はじめに

 我が国の消防は、昭和23年に地域に密着した自治体消防として発足して以来、本年で55年が経過し、この間、関係者の努力の積重ねにより、制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民の安全の確保に大きな役割を果たしてきた。
 特に、本年においては、東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震などの発生が懸念されるなか、大規模・特殊災害時における全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化を図るための緊急消防援助隊の法定化と充実、火災原因調査の強化などを推進するとともに、引き続き、地域住民や企業など幅広い地域社会との連携のもとに、消防本部・消防団を中心とする総合的な消防防災体制の整備を進めてきている。
 しかしながら、近年、社会経済情勢の変化の中で、災害や事故の態様は複雑多様化の傾向を強めてきており、特に本年においては宮城県北部地震、北海道十勝沖地震、九州地方の集中豪雨、台風に伴う風水害等の自然災害や大きな企業災害の続発など、全国各地で住民の安全・安心を脅かす災害等が相次いで発生した。
 また、現在、有事における国民保護法制の策定に向けて内閣官房を中心に具体的な検討が進められているが、武力攻撃災害に対処するために、国民に身近な地方公共団体や消防に期待される役割は重要と考えられる。
 こうした中で、災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務は、ますます大きなものとなってきており、今後とも消防防災全般にわたる施策を強力に展開し、国民の安全確保、安心して暮らせる地域づくりに全力を挙げて取り組んでいく必要がある。
 平成15年版の消防白書においては、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説した。
 特に、特集として「消防組織法・消防法の改正と新たな消防行政の展開」と題し、本年6月に成立した消防組織法及び消防法のポイントを概説するとともに、緊急消防援助隊の充実・強化をはじめ今後の消防防災体制の整備・強化策や地方公共団体及び消防関係者に期待される役割等について記述した。
 また、消防庁と厚生労働省との共同で開催した「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」が、昨年12月に取りまとめた報告書を踏まえて、本年4月から実施された除細動、来年7月を目途に実施される気管挿管、早期の実施に向けてドクターカーによる検証等が進められている薬剤投与、これらの前提となるメディカルコントロール体制の整備などについて、これまでの経過と現在の取り組み状況等を中心に、緊急報告Iとして記述した。
 さらに、本年、全国各地で頻発した企業の産業施設での火災事故等を踏まえ、これらの企業災害の状況と今後の産業事故防災体制の構築に向けた取組み、現在の具体的な検討の方向などについて、緊急報告IIとして記述した。
 この白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民各位の認識と理解を更に深め、また、安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域住民、企業等をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものである。

   平成15年12月


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