はじめに 我が国の消防は、昭和23年に地域に密着した自治体消防として発足して以来、本年で55年が経過し、この間、関係者の努力の積重ねにより、制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民の安全の確保に大きな役割を果たしてきた。 特に、本年においては、東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震などの発生が懸念されるなか、大規模・特殊災害時における全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化を図るための緊急消防援助隊の法定化と充実、火災原因調査の強化などを推進するとともに、引き続き、地域住民や企業など幅広い地域社会との連携のもとに、消防本部・消防団を中心とする総合的な消防防災体制の整備を進めてきている。 しかしながら、近年、社会経済情勢の変化の中で、災害や事故の態様は複雑多様化の傾向を強めてきており、特に本年においては宮城県北部地震、北海道十勝沖地震、九州地方の集中豪雨、台風に伴う風水害等の自然災害や大きな企業災害の続発など、全国各地で住民の安全・安心を脅かす災害等が相次いで発生した。 また、現在、有事における国民保護法制の策定に向けて内閣官房を中心に具体的な検討が進められているが、武力攻撃災害に対処するために、国民に身近な地方公共団体や消防に期待される役割は重要と考えられる。 こうした中で、災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務は、ますます大きなものとなってきており、今後とも消防防災全般にわたる施策を強力に展開し、国民の安全確保、安心して暮らせる地域づくりに全力を挙げて取り組んでいく必要がある。 平成15年版の消防白書においては、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説した。 特に、特集として「消防組織法・消防法の改正と新たな消防行政の展開」と題し、本年6月に成立した消防組織法及び消防法のポイントを概説するとともに、緊急消防援助隊の充実・強化をはじめ今後の消防防災体制の整備・強化策や地方公共団体及び消防関係者に期待される役割等について記述した。 また、消防庁と厚生労働省との共同で開催した「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」が、昨年12月に取りまとめた報告書を踏まえて、本年4月から実施された除細動、来年7月を目途に実施される気管挿管、早期の実施に向けてドクターカーによる検証等が進められている薬剤投与、これらの前提となるメディカルコントロール体制の整備などについて、これまでの経過と現在の取り組み状況等を中心に、緊急報告Iとして記述した。 さらに、本年、全国各地で頻発した企業の産業施設での火災事故等を踏まえ、これらの企業災害の状況と今後の産業事故防災体制の構築に向けた取組み、現在の具体的な検討の方向などについて、緊急報告IIとして記述した。 この白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民各位の認識と理解を更に深め、また、安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域住民、企業等をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものである。   平成15年12月
特集 消防組織法・消防法の改正と新たな消防行政の展開1 はじめに〜法改正の転機としての意義 「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」が、本年6月に成立し、一部は既に施行されている。昨年3月来の「新時代にふさわしい常備消防体制の在り方研究会」における議論や、10月の地方分権改革推進会議の意見、12月の消防審議会答申などを踏まえ、今回、大規模・特殊災害時における全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化をはじめとして、現下の社会環境への対応が図られ、消防防災行政の歩みの中で、新たな一歩が踏み出された。 戦後改革の一環としての消防組織法・消防法の施行により、消防は警察行政から切り離され、市町村の消防責任の原則が確立した。爾来、現場の活動は市町村が担うこととされ、国(消防庁)は、これに対して、消防制度に係る企画立案を主とし、助言・指導・調整の役割を果たしてきたものである。 これまで災害対策上の大きな制度改正は、大規模災害による被害を受け、その反省の上に立って、推進されてきた。伊勢湾台風(昭和34年)を受けた災害対策基本法の制定、新潟地震(昭和39年)を受けた消防組織法改正(消防庁長官による応援措置要求の創設)、阪神・淡路大震災(平成7年)を受けた災害対策基本法改正(緊急災害対策本部の設置要件の変更・対策本部長の指定行政機関に対する指示の創設など)や消防組織法改正(消防庁長官による応援措置要求に係る手続の迅速・適正化)などが、これに該当する。 今回の改正では、消防が防除・被害軽減に立ち向かわなければならない災害の規模・態様が、被害予測の深まりや社会環境の変化に伴い、様相を変えつつあることを踏まえ、大規模・特殊災害時において、市町村段階で対応しきれない場合、全国的観点から国が対応する必要を認め、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、制度的枠組みを変更した。 本特集では、今回の改正事項に関する要点を概説した上で、今後の体制整備や現場における運用上の課題をはじめとして、地方公共団体や消防関係者に期待される役割、新制度による社会的な効果などを紹介する。
2 消防組織法の改正(1)基本的な姿勢〜市町村消防の補完の仕組み〜 今回の改正では、市町村消防の原則を基本的に維持した上で、消防需要の複雑・高度化・多様化の状況を踏まえながら、大規模災害や特殊災害対策など、市町村消防のみでは、迅速・的確な対応を期することが難しい課題の生起も想定しながら、国や都道府県に責任を付与するという考え方に立っている。事務の基礎的な考え方は活かしつつ、必要に応じ、広域的な対応を図ったものである。
(2)大規模及び特殊災害時における全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化ア 背景・考え方 大規模災害に際しては被災地の市町村ごとの対応にとどまらず、広域的な対応が必要となる。また、原子力災害や危険物災害、毒性物質の発散などの特殊災害ともなれば、専門の知識・能力・経験に基づく特別の対応が求められる。これらの大規模・特殊災害が発生した場合に適切に対処し被害を最小限度にとどめるためには、市町村、都道府県、国がそれぞれの機能を的確に担っていくべきである。 これまでも、新潟地震や阪神・淡路大震災の都度、こうした考え方を踏まえた仕組みが整備・改善されてきた。近年では、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、南関東地域直下の地震等の切迫性やNBCテロ災害発生の危険性までが指摘されるに至っている。これらの阪神・淡路大震災をも上回る規模・態様の災害についても、ひとたび発生すれば、消防機関の出動が必要となる。今回は、これらの災害に対する緊急対応を充実・強化するため、新たな枠組みの導入が図られている(第1図を参照)。イ 消防庁長官による「緊急消防援助隊」に対する出動の指示の創設 阪神・淡路大震災の教訓にかんがみ、消防庁長官の措置の求めを受けて、消防機関が迅速・効果的に対応できるよう、消防庁の要綱により緊急消防援助隊が設けられた。今回は、この援助隊を、法律において、明確に位置付けるとともに、大規模な災害で2以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害等の発生時には、消防庁長官は、援助隊の出動のため必要な措置を「指示」するものとし、指示を受けた地方公共団体の側には、出動すべき法的拘束力が生じることとした。 これにより、被災地外からの消防力の投入責任を国が負うものであり、指示を受けた出動活動により増加し、新たに必要となる費用については、国庫負担を導入している。ウ 緊急消防援助隊に係る基本計画の策定と国の財政措置 緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどう配備・充足するかについて、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」を策定(変更)することとしている。計画には、援助隊を構成する消防隊の編成と装備の基準、登録目標数及び車両資機材等の年次整備計画等が規定される予定である。 援助隊に関しては、全国的観点からの対応という国の責任を踏まえ、法律上、計画に基づく施設整備については、国が補助する旨、明らかにしている。地方公共団体が登録する部隊が一定の能力水準を確保できるよう、措置を講じたものである。エ 緊急消防援助隊に係る登録・協力手続 援助隊は、都道府県知事・市町村長の申請に基づき、消防庁長官が人員・施設を登録するものとしている。申請に際しては、区域内の災害の発生状況と他の地域への出動に抽出された後の消防力を総合的に勘案した上で、拠出可能な人員・施設の規模・内容が決定される。なお、消防庁長官が、登録について、地方公共団体に協力を求める手続も設けられている。オ 緊急消防援助隊に係る情報収集・伝達体制の整備 阪神・淡路大震災の際、全国の多数の消防本部から応援部隊が被災地に集結したが、無線の輻輳・混信が発生し、消防活動に支障が見られた。 この教訓をもとに、これまで、アナログ無線に係る全国共通波の増設等の対策が講ぜられたが、今後は、消防救急無線のデジタル化を推進していく。これらを踏まえて、今回の改正において、緊急消防援助隊の出動時の無線運用基準をはじめとする消防の応援等に関する情報通信システムの整備・運用のため必要な事項について、消防庁長官が定めることとされた。カ 今後の課題と地方公共団体に対する期待 以上のように、法令上の仕組みは整ったが、国においては、基本計画に基づき、大規模災害や特殊災害に的確に対処するため、都道府県及び市町村の協力を得ながら、必要な登録部隊数を確保するとともに、登録された部隊の装備及び教育訓練の充実を進めることが重要である。 また、東海地震については、本年5月に「東海地震対策大綱」が、7月には「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」の修正及び「東海地震緊急対策方針」の閣議決定が行われたところであり、東南海・南海地震についても、本年中には、昨年成立した「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づく推進地域が指定される予定であるなど、政府全体としての大規模地震対策推進の動きが進んでいる。このほかにも、南関東地域直下の地震など、切迫性が指摘されている地震は多く、これらに対する具体的な緊急消防援助隊の運用計画の作成や、図上訓練等を通じてその実効性を高めていくことが必要である。さらに、NBC災害など特殊災害に対する教育訓練の充実も不可欠である。 都道府県には、自らの航空消防隊の緊急消防援助隊としての登録が期待されるほか、当該都道府県内の緊急消防援助隊の出動に当たっての連絡調整や応援を受ける場合の受援計画の作成が求められる。 市町村においては、緊急消防援助隊への登録・参画が期待されるほか、日頃からその装備・教育訓練の充実を図る必要がある。緊急消防援助隊の部隊も、出動した先の被災地においては、地元の市町村長の指揮の下、行動することになる。このため、市町村には、大規模・特殊災害時における多くの応援部隊の受入れ等を想定した指揮能力の向上が求められる。
(3)都道府県によるヘリコプターを使用した市町村支援の導入ア 背景・考え方 近年、林野火災の消火や山間・離島地域における救急・救助・捜索活動をはじめとして、消防活動を実施するに際して、ヘリコプターを用いる機会が増加している。ヘリコプターは、機動性に優れる反面、その整備運用に多額の経費を要し、一般の市町村の財政力をもっては対応が困難であること、また、広域的な活動能力を有し、相当数の市町村にわたる活用が効率的なことなどから、都道府県がヘリコプターを使用した消防活動を行えることとする必要性が指摘されてきた。 現在、全国には68機の消防防災ヘリコプターが配備されているが、そのうち41機は37道県が保有しており、実態が先行していた。 これまでは、都道府県がヘリコプターを用いて消防活動を実施するにつき、複数の市町村職員が都道府県有ヘリコプターを使用して、消防業務を行うとの法的構成がとられてきた。今回、責任の所在の明確化などを図る観点から、都道府県が、市町村長の要請に応じ、航空機を用いて市町村の消防を支援できる明確な根拠を設けることとした。 なお、改正後も、事務を実施するかどうかは、区域内の消防需要を踏まえ、引き続き都道府県が主体的に判断すべきである。イ 手続・現場の活動など 消防の支援に関して、都道府県知事・市町村長間で事前に協定を締結する。円滑・迅速な対応に支障を来さないためには、あらかじめ十分な調整の下、要請要件、手続、経費負担などについて定める必要がある。 都道府県の航空消防隊が出動した場合、受援市町村の消防機関と密接な連携の下に行動することにより、支援効果を発揮することとしている。ウ 今後の課題と地方公共団体に対する期待 今回の改正を踏まえ、都道府県・市町村は、従来に増して、消防活動の中でヘリコプターを積極的に活用する姿勢が求められる。 ヘリコプターの特性を活かし、高速道路上での事故に対する救急、ドクターヘリ的運用など、新たな展開が期待される。ヘリ救急の一層の拡大を図るため、積極的な出動を促進するとともに、救急救命士等の同乗による処置内容の高度化などを講じ、救命率の向上を図る必要がある。 また、宮城県北部地震や十勝沖地震においては、消防防災ヘリコプターが出動し、被災地域の映像配信などの情報収集に成果を挙げたが、全国をカバーする体制の構築のため、テレビ電送システム・可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の普及を通じた、情報収集力の強化が必要となる。さらに、林野火災等に対する空中消火を円滑に実施するため、離着陸場や採水場所の整備・確保を進めるなど、災害時への備えを充実することも重要である。 都道府県の航空消防隊に関しては、消防本部所有分のヘリコプターと合わせ、全機について、(2)の緊急消防援助隊として登録され、大規模災害時等には、一体となってその役割を果たすことが期待される。
(4)自主防災組織への教育訓練機会の提供 今回の改正では、大規模災害等に対処するための行政の体制を整えるものの((2)を参照)、これらの「公助」の仕組みだけでは限界がある。ひとたび災害が発生した場合に、住民がお互いに助け合う「共助」「自助」の仕掛けとして、我が国独特の地縁に根ざす自主防災組織の活動の強化を図っていくことが有効である。 今回、消防審議会の答申に基づき、自主性を本質とする組織の性格を尊重しつつ、行政の側で講じ得る対応として、国及び地方公共団体に自主防災組織に対する教育訓練機会の提供を努力義務として課すこととした。 これを受けて、消防庁では、消防大学校において、市町村職員や消防職団員が自主防災組織のリーダーを教育指導する方法について、調査研究を行うこととしている。また、その成果の普及を目的として、講習会を実施することとしている。さらに、自主防災組織のメンバー等を対象としたインターネットによる防災・危機管理教育(防災・危機管理e-カレッジ)については、16年2月を目途に立ち上げを図るなど、積極的に取り組んでいる。
(5)常備消防の設置義務制度の廃止 消防本部・消防署を置かなければならない市町村の政令指定を廃止している。既に98%超が常備化しており、制度の目的は達せられつつあり、消防責任に対する市町村の理解も進んできたことから、地方分権推進の観点も踏まえ、市町村の自主的な判断に委ねることとしたものである。
3 消防法の改正(1)消防用設備等の技術上の基準に対する性能規定の導入ア 背景・考え方 これまで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、その要求内容が常識的かつ明確であり、適否の判定も行いやすい一方で、新たな技術を受け入れにくい面があった。これに対して、近年、社会的規制の様々な分野で、技術革新を促すとともに、技術革新の成果を活用できるよう、技術的な基準として必要な性能のみを規定し、達成する手法は自由に選択できることとする「性能規定」の導入が進められてきた。 消防庁では、建築基準法における性能規定化の動向を踏まえ、平成11年度から消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するための技術的、制度的検討を行ってきたところであり、安全性を損なうことなく性能規定を導入するための技術的基盤が整備されてきた。 今回、こうした状況を踏まえ、消防防災分野における新規の技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することとした。また、これと併せて、基準認証制度における国の関与を最小限とする観点から、現行の指定検定機関の制度を、性能評価も担う登録検定機関制度に改める措置を講じた。イ 性能規定の導入 今回の改正では、防火対象物に消防用設備等を設置し、及び維持する場合には、「消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように」することを求め、今後、積極的に性能規定を導入していくための法的な整備を行った。 消防用設備等に求められる性能は、初期の火災拡大を抑制する性能(初期拡大抑制性能)、火災から安全に避難することを支援する性能(避難安全支援性能)及び有効かつ安全に消防活動を行えるよう支援する性能(消防活動支援性能)の3つに整理できる。政省令では、これらの性能について、消防機関が現行の技術基準と同等以上の性能を有すると判断できるものの設置を認めることができるよう措置していく予定である。 一方、ある設備等が現行基準と同等以上の性能を有しているか否かは直ちにはわかりにくいため、これまでに蓄積されてきた知見に基づき、一定の条件下で一定の検証を行うことにより当該設備等が現行基準と同等以上の性能を有していることを評価する手法(客観的検証法)を開発し、防火安全性を損なうことなく、防火対象物の関係者及び消防機関の双方が、実務上支障なく運用できる制度を構築する必要がある。 改正消防法が施行される来年6月までに、建築構造、空間特性、収容可燃物の種類及び量、在館者特性等を特定しやすい共同住宅に係る消防用設備等の技術基準について客観的検証法を確立し、その他のものについても技術的知見を蓄積した上で、順次、客観的検証法を定めていく予定である。ウ 総務大臣による認定制度の創設 現行の技術基準と同等以上の性能を有する設備等をあらかじめ全て想定して客観的検証法を策定することは困難である。このため、既定の客観的検証法では同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、新たに総務大臣による認定制度を創設した。 具体的には、防火対象物の関係者が、当該防火対象物に設置する特殊消防用設備等の性能等を明らかにするとともに、これを設置し、及び維持するために必要な計画(設備等設置維持計画)を定め、現行基準と同等以上の性能を有することについて総務大臣の認定を受けた場合には、現行規定に適合しているものと同等であると認めることとした。 この際、一定の人的要件、設備的要件を満たす高度な知見を有する日本消防検定協会等が特殊消防用設備等の性能評価を行い、その評価結果を踏まえて、総務大臣が認定を行うこととなる(第2図を参照)。エ 指定検定機関の登録検定機関への移行 消防の用に供する機械器具等は、日常的に使用されることがない一方で、火災時に確実に作動することが求められていることから、日本消防検定協会又は指定検定機関による検定制度の対象となっている。 指定検定機関については、国の関与を最小限とするという政府の基本方針を踏まえ、今回、法令等に明示された一定の要件を満たせば、行政の裁量の余地のない形で登録できる登録検定機関に移行した。さらに、登録検定機関は、検定業務に加え前述の性能評価についても、日本消防検定協会と同様に行うことができることとした。オ 今後の課題と地方公共団体に対する期待 消防用設備等の技術上の基準に性能規定を導入することにより、新技術の開発促進が期待されるが、その実効性を高めるためには、知見の蓄積を図り、客観的検証法の適用範囲を着実に拡大していくことが必要である。このため、総務大臣による認定によりその知見が十分に蓄積された特殊消防用設備等については、円滑に客観的検証法を策定することにより、消防機関が判断できるようにしていくことが必要である。 一方、消防機関においても、客観的検証法による審査体制を整備し、消防防災に係る新たな技術を用いた設備等が導入できる体制を構築することにより、消防防災に係る技術開発の促進と安全性の高い合理的な防火安全対策の構築に寄与することが望まれる。
(2)消防庁長官の自らの判断による火災原因調査ア 背景・考え方 これまで、消防庁長官は、消防長等から求めがあった場合において、特に必要があると認めたときに、火災原因調査を行えるものとされていた。 近年、科学技術の進展による産業の高度化などに伴い、社会的影響が極めて大きい火災や、原因究明の困難な火災なども発生している。 このような背景の中で、これらの火災の原因を一刻も早く解明し、予防・警戒体制を強化するためには、これまでのように消防長等の求めに応じるだけでなく、消防庁長官自らの判断により調査できるようにすべきことが各方面から指摘されていた。今回の改正で、その対応が図られ、本年9月1日より施行されている。平成15年9月8日に発生したブリヂストン栃木工場火災に対して、初めて、改正後の規定に基づき、消防庁長官による火災原因調査を実施した。続いて、同月26日及び28日に発生した出光興産北海道製油所の火災に対しても火災原因調査のチームを派遣しており、既に3件の実績を上げている。イ 対象火災の類型 消防庁長官が自らの判断で原因調査を行う対象として、次の類型の火災が想定されている。1) 火災予防対策等の企画立案上、特に重視すべき火災2) 多数の死者が発生するなど社会的影響が極めて大きい火災3) 燃焼状況が特殊である火災等であって、通常の火災原因の調査では原因究明が困難なもの4) 消防長等から消防庁長官に火災原因調査の実施を要請するいとまがない大規模火災等ウ 今後の課題と地方公共団体に対する期待 火災原因調査が的確に実施されるためには、そのための体制の整備が重要である。そのため、現地消防機関、消防庁との役割分担に係る連携要領を作成し、その連携の円滑化を図ることとしている。また、以下のように、消防庁と独立行政法人消防研究所の調査体制を強化する措置を講じている。1) 調査チームの編成火災種別に応じて、担当の研究者を含めた調査チームを編成している。2) 火災原因調査高度支援専門員・火災調査協力員の登録等地域の大学その他の研究機関の学識経験者などを火災原因調査高度支援専門員として委嘱するとともに、中核的な消防本部の調査担当者で構成する火災調査協力員を調査チームの一員として登録している。3) 火災原因調査委員会の設置 特に重要な火災については、消防研究所に火災原因調査委員会を随時設置し、高度な原因究明を行うこととしている。 以上の調査体制の整備充実を図ることにより、調査・分析結果を活かし、より実効的な火災予防行政の推進が期待される。
(3)救急業務の実施義務制度の廃止 救急業務を行わなければならない市町村の政令指定についても、2(5)に併せて、廃止している。常備消防の設置義務制度の廃止と同様、地方分権推進の観点も踏まえ、市町村の自主的な判断に委ねることとしたものである。
4 結 語 以上、今回の改正事項については、それに伴う体制整備や今後の運用が重要である。狙いどおりの効果を上げていくためには、国は当然、地方公共団体や消防関係者などにおいても、留意・努力が必要である。新制度を最大限に活かせるよう、関係者においては、改正の意義・内容を正確に理解し、円滑・適切な施行に係る真摯な協力が期待される。
緊急報告I 救急救命士の処置範囲の拡大について1 救急救命士の処置範囲拡大 救急救命士制度は、欧米諸国のパラメディック制度を参考とし、我が国におけるプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、平成3年に創設され、心肺停止傷病者の救命効果の向上と救急業務の高度化に大きな成果をもたらしてきた(第1表)。 制度創設から12年を迎え、救命率をさらに向上させるため、平成14年4月、消防庁は、救急救命士の処置範囲の拡大等を検討するために「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」(座長:松田博青(財)日本救急医療財団理事長)(以下、「検討会」という。)を厚生労働省と共同で開催し、同14年12月11日に報告が取りまとめられた。 報告書は次のとおりである。これを受けて、消防庁としては、救急救命士の処置範囲拡大を実現するための具体的取組みを行っている。
(1)検討会報告書の概要1) 総論ア メディカルコントロール体制の確立が、救急救命士の業務拡大を行っていく上での前提イ 救急救命士の養成方法や養成期間のあり方を検討することが必要ウ 救急救命士配置についての地域格差の早期是正2) 除細動ア 平成15年4月目途に具体的な指示なし(医師の包括的指示下)での実施イ 無脈性心室頻拍についても救急救命士の除細動の対象とすべき。ウ 新型の二相性除細動器の早期導入3) 気管挿管ア 医師の具体的な指示に基づき、平成16年7月目途に一定の条件を満たした救急救命士が気管挿管を実施イ 必要な専門的知識に関する講習及び所定の病院実習を修了した者で都道府県等が認定した救急救命士に実施を認める。4) 薬剤投与ア 救急救命士によるエピネフリンを中心とした最小限の薬剤投与の有効性と安全性に関し、平成15年中を目途にドクターカー等で研究・検証をできるだけ早く実施し、早期に検討会で結論を得る。イ この結論として、救急救命士に薬剤投与を認めるとした場合に、プロトコールや養成カリキュラムについての検討等必要な措置を講じ、早期に実施を目指す。
(2)具体的な取組み1) 除細動 平成15年4月1日の救急救命士法施行規則の改正により、救急救命士は医師の具体的指示を要せず、迅速に除細動を実施することが可能となった。 消防庁としては、これに先立ち、指示なし除細動の円滑な実施に向けて、平成15年2月に検討会で示されたカリキュラムに基づく講習会を各地で実施し、また、メディカルコントロール体制の整備、特に事後検証体制の構築を要請した。これらを踏まえ、平成15年4月1日から各地域で指示なし除細動が実施され、迅速な除細動による救命効果の向上が図られている(第2表)。 当初、メディカルコントロール体制が整わない等の理由から、指示なし除細動が実施されていなかった地域も一部みられたが、これらの地域についても順次実施されてきている。2) 気管挿管 気管挿管については、必要な講習カリキュラム・テキストの策定が平成15年内に行われ、各都道府県の消防学校を中心に、平成16年早々から講習が開催される予定となっている。講習修了後、さらに医療機関における実習を経て、平成16年7月を目途に各地域で気管挿管が実施されることとなっている。気管挿管を実施することができる救急救命士の養成は、この医療機関における実習が重要であり、実習先医療機関の確保と関係者の理解と協力が期待される。3) 薬剤投与 薬剤投与については、エピネフリンを中心とした最小限の薬剤について、ドクターカー等でその有効性等の研究・検証を実施し、平成15年中を目途にその研究・検証の結果を得て、結論を出すこととなっている。 結論として薬剤投与を認める場合には、薬剤投与を実施するにあたって必要なプロトコールや養成カリキュラムの策定等、必要な措置を講じ、早期実施を目指すこととなっている。4) メディカルコントロール体制 救急救命士の処置範囲拡大は、メディカルコントロール体制の構築が前提とされており、現在、体制の整備・充実が推進されているところである。 メディカルコントロール体制とは、消防機関と医療機関との協同作業によって1)救急隊が現場からいつでも迅速に救急専門部門の医師等に指示、指導、助言が要請できる、2)実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行いその結果を再教育に活用する、3)救急救命士の資格取得後の再教育として医療機関において定期的に病院実習を行う、という体制のことである。 消防機関と医療機関との協議の場である都道府県単位、各地域単位のメディカルコントロール協議会については、都道府県単位の協議会は全ての都道府県で設置が完了したが、各地域単位の協議会は一部設置されていない地域がみられるため、設置を推進していく必要がある。現場の救急救命士に対する医師の常時指示体制については更なる充実を図るとともに、救急活動に対する医学的観点からの事後検証体制、救急救命士の再教育体制等については確実な実施を図る必要がある。
2 更なる救命効果向上のための救命講習の推進 平成14年中の救急自動車による現場到着所要平均時間は約6.3分であり、心臓停止後約3分で50%が死亡するといわれていることから(第1図:カーラーの救命曲線(抄)参照)、救急自動車到着前のバイスタンダー(現場に居合わせた人)による応急手当の実施は、救命効果向上の鍵を握っている。 救命効果の更なる向上、なかでも心肺停止傷病者の救命効果の向上のためには、「救命の連鎖」つまり、バイスタンダーによる迅速な通報と応急手当、搬送時の救急救命処置、医療機関における専門的治療の各段階で的確な措置が講じられることに加え、関係者相互の緊密な連携の下に一刻も早く次の段階へ橋渡しを行っていくことが不可欠である(第2図:「救命の連鎖」参照)。 このような視点から、消防庁としては、尊い生命を救うため、搬送時の救急救命処置として救急救命士の処置範囲を拡大するとともに、救急自動車到着前にバイスタンダーによる応急手当が適切に実施されるよう、一般住民への応急手当の普及啓発と救命講習開催を推進している。消防機関による救命講習の受講者数は平成6年中に25万人程度であったが、年々増加し、平成14年中には102万人を超えており、消防機関は応急手当普及の代表的機関となっている。 消防庁としては、バイスタンダーによる応急手当が一人でも多くの傷病者に実施されるよう、今後とも応急手当の普及啓発と救命講習内容の充実等に積極的に取り組んでいく。
緊急報告II 多発する企業災害とその対応 危険物施設等の火災漏えい事故は、平成12年に過去最悪となる511件を記録した後、ほぼ同水準で高止まりの状態を推移しており、危険物施設等における災害の動向は、憂慮すべき事態となっている。(第1図) またその要因としては、火災については設備の機能維持が不適切である等の管理不十分、あるいはバルブ開閉状況の確認忘れ等の確認不十分といった人的要因によるものが多数を占めており、漏えいに関しては、人的要因に加えて腐食等施設の経年劣化によるものが多いことが特徴となっている。 こうした中今年に入り、我が国を代表する企業の危険物施設を含めた産業施設での火災事故等が続発し、大規模な被害をもたらしている。(第1表) 7月には、新日本製鐵株式会社八幡製鐵所において、溶鋼鍋が横倒しとなり流出した高温の銑鉄により、死者1名、負傷者2名を出す等の火災事故となった。 8月には、三重ごみ固形化燃料(RDF)発電所の火災においては、消火活動に当たっていた消防職員2名が殉職した。また、エクソンモービル有限会社名古屋油槽所において、改造工事中のタンクから出火し、死者6名、負傷者1名を出す惨事となった。 9月には、新日本製鐵株式会社名古屋製鐵所の燃料用ガスのガスホルダーが爆発炎上し、作業員15名が負傷するほか、周辺民家の窓ガラスが割れるなどの被害が発生した。また、株式会社ブリヂストン栃木工場のタイヤ原料製造工場において、精錬ミキサー付近から出火し、当該工場を全焼させた火災が発生した。さらに、平成15年十勝沖地震後において、出光興産株式会社北海道製油所にて、多数の屋外貯蔵タンクの損傷や油漏れ等の被害が発生し、長期間にわたり2次災害防止のための対策が必要となった。また、浮き屋根式タンク2基に火災が発生し、特に2度目の火災は全面火災となり、鎮火までに多大な時間と消防力を要するとともに、施設周辺の住民生活に大きな影響を及ぼした。 このような一連の産業事故を受け、消防庁としては、今後の産業事故防災体制の構築に向け、以下の通り取り組んでいる。
(1)関係企業からのヒアリングの実施 今後の産業事故防止対策の推進に活かすため、平成15年10月に「企業災害に関する対策検討会」を開催し、一連の産業事故関係企業から、次の事項についてヒアリングを実施した。1) 経営合理化策の安全管理への影響2) 施設・設備の老朽化対策3) 災害時における事業所の通報・応急体制 等
(2)関係省庁と連携した対策の検討 関係省庁と連携して事故防止対策を推進するため、平成15年10月に厚生労働省及び経済産業省と共同で「産業事故災害防止対策推進関係省庁連絡会議」を開催し、産業事故災害の防止について、以下のような取り組みを行っており、共通的な事故防止対策のとりまとめを平成15年中を目途に行うこととしている。1) 各省庁の最近の取り組みに関する情報交換2) 産業事故災害増加の共通的な要因に関する情報収集・検討3) 産業界からのヒアリング4) 災害防止対策のあり方に関する検討
(3)石油コンビナート等特別防災区域における防災対策の充実方策の検討 平成15年十勝沖地震により、苫小牧地区の石油コンビナート等特別防災区域の特定事業所で、多数の屋外貯蔵タンクの損傷や油漏れ等の被害が発生し、さらに浮き屋根式タンク2基の火災等の被害が発生したことに鑑み、東海地震等への対応のあり方等とも併せ、消防庁の「石油コンビナート等防災体制検討会」(委員長:平野敏右(独)消防研究所理事長)に、以下の3つの専門部会を開催し、石油コンビナート等特別防災区域における必要な安全対策について、石油コンビナート等災害防止法令や消防法令の改正も視野に入れ、平成15年中を目途に具体的な方策等についての検討・とりまとめを行うこととしている。1) 特定事業所における防災資機材等検討部会・浮き屋根式タンクの全面火災に係る火災想定と消防戦術について・新たな防災資機材について・泡消火薬剤の備蓄方策について2) 屋外タンク貯蔵所における技術基準等検討部会・浮き屋根式タンクの屋根の構造等について・浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の固定消火設備について・旧法タンクの耐震改修の推進について3) 特定事業所における防災体制・リスク管理等検討部会・地震災害時のコンビナート事業所の自衛防災組織のあり方について・自衛防災組織の機能強化のための防災管理者等の教育・評価方策等について
(4)ごみ固形化燃料等関係施設の安全対策の検討 ごみ固形化燃料等関係施設の安全対策を検討するため、平成15年9月に「ごみ固形化燃料等関係施設の安全対策調査検討会」を開催し、三重ごみ固形化燃料発電所爆発事故の状況並びに全国のごみ固形化燃料及びこれと類似した危険性を有する物質の関係施設における事故発生状況の調査結果等を踏まえ、消防機関におけるごみ固形化燃料等の貯蔵・取扱い情報の把握、ごみ固形化燃料の性状管理、温度監視等の発熱・発火防止対策及び発災時の消火対策等の拡大防止対策が確実に行われるよう検討を行い、平成15年中を目途に必要な火災事故防止対策のとりまとめを行うこととしている。
(5)消防職団員の消防活動における安全管理の充実強化策の検討 消防職団員の消防活動における安全管理の充実強化策を検討するため、平成15年10月に「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、以下のような消防活動における安全管理の充実強化策の検討を行い、平成16年春を目途に検討策のとりまとめを行うこととしている。1) 最近の事案を踏まえた事故回避・抑止のための背後要因(心理状態等)の抽出2) 安全管理に配慮した適切な消防活動に係る重要事項3) 安全管理体制整備・活動態様の改善等につながる事後検証手法4) 前3項に係る情報及び手法の全国的な共有・蓄積等の方法 等 消防庁としては、多発している企業の産業施設による火災事故等を防止するため、上記の検討会等における検討結果をもとに、新たに判明した危険要因に対応したハード面の対策、それぞれの施設が有する危険性に応じ関係者が具体的に実施すべきソフト面の対策等、幅広い実効性ある対策を早急にとりまとめることとしている。
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、平成6年以降6万件を超えていた出火件数は、平成10年及び11年には5万件台で推移してきたが、平成12年以降は、再び6万件を超え、増加の傾向にある。 火災による死者数は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年に戦後最大の2,356人となり、翌平成8年には一旦2千人未満に減少したものの、平成9年以降は再び2千人を超えて推移しており、平成14年は前年に比べ増加している(第1−1−1図、第1−1−2図、第1−1−3図)。 平成14年中における火災の状況をみると、前年に比べ、出火件数、死者数、建物焼損床面積、焼損棟数及び損害額とも全て増加している(第1−1−1表)。 また、放火自殺者を除く死者数は増加しており、高齢者の比率は、前年に比べ増加している一方、乳幼児の比率は減少している(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。
1 出火状況(1)出火件数は増加、1日当たり174件発生 平成14年中の出火件数は6万3,651件であり、前年に比べ60件(0.1%)増加している。また、1日当たりの出火件数は174件となっている(第1−1−1表、第1−1−2表)。
(2)建物火災は全火災の53.7% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の53.7%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(道路、空地、土手及び河川敷の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和59年以降変化していない(第1−1−3表)。 最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災、林野火災及びその他の火災については、平成9年及び10年と2年連続して減少していたが、平成11年以降再び増加傾向にある。 また、平成5年からの10年間の種別ごとの増加指数をみると、建物火災(1.7%)、林野火災(4.8%)、車両火災(19.8%)、その他の火災(37.3%)は、それぞれ増加しており、船舶火災は6.6%の減少となっている(第1−1−4表)。
(3)冬季から春季にかけて火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成14年中では、冬季と春季で総出火件数の54.9%を占めている(第1−1−5表)。
(4)出火率は5.0件/万人 平成14年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、前年同様、全国平均で5.0件/万人である(第1−1−1表、第1−1−6表)。 出火率を都道府県別にみると、最高は山梨県の6.9、次いで茨城県の6.8、島根県及び鹿児島県の6.5の順であり、出火率が最も低いのは、平成5年以降10年連続して富山県の2.8、次いで京都府の3.3の順となっている(第1−1−7表)。
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器及び簡易消火用具 平成14年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が72.7%と圧倒的に多い(第1−1−4図)。 また、初期消火の状況をみると、消火器及び簡易消火用具(水バケツ等)を使用したものが29.0%となっている。一方で、初期消火を行わなかったものは37.9%となっており、この値を10年前(平成5年)と比較すると5.6ポイント増加している(第1−1−8表)。
(6)放火を除くと、住宅火災は建物火災の57.0% 平成14年中において、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数は1万7,274件であり、建物火災の件数(3万282件)の57.0%と半数以上を占めている(第1−1−9表)。
2 火災による死者の状況 平成14年中の火災による死者数は2,235人であり、前年の2,195人に比べ40人(1.8%)増加しているが、放火自殺者を除いた火災による死者数は1,372人で、前年の1,390人に比べ18人(1.3%)減少している。 また、放火自殺者数は863人であり、前年の805人に比べ58人(7.2%)増加している(第1−1−5図)。
(1)1日当たりの火災による死者数は6.1人 平成14年中の火災による1日当たりの死者数は6.1人であり、前年の6.0人に比べ0.1人増加している(第1−1−2表)。
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.77人 平成14年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.77人であり、前年の1.74人に比べ0.03人増加している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年同様東京都が130人で最も多く、次いで千葉県が122人、愛知県が120人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、福井県で13人、次いで石川県が14人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは秋田県で3.28人、最も低いのは奈良県の1.03人となっている(第1−1−10表)。
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成14年中においても、1月から3月、11月及び12月の月ごとの死者数は200人以上(年間の月平均は186人)に上っており、この5か月間に死者総数の56.3%に当たる1,258人の死者が発生している(第1−1−6図)。 平成14年中の時間帯別の火災による死者発生状況は、5時台が120人と最も多く、次いで1時台が119人となっている。就寝時間帯の死者発生状況は、0時台から5時台にかけて100人を超えており、就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1−1−7図)。
(4)死因は火傷が45.4%、一酸化炭素中毒・窒息が42.3% 平成14年中の放火自殺者を除いた火災による死因は、火傷によるものが623人(45.4%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息によるものが581人(42.3%)となっている(第1−1−11表)。
(5)建物火災による死者は死者総数の63.6% 平成14年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,420人と前年に比べ23人増加しており、死者総数に対する比率は前年と同様の63.6%となっている(第1−1−12表)。
(6)逃げ遅れによる死者が60.6% 死亡に至った経過をみると、平成14年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,372人のうち、逃げ遅れが832人で60.6%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が284人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の20.7%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が683人(49.8%)、5歳以下の乳幼児が32人(2.3%)を占めている。また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が182人(13.3%)、「熟睡によるもの」が166人(12.1%)を占め、二大要因となっている(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。
(7)建物火災のうち、全焼による死者は836人 平成14年中の建物火災による死者1,420人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が836人(死者の出た火災1件当たり1.15人)で58.9%を占めている。また、部分焼の場合が279人(同1.07人)で19.6%、半焼の場合が183人(同1.07人)で12.9%、ぼやの場合が122人(同1.01人)で8.6%となっている(第1−1−10図、附属資料13)。
(8)建物火災による死者の86.9%が住宅で発生 平成14年中の建物火災による死者1,420人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,233人は、建物火災による死者の86.9%を占めている。また、階層別では、1階における死者が950人で建物火災による死者の66.9%、2階における死者が322人で建物火災による死者の22.7%等となっている(第1−1−11図、第1−1−12図、附属資料15)。 さらに、建物構造別では、木造建物における死者が927人と最も多く、建物火災による死者の65.3%を占めている(第1−1−13図)。 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,026人であり、建物火災による死者の72.3%を占めている(第1−1−14図、附属資料14)。
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成14年中の住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下同じ。)火災による死者1,233人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人により殺された者(以下「放火自殺者等」という。)241人を除く失火等による死者は992人となっており、前年(923人)に比べ69人(7.5%)増加した。また、このうち65歳以上の高齢者は525人(全体の52.9%)と半数を超えている(第1−1−15図、第1−1−13表、附属資料15)。ア 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成14年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、81歳以上の階層では、最も低い21歳から25歳の階層に比べ27.4倍となっている。 また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、21歳から25歳の階層と比べると約2.3倍となっている(第1−1−16図)。イ たばこを発火源とした火災による死者が22.4% 平成14年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが222人(全体の22.4%)で最も多く、次いでストーブ124人(同12.5%)、こんろ64人(同6.5%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者992人の41.3%を占めている。 また、65歳以上の高齢者についても同様にたばこ、ストーブ及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数の46.3%を占めている(第1−1−17図)。ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成14年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が260人で、死者数992人の26.2%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数525人の32.0%を占めている(第1−1−18図)。エ 死者の42.4%が就寝時間帯 平成14年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が421人であり、住宅火災の死者992人の42.4%を占めている(第1−1−19図)。オ 木造住宅における死者が70.3%と圧倒的に多い 平成14年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物における死者が697人であり、住宅火災の死者992人の70.3%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者525人の76.8%(403人)を占めている(第1−1−20図)。カ 逃げ遅れによる死者が69.3%と圧倒的に多い 平成14年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが687人(全体の69.3%)と最も多く、次いで着衣着火が67人(同6.8%)、出火後再進入が20人(同2.0%)の順となっている(第1−1−21図)。
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は24件・77人 平成14年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は24件で前年(27件)より3件減少している。また、これによる死者は77人で前年(145人)より68人減少している。 火災種別では、建物火災21件・66人(全体の85.7%)、車両火災2件・8人(同10.4%)、航空機火災1件・3人(同3.9%)となっている(第1−1−14表)。 建物用途別では、専用住宅での死者が50人であり、建物火災全体の75.8%を占めている(第1−1−15表)。
エアゾール式の消火器具等について 最近、テレビ通販などで、エアゾール式の消火器具が人気を集めています。 これらの消火器具は、適切に用いれば効果がありますが、その特性を理解せずに用いると危険な場合もあります。●安心して使用できるエアゾール式簡易消火具等 消防庁では、消火器具等を安心して使っていただくために、天ぷら油火災、ストーブ火災など、火災の種類に応じ、消火能力等について厳しい基準を設け、検査を実施しています。 この検査に合格したものは、「住宅用消火器」又は「エアゾール式簡易消火具」と呼ばれ、検定合格証票や鑑定合格証票が貼付されるとともに、有効に消火できる火災の種類が絵表示により示されています。皆さんが消火器等を選ぶ際の目安になることと思います。●ガス系の消火器具では天ぷら油火災は消せません 火は、1)熱、2)燃料、3)酸素の3つがそろうことにより燃え続けることができます。 ガス系の消火器具は、このうちの酸素を一時的に遮断するものであり、ガスがなくなると再燃します。 天ぷら油火災を消すためには、油の温度を下げ、再燃しないようにする必要があり、強化液タイプの住宅用消火器、エアゾール式簡易消火具が有効です。 右の写真は、天ぷら油火災をガス系の消火器具で消す実験ですが、消えたように見えても、ガスがなくなると再燃しているのがおわかりでしょうか。●消防庁のホームページ これらの写真は、消防庁のホームページに掲載している動画をダウンロードしました。 このホームページのURL(アドレス)は、http://www.fdma.go.jp/ となっています。 消防庁では、今後もこれらの役立つ情報を公開していくことを予定していますので、ぜひご覧ください。
(11)放火自殺者は増加、死者総数の38.6% 平成14年中の放火自殺者は863人であり、死者総数2,235人に占める比率は38.6%(前年36.7%)となっており、前年(805人)より58人増加している。 放火自殺者を年齢別にみると、51歳から55歳が159人、56歳から60歳が123人、46歳から50歳が104人であり、これらの年齢で放火自殺者全体の44.7%を占めている(第1−1−22図)。
3 火災による損害額 平成14年中の火災による損害額は1,674億円であり、前年(1,474億円)に比べ200億円増加している。また、火災1件当たりでは263万円となっており、前年に比べ31万円増加している(第1−1−23図)。 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の81.5%を占めている(第1−1−1表)。
4 出火原因 平成14年中の総出火件数6万3,651件のうち、失火による火災が4万736件(全体の64.0%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1−1−24図)。
(1)「放火」による火災が6年連続して第1位 平成14年中の放火による出火件数は8,216件であり、前年に比べ96件(1.2%)増加し、全火災(6万3,651件)の12.9%を占め、6年連続して出火原因の第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは6,337件であり、前年に比べ49件(0.8%)増加している。放火及び放火の疑いを合わせると1万4,553件(全火災の22.9%)であり、前年に比べ145件(1.0%)増加している(第1−1−16表、附属資料6)。 放火による損害額は99億8,765万円であり、前年に比べ6億7,243万円(6.3%)減少している。放火の疑いによる損害額は95億5,511万円であり、前年より6億6,007万円(6.5%)減少している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は195億4,276万円であり、前年に比べ13億3,250万円(6.4%)減少している(第1−1−16表)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが4,723件(全体の32.5%)と最も多くなっている(第1−1−16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、前年同様、夜間から明け方(20時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に8,031件(全体の55.2%)が発生している(第1−1−25図)。
(2)「たばこ」による火災は増加 平成14年中のたばこによる火災は6,779件であり、前年に比べ10件(0.1%)増加し、全火災(6万3,651件)の10.7%を占めている(第1−1−17表、第1−1−26図)。 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが57.8%と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、121億1,846万円であり、前年に比べ2億5,362万円(2.0%)減少している(第1−1−17表)。
(3)「こんろ」による火災は減少 平成14年中のこんろによる火災は5,958件であり、前年に比べ4件(0.1%)減少している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,704件(全体の95.7%)であり、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、68.8%に当たる4,098件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、89億5,648万円であり、前年に比べ4億9,747万円(5.9%)増加している(第1−1−18表)。
(4)「たき火」による火災は増加し、「火遊び」による火災は減少 平成14年中のたき火による火災は4,410件であり、前年に比べ359件(8.9%)増加している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、たき火の延焼拡大が最も多く1,639件、次いで火の粉の飛び火、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は14億1,488万円で、前年に比べ5億627万円(26.4%)減少している(第1−1−19表)。 また、火遊びによる火災は2,237件であり、前年に比べ38件(1.7%)減少している。 火遊びによる火災の損害額は、23億4,591万円であり、前年より4億2,349万円(22.0%)増加している。 火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,162件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1−1−19表)。
(5)「ストーブ」による火災は減少 平成14年中のストーブによる火災は1,782件であり、前年に比べ192件(9.7%)減少している。ストーブの種類別では、石油ストーブによる火災が最も多く1,189件(全体の66.7%)であり、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが536件と最も多く、次いで引火・ふく射、使用方法の誤りの順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、88億1,478万円であり、前年に比べ11億4,656万円(11.5%)減少している(第1−1−20表)。
(6)着火物は前年同様「枯草」が第1位 平成14年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が9,165件であり全体の14.4%を占め、最も多くなっている(第1−1−21表)。
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成14年中の建物火災の出火件数は、3万4,171件であり、前年に比べ41件(0.1%)の増加となっている。これを、10年前(平成5年)の3万3,608件と比較すると1.7%増加したことになる(第1−1−4表)。ア 建物火災は1日に94件、15分に1件の割合 平成14年中の建物火災の1日当たりの出火件数は、94件であり、15分に1件の割合で出火していることになる(第1−1−2表)。 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜4月、11月及び12月)にかけて多く発生し、全体の55.0%を占めている(第1−1−27図)。イ 住宅における火災が建物火災の56.0% 平成14年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の56.0%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1−1−28図、附属資料16)。ウ 建物火災の45.9%が木造建物 平成14年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万5,687件であり、建物火災の45.9%を占め、次いで耐火造、防火造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の28.2%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみても、木造が最も大きく68.4m2となっており、全建物火災平均では48.2m2となっている(第1−1−22表)。エ 建物火災の過半数は小火災 平成14年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,197件であり、全体の47.4%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万6,269件で全体の76.9%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1−1−23表)。オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成14年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが69.5%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが35.1%となっている(第1−1−29図)。カ 3DKの住戸2万5,381戸相当分が焼損 平成14年中の建物焼損床面積は、前年に比べ51,109m2(3.2%)増加し、164万9,751m2となっている。この面積は3DK(65m2)の住宅が2万5,381戸焼損したことに相当する。 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は北海道の8万8,984m2であり、次いで愛知県、埼玉県の順となっている。一方、最低は沖縄県の7,518m2であり、次いで鳥取県、福井県の順となっている(第1−1−24表)。キ 1件当たりの焼損床面積は48.3m2 平成14年中の建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で48.3m2となっており、前年に比べ1.5m2(3.2%)増加している。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、秋田県の121.3m2を最高に、岩手県111.9m2、新潟県92.5m2など34道県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が前年同様東京都の11.6m2で、次いで神奈川県23.8m2、大阪府27.6m2など13都府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1−1−24表)。ク 放水した建物火災の28.0%は覚知後5分以内に放水 平成14年中の建物火災における火元建物の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万8,791件(建物火災の55.0%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万5,240件(放水した建物火災の81.1%)であり、このうち5分以内のものは5,266件(放水した建物火災の28.0%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を20.4m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1−1−25表)。ケ 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成14年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は9,187件であり、放水した建物火災の48.9%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが3,178件で最も多くなっている(第1−1−30図)。
(2)林野火災 平成14年中の林野火災の出火件数は、3,343件であり、前年に比べ336件(11.2%)増加している。焼損面積は、2,634haであり、前年に比べ861ha(48.6%)増加しており、また、損害額も14億4,715万円であり前年に比べ3億2,693万円(29.2%)増加している。また、林野火災による死者は17人であり、前年に比べ8人減少している(第1−1−26表)。 林野火災の出火件数を月別にみると、平成14年中は3月に最も多く発生しており、次いで4月、2月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1−1−31図)。 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は、3,309件であり、全体の99.0%を占めている(第1−1−26表)。 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが885件で全体の26.5%を占め最も多く、次いでたばこ、放火(放火の疑いを含む。)、火入れの順となっている(第1−1−32図)。
(3)車両火災 平成14年中の車両火災の出火件数は、7,785件であり、前年(8,454件)に比べ669件(7.9%)減少し、車両火災件数は昭和51年以降増加傾向にあったが、26年ぶりに減少している。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は32億8,244万円で前年(39億2,664万円)に比べ6億4,420万円(16.4%)減少し、死者は336人で前年(304人)に比べ32人(10.5%)増加している。 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が2,043件(全体の26.2%)と最も多くなっている(第1−1−33図)。
(4)船舶火災 平成14年中の船舶火災の出火件数は、113件であり、前年に比べ13件(10.3%)減少している。出火原因は、電灯・電話等の配線によるものと溶接機によるものがともに9件と最も多くなっている(第1−1−34図)。次に、死者は1人、負傷者は11人となっている。また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は225億3,941万円で、そのうち約222億円は平成14年10月に発生した客船ダイヤモンド・プリンセスの火災損害額である。
(5)航空機火災 平成14年中の航空機火災の出火件数は、4件であり、前年に比べ1件(20.0%)減少している。また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は、2,359万円で前年に比べ1億2,706万円(84.3%)減少している。
[火災予防行政の現況]1 住宅防火対策の現況 平成14年中においては、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数(17,274件)は、建物火災の件数(30,282件)の約6割、また、放火自殺者等を除く住宅火災による死者数(992人)は、建物火災による死者数(1,129人)の約8割となっており、過去10年間この傾向で推移している。 また、近年の主な建物用途別に見た火災100件当たりの死者数では、住居における死者数は、多数の者が利用する物販店舗、旅館・ホテルと比べても5倍程度の死者数となっており、最多となっている。 住宅火災による死者数は概ね横ばい又は微増の傾向であり、これまでの人口の増加及び高齢化の状況を勘案すると抑制状態にあると考えられるが、住宅火災による死者の半数以上が65歳以上の高齢者であり、今後の高齢化の進展とともにさらに住宅火災による死者が増加するおそれがある。 消防庁では、昭和61年に住宅火災による死者数が1,000人を超えたことを重視し、住宅火災による死者の発生を防止する対策を強力に推進することが急務であるとの認識のもと、平成3年に住宅防火対策推進に係る基本方針を策定するとともに住宅防火対策推進協議会を設置し、住宅防火に係るポスター、パンフレットの作成・配布、住宅防火安心マークによる住宅用防災機器の普及の促進等の対策を推進してきた。 平成13年には、過去10年間の実績を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を定め、特に高齢者を対象とした住宅火災による被害及び死者の軽減を目指し、地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進を図るため、関係行政機関、関係団体等と協力しながら住宅防火対策の更なる推進を図ってきている。
2 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成15年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に104万841件あり、そのうち73.3%に当たる76万2,437件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、27万8,404件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が命令・指導を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は67万3,545件で全体の64.7%となっている(第1−1−27表)。
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難の訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 防火対象物の共同防火管理が不十分なままでは、火災発生の際に的確な対応が期待できないわけであるが、平成15年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、58.2%と前年(54.7%)より増加したが、依然として低率に止まっている(第1−1−28表)。
3 消防用設備等の規制(1)防火対象物の実態 平成15年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第1(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(十九)項までに掲げる防火対象物の数)は367万2,980件である。また、14大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は83万8,459件であり、全国の防火対象物の22.8%を占めている。特に都市部に集中しているものは地下街(全国の79.4%)、準地下街(同57.1%)、非特定複合用途防火対象物(同47.3%)、スタジオ(同35.9%)等である(第1−1−29表)。
(2)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物(不特定多数の人々が出入りする百貨店、旅館、病院等の防火対象物)についてみると、平成15年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率は96.2%(前年96.3%)、スプリンクラー設備の設置率は99.6%(同99.5%)となっている(第1−1−30表)。 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近においては、平成11年3月に消防法施行令の一部改正等を行い、スプリンクラーヘッドの設置間隔に係る基準の合理化、誘導灯及び誘導標識に係る技術基準の全面見直し(免除要件の拡大、基準の合理化、新しい機能・性能等を有する誘導灯に係る基準の整備)等を図っている。 また、平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災にかんがみ、この種の小規模雑居ビル(特定複合用途防火対象物)や直通階段が1つしかない防火対象物に設置される自動火災報知設備及び避難器具等の技術上の基準について見直しを行い、設置義務対象物の拡大、階段室における煙感知器の設置間隔の変更、受信機への再鳴動機能の付加、避難器具の設置基準の変更等必要な改正を行っている。 さらに、近年、高層建築物、大空間を有する建築物など大規模・特殊な建築物が増加するとともに、新技術を活用した消防用設備等の開発が行われており、多様な防火対象物に対応し、新技術の活用を図るため、平成15年6月に消防法の一部を改正し、消防法令に性能規定を導入するための関係規定の整備を行ったところである。 一方、消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令、使用禁止命令、刑事告発等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理をさらに進めることとしている。
(3)消防用設備等にかかる技術基準の性能規定化 消防用設備等は、防火対象物の防火安全性を確保するために、設置・維持することが義務付けられており、その技術基準の多くは仕様書規定的に定められている。 この仕組みは、長い間、日本の防火対象物の安全性の確保に大きな役割を果たしてきたが、反面、近年の技術革新や防火対象物の大規模化・特殊化に対応して新たに開発された設備やシステム、外国製品等の導入に対して硬直的な対応となるおそれがある。 このため、消防庁では、平成11年度から13年度の3年間で、「総合防火安全対策手法の開発調査検討会」において、防火対象物の火災危険性に応じた合理的かつ総合的な防火安全対策手法の構築に係る検討を行ってきた。さらに、「防火対象物の総合防火安全評価基準のあり方検討会」において、平成14年度から3か年計画で、消防用設備等に係る性能の評価手法の確立を目指している。 また、平成15年6月には消防法を改正し、(2)でも述べたように消防法令に性能規定を導入するための関係規定の整備を行った。 消防用設備等に係る性能は、「初期拡大抑制性能」、「避難安全支援性能」、「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的、普遍的かつ公正に検証する方法)を策定する予定であり、「初期拡大抑制性能」については事務所用途におけるスプリンクラー設備、「避難安全支援性能」については光点滅走行式避難誘導システム、「消防活動支援性能」については加圧防排煙システムについて評価手法の検討を行っている。また、共同住宅の構造特性等を踏まえた消防用設備等の評価手法の検討も行っている。 さらに、新たな技術開発や工夫に対し、上記の客観的検証法では対応しきれない場合も想定されるため、技術基準に定められた「要求性能」そのものに立ち戻り、高度な識見を有する性能評価機関の性能評価に基づき、「大臣認定」を行う途を開いた。
(4)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 消防設備点検資格者になるための講習は、平成12年12月に消防法施行規則の一部改正が行われ、民間の指定講習機関により行うものとされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施することとしている。 平成15年3月31日現在、消防設備士の数は延べ80万8,962人となっており(第1−1−31表)、また、消防設備点検資格者の数は第1種(機械系統)10万9,681人、第2種(電気系統)10万3,681人となっている。 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(5)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効である。このことから、消防法により、高層建築物、地下街等構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成15年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、86万7,984件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものにあっては、82.5%、じゅうたんを全部使用しているものにあっては、79.3%、展示用合板を全部使用しているものにあっては66.6%となっている(第1−1−32表)。イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている。 防炎表示制度は、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として従前の防炎表示者の認定制度を平成13年1月より登録制度に改正した。併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として一定の基準を満たす指定確認機関による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高め、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成15年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、2万9,728業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.6%を占めている。)で前年同期より497業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎化 消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、オートバイカバー等についても、防炎化を推進することにより火災予防の徹底を図る必要があることから、防炎性能を有するものについて、財団法人日本防炎協会が発行する「防炎製品」表示ラベルの貼付により消費者の利便を図っている(第1−1−33表)。
(6)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭等で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備など、その種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を持ち、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成14年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,637件(総建物火災件数3万4,147件の約22.4%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いの基準は、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制が行われている。
4 防火基準適合表示制度 「防火基準適合表示制度」は、一定規模以上の旅館・ホテル、劇場、公会堂、百貨店等防火基準適合表示制度の対象とされた防火対象物(以下「表示対象物」という。)について、立入調査を通して審査し、一定の防火基準に適合する場合に消防機関が「適マーク」を交付する制度である。同制度はその対象物の防火に関する状況を広く国民に対して情報提供するとともに、対象物関係者の防火に対する認識を高め、防火安全に関する不備事項の是正促進に大きな効果を上げてきたところである。 しかしながら、平成13年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災での経験を踏まえ、消防法の改正により、防火対象物定期点検報告制度が導入されたことに伴い、防火基準適合表示制度は、平成15年9月30日をもって廃止された。 なお、同日に適マークの交付を受けていた旅館ホテル等については、平成15年10月1日から引き続き3年間に限り適マークを表示できる暫定適マーク制度が導入されるとともに、防火対象物定期点検報告制度の対象外の旅館ホテル等について自主点検報告表示制度が導入された。
(1)「適マーク」交付状況 平成15年3月31日現在の表示対象物は全国で5万7,000件あり、そのうち立入調査を完了した表示対象物数は5万3,298件(調査率93.5%)である。 また、立入調査を終えた表示対象物のうち適マークを交付された表示対象物数は3万8,445件(調査完了物件に対する交付率72.1%)である。 さらに、平成15年3月31日現在、2年以上表示基準に適合していると認められ、その旨の表示(適継続章)がなされた表示対象物数は2万4,922件である。 なお、適マークの交付を受けていた表示対象物であって、その後において適マークを返還した対象物は、平成15年3月31日現在、1,175件となっている(第1−1−35図、附属資料17)。
(2)表示基準への適合の状況 表示基準に基づく点検項目は、28項目ある。このうち平成15年3月31日現在、適合率が低い項目は、消火・避難訓練の実施(該当する表示対象物全体の82.3%)、防火管理体制指導マニュアルの実施(同90.0%)、自主チェック体制の整備(同91.1%)となっており、防火管理面の項目における適合率が低い(附属資料18)。
5 消防同意及び立入検査(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成14年度の全国における消防同意事務処理件数は、32万1,697件(前年度33万6,292件)であり、消防同意した申請のうち9万4,118件(29.3%)については、消防機関により指導が行われている(第1−1−34表)。
(2)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成14年度に全国の消防機関が行った立入検査数は、103万4,914件であり、防火対象物数(367万2,980件)の約3割について指導を行っている(第1−1−29表、第1−1−35表)。 新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた平成14年の消防法の一部改正により、立入検査の時間制限の見直し等が行われ、消防機関がより的確で効果的な立入検査を行うことができるようになった。
(3)小規模雑居ビル等の違反状況 立入検査等により判明した防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができ、また、消防法第5条、第5条の2又は第5条の3の規定に基づき、火災の予防に危険であると認める場合等には、当該防火対象物の改修、移転、危険排除等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされており、これらの命令をした場合には、公示することとされている。 このように立入検査等を行った結果消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1−1−36表、附属資料19、20、21)。 特に、新宿区歌舞伎町ビル火災が発生したビルと類似する小規模雑居ビル、特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定用途防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)については、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性にかんがみ、厳しく指導を行っている。しかしながら、小規模雑居ビルについては45.1%の対象物、特定違反対象物については266件の対象物において未だに消防法令違反が存在するため、これらに対して早急な改善指導を行っている(第1−1−37表、第1−1−38表)。
6 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定の対象となる消防用機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定対象消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の消防用機械器具等の形状等が、型式承認を受けたものと同一である旨を確認する検定)とからなっている(第1−1−39表)。 また、新たな技術開発等に係る検定対象消防用機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 なお、昭和61年から、日本消防検定協会以外に、総務大臣が指定する「指定検定機関」でも検定を行うことができることとしていたが、政府の規制改革推進の方針に基づき、平成14年には指定検定機関の公益法人要件を撤廃し、さらに、平成15年からは、指定検定機関から「登録検定機関」へとその参入要件を緩和している。
(2)自己認証 自己認証とは、国が定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格に適合している旨の表示を付そうとする製品の製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成15年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては2,004件、消防用吸管にあっては49件である。
[火災予防行政の課題](1)違反是正の徹底 全国の消防機関において、平成14年の消防法の一部改正等を踏まえた「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビルをはじめとする違反防火対象物に対する違反是正に一定の成果が得られたものの、依然として多数の違反対象物がある。このことから、これらの消防法令違反を是正するため、防火対象物定期点検報告制度等を活用して消防機関による立入検査を一層重点化・効率化するとともに、「違反処理データベース」の充実等により、違反是正を推進する体制の強化に取り組んでいく必要がある。
(2)防火管理の徹底 平成14年の消防法の一部改正により、一定の防火対象物の管理権原者が防火対象物点検資格者に防火管理上必要な業務等について点検を行わせる防火対象物定期点検報告制度が創設され、平成15年10月1日から施行された。本制度の円滑な実施を図るには、対象となる防火対象物数に対応した防火対象物点検資格者を早急に育成するとともに、消防機関において、この制度を活用した立入検査の一層の効率化、重点化に取り組んでいくことにより防火管理の実効性を確保する必要がある。 また、規制改革3か年計画に基づく防火管理者の業務の外部委託及び平成14年10月1日に発生した長崎県長崎市の客船ダイヤモンド・プリンセスの火災を踏まえた建造中の船舶及び工事中の建築物における防火管理の義務付けについても、法制度化等の所要の措置を講じることとした。 さらに、防火管理講習を受ける機会の拡充などを図るため、民間活力を利用して防火管理講習の充実を図る必要がある。
(3)火災原因調査体制の整備・充実 平成15年の第156回国会において「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」が可決成立し、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査をすることができる制度が導入された(平成15年9月1日より施行)。 本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて編成される消防庁及び独立行政法人消防研究所職員等の調査チームが実施するもので、平成15年9月8日に発生したブリヂストン栃木工場火災において初めて適用され、同年10月末までに3件の火災原因調査を実施した。今後、これらの実施結果を検証し、本制度に基づく火災原因調査を迅速的確に実施するため、調査体制のさらなる充実を図る必要がある。
(4)住宅防火対策の推進 高齢化の進展に伴い住宅火災による死者の増加が予見されたことから、消防庁では、平成3年から住宅防火対策推進協議会を中心に、自主防災組織等とも連携した消防職員による高齢者家庭の訪問防火診断などの住宅防火対策を積極的に推進してきている。その結果、この間の高齢化の進展等を勘案すると相応の効果がみられるものの、住宅火災による死者の発生は、概ね横ばい又は微増の傾向となっている。〔火災の現況と最近の動向:参照〕 消防庁では、住宅火災の現況及び社会情勢の変化を踏まえ、地域におけるさらなる安全・安心な生活を確保するため、これまでの取組みに加え、新たな住宅防火対策のあり方について「地域の安全・安心に関する懇話会」において検討を行っている。 平成15年10月にとりまとめられた中間報告においては、日本における住宅火災の実態、住宅用防災機器等(住宅用火災警報器、住宅用消火器等)の効果、欧米主要国の住宅防火対策の状況等を踏まえ、住宅用火災警報器等の普及を図ることが重要とされている。その方策として、 1)保険制度との連携、効果的な流通や技術開発によるコストの低減、国民の意識に浸透する広報等の市場機能の活用を図るとともに、 2)個人が私生活を営む場である住宅の防火責任は、当該個人が負うべきものではあるが、住宅火災は、死者の発生危険が他の用途に比べて高く、さらに隣家への延焼危険性も大きいことなどから、住宅防火対策は単に個人の問題ではなく、市民社会における個人の責任を全うするためにも、居住者本人、家族、さらには地域社会への配慮を踏まえた対応が重要である。このため住宅火災に伴う社会的な影響、社会情勢の変化等を踏まえ、従来個人の自助努力を中心に考えられてきた住宅防火対策について見直しが必要であり、住宅用防災機器等に係る法制度化の検討が必要とされている。
住宅用防災機器等推奨制度について 住宅用防災機器等推奨制度。聞き慣れない言葉ですが、皆さんご存知でしょうか。 消防で「住宅」という場合は、一般にマンションなどの「共同住宅」、一軒家などの「一般住宅」、店舗と自宅が一緒の「併用住宅」の3つを合わせたものを指し、そこで発生する火災を『住宅火災』と言います。 この住宅火災の発生件数は建物火災の約6割を占め、住宅火災により亡くなられる方は、建物火災による死者の8割を超えています。 住宅火災で多くの方が亡くなっていますが、これは、デパート、映画館などいろいろな人が使用する建物が、自動火災報知設備、スプリンクラー設備、誘導灯などの様々な消防用設備等により守られているのに対し、住宅では、これらの消防用設備等の設置の義務付けがなく、住宅火災が個々の住人の責任とされていることも原因の一つかもしれません。 よく言われることですが、住宅火災に対しては、「自分の身は、自分で守ら」なければならないのです。 この「自分の身は、自分で守る」お手伝いとして、消防庁では、平成3年から燃えにくいじゅうたん、カーテン等の「防炎物品」、初期の段階で火災を知らせる「住宅用火災警報器」や「住宅用自動火災報知設備」、お年寄りなどでも使いやすい「住宅用消火器」や「エアゾール式簡易消火具」等の住宅用防災機器について、構造・性能等に係る具体的なガイドラインを作成し、当該ガイドラインに適合する住宅防火に有効な機器について、「優良住宅用防災機器」としてこれを推奨することとしています。 これらの優良住宅用防災機器には、『住宅防火安心マーク』という推奨マークが貼られることとなっており、キャラクターをデザインした消火器など家庭に設置しやすいものが作られています。
(5)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降6年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占め、年々増加する傾向にある。特に、都市部においては、火災原因の4割を超える都市もあるなど、この傾向が顕著で、深刻な社会問題となっている。 このため、消防庁では、平成12年に過去の放火火災事例の分析などをもとに、建物用途別に放火火災予防対策を細かく例示した「放火火災予防対策マニュアル」を作成し、全国の消防機関に配布しているところである。 放火を防ぐためには、一人ひとりが防火対策を心がけるだけでなく、地域全体として放火されない環境造りを行っていくことが重要である。 特に、連続放火が発生している地域にあっては、地域の安全に深刻な影響があるため、暗いところや死角になるところに可燃物を放置しないこと、夜間ゴミを出さないこと、門灯の終夜点灯により街路を明るくすることなどの基本的な対策を地域全体で徹底するとともに、関係行政機関と地域住民が協力して、街灯の増設、炎感知器や侵入監視センサーと連動した照明の設置、監視カメラの設置などを推進し、より一層の警戒体制を構築することが必要である。 消防庁では、平成14年度から、特にこの連続放火にねらいを絞り、消防本部、関係行政機関等からなる検討会を開催し、連続放火の発生している地域との連携を強化し、連続放火に対する具体的な対策とその進め方などについて、検討を進めているところである。
(6)建築物の大規模化・特殊化等に対応した防火安全対策の推進と技術基準の性能規定化 近年、建築物の大規模化・特殊化等が進展する中で、火災等の災害が発生した場合の対応も、高度化、複雑化する傾向にある。これらに適切に対応するためには、より高度化された消防防災システムの整備が効果的であることから、消防庁では、防災の用に供する設備・機器の監視・制御等を建築物全体で一体的に行う総合防災システムの構築等、消防防災システムのインテリジェント化に係る施策を積極的に推進し、適切に対応できるよう措置してきているところである。 今般、消防法が改正され、消防法令への性能規定の導入が制度化されたことに伴い、新たな制度のもとで、引き続きインテリジェント化の推進を図っていくこととしている。
(7)旅館ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等における防火安全対策の推進 平成14年の消防法の一部改正により、一定規模以上の特定防火対象物((十六の三)項を除く)に対し、「防火対象物定期点検報告制度」が導入されたことに伴い、いわゆる「適マーク制度」は、平成15年9月30日をもって廃止された。 なお、従来の適マーク制度の対象となっていた旅館ホテル等については、引き続き3年間に限り適マークを表示できる「暫定適マーク制度」を設けた。また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象外の旅館ホテル等に対しても、同様な制度を用することが可能となるよう「自主点検報告表示制度」が新たに導入された。 旅館ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念されることから、これらの制度を有効に活用し、防火管理体制の一層の充実を図る必要がある。
防火対象物定期点検報告制度及び自主点検報告表示制度〜防火優良認定証及び防火基準点検済証と防火自主点検済証〜 平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災を契機に平成14年4月26日に消防法が一部改正され、防火対象物定期点検報告制度及び自主点検報告表示制度が平成15年10月1日から導入されることになりました。 防火対象物定期点検報告制度については、一定の防火対象物の管理について権限を有する者に対し、防火対象物点検資格者による点検を義務付け、その結果について消防長又は消防署長への報告を行わせるものです。 消防機関が検査した結果、過去3年間消防法令を遵守していると認められた場合には、防火優良認定証を、防火対象物点検資格者が点検した結果、消防法令に適合していると認められた場合には、防火基準点検済証を表示することができます。 自主点検報告表示制度については、平成15年9月末で廃止された「適マーク制度」の対象で防火対象物定期点検報告制度の対象外となる旅館ホテル等について、その自主的防火管理体制の確保を図ることを目的としているものであり、防火対象物定期点検報告制度の点検基準に準じて防火対象物点検資格者又は防火管理者が点検し、点検基準に適合していると認められたとき、防火自主点検済証を表示できる制度です。 また、両制度に係る表示マークを国民に幅広く定着させることを目的に、その愛称について、防火優良認定証及び防火基準点検済証については「防火セイフティマーク」、防火自主点検済証については「新適マーク」となりました。
(8)文化財保護のための防火安全対策の推進 国民共通の財産である文化財を火災による焼失等から保護し、後世に残すことは、極めて重要な課題である。 我が国の文化財建造物は、伝統的な建築技術を用いた木造の建造物が多いなど、通常の防火安全対策では十分な対処が難しいものも多い。このため、文化財の特性に応じた防火管理の実施、消防用設備等の設置、火災時の消火活動等の防火安全対策の充実に努める必要がある。 また、近年、文化財建造物を神社仏閣等以外の多様な用途に活用する事例も見られる。例えば、文化財建造物を、旅館・ホテルや飲食店のように不特定多数の者が利用する場合において、十分な防火安全対策が講じられていない場合、火災危険性が非常に高くなる。このため、近年のこうした文化財建造物の多様な利用実態を踏まえ、その火災危険性に対応した消防用設備等の設置及び防火管理のあり方について法制面も含め、必要な対策を講じていくこととしている。
(9)災害弱者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害弱者が安全に安心して生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害弱者の安全性の確保に留意する必要がある。 災害弱者を収容する社会福祉施設等に対しては、「社会福祉施設及び病院における夜間の防火管理体制指導マニュアル」に基づき、防火管理上特に支障が生じやすい夜間における防火管理体制の整備を図るなどソフト面の充実に努め、災害弱者に配慮した総合的な防火安全対策の推進を指導していくことが必要である。 また、社会福祉施設等以外の防火対象物についても、障害者等の社会参加が増加してきている中、火災発生時に災害弱者による初期消火や避難などの適切な対応が困難となることを踏まえた消防用設備等のあり方について、総合的に検討を行う必要がある。 さらに、本格的な高齢社会を迎え、老人福祉法で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設(グループハウス、シルバーハウジング等)が増加しており、消防庁では、学識経験者、関係省庁等からなる「高齢者施設における火災予防のあり方検討会」を平成14年度から開催し、既往施設との比較等を行いつつ、これらの新たな施設等に対する防火安全対策のあり方について検討を進めている。 一方、災害弱者が居住する住宅における対策として、消防機関をはじめ行政機関が、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等の防火対策推進協力者と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等による防火指導の推進等の取組みを引き続き実践する必要がある。併せて、災害弱者から消防機関への緊急通報体制の一層の充実を図るため、従来から実施している「災害弱者消防緊急通報システムモデル事業」の更なる普及促進に取り組むとともに、情報通信技術の進展を踏まえ、より多様で高機能な自動通報システムや災害弱者に配慮した仕組みを有した緊急通報システムの開発を進めていく必要がある。
(10)消火器等リサイクルの推進 消火器や、防炎加工を施したカーテン、じゅうたんなどの防炎物品は、不要となった場合の処理が困難なものであり、また、老朽化消火器にあっては、事故防止の観点からもリサイクルの推進が求められている。 これらの状況を踏まえ、消火器、防炎物品については、平成12年度から平成16年度にかけて、政府のミレニアムプロジェクトの一環として、リサイクル技術の開発、回収ルート等のリサイクルシステムの構築等について、検討している。 消火器については、平成14年7月に日本消防検定協会の検定細則が改正され、消火薬剤のリサイクル使用についての制度上の整備が行われて、回収消火薬剤のリサイクル使用が始まったほか、回収消火薬剤の再生使用、肥料としての使用などについても実施の段階になっており、社会全体として経済的に成り立つ回収リサイクルシステムをどう構築していくかが課題となっている。 また、じゅうたん、カーテン等の防炎物品については、繊維部分をコンクリート型枠へ再加工する技術などが実用化可能な技術として確認され、回収ルートの構築、リサイクルコストの軽減、テストプラントの建設などが課題となっている。
(11)ISO9000等審査登録機関について 現在、品質管理の手法として広く用いられているISO9000は、製造業のみならず、設計、運送、事務など様々な分野において広く普及してきているところであり、社会的に重要な地位を占めつつある。 ISO9000を事業者等が取得することにより、製品の品質の維持、向上が図られ、さらには、コストの削減などの利点とともに、消防用機械器具等の品質の安定、信頼性が向上するため、その普及が望まれている。 このため、消防関係の事業所等がISO9000の認定取得に取り組みやすくなるよう、専門的な審査登録機関が設置され、ISO9000等の審査登録機関としての資格取得に向けて活動を開始している。 また、消防機関、事業所等で、環境マネジメントシステムの取得への要望が高まっていることから、同審査登録機関ではISO14000の審査を実施することも視野に入れて準備を進めている。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設における事故は、火災(爆発を含む。)と漏えいに大別される。危険物施設の火災・漏えい事故件数は、昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していたが、平成6年を境にして増加傾向を示しており、平成12年に過去最悪となる511件を記録した後、ほぼ同水準の高止まりの状態を継続している。 平成14年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が170件、漏えいが331件で合計501件となっており、前年より2件減少したものの引き続き高い水準で推移している(第1−2−1図)。 また、平成15年に入り、我が国を代表する企業において、火災等の産業災害が続発し、多大な人的・物的被害が発生するという憂慮すべき事態となっている(緊急報告II)。
1 火災 危険物施設における火災の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。火災の主な要因として、一般取扱所、製造所、給油取扱所等における管理不十分・確認不十分等の人的要因をあげることができる。
(1)火災件数と被害 平成14年中の危険物施設における火災の発生件数は、170件(対前年比1件増)、損害額は13億3,682万円(同2億6,690万円増)、死者は3人(同2人増)、負傷者は56人(同9人増)となっている(第1−2−2図)。 危険物施設の火災による他への影響の程度をみると、166件(他の施設からの類焼により危険物施設が火災となった4件を除く。)の火災のうち159件(全体の95.8%)が当該危険物施設のみの火災にとどまり、6件(同3.6%)が当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼し、1件(同0.6%)が危険物の漏えいに起因して施設外から火災となっている。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が90件、給油取扱所での火災が54件となっており、これらの火災は、全体の84.7%を占めている(第1−2−3図)。 さらに、出火原因となった物質を消防法別表の類別等に従って区分すると、170件の火災のうち122件(全体の71.8%)は、危険物が出火原因物質となっている。これを品名別にみると、第4類第1石油類58件、第4類第3石油類17件、第4類第2石油類16件等の順となっている(第1−2−4図)。
(2)火災の発生原因及び着火原因 平成14年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が107件(全体の62.9%)と最も多く、物的要因が29件(同17.1%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が34件(同20.0%)となっている(第1−2−5図)。 また、着火原因をみると、静電気火花が33件(全体の19.4%)で最も多く、次いで不明25件(同14.7%)、高温表面熱21件(同12.4%)、裸火16件(同9.4%)となっている(第1−2−6図)。
(3)無許可施設の火災 平成14年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は、9件であり、死者はなく、負傷者は21人となっている。なお、これらの火災による損害額は、2億5,316万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成14年中の危険物運搬中の火災の発生件数は11件で、死者は1人、負傷者は1人となっている。なお、これらの火災による損害額は1,841万円となっている。
2 漏えい 危険物施設における漏えい事故の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。漏えいの主な要因として、給油取扱所、地下タンク貯蔵所、移動タンク貯蔵所、一般取扱所等における人的要因や危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化をあげることができる。
(1)漏えい件数と被害 平成14年中の危険物施設における危険物漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、331件(対前年比3件減)、損害額は3億660万円(同5,649万円増)、死者は2人(同増減なし)、負傷者は23人(同18人減)となっている(第1−2−7図)。 また、危険物施設別の漏えい事故発生状況をみると、給油取扱所での漏えいが74件、移動タンク貯蔵所での漏えいが72件、一般取扱所での漏えいが68件、地下タンク貯蔵所での漏えいが60件となっており、これらの漏えいは、全体の82.8%を占めている(第1−2−8図)。 さらに、危険物施設における漏えい事故で漏えいした危険物をみると、331件の事故のうち330件(全体の99.7%)が第4類の危険物となっている。これを危険物の品名別にみると、第3石油類133件、第2石油類132件、第1石油類52件等の順となっている(第1−2−9図)。
(2)漏えい事故の発生原因 平成14年中に発生した危険物施設における漏えい事故の発生原因を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が150件(全体の45.3%)と最も多く、物的要因が139件(同42.0%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が42件(同12.7%)となっている(第1−2−10図)。 漏えい事故の発生原因を個別にみると、腐食等劣化によるものが116件(全体の35.1%)と最も多く、次いで確認不十分によるものが63件(19.0%)、管理不十分によるものが41件(12.4%)となっている(第1−2−10図)。
(3)無許可施設の漏えい事故 平成14年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での漏えい事故の発生件数は、14件(対前年比3件増)、死者、負傷者はともになく、損害額は、87万円となっている。
(4)危険物運搬中の漏えい事故 平成14年中の危険物運搬中の漏えい事故の発生件数は16件(同4件減)であり、死者は2人、負傷者は2人となっている。なお、これらの漏えい事故による損害額は、1,847万円となっている。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関が行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として、危険物データベースを運用している。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならないとされている。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 また、危険物施設においては、危険物取扱者以外の者は、危険物取扱者の立会いがなければ危険物を取り扱ってはならず、危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。さらに、一定の危険物施設では、危険物保安監督者を選任し保安監督を行わせる等、危険物の貯蔵又は取扱いに関する保安体制の整備を図らなければならない。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、一定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱いについては、市町村条例で貯蔵・取扱いに関する基準を定め、規制することとされている。 なお、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務は、機関委任事務制度の廃止に伴い、平成12年4月1日から都道府県又は市町村の自治事務とされている。
(2)危険物規制の最近の動向 危険物の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバー自らが、給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした。セルフスタンドは、平成15年3月31日現在2,507施設(対前年度比1,075施設増)が設置され、急激な増加を示している。 平成13年7月には、消防法が改正され、次のとおり危険物の範囲を見直した。ア) 平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第5類(自己反応性物質)の品名に追加した。イ) 平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲を250度未満とした。 また、平成13年9月1日に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえ、違反是正の徹底、防火管理の徹底、避難・安全基準の強化及び罰則の見直し等を内容とする消防法の一部改正が行われ、これと併せて危険物施設の違反処理についても、措置命令等を発した場合の公示の義務付け、行政代執行に係る規定の整備などが行われた。これを受けて、平成14年10月に「危険物施設立入検査マニュアル」及び「危険物施設違反処理マニュアル」をとりまとめ、危険物施設における基準遵守の確保を推進しているところである。 さらに、最近における大規模な産業災害の続発を踏まえ、地震時における大規模屋外タンクの安全確保、ごみ固形化燃料(RDF)等の可燃物を大量に貯蔵・取扱いする施設の安全確保等を図るため、緊急に調査・検討を行っているところである(緊急報告II)。
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成15年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は、53万484施設(対前年度比7,341施設、1.36%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が、12万1,795施設(全体の23.0%)と最も多く、次いで給油取扱所の8万2,371施設(同15.5%)、移動タンク貯蔵所の8万194施設(同15.1%)等となっている(第1−2−1表、第1−2−11図)。 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は、52万992施設(全体の98.2%)となっている。 危険物施設数の最近における推移をみると、全ての施設において減少傾向にある(第1−2−1表、附属資料29)。イ 危険物施設の規模別構成 平成15年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が、40万6,459施設(全体の76.6%)を占めている(第1−2−12図)。
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければできない。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成15年3月31日現在652万6,614人と広く国民の間に定着してきており、広く危険物に関する知識、技能の普及を図っている。今後とも、危険物の安全の確保に大きな役割を果たす危険物取扱者の資質の向上のための各般の施策を推進していくこととしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成14年度中の危険物取扱者試験は、全国で323回(対前年度比3回減)実施されている。受験者数は、53万5,153人(同8,950人増)、合格者数は、22万3,381人(同1万1,299人増)で平均の合格率は41.7%(同1.4ポイント増)となっている(第1−2−13図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が34万7,087人(全体の64.9%)と最も多く、次いで丙種の6万8,527人(同12.8%)となっており、この二種類の試験で全体の77.7%を占めている。合格者数でも、乙種第4類が11万5,189人(全体の51.6%)、丙種が3万7,686人(同16.9%)となっており、この二種類の試験で全体の68.4%を占めている。イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成14年度中の保安講習は、全国で延べ1,353回(対前年度比12回増)実施され、16万8,725人(同919人減)が受講している(第1−2−2表)。
(5)事業所における保安体制の整備 平成15年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で25万1,718事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものには、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1−2−14図)。 なお、危険物施設の許可の際の許可要件が維持されていない等の場合は、許可の取消し等ができる。また、著しく不適任と判断される危険物保安統括管理者及び危険物保安監督者については、市町村長等が解任を命ずることができる。
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが、義務付けられている。 平成14年度中に実施された保安検査は、295件(対前年度比28件減)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは、287件(同29件減)、特定移送取扱所に関するものは8件(同1件増)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成14年度中の立入検査は、26万3,560(対前年度比1万2,442減)の危険物施設について、延べ28万8,987回(同1万3,423回減)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成14年度中において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、317件(対前年度比103件増)となっている(第1−2−15図)。
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならないこととされている。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行うこととされている。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけである。 なお、新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく新東京国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)危険物施設等の安全確保の徹底ア 危険物施設の火災・漏えい事故は、平成6年頃を境に増加傾向に転じ、平成12年中に過去最悪となる511件を記録して以降、ほぼ同水準の高止まりの状態で推移している。このような状況を踏まえ、「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、関係業界や消防機関等により構成される連絡会を中心にして、事故に係る調査分析や事故防止技術の調査研究、各種情報の共有化を進め、官民一体となって事故防止を推進している。イ 効果的・効率的に事故防止を図るためには、過去の危険物事故等を教訓とし、的確に危険要因を抽出しておくことが必要であり、危険物事故や事故防止に関する情報を広く収集・分析して関係者の間で共有することが必要である。このため、危険物等の性状や消防活動要領等をデータベース化した「危険物災害等情報支援システム」、消防機関からの事故報告をデータベース化した「危険物等事故情報サブシステム」の拡充を推進している。ウ 近年における漏えい事故増加については、危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化が主な要因の一つとなっていることから、危険物施設全体に係る腐食・劣化に関する評価手法の確立を図るため、技術開発やデータの収集・整備等を進めることが必要である。エ 科学の進展等に伴い数多くの物質が新たに開発・生産されており、危険物と同様の性状を有していながらその潜在的危険性が認識されていない新規危険性物質の出現が懸念されるところである。このため、新規危険性物質の早期把握に努め、火災・爆発等の防止を図っていくことが必要である。オ 最近続発している産業災害を踏まえ、大規模屋外タンクの地震時安全やごみ固形化燃料(RDF)関連施設の防火安全等を確保するため、技術基準の見直しを含め安全対策の充実を図る必要がある。 また、産業災害の背景要因として、厳しい経済状況下における人員や設備投資等の削減、雇用形態の変化や保守管理業務のアウトソーシング等が指摘されていることから、幅広い視点から実態を把握し、有機的に対策を講じるため、関係省庁とも連携して調査・検討を行い、再発防止を推進していく必要がある。
危険物事故防止に関する基本方針及び平成15年度危険物事故防止アクションプラン 危険物事故の発生状況が過去最悪の水準を推移していること等を踏まえ、危険物施設における火災・漏えい事故の大幅な低減を図ることを目的として、官民共同の行動指針・計画に基づき、総合的な事故防止対策を推進することとしました。[概要] ○ 危険物保安分野では初となる官民共同の行動指針・計画として、「危険物事故防止に関する基本方針」及び「平成15年度危険物事故防止アクションプラン」が危険物等事故防止対策情報連絡会において平成15年5月にとりまとめられました。 ○ 危険物関係業界・団体、研究機関、消防関係行政機関等の連携・協力の下、共通の認識・目標に基づき、官民一体となって総合的な事故防止対策を強力に推進します。平成15年度は、これまでの事故分析結果に基づき、地下タンク・配管等の環境・安全対策、製造所・一般取扱所の火災対策、セルフスタンドなど給油取扱所における安全管理の3項目を重点として、事故防止対策を推進しています。 ○ アクションプランの実施状況や危険物事故の低減状況等については、連絡会を中心に、継続的にフォローアップが行われます。<主な推進方策>(1) 危険物事故に関する調査分析及び事故情報の共有化の推進(2) 危険物事故防止及び危険物災害に対応する消防活動支援に関する情報整備(3) 新規危険性物質に関する情報の把握及び安全対策の推進(4) 新技術・新素材の活用、危険物施設の老朽化対策など事故防止技術の研究開発及び普及の推進(5) 危険物保安エキスパートの育成及び資質の向上(6) 危険物保安に関する基準遵守及びその履行状況に関する客観性・透明性の確保(7) 危険物保安に関する安全意識の高揚
(2)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、新たな危険物品の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、諸外国で導入が進んでいる危険物施設に係る新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行うとともに、安全性の確保に十分配慮しつつ危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を図っていく必要がある。 また、燃料電池自動車への燃料供給のため、水素ステーションのガソリンスタンドへの併設などインフラ整備に係る技術基準を整備するとともに、携帯電話やノートパソコン等への利用が期待されるメタノールを用いた超小型燃料電池(マイクロFC)への対応を図っていく必要がある。 さらに、バイオマス燃料については、地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)等に基づき検討が進められ、消防庁としても同戦略推進会議に本年9月から参画しているところであり、その安全利用を確保するため、危険物保安に係る検討を行っていく必要がある。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成14年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は、121件であり、前年(86件)と比較すると、35件の増加となっている(第1−3−1図)。 全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、16件の災害により、死者4名、負傷者31名が発生している。損害額は、9億4,107万円で、前年に比べ6億9,999万円の増加となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が71件(58.7%)、設備の劣化や故障などの物的要因が42件(34.7%)となっており、前年度と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が88件(うちレイアウト規制対象事業所77件)であり、全体の72.7%を占めている。1事業所当たりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が37.0%と最も高い(第1−3−1表)。
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、鉄鋼業関係34件(全体の28.1%)、化学工業関係33件(同27.3%)、石油製品・石炭製品製造業関係24件(同19.8%)となっている。
3 出光興産(株)北海道製油所における災害及び対応の状況 平成15年9月26日に発生した平成15年十勝沖地震により、北海道苫小牧市の出光興産(株)北海道製油所において保有するタンク105基のうち、54基が何らかの損傷を受け、うち43基に油漏れが発生し、浮き屋根式タンク2基の火災が発生した。 タンク火災への対応及びその後の2次災害防止のための予防措置の状況は以下のとおりである。
(1)原油タンクリング火災ア 事故の概要 地震発生直後の4時50分頃、原油を貯蔵する浮き屋根式タンク(直径:42.7メートル、高さ:24.4メートル、許可容量:32,778kl、残量:約30,000kl)のリング火災及び当該タンク付近の配管から漏油火災が発生し、同日、12時09分に鎮火した。イ 消防機関の活動 苫小牧市消防本部、北海道内応援消防本部及び自衛防災組織から30隊94名が出動し消火に当たったほか、緊急消防援助隊として札幌市消防局から4隊17名が出動し情報収集等に当たった。
(2)ナフサタンク全面火災ア 事故の概要 地震発生から約54時間が経過した平成15年9月28日10時45分頃、ナフサを貯蔵する浮き屋根式タンク(直径:42.7メートル、高さ:24.4メートル、許可容量:32,779kl、残量約26,000kl)で全面火災が発生し、約44時間後の9月30日6時55分に鎮火した。 この火災で、北海道庁は、北海道石油コンビナート等防災計画に基づき、北海道胆振支庁長を本部長とする現地本部を設置、連絡調整等に当たった。イ 消防機関の活動等 苫小牧市消防本部、北海道内応援消防本部及び自衛防災組織から62隊206名、また、緊急消防援助隊として、札幌市消防局、東京消防庁等から31隊97名が出動し消火に当たった。ウ 泡消火薬剤の調達 この火災は、発災から鎮火までに長時間を要したことから泡消火薬剤が不足し、このため消防庁は、全国の消防機関等に提供を依頼するとともに、防衛庁に対し、自衛隊輸送機による輸送支援を要請した。要請を受けた自衛隊では、入間、小牧、浜松、春日の各基地からC−1輸送機等延べ31機で千歳空港に輸送、現地まで車両で搬送した。
(3)タンクの損傷に伴う火災予防措置について 出光興産(株)では、地震により損傷を受け、油面が空気にさらされているタンクにおいて火災が発生することを防止するため、危険度の高い6基のタンクを中心に、消火薬剤による油面の泡シールや、タンク内容物の抜き取り等の火災予防措置を行った。ア 関係機関の対応 消防庁は、9月30日から10月24日まで、消防研究所、危険物保安技術協会の専門家を含め52名の職員等を派遣し、技術的支援を行った。また、北海道庁は、消防庁を含む関係機関及び出光興産(株)を構成機関とする災害予防対策現地本部を10月2日から10月22日まで設置し、一連の対策に当たった。イ 消防機関の活動 北海道広域応援隊(延べ347隊1,217名)、緊急消防援助隊(延べ328隊1,245名)自衛防災組織(延べ184隊304名)が二次災害防止のための放水体制の確保等の活動を行った。ウ 泡消火薬剤の調達 火災予防措置に必要な泡シールのための泡消火薬剤が不足したため、消防庁では都府県に対して提供について要請するとともに、在日米軍に対して提供の調整を行った。その結果、在日米軍からの171klを含む570klの提供を受けた。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質が大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立が図られている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している地域については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の84地区(平成15年4月1日現在)が指定されている(第1−3−2図)。 また、平成15年4月1日現在、第1種事業所420事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は207)、第2種事業所349事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料31のとおりである。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の基準」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を推進するため、特別防災区域所在市町村における大型化学消防車等の整備について国庫補助を行っている。 平成15年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車102台、大型高所放水車87台、泡原液搬送車100台、泡消火薬剤3,538kl、消防艇25艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備25基、泡放水砲21基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成15年4月1日現在、全事業所(769事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか84の共同防災組織、68の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員5,504人、大型化学消防車161台、大型高所放水車122台、泡原液搬送車147台、大型化学高所放水車42台、油回収船38隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成15年4月1日現在、流出油等防止堤が189事業所に、消火用屋外給水施設が572事業所に、非常通報設備が769の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」、「防災要員教育訓練指針」等を示しており、引き続き自衛防災体制の充実を図る。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特別防災区域全体に占める割合は、石油にあっては57.5%、高圧ガスにあっては98.2%となっており、大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成15年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる208(平成14年4月1日現在)の事業所のうち平成14年度中の新設及び変更の届出件数は、16件であった。 また、平成14年度中の確認件数は、19件であった(第1−3−3図)。
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じた。さらに新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間は、石油コンビナート等災害防止法では3月としているところを関係省庁の協力を得て平均1月としている。
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 総合的な災害対策の推進 石油コンビナート等特別防災区域は、大量の危険物等が集積している区域で、ひとたび火災等が発生した場合には甚大な被害となることが懸念されることから、「消防法」や「高圧ガス保安法」等の規制に加えて「石油コンビナート等災害防止法」により、特定事業者に対して自衛防災組織の設置の義務付けや事業所内の施設配置を規制(レイアウト規制)することにより、災害の拡大防止を図ることとしている。 また、同法により、道府県に「石油コンビナート等防災本部」が常設されており、消防機関をはじめとした防災関係機関、特定事業者が一体となって防災体制を確立する体制が整備されている。 こうした中、平成15年9月26日に発生した十勝沖地震では、苫小牧市内の石油精製事業所において、多数の屋外貯蔵タンクの損傷、油漏れ等の被害が発生し、さらに、地震発生から約54時間が経過した後に浮き屋根式タンクの全面火災が発生した。 このたびの災害では、従来の想定とは異なる事象が散見され、いくつかの課題が顕在化したことから、消防庁では、緊急課題してとらえて対応していくこととしている。
(1)浮き屋根式タンクの地震に対する安全性 このたびの地震による浮き屋根式タンクの屋根の損傷は、やや長周期の地震動の影響によるものと考えられ、苫小牧地区の地盤構造特性により影響を受けたものと推定される。 他の地域においても同様の被害が起こり得る可能性も否定できないことから、やや長周期の地震動による影響により損傷を受けにくい浮き屋根構造等とする措置を講ずる必要がある。 また、旧基準で設置された大規模な屋外タンクの耐震改修についても地震危険度を考慮した改修の促進を図ることが必要である。
(2)浮き屋根式タンクで発生した新たな態様の火災(全面火災) 我が国では、浮き屋根式タンクの全面火災の発生事例がなかったことから、これまで、リング火災を念頭に置いた消火戦術を予定していたが、このたび、全面火災が発生したことを受け、浮き屋根式タンクの全面火災を新たな火災事象としてとらえた中で消防戦術を検討・準備する必要がある。
(3)浮き屋根式タンクの全面火災対応資機材の配備 浮き屋根式タンクの全面火災は、リング火災と比較して燃焼面の面積が広く大量の泡消火薬剤を集中投入する必要があったことなどから、鎮火までに長時間を要した。また、火災が長期化したことに伴い泡消火薬剤を大量に消費し、払底する事態に陥った。こうしたことから、浮き屋根式タンクの全面火災への対応可能な資機材の導入について検討を行い、早急に必要な箇所に配備する必要がある。
(4)泡消火薬剤の備蓄増強 このたびの地震において発生した2基のタンク火災に対する消火活動や破損したタンクの二次災害の発生防止のための泡シール対策のため、大量の泡消火薬剤が必要となったことから、消防庁では、全国規模での泡消火薬剤の調達を行った。 こうしたことを踏まえ、災害対策に必要となる泡消火薬剤の備蓄方策の検討を行う。
(5)特定事業所における防災体制の充実、強化 特定事業所に設置している自衛防災組織は、災害発生時における災害の発生又は拡大を防止するために必要な業務を行うこととしているが、このたびの地震では、1つの事業所で多数のタンクに損傷等の被害が発生し、また、複数のタンク火災が断続的に発生するなど、甚大な被害が発生した。こうした事態に対して適切に対処するためには、防災管理者を中心とした防災体制の充実、強化が必要であることから、特定事業所における防災体制について全般的な見直しを行い、適切な措置を講ずる必要がある。 近年、東海地震、東南海・南海地震等の発生が危惧されていることから、大規模な災害が発生した場合において迅速、かつ、的確な対応が可能となるよう、石油コンビナート等災害防止法令及び消防法令の改正も視野に入れ、平成15年中を目途に具体的な方策等についての検討・取りまとめを行うこととしている。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万klを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
石油コンビナート等災害防止法における「構造改革特区」への対応 構造改革特別区域法が平成15年4月1日に施行されました。この法律では、石油コンビナート等災害防止法における「石油コンビナート等特別防災区域における新設事業所等の施設地区の配置等に関する省令」(以下「レイアウト省令」といいます。)第10条(セットバック等施設地区の配置の規準)、第11条(特定通路の幅員)及び第12条(配管ラックの高さ等通路の配置及び形状の規準)の規制についての特例措置を設定しています。 法施行後、三重県等(三重県、四日市市及び四日市港管理組合)からレイアウト省令等に関する特例措置が盛り込まれた構造改革特別区域計画の申請がなされ、関係行政機関の長(レイアウト省令に関しては総務大臣及び経済産業大臣)による「特例措置についての同意」の手続きを経た後に同計画は内閣総理大臣から認定されました。特例措置の内容等1) レイアウト省令第10条関係  セットバックを配置する代わりに施設の配置等に応じて適切な場所に消防活動用の空地を設ける。2) レイアウト省令第11条関係  特定通路の幅員を必要分確保する代わりに上記空地を設けるとともに施設の規模等に応じて適切な水幕設備を設ける。3) レイアウト省令第12条関係  配管ラックの高さにより通行が不能となる消防車両の迂回ルートを設ける。安全性について 三重県等から提案された代替措置は、円滑な消防活動と隣接施設地区への延焼防止効果において現行レイアウト規制で担保している安全性と同等の安全性が確保されており、当該事業所のレイアウト状況等を踏まえた総合的な安全性が検証されました。 消防庁では、今後同様の特区計画については、特区制度創設の趣旨に鑑みつつ、石油コンビナート等特別防災区域における防災の観点からの安全性の確保に十分配慮し、適切に対応していくこととしています。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成14年中の林野火災の件数は、3,343件(前年3,007件)、焼損面積は2,634ha(同1,773ha)、損害額は14億4,715万円(同11億2,022万円)であり、件数、焼損面積、損害額ともに、前年より増加した(第1−1−26表)。 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜採りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成14年も例外ではなく、3月に744件と最も多く発生しており、2月から4月までの間に、1,741件(年間の52.1%)の火災が集中して発生している(第1−1−31図)。
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、1) 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防2) 火災予防の見地からの林野管理3) 消防施設等の整備4) 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成14年度までに、38都道府県の933市町村にわたる229地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場、林野火災対策用資機材、林野火災工作車及び小型動力ポンプ付水槽車)の整備に対して国庫補助を行っている(第1−4−1表)。
林野火災発生危険度予測及び延焼シミュレーションシステムの開発研究 独立行政法人消防研究所では、従来から蓄積してきた林野火災研究の成果に基づき「林野火災発生危険度予測及び延焼シミュレーションシステム」を開発し、平成15年7月2日より運用を開始いたしました。 本システムは、全国の林野の地形及び植生のデータ並びに1日2回更新される気象予測データから、リアルタイムに全国の林野の火災危険度を予測するとともに、発生した林野火災の延焼の状況をシミュレートする機能を有するものです。本システムの利用は、インターネットに接続されたパーソナルコンピューターから、消防研究所のホームページ(http://www.fri.go.jp)のリンクを経由し可能となります。 さらに、気象要素と人口密度、火災発生密度、土地利用情報、植生情報などを組み合わせて、より詳細に火災発生危険度を予測する方法について現在研究を進めています。
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より低いものの、ひとたび発災し、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等へ被害が及ぶこともあり、ときには隣接市町村、隣接都府県に拡大することがある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、迅速に十分な消防力の投入を行うとともに、火災による被害を最小限に抑えることを目的として、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。近年、消防防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」(昭和61年)に基づく消防防災ヘリコプターの応援出動による空中消火が増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1−4−1図のとおりである。 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保できるとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、併せて林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策としては、特に出火防止の徹底が重要である。消防庁としては、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。1) 林野周辺住民、入山者等の防火防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。2) 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。3) 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。4) 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じた山火事予防を呼びかけている。
(2)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、1)異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、2)森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、3)林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、4)林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、5)林野火災における消火・広域応援体制に関する調査など林野火災に係る調査研究を行ってきているが、平成14年度には、「林野火災対策に係る調査研究会」を林野庁と共同で開催し、主に林野火災の予防対策のあり方や、ヘリコプターによる空中消火のあり方について検討を行った。その成果を踏まえて、消防庁では、各都道府県に対し、具体的な運用にあたっての通知を行い、研究成果の活用を図ることとしている。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後積極的に講じる必要がある。1) 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。2) 気象台から発せられる気象情報や火災気象通報を踏まえて、林野火災発生の可能性を勘案し、必要に応じて、火気取扱いの注意喚起や制限など、火災警報の効果的な発令を含めて適切に対応すること。3) 林野火災を覚知した場合、早急に近隣の市町村に対して応援要請を行うなど、林野火災の拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するため、速やかな事前通報及び派遣要請に努めるとともに、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術の徹底を図ること。また、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。4) 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図を、GIS(地理情報システム)の活用も視野に入れて整備するなど、関係部局においてその共有を図ること。5) 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大防止を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成14年中の災害 平成14年中に発生した台風の数は、26個と平年(昭和46年から平成12年までの30年間平均)の26.7個と比較するとほぼ同数であった。また、日本列島への上陸数は3個であったが、7月中旬には台風第6号、第7号の上陸が相次ぎ、各地に住家の全・半壊や浸水など大きな被害をもたらした。 平成14年中の風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、前年に比べて減少(一部破損は増加)し、死者・行方不明者48人(前年88人)、負傷者472人(同990人)、全壊74棟(同86棟)、半壊259棟(同381棟)、一部破損5,440棟(同2,720棟)となっている(第1−5−1図)。 なお、主な風水害の状況は、以下のとおりである。ア 平成14年7月8日から7月20日までの間の暴風雨及び豪雨(台風第6、7号を含む。) 全国各地の広い範囲で、死者6人、行方不明者1人、負傷者39人、住家の全壊27棟、半壊55棟、一部破損415棟、床上浸水2,453棟、床下浸水8,400棟の被害が生じた。 これに対し、延べ7県468市町村で災害対策本部が設置された。イ 平成14年9月30日から10月2日までの間の暴風雨及び豪雨(台風第21号を含む。) 全国各地の広い範囲で、死者4人、負傷者108人、住家の全壊14棟、半壊61棟、一部破損3,441棟、床上浸水304棟、床下浸水1,922棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県103市町村で災害対策本部が設置された。
(2)平成15年1月から9月までの災害 7月18日から7月21日にかけての梅雨前線による大雨により西日本各地で、死者23人、負傷者25人、住家の全壊51棟、半壊56棟、一部破損161棟、床上浸水3,558棟、床下浸水4,188棟の被害が生じた(第1−5−2図)。 これに対し、延べ1県33市町村で災害対策本部が設置された。 また、8月上旬に上陸した台風第10号により全国各地で、死者17人、行方不明者2人、負傷者94人、住家の全壊28棟、一部破損559棟、床上浸水389棟、床下浸水2,009棟の被害が生じた。 これに対し、延べ4道県367市町村で災害対策本部が設置された。 さらに、9月中旬に上陸した台風第14号により全国各地で、死者3人、負傷者95人、住家の全壊13棟、半壊46棟、一部破損312棟、床上浸水71棟、床下浸水292棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県19市町村で災害対策本部が設置された。
[風水害対策の現況] 消防庁では、毎年、出水期を前に、各都道府県に対し、風水害に対する警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知を発し、さらに、台風の襲来時には、台風警戒情報を地方公共団体に送付して、警戒の強化を呼びかけている。 しかしながら、洪水については、近年、大都市などでも時間雨量100mmを超えるような短時間の集中豪雨があり、福岡や東京の地下街あるいは地下室では水死者まで発生した。また、平成12年9月の東海豪雨災害等、都市部の水害の発生により、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態が起こっている。 こうした事象を受けて、地下空間における浸水対策については、国土庁(現・内閣府)、運輸省、建設省(以上、現・国土交通省)と合同で、平成10年11月に「地下空間洪水対策研究会」を発足し検討を進め、平成11年6月末に福岡市の地下街等の浸水被害が発生したことをも踏まえて、平成11年8月に対策が取りまとめられた。そして、都市部における浸水被害対策を総合的に推進するために、都市洪水想定区域又は都市浸水想定区域において、市町村防災会議が、浸水情報の伝達方法、避難場所、地下街への情報伝達方法等を市町村防災計画に定めて住民に周知することや、地下街等の管理者が浸水時の避難等に関する計画作成及び公表に努めることなどを盛り込んだ、特定都市河川浸水被害対策法が平成15年6月に成立した。 さらに、前述の被害を軽減させるため、平成13年6月に1)これまで国直轄河川で行われていた洪水予報を新たに都道府県が管理する河川についても行うこと、2)国及び都道府県は浸水想定区域を指定及び公表すること、3)市町村は浸水想定区域ごとに洪水予報の伝達方法、避難場所等を定め、住民に周知させるよう努めること等を主旨とする水防法の一部改正が行われ、地方公共団体に対し、同法の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 土砂災害としては、平成5年8月の豪雨災害や平成8年12月の蒲原沢土石流災害、平成9年7月の鹿児島県出水市の土石流災害、平成11年6月下旬から7月上旬の豪雨災害、また平成15年7月の豪雨による熊本県水俣市ほかの土石流災害(第1−5−2図)など近年、がけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害により、多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきたが、平成5年8月の豪雨災害等を契機に、土砂災害危険箇所の周知徹底等、特に重点的に推進すべき事項について、平成6年4月に関係省庁による申合せがなされている。また、平成11年6月下旬から7月上旬の豪雨災害を踏まえ、中央防災会議において、特に、効果的な事前周知、気象情報等の収集伝達体制の強化という情報提供の観点から、豪雨災害対策のあり方について検討が行われ、気象情報の収集体制の強化等、重点的に進めるべき豪雨災害対策について提言がなされた。さらに、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月に施行された。この法律に基づき「土砂災害防止対策基本指針」が定められたことから、地方公共団体に対し、法及び指針の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 また、高潮についても、平成11年9月に熊本県不知火海岸で、高潮の被害により12名の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定した。 こうした災害対策の進展に対応した各種提言等を踏まえ、中央防災会議の防災基本計画専門調査会(座長:伊藤滋都市防災研究所理事長)及び同調査会内に編成されたプロジェクトチームにより防災基本計画の修正の検討が行われた。そして平成14年4月23日に中央防災会議において、防災基本計画の風水害編(洪水、土砂災害、高潮対策)等についての修正が了承された。 これを踏まえ、消防庁では、中央防災会議幹事会副会長名により、・地域防災計画の修正に当たっては、各地方公共団体の自然的、社会的条件等を十分に勘案し、地域の実情に即したものとするとともに、具体的かつ実践的な地域防災計画とすること・修正後の防災基本計画は、災害に関する経験と対策の積み重ね等により随時見直し、必要に応じて修正を加えていくこととしており、地域防災計画についても、この趣旨を踏まえ、適宜見直しに取り組まれたいこと等について通知した。
(1)防災体制 都道府県及び市町村に対しては、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や、地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制を整備するよう要請している。特に、平成15年6月には、避難勧告等の基準や災害弱者への防災情報の連絡体制の再点検、地下空間における浸水対策への配慮、災害対策本部の速やかな設置を行うことなどにより、万全の体制を整えるよう地方公共団体に対し要請した。 また、災害時における情報の重要性にかんがみ、防災行政無線網等の情報通信体制の整備を促進するとともに(第2章第9節参照)、平成7年度から、降雨情報等収集分析装置の整備について国庫補助を行い、雨量情報の収集体制を強化するなど、警戒避難体制の整備充実を図っている。 積極的な防災訓練の実施についても、各地方公共団体に対して要請しており、平成14年度中には、風水害を想定した防災訓練を都道府県では21団体で32回、市町村では延べ810回実施している。
(2)災害危険箇所に対する措置 過去に災害履歴を持たない地域においても、土地利用の状況や降雨状況の変化により災害が発生するおそれがあることから、地方公共団体に対し、これらの地域を含めて災害危険箇所を把握するとともに、その情報については、標識、広報誌、ハザードマップ、説明会等様々な媒体や機会を通じて地域住民へ周知徹底を図るよう要請している。 なお、地域防災計画に記載されている災害危険区域で施行される自然災害防止事業に対しては、地方債措置と元利償還金に対する地方交付税措置が講じられている。
(3)2次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては、十分な警戒等を行うよう、地方公共団体に対して要請している。
(4)災害弱者関連施設 災害弱者関連施設への対応としては、平成10年8月末の豪雨での救護施設「からまつ荘」(福島県西郷村)の被災を踏まえ、平成11年1月に関係5省庁による共同通知を発出し、災害弱者関連施設を土砂災害から守るため国土保全事業の推進、当該施設に係る情報提供及び当該施設における防災体制の確立を要請している。これと併せて消防庁では平成10年度に、関係省庁、学識経験者等からなる「災害弱者施設の防災対策のあり方に関する調査検討委員会」を設置し、施設の土砂災害対策に関して行政(国・都道府県・市町村)の果たすべき役割、施設設置者が果たすべき役割などについて検討を行った。そして、これらの施設に対する情報伝達体制等を含めた今後の施策の方向を明らかにするとともに、各地方公共団体に対しては、その内容の周知を図る一方、地域防災計画の点検を行うよう要請している。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等による風水害は、毎年のように我が国の広い地域で大きな被害をもたらしている。 このため、各地方公共団体は、防災関係機関との連携を図りつつ、地形、地質、土地利用の状況、災害履歴等を勘案して、災害危険箇所の把握、避難場所及び避難路の確保、気象予警報、雨量、河川の水位状況等各種情報の的確な把握及びこれらに基づく適切な避難の勧告・指示等、警戒避難体制の強化に努める必要がある。また、避難勧告・指示の発令の基準やその伝達事項・方法、避難場所、避難路や方法等については、地域防災計画に具体的に定め、広報誌等様々な広報媒体により住民への周知を図っていくことが重要である。この際には、高齢者、障害者、乳幼児、傷病者など自力避難の困難ないわゆる災害弱者にも十分配慮した対策を講じることが求められている。 また、風水害による被害を最小限にとどめるためには、住民自らの災害に対する備えが不可欠であり、住民への防災知識の普及啓発に引き続き努めるとともに、自主防災組織の育成強化を進める必要がある。
第6節 火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向]1 三宅島噴火災害 平成12年7月8日、14日、15日、8月10日、13日〜16日に小規模な噴火が起こり、8月18日には、今回の一連の噴火で最大規模の噴火が発生し、さらに29日にも18日に次ぐ規模の噴火があった。この活動について気象庁は、同年8月31日に、「当面これと同程度かこれをやや上回る規模の噴火が繰り返し起こる可能性があり、火砕流に警戒が必要」との見解を示した。 三宅村では、8月31日の気象庁の見解を受け、9月2日には、防災及びライフライン関係要員を除く全住民(三宅村人口3,855人:平成12年8月1日住民基本台帳)に対し、島外への避難指示を行い、全対象住民が島外への避難(9月2日〜4日にかけて実施)を行った。 消防機関の対応としては、平成12年6月27日から7月2日までの間に東京消防庁が応援部隊を自衛隊・海上保安庁の輸送協力により三宅島へ派遣し、地元消防や警察と連携し、道路状況の調査、一時帰宅の支援、道路修繕支援活動、ヘリコプターによる救援物資の搬送等を行った。また、同年8月29日以降は応援部隊を現地派遣して地元消防等と連携し、救急搬送、住民の島外避難の支援等を行ったほか、住民避難後も、警戒巡視、夜間島内滞在時の安全監視等を行っている。 平成13年5月28日に気象庁は、「大規模な噴火の可能性は低いが、火山ガス及び泥流に対する警戒が必要である。」との見解を示した。これを受けて、同年7月11日から13日にかけて泥流等被災家屋対象者(74戸)の一時帰宅(現状確認)が実施され、さらには9月17日から26日及び10月2日から3日にかけて三宅村村民の希望者に対する一時帰宅が実施された。 平成14年4月からは、島内における個人財産の保全、修繕を目的とした一時帰宅を定期的に実施しており、8月4日から6日には、小学校1年生〜高校3年生までの児童・生徒及び同伴する保護者(計446人)を対象に日帰り一時帰宅も実施された。 なお、長期避難生活を余儀なくされている島民の一時帰島に関しては、今後、火山活動の低下に伴う火山ガス放出量の減少に備え、火山ガスに対する安全確保対策を科学的に検討し、帰島の判断材料とするため、平成14年9月、「三宅島火山ガスに関する検討会」が設置され、平成15年3月に健康影響からみた二酸化硫黄濃度の目安と健康被害を最小限にするための安全確保対策についての提言がなされた。 また、平成15年3月には、火山ガスに対処する脱硫装置を備えた退避舎(クリーンハウス)が整備され、平成15年度から同施設を活用した滞在型一時帰宅(滞在期間5日間)が実施されており、4月から9月までの間に1,233世帯、1,940人が一時帰島した。
2 その他の火山災害(1)平成14年中の災害 平成14年中に噴火した火山は、5火山である。主なものとしては、桜島、諏訪之瀬島(ともに鹿児島県)は年間を通してたびたび噴火した。このうち、諏訪之瀬島では、8月に噴火活動がやや活発化し、火山灰を含む噴煙が最高で1,500mまで上がるのが観測された。 火山情報については、平成14年中は、浅間山(群馬県・長野県)及び諏訪之瀬島において各1回、計2回の臨時火山情報が発表されている。
(2)平成15年中の災害 三宅島では、山頂火口から二酸化硫黄を多量に含む火山ガスが依然として放出され続けており、その高さや勢いは長期的には低下傾向にある。二酸化硫黄の放出量も、1日当たり3,000〜1万t程度となっている。
[火山災害対策の現況] 平成15年1月の火山噴火予知連絡会において活火山の定義が見直されたが、新たな定義によると、我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が存在する。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの流出、津波等多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や第6次火山噴火予知計画(平成10年8月文部省測地学審議会建議)による火山を有する地域の市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。平成14年度においては、東京都三宅村の活動火山対策避難施設クリーンハウス(退避舎)に対して7億円の助成を行った。 また、地域の特色を活かした火山災害に強いまちづくりを推進できるように、活動火山情報教育施設、大規模避難宿泊施設、避難休憩施設、活動火山情報表示施設等の火山対策施設について、防災基盤整備事業の対象としている。 さらに、平成12年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動により災害が発生した際、地域住民が迅速に避難できるよう、被害が想定される区域や被害の程度、さらに避難場所、避難経路等の情報を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害弱者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。その一方で消防庁は、平成13年から富士山火山防災協議会に参画するとともに、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」の開催を行っている。 現在、富士山火山防災協議会の下に設置された富士山ハザードマップ検討委員会において、富士山防災対策の基本となる火山ハザードマップが作成されている。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で80団体が整備している。 また、これらの団体においては、適宜見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。特に、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、北海道恵山、雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳、桜島の10火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、9火山の協議会では、それぞれ火山の爆発に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。 また、消防庁では平成14年度に、山体の大きな富士山火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成14年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県7団体で延べ8回、市町村では延べ42回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を引き続き推進していくことが重要である。特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布すること等により、平常時から住民に対し、防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要がある。 消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請し、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図ることの必要性を示している。 なお、平成12年の有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
(2)住民への情報伝達体制の整備 緊急火山情報をはじめとする火山情報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するため、防災行政無線(同報系)は非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、77%(平成15年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告や指示を行う必要がある。また、あらかじめ、情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておく必要がある。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害弱者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日頃から連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じ、登山規制、立入規制等の措置をとることができるように、関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成14年1月から12月までの間に震度1以上が観測された地震は、1,253回(前年1,513回)、このうち、震度4以上を記録した地震は28回(前年37回)で、いずれも前年を下回った(第1−7−1表)。これは、有珠山噴火等に伴う地震(震度1以上1,205回、うち震度4以上45回)、三宅島近海及び新島・神津島近海の火山活動等に伴う地震(震度1以上1万4,253回、うち震度4以上253回)、鳥取県西部地震及び当該地震の余震(震度1以上1,064回、うち震度4以上15回)等により震度1以上が観測された地震が1万7,000回以上発生した平成12年を除く過去数年における平均的な回数である。
(1)平成14年以降の主な地震の概要 平成14年1月から15年9月までに震度4以上を記録した地震は、第1−7−2表のとおりであり、主な地震災害の概要は、以下のとおりである。ア 宮城県沖を震源とする地震 平成15年5月26日18時24分頃、宮城県沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。 この地震により、岩手県大船渡市、宮城県石巻市等で震度6弱、青森県階上村、岩手県陸前高田市、宮城県気仙沼市、秋田県西仙北町、山形県中山町等では、震度5強を記録した。 この地震による被害は、東北6県に及び、負傷者174人、住家の全壊2棟、半壊21棟、一部破損2,404棟となっている。イ 宮城県北部を震源とする地震 平成15年7月26日には宮城県北部を震源とし、震度6弱以上を観測した地震が3回発生した。 まず、0時13分頃、マグニチュード5.6の地震が発生し、この地震により宮城県鳴瀬町、矢本町で震度6弱、鹿島台町、南郷町で震度5強、石巻市、松山町等で震度5弱を記録した。 次に、7時13分頃、マグニチュード6.4の地震が発生し、この地震により宮城県矢本町、南郷町、鳴瀬町で震度6強、涌谷町、河南町、小牛田町、桃生町、鹿島台町で震度6弱、石巻市、古川市等で震度5強を記録した。 さらに、16時56分頃、マグニチュード5.5の地震が発生し、この地震により宮城県河南町で震度6弱、南郷町、涌谷町で震度5強を記録した。 これらの地震による被害は、宮城県を中心に負傷者677人、住家の全壊1,270棟、半壊3,743棟、一部破損11,243棟となっている。ウ 平成15年(2003年)十勝沖地震 平成15年9月26日4時50分頃、釧路沖を震源とするマグニチュード8.0の地震が発生した。この地震により北海道幕別町、釧路町、新冠町、浦河町等で震度6弱、釧路市、別海町、更別町、厚真町で震度5強を記録した。 さらに6時08分頃、十勝沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。この地震により北海道浦河町で震度6弱、新冠町で震度5強を記録した。 これらの地震による被害は、北海道を中心に行方不明者2人、負傷者849人、住家の全壊101棟、半壊127棟、一部破損1,588棟となっている。
(2)平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成14年12月26日現在、人的被害は死者6,433人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1−7−3表、第1−7−4表、第1−7−5表、第1−7−1図)。
2 外国の地震災害 平成14年1月から平成15年9月までの主な地震は、第1−7−6表のとおりである。
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。また、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めている。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、大規模災害時における人命救助活動等をより効率的かつ充実したものとするために緊急消防援助隊を発足させた。また、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しを要請した結果、すべての都道府県において計画が見直されたが、市町村における計画の見直し実施率は約72%であることから、引き続き、地域防災計画が発災時に迅速かつ適切な応急対策の実施ができる実践的なものとなるように見直しを要請している。さらに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等大震火災対策施設等の整備や大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 また、阪神・淡路大震災での貴重な経験や教訓は、次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業や施策の企画・立案、日々の防災活動に役立てる必要があることから、平成13年6月から運用を開始した「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)の充実等により地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 一方、これら国庫補助事業等のほか、公益法人による震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備に対する助成事業も行われている(第1−7−7表)。
(1)地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成された。同計画に基づき、平成13年3月31日までの5年間に避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集対策等が実施された(実績額14兆1,175億円:達成率76.3%)。国は同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 各都道府県は、同法が平成13年3月に一部改正され、この特例等の適用期限が平成18年3月31日まで延長されたことにより、平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画を作成し、引き続き地震防災緊急事業を実施している(計画額14兆1,066億円:平成13年度末時点進捗率15.3%)。 なお、特例措置の対象となる消防庁関係の事業は、耐震性貯水槽、小型動力ポンプ付積載車、海水等利用型消防水利システム、緊急消防援助隊関係の資機材、防災行政無線・画像伝送システム、給水車、電源車、備蓄倉庫及び震災初動対応資機材の整備であり、国の負担割合は2分の1となっている。
(2)東海地震対策ア 東海地震対策大綱の決定 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法の規定に基づき、地震防災対策強化地域に指定された6県167市町村においては、東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画等に基づき、切迫した東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 平成14年4月には大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討した結果、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、従前の6県167市町村から8都県263市町村(合併により平成15年4月1日現在256市町村)に拡大された。 この新たな指定を受けた都県及び市町村においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組みがなされている。 このような状況を踏まえ、平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月29日の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。大綱の主なポイントは、1)被害軽減のための緊急耐震化、2)地域における災害対応力の強化、3)警戒宣言前からの的確な対応、4)災害発生時における広域的防災体制の確立の4点であり、これらを踏まえた防災関係機関・地方公共団体等による的確な対応が求められている。 また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月28日の中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同日、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−7−2図)。これは最近の科学的な知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)による変化に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりも前に今後の推移について説明可能な段階が設定できるとの考えから、これまでの情報発表の仕方を見直したものであり、基本計画修正の中心的な部分である。新たな情報発表の主なポイントは、これまで防災関係機関の防災対応のきっかけとして位置づけられていた「判定会招集連絡報」を廃止し、現行の観測情報を2段階に分け、このうち東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合に「東海地震注意情報」を発表し、これを防災対応のきっかけとするという部分であり、具体的には、この情報を基に、政府は準備行動開始の意志決定とその旨の公表を行い、関係機関は準備行動の実施体制(準備体制)をとることとなる。基本計画の修正により、地方公共団体は地震防災強化計画の、民間事業者は地震防災応急計画の修正が必要であり、消防庁としても、これらの取組みに対して支援・助言に努めることとしている。 さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、1)緊急に実施すべき予防対策、2)緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、3)迅速な閣議手続き等について、平成15年7月29日に「東海地震緊急対策方針」として閣議決定された。消防庁としても、平成14年度に「東海地震に係る広域的な地震防災体制」の調査研究において、都道府県相互間地域防災計画の意義や必要性を示しており、今後とも、具体的な広域的地震防災体制づくりに向けた検討を行っていくこととしている。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。この特例措置の対象となる消防用施設は、消防施設強化促進法に規定する消防施設、小型動力ポンプ付積載車、可搬式小型動力ポンプ及び耐震性貯水槽であり、国の負担割合は2分の1となっている。さらに、これらの施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されるなど財政上の特例措置が講じられている。 地震対策緊急整備事業として、平成14年3月31日までの22年間に実施された避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等、整備された施設等の総事業費は、1兆1,152億円となっている。 なお、この法律は、これまで4回延長され、現在、平成16年度末までの計画に基づき事業が実施されている。
(3)東南海・南海地震対策ア 東南海・南海地震対策の充実・強化 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生し、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている(第1−7−3図)。(今後30年以内に発生する確率は、平成13年9月の地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、東南海地震50%、南海地震40%となっている。) このため、中央防災会議は、平成13年6月に、「東南海、南海地震等に関する専門調査会」の設置を決定し(平成13年10月に第1回委員会を開催)、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策について検討を行っており、平成14年12月に東南海・南海地震が同時に発生した場合の被害想定の一部公表、平成15年9月には被害想定の全体像が示された(第1−7−8表)。 また、地方公共団体においても、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、関係府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立し、東南海・南海地震に係る情報交換・収集を行っている。イ 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行 こうした中で、平成15年7月25日に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」、同法施行令及び施行規則が施行となり、平成15年7月28日、内閣総理大臣から中央防災会議に対して地震防災対策推進地域の指定について諮問がなされ、具体的な推進地域の指定に向けた検討が開始された。東南海・南海地震は、現時点では、その発生の直前予知は困難であり、大規模地震対策特別措置法の適用は困難であるが、これらの地震が発生した場合、死者約1万8千人、全壊棟数約63万棟、経済被害57兆円という、東海地方から九州地方にかけての広い範囲にわたって、相当甚大な被害の発生が予想される。今後、中央防災会議により東南海・南海地震防災対策推進基本計画が作成され、それを踏まえ、推進地域の指定を受けた地方公共団体は同推進計画、津波に係る地震防災対策を講ずべき者として基本計画で定められた民間事業者は対策計画をそれぞれ作成し、具体的な防災対策の推進に努めていくことが求められている。 また、推進地域の指定を受けた地方公共団体にあっては、必要に応じて、地震防災対策特別措置法に基づいた地震防災緊急事業五箇年計画の見直しを検討するなど、着実な計画推進に努める必要がある。 消防庁としては、府県連絡会との連携を通じた地方公共団体との情報交換、推進計画や対策計画の作成に向けた支援・助言のほか、特に甚大な被害が想定される津波対策の推進や効果的な広域的地震防災体制の構築に向けた検討など、東南海・南海地震対策の着実な推進に努めていくこととしている。
東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書 消防庁では、東海地震に係る地震防災対策強化地域(以下「強化地域」という。)における関係都県の広域応援の受入体制の充実と、都道府県をまたがる広域的な地震防災体制の充実を目的として、平成14年度に「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;廣井 脩 東京大学社会情報研究所教授)」を開催し、その検討結果として「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書」としてとりまとめました。 強化地域を一体の被災地ととらえ、発災前から想定される被害に応じた、応援項目、応援の発生時期等を取りまとめた広域応援(受援)プランの策定の考え方と、体制整備の基本となる都道府県相互間地域防災計画の意義に言及しています。●東海地震に係る広域的な防災体制の必要性 〜調査研究の目的等〜 平成14年4月、想定震源域等の見直し(中央防災会議東海地震対策専門調査会)による新たな強化地域が指定されました。(6県167市町村→8都県263市町村:合併により平成15年4月1日現在256市町村)これに伴い、下記の観点から既存の防災体制の見直しを行う必要が生じています。 ○ 強化地域の見直しに伴い、より広域的な応援体制の確保が必要 ○ 災害応急対策を効果的・効率的に活用するため、強化地域各都県の受援ニーズに応じて、限られた応援資源(消防力=緊急消防援助隊含む)の配分が必要 ○ 強化地域各都県が共通の認識に立ち応援要請内容を事前に具体的に想定することが必要(災害応急対策の種類・数量・時期、応援先の都道府県、緊急輸送ルート[=緊急消防援助隊の進出経路]、輸送手段、広域応援受入施設等)●既存の自治体間応援体制の課題 〜現状と課題〜 阪神・淡路大震災を契機として、一都道府県の対応能力を超えるような大規模災害に対応するための広域応援体制の実施に関する協定等が整備されましたが、その現状を調査のうえ、新たな想定震源域に基づく被害想定下での対応についての課題を検討しました。(1) 災害予防関係 平常時からの防災情報の共有化等(2) 警戒宣言発令時 警戒宣言発令時における広域応援部隊の事前配備体制の検討、警戒宣言発令前対策の明確化(3) 災害応急対策関係 国による広域応援体制の確保、国の防災活動拠点の整備都市部(名古屋市)での帰宅困難者対策の必要性、発災初期における迅速・的確な応援・受援体制の確保 訓練による体制の確認、応援部隊の活動拠点の確保、緊急輸送路、輸送手段の確保、道路等の円滑な交通規制の実施●実効ある広域応援プランの策定 〜広域応援プランのあり方〜 実効性のある広域応援プランの策定については、必要な災害応急対策の種類・数量を各県ごとに把握した上で、強化地域全体での見通しを立て、応援資源の配分を検討する必要があります。 当報告においては、基本的な応援・受援の考え方を整理した上で、災害発生時当初に求められる緊急消防援助隊の派遣に関する応援体制をプラン検討例として示しました。 また、物資調達の把握、緊急輸送の基本的な考え方も整理し、それぞれの段階における国、県の役割等についても言及しています。●今後の広域応援体制の取組み 〜都道府県相互間地域防災計画の意義〜 東海地震のような、単独の市町村での対応、県による調整だけでは適切な対処が難しい災害については、行政区域を越えて被災地全体を一つの災害対策オペレーション地域としてとらえ、あらかじめ、大規模かつ広域的な災害応急対応に当たっての連携・調整の基本方針、具体的な運用計画、さらには運用計画に伴う資機材の整備や訓練等の実施が必要となります。 こうした方策の一つとして、市町村や都道府県間の相互間地域防災計画を策定する意義は大きいと考えられます。 本報告書では、東海地震を対象とした都道府県相互間地域防災計画の構成(案)を示しています。
(4)南関東地域における震災対策 南関東地域は、人口、諸機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広範なものとなるおそれがある。この地域においては、200〜300年に一度、関東大震災クラス(M8クラス)の海溝型地震が発生し、この間にもM7クラスの直下型地震が数回発生する可能性が高いとされている(第1−7−4図)。このため、中央防災会議において昭和63年12月に「南関東地域震災応急対策活動要領」が、平成4年8月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が決定され震災対策を推進してきた。この要領等は、ともに阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大都市震災対策専門委員会の提言を受け、平成10年6月に全面的な見直しが行われるとともに、同要領等を補完し、応急対策活動の実践的な備えを推進するため、医療搬送、広域輸送等の課題分野ごとにアクションプランを検討することとされた。平成10年8月に中央防災会議主事会議において「南関東地域の大規模地震時における広域医療搬送活動アクションプラン第1次申し合わせ」(平成12年12月14日改正)が行われたほか、平成12年度から広域輸送プランや帰宅困難者対策についても調査・検討が進められている。 また、関係地方公共団体に対し、この活動要領及び大綱の趣旨等を踏まえ、震災対策用施設・設備の整備の促進、都市型地震災害の防止・軽減対策の推進、広域応援体制の整備充実、緊急輸送の確立、救助・救急体制の確立、情報伝達及び広報体制の確立、災害応急対策の強化、防災意識の啓発、周辺地域と一体となった広域的な防災訓練の実施など震災対策の充実を図るよう要請している。 こうした中、社会経済情勢の変化を踏まえ、平成15年9月、中央防災会議に「首都直下地震対策専門調査会」が設置され、首都直下の「地震像」の明確化や、直下地震を考慮した首都機能(行政、経済)確保対策の検討などが行われている。
(5)総合防災訓練 政府は、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法に基づき、東海地域に大規模地震が発生したとの想定及び南関東地域直下に大規模地震が発生したとの想定のもとに、中央防災会議で決定した「平成15年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成15年9月1日(防災の日)に総合防災訓練を実施した。 当該訓練には、指定行政機関等、関係指定公共機関及び地震防災対策強化地域と周辺地域の関係都県市が参加し、東海地震を想定した訓練は予知対応型訓練として、南関東地域直下の地震を想定した訓練は発災対応型訓練として行った。 なお、南関東地域直下の地震を想定した八都県市合同防災訓練に参加するため、緊急消防援助隊(北海道隊、愛知県隊、福岡県隊)を遠隔地から自衛隊の固定翼機により訓練会場(埼玉県入間市)に輸送した。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、職員の参集訓練、地震警戒本部及び災害対策本部の設置及び運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請などについて、消防防災無線網を活用した国と関係都県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。 また、消防庁に整備した衛星車載局車、現地活動支援車を訓練会場に派遣し、実践的な情報収集・伝達訓練を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成15年4月1日現在、都道府県では、すべての団体において震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,723団体、「節」等を設けているものが854団体、「その他の災害等」として扱っているものが116団体となっている。 なお、地域防災計画で「震災対策編」を設けて「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で737団体となっている。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会(文部科学省)が取りまとめ公表した主要98断層帯のうち39断層帯や南海トラフ、三陸沖から房総沖、千島海溝沿い及び日本海東縁部の4つの海溝型地震の長期評価(平成15年9月10日現在)を踏まえた地域防災計画の見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1−7−5図、第1−7−6図)。 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所の指定は逐年拡充されており、平成15年4月1日現在で、7万2,464箇所が指定されている(第1−7−9表)。 また、避難路については、262団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1−7−10表)。 これらの物資を備蓄するため、平成15年4月1日現在、都道府県においては43団体で616棟、市区町村においては2,376団体で2万278棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては20団体で411棟、市区町村においては144団体で896棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成14年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,923億5,798万円、また、市区町村が実施した事業費は1,019億2,553万円である(第1−7−11表)。
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成14年度においては、44都道府県と1,285市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が行われ、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1−7−12表、第1−7−13表)。 また、これらの訓練のほか、日頃から地域住民等に対し、各都道府県及び1,545市区町村において、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成15年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は1,014団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が401団体、地域防災計画へ記載している団体が812団体、津波災害を想定した避難地は5,355箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が241団体で実施されている。
(8)地震防災に関する日米間の交流 日米間で推進されている地震防災対策の専門家レベルでの交流は、平成7年6月のハリファクス・サミットを契機として充実・強化され、「コモン・アジェンダ(地球的展望にたった協力のための共通課題)」の「自然・人的災害の軽減」分野の重要な課題として位置付けられた。 これまで、平成8年にワシントン、9年に神戸市でそれぞれ日米地震政策シンポジウムが、平成10年にはシアトル市、11年には横浜市、12年にはサンフランシスコ市でそれぞれ日米地震防災政策会議が開催され、消防庁としても研究発表等を行うなど積極的に参加している(平成13年度及び14年度は、テロ等の関係で見送りとなったが、15年度中には事務レベルの会議が予定されている)。 また、平成14年度には、ハワイで開催された第7回日米都市防災会議に参加し、米国側防災機関との意見交換を実施するとともに、平成15年度には、同じくハワイにおいて津波対策に先進的かつ積極的に取り組んでいる関係機関(米国気象局太平洋津波警報センター/国際津波情報センター・ハワイ州防災局・ハワイ大学海洋地球科学技術学部)に対し、地震津波に対する行政の防災対応、住民の防災行動促進等に関する政策、対策の現状、方向性、成果等について、消防庁・内閣府・気象庁が合同で現地調査等を実施する予定である。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約52万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生し、住民の生命、身体、財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年度に地震防災対策特別措置法が制定され、同法に基づき都道府県においては平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を図るべく事業を進めてきたが、これを実施する都道府県及び市町村においては近年の財政事情の悪化等により、防災基盤の整備は計画どおりに進められていない状況にある(達成率76.3%)。 このような中で、災害に強い防災基盤の整備を図るためには、引き続き、平成13年度から17年度までを計画期間とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく事業を積極的に推進する必要がある。 特に、大規模災害時において、避難所や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などの耐震化については、各種国庫補助制度による助成のほか、単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。しかしながら、その耐震改修の進捗率は、平成13年4月1日現在で49%にとどまっていることから、避難所に指定されている施設や災害対策の拠点となる庁舎等を中心に、早急かつ計画的に取り組む必要がある(消防庁の調査結果によれば、地方公共団体では、平成14年度から平成17年度までに、学校施設をはじめとした公共施設約7,500棟の耐震改修を実施する計画である)。 また、個人住宅についても、阪神・淡路大震災の死者の8割以上が建物の倒壊等によるものであったことから、平成15年5月29日に中央防災会議決定された東海地震対策大綱においても、地域住民への意識啓発や耐震診断の徹底した実施等、対策を早急に推進することとしている。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組み 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部地震調査委員会の公表する地震活動の評価結果等を参考に地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、更に教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能の状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成15年4月1日現在、全国で、約7万1,000基を整備してきた耐震性貯水槽については、今後も整備を推進していく必要がある。特に耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債等の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑止するためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対策を現場へ迅速かつ的確に伝達することが重要である。 このため、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を行い、画像伝送等による情報収集・分析を行うなど、多面的な対策が求められている。しかしながら、ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているものの、その映像受信範囲は県庁所在地を中心とした地域に限定されている(第1−7−7図)ことから、財政負担が少なく機動性のある可搬型ヘリコプターテレビ受信装置等についても整備を進めていく必要がある。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある。 なお、平成14年度からは、国庫補助制度として高機能情報通信対応防災無線を追加し、無線回線のデジタル化による通信の高度化を促進している。
5 初動体制の整備 初動対応の如何が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすなど、大規模災害時は発災直後から情報の収集・伝達等の臨機応変で的確な対応が極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保等、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 このうち、地方公共団体における防災担当職員の宿日直体制の整備など夜間・休日も含めた対応については、職員の参集や他機関との連絡を迅速かつ円滑に行う体制が確保されている必要がある。現在、都道府県では16団体において職員の宿日直、13団体において防災専門の嘱託職員による対応、市町村では、1,751団体において職員の宿日直、1,217団体で消防機関による対応、このほか守衛や民間委託警備員等様々な対応がとられている。今後、適切な情報収集、連絡体制のあり方について、各地方公共団体の意見も踏まえながら、議論していく必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心に防災担当部局と一元化した組織体制を整備をしていく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定を適切に実施するとともに、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 また、阪神・淡路大震災を踏まえ、地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震等の切迫性が高まり、NBCテロ災害の発生等が懸念されることから、平成15年度の消防組織法の一部改正により法定化され、平成16年4月からは、大規模災害発生時等における全国的な観点からの緊急対応のため、消防庁長官による出動指示が可能となり、国の国庫負担制度についても定められるなど、緊急対応体制の充実・強化が図られている。
7 実践的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日頃から実践的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実践的な訓練になるよう努める必要があり、地域の総合的防災力向上のため、参加型図上演習(DIG)の実施についても推進していく必要がある。 また、大規模災害時にあっては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実践的なものとなるよう、訓練参加者が、時間経過を追って応急対策をシミュレーションし、付与された状況に基づいて意思決定を行っていく訓練など工夫をこらした訓練に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。
8 津波対策の推進 海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示すとともに、東南海・南海地震対策の一環として、同地震において大きな津波被害が予想される三重県尾鷲市、和歌山県湯浅町、同広川町、同太地町、高知県高知市の3県5市町をモデル地域として選定し、同指針やマニュアルに基づき関係県、市町及び住民が連携して、地域ごとの津波避難計画を策定する事業に取り組み、この成果を取りまとめ、全国の海岸線を有する市町村に配布しており、今後とも、地域ごとの津波避難計画の策定を推進することとしている。 一方で、この津波避難計画に基づく避難を円滑に実施するための避難地や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進や施設の安全性向上を図るなど、津波防災の観点からのまちづくりを推進する必要がある。 こうした津波避難計画の策定や津波防災施設の整備等を推進するとともに、日頃から、住民等に対する津波に関する防災知識や津波避難計画の周知、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、いつでも迅速かつ円滑な避難行動ができる体制を整備しておくことが重要である。 なお、平成15年9月に発生した十勝沖地震においては、津波避難勧告が適切に発せられなかった事例等も見受けられたことから、海岸線を有する市町村においては、地域防災計画上の規定の見直しや発災時の迅速な避難勧告の実施等、的確な津波避難対応に努めることが必要である。
迅速な津波避難対応について 消防庁では、9月26日に発生した十勝沖地震の発生後間もなく、適切な津波避難対応の推進を図る観点から、北海道沿岸部の市町村を対象とした緊急調査を実施しました。<調査の概要>1 対象市町村:北海道の海岸線を有する92市町村のうち、十勝沖地震の際、津波警報・注意報の発令された45市町村2 調査項目:市町村地域防災計画上の津波に関する規定、今回の地震における実際の対応 等<調査結果の概要>○ 地域防災計画上に津波避難計画規定のない市町村が見受けられました。○ 津波避難対象地区を明確に定めていない、若しくは、定めていても人員を把握していない市町村が見受けられました。○ 地域防災計画上の避難勧告を出す場合の基準について見直しを要するケースが見受けられました。避難勧告については、「大地震を感じた場合または津波警報が発表された場合」に出すことが望ましいのですが、不十分な規定が見受けられました。例)「津波警報発表時のみ」・・・・・発表待ちになり避難が遅れるおそれあり  「災害発生のおそれあり 等」・・表現が抽象的であり、どのような場合に勧告が出されるか意思統一がしづらい○ 津波警報が発表された市町村において、避難勧告が出されないケースもありました。*消防庁としては、大きな地震を覚知した場合または津波警報が発表された場合には避難勧告を発するよう通知しています。(平成11年7月22日付け消防震第28号消防庁長官通知)○ 避難勧告を出した市町村において、避難対象住民数(世帯数)と実避難数(市町村の把握数)に大きな乖離が見られました。(指定された避難所以外に避難した人数の把握が不十分であった) 等<消防庁の対応> 全国の海岸線を有する都道府県に対し、調査結果を参考に、管内市町村に対し、1)必要に応じた地域防災計画の見直し、2)速やかな避難勧告の実施、3)避難勧告を実施した際の実避難数(世帯数)把握のための体制整備、4)注意報が発表された場合の自主避難の呼びかけの実施、5)津波避難訓練の的確な実施 等について、周知・徹底されるよう通知を発しました。(平成15年10月9日付け消防災第190号消防庁防災課長通知) 津波における人的被害軽減のためには、「揺れたら逃げる」という意識の徹底が何よりも重要です。(参考)上記通知については、消防庁ホームページでご覧になれます。(URL http://www.fdma.go.jp/html/data/index.html)
第8節 特殊災害対策等[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成14年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故(以下「ガス事故」という。)のうち消防機関が出場したものの総件数は、1,308件(対前年比163件減)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが776件(同109件減)、液化石油ガスに係るものが532件(同54件減)となっている(第1−8−1図)。ア 事故の態様別発生件数 事故を態様別にみると、漏えい事故が1,024件(ガス事故全体の78.3%)、爆発・火災事故が284件(同21.7%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が670件(都市ガス事故全体の86.3%)、爆発・火災事故が106件(同13.7%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が354件(液化石油ガス事故全体の66.5%)、爆発・火災事故が178件(同33.5%)となっている(第1−8−1図)。イ 事故の発生場所別発生件数 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが942件(ガス事故全体の72.0%)、ガス導管等消費先以外におけるものが366件(同28.0%)となっている(第1−8−2図)。 消費先において発生した事故を、発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等発生原因が消費者に係る場合が555件(消費先において発生した事故全体の58.9%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が110件(同11.7%)、その他の原因が277件(同29.4%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が333件(都市ガス事故全体の64.8%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が52件(同10.1%)、その他の原因が129件(同25.1%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が222件(液化石油ガス事故全体の51.9%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が58件(同13.5%)、その他の原因が148件(同34.6%)となっている。
(2)事故による死傷者数 平成14年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は11人(対前年比7人減)、負傷者数は241人(同2人増)である。死者のうち、都市ガスによるものは6人(死者数全体の54.5%、対前年比2人減)、液化石油ガスによるものは5人(同45.5%、同5人減)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは100人(全体の41.5%、対前年比17人増)、液化石油ガスによるものは141人(同58.5%、同15人減)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが8人(死者数全体の72.7%)、爆発・火災事故によるものが3人(同27.3%)、負傷者数では漏えい事故によるものが72人(負傷者数全体の29.9%)、爆発・火災事故によるものが169人(同70.1%)となっている(第1−8−3図)。
(3)自損行為によるガス事故 平成14年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は103件(ガス事故全体の7.9%、対前年比28件増)、これらの事故による死者数は6人(同54.6%、同7人減)、負傷者数は70人(同29.0%、同14人増)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは83件(自損行為に起因する事故全体の80.6%、対前年比24件増)、爆発・火災事故に至ったものは20件(同19.4%、同4件増)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約7割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。 一方、ガス製造施設においても、平成15年9月に愛知県東海市の製鉄所に存するガスホルダーで爆発火災が発生し、負傷者15名のほか近隣住戸にも被害を生じていること等から、関係法令の遵守をはじめ安全対策の推進を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成14年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は、86件(対前年比18件増)で、火災が5件(同4件増)、漏えいが55件(同13件増)、それ以外のものが26件(同1件増)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、塩素が11件(全体の12.8%)、硫化水素が8件(同9.3%)、アンモニアが7件(同8.1%)、以下硝酸等の順になっている(第1−8−4図)。
(2)事故による死傷者数 平成14年中の死者は7人(対前年比4人増)で、負傷者は93人(同8人減)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の2の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1−8−5図)。 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。 なお、消防庁では救助用資機材として陽圧式化学防護服や防毒マスク等の整備を推進している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努めるとともに、立入検査等を通じて貯蔵・取扱いの安全対策について指導を徹底する必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく必要がある。
(3)装備・資機材の整備 有毒ガスの発生など特殊な状況下では、通常の消防装備・資機材では的確な消防活動を行うことが困難な場合があることから、陽圧式化学防護服及び防毒マスク等の整備を一層推進する。 また、危険物災害等特殊な災害を想定した消防資機材の性能等についての自主的な研究・協議に関する活動についても推進している。
[原子力災害対策]1 原子力災害等の現況と最近の動向(1)東北電力株式会社女川原子力発電所における火災ア 事故の概要 平成14年2月9日、東北電力株式会社女川原子力発電所(以下「女川発電所」という。)の定期点検中の2号機において、原子炉建家地下1階の制御棒駆動機構補修室にて、作業員が弁点検用資機材の後片づけの一環として浸透探傷用スプレー缶等の廃棄処理作業を実施中に出火し、ビニールシート等を焼損した。火災は、付近にいた別の作業員が粉末消火器で消し止めた。この火災により、作業員2名が顔面等に火傷を負った。また、粉末消火器で消火活動を行っている際に周囲の粉塵が舞い上がったことにより、作業員2名の顔面に放射性物質が付着したことが確認されたため、除染が行われた。なお、この火災による外部への放射能の影響はなかった。イ 消防機関の活動 女川発電所からの119番通報を受けて、消防本部は消防隊と救急隊を出動させ、負傷した2名の作業員に汚染がないことを確認した後、救急車により、女川町立病院に搬送した。
(2)中部電力株式会社浜岡原子力発電所における配管破断事故ア 事故の概要 平成13年11月7日、中部電力株式会社浜岡原子力発電所(以下「浜岡発電所」という。)の定格出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系蒸気凝縮系配管のエルボ部(L字型の配管)が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建家内に漏えいした。この事故の原因を、原子炉水の放射線分解により発生した水素と酸素が当該配管内に蓄積し、これに着火、急速に燃焼して配管が破断したとする報告を経済産業省原子力安全・保安院(以下「原子力安全・保安院」という。)がとりまとめている。原子力安全委員会もこの内容を妥当とする報告をとりまとめている。なお、この破断事故による外部への放射能の影響はなかった。イ 対応状況 これを踏まえ、原子力安全・保安院は、沸騰水型原子炉を有する電気事業者に対し、高濃度の水素が滞留する可能性のある箇所(9事業所、浜岡1号機を含め29基)を抽出し、その箇所について、非凝縮性ガスの除去操作間隔を適正化するとともに温度計による監視を行うか、又は非凝縮性ガスの滞留を防止するための設備変更(弁の設置、配管経路変更等)を行うかのいずれかの対策を講じるよう指示し、事業者において、これらの再発防止策が講じられている。 消防庁としては、関係県を通じ関係消防本部に対し、当面これらの対策が講じられるまでの間、同様な事故が発生した際の事故対応体制を確保するため、必要な状況確認を行うよう通知するとともに必要な情報提供等の支援を行った。
(3)核燃料サイクル開発機構大洗工学センターにおける火災ア 事故の概要 平成13年10月31日、核燃料サイクル開発機構大洗工学センター(以下「大洗工学センター」という。)の冷却系改造工事中の高速実験炉「常陽」メンテナンス建家1階の機器洗浄槽上部作業場にて、火災が発生し、カートンボックス(紙製のゴミ箱)、難燃シート等を焼損した。この火災の原因は、ナトリウムバルブ洗浄の準備作業を行った際、作業時に出た微量のナトリウムが、ふき取り作業等のときに、作業員の確認不足により、カートンボックスの中に混入し、発熱反応を起こし、数時間後発火・火災に至ったものと推定されている。なお、この火災による外部への放射能の影響はなかった。イ 消防機関の活動 大洗工学センターからの119番通報により、消防隊が出動し大洗工学センター従業員とともにABC粉末消火器により消火した。 消防庁としては、各都道府県を通じ各市町村に対して「ナトリウムを取り扱う施設で発生した火災について」(平成13年12月4日付け消防危第130号)により、ナトリウムの危険物関係事故を未然に防止するための留意事項を示し、併せて保安管理の徹底が図られるよう通知した。
(4)東海村ウラン加工施設における臨界事故ア 事故の概要 平成11年9月30日午前10時35分頃、茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設(転換試験棟)において、JCO従業員が核燃料サイクル開発機構の高速実験炉(常陽)の燃料に用いる硝酸ウラニル溶液の濃度を均一化するという作業が行われた。その際正規の手順を逸脱し、ステンレス容器でウラン粉末を溶解した上、臨界管理のための規定量が制限されている沈殿槽に規定量の2.4キログラムを超える約16.8キログラムの硝酸ウラニル溶液を入れたため、沈殿槽内の硝酸ウラニル溶液が臨界に達する事故が発生した。臨界は、最初に瞬間的に大量の核分裂反応が起こり、その後、臨界状態停止まで約20時間にわたって核分裂状態が緩やかに継続した。 今回の事故によりJCOの敷地境界付近で平成11年9月30日午前11時36分から臨界終息まで測定された空間放射線量率は、ガンマ線については、同時刻から測定され、最大で0.84mSv/h(ミリシーベルト/時)であり、中性子線については同日午後4時半から測定され、最大4.5mSv/hであった。 また、硝酸ウラニル溶液を沈殿槽に注入する作業をしていたJCO従業員3人が放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事したJCO従業員を含む多数の者が被ばくした。イ 消防庁及び消防機関の活動 政府は、9月30日午後9時に内閣総理大臣を本部長とし、関係閣僚を構成員とする政府対策本部を設置した。 消防庁においては、現地からの通報を受け午後1時に「災害警戒連絡室」を設置した。その後「消防庁対策本部」に改組して体制を強化し、関係地方公共団体から災害状況及び市町村の対応状況に関する情報を集約して関係省庁等に提供した。また、茨城県、同県内市町村及び消防機関に対して、広報・避難、緊急搬送体制の確立を指示し、福島県に対して放射線防護資機材の提供準備を要請した。さらに、消防庁では政府の現地対策本部に審議官を派遣して、関係省庁とともに現地対策本部の体制・機能の強化を図った。 重篤な被ばく者3人については、東海村消防本部の救急車によって国立水戸病院へ搬送した後、茨城県防災ヘリコプター及び千葉市消防局の救急車によって科学技術庁放射線医学総合研究所へ搬送した。また、臨界停止に当たっては、ホウ酸水注入に消防車等を活用した。ウ 住民の避難等の状況 9月30日、午後3時に東海村長は、JCO施設から半径350m圏内の住民に対して避難を要請した。茨城県知事は、午後10時30分に半径10km圏内の住民に対して屋内退避を要請した。 10月1日、JCOが、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等の協力を得て、沈殿槽の冷却水抜取り作業を実施した結果、敷地境界付近の中性子線量率が低下した。また、同社従業員が沈殿槽へホウ酸水を注入する作業を行った結果、原子力安全委員会において臨界状態は終息したと判断した。これらの結果を受けて茨城県知事は、午後4時30分に半径10km圏内の屋内退避要請を解除した。 10月2日、JCO、日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構等多くの機関の協力による事故発生現場の遮蔽作業及び半径350m圏内のモニタリング結果を受けて、東海村長が同圏内の避難要請を午後6時30分に解除した。
(5)その他の原子力事故等 その他の原子力施設における最近の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の核燃料サイクル開発機構(旧動力炉・核燃料開発事業団(以下「サイクル機構」という。))の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし火災となった事故。イ) 平成9年3月11日にサイクル機構の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク(以下「タンク」という。)内の清掃作業中に、タンク内で体調不良となった作業員1名を救出するためタンク内に入った別の2名の作業員のうち1名が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案(病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明)。 なお、放射性物質による影響はなかったが、平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、1階の連続紡糸設備のヒーター及びモーターの電気系統接続部付近から出火し、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損した。また、火災の影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407名に避難勧告が出された。 消防庁としては、放射性同位元素等取扱事業所における火災等事故時に備えるため、「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を参考に、事業者との円滑な連携など適切な対応体制の整備を図るよう改めて都道府県を通じ市町村に通知した。 また、従来から、文部科学大臣から消防庁に連絡があった放射性同位元素等取扱事業所の許可等に関する書類(写し)を関係都道府県消防防災主管部長あて通知し、関係市町村に周知していたが、消防機関と市町村関係部局との情報の共有化を図るため、市町村関係部局にも当該通知を周知し、消防機関と市町村関係部局が必要な連携を行い的確に対応するよう併せて通知した。 さらに、文部科学省からも、放射性同位元素等取扱事業者に対して、消防機関と連携するよう通知がなされた。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓から原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等法令等の整備が行われた。 原災法においては、1) 初期対応の迅速化のための原子力事業者からの異常事態の通報義務付け及び内閣総理大臣の緊急事態宣言の発出2) 国、地方公共団体等の連携強化のためのオフサイトセンターの指定及び原子力災害合同対策協議会の設置3) 国の体制強化のため、原子力防災専門官を原子力事業所が所在する地域に配置4) 事業者の責務として、放射線測定設備の設置、原子力防災組織の設置及び災害応急措置の実施、原子力事業者防災業務計画の作成義務付け等が規定された。 また、原子炉等規制法の一部改正により、原子力事業者の保安規程の遵守状況についての定期検査制度の創設、従業者に対する教育義務を明確化するとともに、加工事業者に対しても施設面の定期検査制度が義務付けられた。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて改訂され、表題についても「原子力施設等の防災対策について」に変更された。これにより、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1−8−6図、第1−8−7図、第1−8−8図)及び輸送時の防災対策についても盛り込まれた。 平成13年6月には、医療に携わる者の責務等の明確化を図るなどの改訂を行い、平成14年4月には、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について改訂を行った。さらに、平成14年11月には、原子力災害時におけるメンタルヘルス(心の健康)に関する対策、平成15年7月には、緊急被ばく医療体制における地域ブロック化について改訂を行った。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。さらに、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設等所在地等の21都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るよう、地域防災計画の見直しを進めている。
(4)消防活動の充実等 原子力施設所在市町村等に対して、同報系無線及び放射線防護資機材の整備のための補助を行うとともに、原子力施設等における消防活動用資機材の調査研究、原子力災害時における消防応援体制に関する検討を実施した。 また、原災法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、各都道府県及び消防本部へ通知している。 なお、原子力災害の研修として、平成12年度から消防大学校において、幹部職員を対象に「放射性物質災害講習会」を実施しているほか、文部科学省等において消防職員、消防団員及び自治体職員を対象とした各種原子力防災研修が実施されている。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、放射性同位元素(RI)の輸送については放射線障害防止法等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画には、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えに関する記述が加えられた。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において放射性物質輸送の事故時安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等についてマニュアルとしてとりまとめ、各都道府県及び消防本部に通知している。 さらに、平成14年3月には、原子力災害危機管理関係省庁会議において、関係省庁が連携し一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領をとりまとめた原子力災害対策マニュアルに輸送編が追加された。
3 原子力災害対策の課題 消防庁では、JCOウラン加工施設における臨界事故等を教訓とし、原災法の制定、原子炉等規制法の改正及び防災基本計画原子力災害対策編の見直しが行われたことに伴い、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアル、原子力施設等における消防活動対策マニュアル等の見直しを行った。さらに、平成15年6月に、消防組織法を改正し、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化として、二以上の都道府県に及ぶ大規模な災害又は毒性物質等による特殊災害対策に対応するため、現在、運用上設けられている緊急消防援助隊を法定するとともに、消防庁長官による出動の指示を創設した。また、従来、主に原子力施設の災害対応のための資機材について整備してきたところであるが、今後、核燃料物質等輸送を含めた放射性物質災害対応のため緊急消防援助隊をはじめ各消防本部における放射線防護資機材の整備を図るとともに、教育・訓練の実施等原子力防災体制の充実を図ることが必要である。 また、原子力災害の特殊性に対応した消防活動用資機材の開発及び原子力緊急事態を想定した実践的な防災訓練の実施を推進し、その結果をより実効性ある地域防災計画の整備に反映していく必要がある。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成14年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成14年1月1日から平成14年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)124港における海上災害で消防機関が出動したものは56件あり、このうち火災によるものが18件(全体の32.1%)、油の流出によるものが19件(全体の33.9%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が43件で全体の76.8%を占めている(第1−8−1表)。 最近の主な船舶火災としては、平成14年10月1日に長崎港で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」において、ぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 また、平成14年11月26日には、伊豆大島において座礁していたバハマ船籍の自動車運搬船「ファルヨーロッパ号」で出火、大量の煙が発生したため、付近住民が一時的に自主避難をする事態となった。 油の流出災害としては、平成9年1月2日に日本海沿岸の各地に大きな被害を生じさせたロシア船籍タンカー「ナホトカ号」海難・流出油災害のほか、同年7月2日には東京湾においてパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」流出油災害が発生した。 そのほか、平成14年12月5日に茨城県日立港において、北朝鮮船籍の貨物船「チルソン号」が座礁し燃料油が流出する事故が発生している。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 海上における油の大量流出事故に関しては、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、油汚染事故発生時の即応体制等をより強化するため、平成9年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を改正するとともに、平成10年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正している。 また、平成9年6月に防災基本計画の海上災害対策編が示されたことに伴い、地域防災計画の見直しを含め、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めている。 そのほか、平成15年6月に消防庁では、全国の沿岸海域を有する都道府県及び市町村に対して、漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況とその意見に関する調査を行った。その把握結果について、関係省庁に通知するとともに、都道府県に対し、管内の沿岸海域を有する市町村の地域防災計画に、漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定されるよう指導・助言した。
[航空災害対策]1 航空災害の現況と最近の動向 平成14年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は35件発生しており、そのうち飛行機事故は13件となっている。また、民間航空事故による死者は13人、負傷者は65人となっている(平成14年版航空・鉄道事故調査委員会調べによる。)。 平成14年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは9件となっている。なお、消防機関が出動したものは46件あり、このうち飛行場内が39件、飛行場外が7件となっている。 最近の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)や平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生している。
2 航空災害対策の現況 航空事故は、いったん発生すれば、大惨事を招来するおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が空港管理者により行われているが、消防庁では、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準、航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者、地方公共団体等関係機関に示し、航空災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、化学消防ポンプ自動車の整備について国庫補助を行うなど、空港及びその周辺における消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成15年4月1日現在、空港所在市町村の88消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空災害対策の課題 航空事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においても、空港周辺地域での航空災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル(地下鉄に接続するトンネルを含む)、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び、所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、特に長大海底トンネルの防災対策を取りまとめている。 次に、平成15年2月18日に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、消防庁では、消防庁職員及び消防研究所の研究員による現地調査を実施するとともに、平成15年春季全国火災予防運動などの機会をとらえ、鉄道事業者と消防機関が連携して、288駅において列車火災を想定した防災訓練を実施した。現在、消防庁と国土交通省が協力して、「地下鉄道の火災対策検討会」を開催し、現状の安全対策について検証等を行い、その結果、必要があれば追加的な対策や代替の方策等について検討していくこととしている。 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。なお、平成14年中における道路トンネル火災は18件となっている(第1−8−9図)。 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や日本道路公団等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 都市部の道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、「乗用車専用道路(小型道路)」の導入に向けた検討が国土交通省において進められている。この「乗用車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は、車両火災等における消防活動の課題について検討を行っているところであり、消防庁としても、「乗用車専用道路」の導入時においても円滑な消火・救急活動が確保されるようその対策について検討していく。
韓国地下鉄火災の概要 平成15年2月18日に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、我が国の地下鉄道の安全対策について検証等していく必要があるとの認識の下、消防庁及び消防研究所の研究員を韓国に派遣し、現地調査を実施しました。その結果の概要は以下のとおりです。○発生日時:平成15年2月18日(火)      午前9時53分頃○発生場所:大邱(テグ)市地下鉄一号線 中央路(チュンアンノ)駅構内(地下3階部分)の列車の1両目車内○被害状況:人的被害:死 者192名(対向列車客室内での死者142名、放火列車客室内での死者無し)           負傷者148名     :列車等被害 客車12両(6両編成2列車)全焼及び駅舎昇降場所等焼損○火災の原因:乗客が車内にガソリンを撒いて放火したもの○被害拡大の経過: (1) 放火直後に車両内で火炎が急速に拡大し、内装材等から煙と燃焼生成ガスが大量に発生 (2) 火災の初期から地下2階、地下1階へ煙が急速に拡散、地下駅(地下3階)の乗客等は階段を使い避難をするが、逃げ遅れ救助される者が多数発生 (3) 車両の窓ガラスがゴムで固定されており、熱でゴムが溶け、窓ガラスが脱落、窓から火煙が吹き出し火災が拡大した模様 (4) 対向列車が火災発生後の中央路駅に到着、立ち往生し類焼○救助活動等: (1) 消防局は火災通報を受け、直ちに大邱全域の消防機関に出動を指示。    158隊が出動(隣接消防機関及び中央救助隊の応援隊を含む)。 (2) 隊員は濃煙の中を進入し、負傷者約200名を救助。また隊員も10名が濃煙のため負傷。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、「臨時大深度地下利用調査会設置法」に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」が公布され、平成13年4月1日に施行された。 同年5月、6月に、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する第1回の大深度地下使用協議会が開催された。その際、消防庁から具体的な事業計画が協議会で協議されるときには、当該計画に関係する消防機関を火災発生時等における安全確保の観点から協議会や幹事会に参画させることを要請し、今後、その参加者を調整することとなった。また、平成15年1月に第2回の大深度地下使用協議会が開催され、「大深度地下利用に関する技術開発ビジョン」の策定について報告等があった。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、消防活動や救助活動が従来の施設と比較して困難さが増すことが予想されている。 今後、具体的な大深度地下を利用した事業計画が出された場合には、現状で考えられる各種の対策に加え、より高度な安全確保対策について検討することが必要である。 また、消防庁においては、大深度地下等の消防活動が困難な空間において隊員の位置や隊員の状態等を把握するためのシステムの実用化に向けた開発を行っている。
[その他の施設等の災害対策] 平成15年4月11日に発生した鹿児島県鹿児島市の有限会社南国花火製造所において発生した火災は、死者10名、負傷者4名の大惨事となり、爆発による事業所周囲の住宅等の被害も広範囲におよんだ。被害を拡大させた要因として、許可数量以上の火薬が存置されていたため、煙火製造中に発生した爆発により、次々に爆発が拡大したものと鹿児島県の煙火事故再発防止委員会の調査結果では推定されている。 この火災については、鹿児島市消防局で火災原因調査を行っているほか、事故発生直後において消防庁職員を現地に派遣するとともに、消防研究所で被害拡大の状況等について調査・分析を行っている。 消防庁では、煙火製造事業所における防火安全対策について、関係部局等と連携した総合的な防火安全対策の推進を図るとともに、立入検査等による違反是正を図るよう通知した。
消防活動が困難な空間における消防活動支援情報システムの開発 地下空間等は、1)煙の流動方向と消防活動の進入方向が逆行すること、2)密閉空間であるため煙や熱が充満しやすいこと、3)地下であるため消防隊の進入路が限定されること、4)構造物外部からの情報収集が困難であること等により、消防活動が困難な空間です。 しかし、このような消防活動が困難な空間において、火災、事故等が発生した場合であっても、消防機関は救助及び消火活動を行うことが求められています。 このため、消防庁では、平成12年度以降、大深度地下等の消防活動が困難な空間における消防活動を支援するための消防隊員の位置特定システムの開発を進めています。平成13年度には、隊員の位置を把握する方法としてPHS基地局からの電波を利用した方法を開発し良好な結果を得ました。 さらに平成14年度は、この開発結果を踏まえて、PHS基地局からの信号なしでも位置を計測することのできる自律型の位置特定方式である慣性航法装置(加速度計とジャイロ(※1)を用いた装置)と電子タグ(※2)を活用して消防隊員の位置等を3次元マップに表示するシステムを開発しました。本システムは大きく、隊員の位置特定システム、3次元地図表示システム、咽頭マイクを用いた通話システムからなっています(図参照)。 実験では、10分間程度の活動時間で数十cmから1m程度の誤差で、空気ボンベを利用する際の活動時間が数十分であることを考えると良好な結果が得られています。 本年度においても、位置特定センサ部の小型軽量化、隊員と現場指揮本部間の情報通信システム、電子地図の構築等に関する検討を進めています。※1 ジャイロ…角度または角速度を計測するための機器※2 電子タグ…集積回路(IC)とアンテナを内蔵したもので、個別の識別情報等が格納でき、その情報を電波でやりとりすることが可能
第2章消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 平成15年4月1日現在の常備消防機関の現況は、消防本部が894本部、消防署が1,696署、出張所が3,207所、消防職員が15万5,016人となっている。 前年と比較すると、市町村合併と広域再編が進められたこと等により6本部減少し、消防署は6署増加し、消防職員は529人増加している(第2−1−1表、第2−1−1図)。消防職員のうち、女性職員は2,618人(前年比71人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 現在の市町村における消防体制は、大別して、1)消防本部及び消防署のいわゆる常備消防と消防団とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、2)消防団のみが存する地域(いわゆる非常備町村)がある。 平成15年4月1日現在、常備化市町村は、3,131市町村(うち4町村については政令指定による義務付けのない任意実施町村である。)となり、常備化率は市町村数で98.1%(市は100%、町村は97.6%)に達し、人口の99.8%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。 なお、従来、消防組織法第10条の規定を受けた「消防本部及び消防署を置かなければならない市町村を定める政令」により、市はすべて消防本部及び消防署の設置が義務付けられ、町村については、総務大臣が当該町村の人口、態容、気象条件等を考慮して指定したものについて同様の義務が生じることとされていた。全国にわたる常備化の著しい進展にかんがみ、この制度の目的は達せられたため、法律改正を経て、平成15年9月1日に廃止された。イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化(昭和40年4月1日現在、常備化市町村は600市町村)に伴い、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が進められた。 その結果、平成15年4月1日現在、組合による消防本部は472本部(うち広域連合は31本部)に達しており、その構成市町村数2,507市町村(327市、1,707町、473村)は常備化市町村全体の80.1%に相当する。また、事務委託市町村数は202市町村(24市、140町、38村)に達している。さらに、平成6年度以降、市町村合併により9本部が4本部に再編されている。
(2)消防団 消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っている。常備市町村においても初期消火、残火処理等を行っているほか、大規模災害時には、災害防ぎょのため多数の要員を必要とすることから、多数の消防団員が活躍している。 平成15年4月1日現在、消防団は3,598団、消防団員は92万8,432人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設けられている。団員数は減少傾向にあり、10年前の平成5年4月1日現在に比べ5万4,582人(5.6%)減少している。この間、女性消防団員数は、8,290人増えて1万2,440人となっている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が37.2%を占め、また、平均年齢は37.2歳となっている(第2−1−2図)。
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2−1−2表)。
(2)消防水利  消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が74.8%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は24.2%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2−1−3表)。
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、火災報知機、消防電話及び消防・救急無線電話等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話(119番)は、加入電話又は公衆電話によって消防機関に火災、救急、その他の災害の発生等を通報するもので、平成15年4月1日現在、全国の消防機関に1万3,351回線が設置されている(第2−1−3図)。 また、近年では、携帯電話・PHSの著しい普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が急速に増加している。現在、携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部に転送又は復唱して伝達する方式をとっている。そこで、消防庁では、管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムについて、その実現のため積極的に進めている。 さらに今後は、携帯電話に限らずIP電話、衛星電話及びCATVを利用した電話など、住民からの119番通報手段も多様化されることから、これらの新たな通報手段に対応していく必要がある。イ 消防緊急通信網 消防電話は、消防本部・消防署等の消防機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話であり、消防機関相互の連絡に大きな役割を果たしている。また、消防・救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するため、消防機関は、特に消防・救急無線の増強に努めており、機器についてもデジタル化等の高性能化が進められている。また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビ電送システム等、高度な機能を持った各種消防通信施設を導入する消防機関も徐々に増えている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成13年度の消防費歳出決算額は1兆8,625億円(前年度1兆8,758億円)で、前年度に比べ133億円(0.7%)の減少となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額51兆4,059億円(前年度51兆1,610億円)に占める消防費決算額の割合は3.6%(同3.7%)となっている(第2−1−4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成13年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万8,293円(前年度3万9,067円)であり、住民1人当たりでは1万4,726円(同1万4,854円)となっている(第2−1−4表)。ウ 経費の性質別内訳 平成13年度消防費決算額1兆8,625億円の性質別内訳は、人件費1兆4,103億円(全体の75.7%、前年度74.5%)、物件費1,603億円(同8.6%、同8.6%)、普通建設事業費2,198億円(同11.8%、同12.9%)、その他721億円(同3.9%、同4.0%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が124億円(0.9%)増加しているが、物件費が6億円(0.4%)、普通建設事業費は227億円(9.4%)減少している(第2−1−5表)。
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成13年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆7,001億円(全体の91.3%、前年度90.1%)、次いで地方債989億円(同5.3%、同6.5%)、国庫支出金224億円(同1.2%、同1.2%)となっている(第2−1−6表)。イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、平成14年度の単位費用は1万900円(対前年度伸び率1.9%)、基準財政需要額は1兆7,559億円(同1.0%)であった。平成15年度は、給与単価の引き下げ、物価下落等の影響がある一方で、消防情報化推進対策や救急医療機関連携対策の充実とともに、消防団員報酬が引き上げられたこと等により、単位費用は1万900円(同0.0%)の措置であるが、段階補正の見直し等の影響により、基準財政需要額は1兆7,331億円(同△1.3%)に減少している(第2−1−7表)。ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがある。国は、消防施設強化促進法による法律補助及び予算措置による補助等により、市町村等(一部都道府県を含む。以下同じ。)の消防防災施設等の整備に対して、予算の範囲内で、補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の引上げが規定されているものがある。具体的には、人口急増地域の市町村に対しては2分の1又は10分の4、地震防災対策強化地域の市町村、地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村及び石油コンビナート等所在市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村並びに原子力発電施設等立地地域として指定された市町村に対しては10分の5.5、新東京国際空港周辺地域の市に対しては10分の6、町村に対しては3分の2、沖縄県の市町村に対しては3分の2以内の補助を行っている。 最近の国庫補助金による整備状況をみると、基本的な消防防災施設等である消防ポンプ自動車や防火水槽、耐震性貯水槽等の整備が進展するとともに、緊急消防援助隊が使用する救助工作車や高規格救急自動車等の整備が進んでいる。 平成15年度の市町村等に対する国庫補助金に関しては、市町村等がより使いやすいものとするため、目統合を行った。また、消防補助金に係る予算額については、前年度当初予算額に対して100分の5に相当する額の削減を目指すこととされた中、大規模災害対策として消防団及び自主防災組織関係設備や緊急消防援助隊関係施設及び設備の強化・充実などにより、総額では、対前年度比3.0%減の175億4,213万円(前年度180億8,975万円)を確保したところである。 さらに、国庫補助金の整理合理化の一環として、高規格救急自動車や高度救命処置用資機材等の補助基準額の引上げを行う一方で、消防緊急通信指令システム、消防車両動態管理・情報システム及び消防用高所監視施設を統合し、高機能消防指令センター総合整備事業を新たに創設するなど、補助対象メニューの統合・整理を行った。エ 地方債 消防防災施設等整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成13年度地方債許可額は、947億8,200万円で前年度に比べ197億1,000万円(17.2%)の減少となっている(第2−1−8表)。 平成14年4月からは、これまでの防災まちづくり事業と緊急防災基盤整備事業を再編成して、地域における「災害に強い安全なまちづくり」を目指し、住民の安全の確保と被害の軽減を図るため、防災対策事業を創設し、その中で防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業を推進している。 この事業の実施に当たっては、防災対策事業債が充当され、その元利償還金の一部については地方交付税措置が講じられる。 このうち防災基盤整備事業については、防災拠点施設や拠点避難地等の防災施設整備事業や、防災無線施設等の防災システムのIT化、消防広域再編に伴い新改築する消防庁舎と一体的に整備される自主防災組織等のための訓練・研修施設等の消防広域化対策事業を対象としている。 また、公共施設等耐震化事業については、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地促進対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺整備助成補助金等がある。
(3)都道府県の消防防災費 都道府県の消防防災費の状況をみると、平成13年度における歳出決算額は1,163億1,100万円であり、平成13年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.22%である(第2−1−9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防等に要する事務費等である。 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成13年度における補助金の決算額は95億7,400万円で、前年度に比べて6億7,500万円(6.6%)減少している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に国庫補助に準じて定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は6,800万円で、前年度に比べて3億7,200万円(84.5%)減少している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成15年度の予算額は、前年度より1.3%減の231億6,996万円となっている(第2−1−10表)。 総額のうち175億4,213万円(対前年度比3.0%減)は、消防防災施設整備費補助金及び消防防災設備整備費補助金に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点的整備ア 消防の広域再編の推進 現在管轄人口が10万人に満たない消防本部が全体の約3分の2を占めており、小規模消防本部の広域再編により組織面での対応力強化を推進する必要がある。 消防庁では、平成13年3月に市町村合併との整合性を確保しながら消防の広域再編を推進するための指針を策定し、都道府県の対応を要請した。 これらに併せ、具体的な助言、情報の提供等を行う「消防広域再編アドバイザー」を導入したほか、一定の要件を満たす地域を「広域化重点支援消防」として指定し、各種の財政支援を講じている。 また、全国で市町村合併の推進の動きが活発になっていることを踏まえ、消防庁では、平成15年10月に、消防事務の効率・適正な遂行の観点から、市町村合併に伴う消防本部の広域再編に係る留意事項をとりまとめ、管轄区域の拡大に取り組むよう通知した。イ 消防力の整備 消防庁により、「消防力の基準」及び「消防水利の基準」が示されている。 「消防力の基準」は、昭和36年の制定以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきている。平成12年1月には、市町村の自主性を尊重し、市町村が消防施設及び人員を整備するに当たっての指針として位置付けるため、全部改正を行うなど、所要の見直しを重ねてきた。 昨年来、消防審議会をはじめとして、各方面から、地方分権の趣旨にかんがみ、各市町村で消防力を確保するための指針としての性格を踏まえつつ、社会環境の変化に応じた見直しを行うべき旨の提言を受けている。 消防庁では、平成16年度中を目途に、住民ニーズの把握に努めた上で、一層、市町村の選択範囲を拡大するとともに、高機能設備の導入を促進するため指針の弾力化を図るなど、必要な見直しを行うこととし、調査、検討を進めている。 消防職員については、地域の実情に即して、一層効果的な人員配置と機動力の強化に努めるとともに、教育訓練を充実し、資質向上を図る必要がある。 消防団員については、「消防力の基準」にも、大規模災害時における災害防除や平常時の住民啓発等が消防団の業務として明示されており、今後、住民の消防団活動への参加を一層促進していく必要がある。ウ 消防財源の強化 消防力は逐年強化されているものの、複雑多様化している災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実強化の基礎となる消防財源については、地方交付税における消防費の基準財政需要額を逐年増額するとともに、国庫補助金の確保等なお一層その充実を図っていく必要がある。
(2)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮しなければならず、勤務条件はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、改善を積極的に図る必要がある。 特に交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、人員確保及び勤務体制の整備を図るとともに、1)給料、手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、2)仮眠室等の施設の整備等、執務環境の改善を促進すること、3)消防活動時の安全を高めるため、装備品(防火衣等)を充実強化すること、4)安全衛生管理体制を整備し、事故防止と健康管理に努めるなど、常に配慮が必要である。
(3)消防職員の高年齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成14年4月1日現在、41.1歳と一般行政職の42.3歳よりやや低いものの、40歳代が全体の4割近くを占めている。 また、平成13年度から再任用制度が導入され、消防司令以下の階級にある特定警察職員等については、平成19年4月までに適用することとしており、今後、職員の高年齢化対策を一層推進する必要がある。 消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の活用を図るとともに、1)装備の軽量化・動力化・安全化、2)部隊編成、消防戦術の見直し・検討、3)計画的な体力錬成、4)能力開発、適正な人事配置、人事交流等、総合的な対策を推進し、活力ある体制の確立が必要である。
(4)消防団の充実強化・活性化対策の推進 消防団は、地域における消防防災の要として、重要な役割を果たしている。平常時にも、地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、コミュニティの活性化に大きな役割を果たしている。 近年、社会情勢の変化を受けて、団員数の減少、サラリーマン団員の増加等の課題に直面しており、消防団の充実強化が課題となっている。 このため、消防庁では、社会環境の変化等に対応した消防団制度等のあり方について、幅広い観点から検討を行ってきた。 主な検討事項は、 ・全国レベルでの消防団員数確保の目標(当面約100万人、うち女性団員約10万人) ・事業所の理解と協力・連携のための取組み ・市町村合併に際しての消防団の取扱い ・多様な組織・運営のあり方(機能(技能)別組織や訓練・災害活動への参加義務の一部免除)などである。 今後は、平成14年度に講じた以下のような措置を引き続き実施していくとともに、上記検討事項の実現に向けた取組みの一層の推進を図っていく。ア 消防団の施設・装備の充実強化 地域における消防団の活動拠点となる施設に対して補助を行う「消防団拠点施設等整備事業」、消防車両・無線機器・安全装備品等の消防団に必要な設備の総合的な整備に対して補助を行う「消防団活性化総合整備事業」を実施した。イ 消防団員の処遇の改善 消防団員の報酬等に対する財政措置、退職報償金制度について、引き続きその充実を図った。ウ 消防団への青年層・女性層の加入の促進 消防団啓発ポスターの作成・配布やテレビ・ラジオ番組、インターネット等の各種媒体を通じた消防団活動のPRにより、青年層・女性層の消防団への参加の呼びかけに努めた。エ 公務員や公共的団体職員の入団推奨 国家公務員(特に郵便局職員)・地方公務員や農業協同組合・漁業協同組合・森林組合等の公共的団体職員の入団を推奨した。オ 消防団地域活動表彰・全国消防団員意見発表会の実施 地域における活動を推進するとともに、若手・中堅団員や女性団員の士気の高揚を図るため、 ・地域の実情に合わせた斬新で特色ある活動を常日頃展開し、魅力ある地域づくりを推進している消防団に対する表彰 ・消防団員である住民を多く雇用し、消防団活動に特に深い理解があり協力度の高い事業所に対する表彰と事業所による活動状況報告 ・活躍する若手・中堅団員や女性団員による意見発表会の開催などを実施し、その内容をとりまとめ、全国に提供した。カ 「消防団メールマガジン」の創刊 全国の消防団に関する情報提供のため、平成15年3月に「消防団メールマガジン」を創刊し、全国の消防団員を中心に配信した。
消防・救急に関する世論調査について 社会経済情勢や国・地方の行財政を取り巻く環境の変化は著しく、住民の消防に対する意識や期待する役割も大きく変化しているものと思われます。 こうした変化を的確に把握・認識して、消防行政における企画・立案業務に役立て、効果的・効率的な消防体制の確立に資することを目的に、内閣府・消防庁による世論調査が行われました。 調査結果からは、消防・救急に関する制度・施策・運用面でのこれまでの取組みに対して、住民の皆さんが理解を示し、概ね良好な評価を得ていることがうかがえました。[調査時期及び調査方法等]○ 調査時期:平成15年5月・6月○ 調査対象:全国の20歳以上の者3,000人を対象とし、2,113人より回答を得た。○ 調査方法:調査員による個別面接聴取方式[調査結果の概要]1 消防・救急に対する印象 良い印象を持っている47.6%、どちらかといえば良い印象を持っている39.8%、合計87.4% 良い印象の理由として、消火などで社会に貢献している77.9%、万が一の時に頼りになる67.4%など2 どこよりも先に119番通報すべき事態 火災84.9%、救急77.8%、事故等の救助57.0%、屋外での生命・身体の危険43.4%、危険・有毒物質の漏出などの事態42.0%3 消防車や救急車を要請した経験 救急車を要請したことがある42.6%、消防車を要請したことがある9.0%4 119番通報から到着までの時間 消防車の到着まで我慢できる範囲の時間であった75.4%、我慢できない範囲の時間であった20.4% 救急車の到着まで我慢できる範囲の時間であった79.0%、我慢できない範囲の時間であった18.1%5 緊急走行する消防車両の印象 緊急事態なので急ぐことは理解できる84.7%、緊急事態なので周囲の交通を止めることも理解できる64.9%、安全への配慮が感じられる44.6%など6 救急業務の一部有料化 比較的軽度の傷病者による救急車利用時の費用負担について、現在と同様に無料がよい51.1%、利用者の一部負担がよい36.5%、利用者の全額負担がよい4.1%7 消防団への入団希望 消防団への入団の勧めに対して、入る13.3%、すでに入っている又は入っていた6.3%、入らない69.5% 入らない理由として、体力に自信がない53.8%、職業と両立しない27.7%、男の役割だと思っている21.6%など8 参加したい自主防災組織活動 通常時の活動では、災害に対応する知識や技術を身につける講習38.3%、地域の人々が参加する訓練32.1%など 災害時の活動では、初期消火や応急手当などの活動39.9%、食料等の配布や避難場所の運営30.3%、被害状況や避難場所の状況などの情報伝達25.9%など9 一戸建て住宅の火災対策 火災対策用として設置しているもの、消火器69.8%、安全機能付きガスコンロ28.8%、何もしていない17.3%など 一戸建て住宅への火災警報器設置を義務化することについて、賛成27.1%、どちらかといえば賛成39.8%、合計66.9%10 市町村消防の認知度 消防・救急業務の実施主体について、市町村が行っていることを知っている61.2%、どこが実施しているか考えたことがない18.3%など11 市町村の消防・救急体制の整備 「国が標準的な整備基準を示し、これを目安として、市町村が地域の実情にあわせた整備目標を定める」という考えに賛成35.3%、より国の関与が強くなる考えに賛成28.6%、より市町村の自主性を重んじる考えに賛成20.4%12 消防・救急が今後力を入れるべきこと 消火活動70.0%、一般の救急活動62.0%、高度な処置を行う救急活動53.9%、地震などの大規模災害対応53.4%、救助活動44.4%、住民への防火・防災啓発35.7%、地震予知情報や津波情報の伝達35.1%、応急手当の普及啓発32.7%、原子力・毒物・化学物質等に起因する特殊災害への対応31.0%、テロ災害など新しい分野の災害への対応30.6%など(※調査報告書の全文は、消防庁ホームページで見ることができます。)
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成14年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。)への出動回数は97万8,990回で、出動延人員は1,173万4,138人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,682回、32秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は24万6,271回、出動延人員は497万9,776人となっている(第2−2−1表)。
(2)消防団員の活動状況 消防団は、非常備町村にあっては消防活動を全面的に担っているほか、常備化市町村においても初期消火、延焼防止、残火処理等を行っている。また、多数の動員を必要とする大規模災害や林野火災時においては、多くの消防団員が出動している。 平成14年においては、8月20日に香川県丸亀市本島において発生した林野火災で、迅速に十分な消防力を投入し被害を最小限に抑えるため、多数の団員が出動し、鎮圧や延焼防止等に当たった。また、台風による風水害等の大規模な災害において、消防団は、自宅が被災した団員もいる中で出動し、住民の避難誘導、危険箇所等の警戒巡視、行方不明者の捜索、土のう積み等の活動を不眠不休で行い、被害の拡大を防いだ。これらの果敢な活動の支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という精神である。一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、住民から高く賞賛された。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当、無線等の講習会や住宅の防火指導の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組みが行われている。また、増加傾向にある女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及など、女性の優しさや細かな配慮などを活かして活躍している。このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして重要な役割を担っている。
2 公務災害の状況 消防職団員は職務の特殊性から、生命の危険を顧みず身をていして職務遂行に当たらなければならないときがあり、そのため不幸にしてその職に殉じ、あるいは負傷する場合も生ずる。 平成14年中における火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡した消防職団員は18人、同じく負傷したものは2,545人である。前年に比べて殉職者は4人増加し、負傷者は147人減少している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが38.7%と最も多く、次いで火災によるものが28.1%、救急によるものが11.4%となっている(第2−2−2表)。
3 勤務条件等(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防本部の給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二つがあるが、行政職給料表を採用している団体では、号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けすることや、出動手当等の特殊勤務手当や休日給の支給がなされるなど、交替制勤務の特殊性が考慮されたものとなっている。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成14年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢41.1歳で34万9,188円であり、一般行政職員の場合は平均年齢42.3歳で35万8,784円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が10万9,622円であり、一般行政職員は8万3,768円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は、2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成15年4月1日現在、全国894消防本部中、2部制を採用している消防本部は652本部(72.9%)、3部制を採用している消防本部は187本部(20.9%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は52本部(5.8%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.3%)である。ウ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、1)消防職員の勤務条件及び厚生福利、2)消防職員の被服及び装備品、3)消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 現在、すべての消防本部において、消防職員委員会が設置されている。平成14年度の消防職員委員会における審議件数は約4,900件となっており、このうち審議の結果、実施することが適当とされた職員の意見は、4割強にのぼっている。 こうした審議を経ることにより、感染症に対する予防接種の実施、仮眠室の個別区画化、喫煙対策の実施、活動服等の改良化、救急車へのナビゲーションシステムの搭載など、勤務条件等の改善が進められている。消防職員委員会制度は、消防職員の意思疎通を図り、職員の意見を消防事務に反映しやすくすることにより、消防事務の円滑な運営に資することを目的とするものであり、今後ともその趣旨に沿って適切に運営されるよう努める必要がある(第2−2−3表、第2−2−4表、第2−2−5表、第2−2−6表、第2−2−7表)。エ 公務災害補償 消防職員は、公務により災害を受けた場合、地方公務員災害補償法の規定に基づき、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償並びに休業援護金等の福祉に関して必要な給付等を受けることができる。 また、消防吏員が身体に対し高度の危険が予測される状況下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 平成14年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数は、消防職員について1,906件であり、職員1,000人当たりの受理件数は12.3件となっている。
(2)消防団員の処遇改善ア 報酬・出動手当 非常勤の消防団員は特別職の地方公務員であり、市町村は条例に基づきこれらの消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額、支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨にかんがみ、引上げ等、適正化を図る必要がある。 平成15年度においては、地方交付税の単位費用の積算に当たって、団員の報酬について改善措置が講じられた(第2−2−8表)。イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況のもとで遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2−2−9表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2−2−10表)。 消防団員が身体に対し高度の危険が予測される状況のもとにおいて消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2−2−11表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、療養生活の援護、介護の援護、就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万2,000円、勤務年数30年以上の団長で92万7,000円となっている(第2−2−12表)。オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 平成15年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償等責任共済契約を締結している関係市町村の数は、2,937市町村(契約対象市町村の91.4%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、3,207市町村(契約対象の全市町村)となっている。 消防基金の平成14年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,876人に対し、16億2,211万円となっている(第2−2−13表)。また、福祉事業の支給額は、延べ1,013人に対し4億6,663万円となっている。 消防基金の平成14年度の退職報償金の支給額は、5万8,033人に対し171億6,584万円となっている。カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が改正され、平成14年度から、消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施することとなった。 消防基金における施行初年度である平成14年度の支払状況は、延べ99人に対し812万円となっている。キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、消防団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された(平成14年7月)。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の普通教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。
4 安全衛生体制の整備(1)安全衛生体制 消防には、その業務の性格から労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定は適用されないものの、消防庁では公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実にかつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程の案」、「訓練時における安全管理に関する要綱の案」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、消防本部の安全管理体制の整備の促進と事故防止の徹底を図っている。 また、消防の衛生管理については、労働安全衛生法の規定が適用されるが、消防職員の勤務体制や職務内容からして、職員の健康管理には特に配慮する必要があるため、消防庁としては、「消防における衛生管理に関する規程の案」を示すなどの対応を図っている。
(2)惨事ストレス対策 消防職員は、火災等の大きな災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、このようなストレスを受けた場合には、身体、精神、情動又は行動にさまざまな障害が発生するおそれがある。このようなストレスの問題は、消防機関にとっても比較的新しい問題であり、各消防本部では情報不足や専門家とのつながりが課題とされていた。 消防庁では、平成13年12月に精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、この問題に関する対策の検討に着手して以来、全国の消防職員、消防本部、消防学校を対象とする大規模なアンケート調査を実施するなど研究を重ねてきた。平成15年3月には、研究の成果を踏まえ、惨事ストレス対策のあり方について報告書にとりまとめ、全国の消防本部、消防署所等に配布した。消防庁においては、報告書の提言を受け、惨事ストレスが危惧される災害が発生した場合、現地の消防本部へ精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言などを行う「緊急時メンタルサポートチーム」を創設し、平成15年度より運用を開始したところである。4月に福岡県那珂川町で幼児3人が死亡した事案と、6月に兵庫県神戸市で4人の消防職員が殉職した事案に、それぞれ専門家を派遣している。
(3)安全管理に係る検討 平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生した。 消防庁では、この事態を重く受け止め、安全管理体制の再点検、安全管理マニュアルの徹底について通知を発出した。また、今後の再発防止に資するため、学識経験者や消防関係者で構成する「消防活動における安全管理に係る検討会」において、安全確保策の充実強化策などについて検討を進めている。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在国が行っている表彰等は次のとおりである(第2−2−14表)。
(1)国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。国の栄典制度については、21世紀を迎え、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、平成14年8月の閣議決定により見直しが行われ、平成15年秋から実施された。 その主な内容は、勲章については、1)旭日章と瑞宝章について、従来の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用し、消防職団員については、瑞宝章とする 2)旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた区分をそれぞれ6段階に整理するとともに名称を変更する 3)危険業務従事者叙勲を創設する等であり、褒章については、年齢にとらわれることなく速やかに顕彰する等である。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のあるものをその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えること。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は公共に対して功労のある者に対して勲章を授与し、栄誉を称えること。 また、消防関係の叙勲は、以下の種類に分けられる。・春秋叙勲 春は4月29日、秋は11月3日に実施される。・危険業務従事者叙勲 著しく危険性の高い業務に精励した功労者に対し実施されるもので、上記の日に春秋叙勲とは別に実施される。・死亡叙勲 死亡した功労者に対し、随時実施される。・緊急叙勲 殉職者など特別な功績を有する者に対し、随時実施される。・高齢者叙勲 88歳に達した者で未だ叙勲を受けていない功労者に対して、毎月1日付けで実施される。 <褒章> 自己の危険を顧みず人命救助に尽力した者、業務に精励し他の模範となるべき者、学術、芸術、産業の振興に多大な功績を残した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対して褒章を授与して栄誉を称えること。 褒章は、功績の内容によって、消防関係では以下の褒章が運用されている。・藍綬褒章 消防団長で永年尽力した者等を対象としている。なお、平成16年より、団長のみならず、多年消防業務に従事し、その功労が顕著な消防団員を対象とすることとしている。・黄綬褒章 消防関係業務に精励し衆民の模範である者を対象としている。・紺綬褒章 消防関係機関に対し、一定の金額以上の寄附を行った個人又は法人を対象としている。・紅綬褒章 火災等に際し、身を挺して人命救助に尽力した者を対象としている。
(2)内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、消防表彰規程に基づき、消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受賞者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する。・安全功労者表彰 国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績をあげ、又は功績があったもの等を毎年「国民安全の日」(7月1日)にちなみ、7月上旬に表彰。・防災功労者表彰 災害に際して、防災活動に従事し、顕著な成績をあげ、又は功績があったもの等を毎年「防災の日」(9月1日)にちなみ、9月上旬に表彰。
(3)総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害の防ぎょに関する対策の実施について尽力して功績顕著な者を表彰。
(4)消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の時期により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア)定例表彰 毎年3月7日の消防記念日にちなみ、3月上旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・功労章 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防除に関する対策の実施についてその成績が特に優秀な者を対象としている。・永年勤続功労章 永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者を対象としている。・表彰旗及び竿頭綬 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防除に関する対策の実施について他の模範と認められる消防機関を対象としている。(イ)随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度実施されるもので、その種類と対象は以下のとおりである。・特別功労章 災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕功章 災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・功績章 災害に際して消防作業に従事し、多大な功績があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕彰状 職務遂行中死亡した者を対象としている。・国際協力功労章 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者を対象としている。・表彰状 災害に際して、消防作業に従事し、顕著な功労をあげ、又は防災思想の普及等について優秀な成績を収めた者を対象としている。・賞状 災害に際して、消防作業に従事し、その功労が顕著と認められる者を対象としている。・安全功労者表彰 安全思想の普及、安全水準の向上等のため顕著な成績をあげ又は功労があったもので、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた消防職団員以外の個人又は消防機関以外の団体を対象としている。・防災功労者表彰 災害に際して、防災活動、防災思想の普及等について、その成績が特に優秀なもので、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた個人及び団体を対象としている。
(5)退職消防団員報償 永年勤続した消防団員の功労に報いるため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官より賞状と銀杯が授与される。
(6)消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に協力し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。
(7)その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・消防団地域活動表彰・消防関係業界功労者表彰・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防防災システム管理者表彰・住宅防火対策優良推進組織等表彰・危険物保安功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰・防災まちづくり大賞・優良少年消防クラブ指導者表彰・救急功労者表彰
大規模災害時に活躍する消防団 平成15年は、宮城県北部を震源とする地震、台風10号による風水害、九州地方の集中豪雨、十勝沖地震など大規模災害が相次ぎました。これらの災害において、地元消防団は消防本部と連携し、昼夜を問わない献身的な消防活動を行い、被害を最小限なものとしています。 9月26日に発生した十勝沖地震は、1日に震度6弱の大きな揺れを2度記録する大規模なもので、行方不明者2人、負傷者849人、住家被害1,816棟、断水約1万6,000戸、停電約37万戸と、北海道各地を中心に東北地方まで大きな被害をもたらしました(平成15年11月現在)。 地震発生後、地元消防団員は、いち早く瓦礫の排除や一人暮らし高齢者の安否の確認を行いました。さらに、津波の警戒、行方不明者の捜索、地区住民への避難誘導や避難確認、崩落危険のある地域の警戒及び崩落対策としてのビニールシート張り、倒壊家屋の復旧作業等を行い、安全対策の徹底を図るとともに、断水地区への広報及び住民への生活水の給水等の活動を行い住民生活の安定に貢献しました。 これらの活動には、延べ約7,000人にのぼる消防団員が出動しました。 このように、消防団の活動は災害防ぎょのみならず、安心した住民生活を送る上で精神的な支えとなっており、住民から大きな信頼を得ています。
活躍する女性消防団員 女性消防団員は、農山漁村等で男性消防団員の不在から生じる消防防災体制の低下を防ぐため、男性に代わって消防の任務に携わる必要から誕生しました。 その後、社会環境の変化に伴い、女性の能力を活かすことにより、消防団の組織の活性化を図り地域のニーズに応える方策として、女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まりました。また、男女共同参画の流れを受けて、女性の消防団への参加意欲も高まっています。 こうした動きの中、消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加し、平成15年4月1日現在、1万2,440人(全体の1.3%)、女性消防団員を採用する消防団は965団(全体の26.8%)と全都道府県に及んでおり、今後、ますますその割合は高まっていくものと予想されます。 女性消防団員は、通常の災害対応のほか、一般家庭の防火指導、一人暮らし高齢者宅の防火訪問や応急手当指導など、女性の能力を活かした活動で、大きな成果を挙げています。 例えば、愛媛県松山市消防団では、平成14年度に初めて、62人もの女性消防団員が誕生しました。女性消防団員は、聴覚障害者に対する応急手当指導等を行うために手話を取得するなど、きめ細かい活動を行っているほか、ホームページにおける消防団の紹介や広報誌の発行を担当するなど、消防団の啓発活動に取り組んでおり、今後一層の活躍が期待されています。
消防団活動を積極的に支援する事業所 京三電機株式会社は、茨城県西南の猿島郡総和町に位置し、栃木県や埼玉県からも通勤圏にあり、消防団員は、従業員1,300人のうち39人で、茨城県内が23人、栃木県内が14人、埼玉県内が2人となっています。 従業員団員の出動は、年間延べ約50回、合計の出動時間は約200時間となっています。 消防団活動に対する支援策として、まず、就業規則において、消防団員用の特別休暇を規定し、これに基づき、災害時の出動や消防団が主催する教育訓練への参加の際には、特別休暇が与えられます。 夜中や朝方に火災などの災害が起これば、一定の休養を取ってから出勤することができるため、大きな支援となっています。 また、緊急時、例えば就業時に出動要請の情報が入った場合に、消防団員が素早く行動できるように、手続の簡素化を図っており、外出許可証の発行によらず、上司へ又は守衛所にある名簿に名札を置くことにより、出動することができます。その際、上司が外出の連絡や作業対応を行うなど、周りの職制及び関連部署が手続を代行します。 このほか、消防団活動によるライン作業の停滞を防止するため、工程ごとに育成計画を立て、作業者がどの工程でも作業できるように訓練しています。 今後、このような消防団活動に理解があり、協力的な事業所の輪が広がることが期待されます。
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職団員が適切に対応するためには、その知識、技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部(訓練機関)、消防署や消防団における教育訓練を基本としつつ、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。また、これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。特に、常に危険が潜む災害現場において、指揮命令に基づく厳格な部隊活動が求められる消防職員には、職務遂行にかける使命感と旺盛な気力が不可欠であることから、各消防本部においては、さまざまな教養訓練を通じて、士気の高揚に努めている。 なお、職場教育における基準としては、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、消防庁としては、訓練時や警防活動時の安全管理マニュアル等を示すなど、効率的かつ安全な訓練の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第26条)。 平成15年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。
(2)教育訓練の種類 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」(平成15年11月制定)が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と消防団員に対する基礎教育(従来の普通教育)、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は800時間とされている。・「基礎教育」とは、消防団員として入団後、経験期間が短く、知識・技能の修得が必要な者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は24時間とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び一定期間の活動経験を有する消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成14年度では延べ2万5,528人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−1表)。 初任教育の期間については、平成14年度では、すべての消防学校が6か月以上の教育訓練を実施している。 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成14年度における新規採用者のうち初任教育の受講者は3,232人で、前年度に比べ39人減少している。なお、受講率については、93.7%となっている。 消防団員については、平成14年度では延べ8万1,657人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成14年度においては、地方自治体職員、地域の自主防災組織、婦人防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ1万7,229人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成15年4月1日現在、消防学校の専任教員455人のうち派遣の教員は63人に及んでいる(第2−3−2表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校への研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織として「消防講習所」が設置されたが、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)教育訓練施設等 消防大学校の教育訓練施設は、平成5年度以降、鋭意その整備更新を進め、平成12年度末には地下1階地上5階建ての本館が完成した。通常教室や図書館はもとより、マルチメディアを活用した大規模災害に対する指揮運用訓練室や300人収容の大教室、視聴覚教室等機能的で使いやすい施設となっている。 第2本館には、300人収容の講堂の他救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。 屋内火災防ぎょ訓練棟では、コンピュータにより制御された濃煙高温状態の中で、複雑な建物内を想定したより実戦的な消火・救助訓練を行うことができる。 学生寮地下の防災通信研修施設は、研修機能に加えて、大規模地震時等に消防庁本庁の防災通信施設に支障が生じた場合の補完的情報通信機能を有している。 一方、教育訓練車両については、平成12年度:特殊化学車、平成13年度:救助工作車、平成14年度:指揮隊車を計画的に整備したところである。
(2)教育訓練ア 教育訓練課程 消防大学校に設置されている教育訓練の課程は、2部9学科である(第2−3−3表)。 これらの課程では、消防幹部としての高度な判断能力を身につけるべく、また、特に近年は、消防活動上の安全管理、惨事ストレス対策、地震等の大規模災害やNBCに起因する災害に対する危機管理に係る科目を充実するとともに、民間有識者や社会福祉分野の専門家の講義を積極的に取り入れ、監督者、指導者として幅広い資質の向上に努めている。イ 教育訓練の実施状況 消防大学校(消防講習所を含む。)の卒業生は、平成14年度末現在で2万8,793人となっており、平成15年度入校者の計画人数は783人である(第2−3−4表)。 また、平成14年度には中華人民共和国からの研修生(3人)を受け入れた。ウ 実務講習 最近の消防防災情勢下において特に教育を行う必要がある分野に関しては、実務講習を行っている。(ア)危機管理セミナー(トップ、上級マネジメントコース及び防災実務管理者コース) 地震等の大規模災害時に応急活動を有効に展開できるようにするため、地方公共団体の首長や消防機関の幹部に対して危機管理に関する教育訓練を実施している。(イ)航空消防防災講習会 消防防災航空隊の隊長等に対して、航空消防防災活動に関し必要な教育訓練を実施している。(ウ)緊急消防援助講習会 緊急消防援助隊の都道府県隊長等に対して、大規模災害時における連携活動の実施等に関し必要な教育訓練を実施している。(エ)放射性物質災害講習会 原子力施設所在市町村等の消防本部の隊長等に対して、放射性物質災害に対する対応能力を向上させるための教育訓練を実施している。(オ)違反是正講習会 雑居ビルなどの防火対象物に係る消防法違反の是正を促進させるため、これらの業務処理に必要な専門的知識技能を教育している。
(3)消防学校等に対する技術的援助ア 消防教育訓練研究会 都道府県等の消防学校の教員に対して、教育訓練に必要な知識、技術を教育するとともに、消防教育に共通したテーマを研究するために消防教育訓練研究会を毎年開催している。イ 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教員を対象として、より高度な研究・研修の機会を提供するため特別研究生として受け入れている。ウ 講師の派遣及びあっせん 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、予防、警防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣及びあっせんを行っている。エ 消防教科書の作成及び視聴覚教材の整備 都道府県の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っている。現在は29種類が発行されている。また、視聴覚教育の重要性にかんがみ、視聴覚教材の整備を進めている。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間400人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成15年度には、あわせて全国で約1,400人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、概ね835時間以上の講義及び実習が行われている。 その他、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、平成7年度から財団法人消防科学総合センターの火災原因調査室により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした「基礎講座」、模擬火災家屋の発掘調査実習、火災事象に係る各種実験を主体に実践的調査能力の養成を目的とした「実務講座」が実施されている。 また、毒物・劇物等に起因する災害や有毒ガス等の化学物質を用いた事件の発生に伴い、消防機関においても化学災害発生時における、要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における化学災害対応能力の充実を図っている。
6 全国消防救助技術大会等の実施 消防機関の行う人命救助活動は、複雑多様化する各種災害に対応するため、高度かつ専門的な知識、技術が要求されるに至っていることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第32回大会は、平成15年8月28日に全国9ブロックから選抜された939人(陸上の部678人、水上の部261人)の隊員が参加して仙台市で開催された。
7 防災教育の普及 大規模地震やNBC災害等も懸念されることから、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされている状況のもとで、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。このため、平成15年6月に改正された消防組織法において自主防災組織への教育訓練等に関する国・地方公共団体の努力義務が規定されたことも踏まえ、消防大学校、消防学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組みを進めており、また、昨今のライフスタイルの変化やIT革命の進展に対応し、インターネットを活用した遠隔教育(e−カレッジ)の導入など、家庭や地域で学習できるような教育環境の整備も推進している。
8 教育訓練体制の課題 消防学校における教育訓練は、昭和45年に制定された「消防学校の教育訓練の基準」(消防庁告示)に基づいて行われてきたが、消防需要の拡大や災害形態の多様化などを踏まえ、新たな教科目や科目編成の簡素化、弾力化等の必要性が指摘されていた。 このほか、全国的に平成19年度以降に到来する大量の新規採用消防職員に係る初任教育への対応や、サラリーマン消防団員の増加に伴い、集合教育の受講が困難となるなど、教育手法のあり方も、検討課題とされてきた。 このため、基準を全面的に見直し、各消防学校の実情に応じたカリキュラム編成や柔軟な対応を可能とした「消防学校の教育訓練の基準」(平成15年消防庁告示第3号)を新たに制定した。この基準の主な特徴は、次のとおりである。・個別の各科ごとに、ア)必要の度合いを精査し、廃止、統合(消防職員の予防課程と査察課程)及び新設(消防職員の特殊災害科・上級幹部科、消防団員の初級幹部科・中級幹部科)を図った。イ)新たに教育訓練に係る「到達目標」を設定した。ウ)新たに推奨例としての「標準的な教科目及び時間数」を設定した。 各消防学校では、「到達目標」を斟酌・尊重した上で、「標準的な教科目及び時間数」を参考指針として活用して、具体のカリキュラムを定めることとなる。・消防団員の教育訓練は、消防本部との連携や教授内容の分割実施など、柔軟な対応を可能とした。 消防学校をはじめ、各機関は基準の内容を十分理解の上、相互の連携・協力を図りつつ、効果的な教育訓練に努めることが期待される。
消防大学校長査閲総合訓練<近隣の皆様の見学をいただいて開催> 消防大学校では、去る6月3日、消防大学校グラウンドにおいて、卒業を間近に控えた学生の教育訓練の成果を確認するための大学校長査閲訓練を実施しました。 消防大学校が、近隣の市民等に査閲訓練を公開するのは、昨年10月に続き、今回が第2回目となり、100人を超える人が見学に訪れました。 今回の参加学生(救助科第48期)は48名であり、河川に転落した乗用車の車内から救出する中洲救助訓練、はしご車等を活用した高層建物火災対応訓練、化学災害と火災を複合させた総合訓練等を実施し、教育訓練の成果が十分に発揮された動きに見学者もしきりに感心していました。 消防大学校では、教育訓練の実際を知ってもらうことも広い意味での「地域貢献」であり消防防災分野の意識啓発につながることから、今後も公開訓練を行っていく予定です。
消防大学校災害時支援ボランティアによる訓練を実施 消防大学校では、かねてから地域住民との関わりを深めることに努めていますが、その一環として東京消防庁調布消防署及び三鷹消防署と「地震等大規模災害時における消防活動支援に関する協定」を結んでいます。 これは、地震等の大規模災害が発生したときに、消防大学校の教職員・学生有志でボランティアを組織し、地域の応急救護活動、救出活動、消火活動及び災害情報提供活動等の各種活動を支援するもので、支援期間は災害発生から概ね2〜3日程度としています。 支援対象地域は消防大学校のある調布市深大寺地区に近接する地域ですが、調布・三鷹両市の約20%に当たる地域、居住者約5万9千人(約2万6千世帯)をカバーするものとなっています。 平成15年1月15日、防災とボランティア週間における取組みとして、東京都多摩東部に震度7強の大規模な地震が発生し、「調布市及び三鷹市において多数の火災と救助事象が発生した」との想定で、消防大学校の支援ボランティアを組織し、公園とビル解体現場の訓練場で、消防署、消防団、自主防災組織と連携し倒壊家屋からの救出、応急救護訓練等を実施しました。 訓練に参加した地域の皆さんは、近くに多くの消防職員が学ぶ消防大学校があることを心強く感じると話していました。消防大学校は、こうした訓練を通じて地域との防災協力関係をさらに整えていきたいと考えています。
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は6.9秒に1回、国民29人に1人が救急搬送 平成14年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる件数も含め、455万7,949件(対前年比3.6%増)であり、前年と比較し、15万8,754件増加している。この増加した出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が13万2,001件、その他が2万831件、一般負傷が1万8,917件である。 また、救急自動車による搬送人員は432万9,935人(対前年13万9,038人増、3.3%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は1,982人である(第2−4−1表、第2−4−2表、附属資料33、34)。 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万2,482件(前年1万2,048件)で、6.9秒(同7.2秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の29人に1人(同30人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。 救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、次いで交通事故、一般負傷の順となっている(附属資料33)。
(2)搬送人員の51.4%が入院加療を必要としない傷病者 平成14年中の救急自動車による搬送人員432万9,935人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の48.6%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は51.4%となっている。 なお、軽症傷病者の割合は大都市57.5%に対し、その他の都市48.2%と大都市の方が多くなっている。一方、重症傷病者の割合は大都市7.0%に対して、その他の都市13.0%とその他の都市の方が多くなっている(第2−4−3表)。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成14年中の急病の救急自動車による搬送人員243万9,116人の内訳をWHO(世界保健機構)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(12.2%)、消化器系(11.1%)、心疾患系(10.2%)の順となっている(その他、症状・徴候・診断名不明確の状態を除く。)(第2−4−1図)。
(4)現場到着まで平均6.3分 平成14年中の救急自動車による出場件数455万5,881件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が250万6,553件で最も多く、全体の半数以上(55.0%)になっている。 なお、これらの平均現場到着所要時間は6.3分(前年は6.2分)となっている(第2−4−2図)。
(5)病院到着まで平均28.8分 平成14年中の救急自動車による搬送人員432万9,935人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、20分〜30分未満が164万3,547人(全体の38.0%)で最も多く、次いで30分〜60分未満の141万7,404人(同32.7%)となっている(第2−4−3図)。 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は28.8分(前年28.5分)となっている。
(6)減少する転送 平成14年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.2%(429万5,260人)が転送なしに収容され、残りの0.8%に当たる3万4,675人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の96.6%に応急処置等実施 平成14年中の救急自動車による搬送人員432万9,935人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は418万3,277人(搬送人員の96.6%、前年は95.1%)であり、前年に比較し、19万6,306人(4.9%)増加している(第2−4−4表)。 また、平成3年に拡大された救急隊員による応急処置等の件数は、889万2,323件と前年の約1.1倍となっており、このうち救急救命士が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は4万1,962件にのぼり、前年の約6.3%増となっている。これは救急救命士の養成、救急標準課程又は救急II課程の修了者(2(2)(3)参照)による運用が着実に推進されていることを示している。
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.3% 救急業務実施市町村数は、平成15年4月1日現在、3,136市町村(678市、1,942町、516村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2−4−5表)。 この結果、全3,191市町村のうち、98.3%(前年98.2%)の市町村で救急業務が実施されたこととなり、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(附属資料35)(人口は、平成12年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が422市町村、委託が209市町村、組合が2,505市町村となっている(第2−4−4図)。
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成15年4月1日現在、4,649隊(対前年53隊増)が設置されている(第2−4−5図)。 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成15年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で10万1,783人(対前年372人増)となっており、このうち5万7,968人(対前年453人増、0.8%増)が、救急隊員として救急業務に従事している(第2−4−6図)。 より高度化する救急需要に応えるため、消防庁は、救急救命士のみならず、救急II課程(拡大された応急処置等を行うために救急I課程修了者に対して行われる講習)及び救急標準課程(新しく救急隊員の資格を取得しようとする者を対象とする講習であり、救急I課程と救急II課程を合わせたものに相当するもの)を修了した救急隊員の養成を推進している。現在、救急標準課程又は救急II課程修了者は、それぞれ2万2,012人、4万1,085人であり、うち、それぞれ1万4,984人、2万4,845人が救急隊員として救急業務に従事している。
(3)救急救命士 消防庁においては、全ての救急隊に救急救命士が常時1名配置される体制を目標に救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。 平成15年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国894消防本部のうち96.9%を占める866本部(対前年4本部増)となっており、救急救命士を運用している救急隊も年々増加し、全国4,649隊の救急隊のうち67.6%を占める3,142隊(対前年258隊増)となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は13,728人(対前年1,660人増)、救急救命士として運用されている救急隊員は12,666人(対前年1,843人増)と年々着実に増加している(第2−4−7図、第2−4−8図)。
(4)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成15年4月1日現在、5,574台(対前年57台増、1.0%増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格救急自動車は3,307台(対前年245台増、8%増)が配置されており、今後、更に高規格救急自動車の割合を高めていくよう推進している。
(5)高速自動車国道等における救急業務実施体 高速自動車国道及び本州四国連絡道路(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成15年4月1日現在、総延長7,370kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、日本道路公団及び本州四国連絡橋公団においては、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成15年4月1日現在、全国で4,995箇所となっている(附属資料36)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 平成14年3月31日現在、初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが504箇所(平成13年3月31日現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により410地区で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが165箇所で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち13箇所で整備されている。 救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されている。
4 救急業務体制の整備の課題(1)救急隊員の教育訓練の推進 平成3年に、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が導入されるとともに、救急隊員の行う応急処置範囲も拡大された。 救急救命士の資格は、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格することにより取得できる。新たに資格を取得した救急救命士が救急業務に従事するには、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。 消防庁としては、全国すべての救急隊に少なくとも救急救命士が常時1名配置できるよう、その資格を有する救急救命士の養成を早急に進めており、救急振興財団の救急救命士養成所で年間約1,000人、政令指定都市等における養成所で年間約400人を養成している。平成15年4月1日現在、救急救命士の資格を有する消防職員は13,728人に、運用されている救急救命士数は12,666人になっている。 平成16年7月目途から実施される気管挿管については、平成16年早々から、各都道府県の消防学校を中心に救急救命士の既資格者に対する講習が開催される。また、救急救命士の処置範囲拡大の前提となるメディカルコントロール体制の整備・充実の一環として、資格取得後の定期的な病院実習等を実施し、救急救命士の知識・技術の維持向上を図っている。 救急隊員についても、消防庁としては、平成3年の応急処置範囲拡大後、救急II課程及び救急標準課程の実施を推進してきている。 そのほか、日本臨床救急医学会や全国救急隊員シンポジウム等の医学会、研究会の機会を通じて、救急隊員の全国的な交流と救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急用資機材等の整備 救急業務の高度化に伴い、消防庁としては、高度な応急処置の実施に必要な救急用資機材等の計画的な整備を進めてきている。すなわち、「救急業務高度化資機材緊急整備事業」により、高規格救急自動車、高度救命処置用資機材等の整備に対する国庫補助を行うとともに、地方交付税措置を講じ、資機材の整備の一層の促進を図っている。 また、救急救命士の処置範囲拡大に際しては、有効性と安全性の双方に優れているとされる二相性波形除細動器の導入促進及び平成16年から消防学校で実施される気管挿管講習に必要な資機材の整備等に対して支援を行っている。 今後とも引き続き、高規格救急自動車及び高度救命処置用資機材の早急な配備を促進するとともに、使用の実態を踏まえた資機材の検討、改善を図っていく必要がある。
(3)医療機関との連携の強化と救急救命士の処置範囲拡大 救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、メディカルコントロール体制を整備することが重要である。 消防機関と医療機関との協議の場である都道府県単位、各地域単位のメディカルコントロール協議会については、都道府県単位の協議会は全ての都道府県で設置が完了したが、各地域単位の協議会は一部設置されていない地域がみられるため、その設置を推進していく必要がある。現場の救急救命士に対する医師の常時指示体制の更なる充実を図るとともに、救急活動に対する医学的観点からの事後検証体制、救急救命士の再教育体制等について、その確実な実施を図る必要がある。 救急救命士の処置範囲拡大については、消防庁は厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催し、平成14年12月に報告書が取りまとめられた。これにより、メディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、1)医師の具体的指示なし(包括的指示下)での除細動が平成15年4月から実施され、2)気管挿管については平成16年7月目途に実施されることとなっており、3)薬剤投与は、エピネフリンを中心とした最小限の薬剤について、平成15年中に研究・検討を行うこととなっており、結論として薬剤投与を認める場合には、必要な措置を講じ、早期実施を目指すこととなっている。 このように、消防庁では厚生労働省、各都道府県、消防機関、地域の医師会、医療機関等の関係機関と連携を図りながら、地域におけるプレ・ホスピタルケアの更なる向上を推進している。
包括的指示下での除細動による効果 消防庁では心肺停止傷病者の救命効果の向上を目指し、救急救命士の処置範囲の拡大に積極的に取り組んできました。平成15年4月から、救急救命士は医師の具体的指示なしで除細動を行うことが可能となり、迅速な除細動の実施による救命効果の向上が図られています。 従来、救急救命士は救急救命士法に基づき心室細動(心臓がけいれんして血液が全身に送り出されない状態)を確認後、無線や電話等を活用し医師に連絡を行い、その指示を受けてから除細動(電気ショック)を実施していました。平成15年4月の救急救命士法施行規則の一部改正により、除細動は医師の具体的指示を要さずに救急救命士が行うことができる救急救命処置の範疇となり、救急救命士は心室細動を確認後直ちに除細動を実施することが可能となったわけです。除細動は1分遅れればその救命効果が7〜10%低下するとも言われており、可能な限り早期に実施することが救命効果の向上には必要です。 消防庁では、東京消防庁及び全国13の政令指定都市に協力を依頼し、指示なし除細動の効果について調査した結果を速報値として集計したところ、4月から9月までの6ヶ月について、医師の具体的指示を得てから除細動を実施していた昨年と比較すると除細動実施率が8.4%から11.7%と3.3ポイント、心拍再開率が32.2%から36.9%と4.7ポイント、1ヶ月生存率が15.6%から16.8%と1.2ポイントそれぞれ上昇していることが判明しました。(参考) 救急救命士が救急救命処置として除細動を行うに際しては、自動体外式除細動器を使用することとなっています。消防庁としては、なかでも二相性波形除細動器の導入を促進しています。○自動体外式除細動器:1)電源を入れ、2)除細動パッドを傷病者に着け、3)音声ガイドに従い必要に応じて除細動ボタンを押す、といった操作の流れで、除細動が必要とされる傷病者に対する除細動を可能とする器械です。最近ではより簡単な操作で除細動を行うことができる器械も登場しています。○二相性波形除細動器:より少ないエネルギー量で除細動が実施可能なエネルギーの出力方式を用いた除細動器です。有効性と安全性の双方に優れているとされています。
(4)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成14年中の平均では6.3分である。救急隊が現場に到着するまでの間に、救急現場近くの一般住民による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう実技指導の強化に一層努力していくことが重要である。特に、心肺機能停止状態の傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の修得に主眼を置き、住民体験型の普及啓発活動が積極的に進められている。 消防庁としては、平成5年3月に「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」を制定し、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や、応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・仕事場に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発、及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発を図っている。毎年、講習受講者数は着実に増加しており、平成14年中には救命講習受講者数が102万人を突破し、消防機関は今や、応急手当普及の代表的機関となっている。 心肺蘇生法については、平成13年5月、日本救急医療財団により全国共通の心肺蘇生法の指針が示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動も、平成14年4月よりこの指針を踏まえた新しい内容に順次変更されている。 今後とも、消防機関としては、昭和57年に制定された「救急の日」及び「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を引き続き推進していく必要がある(第2−4−9図)。
(5)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染の危険性があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務において極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の科目を設けるとともに、重症急性呼吸器症候群(SARS)を含めた各種感染症の取扱いについて、感染防止用マスク、手袋、感染防止衣等を着用し、傷病者の処置を行う共通の標準予防策等を消防機関等に示したところである。 また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制について整備していく必要がある。
(6)患者等搬送事業の指導育成 患者等搬送事業者については、昭和63年12月から、運輸省(国土交通省)により患者等輸送に限定された一般乗用旅客自動車運送事業免許が与えられている。 消防庁でも、患者の容態急変時の対応や感染防止対策等の観点から平成元年10月に「患者等搬送事業指導基準」を設けており、消防機関による患者等搬送事業の適切な指導を推進している。
(7)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 救急車での長距離搬送による容態悪化や交通渋滞による搬送遅延等の問題を解消するため、高速かつ機動的という特性を有するヘリコプターを救急搬送に活用することで、搬送時間の大幅な短縮や的確な医療機関への搬送が可能となる。特に、離島、山村等からの救急患者の搬送や交通事故等による重症患者の救命救急センター等専門的医療機関への救急搬送、更には、大規模災害時における広域的な救急搬送などに大きな効果を発揮するので、救命効果の向上に貢献するものと期待されている。 消防防災ヘリコプターを活用した救急業務については、平成10年3月に消防法施行令が一部改正され、消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれを基に出動基準を作成するなど、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を進めている。 平成14年中における全国の消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数2,068件(前年比24.0%増)、搬送人員1,982人(同26.0%増)であり、ヘリコプターによる救急搬送への需要は年々増加している。 今後、さらに消防防災ヘリコプターを救急業務に積極的に活用していくために、地元医療機関との連携体制の構築、離着陸場の整備促進、航空隊員の資質向上等実施体制をより一層充実させることが必要である。
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成14年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数5万414件(対前年1,143件増、2.3%増)、救助人員5万2,278人(同961人増、1.9%増)である(第2−5−1表、附属資料37)。
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ130万4,443人である。消防職員は、延べ111万3,247人で、うち交通事故が36.4%、火災が26.0%である。一方、消防団員は、延べ19万1,196人で、うち火災が83.6%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ49万368人であり、救助活動1件当たり9.7人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は水難事故の15.7人が最も多く、次に自然災害の13.9人となっている(第2−5−2表)。
2 救助活動の実施体制(1)救助隊設置消防本部及び構成市町村 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、救助活動に関する高度な専門教育を受けた隊員、救助活動に必要な資機材及びこれらの資機材を搭載した救助工作車等によって構成される。 平成15年4月1日現在、消防法第36条の2の規定並びに救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)に定める基準に従い、救助隊を設置している消防本部は859本部と前年度と比較して5消防本部減少し、また、当該消防本部の構成市町村(受託市町村を含む。)は3,035市町村であり、前年度と比較して30市町村減少している。これは、主に消防機関の広域再編及び市町村の合併が進められたためである(第2−5−3表)。
(2)救助隊数及び救助隊員数 救助隊は859消防本部に1,493隊設置されており、救助隊員は2万4,027人となっている。1消防本部当たり1.7隊の救助隊が設置され、1隊に16.1人の救助隊員が配置されていることとなる。また、救助隊数及び救助隊員数については、省令第3条の規定による救助隊は若干減少したものの、省令第4条の規定による救助隊(より専門的な教育を受け、多くの資機材を備えた救助隊)は漸増傾向にある(第2−5−4表)。
(3)救助隊が乗車する車両及び主な保有資機材 救助隊の保有する資機材については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている。 それゆえ救助工作車及び救助隊の保有する資機材については、「救助資機材等総合整備事業」に基づく国庫補助に加え、地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている(第2−5−5表)。
(4)救助隊の教育訓練 消防職員の救助活動については、より高度かつ専門的な知識と技術が不可欠となってきている。このため消防庁では、平成10年度から、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催しており、パネルディスカッション等による活発な意見交換や、事例研究などが行われている。また、消防学校の専科教育の救助科では、140時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2−5−6表)。
3 テロ対策 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置、また、平成15年3月18日にイラク情勢等の緊迫化を踏まえ、消防庁に「イラク情勢等を踏まえた消防庁テロ対策室」を設置し、所要の警戒態勢をとるとともに、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期するため、次のような取組みを実施した。
(1)地方公共団体における危機管理体制 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、各都道府県に対して危機管理体制の点検、強化等の要請を行った。特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築など、所要の体制整備について要請を行った。その結果、平成13年10月末までに、全都道府県においてテロ対策本部等が設置され、都道府県における体制が整備された。また、テロ対策に関する国と地方公共団体との連携の一層の強化を図るため、テロ対策関連情報を総務省及び消防庁から各都道府県のテロ対策本部等に対して迅速・的確に提供するとともに、自治体からも速やかな情報提供を要請した。
イラク情勢等を踏まえたテロ対策に係る消防庁の対応について 消防庁ではテロ対策として次のような取組みを実施しています。1 米国同時多発テロ事件及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえた対応 消防庁では、平成13年の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置するとともに、各都道府県に対する危機管理体制の点検・強化、警戒体制の整備強化等の要請、全国の主な消防本部に対する生物・化学テロ対応資機材の無償貸与等を行うなど、国内におけるテロの発生の可能性を踏まえた対策を講じてきたところです。2 米国等によるイラク国内への攻撃事態を踏まえた対応 平成15年3月20日、米国等によるイラクへの攻撃が開始され、内閣に「イラク問題対策本部」が設置されるとともに、「イラク問題に関する対処方針」が決定されました。これを踏まえ、消防庁に「消防庁イラク問題対策本部」を、また総務省に「総務省イラク問題対策本部」を設置し、体制の強化を図り、所要の警戒体制をとりました。 都道府県においてもテロ対策会議が開催され、緊急連絡体制の強化、情報収集体制の確立などの対応が図られ、市町村においてはテロ対応資機材の点検整備及び関係各機関との連携訓練などがなされたところです。
(2)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防、警察、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要があり、平成13年11月には、政府のNBCテロ(放射性物質(Nuclear)、生物剤(Biological)及び化学剤(Chemical)を用いたテロ)対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられた。消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 各都道府県内においては、比較的規模の大きな消防本部等を中心に、特にNBCテロ災害を想定した合同訓練を実施するなど、関係機関の連携の強化を図っている。 また、米国においての炭疽菌事件などを踏まえ、今後、生物テロ災害の発生する危険性が考えられることから、平成15年5月に炭疽菌、天然痘の災害発生に備えるため、関係機関の役割分担と連携、必要な処置を明確化した「生物テロへの対処」が取りまとめられ、その旨を各都道府県内の関係部局、市町村及び消防機関に対して周知させ万全の体制を図った。
(3)テロ災害に対応するための消防資機材の整備 NBCテロに対し、消防隊員の安全を図りながら迅速に対応するためには、身体防護や検知のための特殊な消防活動用資機材を用いた消防活動を実施する必要がある。消防庁では、米国における炭疽菌事件の発生などを踏まえ、特に、NBCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算において、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し、ワールドカップサッカー大会の開催等を考慮の上、各都道府県の代表的な消防本部に対して、これらを無償貸与し、NBCテロ災害の対処能力の強化を図った。 また、平成14年度には、平成13年度と同様にテロ対策用の資機材を追加で無償貸与するとともに、陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器を、テロ対策特殊救助資機材として新たに国庫補助の対象としたところである。
(4)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識、技術が必要である。このため、消防庁では消防職員及び消防団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防署・全消防団等に配布した。 また消防大学校においては、テロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、平成14年1月に全国の救助隊長等を対象とした緊急テロ対策特別講習会を開催し、NBCテロ災害発生時の対処や資機材の取扱い等についての教育訓練を実施した。さらに、平成14年度からは消防大学校における本科、幹部研修科、消防団長科、救助科、危機管理講習会等の学科にNBCテロ災害対応に係る科目を組み入れ、平成14年度は消防職員(約700名)及び消防団員(約100名)に対する教育訓練を実施している。
4 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は、火災、交通事故、労働災害、爆発事故、水難事故、自然災害、山岳遭難等幅広い災害、事故に及んでいる。 加えて、平成7年の地下鉄サリン事件や、平成11年の茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故等が国内で発生し、また平成13年には米国において同時多発テロ事件、炭疽菌事件が発生したように、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 消防庁ではこのような状況を勘案し、これまで原子力災害及び化学災害について、それぞれ消防活動マニュアルを作成し、生物・化学災害時の除染要領についても検討を行っている。 また、救助と救急の連携など傷病者の状態に応じた救出方法をテーマに全国消防救助シンポジウムを開催し、講演やパネルディスカッションを行った。 このように、多種多様な事故・災害に的確に対応するため、各種災害に対応する救助活動のマニュアル及び救助技術等の教育プログラムの充実を図るとともに、高度かつ専門的な機能・性能が要求される救助資機材の機能・性能の明確化や消防・防災ロボット等先進技術の活用について検討を行っているほか、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。 さらに、平成14年11月6日、大阪市内の鉄道軌道敷内で走行列車が消防隊員に接触し、殉職者1名、負傷者1名の列車事故が発生した。消防庁では、この列車事故を踏まえ、鉄道災害時の救急救助活動の安全確保等について国土交通省と連携し、平成15年2月10日に国土交通省の地方運輸局と運輸局所在都道府県、代表消防本部が中心となりブロック単位の協議会を設置するよう要請し、各地区において協議会が開催される等、事故防止についての取り組みが進められている。 なお、震災等の大規模災害やテロ災害等の特殊災害時において、市町村のみでは救助活動等の対応が困難なため、全国的な観点から緊急対応体制を充実・強化するため、平成15年6月に消防組織法を改正し緊急消防援助隊を法的に位置づけ、必要な場合には消防庁長官が出動を指示できることとし、構成する部隊についても指揮支援部隊、特殊災害部隊等を増強した。
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等に日頃から大きな成果をあげている。特に、地震等大規模災害時においては、道路の倒壊や陥没等により陸上交通が遮断され、また津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態が予想されるので、ヘリコプターの高速性、機動性を活用し、消防防災活動で大きな役割を担うことができるものと期待されている。 消防庁としてもこれを支援するため、国庫補助金や地方交付税によって資機材の充実、運用経費等の支援を行い、消防防災ヘリコプターの円滑な運航・整備を推進している。 平成15年4月1日現在の消防防災ヘリコプターの保有状況は、消防機関保有が27機、道県保有が41機、計68機となっており(第2−6−1図)、未配備県域は3県となっている。 消防防災ヘリコプターは、消防防災業務に幅広く活用されており、平成14年中の出動実績は、火災出動1,191件、救急出動2,068件、救助出動1,305件等となっている。 なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づいた広域航空消防応援によって、都道府県域を越えた応援活動が展開されており、平成14年度末までに計239件となっている。
2 航空消防防災体制の課題(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要がある。 消防庁においては、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進してきたが、45都道府県で配備が完了または配備予定となっており、ほぼ目標を達成される見通しとなっている。また、大規模災害時等の広域的な運用に資するため、防災情報システム等を構築し、消防防災ヘリコプターの稼動・整備状況、離着陸場情報等を随時把握し、緊急時においても全国規模で対応できるよう、体制の整備を図っている。 都道府県有の消防防災ヘリコプターは、従来、市町村の消防吏員が都道府県有のヘリコプターを使用して消防事務を行うという法的構成がとられていたところであるが、本年6月の消防組織法等の改正により、都道府県は区域内の市町村長からの要請に応じ、航空機を用いて市町村消防を支援することができること、その支援を行うため都道府県の規則で航空消防隊を設けるものとすること等都道府県が行う支援事務の根拠が法律上明確となった。 既に、宮城県北部地震や十勝沖地震の際には緊急消防援助隊として出動し、被災地の映像を官邸並びに消防庁危機管理センターに配信する等情報収集に活躍した。 このように消防防災ヘリコプターには昼夜を問わず出動需要があり、一部運用されている夜間運航を更に推進していく必要がある。
(2)各種災害時におけるヘリコプター活用の推進 消防防災ヘリコプターは、火災、救急、救助等に幅広く活用されており、出動件数も増加傾向にある(第2−6−2図)。 特に、救急搬送については、消防庁は平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、ヘリコプターの特性を生かした活用を図るよう推進している。各都道府県ではこれを基に出動基準を作成し、地域の実情を踏まえた救急業務実施体制を整備する等効果的な消防防災ヘリコプターの運用について所要の措置を講じている。 また、医師が同乗した救急体制についても、地域の病院と協定を結ぶ等、救命の輪を着実に広げていく必要がある。 高速道路上での交通事故対応については、警察庁、厚生労働省、国土交通省等関係機関と協議を行い、平成14年12月にこれまでの検討結果を中間的に取りまとめ、都道府県に通知を行った。 これを受け、地元の消防、警察、道路管理者等関係機関が参加した模擬訓練を実施する等の取り組みを行っている。
(3)航空隊員に対する教育訓練の推進 航空隊員の資質向上を図るため、平成10年度から消防大学校で「航空消防防災講習会」を開催する等最新の救急救助技術の習得等を進めている。 さらに、消防防災ヘリコプターに係る地方公共団体相互の連絡協調を推進し、国民の信頼と期待に応える航空消防防災体制の確立に資することを目的として平成8年に設立された全国航空消防防災協議会においても、航空消防防災活動の向上に寄与する調査研究や航空隊員を対象とした研修会を実施しており、今年度から新たに航空隊長研修も実施するなど充実に努めている。
(4)航空消防防災体制におけるITの活用推進 IT(情報通信技術)の進展を受けて、消防庁でもITを活用した消防防災ヘリコプターの運用を検討している。 消防防災ヘリコプターは、広域応援に出動するなど遠隔地で活動する場合に、現在の消防・防災無線や航空無線では保有団体(航空基地)との交信が困難となり、保有団体でも自機の現在位置、活動状況を把握することが不可能となる。 このため、消防庁では、GPS(全世界的衛星測位システム)を利用した消防防災ヘリコプターの動態管理システムの構築について研究を進めている。 さらに、被災状況の把握等に有効なヘリコプターテレビ電送システム及び可搬型ヘリコプターテレビ受信装置は、いまだ全国をカバーするには至っていないことから、引き続きその普及・増強に努める必要がある。
第7節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大きな改正や、防災基本計画の修正が行われている。 平成7年6月には、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による措置の創設等を内容とする災害対策基本法の改正が行われたほか、12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等国・地方を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 平成7年7月には、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえ、防災基本計画の全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められた。 平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害についても、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るため、防災基本計画の修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現・経済産業省)、厚生省(現・厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等を置くこととされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村における核燃料加工施設における臨界事故、事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られた。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編に伴い、また、平成14年4月には、近年の風水害・原子力災害対策の進展を踏まえ、各々の災害対策の一層の充実・強化を図るため、それぞれ防災基本計画の修正が行われた。
(3)消防庁の防災体制 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現・総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関しとるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の自然的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編に伴い、自治省・消防庁防災業務計画を廃止し、新たに消防庁防災業務計画を作成した。 さらに、平成15年8月には、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に消防防災・危機管理センターを整備した。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成15年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体、原子力災害対策については22団体、風水害対策については28団体、火山災害対策については16団体、林野火災対策については16団体、雪害対策については11団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。そして、平成12年12月には、中央省庁等改革に伴い指定行政機関及び指定地方行政機関が指定されたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請している。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成15年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、このうち2,322団体(72.2%)が見直しを完了している。しかし、特に小規模な団体における見直しは遅れており、平成14年4月1日現在、人口2,500人未満の町村だけに限ると60.8%にとどまっている。 なお、平成14年度中には、都道府県では31団体が、市町村では754団体が、それぞれ修正を行っている。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントの実施マニュアルを作成するとともに、このような防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、地区別防災カルテの作成マニュアルを示すとともに、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成14年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、51団体となっている。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に抑えるために重要であり、そのためには日頃から実践的な対応力を身に付けておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では、「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上訓練等の実践的な訓練の実施を促進することとしているほか、消防大学校においても、平成15年度に、地方公共団体の首長や防災担当者等を対象として行う「危機管理セミナー」のなかで、状況予測型図上訓練のほか、ロールプレイング型図上訓練やDIG等を実施している。また、地方公共団体に対し、総合的かつ実践的な防災訓練を実施し、災害時に実際に適切な行動ができるか検証するよう要請している。 平成14年度においては、都道府県が延べ235回の防災訓練を実施したほか、市区町村においても延べ6,522回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震が最も多く、次いで、原子力災害、風水害、コンビナート災害、林野火災の順となっており、市区町村では、地震、大火災、風水害の順となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実働)訓練が最も多くなっている(附属資料25)。
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会のさらなる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、すべての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。これに必要な経費については、平成8年度から地方財政計画に約70億円を計上し、普通交付税により措置している。 また、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、1)被害想定、2)職員の動員配備体制、3)情報の収集・伝達体制、4)応援体制、5)被災者の収容、物資等の調達、6)防災に配慮した地域づくりの推進、7)消防団、自主防災組織の充実強化、8)災害ボランティアの活動環境の整備、9)災害弱者対策、10)防災訓練、といった項目に留意する必要がある。 なお、平成9年6月に防災基本計画に事故災害対策が追加されたこと、平成12年5月、平成14年4月に原子力災害対策編が修正されたこと等を踏まえ、各種事故災害対策についても、より実践的、具体的な内容となるよう見直しを進める必要がある。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのため、組織に関しては、高いレベルの危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要がある。平成15年4月1日現在、32都道府県において部次長職以上の防災危機管理専門職が設けられているが、更に充実の必要がある。 防災体制強化の根幹である人材育成については、首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応力の向上、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要である。消防庁としては、平成15年度より消防大学校において、首長等幹部職員を対象とした「トップマネジメントコース」を含む「危機管理セミナー」を実施するとともに、消防職団員やボランティア、広く住民を対象とし、インターネットを活用して家庭や地域でいつでも学習できるe−カレッジを、平成16年2月を目途として実施することとしている。今後は消防学校における実技研修等とも組み合わせつつ実施するなど、防災教育の充実を図っていくこととしている。 このほか、各地方公共団体においては、防災業務に精通した職員をはじめとした人員を夜間・休日においても24時間体制で配置するほか、災害時の職員の自主参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などIT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険個所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。
危機管理セミナー「トップマネジメントコース」の実施について 消防大学校においては、従前より、消防職員及び都道府県・市町村の防災担当職員に対する防災・危機管理教育を実施していましたが、平成15年度より、内容、対象を拡充の上、「危機管理セミナー」として、防災・危機管理教育を実施しています。 平成15年7月31日、8月1日の両日にわたって、都道府県知事、副知事、市長、助役等を対象とした「トップマネジメントコース」を次の内容で開催しました。 1日目:危機管理講演会−自治体首長としての危機管理のあり方 2日目:危機管理図上演習 1日目の危機管理講演会では、約170名の自治体首長等が真剣に聞き入っておられました。2日目の危機管理図上演習は、状況予測型訓練といわれるもので、講師から地震災害の季節、曜日、時刻、天候等を提示し、訓練参加者は発震以降の役割行動や意思決定を想定することで、各人の状況対応能力を向上させるものです。参加者の代表が記入した対応記入票の内容を発表するとともに、コメンテーターの補足意見をいただきました。約80名の訓練参加者は活発に意見や質問をされ、充実した演習となりました。
(4)国民保護法制実施のための体制の整備 武力攻撃事態対処法等いわゆる有事関連三法が平成15年6月13日に公布・施行された。 国民保護法制に関しては、事態対処法の施行の日から1年以内を目標に整備することが衆参両院の特別委員会において決議されている。 国民保護法制は、侵害排除と並び、有事法制の中でも特に国民の生命、身体及び財産を保護するという意味において極めて重要な意義を有するものであるが、現実に被災現場等で国民の保護のための措置を行うこととなる消防機関を含む地方公共団体の果たす役割は非常に大きい。 地方公共団体は、警報の伝達、避難住民の誘導、避難施設等での救援、被災情報の収集及び報告、警戒区域の設定、消火活動・救急搬送等様々な業務を行うことが想定されるが、これらの活動については、常備の消防機関が中心になり、地域の消防団もこれと連携しつつ一定の役割を担い、また、自主防災組織等の自発的な活動との連携も想定される。 これらの事務を円滑に行うため、国民保護法制の実施体制を国、地方公共団体において早期に確立することが必要であり、併せて防災無線の整備や、消防団・自主防災組織に係る活動資機材の整備等の支援を積極的に行っていく必要がある。
第8節 広域消防応援1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成15年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が2,465、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が638、その合計である全国の協定数は、3,103である。また、全国の協定について応援災害別に分類(重複計上)すると、火災2,780、風水害2,262、救急2,388、救助2,278、その他2,428となる。 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などの場合には、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、災害種別に応じた活動マニュアルを作成するとともに、消防広域応援基本計画を作成し、その中で、派遣要請システムの整備、代表消防機関の設置、応援情報リストの整備等の都道府県単位の消防広域応援体制の整備を速やかに推進するように通知しているところであり、平成15年4月1日現在、38都道府県で整備が図られている。 また、平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓に鑑み、運用上、緊急消防援助隊の仕組みが設けられたが、平成15年6月の消防組織法改正により、緊急消防援助隊が法定化されるとともに、消防庁長官による出動指示権及び国の財政措置等の規定が設けられ、平成16年4月から施行されることとなっている。 大規模・特殊災害や林野火災等においては、空中消火や救急業務、救助活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効である。 そのため、消防庁では、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2−8−1表)。 今後とも消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場を確保し、情報活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。 平成14年中には、消防庁長官の求めに応じて38件の消防広域航空応援が実施された。 なお、昭和62年度に消防広域応援交付金制度が創設され、消防庁長官の求めに応じて都道府県の区域を越えて行われた消防広域応援については、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されることとなっている。
2 緊急消防援助隊の整備(1)緊急消防援助隊の整備・充実 平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ充実したものとするため、全国の消防機関相互による迅速な援助体制として、平成7年6月に緊急消防援助隊が発足した。 緊急消防援助隊は、消火部隊、救助部隊、救急部隊のほかに、先行調査や現地消防本部の指揮支援を行う指揮支援部隊、応援部隊が被災地で活動するために必要な食糧などの補給業務を行う後方支援部隊等が編成に加えられており、大規模災害時には、消防組織法に基づく消防庁長官の求めにより出動することとされている。また、平成15年6月の消防組織法改正により、緊急消防援助隊が法定化されるとともに、東海地震等の二以上の都道府県に及ぶ大規模災害や毒性物質の発散等の特殊災害に対処するために特別の必要があるときは消防庁長官がその出動を指示できることとされ、平成16年4月から施行されることとなっている。緊急消防援助隊に係る国の財政措置等についても法律に定められ、消防庁長官の指示を受けて出動した緊急消防援助隊の活動経費に係る国庫負担金、財務大臣との協議を踏まえて総務大臣が策定する「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」に基づいて整備される施設設備に対する国庫補助金等について規定された。 緊急消防援助部隊の部隊編成については、発足当初、救急部隊、救助部隊等の全国から集約的に出動する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(同1万3,000人規模)、総計で1,267隊、交替要員を含め約1万7,000人規模であった。平成13年1月には、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、消火部隊について登録制を導入し、救助隊・救急隊とともにその隊数が大きく増加し、さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、及び消防防災ヘリコプターによる航空部隊、消防艇による水上部隊を新設し、8部隊とした(1,785隊、約2万8,000人規模)。その後も年々登録数は増加し、平成15年5月現在では、2,210隊(隊員数約3万1,000人規模)の体制となっている(第2−8−2表)。平成15年6月の消防組織法改正を受けて、同法に基づき、平成16年3月までに再登録の手続きが行われる予定である。 緊急消防援助隊の装備については、これまでも、消防庁において基準を策定するとともに、国庫補助措置を講じることにより、特殊災害対応特殊消防ポンプ自動車、救助工作車、ファイバースコープ等の高度救助用資機材、災害対応特殊救急自動車、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な車両等の整備を推進している。平成16年度からは、基本計画に基づいた整備が図られることになる。 平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムは、緊急消防援助隊派遣車両の位置及び動態を把握するためのシステムで、車載GPSにより特定した車両位置と車載端末装置から入力した車両動態を携帯電話通信網により消防庁に設置したサーバに送信し、広域応援支援システムの電子地図上にシンボルで表示する。また、携帯電話網の不感地帯では自動的に低軌道衛星回線に切り替わり、全国規模で安定したデータ通信を可能とする。さらに、このシステムには、これらの回線を活用して派遣車両と消防本部等との間で情報連絡を行う簡易な文字通信機能等も備えている。平成13年度の実証実験、平成14年度の可搬型車載端末の開発を経て、現在、指揮支援部隊を構成する政令市消防局等に配備されている。
(2)活動及び訓練等 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁と名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月には、岩手県内陸北部の岩手山付近で発生した震度6弱を記録した地震において、仙台市消防局と東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局、仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局、川崎市消防局から救助部隊、消火部隊を現地に派遣し地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊が、ヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする震度6弱を記録した芸予地震においては、大阪市消防局、神戸市消防局、福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局、北九州市消防局の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。 平成15年には、7月の宮城県北部地震(震度6弱、6強、6弱が1日に連続して発生)において、札幌市消防局の指揮支援部隊が航空部隊により、また、茨城県の航空部隊が被災地上空で情報収集活動を行った。8月の三重県ごみ固形燃料発電所火災では、名古屋市消防局の指揮支援部隊、特殊災害部隊、航空部隊等が消火活動等を行った。9月の栃木県黒磯市ブリヂストン工場火災においては、東京消防庁の指揮支援部隊、特殊災害部隊、航空部隊が出動し、消火活動等を行った。 さらに、9月の平成15年十勝沖地震(震度6弱が2回発生)においては、札幌市消防局、仙台市消防局の指揮支援部隊及び航空部隊、青森県の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。また、当該地震により損傷した出光興産(株)北海道製油所のオイルタンクから発災した火災の消火活動及び鎮火後の火災警戒活動のため、札幌市消防局、北部上北消防本部、青森地域消防本部、八戸広域消防本部、秋田市消防本部、男鹿地区消防本部、仙台市消防局、いわき市消防本部、鹿島南部消防本部、日立市消防本部、東京消防庁、川崎市消防局、藤沢市消防本部、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局が特殊災害部隊等により応援活動を実施した。これらに加えて、泡消火薬剤の提供のため、全国的な広域応援を実施した。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日には、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われ、その後も、隊員の技術向上と部隊間の連携強化のため地域ブロックごとの合同訓練等が毎年行われている。また、緊急消防援助隊発足5年目を迎えた平成12年10月には、148本部、1,922人の隊員による第2回目の全国合同訓練を、皇太子殿下の御臨席のもとに、東京都江東区有明において行った。 平成15年度については全国6ブロックにおいて合同訓練が実施され、国内でのテロ災害を想定した特殊災害部隊の訓練も実施されたほか、自衛隊輸送機と連携した救助部隊の輸送訓練や部隊指揮の図上訓練も行われた。
3 広域防災応援体制(1)広域防災応援体制の確立 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事から防衛庁長官等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛庁長官等に対して災害の状況等を通知することができる。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正により都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。
(2)広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関と、あらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、災害現場における指揮体制等各般にわたる項目について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援に関しては、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組みが進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計22の協定が締結されている。この結果、阪神・淡路大震災以後、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を越えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に取り組む団体が大幅に増加しており、平成15年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、2,360団体となっている。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
第9節 消防防災の情報化の推進1 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 災害時において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくほか、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくことが極めて重要である。 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、1)国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、2)都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網、3)市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網及び4)国と地方公共団体を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2−9−1図、第2−9−1表)。 消防庁では、次の事項に重点をおいて、地方公共団体と一体となって総合的な消防防災通信ネットワークの整備を推進している。
(1)通信ルートの多ルート化及び耐震化の推進 大規模災害時には、通信施設が被害を受け、情報連絡に支障を来すことも予想されることから、災害に強い通信ネットワークを構築するため、地上系通信網に加え、衛星系通信網を整備することにより通信ルートの多ルート化を推進している。 衛星系の通信網については、現在、地域衛星通信ネットワークが消防庁及び44都道府県の間で運用されており、地震等による通信回線の遮断を最小限とするため、通信施設の耐震・免震対策及び停電時に備えた非常電源設備の耐震対策を促進している。
(2)災害に対する初動体制を確立する画像伝送システムの整備 大規模災害発生時に迅速かつ的確な災害応急活動を展開するためには、情報の収集・伝達を速やかに行うことが必要であり、中でも、上空からの映像情報は被害規模及び概要を迅速に把握できることから、災害に対する初動体制及び広域応援体制を整える上で非常に有効である。 画像伝送システムは、衛星地球局、高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等で構成されており、得られた画像情報を消防本部指令センター内等に集約し、発災直後の被害状況を当該団体において把握するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに国(消防庁を経由して官邸等)、都道府県及び他の市町村などへ伝送するものである。 消防庁では、この画像伝送システムを政令指定都市、都道府県庁所在都市等に整備を推進している。 また、高所監視カメラやヘリコプターテレビ電送システムではカバーできない山間部等における大規模災害時においても、被災現場から直接画像情報を防災関係機関へ伝送するため、機動性のある可搬型ヘリコプターテレビ受信装置、衛星を使用した可搬型衛星地球局設備の整備を進めている(附属資料41)。
(3)市町村の消防防災無線網の整備ア 地域住民等に密着した防災行政無線網 同報系無線(住民連絡用)は、住民等に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報、避難勧告等の伝達に極めて有効である。災害現場に赴き、その状況等を的確に把握・伝達するための移動系無線とあわせ、一体的な整備が必要である。 また、地域防災系無線は、災害時において市町村と防災関係機関、病院、学校、ライフライン等の生活関連機関、自主防災組織等との相互連絡に極めて有効であり、平常時においても地域に密着した様々な情報の連絡にも活用できることから、市町村における整備を推進している。 消防庁では、国庫補助制度、防災基盤整備事業等を活用し、これらの無線網の整備の促進を図っているところであり、全国整備率は平成15年3月末現在、同報系無線66.8%、移動系無線86.9%、地域防災系無線8.1%となっている(附属資料42)。 また、平成14年度からは、国庫補助対象に高機能情報通信対応防災無線を追加し、テロップなどの文字情報伝達、一定の静止画像・音声による双方向情報伝達を可能とするデジタル仕様による通信の高度化も促進している。イ 高度化する消防・救急無線網 消防・救急無線は、消防本部、消防署等に基地局を設置し、消防ポンプ自動車、救急自動車等に積載した移動局との間で情報の収集・伝達、指揮・連絡等を行うための無線網である。平成15年4月1日現在、9万7,169局が運用されており、この1年間に1,187局が増加した(第2−1−3図)。 また、119番通報の受付から出動指令、現場活動支援等を効率的に行うための消防緊急通信指令施設は約9割の消防本部で整備され、地図等検索装置や車両動態管理システム、医療情報装置などのシステムの導入が進められているほか、災害現場の映像を消防・防災ヘリコプターから消防本部に伝送するヘリコプターテレビ電送システムの導入も増加するなど消防・救急無線網の高度化が図られている。 一方、近年、情報通信の飛躍的進展により周波数チャンネルの需要が高まっているが、電波は限られた資源であり、新たな周波数割り当てが極めて困難な状況となっている。 このような過密な電波環境への対応や秘匿性の確保、各種データ、画像等の伝達を可能とする消防・救急無線の高度化のため、消防・救急無線においてもデジタル化を進める必要がある。 消防庁では全国消防長会と連携を図りながら、「消防・救急無線デジタル化検討懇談会」を開催し、平成11年度には実験用デジタル無線機の仕様作成及び実験機の製作、12年度には変調方式や周波数帯等の違いによる電波伝搬への影響調査、13年度にはデジタル移行に伴う使用周波数の変更による既設の無線通信補助設備への影響調査及び対応方法の検討、14年度にはデジタル化した際に活用できるアプリケ−ション例と移行に際しての効果的な設計方法や低コスト等のモデル、費用等を検討等、様々な課題検討を行い、全国の消防本部が円滑かつ速やかにデジタルへの移行が図られるよう取組みを進めている。
(4)多様な情報収集、伝達手段の整備とバックアップ機能の確保 地震災害、石油コンビナート災害等の大規模な災害が発生した場合、災害現場においては、消防機関をはじめとする防災関係機関が相互に協力して効率的な災害応急活動を行う必要がある。消防相互の応援には、全国共通波等を的確に活用することとしているほか、警察等異なる機関との密接な情報交換を行うための通信手段としては、防災相互通信用無線(防災相互波)が活用されることとなっている。 消防庁では、特に、大規模災害等の発生が想定される市町村、あるいは石油コンビナート地帯等の市町村に対し、防災相互通信用無線施設を整備し、災害時にその機能を十分活用できるよう、あらかじめ関係機関と調整する等運用体制の確立について要請している。 なお、大地震等により通信施設が使用不能となった場合には、国・地方間の情報伝達機能が麻痺し、災害応急活動に重大な支障を来すことから、通信施設のバックアップを確保しておく必要がある。 このため、地方公共団体の本庁舎が被災した場合のバックアップ施設(衛星施設等)の確保や機動性のある車載型衛星地球局、可搬型衛星地球局等の整備の促進を図っているところである。
2 被害状況等に係る情報の収集・伝達 消防庁では、地方公共団体と国との間の災害情報の収集・伝達の窓口として、消防防災通信ネットワークの充実を図るとともに、迅速かつ的確な情報の収集・伝達に努めている。 とりわけ、大規模災害時には、災害の規模や被害の概況を迅速に把握することが重要であり、災害対策基本法の改正を踏まえ火災・災害等即報要領を改正し、市町村から都道府県に連絡ができない場合や119番通報が殺到する場合には、市町村から直接消防庁に連絡することとした。さらに、航空機事故、鉄道事故等の際の迅速な即報(第一報)の励行を指導するとともに、災害対応を第一線で行い被害状況等を把握できる消防機関からの速やかな情報伝達、休日・夜間の情報収集・伝達体制の整備等について、地方公共団体における体制を強化するよう要請している。 なお、消防庁においても、大規模災害時等に被災地に出動し、情報収集や現地での防災活動の支援を行うための現地活動支援車及び被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を、また、消防庁が被災した場合の地方公共団体との通信機能の確保のため、消防大学校に衛星通信施設等の諸施設をそれぞれ整備している。さらに、地方公共団体から情報を入手し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等に適切に伝達できるよう、その徹底を図っている。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 このため、消防庁では、震度情報や広域応援対応力情報などの防災情報のデータベース化と国・地方 公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始し、本システムで収集された震度データは、気象庁にもオンラインにより提供しており、地方公共団体の震度データについては、気象庁の震度情報に含めて発表されている。 また平成11年度から、危険物等の災害発生時に、色、臭気等から物質を特定し、危険物等に係る危険性及び防ぎょ方法を検索することができるデータベース(危険物災害等情報支援システム)をサブシステムとして新たに防災情報システムに加えるとともに、危険物の対象品目を拡大し、全国の消防本部で利用できるようにしている。 さらに平成15年度には、VPN(仮想専用通信網)の技術を導入し、インターネット経由で防災情報システムの利用を可能とした。
(2)災害対応支援システム等の導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断のもとに的確な応急活動を遂行する必要があるが、そのためには、シミュレーションにより被害を推測するとともに、円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入し、日頃から訓練に努めることが有効である。 このため、消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めており、特に、消防研究所で開発した「簡易型地震被害想定システム」については、簡単な操作で即座に地震発生時の被害を推計することが可能であり、的確な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つことから、全都道府県等に配布しその活用を図っている。 なお、最近の大規模地震においても被害予測に同システムが活用されている。
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、これまで、電話、ファクシミリにより行われてきたが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速、的確に行うため次の3つのサブシステムから構成される緊急支援情報システムを消防庁に構築し、平成13年7月に運用を開始したところであり、引き続きシステムの充実を図っている(第2−9−2図)。また、これらをバックアップして、電子地図等の大容量のデータを衛星通信回線により伝送することができるシステムも平成12年度に整備している。ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等で情報を共有するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。ウ ヘリ映像等による被災状況把握システム 消防防災ヘリコプター等で撮影した被災地映像を解析し、被災範囲等を迅速に把握することができるシステム。
4 情報化の今後の展開(1)防災情報通信体制の充実強化 大規模・特殊災害等において、広域的な対応をより迅速・円滑に行うためには、災害情報を迅速・確実に伝達し、国・都道府県・市町村の相互間における情報共有化等のためのシステムを整備することが必要不可欠である。また、行政と住民の間においても、必要な防災情報の共有化等を一層進めることが重要である。 そこで、消防庁において、消防防災分野の情報通信ネットワーク、情報通信システムの整備等IT化の推進に関する指針を作成し、地方公共団体はこれを踏まえつつ、消防防災情報の共有化の計画的な取組みを行う必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、混信のないよう広域応援時の消防救急無線の全国共通波の増波等を行ってきたところであるが、さらに統一的な情報通信基盤の整備や標準化を早急に進めることが必要となっている。ア 消防防災通信ネットワークの充実強化 消防防災通信ネットワークについては、災害に強い通信網の構築の観点から地上系及び衛星系による通信ルートの多ルート化の早期確立を図るとともに、衛星系については、全国的なネットワークの早期確立のほか最近のデジタル通信技術を活用して、画像情報、地図情報等を含めた多様な防災情報を迅速・効率的に伝達できるよう、ネットワークの高度化を図ることが必要である。 この中で、都道府県と市町村等を結ぶ地上系の防災行政無線については、施設の老朽化等に伴い再整備の時期を迎えているものや、周波数の再編成により他の周波数帯に移行が決定されているものがあり、施設の再整備の際には、IT分野の技術革新を展望しつつ、衛星系通信網と有機的に結合したネットワークを構築することが必要である。 一方、市町村と住民等を結ぶ同報系防災行政無線(住民連絡用)については、既存のアナログ仕様無線の更新も含めデジタル仕様による整備を原則とし、最近急速に普及しているインターネット、携帯電話等の手段も併行活用して、災害発生後住民等に、速やかに情報伝達できるシステムの整備を推進するとともに、住民や地域に密着した情報の相互連絡に有効な地域防災系無線についても導入を促進し、避難所、学校、自主防災組織の活動拠点等を地域における情報拠点として、整備を進めていくことが必要である。 なお、通信施設については、地震時においても確実に稼働することが必要であり、通信施設の耐震・免震対策を行うとともに、非常電源設備についても点検し、機能の見直し等を行うことが重要である。イ 広域応援に必要な情報通信施設等の整備促進 画像伝送システムは、発災直後の被害の概況を把握し、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、政令指定都市、都道府県庁所在都市等大規模な都市における整備が求められる。 また、消防・救急無線については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国共通用の周波数が3波へ増波されている。 さらに、消防防災ヘリコプターの増強に伴い、ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているが、いまだ全国をカバーするには至っておらず、引き続き消防防災ヘリコプターテレビ電送システムの普及・増強に努める必要がある。また、こうしたシステムを搭載したヘリコプターが集結する大規模災害時には混信が発生するおそれがあるため、ヘリコプターテレビ電送用の周波数が4波へ増波されたが、その円滑な運用を図る必要がある。 また、消防防災ヘリコプターは、広域航空消防応援時等において、通常の消防・防災無線、航空無線では保有団体と交信することは不可能となるほか、大規模災害現場においては、同一地域を飛行する複数の消防防災ヘリコプターの動態を管理し統制する必要があるため、消防庁では、ヘリコプターの動態管理が可能になるようなシステムについて、研究開発を推進する。 このほか、車載型や可搬型の衛星地球局、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の整備を促進し、大規模災害時にも機動的で確実な情報の伝達手段を確保することが重要である。ウ 情報の収集・伝達体制の整備 災害時における的確な情報の収集・伝達を行うためには、消防防災通信ネットワーク等設備の充実強化とこれを運用する体制の強化を図ることが重要である。 このため、都道府県、市町村、消防機関、警察等防災関係機関相互の連携を強化するとともに、収集、伝達すべき情報に係る基準の周知徹底、迅速な第一報の励行、消防機関からの速やかな情報伝達、夜間・休日の情報収集・伝達体制の整備・強化を更に推進していく必要がある。エ 住民等への情報伝達の強化 災害時の応急対策の実施に際しては、住民等に対し、気象情報や避難勧告、避難時の生活情報等を適切に伝達することが重要であり、これによって住民等に無用な不安を抱かせないことにもつながる。 そのためには、防災行政無線、有線放送、広報車、消防職団員の巡回等による住民への伝達手段についてハード・ソフト両面から絶えず点検を行うとともに、今後はインターネット等を活用した新たな伝達手段についても整備を進めることが望ましい。 また、住民に対する気象予警報、避難勧告等を迅速、的確に伝達できるよう、あらかじめ伝達手段、手順、ルート等を定め、これを地域防災計画に明示し、住民への広報に努めるとともに、職員に対しても周知徹底しておく必要がある。オ 衛星通信を用いた情報伝達体制の整備 現在、衛星系の通信網として活用されている地域衛星通信ネットワークは、電話・ファクシミリとアナログ映像送信を主としたシステムであるが、情報通信分野の環境は、インターネットに代表されるように大きく発展を続けている。映像分野においてもデジタル化への移行が急速に進みつつあり、地域衛星通信ネットワークにおいても、データ通信を重視し、デジタル映像方式を導入したシステムへの移行が進められている。 こうした背景を踏まえ、消防庁では、次世代化に向けて、高速データ通信に対応できるようにシステムの構築を進めるとともに、映像伝送のデジタル化を行っている。 また、次世代化に伴い、増加が見込まれる可搬型地球局について、消防庁では、機器の集約・小型化及び軽量化を図るとともに操作性を向上させ、機動性に富んだ「災害対応小型衛星電話」を開発したところであり、今後、全国的な導入を推進していくこととしている。カ 消防・救急無線のデジタル化への対応 現場活動の複雑、多様化に伴う情報量の増加等に対応するため、消防・救急無線のデジタル化を推進するとともに、消防緊急通信指令施設に車両の動態管理、地図検索装置等を整備するなど、一層の高度化を図る必要がある。
(2)マルチメディアの活用 最近のマルチメディアに代表されるような情報通信技術の進展に伴い、新たな情報処理技術(IT)を活用したシステムの構築を検討していく必要がある。ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を全国の都道府県、消防本部に整備を進め、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。 また、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進める必要がある。イ 災害対応支援システムの充実 防災用地理情報システム(防災GIS)、全世界的衛星測位システム(GPS)等のマルチメディアの活用を図りながら、消防防災対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるIT化推進のための共通基盤としてパソコンの整備及びこれに接続するLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が遅れている。 そこで電子自治体時代にふさわしい住民サービスを提供していくためには、消防本部においても情報基盤の整備を早急に進める必要がある。 このため消防庁では平成13年度からパソコンの一人一台体制の整備に必要な経費を地方交付税措置として消防費に算入する財政支援のほか、平成15年度にはVPN(仮想専用通信網)の技術を導入した火災報告等オンライン処理システムの整備にあたり消防本部に対して支援を行ったところである。
(4)携帯電話等からの119番通報のあり方の検討 一般加入電話からの119番通報は、通報者の電話番号をもとに発信地を検索し、表示するシステムが構築されており、迅速な消防活動を行うために活用されている。 一方、携帯電話等からの119番通報は発信位置が特定できないため、代表消防本部といわれる消防本部が、他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で当該区域を管轄する消防本部に転送する運用を行っている状況にある。 そこで、消防庁では、全国消防長会や通信事業者等と連携を図りながら、平成12年度から「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討懇談会」を開催し、発信電波を受信した基地局の位置情報を基に接続先消防本部の振り分けを行い、管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムについて、その実現のため積極的に進めている。
(5)消防防災分野における申請・届出等手続の電子化の取組み 申請・届出等手続の電子化の取組みについては、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてペーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやりとりしてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされた。それを踏まえ、総務省では「総務省申請・届出等手続の電子化アクション・プラン」(平成14年7月25日総務省行政情報化推進委員会了承)が策定された。 これを受けて、消防庁では「総務省関係法令に係る地方公共団体関係手続のオンライン化実施要領」(平成15年3月31日)において、地方公共団体に対する申請・届出等の手続をオンライン化するための事務処理手順、システム使用等の実施方策を提示したところである。 消防防災行政に係る申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うものとしては、危険物保安統括管理者、危険物保安監督者選解任の届出等があり、順次インターネットを利用して行えるよう運用を開始したところである。また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)については、平成14年度にオンラインシステムの開発を行い、汎用受付システムとの連携を図るための調整を行った上で、モデル消防機関において実証実験等を行った。平成15年度には国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化のために必要な措置を適切に講じることとしている。
第3章自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成14年中の火災を原因別にみると失火が全体の64.0%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日頃からの備え、災害時の適切な行動が基本となることから、災害に強い安全な地域社会を作るためには、国民の防火防災意識の高揚に待つところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確な対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送を利用した啓発を行うとともに、何年春秋2回の「全国火災予防運動」、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災週間」(8月30日から9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、建築物の密集及び高層化並びに生活様式の変化に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日頃から防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施を提案し、国民に対する防火意識の普及宣伝に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成14年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるものである。平成14年度は「消す心 置いて下さい 火のそばに」を全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力のもとに、「住宅防火対策の推進」、「放火火災予防対策の推進」、「消火器事故防止対策の推進」を重点目標として、各種広報媒体を通じて防火広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断、老朽化消火器の一斉回収等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。イ 春季全国火災予防運動(平成15年3月1日〜3月7日) 平成15年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語のもとに、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」、「林野火災予防対策の推進」を重点目標に加え、秋季同様、様々な行事を実施した。
(2)全国山火事予防運動(平成15年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成15年の全国山火事予防運動では、「温暖化 防ぐ森林 守ろう火から」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗、ポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練、研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と婦人防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成15年3月1日〜3月7日) 車両火災は年々増加の傾向にあることから平成15年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、車庫、駅舎等の対象物に対する初期消火、避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成15年1月26日) 昭和24年1月26日の法隆寺金堂火災及びその後の金閣寺火災等による貴重な文化財の焼損を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共唱により毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導のもとに重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。
2 危険物に関する意識高揚 危険物に係る火災・漏えい等の事故は近年増加傾向にあり、平成14年中の事故発生件数も依然高い水準となっている。それらの事故原因を分析すると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然防止するために、消防庁では、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図るため、平成2年度から、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」としている。「危険物安全週間」に関して、推進標語の募集や推進ポスターの作成及び、各都道府県、関係団体等と協力し広報活動を行っているほか、危険物安全大会において危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。また、危険物施設においては、万一事故が発生した場合に備え自主的に訓練等を行っている。 平成15年度の危険物安全週間においても、米倉涼子氏をモデルとした推進ポスターを作成し、「危険物 無事故の主役は あなたです」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域で危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関においては、危険物施設を対象とした立入検査を実施し、事故の未然防止を図るとともに、火災や油漏れ事故を想定した訓練を自衛消防組織等と連携し行った。
3 防災知識の普及啓発 災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならないことはもちろんであるが、国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識を確実に身につけるとともに、日頃から家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災に心がけることが極めて重要である。また、防災のための学習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、前者では大がかりな防災訓練等を中心とした行事が行われているのに対し、後者は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日頃の備えを高めていくことがその趣旨とされている。平成15年の防災とボランティア週間では、43都道府県のほか、523の市区町村が、防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業を実施している。 このほか、消防庁においては、年間を通じテレビ放送を利用して、普及啓発事業を実施しているほか、平成15年においては、特別広報番組として、「関東大震災から80年」をテーマとして、当時の映像等を利用した、消防庁長官自らが出演した地震災害の備えや防災体制を紹介した番組や、「家庭でできる耐震化」をテーマとした番組を制作放送した。また、地方公共団体では、防火教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道管等が寸断され、常備消防をはじめとする防災関係機関等の災害対応に支障をきたすことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民の一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識のもとに、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や、救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ、地域における自主的な防災活動の重要さが改めて認識されたところである(第3−2−1図)。 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成15年4月1日現在では、全国3,213市区町村のうち、2,536市区町村で10万9,016の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、61.3%となっている(附属資料28)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,635市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ1,214市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これに要した経費は平成14年度で合計53億9,490万円に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を創設し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図っているほか、財団法人自治総合センターではコミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、災害補償制度の充実、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による啓発を行うとともに、自主防災組織の活動拠点づくりを進めるため、防災基盤整備事業により、自主防災活動をはじめとする地域防災力向上を図るための防災拠点施設の整備を促進している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人防火クラブは、家庭における防火の分野では、日頃から大きなウェイトを占める主婦等が火災予防の知識を修得し、地域全体の防火意識の高揚を図るものである。万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な地域社会を作るため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っている。 阪神・淡路大震災においても、婦人防火クラブにより初期消火活動や避難所での炊き出し等が活発に行われた。 なお、平成15年4月1日現在、全国の組織数は、1万4,625団体、約227万人となっており、37道府県において都道府県単位で連絡協議会がつくられている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人防火クラブの活動内容の充実・強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 少年・少女を中心とした自主防災組織である少年消防クラブは、10歳以上15歳以下の少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すとともに、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために各地域で組織づくりが進められている。 消防庁では、関係機関とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成14年度は、特に優良なクラブ16団体、優良なクラブ31団体、及び優良な指導者12人を表彰した。 また、平成14年度も、表彰式と併せて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2003」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成15年5月1日現在の組織数は、6,051団体、約47万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした自主防災組織である幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図るものである。近い将来少年・少女を中心とした防災活動に参加できるための素地づくりのため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導のもとに組織の育成が進められている。 なお、平成15年5月1日現在の組織数は、1万4,704団体、約124万人となっている。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成15年4月1日現在、2,569組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものである。しかし、地震などの大規模災害が発生した際は、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られるならば、地域の自主防災体制の充実に大きな効果をもたらすものと考えられる。 消防庁では、企業(事業所の防災組織)の地域社会での防災活動への参加促進を図っているが、今後、事業所の地域での防災活動を一層高めるためには、事業所と地域社会との平常時からの協力関係の強化及び事業所の防災組織が参加・協力するに当たっての条件整備を進めていくことが必要である。
3 災害時のボランティア活動 被災地における多様なニーズに対応したきめ細かな防災対策を講じる上で、ボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることは、阪神・淡路大震災において改めて認識された。平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられたところであり、また「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災とボランティアの日」(1月17日)の創設も行われている。 消防庁においては、災害救援ボランティアの研修カリキュラムを示すとともに、消防機関に研修の協力について要請を行っている。 また、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、平成13年5月から、共有すべき情報をデータベース化し「災害ボランティア・データバンク」として、インターネットを通じて公開したが、平成15年6月には、データベースの内容充実を行い、都道府県別、団体別、活動内容別、人材・資機材別などの検索・集計の機能向上を図った。 また、災害時の混乱した状況のもとで災害ボランティアの活動が円滑に行われるようにするために、あらかじめ、平常時から災害ボランティア団体と地方公共団体が災害発生時のそれぞれの役割を明確に定めておく必要があることから、災害ボランティア団体と地方公共団体の連携を推進していくこととし、毎年、都道府県、政令指定都市及び消防庁で構成する『災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会』において、地方公共団体における災害ボランティア関係施策等について情報交換、調査検討等を行っている。
災害ボランティア・データバンクのリニューアルについて 阪神・淡路大震災以降、発災直後から被災地に駆けつけ、物資の仕分けや避難所運営、医療介護等、様々な分野で活躍する災害ボランティアの重要性が高まっています。最近でも、熊本県水俣市での土砂災害や宮城県北部を震源とする地震において、多数のボランティアが駆けつけ、がれきの片付けや家庭内の清掃などの活動が活発に行われていました。 消防庁においても、ボランティアの活動環境の整備について取組みを進めていましたが、全国に数多くある災害ボランティア団体については、その活動実態等全体についての資料が少なく、また、各地方公共団体が実施している災害ボランティア団体との連携施策についても、充分に周知されていない状況にあるということから、地方公共団体やボランティア団体等が連携を図るうえで必要な情報が相互に得られるよう、平成13年5月に、災害ボランティア団体の活動状況や地方公共団体の連携施策等に関する情報をデータベース化し、「災害ボランティア・データバンク」として、消防庁のホームページに掲載しました。 しかし、「災害時のボランティア活動のための環境整備に関する検討報告書」(平成14年12月総務省消防庁発行)においても、いつ起こるかわからない大規模災害に備え、市町村単位による需要供給調整のほか、広域的なネットワークを活用したデータベースによる情報提供機能の整備など一層の機能充実が指摘されました。 このため、「災害ボランティア・データバンク」を平成15年6月に、下記のような点から、リニューアルを行いました。<リニューアルのポイント>・登録団体の活動内容を検索できるものとし、被災地が必要とする活動内容の団体を抽出できるものとしたこと。・全都道府県、全政令市のボランティア担当窓口を登録し、ボランティア団体の積極的な登録や、災害時の円滑な活動参加を促すこととしたこと。 このたびのリニューアルにより、登録団体や登録情報の拡充に対応したデータベースを再構築しました。また。セキュリティーやプライバシーに配慮しながら、検索、集計機能を強化して、災害時にボランティアセンターが必要とする機材、団体の検索が迅速、簡単にできるようになりました。 このデータバンクに全国の災害ボランティア団体が参集し、データバンクの機能を最大限生かしていただけることを希望します。災害ボランティア・データバンク(http://www.fdma.go.jp/volunteer/index.cgi)
第3節 災害に強い安全なまちづくり1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設や、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えた。また、その後も相次いで大規模な地震被害が発生し、地方公共団体における災害対応能力の向上が大きな課題となっている。そこで、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、1) 避難所となる公共公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど)2) 災害対策の拠点となる公共公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など)3) 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 また、水道管、ガス管、港湾、地下鉄の耐震化についても単独事業への支援策が設けられている。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討委員会報告書」(平成14年2月、消防庁)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり拠点(以下「防災拠点」という。)となる公共施設等(例えば、社会福祉施設、避難所に指定されている学校施設・公民館等、災害対策本部等の庁舎、消防本部、警察本部等)の耐震改修の状況等は次のとおりである(平成13年4月1日現在)。 地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等は約18万7,400棟で、このうち約11万4,400棟(約61%)が昭和56年以前の耐震基準で建築されたものである。 この約11万4,400棟のうち耐震診断を実施した棟数は、約3万4,700棟(約30%)である。 耐震診断を実施した約3万4,700棟の建物をみると、そのうち約1万200棟(約29%)が「耐震性がある」と診断され、また、平成13年度末までに、約8,400棟(約24%)が耐震改修を終了しており、合計、約1万8,600棟(約54%)が耐震性が確保されている。 また、今後、平成17年度までに耐震改修を予定している棟数は、耐震診断を実施した約3万4,700棟のうち約4,900棟(約14%)となっている。 次の建築物については耐震性が確保されていると判断した場合、平成13年度末で、地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等の約18万7,400棟のうち約9万1,600棟(約49%)が耐震性が確保されていると考えられる。ア 昭和56年以降の新耐震基準で建築された建築物(約7万3,000棟)イ 耐震診断の結果「耐震性能を有する。」と診断された建築物(約1万200棟)ウ 耐震改修済みの建築物(約8,400棟) また、平成17年度までの耐震改修予定の棟数(約4,900棟)を加えると、平成17年度末では、約9万6,500棟(約52%)が耐震性能が確保される見込みとなる(第3−3−1図)。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防施設等整備費補助金や防災基盤整備事業等により、消防車両や消防防災ヘリコプター、防災情報通信施設、耐震性貯水槽等の整備を促進している。 中でも、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝達する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との間の情報連絡についても多角的な対策を講じている。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、併せて食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 さらに、住民の避難に必要な施設等については、避難地、避難路の整備のほか、トイレ等避難生活に必要な機能を持つよう避難施設の改修を促進している。 なお、地域防災計画上掲載されている災害危険区域については、地方債と地方交付税による財政措置が講じられている。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースを確保することは非常に重要であり、このスペースをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、防災基盤整備事業等によりその整備を促進している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。・「コミュニティ防災拠点」 おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難地等に活用される。・「地域防災拠点」 おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難地等に活用される。・「広域防災拠点」 都道府県に一又は数箇所設置され、消防防災に関する広域応援のベースキャンプや物資の集配基地、長期の避難地等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、防災無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティレベルの研修等に活用される防災センターから、日頃から防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。 なお、都市再生プロジェクトの一つとして、首都圏や京阪神都市圏といった稠密な市街地が連たんしている大都市圏において、広域あるいは甚大な被害が発生した場合における国及び地方公共団体等による広域的な災害対策活動の拠点としての「基幹的広域防災拠点」が整備されることになっている。これを中心とした広域防災拠点の連携等のあり方に関する検討のため、消防庁では平成14年度に、関係行政機関や学識経験者等で構成する「広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会」を、首都圏・中部圏・近畿圏の各大都市圏域ごとに開催したところであるが、広域防災拠点に関する共通的課題としては、○オープンスペースの確保、○広域防災拠点における防災情報の共有化の実現、○広域防災拠点を活用した緊急消防援助隊の機能充実のための仕組みの検討、○災害ボランティア活動支援のための環境整備、○圏域内における定期的な協議の実施といった点が挙げられる。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。 さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有しており、こうした点を含め防災上の観点を、地方公共団体における地域づくりにより明確に取り入れ、地域の防災機能の向上を促進する必要がある。 また、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保など)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化と合わせた住民等への情報連絡機能の強化など、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことが必要である。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組みや連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組み、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。これまでの応募累計は、746件を数えるに至っている。 消防庁では、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供などソフト面での支援をも含め、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを総合的に推進することとしている。
「防災まちづくり大賞」受賞事例 地域コミュニティ等における防災に関する様々な工夫・アイディアを凝らした取組みのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介する「防災まちづくり大賞」は、平成14年度で第7回を迎えました。 第7回防災まちづくり大賞では、大阪府にある株式会社毎日放送「震災ネットワーク1・17」と、兵庫県神戸市にある御蔵通5・6丁目町づくり協議会とボランティアグループまち・コミュニケーションが、総務大臣賞を受賞いたしました。 大阪府にある毎日放送では、阪神・淡路大震災の際、何の準備もなく震災報道に入りました。その際被災者に必要な情報を提供し、被災者の心の支えとなるような番組をめざし誕生したのが「ネットワーク1・17」です。この番組では「阪神・淡路大震災の記憶を語り継ぐこと」と「防災の基本知識を伝えること」の2つを柱にし、平成14年で8年目を迎えました。この事例では、震災ラジオ番組の「ネットワーク1・17」内で毎回様々な地震に関する企画を取り上げているほか、平成9年からは大阪タクシー協会との協力により、「タクシー防災リポーター制度」がスタートしました。 御蔵通5・6丁目町づくり協議会(以下まち協)とボランティアグループまち・コミュニケーション(以下まちコミ)は、平成8年9月にまちコミにまち協が参加する形で活動を開始しました。まち協は餅つき大会などのイベントを通して、郊外施設に移った人々を一時的にでも呼び戻すことに成功しました。これら各種イベントは震災後に移り住んだ新しい住民と、震災前に住んでいた住民の融和に役立っています。
第4章規制改革への対応 近年、国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっている。本章では、規制改革に関する政府の取組みとともに、規制改革に対する消防庁の対応について記述することとする。
1 規制改革推進3か年計画以前の取組み(1)規制緩和推進計画策定以前の取組み 平成5年9月の緊急経済対策閣僚会議決定「規制緩和等の実施について」、平成6年2月の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」、平成6年7月の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において、各種の規制緩和措置が盛り込まれ、それぞれ実施に移されてきた(第4−1表)。
(2)規制緩和推進計画の策定と対応 平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、規制緩和等が計画的に推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に61項目を計上し、平成13年度末までに、すべての項目の措置を行った(第4−2表)。
(3)規制緩和推進3か年計画の策定と対応 平成10年3月31日には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、規制緩和等が一層推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に32項目を計上し、平成14年度末までに、計29項目の措置を行った(第4−3表)。
2 規制改革推進3か年計画への取組み 平成13年度からの「規制改革推進3か年計画」の策定に当たり、消防庁としては、内外からの意見・要望等を踏まえつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から所管事務の見直しを行った。 これにより、平成13年3月30日に「規制改革推進3か年計画」が閣議決定され、引き続き規制緩和などの規制改革の推進に向け積極的に取り組むこととなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に計24項目となり、平成14年度末までに6項目の措置を行った(第4−4表)。
3 性能規定化への取組み(1)性能規定化の動き 「規制改革推進3か年計画」(平成15年3月28日閣議決定)において、技術革新に対して柔軟に対応できるよう、仕様規定となっている基準については、原則として全て性能規定化するよう検討を行う旨の方針が決定されている。 従来の「仕様規定」は、材料や寸法などを具体的に規定するものであり、基準の内容が一意に決まり、合否の判定も明快かつ公正に行える一方で、技術革新や経済・社会のグローバル化への柔軟な対応が難しいという点が指摘されている。これに対して、本来果たすべき目的や機能を満たせばよいとするのが「性能規定」であり、近年のシミュレーション技術や評価技術の発展等を背景として、技術基準をできるだけ「性能規定化」していくことが社会的に要請されているところである。
(2)消防庁としての取組み こうした動きを踏まえ、消防庁では、防火対象物や危険物施設の大規模化・複雑化、利用形態の高度化・多様化等への対応、新技術・新素材等の開発、活用及び円滑な導入等の観点から、火災危険性に応じた総合的な防火安全性能の検証法・基準に関する調査研究、実証実験等を実施しているところである。1) 消防用設備等 消防用設備等については、平成11年度から13年度まで「総合防火安全対策手法の開発調査検討会(第1次消防総合プロジェクト)」を開催し、調査研究を実施した。その検討を踏まえ、平成14年度から「防火対象物の総合防火安全評価基準のあり方検討会(第2次消防総合プロジェクト)」を開催し、消防用設備等の性能についての具体的な検証法について検討を行っている。平成15年度は個別性能の検証法に関する具体的な検討を進め、平成16年度には消防用設備等の性能についての検証法を順次判定するとともに、定められた検証法によっては対応できない新しい技術に対応するための大臣認定制度をスタートすることとしている。2) 危険物施設等 危険物施設等についても、平成13年度から「危険物保安に係る技術基準の性能規定化調査検討会」を開催して調査研究を実施しており、平成15年度は、全体フレームワークの構築や個別事項の基礎的整理に向け、検討を進めているところである。これらの検討を踏まえ、平成16年度以降順次性能規定を導入することとし、併せて、総合的な性能規定に関する調査検討や性能規定導入に必要な環境整備の検討を行うこととする。
4 構造改革特区制度への取組み 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日には、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部が内閣に設置された。 推進本部においては、平成14年9月に「構造改革特区推進のための基本方針」等を決定し、構造改革特区推進のための取組み方針等を示した。これを受けて、推進本部は同年10月に、「構造改革特区推進のためのプログラム」を決定し、1)特区において実施することができる特例措置、及び 2)全国において実施することが、時期・内容ともに明確な規制改革事項の上記2点について、明らかにしたところである。 さらに、「構造改革特区推進のための基本方針」の趣旨を実現するため、構造改革特別区域法(以下「特区法」という。)が平成14年12月18日に公布され、特区法第3条第1項に基づき、政府における基本的な施策の推進の方向を示すものとして、その意義・目標及び政府が実施すべき施策に関する基本方針等を定めた構造改革特別区域基本方針が定められた。 消防庁としては、特区制度創設の趣旨に鑑みつつ、火災予防又は防災の観点からの安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。1) 構造改革特区において実施することができる特例措置(第4−5表)・農家民宿における消防用設備等に係る消防令の規定に対する柔軟な対応(平成15年8月現在の実績 8件)・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上のレイアウト規制等の見直し(平成15年8月現在の実績 1件)2) 全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制事項(第4−6表のとおりの対応を行った。)・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設
第5章国際的課題への対応[国際協力・国際交流] 災害から生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災における国際協力・交流は、人道主義、国際社会の相互依存関係、環境保全等の観点から、必要性・緊急性の高い分野となっている。 また、近年の傾向として、開発途上諸国においては、人口の増大と都市への集中、産業活動の拡大、自然環境の変化等に伴い、火災をはじめ地震、風水害、土砂災害等により大きな災害が発生する危険性が高まっている。我が国では、過去における様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ね、ハード・ソフトの両面にわたり高度なシステムを整備していることから、積極的な国際社会への貢献が更に求められている。 このため、集団研修、専門家派遣など開発途上諸国への消防防災技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 開発途上諸国からの研修員受入れ(1)集団研修の実施 消防庁では、独立行政法人国際協力機構(旧国際協力事業団、以下「JICA」という。)を通じ開発途上諸国の消防防災職員を対象とした救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修を実施している。 いずれも消防に関する技術研修として、救急救助技術研修を昭和62年度から、消火技術研修を昭和63年度から、火災予防技術研修を平成2年度から実施している。平成14年度には、消防行政管理者研修(平成14年度で終了)について7か国から8人(累計310人、消防行政集団研修(昭和45年から63年まで実施)を含む。)、救急救助技術研修については9か国から10人(累計126人)、消火技術研修については7か国から8人(累計132人)、火災予防技術研修については、6か国から7人(累計85人)を受け入れた。 また、集団研修のアフターケアのほか、消防防災分野における国際交流を幅広く展開するため、集団研修経験者を対象としたヒューマン・ネットワークづくりを進めている。
(2)個別研修の実施 消防庁では、(1)の集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修員の受入れを行っている。平成14年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中国幹部消防職員を消防大学校の予防科へ受け入れるとともに、各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき各国からの消防防災関係者を消防庁への研修生として受入れを行った。
2 開発途上諸国への専門家派遣 消防庁は、JICAを通じ、開発途上諸国へ消防防災専門家の派遣を行っている。平成12年からは、マダガスカルに市民保護・防災・災害対策に関する技術援助を行うため、長期専門家(派遣期間が1年以上の専門家)を1名派遣した(平成15年10月任期満了)。 また、平成12年度から5年計画でタイにおいて進められている救急医療技術を移転するためのタイ外傷センタープロジェクトにおいて、平成14年度は救急搬送に係る専門家を派遣するとともに研修員の受入れを実施した。 そのほか、平成14年度には前年に引続き、フィリピンに消防に関する技術援助を行うため、短期専門家を派遣した。
3 プロジェクト方式技術協力の実施 消防庁では、JICAを通じ、平成9年10月から平成14年9月まで中国北京市が設立する北京消防訓練センターに対し、「中国・北京消防訓練センタープロジェクト」を推進してきた。 本プロジェクトは、5年間で、7分野、16人の長期専門家と23人の短期専門家を北京市に派遣するとともに、北京市消防局から30人の研修員の受入れを行うほか、必要な機材の供与を行うことにより北京市における消防技術の向上を図ってきた。 なお、プロジェクト終了後も、フォローアップとして救助技術に関する長期専門家1人、短期派遣専門家2人を派遣し、更なる技術協力を進めている。 また、平成14年8月から実施されている「カリブ・災害管理プロジェクト」(技術協力プロジェクト)に消防から地域防災計画の長期専門家1人を派遣するとともに、研修員の受入れを行っている。 1、2及び3で述べた研修員の受入れや消防専門家の派遣をはじめとした開発途上諸国への国際協力は、各国における消防防災の発展に大きな成果を上げているところである。
4 国際交流(1)トップマネージャーセミナーの実施等 消防庁では海外の消防防災関係者との交流の場としてトップマネージャーセミナーを実施しており、平成14年度には、インドネシアから内務省幹部等の訪問を受け入れ、意見交換、視察等を実施している。
(2)日韓消防交流の推進 日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会、2002年の「日韓国民交流年」等を踏まえた日韓消防行政セミナーが日本で開催され、大規模災害対応等について活発な意見交換が行われた。 また、消防庁幹部の関係学会への出席など、日韓消防の交流、連携・協力を推進している。
(3)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟(Federation of World Volunteer Firefighters Association)が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会(International Fire Chiefs Association of Asia)は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。平成14年7月24日から25日にかけて第22回総会が京都市において開催されており、我が国からも消防庁、消防機関等の代表が参画し、アジア地域での消防分野における共同研究の推進や対応力の充実強化について意見交換を行った。
[国際緊急援助](1)設立の経緯 昭和60年11月14日(現地時間13日)に発生したコロンビアのネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際して、救助隊の派遣について意向打診が外務省から消防庁に対して行われた。この援助活動は実現には至らなかったが、消防庁では、こうした活動には国際協力の一環として積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service 略称“IRT-JF”愛称“愛ある手”)を整備した。その後、政府は外務省を中心に、海外で大災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月に「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布施行された。
(2)派遣体制 海外における大規模災害発生時に、被災国政府等からの要請に応じて実施する総合的な国際緊急援助体制が整備され、より迅速な派遣が可能となった。 消防庁長官は、外務大臣からの協力要請及び協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなっている(第5−1図)。 消防庁長官の派遣要請に基づき参集する国際消防救助隊は、日本国の国際緊急援助隊救助チームとしてその一部を構成し(第5−2図)、その高度な救助技術と能力を海外の被災地で発揮している。 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、平成13年度に登録消防本部・隊員数を40消防本部501人体制から62消防本部599人体制に拡充した。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制を更に強化することとしている。
(3)アルジェリア地震災害 国際消防救助隊は、世界のトップレベルの救助技術を有する救助隊として、これまで12回海外において救助活動や支援活動を行っている(第5-1表)。 平成15年5月に発生したアルジェリア国における地震災害においては、国際消防救助隊17人を派遣し現地で救助活動を行った(詳細は囲み記事参照)。 今回は、平成11年の台湾地震以来4年ぶりの派遣であったが、各本部への要請や隊員の選考及び成田空港への参集が迅速に行われるなど、これまで実施してきた訓練等の成果が発揮された。 また、国際消防救助隊の隊長が、国際緊急援助隊中隊長として現場活動を統括し、余震が続く過酷な活動現場において指導的役割を果たした。 消防庁では、今回のアルジェリアへの派遣経験を生かし、今後より効果的な国際緊急援助体制の構築を図るべく、その検証に取り組んでいる。
アルジェリア地震における国際消防救助隊(IRT-JF)の活動概要●アルジェリア地震発生〜初動対応 日本時間の5月22日未明(午前3:45)にアルジェリア民主人民共和国の首都アルジェの東部約60kmの都市テニア付近を震源地とするマグニチュード6.7(米国地質調査所調べ)の大規模な地震が発生しました。当初の情報(BBCニュース)では死者95名以上、負傷者350名以上でしたが、時間の経過とともに死者・負傷者とも増加の一途をたどっていきました。 消防庁においては、早い段階から外務省との連絡・協議を行い、国際緊急援助隊(JDR)救助チーム(*)派遣の可能性があることを受け、同日担当となっている消防本部に対して国際消防救助隊(IRT-JF)派遣の可能性があるため準備を整えておくよう依頼していました。同日の14:30にはアルジェリア政府より正式に派遣の要請があったことを受けて消防庁長官が正式に国際消防救助隊の派遣を決定しました。* 国際緊急援助隊(Japan Disaster Relief Team: JDR)には救助チーム、医療チーム及び専門家チームがあり、救助チームは国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service: IRT-JF)、警察庁、海上保安庁から構成される。●成田から現地へ 国際消防救助隊の第一陣4名(消防庁1名、東京消防庁3名)は同日19:00に成田空港に集合、国際緊急援助隊となる他のメンバー14名(外務省、JICA、警察庁及び海上保安庁)と合流し、21:55に成田を出発しました。 第一陣が現地へ向かう飛行機の中にいる頃、国際消防救助隊の第二陣13名(東京消防庁5名、仙台市消防局2名、京都市消防局2名、川口市消防本部2名、朝霞地区部事務組合埼玉県南西部消防本部2名)は23日7:30に成田に集合し、他省庁のメンバー30名と共に11:10に成田を出発しました。 国際消防救助隊を含む国際緊急援助隊救助チーム第一陣18名は、パリで先遣隊4名(東京消防庁1名、他は外務省・JICA)と後続の14名にさらに分かれて、それぞれアルジェリアの首都アルジェへと出発しました。第二陣は全員がそろってアルジェに入ることができました。●現地での活動状況 現地のアルジェリアにおいては、先遣隊の先導のもと第一陣の残り14名が活動現場に到着したのは現地時間で23日19:20(日本時間24日3:20)でした(既に地震発生からほぼ48時間が経過)。現場は首都アルジェから東方約60kmの海岸沿いの村ゼンムリ・エル・バリにあるバンガローも付属する海岸に面する複合型ホテルで、6階建ての2棟のうちの1棟がほぼ完全に崩壊した状態でした。先遣隊が現場で収集した情報によると、この時点で5人程度が生き埋めになっているとのことでした。第一陣全てが現着したときには、既にルクセンブルグとドイツのチームが捜索を行っていましたが、諸般の事情からどちらのチームも撤退することになったため、日本チームが引き継いで捜索活動を開始しました。トルコチームも同じ現場にいたものの既に救助活動を中止していました。ところが、日本チームが夜を徹して作業を続けることを知りトルコ側から共同で作業することを提案してきたため、交代で作業を行うこととしました。予定では現地時間23日21:30まで日本チームが捜索活動を行い、その後トルコチームと交代することとなっていましたが、同時刻になって交代のため機材を片づけて撤収しようとしたときに日本チームの1人が人の声らしきものを耳にし、生存者がいることが確認できたため、日本チームは救出活動を続行することとしトルコチームと連携して作業に当たりました。懸命の救出作業の結果、現地時間23日23:59に無事男性1名の救出に成功しました。その後も日本チームは救助活動を続けていましたが、現地時間の4:10に第二陣が現場に到着したので5:00から当初の予定どおり3小隊(消防庁、警察庁、海上保安庁の隊員による1小隊11人からなる3つの混成チーム)に分かれて救助活動を再開しました。残念ながら、この後は生存者を救出することはできませんでしたが、地元軍からの申し出により軍と連携して救出活動に当たることができ、現地時間13:55に男性1名遺体で搬出(11:35発見)、現地時間18:30には2体目の遺体を搬出(16:30発見)しました。この日の現地時間20:00過ぎ(既にこの時点で地震発生から72時間以上経過)には一旦救助活動を切り上げて首都アルジェのホテルへと向かいました。第一陣にとってはパリでのトランジット以来約43時間ぶりの睡眠となりました。 翌日は現地時間25日9:50に前日と同様に軍と連携しながら救助活動を再開しました。この日も生存者は救出することはできず、現地時間15:23に3体目の遺体を搬出(13:26発見)、現地時間15:31に4体目の遺体を搬出(14:22発見)、現地時間20:10に5体目の遺体を搬出(16:21発見)し、当該活動現場において生き埋めになったと思われる全ての人の救助を完了しました。●救助活動終了〜帰国 現地時間25日の午後に団長、副団長等によりブーメルデス(首都アルジェから東方約50kmの海岸沿いに位置)に設置されているアルジェリア側の現地対策本部及び国連の現地活動調整所において情報収集した結果、救助チームを新たに投入しなければならない場所は既になく、地震発生から既に72時間以上経過し生存者救出の可能性がきわめて低くなっているとの判断から海外チームの大部分は25、26日にはアルジェリアから引き揚げることが判明したため、日本チームにおいても引き揚げる時期に来ていると判断し、今回の活動現場の救助活動の完了をもって撤収することとされました。これにより、今回の国際緊急援助隊救助チームの最終的な成果は、計6名(生存者1名、死者5名)の救出となりました。 現地時間26日には在アルジェリア日本大使館、ブーメルデスに所在する現地対策本部及び国連の現地活動調整所に日本隊としての活動報告を行い、現地時間27日13:15にアルジェリアを離れ一路日本へと向かい、日本時間29日9:05に無事帰国することができました。成田空港で国際緊急援助隊の解団式を行った後、国際消防救助隊は総務省に場所を移して総務大臣、消防庁長官等列席のもと解隊式を行い、今回の任務を完了しました。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成活動を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても昭和62年7月にはISO/TC21協議会を設置し、ISO対策の充実強化を図り積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成15年3月31日現在、47の規格が国際規格として定められている。 また、ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)分科会において進められている消防隊用防護服等の規格策定作業についても、積極的に参加している。
2 規格の国際化への対応 近年、WTO(世界貿易機関)等における非関税障壁低減に関する包括的な取組みの中で、各国個別の基準・認証制度を国際的に整合化することの重要性が認識されてきた。そして、平成7年1月にはWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効し、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。日本はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、また、平成13年には、ISO/TC21総会を千葉県の幕張メッセにおいて開催するとともに、多くの実験データを提供するなど国際規格の策定に積極的に貢献してきた。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、他の国々と連携を図りつつ、引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全]1 ハロン消火剤等の使用抑制 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、平成2年に消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を開催し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組み、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略と併せ、日本全体として取りまとめの上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどした。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成15年1月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。今後もハロン1301を貴重な資源として捉え、クリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理のもとに使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクルを効率的かつ的確に行うことを目的として平成5年に設立されたハロンバンク推進協議会を活用して回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
2 消防用設備等における環境・省エネルギー対策の推進 近年の地球環境問題に関する社会情勢等から、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組みが求められている。 このため、消防庁では、平成11年度において、消防用設備等全般における環境・省エネルギー対策について調査研究を行ったほか、これを踏まえ、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の一環として、平成12年度から5年計画で消火器と防炎物品のリサイクルの推進に取り組んでいる。 また、環境問題への対応や省エネルギー等の観点から、天然ガス若しくは液化石油ガスを燃料とする内燃機関又はガスタービンを原動機とする自家発電設備が開発され、また、コージェネレーション等の常用電源としての自家発電設備が普及してきたことに対応して、平成13年3月に、消防用設備等の非常電源である自家発電設備について、常用電源との兼用等に係る技術基準の整備を行ったところであり、平成14年度から、新型電池(燃料電池、レドックスフロー電池、ナトリウム・硫黄電池等)の消防用設備等の非常電源への取扱いについて検討を行っている。
3 燃料電池の実用化に向けた規制の再点検の実施 燃料電池は、環境負荷の低減に寄与すること、エネルギー安全保障の確保に資すること、我が国産業の競争力の強化も期待できること等から、我が国における実用化・普及が強く期待されている。その一方で、燃料電池は、爆発性のある水素を用いていることから、消防防災分野についても、1)地下駐車場等における燃料電池自動車火災に対応した消火設備、2)家庭用燃料電池に係る安全基準、3)水素供給スタンドを給油取扱所に併設する場合の安全基準について、平成16年度までに規制の再点検を実施することとされており、関係省庁とも連携を取りつつ、防火安全対策の検討を行っているところである。
第6章消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、総合科学技術会議の定める科学技術基本計画及び消防庁において開催された消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 これらの研究・開発の推進の中心となっているのは、独立行政法人消防研究所である。 消防研究所は、昭和23年に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきたが、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となり、より柔軟な研究ニーズへの対応が可能な体制となっている。 一方、消防庁においては、平成15年度から、消防防災に係る競争的研究資金制度である「消防防災科学技術振興制度」を創設するとともに、燃料電池の設置の安全に係る研究等、消防法の技術基準の整備に直結する研究について、直接研究を実施する体制をとっている。 また、消防防災の研究・開発は、消防機関の研究部門等においても積極的に実施されている。
[消防研究所における研究開発等] 消防研究所では、我が国唯一の消防防災に関する総合的な研究機関として、社会的、行政的要請の高い課題については期限を定め、重点的に研究費を配分して研究を実施するとともに(重点研究)、基盤的な研究を継続的に実施している(基盤研究)。 独立行政法人化に当たり、消防研究所では、5年間の期間中に達成すべき具体的な目標が「独立行政法人消防研究所中期目標」として定められたが、その中で「災害対応への情報化の促進」、「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」、「消火・救急・救助活動の技術の高度化」、「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の四つの研究領域については重点的に研究を実施することとされている。中期目標では重点研究領域とは別に、「物質の燃焼現象」、「消火の理論と技術」、「救急・救助」等の研究分野における基盤的研究の充実を図ることとされている。 また、消防研究所では、研究をより効率的に進めるため積極的に産官学の共同研究を推進しているとともに、研究に関する国際的な交流を行うほか、研究成果の公開及び普及のため各種の活動を実施している。
1 重点研究(1)平成14年度終了重点研究 平成14年度に終了した重点研究の概要は、次のとおりである。ア 中高層建物の上階延焼による被害軽減のための研究(平成11〜14年度) バルコニーを含む中高層共同住宅を模擬した模型実験及び事例解析等により、中高層共同住宅火災の出火住戸における火災性状及び上階への延焼拡大性状の特徴を明らかにするとともに、延焼拡大防止、避難安全等に有効な対策を考察し、提言することを目的とした研究を実施した。また、平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災に関して、階段室における火災性状、消防設備等の設置等の研究を実施した。この結果、中高層共同住宅のバルコニーの張り出し長さや、形状について上階延焼防止に必要な一連の技術指針を整備するとともに、階段室における火災性状の把握、階段室に設置された火災感知器及び消火設備の作動状況の分析を通して、消防法施行令等改正の基礎資料をとりまとめた。イ ウォーターミストの消火機構と有効な適用方法に関する研究(平成12〜14年度) ハロン消火設備の代替として、また、消防隊の消火活動やスプリンクラー消火等の水損を軽減するとして注目されているウォーターミスト消火設備の利用指針の作成と普及に寄与するため、ウォーターミストの消火作用と、火災の進展に対応したウォーターミスト消火の最適条件を明らかにする研究を実施した。この結果、ウォーターミスト消火設備の実用化に向けた基礎資料が整備されるとともに、消防隊用ウォーターミストノズルの開発及び一部実戦配備が行われた。ウ 小規模タンクの地震時の安全性評価手法確立のための研究(平成12〜14年度) 地震時の小規模タンクの浮き上がり挙動を実験的及び解析的に調べ、タンク底部の浮き上がり現象に起因する底部破口のメカニズムを解明し、地震時における小規模タンクの総合的強度評価システムを構築するための研究を実施した。この結果、地震時における小規模タンクの底部、特に側板と底板の隅肉溶接部の強度安全性評価を行うためのデータが整理され、小規模タンクの強度評価計算プログラムが開発された。
(2)継続重点研究 平成14年度に実施した重点研究で15年度以降に継続しているものの概要は、次のとおりである。ア 林野火災の発生危険度と拡大を予測するシステムの開発(平成13〜15年度) オンライン気象データ、林野火災データ及び地形データベース等、IT技術革新により利用可能となった情報を活用して林野火災の発生危険度と林野火災拡大状況を予測するシミュレーションシステムを開発する。イ 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(平成14〜18年度) 発生した災害種別・内容、空間的分布とを迅速に把握し、把握した被害情報に基づく災害の拡大予測と最適対応のための支援情報を創出することを目的として、支援情報創出に必要となる基盤データ構築に関する検討、全国展開可能な簡易な被害拡大予測手法の開発、災害発生時におけるリアルタイムな災害拡大予測により被害を極小化するためのシステムの研究を行う。ウ 災害弱者の火災避難安全のための警報・手法の開発(平成14〜16年度) 高齢者や聴覚障害により警報音の聞取りが困難な人に対しても有効な警報伝達手法の開発、及び病気・身体不自由などにより自力避難が困難な人を救助するための通報システムの開発のための研究を実施する。エ 建物火災に関する研究成果を有効に活用する技術の研究(平成13〜15年度) 建物火災に関して蓄積されてきた、実大実験、素材性状、火災事例等の多元的な形態の研究成果情報を、火災危険度の事前予測に基づく仮想現実空間内での火災擬似体験として提供可能とする、あるいは、インターネットを介して共有化するために必要とされる共通データベース手続き(プロトコル)と、仮想現実空間(VR:Virtual Reality)での火災シミュレーション技術の開発のための研究を実施する。オ 救急システムに関する研究(平成14〜16年度) 救急救命率の向上、市民から期待される救急サービスの維持・向上を図ることを目的として、増加し多様化することが予測される救急要請の実態、消防機関における救急隊の運用状況を調査分析し、限られた救急隊等消防力資源を効果的に運用する救急システムの構築のための研究を実施する。カ 消防用防護服の総合的な性能評価法に関する研究(平成14〜16年度) 消防用防護服の耐熱性能に加えて快適性、機能性などに関する研究を実施し、耐熱性能、快適性能、機能性能に関する我が国基準の提案と日本の気候風土に適した消防隊員用防護服の総合評価手法の開発を行なう。キ 原子力施設の消防防災技術に関する研究1 原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究(平成13〜15年度) 原子力施設における臨界事故や火災・爆発事故発生時に、要救助者を被ばくから守る防護壁ロボットと要救助者を牽引し安全な場所へ移動させる牽引ロボットの要素技術を開発する。ク 原子力施設の消防防災技術に関する研究2 原子力施設に利用される物質の消火困難性解明のための研究(平成13〜15年度) 原子力施設において使用されるアルカリ金属類について、小規模消火実験により消火残さの発火機構の解明を行い、中規模実験により粉末消火剤による消火性能と消火残さの発火抑制機能を評価する。ケ 危険性判定試験方法の適正化に関する研究(平成13〜15年度) 消防法の危険物の判定試験法改正後に登場した新しい化学物質等、従前の判定法では危険性が十分評価しきれない物質について、当該新規物質の危険性の推定・把握ができる試験方法の開発を行うための研究を実施する。
2 基盤研究 重点研究のほか、消防防災に係る科学技術の基礎的・継続的研究として、平成14年度には26課題の基盤研究を行った。
3 外部競争的研究資金等による研究 消防研究所では消防防災の研究をより積極的に行うため、文部科学省原子力試験研究費、科学技術振興調整費等の外部競争的研究資金を活用して研究を行っている。平成14年度には、次の研究課題を外部競争的研究資金により実施した。ア 原子力施設の消防防災技術に関する研究(重点研究:文部科学省原子力試験研究費)イ 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(重点研究:一部、文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト)ウ ガレキ下に取り残された要救助者探査に必要な要素技術に関する研究(重点研究:文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト)
4 大学、消防機関及び民間企業等との共同研究及び協力 消防防災の研究は、消防機関を通じた社会的なニーズの把握と成果の反映が重要であるとともに、産学官の連携により推進することが効率化などの観点から重要である。 建築防火、消火、あるいは危険物に関連した基礎的研究については大学の研究室を中心に、消防活動の現場に関連した研究については消防機関を中心に、消防用機器等の開発に当たっては民間企業を中心に、それぞれ共同研究先を広く求めている。平成14年度は次の31件について共同研究を実施した。
(1)大学等との共同研究等 消防防災に関連した火災安全等の研究を行っている大学及び工業高等専門学校の研究室と、火災・燃焼・消火等に関連した以下の共同研究等を行った。ア 原子力施設の消防防災技術に関する研究−原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究(京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻)イ 金属ナトリウムの燃焼と消火に関する基礎的研究(静岡大学工学部機械工学科)ウ 火炎中における消火剤の挙動に関する研究(筑波大学機能工学系)エ ウォーターミスト消火のシミュレーション手法に関する研究(東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻)オ ウォーターミスト消火の反応論的シミュレーション手法に関する研究(青山学院大学理工学部機械創造工学科)カ 地震による浮き上がりを伴う小規模タンクの強度に関する研究(高知工業高等専門学校機械工学科)キ 地震による浮き上がりを伴う小規模タンクの挙動に関する研究(龍谷大学理工学部機械システム工学科)ク 火災統計に基づく日常管理・消防用設備等の設置状況の火災抑止効果に関する研究(名古屋市立大学大学院)ケ 強震動シミュレーションにおける海の影響評価に関する研究(京都大学防災研究所・他)コ 同時多点アレー観測による地下構造の水平方向不均質性の抽出(東京大学地震研究所・他)
(2)消防機関との共同研究等 消防機関と以下の共同研究等を行った。ア 水/空気混合噴霧の消火性能についての研究(横浜市消防局)イ 防火衣の耐熱性能の評価に関する研究(京都市消防局)ウ 消防用防護服の総合的な性能評価手法及び総合的に優れた防火衣の開発に関する研究(東京消防庁)エ 木材に塗布した難燃材の経年変化に関する研究(京都市消防局)
(3)地方公共団体、非営利団体等との共同研究等 地方公共団体、非営利団体等と以下の共同研究等を行った。ア 長距離無線LANとPHSを用いたネットワーク対応型消防無線システムに関する研究(独立行政法人通信総合研究所)イ 防火服の耐熱性能の評価に関する研究((財)日本防炎協会)ウ ナトリウム燃焼挙動に関する研究(IV)(核燃料サイクル開発機構)エ 地震災害予測のための大都市圏強震動シミュレータの開発(科学技術振興事業団)オ 閉鎖型スプリンクラーヘッドの感熱体の経年挙動に関する基礎的研究(日本消防検定協会)カ 消防用ロボットに適した制御理論に関する研究(岐阜県生産情報技術研究所)キ 消防用防護服の総合的な性能評価手法に関する研究((財)日本防炎協会)ク 自己加速分解温度の決定に関する研究(神奈川県産業技術総合研究所)ケ 林野火災の発生危険度と拡大を予測するシステムの開発(広島県立林業技術センター)
(4)民間企業等との共同研究等 民間企業等と以下の共同研究等を行った。ア 原子力施設の消防防災技術に関する研究−原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究−イ スプリンクラー等による消火効果を考慮した区画火災の燃焼特性の研究ウ ウォーターミストの消火性能に関する研究エ バーチャルリアリティ(VR)技術を用いた防火安全技術に関する研究オ 水/空気混合噴霧の消火性能に関する研究カ 火災統計に基づく日常管理・消防用設備等の設置状況の火災抑止効果に関する研究キ 一般住宅における初期火災時の燃焼特性に関する研究ク 火災時における臭い警報システムに関する研究
5 国際的な研究の協力と交流 火災等災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、災害の情報や研究の成果等を相互に公開し研究を効率的に進める必要がある。また、大量の危険物等が国境を越えて流通しているので、それらの安全に関する国際規格を作成するためにも研究の国際的協力が必要である。このため、国際的な共同研究、研究者の交流等を積極的に推進することが不可欠である。このため、消防研究所は、以下の国内外との共同研究等を実施している。
(1)国際共同研究 平成14年度は以下の国際共同研究を行った。ア 危険物の危険性評価に関する研究(韓国・プキャン国立大学、中国・人民武装警察附属学院)イ ソウル市を対象とした地震被害想定システムの開発(韓国・ソウル市立大学)ウ 石油タンク火災に関する研究(フランス・ポアチエ大学)エ エネルギー物質の危険性評価に関する研究(中国・南京理工大学)
(2)外国研究者の受入れ 火災関連の外国人研究者を受け入れ、国際的に関心のある課題について協力して研究を行っている。平成14年度は韓国及び中国から2人をJSPS(日本学術振興会)フェローとして受け入れ、自己加速分解温度の評価及びリモートセンシングデータを用いた地震災害危険度評価に関する研究を行った。
(3)消防研究所シンポジウム(国際シンポジウム)の開催 平成14年7月に、現在における消火設備に関する知識を整理し、将来の課題を洗い出し、社会の安全に貢献することを目的として、12か国の研究者を招いて第2回消防研究所シンポジウム「消火設備の科学技術と基準」を開催した。
6 消防研究所による研究成果の公開及び普及 消防研究所では、研究成果を広く一般に公開するとともにその普及を図るため、以下の活動を行っている。
(1)全国消防技術者会議 昭和28年以来、毎年、全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として「全国消防技術者会議」を開催している。平成14年度は、10月17日及び18日の2日間、東京虎ノ門ニッショーホールにおいて第50回会議を開催し、24件の研究発表が行われた。
(2)消防防災研究講演会 消防研究所創立50周年に当たる平成9年度から、消防研究所の研究成果を広く普及すること等を目的として開催している。平成14年度は、平成15年1月24日、消防研究所において第6回講演会を開催し、「小規模雑居ビル火災をめぐる問題と防火安全対策」をテーマとして講演、討論等を行った。
(3)一般公開 科学技術週間の一環として消防研究所の一般公開を平成15年4月18日に開催し、全国の消防関係者、企業、大学等の研究機関、一般市民等約800人の参加を得た。
(4)消防研究所研究資料等の発行 定期的に「消防研究所報告」、「消研輯報」及び「消防研究所年報」を発行しているほか、個々の研究課題ごとに報告書をとりまとめ配布するなど、研究成果の普及に努めている。
(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰 消防研究所では、消防庁との共催により、消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的に、消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文を募集し、優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を設け、消防機関等における研究・開発の推進を図っている。平成14年度は、全国の消防機関、消防機器メーカー等から総計91編(機器の開発・改良84編、科学論文7編)の応募があり、選考委員会(委員長 上原陽一 横浜国立大学名誉教授)による厳正な審査の結果、10作品を授賞作品(優秀賞:8作品、奨励賞:2作品)が決定された。
[消防庁における研究開発推進の概要] 消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに革新的かつ実用的な技術へ育成するための制度、いわゆる競争的研究資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を平成15年度から創設した。 平成15年度は、平成15年3月5日〜4月25日の間に募集を行い、大学、民間企業等に所属する研究者から、合計131件の応募があった。応募課題の審査においては、消防庁内に外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」を開催し、研究代表者から提出された申請書類等の内容について評価を行い、この制度の目的に照らして優秀と認められる採択課題を選定した結果、16件の研究課題が採択された(囲み記事参照)。 また、消防庁においては、燃料電池の設置の安全に係る研究、消防用設備等の設置基準の性能規定化の研究等、消防法の技術基準の整備に直結する研究については、直接研究を実施する体制をとっている(燃料電池の設置の安全に係る研究について囲み記事参照)。
「消防防災科学技術研究推進制度」について 近年の都市化の進展、科学技術の発展等により、火災などの災害に消防機関等が迅速的確に対応していくためには、1)消火・救急・救助活動に関する科学技術の高度化、2)災害対応策への情報化の促進、3)環境保全の推進などについて、総合的に消防防災科学技術に係る研究を推進し、適切に導入・応用することが必要です。 このため、総務省消防庁では、消防防災科学技術の振興を図ることを目的に、平成15年度から消防防災分野の競争的資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を創設しました。●制度の概要 「消防防災科学技術研究推進制度」は、現在、直面している消防防災の課題の解決に非常に役立つ科学技術等の研究開発に関する提案を大学、研究所、消防機関等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究委託し、より革新的かつ実用的な技術へ育成するための制度です。●平成15年度の現状 平成15年度には131件の応募がありました。これらの応募を研究テーマごとに分類すると、防災力の向上(31%)、建築防火対策等の推進(15%)、救急・救助業務の高度化(15%)等に関するテーマが多くありました。また、提出機関ごとに分類すると、大学(47%)、企業(20%)からの応募が多くありました。テーマごとの応募状況は図のとおりです。 応募テーマを審査するため、総務省消防庁内に学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」を開催し、この評価会において専門的な知見に基づき厳正な評価を行い、優秀と認められる16件のテーマを選出しました。これら16件のうち、消防機関が中心となって研究するテーマが3件、消防機関が共同研究機関となって研究に参加するテーマが2件あります。<採択研究テーマ名一覧>2流体ノズルPAGを用いた水損低減型消火システムの開発研究セルフスタンドにおける顧客の静電気を主因とする防火対策に係る研究地下空間における避難と消防活動支援のための煙制御に関する研究消防職員の勤務時における身体負荷に関する研究障害となる物品を排除しながら閉鎖する防火戸の研究レスキュー工学の構築を目指した啓発活動のための核心的企画研究高齢社会に対応した火災予防検知システムの開発地域防災体制のための心理学的プログラムの構築環境に配慮した一般火災用消火剤の開発豪雨災害対策のための危機管理・図上訓練システム防災観測機システムの研究津波による石油タンクの被害予測手段に関する研究防災情報通信のための臨時回線用長距離・大容量無線LANの研究開発消防・危機管理用具の性能に関する研究消火設備を考慮した火災性状予測ツールの構築複合センサによる消防隊員の携帯型位置特定システム
燃料電池の安全利用●「燃料電池」とは 燃料電池とは、水素と酸素を反応させて、直接、電力を発生させる装置をいい、従来の燃料と比較して、次のような特徴をもっています。 1) 発電の際、水素と酸素の反応に伴い排出されるのは水のみであり、振動や騒音が非常に小さいなど環境にやさしいこと。 2) 電力のほか、同時に発生した熱を有効利用することにより、総合的なエネルギー効率が高くなること。 このため、環境対策、エネルギーの安定供給及び国際競争力確保等の観点から、燃料電池の開発・普及が世界的に進められているところです。 こうしたことを背景に、我が国でも、「燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議」開催して検討を行い、平成14年10月25日「燃料電池の実用化に向けた包括的な規制の再点検の実施について」をとりまとめるなど、政府全体として、平成17年度末までの導入環境の整備を目指し、幅広い取組みを実施しています。●燃料電池の安全利用 燃料電池はこれまでエネルギーとしての利用経験の少ない水素を利用していることから、導入環境整備に当たって各種規制の見直しが必要になりますが、その際には、安全性の確保を前提として実施する必要があります。消防庁では、上記連絡会議における取組みの一環として、防火安全上の観点から以下の3項目について検討を行っています。 1) 地下駐車場等における燃料電池自動車火災に対応した消火設備 2) 家庭用燃料電池に係る安全基準 3) 水素供給スタンドを給油取扱所に併設する場合の安全基準 このほか、携帯電話やノート型パソコン等への利用が見込まれる超小型燃料電池(マイクロFC)など燃料電池関連の新技術に関して、防火安全上の観点等から検討を行い、社会ニーズや技術革新などへの円滑な対応を図ることとしています。  
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防の科学技術に関する研究は、消防機関の研究部門においてもなされている。平成15年度において消防科学技術の研究部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、横浜市消防局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の8本部がある。 消防機関の研究部門の概要は第6−1表のとおりである。研究部門の定員は8機関で88人となっており、また、研究費は約161万円から6,716万円まで地方公共団体により大きな違いがあり、その総計は1億1,118万円となっている。 また、これらの研究部門は毎年、「指定都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術について意見交換を行っている。
2 消防機関における研究の概要 ほとんどの研究機関で一般の火災研究を行っており、ついで危険物の判定等の試験研究、火災原因究明等の調査研究を行っている。消防装備の開発については、装備担当部門単独又は協力して行っている本部もある。 また、平成7年度から、多くの機関で地震時の出火防止対策及び消火等の地震対策研究が開始され、その後も続けられている。
[消防防災の科学技術研究の課題] 消防防災の科学技術は、災害の発生に伴う緊急的な研究ニーズが出現すること、また、その対象とする研究領域が著しく広く、様々な知見が必要であることなどが特徴的である。こうした消防防災の科学技術研究の特性に対応する上では、研究組織の運営の機動性、柔軟性が必要であるとともに、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携が求められる。 消防研究所においては、今後とも、組織の弾力性を確保しつつ、研究ポテンシャルを一層高めるとともに、消防防災の科学技術研究のニーズに的確に把握するため、消防庁・消防機関・地方公共団体との連携を緊密化し、また、大学研究機関や民間との協力関係を深め効果的・効率的な研究を実施することが必要である。 また、競争的研究資金制度の一層の充実により、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携の推進が求められる。
火災感知機能を有するエアコンの開発・試作 エアコンや空気清浄機などに内蔵されている煙センサ、匂いセンサ、温度センサ等の各種センサ及びマイクロコンピュータを活用して火災を発見することのできる技術を開発し、住宅向け並びに高齢者施設向けの火災感知機能つきエアコンを試作しました。一般の住居等に自主的に設置されやすく、機能の確認と維持が容易な住宅用の火災感知システムを目指しています。 開発した機器の特長は次の通りです。・設置環境に応じた火災の判断基準を自動的に設定。・テレビ画面への割込み表示、または、電話回線を用いた外部への通報。・空気汚れ、その他の環境情報を常時報知させることで、センサの機能確認が可能。
小規模タンクの地震時の安全性評価手法確立のための研究 「小規模タンク」(ここでは、容量が1,000kl未満のタンクをいう。)が地震動を受けた際に、タンク底部の一部が浮き上がる現象を数値解析と実験により研究し、タンクの強度を評価するプログラムを開発しました。 解析をより短時間でかつ精度良く行うために、タンク底部の浮上がりを軸対称の単純なモデルに置き換え、有限要素法により、隅角部に発生するひずみを計算した結果、側板−底板接合部近傍では、大型タンク等では見られない小規模タンク特有の挙動が現れることが明らかになりました。 さらに、浮上がりによる破断について、低サイクル疲労強度実験を行った結果、タンク底部の最大浮上がり量が消防法で規定されている変位内であれば、100回浮上がりを繰返しても破断しないことがわかりました。
原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究 原子力施設で発生した臨界事故時に、被ばくした被災者を救急搬送するために消防職員が被ばくする事態が発生したことを契機として、原子力施設における臨界事故や火災・爆発事故発生時の消防力を強化するための研究開発を平成13年度から3か年の期間で実施している。 具体的には、京都大学や民間企業との産学官連携の体制で、要救助者を被ばくから守る防護壁ロボット及び自力避難ができない要救助者を牽引し安全な場所へ移動させる牽引ロボットに必要となる要素技術の開発研究を行っている。
第7章今後の消防防災行政の方向 近年において、新宿区歌舞伎町ビル火災や三宅島での火山災害、また、本年に入っては、宮城県北部地震や平成15年十勝沖地震等の地震災害、台風による風水害、さらには我が国を代表する企業等の産業施設における火災事故など、多種多様な災害が発生している。 平成7年の阪神・淡路大震災は約6,400人の犠牲者と約10兆円の経済損失をもたらしたが、今後発生のおそれが指摘されている東海地震、東南海・南海地震、さらには南関東直下型地震についても甚大な被害が想定されている。 このように、我が国は、地震や風水害等の発生リスクが極めて高いうえ、都市において社会資本が高度に集積しているため、諸外国に比較し、災害の発生の危険性と被害の甚大さが突出して高いとされている。 そのため、災害や国民保護などの緊急事態への対応体制を国の責務として整備し、国民の「安全」「安心」を確保することが急務となっている。 具体的には、全国的な緊急対応体制の強化に併せた常備消防、消防団及び自主防災組織等の充実強化、住宅防火等の火災予防対策、救急救命士の処置範囲の拡大に対応した救急救助業務の高度化、武力攻撃事態対処法の成立に伴う国民保護法制の整備に応じた国・地方を通じた体制整備等が求められている。
1 国・地方を通ずる消防防災力の強化(1)全国的な観点からの消防防災力の強化ア 新たに発足する緊急消防援助隊の整備・充実 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年に創設された緊急消防援助隊については、平成15年6月の消防組織法改正により法定化されるとともに、平成16年4月から東海地震等の二以上の都道府県に及ぶ大規模災害や毒性物質の発散等の特殊災害に対処するため特別の必要があるときは、消防庁長官がその出動を指示できることとなった。また、消防庁長官の指示を受けた出動により増加し、又は新たに必要となる経費に対する国庫負担金措置、施設・資機材の整備に必要な国庫補助金の確保等によりその整備・充実を図ることとなっている。 今後は総務大臣の定める基本計画に基づき、大規模・特殊災害に的確に対処するため、都道府県及び市町村の協力を得て、必要な登録隊数を増強するとともに、その資機材等を一層整備する必要がある。 特に、緊急消防援助隊活動に不可欠な消防救急無線のデジタル化については、効率化・共同化等を図りながら平成16年度から概ね10年で整備する。 さらに、基本計画に定める全国規模の図上訓練、ブロック別広域訓練等を実施するとともに、緊急消防援助隊による無償使用の対象となる消防用国有財産・物品の整備を推進する。イ 実践的な防災訓練等の実施 平成15年8月に、大規模・特殊災害が発生した際に、より迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に「消防防災・危機管理センター」を整備したところであり、今後は、同センターを活用し、国の関係機関、地方公共団体等と連携した実践的な防災訓練や図上訓練を実施し、初動対応を強化する。
(2)地域における消防防災力の強化ア 常備消防力の強化 地域の常備消防力については、東海地震等の大規模災害や原子力災害をはじめとするNBC(放射性物質、生物剤、化学剤)災害などの特殊災害に対処し、効果的な消防活動を行うため、消防防災施設、無線、資機材等の整備を促進する必要がある。 また、今日の消火・救急・予防業務等に対する住民のニーズの高度化や、複雑多様化する災害に的確に対応していくためには、消防本部の体制の充実強化が必要である。管轄人口10万人以上を基本に、市町村合併の推進と軌を一にしつつ、消防の対応力の強化が図られるよう配慮しながら、小規模消防本部の広域再編を引き続き進める。 市町村が適正な消防力を整備するに当たっての指針として、国が示している「消防力の基準」については、消防職員の柔軟な配置・活用を可能とするなど、市町村が様々な選択を行えるような内容・形態にしていくとともに、常備消防・消防団を含めた総合的な市町村の消防力の強化に資するため、平成16年度中を目途に見直しを行う。 さらに、消防職員委員会制度の円滑な運用を図り、消防職員が適切、安全かつ能率的に業務を遂行できる環境づくりに努めるとともに、惨事ストレス対策としてメンタルサポートの支援等を推進する。また、職員の高年齢化等に対応するため、適切な勤務環境・条件の整備を促進する。 また、最近相次いでいる殉職事故を踏まえ、「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保のための充実強化策などについて検討を進める。 加えて、林野火災等における消火活動・情報収集活動・人員物資搬送活動、各種災害時における救助活動、捜索活動等を行うための消防防災ヘリコプターについて、未配備県域を解消するほか、緊急消防援助隊における必要機数の確保を図るとともに、一層の活用促進を図る。また、林野火災・市街地火災等に対する空中消火について関係機関と連携した合同訓練を行い、その効果の実証を図る。イ 消防団の充実強化 消防団は、就業構造の変化や地域社会への帰属意識の希薄化等に伴い、団員数の減少、被雇用者(サラリーマン)団員の増加、団員の高年齢化など様々な課題に直面している。 今後は、消防団員を当面100万人(女性10万人)確保することを目指し、多様な災害対応を念頭に置き、「消防団総合整備事業」による施設・資機材等の確保に加え、インターネットを通じたe−カレッジ等によるサラリーマン団員等の教育機会の充実、団員の処遇改善を図る。 また、全国消防団員意見発表会の開催や優良消防団の表彰等により、若手・中堅団員及び女性団員の意欲を喚起するとともに、地方公共団体や郵便局、公共的団体職員等の入団の推奨、消防団を支援する事業所に対する表彰の充実など事業所との連携強化、消防団メールマガジンなど情報提供の充実等の措置を講じる。ウ 自主防災組織等の充実強化 自主防災組織の組織化に伴う活動体制の支援を図るため、従来から設立時に整備する資機材についての助成などを行っているが、今後さらに地域実態に応じた自主防災組織の設立を推進するため、「自主防災組織の手引」の作成・配布により自主防災組織の設立や活動に係るノウハウの提供を行うほか、住民の防災意識の向上や自主防災組織の活動展開を促進するため、シンポジウムを開催する。また、自主防災組織間の連携の充実を図り、相互研鑽による技術水準の向上を目指すため、各市町村・各都道府県単位での協議会の組織化の推進を図る。教育・普及面では、防災教育をインターネット上で行うe−カレッジや、学校教育を通じた自主防災活動を啓発するためのモデル事業の実施、消防大学校・消防学校における自主防災組織リーダー講習会の開催及び講習会用の教材作成等を通じて、支援体制の充実を進める。 さらに、災害ボランティアの活動を側面から支援するため、ボランティア活動関連情報の消防庁ホームページでの提供や、消防庁が運営している災害ボランティア・データバンクの機能強化、ボランティア活動家や行政職員等が集い防災に関して情報が交換できる場の設置等、活動環境の整備充実を図る。エ 地域における防災力の強化(ア)人材育成及び地方公共団体の防災体制の強化等 地方公共団体が大規模災害に適切に対応できるためには、トップマネージメントが極めて重要であることから、消防大学校における地方公共団体の首長等を対象とした危機管理セミナーの充実を図るほか、地方公共団体の幹部クラスの防災・危機管理専任スタッフの配置・研修、地域住民及び地方公共団体職員や消防職団員を対象としたインターネットを通じたe−カレッジの活用等による防災知識の普及等を推進する。(イ)地域防災力評価の普及・促進 地域防災計画をより実践的なものとするため、各地方公共団体の計画の内容をデータベース化するなどにより、各団体においてその内容の比較・検証等を通じたより適切な計画への見直しを行うよう促進する必要がある。 また、消防庁において平成15年11月に策定した「地方公共団体の地域防災力・危機管理能力評価指針」を活用し、各団体がそれぞれの地域の防災力の現状を客観的にチェックし、防災施策の充実強化に取り組みやすい環境を整えるため、指針の普及、評価実施の促進を図る。 さらに、今後、地方公共団体の人口規模や地理的条件などの特性が類似する団体ごとに相対比較を行うことが可能な仕組みを整備するなど、指針のさらなる充実を検討する。
(3)震災対策の充実 震災対策の充実については、平成15年5月の「東海地震対策大綱」の中央防災会議決定、7月の「東海地震緊急対策方針」の閣議決定、9月の東南海・南海地震に係る被害想定の実施等が進められてきた。このような状況を踏まえ、東海地震、東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制を確立するため、応援・受援の具体的な計画を定めるアクションプランの策定や、地域ごとの津波避難計画の策定、さらには、南関東直下型地震や日本海溝周辺の地震に関連する地方公共団体における的確な防災対応についての調査検討を推進する。 また、耐震性貯水槽等の整備促進とともに、庁舎等災害対策の拠点となる施設、学校等災害時に避難所となる施設等の耐震化を進めるため、地方公共団体における耐震化計画に基づく耐震改修事業の促進を図る。
(4)特殊災害・テロ災害対策の充実 原子力施設等で発生する災害は、放射性物質及び放射線の特殊性から、消防活動に際して特別の対策が必要である。 また、平成13年9月の米国における同時多発テロや炭疽菌事件を契機に、政府全体としても生物化学テロ対策を中心に更に抜本的な対策の強化を図っており、特に、NBC(放射性物質、生物剤、化学剤)テロ対策については、特殊な資機材や防災の訓練が必要であるほか、地方公共団体における対応体制の整備が必要である。 このため、原子力災害対策として、所在・周辺市町村における原子力防災資機材整備の促進、原子力総合防災訓練の充実、放射性物質の除染方法等に関するマニュアル整備等を行う。 また、緊急消防援助隊等のNBC災害対応能力の充実を図るため、活動資機材等の整備とともに、消防大学校において、NBCテロ災害対策講習会を実施する。
(5)消防防災分野におけるIT化の推進ア 国・地方間の情報通信体制の強化(ア)消防防災情報通信ネットワークの高度化・高機能化 全国的な観点から効率的な基盤整備を推進するため、消防救急無線、地域衛星通信ネットワークのデジタル化について、効率化・共同化等を図りながら積極的に促進していく。(イ)情報共有化に向けたシステム整備 消防庁防災情報システムと都道府県防災情報システムを相互接続し、都道府県防災情報システムにおける人的被害・物的被害の情報を消防庁防災情報システムに自動送信する機能等を構築し消防庁と都道府県間で情報を共有することにより、災害応急活動を迅速に展開する。 また、ヘリコプターテレビ電送システム、高所監視カメラ等を活用して被災地の映像を国・地方公共団体へ伝送する画像伝送システムの整備を推進することにより災害に係る映像情報を共有し、緊急消防援助隊をはじめ広域応援活動の迅速な展開を図る。 加えて、火災報告等オンライン処理システムに引き続き各種統計報告のオンライン化をさらに推進する。イ 行政・住民間の情報連絡体制の整備(ア)消防庁からの災害情報提供の充実 地域衛星通信ネットワーク及び市町村防災行政無線等を活用し、気象庁のナウキャスト地震情報等を消防庁から地方公共団体を経由して住民等へ伝達し、津波に対する迅速な避難勧告等への活用を図るシステムを開発する。 また、消防庁から住民等への災害等に関する情報の提供を充実するため、被害情報の迅速な提示等により、消防庁ホームページの利便性を高める。 さらに、国民保護の観点から、有事の際の警報、避難指示などの情報を国から都道府県・市町村を通じて迅速に国民等へ全国的に伝達するべく、これに不可欠な市町村防災行政無線の整備・デジタル化を推進する。(イ)地方公共団体(消防本部)・住民間の情報連絡体制の強化 各消防本部において高機能消防指令センターの整備により、携帯電話等による119番通報の円滑化を図るとともに、高齢者等の災害弱者からの緊急通報の方策等について検討する。 さらに、地方公共団体から住民等への有効な情報提供方策の検討を行う。
(6)消防防災に係る科学技術の高度化 科学技術に基づく消防対応の高度化を推進するため、消防防災に係る科学技術について、災害対応力の強化、火災予防対策の推進、危険性物質・危険物施設の安全確保、消火・救急・救助活動に係る技術の高度化等の各分野における重点的な研究開発を推進する。 このため、消防研究所において、「地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究」、「地下施設、大規模複合建築物等における避難誘導効果評価法に関する研究」、「廃棄物及びその処理施設の火災安全技術に関する研究」、「消防用防護服の総合的な性能評価手法に関する研究」等の研究を推進する。 また、意欲ある研究者の優れた提案に基づいて実施される研究開発に対して重点的に資金を配分するための競争的研究資金制度をさらに充実し、産学官連携による競争的で活性化された研究環境を実現し、研究開発推進を図る。
(7)消防防災分野における国際的課題への対応ア 国際協力・交流の推進 開発途上諸国へのODAを含む消防分野の経済・技術協力、開発途上諸国からの研修員の受け入れ及びトップマネージャーセミナーの開催、国際消防救助隊(IRT)の一層の充実等を図る。 さらに、平成17年1月に我が国で開かれる国連世界防災会議において、阪神・淡路大震災以降10年間の消防防災対策の充実について情報発信しつつ、主要国の防災関係諸機関との情報交換等の機会の拡大を図る。また、消防研究所において、消防用防護服に関する国際シンポジウムを開催する。イ 国際化への対応 消火器の消火能力等に係る国際規格についての検証実験を実施するほか、消防器具の試験方法等の国際的な標準化に引き続き協力していくとともに、危険物保安について、化学物質の試験方法、分類及び表示基準の国際的な標準化に関する調査検討を行う。
2 有事に備えた国民保護のための体制づくり(1)国民保護法制の適切な運用に向けた体制整備等 平成15年6月に武力攻撃事態対処法等いわゆる有事関連三法が施行され、1年以内を目標として、国が主要な役割を担う国民保護法制が整備されることとなっている。これに伴い、国が定める指針に基づき、消防庁の国民保護計画を策定するとともに、各地方公共団体が国民保護計画を策定することとなることから、各地方公共団体に対し、その作成の支援・助言を適切に行う必要がある。 また、警報、避難指示などを国から都道府県・市町村を通じて迅速に国民等へ伝達するための市町村防災行政無線の全国的整備・デジタル化、消防団・自主防災組織の活動に必要な資機材等の整備の促進を行うほか、これらの実施に不可欠な、消防庁の組織体制の強化を図る。
(2)地方公共団体等における対応力の強化 「国民保護計画」の策定、警報の伝達、住民に対する避難の指示・誘導、消防、救援等といった重要な役割が想定されている地方公共団体について、組織体制の確立、職員等に対する教育・訓練の実施、物資・資機材の整備・備蓄、全国的な情報伝達に不可欠な市町村防災行政無線の整備・デジタル化等の情報通信ネットワークの構築などを推進する。 また、武力攻撃事態等における広域・大規模な避難等の実施に当たって、自主防災組織・ボランティア等の自主的な活動に対する支援を行う。
3 火災予防対策等の推進(1)住宅防火対策の推進 建物火災の死者数の8割以上を占める住宅火災による死者数を低減するため、引き続き「住宅防火基本方針」に基づき、住宅用防災機器等の更なる普及促進や開発、福祉関係者等も含めた防災意識の一層の向上を図る。 また、これまでの取組みに加え、新たな住宅防火対策のあり方について、「地域の安全・安心に関する懇話会」において検討を行っており、平成15年10月に中間報告がまとめられた。中間報告において住宅火災による死者数の低減に有効な住宅用火災警報器等の普及が重要とされたことを受け、保険制度への反映、消費者の負担軽減等に資する技術開発等の市場機能の活用、法制度化の検討を含め、住宅用火災警報器等の一層の普及促進を図る。 さらに、放火火災対策として、連続放火発生地域において、地域の消防や警察等の関係機関との連携を図りながら、放火対策機器のモデル設置や放火警戒地域である旨の広報等を実施し、その抑止効果の検証等を行う。
(2)小規模雑居ビル等の防火安全対策の徹底 小規模雑居ビルの違反是正状況については、一斉立入検査により相当程度が改善されたものの、平成15年6月30日現在、消防法令違反率がなお約45%と高い状況にある。このことから、小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物の違反を是正するため、防火対象物定期点検報告制度等を活用し、消防機関による立入検査を一層重点化・効率化するとともに、違反処理に関するデータベースを充実する等により違反是正体制の強化を図る。 また、防火管理体制を充実強化するため、防火対象物点検資格者の育成等防火対象物定期点検報告制度の円滑な実施を図るとともに、防火管理講習の機会の拡充、消防計画マニュアルの作成等を行う。
(3)危険物等事故対策の充実ア 総合的な危険物事故防止対策の推進 近年における危険物の火災・漏えい事故の増加傾向を踏まえ、「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、官民一体となって事故防止を強力に推進する。 また、危険物施設に係る腐食・劣化に関する評価手法の開発・データベースの整備、自主保安の一層の推進等を図ることにより、火災・漏えい事故の防止、施設の効果的・効率的な保守管理を推進する。 さらに、社会生活の多様化等に伴い普及が予測される新規危険性物質の早期把握に努める。イ 企業事故防止対策の推進 大規模産業施設等で続発した火災事故等について、関係する企業等から事故発生時の状況を聴取し、事故に至った経緯の分析を行うとともに、関係省庁とも連携して情報交換や安全対策の検討を行い、再発防止対策を推進する。 また、平成15年十勝沖地震により、苫小牧市内の製油所で、タンク2基の火災が発生したこと等を踏まえ、東海地震等への対応のあり方等とも併せ、消防庁の「石油コンビナート等防災体制検討会」に3つの専門部会を設け、消防法や石油コンビナート等災害防止法等の法令改正も視野に入れた検討を行い、安全対策の充実を図る。 さらに、石油コンビナート防災対策として、特別防災区域内の事業所の配置図・施設情報等を国・地方で共有・管理し、迅速・的確な災害対応を行うための地域情報管理システムの整備等を実施する。 他方、ごみ固形化燃料(RDF)発電所で発生した火災を踏まえ、類似施設における火災等の発生状況及び要因の把握を行うとともに、制度改正の検討を含め、同種施設における再発防止対策を推進する。
(4)消防庁・消防研究所による火災原因調査の推進等 平成15年6月に成立した消防法の改正法により導入された消防庁による主体的な火災原因調査については、ブリヂストン栃木工場火災等で行っているが、さらに、火災原因調査高度支援専門員や中核的な消防本部等の火災調査協力員を含む火災種別に応じた調査チームの編成、調査に必要な資機材の整備等により実効性のある体制を整備・充実し、火災予防制度の企画立案等に資する調査を実施する。
(5)新技術等に対応した防火安全対策等の構築 新技術等の円滑な導入を行うため、消防用設備等に係る技術基準の性能規定化については、初期拡大抑制性能、避難安全支援性能及び消防活動支援性能について、新たに開発された設備等の性能を確認するための客観的検証法を共同住宅に関して来年の改正法施行時までに制定する予定であり、その他の客観的検証法についても順次制定・導入する。 また、危険物施設に係る技術基準についても、新技術・新素材の円滑な導入等を図るため、タンクローリー、地下タンク等から順次性能規定の導入を行う。 さらに、自動車用や家庭用の燃料電池、超小型燃料電池やバイオ燃料等の安全利用に必要な防火安全基準等の検討・整備を行うとともに、既存の非常電源に加え、電力の平準化に資するとされているナトリウム硫黄電池等の新型の電源について、消防用設備等の非常電源への導入に関する検討を踏まえ、必要な措置を講ずる。
4 救急救命等の充実・高度化(1)搬送体制の確保 救急搬送体制については高齢化の進展等に伴い、今後、大幅に救急出場の件数が増加することが見込まれることから、引き続き救急救命士等による高度な救急処置を行うことが可能な高規格救急自動車や自動体外式除細動器等の高度救命処置用資機材の整備を促進し、高度な救急救命処置が可能な搬送体制の確保を図る。
(2)救急業務の高度化の推進 救急業務については、高齢化社会の進展等に伴い増大する心筋梗塞、脳卒中等による心肺機能停止患者の救命率を一層向上させるため、平成15年4月から実施されている「医師の具体的な指示なしでの除細動」を幅広く確実に実施するほか、講習・実習の確保等により、「気管挿管」の平成16年7月からの円滑な実施を図り、また、エピネフリンを中心とした「薬剤投与」について「検討会」の結論を踏まえ、認めるとした場合には、必要な措置を講じ、早期実現を図るなど、救急救命士の処置範囲を拡大し、適切な実施を図る。 さらに、救急救命士の行う救急救命処置等の質を高めるため、メディカルコントロール体制の一層の充実・高度化を図る必要がある。救急救命士に対する医師による常時指示体制については更なる充実を図るとともに、救急活動に対する医学的観点からの事後検証体制、救急救命士の再教育体制等については確実な実施を図る必要がある。また、救命率の更なる向上を図るため、自動体外式除細動器の積極的配備を進める。 加えて、救急隊員の教育内容の高度化を検討するほか、消防大学校においても、救急業務の高度化に対応した救急業務関係幹部・指導者教育を強化する。
(3)応急手当の普及 救命効果の更なる向上を図るためには、救急救命士の処置範囲の拡大等による救急業務の高度化の推進に併せて、救急事故発生時において、救急隊到着前に、バイスタンダー(現場に居合わせた人)による適切な心臓マッサージや人工呼吸などの応急手当の実施を確保することが重要である。消防機関による救命講習の受講者数は平成6年中に25万人程度であったが、平成14年中には102万人を超えるまで増加してきており、救急の日等のイベントを通じて日本赤十字社等の関係機関との連携強化を図りつつ、更なる救命講習の開催、受講者数の確保等を推進する。また、自主防災組織や婦人防火クラブのメンバー、大規模な事業所や多数の住民の出入りする事業所の従業員等を中心に幅広く普及啓発を行うとともに、講習内容の高度化を検討する。
(4)救助技術等の高度化 救助業務について、複雑多様化する災害事象に的確に対応し、被害を軽減するため引き続き救助隊員に対する教育訓練の充実強化を図るとともに、大規模な地震災害、NBC(放射性物質、生物剤、化学剤)テロ発生時等消防隊員による救出、救助、消火等の活動が困難な災害現場において安全かつ迅速な消防活動を実施するため、偵察・探査・救助等を行う消防・防災ロボットの研究開発を推進する。