特集 緊急消防援助隊と国民保護法制−国家的視野に立った消防の新たな構築− 

1 緊急消防援助隊

(1)緊急消防援助隊の概要と消防組織法改正による法制化

 ア 緊急消防援助隊の概要
 緊急消防援助隊は、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ迅速に実施し得るよう、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、平成7年6月に創設された。
 この緊急消防援助隊は、平常時においては、それぞれの地域における消防の責任の遂行に全力をあげる一方、一旦、我が国のどこかにおいて大規模災害が発生した場合には、全国から当該災害に対応できるだけの消防部隊が被災地に集中的に出動するというシステムである。
 創設当初は要綱設置という形でスタートした緊急消防援助隊であるが、その部隊は、全国の消防本部から登録された指揮支援部隊、都道府県指揮隊、消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊から構成され、大規模災害発生に際し、消防組織法第24条の3に規定する消防庁長官の要請(同法改正後は指示も含む)により、被災地に出動し、被災市町村長の指揮の下、活動することを任務としている。
 第3表にみるように、緊急消防援助隊創設後平成8年の蒲原沢土石流災害が最初の出動事例となった後、数々の災害に出動している。
 
第3表 緊急消防援助隊の出動事例(平成8年〜平成16年)

 イ 消防組織法改正による法制化
 近年、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、南関東地域直下型地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、こうした災害に対しては、市町村消防のみでは、迅速・的確な対応が困難な場合が想定される。そこで、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、あわせて、国の財政措置を規定する等を内容とする、消防組織法の改正案が平成15年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立、同年6月18日公布(平成15年法律第84号)後、平成16年4月1日より施行された。

 (ア)法改正の主な内容
 法改正の主な内容は、緊急消防援助隊の法律上への明確な位置付けと消防庁長官の出動の指示権の創設、緊急消防援助隊に係る基本計画の策定及び国の財政措置となっている(第1表参照)。
 
第1表 消防組織法改正による緊急消防援助隊の法制化概要

 (イ)法律上の位置付けと消防庁長官の出動指示
 創設以来要綱に基づき運用がなされてきた緊急消防援助隊であるが、この法改正により、消防組織法上の組織として明確に位置付けるとともに、あわせて、東海地震等大規模な災害で2以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害(NBC災害)等の発生時には、消防庁長官は、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を「指示」するものとされた。この指示権の創設は、まさに国家的な見地から対応すべき大規模災害等に対し、緊急消防援助隊の出動指示という形で、被災地への消防力の投入責任を国に負わせることとするものである。

 (ウ)緊急消防援助隊に係る基本計画の策定等
 法律上位置付けられた緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどう配備・充足するかについて、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」を策定することとしている。この基本計画は、平成16年2月に策定され、緊急消防援助隊を構成する部隊の編成と装備の基準、出動計画及び必要な施設の整備目標などを規定している。
 また、緊急消防援助隊の登録についても、改正法の施行に伴い、都道府県知事及び市町村長よりあらためて申請がなされたところである。

 (エ)緊急消防援助隊に係る国の財政措置
 消防庁長官の指示を受けた場合には、緊急消防援助隊の出動が法律上義務付けられることから、出動に伴い新たに必要となる経費については、地方財政法第10条の国庫負担金として、国が全額負担することとしている。
 また、基本計画に基づく施設(設備も含む)の整備についても、「国が補助するものとする」と法律上明記されるとともに、対象施設及び補助率(2分の1)については政令で規定されている。

 1 緊急消防援助隊

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