はじめに 我が国の消防は、昭和23年に地域に密着した自治体消防として発足して以来、半世紀が経過したが、この間、関係者の努力の積重ねにより、制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民の安全の確保に大きな役割を果たしてきた。 しかしながら、本年は、7月に新潟・福島豪雨、福井豪雨災害、10月には台風第23号及び新潟県中越地震等の大規模災害が引き続いて数多く発生し、全国各地に大きな被害をもたらしている。また、消防行政を取り巻く状況は大きく変化しており、大規模災害、テロへの対応や危機管理が重要な課題となっており、緊急事態への国・地方を通じる対応体制の強化が急務となっている。 このような状況のもと、消防組織法の改正により、平成16年4月から緊急消防援助隊は、法律上の位置付けが明確化され、全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化が図られた。 また、今年の6月には、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下、「国民保護法」という。)が成立し、9月に施行され、消防は市町村長の指揮の下、避難住民の誘導等を行うことになっているなど、消防庁をはじめ全国の消防機関が、住民の安全に全力を尽くすことが求められている。 このように、災害等から国民の生命、身体及び財産を守るという消防の責務は、ますます大きなものとなってきており、今後とも消防防災全般にわたる施策を強力に展開し、国民の安全確保、安心して暮らせる地域づくりに全力を挙げて取り組んでいく必要がある。 平成16年版の消防白書においては、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説した。 特に、大規模災害や有事に際して効果的な対応をするためには、国家的な視野に立った対応が不可欠であることから、特集として「緊急消防援助隊と国民保護法制−国家的視野に立った消防の新たな構築−」と題し、先述した緊急消防援助隊と国民保護法制について、経緯や内容、今後の取組みや課題等を記述した。 また、本年において特に話題性のあるものをトピックスとして次の項目について記述している。 トピックスIでは、自然災害が多発していることを踏まえ、豪雨・台風災害や10月に発生した新潟県中越地震における被害の状況、消防庁の対応、今後の課題等について記述した。 トピックスIIでは、阪神・淡路大震災や今回の新潟県中越地震等を踏まえ、今後の地域防災体制の戦略的整備について記述した。 トピックスIIIでは、近年の住宅火災による死者の急増等を踏まえ、設置が義務化された住宅用火災警報器等による住宅防火対策について記述した。 トピックスIVでは、地域の安心・安全を確保するため、防災・防犯等に幅広く対応する地域拠点等の創出の取組みとして、地域安心安全ステーション整備モデル事業について記述した。 これらを踏まえ、この白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民各位の認識と理解を更に深め、また、安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域住民、企業等をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものである。平成16年12月
特集 緊急消防援助隊と国民保護法制−国家的視野に立った消防の新たな構築− 消防防災行政を取り巻く状況は近年大きく変化しており、消防の任務は従来の火災、救急、救助、自然災害対応から、大規模地震、テロへの対応や危機管理が重要な課題となっており、緊急事態への国・地方を通じた対応体制の強化が急務となっている。 特に次の2点については、今後の消防防災行政において重要な課題となっている。1 緊急消防援助隊 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年6月に発足した緊急消防援助隊は、消防組織法の改正により、平成16年4月から、法律上の位置付けが明確化されるとともに、消防庁長官に大規模災害や特殊災害時における出動の指示権が付与されるなど、全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化が図られた。本年の豪雨・台風災害や新潟県中越地震においても活動し、多数の被災者を救出したところではあるが、今後発生する大規模な災害等に対して迅速かつ的確な対応が期待されている。2 国民保護法制 平成16年6月に「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)が成立し、9月17日から施行され、武力攻撃事態や緊急対処事態(大規模テロ)の際に、消防が市町村長の指示のもと避難住民の誘導に当たること、消防庁長官による武力攻撃災害の防御等に関する広域的な指示をすること等が規定された。有事の際にも、消防庁をはじめ全国の消防機関が、住民の安全確保に全力を尽くすことが求められている。 以下この2点について、これまでの法制化の経緯やその概要、運用状況や今後の取組み・課題等を紹介する。
1 緊急消防援助隊(1)緊急消防援助隊の概要と消防組織法改正による法制化 ア 緊急消防援助隊の概要 緊急消防援助隊は、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ迅速に実施し得るよう、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、平成7年6月に創設された。 この緊急消防援助隊は、平常時においては、それぞれの地域における消防の責任の遂行に全力をあげる一方、一旦、我が国のどこかにおいて大規模災害が発生した場合には、全国から当該災害に対応できるだけの消防部隊が被災地に集中的に出動するというシステムである。 創設当初は要綱設置という形でスタートした緊急消防援助隊であるが、その部隊は、全国の消防本部から登録された指揮支援部隊、都道府県指揮隊、消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊から構成され、大規模災害発生に際し、消防組織法第24条の3に規定する消防庁長官の要請(同法改正後は指示も含む)により、被災地に出動し、被災市町村長の指揮の下、活動することを任務としている。 第3表にみるように、緊急消防援助隊創設後平成8年の蒲原沢土石流災害が最初の出動事例となった後、数々の災害に出動している。 イ 消防組織法改正による法制化 近年、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、南関東地域直下型地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、こうした災害に対しては、市町村消防のみでは、迅速・的確な対応が困難な場合が想定される。そこで、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、あわせて、国の財政措置を規定する等を内容とする、消防組織法の改正案が平成15年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立、同年6月18日公布(平成15年法律第84号)後、平成16年4月1日より施行された。 (ア)法改正の主な内容 法改正の主な内容は、緊急消防援助隊の法律上への明確な位置付けと消防庁長官の出動の指示権の創設、緊急消防援助隊に係る基本計画の策定及び国の財政措置となっている(第1表参照)。 (イ)法律上の位置付けと消防庁長官の出動指示 創設以来要綱に基づき運用がなされてきた緊急消防援助隊であるが、この法改正により、消防組織法上の組織として明確に位置付けるとともに、あわせて、東海地震等大規模な災害で2以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害(NBC災害)等の発生時には、消防庁長官は、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を「指示」するものとされた。この指示権の創設は、まさに国家的な見地から対応すべき大規模災害等に対し、緊急消防援助隊の出動指示という形で、被災地への消防力の投入責任を国に負わせることとするものである。 (ウ)緊急消防援助隊に係る基本計画の策定等 法律上位置付けられた緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどう配備・充足するかについて、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」を策定することとしている。この基本計画は、平成16年2月に策定され、緊急消防援助隊を構成する部隊の編成と装備の基準、出動計画及び必要な施設の整備目標などを規定している。 また、緊急消防援助隊の登録についても、改正法の施行に伴い、都道府県知事及び市町村長よりあらためて申請がなされたところである。 (エ)緊急消防援助隊に係る国の財政措置 消防庁長官の指示を受けた場合には、緊急消防援助隊の出動が法律上義務付けられることから、出動に伴い新たに必要となる経費については、地方財政法第10条の国庫負担金として、国が全額負担することとしている。 また、基本計画に基づく施設(設備も含む)の整備についても、「国が補助するものとする」と法律上明記されるとともに、対象施設及び補助率(2分の1)については政令で規定されている。
(2)緊急消防援助隊の活動 ア 緊急消防援助隊の体制 緊急消防援助隊の部隊編成については、平成7年の創設当初は、指揮支援部隊、救助部隊、救急部隊、消火部隊及び後方支援部隊の5部隊を中心とする、総計1,267隊、約1万7,000人規模の体制であった。 平成13年1月には、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、消防防災ヘリコプターによる航空部隊及び消防艇による水上部隊を新設し、消火、救助部隊等の増加も図り、8部隊、総計1,785隊、約2万8,000人規模となった。 その後も年々登録部隊数は増加し、法制化直前の平成15年5月時点では、2,210隊、約3万1,000人規模の体制となっていた。 法制化に伴い、あらためて登録の手続きを経た平成16年4月1日時点においては、指揮支援部隊をはじめとする10部隊で編成され、全国812消防本部から2,821隊が登録、隊員数約3万5,000人となり、大幅に体制が強化されて、新たな緊急消防援助隊として発足したところである(第1図及び第2表参照)。 平成16年4月14日には、麻生総務大臣出席の下、全国の指揮支援部隊、都道府県指揮隊及び都道府県航空隊の隊長等が参集して、緊急消防援助隊発足式が、総務省講堂において挙行された。 イ 主な出動事例 (ア)創設後法制化までの主な出動事例 緊急消防援助隊創設後、最初の出動となった事例は、平成8年12月に、新潟・長野の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害であった。その後も平成12年の有珠山噴火災害、平成13年の芸予地震などの自然災害をはじめ、平成15年の十勝沖地震に伴う出光興産北海道製油所タンク火災などの火災事案に出動している(第3表参照)。 (イ)新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害への出動 平成16年7月の梅雨前線停滞に伴う新潟・福島豪雨災害、及びそれに続く福井豪雨災害においては、堤防の決壊等により甚大な被害を受けた新潟県及び福井県に法制化後初めて緊急消防援助隊が出動し、陸上と空から救出活動等に従事したところである。 新潟県には7月13日、宮城県、山形県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、長野県及び岐阜県の1都11県から出動し、延ベ171隊、693人(うち航空隊9隊、71人)が3日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、三条市1,652人、見附市106人、中之島町97人の総数1,855人(うちヘリコプターにより92人)を救出した。 続いて福井県には18日、神奈川県、富山県、石川県、長野県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県及び島根県の2府10県から出動し、159隊、679人(うち航空隊9隊、65人)が2日間の活動に従事、住宅や山間部等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、福井市266人、江市45人、美山町77人の総数388人(うちヘリコプターにより187人)を救出した。 (ウ)台風第23号災害への出動 平成16年10月、全国的規模で平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号災害においては、豪雨による堤防の決壊等のため多大な被害を受けた兵庫県に出動し、浸水家屋の戸別調査及び救出活動等に従事したところである。 10月21日、兵庫県豊岡市に、愛知県、滋賀県、大阪府及び岡山県の1府3県から出動し、70隊、284人が2日間の活動に従事、2,000世帯を超える戸別調査を行うとともに住宅等に孤立した住民127人を救命ボート等により救出した。 (エ)新潟県中越地震への出動 10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8、最大震度7となる大地震が発生した。本震発生後、短時間の内に震度6強を含む余震が頻発し、その後も震度6弱の余震が発生するなど、新潟県の内陸部・山間部に家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。 緊急消防援助隊については、地震発生直後の23日18時25分、消防組織法第24条の3第2項及び第4項に基づき、情報収集と指揮支援部隊派遣のため、埼玉県と仙台市に消防庁長官より直接ヘリコプターの出動要請を行うとともに、19時20分の新潟県からの派遣要請を受けて、直ちに山形県、富山県、福島県及び東京都に出動を要請したところである。その後も引き続き各県に出動要請を行った結果、11月1日までの10日間に、累計で、1都14県から480隊、2,121人、ヘリコプター20機と、これまでで最大規模の出動となった(出動都県は、宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、山梨県、富山県、石川県及び愛知県)。 活動状況は、主に小千谷市、長岡市、山古志村において、孤立住民等の安否確認、救助・救出、救急搬送に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動にも当たったところである。特に10月25日全村避難指示が発令された山古志村においては、自衛隊、警察及び海上保安庁と連携して消防防災ヘリコプターにより集中的に救出活動を実施、さらに27日には、長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故現場において、東京消防庁ハイパーレスキュー隊を中核に地元長岡市、新潟県と緊急消防援助隊の合同の救助活動を実施し、2歳男児1人とその母親の2人を地震発生以来4日ぶりに救出(母親は病院搬送後死亡確認)した。 こうした活動の結果453人(うちヘリコプターにより282人)を救出し、11月1日、活動を終了した。
(3)緊急消防援助隊の運用 緊急消防援助隊の編成及び出動計画等については、総務大臣が定める基本計画に定められているが、その概要は以下のとおりである。 ア 緊急消防援助隊の編成 緊急消防援助隊の部隊は、全国を8つのブロックに分けた災害発生地域別に、政令指定都市の消防本部により編成される指揮支援部隊と、応援都道府県内の消防本部の消火部隊、救助部隊、救急部隊等から編成される都道府県隊に大別される。 緊急消防援助隊は、被災地の市町村長(又は委任を受けた消防長。以下同じ)の指揮の下に活動することとなるが、指揮支援部隊は、大規模災害の発生に際し、ヘリコプター等で速やかに被災地に赴き、被害情報の収集等に当たるとともに、当該市町村長の指揮を支援し、被災地における緊急消防援助隊の活動が円滑に行われるよう支援活動を行う。 都道府県隊は、当該都道府県内の消防本部において登録されている消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊並びに当該都道府県の航空部隊のうち、被災地への応援に必要な部隊をもって編成される。 こうした部隊編成に基づき、緊急消防援助隊は、被災地の市町村長→指揮支援部隊長→都道府県隊長→各部隊長という指揮命令系統により、活動することとなる。 イ 出動計画 (ア)基本的な出動計画 大規模災害等の発災に際し、消防庁長官は、情報収集に努めるとともに、被災都道府県知事等との密接な連携を図り、緊急消防援助隊の出動の有無を判断し、消防組織法第24条の3の規定に基づき、出動の要請又は指示の措置をとることとされている。この場合において迅速かつ的確な出動が可能となるよう、あらかじめ出動計画が定められている。 具体的には、災害発生都道府県ごとに、その隣接都道府県を中心に、原則として第一次的に応援出動する都道府県隊を第1次出動都道府県隊と、災害の規模によりさらに応援が必要となる場合に出動準備を行う都道府県隊を出動準備都道府県隊として指定している。 (イ)東海地震等における出動計画 東海地震、南関東地域直下型地震等の大規模地震については、2以上の都道府県に及ぶ著しい地震被害が想定され、第1次出動都道府県隊及び出動準備都道府県隊だけでは、消防力が不足されると考えられることから、全国的規模での緊急消防援助隊の出動を行うこととしている。 そのため、東海地震及び南関東地域直下型地震を想定して、中央防災会議における対応方針も踏まえ、それぞれの発災時における緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを策定しており、例えば東海地震の場合、強化地域に指定されている8都県以外の全道府県の陸上部隊の出動順位、応援先都県、出動ルート等を定めるとともに、航空部隊についても全国的な運用を行うこととしている。 (ウ)緊急消防援助隊調整本部 緊急消防援助隊はそれぞれの管轄区域を離れて活動することから、迅速かつ効果的な活動を行うためには、速やかな集結及び被災地域への出動とともに、被災地域における各部隊の具体的な活動場所及び部隊配備等を、被害状況を踏まえて適時的確に決定する必要がある。 そのため、緊急消防援助隊が出動した場合には、被災都道府県において緊急消防援助隊調整本部を設置し、同本部には、消防庁職員も派遣して、都道府県・県代表消防機関職員、指揮支援部隊長等とともに、緊急消防援助隊の部隊配備をはじめとする所要の連絡調整を行うこととしている(第2図及び第3図参照)。 ウ 教育訓練 緊急消防援助隊は、全国各地から出動した部隊が同一の被災地域において活動することを任務とするものであるから、円滑かつ効果的な活動を行うためには、技術の向上はもとより、指揮及び相互の連携活動能力を高める必要がある。そのため平時からの教育訓練が極めて重要であり、消防大学校における教育訓練はもとより、毎年度全国の各地域ごとにブロック合同訓練を実施している他、平成17年度に全国合同訓練を実施することとしている。 なお、地域ブロック合同訓練及び全国合同訓練についても基本計画に明記され、それぞれ国主催で行われることから、その経費も国が負担することにしている。
(4)今後の課題 以上のように法制化後新たに発足した緊急消防援助隊であるが、今後さらに活動能力を高めていくためには、 〔1〕 消防庁長官の指示権が創設されたことも踏まえると、大規模災害・特殊災害等発生時においては、消防庁自体の初動対応がこれまで以上に重要となり、迅速かつ的確な情報収集等に努め、できる限り災害の規模、被害状況等を把握して、緊急消防援助隊の派遣等必要な措置を即座に講じなければならない。消防庁においては、平成15年8月に「消防防災・危機管理センター」を設置し、平常時の執務体制とは別個の全庁的な災害対策本部体制の構築など災害応急体制を整備してきたところであるが、今後とも情報収集体制等を強化し、また繰り返し図上訓練等を実施するなど日頃から体制の点検を行いながら、より実践的かつ効率的な応急体制を確立するために災害対策本部のあり方について見直しを行っている。主な事項は、平常時の課・室体制や災害種別に関わらず災害対策本部の組織体制を原則として一本化して大規模災害への応急対応を行うこと、また、災害対策本部における情報窓口の一本化及び情報整理・伝達の制御、職員の現地派遣体制の強化を図るとともに、緊急消防援助隊の出動の要否、派遣地域、必要な部隊種別及び規模の判断等オペレーション機能の強化を図っている(第4図参照)。 〔2〕 緊急消防援助隊が迅速かつ効果的に活動するためには、各都道府県と県代表消防機関において速やかに応援部隊を編成し、参集・集結して被災地に出動する必要がある。また、緊急消防援助隊を受け入れる被災地の側においても、都道府県と被災市町村、消防機関が連携して緊急消防援助隊の活動地域等を調整・決定することが重要である。そのためには、平時より、各種防災訓練等の機会も生かしながら、緊急消防援助隊調整本部運営訓練や大規模な参集・集結訓練など、緊急消防援助隊の活動に即したより実践的な教育訓練を行う必要がある。 〔3〕 いつ起きてもおかしくないと言われる東海地震や東南海・南海地震等に備えるためには、発生時における緊急消防援助隊の活動方針をさらに具体化していく必要があり、そのためには東海地震及び南関東地域直下型地震に係るアクションプランを随時検証するとともに、東南海・南海地震等を想定したアクションプランの策定など様々な事案を想定した運用体制の構築を図っていく必要がある。 〔4〕 緊急消防援助隊の活動規模も増大していることから、今後さらに計画的な登録部隊の増強(平成20年度までに3,000隊規模を目標)とともに、車両、航空機、資機材等各種の施設・設備整備を推進していく必要がある。 〔5〕 NBC災害等特殊災害の場合においては、大規模自然災害の場合とは出動部隊、活動内容等も異なってくることから、これらの事案の特殊性を踏まえた具体的な対応方策の検証を進めていく必要がある。等の課題に引き続き取り組んでいく必要がある。
2 国民保護法制 冷戦終結後、10年以上を経て、近い将来、我が国に対する本格的な侵略事態の生起の可能性は低下する一方、大量破壊兵器の拡散や国際テロなど、新たな脅威への対応が国際社会の差し迫った課題となっている。例えば、平成13年の米国同時多発テロや日本近海における武装不審船出現は、国民に不安を与えるとともに、新たな危機に備えることの重要性を再認識させることとなった。 このような中で、国民保護法を含む有事関連法が、与野党の大多数の支持を得て成立したところである。 国民保護法では、地方公共団体は、警報の伝達や避難の指示、救援の実施等の国民の保護のための措置の多くを実施する責務を有するなど、大きな役割を期待されている。 また、消防も、市町村長の指揮の下に避難住民の誘導や、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護し、武力攻撃災害を防除及び軽減することが規定されるなど、重要な責務を負うこととされている。 以下、我が国の安全保障をめぐる動きや消防庁のテロ対策等について概説した後、国民保護法の基本的枠組みについて紹介する。
(1)我が国の安全保障をめぐる動き 最近の我が国をめぐる安全保障環境については、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」(平成15年12月19日安全保障会議及び閣議決定)において、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する一方、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が国際社会の差し迫った課題となっていると記述されている。 また、我が国の安全保障と防衛力の在り方について、幅広い観点から総合的な検討を行うことを目的として内閣総理大臣が開催した「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告書(平成16年10月4日)においても、「冷戦終結後十数年を経て、日本に対する本格的な武力侵攻の可能性は大幅に低下している。一方、テロリストなどの非国家主体による攻撃という、従来の国家間の「抑止」という概念ではとらえにくい脅威が深刻な問題となっている。」と指摘されている。
(2)政府及び消防庁のテロ対策 テロリズムは、その目的・動機の如何を問わず正当化され得ず、断固非難されるべきものである。テロリズムとの闘いについては、国際社会においても明確な決意が共有されており、かねてから、国連総会において、テロ防止及び撲滅のための措置に関して「国際テロリズムに関する廃絶措置」決議が採択されている。また、平成12年7月の九州・沖縄サミットにおいても、動機の如何を問わずあらゆる形態のテロリズムと闘う決意が再確認されている。 また、我が国においては、平成7年3月20日に、化学剤であるサリンを使用し無差別の大量殺傷を目的とした「地下鉄サリン事件」が発生した。 このような情勢をも踏まえ、我が国においては、テロ事案の防止及び発生時の対処体制の強化に向けた継続的な努力が行われている。平成10年4月10日の閣議においては「重大テロ事件等発生時の政府の初動措置について」を決定(以下「重大テロ対処閣議決定」という。)するなど、政府全体として対処体制の整備を着実に進められてきており、NBCテロや大規模爆弾テロ等大量殺傷型のテロ事件が発生した際の対処については、平成11年3月23日、重大テロ対処閣議決定に基づく対応マニュアルとして、「大量殺傷型テロ事件発生時において行うべき措置について」が策定されたところである。 また、平成13年9月11日に米国で発生した同時多発テロを踏まえ、同年10月8日に内閣に「緊急テロ対策本部」が設置され、国内における警戒態勢の強化、在留邦人の安全確保、退避支援、テロ対策特別措置法等の早期成立等をはじめとする一連の緊急対応措置が決定され、同年11月22日には、消防等現地関係機関等の連携確保に向けた措置として、「NBCテロ対処現地関係機関連携モデル」が示されている。 これを受けて、消防庁においても、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置するとともに、各都道府県に対する危機管理体制の点検・強化、警戒態勢の整備強化等の要請等を行うなど、国内におけるテロ発生の可能性を踏まえた対策を講じてきている。 装備面では、NBCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度に陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を各都道府県の代表的な消防本部に対して無償貸与し、平成14年度からは、陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器をテロ対策特殊救助資機材として国庫補助の対象とするとともに、平成16年度にはNBC対応車両を補助対象として追加している。 また、平成15年6月の消防組織法の改正により、地震等の大規模災害とともにNBCテロ災害等の特殊災害を対象として、緊急消防援助隊の法整備及び消防庁長官による出動指示の法制化が行われるとともに、平成16年4月から同援助隊の登録がなされている。 地方公共団体におけるテロ災害対策の確認及び徹底を図るため、消防庁としては、NBC災害に係る各種消防活動マニュアルを作成し、地方公共団体及び消防機関に配布するとともに、警察、自衛隊、保健所等の関係機関との連携の円滑化・強化が図られるよう、その周知徹底を図っている。 また、消防大学校において、従来からのNBCテロ災害対応に係る科目に加えて平成16年度からはNBC災害講習会を新設したところであり、各都道府県の消防学校においても16年度から特殊災害科を新設したところである。 今後は、各消防機関において、関係機関との連携の下に、テロ災害等の特殊災害に係る様々な図上訓練・実動訓練等が実施され、テロ災害対応能力の一層の向上が図られることが期待されている。
(3)有事関連三法の成立までの動き 我が国の安全保障を取り巻く環境の変化等を受けて、平成14年2月開会の第154回通常国会において、小泉総理大臣が、有事法制のとりまとめを急ぎ、関連法案を同国会に提出するとの方針を示し、同年3月に武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(以下「事態対処法」という。)、改正自衛隊法及び改正安全保障会議設置法のいわゆる有事関連三法案が国会に提出された。 これらの法案の審議は、平成15年の第156回通常国会まで議論が持ち越され、与野党協議を受けて、平成15年6月に成立した。 事態対処法は、対象とする事態の定義、事態への対処に関する基本的理念、国全体としての対処の枠組み等の基本的事項を明らかにするものであり、有事法制全体の中核として位置付けられる法律である。 また、事態対処法においては、国民の保護のための法制を整備することが規定されており、事態対処法の国会審議が行われた衆参両院の特別委員会においては、国民の保護のための法制の整備は、事態対処法の施行の日から1年以内を目標として実施する旨の附帯決議が付された。 また、改正安全保障会議設置法においては、議員の構成を見直し、議員に総務大臣等が追加された。総務大臣が安全保障会議の議員に追加された趣旨は、住民避難、災害防止、救急救助等の国民保護に不可欠な機能を所管することのほか、国と地方の連絡調整事務や重要通信の確保、電波の緊急割り当て等の事務を所管することによるものである。 また、これと併せて安全保障会議を補佐し、各種事態に関する分析・検討等を行い、安全保障会議に進言する組織として、内閣官房長官を委員長とする事態対処専門委員会が設置されることとなった。消防庁長官が委員に任命されている(第5図参照)。
(4)国民保護法の成立と施行までの動き 事態対処法の成立を受け、政府は、直ちに内閣官房長官を本部長とする国民保護法制整備本部を設置し、国民保護法案の検討に入った。その後、4回にわたり閣僚級の議論が行われるとともに、2回にわたり都道府県知事との意見交換会が開催された(資料1参照)。 地方公共団体からの意見を踏まえ、具体的には、 〔1〕 国の基本指針において、想定される武力攻撃事態の類型等について示すこととしたこと。 〔2〕 国、地方公共団体、指定公共機関等の役割分担、権限などを明確化したこと。 〔3〕 国の指示がなくても住民に対し「緊急通報」や「退避の指示」、「警戒区域の設定」ができることとするなど、都道府県知事や市町村長の権限を強化したこと。 〔4〕 大規模テロ等の緊急対処事態についても武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に準じた措置を講ずることができるようにしたこと。等の点について、国民保護法案に地方公共団体の意見が反映されることとなった。 このような過程を経て、国民保護法案がとりまとめられ、同法案を含むいわゆる有事関連7法案と3条約案が第159回通常国会に提出された。 国会においては、衆議院で50時間以上、参議院で30時間以上の審議が行われ、衆議院では、国民保護法案について、緊急対処事態に関する事項や国と地方公共団体が共同して実施する訓練についての地方公共団体の費用にかかる国庫負担規定が追加されるなどの修正が行われた。 このような経過を経て、6月14日、参議院本会議において、衆議院修正後の国民保護法案が可決・成立した。なお、法案の可決に当たっては、衆参両院において附帯決議が付された(資料2参照)。 その後、政府において国民保護法の施行令についての検討が進められ、国民保護法は、同法施行令とともに、9月17日に施行された。 なお、消防庁では、9月17日の施行に併せ、地方公共団体に対し、国民保護法上の留意事項や今後のスケジュール等を周知するため、施行通知を発出している。
(5)想定される武力攻撃事態等の類型 国民保護法案の検討過程において、地方公共団体から、想定される具体的な武力攻撃事態の類型について示すよう要望が出ていたところであるが、政府では、衆議院議員平岡秀夫君提出有事法制関係法案等に関する質問に対する答弁書(平成16年3月19日提出)の中で、『「武力攻撃事態の想定」としては、現時点においては、航空機や船舶により地上部隊が上陸する攻撃、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空機による攻撃等を想定している』と、4つの類型を考えていることを示している。 また、緊急対処事態(武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態を含む。))については、平成16年5月12日の衆議院武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会における前原委員に対する井上国務大臣答弁の中で、〔1〕危険性を内在する物質を有する施設等に対する攻撃が行われる事態、〔2〕多数の人が集合する施設及び大量輸送機関等に対する攻撃が行われる事態、〔3〕多数の人を殺傷する特性を有する物質等による攻撃が行われる事態、〔4〕破壊の手段として交通機関を用いた攻撃が行われる事態の4類型が、想定される緊急対処事態の類型として示されている(資料3参照)。
(6)国民保護法における地方公共団体の役割 国民保護法においては、地方公共団体が国民の保護のための措置の多くを実施する責務を有しているところであり、国民保護法における地方公共団体の役割について、以下、平時及び武力攻撃事態等に分けて概説する。 〔1〕 平時における役割 ア)国民保護計画の作成 地方公共団体は、いざというときに迅速に国民の保護のための措置が実施できるように、あらかじめ、国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)を作成することとされている。この場合、国があらかじめ策定することとされている基本指針に基づき都道府県が国民保護計画を作成し、その都道府県の国民保護計画に基づき市町村が国民保護計画を作成することとなる。 なお、武力攻撃事態等における避難や救援は広域的になされる可能性が大きいため、都道府県間、市町村間の国民保護計画の整合性が重要になることから、都道府県の国民保護計画については総務大臣を経由して内閣総理大臣に、市町村の国民保護計画については都道府県知事に、それぞれ協議しなければならないこととされている。 イ)国民保護協議会 国民保護計画を作成するに当たっては、幅広く住民の意見を求め、関係する者から意見を聴取することとされているため、すべての都道府県及び市町村に、国民保護協議会が設置されることとなる。国民保護計画の作成又は変更に当たっては、地方公共団体の長は、この国民保護協議会に諮問をしなければならないこととされている。 ウ)組織の整備、訓練 地方公共団体は、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備しなければならないこととされている。 また、地方公共団体は、それぞれ又は国等と共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならないこととされている。 〔2〕 武力攻撃事態等における役割 ア)国・地方公共団体の対策本部の設置 武力攻撃事態等に至ったとき、政府は、武力攻撃事態等への対処に関する基本的な方針(以下「対処基本方針」という。)を定めることとなる。その手続きは、内閣総理大臣が対処基本方針の案を作成の上、閣議の決定後、国会の承認を求めることとなる。対処基本方針が定められたときは、内閣総理大臣は、閣議に諮り、臨時に国の武力攻撃事態等対策本部を設置することとなる。 ここで、内閣総理大臣が対処基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めると同時に、国民保護対策本部を設置すべき都道府県及び市町村の指定について閣議の決定を求めることとなる。指定を受けた都道府県及び市町村は、国民保護計画に基づき国民保護対策本部を設置しなければならない。 なお、都道府県及び市町村の側から、対策本部を設置すべき指定を行うよう内閣総理大臣に対し要請を行うこともできることとされている。 イ)警報の通知・伝達 武力攻撃事態等に至った場合、国の対策本部長は、基本指針及び対処基本方針に基づき、警報を発することとなる。都道府県知事には総務大臣を経由して警報が伝えられると同時に、放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関も警報を放送することとなる。 都道府県知事により警報が市町村長に通知され、市町村長は防災行政無線等を用いて住民に警報を伝達することとなる。 ウ)避難措置の指示 国の対策本部長は、警報を発令した場合において、住民の避難が必要であると認めるときは、基本指針で定めるところにより、関係都道府県知事に対し、住民の避難に関する措置を講ずべきことを指示する。 避難措置の指示は、総務大臣を経由して関係都道府県知事に通知される。都道府県知事は、避難措置の指示を受けたときは、要避難地域を管轄する市町村長を経由して、当該地域の住民に対し、避難すべき旨を指示しなければならない。 避難の指示には、国が発する避難措置の指示の内容に加えて「主要な避難の経路、避難のための交通手段その他避難の方法」が示される。また、放送事業者である指定公共機関又は指定地方公共機関は、警報の放送と同様、速やかに避難の指示を放送することとなる。 なお、避難先地域となる市町村長は、都道府県知事から避難の指示を通知されたときは、正当な理由がない限り、避難住民の受入を拒んではならないこととされている。 エ)避難住民の誘導 市町村長は、都道府県知事より避難の指示があったときは、直ちに避難実施要領を定め、避難住民の誘導を行わなければならない。 市町村長は、避難実施要領に定めるところにより、市町村の職員並びに消防長及び消防団長を指揮して、避難住民の誘導を行う。また、市町村長は、必要があると認めるときは、警察署長、海上保安部長等又は既に国民の保護のための措置の実施を命ぜられた自衛隊の一定の部隊等の長に対し、避難住民の誘導を行うよう要請することができることとされている。 オ)避難住民等の救援 救援の実施は都道府県が中心的な役割を果たすこととされている。国の対策本部長が避難措置の指示をしたとき又は武力攻撃災害による被災者が発生した場合において、救援が必要な地域を管轄する都道府県知事に対し、救援に関する措置を講ずべきことを指示する。都道府県知事は、当該指示を受けた場合は救援を行わなければならない。 また、事態に照らし緊急を要し、救援の指示を待ついとまがないと認められるときは、指示を待たないで救援を行うことができることとされている。 カ)安否情報の収集、報告 市町村長は、避難住民及び武力攻撃により死亡し、又は負傷した住民の安否に関する情報を収集、整理するよう努め、都道府県知事に対し安否情報を報告しなければならないこととされている。また、都道府県知事は、市町村長から報告を受けた安否情報を整理するとともに、必要に応じて自ら安否情報を収集、整理するよう努め、総務大臣に対し報告しなければならないこととされている。 総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報について照会があった場合は、個人の情報の保護に十分留意の上、速やかに回答しなければならないこととされている。
(7)武力攻撃事態等における消防の役割 国民保護法第97条第7項では、武力攻撃災害に対する消防の任務を「消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護するとともに、武力攻撃災害を防除し、及び軽減しなければならない。」と規定している。 この規定は、消防組織法第1条の「消防は、その施設及び人員を活用して、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水火災又は地震等の災害を防除し、及びこれらの災害に因る被害を軽減することを以て、その任務とする。」との規定を武力攻撃事態等にも当てはめたものとなっており、消防が、自然災害、武力攻撃災害等原因の如何にかかわらず、こうした任務に当たることを示したものである。 なお、国民保護法では、武力攻撃事態等の特殊性にかんがみ、特に安全確保配慮義務を定めているところであり、通常の災害等に比して消防職団員等の安全確保には特段の注意が払われることとなっている。 したがって、消防は、武力攻撃事態等において、戦闘行為が行われる地域等で火災や災害が発生したとしても、武力攻撃に直接さらされる危険を冒して出動し、消火活動や救急救助活動に当たることはないものである。 また、避難住民の誘導については、市町村長が市町村の職員並びに消防長及び消防団長を指揮して行うこととなっているが、特に、平素から地域で活動している消防吏員や消防団員が大きな役割を担うことが期待されている。 さらに、武力攻撃事態等という緊急事態であることにかんがみ、一定の要件のもとに次の消防庁長官の消防に関する指示権限が新たに規定されている 〔1〕 人命の救助等のために特に緊急を要し、都道府県知事の指示を待ついとまがないと認めるときの市町村長に対する指示権 〔2〕 武力攻撃災害を防御するための措置が的確かつ迅速に講じられるようにするため特に必要があると認めるときの都道府県知事に対する指示権 〔3〕 都道府県知事又は市町村長に対する応援の指示権 なお、これらの指示をするときは、消防庁長官及び都道府県知事は、出動する職員の安全の確保に十分留意し、必要な措置を講ずることとしている。
(8)今後の課題等 消防庁では、国民保護室及び国民保護運用室の二室を中心に、国民保護に関する総合的な企画・立案、運用方策の検討を行っているところである。具体的には、地方公共団体における国民保護計画の作成を支援するため、国民保護モデル計画を作成することとしているほか、市町村における避難実施要領の迅速な策定を支援するため避難マニュアルを作成する予定である。また、警報の伝達システムや安否情報の収集・提供のためのシステムのあり方についても検討していくこととしている。 また、国民保護法における消防の役割は重要かつ広範囲にわたることから、消防庁をあげて国民保護に取り組んでいくため、平成16年7月、消防庁長官を本部長とし、消防庁内の全課室長等により構成される消防庁国民保護推進本部を設置し、地方公共団体の取組みを支援していくこととしている。 さらに、国民保護モデル計画の作成に当たっては、事態の想定、武力攻撃の状況等に応じた避難の方法等について、幅広い視点から検討していくことが必要であることから、この分野について高い見識を有する方々で構成する「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」(座長:石原信雄 元内閣官房副長官)を開催した。 この懇談会の第1回会合は8月27日に開催され、事態に応じた国民保護計画策定上の留意点等について、湾岸戦争時のイスラエルにおける弾道ミサイルへの対応や北朝鮮潜水艦による韓国領海侵入事件等の過去の外国における実例等も参考にしながら議論されている。 消防庁では、この懇談会の議論も踏まえ、平成16年度末までに都道府県の国民保護モデル計画を作成し、提示することを予定している。 国民保護法は、9月17日に施行され、いよいよ運用の段階を迎えることとなった。 これにより、我が国の有事における国民保護のための基本的な仕組みが整備されたことになるが、実際に有事が起こった際に、これらの仕組みが有効に機能するためには、国、地方公共団体は、平時から必要な体制の整備に努めていくことが必要である。 政府では、現在、基本指針の策定作業に取り組んでいるところであるが、地方公共団体においても、国民保護協議会の設置や国民保護計画の作成等を行っていくことはもとより、引き続き危機管理体制の整備・充実に努めるとともに、警報や避難の指示の伝達、避難住民の誘導等に大きな役割を果たす消防団や自主防災組織の拡充を図っていくことが必要である。 さらに、国民の保護のための措置が的確かつ円滑に実施されるためには、国民保護法の仕組み等について国民に十分理解していただくことが極めて重要である。国、地方公共団体をあげて、様々な機会を通じて、国民に対する制度の普及・啓発、情報提供等に努めることが求められる。
トピックスI 新潟県中越地震及び本年の風水害の状況と消防の対応はじめに 平成16年はまれに見る自然災害の集中する年となった。7月の新潟・福島豪雨及び福井豪雨においては、多数の死者を出し、8月31日に激甚災害への指定が閣議決定されるとともに、台風の上陸数も10個となり平成2年と平成5年の6個を大きく上回って過去最多を記録し、人的・物的ともに大きな被害が発生した。 また10月23日に発生した平成16年(2004年)新潟県中越地震は、マグニチュード6.8であったが、内陸の浅いところで発生したもので、最大震度7を記録し、死者40人、負傷者2,867人、住宅被害4万8,887棟(11月17日現在)という大きな被害につながった。
1 豪雨・台風災害の概要と国の対応、課題について(1)豪雨災害の概要 平成16年7月新潟・福島豪雨及び平成16年7月福井豪雨においては、短期間の局地的な豪雨に対して、改めて万全の警戒体制で臨む必要が痛感されたところである。高齢者が自力で避難することができず、自宅で死亡するケースや、保育所に園児が孤立し、ヘリコプターで救助が行われるような例など、災害時要援護者をはじめとした住民が安全かつ的確な避難を行うための、情報収集・伝達体制や避難体制の整備等が、今後の重要な課題となった。 新潟県三条市における7人の死者の中には五十嵐川の堤防の決壊によって就寝中に水死した78歳の男性や、逃げ遅れて自宅が濁流に流された75歳の女性が含まれるなど、新潟・福島及び福井の災害による死者・行方不明21人のうち、17人が65歳以上の高齢者であった。 一方、被災した住民からは、避難勧告が発せられたことについて知らなかった、広報車の通行する音やサイレンが一切聞こえなかった等の声があがった。このように市町村から住民に対して確実な情報伝達がなされなかったのではないか、また、一部の市町村では避難勧告を発するタイミングが遅れたのではないかとの指摘もある。
(2)台風災害の概要 平成16年の台風上陸数は、6月2個、7月2個、8月2個、9月2個、10月2個と計10個にのぼり、8月の台風第15号や9月の台風第21号においては土石流災害、8月の台風第16号では高潮による大きな被害が発生しており、特に10月の台風第23号では、死者・行方不明が94人(11月10日現在)と大きな人的被害が生じている。 これら一連の台風被害において、避難勧告の発出のタイミングについて課題が指摘されている。
(3)消防庁をはじめとした国の対応と検討の内容 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ平成7年に発足した緊急消防援助隊は、平成15年6月の消防組織法改正により法律上の位置付けを明確化し、平成16年4月1日から新たに発足したところであるが、平成16年7月の新潟・福島豪雨やそれに続く福井豪雨において、堤防の決壊等により甚大な被害を受けた新潟県及び福井県に、法制化後はじめて出動し、10月には、全国的規模で平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号において、多大な被害を受けた兵庫県に出動した。 これらの出動は、水害対応という緊急消防援助隊としては過去に例を見ない事例であり、その派遣規模も延べ400部隊、1,656人と過去最大のものであり、住宅等に孤立した住民の救命ボートやヘリコプターによる救出(計2,370人を救出)、浸水家屋の戸別調査などに従事した。特に新潟豪雨は出動の要請時刻が夜間であったこと、また福井豪雨は休日であったことにより、各都道府県、各消防本部ともに早急な部隊編成やボートの確保等に苦心した点もあった。しかし、出動した隊が被災地に迅速に赴き、遠方からの到着、不慣れな地域での活動にもかかわらず、各都道府県隊一丸となって救出活動に当たったことは、被災地の住民に大きな安心感を与えるとともに、被災地消防本部にも心強い応援となったと思われる。 消防庁では7月の豪雨災害を踏まえ、地方公共団体に対して「風水害対策の徹底について」(平成16年7月28日付け消防災第153号消防庁次長通知)を発し、〔1〕迅速な避難体制の確立のための情報収集・伝達体制や避難体制の整備、〔2〕初動体制の速やかな確立のための職員の動員配備や緊急消防援助隊の出動要請等について周知徹底を図ったところである。政府としても、7月28日に関係省庁局長会議を開催し、豪雨災害対策の推進のために検討すべき課題や対策について確認し、中央防災会議に報告されたところである。 また、8月には、消防庁主催により「風水害対策に係る都道府県消防防災主管課長会議」を開催し地方公共団体と関係省庁間において今後検討すべき課題等についての情報共有を図るとともに、新潟県・福井県に関係省庁(内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁)の職員を派遣し、現地調査を実施している。
(4)課題 ア 検討会の設置 前述した関係省庁局長会議で確認された課題や対策は、〔1〕豪雨災害時の災害情報の伝達・提供の迅速化・確実化に関すること、〔2〕高齢者等の安全かつ迅速な避難体制の整備に関すること、〔3〕総合的な治水対策に関すること、〔4〕観測・予報体制等の充実強化に関すること等36項目に渡っており、今回特に問題となった避難勧告や高齢者等災害時要援護者の避難対策については、関係省庁・関係地方公共団体・有識者で構成する「集中豪雨等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」(10月7日に第1回を開催)により検討することとされており、「避難勧告・指示、避難行動のマニュアルの整備」及び「高齢者等災害時要援護者の避難支援ガイドラインの策定」について、年内に骨子を発表し、年度内にマニュアルやガイドラインを取りまとめるというスケジュールで検討していくこととしている。 イ 主な検討事項 <避難勧告・指示、避難行動のマニュアルの整備> マニュアルの整備に当たっては、具体的な発令基準の策定のほか、避難勧告等の準備のための準備情報(若しくは注意情報)の提供がひとつの論点となっている。名古屋市では、水位と雨量を考慮した客観的基準により、先進的にこのような情報の提供に取り組んでいる。こうした取組みにより、行政・住民ともに避難の実施に向けた迅速な準備体制の構築が期待される。 <高齢者等災害時要援護者の避難支援ガイドラインの策定> ガイドラインの策定に当たっては、先進的事例の研究を行うこととしており、例えば、東京都荒川区において、高齢者や身体障害者等の災害時要援護者を災害時に救出するための「おんぶ作戦」と呼ばれる救出体制づくりが、1984年(昭和59年)より地域の自主防災組織によって進められている。この作戦は、地域住民がチームを組み、あらかじめ特定した高齢者等を、協力し合って、リヤカーやおんぶ帯等によって救出するものである。こうした取組みでは、各地域の実情にあった体制づくりが必要である。また、対象者と自主防災組織の人たちとの信頼関係が何よりも重要であり、平常時からの訓練などを通じ相互の意思疎通等を図ることが求められている。 災害時要援護者の避難誘導体制の構築に当たっては、その所在情報の活用がカギとなるが、この場合、個人情報保護の観点での課題が指摘される。この課題への十分な配慮を伴った情報活用を行うための工夫や整理が必要であるが、その土台となるのは、援助される側とする側の揺るぎない信頼関係の構築にあると考えられる。
2 平成16年(2004年)新潟県中越地震の概要と国の対応、課題について(1)今回の災害の概要 10月23日午後5時56分に発生した平成16年(2004年)新潟県中越地震は、内陸の浅いところで発生したもので、新潟県川口町では兵庫県南部地震以来の震度7を記録し、その後も震度6弱を超える大きな余震が続いた。そして、死者40人、負傷者2,867人、全壊家屋2,028棟、半壊4,430棟、一部破損4万2,429棟(11月17日現在)と大きな被害が発生した。
(2)消防庁の対応と地方公共団体による支援 消防庁では、地震発生と同時に長官を本部長とする災害対策本部を設置し、情報収集に当たるとともに、今後の広域的な応援出動に対応するため、午後6時25分、直接長官から埼玉県及び仙台市に対してヘリコプターの出動を要請したのに続き、午後7時20分の新潟県知事からの出動要請を受けて、各都県知事に対して緊急消防援助隊の出動要請を行った。緊急消防援助隊の派遣については、11月1日までの10日間に、累計で、1都14県から480隊、2,121人、ヘリコプター20機となり、同年の豪雨災害での派遣規模を越え、主に小千谷市、長岡市、山古志村において、救助・救出(計453人を救出)、救急搬送、孤立住民等の安否確認に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動にも当たった。 また、先遣隊として発災当日に消防庁職員5人を新潟県に派遣して、被害状況の把握と緊急消防援助隊の連絡調整を行わせた(11月17日現在、消防庁及び消防研究所から、緊急消防援助隊指揮支援本部(小千谷市)や県庁等へ派遣した人数は累計52人となっている。)。 余震の続く中、避難所に集まった住民の食料、毛布等の確保が翌日から大きな課題となった。消防庁からは、地方公共団体に対して、10月25日付け通知で「新潟県中越地震及び台風に伴う災害に対する支援について」を発出し、〔1〕食料、水、医薬品、日用品等の物資の提供、〔2〕上下水道の復旧に係る土木技術職員や家屋の危険度を判定する職員並びに心のケアに対応するための専門家等の派遣等についての支援を要請した。 新潟県では、北海道・東北地方知事会の各道県、群馬、長野、富山及び石川の各県と災害時相互応援協定を結んでおり、同協定に基づく応援が行われるとともに、応援協定を締結していない自治体からも広く応援が行われた。応援する自治体からは、必要とされる物資や業務を出来るだけ早く、被災自治体から教えて欲しいという声が聞かれたところである。 11月19日現在、被災地外の地方公共団体から提供された義援物資は、アルファ米82万3,505食、飲料水(ペットボトル)58万7,054本、簡易トイレ2万1,707基、毛布12万417枚等が提供、職員については、建物応急危険度判定に1,063人、避難所の管理・運営に1,274人、その他上下水道の復旧や健康相談等の活動に2,764人が派遣されている。このほか、ボランティアについては、11月25日現在、5万5,373人が参加し、避難所における運営補助、避難者への救援物資の配送支援、被災家屋の片づけなどに従事している。
(3)課題 今回の地震を教訓として、様々な課題が指摘されている。消防庁では、地方公共団体に対して「震災対策の徹底について」(平成16年11月29日付け消防災第231号消防庁次長通知)を発し、改めて震災対策に万全を期すよう通知したところである。 具体的には、〔1〕防災拠点となる公共施設等の耐震化について、今回、一部市町村の庁舎が被災により一時期使用できなくなったことから、耐震診断、耐震改修を推進すること、〔2〕初動期の確実な被災情報の収集について、今回停電により、非常用電源設備が整備されていない若しくは整備されていても動作させなかった19団体において防災行政無線が不通となり、震度情報ネットワークについても同様の理由や回線容量の不足により、一部で震度情報が発表されない等、適切な業務執行に支障が生じたことから、非常用電源設備の整備、その保守点検の実施と操作を徹底するとともに、非常用電源設備を用いた訓練を実施すること、〔3〕地域防災計画における震災対策の充実について、阪神・淡路大震災を踏まえた見直しが実施されていない、震災対策について特に記載していない市町村地域防災計画が見受けられるとともに、昨年施行された「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に定める推進計画等を作成していない市町村も多いことから、見直しを推進し内容を充実すること、〔4〕市町村における災害時相互応援協定の締結の促進について、都道府県の区域を越えた市町村も含め、できるだけ多くの市町村との災害時相互応援協定の締結に努めるほか、初動期における物資の確保が課題となったことを踏まえ、発災時の受援側窓口の早期立ち上げや、協定当事者相互が輸送方法やルートを平素から確認できるよう、実践的な訓練に努めること、〔5〕災害時における備蓄の推進について、備蓄の確保と避難所への供給体制の整備に努めること、〔6〕避難者への対応について、プライバシーの確保や生活環境に配慮した避難所運営に留意すること、について要請を行った。
3 今後に向けて 大規模な災害や広域に及ぶ災害が発生した場合、行政の能力には限界があることから、迅速な人命救助活動、更には避難生活において、自助・共助・公助の連携がいかに機能するかにかかっている。今回の豪雨災害・台風災害・地震災害についてもそれが当てはまるといえる。迅速かつ的確な避難勧告(公助)がなければ住民避難は進まず、また、避難勧告が発出されても、住民の危機意識が希薄で適切な避難(自助)が実行されなければ意味がない。高齢者や障害者等の援護が必要な方には、情報面や避難行動の面からの支援(公助、共助)が必要である。避難生活が始まれば、いち早い行政・民間からの支援が必要であるし、長期化する場合には様々なケアが必要であり、行政とボランティアとの連携も重要となっている。 今回浮き彫りとなった課題への対策については、これらが有効に機能することを念頭に検討していく必要がある。
トピックスII 地域防災体制の戦略的整備について1 阪神・淡路大震災後の法改正や制度の創設 平成17年1月17日、阪神・淡路大震災から10周年を迎える。多くの尊い命を犠牲にしたこの災害を契機に、これまで新たな法の制定や制度の創設等、地方公共団体の体制整備に係る様々な施策の充実が図られてきた。今回の新潟県中越地震等を踏まえ、これら施策の重要性と更なる推進の必要性が認識されているところである。○ 地震防災対策特別措置法の制定(平成7年7月) 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえて、総合的な地震防災対策を強化し、地震防災のための施設等の整備を促進するため、都道府県知事による地震防災緊急事業五箇年計画の作成、補助率のかさ上げ等を内容として制定。○ 緊急防災基盤整備事業の創設(平成7年11月) 地域の特性と自主性に応じた地方単独事業による「災害に強い安全なまちづくり」を推進するため、公共施設等の耐震化及び防災基盤の整備等を内容とする起債事業を創設(平成14年度からは防災対策事業に再編)。
2 今後の課題(1)耐震化の推進 大規模地震時において災害対策本部が置かれる行政庁舎や応急対策の指示をする消防本部、更には避難場所となる小中高等学校などの防災拠点となる公共施設等の耐震化が重要である。平成16年2月に消防庁が取りまとめた調査結果によると、防災拠点となる公共施設等のうち平成19年度末までに耐震化される見込みの割合は、全国ベースで約54%となっており、半数近くの公共施設等の耐震性が確保されていない状況であり、早急に取組みを進めていく必要がある。
(2)防災行政無線の整備 地震による津波や豪雨、更には火山の噴火などの情報を迅速かつ確実に伝達することにより、住民の避難の確保が求められている。同報系防災行政無線の整備率は全国ベースでは十分なものとはいえず、また、地域的にばらつきがあり、早急な整備が必要である。
(3)消防団の充実・自主防災組織の育成・充実、相互の連携による地域防災力の強化 災害時はもとより、武力攻撃事態時における住民の避難誘導・負傷者の救助・救援においても、その役割が期待される消防団・自主防災組織については、今後とも団員の確保・組織率の向上・相互の連携等の取組みが必要である。
3 地域防災体制の戦略的整備に向けて 各種施策に振り向けることができる資源は有限である。阪神・淡路大震災から10年を迎え、改めて地域の防災力を見直し、必要な防災投資をどこに重点的に配分していくか戦略的に検討していくことが求められている。 大規模地震が想定される地域においては、各種防災施設の整備水準を更に高めるとともに、その他の地域においても大規模災害に備えて防災施設を整備する等、地域防災体制の整備に努めることが必要である。
トピックスIII 住宅防火対策の充実強化〜住宅用火災警報器等の設置義務化〜1 消防法改正の背景 これまで住宅防火対策は、住宅防火対策推進協議会を中心とした広報・普及啓発活動等を中心に推進されてきたが、最近の住宅火災による死者の急増等を踏まえ、これまでの推進方策を抜本的に見直し、新たに住宅用火災警報器又は住宅用自動火災報知設備(以下「住宅用火災警報器等」という。)の設置を義務付けることとした。 近年の住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。以下同じ。)は、増加傾向にあり、平成15年中の住宅火災による死者数は昭和61年以来17年ぶりに1,000人を超え1,041人となっており、このうち約7割が逃げ遅れによるものである。特に、死者の過半が65歳以上であることから、今後、高齢化の進展により更に増加するおそれがある。 また、住宅火災による死者数は、建物火災による死者数の約9割を占め、住宅はホテル・旅館、百貨店等よりも火災発生時には5倍程度死者が発生しやすい状況となっている。 米国や英国においては、住宅用火災警報器等の普及率が高くなるにつれて住宅火災による死者数が減少しており、住宅用火災警報器等の効果が大きいことが分かる。米国では1970年代後半には約6,000人の死者が発生していたものが、2002年の時点で住宅用火災警報器等の普及率が90%超となることにより、死者数が3,000人弱とほぼ半減している。英国においても同様の傾向が見られ、この2つの事例から見ても住宅用火災警報器等の設置による住宅火災による死者数低減の効果は高いといえる。 また、日本の住宅火災においても、住宅用火災警報器等の有無によって、3.3倍(平成15年中)の低減効果が見られている。 このような状況を踏まえ、平成15年12月に消防審議会から、住宅用火災警報器等の住宅用防災機器を、住宅への設置を義務付ける等を内容とする答申が出され、この答申を受けて、「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」が衆参両議院で全会一致で可決・成立し、平成16年6月2日に公布された。これにより、既存住宅を含めて全国の住宅に住宅用火災警報器等の設置が義務付けられることとなった。また、衆参両議院で、本法律に住宅用火災警報器等の積極的な普及に努めること等の附帯決議が付された。
2 改正後の消防法令の概要(住宅防火関係) 改正後の消防法(以下「改正法」という。)第9条の2により、住宅の関係者に、政令で定める住宅用防災機器の設置及び維持が義務付けられ、政令において、住宅用防災警報器(いわゆる住宅用火災警報器)及び住宅用防災報知設備(いわゆる住宅用火災報知設備)が規定された(以下これらを「住警器等」という。)。 また、改正法第9条の2により、これら住宅用防災機器の設置及び維持に関する基準については、政令で定める基準に従い市町村条例で定めることとされた。 この市町村条例の基準となる政令においては、住警器等を設置する部分として、〔1〕就寝の用に供する居室、〔2〕〔1〕の住宅の部分が存する階から直下階に通ずる階段、〔3〕その他総務省令で定める住宅の部分が定められたほか、スプリンクラー設備や自動火災報知設備などを設置している場合における住警器等の設置の免除が具体的に示されている。 また、住宅の位置、構造又は設備の状況から判断して、住宅における火災の発生又は延焼のおそれが著しく少ないと消防長又は消防署長が認める場合の住警器等の設置基準の適用除外や、各地域の気候又は風土の特殊性を踏まえた上で政省令で定めた住警器等の設置基準以外の基準を設けることができることとした。
3 住警器等の設置及び維持の適用時期 住宅に住警器等の設置及び維持を義務付ける改正法第9条の2の適用は、新築住宅については、改正法の施行期日(平成18年6月1日)から設置の義務化が図られることとなるが、既存住宅への適用については、同法附則第2条(住宅用防災機器に関する経過措置)において、市町村(特別区の存する区域においては、都)の条例で定める日までの間は適用しないとされている。 これは、各市町村において住警器等の設置・維持に関する周知徹底が必要なことなどから、住民の理解を得た上で、義務化することが適当とされたためである。
4 住警器等の広報、普及・啓発の必要性 住宅火災による死者数の低減を図るため消防法は改正されたところであるが、今後、戸建住宅等に住警器等の義務化を図っていく上で、その周知を積極的に行っていくことが必要であり、広く国民に住警器等の設置による効果等を広報し、設置の必要性を理解してもらうことが必要である。 具体的には、 〔1〕 住警器等の設置の必要性 〔2〕 住警器等の効果 〔3〕 設置が必要となる時期 〔4〕 悪質訪問販売に係る注意喚起などについて、地域に根ざした婦人防火クラブ、消防団等と広く連携し、春秋の火災予防運動時等の様々な広報、普及・啓発の機会を捉え、パンフレット、リーフレット等を活用した広報活動や、マスメディア等を有効に活用し積極的に周知を図り、普及・  啓発を進める必要がある。 消防庁では、住警器等の設置義務化等について関係団体への説明や協力依頼を行うとともに、9月9日には住宅防火対策推進協議会により、東京消防庁、名古屋市消防局及び金沢市消防本部に対して住宅用火災警報器が配布された。これを受けて9月20日の「敬老の日」には、各消防機関は、配布された住宅用火災警報器約1,000個を、各婦人防火クラブ等と協力し、高齢者のみの世帯に対して設置したところである。 また、住宅防火対策推進協議会の事務局である(財)日本消防設備安全センターに、「住宅用火災警報器相談室」(電話0120−565−911)が設けられ、全国からの問い合わせや相談に応じているところである。
5 今後の課題 消防庁では、消防法改正後、積極的に住警器等の普及促進に努めているが、今後、住警器等その他の住宅用防災機器等の性能を適切に評価した保険料の割引制度についての損害保険業界への働きかけ、技術開発の促進、リース方式の導入等について関係業界に働きかけ、消防団、婦人防火クラブ等と連携した住警器等の設置、維持管理等に係る啓発などの普及方策の推進、報道機関の報道方法の工夫についての働きかけなど、市場機能の活用について重点的に推進し、更に様々な広報、普及・促進に関する施策を講じていくこととしている。
トピックスIV 地域安心安全ステーション整備モデル事業〜地域安心安全アクションプラン〜1 背景 「地域安心安全アクションプラン」とは、自主防災組織やコミュニティ等の住民パワーを活かし、地域の安心・安全を確保するため、防災・防犯等に幅広く対応する地域拠点・ネットワークの創出に取り組むことが必要であるとして、平成16年5月11日の経済財政諮問会議において麻生総務大臣が提言したものである。 本プランの背景としては、次の点を指摘することができる。〔1〕東海地震や東南海・南海地震の切迫性が指摘されるなど大規模災害の危険性が高まり、〔2〕空き巣やひったくり、幼少年・少女を対象とした犯罪の増加、また犯罪の凶悪化が進む中で、身近な場所での安心・安全の確立が地域における喫緊の課題である。一方、これまで地域社会の安全に貢献していたコミュニティ活動そのものが弱体化してきており、改めてコミュニティ活動をベースにした地域の防災・防犯体制の強化を図ることが、国民の安心・安全な暮らしの確保につながる。 特に、災害時の緊急事態発生時においては、警報伝達や住民避難・救助を迅速・的確に行うためには、消防機関の組織力では限界があり、地域の消防団・自主防災組織・ボランティア等が活躍することが何よりも有効である。例えば、平成7年の阪神・淡路大震災では、救出者の約98%が住民自らの活動によるものである。 国民の安心・安全な生活の実現のためには、防災と防犯が連携の上、住民と手を組んで地域の力を結集した取組みが重要である。
2 具体的内容(1)「地域安心安全ステーション整備モデル事業」 本プランのうち、消防庁としては、特に「地域安心安全ステーション整備モデル事業」について、総務省及び警察庁と連携し積極的に取り組んでいる。 具体的には、全国の小学校区単位で公民館や消防団詰所、交番コミュニティルームなどを「地域安心安全ステーション」として指定し、当該ステーションを活動拠点として自主防災組織や各種コミュニティが行う災害訓練や「安心安全パトロール」活動、消火訓練、自動体外式除細動器(AED)を使用した応急手当等について、資機材の整備支援、ノウハウの提供などを通じて支援を行う。
(2)全国15団体で先行実施 「地域安心安全ステーション整備モデル事業」については、モデル事業の実施を希望する市区町村を公募し、所定の書類審査等を経て選考し、平成16年7月30日に選定15団体を発表した。参考:札幌市(北海道) 横浜町(青森県) 二本松市(福島県) 新宿区(東京都) 伊勢原市(神奈川県) 野々市町(石川県) 各務原市(岐阜県) 袋井市(静岡県) 大府市(愛知県) 神戸市(兵庫県) 大社町(島根県) 呉市(広島県) 善通寺市(香川県) 柳川市(福岡県) 玉名市(熊本県)  さらに、同年8月23日には、総務省消防庁内の消防防災・危機管理センターにて、総務省、警察庁の担当者とともに選定15団体が参加のもと、説明会を開き、選定15団体による事業予定内容に係る説明・意見交換が行われた。 選定15団体は、事業実施に必要な資機材の整備等を進め、本格的に事業開始となる。
(3)今後の展開 消防庁としては、モデル活動事例を評価・検証するとともに、〔1〕取組み内容、〔2〕取組み方法、〔3〕行政との連携策等を整理の上、報告書としてとりまとめ、他地域への普及と全国への展開を一層推進する予定である。※具体的な活動事例○地域関係機関(市町村、消防団、自主防災組織、住民、ボランティア等)による防災・防犯に関する戦略会議○青色回転灯を使用した安心安全パトロール(自主防犯パトロール)○消防機関や消防団等による消火、救出や救急救命等の講習会○避難誘導、初期消火、救出、救急救命等の防災訓練○地域の危険箇所、防災施設・設備、避難場所等の把握○自動体外式除細動器(AED)を利用した救命応急手当訓練○防災・防犯の啓発活動○高齢者や障害者等災害時要援護者の把握及び避難対策の検討 等
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、平成6年以降6万件を超えていた出火件数は、平成10年及び11年には5万件台で推移し、平成12年以降は、再び6万件を超えたが、平成15年は再び5万件台に減少している。 火災による死者数は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年に戦後最大の2,356人となり、翌平成8年には一旦2千人未満に減少したものの、平成9年以降は再び2千人を超えて推移しており、平成15年は前年に比べ増加している(第1−1−1図、第1−1−2図、第1−1−3図)。 平成15年中における火災の状況をみると、出火件数、建物焼損床面積、焼損棟数及び損害額とも減少しているものの、前年に比べ死者数は増加している(第1−1−1表)。 また、放火自殺者を除く死者数は増加し、高齢者及び乳幼児の比率についても、前年に比べ増加している(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。
1 出火状況(1)出火件数は減少、1日当たり154件発生 平成15年中の出火件数は5万6,333件であり、前年に比べ7,318件(11.5%)減少している。また、1日当たりの出火件数は154件となっている(第1−1−1表、第1−1−2表)。
(2)建物火災は全火災の57.8% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の57.8%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(道路、空地、土手及び河川敷の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和59年以降変化していない(第1−1−3表)。 最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災、林野火災及びその他の火災については、平成9年及び10年と2年連続して減少し、平成11年以降は再び増加傾向であったが、平成15年は減少している。 また、平成6年からの10年間の種別ごとの増加指数をみると、車両火災(8.9%)は増加しているが、建物火災(5.2%)、林野火災(60.1%)、その他の火災(16.1%)は、それぞれ減少となっている(第1−1−4表)。
(3)冬季から春季にかけて火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成15年中では、冬季と春季で総出火件数の58.1%を占めている(第1−1−5表)。
(4)出火率は4.4件/万人 平成15年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で4.4件/万人となり前年より0.6ポイント減少している(第1−1−1表、第1−1−6表)。 出火率を都道府県別にみると、最高は山梨県の6.2、次いで鹿児島県の5.9、福島県の5.8の順であり、出火率が最も低いのは、平成5年以降11年連続して富山県の2.4、次いで京都府の2.9の順となっている(第1−1−7表)。
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器 平成15年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が71.3%と圧倒的に多い(第1−1−4図)。 また、初期消火の状況をみると、消火器を使用したものが23.2%と初期消火が行われたもののなかで最も高い比率になっている。一方で、初期消火を行わなかったものは37.2%となっており、この値を10年前(平成6年)と比較すると3.7ポイント増加している(第1−1−8表)。
(6)放火を除くと、住宅火災は建物火災の58.5% 平成15年中において、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数は1万6,700件であり、建物火災の件数(2万8,568件)の58.5%と半数以上を占めている(第1−1−9表)。
2 火災による死者の状況 平成15年中の火災による死者数は2,248人であり、前年の2,235人に比べ13人(0.6%)増加しており、放火自殺者を除いた火災による死者数も1,433人で、前年の1,372人に比べ61人(4.4%)増加している。 また、放火自殺者数は815人であり、前年の863人に比べ48人(5.6%)減少している(第1−1−5図)。
(1)1日当たりの火災による死者数は6.2人 平成15年中の火災による1日当たりの死者数は6.2人であり、前年の6.1人に比べ0.1人増加している(第1−1−2表)。
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.77人 平成15年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.77人であり、前年同様となっている。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年同様東京都が151人で最も多く、次いで愛知県が137人、大阪府が122人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、福井県で11人、次いで徳島県が13人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは鳥取県で3.23人、最も低いのは神奈川県の1.18人となっている(第1−1−10表)。
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成15年中においても、1月から3月及び12月の月ごとの死者数は200人以上(年間の月平均は187.3人)に上っており、この4か月間に死者総数の48.7%に当たる1,094人の死者が発生している(第1−1−6図)。 平成15年中の時間帯別の火災による死者発生状況は、0時台が134人と最も多く、次いで3時台が131人となっている。就寝時間帯の死者発生状況は、23時台から5時台にかけて100人を超えており、就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1−1−7図)。
(4)死因は火傷が43.6%、一酸化炭素中毒・窒息が42.0% 平成15年中の放火自殺者を除いた火災による死因は、火傷によるものが625人(43.6%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息によるものが602人(42.0%)となっている(第1−1−11表)。
(5)建物火災による死者は死者総数の66.5% 平成15年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,494人と前年に比べ74人増加しており、死者総数に対する比率は66.5%と前年(63.6%)に比べ2.9ポイント増加している(第1−1−12表)。
(6)逃げ遅れによる死者が60.5% 死亡に至った経過をみると、平成15年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,433人のうち、逃げ遅れが867人で60.5%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が305人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の21.3%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が744人(51.9%)を占めており、特に81歳以上が307人(21.4%)と極めて多くなっている。また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が191人(13.3%)、「熟睡によるもの」が171人(11.9%)となっている(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。
(7)建物火災のうち、全焼による死者は878人 平成15年中の建物火災による死者1,494人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が878人(死者の出た火災1件当たり1.15人)で58.8%を占めている。また、部分焼の場合が312人(同1.08人)で20.9%、半焼の場合が206人(同1.07人)で13.8%、ぼやの場合が98人(同1.00人)で6.5%となっている(第1−1−10図、附属資料13)。
(8)建物火災による死者の85.7%が住宅で発生 平成15年中の建物火災による死者1,494人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,280人は、建物火災による死者の85.7%を占めている。また、階層別では、1階における死者が964人で建物火災による死者の64.5%、2階における死者が355人で建物火災による死者の23.8%等となっている(第1−1−11図、第1−1−12図、附属資料15)。 さらに、建物構造別では、木造建物における死者が976人と最も多く、建物火災による死者の65.3%を占めている(第1−1−13図)。 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,076人であり、建物火災による死者の72.0%を占めている(第1−1−14図、附属資料14)。
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成15年中の住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅をいう。以下同じ。)火災による死者1,280人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人により殺された者(以下「放火自殺者等」という。)239人を除く失火等による死者は1,041人となっており、前年(992人)に比べ49人(4.9%)増加した。また、このうち65歳以上の高齢者は589人(全体の56.6%)と半数を超えている(第1−1−15図、第1−1−13表、附属資料15)。ア 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成15年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、最も低い16歳から20歳の階層に比べ32.7倍となっている。 また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、16歳から20歳の階層と比べると約3.1倍となっている(第1−1−16図)。イ たばこを発火源とした火災による死者が19.2% 平成15年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが200人(全体の19.2%)で最も多く、次いでストーブ139人(同13.4%)、こんろ71人(同6.8%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者1,041人の39.4%を占めている。 また、65歳以上の高齢者についても同様にたばこ、ストーブ及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数589人の42.6%を占めている(第1−1−17図)。ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成15年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が236人で、死者数1,041人の22.7%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数589人の24.3%を占めている(第1−1−18図)。エ 死者の44.7%が就寝時間帯 平成15年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が465人であり、住宅火災の死者1,041人の44.7%を占めている(第1−1−19図)。オ 木造住宅における死者が71.4%と圧倒的に多い 平成15年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物における死者が743人であり、住宅火災の死者1,041人の71.4%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者589人の77.4%(456人)を占めている(第1−1−20図)。カ 逃げ遅れによる死者が68.4%と圧倒的に多い 平成15年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが712人(全体の68.4%)と最も多く、次いで着衣着火が56人(同5.4%)、出火後再進入が25人(同2.4%)の順となっている(第1−1−21図)。
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は33件・118人 平成15年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は33件で前年(24件)より9件増加している。また、これによる死者は118人で前年(77人)より41人増加している。 火災種別では、建物火災28件・98人(全体の83.1%)、車両火災4件・16人(同13.6%)、その他の火災1件・4人(同3.4%)となっている(第1−1−14表)。 建物用途別では、専用住宅での死者が78人であり、建物火災全体の79.6%を占めている(第1−1−15表)。
(11)放火自殺者は減少、死者総数の36.3% 平成15年中の放火自殺者は815人であり、死者総数2,248人に占める比率は36.3%(前年38.6%)となっており、前年(863人)より48人減少している(第1−1−5図)。 放火自殺者を年齢別にみると、51歳から55歳が150人、56歳から60歳が108人と多くなっており、41歳から70歳までの統計は556人と全体の69.2%を占めている(第1−1−22図)。
3 火災による損害額 平成15年中の火災による損害額は1,331億円であり、前年(1,674億円)に比べ343億円減少している。また、火災1件当たりでは236万円となっており、前年に比べ27万円減少している(第1−1−23図)。 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の93.6%を占めている(第1−1−1表)。
4 出火原因 平成15年中の総出火件数5万6,333件のうち、失火による火災が3万5,053件(全体の62.1%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1−1−24図)。
(1)「放火」による火災が7年連続して第1位 平成15年中の放火による出火件数は8,354件であり、前年に比べ138件(1.7%)増加し、全火災(5万6,333件)の14.8%を占め、7年連続して出火原因の第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは5,707件であり、前年に比べ630件(9.9%)減少している。放火及び放火の疑いを合わせると1万4,061件(全火災の25.0%)であり、前年に比べ492件(3.4%)減少している(第1−1−16表、第1−1−25図、附属資料6)。 放火による損害額は79億3,520万円であり、前年に比べ20億5,245万円(20.5%)減少している。放火の疑いによる損害額は112億4,162万円であり、前年より16億8,651万円(17.7%)増加している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は191億7,682万円であり、前年に比べ3億6,594万円(1.9%)減少している(第1−1−16表)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが4,737件(全体の33.7%)と最も多くなっている(第1−1−16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、夜間から明け方(22時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に7,100件(全体の50.5%)が発生している(第1−1−26図)。
(2)「こんろ」による火災は減少 平成15年中のこんろによる火災は5,850件であり、前年に比べ108件(1.8%)減少している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,609件(全体の95.9%)であり、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、67.5%に当たる3,950件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、73億2,558万円であり、前年に比べ16億3,090万円(18.2%)減少している(第1−1−17表)。
(3)「たばこ」による火災は減少 平成15年中のたばこによる火災は5,357件であり、前年に比べ1,422件(21.0%)減少し、全火災(5万6,333件)の9.5%を占めている(第1−1−18表、第1−1−25図)。 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが53.1%と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、104億4,764万円であり、前年に比べ16億7,082万円(13.8%)減少している(第1−1−18表)。
(4)「たき火」及び「火遊び」による火災は減少 平成15年中のたき火による火災は2,780件であり、前年に比べ1,630件(37.0%)減少している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、たき火の延焼拡大が最も多く1,024件、次いで火の粉の飛び火、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は10億1,683万円で、前年に比べ3億9,805万円(28.1%)減少している(第1−1−19表)。 また、火遊びによる火災は1,966件であり、前年に比べ271件(12.1%)減少している。 火遊びによる火災の損害額は、23億2,880万円であり、前年より1,711万円(0.7%)減少している。 火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,081件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1−1−19表)。
(5)「ストーブ」による火災は増加 平成15年中のストーブによる火災は1,955件であり、前年に比べ173件(9.7%)増加している。ストーブの種類別では、石油ストーブによる火災が最も多く1,238件(全体の63.3%)であり、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが634件と最も多く、次いで引火・ふく射、使用方法の誤りの順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、94億345万円であり、前年に比べ5億8,867万円(6.7%)増加している(第1−1−20表)。
(6)着火物は前年同様「枯草」が第1位 平成15年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が5,979件であり全体の10.6%を占め、最も多くなっている(第1−1−21表)。
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成15年中の建物火災の出火件数は、3万2,534件であり、前年に比べ1,637件(4.8%)の減少となっている。これを、10年前(平成6年)の3万4,315件と比較すると5.2%減少したことになる(第1−1−4表)。ア 建物火災は1日に89件、16分に1件の割合 平成15年中の建物火災の1日当たりの出火件数は、89件であり、16分に1件の割合で出火していることになる(第1−1−2表)。 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜3月、12月)にかけて多く発生し、全体の39.9%を占めている(第1−1−27図)。イ 住宅における火災が建物火災の57.4% 平成15年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の57.4%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1−1−28図、附属資料16)。ウ 建物火災の45.2%が木造建物 平成15年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万4,714件であり、建物火災の45.2%を占め、次いで耐火造、防火造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の27.2%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみると、準耐火非木造が最も大きく77.9m2となっており、全建物火災平均では48.2m2となっている(第1−1−22表)。エ 建物火災の過半数は小火災 平成15年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,039件であり、全体の49.3%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万5,380件で全体の78.0%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1−1−23表)。オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成15年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが68.2%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが37.0%となっている(第1−1−29図)。カ 3DKの住戸2万4,183戸相当分が焼損 平成15年中の建物焼損床面積は、前年に比べ77,830m2(4.7%)減少し、157万1,921m2となっている。この面積は3DK(65m2)の住宅が2万4,183戸焼損したことに相当する(第1−1−3図)。 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は北海道の8万5,771m2であり、次いで栃木県、埼玉県の順となっている。一方、最低は沖縄県の6,585m2であり、次いで福井県、山梨県の順となっている(第1−1−24表)。キ 1件当たりの焼損床面積は48.3m2 平成15年中の建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で48.3m2となっており、前年と同様である。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、栃木県の129.4m2を最高に、富山県107.5m2、秋田県102.7m2など32道県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が東京都の10.0m2で、次いで大阪府24.3m2、広島県及び沖縄県32.1m2など15都府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1−1−24表)。ク 放水した建物火災の26.9%は覚知後5分以内に放水 平成15年中の建物火災の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万7,162件(建物火災の52.8%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万3,856件(放水した建物火災の80.7%)であり、このうち5分以内のものは4,612件(放水した建物火災の26.9%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を25.6m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1−1−25表)。ケ 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成15年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は8,114件であり、放水した建物火災の47.3%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが2,838件で最も多くなっている(第1−1−30図)。
(2)林野火災 平成15年中の林野火災の出火件数は、1,810件であり、前年に比べ1,533件(45.9%)減少している。焼損面積は、726haであり、前年に比べ1,908ha(72.4%)減少しており、また、損害額も2億9,211万円であり前年に比べ11億5,505万円(79.8%)減少している。また、林野火災による死者は19人であり、前年に比べ2人増加している(第1−1−26表)。 林野火災の出火件数を月別にみると、平成15年中は3月に最も多く発生しており、次いで4月、5月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1−1−31図)。 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は、1,797件であり、全体の99.3%を占めている(第1−1−27表)。 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが449件で全体の24.8%を占め最も多く、次いでたばこ及び放火(放火の疑いを含む。)、火入れの順となっている(第1−1−32図)。
(3)車両火災 平成15年中の車両火災の出火件数は7,366件で、前年に比べ419件(5.4%)減少し、車両火災件数は昭和51年以降増加傾向にあったが、2年連続減少している。 次に、死者数は313人で、前年に比べ23人(6.8%)減少し、負傷者数は381人で、前年に比べ44人(10.4%)減少している。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は32億2,063万円で、前年に比べ6,181万円(1.9%)減少している(第1−1−28表)。 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,953件(全体の26.5%)と最も多くなっている(第1−1−33図)。
(4)船舶火災 平成15年中の船舶火災の出火件数は136件で、前年に比べ23件(20.4%)増加している。 次に、死者数は4人で、前年に比べ3人増加し、負傷者数は34人で、前年に比べ23人増加している。 また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は4億7,912万円で、客船ダイヤモンド・プリンセスの火災が発生した前年に比べ220億6,029万円減少している(第1−1−29表)。 出火原因は、電灯・電話等の配線によるものが16件(全体の11.8%)と最も多くなっている(第1−1−34図)。
(5)航空機火災 平成15年中の航空機火災の出火件数は3件で、前年に比べ1件減少している。 次に、死者数は1人で、前年に比べ4人減少し、負傷者数は平成14年、15年ともになしとなっている。 また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は5億1,595万円で、前年に比べ4億9,236万円増加している。これは、平成15年5月に発生した米軍基地内での訓練支援機の火災(損害額5億円)によるものである(第1−1−30表)。
[火災予防行政の現況]1 住宅防火対策の現況 平成15年中においては、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数(16,700件)は、建物火災の件数(28,568件)の約6割、また、放火自殺者等を除く住宅火災による死者数(1,041人)は、建物火災による死者数(1,204人)の約9割となっており、過去10年間この傾向で推移している。 また、近年の主な建物用途別に見た火災100件当たりの死者数では、住居における死者数は、多数の者が利用する物販店舗、旅館・ホテルと比べても5倍程度の死者数となっており、最多となっている。 住宅火災による死者数は増加傾向にあり、住宅火災による死者の半数以上が65歳以上の高齢者であることを考えると、今後の高齢化の進展とともに更に住宅火災による死者が増加するおそれがある。 消防庁では、平成3年に住宅防火対策推進に係る基本方針を策定、住宅防火対策推進協議会を設置し、住宅防火に係るポスター、パンフレットの作成・配布、住宅防火安心マークによる住宅用防災機器の普及の促進等の対策を推進してきた。平成13年には、過去10年間の実績を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を定め、特に高齢者を対象とした住宅火災による被害及び死者の軽減を目指し、地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進を図るため、関係行政機関、関係団体等と協力しながら住宅防火対策の更なる推進を図ってきた。しかし、今後、住宅火災による死者の増加が予想されることから、平成15年12月に消防審議会から、住宅に住宅用火災警報器等の住宅用防災機器の設置を義務付ける等を内容とする答申が出され、この答申を受けて、「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」が衆参両議院で全会一致で可決成立し、平成16年6月2日に公布された。これにより、既存住宅を含めて全国の住宅に住宅用火災警報器等の設置が義務付けられることとなった。また、衆参両議院で、本法律に住宅用火災警報器等の積極的な普及に努めること等の附帯決議が付された。
2 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成16年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に103万9,998件あり、そのうち74.2%に当たる77万1,277件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、26万8,721件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が命令・指導を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は68万341件で全体の65.4%となっている(第1−1−31表)。
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難の訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 平成16年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、66.4%と前年(58.2%)より増加している(第1−1−32表)。
(3)防火対象物点検資格者 火災の発生を防止し、火災による被害を軽減するためには、消防機関のみならず防火対象物の関係者による防火対象物の火災予防上の維持管理及び消防法令への適合が重要である。 そのため、消防法では、一定の用途、構造等を有する防火対象物の管理権原者に対して、火災の予防に関して専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)による点検及び点検結果の消防長又は消防署長への報告を義務付けている。 この防火対象物点検資格者は、消防用設備等の工事等について3年以上の実務経験を有する消防設備士や、防火管理者として3年以上の実務経験を有する者など、火災予防に関し一定の知識を有する者であって、法人で総務大臣が登録するものが行う講習の課程を修了し、防火対象物の点検に関し必要な知識及び技能を修得したことを証する書類の交付を受けた者である。 防火対象物点検資格者は、その資質の維持及び向上を図るため、5年ごとに再講習を受講し、登録機関が発行する免状の交付を受けることとされている。 平成16年3月31日現在、防火対象物点検資格者の数は11,970人となっている。 なお、点検の結果、防火管理業務を適正に執行しているとして点検基準に適合した防火対象物には、当該状況を利用者等に分かりやすく情報提供するため、表示(防火基準点検済証)を付することができる。 また、定期点検報告が義務となる防火対象物のうち、管理を開始してから3年間以上継続して消防法令を遵守しているものは、当該防火対象物の管理権原者の申請に基づく消防機関の行う検査により、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合に点検・報告の義務が免除され、当該認定を受けた防火対象物には表示(防火優良認定証)を付することができる。
防火管理者の業務の外部委託について これまで火気使用箇所の点検、防火避難施設(防火戸など)の維持管理、火災が発生した場合の初動対応など一部の防火管理の業務については、建物の用途等に関係なく外部委託できることとなっていました。 しかし、マンションの管理実態や新たな不動産管理形態が出現してきている状況を踏まえ、これまでの一部の防火管理の業務の外部委託に加えて、平成16年6月1日から、一定の要件を満足する防火対象物に限って、防火管理者の業務を外部の防火管理者の資格を有する者に委託できることとなりました。 対象となる防火対象物の一例は以下のとおりです。 〔1〕 マンション、アパート等 〔2〕 1人の所有者が複数のビルを所有している場合の当該ビル 〔3〕 不動産の流動化に対応して証券化されているビル ただし、いずれの場合もこれまでの防火管理の形態では、管理的又は監督的地位にある者のいずれもが防火管理上必要な業務を適正に行うことができない合理的な理由があると消防長又は消防署長が認めた場合に限られます。 なお、詳しいことをお知りになりたい場合は、お近くの消防本部又は消防署までお問い合わせください。
3 立入検査(1)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成15年度中に全国の消防機関が行った立入検査回数は、104万839回であり、火災予防上必要な指導を行っている(第1−1−33表)。 新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた平成14年の消防法の一部改正により、立入検査の時間制限の見直し等が行われ、消防機関がより的確で効果的な立入検査を行うことができるようになった。
(2)小規模雑居ビル等の違反状況 立入検査等により判明した防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができ、また、火災の予防に危険であると認める消防法第5条、第5条の2又は第5条の3の規定に基づき、当該防火対象物の改修、移転、危険排除等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされており、これらの命令をした場合には、公示することとされている。 このように立入検査等を行った結果消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1−1−34表、附属資料17、18、19)。 特に、新宿区歌舞伎町ビル火災が発生したビルと類似する小規模雑居ビル、特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)については、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性にかんがみ、厳しく指導を行っており、消防法令違反は前年度に比べ減少している。しかしながら、小規模雑居ビルについては35.7%の対象物、特定違反対象物については230件の対象物において、消防法令違反が存在し、未だ十分に是正されている状況にあるとは言えないことから、小規模雑居ビル等の違反是正について、各都道府県及び全国の消防機関に対し、 〔1〕 違反処理担当職員への教育の充実、予防要員の確保等の違反是正体制の充実に努めること。 〔2〕 都道府県単位等に違反是正推進連絡会を早期に設置し、違反是正業務について消防機関相互の協力体制を密にすること。 〔3〕 消防庁で作成した「小規模ビル避難等訓練マニュアル」を活用し、違反率の最も高い消防訓練の未実施の是正指導を徹底すること。 〔4〕 行政指導により違反を是正しないものに対して適切に命令等の違反処理を実施すること。 〔5〕 平成15年10月1日から施行された防火対象物定期点検報告制度の趣旨、内容等の周知徹底を図ること。等を通知し(平成16年3月8日付け消防安第36号)、引き続き違反是正の徹底を図っている(第1−1−35表、第1−1−36表)。
〜小規模ビル避難等訓練マニュアル〜 平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた消防審議会答申(平成13年12月26日付け)において、当該火災が大惨事になった要因として「階段室の物品存置」「避難訓練の未実施」「消防用設備等の点検未実施」「初期消火、通報及び避難誘導等の初期対応を的確に行うことができなかったこと」等が挙げられ、防火管理、とりわけ初期消火、通報及び避難誘導等の初期対応を的確に行うことが重要であるとされました。 消防庁では、これらの状況を踏まえて小規模ビルの関係者がわかりやすく、取組みやすいものとなるように避難等訓練を5つに分割したマニュアルを作成、配布しました。【小規模ビル避難等訓練マニュアル】 マニュアルは、〔1〕消火訓練、〔2〕通報訓練、避難訓練等(〔3〕階段、通路等を使用した訓練方法、〔4〕避難器具を使用した訓練方法、〔5〕日常点検のポイント)で構成されていますが、消火訓練の例は、次のとおりです。【消火器を使用した場合の訓練方法】【屋内消火栓を使用した場合の訓練方法】
4 消防用設備等(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成15年度の全国における消防同意事務処理件数は、31万8,494件(前年度32万1,697件)であり、消防同意した申請のうち9万3,009件(29.2%)については、消防機関により指導が行われている(第1−1−37表)。
(2)防火対象物の実態 平成16年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第1(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(十九)項までに掲げる防火対象物の数)は372万6,880件である。 また、14大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は88万2,052件であり、全国の防火対象物の23.7%を占めている。特に都市部に集中しているものは準地下街(全国の71.4%)、地下街(同70.1%)、非特定複合用途防火対象物(同46.9%)、性風俗特殊営業店舗等(同43.1%)などである(第1−1−38表)。
(3)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみると、平成16年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率は96.2%(前年96.2%)、スプリンクラー設備の設置率は99.6%(同99.6%)となっている(第1−1−39表)。 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近においては、平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災にかんがみ、この種の小規模雑居ビル(特定複合用途防火対象物)や直通階段が1つしかない防火対象物に設置される自動火災報知設備及び避難器具等の技術上の基準について見直しを行い、設置義務対象物の拡大、階段室における煙感知器の設置間隔の変更、受信機への再鳴動機能の付加、避難器具の設置基準の変更等必要な改正を行っている。 また、近年、高層建築物、大空間を有する建築物など大規模・特殊な建築物が増加するとともに、新技術を活用した消防用設備等の設置のニーズが高まっていること等を踏まえ、平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防法令に性能規定を導入するとともに、平成16年6月からの施行に合わせて関係規定の整備を図ったところである。 一方、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令、使用禁止命令、刑事告発等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。
(4)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 さらに、消防法令において、消防用設備等の技術基準に性能規定を導入したことを受けて、平成16年3月及び5月に消防法施行規則の一部改正が行われ、特殊消防用設備等の工事又は整備を行うことができる特類の甲種消防設備士と、特殊消防用設備等の点検を行うことができる特種消防設備点検資格者の資格を新たに創設したところである。 また、消防設備点検資格者になるための講習は、従来、総務大臣又は消防庁長官が指定する者が行ってきたところであるが、平成16年3月の消防法施行規則の一部改正により、総務大臣又は消防庁長官の登録を受けた法人が行うこととされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施することとしている。 平成16年3月31日現在、消防設備士の数は延べ83万2,839人となっており(第1−1−40表)、また、消防設備点検資格者の数は第1種(機械系統)11万3,252人、第2種(電気系統)10万7,022人となっている。 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(5)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成16年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、86万9,070件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものは83.7%、じゅうたんを全部使用しているものは80.5%、展示用合板を全部使用しているものは70.8%となっている(第1−1−41表)。イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている。 防炎表示制度に関しては、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として従前の防炎表示者の認定制度が平成13年1月より登録制度に改正され、併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として一定の基準を満たす指定確認機関(現行登録確認機関)による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高め、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成16年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、3万184業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.6%を占めている。)で前年同期より456業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎化 消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、自動車・オートバイカバー等についても、防炎化を推進することにより火災予防の徹底を図る必要があることから、防炎性能を有するものについて、「防炎製品」表示ラベルの貼付により消費者の利便を図っている(第1−1−42表)。
防炎品の普及について 平成15年中の死者が発生した住宅火災における着火物の状況をみると、平成15年中の住宅火災による死者1,041人のうち、その約3分の1が衣類、寝具類やカーテン等に着火したことが原因となっており、また65歳以上の高齢者(589人)でみるとその割合は更に大きくなります。今後、本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、高齢者の着衣着火等による犠牲者の増大が危惧されることから、衣類、寝具類やカーテン等に防炎品を使用することが、住宅火災の発生と死者の低減を図る上で有効な対策であると考えられます。また、近年増加している自動車やオートバイ等への放火を防止する上においても、防炎品を使用することが有効な対策であると言えます。 このため、消防庁においては、高齢者を中心とした着衣着火等による犠牲者の低減等を図るために、地域の婦人防火クラブ等の自主防災組織と連携して防炎品の更なる普及を図ることとしています。 なお、環境問題の観点から、防炎物品のリサイクルに向けた技術開発にも取り組んでいるところです。(参考) 防炎品には、消防法においてホテルや病院等の一定の建物にその使用が義務付けられている防炎物品と火災予防の観点からその使用が推奨されている防炎製品とがあります。<防炎品の効果> 以下の写真については、防炎品が有する防炎性能の実験を行った結果です。防炎品は非防炎品に比べて火災の発生と死者発生の防止に有効であることがわかります。
(6)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備など、その種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を持ち、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成15年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,709件(総建物火災件数3万2,534件の23.7%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いについては、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制されている。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定の対象となる消防用機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定対象消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の消防用機械器具等の形状等が、型式承認を受けたものと同一である旨を確認する検定)とからなっている(第1−1−43表)。 また、新たな技術開発等に係る検定対象消防用機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の基準に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 なお、昭和61年から、日本消防検定協会以外に、総務大臣が指定する「指定検定機関」でも検定を行うことができることとしていたが、政府の規制改革推進の方針に基づき、平成14年には指定検定機関の公益法人要件を撤廃し、さらに、平成15年からは、指定検定機関から「登録検定機関」へとその参入要件を緩和している。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格にしている旨の表示を付そうとする製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成16年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては2,067件、消防用吸管にあっては49件である。
6 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化(1)性能規定導入の経緯 これまで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、その要求内容が常識的かつ明確であり、適否の判定も行いやすい一方で、新たな技術を受け入れにくい面があった。これに対して、近年、社会的規制の様々な分野で、技術革新の成果を活用し、また、技術革新を促すため、技術的な基準として必要な性能を規定し、達成する手法は自由に選択できることとする「性能規定」の導入が進められてきた。 「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)においても、消防法に規定する消防用設備等や消火活動上必要な施設についてできる限り性能規定化を図ることが政府の基本的な方針とされている。 消防庁では、建築基準法における性能規定化の動向を踏まえ、平成11年度から消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するために、技術的、制度的な観点からの調査研究及び実証実験等を通じて、安全性を損なうことなく性能規定を導入するための技術的基盤の整備に取り組んできたところであり、平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するため、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することとしたものである。
(2)技術基準の性能規定化に係る検討 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するためには、消防用設備等に係る要求性能の整理及び分析とともに、新たに開発された設備やシステム等が消防法令に規定された消防用設備等の技術基準と同等以上の防火安全性能を有していることについて、迅速かつ適切に評価できる制度の構築を確立することが必要である。 消防庁では、平成11年度から13年度までの3か年、「総合防火安全対策手法の開発調査検討会」(第1次消防総合プロジェクト)を開催し、防火対象物の火災危険性に応じた合理的かつ総合的な防火安全対策手法の構築に係る検討を行ってきた。さらに、平成14年度には、「防火対象物の総合防火安全評価基準のあり方検討会」(第2次消防総合プロジェクト)を設け、各種の防火対象物の火災危険性や消防用設備等の特性などについて検討するとともに、3か年計画で、消防用設備等に係る性能の評価手法の確立を目指しているところである。
(3)性能規定化に関する基準の考え方 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると判断できる設備について設置を認めることとしているものである。 消防用設備等に求められる性能は、「初期拡大抑制性能」、「避難安全支援性能」、「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)を策定する予定であり、初期の火災拡大を抑制する性能である「初期拡大抑制性能」については事務所用途におけるスプリンクラー設備、火災から安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」については光点滅走行式避難誘導システム、有効かつ安全に消防活動を行えるよう支援する性能である「消防活動支援性能」については加圧防排煙システムについて評価手法の検討を行っている。また、共同住宅の構造特性等を踏まえた消防用設備等の評価手法の検討も行っているところである。 一方、現行の技術基準と同等以上の性能を有する設備等をあらかじめすべて想定して客観的検証法を策定することは困難である。このため、既定の客観的検証法では同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」を設置しようとする場合には、防火対象物ごとに、高度な技術的識見を有する性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき、総務大臣がその性能を審査し、必要な性能を有するものについては円滑に設置できるようにすることとされたものである。 これらの規定を導入することにより、今後「特殊消防用設備等」を中心に新技術等を用いた新たな設備等が積極的に開発されていくことが期待される。
消防防災システムの高度化の促進について 平成15年6月に、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することを柱の一つとする消防法の一部改正が行われ、平成16年6月1日から施行されました。 この改正により、大規模化、高層化、深層化している防火対象物に対応して、消防防災システムの高度化の促進と、防火対象物の総合的な安全性の一層の向上が図られることとなりました。 大規模化、高層化、深層化が進んだ防火対象物で火災が発生すると、防災上管理すべき空間、情報等が広範囲で多岐にわたるだけでなく在館者も多いことから、火災の覚知、消火、通報及び避難誘導等の対応を迅速かつ的確に実施する必要があります。 そのためには、火災情報や各種消防用設備等の作動状況等を防災センター等に設置した総合操作盤で監視・制御することを基本とし、防火対象物の状況に即したきめ細やかな機能を付加した、非常に高度な「消防防災システム」を構築することが必要です。 今回の改正により、消防法令で予想しない特殊な技術を用いた消防防災システムや、技術基準が定められていない高度な消防防災システム等を特殊消防用設備等として総務大臣が認定をすることにより、これまでに比べて円滑に導入することができるようになりました。 さらに、大臣認定を受けた消防防災システムのうち、消防防災技術の高度化に資するもので、他の模範となるものに対して消防庁長官が表彰を行うこととしており、消防防災システムの開発、普及を促進し、消防行政の円滑な推進を目指します。
7 火災原因調査の現況 平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査をすることができる制度が導入された(平成15年9月1日より施行)。 本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて編成される消防庁及び独立行政法人消防研究所職員の調査チームが実施するもので、平成15年9月8日に発生した栃木県黒磯市ブリヂストン栃木工場火災に対して、改正消防法に基づき、初めての消防庁長官の自らの判断による火災原因調査を実施するとともに、出光興産北海道製油所において同月26日に原油タンク、28日にナフサタンクからそれぞれ発生した火災に対しても火災原因調査のチームを派遣し、計3件の火災に対して改正消防法に基づく火災原因調査を実施した。 さらに、三重県RDF発電所火災をはじめとした3件の火災に対しては、消防長から消防庁長官に対し火災原因調査の要請がされ、この要請に基づいた火災原因調査を実施し、これらを合わせ平成15年度には合計6件の火災に対して消防庁長官による火災原因調査を実施した。 これらの火災原因調査の結果を踏まえ、ブリヂストン栃木工場火災及び三重県RDF発電所火災を受けた「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」(平成16年法律第65号)により、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の基準を市町村条例で定めることとされた。また出光興産北海道製油所火災を受けた「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令及び危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(平成16年政令第218号)等により、旧基準の屋外タンクに係る新たな技術上の基準への適合に関する経過措置の期限を繰り上げるなどの措置が講じられた。
[火災予防行政の課題](1)違反是正の徹底 全国の消防機関において、平成14年の消防法の一部改正等を踏まえた「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビルをはじめとする違反防火対象物に対する違反是正に一定の成果が得られたものの、未だ違反が十分には改善されていない。 このことから、これらの消防法令違反の是正を的確に推進するため、防火対象物定期点検報告制度等を活用した消防機関による立入検査の一層の重点化・効率化をはじめ、違反処理担当職員に対する教育や「違反処理データベース」の充実、違反是正推進連絡会を活用した消防機関相互の協力体制の活用等により、違反是正を推進する体制の強化に取り組んでいく必要がある。
(2)防火管理の徹底 防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災又は地震等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度である。 防火管理を充実するためには、まず防火管理者の選任を徹底する必要があるが、これまで、「防火管理者となるべき者がいない」、「防火管理講習の開催回数が少ないために受講できない」、「防火管理講習を受講する時間がない」等の理由により、防火管理者が選任されていない防火対象物が多く残っていた。 そこで、平成16年2月の消防法施行令の一部改正等により、防火管理者の選任が特に困難なもので、一定の基準に該当するものについては、防火管理者の業務を外部に委託できることとした。 また、防火管理講習の受講機会を増やすために、民間の法人による防火管理講習を可能とし、1日の講習で受講できる乙種防火管理講習の受講機会を増やすために、甲種防火管理講習の1日目と乙種防火管理講習を兼ねることができることとした。 今後は、これらの制度を積極的に活用し、防火管理者の選任の徹底を図る必要がある。 さらに、防火管理者が選任されていたとしても、十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者(防火対象物点検資格者)に防火上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。
(3)住宅防火対策の推進 住宅防火対策については、これまで広報・普及啓発活動を中心に取り組んできたところであるが、最近の住宅火災による死者数は増加傾向にあり、特に、平成14年中の死者数は昭和61年以降最悪の992人となり、平成15年中の死者数は更に増加し1,041人と急増している状況にある。 また、同死者数の過半は65歳以上の高齢者であり、今後の高齢化の進展に伴い、更に増加が予想されることから、平成15年12月消防審議会から答申が出され、従来個人の自助努力と考えられてきた住宅防火対策を抜本的に見直し、住宅へ住宅用防災機器の設置を義務付ける法制度化の導入を行った。 消防庁では、法制度化の導入に伴い、消防法改正後、積極的に住宅用火災警報器等の普及促進に努めている。今後、住宅用火災警報器等その他の住宅用防災機器等の性能を適切に評価した保険料の割引制度についての損害保険業界への働きかけ、技術開発の促進、リース方式の導入等について関係業界に働きかけるとともに、消防団、婦人防火クラブ等と連携した住宅用火災警報器等の設置、維持管理等に係る啓発などの普及方策の推進、報道機関の報道方法の工夫についての働きかけなど、市場機能の活用について重点的に推進し、さらに様々な広報、普及・促進に関する施策を講じていくこととしている。
(4)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降7年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占め、年々増加する傾向にある。特に、都市部においては、火災原因の4割を超える都市もあるなど、この傾向が顕著で、深刻な社会問題となっている。 このため、消防庁では、平成12年に過去の放火火災事例の分析などをもとに、建物用途別に放火火災予防対策を細かく例示した「放火火災予防対策マニュアル」を作成し、全国の消防機関に配布しているところである。 放火を防ぐためには、一人ひとりが防火対策を心がけるだけでなく、地域全体として「放火されない環境づくり」を行っていくことが重要である。 特に、連続放火が発生している地域にあっては、地域の安全に深刻な影響があるため、暗いところや死角になるところに可燃物を放置しないこと、夜間ゴミを出さないこと、門灯の終夜点灯により街路を明るくすることなどの基本的な対策を地域全体で徹底するとともに、関係行政機関と地域住民が協力して、街灯の増設、炎感知器や侵入監視センサーと連動した照明の設置、監視カメラの設置などを推進し、より一層の警戒体制を構築することが必要である。 また、消防庁では、平成14年度から放火火災・連続放火火災の防止のため消防本部、関係行政機関等からなる検討会を開催し、検討を進めている。平成15年度には、ハードによる対応策の一つとして、炎センサーとレンズ付きフィルムを一体化させた放火監視機器について、松戸市消防局(千葉県)及び八尾市消防本部(大阪府)の協力を得て、商店街や住宅街等に当該機器を設置し、その効果の検証を行ったところである。 今後、平成15年12月に犯罪対策閣僚会議において「犯罪に強い社会実現のための行動計画」が策定されたことも踏まえ、客観的評価指標による地域の現状分析手法を用いて、地域自らが放火火災に関する危険度を評価し、ソフト・ハードの両面から総合的な対策を講じることができる環境整備を進めていくこととしている。
放火火災防止対策○ はじめに 最近、放火による火災が増えています(第1章第1節4(1)参照)。件数だけでなく、火災全体に占める放火火災の比率が伸びていることにも留意しなければなりません。このため、火災による被害を減らしていくには、火災予防のためのハード面、ソフト面の対策に加えて、放火火災の防止対策が不可欠になってきています。○ 放火火災を防止するには 「放火火災の防止」の基本は、「放火されない、放火させない、放火されても被害を大きくさせない」ということです。このことを基本目標として、建物ごとの放火火災予防対策、地域ぐるみの活動、安全なまちづくり、広報や防火教育、行政の取組みなどを行っていくことが必要です。 「放火されない」ための基本は、「放火されにくい環境をつくっておく」ということです。 放火の実態を分析すれば、放火しようとしたときに、手間がかかったり人目につきやすかったりすればやりにくいことは明らかです。「手間」と「人目」をキーワードに、できるだけ放火されにくい環境をつくっていくことが基本になります。 ○ 今後の取組み 消防庁では、「放火されにくい環境づくり」を目指し、春秋の火災予防運動において全国的な放火火災防止への取組みをはじめとして、放火防止対策機器等の効果・課題を検証し、放火火災・連続放火火災の効果的な予防対策の一つとして位置付けていくことを検討するとともに、地域(消防本部、町内会、地域住民等)自らが、放火火災の「危険性」を判断するための地域の評価指標(例:夜間のゴミ出しの有無等)による評価を行い、必要な対応をとるための総合対応マニュアルについての検討なども進めています。
(5)旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等における防火安全対策の推進 平成14年の消防法の一部改正により、一定規模以上の特定防火対象物((十六の三)項を除く)に対し、平成15年10月1日から「防火対象物定期点検報告制度」が導入された。これに伴い、いわゆる「適マーク制度」は、平成15年9月30日をもって廃止され、従来の適マーク制度の対象となっていた旅館・ホテル等については、引き続き3年間に限り適マークを表示できる「暫定適マーク制度」が設けられ、また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象外の旅館・ホテル等に対しても、同様の制度を活用することが可能となるよう「自主点検報告表示制度」が新たに導入された。 「防火対象物定期点検制度」は、旅館・ホテルをはじめとした多数の人が出入り等する一定の防火対象物について権原を有する者に対し、防火対象物点検資格者による点検を義務付け、その結果について消防長又は消防署長へ報告を行わせるもので、管理権原者による防火対象物の管理の業務の消防法令への適合性を確保することとしたものである。 また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象となるもののうち、過去3年間消防法令を遵守していると消防機関の検査により認められた場合には、この点検報告が免除されることとなっている。 なお、これらの制度に適合するものについては、その情報を利用者に提供するマ−クを表示することができるようになっている。 旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念されることから、これらの制度を有効に活用し、防火安全対策の一層の充実を図る必要がある。
(6)消防法令への性能規定の導入による期待及び課題 消防法令に定める消防用設備等の技術上の基準に性能規定を導入することにより、新技術の開発促進が期待されるが、その実効性を高めるためには、知見の蓄積を図り、客観的検証法の適用範囲を着実に拡大していくことが必要である。このため、総務大臣による認定によりその知見が十分に蓄積された特殊消防用設備等については、円滑に客観的検証法を策定することにより、消防機関が判断できるようにしていくことが必要である。 一方、消防機関においても、客観的検証法による審査体制を整備し、消防防災に係る新たな技術を用いた設備等が導入できる体制を構築することにより、消防防災に係る技術開発の促進と安全性の高い合理的な防火安全対策の構築に寄与することが望まれる。
(7)文化財保護のための防火安全対策の推進 国民共通の財産である文化財を火災による焼失等から保護し、後世に残すことは、極めて重要な課題である。 我が国の文化財建造物は、伝統的な建築技術を用いた木造の建造物が多いなど、通常の防火安全対策では十分な対処が難しいものも多い。このため、文化財の特性に応じた防火管理の実施、消防用設備等の設置、火災時の消火活動等の防火安全対策の充実に努める必要がある。 文化財建造物として指定を受けた防火対象物は、消防法施行令別表第1(十七)項に掲げる文化財施設として位置付け、必要な防火安全対策を講じてきたところであるが、近年、文化財建造物又はその部分を飲食店、宿泊施設等として利用するもの等、文化財建造物の利用形態が多様化してきた。 このような状況を踏まえ、平成16年2月の消防法施行令の一部改正により、文化財施設としての火災危険性のみに着目して防火安全対策を講ずれば足りるとしていた取扱いを改め、文化財施設であることに加え、使用実態に応じた用途にも該当するものとして取り扱うこととした。この改正により、消防用設備等の設置をはじめとした必要な防火安全上の措置を、使用実態に応じて講ずることができるようになった。
(8)災害時要援護者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害時要援護者が安全に安心して生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。 今後、本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、老人福祉法で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設(グループハウス、シルバーハウジング等)が増加してきており、この状況を踏まえて消防庁では、学識経験者、関係省庁等からなる「高齢者施設における火災予防のあり方検討会」を平成14年度から2年間にわたり開催し、既往施設との比較等を行いつつ、これらの新たな施設等に対する防火安全対策のあり方について検討を進めてきた。今後、この検討結果等を踏まえ、実態に即した防火安全対策が行えるよう、法制面も含め、必要な対策を講ずることとしている。 一方、災害時要援護者が居住する住宅における対策として、消防機関をはじめ行政機関が、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等の防火対策推進協力者と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等による防火指導の推進等の取組みを引き続き実践する必要がある。併せて、災害時要援護者から消防機関への緊急通報体制の一層の充実を図るため、従来から実施している「災害弱者緊急通報システムモデル事業」の更なる普及促進に取り組むとともに、情報通信技術の進展を踏まえ、より多様で高機能な自動通報システムや災害時要援護者に配慮した仕組みを有した緊急通報システムの開発・普及を進めていく必要がある。
(9)消火器等リサイクルの推進 消火器や、防炎加工を施したカーテン、じゅうたんなどの防炎物品は、不要となった場合の処理が困難なものであり、また、老朽化消火器にあっては、事故防止の観点からも適切な処理が求められていることから、政府のミレニアムプロジェクト(平成12年度から平成16年度)の一環として、リサイクル技術の開発、回収ルート等のリサイクルシステムの構築等について検討している。 消火器については、平成14年7月に日本消防検定協会の検定細則が改正され、消火薬剤のリサイクル使用についての制度上の整備が行われ、平成15年11月から消火器の消火薬剤の40%以上を再生消火薬剤としたエコマーク付き消火器が販売されている。 また、じゅうたん、カーテン等の防炎物品については、繊維部分をコンクリート型枠へ再加工する技術などが実用化可能な技術として確認された。今後は、廃防炎物品回収ルートの構築、テストプラントの建設及び再生品の市場開拓を総合的に推進するための検証実験等が課題となっている。
消火器のリサイクルについて  最近、リサイクルという言葉をよく耳にします。その背景には、ごみの増加、環境破壊などが挙げられます。環境問題が深刻化している今、地球上の限りある資源を有効に利用することは、我々が安全で快適な生活水準と経済活動を長期的に維持するために欠かせないこととなっています。消防庁では、政府の「ミレニアム・プロジェクト」の一環として消火器・防炎物品のリサイクル・リユース技術の確立を目指しています。 消火器など火災予防上必要なものが、廃棄、埋め立てなど資源の浪費や環境への負荷などにつながらないように、消防分野の環境問題への対応を行っています。みなさんが日常見慣れている消火器については、容器である鉄等はリサイクルされていましたが、中身の消火薬剤は埋め立てられていました。このため消火薬剤のリサイクルのための研究が進められ、その安全性などが確認されたことから平成14年7月に消火器用消火薬剤のリサイクルが制度上可能となりました。また、平成15年11月には、リサイクルされた消火薬剤を一定量以上使用した消火器に「エコマーク」を付けることが財団法人日本環境協会により認定され、消火器のリサイクルの輪が広がっています。 さらに、設計の段階からリサイクルをイメージした再生利用しやすい商品作りが模索され始めるなど、消火器のリサイクルが加速しています。消火器のリサイクルをきっかけとして、環境への負荷や資源の有効活用への配慮を行い、製造工程や商品の梱包に用いる資材などについても取組みを進めるなど、トータルでの循環型社会の構築に向けた取組みが期待されます。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設における事故は、火災(爆発を含む。)と漏えいに大別される。危険物施設の火災・漏えい事故件数は、昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していたが、平成6年を境にして増加傾向を示している。 平成15年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が188件、漏えいが352件で合計540件となっており、前年より39件増加し、統計を取り始めて以来過去最悪となっている。(第1−2−1図)。 特に平成15年には我が国を代表する企業において、火災等の産業災害が続発し、多大な人的・物的被害が発生するという憂慮すべき事態となっている。
1 平成15年中の主な産業災害 平成15年に発生した主な産業災害の概要は次のとおりである。
(1)三重ごみ固形燃料(RDF)発電所火災 平成15年8月14日、三重県多度町の三重ごみ固形燃料(RDF)発電所において、作業員4名の負傷を伴う火災が発生、桑名市消防本部が継続的に消火・冷却作業を行っていたところ、8月19日にRDF貯蔵槽が爆発、屋根の上で消火活動を行っていた桑名市消防本部の消防職員2名が殉職、作業員1名が負傷するとともに発電所管理棟等の建物も損壊。火災は45日後に鎮火(囲み記事「ごみ固形燃料発電所爆発火災と指定可燃物」参照)。
(2)エクソンモービル(有)名古屋油槽所火災 平成15年8月29日、愛知県名古屋市港区のエクソンモービル(有)名古屋油槽所で改造工事中のガソリンタンク付近から出火。作業中の工事関係者6名死亡、1名負傷。
(3)新日本製鐵(株)名古屋製鐵所火災 平成15年9月3日、愛知県東海市の新日本製鐵(株)名古屋製鐵所内にある燃料用ガスのガスホルダー1基(容量約4万k、高さ約50m、直径35m)が爆発、炎上。 事業所内の従業員15名が負傷、周辺の民家にも、窓ガラスが割れるなどの被害。
(4)(株)ブリヂストン栃木工場火災 平成15年9月8日、栃木県黒磯市の(株)ブリヂストン栃木工場内のバンバリー工場(タイヤ原料のゴム平板を製造)の精錬ミキサー3号機付近から出火、当該工場を全焼、屋外に保管していたタイヤ約16万5,000本を焼失。焼損床面積3万9,581m2、付近住民1,708世帯、5,032名に避難指示。
(5)出光興産(株)北海道製油所タンク火災 平成15年9月26日に発生した十勝沖地震の直後、北海道苫小牧市の出光興産(株)北海道製油所の原油貯蔵タンク(約3万3,000kl)でやや長周期地震動の影響による浮き屋根の揺動に伴い火災が発生し、約7時間後に鎮火。 さらに、地震発生から2日後に、浮き屋根が沈下したナフサ貯蔵タンク(約3万3,000kl)で全面火災が発生し、2日後に鎮火(第1章第3節[石油コンビナート災害対策の課題]1(2)参照)。
2 火災 危険物施設における火災の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。火災の主な要因として、一般取扱所、製造所、給油取扱所等における管理不十分・確認不十分等の人的要因を挙げることができる。
(1)火災件数と被害 平成15年中の危険物施設における火災の発生件数は、188件(対前年比18件増)、損害額は16億7,153万円(同3億3,471万円増)、死者は22人(同19人増)、負傷者は52人(同4人減)となっている(第1−2−2図)。 危険物施設の火災による他への影響の程度をみると、181件(他の施設からの類焼により危険物施設が火災となった7件を除く。)の火災のうち171件(全体の94.5%)が当該危険物施設のみの火災にとどまり、9件(同5.0%)が当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼し、1件(同0.5%)が危険物の漏えいに起因して施設外から火災となっている。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が111件、給油取扱所での火災が38件、製造所での火災が24件となっており、これらの火災は、全体の92.0%を占めている(第1−2−3図)。 さらに、出火原因となった物質を消防法別表の類別等に従って区分すると、188件の火災のうち112件(全体の59.6%)は、危険物が出火原因物質となっている。これを品名別にみると、第4類第1石油類48件、第4類第3石油類26件、第4類第2石油類14件等の順となっている(第1−2−4図)。
(2)火災の発生原因及び着火原因 平成15年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が109件(全体の58.0%)と最も多く、物的要因が43件(同23.0%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が36件(同19.0%)となっている(第1−2−5図)。 また、着火原因をみると、高温表面熱が28件(全体の14.9%)で最も多く、次いで裸火24件(同12.8%)、静電気火花17件(同9.0%)となっている(第1−2−6図)。
(3)無許可施設の火災 平成15年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は、12件であり、死者3人、負傷者は12人となっている。なお、これらの火災による損害額は、1億914万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成15年中の危険物運搬中の火災の発生件数は6件で、死者は1人、負傷者は1人となっている。なお、これらの火災による損害額は336万円となっている。
3 漏えい 危険物施設における漏えい事故の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。漏えいの主な要因として、給油取扱所、地下タンク貯蔵所、移動タンク貯蔵所、一般取扱所等における人的要因や危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化を挙げることができる。
(1)漏えい件数と被害 平成15年中の危険物施設における危険物漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、352件(対前年比21件増)、損害額は2億2,277万円(同8,383万円減)、死者はなし(同2人減)、負傷者は32人(同9人増)となっている(第1−2−7図)。 また、危険物施設別の漏えい事故発生状況をみると、移動タンク貯蔵所及び一般取扱所での漏えいがそれぞれ79件、給油取扱所での漏えいが71件、屋外タンク貯蔵所での漏えいが54件、地下タンク貯蔵所での漏えいが47件となっており、これらの漏えいは、全体の93.7%を占めている(第1−2−8図)。 さらに、危険物施設における漏えい事故で漏えいした危険物をみると、352件の事故のうち346件(全体の98.3%)が第4類の危険物となっている。これを危険物の品名別にみると、第2石油類148件、第3石油類127件、第1石油類58件等の順となっている(第1−2−9図)。
(2)漏えい事故の発生原因 平成15年中に発生した危険物施設における漏えい事故の発生原因を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が171件(全体の48.6%)と最も多く、物的要因が133件(同37.8%)、その他の要因(不明を含む。)が48件(同13.6%)となっている(第1−2−10図)。 漏えい事故の発生原因を個別にみると、腐食等劣化によるものが100件(全体の28.4%)と最も多く、次いで確認不十分によるものが65件(18.5%)、交通事故によるものが40件(11.4%)、監視不十分によるものが37件(10.5%)となっている(第1−2−10図)。
(3)無許可施設の漏えい事故 平成15年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での漏えい事故の発生件数は、5件(対前年比9件減)、死者、負傷者はともになく、損害額は、22万円となっている。
(4)危険物運搬中の漏えい事故 平成15年中の危険物運搬中の漏えい事故の発生件数は19件(同3件増)であり、死者はなく、負傷者は5人となっている。なお、これらの漏えい事故による損害額は、985万円となっている。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関が行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として、危険物データベースを運用している。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならないとされている。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 また、危険物施設においては、危険物取扱者以外の者は、危険物取扱者の立会いがなければ危険物を取り扱ってはならず、危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。さらに、一定の危険物施設では、危険物保安監督者を選任し保安監督を行わせる等、危険物の貯蔵又は取扱いに関する保安体制の整備を図らなければならない。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、指定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱いについては、市町村条例で貯蔵・取扱いに関する基準を定め、規制することとされている。さらに平成16年6月には消防法が改正され、貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く)についても市町村条例で定めることとされた。 なお、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務は、機関委任事務制度の廃止に伴い、平成12年4月1日から都道府県又は市町村の自治事務とされている。
(2)危険物規制の最近の動向 危険物の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバー自らが、給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした。 平成13年7月には、消防法が改正され、次のとおり危険物の範囲を見直した。 ア) 平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第一第5類(自己反応性物質)の品名に追加した。 イ) 平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲を250度未満とした。 また、平成15年8月に発生した三重ごみ固形燃料発電所爆発事故や同年9月に発生した(株)ブリヂストン栃木工場タイヤ火災事故などを踏まえ、平成16年6月に消防法を改正し、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く)を市町村条例で定めることとするとともに、再生資源燃料(RDF、RPF等)を指定可燃物に追加した(囲み記事「ごみ固形燃料発電所爆発火災と指定可燃物」参照)。また、各地で発生が懸念される大規模地震に備えるため、大規模屋外貯蔵タンクの耐震改修期限の前倒しを実施した。引き続き屋外タンクの耐震性確保に向けた取組みを進めているところである(囲み記事「浮き屋根式屋外貯蔵タンクの構造と地震対策」参照)。 さらに、危険物施設の性能規定化(第1章第1節[火災予防行政の現況]6(1)参照)については、平成13年度から調査研究を実施しており、平成16年度は、給油取扱所、屋内貯蔵所及び屋外貯蔵所の技術基準について個別検討を進めているところである。すでに個別に検討が行われた地下タンク貯蔵所等については優先度が高いと判断された技術基準について、平成16年度中に性能規定化のための法令改正を行う予定である。 なお、平成17年度以降も引き続き性能規定に関する調査検討を行うこととする。
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成16年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は、52万3,341施設(対前年度比7,143施設、1.3%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が、11万9,988施設(全体の22.9%)と最も多く、次いで給油取扱所の8万814施設(同15.5%)、移動タンク貯蔵所の7万9,804施設(同15.2%)等となっている(第1−2−1表、第1−2−11図)。 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は、51万3,950施設(全体の98.2%)となっている。 危険物施設数の最近における推移をみると、全ての施設において減少傾向にある(第1−2−1表、附属資料27)。イ 危険物施設の規模別構成 平成16年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が、40万741施設(全体の76.6%)を占めている(第1−2−12図)。
ごみ固形燃料発電所爆発火災と指定可燃物 「指定可燃物」とは、火災が発生した場合にその拡大が速やかであり、又は消火の活動が著しく困難となるものとして政令で定められているものであり、綿花類、紙くず、石炭・木炭類、合成樹脂類等があります。 これらの物品を一定数量以上貯蔵・取扱う場合は、消防長等に届出が必要なほか、貯蔵及び取扱いの技術上の基準が市町村条例により定められています。 平成15年に発生した三重ごみ固形燃料発電所爆発事故では、消防職員2名が殉職し、作業員5名が負傷するとともに、完全鎮火までに長時間を要しました。 調査の結果、ごみ固形化燃料等の関係施設では、発熱や発火する事例が他でも発生しており、大量に集積した場合の消火活動が非常に困難となることが判明しました。 そこで必要な火災予防対策を講じるため、平成16年6月に指定可燃物等に係る消防法の一部を改正し、従来の「貯蔵及び取扱いの技術上の基準」に加え、「貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造、設備」についても市町村条例で定めることとしました。 また、ごみ固形化燃料のように、資源の有効活用とリサイクルの観点から近年普及してきた再生資源燃料が新たに指定可燃物に指定されました。
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければできない。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成16年3月31日現在675万4,858人と広く国民の間に定着してきており、広く危険物に関する知識、技能の普及を図っている。今後とも、危険物の安全の確保に大きな役割を果たす危険物取扱者の資質の向上のための各般の施策を推進していくこととしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成15年度中の危険物取扱者試験は、全国で329回(対前年度比6回増)実施されている。受験者数は、53万3,096人(同2,057人減)、合格者数は、22万8,244人(同4,863人増)で平均の合格率は42.8%(同1.1ポイント増)となっている(第1−2−13図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が34万4,506人(全体の64.6%)と最も多く、次いで丙種の6万4,068人(同12.0%)となっており、この二種類の試験で全体の76.6%を占めている。合格者数でも、乙種第4類が11万6,190人(全体の50.9%)、丙種が3万4,978人(同15.3%)となっており、この二種類の試験で全体の66.2%を占めている。イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成15年度中の保安講習は、全国で延べ1,334回(対前年度比19回減)実施され、15万7,884人(同1万841人減)が受講している(第1−2−2表)。
(5)事業所における保安体制の整備 平成16年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で24万7,729事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものには、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1−2−14図)。 なお、危険物施設の許可の際の許可要件が維持されていない等の場合は、許可の取消し等ができる。また、著しく不適任と判断される危険物保安統括管理者及び危険物保安監督者については、市町村長等が解任を命ずることができる。
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが義務付けられている。 平成15年度中に実施された保安検査は、290件(対前年度比5件減)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは、282件(同5件減)、特定移送取扱所に関するものは8件(前年同数)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成15年度中の立入検査は、25万7,765(対前年度比5,795減)の危険物施設について、延べ28万7,310回(同1,677回減)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成15年度中において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、527件(対前年度比210件増)となっている(第1−2−15図)。
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならないこととされている。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行うこととされている。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけである。 なお、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)危険物施設等の安全確保の徹底ア 危険物施設の火災・漏えい事故は平成6年頃を境に増加傾向に転じ、平成15年には過去最悪となる540件を記録している。 特に平成15年には大規模な事業所における産業災害が相次いだが、産業災害の背景要因として、厳しい経済状況下における人員や設備投資等の削減、雇用形態の変化や保守管理業務のアウトソーシング等が指摘されていることから、幅広い視点から実態を把握し、有機的に対策を講じる必要がある。 消防庁としてはそれぞれの事故原因調査結果を踏まえ、再発防止のために必要な対策について検討を行ってきており、その結果に基づき、屋外タンク貯蔵所の浮き屋根の機能強化、指定可燃物の火災防止対策の充実等の対策の徹底を図っていくことが課題となっている。 また、平成15年度からは、関係業界や消防機関等により構成される連絡会において「危険物事故防止アクションプラン」を策定し、事故に係る調査分析や事故防止対策技術の調査研究、各種情報の共有化を重点的に進めてきている。平成16年度は一連の産業災害の要因も踏まえ、地震対策や指定可燃物の火災対策も加えた新たな重点項目を定め、引き続き官民一体となって事故防止を推進している。 さらに、各事業所の実態に応じた自主的な保安対策の推進を図るために、事業所ごとに危険要因を把握して、これに応じた対策を講じることが必要であり、関係省令等の改正等を通じて、必要な対策を講じる予定である。イ 効果的・効率的に事故防止を図るためには、過去の危険物事故等を教訓とし、的確に危険要因を抽出しておくことが必要であり、危険物事故や事故防止に関する情報を広く収集・分析して関係者の間で共有することが必要である。このため、危険物等の性状や消防活動要領等をデータベース化した「危険物災害等情報支援システム」、消防機関からの事故報告をデータベース化した「危険物等事故情報サブシステム」の拡充を推進している。ウ 近年における漏えい事故増加については、危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化が主な要因の一つとなっていることから、危険物施設全体に係る腐食・劣化に関する評価手法の確立を図るため、評価手法の開発やデータベースの整備等を進めることが必要である。エ 科学の進展等に伴い数多くの物質が新たに開発・生産されており、危険物や指定可燃物と同様の性状を有していながらその潜在的危険性が認識されていない新規危険性物質の出現が懸念されるところである。このため、新規危険性物質の早期把握に努め、火災・爆発等の防止を図っていくことが必要である。
(2)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、新たな危険物品の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、諸外国で導入が進んでいる危険物施設に係る新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行うとともに、安全性の確保に十分配慮しつつ危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を図っていく必要がある。 また、燃料電池自動車への燃料供給のため、水素ステーションの給油取扱所への併設などインフラ整備に係る技術基準を整備するとともに、携帯電話やノートパソコン等への利用が期待されるメタノールを用いた超小型燃料電池(マイクロFC)など、新たな危険物の取扱いに対応した安全対策の確保を図っていく必要がある。 さらに、バイオマス燃料については、地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)等に基づき検討が進められ、消防庁としても同戦略推進会議に昨年9月から参画しているところであり、その安全利用を確保するため、危険物保安に係る検討を行っていく必要がある。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成15年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は、161件であり、前年(121件)と比較すると、40件の増加となっている。このうち28件は、平成15年十勝沖地震によるものであり、それを除くと133件で前年と比べ12件の増加である(第1−3−1図)。 全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、15件の災害により、死者7名、負傷者52名が発生している。損害額は、14億207万円で、前年に比べ4億6,100万円の増加となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が64件(39.8%)、設備の劣化や故障などの物的要因が60件(37.3%)となっており、前年度と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が140件(うちレイアウト規制対象事業所106件)であり、全体の87.0%を占めている。1事業所当たりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が65.8%と最も高い(第1−3−1表)。
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、化学工業関係48件(同29.8%)、石油製品・石炭製品製造業関係44件(同27.3%)、鉄鋼業関係27件(全体の16.8%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質が大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立を図ることとしている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している地域については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の84地区(平成16年4月1日現在)が指定されている(第1−3−2図)。 また、平成16年4月1日現在、第1種事業所413事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は203)、第2種事業所348事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料29のとおりである。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の基準」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を推進するため、特別防災区域所在市町村における大型化学消防車等の整備について国庫補助を行っている。 平成16年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車102台、大型高所放水車85台、泡原液搬送車97台、泡消火薬剤3,390kl、消防艇25艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備30基、泡放水砲25基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成16年4月1日現在、全事業所(761事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか82の共同防災組織、66の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員5,395人、大型化学消防車150台、大型高所放水車111台、泡原液搬送車143台、大型化学高所放水車52台、油回収船37隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成16年4月1日現在、流出油等防止堤が190事業所に、消火用屋外給水施設が567事業所に、非常通報設備が761の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」、「防災要員教育訓練指針」等を示しており、引き続き自衛防災体制の充実を図る。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特別防災区域全体に占める割合は、石油にあっては56.6%、高圧ガスにあっては98.2%となっており、高圧ガスについては大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成16年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる207(平成15年4月1日現在)の事業所のうち平成15年度中の新設及び変更の届出件数は、27件であった。 また、平成15年度中の確認件数は、22件であった(第1−3−3図)。
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じた。さらに新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間は、石油コンビナート等災害防止法では3月としているところを関係省庁の協力を得て平均1月としている。
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
6 石油コンビナート等災害防止法の一部改正(1)経緯 平成15年9月26日に発生した平成15年十勝沖地震により、北海道苫小牧市内の石油精製事業所で多数の屋外貯蔵タンクの損傷、油漏れ等の被害が発生するとともに、浮き屋根式タンク2基の火災が発生した。うち1基は、ナフサを貯蔵する浮き屋根式タンクの全面火災で、地震発生から約54時間が経過した平成15年9月28日10時45分頃発生、北海道内の広域応援隊、東京消防庁等の緊急消防援助隊が出動し消火に当たったが、鎮火までに約44時間を要し、9月30日に鎮火した。 この火災は従来の災害想定を超えたタンク全面火災で、我が国では前例のない火災であった。 この事例により、〔1〕消防力の充実強化(特定事業所に係る防災資機材の増強)、〔2〕防災体制の充実強化(防災管理者・防災規程等を中心とした体制の整備)の必要性が指摘された。 これを受け、消防庁では石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行った(平成16年6月2日公布)。
(2)概要ア 改正内容(ア)防災資機材等の機能強化に伴う防災体制の整備 今回の改正において、災害想定の拡充に伴い新たに配備を義務付けることとしている増強資機材(大容量泡放射システム)について、特定事業者共同で特別防災区域を越えてより広域的に配備することを可能とする組織的受け皿(広域共同防災組織)を整備することとした。(イ)防災業務の適正化及び責任の明確化 特定事業所における防災対応について、従来の外形的・形式的な不適正状態の矯正にとどまっていた仕組みに加えて、不適正状態の実質的な改善を促し、その適正化を図る仕組みとして、市町村長等による特定事業者に対する防災業務の改善措置命令を導入するものとした。 また、特定事業所における防災対応に関して、不適正な状態を時機を失さず把握できるようにするとともに、報告の際に行う自己点検の過程で、不適正な状態を自ら認知し、所要の自発的な改善を促すため、特定事業者による防災業務の実施状況の定期報告制度を導入するものとした。(ウ)防災規程の実効性の確保とそれに伴う行政の関与 社会環境の変化に合わせて防災規程の見直しを適時適切に行っていない場合等を想定して、市町村長等による特定事業者に対する防災規程の変更命令を導入するものとした。(エ)災害現場における情報提供要求 災害の現場において、市町村長等は、特定事業所においてその事業の実施を統括管理する者に対して、必要な事項について、情報の提供を求めることができるものとした。(オ)防災管理者等への研修機会の提供 特定事業者は、その選任した防災管理者等に対し、特定事業所における災害の発生又は拡大を防止するため、防災業務に関する能力の向上に資する研修の機会を与えるように努めなければならないものとした。(カ)災害現地への消防庁職員の派遣 防災本部の本部長は、災害応急対策の実施について必要があると認めるときは、消防庁長官に対し、専門的知識を有する職員の派遣を要請することができるものとした。イ 施行期日 平成16年12月1日。ただし、広域共同防災組織の整備については、公布後1年6月以内に施行。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 総合的な災害対策の推進 石油コンビナート等特別防災区域は、大量の危険物等が集積している区域で、ひとたび火災等が発生した場合には甚大な被害となることが懸念されることから、消防法や高圧ガス保安法等の規制に加えて石油コンビナート等災害防止法により、特定事業者に対して自衛防災組織の設置の義務付けや事業所内の施設配置を規制(レイアウト規制)することにより、災害の拡大防止を図ることとしている。 また、同法により、道府県に防災本部が常設されており、消防機関をはじめとした防災関係機関、特定事業者が一体となって防災体制を確立する体制が整備されている。 こうした中、平成15年に発生した苫小牧市内の石油精製事業所の事故を受け、石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行い、災害対応に努めることとしている。
(1)石油コンビナート等災害防止法の一部改正に伴い検討すべき事項(ア)浮き屋根式タンクの全面火災を想定した大容量泡放射システムを特定事業者が配備することとされたが、特定事業者共同で、より広域的な配備が可能である広域共同防災組織の整備を行うことができるとされている。その整備に当たっては、〔1〕浮き屋根式タンクの特別防災区域ごとの基数及び集中度、〔2〕大容量泡放射システムを配置できるまでの時間的猶予、〔3〕東海地震、東南海・南海地震や南関東直下型地震等の被害が予想される地域及びやや長周期の地震動が生じる可能性の高い地域等を考慮して決定する必要がある。(イ)市町村長等は特定事業者に対して防災業務の改善措置命令及び防災規程等の変更命令ができることとされた。こうした措置命令及び変更命令を行う際には統一的な基準が必要であり、そのため防災規程等に係る実態調査や問題点等の把握・検討等を行い、具体的事例に応じた措置命令及び変更命令のマニュアルを作成する必要がある。 また、特定事業者が行う防災業務の実施状況の定期報告については、報告すべき内容の事項について検討を行い、特定事業者の自主保安を促すためのチェックリストを作成する必要がある。 さらに、特定事業者が行う防災管理者等への研修については、研修の項目及びあり方について検討する必要がある。
(2)浮き屋根式タンクの地震に対する安全性について 平成15年9月の十勝沖地震による浮き屋根式タンクの屋根の損傷は、「やや長周期地震動」の影響によるものと考えられ、苫小牧地区の地盤構造特性により影響を受けたものと推定される。 「やや長周期地震動」とは、石油タンクのスロッシング(液面の揺動)に強く影響する周期約3秒から15秒程度の地震動で、主に表面波から構成され、震源特性(震源深さ、規模、破壊過程など)と伝播特性(堆積層の影響)により地域ごとに特性がある。 他の地域においても同様の被害が起こり得る可能性も否定できないことから、やや長周期地震動による影響により損傷を受けにくい浮き屋根構造等とする措置を講ずる必要がある(囲み記事「浮き屋根式屋外貯蔵タンクの構造と地震対策」参照)。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万klを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
大容量泡放射システム 今回の石油コンビナ−ト等災害防止法の一部改正において、災害想定の拡充に伴い新たに特定事業者に配備を義務付けることとしている資機材が大容量泡放射システムです。 大容量泡放射システムとは、主として大型の浮き屋根式タンク(可燃性液体貯蔵タンク)の全面火災の消火に用いる資機材で、大容量泡放射砲、ポンプ・混合装置、放射に必要な泡原液、泡原液搬送のための資機材及び必要となる水量の水利を確保する遠距離送水のための資機材の総称をいいます。 毎分1万リットル以上の放射能力を持つ大容量泡放射システムは、現在配備されている大型高所放水車数台分の能力を有しています。例えば、平成15年に苫小牧市内の石油精製事業所で発生し、鎮火まで約44時間を要した浮き屋根式タンク全面火災のような事例においても、大量の泡消火薬剤を集中投入することができ、短時間での消火が期待されます。【大容量泡放射システムの構成】〔1〕 大容量泡放射砲 ・浮き屋根式タンク火災に対し、必要量の泡水溶液を放射できるノズルを有したトレーラー、あるいは消防車等〔2〕 ポンプ・混合装置 ・大容量泡放射砲で自然水利など(消火栓を含む)を活用し、必要量の泡水溶液を放射できる能力を有するポンプ及び泡消火薬剤と水を混合させる装置〔3〕 泡原液(泡消火薬剤) ・当該大容量泡放射砲に適した性状の泡消火薬剤〔4〕 泡原液搬送のための資機材 ・泡原液の配備場所等から火災発生場所まで泡原液を運搬するための泡原液搬送車、大型コンテナ等〔5〕 遠距離送水のための資機材(遠距離送水システム) ・大容量泡放射砲で所定の量の放射を行うことができない場合において別途必要となる自然水利など(消火栓を含む)からの送水システム
浮き屋根式屋外貯蔵タンクの構造と地震対策 浮き屋根式屋外貯蔵タンクは、貯蔵油にポンツーンと呼ばれる浮きが付いた屋根を浮かべた構造となっており、貯蔵危険物の増減に伴って屋根が上下動します。 平成15年9月26日の十勝沖地震においては、「やや長周期地震動」の影響により、液面の揺動(スロッシング)にあわせて浮き屋根も上下動したことに伴い、苫小牧市の出光興産(株)北海道製油所で屋外タンク貯蔵所浮き屋根外縁部でリング状の火災(リング火災)が発生、さらに、その2日後には、地震時の損傷で浮き屋根が沈下していた別の屋外タンク貯蔵所で露出していた油面全体の火災(全面火災)が発生し、鎮火までに44時間を要したほか、全国規模での緊急消防援助隊の出動、泡原液の全国規模での調達を実施する大災害となりました。 その後消防庁が実施した火災原因調査により、着火源として、第一の火災であるリング火災では、浮き屋根と他の設備との衝突等による火花が、また第二の火災であるタンク全面火災では静電気の可能性が考えられました。いずれにしても、やや長周期地震動の影響によるタンク火災防止のためには浮き屋根の耐震機能強化が最も重要な対策と言えます。 そこで消防庁では、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの地震時安全対策について検討を行いました。 この検討を受け、浮き屋根の損傷・沈没による事故を低減するため、今後、「やや長周期地震動」の影響により浮き屋根が損傷・沈没しないよう、浮き屋根の構造強化を図る予定です。 また、現行の耐震基準制定以前に設置された旧基準の屋外タンク貯蔵所は、平成6年及び平成11年の政令改正により、タンクの容量に応じて期限を定め、構造及び設備を新基準に適合させること(耐震改修すること)とされていましたが、近年、発生が危惧されている大規模地震に備え、改修期限を2〜3年それぞれ繰り上げるよう関係政令を改正し、平成16年10月1日より施行されました。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成15年中の林野火災の件数は、1,810件(前年3,343件)、焼損面積は726ha(同2,634ha)、損害額は2億9,211万円(同14億4,715万円)であり、件数、焼損面積、損害額ともに、前年より減少した(第1−1−27表)。 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜採りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成15年も例外ではなく、3月に430件と最も多く発生しており、3月から5月までの間に、1,003件(年間の55.4%)の火災が集中して発生している(第1−1−31図)。
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、 〔1〕 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防 〔2〕 火災予防の見地からの林野管理 〔3〕 消防施設等の整備 〔4〕 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成15年度までに、38都道府県の905市町村にわたる234地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場、林野火災対策用資機材、林野火災工作車及び小型動力ポンプ付水槽車)の整備に対して国庫補助を行っている(第1−4−1表)。
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より低いものの、ひとたび発災し、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等へ被害が及ぶこともあり、ときには隣接市町村、隣接都府県に拡大することがある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、迅速に十分な消防力の投入を行うとともに、火災による被害を最小限に抑えることを目的として、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。近年、消防防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」(昭和61年)に基づく消防防災ヘリコプターの応援出動による空中消火が増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1−4−1図のとおりである。 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保できるとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、併せて林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策としては、特に出火防止の徹底が重要である。消防庁としては、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。〔1〕 林野周辺住民、入山者等の防火防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。〔2〕 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。〔3〕 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。〔4〕 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じた山火事予防を呼びかけている。
(2)火災警報の運用の工夫 消防庁と気象庁は、消防本部で観測した湿度等のデータを気象庁側に提供することにより、気象台が発表する火災気象通報の区分をよりきめ細かく行うことで合意した。この試みは、平成16年6月以降、岩手・栃木・山口・熊本の4県で試行されており、この火災気象通報を都道府県を通じて受けた市町村長は、適切な時期に消防法第22条に定める「火災警報」に結びつけていくことが期待される。 今後は、試行結果を踏まえながら運用面や技術面の課題及び改善点を整理し、取組みを広めていく予定である。
(3)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、〔1〕異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、〔2〕森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、〔3〕林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、〔4〕林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、〔5〕林野火災における消火・広域応援体制に関する調査、さらに平成14年度には、〔6〕林野火災の予防対策のあり方やヘリコプターによる空中消火のあり方についての検討(林野庁と共同)を行うなど、各種林野火災に係る調査研究を行ってきた。 平成16年度については、平成16年における林野火災が前年に比して増加かつ大規模化している状況にあることから、本年度から試行を開始している火災気象連携システムの活用を通した、火災警報の効果的な発令等による、林野火災の有効な低減方策を検討することとしている(第1−4−2表、第1−4−3表)。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後積極的に講じる必要がある。〔1〕 気象台から発せられる気象情報や火災気象通報を踏まえて、林野火災発生の可能性を勘案し、必要に応じて火災警報の効果的な発令を行うなど、火気取扱いの注意喚起や制限を含めて適切に対応すること。〔2〕 林野火災を覚知した場合、早急に近隣の市町村に対して応援要請を行うなど、林野火災の拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するため、速やかな事前通報及び派遣要請に努めるとともに、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術の徹底を図ること。また、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。〔3〕 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図を、GIS(地理情報システム)の活用も視野に入れて整備するなど、関係部局においてその共有を図ること。〔4〕 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。〔5〕 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大防止を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成15年中の災害 平成15年中に発生した台風の数は、21個と平年(昭和46年から平成12年までの30年間平均)の26.7個と比較すると少なかった。また、日本列島への上陸数は2個であったが、7月18日から21日にかけての梅雨前線による大雨、8月の台風第10号、9月の台風第14号等により、各地に住家の全・半壊や浸水など大きな被害をもたらした。 平成15年中の風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、前年に比べて増加(半壊、一部破損は減少)し、死者・行方不明者60人(前年48人)、負傷者483人(同472人)、全壊115棟(同74棟)、半壊238棟(同259棟)、一部破損3,355棟(同5,440棟)となっている(第1−5−1図)。 なお、主な風水害の状況は、以下のとおりである。ア 平成15年7月18日から7月21日にかけての梅雨前線による大雨 西日本各地で、死者23人、負傷者25人、住家の全壊51棟、半壊56棟、一部破損161棟、床上浸水3,558棟、床下浸水4,188棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県33市町村で災害対策本部が設置された。イ 平成15年台風第10号 全国各地の広い範囲で、死者17人、行方不明者2人、負傷者94人、住家の全壊28棟、半壊27棟、一部破損559棟、床上浸水389棟、床下浸水2,009棟の被害が生じた。 これに対し、延べ4道県367市町村で災害対策本部が設置された。ウ 平成15年台風第14号 全国各地の広い範囲で、死者3人、負傷者110人、住家の全壊18棟、半壊87棟、一部破損1,437棟、床上浸水72棟、床下浸水303棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県20市町村で災害対策本部が設置された。
(2)平成16年1月から10月までの災害 平成16年10月までに発生した台風の数は、24個であり、このうち、日本列島への上陸数は10個で過去最多であった。平成16年7月新潟・福島豪雨、平成16年7月福井豪雨、台風第23号等により、各地に住家の全・半壊や浸水など大きな被害をもたらした。 風水害に伴う人的被害、住家被害は、死者・行方不明者230人、負傷者2,540人、全壊773棟、半壊8,182棟、一部破損75,995棟となっている(平成16年11月10日現在)。 なお、主な風水害の状況は、以下のとおりである。 6月下旬に上陸した台風第6号により全国各地で、死者2人、行方不明者3人、負傷者118人、住家の全壊1棟、半壊2棟、一部破損150棟、床上浸水1棟、床下浸水41棟の被害が生じた。 これに対し、延べ3県265市町村で災害対策本部が設置された。 平成16年7月新潟・福島豪雨により、死者16人、負傷者4人、住家の全壊70棟、半壊5,354棟、一部破損94棟、床上浸水2,149棟、床下浸水6,208棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県50市町村で災害対策本部が設置された。 平成16年7月福井豪雨により、死者4人、行方不明者1人、負傷者19人、住家の全壊66棟、半壊135棟、一部破損229棟、床上浸水4,052棟、床下浸水9,675棟の被害が生じた。 これに対し、延べ1県9市町村で災害対策本部が設置された。 7月31日に上陸した台風第10号及び8月4日に上陸した台風第11号及び関連する大雨により全国各地で、死者3人、負傷者19人、住家の全壊12棟、半壊15棟、一部破損65棟、床上浸水218棟、床下浸水2,420棟の被害が生じた。 これに対し、延べ3県160市町村で災害対策本部が設置された。 8月下旬に上陸した台風第15号及び前線に伴う大雨により全国各地で、死者10人、負傷者22人、住家の全壊22棟、半壊19棟、一部破損209棟、床上浸水526棟、床下浸水2,333棟の被害が生じた。 これに対し、延べ3県6市町村で災害対策本部が設置された。 8月下旬に上陸した台風第16号により全国各地で、死者14人、行方不明者3人、負傷者269人、住家の全壊30棟、半壊92棟、一部破損7,124棟、床上浸水16,840棟、床下浸水29,785棟の被害が生じた。 これに対し、延べ11県629市町村で災害対策本部が設置された。 9月上旬に上陸した台風第18号により全国各地で、死者41人、行方不明者4人、負傷者1,324人、住家の全壊122棟、半壊1,092棟、一部破損50,731棟、床上浸水1,612棟、床下浸水6,628棟の被害が生じた。 これに対し、延べ11道県737市町村で災害対策本部が設置された。 9月下旬に上陸した台風第21号及び秋雨前線に伴う大雨により全国各地で、死者26人、行方不明者1人、負傷者97人、住家の全壊79棟、半壊273棟、一部破損1,936棟、床上浸水5,798棟、床下浸水13,883棟の被害が生じた。 これに対し、延べ4県342市町村で災害対策本部が設置された。 10月上旬に上陸した台風第22号により全国各地で、死者6人、行方不明者2人、負傷者167人、住家の全壊170棟、半壊251棟、一部破損4,534棟、床上浸水1,247棟、床下浸水3,612棟の被害が生じた。 これに対し、延べ4県278市町村で災害対策本部が設置された。 10月下旬に上陸した台風第23号により全国各地で、死者90人、行方不明者4人、負傷者486人、住家の全壊188棟、半壊914棟、一部破損10,584棟、床上浸水21,812棟、床下浸水40,105棟の被害が生じた。 これに対し、延べ13府県815市町村で災害対策本部が設置された。
[風水害対策の現況]1 態様別の現況 平成14年4月に中央防災会議において、防災基本計画の風水害編等の修正が行われ、これを踏まえ消防庁では、洪水予報河川の指定、土砂災害警戒区域の指定及び高潮ハザ−ドマップの作成などについて地域防災計画の修正を行うよう要請している。 また消防庁では、毎年、出水期を前に、各都道府県に対し、風水害に対する警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知を発するとともに、台風の襲来時には、台風警戒情報を地方公共団体に送付して、警戒の強化を呼びかけている。 平成16年には集中豪雨や台風による災害が多発したが、これらを通じて認識された主な課題としては、〔1〕市町村における避難勧告・避難指示のあり方、〔2〕住民への適切な情報提供のあり方、〔3〕高齢者等災害時要援護者の避難支援体制の確立などがあり、これらを踏まえて政府では、「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」を設置したところであり、年内に骨子案をまとめるとともに、年度内に、避難勧告・避難指示、避難行動マニュアルや高齢者等災害時要援護者の避難支援ガイドラインを取りまとめていく予定である。
(1)洪水 近年、時間雨量80mmを超えるような猛烈な雨が頻発し、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど、大きな被害が発生する例が増えている。 平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨や同月の福井豪雨を見ると、停滞した梅雨前線に次々と湿った空気が流入し、非常に激しい雨が短時間で狭い範囲に降った結果、中小河川が破堤し、河川に隣接する住宅地一体が浸水するなどの被害が発生した。人的被害では、高齢者の独り暮らしや夫婦2人だけの世帯など、いわゆる災害時要援護者に死者が多かったことから、政府では災害時要援護者にかかる避難支援ガイドラインの検討を行っているところである。また、避難勧告や避難指示等の情報を迅速かつ的確に伝達できるよう、防災行政無線の整備を含め、情報収集・伝達体制の確立について、助言を行う。 一方、都市部でこのような集中豪雨が発生すると、排水能力の限界から水が溢れたり、さらには地下街や地下室へ水が流れ込むなどにより、これまでも福岡市や東京都内の地下空間において水死者が発生している。地下空間における浸水対策については、都市部における浸水被害対策を総合的に推進するために、都市洪水想定区域又は都市浸水想定区域において、洪水等情報の伝達方法、避難場所、地下街等への情報伝達方法等を市町村地域防災計画に定めて住民に周知することや、地下街等の所有者又は管理者が浸水時の避難等に関する計画作成及び公表に努めることなどを盛り込んだ特定都市河川浸水被害対策法が、平成16年5月から施行されている。 さらに、前述の被害を軽減させるため、平成13年6月に〔1〕これまで国直轄河川で行われていた洪水予報を新たに都道府県が管理する河川についても行うこと(平成16年7月2日現在19水系29河川を指定)、〔2〕国及び都道府県は浸水想定区域を指定及び公表すること、〔3〕市町村は浸水想定区域ごとに洪水予報の伝達方法、避難場所等を定め、住民に周知させるよう努めること等を主旨とする水防法の一部改正が行われ、地方公共団体に対し、同法の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。
(2)土砂災害 土砂災害は、平成16年においては8月の台風第15号による愛媛県新居浜市ほかの土石流災害や9月の台風第21号による三重県宮川村や愛媛県西条市ほかでの土石流災害などが生じ、多くの死者が発生した。また、これまでも平成8年12月の蒲原沢土石流災害、平成9年7月の鹿児島県出水市の土石流災害、平成15年7月の豪雨による熊本県水俣市ほかの土石流災害などが発生しており近年、がけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害により、多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきており、土砂災害危険箇所の周知徹底等、特に重点的に推進すべき事項について、関係省庁による申合せがなされている。また中央防災会議においては、特に、効果的な事前周知、気象情報等の収集伝達体制の強化という情報提供の観点から、豪雨災害対策のあり方について検討が行われ、気象情報の収集体制の強化等、重点的に進めるべき豪雨災害対策について提言がなされた。さらに、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月に施行された。この法律に基づき「土砂災害防止対策基本指針」が定められたことから、地方公共団体に対し、法及び指針の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 また、土砂災害が見込まれるときに、市町村長が住民に対して行う避難指示等の防災対応を適時適切に判断できるよう支援することを目的とした土砂災害警戒情報の提供を、本格実施していく予定である。
(3)高潮 消防庁では、平成11年9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12名の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定している。 平成16年8月の台風第16号に伴う被害では、1年で最も潮位が高くなる大潮の時期に加えて満潮とも重なり、既往最高潮位を60cm近くも超えるところが出るなど、香川県・岡山県・広島県等の瀬戸内地区を中心に、床上浸水など相当数の高潮被害が発生し、被害防止対策が課題となっている。
2 具体的な対応方針(1)防災体制 都道府県及び市町村に対しては、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や、地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制を整備するよう要請している。特に、平成16年7月には、同月発生の新潟・福島豪雨や福井豪雨による災害状況にかんがみて、避難勧告等の基準の再点検、都道府県と市町村間及び同一水系を有する上下流の市町村間における迅速かつ的確な伝達体制の整備、住民特に災害時要援護者の避難誘導体制の整備、職員の動員配備等初動体制の速やかな確立などにより、万全の体制を整えるよう地方公共団体に対し改めて要請するとともに、本格的な台風襲来を前に平成16年8月には、風水害対策にかかる都道府県消防防災主管課長会議を開催して徹底を図った。 また、災害時における情報の重要性にかんがみ、防災行政無線網等の情報通信体制の整備を促進するとともに(第2章第10節参照)、休日・夜間を含めた住民との間や防災関係機関相互間での情報収集や伝達体制の整備など、警戒避難体制の充実を図る必要がある。 防災訓練についても、平成15年度中には、風水害を想定した防災訓練を都道府県では23団体で32回、市町村では延べ780回実施しており、各地方公共団体に対し積極的に実施するよう要請している。
(2)災害危険箇所に対する措置 地方公共団体に対し、土砂災害の発生する可能性のある災害危険箇所を把握するとともに、その情報については、地域防災計画に反映させたうえ標識、広報誌、ハザードマップ、説明会等様々な媒体や機会を通じて地域住民へ周知徹底を図るよう要請している。 なお、地域防災計画に記載されている災害危険区域で施行される自然災害防止事業に対しては、地方債措置と元利償還金に対する地方交付税措置が講じられている。
(3)2次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、災害対策基本法に基づく警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては、十分な警戒等を行うよう、地方公共団体に対して要請している。
(4)災害時要援護者関連施設 災害時要援護者関連施設への対応としては、平成10年8月末の豪雨での救護施設「からまつ荘」(福島県西郷村)の被災を踏まえ、平成11年1月に関係5省庁による共同通知を発出し、災害時要援護者関連施設を土砂災害から守るため国土保全事業の推進、当該施設に係る情報提供及び当該施設における防災体制の確立を要請している。これと併せて消防庁では平成10年度に、関係省庁、学識経験者等からなる「災害弱者施設の防災対策のあり方に関する調査検討委員会」を開催し、施設の土砂災害対策に関して行政(国・都道府県・市町村)の果たすべき役割、施設設置者が果たすべき役割などについて検討を行った。そして、これらの施設に対する情報伝達体制等を含めた今後の施策の方向を明らかにするとともに、各地方公共団体に対しては、その内容の周知を図る一方、地域防災計画の点検を行うよう要請している。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等による風水害は、毎年のように我が国の広い地域で大きな被害をもたらしている。とりわけ、平成16年の梅雨前線に伴う集中豪雨においては、〔1〕防災情報の迅速確実な伝達提供〔防災行政無線(同報系)の普及促進、要員派遣を含めた国と自治体との連携強化、避難勧告・避難指示や避難行動マニュアルの整備等を含む〕、〔2〕災害時要援護者の避難体制の確保〔高齢者等災害時要援護者の避難支援ガイドラインの策定や消防団・自主防災組織の充実強化等を含む〕、〔3〕総合的な治水対策、〔4〕観測予報体制の充実強化のほか、ボランティア活動の支援強化、緊急消防援助隊の整備促進など36項目を課題として掲げ、内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁をはじめとした関係省庁局長会議においてその支援の検討が行われている。
(1)防災情報の伝達・提供の迅速化、確実化 各地方公共団体は、防災関係機関相互の連携強化を図りつつ、地形、地質、土地利用の状況、災害履歴等を勘案して、災害危険箇所の把握、避難場所及び避難路の確保、気象予警報、雨量、河川の水位状況等各種情報の的確な把握及びこれらに基づく適切な避難勧告・避難指示等、防災体制の強化に努める必要がある。
(2)災害時に高齢者等が安全かつ迅速に避難できる体制の整備 避難勧告・避難指示の発令の基準やその伝達事項・方法、避難場所、避難路や避難方法等については、地域防災計画に具体的に定め、広報誌等様々な広報媒体により住民への周知を図っていくことが重要である。この際には、高齢者、障害者、乳幼児、傷病者など自力避難の困難ないわゆる災害時要援護者にも十分配慮した対策を講じることが求められている。 地域においては、例えば自主防災組織で災害時における高齢者等の救出チ−ム体制づくりを進めたり、地域のリ−ダーと民生委員の協議のもと、本人の了解を得たうえで自力避難困難者をリスト化しておくなどの工夫を凝らした事例も見られ、こうした取組みの更なる広がりが地域の防災力の一層の強化につながる。
(3)自主防災組織の育成等 風水害による被害を最小限にとどめるためには防災機関の活動のみならず、住民自らの災害に対する日常の備えが不可欠であり、市町村と住民の協働による訓練をはじめ、防災知識の普及啓発に引き続き努めるとともに、地域の防災対策を担う自主防災組織の育成強化を進める必要がある。
第6節 火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向]1 三宅島噴火災害 平成12年7月8日、14日、15日、8月10日、13日〜16日に小規模な噴火が起こり、8月18日には、一連の噴火で最大規模の噴火が発生し、さらに29日にも18日に次ぐ規模の噴火があった。この活動について火山噴火予知連絡会は、同年8月31日に、「当面8月18日及び29日と同程度かこれをやや上回る規模の噴火が繰り返し起こる可能性があり、火砕流に警戒が必要」との見解を示した。その後9月まで小規模な噴火が時折発生した。 三宅村では、この気象庁の見解を受け、同年9月2日には、防災及びライフライン関係要員を除く全住民(三宅村人口3,855人:平成12年8月1日住民基本台帳)に対し、島外への避難指示を行い、全対象住民が島外への避難(9月2日〜4日にかけて実施)を行った。 消防機関の対応としては、平成12年6月27日から7月2日までの間に東京消防庁が応援部隊を自衛隊・海上保安庁の輸送協力により三宅島へ派遣し、地元消防や警察と連携し、道路状況の調査、一時帰宅の支援、道路修繕支援活動、ヘリコプターによる救援物資の搬送等を行った。また、同年8月29日以降は応援部隊を現地派遣して地元消防等と連携し、救急搬送、住民の島外避難の支援等を行ったほか、住民避難後も、警戒巡視、夜間島内滞在時の安全監視等を行っている。 長期避難生活を余儀なくされるなか、平成15年3月には、火山ガスに対処する脱硫装置を備えた302名宿泊可能な滞在型の活動火山対策避難施設・退避舎(クリーンハウス)が消防防災施設整備費補助金を活用して整備された。平成15年度からは同施設を活用した滞在型一時帰宅が実施されており、平成15年4月から平成16年7月までの間に延べ3,579世帯、5,891人が一時帰島している。 一方、三宅島の火山活動は最近約2年間大きな変化がなく、火山ガスの放出はほぼ1日あたり3千〜1万トン程度で継続している。島民の避難生活はほぼ4年に及び、精神的及び経済的負担が限界となるなかで、島民に帰島の意向調査を実施するなど、「火山ガスとの共生」による帰島を視野に検討が進められた。そして、平成16年7月20日に三宅村は、帰島は村民個々の自己責任に基づく、村は村民の安全確保のため新たに条例を制定することなどを内容とする「帰島に関する基本方針」を発表し、平成17年2月に避難指示を解除することとした。平成16年9月に、村は三宅村帰島計画をまとめ、帰島に向けた施策を明らかにしたが、このような動きにあわせて、国や東京都は、今後、村の帰島に向けての取組みを支援していくことにしている。
2 その他の火山災害(1)平成15年中の災害 平成15年の日本の火山活動は、人体や家屋等に顕著な被害を与えるような噴火は発生せず、比較的静穏に推移した。噴火したのは、浅間山、桜島、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島の4火山で、桜島では昭和30年から、諏訪之瀬島では昭和31年から続いている山頂噴火が継続した。浅間山、薩摩硫黄島の噴火は、微量の火山灰を山腹や山麓に降らせる程度の小規模なものであり、浅間山が噴火したのは平成2年以来であった。 火山情報については、平成15年中は、十勝岳及び霧島山において各1回、計2回の臨時火山情報が発表されている。
(2)平成16年中の災害 三宅島では、山頂火口から二酸化硫黄を多量に含む火山ガスが依然として放出され続けており、二酸化硫黄の放出量は、日量3千〜1万トン程度で概ね横ばい傾向が続いている。 また、浅間山が平成16年9月1日20時02分頃噴火し、この噴火により大きな爆発音と空振が観測され、噴石が浅間山山体の中腹まで飛散し、降灰は福島県太平洋岸まで及んだ。この噴火による人的被害は無かったが、空振により博物館施設や小学校においてガラスが破損する被害が発生した。浅間山ではその後、度々噴火が発生しており、9月23日、29日、11月14日には中規模の噴火が発生して、山麓へ火山礫が降下し、山形県(9月23日)や栃木県(11月14日)に及ぶ広い範囲で降灰があった。9月16日〜17日には小規模の噴火が連続して発生し、一連の噴火による降灰は東京を含む関東南部の広範囲で確認された。
[火山災害対策の現況] 平成15年1月の火山噴火予知連絡会において活火山の定義が見直されたが、新たな定義によると、我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が存在する。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの流出、津波等多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や第6次火山噴火予知計画(平成10年8月文部省測地学審議会建議)による火山を有する地域の市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。平成14年度においては、東京都三宅村の活動火山対策避難施設クリーンハウス(退避舎)に対して7億円の助成を行った。 また、地域の特色を活かした火山災害に強いまちづくりを推進できるように、活動火山情報教育施設、大規模避難宿泊施設、避難休憩施設、活動火山情報表示施設等の火山対策施設について、防災基盤整備事業の対象としている。 さらに、平成12年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動により災害が発生した際、地域住民が迅速に避難できるよう、被害が想定される区域や被害の程度、さらに避難場所、避難経路等の情報を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。その一方で消防庁は、平成13年から富士山火山防災協議会に参画するとともに、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」の開催を行っている。 平成13年度からは、富士山火山防災協議会の下に設置された富士山ハザードマップ検討委員会において、富士山防災対策の基本となる火山ハザードマップの作成検討等が進められ、平成16年6月に報告がまとめられた。なお、引き続き新たに、富士山火山広域防災検討会が設置され、そのなかで広域的な火山防災体制の確立のための検討が行われている。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で89団体が整備している。 また、これらの団体においては、適宜見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。特に、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、北海道恵山、雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳、桜島の10火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、9火山の協議会では、それぞれ火山の爆発に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。 また、消防庁では平成14年度に、山体の大きな富士山における火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成15年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県4団体で延べ5回、市町村では延べ39回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
(4)火山活動度レベルの活用 異常な火山現象が認められた場合には、「緊急火山情報」、「臨時火山情報」、「火山観測情報」といった火山情報が気象庁から発表されているが、この火山情報をより分かりやすくする趣旨から、火山活動の程度を客観的な数値指標(0〜5)で表した「火山活動度レベル」が平成15年11月から、浅間山、伊豆大島、阿蘇山、雲仙岳、桜島の5火山で導入されている。 この制度は今後逐次、他の火山にも導入されていくこととなるが、関係自治体においては、レベルに応じた適切な防災対応に配慮することが望まれる。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を引き続き推進していくことが重要である。特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布することを通じて、防災情報を積極的に提供することが、平常時から住民に対して、防災意識の高揚を図ることにつながる。 消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。また、内閣府、国土交通省及び気象庁とともに、平成13年7月から富士山ハザ−ドマップ検討委員会を設置し、火山ハザ−ドマップの内容を検討してきた結果、平成16年6月に「富士山火山防災マップ」〔火山ハザ−ドマップとそれに対する各種防災情報(避難所の位置、連絡先や災害発生時にとるべき行動等)を記載したマップ〕として試作版を提示した。 なお、平成12年の有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
(2)住民への情報伝達体制の整備 緊急火山情報や臨時火山情報をはじめとする火山情報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、75.0%(平成16年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告や指示を行う必要がある。また、あらかじめ、情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておくことが必要である。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日頃から連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じ、登山規制、立入規制等の措置を速やかにとることができるように、関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成15年1月から12月までの間に震度1以上が観測された地震は、2,179回(前年1,253回)で、このうち、震度4以上を記録した地震は71回(前年28回)で、いずれも前年を大幅に上回った(第1−7−1表)。
(1)平成15年以降の主な地震の概要 平成15年1月から16年10月までに震度4以上を記録した地震は、第1−7−3表のとおりであり、主な地震災害の概要は、以下のとおりである。ア 宮城県沖を震源とする地震 平成15年5月26日18時24分頃、宮城県沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。 この地震により、岩手県大船渡市、宮城県石巻市等で震度6弱、青森県階上町、岩手県陸前高田市、宮城県気仙沼市、秋田県西仙北町、山形県中山町等では、震度5強を記録した。 この地震による被害は、東北6県に及び、負傷者174人、住家の全壊2棟、半壊21棟、一部破損2,404棟となっている。イ 宮城県北部を震源とする地震 平成15年7月26日には宮城県北部を震源とし、震度6弱以上を観測した地震が3回発生した。 0時13分頃、マグニチュード5.6の地震が発生し、この地震により宮城県鳴瀬町、矢本町で震度6弱、鹿島台町、南郷町で震度5強、石巻市、松山町等で震度5弱を記録した。 次に、7時13分頃、マグニチュード6.4の地震が発生し、この地震により宮城県矢本町、南郷町、鳴瀬町で震度6強、涌谷町、河南町、小牛田町、桃生町、鹿島台町で震度6弱、石巻市、古川市等で震度5強を記録した。 さらに、16時56分頃、マグニチュード5.5の地震が発生し、この地震により宮城県河南町で震度6弱、南郷町、涌谷町で震度5強を記録した。 これらの地震による被害は、宮城県を中心に負傷者677人、住家の全壊1,276棟、半壊3,809棟、一部破損1万976棟となっている。ウ 平成15年(2003年)十勝沖地震 平成15年9月26日4時50分頃、釧路沖を震源とするマグニチュード8.0の地震が発生した。この地震により北海道幕別町、釧路町、新冠町、浦河町等で震度6弱、釧路市、別海町、更別村、厚真町等で震度5強を記録した。 さらに6時08分頃、十勝沖を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生した。この地震により北海道浦河町で震度6弱、新冠町で震度5強を記録した。 この地震による被害は、北海道を中心に行方不明者2人、負傷者849人、住家の全壊116棟、半壊368棟、一部損壊1,580棟となっている。エ 平成16年(2004年)新潟県中越地震 平成16年10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。この地震により新潟県川口町で震度7、小千谷市、山古志村、小国町で震度6強、十日町市、中里村、長岡市、栃尾市、三島町、越路町、川西町、刈羽村、入広瀬村、堀之内町、広神村、守門村で震度6弱、中之島町、安塚町、与板町、和島村、出雲崎町、小出町、六日町、松之山町、見附市、塩沢町、松代町、津南町、大和町で震度5強、栄町、広神村、湯之谷村、上越市、浦川原村、巻町、牧村、柿崎町、吉川町、三和村、三条市、柏崎市、加茂市、西山町、燕市、弥彦村、吉田町、月潟村、中之口村、高柳町、分水町、頸城村、福島県只見町、西会津町、柳津町、群馬県北橘村、高崎市、片品村、埼玉県久喜市、長野県三水村で震度5弱を記録した。 その後も震度6強を観測する地震が2回、6弱を観測する地震が2回あった。 この地震による被害は、新潟県を中心に死者40人、負傷者2,867人、住家の全壊2,028棟、半壊4,430棟、一部破損42,429棟となっている(平成16年11月17日現在)。 また、避難状況については、川口町が10月23日19時に避難勧告を行ったのをはじめとして、1万8,694世帯、6万1,573人に避難勧告、1,023世帯、3,227人に避難指示が出され、山古志村については、全村避難指示となった。避難者数は、最大時(10月26日)で10万3,178人に上った(11月17日現在では、1万663人)。 ライフライン被害については、延べ数で、停電約30万8,860戸、ガス供給停止約5万6千戸、水道断水12万9,750戸となっている(平成16年(2004年)新潟県中越地震について(第38報)内閣府発表による)。この停電により新潟県内の19の市町村役場で防災行政無線が一時不通となった。 交通機関については、鉄道では上越新幹線浦佐駅〜長岡駅間で列車が脱線するなどして運転中止区間が発生している。道路も関越道の一部が10日以上通行止めになるなど多数の通行禁止区間が発生している(11月17日現在)。
(2)平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成15年12月25日現在、人的被害は死者6,433人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1−7−4表、第1−7−5表、第1−7−6表)。
2 外国の地震災害 平成15年1月から平成16年9月までの主な地震は、第1−7−7表のとおりである。
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。また、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めている。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、大規模災害時における人命救助活動等をより効率的かつ充実したものとするために平成16年4月、法律に基づく緊急消防援助隊を発足させた。全国の消防本部より2,821部隊、約3万5,000人の隊員が登録されている。さらに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等の整備や大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 また、阪神・淡路大震災での貴重な経験や教訓は、次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業や施策の企画・立案、日々の防災活動に役立てる必要があることから、平成13年6月から運用を開始した「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)の充実等により地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 一方、これら国庫補助事業等のほか、公益法人による震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備に対する助成事業も行われている。
(1)東海地震対策 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法の規定に基づき、地震防災対策強化地域に指定された6県167市町村においては、東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画等に基づき、切迫した東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 平成14年4月には大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討した結果、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、従前の6県167市町村から8都県263市町村(平成16年4月1日現在249市町村)に拡大された。 この新たな指定を受けた都県及び市町村等においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組みがなされており、このうち、民間事業者が作成する地震防災応急計画の作成率(平成16年4月1日現在)は、79%となっており、消防庁では今後とも各都県、消防本部等を通じて作成を強く働きかけていくこととしている。 地震防災対策強化地域の拡大を受け平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月29日の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。大綱の主なポイントは、〔1〕被害軽減のための緊急耐震化、〔2〕地域における災害対応力の強化、〔3〕警戒宣言前からの的確な対応、〔4〕災害発生時における広域的防災体制の確立の4点であり、これらを踏まえた防災関係機関・地方公共団体等による的確な対応が求められている。 また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月28日の中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同日、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−7−1図)。これは最近の科学的な知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)による変化に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりも前に今後の推移について説明可能な段階が設定できるとの考えから、これまでの情報発表の仕方を見直したものであり、基本計画修正の中心的な部分である。新たな情報発表の主なポイントは、これまで防災関係機関の防災対応のきっかけとして位置付けられていた「判定会招集連絡報」を廃止し、現行の観測情報を2段階に分け、このうち東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合に「東海地震注意情報」を発表し、これを防災対応のきっかけとするという部分であり、具体的には、この情報を基に、政府は準備行動開始の意思決定とその旨の公表を行い、関係機関は準備行動の実施体制(準備体制)をとることとなる。基本計画の修正により、地方公共団体は地震防災強化計画の、民間事業者は地震防災応急計画の修正が必要であり、消防庁としても、これらの取組みに対して支援・助言に努めることとしている。 さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、〔1〕緊急に実施すべき予防対策、〔2〕緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、〔3〕迅速な閣議手続き等について、平成15年7月29日に「東海地震緊急対策方針」として閣議決定された。平成15年12月16日には、中央防災会議において「東海地震応急対策活動要領」が決定され、同要領に基づく、関係省庁の救助、物資の調達等について、具体的な活動内容の申し合わせを行った。
(2)東南海・南海地震対策ア 東南海・南海地震対策の充実・強化 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生し、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている(第1−7−2図)(今後30年以内に発生する確率は、平成16年9月の地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、東南海地震60%、南海地震50%となっている。)。 このため、中央防災会議は、平成13年6月に、「東南海、南海地震等に関する専門調査会」の設置を決定し(平成13年10月に第1回委員会を開催)、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策について検討を行っており、平成14年12月に東南海・南海地震が同時に発生した場合の被害想定の一部公表、平成15年9月には被害想定の全体像が示された(第1−7−8表)。 また、地方公共団体においても、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、関係府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立し、東南海・南海地震に係る情報交換・収集を行っている。イ 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行 こうした中で、平成15年7月25日に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」、同法施行令及び施行規則が施行となり、平成15年7月28日、内閣総理大臣から中央防災会議に対して地震防災対策推進地域の指定について諮問がなされ、東南海・南海地震が発生した場合、「著しい地震災害の恐れがある地域」として、具体的な推進地域の指定に向けた検討が開始された。その結果、平成15年12月16日に中央防災会議において「東南海・南海地震防災対策推進地域」(1都2府18県652市町村)が公表され、翌17日に内閣総理大臣により指定(公示)された。推進地域の指定を受けた地方公共団体その他防災関係機関は、東南海・南海地震防災対策推進基本計画に基づき、「東南海・南海地震防災対策推進計画」を作成し地震防災対策強化を図ることとなった。また、特に津波からの甚大な被害が懸念される地域については、地域ぐるみの迅速な対応が求められることから、学校・病院等多数の者が集まる施設管理者等に対し、津波からの円滑な避難に関して「地震防災対策計画」を地域指定から6ヶ月以内に策定するものとされた。平成16年6月16日現在の対策計画の作成率は、57.4%となっており、消防庁としては今後とも各都府県、消防本部等を通じて作成を強く働きかけていくこととしている。 また、平成15年12月、東南海・南海地震防災対策のマスタープランとなる「東南海・南海地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。この大綱は、東南海・南海地震に対して津波防災体制の確立などを掲げた総合的計画であり、平成16年3月に中央防災会議で決定された推進基本計画をはじめとして、推進計画や対策計画はこの大綱に沿って、地域の実情に即した具体的な形で作成されたものである。 消防庁では、「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会」を開催し、被災地・受援側の視点から広域的な防災対策に必要な方策の検討を行い、平成16年3月報告書として取りまとめた(囲み記事「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する研究報告書」参照。)。
東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する研究報告書● 広域応援体制の整備に向けて〜調査研究の目的〜 消防庁では、「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長:室r益輝 神戸大学都市安全研究センター教授(当時、平成16年4月より消防研究所理事長))」を平成15年度に開催し、その検討結果を「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する研究報告書」として取りまとめました。 この報告書では、市町村・都府県境を越え、東南海・南海地震の被害が想定される地域が一体となって取るべき防災体制を「広域防災体制」とし、このうち、広域的な受援体制の整備の観点と、津波対策の観点からみた地方公共団体の防災体制の現状と課題を踏まえて、広域防災体制のあり方について検討しています。1 広域的な地震防災体制のあり方〔1〕 実効性のある危機管理体制の確保、自力対応体制の整備 東南海・南海地震における広域応援については、被災地によっては応援がすぐに来ないことが考えられ、各被災地域における自立的な防災体制の確立が求められています。 そのためには、起こりうる事態をしっかり理解したうえで、実効性のある危機管理体制の確保が必要となります。 例えば、発災直後、災害対策本部を早急に設置し、的確な初動対応を行う必要がありますが、災害状況によっては職員が参集できず、限られた人数と情報しかない状況下で、多岐にわたって迅速に意思決定をしていかなければなりません。的確な初動対応を可能とするためには、防災主管課が組織内の関係部局を横断的に調整しながら迅速な対応を行えるかどうかにかかってきます。 体制の整備に当たって、首長や職員は被災時の状況をイメージし、組織体制に反映させていかなければなりません。特に首長には、そのリーダーシップを発揮していただき、首長を補佐する防災専門員の設置や防災主管課の強化を図っていくことが求められます。〔2〕 孤立地域対策 また、東南海・南海地震の特性として津波災害や土砂災害等による「孤立地域」の発生が懸念されます。孤立地域は概して被害が大きいことが予想される一方、早期の応援も期待できないことから、可能な限り地域による自立的な避難・救助体制が求められます。その対策として、孤立想定地域のデータベース化や防災行政無線のデジタル化等による早期把握体制の整備が必要です。2 津波対策のあり方〔1〕 津波からの避難の勧告・指示の実施体制及び伝達体制の整備 平成15年に起きた宮城県沖地震や十勝沖地震の反省から、市町村は避難警報等の的確な伝達が必要であり、その発令基準・伝達体制の整備、また、首長が不在だった場合の発令権限の委任制度など実効性のある体制の構築が求められます。〔2〕 津波知識の普及・啓発、避難訓練の推進 一方、住民の避難意識の変革も必要です。平成15年宮城県沖地震では、テレビによる避難勧告等の報道を待ってから避難行動に移る、あるいは、避難勧告等が発令されても避難しない、といった行動が多くみられました。 津波対策は「避難すること」が基本であり、そのため、地方公共団体はしっかりと津波情報や避難勧告等を住民まで伝えることと、そのための体制整備が必要であり、また、住民も受け取った情報を自分自身の問題として捉え、実際に行動に移すことが求められます。普段の訓練においても、津波浸水予測図などで危険箇所を意識したり、家屋の倒壊により避難路が塞がったりした時の対処も含めた訓練が必要です(下図)。 また、学校や家庭において津波防災知識を普及していくことが、将来にわたった実効性のある津波防災対策につながっていくと考えています。3 地方公共団体が取り組むべき施策・業務 地方公共団体における地震対策には、堤防等の整備など計画から完成まで数年かかるものから、組織の初動体制整備や職員への研修など直ちに取り組むことができる施策、あるいは、地域の災害記録の伝承など長く取り組んでいく施策もあります。 本報告書では、こうした地方公共団体が行うべき施策・業務を、短期・中期・長期の区分で整理し、また、目標年度と達成すべき水準を例示しています。 地方公共団体は、これらの例を参考に、実施すべき施策・事業を整理し、東南海・南海地震防災対策を計画的・効果的に行っていくことが求められます。本報告書の全文を、消防庁のホームページからご覧になれます。http://www.fdma.go.jp/html/new/160624_houkoku.html
(3)南関東地域における震災対策 南関東地域は、人口、諸機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広範なものとなるおそれがある。この地域においては、200〜300年に一度、関東大震災クラス(M8クラス)の海溝型地震が発生し、この間にもM7クラスの直下型地震が数回発生する可能性が高いとされている(第1−7−3図)。このため、中央防災会議において昭和63年12月に「南関東地域震災応急対策活動要領」が、平成4年8月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が決定され震災対策を推進してきた。この要領等は、ともに阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大都市震災対策専門委員会の提言を受け、平成10年6月に全面的な見直しが行われるとともに、同要領等を補完し、応急対策活動の実践的な備えを推進するため、医療搬送、広域輸送等の課題分野ごとにアクションプランを検討することとされた。平成10年8月に中央防災会議主事会議において「南関東地域の大規模地震時における広域医療搬送活動アクションプラン第1次申し合わせ」(平成12年12月14日改正)が行われたほか、平成12年度から広域輸送プランや帰宅困難者対策についても調査・検討が進められている。 また、関係地方公共団体に対し、この活動要領及び大綱の趣旨等を踏まえ、震災対策用施設・設備の整備の促進、都市型地震災害の防止・軽減対策の推進、広域応援体制の整備充実、緊急輸送の確立、救助・救急体制の確立、情報伝達及び広報体制の確立、災害応急対策の強化、防災意識の啓発、周辺地域と一体となった広域的な防災訓練の実施など震災対策の充実を図るよう要請している。 こうした中、社会経済情勢の変化を踏まえ、平成15年9月、中央防災会議に「首都直下地震対策専門調査会」が設置され、首都直下の「地震像」の明確化や、直下地震を考慮した首都機能(行政、経済)確保対策の検討などが行われている。 また、中央防災会議における内閣総理大臣の指示により、緊急消防援助隊等、広域応援部隊の活動拠点の確保を図ることとなり、関係都県をはじめとする地方公共団体と協議の結果、平成16年4月20日、465箇所の活動拠点の利用について合意した。今後、これら活動拠点は地域防災計画等へ位置付けられ、訓練時等に活用されることとなる。
(4)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震 日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震の中には、約40年間隔で発生する宮城県沖地震など、繰り返し発生するものもあり、その切迫性も指摘されているとともに、震源域はそのほとんどが海溝周辺にあり、過去において大津波を伴う地震が多数発生していること等から、この地域で発生する海溝型地震による地震・津波防災対策、特に巨大な津波に対する防災対策の確立を図るため、平成15年10月27日、中央防災会議に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」が設置された。 この専門調査会においては、今後、この地域で発生する海溝型地震のうち、防災対策上対象とすべき地震について検討した上で、その地震により発生すると予測される被害の大きさや、それに対する地震防災対策について検討を行うこととされている。 平成16年3月26日、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進を図るためには法的整備が必要であるとして、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が、議員立法により成立し、同年4月2日に公布された。これにより内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として指定するとともに、中央防災会議は、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」を作成することとなった。また、推進地域の指定を受けた地方公共団体等防災関係機関は、この基本計画に基づき、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画」を作成するとともに、推進地域内で特に津波による甚大な被害のおそれのある地域において地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者のうち基本計画で定める者は「地震防災対策計画」を作成し、その実施を推進することとなる。この法律は、公布後1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されることから、遅くとも平成17年秋までには施行されるものである。
(5)地震防災緊急事業五箇年計画、地震対策緊急整備事業計画ア 地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成された。同計画に基づき、平成13年3月31日までの5年間に避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集市街地対策等が実施された(実績額14兆1,175億円:達成率76.3%)。国は同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 各都道府県は、同法が平成13年3月に一部改正され、この特例等の適用期限が平成18年3月31日まで延長されたことにより、平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画を作成し、引き続き地震防災緊急事業を実施しており、平成13年度からの計画額は約14兆1千億円となっている。 なお、耐震性貯水槽、小型動力ポンプ付積載車等特例措置の対象となる消防庁関係の事業の国の負担割合は、2分の1となっている。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。この特例措置の対象となる消防用施設は、消防施設強化促進法に規定する消防施設、小型動力ポンプ付積載車、可搬式小型動力ポンプ及び耐震性貯水槽であり、国の負担割合は2分の1となっている。さらに、これらの施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されるなど財政上の特例措置が講じられている。 地震対策緊急整備事業として、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等を実施しており、昭和55年度からの計画額は約1兆5千億円となっている。 なお、この法律は、これまで4回延長され、現在、平成16年度末までの計画に基づき事業が実施されている。
(6)総合防災訓練 政府は、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法に基づき、東海地域に大規模地震が発生したとの想定及び南関東地域直下に大規模地震が発生したとの想定のもとに、中央防災会議で決定した「平成16年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成16年9月1日(防災の日)に総合防災訓練を実施した。 当該訓練には、指定行政機関等、関係指定公共機関及び地震防災対策強化地域と周辺地域の関係都県市が参加し、東海地震を想定した訓練は予知対応型訓練として、南関東地域直下の地震を想定した訓練は発災対応型訓練として行った。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、職員の参集訓練、地震警戒本部及び災害対策本部の設置・運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請などについて、消防防災無線網を活用した国と関係都県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。 また、消防庁に整備した緊急消防援助隊指揮車、現地活動支援車、衛星車載局車を訓練会場に派遣し、実践的な情報収集・伝達訓練を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、津波対策、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成16年4月1日現在、すべての都道府県において、震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けて定めている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,757団体、「節」等を設けているものが792団体、「その他の災害等」として扱っているものが114団体となっている。 なお、地域防災計画で「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で722団体となっている。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会が順次評価を取りまとめ公表している主要98断層帯で発生する地震や海溝型地震の長期評価(平成16年11月10日現在、69断層帯、海溝型地震のうち南海トラフ、三陸沖から房総沖にかけて、千島海溝沿い、日本海東縁部、日向難および南西諸島海溝周辺、相模トラフ沿いで発生する地震についての評価結果を公表)等を踏まえた地域防災計画の見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1−7−4図、第1−7−5図)。 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所の指定は逐年拡充されており、平成16年4月1日現在で、7万2,577箇所が指定されている(第1−7−9表)。 また、避難路については、260団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1−7−10表)。 これらの物資を備蓄するため、平成16年4月1日現在、都道府県においては43団体で853棟、市区町村においては2,349団体で2万657棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては19団体で411棟、市区町村においては148団体で2,055棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成15年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,813億8,000万円、また、市区町村が実施した事業費は879億300万円である(第1−7−11表)。
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成15年度においては、47都道府県と1,242市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が行われ、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1−7−12表、第1−7−13表)。 また、これらの訓練のほか、日頃から地域住民等に対し、43都道府県及び1,491市区町村において、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成16年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は986団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が420団体、地域防災計画へ記載している団体が798団体、津波災害を想定した避難地は5,609箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が241団体で実施されている。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約52万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生し、住民の生命、身体、財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年度に地震防災対策特別措置法が制定され、同法に基づき都道府県においては平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を図るべく事業を進めてきたが、これを実施する都道府県及び市町村においては近年の財政事情の悪化等により、防災基盤の整備は計画どおりに進められていない状況にある(達成率76.3%)。 このような中で、災害に強い防災基盤の整備を図るためには、引き続き、平成13年度から17年度までを計画期間とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく事業を積極的に推進する必要がある。 特に、大規模災害時において、避難所や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などの耐震化については、各種国庫補助制度による助成のほか、単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。しかしながら、その耐震改修の進捗率は、平成15年4月1日現在で約54%にとどまっていることから、避難所に指定されている施設や災害対策の拠点となる庁舎等を中心に、早急かつ計画的に取り組む必要がある(消防庁の調査結果によれば、地方公共団体では、平成16年度から平成19年度までに、学校施設をはじめとした公共施設約7,400棟の耐震改修を実施する計画である)。 また、個人住宅についても、阪神・淡路大震災の死者の8割以上が建物の倒壊等によるものであったことから、平成15年5月29日に中央防災会議決定された東海地震対策大綱においても、地域住民への意識啓発や耐震診断の徹底した実施等、対策を早急に推進することとしている。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組み 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部地震調査委員会の公表する地震活動の評価結果等を参考に地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、更に教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能の状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成16年4月1日現在、全国で、約7万5,000基を整備してきた耐震性貯水槽については、今後も整備を推進していく必要がある。特に耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債等の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑止するためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対策を現場へ迅速かつ的確に伝達することが重要であり、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を進めていく必要がある。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある(第2章第10節を参照)。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震において、消防庁では、応急体制活動要領に基づく各班ごとの初動対応により、情報の集約、整理、広域応援対応等を速やかに行った。 また、阪神・淡路大震災後、自治体ごとに整備された震度情報ネットワークにより震度情報を早期に収集した。 しかしながら、初動期の情報収集に当たって、NTT回線も防災行政無線も繋がらず、山間部の一部で情報孤立地域も発生するなど、他の無線系の活用や非常用電源の整備等、非常時の通信確保について課題を残した。
5 初動体制の整備 初動対応の如何が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすなど、大規模災害時は発災直後から情報の収集・伝達等の臨機応変で的確な対応が極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保等、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 このうち、地方公共団体における防災担当職員の宿日直体制の整備など夜間・休日も含めた対応については、職員の参集や他機関との連絡を迅速かつ円滑に行う体制が確保されている必要がある。平成16年4月1日現在、都道府県では18団体において職員の宿日直、13団体において防災専門の嘱託職員による対応、市町村では、1,676団体において職員の宿日直、1,195団体で消防機関による対応、このほか守衛や民間委託警備員等様々な対応がとられている。今後、国民保護業務の追加も行われることをも配慮し、24時間対応での情報収集、連絡体制の推進を図っていく必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心に防災担当部局と一元化した組織体制を整備していく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震、東南海・南海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定を適切に実施するとともに、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、災害時相互応援協定に基づく救援活動が物資の供給と職員応援の両面から行われ成果を上げたが、初動期においては必ずしもスムーズに機能せず、応援側自治体からは、必要とされる物資や業務をできるだけ早く被災自治体から教えて欲しいという声が聞かれた。 今後も、できるだけ多くの自治体での相互応援協定締結を推進するとともに、自治体同士が普段から訓練等で連絡を取り合い、災害時には受援側の窓口を早期に立ち上げることができるような体制づくりを推進する。 また、阪神・淡路大震災を踏まえ、地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震等の切迫性が高まり、NBCテロ災害の発生等が懸念されることから、平成15年度の消防組織法の一部改正により法定化され、平成16年4月からは、大規模災害発生時等における全国的な観点からの緊急対応のため、消防庁長官による出動指示が可能となった他、国の国庫負担制度についても定められるなど、緊急対応体制の充実・強化が図られている。なお、消防庁では平成15年12月に東海地震及び南関東直下型地震に係る緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを作成し、緊急対応体制のさらなる強化を図っている。 平成16年10月23日午後5時56分頃発生した新潟県中越地震においては、発災後の広域的な応援出動に対応するため、発災直後の午後6時25分、新潟県の要請を待たないで、消防庁長官が消防ヘリコプターの出動を要請し、午後7時20分の新潟県知事からの出動要請をうけて、各都県知事に対して緊急消防援助隊の出動要請を行った。 同地震災害において、緊急消防援助隊は、1都14県から、累計441隊1,877名、消防防災ヘリ20機が出動し、453名を救助した。
7 実践的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日頃から実践的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実践的な訓練になるよう努める必要があり、地域の総合的防災力向上のため、参加型図上演習(DIG)の実施についても推進していく必要がある。 また、大規模災害時にあっては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実践的なものとなるよう、訓練参加者が、時間経過を追って応急対策をシミュレーションし、付与された状況に基づいて意思決定を行っていく訓練など工夫をこらした訓練に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。
8 津波対策の推進 平成15年9月に発生した十勝沖地震においては、市町村による津波避難勧告が適切に発せられなかった事例等が見受けられ、また同年5月の宮城県沖を震源とする地震においては、津波の怖さを認識しておきながら、地震の発生あるいは避難勧告等の発令があっても避難しないといった住民の行動が多くみられた。 さらに、平成16年9月に発生した東海道沖を震源とする地震においても、気象庁から津波警報が発せられた42市町村のうち、12市町村でしか避難勧告が行われなかった(第1−7−14表)。 津波被害軽減の基本は「避難すること」であり、海岸線を有する市町村においては、地域防災計画上の規定の見直しや発災時の迅速な避難勧告等、的確な津波避難対応に努めることが必要であり、住民も受け取った情報を自分自身の問題として捉え、実際に避難行動を起こす必要がある。 実効性のある津波避難対策を実施するうえで、海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示すとともに、東南海・南海地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策の一環として、モデル地域を選定し、同指針やマニュアルに基づき関係県、市町及び住民が連携して、地域ごとの津波避難計画を策定する事業に取り組み、この成果を取りまとめ、全国の海岸線を有する市町村に配布しており、今後とも、地域ごとの津波避難計画の策定を推進することとしている。 一方で、この津波避難計画に基づく避難を円滑に実施するための避難地や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進や施設の安全性向上を図るなど、津波防災の観点からのまちづくりを推進する必要がある。 こうした津波避難計画の策定や津波防災施設の整備等を推進するとともに、日頃から、住民等に対する津波に関する防災知識や津波避難計画の周知、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、いつでも迅速かつ円滑な避難行動ができる体制を整備しておくことが重要である。
第8節 特殊災害対策等1 原子力災害等の現況と最近の動向(1)関西電力株式会社美浜発電所3号機タービン建屋事故ア 事故の概要 平成16年8月9日15時22分頃、関西電力株式会社美浜発電所3号機が定格熱出力運転中のところ、タービン建屋2階、脱気器側の天井付近にある給水加熱器から脱気器への給水ラインである復水配管(直径約560mm、炭素鋼)の破口(最大で配管軸方向に515mm、周方向に930mm)により、蒸気及び高温水(約140度、10気圧)が噴出した。同建屋全体に蒸気が充満し、付近にいた作業員11名が熱傷を受け、5名が死亡、6名が負傷した。 なお、この事故による外部への放射能による影響はなかった。イ 消防庁及び消防機関の活動 美浜発電所からの119番通報を受けて、敦賀美方消防組合消防本部から17隊48名が出動した。到着後、現場指揮本部を設置するとともに、負傷者のトリアージを実施し、11名を救急隊等により搬送した。また、逃げ遅れ者等の有無を確認するため、タービン建屋内の人命検索を実施したが、負傷者等要救助者は発見されなかった。 さらに、福井県防災航空隊のヘリコプターにより、病院に収容されていた負傷者2名を別の病院に転院搬送した。 消防庁としては、事故状況の把握のため、独立行政法人消防研究所の職員2名及び消防庁職員2名を現地に派遣した。この事故を踏まえ、同年8月13日に、事故対応体制の再確認などを内容とする通知を各都道府県を通じ消防機関に通知するとともに、必要な情報提供等の支援を行った。また、同年10月4日、今後の消防活動に資することを目的として、関係道県、関係消防本部等の担当者による意見交換会を開催した。
(2)その他の原子力事故等 その他の原子力施設における最近の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の核燃料サイクル開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし火災となった事故。イ) 平成9年3月11日に核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成11年9月30日に茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設において、臨界に達する事故が発生し、従業員3名が重篤の放射線被ばくを受けた(うち2名死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3名、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事した従業員を含む多数の者が被ばくした事故。エ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク内の清掃作業中に、当該タンク内で体調不良となった作業員1名を救出するためタンク内に入った別の2名の作業員のうち1名が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案(病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明)。オ) 平成13年11月7日に中部電力株式会社浜岡原子力発電所の定格熱出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系配管が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建屋内に漏えいした事故。カ) 平成14年2月9日に東北電力株式会社女川原子力発電所の定期点検中の2号機の原子炉建屋地下1階の制御棒駆動機構補修室において、作業員が弁点検用資機材の後片づけの一環として浸透探傷用スプレー缶等の廃棄処理作業を実施中に出火し、ビニールシート等を焼損するとともに、作業員2名が火傷を負った火災。 なお、放射性物質による影響はなかったが、平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損する火災があった。また、火災の影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407名に避難勧告が出された。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓から原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、平成11年12月に原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等法令等の整備が行われた。 また、平成12年8月に原子力災害危機管理関係省庁会議において、関係省庁が一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領を取りまとめた原子力災害対策マニュアルが作成された。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて「原子力施設等の防災対策について」に改訂され、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1−8−1図、第1−8−2図、第1−8−3図)及び核燃料物質等の輸送時の防災対策についても盛り込まれた。 また、平成13年6月には、国、地方公共団体、原子力事業者等の医療に携わる者の責務等の明確化について、平成14年4月には、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策についてそれぞれ改訂が行われた。さらに平成14年11月には、原子力災害時におけるメンタルヘルス(心の健康)に関する対策について、平成15年7月には、緊急被ばく医療体制における地域ブロック化についてそれぞれ改訂が行われた。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。また、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。さらに、平成16年3月には緊急被ばく医療の実施体制に係る修正を行った。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設所在地等の21都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るため、地域防災計画の見直しを進めている。
(4)消防活動の充実等 原子力施設所在市町村等に対して、同報系無線及び放射線防護資機材の整備のための補助を行うとともに、原子力施設等における消防活動用資機材の調査研究、原子力災害時における消防応援体制に関する検討を実施した。 また、原災法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、平成13年5月に各都道府県及び消防本部へ配布している。さらに、消防隊員が災害現場で活用できるよう必要とされる知識、活動要領、留意点等をコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」を平成16年5月に、原子力災害における消防活動のケーススタディを内容とする「原子力施設等における消防活動訓練マニュアル」を平成16年6月に、それぞれ各都道府県を通じ、全消防本部に配布している。 なお、原子力災害の研修として、消防大学校においては、平成12年度から、幹部職員を対象に実施していた「放射性物質災害講習会」を平成16年度からは「NBC災害講習会」として再編し実施しているほか、文部科学省等において消防職員、消防団員及び自治体職員を対象とした各種原子力防災研修が実施されている。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、放射性同位元素(RI)の輸送については放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画には、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えに関する記述が加えられた。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において放射性物質輸送の事故時安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等についてマニュアルとしてとりまとめ、平成13年5月に各都道府県及び消防本部に通知した。 また、平成14年3月に、原子力災害危機管理関係省庁会議において、原子力災害対策マニュアルに輸送編が追加された。
3 原子力災害対策の課題 消防庁では、JCOウラン加工施設における臨界事故等を教訓とし、原災法の制定、原子炉等規制法の改正及び防災基本計画原子力災害対策編の見直しが行われたことに伴い、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアル、原子力施設等における消防活動対策マニュアル等の見直しを行った。さらに、平成15年6月に、消防組織法を改正し、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化として、二以上の都道府県に及ぶ大規模な災害又は毒性物質等による特殊災害対策に対応するため、運用上設けられていた緊急消防援助隊を法定化し、消防庁長官による出動の指示を創設するとともに、消防学校の教育訓練の基準を改正し、特殊災害科を新たに加えた。また、従来、主に原子力施設の災害対応のための資機材について整備を推進してきたところであるが、今後、テロ災害を含めた放射性物質災害対応のため緊急消防援助隊をはじめ各消防本部における放射線防護資機材の整備を図る必要がある。さらに、各消防学校等における教育・訓練体制の整備等により原子力防災体制の充実を図ることが必要である。 また、原子力緊急事態を想定した実践的な防災訓練の実施を推進し、その結果を地域防災計画等に反映し、より実効性のある原子力防災体制を構築していく必要がある。
原子力災害と防災資機材 原子力災害においては、一般の災害と比較し、主に以下のような特徴があります。〔1〕 放射性物質又は放射線の存在は、放射線測定器を用いることにより、検知できるが、その存在を、五感で感じることができず、被ばくの程度を自ら判断できないこと。〔2〕 一般的な災害と異なり、的確な消防活動を行うためには、放射線等に関する知識を必要とするとともに、汚染防護服、放射線測定器など特殊な装備が必要となること。〔3〕 事業者がその予防対策、応急対策について、大きな責務を有すること。〔4〕 原子力に関する専門的知識を有する機関の役割や指示、助言等が重要であること。 このような特徴を踏まえ、消防機関においては、原子力災害が発生した場合に、隊員の安全確保を図りつつ、迅速かつ的確な消防活動が行えるよう教育・訓練の充実や資機材の整備等を行っています。 消防機関において整備している資機材(例)とその目的は、次のとおりです。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル(地下鉄に接続するトンネルを含む。)、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、さらに長大海底トンネルとしての防災対策を取りまとめている。 次に、平成15年2月に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、消防庁では、国土交通省と共同で、「地下鉄道の火災対策検討会」を設置し、ガソリンによる放火火災を想定し、地下鉄道の不燃化の推進と旅客の安全な避難対策を基本として、我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を進め、平成16年3月に検討結果を取りまとめた。主な内容については次のとおりである。
(1)車両の火災対策 我が国の車両は、一定の不燃性や難燃性などの防火性能を備えているが、更に大火源火災を考慮し、以下の措置を講じる必要がある。ア 防火性能が低い材料及び溶融滴下する材料は、車両天井部への使用を制限する。イ 従来の車両材料燃焼試験に、溶融滴下の判定を追加するとともに、新たに大火源火災における防火性能を判定するための燃焼試験を追加する。ウ 隣接車両への煙の流入等を防止するため、連結する車両間に、通常時閉じる構造の扉を設置する。
(2)地下駅・トンネルの火災対策 異なる2以上の避難経路を設けること等の現行の基準に加え、大火源火災に対し、旅客の安全な避難を確保するとともに消防活動を支援するため、以下の措置を講じる必要がある。ア 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客が安全に避難できる時間を確保するための排煙設備を設置する。イ 旅客の安全な避難を確保するとともに、消防活動を支援するため、ホームとコンコースを結ぶ階段に、出火場所からの煙や炎を遮断するための防火シャッター等を設置する。ウ 旅客の避難経路を確保するため、袋小路部等には、売店を設置しない。これ以外の箇所に、売店を設置する場合には、自動火災報知設備を設置することとし、コンビニ型売店には、これに加え、スプリンクラー設備を設置する。エ 消防隊員が地上と通信するための無線通信補助設備を設置する。また、駅の規模等により、消防隊員が使用する機器のための非常コンセント設備を設置する。
(3)旅客の避難誘導等に関する対策 旅客の安全な避難誘導をより確実に行うため以下の措置を講じる必要がある。ア 火災発生時の運転取扱上徹底すべき事項を盛り込んだマニュアルを整備する。イ 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客の避難誘導の方法等火災発生時に係員が行うべき事項を定めたマニュアルを整備する。ウ 消火器、非常通報装置及びドアコックの車内表示を、ピクトグラム(絵文字)を使用する等により統一する。エ 避難経路図の駅への表示、消火器配置図の車両への表示等を行うとともに、通常時の構内放送、車内放送により、旅客に対し危機管理意識の高揚を図る。
(4)消防機関との連携 駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、鉄軌道事業者と消防機関が共有するとともに、定期的に両者が連携した訓練を実施する。 この結果を踏まえ、消防庁では、国土交通省と連携して地下鉄道の防火安全対策の充実を図ることとしている。 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。なお、平成15年中における道路トンネル火災は25件となっている(第1−8−4図)。 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や日本道路公団等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 都市部の道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、「乗用車専用道路(小型道路)」の導入に向けた検討が国土交通省において進められている。この「乗用車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は、車両火災等における消防活動の課題について検討を行っているところであり、消防庁としても、「乗用車専用道路」の導入時においても円滑な消火・救急活動が確保されるようその対策について検討していく。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が公布され、平成13年4月1日に施行された。 また、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ3回開催された。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、消火活動や救助活動が従来の施設と比較して困難さが増すことが予想されている。 このため、大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を平成16年2月に消防庁、国土交通省等関係機関において検討を行い、取りまとめた。 今後、大深度地下を利用する事業の計画に当たっては、同指針等を踏まえた安全対策が講じられるように、適切に指導、助言等を行う必要がある。 また、消防庁においては、地下街やトンネル等の消防活動が困難な空間において、消防隊員の位置特定機能、3次元数値地図を活用した消防隊員の位置表示機能、電子タグを活用した災害情報蓄積機能、無線通信を活用した現場指揮本部からの指示命令に対する応答機能等を有する小型軽量な可搬式のシステムについて、実用化に向けた開発を行っている。
[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成15年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故(以下「ガス事故」という。)のうち消防機関が出場したものの総件数は、1,344件(対前年比36件増)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが795件(同19件増)、液化石油ガスに係るものが549件(同17件増)となっている(第1−8−5図)。ア 事故の態様別発生件数 事故を態様別にみると、漏えい事故が1,043件(ガス事故全体の77.6%)、爆発・火災事故が301件(同22.4%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が708件(都市ガス事故全体の89.0%)、爆発・火災事故が87件(同11.0%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が335件(液化石油ガス事故全体の61.0%)、爆発・火災事故が214件(同39.0%)となっている(第1−8−5図)。イ 事故の発生場所別発生件数 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが958件(ガス事故全体の71.3%)、ガス導管等消費先以外におけるものが386件(同28.7%)となっている(第1−8−6図)。 消費先において発生した事故を、発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等発生原因が消費者に係る場合が529件(消費先において発生した事故全体の55.2%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が118件(同12.3%)、その他の原因が311件(同32.5%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が292件(都市ガス事故全体の58.9%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が55件(同11.1%)、その他の原因が149件(同30.0%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が237件(液化石油ガス事故全体の51.3%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が63件(同13.6%)、その他の原因が162件(同35.1%)となっている。
(2)事故による死傷者数 平成15年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は12人(対前年比1人増)、負傷者数は234人(同7人減)である。死者のうち、都市ガスによるものは3人(死者数全体の25.0%、対前年比3人減)、液化石油ガスによるものは9人(同75.0%、同4人増)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは67人(全体の28.6%、対前年比33人減)、液化石油ガスによるものは167人(同71.4%、同26人増)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが5人(死者数全体の41.7%)、爆発・火災事故によるものが7人(同58.3%)、負傷者数では漏えい事故によるものが67人(負傷者数全体の28.6%)、爆発・火災事故によるものが167人(同71.4%)となっている(第1−8−7図)。
(3)自損行為によるガス事故 平成15年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は80件(ガス事故全体の6.0%、対前年比23件減)、これらの事故による死者数は6人(死者全体の50.0%、前年同数)、負傷者数は63人(負傷者全体の26.9%、同7人減)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは63件(自損行為に起因する事故全体の78.8%、対前年比20件減)、爆発・火災事故に至ったものは17件(同21.2%、同3件減)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約7割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。 一方、ガス製造施設においても、関係法令の遵守をはじめ安全対策の推進を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成15年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は、81件(対前年比5件減)で、火災が4件(同1件減)、漏えいが55件(前年同件数)、それ以外のものが22件(同4件減)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、アンモニアが13件(全体の16.1%)、塩酸が9件(同11.1%)、硫酸が8件(同9.9%)、以下一酸化炭素等の順になっている(第1−8−8図)。
(2)事故による死傷者数 平成15年中の死者は4人(対前年比3人減)で、負傷者は78人(同15人減)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の2の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1−8−9図)。 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。 なお、消防庁では救助用資機材として陽圧式化学防護服や防毒マスク等の整備を推進している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努めるとともに、立入検査等を通じて貯蔵・取扱いの安全対策について指導を徹底する必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく必要がある。
(3)装備・資機材の整備 有毒ガスの発生など特殊な状況下では、通常の消防装備・資機材では的確な消防活動を行うことが困難な場合があることから、陽圧式化学防護服及び防毒マスク等の整備を一層推進する。 また、危険物災害等特殊な災害を想定した消防資機材の性能等についての自主的な研究・協議に関する活動についても推進している。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成15年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成15年1月1日から平成15年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)108港における海上災害で消防機関が出動したものは44件あり、このうち火災によるものが21件(全体の47.7%)、油の流出によるものが13件(全体の29.5%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が38件で全体の86.4%を占めている(第1−8−1表)。 最近の主な船舶火災としては、平成14年10月1日に長崎港で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」において、ぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 また、平成14年11月26日には、伊豆大島において座礁していたバハマ船籍の自動車運搬船「ファルヨーロッパ号」で出火、大量の煙が発生したため、付近住民が一時的に自主避難をする事態となった。 油の流出災害としては、平成14年12月5日に茨城県日立港において、北朝鮮船籍の貨物船「チルソン号」が座礁し燃料油が流出する事故が発生している。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 海上における油の大量流出事故に関しては、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、油汚染事故発生時の即応体制等をより強化するため、平成9年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を改正するとともに、平成10年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正している。 また、平成9年6月に防災基本計画の海上災害対策編が示されたことに伴い、地域防災計画の見直しを含め、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めている。 そのほか、平成15年6月に消防庁では、全国の沿岸海域を有する都道府県及び市町村に対して、漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況とその意見に関する調査を行った。その把握結果について、関係省庁に通知するとともに、都道府県に対し、管内の沿岸海域を有する市町村の地域防災計画に、漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定されるよう指導・助言した。
[航空災害対策]1 航空災害の現況と最近の動向 平成15年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は18件発生しており、そのうち飛行機事故は15件となっている。また、民間航空事故による死者は12人、負傷者は13人となっている(平成15年版航空・鉄道事故調査委員会調べによる。)。 平成15年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは4件となっている。なお、消防機関が出動したものは51件あり、このうち飛行場内が47件、飛行場外が4件となっている。 最近の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)や平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生している。
2 航空災害対策の現況 航空事故は、いったん発生すれば、大惨事となるおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が空港管理者により行われているが、消防庁では、国土交通省等と空港災害対策研究会議を設け、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準や航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者及び地方公共団体等関係機関に示し、航空災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、化学消防ポンプ自動車の整備について国庫補助を行うなど、空港及びその周辺で発生する航空災害に対処すべく消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成16年4月1日現在、空港所在市町村の93消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空災害対策の課題 航空事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においても、空港周辺地域での航空災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。
第2章 消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 平成16年4月1日現在の常備消防機関の現況は、消防本部が886本部、消防署が1,699署、出張所が3,207所、消防職員が15万5,524人となっている。 前年と比較すると、市町村合併と広域再編が進められたこと等により8本部減少し、消防署は3署増加し、消防職員は508人増加している(第2−1−1表、第2−1−1図)。消防職員のうち、女性職員は2,731人(前年比113人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 現在の市町村における消防体制は、大別して、〔1〕消防本部及び消防署のいわゆる常備消防と消防団とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、〔2〕消防団のみが存する地域(いわゆる非常備町村)がある。 平成16年4月1日現在、常備化市町村は、3,044市町村となり、常備化率は市町村数で98.2%(市は100%、町村は97.6%)に達し、人口の99.8%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化(昭和40年4月1日現在、常備化市町村は600市町村)に伴い、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が進められた。 その結果、平成16年4月1日現在、組合による消防本部は459本部(うち広域連合は29本部)に達しており、その構成市町村数2,182市町村(301市、1,517町、364村)は常備化市町村全体の71.7%に相当する。また、事務委託市町村数は195市町村(26市、132町、37村)に達している。さらに、平成6年度以降、市町村合併により22本部が9本部に再編されている。
(2)消防団 消防団は、常備消防と同様に市町村の消防機関であり、その構成員である消防団員は、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員である一方、他に本業を持ちながら、自らの意思に基づく参加、すなわちボランティアとしての性格も併せ有している。 平成16年4月1日現在、全国の消防団数は3,524団、消防団員数は91万9,105人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設置されている。 消防団は、 ・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務) ・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約6倍) ・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)といった3つの特性を活かしながら、初期消火や残火処理等を行っているほか、大規模災害時には住民の避難誘導や災害防ぎょ等を行っており、特に消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っているなど、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。 また、消防団は、平常時においても地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、コミュニティの活性化に大きな役割を果たしている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が37.7%を占め、また、平均年齢は37.4歳となっている(第2−1−2図)。
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2−1−2表)。
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が75.2%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は23.8%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2−1−3表)。
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、消防電話及び消防救急無線等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話(119番)は、加入電話又は公衆電話によって消防機関に火災、救急、その他の災害の発生等を通報するもので、平成16年4月1日現在、全国の消防機関に1万2,902回線が設置されている(第2−1−3図)。 また、近年では、携帯電話等の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数の全体に占める割合が20%にせまっている。現在、携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部へ転送する方式をとっている。この方式では、転送にかかる時間的遅延などの問題が指摘されていることから、消防庁では、携帯電話の発信地を管轄する消防本部で119番通報を直接受信可能なシステムへの移行を推進している。 さらに今後は、電気通信技術の変革により、IP電話や直収電話など電話サービスの多様化が始まっており、これらの新たな電話からの119番通報にも対応していく必要がある。イ 消防緊急通信網 消防電話は、消防本部・消防署等の消防機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話であり、消防機関相互の連絡に大きな役割を果たしている。また、消防・救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するため、消防機関は、特に消防・救急無線の増強に努めており、現行のアナログ方式より周波数の有効利用やデータ通信の点で優れているデジタル方式への移行などに向けた取組みを進めている。また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビ電送システム等、高度な機能を持った各種消防通信施設を導入する消防機関も徐々に増えている。これらの施設は多額の経費を要することなどから、小規模消防本部だけでは整備することができないことが多い。そのため、通信指令管制業務の効率化を図る観点からも一定エリア内に高機能な通信指令施設を設けるとともに、その施設の共同運用を進め、より広い範囲からの通報を受信し処理を行い、管轄消防本部へ割り振るシステムを整備するなど、通信指令業務の高度化に向けた取組みが求められている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成14年度の消防費歳出決算額は1兆8,593億円(前年度1兆8,625億円)で、前年度に比べ32億円(0.2%)の減少となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額50兆4,260億円(前年度51兆4,059億円)に占める消防費決算額の割合は3.7%(同3.6%)となっている(第2−1−4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成14年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万7,744円(前年度3万8,293円)であり、住民1人当たりでは1万4,676円(同1万4,726円)となっている(第2−1−4表)。ウ 経費の性質別内訳 平成14年度消防費決算額1兆8,593億円の性質別内訳は、人件費1兆4,011億円(全体の75.4%、前年度75.7%)、物件費1,638億円(同8.8%、同8.6%)、普通建設事業費2,198億円(同11.8%、同11.8%)、その他746億円(同4.0%、同3.9%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が92億円(0.7%)減少しているが、普通建設事業費は前年同額、物件費が35億円(2.2%)増加している(第2−1−5表)。
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成14年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,911億円(全体の91.0%、前年度91.3%)、次いで地方債1,034億円(同5.6%、同5.3%)、国庫支出金229億円(同1.2%、同1.2%)となっている(第2−1−6表)。イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、平成15年度の単位費用は1万900円(対前年度同額)、基準財政需要額は1兆7,331億円(対前年度伸び率△1.3%)であった。平成16年度は、物価下落等の影響により、単位費用は1万800円(同△0.9%)の措置であり、さらに段階補正の見直し等の影響により、基準財政需要額は1兆6,953億円(同△2.2%)に減少している(第2−1−7表)。ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがある。国は、消防施設強化促進法による法律補助及び予算措置による補助により、市町村等(一部都道府県を含む。)の消防防災施設等の整備に対して、予算の範囲内で、原則として補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の引上げが規定されているものがある。具体的には、地震防災対策強化地域の市町村、地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村及び石油コンビナート等所在市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村並びに原子力発電施設等立地地域として指定された市町村に対しては10分の5.5、成田国際空港周辺地域の市に対しては10分の6、町村に対しては3分の2、沖縄県の市町村に対しては3分の2以内の補助を行っている。 また、緊急消防援助隊関係施設の整備に対しては、予算措置により補助を行っていたところであるが、平成15年6月の消防組織法の一部改正により緊急消防援助隊が法定化されるとともに、一定の施設整備に要する経費については、予算の範囲内において国が補助するものとされたところである。 平成16年度予算においては、三位一体の改革により地方向け補助金について1兆円の削減を行うこととされ、さらに地方公共団体に対する奨励的補助金は前年度の5%相当額を減額するという厳しい制約が課せられた。このような中で、消防補助金に係る予算額は、緊急消防援助隊の義務的補助金化や、消防団関係設備、大規模災害・特殊災害等に対応した設備等の拡充・強化等を行うこととし、総額では、対前年度比9.3%減の159億491万円(前年度175億4,213万円)を確保したところである。 具体的には、三位一体の改革等により、林野分を除く防火水槽や降雨情報等収集分析装置などを補助対象から除外したものの、緊急消防援助隊関係については、特殊災害対応自動車、支援車II型及び消防救急デジタル無線設備を補助対象に加え、補助率についても一律2分の1に引上げを行った。また、消防団関係については、消防団拠点施設等整備事業と消防団活性化総合整備事業を統合し、補助率を原則2分の1に引き上げ、消防団総合整備事業を創設するなど、補助内容の充実・強化を図る一方、消防補助金の整理合理化を進めている。エ 地方債 消防防災施設等整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成14年度地方債許可額は、931億4,400万円で前年度に比べ16億3,800万円(1.7%)の減少となっている(第2−1−8表)。 地域における「災害に強い安全なまちづくり」を目指し、住民の安全の確保と被害の軽減を図るため、防災対策事業として防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業が推進されているが、これらの事業には防災対策事業債が充当され、その元利償還金の一部については地方交付税措置が講じられている。 防災基盤整備事業は、防災施設整備事業、防災システムのIT化事業、消防広域化対策事業に加え、平成16年度から緊急消防援助隊施設整備事業も対象としている。 また、公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地促進対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺整備助成補助金等がある。
(3)都道府県の消防防災費 都道府県の消防防災費の状況をみると、平成14年度における歳出決算額は895億400万円であり、平成14年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.18%である(第2−1−9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防等に要する事務費等である。 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成14年度における補助金の決算額は98億4,500万円で、前年度に比べて2億7,100万円(2.8%)増加している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に国庫補助に準じて定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は8,300万円で、前年度に比べて1,500万円(22.1%)増加している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成16年度の予算額は、前年度より4.9%減の220億2,929万円となっている(第2−1−10表)。 総額のうち、159億491万円(対前年度比9.3%減)は、消防防災施設整備費補助金及び消防防災設備整備費補助金に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点整備ア 消防の広域再編の推進 現在管轄人口が10万人に満たない消防本部が全体の約3分の2を占めており、小規模消防本部の広域再編により組織面での対応力を推進する必要がある。 消防庁では、平成13年3月に市町村合併との整合性を確保しながら消防の広域再編を推進するための指針を策定し、都道府県の対応を要請した。 これらに併せ、具体的な助言、情報の提供等を行う「消防広域再編アドバイザー」を導入したほか、一定の要件を満たす地域を「広域化重点支援消防」として指定し、各種の財政支援を講じている。 また、全国で市町村合併の推進の動きが活発になっていることを踏まえ、消防庁では、平成15年10月に、消防事務の効率・適正な遂行の観点から、市町村合併に伴う消防本部の広域再編に係る留意事項をとりまとめ、管轄区域の拡大に取り組むよう通知した。 特に、それまで組合を構成していた市町村の一部が合併し、当該合併後の市町村が単一で消防本部を設置することなどにより、結果として従来の消防本部の管轄区域が縮小され、消防本部の一層の小規模化を招くことがないよう要請している。イ 消防力の整備 消防庁により、「消防力の基準」及び「消防水利の基準」が示されている。 「消防力の基準」は、昭和36年の制定以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきている。従来は市町村が備えるべき消防力の「最低基準」と位置付けられてきたのに対し、平成12年1月に全部改正を行い、地方分権の趣旨を踏まえ、市町村の自主性を尊重し、市町村が消防施設及び人員を整備するに当たっての「指針」として位置付けるなど、所要の見直しを重ねてきた。 さらに平成15年10月の消防審議会においては、「消防力の基準」について、地方分権の趣旨にかんがみ、各市町村で消防力を確保するための指針としての性格を踏まえつつ、社会環境の変化に応じた見直しを行うべき旨の答申が出されたことを受け、消防庁では、「消防力の基準」の性格を明確化するため名称を「消防力の整備指針」に改めるとともに、救急需要の増加や警防・予防業務の高度化等に対応していくため、住民のニーズに応じた効率的・効果的な消防力の整備水準を定める観点から見直し作業を進めており、平成16年度中に改正を行う予定である。 主な改正事項としては、災害現場での情報収集や部隊の安全管理を図るため、消防署ごとに指揮隊を配置すること、ポンプ車等の通信機器等の性能を加味して人員配置の基準を弾力化すること、隣接署所による火災対応が可能な場合等を条件として警防要員を救急隊員と兼務させることを可能とすること、予防要員の充実強化を図ること等が挙げられる。ウ 消防財源の強化 消防力は逐年強化されているものの、複雑多様化している災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実強化の基礎となる消防財源については、地方交付税における消防費の基準財政需要額を逐年増額するとともに、国庫補助金の確保等なお一層その充実を図っていく必要がある。
(2)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮しなければならず、勤務条件はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、改善を積極的に図る必要がある。 特に交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、人員確保及び勤務体制の整備を図るとともに、〔1〕給料、手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、〔2〕仮眠室等の施設の整備等、執務環境の改善を促進すること、〔3〕消防活動時の安全を高めるため、装備品(防火衣等)を充実強化すること、〔4〕安全衛生管理体制を整備し、事故防止と健康管理に努めるなど、常に配慮が必要である。
(3)消防職員の高年齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成15年4月1日現在、41.3歳と一般行政職の42.6歳よりやや低くなっているが、昨年(41.1歳)より僅かであるが上昇している。 また、平成13年度から再任用制度が導入され、消防司令以下の階級にある特定警察職員等については、平成19年4月までに適用することとしており、今後、職員の高年齢化対策を一層推進する必要がある。 消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の活用を図るとともに、〔1〕装備の軽量化・動力化・安全化、〔2〕部隊編成、消防戦術の見直し・検討、〔3〕計画的な体力錬成、〔4〕能力開発、適正な人事配置、人事交流等、総合的な対策を推進し、活力ある体制の確立が必要である。
(4)消防団の充実強化・活性化対策の推進 全国各地では地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動した。消防団員は、水防活動や住民の避難誘導、被災者の救助活動などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。 また、今後も南関東直下型地震、東海地震、南海・東南海地震などの大規模地震の発生が危惧されており、さらに、平成16年6月に成立した国民保護法では、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うことが規定された。 これらのことからも明らかなように、消防団は、地域における消防防災体制の中核的存在として、地域の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっている。 しかしながら、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて、様々な課題を抱えている。・消防団員数の減少 消防団員数は年々減少しており、10年前の平成6年4月1日現在に比べても6万632人(6.2%)減少している。・消防団員のサラリーマン化 消防団員に占める被用者(サラリーマン)団員の割合は、10年前の平成6年4月1日現在に比べ6.5%増加しており、団員のサラリーマン化が進んでいる。・消防団員の高年齢化 消防団員の平均年齢は、10年前の平成6年4月1日現在に比べ1.6歳増加しており、少しずつではあるものの団員の高年齢化が進んでいる。・女性の採用 女性消防団員数は、10年前の平成6年4月1日現在に比べ8,209人増えて1万3,148人となっており、団員数が減少する間、年々増加している。しかしながら、女性を採用している消防団は全消防団の3割程度に止まっている。 そこで、消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性団員数10万人以上)確保することを目標とし、消防団が抱える様々な課題を解消し、消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、以下のような施策を実施している。ア 検討会の開催 消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、各種検討会を開催又は委員として参画し、検討・議論された提言を取りまとめ、施策に反映している。最近における主な検討会は以下のとおりである。(ア)消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会a 目  的 社会の就業構造の変化に伴い、消防団員の中でサラリーマンが占める割合は年々増加しており、今後、団員の確保策を進めるためには、サラリーマン団員の参加の促進が不可欠。そこで、サラリーマン団員等が参加しやすい消防団の活動環境及び組織制度等について必要な検討を行うため開催b 検討期間 平成16年7月〜平成16年12月(予定)c 座  長 大森彌・千葉大学教授d 主な検討内容・ サラリーマン団員・女性等が参加しやすい環境づくり・ 各消防団が特性に応じて選択できる組織制度・ 消防団の活動実態を踏まえた団員の処遇改善策(イ)地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会a 目  的 「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」(委員長:伊藤滋・早稲田大学教授)の報告(平成15年3月)において、これからの消防団のあり方として提言された「消防団員数の確保」等を踏まえ、地域防災力の充実強化を図るため、「消防団員数の確保」に特に焦点を当て、消防団員の確保対策及び国、地方公共団体、消防団がそれぞれ実施する具体的な方策について必要な検討を行うため開催b 検討期間 平成15年11月〜平成16年3月c 座  長 大森彌・千葉大学教授d 主な検討結果・ 都道府県、市町村、消防団が連携し地域の実態にあった団員確保方策の実施・ 市町村合併時における消防団員の定数の維持・ 事業所への説明や事業所との交流など、事業所の理解を深める活動の推進・ 消防団ホームページの充実や、市町村・都道府県ホームページでの消防団活動の紹介など、住民・団員が消防団情報にアクセスしやすい環境づくりの促進(ウ)消防団の新しい装備に関する検討会(事務局:日本消防検定協会)a 目  的 消防団が活動しやすい環境づくりを図るため、消防団装備の充実、魅力向上方策について、必要な検討を行うため開催b 検討期間 平成15年11月〜平成16年4月c 座  長 山越芳男・財団法人日本消防設備安全センター会長d 主な検討結果・ 資機材の積載スペースを拡大した消防ポンプ自動車や、大規模災害時用資機材のユニット化など、今後の消防団に相応しい消防ポンプ車両・各種資機材の提言・ 電子メールによる出動指令等、携帯電話を活用した情報通信システムの提案イ 各種施策の実施 消防団への参加促進や消防団の活動環境の整備を図るため、以下の施策を実施している。(ア)消防団の装備・施設の充実強化 消防車両・無線機器・安全装備品等の消防団に必要な設備や、消防団の活動拠点となる施設の整備に対して補助を行う「消防団総合整備事業」を実施している。(イ)消防団員の処遇の改善 消防団員の年額報酬や出動手当等に対する地方財政措置、退職報償金制度について、その充実を図っている。(ウ)消防団への加入の促進 消防団啓発ポスターや、小学生・中学生・高校生・大学生・専門学校生・社会人・女性といった全国の幅広い層に向けてそれぞれを対象にした消防団参加促進パンフレット(リーフレット)の作成・配布などにより幅広い層の消防団への参加の呼びかけに努めている。(エ)公務員や公共的団体職員の入団推奨 国家公務員(特に郵便局職員)・地方公務員や、農業協同組合・漁業協同組合・森林組合等の公共的団体職員の入団を推奨している。(オ)女性の入団推奨 地域に密着して生活し、地域コミュニティの結びつきの強い女性の入団を推奨している。(カ)全国消防団員意見発表会・消防団地域活動表彰の実施 地域における活動を推進するとともに、若手・中堅団員や女性団員の士気の高揚を図るため、・ 全国各地で活躍する若手・中堅団員や女性団員による意見発表会の開催・ 地域の実情に合わせた斬新で特色ある活動を常日頃展開し、魅力ある地域づくりを推進している消防団に対する表彰などを実施し、その内容をとりまとめ、全国に提供している。(キ)事業所への理解・協力 サラリーマン団員の増加に伴い、消防団員である住民を雇用する事業所による消防団活動の理解・協力を得ることは不可欠である。そこで、・ 消防団員である住民を多く雇用し、消防団活動に特に深い理解があり協力度の高い事業所に対する表彰・ 経済団体や東京に本社機構を持つ事業所への働きかけ・ 事業所に向けた消防団参加促進パンフレットの作成・配布などを実施し、事業所の消防団活動の理解・協力を求めている。(ク)インターネットによる消防団活動のPRa 「消防団のホームページ」の運用 「消防庁ホームページ」内に「消防団のホームページ」を設け、消防庁における最新施策や最新情報等を掲載し、消防団活動のPRに努めている。b 「消防団メールマガジン」の発行 全国の消防団等に関する情報を提供するため、平成15年3月から「消防団メールマガジン」を発行し、全国の消防団員を中心に配信している。
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成15年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。)への出動回数は97万8,292回で、出動延人員は1,177万5,203人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,680回、32秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は24万6,237回、出動延人員は473万9,850人となっている(第2−2−1表)。
(2)消防団員の活動状況 全国各地では地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動し、消防団は消防隊と連携しながら、昼夜を分かたずに多岐にわたる活動を行った。 平成15年度においては、宮城県北部を震源とする地震における堤防決壊防止活動、台風第10号による風水害・九州地方の集中豪雨における住民の避難誘導、十勝沖地震における津波警報発令に伴う住民への広報活動・避難誘導、栃木県黒磯市のタイヤ工場火災における消火活動に従事し、地域住民の安心・安全確保に力を発揮した。 平成16年度においては、各地で、相次ぐ台風等の上陸による水災や震災が発生した。新潟・福島豪雨、福井豪雨、台風第23号等の水災における水防活動及び住民の避難誘導、新潟県中越地震における住民の避難誘導及び巡回による住民の安全確認など、各地の消防団は多岐にわたる活動で被害の軽減に大きく寄与した。 全国の消防団は、自宅が被災した消防団員もいる中で出動し、地域の防災力の中心として、これらの果敢な活動を不眠不休で行い、被害の拡大を防止し、住民の安全確保に貢献した。その支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という精神である。一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、地域住民から高く賞賛されている。消防団員は、地域に居住又は勤務する住民により構成され地域に密着しており、地理や住民の居住先等の地域情報を十分に把握しているため、大規模災害時には特に能力を発揮している。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当、無線等の講習会や住宅の防火指導の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組みが行われている。また、少しずつではあるものの着実に増加している女性消防団員は、独り暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及など、女性の優しさや細かな配慮などを活かして活躍している。 このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして、地域の安心・安全のため重要な役割を担っている。
2 公務災害の状況 平成15年中における公務により死亡した消防職団員(火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡したもの等)は16人、同じく負傷したものは2,439人である。前年に比べて公務による死者は2人減少し、負傷者は106人減少している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが37.3%と最も多く、次いで火災によるものが24.8%、救急によるものが9.0%となっている(第2−2−2表)。
活躍する女性消防吏員 平成16年4月1日現在の全国の消防吏員数は15万3,978人で、うち女性消防吏員数は1,918人(1.25%)となっており、年々増加傾向にあります。 女性消防吏員は、昭和44年に川崎市で初めて採用され、その後、徐々に女性消防吏員を採用する消防本部が増えてきましたが、女性の深夜業務への従事が制限されていたこともあり、女性消防吏員を採用する消防本部はごく一部に限られていました。 その後、社会全般における女性の社会進出の広がり等を背景に、平成6年には労働基準法の一部が改正され、女性の深夜業務への従事制限が解除されたことから、住民からの期待や要望が強かった女性の救急隊員を配置しようとする消防本部が増えてきました。 消防庁では、消防組織の充実強化を図るための方策の一つとして、消防組織における女性消防吏員の更なる積極的な採用と職域の拡大について推進しているところです。平成16年2月6日付け消防消第32号通知などにより、〔1〕採用における平等な受験機会を提供すること、〔2〕警防業務、予防業務、救急業務など幅広く従事できるよう職域を拡大すること、〔3〕仮眠室やトイレ等の環境整備を行うこと、について各消防本部における積極的な取組みを求めるとともに、警防業務を含む消防活動においては、基本的に女性は男性と同様に活動ができることなどを示したところです。 消防庁は、今後とも、各消防本部において積極的な取組みが図られ、女性消防吏員がより一層活躍されることを期待しております。
大規模災害時に活躍する消防団 平成16年は、各地で、相次ぐ台風等の上陸による水災や震災が発生し、各地の消防団は消防本部と連携し、昼夜を問わず献身的な消防活動を行い、被害の軽減に大きく寄与しました。 7月から連続して発生した新潟・福島豪雨、福井豪雨や、相次いだ台風による災害では、各地で河川の氾濫や堤防の決壊、高潮などが発生し、地元消防団員は、いち早く河川巡視警戒や土のう積み作業などの水防活動に従事し、避難勧告が発令された際には、住民に対して周知広報や避難誘導を行いました。これら以外にも、人命救助活動、行方不明者の捜索、住民の検索活動、近隣消防団への応援活動などを行い、住民の安心・安全確保に貢献しました。 また、10月23日に発生した新潟県中越地震は、新潟県川口町の震度7を最高に、震度6以上の揺れを5度も記録するほどの大規模なものであり、新潟県中越地方を中心に大きな被害をもたらし、現在も余震が続いています(平成16年11月17日現在)。 地元消防団はいち早く現場にかけつけて火災の消火活動を行ったほか、避難勧告発令に伴う避難広報及び避難誘導、危険箇所の警戒・巡回による住民の安全確認など多岐にわたる活動を行い、現在も継続中です(平成16年11月17日現在)。 このように、災害防ぎょや避難住民の誘導などといった消防団の活動は、安心した住民生活を送る上で精神的な支えとなっており、住民から大きな信頼を得ています。
活躍する女性消防団員 女性消防団員は、地域に密着した存在であり、社会環境の変化に伴い、女性の能力を活かすことによる消防団の組織の活性化を図り、地域のニーズに応える方策として、女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まりました。男女共同参画の流れを受けて、女性の消防団への参加意欲も高まっています。 こうした動きの中、消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加し、平成16年4月1日現在、1万3,148人(全体の1.4%)、女性消防団員を採用する消防団は1,017団(全体の28.9%)と全都道府県に及んでいます。 岡山県岡山市・笠岡市、徳島県鳴門市、滋賀県栗東市など、新たに女性消防団員を採用する市町村は増えています。岡山県笠岡市では平成16年8月に新たに女性消防団員13人を採用し、研修を経て、防火広報や防火指導などの活動に取り組んでいます。 また、神奈川県横須賀市消防団では、平成3年度に全国で初めて、女性消防団員を主体とした消防団音楽隊を発足しました。市民に広く消防団をPRするため、消防の諸行事をはじめとする横須賀市主催のイベントに出場し、音楽を通じて市民と触れ合うなど、消防団の啓発活動に取り組んでいます。 このように、全国の女性消防団員は、通常の災害対応のほか、広報活動、一般家庭の防火指導、独り暮らし高齢者宅の防火訪問や応急手当指導など、多岐にわたる活動を行って大きな成果を上げており、今後も一層の活躍が期待されています。
3 勤務条件等(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防本部の給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二つがあるが、行政職給料表を採用している団体では、号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けすることや、出動手当等の特殊勤務手当や休日給の支給がなされるなど、交替制勤務の特殊性が考慮されたものとなっている。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成15年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢41.3歳で34万3,053円であり、一般行政職員の場合は平均年齢42.6歳で35万3,133円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が10万5,753円であり、一般行政職員は8万7,141円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は、2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成16年4月1日現在、全国886消防本部中、2部制を採用している消防本部は628本部(70.9%)、3部制を採用している消防本部は200本部(22.6%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は55本部(6.2%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.3%)である。ウ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、〔1〕消防職員の勤務条件及び厚生福利、〔2〕消防職員の被服及び装備品、〔3〕消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 平成15年度には、消防職員委員会制度施行以来、初めてすべての消防本部において消防職員委員会が開催(開催率100%)された。また、審議状況は、審議件数が5,590件となっており、このうち審議の結果、「実施することが適当」とされた職員の意見は、4割強にのぼっている。 こうした審議を経ることにより、平成14年度における審議の結果「実施することが適当」とされた意見の約6割が翌年度に実現されており、感染症に対する定期検査の実施、仮眠室の個室化、喫煙対策の実施、活動服等の改良、救急車への防刃ベストの積載など、勤務条件等の改善が進められている。消防職員委員会制度は、消防職員の意思疎通を図り、職員の意見を消防事務に反映しやすくすることにより、消防事務の円滑な運営に資することを目的とするものであり、各消防本部における消防職員委員会への取組みが着実に定着してきているが、今後ともその趣旨に沿って適切に運営されるよう努める必要がある(第2−2−3表、第2−2−4表、第2−2−5表、第2−2−6表、第2−2−7表)。エ 公務災害補償 消防職員は、公務により災害を受けた場合、地方公務員災害補償法の規定に基づき、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償並びに休業援護金等の福祉に関して必要な給付等を受けることができる。 また、消防吏員が身体に対し高度の危険が予測される状況下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 平成15年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数は、消防職員について1,907件であり、職員1,000人当たりの受理件数は12.2件となっている。
(2)消防団員の処遇改善 消防団員は、大規模災害時においては昼夜を分かたず多岐にわたり活動し、また、平常時においても地域に密着した活動を行っているので、消防団員の処遇については、十分に配慮し改善していく必要がある。ア 報酬・出動手当 市町村では、条例に基づき消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額や支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨にかんがみ、引上げ等、適正化を図る必要がある。 平成16年度においては、地方交付税の単位費用の積算に当たって、団員の出動手当について改善措置が講じられた(第2−2−8表)。イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況のもとで遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2−2−9表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2−2−10表)。 消防団員が身体に対し高度の危険が予測される状況の下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2−2−11表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、療養生活の援護、介護の援護及び就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万4,000円、勤務年数30年以上の団長で92万9,000円となっている(第2−2−12表)。オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 平成16年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償等責任共済契約を締結している関係市町村の数は、2,867市町村(契約対象市町村の91.5%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、3,127市町村(契約対象の全市町村)となっている。 消防基金の平成15年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,811人に対し、16億2,117万円となっている(第2−2−13表)。また、福祉事業の支給額は、延べ1,040人に対し6億1,855万円となっている。 消防基金の平成15年度の退職報償金の支給額は、5万9,254人に対し179億8,972万円となっている。カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が改正され、平成14年度から、消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施することとなった。 平成15年度の支払状況は、延べ66人に対し567万5,000円となっている。キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、消防団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された(平成14年7月)。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の普通教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。
4 安全衛生体制の整備(1)安全衛生体制 消防には、その業務の性格から労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定は適用されないものの、消防庁では公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実にかつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程の案」、「訓練時における安全管理に関する要綱の案」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、消防本部の安全管理体制の整備の促進と事故防止の徹底を図っている。 また、消防の衛生管理については、労働安全衛生法の規定が適用されるが、消防職員の勤務体制や職務内容からして、職員の健康管理には特に配慮する必要があるため、消防庁としては、「消防における衛生管理に関する規程の案」を示すなどの対応を図っている。
(2)惨事ストレス対策 消防職員は、火災等の大きな災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、このようなストレスを受けた場合には、身体、精神、情動又は行動にさまざまな障害が発生するおそれがある。このようなストレスの問題は、消防機関にとっても比較的新しい問題であり、各消防本部では情報不足や専門家とのつながりが課題とされていた。 消防庁では、平成13年12月に精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、この問題に関する対策の検討に着手して以来、全国の消防職員、消防本部、消防学校を対象とする大規模なアンケート調査を実施するなど研究を重ねてきた。平成15年3月には、研究の成果を踏まえ、惨事ストレス対策のあり方について報告書にとりまとめ、全国の消防本部、消防署所等に配布した。消防庁においては、報告書の提言を受け、惨事ストレスが危惧される災害が発生した場合、現地の消防本部へ精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言などを行う「緊急時メンタルサポートチーム」を創設し、平成15年度より運用を開始したところであり、4月に福岡県那珂川町で幼児3人が死亡した事案等2件、平成16年には7月に福島県郡山市で2人の消防職員が死傷した事故等4件(平成16年10月現在)に関してそれぞれ専門家を派遣している。
(3)安全管理体制の強化 平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生した。 消防庁では、この事態を重く受け止め、安全管理体制の再点検、安全管理マニュアルの徹底について通知を発出した。また、今後の再発防止に資するため、平成15年10月から学識経験者や消防関係者で構成する「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、安全への高い意識と高度な判断力の重要性、トップマネージャーが危険性のある物質等への知見を深めるための「新しい態様で使用される物品の火災等に係る情報の一元化システム」、心理学の要素を反映した効果的な教育訓練手法、現場指揮体制の充実等について平成16年11月に取りまとめた。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在国が行っている表彰等は次のとおりである(第2−2−14表)。
(1)国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。国の栄典制度については、21世紀を迎え、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、平成14年8月の閣議決定により見直しが行われ、平成15年秋から実施された。 その主な内容は、勲章については、〔1〕旭日章と瑞宝章について、従来の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用し、消防職団員については、瑞宝章とする〔2〕旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた区分をそれぞれ6段階に整理するとともに名称を変更する〔3〕危険業務従事者叙勲を創設する等であり、褒章については、年齢にとらわれることなく速やかに顕彰する等である。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のあるものをその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えること。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は公共に対して功労のある者に対して勲章を授与し、栄誉を称えること。 また、消防関係の叙勲は、以下の種類に分けられる。・春秋叙勲      春は4月29日、秋は11月3日に実施される。・危険業務従事者叙勲 著しく危険性の高い業務に精励した功労者に対し実施されるもので、上記の日に春秋叙勲とは別に実施される。・高齢者叙勲     春秋叙勲又は危険業務従事者叙勲によりいまだ勲章を授与されていない功労者のうち、88歳になった者に対して、毎月1日付けで実施される。・死亡叙勲      死亡した功労者に対し、随時実施される。・緊急叙勲      殉職者など特別な功績を有する者に対し、随時実施される。 <褒章> 自己の危険を顧みず人命救助に尽力した者、業務に精励し他の模範となるべき者、学術、芸術、産業の振興に多大な功績を残した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対して褒章を授与して栄誉を称えること。 褒章は、功績の内容によって、消防関係では以下の褒章が運用されている。・藍綬褒章     多年消防業務に従事し、その功労が顕著な消防団員を対象としている。・黄綬褒章     消防関係業務に精励し衆民の模範である者を対象としている。・紺綬褒章     消防関係機関に対し、一定の金額以上の寄附を行った個人又は団体を対象としている。・紅綬褒章     火災等に際し、身を挺して人命救助に尽力した者を対象としている。
(2)内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、消防表彰規程に基づき、消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受賞者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する。・安全功労者表彰 国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績をあげ、又は功績があったもの等を毎年「国民安全の日」(7月1日)にちなみ、7月上旬に表彰。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があったものや防災思想の普及又は防災体制の整備について顕著な功績があったものを毎年「防災の日」(9月1日)にちなみ、9月上旬に表彰。
(3)総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害の防ぎょに関する対策の実施について尽力して功績顕著な者を表彰。
(4)消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の種類により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア)定例表彰 毎年3月7日の消防記念日、7月1日の国民安全の日、9月1日の防災の日にちなみ、3月上旬、7月上旬、8月下旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・功労章 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防ぎょに関する対策の実施についてその成績が特に優秀な者を対象としている。・永年勤続功労章 永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者を対象としている。・表彰旗及び竿頭綬 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防ぎょに関する対策の実施について他の模範と認められる消防機関を対象としている。・安全功労者表彰 安全思想の普及、安全水準の向上等のため顕著な成績をあげ又は功労があったもので、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた消防職団員以外の個人又は消防機関以外の団体を対象としている。・防災功労者表彰 災害に際して防災活動、防災思想の普及等について、その成績が特に優秀なもので、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた個人及び団体を対象としている。(イ)随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度実施されるもので、その種類と対象は以下のとおりである。・特別功労章 災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕功章 災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・功績章 災害に際して消防作業に従事し、多大な功績があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕彰状 職務遂行中死亡した者を対象としている。・国際協力功労章 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者を対象としている。・表彰状 災害に際して、消防作業に従事し、顕著な功労をあげ、又は防災思想の普及等について優秀な成績を収めた者を対象としている。・賞状 災害に際して、消防作業に従事し、その功労が顕著と認められる者を対象としている。
(5)退職消防団員報償 永年勤続した消防団員の功労に報いるため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官より賞状と銀杯が授与される。
(6)消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に協力し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。
(7)その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・消防団地域活動表彰・消防関係業界功労者表彰・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防用設備等表彰・住宅防火対策優良推進組織等表彰・危険物保安功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰・防災まちづくり大賞・優良少年消防クラブ指導者表彰・救急功労者表彰
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職団員が適切に対応するためには、その知識、技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部(訓練機関)、消防署や消防団における教育訓練を基本としつつ、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。また、これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。特に、常に危険が潜む災害現場において、指揮命令に基づく厳格な部隊活動が求められる消防職員には、職務遂行にかける使命感と旺盛な気力が不可欠であることから、各消防本部においては、さまざまな教養訓練を通じて、士気の高揚に努めている。 なお、職場教育における基準としては、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、消防庁としては、訓練時や警防活動時の安全管理マニュアル等を示すなど、効率的かつ安全な訓練の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第26条)。 平成16年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。
(2)教育訓練の種類 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」(平成16年4月1日施行)が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と消防団員に対する基礎教育(従来の普通教育)、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は800時間とされている。・「基礎教育」とは、消防団員として入団後、経験期間が短く、知識・技能の修得が必要な者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は24時間とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び一定期間の活動経験を有する消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。 なお、この基準については、全国的に平成19年度以降に到来する大量の新規採用消防職員に係る初任教育への対応や、サラリーマン消防団員の増加に伴い、集合教育の受講が困難となるなどの検討課題に対応するため、昭和45年に制定された従来の基準を全面的に見直し、各消防学校の実情に応じたカリキュラム編成や柔軟な対応を可能としたものである。 見直しに当たっては、個別の各科ごとに、ア)必要の度合いを精査し、廃止、統合(消防職員の予防課程と査察課程)及び新設(消防職員の特殊災害科・上級幹部科、消防団員の初級幹部科・中級幹部科)を図り、イ)新たに教育訓練に係る「到達目標」や、ウ)推奨例としての「標準的な教科目及び時間数」を設定した。 消防団員の教育訓練についても、消防本部との連携や教授内容の分割実施など、柔軟な対応を可能とした。 各消防学校では、「到達目標」を斟酌・尊重した上で、「標準的な教科目及び時間数」を参考指針として活用して、具体のカリキュラムを定めることとなる。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成15年度では延べ2万4,895人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−1表)。 初任教育の期間については、平成15年度では、すべての消防学校が6か月以上の教育訓練を実施している。 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成15年度における新規採用者のうち初任教育の受講者は3,438人で、前年度に比べ206人増加している。なお、受講率については、92.4%となっている。 消防団員については、平成15年度では延べ7万3,947人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成15年度においては、地方公共団体職員、地域の自主防災組織、婦人防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ1万3,334人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成16年4月1日現在、消防学校の専任教員458人のうち派遣の教員は117人に及んでおり、前年度に比べ54人増加している(第2−3−2表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校への研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織の「消防講習所」として設置され、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となった。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する技術的援助を行っている。
(1)教育訓練施設等 消防大学校の教育訓練施設は、平成5年度以降、整備更新を進め、平成12年度にほぼ完了した。本館には、普通教室や図書館はもとより、大規模災害に対する指揮運用訓練室や300人収容の大教室、視聴覚教室等を設けている。 第2本館には、300人収容の講堂のほか救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。救急訓練室においては高度救急処置人形などの機材が整備され、救急救命士の気管挿管や薬剤投与講習に対応できるものとなっている。 屋内火災防ぎょ訓練棟では、濃煙高温状態の中で、複雑な建物内を想定した、より実戦的な消火・救助訓練を行うことができる。 一方、教育訓練車両については、平成13年度:救助工作車III型、高規格救急車、平成14年度:指揮隊車、平成15年度:普通ポンプ車を整備したところである。
(2)教育訓練ア 総合教育及び専科教育 消防大学校における教育訓練課程は総合教育部及び専科教育部の2部9学科から成っている(第2−3−3表)。 これらの課程では、消防の指導者、監督者としての幅広い人材の育成に努めている。平成16年度の実施課程は次のとおりである。イ 総合教育及び専科教育の実施状況 消防大学校(消防講習所を含む。)の卒業生は、平成15年度末現在で2万9,609人(うち、平成15年度の卒業生は816人)である。平成16年度入校者の教育予定人数は804人である(第2−3−4表)。ウ 実務講習 総合教育及び専科教育に加え、実務講習を行っている。(ア)危機管理セミナー(トップマネジメントコース及び防災実務者管理者コース) 地震等の大規模災害時に必要とされる緊急災害対策活動を適切に実施できるようにするため、地方公共団体の首長、幹部、防災の担当者に対して危機管理に関する教育訓練を実施している。(イ)航空消防防災講習会 消防防災航空隊の隊長等に対して、航空医学、航空法規、安全管理、救助訓練等を実施している。(ウ)緊急消防援助講習会 緊急消防援助隊の都道府県隊長等に対して、大規模災害時における効率的な部隊運用訓練、連携活動訓練を実施している。(エ)違反是正講習会 雑居ビルなどの防火対象物に係る消防法違反の是正を促進させるため、これらの業務処理に必要な専門的知識技能を教育している。(オ)NBC災害講習会 NBC災害対策を担当する消防本部の隊長や消防学校の教官等に対して、NBC災害に対する対応能力を向上させるための教育訓練を実施している。(カ)自主防災リーダー講習会 自主防災組織のリーダーに対して、地域における自主防災組織の充実に関する教育訓練を実施している。(キ)自主防災指導者講習会 自主防災組織の育成を担当している消防本部の職員、都道府県、市町村の職員に対して、自主防災組織の充実に関する指導法について教育訓練を実施している。エ 実務講習の実施状況 消防大学校の実務講習の終了者は、平成15年度末現在で9,846人(うち、平成15年度の終了者は561人)である。平成16年度の講習計画人数は654人である(第2−3−5表)。
(3)消防学校等に対する技術的援助ア 消防教育訓練講習会 都道府県等の消防学校の教官に対して、教育訓練に必要な知識、技術を教育するとともに、消防教育に共通したテーマを研究するために消防教育訓練講習会を毎年開催している。イ 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教官に、より高度な研究・研修の機会を提供するため、特別研究生として受け入れている。ウ 講師の派遣及びあっせん 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、予防、警防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣及びあっせんを行っている。平成15年度は延べ111回の講師の派遣及びあっせんを実施した。エ 消防教科書の作成及び視聴覚教材の整備 都道府県の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っている。現在までに24種類を発行している。また、視聴覚教材の整備を進めている。
(4)調査・研究 平成16年より消防大学校に「自主防災組織教育指導者に対する教育のあり方に関する調査研究委員会」を設置し、自主防災組織の教育訓練の内容及び教育形態について調査研究を行うとともに、自主防災組織指導者が活用するための教本等を作成している。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団(以下「救急振興財団」という。)が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間400人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成16年度には、あわせて全国で約1,400人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 これらの救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、講義及び実習が行われている。 その他、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、平成14年度から独立行政法人消防研究所の火災原因調査室により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした講座が実施されている(平成7年度〜平成13年度は、財団法人消防科学総合センターで実施)。 また、消防機関においても、生物・化学災害発生時における要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、生物・化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における生物・化学災害対応能力の充実を図っている。なお、平成16年度は、同年4月から都道府県の消防学校において順次設置されている特殊災害科の教官を養成するため、消防学校の職員が参加している。
6 全国消防救助技術大会等の実施 人命救助活動は、複雑多様化する各種災害に対応するため、高度かつ専門的な知識、技術が要求されるに至っていることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第33回大会は、平成16年8月26日に全国9ブロックから選抜された939人(陸上の部678人、水上の部261人)の隊員が参加して神戸市で開催された。
7 防災教育の普及 大規模地震やNBC災害等の発生も懸念されることから、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされている状況のもとで、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。このため、平成15年6月に改正された消防組織法において自主防災組織への教育訓練等に関する国・地方公共団体の努力義務が規定されたことも踏まえ、消防大学校、消防学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組みを進めている。また、昨今のライフスタイルの変化やICT革命の進展に対応し、インターネットを活用した遠隔教育(防災・危機管理e−カレッジ)の運用を平成16年2月から開始し、幼稚園児・小学校低学年児童向けや消防団向けのコンテンツの追加等、平成15年度から3年間の計画で内容を充実しているところであり、家庭や地域、学校等で学習できるような教育環境の整備を推進している。
気管挿管の指導者養成(救急科第59期、第60期) 消防大学校では、平成16年2月と3月の救急科第59期及び第60期において、既に救急救命士の資格を持ち全国から選抜された103人に対して気管挿管講習カリキュラムを取り入れた指導者教育を実施しました。 これは、約2週間(62単位)の講習と、医療機関における30症例を経験した救急救命士が医師の具体的な指示の下で気管挿管を行えることとなったことを受けたものです。 カリキュラムは気管挿管に関する座学やシュミレーション実習をはじめ、指導者として必要な教育技法や救急実務に至るまで多岐にわたるもので、卒業生は現在全国の消防学校等で行われる62単位の追加講習の教官として活躍しています。 気管挿管を実施することができる救急救命士が増加することで、救急搬送中の傷病者の一層の救命率の向上が期待されています。
平成16年度危機管理セミナー「トップマネジメントコース」 消防大学校においては、従前より、消防職員及び都道府県・市町村の防災担当職員に対する防災・危機管理教育を実施していましたが、平成15年度より都道府県知事や市町村長などの自治体トップ等を対象とした「危機管理セミナー・トップマネジメントコース」を開講し、平成16年度は7月30日と10月18日の2回にわたって次の内容で行いました。 ・講演<自然災害に対する危機管理・テロ災害等に対する危機管理> ・状況予測型図上訓練 このセミナーには延べ約140人の市町村長をはじめ、自治体幹部の方々が参加されました。 状況予測型図上訓練では、講師より地震の規模、季節、時刻、天候等を提示し、参加者はこの状況に対応した地震発生以降の役割や意思決定すべき項目を想定し、対応票に記入します。参加者の代表による対応票の内容の発表をもとに、講師やコメンテーターの意見をいただきました。訓練参加者からは、災害時に考慮すべき役割や普段から準備しておくことが明らかになった等、大変充実した訓練であったとの評価を受けました。
テロ災害への取組み(第1回NBC災害講習会) 我が国においては、平成6年と7年にそれぞれ松本市と東京の地下鉄でサリン事件が発生し、化学テロによる大きな被害を受けています。また、平成11年には茨城県東海村のウラン加工施設で臨界事故が発生し、原子力災害の危険性と対応の困難さを改めて認識させられました。 このような、N(原子力)、B(生物剤)、C(化学剤)による災害に対応するためには、資機材とともにNBC災害に関する専門的な知識、技術が必要となります。 消防大学校では、従来から実施していた放射性物質講習会の内容を拡充し、第1回NBC災害講習会を平成16年9月に開催しました。 46人の講習生は、NBC災害の特性やその消防活動要領及び安全管理などの講義に加え、防護服を着装しての現場活動訓練、大規模施設を想定した図上訓練等のカリキュラムを終了し、全国の消防本部でNBC災害対策の指導的役割を果たしています。
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は6.5秒に1回、国民28人に1人が救急搬送 平成15年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる件数も含め、483万2,900件(対前年比6.0%増)であり、前年と比較し、27万4,951件増加している。この増加した出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が20万8,808件、一般負傷が3万8,875件、その他が2万6,635件である。 また、救急自動車による搬送人員は457万5,325人(対前年24万5,390人増、5.7%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は2,078人である(第2−4−1表、第2−4−2表、附属資料31、32)。 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万3,235件(前年1万2,482件)で、6.5秒(同6.9秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の28人に1人(同29人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。 救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、次いで交通事故、一般負傷の順となっている(附属資料31)。
(2)搬送人員の51.4%が入院加療を必要としない傷病者 平成15年中の救急自動車による搬送人員457万5,325人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の48.6%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は51.4%となっている(第2−4−3表)。 なお、高齢者(65歳以上)の傷病者の割合は全体の41.4%となっている。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成15年中の急病の救急自動車による搬送人員457万5,325人の内訳をWHO(世界保健機構)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(11.9%)、消化器系(10.8%)、呼吸器系(10.4%)の順となっている(その他、症状・徴候・診断名不明確の状態を除く。)(第2−4−1図)。
(4)現場到着まで平均6.3分 平成15年中の救急自動車による出場件数483万813件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が269万8,950件で最も多く、全体の半数以上(55.9%)になっている。 なお、これらの平均現場到着所要時間は6.3分(前年6.3分)となっている(第2−4−2図)。
(5)病院到着まで平均29.4分 平成15年中の救急自動車による搬送人員457万5,325人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、20分〜30分未満が174万7,145人(全体の38.2%)で最も多く、次いで30分〜60分未満の158万4,789人(同34.6%)となっている(第2−4−3図)。 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は29.4分(前年28.8分)となっている。
(6)減少する転送 平成15年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.3%(454万1,424人)が転送なしに収容され、残りの0.7%に当たる3万3,901人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の96.7%に応急処置等実施 平成15年中の救急自動車による搬送人員457万5,325人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は442万4,415人(搬送人員の96.7%、前年は96.6%)であり、前年に比較し、24万1,138人(5.8%)増加している(第2−4−4表)。 また、平成3年に拡大された救急隊員による応急処置等の件数は、985万5,527件と前年の約10.8%増となっており、このうち救急救命士が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置の件数は4万7,135件にのぼり、前年の約12.3%増となっている。これは救急救命士の養成、救急科修了者(旧救急標準課程又は救急II課程の修了者を含む。以下同じ。)(2(2)、(3)参照)による運用が着実に推進されていることを示している。
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.3% 救急業務実施市町村数は、平成16年4月1日現在、3,048市町村(697市、1,853町、498村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2−4−5表)。 この結果、全3,101市町村のうち、98.3%(前年98.3%)の市町村で救急業務が実施されたこととなり、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(附属資料33)(人口は、平成12年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が427市町村、委託が202市町村、組合が2,419市町村となっている(第2−4−4図)。
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成16年4月1日現在、4,711隊(対前年62隊増)が設置されている(第2−4−5図)。 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成16年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で10万3,549人(対前年1,766人増)となっており、このうち5万7,936人が、救急隊員として救急業務に従事している(第2−4−6図)。 より高度化する救急需要に応えるため、消防庁は、救急救命士のみならず、救急科を修了した救急隊員の養成を推進している。現在、救急科修了者は、6万5,109人であり、うち、3万9,644人が救急隊員として救急業務に従事している。
(3)救急救命士 消防庁においては、全ての救急隊に救急救命士が常時1名配置される体制を目標に救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。 平成16年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国886消防本部のうち98.9%を占める876本部(対前年10本部増)となっており、救急救命士を運用している救急隊も年々増加し、全国4,711隊の救急隊のうち73.0%を占める3,439隊(対前年297隊増)となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は15,303人(対前年1,575人増)、救急救命士として運用されている救急隊員は13,505人(対前年1,353人増)と年々着実に増加している(第2−4−7図、第2−4−8図)。
(4)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成16年4月1日現在、5,636台(対前年62台増、1.1%増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格救急自動車は3,637台(対前年330台増、10.0%増)が配置されており、今後、更に高規格救急自動車の割合を高めていくよう推進している。
(5)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道及び本州四国連絡道路(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道等のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成16年4月末現在、供用延長7,516kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、日本道路公団及び本州四国連絡橋公団においては、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成16年4月1日現在、全国で4,965箇所となっている(附属資料34)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 平成16年3月31日現在、初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが509箇所(平成15年3月31日現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により410地区で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが170箇所で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち15箇所で整備されている。 救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されている。
4 救急業務高度化の推進(1)救急隊員の教育訓練の推進 平成3年に、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が導入されるとともに、救急隊員の行う応急処置範囲が拡大された。消防庁としては、都道府県等の消防学校における拡大された応急処置の内容を含んだ救急課程の円滑な実施や救急振興財団等における救急救命士の着実な養成が行われるよう、諸施策を推進してきている。 そのほか、全国救急隊員シンポジウムや日本臨床救急医学会等の研修・研究機会を通じて、救急隊員の全国的な交流と救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急救命士の処置範囲の拡大 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁は厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催し、平成14年12月及び平成15年12月に報告書をそれぞれ取りまとめた。平成14年12月の報告書では、次の(3)に述べるメディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、〔1〕除細動は、平成15年4月を目途に医師の包括的指示(具体的指示なし)による実施、〔2〕気管挿管は、平成16年7月を目途に医師の具体的な指示に基づき、一定の講習及び病院実習を修了した救急救命士が実施、〔3〕薬剤投与は、エピネフリン(心拍再開に資する強心剤)を中心とした最小限の薬剤投与の有効性と安全性に関し、平成15年中を目途にドクターカー等で研究・検証をできるだけ早く実施し、早期に検討会で結論を得る、こととされた。これを踏まえ、薬剤投与については、平成15年12月の報告書において、平成18年4月を目途として救急救命士によるエピネフリンの使用を認めることとすべきである、とされた。 〔1〕除細動 平成15年4月から、救急救命士は医師の具体的指示なしで迅速に除細動を実施すること(以下「指示なし除細動」という。)が可能となった。 消防庁としては、これに先立ち、指示なし除細動の円滑な実施に向けて、「包括的指示下での除細動に関する研究会」で示されたカリキュラムに基づく講習会を各地で実施し、また、メディカルコントロール体制の整備、特に事後検証体制の構築を各都道府県、消防機関に要請した。これらを踏まえ、平成15年4月から順次各地域で指示なし除細動が実施され、迅速な除細動による救命効果の向上が図られている(第2−4−7表)。 〔2〕気管挿管 気管挿管については、平成16年7月から、各地域において講習及び病院実習を修了した救急救命士により実施されているところであるが、このための講習については、各都道府県の消防学校を中心に、平成16年1月以降、体制が整った消防学校等から順次開催され、また、病院実習については、講習修了後に各地域の医療機関の協力を得て行われている。 今後も、関係者の理解と協力のもとに、実習先医療機関の確保等に努めつつ、気管挿管を実施することができる救急救命士の養成をさらに促進していくことしている。 〔3〕薬剤投与 薬剤投与については、平成15年12月の報告書において、平成18年4月を目途として、救急救命士によるエピネフリンの使用が認められることとなっている。薬剤投与の実施に当たっては、高度な専門性を有する所要の講習及び病院実習を修了する必要があることから、消防庁としては、救急振興財団等による全国的な研修体制の整備をはじめ必要な措置を講じ、円滑な実施に向けて準備を進めている。
(3)メディカルコントロール体制の充実 救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、今後ともメディカルコントロール体制を充実していく必要がある。 このメディカルコントロール体制とは、消防機関と医療機関との連携によって、〔1〕救急隊が現場からいつでも迅速に医師に指示、指導、助言が要請できる、〔2〕実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行い、その結果を再教育に活用する、〔3〕救急救命士の資格取得後の再教育として、医療機関において定期的に病院実習を行う、という体制をいうものである。 消防機関と医療機関との協議の場である各都道府県単位及び各地域単位のメディカルコントロール協議会については、全て設置が完了しており、事後検証等により、救急業務の質的向上に積極的に取り組んでいるところである。
(4)ウツタイン様式の導入 ウツタイン様式とは、心肺停止症例をその原因別に分類するとともに、目撃の有無、バイスタンダーによる心肺蘇生の有無等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後を記録するためのガイドラインであり、世界的に推奨されているものである。 我が国では、平成17年1月から全国の消防本部で一斉に導入を開始する予定であるが、全国統一的な導入は各国で初めての先進的な取組みとなるものである。消防庁としては、ウツタイン様式による調査結果をオンラインで集計・分析するためのシステム整備も併せて進めており、運用が開始されると、救急救命士が行う救急救命処置の効果等の検証や諸外国との比較が客観的データに基づき可能となり、プレホスピタル・ケアの一層の充実に資するものである。 ウツタイン様式の導入に当たっては、消防機関と医療機関の連携体制の充実・強化を促進していくことが重要である。
(5)救急隊員等による自動体外式除細動器(AED)の使用 従来、医師、救急救命士等以外の非医療従事者には心肺停止傷病者に対する除細動を実施することが認められていなかったが、平成16年7月に示された厚生労働省設置の「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」の報告書により、非医療従事者による自動体外式除細動器(AED;Automated External Defibrillator)の使用を可能とする見解が示された。報告書では、救急隊員、一般消防職員等、業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心肺停止傷病者に応急の対応をすることが期待・想定される非医療従事者には所要の講習が必要とされた。 これを受け、消防庁では、「応急手当普及啓発推進検討会」を開催し、救急隊員等のための講習のあり方を取りまとめたところであり、今後、救急隊員等に所要の講習を実施することにより、救急現場におけるより迅速な除細動が可能となり、救命効果の向上が期待される。
(6)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成15年中の平均では6.3分である。この間に、救急現場に居合わせた一般市民による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう、実技指導に積極的に取り組んでいくことが重要である。現在、特に心肺機能停止傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の習得に主眼を置き、住民体験型の普及啓発活動が推進されている。 消防庁としては、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月制定)により、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・事業所に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発活動を行っている。この結果、講習受講者数は年々着実に増加しており、平成15年中の救命講習受講者数は114万人を超え、消防機関は最も代表的な応急手当普及啓発の担い手として期待されている。 消防機関においては、昭和57年に制定された「救急の日」(9月9日)及びその前後の「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を推進しているところである。 また、平成16年7月から、一般市民を含めた非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用が可能となったことから、消防庁としては、「応急手当普及啓発推進検討会」の報告を受けて必要な要綱等の改正を行い、消防機関における自動体外式除細動器(AED)による除細動の内容を組み入れた救命講習の実施を促進していくこととしている。
5 救急業務体制の整備の課題(1)救急救命士の養成 救急救命士は、平成3年の制度導入以降、着実に養成され、各地の救急現場において活躍しているところであるが、全国すべての救急隊に少なくとも救急救命士が常時1名配置できるよう、今後も引き続き救急救命士の養成を積極的に進めていく必要がある。 救急救命士の資格は、消防職員の場合、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格することにより取得することができる。資格取得後、救急救命士が救急業務に従事するには、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。 救急救命士は、現在、救急振興財団の救急救命士養成所で年間約1,000人、政令指定都市等における養成所で年間約400人を養成しているところであるが、救急救命士の処置範囲の拡大(気管挿管・薬剤投与)に伴う講習内容の改正等を踏まえて、医療機関と連携しながら、各養成機関での救急救命士の養成を円滑、着実に進めていく必要がある。
(2)救急用資機材等の整備 救急業務の高度化に伴い、消防庁としては、高規格救急自動車、高度救命処置用資機材等の整備に対する国庫補助を行うとともに、地方交付税措置を講じるなど高度な応急処置の実施に必要な救急用資機材等の整備を促進している。 また、救急救命士の処置範囲拡大に際しては、有効性と安全性の双方に優れているとされる二相性波形除細動器の導入促進及び平成16年から消防学校で実施されている気管挿管講習に必要な資機材の整備等に対して支援を行っている。 今後とも引き続き、高規格救急自動車及び救急救命士の処置範囲の拡大に対応した高度救命処置用資機材の配備を促進する必要がある。
(3)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染の危険性があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務において極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の科目を設けるとともに、重症急性呼吸器症候群(SARS)を含めた各種感染症の取扱いについて、感染防止用マスク、手袋、感染防止衣等を着用し、傷病者の処置を行う共通の標準予防策等の徹底を消防機関等に要請しているところである。 また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制について整備していく必要がある。
(4)患者等搬送事業の指導育成 患者等搬送事業者については、国土交通省から一般乗用旅客自動車運送事業等の許可を受けている。 消防庁でも、患者の容態急変時の対応や感染防止対策等の観点から平成元年10月に「患者等搬送事業指導基準」を設け、消防機関による患者等搬送事業の適切な指導を推進しているところであるが、今後福祉分野等とも連携しつつ、一層の活用が期待されている。
(5)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 消防防災ヘリコプターを活用した救急業務については、平成10年3月に消防法施行令が一部改正され、消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれを基に出動基準を作成するなど、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を進めている。 平成15年中における全国の消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数2,087件(前年比0.9%増)、搬送人員2,078人(同4.8%増)であり、消防防災ヘリコプターによる救急搬送への需要は年々増加している。特に、離島、山村等からの救急患者の搬送や交通事故等による重症患者の救命救急センター等専門的医療機関への救急搬送、更には、大規模災害時における広域的な救急搬送などに大きな効果を発揮し、救命効果の向上に貢献するものと期待されていることから、今後とも、医療機関と連携をしながら、消防防災ヘリコプターの一層の活用を推進していく必要がある。
非医療従事者の自動体外式除細動器(AED)の使用について1 自動体外式除細動器について 心臓突然死の原因である心室細動に対する救命処置で最も有効であると言われているのが自動体外式除細動器(以下「AED」という。)による除細動(電気ショック)であり、欧米で心臓突然死の減少を目的として、鉄道の駅や民間航空機等に設置したり、心臓の不整脈が原因で心肺停止となる可能性が高い危険因子を有する患者の家庭に設置したのがはじまりでした。2 欧米におけるAEDの状況について 欧米の大都市において、AEDは心肺停止傷病者の発生頻度の高い、国際空港、スポーツジム、高齢者福祉施設等の公衆が多く出入りする公共の場所を中心に設置が進んでいます。また、AEDは、救急隊員、消防職員、警察官等はもちろん、一般市民による使用も可能となっています。特に国際空港における普及状況がめざましく、米国では、シカゴのオヘア空港に1999年5月からAEDの設置が開始されて以来、全米の空港において設置が進んでいます。3 日本のAEDの現状 日本では、除細動は医師のほか、救急救命士が実施してきました。その結果、心肺停止傷病者に対する除細動が迅速に実施できるようになり、不整脈が原因の心肺停止傷病者の救命率が向上しました。 そのような中で、平成15年11月から厚生労働省が「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」を開催し、日本国内における非医療従事者のAED使用はどうあるべきか、検討が開始されました。そして、平成16年7月に、その検討結果を踏まえて、非医療従事者によるAEDの使用が可能との方針が示されました。4 救える命を救うために 日本国内においても、国際空港等の公衆が多く出入りする公共の場所にAEDが設置されれば、突然発生する心肺停止傷病者に対して一般市民がAEDを使用することができるようになります。 そのため、今後は、さらに一人でも多くの一般市民が心肺蘇生法とAEDの使用法を学び、一人でも多くの命が救われることが期待されます。
ウツタイン様式導入に当たって1 ウツタイン様式について 1990年6月に、ノルウェーのウツタイン修道院で開催された国際蘇生会議において、アメリカ心臓協会等の世界各国の学会の代表が、病院外心肺機能停止症例の蘇生率等について、地域間・国際間での比較が可能になるよう、記録方法に関するガイドラインを作成しました。 具体的には、心肺機能停止症例をその原因から心原性(心筋梗塞等)、非心原性(交通事故による外傷、溺水等)に分類すると共に、目撃の有無、バイスタンダーによる心肺蘇生の有無、初期心電図波形別等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後転帰を記録するためのガイドラインであり、その名称がウツタイン様式とされました。2 我が国におけるウツタイン様式の導入の経緯について ウツタイン様式は、90年代以降、心肺機能停止症例に関する記録方法として、世界的に推奨されてきました。しかし、欧米諸国においても、この様式に基づく記録が国レベルで行われている例はなく、一部の救急システムの進んだ地域での導入例があるとはいえ、現在も都市レベル、地域レベルでの導入にとどまっています。 我が国においても、東京都下や大阪府下等において、ウツタイン様式による記録、分析が行われている例や、また、救急振興財団において、平成9年から平成13年にかけて、全国10の救命救急センターと関係消防本部の協力により、ウツタイン様式による救命効果の調査が行われた例等がありますが、全国レベルでの導入は未だ行われていませでした。 しかしながら、救急救命士の処置範囲の拡大等の救急業務の質的な変化を踏まえ、救急業務高度化推進検討会において、ウツタイン様式に基づく心肺機能停止症例に関する記録様式の全国的な導入の必要性について検討が重ねられた結果、平成17年1月からウツタイン様式を導入すべきとの報告書がとりまとめられました。3 プレホスピタル・ケアの充実に向けて 消防庁としては、ウツタイン様式の導入によって、全国的な集計、分析だけではなく、各都道府県や消防本部単位においても、集計、分析を実施し、得られる統計データを消防機関と医療機関が共有し、救命効果の客観的・医学的な評価、地域間・国際間の比較・検証を実施する予定です。そして、今後の我が国のプレホスピタル・ケアの充実に有効活用するとともに、救急救命士の処置範囲拡大を含めた、一層の救急業務の高度化を推進し、我が国の救命率の更なる向上を目指します。
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成15年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数5万1,810件(対前年1,396件増、2.8%増)、救助人員5万2,301人(同23人増、0.0%増)である(第2−5−1表、附属資料35)。
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ134万1,983人である。消防職員は、延べ116万4,921人で、うち交通事故が34.3%、火災が25.9%である。一方、消防団員は、延べ17万7,062人で、うち火災が81.2%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ55万1,329人であり、救助活動1件当たり10.6人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は爆発事故の24.0人が最も多く、次に火災の20.2人となっている(第2−5−2表)。
2 救助活動の実施体制(1)救助隊設置消防本部及び構成市町村 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、救助活動に関する高度な専門教育を受けた隊員、救助活動に必要な資機材及びこれらの資機材を搭載した救助工作車等によって構成される。 平成16年4月1日現在、消防法第36条の2の規定並びに救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)に従い、救助隊を設置している消防本部は851本部と前年度と比較して8消防本部減少し、また、当該消防本部の構成市町村(受託市町村を含む。)は2,942市町村であり、前年度と比較して93市町村減少している。これは、主に消防機関の広域再編及び市町村の合併が進められたためである(第2−5−3表)。
(2)救助隊数及び救助隊員数 救助隊は851消防本部に1,494隊設置されており、救助隊員は2万4,262人となっている。1消防本部当たり1.8隊の救助隊が設置され、1隊に16.2人の救助隊員が配置されていることとなる。また、救助隊数及び救助隊員数については、省令第3条の規定による救助隊、省令第4条の規定による救助隊(より専門的な教育を受け、多くの資機材を備えた救助隊)ともに前年度と比較して増加している(第2−5−4表)。
(3)救助隊が乗車する車両及び主な保有資機材 救助隊の保有する資機材については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている。 それゆえ救助工作車及び救助隊の保有する資機材については、国庫補助に加え、地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている(第2−5−5表)。
(4)救助隊の教育訓練 消防職員の救助活動については、より高度かつ専門的な知識と技術が不可欠となってきている。このため消防庁では、平成10年度から、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催しており、パネルディスカッション等による活発な意見交換や、事例研究などが行われている。また、消防学校の専科教育の救助科では、140時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2−5−6表)。
3 テロ対策 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置、平成15年3月18日にイラク情勢等の緊迫化を踏まえ、消防庁に「イラク情勢等を踏まえた消防庁テロ対策室」を設置、また平成16年7月2日にテロ災害への一層の対処の強化を図るため「消防庁イラク問題・テロ災害対策本部」と名称を変更し、所要の警戒態勢をとるとともに、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期するため、次のような取組みを実施した。
(1)地方公共団体における危機管理体制 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、機会をとらえ各都道府県に対して危機管理体制の点検、強化等の要請を累次に渡り行った。特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築など、所要の体制整備について要請を行い、全都道府県においてテロ対策本部等が設置された。また、テロ対策に関する国と地方公共団体との連携、更には警察機関との一層の連携の強化を図った。
(2)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防、警察、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要があり、平成13年11月には、政府のNBCテロ(放射性物質(Nuclear)、生物剤(Biological)及び化学剤(Chemical)を用いたテロ)対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられた。消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 また、米国における炭疽菌事件などを踏まえ、今後、生物テロ災害の発生する危険性が考えられることから、平成15年5月に炭疽菌、天然痘の災害発生に備えるため、関係機関の役割分担と連携、必要な処置を明確化した「生物テロへの対処」が取りまとめられ、その旨を各都道府県内の関係部局、市町村及び消防機関に対して周知し、万全の体制を図った。 平成16年7月27日に東京の地下鉄で実施された消防・警察、その他関係機関による化学剤テロ災害合同訓練を始めとして、各都道府県内においては、比較的規模の大きな消防本部等を中心に、特にNBCテロ災害を想定した合同訓練を実施し、関係機関の連携の強化を図っている。
(3)テロ災害に対応するための消防資機材の整備 NBCテロに対し、消防隊員の安全を図りながら迅速に対応するためには、身体防護や検知のための特殊な消防活動用資機材を用いた消防活動を実施する必要がある。消防庁では、米国における炭疽菌事件の発生などを踏まえ、特に、NBCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算において、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し各都道府県の代表的な消防本部に対して、これらを無償貸与し、NBCテロ災害の対処能力の強化を図った。 また、国庫補助の対象に、テロ対策特殊救助資機材として、平成14年度に陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器、平成16年度にNBC対応車両を新たに加えたところである。
(4)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識、技術が必要である。このため、消防庁では消防職員及び消防団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防本部・全消防団等に配布した。 また消防大学校においては、テロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、従来からの本科、幹部研修科、消防団長科、救助科、危機管理講習会等の学科にNBCテロ災害対応に係る科目を組み入れている他、平成16年度からはNBC災害講習会を新設した。 一方、都道府県の消防学校においても、従来救助科の中に授業科目として取り入れられていた特殊災害分野について、平成16年度から特殊災害科として新設した。
4 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は、火災、交通事故、労働災害、爆発事故、水難事故、自然災害、山岳遭難等幅広い災害、事故に及んでいる。 加えて、平成7年の地下鉄サリン事件や、平成11年の茨城県東海村ウラン加工施設における臨界事故等が国内で発生し、また平成13年には米国において同時多発テロ事件、炭疽菌事件が発生したように、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 消防庁ではこのような状況を勘案し、これまで生物・化学災害時の除染要領等について検討し、平成16年3月に「BCテロ災害に伴う消防機関が行う除染マニュアル」として報告書を取りまとめた。 また、平成16年12月、全国の救助隊員等約1,300名を対象として、「救助活動における新たな救助技術等の導入について」をテーマに全国消防救助シンポジウムを開催し、講演やパネルディスカッションを行った。 このように、多種多様な事故・災害に的確に対応するため、各種災害に対応する救助活動のマニュアル及び救助技術等の教育プログラムの充実を図るとともに、高度かつ専門的な機能・性能が要求される救助資機材の機能・性能の明確化や消防・防災ロボット等先進技術の活用について検討を行っており、また、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。 なお、震災等の大規模災害やテロ災害等の特殊災害時においては、市町村のみでは救助活動等の対応が困難なことから、全国的な観点から緊急対応体制を充実・強化するため、平成15年6月に消防組織法を改正し緊急消防援助隊を法的に位置付け、必要な場合には消防庁長官が出動を指示できることとした。平成16年4月現在、指揮支援部隊28隊、特殊災害部隊221隊、救助部隊277隊、救急部隊610隊等、計2,821隊(重複分を除く。)が登録されている。
テロ災害対応について テロ災害に対する危機管理のあり方については、災害が発生しないよう備えることは当然ですが、万が一災害が発生した場合にどうするか、被害を最小限にとどめるために何をなすべきかを強く認識し、最善を尽くすことが大変重要になります。 消防庁としても、これまで、大規模災害やNBCテロ災害を含む特殊災害への対応能力強化のための消防組織法の改正(広域応援のための緊急消防援助隊の登録、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示権の付与等の法整備)、NBCテロ対応資機材の配備による対応能力の向上(全国の主要な消防本部へ陽圧式化学防護服・除染シャワー等を配備、全救急隊・消防航空隊に防毒マスクを配備)、特殊災害に係る消防大学校、都道府県の消防学校等における教育内容を充実するとともに、「自衛隊化学学校」、「原子力安全技術センター」等で消防職員の研修を実施しています。 また、化学災害(毒・劇物等)に係る消防活動マニュアル(平成14年3月)、生物・化学剤テロ災害に伴う消防機関が行う除染活動マニュアル(平成16年3月)、原子力施設等における消防活動対策ハンドブック(平成16年3月)等活動マニュアルの作成配布を通じて体制の充実を図ってきているところです。 地方公共団体におけるテロ災害対応の取組みに対しては、都道府県、消防機関へ「テロ災害対策の確認及び徹底」について累次にわたって通知を発出し、全国都道府県を集めた関係会議等において周知徹底を図ることなどにより、体制の充実を求めています。 特に、テロ災害等については、行政における関係部局が複数にわたるため、一丸となった協力体制が必要になるとともに、消防・警察・医療機関をはじめ、関係機関との迅速な連携が求められるため、知事・市長等のトップの判断、リーダーシップが必要不可欠になります。 消防庁においても、様々な災害を想定して、現場の機関と連携した訓練を随時実施しています。例えば、平成16年7月27日に、東京都内における現場訓練(都総合防災部、交通局、健康局、警視庁及び東京消防庁等の参加)と警察庁及び消防庁(職員現場派遣、広域応援等訓練を含む。)における訓練を連携させることにより、「現場から国」までの連絡・連携体制を確認する化学テロ災害対応連携訓練を実施したところです。
東京消防庁消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー隊)について 平成16年10月の新潟県中越地震で発生した長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故現場で、地元長岡市、新潟県と緊急消防援助隊は2歳男児とその母親の計2名を地震発生以来4日ぶりに救出(母親は病院搬送後死亡確認)しました。そこで中核となり救助に当たったのは、東京消防庁消防救助機動部隊、通称「ハイパーレスキュー隊」でした。ハイパーレスキュー隊は、平成7年1月の阪神・淡路大震災を教訓として、東京消防庁が平成8年12月に組織しました。 この部隊は、震災時や大規模な災害に対処できるよう、高度な救助・救急技術と重機の運転資格等を有する選りすぐりの隊員及び震災対策用救助車・特殊救急車・大型重機等の車両で構成され、赤外線スコープや電磁波探査装置等の人命探索機材を備えています。 このような資機材を有するハイパーレスキュー隊は、東京消防庁管内2箇所に配置されており、それぞれの部隊は、救助車等を備える「機動救助隊」、ドラグショベル、クレーン車等大型重機や大型化学車等を備える「機動特科隊」及び特殊救急車や遠距離大量送水装備等を備える「機動救急救援隊」により編成され、災害の態様に応じて、機動的に隊や車両、装備を選択し、現場に向かいます。 これまで、平成13年9月の新宿区歌舞伎町ビル火災等、東京消防庁管内で発生した様々な災害に対応したのを始め、緊急消防援助隊としても、平成16年10月の新潟県中越地震のほか、平成8年12月長野県小谷村土石流災害、平成12年3月北海道有珠山噴火災害等に派遣されるとともに、国際消防救助隊(IRT-JF)の一員として、平成9年10月のインドネシア森林火災、平成11年1月のコロンビア地震、8月のトルコ地震、9月の台湾地震、平成15年5月のアルジェリア地震、平成16年2月のモロッコ地震に災害派遣されています。 また、平成14年には、NBC災害等の特殊災害に対応するため、化学物質等に関する高度な知識・技術を有する隊員と特殊災害対策車、救助車、救助ロボット等の車両等から成り、特殊な防護服、検知器等を備えるハイパーレスキュー隊が1部隊増強され、現在3部隊で運用されています。 各ハイパーレスキュー隊では、その任務に基づき、いつ、いかなる災害に対しても、保有する特殊装備を効果的に駆使し期待された活動が行えるよう、平素から隊員の気力・体力の充実と様々な状況を想定した訓練に励んでいます。
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等に日頃から大きな成果を上げている。特に、地震等大規模災害時においては、道路の倒壊や陥没等により陸上交通が遮断され、また津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態が予想されるので、ヘリコプターの高速性、機動性を活用し、消防防災活動で大きな役割を担うことができるものと期待されている。 消防庁としてもこれを支援するため、国庫補助金や地方交付税によって資機材の充実、運用経費等の支援を行い、消防防災ヘリコプターの円滑な運航・整備を推進している。 平成16年4月1日現在の消防防災ヘリコプターの保有状況は、消防機関保有が27機、道県保有が41機、計68機となっており(第2−6−1図)、未配備県域は3県となっている。 消防防災ヘリコプターは、消防防災業務に幅広く活用されており、平成15年中の出動実績は、火災出動850件、救急出動2,087件、救助出動1,403件等となっている。 なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づいた広域航空消防応援によって、都道府県域を越えた応援活動が展開されており、平成15年中は24件となっている。
2 航空消防防災体制の課題(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要がある。 消防庁においては、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進してきたが、45都道府県で配備(平成16年度配備予定県を含む。)されている。また、大規模災害時等の広域的な運用に資するため、防災情報システム等を構築し、消防防災ヘリコプターの稼動・整備状況、離着陸場情報等を随時把握し、緊急時においても全国規模で対応できるよう、体制の整備を図っている。 都道府県保有の消防防災ヘリコプターは、従来、市町村の消防吏員が都道府県保有のヘリコプターを使用して消防事務を行うという法的構成がとられていたところであるが、平成15年6月の消防組織法等の改正により、都道府県は区域内の市町村長からの要請に応じ、航空機を用いて市町村消防を支援することができること、その支援を行うため都道府県に航空消防隊を設けるものとすること等、都道府県が行う支援事務の根拠が法律上明確となった。 平成16年度に多発した自然災害では、消防防災ヘリコプターが活躍した。7月の新潟・福島及び福井豪雨、相次いで発生した大型台風、10月の新潟県中越地震等の際には、多くの消防防災ヘリコプターが出動し、新潟・福島及び福井豪雨では340人以上、新潟県中越地震では380人以上を救助・救出あるいは救急搬送したほか、被災地の映像を官邸及び消防庁の消防防災・危機管理センターに配信するなど、大きな役割を果たした。 このように消防防災ヘリコプターの出動需要は高まっており、広域的な連携の下、一層の活用を推進していく必要がある。
(2)各種災害時におけるヘリコプター活用の推進 消防防災ヘリコプターは、火災、救急、救助等に幅広く活用されている(第2−6−2図)。 特に、救急搬送については、消防庁は平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、ヘリコプターの特性を生かした活用を図るよう推進している。各都道府県ではこれを基に出動基準を作成し、地域の実情を踏まえた救急業務実施体制を整備する等効果的な消防防災ヘリコプターの運用について所要の措置を講じている。 また、医師が同乗した救急体制についても、地域の病院と協定を結ぶ等、救命の輪が着実に広がっている。 高速道路上での交通事故対応については、平成14年12月の警察庁、厚生労働省、国土交通省等関係機関との協議・取りまとめを踏まえ、関係省庁等において、ヘリコプターの運用手順等を継続して検討しているほか、地元の消防、警察、道路管理者等関係機関が参加した模擬訓練を実施する等の取組みを行っている。
(3)航空隊員に対する教育訓練の推進 航空隊員の資質向上を図るため、平成10年度から消防大学校で「航空消防防災講習会」を開催する等最新の救急救助技術の習得等を進めている。 さらに、消防防災ヘリコプターに係る地方公共団体相互の連絡協調を推進し、国民の信頼と期待に応える航空消防防災体制の確立に資することを目的として平成8年に設立された全国航空消防防災協議会においても、航空消防防災活動の向上に寄与する調査研究、航空隊員を対象とした研修会及び航空隊長講習会を実施している。
(4)航空消防防災体制におけるICTの活用推進 ICT(情報通信技術)の進展を受けて、消防庁でもICTを活用した消防防災ヘリコプターの運用を検討している。 消防防災ヘリコプターは、広域応援に出動するなど遠隔地で活動する場合に、現在の消防・防災無線や航空無線では保有団体(航空基地)との交信が困難となり、保有団体でも自機の現在位置、活動状況を把握することが不可能となる。 このため、消防庁では、GPS(全世界的衛星測位システム)を利用した消防防災ヘリコプターの動態管理システムの構築について研究を進め、平成16年3月には実証実験を実施し、実用化に向けてさらに検討を行っている。 さらに、被災状況の把握等に有効なヘリコプターテレビ電送システムは、いまだ全国をカバーするには至っていないことから、引き続きその普及・増強に努める必要がある。
第7節 広域消防応援と緊急消防援助隊1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成16年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が2,436、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が638、その合計である全国の協定数は、3,074である。また、全国の協定について応援災害別に分類(重複計上)すると、火災2,744、風水害2,241、救急2,373、救助2,262、その他2,431となる。 現在、全ての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定ほか)、港湾(東京湾消防相互応援協定ほか)や空港(関西国際空港消防相互応援協定ほか)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の整備・充実を図るとともに、各都道府県に対し消防広域応援基本計画を作成し、その中で、派遣要請システムの整備、代表消防機関の設置、応援情報リストの整備等の都道府県単位の消防広域応援体制の整備を速やかに推進するように通知しているところであり、平成16年4月1日現在、38都道府県で整備が図られている。 また、大規模・特殊災害や林野火災等においては、空中消火や救急業務、救助活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効である。 そのため、消防庁では、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2−7−1表)。 今後とも消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場を確保し、情報活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。 平成15年中には、消防庁長官の求めに応じて24件の消防広域航空応援が実施された。
2 緊急消防援助隊(1)緊急消防援助隊の整備・充実 平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ充実したものとするため、全国の消防機関相互による迅速な援助体制として、平成7年6月に緊急消防援助隊が発足した。 緊急消防援助隊は、消火部隊、救助部隊、救急部隊のほかに、先行調査や現地消防本部の指揮支援を行う指揮支援部隊、応援部隊が被災地で活動するために必要な食糧などの補給業務を行う後方支援部隊等が編成に加えられており、大規模災害時には、消防組織法第24条の3に基づく消防庁長官の求めにより出動することとされている。さらに、平成15年6月の消防組織法改正により、緊急消防援助隊が法制化されるとともに、東海地震等の二以上の都道府県に及ぶ大規模災害や毒性物質の発散等の特殊災害に対処するために特別の必要があるときは消防庁長官がその出動を指示できることとされ、平成16年4月1日から施行された。それに伴い緊急消防援助隊に係る国の財政措置等についても法律に定められ、消防庁長官の指示を受けて出動した緊急消防援助隊の活動経費に係る国庫負担金、総務大臣が策定する「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下、「基本計画」という。)に基づいて整備される施設設備に対する国庫補助金等について規定された。 緊急消防援助部隊の部隊編成については、発足当初、救急部隊、救助部隊等の全国から集約的に出動する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(同1万3,000人規模)、総計で1,267隊、交替要員を含め約1万7,000人規模であった。平成13年1月には、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、消火部隊について登録制を導入し、救助隊・救急隊とともにその隊数が大きく増加し、さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、及び消防防災ヘリコプターによる航空部隊、消防艇による水上部隊を新設し、8部隊とした(1,785隊、約2万8,000人規模)。 平成16年4月1日からの法律上の位置付けの明確化に伴い、法律に基づく登録を行った結果、指揮支援部隊をはじめとする10部隊で編成され、全国812消防本部から2,821隊が登録、隊員数約3万5,000人の緊急対応体制として新たに発足したところである。去る4月14日には、総務省講堂において全国の緊急消防援助隊指揮支援部隊、都道府県指揮隊、都道府県航空隊の隊長等の参集による緊急消防援助隊発足式が、麻生総務大臣出席のもと挙行された(第2−7−2表)。 緊急消防援助隊の装備については、これまでも、消防庁において基準を策定するとともに、国庫補助措置を講じることにより、特殊災害対応特殊消防ポンプ自動車、救助工作車、ファイバースコープ等の高度救助用資機材、災害対応特殊救急自動車、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な車両等の整備を推進している。平成16年度からは、基本計画に基づいた義務的補助金により整備を図っているところである。 平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムは、緊急消防援助隊派遣車両の位置及び動態を把握するためのシステムで、車載GPSにより特定した車両位置と車載端末装置から入力した車両動態を携帯電話通信網により消防庁に設置したサーバに送信し、広域応援支援システムの電子地図上にシンボルで表示する。また、携帯電話網の不感地帯では自動的に低軌道衛星回線に切り替わり、全国規模で安定したデータ通信を可能とする。さらに、このシステムには、これらの回線を活用して派遣車両と消防本部等との間で情報連絡を行う簡易な文字通信機能等も備えている。平成13年度の実証実験、平成14年度の可搬型車載端末の開発を経て、現在、指揮支援部隊を構成する政令市消防局等に配備されている。
(2)緊急消防援助隊の活動及び訓練等 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁と名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月には、岩手県内陸北部の岩手山付近で発生した震度6弱を記録した地震において、仙台市消防局と東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局、仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局、川崎市消防局から救助部隊・消火部隊を現地に派遣し地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊が、ヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする震度6弱を記録した芸予地震においては、大阪市消防局、神戸市消防局、福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局、北九州市消防局の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。 平成15年には、7月の宮城県北部地震(震度6弱、6強、6弱が1日に連続して発生)において、札幌市消防局の指揮支援部隊・航空部隊及び茨城県の航空部隊が被災地上空で情報収集活動を行った。8月の三重県ごみ固形燃料発電所火災では、名古屋市消防局の指揮支援部隊・特殊災害部隊等が、9月の栃木県黒磯市ブリヂストン工場火災においては、東京消防庁の指揮支援部隊・特殊災害部隊等が出動し、消火活動等を行った。 さらに、9月の平成15年十勝沖地震(震度6弱が2回発生)においては、札幌市消防局、仙台市消防局の指揮支援部隊・航空部隊、青森県の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。また、当該地震により損傷した出光興産(株)北海道製油所のオイルタンクから発災した火災の消火活動及び鎮火後の火災警戒活動のため、札幌市消防局の指揮支援部隊のほか、10都県15消防本部の特殊災害部隊等により応援活動を実施した。これらに加えて、泡消火薬剤の提供のため、全国的な広域応援を実施し、自衛隊航空機による輸送支援及び在日米軍からの泡消火薬剤の提供を受けた。 平成16年7月13日からの新潟・福島豪雨災害では、法制化以来初めて緊急消防援助隊が出動し、大規模な堤防決壊・浸水地域・山間部等において、陸上及び空から救出活動等に従事した。 新潟県には宮城県、山形県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、長野県、岐阜県の1都11県から出動し、延べ171隊、693人(うち航空隊9隊、71人)が3日間の活動に従事し、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、三条市1,652人、見附市106人、中之島町97人の総数1,855人(うちヘリコプターによる救出92人)を救出した。 続く18日の福井県には神奈川県、富山県、石川県、長野県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県の2府10県から159隊、679人(うち航空隊9隊、65人)が2日間の活動に従事し、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、福井市266人、江市45人及び美山町77人の総数388人(うちヘリコプターによる救出187人)を救出した。 10月、全国的規模で平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号災害においては、豪雨による堤防の決壊等のため多大な被害を受けた兵庫県に出動し、浸水家屋の戸別調査及び救出活動等に従事したところである。10月21日、兵庫県豊岡市に、愛知県、滋賀県、大阪府及び岡山県の1府3県から出動し、70隊、284人が2日間の活動に従事、2,000世帯を超える戸別調査を行うとともに住宅等に孤立した住民127人を救命ボート等により救出した。 10月23日に発生した新潟県中越地震(震度7、6強、6強、6弱が2時間の間に連続して発生)においては、11月1日の活動終了までの間に、宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、山梨県、富山県、石川県及び愛知県の1都14県から累計で480隊、2,121人、ヘリコプター20機が出動し、これまでで最大の出動規模となった。主に小千谷市、長岡市、山古志村において、孤立住民等の安否確認、救助・救出、救急搬送に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動にも当たり、総数453人(うちヘリコプターによる救出282人)を救出した。 以上のような緊急消防援助隊の活動経費については、消防庁長官の指示に基づく出動に係る国庫負担制度とは別に、昭和62年度に創設された消防広域応援交付金制度に基づき、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されている。 大規模災害時における緊急消防援助隊の的確かつ迅速な出動及び活動を行うためには、全国各地からそれぞれの管轄区域を離れて活動に従事するという緊急消防援助隊の特殊性を考慮し、指揮・連携能力の向上を図るなど、平時からの緊急消防援助隊としての教育訓練が重要となる。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日に、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われたのをはじめ、平成12年10月には、第2回目の全国合同訓練を、それ以外に、毎年、隊員の技術向上と部隊間の連携強化のため地域ブロックごとに合同訓練が行われている。 平成16年4月の法制後の基本計画においても、消防大学校における必要な教育訓練の実施とともに、平成16年度における図上訓練、平成17年度における第3回全国合同訓練の実施を明記し、緊急消防援助隊の教育訓練の充実を図ることとしている。
緊急消防援助隊発足式 平成16年4月1日、改正消防組織法の施行に伴い、緊急消防援助隊は全国2,821隊、隊員数約3万5,000人の部隊として新たに発足しました。 平成16年4月14日総務省講堂において麻生総務大臣出席の下、緊急消防援助隊発足式が挙行され、指揮支援部隊長、各都道府県隊指揮隊長及び各都道府県航空隊長の約150人が出席しました。 式典は、総務大臣の挨拶に始まり、消防庁長官から緊急消防援助隊旗及び登録証が代表の消防本部に交付され、消防庁長官からの激励の言葉及び福岡県隊代表者の決意の言葉に続き、来賓を代表して全国消防長会会長から祝辞がなされました。 緊急消防援助隊は複数の消防本部による連合部隊が、自らの管轄区域を離れて活動するものであることから、その活動をより効果的なものとするためには、緊急消防援助隊と被災地の消防部隊との連携など、活動能力の一層の向上が重要です。 平成7年の創設以来、数々の出動実績を積み重ねてきた緊急消防援助隊ですが、新たな体制の発足を機に、あらためて全国の消防が強固に連携団結する体制の確立に向けて、全国の消防機関及び都道府県航空隊の積極的な協力を期待します。
第8節 国と地方の防災体制等1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)消防庁の防災体制等 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現・総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関しとるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の地理的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編に伴い、自治省・消防庁防災業務計画を廃止し、新たに消防庁防災業務計画を作成した。 さらに、消防庁では、平成15年8月に、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう整備した「消防防災・危機管理センター」を活用し、(1)適切な情報収集、(2)関係機関への情報発信、(3)緊急消防援助隊等のオペレーション等、災害応急体制の点検を目的に繰り返し図上訓練を実施している。これによって、消防庁の応急体制の不備な点、改善すべき課題を浮き彫りにし、消防庁の災害対策本部のあり方について再考した。その主なものは、従前は災害対策本部編成を災害種別に応じてその都度編成していたが、平常時の執務体制から災害対策本部による応急体制への移行を迅速かつ円滑に行い、効率的なオペレーションを行うため、平常時の課・室体制や災害種別に関わらず、災害対策本部の組織体制を原則として一本化し、大規模災害等への応急対応を行うこと。また、災害対策本部における情報窓口の一本化及び情報整理・伝達の制御、職員の現地派遣体制の強化等である。なお、平成16年7月新潟・福島豪雨、平成16年7月福井豪雨、平成16年10月新潟県中越地震などの災害においては、この体制で臨み迅速な初動対応を行うことができた。
2 地方公共団体の防災体制(1)防災体制 地方公共団体は、災害対策基本法により、災害の予測予報、情報の伝達及び防災計画の実施のための組織の整備並びに職員の配置や服務基準を作成することとされている。災害による被害を最小限に食い止めるためには、地方公共団体が迅速かつ的確な対応を行うことが必要であるが、災害対策は各部局に関連する事項であることから、危機管理監等の専任スタッフが首長等を補佐し、各部局を統括又は調整するといった方向で、組織のあり方を構築をしていくことが求められており、平成16年4月1日現在、部次長級以上の防災危機管理専門職を設置している都道府県は37団体となっている。
(2)防災訓練 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に抑えるために重要であり、そのためには日頃から実践的な対応力を身に付けておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では、「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上訓練等の実践的な訓練の実施を促進することとしているほか、消防大学校においても、平成16年度に、地方公共団体の首長や防災担当者等を対象として行う「危機管理セミナー」の中で、状況予測型図上訓練のほか、ロールプレイング型図上訓練やDIG等を実施している。また、地方公共団体に対し、総合的かつ実践的な防災訓練を実施し、災害時に実際に適切な行動ができるか検証するよう要請している。 平成15年度においては、都道府県が延べ232回の防災訓練を実施したほか、市区町村においても延べ6,306回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震が最も多く、次いで、原子力災害、風水害、コンビナート災害、林野火災の順となっており、市区町村では、地震、林野火災、大火災、風水害の順となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実働)訓練が最も多くなっている(附属資料23)。 なお、消防庁においても、平成16年7月に警察と連携したテロ対策訓練を実施するとともに、各地方公共団体に対しても、テロ対策訓練の実施について要請している。
(3)広域防災応援体制ア 広域防災応援体制の確立 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事から防衛庁長官等に対する部隊等の派遣の要請がある。 なお、消防庁では、平成7年10月の自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正を踏まえ、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。イ 広域防災応援協定の締結 都道府県間の広域防災応援に関しては、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組みが進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計22の協定が締結され、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を越えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に取り組む団体が大幅に増加しており、平成16年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、2,305団体となっている。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼ全ての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成16年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体、原子力災害対策については23団体、風水害対策については28団体、火山災害対策については16団体、林野火災対策については18団体、雪害対策については11団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成16年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、平成16年4月1日現在で都道府県との事前協議を開始している市町村は2,621団体(83.9%)である(このうち2,391団体(76.6%)が見直しを完了)。しかし、特に小規模な団体における見直しは遅れており、平成15年4月1日現在、人口2,500人未満の町村だけに限ると70.7%にとどまっている。 なお、平成15年度中には、都道府県では27団体が、市町村では684団体が、それぞれ修正を行っている。 また、平成9年6月には防災基本計画への事故災害対策の追加、平成12年5月に原子力災害対策編、平成14年4月に原子力災害対策編、風水害対策編が修正されたこと、平成12年12月に、中央省庁等改革に伴い指定行政機関及び指定地方行政機関が指定されたこと、平成16年3月に東海地震、東南海・南海地震への対策として震災対策編を中心に修正が行われたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請した。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントの実施マニュアルを作成するとともに、このような防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、地区別防災カルテの作成マニュアルを示すとともに、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成15年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、44団体となっている。
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会の更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、全ての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。これに必要な経費については、平成8年度から地方財政計画に約70億円を計上し、普通交付税により措置している。 また、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、〔1〕被害想定、〔2〕職員の動員配備体制、〔3〕情報の収集・伝達体制、〔4〕応援体制、〔5〕被災者の収容、物資等の調達、〔6〕防災に配慮した地域づくりの推進、〔7〕消防団、自主防災組織の充実強化、〔8〕災害ボランティアの活動環境の整備、〔9〕災害時要援護者対策、〔10〕防災訓練などの項目に留意する必要がある。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのため、組織に関しては、高いレベルの危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要があり、都道府県においては部次長職以上の防災危機管理専門職の設置が進んでいるが、更に充実の必要がある。一方、市町村においては、防災担当の係を設置している団体がある一方、他の業務を兼務している防災担当職員しかいない例もあるなど、都道府県に比べ防災危機管理体制が脆弱であり、大規模地震の切迫性等を踏まえ、体制の強化が喫緊の課題である。 防災体制強化の根幹である人材育成については、首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応力の向上、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要である。消防庁としては、平成15年度より消防大学校において、首長等幹部職員を対象とした「トップマネジメントコース」を含む「危機管理セミナー」を実施するとともに、消防職団員やボランティア、広く住民を対象とし、インターネットを活用して家庭や地域でいつでも学習できる「防災・危機管理e-カレッジ」を、平成16年2月から運用開始している。今後は消防学校における実技研修等とも組み合わせつつ実施するなど、防災教育の充実を図っていくこととしている。 このほか、各地方公共団体においては、防災業務に精通した職員をはじめとした人員を夜間・休日においても24時間体制で配置するほか、災害時の職員の自主参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などICT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険箇所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。 また、近年の豪雨災害による被害を踏まえ、避難勧告・指示を発出する際の客観的な基準の作成や高齢者等災害時要援護者の避難誘導体制の整備等についても進めていく必要がある。
5 災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大きな改正や、防災基本計画の修正が行われている。 災害対策基本法については、平成7年6月に、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による措置の創設等を内容とする改正が行われたほか、12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等国・地方を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 防災基本計画については、平成7年7月には、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえ、全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められ、平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害についても、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るための修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現・経済産業省)、厚生省(現・厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等を置くこととされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村における核燃料加工施設における臨界事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られた。 平成12年12月には、平成13年1月の省庁再編に伴い、また、平成14年4月には、近年の風水害・原子力災害対策の進展を踏まえ、各々の災害対策の一層の充実・強化を図るため、それぞれ修正、平成16年3月には東海地震に係る地震防災基本計画の修正、東南海・南海地震防災対策推進基本計画の策定等、近年の震災対策の進展を踏まえ、震災対策編を中心に修正が行われた。
都道府県の地域防災力・危機管理能力についての自己評価結果 地域の防災力・危機管理能力を向上させていくためには、まずその前提として、地方公共団体が自らの取組みについて、現状はどうなのか、どこが不十分なのかなどについて、自己分析を行うことが必要です。 消防庁では、平成15年10月に、このような自己評価を行うための「防災力評価指針」の案を取りまとめ、これに基づいたチェック項目に答えていただく形で、各都道府県による試行的な自己評価を実施しました。● 趣旨 自己評価により、自らの取組状況や課題等について総点検し、より充実した防災体制の検討・整備に役立てようとするものです。<その他> 評価結果に基づき、いくつかのグループに分けて比較した結果は次のとおりです。〔1〕 他の地域に比べ、東海地震の地震防災対策強化地域を含む地域は高く、昨年12月に地域指定のあった東南海・南海地震防災対策推進地域は低い結果となっています。 この理由としては、東南海・南海地震に係る長期評価が発表されたのが平成13年と、東海地震に比べ、切迫性が指摘されてからそれほど時間が経過していないことなどが考えられます。〔2〕 危機管理専門職をある程度前から設置している団体は高い水準です。部次長級以上の防災・危機管理専門職を平成10年以前から設置されている団体と平成16年4月現在も設置していない団体とを比較した結果であり、前者については、全ての項目にわたり高い評価結果となっています。 これは、危機管理を組織的に行っている団体は、組織面だけでなく、各種の施策についても対応しているところが多いことを示しています。 なお、詳細は、消防庁ホームページでご覧になれます。(アドレス:http://www.fdma.go.jp/html/new/pdf/040621_todouhuken.pdf)
インターネット上で学ぶ「防災・危機管理e−カレッジ」について 災害発生時、大切なあなたの命やくらしを守るためには・・・ 「忘れた頃にやってくる」災害には、日頃からの対応や備え、学習が必要です。 いつでもどこでもどなたでも利用できる学びの場、「防災・危機管理e−カレッジ」に是非、ご来校ください。 e−カレッジってどんなもの? 消防庁では、東海地震の切迫性がいわれ、東南海・南海地震や南関東直下の地震については被害が甚大なものになることが予想されていることから、緊急消防援助隊の強化や、情報の効果的な収集、分析、伝達に資するため消防防災・危機管理センターを整備するなど、体制強化に努めています。 しかし、大規模な災害に対しては、地域の防災力を高めて被害の軽減を図ることが非常に重要であるとの認識から、地域の防災力を強化するための各種の施策を実施しています。 「防災・危機管理e−カレッジ」は、この一環として実施するもので、24時間いつでもどこでも、どなたでも利用できる、防災・危機管理に関する学びの場をインターネット上で提供することを目的としています。以下に、「防災・危機管理e−カレッジ」の主な内容を紹介します。 大地震発生!3日間生き延びることができますか? 本コース、「大災害を3日間生き延びる!」では災害、特に大地震の際、起こりうる具体的な状況が時間を追って示され、それに対して「あなたならどうする?」という質問形式であなたの判断・対応が求められます。質問に答えながら、災害イメージを具体化し、いかに身を守るか、3日間生き延びるためにどのような準備が必要か考えていきましょう。 ご存じですか、基礎知識? 本コース「基礎を学ぶ」は、災害に備えて、災害が起こったときのために、是非知っておきたい情報、ノウハウをアニメーションによる解説とともに学習することができます。 それぞれのコースについてテストを受け、一定レベルに達した方には修了証を発行致します。また、より深い学習を希望される方には、コース「深く学ぶ」をご利用いただけます。 これらのコースのほかにも災害と人間、命の大切さについて深い考察を巡らせた寺田寅彦氏ら「師範」に学ぶ「師範室」、防災に関する掲示板等交流の場である「投稿・交流の場」など、多彩で幅広い内容をご用意しております。 これら、既存のコースのほかにも幼児及び小学校低学年向けコンテンツの開発等を随時行っています。 e−カレッジで学ぶには? 「防災・危機管理e−カレッジ」での学習においては、登録等の手続きは必要ありません。URL(http://www.e-college.fdma.go.jp)にアクセスいただき、ご希望のコースを選択して学習していただくことができます。
第9節 国民保護のための取組み1 国民保護法施行後の政府及び消防庁における取組み(1)国民保護法の成立後の消防庁の体制整備と地方公共団体への周知 先に述べたとおり、国民保護法は、平成16年6月14日に第159回国会において可決・成立し、6月18日に公布された。 この国民保護法の成立を受けて、消防庁では、内閣官房の協力を得て、6月28日には都道府県説明会を開催し、国民保護法成立に伴う留意事項や、今後の取組みについての事務連絡を通知した。 また、7月2日付で、総務課に置かれていた国民保護準備室を改組して、国民保護室及び国民保護運用室の2室を総務課の課内室として新たに設置し、また、同日付で、国民保護という新しい行政に消防庁全体で取り組んでいく体制を整えるため、消防庁長官を本部長に、消防庁国民保護推進本部を設置した。この推進本部には、総務省内の関係する各課長等もオブザーバーとして参加している。 また、消防庁では、今後の円滑な推進を図る観点から、7月から8月にかけて、国民保護法の施行に当たって重要な役割を果たす市町村や消防機関に、直接、説明する機会をつくり、国民保護法制についての理解を得るため、内閣官房の全面的な協力を得て、全国8ブロックと沖縄県で国民保護に関する説明会を実施した。この説明会には、都道府県、市町村、消防機関合わせて1,039機関から、1,620名が参加している。うち、都道府県からの参加者は373名、市町村からの参加者は759名、消防機関からの参加者は488名となっている。
(2)国民保護法施行令の制定、指定公共機関の指定等 政府では、国民保護法の成立から直ちに、内閣官房を中心に、国民保護法施行令等関係政令の制定、指定公共機関指定に向けた取組みが精力的に進められた。消防庁においても、安否情報に関する政令案の作成等についての原案作成をはじめ、内閣官房と密接な連携をとって作業を進めたところである。 政府は、平成16年9月7日に、国民保護法制整備本部を開催し、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の施行期日を定める政令案要綱、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律施行令案要綱、指定公共機関の対象事業者、国民保護法に係る基本指針及び計画策定等のスケジュールを了承した。これを受け、国民保護法の施行期日を9月17日と定める「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の施行期日を定める政令」(平成16年政令第274号)は9月10日に閣議決定され、9月15日に公布された。これと併せて、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律施行令」(平成16年政令第275号)、指定公共機関を指定するための「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成16年政令第276号)は、9月10日に閣議決定、9月15日に公布され、9月17日から施行されている。また、併せて、「武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律施行令」(平成16年政令第278号)、「武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律施行令」(平成16年政令第280号)が閣議決定され、施行されている。 なお、国民保護法制整備本部は、国民保護法が施行された9月17日付で、廃止されている。
(3)施行通知の発出 国民保護法の施行に合わせて、消防庁では、地方公共団体に対し、国民保護法の施行に際し、国民保護法上の一般的な事項を内容とする施行通知等を、国民保護法の施行日である9月17日付で発出した。公文書での施行通知は、地方自治法上の「技術的な助言」としての意味を持つものであるが、国民保護法上、地方公共団体との一般的な連絡調整は総務省消防庁が担当することとなっていることを踏まえてのものである。具体的には、基本的な事項に関して、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の施行について」(平成16年9月17日消防国第1号消防庁長官通知)を発出したほか、指定地方公共機関の指定等に係る「指定公共機関の指定及び指定地方公共機関の指定に係る留意事項について」(平成16年9月17日消防国第2号消防庁次長通知)、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律の施行に係る留意事項について」(平成16年9月17日消防国第3号消防庁国民保護室長通知)、「国民保護対策本部及び緊急対処事態対策本部条例参考例並びに国民保護協議会条例参考例について」(平成16年9月17日消防国第4号消防庁国民保護室長通知)、さらに、参考資料を事務連絡により伝達した。
(4)指定公共機関の指定について 事態対処法に基づく指定公共機関については、「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律施行令の一部を改正する政令」による改正後の事態対処法施行令第3条第1号から第39号まで及び第40号の規定に基づく内閣総理大臣公示により、160法人が指定された。政令で指定されたのは、独立行政法人や特殊法人である公団等39法人、公示により指定されたのは121法人である。法律上、指定公共機関として明示されている日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会も指定されている。 消防庁関係では、武力攻撃災害の防除、軽減又は復旧に関する知見を有する災害研究機関として、独立行政法人消防研究所が、指定公共機関に指定されている。 なお、事態対処法上の指定行政機関及び指定地方行政機関は、事態対処法施行令により、平成15年6月13日に指定されており、指定行政機関に総務省及び消防庁が指定されている。
2 地方公共団体の国民保護計画策定に向けた今後の取組み(1)基本指針等の作成スケジュール 政府は、国民保護法制整備本部において、国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)、指定行政機関及び地方公共団体の国民保護計画、指定公共機関及び指定地方公共機関の国民保護業務計画(以下「国民保護業務計画」という。)策定のスケジュールを示し、了承を得ている(第2−9−1表)。 政府の基本指針においては、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置の実施に関する国としての基本的な方針のほか、武力攻撃事態の想定に関する事項や指定行政機関、都道府県及び指定公共機関が国民保護計画又は国民保護業務計画を作成する際の基準となるべき事項、関係機関相互の連携協力の確保に関する事項等を定めることとされている。 基本指針については、現在、内閣官房を中心に検討が進められており、平成16年中にその要旨を公表して、意見を聴取した後、平成16年度末を目途に策定することとなっている。
(2)指定行政機関、指定公共機関の計画作成スケジュール 指定行政機関の長及び指定公共機関は、基本指針に基づき、その所掌事務に関する国民保護計画又はその業務に関する国民保護業務計画を作成することとされている。計画では、当該指定行政機関又は当該指定公共機関が実施する国民の保護のための措置の内容及び実施方法に関する事項、国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項、関係機関との連携に関する事項等を定めることとされている。 指定行政機関の国民保護計画については、平成17年度中を目途に作成することが予定されており、指定公共機関の国民保護業務計画についても、同じく平成17年度中には作成され、指定行政機関の長を経由して内閣総理大臣に報告されるものと見込まれている。 消防庁も、指定行政機関の一つとして、基本指針に基づき、消防庁が所掌する事務についての国民保護計画を作成することとなっており、平成17年度の早い段階で作成できるよう取組みを進めていくこととしている。
(3)都道府県国民保護計画の作成スケジュール 都道府県知事は、基本指針に基づき、国民保護計画を作成することとされている。都道府県の計画では、当該都道府県の地域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項、当該都道府県の国民の保護のための措置に関する事項、国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項、市町村及び指定地方公共機関の国民保護計画又は国民保護業務計画の作成の基準となるべき事項等を定めることとされている。 また、都道府県の国民保護計画は、市町村の国民保護計画及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の前提となる重要なものであることから、各都道府県においては、基本指針策定後速やかに国民保護計画の検討に着手し、平成17年度中には作成することを予定しており、その旨、消防庁長官通知により要請しているところである。
(4)市町村国民保護計画作成のスケジュール 市町村長は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画を作成することとされている。市町村の計画では、当該市町村の地域に係る国民の保護のための措置の総合的な推進に関する事項、当該市町村の国民の保護のための措置に関する事項、国民の保護のための措置を実施するための体制に関する事項等を定めることとされている。 市町村の国民保護計画については、平成17年度中に作成されることとなる都道府県の国民保護計画に基づいて作成することになるため、平成18年度を目途に作成することが予定されている。 なお、指定都市においては、原則として都道府県が行うこととされている救援に関する事務を行うこととされているので、できるだけ速やかに国民保護計画を作成できるよう、所要の準備を進めることが期待されている。
(5)消防庁における国民保護モデル計画の作成 都道府県及び市町村は、基本指針等に基づき国民保護計画を作成することとなるが、地方公共団体からは、「国民保護法制においては、住民の避難や救援等について都道府県知事が主体的に対処できるよう、想定される具体的な武力攻撃事態に応じて計画策定の指針を示すこと。」(平成15年7月17日全国知事会提案・要望)、「武力攻撃事態及び緊急対処事態の態様及び規模を国において具体的に想定し、シミュレーションの形で地方公共団体に提示すること。」(平成16年3月29日全国市長会要望)といった要望がよせられている。こうした要望を踏まえ、政府としては、国民保護法に基づく基本指針のほか、国民保護法に基づく地方公共団体の事務に関する国と地方公共団体の連絡調整に関する事項を所管する消防庁において、国民保護モデル計画を作成・提示することとしている。 国民保護モデル計画の作成に当たっては、事態の想定、武力攻撃の状況等に応じた避難の方法等について、幅広い視点から検討していくことが必要であることから、「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」(座長:石原信雄 元内閣官房副長官)を開催し、意見を聴取しながら検討を進めているところである。 国民保護モデル計画の作成・提示スケジュールについては、都道府県のモデル計画を平成16年度中に作成・提示し、市町村のモデル計画は平成17年度中に作成・提示することとしている。 なお、地方公共団体の意見を反映させるため、国民保護モデル計画の作成に当たっては、地方公共団体から意見を聴取する機会を設けることとしている。 また、市町村長は、避難の指示があったときは、国民保護計画に基づき、避難実施要領を作成し、避難住民の誘導を行うこととされている。武力攻撃事態等において迅速に避難実施要領を作成するためには、平素よりあらかじめ複数の避難実施要領のパターンを準備しておく必要があることから、消防庁としては、各市町村の地域特性等を踏まえた避難実施要領のパターンの作成を支援するため、避難マニュアルの作成に取り組むこととしている。
(6)指定公共機関及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の作成 指定公共機関の国民保護業務計画については、政府の基本指針を踏まえ平成17年度中に、指定地方公共機関の国民保護業務計画については都道府県の国民保護業務計画を踏まえ、平成18年度に作成することが期待されている。
3 国民保護計画の策定に向けた地方公共団体における体制整備の推進(1)都道府県及び市町村の国民保護協議会の設置 地方公共団体の国民保護協議会は、都道府県、市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するために設置するものであり、都道府県知事又は市町村長は、国民保護計画を作成し、又は変更するときは、当該地方公共団体の国民保護協議会に諮問しなければならないこととされている。 このため、都道府県については、基本指針策定後速やかに都道府県の国民保護計画について諮問できるよう、平成16年度中には都道府県国民保護協議会の設置のための条例制定等所要の準備を進めておくことが必要であることから、消防庁長官通知等により、各都道府県に対し、その旨、要請しているところである。 市町村国民保護協議会については、市町村の国民保護計画の円滑な作成のために、早期に設置できるよう所要の準備を進めることが必要であり、その旨、消防庁長官通知等により、要請しているところである。
(2)指定地方公共機関の指定 指定地方公共機関とは、「都道府県の区域において電気、ガス、輸送、通信、医療その他の公益的事業を営む法人、地方道路公社その他の公共的施設を管理する法人及び地方独立行政法人で、あらかじめ当該法人の意見を聴いて当該都道府県の知事が指定するもの」であり、都道府県及び市町村の国民保護協議会の委員として指定地方公共機関の役員又は職員を任命することができることとされている。 より広域的な範囲内における取組みを行う法人については、既に、政令及び内閣総理大臣公示により、前述のとおり、160機関が指定されているところであり、指定地方公共機関の指定についても、国民保護措置の実施に支障がないよう、早期に指定することが期待される。特に、国民保護協議会に役員又は職員を委員として任命することが予定される法人については、その設置に支障が生じることのないよう、速やかに指定地方公共機関として指定する準備を進めておくことが必要であり、その旨、消防庁長官通知により、要請しているところである。
(3)地方公共団体における危機管理体制の充実強化 都道府県知事、市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備しなければならないこととされている。 阪神・淡路大震災後、地方公共団体においては、危機管理体制の充実が図られてきており、平成16年4月1日現在、部次長級以上の防災・危機管理専門職を設けている都道府県は37団体となっている。 国民保護法の施行やテロ対策強化の必要性等を踏まえ、都道府県においては、さらに危機管理体制の充実に努めていくことが求められており、消防庁としても、体制強化に向けた、都道府県、市町村の取組みを要請しているところである。
4 今後の課題(1)国民保護計画の早期策定とこれに向けた体制整備の促進 今後の課題の第一は、まず、都道府県及び市町村の国民保護計画の策定に向けて、都道府県及び市町村の取組みを支援していくことであり、国民保護協議会の設立や指定地方公共機関の指定を支援していくことである。消防庁としては、国民保護モデル計画の作成をはじめ、あらゆる面で、都道府県、市町村の取組みを支援していくこととしている。
(2)普及啓発・研修・教育 国民保護法上、政府は、国民の保護のための措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めることとされている。また、都道府県は国民の保護のための措置のうち、警報の通知、避難の指示や救援に関する措置などを実施する責務を有しているため、具体的な措置を行う職員に対し、制度について研修を行うとともに、都道府県が実施する国民の保護のための措置の具体的内容について、十分周知徹底しておくことが求められる。国民保護法の施行を踏まえ法律の趣旨を浸透させ、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置について理解を得るまでには、今後、繰り返し地方公共団体の一般職員、消防吏員、消防団員等に対して普及・啓発活動を行っていく必要がある。 今後、地方公共団体や消防における危機管理や国民保護に関する専門的な知識を有する職員を養成していくため、消防大学校等における研修機会の拡大、都道府県の自治研修所や消防学校における国民保護に関するカリキュラムの創設等に取り組んでいかなくてはならない。 また、国民の保護のための措置を円滑に行うためには、自主防災組織をはじめとする住民に対しても、国民保護法の仕組みや地方公共団体が実施する国民の保護のための措置の内容等について普及啓発を行う必要がある。 このため、消防庁では、地方公共団体に対する普及啓発資料の作成を行うとともに、国民の保護のための措置を実施する地方公共団体職員や、住民避難に関し重要な役割を果たす消防団や自主防災組織等に対して都道府県等が行う講演会やフォーラムなどへの積極的な参加を促すなど普及啓発活動を行うとともに、地方公共団体が住民向けに実施する普及啓発活動を支援していくこととしている。
(3)訓練 都道府県知事及び市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならないこととされている。 特に、国民保護計画を実効性あるものとするためには、平素から実践的な訓練を行い、国民の保護のための措置を担う地方公共団体職員の対処能力の向上や関係機関との連携確認などを行うことが重要である。 このため、地方公共団体において訓練を行う際には、防衛庁・自衛隊、警察、消防等関係機関とも連携した訓練を行うことが求められるところである。 なお、国会における法案修正により、国と地方が共同して行う訓練についての国庫負担規定が追加されたほか、国民の保護のための措置についての訓練を行う場合には、災害をも含めた幅広い事態に対応できるように、防災訓練との有機的な連携が図られるよう配慮することとされている。
(4)その他〔1〕 装備資機材、備蓄 武力攻撃事態等において、住民を武力攻撃災害等から守り、被災した場合に的確な救急救助を行うためには、消防をはじめとする関係機関が、このために必要となる装備資機材を保有し、使いこなせるように、訓練しておくことが必要である。今後、NBCテロ対策とも合わせて、これらについて検討していくことが必要であり、NBCテロに対応したマニュアルの整備等と合わせて、消防庁としても必要な対策を講じていくこととしている。 また、いざという時の住民生活を確保するためには、食料や日常生活品などの備蓄が必要である、災害対策と合わせて、必要な備蓄の検討を行うことが必要である。〔2〕 警報伝達システム、安否情報収集・提供システム 武力攻撃事態等において、住民の避難を的確かつ迅速に行うためには、武力攻撃事態等の現状・予測及び武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域についての警報を、直ちに住民等に伝達できるシステムを構築しておくことが重要である。このため、消防庁においては、武力攻撃事態の切迫性等に応じた警報の伝達内容や手法について、検討していくこととしている。 なお、その検討に際しては、緊急の際に住民に危機を伝えるサイレン等を吹鳴する同報系防災行政無線が極めて重要な役割を果たすことが期待されている。しかしながら、同報系防災行政無線の整備率は67.8%にとどまっているほか、吹鳴できるサイレンの種類が限定されている、音量が十分でない等国民保護上の問題点を有するものも含まれている。弾道ミサイル等は発射から数分で着弾するといわれており、その発射情報を得てから短時間で末端の住民まで発射情報を伝えるための仕組みの構築が課題となっている。 また、市町村長及び都道府県知事は避難住民等の安否情報の収集、整理に努めることとされており、総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報についての照会に速やかに回答することとされ、その際には個人の情報の保護に十分留意しなければならないこととされている。 消防庁では、武力攻撃事態等における家族、親族、友人等の安否情報は、国民が最も必要とする情報の一つであることを踏まえ、効率的な安否情報の収集及び提供のあり方について検討を進め、その結果に基づき、安否情報共有ネットワークの検討を行うこととしている。 なお、安否情報共有ネットワークの検討に当たっては、個人の情報の保護に十分留意することとしている。〔3〕 被災情報の収集・整理システム、被害想定 国民保護法において、市町村長は、被災情報を都道府県知事に報告することとされ、都道府県知事は、自ら収集し、又は市町村長から報告を受けた被災情報を総務大臣に報告することとされている。このため、消防庁においては、全国から報告される様々な被災情報について迅速かつ的確に収集・整理するためのシステム整備について検討していくこととしている。 また、地方公共団体において、警報の伝達や避難住民の誘導等の国民の保護のための措置を的確に実施するためには、武力攻撃により発生する被害の状況について想定を行っておくことが望ましいが、具体的な被害は、武力攻撃の手段や規模、気候、地理的状況等により異なることから、一般的に武力攻撃事態等に対する知見が乏しい地方公共団体において、各団体ごとに被害想定を行うことは困難である。 このため、消防庁においては、地方公共団体が活用できる被害想定シミュレーションのプログラムの開発など、地方公共団体における被害想定の手法について検討していくこととしている。〔4〕 特殊標章等の取扱いについての検討 指定行政機関の長、地方公共団体の長等は、指定行政機関や地方公共団体の職員等で国民の保護のための措置に係る職務を行うもの又は指定行政機関や地方公共団体が実施する国民の保護のための措置に必要な援助について協力をする者に対し、これらの者又は使用される場所等を識別させるため、ジュネーヴ条約第一追加議定書第66条3の国際的な特殊標章等を交付し、又は使用させることができることとされている。この特殊標章等については、国民保護法上、みだりに使用してはならないこととされており、各交付権者においては、それぞれ交付対象者に特殊標章等を交付する際の取扱基準を作成すること等により、特殊標章等の適正使用を担保することが必要となっている。 消防庁においては、関係省庁間の申し合わせに基づき、各指定行政機関、地方公共団体等における特殊標章等の統一的な取扱基準の原案を作成することとしている。
第10節 消防防災の情報化の推進1 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 災害時において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくほか、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくことが極めて重要である。 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、〔1〕国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、〔2〕都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網、〔3〕市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網及び 〔4〕国と地方公共団体を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2−10−1図、第2−10−1表)。 消防庁では、次の事項に重点をおいて、地方公共団体と一体となって総合的な消防防災通信ネットワークの整備を推進している。
(1)通信ルートの多ルート化及び耐震化の推進 大規模災害時には、通信施設が被害を受け、情報連絡に支障を来すことも予想されることから、災害に強い通信ネットワークを構築するため、地上系通信網に加え、衛星系通信網を整備することにより通信ルートの多ルート化を推進している。 衛星系の通信網については、現在、地域衛星通信ネットワークが消防庁及び44都道府県の間で運用されており、地震等による通信回線の遮断を最小限とするため、通信施設の耐震対策及び停電時に備えた非常電源設備の耐震対策を促進している。
(2)災害に対する初動体制を確立する画像伝送システムの整備 大規模災害発生時に迅速かつ的確な災害応急活動を展開するためには、情報の収集・伝達を速やかに行うことが必要であり、中でも、上空からの映像情報は被害規模及び概要を迅速に把握できるため、災害に対する初動体制及び広域応援体制を整える上で非常に有効である。 画像伝送システム(第2−10−2図)は、衛星地球局、高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等で構成されており、得られた画像情報を消防本部指令センター内等に集約し、発災直後の被害状況を当該団体において把握するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに国(消防庁を経由して官邸等)、都道府県及び他の市町村などへ伝送するものである。ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているものの、その映像受信範囲は一部の地域に限定されている(第2−10−3図)ことから、財政負担が少なく機動性のある可搬型ヘリコプターテレビ受信装置についても整備を進めていく必要がある。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するため、消防機関は、特に消防・救急無線の増強に努めており、機器についてもデジタル化等の高性能化が進められている。また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビの撮影位置を把握する資機材など高度な機能を持った各種消防通信設備を導入する消防機関も徐々に増えている。
(3)市町村の消防防災無線の整備ア 地域住民等に密着した防災行政無線網 同報系の防災行政無線は、住民等に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報、避難勧告等の伝達に極めて有効である。災害現場に赴き、その状況等を的確に把握・伝達するための移動系の防災行政無線とあわせ、一体的な整備が必要である。 また、地域防災系の防災行政無線は、災害時において市町村と防災関係機関、病院、学校、ライフライン等の生活関連機関、自主防災組織等との相互連絡に極めて有効であり、平常時においても地域に密着した様々な情報の連絡にも活用できることから、市町村における整備を促進している。 消防庁では、国庫補助制度、防災基盤整備事業等を活用し、これらの無線網の整備の促進を図っているところであり、全国整備率は平成16年3月末現在、同報系無線67.8%、移動系無線82.3%、地域防災系無線7.8%となっている(附属資料40)。 また、平成16年度からは国庫補助対象を高機能情報通信対応防災無線通信設備に限定し、テロップなどの文字情報伝達、一定の静止画像・音声による双方向情報伝達を可能とするデジタル仕様による通信の高度化も促進している。イ 高度化する消防・救急無線網 消防・救急無線は、消防本部、消防署等に基地局を設置し、消防ポンプ自動車、救急自動車等に積載した移動局との間で情報の収集・伝達、指揮・連絡等を行うための無線網である。平成16年4月1日現在、9万8,636局が運用されており、この1年間に1,467局が増加した(第2−1−3図)。 また、119番通報の受付から出動指令、現場活動支援等を効率的に行うための消防緊急通信指令施設は約9割の消防本部で整備され、地図等検索装置や車両動態管理システム、医療情報装置などのシステムの導入が進められているほか、災害現場の映像を消防・防災ヘリコプターから消防本部に伝送するヘリコプターテレビ電送システムの導入も増加するなど消防・救急無線網の高度化が図られている。 一方、近年、情報通信の飛躍的進展により周波数チャンネルの需要が高まっているが、電波は限られた資源であり、新たな周波数割り当てが極めて困難な状況となっている。 このような過密な電波環境への対応や秘匿性の確保、各種データ、画像等の伝達を可能とする消防・救急無線の高度化のため、消防・救急無線においてもデジタル化を進める必要がある。 消防庁では全国消防長会と連携を図りながら、「消防・救急無線デジタル化検討懇談会」を開催し、平成11年度には実験用デジタル無線機の仕様作成及び実験機の製作、平成12年度には変調方式や周波数帯等の違いによる電波伝搬への影響調査、平成13年度にはデジタル移行に伴う使用周波数の変更による既設の無線通信補助設備への影響調査及び対応方法の検討、平成14年度にはデジタル化した際に活用できるアプリケ−ション例と移行に際しての効果的な設計方法や低コスト等のモデル、費用等を検討等、様々な課題検討を行い、全国の消防本部が円滑かつ速やかにデジタルへの移行が図られるよう取組みを進めている。また、平成16年度に「消防・救急無線の広域化・共同化の推進懇談会」を開催し、無線設備の広域化・共同化による効率的な整備に向けた検討を行う予定である。
(4)多様な情報収集、伝達手段の整備とバックアップ機能の確保 地震災害、石油コンビナート災害等の大規模な災害が発生した場合、災害現場においては、消防機関をはじめとする防災関係機関が相互に協力して効率的な災害応急活動を行う必要がある。消防相互の応援には、全国共通波等を的確に活用することとしているほか、警察等異なる機関との密接な情報交換を行うための通信手段としては、防災相互通信用無線(防災相互波)が活用されることとなっている。 消防庁では、特に、大規模災害等の発生が想定される市町村、あるいは石油コンビナート地帯等の市町村に対し、防災相互通信用無線施設を整備し、災害時にその機能を十分活用できるよう、あらかじめ関係機関と調整する等運用体制の確立について要請している。 なお、大地震等により通信施設が使用不能となった場合には、国・地方間の情報伝達機能が麻痺し、災害応急活動に重大な支障を来すことから、通信施設のバックアップを確保しておく必要がある。 このため、地方公共団体の本庁舎が被災した場合のバックアップ施設(衛星施設等)の確保や機動性のある車載型衛星地球局、可搬型衛星地球局等の整備の促進を図っているところである。
2 被害状況等に係る情報の収集・伝達 消防庁では、地方公共団体と国との間の災害情報の収集・伝達の窓口として、消防防災通信ネットワークの充実を図るとともに、迅速かつ的確な情報の収集・伝達に努めている。 とりわけ、大規模災害時には、災害の規模や被害の概況を迅速に把握することが重要である。消防庁では、大規模災害時の都道府県及び市町村からの情報収集のために火災・災害等即報要領を定め、緊急消防援助隊等による対応を迅速に行うよう、情報収集体制の整備に努めているところである。また、火災・災害等即報要領については、必要に応じてこれまでも随時見直しを行ってきたところであるが、平成16年9月17日には、国民保護法の施行に伴い、武力攻撃災害及び緊急対処事態を即報の対象として位置付け、これらの災害等(該当するおそれがある場合を含む。)が発生した場合も報告の対象としている。 なお、消防庁においても、大規模災害時等に被災地に出動し、情報収集や現地での防災活動の支援を行うための現地活動支援車及び被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を、また、消防庁が被災した場合の地方公共団体との通信機能の確保のため、消防大学校に衛星通信施設等の諸施設をそれぞれ整備している。さらに、地方公共団体から情報を入手し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等に適切に伝達できるよう、その徹底を図っている。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 このため、消防庁では、震度情報や広域応援対応力情報などの防災情報のデータベース化と国・地方 公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始し、本システムで収集された震度データは、気象庁にもオンラインにより提供しており、地方公共団体の震度データについては、気象庁の震度情報に含めて発表されている。 また平成11年度から、危険物等の災害発生時に、色、臭気等から物質を特定し、危険物等に係る危険性及び防ぎょ方法を検索することができるデータベース(危険物災害等情報支援システム)をサブシステムとして新たに防災情報システムに加えるとともに、危険物の対象品目を拡大し、全国の消防本部で利用できるようにしている。 さらに平成15年度には、VPN(仮想専用通信網)の技術を導入し、インターネット経由で防災情報システムの利用を可能とした。
(2)災害対応支援システム等の導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断のもとに的確な応急活動を遂行する必要がある。そのためには、日常は災害対応訓練に活用できるとともに、地震発生直後には被害を即時に推定することができるシミュレーションシステムの導入が有効である。 このため、消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めている。特に、独立行政法人消防研究所が開発した「簡易型地震被害想定システム」は、震源、マグニチュード等の入力という簡単な操作で即座に地震による被害を推計することが可能であり、災害対応における初動対応の状況判断と日常の訓練等に有効である。消防庁では、このシステムを全国の自治体や消防本部に配布し、その活用を図るとともに、最近の震災対応で消防庁に設置された災害対策本部においても被害予測に同想定システムを活用している。
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、これまで、電話、ファクシミリにより行われてきたが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速、的確に行うため、消防庁では、次の3つのサブシステムから構成される緊急支援情報システム、及びこれらをバックアップして電子地図等の大容量のデータ等を衛星通信回線により伝送することができるシステムを整備している(第2−10−6図)。ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等で情報を共有するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。ウ ヘリ映像等による被災状況把握システム 消防防災ヘリコプター等で撮影した被災地映像を解析し、被災範囲等を迅速に把握することができるシステム。
(4)各種統計報告オンライン処理システム 行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度からVPN網を活用した各種統計報告のオンライン処理を可能とするシステムの開発を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。ア 火災報告等オンライン処理システム 従来から火災報告取扱要領に基づき、国内で発生した火災について把握するシステムで、火災種別、火災原因、死傷者数、損害状況等の調査・分析等に活用している。イ 防火対象物実態等調査オンライン処理システム 消防設備等の設置、防火管理制度や消防設備士制度の運用及び違反処理体制の整備状況の実態を把握することを目的として実施している「防火対象物実態等調査」については、平成15年度にシステムの開発を行った。平成16年度は4月から6月まで試験運用を行い、8月から各都道府県及び全消防本部において、前年度データ入力作業及び事前習熟を進めている。 平成17年度から「防火対象物実態等調査オンライン処理システム」の本格運用を開始する予定としている。ウ ウツタイン様式調査オンライン処理システム 「ウツタイン様式調査オンライン処理システム」は、平成15年度にシステムの開発を行った。ウツタイン様式は従前の蘇生指標に代わり、心肺停止傷病者の実態を把握する世界標準の様式であり、また、この様式を国レベルで実施するのは日本が初めてであり各種学会の期待も大きく、救急行政、救急医療はもとより医療全体のレベルの向上につながるものである。 本システムは、平成17年1月の本運用を予定しており、試験運用を政令指定都市においては平成16年7月から開始し、平成16年10月からはすべての消防本部において開始する予定である。
4 情報化の今後の展開(1)防災情報通信体制の充実強化 大規模・特殊災害等において、広域的な対応をより迅速・円滑に行うためには、災害情報を迅速・確実に伝達し、国、都道府県、市町村の相互間における情報共有化等のためのシステムを整備することが必要不可欠である。また、行政と住民の間においても、必要な防災情報の共有化等を一層進めることが重要である。 そこで、消防庁において、消防防災分野の情報通信ネットワーク、情報通信システムの整備推進に関する指針を作成し、地方公共団体はこれを踏まえつつ、消防防災情報の共有化の計画的な取組みを行う必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、混信のないよう広域応援時の消防救急無線の全国共通波の増波等を行ってきたところであるが、さらに統一的な情報通信基盤の整備や標準化を早急に進めることが必要となっており、前述の「消防・救急無線の広域化・共同化の推進懇談会」における検討なども踏まえて推進していく。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、都道府県防災行政無線が建物の倒壊や停電などにより一部地域で不通となる事態が生じた。防災行政無線については、災害時においても的確に機能が確保されることが必要であり、非常電源設備の設置や耐震対策等を徹底する必要がある。ア 消防防災通信ネットワークの充実強化 消防防災通信ネットワークについては、災害に強い通信網の構築の観点から地上系及び衛星系による通信ルートの多ルート化の早期確立を図るとともに、衛星系については、全国的なネットワークの早期確立のほか最近のデジタル通信技術を活用して、画像情報、地図情報等を含めた多様な防災情報を迅速・効率的に伝達できるよう、ネットワークの高度化を図ることが必要である。 この中で、都道府県と市町村等を結ぶ地上系の防災行政無線については、施設の老朽化等に伴い再整備の時期を迎えているものや、周波数の再編成により他の周波数帯に移行が決定されているものがあり、施設の再整備の際には、情報通信分野の技術革新を展望しつつ、衛星系通信網と有機的に結合したネットワークを構築することが必要である。 一方、市町村と住民等を結ぶ同報系の防災行政無線(住民連絡用)については、全国の市町村における整備促進を図るとともに、双方向通信機能やデータ伝送機能を有するデジタル方式による整備を促進する必要がある。また最近急速に普及しているインターネット、携帯電話や、サービスが開始された地上デジタル放送等について活用方策を検討し、災害発生後住民等に、速やかに情報伝達できるシステムの整備を図る必要がある。 なお、通信施設については、地震時においても確実に稼動することが必要であり、通信施設の耐震対策等を行うとともに、非常用電源設備の設置及び保守点検を実施し、また、的確な操作の徹底のため総合防災訓練時等における防災行政無線を使用した通信訓練を実施することが重要である。イ 広域応援に必要な情報通信施設等の整備促進 画像伝送システムは、発災直後の被害の概況を把握し、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、政令指定都市、都道府県庁所在都市等大規模な都市における整備が求められる。 また、消防・救急無線については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国共通用の周波数が3波へ増波されている。 さらに、消防防災ヘリコプターの増強に伴い、ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているが、いまだ全国をカバーするには至っておらず、引き続き消防防災ヘリコプターテレビ電送システムの普及・増強に努める必要がある。また、こうしたシステムを搭載したヘリコプターが集結する大規模災害時には混信が発生するおそれがあるため、ヘリコプターテレビ電送用の周波数が4波へ増波されたが、その円滑な運用を図る必要がある。 また、消防防災ヘリコプターは、広域航空消防応援時等において、通常の消防・防災無線、航空無線では保有団体と交信することは不可能となるほか、大規模災害現場においては、同一地帯を飛行する複数の消防防災ヘリコプターの動態を管理し統制する必要があるため、消防庁では、ヘリコプターの動態管理が可能になるシステムについて、研究開発を進め、平成16年3月には実証実験を実施し、実用化に向けてさらに検討を行っている。 このほか、車載型や可搬型の衛星地球局、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の整備を促進し、大規模災害時にも機動的で確実な情報の伝達手段を確保することが重要である。ウ 情報の収集・伝達体制の整備 災害時における的確な情報の収集・伝達を行うためには、消防防災通信ネットワーク等設備の充実強化とこれを運用する体制の強化を図ることが重要である。 このため、都道府県、市町村、消防機関、警察等防災関係機関相互の連携を強化するとともに、収集、伝達すべき情報に係る基準の周知徹底、迅速な第一報の励行、消防機関からの速やかな情報伝達、夜間・休日の情報収集・伝達体制の整備・強化を更に推進していく必要がある。エ 住民等への情報伝達の強化 災害時の応急対策の実施に際しては、住民等に対し、気象情報や避難勧告、避難時の生活情報等を適切に伝達することが重要であり、これによって住民等に無用な不安を抱かせないことにもつながる。 そのためには、防災行政無線、有線放送、広報車、消防職団員の巡回等による住民への伝達手段についてハード・ソフト両面から絶えず点検を行うとともに、今後はインターネット等を活用した新たな伝達手段についても整備を進めることが望ましい。 また、住民に対する気象予警報、避難勧告等を迅速、的確に伝達できるよう、あらかじめ伝達手段、手順、ルート等を定め、これを地域防災計画に明示し、住民への広報に努めるとともに、職員に対しても周知徹底しておく必要がある。オ 衛星通信を用いた情報伝達体制の整備 現在、衛星系の通信網として活用されている地域衛星通信ネットワークは、電話・ファクシミリとアナログ映像送信を主としたシステムであるが、情報通信分野の環境は、インターネットに代表されるように大きく発展を続けている。映像分野においてもデジタル化への移行が急速に進みつつあり、地域衛星通信ネットワークにおいても、データ通信を重視し、デジタル映像方式を導入したシステムへの移行が進められている。カ 消防・救急無線のデジタル化への対応 現場活動の複雑、多様化に伴う情報量の増加等に対応するため、消防・救急無線のデジタル化を推進するとともに、消防緊急通信指令施設に車両の動態管理、地図検索装置等を整備するなど、一層の高度化を図る必要がある。
(2)最新の情報通信技術の活用ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を、全国の都道府県、消防本部に整備促進し、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。 また、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進める必要がある。イ 災害対応支援システムの充実 防災用地理情報システム(防災GIS)、全地球測位システム(GPS)等の活用を図りながら、消防防災対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるICT化推進のための共通基盤としてパソコンの整備及びこれに接続するLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が遅れている。 そこで電子自治体時代にふさわしい住民サービスを提供していくためには、消防本部においても情報基盤の整備を早急に進める必要がある。 このため消防庁では平成13年度からパソコンの一人一台体制の整備に必要な経費を地方交付税措置として消防費に算入する財政支援を行っている。
(4)携帯電話等からの119番通報のあり方の検討 一般加入電話からの119番通報は、通報者の電話番号をもとに発信地を検索し、表示するシステムが構築されており、迅速な消防活動を行うために活用されている。 一方、携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部へ転送又は復唱して伝達する方式をとっている。 この方式では、転送にかかる時間的遅延などの問題が指摘されていることから、消防庁では、「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討懇談会」を開催するなど、消防関係機関や電気通信事業者等と連携を図りながら、発信電波を受信した基地局の位置情報を基に接続先消防本部の振り分けを行い、管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムへの移行を平成17年度に行うこととしている。
(5)消防防災分野における申請・届出等手続の電子化の取組み 申請・届出等手続の電子化の取組みについては、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてペーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやりとりしてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされた。それを踏まえ、総務省では「総務省申請・届出等手続の電子化アクション・プラン」(平成14年7月25日総務省行政情報化推進委員会了承)が策定された。 これを受けて、消防庁では「総務省関係法令に係る地方公共団体関係手続のオンライン化実施要領」(平成15年3月31日)において、地方公共団体に対する申請・届出等の手続をオンライン化するための事務処理手順、システム使用等の実施方策を提示したところである。 消防防災分野における申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うものとしては、検定対象機械器具等の型式承認の申請、製造所等(移送取扱所)の設置許可申請等があり、順次インターネットを利用して行えるよう整備を進めているところである。また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)については、平成14年度にオンラインシステムの開発を行い、汎用受付システムとの連携を図るための調整を行った上で、モデル消防機関において実証実験等を行った。平成15年度には国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化のために必要な措置を図ったところであり、平成16年度も引き続き国と地方公共団体とのオンライン化を推進し、行政事務の効率化等に努めることとしている。
消防・救急無線のデジタル化について 消防・救急無線については、災害時における消防活動上の重要な情報伝達手段として、これまでアナログ通信方式による音声主体の運用が行われてきました。デジタル電送等の通信ニーズの多様化に対応するため、デジタル通信方式の導入などにより、逼迫する周波数帯の有効利用が図られつつあるところです。消防・救急無線についても同様に、デジタル化が求められているところであり、平成28年5月31日までの期間において、すべての消防本部がデジタル化を進めていくこととなっています。 消防・救急活動においては、患者の傷病情報等の伝送を行う等、個人情報の保護の観点から、より秘匿性を向上させた通信が求められます。また、消防・救急車両の位置情報をはじめ、動態管理情報や水利情報等のデータ伝送ニーズへの対応等、通信の高度化が求められているところです。さらにデジタル通信方式の活用により、消防活動における音声通信の輻輳を回避することや、デジタル化による占有周波数の狭帯域化により周波数の有効活用ができるようになります。 消防・救急無線のデジタル化によって、これらの通信ニーズの実現と、高度化支援及び安心した通信の実現が図られ、一層の消防力の活用につながります。
同報系の市町村防災行政無線の整備について 同報系の市町村防災行政無線は、住民に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報や避難勧告の伝達に極めて有効な無線網です。近年、この同報系の市町村防災行政無線については、より一層の周波数有効利用を図り、災害発生時の住民の安全確保や行政サービスの向上を図るために、高機能なデジタル方式が導入されています。(1)同報系の市町村防災行政無線のデジタル化の有用性について 同報系の市町村防災行政無線のデジタル化には次のような有効性があります。 ア 双方向通信の実現により、電話のように会話が可能となるとともに、市町村役場から住民への拡声通報中であっても、別の場所へ連絡ができるようになります。 イ データ通信の実現により、各種文字データ表示による災害時要援護者への情報伝達が容易に可能となるほか、画像伝送や各種データの蓄積及び加工等音声以外の高度かつ高機能な情報伝達が可能となります。(2)同報系の市町村防災行政無線に関する標準化 現在のアナログ無線では、各メーカーが製造する機器間に互換性がない状況でした。他の市町村から被災地へ関連機器を持ち込んだり、市町村合併に対応可能とするためには、メーカー相互間の互換性を保証する規格が必要となります。平成15年4月に、総務省において「市町村デジタル同報通信システム推奨規格」(総務省推奨規格)が策定され、これを受けて同年7月には民間規格である「市町村デジタル同報通信システム」の標準規格が策定されました。これらの規格により、同報系の市町村防災行政無線について、相互互換性が確保できるとともに、標準化により、価格の低減化も図られるものと期待されています。
携帯電話やIP電話などからの119番通報について 消火活動や救急・救助活動は、1分1秒を争う時間との勝負です。消防本部では、119番通報を受けると、直ちに最寄りの消防署から消防車や救急車等を出動させます。近年、電気通信技術の変革により、通報を行う電話の仕組みも大きく変わろうとしています。携帯電話からの119番通報について 固定電話からの119番通報は最寄りの消防本部へ直接つながりますが、携帯電話からの通報は、一度大きな消防本部(代表消防本部)が受信し、発信場所を管轄する最寄りの消防本部へ転送する方式によって受信されています。しかしながら、携帯電話からの119番通報件数が150万件を超えて年々増加傾向にあることから、現行方式では、管轄外から着信する通報の受付と転送のための時間的遅延等の問題が指摘されています。そこでこれを改善するため、携帯電話からの119番通報について、発信地を管轄する消防本部に直接接続するシステム(直接受信システム)が平成17年度に導入されます。システムの移行後においても、携帯電話の電波が消防本部の管轄境界を超えて接続される可能性があり、この場合においては通報の転送が行われます。火災や救急などの通報を円滑に行うためには、固定電話と携帯電話の通報の仕組みの違いなどを、通報者にも予め理解して頂く必要があります。IP電話等からの119番通通報ついて IP電話や直収電話など従来からの固定電話に相当した新しい電話サービスが開始されつつあります。これら新しい形態の電話から119番通報を可能とするためには、各消防本部ごとに接続回線を準備するなどのシステム整備が必要であり、各消防本部において受信体制を順次構築中です。今後、電気通信事業の動向を踏まえ、携帯電話からの直接受信システムの導入を機に全国的な体制整備を行う予定です。
第3章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成15年中の火災を原因別にみると失火が全体の62.1%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日頃からの備え、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会をつくるためには、国民の防火防災意識の高揚に待つところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災週間」(8月30日から9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、都市構造や建築構造、生活様式の変化等に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日頃から防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施を提案し、国民に対する防火意識の普及宣伝に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成15年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい気候となる時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、「その油断 火から炎へ 災いへ」を平成15年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力のもとに、「住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災予防対策の推進」、「消火器事故防止対策の推進」を重点目標として、各種広報媒体を通じて防火広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断、老朽化消火器の一斉回収等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。イ 春季全国火災予防運動(平成16年3月1日〜3月7日) 平成16年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語のもとに、「住宅防火対策の推進」、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」、「林野火災予防対策の推進」を重点目標として、秋季同様、様々な行事を実施した。
(2)全国山火事予防運動(平成16年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成16年の全国山火事予防運動では、「未来へと ひきつぐ森です 火の用心」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗、ポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練、研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と婦人防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成16年3月1日〜3月7日) 車両火災は前年から若干減少しているものの、依然として発生件数が多いことから平成16年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、車庫、駅舎等の対象物に対する初期消火、避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成16年1月26日) 昭和24年1月26日の法隆寺金堂火災を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共唱により毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導のもとに重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。 平成16年1月26日には、昭和30年の「第1回文化財防火デー」開催以来、50年の節目を迎えた。 文化財保護の歴史を顧みつつ、文化財防火・防災意識の高揚を図るため、第50回文化財防火デー記念事業として、京都市において「第50回文化財防火デー記念式典」を開催し、法隆寺金堂壁画再現事業に参加した平山郁夫氏による記念講演のほか、半世紀にもわたる長い間、継続して文化財防火に尽力されてきた以下の方々を文化財防火功労賞受賞者として表彰した。
2 危険物に関する意識高揚 危険物に係る火災・漏えい等の事故は近年増加傾向にあり、平成15年中の事故発生件数は、統計を取り始めて以来過去最悪となっている。それらの事故原因を分析すると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然防止するために、消防庁では、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図るため、平成2年度から、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」としている。「危険物安全週間」に関して、推進標語の募集や推進ポスターの作成及び、各都道府県、関係団体等と協力し広報活動を行っているほか、危険物安全大会において危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。また、危険物施設においては、万一事故が発生した場合に備え自主的に訓練等を行っている。 平成16年度の危険物安全週間においても、女子柔道の谷亮子選手をモデルとした推進ポスターを作成し、「危険物 ゆるむ心の 帯しめて」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域で危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関においては、危険物施設を対象とした立入検査を実施し、事故の未然防止を図るとともに、火災や油漏れ事故を想定した訓練を自衛消防組織等と連携し行った。
3 防災知識の普及啓発 平成16年においても7月に新潟・福島豪雨災害や福井豪雨災害が発生、また10月には台風23号による水害、震度7を記録した新潟県中越地震が発生するなど自然災害が多発している。一方、東南海・南海地震や東海地震、南関東直下型地震といった大規模地震の発生が予想されているところであり、災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならない。また同時に国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識や技術を確実に身につけるとともに、日頃から家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災を心がけることが極めて重要である。また、防災のための講習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、前者では大がかりな防災訓練等を中心とした行事が行われているのに対し、後者は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日頃の備えを高めていくことがその趣旨とされている。平成16年の防災とボランティア週間では、39都道府県のほか、525の市区町村が、防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業を実施している。 このほか、消防庁においては、年間を通じテレビ放送を利用して、防災知識の普及啓発事業を実施しており、平成16年においては、平成15年7月に発生した集中豪雨による水俣土砂災害、災害伝言ダイヤルや災害伝言板等をテーマとした番組を放送するとともに地方公共団体では、防火教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道等のライフラインが寸断され、常備消防をはじめとする防災関係機関等の災害対応に支障をきたすことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識のもとに、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や、救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ、地域における自主的な防災活動の重要さが改めて認識されたところであり(第3−2−1図)、これに伴い全国における自主的な防災組織の組織率も増加傾向にある(第3−2−2図)。 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成16年4月1日現在では、全国3,123市区町村のうち、2,480市区町村で11万2,052の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、62.5%となっている(附属資料26)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,185市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ401市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これに要した経費は平成15年度で合計33億4,537万円に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を創設し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図っているほか、財団法人自治総合センターではコミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、災害補償制度の充実、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による防災活動の啓発を行うとともに、自主防災組織の活動拠点づくりを進めるため、防災基盤整備事業により、自主防災活動をはじめとする地域防災力向上を図るための防災拠点施設の整備を促進している。また、自主防災組織活動を進めるための指針である「自主防災組織の手引」(冊子)や自主防災組織結成のためのポイントを、視覚的にわかりやすく示した「自主防災組織の結成にむけて」(CD-ROM)を作成し、それぞれ各自治体等へ配布している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 平成15年度には、「地域の安全・安心に関する懇話会」を開催し、その中で、地域防災力強化の決め手となる自主防災組織の活性化のためには、自主防災組織相互の協調・交流や行政・企業・教育その他の分野との連携が重要とされ、自主防災組織が相互の活動内容を知り、連絡を取り合うための都道府県や市町村単位の連絡協議会の設置が有効と示された。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人防火クラブは、家庭における防火の分野では、日頃から大きなウェイトを占める主婦等が火災予防の知識を修得し、地域全体の防火意識の高揚を図るものである。万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っている。 阪神・淡路大震災においても、婦人防火クラブにより初期消火活動や避難所での炊き出し等が活発に行われた。 なお、平成16年4月1日現在、全国の組織数は、1万4,351団体、約223万人となっており、37道府県において都道府県単位で連絡協議会がつくられている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人防火クラブの活動内容の充実・強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 少年・少女を中心とした自主防災組織である少年消防クラブは、10歳以上15歳以下の少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すとともに、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために各地域で組織づくりが進められている。 消防庁では、関係機関とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成15年度は、特に優良なクラブ13団体、優良なクラブ32団体、及び優良な指導者10人を表彰した。 また、平成15年度も、表彰式と併せて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2004」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成16年5月1日現在の組織数は、5,980団体、約46万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした自主防災組織である幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図るものである。近い将来少年・少女を中心とした防災活動に参加できるための素地づくりのため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導のもとに組織の育成が進められている。 なお、平成16年5月1日現在の組織数は、1万4,624団体、約125万人となっている。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成16年4月1日現在、2,530組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものである。しかし、地震などの大規模災害が発生した際は、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られれば、地域の自主防災体制の充実に大きな効果をもたらすものと考えられる。 消防庁では、企業(事業所の防災組織)の地域社会での防災活動への参加促進を図っているが、今後、事業所の地域での防災活動を一層高めるためには、事業所と地域社会との平常時からの協力関係の強化及び事業所の防災組織が参加・協力するに当たっての条件整備を進めていくことが必要である。
3 災害時のボランティア活動 被災地における多様なニーズに対応したきめ細かな防災対策を講じる上で、ボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることは、阪神・淡路大震災において改めて認識されたところである。平成7年12月に改正された災害対策基本法において、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられたところであり、また「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災とボランティアの日」(1月17日)の創設も行われている。 最近では平成16年7月の新潟・福島豪雨や福井豪雨のほか、同年10月の新潟県中越地震においても多数のボランティア(平成16年11月25日現在、延べ5万5,373人)が被災地に入り、避難所での炊き出し支援、救援物資の仕分け作業、被災家屋の片付け等様々な活動が活発に行われている。 消防庁においては、災害救援ボランティアの研修カリキュラムを示すとともに、消防機関に研修の協力について要請を行っている。 また、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報を相互に得られるよう、平成13年5月から、共有すべき情報をデータベース化し「災害ボランティア・データバンク」として、インターネットを通じて公開したが、平成15年6月には、データベースの内容充実を行い、都道府県別、団体別、活動内容別、人材・資機材別などの検索・集計の機能向上を図った。さらに、平成15年度には広域かつ大規模な災害時における災害ボランティア活動の支援のあり方について検討を行うとともに、災害時のボランティア活動の成否に深く関わる被災者側のニーズと災害ボランティアの調整に着目し、この調整の役割を担うボランティア・コーディネーターを支援するために汎用的な情報整理支援システムを構築し、そのCD-ROMを各自治体等へ配布した。 平成16年7月の新潟・福島及び福井豪雨災害において、災害ボランティアが延べ10万3,118人活動するなど、災害ボランティアの活動があらためて注目されたことを受け、平成16年9月には、災害ボランティアや関係省庁が一堂に会し、防災担当大臣出席の下、今回のボランティア活動を振り返りながら意見の交換を行う「16年7月豪雨ボランティア懇談会」を内閣府と共催した。 さらに、平成16年度には、ボランティアセンターの迅速な立ち上げと円滑な運営に資するため、災害時のボランティア活動やボランティアセンターの運営等の活動事例を収集し、データベース化の上、ホームページ上で広く公開することとしている。 また、災害時の混乱した状況のもとで災害ボランティアの活動が円滑に行われるようにするために、あらかじめ、平常時から災害ボランティア団体と地方公共団体が災害発生時のそれぞれの役割を明確に定めておく必要があることから、災害ボランティア団体と地方公共団体の連携を推進していくこととし、毎年、都道府県、政令指定都市及び消防庁で構成する『災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会』を開催して、地方公共団体における災害ボランティア関係施策等について情報交換、調査検討等を行っている。
第3節 災害に強い安全なまちづくり1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設や、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えた。また、その後も相次いで大規模な地震被害が発生し、地方公共団体における災害対応能力の向上が大きな課題となっている。そこで、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、〔1〕 避難所となる公共公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど)〔2〕 災害対策の拠点となる公共公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など)〔3〕 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 また、水道管、ガス管、港湾、地下鉄の耐震化についても単独事業への支援策が設けられている。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(平成16年2月)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり拠点(以下「防災拠点」という。)となる公共施設等(例えば、社会福祉施設、避難所に指定されている学校施設・公民館等、災害対策本部等の庁舎、消防本部、警察本部等)の耐震改修の状況等は次のとおりである(平成15年4月1日現在)。 地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等は約18万7,300棟で、このうち約11万1,600棟(約60%)が昭和56年以前の耐震基準で建築されたものである。 この約11万1,600棟のうち耐震診断を実施した棟数は、約3万6,700棟(約33%)である。 耐震診断を実施した約3万6,700棟の建物をみると、そのうち約9,500棟(約26%)が「耐震性がある」と診断され、また、平成15年度末までに、約1万1,500棟(約31%)が耐震改修を終了しており、合計、約2万1,000棟(約57%)の耐震性が確保されている。 また、今後、平成19年度までに耐震改修を予定している棟数は、耐震診断を実施した約3万6,700棟のうち約5,200棟(約14%)となっている。 次の建築物については耐震性が確保されていると判断した場合、平成15年度末で、地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等の約18万7,300棟のうち約9万6,700棟(約52%)が耐震性が確保されていると考えられる。ア 昭和56年以降の新耐震基準で建築された建築物(約7万5,700棟)イ 耐震診断の結果「耐震性能を有する。」と診断された建築物(約9,500棟)ウ 耐震改修済みの建築物(約1万1,500棟) また、平成19年度までの耐震改修予定の棟数(約5,200棟)を加えると、平成19年度末では、約10万1,800棟(約54%)が耐震性能が確保される見込みとなる(第3−3−1図)。 災害対策の拠点となる施設等については、早急かつ計画的な耐震化に取り組む必要がある。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防施設等整備費補助金や防災基盤整備事業等により、消防車両や消防防災ヘリコプター、防災情報通信施設、耐震性貯水槽等の整備を促進している。 中でも、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝達する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との間の情報連絡についても多角的な対策を講じている。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、併せて食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際には、一部の市町村において停電により窓口業務、県防災行政無線及び震度情報ネットワーク等に支障が生じた例があったことから、消防庁としては、非常用電源の整備、保守点検の実施と的確な操作の徹底、さらには防災行政無線を使用した通信訓練の実施を地方公共団体に要請したところである。 さらに、住民の避難に必要な施設等については、避難地、避難路の整備のほか、トイレ等避難生活に必要な機能を持つよう避難施設の改修を促進している。 なお、地域防災計画上掲載されている災害危険区域については、地方債と地方交付税による財政措置が講じられている。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースを確保することは非常に重要であり、このスペースをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、防災基盤整備事業等によりその整備を促進している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。・「コミュニティ防災拠点」 おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難地等に活用される。・「地域防災拠点」 おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難地等に活用される。・「広域防災拠点」 都道府県に一又は数箇所設置され、消防防災に関する広域応援のベースキャンプや物資の集配基地、長期の避難地等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、防災無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティレベルの研修等に活用される防災センターから、日頃から防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。 なお、首都圏、京阪神圏や名古屋圏といった稠密な市街地が連たんしている大都市圏において、広域あるいは甚大な被害が発生した場合における、国及び地方公共団体等による広域的な災害対策活動拠点の整備検討が引き続き行われている。これを中心とした広域防災拠点の連携等のあり方に関する検討のため、消防庁では平成14年度に、関係行政機関や学識経験者等で構成する「広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会」を、首都圏・中部圏・近畿圏の各大都市圏域ごとに開催したところであるが、広域防災拠点に関する共通的課題としては、オープンスペースの確保、広域防災拠点における防災情報の共有化の実現、広域防災拠点を活用した緊急消防援助隊の機能充実のための仕組みの検討、災害ボランティア活動支援のための環境整備、圏域内における定期的な協議の実施といった点が挙げられる。 平成16年度からは、首都圏の基幹的広域防災拠点として位置付けられた東京都の有明の丘地区及び川崎市の東扇島地区において、それぞれの防災拠点としての機能の具体的な検討とあわせて、基本設計が進められている。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有している。また、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保など)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化と合わせた住民等への情報連絡機能の強化など、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことによって、地域の防災能力の向上を促進する必要がある。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など地方公共団体の実施する単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組みや連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組み、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。これまでの応募累計は、1,013件を数えるに至っている。 消防庁では、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供などソフト面での支援をも含め、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを総合的に推進することとしている。
防災まちづくり大賞受賞事例 地域のコミュニティ等における防災に関する創意工夫を凝らした取組みや継続的な取組み等のうち、特に優れたものを表彰し、全国に紹介する「防災まちづくり大賞」は、平成15年度で第8回目を迎えました。 第8回防災まちづくり大賞では、東京都にある災害救援ボランティア推進委員会と、和歌山県西牟婁郡串本町にある大水崎自主防災組織が、総務大臣賞を受賞しました。 東京都にある災害救援ボランティア推進委員会(以下、委員会)は、災害時のボランティア活動にはリーダーの存在が重要であるという阪神・淡路大震災の教訓をもとに、そのようなリーダーの養成と地域ネットワークの構築を目的として平成7年7月に結成されました。当該委員会では、ボランティアリーダー養成のために教育訓練講座を平成7年12月から開催しています。平成15年8月には、70回を数えるに至り、3,161名をセーフティーリーダーとして認定してきました。委員会は、消防庁が平成7年10月に公表した「災害救援ボランティアの研修カリキュラム」を参考にした独自のカリキュラムで教育訓練を進め、防災訓練、ライフラインや防災関係の施設見学、専門家による講演会等も行っています。こうして、セーフティーリーダーとして認定された多くの方々が、自主防災会や自治会、企業、学校、地域等において多彩な活動を行っています。 一方、和歌山県西牟婁郡串本町にある大水崎自主防災組織は、地震が発生した場合、津波被害が心配される地域にあって、津波避難マップを作成し全世帯に配布したり、災害図上訓練(DIG)を実施するなど様々な活動にこれまで取り組んできました。特に、行政に依存しがちなハード面の防災対策を住民が自発的に実施し、避難路建設に着手した点が、この組織の特徴であり、のちにこの活動が契機となって、町による避難路整備につながりました。こうして完成した避難路は、住民の防災意識の向上と地震津波に対する啓発に大きな役割を果たし、防災対策のシンボル的存在になっています。
第4章 規制改革への対応 近年、国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっている。本章では、規制改革に関する政府の取組みとともに、規制改革に対する消防庁の対応について記述することとする。
1 規制改革推進3か年計画以前の取組み 消防防災行政においては、必要な安全性を確保する等の観点から、消防用設備等や危険物施設等の各分野において必要な規制を行ってきているところであるが、近年の技術革新や社会経済活動の多様化等に鑑み、柔軟な対応を求められることが多くなり、平成5年9月16日の緊急経済対策閣僚会議決定「規制緩和等の実施について」において7項目、平成6年2月15日の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」において3項目、平成6年7月5日の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において7項目を消防防災行政に係る各種の規制緩和措置として計上し、それぞれ実施に移してきたところである。 また、平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、規制緩和等が計画的に推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に61項目を計上し、平成13年度末までに、全ての項目について措置を講じた。 さらに、平成10年3月31日には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、規制緩和等が一層推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に32項目を計上し、平成15年度末までに、全ての項目について措置を講じた。 これらの規制緩和への対応として、消防庁が講じた主な措置は以下のとおりである(第4−1表)。
2 規制改革推進3か年計画への取組み 平成13年度からの「規制改革推進3か年計画」の策定に当たり、消防庁としては、内外からの意見・要望等を踏まえつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から所管事務の見直しを行った。 これにより、平成13年3月30日に「規制改革推進3か年計画」が閣議決定され、消防庁としても同計画に基づき、引き続き規制緩和など規制改革の推進に向け積極的に取り組むこととなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に計24項目が対象となり、平成15年度末までに16項目について措置を講じた(第4−2表)。 なお、これ以外の8項目については、平成16年3月19日に新たに閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」に引き続き計上し、平成16年度以降、所要の措置を講ずることとしている(第4−3表)。
3 規制改革・民間開放推進3か年計画への取組み これまで、3次にわたる「規制改革(緩和)推進計画」を策定する中で、消防庁では、消防防災分野において内外からの意見・要望を踏まえて、安全性の確保を図りつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から積極的に規制改革を推進してきた。 平成16年度から、行政の各分野について、民間開放その他の規制の在り方の改革の積極的かつ抜本的な推進を図り、経済社会の構造改革を一層加速することを目的として、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)が策定され、消防庁としては、消防防災行政に係るものとして以下の17項目を計上し、所要の措置を講ずることとしている(第4−3表)。
4 構造改革特区制度への取組み 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日には、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部が内閣に設置された。 推進本部においては、平成14年9月に「構造改革特区推進のための基本方針」等を決定し、構造改革特区推進のための取組み方針等を示した。これを受けて、推進本部は同年10月に、「構造改革特区推進のためのプログラム」を決定し、特区において実施することができる特例措置及び全国において実施することが、時期・内容ともに明確な規制改革事項の2点について、明らかにしたところである。 さらに、平成14年12月18日には、「構造改革特区推進のための基本方針」の趣旨を実現するため、構造改革特別区域法(以下「法」という。)が公布され、法第3条第1項に基づき、政府における基本的な施策の推進の方向を示すものとして、その意義及び目標、政府が実施すべき施策に関する基本方針等を内容とする構造改革特別区域基本方針が定められた。 消防庁としては、特区制度の趣旨に鑑みつつ、火災予防又は防災の観点からの安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。〔1〕 構造改革特区において実施することができる特例措置(第4−4表)・農家民宿における消防用設備等に係る消防法令の規定に対する柔軟な対応(平成16年8月現在の実績 25件)・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上のレイアウト規制等の見直し(平成16年8月現在の実績 1件) なお、平成16年4月には、特区において講じられた規制の特例措置の評価に関する基本方針が定められ、特段の問題の生じていない特例措置については、速やかに全国規模の規制改革につなげることとされた。消防庁としてもこの基本方針に基づき、上記特例措置の全国展開について検討を行っているところである。〔2〕 全国において実施することが時期、内容とも明確な規制事項(第4−5表)・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設
第5章 国際的課題への対応[国際協力・国際交流] 災害から国民の生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災における国際協力・交流は、人道主義、国際社会の相互依存関係、環境保全等の観点から、必要性・緊急性の高い分野となっている。 また、開発途上諸国における近年の傾向として、人口の増大と都市への集中、産業活動の拡大、自然環境の変化等に伴い、火災をはじめ地震、風水害、土砂災害等、大規模な災害が発生する危険性が高まっている。我が国では、過去における様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ね、ハード・ソフトの両面にわたり高度なシステムを整備していることから、積極的な国際社会への貢献が更に求められている。 このため、集団研修、専門家派遣など開発途上諸国への消防防災技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 開発途上諸国からの研修員受入れ(1)集団研修の実施 消防庁では、独立行政法人国際協力機構(旧国際協力事業団、以下「JICA」という。)を通じ開発途上諸国の消防防災職員を対象とした救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修を実施している。 いずれも消防に関する技術研修として、救急救助技術研修を昭和62年度から、消火技術研修を昭和63年度から、火災予防技術研修を平成2年度から実施している。平成15年度には、救急救助技術研修について10か国から11人(累計138人)を、消火技術研修については8か国から9人(累計141人)、火災予防技術研修については、5か国から5人(累計90人)を受け入れた。 また、集団研修のアフターケアのほか、消防防災分野における国際交流を幅広く展開するため、集団研修経験者を対象としたヒューマン・ネットワークづくりを進めている。
(2)個別研修の実施 消防庁では、(1)の集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修員の受入れを行っている。平成15年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中国幹部消防職員を消防大学校の予防科へ受け入れるとともに、各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき各国からの消防防災関係者を研修生として受け入れ、研修を実施した。
2 開発途上諸国への専門家派遣 消防庁は、JICAを通じ、開発途上諸国へ消防防災専門家の派遣を行っている。平成12年から5年計画で進められているタイ外傷センタープロジェクトにおいては、救急医療技術を移転するため救急救命に係る専門家を派遣するとともに随時研修員の受入れを実施している。 このほか、平成15年度には、ウズベキスタンに防災マネージメントに関する技術援助を行うため、短期専門家を派遣した。
3 プロジェクト方式技術協力の実施 消防庁では、JICAを通じ、平成9年10月から平成14年9月まで中国北京市が設立する北京消防訓練センターに対し、「中国・北京消防訓練センタープロジェクト」を推進してきた。 本プロジェクトは、5年間で、7分野、16人の長期専門家と23人の短期専門家を北京市に派遣するとともに、北京市消防局から30人の研修員の受入れを行うほか、必要な機材の供与を行うことにより北京市における消防技術の向上を図ってきた。 なお、プロジェクト終了後も、フォローアップとして救助技術に関する長期・短期専門家を派遣し、更なる技術協力を実施している。 また、平成14年8月から実施されている「カリブ・災害管理プロジェクト」には地域防災計画の長期専門家1人を派遣するとともに、研修員の受入れを行っている。 1、2及び3で述べた研修員の受入れや消防防災専門家の派遣をはじめとした開発途上諸国への国際協力は、各国における消防防災の発展に大きな成果を上げているところである。
4 国際交流(1)トップマネージャーセミナーの実施等 消防庁ではJICAを通じ、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、トップマネージャーセミナーを実施しており、平成15年度には、ベトナムから消防警察局幹部等の訪問を受け入れ、意見交換、視察等を実施している。
(2)日韓消防交流の推進 消防庁では、日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会、2002年の「日韓国民交流年」等を踏まえ、日韓消防行政セミナーを開催している。平成15年度の日韓消防行政セミナーは韓国で開催され、危機管理行政や自然災害対策等について活発な意見交換が行われた。平成16年度は、平成17年1月に日本で開催する予定である。 平成16年9月には、消防庁長官が韓国消防防災庁を訪問し、消防防災庁長との日韓消防トップ会談が行われ、大規模災害対応や民防衛制度について活発な意見交換が行われた。 また、消防庁幹部の関係学会への出席など、日韓消防の交流、連携・協力を推進している。
(3)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟(Federation of World Volunteer Firefighters Association)が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会(International Fire Chiefs Association of Asia)は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。平成16年11月17日から19日にかけて第23回総会が台湾・台北市において開催され、我が国からも消防庁、消防機関等の代表が参加している。
[国際緊急援助](1)設立の経緯 昭和60年11月14日(現地時間13日)に発生したコロンビアのネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際して、救助隊の派遣について意向打診が外務省から消防庁に対して行われた。この援助活動は実現には至らなかったが、消防庁では、こうした活動には国際協力の一環として積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service 略称“IRT-JF”愛称“愛ある手”)を整備した。その後、政府は外務省を中心に、海外で大災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月に「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布施行された。
(2)派遣体制 海外における大規模災害発生時に、被災国政府等からの要請に応じて実施する総合的な国際緊急援助体制が整備され、より迅速な派遣が可能となった。 消防庁長官は、外務大臣からの協力要請及び協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなっている(第5−1図)。 消防庁長官の派遣要請に基づき参集する国際消防救助隊は、日本国の国際緊急援助隊救助チームとしてその一部を構成し(第5−2図)、その高度な救助技術と能力を海外の被災地で発揮している。 また、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、平成13年度に登録消防本部・隊員数を40消防本部501人体制から62消防本部599人体制に拡充した。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制を更に強化することとしている。
(3)アルジェリア、モロッコ地震災害 国際消防救助隊は、世界のトップレベルの救助技術を有する救助隊として、平成15年度末までに13回海外において救助活動や支援活動を行っている(第5−1表)。 平成15年5月に発生したアルジェリア民主人民共和国における地震災害においては、国際消防救助隊員17名を派遣して現地で救助活動を行い、倒壊建物から生存者を救出するなど大きな成果を上げている。 また、平成16年2月に発生したモロッコ王国における地震災害には、国際消防救助隊員7名を派遣し、現地の救助技術向上のため救助資機材の供与を行うなど、日本とモロッコ王国両国の友好親善の観点からも大きな役割を果たしている。 消防庁では、アルジェリア民主人民共和国、モロッコ王国両国への派遣経験を活かし、より効果的な国際緊急援助体制の構築を図るべく、その検証に取り組んでいる。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成活動を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても昭和62年7月にはISO/TC21協議会を設置し、ISO対策の充実強化を図り積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成16年3月31日現在、53の規格が国際規格として定められている。                      また、ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)分科会において進められている消防隊用防護服等の規格策定作業についても、積極的に参加している。
2 規格の国際化への対応 近年、WTO(世界貿易機関)等における非関税障壁低減に関する包括的な取組みの中で、各国個別の基準・認証制度を国際的に整合化することの重要性が認識されてきた。そして、平成7年1月にはWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効し、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。日本はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、また、平成13年には、ISO/TC21総会を千葉県の幕張メッセにおいて開催するとともに多くの実験データの提供を行った。さらに、平成15年9月にはローマ(イタリア)においてISO/TC21総会が開かれ、日本からも各分科会の専門家等が出席を行うなど国際規格の策定に積極的に貢献している。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、他の国々と連携を図りつつ、引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全]1 ハロン消火剤等の使用抑制 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、平成2年に消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を開催し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組み、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略と併せ、日本全体として取りまとめの上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどした。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成16年1月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。今後もハロン1301を貴重な資源として捉え、クリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理のもとに使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクルを効率的かつ的確に行うことを目的として平成5年に設立されたハロンバンク推進協議会を活用して回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
2 消防用設備等における環境・省エネルギー対策の推進 近年の地球環境問題に関する社会情勢等から、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組みが求められている。 このため、消防庁では、平成11年度において、消防用設備等全般における環境・省エネルギー対策について調査研究を行ったほか、これを踏まえ、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の一環として、平成12年度から5年計画で消火器と防炎物品のリサイクルの推進に取り組んでいる。 また、環境問題への対応や省エネルギー等の観点から、天然ガス若しくは液化石油ガスを燃料とする内燃機関又はガスタービンを原動機とする自家発電設備が開発され、さらに、コージェネレーション等の常用電源としての自家発電設備が普及してきたことに対応して、平成13年3月に、消防用設備等の非常電源である自家発電設備について、常用電源との兼用等に係る技術基準の整備を行ったところである。平成14年度からは、新型電源(燃料電池、レドックスフロー電池、ナトリウム・硫黄電池等)の消防用設備等の非常電源への取扱いについて検討を行っており、非常電源としての取扱いが可能な電源については、平成16年度中に規定の見直し等必要な措置を講ずることとしている。
3 燃料電池の実用化に向けた規制の再点検の実施 燃料電池は、環境負荷の低減に寄与すること、エネルギー安全保障の確保に資すること、我が国産業の競争力の強化も期待できること等から、我が国における実用化・普及が強く期待されている。その一方で、燃料電池は、爆発性のある水素を用いていることから、消防防災分野についても、〔1〕地下駐車場等における燃料電池自動車火災に対応した消火設備、〔2〕家庭用燃料電池に係る安全基準、〔3〕水素供給スタンドを給油取扱所に併設する場合の安全基準について、平成16年度までに規制の再点検を実施することとされており、関係省庁とも連携を取りつつ、防火安全対策の検討を行っているところである。
第6章 消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)及び消防庁に設置された消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 これらの研究・開発の推進の中心となっているのは、独立行政法人消防研究所である。 消防研究所は、昭和23年に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきたが、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となり、より柔軟な研究ニーズへの対応が可能な体制となっている。 一方、消防庁においては、平成15年度から、消防防災に係る競争的研究資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を創設するとともに、燃料電池の設置の安全に係る研究等、消防法の技術基準の整備に直結する研究について、直接研究を実施する体制をとっている。 また、消防防災の研究・開発は、消防機関の研究部門等においても積極的に実施されている。
[消防研究所における研究開発等] 消防研究所は、我が国唯一の火災等の災害に関する総合的な研究機関であるとともに、大規模、特殊な火災等の災害発生時の現場における消防機関等と一体となった災害対応(消火方法、拡大防止、二次災害防止等に関する助言、情報提供など)及び火災原因調査を担う機関であり、これらの災害等を踏まえた社会的、行政的要請の高い課題について緊急かつ優先的に行う重点研究と火災等の災害に関する基盤的な研究を継続的に実施している。 独立行政法人化に当たり、消防研究所では、5年間の期間中に達成すべき具体的な目標が「独立行政法人消防研究所中期目標」として定められたが、その中で「災害対応への情報化の促進」、「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」、「消火・救急・救助活動の技術の高度化」、「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の四つの研究領域については重点的に研究を実施することとされている。中期目標では重点研究領域とは別に、「物質の燃焼現象」、「消火の理論と技術」、「救急・救助」等の研究分野における基盤的研究の充実を図ることとされている。 また、消防研究所では、研究をより効率的に進めるため積極的に産学官の共同研究を推進しているとともに、研究に関する国際的な交流を行うほか、研究成果の公開及び普及のため各種の活動を実施している。
1 重点研究(1)平成15年度終了重点研究 平成15年度に終了した重点研究の概要は、次のとおりである。ア 林野火災の発生危険度と拡大を予測するシステムの開発(平成13〜15年度) 森林の荒廃や過疎・高齢化している山村の実態に対応し、最近利用が可能になりつつあるオンライン気象データベース、林野火災データベース、地形データベース等に基づくIT技術を利用して、林野火災の発生しやすい状況を予測する手法と、少ない消防力を有効に活用するため火災拡大防止手法を開発することを目的に研究を実施した。この結果、過去の火災情報と実効湿度、実効雨量、植生水分、人口密度、植生などの情報について、火災発生危険度に関する重回帰分析を行い、林野火災の発生危険度予測手法の精度を向上させるための情報を得た。さらに、ニューラルネット手法に基づく火災発生危険度予測手法も開発した。危険度予測の結果、実際に火災が発生した箇所は火災発生危険度の高い場所と概ね一致した。また、火の粉による着火を防止することを目的とし、空中散水による延焼防止をシミュレーション手法により調べた。イ 建物火災に関する研究成果を有効に活用する技術の研究(平成13〜15年度) 建物火災に関して蓄積されてきた、実大実験、素材性状、火災事例等の多元的な形態の研究成果情報を、火災危険度の事前予測に基づく仮想現実空間内での火災疑似体験として提供可能とする、あるいは、インターネットを介して共有化するために必要とされる共通データベース手続き(プロトコル)と、仮想現実空間(VR:Virtual Reality)での火災シミュレーション技術の開発のための研究を実施した。その結果、Webを通してアクセスできる、材料の燃焼データベース及び各種ゴミ類の燃焼データベースを構築した。また、体験者がVR建物内を自由に視点移動することができるとともに、火災現象とのインタラクティブ(相互作用)な体験ができる火災擬似体験装置を開発した。ウ 原子力施設の消防防災技術に関する研究1 原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究(平成13〜15年度) 原子力施設における臨界事故や火災・爆発事故発生時に、要救助者を被ばくから守る防護壁ロボットと要救助者を牽引し安全な場所へ移動させる牽引ロボットの要素技術を開発する研究を実施した。国内、海外の関連技術調査を行った結果、小型移動ロボット群を利用したシステムが防護壁ロボット及び牽引ロボットに対して有効な手法の一つであることがわかった。そこで、移動機構及びコンピュータを共通化したユニットを持ち、その上に種々の機能をオプションとして付加することができる小型ロボットを制作し、この基本システムの実用化に向けて様々な拡張機能の開発・改良を行った。エ 原子力施設の消防防災技術に関する研究2 原子力施設に利用される物質の消火困難性解明のための研究(平成13〜15年度) 原子力施設において使用されるアルカリ金属類について、小規模消火実験により消火残さの発火機構の解明を行い、中規模実験により粉末消火剤による消火性能と消火残さの発火抑制機能を評価するための研究を実施した。その結果、ナトリウム消火残さの発火抑制は、金属消火用粉末消火剤ナトレックスMに含まれる水分の寄与によることがわかった。オ ガレキ下に取り残された要救助者探査に必要な要素技術に関する研究(平成13〜15年度) ガレキ下に取り残された要救助者を探索し救出するロボットの五つの要素技術として、人体識別センサ、位置同定技術、探査プローブ、空中・ガレキ内移動型ロボットの協調探索技術、移動機構を研究開発した。その結果、人体識別センサについては、直径10mm、円形の断面形状、先端が平坦な触子を用いた場合10.0mm〜15.0mmの表面の変位が人体では認められることがわかった。位置同定技術については、国際電気通信基礎技術研究所が開発を進めているESPARアンテナを利用して、電波の指向性を利用した位置同定法を実験的に検討した。さらに、プローブに積載する機能を検討し、カメラ、距離センサとした。カメラ及び距離センサの選定を行い、プローブの試作を行った。空中移動型ロボットガレキ内移動型ロボットの協調探索技術については、空中移動型ロボットが撮影する動画像に、リアルタイムでガレキ内移動ロボットの位置、ロボットから得られた情報を表示する手法について基礎的な研究を行った。また、移動機構については、各面を開閉できる立方体の各面にクローラ機構を取り付けた移動機構を提案し試作を行った。カ 危険性判定試験方法の適正化に関する研究(平成13〜15年度) 消防法の危険物の判定試験法改正後に登場した新しい化学物質等、従前の判定法では危険性が十分評価しきれない物質について、当該新規物質の危険性の推定・把握が出来る試験方法の開発を行うための研究を実施した。その結果、国際的な改良が求められている自己反応性物質の危険性を評価するための圧力容器試験器に関して日本とオランダが提案している小型密閉式圧力容器試験の良否に関する検討結果をOECD-IGUS(経済協力開発機構・不安定物質の爆発危険専門家国際会議)の場で報告した。また、肉骨粉、ヒドロキシルアミン水溶液、タイヤ工場等で使用される発泡液などの新規物質の危険性も評価した。
(2)継続重点研究 平成15年度に実施した重点研究で16年度以降に継続しているものの概要は、次のとおりである。ア 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(平成14〜18年度) 発生した災害種別・内容、空間的分布とを迅速に把握し、把握した被害情報に基づく災害の拡大予測と最適対応のための支援情報を創出することを目的として、支援情報創出に必要となる基盤データ構築に関する検討、全国展開可能な簡易な被害拡大予測手法の開発、災害発生時におけるリアルタイムな災害拡大予測により被害を極小化するためのシステムの研究を行う。イ 斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究(平成15〜17年度) 斜面災害現場における救助活動の安全を確保するため、崩壊面の形状と地下水の流出状況を遠隔監視し、二次崩壊の前兆となる変化を感知する手法の開発を行う。ウ 災害弱者の火災避難安全のための警報・手法の開発(平成14〜16年度) 加齢あるいは聴覚障害により警報音の聞取りが困難な人に対しても有効な警報伝達手法の開発、及び病気・身体不自由などにより自力避難が困難な人を救助するための通報システムの開発のための研究を実施する。エ 消防用防護服の総合的な性能評価法に関する研究(平成14〜16年度) 消防用防護服の耐熱性能に加えて快適性、機能性などに関する研究を実施し、耐熱性能、快適性能、機能性能に関する我が国基準の提案と日本の気候風土に適した消防隊員用防護服の総合評価手法の開発を行う。オ 救急システムに関する研究(平成14〜16年度) 救急救命率の向上、市民から期待される救急サービスの維持・向上を図ることを目的として、増加し多様化することが予測される救急要請の実態、消防機関における救急隊の運用状況を調査分析し、限られた救急隊等消防力資源を効果的に運用する救急システムの構築のための研究を実施する。カ 石油タンクの経年劣化に伴う危険度予測手法の確立に関する研究(平成15〜17年度) 石油タンクの損傷による危険物の漏洩を防止するため、石油タンク底板の経年劣化の非開放検査手法(AE法)による評価、ごく短周期領域までの強震動の予測等を行い、供用中の危険物施設の安全性評価手法を確立する。平成15年に発生した宮城県北部地震、十勝沖地震に関連して現地緊急調査を実施した。特に十勝沖地震による石油タンク被害調査結果を踏まえ、平成16年度は大幅に研究計画を変更予定。キ 廃棄物及びその処理施設の火災安全技術に関する研究(平成15〜17年度) 廃棄物及び廃棄物処理施設における火災事例の調査をもとに、火災発生メカニズムを解明し、燃焼物の危険性評価を含む出火防止対策の技術的検討を行う。蓄積された知見に基づき、三重県ごみ固形燃料(RDF)発電所爆発事故時には、消火活動及びRDF除去作業への現地での助言を行った。
2 基盤研究 重点研究のほか、消防防災に係る科学技術の基礎的・継続的研究として、平成15年度には24課題の基盤研究を行った。
3 外部競争的研究資金等による研究 消防研究所では消防防災の研究をより積極的に行うため、文部科学省原子力試験研究費、科学技術振興調整費等の外部競争的研究資金を活用して研究を行っている。平成15年度には、次の研究課題を外部競争的研究資金により実施した。ア 原子力施設における火災安全に関する研究(重点研究:文部科学省国立機関原子力試験研究費)イ 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(重点研究:一部、文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト)ウ ガレキ下に取り残された要救助者探査に必要な要素技術に関する研究(重点研究:文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト)エ 石油タンクの経年劣化に伴う危険度予測手法の確立に関する研究(重点研究:一部、文部科学省科学技術振興調整費による「2003年(平成15年)十勝沖地震に関する緊急研究」)
4 大学、消防機関及び民間企業等との共同研究及び協力 消防防災の研究は、消防機関を通じた社会的なニーズの把握と成果の反映が重要であるとともに、産学官の連携により推進することが効率化などの観点から重要である。 建築防火、消火、あるいは危険物に関連した基礎的研究については大学の研究室を中心に、消防活動の現場に関連した研究については消防機関を中心に、消防用機器等の開発に当たっては民間企業を中心に、それぞれ共同研究先を広く求めている。平成15年度は次の28件について共同研究を実施した。
(1)大学等との共同研究等 消防防災に関連した火災安全等の研究を行っている大学及び工業高等専門学校の研究室と、火災・燃焼・消火等に関連した以下の共同研究等を行った。ア 原子力施設の消防防災技術に関する研究−原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究(京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻)イ 金属ナトリウムの燃焼と消火に関する基礎的研究(静岡大学工学部機械工学科)ウ 火炎中における消火剤の挙動に関する研究(筑波大学機能工学系)エ AE法による石油タンク底部の腐食劣化評価に関する研究(電気通信大学電気通信学部知能機械工学科)オ 多様な火災に対応するための消火手法に関する研究(東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻)カ 海の考慮による強震動予測の高精度化に関する研究(京都大学防災研究所・他)
(2)消防機関との共同研究等 消防機関と以下の共同研究等を行った。ア 消防用防護服の総合的な性能評価手法及び総合的に優れた防火衣の開発に関する研究(東京消防庁)イ 地下鉄車両の燃焼性状に関する研究(東京消防庁消防科学研究所)ウ 大規模閉鎖空間における消防活動に関する研究(横浜市消防局消防訓練センター)エ 救急活動記録データの分析(救急要請を行っている市民ニーズの把握、救急件数の増加要因分析など)他(仙台市消防局)
(3)地方公共団体、非営利団体等との共同研究等 地方公共団体、非営利団体等と以下の共同研究等を行った。ア 長距離無線LANとPHSを用いたネットワーク対応型消防無線システムに関する研究(独立行政法人通信総合研究所)イ 地震災害予測のための大都市圏強震動シミュレータの開発(科学技術振興事業団)ウ 閉鎖型スプリンクラーヘッドの感熱体の経年挙動に関する基礎的研究(日本消防検定協会)エ 消防用防護服の総合的な性能評価手法に関する研究(日本防炎協会)オ ガレキ内探査ロボットに必要となる要素技術に関する研究(岐阜県生産情報技術研究所)カ 斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究(独立行政法人防災科学技術研究所)キ ナトリウム燃焼挙動に関する研究(IV)(核燃料サイクル開発機構)
(4)民間企業等との共同研究等 民間企業等と以下の共同研究等を行った。ア 原子力施設の消防防災技術に関する研究−原子力施設における救助活動支援ロボット開発のための研究−イ 水/空気混合噴霧の消火性能に関する研究ウ バーチャルリアリティ(VR)技術を用いた防火安全技術に関する研究エ 一般住宅における初期火災時の燃焼特性に関する研究オ 火災時における臭い警報システムに関する研究カ 水幕式火災防災システムの設計法の開発に関する研究キ 室内環境データの収集と火災感知のための統計分析に関する研究ク AE法による石油タンク底部の腐食劣化評価に関する研究ケ 震災時の救助活動を想定したガレキ探査可能な大型ロボット開発可能性に関する研究コ 窒素富化空気を用いた防火技術の開発と評価に関する研究サ 災害弱者を含む広域住民への火災/避難に関する情報伝達手法の研究
ウォーターミストによる消火システム―水/空気2流体噴霧ノズルの開発― ウォーターミストの消火機構と有効な適用方法に関する研究は、横浜市消防局、東京大学等学術機関3機関、民間企業7社及び公的研究機関1機関との産学官連携の共同研究として実施しました。 建物の高層階で発生した火災を消火する際には、消火の目的で放水した水によって、下層の階に水による損害(以下、「水損」という。)が発生することが避けられず、消防活動時の水損が社会的な問題として指摘されてきました(表)。水損を軽減させ、消防隊の消火活動を効果的に行うことができる、より少量の水で効果的に消火する方法が求められています。この目標達成の手段として、ウォーターミストを消火に活用することとし、消防隊が使用するのに適した可搬で操作性に優れた水/空気2流体噴霧ノズルを新たに開発・試作しました。 空気を同時に噴出することにより水を微粒化する原理は、開発に参加した民間企業が人工降雪機(スノーガン)製造に関連して保有していた技術を応用したものです。通常の水単独での噴霧による場合に比較して、より低い圧力(水圧、空気圧とも0.4Mpa)でウォーターミストを発生させることができます。低い圧力で噴出させることにより、ノズルを軽量にすることが出来るだけでなく、噴出にともなう反動が小さく、操作性の高い装備とすることが出来ました。 今回開発した水/空気2流体噴霧ノズルから放出されるウォーターミストによる消火では、通常の消火方法と比較して、消火に必要な水の総量を1/4に削減できます。 現在、共同研究者である横浜市消防局では、開発した水/空気2流体噴霧ノズルの実践配備に向けた検討を進めています。
災害弱者の火災時避難安全のための警報・通報手法の開発 本研究では、「自力避難可能ではあるが聴覚障害等により警報音の聞取りが困難な人に対して有効な火災の警報伝達手法の開発」と「自力避難が困難な人を救助するための通報システムの開発」を行っています。 聴覚障害等を有する方々へのアンケート調査結果を踏まえ、警報音の聞取りが困難な人に対する警報伝達手法として、「光」、「振動」及び「臭気」を選択し、警報として認識することができるものを発生させる機能を有する機器の開発試作を行っています。 自力避難が困難な人を救助するための通報システムは、要介護者宅で火災が発生した際に、インターネット通信網を用いて近隣介護者、介護事業所等に警報・通報するものです。また、電話転送機能により、発災害時には第1通知先として家族や親族に自動的に通知し、第2通知先として火災が発生している住宅を管轄する消防署に119番通報することができます。 さらに、聴覚に障害のある方々は通常周辺で発生している災害情報等が把握しづらい状況にあることへの不安が大きなことが研究の過程で明らかとなったため、地域防災情報を受信し表示することが可能な機能の付加についても開発を行っています。
地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究 本研究では、災害直後対応のための支援情報創出に必要となる基盤データの構築に関する検討、それらを用いた全国展開可能で簡易な被害拡大予測手法を開発するとともに、災害発生時のリアルタイム災害拡大予測を行い、これに基づいた広域応援を含めた消防力最適運用システムの構築を目指しています。このため、次の事項について、研究を行っています。1 被害情報の早期取得と共有を行うことができるように、リモートセンシングに基づく広域災害情報の抽出、情報収集端末の高度利用、消防庁広域応援支援システムとのリンクによる被害情報の共有、統合化消防無線(FiReCOS)の広域通信化について、モデル化、機器の開発・試作等を行っています。2 地震被害想定のための基盤情報の取得とシステム構築として、リモートセンシングに基づく面的基盤データの抽出と被害想定への適用、土地条件図等の詳細地盤分類と地盤の増幅度特性について検証等を行っています。併せて、アジア地域を対象とした地震被害想定システムの開発を行いました。基盤データのない地域を対象として、リモートセンシングに基づく標高データを用いた地盤分類、ボーリングデータや微動アレイ測定に基づく増幅度の推定、及び人口、建物データベース構築等から被害想定を行うことのできるプロトタイプシステムを開発しました。図1は韓国ソウル市に適用した例です。3 実情報に基づくリアルタイム地震被害推定システムの構築を行うために、実地震被害情報に基づく被害関数の更新方法の開発を行いました。4 消防力最適運用システムとして、リアルタイム火災延焼予測システムの構築と標準化のための指針策定、最適運用システムの構築と標準化のための指針策定(図2)として消防力最適運用支援システムの1次運用モデルの精度向上、及び消防力2次運用の試作を行うとともに、応援部隊の最適配備のモデル化に関する検討を行っています。5 地方自治体の災害対策本部における応急対応支援システムの開発を行うために、システムが提供すべき応急対応支援情報の整理、1次、2次被害予測や応急支援需要予測に関するアルゴリズム、経験則等の収集・開発、応急対応支援システムの構築を行っています。6 さらに、防災情報システムの現状調査とシステムのあり方に関する検討も行っています。
5 国際的な研究の協力と交流 火災等災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、災害の情報や研究の成果等を相互に公開し研究を効率的に進める必要がある。また、大量の危険物等が国境を越えて流通しているので、それらの安全に関する国際規格を作成するためにも研究の国際的協力が必要である。このため、国際的な共同研究、研究者の交流等を積極的に推進することが不可欠である。このため、消防研究所は、以下の国内外との共同研究等を実施している。
(1)国際共同研究 平成15年度は以下の国際共同研究を行った。ア 危険物の危険性評価に関する研究(韓国・プキャン国立大学、中国・人民武装警察学院)イ ソウル市を対象とした地震被害想定システムの開発(韓国・ソウル市立大学)ウ 石油タンク火災に関する研究(フランス・ポアチエ大学)エ エネルギー物質の危険性評価に関する研究(中国・南京理工大学)オ 地下鉄の火災安全性に関する研究(韓国・慶北大学)
(2)外国人研究者の受入れ 火災関連の外国人研究者を受け入れ、国際的に関心のある課題について協力して研究を行っている。平成15年度は韓国から1人をJSPS(日本学術振興会)フェローとして受け入れ、リモートセンシングデータを用いた地震災害危険度評価に関する研究を行った。
(3)消防研究所シンポジウム(国際シンポジウム)の開催 平成15年10月に、世界の主要火災研究機関の長が構成員となっているThe Forum for International Cooperation on Fire Research(火災研究の国際協調に関する協議会)会合の日本での開催を実現したほか、平成16年3月には「第3回消防研究所シンポジウム−危険物の製造、貯蔵、使用、輸送及び廃棄における安全に関する国際シンポジウム−」を開催した。このシンポジウムは危険物に関する国内外のエキスパートを招へいし、危険物の事故事例の分析とその教訓についての講演、意見交換、各国の事故データベースの紹介と、国連危険物輸送勧告書における諸問題についての討論が行われた。
6 消防研究所による研究成果の公開及び普及 消防研究所では、研究成果を広く一般に公開するとともにその普及を図るため、以下の活動を行っている。
(1)全国消防技術者会議 昭和28年以来、毎年、全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として「全国消防技術者会議」を開催している。平成15年度は、10月30日及び31日の2日間、東京虎ノ門ニッショーホールにおいて第51回会議を開催し、27件の研究発表が行われた。
(2)消防防災研究講演会 消防研究所創立50周年に当たる平成9年度から、消防研究所の研究成果を広く普及すること等を目的として開催している。平成15年度は、平成16年1月30日、消防研究所において第7回講演会を開催し、「産業施設における最近の火災事故」をテーマとして講演、討論等を行った。
(3)一般公開 科学技術週間の一環として消防研究所の一般公開を平成15年4月18日に開催し、全国の消防関係者、企業、大学等の研究機関、一般市民等787人の参加を得た。
(4)消防研究所研究資料等の発行 定期的に「消防研究所報告」及び「消研輯報」を発行しているほか、個々の研究課題ごとに報告書をとりまとめ配布するなど、研究成果の普及に努めている。
(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰 消防研究所では、消防庁との共催により、消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的に、消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文を募集し、優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を設け、消防機関等における研究・開発の推進を図っている。平成15年度は、全国の消防機関、消防機器メーカー等から総計86編(機器の開発・改良69編、科学論文17編)の応募があり、選考委員会(委員長 上原陽一 横浜国立大学名誉教授)による厳正な審査の結果、11作品が授賞作品(優秀賞:9作品、奨励賞:2作品)に決定された。
[消防庁における研究開発推進の概要] 消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに革新的かつ実用的な技術へ育成するための「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金制度)を平成15年度に創設し、運営を開始した。 平成16年度は、大学、民間企業等に所属する研究者から、合計64件の応募があった。応募課題の審査においては、消防庁内に外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」を開催し、研究代表者から提出された申請書類等の内容について評価を行い、この制度の目的に照らして優秀と認められる採択課題を選定した結果、新たに12件の研究課題が採択された(平成15年度からの継続分としては、12件の研究課題について引き続き委託を行っている)。 また、消防庁においては、燃料電池の設置の安全に係る研究、消防用設備等の設置基準の性能規定化の研究、危険物施設に係る腐食・劣化に関する研究等、消防法の技術基準の整備に直結する研究等については、直接研究を実施する体制をとっている。
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防の科学技術に関する研究は、消防機関の研究部門においてもなされている。平成15年度において消防科学技術の研究部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、横浜市消防局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の8本部がある。 消防機関の研究部門の概要は第6−2表のとおりである。研究部門の定員は8機関で87人となっており、また、研究費は約180万円から5,500万円まで地方公共団体により大きな違いがあり、その総計は9,856万円となっている。 また、これらの研究部門は毎年、「大都市消防防災研究機関連絡会」を開催し意見交換を行っている。
2 消防機関における研究の概要 ほとんどの研究機関で一般の火災研究を行っており、ついで危険物の判定等の試験研究、火災原因究明等の調査研究を行っている。消防装備の開発については、装備担当部門単独又は協力して行っている本部もある。 また、平成7年度から、多くの機関で地震時の出火防止対策及び消火等の地震対策研究が開始され、その後も続けられている。
[消防防災の科学技術研究の課題] 消防防災の科学技術は、災害の発生に伴う緊急的な研究ニーズが出現すること、また、その対象とする研究領域が著しく広く、様々な知見が必要であることなどが特徴的である。こうした消防防災の科学技術研究の特性に対応する上では、研究組織の運営の機動性、柔軟性が必要であるとともに、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携が求められる。 消防研究所においては、今後とも、組織の弾力性を確保しつつ、研究ポテンシャルを一層高めるとともに、消防防災の科学技術研究のニーズを的確に把握するため、消防庁・消防機関・地方公共団体との連携を緊密化し、また、大学研究機関や民間との協力関係を深め効果的・効率的な研究を実施することが必要である。 また、競争的研究資金制度の一層の充実により、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携の推進が求められる。
第7章 今後の消防防災行政の方向 社会経済情勢等の変化の中で、備えを行うべき災害等の対象には大規模地震等の自然災害、重大事故に加え、テロや有事も含め複雑多様化している。実際に、平成15年には、栃木県黒磯市ブリヂストン工場火災、三重ごみ固形燃料発電所爆発事故及び出光興産(株)北海道製油所火災などの企業災害や、十勝沖地震などの地震災害などが発生し、また平成16年には、7月に新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害が発生し、また、台風の上陸も相次ぎ、10月には新潟県中越地震が発生し、甚大な被害が生じている。 このような状況の中で、消防防災行政の根幹が住民の生命・身体・財産を守ることであることを改めて認識し、次の2点を当面の最重要課題とする。〔1〕 国として対処すべき大規模災害等に対し、消防庁及び各消防本部や地方公共団体が戦略的・実践的に対処できる体制を確立する。〔2〕 大規模災害等の緊急事態において、住民やコミュニティが住民の避難や救助等に大きな役割を果たすことを踏まえ、地域単位でのきめ細かな安心・安全地域づくりを推進する。 重点施策の具体的内容に関しては、次の5点を挙げることができる。 第一に、東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震などの発生が懸念される中、大規模地震・豪雨災害・特殊災害時における全国的見地からの緊急対応体制の充実・強化を図るため、消防庁及び緊急消防援助隊の役割を一層充実強化することが必要である。 第二に、国民保護法が平成16年6月に成立し、制度の根幹を消防防災行政が担うこととなり、その体制整備を進めることが必要である。同時に、NBCテロ等を含め緊急事態への対処が重要な課題となり、常備消防・消防団・自主防災組織の役割を充実強化することが必要である。 第三に、企業活動の高度化・多様化に伴い、大規模な企業災害が多発しており、安全対策の確立が急務である。その際、企業自らの安全対策と消防部局が連携した安全対策が重要な視点である。 第四に、最近における住宅火災による死者数が急増していることや放火が出火原因の第1位を占めるなど、地域における新たな防火・防犯体制の構築が必要となっている。特に、住宅火災については、消防法が平成16年6月に改正され、住宅用防災機器の設置が義務付けられることとなったが、今後は地域における防火・防犯の体制を今一度強固なものとすることが大切である。 第五に、救命率の向上のため、救急救命士の処置範囲拡大や応急手当の普及など、救急救命等の高度化が一層求められていることから、一層の体制強化が必要である。特に、平成16年7月から、非医療従事者による除細動器の使用が認められることとなり、今後の普及のため環境整備を進めることが重要である。
1 全国的見地からの対応体制の整備(1)国における危機管理体制の強化ア 消防庁の体制の充実・強化 近年、治安・安全に対する国民の関心は特に強くなっている。事実、「経済財政運営と構造改革の基本方針2004」では、治安・安全対策の整備を喫緊の課題と位置付け、国家として責任を持って取り組んでいるところである。 特に、消防防災分野では、大規模災害・テロ・有事等に対する全国的見地からの対応の必要性から、まず、平成15年6月の消防組織法の改正により、緊急消防援助隊に係る消防庁長官の指示権が創設され、平成16年4月より施行された。これにより、情報収集や出動時の各種調整などの新たな任務が、消防庁として果たすべき責務に加わった。次に、平成16年6月に武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律が制定され、国民保護のための措置に関する基幹的業務を消防庁長官が行うこととなった。具体的には、住民の避難、安否情報の収集・伝達、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡調整などに関する新たな任務が、消防庁として果たすべき責務に加わったところである。 このように、消防庁の体制は、従来の企画立案業務に特化した「政策庁」から、緊急事態対応などのオペレーションも含めた「政策・実施庁」へと大きくその性格を変えている。 そこで、消防庁の対応機能強化を図るために、必要な要員の確保などにより、消防庁の組織体制の充実・強化を図る。イ 緊急消防援助隊の増強・充実 大規模地震・豪雨災害・特殊災害等に対して全国的見地からの対応が強く求められる中、緊急消防援助隊の果たす役割は特に強くなっている。実際に、ボート及びヘリコプターを活用して、平成16年7月の新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害では1都2府17県から延べ330隊、1,372人が活動に従事し、2,243人の救出を実施し、また10月の新潟県中越地震では1都14県から延べ480隊、2,121人が活動に従事し、453人の救出を実施したところである。 緊急消防援助隊について、消防庁長官の指示を受けた出動に伴い必要となる経費に対する国庫負担金措置、施設・無線・資機材の整備に必要な国庫補助金の確保等によりその整備・充実を図る。 特に、緊急消防援助隊活動に不可欠な消防救急無線のデジタル化については、効率化・共同化等を図りながら引き続き計画的に整備を進めるとともに、ヘリコプターテレビ受信装置の整備を積極的に推進する。 さらに、基本計画に定める第3回緊急消防援助隊全国合同訓練、地域ブロック合同訓練等を実施する。 また、放射性物質災害対応用の資機材など緊急消防援助隊による無償使用の対象となる消防用国有財産・物品の整備を推進する。ウ 実践的な防災訓練等の実施  大規模災害等に備え、国と全国の消防の緊密な連携に基づく迅速かつ的確な人命救助活動体制を充実強化するため、実践的な訓練の繰り返しを通じた的確な緊急事態対応の体制が何よりも重要である。そのため、消防庁に設置した「消防防災・危機管理センター」を活用し、平成16年3月に実施された図上訓練以降、数次の実践訓練を実施しているところである。今後も、当該センターを活用して、国の関係機関、地方公共団体等と連携した実践的な防災訓練や図上訓練を実施し、初動対応を一層強化する。エ 地域における防災・危機管理体制の強化に係る支援(ア)人材育成及び地方公共団体の防災体制の強化等 地方公共団体の幹部クラスの防災・危機管理専任スタッフの配置・研修、消防大学校における、地方公共団体の首長等を対象とした危機管理セミナーの充実、カリキュラムのインターネット上での配信など地域住民及び地方公共団体職員や消防職団員を対象としたインターネットを通じたe−カレッジの活用等を引き続き推進する。(イ)地域防災力評価の普及・促進 より実践的な地域防災計画への見直しの促進のほか、地域防災力の評価指針を充実し、指針の普及、評価実施の促進を通じて、市町村における具体的な防災・危機管理体制の検討など、地方公共団体の防災対応力を戦略的に強化する。オ 震災対策の充実 平成16年10月に発生した新潟県中越地震では、緊急消防援助隊の派遣要請をはじめとする初動期の対応は円滑に進めることができたが、山間部を中心にした情報孤立地域の発生や防災行政無線が一部不通となるなどの問題点が指摘されたところであり、情報収集・連絡手段の一層の充実確保や自家発電設備の整備、保守点検の徹底を進める。 東海地震、東南海・南海地震について、指定地域を中心としたアクションプランの策定などを図るとともに、南関東直下型地震について、都市災害に係る広域応援プランの検討などを進め、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震について、沿岸市町村における地域ごとの津波避難計画の策定などを推進する。また、耐震性貯水槽等の整備促進とともに、防災拠点等公共施設の耐震化を進めるため、地方公共団体における耐震化計画に基づく耐震改修事業の促進を図る。カ 豪雨災害対策の充実 平成16年7月に発生した、新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害では、警報伝達や避難誘導体制の不十分さが指摘されたところである。そこで、短時間に急激な降雨を伴う豪雨災害に際して、市町村が避難勧告・指示を迅速かつ確実に発することができるよう、その判断基準の明確化等を図るとともに、避難に際して高齢者等の災害時要援護者の逃げ遅れがないよう、同報系の防災行政無線の整備や放送による防災情報の伝達の促進、携帯電話の活用の検討、福祉部局と連携した災害時要援護者避難対策の促進を図る。キ 特殊災害・テロ災害対策の充実 原子力災害時等の消防活動における汚染測定方法、除染方法等について、視覚的な教育教材の整備などを進め、消防機関における原子力災害等対応体制の向上を図る。 また、緊急消防援助隊等のNBC災害対応能力の充実を図るため、活動資機材等の整備を進める。 さらに、石油コンビナート防災対策として、平成15年の出光興産(株)北海道製油所タンク火災を受けて行われた石油コンビナート等災害防止法の一部改正(平成16年法律第65号)を踏まえ、防災体制の充実強化策に係る運用基準の策定を進める。
(2)国民保護のための体制づくりア 国民保護のための仕組みの整備・充実 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)の制定に伴い、国民保護モデル計画や避難マニュアルの作成などによる地方公共団体の国民保護計画の作成を支援するとともに、警報伝達や安否情報のシステム等により、国と地方の危機管理体制の整備・充実を図る。イ 国民保護に必要な資機材等の整備の支援 警報、避難指示などを国民へ伝達するための防災行政無線の全国的整備・デジタル化、消防団や自主防災組織の活動に必要な資機材等の整備を推進する。ウ 国と地方の対処能力の向上及び協力体制の確保 国民の保護のための訓練の企画・実施や地方公共団体職員等に対する危機管理研修の充実強化等により国と地方の対処能力の向上を推進する。 国民保護法制の普及・啓発を進めるとともに、特殊標章等の取扱いについて検討し、地域住民の意識向上及び協力体制を確保する。
(3)消防防災科学技術の向上ア 国・地方間の情報通信体制の強化(ア)消防防災情報通信ネットワークの高度化・高機能化 全国的な観点から効率的な基盤整備を推進するため、各地方公共団体における消防防災ICT化計画の策定を進める。これに基づき、消防救急無線の高度化・高機能化、地域衛星通信ネットワークのデジタル化等について、効率化・共同化等を図りながら積極的に促進する。(イ)情報共有化に向けたシステム整備 国・地方公共団体間の防災情報の共有化に向け、消防庁防災情報システムと都道府県防災情報システムを相互接続する等、地方公共団体等との情報共有化を図るとともに、各種統計報告のオンライン化を推進する。 また、災害時における情報共有を一層進めるため、消防防災ヘリ映像等を活用した災害状況把握システムに関する調査検討を進めるとともに、ヘリコプターテレビ受信装置の整備を積極的に推進する。イ 行政・住民間の情報連絡体制の整備(ア)消防庁からの災害情報提供の充実 地域衛星通信ネットワーク及び防災行政無線等を活用し、気象庁の緊急地震速報等を地方公共団体や消防機関を経由して住民等へ伝達し、津波に対する迅速な避難勧告等への活用を図るシステムを整備する。 また、災害時において、国・地方公共団体・住民間で防災情報の共有化を進めるため、次世代地域情報プラットフォームの検討・開発を進める。(イ)地方公共団体(消防本部)・住民間の情報連絡体制の強化 IP電話や携帯電話の高機能化などICT革命の進展を受け、携帯電話等による119番通報の一層の円滑化を図るとともに、高齢者・聴覚障害者等の災害時要援護者からの緊急通報の方策等について検討し、稼働実験等を行う。 さらに、同報系の防災行政無線の積極的な整備促進を進めると同時に、放送による防災情報の伝達の促進等、地方公共団体から住民等への有効な情報提供方策の検討を行う。ウ 消防防災に係る科学技術の高度化 消防防災に係る科学技術の高度化により、災害対応力の強化、火災予防対策の推進、危険性物質・危険物施設の安全確保、消火・救急・救助活動に係る技術の高度化等の各分野における重点的な研究開発を推進する。 特に、消防研究所において、「廃棄物及びその処理施設の防火安全対策の推進」、「地震、劣化等に対する石油タンクの安全確保とタンク火災に対する消火技術の向上」等の研究を推進する。 また、消防防災分野に係る競争的研究資金制度の一層の充実を図り、産学官連携による研究開発を推進する。同時に、平成15年の出光興産(株)北海道製油所タンク火災を受け、やや長周期地震動に係る危険物施設の耐震基準強化に関する標準的な設計手法の開発を行う。 なお、近年の環境意識の急激な高まりを踏まえ、消防分野においても環境対策の推進が求められている。このため、火災予防上不可欠であるが処理困難物とされている防炎物品等について、ミレニアム・プロジェクトの成果も活用しつつリサイクルの推進を行う。エ 消防防災分野における国際的課題への対応(ア)国際協力・交流の推進 開発途上諸国へのODAを含む消防分野の経済・技術協力、開発途上諸国からの研修員の受け入れ及びトップマネージャーセミナーの開催、国際消防救助隊(IRT)の一層の充実等を図る。 さらに、日韓消防行政セミナーへの参加など主要国の防災関係諸機関との情報交換等の機会の拡大を積極的に図る。(イ)国際化への対応 消防器具の国際規格について、試験方法等の国際的な標準化に引き続き協力していくとともに、危険物保安について、化学物質の試験方法、分類及び表示基準の国際的な標準化に関する調査検討を行う。オ 新技術等に対応した防火安全対策等の構築 新技術等の円滑な導入を推進するため、消防用設備等に係る技術基準の性能規定を導入したことに伴い、火災予防に資する最新の知見に基づき、消防用設備等に必要とされる防火安全性能に関する知識の整理・分析を行うとともに、審査支援システムの開発を行う。また、ユビキタス機能を応用した高機能自動火災報知設備の開発についても検討を行う。 一方、危険物施設に係る技術基準についても、新技術・新素材の円滑な導入等を一層図るため、シミュレーション等の実施を通じて、性能規定の導入・基盤整備を行う。 さらに、バイオマス燃料や有機ハイドライド方式水素供給システムの導入などに必要な防火安全基準等の検討・整備を行う。
2 住民等との協働による安心安全な地域づくり(1)地域における消防防災力の強化ア 安心安全アクションプランの充実・強化 大規模災害等の危険性の高まりや犯罪の増加などから、地域における安心・安全の確保に向けた地道なコミュニティ活動が重要視されている。そうした中、平成16年5月の経済財政諮問会議において総務大臣より、自主防災組織やコミュニティ等の住民活動を活かし、地域の安心・安全を確保するため、防災・防犯等に幅広く対応する地域拠点・ネットワークの創出に取り組む「地域安心安全アクションプラン」を提言した。 これを受け消防庁として、自主防災組織や各種コミュニティが消防や警察などの関係機関と連携し、安心安全パトロールや初期消火、応急手当等を総合的に実施する安心安全アクションプランモデル事業を推進することとする。イ 常備消防力の強化 安心安全な地域づくりを実現する上で、市町村消防の果たす役割は一段と大きなものとなっている。市町村消防の体制、つまり、地域の常備消防力については、消防防災施設、無線、資機材等の整備を促進するとともに、小規模消防本部の広域再編を引き続き進める。また、指揮隊について、新たに「消防力の基準」に位置付けるとともに、その体制や装備の充実強化を図る。 さらに、惨事ストレス対策や消防職員の勤務環境の整備など、職員が安全かつ能率的に業務を遂行できる体制・環境づくりを進めるとともに、消防職員委員会制度の円滑な運用を図る。また、平成14・15年度に相次いだ消防職団員の殉職事故を受けて行われた所要の検討を踏まえ、事故事例の情報収集システム及び新しい態様で使用される物品の火災等における情報の一元化システムを構築、運用することとする。 加えて、消防防災ヘリコプターについて、緊急消防援助隊における必要機数の確保を図るとともに、一層の活用促進を図る。ウ 消防団の充実強化 消防団員を当面100万人(女性10万人)確保することを目指し、引き続き消防団員の活動環境の整備や、住民の消防団活動への理解を深める施策を推進する。 また、着実に増加している女性消防団員に焦点を置き、女性団員の活動環境の整備を進めるため、消防関係者や学識経験者等による調査検討会を開催し、婦人防火クラブとの連携や女性団員の活動の場の拡大等の方策について検討を行う。エ 自主防災組織等の充実強化 自主防災組織の組織化と活動の活性化を推進するため、消防団、日本赤十字社、NPO等の準公共的な機関との連携方策について検証するモデル事業を実施するとともに、特にコミュニティ活動が希薄とされる都市部において企業、PTA等との連携やマンション等における活動のあり方に関する検討を進める。 加えて、国民保護法の観点から、避難住民の誘導等における自主防災組織活動の役割を啓発する。 また、平常時や災害時における災害ボランティアに対し、連携マニュアルの作成を通じて相互の協力体制の構築と活動の充実を図る。オ 災害時における情報伝達・避難誘導体制の整備・促進 平成16年7月の新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害を踏まえ、災害時における高齢者や障害者など災害時要援護者の避難について、消防団や自主防災組織など地域の人的防災資源を効果的に活用したシステムづくりや福祉部局と連携したモデル的な取組みパターンの検討など、地方公共団体における実効性のある取組みを推進する。
(2)火災予防対策等の推進ア 住宅防火対策の推進 住宅火災による死者数が急増している。特に平成15年は、1,041人となり、昭和61年以来、17年ぶりに1,000人を超える数字となっている。死者数の半数以上が高齢者であり、今後の高齢化の進展をかんがみると死者数の増加が強く予想されることから、住宅火災による死者数低減を目的として、住宅用防災機器の設置を義務付ける消防法の一部改正(平成16年法律第65号)を踏まえ、今後は地域の防災組織と連携し、市場機能も活用しつつ広報啓発の一層の充実を通じて、住宅用火災警報器等の普及を積極的に推進する。イ 小規模雑居ビル等の防火安全対策の徹底 小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物の消防法令違反を是正するため、防火対象物定期点検報告制度等を活用し、消防機関による立入検査を重点化・効率化するとともに、違反是正体制の充実を図る。 さらに、避難等訓練マニュアルの作成、消防計画作成マニュアル等の作成などを通じて、防火対象物ごとの実態に合った防火管理体制の確立を図る。ウ 放火火災防止対策の推進 放火火災防止に係る客観的評価指標による地域の現状分析手法を用いて、地域自らが放火火災に関する危険度について評価を行う環境整備を進め、地域住民・事業者と連携した照明点灯運動や警戒パトロールの実施、放火監視機器の設置などソフト・ハードの両面から総合的な対策を講じ、地域の行政と住民等が一体となった「放火されない環境づくり」の取組みを一層推進する。エ 危険物事故対策の充実 近年における危険物の火災・漏えい事故の増加傾向を踏まえ、「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、官民一体となって事故防止を強力に推進する。 また、危険物施設に係る腐食・劣化に関する評価手法の開発・データベースの整備、自主保安の一層の推進等を図ることにより、火災・漏えい事故の防止、施設の効果的・効率的な保守管理を推進する。 さらに、新規危険性物質の早期把握に努めると同時に、リスクアセスメント手法を活用した潜在的な危険要因に応じた安全対策について調査検討を行う。オ 消防庁・消防研究所による火災原因調査の推進 火災種別に応じた火災原因調査を目的とする消防研究所研究員、火災原因調査高度支援専門員や火災調査協力員からなる調査チーム及び大規模・特殊災害等の拡大や二次災害の防止方策について専門的な検討・助言を目的とする消防研究所研究員などからなる専門家チームを充実強化し、消防庁による火災原因調査を推進する。
(3)救急救命等の充実・高度化ア 救急業務の高度化の推進 今後高齢化の進展等により更に救急出場件数の増加が見込まれる中、引き続き高規格救急自動車や高度救命処置用資機材の整備を促進し、高度な救急救命処置が可能な搬送体制の確保を図る。 心肺停止傷病者の救命率を一層向上させるため、救急救命士の処置範囲を拡大しつつ、救急救命士の行う救急救命処置等の適切な実施を図るため、医師による常時指示体制、医学的観点からの事後検証体制、再教育体制等のより一層の充実・強化を図る。イ 応急手当の普及 これまで、医師、看護師及び救急救命士の医療従事者に限られていた心肺停止傷病者に対する除細動が、自動体外式除細動器(AED)を使うことにより、一般市民を含む非医療従事者でも平成16年7月から可能とされた。 そこで、救命率の更なる向上を図るため、救急隊到着前のバイスタンダー(現場に居合わせた人)による自動体外式除細動器(AED)の使用も含めた応急手当の普及啓発を推進する。そのため、救急の日等のイベントを通じて日本赤十字社等の関係機関との連携強化を図りつつ、救命講習の開催、受講者数の確保等を図る。ウ 救助技術等の高度化 航空機の活用による消防防災業務の高度化に関して検討を行う。また、救助業務について、多様な災害を想定した教育訓練の充実強化を図るとともに、検知・探査を行う消防・防災ロボットの研究開発を推進する。