はじめに  我が国の消防は、昭和23年に地域に密着した自治体消防として発足して以来、半世紀が経過したが、この間、関係者の努力の積重ねにより、制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民の安全の確保に大きな役割を果たしてきた。 特に、近年においては、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて創設された緊急消防援助隊について一層の拡充を図るなど広域的な消防防災体制を強化するとともに、地域住民や企業など幅広い地域社会との連携のもとに、消防本部・消防団を中心とする総合的な消防防災体制の整備を進めてきている。 しかしながら、近年、社会経済情勢の変化の中で、災害や事故の態様も複雑多様化・大規模化の傾向を強めてきており、昨年来、有珠山や三宅島の火山噴火、東海地方を中心とする豪雨、鳥取県西部地震などによる多くの災害が発生し、また、本年に入っても、芸予地震、台風第11号・第15号等に伴う風水害、新宿区歌舞伎町におけるビル火災など、全国各地で住民の安全を脅かす災害等が相次いで発生している。 さらに、米国の同時多発テロを契機に、国内におけるテロ発生時の対応が迫られている。 こうした中で、災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務は、新世紀を迎えた今日、ますます大きなものとなってきており、今後とも消防防災全般にわたる施策を強力に展開し、国民の安全確保、安心して暮らせる地域づくりに全力を挙げて取り組んでいく必要がある。 平成13年版の消防白書は、火災をはじめとする各種災害の実態や、消防防災行政の現況と課題等について解説したものであり、特集として「新たな住宅防火対策の推進―連携と実践―」と題し、本格的な高齢社会を迎えるに当たり、高齢者等を中心とした住宅火災による死者のより一層の低減を図ることを目的として策定された「住宅防火基本方針」に基づく今後の新たな住宅防火への取組みを取り上げるとともに、これまでの住宅防火の取組みについて整理した。加えて、放火火災予防対策、老朽化消火器の破裂による事故の再発防止対策、住宅に適した消火器等住宅防火に関連する諸施策について記述した。 また、平成13年9月1日に東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルで発生した火災にかんがみ、消防庁において、小規模雑居ビル防火安全対策について、関係省庁との緊密な連携等を図りながら、具体的な検討を行っているところであり、これまでの経過等について、緊急報告として記述した。 さらに、平成13年9月11日に米国において発生した同時多発テロ事件並びにその後の情勢の変化等を踏まえた消防庁におけるテロ対策への取組み等についても、緊急報告として記述した。 この白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民各位の認識と理解を更に深め、また、安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域住民、企業等をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものである。  平成13年12月
特 集新たな住宅防火対策の推進 ――連携と実践――はじめに 我が国では約8分に1件の割合で火災が発生している。 このうち、平成13年9月1日に発生し、44人の死者を出した新宿区歌舞伎町ビル火災が記憶に新しいが、このほか、大阪市千日デパートビル火災(昭和47年、死者118人)、熊本市大洋デパート火災(昭和48年、死者100人)やホテルニュージャパン火災(昭和57年、死者33人)といった比較的多くの人々が出入りする商業的な建築物における火災が人々の耳目を集めた火災となっている。しかしながら、比較的多くの人々が出入りする商業的な建築物において発生した火災(特定防火対象物における火災)は、建物火災の約13.0%(平成12年中。以下「はじめに」の数値において同じ。)を占めているにすぎず、建物火災による死者数1,090人(放火自殺者等を除く。以下同じ。)のうち、こうした火災による死者数は約4.9%の53人にすぎない。 日々発生している火災の多くを占めているのは、個人が寝起きし、その私生活を営む場となっている住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅の総称をいう。以下同じ。)において発生した火災である。住宅で発生した火災は、建物火災の約6割を占めており、建物火災による死者数1,090人のうち、住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。以下同じ。)は、85.9%の936人に上っている。住宅火災による死者の実態については、平成3年度から平成12年度までのものを分析した結果、「高齢者」が、「熟睡中」に、「たばこ」、「暖房器具」を発火源とし、「ふとん類」、「衣類」等に着火することで発生するものが多いことが判明した。住宅火災における死者に占める65歳以上の高齢者の割合は55.2%にも及んでおり、今後、住宅防火対策が、本格的な高齢社会を迎える我が国にとって、喫緊の課題であることを示している。 消防庁では、昭和61年に住宅火災による死者が1,000人を超えたことを契機として、住宅での火災による死者発生を防止する対策を強力に推進することが急務であるとの認識のもとで、昭和62年から平成元年までの3年間にわたり、「住宅防火対策検討委員会」を設置し、住宅防火対策に係る検討を行い、この検討結果を踏まえて、平成3年に住宅防火対策推進協議会を設置し、同年に「住宅防火対策推進に係る基本方針」(以下「前期方針」という。)及び平成8年には「後期5ヶ年における住宅防火対策のあり方」(以下「後期方針」という。)を示し、住宅火災による死者数の半減を目指して、各種対策を国民運動的に推進してきた。 このような取組みの結果、住宅火災による死者数にあっては、人口の増加及び高齢化の状況を踏まえれば、概ね抑制状態の傾向にあり、相応の効果を上げることができたものの、冒頭に述べたように、依然、住宅火災が建物火災の多くを占める状態が続いているところである。 かかる実態を踏まえ、消防庁では、今後、本格的な高齢社会を迎えるに当たり、高齢者等を中心とした住宅火災による死者のより一層の低減を図ることを目的として、本年4月に新たに「住宅防火基本方針」(以下「新方針」という。)を策定した。そして、「連携と実践」をスローガンに、関係機関等との横断的な連携のもとに、住宅のハード面における防火安全性能の向上を図ることにより住宅防火安全度の飛躍的向上を目指すとともに、住宅のソフト面における防火安全の向上を図るために住宅防火情報の提供と防火意識の更なる高揚により個々具体的な住宅防火対策を積極的に推進することとした。 本書では、住宅防火対策の節目に当たり、特集として、住宅火災の実態を紹介しながら、これまでの住宅防火の取組みを振り返るとともに、今後の新たな住宅防火への取組みを取り上げることとしたい。 また、住宅防火対策に密接に関連するものとして、今や火災の発生原因の第1位となっており、特に大都市圏においては深刻な社会問題となっている放火火災予防対策と、平成13年に人身事故が相次いだ老朽化消火器の破裂による事故の再発防止対策及び住宅に適した消火器についても取り上げることとしたい。
第1節 住宅火災の実態1 建物火災のうち住宅火災の件数 過去10年間の建物火災(放火を除く。以下この節において同じ。)の動向をみると、出火件数(平成12年中。以下この節において同じ。)は、約3万1,000件前後で推移しており、そのうち住宅火災の占める割合は、約6割の約1万8,000件前後となっている(第1表)。 平成12年中の建物火災件数は、3万198件であり、そのうち住宅火災(1万7,308件)の占める比率は、57.3%となっている(第1表、第1図)。
2 建物火災による死者のうち住宅火災による死者数 住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。以下本特集において同じ。)は、平成6年から平成10年までは、横ばい・減少傾向を示していたが、平成11年には増加に転じ、昭和61年(1,016人)以降では最高の数値(981人)となったが、平成12年には、若干減少している(第2図)。 平成12年中の住宅火災による死者数は936人であり、建物火災による死者数のうち、住宅火災による死者数が85.9%を占めている(第3図)。そのうち65歳以上の高齢者が半数以上(55.2%)を占めており、依然として高い状況が続いている(第1表、第2図)。
3 発火源別死者数 死者の発生した住宅火災の発火源は、「たばこ」(20.4%)、「ストーブ」(14.7%)、「マッチ・ライター」(5.6%)が上位を占めている。 住宅火災の件数をみると、「こんろ」は火災件数の割に死者数が少なくなっているが、「たばこ」及び「ストーブ」は逆に多くなっている(第4図)。
4 着火物別死者数 死者の発生した住宅火災の着火物は、圧倒的に「ふとん類」が多く、第2位の「衣類」の約2倍となっている。 住宅火災の件数をみると、「天ぷら油」は火災件数の割に死者数が少ないが、「ふとん類」及び「衣類」は逆に多くなっている(第5図)。
5 出火箇所別死者数 死者の発生した住宅火災を出火箇所別にみると、圧倒的に「居室」が多く、約8割を占めている。 「台所」は、火災件数の割に死者数が少なくなっている(第6図)。
6 時間帯別死者数 死者の発生した住宅火災を時間帯別にみると、就寝時間帯(22時から6時)に多くの死者が発生している。 住宅火災の件数をみると、逆に就寝時間帯は少なくなっていることから、就寝時間帯は死者が発生する割合が高いことがうかがえる(第7図)。
7 月別死者数 死者の発生した住宅火災を月別にみると、12月から3月までの4か月間に多くの死者(57.8%)が発生している。 住宅火災の件数をみると、12月から3月までの4か月間は火災件数の割に死者が多くなっていることから、この4か月間は死者が発生する割合が高いことがうかがえる(第8図)。
8 年齢別死者数 住宅火災における年齢別の死者の割合は、65歳以上の高齢者において、著しく高くなっている(第9図)。
9 死に至った経過別死者数 死に至った経過別死者発生状況は、「逃げ遅れ」が約7割を占めている(第10図)。
第2節 新たな住宅防火への取組み1 新たな住宅防火対策の検討 平成3年から住宅防火対策推進協議会を設立し、10年後の火災による死者を大幅に抑えることを目標に各種施策を国民運動的に実施してきた。 この結果、住宅火災による死者数にあっては、人口の増加及び高齢化の状況を踏まえれば、住宅火災による死者総数は概ね抑制状態の傾向にあるものの、高齢者を中心に、死者は依然として多発している状況にあった。 平成12年度をもって、これまでの活動成果を検証するために、平成12年に「新住宅防火対策検討会」(委員長:菅原進一・東京大学教授)を設け、今後のあり方等についての検討を行った。
(1)「新住宅防火対策検討会」における検討 実務者レベルの委員で構成された検討会を5回開催し、新方針の案となる「今後の住宅防火対策のあり方に係るまとめ」を次のように作成した。ア 推進体制の整備等 地域の実情に応じて、住宅防火のみを目的とする協議会に限らず、防火・防災・環境・福祉等に係るまちづくりのための既存組織を活用するなどして、実践を伴う幅広い連携・協議が長期にわたって推進されることが望ましい。 また、構成委員の役割、事業計画のもととなる目標とその評価方法等を明確化し、実践に対する動機付けを図ることが必要である。イ 防火意識の高揚・広報の推進 広報の基本は、受け取る側に立ち、対策の実施の必要性を動機付けることが重要であることから、全国一律・同内容の広報から重点対象を絞り込んだ広報の展開について検討し、消防団、ホームヘルパー、防火クラブ、その他の自主防災組織、地域に密着した関係団体との連携による重点的広報の推進を図る必要がある。 また、広報対象に応じた広報素材等の作成・提供を図ることが必要である。ウ その他の地域密着型事業の推進(ア)展示会・展示普及事業の充実強化 都道府県単位のシンポジウムの開催、住宅用防炎機器等の地方展示会等多様なイベントへの参加・支援について充実方策を検討し、推進することが必要である。 なお、予算の確保や内容についての検討が必要である。(イ)住宅防火モデル事業の実施 モデル事業については、効果の検証方法について検討が必要であり、また、予算の確保及び費用対効果の面から、実施地域の指定及び実施方法等について工夫することが必要である。エ 住宅防火診断の実施(ア)防火診断プログラムについて、入力項目、評価方法、具体的対策の表示等、内容の検討・改良を進めるとともに、インターネット等による自己診断方式を主体とすることについて検討する必要がある。(イ)防火診断訪問については、消防団、ホームヘルパー、自主防災組織等の活用と合わせて、福祉部局等との連携を図り、対象を絞った重点実施を積極的に推進する必要がある。オ 住宅用防災機器等の開発・普及促進(ア)電池交換が不要な着脱式火災警報器や多機能・複合型警報器、取扱いが容易な消火器具等の開発、販売ルートの拡充、設置への動機付けのあり方の検討等を図り、強力に普及・促進を図る。(イ)住宅性能表示制度を活用した新築住宅への防災機器の設置促進を図る。(ウ)福祉部局等との連携により、高齢者世帯等への防炎衣類・寝具、その他の防災機器等の普及促進を支援する。(エ)住宅用防災機器等の具体的奏功事例等を収集・情報提供し、設置のメリットを強調した広報を推進する。 この検討結果等を踏まえ、住宅防火対策推進協議会において決定された「新指針」を受けて、平成13年度以降も引き続き、高齢者の安全対策を中心とした事項を主要対策として、具体的実践方策の積極的な展開を図っていくこととした。
2 新たな住宅防火対策の推進 平成13年4月に策定した新方針に基づき、個人が私生活を営む場である住宅の防火責任は、当該個人が負うべきものとの考えのもとに、個人の責任において個々の住宅における防火安全のグレードアップを図る必要があるとした。 消防庁では、今後の取組みとして、個人の住宅における防火安全度の向上を図るための支援と地域における住宅防火対策の推進のための支援に重点を置き、必要かつ具体的な対策を積極的に実施していくものとする。
3 目標 今後10年間の目標として、ハード・ソフト両面からの住宅防火対策の充実強化を図り、放火自殺者等を除く住宅火災による死者の発生数を現状から予測される死者発生数の半数※に低減・抑制することを目指す(第11図)。 なお、目標期間を前期5か年(平成13年度から17年度)と後期5か年(平成18年度から22年度)に分け、前期の実績を踏まえて、後期5か年の必要な対策の見直しを講じるものとする。※この「予測される死者発生数」とは、人口問題研究所の年齢階層別将来推計人口(平成9年1月推計)に、これまでの年齢階層別住宅火災死者発生率(放火自殺者等を除く。)を乗じて算出したもの(以下「死者発生予測数」という。)である。
4 具体的実践方策 国、地方公共団体及び関係機関等がそれぞれの立場で連携を図り、「連携と実践」をスローガンに掲げ、個々具体的な住宅防火対策を積極的に推進することとしている。
(1)関係機関等との横断的連携の推進 国、都道府県及び市町村のそれぞれの段階で、関係する行政機関、福祉関係機関、研究機関及び関係業界等が、個々の住宅防火対策の内容に応じて必要な連携を横断的に行う。
(2)住宅防火安全度の飛躍的向上 住宅のハード面における防火安全性能の向上を図るため、住宅用防災機器等の普及促進を図る。ア 住宅用火災警報器等の設置促進 住宅火災における逃げ遅れの死者を低減するため、火災の早期発見に寄与し、逃げ遅れによる死者の発生防止に効果が期待される住宅用火災警報器等の設置促進を図る。(ア)新型の「住宅用火災警報器」の普及 平成13年5月、消防庁予防課長通知により、「新型の住宅用火災警報器に係るガイドラインについて」を示し、「連動型住宅用火災警報器」の基準を策定し、「住宅用スプリンクラー設備及び住宅用火災警報器に係る技術ガイドライン」に追加したところである。 これは、電池交換が不要で、天井コンセント脱着式のため更新が容易な警報器と、天井コンセント(専用接続具)の基準を示したものであり、このうち脱着型の住宅用火災警報器は、取付け・取外しが容易であるため、維持管理や用途変更に対応しやすいものである。 さらに、連動型にしたものは、火災を感知した住宅用火災警報器だけでなく、相互に接続されているものが警報を発するため、早期避難に極めて有効なものである。 なお、この警報器は、あらかじめ天井面等に専用接続器具・信号線を設置しておく必要があることから、主として次の方法により、新築住宅に対して設置の促進を図ることとしている。a 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度を活用した設置促進 すべての居室に脱着式の住宅用火災警報器(連動型)の取付け用コンセント及び配線(相互接続)がなされ、かつ、感知を行う部分が、すべての居室及び台所に設置されており、火災が発生した場合、早期に感知し、住戸全域にわたり警報を発するものを住宅性能表示制度に位置付けており、この制度を活用して設置促進を図る。b 公営住宅等への情報提供による設置促進 自動火災報知設備の設置義務対象外の公営住宅や職員住宅等の事業主体に対して情報提供等を行うことにより、設置促進を図る。c 住宅メーカー団体等への協力要請 住宅メーカー団体等に対し、普及促進の協力を依頼することにより、設置促進を図る。(イ)従来型の「住宅用火災警報器」の普及 新型の住宅用火災警報器を設置する場合、あらかじめ天井面等に専用接続器具と信号線を設置する工事が必要となることから、既存の住宅においては、従来から設置促進を図っている、ビスで取付け可能な電池式の住宅用火災警報器の普及を図るものとする。a 無償交付による設置促進 平成10年度、11年度の2か年にわたり、住宅用防災機器等モニター事業として全国333市町村の高齢者世帯、住宅防火モデル地区等を中心に約3万個の住宅用火災警報器(煙感知式)を交付した。この交付の1年後には、モニターに対してアンケート調査を実施し、住宅用火災警報器の奏功事例、火災予防上の効果などについての説得力のある集計・分析を行い、住宅用防災機器等の普及・促進のための基礎資料としたところであり、平成13年3月に「住宅用防災機器等に関するモニター事業報告書」として公表した。 これらのモニターからは、「火災を未然に防ぐことができた。」、「設置するまで、住宅用火災警報器の存在を知らなかったが、設置してみて非常に役に立った。」などという評価する意見が多かったため、今後も機会をとらえ、住宅防火モニター事業として、住宅防火対策を積極的に推進している高齢者等の災害時要援護者が多く居住している住宅防火モデル地区等を中心に、住宅用火災警報器の無償交付を行い、設置促進を図る。b 福祉団体等との連携による点検及び更新の促進 上記aによる無償交付事業の対象となった家庭と併せて、高齢者等が居住する家庭に対しては、各個人で住宅用火災警報器等の点検及び機能の低下した機器等の更新ができない場合、ホームヘルパーや民生委員等の福祉関係者や防火クラブ員等との連携による点検等の促進を図る。(ウ)住宅用火災・ガス漏れ複合型警報器等の普及促進 平成11年に、火災感知の機能とガス漏れ検知及び一酸化炭素検知の機能を組み込んだ複合型の住宅用火災警報器(以下「住宅用火災・ガス漏れ複合型警報器」という。)が開発され、平成11年9月に消防庁予防課長からガス関係団体等に普及促進の要望を行った。 その後、あるガス会社のエリアでは、1年間に約20万台以上が設置されるなど、急速に普及しているが、全国の都市ガス事業者236対象を調べてみると、この住宅用火災・ガス漏れ複合型警報器を採用しているのは、約30%(平成13年6月調査)にすぎなかった。このため、再度、ガス関係団体等に普及要望を行い、普及促進を全国に展開することとしている。(エ)その他新規開発による普及促進 高齢者は、火災等の災害発生時において、周囲の状況変化に迅速・的確な行動をとることが困難なため、逃げ遅れ等による死傷事例が多く、今後、本格的な高齢社会の到来を迎えるに当たり、高齢者の火災による死者数の急増が懸念されるところである。 このような状況を踏まえ、高齢者の防火安全性を確保するため、消防庁では、高齢社会における火災予防・火災通報のあり方を検討するとともに、軽量で使いやすい消火器や操作の容易な避難器具など高齢者の体力、視力、聴力等を考慮したより効果的な火災予防・火災通報機器のガイドラインを作成する。イ 住宅用消火器等の設置促進 火災の初期消火と拡大防止に寄与し、逃げ遅れによる死者の発生防止にも効果が認められる住宅用消火器・自動消火設備等の設置促進を図る。(ア)ニーズに対応した新たな推奨基準の策定 「住宅用防災機器等の開発、普及の推進」の調査研究の一つとして、平成13年3月、家庭の主婦を中心とした女性の協力を得て、既存の様々な消火器等(一般消火器、住宅用消火器、エアゾール式簡易消火具)を用いて、持ちやすさ、操作しやすさ、設置しやすさなどの視点から、住宅火災に適応した消火器等の使いやすさの検証実験を行った。 その結果、エアゾール式簡易消火具はスプレー式と握り式が持ちやすく、操作が非常に簡単である、同じエアゾール式でもレバー式は持ちにくく操作も困難であるとの回答が多かった。一方で、一般消火器は、持ちにくく、操作が困難であり、自宅には置きたくないとの回答が多かった(実験に使用した一般消火器は、粉末10型=粉末消火薬剤が約3.0kg入ったもの)。 さらに、「天ぷら油火災」及び「カーテン火災」を想定し、消火実験を体験してもらい、持ちやすさ、消火のための操作性、消火のしやすさ、消火の際の安心感、消火の自信、その他消火器に対する意見についてアンケートを実施した。 その結果、カーテン火災に対しては、住宅用消火器の中性強化液がどの質問項目に対しても、ポイントが高く、消火もしやすいとの回答が多かった。 天ぷら油火災に対して、粉末タイプの消火器等を使用した場合では、通常、鍋の油面への直接放射が有効であるが、大部分の実験者が炎に対して放射してしまい、炎の上昇気流によって粉末が舞い上げられて、消火に手間どっており、消火もしにくかったという回答が多かった。 その一方、強化液の消火器等の方が、天ぷら油火災に対しては確実に消火ができ、特にエアゾール式簡易消火具(強化液)のレバー式やスプレー式は、持ちやすく、操作が簡単で消火もしやすいとの回答が多く、台所に設置するのに適しているとの回答が多かった。また、エアゾール式簡易消火具の消火性能が見た目よりも高いとの回答も多かった。 なお、住宅用消火器(強化液)の場合は、放射圧力が強く油を噴き飛ばしているものが散見された。 これらの分析結果を踏まえ、住宅構造、居住者の生活環境等に配慮した「消火器等推奨基準」(平成13年11月6日消防予第387号消防予防課長通知)を次のとおり策定しており、これを活用して的確な消火器等の普及促進を図ることとしている。(イ)実消火訓練設備の開発・配備による設置促進 消火訓練を促進し、取扱いの習熟を図るために、天ぷら油火災やカーテン火災の再現ができ、強化液消火器、粉末消火器等を放射できる実消火訓練設備を開発し、実践による設置促進を図ることとしている。(ウ)自動消火設備等の設置促進 住宅用スプリンクラー設備や、住宅用自動消火装置、固定型消火機器及び天ぷら油火災用簡易装置は、火災の早期発見、初期消火、拡大防止に寄与し、逃げ遅れによる死者の発生防止にも効果があると考えられるため、設置促進を図り、これらを設置した場合の損害保険料の割引制度の導入に向けて情報提供を推進する。ウ 防炎品の使用促進 平成12年中の高齢者の死者517人についてみると、着衣着火による死者は39人(7.5%)であり、着衣着火に極めて有効である防炎品の使用促進を図る。(ア)ニーズに対応した新たな推奨基準の策定 かねてより、「寝たばこは、しない、させない。」という広報を実施しているが、いくら注意を喚起しても完全にこれを徹底させることは難しい実態にある。そのため、かかる実態を踏まえて、寝たばこをしてしまう可能性のある場合には、使用する寝具類は、防炎品を使用するなど、生活実態や住宅内における火気使用設備器具等の使用実態に応じた防炎品の推奨基準を策定し、使用促進を図ることとしている。(イ)住宅防火対策推進協議会ホームページを活用した具体的事例の収集 防炎品は、着火による火災そのものを防止する効果があるため、事例としての収集が難しいが、平成14年度から住宅防火対策推進協議会ホームページ(以下「協議会ホームページ」という。)で、一般住民の火災になりかけた体験等(ヒヤリ・ハッと体験)を募集し、それら情報をフィードバックすることにより、使用促進を図ることとしている。エ 住宅防火安心マークの普及 住宅用防災機器等の構造・性能等に係る具体的ガイドラインに適合する住宅用防火機器等に対して、その旨明示する優良住宅用防災機器等の推奨制度(平成13年7月末現在:12品目105型式承認)の周知徹底の広報と、住宅用防災機器等の円滑な流通、販売を行うために、機器等を販売する団体等(平成13年7月末現在:43団体)に対し、住宅防火安心マークを付した看板等を設置することにより、住民の購入の目安とし、機器等の普及促進を図る。オ 研究機関と連携した新規開発の促進 建物火災による死者全体の80%以上を占めている住宅火災による死者を低減させるために、独立行政法人消防研究所では、居室に広く設置されている住宅用機器に、機能の維持が容易な火災検知機能を組み込むことについて開発研究を行っている。開発中の機器は、エアコンや空気清浄機などの住宅用機器に火災検知機能を付加するもので、温度センサー、煙センサー、ガスセンサー等を機器本来の作動制御のほかに環境異常を検出し火災時には警報を発するために利用する。また、通常時は酸素濃度の低下あるいはCO濃度、CO2濃度の増加、空気汚濁等を検出し表示することにより、居住者の快適な住環境を確保すると同時にセンサーの機能維持を促す効果が得られるものである(第12図)。
消火器等推奨基準1 消火器等推奨基準策定の背景 消防法では、火災を早期に発見し、速やかに報知し、初期消火、安全避難を行うことにより、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために、消火器、自動火災報知設備、避難器具等の消防用設備等の設置及び維持の義務を課している。これらは、本来、広くあらゆる建築物について設置を義務付けることが望ましいが、収容人員の多少、出火の場合の人的物的損害の程度、消防用設備等の設置及び維持に要する経済的負担等を考慮して、消防用設備等を設置し、維持する義務のある建築物を一定の建築物に限定しているところである。他方、個人が私生活を営む場である住宅については、その防火責任を当該個人が負うべきものとの考えの下に、火災発生時の危険性を共有する共同住宅等の一部を除き、消防法令による消防用設備等の設置維持義務を課していない。 しかしながら、住宅火災は建物火災の発生件数の約6割を、住宅火災による死者数は建物火災による死者数の約9割を占めており(火災の発生件数については放火火災を、死者数については放火自殺者等を除く。)、住宅の防火安全性能については各個人が着実にその向上を図っていく必要がある。こうした観点から、消防庁としては、優良住宅用防災機器等推奨制度(住宅防火安心マーク制度)の周知、火災の早期発見に寄与する住宅用火災警報器の普及、着衣着火に有効な防炎品の使用促進等を図っているところであるが、住宅において、火災の初期消火と拡大防止に寄与する消火器等の設置を図っていくことは極めて重要である。
2 消火器等推奨基準策定の考え方 消防庁では、平成3年以降、住宅防火対策に必要な機器等を居住者に的確に提供できるようにするため、住宅にふさわしい「住宅用防災機器等の開発、普及の推進」の調査研究を行っているが、住宅に消火器等を設置するに当たっては、その消火作用と可燃物の燃焼性状を考慮することが必要となり、さらに、主婦、高齢者等を含む使用者の体力状況、及び、台所、居間等の設置場所の状況を十分に踏まえなければならないことから、家庭の主婦を中心とした女性により、「天ぷら油火災」及び「カーテン火災」を想定した消火実験等を行い、持ちやすさ、消火のための操作性、消火のしやすさ、消火の際の安心感、消火の自信、その他消火器に対する意見について、既存の様々な消火器及びエアゾール式簡易消火具を用いながら調査した。 また、本年3月以降、老朽化した消火器の破裂によって人身事故を含む事故が相次いで発生しているが、これらの事故は、長期間保守点検等がなされておらず腐食が激しい加圧式の消火器(消火薬剤を放出するための圧力が消火器内部に常時かかっている方式(蓄圧式)ではなく、使用時のみ内部の加圧用ボンベから高圧のガスが一気に消火器内部にかかる方式のものをいう。)を、このような状態になった場合の危険性を認識せずに操作したために発生したものである。 これらを踏まえ、住宅火災に適した消火器等を推奨するものとして、3に示す基準を策定した。 この消火器等推奨基準は、住宅火災に適した消火器等を示したものであり、地方自治体によっては、地震時の出火の備えとして消火器等を住宅に配備し、初期消火に努めることとしているところもあることに考慮する必要がある。 なお、加圧式の通常の消火器を住宅に設置する場合には、保守点検等の維持管理を励行することが危険防止の観点から必要である。
3 消火器等推奨基準  防火対象物や住宅に広く設置されている通常の消火器(赤色で塗色されているもの)は、定期的な点検や整備などの日頃から適切な維持管理が必要なものである。  また、消火器が適切に維持管理されていない場合には、消火器の能力を発揮できないことがあるだけでなく、加圧式の消火器が著しく腐食した場合には、消火器を使用した際、破裂することもある。  したがって、住宅に消火器等を設置するに当たっては、維持管理が比較的容易な住宅用消火器やエアゾール式簡易消火具とすることがより望ましい。  さらに、これら消火器等を住宅内に設置する場合には、生活空間によって想定される火災特性が異なり、また、消火器等を使用する者の体力状況が異なることから、これらに応じた消火器等を選択することが適切である。この場合においては、次の基準によることが望ましい(表参照)。(1)台所  台所においては、発生が想定される主な火災は、天ぷら油火災であることから、天ぷら油火災を消火する効果、天ぷら油火災の場合には小区画内での消火薬剤放出による視界への影響による弊害等を考慮に入れると強化液、水(浸潤剤入り)又は機械泡(以下「液体系」という。)を消火薬剤とする住宅用消火器又はエアゾール式簡易消火具を設置することが望ましい。(2)居間、寝室、書斎、子供部屋等  居間、寝室、書斎、子供部屋等(以下「居間等」という。)のいずれか一つの用途が存する階においては、通常の体力のある者が居住する場合には、住宅用消火器を設置することが望ましく、比較的体力のない高齢者等が居住する住宅の場合では、エアゾール式簡易消火具を設置することが望ましい。
(3)住宅防火情報の提供と防火意識の更なる高揚 ソフト面における防火安全の向上を図るため、住宅防火情報を積極的に提供し、各家庭の具体的な住宅防火安全レベルの向上を目指し、住民自らが防火に取り組む対策を推進する。ア 地域密着型の防火への取組みの展開促進 地域住民が行う住宅防火への取組みに対して、主体的に推進できるよう積極的にサポートし、住宅防火対策の促進を図る。(ア)地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進 関係行政機関と連携した高齢者等の災害時要援護者情報の積極的な収集を行い、防火対策への活用を図る。(イ)福祉関係者等に対する住宅防火情報の提供 ホームヘルパー、民生委員等の福祉関係者や防火クラブ員等の指導的立場で住宅防火を推進している者を「防火対策推進協力者」(以下「協力者」という。)としての位置付けを行い、支援体制の充実を図るとともに、協力者に応じた必要かつ具体的な住宅防火対策情報の提供を図る。a 協力者用「住宅防火対策指導教材」の作成 高齢者等を介護している協力者が、地域におけるリーダーとして必要とする知識を網羅した指導教材を作成し、この協力者が高齢者宅等への訪問時に防火の観点からアドバイスする上での参考として活用する。 今後は、協議会ホームページにこの指導教材を配信するとともに、育成支援プログラムを作成し、協力者に対する支援の充実を図る。b 高齢者等にわかりやすい防火対策資料の作成 高齢者等にわかりやすい防火対策資料を作成し、火災で死亡する主な出火原因と日常の生活の中で火災を起こさないための具体的な例を示すことにより注意喚起を図る。(ウ)地域の教育の場を活用した住宅防火知識の普及 展示会やシンポジウムなどの防火イベント等のあらゆる教育の場を活用して住宅防火知識の普及の徹底を図る。a 住宅防火フォーラム等の開催 一般の人を対象に、住宅火災の実態を紹介し、「何か住宅防火の取組みをしなくては」という意識付けをするとともに、地元報道関係者等による広報活動を通じた、住宅防火知識の啓発を促進する効果をねらって、平成13年度は、東京、大阪の2会場において、住宅防火フォーラム等を開催した。今後は、住宅防火地方講演会支援事業として位置付けて、各自治体において、住宅防火フォーラムや講演会等が実施できるように助成を行う予定である。b 展示普及事業等の充実強化 平成3年度から実施している住宅用防災機器等普及促進事業は、住宅防火対策の推進に資するため、防火イベントや展示等のために使用する住宅用防災機器等を交付しているものであるが、今年度は、交付する住宅用防災機器等の見直しを図り、新型の住宅用火災警報器と住宅用火災・ガス漏れ複合型警報器を新たに追加した。平成3年度から平成13年度までの交付団体総数は234団体である。 平成8年度から実施している住宅防火地方展示会支援事業は、防火イベントや展示会等を実施するために助成を行っているものである。平成8年度から平成13年度までの助成団体総数は39団体である。イ インターネット等の活用による住宅防火情報の収集・提供の推進 個々の高齢者居住住宅等の実情に応じた、インターネットの活用による住宅防火診断手法の新規開発と訪問診断等の実施促進を図る。(ア)パソコン等を活用した住宅防火診断の促進 住宅防火診断とは、消防職員等が、各家庭を訪問したり、防火講演会や防火イベント等を利用して、それぞれの住宅防火対策を具体的に認識できるよう防火・防災に関するアドバイスを行うものである。a 住宅防火診断プログラムの開発・改訂 平成3年に従来方針に基づき、各住宅の家族構成、火気使用設備・器具の使用実態、消火器等の住宅用防災機器等の設置状況等から、各家族及び住宅ごとに防火安全性の現状評価及び改善のために防火対策を実施した場合の効果を数値で示すパソコンソフトを開発し、平成9年度には、使用語句の簡易化(「低減率」から「あんしん度」へ)、集計・統計機能の充実、アドバイス・防災機器の表示等附属機能の充実などの大幅な改定を行った。b インターネットの活用による住宅防火診断手法の新規開発 この住宅防火診断システムについては、診断実施者側からは、興味を引く画面でない、操作性が悪く、入力項目が多いため、1回の診断に時間がかかりすぎる、ハードウエアの環境が整備されていない等、また、受診者からは、入力情報が、受診者のプライバシーに踏み込みすぎである、診断出力結果(あんしん度グラフ)の内容が理解しづらい、診断後の改善対策が、結果から見出すことができない等の問題点が指摘された。 これらの問題点を踏まえ、新方針に基づき、webシステムの普及利用、誰もが見て納得する結果表現と防火に対する具体的な対策の提示、親しみやすさの向上と防火に対する意識を高める内容の充実、画像(静止画、動画)、音声、解説等の素材の盛込みなどの考えを取り入れて、次の改良を行うための新規開発を行っているところである。1) システムとしての改良点 webシステムを採用する。 インターネットに接続することにより、利用者は好きな時間に診断できるため、より多くの人が利用可能となる。 また、通信手段さえ確保できれば、どこからでもアクセスできるため、戸別訪問やイベント等での活用も可能である。2) 内容の改良点 診断情報の入力操作を極力少なくし、マウスを使ったクリック操作で高齢者等にも簡単な操作とする。 画面も映像、アニメーションを用い、親しみやすくわかりやすいシステムとする。上記の改良点を踏まえ開発中の新しい内容を紹介する。1) 「住宅防火診断コンテンツ」 住宅内の各場所において、防火対策に関する質問を行い、受診者は、火災原因(発火源、着火物)や機器等の防火対策をマウスを使って回答するもので、その回答結果から診断を行い、併せて受診者に対する防火アドバイスを行う。2) 「住宅防火対策データ集」 住宅火災の原因とその対策、防火対策の心得と準備、防火に関する統計データの紹介、火災になりかけた体験(ヒヤリ・ハッと体験)等の紹介を画像(静止画、動画、アニメーション)とテキスト集により解説する。3) 「風水防火対策コンテンツ」 家の構造、位置(方位)などの視点から診断を行い、防火に対するヒント、アドバイスを解説する。 なお、この新しい「住宅防火診断」は、平成14年春季全国火災予防運動までには、協議会ホームページから利用できるようになる予定である。(イ)パンフレット等の効果的・効率的な活用の促進 例年、住宅防火対策推進協議会広報分科会のビデオ・パンフレット製作部会において、パンフレット等を作成して配布することにより防火意識の高揚等を図っている。 平成13年度は、このパンフレットの中に、住宅防火診断チェックリストを盛り込んだものを作成した。 この「住宅防火診断チェックリスト」等との併用により、高齢者居住住宅等の訪問診断時への効果的な活用を図る。(ウ)訪問診断・防火指導の重点実施 福祉関係機関・団体、協力者等と連携し、その協力を得て、災害時要援護者等居住世帯に対する住宅防火対策の訪問診断の重点実施を図る。
第3節 これまでの取組み1 住宅防火の経緯 消防庁では、昭和61年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)が1,000人を超えたことを踏まえて、昭和62年度から平成元年度までの3年間にわたり、「住宅防火対策検討委員会」(委員長:岸谷孝一・日本大学理工学部教授)を設置し、住宅防火対策に係る検討(別表1)を行った。 この検討結果等を踏まえて、住宅防火対策を消防行政の極めて重大な課題として国民運動的に推進するため、平成3年3月に従来方針(別表1)を定め、建設省(現国土交通省)住宅局と協力して、関係行政機関、関係団体等との幅広い連携のもとに防火意識の高揚、住宅防火診断の実施、住宅用防災機器等の開発、普及の推進をはじめとした各種方策を展開してきた。 また、平成3年7月には、住宅防火対策を組織的に推進するため、学識経験者、関係行政機関、関係団体等で構成する「住宅防火対策推進協議会」(会長:石原俊・(社)経済同友会代表幹事)を設置し、住宅防火対策を総合的かつ効果的に推進した。 しかしながら、平成7年末までの住宅火災による死者発生状況をみてみると、各年における死者発生数は、これまでの施策の成果を反映し、人口及び世帯数の増加の状況と比較して抑制状態にあるものの、絶対数では増加の傾向を示しており、また、住宅火災による死者のうち高齢者の占める割合は、人口高齢化率に比べ著しく高い水準となっており、順調に施策の成果が上がっているとはいいがたい状況にあった。 そのため、平成8年度からは、後期方針(別表1)を定め、「抑制から減少へ」を目標として、より効果的な住宅防火対策の推進に取り組んできたところである。
2 当初目標に対する達成度の分析 平成12年中の住宅火災による死者は936人で、人口の増加及び高齢化の状況を踏まえた当年の死者発生予測数1,278人以下ではあるものの、その2分の1である639人を大きく上回っており、平成3年の従来方針において、当面の目標とした「10年後(平成12年中)における死者発生数を、現状から予測される死者発生数の2分の1以下に抑える。」ことは達成できなかった(第13図)。
(1)過去10年間における死者数の推移ア 平成3年以降の住宅火災における死者数の推移をみると、平成3年の832人から増加傾向にあった死者数は、平成6年の959人をピークとして平成10年の865人まで緩やかに減少し、平成11年には、981人まで急増したものの、平成6年以降はおおむね抑制傾向にあるといえる。イ 死者数の推移を、65歳以上の高齢者とそれ以外の者とに分けてみると、高齢者の死者が年々増加傾向にあるのに対し、高齢者以外の死者は横ばい若しくはやや減少傾向にあり、全死者数に占める高齢者の割合が平成3年の50.0%から平成12年の55.2%まで増加している。ウ 死者の予測値に対する実死者数の割合をみると、平成3年の80.2%から、平成6年の86.0%をピークとして平成10年の70.6%まで減少し、平成11年には78.4%に増加したものの、低減する傾向にあるといえる(第13図)。
(2)死者の発生割合の推移 人口10万人当たりの死者数をみると、全年齢では平成3年の0.67人から平成12年の0.74人まで、横ばい若しくはやや増加傾向にあるのに対し、高齢者は平成3年の2.67人から平成12年の2.32人まで、やや減少傾向にあり、高齢化に伴い高齢者人口が増加している一方で、高齢者の住宅火災による死者の発生割合は、やや減少しつつあるといえる。
(3)まとめ 以上から、住宅火災による死者の発生状況は、人口増加、特に高齢者の増加に伴って依然としてやや増加傾向にはあるものの、死者の予測値に対する実死者数の割合及び高齢者の死者発生割合の減少傾向から、人口増加及び高齢者の人口割合の増加に比べて抑制傾向にあるといえ、当初目標は達成できなかったものの、住宅防火対策の推進による相応の効果は上がっていると考えられる(第13図)。
3 火災による死者の発生防止に寄与する個々の要因の分析(1)建物構造ア 住宅火災の発生件数をみると、住宅総数が昭和63年から平成10年までの10年間で19.6%増加している(総務省統計局:住宅・土地統計調査)のに反して、住宅火災は平成3年の1万9,531件から平成12年の1万7,308件まで、減少傾向を示している。 これを建物構造別にみると、火災件数では木造住宅火災の減少が最も大きいが、防火構造住宅火災が約26.0%減少し、耐火構造住宅火災は約11.4%の減少、木造住宅火災は約9.3%の減少となっている。イ 一方、住宅火災100件当たりの死者発生数の推移をみると、木造住宅火災による死者が平成3年の5.34人から平成12年の6.36人まで19.1%増加、防火構造住宅火災では3.18人から4.38人まで37.7%増加、耐火構造住宅火災では1.73人から3.55人まで105.2%の増加、準耐火構造住宅火災では3.46人から3.76人まで8.7%の増加となっている。ウ 住宅火災件数は、建物の増加にもかかわらず主として住宅内部の火源、着火物あるいはソフト面等に起因して減少しているが、一方で住宅火災1件当たりの死者発生数は増加しており、特に、木造・防火構造などの住宅防火性能の低いものほど火災1件当たりの死者発生数が高くなる傾向にあることから、建物構造による死者の低減には、耐火構造・準耐火構造等の防火性能の高さが抑制要因となるといえる。
(2)発火源ア 発火源別に死者の発生状況をみると、「たばこ」又は「暖房器具」が発火源の火災による死者が毎年第1位又は第2位で、全体の約3分の1の件数を占めている。 住宅火災の出火原因の第1位が「こんろ」であるにもかかわらず、「たばこ」又は「暖房器具」が死者の第1位、第2位を占めているのは、「たばこ」又は「暖房器具」が、居室で就寝直前又は就寝中に使用されることが多いためと考えられる。イ 一方、発火源別に死者数の推移をみると、「暖房器具」及び「こんろ」に起因する死者数は減少傾向にあり、「たばこ」、「マッチ・ライター」及び「電気器具」に起因する死者が増加傾向にある。 これは、「暖房器具」及び「こんろ」について、立ち消え安全装置、天ぷら油火災防止機能付きガステーブルの普及、対震自動消火装置付き暖房器具の普及など、ハード面の安全性向上が図られた結果と考えられる。 発火源のうち、「電気器具」について死者が増加傾向にあるのは、個々の器具の安全性は向上しているものの、家電製品等の急増によって火災件数が増加傾向にあるためと考えられる。 発火源別の火災による死者数の低減を阻害する最も大きな要因としては、暖房器具、こんろと違い、発火源自体に対するハード面の対策が困難な「たばこ」や「マッチ・ライター」等については、それを取り扱う「人」の不注意等にあると考えられ、着火や延焼拡大を防ぐための防火対策がより効果的であると考えられる。
(3)着火物ア 着火物別に死者の発生状況をみると、「ふとん・座布団・寝具」が毎年第1位で、10年間平均で全体の18.4%を占め、「衣類」がこれに次いでいる。 着火物別の火災による死者数の推移をみると、「ガソリン・灯油類」の増加傾向と、「繊維類」の減少傾向などがあるが、全体的にはおおむね横ばいの傾向にある。イ 「ふとん類」について住宅防火安心マーク付き防炎製品の普及状況をみると、10年間合計でシーツ、枕カバー、布団等の「寝具類」が約59万枚普及している。 防炎寝具類の使用により、「寝具類」を着火物とする火災はほぼ防げると考えられる。ウ 同様に、住宅防火安心マーク付き防炎衣服類は、10年間で約16万着普及している。エ 「カーテン・じゅうたん類」は、火災の拡大要因となる危険性が高いものの、これらを着火物とする火災による死者は10年間で192件と比較的少ない。 これらの防炎物品の普及状況をみると、住宅用のカーテン類が約515万枚、じゅうたん類が167万枚普及している。オ 寝具、衣類、カーテン、じゅうたん、その他の防炎品は、これらのものへの着火による火災そのものを防止できることから、「火災に至らなかった例」を統計的に収集していない現状では、その効果を定量的に分析することが困難である。
(4)出火箇所ア 出火箇所別に死者の発生状況をみると、毎年「居室」での死者数が全体の約8割を占めておおむね横ばいの傾向を示している。これは、居室の使用形態が寝室や居間等のほか極めて多様で、発火源、着火物がともに多いこと、就寝中のため逃げ遅れることが多いこと等がその主な要因といえる。イ このため、居室からの出火による死者の発生要因としては、発火源、着火物、延焼拡大要因、死に至る経過、人による初期対応等の要因が複雑に関与している。 なお、総合的な対策としては、防炎品等による着火物の防火対策や住宅用火災警報器等の設置による早期発見対策、住宅用スプリンクラー設備等の自動消火設備の設置が効果的であると考えられる。
(5)死に至った経過 死に至った経過別では、特に「発見の遅れ」による「逃げ遅れ」が毎年第1位を占め、その他の「逃げ遅れ」と合わせて全体の約7割を占めている。
第4節 関連施策1 放火火災予防対策(1)現状 放火(放火の疑いを含む。以下この節において同じ。)による火災は、年々増加傾向にあり、昭和60年以降、火災原因の第1位を占めている。今や、放火は、全火災の約5分の1に相当しており(第14図)、特に大都市圏においては火災原因の5分の2以上を占めるところもある(東京、大阪)など深刻な社会問題となっている。 かつて、放火が農村部に多いといわれた頃、家族や近隣との間で生じた深刻な不満や恨みを晴らす手段としての放火が多いといわれていた。しかしながら、最近の放火は農村型から都市型に様変わりしてきており、相手と場所を選ばない無差別なものが多くなってきているのが大きな特徴である。都市型放火においても病的な放火魔は少なく、自分の抱え込んだ不平不満を発散するためや挑戦的な放火に走る傾向にあるとの心理学的分析もある。いずれにしても、職場、地域社会で心理的に孤立し、憂さ晴らしのため無差別に放火に走ることが多いことから、いつも身の回りで放火が発生する可能性があることを考えて放火火災予防対策を検討する必要がある。 専門家の推計によるとこのような都市型犯罪は、今後とも増え続けると見込まれており、放火火災予防対策は火災予防行政において、今後、ますますその重要性を増していく分野である。
(2)消防庁の取組み 消防庁では、平成元年以降、春・秋の全国火災予防運動の重点目標の一つとして「地域における防火安全体制の充実」を掲げ、地域ぐるみで放火火災を防止するよう指導を行ってきており、平成3年9月には「火災予防条例準則」(現在の「火災予防条例(例)」)を改正し、新たに、空家の管理に関する火災予防上必要な措置に関する規定を置くこととした。 また、自動車・オートバイ等のボディカバーを防炎製品の品目として平成4年11月に追加するとともに、車両火災予防運動における重点実施要綱として自動車等のボディカバーにおける防炎製品の使用を平成5年から掲げ、さらに平成12年には「放火火災予防対策の推進」を全国火災予防運動の重点目標に掲げ、ハード、ソフト両面からの対応を図ってきている。 しかしながら、放火火災は、故意により発生するものであることから、主として過失等により発生する火災を対象とした一般の火災予防対策とは異なった対応も必要となることから、平成9年度から10年度において「防火対象物の放火火災予防対策に関する調査研究委員会」(委員長:上原陽一・横浜国立大学工学部名誉教授)を設置し、住居環境や生活環境など各要因ごとに放火火災発生メカニズムの調査解析等を行い、あらかじめとり得る方策をハード、ソフト両面にわたり検討してきたところである。この検討結果を踏まえて作成した「放火火災予防対策マニュアル」等に基づき、今後も、地域の連携を密にした具体的対策の推進を図り、引き続き、放火火災の更なる低減を図るために、特に、「放火されない環境づくり」と「被害の局限化」を最重点に推進することとしている。
(3)今後の検討課題 これらを踏まえ、大都市における多角的な放火発生メカニズムの分析と被害軽減の検討を行い、今後、消防機関が行う放火火災予防対策の方向性を示し、放火火災の発生件数の低減と被害の局限化を図る予定である。
2 消火器事故対策 平成13年3月(愛知県名古屋市)、4月(北海道帯広市)に相次いで老朽化した消火器等の破裂による人身事故が発生したため、消防庁では平成13年6月に「消火器事故対策検討会」を設置して、一般家庭にある古い消火器を回収するなどの緊急対策や抜本的な事故再発防止対策等について検討を行った。 このうち緊急対策については、平成13年秋季火災予防運動の重点目標の一つとして、以下の対策を実施している。1) 老朽化消火器等の一斉回収ア 事故の発生を防止するため、老朽化した消火器等の一斉回収を行う。 回収に当たっては、消防機関が中心となり、管内市町村と連携を図るとともに、消火器の販売・点検業者等と協議して、各地域に適した消火器の回収方法を決定し、実施する。回収方法としては、1)住民が販売・点検業者に消火器を持ち込み、回収してもらう方法や、2)一定期間、消防機関が回収場所を指定し、住民から持ち込まれた消火器を販売・点検業者が回収する方法などである。イ 消火器の回収を有効に、かつ、安全に行うため、市町村においては、老朽化した消火器等の危険性や一斉回収の方法について広報を行う。2) 住宅に適した消火器等の普及 住宅防火基本方針に基づき策定された消火器等推奨基準に適合する住宅用消火器やエアゾール式簡易消火具等の住宅への設置の普及促進を図る。 このため、住民に対し、このことを様々な方法を用いて積極的に広報する。
3 消火器・防炎物品のリサイクル 消火器、防炎物品は、消防法の義務付けによるほか、一般家庭でも広く用いられている。しかしながら、消火器については、消火剤や加圧用ガス容器を内蔵していること等から処理困難廃棄物となっている場合が多く、また、防炎物品についても、焼却処分が比較的困難であることなど、不用品の処理について課題が存する状況となっている。 このため、消防庁では、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の「安心・安全の生活のためのダイオキシン類、環境ホルモンの適正管理、無害化の促進及びリサイクル技術の開発」の一環として、消火器及び防炎物品について、効率的なリサイクル方法や実効性のあるリサイクル制度について検討を行い、これらを踏まえ消火器・防炎物品等のリサイクルの積極的な推進を図っている。
緊急報告 I『新宿区歌舞伎町ビル火災』1 概要 平成13年9月1日、東京都新宿区歌舞伎町の雑居ビルにおいて発生した火災は44人の死者と3人の負傷者を出し、小規模の防火対象物としては過去に例をみない大惨事となった。 現在、この火災については、関係当局により火災原因の究明が行われているが、消防庁においては、同様の火災の再発を防止するために、次のとおり対応しているところである。 また、同年10月29日にも、歌舞伎町内の別の雑居ビルで発生した火災により、2人の死者が発生したところであり、あらためて早急な対策の実施が求められている。
2 対策(1) 一斉立入検査の実施 全国の消防機関において、今回火災を起こしたビルと同様の小規模な雑居ビルについて一斉立入検査を行い、法令違反等の防火安全上の不備事項が確認された場合には、必要な措置を講じるよう、消防庁長官より都道府県を通じて通知を発出した。
(2) 小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会の開催 消防庁次長を長とし、学識経験者、消防機関職員等で構成する「小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会」の第1回会合を平成13年9月6日に、第2回会合を同年10月25日に、第3回会合を同年11月15日に開催した。 委員会において、今回の火災の原因や法令違反の有無等の調査を踏まえながら、小規模雑居ビルについて、「防火安全対策の基準のあり方」や「基準適合確保方策のあり方」を検討の上、これらの論点を整理し、消防審議会における議論の参考とすることとしている。 第1回会合では、現在までに判明した火災の概要や小規模雑居ビルの防火安全対策の現状を委員の方々に把握していただいた上で、小規模雑居ビルの防火安全対策の問題点等について活発な意見交換が行われた。 第2回会合では、一斉立入検査の中間とりまとめ結果についての説明、消防本部及び地方自治体の建築関係部局からの意見聴取の後、小規模雑居ビルの防火安全対策について議論が行われた。 第3回会合では、一斉立入検査のとりまとめ結果についての説明の後、小規模雑居ビルの防火安全の確保について基本的な考え方が整理され、個別の対策について、議論が行われた。
(3) 消防審議会への諮問 平成13年9月26日に開催された消防審議会において、消防庁長官から同審議会に対し、「小規模雑居ビル火災の再発防止について、防火安全対策の基準や基準適合確保方策のあり方はいかにあるべきか、意見を示されたい」との諮問を行った。 今後、小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会での検討を踏まえつつ、答申がまとめられる予定である。
(4) 小規模雑居ビル火災安全対策連絡協議会の開催 関係省庁課長から構成される「小規模雑居ビル火災安全対策連絡協議会」開催(第1回:9月11日、第2回:11月8日)され、関係省庁官の連携のあり方についての意見交換が行われている。
新宿区歌舞伎町ビル火災の概要                     平成13年10月5日現在1 発生日時等 発  生:平成13年9月1日(土)  調査中 覚  知:     〃     01時01分(119番による) 延焼防止:     〃     02時14分 鎮  圧:     〃     05時36分 鎮  火:     〃     06時44分2 出火場所 東京都新宿区歌舞伎町一丁目18番4号 明星(みょうじょう)56ビル 耐火造一部その他構造 地下2階地上5階 複合用途(16項イ) 建築面積 83m2 延床面積 516m2 消防同意 昭和59年8月15日 使用検査 昭和60年9月28日  B2  77m2 飲食店、機械室  B1  75m2 遊技場  1階  82m2 その他の事業所  2階  〃  その他の事業所  3階  〃  遊技場(ゲーム麻雀「一休」)  4階  〃  飲食店(キャバクラ「スーパールーズ」)  5階  36m2 その他の事業所、EV機械室3 概要 3階エレベーターホール付近から出火して3階の遊技場店内に延焼し、さらに屋内階段を経由して4階へ延焼し、4階の飲食店内に延焼拡大した。 なお、出火時3、4階に多数の逃げ遅れ者がいた。4 焼損程度 3階部分80m2、4階部分80m2、計焼損床面積160m2 2階階段及び5階(屋上)階段の内壁6m2、天井3m2、計焼損表面積9m25 死傷者(1)死 者  44人(男性32人、女性12人)(2)負傷者  3人(男性3人)6 東京消防庁の活動状況 救急特別第2出場救急48、火災−第2出場車両53、計消防車両101台(内訳・救急48、ポンプ・化学25、はしご4、救助6、指揮車6、他12) 職員 340人 消防団員 21人 計361人7 その他 火災原因については調査中8 特記事項(1)火災発生の報知に関する事項 自動火災報知設備のベルの鳴動を聞いたという情報が現時点で確認されていないことから、当該設備が適正に維持管理されていなかった可能性があること。(2)延焼拡大に関する事項 ア 3階から4階の階段には、可燃物等が大量に置かれ延焼拡大の要因となったと考えられること。 イ 3階及び4階の店舗と屋内階段とを防火区画するための防火戸が有効に閉鎖されなかったと考えられること。(3)避難に関する事項 ア 屋内階段以外に有効な避難手段がなかったこと。 イ 一系統しかない屋内階段の3階エレベーターホール付近から火災が発生したため、3階及び4階の店舗内にいた客及び従業員の避難路が絶たれたこと。 ウ 3階及び4階の店舗内は、窓等の開口部が少なく密室構造であったため、濃煙・熱気等が一気に充満したと予測されること。(4)消防活動等に関する事項 道路に面する外壁面に避難上及び消防活動上支障となる広告板(ビニールシート)が設置されていたこと。
緊急報告II『米国同時多発テロ事件と消防庁の対応』 平成13年9月11日、日本時間午後9時45分頃及び午後10時5分頃、アメリカ合衆国(以下「米国」という。)ニューヨーク市世界貿易センタービル北棟及び南棟に相次いでハイジャックされた航空機が突入した等の同時多発テロ事件においては、日本人を含む5,000人以上の犠牲者が発生し、いまだにその多くが行方不明のままとなっており、また、事件直後の世界貿易センタービルにおいて救助活動に従事していた300人を超えるニューヨーク市消防局の消防職員が同ビルの倒壊に伴い犠牲となるという極めて特異な事件である。 また、この同時多発テロ事件以降も、米国等において郵便物を用いた炭疽菌テロ事件が発生し複数の死傷者が発生しているなど、世界各地において新たなテロ事件への不安が広がっている状況が見られる。 我が国においては、米国における同時多発テロ事件が発生した直後に、安全保障会議が開催され、同会議において「政府対処方針」を決定した(平成13年9月12日)のをはじめとして、「米国における同時多発テロへの対応に関する我が国の措置について」において基本方針及び当面の措置を決定する(平成13年9月19日)などの速やかな対応が図られたところである。 消防庁においては、この同時多発テロ事件発生後も新たに大規模なテロ事件が国外のみならず国内においても発生する可能性が否定できない状況にあること、また、平成13年10月8日以降米国等によるアフガニスタン内の軍事施設等への攻撃が行われている状況を踏まえ、政府の対処方針等に沿って措置を講じてきたところである。同時多発テロ事件の発生直後からの消防庁の対応は以下のとおりである。
1 国際消防救助隊の派遣準備 同時多発テロ事件に伴う官邸対策室設置直後、内閣総理大臣から米国の被害者に対する救援体制(レスキュー隊の編成とスタンバイ等)の指示がなされた。これを受けて消防庁においては、事件発生直後から国際消防救助隊の出動準備を行い、翌12日早朝には、外務省より集結場所として指定された羽田空港に隊員24人(東京消防庁11人、市川市消防局、川崎市消防局、横浜市消防局、藤沢市消防本部各3人及び消防庁1人)を派遣した。派遣隊員は、羽田空港到着後、警察及び海上保安庁の救助隊員、医療チーム要員と合流し、米国からの派遣要請があった場合に備え、翌13日まで待機したところである(最終的に米国からの要請は行われず、派遣には至らなかった。)。
2 緊急テロ対策本部の設置 米国等のアフガニスタン内の軍事施設等に対する攻撃開始を踏まえ、10月8日に内閣に緊急テロ対策本部が設置されたが、同日、消防庁にも消防庁長官を本部長とする緊急テロ対策本部を設置した。また、総務省にも官房長を本部長とする総務省緊急テロ対策本部が設置され所要の警戒体制をとった。 また、同日、各都道府県に対して通知を発し、警戒体制の整備強化や迅速な情報提供など、テロ事件発生時における万全の対応について要請した。
3 地方公共団体における危機管理体制の構築(1)地方公共団体における危機管理体制の強化 同時多発テロ事件以後、各都道府県に対して危機管理体制の点検、強化等の要請を行った。特に、都道府県を中心として、市区町村、消防、警察、自衛隊及び医療機関など関係機関とのテロに関する事前情報の共有、薬剤・資機材等の保有状況の把握、テロ災害発生時の連携等について適切な体制整備を緊急に図る必要があるため、都道府県におけるテロ対策本部の設置など所要の体制整備についての要請を行った。また、24時間対応可能な体制の構築についての要請も行った。その結果、10月26日までに全都道府県においてテロ対策本部又はテロ対策連絡会議等が設置され、テロ災害発生時の初動対応の確立、テロ災害対策関連情報の共有、関係機関との連携の強化など都道府県における体制が整備された。 また、併せて市区町村に対し、消防団との情報の共有についても要請した。
(2)国と地方公共団体の連携強化 テロ対策に関する国と地方公共団体との連携の一層の強化を図るため、テロ対策に関する政府の動向や、テロに関する注意喚起の情報など、テロ対策に必要な情報を総務省及び消防庁から各都道府県のテロ対策本部等に対して的確に提供するとともに、自治体からの速やかな情報提供を依頼した。特に、テロ事件による救急・救助事故発生時の即報について確認を行うとともに、テロ事件に起因する災害の発生の可能性に関する情報を都道府県又は市区町村で覚知した場合には、即報要領に準じた即報を行うこととした。
4 BCテロ災害を想定した消防資機材の整備 米国における炭疽菌によるテロ事件の発生などを踏まえ、特に生物剤(Biological)、化学剤(Chemical)を用いたテロによる災害に対する消防本部の対処能力の向上を緊急に図る必要が生じたことから、平成13年度補正予算において化学防護服、化学剤検知資器材、生物剤検知資器材、防毒マスク等の資機材を消防庁が購入して各都道府県の主な消防本部に配置するとともに、これらの資機材を用いた広域的な応援体制の強化を図ることとした。
5 NBCテロ災害発生時の適切な対処(1)NBC災害に係る知識の修得 核物質(Nuclear)、生物剤又は化学剤を用いたテロ事件発生に備え、各都道府県及び消防本部に対し、NBC災害に係る知識の修得を図るよう要請した。
(2)消防本部における訓練の実施 生物剤、化学剤を用いたテロによる災害への対応力の強化を図るため、消防本部において、これらの災害を想定した訓練を実施している。
(3)関係機関との連携と合同訓練の実施 テロ災害発生時における適切な応急対応措置を講ずるため、警察、自衛隊等の関係機関の保有する資機材の整備状況についての把握を行うとともに、災害発生時における関係機関との連携強化について、都道府県に対して要請を行った。 また、テロ災害を想定した警察や衛生関係機関との合同訓練を実施するなど、関係機関との連携の強化を図った。
(4)緊急消防援助隊ブロック合同訓練の実施 平成13年度の緊急消防援助隊ブロック合同訓練(関東ブロック及び中部・近畿ブロック)において、テロ災害を想定した訓練を実施した。
(5)訓練状況の映像の配信 消防庁では、10月23日に神奈川県で実施された関係機関との合同訓練や、11月8日に実施された東京消防庁での訓練状況について、現地に衛星車載局車を派遣し、地域衛星通信ネットワークにより、関係省庁及び地方公共団体に配信を行った。
(6)地方公共団体及び消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 消防大学校において、消防庁が整備した資機材の取扱訓練を行うとともに、生物剤、化学剤を用いたテロに対応するための危機管理訓練を充実強化することとした。また、消防職員及び消防団員に対するテロ災害対策用教材を作成し、配布することとした。
6 緊急テロ対策担当部長会議の開催 10月30日に各都道府県及び政令指定都市の緊急テロ対策本部長等を対象とした緊急テロ対策担当部長会議を総務省自治行政局とともに開催し、各関係省庁から政府における緊急テロ対策関連施策について説明するとともに、地方公共団体における危機管理体制の一層の強化等について要請した。
7 消防庁から都道府県に対する主な通知(1)米国テロ発生を踏まえた対応 9月12日の安全保障会議において決定された6項目の政府対処方針を踏まえた適切な対応について、同日通知した。
(2)国内におけるテロ事件発生時の対応 国内におけるテロ事件発生時の対応について9月26日に通知し、次の各事項について十分留意した上での適切な体制の整備について要請した。 ア テロ事件発生時の政府の初動措置等 イ 危機管理体制の点検等の実施 ウ 事前情報に対する必要な対応と消防防災体制の確保及び即報要領に準じた即報の実施 エ テロ事件発生時の速やかな即報 オ テロ災害発生時の情報収集と迅速な伝達、広域応援等の要請及び関係機関との連携 カ 消防活動時の二次災害の防止 キ NBC災害に対する知識の修得と資機材状況の把握、訓練の実施
(3)緊急テロ対策本部の設置 消防庁緊急テロ対策本部の設置について10月8日に各都道府県に通知するとともに、警戒体制の整備強化や迅速な情報提供など、テロ事件発生時における万全の対応について要請した。
(4)国内テロ対策等における重点推進事項に沿った対応 10月12日に開催された国内テロ対策等に関する関係省庁会議において、推進事項がまとめられるとともに、関係の深い省庁間の連絡を密にして、強力に推進していくことが申し合わされた。これを踏まえ、総務省としても重点推進事項に沿った対応を図るとともに、10月15日、各都道府県知事あてに通知し、都道府県においてテロ対策に万全を期すよう要請した。
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、出火件数については、平成6年以降6万件を超えていたが、平成10年及び11年には5万件台で推移してきた。平成12年は、再び6万件を超えている。 火災による死者数は、平成11年は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年に次いで戦後2番目となったが、平成12年は前年に比べ減少している(第1-1-1図、第1-1-2図、第1-1-3図)。 平成12年中における火災の状況をみると、前年に比べ、出火件数、焼損棟数は増加しているが、建物焼損床面積、死者数及び損害額は減少している(第1-1-1表)。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、高齢者の比率は、前年に比べ減少したものの、乳幼児の比率については若干増加し、放火自殺者を含む死者数全体としては若干減少している(第1-1-8図、第1-1-9図、附属資料12)。
1 出火状況(1)出火件数は増加、1日当たり171件発生 平成12年中の出火件数は、6万2,454件であり、前年に比べ3,928件(6.7%)増加している。また、1日当たりの出火件数は171件となっている(第1-1-1表、第1-1-2表)。
(2)建物火災は全火災の54.5% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の54.5%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(道路、空地、土手及び河川敷の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和59年以後変化していない(第1-1-3表)。 最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災や林野火災については、平成9年及び平成10年と2年連続して減少していたが、平成11年以降再び増加に転じており、車両火災にあっては、この10年間で約33.8%増加して8,303件となっている(第1-1-4表)。
(3)冬季と春季に火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成12年中では、春季と冬季で総出火件数の57.2%を占めている(第1-1-5表)。
(4)出火率は5.0 平成12年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で5.0と、前年と比べ0.3ポイント増加している(第1-1-6表)。 出火率を都道府県別でみると、最高は茨城県・山梨県・島根県の6.8であり、出火率の最も低いのは昨年同様富山県の2.3、次いで京都府の3.2の順となっている(第1-1-7表)。
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器及び簡易消火器具 平成12年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が73.7%と圧倒的に多い(第1-1-4図)。 また、初期消火の状況をみると、消火器及び簡易消火器具(水バケツ等)を使用したものが30.9%となっているが、初期消火をしなかったものも36.8%となっており、10年前(平成3年)と比較すると6.2ポイント増加している(第1-1-8表)。
(6)放火を除くと、住宅火災は建物火災の57.3% 放火を除くと、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)の火災の件数は1万7,308件であり、建物火災の件数(3万198件)の57.3%と半数以上を占めている(第1-1-9表)。
2 火災による死者の状況 平成12年中の火災による死者数は、2,034人であり、前年の2,122人に比べ88人(4.1%)減少しており、そのうち、放火自殺者を除いた火災による死者数は、1,302人で、前年の1,346人に比べ44人(3.3%)減少している。 また、放火自殺者数は、732人であり、前年の776人に比べ44人減少している(第1-1-5図)。
(1)1日当たりの火災による死者数は5.6人 平成12年中の火災による1日当たりの死者数は5.6人であり、前年の5.8人に比べ0.2人減少している(第1-1-2表)。 過去5年間の傾向として、死者総数及び放火自殺者を除いた死者数はともに、横ばい状態で推移している(第1-1-5図)。
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.61人 人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.61人であり、前年の1.69人に比べ0.08人減少している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、昨年同様東京都が126人で最も多く、次いで大阪府が122人、愛知県が104人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、徳島県で7人、次いで福井県が8人、鳥取県が10人となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは青森県で3.66人、最も低いのは徳島県の0.84人となっている(第1-1-10表)。
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成12年中においても、1月から3月及び12月の月ごとの死者数は200人以上(年間の月平均は170人)に上っており、この4か月間に死者総数の49.9%に当たる1,014人の死者が発生している(第1-1-6図)。 時間帯別の火災による死者発生状況は、5時台が124人と最も多く、次いで2時台が110人となっている。就寝時間帯の死者発生状況については、1時台、2時台、3時台及び5時台が100人を超えており就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1-1-7図)。
(4)死因は火傷が46.5%、一酸化炭素中毒・窒息が43.3% 放火自殺者を除いた火災による死因は、火傷によるものが605人(46.5%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息によるものが564人(43.3%)となっている(第1-1-11表)。 なお、近年一酸化炭素中毒・窒息は微増、火傷は微減の傾向にある。
(5)建物火災による死者は死者総数の67.2% 平成12年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は前年に比べ71人減少し1,368人となり、死者総数に対する比率も67.2%(前年67.8%)と0.6ポイント減少している(第1-1-12表)。
(6)逃げ遅れによる死者が66.1% 死亡に至った経過をみると、逃げ遅れが860人で放火自殺者を除く死者数1,302人の66.1%を占め、その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの」が301人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の23.1%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が646人(49.6%)、5歳以下の乳幼児が43人(3.3%)を占めている。また、死亡に至った理由別では、病気又は身体不自由が201人(15.4%)、熟睡が180人(13.8%)を占め、二大要因となっている(第1-1-8図、第1-1-9図、附属資料12)。
(7)建物火災のうち、全焼による死者は810人 建物火災による死者1,368人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が810人(死者の出た火災1件当たり1.15人)で59.2%、部分焼の場合が268人(同1.09人)で19.6%、半焼の場合が185人(同1.11人)で13.5%、ぼやの場合が105人(同1.02人)で7.7%となっている(第1-1-10図、附属資料13)。
(8)建物火災による死者の84.9%が住宅で発生 建物火災による死者1,368人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,161人は、建物火災による死者の84.9%を占めている。また、階層別では、1階における死者が925人で建物火災による死者の67.6%、2階における死者が300人で建物火災による死者の21.9%等となっている(第1-1-11図、第1-1-12図、附属資料15)。 さらに、建物構造別では木造建物における死者が914人(全体の66.8%)と最も多く、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,025人で、建物火災による死者の74.9%を占めている(第1-1-13図、第1-1-14図、附属資料14)。
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下同じ。)火災による死者1,161人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人により殺された者(以下「放火自殺者等」という。)225人を除く失火等による死者は936人となっており、前年(981人)に比べ45人(4.6%)減少した。また、このうち65歳以上の高齢者は517人(全体の55.2%)と半数を超えている(第1-1-15図、第1-1-13表、附属資料15)。 ア 死者発生は高齢者層で著しく高い  住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別に同階層の人口10万人当たりの死者発生数をみると、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、81歳以上の階層では、最も低い16歳から20歳の階層に比べ約52倍となっている。  また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、16歳から20歳の階層と比べると約5倍となっている(第1-1-16図)。 イ たばこを発火源とした火災による死者が20.4%  住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが191人(全体の20.4%)で最も多く、次いでストーブ138人(同14.7%)、こんろ69人(同7.4%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者936人の42.5%を占めている。  また、65歳以上の高齢者についても同様にたばこ、ストーブ及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数の44.7%を占めている(第1-1-17図)。 ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い  住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が257人で、死者数936人の27.5%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数の30.0%を占めている(第1-1-18図)。 エ 死者の42.2%が就寝時間帯 住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間に395人と住宅火災の死者936人の42.2%を占めている(第1-1-19図)。 オ 木造住宅における死者が70.8%と圧倒的に多い  住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物におけるものが663人と、住宅火災の死者936人の70.8%を占め、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者517人の76.6%(396人)が木造建築物における死者で占められている(第1-1-20図)。 カ 逃げ遅れによる死者が73.3%と圧倒的に多い 住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、死に至った経過別死者発生状況をみると、逃げ遅れが686人(73.3%)と最も多く、以下着衣着火52人(5.6%)、出火後再進入が24人(2.6%)となっている(第1-1-21図)。 ※特集「新たな住宅防火対策の推進−連携と実践−」第1節「住宅火災の実態」を参照。 
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は28件・100人 平成12年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は28件で前年(21件)より7件増加している。また、これによる死者は100人で前年(76人)より24人増加している。 火災種別では、建物火災23件・84人(全体の84.0%)車両火災4件・12人(同12.0%)、その他火災1件・4人(同4.0%)となっている(第1-1-14表)。 建物用途別では、専用住宅での死者が53人で建物火災全体の63.1%を占めている(第1-1-15表)。
(11)放火自殺者は減少、死者総数の36.0% 平成12年中の放火自殺者は732人で、死者総数2,034人に占める比率は36.0%(前年36.6%)となっており、前年(776人)より44人減少している。 放火自殺者を年齢別にみると、56歳から60歳が125人、51歳から55歳が117人及び46歳から50歳が90人と、これらの年齢で放火自殺者全体の45.4%を占めている(第1-1-22図)。
3 火災による損害額 平成12年中の火災による損害額は、1,504億円であり、前年(1,512億円)に比べ約7億円減少している。また、火災1件当たりでは、241万円となっており、前年に比べ17万円減少している(第1-1-23図)。 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の93.1%を占めている(第1-1-1表)。
4 出火原因 総出火件数6万2,454件のうち、失火による火災が4万425件(全体の64.7%)で、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1-1-24図)。
(1)「放火」火災が4年連続して第1位 平成12年中の放火による出火件数は、7,817件であり、前年に比べ336件(4.5%)増加し、全火災(6万2,454件)の12.5%を占め、4年連続して第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは6,035件で、前年に比べ571件(10.5%)増加しており、放火及び放火の疑いを合わせると1万3,852件(全火災の22.2%)で、前年に比べ907件(7.0%)増加している(第1-1-24図、第1-1-25図)。 放火による損害額は、121億5,826万円であり、前年に比べ14億4,119万円(10.6%)減少している。放火の疑いによる損害額は101億548万円で、前年より6億3,344万円(6.7%)増加している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は222億6,374万円で、前年に比べ8億775万円(3.5%)減少している。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが4,639件(全体の33.5%)と最も多く、次いでその他のたばことマッチによるもの、マッチによるものの順となっている(第1-1-16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、前年同様、夜間から明け方(20時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に8,044件(全体の58.1%)が発生している(第1-1-26図)。 ※特集「新たな住宅防火対策の推進−連携と実践−」第4節「関連施策」1「放火火災予防対策」を参照。
(2)「たばこ」による火災は増加 平成12年中のたばこによる火災は、6,871件であり、前年に比べ456件(7.1%)増加し、全火災(6万2,454件)の11.0%となっている(第1-1-17表、第1-1-25図)。 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが57.0%と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、130億8,628万円であり、前年に比べ2億3,934万円(1.8%)減少している(第1-1-17表)。
(3)「こんろ」による火災は増加 平成12年中のこんろによる火災は、5,636件であり、前年に比べ106件(1.9%)増加している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,390件(全体の95.6%)で、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、70.8%に当たる3,991件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、87億6,377万円であり、前年に比べ2億5,842万円(3.0%)増加している(第1-1-18表)。
(4)「たき火」及び「火遊び」による火災は増加 平成12年中のたき火による火災は、3,969件であり、前年に比べ549件(16.1%)増加している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、火の粉の飛び火が最も多く1,400件、次いでたき火の延焼拡大、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は、19億8,412万円で、前年に比べ5億3,162万円(36.6%)増加している(第1-1-19表)。 また、火遊びによる火災は、2,338件であり、前年に比べ84件(3.7%)増加している。火遊びによる火災の損害額をみると、24億6,051万円で前年より3億2,401万円(11.6%)減少している。火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,218件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1-1-19表)。
(5)「ストーブ」による火災は減少 平成12年中のストーブによる火災は、1,865件であり、前年に比べ137件(6.8%)減少している。ストーブの種類別では、普及率の高い石油ストーブによる火災が最も多く1,269件(全体の68.0%)で、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 次に、ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが583件と最も多く、次いで引火・ふく射、使用方法の誤りの順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、95億5,207万円であり、前年に比べ5億321万円(5.0%)減少している(第1-1-20表)。
(6)着火物は前年同様「枯草」が第1位 平成12年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が8,252件であり全体の13.2%を占め、最も多くなっている(第1-1-21表)。
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成12年中の建物火災の出火件数は、3万4,028件であり、前年に比べ698件(2.1%)の増加となっている。これを、10年前(平成3年)の3万4,263件と比較すると0.7%減少したことになる(第1-1-4表)。ア 建物火災は1日に93件、15分に1件の割合 建物火災の1日当たりの出火件数は、93件であり、15分に1件の割合で出火していることになる(第1-1-2表)。 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜3月及び12月)にかけて多く発生し、全体の39.0%を占めている(第1-1-27図)。イ 住宅における火災が建物火災の56.3% 建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の56.3%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1-1-28図、附属資料16)。ウ 建物火災の46.4%が木造建物 建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万5,778件で、建物火災の46.4%を占め、次いで耐火造、防火造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の27.3%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみても、木造が最も大きく66.1m2となっており、全建物火災平均では46.7m2となっている(第1-1-22表)。エ 建物火災の過半数は小火災 建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万5,650件で全体の46.0%、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万6,105件で全体の76.7%をそれぞれ占め、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1-1-23表)。オ 建物火災はこんろによるものが多い 建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが71.8%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが37.4%となっている(第1-1-29図)。カ 3DKの住戸2万4,524戸相当分が焼損 建物焼損床面積は、前年に比べ1万8,298m2(1.1%)減少し、159万4,049m2となっている。この面積は3DK(65m2)の住宅が2万4,524戸焼損したことに相当する。 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は愛知県で8万1,511m2、次いで北海道、茨城県の順となっている。一方、最低は鳥取県の7,416m2、次いで沖縄県、石川県の順となっている(第1-1-24表)。キ 1件当たりの焼損床面積は46.8m2 建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で46.8m2となっており、前年に比べ1.6m2(3.3%)減少している。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、青森県の108.3m2を最高に、岩手県107.3m2、秋田県95.2m2など34県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が前年同様東京都の13.0m2で、次いで大阪府24.1m2、神奈川県26.3m2など13都道府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1-1-24表)。ク 放水した建物火災の30.4%は覚知後5分以内に放水 建物火災の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万8,838件(建物火災の55.4%)で、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万5,609件(放水した建物火災の82.9%)で、このうち5分以内のものは5,732件(放水した建物火災の30.4%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を16.3m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1-1-25表)。ケ 建物火災の半数以上は放水開始後30分以内に鎮火 消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は9,675件で放水した建物火災の51.4%(第1-1-30図)、このうち11分から20分までに鎮火したものが3,369件で最も多くなっている。
トラッキング 平成13年10月29日に新宿区歌舞伎町の三洋ビルで発生した火災により、2人の死者が発生したが、この火災の原因は、コンセントとプラグの間に発生した「トラッキング」であったと推定されている。 電気機器や配線器具から出火する火災には、たばこやこんろなどの火気から出火する火災とは、異なる注意が必要であり、その原因としては、コードなどを乱暴に扱ったために傷んだ部分が発熱したもの、絶縁部分が劣化してショートするもの等があるが、この中に「トラッキング」と呼ばれる現象がある。 これは、長期間差し込んだままのプラグとコンセントの間に溜まったほこりが湿気を吸ったり、電気を通す物質が付着したり、熱のために樹脂が劣化したりすることにより、プラグの2本の差し歯の間に微弱な電流が流れて導電性の通路(トラック)が形成されるようになり、そこに過大な電流が流れて激しく発熱し、火災に至るというものである。 トラッキングをはじめとする電気による火災を防ぐためには、電気機器・コード等を乱暴に扱わないこと、点検や清掃をすること、タコ足配線などで配線に多くの電流が流れないようにすること等が大切である。
(2)林野火災 平成12年中の林野火災の出火件数は、2,805件で、前年に比べ144件(5.4%)増加した。焼損面積は1,455haで前年より446ha(44.2%)増加しており、また、損害額も7億850万円で前年より1億8,755万円(36.0%)増加している。また、林野火災による死者は16人で、前年より5人増加している(第1-1-26表)。 また、林野火災の出火件数を月別にみると、平成12年中は3月に最も多く発生しており、次いで4月、2月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1-1-31図)。 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は、2,779件で全体の99.1%を占めている(第1-1-26表)。 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが772件で全体の27.5%を占め最も多く、次いでたばこ、火入れ、放火(放火の疑いを含む。)の順となっている(第1-1-32図)。
(3)車両火災 平成12年中の車両火災の出火件数は、8,303件で前年に比べ443件(5.6%)増加し、車両火災件数は増加傾向にある。 また、損害額は36億1,058万円で前年に比べ2億7,576万円(8.3%)増加し、死者は267人で前年に比べ11人(4.3%)増加している。 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,952件(全体の23.5%)と最も多くなっている(第1-1-33図)。
(4)船舶火災 平成12年中の船舶火災の出火件数は、前年に比べ15件(10.5%)減少し、128件となっている。また、損害額は4億4,565万円で前年に比べ1億5,364万円(52.6%)増加している。なお、死者はなく、負傷者は21人となっている。 出火原因は、交通機関内配線によるものが15件と最も多くなっている(第1-1-34図)。
(5)航空機火災 平成12年中の航空機火災の出火件数は、4件となっている。
[火災予防行政の現況]1 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成13年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に101万6,942件あり、そのうち73.4%に当たる74万6,448件が防火管理者を選任し、その旨を消防機関に届け出ている。しかしながら、27万494件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が命令・指導を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するため消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は65万3,010件で全体の64.2%となっている(第1-1-27表)。
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難の訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 防火対象物の共同防火管理が不十分なままでは、火災発生の際に的確な対応が期待できないわけであるが、平成13年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、61.6%と前年(60.1%)より若干増加したものの、依然として低率に止まっている(第1-1-28表)。
2 消防用設備等の規制(1)防火対象物の実態 平成13年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第1(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(十九)項までに掲げる防火対象物の数)は353万2,412件である。また、13大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は78万560件で、全国の防火対象物の22.1%を占めている。特に都市部に集中しているものは地下街(全国の79.7%)、準地下街(同57.1%)、非特定複合用途防火対象物(同43.9%)、スタジオ(同40.3%)等である(第1-1-29表)。
(2)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみると、平成13年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率96.1%(前年96.0%)、スプリンクラー設備の設置率99.5%(同99.5%)となっている(第1-1-30表)。 消防庁は、スプリンクラー設備が設置されていなかったホテル・ニュージャパン火災の惨事にかんがみ、防火基準適合表示制度をより推進するとともに、違反対象物についての指導を一層徹底し、悪質なものについては、消防法に基づき命令を発する等厳正な措置を講じるよう指導している。 消防用設備等に係る技術上の基準については、社会的要請に応じ規定の整備を行っている。最近においては、平成11年3月に消防法施行令の一部改正等を行い、スプリンクラーヘッドの設置間隔に係る基準の合理化、誘導灯及び誘導標識に係る技術基準の全面見直し(免除要件の拡大、基準の合理化、新しい機能・性能等を有する誘導灯に係る基準の整備)等を図っている。また、技術革新による新技術や新素材の円滑な導入、多様なニーズに対応した選択の幅の拡大等の観点から消防用設備等に係る検討を進めているところであり、今後とも技術上の基準の整備に努めることとしている。 消防用設備等を設置したときは、消防長又は消防署長が技術上の基準に適合しているか否かを検査しており、設置後の検査が困難な設備等については消防機関にも、防火対象物の管理権原者にも負担となっていたところであるが、平成12年12月に消防法施行規則の一部改正等が行われ、指定認定機関が消防用設備等又はこれらの部分である機械器具について設備等技術基準に適合しているとして認定することができるものとし、認定を受けたものは検査の際に当該認定に係る設備等技術基準に適合していると見なすこととされた。 さらに、近年増加している高層建築物、大規模建築物等については、最新の技術等を活用し、建築物全体として総合的かつ有機的に機能する消防防災システムの整備を推進していく必要があり、消防庁としては、昭和61年12月に「消防防災システムのインテリジェント化推進要綱」を定めるとともに、特に優れた消防防災システムに対する表彰制度を設け、機能の優良性の確保と技術開発の促進を図っている。
(3)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等については、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 消防設備点検資格者となるための講習については、平成12年12月に消防法施行規則の一部改正が行われ、民間の指定講習機関により行うものとされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るために、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施することとしている。 平成13年3月31日現在、消防設備士の数は延べ79万8,654人となっており(第1-1-31表)、また、消防設備点検資格者の数は第1種(機械系統)10万1,808人、第2種(電気系統)9万6,316人となっている。 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、自主的に各都道府県単位で実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行に対する認識の高揚が図られている。
(4)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成13年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、84万416件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものにあっては85.4%、じゅうたんを全部使用しているものにあっては82.4%、展示用合板を全部使用しているものにあっては79.8%となっている(第1-1-32表)。イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のため陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている。 防炎表示制度に関しては、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として従前の防炎表示者の認定制度が平成13年1月より登録制度に改正され、併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として一定の基準を満たす指定確認機関による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高め、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成13年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、2万8,946業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.7%を占めている。)で前年同期より246業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎化 消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類等についても、防炎化を推進することにより火災予防の徹底を図る必要があることから、防炎性能を有するものについて、財団法人日本防炎協会が発行する「防炎製品」表示ラベルの貼付により消費者の利便を図っている(第1-1-33表)。
(5)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器等、また、業務用として使用される炉、厨房設備、サウナ設備などその種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものとなっており、様々な面で国民の生活を豊かなものとしている。しかし、熱源、裸火等を持ち、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブを例にとると、平成12年中で合計7,380件(総建物火災件数3万4,028件の約21.7%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理等の基準にあっては、消防法第9条に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制が行われてきたが、火気設備等の規制内容について、市場アクセスの一層の改善を図る必要があることから、消防庁は平成13年に消防法第9条の改正を行って、政令で定める基準に従い条例を定めることとし、全国統一的な基準に基づき火気設備等の規制を行うこととした。
3 防火基準適合表示制度 「防火基準適合表示制度」は、一定規模以上の旅館・ホテル、劇場、公会堂、百貨店等、防火基準適合表示制度の対象とされた防火対象物(以下「表示対象物」という。)について立入調査を通して審査し、一定の防火基準に適合する場合に消防機関が「適マーク」を交付する制度であり、その対象物の防火に関する状況を広く国民に対して情報提供するとともに、対象物関係者の防火に対する認識を高め、防火安全に関する不備事項の是正促進に大きな効果を上げている。 また、平成6年12月に発生した福島県飯坂温泉若喜旅館本店の火災では、適マークを交付された表示対象物にもかかわらず多数の犠牲者を出したことを厳しく受けとめ、平成8年4月より適マーク交付基準に消防機関へ通報する火災報知設備の設置等2項目を加え、一層の防火安全対策の徹底を図っている。
(1)「適マーク」交付状況 平成13年3月31日現在の表示対象物は全国で5万7,011件であり、そのうち立入調査を完了した表示対象物数は5万4,097件(調査率94.9%)である。立入調査を終えた表示対象物のうち適マークを交付された表示対象物数は3万8,605件(調査完了物件に対する交付率71.4%)である。 また、平成13年3月31日現在、2年以上表示基準に適合していると認められ、その旨の表示(適継続章)がなされた表示対象物数は2万7,331件である。 なお、適マークの交付を受けていた表示対象物であって、その後において適マークを返還した対象物は、平成13年3月31日現在、1,059件となっている(第1-1-35図、附属資料17)。
(2)表示基準への適合の状況 表示基準に基づく点検項目は、28項目である。このうち、適合率が低い項目は、消火・避難訓練の実施(該当する表示対象物全体の81.3%)、防火管理体制指導マニュアルの実施(同88.9%)、自主チェック体制の整備(同90.0%)となっており、防火管理面における適合率が低い(附属資料18)。
4 消防同意及び立入検査(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成12年度の全国における消防同意事務処理件数は、35万4,829件(前年度37万7,644件)であり、消防同意した申請のうち9万8,322件(27.7%)について消防機関により指導が行われている(第1-1-34表)。
(2)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って立入検査を行っている。 平成12年度に全国の消防機関が行った立入検査数は、109万2,637件であり、防火対象物数(353万2,412件)の30.9%について指導を行っている(第1-1-29表、第1-1-35表)。
(3)違反状態の改善 立入検査等により発見された防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置については、消防長又は消防署長は、消防法第8条第3項、第8条の2第3項及び第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命ずることができ、また、消防法第5条の規定に基づき、火災予防上必要があると認める場合又は火災が発生したならば人命に危険であると認める場合には、当該防火対象物の改修、移転、使用の禁止等の必要な措置を講じるべきことを命じることができるとされている。 このようなことから立入検査等を行った結果、消防法違反を発見した場合は、消防長又は消防署長による指示、警告、命令等の改善指導が行われ、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1-1-36表、附属資料19、20、21)。 特に、特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定用途防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)にあっては、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性にかんがみ、厳しく指導を行っているところであるが、未だに220件の対象物において消防法違反が存在するため、これらに対して早急な改善指導を行っているところである(第1-1-37表)。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定対象機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定の対象となる消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の器具等が、型式承認を受けたものと同一である旨を確認する検定)とからなっている(第1-1-38表)。 また、新たな技術開発等に係る検定対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 個別検定については、一括抜取りの範囲の拡大、検査項目の省略・削減を中心とした簡素合理化を実施している。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格に適合している旨の表示を付そうとする製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成13年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては1,827件、消防用吸管にあっては48件である。
[火災予防行政の課題](1)違反対象物への違反是正指導の推進 不特定多数の者が出入りする特定防火対象物については、既存の防火対象物であっても現行の消防用設備等の基準を適用するなど、消防法において、特に厳しい義務付けをしているが、繰り返しの指導にもかかわらず、消防法の規定に違反し、消防用設備等の維持管理が十分に行われないものがある。このため、これらの違反対象物の管理権原者に対して、措置命令等必要な措置を講ずることにより、早急に違反状態の是正を図る必要がある。特に特定違反対象物については、違反判明後も相当期間が経過しているにもかかわらず是正されていない対象物が存在するため、今後も違反処理ブロック会議をはじめ各種機会を通じて、引き続き重点的に違反是正の指導に取り組んでいく必要がある。
(2)防火管理体制の確立 防火対象物の管理権原者に対しては、防火管理者の選任及び防火管理者による適切な消防計画の作成等を徹底させ、防火管理体制を確立させる必要がある。 この中で、消防用設備等は、火災の際に有効に機能する必要があるため、設置した後においても十分な維持管理を行うことが極めて重要であり、今後とも、点検を確実に実施するなど維持管理の徹底を指導していくことが必要である。
(3)防火基準適合表示制度の普及 防火基準適合表示制度は、旅館・ホテル、劇場、公会堂、百貨店等の防火対象物に対し、一定の基準に適合したものに「適マーク」を交付する制度で、その利用者に対する情報提供のための手段として、国民の間に広く浸透し、防火安全対策の充実に大きな成果を上げている。今後は、更に適正な運用について指導を行い、これらの防火対象物における防火安全対策の一層の推進を図る必要がある。
(4)火災原因調査体制の推進 火災原因を究明し、また、火災によって生じた損害の程度を明らかにすることは、効果的な火災予防施策の推進、あるいは消火活動体制の確立、効率化を図るための資料を得る上で極めて重要である。このため、各消防本部における火災原因調査体制の整備、都道府県等による広域的な支援体制の確立、消防本部相互による支援体制等の確立を推進するとともに、火災調査関連情報データベースを活用して火災原因調査に必要な情報の提供を行い、火災原因調査体制の充実強化を図る必要がある。
(5)自動通報システムの構築 火災による被害を最小限に抑えるためには、できる限り早期に消防機関に通報し、消防機関が迅速に消火・救助活動を行うことができるようにすることが重要である。 このことから、従来の119番通報のような関係者からの通報を前提とし た受動的なシステムと併せて、住宅を含む全防火対象物の火災情報等を通信回線等を介して消防機関が積極的に把握するとともに、機動的に対応することができるシステム(自動通報システム)等を構築することが必要である。 また、併せて本格的な高齢化社会の到来を迎え、より適切かつ迅速な火災・救急業務の実施を図るため、高齢者、身体障害者等のいわゆる災害時要援護者との間に、119番通報に代わる新たな緊急通報システム(万一火災が発生した場合には煙や熱を感知するセンサーの働きにより、また急病などの場合には身につけているペンダントなどのボタンを押すことにより最寄りの消防機関等に緊急事態の発生が自動的に通報される機能を持ったシステム)の普及を図る必要がある。 このため、消防庁では平成元年度から救急要請を目的とした「災害弱者緊急通報システムモデル事業」を、また、平成7年度からは、従前の事業に火災感知機を連動させた「災害弱者消防緊急通報システムモデル事業」を実施し、緊急通報システムの普及促進に取り組んでいるところである。 今後も、情報技術の進展を踏まえ、より多様で高機能な自動通報システム、災害時要援護者に配慮した仕組みを有した緊急通報システムの普及開発を進めていく必要がある。
(6)建築物の大規模化・高層化等に対応した総合的な防火安全対策の推進 近年、土地の高度利用を図るため建築物が大規模化・高層化し、用途の複合化が進むとともに、その利用形態も多様化している。このような建築物においては、日常時の防火管理はもとより、火災等の災害時において要求される対応も、複雑化かつ高度化している。このため、最新の技術を活用して消防防災システムの高度化を推進するとともに、総合操作盤の普及促進を図り、消防用設備等をはじめとする防災の用に供する設備・機器の監視・制御等を建築物全体で一体的に行う総合消防防災システムの構築を推進する必要がある。これらのハード面の対応と併せ、防災センター要員に対する教育制度を適切に運用し、防災センターの機能を十分に発揮させるためのソフト面の対応を充実させることが重要である。 また、建築物の高層化・深層化がますます進展しており、避難誘導、消防活動等が特に困難になる超高層建築物や深層化した建築物については、消防用設備等の充実を図る必要がある。 さらに、管理権原が分かれている一定の建築物においては、建築物全体で一体となった防火管理体制を確保するため、建築物の実態に応じた共同防火管理体制を整備し、運用するよう指導している。 これらに加え、新技術の円滑な導入や技術基準の性能規定化の要請を踏まえ、防火対象物の火災危険性に応じて防火安全対策(消防用設備等、防火管理、建築構造等)を講じることを目的とした総合的な評価手法について、その構築を図っていくことが必要である。
(7)物品販売店舗、病院・社会福祉施設、旅館・ホテル等における防火安全対策の推進 物品販売店舗、病院・社会福祉施設、旅館・ホテル等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念される。このため、消防用設備等の適切な設置、維持・管理や防火管理体制の充実等が特に重要となる。今後とも、これらの施設における消防用設備等、防火管理体制の整備を促進し、防火安全対策の充実を図るため、物品販売店舗、病院・社会福祉施設、旅館・ホテル等の用途別に作成された防火管理体制指導マニュアルの活用などにより、自主防火管理体制の強化について指導していくことが必要である。
(8)文化財保護のための防火安全対策の推進 国民共通の財産である文化財を火災による焼失等から保護し、後世に残すことは極めて重要な課題である。しかし、文化財建造物の多くは伝統的な建築技術を用いた木造の建造物であるとともに、その利用の形態、建造物の構造、立地条件等は多種多様であり、従来の防火安全対策のみでは、実態に即したきめ細かい防火対策を実施する上で十分とはいえない。このため、個々の文化財建造物の特性に応じた防火管理の実施、消防用設備等の設置、火災時の消火活動等の防火安全対策の充実に努める必要がある。
(9)災害時要援護者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、身体傷害者等いわゆる災害時要援護者は、火災等の災害発生時において、周囲の状況変化に迅速・的確な避難行動をとることが困難であり、逃げ遅れ等により死傷する事例も多い。そのため、火災情報の迅速な伝達ができる機器の開発普及、避難誘導体制の充実を図るとともに、一人でも操作できる屋内消火栓設備などの初期消火設備の充実や、消防機関への迅速な通報が可能な火災通報装置等の設置の促進を図っていくことが必要である。 さらに、病院・社会福祉施設等に対しては、「夜間の防火管理体制指導マニュアル」に基づき、防火管理上特に問題点が多い夜間における防火管理体制の整備を図るなどソフト面の充実に努め、災害時要援護者に配慮した総合的な防火安全対策の推進を指導していくことが必要である。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設における事故は、火災(爆発を含む。)と漏えいに大別される。昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していた危険物施設における事故件数は、平成6年を境にして増加傾向を示している。特に、平成12年中に発生した火災・漏えい事故件数は511件(鳥取県西部地震による事故件数を除く。)で、対前年比18.6%増となり、統計を取り始めて以来、過去最高となっている(第1-2-1図)。
1 火災(1)火災件数と被害 平成12年中の危険物施設における火災の発生件数は、194件(対前年比32件増)、損害額は21億7,098万円(同13億9,868万円減)、死者は6人(同2人増)、負傷者は54人(同9人増)となっている(第1-2-2図)。 危険物施設の火災による他への影響の程度についてみると、189件(他の施設からの類焼により危険物施設が火災となった5件を除く。)の火災のうち180件(全体の95.2%)が当該危険物施設のみの火災にとどまり、9件(同4.8%)が当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼している。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が111件、給油取扱所での火災が42件となっており、これだけで全体の78.9%を占めている(第1-2-3図)。 さらに、出火原因となった物質を消防法別表の類別等に従って区分すると、194件の火災のうち117件(全体の60.3%)が危険物が出火原因物質と なっている。これを品名別にみると、第4類第1石油類50件、第4類第3石油類27件、第4類第2石油類13件等の順となっている(第1-2-4図)。
(2)火災の発生原因及び着火原因 平成12年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別してみると、人的要因が132件(全体の68.1%)と最も多く、物的要因が42件(同21.6%)、その他の要因が13件(同6.6%)となっている。 また、着火原因をみると、静電気火花が29件(全体の14.9%)で最も多く、次いで裸火25件(同12.9%)、過熱着火24件(同12.5%)、高温表面熱23件(同11.9%)となっている。
危険物とは? 普段は何気なく生活していても、私たちの身の回りには一歩間違うと大きな被害をおこしかねない危険な化学物質がたくさん存在している。 一般的には、こうした物質をまとめて「危険物」と呼んでおり、引火性の物質、爆発性の物質、毒物・劇物又は放射性の物質を総称している場合が多い。 これらの物質は、種々の法令によりそれぞれ貯蔵や取扱い方法等が規制されている。 消防法上の危険物とは火災危険性の高い物質であり、「消防法別表の品名欄に掲げる物品で、同表に定める区分に応じ同表の性質欄に掲げる性状を有するもの」と定義されている。また、温度20度1気圧の環境で液体又は固体の状態にある化学物質で気体は該当しない。 消防法では危険物の性質に応じて第一類から第六類まで分類している。 また、原則として、危険物かどうかの判断は、定められた試験を適用した場合にその物品が一定の危険性状を示すかどうかを確認することにより行われる。 消防法別表の備考を見てみると、ガソリン、軽油、灯油などのなじみのある名前が見受けられる。これらは、引火性液体といって、可燃性の蒸気を発生させ、建物の低いところにたまるため、付近にライターの火や静電気火花があると、容易に可燃性の蒸気に引火し、火災を生ずるものである。 この中でも、ガソリンは氷点下40度程度の低い温度でも引火するほど揮発性が高く、蒸気が広がるため、思わぬところの火源により引火し、火災に至る危険性がある。ガソリン等の危険物の蒸気の広がりは目で確認できない場合が多いため、火気のない所で取り扱う等、十分な注意が必要となる。 危険物は、正しく使えば現代の私たちの生活を支えてくれる大変便利なものである。しかし、日常のちょっとした不注意がきっかけとなり、火災・漏えい事故を引き起こし、尊い生命や財産を一瞬にして奪い去ってしまいかねない。 危険物を取り扱う際には、細心の注意をもって安全確保に努めることが必要である。
(3)無許可施設の火災 平成12年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は9件で、死者はなく、負傷者は4人となっている。なお、これらの火災による損害額は4億9,061万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成12年中の危険物運搬中の火災の発生件数は7件で、死者はなく、負傷者は2人となっている。なお、これらの火災による損害額は8,272万円となっている。
2 危険物漏えい事故 平成12年中の危険物施設における危険物漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、317件(対前年比48件増)となっている(第1-2-5図、第1-2-6図)。これを、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別してみると、人的要因が151件(全体の47.6%)と最も多く、物的要因が121件(同38.2%)、その他の要因が40件(同12.6%)となっている。 このほか、無許可施設において5件(対前年比2件減)、危険物運搬中に26件(同5件増)の事故が発生している。仮貯蔵・仮取扱中に事故は発生していない(同1件減)。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきたところである。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関の行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として危険物データベースを運用しているところである。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならないとされている。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならないこととされている。 また、危険物施設においては、危険物取扱者以外の者は危険物取扱者の立会いがなければ危険物を取り扱ってはならず、危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従って行わなければならないものとされている。さらに、一定の危険物施設では、危険物保安監督者を選任し保安監督を行わせる等危険物の貯蔵又は取扱いに関する保安体制の整備を図らなければならないこととされている。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならないものとされている。 一定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱いについては、市町村条例で貯蔵・取扱いに関する基準を定め、規制することとされている。 なお、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務は、機関委任事務制度の廃止に伴い、平成12年4月1日より都道府県又は市町村の自治事務とされている。
(2)危険物規制の最近の動向 危険物の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえて、必要な見直しを行ってきたところである。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバーが自ら給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所の設置を可能としたところであり、平成13年3月31日現在487施設が設置されている。 平成11年3月には、近年の危険物施設を有する事業所における自主保安の進展状況等を踏まえ、石油コンビナート等特別防災区域内の事業所のうち、市町村長等が、工事管理を含む保安のための優れた体制を有することが実績からも明らかであると認める事業所については、当該事業所が行う危険物施設の一定の変更工事に係る完成検査等について、当該市町村長は当該事業所の自主検査結果を活用して、完成検査等を実施して差し支えないこととした。 平成12年3月には、容量が1万kl未満の特定屋外タンク貯蔵所の内部点検について、構造上の安全レベルに応じて点検周期を延長した。 平成13年7月には、消防法が改正され、以下のとおり危険物の範囲を見直した。1) 平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第5類(自己反応性物質)の危険物の品名に追加した。2) 平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲の上限を250度未満とした。
ガソリンスタンドの多様化 ガソリンスタンドは、消防法に定める危険物施設のうち、給油取扱所に区分され、その数は、昨今の経済情勢もあり、平成9年度から減少傾向にある。 しかしながら、近年、セルフスタンドや排気ガスを環境負荷の少ないものとする圧縮天然ガス等の燃料供給設備が併設されたガソリンスタンドは、全体が減少傾向にある中で増加傾向にある。環境負荷の小さい燃料を扱うガソリンスタンド(給油取扱所)○メタノール給油取扱所 メタノールを燃料とする自動車に給油するための固定給油設備が設置されているガソリンスタンドである。メタノールは、ガソリン、軽油及び灯油と異なり水溶性である等の特異な性質を持っていることから、メタノール給油取扱所には、漏れた危険物を収容する設備等の特別な設備が設けられている。○圧縮天然ガス等併設給油取扱所 圧縮天然ガス又は液化石油ガスを燃料とする自動車にガス充てんするための充てん用機器が、ガソリン等の固定給油設備と併設されているガソリンスタンドである。セルフスタンド(顧客が自ら給油等を行う給油取扱所) セルフスタンドは、給油に訪れた顧客自らが固定給油設備を操作して、自家用車等に、ガソリン等を給油する給油取扱所となっている。近年、その数は急激に増加し、セルフスタンドを利用する人も多くなっている。 セルフスタンドを利用する際は、ガソリンの危険性を十分認識し、エンジンの停止、喫煙他火気の使用を避けなければならないのはもちろんのこと、ガソリンは静電気による火花でも容易に火災になることから、給油作業に入る前に、車両のドア等の金属部分に触れること等により、静電気を除去する必要がある。 ガソリンの危険性について  ガソリンの引火点は、約-40℃であることから、日本においては冬季であっても可燃性の蒸気がガソリンの液表面から出ている。その可燃性の蒸気は火気又は静電気の火花により、容易に引火する。 
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成13年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は、54万2,068施設(対前年度比3,975施設、0.73%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が、12万3,964施設(全体の22.9%)と最も多く、次いで給油取扱所の8万5,182施設(同15.7%)、屋外タンク貯蔵所の8万260施設(同14.8%)等となっている(第1-2-7図)。 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は53万2,574施設(全体の98.2%)となっている。 危険物施設数の最近における推移についてみると、製造所及び移動タンク貯蔵所はわずかに増加しているが、その他の施設は減少傾向にある(第1-2-1表、附属資料29)。イ 危険物施設の規模別構成 平成13年3月31日現在における危険物施設総数の規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の構成は、第1-2-8図のとおりであり、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が41万5,384施設(全体の76.7%)を占めている。
危険物施設の標識・掲示板 ガソリンスタンドには、下のような標識・掲示板が掲げられているが、これらの標識・掲示板は消防法令により設置が義務付けられている。 標識は、その施設が危険物施設であることを示して防災上の注意を喚起することを目的として設けられている。 また、掲示板は、施設の防火に関し必要な事項を掲示することによりその徹底を図るために設けられるもので、「火気厳禁」のような注意事項を表示したもののほか、次のような、貯蔵し、又は取り扱う危険物の種類・量、危険物保安監督者、タンク注入口の表示、ポンプ設備の表示等がある。 なお、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)については、下図のような「危」の標識を掲げることとされている。 従前、この標識の大きさは0.4m平方とされていたが、平成12年5月1日から、0.3m平方以上0.4m平方以下とすることが可能となっている。
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は甲種、乙種及び丙種に区分され、危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければできないこととされている。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成13年3月31日現在616万5,282人と広く国民の間に定着してきており、広く危険物に関する知識、技能の普及を図っているところである。今後とも、危険物の安全の確保に大きな役割を果たす危険物取扱者の資質の向上のための各般の施策を推進していくこととしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成12年度において危険物取扱者試験は全国で323回(対前年度比8回減)実施されている。受験者数は、52万8,298人(同2,475人減)、合格者数は、21万4,117人(同4,050人減)で平均の合格率は40.5%(同0.6%減)となっている(第1-2-9図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では乙種第4類が34万2,703人(全体の64.9%)と最も多く、次いで丙種の7万9,456人(同15.0%)となっており、この両者で全体の79.9%を占めている。合格者数でも乙種第4類が11万1,874人(全体の52.2%)、丙種が4万2,134人(同19.7%)となっており、この両者で全体の71.9%を占めている。イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成12年度において、保安講習は、全国で延べ1,352回(対前年度比30回減)実施され、17万3,151人(同3,763人減)が受講している(第1-2-2表)。
(5)事業所における保安体制の整備 平成13年3月31日現在、危険物施設をもつ事業所総数は、全国で25万8,098事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等で同一事業所において一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う者には、危険物保安監督者の選任、自衛消防組織の設置、危険物施設保安員の指定又は予防規程の作成が義務付けられている。さらに、一定数量以上の第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設等の所有者、管理者又は占有者には、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1-2-10図)。 なお、危険物施設の許可の際の要件が維持されていない等の場合については、許可の取消し等ができることとされている。また、著しく不適任と判断される危険物保安統括管理者及び危険物保安監督者については、市町村長等が解任を命ずることができるとされている。
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが義務付けられている。 平成12年度に実施された保安検査は314件(対前年度比25件減)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは306件(同24件減)、特定移送取扱所に関するものは8件(同1件減)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成12年度においては、28万4,572(対前年度比3,804減)の危険物施設について、延べ31万5,841回(同6,680回減)の立入検査が行われている。 立入検査を行った結果、危険物施設等における危険物の貯蔵若しくは取扱い、又は当該施設の位置、構造若しくは設備が消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成12年度において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、277件(対前年度比70件増)となっている(第1-2-11図)。
(8)危険物に関する意識の高揚 危険物施設の事故原因を分析すると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多いことから、事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、広く国民の危険物に対する意識の高揚及び啓発を図るため、平成2年度からは毎年6月の第2週を「危険物安全週間」として、全国的な啓発運動を展開している。 平成13年度の危険物安全週間においては、危険物保安功労者等の表彰、講演会・研修会、消防機関による集中査察等を実施したほか、危険物関係事業所においては自衛消防組織等による消防訓練等を行った。また、「危険物 めざすゴールは 無災害」を危険物安全週間推進標語として、危険物に対する意識の高揚、啓発を図るためポスター・パンフレットの配布等広報活動を行った。
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならないこととされている。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行うこととされている。 石油パイプライン事業法の適用を受けているのは、現在、新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけである。 なお、新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)危険物施設等の安全の確保の徹底 危険物施設等の事故は、近年顕著な増加傾向を示しており、加えて危険物には指定されていなかった物質を原因とする大きな事故も発生している。 このため、法令による技術基準の整備、消防機関による立入検査等の強化、データベースの構築による危険物等の事故情報の有効活用、新たな技術の導入を活用した効率的な検査方法、事故の詳細分析による有効な事故防止対策、新規危険性物質の把握等について検討し、事故防止の徹底を図る必要がある。 このうち、新規危険性物質の把握については、科学技術の進展により化学物質の種類は増加しており、消防法上の危険物にはなっていないが火災危険性を有するもの、あるいは、微量の不純物の混入でも火災危険性が顕著になる物質などが出現する可能性がある。これらの新規危険性物質を速やかに把握し、爆発・火災等の災害を未然に防止することのできる体制を確立する必要がある。
(2)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、新たな危険物品の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、諸外国で導入が進んでいる危険物施設に係る新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行うとともに、安全性の確保に十分配慮しつつ危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を図っていく必要がある。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成12年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は82件で、前年(91件)と比較すると、9件の減少となっている(第1-3-1図)。 しかし、全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、7件の災害により、負傷者13人が発生しているが、死者は発生していない。損害額は、3億9,510万円で、前年に比べ4億324万円の大幅な減少となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が58件(対前年比2件増)、設備の劣化や故障などの物的要因が24件(同1件減)となっており、前年度と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が59件(うちレイアウト規制対象事業所47件)と全体の72.0%を占めている。1事業所当たりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が21.1%と最も高い(第1-3-1表)。
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、化学工業関係21件(全体の25.6%)、石油製品・石炭製品製造業関係19件(同23.2%)、鉄鋼業関係17件(同20.7%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質を大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立が図られている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスが大量に集積している地域について、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の85地区(平成13年4月1日現在)が指定されている(第1-3-2図)。 また、平成13年4月1日現在、446の第1種事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は216)、363の第2種事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料31のとおりとなっている。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力を十分に整備することが必要であり、消防庁は、消防力の基準において市町村の消防機関が、特別防災区域に係る災害に対処するため保有すべき消防力について定め、その強化を図っている。 平成13年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車99台、大型高所放水車82台、泡原液搬送車95台、泡消火薬剤3,621kl、消防艇27艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備24基、泡放水砲21基等が整備されている。 消防庁においては、特別防災区域所在市町村における大型化学消防車等の整備について補助を行っている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成13年4月1日現在、809の全事業所に自衛防災組織が置かれ、このほか89の共同防災組織、65の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時6,009人の防災要員、178台の大型化学消防車、140台の大型高所放水車、153台の泡原液搬送車、26台の大型化学高所放水車、41隻の油回収船等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成13年4月1日現在、流出油等防止堤が203事業所に、消火用屋外給水施設が602事業所に、非常通報設備が809の事業所にそれぞれ設置されている。
技術革新による大型化学高所放水車の省力化 石油コンビナート等特別防災区域では、石油コンビナート等災害防止法の規定により特定事業所にはその施設の規模、形態等に応じて一定の化学消防自動車、消火薬剤、油回収船その他の機械器具、資材又は設備(以下「防災資機材等」という。)を備え付けなければならないことになっており、また、消防車両等の種類に応じて必要な人数の防災要員を置くことが義務付けられている。 近年、これらの防災資機材等については、技術進歩等により、防災要員の負担の軽減を図る種々の装置・機械器具が付加されているものが開発されていることから、省力化を図るための装置又は機械器具を有し、又は搭載した消防車両を導入した場合に、従前と変わらない消火活動上の機能が確保されているものについては、防災要員の人数を減ずることができるよう要件が緩和された。 省力化を図るための装置又は機械器具としては、次のものがある。(1)一般的に「ホースカー」と呼ばれている消防用ホースの積み卸し、運搬及び延長を行う、操作性など一定の要件を満たしたホース延長用資機材(2)ノズル放水の際にノズル保持のための肩ベルト、放水の反動力を軽減させる構造等により防災要員1人で安全かつ有効に放水できる低反動ノズル(3)消火活動の際にヘッドセット等の装置により手を使うことなく容易に通信操作ができる携帯無線機 大型化学高所放水車は、大型化学消防車と大型高所放水車の機能を合わせ持った消防車両であり、この車両においても大型化学消防車などと同様に、上記3点の省力化対応機器を採用することにより、防災要員5人が必要なところ3人での対応が可能となった。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。これらの防災組織は実際の防災活動経験に乏しい面もあるため、消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」及び「防災要員教育訓練指針」を取りまとめるとともに、これらの内容をより効果的に周知するため視聴覚教材を作成し、消防機関を通じて自衛防災組織等に対し指導を行っている。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所の石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特別防災区域全体に占める割合は、石油にあっては57.3%、高圧ガスにあっては98.1%となっており、大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成13年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる223(平成12年4月1日現在)の事業所における平成12年度中の新設及び変更の届出件数は22件であった。 また、平成12年度中の確認件数は10件であった(第1-3-3図)。
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じたほか、関係省庁の協力を得て新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間の短縮に努めている。
5 その他の災害対策(1)大規模地震発生時における自衛防災組織等による広域応援体制の構築 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災においては、石油コンビナートで大規模な災害は発生しなかったが、今後、大規模地震発生時に石油コンビナートに所在する自衛防災組織等による広域的な応援が考えられることから、実際に広域応援を行う場合の手続、方法等について検討を行っており、これらを通じて自衛防災組織等による広域応援体制の構築を進めることとしている。
(2)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられているが、通報に時間を要している場合もあるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(3)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等について、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 総合的な災害対策の推進 消防庁では、学識経験者等により構成される「石油コンビナート等防災体制検討委員会」等において石油コンビナートにかかわる諸問題について検討を行い、総合的な災害対策の推進を行っている。
(1)防災資機材等の高度化、多様化 近年の防災資機材等に係る機能の高度化や多様化を踏まえ、自衛防災組織等に備え付けなければならない化学消防自動車等について、消防活動に係る作業の省力化に資する装置又は機械器具が備え付けられているものについては、より少ない防災要員の人数とすることを可能としたほか、一定規模以上の屋外貯蔵タンクがある場合に備え付けるべき防災資機材として、従前の大型化学消防車、大型高所放水車及び泡原液搬送車(以下「3点セット」という。)に代えて、一定の要件に適合する屋外貯蔵タンクについては、新たに3点セットと同等の機能を有する防災資機材として半固定液面下泡注入設備(SSI)によることを可能とする等の制度化したところである。 防災資機材等については、今後とも技術革新による操作性の向上、新たな装置又は機械器具の開発等を踏まえ、高度化・多様化を図り、一層の防災体制の充実を図っていく必要がある。
(2)防災アセスメントの実施の推進 石油コンビナート等防災計画に定めることとされている災害想定を実施するには、客観的かつ現実的なものとして影響範囲の算定方法、影響評価の指標等を示す必要があり、その策定には防災アセスメントが活用されている。 消防庁においては、阪神・淡路大震災を踏まえ、平成12年度に地震等の災害想定を充実する等防災アセスメント策定指針の見直しを行ったところであり、石油コンビナート防災対策の充実強化に資するため、防災アセスメントに対する理解の増進を行うとともに実施の推進を図っていく必要がある。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借り上げ分を含め5,000万klを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった新しい方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じてきているところであり、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成12年中の林野火災の件数は2,805件(前年2,661件)、焼損面積は1,455ha(同1,009ha)、損害額は7億850万円(同5億2,095万円)であり、件数、焼損面積、損害額ともに、前年より増加した(第1-1-26表)。 例年、林野火災は春先を中心に発生しており、このことは、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜採りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成12年も例外ではなく、3月に580件と最も多く発生しており、2月から4月までの間に、年間の54.5%の火災が集中して発生している(第1-1-31図)。
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同して林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、 1) 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防 2) 火災予防の見地からの林野管理 3) 消防施設等の整備 4) 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成12年度までに、38都道府県の945市町村にわたる227地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場、林野火災対策用資機材、林野火災工作車、小型動力ポンプ付水槽車等)の整備に対して補助を行っている(第1-4-1表)。
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より小さいものの、ひとたび発災し、対応が遅れれば貴重な森林資源を大量に焼失することとなり、ときには隣接市町村、隣接都府県に及ぶ場合がある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合に迅速に十分な消防力を投入して火災による被害を最小限に抑えるために、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進めるとともに、早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、過疎化等による人員不足が問題となる中で、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動の実施のために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な状況でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防・防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されているが、消防・防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく消防・防災ヘリコプターの応援出動による空中消火も増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1-4-1図のとおりである。 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保できるとともに、平常時においては地域住民も多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備に対して国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因には、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多いこと、林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策においては出火防止の徹底が特に重要であり、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。1) 林野周辺住民、入山者等の防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祭日に多いことから、このような多発期の週末、祭日の前に徹底した広報を行うこと。2) 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。3) 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。4) 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じて山火事予防を呼びかけている。
(2)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、林野火災における消火・広域応援体制に関する調査など林野火災に係る調査研究を行ってきており、その成果を地方公共団体の林野火災対策策定のために提供している。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後積極的に講じる必要がある。1) 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。2) 近隣の市町村に対する応援要請など林野火災の早期拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するとともに、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。また、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術を徹底すること。3) 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図の整備を促進するとともに、これを生かしたシミュレーションシステムの開発・普及を図ること。4) 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成12年中の災害 平成12年中に発生した台風の数は、23個と平年(昭和46年から平成12年)の26.7個に比べて若干少なかった。また、平成12年は、昭和61年以来14年ぶりに台風の上陸はなかったものの、接近した台風の影響を受けて前線の活動が活発化し、各地に被害をもたらした。風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害はともに前年に比べて大幅に減少し、死者・行方不明者77人(前年141人)、負傷者601人(同1,698人)、全壊57棟(前年531棟)、半壊247棟(同3,844棟)、一部損壊3,562棟(同11万3,074棟)となっている(第1-5-1図、附属資料11)。 なお、主な風水害の状況は、以下のとおりである。ア 平成12年7月3日から7月9日までの間の暴風雨及び豪雨(台風第3号を含む。) 平成12年7月3日から7月9日までの間の暴風雨及び豪雨により、東北及び関東地方で負傷者10人、住家の全壊3棟、一部損壊69棟、床上浸水1,022棟、床下浸水4,621棟の被害が生じた。 これに対し、延べ2県100市町村で災害対策本部が設置された。イ 平成12年9月8日から9月17日までの間の豪雨(台風第14、15、17号を含む。) 平成12年9月8日から9月17日までの間の豪雨により、全国各地の広い範囲で、死者10人、行方不明者2人、負傷者118人、住家の全壊30棟、半壊176棟、一部損壊185棟、床上浸水2万2,885棟、床下浸水4万6,342棟の被害が生じた。特に愛知県を中心とする東海地方では、日本付近に停滞していた秋雨前線に、台風第14号の影響で暖かく湿った空気が多量に流れ込んだため、前線の活動が著しく活発化し記録的な大雨となり、甚大な被害が生じた。 これに対し、延べ5県262市町村で災害対策本部が設置された。 消防庁では、災害情報を集約するとともに、関係都道府県に適切な対応をとるよう指示した。 また、各消防機関は、危険箇所等の警戒巡視、救助、避難の誘導、土のう積みなどの活動を実施した。
(2)平成13年1月から9月までの災害 8月下旬に上陸した台風第11号により、全国各地で死者6人、負傷者31人、住家の半壊・一部損壊約50棟、床上・床下浸水約700棟の被害を生じた。 これに対し、延べ4県257市町村で災害対策本部が設置された。 また、9月上旬に上陸した台風第15号により、全国各地で死者5人、行方不明者3人、負傷者48人、住家の全・半壊13棟、床上・床下浸水約800棟の被害を生じた。 これに対し、延べ3県265市町村で災害対策本部が設置された。
[風水害対策の現況] 平成5年8月豪雨災害や平成8年12月の蒲原沢土石流災害、平成9年7月の鹿児島県出水市の土石流災害、平成11年6月下旬から7月上旬の豪雨災害など、近年はがけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害により、多くの人的被害が生じている。 土砂災害対策については、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきたが、平成5年8月豪雨災害等を契機に、特に重点的に推進すべき事項について、平成6年4月、関係省庁による申合せがなされている。また、平成11年6月下旬から7月上旬の豪雨災害を踏まえ、中央防災会議において、特に、効果的な事前周知、気象情報等の収集伝達体制の強化という情報提供の観点から、豪雨災害対策のあり方について検討が行われ、重点的に進めるべき豪雨災害対策について提言がなされた。さらに、土砂災害から国民の生命、身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月に施行され、この法律に基づき「土砂災害防止対策基本指針」が定められたことから、地方公共団体に対し、法及び指針の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 消防庁では、毎年、出水期を前に通知を発し、警戒の強化、土砂災害対策の充実を指導するとともに、台風の襲来時には、台風警戒情報を地方公共団体に送付して、警戒の強化を呼びかけている。また、平成12年4月の中央防災会議の提言についても地方公共団体に対し、その趣旨の徹底を要請した。 地下空間における浸水対策については、国土庁(現内閣府)・運輸省・建設省(現国土交通省)と合同で、平成10年11月に「地下空間洪水対策研究会」を発足し検討を進めていたが、平成11年6月末に福岡市の地下街等の浸水被害が発生したことをも踏まえて、平成11年8月に対策が取りまとめられた。 また、水災による被害の軽減を図るため、平成13年6月に水防法が改正され、国土交通大臣に加えて新たに都道府県知事が洪水予報を行うこと、国土交通大臣又は都道府県知事が洪水予報、河川の浸水想定区域を公表すること及び市町村地域防災計画において浸水想定区域における円滑かつ迅速な避難の確保等の措置を講じることが定められた。さらに市町村防災会議は浸水想定区域内に地下街等がある場合には洪水予報の伝達方法を定めることとされた。 災害時要援護者関連施設については、平成10年8月末豪雨での救護施設「からまつ荘」の被災を踏まえ、平成11年1月に関係5省庁による共同通知を行い、土砂災害の危険地域に立地している施設に対する国土保全事業の推進、情報提供等、防災体制の確立を要請している。これと併せて平成10年度に、関係省庁、学識経験者等からなる「災害弱者施設の防災対策のあり方に関する調査検討委員会」を設置し、施設の土砂災害対策に関し行政(国・都道府県・市町村)の果たすべき役割、施設設置者が果たすべき役割などについて検討を行い、これらの施設に対する情報伝達体制等を含めた今後の施策の方向を明らかにした。各地方公共団体に対しては、その内容の周知を図るとともに地域防災計画の点検を行うよう要請している。
(1)防災体制 都道府県及び市町村においては、地方防災会議の開催を通じて防災関係機関との連携を強化するとともに、地域防災計画の見直しを行うなど、災害に的確に対応しうる体制を整備するよう要請している。特に平成12年5月には、避難勧告等の基準や災害時要援護者への防災情報の連絡体制の再点検、地下空間における浸水対策への配慮、災害対策本部の速やかな設置を行うことなどにより、万全の体制を整えるよう地方公共団体に対し要請した。 また、災害時における情報の重要性にかんがみ、防災行政無線網等の情報通信体制の整備を促進するとともに(第2章第9節参照)、平成7年度より、降雨情報等収集分析装置の整備について国庫補助を行い、雨量情報の収集体制を強化するなど、警戒避難体制の整備充実を図っている。 また、各地方公共団体に対して積極的な防災訓練の実施を要請しており、平成12年度中には、風水害を想定した防災訓練が都道府県では23団体で延べ31回、市町村では延べ856回実施されている。
(2)災害危険箇所に対する措置 過去に災害履歴を持たない地域においても、土地利用の状況や降雨状況の変化により災害が発生するおそれがあることから、地方公共団体に対し、これらの地域を含めて災害危険箇所を把握するとともに、これらの情報については、地域住民へ周知徹底を図るよう要請している。 なお、地域防災計画に記載されている災害危険箇所で施工される自然災害防止事業に対しては、地方債措置と元利償還金に対する地方交付税措置が講じられている。
(3)2次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては十分な警戒等を行うよう、地方公共団体に対して要請している。
[風水害対策の課題](1)防災体制の整備 台風、集中豪雨等による風水害は、毎年のように我が国の広い地域で大きな被害をもたらしている。 このため、各地方公共団体は、防災関係機関との連携を図りつつ、地形、地質、土地利用の状況、災害履歴等を勘案して、災害危険箇所の把握、安全な避難場所及び避難路の確保、気象予警報、雨量、河川の水位状況等各種情報の的確な把握及びこれに基づく適切な避難の勧告・指示等、警戒避難体制の強化に努める必要がある。また、避難勧告・指示の発令の基準やその伝達事項・方法、避難場所、避難路や方法等を地域防災計画に具体的に定め、広報紙、インターネットの利用等様々な広報媒体により住民への周知を図っていくことも重要である。その際には、高齢者、障害者、乳幼児、傷病者など自力避難の困難ないわゆる災害時要援護者にも十分配慮した対策を講じることが求められている。 また、災害危険箇所等を住民に周知するため、ハザードマップの作成と住民への配布を行っていく必要がある。 風水害による被害を最小限にとどめるためには、住民自らの災害に対する備えが不可欠であり、住民への防災知識の普及啓発に努めるとともに、自主防災組織の育成強化を進める必要がある。
(2)土砂災害対策の推進 土砂災害の発生するおそれのある地域を有する地方公共団体においては、土砂災害対策推進要綱、関係省庁による重点申合せ、中央防災会議の提言、消防庁通知等の趣旨を踏まえ、今後も引き続き総合的な土砂災害対策の推進に努める必要がある。 特に、豪雨災害時においては、降り始めから短時間でがけ崩れ、土石流等が発生している例が見られることから、気象予警報等とともに、関係機関の協力を得て、雨量情報や河川水位等の水防情報等を的確に把握する必要がある。近年、雨量等の情報について総合的に収集するシステムを整備する地方公共団体が増えてきているが、今後こうした体制の一層の整備が望まれる。また、こうしたシステムの活用と併せて、災害危険箇所を中心に警戒巡視等を行い、住民に注意を呼びかけるなど警戒体制の確立に努める必要がある。 なお、地震等により、斜面崩壊、ひび割れ、地盤のゆるみ等が生じ、土砂災害の発生が予想される箇所等については、特に警戒が求められる。 また、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月1日から施行されたことに伴い、同法に基づく土砂災害警戒区域ごとに警戒避難体制に関する事項を市町村地域防災計画に定めることが必要である。
第6節 火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向]1 有珠山噴火災害 有珠山は、平成12年3月27日午前から火山性地震が次第に増加し、平成12年3月31日13時07分頃噴火した。その後、マグマの活動は次第に低下している状況にあったが、平成13年5月28日、火山噴火予知連絡会より「有珠山のマグマの供給は停止し、2000年3月に始まったマグマの活動は終息したと判断される」との見解が発表された。 これを受け、噴火時に全町が避難指示地域となった虻田町においても、学識経験者や関係機関等と協議の上、平成12年7月28日以降避難指示未解除となっていた残る202世帯378人に対する避難指示解除が平成13年6月20日に行われた。 なお、金比羅山K-B火口半径200mについては、引き続き避難指示地域に設定されている。 北海道では、平成13年3月30日に「2000年有珠山噴火災害復興計画基本方針」を策定、同年7月には被災した伊達市、虻田町、壮瞥町においても復興計画が策定された。 また、有珠山噴火災害について、今後の復旧・復興に向けた取組みを政府として一層支援するため、政府の「有珠山噴火災害復旧・復興対策会議」が設置されたことに伴い、「有珠山噴火非常災害対策本部」は平成13年6月28日付で廃止となった。 消防庁では、噴火前より現地への先遣隊の派遣や緊急消防援助隊の派遣要請を行うなど、災害応急体制の確保に努めてきたが、噴火活動の低下に伴い、安全が確認されたことを機に、災害対策本部を同日付けで廃止した。 この火山災害に対する消防活動については、地元消防本部を支援するため、北海道内の消防応援部隊77隊238人、北海道外からの緊急消防援助隊15隊72人、北海道内外からのヘリコプターによる応援が行われた。 道内応援隊及び緊急消防援助隊は、地元消防職団員とともに、避難誘導等の活動に携わったほか、救急隊については、避難所等への待機又は巡回により避難者の中に急病人が発生することに備えた。
2 三宅島噴火災害 平成12年7月8日、14日、15日、8月10日、13日〜16日と小規模な噴火があり、8月18日には、それまでで最大規模の噴火が起こり、29日にも18日に次ぐ規模の噴火があった。この活動について気象庁は、8月31日に、「当面これと同程度かこれをやや上回る規模の噴火が繰り返しおこる可能性があり、火砕流に警戒が必要」との見解を示した。 三宅村では、平成12年9月2日には、8月31日の気象庁の見解を受け、防災及びライフライン関係要員を除く全住民(三宅村人口3,855人:平成12年8月1日住民基本台帳)に対し、島外への避難指示を行い、全対象住民が島外への避難(9月2日〜4日にかけて実施)を行った。 消防については、平成12年6月27日から7月2日までの間、東京消防庁が応援部隊を三宅島へ派遣し、地元消防、警察と連携し、道路状況の調査、一時帰宅の支援、道路修繕支援活動、ヘリコプターによる救援物資の搬送等を行った。また、8月29日以降、応援部隊を現地派遣し、地元消防等と連携し、救急搬送、住民の島外避難の支援等を行ったほか、住民避難後も、警戒巡視、夜間島内滞在時の安全監視等を行っている。 平成13年5月28日に気象庁は「大規模な噴火の可能性は低いが、火山ガス及び泥流に対する警戒が必要である。」との見解を示した。これを受けて、7月11日から13日にかけて泥流等被災家屋対象者(74戸)の一時帰宅(現状確認)が実施され、さらには9月17日から26日及び10月2日から3日にかけて三宅村村民の希望者に対する一時帰宅が実施された。
3 その他の火山災害(1)平成12年中の災害 平成12年中に噴火した火山は有珠山、三宅島を含め6火山である。桜島では、噴煙が火口上5,000m以上上がる爆発があり、山ろくで火山礫により車のガラスが割れるなど約6年ぶりに被害が生じた。 火山情報については、平成12年中は、有珠山、三宅島で計6回の緊急火山情報、また、有珠山、三宅島を含む8火山において、計59回の臨時火山情報が発表されている。 これらに対し、関係地方公共団体では、警戒監視体制を強化する措置がとられている。
(2)平成13年中の災害 桜島は、昨年から引き続き噴火・爆発を繰り返し、火口からの噴煙を吹き上げ、7月の観測では、火口からの噴煙の高さが2,000mであった。 また、薩摩硫黄島(鹿児島県)は、活発な地震活動が継続し、島内で降灰が認められ、7月の上空からの観測で乳白色の噴煙が火口上約300mまで上がっているのを確認している。 さらに、諏訪之瀬島(鹿児島県)では、同じく7月の上空からの観測で灰色の噴煙が火口上600〜1,000mまで上がっているのを確認している。
[火山災害対策の現況] 我が国には、現在86(北方領土を含む。)の活火山がある。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの流出、津波など多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられているが、消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用の一部を補助している。さらに平成11年には、活動火山対策避難施設等の補助事業の対象地域を拡大し、第6次火山噴火予知計画(平成10年8月文部省測地学審議会建議)における火山も対象とした。 また、雲仙岳噴火災害時における貴重な経験をもとに、住民の避難、救出救助、災害情報の収集伝達等の活動のために使用する耐熱装甲型救助活動車及び火山噴火災害特殊避難車を補助対象に加え、火山災害に対する消防の対応力の強化を図るとともに、地域の特色を活かした火山災害に強いまちづくりを推進できるように、活動火山情報教育施設、大規模避難宿泊施設、避難休憩施設、活動火山情報表示施設などの火山対策施設について、防災まちづくり事業の対象としている。 平成12年の有珠山噴火災害時には、地元の消防本部を支援するため、北海道内のほかの消防本部の部隊や緊急消防援助隊による広域消防応援、他県等の保有する消防・防災ヘリコプターによる広域航空消防応援が実施されており、消防庁としても、消防・防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等のデータベース化を図るなど広域応援体制の整備を進めているところである。なお、有珠山噴火災害では、緊急消防援助隊として応援に当たった横浜市消防局の耐熱装甲型救助活動車が、逃げ遅れた住民を救出した。 さらに、消防庁では、平成12年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動等により危険の及ぶ範囲を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行う一方、「火山災害関係都道県連絡会議」を開催し、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくこととした。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下をはじめとする火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道県で14団体、市町村で72団体が整備している。 また、これらの団体においては、適宜見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体にあっては、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。特に、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳、桜島の7火山の関係市町村では防災会議の協議会が設置されており、それぞれ火山の爆発に関連する事前措置その他の必要な措置について、指定地域防災計画が作成されている。また、平成9年3月には北海道恵山、平成12年2月には北海道樽前山の関係市町村で防災会議の協議会が設置され、現在、広域的な連絡・協力体制の整備が図られている。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携のもと、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成12年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県3団体で延べ4回、市町村では延べ33回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。 また、平成13年6月3日には、富士山の火山噴火を想定し、山梨県、富士山周辺市町村、消防庁を含む防災関係機関、観光関係団体及び自主防災組織など58団体の計約1万5,000人が参加し、実践的な訓練を実施した。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を引き続き推進していくことが重要であるが、特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布すること等により、平常時から住民に対し、防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要がある。 なお、有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
(2)住民への情報伝達体制の整備 火山情報、避難勧告・指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するため、防災行政無線(同報系)は、非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、80.7%(平成12年10月1日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告・指示を行う必要がある。また、あらかじめ、情報伝達体制、避難に対する広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておく必要がある。特に、高齢者 などの自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておく支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察機関、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日頃から連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じ、登山規制、立入規制等の措置をとることができるように、関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成12年1月から12月までの間に震度1以上が観測された地震は、1万7,678回(前年1,023回)で、このうち、震度4以上を記録した地震は357回(前年23回)、いずれも前年を大幅に上回った。これは、3月からの有珠山噴火等に伴う地震(震度1以上1,205回、うち震度4以上45回)、6月〜8月にかけての三宅島近海及び新島・神津島近海の火山活動等に伴う地震(震度1以上1万4,255回、うち震度4以上253回)、10月の鳥取県西部地震及び当該地震の余震(震度1以上1,064回、うち震度4以上15回)によるものである(第1−7−1表)。
(1)平成12年以降の主な地震の概要 平成12年1月から13年9月までに震度4以上を記録した地震は、第1-7-1表のとおりであり、主な地震災害の概要は、以下のとおりである。ア 平成12年三宅島近海及び新島・神津島近海を震源とする地震 平成12年6月26日から、三宅島島内西部で始まった火山性の地震活動は、西方へ移動しながら三宅島と神津島の中間の海域まで移動するとともに、27日午後からはマグニチュード4.0以上の地震が発生し始め、29日にはマグニチュード5.2の地震が発生し、神津島村で震度5弱を記録した。 7月1日には、新島・神津島近海を震源とするマグニチュード6.4の地震が発生し、神津島村では震度6弱、新島村で震度5弱を記録した。 その後も新島・神津島近海や三宅島近海を震源とする群発地震が継続し、7月1日から8月18日までの間に、神津島村、三宅島村及び新島村で合わせて震度6弱を6回、震度5強を7回記録した(第1-7-1図)。 これらの地震等による被害は6町村に及び、死者1人、負傷者15人、住家の全壊15棟、半壊20棟、一部破損174棟(平成13年1月26日現在、平成12年台風第3号による被害を含む。)となっている。イ 平成12年(2000年)鳥取県西部地震 平成12年10月6日13時30分、鳥取県西部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した。この地震により、鳥取県境港市、日野町で震度6強、西伯町、溝口町等では震度6弱を記録した(第1-7-2図)。 震度6強は、平成8年2月の気象庁による震度階級の見直し以降初めて記録したもので、マグニチュードは7.3と平成7年(1995年)兵庫県南部地震と同等の規模となった。 この地震による被害は、鳥取県、岡山県、島根県を中心に1府9県に及び、負傷者182人、住家の全壊434棟、半壊3,094棟、一部損壊1万8,199棟(平成13年10月10日現在)となっている。ウ 平成13年(2001年)芸予地震 平成13年3月24日15時27分、安芸灘を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生した。 この地震により、広島県河内町、大崎町、熊野町で震度6弱、広島県呉市、愛媛県今治市等では、震度5強を記録した(第1-7-3図)。 この地震による被害は、広島県、愛媛県、山口県を中心に9県に及び、広島県、愛媛県でそれぞれ1人が死亡したほか、負傷者287人、住家の全壊69棟、半壊749棟、一部破損4万8,602棟(平成13年10月17日現在)となっている。エ 静岡県中部を震源とする地震 平成13年4月3日23時57分、静岡県中部を震源とするマグニチュード5.1の地震が発生した。この地震により静岡県静岡市で震度5強、島田市、岡部町、川根町で震度5弱を記録した。 この地震による被害は、静岡県で負傷者8人、住家の一部破損80棟となっている。
(2)平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成12年12月27日現在、人的被害は死者6,432人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1-7-2表、第1-7-3表、第1-7-4表、第1-7-4図)。
2 外国の地震災害 平成12年1月から平成13年9月までの主な地震は、第1-7-5表のとおりである。
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁は、地震災害を防止し、被害の軽減を図るため、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めるとともに、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、地域防災計画が発災時に迅速かつ適切な応急対策の実施ができる実践的なものとなるように早急な見直しを要請するとともに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等大震火災対策施設等の整備充実を図っている。 また、大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 さらに、阪神・淡路大震災での貴重な経験、教訓を次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業、施策の企画・立案や日々の防災活動に役立てるため、消防庁や地方公共団体等における阪神・淡路大震災以降に講じられた各種施策の内容及び成果を調査・検討し、当面する課題を中心に新時代に向けての地震防災対策の展開について、24項目の提言をとりまとめるとともに、「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)を構築し、平成13年6月1日から運用を開始して、地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 一方、これら国庫補助事業等のほか、公益法人による震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備に対する助成事業も行われている(第1-7-6表)。関連サイト:「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(http://sinsai.fdma.go.jp/)
東南海・南海地震 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的に見て100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8程度である。 この地震は、主に四国や紀伊半島が乗っている陸のプレートの下へ、太平洋側からフィリピン海プレートが沈み込むことに伴い、この2つのプレートの境界面が破壊する(ずれる)ことにより発生する。 最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生しており、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている。 このため、地震調査研究推進本部の地震調査委員会は調査・検討を行い、平成13年9月27日に、この地震の発生可能性の長期的な確率評価等を公表した。その概要は右表・下図のとおりである。 また、中央防災会議においても、「東南海・南海地震等に関する専門調査会」を設置し、平成14年度末を目途に、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策の基本的なあり方について検討を行っている。 この地震が発生した場合、西日本の太平洋岸を中心に広い範囲で、地震動や津波による大きな被害が予想される。 こうしたことから、地方公共団体においては、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、平成13年11月15日に、30府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立しており、国及び地方公共団体が連携した取組みを行うこととしている。
阪神・淡路大震災関連情報データベース〜新たな地震防災の創造のために〜 阪神・淡路大震災における多くの経験や教訓を次の世代に継承していくとともに、これらの教訓等を消防防災対策事業、施策の企画・立案や日々の防災活動に役立てていただくために、平成13年6月に「阪神・淡路大震災関連情報データベース」の運用を開始した。 その内容は、阪神・淡路大震災に関するデータのほか、震災以降、消防庁をはじめとする消防防災機関の施策・事業や消防団等の防災活動の実施過程で蓄積された文書、冊子、レポート、写真、映像などの約2万タイトルに及ぶ各種情報であり、これらを有機的に活用できる。 このデータベースをインターネット上で公開することで、地方公共団体等の防災担当者、研究機関をはじめ、一般の方々まで、多くの方に活用していただけるようになっている。関連サイト:「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(http://sinsai.fdma.go.jp/)
(1)地震防災対策強化地域における震災対策ア 東海地震対策の充実・強化 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法の規定に基づき、地震防災対策強化地域に指定された6県167市町村(第1-7-5図)においては、東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画等に基づき、予想される東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、病院、百貨店、劇場、鉄道事業等地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地震防災応急対策・各種施設整備等それぞれの地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 しかし、大規模地震対策特別措置法が制定されて以来20年余が経過し、社会経済情勢の大きな変化、また阪神・淡路大震災の発生など、とりまく状況が大きく変化したため、中央防災会議では平成11年7月に「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」を修正するとともに、平成12年5月に、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る屋内避難施設の選定及び安全確保のための指針」及び「判定会招集連絡が発せられた際の防災機関の対応に係る基本方針について」を定めた。 また、消防庁では、平成12年2月に地方公共団体に対して「地震防災強化計画の見直しについて」により、計画の見直しを要請するとともに平成12年5月に、屋内避難施設の選定及び安全確保や判定会招集時の対応について通知し、東海地震対策の充実強化を図っている。 さらに、平成13年1月26日の中央防災会議において、これまでの観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえて、東海地震対策の一層の充実強化を検討するため、「東海地震に関する専門調査会」が設置された。 平成13年6月に、この専門調査会により示された東海地震の新たな想定震源域の案に基づき、地震の揺れや津波により著しい被害を受ける地域についての検討が行われている。この検討結果に基づき、地震防災対策強化地域の見直しが必要な場合には所要の手続きをとるとともに、具体的な防災対策の検討を開始する。 今後、こうした検討結果等に応じて、関係地方公共団体においては、地震防災強化計画や新たな地震被害想定の実施等に基づく地震対策緊急整備事業計画等の策定・見直しを行い、地震防災施設等の整備及び広域的防災体制の整備充実を図る等東海地震対策のより一層の充実・強化を図る必要がある。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されており、同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。この特例措置の対象となる消防用施設は、消防施設強化促進法に規定する消防施設、小型動力ポンプ付積載車、可搬式小型動力ポンプ及び耐震性貯水槽であり、国の負担割合は2分の1となっている。さらに、これらの施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されるなど財政上の特例措置が講じられている。 地震対策緊急整備事業として、平成12年3月31日までの20年間に実施された避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等、整備された施設等の総事業費は、1兆478億円となっている。 なお、この法律は、これまで4回延長され、適用期限は平成17年3月31日までとなっている。
(2)地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成された。国は同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 平成13年3月31日に同法の一部を改正する法律が公布施行され、この特例等の適用期限が平成18年3月31日まで延長された。地震防災緊急事業として、平成12年3月31日までの5年間に実施された避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集対策等、整備された施設等の総事業費は、13兆7,549億円であり、現在、各都道府県において、平成13年度から始まる第2次地震防災緊急事業五箇年計画を作成している。 なお、特例措置の対象となる消防庁関係の事業は、耐震性貯水槽、小型動力ポンプ付積載車、海水等利用型消防水利システム、緊急消防援助隊関係の資機材、防災行政無線・画像伝送システム、給水車、電源車、備蓄倉庫及び震災初動対応資機材の整備であり、国の負担割合は2分の1となっている。
(3)南関東地域における震災対策 南関東地域は、人口、諸機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広範なものとなるおそれがあるため、中央防災会議において昭和63年12月に「南関東地域震災応急対策活動要領」が、平成4年8月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」(第1-7-5図)が決定され、ともに平成10年6月に阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全面的な見直しが行われている。 また、同要領及び同大綱において、応急対策の実践的な備えを推進するため、分野ごとにアクションプランを検討することとされ、平成10年8月に中央防災会議主事会議において「南関東地域の大規模地震時における広域医療搬送活動アクションプラン第1次申し合わせ」が行われた。 なお、関係地方公共団体に対し、この活動要領及び大綱の趣旨等を踏まえ、震災対策用施設・設備の整備の促進、都市型地震災害の防止・軽減対策の推進、広域応援体制の整備充実、緊急輸送の確立、救助・救急体制の確立、情報伝達及び広報体制の確立、災害応急対策の強化、防災意識の啓発、周辺地域と一体となった広域的な防災訓練の実施など震災対策の充実を図るよう要請している。
避難場所の図記号 現在、地方公共団体が設置している避難標識の図記号は多種多様であるが、災害発生という緊急時において迅速かつ円滑な避難を行うためには、誰もが、いつでも、全国のどこの地域においても、理解でき、かつ、わかりやすく、統一された図記号を整備する必要がある。また、国際化の進展を視野に入れた場合、諸外国の人々にとっても認識できるものでなければならない。 このため、平成12年度に、消防庁に「避難標識に関する調査検討委員会」を設置し、避難標識のあり方を検討した。 下の図記号は、この委員会において、視認度(一目で認知できる)、記憶度等の点において、避難標識が備えるべき要素、国際化への対応、都市景観との整合等の観点からみて優れており、非常口に係る図記号との整合性も考えた場合、「避難場所」を表示するものとしてふさわしいとの評価を得たものである。 現在、この図記号の一層の普及を図るため、案内用図記号としてのJIS規格(日本工業規格)化に向けた手続や国際標準化機構(ISO)の国際標準化に向けての検討が進められている。 今後、この図記号について、地方公共団体等を通じて住民等に周知するとともに、公益法人の助成事業等の活用により普及を図ることとしている。
(4)総合防災訓練 政府は、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法に基づき、東海地域に大規模地震が発生したとの想定及び南関東地域直下に大規模地震が発生したとの想定のもとに、中央防災会議で決定した「平成13年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成13年9月1日(防災の日)に総合防災訓練を実施した。 当該訓練には、指定行政機関等、関係指定公共機関及び地震防災対策強化地域と周辺地域の関係都県市が参加し、東海地震を想定した訓練は予知対応型訓練として、南関東地域直下の地震を想定した訓練は発災対応型訓練として行った。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、職員の参集訓練、地震警戒本部及び災害対策本部の設置及び運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請などについて、消防防災無線網を活用した国と関係都県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。 また、消防庁に整備した衛星車載局車、現地活動支援車を訓練会場に派遣し、実践的な情報収集・伝達訓練を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成13年4月1日現在、都道府県においては、すべての団体が震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けている。 市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,537団体、「節」等を設けているものが943団体、「その他の災害等」として扱っているものが130団体となっている。 なお、地域防災計画で「震災対策編」を設けて「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で619団体となっている。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会が取りまとめ公表した活断層・海溝型地震の長期評価を踏まえた見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1-7-6図、第1-7-7図)。 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所の指定は逐年拡充されており、平成13年4月1日現在で、7万1,315箇所が指定されている(第1-7-7表)。 また、避難路については、249団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1-7-8表)。 これらの物資を備蓄するため、平成13年4月1日現在、都道府県においては45団体で1,262棟、市区町村においては2,397団体で1万6,761棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては25団体で426棟、市区町村においては149団体で1,170棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成12年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は2,105億1,812万円、また、市区町村が実施した事業費は815億3,074万円である(第1-7-9表)。
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成12年度においては、46都府県(北海道は災害発生のため中止)と1,229市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が行われ、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1-7-10表、第1-7-11表)。 また、これらの訓練のほか、日頃から地域住民等に対し、各都道府県及び1,529市区町村において、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成13年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は1,024団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が400団体、地域防災計画へ記載している団体が801団体、津波災害を想定した避難地は5,171箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が240団体で実施されている。
(8)地震防災に関する日米間の交流 日米間で推進されている地震防災対策の専門家レベルでの交流は、平成7年6月のハリファクス・サミットを契機として充実・強化され、「コモン・アジェンダ(地球的展望にたった協力のための共通課題)」の「自然・人的災害の軽減」分野の重要な課題として位置付けられた。 これまで、平成8年にワシントン、9年に神戸市でそれぞれ日米地震政策シンポジウムが、平成10年にはシアトル市、11年には横浜市、12年にはサンフランシスコ市でそれぞれ日米地震防災政策会議が開催され、消防庁としても研究発表等を行うなど積極的に参加している。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約52万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生したところであり、住民の生命、身体、財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年度に地震防災対策特別措置法が制定され、同法に基づき都道府県においては平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を図るべく事業を進めてきたが、これを実施する都道府県及び市町村においては近年の財政事情の悪化等により、防災基盤の整備は計画どおりに進められていない状況にある(進捗率74.3%)。 このような中で、災害に強い防災基盤の整備を図るためには、引き続き、平成13年度から17年度までを計画期間とする第二次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく事業を積極的に推進する必要がある。 特に、大規模災害時において、避難所となる公共施設や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などについては、その耐震化率が50%程度であることから、早急かつ計画的に耐震改修の実施に取り組む必要がある。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組み 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部地震調査委員会の公表する、地域における地震活動の長期的な確率評価等を踏まえた被害想定の実施等に基づき防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
地震に強い防災拠点 地震が繰り返し多く発生する日本では、その教訓を生かして、建築物の耐震性の向上が図られてきた。しかし、平成7年1月の阪神・淡路大震災では、全半壊した建築物が約25万棟にも及び、多くの犠牲者を出したほか、庁舎、消防署、学校等の施設も被害を受け、災害応急対策の円滑な実施に支障をきたした。 大きな被害を受けた建築物の多くは、昭和56年の建築基準法改正以前の耐震設計基準により建築されたものであったため、改めて建築物の耐震化の重要性が認識された。 このため、平成7年12月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行され、学校、事務所、百貨店等の多数の者が利用する一定規模以上の建築物のうち、耐震関係規定に適合せず、既存不適格である建築物の所有者は、耐震診断を実施し、必要に応じて耐震改修を実施する努力義務が課せられることとなった。 この法律は、あらゆる建築物の地震に対する安全性の向上を図るために耐震改修の促進に関する措置を定めたものであり、地方公共団体の所有する建築物も対象となる。公共施設等は、多数の者や不特定多数の者が利用することが多く、耐震性が低い場合、大地震の発生により大きな被害が生じる危険性が高い。 また、防災拠点となる公共施設等は、災害発生時に重要な役割を担っており、地方公共団体の庁舎や消防署、警察署等は災害応急対策の指揮、情報伝達等の拠点として、病院は救急医療活動拠点として、公立学校の校舎の多くは避難所として、それぞれ地域防災計画に位置付けられている。災害応急対策を円滑に実施するために、防災拠点となる公共施設等の耐震改修は急務といえる。 したがって、想定される震度に対する耐震性の有無や施設の防災拠点としての役割等を考慮しながら、都道府県が策定する耐震改修促進計画に基づき、耐震改修促進実施計画を策定し、優先的に整備すべき施設から順次、迅速かつ計画的に耐震改修を推進する必要がある。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、さらに教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防・防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防・防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能の状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、耐震性貯水槽の整備促進を図っていく必要がある。耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債等の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきたところである。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ適切に行われ震災被害を最小限に抑止するためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対策を現場へ的確かつ迅速に伝達することが重要である。 このため、被害想定システム等の活用や高所監視カメラやヘリコプターテレビ電送システム等の整備を行い、画像伝送等による情報収集・分析を行うなど、多面的な対策が求められている。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある。
5 初動体制の整備 初動対応の如何が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすなど、大規模災害時は発災直後から情報の収集・伝達等の臨機応変で的確な対応が極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保、防災担当職員の宿直体制の整備など夜間・休日も含めた職員参集方策等についての検討を行い、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 なお、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定を適切に実施するとともに、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。
7 実践的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日頃から実践的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実践的な訓練になるよう努める必要がある。 また、大規模災害時にあっては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実践的なものとなるよう、ロールプレイング、状況付与方式など工夫をこらした訓練に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。
8 津波対策の推進 海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 また、避難地や避難路、情報通信機器、防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などの整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進、建築物の耐震化等の施設の安全性の向上を図るなど、津波防災の観点からのまちづくりを推進する必要がある。 さらに、日頃から、津波に関する防災知識の普及を図るとともに、津波予報等の発令から避難行動に至るまでを具体的に示した避難マニュアルの作成・配布、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、迅速かつ円滑な避難活動を図る体制を整備しておくことが重要である。
きめ細かな津波予報 現在の津波予報は、20〜30km間隔程度の海岸ごとに、具体的な数値で津波の高さを迅速に予測することが可能となっており、住民が理解しやすく、地方公共団体などの防災関係機関にも受け入れられやすい、概ね都道府県ごとの66の予報区分により発表されている。○地震発生から津波予報が発表されるまでの流れ津波予報津波の到達が予測される地域、津波の高さの規模(3段階)の予報。日本近海で地震が発生した場合、地震発生後約3分で発表する。津波情報予測される津波の高さの詳細(8段階)及び津波の予想到達時刻、あるいは実際に観測された津波の高さ・時刻等についての情報。○津波予報の種類、解説、発表される津波の高さ
第8節 特殊災害対策等[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成12年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故(以下「ガス事故」という。)で消防機関が出場したものの総件数は、1,519件(対前年比26件増)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが946件(同11件増)、液化石油ガスに係るものが573件(同15件増)となっている。ア 事故の態様別発生件数 事故を態様別にみると、漏えい事故が1,227件(ガス事故全体の80.8%)、爆発・火災事故が292件(同19.2%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が850件(都市ガス事故全体の89.9%)、爆発・火災事故が96件(同10.1%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が377件(液化石油ガス事故全体の65.8%)、爆発・火災事故が196件(同34.2%)となっている(第1-8-1図)。イ 事故の発生場所別発生件数 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが1,101件(ガス事故全体の72.5%)、ガス導管等消費先以外におけるものが418件(同27.5%)となっている(第1-8-2図)。 消費先において発生した事故を、発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等発生原因が消費者に係る場合が622件(消費先において発生した事故全体の56.5%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が223件(同20.3%)、その他の原因が256件(同23.2%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が389件(都市ガス事故全体の63.6%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が118件(同19.3%)、その他の原因が105件(同17.1%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が233件(液化石油ガス事故全体の47.7%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が105件(同21.4%)、その他の原因が151件(同30.9%)となっている。
(2)事故による死傷者数 平成12年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は19人(対前年比6人減)、負傷者数は263人(同19人減)である。死者のうち、都市ガスによるものは11人(死者数全体の57.9%、対前年比5人減)、液化石油ガスによるものは8人(同42.1%、同1人減)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは102人(全体の38.8%、対前年比16人減)、液化石油ガスによるものは161人(同61.2%、同3人減)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが13人(死者数全体の68.4%)、爆発・火災事故によるものが6人(同31.6%)、負傷者数では漏えい事故によるものが85人(負傷者数全体の32.3%)、爆発・火災事故によるものが178人(同67.7%)となっている(第1-8-3図)。
(3)自損行為によるガス事故 平成12年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は87件(ガス事故全体の5.7%、対前年比26件減)、これらの事故による死者数は14人(同73.7%、同1人増)、負傷者数は63人(同24.0%、同25人減)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは70件(自損行為に起因する事故全体の80.5%、対前年比16件減)、爆発・火災事故に至ったものは17件(同19.5%、同10件減)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁はLPガス等に係る事業登録等を行った場合には消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約7割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成12年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は61件(対前年比3件減)で、火災が8件(同7件増)、漏えいが41件(同2件減)、それ以外のものが12件(同8件減)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、アンモニアが10件(全体の16.4%)、クロルピクリンが7件(同11.5%)、塩酸が6件(同9.8%)、硫酸が4件(同6.6%)、硫化水素が4件(同6.6%)、以下塩素等の順になっている(第1-8-4図)。
(2)事故による死傷者数 平成12年中の死者は10人(対前年比6人増)で、負傷者は160人(同70人増)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の2の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1-8-5図)。 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。 なお、消防庁では救助用資機材として防毒衣や防毒マスク等の整備を推進している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努めるとともに、立入検査等を通じて貯蔵・取扱いの安全対策について指導を徹底する必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく必要がある。
(3)装備・資機材の整備 有毒ガスの発生など特殊な状況下では、通常の消防装備・資機材では的確な消防活動を行うことが困難な場合があることから、防毒衣及び防毒マスク等の整備を推進する。
[原子力災害対策]1 原子力災害の現況と最近の動向(1)北海道電力株式会社泊発電所における救急事案ア 事故の概要 平成12年8月17日、北海道電力株式会社泊発電所(以下「泊発電所」という。)において、定期点検中、点検対象設備である放射性廃棄物処理建屋サンプタンク(以下「タンク」という。)内の清掃作業を15時20分頃から、順次交代で実施しており、3人目の作業員として16時25分頃から、C作業員がタンク内で作業を行っていたところ具合が悪くなったものである。このため、被災者のA作業員とB作業員の2人がタンクに入り、C作業員を押し上げようとしていたところ、16時40分頃に被災者のA作業員が縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、病院に搬送されたが、17時58分死亡確認された。 なお、具合が悪くなったC作業員は、その後回復している。イ 消防機関の活動 一般加入電話により消防本部へ事故の連絡があったが、詳しい情報提供がなされず、消防本部が事業者に問い合わせることにより、怪我人の発生及び若干の放射能汚染があることを覚知し、救急隊が出場したものである。ウ 情報提供状況(ア)通報段階における負傷者の汚染についての情報提供 消防署からの電話による状況聴取に基づき負傷者の汚染状況について情報提供が行われた。また、口頭による情報提供に併せてファクシミリによる汚染部位についての情報提供が行われるとともに、救急隊現場到着時、救急隊員にファクシミリと同様の情報提供が行われた。(イ)事業者(放射線管理員)からの除染状況についての情報提供 救急隊現場到着時、既に放射線管理員により測定が行われており、救急隊は「負傷者の除染を実施したが、まだ一部汚染している。汚染している箇所については他に汚染しないよう被覆している」との報告を受けている。しかし、病院において負傷者の死亡確認後、再度、全身の測定を行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には、当初、説明があったレベルより高い汚染が判明した。 このことについて、泊発電所によると、搬送時点では、すでに傷病者は仰向けの状態で心肺蘇生措置を受けていたことから、全ての部位の除染及び測定をすることはできなかったことが原因としており、人命を第一に考えた措置であったとしている。 なお、放射線管理員等により、救急搬送時負傷者に対し部分及び全身被覆を行っていたこと、さらに救急隊員は現着時泊発電所から防護服一式を貸与され、汚染防止を図ったために二次汚染はなかった。
(2)東海村ウラン加工施設における臨界事故ア 事故の概要 平成11年9月30日午前10時35分頃、茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設(転換試験棟)において、JCO従業員が核燃料サイクル開発機構の高速実験炉(常陽)の燃料に用いる硝酸ウラニル溶液の濃度を均一化するという作業で正規の手順を逸脱し、ステンレス容器でウラン粉末を溶解した上、臨界管理のための規定量が制限されている沈殿槽に規定量の2.4キログラムを超える約16.8キログラムの硝酸ウラニル溶液を入れたため、沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達する事故が発生した。臨界は、最初に瞬間的に大量の核分裂反応が起こり、その後、臨界状態停止まで約20時間にわたって核分裂状態が緩やかに継続した。 今回の事故によりJCOの敷地境界付近で平成11年9月30日午前11時36分から臨界終息まで測定された空間放射線量率は、ガンマ線が最大0.84mSv/h(ミリシーベルト/時)であった。中性子線については同日午後4時半以降測定され、最大4.5mSv/hであった。 また、硝酸ウラニル溶液を沈殿槽に注入する作業をしていたJCO従業員3人が放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事したJCO従業員を含む多数の者が被ばくした。イ 消防庁及び消防機関の活動 政府は、9月30日午後9時に内閣総理大臣を本部長とし、関係閣僚を構成員とする政府対策本部を設置した。 消防庁においては、現地からの通報を受け午後1時に「災害警戒連絡室」を設置した。その後「消防庁対策本部」に改組して体制を強化し、関係地方公共団体から災害状況及び市町村の対応状況に関する情報を集約して関係省庁等に提供した。また、茨城県、同県内市町村及び消防機関に対して、広報・避難、緊急搬送体制の確立を指示し、福島県に対して放射線防護資機材の提供準備を要請した。さらに、消防庁では政府の現地対策本部に審議官を派遣して、関係省庁とともに現地対策本部の体制・機能の強化を図った。 重篤な被ばく者3人については、東海村消防本部の救急車によって国立水戸病院へ搬送した後、茨城県防災ヘリコプター及び千葉市消防局の救急車によって科学技術庁放射線医学総合研究所へ搬送した。また、臨界停止に当たっては、ホウ酸水注入に消防車等を活用した。ウ 住民の避難等の状況 9月30日、午後3時に東海村村長は、JCO施設から半径350m圏内の住民に対して避難を要請した。茨城県知事は午後10時30分に半径10km圏内の住民に対して屋内退避を要請した。 10月1日、JCO従業員が、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等の協力を得て、沈殿槽の冷却水抜取り作業を実施した結果、敷地境界付近の中性子線量率が低下した。また、同社従業員が沈殿槽へホウ酸水を注入する作業を行った結果、原子力安全委員会において臨界状態は終息したと判断した。これらの結果を受けて茨城県知事は、午後4時30分に半径10km圏内の屋内退避要請を解除した。 10月2日、JCO従業員による事故発生現場の遮蔽作業及び半径350m圏内のモニタリング結果を受けて、東海村長が同圏内の避難要請を午後6時30分に解除した。
(3)その他の原子力事故 その他の原子力施設における最近の事故としては、平成7年12月8日に使用前検査中の核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「サイクル機構」という。))の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし火災となった事故、平成9年3月11日にサイクル機構の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故及び平成11年7月12日に日本原子力発電株式会社敦賀発電所2号炉において一次冷却系の再生熱交換器から冷却材が格納容器内に漏えいした事故がある。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、東海村ウラン加工施設における臨界事故等の教訓から原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等法令等の整備が行われた。 原災法においては、1) 初期対応の迅速化のための原子力事業者からの異常事態の通報義務付け及び内閣総理大臣の緊急事態宣言の発出2) 国、地方公共団体等の連携強化のためのオフサイトセンターの指定及び原子力災害合同対策協議会の設置3) 国の体制強化のため、原子力防災専門官を原子力事業所が所在する地域に配置4) 事業者の責務として、放射線測定設備の設置、原子力防災組織の設置及び災害応急措置の実施、原子力事業者防災業務計画の作成義務付け等が規定された。 また、原子炉等規制法の一部改正により、原子力事業者の保安規程の遵守状況についての定期検査制度の創設、従業者に対する教育義務を明確化するとともに、加工事業者に対しても施設面の定期検査制度が義務付けられた。 原子力安全委員会決定の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて改訂され、表題についても「原子力施設等の防災対策について」に変更された。これにより、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設も対象施設とされた(第1-8-6図、第1-8-7図)。さらに、平成13年6月には、臨界事故による被ばく患者に対する緊急被ばく医療の経験を踏まえ、緊急被ばく医療をより実効性があるものとするため、医療に携わる者の責務等の明確化を図るなどの改訂を行った。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画であり、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月関係地方公共団体に通知したところである。 これらを踏まえて、原子力施設等所在地等の21都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るよう、地域防災計画の見直しを進めているところである。
(4)消防活動の充実等 原子力施設所在市町村等に対して、同報系無線及び放射線防護資機材の整備のための補助を行うとともに、原子力施設等における消防活動用資機材の調査研究、原子力災害時における消防応援体制に関する検討を実施した。 また、原子力災害対策特別措置法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、各都道府県及び消防本部へ通知しているところである。 なお、原子力災害の研修として、平成12年度から消防大学校において、幹部職員を対象に「放射性物質災害講習会」を実施している。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、放射性同位元素(RI)の輸送については放射線障害防止法等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画は、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えを加えたところである。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において放射性物質輸送の事故時安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等について「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、各都道府県及び消防本部に通知しているところである。
3 原子力災害対策の課題 消防庁では、東海村ウラン加工施設における臨界事故等を教訓とし、原災法の制定、原子炉等規制法の改正及び防災基本計画原子力災害対策編の見直しが行われたことに伴い、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアル等を見直したところである。今後、さらに地域防災計画の作成又は見直しの推進、原子力施設等における消防活動対策マニュアルの活用、放射線防護資機材の整備及び教育の実施等原子力防災体制の充実を図ることが必要である。 また、原子力災害の特殊性に対応した救助資機材の開発及び原子力緊急事態を想定した実践的な防災訓練を引き続き実施するとともに、改訂された地域防災計画の実効性について検討していく必要がある。
整備が進む原子力災害対策用資機材 原子力施設において事故が発生した場合、放射線物質又は放射線の存在を五感で感じることはできず、被ばくの程度を自覚することができないという特殊性があるので、事故発生現場で消防活動を行うためには、放射線防護服、呼吸保護具、個人被ばく線量計など特殊な装備をもって対応する必要がある。そのためにも、消防機関として原子力災害に関する地域防災計画などの体制の整備を図り、先述の装備をあらかじめ用意しておくことが求められている。原子力災害に関して万全な体制を整備しておくことは、災害時の活動をスムーズにするものであり、放射能汚染の拡大を防ぐことができるものと考えられる。 平成11年9月、茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オーのウラン加工施設で臨界事故が発生したが、この事故を踏まえ、改めて原子力施設の安全・防災対策を抜本的に強化することが求められ、原子力災害に関する地域防災計画等の見直し、消防活動対策マニュアルの活用などが行われ、併せて放射線防護資機材の整備や教育なども行われてきている。平成13年4月1日現在で、市町村消防本部が装備している原子力災害対策用の資機材の数は、防護服が2万6,242着、呼吸保護具が4万5,819個、個人被ばく線量計が2万1,294台と、年々その整備は進んできているところであり、また、これら資機材を搭載した原子力災害対策車の整備も進んでいる。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成12年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成12年1月1日から平成12年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)126港における海上災害で消防機関が出動したものは70件あり、このうち火災によるものが29件(全体の41.4%)、油の流出によるものが16件(同22.9%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が54件で全体の77.1%を占めている(第1-8-1表)。 最近の主な船舶火災としては、平成8年4月9日に大阪港内に停泊中のパナマ船籍「エバートラスト号」のエンジン部分から出火し、死者1人、負傷者2人を出す火災が発生している。 また、油の流出災害としては、平成9年1月2日に日本海沿岸の各地に大きな被害を生じさせたロシア船籍タンカー「ナホトカ号」海難・流出油災害のほか、同年7月2日には東京湾においてパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」流出油災害が発生した。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 海上における油の大量流出事故に関しては、「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約」(略称OPRC条約)の締結に伴い、平成7年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正するとともに、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を策定(平成7年12月閣議決定)する等国内体制が整備され、関係省庁間の連携の強化が図られてきたが、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、油汚染事故発生時の即応体制等をより強化するため、平成9年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を改正するとともに、平成10年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正している。 また、平成9年6月に防災基本計画の海上災害対策編が示されたことに伴い、地域防災計画の見直しを含め、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めている。
[航空機災害対策]1 航空機の災害の現況と最近の動向 平成12年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は28件発生しており、そのうち飛行機事故は11件となっている。また、民間航空事故による死者は9人、負傷者は25人となっている(平成12年版 航空事故調査委員会事務局報による。)。 平成12年中に民間航空事故等で消防機関が消火救難活動を実施したものは5件となっている。なお、消防機関が出動したものは42件あり、このうち飛行場内が37件、飛行場外が5件となっている。 最近の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)や平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生している。
2 航空機災害対策の現況 航空機事故は、いったん発生すれば、大惨事を招来するおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が行われているが、消防庁では、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準、航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者、地方公共団体等関係機関に示し、航空機災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、化学消防ポンプ自動車の整備について国庫補助を行うなど、空港及びその周辺における消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成13年4月1日現在、空港所在市町村の90消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空機災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空機災害対策の課題 航空機事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においても、空港周辺地域での航空機災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、地上への出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、トンネル等における消火、避難設備等の設置の促進、トンネル等所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、特に長大トンネルの防災対策を取りまとめている。 道路トンネルに関しては、関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設の設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。平成12年中におけるトンネル火災は30件となっている(第1-8-8図)。 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や日本道路公団等と連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 比較的短い道路トンネルについては、非常用施設の設置基準が長大トンネルに比べて緩いものとされているが、消防隊員が活動の際、危険にさらされる事故も起きており、設置の基準と警防戦術の整合性、施設の運用方法等について検討を行っている。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、「臨時大深度地下利用調査会設置法」に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が公布され、平成13年4月1日に施行された。 平成13年5月、6月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、大深度地下使用協議会が開催され、消防庁の要請により、今後、具体的な事業計画が出されたときには、当該計画に関係する消防機関が協議会や幹事会に参加することとなった。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、消防活動や救助活動が従来の施設と比較して困難さが増すことが予想されている。 今後、具体的な大深度地下を利用した事業計画が出された場合には、現状で考えられる各種の対策に加え、より高度な安全確保対策について検討することが必要である。
[ロシア宇宙ステーション「ミール」軌道離脱計画対策]1 「ミール」の軌道離脱計画 宇宙ステーション「ミール」とは、ロシア(旧ソ連)が建設した有人宇宙ステーションで、1986年に打ち上げられ、1994年から1995年にかけて、437日という宇宙飛行士の宇宙空間連続滞在最長記録を樹立し、2000年6月からは無人で飛行していたが、老朽化に伴い、「ミール」を南太平洋上に廃棄しようというのが、ロシア政府の軌道離脱計画である。
2 予測された日本への影響 計画によれば、「ミール」の本体の3分の2は大気圏で燃え尽きるが、ドッキング装置、エンジン関係部品、姿勢制御装置等の一部が燃え尽きずに海面まで到達すると予想され、これらの落下物の総量は20〜25t、個々の破片の重量は小さいもので500gから大きいもので700kgとされており、破片の個数は最大で1,500個程度になる可能性があるが、100kgを超えるものはごく一部であるとされていた。 文部科学省は、軌道離脱計画の成功率がロシア政府の発表どおり97〜98%だとすると日本の居住者に影響を与える確率は約1億分の1と試算し、極めて低いものと評価していた。したがって、本計画は我が国にとって基本的に安全なものであると認識されていたが、政府としては万が一の事態への備えとして、関係省庁による連絡体制を整えるなど、万全の体制をとることとした。 なお、今回、「ミール」の軌道離脱計画は予定どおり遂行され、我が国への影響はなかった。
3 消防庁の対応 関係各機関から得た情報を随時各都道府県に通知し、緊急時の連絡・情報収集体制の確保、市町村等への周知徹底を呼びかけるとともに、軌道離脱計画遂行予定日である平成13年3月23日においては、次のような対応を行った。○ 7時40分 内閣府及び内閣官房が8時に官邸別館内に設置する関係省庁間の情報連絡体制に対応するため、特殊災害室に「災害対策室」を設置し、各都道府県との間の情報連絡体制を確保○ 7時45分 官邸別館に情報連絡等の任務のための職員1人を派遣  計画が遂行されるまで、官邸別館からの情報を随時各都道府県に対して通知○ 16時38分 16時の内閣官房長官定例記者会見におけるロシア宇宙ステーション「ミール」の軌道離脱計画に関する状況等についての発表に伴い、各都道府県に対して「ミール」に関する緊急時の連絡・情報収集体制の解除を通知 同時に、特殊災害室に設置していた「災害対策室」を廃止
4 各都道府県の対応 各都道府県では、緊急時の連絡・情報収集体制を確保するとともに、市町村等への情報の伝達体制を確立し、計画遂行日の3月23日においては、次のような対応を行った。 ○ 消防庁との情報連絡体制の確保 ○ 消防庁からの情報を随時市町村等へ伝達 ○ 消防庁から緊急時の連絡・情報収集体制解除の通知を受け、同体制を解除し、その旨を市町村等へ伝達 また、上記以外に、次のような対応をとり、緊急事態の発生に万全の体制を整えた都道府県もあった。 ○ 宿日直体制の強化 ○ 関係職員の待機体制の確保 ○ 関係部局連絡会議の開催 ○ 災害対策連絡室の設置 ○ 住民に対するミール対応窓口の設置 ○ 知事コメントの発表 ○ ミールに関するホームページのアドレスを周知 ○ マスコミへの情報提供
第2章 消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 平成13年4月1日現在の常備消防機関の現況は、消防本部が904本部、消防署が1,687署、出張所が3,225所、消防職員が15万3,952人となっている。 前年と比較すると、広域再編が進められたこと等により3本部減少し、消防署は5署増加し、消防職員は513人増加している(第2-1-1表、第2-1-1図)。消防職員のうち、女性職員は2,476人(前年比95人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 現在の市町村における消防体制は、大別して、1)消防本部及び消防署のいわゆる常備消防と消防団とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、2)消防団のみが存する地域(いわゆる非常備町村)が ある。 「消防本部及び消防署を置かなければならない市町村を定める政令」により、市はすべて消防本部及び消防署の設置が義務付けられており、町村については、総務大臣が当該町村の人口、態容、気象条件等を考慮して指定したものについて同様の義務が生じることとされている。 平成13年4月1日現在、常備化市町村は、3,163市町村(うち4町村については政令指定による義務付けのない任意実施町村である。)となり、常備化率は市町村数で98.0%(市は100%、町村は97.5%)に達し、人口の99.8%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。イ 広域化の状況 市町村は、当該市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有する。しかし、消防の常備化のために常勤の消防職員を雇用し、消防署、消防ポンプ自動車、救急自動車等の施設・設備を整備・維持することは、単独の市町村では財政面等で困難な場合が多い。そこで、昭和40年代以降、消防体制の広域化が進められてきた。 消防体制の広域化は、従来、主に地方自治法の規定に基づく地方公共団体の組合(第284条第1項)又は事務の委託(第252条の14第1項)の方式により進められてきた。 地方公共団体の組合による消防体制の広域化は、消防事務を2以上の市町村で共同処理するために組合を設立するものであり、本部数は平成13年4月1日現在、475本部(うち、広域連合は14本部)に達しており、その構成市町村数2,532市町村(319市、1,727町、486村)は常備化市町村全体の80.1%に相当する。 事務の委託による消防体制の広域化は、消防事務を他の市町村に委託して処理する方式であり、比較的大きな都市に対し、隣接市町村が委託する形が一般的である。平成13年4月1日現在、事務委託市町村数は202市町村(24市、140町、38村)に達している。 なお、2以上の市町村を1の市町村に合併することにより、より効果的に消防体制の広域化を進めようとする例もみられ、平成6年度以降市町村合併により7本部が3本部に再編されている。
(2)消防団 常備化が進展してきた今日においても、地域の消防防災に果たす消防団の役割は依然として重要である。 消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っている。常備市町村においても初期消火、残火処理等を行っているほか、大規模災害時には、災害防ぎょのため多数の要員を必要とすることから、多数の消防団員が活躍している。 さらに、平常時の活動として、住民への防火指導、巡回広報、特別警戒、応急手当指導等の活動を行っており、地域の消防防災の要となっている。 平成13年4月1日現在、消防団は3,636団、消防団員は94万4,134人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設けられている。団員数は減少傾向にあり、10年前の平成3年4月1日現在に比べ4万7,432人(4.8%)減少している。この間、女性消防団員数は、8,120人増えて1万776人となっている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が35.9%を占め、また、平均年齢は36.9歳となっている(第2-1-2図)。
2 消防施設(1)消防車両等の設備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、救急自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2-1-2表)。
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が74.5%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は24.4%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2-1- 3表)。
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、火災報知機、消防電話及び消防・救急無線電話等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話は、加入電話又は公衆電話によって消防機関に火災、救急、その他の災害の発生等を通報するもので、平成13年4月1日現在、全国の消防機関に1万4,117回線が設置され、平成11年まで逐年増加している(第2-1-3図)。 また、近年では、携帯電話(自動車電話・PHSを含む。)の著しい普及に伴い、携帯電話による119番通報の件数が急速に増加している。現在、携帯電話からの119番通報は、一部復唱方式を採用している消防本部を除き、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認の上で、当該区域を管轄する消防本部に転送することにより、通報者と当該消防本部とが直接通話可能となる転送方式をとっている。今後、消防庁、消防機関、通信事業者等の関係機関で協議し、転送方式によらず、通報者が発信した位置を管轄する消防本部へ直接通報できるようシステムの整備を図る必要がある。 さらに今後は、携帯電話に限らず衛星電話やCATVを利用した電話など、住民からの119番通報手段も多様化されることから、これらの新たな通報手段に対応していく必要がある。イ 消防緊急通信網 消防電話は、消防本部・消防署等の消防機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話であり、消防機関相互の連絡に大きな役割を果たしている。また、消防・救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な施設である。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するため、消防機関は、特に消防・救急無線の増強に努めており、使用機材についても高性能化が進められている。また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビ電送システム等、高度な機能を持った各種消防通信施設を導入する消防機関も徐々に増えている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成11年度の消防費歳出決算額は1兆8,736億円(前年度1兆9,012億円)で、前年度に比べ276億円(1.5%)の減少となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額54兆181億円(前年度52兆3,806億円)に占める消防費決算額の割合は3.5%(同3.6%)となっている(第2-1-4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成11年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万9,864円(前年度4万614円)であり、住民1人当たりでは1万4,870円(同1万5,106円)となっている(第2-1-4表)。ウ 経費の性質別内訳 平成11年度消防費決算額1兆8,736億円の性質別内訳は、人件費1兆3,937億円(全体の74.4%、前年度72.6%)、物件費1,588億円(同8.5%、同8.5%)、普通建設事業費2,449億円(同13.1%、同14.9%)、その他761億円(同4.1%、同3.9%)となっている。 これを前年度と比較すると、物件費で31億円(1.9%)、普通建設事業費で389億円(13.7%)減少しているが、人件費は127億円(0.9%)増加している(第2-1-5表)。
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成11年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,780億円(全体の89.6%、前年度88.2%)、次いで地方債1,294億円(同6.9%、同8.2%)、国庫補助金220億円(同1.2%、同1.2%)となっている(第2-1-6表)。イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、逐年増加している(第2-1-7表)。平成12年度の単位費用は1万600円(当初算定。対前年度伸び率1.0%)、基準財政需要額は1兆7,312億円(同1.2%)であったが、平成13年度は、消防本部における情報基盤整備を推進するため、消防情報化推進対策に要する経費が新たに算入されたほか、救急隊員の医療行為の質の向上・維持等を図るため、医療機関連携対策経費が充実されるとともに、消防団の活性化に資するため、団員報酬及び出動手当等が引き上げられたこと等により、単位費用は1万700円(同0.9%)に引き上げられ、基準財政需要額は1兆7,383億円(同0.4%)に増加している。ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがある。国は、消防施設強化促進法による補助及び予算補助により、市町村等(一部都道府県を含む。以下同じ。)の消防防災施設等の整備について、補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の引上げが規定されているものがある。人口急増地域の市町村に対しては2分の1又は10分の4、地震防災対策強化地域の市町村、地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村及び石油コンビナート等所在市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村に対しては10分の5.5、新東京国際空港周辺地域の市に対しては10分の6、町村に対しては3分の2、沖縄県の市町村に対しては3分の2以内の補助を行っている。また、平成13年度からは、原子力発電施設等立地地域として指定された市町村に対しては10分の5.5以内の補助を行うこととしている。 最近の国庫補助金による整備状況をみると、基本的な消防施設等である消防ポンプ自動車や防火水槽、耐震性貯水槽等の整備が進展するとともに、緊急消防援助隊が使用する救助工作車や救急自動車等の整備が進んでいる。 市町村等に対する国庫補助金予算額については、平成13年度においては財政構造改革法は凍結しつつも、同法上の区分としてのいわゆる「その他の補助金等」について、前年度に引き続き1割削減すること等とされたところであるが、緊急消防援助隊関係の施設及び設備について内容の拡充と大幅な増加を図ることなどにより、総額では、前年度に比べて0.7%増の190億6万円(前年度188億6,969万円)としている。 また、平成13年度の補助金においては、国庫補助金の整理合理化の一環として、消防広域化推進事業等の補助基準額の引上げや補助対象メニューの整理を行った。エ 地方債 消防防災施設等整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成11年度地方債許可額は、1,227億2,100万円で前年度に比べ256億7,000万円(17.3%)の減少となっている(第2-1-8表)。 なお、昭和61年度から地域の特性に応じた災害に強い安全なまちづくりを積極的に推進し、住民生活の安全を確保するとともに、地域社会における消防防災基盤の整備の推進を図るため、防災まちづくり事業を実施している。防災まちづくり事業に要する経費については、地域総合整備事業債(特別分・一般分)の発行が認められ、特別分の元利償還金については、地方交付税措置が講じられている。主な対象事業例としては、防災センター、コミュニティ消防センター、防災資機材地域備蓄施設、防火水槽、小型動力ポンプ、防災無線施設、消防緊急情報システム、災害時要援護者消防緊急通報システムモデル事業等の消防防災施設整備、避難路(防災車両の進入のための道路を含む。)、避難地及び避難休憩施設の防災基盤整備並びに震災対策特別事業として拠点避難地整備、地域防災無線設備、ヘリコプター離着陸場の整備及び災害情報システム整備がある。 さらに、平成7年度からは、消防広域化の推進を図るため、消防の広域再編を行う市町村が住民に対する消防・防災の啓発等に使用する施設を消防庁舎と一体的に整備する事業等を対象としている。 また、平成7年度には緊急防災基盤整備事業を創設し、防災基盤の整備を推進している。この事業を活用して行う事業に要する経費に充てるために発行した地方債についても、元利償還金に対する地方交付税措置が講じられている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地促進対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺整備助成補助金等がある。
(3)都道府県の消防防災費 都道府県の消防防災費の状況をみると、平成11年度における歳出決算額は1,276億5,200万円であり、平成11年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.24%である(第2-1-9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防等に要する事務費等である。 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成11年度における補助金の決算額は92億4,400万円で、前年度に比べて16億800万円(14.8%)減少している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に国庫補助に準じて定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は1億6,400万円で、前年度に比べて2億6,700万円(61.9%)減少している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成13年度の予算額は、前年度より8.3%減の243億1,206万円となっている(第2-1-10表)。 総額のうち190億6万円(対前年度比0.7%増)は、消防防災施設整備費補助金、市町村消防施設整備費補助金、消防防災設備整備費補助金及び市町村消防設備整備費補助金に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点的整備ア 消防の広域再編の推進 最近の急激な高齢化社会の進行等の地域社会の変化に伴い消防需要は大きく変化しており、救急業務の高度化の要請が高まってきているほか、建築物の高層化、危険物施設の多様化等に伴う災害の複雑多様化に対応して、はしご付消防自動車や化学消防自動車等高度な設備の一層の整備充実等が必要となってきている。 市町村は、これらの新たな消防需要に対応した消防体制の一層の整備充実を図り、全国いずれの地域においても等しく生活の安全が確保されるよう、住民の期待と信頼に応えられる高度な消防サービスを提供していかなければならない。 しかしながら、全国の消防本部の組織体制は、消防本部により大きな差異があり、管轄人口規模でみても5万人未満のものから100万人以上のものまで極めて多様であり、中でも管轄人口10万人未満の小規模消防本部が全体の約3分の2を占めている現状にある。 これらの小規模消防本部の場合、一般に財政基盤や人員、施設装備の面で十分でなく、今後これらの消防需要に十分対応できるようにするため、小規模消防本部の広域再編など組織面での消防の対応力の強化方策を推進することが必要である。 都道府県においては、関係市町村間の連絡協調を図り、計画的に県内の小規模消防本部の広域再編を推進するとともに、組合消防本部の人事、財政面での運用改善を促進するなど、消防の対応力強化に向け、積極的な役割を果たすことが期待される。このため各都道府県においては、消防広域化基本計画を策定し、これに基づき各市町村において消防の広域化に向けた取組みが進められている。 消防庁においては、平成6年度から先導的に消防の広域再編を図ろうとする市町村等をモデル広域消防として指定し、支援を行うなどした結果、平成13年4月1日までに全国で30の圏域において消防の広域再編が実施された。 これまで消防の広域再編は、主として一部事務組合等広域行政制度の活用により実施されてきたが、近年、市町村合併が推進されており、小規模消防本部の広域再編は市町村合併の手法によることが効果的であることから、消防庁において、平成13年3月に「消防広域化基本計画の見直しに関する指針」を策定した。これにより都道府県において策定されている消防広域化基本計画を見直すよう要請し、今後は、市町村合併との整合性を確保しながら消防の広域再編を推進することとしている。 また、広域再編を実施しようとする市町村等のうち、市町村合併との整合性が確保されていることなど、一定の要件を満たしたものを広域化重点支援消防として指定し、補助金の優先配分をはじめとする各種の財政支援措置を講じ、消防力の整備を重点的に支援することとしている。イ 消防力の整備 近年の都市化の進展による地域生活環境の変化や、これに伴う消防に対するニーズの増大、多様化等は消防力の整備のあり方に大きな影響を及ぼしてきている。消防機関としてこれらに適切に対応し、消防施設及び人員の効率的、重点的な整備充実に配慮しつつ消防力の整備を一層進める必要がある。 市町村が必要な消防施設及び人員を整備するに当たっては、消防庁が「消防力の基準」及び「消防水利の基準」を示しており、これらを指針として、当該市町村における市街地の人口、都市構造、中高層建築物の状況、危険物施設の数、過去の火災発生状況等の地域の実情を考慮して当該市町村がその水準を決定することとなる。 消防力の基準については、昭和36年の制定以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきたが、近年の都市構造の変化、消防需要の変化、さらには地方分権の動きに対応し、市町村の自主性を尊重した、より実態に即した基準に見直す必要が生じた。こうしたことから、平成11年3月に消防審議会より見直しの答申がなされ、消防庁では平成12年1月に基準の全部改正を行った。 主な改正点としては、1)市街地に該当しない地域の消防需要に対処するための署所の設置の規定化、2)救急自動車の配置基準台数の増加、3)消防車両について、通常時に運用する車両と非常時(大規模災害等)に運用する車両の整理、4)2台の消防ポンプ自動車の連携(ペア運用)、複数の消防車両の乗り換え運用による効率的な人員配置の規定化、5)消防団について、市街地における常備消防と一体となった消防力の明確化、6)消防団の業務について、消火や火災の予防等に加え、組織力の必要な地震、風水害等の災害の防除等や地域住民に対する啓発等を明記したこと、等である。 改正後の消防力の基準を踏まえ、各市町村においては、地域の実情を考慮して整備すべき消防力の水準を定め、これに基づいて消防施設等の整備を進めることとなる。 消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車等の消防設備については、これまで、逐年その整備が進められてきているが、消防本部によってその取組みに差異も見受けられるところであり、今後、必要な施設の整備を推進していく必要がある。また、消防力の基幹をなす人員についてみると、消防職員は、平成13年4月1日現在で15万3,952人となっており、その充実強化が図られてきているが、今後とも、地域の実情に即して、一層効果的、重点的な人員配置と機動力の強化に努めるとともに、災害の複雑多様化に対応した教育訓練を更に充実し、消防職員の資質の向上を図る必要がある。 消防団員は、平成13年4月1日現在で94万4,134人となっており、団員数は現在なお減少の傾向にある。消防団は、常備消防と並んで地域社会における消防防災の中核であり、また、地域連帯の要であることから、今後とも消防団の機動力の強化、装備の充実及び団員の資質向上に努めることが必要である。また、平成12年1月の消防力の基準の全部改正により、組織力の必要な大規模災害時における災害防除活動や平常時における地域住民に対する啓発等が消防団の業務として明示されたところであり、地域社会への広報活動や交流活動の活発化により消防団活動への参加を一層促進し、消防団の充実強化を図る必要がある。 一方、消防水利の基準を指針として整備が進められている消防水利については、自然水利を積極的に活用するとともに、大規模地震対策等の観点から防火水槽や大型の耐震性貯水槽の設置を促進することが必要であり、これらと消火栓を適切に組み合わせて設置することにより、水利の多元化を一層促進する必要がある。ウ 消防財源の強化 消防力は逐年強化されているものの、大規模化、複雑多様化している災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実強化の基礎となる消防財源については、地方交付税における消防費の基準財政需要額を逐年増額するとともに、国庫補助金の確保等なお一層その充実を図っていく必要がある。
(2)消防職団員の処遇 消防職団員の処遇は、消防業務の性格を十分考慮したものでなければならず、このためには勤務条件の改善はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、その改善を積極的に図る必要がある。 消防職員の処遇については、特に交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、所要の人員の確保及び勤務体制の整備を図るとともに、1)給料、手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、2)仮眠室、食堂等の施設の整備等執務環境の改善を促進すること、3)消防活動時の防護性を高めるため安全装備品(防火衣、防火靴等)の充実強化を図ること、4)安全衛生管理体制の整備を図り、事故防止と健康管理に努めていくことを中心として、常に配慮する必要がある。 消防団員については、従来から、報酬、出動手当、公務災害補償、賞じゅつ金、退職報償金等の充実及び叙勲、各種表彰等の拡充などの諸施策を講じてきているが、消防団員は、自らの手で災害から郷土を守るため献身的な活動を行っていることにかんがみ、今後ともこの労苦にできる限り報いるよう引き続き処遇の改善を図っていく必要がある。 なお、消防吏員の服制の基準及び消防団員の服制の基準については、いずれも最終改正から10年以上が経過しており、時代の要請に必ずしも沿っていない状況が生じていた。このため、消防吏員及び消防団員の士気高揚、秩序ある組織的活動の確保等の観点から、制服及び作業服を中心に基準の見直しを行い、新たな基準を平成13年4月1日から施行した。
消防吏員・消防団員の新しい服制 消防吏員の服制基準と消防団員の服制基準については、いずれの基準についても最終改正から10年以上が経過しており、女性消防吏員を念頭においた服制となっていないなど、時代の要請に必ずしも沿っていない状況が生じていた。 このため、制服及び作業服を中心に、消防吏員及び消防団員の士気高揚、秩序ある組織的活動の確保等の観点から、基準の見直しを行い、平成13年4月1日から新たな基準を施行した。  見直しのポイントは次のとおりである。○全国統一すべき事項と各団体の裁量範囲の明確化  服制についての一定の統一感を保ちつつ、各地域において気候風土や消防活動の実態等にあった服制を取り入れられるようにした。○「消防」の象徴性の確保  住民等に「消防」と識別しやすい服制とし、また、警察や自衛隊等との区別を図る観点から、オレンジ色を使用することとした。○消防吏員と消防団員の統一感の確保と区別化  消防吏員と消防団員については、いずれも消防機関に属するものであることから統一感を確保する一方で、指揮命令や識別を容易にする必要があること、権限に相違があること等から区別化を図った。
(3)消防職員の高齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成12年4月1日現在、40.5歳と一般行政職の41.8歳よりやや低いものの、年齢構成は、40歳代の職員が全体の4割近くを占めていることから、今後ますます高齢化していくことが予想されるところであり、今後の消防力の適切な水準を確保していくために検討すべき課題は多い。 また、平成11年の地方公務員法等の一部改正により、新たな再任用制度が導入されることとなった。 これらを受け、消防機関においても、1)消防装備の軽量化・動力化・安全化、2)職員の高齢化に対応する消防部隊の編成、消防戦術の検討、3)体力錬成の計画的な実施、4)職員の能力開発、適正な人事配置、市町村長部局との人事交流への取組み等、総合的な対策を推進し、活力ある消防組織体制を確立する必要がある。
(4)消防団の充実強化対策の推進 消防団は、阪神・淡路大震災をはじめとする近年発生した大規模災害におけるめざましい活躍でも示されたとおり、消火活動のみならず、地震や風水害等多数の動員を必要とする大規模災害時の救助救出活動、避難誘導、災害防ぎょ活動など非常に重要な役割を果たしているとともに、平常時においても、住民への防火指導、巡回広報、特別警戒、応急手当指導等、地域に密着した活動を展開しており、地域における消防力・防災力の向上、地域コミュニティの活性化に大きな役割を果たしている。 一方、都市化による住民の連帯意識の希薄化の傾向、過疎地域における若年層の減少、就業形態の変化等、近年の社会経済情勢の変化の影響を受けて、団員数の減少、サラリーマン団員の増加等の課題に直面しており、消防団の充実強化を一層推進することが喫緊の課題となっている。 このため、平成12年度においては、以下の措置を講じている。ア 消防団の施設・装備の充実強化 地域における消防団の活動拠点となる施設に対して補助を行う「消防団拠点施設等整備事業」、無線機器や安全装備品等の消防団に必要な設備の総合的な整備に対して補助を行う「消防団活性化総合整備事業」を実施している。イ 消防団への青年層・女性層の加入の促進 消防団啓発ポスターの作成・配布や政府提供のテレビ・ラジオ番組、インターネット等の各種広報媒体を通じた消防団活動のPR等により、青年層・女性層の消防団への参加の呼びかけに努めている。ウ 消防団の直面している課題及び取組み状況の把握と情報提供 全国の消防団がそれぞれの地域社会において直面している課題及びこれらに対する取組み事例を調査し、その結果を全国の消防団に対して提供している。エ 消防団員の処遇の改善 消防団員の報酬や出動手当等に対する財政措置、退職報償金制度の充実を図った。 今後も地域における消防団活動の一層の充実を図るため、青年層・女性層の消防団活動への積極的な参加の促進及び消防団活動の安全の確保に努めるとともに、消防団員の処遇改善を一層進める等、引き続き消防団の充実強化を推進していく必要がある。
大規模災害時における消防団活動例 平成12年は、北海道有珠山及び三宅島の噴火、東海地方の集中豪雨、鳥取県西部地震、そして平成13年3月の広島県安芸灘を震源とする芸予地震と大規模災害が相次いだ。これらの災害において、地元消防団は消防本部と連携し、昼夜を問わない献身的な消防活動を行い、被害を最小限なものとしている。 芸予地震では、地震発生後、地元消防団員がいち早く瓦礫の排除や一人暮らし高齢者の安否の確認を行った。さらに、地区住民への避難誘導や避難確認、崩落危険のある地域の警戒及び崩落対策としてのビニールシート張り、管轄区域内の被害状況調査及び道路状況調査、倒壊家屋の復旧作業等を行い、安全対策の徹底を図るとともに、断水地区への広報及び住民への生活水の給水等の活動を行い住民生活の安定に貢献した。 また、この地震により、屋根に損害を受けた高齢者の家屋の修繕を手伝うなどの活動も行った。 このように、消防団の活動は災害防ぎょのみならず、安心した住民生活を送る上で精神的な支えとなっており、住民から大きな信頼を得ている。
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成12年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。ただし救急業務を除く。)への出動回数は85万9,984回で、出動延人員は953万1,717人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,356回、37秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は26万985回、出動延人員は515万4,596人となっている(第2-2-1表)。
(2)消防団員の活動状況 消防団は、消防本部・消防署が置かれていない非常備町村にあっては消防活動を全面的に担っているほか、常備化市町村においても初期消火、延焼防止、残火処理等を行っている。また、多数の動員を必要とする大規模災害時においては、多くの消防団員が出動している。 平成12年においては、有珠山や三宅島の噴火、東海地方における集中豪雨、鳥取県西部地震等の災害において、自宅が被災した団員もいる中で、延べ4万人以上の消防団員が出動し、住民の避難誘導、危険箇所等の警戒巡視、行方不明者の捜索、土のう積み等の活動を不眠不休で行い、被害の拡大を防いだ。これらの果敢な活動の支えとなったのが、日頃の訓練と自分たちの地域は自分たちで守るという郷土愛護の精神であり、一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、住民から高く賞賛された。消防庁としても消防庁長官表彰(防災功労)を行い、その功績を称えた。 また、平成13年においても、芸予地震などの大規模な災害に対し、住民の避難誘導や危険箇所の巡回、復旧作業、被害調査、住民への給水活動等、積極的な活動を展開している。 一方、平常時の活動としては、災害時に備えた訓練を行うほか、団員の持つ豊富な知識・経験・資格を活かした応急手当、無線等の講習会や住宅の防火指導の実施、広報紙の発行など、地域に密着した消防団として、各地で活発な取組みが行われている。また、女性消防団員の参加も増加傾向にあり、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及など、女性の優しさや細かな配慮などを活かして活躍している。このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして重要な役割を担っている。
活躍する女性消防団員 女性消防団員は、農山漁村等で男性消防団員の不在から生じる消防防災体制の低下を防ぐため、男性に代わって消防の任に携わる必要から生まれた。 その後、社会環境の変化に伴い、女性の特性を活かすとともに消防団の組織の活性化と時代のニーズに応える方策としての女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まり、女性の消防団への参加意欲も高まっている。 こうした動きの中、消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加し、平成13年4月1日現在、1万776人(全体の1.1%)、女性消防団員を採用する消防団は805団(全体の22.1%)と全都道府県に及んでいる。 女性消防団員は、通常の災害対応のほか、一般家庭の防火指導、一人暮らし高齢者宅の防火訪問及び応急手当指導等において女性の特性を活かした活動により大きな成果を挙げている。 例えば、静岡県裾野市消防団では20人の女性消防分団が、一人暮らし高齢者宅の防火訪問、市民への応急手当指導等にきめ細かい活動を行っているほか、一日郵便局長を務め消防団のPRを図るなどの活動を行っており、今後一層の活躍が期待されている。
2 公務災害の状況 消防職団員は職務の特殊性から、生命の危険を顧みず身をていして職務遂行に当たらなければならないときがあり、そのため不幸にしてその職に殉じ、あるいは負傷する場合も生ずる。 平成12年中における火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡した消防職団員は13人、同じく負傷したものは2,742人である。前年に比べて殉職者は3人減少し、負傷者は201人増加している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが36.7%と最も多く、次いで火災によるものが25.8%、救急によるものが8.6%となっている(第2−2−2表)。
3 安全衛生体制の整備 消防には、その業務の性格から労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付けた規定は適用されないものの、消防庁では公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実にかつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程の案」、「訓練時における安全管理に関する要綱の案」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、消防本部の安全管理体制の整備の促進と事故防止の徹底を図っている。 また、消防の衛生管理については、労働安全衛生法の規定が適用されるが、消防職員の勤務体制や職務内容からして、職員の健康管理には特に配慮する必要があるため、消防庁としては、「消防における衛生管理に関する規程の案」を示すなど、衛生管理体制の整備の徹底を図っているところである。
4 勤務条件等(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならないが、具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件については、市町村(複数の市町村で構成する組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防本部において現に採用されている給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二つがあるが、行政職給料表を採用している団体では、号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けする等の優遇措置を講じているところが多い。 消防職員の平均給料月額は、平成12年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢40.5歳で34万3,514円であり、一般行政職員の場合は平均年齢41.8歳で35万3,931円となっている。なお、平成10年地方公務員給与実態調査による平均昇級間差額を用いて、消防職員の平均年齢40.5歳を一般行政職員の平均年齢41.8歳に置き換えた場合の平均給料月額は、35万1,815円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が10万7,128円であり、一般行政職員は8万4,830円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は、2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成13年4月1日現在全国904消防本部中、2部制を採用している消防本部は679本部(75.1%)、3部制を採用している消防本部は168本部(18.6%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部も57本部(6.3%)ある。 完全週休二日制については、消防職員についても、一般行政職員への完全週休二日制の実施状況を勘案しつつ、順次実施が進められた。なお、週40時間勤務制へは、一般行政職員と同様平成6年4月1日に移行した。ウ 勤務条件の改善 消防職員の勤務条件については、これまでも処遇改善の措置が講じられてきたが、社会経済情勢の著しい変化の中で業務内容も複雑多様化しており、これに即応し、勤務の特殊性や職務の危険性の実態に配慮しつつ適切な改善がなされるよう引き続き検討を進めている。エ 消防職員委員会 消防職員委員会は、1)消防職員の勤務条件及び厚生福利、2)消防職員の被服及び装備品、3)消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としており、平成8年10月1日から制度が施行された。 平成9年4月1日までに、すべての消防本部において、消防職員委員会に関する市町村の規則が制定され、消防職員委員会が設置されており、平成12年度までの消防職員委員会における審議案件は3万件を超えるに至っている。消防職員委員会制度は、消防職員の意志疎通を図り、職員の意見を消防事務に反映しやすくすることにより、消防事務の円滑な運営に資することを目的として設けられているものであるので、委員会がその趣旨に沿って適切に運営されるよう努める必要がある。オ 公務災害補償 消防職員は、公務により災害を受けた場合、地方公務員災害補償法の規定に基づき、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償並びに休業援護金等の福祉に関して必要な給付等を受けることができる。 また、消防吏員が身体に対し高度の危険が予測される状況下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 平成12年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数は、消防職員について1,961件であり、職員1,000人当たりの受理件数は12.8件となっている。警察職員は19.6件である。
(2)消防団員の処遇改善ア 報酬・出動手当 非常勤の消防団員は特別職の地方公務員であり、市町村は条例に基づきこれらの消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給することとなっている。その支給額、支給方法は、市町村の財政事情や地域の特殊事情に基づく団運営の相違により、必ずしも同一ではないが、支給額の極めて低い市町村に対しては、支給額の引上げ等の適正化を図るよう要請している。 なお、平成13年度においては、地方交付税の単位費用の積算に当たって、団員の報酬、出動手当等について改善措置が講じられた(第2-2-3表)。イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況の下で遂行されるため、消防団員が公務により死傷する事例は決して少なくない(第2-2-4表)。消防組織法第15条の7の規定により、市町村は、非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。 なお、消防団員が身体に対し高度の危険が予想される状況のもとにおいて消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 公務災害補償については、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定の基礎となる補償基礎額について、逐次その充実が図られている(第2-2-5表)。 火災、風水害等における民間の消防協力者等の死傷者に対しても、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている(第2-2-6表)。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、療養生活の援護、介護の援護、就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で13万6,000円、勤務年数30年以上の団長で92万1,000円となっている(第2-2-7表)。オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に非常勤消防団員等に係る損害補償の基準を定める政令が制定されるとともに、市町村の支給責任の共済制度として、同年消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、非常勤消防団員の退職報償金の支払についても消防基金の共済制度が確立し、さらに、昭和47年には、消防基金による福祉事業(平成7年7月までは「福祉施設」)の制度が確立した。また、昭和58年度からは消防協力者等に係る消防基金の支払額について、従前、市町村の支給額の2分の1であったものが全額となった。 平成13年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償等責任共済契約を締結している関係市町村の数は、2,949市町村(契約対象市町村の91.3%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、3,222市町村(契約対象市町村の100%)となっている。 消防基金の平成12年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,936人に対し、16億2,659万円となっている(第2-2-8表)。また、福祉事業の支給額は、延べ1,116人に対し4億9,916万円となっている。 消防基金の平成12年度の退職報償金の支給額は、5万8,654人に対し168億7,246万円となっている。 なお、市町村の消防基金又は指定法人に対する掛金については、普通交付税の単位費用に算入されている。カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が平成13年に改正され、同年7月4日に公布、平成14年4月1日に施行されることとされた。この改正により消防団員等公務災害補償等共済基金は、消防団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に見舞金を支給する事業を実施することとなっている。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在国が行っている表彰等は次のとおりである(第2-2-9表)。○ 叙位、叙勲及び褒章 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。<叙位>     死亡者が対象<叙勲>・死亡叙勲    死亡者が対象・特別叙勲    殉職者等が対象・高齢者叙勲   88歳に達した者が対象・春秋叙勲    生存者が対象<褒章>・藍綬褒章    現職者が対象・黄綬褒章    消防業界関係者が対象・紺綬褒章    高額な寄附を行った者等が対象○ 内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、消防表彰規程に基づき、消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受章者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰。・安全功労者表彰 国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績を上げ、又は功績があった者等を毎年「国民安全の日」に表彰。・防災功労者表彰 災害に際して、防災活動に従事し、顕著な成績を上げ、又は功績があった者等を毎年「防災の日」に表彰。○ 総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保等に尽力し、その功績顕著な消防団長及び都道府県婦人防火クラブ会長を表彰。○ 消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等を表彰。・功労章 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防除に関する対策の実施についてその成績が特に優秀な者。・永年勤続功労章 永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者。・表彰旗及び竿頭綬 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防除に関する対策の実施について他の模範と認められる消防機関。・特別功労章 災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる殉職者。・顕功章 災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる殉職者。・功績章 災害に際して消防作業に従事し、多大な功績があると認められる殉職者。・顕彰状 職務遂行中死亡した者。・国際協力功労章 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者。・表彰状 災害において消防作業に従事し、その功労顕著な者。・賞状 他の模範として推奨すべき功績のあった消防隊。・安全功労者表彰 防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害防除に関する対策の実施について、その成績が特に優秀であり、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた個人及び団体。・防災功労者表彰 災害に際して、防災活動に従事し、顕著な成績を上げ、又は功績があった者等で、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた個人及び団体。○ 退職消防団員報償 退職消防団員報償規程に基づき、永年勤続した消防団員が退職の際、その勤続年数に応じて消防庁長官より賞状と銀杯が授与される。○ 消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 消防庁長官褒状授与内規に基づき、災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては消防庁長官褒状が、また、消防庁長官感謝状授与内規に基づき、消防の発展に協力し、その功績顕著な外部の者又は団体に対しては、消防庁長官感謝状が授与される。○ その他 その他、消防関係の各分野において、功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・危険物保安功労者表彰       ・優良危険物関係事業所表彰・消防関係業界功労者表彰      ・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防防災システム管理者表彰  ・住宅防火対策優良推進組織等表彰・救急功労者表彰
現場活動と心のケア現場活動に係るストレスとは○ 消防職団員は、火災等の大きな災害現場などで、悲惨な体験や恐怖などの体験をしたことによる強い精神ショック、ストレスを受けることがあり、このような場合、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがある。消防機関における対策の状況○ このような問題は、阪神・淡路大震災後から指摘されてきたが、平成13年9月1日未明に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災に出動した消防職員にも、様々なストレス症状が見られ、東京消防庁では、組織的にそれらのストレスの緩和・発散のための対策を講じている。○ しかし、このようなストレスの問題は、いまだ比較的新しい問題でもあり、その対策を組織的に行っている消防機関は極めて少ない。今後のストレス対策への取組み○ 消防庁では、平成13年度から消防大学校のカリキュラムに、現場活動に係るストレス対策の講義を追加している。 また、次の事項についての調査研究を行っている。・現場活動に係るストレスの実態の把握・ストレスの緩和・発散方策・ストレスを受けた者に対するケアのあり方・ストレスについての教育のあり方○ これらを踏まえ、各消防機関では必要な対策を講じていくことが必要である。
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職団員が適切に対応するためには、その知識、技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部(訓練機関)、消防署や消防団における教育訓練を基本としつつ、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。また、これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。 職場教育における基準としては、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、消防庁としては、訓練時の安全管理体制等の整備についてマニュアル等を示すなど、効率的かつ安全な訓練の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第26条)。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」があり、平成13年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と政令指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 この「消防学校の施設、人員及び運営の基準」については、平成10年12月に一部改正され、簡素化、弾力化が図られるとともに、消防学校の運営に関する協議会等の設置が盛り込まれた。
(2)教育訓練の基準 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」が定められている。この中で定められている消防学校における教育訓練には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と消防団員に対する普通教育、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、教育期間は6か月以上とされている。・「普通教育」とは、消防団員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、教育期間は4日以上とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び主として普通教育を修了した消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成12年度では延べ2万6,619人が消防学校における教育訓練を受講している(第2-3-1表)。 初任教育の期間については、平成12年度では、すべての消防学校が6か月以上の教育訓練を実施している。 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成12年度における新規採用者のうち初任教育の受講者は2,806人で、採用者数が増加したことに伴い前年度に比べ325人増加している。なお、受講率については、93.7%となっている(第2-3-2表)。 消防団員については、平成12年度では延べ7万9,754人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成12年度においては、地方自治体職員、地域の自主防災組織、婦人防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ2万661人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成13年4月1日現在、消防学校の専任教員429人のうち派遣の教員は79人に及んでいる(第2-3-3表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校への研修や都道府県のほかの部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、その前身である「消防講習所」が、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織として設置され、その後、昭和34年4月に発展的に解消し、「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)教育訓練施設等 消防大学校の教育訓練施設は、平成5年度以降、鋭意その整備更新を進め、平成12年度末には地下1階地上5階建ての本館が完成した。通常教室や図書館はもとより、マルチメディアを活用した大規模災害に対する指揮訓練教室や階段式の大教室等機能的で使いやすい施設となっている。 第2本館には、300人を収容できる講堂をはじめとする諸施設が整備されている。救急訓練室においては、半自動除細動器や高度処置訓練用人形等により救急業務の高度化に対応した訓練を実施でき、また、特別教室は、屋外テレビカメラによって訓練場における訓練の状況を撮影し、これらの映像をもとにして自らの訓練状況を振り返ることにより訓練効果をより一層高めることができるものとなっている。屋内訓練室は、雨天時でも消防活動訓練を実施できるほか、学生の体力錬成にも活用されている。 屋内火災防ぎょ訓練棟は、より実戦的な状況下を訓練の場とするため、コンピュータ制御による蒸気や煙の濃度のコントロールにより、様々な濃煙高温状態を作り出すとともに、複雑な建物内を想定した暗室迷路の中において消火・救助訓練を行うことができるものとなっている。 学生寮地下に設けられた防災通信研修施設においては、防災研修機能に加えて、特に南関東地域直下地震時において、消防庁本庁の防災通信施設に万が一支障が生じた際には、通信機器類を最大限に活用し、情報の収集・連絡に当たることになっており、消防庁本庁の防災通信システムの補完的機能も有している。 一方、教育訓練車両の整備については、計画的な整備(平成10年度:災害救援車、平成11年度:普通消防ポンプ自動車、平成12年:特殊化学車)を進めており、平成13年度においては救助工作車を整備することとしている。
マルチメディアを活用した大規模災害対応訓練施設 消防大学校本館には、阪神・淡路大震災等を教訓とし、大規模災害発生時における全国の消防職団員幹部の災害対応能力の向上及び他関係機関との有機的な連携を目的とした大規模災害対応訓練施設が設置されている。この訓練施設は、大規模災害が発生した場合に組織される「消防本部」及び「現地指揮本部」での指揮者が災害状況把握、意志決定等の能力を身につけるための訓練システムである。訓練内容は、あらかじめ作成した訓練シナリオデータに基づき、災害状況を大型画面に表示することで訓練生は被害状況、消防力等を把握しながら、訓練者端末により、活動方針、部隊管理等の活動を入力することで災害現場を指揮する。 なお、訓練終了後に訓練履歴が印刷されるとともに、リプレイも表示できるので、訓練生の状況判断や下命事項が妥当であったか否かを検討することができる。
(2)教育訓練ア 教育訓練課程 消防大学校に現在設置されている教育訓練の課程は、2部9学科である(第2-3-4表)。このうち、平成13年度には、従来の「火災調査講習会」を「火災調査科」にし、教育内容の充実を図ることとした。 これらの課程では、消防幹部としての高度な教養を身につけ、また、特に近年は、地震災害等大規模広域災害に対応するための広域部隊運用、航空消防防災活動に係る科目を充実するとともに、民間有識者や社会福祉分野の専門家の講義を積極的に取り入れ、監督者、指導者として幅広い資質の向上に努めている。イ 教育訓練の実施状況 消防大学校(消防講習所を含む。)の卒業生は、平成12年度末現在で2万7,233人となっており、平成13年度入校者の計画人数は824人である(第2-3-5表)。 また、平成12年度には中華人民共和国からの研修生(3人)を受け入れた。ウ 実務講習 平成13年度において、消防大学校で実施している実務講習は、次のとおりである。(ア)トップセミナー 消防防災行政の最高責任者である消防長等に対して、現下の重要課題の現状と問題点等を主眼とした教育訓練を実施している。(イ)放射性物質災害講習会 原子力施設所在市町村等の消防本部の隊長等に対して、放射性物質災害に対する対応能力を向上させるための教育訓練を実施している。(ウ)危機管理(大規模災害発災時に係る災害対策活動)講習会 地震等の大規模災害発災時に必要とされる緊急災害対策活動を有効に展開できるようにするために講習会を実施している。(エ)消防学校長研修会 消防学校の学校長等に対して、消防学校運営及び学校教育に必要な教育訓練を実施している。(オ)航空消防防災講習会 消防防災航空隊の隊長等に対して、航空消防防災活動に関し必要な教育訓練を実施している。(カ)緊急消防援助講習会 緊急消防援助隊の都道府県隊長等に対して、大規模災害時における連携活動の実施等に関し必要な教育訓練を実施している。
(3)消防学校等に対する技術的援助ア 消防教育訓練研究会 消防教育に携わる者に共通した研究の場として、消防教育訓練研究会を毎年開催している。イ 特別研究生の受け入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教員を対象として、より高度な研究・研修の機会を提供するため特別研究生を受け入れている。ウ 講師の派遣及びあっせん 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、予防、警防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣又はあっせんを行っている。エ 教員用指導資料等の作成及び視聴覚教材の整備 消防学校等の教員用指導資料の編集、作成を行い、消防事象の変化に即応した内容の再検討や改訂作業を適宜行っている。 また、消防学校の初任者用教科書の編集を行っており、現在までに29種類が配布されている。 さらに、視聴覚教育の重要性にかんがみ、視聴覚教材の整備を進めている。オ 遠隔教育のモデル事業の実施 平成13年度においては、時代の要請に応じた多様な教育訓練のあり方を検討する上で必要なデータを収集するため、地域通信ネットワーク等の情報機器を利用し、消防学校に対する遠隔教育のモデル事業を実施することとしている。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間400人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成13年度には、全国で約1,400人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、835時間以上の講義及び実習が行われている。 その他、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、平成7年度から財団法人消防科学総合センターの火災原因調査室により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした「基礎講座」、模擬火災家屋の発掘調査実習、火災事象に係る各種実験を主体に実践的調査能力の養成を目的とした「実務講座」が実施されている。 また、毒物・劇物等に起因する災害や有毒ガス等の化学物質を用いた事件の発生に伴い、消防機関においても化学災害発生時における、要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における化学災害対応能力の充実を図っている。
6 全国消防救助技術大会等の実施 消防機関の行う人命救助活動は、複雑多様化する各種災害に対応するため、高度かつ専門的な知識、技術が要求されるに至っていることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第30回大会は、平成13年8月8日に全国9ブロックから選抜された939人(陸上の部678人、水上の部261人)の隊員が参加して東京都で開催された。
7 教育訓練体制の課題 近年における災害の複雑多様化により、消防業務は極めて広範囲にわたり、質的にも専門化、高度化が求められている。また、職員の高齢化等の問題も抱えており、これに対処するための消防職団員の資質向上は時代の要請でもある。このため、消防職団員の教育訓練は、ますますその重要性を増している。 消防学校の教育訓練の中で最も基本となる初任教育について平成12年度の受講状況をみると、新規採用者のうち初任教育を受けた者が93.7%となっているが、初任教育は、消防職員として最低限備えるべき基礎的知識と技能を修得させるものであり、新規採用者全員が初任教育を受講できるよう一層努力する必要がある。 さらに、消防学校においては、このほかに専門的かつ科学的な知識と技能を修得させるための専科教育、消防幹部としての管理能力のかん養を目的とした幹部教育を併せて実施している。これらの教育訓練の拡充を図るためには、施設の整備及び教材等の充実、専門的な知識と技能を有する優れた教官の確保等に努める必要がある。 また、消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行う消防大学校に対する教育需要は一層増大する傾向にあり、これに対応するためには、今後とも人的、物的両面において整備拡充に努める必要がある。
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は7.6秒に1回、国民32人に1人が救急搬送 平成12年中における全国の救急業務の実施状況は、平成10年3月に法制化されたヘリコプターによる件数も含め、418万4,121件(対前年比6.4%増)であり、前年と比較し、25万3,122件増加している。この増加した出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が13万1,420件(増加件数全体の52.0%)、一般負傷が3万9,286件(同15.5%)、交通事故が3万5,097件(同13.9%)、転院搬送が2万9,492件(同11.7%)で、増加件数の93.1%を占めている。 また、救急自動車による搬送人員は399万7,942人(対前年23万7,946人増、6.3%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は1,323人である(第2-4-1表、第2-4-2表、附属資料33、34)。 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万1,428件(前年1万767件)、7.6秒(前年8.0秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の32人に1人(前年33人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。 救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、次いで交通事故、一般負傷の順となっている(附属資料33)。
(2)搬送人員の51.0%が入院加療を必要としない傷病者 平成12年中の救急自動車による搬送人員399万7,942人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の49.0%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は51.0%となっている。 なお、軽症傷病者の割合は大都市56.9%に対し、その他の都市48.1%と大都市の方が多くなっている。一方、重症傷病者の割合は大都市7.4%に対して、その他の都市13.5%とその他の都市の方が多くなっている(第2-4-3表)。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成12年中の急病の救急自動車による搬送人員219万545人の内訳をWHO(世界保健機構)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(13.0%)、消化器系(11.2%)、心疾患系(10.8%)の順となっている(その他、症状・徴候・診断名不明確の状態を除く。)(第2-4-1図)。
(4)現場到着まで平均6.1分 平成12年中の救急自動車による出場件数418万2,675件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が226万934件で最も多く、全体の半数以上(54.1%)になっている。 なお、これらの平均現場到着所要時間は6.1分(前年と同じ)となっている(第2-4-2図)。
(5)病院到着まで平均27.8分 平成12年中の救急自動車による搬送人員399万7,942人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、20分〜30分未満が149万5,579人(全体の37.4%)で最も多く、次いで30分〜60分未満の119万57人(同29.8%)となっている(第2-4-3図)。 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は27.8分(前年27.1分)となっている。
(6)減少する転送 平成12年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.1%(396万1,519人)が転送なしに収容され、残りの0.9%に当たる3万6,423人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の88.9%に応急処置等実施 平成12年中の救急自動車による搬送人員399万7,942人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は355万4,160人(搬送人員の88.9%、前年は86.5%)であり、前年に比較し、30万2,339人(9.3%)増加している。その内容は血中酸素飽和度測定が最も多く、次いで血圧測定、毛布等による保温の順となっている。 また、平成3年8月の「救急隊員の行う応急処置等の基準」(昭和53年消防庁告示第2号)の改正により拡大された応急処置等の件数は、721万9,099件と前年の約1.2倍となっており、このうち救急救命士が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は3万6,777件にのぼり、前年の約7.4%増となっている。これは救急救命士の養成、救急標準課程又は救急II課程の修了者(2(2)参照)による運用が着実に推進されていることを示している(第2-4-4表)。
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.2% 救急業務実施市町村数は、平成13年4月1日現在、3,170市町村(673市、1,967町、530村)で前年と比較して1市1町1村の増加となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2-4-5表)。 この結果、全3,227市町村のうち、98.2%(前年98.0%)の市町村で救急業務が実施されたこととなり、全人口の99.9%(前年99.8%)がカバーされている(附属資料35)(人口は、平成12年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が434市町村、委託が209市町村、組合2,527が市町村となっている(第2-4-4図)。 また、実施市町村のうち、3,159市町村は、消防法施行令第43条により救急業務の実施を義務付けられた政令指定市町村であるが、11町村は救急業務の実施を義務付けられていない任意実施町村である。
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成13年4月1日現在、4,563隊(対前年19隊減)が設置されている(第2-4-5図)。 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成13年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で9万8,915人(対前年1,653人増、1.7%増)となっており、このうち5万6,557人(対前年429人増、0.8%増)が、救急隊員として救急業務に従事している(第2-4-6図)。 より高度化する救急需要に応えるため、消防庁は、救急救命士のみならず、救急II課程(拡大された応急処置等を行うために救急I課程修了者に対して行われる講習)及び救急標準課程(新しく救急隊員の資格を取得しようとする者を対象とする講習であり、救急I課程と救急II課程を合わせたものに相当するもの)を修了した救急隊員を養成するよう通知している。現在、救急標準課程又は救急II課程修了者は、それぞれ1万6,810人、4万475人であり、うち、それぞれ1万3,776人、3万1,502人が救急隊員として救急業務に従事している。 平成13年4月1日現在、消防職員のうち救急救命士資格を有する者の数は1万497人であり、このうち9,461人が842消防本部で救急救命士として救急業務に従事している。
(3)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成13年4月1日現在、5,448台(対前年103台増、1.9%増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格救急自動車は2,742台が配置されており、今後、更に高規格救急自動車の割合を高めていくよう推進している。
(4)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道及び本州四国連絡道路(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成13年4月1日現在総延長6,873.6kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、日本道路公団及び本州四国連絡橋公団においては、西瀬戸自動車道を除き、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成13年4月1日現在、全国で5,201箇所となっている(附属資料36)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 平成13年3月31日現在、初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが508箇所(平成12年3月31日現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により411地区で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが158箇所で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち10箇所で整備されている。 なお、平成10年4月の医療法の改正及び「救急病院等を定める省令の一部を改正する省令」(平成10年厚生省令第36号)の施行により、救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されることとなった。
4 救急業務体制の整備の課題(1)救急隊員の教育訓練の推進 我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士法(平成3年法律第36号)に基づき、医師の指示のもとに、心肺機能停止状態の傷病者に対して、病院又は診療所に搬送されるまでの間に高度な応急処置を行うための資格制度として、救急救命士の資格が設けられた。 救急救命士の資格は、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、835時間以上の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格して初めて取得できるものである。また、新たに資格を取得した救急救命士が救急業務に従事するに当たっては、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。この救急救命士の資格を持つ救急隊員による高度な救急業務は、平成4年7月から実施されており、傷病者の救命に大きな効果を上げている。 また今般、資格取得後の定期的な病院実習や、救急活動の事後検証等を実施し、医療面から救急救命士等の行う応急処置を保障するメディカルコントロール体制の構築を促進しており、救急救命士等の知識・技術の維持向上を図っている。 消防庁では、平成3年8月に「救急隊員の行う応急処置等の基準」が改正されたことにより拡大された、応急処置等を行うために必要となる知識及び技能を救急隊員に修得させるために、救急II課程教育の計画的な実施及び消防学校における救急標準課程の設置を推進している。 また、全国のすべての救急隊に少なくとも常時1人の救急救命士を配置するため、救急救命士の資格を有する救急隊員の養成を早急に進めており、救急振興財団の救急救命士養成所では、年間1,000人を養成している。 その他、日本臨床救急医学会や全国救急隊員シンポジウム等の医学会、研究会の機会を通じて、救急隊員の全国的な交流と救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急用資機材等の整備 救急隊員の行う応急処置等の範囲が拡大されたことに伴い、高度な応急処置の実施に必要な救急用資機材等の計画的な整備を進めなければならない。このため、「救急業務高度化資機材緊急整備事業」により、高規格救急自動車、高度救命処置用資機材等の整備に対する国庫補助を行うとともに、地方交付税措置を講じ、資機材の整備の一層の促進を図っているところである。 今後とも引き続き、高規格救急自動車及び高度救命処置用資機材の早急な配備を促進するとともに、使用の実態を踏まえた資機材の検討、改善を図っていく必要がある。
10年を迎えた救急救命士制度 救急に対する国民のニーズが高まるにつれ、傷病者の救命率が欧米諸国と比べて十分なものでないことが指摘され、救急隊員の行う応急処置範囲の拡大と、新たな資格制度の導入が課題とされた。 このため平成3年4月、救急救命士法が制定、同年8月に施行され、医師の指示のもと、医療機関に搬送されるまでの間に救急救命処置を行うことを業務とする救急救命士の資格が設けられた。 救急救命士法制定1か月後の5月には、財団法人救急振興財団が設立され、救急救命士養成のため第1期生60人に対する教育を開始した。翌平成4年春には第1回目の国家試験が実施され、第1号の救急救命士が誕生することとなった。その後、教育施設、体制の充実が図られ、現在、財団法人救急振興財団と全国10か所の政令市等の救急救命士養成所において年間約1,400人の救急救命士が養成されている。 消防庁では、すべての救急隊に救急救命士が常時1人配置される体制を目標に救急救命士の養成と、運用体制の整備を推進している。平成13年4月1日現在、全救急隊の約57%が救急救命士運用隊となっている。 救急救命士による救命効果については、平成9年度から3か年をかけて、厚生省(現厚生労働省)等の関係機関と連携して実施した調査によると、特に、心原性疾患(心臓に原因があると予想される疾患)による心肺停止については、救急救命士が搭乗していない隊による3か月生存率が0%であるのに対し、救急救命士が搭乗している場合には4.0%にも達しており、救急救命士制度の効果が明らかになっている。 現在、消防庁では、メディカルコントロール体制の構築を推進しており、体制構築の進捗状況を踏まえ、救急救命士の行う救命処置範囲の拡大を図り、更なる救命効果の向上を目指している。
メディカルコントロールとは メディカルコントロールとは、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を保障することを指している。 具体的には、以下の3つの体制を構築することである。1)救急隊が現場から24時間いつでも迅速に救急専門部門の医師等に指示、指導、助言が要請できること。2)実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行いその結果を再教育に活用すること。3)救急救命士の資格取得後の再教育として医療機関において定期的に病院実習を行うこと。 制度導入から10年を経過した救急救命士は、救急救命士法に基づき医療職として位置付けられている。医師の指示のもとに救急救命処置を実施することとされ、救命効果の向上に大きく貢献してきた。しかし、その業務の場が医療機関内ではないことから、他の医療従事者と異なり、臨床の場において医師の指示のもとに、十分な医学的な経験を積む環境に乏しい。傷病者の搬送途上における救命効果の一層の向上を目指し、救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためにも、このメディカルコントロール体制の構築が重要な課題となっている。 消防庁では厚生労働省、各都道府県、消防機関、地域の医師会、医療機関等の関係機関と連携を図りながらこのメディカルコントロール体制の構築を進め、地域におけるプレホスピタル・ケアの更なる向上を目指している。
(3)医療機関との連携の強化 救急業務の高度化を円滑に推進するためには、救急II課程教育等における医療機関での実習や救急救命士の病院内実習及び就業前教育等を充実する必要があり、そのためにも地域医療機関の協力が不可欠である。また、救急救命士が救急救命処置を行う上での医師の指示体制の確立、及び救急隊員の知識、技術の維持向上策、救急救命士等の行う応急処置についての医療面における質の保障と事後検証体制の確立など、救急隊と医療機関との連携を強化することが必要である。 そのため、消防機関と救急救命センター等地域の中核的な医療機関を中心としたメディカルコントロール協議会の設置を推進しており、地域が一体となった救急医療体制の整備の促進を図っているところである。 さらに、医療機関との連携体制を確立していくためには、広域的な取組みも重要であることから、都道府県による消防機関と医療機関及びメディカルコントロール協議会間の調整について積極的に推進していく必要がある。
(4)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成12年中の平均では6.1分である。救急隊が現場に到着するまでの間に、救急現場近くの一般住民による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう実技指導の強化に一層努力していくことが重要である。特に、心肺機能停止状態の傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の修得に主眼を置き、住民体験型の普及啓発活動が積極的に進められている。 心肺蘇生法については、平成13年5月、日本救急医療財団により全国共通の心肺蘇生法の指針が示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動も、この指針を踏まえた統一的な新しいものとするよう進めている。 また、口頭指導(救急要請時に119番受付係員が電話で行う応急手当指導)についての標準的なプロトコール(指導方法を台詞まで詳細に定めたもの)を作成し、指導体制の確立を推進している。 さらに、消防機関では、昭和57年に制定された「救急の日」及び「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発に努めている。 また、平成5年3月に消防庁が制定した「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」に基づき、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する普及講習の実施や、応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所や仕事場に勤務する管理者や従業員を対象にした応急手当の普及啓発、及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発を図っている。 今後とも、消防機関による応急手当の普及啓発活動が計画的に、かつ、円滑に進むよう、全国的な水準の確保に努め、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を引き続き推進していく必要がある(第2-4-7図)。
変わる心肺蘇生法 消防機関では「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」に基づき住民に対する応急手当、特に心肺蘇生法の普及に努めてきた。 平成12年8月、アメリカ心臓協会(AHA)が心肺蘇生法に関して収集した多くのデータを科学的根拠に基づき分析し、心肺蘇生法の手順や手技をより効果的でわかりやすいものにまとめ、国際的な基準といえるガイドライン2000として発表した。 このガイドラインに基づき、日本でも厚生労働省と日本救急医療財団が救急蘇生法の指針を平成13年5月、約8年ぶりに改訂した。消防庁ではこの指針を受け委員会を組織し前述の実施要綱を改正し、新しい指針に基づく心肺蘇生法の普及に対する準備を進めている。 主な変更点は以下のとおりである。・口腔内の異物を確認することなく気道を確保して人工呼吸を行う。・人工呼吸の呼気吹き込み量の適切な量は約10ml/kgとする。・二人で行う心肺蘇生法でも、一人で行う場合と同じく、心臓マッサージと人工呼吸の比率を15:2とする。・心停止の観察・判断には、頚動脈の拍動を触れる必要はない(反応がなく呼吸をしていない傷病者に呼気を吹き込み、それに反応して呼吸を始めるか、咳をするか、その他の動きを示すかどうかで心停止を判断する。)。・心臓マッサージは1分間に100回の速さ(割合)で行う。・口対口人工呼吸ができない場合、電話で指示する場合は心臓マッサージだけでも良い。 またガイドライン2000では、救急救命士を含む医療従事者の行う心肺蘇生法についても見直しており、救急隊員の行う心肺蘇生法についても継続して検討している。
(5)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染危険があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務に関する極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の課目を設けるとともに、結核、B型肝炎ウイルス、HIV(AIDSウイルス)、病原性大腸菌O-157の感染予防対策等について消防機関等に通知しているところである。 また、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)が平成11年4月1日に施行され、危険性の高い感染症に罹患している傷病者を入院させるための搬送については都道府県知事が行うこととなった。しかし、消防機関が搬送後にこれらの感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制を整備するよう通知している。
(6)患者等搬送事業の指導育成 患者等搬送事業者については、昭和63年12月、運輸省において新たに患者等輸送に限定された一般乗用旅客自動車運送事業免許が与えられることとなったが、患者の容態急変時の対応や感染防止対策が不十分であると指摘されていた。 このため、消防庁は、平成元年10月に消防機関が患者等搬送事業を指導する全国統一的な基準である「患者等搬送事業指導基準」を設け、今後とも、利用者の安全と利便を確保するために、消防機関による適切な指導を推進する。
(7)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 ヘリコプターは高速で機動的という特性があり、救急車による長距離搬送や交通渋滞による搬送遅延等の問題がないことから、傷病者の救命効果の向上には、ヘリコプターを活用した救急搬送が有効である。特に、重症者の救急搬送、遠隔地からの救急搬送及び大規模災害時における広域的な救急活動に大きな効果を発揮することが期待されている。 消防・防災ヘリコプターによる救急業務については、平成10年3月に消防法施行令が一部改正され、ヘリコプターによる救急業務が消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、それぞれの地域の実状を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を推進している。 平成12年中における全国の消防・防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数1,446件(前年比48.3%増)、搬送人員1,323人(同17.8%増)であり、ヘリコプターによる救急搬送需要は、急激に増加している。 ヘリコプターを救急業務に積極的に活用する上では、医療機関との連携や離着陸場の整備等のシステム整備などを図ることも必要である。
ますます期待される救急ヘリコプター(医療機関との連携) ヘリコプターは、その高速で機動的という特性から傷病者の迅速な医療機関への搬送が可能であり、救急車での搬送では時間を要する場合などには、救命効果の向上に有効である。 ヘリコプターによる救急搬送は、平成10年3月の消防法施行令改正により救急業務としての法的な位置付けがなされたが、さらに消防・防災ヘリコプターによる救急業務の推進を図るため、消防庁ではヘリコプターによる救急システムの推進に関する検討を行い、平成12年2月に救急ヘリコプターの出動基準ガイドラインを定めたところである。 平成12年中のヘリコプターによる救急出動件数は、前年より471件増えて1,446件に達し、今後も増加が予想される。それとともに、迅速かつ安全な救急活動にはヘリコプター乗組員と指令センター等による、消防機関内での連携だけではなく、医療機関や医師との綿密な連携が欠かせないものとなっている。 平成13年7月初旬に発生したオートバイの単独事故においては、事故発生現場が病院搬送に長時間を要する場所であると判断した出動途上の救急隊長が救急ヘリを要請し、救急救命士が搭乗した救急ヘリコプターが離陸16分後には事故現場直近のヘリポートに着陸した。先着していた救急隊から引き継がれた負傷者は、機内において救急救命士により救命処置が継続して実施された。 指令センターでは、受傷状況等から緊急離発着設備を有する大学付属病院を選定し、負傷者の受け入れと救急ヘリコプターの着陸許可を得た。ヘリポートを離陸した救急ヘリコプターは、その22分後には当該医療機関の屋上に着陸し、待ちかまえていた医療スタッフに引き継がれた。 このように、出動途上の救急隊の判断、ヘリコプター内における救命処置、負傷者の状況を勘案した指令センターによる医療機関の選択、そして医療機関の受け入れ体制のそれぞれがうまく連携し、この事例の負傷者は一命をとりとめることができた。
NBCテロと炭疽(そ)菌 NBCとは大量破壊兵器に関連する物質である核物質(Nuclear)、生物剤(Biological)及び化学剤(Chemical)の総称として用いられており、これらの物質を用いたテロをNBCテロと呼んでいる。過去に発生したNBCテロとしては、1994〜1995年に松本市及び東京で発生したサリン(化学剤)によるサリン事件があり、多数の一般市民に死傷者が発生した。 また米国での同時多発テロ事件以降、米国内の報道機関や政府関連機関等に対して生物剤である炭疽菌が送付される事件が相次いでおり、当該機関の関係者や郵便事業関係者に感染者が発生するなど、その被害の拡大が懸念されている。 炭疽菌は、アジア、南米、アフリカを主として世界的に分布している土壌菌で、いったん芽胞をつくると長期間栄養素がない状態で土壌や動物製品などに存在することが可能である。米国での炭疽菌事件では、菌は芽胞の状態で送付されている。炭疽菌により引き起こされる炭疽は、我が国では過去に毎年1〜2人見られたが、現在はほとんど見られなくなっている。 炭疽は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により四類の感染症に定められ、感染部位により、肺炭疽、皮膚炭疽、腸炭疽の3種類に分けられる。潜伏期は1〜7日程度で、肺炭疽の場合感冒様症状で発病し、抗生物質により治療が可能な疾患であるが、無治療では90%以上の致死率である。
(8)救急業務におけるITの活用推進 IT(情報通信技術)の進展を受けて、消防庁では救急業務においてもITの活用について調査検討を進めているところである。 救急事案については、高い救命効果を確保するために、救急自動車ができるだけ早く現場に到着し、医療機関に搬送することが必要である。そこで、消防庁では、災害、事故の発生を消防機関が覚知してから、救急自動車などの消防車両が現場に到着するまでの時間と、傷病者を医療機関に搬送するまでの時間を短縮するため、消防車両から光通信装置を利用して信号を制御することにより、なるべく消防車両が青信号で通過できるようにする救急車両支援情報通信システム(FAST)に関する調査研究等を警視庁と連動して推進しているところである。
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成12年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数4万6,104件(対前年3,556件増、8.4%増)、救助人員5万3,247人(同9,166人増、20.8%増)である(第2-5-1表、附属資料37)。
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ123万3,129人である。消防職員は、延べ104万8,928人で、うち交通事故が38.4%、火災が27.0%である。一方、消防団員は、延べ18万4,201人で、うち火災が82.9%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ46万3,974人であり、救助活動1件当たり10.1人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は水難事故の17.0人が最も多く、次に火災の12.3人となっている(第2−5−2表)。
2 救助活動の実施体制(1)救助隊設置消防本部及び構成市町村 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、救助活動に関する高度な専門教育を受けた隊員、救助活動に必要な資機材及びこれらの資機材を搭載した救助工作車等によって構成される。 平成13年4月1日現在、消防法第36条の2の規定並びに救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)に定める基準に従い、救助隊を設置している消防本部は867本部と前年度と同数であり、また、当該消防本部の構成市町村(受託市町村を含む。)は3,067市町村であり、前年と比較して18市町村増加している。これは、主に組合により救助活動を実施する市町村が増加したためである(第2-5-3表)。
(2)救助隊数及び救助隊員数 救助隊は867消防本部に1,532隊設置されており、救助隊員は2万4,168人となっている。1消防本部当たり1.8隊の救助隊が設置され、1隊に15.8人の救助隊員が配置されていることとなる。また、救助隊数及び救助隊員数については、省令第3条の規定による救助隊、省令第4条の規定による救助隊(より特別な編成及び装備を備えた救助隊)とも漸増傾向にある(第2-5-4表)。
(3)救助隊が乗車する車両及び主な保有資機材 救助隊の保有する資機材については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている。 また、それら資機材を積載した救助工作車についても、年々その整備が図られているが、これらの救助工作車及び救助隊の保有する資機材については、「救助資機材等総合整備事業」に基づく国庫補助に加え、地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っているところである(第2-5-5表)。
(4)救助隊の教育訓練 消防職員の救助活動については、より高度かつ専門的な知識と技術が不可欠となってきており、消防学校及び職場における教育訓練の充実強化を早急に図っていく必要がある。このため消防庁では、平成10年度から、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催しており、パネルディスカッション等による活発な意見交換や、事例研究などが行われている。また、消防学校の専科教育の救助科では、146時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2-5-6表)。
3 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は沿革的には火災時における人命救助を原点としてきたが、現在では、経済、社会活動の複雑多様化に伴い、交通事故、労働災害、爆発事故、水難事故、自然災害、山岳遭難等幅広い災害、事故に及んでいる。 また、平成7年の地下鉄サリン事件や、平成11年の茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故のように、有毒化学物質や放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 消防庁ではこのような状況を勘案し、原子力災害については、平成12年度に原子力施設等における消防活動対策マニュアルを作成したところであり、また、細菌等の生物及び化学災害について救助技術の高度化等検討委員会等において、災害への対応マニュアルについて検討を行っている。 このように、年々増加する多種多様な事故・災害に的確に対応するため、各種災害に対応する救助活動のマニュアル及び救助技術等の教育訓練のプログラムの充実を図るとともに、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 平成7年1月の阪神・淡路大震災においては、消防機関及び都道府県が保有する消防・防災ヘリコプターが、重症者等の救急搬送、医薬品・食料品等の物資搬送、救助隊員・医師等の人員搬送、上空からの情報収集に機動力を発揮し、その必要性が改めて認識された。 各地方公共団体においては、この経験を踏まえ、消防・防災ヘリコプターの新規導入及び複数機の整備を行う等、航空消防防災体制の充実に向けた積極的な取組みが実施されている。 消防庁としても、これを支援するため、所要の国庫補助金を確保するとともに、地方交付税においても所要の措置を講ずることにより、消防・防災ヘリコプターの円滑な整備を推進している。 平成13年4月1日現在、消防・防災ヘリコプターは、消防機関保有のものが27機、道県保有のものが41機、計68機が配備されており(第2-6-1表)、未配備県域は3県となっている。 消防・防災ヘリコプターは、消防防災業務に幅広く活用されており、平成12年中の出動実績は、火災出動976件、救急出動1,446件、救助出動1,051件等となっている。 また、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく広域航空消防応援によって、都道府県域を越えた応援活動が実施されており、その出動実績は、平成13年7月31日に発生した福島県における山林火災までに計199件となっている。
2 航空消防防災体制の課題 都市化の進展や都市構造の変化等による災害の大規模・複雑多様化に備えるとともに、救急業務の一層の高度化を実現し、国民の信頼と期待に応えていくために、消防・防災ヘリコプターの計画的な配備を積極的に推進するとともに、全国に配備されている消防・防災ヘリコプターの整備点検情報、全国各地の離着陸場情報等をデータベース化し、その適切な運用を図っていくこととしている。 また、消防・防災ヘリコプターの平常時の救急搬送への効果的活用を図るため、ヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインに基づく地域の実状を踏まえた出動基準等の策定、搬送拠点となる離着陸場及び医療機関との連携体制の整備等を推進していく必要がある。 さらに、ヘリコプターの運航は、基本的には昼間に限られているが、ヘリコプターは大規模災害時の救急搬送、災害時要援護者の搬送等において、昼夜を問わず需要があることから、照明設備を装備した場外離着陸場の整備促進、定期的な夜間飛行訓練及び操縦士等の人員の確保など、夜間の運航体制の構築に努める必要がある。 加えて、ヘリコプターは、定期点検等によりかなりの期間が運航不能となることから、運航不能期間中において代替機を確保できる体制を含め、消防・防災ヘリコプターの新たな整備計画についての検討を行う必要がある。 また、航空隊員に対する研修の充実も重要な課題であり、平成10年度からの消防大学校における「航空消防防災講習会」等により、活動技術の習得等が進められている。 このほか、平成8年1月に、消防・防災ヘリコプターに係る地方公共団体相互の連絡協調を推進し、全国の住民の信頼に応える航空消防防災体制の確立に資することを目的として、全国航空消防防災協議会が設立された。平成11年度は、同協議会において、航空消防防災活動をより安全・確実で信頼性の高いものとすることを目的とした「安全対策マニュアル」やヘリコプター機内における傷病者管理のあり方等に関する調査研究についての検討がなされ、報告書として示されている。 消防庁においても同協議会と連携し、消防・防災ヘリコプターの円滑な運用体制を確立していく必要がある。 また、IT(情報通信技術)の進展を受けて、消防・防災ヘリコプターの運用についてもITの活用が検討されている。 消防・防災ヘリコプターについては、大規模災害発生時における広域航空消防応援時において、その保有団体から遠く離れた場所において活動を行う場合、通常の消防・防災無線、航空無線では保有団体と交信してその動態を把握することは不可能である。 そこで、現在、消防庁では、カーナビゲーションシステムなどにも利用されているGPS(全世界的衛星測位システム)や高度計等のデータを、消防・防災ヘリコプターと地上の保有団体との間で、衛星電話を使用して送受信することを通じて、保有団体における消防・防災ヘリコプターの動態管理が可能になるようなシステムについて、研究開発を推進しているところである。
第7節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち、中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の改正や、防災基本計画の修正が行われている 平成7年6月には、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による措置の創設等を内容とする災害対策基本法の改正が行われたほか、12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等、国・地方を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 平成7年7月には、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえ、防災基本計画の全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められた。 平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害についても、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るため、防災基本計画の修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現経済産業省)、厚生省(現厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等が置かれることとされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村における核燃料加工施設における臨界事故、事故を踏まえた原子力災害特別措置法の施行等を踏まえ、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られている。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編を迎えるに当たり、そのための修正が行われている。
(3)消防庁の防災体制 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関し、とるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の自然的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編を迎えるに当たり、自治省・消防庁防災業務計画を廃止し、新たに消防庁防災業務計画を作成した。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成13年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体、原子力災害対策については16団体、風水害対策については 23団体、火山災害対策については14団体、林野火災対策については13団体、雪害対策については9団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など、緊急を要する事項についての見直しを要請した。また、平成12年12月には、中央省庁等改革に伴い指定行政機関及び指定地方行政機関が指定されたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請している。 この結果、阪神・淡路大震災以降平成13年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、このうち2,053団体(63%)が見直しを完了している。 なお、平成12年度中には、都道府県では30団体が、市町村では821団体が、それぞれ修正を行っている。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントの実施マニュアルを作成するとともに、このような防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、地区別防災カルテの作成マニュアルを示すとともに、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請しているところである。なお、平成12年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、19団体となっている。
実践的な防災訓練の実施(図上訓練) 災害が発生した際に、市町村等の防災担当職員、消防、警察等の実働機関、住民等が迅速・的確に行動するためには、繰り返し訓練を行うことが重要である。そこで、毎年、9月1日の防災の日を中心に全国各地で様々な防災訓練が実施されているが、近年、シナリオを訓練者に公表せず、一部の与えられた情報の下に自らの判断により行動する訓練(図上訓練)が行われている。 平成13年5月11日、1)大規模水害対応に当たっての課題の抽出、2)国の関係省庁職員の状況判断能力等の災害対応能力の向上を図るため、関係省庁が参加した大規模水害対処訓練が実施された。この訓練では、内閣官房、内閣府、警察庁、防衛庁、消防庁、厚生労働省、国土交通省、海上保安庁、気象庁が、群馬県内での局地的集中豪雨に伴う急激な水害及び利根川破堤による広域的水害への対応を訓練した。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に抑えるために重要であり、そのためには日頃から実践的な対応力を身に付けておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では、地方公共団体に対し、自衛隊等の防災関係機関とも連携の上、住民の参加のもとに、情報の収集・伝達、避難誘導、救出・救護など総合的かつ実践的な防災訓練を実施し、災害時に実際に適切な行動ができるか検証するよう要請している。また、それとともに、情報収集・伝達訓練や広域的防災訓練、災害の種類、発生時間等、様々な状況を想定した訓練、訓練者にシナリオが公表されず、訓練者の判断が求められる図上訓練など各種訓練の実施を推進している。 平成12年度においては、都道府県が延べ239回の防災訓練を実施したほか、市区町村においても延べ7,084回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震が最も多く、次いで、原子力災害、風水害、コンビナート災害、林野火災の順となっており、市区町村では、地震、大火災、風水害の順となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実働)訓練が最も多くなっている(附属資料25)。
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会の活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、すべての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。 また、見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。平成8年度より地方財政計画に必要な経費(平成13年度は70億円)を計上し、地方交付税により措置している。 なお、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、1)被害想定、2)職員の動員配備体制、3)情報の収集・伝達体制、4)応援体制、5)被災者の収容、物資等の調達、6)防災に配慮した地域づくりの推進、7)消防団、自主防災組織の充実強化、8)災害ボランティアの活動環境の整備、9)災害時要援護者対策、10)防災訓練の10項目に留意する必要がある。 さらに、平成9年6月に防災基本計画に事故災害対策が追加されたこと、平成12年5月に原子力災害対策編が修正されたこと等を踏まえ、各種事故災害対策についても、より実践的、具体的な内容となるよう見直しを進める必要がある。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのためには、まず、防災関係機関と連携した防災訓練等の実施により、地域防災計画の実効性を検証するとともに、関係者の対応力の向上を図ることが必要である。特に、情報の収集・伝達など防災対策の基本となるべき事項については、防災訓練や研修等実践的な防災教育を繰り返し実施するとともに、防災対策の分野、内容等に応じて、より具体的、実践的なマニュアルの整備を進めていく必要がある。 さらに、防災対策全体をコーディネートする防災の中枢機能の強化が重要であり、この機能を担う人材の育成を図る必要がある。消防庁では、消防大学校における防災教育の充実を図るとともに、地方公共団体での防災教育の推進を呼びかけているが、今後、地方公共団体の長、防災担当職員等に対する初動対応や平常時の取組み等に関する研修の充実を図るなど、教育訓練の一層の充実を図ることが必要である。 このほか、各地方公共団体においては、災害時の職員の自主参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などIT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険箇所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。
第8節 広域消防応援1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成13年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が2,404、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が627、その合計である全国の協定数は、3,031である。また、全国の協定について応援災害別に分類(重複計上)すると、火災2,729、風水害2,192、救急2,317、救助2,196、その他2,325となる。 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)、林野火災(四国西南地域消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などの場合には、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、災害種別に応じた活動マニュアルを作成するとともに、消防広域応援基本計画の作成、派遣要請システムの整備、代表消防機関の設置、応援情報リストの整備等の都道府県単位の消防広域応援体制の整備を速やかに推進するように通知しているところであり、平成13年4月1日現在、38都道府県で整備が図られている。 また、平成7年10月の消防組織法改正により、大規模災害時においては、消防庁長官は都道府県知事の要請を待たずに被災地以外の都道府県知事又は直接市町村長に対し、応援のための措置を求めることができることとされた。 大規模・特殊災害や林野火災等においては、空中消火や救急業務、救助活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効である。 そのため、消防庁では、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防・防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2-8-1表)。 また、「大規模災害時における消防・防災ヘリコプターの広域応援体制検討委員会」において検討を行い、ヘリコプターによる広域応援に関して被災地側の受援体制の整備を推進している。 なお、ヘリコプターは一定の期間、検査又は整備等のために運航不能となることから、消防・防災ヘリコプターを保有する機関の中には、ヘリコプター運航不能時等の応援に関する協定を締結しているものがある。 今後とも消防・防災ヘリコプターを更に増強しつつ、その広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場を確保し、情報活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。 平成12年中には消防庁長官の求めに応じて23件の消防広域航空応援が実施された。 なお、昭和62年度に消防広域応援交付金制度が創設され、消防庁長官の求めに応じて都道府県の区域を越えて行われた消防広域応援については、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されることとなっている。
2 広域防災応援体制(1)広域防災応援体制の確立 大規模、広域的な災害に適切に対応するためには、地方公共団体の区域を越えて機動的、効果的に対処し得るよう、防災関係機関相互の連携強化をはじめとする広域防災応援体制の確立を図る必要がある。 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛庁長官等に対する部隊等の派遣の要請等がある。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正により都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。
(2)広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関と、あらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、災害現場における指揮体制等各般にわたる項目について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援に関しては、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組みが進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計22の協定が締結されている。この結果、阪神・淡路大震災以後、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を越えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に取り組む団体が大幅に増加しており、平成13年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、2,278団体となっている。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防・防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 緊急消防援助隊の整備(1)緊急消防援助隊の整備 平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ充実したものとするため、全国の消防機関相互による迅速な援助体制として、平成7年6月に緊急消防援助隊が発足した。 緊急消防援助隊は、救助部隊、救急部隊のほかに、先行調査や現地消防本部の指揮支援を行う指揮支援部隊、応援部隊が被災地で活動するために必要な食糧などの補給業務を行う後方支援部隊等が編成に加えられており、大規模災害時には、消防組織法に基づく消防庁長官の要請により出動することとなる。 緊急消防援助部隊の部隊編成については、発足以来、救急部隊、救助部隊等の全国から集約的に出動する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(同1万3,000人規模)、総計で1,267隊、交替要員を含め約1万7,000人規模であったが、平成13年1月から、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、1,267隊(隊員数約1万7,000人)体制を、1,785隊(隊員数約2万6,000人)体制に拡充した。具体的には、消火部隊について消防庁長官の出動要請により全国から被災地に短時間で出動させる体制とするとともに隊数を増加し、また、既存の救助隊・救急隊の隊数を増加した。さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、及び消防・防災ヘリコプターによる航空部隊、消防艇による水上部隊を新設した(第2-8-2表)。 緊急消防援助隊の装備については、消防庁において基準を策定するとともに、国庫補助措置を講じることにより、救助工作車、ファイバースコープ等の高度救助用資機材、災害対応特殊救急自動車など救助・救急活動に必要な資機材や、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な車両、資機材の整備を推進しているところである。また、平成13年度から部隊の拡充に伴い、災害対応特殊ポンプ自動車、ヘリコプター及び広域応援対応型消防艇等についても補助対象事業が拡充された。 平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムは、緊急消防援助隊派遣車両の位置及び動態を把握するためのシステムで、車載GPSにより特定した車両位置と車載端末装置から入力した車両動態を携帯電話通信網により消防庁に設置したサーバに送信し、広域応援支援システムの電子地図上にシンボルで表示する。また、携帯電話網の不感地滞では自動的に低軌道衛星回線に切り替わり、全国規模で安定したデータ通信を可能とする。さらに、このシステムには、これらの回線を活用して派遣車両と消防本部等との間で情報連絡を行う簡易な文字通信機能等も備えている。 平成13年度においては、平成12年度に消防庁に整備した車載端末及び消防庁サーバ等により実証実験を実施、システムの標準仕様策定に向け、専門委員会で検討を進めている。
(2)活動及び訓練等 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁と名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月には、岩手県内陸北部の岩手山付近で発生した震度6弱を記録する地震において、仙台市消防局と東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局、仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局、川崎市消防局から救助部隊、消火部隊を現地に派遣し地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊が、ヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする震度6弱を記録した芸予地震においては、大阪市消防局、神戸市消防局、福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局、北九州市消防局の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日には、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われたところであるが、その後も、隊員の技術向上と部隊間の連携強化のため地域ブロックごとの合同訓練等が毎年行われているところであり、緊急消防援助隊発足5年目を迎えた平成12年10月には、148本部、1,922人の隊員による第2回目の全国合同訓練を東京都江東区有明において行った。 平成13年度においても、全国5ブロックにおいて合同訓練が実施されたが、同年9月11日に発生した米国同時多発テロ災害を受け、関東ブロック及び中部・近畿ブロック訓練において、国内でのテロ災害を想定した特殊災害部隊の訓練が実施された。
第9節 消防防災の情報化の推進1 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 災害時において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくほか、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくことが極めて重要である。 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網及び市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網が構築されている(第2-9-1図、第2-9-1表)。 消防庁では、次の事項に重点をおいて、地方公共団体と一体となって総合的な消防防災通信ネットワークの整備を推進している。
(1)通信ルートの二重化及び耐震化の推進 大規模災害時には、通信施設が被害を受け、情報連絡に支障を来すことも予想されることから、災害に強い通信ネットワークを構築するため、地上系通信網に加え、衛星系通信網を整備することにより通信ルートの二重化を図る必要がある。 衛星系の通信網については、現在、地域衛星通信ネットワークが消防庁及び41都道府県の間で運用されているが、未整備の団体も含め全国的なネットワークの早急な整備を図る必要がある。 また、地震による通信回線の遮断を最小限とするため、通信施設の耐震・免震対策及び停電時に備えた非常電源設備の耐震対策を促進しているところである。
(2)災害に対する初動体制を確立する画像伝送システムの整備 大規模災害発生時に迅速かつ的確な災害応急活動を展開するためには、情報の収集・伝達を速やかに行うことが必要であり、中でも、映像による被害状況の早期把握は、災害に対する初動体制及び広域応援体制を整える上で重要となる。 画像伝送システムは、衛星地球局、高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等で構成されており、得られた画像情報を消防本部指令センター内に集約し、発災直後の被害状況を当該市町村において把握するとともに、衛星通信を活用して、直ちに国(官邸、消防庁等)、都道府県及び他の市町村などへ伝送するものである。 消防庁では、この画像伝送システムを政令指定都市、都道府県庁所在都市等に整備を推進しているところであり、平成13年4月末現在、37団体で運用中である。 また、高所監視カメラやヘリコプターテレビ電送システムではカバーできない山間部等における大規模災害時においても、被災現場から直接画像情報を衛星に送信し、防災関係機関へ伝送するため、機動性のある可搬型衛星地球局設備、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の整備を進めている(附属資料41)。
ヘリコプターテレビ電送システムにGPS技術を活用 阪神・淡路大震災以降、災害発生時における被災地映像情報の早期収集が課題となっており、消防庁では、ヘリコプターテレビ電送システムの普及促進を図ってきた。有珠山噴火、三宅島噴火、鳥取県西部地震などにおいては、早期に映像情報を収集することができ、初動体制の確立に大いに役立ったところである。 しかしながら、これまでヘリコプターの飛行位置、撮影場所、撮影方向等が明確にはわからない場合もみられた。 そこで、消防庁では、ヘリコプターがどこを飛んで何を撮影しているのかを迅速に把握するため、ヘリコプターテレビの映像信号の中に、GPS技術等を活用して取得した位置情報(緯度・経度情報、ヘリコプターの飛行方向情報、カメラの画角情報及び撮影方向情報)を挿入する技術の普及を促進することとしている。なお、位置情報の挿入されたヘリコプターテレビ映像は、緊急支援情報システムのサブシステムである「ヘリ映像等による被災地状況把握システム」を用いて被災範囲を分析し、その結果を全国に配信することも可能である。
(3)市町村の消防・防災無線網の整備ア 地域住民等に密着した防災行政無線網 同報系無線は、住民等に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報、避難勧告等の伝達に極めて有効である。一方、移動系無線は、災害現場に赴き、その状況等を的確に把握・伝達するのに適しており、効果的な災害応急活動を行うためには、これら両施設の一体的な整備が必要である。 また、地域防災無線は、災害時において市町村と防災関係機関、病院、学校、ライフライン等の生活関連機関、自主防災組織等との相互連絡に極めて有効であり、平常時においても地域に密着した様々な情報の連絡にも活用できることから、市町村における整備を推進している。 消防庁では、国庫補助制度、緊急防災基盤整備事業等を活用し、これらの無線網の整備の促進を図っているところであり、全国整備率は平成13年3月末現在、同報系無線65.3%、移動系無線86.6%、地域防災無線7.4%となっている(附属資料42)。イ 高度化する消防・救急無線網 消防・救急無線は、消防本部、消防署及び消防団に基地局を設置し、消防ポンプ自動車、救急自動車等に積載した移動局との間で情報の収集・伝達、指揮・連絡等を行うための無線網である。平成13年4月1日現在9万3,624局が運用されており、この1年間に588局が増加した(第2-1-3図)。 また、119番通報の受付から出動指令、現場活動支援等を効率的に行うための消防緊急通信指令施設は約9割の消防本部で整備され、地図等検索装置や医療情報装置などのシステムの導入が進められているほか、災害現場の映像を消防・防災ヘリコプターから消防本部に伝送するヘリコプターテレビ電送システムの導入も増加するなど消防・救急無線網の高度化が図られている。 一方、近年、情報通信の飛躍的進展により新たな周波数割当て要求が増加しているが、電波は限られた資源であり、新たな周波数割当てが極めて困難な状況となっている。 このような過密な電波環境への対応や今後の消防・救急無線の高度化のため、消防・救急無線においてもデジタル化を進める必要がある。 消防庁では平成11年度から「消防・救急無線デジタル化検討委員会」を設け、フィールド実験により今後の消防・救急無線のデジタル化への移行に係る基礎資料を得るとともに、実験の結果を踏まえ整理された課題について検討を実施している。
(4)多様な情報収集、伝達手段の整備とバックアップ機能の確保 地震災害、石油コンビナート災害等の大規模な災害が発生した場合、災害現場においては、消防機関をはじめとする防災関係機関が相互に協力して効果的な災害応急活動を行う必要があるが、異なる防災関係機関相互間の密接な情報交換を行うための通信手段として、防災相互通信用無線(防災相互波)が活用されている。 消防庁では、特に、大規模災害等の発生が想定される市町村、あるいは石油コンビナート地帯等の市町村に対し、防災相互通信用無線施設を整備し、災害時にその機能が十分発揮できるよう、あらかじめ関係機関と調整する等その運用体制を確立するよう要請しているところである。 なお、大地震等により通信施設が使用不能となった場合には、国・地方間の情報伝達機能が麻痺し、災害対応の実施に重大な支障を来すことから、通信施設のバックアップを確保しておく必要がある。 このため、消防庁としては、地方公共団体の本庁舎と同時には被害を受けにくい場所への衛星系無線等の施設を中心としたバックアップ施設の確保や機動性のある車載型衛星地球局、可搬型衛星地球局等の整備の促進を図っている。
2 被害状況等に係る情報の収集・伝達 消防庁では、地方公共団体と国との間の災害情報の収集・伝達の窓口として、消防防災通信ネットワークの充実を図るとともに、迅速かつ的確な情報の収集・伝達に努めている。 とりわけ、大規模災害時には、災害の規模や被害の概況を迅速に把握することが重要であり、災害対策基本法の改正を踏まえ火災・災害等即報要領を改正し、市町村から都道府県に連絡ができない場合や119番通報が殺到する場合には、市町村から直接消防庁に連絡することとした。さらに、航空機事故、鉄道事故等の際の迅速な第一報の励行、災害対応を第一線で行い被害状況等を把握できる消防機関からの速やかな情報伝達、休日・夜間の情報収集・伝達体制の整備等について、地方公共団体において体制の強化が図られている。 なお、消防庁においても、大規模災害時等に被災地に出動し、情報収集や現地での防災活動の支援を行うための現地活動支援車及び被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を整備し、また、消防庁が被災した場合の地方公共団体との通信機能の確保のため、消防大学校に衛星通信施設等の諸施設を整備している。さらに、地方公共団体から情報を入手し、内閣府、内閣情報調査室等に伝達する業務が適切に実施できるよう、職員の教育、訓練の徹底を図っている。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 広域的な対応が重視される大規模災害発生時の災害応急活動においては、迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠である。 このため、消防庁では、震度情報などの緊急情報を迅速に伝達するほか、緊急消防援助隊や消防・防災ヘリコプターの出動可能状況、非常物資の備蓄等広域応援の対応力の状況、消防防災統計など消防防災に係る情報をデータベース化するとともに、コンピュータによる全国的なネットワーク化を図り、消防庁と地方公共団体等との間でこれらの情報を共有化できる防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。 このシステムにおいては、全国の市町村の震度情報を消防庁で集約し、地方公共団体に配信する機能を有している。全国の市町村で計測された震度の情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始し、本システムで収集された震度データは、気象庁にもオンラインにより提供している。なお、一部の地方公共団体の震度データについては、各地の気象台にオンライン提供し、気象庁の震度情報に含めて発表されている。 また、平成11年度から、危険物等の災害発生時に、色、臭気等から物質を特定し、危険物等に係る危険性及び防ぎょ方法を検索することができるデータベース(危険物災害等情報支援システム)をサブシステムとして新たに防災情報システムに加え、全国の消防本部で利用できるようにしている。
(2)災害対応支援システム等の導入と活用 災害時には、正確かつ迅速な状況判断のもとに的確な応急活動を遂行する必要があるが、そのためには、シミュレーションにより被害状況を推測するとともに、円滑な対策の実施を訓練できるシステムを導入し、日頃から訓練に努めることが有効である。 このため、消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めており、特に、消防研究所で開発した「簡易型地震被害想定システム」については、簡単な操作で瞬時に地震発生時の被害を推計することが可能であり、的確な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つことから、全都道府県等に配布しその活用を図っている。
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、電話、ファクシミリにより行われているが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速、的確に行うため次の4つのサブシステムにより構成される緊急支援情報システムを消防庁に構築し、平成13年7月に運用を開始したところであり、引き続きシステムの充実を図っている(第2-9-2図)。ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等に情報提供するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。ウ ヘリ映像等による被災状況把握システム 消防・防災ヘリコプター等で撮影した被災地映像を解析し、被災範囲等を迅速に把握することができるシステム。エ 衛星データ通信・データ放送 ア〜ウのシステムをバックアップして、電子地図等の大容量のデータを、衛星通信回線により送ることができるシステム。
4 情報化の今後の展開(1)防災情報通信体制の充実強化 あらゆる災害に対し、迅速かつ的確な防災情報の収集・伝達を行うため、次のように、消防防災通信ネットワークの充実強化を図るとともに、これを運用し、情報の収集・伝達を実施する体制の強化を図ることが必要である。ア 消防防災通信ネットワークの充実強化 消防防災通信ネットワークについては、災害に強い通信網の構築の観点から地上系及び衛星系による通信ルートの二重化の早期確立を図るとともに、衛星系ルートについては、最近のデジタル通信技術を活用して、画像情報 、地図情報等を含めた多様な防災情報を伝達できるようネットワークの高度化を図ることが必要である。 この中で、都道府県と市町村等を結ぶ地上系の都道府県防災行政無線については、施設の老朽化等に伴い再整備の時期を迎えているものや、周波数の再編成により他の周波数帯に移行が決定されているものがあり、施設の再整備の際には、IT分野の技術革新を展望しつつ、衛星系通信網と有機的に結合したネットワークを構築することが必要である。 一方、市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線については、デジタル方式による高機能化にも留意し、引き続き屋外拡声方式のほか戸別受信方式による整備を図りつつ、同報系無線の整備率の一層の向上を図るとともに、住民や地域に密着した情報の相互連絡に有効な地域防災無線についても導入を促進し、避難所、学校、自主防災組織の活動拠点等を地域における情報拠点として、整備を進めていくことが必要である。 このほか、消防・救急無線についても、現場活動の複雑、多様化に伴う情報量の増加等に対応するため、デジタル化を進めるとともに、消防緊急通信指令施設に車両の動態管理、地図検索の装置を整備するなど、一層の高度化を図る必要がある。 これらの防災情報・通信施設等については、整備目標(計画指針)を策定し、各団体における計画的な財政確保を図ることによって、整備を促進することとしている。 なお、通信施設については、地震時においても確実に稼働できるようにすることが重要であり、通信施設の耐震・免震対策を行うとともに、非常電源設備についても点検し、機能の見直し等を行うことが重要である。イ 広域応援に必要な情報通信施設等の整備促進 画像伝送システムは、発災直後の被害の概況を把握し、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、政令指定都市、都道府県庁所在都市等大規模な都市における一層の整備が求められる。 また、消防・救急無線については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国共通用の周波数が3波へ増波され、消防広域応援活動下での有効活用が図られることとなったことから、全国共通波の増波等にも対応した消防広域応援用無線設備の整備が急がれる。 さらに、消防・防災ヘリコプターの増強に伴い、ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加し、こうしたシステムを搭載したヘリコプターが集結する大規模災害時には混信が発生するおそれがあるため、ヘリコプターテレビ電送用の周波数等が4波へ増波されたが、引き続きその円滑な運用を図る必要がある。 このほか、車載型や可搬型の衛星地球局、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の整備を促進し、大規模災害時にも機動的で確実な情報の伝達手段を確保することが重要である。ウ 情報の収集・伝達体制の整備 災害時において的確な情報の収集・伝達を行うためには、消防防災通信ネットワークの充実強化に合わせて、これを運用し、情報を迅速かつ的確に収集する体制の強化を図ることが重要である。 このため、都道府県、市町村、消防機関、警察等防災関係機関相互の連携を強化するとともに、収集、伝達すべき情報に係る基準の周知徹底、迅速な第一報の励行、消防機関からの速やかな情報伝達、夜間・休日の情報収集・伝達体制の整備等を更に推進していく必要がある。エ 住民等への情報伝達の強化 災害時の応急対策の実施に際しては、住民等に対し、気象情報や避難勧告、避難時の生活情報等を適切に伝達することが重要であり、これによって住民等に無用な不安を抱かせないことにもつながる。 そのためには、防災行政無線、有線放送、広報車、消防職団員の巡回等による住民への情報伝達についてハード・ソフト両面から絶えず点検を行うとともに、今後はインターネット等を活用した新たな伝達手段についても整備を進めることが望ましい。 また、住民に対する気象予警報、避難勧告等を迅速、的確に伝達できるよう、あらかじめ伝達手段、手順、ルート等を定め、これを地域防災計画に明示し、住民への広報に努めるとともに、職員に対しても周知徹底しておく必要がある。オ 衛星通信を用いた情報伝達体制の整備 現在、衛星系の通信網として活用されている地域衛星通信ネットワークは、電話・ファクシミリとアナログ映像送信を主としたシステムであるが、情報通信分野の環境は、インターネットに代表されるように大きく発展を続けている。映像分野においてもデジタル化への移行が急速に進みつつあり、地域衛星通信ネットワークにおいても、データ通信を重視し、デジタル映像方式を導入したシステムへの移行が求められているといえる。 こうした背景を踏まえ、消防庁では、次世代化に向けて、高速データ通信に対応できるように衛星データ通信・衛星データ放送システムを構築してきている。 また、次世代化に伴い可搬型衛星地球局の増加が見込まれるが、現在の可搬型衛星地球局は、かなりの重量があり、機動性を欠くところがあるため、消防庁では、機動性に富み軽量で操作の容易な「災害対応小型衛星電話」の開発を進めている。カ 消防・救急無線のデジタル化への対応 消防業務の高度化のため消防・救急無線のデジタル化が必要となっており、現在、消防庁で検討している結果も踏まえ、全国の消防本部において消防・救急無線のデジタル化移行を円滑に進めていく必要がある。
インターネット技術を活用した被災地住民向け災害情報システム 政令指定都市や県庁所在地の消防本部等では、大規模災害発生時の情報収集を目的としてヘリコプターテレビ電送システムや高所監視カメラ等の整備が進められており、災害発生後、速やかに被災概要を把握することができるが、これらを保有していない中小の市町村では、消防本部への緊急通報の状況や職員の巡回等によって情報収集し、被害状況を把握しているのが現状である。 このため、被災直後の状況把握に間隙を生じやすく、また、被災状況の全容の把握に時間を要するため、適切な状況判断と迅速な災害対応に支障を生ずることとなる。 本システムは、近年、急激に普及が進んでいる携帯電話、パソコンを活用して災害情報の収集、伝達を行うもので、インターネット接続機能を持った各機器から簡単な操作により各エリア(街区等)の被災状況を市町村の災害対策本部に送信し、管内の被害状況を把握することができるものとして現在開発が進められている。情報の送信には特別なソフト等は不要のため、市町村職員や消防職団員のほか、自治会関係者、ボランティア、一般住民からも広く情報の収集が可能となる。 このシステムは、地震災害や風水害、火山災害等を対象としており、被害情報に画像を添付する機能、収集した災害情報を整理してホームページで公開する機能、GISの活用(災害情報の入力、被害範囲の把握等)等各機能をメニュー化し、市町村の実情に応じて選択する方式となる予定である。
(2)マルチメディアの活用 最近のマルチメディアに代表されるような情報通信技術の進展に伴い、新たな情報処理技術を活用したシステムの構築を検討していく必要がある。ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を全国の都道府県、消防本部に整備を進め、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。また、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進める必要がある。イ 災害対応支援システムの充実 地震被害予測システム、延焼拡大予測システム、林野火災応急対策シミュレーションシステム等の普及を促進するとともに、防災用地理情報システム(防災GIS)、全世界的衛星測位システム(GPS)等のマルチメディアの活用を図りながら、消防防災対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるIT化推進のための共通基盤としてパソコン及びこれに接続するLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が遅れている。平成12年度末の消防本部におけるパソコンの整備率(常時勤務する職員数に対するパソコンの台数の割合)は14.8%であり、7人に1台程度にとどまっている。また、平成13〜15年度の整備計画についても平成15年度末で37.1%の低い水準にとどまっている(第2-9-3図)。 一方、平成12年度末のLANの整備状況については、本部が44.3%、消防署等が34.5%となっており、パソコンの整備率と比較すれば、LANに接続している端末数が少なく、情報の共有化のためにこれらの情報基盤を十分に活用するのは厳しい状況であると考えられる(第2-9-4図)。 消防本部と市町村の他の部局との情報の連携、住民へのサービス向上のためには、消防本部において、情報基盤整備への一層の取組みが必要である。
(4)携帯電話等からの119番通報の発信地表示システムの検討 一般加入電話からの119番通報は、通報者の電話番号をもとに発信地を検索し、表示するシステムが構築されており、迅速な消防活動を行うために活用されている。 一方、携帯電話等からの119番通報は発信位置が特定できないため、代表消防本部といわれる消防本部が、他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で当該区域を管轄する消防本部に転送する運用を行っている状況にある。 携帯電話等からの119番通報に対しても迅速な消防活動を行うことが必要であり、通報者の位置をもとに発信地を管轄する消防本部で直接受信でき、また、発信地を検索し地図上に表示するシステムの構築が必要であることから、消防庁では、平成12年度から「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討委員会」を設け、携帯電話等からの119番通報について発信地表示機能の構築を目指して検討を行っている。
(5)災害時における119番通報の集中状況把握に関する検討 大規模災害発生時において迅速な広域応援活動を行うためには、どこでどのような災害が発生しているか把握することが重要である。 しかし、被災地を管轄する消防本部では災害対応に追われ、都道府県等への報告に遅れを生ずるおそれがある。 被害の集中している地域では多くの住民が消防本部に119番通報をかけることから、この集中情報は被災範囲を特定する上で重要な要素となる。 このため、消防庁では平成13年度から119番通報回線の輻輳状況等を監視し、一定以上の集中が発生した場合にその情報を消防庁及び各都道府県等に伝達する仕組みについて検討を行っている。
(6)消防分野における申請・届出等手続の電子化への取組み 申請・届出等手続の電子化への取組みについては、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、平成15年度までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてペーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやり取りされてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされ、そのため、省庁別に、省庁内オンライン化基盤整備計画と個別手続のオンライン化実施計画を盛り込んだアクション・プランを策定し、公表するものとされている。 なお、地方公共団体に対する申請・届出等の手続のオンライン化に関しては、所管省庁において、オンライン化実現のための事務処理手順、システムの標準仕様等の実施方策を提示することとされている。 さらに、「e-Japan重点計画(平成13年3月29日IT戦略本部決定)」に基づき、各府省において、個別手続のオンライン化実施時期の前倒し等の観点から見直しがなされ、新アクション・プランが策定・公表される等、政府全体においてオンライン化への取組みが進められている。 消防庁においては、申請・届出等手続のオンライン化を着実に推進するため、インフラ整備及び図面の電子化等の諸課題を検討してとりまとめることとしている。 消防防災行政に係る申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うもの(消防用機械器具等の検定の型式承認の申請、石油コンビナート等災害防止法上の第一種事業所新設等届出等)については、平成15年度まで(一部については平成14年度まで)に整備・運用開始を図ることとしている。 また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)についても、国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化実現のために必要な措置を適切に講じることとしている。
第3章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成12年中の火災を原因別にみると失火が全体の64.7%を占めていること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日頃からの備え、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会を作るためには、国民の防火防災意識の高揚に待つところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災週間」(8月30日から9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、建築物の密集及び高層化並びに生活様式の変化に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日頃から防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施を提案し、国民に対する防火意識の普及宣伝に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成12年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい気候となる時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、「火をつけた あなたの責任 最後まで」を平成12年度の全国統一防火標語として、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力のもとに、各種広報媒体を通じて防火広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。イ 春季全国火災予防運動(平成13年3月1日〜3月7日) 平成13年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語のもとに、「住宅防火対策の推進」、「放火火災予防対策の推進」、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」のほか、「林野火災予防対策の徹底」を重点目標に加え、秋季同様、様々な行事を実施した。
(2)全国山火事予防運動(平成13年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成13年の全国山火事予防運動では、「育てたい 山へのマナー 火の始末」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗、ポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練、研究会の開催等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成13年3月1日〜3月7日) 車両火災は年々急増の傾向にあることから平成13年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、車庫、駅舎等の対象物に対する初期消火、避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成13年1月26日) 昭和24年1月26日、法隆寺金堂火災及びその後の金閣寺火災等による貴重な文化財の焼損を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共唱により毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導のもとに重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。
2 防災知識の普及啓発(1)防災週間、防災とボランティア週間等を活用した啓発活動 災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならないことはもちろんであるが、国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、応急救護などの防災に関する知識を確実に身につけるとともに、日頃から家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災に心がけることが極めて重要である。また、防災のための学習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日が「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、前者では大がかりな防災訓練等が中心となった行事が行われているのに対し、後者は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日頃の備えを高めて行くことがその趣旨とされており、平成13年の防災とボランティア週間では、39都道府県のほか、543の市区町村が、防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業を実施している。 このほか、消防庁においては、年間を通じテレビ放送を利用して、普及啓発事業を実施している(附属資料43)。また、地方公共団体では、防火教室の開催、自主防災組織の活動などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道管等が寸断され、また、消防機関等の活動は著しく制限されることが予想される。このような状況下では、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識のもとに、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多く見られ、地域における自主的な防災活動の重要さが改めて認識されたところである。 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成13年4月1日現在では、全国3,249市区町村のうち、2,503市区町村で10万594の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、57.9%となっている(附属資料28)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,664市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ1,411市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これに要した経費は平成12年度で合計61億1,610万円に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を創設し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図っているほか、財団法人自治総合センターがコミュニティ助成事業の一環として行っている防災用資機材の整備に対する助成への協力も行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、災害補償制度の充実、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による啓発を行うとともに、自主防災組織の活動拠点づくりを進めるため、防災まちづくり事業及び緊急防災基盤整備事業により、防災センター等の整備を促進している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 家庭を中心とした自主防災活動 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織は、日頃家庭における防火の分野では大きなウェイトを占める主婦等が火災予防の知識を修得し、地域全体の防火意識の高揚を図るとともに、万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な地域社会を作るため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っている。 阪神・淡路大震災においても、初期消火活動や避難所での炊き出し等が活発に行われている。 なお、平成13年4月1日現在、全国の組織数は、1万4,812団体、約234万人となっている。ウ 少年・少女を中心とした自主防災活動 少年・少女を中心とした自主防災組織は、10歳以上15歳以下の少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すとともに、研究発表会、ポスター等の作成、実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために組織づくりが進められている。 消防庁では、関係機関とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成12年度の受賞は、特に優良なクラブ17団体、優良なクラブ33団体、及び優良な指導者7人となっている。 また、平成12年度も、表彰式と併せて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年消防クラブフレンドシップ2001」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成13年5月1日現在の組織数は、6,108団体、約48万人となっている。エ 児童・園児を中心とした自主防災活動 児童・園児を中心とした自主防災組織は、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図り、近い将来少年・少女を中心とした防災活動に参加できるための素地づくりのため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成されるもので、消防機関等の指導のもとに組織の育成が進められている。 なお、平成13年5月1日現在の組織数は、1万4,384団体、約119万人となっている。
地域ぐるみの防災体制(東京都江戸川区) 新しく建てられた高層マンションでは、地区全体で「防災」を考える機会もあまり多くないといわれる。しかし、東京都江戸川区にはニュータウンの防災会が中心となって、管理組合・自治会とともに防災意識の高揚に努めている高層マンションがある。 江戸川区のなぎさニュータウン地区は、昭和55年の最終入居以来、自主防災組織を結成して防災に取り組んできた。しかし規模の大きな都市型共同住宅ということから、防災意識の醸成や防災コミュニティづくりが難しく、必ずしも順調な運営とはいえなかった。しかし、平成7年の阪神・淡路大震災の発生を真摯に受け止め、埋め立て地の高層共同住宅という、同条件の被害状況を調査し、さらに資料収集や分析を行った。 また、翌平成8年9月には東京直下地震の被害想定が出たことで、「自分たちの街は自分たちで守ろう」という自主防災意識が一層高まり、同年12月に「防災会」という防災リーダー組織を結成した。それ以後、この組織が中心となって、都市型マンションにおける危機管理のあり方、防災コミュニティのあり方、地震発生時のあり方などについて徹底した検討を加え、これを実行して総合的な防災体制づくりへと歩み続けてきた。そのほかにも、各種防災資機材の整備も進められ、なぎさニュータウン地区は災害に強いまちへと変貌しつつある。 なお、この活動は、大規模高層住宅の防災まちづくりのモデルとして、第5回防災まちづくり大賞総務大臣賞を受賞している。
2 事業所の自主防災体制  一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビ ナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられているが、法令等により義務付けられていない事業所において、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成13年4月1日現在、2,765組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものである。しかし、特に地震などの大規模災害の際、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られるならば、地域の自主防災体制の充実に大きな効果をもたらすものと考えられる。 消防庁では、企業(事業所の防災組織)の地域社会での防災活動の促進を図っているが、今後、事業所の防災組織の活動を一層高めるため、事業所と地域社会との平常時からの協力関係の強化及び事業所の防災組織が参加・協力するに当たっての条件整備を進めていくことが必要である。
3 災害時のボランティア活動 被災地における多様なニーズに対応したきめ細かな防災対策を講じる上でボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることは、阪神・淡路大震災において改めて認識されたところであり、平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられた。また、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災とボランティアの日」(1月17日)の創設も行われている。 消防庁においては、災害救援ボランティアの研修カリキュラムを示すとともに、消防機関に研修の協力について要請を行っている。 また、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体やボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、共有すべき情報をデータベース化し「災害ボランティア・データバンク」として、消防庁ホームページで公開している。 なお、ボランティアの研修等の費用については地方交付税により、財政措置している。 また、災害時の混乱した状況の下で災害ボランティアの活動が更に円滑に行われるようにするために、あらかじめ、平常時から災害ボランティア団体と地方公共団体が災害発生時のそれぞれの役割を明確に定めておく必要があることから、災害ボランティア団体と地方公共団体の連携を推進するなど、災害ボランティア団体の活動環境の整備を推進していくこととしている。 また、ボランティア団体は、様々な活動を実施しており、これまでも被災地での炊き出しや被災した民家の清掃等を行うなどしていたが、最近では、日頃から24時間体制で災害情報を収集し、いち早く個人向けにインターネットや携帯電話で提供したり、災害発生時に地方公共団体のホームページ立ち上げを支援する団体もある。
災害ボランティア・データバンク 阪神・淡路大震災以降、発災直後から被災地に駆けつけ、物資の仕分けや避難所運営、医療介護等、様々な分野で活躍する災害ボランティアの重要性が高まっている。消防庁においても「防災とボランティアの日」をはじめ、活動環境の整備について取組みを進めているところであるが、全国に数多くある災害ボランティア団体については、その活動実態等全容についての資料が少なく、また、各地方公共団体が実施している災害ボランティア団体との連携施策についても、対外的に十分に周知されていない状況にある。 このため、消防庁では、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体やボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、共有すべき情報をデータベース化し「災害ボランティア・データバンク」として、インターネットを通じて公開している。 データベースは、地方公共団体、公共機関(社会福祉協議会、日本赤十字支部)、災害ボランティア団体の協力を得ながら策定し、災害ボランティア団体の活動内容等について消防庁のホームページに掲載している。関連サイト:消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)
第3節 災害に強い安全なまちづくり 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊、木造住宅密集地域での延焼、通信網や交通網の混乱、ライフラインの機能停止など大規模な被害が生じ、また、住民の避難所や防災活動の拠点などの整備が十分でないことが明らかとなった。また、その後も大規模な災害が続発し、災害発生時の住民の安全が確保できるように、災害への取組みを強化することが大きな課題となっている。 これらの教訓を踏まえ、消防防災活動に直結する防災基盤を整備するとともに、ハード・ソフトの両面から防災に配慮した「防災まちづくり」を推進し、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを進めていくことが必要である。
1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設や、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えた。このため、消防庁では、平成7年度から平成12年度までの間、緊急防災基盤整備事業により地方単独事業への支援を実施してきたところである。 しかし、近年においても各種災害が頻発し、地方公共団体の災害対応能力の向上が大きな課題となっていることから、これを平成17年度まで延長することとし、総務省との連携の下、引き続き1) 避難所となる公共公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど)2) 災害対策の拠点となる公共公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など)3) 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋梁、交通安全施設、福祉施設など)の耐震改修を促進している。 また、水道管、ガス管、港湾、地下鉄の耐震化についても単独事業への支援策が設けられている。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防施設等整備費補助金や防災まちづくり事業、緊急防災基盤整備事業等により、消防車両や消防・防災ヘリコプター、防災情報通信施設、耐震性貯水槽等の整備を促進している。 なかでも、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝達する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との間の情報連絡についても多角的な対策を講じている。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、併せて食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 さらに、住民の避難に必要な施設等については、避難地、避難路の整備のほか、トイレ等避難生活に必要な機能を持つよう避難施設の改修を促進している。 なお、地域防災計画上掲載されている災害危険箇所については、地方債と地方交付税による財政措置が講じられている。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースの確保は非常に重要であり、これらをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、緊急防災基盤整備事業や防災まちづくり事業等によりその整備を支援している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。・「コミュニティ防災拠点」 おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難地等に活用される。・「地域防災拠点」 おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難地等に活用される。・「広域防災拠点」 都道府県に一又は数箇所設置され、消防防災に関する広域応援のベースキャンプや物資の集配基地、長期の避難地等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、防災無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティレベルの研修等に活用される防災センターから、日頃から防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占めている。 さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有しており、こうした点を含め防災上の観点を、地方公共団体における地域づくりにより明確に取り入れ、地域の防災機能の向上を促進する必要がある。 また、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保など)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化、共同溝化、地域の情報化と合わせた住民等への情報連絡機能の強化など、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことが必要である。 こうした事業には、防災まちづくり事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした都市生活環境整備特別対策事業など単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、これらの地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組みや連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設している。これは、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組み、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものに対して表彰し、全国に紹介しているものである。 消防庁としては、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供などソフト面での支援をも含め、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを総合的に推進することとしている。
コミュニティ放送による緊急情報放送システム等の取組み(大阪府守口市) 平成5年に開局した(株)エフエムもりぐちは、全国の自治体に先駆けて守口市が開局させたコミュニティ放送局である。開局当初より防災情報の放送を第一義に考えており、阪神・淡路大震災後の平成7年8月からは、守口市門真市消防組合消防本部とともに、24時間体制で防災情報をいち早く放送するシステムに取り組んでいる。これは昼間の時間帯に災害が起きた際は、消防本部からリアルタイムで放送局に緊急情報をファクシミリで送信し、アナウンサーが通常の番組に割り込んで放送するもので、放送局が無人となる午後7時から翌朝7時までの時間帯に災害が起きた際には、消防本部に設けられた遠隔放送マイクを利用して消防職員が緊急情報を直接放送している。また、平常時にも消防本部通信司令室から1日2回5分間ずつ、「もりぐちリアルタイム消防」というコーナーで、前日及び当日の消防事故概要と防災メモを全職員担当で放送している。さらに、毎月1〜2回消防職員が放送局のスタジオに出向き、約15分間の生番組「いきいきライフもりぐち」に出演して、防災について訴えている。システム構築以来試行錯誤を繰り返して現在の形となったこの放送は、市民の反応も大きく、何らかの緊急時にラジオのスイッチを入れる市民が増加しているとのことである。 なお、この活動は消防本部とコミュニティ放送局が連携して緊急情報を放送している先進的な例ということで評価され、第5回防災まちづくり大賞総務大臣賞を受賞している。
第4章 規制改革への対応 近年、国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっている。本章では、規制改革に関する政府の取組みとともに、規制改革に対する消防庁の対応について記述することとする。
1 規制改革の推進のための取組み(1)規制緩和推進計画策定以前の取組み 規制緩和推進計画策定前の規制緩和施策としては、平成5年9月の経済対策閣僚会議決定「緊急経済対策」、平成6年2月の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」、平成6年7月の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において、各種の規制緩和措置が盛り込まれ(第4-1表)、それぞれ実施に移されてきた。また、「今後における規制緩和の推進等について」においては、既往の規制緩和方策の成果を踏まえ、今後さらに規制緩和の推進に積極的かつ計画的に取り組むため、平成6年度内に「規制緩和推進計画」を策定することとされた。
(2)規制緩和推進計画の策定及び改定等 平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、規制緩和等が計画的に推進されることとなった。 「規制緩和推進計画」は、平成8年3月29日の閣議決定「規制緩和推進計画の改定について」により計画の改定が行われ、さらに、平成9年3月28日の閣議決定「規制緩和推進計画の再改定について」により計画の再改定が行われた。 また、「規制緩和推進計画」は、平成9年度末をもって計画期間を終了することとなっており、平成9年12月20日に閣議決定された「規制緩和の推進等について」において、平成10年度を初年度とする新たな規制緩和推進3か年計画を平成9年度内を目途に策定することが決定された。
(3)規制緩和推進3か年計画の策定及び改定等 平成10年3月31日には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、我が国経済社会の抜本的な構造改革を図り、国際的に開かれ、自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会としていくとともに、行政のあり方について、いわゆる事前規制型の行政から事後チェック型の行政に転換していくことを基本として、1)経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限との原則の下、規制の撤廃、又はより緩やかな規制への移行、2)検査の民間移行等規制方法の合理化、3)規制の内容の明確化、簡素化、4)規制の国際的整合化、5)規制関連手続の迅速化、6)規制制定手続の透明化を重視し、平成10年度から12年度までの3か年にわたり規制緩和等を計画的に推進することとされた。 また、平成11年3月30日には「規制緩和推進3か年計画(改定)」が閣議決定され、さらに、平成12年3月31日には「規制緩和推進3か年計画(再改定)」が閣議決定された。
(4)規制改革推進3か年計画の策定 「規制緩和推進3か年計画」は平成12年度末をもって計画期間を終了することとなっており、平成12年12月1日に閣議決定された「行政改革大綱」においては、平成13年度を初年度とする新たな「規制改革推進3か年計画」を平成12度末までに策定することとされた。 これを受け、平成13年3月30日には「規制改革推進3か年計画」が閣議決定され、我が国が直面する経済のグローバル化、少子高齢化、情報通信技術革命(IT革命)、環境問題の深刻化等の構造的な環境変化に対応して、経済社会の構造改革を進めることにより、1)経済活性化による持続的な経済成長の達成、2)透明性が高く公正で信頼できる経済社会の実現、3)多様な選択肢の確保された国民生活の実現、4)国際的に開かれた経済社会の実現等を図る観点から、行政の各般の分野について計画的に規制改革の積極的かつ抜本的な推進を図ることとされた。
2 規制緩和推進計画等に対する消防庁の対応(1)規制緩和推進計画における規制緩和項目の措置状況 「規制緩和推進計画」は2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に62項目を計上し、平成12年度末までに、計61項目の措置を行ったところである(第4-2表)。
(2)規制緩和推進3か年計画における規制緩和項目の措置状況 「規制緩和推進3か年計画」は2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に29項目を計上した(第4-3表)。 計画の最終年度である平成12年度においても、「移動タンク貯蔵所の基準」、「給油取扱所に係る技術上の基準」、「保安四法関係の規制」、「セルフサービス方式の給油取扱所の固定給油設備の危険範囲の基準」、「消防用設備等の点検済表示制度」、「消防用設備等の非常電源の常用電源との兼用に係る技術基準化」の規制緩和項目の措置を行い、計画全体を通じては平成12年度末までに、計18項目の措置を行った。 なお、平成13年7月には、消防法を改正し、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲の上限を250度未満とする措置を行うなど、引き続き着実に計画の実施を図っているところである。
(3)規制改革推進3か年計画への対応 平成13年度からの「規制改革推進3か年計画」の策定に当たり、消防庁としては、内外からの意見・要望等を踏まえつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から所管事務の見直しを行った。 以上により、平成13年3月30日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」においては、以下の14項目を計上した(第4-4表)。規制改革推進3か年計画に盛り込んだ事項 ・保安四法関係 ・引火点の高い液体の危険物からの除外 ・防火管理者の業務の外部委託 ・自動火災警報機に係る消防法と高圧ガス保安法の重複規制の撤廃 ・排煙設備に係る技術基準の性能規定化 ・消防法で規定する消火設備に係る技術基準の見直し ・危険物取扱者の実務経験要件の見直し ・危険物取扱者の資格の有効期間又は定期講習の義務付けの見直し ・危険性物質輸送時の運転要員の確保方策 ・給油取扱所における作業場の面積 ・危険物施設の保安検査 ・消防用機械器具の検定 ・タンクローリーに関する規制緩和 ・石油コンビナートの防災資機材の基準
(4)今後の取組み 消防行政に係る規制は、火災予防又は防災の観点から行われる安全規制であり、国民の生命、身体及び財産の保護のため極めて重要なものであるとの認識のもと、消防庁としても、今後とも、安全性の確保に十分配慮しながら、「規制改革推進3か年計画」に定められた各措置を着実に実施するなど、社会的要請に対応した規制改革等の一層の推進を図っていくこととしている。
第5章 国際的課題への対応[国際協力・国際交流]1 国際協力・国際交流の現況(1)開発途上諸国からの研修員受入れア 集団研修の実施 消防庁では、国際協力事業団と協力して開発途上諸国の消防防災職員を対象とした消防行政管理者研修、救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修を実施している。 消防行政管理者研修は、平成元年度から実施しているもので、消防行政管理者の養成に重点を置いた研修コースである。一方、消防に関する技術研修として、救急救助技術研修を昭和62年度から、消火技術研修を昭和63年度から、火災予防技術研修を平成2年度から実施している。平成12年度には、消防行政管理者研修においては8か国から8人(累計294人、消防行政集団研修(昭和45年から63年まで実施)を含む。)、救急救助技術研修については11か国から11人(累計106人)、消火技術研修については9か国から10人(累計115人)、火災予防技術研修については、6か国から7人(累計72人)を受け入れた。 また、集団研修のアフターケアのほか、消防防災分野における国際交流を幅広く展開するため、集団研修経験者を対象としたヒューマン・ネットワークづくりを進めている。イ 個別研修の実施 消防庁では、アの集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修員の受入れを行っている。平成12年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中国幹部消防職員を消防大学校の予防科へ受け入れるとともに、各国大使館、国際協力事業団、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づきブラジル、ロシア、中国、トルコ等の消防防災関係者による消防庁への研修生の受入れを行った。
(2)開発途上諸国への専門家派遣 消防庁は、国際協力事業団と協力し、開発途上諸国へ消防専門家の派遣を行っている。平成11年度には、インドネシア(救急医療技術指導)、マダガスカル(救助技術指導)、カンボディア(消防行政セミナー)、フィリピン(消防学校改善指導)に専門家をそれぞれ派遣した。また、平成12年度から5年計画でタイにおいて進められている救急医療技術を移転するためのプロジェクトにおいて、救急搬送に係る専門家を派遣している。
(3)プロジェクト方式技術協力の実施 消防庁では国際協力事業団と協力して、平成9年10月から中国北京市が設立する北京消防訓練センターに対し、5年間の実施期間で「中国・北京消防訓練センタープロジェクト」を推進している。 本プロジェクトは、5年間で、7分野、十数人の長期専門家(派遣期間が1年以上の専門家)と30人程度の短期専門家(派遣期間が1年未満の専門家)を北京市に派遣するとともに、北京市消防局から20〜30人程度の研修員の受入れを行うほか、必要な機材の供与を行うことにより北京市における消防技術の向上を図ることを目的としている。 平成11年度には、長期専門家4人及び短期専門家6人を派遣するとともに、北京市消防局から職員6人を受け入れて研修を実施した。 (1)、(2)及び(3)で述べた研修員の受入れや消防専門家の派遣をはじめとした開発途上諸国への国際協力は、各国における消防の発展に大きな成果をあげているところである。 *プロジェクト方式技術協力とは、技術協力の基本的形態である「研修員の受入」「専門家派遣」「機材供与」を計画的かつ総合的に組み合わせて実施する形態の技術協力である。
(4)国際交流ア トップマネージャーセミナーの実施 消防庁では、国際協力事業団と協力して、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、海外の消防防災行政に携わる幹部職員との交流セミナーを平成11年度から実施している。平成12年度には、フィリピンから3人を受け入れ、消防庁のほか、東京消防庁、横浜市消防局、京都市消防局との交流を行った。イ 日韓消防交流の推進 日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会、2002年の「日韓国民交流年」等を踏まえ、日韓消防関係者会議の開催など、日韓消防の交流、連携・協力を推進している。ウ 国際消防組織への参画等 義勇消防いわゆる消防団の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟(Federation of World Volunteer Firefighters Association)が設立されており、我が国では、財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会(International Fire Chiefs Association of Asia)は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。平成12年8月7日から8月8日にかけて第21回総会がマレイシアにおいて開催されており、我が国からも消防庁、消防機関等の代表が参画している。 このほか、消防庁では海外の消防防災関係者との交流を適宜実施しており、平成12年度には、ラオスから内務大臣、中国から天津消防科学研究所所長等の訪問を受け入れ、意見交換、視察等を実施している。
2 国際協力・国際交流の課題 災害から生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災における国際協力・交流は、人道主義、国際社会の相互依存関係、環境保全等の観点から、必要性・緊急性の高い分野となっている。 また、近年の傾向として、開発途上諸国においては、人口の増大と都市への集中、産業活動の拡大、自然環境の変化等に伴い、火災をはじめ地震、風水害、土砂災害等により大きな被害が発生する危険性が高まっている。我が国では、過去における様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ね、ハード・ソフトの両面にわたり高度なシステムを整備していることから、積極的な国際社会への貢献が更に求められている。 このため、集団研修、専門家派遣、中国・北京消防訓練センタープロジェクト等開発途上諸国への消防防災技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。 一方、地方公共団体においては、消防防災の分野を含め、国際交流・国際協力をより一層自主的・主体的に推進することが求められている。その支援の一環として、全国市町村国際文化研修所に消防職員研修コースが平成6年度から設置され、平成12年度においては地方公共団体の消防職員23人が消防実務に必要な語学研修等を受講しているところであるが、国際化の進展に対応した取組みの実施、体制整備については、引き続き推進を図ることが重要である。
[国際消防救助隊] 昭和60年11月14日(現地時間13日)に発生したコロンビアのネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際して、救助隊の派遣について意向打診が外務省から消防庁に対して行われた。この援助活動は実現には至らなかったが、消防庁では、こうした活動には国際協力の一環として積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service 略称“IRT-JF”愛称“愛ある手”)を整備したところである。その後、政府は外務省を中心に、海外で大災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月に「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布施行された。 この法律は、海外における大規模災害時に、被災国政府等の要請に応じて実施する総合的な国際緊急援助体制の整備を図ることを目的としたものであり、消防庁長官は、外務大臣からの協力要請及び協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなった。 国際緊急援助隊の一部を構成する国際消防救助隊は、世界のトップレベルの救助技術を有する救助隊として、これまで11回海外において救助活動や支援活動を行っている(第5-1表)。近年では、トルコ西部における地震災害や台湾地震災害において迅速に出動し、高度な資機材を用いて救出活動をしたところである。 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、平成13年度より登録消防本部・隊員数を40消防本部501人体制から62消防本部599人体制に拡充したところである。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制をさらに強化することとしている。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成活動を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても昭和62年7月にはISO/TC21協議会を設置し、ISO対策の充実強化を図り積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成13年3月31日現在、以下の45の規格が国際規格として定められている。 ISO 3941	(1977/10/1)火災の分類 ISO 6309	(1987/8/15)安全標識 ISO 6790	(1986/12/15)消防設計図・仕様書の図式記号 ISO 8421-1	(1987/3/1)用語-第1部:一般的な火災の現象及び用語 ISO 8421-2	(1987/3/1)用語-第2部:建築物の防火 ISO 8421-3	(1989/11/1)用語-第3部:火災の感知及び警報 ISO 8421-4	(1990/2/15)用語-第4部:消火装置 ISO 8421-5	(1988/10/1)用語-第5部:煙の制御 ISO 8421-6	(1987/12/1)用語-第6部:避難及び避難方法 ISO 8421-7	(1987/12/1)用語-第7部:爆発感知及び制御方法 ISO 8421-8	(1990/8/15)用語-第8部:消防、救助、危険物の取扱いに関する特有用語 ISO 7240-1	(1988/9/1)火災感知及び警報システム ISO 7165	(1999/12/1)手提式消火器(機能及び構造) ISO 11601	(1999/12/1)車載式消火器(機能及び構造) ISO 6182-1	(1993/7/1)閉鎖型スプリンクラーヘッド ISO 6182-2	(1993/6/15)湿式警報弁 ISO 6182-3	(1993/6/15)乾式警報弁 ISO 6182-4	(1993/9/1)急速開放弁 ISO 6182-5	(1995/11/15)デリュージ弁 ISO 6183	(1990/7/1)二酸化炭素消火設備(設計及び設置上の基準) ISO 6184-1	(1985/11/15)空気混合の可燃性粉塵の爆発指数の測定 ISO 6184-2	(1985/11/15)空気混合の可燃性ガスの爆発指数の測定 ISO 6184-3	(1985/11/15)空気混合の燃料の爆発指数の測定 ISO 6184-4	(1985/11/15)爆発制御装置の効果の測定 ISO 7202	(1987/6/1)粉末消火薬剤 ISO 5923	(1989/12/15)二酸化炭素消火薬剤 ISO 7201-1	(1989/12/15)ハロン1211及びハロン1301消火薬剤の仕様書 ISO 7201-2	(1991/12/15)ハロンの安全な輸送及び取扱い手順の基準 ISO 7203-1	(1995/12/15)非水溶性液体用低発泡用泡消火薬剤 ISO 7203-2	(1995/12/15)非水溶性液体用中・高発泡用泡消火薬剤 ISO 7203-3	(1999/3/1)水溶性液体用低発泡泡消火薬剤 ISO14520-1	(2001/8/1)新ガス消火剤による消火設備-一般要件 ISO14520-2	(2001/8/1)  〃          -CF3I ISO14520-3	(2001/8/1)  〃          -FC-2-1-8 ISO14520-4	(2001/8/1)  〃          -FC-3-1-10 ISO14520-6	(2001/8/1)  〃          -HCFC Blend A ISO14520-7	(2001/8/1)  〃          -HCFC 124 ISO14520-8	(2001/8/1)  〃          -HFC 125 ISO14520-9	(2001/8/1)  〃          -HFC 227ea ISO14520-10	(2001/8/1)  〃          -HFC 23 ISO14520-11	(2001/8/1)  〃          -HFC 236fa ISO14520-12	(2001/8/1)  〃          -IG-01 ISO14520-13	(2001/8/1)  〃          -IG-100 ISO14520-14	(2001/8/1)  〃          -IG-55 ISO14520-15	(2001/8/1)  〃          -IG-541 また、ISO/TC94/SC13(防護服)分科委員会において進められている消防隊用防護服等の規格策定作業についても、積極的に参加しているところである。平成13年3月31日現在、19の規格が国際規格として定められている。
2 規格の国際化への対応 近年、WTO等における非関税障壁低減に関する包括的な取組みの中で、各国個別の基準・認証制度を国際整合化することの重要性が認識されてきた。そして、1995年1月にはWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効し、国際規格の導入はWTO加盟国の義務となった。日本はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期より参加するとともに、多くの実験データを提供するなど国際規格の策定に積極的に貢献してきた。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、他の国々と連携を図りつつ引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全]1 ハロン消火剤等の使用抑制 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において指定され、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなったことにより、現在あるハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を設置し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組み、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略と併せ、日本全体として取りまとめの上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどしたところである。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガス種・設置方法について平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成13年1月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。今後もハロン1301を貴重な資源として捉え、クリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理のもとに使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクルを効率的かつ的確に行うことを目的として設立されたハロンバンク推進協議会を活用して回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
2 消防用設備等における環境・省エネルギー対策の推進 近年の地球環境問題に関する社会情勢等から、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組みが求められている。 このため、消防庁では、平成11年度において、消防用設備等全般における環境・省エネルギー対策について調査研究を行ったほか、これを踏まえ、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の一環として、平成12年度から5年計画で消火器と防炎物品のリサイクルの推進に取り組んでいるところである。 また、環境問題への対応や省エネルギー等の観点から、天然ガス若しくは液化石油ガスを燃料とする内燃機関又はガスタービンを原動機とする自家発電設備が開発され、また、コージェネレーション等の常用電源としての自家発電設備が普及してきたことに対応して、平成13年3月に、消防用設備等の非常電源である自家発電設備について、常用電源との兼用等に係る技術基準の整備を行った。
ISO/TC21千葉会議2001 ISO/TC21は、消防器具に関するISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)規格について審議するTC(Technical Committee:専門委員会)で、その総会は、2年に1回開催されている。今年で15回目となるISO/TC21の総会は、「ISO/TC21 千葉会議 2001」として、平成13年9月10日から14日までの5日間、千葉県にある幕張メッセ国際コンベンションホールにおいて開催された。 この千葉会議では、13か国81人の方々(国内参加者37人を含む。)が参加し、総会のほか、各種SC(Sub Committee:分科会)において活発な審議が行われた。 総会で決議された事項(RESOLUTION 90から95)の概略は、次のとおりである。・RESOLUTION(決議) 90(CHIBA 01) ISO/TC21は、各SCの議長がTCと合同で、ビジネスプランを検討し、TC21総会の都度、提案事項と併せて報告を行う。・RESOLUTION 91(CHIBA 02) ISO10085(消防用自動車のシンボル)に関して、審議していたWG(Working Group:作業部会)2の解散に伴い、今後の処理をISO内に設定した電子メール方式によって行う。・RESOLUTION 92(CHIBA 03) 「煙及び熱の制御システム及び部品」について、1)新たに、SC11を設立する。2)事務局は、ドイツとする。3)ISO/TC92及びCEN(European Committee for Standardization:ヨーロッパ標準化機構)/TC191/SC1との連絡を密にする。4)まず部品の規格の作成検討から始める。5)ISO/TMB(Technical Management Board)に通知する。・RESOLUTION 93(CHIBA 04) 審議内容に応じ、SC6及びSC8の名称の変更について検討する。・RESOLUTION 94(CHIBA 05) SC2の事務局がフランスから韓国に移管された。・RESOLUTION 95(CHIBA 06) SC3の事務局がイギリスからオーストラリアに移管された。 最後に、次回の総会については、欧州で開きたいとの意向が事務局から示されたが、詳細については今後6か月の間に決めることとされた。
第6章 消防の科学技術の研究[研究・開発の推進] 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 昭和23年に設立されて以来、我が国における消防の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきた消防研究所は、中央省庁等改革の一環として平成13年4月1日に独立行政法人消防研究所となった。 消防研究所では、我が国唯一の国立の消防防災に関する研究機関として、基礎的な経常研究を継続的に実施するとともに、社会的、行政的要請の高い課題については期限を定め、特別研究などとして重点的に研究費を配分して研究を実施してきた。 独立行政法人消防研究所では、5年間の期間中に達成すべき「業務運営の効率化」「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上」等に関する具体的な目標が「独立行政法人消防研究所中期目標」として定められており、その中で「災害対応への情報化の促進」、「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」、「消火・救急・救助活動の技術の高度化」、「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の四つの研究領域については重点的に研究を実施することとされている。中期目標では重点研究領域とは別に、「物質の燃焼現象」、「消火の理論と技術」、「救急・救助」等の研究分野における基盤的研究の充実を求めている。 そのほか、外国の研究機関、国内の大学あるいは企業との共同研究をこれまで以上に積極的に進め、研究成果の活用に努めることなど、「業務運営の効率化」が目標とされている。
地下施設火災における加圧排煙技術に関する研究 地下施設には、多くの用途・形態があり、地下街、地下駐車場、地下駅舎、道路トンネル、鉄道トンネル、地下通路等がある。近年、都市地域における土地の高度利用の観点から、これらの地下施設の中で地下トンネルとともに地下駐車場のように地下階を多階に設け、深層化並びに大規模化した深層地下施設が増加する傾向にある。地上施設と比較し窓がない閉鎖的空間である深層地下施設は、万一火災が発生すると新鮮な空気の流入が制限され、煙が大量に発生し地下空間内に滞留しやすい構造となっている。深層地下施設火災は、濃煙による避難障害に加えて消火、救助等の消防活動が困難になるおそれがあり、避難及び消防活動支援のための排煙対策が重要である。 特に、深層地下施設火災では、煙が階段を通して下から上昇してくるので、消防隊員は地下内部に進入しにくく、消防活動拠点等の確保が困難になることが予想される。そこで、給気側にクリーンな空間を確保でき、深層地下施設内に消防活動拠点を確保するために有効な加圧排煙技術について研究した。写真に示す中規模地下基本模型を用いて加圧排煙実験を行い、火源の発熱速度、火災室の熱気流温度等と進入口の遮煙風速の関係について研究を行った。これらの実験から、進入口から給気側区画への煙の流出、拡大を防ぐための加圧排煙を導入した施設による遮煙風速の予測が可能となり、加圧排煙を設計するに当たり、火源の発熱速度に応じた送風機の加圧給気量を算定できるようになった。
1 特別研究 消防研究所で平成12年度に終了した特別研究は、次のとおりである。
(1)放出されたガス系消火剤の流動と混合に関する研究 オゾン層保護のために開発されたハロン代替の新消火剤が抱える諸問題を解決するため、防護区画内に放出されたガス系消火剤の流動と混合過程についての模型実験と数値シミュレーションの結果を比較検討し、ガス系消火設備の設計の合理的評価が可能なシミュレーションコードを開発した。
(2)危険物の判定試験法に関する研究 危険物の危険に関する試験は、日本国内では消防法令等により、海上及び航空輸送では国際的規約に定める方法により行われている。これらの試験法を、より簡便で合理的なものとするため、自己反応現象及び酸化性物質による燃焼現象についての基礎的理解を図った上で、試験法の改良及び新たな提案を行うための研究を行った。
(3)地下施設における消防活動のための排煙技術に関する研究 都市地域における土地の高度利用から、深層化、大規模化した地下施設が増加しているが、これら地下施設で火災が発生した場合、煙が大量に発生し施設内に煙が充満するおそれがある。このため、消防活動が必要となる火災盛期においても、消火・救助活動が視界不良等により阻害されないよう、消防活動支援のためのシステムを開発した。
2 経常研究 特別研究のほか、消防防災に係る科学技術の基礎的・継続的研究として、平成12年度には下記27課題の経常研究を行った。
(1)地震防災に関連した研究 ○ 地震時の応急対策のための情報収集・処理に関する研究 ○ 斜面崩壊の発生時間の予測に関する基礎的研究 ○ 長周期地震動のハザードマップの作成とリアルタイム予測システムの構築 ○ 都市直下の活断層を震源とする強震動予測に関する研究 ○ リモートセンシングデータによる災害危険度評価に関する基礎的研究 ○ 地震火災リスクの評価手法に関する研究
(2)消火に関連した研究 ○ ガス系消火剤添加火炎中のCO生成挙動に関する基礎的研究 ○ 非金属材料の消火設備用配管及び管継手における流体特性に関する研究 ○ 集積可燃物の延焼阻止剤による自己燃焼限界に関する研究 ○ 負触媒物質による火炎抑制の機構に関する研究
(3)燃焼・火災に関連した研究 ○ 文化財建造物の防炎対策に関する研究 ○ 火災時に形成される電気ケーブル溶融痕の形態に関する研究 ○ AE法による構造部材の腐食モニタリング技術に関する基礎的研究 ○ 熱可塑性プラスチックの溶融に伴う火炎広がりに関する研究 ○ 毛羽だった表面を伝ぱする火炎に関する研究 ○ 森林火災性状に関する基礎的研究 ○ 火災発生危険基準及び土壌水分と林野火災発生件数の関係に関する研究 ○ リチウムとリチウム塩を用いた新機能材料の燃焼特性と消火に関する研究 ○ 既存建築物の業種別火災リスクに関する研究
(4)消防設備・消防資機材に関連した研究及びその他の研究 ○ 広報用拡声装置の明瞭度の制御に関する研究 ○ 市街地火災に対する消防力の運用効果の評価に関する研究 ○ ベランダ昇降ロボットの動作安定のための改良に関する研究 ○ マイクロ波が及ぼす感知器への影響に関する研究 ○ 消防用救助ロボットの開発に関する調査研究 ○ 住宅火災による死者発生リスクとその低減対策に関する研究 ○ 防火服の耐熱性能の評価に関する研究 ○ 視覚情報が避難行動に及ぼす影響に関する基礎的研究
3 その他の研究 消防研究所では消防防災の研究をより積極的に行うため、文部科学省科学技術振興調整費等の外部の資金を活用して研究を行っている。平成12年度に実施したこれらの研究の概要は、以下のとおりである。(1)酸化性物質の危険性評価試験の調和に関する研究(2)エネルギー物質の危険度評価方法に関する国際的総合研究(3)粒子画像計測法を用いた開口部噴出火炎性状に関する実験研究(4)石油燃料の導電率測定に関する研究(5)原子力施設における火災安全に関する研究
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防の科学技術に関する研究は、消防機関の研究部門においてもなされている。平成12年度において消防科学技術の研究部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、横浜市消防局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の8本部がある。 消防機関の研究部門の概要は第6-1表のとおりである。研究部門の定員は8機関で84人となっており、また、研究費は約160万円から7,000万円まで地方公共団体により大きな違いがあり、その総計は1億1,360万円となっている。 また、これらの研究部門は毎年1回持ち回りで「指定都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術について意見交換を行っている。
2 消防機関における研究の概要 ほとんどの研究機関で一般の火災研究を行っており、ついで危険物の判定等の試験研究、火災原因究明等の調査研究を行っている。消防装備の開発については、装備担当部門単独又は協力して行っている本部もある。 また、平成7年度から、多くの機関で地震時の出火防止対策及び消火等の地震対策研究が開始され、その後も続けられている。
3 消防防災機器類の開発等の表彰 自治体消防制度50周年を記念して、消防庁は消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的に、消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文を募集し、優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を発足させた。平成12年度は一般及び消防関係者から合計102編の応募があり、そのうち14編が表彰された。
[研究の協力と交流]1 国際共同研究及び国際協力 火災等災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、災害の情報や研究の成果等を相互に公開し研究を効率的に進める必要がある。また、大量の危険物等が国境を越えて流通しているので、それらの安全に関する国際規格を作成するためにも研究の国際的協力が必要である。このため、共同研究、研究者の交流等を積極的に推進している。
(1)国際共同研究 平成12年度は次の2研究を行った。ア 英国保健安全研究所(HSE/HSL、韓国釜慶大学等9か国、17機関)と共同で、エネルギー物質の危険度評価方法に関する国際総合研究を行った。イ オランダ応用科学研究所(TNO)研究所と共同で、酸化性物質の危険性評価試験の調和に関する研究を行った。
(2)外国研究者の受入れ 火災関連の外国人研究者を受け入れ、国際的に関心のある課題について協力して研究を行っている。平成12年度は南京理工大学の4人をSTAフェローとして受け入れ、固液相界面における酸化還元反応、自己反応性物質の熱分解特性及びエネルギー物質の熱分解特性に関する研究を行った。
2 消防機関との協力消防研究所は消防機関の協力を得て以下の共同研究等を行った。ア 横浜市消防訓練センターと共同で、水/空気混合噴霧の消火性能についての研究を行った。
3 大学及び民間企業等との共同研究及び協力 消防防災の研究をより効率的に進めるため、積極的に産学官の共同研究を進めている。このため、消防用機器等の開発に当たっては、民間企業にその開発内容を明示し、公募により共同研究を行っている。また、消火剤と危険物に関連した基礎的研究を大学の研究室と共同で行っている。平成12年度は次の19件について共同研究を実施した。
(1)大学との共同研究等 消防防災に関連した火災安全等の研究を行っている大学の研究室と、火災・燃焼・消火等に関連した以下の共同研究等を行った。ア 電気通信大学電気通信学部及び民間企業3社と共同で、AE法による構造部材の腐食モニタリング技術に関する基礎的研究を行った。イ 名古屋大学工学系研究科及び筑波大学機能工学系と共同で、ガス系消火剤添加火炎中のCO生成挙動に関する研究を行った。ウ 福井大学工学部及び東京大学大学院工学系研究科と共同で、放出されたガス系消火剤の流動と混合についての研究を行った。エ 東京大学大学院新領域創成科学研究科と共同で、エネルギー物質の分解の激しさ評価試験方法についての研究を行った。オ 東京大学大学院工学系研究科と共同で、大規模石油タンク火災の放射特性についての研究を行った。カ 東京工業大学大学院総合理工学研究科と共同で、視覚情報が避難行動に及ぼす影響に関する研究を行った。キ 青山学院大学理工学部機械創造工学科及び東京大学大学院工学系研究科と共同で、ウォーターミスト消火のシミュレーション手法についての研究を行った。ク 京都大学大学院情報学研究科と共同で、消防用救助ロボットの開発について研究を行った。ケ 静岡大学工学部と共同で、金属ナトリウムの燃焼と消火に関する基礎的研究を行った。
(2)非営利団体との共同研究等 特殊法人等非営利団体と以下の共同研究等を行った。ア 核燃料サイクル開発機構と共同で、ナトリウム燃焼挙動についての研究を行った。イ 財団法人総合安全工学研究所と共同で、大規模石油タンク火災の放射特性についての研究を行った。ウ 財団法人日本消防設備安全センターと共同で、非金属材料の消火設備用配管及び管継手における流体特性についての研究を行った。
(3)民間企業等との共同研究等 民間企業等と以下の共同研究等を行った。 ○ 消防活動支援情報システムの通信基礎技術に関する研究 ○ AE法による構造部材の腐食モニタリング技術に関する基礎的研究 ○ 中高層建物における延焼性状に関する研究 ○ 水/空気混合噴霧の消火性能に関する研究 ○ 固体可燃物火災に対するガス系消火剤の性能評価に関する研究 ○ 地震時における小規模タンクの損傷に対する安全性評価に関する研究 ○ スプリンクラー等による消火効果を考慮した区画火災の燃焼特性の研究
[研究成果の公開及び普及] 消防研究所では、研究成果を広く一般に公開するとともにその普及を図るため、以下の活動を行っている。
(1)全国消防技術者会議 昭和28年以来、毎年、全国の消防技術者を対象として「全国消防技術者会議」を開催している。平成12年度は、10月19日及び20日の2日間、第48回会議を開催し、約560人の参加のもと、研究発表、意見交換等を行った。
(2)消防防災研究講演会 消防研究所創立50周年に当たる平成9年度から、消防研究所の研究成果を広く普及すること等を目的として、「消防防災研究講演会」を開催している。平成12年度は、平成13年1月26日に第4回講演会を開催し、約70人の参加のもと、「市街地火災における空中消火技術」をテーマとして講演、討論等を行った。
(3)一般公開 科学技術週間の一環として消防研究所の一般公開を平成12年4月21日に開催し、全国の消防関係者、企業、大学等の研究機関、一般市民等約450人の参加を得た。
(4)消防研究所研究資料等の発行 消防研究所では、定期的に「消防研究所報告」、「消研輯報」及び「消防研究所年報」を発行しているほか、個々の研究課題ごとに報告書をとりまとめるなど、研究成果の普及に努めている。
[消防の科学技術研究の課題] 消防研究所は、平成13年4月1日から独立行政法人に移行した。独立行政法人消防研究所の発足に向けて総務省に独立行政法人評価委員会が設置され、消防研究所の中期目標、中期計画、業務実績の評価の体制が整えられた。 独立行政法人化後は、独立性を発揮して必要とされる研究課題に消防研究所がより一層柔軟な体制で対応することが期待されている一方、消防行政と研究との一体性を確保すること、消防の科学技術の研究を進めるうえでの消防機関との連携をこれまで以上に推進させること、近年重要度の増している救急に関する研究に取り組むことなどが、消防研究所に課せられた課題である。 消防の科学技術研究に関しても国際的な調和の達成と、国際貢献、特にアジア・オセアニア地域への貢献をより重視することが望まれている。
第7章 今後の消防防災行政の方向 我が国は、これまで幾多の災害を経験してきており、近年においても、戦後最大の被害をもたらした阪神・淡路大震災が発生し、その後も、地下鉄サリン事件、ナホトカ号海難事故、茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故、有珠山や三宅島などの噴火のほか、各地における豪雨や台風による災害が起きている。 本年に入っても、芸予地震や台風第11号、台風第15号などの自然災害、新宿区歌舞伎町の雑居ビルでの火災や兵庫県明石市において開催された花火大会での事故など、全国各地で住民生活の安全を脅かす災害・事故が相次いで発生している。 このため、消防防災行政に重要な役割を担っている地方公共団体が、安全な地域社会づくりに向け、その使命を十分に果たしていくことができるよう、今後とも各般の施策を強力に展開して、消防防災行政の推進及びその体制の充実強化を図っていく必要がある。 具体的には、新時代にふさわしい消防のあり方、消防防災におけるIT化の推進、消防防災技術に係る研究・開発の推進、国際協力の推進と国際化への対応、技術革新等に対応した規制改革の推進、地方公共団体における危機管理機能の強化、震災対策の充実、特殊災害対策の充実、消防力の整備充実、消防団の充実強化、自主的防災活動の促進、救急・救助の充実・高度化、住宅防火など火災予防対策の推進、危険物施設等の安全の確保、石油コンビナート災害対策の充実強化などに積極的に取り組むことが必要である。
1 新時代における消防行政の展開(1)新時代にふさわしい消防のあり方 昭和23年の消防組織法施行以来、市町村が、当該市町村の区域における消防を十分に果たすべき責任を有することとされ、常備消防と消防団は、連携して地域防災の任に当たってきた。 一方、国民の安全に対する意識が高まってきているほか、少子高齢化の進展、過疎・過密化の進行など消防を取り巻く社会環境は大きく変化している。このような状況の下で、消防に対する国民ニーズも高度化・多様化しており、これらに的確に対応する消防体制のあり方等を検討することが必要である。 常備消防については、国民のニーズに対する各消防本部の対応力を高める観点から、市町村合併や一部事務組合や事務委託等の広域行政制度により、小規模消防本部の広域再編が進められてきた。また、大規模災害発生時など、個々の市町村では十分な対応のできないような場合の緊急消防援助隊等による相互応援体制の充実を進めてきている。 一方、救急需要の増大、高度化、予防業務の専門化の要請などをはじめとして、消防需要は、今後より高度化・多様化していくことが予想される。これらの消防需要の変化に的確に対応し、住民の期待と信頼に応えられる消防サービスを提供していくためには、消防本部の広域再編だけにとどまらず、県・市町村の役割分担のあり方、消防機関の業務運営のあり方など、新時代にふさわしい常備消防のあり方について総合的に検討する必要がある。 また、消防団は、地域社会のニーズに対応して、火災対応はもとより、幅広い活動を行っており、住民からも評価を受けている。例えば、阪神・淡路大震災を契機として再認識されたように、大規模地震、風水害等の大規模災害発生時には、消防団は、その要員動員力や地域密着性といった特性を活かし、大きな力を発揮している。また、火災など通常災害への対応でも、消防団が大きな役割を果たしている地域が多い。さらに、地域密着性という利点を活かし、平常時における住民への防災指導等のほか、各種の地域行事、地域の高齢者対策等のコミュニティ-活動面での重要な役割を担っている消防団が多く、今後も、その地域密着性、要員動員力等の特性を活かしながら、地域社会の幅広いニーズに応えていくことが期待されている。 一方、消防団は、常備化の進展や就業構造の変化、国民意識の変容等の社会環境の変化に伴い、消防団員数の減少、被雇用者である団員の増加等に直面しており、今後、消防団が社会環境の変化などに的確に対応しながら、地域社会の要請に応えていく観点から、消防団の制度、運営等のあり方について検討していく必要がある。
(2)消防防災におけるIT化の推進 災害時において、国、地方公共団体が迅速かつ的確に対応するためには、情報の収集・伝達が極めて重要である。 このため、引き続き防災行政無線等の整備充実に努めるとともに、大規模地震時等においても確実な情報連絡が可能となるよう、通信ルートの二重化や通信施設の耐震化、バックアップ体制の確保等に努める必要がある。 とりわけ、地上災害の影響を受けにくい地域衛星通信ネットワークの整備は、地上系防災行政無線とあいまって通信ルートの二重化が図られるとともに、画像情報など多角的な情報通信を可能とするものであり、未整備の地方公共団体にあっては早急な整備が求められる。また、地域衛星通信ネットワークを活用して災害現場の映像を伝送し、国や地方公共団体が被害状況の概略を速やかに把握し、画像情報を共有化することができる画像伝送システムの整備を進める必要がある。特に、機動性に優れ災害現場情報をリアルタイムに収集・送信できる衛星車載局、可搬型衛星地球局、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置等の機器整備が急がれるところである。 さらに、現在消防庁においては、消防・防災ヘリコプターの運航状況をはじめ備蓄物資等の広域応援の対応力、危険物災害対応情報、消防防災統計など消防防災に係る情報についてデータベースを整備しているところであるが、今後もこれらの充実を図り国及び地方公共団体におけるデータの共有化を進めるとともに、防災対策の企画立案、災害時における円滑な広域応援活動の支援等、一層有効に活用できるよう全国的なネットワーク化を推進することが必要である。 加えて、市町村と住民との間のきめ細かい情報収集・伝達を可能とするため、インターネット技術を活用した被災地住民向け災害情報システムの普及を図るとともに、地域のCATV、コミュニティFM等の活用も含め、災害時における被災者等への情報伝達や、地域住民からの情報提供にも配慮した地域の情報化施策を推進する必要がある。 一方、情報通信の分野における最近の技術革新とその普及にはめざましいものがある。消防防災の分野においても、こうしたIT(情報通信技術)革命に対応した情報化を推進するため、積極的にその技術を導入し、より高度な防災情報通信体制を構築していくことが求められている。例えば、国、都道府県、市町村及び消防機関における情報の収集・伝達をより円滑に行うため、電話やファクシミリ、映像のほかに地図情報等のコンピュータデータなど多様な防災情報を高速で通信できるよう、衛星通信ネットワークの機能強化・充実を図る必要がある。これを実現するため、デジタル技術を用いた衛星データ通信等が可能な次世代衛星通信ネットワークシステム(平成14年度以降に導入予定)への移行促進とこれに対応した衛星地球局の整備を促進する必要がある。 また、今後の消防・救急無線の高度化を図り、過密な電波環境へ対応するため、消防・救急無線のデジタル化を進めていく必要がある。 とりわけ、携帯電話の普及により、携帯電話からの119番通報が急増しているところであるが、携帯電話からの119番通報の場合、現状の消防本部のシステムでは通報者の位置が特定できないため、GPS等を用いた携帯電話からの119番通報の発信地表示システムの検討を行うとともに、現行の可搬型衛星地球局が大きく機動性に劣る面があることから、災害時における機動性に優れた小型衛星電話の開発を行うなど高度防災情報通信体制の整備を推進する必要がある。さらに、近年、ハッカーによるデータ破壊、コンピュータウィルスによるシステム停止等が増加してきていることから、情報システムのセキュリティ対策を一層徹底する必要がある。 国においては、住民の利便性向上と地方公共団体の事務の簡素効率化を図るため、平成11年に内閣総理大臣が決定したミレニアムプロジェクトをはじめ、内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部により平成13年に決定されたe-Japan戦略、e-Japan重点計画等により、平成15年度までに、国民等と国との間の申請・届出等の実質的にすべての手続について、オンライン化を図ることとしている。また、国民と地方公共団体との間の申請・届出等手続についても、平成15年度までにオンライン化に関する実施方策を提示することとしている。 これを受けて消防防災分野においても、国民等が行う、国に対する申請・届出等手続については平成15年度まで(一部については平成14年度中)にオンライン化を図り、また、地方公共団体に対する申請・届出等手続については平成15年度までに実施方策を提示することとしている。このための技術仕様及び技術的課題については、外部の有識者や消防機関の代表者、申請・届出を行う者の意見を参考に検討を行っているところであり、消防防災分野の申請・届出等の電子化に係る基本仕様等について、申請書等の取得と送付、エラーチェック等を行う受付システム、審査を支援するためのシステム、申請書、添付図面等を時系列により管理する保管システム、申請者の申請を支援する周辺システムにより構成されるものとし、消防用設備等の設置届出等危険物施設等の設置許可等の図面等を添付する必要がある申請・届出等の電子化に当たっては、図面の電子化は図面の標準化の動向などを踏まえた方式とする方向で、基本仕様に基づく研究開発を行っているところであるが、今後も汎用受付等システム、個人認証基盤、電子決裁システム、セキュリティシステム等関係するシステムや、申請・届出等の手続において関連する事務を所管する各省庁との連携を図りつつ、研究開発の推進を図ることが必要である。
(3)消防防災技術に係る研究・開発の推進 災害に強い安全なまちづくりを行うためには科学技術の面からの取組みも重要である。このため、平成13年4月に独立行政法人となった消防研究所と一体性を確保しつつ消防防災技術の研究開発に取り組んでいるところであり、大規模災害の発生に備え、被害状況の早期収集システムの開発、地域防災活動拠点の安全性確保、消火用水の不足に備えた消火剤等を混入した水による延焼阻止技術の高度化等の研究開発や、高齢者等災害時要援護者の安全確保に資する住宅内電気器具の火災感知器への応用技術等の確立、消防力の充実強化のための消防装備・消防通信機器等の高度化の研究、危険物施設の安全確保等の研究を行っていくこととしている。 また、これらの研究を効率的に行うため、国内外の大学・企業、研究機関との共同研究を積極的に進める必要がある。 加えて、資源の再利用など環境保護についての社会的要請を踏まえ、消火器、防炎物品等のリサイクル・リユースに関する調査研究を進めるとともに、ハロン代替消火剤の研究等を推進する必要がある。
(4)国際協力の推進と国際化への対応 消防防災に関する各国共通の課題への対応を図るため、集団研修、専門家派遣、中国・北京消防訓練センタープロジェクト等開発途上諸国への消防防災技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的に推進する必要がある。また、平成11年1月にコロンビア、8月にトルコ、9月に台湾において発生した地震に際しては、直ちに国際消防救助隊を派遣したが、引き続き、海外の被災地における救助活動が、より迅速かつ円滑に行われるよう、登録隊員の教育訓練等の充実強化を図るとともに、国際消防救助隊員の後方支援的業務について関係機関とともに検討する必要がある。 さらに、消火剤として幅広く使用されているハロン及びハロン代替消火剤(HFC等)については、オゾン層保護及び地球温暖化防止の観点から国際的な排出抑制の取組みが行われている。我が国においても、モントリオール議定書締約国会合等の国際会議の動向も踏まえ、平成12年7月に国連環境計画(UNEP)に提出した「国家ハロンマネジメント戦略」に基づき、火災からの人命の安全、財産の保護を考慮しつつ、十分な管理のもと、クリティカルユースに限定してハロン消火剤を適切に使用し、その有効な回収・再利用についても、ハロンバンクの円滑な運用等により実施する。また、新たに開発されるハロン代替消火剤についても、消火性能及び毒性の評価を行い、その適正な設置を図っていくとともに、HFC系の消火剤については地球温暖化防止の観点からその排出抑制を図る必要がある。 次に、ISO(国際標準化機構)が行っている消火器、スプリンクラー設備等の消防用機器に係る国際規格の策定作業に引き続き積極的に参加するとともに、消防機器等の国際化に関する国内業界、消防機関等への周知徹底及び対応体制についての検討を行っていく必要がある。なお、今年はISO/TC21(消防器具)の国際会議が、千葉県の幕張メッセにおいて総会のほか併せて9の会議が開かれ、活発な討議が行われた。
(5)技術革新等に対応した規制改革の推進 消防行政に係る規制は、火災予防又は防災の観点から行われる安全に関する規制であり、国民の生命、身体及び財産の保護のために極めて重要なものである。 一方で、安全性の確保に十分配慮しつつ、経済の活性化、内需の拡大化、国民負担の軽減化、行政事務の簡素化を図るという規制改革の趣旨を踏まえ、「規制緩和推進3か年計画(再改定)」等の着実な実施を図り、社会的な要請に対応した規制改革の一層の推進を図ってきたところである。 さらに、「規制改革推進3か年計画」にのっとって、多様なニーズに対応した選択の幅の拡大、技術革新等による新技術・新素材の円滑な導入、手続の簡素化を図るため、消防用設備等や危険物の規制に関する技術上の基準について性能に主眼をおいた規定への見直しを引き続き推進する。
2 総合的な防災対策の推進(1)地方公共団体における危機管理機能の強化 阪神・淡路大震災等、近年の各種災害の教訓を踏まえ、大規模災害に適切に対応できる防災対策を確立することが、現下の緊急の課題となっている。 地方公共団体における危機管理機能の強化に向け、実践的な防災体制を構築するためには、初動対応を含めた災害対応が的確かつ迅速に行われるよう機動的かつ実践的な防災体制を構築することが重要である。 特に、都道府県を越える圏域に被害が及ぶ広域的な大規模災害に適切に対応するため、都道府県を越える圏域に被害が及ぶ大規模災害に適切に対応できる広域的な防災体制等を検討するとともに、実践的な訓練を支援していく必要がある。 また、地域における総合的な防災対策の充実を図るため、防災基本計画及び総務省・消防庁防災業務計画を踏まえつつ、防災アセスメントや被害想定に基づき、その防災行政の基本となる地域防災計画を、地域の実情に応じた実践的なものに見直していく必要があるとともに、首長や職員への研修を充実するなど災害時の初動体制の強化等を推進していく必要がある。 このほか、都道府県、市町村による地域防災計画に基づく総合的な防災体制を評価する指針の作成、火山、風水害等各種災害に対応したハザードマップの作成・公表の促進及び地図情報システムと連動したデータベースの構築等により、地域の災害対応力の充実を図る必要がある。 さらに、大規模災害等に見舞われた場合であっても、その被害を最小限にとどめるためには、地域そのものが災害に対し強い構造を持つよう、災害に強い安全なまちづくりを進めることが極めて重要である。 そこで、防災センター等の防災拠点施設、防災行政無線等の防災情報システム、避難地等地域の防災基盤の整備を推進する必要がある。 大規模災害対策については、個々の防災関係機関が体制強化を図るほか、市町村あるいは都道府県の区域を越えた広域的な消防の応援体制を確立することが重要である。 このため、人命救助活動等に関して全国の消防機関相互による広域応援を行う緊急消防援助隊の活動に必要な可搬型衛星地球局、衛星車載局車等の車両や資機材の計画的な整備を推進するとともに、合同訓練等の各種訓練を実施していく必要がある。また、大規模災害時において、緊急消防援助隊による広域消防応援の円滑な実施を確保し、消防庁や被災地消防機関、派遣元消防機関、官邸等との間の情報通信機能を強化するため、情報通信部隊の創設を含めた体制の充実強化を図る必要がある。 さらに、非常用物資の備蓄、救援用物資の集配、ヘリコプター輸送等の拠点としての機能を有する広域防災拠点の整備を推進するなど、広域的な応援体制の強化を図っていくことが重要である。 また、消防・防災ヘリコプターは、各種災害状況の把握、林野火災に対する消火、人命の救助等に極めて有効であるが、特に、大規模災害時にはその果たす役割が大きいことから、各地方公共団体の消防・防災ヘリコプターをより迅速かつ機動的に運用することが必要である。 したがって、大規模災害時のヘリコプターの集中運用時について受援側の受け入れ体制の強化を図るなど、平時はもちろん大規模災害時においても適切な運用が図れるような体制を確立していくとともに、航空隊員の資質向上を図っていく必要がある。
(2)震災対策の充実 地震災害に対する地域防災力を高めるためには、地域防災計画等の見直しをはじめ、地震防災訓練及び初動時における応急対策等の施策の拡充強化を図ることが重要である。 このため、地震災害のもたらす被害の広域性、複合性にかんがみ、地域防災計画における震災対策に関する総合的な計画及び実践的な行動マニュアル等の活動要領を策定・整備するとともに、地方公共団体の初動時における意思決定等を円滑化し災害対応能力の向上を図る必要がある。 また、地震被害を軽減するためには初動活動が迅速かつ的確に行われることが重要であることから、被害想定に基づき関係機関との連携及び住民等の参加を得て総合的な地震防災訓練を実施するとともに、地域防災計画及び地震時の活動要領等の見直しにつながるような実践的で実効性のある地震防災訓練の確立、普及が必要である。 さらに、地域の地震防災機能を高めるため、消防防災施設等の整備や防災拠点となる公共施設等の耐震化を計画的かつ積極的に進める必要がある。 一方、東海地震対策等については、中央防災会議の動向等を踏まえ、今後における東海地震に係る強化地域等における消防防災施策・体制のあり方を検討の上、東海地震対策等の充実強化を図るとともに、大規模地震時において相互応援による連携が一層円滑なものになるよう人的、物的資源等に係る情報の共有等を図る必要がある。
(3)特殊災害対策の充実 原子力災害については、茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故等の教訓を踏まえ、原子力災害対策特別措置法が制定され、防災基本計画の見直しが行われるなど原子力防災体制全般についての強化が図られてきたところである。今後は地域防災計画作成マニュアル及び消防活動マニュアルに沿った、地域防災計画及び実践的な消防活動計画等の見直しを引き続き推進するとともに、放射線防護資機材の整備や各都道府県の消防学校等における原子力災害に関する教育の充実を図る必要がある。 大深度地下施設、原子力施設等の消防活動が困難な空間については、消火、救助活動等の困難性が高まることが予想されることから、迅速で円滑な救助、救急及び消火活動を行うことが求められているため、情報通信技術の活用による、消防活動を支援するためのシステムを図る必要がある。また、比較的短い道路トンネルについては、非常用施設の設置基準が長大トンネルに比べて緩く、消火活動に支障をきたしていることから、設置基準と警防戦術との整合性、施設の運用方法等について検討を行っている。 工事中の道路トンネルで車両火災が発生し、非常用施設もなく、濃煙のため消防隊等が進入できず、消火困難であった事案や、原子力施設や石油コンビナート施設の改修作業中、溶断の火花等により火災となった事案が続発したため、改修工事等の安全対策について検討を行う必要がある。
3 地域の消防対応力の強化(1)消防力の整備充実 消防の施設及び設備については、近年複雑多様化する各種災害や阪神・淡路大震災のような大規模災害に対応し、効果的な消防活動を確保するため、より一層の充実強化を図る必要がある。具体的には、建築物の高層化、危険物品の増加、危険物施設の多様化、救急業務の高度化等に対応して、はしご付消防ポンプ自動車、化学消防自動車、消防・防災ヘリコプター、高規格救急自動車等の整備を促進することが必要である。また、消火栓との適切な組合せのもとで防火水槽や耐震性貯水槽の整備の促進を図るとともに、これら人工水利と河川、海等自然水利の活用等消防水利の多様化を図っていく必要がある。さらに、消防本部と消防署所、火災現場等との間で迅速・的確に情報の伝達や指令等を行うことができるよう、消防緊急通信指令施設の整備を早急に進めるなど、消防機関の通信体制を強化する必要がある。 今日の消防・救急・予防業務等に対する住民のニーズの高度化や、複雑多様化する災害に十分に対応していくためには、消防本部の体制の充実強化が必要である。消防庁としては、平成6年以来、消防の広域再編に対して財政措置を講じるなど小規模な消防本部が円滑に広域再編を進められるよう支援してきたところであるが、近年、市町村の共通課題である市町村合併の推進と整合性を確保した消防の広域再編を一層推進することが必要である。 さらに、近年、消防に対するニーズは、より一層高度化、多様化するとともに、少子高齢化の進展、民間部門の役割の増大等、社会環境も変化しつつあり、このような環境変化に的確に対応していくため、国民のニーズ、社会環境の変化に応じた平常時の消防のあり方、これを実現していくための国、地方公共団体等の対応のあり方等について総合的な検討が必要である。 また、消防業務の複雑化・多様化・専門化に即応し得る高度で専門的な消防職団員の養成を図るために、都道府県の消防学校等における教育訓練の更なる充実を図る必要がある。 消防大学校においては、急激な技術革新や社会の変化に対処できる消防本部及び消防団の幹部を育成するため、映像情報機器を活用したシミュレーションシステムによる実践的指揮訓練、危機管理等に関する教育訓練の実施などにより、消防行政ニーズの多様化・高度化に即応した消防幹部教育訓練の更なる拡充強化等を図るとともに、情報化の進展に併せ、情報技術を利用した教育手法を導入する取組みを進めるなど時代の要請に応じた教育訓練の充実強化を図ることが必要である。
(2)消防団の充実強化 消防団は、火災対応はもとより、地域社会のニーズに応じた幅広い活動を行っており、地域防災等において重要な役割を果たしている。 阪神・淡路大震災を契機として再認識されたように、大規模地震、風水害等の大規模災害発生時には、消防団は、その要員動員力や地域密着性といった特性を活かし、大きな力を発揮している。また、火災など通常災害への対応でも、消防団が大きな役割を果たしている地域が多い。 さらに、地域密着性という利点を活かし、平常時における住民への防災指導等のほか、地域の高齢者対策等のコミュニティ活動面で重要な役割を担っている消防団も多い。 このように、消防団は、その地域密着性、要員動員力等の特性を活かしながら、地域社会の幅広いニーズに応えていくことができる重要な消防機関である。 一方で、消防団は、常備化の進展や就業構造の変化、国民意識の変容等の社会環境の変化に伴い、消防団員数の減少、被雇用者である団員の増加等の課題に直面している。そこで、これらの環境変化及び課題を踏まえた今後の消防団のあり方について抜本的な検討を行う必要がある。 また、消防団が地域の消防防災機関として、より一層効果的な役割を果たすための方策を講じていく必要がある。 このような観点から、インターネット等の新しい媒体の活用など地域住民の消防団に対する理解と認識を深めていくとともに、青年層・女性層の加入促進を図る必要がある。 また、自主防災組織や事業所の自衛消防組織との連携等による、消防団を中心とした地域の消防体制の充実強化を図る必要がある。 さらに、災害時における災害防ぎょ活動、平常時における地域に密着した活動など消防団の幅広い活動を推進するための施設・設備の充実強化、団員の処遇改善を行うとともに、団員の自家用車等の損害に対する見舞金制度の導入や資格取得の積極的な支援など活動環境の整備を図る必要がある。
(3)自主的防災活動の促進 大規模災害時には、一人ひとりの防災意識、コミュニティの連帯感あるいはボランティア精神に基づく自主的な防災活動が非常に重要である。 そこで、国民一人ひとりが最低限必要な防災知識・技能を習得することにより、災害に強い自立した個人の育成支援等を積極的に進めることが必要である。 また、平常時から、地方公共団体が、パンフレットや電話帳(レッドページ)、インターネットなどの各種の広報媒体を利用して、地域の災害危険度に関する情報や被害想定等の防災に関する情報を積極的に提供することにより、住民の防災意識の高揚を図るとともに、自主防災のための資機材及び活動拠点の整備等を行い、自主防災体制の強化を図る必要がある。加えて、福祉活動等他分野の活動や商店街を中心とした地域防災活動との連携を推進することが重要である。 災害ボランティアについては、地域防災計画における位置付けを明確化し、災害ボランティアリーダー等の育成や専門ボランティア登録制度の普及を図るとともに、災害ボランティアとのシンポジウム等の場を通じて、平常時からの災害のボランティア団体と地方公共団体との連携を進め、災害ボランティアの活動環境の整備を図る必要がある。
4 救急・救助の充実・高度化 救急業務については、その高度化を推進し、傷病者の搬送途上における救命効果をより一層向上させるために、適切なプレホスピタルケアを提供する体制(病院前救護体制)を推進することが必要である。このため、平成3年に範囲の拡大された応急処置についてすべての救急隊員が実施できるよう必要な教育訓練を促進するとともに、救急救命士の資格を有する救急隊員の養成を推進する。また、更なる救急業務の高度化を推進するため、救急隊員の行う応急処置等について医学的観点からその質を保障する、いわゆるメディカルコントロール体制の構築を積極的に推進する。さらに、救急隊員が高度な応急処置を行うため、高規格救急自動車及び高度救命処置用資器材などハード面での整備を進める。 また、重度傷病者の救命率の向上には、救急隊到着前において、地域住民等により適切な応急手当が実施されることが極めて効果的である。このため、関係機関等との連携の強化を図りつつ、地域住民等に対する応急手当の普及啓発活動を推進する。特に、119番通報を受けた消防職員が救急現場付近にある者に対して行う電話等による応急手当の口頭指導は救命効果を高める上で有効であり、その体制づくりを積極的に推進する。 さらに、高速で機動的という特性を持つ消防・防災ヘリコプターを救急業務に活用することは、救命効果の向上に有効であることから、出動基準ガイドラインに基づく出動体制の確立等によりヘリコプターによる救急業務の全国的展開を図り、運航不能期間中の代替機の確保方策や今後の整備計画を検討するとともに、ヘリコプターと連携して活動する救急隊員の教育訓練の充実を図る必要がある。 救助業務については、複雑多様化する災害事象による被害を軽減することにより公共の安全の確保を図るため、救助隊員の教育訓練の充実強化や、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を推進する。これに併せて、救助シンポジウムの内容等を充実させ、化学災害・列車事故等の多様な災害に対応するための救助マニュアルを作成するなど、救助技術の高度化を図る。
5 火災予防対策の推進及び危険物等の安全の確保(1)住宅防火などの火災予防対策の推進 住宅火災による死者は建物火災による死者の85.9%を占め、特に高齢者の割合が半数以上を占めることから、高齢者等を中心とした住宅火災による死者のより一層の低減を図るため、平成13年4月1日に定められた「住宅防火基本方針」に基づき、住宅用消火器具・住宅用火災警報器・防炎製品等の普及等、高齢者等を主な対象とした住宅防火対策を強力に推進し、今後10年間に、住宅火災による死者の発生数を、予測される死者発生数の半数に低減・抑制することを目指す。 さらに、小規模共同住宅においては、特に死者の発生率が高いことから、その火災予防対策の充実について検討が必要である。 放火及び放火の疑いによる火災は、昭和60年以降、火災原因の第1位を占めており、年々増加する傾向にあるため、放火されない環境作りの推進等の施策を実施してきたところであるが、特に大都市圏においては火災原因の約5分の2を占め、深刻な社会問題となっているため、今後、多角的な放火発生メカニズムの分析と被害低減の検討を行い、放火発生件数の低減と被害の局限化等の対策を、更に推進する必要がある。 また、近年、火災態様の複雑化等に伴い火災原因の究明に困難を来すケースが増加しているため、適正な火災原因調査を推進する上での調査体制等と火災原因調査技能の向上支援の充実強化が必要である。 一方、増大する査察行政需要と行政の簡素化の要請に対応し、防火・人命安全対策の徹底を図るためには、効率的な立入検査の推進と消防法違反の早期是正を図ることが必要である。また、防火対象物の使用形態の多様化により、現行の火災予防対策では実情に合わないケースが生じてきており、小規模防火対象物についても、適正な防火管理や消防用設備等の設置のあり方を検討することが必要である。 さらに、文化財活用の動向を踏まえつつ、文化財(文化財である物品等を有する施設等も含む。)の保護とその利用者等の生命・身体・財産の保護を図るため、文化財の火災予防対策の充実について検討し、より一層適切な消防規制等を行うことが必要である。
(2)危険物施設等の安全の確保 危険物施設等における事故件数は近年顕著な増加傾向を示しており、加えて、危険物には指定されていなかった物質を原因とする大きな事故も発生している。このため、事故事例の分析体制の強化、新規危険性物質の早期把握・評価の体制の確立等の事故防止策を、体系的かつ総合的な形で推進する必要がある。事故事例の分析体制の強化については、的確な事故事例の分析が、具体的かつ効果的な事故防止策を導く上で極めて重要であることから、多変量解析による分析手法の活用等により、分析体制を強化する。新規危険性物質の早期把握・評価体制の確立については、科学技術の進展等に伴い、消防法上の危険物にはなっていないが火災危険性を有する物質が出現する可能性があることから、関係機関と連携しつつ情報を収集するとともに、そのような物質の具体的な火災危険性を評価する体制を確立する。これらをはじめとする種々の事故防止策を盛り込んだ計画を策定し、体系的かつ総合的な形で事故防止策を推進する。 また、危険物等に係る災害が一旦発生した場合、迅速かつ効果的な消防活動を展開するためには、より早い段階での危険物等の物質情報及び消防活動の要領に係る情報の把握が重要である。このため、危険物災害等情報支援システムについて、物性情報や消防活動要領のデータを拡充する必要がある。
(3)石油コンビナート災害対策の充実強化 石油コンビナートにおける事故防止及び事故発生時の応急対応の迅速化等の防災対策を充実強化するとともに、石油コンビナート等防災計画の作成又は見直しを行うに当たっては、防災アセスメントの実施が不可欠である。また、防災アセスメントの理解の増進を図ることにより石油コンビナートにおける防災アセスメントの実施を推進する。さらに、災害対応を的確に行うため、特別防災区域に係る事業所配置図等の地域情報を整備する等、石油コンビナート災害対策の充実強化を図る必要がある。