特集 消防防災力強化戦略 −安心・安全な社会の確立に向けて− 

4 災害時の対策

(1) 一人を救う一秒を生む −世界最先端の災害緊急情報伝達・収集ネットワーク

 平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波災害、平成17年9月のハリケーン・カトリーナの被害や10月のパキスタン・イスラム共和国地震災害などの海外での大災害も記憶に新しいが、災害や緊急事態等が発生した際には、一刻も早い情報の伝達や収集が生死を分ける。そのため、昨今の国際情勢や大規模自然災害の頻発等を踏まえ、わが国の重要な神経網として、災害等の情報をいち早く伝え、また初動時の情報収集をより迅速にする世界最先端の災害緊急情報伝達・収集ネットワークの構築が必要不可欠である。

 ア 災害情報の瞬時伝達システムの構築
 (ア)全国瞬時警報伝達システム(J-ALERT)の開発・整備
 自然災害や武力攻撃時を問わず、災害対応において極めて重要なことは、如何にして、1秒でも早く住民に警報等の危険を伝達し、警戒を呼びかけるかである。
 このため、武力攻撃時の警報や、緊急地震速報、津波警報等の即時対応が必要な災害情報を、瞬時に住民に伝達する仕組みとして、全国瞬時警報システム(J-ALERT)の開発・整備を進めることを検討している(第1図参照)。
 平成16年度は実際のシステム実験に成功しており、平成17年度においては約30の地方団体において実証実験を行い、標準仕様を決定することとしている。
 J-ALERTが整備されると、現在、数分程度要していた国から住民までの情報伝達が僅か数秒で可能となることから、住民の円滑な避難等に大きく資することが期待できる。ただし、J-ALERTは、同報系の市町村防災行政無線の整備が前提となっているため、未整備の地域における早期の整備が期待される。

 
第1図 災害情報の瞬時伝達システムの構築

 (イ)携帯電話・テレビの自動起動・警報受信の利活用システムの開発・普及促進
 平成15年12月より地上デジタル放送が開始され、平成18年末までには全国の県庁所在地など主要都市で放送が開始される予定である。平成23年7月には完全移行するこの地上デジタル放送を活用して、携帯電話・テレビを自動起動させ、警報を受信させることは、同報系の市町村防災行政無線を活用するJ-ALERT等と相まって、風水害に伴う予警報や避難勧告、地震に伴う津波情報など住民に迅速かつ確実に伝達すべき情報の伝達手段を多様化することにつながる。
 こうしたシステムを開発・普及させていくには、一般のテレビにおいて警報等を待ち受ける際の待機電力の問題やチューナーの数が少なく地上デジタル放送以外の放送を視聴中に警報等を受信できない可能性などの課題がいくつかある。消防庁としては、総務省情報通信政策局と連携し、こうした地上デジタル放送の活用や課題について検討を進めている。また、地上デジタル放送が受信可能な携帯電話が順次発売される見込みであり、同様の自動起動機能を組み込むための検討が進められる予定である。また、地方公共団体と協力しながら、コンテンツとなる伝達情報について提供方法、放送事業者との連携体制を構築していく予定である。

 イ 被災地情報の収集・広域通信体制の強化
 (ア)衛星携帯電話を全市町村に整備
 平成16年の新潟県中越地震の際は、道路、通信網が途絶し孤立した集落では連絡手段がなく、応急対応が遅くなるという反省がみられた。もとより、NTT等の電話回線の輻輳、断線に備え、専用回線による防災行政無線の整備を進めているところであるが、さらにバックアップとして衛星携帯電話を各市町村で整備することで、市町村外部や内部において確実に情報伝達・情報収集を図ることが望ましい。消防庁としては、衛星携帯電話の有効性の検証、活用事例の紹介等を通じ、各市町村における整備を働きかけていく(第2図参照)。
 (イ)ヘリコプターテレビ電送システムの全国的整備等
 災害時に被災状況を確実に把握するため、ヘリコプターによるテレビ撮影が有効であるが、その映像をリアルタイムで地方公共団体や国において把握できるよう、ヘリコプターテレビ電送システムを全国的に配備することが必要である。このシステムには、機上の電送設備の他、地上において映像を受信するヘリテレ受信装置、さらにはその映像を通信衛星に送信する衛星地球局が必要となる。このシステムの未整備地域において発生した平成16年の新潟県中越地震の際には、応援の仙台市のヘリコプターから千葉市のヘリテレ受信装置、衛星地球局を経由して消防庁への映像電送を行ったが初動時の迅速な被災状況の把握に支障が生じた。今後、このような未整備地域において重点的に整備の促進を図る必要がある。あわせて、夜間のヘリコプターの運用や情報収集に関する調査検討を行うこと等により、初動時における迅速な被災地情報収集体制の構築を図っていく(第2図参照)。
 
第2図 被災地情報の収集・広域通信体制の強化

 (ウ)震度情報ネットワークシステムの迅速化
 平成17年7月の千葉県北西部を震源とする地震や同年8月の宮城県沖を震源とする地震の際には、地方公共団体に整備されている震度情報ネットワークにおいて情報が遅れて送信される事例が相次いだが、震度情報ネットワークについて、システムの効率的な見直しを行う等により、震度データ送信及び震度発表の更なる迅速化等の充実を図る。
 (エ)消防救急無線のデジタル化(平成28年度目途)・消防通信指令施設の広域・共同運用
 平成15年10月より、消防救急無線については現在のアナログ周波数の使用期限が平成28年5月31日までとされ、全国の消防本部においては、260MHz帯デジタル無線への移行が急務となっている。
 消防救急無線のデジタル化はチャンネル数が増えるなど、より電波を有効に活用できるが、多額の設備投資が必要なため、その効果的、効率的整備が求められている。そのため、複数の消防本部による無線設備の広域・共同運用が課題となっている。
 平成16年度の消防救急無線の広域化・共同化の推進検討懇談会の対応策を踏まえ、消防庁は平成18年度までに各都道府県において広域化・共同化のための計画を策定するように要請をしたところであり、また、併せて消防通信指令施設についても広域・共同運用することを強力に推進していく必要がある。
 (オ)緊急消防援助隊の広域通信体制の強化
 災害時の円滑な広域応援のため、各都道府県から参集する緊急消防援助隊の相互間における情報共有を図ることが必要である。このため、消防救急無線のデジタル化、広域・共同運用と併せ、消防救急無線と地域衛星通信ネットワークとが連携して、全国で情報を共有できる仕組みを検討する。

 4 災害時の対策

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