特集 新たな火災予防対策の推進
〜新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえて〜 

(2)防火管理の徹底

 〜民間能力の活用等による「防火対象物の定期点検報告制度」の創設等〜

 そもそも防火対象物の火災予防上の安全は、その管理者等が消防法令を遵守することなどにより確保するのが原則である。しかし、防火対象物に用いられる科学技術の高度化・多様化等により、消防法令等を遵守してビルの防火管理を行うためには火災予防に関する相当な知識や経験を必要とするようになってきており、こうしたことが、管理者等による適切な防火管理の実施を困難にしている面がある。
 このため、一定の規模、用途の防火対象物については、火災予防に関する専門的な知識や経験を有する者が防火管理について点検を実施するとともに、消防機関が点検結果の報告を活用することにより効果的な違反是正を図るなどの仕組みを設けることにより、防火管理の徹底を図ることが必要であると考えられる。
 一方、一定期間以上消防法令を遵守している防火対象物については、この点検報告義務を免除する仕組みを併せて導入することにより、優良な事業者の負担を軽減するとともに、消防法令遵守に対するインセンティブを高めるなどの配慮も必要であると考えられる。
 このような観点から、新たに、防火対象物の定期点検報告制度が、優良防火対象物に対する特例認定制度を含む形で創設された(平成15年10月1日施行)。
 また、いわゆる雑居ビルのように、複数の管理者により共同で防火管理を行う場合には、関係者の防火管理意識が低下しがちである。このため、今回の改正に際し、管理について権原が分かれている防火対象物について特に共用部分に関して防火管理の責任を負うべき者の明確化が図られた。

ア 防火対象物の定期点検報告制度の概要

(ア)定期点検・報告

 今回の改正により、一定の防火対象物の管理権原者は、1年に1度、一定の火災予防に関する専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)に、防火管理の状況、消防用設備等の設置状況等の火災予防上必要な事項を点検させ、これを消防機関に報告しなければならないこととされた(第6図)。
 この対象となる防火対象物は、火災発生時に危険な状況に置かれる人数が多いこと又は避難経路が限定されて火災発生時に逃げ遅れの可能性が高いことから、特定防火対象物(不特定多数の人々が出入りする百貨店、旅館、病院等の防火対象物)であって、収容人員が300人以上のもの又は収容人員が30人以上300人未満のもので1階段のもの(不特定多数の人々が出入りする飲食店等の用途「特定用途」に供される部分が地階又は3階以上の階に存するもので、こうした階から直接地上へ通ずる出入口のある階に通ずる階段が1のもの。以下、「1階段の特定ビル」という。)とされた(第7図)。対象となる施設は、全国で約20万施設と推定される。
 なお、防火対象物を点検する資格者としては、一定期間以上消防防災分野における実務経験を有する者であって、点検資格者として必要な火災予防に関する専門的知識を習得するための講習を修了した者とされた(第6図)。

(イ)定期点検報告の特例認定

 次のとおり優良に防火管理を行っていると認められる防火対象物については、防火対象物の定期点検報告義務を免除する特例認定を受けることができることとされた(第8図)。

○防火対象物の管理権原者が、その管理を開始してから3年以上経過していること。
○過去3年以内において、消防法令等に違反したことにより命令を受けたことがなく、また受けるべき事由がないこと。
○過去3年以内において特例認定の取消しを受けたことがなく、かつ受けるべき事由がないこと。
○過去3年以内において防火対象物の定期点検報告制度による点検報告を怠ったことや虚偽報告を行ったことがなく、また点検の結果が適合していること。
○消防法令の遵守の状況が優良なものとして一定の基準に適合していると認められること。

(ウ)管理権原者による情報の提供

 防火対象物の管理権原者自らが、防火管理が優良である旨の情報を利用者等に積極的に提供する仕組みが設けられた。
 まず、防火対象物の防火対象物の定期点検報告の結果、防火対象物の点検事項が基準に適合していると認められる場合には、管理権原者は、その旨の表示(防火基準点検済証)を行うことができる。防火基準点検済証には、管理権原者の氏名、点検を行った日、次回点検予定日及び点検実施者が明記され、点検実施の責任が明確化される(第9図)。
 また、特例認定を受けた場合についても、管理権原者がその旨の表示(防火優良認定証)を行うことができる。防火優良認定証には、管理権原者の氏名、認定を受けた日、認定が失効する日、認定をした消防本部等が明記される(第10図)。

イ 防火管理責任の明確化

 小規模雑居ビル等における階段等の共用部分については、これまで防火管理について責任を負うべき管理権原者が必ずしも明確にされなかったことから、今回の改正において、共同管理をする管理権原者は、消防計画の中で各管理権原者が共用部分のどの部分に責任を有するかを明確化しなければならないこととされた。
 また、共同防火管理協議会において、その代表者に必ずしも複数の管理権原者を取りまとめる代表としてふさわしい立場の者が選任されていない場合も多い現状にかんがみ、今回の改正において、代表者は、所有者等、主要な管理権原者とする旨が明確にされた。

ウ その他防火管理体制の充実

 防火管理者に対する防火管理講習については、その講習機会を増やし、防火管理者の選任率を向上させることが必要であるとの指摘もあることから、消防機関による講習実施体制を見直し、民間活力の導入により講習機会を増加させる制度の整備を図るとともに、一定規模以上の特定防火対象物の防火管理者に対する講習内容の充実を図ることとした。

エ 消防用設備等の点検報告制度の充実

 新宿区歌舞伎町ビル火災では、自動火災報知設備は設置されていたが、的確に作動しなかった可能性が高い。このような消防用設備等が火災時に確実に作動するためには、保守点検を着実に実施する必要がある。消防法では、消防用設備等について資格者が定期的に点検し消防機関に報告する制度を設けているが、今回火災となった雑居ビルは、その対象となっていなかった。このため、延べ面積1,000m2以上の特定防火対象物等とされている点検報告制度の対象を拡大し、1階段の特定ビルについては、避難経路が限定され、火災発生時に逃げ遅れの危険性が高いことなどから、小規模なものについても自主点検ではなく資格者による定期点検の対象とされた。なお、これに併せて、消防用設備等の設置時検査の対象についても、このような防火対象物が新たに追加された。
 

 

 

 

 


 

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