はじめに 我が国の消防は、昭和23年に地域に密着した自治体消防として発足して以来、半世紀が経過したが、この間、関係者の努力の積重ねにより、制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民の安全の確保に大きな役割を果たしてきた。 特に、近年においては、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて創設された緊急消防援助隊について一層の拡充強化を図るなど広域的な消防防災体制を推進するとともに、地域住民や企業など幅広い地域社会との連携のもとに、消防本部・消防団を中心とする総合的な消防防災体制の整備を進めてきている。 しかしながら、近年、社会経済情勢の変化の中で、災害や事故の態様は複雑多様化の傾向を強めてきており、昨年来、新宿区歌舞伎町ビル火災をはじめ、芸予地震や台風に伴う風水害などの多くの災害が発生し、また、本年に入っても、大規模な林野火災や台風に伴う風水害が発生するなど、全国各地で住民の安全を脅かす災害等が相次いで発生している。 さらに、昨年9月の米国の同時多発テロに加えて、本年10月にインドネシア・バリ島でのテロが発生するなど、国内におけるテロ発生時の対応が迫られている。 こうした中で、災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務は、ますます大きなものとなってきており、今後とも消防防災全般にわたる施策を強力に展開し、国民の安全確保、安心して暮らせる地域づくりに全力をあげて取り組んでいく必要がある。  平成14年版の消防白書は、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説したものである。 特に、特集として「新たな火災予防対策の推進」と題し、新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえ行われた消防法令改正をはじめとする制度改正のポイントと再発防止のための取組み等を記述した。 また、平成3年に創設された救急救命士制度は、救急業務の高度化に大きく寄与し、心肺停止傷病者の救命効果の向上が図られたが、更なる救命率の向上を図るための救急救命士の処置範囲の拡大について、現在、年末の取りまとめに向けて具体的な検討が進められている。そこで、救急救命士の処置範囲の拡大についての取組状況等について、これまでの経過と今後の方向を中心に、緊急報告として記述した。 さらに、大規模災害等に備えた国・地方公共団体による防災力充実に向けた取組みや、大規模災害等において大きな役割を果たすことが期待される消防団と自主防災組織について、それぞれの現状と課題、今後の充実方策等について、特別報告として記述した。 この白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民各位の認識と理解を更に深め、また、安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域住民、企業等をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものである。  平成14年12月
特集 新たな火災予防対策の推進〜新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえて〜はじめに 平成13年9月1日未明に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災は、一夜のうちに44人もの尊い命を奪い、昭和57年のホテル・ニュージャパン火災(死者33人)を超える大惨事となった。この火災が、延べ面積500m2程度の小規模なビルで発生したにもかかわらず、このような被害となったのは、違法・不適切な防火管理が行われていたこと等により火災に対して有効な初期対応ができなかったこと等が原因である。 この火災を踏まえ、緊急に実施された全国の小規模雑居ビルの一斉立入検査の結果、何らかの消防法令違反があるものが9割を超えるなどの事実が判明し、これらの問題がこのビルに特有のものではなく、同種の小規模雑居ビルにおいても共通の問題であることが明らかとなった。今回の新宿区歌舞伎町ビル火災は、近年、防火対象物の構造・設備、用途、利用形態等の多様化・高度化が進展し、また用途やテナントの変更が頻繁なビルが現れていることを背景にして、防火管理を十分に実施し、消防法令を遵守しなければ、小規模な防火対象物であっても、大惨事が発生することを示したのである。 消防庁では、こうした新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえて、従来からの火災予防対策のあり方について、次のような点等を中心に基本的な見直しを行った。1)違反是正の徹底 消防機関は、従来のように防火対象物の関係者の自発的な違反是正を促す行政指導を中心として違反処理を行うだけでなく、個別の違反事案の火災予防上の危険性の程度、防火対象物の関係者の自発的な違反是正の意思等の有無、違反処理のための代替手段の可能性等に応じて、消防法による措置命令、使用禁止命令、刑事告発等の措置を積極的に講じることにより、迅速かつ効果的な違反処理を進める必要がある。また、防火対象物の利用者や周辺の住民が、自らの生命、身体及び財産を守るために、当該防火対象物の違反処理の状況に関する情報をあらかじめ知ることができるような仕組みが必要である。2)防火管理の徹底 防火対象物が、社会状況の変化・科学技術の発達等により、その使用形態も含めて高度化・多様化・複雑化する中で、その防火管理を行うためには火災予防に関する高度な知識や経験が必要となる。このため、こうした知識や経験を有する専門家など民間の力を活用しながら防火管理を補強することができる仕組みを設けることが必要である。また、防火対象物の利用者等が、その防火管理の状況に関する情報をあらかじめ知ることができるような仕組みが必要である。3)避難・安全基準の強化 直通階段が1の防火対象物については、火災が発生した場合に人命に危険が及ぶ可能性が高いため、火災を早期に発見・報知し、避難を迅速に行うことが必要である。また、防火対象物の使用形態が多様化、複雑化する中で、新たな形態の防火対象物の用途の出現に対応した消防法令の防火安全上の基準が必要である。 消防庁では、このような観点を踏まえ、1)消防機関による「違反是正の徹底」、2)ビル管理者等による「防火管理の徹底」、3)「避難・安全基準の強化」等を柱として、消防法の改正をはじめとする制度改正等を行った。 本特集では、新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓を踏まえた再発防止のための取組みを紹介するとともに、消防法令改正等の制度改正のポイント等を解説する。
第1節 新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓1 新宿区歌舞伎町ビル火災の概要 この火災は、平成13年9月1日未明、東京都新宿区歌舞伎町の小規模雑居ビル「明星56ビル」で発生し、44人の死者と3人の負傷者を出すという、小規模の防火対象物としては過去に例をみない大惨事となったものである。 火災は、3階エレベーターホール付近から出火して3階の遊技場内に延焼し、さらに屋内階段を経由して、4階の飲食店内に延焼拡大した。これにより、3階の客15人と従業員2人、4階の客11人と従業員16人が避難できずに死亡したほか、3階の従業員3人が窓から転落・避難し負傷したものである。 火災が発生した階段は、狭い上、ロッカー等の物品やビールケース等の可燃物が大量に置かれており、またこれにより防火戸が閉鎖しなかったため、室内に容易に延焼し、このことが、在館者の逃げ遅れにもつながったものと考えられる。新宿区歌舞伎町ビル火災の概要覚知日時	平成13年9月1日 午前1時01分(119番通報による)出火場所	東京都新宿区歌舞伎町1丁目18-4出火建物	明星56ビル 複合用途(16項イ)    	耐火造一部その他構造 地下2階地上5階    	建築面積83u 延床面積516u被害状況	半焼    	焼損床面積160u(3階遊技場(ゲーム麻雀店)80u、4階(キャバクラ)80u、第1図)    	焼損表面積9u(2階階段及び5階(屋上)階段の内壁6u、天井3u)    	死者44人、負傷者3人火災原因	放火の疑い
2 新宿区歌舞伎町ビル火災の教訓(1)防火管理の不備 出火した階段室は、狭い上に多くの物品や可燃物が存置されており、これが延焼媒体となると同時に、避難障害や後述の防火戸の閉鎖障害となった。また、この防火対象物においては部分的にしか防火管理者の選任届出がなされておらず、消防計画や共同防火管理の届出もなされていなかった。さらに、自衛消防訓練も部分的にしか実施されておらず、消防用設備等の定期点検報告もなされていなかった。
(2)初期対応の遅れ 明星56ビルには自動火災報知設備が設置されていたが、ベルが停止されていた可能性が高く、火災時には鳴動していない。このため、火災の発見が遅れ、初期消火、通報、避難誘導等の初期対応を的確に行うことができなかった。また、避難器具は3階には設置されておらず、4階には設置されていたが実質上使用できない状態であった。
(3)1階段の防火対象物の危険性 明星56ビルには直通階段が屋内に1つしかなく、当該階段部分からの出火であり、他に有効な避難手段もなかったため、避難経路を効果的に確保することができなかった。このような防火対象物では、特に階段室から出火した場合には、多数の者が逃げ遅れる可能性があることが改めて浮き彫りとなった。
(4)防火戸の閉鎖障害 エレベーターホールや屋内階段と店舗との間には、感知器と連動した防火戸があったが、存置された物品等が障害となって火災時に閉鎖しなかった。このため、急激に火煙が店舗内に流入した(なお、3階及び4階の店舗内は窓等の開口部が少なくほぼ密室構造であったため、濃煙・熱気が一気に充満したと考えられる)。
第2節 再発防止に向けた取組み1 新宿区歌舞伎町ビル火災直後の取組み(1)全国一斉立入検査ア 一斉立入検査の実施 消防庁では、火災発生2日後の9月3日、都道府県を通じて全国の消防機関に対して消防庁長官通知「小規模雑居ビル火災の再発防止について」を発出し、今回火災を起こしたビルと類似のビルの一斉立入検査を行い、その結果、消防法令違反等の防火安全上の不備が確認された場合には、必要な是正措置を講じるよう求めた。イ 一斉立入検査の結果 この一斉立入検査の結果、検査対象とした8,407の小規模雑居ビルのうち、何らかの消防法令違反があるものが実に90%を超えるなどの事実が判明した(第1表)。 また、8,407対象のうち、13大都市における防火対象物数は54.2%(4,553対象)を占めており、防火対象物数に占める13大都市におけるものの割合28.4%と比べるとその割合がかなり高い。この傾向は、用途別にみても、明らかである。こうした結果から、このような小規模雑居ビルの都市部への集中の度合いは、他の建築物等に比べ、かなり高いという結果が改めて判明した(第2表)。
(2)小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会及び消防審議会 消防庁は、火災後直ちに、小規模雑居ビル火災が発生した場合の問題点を整理し、講ずべき防火安全対策について緊急に取りまとめるため、消防庁次長を委員長とし、学識経験者、関係省庁職員、消防機関職員等で構成される「小規模雑居ビル火災緊急対策検討委員会」を開催し、平成13年9月6日(第1回会合)から約3か月にわたって集中的に検討を進めた。 また、並行して、消防庁長官から消防審議会に対し「小規模雑居ビル火災再発防止対策について」諮問を行い(平成13年9月26日)、同年12月26日に「小規模雑居ビルの防火安全対策に関する答申」を受けた。
(3)警察、建築、衛生部局等の関係機関との連携 小規模雑居ビルにおける防火安全の確保に関する関係省庁の連携を図るため、火災直後の平成13年9月11日に、「小規模雑居ビル防火安全対策連絡協議会」を設置し、小規模雑居ビルの防火安全に係る方針、関係省庁の連絡調整等について協議を行った。これを踏まえ、消防庁から各消防機関に対し、また、警察庁、国土交通省及び厚生労働省からそれぞれの地方の関係部局に対し、関係行政機関との連携強化について通知が発出された。この通知に基づき、各地の都道府県及び市町村において、連絡協議会等が組織され、関係機関相互の連携が図られている。
2 制度改正のポイント 消防審議会の答申等を踏まえ、消防法令の改正をはじめ、次のような制度改正等を行った(第2図)。
(1)違反是正の徹底 〜行政指導中心から法令に基づく違反是正の徹底へ〜 これまで、消防機関は、消防法令違反など火災予防上の危険な状態を是正する際には、関係者の自発的な改修、除去等の行動を促すなどの行政指導を中心に行ってきた。しかし、一斉立入検査結果が示すように消防法令違反が多い現状等を踏まえれば、個別の違反事案の火災危険の程度、防火対象物の関係者の違反是正の意思や能力の有無、違反処理のための代替手段の可能性等に応じて、消防法による措置命令や使用停止命令、刑事告発等をより積極的に発動し、迅速かつ効率的な違反処理を進める必要がある。 また、消防機関は、防火対象物等の実態を把握し、その関係者に対して火災予防上必要な指導を行い、また万一の出火に際しても被害を最小限度に止め得るよう立入検査を実施しているが、防火対象物の増加等に伴って、これまでのような立入検査実施率を維持することが困難になってきている(第3図、第4図参照)。こうした状況にかんがみれば、立入検査は、すべての防火対象物について一律に実施するのではなく、迅速かつ効率的な違反処理の実施という観点から、消防機関が有する情報をもとに火災危険性が高い防火対象物に重点を置いて実施していくべきであり、そのためにも、立入検査を補完する新たな仕組みが必要である。 さらに、防火対象物における火災危険性は、防火対象物の管理者のみが認識するだけでは十分ではない。今回火災が発生した新宿区歌舞伎町などの繁華街では、防火対象物が特に密集し、多数の利用者や隣接する防火対象物が存在する。こうした状況等を踏まえれば、火災による被害を受ける可能性がある防火対象物の利用者や周辺の住民が、自らの生命、身体及び財産を守るために、当該防火対象物の火災予防上の危険に関する情報を知ることができるような新たな仕組みが必要である。 このような考え方のもとに、次のような一連の制度改正を行ったものである。ア 消防機関による立入検査制限等の見直し 今回火災が発生した新宿区歌舞伎町のような繁華街を中心に、深夜営業の店舗等、日中以外の時間帯に利用されるものが増加してきた。消防機関の立入検査は、原則として日中又は営業時間帯に行うこととされてきたが、小規模雑居ビル等については、深夜営業を行う店舗が多く、日中又は営業時間内の立入検査が困難となる場合が増加している。こうした状況に対応し、今回の消防法改正では、全時間帯に立入検査を行うことが可能(例えば、日没後でも営業時間の前後に立入検査を行うことが可能)になるよう措置したところであり、これにより、個々のビル、テナントの状況に応じた効率的かつ効果的な立入検査が実施できることとなった(第5図)。 また、消防機関は、立入検査を実施する際、事前通告や証票提示を行うこととされていたが、小規模雑居ビル等では、所有者(オーナー)と占有者(テナント)の契約関係が複雑である場合が多いことなどから、消防機関が立入検査を実施する際の事前通告や証票提示をする相手方の特定が困難となり、結果として立入検査の実施に支障が生じる場合があった。今回の消防法改正により、事前通告の廃止や証票提示の相手方の拡大を図ったところであり、小規模雑居ビル等に対する適時、適切な立入検査が実施できることとなった。イ 消防機関の措置命令等の発動要件の明確化 防火対象物について消防法令違反が多発している中にあって、平成12年度に全国の消防機関で措置命令が実際に発動された件数は84件であった。件数がこのように少ない背景には、消防機関において措置命令を発動するための判断が難しくその発動に踏み切りにくいとの一面もあった。このため、今回の消防法改正により、消防機関による措置命令の発動要件について可能な限り具体化・明確化が図られるとともに、後述する「違反処理マニュアル」では、要件等について具体例をあげて明確化されている。例えば、消防法上各種の措置命令を発動する要件とされていた「火災の予防上必要があると認める場合」については、3つの類型に分類され、その結果、例えば、「消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める場合」と具体化されたところであり、さらに、この要件を受けて、「違反処理マニュアル」においては、「階段の出入口の防火シャッターが破損変形等により機能不良となっている」、「階段室等を多目的に使用するため、改装、その他構造等を変更して構造不適となっている」など該当する具体例が示されている。これにより、消防機関による違反是正措置がより迅速、かつ、適切に講じられる環境が整った。ウ 消防吏員による措置命令 消防吏員が立入検査時に火災危険や消防法令違反を覚知しても、防火対象物に対する措置命令等については、すべて消防長又は消防署長のみが発動することとなっていたため、消防吏員がその場で措置命令を発動することができなかった。しかし、今回の消防法改正により、避難経路となる廊下や階段に放置された物品の除去命令や火災予防上危険な火気使用設備・器具等の使用禁止命令等の一定の命令については、消防吏員でも発動できるものとし、火災危険に対して消防機関による違反是正措置がより適時・適切に講じられるようになった。エ 消防機関が措置命令等を発した場合の情報提供 消防法令違反等により措置命令等が発動された小規模雑居ビル等の防火対象物については、その管理者が違反状態を継続することにより火災を発生させた場合には、その防火対象物の利用者や周辺の住民等に大きな被害を及ぼす可能性がある。今回の消防法改正により、利用者等がこのような事実を知らずに不測の損害を被ることを防ぐために、措置命令又は使用禁止命令が発動された小規模雑居ビル等に、その事実を知らせる標識を設置するなど、消防機関がその情報を提供する仕組みが創設された。オ 立入検査マニュアル・違反処理マニュアル 消防庁では、平成14年8月、各消防機関の的確・効率的な立入検査の実施や迅速・的確な違反是正の推進に資するよう「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を作成し、全国の消防機関等に配布した。 立入検査マニュアルは、「立入検査要領」及び「小規模雑居ビル立入検査時の留意事項」で構成されている。「立入検査要領」は、立入検査を的確に行うための検査手順(フローチャート)、検査の具体的内容及びその解説等で構成されており、「小規模雑居ビル立入検査時の留意事項」は、小規模雑居ビルにおける火災危険性等を踏まえた立入検査の優先順位の考え方、着眼点、関係者への指導要領等をまとめたものである。 また、違反処理マニュアルは、「違反処理要領」、「違反処理基準」等で構成されている。「違反処理要領」は、違反処理を迅速かつ的確に行うためのその処理手順(フローチャート)、処理の具体的内容及びその解説等で構成されており、「違反処理基準」は、違反処理を厳正公平に実施するための違反者に対する警告、命令、認定の取り消しへの移行基準及び時期の判断を具体的事例をあげて示したものである。 なお、両マニュアルの内容については、予防職員に対する講習を実施して周知徹底を図っている。
(2)防火管理の徹底 〜民間能力の活用等による「防火対象物の定期点検報告制度」の創設等〜 そもそも防火対象物の火災予防上の安全は、その管理者等が消防法令を遵守することなどにより確保するのが原則である。しかし、防火対象物に用いられる科学技術の高度化・多様化等により、消防法令等を遵守してビルの防火管理を行うためには火災予防に関する相当な知識や経験を必要とするようになってきており、こうしたことが、管理者等による適切な防火管理の実施を困難にしている面がある。 このため、一定の規模、用途の防火対象物については、火災予防に関する専門的な知識や経験を有する者が防火管理について点検を実施するとともに、消防機関が点検結果の報告を活用することにより効果的な違反是正を図るなどの仕組みを設けることにより、防火管理の徹底を図ることが必要であると考えられる。 一方、一定期間以上消防法令を遵守している防火対象物については、この点検報告義務を免除する仕組みを併せて導入することにより、優良な事業者の負担を軽減するとともに、消防法令遵守に対するインセンティブを高めるなどの配慮も必要であると考えられる。 このような観点から、新たに、防火対象物の定期点検報告制度が、優良防火対象物に対する特例認定制度を含む形で創設された(平成15年10月1日施行)。 また、いわゆる雑居ビルのように、複数の管理者により共同で防火管理を行う場合には、関係者の防火管理意識が低下しがちである。このため、今回の改正に際し、管理について権原が分かれている防火対象物について特に共用部分に関して防火管理の責任を負うべき者の明確化が図られた。ア 防火対象物の定期点検報告制度の概要(ア)定期点検・報告 今回の改正により、一定の防火対象物の管理権原者は、1年に1度、一定の火災予防に関する専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)に、防火管理の状況、消防用設備等の設置状況等の火災予防上必要な事項を点検させ、これを消防機関に報告しなければならないこととされた(第6図)。 この対象となる防火対象物は、火災発生時に危険な状況に置かれる人数が多いこと又は避難経路が限定されて火災発生時に逃げ遅れの可能性が高いことから、特定防火対象物(不特定多数の人々が出入りする百貨店、旅館、病院等の防火対象物)であって、収容人員が300人以上のもの又は収容人員が30人以上300人未満のもので1階段のもの(不特定多数の人々が出入りする飲食店等の用途「特定用途」に供される部分が地階又は3階以上の階に存するもので、こうした階から直接地上へ通ずる出入口のある階に通ずる階段が1のもの。以下、「1階段の特定ビル」という。)とされた(第7図)。対象となる施設は、全国で約20万施設と推定される。 なお、防火対象物を点検する資格者としては、一定期間以上消防防災分野における実務経験を有する者であって、点検資格者として必要な火災予防に関する専門的知識を習得するための講習を修了した者とされた(第6図)。(イ)定期点検報告の特例認定 次のとおり優良に防火管理を行っていると認められる防火対象物については、防火対象物の定期点検報告義務を免除する特例認定を受けることができることとされた(第8図)。○防火対象物の管理権原者が、その管理を開始してから3年以上経過していること。○過去3年以内において、消防法令等に違反したことにより命令を受けたことがなく、また受けるべき事由がないこと。○過去3年以内において特例認定の取消しを受けたことがなく、かつ受けるべき事由がないこと。○過去3年以内において防火対象物の定期点検報告制度による点検報告を怠ったことや虚偽報告を行ったことがなく、また点検の結果が適合していること。○消防法令の遵守の状況が優良なものとして一定の基準に適合していると認められること。(ウ)管理権原者による情報の提供 防火対象物の管理権原者自らが、防火管理が優良である旨の情報を利用者等に積極的に提供する仕組みが設けられた。 まず、防火対象物の防火対象物の定期点検報告の結果、防火対象物の点検事項が基準に適合していると認められる場合には、管理権原者は、その旨の表示(防火基準点検済証)を行うことができる。防火基準点検済証には、管理権原者の氏名、点検を行った日、次回点検予定日及び点検実施者が明記され、点検実施の責任が明確化される(第9図)。 また、特例認定を受けた場合についても、管理権原者がその旨の表示(防火優良認定証)を行うことができる。防火優良認定証には、管理権原者の氏名、認定を受けた日、認定が失効する日、認定をした消防本部等が明記される(第10図)。イ 防火管理責任の明確化 小規模雑居ビル等における階段等の共用部分については、これまで防火管理について責任を負うべき管理権原者が必ずしも明確にされなかったことから、今回の改正において、共同管理をする管理権原者は、消防計画の中で各管理権原者が共用部分のどの部分に責任を有するかを明確化しなければならないこととされた。 また、共同防火管理協議会において、その代表者に必ずしも複数の管理権原者を取りまとめる代表としてふさわしい立場の者が選任されていない場合も多い現状にかんがみ、今回の改正において、代表者は、所有者等、主要な管理権原者とする旨が明確にされた。ウ その他防火管理体制の充実 防火管理者に対する防火管理講習については、その講習機会を増やし、防火管理者の選任率を向上させることが必要であるとの指摘もあることから、消防機関による講習実施体制を見直し、民間活力の導入により講習機会を増加させる制度の整備を図るとともに、一定規模以上の特定防火対象物の防火管理者に対する講習内容の充実を図ることとした。エ 消防用設備等の点検報告制度の充実 新宿区歌舞伎町ビル火災では、自動火災報知設備は設置されていたが、的確に作動しなかった可能性が高い。このような消防用設備等が火災時に確実に作動するためには、保守点検を着実に実施する必要がある。消防法では、消防用設備等について資格者が定期的に点検し消防機関に報告する制度を設けているが、今回火災となった雑居ビルは、その対象となっていなかった。このため、延べ面積1,000m2以上の特定防火対象物等とされている点検報告制度の対象を拡大し、1階段の特定ビルについては、避難経路が限定され、火災発生時に逃げ遅れの危険性が高いことなどから、小規模なものについても自主点検ではなく資格者による定期点検の対象とされた。なお、これに併せて、消防用設備等の設置時検査の対象についても、このような防火対象物が新たに追加された。
(3)避難・安全基準の強化 〜火災の早期発見・報知と迅速な避難、新たな形態の防火対象物の出現への対応等〜 新宿区歌舞伎町ビル火災では、防火対象物における火災の早期発見・報知や迅速な避難の重要性が改めて明らかになったことから、自動火災報知設備等の消防用設備等や避難施設に係る規制が見直された。また、繁華街の小規模雑居ビルを中心に飲食を伴わない新たな形態の性風俗関連特殊営業を営む施設等、様々な形態の防火対象物が次々に出現していることから、消防法令の防火安全対策についても、これに的確に対応していく必要がある。 このような考え方のもとに、次のような制度改正を行った。ア 避難施設及び防火戸の管理の強化 新宿区歌舞伎町ビル火災では、避難上必要な施設(避難施設)である階段に可燃物等の物品が存置されていたこと、また、このため防火設備(防火戸)が閉鎖しなかったことが大惨事を招く大きな原因となった。また、火災直後に実施した前述の小規模雑居ビルの一斉立入検査の結果では、避難施設の管理について約3割、防火戸の管理について約2割の違反があることが判明した。このような状況を踏まえ、防火対象物の管理権原者は、避難施設で避難の支障となったり、防火戸の閉鎖の支障となったりする物件が存置されないよう管理しなければならないことが、消防法に明記された。イ 消防用設備等の基準強化 逃げ遅れにより多数の死者が発生し、改めて火災の早期発見・報知の重要性が浮き彫りとなったことを踏まえ、自動火災報知設備の設置対象を見直す必要性が消防審議会でも指摘された。このため、早期の避難の必要性が高い1階段の特定ビルや複数の用途が混在するビルのうち延べ面積が300m2以上のものについて、自動火災報知設備の設置規制が強化された。なお、防火対象物の定期点検報告制度、消防用設備等の定期点検報告制度及び自動火災報知設備等の設置対象の改正の状況を比較すれば、第11図のとおりである。ウ 新たな形態の防火対象物への対応 キャバレー、遊技場等の防火対象物のうち、飲食を伴わない新たな営業形態の性風俗関連特殊営業を営む施設や、実態上ホテル等の宿泊施設に類する施設については、これまでこうした営業形態に対応した用途区分を設けていなかったことから、特定防火対象物に位置づけられているキャバレー、遊技場等と比較して、防火管理や消防用設備等の設置維持等について、より緩やかな義務を課されるにとどまっていた。しかしながら、こうした施設も、逃げ遅れによる人命危険性が高いことにかんがみて、今回の改正により、キャバレー、遊技場等の特定防火対象物と同等の義務を課すこととされた。
(4)罰則の強化ア 措置命令等違反に対する罰則の引上げ 新宿区歌舞伎町ビル火災では、防火管理や消防用設備等の設置維持に係る消防法令が遵守されていなかったことや、その違反状態が改善されていなかったことが指摘された。また、この火災を踏まえて実施された全国の小規模雑居ビルの一斉立入検査の結果、何らかの消防法令違反があるものが9割を超える等の事実が判明したところである。 これは、消防法令による火災予防の制度の重要性が日常的には認識されにくく、また、消防法令違反に対する罰則が消防法令遵守に係るコストと比較して軽く、法令違反を知りながら、遵守のためのコスト負担を避け、営業利益を優先する関係者が多いためであると考えられる。 これを踏まえ、消防法令違反の抑止力の程度を勘案するとともに、消防法と同様に人の生命、身体を保護法益としている他法律との均衡等も考慮して、例えば、防火対象物の火災予防措置命令及び使用禁止命令に対する違反については、これまで「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされていたものを、それぞれ「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」に引き上げるなど、その強化が図られた(第3表)。イ 両罰の強化 近年、営業利益の優先の観点から消防法令違反となる場合が大半を占める現状にあるといわれているが、これらの違反については、行為者本人のみならず、従業員等の行為について管理、監督責任を有する事業主体(特に法人)も責任を負うべきであると考えられる。しかし、これまでは、消防法違反に対する法人への罰則については、その額が自然人に対する罰金と同額とされているなど、法人への違反の抑止力が十分であるとはいえない状況にあった。 これを踏まえ、法人への消防法令違反の抑止力の程度を勘案するとともに、消防法と同様に人の生命、身体を保護法益としている他法律との均衡等も考慮し、例えば、防火対象物の火災予防措置命令及び使用禁止命令に対する違反については、行為者を罰するほか、法人も罰することとし、その罰金を最高1億円とするなど、両罰規定の整備が行われた。
(5)その他ア 警察、建築、衛生部局等の関係機関との連携強化 小規模雑居ビルをはじめとして、近年、所有者やテナントが頻繁に替わる防火対象物が増加しつつあり、消防機関がこれらの者の実態を把握することは困難であった。このため、これらの者との連絡がつかず立入検査が実施できない、立会い人がいないためにテナント部分の用途判定ができないなどの問題が生じていた。 これまで、消防機関は、防火対象物の実態を把握するには、主として防火対象物に立ち入り、関係者に質問することなどによって行っていたところであるが、今回の消防法の改正により、消防機関は、防火対象物に関して関係のある官公署に対し、その官公署の保有する情報について照会し、又はその協力を求めることができるようになり、適切な違反処理等をより効果的・効率的に進められるようになった。イ 国民への周知等防火安全に係る啓発 消防庁では、小規模雑居ビルの火災危険性について各ビルの関係者に十分理解してもらうため、小規模雑居ビルの防火安全上のポイントを記載したリーフレットを作成した。 また、小規模雑居ビルの火災危険性等について一般利用者等を啓発するため、小規模雑居ビルの火災危険性に係るチェックポイントや火災発生時の対応方法等についてのリーフレットも作成して、それぞれ消防本部、消防団等に配布した。 各消防本部、消防団等では、これらのリーフレットを防火管理講習等の各種講習会や立入検査の実施時に配布するとともに、自治会、自主防災組織、商工関係団体、料飲食業組合等の関係団体を通じて関係者に配布し、また、地方公共団体の広報誌に掲載するなどして、小規模雑居ビル関係者及び国民の防火安全意識の啓発に活用している。 なお、消防庁では、これらのリーフレットをホームページにも掲載し、広くその周知を図っている(http://www.fdma.go.jp/)。ウ 支援要員の活用 政府は、平成13年度の第1次補正予算で、現下の厳しい雇用情勢にかんがみ、緊急雇用対策特別交付金(3,500億円)を創設し、各地方公共団体のニーズを踏まえた事業を平成16年度末までの間で実施することとした。この交付金の推奨事業例に、「小規模雑居ビル等防火対象物に関する調査・指導による地域の防災安全性の向上を図る事業」が掲げられ、消防庁では1)消防機関による小規模雑居ビル等の防火対象物に対する違反是正措置の支援事業、2)小規模雑居ビル等の防火対象物における自己点検の実施に対する指導実施事業、3)防火対象物台帳等の電子化及び電子申請・届出等の促進支援事業を提示しているところである。平成13年度の補正予算では17道府県で3億3,200万円、約150人の雇用が行われ、平成14年度には44の道府県において、35億1,400万円、約1,700人の雇用が予定されている。
3 予防体制の強化 消防庁では、以上のような制度改正等を踏まえ、今後とも、消防庁及び消防機関双方における予防体制の強化を一層推進していくこととしている。
(1)消防庁の体制強化ア 防火安全室の設置 消防庁では、新宿区歌舞伎町ビル火災を契機に、平成14年4月、防火対象物の防火安全対策を推進するための専任部署として防火安全室を設置した。防火安全室においては、「違反処理マニュアル」、「立入検査マニュアル」等の作成、違反処理事務を担当する消防機関の予防職員に対する研修の充実等を通じて違反是正体制の強化を図るとともに、小規模雑居ビルの違反の是正状況について、適宜把握し、その是正推進に努めている(第4表、第5表)。また、防火対象物の定期点検報告制度の円滑な導入に向けた諸施策の実施、防火管理講習の充実、防火管理者の育成方策の検討等によって防火管理体制の充実強化を推進するほか、火災原因調査に係る制度の充実について検討している。イ 火災原因調査体制の検討 平成14年4月の法改正の国会審議の際、衆参両議院総務委員会での附帯決議において、「今後、地方公共団体から求めがないときであっても、消防庁長官が大規模火災等の原因調査を実施できるよう制度や体制の整備に努めること」とされた。これを踏まえ、学識経験者、消防機関職員等で構成される「火災等原因調査制度・体制のあり方検討会」(委員長:東京大学大学院 田村教授)を開催し、通常の火災原因調査ではその原因究明が困難と考えられる大規模火災等の原因調査を消防庁長官が主体的に実施するための制度や実施方法のあり方について検討を行っている。
(2)消防機関の体制強化ア 予防要員(ア)予防要員に係る地方財政措置 新宿区歌舞伎町ビル火災を教訓とし、消防機関における予防体制を強化する観点から、平成14年度の地方財政計画において1,077人の予防要員を増員するための経費を見込むこととされた。(イ)予防要員に係る講習 「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」の内容を消防機関の違反是正担当職員に周知するとともに、職員の資質向上に資するため、平成14年9月から11月にかけて、消防庁、全国消防長会及び違反是正支援センターの三者共催で、全国9か所において、違反是正等研修会を実施することとした。また、消防庁は、都道府県消防主管課長会とともに、違反是正支援センターの協力を得て、例年全国6か所において実施している消防法違反是正推進会議についても、上記研修会と同内容で実施した。イ 防火対象物の定期点検報告制度の円滑な実施 平成15年10月1日から防火対象物の定期点検報告制度が実施され、また、消防法令の遵守状況が優良な防火対象物として認定されると3年間点検報告が免除される特例認定手続が平成15年1月1日から前倒しで実施される(認定の効力は平成15年10月1日から発生)こととなっている。 このことから、確実かつ円滑な点検制度の実施を図るため、防火対象物の管理権原者に対して本制度の趣旨を記載したリーフレットを配布することなどにより、本制度の周知徹底を図っていくこととしている。ウ 違反処理データベースの整備等 消防法改正に伴う違反処理機会の増大や新たな形態の違反処理事案の発生が予測されるが、これらの消防法令違反の是正推進に当たっては、過去の違反処理事例や消防関係判例の活用が不可欠であると考えられる。しかし、多くの消防機関にとっては、このような情報を単独で収集、管理することは困難であるため、消防庁において、1)消防機関から収集する告発、命令等の違反処理事例、2)消防関係判例、等のデータベースを構築し、消防機関が違反処理を実施するに当たって、これらを有効に活用できるよう整備していく必要がある。 また、全国の消防機関が行う違反是正業務を支援するため、(財)日本消防設備安全センターにおいて、平成14年4月に「違反是正支援センター」が開設された。
まとめ 消防庁では、これまでも、過去の幾多の火災から得た貴重な教訓等をもとに制度改正を行って火災予防対策を推進してきた。昭和23年の消防法の制定により確立された火災予防の制度は、その後の急速な経済の発展と科学技術の進歩等を背景にして、高層化・深層化するビルの登場等により複雑化する建物火災等に対処するため、その内容を充実させてきた。こうした中で、消防法令の改正等によって講じられてきた措置は、国民の生命、身体及び財産の火災からの保護という観点から、不特定多数の人々が利用する比較的大規模な防火対象物における危険性の高さや被害の大きさを前提に講じられてきた。その結果、この種の防火対象物の火災による死者の発生率や火災1件当たりの焼損面積が激減するなど、成果を上げてきたところである。 しかしながら、今回発生した新宿区歌舞伎町ビル火災は、小規模な防火対象物であっても大惨事が発生することを示したものであった。このため、今回、消防機関による立入検査や措置命令、ビル管理者等による防火管理、消防法令違反に対する罰則等に関し、基本的な考え方にわたる制度改正を行ったものであり、火災予防に関する基本的な制度の改正という意味では千日デパートビル火災(昭和47年5月)や大洋デパートビル火災(昭和48年11月)を踏まえた昭和49年の改正以来、28年ぶりのものとなった。 安全は、偶然もたらされるものではない。火災予防上の安全性は、消防法令に基づく火災予防の制度が整備され、その法令に基づく火災予防対策が確実に実施されることにより確保されてきた。先人たちが築いてきた防火対象物の防火安全性を失わないようにするため、今回の制度改正を踏まえ、防火管理や違反是正等を徹底し、火災予防対策をより一層強力に推進していく必要がある。
緊急報告 救急救命士の処置範囲の拡大について1 救急救命士制度 救急救命士制度は、我が国におけるプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、平成3年に創設され、心肺停止傷病者の救命効果の向上と救急業務の高度化に大きな成果をもたらした。 救急救命士は、救急救命士法に基づき、心肺停止傷病者に対して医師の具体的な指示のもとに、特定行為と呼ばれる以下の3つの救急救命処置を実施することができる。(1)半自動式除細動器による除細動(いわゆる電気ショック)(2)乳酸リンゲル液を用いた静脈路確保のための輸液(3)食道閉鎖式エアウェイ及びラリンゲアルマスクを用いた気道の確保 救急救命士制度発足から10年余が経過し、平成14年4月1日現在、救急救命士の資格を有する消防職員は1万2,068人に達し、1万823人の救急救命士が運用されている。また、全国の救急隊4,596隊のうち救急救命士運用隊は約62.8%を占める2,884隊となり、国民の間にもかなり定着してきている。 救急救命士の導入効果について、心肺停止の目撃された症例のうち、救急救命士により処置された傷病者と救急救命士の資格を有しない救急隊員により処置された傷病者との1か月生存率の比較に基づき、すべての該当症例が救急救命士により処置されたと仮定して試算すると、平成13年において、救急救命士制度の導入により、1,097人が救命されたと推計される(第1表)。
2 処置範囲拡大の経過 アメリカ合衆国のパラメディック制度を参考に救急救命士制度が創設されて以降、これまでにも、救急救命士の処置範囲が諸外国に比較すると限定されていることなどもあり(第2表)、消防庁をはじめ各方面において、救急救命士の処置範囲拡大の検討が行われてきた。平成7年の総務庁(当時)の「救急業務及び救急医療業務に関する行政監察結果に基づく勧告」においても、1)医師の具体的な指示なしでの除細動の実施、2)気管挿管の実施(気管にチューブを挿入し、気道を確保するもの)、3)心肺停止前の静脈路確保、4)昇圧剤等の薬剤投与について例をあげ、救急救命士の処置範囲拡大について検討する必要がある旨指摘された。しかし、当時は救急救命士が運用を開始してからまだ日も浅く、救急救命士の量的な運用状況も充実していなかったことなどもあり、処置範囲の拡大が具体的に検討されるには至らなかった。 その後、平成12年には、救急救命士の増加等に伴い、救急救命士運用隊の全国的な整備が一層進んでいく中、厚生省(当時)に設けられた「病院前救護体制のあり方等に関する検討会」の報告書が、平成13年には、消防庁の「救急業務高度化推進委員会」報告書が取りまとめられた。これらの報告書では、救急救命士の処置範囲を拡大した場合、その基盤となるメディカルコントロール体制の構築の必要性について指摘されている。処置範囲拡大を具体化する方向性が明確になってきた。このような中、平成13年秋に一部の地域で現在認められていない気管挿管を実施していたという事件が明らかになったこともあり、救急救命士の処置範囲について注目を浴びることとなり、そのあり方について具体的な検討が開始されることとなった。
3 処置範囲拡大に向けた具体的な動き 救急救命士の処置範囲の問題は国民の関心も高く、政府においても、早期検討を行うこととなり、4月17日には消防庁と厚生労働省との共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」<座長:松田博青日本救急医療財団理事長、医療・消防機関関係者等で構成>(以下検討会という。)が開催された。検討会の審議の結果、7月22日、中間報告が取りまとめられた。
4 検討会中間報告 検討会中間報告では、救急救命士の処置範囲の拡大についての基本的方向性と検討課題が指摘されている。検討課題については、年内を目途に最終的結論が取りまとめられるよう、引き続き検討を継続することとされた。中間報告の概要は次のとおりである。
(1)総論ア メディカルコントロール体制の確立が、救急救命士の業務拡大を行っていく上での前提である。イ 救命救急センターの整備や救急専門医の養成確保が必要である。ウ 救急救命士の養成方法や養成期間のあり方を検討する必要がある。エ 救急救命士配置の地域格差の早期是正が必要である。
(2)除細動ア 具体的な指示なし(医師の包括的指示)での実施を認める必要がある。イ 新型の二相性除細動器の早期導入を図る必要がある。ウ 無脈性心室頻拍についても除細動の対象とすべきである。
(3)気管挿管ア 救急救命士による気管挿管を限定的に認める場合の諸条件について、早急に具体化を図る必要がある。イ 病院実習の成否が、救急救命士による気管挿管の制度化に当たって最も重要な課題である。ウ 一定症例数以上の実習修了等の要件を満たす者を個別に認定するしくみを具体化する必要がある。
(4)薬剤投与ア 薬剤投与は、救命率向上に一定の効果を期待できる反面、副作用の危険性も高く、慎重な議論を更に継続する必要がある。イ 心拍再開時に必要となる数種類の薬剤に限定し、早期に結論を得るべく議論を進めていくことが適当である。 現在、消防庁では「救急業務高度化推進委員会」等で、厚生労働省では厚生労働科学研究班において、専門家の意見の集約を図っており、これらの報告を踏まえ、検討会を開催し、年末には最終報告をとりまとめる予定である。消防庁としては、より一層の傷病者の救命効果の向上が図られるようなかたちで救急救命士の処置範囲の拡大が実施できるように、検討会の結論が出されるよう取り組んでいる。
5 メディカルコントロール体制の整備促進 救急救命士の処置範囲の拡大については、その前提であるメディカルコントロール体制を早期に構築することが重要である。メディカルコントロール体制とは、救急救命士を含む救急隊員の応急処置の質を医学的観点から保障することを意味する。具体的には、都道府県、二次医療圏又は複数の二次医療圏の単位ごとに消防機関、医療関係者等を構成員とするメディカルコントロール協議会を設置し、1)救急隊が現場から迅速に医師の指示・指導・助言を要請できる、2)実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について事後検証を行う、3)資格取得後も救急救命士が医療機関において定期的に病院実習を行う体制を構築することである。消防庁では、平成13年に出された「救急業務高度化推進委員会報告書」を受け、「救急業務の高度化の推進について」を発出し、各地域のメディカルコントロール体制構築の具体化についてその促進を図ってきた。 今回の中間報告においても、メディカルコントロール体制の必要性が指摘されており、消防庁では、改めて体制構築の促進について厚生労働省と連携し、各都道府県知事に対し連名で「メディカルコントロール協議会の設置促進について」(平成14年7月23日付け消防庁次長・厚生労働省医政局長通知)を発出し、メディカルコントロール協議会の設置をはじめとする体制の構築を促進するよう要請した。 今後、救急業務の高度化を図るためには、医療機関との連携を一層強化し、再教育や実施した救急活動の事後検証等を通して、救急救命士を含む救急隊員の知識・技術の維持向上が不可欠である。メディカルコントロール体制は、現在検討されている救急救命士の処置範囲拡大に関してのみならず、将来にわたり救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置の質を確保し、更なる救急業務の高度化を推進する上での基盤となる制度である。
6 更なる救命効果の向上に向けて 消防庁としては、救急救命士の処置範囲の拡大の検討に際しては、更なる救命効果の向上を目指し国民の視点に立った検討を進めている。心肺停止傷病者の救命効果の向上には、「救命の連鎖」つまり、バイスタンダー(現場に居合わせた人)による迅速な通報、応急手当、搬送時の救急救命処置、医療機関における専門的治療の各段階で最善の措置が講じられることに加え、関係者相互の緊密な連携のもとに一刻も早く次の段階へ橋渡しを行っていくことが不可欠である。搬送時の救急救命処置が適切に実施され、バイスタンダーによる応急手当の普及とあいまって、より一人でも多くの傷病者の尊い生命を救うことができるよう、今後も救命効果の向上に向けて積極的に取り組んでいく。
特別報告 大規模災害等に備えた地域防災力の向上1 大規模災害等に備えた地域防災力への取組み(1)危惧される大規模災害 我が国は、その位置、地形や気象などの自然条件から、地震、台風、豪雨、火山の噴火などによる災害が発生しやすい環境にある。いつ発生してもおかしくないといわれている東海地震では、阪神・淡路大震災をも上回る甚大な被害が想定され、また、今世紀前半での発生が懸念されている東南海・南海地震でも大きな被害が広範囲かつ多重的に発生すると予測される。 このような大規模な災害に対応するためには、国としての防災対策はもちろんのこと、地方公共団体の取組み、さらには地域の防災力を高めていくことが必要である。
(2)阪神・淡路大震災の教訓に基づく国等の防災対策の強化 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国では、災害対策基本法の改正や防災基本計画の修正を行ったほか、災害発生時の初期情報収集・連絡体制の充実、関係省庁の局長等が官邸へ30分以内に駆けつける緊急参集チームの設置など、初動対応体制を大きく改善した。 さらに、常備消防力の整備充実に向けた地方公共団体の消防防災施設等の整備に係る地方財政措置や補助金の充実が図られるとともに、広域的被災地支援を消防の立場から円滑に行う緊急消防援助隊が創設された。緊急消防援助隊は、消防庁長官の要請に基づき予め登録された全国の消防機関の部隊が迅速に出動するものであるが、その後も登録部隊数の増加、資機材の整備、合同訓練の実施など、順次充実強化が図られている。 一方、市町村では、指定都市などにおいて、消防機関を中心として防災担当部局との一元化を図る動きが出てきているなど、消防と防災を合わせて幅広く危機管理を捉えて、消防・防災の調整と連携による大規模災害等に備えた体制整備が進みつつある。
(3)地域の防災力向上の必要性 以上のような体制整備が図られてはいるものの、災害が大きければ大きいほど、常備消防を始めとする防災関係機関等自身が被害を受け、災害対応に支障をきたす場合があるうえに、救助、救援活動において迅速に対応を行ったとしても広域的な応援には時間を要することから、発災直後の初動期における地域住民相互の助け合い、人命救助や初期消火への努力が被害の軽減につながることになる。 日本火災学会の調査によれば、阪神・淡路大震災により生き埋めや建物等に閉じこめられた人のうち、生存して救出された約95%は、自力又は家族や隣人、すなわち救助救出を行う公的機関以外によるものであったとの結果が出ている(第1図)。 例えば、日頃から消防団を中心に行政機関と住民による自主防災組織との緊密な連携があった淡路島の北淡町では、激震地であったにもかかわらず、他地域に比較して死者が少なかったという結果がある。これは、消防、警察、自衛隊などが本格的に機能する前段階などにおいては、住民自らが主役となって防災活動を行うことの重要性を示しているものである。
(4)消防団、自主防災組織、NPOなどの連携による地域の防災体制確立 防災の視点に立っての地域づくりを推進するに当たっては、自主防災組織を始めとする地域住民が、消防本部・消防署や消防団で構成する消防機関との緊密な連携を持ち、一体となって取り組んでいくことが必要である。 特に消防団は、我が国のほとんどの市町村に設置されている歴史ある組織であり、防災面での十分な訓練と経験を積んでいることから、それぞれの地域でリーダーシップをとり、自主防災組織や住民に対する訓練指導、防災知識の普及啓発を行うことが期待される。 また、地域ぐるみで防災力の向上を図るためには、町内会、婦人会、PTA、青年団、商店街、学校、事業所等、地域にある様々な組織や民間非営利組織(NPO:Non Profit Organization)、ボランティア団体等が多面的に防災面で対応力を持つことが望まれ、これらの団体と自主防災組織や消防団との連携を図っていくことが有効である。 さらに、地域社会において企業が地域の防災活動に積極的な役割を果たしている例も少なくなく、こういった企業の防災活動との連携は地域防災力の向上に大きく役立つものである。
2 地域密着性と要員動員力を活かし大規模災害等で活躍する消防団(1)地域における消防団の重要性 消防団は、市町村の消防機関である(消防組織法第9条)。構成員である団員は、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員である一方、他に本業を持ちながら、自らの意思に基づく参加、すなわちボランティアとしての性格も併せ有している。 阪神・淡路大震災において、消防団は、消火活動、要救助者の検索、救助活動、給水活動、危険箇所の警戒活動など、幅広い活動に従事した。特に、日頃の地域に密着した活動の経験を活かして、倒壊家屋から数多くの人々を救出した活躍にはめざましいものがあった。こうした活動により、地域密着性や大きな要員動員力を有する消防団の役割の重要性が再認識された。 その後、消防庁が、平成13年12月に、消防団を設置する全市町村及び全消防団を対象に調査したところ(以下「実態調査」という。)によれば、全国の9割にも及ぶ市町村が、消防団は非常に重要であるとしている。
(2)消防団の現状 経済の高度成長期以降の過密・過疎の進行などや地域社会、就業構造、国民意識の大きな変化に伴い、過疎地域などにおいては、新たに団員として参加する若年層が年々減少する一方、都市部を中心に地域社会への帰属意識の希薄化が生じ、既存の地域組織活動になじみが薄い住民が増加している。 団員の年齢構成は、かつて比較的若年層が中心であったが、近年、30歳未満の団員の割合が減少する一方、40代や50代以上の割合が増加するなど、高齢化が進行している。 また、団員の職業構成は、かつて自営業者などが中心を占めていたが、被雇用者である団員の割合が増加しており、昭和43年の3割弱が、平成14年には7割弱に達している。 このような団員数の減少と団員構成の変化が、消防団の運営に影響を及ぼしており、適正な規模の活力ある消防団の確保をいかに図っていくかが、各地域・市町村の切実な課題となっている。
(3)消防団の特性とその発揮 消防団が、大規模災害時をはじめとして、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。常備消防とは異なる特性や役割を踏まえながら、今後の消防団のあり方を考えていかなければならない。 消防団は、次のような特性がある。ア 構成員である団員は、地域の住民であることが多く、地元の事情等に通じた地域に密着した存在である(地域密着性)。イ 団員数は、かつてより減少しているが、なお、全国で約93万7,000人と、常備職員の約6倍強となっている(要員動員力)。ウ 団員は、日頃から教育訓練を受けており、災害発生時には即時に対応できる能力を有している(即時対応力)。 消防団が、要員動員力や即時対応力という特性を発揮していくには、各地域の実情に応じた適正な団員数を確保すべきである。消防団を支援する組織を設けたり、これらと連携を図ることも大切である。また、それぞれの団員に対する適切な研修・教育訓練が欠かせない。 さらに、活動を地域防災面に止めることなく、福祉や環境保全、芸術文化など、他の分野にも、幅を広げることにより、地域密着性がより高められる。 このほか、外部からの環境整備も重要である。国民や企業が、災害に対して自らが自らを守ることの自覚に加え、消防団が果している指導的役割について認識を高める必要がある。学校教育などの場で地域防災や消防団に対する理解を促進することも重要である。
(4)大規模災害時等への対応を意識した消防団活動 実態調査によれば、新たに必要とされはじめた活動としては、「大規模災害を想定した防災訓練」との回答が大都市を中心に多く全体の51%を占めている。また、「大規模災害を想定した訓練」に重点を置くとする消防団は35%であり、「実際の火災を想定した訓練」などに比べまだ低位であるものの、政令指定都市を中心に人口規模が大きくなればなるほど回答率が高くなっている。 これらの結果から、大都市の消防団では、阪神・淡路大震災の経験にかんがみ、常備消防との役割分担も念頭に置いた上で、大規模災害を意識した活動に取り組みはじめていることがうかがえる。 大規模災害等の発生のおそれは、大都市部に限られない。今後は、消防団の活動を考えるに際して、いずれの地域においても、大規模災害等への対応を意識する姿勢が求められる。
(5)消防団の主体的な取組みとその支援 消防庁が平成13年6月に設置した「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」(委員長:伊藤滋・早稲田大学教授)は、実態調査を踏まえつつ、社会環境や消防団の現状を踏まえた今後の消防団のあり方を検討している。 同委員会では、消防団を取り巻く諸問題に対応するため、各地域で既に取り組まれ、また、現段階で考えられる具体策をいくつか紹介している。ア 消防団員の活動を弾力化させる消防団運営 団員の一部について、基礎的な訓練への参加義務にとどめ、報酬などの処遇は、義務の一部免除に対応し、通常の団員と差異を設ける。イ 消防団に協力し、裾野を広げる組織との連携 自主防災組織をはじめとして、女性消防隊や少年消防隊などの組織を育成し、消防団がこれらの組織の指導者となるなど、連携を強化する。ウ 消防団の組織及び団員の活性化を図る工夫 情報通信隊や土木作業隊のような機能別組織を導入することなどにより、団員に、能力や希望に合わせた業務を選択させる。 また、意見発表会や優良団員の表彰など、若手・中堅団員向けに魅力があり、意識を喚起する行事を開催する。さらに、女性団員向けの研修の充実や活動表彰に取り組む。エ 教育訓練の充実 大規模災害時や林野火災への対応に重点を置くなど、消防団の業務などに対応して、内容を充実する。また、e-ラーニング(パソコンを使い、ネットワークを活用した教育や研修)による在宅学習など、新しい方式の導入を図る。オ 事業所向けの方策 協定に基づき自衛消防組織が事業所の外で消防機関に協力する仕組みの普及や自衛消防隊の構成員が勤務地において消防団員を兼ねるなど、地域の事業所が設ける自衛消防隊と消防団との連携を促進する。 民間に相当数の雇用を抱える事業所が見られない地域などにおいて、市町村・都道府県の職員や郵便局などの職員が団員となることを推奨する。 市町村が上記のような具体策を参考として、多様な選択や取組みを行い、消防団の活性化に努めることにより、大規模災害等への備えをはじめ、地域防災力の向上に資することが期待される。
3 大規模災害等に備えた住民による自主防災活動(1)自主防災組織の育成に関する市町村の役割 災害時に住民による自主防災活動が効果的に行われるためには、平時から組織づくりを行うとともに、防災資機材の整備や防災訓練を実施しておくことが必要である。災害対策基本法においては、市町村が自主防災組織の充実に努めなければならない旨規定されており(災害対策基本法第5条第2項)、地域の実情に応じて町内会や小学校区などを単位とした組織の結成に努めることが求められている。
(2)自主防災組織の抱える課題 阪神・淡路大震災を契機として、多くの地方公共団体が自主防災組織の重要性を再認識し、その結成に努力した結果、阪神・淡路大震災直後の平成7年4月時点で全国における組織率(総世帯数に対する組織結成地域の世帯数の割合)は、43.8%であったものが、平成14年4月では59.7%となっている。 しかしながら、この結成状況では未だ十分とは言えないうえに、既に組織が結成されているところにおいても、1)会議や訓練の準備に使う活動拠点の不足、2)組織役員の高齢化や昼間活動要員の不足、3)自主防災活動に対する住民の意識不足、4)リーダー不足、5)活動のマンネリ化、6)活動費や資機材の不足などの課題を抱えている。 その一方で、平成11年の「防災と情報に関する世論調査」(総理府)では、自主防災活動に参加したことのない人が全体の7割にものぼる中で、その約50%は「情報不足で活動を知らない」、「参加する方法がわからない」という結果が出ており、地域防災への参加促進方法の工夫が必要であるといえる。
(3)これからの自主防災活動促進の視点 自主防災活動を活発化させるノウハウは、結局はその活動を担う人の熱意と行動力に負うところが大きいのであるが、その場合でも以下のいくつかの点に留意すべきである。ア 住民自らの主体的な防災活動を促す工夫 地域のイベントなどに防災の観点を盛り込むなど、普段から「楽しみながら」住民の防災意識の高揚を図り、主体的な防災活動が行われる環境を整備することが必要である。イ リーダー等役員選任の工夫 自主防災組織のリーダー等の役員に、消防職員や消防団員経験者、医師、看護婦、自衛隊員経験者、大工等の専門的知識や経験を有する人を含めることで組織の機能向上が期待できる。サラリーマンOBは、現役時代に培った経験が、総合的、組織的対処が必要な防災活動に十分活かせる。ウ 他の地域の自主防災組織等との連携 大規模災害に備え、他の地域の自主防災組織との相互の応援協力体制等の連携を普段から確立していくことが望まれるとともに、都道府県や市町村を単位とした自主防災組織の連絡協議会等の設置など、活動事例等や情報交換ができる場(組織)をつくることが活動継続のうえで有効である。エ 婦人防火クラブや福祉ボランティア団体等との連携 自主防災組織が、婦人防火クラブや少年消防クラブといった民間防火組織又は福祉関係を中心としたボランティア団体や事業所の自衛消防組織との連携を促進することで、人的・物的資源調達の幅が広がり、災害時の効果的なネットワークを築くことができる。
(4)消防庁の自主防災活動支援に係る取組み 消防庁では、これまで、自主防災活動に対し補助金の交付や地方交付税、地方債による財政措置を行うほか、地域の優れた取組み等への表彰、優良事例の全国への紹介などにより側面的な支援を行ってきた。 今後も一層の地域防災力の充実を図るため、これまでの自主防災活動に対する支援の継続に加えて、以下のような取組みを行うこととしているア 地域防災力向上に向けた人材育成 消防団や自主防災組織のリーダー等を始めとして、住民の災害対応能力の向上を図るため、消防大学校や都道府県の消防学校等を活用し、消防職員、消防団員に対する教育訓練に加えて、一般の人をも対象とした防災・危機管理教育の充実強化、さらに家庭内や地域で学習できるe-ラーニングの活用による教育訓練の実施など新たな施策を進める(第2図)。イ 総合的な防災体制評価指針の策定 行政が自主防災活動支援を適切に行っているか否かなどの点をチェックし、地域の防災力の現状を自らが確認できる指標を作成し、行政の努力を住民が客観的に認識し評価できる仕組みを検討する。 以上、地域防災力の向上に向けた留意点について述べてきたが、最終的には、地域の防災に責任を有する地方公共団体の首長等が、消防団や自主防災組織のリーダー、住民等と連携しつつ、いかに地域社会の安全を考え、地域防災力の向上に向けて取り組むかが極めて重要である。 この点については、災害にまつわる故事、警句にもいくつかの示唆があり、各地方公共団体の首長や地域のリーダーが率先して地域防災力の向上に向けて取り組むことが重要であることが示されている。
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、平成6年以降6万件を超えていた出火件数は、平成10年及び11年には5万件台で推移してきたが、平成12年以降は、再び6万件を超え、増加の傾向にある。 火災による死者数は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年に戦後最大の2,356人となり、翌平成8年には一旦2千人未満に減少したものの、平成9年以降は再び2千人を超えて推移しており、平成13年は前年に比べ増加している(第1-1-1図、第1-1-2図、第1-1-3図)。 平成13年中における火災の状況をみると、前年に比べ、出火件数、死者数及び建物焼損床面積は増加しているが、焼損棟数及び損害額は減少している(第1-1-1表)。 また、放火自殺者を除く死者数は増加しているが、高齢者及び乳幼児の比率は、前年に比べ減少している(第1-1-8図、第1-1-9図、附属資料12)。
1 出火状況(1)出火件数は増加、1日当たり174件発生 平成13年中の出火件数は6万3,591件であり、前年に比べ1,137件(1.8%)増加している。また、1日当たりの出火件数は174件となっている(第1-1-1表、第1-1-2表)。
(2)建物火災は全火災の53.7% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の53.7%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(道路、空地、土手及び河川敷の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和59年以降変化していない(第1-1-3表)。 最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災、林野火災及びその他の火災については、平成9年及び10年と2年連続して減少していたが、平成11年以降再び増加傾向にある。 特に、平成4年からの10年間の種別ごとの増加指数をみると、林野火災(32.9%)、車両火災(34.6%)、その他の火災(42.4%)は、それぞれ30%以上増加している(第1-1-4表)。
(3)冬季から春季にかけて火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成13年中では、冬季と春季で総出火件数の57.4%を占めている(第1-1-5表)。
(4)出火率は5.0件/万人 平成13年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、前年同様、全国平均で5.0件/万人である(第1-1-1表、第1-1-6表)。 出火率を都道府県別にみると、最高は山梨県の6.9、次いで栃木県、愛知県の6.4の順であり、出火率の最も低いのは、平成5年以降9年連続して富山県の2.6、次いで福井県の3.0の順となっている(第1-1-7表)。
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器及び簡易消火用具 平成13年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が73.5%と圧倒的に多い(第1-1-4図)。 また、初期消火の状況をみると、消火器及び簡易消火用具(水バケツ等)を使用したものが29.9%となっているが、初期消火を行わなかったものは37.7%となっており、この値を10年前(平成4年)と比較すると5.8ポイント増加している(第1-1-8表)。
(6)放火を除くと、住宅火災は建物火災の57.0% 平成13年中において、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数は1万7,280件であり、建物火災の件数(3万333件)の57.0%と半数以上を占めている(第1-1-9表)。
2 火災による死者の状況 平成13年中の火災による死者数は2,195人であり、前年の2,034人に比べ161人(7.9%)増加しており、そのうち、放火自殺者を除いた火災による死者数は1,390人で、前年の1,302人に比べ88人(6.8%)増加している。 また、放火自殺者数は805人であり、前年の732人に比べ73人(10.0%)増加している(第1-1-5図)。
(1)1日当たりの火災による死者数は6.0人 平成13年中の火災による1日当たりの死者数は6.0人であり、前年の5.6人に比べ0.4人増加している(第1-1-2表)。 過去5年間の傾向として、死者総数及び放火自殺者を除いた死者数はともに、ほぼ横ばい状態で推移していたが、平成13年中は、前年に比べ増加している(第1-1-5図)。
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.74人 平成13年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.74人であり、前年の1.61人に比べ0.13人増加している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年同様東京都が160人で最も多く、次いで大阪府が124人、神奈川県、愛知県が116人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、福井県、山梨県、島根県で11人、次いで鳥取県が12人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは前年同様青森県で3.47人、最も低いのは滋賀県の0.98人となっている(第1-1-10表)。
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成13年中においても、1月から4月及び12月の月ごとの死者数は200人以上(年間の月平均は183人)に上っており、この5か月間に死者総数の54.1%に当たる1,187人の死者が発生している(第1-1-6図)。 平成13年中の時間帯別の火災による死者発生状況は、0時台が164人と最も多く、次いで2時台が127人となっている。なお、0時台の死者には、新宿区歌舞伎町ビル火災(午前0時50分発生)による死者(44人)が含まれている。就寝時間帯の死者発生状況は、0時台から5時台にかけて100人を超えており、就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1-1-7図)。
(4)死因は火傷が46.0%、一酸化炭素中毒・窒息が41.4% 平成13年中の放火自殺者を除いた火災による死因は、火傷によるものが640人(46.0%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息によるものが576人(41.4%)となっている(第1-1-11表)。
(5)建物火災による死者は死者総数の63.6% 平成13年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,397人と前年に比べ29人増加しているのに対し、死者総数に対する比率は63.6%(前年67.2%)と3.6ポイント減少している(第1-1-12表)。
(6)逃げ遅れによる死者が61.7% 死亡に至った経過をみると、平成13年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,390人のうち、逃げ遅れが857人で61.7%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が284人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の20.4%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が670人(48.2%)、5歳以下の乳幼児が44人(3.2%)を占めている。また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が183人(13.2%)、「熟睡によるもの」が162人(11.7%)を占め、二大要因となっている(第1-1-8図、第1-1-9図、附属資料12)。
(7)建物火災のうち、全焼による死者は794人 平成13年中の建物火災による死者1,397人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が794人(死者の出た火災1件当たり1.15人)で56.8%を占めている。また、部分焼の場合が255人(同1.05人)で18.3%、半焼の場合が237人(同1.39人)で17.0%、ぼやの場合が111人(同1.04人)で7.9%となっている(第1-1-10図、附属資料13)。
(8)建物火災による死者の81.7%が住宅で発生 平成13年中の建物火災による死者1,397人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,142人は、建物火災による死者の81.7%を占めている。また、階層別では、1階における死者が933人で建物火災による死者の66.8%、2階における死者が301人で建物火災による死者の21.5%等となっている(第1-1-11図、第1-1-12図、附属資料15)。 さらに、建物構造別では、木造建物における死者が898人と最も多く、建物火災による死者の64.3%を占めている(第1-1-13図)。 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,014人であり、建物火災による死者の72.6%を占めている(第1-1-14図、附属資料14)。
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成13年中の住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下同じ。)火災による死者1,142人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人により殺された者(以下「放火自殺者等」という。)219人を除く失火等による死者は923人となっており、前年(936人)に比べ13人(1.4%)減少した。また、このうち65歳以上の高齢者は511人(全体の55.4%)と半数を超えている(第1-1-15図、第1-1-13表、附属資料15)。ア 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成13年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、81歳以上の階層では、最も低い11歳から15歳の階層に比べ49倍となっている。 また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、11歳から15歳の階層と比べると約5.2倍となっている(第1-1-16図)。イ たばこを発火源とした火災による死者が22.9% 平成13年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが211人(全体の22.9%)で最も多く、次いでストーブ124人(同13.4%)、こんろ57人(同6.2%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者923人の42.5%を占めている。 また、65歳以上の高齢者についても同様にたばこ、ストーブ及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数の45.4%を占めている(第1-1-17図)。ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成13年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が265人で、死者数923人の28.7%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数511人の31.5%を占めている(第1-1-18図)。エ 死者の46.0%が就寝時間帯 平成13年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が425人であり、住宅火災の死者923人の46.0%を占めている(第1-1-19図)。オ 木造住宅における死者が70.0%と圧倒的に多い 平成13年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物における死者が646人であり、住宅火災の死者923人の70.0%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者511人の74.6%(381人)を占めている(第1-1-20図)。カ 逃げ遅れによる死者が68.0%と圧倒的に多い 平成13年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが628人(全体の68.0%)と最も多く、次いで着衣着火が69人(同7.5%)、出火後再進入が18人(同2.0%)の順となっている(第1-1-21図)。
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は27件・145人 平成13年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は27件で前年(28件)より1件減少している。また、これによる死者は145人で前年(100人)より45人増加している。 火災種別では、建物火災22件・130人(全体の89.7%)、車両火災4件・12人(同8.3%)、航空機火災1件・3人(同2.0%)となっている(第1-1-14表)。 建物用途別では、専用住宅での死者が38人であり、建物火災全体の29.2%を占めている(第1-1-15表)。
(11)放火自殺者は増加、死者総数の36.7% 平成13年中の放火自殺者は805人であり、死者総数2,195人に占める比率は36.7%(前年36.0%)となっており、前年(732人)より73人増加している。 放火自殺者を年齢別にみると、51歳から55歳が123人、56歳から60歳が120人、46歳から50歳が98人であり、これらの年齢で放火自殺者全体の42.4%を占めている(第1-1-22図)。
消子ちゃんプロフィール○ はじめまして。私が「消子ちゃん」です。 住宅防火対策推進協議会という、難しそうなところで、アイドルやってま〜す。△ お仕事は大変ですか?○ 私は、毎日http://www.jubo.go.jp/index.htmlにお勤めしています。皆さん会いに来てね。 私は、「消子ちゃんの住宅防火ねっと」というコーナーも担当しています。風水診断なんかもやっています。 時々、出張があって、住宅防火対策推進協議会の出ている展示会などのイベントに参加しています。 一緒に写真を撮った人、お元気ですか?△ 少し、プロフィールを教えてください。○ 私がデビューしたのは、平成5年です。△ かなり以前ですね。○ こらこら!失礼ですよ。アイドルは、歳をとらないんです(笑)。でも、いくつに見えますか?△ 失礼しました。では、白書をお読みの皆さんに、住宅防火について、一言お願いします。○ はい。あらためて、はじめまして。消子です。 毎年、火災で多くの方が亡くなっています。中でも、住宅での火災は建物火災の過半数を占め、住宅で亡くなられる方は、建物火災の8割にものぼります。 住宅防火対策推進協議会では、次の「住宅防火 いのちを守る 7つのポイント」をお奨めしています。
3 火災による損害額 平成13年中の火災による損害額は1,474億円であり、前年(1,504億円)に比べ30億円減少している。また、火災1件当たりでは232万円となっており、前年に比べ9万円減少している(第1-1-23図)。 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の93.7%を占めている(第1-1-1表)。
4 出火原因 平成13年中の総出火件数6万3,591件のうち、失火による火災が4万923件(全体の64.3%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1-1-24図)。
(1)「放火」による火災が5年連続して第1位 平成13年中の放火による出火件数は8,120件であり、前年に比べ303件(3.9%)増加し、全火災(6万3,591件)の12.8%を占め、5年連続して出火原因の第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは6,288件であり、前年に比べ253件(4.2%)増加している。放火及び放火の疑いを合わせると1万4,408件(全火災の22.7%)であり、前年に比べ556件(4.0%)増加している(第1-1-16表、附属資料6)。 放火による損害額は106億6,008万円であり、前年に比べ14億9,818万円(12.3%)減少している。放火の疑いによる損害額は102億1,518万円であり、前年より1億970万円(1.1%)増加している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は208億7,526万円であり、前年に比べ13億8,848万円(6.2%)減少している(第1-1-16表)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが4,670件(全体の32.4%)と最も多くなっている(第1-1-16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、前年同様、夜間から明け方(20時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に8,373件(全体の58.1%)が発生している(第1-1-26図)。
(2)「たばこ」による火災は減少 平成13年中のたばこによる火災は6,769件であり、前年に比べ102件(1.5%)減少し、全火災(6万3,591件)の10.6%を占めている(第1-1-17表、第1-1-25図)。 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが56.9%と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、123億7,208万円であり、前年に比べ7億1,420万円(5.5%)減少している(第1-1-17表)。
(3)「こんろ」による火災は増加 平成13年中のこんろによる火災は5,962件であり、前年に比べ326件(5.8%)増加している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,700件(全体の95.6%)であり、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、70.5%に当たる4,204件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、84億5,901万円であり、前年に比べ3億1,229万円(3.6%)減少している(第1-1-18表)。
(4)「たき火」による火災は増加し、「火遊び」による火災は減少 平成13年中のたき火による火災は4,051件であり、前年に比べ82件(2.1%)増加している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、たき火の延焼拡大が最も多く1,445件、次いで火の粉の飛び火、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は19億2,115万円で、前年に比べ6,297万円(3.2%)減少している(第1-1-19表)。 また、火遊びによる火災は2,275件であり、前年に比べ63件(2.7%)減少している。 火遊びによる火災の損害額は、19億2,242万円であり、前年より5億3,809万円(21.9%)減少している。 火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,193件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1-1-19表)。
(5)「ストーブ」による火災は増加 平成13年中のストーブによる火災は1,974件であり、前年に比べ109件(5.8%)増加している。ストーブの種類別では、石油ストーブによる火災が最も多く1,306件(全体の66.2%)であり、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが622件と最も多く、次いで使用方法の誤り、引火・ふく射の順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、99億6,134万円であり、前年に比べ4億927万円(4.3%)増加している(第1-1-20表)。
(6)着火物は前年同様「枯草」が第1位 平成13年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が8,624件であり全体の13.6%を占め、最も多くなっている(第1-1-21表)。
放火火災予防対策○ 火災原因の第1位をご存知ですか? 放火です。全火災件数(63,591件)のうち、実に8,120件が放火による火災となっています。これに、放火の疑い(6,288件)を加えると、14,408件(22.7%)となります。○ 放火火災はどこで発生しているのでしょうか? 建物で多く発生しています。建物火災件数(34,130件)のうち、放火が3,797件、放火の疑いが2,500件で、それぞれ建物火災の原因の2位と4位となっています。 また、車両火災件数(8,454件)のうち、放火が1,206件、放火の疑いが929件、合計2,135件で、車両火災の4件に1件は、放火が原因となっていると思われます。○ 放火火災はいつ発生しているのでしょうか? 放火及び放火の疑いによる火災は、午前9時が最も少なく、時間とともに徐々に増加し、午前3時がピーク(午前9時の約5倍)となり、その後下がっていく傾向がみられます。やはり、暗い時間帯が多くなっています。○ 放火火災はどのような状況で発生しているのでしょうか? 放火は、人目につきにくい、燃えやすいものが放置されている、侵入しやすいなどいくつかの条件が重なった場所で起きやすいようです。○ どのようにすれば放火を防ぐことができるのでしょうか? 新聞紙などの燃えやすいものを外に放置しないこと、暗いところなど死角をなくすこと、部外者が容易に侵入できないようにすること、機器等を活用すること(人が通ると点灯するセンサー付の照明器具の設置、防炎化された自動車カバーやバイクカバーの使用等)など地域ぐるみで対策を行っていくことが重要です。 また、ご家族やご近所の方々と放火について普段から話し合うなどの心がけも大切です。
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成13年中の建物火災の出火件数は、3万4,130件であり、前年に比べ102件(0.3%)の増加となっている。これを、10年前(平成4年)の3万3,532件と比較すると1.8%増加したことになる(第1-1-4表)。ア 建物火災は1日に94件、15分に1件の割合 平成13年中の建物火災の1日当たりの出火件数は、94件であり、15分に1件の割合で出火していることになる(第1-1-2表)。 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜4月及び12月)にかけて多く発生し、全体の48.0%を占めている(第1-1-27図)。イ 住宅における火災が建物火災の56.0% 平成13年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の56.0%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1-1-28図、附属資料16)。ウ 建物火災の45.8%が木造建物 平成13年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万5,624件であり、建物火災の45.8%を占め、次いで耐火造、防火造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の27.0%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみても、木造が最も大きく65.9m2となっており、全建物火災平均では46.8m2となっている(第1-1-22表)。エ 建物火災の過半数は小火災 平成13年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,139件であり、全体の47.3%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万6,352件で全体の77.2%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1-1-23表)。オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成13年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが71.4%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが36.7%となっている(第1-1-29図)。カ 3DKの住戸2万4,594戸相当分が焼損 平成13年中の建物焼損床面積は、前年に比べ4,593m2(0.3%)増加し、159万8,642m2となっている。この面積は3DK(65m2)の住宅が2万4,594戸焼損したことに相当する。 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は北海道の7万8,080m2であり、次いで愛知県、大阪府の順となっている。一方、最低は沖縄県の6,118m2であり、次いで鳥取県、徳島県の順となっている(第1-1-24表)。キ 1件当たりの焼損床面積は46.8m2 平成13年中の建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で46.8m2となっており、前年同様となっている。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、岩手県の96.0m2を最高に、青森県90.3m2、石川県88.5m2など35道県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が前年同様東京都の11.3m2で、次いで沖縄県23.6m2、神奈川県26.0m2など12都府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1-1-24表)。ク 放水した建物火災の28.4%は覚知後5分以内に放水 平成13年中の建物火災の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万8,599件(建物火災の54.5%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万5,251件(放水した建物火災の82.0%)であり、このうち5分以内のものは5,274件(放水した建物火災の28.4%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を14.9m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1-1-25表)。ケ 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成13年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は9,290件であり、放水した建物火災の49.9%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが3,176件で最も多くなっている(第1-1-30図)。
(2)林野火災 平成13年中の林野火災の出火件数は、3,007件であり、前年に比べ202件(7.2%)増加している。焼損面積は、1,773haであり、前年に比べ318ha(21.9%)増加しており、また、損害額も11億2,022万円であり前年に比べ4億1,172万円(58.1%)増加している。また、林野火災による死者は25人であり、前年に比べ9人増加している(第1-1-26表)。 また、林野火災の出火件数を月別にみると、平成13年中は4月に最も多く発生しており、次いで3月、5月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1-1-31図)。 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は、2,981件であり、全体の99.1%を占めている(第1-1-26表)。 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが740件で全体の24.6%を占め最も多く、次いでたばこ、火入れ、放火(放火の疑いを含む。)の順となっている(第1-1-32図)。
(3)車両火災 平成13年中の車両火災の出火件数は、8,454件であり、前年に比べ151件(1.8%)増加し、車両火災件数は増加傾向にある。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は39億2,664万円で前年に比べ3億1,606万円(8.8%)増加し、死者は304人で前年に比べ37人(13.9%)増加している。 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が2,135件(全体の25.3%)と最も多くなっている(第1-1-33図)。
(4)船舶火災 平成13年中の船舶火災の出火件数は、126件であり、前年に比べ2件(1.6%)減少している。また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は5億4,218万円で前年に比べ9,653万円(21.7%)増加している。なお、死者は3人、負傷者は26人となっている。 出火原因は、電灯・電話等の配線によるものが14件と最も多くなっている(第1-1-34図)。
(5)航空機火災 平成13年中の航空機火災の出火件数は、5件であり、前年に比べ1件(25.0%)増加している。また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は、1億5,065万円で前年に比べ8,230万円(120.4%)増加している。
[火災予防行政の現況]1 防火管理制度 平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災を契機に、消防計画において、管理について権原が分かれている防火対象物の権原の範囲を示すとともに、また、共同防火管理協議会の代表者については、所有権を有する者等の主要な管理権原を有する者とするため、平成14年の消防法施行規則一部改正を行い、防火管理制度の強化を図り、防火管理の徹底を図っている。
(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成14年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に102万4,878件あり、そのうち73.3%に当たる75万1,482件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、27万3,396件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が命令・指導を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は66万583件で全体の64.5%となっている(第1-1-27表)。
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難の訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 防火対象物の共同防火管理が不十分なままでは、火災発生の際に的確な対応が期待できないわけであるが、平成14年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、54.7%と前年(61.6%)より減少し、依然として低率に止まっている(第1-1-28表)。 新宿区歌舞伎町ビル火災において、小規模雑居ビルの階段等の共用部分について、防火管理の不備が問題となったことを踏まえ、平成14年の消防法施行規則の一部改正により、共同防火管理をする管理権原者は、消防計画の中でそれぞれの責任を明確化すること、共同防火管理協議会の代表者については所有者等の主要な管理権原者とすることなどが規定された。
2 消防用設備等の規制(1)防火対象物の実態 平成14年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第1(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150u以上のもの及び(十七)項から(十九)項までに掲げる防火対象物の数)は363万7,625件である。 また、13大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は84万214件であり、全国の防火対象物の23.1%を占めている。特に都市部に集中しているものは地下街(全国の79.7%)、準地下街(同57.1%)、非特定複合用途防火対象物(同48.1%)、スタジオ(同40.1%)等である(第1-1-29表)。
(2)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみると、平成14年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率は96.3%(前年96.1%)、スプリンクラー設備の設置率は99.5%(同99.5%)となっている(第1-1-30表)。 また、平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災にかんがみ、この種の小規模雑居ビル(特定複合用途防火対象物)や直通階段が1つしかない防火対象物に対する自動火災報知設備の設置義務を拡大するとともに、違反対象物については積極的に消防法に基づく措置命令、使用停止命令、刑事告発等の措置を講じ、迅速かつ効果的な違反処理をすすめることとしている。 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近においては、平成11年3月に消防法施行令の一部改正等を行い、スプリンクラーヘッドの設置間隔に係る基準の合理化、誘導灯及び誘導標識に係る技術基準の全面見直し(免除要件の拡大、基準の合理化、新しい機能・性能等を有する誘導灯に係る基準の整備)等を図っている。また、技術革新による新技術や新素材の円滑な導入、多様なニーズに対応した選択の幅の拡大等の観点から消防用設備等に係る検討を進めており、今後とも技術上の基準の整備に努めることとしている。 消防用設備等を設置したときは、消防長又は消防署長が技術上の基準に適合しているか否かを検査しているが、設置後の検査が困難な設備等については、消防機関にも防火対象物の管理権原者にも負担となっていたが、平成12年12月に消防法施行規則の一部改正等が行われ、指定認定機関が消防用設備等又はこれらの部分である機械器具について設備等技術基準に適合しているとして認定することができるものとし、認定を受けたものは検査の際に当該認定に係る設備等技術基準に適合しているとみなすこととされた。 さらに、近年増加している高層建築物、大規模建築物等については、最新の技術等を活用し、建築物全体として総合的かつ有機的に機能する消防防災システムの整備を推進していく必要があり、消防庁としては、昭和61年12月に「消防防災システムのインテリジェント化推進要綱」を定めるとともに、特に優れた消防防災システムに対する表彰制度を設け、機能の優良性の確保と技術開発の促進を図っている。
(3)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 消防設備点検資格者になるための講習は、平成12年12月に消防法施行規則の一部改正が行われ、民間の指定講習機関により行うものとされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施することとしている。 平成14年3月31日現在、消防設備士の数は延べ78万7,333人となっており(第1-1-31表)、また、消防設備点検資格者の数は第1種(機械系統)10万5,577人、第2種(電気系統)9万9,854人となっている。 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、自主的に各都道府県単位で実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行に対する認識の高揚が図られている。
(4)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効である。このことから、消防法では、高層建築物、地下街等構造及び形態上防火に特に留意する必要がある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等不特定多数の者やいわゆる災害弱者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成14年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、85万4,228件である。防炎物品の適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものにあっては85.0%、じゅうたんを全部使用しているものにあっては82.7%、展示用合板を全部使用しているものにあっては76.2%となっている(第1-1-32表)。イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている。 防炎表示制度は、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として、従前の防炎表示者の認定制度を平成13年1月から登録制度に改正した。併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として一定の基準を満たす指定確認機関による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高めることにより、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成14年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、2万9,231業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.7%を占めている。)であり、前年同期より285業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎化 消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、オートバイカバー等についても、防炎化を推進することにより火災予防の徹底を図る必要があることから、防炎性能を有するものについては、財団法人日本防炎協会が発行する「防炎製品」表示ラベルの貼付により消費者の利便を図っている(第1-1-33表)。
(5)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器等や業務用として使用される炉、厨房設備、サウナ設備など、その種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を持ち、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成13年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,808件(総建物火災件数3万4,130件の約22.9%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いの基準は、消防法第9条に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制が行われてきたが、火気設備等の規制内容は、市場アクセスの一層の改善を図るため、消防庁は平成13年に消防法第9条の改正を行って、政令で定める基準に従い条例を定めることとし、全国統一的な基準に基づき火気設備等の規制を行うこととした。
3 防火基準適合表示制度 「防火基準適合表示制度」は、一定規模以上の旅館・ホテル、劇場、公会堂、百貨店等、防火基準適合表示制度の対象とされた防火対象物(以下「表示対象物」という。)について立入調査を通して審査し、一定の防火基準に適合する場合に消防機関が「適マーク」を交付する制度である。同制度は、その対象物の防火に関する状況を広く国民に対して情報提供するとともに、対象物関係者の防火に対する認識を高め、防火安全に関する不備事項の是正促進に大きな効果を上げている。 また、平成6年12月に発生した福島県飯坂温泉若喜旅館本店の火災では、適マークを交付された表示対象物にもかかわらず多数の犠牲者が発生したことを厳しく受けとめ、平成8年4月からは、適マーク交付基準に消防機関へ通報する火災報知設備の設置等2項目を加え、一層の防火安全対策の徹底を図っている。
(1)「適マーク」交付状況 平成14年3月31日現在の表示対象物は全国で5万7,062件あり、そのうち立入調査を完了した表示対象物数は5万3,955件(調査率94.6%)である。また、立入調査を終えた表示対象物のうち適マークを交付された表示対象物数は3万8,621件(調査完了物件に対する交付率71.6%)である。 さらに、平成14年3月31日現在、2年以上表示基準に適合していると認められ、その旨の表示(適継続章)がなされた表示対象物数は2万5,730件である。 なお、適マークの交付を受けていた表示対象物であって、その後において適マークを返還した対象物は、平成14年3月31日現在、1,323件となっている(第1-1-35図、附属資料17)。
(2)表示基準への適合の状況 表示基準に基づく点検項目は、28項目ある。このうち、適合率が低い項目は、消火・避難訓練の実施(該当する表示対象物全体の81.9%)、防火管理体制指導マニュアルの実施(同89.2%)、自主チェック体制の整備(同90.8%)となっており、防火管理面の項目における適合率が低い(附属資料18)。
4 消防同意及び立入検査(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成13年度の全国における消防同意事務処理件数は、33万6,292件(前年度35万4,829件)であり、消防同意した申請のうち9万7,574件(29.0%)については、消防機関により指導が行われている(第1-1-34表)。
(2)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成13年度に全国の消防機関が行った立入検査数は、110万2,109件であり、防火対象物数(363万7,625件)の約3割について指導を行っている(第1-1-29表、第1-1-35表)。 新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた平成14年の消防法の一部改正により、立入検査の時間制限の見直し等が行われ、消防機関がより的確で効果的な立入検査を行うことができるようになった。
(3)違反状態の改善 立入検査等により発見された防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができ、また、消防法第5条又は第5条の2の規定に基づき、火災の予防に危険であると認める場合等には、当該防火対象物の改修、移転等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされている。 このようなことから立入検査等を行った結果、消防法違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、指示、警告、命令等の改善指導を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1-1-36表、附属資料19、20、21)。 特に、特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定用途防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)にあっては、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性にかんがみ、厳しく指導を行っているが、未だに216件の対象物において消防法違反が存在するため、これらに対して早急な改善指導を行っている(第1-1-37表)。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定対象機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定の対象となる消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の器具等が、型式承認を受けたものと同一である旨を確認する検定)とからなっている(第1-1-38表)。 また、新たな技術開発等に係る検定対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 個別検定については、一括抜取りの範囲の拡大、検査項目の省略・削減を中心とした簡素合理化を実施している。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格に適合している旨の表示を付そうとする製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成14年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては1,855件、消防用吸管にあっては48件である。
[火災予防行政の課題](1)違反是正の徹底 立入検査制限等の見直し、措置命令等の発動要件の明確化、措置命令等を発した場合の公示義務付け、罰則の強化等を内容とする平成14年の消防法の一部改正等を踏まえ、火災危険性等を勘案した立入検査の優先順位の考え方や防火対象物の関係者への指導要領等を盛り込んだ「立入検査マニュアル」と、火災の危険性、違反の悪質性等を勘案した命令発動要件の具体例や告発要領等を盛り込んだ「違反処理マニュアル」を用いて全国の予防職員に研修会を行うほか、全国の消防機関において違反処理に係る判例や事例を検索できる「違反処理データベース」を構築するなど、違反是正を推進する体制の整備を図り、小規模雑居ビルをはじめとする違反防火対象物に対する是正指導に重点的に取り組んでいく必要がある。※特集「新たな火災予防対策の推進」を参照
(2)防火管理の徹底 平成14年の消防法の一部改正により、防火対象物の定期点検報告制度が創設された。また、防火管理制度の運用において、小規模雑居ビルの階段等の共用部分について管理権原者が必ずしも明確にされていないこと、また、共同防火管理協議会の代表者についてふさわしい立場の者が選任されていない場合があることから、消防法施行規則の一部改正など必要な措置を行った。これらの改正された法令の施行(平成15年10月)に向け、その制度改正の実効性を確保し、防火管理の徹底を図っていく必要がある。 また、防火管理講習については、講習の実施主体に民間活力を導入して十分な講習機会の確保を図るとともに、防火管理が複雑化している特定防火対象物の防火管理に再講習を義務付けるなど、その充実強化に取り組んでいく必要がある。※特集「新たな火災予防対策の推進」を参照
(3)火災原因調査体制の整備・充実 火災原因を究明し、また、火災によって生じた損害の程度を明らかにすることは、効果的な火災予防施策の推進、あるいは消火活動体制の確立、効率化を図るための資料を得る上で極めて重要である。このため、各消防本部における火災原因調査体制の整備、都道府県等による広域的な支援体制の確立、消防本部相互による支援体制等の確立を促進するとともに、火災調査関連情報データベースを活用して火災原因調査に必要な情報の提供を行う必要がある。 他方、近年、建築技術の高度化、社会生活の多様化等により、火災の様態も複雑多岐にわたり、新たな設備や複雑なプロセスから生じる火災や出火経過等が特定できない火災事例もみられるなど、火災原因を究明することが困難な火災事例もみられる。また、平成14年の第154回国会(常会)における消防法の一部を改正する法律案に対する衆参両議院総務委員会の附帯決議で、「今後、地方公共団体から求めがないときであっても、消防庁長官が大規模火災等の火災原因調査を実施できるよう制度や体制の整備に努めること」とされた。 これらを踏まえ、消防庁長官の主体的な火災原因調査を導入するなど、火災原因調査体制の充実強化を図る必要がある。
(4)住宅防火対策の推進 住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)は、平成13年においては建物火災による死者の82.5%と高い割合を占めており、特に、高齢者の死者発生率が他の年齢層に比べ極めて高い現状にある。消防庁では、これまでも各種の住宅防火対策を国民運動的に推進してきたところであるが、今後とも高齢化が一層進展することから、住宅防火対策を推進し、住宅火災の発生とこれによる死者の発生を抑えることが、現下の消防行政における極めて重要な課題となっている。 住宅防火を推進するためには、個人の責任において個々の住宅における防火安全の向上を図る必要がある一方で、平成13年4月に策定した新たな「住宅防火基本方針」に基づき、高齢者等を中心とした住宅火災による死者のより一層の低減を図ることを目標に住宅防火対策を積極的に推進する必要がある。ハード面においては、住宅用火災警報器、住宅用消火器、住宅用スプリンクラー等の設置促進や防炎寝具の普及等を通じて防火安全性能の向上を目指すとともに、ソフト面においては、住宅防火情報の提供や防火意識の更なる高揚により住宅の防火安全の向上を図る。 また、火災発生時等に初期消火や避難等の対応が困難となる高齢者等の増加が見込まれる中、今後とも、地域ぐるみの取組みが重要である。このため、消防機関は、福祉関係部局等の関係行政機関はもとより、町内会・自治会等の公共的団体、婦人防火クラブ、ホ-ムヘルパー等の福祉関係者等と、地域単位で連携・協力し、対策の実践を図ることが必要である。その際には、住宅防火対策等に関する知識を分かりやすく説明した教材を作成・配布することなどにより、潜在する住宅火災の危険性の排除等について具体的な注意喚起を図るとともに、学校、幼稚園、保育所や地域のサークル活動等のあらゆる場を活用して、地域の実情に即した住宅防火の展示普及事業や住宅防火シンポジウム等を行い、住宅防火知識の普及を図ることが必要である。
(5)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降5年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占め、年々増加する傾向にある。特に、都市部においては、火災原因の4割を超える都市もあるなど、この傾向が顕著で、深刻な社会問題となっている。 このため、消防庁では、地域における放火火災の実情の分析やその特性等に応じた放火防止対策を行う先進市町村の事例等をもとに放火防止対策要綱を策定するほか、関係機関との連携を強化して放火発生件数の低減と被害の局限化等を図るための対策を一層推進することとしている。 近年の放火は、相手と場所を選ばない無差別なものが多い。このため、一人ひとりが防火対策を心掛けるだけでなく、地域における放火火災予防対策の推進も重要である。それぞれの地域社会を構成する地域住民自らが放火火災に対する危機感を持ち、「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識のもとに、消防機関をはじめ、関係行政機関、関係団体、町内会等が一体となって地域ぐるみの対策の推進を積極的に図っていくことが必要である。その際、学校・自治会等における火災予防教育の実施や放火火災予防診断、座談会等を実施するなど、「放火火災予防対策マニュアル」等を活用して、地域住民の意識の高揚を図り、放火されない環境づくりを推進する必要がある。 また、特に放火が多発する地区等にあっては、可燃物を放置しない等の地域の環境整備はもとより、重点警戒の実施や街灯の増設、侵入監視センサー、警報器等の防火・防犯設備の設置、自動車・オートバイカバーの防炎化を推進することなども必要である。
(6)建築物の大規模化・高層化等に対応した防火安全対策の推進と技術基準の性能規定化 近年、建築物の大規模化、高層化等が進展する中で、火災等の災害が発生した場合の対応も、高度化、複雑化する傾向にある。これらに適切に対応するためには、より高度化された消防防災システムの整備が効果的であることから、消防庁では、防災の用に供する設備・機器の監視・制御等を建築物全体で一体的に行う総合防災システムの構築等、消防防災システムのインテリジェント化に係る施策を積極的に推進している。また、防災センターの機能を十分に発揮させるため、防災センター要員に対する教育制度を適切に運用し、ソフト面の対応の充実を図っている。 このように、消防庁では、消防用設備等に係る技術の進展や新たな知見の蓄積を踏まえ、消防防災システムのインテリジェント化に適切に対応できるよう措置してきているところである。しかし、こうした防火対象物においては、従来の仕様書規定を中心にした技術基準では、建築物の特殊性や新技術を活用した消防用設備等の導入に対しては硬直的な対応となるおそれもある。また、平成14年3月に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」においては、基準認証等分野の基本方針として、「基準の内容が、技術革新に対して柔軟に対応できるよう、仕様書規定となっている基準については原則としてこれをすべて性能規定化するよう検討を行う。」こととされている。このため、消防庁では、平成11年度から防火対象物の火災危険性に応じた合理的かつ総合的な防火安全対策手法の構築に係る検討を行ってきたところであり、今後、この検討の状況を踏まえ、防災センター要員等ソフト面との有機的な連携に留意しつつ、消防用設備等の技術基準の性能規定化に積極的に取り組むことが必要である。
(7)物品販売店舗、病院・社会福祉施設、旅館・ホテル等における防火安全対策の推進 物品販売店舗、病院・社会福祉施設、旅館・ホテル等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念される。このため、消防用設備等の適切な設置、維持・管理や防火管理体制の充実等が特に重要となる。今後とも、これらの施設における消防用設備等、防火管理体制の整備を促進し、防火安全対策の充実を図るため、物品販売店舗、病院・社会福祉施設、旅館・ホテル等の用途別に作成された防火管理体制指導マニュアルの活用などにより、自主防火管理体制の強化について指導していくことが必要である。
(8)文化財保護のための防火安全対策の推進 平成12年5月には重要文化財である寂光院本堂の木造地蔵菩薩立像が焼損する火災が発生したが、国民共通の財産である文化財を火災による焼失等から保護し、後世に残すことは、極めて重要な課題である。 我が国の文化財建造物は、伝統的な建築技術を用いた木造の建造物が多いなど、通常の防火安全対策では十分な対処が難しいものも多い。このため、文化財の特性に応じた防火管理の実施、消防用設備等の設置、火災時の消火活動等の防火安全対策の充実に努める必要がある。 また、近年、文化財建造物を神社仏閣等以外の多様な用途に活用する事例も見られる。例えば、文化財建造物を、旅館・ホテルや飲食店のように不特定多数の者が利用する場合には、十分な防火安全対策が講じられていない場合、火災危険性が非常に高くなる。このため、こうした文化財建造物の多様な利用実態を踏まえ、その火災危険性に対応した消防用設備等の設置及び防火管理のあり方について検討し、必要な対策を講じる必要がある。
(9)災害弱者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害弱者が安全に安心して生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害弱者の安全性の確保に留意する必要がある。 災害弱者を収容する社会福祉施設等に対しては、「社会福祉施設及び病院における夜間の防火管理体制指導マニュアル」に基づき、防火管理上特に支障が生じやすい夜間における防火管理体制の整備を図るなどソフト面の充実に努め、災害弱者に配慮した総合的な防火安全対策の推進を指導していくことが必要である。 また、社会福祉施設等以外の防火対象物についても、障害者等の社会参加が増加してきている中、火災発生時に災害弱者による初期消火や避難などの適切な対応が困難となることを踏まえた消防用設備等のあり方について、総合的に検討を行う必要がある。 さらに、災害弱者が居住する住宅における対策として、消防機関をはじめ行政機関が、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等の防火対策推進協力者と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等の防火指導の推進等の取組みを引き続き実践する必要がある。併せて、災害弱者から消防機関への緊急通報体制の一層の充実を図るため、従来から実施している「災害弱者消防緊急通報システム(万一火災が発生した場合には煙や熱を感知するセンサーの働きにより、また急病などの場合には身につけているペンダントなどのボタンを押すことにより最寄りの消防機関等に緊急事態の発生が自動的に通報される機能を持ったシステム)モデル事業」の更なる普及促進に取り組むとともに、今後とも、情報通信技術の進展を踏まえ、より多様で高機能な自動通報システムや災害弱者に配慮した仕組みを有した緊急通報システムの開発を進めていく必要がある。
(10)消火器事故防止対策の推進 平成13年に相次いで老朽化した消火器等の破裂による人身事故が発生したため、消防庁では平成13年6月に「消火器事故対策検討会」を設置して、一般家庭にある古い消火器を回収するなどの緊急対策や抜本的な事故再発防止対策等について検討を行った。 この結果、平成13年秋季火災予防運動から、緊急対策として、消防機関、消火器の販売・点検業者等が協力して、老朽化した消火器の危険性の広報や一斉回収等を行っている。また、事故の危険性の少ない、住宅防火基本方針に基づき策定された消火器等推奨基準に適合する住宅用消火器やエアゾール式簡易消火具等の住宅への普及促進を図っている。 今後とも、抜本的な再発防止対策を含め、消火器事故防止対策について、消防庁、消防機関、消火器メーカー、消火器販売・点検業者等が協力して取り組んでいく必要がある。
(11)ISO9000等審査登録機関について 現在、品質管理の手法として広く用いられているISO9000は、製造業のみならず、設計、運送、事務など様々な分野において広く普及してきているところであり、社会的に重要な地位を占めつつある。 ISO9000を事業者等が取得することにより、製品の品質の維持、向上が図られ、さらには、コストの削減などの利点とともに、消防用機械器具等の品質の安定、信頼性が向上するため、その普及が望まれている。 このため、消防関係の事業所等において容易にISO9000の認定を取得するためのISO9000等審査登録機関の設立が必要であり、平成14年7月に、その設立準備室が設置され、ISO9000等審査登録機関の設立に向けた取組みがなされている。 また、消防機関、事業所等で、環境マネジメントシステムの取得への要望が高まっていることから、将来、同審査登録機関においてISO14000の審査を実施することも視野に入れている。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設における事故は、火災(爆発を含む。)と漏えいに大別される。昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していた危険物施設における事故件数は、平成6年を境にして増加傾向を示しており、平成13年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が169件、漏えいが334件であり、高い水準で推移している。このうち、漏えい件数については、統計を取りはじめて以来、過去最高となっている(第1-2-1図)。
1 火災(1)火災件数と被害 平成13年中の危険物施設における火災の発生件数は、169件(対前年比25件減)、損害額は10億6,992万円(同11億106万円減)、死者は1人(同5人減)、負傷者は47人(同7人減)となっている(第1-2-2図)。 危険物施設の火災による他への影響の程度をみると、164件(他の施設からの類焼により危険物施設が火災となった5件を除く。)の火災のうち158件(全体の96.3%)が当該危険物施設のみの火災にとどまり、5件(同3.1%)が当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼し、1件(同0.6%)が危険物の漏えいに起因して施設外から火災となっている。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が91件、給油取扱所での火災が44件となっており、これらの火災は、全体の79.9%を占めている(第1-2-3図)。 さらに、出火原因となった物質を消防法別表の類別等に従って区分すると、169件の火災のうち102件(全体の60.4%)は、危険物が出火原因物質となっている。これを品名別にみると、第4類第1石油類45件、第4類第2石油類15件、第4類第3石油類10件等の順となっている(第1-2-4図)。
危険物施設って何? 皆さん、「危険物施設」ってご存じですか?  消防関係者の間では比較的ポピュラーな言葉ですが、この言葉は消防法令には出てきません。消防関係者以外で、この言葉の意味をご存じの方はあまりいないのではないでしょうか。 「危険物施設」について解説する前に、まず「危険物」とは何かということについて少し触れてみます。消防法で規定されている「危険物」は、一般的な言葉として用いられている「危険物」より狭い概念で、原則として、ガス、火薬、毒劇物等は含まず、代表的なものとしてはガソリン、灯油等の石油製品が挙げられます。 では、「危険物施設」とは何でしょうか。「危険物施設」とは、消防法で規定される「危険物」を一定量以上貯蔵し、又は取り扱う施設のことで、危険物を製造する「製造所」、危険物を貯蔵する「屋内貯蔵所」、「屋外タンク貯蔵所」、「屋内タンク貯蔵所」、「地下タンク貯蔵所」、「簡易タンク貯蔵所」、「移動タンク貯蔵所」、「屋外貯蔵所」、危険物を取り扱う「給油取扱所」、「販売取扱所」、「移送取扱所」、「一般取扱所」の12種類に区分されます。 それぞれの代表例には、例えば次のようなものがあります。「製造所」・・・・・・・石油製品を製造する製油所「屋内貯蔵所」・・・・・ドラム缶等の容器に収納された危険物を貯蔵する倉庫「屋外タンク貯蔵所」・・コンビナート地区でよく見られる石油タンク「屋内タンク貯蔵所」・・高層ビルなどの非常電源用の建物内にある燃料タンク「地下タンク貯蔵所」・・ボイラー等に接続される地下に埋設された燃料タンク「簡易タンク貯蔵所」・・都市部以外の地域に設置できる小型のタンク「移動タンク貯蔵所」・・タンクローリー「屋外貯蔵所」・・・・・ドラム缶等の容器に収納された危険物を貯蔵する屋外の場所「給油取扱所」・・・・・ガソリンスタンド「販売取扱所」・・・・・塗料販売店「移送取扱所」・・・・・通常パイプラインと呼ばれるもの「一般取扱所」・・・・・印刷工場、塗装工場等 これらの中には普段は皆さんの目に触れにくいものもありますが、ご覧になったことがあるものも多くあることでしょう。 これら危険物施設に対しては、消防法令において、火災予防上の観点から、ハード面及びソフト面の技術基準を定め、十分な安全対策を図っており、皆さんの普段の生活における安全を陰から支えているのです。
(2)火災の発生原因及び着火原因 平成13年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が103件(全体の60.9%)と最も多く、物的要因が27件(同16.0%)、その他の要因が39件(同23.1%)となっている。 また、着火原因をみると、静電気火花が30件(全体の17.8%)で最も多く、次いで裸火29件(同17.2%)、過熱着火27件(同16.0%)となっている。
(3)無許可施設の火災 平成13年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は、13件であり、死者は6人、負傷者は3人となっている。なお、これらの火災による損害額は、1億3,784万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成13年中の危険物運搬中の火災の発生件数は、11件であり、死者はなく、負傷者は5人となっている。なお、これらの火災による損害額は2,454万円となっている。
2 漏えい 平成13年中の危険物施設における危険物漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、334件(対前年比17件増)となっている(第1-2-5図、第1-2-6図)。これを、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が177件(全体の53.0%)と最も多く、物的要因が110件(同32.9%)、その他の要因が47件(同14.1%)となっている。 このほか、無許可施設において11件(対前年比6件増)、危険物運搬中に20件(同6件減)の事故が発生している。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関が行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として、危険物データベースを運用している。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならないとされている。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 また、危険物施設においては、危険物取扱者以外の者は、危険物取扱者の立会いがなければ危険物を取り扱ってはならず、危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。さらに、一定の危険物施設では、危険物保安監督者を選任し保安監督を行わせる等、危険物の貯蔵又は取扱いに関する保安体制の整備を図らなければならない。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、一定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱いについては、市町村条例で貯蔵・取扱いに関する基準を定め、規制することとされている。 なお、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務は、機関委任事務制度の廃止に伴い、平成12年4月1日から都道府県又は市町村の自治事務とされている。
(2)危険物規制の最近の動向 危険物の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバー自らが、給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした。セルフスタンドは、平成14年3月31日現在1,432施設(対前年度比945施設増)が設置され、急激な増加を示している。 平成12年3月には、容量が1万kl未満の特定屋外タンク貯蔵所の内部点検について、構造上の安全レベルに応じて点検周期を延長した。 平成13年7月には、消防法が改正され、次のとおり危険物の範囲を見直した。 ア) 平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第5類(自己反応性物質)の品名に追加した。 イ) 平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲を250度未満とした。 また、「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、平成13年9月には、ガソリンスタンドに設置される専用タンクの容量制限を撤廃したほか、平成14年1月には、屋外で貯蔵することができる危険物を追加するとともに、その際に必要な技術基準を策定した。
セルフスタンドでの安全給油〜静電気による火災の防止〜 セルフスタンドは、給油に訪れた顧客自らが給油設備を操作して、自動車等にガソリン等を給油する給油取扱所となっており、近年、その数は大幅に増加しています。平成14年3月31日現在で1,432施設あり、昨年(487施設)と比較すると1年間で3倍近く増加しました。国民の関心も高く、また、セルフスタンドを利用する人も多くなっています。 セルフスタンドを利用する際は、従業員だけではなく一人ひとりの利用者がガソリンの危険性を十分認識し、エンジンの停止、喫煙ほか火気の使用を避けなければなりません。 また、ガソリンは静電気による火花でも容易に火災になるおそれがあり、給油する前に、自動車の給油口のキャップを緩めた際、噴出したガソリン蒸気に引火した事例も発生しています。これは、利用者に帯電した静電気によるものと考えられており、消防庁では関係業界との連携・協力のもと、静電気防止対策に係る注意喚起、啓発ポスターやパンフレットの配布、静電気除去シートの計量機等への貼付など、事故防止対策に取り組んでいます。個々の利用者においても、給油作業に入る前に、静電気除去シートや金属部分(ドア等)に触れること等により、静電気を除去する必要があります。<事故の未然防止のために>○給油前に必ず自動車のドア・窓をお閉めください。○静電気除去のため、作業前には必ず自動車の金属部分に触れてください。○給油作業は必ずお一人で行ってください。○給油口付近にお子様が近づかないように注意してください。○その他、ガソリンスタンド内に掲示されている注意事項を守ってください。
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成14年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は、53万7,825施設(対前年度比4,243施設、0.78%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が、12万3,096施設(全体の22.9%)と最も多く、次いで給油取扱所の8万3,869施設(同15.7%)、移動タンク貯蔵所の8万356施設(同14.9%)等となっている(第1-2-1表、第1-2-7図)。 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は、52万4,546施設(全体の97.5%)となっている。 危険物施設数の最近における推移をみると、製造所及び移動タンク貯蔵所はわずかに増加しているが、その他の施設は減少傾向にある(第1-2-1表、附属資料29)。イ 危険物施設の規模別構成 平成14年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が、41万2,032施設(全体の76.6%)を占めている(第1-2-8図)。
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければできない。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成14年3月31日現在637万7,364人と広く国民の間に定着してきており、広く危険物に関する知識、技能の普及を図っている。今後とも、危険物の安全の確保に大きな役割を果たす危険物取扱者の資質の向上のための各般の施策を推進していくこととしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成13年度中の危険物取扱者試験は、全国で326回(対前年度比3回増)実施されている。受験者数は、52万6,203人(同2,095人減)、合格者数は、21万2,082人(同2,035人減)で平均の合格率は40.3%(同0.2ポイント減)となっている(第1-2-9図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が34万2,417人(全体の65.1%)と最も多く、次いで丙種の7万3,659人(同14.0%)となっており、この二種類の試験で全体の79.1%を占めている。合格者数でも、乙種第4類が11万614人(全体の52.2%)、丙種が3万9,750人(同18.7%)となっており、この二種類の試験で全体の70.9%を占めている。イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成13年度中の保安講習は、全国で延べ1,365回(対前年度比13回増)実施され、16万9,644人(同3,507人減)が受講している(第1-2-2表)。
(5)事業所における保安体制の整備 平成14年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で25万5,209事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規定の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものには、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1-2-10図)。 なお、危険物施設の許可の際の許可要件が維持されていない等の場合は、許可の取消し等ができる。また、著しく不適任と判断される危険物保安統括管理者及び危険物保安監督者については、市町村長等が解任を命ずることができる。
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが、義務付けられている。 平成13年度中に実施された保安検査は、323件(対前年度比9件増)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは、316件(同10件増)、特定移送取扱所に関するものは7件(同1件減)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成13年度中の立入検査は、27万6,002(対前年度比8,570減)の危険物施設について、延べ30万2,410回(同13,431回減)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成13年度中において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、214件(対前年度比63件減)となっている(第1-2-11図)。
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならないこととされている。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行うこととされている。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけである。 なお、新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)危険物施設等の安全確保の徹底 危険物施設等の事故件数は、近年顕著な増加傾向を示しており、加えて平成12年には、危険物に指定されていなかった物質を原因とする大きな事故も発生している。 このため、法令による技術基準の整備、事故の要因分析と対策の推進、新規危険性物質の把握と対策の推進及び消防機関の危険物災害への対応力の強化等について検討し、事故防止の徹底を図る必要がある。 このうち、事故の要因分析と対策の推進については、分析結果を踏まえ、事故防止上重要度の高い対策について重点的な取組みを図っていくことが必要である。特に、これまでの分析から、危険物に係る事故のおよそ3分の2を占める漏えい事故に関しては、地下埋設配管等の腐食が重要な要因であることが判明しており、これらに対する安全対策の総合的検討とその推進を図っていく必要がある。 新規危険性物質の把握と対策の推進については、科学技術の進展から、消防法上の危険物にはなっていないものの火災危険性を有する化学物質などが出現する可能性がある。このため、こうした物質に関する情報を速やかに把握し、危険性が確認された場合には必要な対応を図ることが必要である。 消防機関の危険物災害への対応力の強化については、効率的・効果的な立入検査を実施するための有用な情報を提供し、予防業務の一層的確な執行を支援するほか、危険物の物性情報や事故事例などの保安情報を提供し、消防対応力の充実を図っていくことが必要である。
(2)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、新たな危険物品の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、諸外国で導入が進んでいる危険物施設に係る新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行うとともに、安全性の確保に十分配慮しつつ危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を図っていく必要がある。また、燃料電池自動車への燃料供給のため、水素ステーションのガソリンスタンドへの併設などインフラ整備に係る技術基準の整備を図っていく必要がある。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成13年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は、86件であり、前年(82件)と比較すると、4件の増加となっている(第1-3-1図)。 全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、15件の災害により、死者1名、負傷者43名が発生している。損害額は、2億4,108万円で、前年に比べ1億5,402万円の減少となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が50件(対前年比8件減)、設備の劣化や故障などの物的要因が27件(同3件増)となっており、前年度と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が67件(うちレイアウト規制対象事業所56件)であり、全体の77.9%を占めている。1事業所当たりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が25.9%と最も高い(第1-3-1表)。
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、鉄鋼業関係25件(全体の29.1%)、化学工業関係23件(同26.7%)、石油製品・石炭製品製造業関係18件(同20.9%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質を大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立が図られている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している地域については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の85地区(平成14年4月1日現在)が指定されている(第1-3-2図)。 また、平成14年4月1日現在、第1種事業所428事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は208)、第2種事業所362事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料31のとおりである。
石油コンビナート等災害防止法で定める特別防災区域 石油コンビナート等災害防止法(以下、「石災法」という。)では、大量の石油又は高圧ガスが取り扱われている区域又は取り扱われることとなる区域を「石油コンビナート等特別防災区域」として政令で指定しています。 これは、大量の石油又は高圧ガスを扱う事業者が集中している区域において災害が発生した場合には、大規模な災害となるおそれがあるため、その区域を特別防災区域として指定し、総合的な防災対策の推進を図ることによって、国民の生命、身体及び財産を保護することを目的としているものです。 石油コンビナート等特別防災区域は、次に示す(1)〜(3)のいずれかの要件に該当した場合、特別防災区域として指定されます。(1)複数の事業所が所在する区域全体での石油又は高圧ガスの扱い量が大量である区域(石災法第2条第2号イに該当)(2)単一の事業所のみで大量の石油又は高圧ガスを扱うこととなる区域(石災法第2条第2号ロに該当)(3)これから近い将来に(1)又は(2)に該当することとなると認められる区域(石災法第2条第2号ハに該当) 特別防災区域の指定に際しては、地元の意見を反映させ、かつ実態に即した地域指定が行えるように関係都道府県及び関係市町村の意見を聴くこととされています。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の基準」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を推進するため、特別防災区域所在市町村における大型化学消防車等の整備について国庫補助を行っている。 平成14年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車102台、大型高所放水車86台、泡原液搬送車99台、泡消火薬剤3,749kl、消防艇27艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備24基、泡放水砲21基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成14年4月1日現在、全事業所(790事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか87の共同防災組織、66の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員5,783人、大型化学消防車173台、大型高所放水車131台、泡原液搬送車149台、大型化学高所放水車32台、油回収船38隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成14年4月1日現在、流出油等防止堤が195事業所に、消火用屋外給水施設が586事業所に、非常通報設備が790の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。これらの防災組織は実際の防災活動経験に乏しい面もあるため、消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」及び「防災要員教育訓練指針」を取りまとめるとともに、これらの内容をより効果的に周知するために視聴覚教材を作成し、消防機関を通じて自衛防災組織等に対し指導を行っている。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特別防災区域全体に占める割合は、石油にあっては57.4%、高圧ガスにあっては98.3%となっており、大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成14年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる216(平成13年4月1日現在)の事業所のうち平成13年度中の新設及び変更の届出件数は、26件であった。 また、平成13年度中の確認件数は、23件であった(第1-3-3図)。
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じた。さらに新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間は、関係省庁の協力を得て短縮に努めている。
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 総合的な災害対策の推進 消防庁では、学識経験者等により構成される「石油コンビナート等防災体制検討委員会」等において石油コンビナートにかかわる諸問題について検討を行い、総合的な災害対策の推進を行っている。
(1)防災資機材等の高度化、多様化 近年の防災資機材等に係る機能の高度化や多様化を踏まえ、自衛防災組織等に備え付けなければならない化学消防自動車等のうち、消防活動に係る作業の省力化に資する装置又は機械器具が備え付けられているものについては、より少ない防災要員の人数とすることを可能とした。また、一定規模以上の屋外貯蔵タンクがある場合に備え付けるべき防災資機材として、従前の大型化学消防車、大型高所放水車及び泡原液搬送車(以下「3点セット」という。)に代えて、一定の要件に適合する屋外貯蔵タンクについては、新たに3点セットと同等の機能を有する防災資機材として半固定液面下泡注入設備(SSI)によることを可能とする等、平成10年から平成12年にかけて順次制度化を図った。 防災資機材等については、今後とも技術革新による操作性の向上、新たな装置又は機械器具の開発等を踏まえ、高度化・多様化を図り、一層の防災体制の充実を図っていく必要がある。
(2)防災アセスメントの実施の推進 石油コンビナート等防災計画に定めることとされている災害想定を実施するには、客観的かつ現実的なものとして影響範囲の算定方法、影響評価の指標等を示す必要があり、その策定には防災アセスメントが活用されている。 消防庁においては、阪神・淡路大震災を踏まえ、平成12年度に地震等の災害想定を充実する等防災アセスメント策定指針の見直しを行った。今後とも石油コンビナート防災対策の充実強化に資するため、防災アセスメントに対する理解の増進を行うとともに実施の推進を図っていくこととしている。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万klを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成13年中の林野火災の件数は、3,007件(前年2,805件)、焼損面積は1,773ha(同1,455ha)、損害額は11億2,022万円(同7億850万円)であり、件数、焼損面積、損害額ともに、前年より増加した(第1-1-26表)。 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜採りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成13年も例外ではなく、4月に約92haを焼損した大分県玖珠町での林野火災をはじめ1,053件と最も多く発生しており、3月から5月までの間に、年間の64.3%の火災が集中して発生している(第1-1-31図)。
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、1) 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防2) 火災予防の見地からの林野管理3) 消防施設等の整備4) 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成13年度までに、38都道府県の949市町村にわたる229地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場、林野火災対策用資機材、林野火災工作車及び小型動力ポンプ付水槽車)の整備に対して国庫補助を行っている(1-4-1表)。
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より低いものの、ひとたび発災し、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等へ被害が及ぶこともあり、ときには隣接市町村、隣接都府県に拡大することがある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、迅速に十分な消防力の投入を行うとともに、火災による被害を最小限に抑えることを目的として、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防・防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。近年、消防・防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」(昭和61年)に基づく消防・防災ヘリコプターの応援出動による空中消火が増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1-4-1図のとおりである。 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保できるとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、併せて林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策としては、出火防止の徹底が特に重要である。消防としては、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。1) 林野周辺住民、入山者等の防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。2) 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。3) 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。4) 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じて山火事予防を呼びかけている。
(2)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、1)異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、2)森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、3)林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、4)林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、5)林野火災における消火・広域応援体制に関する調査など林野火災に係る調査研究を行ってきたが、平成14年度においては、「林野火災対策に係る調査研究会」を林野庁と共同で開催し、ヘリコプターによる空中消火の効果的なあり方等について検討しており、その成果を地方公共団体の林野火災対策策定のために提供することとしている。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後積極的に講じる必要がある。1) 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。2) 気象台等から発せられる気象情報の通報と、林野火災発生可能性の関係を勘案し、必要に応じて、火気取扱いの注意喚起や制限など、適切に対応すること。3) 近隣の市町村に対する応援要請など林野火災の早期拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するとともに、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。また、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術を徹底すること。4) 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図の整備を促進するとともに、これを生かしたシミュレーションシステムの開発・普及を図ること。5) 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成13年中の災害 平成13年中に発生した台風の数は、26個と平年(昭和46年から平成13年)の26.7個と比較するとほぼ同数であった。また、日本列島への上陸数は2個であったが、8月下旬から9月上旬にかけて台風第11号、第15号の上陸が相次ぐとともに、台風第16号が沖縄周辺に長時間停滞するなど、各地に住家の全・半壊や浸水など大きな被害をもたらした。 平成13年中の風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、ともに前年に比べて増加(一部損壊は減少)し、死者・行方不明者88人(前年77人)、負傷者990人(同601人)、全壊86棟(同57棟)、半壊381棟(同247棟)、一部損壊2,720棟(同3,562棟)となっている(第1-5-1図)。 なお、主な風水害の状況は、以下のとおりである。ア 平成13年8月20日から8月23日までの間の暴風雨及び豪雨(台風第11号を含む。) 全国各地の広い範囲で、死者6人、行方不明者1人、負傷者29人、住家の半壊2棟、一部損壊164棟、床上浸水300棟、床下浸水882棟の被害が生じた。 これに対し、延べ4県270市町村で災害対策本部が設置された。イ 平成13年9月1日から9月16日までの間の暴風雨及び豪雨(台風第15、16号を含む。) 全国各地の広い範囲で、死者9人、行方不明者2人、負傷者66人、住家の全壊60棟、半壊330棟、一部損壊509棟、床上浸水1,206棟、床下浸水2,705棟の被害が生じた。 これに対し、延べ4県341市町村で災害対策本部が設置された。
(2)平成14年1月から10月までの災害 7月中旬に上陸した台風第6号により全国各地で、死者・行方不明者7人、負傷者29人、住家の全・半壊41棟、一部損壊201棟、床上・床下浸水約1万棟の被害をもたらした。 これに対し、延べ3県272市町村で災害対策本部が設置された。 また、7月中旬に上陸した台風第7号により全国各地で、負傷者9人、住家の全・半壊31棟、一部損壊162棟、床上浸水23棟、床下浸水224棟の被害が生じた。 これに対し、延べ2県185市町村で災害対策本部が設置された。 さらに、10月上旬に上陸した台風第21号により全国各地で、死者5人、負傷者88人、住家の全・半壊18棟、一部損壊383棟、床上浸水203棟、床下浸水1,352棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県86市町村で災害対策本部が設置された。
[風水害対策の現況] 消防庁では、毎年、出水期を前に、警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知を発し、さらに、台風の襲来時には、台風警戒情報を地方公共団体に送付して、警戒の強化を呼びかけている。 しかしながら、洪水については、近年、大都市などでも時間雨量100mmを超えるような短時間の集中豪雨があり、福岡や東京の地下街あるいは地下室では水死者まで発生した。また、東海豪雨等、都市部の水害の発生により、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態が起こっている。 こうした事象を受けて、地下空間における浸水対策については、国土庁(現・内閣府)、運輸省、建設省(以上、現・国土交通省)と合同で、平成10年11月に「地下空間洪水対策研究会」を発足し検討を進め、平成11年6月末に福岡市の地下街等の浸水被害が発生したことをも踏まえて、平成11年8月に対策が取りまとめられた。 さらに、前述の被害を軽減させるため、平成13年6月に1)これまで国直轄河川で行われていた洪水予報を新たに都道府県が管理する河川についても行うこと、2)国及び都道府県は浸水想定区域を指定及び公表すること、3)市町村は浸水想定区域ごとに浸水予報の伝達方法、避難場所等を定め、住民に周知させるよう努めること等を主旨とする水防法の一部改正が行われ、地方公共団体に対し、同法の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 土砂災害としては、平成5年8月の豪雨災害や平成8年12月の蒲原沢土石流災害、平成9年7月の鹿児島県出水市の土石流災害、平成11年6月下旬から7月上旬の豪雨災害、平成12年9月の東海豪雨災害など近年、がけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害により、多くの人的被害が生じている。そのため、土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきたが、平成5年8月の豪雨災害等を契機に、土砂災害危険箇所の周知徹底等、特に重点的に推進すべき事項について、平成6年4月に関係省庁による申合せがなされている。また、平成11年6月下旬から7月上旬の豪雨災害を踏まえ、中央防災会議において、特に、効果的な事前周知、気象情報等の収集伝達体制の強化という情報提供の観点から、豪雨災害対策のあり方について検討が行われ、気象情報の収集体制の強化等、重点的に進めるべき豪雨災害対策について提言がなされた。さらに、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月に施行された。この法律に基づき「土砂災害防止対策基本指針」が定められたことから、地方公共団体に対し、法及び指針の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 また、高潮についても、平成11年9月に熊本県不知火海岸で、高潮の被害により12名の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定した。 こうした災害対策の進展に対応した各種提言等を踏まえ、中央防災会議の防災基本計画専門調査会(座長:伊藤滋都市防災研究所理事長)及び同調査会内に編成されたプロジェクトチームにより検討が行われた。そして平成14年4月23日に中央防災会議において、防災基本計画の風水害編(洪水、土砂災害、高潮対策)等についての修正が了承された。 これを踏まえ、消防庁では、中央防災会議幹事会副会長名により、・地域防災計画の修正に当たっては、各地方公共団体の自然的、社会的条件等を十分に勘案し、地域の実情に即したものとするとともに、具体的かつ実践的な地域防災計画とすること・修正後の防災基本計画は、災害に関する経験と対策の積み重ね等により随時見直し、必要に応じて修正を加えていくこととしており、地域防災計画についても、この趣旨を踏まえ、適宜見直しに取り組まれたいこと等について通知した(「防災基本計画の修正に伴う地域防災計画の見直しの推進について」平成14年5月30日中防消第40号)。
(1)防災体制 都道府県及び市町村に対しては、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や、地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制を整備するよう要請している。特に、平成12年5月には、避難勧告等の基準や災害弱者への防災情報の連絡体制の再点検、地下空間における浸水対策への配慮、災害対策本部の速やかな設置を行うことなどにより、万全の体制を整えるよう地方公共団体に対し要請した。 また、災害時における情報の重要性にかんがみ、防災行政無線網等の情報通信体制の整備を促進するとともに(第2章第9節参照)、平成7年度から、降雨情報等収集分析装置の整備について国庫補助を行い、雨量情報の収集体制を強化するなど、警戒避難体制の整備充実を図っている。 また、各地方公共団体に対して積極的な防災訓練の実施を要請しており、平成13年度中には、風水害を想定した防災訓練を都道府県では27団体で37回、市町村では延べ840回実施している。
(2)災害危険箇所に対する措置 過去に災害履歴を持たない地域においても、土地利用の状況や降雨状況の変化により災害が発生するおそれがあることから、地方公共団体に対し、これらの地域を含めて災害危険箇所を把握するとともに、これらの情報については、地域住民へ周知徹底を図るよう要請している。 なお、地域防災計画に記載されている災害危険区域で施行される自然災害防止事業に対しては、地方債措置と元利償還金に対する地方交付税措置が講じられている。
(3)2次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては、十分な警戒等を行うよう、地方公共団体に対して要請している。
(4)災害弱者関連施設 災害弱者関連施設への対応としては、平成10年8月末の豪雨での救護施設「からまつ荘」(福島県西郷村)の被災を踏まえ、平成11年1月に関係5省庁による共同通知を発出し、災害弱者関連施設を土砂災害から守るため国土保全事業の推進、当該施設に係る情報提供及び当該施設における防災体制の確立を要請している。これと併せて消防庁では平成10年度に、関係省庁、学識経験者等からなる「災害弱者施設の防災対策のあり方に関する調査検討委員会」を設置し、施設の土砂災害対策に関し行政(国・都道府県・市町村)の果たすべき役割、施設設置者が果たすべき役割などについて検討を行った。そして、これらの施設に対する情報伝達体制等を含めた今後の施策の方向を明らかにするとともに、各地方公共団体に対しては、その内容の周知を図る一方、地域防災計画の点検を行うよう要請している。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等による風水害は、毎年のように我が国の広い地域で大きな被害をもたらしている。 このため、各地方公共団体は、防災関係機関との連携を図りつつ、地形、地質、土地利用の状況、災害履歴等を勘案して、災害危険箇所の把握、避難場所及び避難路の確保、気象予警報、雨量、河川の水位状況等各種情報の的確な把握及びこれに基づく適切な避難の勧告・指示等、警戒避難体制の強化に努める必要がある。また、避難勧告・指示の発令の基準やその伝達事項・方法、避難場所、避難路や方法等については、地域防災計画に具体的に定め、広報誌等様々な広報媒体により住民への周知を図っていくことが重要である。この際には、高齢者、障害者、乳幼児、傷病者など自力避難の困難ないわゆる災害弱者にも十分配慮した対策を講じることが求められている。 また、風水害による被害を最小限にとどめるためには、住民自らの災害に対する備えが不可欠であり、住民への防災知識の普及啓発に努めるとともに、自主防災組織の育成強化を進める必要がある。
第6節 火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向]1 三宅島噴火災害 平成12年7月8日、14日、15日、8月10日、13日〜16日に小規模な噴火が起こり、8月18日には、今回の一連の噴火で最大規模の噴火が発生し、さらに29日にも18日に次ぐ規模の噴火があった。この活動について気象庁は、同年8月31日に、「当面これと同程度かこれをやや上回る規模の噴火が繰り返し起こる可能性があり、火砕流に警戒が必要」との見解を示した。 三宅村では、8月31日の気象庁の見解を受け、9月2日には、防災及びライフライン関係要員を除く全住民(三宅村人口3,855人:平成12年8月1日住民基本台帳)に対し、島外への避難指示を行い、全対象住民が島外への避難(9月2日〜4日にかけて実施)を行った。 消防機関の対応としては、平成12年6月27日から7月2日までの間に東京消防庁が応援部隊を自衛隊・海上保安庁の輸送協力により三宅島へ派遣し、地元消防や警察と連携し、道路状況の調査、一時帰宅の支援、道路修繕支援活動、ヘリコプターによる救援物資の搬送等を行った。また、同年8月29日以降は応援部隊を現地派遣して地元消防等と連携し、救急搬送、住民の島外避難の支援等を行ったほか、住民避難後も、警戒巡視、夜間島内滞在時の安全監視等を行っている。 平成13年5月28日に気象庁は、「大規模な噴火の可能性は低いが、火山ガス及び泥流に対する警戒が必要である。」との見解を示した。これを受けて、同年7月11日から13日にかけて泥流等被災家屋対象者(74戸)の一時帰宅(現状確認)が実施され、さらには9月17日から26日及び10月2日から3日にかけて三宅村村民の希望者に対する一時帰宅が実施された。 平成14年4月からは、島内における個人財産の保全、修繕を目的とした一時帰宅を定期的に実施しており、8月4日から6日には、小学校1年生〜高校3年生までの児童・生徒及び同伴する保護者(計446人)を対象に日帰り一時帰宅も実施された。 なお、長期避難生活を余儀なくされている島民の一時帰島に関しては、今後、火山活動の低下に伴う火山ガス放出量の減少に備え、火山ガスに対する安全確保対策を科学的に検討し、帰島の判断材料とするため、平成14年9月30日、「三宅島火山ガスに関する検討会」が設置され、学識経験者及び行政職員により検討がはじめられており、平成14年度末を目処にとりまとめが行われる予定である。
2 その他の火山災害(1)平成13年中の災害 平成13年中に噴火した火山は、6火山である。主なものとしては、桜島、薩摩硫黄島(ともに鹿児島県)は年間を通してたびたび噴火し、諏訪之瀬島(鹿児島県)では、島内で降灰が認められたほか7月以降地震活動も活発になり、噴火に伴う火山性微動や空振も観測された。 火山情報については、平成13年中は、三宅島において計3回の臨時火山情報が発表されている。
(2)平成14年中の災害 三宅島では、山頂火口から二酸化硫黄を多量に含む火山ガスが依然として放出され続けており、その高さや勢いは長期的には低下傾向にある。二酸化硫黄の放出量も、1日当たり4,000〜1万数千t程度となっている。 また、諏訪之瀬島(鹿児島県)では、4月に噴火活動が活発になり、島内の集落に降灰があったほか、爆発音、体感空振、火映現象などが観測された。 さらに、浅間山(長野県・群馬県)では、6月の観測で火口底温度が上昇する傾向がみられ、火口からの噴煙の高さが1,000mまで上がっている様子が確認された。
[火山災害対策の現況] 我が国には、現在86(北方領土を含む。)の活火山がある。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの流出、津波など多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や第6次火山噴火予知計画(平成10年8月文部省測地学審議会建議)による火山を有する地域の市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。平成14年度においては、東京都三宅村のクリーンハウス(退避舎)に対して7億円の助成を行った。 また、地域の特色を活かした火山災害に強いまちづくりを推進できるように、活動火山情報教育施設、大規模避難宿泊施設、避難休憩施設、活動火山情報表示施設などの火山対策施設について、防災基盤整備事業の対象としている。 さらに、平成12年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動等により危険の及ぶ範囲を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害弱者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。その一方で消防庁は、平成13年から富士山火山防災協議会に参画するとともに、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」の開催を行っている。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道県で15団体、市町村で72団体が整備している。 また、これらの団体においては、適宜見直しも行われている。
クリーンハウスとは?(東京都三宅村活動火山避難施設) 平成12年9月以来、全島民の島外避難を継続している東京都三宅村では、平成14年4月から、定期的な島民の日帰り一時帰宅が実施されているほか、8月初旬には、小学1年生〜高校3年生までの児童・生徒及び保護者を対象に日帰り一時帰宅も実施されています。こうした取組みの中、滞在型一時帰宅や本格的帰島実施に備え、クリーンハウスの緊急整備が必要となり、平成14年度中に避難施設緊急整備(クリーンハウス設置)を行うこととしています。 クリーンハウスとは、火山ガスに対処する脱硫装置を備えた退避舎のことで、次の安全性能等を確保した施設とされています。(三宅村資料より)1 高濃度の火山ガスを除去する能力を有する脱硫装置を設置する。脱硫装置は棟ごとに1機設置する。2 噴火により噴出される噴石に対しても安全な構造・強度を有する建築物とする。3 設置位置は泥流被害のおそれがある箇所は避けるとともに、港湾及びヘリポートまでの避難路を常時確保する。4 脱硫装置の自動起動停止装置を含むSO2ガス濃度監視システムを持ち、ガス警報装置や非常放送設備を備えた施設とする。5 発電設備を装備し、約72時間の電源供給が可能である。6 脱硫装置のフィルター、防毒マスク、火山ガスの検知器、食・飲料について数量に十分に余裕をもって常備する。7 建物の階段については、非常時の2方向避難を確保する。 なお、島民用避難施設として恒久的なクリーンハウスが設置されるのは、東京都三宅村の施設が初めてです。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。特に、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、北海道恵山、雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳、桜島の10火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、9火山の協議会では、それぞれ火山の爆発に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携のもと、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成13年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県4団体で延べ7回、市町村では延べ52回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を引き続き推進していくことが重要である。特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布すること等により、平常時から住民に対し、防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要がある。 なお、平成12年の有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
ハザードマップを活用した防災体制 ハザードマップとは、災害が発生した際に、地域住民が迅速に避難できるよう、被害が想定される区域と被害の程度、さらに避難場所、避難経路などの情報を地図上に明示したものをいいます。 有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されていたため、噴火前の段階から避難が円滑に実施されました。 消防庁では、「火山噴火災害の強化について」(平成12年7月25日消防災第72号)の通知で、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請し、平常時から住民に対し、防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図ることの必要性を示しました。 平成13年7月には、国及び関係県、市町村により「富士山ハザードマップ作成協議会」(現在は富士山火山防災協議会に改称)が設立されました。また、平成14年6月には、同協議会の下に設置された、学識経験者等で構成する「富士山ハザードマップ検討委員会」から、溶岩流や降灰の被害予測に関する中間報告がなされました。同協議会では、平成14年度末を目途として、富士山防災対策の基本となる火山ハザードマップを作成しています。 さらに、洪水対策・土砂災害対策等についても、平成13年4月の「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の施行や、平成13年7月の改正水防法の施行などを踏まえ、防災基本計画においてもハザードマップの必要性が示されています。それらを踏まえ、消防庁としても「風水害対策の強化について」(平成14年6月7日消防災第82号)において、各都道府県に対して、災害時に地域住民が円滑かつ迅速な避難行動が行えるよう、ハザードマップの作成等を要請しています。
(2)住民への情報伝達体制の整備 火山情報、避難勧告・指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するため、防災行政無線(同報系)は、非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、75%(平成13年10月1日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告・指示を行う必要がある。また、あらかじめ、情報伝達体制、避難に対する広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておく必要がある。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害弱者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておく支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日頃から連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じ、登山規制、立入規制等の措置をとることができるように、関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成13年1月から12月までの間に震度1以上が観測された地震は、1,513回(前年1万7,676回)で、このうち、震度4以上を記録した地震は37回(前年357回)、いずれも前年を大幅に下回った(第1-7-1表)。これは、平成12年は、3月からの有珠山噴火等に伴う地震(震度1以上1,205回、うち震度4以上45回)、6月〜8月にかけての三宅島近海及び新島・神津島近海の火山活動等に伴う地震(震度1以上1万4,253回、うち震度4以上253回)、10月の鳥取県西部地震及び当該地震の余震(震度1以上1,064回、うち震度4以上15回)によるもので、平成12年を除く過去数年における平均的な回数である。
(1)平成13年以降の主な地震の概要 平成13年1月から14年9月までに震度4以上を記録した地震は、第1-7-2表のとおりであり、主な地震災害の概要は、以下のとおりである。ア 平成13年(2001年)芸予地震 平成13年3月24日15時27分、安芸灘を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生した。 この地震により、広島県河内町、大崎町、熊野町で震度6弱、広島県呉市、愛媛県今治市等では、震度5強を記録した(第1-7-1図)。 この地震による被害は、広島県、愛媛県、山口県を中心に9県に及び、広島県、愛媛県でそれぞれ1人が死亡したほか、負傷者288人、住家の全壊70棟、半壊774棟、一部破損4万9,223棟となっている。イ 静岡県中部を震源とする地震 平成13年4月3日23時57分、静岡県中部を震源とするマグニチュード5.1の地震が発生した。この地震により静岡県静岡市で震度5強、島田市、岡部町、川根町で震度5弱を記録した。 この地震による被害は、静岡県で負傷者8人、住家の一部破損80棟となっている。ウ 奄美大島近海を震源とする地震 平成13年12月9日5時29分、奄美大島近海を震源とするマグニチュード5.8の地震が発生した。この地震により鹿児島県住用村で震度5強、名瀬市で震度5弱を記録した。 この地震による被害は、住家の一部損壊1棟となっている。
(2)平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成12年12月27日現在、人的被害は死者6,432人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1-7-3表、第1-7-4表、第1-7-5表、第1-7-2図)。
2 外国の地震災害 平成13年1月から平成14年9月までの主な地震は、第1-7-6表のとおりである。
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。また、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めている。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、大規模災害時における人命救助活動等をより効率的かつ充実したものとするために緊急消防援助隊を発足させた。また、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しを要請した結果、すべての都道府県において計画が見直されたが、市町村における計画の見直し実施率は約63%であることから、引き続き、地域防災計画が発災時に迅速かつ適切な応急対策の実施ができる実践的なものとなるように見直しを要請している。さらに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等大震火災対策施設等の整備や大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 また、阪神・淡路大震災での貴重な経験や教訓は、次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業や施策の企画・立案、日々の防災活動に役立てる必要があることから、平成13年6月から運用を開始した「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)の充実等により地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 一方、これら国庫補助事業等のほか、公益法人による震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備に対する助成事業も行われている(第1-7-7表)。
(1)地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成された。同計画に基づき、平成13年3月31日までの5年間に避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集対策等が実施された(総事業費14兆1,175億円)。国は同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 各都道府県は、同法が平成13年3月に一部改正され、この特例等の適用期限が平成18年3月31日まで延長されたことにより、平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画を作成し、引き続き地震防災緊急事業を実施している(計画額14兆1,982億円)。 なお、特例措置の対象となる消防庁関係の事業は、耐震性貯水槽、小型動力ポンプ付積載車、海水等利用型消防水利システム、緊急消防援助隊関係の資機材、防災行政無線・画像伝送システム、給水車、電源車、備蓄倉庫及び震災初動対応資機材の整備であり、国の負担割合は2分の1となっている。
(2)東海地震対策ア 東海地震に係る地震防災対策強化地域指定の見直し 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法の規定に基づき、地震防災対策強化地域に指定された6県167市町村においては、東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画等に基づき、予想される東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、病院、百貨店、劇場、鉄道事業等地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地震防災応急対策・各種施設整備等それぞれの地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 しかし、大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀が経過し、この間に観測体制の高密度化・高精度化や観測データの蓄積、新たな学術的知見等が得られた。これらを踏まえ、東海地震対策の充実・強化を図るため、中央防災会議は、平成13年3月に「東海地震に関する専門調査会」を設置し、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討し、平成13年12月18日に開催された中央防災会議において、その検討結果を報告した。同日、内閣総理大臣から「地震防災対策強化地域の指定の範囲について」の諮問を受け、中央防災会議は、「東海地震対策専門調査会」を設置した。 中央防災会議の「東海地震対策専門調査会」は、地震防災対策強化地域の指定の範囲についての検討を重ね、平成14年4月23日に開催された中央防災会議において、その検討結果を内閣総理大臣に答申し、翌24日、内閣総理大臣は、従前の6県167市町村から8都県263市町村に拡大した新たな「東海地震に係る地震防災対策強化地域の指定」を公示した(第1-7-3図)。 この指定を受け、新たに地震防災対策強化地域に指定された都県及び市町村では、地震防災対策強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組みがなされている。 一方、中央防災会議の「東海地震対策専門調査会」では、引き続き、東海地震対策の充実・強化を図るため、平成14年度末を目途に、新たな地震防災対策強化地域の指定に伴う課題、被害想定、今後の東海地震対策のあり方について検討を進めている。 平成14年8月に、同専門調査会は、地震動及び液状化に伴う建物被害及び人的被害の想定を公表した。この被害想定によると、地震防災対策強化地域全体で、建物全壊棟数は約23万1,400棟、建物全壊による死者は約8,100人にのぼると想定されている。 こうした状況を踏まえ、消防庁では、学識経験者や地方公共団体等の意見を聞きながら、広域応援プランや都道府県相互間地域防災計画のあり方並びに地震発生前から地震発生後における緊急消防援助隊の応援のあり方等を検討中である。 また、今後、中央防災会議の「東海地震対策専門調査会」の検討結果、それに伴う国の「東海地震の地震防災強化地域に係る地震防災基本計画」の見直し等を踏まえながら、地方防災会議や特定の民間事業所がそれぞれ策定する地震防災強化計画や地震防災応急計画の追加・修正等について要請、助言していくこととしている。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。この特例措置の対象となる消防用施設は、消防施設強化促進法に規定する消防施設、小型動力ポンプ付積載車、可搬式小型動力ポンプ及び耐震性貯水槽であり、国の負担割合は2分の1となっている。さらに、これらの施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されるなど財政上の特例措置が講じられている。 地震対策緊急整備事業として、平成13年3月31日までの21年間に実施された避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等、整備された施設等の総事業費は、1兆1,052億円となっている。 なお、この法律は、これまで4回延長され、現在、平成16年度末までの計画(従前の6県における平成12年度から16年度までの計画額2,883億円、平成12年度実施額574億円)に基づき事業が実施されているが、地震防災対策強化地域の指定の拡大に伴い、現在、関係都県の地震対策緊急整備事業計画の見直しが行われている。
東海地震に係る地震防災対策強化地域の指定の経緯等1 「東海地震に関する専門調査会」の検討結果 (平成13年12月18日中央防災会議報告) 大規模地震対策特別措置法の成立(昭和53年6月)以来、この四半世紀の間に蓄積された観測データや新たな学術的知見等(表1)を踏まえ、新たな想定震源域(図1)並びにその想定震源域に基づき想定される震度分布(図2)及び津波の高さの分布(図3)が見直されました。 この結果、震度6弱以上となる地域が従来よりも西側等に拡大するとともに、高い津波が発生する地域も拡大したことにより、東海地震に関する専門調査会は、地震防災対策強化地域の見直しが必要との結論を得ました。2 「東海地震対策専門調査会」の検討結果 (平成14年4月23日中央防災会議報告) 「東海地震に関する専門調査会」の検討結果を踏まえて、東海地震対策専門調査会は、大規模地震対策特別措置法第3条第1項に基づく地震防災対策強化地域を指定する際の判断基準である「大規模な地震が発生する場合に著しい地震災害が生じるおそれ」として、次のような考え方を示し、263市町村を地震防災対策強化地域に指定する必要がある、との結論を内閣総理大臣に答申しました。<地震防災対策強化地域指定の考え方>1)震度6弱以上の地域(地震の揺れによる著しい被害)2)20分以内に高い津波(沿岸で3m以上又は地上で2m以上)が来襲する地域3)一体的な防災体制の確保等の観点についても配慮3 地震防災対策強化地域の指定 東海地震対策専門調査会の答申を受け、内閣総理大臣は、平成14年4月24日、大規模地震対策特別措置法第3条第4項に基づき、従前の6県167市町村に96市町村を加えた8都県263市町村を地震防災対策強化地域に指定し、公示しました。※新たな地震防災対策強化地域は第1-7-3図、市町村名は附属資料23を参照。
(3)東南海・南海地震対策ア 東南海・南海地震対策の充実・強化 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生し、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている。地震調査研究推進本部の地震調査委員会は、平成13年9月に、これらの地震の発生可能性の長期的な確率評価を公表した(第1-7-8表)。 このため、中央防災会議は、平成13年10月に、「東南海・南海地震等に関する専門調査会」を設置し、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策の基本的なあり方について検討を行っており、平成14年度末を目途に結論を得ることとしている。 また、地方公共団体においても、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、平成13年11月に、30府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立した。イ 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 こうした中で、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法案」が議員提案され、7月19日に可決成立し、7月26日に公布された。東南海・南海地震は、現時点では、その発生の直前予知は困難であり、大規模地震対策特別措置法の適用は困難であるが、これらの地震が発生した場合、東海地方から九州地方にかけての広い範囲にわたって、地震の揺れや津波による相当甚大な被害の発生が予想される。 こうしたことから、この法律は、地震観測施設や避難地、避難路、消防施設等の地震防災上緊急に整備すべき施設の整備の推進や防災計画の策定により、東南海・南海地震に対する地震防災対策の推進を図るために制定されたものである。 この法律は、公布の日から一年を超えない範囲において政令で定める日から施行されることになっており、今後、東南海・南海地震防災対策推進地域が指定されることに伴い、国は東南海・南海地震防災対策推進基本計画、地方公共団体等は同推進計画、特定の民間事業所等は、津波に係る地震防災対策を定めた同対策計画をそれぞれ策定しなければならない。 消防庁としても、東南海・南海地震に関する府県連絡会等を通じて、国の基本計画を踏まえながら推進計画や対策計画が円滑に策定できるよう助言、支援するとともに、広域的な防災体制の確保等についても検討し、国と関係府県あるいは関係府県相互間の連携強化を図り、東南海・南海地震対策を積極的に推進することとしている(第1-7-4図)。
「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」(平成14年7月26日法律第92号)の概要1 目的 東南海・南海地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、東南海・南海地震防災対策推進地域(推進地域)の指定等の特別の措置を定め、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進を図ります。2 推進地域の指定等【法第3条、4条】(1)内閣総理大臣は、推進地域を指定(2)推進地域の指定に当たっては、あらかじめ次の事項を実施 ・内閣総理大臣は、中央防災会議に諮問及び関係都府県の意見聴取 ・関係都府県は、関係市町村の意見聴取(3)指定を受けた推進地域が大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災対策強化地域の指定を受けることとなったときは、推進地域の指定を解除3 推進地域において実施すべき事項(1)基本計画等の作成【法第5条〜8条】 ・中央防災会議は、東南海・南海地震防災対策推進基本計画(基本計画:国の基本的方針並びに推進計画及び対策計画の基本となるべき事項等の計画)を作成【法第5条】 ・指定行政機関の長、指定公共機関、地域防災会議等は推進計画(地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備、津波からの防護及び円滑な避難の確保に関する事項等の計画)を作成【法第6条】 ・不特定多数の者が出入りする施設等の管理・運営者(津波に係る地震防災対策を講ずべき者に限る。)は、対策計画(津波からの円滑な避難の確保に関する事項等の計画)を作成し、都府県知事等に届出【法第7条、8条】(2)地震観測施設等の整備【法第9条】 国は、観測及び測量のための施設等の整備に努力(3)地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備等【法第10条、11条】 ・国及び地方公共団体は、地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備等に努力 ・国は、地震防災対策の推進のため必要な財政上及び金融上の配慮
(4)南関東地域における震災対策 南関東地域は、人口、諸機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広範なものとなるおそれがある(第1-7-5図)。このため、中央防災会議において昭和63年12月に「南関東地域震災応急対策活動要領」が、平成4年8月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が決定され震災対策を推進してきた。この要領等は、ともに阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大都市震災対策専門委員会の提言を受け、平成10年6月に全面的な見直しが行われるとともに、同要領等を補完し、応急対策活動の実践的な備えを推進するため、医療搬送、広域輸送等の課題分野ごとにアクションプランを検討することとされた。平成10年8月に中央防災会議主事会議において「南関東地域の大規模地震時における広域医療搬送活動アクションプラン第1次申し合わせ」(平成12年12月14日改正)が行われたほか、平成12年度から広域輸送プランや帰宅困難者対策についても調査・検討が進められている。 また、関係地方公共団体に対し、この活動要領及び大綱の趣旨等を踏まえ、震災対策用施設・設備の整備の促進、都市型地震災害の防止・軽減対策の推進、広域応援体制の整備充実、緊急輸送の確立、救助・救急体制の確立、情報伝達及び広報体制の確立、災害応急対策の強化、防災意識の啓発、周辺地域と一体となった広域的な防災訓練の実施など震災対策の充実を図るよう要請している。
(5)総合防災訓練 政府は、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法に基づき、東海地域に大規模地震が発生したとの想定及び南関東地域直下に大規模地震が発生したとの想定のもとに、中央防災会議で決定した「平成14年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成14年9月1日(防災の日)に総合防災訓練を実施した。 当該訓練には、指定行政機関等、関係指定公共機関及び地震防災対策強化地域と周辺地域の関係都県市が参加し、東海地震を想定した訓練は新たに57市町村が強化地域に指定された愛知県に初めて政府調査団の派遣等に係る訓練を加え予知対応型訓練及び発災対応型訓練として、南関東地域直下の地震を想定した訓練は発災対応型訓練として行った。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、職員の参集訓練、地震警戒本部及び災害対策本部の設置及び運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請などについて、消防防災無線網を活用した国と関係都県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。 また、消防庁に整備した衛星車載局車、現地活動支援車を訓練会場に派遣し、実践的な情報収集・伝達訓練を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成14年4月1日現在、都道府県では、すべての団体において震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,648団体、「節」等を設けているものが899団体、「その他の災害等」として扱っているものが122団体となっている。 なお、地域防災計画で「震災対策編」を設けて「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で640団体となっている。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(文部科学省)が取りまとめ公表した24地域26活断層・宮城県沖、南海トラフ及び三陸沖から房総沖の3つの海溝型地震の長期評価(平成14年10月9日現在)を踏まえた地域防災計画の見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1-7-6図、第1-7-7図)。 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所の指定は逐年拡充されており、平成14年4月1日現在で、7万1,722箇所が指定されている(第1-7-9表)。 また、避難路については、262団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1-7-10表)。 これらの物資を備蓄するため、平成14年4月1日現在、都道府県においては43団体で676棟、市区町村においては2,362団体で1万8,452棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては21団体で404棟、市区町村においては145団体で558棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成13年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は2,504億3,551万円、また、市区町村が実施した事業費は736億7,343万円である(第1-7-11表)。
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成13年度においては、47都道府県と1,307市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が行われ、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1-7-12表、第1-7-13表)。 また、これらの訓練のほか、日頃から地域住民等に対し、各都道府県及び1,581市区町村において、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成14年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は1,021団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が400団体、地域防災計画へ記載している団体が812団体、津波災害を想定した避難地は5,268箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が238団体で実施されている。
(8)地震防災に関する日米間の交流 日米間で推進されている地震防災対策の専門家レベルでの交流は、平成7年6月のハリファクス・サミットを契機として充実・強化され、「コモン・アジェンダ(地球的展望にたった協力のための共通課題)」の「自然・人的災害の軽減」分野の重要な課題として位置付けられた。 これまで、平成8年にワシントン、9年に神戸市でそれぞれ日米地震政策シンポジウムが、平成10年にはシアトル市、11年には横浜市、12年にはサンフランシスコ市でそれぞれ日米地震防災政策会議が開催され、消防庁としても研究発表等を行うなど積極的に参加している(平成13年は、テロ等の関係で見送りとなったが、平成14年度中の開催が予定されている)。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約52万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生したところであり、住民の生命、身体、財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年度に地震防災対策特別措置法が制定され、同法に基づき都道府県においては平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を図るべく事業を進めてきたが、これを実施する都道府県及び市町村においては近年の財政事情の悪化等により、防災基盤の整備は計画どおりに進められていない状況にある(進捗率76.3%)。 このような中で、災害に強い防災基盤の整備を図るためには、引き続き、平成13年度から17年度までを計画期間とする第二次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく事業を積極的に推進する必要がある。 特に、大規模災害時において、避難所となる公共施設や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などの耐震化については、各種国庫補助制度とともに、単独事業として行われる耐震改修事業については、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。しかしながら、その耐震改修の進捗率は、49%にとどまっていることから、避難所に指定されている施設や災害対策の拠点となる庁舎等を中心に、早急かつ計画的に取り組む必要がある(消防庁の調査結果によれば、地方公共団体では、平成14年度から平成17年度までに、学校施設をはじめとした公共施設約7,500棟の耐震改修を実施する計画である)。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組み 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部地震調査委員会の公表する地震活動の評価結果等を参考に地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、更に教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防・防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防・防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能の状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成14年4月1日現在、全国で、約6万7,000基を整備してきた耐震性貯水槽については、今後も整備を推進していく必要がある。特に耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債等の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ適切に行われ震災被害を最小限に抑止するためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対策を現場へ的確かつ迅速に伝達することが重要である。 このため、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を行い、画像伝送等による情報収集・分析を行うなど、多面的な対策が求められている。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある。 なお、平成14年度からは、国庫補助制度として高機能情報通信対応防災無線を追加し、無線回線のデジタル化による通信の高度化を促進している。
5 初動体制の整備 初動対応の如何が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすなど、大規模災害時は発災直後から情報の収集・伝達等の臨機応変で的確な対応が極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保、防災担当職員の宿直体制の整備など夜間・休日も含めた職員参集方策等についての検討を行い、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。なお、職員の宿日直体制については、都道府県において15団体で整備され、防災専門の嘱託職員による体制を整備している団体も12団体に達している。 一方、市町村においては、1,824団体で職員による宿日直が行われ、民間委託警備員等による勤務時間外における情報連絡体制を確保している。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心にして防災担当部局と一元化する組織体制の整備を行っていく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定を適切に実施するとともに、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 また、阪神・淡路大震災を踏まえ、地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、対応能力の強化・充実を図っていく必要がある。
7 実践的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日頃から実践的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実践的な訓練になるよう努める必要がある。 また、大規模災害時にあっては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実践的なものとなるよう、訓練参加者が、時間経過を追って応急対策をシミュレーションし、付与された状況に基づいて意思決定を行っていく訓練など工夫を こらした訓練に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。
8 津波対策の推進 海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示すとともに、東南海・南海地震対策の一環として、モデル地域を選定し、同指針やマニュアルに基づき関係県、市町及び住民が連携して、地域ごとの津波避難計画を策定する事業に取り組んでいる。今後、このモデル事業の成果を全国に普及し、津波避難計画の策定を推進することとしている。 一方で、この津波避難計画に基づく避難を円滑に実施するための避難地や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進、建築物の耐震化等の施設の安全性の向上を図るなど、津波防災の観点からのまちづくりを推進する必要がある。 こうした津波避難計画の策定や津波防災施設の整備等を推進するとともに、日頃から、住民等に対する津波に関する防災知識や津波避難計画の周知、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、いつでも迅速かつ円滑な避難行動ができる体制を整備しておくことが重要である。
日本における地震による津波被害 〜過去の津波被害に学ぶ〜 我が国は地震多発国であり、過去、地震の揺れによる被害とともに津波により多くの被害が発生しています。ここ約100年の間に、死者100人以上の被害を発生させた地震は7回を数え、平均すると約15年に1度の割合で大きな津波被害を受けていることになります。【理科年表による:死者・行方不明者数には地震動等による被害者も含む。】 津波は、海域で起こった地震による地殻変動が海底まで達し、海底の上下変動が生じることにより発生します。津波が伝わる速さは海底の深さに関係しますが、深さ10mの海岸付近でも、その速さは時速約36km(秒速約10m)です。 日本の近海で大きな地震が発生した場合、日本海中部地震や北海道南西沖地震のように、地域によっては数分で海岸に津波が到達します。また、1896年や1933年の三陸地震津波のように地震の揺れによる被害は少なかったものの、大きな津波被害を発生させる地震もあります。 さらに、1960年のチリ地震津波のように、南米のチリ沖で発生した地震による津波が、二十数時間をかけて太平洋を渡り日本の沿岸に到達した例もあります。 強い地震の揺れを感じたときや弱い地震であっても長い時間ゆっくりとした揺れを感じたとき、あるいは津波注意報や警報が発表された場合には、直ちに海浜から離れ、急いで安全な場所に避難することが津波避難の鉄則です。 全長3万4,800km余にも及ぶ海岸線を有する我が国にとって、地震等による津波の発生は避けられませんが、津波による被害を軽減することは可能です。 東海地震、東南海・南海地震、あるいは三陸沖から房総沖にかけての地震等による津波の発生が懸念されている今日、過去の津波被害に学びながら、一刻も早く、地域の状況に応じた津波避難対策を確立する必要があります。
津波避難計画の策定 津波避難計画は、都道府県、市町村及び住民等が各々の役割を果たしながら作成することが大切であり、海岸線等を有するすべての市町村が、平成13年度に消防庁が作成した「津波対策推進マニュアル検討報告書」を参考にしながら、市町村における津波避難計画や地域ごとの津波避難計画を各々の地域の実情に応じて策定する必要があります。1 都道府県、市町村及び住民等の役割ア 都道府県 ・市町村が策定すべき津波避難計画に係る指針の策定 ・市町村に対する津波避難計画策定の支援 ・津波浸水予測図の作成及び公表イ 市町村 ・市町村全体の津波避難計画の策定 ・地域ごとの津波避難計画の策定支援ウ 住 民 ・住民参加・参画による地域ごとの津波避難計画の策定2 市町村における津波避難計画の策定ア 津波避難計画の概念図(図1)により避難計画の全体イメージを把握し、津波避難計画の策定のフロー図(図2)に沿って津波避難計画を策定する。イ 津波避難計画には、津波浸水予測図、避難対象地域・避難場所・避難路の状況、初動体制、津波情報の伝達、避難勧告・指示の発令、災害弱者等への対応、平常時の津波防災啓発、避難訓練等の実施等を定める。3 地域ごとの津波避難計画の策定ア 地域住民や市町村防災担当職員、学識経験者等の参画により、地域ごとの津波避難計画策定のためのワークショップを開催する。イ ワークショップでは、津波の危険性や地域の危険性を把握するとともに、津波からの避難方法等や津波避難計画の周知・訓練等のアクションプランを考える。
第8節 特殊災害対策等[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成13年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故(以下「ガス事故」という。)のうち消防機関が出場したものの総件数は、1,471件(対前年比48件減)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが885件(同61件減)、液化石油ガスに係るものが586件(同13件増)となっている(第1-8-1図)。ア 事故の態様別発生件数 事故を態様別にみると、漏えい事故が1,240件(ガス事故全体の84.3%)、爆発・火災事故が231件(同15.7%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が811件(都市ガス事故全体の91.6%)、爆発・火災事故が74件(同8.4%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が429件(液化石油ガス事故全体の73.2%)、爆発・火災事故が157件(同26.8%)となっている(第1-8-1図)。イ 事故の発生場所別発生件数 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが1,112件(ガス事故全体の75.6%)、ガス導管等消費先以外におけるものが359件(同24.4%)となっている(第1-8-2図)。 消費先において発生した事故を、発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等発生原因が消費者に係る場合が581件(消費先において発生した事故全体の52.2%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が190件(同17.1%)、その他の原因が341件(同30.7%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が334件(都市ガス事故全体の55.5%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が93件(同15.4%)、その他の原因が175件(同29.1%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が247件(液化石油ガス事故全体の48.4%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が97件(同19.0%)、その他の原因が166件(同32.6%)となっている。
(2)事故による死傷者数 平成13年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は18人(対前年比1人減)、負傷者数は239人(同24人減)である。死者のうち、都市ガスによるものは8人(死者数全体の44.4%、対前年比3人減)、液化石油ガスによるものは10人(同55.6%、同2人増)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは83人(全体の34.7%、対前年比19人減)、液化石油ガスによるものは156人(同65.3%、同5人減)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが12人(死者数全体の66.7%)、爆発・火災事故によるものが6人(同33.3%)、負傷者数では漏えい事故によるものが87人(負傷者数全体の36.4%)、爆発・火災事故によるものが152人(同63.6%)となっている(第1-8-3図)。
(3)自損行為によるガス事故 平成13年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は75件(ガス事故全体の5.1%、対前年比12件減)、これらの事故による死者数は13人(同72.2%、同1人減)、負傷者数は56人(同23.4%、同7人減)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは59件(自損行為に起因する事故全体の78.7%、対前年比11件減)、爆発・火災事故に至ったものは16件(同21.3%、同1件減)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約8割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成13年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は、68件(対前年比7件増)で、火災が1件(同7件減)、漏えいが42件(同1件増)、それ以外のものが25件(同13件増)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、塩化水素が8件(全体の11.8%)、アンモニアが7件(同10.3%)、クロルピクリンが7件(同10.3%)、以下硫酸等の順になっている(第1-8-4図)。
(2)事故による死傷者数 平成13年中の死者は3人(対前年比7人減)で、負傷者は101人(同59人減)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の2の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1-8-5図)。 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。 なお、消防庁では救助用資機材として防毒衣や防毒マスク等の整備を推進している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努めるとともに、立入検査等を通じて貯蔵・取扱いの安全対策について指導を徹底する必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく必要がある。
(3)装備・資機材の整備 有毒ガスの発生など特殊な状況下では、通常の消防装備・資機材では的確な消防活動を行うことが困難な場合があることから、防毒衣及び防毒マスク等の整備を一層推進する。
[原子力災害対策]1 原子力災害等の現況と最近の動向(1)東北電力株式会社女川原子力発電所における火災ア 事故の概要 平成14年2月9日、東北電力株式会社女川原子力発電所(以下「女川発電所」という。)の定期点検中の2号機において、原子炉建家地下1階の制御棒駆動機構補修室にて、作業員が弁点検用資機材の後片づけの一環として浸透探傷用スプレー缶等の廃棄処理作業を実施中に出火し、ビニールシート等を焼損した。火災は、付近にいた別の作業員が粉末消火器で消し止めた。この火災により、作業員2名が顔面等に火傷を負った。また、粉末消火器で消火活動を行っている際に周囲の粉塵が舞い上がったことにより、作業員2名の顔面に放射性物質が付着したことが確認されたため、除染が行われた。なお、この火災による外部への放射能の影響はなかった。イ 消防機関の活動 女川発電所からの119番通報を受けて、消防本部は消防隊と救急隊を出動させ、負傷した2名の作業員に汚染がないことを確認した後、救急車により、女川町立病院に搬送した。
(2)中部電力株式会社浜岡原子力発電所における配管破断事故ア 事故の概要 平成13年11月7日、中部電力株式会社浜岡原子力発電所(以下「浜岡発電所」という。)の定格出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系蒸気凝縮系配管のエルボ部(L字型の配管)が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建家内に漏えいした。この事故の原因を、原子炉水の放射線分解により発生した水素と酸素が当該配管内に蓄積し、これに着火、急速に燃焼して配管が破断したとする報告を経済産業省原子力安全・保安院(以下「原子力安全・保安院」という。)がとりまとめている。原子力安全委員会もこの内容を妥当とする報告をとりまとめている。なお、この破断事故による外部への放射能の影響はなかった。イ 対応状況 これを踏まえ、原子力安全・保安院は、沸騰水型原子炉を有する電気事業者に対し、高濃度の水素が滞留する可能性のある箇所(6事業所、浜岡1号機を含め29基)を抽出し、その箇所について、非凝縮性ガスの除去操作間隔を適正化するとともに温度計による監視を行うか、又は非凝縮性ガスの滞留を防止するための設備変更(弁の設置、配管経路変更等)を行うかのいずれかの対策を講じるよう指示し、事業者において、これらの再発防止策が講じられている。 消防庁としては、関係県を通じ関係消防本部に対し、当面これらの対策が講じられるまでの間、同様な事故が発生した際の事故対応体制を確保するため、必要な状況確認を行うよう通知するとともに必要な情報提供等の支援を行っている。
(3)核燃料サイクル開発機構大洗工学センターにおける火災ア 事故の概要 平成13年10月31日、核燃料サイクル開発機構大洗工学センター(以下「大洗工学センター」という。)の冷却系改造工事中の高速実験炉「常陽」メンテナンス建家1階の機器洗浄槽上部作業場にて、火災が発生し、カートンボックス(紙製のゴミ箱)、難燃シート等を焼損した。この火災の原因は、ナトリウムバルブ洗浄の準備作業を行った際、作業時に出た微量のナトリウムが、ふき取り作業等のときに、作業員の確認不足により、カートンボックスの中に混入し、発熱反応を起こし、数時間後発火・火災に至ったものと推定されている。なお、この火災による外部への放射能の影響はなかった。イ 消防機関の活動 大洗工学センターからの119番通報により、消防隊が出動し大洗工学センター従業員とともにABC粉末消火器により消火した。 消防庁としては、各都道府県を通じ各市町村に対して「ナトリウムを取り扱う施設で発生した火災について」(平成13年12月4日付け消防危第130号)により、ナトリウムの危険物関係事故を未然に防止するための留意事項を示し、併せて保安管理の徹底が図られるよう通知した。
(4)東海村ウラン加工施設における臨界事故ア 事故の概要 平成11年9月30日午前10時35分頃、茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設(転換試験棟)において、JCO従業員が核燃料サイクル開発機構の高速実験炉(常陽)の燃料に用いる硝酸ウラニル溶液の濃度を均一化するという作業が行われた。その際正規の手順を逸脱し、ステンレス容器でウラン粉末を溶解した上、臨界管理のための規定量が制限されている沈殿槽に規定量の2.4キログラムを超える約16.8キログラムの硝酸ウラニル溶液を入れたため、沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達する事故が発生した。臨界は、最初に瞬間的に大量の核分裂反応が起こり、その後、臨界状態停止まで約20時間にわたって核分裂状態が緩やかに継続した。 今回の事故によりJCOの敷地境界付近で平成11年9月30日午前11時36分から臨界終息まで測定された空間放射線量率は、ガンマ線については、同時刻から測定され、最大で0.84mSv/h(ミリシーベルト/時)であり、中性子線については同日午後4時半から測定され、最大4.5mSv/hであった。 また、硝酸ウラニル溶液を沈殿槽に注入する作業をしていたJCO従業員3人が放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事したJCO従業員を含む多数の者が被ばくした。イ 消防庁及び消防機関の活動 政府は、9月30日午後9時に内閣総理大臣を本部長とし、関係閣僚を構成員とする政府対策本部を設置した。 消防庁においては、現地からの通報を受け午後1時に「災害警戒連絡室」を設置した。その後「消防庁対策本部」に改組して体制を強化し、関係地方公共団体から災害状況及び市町村の対応状況に関する情報を集約して関係省庁等に提供した。また、茨城県、同県内市町村及び消防機関に対して、広報・避難、緊急搬送体制の確立を指示し、福島県に対して放射線防護資機材の提供準備を要請した。さらに、消防庁では政府の現地対策本部に審議官を派遣して、関係省庁とともに現地対策本部の体制・機能の強化を図った。 重篤な被ばく者3人については、東海村消防本部の救急車によって国立水戸病院へ搬送した後、茨城県防災ヘリコプター及び千葉市消防局の救急車によって科学技術庁放射線医学総合研究所へ搬送した。また、臨界停止に当たっては、ホウ酸水注入に消防車等を活用した。ウ 住民の避難等の状況 9月30日、午後3時に東海村長は、JCO施設から半径350m圏内の住民に対して避難を要請した。茨城県知事は、午後10時30分に半径10km圏内の住民に対して屋内退避を要請した。 10月1日、JCOが、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等の協力を得て、沈殿槽の冷却水抜取り作業を実施した結果、敷地境界付近の中性子線量率が低下した。また、同社従業員が沈殿槽へホウ酸水を注入する作業を行った結果、原子力安全委員会において臨界状態は終息したと判断した。これらの結果を受けて茨城県知事は、午後4時30分に半径10km圏内の屋内退避要請を解除した。 10月2日、JCO、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等多くの機関の協力による事故発生現場の遮蔽作業及び半径350m圏内のモニタリング結果を受けて、東海村長が同圏内の避難要請を午後6時30分に解除した。
(5)その他の原子力事故等 その他の原子力施設における最近の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「サイクル機構」という。))の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし火災となった事故。イ) 平成9年3月11日にサイクル機構の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク(以下「タンク」という。)内の清掃作業中に、タンク内で体調不良となった作業員1名を救出するためタンク内に入った別の2名の作業員のうち1名が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案(病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明)。 なお、放射性物質による影響はなかったが、平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、1階の連続紡糸設備のヒーター及びモーターの電気系統接続部付近から出火し、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損した。また、火災の影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407名に避難勧告が出された。 消防庁としては、放射性同位元素等取扱事業所における火災等事故時に備えるため、「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を参考に、事業者との円滑な連携など適切な対応体制の整備を図るよう改めて都道府県を通じ市町村に通知した。 また、従来から、文部科学大臣から消防庁に連絡があった放射性同位元素等取扱事業所の許可等に関する書類(写し)を関係都道府県消防防災主管部長あて通知し、関係市町村に周知していたが、消防機関と市町村関係部局との情報の共有化を図るため、市町村関係部局にも当該通知を周知し、消防機関と市町村関係部局が必要な連携を行い的確に対応するよう併せて通知した。 さらに、文部科学省からも、放射性同位元素等取扱事業者に対して、消防機関と連携するよう通知がなされた。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓から原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等法令等の整備が行われた。 原災法においては、1) 初期対応の迅速化のための原子力事業者からの異常事態の通報義務付け及び内閣総理大臣の緊急事態宣言の発出2) 国、地方公共団体等の連携強化のためのオフサイトセンターの指定及び原子力災害合同対策協議会の設置3) 国の体制強化のため、原子力防災専門官を原子力事業所が所在する地域に配置4) 事業者の責務として、放射線測定設備の設置、原子力防災組織の設置及び災害応急措置の実施、原子力事業者防災業務計画の作成義務付け等が規定された。 また、原子炉等規制法の一部改正により、原子力事業者の保安規程の遵守状況についての定期検査制度の創設、従業者に対する教育義務を明確化するとともに、加工事業者に対しても施設面の定期検査制度が義務付けられた。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて改訂され、表題についても「原子力施設等の防災対策について」に変更された。これにより、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1-8-6図、第1-8-7図)及び輸送時の防災対策についても盛り込まれた。 平成13年6月には、臨界事故による被ばく患者に対する緊急被ばく医療の経験を踏まえ、緊急被ばく医療をより実効性があるものとするため、医療に携わる者の責務等の明確化を図るなどの改訂を行った。さらに、平成14年4月には、原爆被災者に対する長期追跡調査から得られた科学的知見及びチェルノブイリ原子力発電所事故の調査結果等を踏まえ、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について改訂を行った。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。さらに、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設等所在地等の21都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るよう、地域防災計画の見直しを進めている。
(4)消防活動の充実等 原子力施設所在市町村等に対して、同報系無線及び放射線防護資機材の整備のための補助を行うとともに、原子力施設等における消防活動用資機材の調査研究、原子力災害時における消防応援体制に関する検討を実施した。 また、原災法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、各都道府県及び消防本部へ通知している。 なお、原子力災害の研修として、平成12年度から消防大学校において、幹部職員を対象に「放射性物質災害講習会」を実施しているほか、文部科学省等において消防職員、消防団員及び自治体職員を対象とした各種原子力防災研修が実施されている。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、放射性同位元素(RI)の輸送については放射線障害防止法等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画には、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えに関する記述が加えられた。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において放射性物質輸送の事故時安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等について「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、各都道府県及び消防本部に通知している。 さらに、平成14年3月には、原子力災害危機管理関係省庁会議において、関係省庁が連携し一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領をとりまとめた原子力災害対策マニュアルに輸送編が追加された。
3 原子力災害対策の課題 消防庁では、JCOウラン加工施設における臨界事故等を教訓とし、原災法の制定、原子炉等規制法の改正及び防災基本計画原子力災害対策編の見直しが行われたことに伴い、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアル等の見直しを行った。今後、更に、地域防災計画の作成又は見直しの推進、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルの見直し、原子力施設等における消防活動対策マニュアル活用の促進、原子力災害時に現場で活用できる消防活動対策マニュアルのハンドブック版の作成、放射線防護資機材の整備及び教育の実施等原子力防災体制の充実を図ることが必要である。 また、原子力災害の特殊性に対応した救助資機材の開発及び原子力緊急事態を想定した防災訓練の実施を推進するとともに、その訓練を検証し、より実践的な原子力防災訓練のあり方やより実効性ある地域防災計画について検討していく必要がある。
平成14年度 原子力総合防災訓練 平成14年11月7日(木)、福井県大飯町において、原子力災害対策特別措置法等に定める国、地方公共団体、原子力事業者等が一体となった原子力総合防災訓練が、防災関係機関の機能の確認及び防災関係機関相互の協力の円滑化を図ることなどを目的として実施されました。 訓練では、新総理官邸においては、内閣総理大臣を本部長とする原子力災害対策本部の設置・運営訓練が、また、現地の緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)においては、国、地方公共団体、原子力事業者等の関係者が一堂に会して、情報の共有、相互協力を図る原子力災害合同対策協議会の設置・運営訓練(写真参照)などがそれぞれ実施されたほか、住民の避難、屋内退避の訓練、汚染された負傷者を除染して医療機関へ搬送するなどの医療活動訓練等が実施されました。 本年度の訓練では、小学校の児童や福祉施設の入所者等の災害弱者などが参加した避難及び屋内退避訓練を実施するとともに、発電所が半島の突端に位置する地域の特殊性から陸上及び海上からの住民避難訓練が実施されました。また、県外からの広域応援として石川県や名古屋市消防局の緊急消防援助隊などが参加した訓練が行われ、名古屋市消防局のヘリコプターが、石川県の衛星通信車を活用して、上空からの被災地の映像を総理官邸の原子力災害対策本部会議に提供しました。また、発電所内において重傷を負った被ばく患者が発生したことを想定した搬送訓練では、石川県のヘリコプターが、若狭消防組合消防本部の救急車により大飯原子力防災センターのヘリポートまで搬送された患者を福井市内のヘリポートまで搬送し、福井県立病院の救急車に引き継ぐ訓練を実施しました。 消防庁においては、政府の原子力災害対策本部会議、現地の原子力災害合同対策協議会等に参画し、消防庁内では、政府の原子力災害対策本部など関係機関との緊急時の通信連絡、情報の収集・伝達訓練を実施しました。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成13年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成13年1月1日から平成13年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)119港における海上災害で消防機関が出動したものは55件あり、このうち火災によるものが24件(全体の43.6%)、油の流出によるものが15件(同27.3%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が44件で全体の80.0%を占めている(第1-8-1表)。 最近の主な船舶火災としては、平成8年4月9日に大阪港内に停泊中のパナマ船籍「エバートラスト号」のエンジン部分から出火し、死者1人、負傷者2人を出す火災が発生している。 また、平成14年10月1日に長崎港内で建造中の客船「ダイヤモンドプリンセス号」においてぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 油の流出災害としては、平成9年1月2日に日本海沿岸の各地に大きな被害を生じさせたロシア船籍タンカー「ナホトカ号」海難・流出油災害のほか、同年7月2日には東京湾においてパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」流出油災害が発生した。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大している。また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられている。このほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 海上における油の大量流出事故に関しては、「1990年の油による汚染に係る準備、対応及び協力に関する国際条約」(略称OPRC条約)の締結に伴い、平成7年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部が改正された。さらに、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を策定(平成7年12月閣議決定)する等国内体制が整備され、関係省庁間の連携の強化が図られてきたが、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、油汚染事故発生時の即応体制等をより強化するため、平成9年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を改正するとともに、平成10年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正している。 また、平成9年6月に防災基本計画の海上災害対策編が示されたことに伴い、地域防災計画の見直しを含め、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めている。
[航空機災害対策]1 航空機の災害の現況と最近の動向 平成13年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は21件発生しており、そのうち飛行機事故は10件となっている。また、民間航空事故による死者は12人、負傷者は128人となっている(平成13年航空・鉄道事故調査委員会調べによる。)。 平成13年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは6件となっている。なお、消防機関が出動したものは45件あり、このうち飛行場内が38件、飛行場外が7件となっている。 最近の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)や平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生している。
2 航空機災害対策の現況 航空機事故は、いったん発生すれば、大惨事を招来するおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が行われているが、消防庁では、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準、航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者、地方公共団体等関係機関に示し、航空機災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、化学消防ポンプ自動車の整備について国庫補助を行うなど、空港及びその周辺における消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成14年4月1日現在、空港所在市町村の88消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空機災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきた。さらに、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空機災害対策の課題 航空機事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要である。そのため空港が所在する市町村においては、空港周辺地域での航空機災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、更には地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、地上への出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、トンネル等における消火、避難設備等の設置の促進、トンネル等所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、特に長大トンネルの防災対策を取りまとめている。 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。なお、平成13年中における道路トンネル火災は19件となっている(第1-8-8図)。 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や日本道路公団等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 比較的短い道路トンネルについては、非常用施設の設置基準が長大トンネルに比べて緩いものとされているが、消防隊員が活動の際、危険にさらされる事故も起きており、設置の基準と警防戦術の整合性、施設の運用方法等について調査研究を行い、課題及びその対策の方向性について取りまとめ、具体的な方策の検討を行っている。 現在、道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、「小型車専用道路」の導入に向けた検討が国土交通省において進められているところであるが、この「小型車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は平成13年度から「乗用車専用道路における救急・消火活動に関する検討委員会」を設置し、車両火災等における消防活動等の課題について検討を行っているところであるが、消防庁としても、当該委員会に参画するとともに、「小型車専用道路」の導入時においても円滑な消火・救急活動が確保されるようその対策について検討していく。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、「臨時大深度地下利用調査会設置法」に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が公布され、平成13年4月1日に施行された。 同年5月、6月に、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が開催された。その際、消防庁から具体的な事業計画が協議会で協議されるときには、当該計画に関係する消防機関を火災発生時等における安全確保の観点から協議会や幹事会に参画させることを要請し、今後、その参加者を調整することとなった。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、消防活動や救助活動が従来の施設と比較して困難さが増すことが予想されている。 今後、具体的な大深度地下を利用した事業計画が出された場合には、現状で考えられる各種の対策に加え、より高度な安全確保対策について検討することが必要である。 また、消防庁においては、大深度地下等の消防活動が困難な空間において隊員の位置や呼吸器残量等の情報を把握するためのシステムを開発している。
大深度地下等における消防隊員の位置特定システムの開発 平成12年5月に「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が公布され(平成13年4月1日施行)、これにより、土地利用者に補償することなく、地下40m以下の部分を一定の手続により使用することが可能となりました。 今後整備が進むと思われるこの大深度地下を利用した施設をはじめ、現在すでにある道路トンネルや地下街等において、火災が発生すると煙や熱気の充満により、消防隊員が危険にさらされ消防活動が困難を極めますが、そのような困難な空間においても、迅速で円滑な救助、救急及び消火活動を行う必要があります。 このため、消防庁では、GPS(全世界的衛星測位システム)や無線などの通信方式に依存せずに、衛星からの電波が届かない地下空間などにおいても消防隊員の位置特定ができ、併せて隊員の空気呼吸器などの安全管理機能を付加したシステムを開発検討しています。平成13年度には、モニターに隊員の位置と識別(所属、番号等)、隊員の緊急事態(動作停止、空気呼吸器の残量)等を表示するシステムの基本型を試作開発(写真参照)しました。引き続き、大深度地下等での災害現場において消防活動を行う消防隊員が、実際に携行・活用できるようなシステムの開発を行っていくこととしています。
第2章 消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 平成14年4月1日現在の常備消防機関の現況は、消防本部が900本部、消防署が1,690署、出張所が3,226所、消防職員が15万4,487人となっている。 前年と比較すると、市町村合併と広域再編が進められたこと等により4本部減少し、消防署は3署増加し、消防職員は535人増加している(第2-1-1表、第2-1-1図)。消防職員のうち、女性職員は2,547人(前年比71人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 現在の市町村における消防体制は、大別して、1)消防本部及び消防署のいわゆる常備消防と消防団とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、2)消防団のみが存する地域(いわゆる非常備町村)がある。 「消防本部及び消防署を置かなければならない市町村を定める政令」により、市はすべて消防本部及び消防署の設置が義務付けられており、町村については、総務大臣が当該町村の人口、態容、気象条件等を考慮して指定したものについて同様の義務が生じることとされている。 平成14年4月1日現在、常備化市町村は、3,158市町村(うち4町村については政令指定による義務付けのない任意実施町村である。)となり、常備化率は市町村数で98.1%(市は100%、町村は97.6%)に達し、人口の99.8%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化(昭和40年4月1日現在、常備化市町村は600市町村)に伴い、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が進められた。 その結果、平成14年4月1日現在、組合による消防本部は475本部(うち広域連合は14本部)に達しており、その構成市町村数2,529市町村(322市、1,724町、483村)は常備化市町村全体の80.1%に相当する。また、事務委託市町村数は204市町村(24市、142町、38村)に達している。さらに、平成6年度以降、市町村合併により7本部が3本部に再編されている。
(2)消防団 消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っている。常備市町村においても初期消火、残火処理等を行っているほか、大規模災害時には、災害防ぎょのため多数の要員を必要とすることから、多数の消防団員が活躍している。 平成14年4月1日現在、消防団は3,627団、消防団員は93万7,169人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設けられている。団員数は減少傾向にあり、10年前の平成4年4月1日現在に比べ4万9,827人(5.0%)減少している。この間、女性消防団員数は、8,234人増えて1万1,597人となっている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が36.6%を占め、また、平均年齢は37.1歳となっている(第2-1-2図)。
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2-1-2表)。
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が74.6%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は24.3%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2-1-3表)。
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、火災報知機、消防電話及び消防・救急無線電話等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話(119番)は、加入電話又は公衆電話によって消防機関に火災、救急、その他の災害の発生等を通報するもので、平成14年4月1日現在、全国の消防機関に1万3,925回線が設置されている(第2-1-3図)。 また、近年では、携帯電話・PHSの著しい普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が急速に増加している。現在、携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部に転送又は復唱して伝達する方式をとっている。今後、消防庁、消防機関、通信事業者等の関係機関で協議し、転送方式によらず、通報者が発信した位置を管轄する消防本部へ直接通報できるようシステムの整備を図る必要がある。 さらに今後は、携帯電話に限らずIP電話、衛星電話及びCATVを利用した電話など、住民からの119番通報手段も多様化されることから、これらの新たな通報手段に対応していく必要がある。イ 消防緊急通信網 消防電話は、消防本部・消防署等の消防機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話であり、消防機関相互の連絡に大きな役割を果たしている。また、消防・救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するため、消防機関は、特に消防・救急無線の増強に努めており、機器についてもデジタル化等の高性能化が進められている。また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビ電送システム等、高度な機能を持った各種消防通信施設を導入する消防機関も徐々に増えている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成12年度の消防費歳出決算額は1兆8,758億円(前年度1兆8,736億円)で、前年度に比べ22億円(0.1%)の増加となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額51兆1,610億円(前年度54兆181億円)に占める消防費決算額の割合は3.7%(同3.5%)となっている(第2-1-4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成12年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万9,067円(前年度3万9,511円)であり、住民1人当たりでは1万4,854円(同1万4,861円)となっている(第2-1-4表)。ウ 経費の性質別内訳 平成12年度消防費決算額1兆8,758億円の性質別内訳は、人件費1兆3,979億円(全体の74.5%、前年度74.4%)、物件費1,609億円(同8.6%、同8.5%)、普通建設事業費2,425億円(同12.9%、同13.1%)、その他745億円(同4.0%、同4.1%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が42億円(0.3%)、物件費が21億円(1.3%)増加しているが、普通建設事業費は24億円(1.0%)減少している(第2-1-5表)。	
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成12年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,892億円(全体の90.1%、前年度89.6%)、次いで地方債1,220億円(同6.5%、同6.9%)、国庫支出金228億円(同1.2%、同1.2%)となっている(第2-1-6表)。イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、逐年増加している(第2-1-7表)。平成13年度の単位費用は1万700円(対前年度伸び率0.9%)、基準財政需要額は1兆7,383億円(同0.4%)であったが、平成14年度は、消防本部における情報基盤整備を促進するため、消防情報化推進対策に要する経費が充実されたほか、救急隊員の医療行為の質の維持・向上等を図るため、医療機関連携対策経費が充実されるとともに、消防団の活性化に資するため、団員報酬及び出動手当等が引き上げられたこと等により、単位費用は1万900円(同1.9%)に引き上げられ、基準財政需要額は1兆7,559億円(同1.0%)に増加している。ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがある。国は、消防施設強化促進法による補助及び予算補助により、市町村等(一部都道府県を含む。以下同じ。)の消防防災施設等の整備について、補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の引上げが規定されているものがある。人口急増地域の市町村に対しては2分の1又は10分の4、地震防災対策強化地域の市町村、地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村及び石油コンビナート等所在市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村並びに原子力発電施設等立地地域として指定された市町村に対しては10分の5.5、新東京国際空港周辺地域の市に対しては10分の6、町村に対しては3分の2、沖縄県の市町村に対しては3分の2以内の補助を行っている。 最近の国庫補助金による整備状況をみると、基本的な消防施設等である消防ポンプ自動車や防火水槽、耐震性貯水槽等の整備が進展するとともに、緊急消防援助隊が使用する救助工作車や救急自動車等の整備が進んでいる。 平成14年度の市町村等に対する国庫補助金予算額に関しては、いわゆる「その他の補助金等」について、前年度に引き続き1割削減するとされたところであるが、高機能情報通信対応防災無線通信設備等を新たに補助対象に加えるとともに、緊急消防援助隊関係施設及び設備の強化・充実を行うなどにより、総額では、前年度に比べて4.8%減の180億8,975万円(前年度190億6万円)を確保している。 また、平成14年度の補助金においては、国庫補助金の整理合理化の一環として、耐震性貯水槽(飲料水兼用型)の補助基準額の引上げや補助対象メニューの整理を行った。エ 地方債 消防防災施設等整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成12年度地方債許可額は、1,144億9,200万円で前年度に比べ82億2,900万円(6.7%)の減少となっている(第2-1-8表)。 平成14年4月からは、これまでの防災まちづくり事業と緊急防災基盤整備事業を再編成して、地域における「災害に強い安全なまちづくり」を目指し、住民の安全の確保と被害の軽減を図るため、防災対策事業を創設し、その中で防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業を推進している。 この事業の実施に当たっては、防災対策事業債が充当され、その元利償還金の一部については地方交付税措置が講じられる。 このうち防災基盤整備事業については、防災拠点施設や拠点避難地等の防災施設整備事業や、防災無線施設等の防災システムのIT化、消防広域再編に伴い新改築する消防庁舎と一体的に整備される自主防災組織等のための訓練・研修施設等の消防広域化対策事業を対象としている。 また、公共施設等耐震化事業については、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地促進対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺整備助成補助金等がある。		
(3)都道府県の消防防災費 都道府県の消防防災費の状況をみると、平成12年度における歳出決算額は1,142億4,100万円であり、平成12年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.21%である(第2-1-9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防等に要する事務費等である。 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成12年度における補助金の決算額は102億4,900万円で、前年度に比べて10億500万円(10.9%)増加している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に国庫補助に準じて定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は4億4,000万円で、前年度に比べて2億7,600万円(168.3%)増加している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成14年度の予算額は、前年度より3.5%減の234億6,818万円となっている(第2-1-10表)。 総額のうち180億8,975万円(対前年度比4.8%減)は、消防防災施設整備費補助金、市町村消防施設整備費補助金、消防防災設備整備費補助金及び市町村消防設備整備費補助金に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点的整備ア 消防の広域再編の推進 昭和40年代以降、消防事務の高度化・専門化への対応を背景として、一部事務組合の設置を中心として消防の広域化が推進されてきた。 全国の消防本部は、管轄人口でみれば極めて多様で、中でも管轄人口が10万人に満たない消防本部が全体の約3分の2を占めている現状にあり、小規模消防本部の広域再編など組織面での消防の対応力の強化を推進する必要がある。 このため消防庁では、平成6年9月に消防の広域化を進めるための基本計画の作成を都道府県に要請し、さらに、平成13年3月には市町村合併との整合性を確保しながら消防の広域再編を推進するため、「消防広域化基本計画の見直しに関する指針」を策定した。 なお、これらの施策と併せ、広域再編を実施するにあたっての具体的な助言、情報の提供等を行う「消防広域再編アドバイザー制度」を設けるほか、市町村合併との整合性が確保されていることなど、一定の要件を満たした地域を「広域化重点支援消防」として指定し、補助金の優先配分をはじめとする各種の財政支援を講じ、消防の広域再編を一層推進している。イ 消防力の整備 近年の消防に対するニーズの増大、多様化等に適切に対応するため、消防の施設及び人員の効率的、重点的な整備充実を図り、消防力の整備を一層進める必要がある。 消防庁は、市町村が消防施設及び人員を整備するに当たっての指針として「消防力の基準」及び「消防水利の基準」を示している。市町村は、市街地の人口、都市構造、過去の火災発生状況等の地域の実情を考慮して、水準を決定することとなる。 「消防力の基準」は、昭和36年の制定以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきたが、近年の消防需要の変化に対応し、市町村の自主性を尊重したものとするため、平成12年1月に全部改正が行われた。各市町村においては、「消防力の基準」を踏まえるとともに、地域の実情を考慮して、整備すべき消防力の水準が定められ、消防施設等の整備が進められている。「消防力の基準」については、地方分権の趣旨にかんがみ、各市町村で消防力の確保を図るための指針としての性格を踏まえつつ、消防行政を取り巻く状況の変化に応じた見直しを行うとともに、分かりやすく簡素化を図る等、今後も更なる見直しを進める。 消防職員については、地域の実情に即して、一層効果的、重点的な人員配置と機動力の強化に努めるとともに、教育訓練を更に充実し、資質の向上を図る必要がある。 消防団員については、平成12年から「消防力の基準」にも大規模災害時における災害防除活動や平常時における地域住民に対する啓発等が消防団の業務として明示されたところであるが、消防団活動への参加を一層促進していく必要がある。 一方、消防水利については、自然水利を積極的に活用するとともに、防火水槽や大型の耐震性貯水槽の設置を促進し、これらと消火栓を適切に組み合わせて設置することにより、水利の多元化を一層促進する必要がある。ウ 消防財源の強化 消防力は逐年強化されているものの、複雑多様化している災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実強化の基礎となる消防財源については、地方交付税における消防費の基準財政需要額を逐年増額するとともに、国庫補助金の確保等なお一層その充実を図っていく必要がある。
(2)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮したものでなければならず、勤務条件の改善はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、その改善を積極的に図る必要がある。 特に交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、所要の人員の確保及び勤務体制の整備を図るとともに、1)給料、手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、2)仮眠室、食堂等の施設の整備等執務環境の改善を促進すること、3)消防活動時の防護性を高めるため安全装備品(防火衣、防火靴等)の充実強化を図ること、4)安全衛生管理体制の整備を図り、事故防止と健康管理に努めるなど、配慮が常に必要である。
(3)消防職員の高齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成13年4月1日現在、40.8歳と一般行政職の42.1歳よりやや低いものの、40歳代の職員が全体の4割近くを占めている。 また、平成11年の地方公務員法等の一部改正により、平成13年度から新たな再任用制度が導入され、消防司令以下の階級にあるいわゆる特定警察職員等については、平成19年4月1日までの間の条例で定める日から適用することとしており、今後、職員の高齢化対策を一層推進する必要がある。 このため、消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の有効活用を図るとともに、1)消防装備の軽量化・動力化・安全化、2)消防部隊の編成、消防戦術の見直し・検討、3)体力錬成の計画的な実施、4)職員の能力開発、適正な人事配置、市町村長部局との人事交流への取組み等、総合的な対策を推進し、活力ある消防組織体制を確立する必要がある。
(4)消防団の充実強化対策の推進 消防団は、消火活動のみならず、地震や風水害等多数の動員を必要とする大規模災害時の救助救出活動、避難誘導、災害防ぎょ活動など非常に重要な役割を果たしている。さらに、平常時においても、住民への防火指導、巡回広報、特別警戒、応急手当指導等、地域に密着した活動を展開しており、地域における消防力・防災力の向上、地域コミュニティの活性化に大きな役割を果たしている。 一方、近年の社会経済情勢の変化の影響を受けて、団員数の減少、サラリーマン団員の増加等の課題に直面しており、消防団の充実強化を一層推進することが緊急の課題となっている。 このため、平成13年度に講じた、以下のような措置については引き続き実施する必要がある。ア 消防団の施設・装備の充実強化 地域における消防団の活動拠点となる施設に対して補助を行う「消防団拠点施設等整備事業」、無線機器や安全装備品等の消防団に必要な設備の総合的な整備に対して補助を行う「消防団活性化総合整備事業」を実施している。イ 消防団への青年層・女性層の加入の促進 消防団啓発ポスターの作成・配布や政府提供のテレビ・ラジオ番組、インターネット等の各種広報媒体を通じた消防団活動のPR等により、青年層・女性層の消防団への参加の呼びかけに努めている。ウ 消防団員の処遇の改善と活動表彰 消防団員の報酬や出動手当等に対する財政措置、退職報償金制度について、引き続きその充実を図った。 また、地域に密着した平常時の活動について創意工夫をもって積極的に取り組み、地域防災力の向上に寄与しており、その活動内容が優秀で他の模範となる消防団を消防庁長官が表彰する消防団地域活動表彰制度を創設し、あわせてその活動事例を全国の消防団等に対して提供した。エ 2002年消防団シンポジウムの実施 社会環境の変化等に対応した消防団活動や運営などのあり方について討議するため、2002年消防団シンポジウムを開催した。「変動する社会環境とこれからの消防団を考える」と題したパネルディスカッションをはじめとして、一般を含めた多くの方々との幅広い意見交換が行われた。オ 新時代に即した消防団のあり方に関する検討 消防団を取り巻く環境の変化に対応するため、1)消防団員の活動を弾力化させる消防団運営、2)消防団に協力し、裾野を広げる組織との連携、3)消防団の組織及び団員の活性化を図る工夫、4)教育訓練の充実、5)事業所向けの方策などについて、様々な視点から検討している。
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成13年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。)への出動回数は88万5,510回で、出動延人員は1,000万5,646人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,426回、36秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は26万281回、出動延人員は513万9,000人となっている(第2-2-1表)。
(2)消防団員の活動状況 消防団は、非常備町村にあっては消防活動を全面的に担っているほか、常備化市町村においても初期消火、延焼防止、残火処理等を行っている。また、多数の動員を必要とする大規模災害や林野火災時においては、多くの消防団員が出動している。 平成13年においては、3月24日に発生した広島県安芸灘を震源とする芸予地震、7月から9月にかけての梅雨前線や台風による風水害等の大規模な災害において、消防団は、自宅が被災した団員もいる中で出動し、住民の避難誘導、危険箇所等の警戒巡視、行方不明者の捜索、土のう積み等の活動を不眠不休で行い、被害の拡大を防いだ。また、林野火災においても、迅速に十分な消防力を投入し被害を最小限に抑えるため、多数の団員が出動し、鎮圧や延焼防止等に当たった。さらに、9月1日に新宿区歌舞伎町で発生した雑居ビル火災においても、常備消防機関等と連携し、消防警戒区域の設定や要救助者搬送及び救急隊搬送支援等の活動を展開した。これらの果敢な活動の支えとなったのが、日頃の訓練と自分たちの地域は自分たちで守るという郷土愛護の精神である。一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、住民から高く賞賛された。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当、無線等の講習会や住宅の防火指導の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組みが行われている。また、増加傾向にある女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及など、女性の優しさや細かな配慮などを活かして活躍している。このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして重要な役割を担っている。
林野火災における消防団活動例 林野火災は、発生頻度は大きくないものの、消火に多くの困難を伴うため、ひとたび発生し対応が遅れれば、森林資源を大量に焼損することとなり、ときには人家や人命に被害を及ぼすこともあります。したがって、迅速に十分な消防力を投入し被害を最小限に抑えることが重要であり、この点で消防団の即時対応力・要員動員力が大いに必要とされています。 平成14年8月20日正午頃、乾燥注意報が発令されている中、瀬戸内海の香川県丸亀市本島において林野火災が発生し、同年8月27日午後3時に鎮圧、同年9月3日午前10時に鎮火されるまで、島面積約675haのうち約160ha(島面積の約23.7%)を焼損する大規模な災害に至りました。その間、付近の島民は、避難勧告又は自主判断により避難するなど、不安な時間を過ごしました。 この林野火災において、地元消防団員及び近隣消防団員延べ2,000人以上が、延べ300台以上の消防団の車両とともに出動し、消火活動はもとより、消防・防災ヘリコプターの臨時離着陸場における消火剤の撹拌作業、警戒巡視、主に背負い式消火用水のうを使用した残火処理等の活動を行い、被害の拡大を防ぐとともに、鎮火・鎮圧に貢献しました。
(3)ワールドカップサッカー大会に関する消防・救急警戒ア 消防庁における対応 ワールドカップサッカー大会が平成14年5月31日から6月30日まで開催された。消防庁においては、大会開催前から関係地方公共団体、消防本部等と連携を図り、競技場等における消防・救急警戒の実施に関する検討を重ねた。(ア)消防関係連絡会議 今回の大会は、全国10箇所という広範囲で開催されたことから、開催競技場を管轄する消防本部、その近隣消防本部及び関係地方公共団体等との連絡調整を円滑に実施するため、平成13年7月より消防関係連絡会議を4回開催し、過去の事例の検討、各消防本部による対応計画の策定、情報連絡体制の確立、テロ災害に関する各種検討などを行った。(イ)テロ対策を含む消防・救急警戒 消防庁では、平成13年9月に米国で発生した同時多発テロを受け、テロ対策の万全を期するため、平成14年3月にテロ対策本部担当部長会議を開催し、危機管理体制の更なる強化を要請した。また、平成14年2月から3月にかけて、全都道府県の代表的な消防本部に対し、生物剤・化学剤を使用したテロ災害への対処に必要な資機材を貸与し、各開催地の消防本部において、その活用が図られた。(ウ)消防庁警戒本部の設置 消防庁では、平成14年5月9日から7月10日までの間、地方公共団体、消防機関、関係省庁との連絡調整等を一層強化するため、「消防庁ワールドカップサッカー大会警戒本部」(本部長:消防庁次長)を設置した。これにより、万一大規模災害が発生した場合の情報連絡体制の確保、対応計画実施状況の検証、現地消防本部への職員派遣による情報収集などを実施し、各消防本部における消防・救急警戒の支援を行った。イ 消防本部における消防・救急警戒の実施 消防庁では、開催競技場を管轄する10消防本部による対応計画の策定を支援するため、基本的な留意事項を内容とした標準的対応計画を提示し、消防・救急警戒対策の確立を図った。 対応計画では、各地域の特性を勘案しながら、地元の消防本部で対応可能な災害規模を第一次対応計画、道府県内消防本部の応援を必要とする災害規模を第二次対応計画、道府県の区域を越える広域応援を必要とする災害規模を第三次対応計画にそれぞれ区分して、災害規模に応じ事前に準備し、又は実施すべき事項を定めた。 これらの計画に基づき、すべての会場で現地訓練を数次にわたり実施し、事故・災害の発生に備え万全の体制をとった。ウ 警戒の結果 全国10競技場で開催された32試合において、競技場及びその周辺に重大な事故や火災、その他の災害の発生はなく、救急総出動件数は95件(搬送人員94人(うち外国人22人))、1試合当たり平均2.2件であった。 今大会のような長期間かつ大規模、広域的な消防・救急警戒は、国、都道府県及び市町村ともに初めての経験であったが、消防機関においては、関係機関との調整、対応計画の策定及び事前訓練の実施等、十分な準備を行い、万全な警戒を実施したことにより成果を上げることができた。
ワールドカップサッカー大会に関する消防・救急警戒 開催競技場を管轄する10消防本部では、本大会の開催に先立ち、競技場、宿泊施設、駅舎などワールドカップサッカー大会関連施設約1,700対象物の立入検査を実施するとともに、消防・救急警戒対応計画の策定や関係地方公共団体、警察、保健所、自衛隊などの関係機関との消防総合訓練を実施し、万全の体制を整えました。 10消防本部では試合当日、消防警戒本部や現地指揮本部を設置するとともに、開催競技場及びその周辺において延べ人員約8,200人(応援消防本部、消防団を含む。)、延べ消防車両台数約1,100台(応援消防本部、消防団を含む。)及び消防・防災ヘリコプターを配備するなど消防・救急警戒を実施しました。また、各消防本部の消防力はそれぞれ異なることから、一部の消防本部は、県内の複数の消防本部と応援協定を締結し、競技場への消防車両の事前配備を行うなど、集団救急事故やテロ等の特殊災害を含めた各種の災害への初動体制の確保を図りました。 なお、県、消防、警察、医師会などの災害対応機関が、情報の一元共有化と各機関相互の連絡を容易にするため、競技場内に「現地連絡調整所」を設置した例もありました。  地域の消防団においても、延べ人員約7,800人、延べ車両台数約530台により、消防本部と連携しながら大会関連の消防・救急警戒を実施し、住民の安全確保を図りました。
2 公務災害の状況 消防職団員は職務の特殊性から、生命の危険を顧みず身をていして職務遂行に当たらなければならないときがあり、そのため不幸にしてその職に殉じ、あるいは負傷する場合も生ずる。 平成13年中における火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡した消防職団員は14人、同じく負傷したものは2,692人である。前年に比べて殉職者は1人増加し、負傷者は50人減少している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが37.0%と最も多く、次いで火災によるものが27.5%、救急によるものが10.2%となっている(第2-2-2表)。
3 安全衛生体制の整備 消防には、その業務の性格から労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定は適用されないものの、消防庁では公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実にかつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程の案」、「訓練時における安全管理に関する要綱の案」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、消防本部の安全管理体制の整備の促進と事故防止の徹底を図っている。 また、消防の衛生管理については、労働安全衛生法の規定が適用されるが、消防職員の勤務体制や職務内容からして、職員の健康管理には特に配慮する必要があるため、消防庁としては、「消防における衛生管理に関する規程の案」を示すなどの対応を図っているところである。
4 勤務条件等(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防本部の給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二つがあるが、行政職給料表を採用している団体では、号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けすることや、出動手当等の特殊勤務手当や休日給の支給がなされるなど、交替制勤務の特殊性が考慮されたものとなっている。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成13年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢40.8歳で34万5,556円であり、一般行政職員の場合は平均年齢42.1歳で35万6,360円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が10万6,918円であり、一般行政職員は8万4,543円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は、2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成14年4月1日現在、全国900消防本部中、2部制を採用している消防本部は667本部(74.1%)、3部制を採用している消防本部は178本部(19.8%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は52本部(5.8%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.3%)である。ウ 勤務条件の改善 消防職員の勤務条件については、これまでも処遇改善の措置が講じられてきたが、社会経済情勢の著しい変化の中で業務内容も複雑多様化しており、これに即応し、勤務の特殊性や職務の危険性の実態に配慮しつつ、引き続き適切な改善措置が講じられるよう努める必要がある。エ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、1)消防職員の勤務条件及び厚生福利、2)消防職員の被服及び装備品、3)消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 現在、すべての消防本部において、消防職員委員会が設置されている。平成13年度の消防職員委員会における審議件数は約5,000件となっており、このうち審議の結果、実施することが適当とされた職員の意見は、4割強にのぼっている。 こうした審議を経ることにより、感染症に対する予防接種の実施、仮眠室の個別区画化、喫煙対策の実施、活動服等の改良化、救急車へのナビゲーションシステムの搭載など、勤務条件等の改善が進められている。消防職員委員会制度は、消防職員の意思疎通を図り、職員の意見を消防事務に反映しやすくすることにより、消防事務の円滑な運営に資することを目的とするものであり、今後ともその趣旨に沿って適切に運営されるよう努める必要がある。オ 公務災害補償 消防職員は、公務により災害を受けた場合、地方公務員災害補償法の規定に基づき、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償並びに休業援護金等の福祉に関して必要な給付等を受けることができる。 また、消防吏員が身体に対し高度の危険が予測される状況下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 平成13年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数は、消防職員について2,067件であり、職員1,000人当たりの受理件数は13.3件となっている。
(2)消防団員の処遇改善ア 報酬・出動手当 非常勤の消防団員は特別職の地方公務員であり、市町村は条例に基づきこれらの消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額、支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨にかんがみ、引き上げ等、適正化を図る必要がある。 平成14年度においては、地方交付税の単位費用の積算に当たって、団員の報酬、出動手当等について改善措置が講じられた(第2-2-3表)。イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況のもとで遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2-2-4表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2-2-5表)。 消防団員が身体に対し高度の危険が予想される状況のもとにおいて消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2-2-6表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、療養生活の援護、介護の援護、就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万円、勤務年数30年以上の団長で92万5,000円となっている(第2-2-7表)。オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 平成14年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償等責任共済契約を締結している関係市町村の数は、2,947市町村(契約対象市町村の91.4%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、3,218市町村(契約対象の全市町村)となっている。 消防基金の平成13年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,651人に対し、16億1,930万円となっている(第2-2-8表)。また、福祉事業の支給額は、延べ1,007人に対し5億2,576万円となっている。消防基金の平成13年度の退職報償金の支給額は、5万8,611人に対し169億6,118万円となっている。カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 団員等が、その活動にやむを得ず自家用車を使用する度合いが高いにもかかわらず、多くの場合、その過程で被った損害を団員個人が負担しており、このことが活動の支障ともなっていると指摘されていた。 そこで、消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が平成13年に改正され、平成14年4月1日から施行された。この改正により消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施することとなった。 消防基金における施行日から平成14年9月末日までの支払状況については、延べ39人に対し310万円となっている。キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防法施行規則及び危険物の規制に関する規則が平成14年に改正され、同年7月1日から施行された。この改正により、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の普通教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。					
現場活動と心のケア○現場活動に係るストレスについて 消防職団員は、火災等の大きな災害現場などで、悲惨な体験や恐怖などの体験をしたことによる強い精神ショック、ストレスを受けることがあり、このような場合、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがあります。○消防機関における対策の状況 このような問題は、阪神・淡路大震災後から指摘されてきましたが、平成13年9月1日未明に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災に出動した消防職員にも、様々なストレス症状が見られ、東京消防庁では、組織的にそれらのストレスの緩和・発散のための対策を講じています。 このようなストレスの問題は、消防機関にとって比較的新しい問題でもあり、その対策を組織的に行っている例はいまだ少ない状況となっています。○今後のストレス対策への取組み 消防庁では、平成13年度に引き続き、14年度においても、消防大学校のカリキュラムに、現場活動に係るストレス対策の講義を追加しているほか、次の事項についての調査研究を行っています。・現場活動に係るストレスの実態の把握・ストレスの緩和・発散方策・ストレスを受けた者に対するケアのあり方・ストレスについての教育のあり方 消防学校の中には、現場活動に係るストレス対策について講義を始めたところもあり、消防学校をはじめ多くの消防本部が、現場活動に係るストレス対策の必要性を認識し始めていますが、その具体的な取組みには情報不足等を課題としてあげています。 こうしたことから、消防庁では各消防機関における具体的対策の構築が図られるよう、調査・研究の成果に基づき、積極的に支援していくこととしています。
5 消防表彰等(1)表彰制度の概要 消防関係者等に対して、現在国が行っている表彰等は次のとおりである(第2-2-9表)。ア 国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のあるものをその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えることをいう。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は社会公共に対して功労のあるものをその功労の程度に応じて、勲等に叙し、栄誉を称えることをいう。 また、その叙勲方法によって、以下の種類に分けられる。・春秋叙勲   春はみどりの日、秋は文化の日に実施されるもので、一般的に生存者叙勲とも呼ばれる。・死亡叙勲   未だ叙勲を受けず死亡した功労者に対し、随時実施される。・特別叙勲   殉職者など特別な功績を有する者に対し、随時実施される。・高齢者叙勲  88歳に達した者で未だ叙勲を受けていない功労者に対して、随時実施される。 <褒章> 自己の危険を顧みず人命を救助した者、業務に精励し他の模範となるべき者、学術、芸術、産業の振興に多大な功績を残した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対し、徽章(きしょう)等を授与して顕彰することをいう。 褒章は、功績の内容によって、消防関係では以下の褒章が運用されている。・藍綬褒章   消防団長で永年尽力した者等を対象としている。・黄綬褒章   消防関係業界で永年尽力した者を対象としている。・紺綬褒章   消防関係機関に対し、一定の金額以上の寄附を行った個人及び法人を対象としている。・紅綬褒章   火災等に際し、身を挺して人命救助を行った者を対象としている。イ 内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、消防表彰規程に基づき、消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受章者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する。・安全功労者表彰  国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績をあげ、又は功績があったもの等を毎年「国民安全の日」(7月1日)にちなみ、7月上旬に表彰。・防災功労者表彰  災害に際して、防災活動に従事し、顕著な成績をあげ、又は功績があったもの等を毎年「防災の日」(9月1日)にちなみ、9月上旬に表彰。ウ 総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保等に尽力し、その功績顕著な消防団長及び都道府県婦人防火クラブ会長を表彰。エ 消防庁長官表彰 消防庁長官表彰は、消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の時期により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア) 定例表彰 毎年3月7日の消防の日にちなみ、3月上旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・功労章  防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防除に関する対策の実施についてその成績が特に優秀な者を対象としている。・永年勤続功労章  永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者を対象としている。・表彰旗及び竿頭綬  防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防除に関する対策の実施について他の模範と認められる消防機関を対象としている。(イ) 随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・特別功労章  災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる殉職者を対象としている。・顕功章  災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる殉職者を対象としている。・功績章  災害に際して消防作業に従事し、多大な功績があると認められる殉職者を対象としている。・顕彰状  職務遂行中死亡した者を対象としている。・国際協力功労章  「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者を対象としている。・表彰状  災害において消防作業に従事し、その功労顕著な消防職団員以外の個人又は消防機関以外の団体を対象としている。・賞状  例えば酸欠空気の吹き出る地下工事現場、送電線上、漂流中の船舶などの特殊な災害現場において顕著な功労をあげ、他の模範として推奨すべき功績のあった消防隊等を対象としている。・安全功労者表彰  防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害防除に関する対策の実施について、その成績が特に優秀であり、過去において当該事案により都道府県知事の表彰を受けた消防職団員以外の個人又は消防機関以外の団体を対象としている。・防災功労者表彰  災害に際して、防災活動に従事し、顕著な成績をあげ、又は功績があったもの等で、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた個人及び団体を対象としている。オ 退職消防団員報償 永年勤続した消防団員を労うため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官より賞状と銀杯が授与される。カ 消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に協力し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。キ その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・危険物保安功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰・消防関係業界功労者表彰・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防防災システム管理者表彰・住宅防火対策優良推進組織等表彰・救急功労者表彰・消防団地域活動表彰
(2)栄典制度の見直し 国の栄典については、平成14年8月の閣議決定により、21世紀を迎え、社会情勢の変化に対応したものとするための見直しが実施されることとなった。 その主な内容は、1)旭日章と瑞宝章について、現行の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用する、2)旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた勲等をそれぞれ6段階に整理するとともに、数字による表記を改める、3)警察官、自衛官など著しく危険性の高い業務に精励した者を対象に新たな叙勲を実施する、等である。 このうち消防関係に対する叙勲については、1)瑞宝章の対象となること、2)受章段階が簡素化されること、3)消防司令以下の消防吏員を対象に新たな叙勲が実施されること等が予定されている。なお、詳細については今後更に検討され、平成15年秋の叙勲以降に実施されることとなっている。
消防団地域活動表彰における消防団活動例 平成13年度に消防団地域活動表彰を受賞した47の消防団・分団の平常時における活動内容を具体的に紹介すると、次のようなものがあります。○ 音楽隊・女性消防隊等による魅力ある消防団活動(長野県上田市消防団) 昭和48年に全国で3番目に結成された音楽消防隊(平成13年度の隊員数29名、うち女性14名)の主な活動は、出初式の市中パレードでの演奏、定期演奏会、幼稚園・小学校等での出前演奏会等で、地域住民に対して音楽を通じた予防消防活動を行っています。さらに、消火訓練、規律訓練、救命講習等の実践面でも、団員としての資質向上に努めています。 一方、各分団に在籍していた女性団員を基に平成4年に団本部付として再編成された女性消防隊「ペテナス」(平成13年度の隊員数13名)の主な活動は、毎月の車両による広報活動、一人暮らしの高齢者宅を中心とした防火訪問、幼稚園等での火災予防啓発活動等で、地域の高齢者や子供達から好評を得ています。さらに、団員としての実践面でも、火災現場における本部設営等で活躍しています。○ 小学生への防火・防災教育の推進(京都市山科消防団百々(どど)分団) 防火・防災の思想普及には若年層からのアピールが効果的との観点から、平成4年より、小学4年生の社会科に組み込まれている消防の仕事に関する授業の際、分団長が1日先生として教壇に立っています。この授業では、消防団活動の内容、団員の使命、常備消防との違い、災害に対する心構え等を、団員手作りの教材を使用して教えています。 また、分団拠点施設が小学校に近接していることから、小学生に施設を見学させるだけでなく、小学校内の郷土資料室への消防資機材の展示や朝礼時の「火の用心」の講話を行っています。4月下旬の田植え、9月下旬の稲刈り、10月中旬の脱穀といった体験学習時には、防火・防災の話を織り交ぜながら、その指導を行っています。
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職団員が適切に対応するためには、その知識、技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部(訓練機関)、消防署や消防団における教育訓練を基本としつつ、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。また、これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。 職場教育における基準としては、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、消防庁としては、訓練時の安全管理体制等の整備についてマニュアル等を示すなど、効率的かつ安全な訓練の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第26条)。 平成14年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と政令指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。この基準は、平成10年12月に一部改正され、簡素化、弾力化が図られるとともに、消防学校の運営に関する協議会等の設置が盛り込まれた。
(2)教育訓練の基準 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と消防団員に対する普通教育、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、教育期間は6か月以上とされている。・「普通教育」とは、消防団員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、教育期間は4日以上とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び主として普通教育を修了した消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成13年度では延べ2万7,010人が消防学校における教育訓練を受講している(第2-3-1表)。 初任教育の期間については、平成13年度では、すべての消防学校が6か月以上の教育訓練を実施している。 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成13年度における新規採用者のうち初任教育の受講者は3,271人で、採用者数が増加したことに伴い前年度に比べ465人増加している。なお、受講率については、95.1%となっている。 消防団員については、平成13年度では延べ7万6,166人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成13年度においては、地方自治体職員、地域の自主防災組織、婦人防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ2万117人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成14年4月1日現在、消防学校の専任教員440人のうち派遣の教員は81人に及んでいる(第2-3-2表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校への研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、その前身である「消防講習所」が、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織として設置され、その後、昭和34年4月に発展的に解消し、「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)教育訓練施設等 消防大学校の教育訓練施設は、平成5年度以降、鋭意その整備更新を進め、平成12年度末には地下1階地上5階建ての本館が完成した。通常教室や図書館はもとより、マルチメディアを活用した大規模災害に対する指揮訓練教室や階段式の大教室等機能的で使いやすい施設となっている。 第2本館には、300人を収容できる講堂をはじめとする諸施設が整備されている。救急訓練室においては、半自動式除細動器や高度救急処置訓練用人形等により救急業務の高度化に対応した訓練を実施でき、また、特別教室は、屋外テレビカメラによって訓練場における訓練の状況を撮影し、これらの映像をもとにして自らの訓練状況を振り返ることにより訓練効果をより一層高めることができるものとなっている。屋内訓練室は、雨天時でも消防活動訓練を実施できるほか、学生の体力錬成にも活用されている。 屋内火災防ぎょ訓練棟は、より実戦的な状況下を訓練の場とするため、コンピュータ制御による蒸気や煙の濃度のコントロールにより、様々な濃煙高温状態を作り出すとともに、複雑な建物内を想定した暗室迷路の中において消火・救助訓練を行うことができるものとなっている。 学生寮地下に設けられた防災通信研修施設においては、防災研修機能に加えて、特に南関東地域直下地震時において、消防庁本庁の防災通信施設に万が一支障が生じた際には、通信機器類を最大限に活用し、情報の収集・連絡に当たることになっており、消防庁本庁の防災通信システムの補完的機能も有している。 一方、教育訓練車両の整備については、計画的な整備(平成11年度:普通消防ポンプ自動車、平成12年度:特殊化学車、平成13年度:救助工作車)を進めており、平成14年度においては指揮隊車を整備することとしている。
(2)教育訓練ア 教育訓練課程 消防大学校に現在設置されている教育訓練の課程は、2部9学科である(第2-3-3表)。 これらの課程では、消防幹部としての高度な教養を身につけ、また、特に近年は、危機管理、惨事ストレス対策、地震災害等大規模広域災害に対応するための部隊運用、航空消防防災活動に係る科目を充実するとともに、民間有識者や社会福祉分野の専門家の講義を積極的に取り入れ、監督者、指導者として幅広い資質の向上に努めている。イ 教育訓練の実施状況 消防大学校(消防講習所を含む。)の卒業生は、平成13年度末現在で2万8,003人となっており、平成14年度入校者の計画人数は834人である(第2-3-4表)。また、平成13年度には中華人民共和国からの研修生(3人)を受け入れた。ウ 実務講習 消防大学校で実施している実務講習は、次のとおりである。(ア)トップセミナー 消防防災行政の最高責任者である消防長等に対して、現下の重要課題の現状と問題点等を主眼とした教育訓練を実施している。(イ)放射性物質災害講習会 原子力施設所在市町村等の消防本部の隊長等に対して、放射性物質災害に対する対応能力を向上させるための教育訓練を実施している。(ウ)危機管理(大規模災害発災時に係る災害対策活動)講習会 地震等の大規模災害発災時に必要とされる緊急災害対策活動を有効に展開できるようにするために講習会を実施している。(エ)消防学校長研修会 消防学校の学校長等に対して、消防学校運営及び学校教育に必要な教育訓練を実施している。(オ)航空消防防災講習会 消防防災航空隊の隊長等に対して、航空消防防災活動に関し必要な教育訓練を実施している。(カ)緊急消防援助講習会 緊急消防援助隊の都道府県隊長等に対して、大規模災害時における連携活動の実施等に関し必要な教育訓練を実施している。	
火災調査科の設置について 昭和58年度から実施してきた短期間の火災調査講習会は、平成13年度から専科教育部門の「火災調査科」に格上げしました。この学科は、教育訓練期間を約1か月間として、近年の複雑多様化した出火原因を専門的、かつ、科学的に調査し、火災予防業務の高度化を推進するため、火災調査業務に関する高度の知識及び技能を習得させることによって、火災調査業務の監督者及び指導者としての資質を向上させることを目的としています。 主な教育訓練内容としては、次のとおりです。	
緊急テロ対策特別講習会 消防大学校においては、政府として取り組んでいるテロ対策の一環として、生物剤・化学剤等に起因する事件、いわゆるテロ事件の発生に際し、的確な消防活動の確保を図るため、消防本部の救急、救助隊長等115名を対象に、生物剤・化学剤等に関する基礎的知識、消防活動用資機材による対処法等を習得することを目的として、平成14年1月9日から1月11日までの3日間の日程で「緊急テロ対策特別講習会」を実施しました。
(3)消防学校等に対する技術的援助ア 消防教育訓練研究会 消防教育に携わる者に共通した研究の場として、消防教育訓練研究会を毎年開催している。イ 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教員を対象として、より高度な研究・研修の機会を提供するため特別研究生を受け入れている。ウ 講師の派遣及びあっせん 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、予防、警防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣及びあっせんを行っている。エ 教員用指導資料等の作成及び視聴覚教材の整備 消防学校等の教員用指導資料の編集、作成を行い、消防事象の変化に即応した内容の再検討や改訂作業を適宜行っている。 また、消防学校の初任者用教科書の編集を行っており、現在までに30種類が配布されている。 さらに、視聴覚教育の重要性にかんがみ、視聴覚教材の整備を進めている。オ 遠隔教育のモデル事業の実施 平成13年度においては、時代の要請に応じた多様な教育訓練のあり方を検討する上で必要なデータを収集するため、地域通信ネットワーク等の情報機器を利用し、消防学校に対する遠隔教育のモデル事業を実施した。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間400人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成14年度には、全国で約1,400人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、835時間以上の講義及び実習が行われている。 その他、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、平成7年度から財団法人消防科学総合センターの火災原因調査室により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした「基礎講座」、模擬火災家屋の発掘調査実習、火災事象に係る各種実験を主体に実践的調査能力の養成を目的とした「実務講座」が実施されている。 また、毒物・劇物等に起因する災害や有毒ガス等の化学物質を用いた事件の発生に伴い、消防機関においても化学災害発生時における、要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における化学災害対応能力の充実を図っている。
6 全国消防救助技術大会等の実施 消防機関の行う人命救助活動は、複雑多様化する各種災害に対応するため、高度かつ専門的な知識、技術が要求されるに至っていることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第31回大会は、平成14年8月23日に全国9ブロックから選抜された939人(陸上の部678人、水上の部261人)の隊員が参加して名古屋市で開催された。
全国消防救助技術大会 全国消防技術大会は、財団法人全国消防協会が主催し、全国の消防救助隊員が一堂に会し、お互いの習得した救助技術を披露するとともに、相互に技術を交換し及び研さんすることなどを目的に実施されています。昭和47年に第1回大会が東京で開催されて以来毎年開催され、平成14年度で第31回を迎えました。 毎年この全国消防救助技術大会に先立ち、全国9地区において、日頃鍛え抜いた救助技術を競い合う地区指導会が開催され、一定以上の技術が確認された部隊や隊員が、総合指導会である全国消防救助技術大会に出場することとなっています。 平成14年度は、8月23日に名古屋市において陸上の部9種目(個人3種目、団体6種目)と、水上の部7種目(個人2種目、団体5種目)の計16の訓練種目が行われました。 消防救助技術は、人命救助のための技術であるのは勿論のこと、人命救助を実施する隊員自らの身を守るための技術でもあり、救助隊員は迅速、確実かつ高度な救助技術の習得が求められます。大会に向けて、各隊員は日頃からのたゆまぬ訓練や体力の維持向上の努力と、部隊活動の基礎となる隊員相互のチームワークの強化を行っており、本大会では各出場隊員が持つ最大限の技術、体力及び集中力が発揮されるとともに、団体種目では、部隊が一致団結したチームプレーとしての成果が披露されるものとなっています。 このように、全国消防救助技術大会への出場は救助隊員にとって大きな目標でもあり、その実績は隊員の大きな自信に結びつくものです。また、参加隊員には緊急消防援助隊登録部隊の隊員や国際消防救助隊の登録隊員も含まれ、その成果は自らの消防本部のみならず、国内外での大規模災害時においても発揮されています。
7 教育訓練体制の課題 近年における災害の複雑多様化により、消防業務は極めて広範囲にわたり、質的にも専門化、高度化が求められている。また、職員の高齢化等の問題も抱えており、これに対処するための消防職団員の資質向上は時代の要請でもある。このため、消防職団員の教育訓練は、ますますその重要性を増している。 消防学校における教育訓練は、「消防学校の教育訓練の基準」(昭和45年消防庁告示第1号)に基づいているが、消防需要の拡大や災害形態の多様化などから、新たな教科目や科目編成の簡素化、弾力化等の必要性が指摘されている。 このほか、消防職員に対する教育については、全国的に平成19年以降に予想される大量退職に伴う大量の新規採用職員への初任教育が必要となることから、この時期における円滑な教育体制の確保は眼前の課題である。 また、消防団員に対する教育については、サラリーマンの団員が増えており、消防学校での集合教育の受講が困難な状況が顕著であり、その教育手法のあり方も課題である。 さらに、東海、東南海・南海地震等の大規模地震のおそれや、平成13年の米国同時多発テロの発生等を踏まえ、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされている。このような状況のもとで、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。このため、消防大学校、消防学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとしていくことが必要であり、また、昨今のライフスタイルの変化やIT革命の進展に対応し、インターネットを活用した遠隔教育(e-ラーニング)の導入など、家庭や地域で学習できるような教育環境の整備も検討する必要がある。
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は7.2秒に1回、国民30人に1人が救急搬送 平成13年中における全国の救急業務の実施状況は、平成10年3月に法制化されたヘリコプターによる件数も含め、439万9,195件(対前年比5.1%増)であり、前年と比較し、21万5,074件増加している。この増加した出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が13万6,233件(増加件数全体の63.4%)、一般負傷が4万2,728件(同19.9%)、その他が2万5,195件(同11.7%)、交通事故が6,362件(同3.0%)で、増加件数の98.0%を占めている。 また、救急自動車による搬送人員は419万897人(対前年19万2,955人増、4.8%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は1,573人である(第2-4-1表、第2-4-2表、附属資料33、34)。 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万2,048件(前年1万1,428件)、7.2秒(同7.6秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の30人に1人(同32人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。 救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、次いで交通事故、一般負傷の順となっている(附属資料33)。	
(2)搬送人員の51.4%が入院加療を必要としない傷病者 平成13年中の救急自動車による搬送人員419万897人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の48.6%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は51.4%となっている。 なお、軽症傷病者の割合は大都市57.4%に対し、その他の都市48.5%と大都市の方が多くなっている。一方、重症傷病者の割合は大都市7.2%に対して、その他の都市13.1%とその他の都市の方が多くなっている(第2-4-3表)。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成13年中の急病の救急自動車による搬送人員231万5,317人の内訳をWHO(世界保健機構)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(12.7%)、消化器系(11.1%)、心疾患系(10.6%)の順となっている(その他、症状・徴候・診断名不明確の状態を除く。)(第2-4-1図)。
(4)現場到着まで平均6.2分 平成13年中の救急自動車による出場件数439万7,527件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が240万3,273件で最も多く、全体の半数以上(54.7%)になっている。 なお、これらの平均現場到着所要時間は6.2分(前年は6.1分)となっている(第2-4-2図)。		
(5)病院到着まで平均28.5分 平成13年中の救急自動車による搬送人員419万897人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、20分〜30分未満が168万501人(全体の40.1%)で最も多く、次いで10分〜20分未満の118万3,612人(同28.2%)となっている(第2-4-3図)。 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は28.5分(前年27.8分)となっている。
(6)減少する転送 平成13年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.1%(415万4,064人)が転送なしに収容され、残りの0.9%に当たる3万6,833人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の95.1%に応急処置等実施 平成13年中の救急自動車による搬送人員419万897人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は398万6,971人(搬送人員の95.1%、前年は88.9%)であり、前年に比較し、43万2,811人(12.2%)増加している。その内容は血中酸素飽和度測定が最も多く、次いで血圧測定、毛布等による保温の順となっている。 また、平成3年8月の「救急隊員の行う応急処置等の基準」(昭和53年消防庁告示第2号)の改正により拡大された応急処置等の件数は、809万817件と前年の約1.1倍となっており、このうち救急救命士が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は3万9,457件にのぼり、前年の約7.3%増となっている。これは救急救命士の養成、救急標準課程又は救急II課程の修了者(2(2)参照)による運用が着実に推進されていることを示している(第2-4-4表)。	
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.2% 救急業務実施市町村数は、平成14年4月1日現在、3,162市町村(676市、1,962町、524村)で前年と比較して8市町村の減少となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2-4-5表)。 この結果、全3,219市町村のうち、98.2%(前年98.2%)の市町村で救急業務が実施されたこととなり、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(附属資料35)(人口は、平成12年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が425市町村、委託が208市町村、組合が2,529市町村となっている(第2-4-4図)。 また、実施市町村のうち、3,154市町村は、消防法施行令第43条により救急業務の実施を義務付けられた政令指定市町村であるが、8町村は救急業務の実施を義務付けられていない任意実施町村である。	
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成14年4月1日現在、4,596隊(対前年33隊増)が設置されている(第2-4-5図)。 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成14年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で10万1,411人(対前年2,496人増、2.5%増)となっており、このうち5万7,515人(対前年958人増、1.7%増)が、救急隊員として救急業務に従事している(第2-4-6図)。 より高度化する救急需要に応えるため、消防庁は、救急救命士のみならず、救急II課程(拡大された応急処置等を行うために救急I課程修了者に対して行われる講習)及び救急標準課程(新しく救急隊員の資格を取得しようとする者を対象とする講習であり、救急I課程と救急II課程を合わせたものに相当するもの)を修了した救急隊員を養成するよう通知している。現在、救急標準課程又は救急II課程修了者は、それぞれ1万9,653人、4万1,308人であり、うち、それぞれ1万3,358人、2万6,150人が救急隊員として救急業務に従事している。 平成14年4月1日現在、消防職員のうち救急救命士資格を有する者の数は1万2,068人であり、このうち1万823人が862消防本部で救急救命士として救急業務に従事している。	
(3)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成14年4月1日現在、5,517台(対前年69台増、1.3%増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格救急自動車は3,062台が配置されており、今後、更に高規格救急自動車の割合を高めていくよう推進している。
(4)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道及び本州四国連絡道路(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成14年4月1日現在、総延長7,075.1kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、日本道路公団及び本州四国連絡橋公団においては、西瀬戸自動車道を除き、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成14年4月1日現在、全国で5,039箇所となっている(附属資料36)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 平成14年3月31日現在、初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが511箇所(平成13年3月31日現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により409地区で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが163箇所で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち11箇所で整備されている。 なお、平成10年4月の医療法の改正及び「救急病院等を定める省令の一部を改正する省令」(平成10年厚生省令第36号)の施行により、救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されることとなった。
4 救急業務体制の整備の課題(1)救急隊員の教育訓練の推進 我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士法(平成3年法律第36号)に基づき、医師の指示のもとに、心肺機能停止状態の傷病者に対して、病院又は診療所に搬送されるまでの間に高度な応急処置を行うための資格制度として、救急救命士の資格が設けられた。 救急救命士の資格は、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格して初めて取得できるものである。また、新たに資格を取得した救急救命士が救急業務に従事するに当たっては、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。この救急救命士の資格を持つ救急隊員による高度な救急業務は、平成4年7月から実施されており、傷病者の救命に大きな効果を上げている。 また、資格取得後の定期的な病院実習や、救急活動の事後検証等を実施し、医療面から救急救命士等の行う応急処置を保障するメディカルコントロール体制の構築を促進しており、救急救命士等の知識・技術の維持向上を図っている。 平成3年8月に「救急隊員の行う応急処置等の基準」が改正され、救急隊員の行う応急処置範囲が拡大されたため救急隊員に対する更なる教育訓練が必要となった。消防庁では、救急II課程教育の計画的な実施及び消防学校における救急標準課程の設置を推進している。 また、全国のすべての救急隊に少なくとも常時1人の救急救命士を配置するため、救急救命士の資格を有する救急隊員の養成を早急に進めており、救急振興財団の救急救命士養成所で年間約1,000人を、政令指定都市等における養成所で年間約400人を養成している。 そのほか、日本臨床救急医学会や全国救急隊員シンポジウム等の医学会、研究会の機会を通じて、救急隊員の全国的な交流と救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急用資機材等の整備 救急隊員の行う応急処置等の範囲が拡大されたことに伴い、高度な応急処置の実施に必要な救急用資機材等の計画的な整備を進めなければならない。このため、「救急業務高度化資機材緊急整備事業」により、高規格救急自動車、高度救命処置用資機材等の整備に対する国庫補助を行うとともに、地方交付税措置を講じ、資機材の整備の一層の促進を図っている。 今後とも引き続き、高規格救急自動車及び高度救命処置用資機材の早急な配備を促進するとともに、使用の実態を踏まえた資機材の検討、改善を図っていく必要がある。
(3)医療機関との連携の強化と救急救命士の処置範囲拡大 救急業務の高度化を円滑に推進するためには、救急II課程教育等における医療機関での実習や救急救命士の病院内実習及び就業前教育等を充実する必要があり、そのためにも地域医療機関の協力が不可欠である。また、救急救命士が救急救命処置を行う上での医師の指示体制の確立、及び救急隊員の知識、技術の維持向上策、救急救命士等の行う応急処置についての医療面における質の保障と事後検証体制及び資格取得後も救急救命士が医療機関において定期的に病院実習を行う体制の構築など、救急隊と医療機関との連携を強化することが必要である。 そのため、消防機関と救急救命センター等、地域の中核的な医療機関を中心としたメディカルコントロール協議会の設置を推進しており、地域が一体となった救急医療体制の整備の促進を図っている。 さらに、医療機関との連携体制を確立していくためには、広域的な取組みも重要であることから、都道府県による消防機関と医療機関及びメディカルコントロール協議会間の調整について積極的に推進していく必要がある。 更なる救命効果の向上のためには、救急救命士の処置範囲拡大が必要であり、メディカルコントロール体制はその前提となる制度である。したがって、メディカルコントロール体制を早急に整備し、消防機関と医療機関との一層の連携強化、信頼関係の醸成を促進し、救急救命士の技能の維持向上を図ることが重要である。 救急救命士の処置範囲拡大については、消防庁と厚生労働省が共同で検討会を開催し、1)医師の具体的指示なし(包括的指示下)での除細動、医師の具体的指示下での2)気管挿管、3)薬剤投与を中心に検討を進めている。7月には中間報告が取りまとめられ基本的方向性と検討課題が示された。現在専門家の意見を集約しながら処置範囲拡大を前提に、必要な条件整備等について更なる検討が進められており、最終的な報告が年内を目途に取りまとめられる予定である。消防庁としては1人でも多くの傷病者が救命されるよう検討会において適切な結論が出されるよう取り組んでいる。
救急救命士の病院実習 救急救命士は医療従事者としての国家資格を持ちますが、他の医療従事者とは異なった側面を有しています。そのひとつに、業務を実施する場所があります。医師をはじめ看護師、放射線技師等の医療従事者は医療機関内で業務を行うことが一般的ですが、救急救命士の場合は救急自動車内、救急現場で救急救命処置を実施します。臨床の場において、医師の具体的な指示のもとに医学的な知識・技術を経験するためには、救急救命士の医療機関での実習は不可欠です。救急救命士はその養成課程の段階から病院実習を行っています。 消防庁としては、救急救命士養成課程を修了し国家試験に合格してからも、救急救命士として救急現場で活動する前には就業前研修として160時間以上の病院実習を実施することとしています。また、現在推進しているメディカルコントロール体制の一環として、今後は救急救命士資格取得後も定期的に一定期間の病院実習を行うことを要請しています。これら病院実習は消防庁において定めたガイドラインに基づき、救命救急センター等地域の中核となる医療機関を中心に、医師の指導・監督のもとで実施されています。 また、病院実習をより効率的に行うため、札幌市や船橋市においては、医療機関との強固な連携のもと、医療機関内に救急車を待機させておくためのワークステーションと呼ばれる研修施設を兼ねた出張所を設置し、普段は病院内で実習を行うとともに、救急要請に対しては必要に応じ医師を同乗させ(ドクターカー)現場に出場するといった方法を採用し、救急救命士の技能の維持向上に大きな成果を上げています。ワークステーション方式は救急救命士を含む救急隊員の知識技術の向上を図るには効果的な制度といえ、今後一層の普及が期待されています。 救急救命士は、救急現場での的確な救急救命処置の実施により国民の救命効果の向上を目指し、病院実習等の機会を通じて知識と技術の研鑽に努めています。
(4)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成13年中の平均では6.2分である。救急隊が現場に到着するまでの間に、救急現場近くの一般住民による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう実技指導の強化に一層努力していくことが重要である。特に、心肺機能停止状態の傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の修得に主眼を置き、住民体験型の普及啓発活動が積極的に進められている。 心肺蘇生法については、平成13年5月、日本救急医療財団により全国共通の心肺蘇生法の指針が示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動も、平成14年4月よりこの指針を踏まえた新しい内容に順次変更されている。 また、口頭指導(救急要請時に119番受付係員が電話で行う応急手当指導)についての標準的なプロトコール(指導方法を台詞まで詳細に定めたもの)を作成し、指導体制の確立を推進している。 さらに、消防機関では、昭和57年に制定された「救急の日」及び「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発に努めている。 また、平成5年3月に消防庁が制定した「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」に基づき、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する普及講習の実施や、応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・仕事場に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発、及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発を図っている。 今後とも、消防機関による応急手当の普及啓発活動が計画的に、かつ、円滑に進むよう、全国的な水準の確保に努め、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を引き続き推進していく必要がある(第2-4-7図)。	
(5)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染危険があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務に関する極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の課目を設けるとともに、各種感染症に対する予防対策等について消防機関等に通知している。 また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制について整備していく必要がある。
(6)患者等搬送事業の指導育成 患者等搬送事業者については、昭和63年12月、運輸省において新たに患者等輸送に限定された一般乗用旅客自動車運送事業免許が与えられることとなったが、患者の容態急変時の対応や感染防止対策が不十分であると指摘されていた。 このため、消防庁は、平成元年10月に消防機関が患者等搬送事業を指導する全国統一的な基準である「患者等搬送事業指導基準」を設け、今後とも、利用者の安全と利便を確保するために、消防機関による適切な指導を推進する。
(7)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 ヘリコプターは高速で機動的という特性があり、救急車による長距離搬送や交通渋滞による搬送遅延等の問題がないことから、傷病者の救命効果の向上には、ヘリコプターを活用した救急搬送が有効である。特に、重症者の救急搬送、遠隔地からの救急搬送及び大規模災害時における広域的な救急活動に大きな効果を発揮することが期待されている。 消防・防災ヘリコプターによる救急業務については、平成10年3月に消防法施行令が一部改正され、ヘリコプターによる救急業務が消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれをもとに出動基準を作成しているところであり、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備が進められている。 平成13年中における全国の消防・防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数1,668件(前年比15.4%増)、搬送人員1,573人(同18.9%増)であり、ヘリコプターによる救急搬送の需要は、年々増加している。 ヘリコプターを救急業務に積極的に活用するには、医療機関との連携体制の整備、離着陸場の整備の推進などを図ることも必要である。
消防・防災ヘリコプターによる救急活動 ヘリコプターは、その高速で機動的という特性を活用して、傷病者の迅速な医療機関への搬送に大きく貢献しています。離島・山間部など、救急自動車による傷病者の搬送が困難又は時間を要する場所からの救急搬送にはその効果は大きく、これにより、早期に医師による治療が開始できることとなり、救命効果の向上が期待できます。また、山岳遭難事故や水難事故現場などのヘリコプターが着陸できない場所においては、消防・防災ヘリコプターは上空でホバリング(空中停止)しながら傷病者を機内に収容し、引き続き救急救命士等により救急救命処置を行いながら医療機関へ搬送することも可能です。 ヘリコプターの機内では、救急自動車とほぼ同等の救急救命処置ができるよう、現在、全国51団体68機の消防・防災ヘリコプターにおいて、機内で救急救命処置を実施するために必要な資材を搭載することが可能となっています。また、救急救命士が搭乗し、医師の指示を受けて、除細動などの特定行為を機内で実施することが可能です。このように、消防・防災ヘリコプターはいわば空飛ぶ救急自動車の機能を果たすことができます。 過去5年間の消防・防災ヘリコプターによる救急出動件数をみると、平成9年中は556件であった出動件数は、平成13年中には1,668件と3倍に達しており、今後とも消防・防災ヘリコプターによる救急活動への需要は着実に増加していくものと推測されます。 このような需要に応え、また、消防・防災ヘリコプターによる救急活動の効果を更に向上させるためには、救急事故現場により近い場所への離着陸の実施や地上の救急隊との円滑な連携活動による搬送時間の短縮、搬送途上での医師との連絡体制の確保や医療機関到着時の速やかな傷病者の引き渡しなどが求められています。そのためにも、消防・防災機関がそれぞれの役割を適切に果たすとともに、ヘリコプターの離着陸に伴う騒音等諸課題に対する住民の理解と協力を得、さらに、医療機関等との綿密な連携活動を図ることが重要です。
(8)救急業務におけるITの活用推進 IT(情報通信技術)の進展を受けて、消防庁では救急業務においてもITの活用について調査検討を進めている。 救急事案については、高い救命効果を確保するために、救急自動車ができるだけ早く現場に到着し、医療機関に搬送することが必要である。そこで、消防庁では、災害、事故の発生を消防機関が覚知してから、救急自動車などの消防車両が現場に到着するまでの時間と、傷病者を医療機関に搬送するまでの時間を短縮するため、消防車両から光通信装置を利用して信号を制御することにより、なるべく消防車両が青信号で通過できるようにする現場急行支援システム(FAST)に関する調査研究等を警察庁と連携して推進している。
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成13年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数4万9,271件(対前年3,167件増、6.9%増)、救助人員5万1,317人(同1,930人減、3.6%減)である(第2-5-1表、附属資料37)。
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ130万3,992人である。消防職員は、延べ111万3,306人で、うち交通事故が37.6%、火災が27.0%である。一方、消防団員は、延べ19万686人で、うち火災が81.3%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ49万6,061人であり、救助活動1件当たり10.1人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は水難事故の17.2人が最も多く、次に自然災害の14.3人となっている(第2-5-2表)。
2 救助活動の実施体制(1)救助隊設置消防本部及び構成市町村 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、救助活動に関する高度な専門教育を受けた隊員、救助活動に必要な資機材及びこれらの資機材を搭載した救助工作車等によって構成される。 平成14年4月1日現在、消防法第36条の2の規定並びに救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)に定める基準に従い、救助隊を設置している消防本部は864本部と前年度と比較して3消防本部減少し、また、当該消防本部の構成市町村(受託市町村を含む。)は3,065市町村であり、前年度と比較して2市町村減少している。これは、主に消防機関の広域再編及び市町村の合併が進められたためである(第2-5-3表)。
(2)救助隊数及び救助隊員数 救助隊は864消防本部に1,488隊設置されており、救助隊員は2万3,645人となっている。1消防本部当たり1.7隊の救助隊が設置され、1隊に15.9人の救助隊員が配置されていることとなる。また、救助隊数及び救助隊員数については、省令第3条の規定による救助隊は若干減少したものの、省令第4条の規定による救助隊(より特別な編成及び装備を備えた救助隊)は漸増傾向にある(第2-5-4表)。
(3)救助隊が乗車する車両及び主な保有資機材 救助隊の保有する資機材については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている。 また、それらの資機材を積載した救助工作車についても、年々その整備が図られているが、これらの救助工作車及び救助隊の保有する資機材については、「救助資機材等総合整備事業」に基づく国庫補助に加え、地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている(第2-5-5表)。	
(4)救助隊の教育訓練 消防職員の救助活動については、より高度かつ専門的な知識と技術が不可欠となってきており、消防学校及び職場における教育訓練の充実強化を早急に図っていく必要がある。このため消防庁では、平成10年度から、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催しており、パネルディスカッション等による活発な意見交換や、事例研究などが行われている。また、消防学校の専科教育の救助科では、146時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2-5-6表)。
3 テロ対策 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件発生後、新たなテロ事件が国外のみならず国内においても発生する可能性が否定できない状況を踏まえ、同年10月8日、政府に緊急テロ対策本部が設置され、消防庁においても消防庁緊急テロ対策本部を設置し、所要の警戒態勢をとるとともに、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期するため、次のような取組みを実施した。
(1)地方公共団体における危機管理体制の構築 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、各都道府県に対して危機管理体制の点検、強化等の要請を行った。特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築など、所要の体制整備について要請を行った。その結果、平成13年10月末までに、全都道府県においてテロ対策本部等が設置され、都道府県における体制が整備された。また、その後平成14年3月には、ワールドカップサッカー大会を控え、開催地等関係地方公共団体における一層の危機管理体制の強化及び関係機関との合同訓練の実施等について要請した。 これらのほか、テロ対策に関する国と地方公共団体との連携の一層の強化を図るため、テロ対策関連情報を総務省及び消防庁から各都道府県のテロ対策本部等に対して迅速・的確に提供するとともに、自治体からも速やかな情報提供を要請した。
(2)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防、警察、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要がある。このため、各都道府県内においては、代表的な消防本部を中心に、特に核物質(Nuclear)、生物剤(Biological)及び化学剤(Chemical)を用いたテロ(NBCテロ)災害を想定した合同訓練を実施するなど、関係機関の連携の強化を図っている。さらに、平成13年11月には、政府のNBCテロ対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられたことから、消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 また、平成14年5〜6月開催のワールドカップサッカー大会に向け、消防庁では開催地等の消防機関による消防関係連絡会議を開催し、生物・化学(BC)テロを含む災害発生に備えるための対処計画の策定について要請した。また、全ての開催地において、競技場でのBCテロを想定した訓練や図上演習等を警察、医療機関等と合同で実施し、災害発生時の連携体制・活動要領について細部にわたり確認点検を行った。このように、ワールドカップサッカー大会に対しても、関係地方公共団体では万全の体制により警戒に当たった。
(3)テロ災害に対応するための消防資機材の整備 BCテロに対し、消防隊員の安全を図りながら迅速に対応するためには、身体防護や検知のための特殊な消防活動用資機材を用いた消防活動を実施する必要がある。消防庁では、米国における炭疽(そ)菌事件の発生などを踏まえ、特に、BCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算において、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し、ワールドカップサッカー大会の開催や米軍基地の所在等を考慮の上、各都道府県の代表的な消防本部に対して、これらを無償貸与し、広域的な応援体制の強化を図った。 また、平成14年度には、陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器を、テロ対策特殊救助資機材として新たに国庫補助の対象としたところである。
生物・化学災害に対する消防の対応 細菌等の生物(Biological)や化学物質(Chemical)に係る災害(BC災害)として、消防機関では従前より研究施設、化学工場及び毒物劇物輸送車両等での火災や漏えい事故等に対応してきました。しかし、平成6〜7年の長野県松本市、東京都でのサリン事件や、平成13年の米国での炭疽(そ)菌事件など、無差別な殺傷を目的とするテロ事件が発生しており、いわゆる大量破壊兵器に相当する生物剤や化学剤を用いたテロ(BCテロ)など、犯罪に起因するBC災害にも消防機関が対応しなければならない状況となっています。 これまで、救助隊の編成、装備及び配置の基準(昭和61年自治省令第22号)に基づく一定規模以上の市町村の救助隊等では、化学防護服や防毒マスク、有毒ガス測定器などの資機材を装備してきました。平成13年の米国同時多発テロ事件以降、特にBCテロ発生の危険について指摘がなされたため、さらに毒性の高い生物剤・化学剤に対応できる資機材を緊急に整備することが求められました。このため、消防庁では、各都道府県内の代表的な消防本部の救助隊等に対して、陽圧式化学防護服、生物剤・化学剤の簡易検知機及び除染シャワーなどの資機材を、また全救急隊に対して防毒マスクを無償貸与しました。 各消防本部においては、このような資機材の充実に加え、職員に対する教育訓練を実施しており、救助隊や化学災害対応部隊等の専門部隊を中心としてBC災害対応体制の強化を図っています。更に、BC災害では、消防機関だけでなく関係機関も含めた一体的な対応が求められることから、「NBCテロ対処現地関係機関連携モデル(平成13年11月)」を参考に、警察や保健所、医療機関等の関係機関との連携の強化が図られ合同訓練が各地で行われています。ワールドカップサッカー大会においても、各会場ごとに関係機関との合同訓練が事前に実施され、また競技当日には、BC災害対応資機材を備えた消防部隊が競技場に配置されるなど、万一BCテロが発生した際には、警察、医療機関、自衛隊等と連携した活動が実施できる体制がとられました。
(4)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識、技術が必要である。このため、消防庁では消防職員及び消防団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防署・全消防団等に配布した。 また消防大学校においては、テロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、平成14年1月に全国の救助隊長等115名を対象とした緊急テロ対策特別講習会を開催し、BCテロ災害発生時の対処や資機材の取扱い等についての教育訓練を実施した。さらに、平成14年度からは消防大学校における本科、幹部研修科、消防団長科、救助科、危機管理講習会等の学科にBCテロ災害対応に係る科目を組み入れ、平成14年度は消防職員(約700名)及び消防団員に対する教育訓練を実施している。
4 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は、火災、交通事故、労働災害、爆発事故、水難事故、自然災害、山岳遭難等幅広い災害、事故に及んでいる。 加えて、平成7年の地下鉄サリン事件や、平成11年の茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故等が国内で発生し、また平成13年には米国において炭疽菌事件が発生したように、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 消防庁ではこのような状況を勘案し、これまで原子力災害及び化学災害について、それぞれ消防活動マニュアルを作成し、平成14年度には、救助技術の高度化委員会において生物・化学災害時の除染要領について検討を行っている。 さらに、救助が難しい「急流河川事故等に関する救助方法について」をテーマに全国消防救助シンポジウムを開催し、救助技術に関する意見交換を行った。 このように、多種多様な事故・災害に的確に対応するため、各種災害に対応する救助活動のマニュアル及び救助技術等の教育訓練のプログラムの充実を図るとともに、高度かつ専門的な機能・性能が要求される救助資機材の機能・性能の明確化や消防・防災ロボット等先進技術の活用についての検討を行っているほか、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。 また、テロ災害等に係る救助活動体制の整備や、特殊な救助資機材の整備は、市町村のみでは困難な場合もあることから、大規模、特殊な災害時に対する救助活動技術の向上や資機材の整備のあり方について検討を行う必要がある。
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防・防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等の消火活動等に日頃から大きな成果を上げている。特に震災時においては、道路の倒壊や陥没等により陸上交通が遮断され、また津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態が予想されるので、その高速性、機動性を発揮し、消防・防災面で大きな役割を担うことが期待される。 平成7年1月の阪神・淡路大震災においては、消防・防災ヘリコプターが、重症者等の救急搬送、医薬品・食料品等の物資搬送、救助隊員・医師等の人員搬送、上空からの情報収集に機動力を発揮し、その必要性が改めて認識された。 各地方公共団体においては、この経験を踏まえ、消防・防災ヘリコプターの新規導入及び複数機の整備を行う等、航空消防防災体制の充実に向けた積極的な取組みが実施されている。 消防庁としても、これを支援するため、所要の国庫補助金を確保するとともに、地方交付税においても所要の措置を講ずることにより、消防・防災ヘリコプターの円滑な整備を推進している。 平成14年4月1日現在、消防・防災ヘリコプターは、消防機関保有のものが27機、道県保有のものが41機、計68機が配備されており(第2-6-1表)、未配備県域は3県となっている。 消防・防災ヘリコプターは、消防防災業務に幅広く活用されており、平成13年中の出動実績は、火災出動1,201件、救急出動1,668件、救助出動1,196件等となっている。 また、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく広域航空消防応援によって、都道府県域を越えた応援活動が実施されており、その出動実績は、平成14年9月1日に発生した長野県の山林火災までで計232件となっている。
2 航空消防防災体制の課題(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防・防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要がある。 消防庁においては、現在未配備の県域を含めた消防・防災ヘリコプターの配備について引き続き推進しているほか、大規模災害時等の広域的な運用に資するため、消防・防災ヘリコプターの整備点検情報、全国各地の離着陸場情報等をデータベース化し、その適切な運用を図っている。 また、ヘリコプターは、定期点検等によりかなりの期間が運航不能となることから、運航不能期間中においては、代替機の確保が必要である。現在、多くの団体で、運航不能期間中における相互応援体制が整備されているが、引き続きこれを推進し、ヘリコプターの広域的な運用のための代替機の確保方策を含め、消防・防災ヘリコプターの新たな整備計画についても検討を行う必要がある。 さらに、ヘリコプターは各種災害や救急搬送など昼夜を問わず需要があるが、現在ヘリコプターの運航は、一部を除く多くの団体で基本的に昼間に限られていることから、定期的な夜間飛行訓練、夜間における操縦士等の人員の迅速な確保、照明設備を装備した離着陸場の整備促進など、夜間の運航体制の構築に努める必要がある。
(2)各種災害時におけるヘリコプター活用の推進 消防・防災ヘリコプターは、火災、救急、救助等の災害に幅広く活用されており、出動件数も各災害区分とも年々増加している(第2-6-1図)。災害対応の迅速化と救命効果の向上を図るため、消防・防災ヘリコプターの各種災害への活用について引き続き推進していく必要がある。 このうち、救急搬送については、消防・防災ヘリコプターの効果的活用を図るために、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示した。各都道府県はこれを基に出動基準を作成し、地域の実情を踏まえた実効性のある救急業務実施体制の整備と的確な運用が進められている。しかし、一部に出動実績の少ない地域も見受けられることなどから、消防・防災ヘリコプターによる救急搬送の一層の推進を図るとともに、搬送拠点となる離着陸場の確保及び医療機関との連携体制の整備を推進していく必要がある。 なお、消防は、消防組織法により市町村が果たすべき責任とされていることから、都道府県が所有する防災ヘリコプターの消防活動の制度的な位置づけについて、このようなヘリコプターの活用の拡大に対応した検討を進める必要がある。
(3)航空隊員に対する教育訓練の推進 航空隊員に対する研修の充実を図るため、平成10年度からの消防大学校における「航空消防防災講習会」等により、活動技術の習得等が進められている。 さらに消防・防災ヘリコプターに係る地方公共団体相互の連絡協調を推進し、国民の信頼と期待に応える航空消防防災体制の確立に資することを目的として平成8年に設立された、全国航空消防防災協議会においても、航空消防防災体制に関する調査研究や航空隊員等を対象とした研修会が実施されており、平成13年度には、災害現場における医師、航空隊員及び消防隊員との安全かつ円滑な連携活動のための訓練のあり方等について調査研究がなされた。消防庁においても同協議会と連携し、消防・防災ヘリコプターの円滑な運用体制の確立を図っている。
(4)航空消防防災体制におけるITの活用推進 IT(情報通信技術)の進展を受けて、消防庁では消防・防災ヘリコプターの運用についてもITの活用が検討されている。 消防・防災ヘリコプターは、広域航空消防応援時等において、その保有団体から遠く離れた場所において活動を行う場合、通常の消防・防災無線、航空無線では保有団体と交信してその動態を把握することは不可能となるほか、大規模災害現場においては、同一地域を飛行する複数の消防・防災ヘリコプターの動態を管理し統制する必要がある。このため、消防庁では、現在GPS(全世界的衛星測位システム)や高度計等のデータを、消防・防災ヘリコプターのみならず、衛星電話回線を通じて保有団体や大規模災害時の現地指揮本部に通信し、消防・防災ヘリコプターの動態管理が可能になるようなシステムについて、研究開発を推進している。
第7節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大きな改正や、防災基本計画の修正が行われている。 平成7年6月には、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による措置の創設等を内容とする災害対策基本法の改正が行われたほか、12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等国・地方を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 平成7年7月には、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえ、防災基本計画の全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められた。 平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害についても、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るため、防災基本計画の修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現・経済産業省)、厚生省(現・厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等を置くこととされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村における核燃料加工施設における臨界事故、事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られた。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編に伴い、また、平成14年4月には、近年の風水害・原子力災害対策の進展を踏まえ、各々の災害対策の一層の充実・強化を図るため、それぞれ防災基本計画の修正が行われた。
(3)消防庁の防災体制 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現・総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関しとるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の自然的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編に伴い、自治省・消防庁防災業務計画を廃止し、新たに消防庁防災業務計画を作成した。 なお、首相官邸はもとより他省庁においても、内閣府、国土交通省ほか実動関係省庁を中心に、大規模災害の発生その他有事の際に設置される緊急対策本部等の活動のために、専用の危機管理センター等を設けている例があり、消防庁においても早急にその整備・充実を図る必要がある。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成14年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体、原子力災害対策については21団体、風水害対策については27団体、火山災害対策については15団体、林野火災対策については15団体、雪害対策については9団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。そして、平成12年12月には、中央省庁等改革に伴い指定行政機関及び指定地方行政機関が指定されたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請している。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成14年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、このうち2,208団体(68.1%)が見直しを完了している。 なお、平成13年度中には、都道府県では33団体が、市町村では741団体が、それぞれ修正を行っている。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントの実施マニュアルを作成するとともに、このような防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。 イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、地区別防災カルテの作成マニュアルを示すとともに、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成13年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、21団体となっている。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に抑えるために重要であり、そのためには日頃から実践的な対応力を身に付けておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では、地方公共団体に対し、自衛隊等の防災関係機関とも連携の上、住民の参加のもとに、情報の収集・伝達、避難誘導、救出・救護など総合的かつ実践的な防災訓練を実施し、災害時に実際に適切な行動ができるか検証するよう要請している。また、情報収集・伝達訓練や広域的防災訓練、災害の種類、発生時間等様々な状況を想定した訓練、訓練者にシナリオが公表されず、訓練者の判断が求められる図上訓練など各種訓練の実施を推進している。 平成13年度においては、都道府県が延べ263回の防災訓練を実施したほか、市区町村においても延べ6,792回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震が最も多く、次いで、原子力災害、風水害、コンビナート災害、林野火災の順となっており、市区町村では、地震、大火災、風水害の順となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実働)訓練が最も多くなっている(附属資料25)。
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会の活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、すべての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。 また、見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。これに必要な経費については、平成8年度から地方財政計画に約70億円を計上し、普通交付税により措置している。 なお、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、1)被害想定、2)職員の動員配備体制、3)情報の収集・伝達体制、4)応援体制、5)被災者の収容、物資等の調達、6)防災に配慮した地域づくりの推進、7)消防団、自主防災組織の充実強化、8)災害ボランティアの活動環境の整備、9)災害弱者対策、10)防災訓練の10項目に留意する必要がある。 さらに、平成9年6月に防災基本計画に事故災害対策が追加されたこと、平成12年5月、平成14年4月に原子力災害対策編が修正されたこと等を踏まえ、各種事故災害対策についても、より実践的、具体的な内容となるよう見直しを進める必要がある。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのためには、「地方公共団体の防災体制のあり方に関する調査検討委員会報告書」(平成14年3月消防庁防災課)や「防災体制の強化に関する提言」(平成14年7月中央防災会議)において提言されているように、組織・人材の充実、強化が何よりも重要と考えられる。組織に関しては、高いレベルの危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要がある。平成14年4月1日現在、28都道府県において部次長職以上の防災危機管理専門職が設けられているが、更に充実の必要がある。 防災体制強化の根幹である人材育成については、首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応力の向上、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要であり、消防庁としては消防大学校や消防学校等を活用し、e-ラーニング等の遠隔教育の実施も視野に入れ、防災教育の充実を図っていくこととしている。 このほか、各地方公共団体においては、災害時の職員の自主参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などIT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険個所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。
地方公共団体における危機管理のあり方シンポジウム 平成14年5月29日に神戸、31日に東京で、米国連邦危機管理庁(FEMA)で8年間長官を務めたジェームズ・リー・ウイット氏を招いての「地方公共団体における危機管理のあり方についてのシンポジウム」が開催され、地方公共団体の首長をはじめ防災関係職員等が聴講し、盛況のうちに幕を閉じました。この中でウイット氏による基調講演(「連邦政府における危機管理とFEMA」)が行われ、その概要は次のとおりです。 ウイット氏はオクラホマの連邦政府ビル爆破事件などの例を紹介し、テロ事案発生時の危機管理・事態管理機能の重要性、連邦(国)レベルでの教育・訓練の重要性、訓練・実践の経験を防災体制の充実・強化にフィードバックすること、情報の共有化をはじめ、防災資源の共有化を進めることの重要性を指摘しています。 その中で特に、FEMAが力を入れてきた点として、地方政府や州との防災相互応援協定による連携策の推進や災害対策本部の標準化(ICS)の推進、専門職員の確保などを挙げていました。また、防災対策は常に被災者の立場に立って考えることや、先を見越した施策の展開が必要としていました。
第8節 広域消防応援1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成14年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が2,471、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が623、その合計である全国の協定数は、3,094である。また、全国の協定について応援災害別に分類(重複計上)すると、火災2,776、風水害2,246、救急2,394、救助2,280、その他2,410となる。 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などの場合には、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、災害種別に応じた活動マニュアルを作成するとともに、消防広域応援基本計画を作成し、その中で、派遣要請システムの整備、代表消防機関の設置、応援情報リストの整備等の都道府県単位の消防広域応援体制の整備を速やかに推進するように通知しているところであり、平成14年4月1日現在、38都道府県で整備が図られている。 また、平成7年10月の消防組織法改正により、大規模災害時においては、消防庁長官は都道府県知事の要請を待たずに被災地以外の都道府県知事又は直接市町村長に対し、応援のための措置を求めることができることとされた。 大規模・特殊災害や林野火災等においては、空中消火や救急業務、救助活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効である。 そのため、消防庁では、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防・防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2-8-1表)。 また、「大規模災害時における消防・防災ヘリコプターの広域応援体制検討委員会」において検討を行い、ヘリコプターによる広域応援に関して被災地側の受援体制の整備を推進している。 なお、ヘリコプターは一定の期間、検査又は整備等のために運航不能となることから、消防・防災ヘリコプターを保有する機関の中には、ヘリコプター運航不能時等の応援に関する協定を締結しているものがある。 今後とも消防・防災ヘリコプターを更に増強しつつ、その広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場を確保し、情報活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。 平成13年中には、消防庁長官の求めに応じて32件の消防広域航空応援が実施された。 なお、昭和62年度に消防広域応援交付金制度が創設され、消防庁長官の求めに応じて都道府県の区域を越えて行われた消防広域応援については、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されることとなっている。
2 広域防災応援体制(1)広域防災応援体制の確立 大規模、広域的な災害に適切に対応するためには、地方公共団体の区域を越えて機動的、効果的に対処し得るよう、防災関係機関相互の連携強化をはじめとする広域防災応援体制の確立を図る必要がある。 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事から防衛庁長官等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛庁長官等に対して災害の状況等を通知することができる。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正により都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。
(2)広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関と、あらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、災害現場における指揮体制等各般にわたる項目について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援に関しては、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組みが進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計22の協定が締結されている。この結果、阪神・淡路大震災以後、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を越えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に取り組む団体が大幅に増加しており、平成14年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、2,289団体となっている。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防・防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 緊急消防援助隊の整備(1)緊急消防援助隊の整備 平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ充実したものとするため、全国の消防機関相互による迅速な援助体制として、平成7年6月に緊急消防援助隊が発足した。 緊急消防援助隊は、救助部隊、救急部隊のほかに、先行調査や現地消防本部の指揮支援を行う指揮支援部隊、応援部隊が被災地で活動するために必要な食糧などの補給業務を行う後方支援部隊等が編成に加えられており、大規模災害時には、消防組織法に基づく消防庁長官の要請により出動することとなる。なお、広域的な消防防災体制について、緊急消防援助隊を法的に明確に位置付けること等について検討が行われている。 緊急消防援助部隊の部隊編成については、発足当初、救急部隊、救助部隊等の全国から集約的に出動する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(同1万3,000人規模)、総計で1,267隊、交替要員を含め約1万7,000人規模であったが、平成13年1月から、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、1,785隊(隊員数約2万6,000人)体制に拡充した。具体的には、消火部隊について登録制を導入するとともに隊数を増加し、また、既存の救助隊・救急隊の隊数を増加した。さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、及び消防・防災ヘリコプターによる航空部隊、消防艇による水上部隊を新設し、現在では8部隊となっている。平成14年4月現在では、2,028隊(隊員数約2万9,000人)の体制となっている(第2-8-2表)。 緊急消防援助隊の装備については、消防庁において基準を策定するとともに、国庫補助措置を講じることにより、救助工作車、ファイバースコープ等の高度救助用資機材、災害対応特殊救急自動車など救助・救急活動に必要な資機材や、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な車両、資機材の整備を推進している。また、平成13年度から部隊の拡充に伴い、災害対応特殊ポンプ自動車、ヘリコプター及び広域応援対応型消防艇等についても補助対象事業が拡充された。 平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムは、緊急消防援助隊派遣車両の位置及び動態を把握するためのシステムで、車載GPSにより特定した車両位置と車載端末装置から入力した車両動態を携帯電話通信網により消防庁に設置したサーバに送信し、広域応援支援システムの電子地図上にシンボルで表示する。また、携帯電話網の不感地帯では自動的に低軌道衛星回線に切り替わり、全国規模で安定したデータ通信を可能とする。さらに、このシステムには、これらの回線を活用して派遣車両と消防本部等との間で情報連絡を行う簡易な文字通信機能等も備えている。 平成13年度には、消防庁に整備した車載端末及び消防庁サーバ等により実証実験を実施するとともに、「緊急消防援助隊動態情報システムに関する標準仕様等検討委員会」において検討を行いシステムの標準仕様を策定した。それに基づいて、平成14年度においては、緊急消防援助隊動態情報システム可搬型車載端末の整備を進めている。
(2)活動及び訓練等 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁と名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月には、岩手県内陸北部の岩手山付近で発生した震度6弱を記録する地震において、仙台市消防局と東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局、仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局、川崎市消防局から救助部隊、消火部隊を現地に派遣し地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊が、ヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする震度6弱を記録した芸予地震においては、大阪市消防局、神戸市消防局、福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局、北九州市消防局の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日には、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われ、その後も、隊員の技術向上と部隊間の連携強化のため地域ブロックごとの合同訓練等が毎年行われている。また、緊急消防援助隊発足5年目を迎えた平成12年10月には、148本部、1,922人の隊員による第2回目の全国合同訓練を、皇太子殿下の御臨席のもとに、東京都江東区有明において行った。 平成14年度については全国6ブロックにおいて合同訓練が実施され、平成13年9月11日に発生した米国同時多発テロ災害を受け、国内でのテロ災害を想定した特殊災害部隊の訓練も取り入れられた。
第9節 消防防災の情報化の推進1 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 災害時において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくほか、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくことが極めて重要である。 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、1)国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、2)都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網、3)市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網及び4)国と地方公共団体を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2-9-1図、第2-9-1表)。 消防庁では、次の事項に重点をおいて、地方公共団体と一体となって総合的な消防防災通信ネットワークの整備を推進している。	
(1)通信ルートの多ルート化及び耐震化の推進 大規模災害時には、通信施設が被害を受け、情報連絡に支障を来すことも予想されることから、災害に強い通信ネットワークを構築するため、地上系通信網に加え、衛星系通信網を整備することにより通信ルートの多ルート化を推進している。 衛星系の通信網については、現在、地域衛星通信ネットワークが消防庁及び43都道府県の間で運用されており、地震等による通信回線の遮断を最小限とするため、通信施設の耐震・免震対策及び停電時に備えた非常電源設備の耐震対策を促進している。
(2)災害に対する初動体制を確立する画像伝送システムの整備 大規模災害発生時に迅速かつ的確な災害応急活動を展開するためには、情報の収集・伝達を速やかに行うことが必要であり、中でも、上空からの映像情報は被害規模及び概要を迅速に把握できることから、災害に対する初動体制及び広域応援体制を整える上で非常に有効である。 画像伝送システムは、衛星地球局、高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等で構成されており、得られた画像情報を消防本部指令センター内等に集約し、発災直後の被害状況を当該団体において把握するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに国(消防庁を経由して官邸等)、都道府県及び他の市町村などへ伝送するものである。 消防庁では、この画像伝送システムを政令指定都市、都道府県庁所在都市等に整備を推進している。 また、高所監視カメラやヘリコプターテレビ電送システムではカバーできない山間部等における大規模災害時においても、被災現場から直接画像情報を防災関係機関へ伝送するため、機動性のある可搬型ヘリコプターテレビ受信装置、衛星を使用した可搬型衛星地球局設備の整備を進めている(附属資料41)。
(3)市町村の消防・防災無線網の整備ア 地域住民等に密着した防災行政無線網 同報系無線(住民連絡用)は、住民等に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報、避難勧告等の伝達に極めて有効である。災害現場に赴き、その状況等を的確に把握・伝達するための移動系無線とあわせ、一体的な整備が必要である。 また、地域防災系無線は、災害時において市町村と防災関係機関、病院、学校、ライフライン等の生活関連機関、自主防災組織等との相互連絡に極めて有効であり、平常時においても地域に密着した様々な情報の連絡にも活用できることから、市町村における整備を推進している。 消防庁では、国庫補助制度、防災基盤整備事業等を活用し、これらの無線網の整備の促進を図っているところであり、全国整備率は平成14年3月末現在、同報系無線66.1%、移動系無線86.8%、地域防災系無線7.8%となっている(附属資料42)。 また、平成14年度からは、国庫補助対象に高機能情報通信対応防災無線を追加し、テロップなどの文字情報伝達、一定の静止画像・音声による双方向情報伝達を可能とするデジタル仕様による通信の高度化も促進している。 イ 高度化する消防・救急無線網 消防・救急無線は、消防本部、消防署等に基地局を設置し、消防ポンプ自動車、救急自動車等に積載した移動局との間で情報の収集・伝達、指揮・連絡等を行うための無線網である。平成14年4月1日現在、9万5,982局が運用されており、この1年間に2,358局が増加した(第2-1-3図)。 また、119番通報の受付から出動指令、現場活動支援等を効率的に行うための消防緊急通信指令施設は約9割の消防本部で整備され、地図等検索装置や車両動態管理システム、医療情報装置などのシステムの導入が進められているほか、災害現場の映像を消防・防災ヘリコプターから消防本部に伝送するヘリコプターテレビ電送システムの導入も増加するなど消防・救急無線網の高度化が図られている。 一方、近年、情報通信の飛躍的進展により周波数チャンネルの需要が高まっているが、電波は限られた資源であり、新たな周波数割り当てが極めて困難な状況となっている。 このような過密な電波環境への対応や秘匿性の確保、各種データ、画像等の伝達を可能とする消防・救急無線の高度化のため、消防・救急無線においてもデジタル化を進める必要がある。 消防庁では全国消防長会と連携を図りながら、「消防・救急無線デジタル化検討委員会」を設け、平成11年度には実験用デジタル無線機の仕様作成及び実験機の製作、12年度には変調方式や周波数帯等の違いによる電波伝搬への影響調査、13年度にはデジタル移行に伴う使用周波数の変更による既設の無線通信補助設備への影響調査及び対応方法の検討等、様々な課題検討を行い、全国の消防本部が円滑かつ速やかにデジタルへの移行が図られるよう取組みを進めている。
(4)多様な情報収集、伝達手段の整備とバックアップ機能の確保 地震災害、石油コンビナート災害等の大規模な災害が発生した場合、災害現場においては、消防機関をはじめとする防災関係機関が相互に協力して効率的な災害応急活動を行う必要がある。消防相互の応援には、全国共通波等を的確に活用することとしているほか、警察等異なる機関との密接な情報交換を行うための通信手段としては、防災相互通信用無線(防災相互波)が活用されることとなっている。 消防庁では、特に、大規模災害等の発生が想定される市町村、あるいは石油コンビナート地帯等の市町村に対し、防災相互通信用無線施設を整備し、災害時にその機能を十分活用できるよう、あらかじめ関係機関と調整する等運用体制の確立について要請している。 なお、大地震等により通信施設が使用不能となった場合には、国・地方間の情報伝達機能が麻痺し、災害応急活動に重大な支障を来すことから、通信施設のバックアップを確保しておく必要がある。 このため、地方公共団体の本庁舎が被災した場合のバックアップ施設(衛星施設等)の確保や機動性のある車載型衛星地球局、可搬型衛星地球局等の整備の促進を図っているところである。
2 被害状況等に係る情報の収集・伝達 消防庁では、地方公共団体と国との間の災害情報の収集・伝達の窓口として、消防防災通信ネットワークの充実を図るとともに、迅速かつ的確な情報の収集・伝達に努めている。 とりわけ、大規模災害時には、災害の規模や被害の概況を迅速に把握することが重要であり、災害対策基本法の改正を踏まえ火災・災害等即報要領を改正し、市町村から都道府県に連絡ができない場合や119番通報が殺到する場合には、市町村から直接消防庁に連絡することとした。さらに、航空機事故、鉄道事故等の際の迅速な即報(第一報)の励行を指導するとともに、災害対応を第一線で行い被害状況等を把握できる消防機関からの速やかな情報伝達、休日・夜間の情報収集・伝達体制の整備等について、地方公共団体における体制を強化するよう要請している。 なお、消防庁においても、大規模災害時等に被災地に出動し、情報収集や現地での防災活動の支援を行うための現地活動支援車及び被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を、また、消防庁が被災した場合の地方公共団体との通信機能の確保のため、消防大学校に衛星通信施設等の諸施設をそれぞれ整備している。さらに、地方公共団体から情報を入手し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等に適切に伝達できるよう、その徹底を図っている。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 このため、消防庁では、震度情報や広域応援対応力情報などの防災情報のデータベース化と国・地方公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始し、本システムで収集された震度データは、気象庁にもオンラインにより提供しており、地方公共団体の震度データについては、気象庁の震度情報に含めて発表されている。 また平成11年度から、危険物等の災害発生時に、色、臭気等から物質を特定し、危険物等に係る危険性及び防ぎょ方法を検索することができるデータベース(危険物災害等情報支援システム)をサブシステムとして新たに防災情報システムに加えるとともに、危険物の対象品目を拡大し、全国の消防本部で利用できるようにしている。
火災報告等オンライン処理システムの開発 本年度より開発、構築する各種統計報告のオンライン処理システムは、統計事務の情報化を推進するため、データ通信手段を利用して集計処理の迅速化を図るとともに、都道府県、消防本部等における集計データの有効活用など情報の共有化にも資するものです。 本オンライン処理システム導入の基本的な考え方は、次のとおりです。(1)消防本部における火災データ入力の効率化を図るとともに、都道府県における報告のための処理の効率化を図る。(2)都道府県及び消防本部等に対する全国統計データ(火災年報等)の提供の迅速化を図る。(3)既に一部の消防本部において独自に構築済みの統計システムとの連携を図る。 本オンライン処理システムの導入効果については、次のとおりです。(1)消防本部における火災データ入力時にデータチェックを行うので、提出データの差し戻し等による時間のロスがなくなるとともに、都道府県でのデータチェックの手間が軽減される。(2)都道府県、消防本部に対して迅速に統計処理情報を提供し予防業務に速やかに反映させることができる。 火災報告等オンライン処理システムは、試行期間(平成15年4月〜12月)を経て平成16年から運用開始を予定しており、さらに他の各種統計報告についても平成15年度以降オンライン処理システムの開発、構築を行う予定です。
(2)災害対応支援システム等の導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断のもとに的確な応急活動を遂行する必要があるが、そのためには、シミュレーションにより被害を推測するとともに、円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入し、日頃から訓練に努めることが有効である。 このため、消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めており、特に、消防研究所で開発した「簡易型地震被害想定システム」については、簡単な操作で即座に地震発生時の被害を推計することが可能であり、的確な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つことから、全都道府県等に配布しその活用を図っている。 なお、最近の大規模地震においても被害予測に同システムが活用されている。
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、これまで、電話、ファクシミリにより行われてきたが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速、的確に行うため次の4つのサブシステムにより構成される緊急支援情報システムを消防庁に構築し、平成13年7月に運用を開始したところであり、引き続きシステムの充実を図っている(第2-9-2図)。ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等で情報を共有するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。ウ ヘリ映像等による被災状況把握システム 消防・防災ヘリコプター等で撮影した被災地映像を解析し、被災範囲等を迅速に把握することができるシステム。エ 衛星データ通信・データ放送 ア〜ウのシステムをバックアップして、電子地図等の大容量のデータを、衛星通信回線により伝送することができるシステム。
4 情報化の今後の展開(1)防災情報通信体制の充実強化 あらゆる災害に対し、迅速かつ的確な防災情報の収集・伝達を行うため、次のように、消防防災通信ネットワークの充実強化を図るとともに、情報の収集・伝達を実施する体制の強化を図ることが必要である。 そこで、消防庁において、消防防災分野の情報通信ネットワーク、情報通信システムの整備等IT化の推進に関する指針を作成し、地方公共団体はこれを踏まえつつ、消防防災情報の共有化の計画的な取組みを行う必要がある。ア 消防防災通信ネットワークの充実強化 消防防災通信ネットワークについては、災害に強い通信網の構築の観点から地上系及び衛星系による通信ルートの多ルート化の早期確立を図るとともに、衛星系については、全国的なネットワークの早期確立のほか最近のデジタル通信技術を活用して、画像情報、地図情報等を含めた多様な防災情報を迅速・効率的に伝達できるよう、ネットワークの高度化を図ることが必要である。 この中で、都道府県と市町村等を結ぶ地上系の防災行政無線については、施設の老朽化等に伴い再整備の時期を迎えているものや、周波数の再編成により他の周波数帯に移行が決定されているものがあり、施設の再整備の際には、IT分野の技術革新を展望しつつ、衛星系通信網と有機的に結合したネットワークを構築することが必要である。 一方、市町村と住民等を結ぶ同報系防災行政無線(住民連絡用)については、既存のアナログ仕様無線の更新も含めデジタル仕様による整備を原則とし、最近急速に普及しているインターネット、携帯電話等の手段も併行活用して、災害発生後住民等に、速やかに情報伝達できるシステムの整備を推進するとともに、住民や地域に密着した情報の相互連絡に有効な地域防災系無線についても導入を促進し、避難所、学校、自主防災組織の活動拠点等を地域における情報拠点として、整備を進めていくことが必要である。 なお、通信施設については、地震時においても確実に稼働することが必要であり、通信施設の耐震・免震対策を行うとともに、非常電源設備についても点検し、機能の見直し等を行うことが重要である。イ 広域応援に必要な情報通信施設等の整備促進 画像伝送システムは、発災直後の被害の概況を把握し、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、政令指定都市、都道府県庁所在都市等大規模な都市における整備が求められる。 また、消防・救急無線については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国共通用の周波数が3波へ増波されている。 さらに、消防・防災ヘリコプターの増強に伴い、ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているが、いまだ全国をカバーするには至っておらず、引き続き消防・防災ヘリコプターテレビ電送システムの普及・増強に努める必要がある。また、こうしたシステムを搭載したヘリコプターが集結する大規模災害時には混信が発生するおそれがあるため、ヘリコプターテレビ電送用の周波数が4波へ増波されたが、その円滑な運用を図る必要がある。 また、消防・防災ヘリコプターは、広域航空消防応援時等において、通常の消防・防災無線、航空無線では保有団体と交信することは不可能となるほか、大規模災害現場においては、同一地域を飛行する複数の消防・防災ヘリコプターの動態を管理し統制する必要があるため、消防庁では、ヘリコプターの動態管理が可能になるようなシステムについて、研究開発を推進する。 このほか、車載型や可搬型の衛星地球局、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の整備を促進し、大規模災害時にも機動的で確実な情報の伝達手段を確保することが重要である。ウ 情報の収集・伝達体制の整備 災害時における的確な情報の収集・伝達を行うためには、消防防災通信ネットワーク等設備の充実強化とこれを運用する体制の強化を図ることが重要である。 このため、都道府県、市町村、消防機関、警察等防災関係機関相互の連携を強化するとともに、収集、伝達すべき情報に係る基準の周知徹底、迅速な第一報の励行、消防機関からの速やかな情報伝達、夜間・休日の情報収集・伝達体制の整備・強化を更に推進していく必要がある。エ 住民等への情報伝達の強化 災害時の応急対策の実施に際しては、住民等に対し、気象情報や避難勧告、避難時の生活情報等を適切に伝達することが重要であり、これによって住民等に無用な不安を抱かせないことにもつながる。 そのためには、防災行政無線、有線放送、広報車、消防職団員の巡回等による住民への伝達手段についてハード・ソフト両面から絶えず点検を行うとともに、今後はインターネット等を活用した新たな伝達手段についても整備を進めることが望ましい。 また、住民に対する気象予警報、避難勧告等を迅速、的確に伝達できるよう、あらかじめ伝達手段、手順、ルート等を定め、これを地域防災計画に明示し、住民への広報に努めるとともに、職員に対しても周知徹底しておく必要がある。オ 衛星通信を用いた情報伝達体制の整備 現在、衛星系の通信網として活用されている地域衛星通信ネットワークは、電話・ファクシミリとアナログ映像送信を主としたシステムであるが、情報通信分野の環境は、インターネットに代表されるように大きく発展を続けている。映像分野においてもデジタル化への移行が急速に進みつつあり、地域衛星通信ネットワークにおいても、データ通信を重視し、デジタル映像方式を導入したシステムへの移行が進められている。 こうした背景を踏まえ、消防庁では、次世代化に向けて、高速データ通信に対応できるように衛星データ通信・衛星データ放送システムの構築を進めている。 また、次世代化に伴い、増加が見込まれる可搬型地球局について、消防庁では、機器の集約・小型化及び軽量化を図るとともに操作性を向上させ、機動性に富んだ「災害対応小型衛星電話」を開発したところであり、今後、全国的な導入を推進していくこととしている。カ 消防・救急無線のデジタル化への対応 現場活動の複雑、多様化に伴う情報量の増加等に対応するため、消防・救急無線のデジタル化を進めるとともに、消防緊急通信指令施設に車両の動態管理、地図検索装置等を整備するなど、一層の高度化を図る必要がある。
(2)マルチメディアの活用 最近のマルチメディアに代表されるような情報通信技術の進展に伴い、新たな情報処理技術(IT)を活用したシステムの構築を検討していく必要がある。ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を全国の都道府県、消防本部に整備を進め、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。 また、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進める必要がある。イ 災害対応支援システムの充実 地震被害予測システム、延焼拡大予測システム、林野火災応急対策シミュレーションシステム等の普及を促進するとともに、防災用地理情報システム(防災GIS)、全世界的衛星測位システム(GPS)等のマルチメディアの活用を図りながら、消防防災対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるIT化推進のための共通基盤としてパソコンの整備及びこれに接続するLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が遅れている。 平成13年度末の消防本部におけるパソコンの整備率(常時勤務する職員数に対するパソコンの台数の割合)は24.5%であり、4人に1台程度にとどまっている。また、13〜15年度の整備計画についても15年度末で42.2%の低い水準に留まっている(第2-9-3図)。また、平成13年度末のLANの整備状況については、本部が62.6%、消防署等が47.2%となっており、パソコンの整備率を勘案すると、LANに接続している端末数が少なく、情報の共有化のためにこれらの情報基盤を十分に活用するのは厳しい状況であると考えられる(第2-9-4図)。 電子自治体時代にふさわしい住民サービスを提供していくためには、消防本部においても情報基盤の整備を早急に進める必要がある。 このため消防庁では平成13年度からパソコンの一人一台体制の整備に必要な経費を地方交付税措置として消防費に算入する財政支援のほか全国の消防本部にパソコン、LAN等の大幅な拡充のための整備計画の策定を要請し、この計画に沿った整備計画が推進されている。	
(4)携帯電話等からの119番通報の発信地表示システムの検討 一般加入電話からの119番通報は、通報者の電話番号をもとに発信地を検索し、表示するシステムが構築されており、迅速な消防活動を行うために活用されている。 一方、携帯電話等からの119番通報は発信位置が特定できないため、代表消防本部といわれる消防本部が、他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で当該区域を管轄する消防本部に転送する運用を行っている状況にある。 そこで、消防庁では、全国消防長会や通信事業者等と連携を図りながら、平成12年度から「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討委員会」を設け、発信電波を受信した基地局の位置情報を基に接続先消防本部の振り分けを行い、管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムの実現方策について検討を行っている。
携帯電話からの119番通報について 平成14年8月、携帯電話の契約者数が7,000万人を超え、それに伴い携帯電話からの119番通報件数も増加の一途をたどり、平成13年度には通報全体の約17%を占めるに至っています。 携帯電話については、GPSシステムを利用した位置情報の取得、静止画や動画の送信が可能な端末が既に発売されており、今後携帯電話からの119番通報形態の多様化が予想されます。 現在、119番通報は音声による通報が主となっていますが、併せて画像情報等を取得することで、早期に災害現場の状況を視覚的に把握できれば、より迅速で的確な災害対応が可能となります。 消防庁では、このような状況を踏まえ、多様化する携帯電話からの119番通報への対応について、将来の技術動向を踏まえながらその導入について検討することとしています。
(5)消防防災分野における申請・届出等手続の電子化の取組み 申請・届出等手続の電子化の取組みについては、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてペーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやりとりされてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされ、そのため、省庁別に、省庁内オンライン化基盤整備計画と個別手続のオンライン化実施計画を盛り込んだアクション・プランを策定し、公表するものとされている。 なお、地方公共団体に対する申請・届出等の手続のオンライン化に関しては、所管省庁において、オンライン化実現のための事務処理手順、システムの標準仕様等の実施方策を提示することとされている。 消防庁においては、消防防災分野の申請・届出等手続のオンライン化を着実に推進するため、インフラ整備及び図面の電子化等の諸課題を検討して取りまとめることとしている。 消防防災行政に係る申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うもの(消防用機械器具等の検定の型式承認の申請、石油コンビナート等災害防止法上の第一種事業所新設等届出等)については、平成15年度までの整備・運用開始を図ることとしている。また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)についても、国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化実現のために必要な措置を適切に講じることとしている。
第3章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成13年中の火災を原因別にみると失火が全体の64.3%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日頃からの備え、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会を作るためには、国民の防火防災意識の高揚に待つところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災週間」(8月30日から9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、建築物の密集及び高層化並びに生活様式の変化に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日頃から防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施を提案し、国民に対する防火意識の普及宣伝に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成13年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい気候となる時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、「たしかめて。火を消してから 次のこと」を平成13年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力のもとに、「住宅防火対策の推進」、「放火火災予防対策の推進」、「消火器事故防止対策の推進」を重点目標として、各種広報媒体を通じて防火広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断、老朽化消火器の一斉回収等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。イ 春季全国火災予防運動(平成14年3月1日〜3月7日) 平成14年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語のもとに、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」、「林野火災予防対策の推進」を重点目標に加え、秋季同様、様々な行事を実施した。
(2)全国山火事予防運動(平成14年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成14年の全国山火事予防運動では、「火を消して 森を消さない 心がけ」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗、ポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練、研究会の開催等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成14年3月1日〜3月7日) 車両火災は年々急増の傾向にあることから平成14年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、車庫、駅舎等の対象物に対する初期消火、避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成14年1月26日) 昭和24年1月26日、法隆寺金堂火災及びその後の金閣寺火災等による貴重な文化財の焼損を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共唱により毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導のもとに重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。
2 危険物に関する意識高揚 危険物に係る火災・漏えい等の事故は近年増加傾向にあり、平成13年中の事故発生件数も依然高い水準となっている。それらの事故原因を分析すると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然防止するために、消防庁では、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図るため、平成2年度から、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」としている。「危険物安全週間」に関して、推進標語の募集や推進ポスターの作成及び、各都道府県、関係団体等と協力し広報活動を行っているほか、危険物安全大会において危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。また、危険物施設においては、万一事故が発生した場合に備え自主的に訓練等を行っている。 平成14年度の危険物安全週間においても、サッカー日本代表チーム監督のフィリップ・トルシエ氏をモデルとした推進ポスターを作成し、「危険物 小さな油断も イエローカード」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域で危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関においては、危険物施設を対象とした立入検査を実施し、事故の未然防止を図るとともに、火災や油漏れ事故を想定した訓練を自衛消防組織等と連携し行った。
フィリップ・トルシエ氏をモデルとした危険物安全週間推進ポスター 消防庁では、毎年6月の第2週を危険物安全週間とし、危険物に対する意識の高揚、啓発を図っており、その一環として、推進ポスターを作成しています。 例年、モデルの選定に当たっては、事故に対する警戒心と事故予防のための細心の注意を喚起させるような、真剣勝負の世界で活躍する人物や緊張感を醸し出す人物を念頭に置いており、これまでもスポーツを中心とした各分野の第一人者の協力が得られてきました。 平成14年度は、「ワールドカップサッカー大会」の開催年ということもあり、話題性の面からも、サッカー選手を主な対象として検討を進め、日本代表チーム監督という要職にあり、緊張感溢れるムードを漂わせるフィリップ・トルシエ氏が、モデルとしてふさわしいとの結論に達し、協力を依頼しました。幸いにもトルシエ氏の協力が得られ、「危険物 小さな油断も イエローカード」の標語とともに推進ポスターが作成されました。 このポスターは、危険物安全週間(6月2日から6月8日まで)が「ワールドカップサッカー大会」の開催期間と重なったこともあり、新聞や広告関係誌でも取り上げられ、危険物安全週間を広く国民に周知させることができました。 また、ワールドカップサッカー大会閉幕後の7月には、消防庁長官よりトルシエ氏に対し、感謝状及び記念品が授与されました。		
3 防災知識の普及啓発(1)防災週間、防災とボランティア週間等を活用した啓発活動 災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならないことはもちろんであるが、国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識を確実に身につけるとともに、日頃から家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災に心がけることが極めて重要である。また、防災のための学習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、前者では大がかりな防災訓練等を中心とした行事が行われているのに対し、後者は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日頃の備えを高めていくことがその趣旨とされている。平成14年の防災とボランティア週間では、38都道府県のほか、595の市区町村が、防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業を実施している。 このほか、消防庁においては、年間を通じテレビ放送を利用して、普及啓発事業を実施しているほか、平成14年においては、大都市圏の消防機関の活動や、ドラマによる大地震時のサバイバル術などを盛り込んだ特別広報番組を制作放送した(附属資料43)。また、地方公共団体では、防火教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道管等が寸断され、また、消防機関等の活動は著しく制限されることが予想される。このような状況下では、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識のもとに、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ、地域における自主的な防災活動の重要さが改めて認識されたところである。 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成14年4月1日現在では、全国3,241市区町村のうち、2,525市区町村で10万4,539の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、59.7となっている(附属資料28)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,966市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ1,336市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これに要した経費は平成13年度で合計40億4,624万円に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を創設し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図っているほか、財団法人自治総合センターではコミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、災害補償制度の充実、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による啓発を行うとともに、自主防災組織の活動拠点づくりを進めるため、防災基盤整備事業により、防災拠点施設の整備を促進している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人防火クラブは、日頃家庭における防火の分野では大きなウェイトを占める主婦等が火災予防の知識を修得し、地域全体の防火意識の高揚を図るとともに、万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な地域社会を作るため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っている。 阪神・淡路大震災においても、婦人防火クラブにより初期消火活動や避難所での炊き出し等が活発に行われた。 なお、平成14年4月1日現在、全国の組織数は、1万4,717団体、約230万人となっており、36道府県において都道府県単位で連絡協議会がつくられている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人防火クラブの活動内容の充実・強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 少年・少女を中心とした自主防災組織である少年消防クラブは、10歳以上15歳以下の少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すとともに、研究発表会、ポスター等の作成、実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために各地域で組織づくりが進められている。 消防庁では、関係機関とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成13年度は、特に優良なクラブ15団体、優良なクラブ31団体、及び優良な指導者8人を表彰した。 また、平成13年度も、表彰式と併せて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2002」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成14年5月1日現在の組織数は、6,042団体、約47万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした自主防災組織である幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図り、近い将来少年・少女を中心とした防災活動に参加できるための素地づくりのため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成されるもので、消防機関等の指導のもとに組織の育成が進められている。 なお、平成14年5月1日現在の組織数は、1万4,480団体、約121万人となっている。
婦人防火クラブ 婦人防火クラブは、主に家庭の主婦等の女性により構成された防火・防災組織です。女性が火災予防の知識を習得し、コンロやストーブ等の安全な使用方法の習得や、消火器等初期消火用具の使い方、通報連絡、避難要領等に習熟することにより、住宅における火災を防止し、併せて、地域の協力体制と連帯意識の高揚を図ることによって、恒久的な明るい平和な家庭づくり、安全な地域社会づくりを目指すことを目的としています。平成14年4月1日現在、全国各地に1万4,717のクラブが結成され、約230万人のクラブ員が活躍しています。 婦人防火クラブの活動内容は、各クラブによってさまざまですが、平常時にはおおむね次のようなものがあげられます。・初期消火訓練や救急講習会、総合防災訓練に参加し、知識と技術を習得する。・婦人防火・防災教室の開催、家庭の住宅防火診断の実施等を通じて、防火・防災意識の啓発を図る。・消防・防災施設等を見学し、防火・防災についての知識を習得する。・春、秋の全国火災予防運動、防災週間、救急の日等のイベントに参加してキャンペーン活動を行う。 婦人防火クラブは地域単位のクラブですが、複数の地域クラブによって市町村単位で連合組織である市町村婦人防火クラブ連合会を作っているところも多く、また36道府県(平成14年度)においては、これらの市町村婦人防火クラブ連合会が都道府県単位にまとまって、都道府県の連合組織である都道府県婦人防火クラブ連絡協議会が作られています。 さらに、都道府県婦人防火クラブ連絡協議会の全国的組織として全国婦人防火連合会が設置され、全国レベルでの研修活動などを実施しています。
地域防災の担い手をめざした中学教育の取組みと実践(東京都世田谷区立太子堂中学校) 太子堂地区は木造住宅が密集しているうえに道路幅も狭いため、消防車や救急車等が容易に通行できない状況にあり、「自主防災」が同地区の長年の課題となっていました。 こうした中で、太子堂中学校では、平成9年度から、中学生が地域防災の担い手となる日をめざして、「地域自主防災活動」に焦点を当てた防災教育に取り組んできました。 消防署及び消防団の指導のもと、市民防災組織に配置されたD級ポンプを使用し、全生徒及び教職員がD級ポンプ操法訓練や「普通救命講習」を実施し、実戦的な初期消火や応急手当の技能を身につけると同時に命の尊さや大切さを学んでいます。 また、災害時に避難所となる中学校で、小・中学校の児童・生徒が地域住民と一緒に「避難所体験サバイバルキャンプ」を行い、いざという時に助け合うために、小・中学生が地域の人の顔を覚えられるようにしています。 さらに中学校の生徒会が中心となってプロジェクトチームを作り、公園や広場づくりに対する提案を行う「防災街づくり学習」、阪神・淡路大震災時に避難所となった中学校の教師と生徒が一体となって不眠不休の支援活動を展開した体験談などの防災講演や防災ビデオ鑑賞を実施しています。 このように中学生を自主防災活動の中心に据えることにより、地域防災の担い手の一員として中学生のうちから自覚と責任感を持たせるとともに、地域に住むお年寄りなどの災害弱者を積極的に守ろうという、やさしさや思いやりの気持ちが生徒たちに芽生えるなど大きな効果を生んでいます。 なお、この活動は、中学生に対する様々な防災学習の試みが評価され、第6回防災まちづくり大賞総務大臣賞を受賞しています。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成14年4月1日現在、2,752組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものである。しかし、地震などの大規模災害が発生した際は、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られるならば、地域の自主防災体制の充実に大きな効果をもたらすものと考えられる。 消防庁では、企業(事業所の防災組織)の地域社会での防災活動への参加促進を図っているが、今後、事業所の地域での防災活動を一層高めるためには、事業所と地域社会との平常時からの協力関係の強化及び事業所の防災組織が参加・協力するに当たっての条件整備を進めていくことが必要である。
3 災害時のボランティア活動 被災地における多様なニーズに対応したきめ細かな防災対策を講じる上でボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることは、阪神・淡路大震災において改めて認識されたところであり、平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられた。また、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災とボランティアの日」(1月17日)の創設も行われている。 消防庁においては、災害救援ボランティアの研修カリキュラムを示すとともに、消防機関に研修の協力について要請を行っている。 また、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、共有すべき情報をデータベース化し「災害ボランティア・データバンク」として、インターネットを通じて公開している。 また、災害時の混乱した状況のもとで災害ボランティアの活動が円滑に行われるようにするために、あらかじめ、平常時から災害ボランティア団体と地方公共団体が災害発生時のそれぞれの役割を明確に定めておく必要があることから、災害ボランティア団体と地方公共団体の連携を推進するほか、平成14年においては「災害ボランティアの活動環境に関する検討懇談会」を開催して、災害時のボランティア活動の活性化と活用を支援するため、ボランティア団体やボランティアを希望する人に対する情報提供体制の強化、広域防災拠点を活用した研修・訓練の実施など、その活動環境整備の必要性について等の提言をいただいたところであり、各地方公共団体へもその成果を提供した。
第3節 災害に強い安全なまちづくり 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊、木造住宅密集地域での延焼、通信網や交通網の混乱、ライフラインの機能停止など大規模な被害が生じ、また、住民の避難所や防災活動の拠点などの整備が十分でないことが明らかとなった。また、その後も大規模な災害が続発し、災害発生時の住民の安全が確保できるように、災害への取組みを強化することが大きな課題となっている。 これらの教訓を踏まえ、消防防災活動に直結する防災基盤を整備するとともに、ハード・ソフトの両面から防災に配慮した「防災まちづくり」を推進し、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを進めていくことが必要である。
1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設や、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えた。また、その後も相次いで大規模な地震被害が発生し、地方公共団体における災害対応能力の向上が大きな課題となっている。そこで、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、 1)避難所となる公共公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど) 2)災害対策の拠点となる公共公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など) 3)不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 また、水道管、ガス管、港湾、地下鉄の耐震化についても単独事業への支援策が設けられている。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討委員会報告書」(平成14年2月、消防庁)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり拠点(以下「防災拠点」という。)となる公共施設等(例えば、社会福祉施設、避難所に指定されている学校施設・公民館等、災害対策本部等の庁舎、消防本部、警察本部等)の耐震改修の状況等は次のとおりである。 地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等は約18万7,400棟で、このうち約11万4,400棟(約61%)が昭和56年以前の耐震基準で建築されたものである。 この約11万4,400棟のうち耐震診断を実施した棟数は、約3万4,700棟(約30%)である。 耐震診断を実施した約3万4,700棟の建物をみると、そのうち約1万200棟(約29%)が「耐震性がある」と診断され、また、平成13年度末までに、約8,400棟(約24%)が耐震改修を終了しており、合計、約1万8,600棟(約54%)が耐震性が確保されている。 また、今後、平成17年度までに耐震改修を予定している棟数は、耐震診断を実施した約3万4,700棟のうち約4,900棟(約14%)となっている。 次の建築物については耐震性が確保されていると判断した場合、平成13年度末で、地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等の約18万7,400棟のうち約9万1,600棟(約49%)が耐震性が確保されていると考えられる。 ア 昭和56年以降の新耐震基準で建築された建築物(約7万3,000棟) イ 耐震診断の結果「耐震性能を有する。」と診断された建築物(約1万200棟) ウ 耐震改修済みの建築物(約8,400棟) また、平成17年度までの耐震改修予定の棟数(約4,900棟)を加えると、平成17年度末では、約9万6,500棟(約52%)が耐震性能が確保される見込みとなる(第3-3-1図)。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防施設等整備費補助金や防災基盤整備事業等により、消防車両や消防・防災ヘリコプター、防災情報通信施設、耐震性貯水槽等の整備を促進している。 中でも、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝達する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との間の情報連絡についても多角的な対策を講じている。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、併せて食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 さらに、住民の避難に必要な施設等については、避難地、避難路の整備のほか、トイレ等避難生活に必要な機能を持つよう避難施設の改修を促進している。 なお、地域防災計画上掲載されている災害危険区域については、地方債と地方交付税による財政措置が講じられている。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースを確保することは非常に重要であり、このスペースをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、防災基盤整備事業等によりその整備を促進している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。 ・「コミュニティ防災拠点」 おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難地等に活用される。 ・「地域防災拠点」 おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難地等に活用される。 ・「広域防災拠点」 都道府県に一又は数箇所設置され、消防防災に関する広域応援のベースキャンプや物資の集配基地、長期の避難地等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、防災無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティレベルの研修等に活用される防災センターから、日頃から防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。 なお、都市再生プロジェクトの一つとして、大都市圏における国及び地方公共団体の災害応急活動拠点としての「基幹的広域防災拠点」が整備されることになっており、これを中心とした広域防災拠点の連携等のあり方に関し、関係行政機関や学識経験者等で構成する検討会を設け、調査・検討を行っている。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。 さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有しており、こうした点を含め防災上の観点を、地方公共団体における地域づくりにより明確に取り入れ、地域の防災機能の向上を促進する必要がある。 また、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保など)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化と合わせた住民等への情報連絡機能の強化など、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことが必要である。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組みや連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組み、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。 消防庁では、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供などソフト面での支援をも含め、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを総合的に推進することとしている。
第4章 規制改革への対応 近年、国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっている。本章では、規制改革に関する政府の取組みとともに、規制改革に対する消防庁の対応について記述することとする。
1 規制改革推進3か年計画以前の取組み(1)規制緩和推進計画策定以前の取組み 平成5年9月の緊急経済対策閣僚会議決定「規制緩和等の実施について」、平成6年2月の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」、平成6年7月の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において、各種の規制緩和措置が盛り込まれ、それぞれ実施に移されてきた(第4-1表)。
(2)規制緩和推進計画の策定と対応 平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、規制緩和等が計画的に推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に61項目を計上し、平成13年度末までに、すべての項目の措置を行った(第4-2表)。				
(3)規制緩和推進3か年計画の策定と対応 平成10年3月31日には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、規制緩和等が一層推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に32項目を計上し、平成13年度末までに、計28項目の措置を行った(第4-3表)。		
2 規制改革推進3か年計画への取組み 平成13年度からの「規制改革推進3か年計画」の策定に当たり、消防庁としては、内外からの意見・要望等を踏まえつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から所管事務の見直しを行った。 これにより、平成13年3月30日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」においては、引火点が250度程度を超える引火性液体については、危険物から除外するとともに、引火点が100度程度から250度程度の引火性液体の危険物の貯蔵・取扱施設の技術基準の合理化を図ること、消防用機械器具の検定を行う指定検定機関の公益法人要件を撤廃すること等以下の14項目を計上した。 規制改革推進3か年計画に盛り込んだ事項 ・保安四法関係 ・引火点の高い液体の危険物からの除外 ・防火管理者の業務の外部委託 ・自動火災警報器に係る消防法と高圧ガス保安法の重複規制の撤廃 ・排煙設備に係る技術基準の性能規定化 ・消防法で規定する消火設備に係る技術基準の見直し ・危険物取扱者の実務経験要件の見直し ・危険物取扱者の資格の有効期間又は定期講習の義務付けの見直し ・危険性物質輸送時の運転要員の確保方策 ・給油取扱所における作業場の面積 ・危険物施設の保安検査 ・消防用機械器具の検定 ・タンクローリーに関する規制緩和 ・石油コンビナートの防災資機材の基準 さらに、平成14年3月29日に「規制改革推進3か年計画(改定)」が閣議決定され、以下の2項目が追加され、計16項目となった(第4-4表)。 ・使用停止命令の解除 ・燃料電池の消防設備非常電源としての使用		
3 構造改革特区制度への取組み 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日に、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部が内閣に設置された。 推進本部においては、平成14年9月に「構造改革特区推進のための基本方針」を決定し、構造改革特区推進のための取組み方針等を示した。これを受けて、推進本部は同年10月に、「構造改革特区推進のためのプログラム」を決定し、1)特区において実施することができる特例措置、及び2)全国において実施することが、時期・内容ともに明確な規制改革事項の以上2点について、明らかにしたところである。 消防庁としては、特区制度創設の趣旨に鑑みつつ、火災予防又は防災の観点からの安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。1)構造改革特区において実施することができる特例措置(第4-5表) ・農家民宿における消防用設備等に係る消防令の規定に対する柔軟な対応(通知の発出) ・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上のレイアウト規制等の見直し2)全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制事項(第4-6表) ・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和 ・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和 ・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設	
第5章 国際的課題への対応[国際協力・国際交流] 災害から生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災における国際協力・交流は、人道主義、国際社会の相互依存関係、環境保全等の観点から、必要性・緊急性の高い分野となっている。 また、近年の傾向として、開発途上諸国においては、人口の増大と都市への集中、産業活動の拡大、自然環境の変化等に伴い、火災をはじめ地震、風水害、土砂災害等により大きな災害が発生する危険性が高まっている。我が国では、過去における様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ね、ハード・ソフトの両面にわたり高度なシステムを整備していることから、積極的な国際社会への貢献が更に求められている。 このため、集団研修、専門家派遣など開発途上諸国への消防防災技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 開発途上諸国からの研修員受入れ(1)集団研修の実施 消防庁では、国際協力事業団を通じ開発途上諸国の消防防災職員を対象とした消防行政管理者研修、救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修を実施している。 消防行政管理者研修は、平成元年度から実施しているもので、消防行政管理者の養成に重点を置いた研修コースである。一方、消防に関する技術研修として、救急救助技術研修を昭和62年度から、消火技術研修を昭和63年度から、火災予防技術研修を平成2年度から実施している。平成13年度には、消防行政管理者研修においては8か国から8人(累計302人、消防行政集団研修(昭和45年から63年まで実施)を含む。)、救急救助技術研修については11か国から11人(累計117人)、消火技術研修については7か国から9人(累計123人)、火災予防技術研修については、5か国から6人(累計78人)を受け入れた。 また、集団研修のアフターケアのほか、消防防災分野における国際交流を幅広く展開するため、集団研修経験者を対象としたヒューマン・ネットワークづくりを進めている。
(2)個別研修の実施 消防庁では、(1)の集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修員の受入れを行っている。平成13年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中国幹部消防職員を消防大学校の予防科へ受け入れるとともに、各国大使館、国際協力事業団、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき各国からの消防防災関係者による消防庁への研修生の受入れを行った。
2 開発途上諸国への専門家派遣 消防庁は、国際協力事業団を通じ、開発途上諸国へ消防防災専門家の派遣を行っている。平成12年からは、マダガスカルに市民保護・防災・災害対策に関する技術援助を行うため、長期専門家(派遣期間が1年以上の専門家)を1名派遣している。さらに、平成13年度には、短期専門家(派遣期間が1年未満の専門家)として、セミナー講師を派遣した。 また、平成12年度から5年計画でタイにおいて進められている救急医療技術を移転するためのタイ外傷センタープロジェクトにおいて、救急搬送に係る専門家を派遣している。 そのほか、平成13年度には、フィリピンに消防訓練に関する技術援助を行うため、短期専門家を派遣した。
3 プロジェクト方式技術協力の実施 消防庁では、国際協力事業団を通じ、平成9年10月から平成14年9月まで中国北京市が設立する北京消防訓練センターに対し、「中国・北京消防訓練センタープロジェクト」を推進してきた。 本プロジェクトは、5年間で、7分野、16人の長期専門家と23人の短期専門家を北京市に派遣するとともに、北京市消防局から30人の研修員の受入れを行うほか、必要な機材の供与を行うことにより北京市における消防技術の向上を図ってきた。 また、平成14年8月から実施されている「カリブ・災害管理プロジェクト」に消防から地域防災計画の長期専門家1人を派遣している。 1、2及び3で述べた研修員の受入れや消防専門家の派遣をはじめとした開発途上諸国への国際協力は、各国における消防防災の発展に大きな成果を上げているところである。
4 国際交流(1)トップマネージャーセミナーの実施等 消防庁では、国際協力事業団を通じ、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、海外の消防防災行政に携わる幹部職員との交流セミナーを平成11年度及び平成12年度に実施した。 このほか、消防庁では海外の消防防災関係者との交流を適宜実施しており、平成13年度には、ベトナムから公安大臣等の訪問を受け入れ、意見交換、視察等を実施している。
(2)日韓消防交流の推進 日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会、2002年の「日韓国民交流年」等を踏まえた日韓消防行政セミナーの開催、消防庁幹部の関係学会への出席など、日韓消防の交流、連携・協力を推進している。
(3)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟(Federation of World Volunteer Firefighters Association)が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会(International Fire Chiefs Association of Asia)は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。平成14年7月24日から25日にかけて第22回総会が京都市において開催されており、我が国からも消防庁、消防機関等の代表が参画している。
[国際消防救助隊] 昭和60年11月14日(現地時間13日)に発生したコロンビアのネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際して、救助隊の派遣について意向打診が外務省から消防庁に対して行われた。この援助活動は実現には至らなかったが、消防庁では、こうした活動には国際協力の一環として積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service 略称“IRT-JF”愛称“愛ある手”)を整備した。その後、政府は外務省を中心に、海外で大災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月に「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布施行された。 この法律は、海外における大規模災害時に、被災国政府等の要請に応じて実施する総合的な国際緊急援助体制の整備を図ることを目的としたものであり、消防庁長官は、外務大臣からの協力要請及び協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなった。 国際緊急援助隊の一部を構成する国際消防救助隊は、世界のトップレベルの救助技術を有する救助隊として、これまで11回海外において救助活動や支援活動を行っている(第5-1表)。近年では、トルコ西部における地震災害や台湾地震災害において迅速に出動し、高度な資機材を用いて救出活動を行った。 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、平成13年度に登録消防本部・隊員数を40消防本部501人体制から62消防本部599人体制に拡充した。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制を更に強化することとしている。	
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成活動を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても昭和62年7月にはISO/TC21協議会を設置し、ISO対策の充実強化を図り積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成14年3月31日現在、47の規格が国際規格として定められている。 また、ISO/TC94/SC13(防護服)分科委員会において進められている消防隊用防護服等の規格策定作業についても、積極的に参加している。平成14年3月31日現在、22の規格が国際規格として定められている。
2 規格の国際化への対応 近年、WTO等における非関税障壁低減に関する包括的な取組みの中で、各国個別の基準・認証制度を国際整合化することの重要性が認識されてきた。そして、1995年1月にはWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効し、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。日本はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、また、平成13年には、ISO/TC21総会を千葉県の幕張メッセにおいて開催するとともに、多くの実験データを提供するなど国際規格の策定に積極的に貢献してきた。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、他の国々と連携を図りつつ引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全]1 ハロン消火剤等の使用抑制 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において指定され、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなったことにより、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、平成2年に消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を開催し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組み、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略と併せ、日本全体として取りまとめの上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどした。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガス種・設置方法について平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成14年1月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。今後もハロン1301を貴重な資源として捉え、クリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理のもとに使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクルを効率的かつ的確に行うことを目的として平成5年に設立されたハロンバンク推進協議会を活用して回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
2 消防用設備等における環境・省エネルギー対策の推進 近年の地球環境問題に関する社会情勢等から、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組みが求められている。 このため、消防庁では、平成11年度において、消防用設備等全般における環境・省エネルギー対策について調査研究を行ったほか、これを踏まえ、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の一環として、平成12年度から5年計画で消火器と防炎物品のリサイクルの推進に取り組んでいる。 また、環境問題への対応や省エネルギー等の観点から、天然ガス若しくは液化石油ガスを燃料とする内燃機関又はガスタービンを原動機とする自家発電設備が開発され、また、コージェネレーション等の常用電源としての自家発電設備が普及してきたことに対応して、平成13年3月に、消防用設備等の非常電源である自家発電設備について、常用電源との兼用等に係る技術基準の整備を行った。
第6章 消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、総合科学技術会議の定める科学技術基本計画及び消防庁に設置された消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 これらの研究・開発の推進の中心となっているのは、独立行政法人消防研究所である。 消防研究所は、昭和23年に設立されて以来、我が国における消防の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきたが、中央省庁等改革の一環として平成13年4月1日に独立行政法人消防研究所となった。 また、消防防災の研究・開発は、消防機関の研究部門等においても積極的に実施されている。 消防庁では、消防研究所との共催により、消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的に、消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文を募集し、優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を設け、消防機関等における研究・開発の推進を図っている。
[消防研究所における研究] 消防研究所では、我が国唯一の消防防災に関する総合的な研究機関として、基盤的な研究を継続的に実施するとともに(基盤研究)、社会的、行政的要請の高い課題については期限を定め、重点的に研究費を配分して研究を実施してきた(重点研究)。 独立行政法人化に当たり、消防研究所では、5年間の期間中に達成すべき具体的な目標が「独立行政法人消防研究所中期目標」として定められたが、その中で「災害対応への情報化の促進」、「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」、「消火・救急・救助活動の技術の高度化」、「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の四つの研究領域については重点的に研究を実施することとされている。中期目標では重点研究領域とは別に、「物質の燃焼現象」、「消火の理論と技術」、「救急・救助」等の研究分野における基盤的研究の充実を図ることとされており、平成13年度から新たに救急に関する研究にも取り組むこととした。さらに、独立行政法人化を契機に、より柔軟な研究ニーズへの対応を可能とするために研究部門を基盤研究部とプロジェクト研究部の2部制にしたほか、研究企画部を新設するなどの大幅な改組を実施した。 そのほか、外国の研究機関、国内の大学あるいは企業との共同研究をこれまで以上に積極的に進め、研究成果の活用に努めることなど、「業務運営の効率化」が目標とされている。
1 重点研究消防研究所で平成13年度に終了した重点研究は、次のとおりである。
(1)災害現場における消防活動を支援する情報システムの開発 平成11年度から災害現場での効率的情報収集が可能な携帯端末、輻輳の起こらないデジタル無線システム、被害情報及び災害時の防災資源情報等を総合的に把握して合理的な消防防災活動のための支援情報を創出伝達できるシステムの開発を行った。開発したシステムは、情報収集端末、車載型情報端末、消防防災通信システム、火災延焼シミュレーター、消防力最適運用支援システム、消防活動支援地理情報システムから構成されており、横須賀市をモデル地区とした原型システムを構築した。さらに、日本新生枠予算により、実用レベルのリアルタイム最適消防力運用システムを目指した実証システム試験を所沢市を対象として実施した。
(2)住宅内電気器具の火災感知への応用技術の確立 平成11年度からエアコンディショナーや空気清浄機などの機器に盛り込まれている煙センサー、匂いセンサー、温度センサー等の各種センサー及びマイクロコンピュータを活用して火災を発見することのできる技術を開発し、住宅向け並びに高齢者施設向けの火災感知機能付エアコンディショナー(住宅火災総合監視システム)を試作した。 平成13年度に消防研究所が実施した、その他の重点研究の概要は、以下に記すとおりである。 ○林野火災の発生危険度と拡大を予測するシステムの開発(平成13〜15年度(予定研究期間。以下同様)) オンライン気象データ、林野火災データ及び地形データベース等、IT技術革新により利用可能となった情報を活用して林野火災の発生危険度と林野火災拡大状況を予測するシミュレーションシステムを開発する。 ○中高層建物の上階延焼による被害軽減のための研究(平成11〜14年度) 中高層共同住宅火災の火災性状及び上階への延焼拡大性状を中規模模型実験等により明らかにし、上階延焼危険性の評価手法の確立を目指すとともに、延焼拡大防止対策、避難安全対策及び消防防災上の対策を提言する。なお、平成13年9月1日に発生した新宿歌舞伎町小規模雑居ビル火災を受け、実大階段室模型を用いた火災実験等の研究内容を緊急に追加し実施した(囲み記事p416参照)。 ○建物火災に関する研究成果を有効に活用する技術の研究(平成13〜15年度) 素材の燃焼性状、実大火災実験等の多様な研究成果情報を活用し、火災性状予測に基づく火災疑似体験、あるいは、インターネットを介した情報の共有化を可能とする共通データベース手続と仮想現実空間でのシミュレーション技術を開発する。 ○ウォーターミストの消火機構と有効な適用方法に関する研究(平成12〜14年度) 火災の火源規模等と、ウォーターミストの物理的性質、消火機構との関連について実験的・解析的に研究し、ウォーターミストにより消火できる火災の種類と規模を明らかにする。 ○原子力施設の消防防災技術に関する研究1 原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究(平成13〜15年度) 原子力施設における臨界事故や火災・爆発事故発生時に、要救助者を被ばくから守る防護壁ロボットと要救助者を牽引し安全な場所へ移動させる牽引ロボットの要素技術を開発する。 ○原子力施設の消防防災技術に関する研究2 原子力施設に利用される物質の消火困難性解明のための研究(平成13〜15年度) 原子力施設において使用されるアルカリ金属類について、小規模消火実験により消火残さの発火機構の解明を行い、中規模実験により粉末消火剤による消火性能と消火残さの発火抑制機能を評価する。 ○危険性判定試験方法の適正化に関する研究(平成13〜15年度) 消防法の危険物の判定試験法改正後に登場した新しい化学物質等、従前の判定法では危険性が十分評価しきれない物質について、当該新規物質の危険性の推定・把握ができる試験方法の修正を行う。 ○小規模タンクの地震時の安全性評価手法確立のための研究(平成12〜14年度) 地震時における小規模タンクの浮き上がり挙動を実験的及び解析的に調べ、タンク底部の浮き上がり現象に起因する底部破口のメカニズムを解明し、地震動に対する小規模タンクの強度評価手法を確立する。
2 基盤研究 重点研究のほか、消防防災に係る科学技術の基礎的・継続的研究として、平成13年度には次の28課題の基盤研究を行った。 ○ 文化財建造物等の防炎対策に関する研究 ○ 防火服の耐熱性能の評価に関する研究 ○ 熱可塑性プラスチックの溶融に伴う火炎広がりに関する研究 ○ 毛羽だった表面を伝ぱする火炎に関する研究 ○ 森林火災性状に関する基礎的研究 ○ リチウムとリチウム塩を用いた新機能材料の燃焼特性と消火に関する研究 ○ 酸化性物質の危険性評価試験の調和に関する研究 ○ ブレービー(BLEVE)の生起機構に関する研究 ○ 防火水槽の地震被害に関する研究 ○ 火災発生危険基準及び土壌水分と林野火災発生件数の関係に関する研究 ○ 地すべり土塊内の応力の測定法に関する研究 ○ 集積可燃物の延焼阻止剤による自己燃焼限界に関する研究 ○ 負触媒物質による火炎抑制の機構に関する研究 ○ 二酸化炭素消火剤に添加した鉄化合物の消火性能に関する研究 ○ 地下施設火災の数値シミュレーションに関する研究 ○ 地下施設の火災特性へ及ぼす深さの影響に関する基礎的研究 ○ 既存建築物の業種別火災リスクに関する研究 ○ 粒子画像計測法による火災・熱気流の流れ場の測定に関する実験 ○ AE法による構造部材の腐食モニタリング技術に関する基礎的研究 ○ 消防用ロボットに適した制御理論に関する研究 ○ マイクロ波が及ぼす感知器への影響に関する研究 ○ 長周期地震動のハザードマップの作成とリアルタイム予測システムの構築 ○ 地震時の応急対策のための情報収集・処理に関する研究-その3.震度情報に基づく地盤の増幅度特性 ○ 地震による建物被害把握のためのリモートセンシングデータのモデル化に関する研究 ○ 住家・危険物施設の被害評価のための短周期地震動の予測/推定に関する研究 ○ 地震火災リスクの評価手法に関する研究 ○ 住宅火災による死者発生リスクとその低減対策に関する研究 ○ 火災時に形成される電気ケーブル溶融痕の形態に関する研究
実大規模階段室模型による火災実験 多数の犠牲者が発生した、平成13年9月1日の新宿区歌舞伎町ビル火災を受けて、階段室という防火安全上重要な部位における火災性状を科学的に明らかにし、感知・消火等の防火安全対策の実証を行うために、独立行政法人消防研究所構内に5階層の実大規模階段室模型を建設し火災実験を実施しました。 実験は、火源の種類、位置、開口条件などの火災の条件が、発生するガスなど火災性状に与える影響を把握するための実験、階段室に設置された火災感知器の作動実験、及び消火設備の作動実験の大きく3種類に分類され、平成14年1月末から3月初旬にかけて行われました。その結果、一酸化炭素の発生が、閉鎖状態よりもむしろ開放状態で急速な燃焼が生じ供給空気が追いつかない状態で多量に発生する現象が確認されるなど、多くの貴重な知見が得られました。
3 外部競争的研究資金等による研究 消防研究所では消防防災の研究をより積極的に行うため、文部科学省原子力試験研究費、科学技術振興調整費等の外部競争的研究資金を活用して研究を行っている。平成13年度には、次の研究課題を外部競争的研究資金により実施した。 ○ 酸化性物質の危険性評価試験の調和に関する研究(基盤研究) ○ 原子力施設における火災安全に関する研究(重点研究) また、日本新生枠予算により「災害現場における消防活動を支援する情報システムの開発」の成果を実用レベルのリアルタイム最適消防力運用システムとして構築するための開発研究を「大規模災害時におけるリアルタイム最適消防力運用システムの開発」として実施した。
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防の科学技術に関する研究は、消防機関の研究部門においてもなされている。平成13年度において消防科学技術の研究部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、横浜市消防局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の8本部がある。 消防機関の研究部門の概要は第6-1表のとおりである。研究部門の定員は8機関で82人となっており、また、研究費は約200万円から6,200万円まで地方公共団体により大きな違いがあり、その総計は1億706万円となっている。 また、これらの研究部門は毎年1回持ち回りで「指定都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術について意見交換を行っている。
2 消防機関における研究の概要 ほとんどの研究機関で一般の火災研究を行っており、ついで危険物の判定等の試験研究、火災原因究明等の調査研究を行っている。消防装備の開発については、装備担当部門単独又は協力して行っている本部もある。 また、平成7年度から、多くの機関で地震時の出火防止対策及び消火等の地震対策研究が開始され、その後も続けられている。
[研究の協力と交流] 火災等災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、災害の情報や研究の成果等を相互に公開し研究を効率的に進める必要がある。また、大量の危険物等が国境を越えて流通しているので、それらの安全に関する国際規格を作成するためにも研究の国際的協力が必要である。このため、国際的な共同研究、研究者の交流等を積極的に推進することが不可欠である。 消防防災の研究は、消防機関を通じた社会的なニーズの把握と成果の反映が重要であるとともに、産学官の連携により推進することが効率化などの観点から重要である。 こうした趣旨を踏まえ、独立行政法人消防研究所においても、平成14年2月に、21世紀における地震被害軽減のための情報戦略及び技術的展望について、アジア・オセアニア地域を中心とする防災担当者、防災研究者間の情報交換の促進に貢献する目的で第1回消防研究所シンポジウム(地震災害軽減のための情報技術・戦略に関するアジア・オセアニアシンポジウム)を開催した。 さらに、独立行政法人消防研究所は、以下の国内外との共同研究等を実施している。
1 国際共同研究及び国際協力(1)国際共同研究 平成13年度は韓国釜慶大学等5か国、6機関と、酸化性固体の試験方法の適正化に関する国際共同研究を行った。
(2)外国研究者の受入れ 火災関連の外国人研究者を受け入れ、国際的に関心のある課題について協力して研究を行っている。平成13年度は南京理工大学及び中国科学技術大学から4人をJSPS(日本学術振興会)フェローとして受け入れ、固液相界面における酸化還元反応、自己反応性物質の熱分解特性、エネルギー物質の熱分解特性及び林野火災の発生危険度と拡大予測に関する研究を行った。
2 消防機関との協力 消防研究所は消防機関の協力を得て以下の共同研究等を行った。 ア 水/空気混合噴霧の消火性能についての研究(横浜市消防局) イ 防火衣の耐熱性能の評価に関する研究(京都市消防局)
3 大学及び民間企業等との共同研究及び協力 消防防災の研究をより効率的に進めるため、積極的に産学官の共同研究を進めている。消防用機器等の開発に当たっては民間企業を中心に、建築防火、消火、あるいは危険物に関連した基礎的研究については大学の研究室を中心に共同研究先を広く求めている。平成13年度は次の26件について共同研究を実施した。
(1)大学等との共同研究等 消防防災に関連した火災安全等の研究を行っている大学及び工業高等専門学校の研究室と、火災・燃焼・消火等に関連した以下の共同研究等を行った。 ア AE法による腐食モニタリング技術に関する基礎的研究(電気通信大学知能機械工学科) イ エネルギー物質の分解の激しさ評価試験方法についての研究(東京大学大学院新領域創成科学研究科) ウ ウォーターミスト消火の反応論的シミュレーション手法についての研究(青山学院大学理工学部機械創造工学科) エ 原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究(京都大学大学院情報学研究科) オ 金属ナトリウムの燃焼と消火に関する基礎的研究(静岡大学工学部) カ 破砕性地盤における地すべり運動機構及び運動範囲予測法の研究(金沢大学工学部及び京都大学防災研究所) キ 火炎中における消火剤の挙動に関する研究(筑波大学機能工学系) ク ウォーターミスト消火のシミュレーション手法に関する研究(東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻) ケ 乱流火災の微細構造に関する研究(東京都立高等工業専門学校機械工学科 古川純一教授) コ 林野火災の発生危険度と拡大を予測するシステムの開発(大分工業高等専門学校 小西忠司助教授) サ 地震による浮き上がりを伴う小規模タンクの強度に関する研究(高知工業高等専門学校機械工学科 吉田聖一教授)
(2)非営利団体との共同研究等 特殊法人等非営利団体と以下の共同研究等を行った。 ア ナトリウム燃焼挙動についての研究(核燃料サイクル開発機構) イ 地震災害予測のための大都市圏強震動シミュレータの開発についての研究(科学技術振興事業団)
(3)民間企業等との共同研究等 民間企業等と以下の共同研究等を行った。 ア 災害現場における消防活動を支援する情報システムの通信基礎技術に関する研究 イ 中高層建物における延焼性状に関する研究 ウ 水/空気混合噴霧の消火性能に関する研究 エ スプリンクラー等による消火効果を考慮した区画火災の燃焼特性の研究 オ 地震火災リスクの評価手法に関する研究 カ 防火服の耐熱性能の評価に関する研究 キ 原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究 ク ウォーターミストの消火性能に関する研究 ケ バーチャルリアリティ(VR)技術を用いた防火安全技術に関する研究 コ 住宅内電気器具の火災感知への応用技術の確立 サ 煙中での各種誘導用光源の視認性に関する研究 シ 防火衣の耐熱性能の評価に関する研究 ス AE法による工水タンク底部の腐食及び漏洩のモニタリング技術に関する研究
バーチャルリアリティー技術を用いた火災現場の仮想現実体験技術に関する研究 独立行政法人消防研究所では、これまでの多年にわたる実験研究により蓄積された火災性状に関する知見を最新の情報技術(IT)を活用してデータベース化するとともに、火災性状予測モデルの妥当性検証のための比較データとして、あるいは防火安全設計時の火災の入力データ等として有効活用を図る技術開発研究を実施しています。 研究者・技術者・消防吏員等が建物火災の性状に関する技術情報を容易に得られるだけでなく、火災性状等データベースを活用した火災性状予測モデルを用いて、仮想現実空間で火災の擬似体験が可能なシステムの開発も併せて実施しています。 将来的には、科学的根拠に裏付けされた実用的な教育、訓練に適用可能なシステム技術の開発につながることを目指した研究です。 本研究は、産学との共同研究として実施するほか、データを所有している試験研究機関、大学、企業からの参画を求めています。		
[消防研究所による研究成果の公開及び普及] 消防研究所では、研究成果を広く一般に公開するとともにその普及を図るため、以下の活動を行っている。
(1)全国消防技術者会議 昭和28年以来、毎年、全国の消防技術者を対象として「全国消防技術者会議」を開催している。平成13年度は、11月1日及び2日の2日間、第49回会議を開催し、約610人の参加のもと、研究発表、意見交換等を行った。
(2)消防防災研究講演会 消防研究所創立50周年に当たる平成9年度から、消防研究所の研究成果を広く普及すること等を目的として、「消防防災研究講演会」を開催している。平成13年度は、平成14年1月22日に第5回講演会を開催し、約90人の参加のもと、「消防用設備等の性能評価手法の構築に向けて」をテーマとして講演、討論等を行った。
(3)一般公開 科学技術週間の一環として消防研究所の一般公開を平成14年4月19日に開催し、全国の消防関係者、企業、大学等の研究機関、一般市民等約630人の参加を得た。
(4)消防研究所研究資料等の発行 消防研究所では、定期的に「消防研究所報告」、「消研輯報」及び「消防研究所年報」を発行しているほか、個々の研究課題ごとに報告書をとりまとめるなど、研究成果の普及に努めている。
[消防の科学技術研究の課題] 消防の科学技術は、その対象とする研究領域が著しく広いこと、また、災害の発生に伴う緊急的な研究ニーズの出現などが特徴的である。こうした消防の科学技術研究の特性に対応する上では、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携が求められるところである。さらに、環境に配慮した科学技術を火災安全の視点から支える研究領域についても、今後取り組んでいく必要性が高まっている。 消防の科学技術研究に関しても国際的な調和の達成と、国際貢献、特にアジア・オセアニア地域への貢献をより重視することが望まれている。 消防研究所は、平成13年4月1日から独立行政法人に移行した。独立行政法人消防研究所の発足に向けて総務省に独立行政法人評価委員会が設置され、消防研究所の中期目標、中期計画、業務実績の評価の体制が整えられた。 独立行政法人化後は、独立性を発揮して必要とされる研究課題に消防研究所がより一層柔軟な体制で対応することが期待されている一方、消防行政と研究との一体性を確保すること、消防の科学技術の研究を進める上での消防機関との連携をこれまで以上に推進させること、近年重要度の増している救急に関する研究に取り組むことなどが、消防研究所に課せられた課題である。
第7章 今後の消防防災行政の方向 我が国は、これまで幾多の災害を経験してきており、近年においても、新宿区歌舞伎町ビル火災、鳥取県西部地震や芸予地震等の地震災害、三宅島や有珠山における火山災害、JCOの原子力事故災害など、多種多様な火災・地震等の災害が発生している。 一方、救急については、高齢化の進展等に伴い増大する心筋梗塞や脳卒中等の搬送患者の救命率を一層高めるため、救急救命士の処置範囲の拡大が強く求められている。 また、平成7年の阪神・淡路大震災は約6,400人の犠牲者と約10兆円の物的損害をもたらしたが、今後、広域かつ激甚な被害が想定される大規模地震として、現在、東海地震がいつ発生してもおかしくない状況とされてきているほか、東南海・南海地震、南関東地域直下の地震などの発生のおそれが指摘されている。 さらに、米国の同時多発テロの発生などもあり、安全・安心に対する国民の関心は一層の高まりをみせている。 火災・災害の危険性が高い我が国においては、それらから国民の生命、身体及び財産を保護すること等を目的とする消防防災行政は、地域において経済や福祉、教育・文化などの充実・発展を図る上での基盤をなすものであり、国・地方を通じた最も基本的で、かつ、重要な責務の一つである。このような点を十分に踏まえながら、国と地方公共団体が、適切な役割分担のもとに国民が安全・安心に暮らすことができる地域社会を構築し、複雑多様化する火災・災害等に的確に対処していく必要がある。
I 火災予防対策等の推進1 小規模雑居ビル等に対する防火安全の確保 新宿区歌舞伎町ビル火災を契機として実施された全国的な立入検査の結果、9割を超える小規模雑居ビルにおいて何らかの消防法令違反が存在している状況が明らかとなった。このような状況を踏まえ、消防機関による立入検査及び措置命令に係る規定の整備、防火対象物定期点検報告制度の創設、罰則の強化等を内容とする消防法令の一部改正が行なわれた。 今後この改正の趣旨を踏まえ、本改正の内容が的確に運用されるよう、違反処理マニュアル・立入検査マニュアルを活用した研修の充実等により、消防法令違反の是正等の予防事務を担当する職員の資質向上、立入検査の重点化・効率化の徹底を図るとともに、消防機関による違反是正の徹底を推進する。また、創設された防火対象物定期点検報告制度について、その周知徹底に努めるとともに、防火対象物点検資格者の養成、管理権原者による的確な点検の実施等を推進し、その円滑な導入を図る。
2 住宅防火など火災予防対策の推進 住宅火災による死者が建物火災による死者の82.5%(放火自殺者を除く。)を占める現下の状況においては、住宅防火対策の充実が急務となっている。このため、平成13年4月1日に策定した新たな「住宅防火基本方針」に基づき、個人の責任において個々の住宅における防火安全の向上を図る一方、市町村、消防機関等の関係機関や婦人防火クラブなどのボランティア等との連携のもと、住宅用火災警報器等の設置促進等を通じた住宅のハード面における防火安全性能の向上と、住宅防火情報の提供や防火意識の更なる高揚によりソフト面における住宅の防火安全の向上を図る。 また、放火及び放火の疑いによる火災は、昭和60年以降、火災原因の第1位を占めており、年々増加する傾向にある。特に大都市圏においては火災原因の4割を超える都市もあり、深刻な社会問題となっている。このため、先進市町村の事例等をもとに放火防止対策要綱を策定するほか、関係機関との連携を強化して放火発生件数の低減と被害の局限化等の対策を、一層推進する。 さらに、近年、文化財建築物を旅館等多様な用途に使用することが増加しているが、文化財が代替できない貴重な財産であることを踏まえ、放火対策も視野に入れ、こうした文化財建築物の特性に応じた火災予防対策の充実を図る。
3 規制改革の理念に沿った安全対策の推進 近年の科学技術の進展等に応じ、燃料電池に代表される新たな技術が開発されている。また、平成14年3月に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」をはじめとして、経済社会の変化に対応し、生活者・消費者本位の経済社会システムの構築と経済の活性化を同時に実現させる観点から、行政の各分野について規制改革の積極的かつ抜本的な推進が求められている。これらを踏まえ、一般住宅における燃料電池の利用や、燃料電池自動車の燃料供給のための水素ステーションの給油取扱所への併設などに係る技術基準の策定等を検討するとともに、新技術の開発やコストの低減を図りやすくする観点から、消防用設備等及び危険物施設に関する技術基準等の性能規定化について検討する。特に、消防用設備等については、近年大規模な建築物や特殊な構造物が出現してきており、こうした状況を背景として、技術革新による新技術の導入、多様なニーズに対応した選択の幅の拡大、コスト縮減などの社会的要請に資するよう、消防用設備等の技術上の基準について性能規定化を推進していく必要がある。 また、危険物施設について、諸外国で導入が進んでいる新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行う。一方、消防防災業界の品質管理のグローバルスタンダード化に併せ、消防機器等に係る国際規格化を図るとともに、消防防災機器の供給及び維持管理等について、品質管理の向上を図るため、ISO9000の導入等を図る。
4 危険物施設等の安全確保 危険物施設等における事故件数は近年顕著な増加傾向を示しており、加えて、平成12年には、危険物に指定されていなかった物質(ヒドロキシルアミン)を原因とする大きな事故も発生している。これらに対処するため、事故の要因分析と対策の推進、新規危険性物質の早期把握とこれらを踏まえた対策の推進、消防機関の危険物災害に対する対応力強化等を推進する。 このうち、事故の要因分析と対策の推進に関しては、漏えい事故の防止を図る上で特に重要であると判明した地下埋設配管等の腐食防止対策、点検方法等保安対策に関して総合的な検証・検討を行うとともに、火災事故の防止を図る上で重点を置く必要があると考えられる一般取扱所、製造所等を中心に詳細な要因分析を行う。 また、新規危険性物質の早期把握と対策の推進に関しては、関係業界、消防機関等の関係者で構成する新規危険性物質の情報連絡のための体制を構築しており、これを活用して、新規危険性物質に係る保安対策の充実を図るための具体的な仕組みを確立していく。 さらに、消防機関の対応力の強化に関しては、重点的・効率的な立入検査・違反是正の実施等の安全対策の実施を推進するとともに、災害発生時に迅速かつ効果的な消防活動の展開を支える的確な情報の提供を図るために、危険物災害等情報支援システムについて、データの追加、消防活動要領の充実強化など機能の一層の充実を図る。
II 救急救命等の充実・高度化1 救急業務の高度化の推進 救急業務については、高齢化の進展等に伴い増大する心筋梗塞、脳卒中等による心肺機能停止患者の救命率を一層高めるため、医師の具体的な指示なしでの除細動、医師の具体的な指示のもとでの気管挿管及び薬剤投与を中心に審議した「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」における検討結果を踏まえて、救急救命士の処置範囲の拡大について早期実現を図る。 また、処置の高度化を推進し、傷病者の搬送途上における救命効果をより一層向上させるために、救急救命士の資格を有する救急隊員の養成等を推進する。さらに、救急救命士等の行う応急処置等の質を高めるため、救急救命士に対する医師による指示体制の充実、救急活動に対する医学的観点からの事後検証体制の充実、救急救命士の再教育体制の充実等メディカルコントロール体制の構築を積極的に推進する。 また、救急救命士等による高度な応急処置に必要な、高規格救急自動車及び高度救命処置用資器材等の整備を促進する。
2 応急手当の普及 救命効果の更なる向上を図るためには、救急救命士の処置範囲の拡大等による救急業務の高度化の推進にあわせて、救急事故発生時において、救急隊到着前に、バイスタンダー(現場に居合わせた人)による適切な心肺マッサージや人工呼吸などの応急手当の実施を確保することが重要である。このため、特に公衆の出入りする場所等に勤務する者を対象に応急手当の普及啓発を図るとともに、消防機関に救急要請があった際に、応急手当の指導を行う適切な口頭指導の実施体制のより一層の充実を図る。
3 救助業務及びヘリコプターの活用の推進 複雑多様化する災害事象に的確に対応し、被害を軽減することにより公共の安全の確保を図るため、救助隊員の教育訓練の充実強化や、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を推進する。また、救助技術の高度化を図るとともに、消防防災ロボットの活用についても検討を進める。 高速で機動性を持つ消防・防災ヘリコプターを救急・救助業務の充実、高度化に一層役立てるため、ヘリコプター等の活用の全国的展開と円滑な実施を推進する。
III 大規模災害等への対応1 大規模災害対策の充実 大規模地震対策の推進については、東海地震について、平成14年4月、地震防災対策強化地域の見直しの結果、対象地域の拡大が行われており、東南海・南海地震については、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づき、今後「地震防災対策推進地域」の指定や「地震防災対策推進計画」等の策定が行われることとなっている。現在、中央防災会議の専門調査会において、それぞれの地震による被害想定、対策の現状評価、今後の対策のあり方等について調査検討がなされているところであるが、これら大規模地震は、極めて広範囲にわたり甚大な被害をもたらすと想定される。 こうした状況を踏まえ、東海地震については、いつ発生してもおかしくないとされていることから、強化地域の拡大に応じた対策の充実等を図るとともに、東南海・南海地震については、地域防災計画の見直しや消防防災体制の充実等を促進する。また、これらの地震に係る広域緊急対応計画、受援計画、都道府県相互間地域防災計画のあり方等について検討を進める。 さらに、耐震性貯水槽等の整備促進を図るとともに、学校等災害時に避難所となる施設、庁舎等災害対策の拠点となる施設等の耐震改修を進めるため、地方公共団体における耐震化計画に基づく事業の促進を図る。 林野火災等の広域的な災害発生時には、初期段階におけるヘリコプターの積極的な投入による情報収集や空中消火活動の展開、関係機関の的確な情報共有など、広域的な応援対応体制の整備が重要である。このため、林野火災が多発する都道府県をモデル指定し、森林保全機関と消防機関との協力のあり方や近隣都道府県の消防・防災ヘリコプターの早期かつ大量投入による効果を検証する。
2 特殊災害対策の充実 茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故等にみられるように、原子力施設や石油コンビナート等の特殊な施設で発生する災害は、深刻な被害をもたらす可能性があり、また、消防活動に際して特別の対策が必要である。 このため、原子力災害について、地域防災計画作成マニュアルの見直し、「原子力防災訓練マニュアル」・「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」の新たな作成等対策の充実強化を図る。 石油コンビナート災害対策については、適切な応急対応に資する地域情報管理システムの充実等により防災体制の強化を図るほか、構造改革特区等として特例措置を講ずることができるとした工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上のレイアウト規制に関しては、施設地区の基準、特定通路の幅員等に係る特例措置については構造改革特区として、また、多品種・少量生産プラント等の設置を可能とする施設地区の区分、地区要件に係る特例措置については全国的に実施するものとして、それぞれ現行基準により担保されている安全性が十分に確保されるかについて検証等を行い、その結果に基づいて適切に対処する。 また、大深度地下施設や原子力施設等の消防活動が困難な空間において、消防隊員の状況の表示機能、有毒ガス等の環境状態表示機能、現場指揮本部からの指示命令に対する応答機能等を搭載した消防活動支援情報システムの開発を引き続き推進する。
3 テロ災害対策の充実 平成13年9月の米国における同時多発テロや炭疽菌事件を契機に、政府全体としても生物化学テロ対策を中心に更に抜本的な対策の強化を図っているところであるが、特に、NBC(核、生物、化学)テロについては、消防活動の際、特殊な資機材や防災の訓練が必要であるほか、地方公共団体における対応体制の整備が必要である。 このため、地方公共団体における防災・危機管理部門と関係機関の連携を強化するとともに、消防大学校における危機管理教育等の訓練体制の充実を図る。また、NBCテロに対応するための消防活動用資機材について、その性能基準等について関係者と連携を図りながら、整備・開発を推進していく。
4 武力攻撃事態における国民保護のあり方の検討 武力攻撃事態対処法案等が国会で継続審議されている状況等を踏まえ、今後整備が想定される国民の保護のための法制における警報伝達や避難対策、消防活動等住民の安全確保のための対策のあり方等について検討を進める。
IV 防災・危機管理に関わる組織、人材、情報通信基盤の整備・充実1 地方公共団体の防災・危機管理に係る組織体制の整備の推進 阪神・淡路大震災等近年の各種災害の教訓を踏まえ、地方公共団体が大規模災害に適切に対応できる防災体制を確立する観点から、24時間対応が可能で現場経験が豊富な消防機関を中心にした防災担当部局との組織の一元化や、首長等を補佐し、各部局を統括又は調整する役割を担う危機管理専任スタッフを設けるなどの、防災・危機管理組織の構築を推進する。また、組織的計画的な災害対応を行うことが困難な小規模市町村に対する、都道府県による支援体制の整備を推進する。さらに、地方公共団体による自らの地域の災害対応力の評価を推進するとともに、住民との情報の共有化を図ることにより、地域防災計画の作成、実施・運用、チェック等防災評価、見直しを継続的に実施する防災マネジメントシステムを構築する。
2 消防防災に係る教育・研修体制の構築等 防災・危機管理体制を強化するためには、人材の育成が極めて重要であり、特に、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、消防・防災担当職員の実践的対応力の向上を図るとともに、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の向上を図ることが求められている。 このため、消防防災・危機管理についての教育・研修体制を充実強化するため、首長等を対象とする危機管理トップマネジメントセミナーの開催等を、各消防学校と連携しつつ消防大学校を中心に行うとともに、e-ラーニングシステム(ITを活用した教育研修)等を活用した住民、自主防災組織、地方公共団体職員、消防職団員等に対する消防防災に係る教育・研修体制の構築を図る。 また、国・地方間の人事交流や海外派遣等を推進することにより、防災面での専門的な知識と経験を有する人材を育成していく。
3 IT革命に対応した消防防災分野における情報化の促進 迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、情報を的確に収集、伝達できる体制を構築しておくことが必要である。政府全体としても、「e-Japan重点計画2002」、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」等において、国、地方公共団体、住民間での防災情報の共有化、防災等の公共分野のIT化の加速等の必要性が指摘されている。 これらを踏まえ、各種情報通信システムに係る全国的な標準化、共通化を推進するとともに、広域的な整備等を通じ、効率性を確保しつつ、情報共有のための基盤を整備していくことが必要である。このような観点を踏まえつつ、消防救急車両の動態管理、画像情報及び心電図等のデータ通信、秘匿性の確保などが可能となる消防救急無線などのデジタル化を進めるとともに、テロップなどの文字情報や音声・データによる一定の双方向の情報伝達が可能となる同報系(住民連絡用)防災行政無線の整備促進を図るほか、衛星通信の次世代化、災害時の通信ルートの確保につながる多ルート化等の情報通信ネットワークの整備等を積極的に推進し、国・地方公共団体・住民を通じた防災情報の共有化等を計画的に進める。 また、現在、政府としては電子政府、電子自治体化を推進しているところであるが、消防防災分野においても、国に対する申請・届出等手続については平成15年度まで(一部については平成14年度中)にオンライン化を図り、また、地方公共団体に対する申請・届出等の手続については平成15年度までにオンライン化の実施方策を提示する。
4 消防防災に係る科学技術の高度化 災害の複雑多様化に対し、災害防止や被害軽減、原因究明等に関して科学技術が果たす役割は一層重要になっており、また、科学技術の発展により、消防防災活動に活用できる科学技術は広範化、高度化している。そこで、災害対応等のための各種情報システムの開発及び高度化、消火・救急・救助活動に係る技術の高度化等を図るため、情報機器、防災資機材、消防用設備等に係る科学技術について、独立行政法人消防研究所とも連携しつつ、重点的かつ計画的な研究開発を推進する。 また、こうした研究を行う組織等を対象として、意欲ある研究者の優れた提案に基づいて実施される研究開発に対して重点的に資金を配分する競争的研究資金制度を設けることなどにより、産学官の連携の下、競争的で活性化された研究開発環境を実現し、我が国の消防防災科学技術の大幅な向上と裾野の拡大を図るとともに、その成果の地方公共団体等への普及を図る。
V 自治体消防の強化と広域緊急対応体制の整備1 消防力の整備充実 消防の施設及び設備については、近年複雑多様化する各種災害や、阪神・淡路大震災のような大規模災害に対応し、効果的な消防活動を確保するため、より一層の充実強化を図る必要がある。このため、今後は特に、消防・防災ヘリコプター、高規格救急自動車や、耐震性貯水槽等の消防水利の整備、消防機関の通信体制の強化等を推進する。これらの整備に要する消防財源については、国民の生命、身体、財産を守るために必要であることにかんがみ、国庫補助金の確保をはじめとして、その充実に努める。 また、今日の消防・救急・予防業務等に対する住民のニーズの高度化や、複雑多様化する災害に的確に対応していくためには、消防本部の体制の充実強化が必要である。消防の対応力の強化を図るため、市町村合併の推進との整合性を確保しつつ、小規模消防本部の広域再編を引き続き進めるとともに、一部事務組合など事務の共同処理方式の活用を図る。 さらに、消防職員が災害活動等から受ける、いわゆる「惨事ストレス」対策の充実や、消防職団員の対応力向上のための教育が提供できる仕組みの整備など、消防職員が安全に勤務できる環境づくりに努める。 消防力の基準については、市町村の消防力整備に係る指針としての性格を踏まえつつ、社会環境の変化に対応した必要な見直しを行うとともに、住民ニーズに立脚した機能面等からの技術的基準として構成するという基本方針のもとに、内容の向上を図っていく。
2 消防団の充実強化等 消防団は、地域社会のニーズに対応して、火災対応はもとより、幅広い活動を行っており、特に、地域密着性や要員動員力を活かした大規模災害時の活動は、住民からも高い評価を受けている。一方、消防団は、就業構造の変化、国民意識の変容等の社会環境の変化に伴い、消防団員数の減少、被雇用者である団員(サラリーマン団員)の増加等に直面している。 今後、消防団が社会環境の変化などに的確に対応しながら、地域社会の要請に応えていけるようにするため、引き続き、消防団の充実強化を推進するための方策を講じる。特に、サラリーマン団員や女性消防団員、若手・中堅団員を念頭に、活動環境の整備を図っていく。 また、地域の災害対応力の向上を図るため、自主防災組織、婦人防火クラブ、災害ボランティア等の活動を支援するとともに、企業や事業所が地域の防災活動に貢献できる仕組みの構築を促進する。
3 通常の消防防災事務に係る執行体制の強化 平常時や通常想定される災害時における消防防災事務、いわば恒常的に処理が要求される事務について、これを充実強化するために、市町村が選択可能な執行体制を構築すべく、多様な事務処理方式の導入を図っていく。 市町村の消防責任の原則を基本的に維持しながら、市町村が、自らの判断のもと、他の主体に対し、事務の執行を委ねたり、協力を求めるなどの方策の展開を促進していく。 現在、応援協定のほか、隣接する比較的規模が大きい市町村への事務の全部委託などの方法が活用されている。 今後は、事務の一部について、同一都道府県内の指定都市や中核市等に対し事務処理を委託する方策などを、具体的に検討していく。また、その際、地域事情によっては都道府県が特例的に消防事務の一部を処理できるよう検討する。
4 大規模・特殊災害等の発生時における国及び都道府県の役割の充実強化 現在、大規模・特殊災害時等において、国は、消防の広域応援のための措置要求等の権限を有するにすぎない。 このため、運用上設けている緊急消防援助隊について、その位置付けやこれに対する国の役割を、法的に明確化し、充実する方向で検討していく。 このほか、大規模火災や複雑な要因による火災について、国が主体的な判断により、火災原因調査を実施できるよう、検討を進める。 また、都道府県が、広域的な観点からの指示、非常事態時における指示等、付与された権限を適切に行使できるよう方策を講じていく。 これに加えて、高速性・機動性を有するヘリコプターについては、都道府県保有分を含めた活用に取り組むとともに、消火、救急救助等の活動を、都道府県が行う根拠の明確化を図っていく。