(1)東海地震対策
昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法の規定に基づき、地震防災対策強化地域に指定された6県167市町村においては、東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画等に基づき、切迫した東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。
平成14年4月には大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討した結果、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、従前の6県167市町村から8都県263市町村(平成17年4月1日現在213市町村)に拡大された。
この新たな指定を受けた都県及び市町村等においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組みがなされており、このうち、民間事業者が作成する地震防災応急計画の作成率(平成17年4月1日現在)は、79.1%となっている。消防庁では今後とも関係都県、消防本部等を通じて作成を強く働きかけていく。
地震防災対策強化地域の拡大を受け平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。大綱の主なポイントは、〔1〕被害軽減のための緊急耐震化、〔2〕地域における災害対応力の強化、〔3〕警戒宣言前からの的確な対応、〔4〕災害発生時における広域的防災体制の確立の4点であり、これらを踏まえた防災関係機関・地方公共団体等による的確な対応が求められている。消防庁では、地震防災対策強化地域における関係都県の広域応援の受け入れ体制及び都道府県をまたがる広域的な地震防災体制の充実を目的として、「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;廣井 脩 現東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授)」を開催し、その検討結果を「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書」として平成15年3月にとりまとめた。
また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月に中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同日、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−7−1図)。これは最近の科学的な知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)による変化に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりも前に今後の推移について説明可能な段階が設定できるとの考えから、これまでの情報発表の仕方を見直したものであり、基本計画修正の中心的な部分である。新たな情報発表の主なポイントは、これまで防災関係機関の防災対応のきっかけとして位置付けられていた「判定会招集連絡報」を廃止し、現行の観測情報を2段階に分け、このうち東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合に「東海地震注意情報」を発表し、これを防災対応のきっかけとするという部分である。具体的には、この情報を基に、政府は準備行動開始の意思決定とその旨の公表を行い、関係機関は準備行動の実施体制(準備体制)をとることとなる。基本計画の修正により、地方公共団体は地震防災強化計画の、民間事業者は地震防災応急計画の修正が必要であり、消防庁としても、これらの取組みに対して積極的な支援・助言に努めている。
さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、〔1〕緊急に実施すべき予防対策、〔2〕緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、〔3〕迅速な閣議手続き等について、平成15年7月に「東海地震緊急対策方針」として閣議決定された。平成15年12月には、中央防災会議において「東海地震応急対策活動要領」が決定され、同要領に基づく、関係省庁の救助、物資の調達等について、具体的な活動内容の申し合わせを行った。
加えて、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。