はじめに 我が国の消防は、昭和23年に自治体消防として発足以来、関係者の努力の積重ねにより、制度、施策、施設等の充実強化が図られ、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等の自然災害や事故、テロ災害等への対応まで広範囲にわたり、国民の安全の確保に大きな役割を果たしてきた。さらに、昨年4月には、緊急消防援助隊を法制化し消防庁長官の指示権を創設することにより、大規模災害や特殊災害に対する全国的観点からの緊急対応体制の充実・強化を図るとともに、国民保護法が昨年9月に施行され、避難住民の誘導等の対処など消防が担う役割はますます大きく重要となっている。 しかしながら、今年に入っても、福岡県西方沖、宮城県沖を震源とする地震、台風第14号等の自然災害やJR西日本福知山線列車事故等の発生など頻発、多様化、大規模化する災害・事故等により、全国各地に大きな被害が生じている。 このように我が国の安心・安全神話に揺らぎが生じていることから、安心・安全の総点検を行うとともに、災害時の対策、平常時の対策の双方について、幅広い取組みを進めることにより、我が国が優位性を有する安心・安全を維持向上させることが求められている。 このような状況のもと、大規模災害、特殊災害に的確に対処するため、緊急消防援助隊の増強等更なる充実・強化や高度な資機材を備えた高度消防・救急救助体制の全国的な整備の検討等に取り組むとともに、地域防災ネットワークの構築や消防庁の体制強化等、総合的な消防防災対策に全力を挙げて取り組んでいくこととしている。 さらに海外においても、スマトラ沖大地震・インド洋津波災害やパキスタン・イスラム共和国での地震災害の発生により、国際消防救助隊の派遣に加えて、消防防災分野における国際的な協力体制への取組みが求められている。 平成17年版の消防白書においては、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、国民保護への取組み、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説した。 特に、先述したように、経済活性化の基盤のみならず、国家の存立基盤でもあり、我が国に大きな優位性がある国民の安心・安全を維持向上させるため、特集として「消防防災力強化戦略−安心・安全な社会の確立に向けて−」と題し、消防庁の消防防災力強化戦略、安心・安全ビジョンを記述した。 また、本年において特に話題性のある次の項目をトピックスとして記述している。 トピックスIでは、甚大な被害をもたらしたスマトラ沖大地震・インド洋津波災害及びパキスタン・イスラム共和国地震災害における国際消防救助隊の派遣状況、復興に向けての支援、今後の活動等について記述した。 トピックスIIでは、増加する救急需要を踏まえ、救急業務の現状、救急需要対策についての検討項目等について記述した。 これらを踏まえ、この白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民各位の認識と理解を更に深め、また、安心・安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域住民、企業等をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものである。平成17年12月
特集 消防防災力強化戦略−安心・安全な社会の確立に向けて−1 はじめに 平成17年4月25日9時18分頃、多くの乗客を乗せた通勤列車は制限速度を大きく超過したままカーブに突入し脱線、マンションに激突した。地元消防本部、県内応援隊、緊急消防援助隊は、近隣事業所や住民の協力も得て、多くの乗客を救助、救急搬送した。死者107人、負傷者549人。 平成16年10月23日17時56分頃、M6.8の地震が発生し、震度7を記録。道路は寸断され、通信も途絶した孤立した村では、翌朝までその甚大な被害がわからなかった。続く余震の中、一台の乗用車が崩落した土砂に埋もれていた。10月27日14時39分、全国から参集した緊急消防援助隊が二歳の男児を救出した。死者51人、負傷者4,805人。 平成7年3月20日午前8時頃、首都の地下鉄でサリンが散布され、乗客や駅員が次々と倒れていった。化学物質の毒性を知らずに救助に向かった消防職員等も続いて倒れ、多大な二次被害が発生した。死者12人、負傷者5,510人。 平成7年1月17日午前5時46分頃、人口稠密な大都市直下でM7.3の地震が発生し、震度7を記録。高速道路は倒れ、倒壊家屋の下で多くの住民が犠牲となった。同時多発した火災、殺到する救急・救助要請に地元の消防活動は寸断された道路等に阻まれるなど困難を極め、消防団や応援部隊もなすすべのない惨状が広がった。死者6,433人、負傷者4万3,792人。 相次ぐ災害、事故等を乗り越えながらも、日本の安心・安全は揺さぶられている。経済活性化の基盤のみならず、国家の存立基盤でもあり、我が国に大きな優位性がある国民の安心・安全を維持向上させるため、消防防災力をどのように強化していくのか、その戦略、安心・安全ビジョンを紹介する。
2 消防庁の消防防災力強化戦略 消防庁の消防防災力強化戦略は、平成17年5月24日に開催された経済財政諮問会議において、総務大臣が発表した「安心・安全ビジョン〜安心・安全な社会の確立に向けて」をその基本としている。このビジョン等を受けて平成17年6月21日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(いわゆる骨太方針)2005」でも、「国民の安心・安全の確保」が重要な位置づけを占め、「消防等の防災対策について、・・・戦略的・重点的に施策を推進する。」とされた。 現在、急速に進展する少子化、高齢社会、変化する国際情勢、一方で高度ICT(情報通信技術)など技術の進歩や経済発展による社会の高度化や複雑化、また、これに伴う社会構造の変化といった複合的な要因から、日本の安心・安全は問い直されている。こうした社会の変化に加え、消防体制自体も、市町村合併の大幅な進展、地域の消防を担う消防団員の減少や来るべき団塊世代の大量退職など多岐にわたる課題や可能性を内包している。 このような時代背景、課題認識の下、消防防災力強化戦略は具体的には、官民各々が防災・事故対策等の「安心・安全総点検運動」を展開しつつ、大きく二つの視点、「災害・事故発生時の対策の強化」及び「平常時からの備えの強化」に基づいて施策を講じていくことをその柱としている。
3 安心・安全の総点検 現実を見据えた想像力で −地域の防災・危機管理体制の総点検 ア 地域防災計画の総点検 地域の防災・危機管理の根幹である地域防災計画については、阪神・淡路大震災以降も見直しがなされていない地方公共団体があるなど、安心・安全の確立のための基盤として、早急に総点検を行う必要がある。この際、現実を的確に把握するとともに、自然災害においても、米国同時多発テロを検証した米同時テロに関する国家調査委員会報告書で被害の最大の要因とされた想像力を欠如させることなく、起こりうる事態を想定し、備えることが肝要である。 消防庁は、阪神・淡路大震災以降における地域防災計画の修正率の向上に努めるとともに、都道府県・市町村における、地域防災力・危機管理能力評価指針による自己評価の実施の推進やその状況の把握、計画修正協議を通じて必要な助言を行う等の支援や消防庁ホームページ等を通じた都道府県間での計画内容の情報共有などにより、より実効的な総点検を実施していくこととしている。また、地域住民の方々による閲覧により、実際的な点検が進むことも期待されている。 イ 国民保護計画の作成 最近の我が国をめぐる安全保障環境については、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下する一方、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態への対応が国際社会の差し迫った課題となっている(「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」(平成15年12月19日閣議決定))。 こうした中で、平成15年6月に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」が、平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)」が成立し、これに基づき、武力攻撃事態等に的確に対応するため、国民保護計画を作成することとされている。地方公共団体は国民保護措置の重要な役割を担うこととされており、都道府県は平成17年度中に、市町村は平成18年度目途の作成が予定されている。 消防庁は、地方公共団体の計画作成を支援するため、平成17年3月に都道府県国民保護モデル計画を作成したところであるが、都道府県計画策定の際の国との協議において必要な助言を行うこととしている。また平成17年度中には、市町村国民保護モデル計画を作成することとしている。
4 災害時の対策(1) 一人を救う一秒を生む −世界最先端の災害緊急情報伝達・収集ネットワーク 平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波災害、平成17年9月のハリケーン・カトリーナの被害や10月のパキスタン・イスラム共和国地震災害などの海外での大災害も記憶に新しいが、災害や緊急事態等が発生した際には、一刻も早い情報の伝達や収集が生死を分ける。そのため、昨今の国際情勢や大規模自然災害の頻発等を踏まえ、わが国の重要な神経網として、災害等の情報をいち早く伝え、また初動時の情報収集をより迅速にする世界最先端の災害緊急情報伝達・収集ネットワークの構築が必要不可欠である。 ア 災害情報の瞬時伝達システムの構築 (ア)全国瞬時警報伝達システム(J-ALERT)の開発・整備 自然災害や武力攻撃時を問わず、災害対応において極めて重要なことは、如何にして、1秒でも早く住民に警報等の危険を伝達し、警戒を呼びかけるかである。 このため、武力攻撃時の警報や、緊急地震速報、津波警報等の即時対応が必要な災害情報を、瞬時に住民に伝達する仕組みとして、全国瞬時警報システム(J-ALERT)の開発・整備を進めることを検討している(第1図参照)。 平成16年度は実際のシステム実験に成功しており、平成17年度においては約30の地方団体において実証実験を行い、標準仕様を決定することとしている。 J-ALERTが整備されると、現在、数分程度要していた国から住民までの情報伝達が僅か数秒で可能となることから、住民の円滑な避難等に大きく資することが期待できる。ただし、J-ALERTは、同報系の市町村防災行政無線の整備が前提となっているため、未整備の地域における早期の整備が期待される。 (イ)携帯電話・テレビの自動起動・警報受信の利活用システムの開発・普及促進 平成15年12月より地上デジタル放送が開始され、平成18年末までには全国の県庁所在地など主要都市で放送が開始される予定である。平成23年7月には完全移行するこの地上デジタル放送を活用して、携帯電話・テレビを自動起動させ、警報を受信させることは、同報系の市町村防災行政無線を活用するJ-ALERT等と相まって、風水害に伴う予警報や避難勧告、地震に伴う津波情報など住民に迅速かつ確実に伝達すべき情報の伝達手段を多様化することにつながる。 こうしたシステムを開発・普及させていくには、一般のテレビにおいて警報等を待ち受ける際の待機電力の問題やチューナーの数が少なく地上デジタル放送以外の放送を視聴中に警報等を受信できない可能性などの課題がいくつかある。消防庁としては、総務省情報通信政策局と連携し、こうした地上デジタル放送の活用や課題について検討を進めている。また、地上デジタル放送が受信可能な携帯電話が順次発売される見込みであり、同様の自動起動機能を組み込むための検討が進められる予定である。また、地方公共団体と協力しながら、コンテンツとなる伝達情報について提供方法、放送事業者との連携体制を構築していく予定である。 イ 被災地情報の収集・広域通信体制の強化 (ア)衛星携帯電話を全市町村に整備 平成16年の新潟県中越地震の際は、道路、通信網が途絶し孤立した集落では連絡手段がなく、応急対応が遅くなるという反省がみられた。もとより、NTT等の電話回線の輻輳、断線に備え、専用回線による防災行政無線の整備を進めているところであるが、さらにバックアップとして衛星携帯電話を各市町村で整備することで、市町村外部や内部において確実に情報伝達・情報収集を図ることが望ましい。消防庁としては、衛星携帯電話の有効性の検証、活用事例の紹介等を通じ、各市町村における整備を働きかけていく(第2図参照)。 (イ)ヘリコプターテレビ電送システムの全国的整備等 災害時に被災状況を確実に把握するため、ヘリコプターによるテレビ撮影が有効であるが、その映像をリアルタイムで地方公共団体や国において把握できるよう、ヘリコプターテレビ電送システムを全国的に配備することが必要である。このシステムには、機上の電送設備の他、地上において映像を受信するヘリテレ受信装置、さらにはその映像を通信衛星に送信する衛星地球局が必要となる。このシステムの未整備地域において発生した平成16年の新潟県中越地震の際には、応援の仙台市のヘリコプターから千葉市のヘリテレ受信装置、衛星地球局を経由して消防庁への映像電送を行ったが初動時の迅速な被災状況の把握に支障が生じた。今後、このような未整備地域において重点的に整備の促進を図る必要がある。あわせて、夜間のヘリコプターの運用や情報収集に関する調査検討を行うこと等により、初動時における迅速な被災地情報収集体制の構築を図っていく(第2図参照)。 (ウ)震度情報ネットワークシステムの迅速化 平成17年7月の千葉県北西部を震源とする地震や同年8月の宮城県沖を震源とする地震の際には、地方公共団体に整備されている震度情報ネットワークにおいて情報が遅れて送信される事例が相次いだが、震度情報ネットワークについて、システムの効率的な見直しを行う等により、震度データ送信及び震度発表の更なる迅速化等の充実を図る。 (エ)消防救急無線のデジタル化(平成28年度目途)・消防通信指令施設の広域・共同運用 平成15年10月より、消防救急無線については現在のアナログ周波数の使用期限が平成28年5月31日までとされ、全国の消防本部においては、260MHz帯デジタル無線への移行が急務となっている。 消防救急無線のデジタル化はチャンネル数が増えるなど、より電波を有効に活用できるが、多額の設備投資が必要なため、その効果的、効率的整備が求められている。そのため、複数の消防本部による無線設備の広域・共同運用が課題となっている。 平成16年度の消防救急無線の広域化・共同化の推進検討懇談会の対応策を踏まえ、消防庁は平成18年度までに各都道府県において広域化・共同化のための計画を策定するように要請をしたところであり、また、併せて消防通信指令施設についても広域・共同運用することを強力に推進していく必要がある。 (オ)緊急消防援助隊の広域通信体制の強化 災害時の円滑な広域応援のため、各都道府県から参集する緊急消防援助隊の相互間における情報共有を図ることが必要である。このため、消防救急無線のデジタル化、広域・共同運用と併せ、消防救急無線と地域衛星通信ネットワークとが連携して、全国で情報を共有できる仕組みを検討する。
(2)精鋭達によるセーフティネット −高度消防・救急救助体制の全国的整備 消防は、市町村が第一義的にその責任を負うこととされている。しかしながら、阪神・淡路大震災のような大規模災害時には市町村、都道府県を越えて相互に応援し、その被害の軽減を図っていくものであり、また、こうした広域的に対応すべき事態も大規模な自然災害のみならず重大事故災害やテロ災害等が想定される。このため、全国的な観点から高度な消防・救急救助体制の構築が現在求められている。 ア 「特別高度救助隊」、「高度救助隊」の全国的展開・配備と緊急消防援助隊の大幅増強 (ア)東京消防庁及び政令市消防本部に「特別高度救助隊」、中核市規模以上等の消防本部に「高度救助隊」の配備を検討 平成16年10月23日の新潟県中越地震において発生した長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故において、2歳男児1人とその母親の2人が救出(母親は病院搬送後死亡確認)された。その際、全国から応援に来た緊急消防援助隊が活躍したが、なかでもその救出の中核を担ったのは、東京消防庁消防救助機動部隊、「ハイパーレスキュー隊」であった。高度な救助技術と資機材を有する同部隊は東京消防庁管内で3隊配備されているが、その他の地域では配備されていない。また、平成17年4月に兵庫県尼崎市で起きたJR西日本福知山線列車事故でも地元消防本部、県内応援隊、緊急消防援助隊の救助隊が活躍したが、気化したガソリンが充満していたためその活動が制約された面などもあった。こうした背景の下、大規模災害、テロ、有事等に対して全国的見地から救助体制等を強化する必要がある。 消防庁は、「特別高度救助隊」の東京消防庁・政令市消防本部への配備、「高度救助隊」の中核市消防本部・中核市を有しない県の代表消防本部への配備を検討し、あわせて特別高度救助隊には特殊な救助用資機材、高度救助隊には高度救助用資機材等を整備することを検討している。 (イ)消防大学校において高度救助隊の養成講座を創設 特別高度救助隊や高度救助隊の整備にあたり、資機材等の整備のみでなく、部隊育成のために、消防庁では消防大学校において特別高度救助隊隊員の養成講座を創設し、配備される専門的な車両及び資機材の取扱訓練や各種災害を想定した実践的な高度救助訓練とともに、現場管理・部隊管理能力の向上を図る高度救助技術・知識等の専門的な教育訓練の実施を予定している。 (ウ)緊急消防援助隊の登録部隊数を増強(平成17年4月現在2,963隊)し、総合的・実践的な訓練を継続的に実施 緊急消防援助隊は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、迅速で効果的な消防の広域応援のために平成7年に創設され、平成15年6月にはより実効的な仕組みとするために法律に明確に位置づけられた。緊急消防援助隊については、総務大臣が策定した「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」に基づいて消防庁長官が部隊を登録することとなっており、大規模・特殊災害時には被災地の状況に応じて、消防庁長官の指示又は求めにより都道府県を越えて部隊が出動していく。 平成17年4月現在、指揮支援部隊、都道府県指揮隊、救助部隊、消火部隊、救急部隊、航空部隊等計2,963隊が登録されており、平成16年7月の新潟・福島豪雨から平成17年4月のJR西日本福知山線列車事故まで計6回出場し、その出場は延べ1,552隊、6,271人に及び、2,865人の人命救助とめざましい活躍をしている。 一方、中央防災会議においては、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震に関する被害想定が相次いで出され、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震についても今後被害想定が出されることとなっている。これらの想定される大規模地震災害や相次ぐ自然災害に対して国民の安心・安全を確保する対応体制を強化するためには、緊急消防援助隊の登録部隊数を現在の3,000隊規模からさらに増強することを検討する必要がある。具体的には、大規模地震発生時の大規模火災発生に備える消火部隊、高度救助隊の全国的な展開・配備をはじめとする救助部隊、大規模救急事案のための広域医療搬送体制を強化する救急部隊、これらの部隊に伴う後方支援部隊の増強を想定している(第3図参照)。 また、こうした部隊の編成、登録の増強のみならず、総合的・実践的な訓練を継続的に実施する必要があり、その連携、運用の錬度を高めるため、平成17年6月10日、11日には静岡県において緊急消防援助隊全国合同訓練が行われ、部隊の参集及び活動体制について総合的に検証が行われた。消防庁では、今後とも全国訓練やブロック訓練、図上訓練等により、緊急消防援助隊の充実強化に努めていくこととしている。 (エ)国としてのオペレーション体制を強化 緊急消防援助隊に対する消防庁長官の指示権の創設に伴い、全国的な運用調整を行う責務が消防庁に生じたこと等により、消防庁は、法律に明確に規定された国の責務を果たすべく、災害への対応のオペレーションも実施することとなる等大きく変化している。 このため、消防庁では平成15年8月に設置した消防防災・危機管理センターにおいて、実践的図上演習等を繰り返し実施し、災害即応体制の点検・検証を行っている。大規模災害発生時には、直ちに緊急消防援助隊を派遣するとともに、現地に派遣した消防庁職員を通じて、消防庁災害対策本部、都道府県・市町村災害対策本部、緊急消防援助隊調整本部、指揮支援本部との調整を行っているところである。 人員体制についても充実を図っており、平成17年度には15人の増員を行い、航空専門官、地域情報把握専門官等を設置した。また、新たに国民保護法の施行に伴う体制も充実し、テロ対策専門官等も設けた。さらに、消防庁ヘリコプターの整備により、大規模災害時における初動時の情報収集、先遣隊派遣を迅速に行うことのできる体制を整えるとともに、新たに「国民保護・防災部」を設置した。 しかしながら、全国的なオペレーションを実践するためには担当職員の人数が絶対的に不足しており、今後、安心・安全な社会の確立に向け、また一人でも多くの人命を救い、被害を軽減するために消防庁の体制強化を含め、国としてのオペレーション体制を早急に強化する必要がある。 イ 救急救命等の充実・高度化 (ア)救急需要対策の推進 平成16年中の救急出場件数は約503万件であり、10年前の平成6年と比較して約65%も増加している。今後も、高齢社会のさらなる進展や住民意識の変化等に伴い、救急需要は増加していくと予想されている。また、平成16年中の平均現場到着所要時間は6.4分となっており、平成6年中と比べると、0.6分遅延している。救急事案においては最初の数分の処置が生死を分けることもあり、救急出場件数がこのまま増加を続ければ、住民の救急要請に対して、現在のような迅速な対応が困難となる地域が出てくるおそれがある(第4図参照)。 消防庁では、こうした状況を踏まえ、今後も救急業務が適正に確保されるよう、救急自動車の適正利用の普及啓発、傷病者のトリアージ(緊急度判断)システム、民間事業者の活用等の救急需要対策について、幅広く検討を行っていく。 (イ)救急業務の高度化の推進 傷病者の救命効果の向上を図るため、救急救命士の処置範囲の拡大を推進しつつ、救急救命処置等の適切な実施に必要な医師による常時指示体制、医学的観点からの事後検証体制、再教育・研修体制の確保など、メディカルコントロール体制のあり方を検討し、更なる充実を図る。 また、9月9日の「救急の日」のイベント等を通じて、関係機関との連携を図りつつ、誰でも使用可能となった自動体外式除細動器(AED)の使用も含めたバイスタンダー(その場に居合わせた人)による応急手当の普及啓発を推進する。 ウ 先端科学による消火・救急救助技術の開発 −ロボット、ナノテク、ICT等を活用し、高度な技術・資機材を研究開発・実用化(高機能ウォーターカッター、救助ロボット、ナノテク消防服、電磁波探査装置、遠隔救急医療システム等) JR西日本福知山線列車事故での気化したガソリンが充満した現場や新潟県中越地震の際の余震による土砂崩れ等二次災害が想定される過酷な現場におけるより迅速な救助活動のための高度な資機材の開発や、三重県でのごみ固形燃料(RDF)施設での爆発事故や北海道苫小牧での石油タンク全面火災のような大規模・特殊災害における迅速かつ安全な消火活動のための技術・資機材の高度化などが強く求められている。また、高度・複雑化する社会においては、新たな技術、素材への対応も望まれている。こうしたニーズに応え、新たな視点から高度な消防防災科学技術の研究開発を行う必要があり、例えば、独立行政法人消防研究所では、多様な利用が期待されるナノテクノロジーを活用して、耐熱性、強度、運動性等の面でより高性能で、より迅速・確実な消防活動を可能とするナノテク消防服の研究開発等を進めていく予定であるが、様々な分野において、消防機関、企業、大学等関係機関と連携を図りながら一層の開発研究を推進する必要がある(第5図参照)。
5 平常時の対策(1)あなたの手が地域を守る −地域防災力の強化 日常に潜む火災、事故等に対しては消防がその役割を十分発揮すべきであるが、大規模災害時には阪神・淡路大震災の例を引くまでもなく、地域自らがどのような備えをしてきたかが問われてくる。どのように地域の防災力を強化し、消防との連携を図って地域を守っていくのか、消防庁では次のような総合的な施策を講じている。 ア 耐震化緊急実施計画等の策定 (ア)防災拠点となる公共施設(文教施設、社会福祉施設、庁舎等)、危険物施設(石油タンク等)などの耐震対策を強力に推進 大規模地震時において、的確に災害応急対応を実施するためには、市町村等の庁舎、消防署等をはじめ、避難所となる学校施設など、防災拠点となる公共施設等の耐震化を強力に推進することが必要である。しかしながら、平成15年度末の消防庁調査によれば、防災拠点となる公共施設等の耐震化率は51.3%にすぎない。消防庁としては、公共施設等の耐震化を促進するため、地方公共団体への財政支援である「公共施設等耐震化事業」の積極的活用を図っている。この事業では事業費の90%は地方債を充てることができ、元利償還金の50%は後年度普通交付税の基準財政需要額として算入される(交付税措置)。 さらに消防庁としては、平成17年6月に各都道府県に対して定量的な目標を設定した「耐震化緊急実施計画」の策定を要請し、計画的、効果的な耐震化の推進を図っている。また、耐震診断・改修工事の効果的な実施手法や事例を紹介する「耐震化促進ナビ」を作成、公表している(第6図参照)。 (イ)津波避難計画を策定し、避難地・避難路の整備を促進 東南海・南海地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等において巨大な津波の発生が想定されることを踏まえ、消防庁では、地方公共団体に対し、津波からの避難計画策定を求めるとともに、避難地・避難路の整備を促進することとしている(囲み記事「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」参照)。 イ 実践的な図上シミュレーション訓練の計画的実施 地震や津波などの大規模災害に、迅速かつ効果的な応急対策を地方公共団体において実施するためには、様々な条件等を想定した実践的な図上型防災訓練を実施することが有効である。このため、消防庁においては市町村長や都道府県防災担当部局幹部を対象とした実践的な研修「防災危機管理ラボ」等を実施するとともに、市町村における防災図上訓練及び住民参加による防災ワークショップの実施を促進するため、その企画・運営・評価の実施サイクルについて助言・支援している。これらにより市町村における実効的な防災訓練等の普及を行い、市町村長等のリーダーシップの強化、そして住民と行政間の信頼関係の確立を目指している(囲み記事「地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書(平成16年度)について」、「防災危機管理ブロック・ラボの開催について」参照)。 ウ 地方公共団体と事業所間の防災協力の推進 JR西日本福知山線列車事故においては、災害現場周辺の住民・事業所が発災直後から保有する事業・防災用の資機材等により救出・救助や負傷者の搬送にあたった。このような事業所の防災協力がとりわけ大規模な事故や災害発生時には、地域の防災力を担う重要な一翼であることが改めて認識された。 消防庁としては、災害発生直後の初動対応において事業所の防災協力が実施されるために必要な体制のあり方やそれを構築するための方策など様々な事項について検討し、地方公共団体の防災体制づくりや実践的な訓練実施等に取り組んだ実績を具体的なノウハウとして提供すること等を通じて、地方公共団体を支援していく。 エ 災害時要援護者避難支援プランを作成 大規模災害、特に平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害や同年10月の台風第23号による災害等の風水害では全国各地で高齢者等の災害時要援護者の被害が一際大きく、高齢者等に配慮した警報伝達や避難誘導体制の不十分さが指摘された。そこで、有識者・消防庁を含めた関係省庁による「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」で対策が検討され、平成17年3月の中央防災会議においてその検討結果が報告された。 この検討に基づく「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」においては、要援護者の特性を踏まえた情報伝達などの「情報伝達体制の整備」、防災担当者と福祉担当者の連携による要援護者情報の把握手法など「災害時要援護者情報の共有」や、「災害時要援護者の避難支援計画の具体化」の3点の課題を挙げ、市町村に対し具体的な「避難支援プラン」の作成を要請している。 消防庁では、「災害時要援護者避難支援プラン」作成を地方公共団体に要請するとともに、これらの課題や個人情報に対する住民の意識の高まりなどに対するモデル市町村の取組み状況を整理し、地方公共団体に提供するなどその作成を支援していくこととしており、併せて未だ整備が行き届いていない同報系の市町村防災行政無線の整備も促進している。 オ 地域安心安全ネットの全国展開 (ア)消防団の充実強化と防災コーディネーターの養成(地域防災力の中心となる人材) 平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災以後、「自分たちの地域は自分たちで守る」との考え方のもと、とりわけ大規模災害時には初期消火、救助等において活躍が期待される「共助」の担い手である消防団、自主防災組織の活動や各種ボランティア活動等の重要性が広く認識されている。 これらの地域の防災力の担い手としては、消防団、自主防災組織、婦人(女性)防火クラブ、幼年消防クラブ、ボランティア等の様々な活動主体があるが、現状ではこれら多様な担い手がそれぞれの特性を活かした活動を独自に行っている。そこで、さらなる地域防災力の向上のために、これらの主体が日頃から連携・相互協力して、災害時の地域の防災力を総合的、効果的に発揮していく必要がある。 このため、消防庁では、地域における防災力の担い手の役割・活動を調整するため、防災に関する意欲、知識・経験を有する「防災コーディネーター」を養成し、このコーディネーターを介して、各主体の市民が一体的に活動できるよう、様々な施策を講じていく予定である。 (イ)「地域安心安全ステーション」(地域の安心・安全活動の拠点)の全国展開 大規模な自然災害・事故災害の頻発に加え、犯罪の大幅な増加が地域の安心・安全を脅かしつつあり、例えば火災においても放火が8年連続して出火原因の第一位を占めている。一方、地域の防災・防犯活動にあたり極めて重要な役割を果たす地域コミュニティ組織の弱体化が指摘されている。 消防庁では、平成16年度から警察庁と連携して、「地域安心安全ステーション整備モデル事業」を実施している。具体的には、小学校区単位を基本に公民館や消防団詰所等を活用したステーションを置き、デジタル防災行政無線、救出救助器具、応急手当資機材、防災資機材を優先配備し、そこを中核とした訓練や応急手当講習等の実施している。そして、自主防災組織や各種コミュニティが市町村を通じて、消防、警察等と協力して、ステーションを拠点に行う地域安心安全パトロールに対する支援を講じている。また、平成17年度には全国で100のモデル団体を選定し、地域安心安全パトロール等に加え、自動体外式除細動器(AED)を利用した救命講習や避難誘導、初期消火、救出等の防災訓練などの活動に適切な助言を行い、また今後、優良活動事例をホームページ上に掲載して他地域への参考とする取組みを進めており、これらの施策を全国に展開していく(第7図、囲み記事「地域安心安全ステーション整備モデル事業」参照)。
(2)「いざ」のために、今 −火災・危険物の予防対策 平時から災害に備えることは重要であるが、中でも未然にその発生を防ぐことが重要である。このため、消防法令では様々な規制を講じ、また、施策を通じて災害の予防を図っており、社会の変化に応じて的確にその見直しを行い、対応していくことが必要である。 ア 住宅防火対策の推進 住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。以下同じ)は、建物火災の死者数の約9割を占めており、近年その数は急増し、平成17年上半期では住宅火災による死者数の統計がある昭和54年以降最悪の死者数を記録している。さらに、死者の半数以上が高齢者であるため、今後、高齢社会の進展に伴い、ますます増加するおそれがある(第8図参照)。 消防庁では、このような状況を踏まえ、平成16年に消防法を改正し、住宅用火災警報器等の設置及び維持を義務付けた。さらに、この改正消防法の円滑かつ効果的な施行に向けて、地域で住宅用火災警報器等の広報活動等に取り組む消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等を支援し、高齢者等を中心として住宅用火災警報器等の普及啓発を一層推進し、住宅火災による死者数の低減を実現していく(囲み記事「住宅用火災警報器の広報・普及啓発活動について」参照)。 イ 放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降8年連続して出火原因の第1位であり、放火の疑いのある火災と合わせると全火災の2割以上を占めている。放火を防ぐためには、一人ひとりが防止対策を心がけるだけでなく、地域全体が「放火されない環境づくり」に取り組む必要がある。 消防庁では、個人・事業所・地域・地方公共団体等が、自ら放火火災の危険性の認識を持って、対応することができるよう、「放火火災防止対策戦略プラン」を策定した。今後、地域等の戦略プランの評価シートを収集・分析し、プランの改定や放火危険度データベースの開発を進め、地域による科学的な「放火されない環境づくり」の取組みを一層推進していく(囲み記事「ご近所の底力を利用した放火火災防止対策」参照)。 ウ 危険物事故対策の推進 危険物施設の老朽化や不適切な管理等により危険物の火災・漏洩事故は近年増加する傾向にある。このため、消防庁では、「危険物事故防止アクションプラン」に基づき、官民一体となって総合的な事故防止対策を推進するとともに、津波や洪水による浸水に対する危険物施設の安全対策の検討を行う。また、危険物施設の腐食・劣化に関する評価手法の開発等による保守管理の推進や科学技術の進歩に伴い開発される新規危険性物質の早期把握及び危険性評価等に努め、潜在的な危険要因に応じた安全対策を講じていく。
(3)今後の消防体制のあるべき姿に向けて これまでの消防防災強化戦略に加え、多様化、大規模化する災害・事故等に的確に対応し、今後とも消防が住民の生命、身体及び財産を守る責務を全うするためには、消防体制のさらなる充実強化を図る必要がある。また、今後、少子高齢社会の進展により将来人口の減少が想定され、現在の消防本部の管轄人口も減少すると考えられる。さらに、これまで消防庁は消防本部の広域再編を推進してきたが、平成の市町村合併に一定の目処が立ったところである。これらを踏まえ、今後の広域再編など消防体制のあり方を新たに検討する必要がある。 このため、消防庁では、現在、これまでの消防体制の現状と課題や広域化の取組みを分析し、消防機関の果たすべき役割や今後の消防体制のあり方について、消防本部に求められる消防力・規模や小規模消防本部の課題、消防本部の広域再編の基本的考え方やその推進方策などについて徹底した調査検討を進めている。こうした調査検討に基づき、地域において高度化、複雑化する社会に対応し、住民の安心・安全を確保する消防体制の整備方策を構築することとしている。
トピックスI 消防防災分野における国際緊急援助・国際協力の進展1 スマトラ沖大地震・インド洋津波災害に対する国際緊急援助活動と復興支援(1)地震及び津波被害の概要 平成16年12月26日現地時間午前7時58分頃、インドネシア共和国メダン西方約300キロのインド洋を震源地とするマグニチュード9.0(米国地質調査所調べ)の大規模な地震が発生し、この地震を原因とする大規模な津波は、インド洋沿岸諸国に死者、行方不明者あわせて22万人を超える犠牲者が生じる極めて甚大な被害をもたらした。この地震は1900年以降、規模としては4番目に大きい地震であったが、津波による犠牲者は記録上最大となった(第1表、第1図参照)。
(2)国際消防救助隊の派遣 ア 派遣決定 消防庁では地震発生直後から外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)との連絡・協議を行い、平成16年12月27日にタイ王国政府から我が国に対して正式に援助要請があり、政府が国際緊急援助隊救助チームの派遣を決定したことを受けて、12月28日18時40分、消防庁長官が国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire Service)の派遣を決定した。 イ 成田国際空港から現地へ 国際消防救助隊第1陣となる救助チーム13人(消防庁1人、東京消防庁5人、大阪市消防局3人、千葉市消防局2人、相模原市消防本部1人、川越地区消防組合消防本部1人)は、平成16年12月29日早朝、成田国際空港で国際緊急援助隊救助チームとなる他の隊員(外務省、JICA、警察庁、海上保安庁等36人)と合流し、結団式を挙行。11時17分に被災地であるタイ王国プーケットへ向けて出発した。同日17時45分にはヘリコプターチーム先遣隊(東京消防庁5人)が成田国際空港を出発した。 被災地入りした捜索救助チームは、12月30日にプーケット北方のタクアパー郡で活動を開始、途中ヘリコプターやボートを活用してピピ島に転戦する等、陸路はもとより空路・海路の機動力を駆使して広範囲にわたる捜索救助活動を展開した。残念ながら生存者の発見・救出には至らなかったが、行方不明者の安否確認のため、多くの遺留品を収集し現地災害対策本部に提出した(第2図、第3図参照)。 平成17年1月4日、タイ王国政府が行方不明者の検索活動を終了したことから、1月7日、救助チームは救援活動を後続のヘリコプターチーム、専門家チームに引き継ぎ帰国の途についた。 ウ 消防ヘリコプターによる支援活動 被災地を空から支援するため、平成16年12月31日10時53分、ヘリコプターチーム24人(消防庁1人、東京消防庁11人、大阪市消防局12人)が被災地へ向けて成田国際空港を出発。平成17年1月1日深夜には大型輸送機アントノフに積載された消防ヘリコプター2機(東京消防庁「ちどり」、大阪市消防局「なにわ」機種AS365N2)が被災地へと飛び立った。 1月2日、プーケット空港に到着した2機の消防ヘリコプターは、プーケット空港を拠点として孤立集落や離島への医師・医薬品の搬送、食糧・飲料水・発電機・浄水器等の生活関連物資の搬送等、精力的な救援活動を実施し、1月16日までの15日間で、現地での飛行回数・時間は延べ58回68時間に及んだ。 エ 専門家チームによる技術協力 平成17年1月7日からは検索救助技術の専門家チーム4人(消防庁1人、東京消防庁2人、横浜市消防局1人)がプーケットに入り、自然災害研修予防対策センターにおいて、タイ王国内務省の災害担当教官に対する1週間にわたる検索救助技術指導を実施したほか、タイ国防省関係者、学生等約1,000人を対象とした津波対策に関するセミナーを開催するなど、現地の検索救助技術向上、防災意識の普及啓発に寄与した。 オ 活動終了〜帰国 タイ王国での任務を終えた国際消防救助隊は、タイ王国政府機関や在タイ日本大使への活動報告を行い、平成17年1月20日7時10分、ヘリコプターチームと専門家チームが成田国際空港に到着したことにより全隊員が無事に帰国した。同日、消防庁において総務大臣、消防庁長官列席のもと解隊式が行われ、国際消防救助隊長から消防庁長官へ隊旗が返還された。
(3)復興に向けての支援 国際消防救助隊の派遣を契機として日本・タイ両国間の相互理解が進んだことから、平成17年4月、タイ王国から日本国政府に対して防災分野における技術協力専門家の派遣要請があった。これを受けて、消防庁ではタイ王国の災害管理能力及び防災教育のレベル向上に寄与するため、消防庁職員をタイ王国内務省防災局長アドバイザーとして派遣するとともに、随時タイ王国から研修生を日本に受け入れて研修を実施することとした。 平成17年7月には消防庁長官がタイ王国を訪問し、消防庁とタイ王国内務省との間で消防防災分野における包括的な協力に関する共同宣言がなされた。調印に先立ち、消防庁長官とタイ王国内務省防災担当政務官との会談が行われ、このなかでタイ王国内務省防災担当政務官から津波災害時の日本からの援助活動に対して謝意が述べられ、消防庁長官は、日本国政府は日・タイ共同宣言を契機に、一層の協力支援を推進する意向を表明した。 消防庁では、今後この二国間の消防防災分野における協力関係がモデルとなり、アジア地域を中心に海外諸国との間でも積極的に協力関係を築いていきたいと考えている。共同宣言の主な内容1.人的交流をはじめ、両国消防防災当局間のパートナーシップをさらに促進し、以下の相互の技術・知見の共有をより一層進める。(1)消防防災分野における専門家の派遣、研修員の受け入れ(2)両省職員間の相互訪問を通じた意見交換及び情報共有の推進(3)両省間の教育機関及び研究機関の交流2.平素から両国の消防防災に関する情報を共有するため、インターネット等を通じた相互連絡体制の構築を進めていく。3.双方は、緊急時における相互応援体制の確立に向け、両国の実情を考慮しながら実効性ある制度づくりに向けて取り組んでいく。
2 世界消防庁長官会議と国際消防シンポジウムの開催 阪神・淡路大震災10周年を期して、また、スマトラ沖大地震・インド洋津波災害という世界的な大災害を背景として世界の消防庁長官等を招聘し、大規模災害発生時における国家消防の役割についての意見交換や、各国間の今後の協力体制や将来展望を宣言すること等を目的に、初の試みとして平成17年1月24日、東京で世界消防庁長官会議が開催された。 会議には、エジプト・アラブ共和国、フランス共和国、ホンジュラス共和国、モンゴル国、フィリピン共和国、大韓民国、シンガポール共和国、英国、アメリカ合衆国(オブザーバー参加)、日本の10か国の消防防災当局の代表が参加し、世界消防庁長官会議共同宣言がなされた。 また、世界消防庁長官会議に引き続き、「国際消防シンポジウム」が開催され、各国の消防防災分野における課題、今後の方向性について意見交換が行われた。世界消防庁長官会議共同宣言 エジプト・アラブ共和国、ホンジュラス共和国、モンゴル国、フィリピン共和国、大韓民国、シンガポール共和国、英国、日本国の消防防災当局の首脳は、各国の大規模災害対策、国民保護施策を踏まえた国家消防の役割について幅広く意見交換を行い、われわれが各国国民の生命と身体を守るため、共通の使命と目的を有していることを認識し、以下のことを議論した。この崇高な使命を達成するために、各国が消防防災分野で多くの関心を共有することに留意し、大規模災害や国民保護施策において、各国が国家的な視点で総合的な消防防災体制を構築していく必要性について確認し、各国消防防災当局間の相互理解と協力関係が、各国の消防防災施策の推進と災害の防止、災害からの被害軽減のために重要であることを認識し、次の通り合意するものとする。1.われわれ国家消防防災当局は、これまでの消防防災交流の実績を踏まえ、人的交流をはじめ、さらなる交流を進め、相互の技術・知見の共有をより一層進めていくこととした。2.そのために、各国の消防防災に関する情報を共有するための各国消防防災当局間のネットワークの構築を進めていくこととした。3.また、緊急時における相互応援体制の確立に向け、各国の実情を考慮しながら、実効性のある仕組みづくりに向け取り組んでいくこととした。
3 パキスタン・イスラム共和国に対する国際消防救助隊の派遣(1)地震の概要 平成17年10月8日現地時間午前8時50分頃、パキスタン・イスラム共和国の首都イスラマバード北北東約95キロの地点を震源とするマグニチュード7.6(米国地質調査所調べ)の大規模な地震が発生し、パキスタン・イスラム共和国で死者、7万3,320人、負傷者12万8,378人、インドで死者1,300人以上、負傷者約6,300人(平成17年11月17日現在)という甚大な被害をもたらした。
(2)国際消防救助隊の派遣 ア 派遣決定〜現地へ 消防庁では地震発生当初から外務省及び独立行政法人国際協力機構(JICA)と連絡・協議を行い、パキスタン政府から我が国政府に対して援助要請があり、日本国政府が国際緊急援助隊救助チームの派遣を決定したことを受けて、10月8日21時00分、消防庁長官が国際消防救助隊の派遣を決定、翌10月9日早朝、国際消防救助隊13人(消防庁1人、東京消防庁6人、横浜市消防局3人、船橋市消防局2人、茨城西南地方広域市町村圏事務組合消防本部1人)は成田国際空港に集結、国際緊急援助隊救助チーム36人と合流し、被災地へ向けて出発した。 空路・陸路を乗り継ぎ、現地時間10月10日早朝イスラマバード近郊のラワールピンディに到着した国際消防救助隊は、パキスタン軍のヘリコプターで活動サイトである北西辺境州バトグラム郡へ到着し、当地で活動を開始した。 バトグラム郡は首都イスラマバードの北方約120キロの山間部にあり、気温の日較差が大きく、厳しい環境下での活動を強いられた。活動サイトを調査中、倒壊した病院に入院患者が取り残されているとの情報があり、検索・救助活動を開始。余震が続くなか建物内部に侵入し、10月11日まで検索活動を実施したが、要救助者を発見することはできなかった。 10月12日以降もバトグラム郡内で活動を展開、要救助者の情報があるバターモーリ地区、コルゲラ地区において検索・救助活動を実施した。当地は土造り、煉瓦造りの住居が多く、それらの建物が倒壊した現場での活動は困難を極めたが、2つの地区で3人の要救助者の遺体を発見・救出し、生き埋めになったと思われる全ての要救助者の救出を完了した。 イ 活動終了〜帰国 10月15日、国際緊急援助隊救助チームはパキスタン政府、国連人道問題調整事務所及び在パキスタン日本大使に日本隊としての活動報告を行い、10月16日にイスラマバードを離れ帰途についた。日本時間10月18日早朝、無事帰国した国際緊急援助隊救助チームは成田市内で解団式を実施、その後国際消防救助隊は総務省に場所を移して消防庁長官列席のもと解隊式を行い、今回の任務を終了した。
4 今後の活動に向けて 消防庁では、外務省及び独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携し、隊員に対する想定訓練・研修の実施や、被災地への人員・資機材の搬送手段に関する検討など被災国からの要請に応え、迅速かつ効果的に検索・救助活動を実施するための体制整備に取り組んでいる。人員・資機材の搬送については、災害発生後72時間が生存者救出の一応の目安となることから、被災国からの要請、派遣決定、実際の派遣を速やかに行い、一刻も早く現地に到着することが鍵になり、そのための体制整備が求められている。また、災害発生時の国際緊急援助活動はもとより、災害からの復興・復旧に対する支援や消防防災分野における技術移転に積極的に協力することとし、海外諸国との交流を推進している。
トピックスII 増加する救急需要への対応1 救急業務の現状 消防機関の行う救急業務は、昭和38年に法制化されて以来、我が国の社会経済活動の進展に従って、その体制が整備されてきた。そのような中、救急自動車による救急出場件数は年々増加し、平成16年中は502万9,108件に達し、初めて500万件を突破した。平成6年中の救急出場件数が304万9,000件であったことと比べると、10年間で64.9%増加したこととなる。また、全国の救急隊数は、平成16年4月1日現在で4,711隊であり、平成6年4月1日現在の4,331隊と比べると、10年間で8.8%の増加にとどまっている。これにより、救急隊1隊当たりの年間平均出場件数は増加傾向にあり、さらに、救急自動車の現場到着所要時間は遅延傾向にある(第1図参照)。 今後も、高齢化の更なる進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増加し続けると考えられる。また、全国の消防本部においては、厳しい財政事情等により、救急需要の増加に合わせて救急自動車や人員等の整備を図ることが困難な状況にあることから、救急隊1隊当たりの年間平均出場件数は更に増加し、救急自動車の現場到着所要時間も更に遅延していくことが予想される。そのため、今後、地域によっては、傷病者が発生した場合に、救急自動車による迅速な対応が困難となってくるおそれがある(第2図、第3図参照)。
2 消防力の整備指針に関する調査検討会 消防庁は、平成15年10月から有識者及び実務者による「消防力の整備指針に関する調査検討会」を開催し、市町村の消防力の水準のあり方等について、必要な検討を行ってきた。その結果が平成17年3月に「消防力の整備指針について」(「消防力の整備指針に関する調査検討会」報告書)としてとりまとめられ、救急需要対策については、以下の項目について検討を行う必要があることが示された。―「消防力の整備指針に関する調査検討会」報告書(抜粋)―○ 救急需要への対応 救急出動件数が著しく増加する中、厳しい財政事情等により、その増加に合わせて救急自動車や人員等の体制整備を図ることは困難であるが、今後も救急需要が増加し続けることも予想されるところであり、併せて地震等の大規模災害時等の対応を含め、以下の項目について検討を行う必要がある。・ 救急自動車の適正利用に係る周知啓発活動の推進  救急自動車の利用のあり方について住民に対する周知啓発活動を推進・ 救急要請時や救急現場におけるトリアージシステムの確立  傷病者の重症度・緊急度の判断基準を定め、基準に基づく対応体制等の導入等について検討・ 一定の出動業務や患者等の搬送業務への民間活用等  消防機関が本来対応する必要がない一定の出動・搬送業務について、民間事業者の活用等を検討・ 救急事案の発生防止策(予防救急)  建築物、気候等を起因とした救急事案に係る情報について収集・分析を行い、救急事案の発生を防止する施策を推進・ 消防救急自動車の活用  警防・救急業務を相互に補完するものとして消防救急自動車を活用・ 大規模災害時等における対応  大規模災害時等において、市町村、都道府県、国の役割分担のもと、医療機関等の関係機関とも連携し、救急体制の充実強化について検討
3 検討会の開催 消防庁としては、救急需要の増加が原因で、国民に不利益が及ぶことのないよう、増加する救急需要への対応を検討するため、学識経験者、医療関係者、消防本部の代表者等を委員とする「救急需要対策に関する検討会」、「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」の2つの検討会を開催することとした。 「救急需要対策に関する検討会」においては、各消防本部が地域の実情に応じて柔軟な対策を実施できるよう、救急要請時や救急現場におけるトリアージシステムの確立や、救急隊の運用体制の効率化等、救急需要対策に関する総合的な検討を行い、また、「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」においては、消防機関が実施している救急搬送業務において、患者等搬送事業者を活用する方策等に関する検討を行なっている。 今後、消防庁として、これらの検討会の結果をもとに、各地域において適切な救急需要対策の実施が図られるように推進していきたいと考えている。
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、平成7年以降6万件を超えていた出火件数は、平成10年及び11年には5万件台で推移したが、平成12年以降は再び6万件を超え、平成15年に5万件台に減少したものの、平成16年は再び6万件台に増加している。 火災による死者数は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年に戦後最大の2,356人となり、翌平成8年には一旦2,000人未満に減少したものの、平成9年以降は再び2,000人を超えて推移しており、平成16年は前年に比べ減少したが依然として2,000人を超えている(第1−1−1図、第1−1−2図、第1−1−3図)。 平成16年中における火災の状況をみると、出火件数、焼損棟数、建物焼損床面積及び損害額とも増加しているものの、前年に比べ死者数は減少している(第1−1−1表)。 なお、放火自殺者を除く死者数についても減少しているものの、高齢者及び乳幼児の比率については、前年に比べ増加している(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。
1 出火状況(1)出火件数は増加、1日当たり165件発生 平成16年中の出火件数は6万387件であり、前年に比べ4,054件(7.2%)増加している。また、1日当たりの出火件数は165件となっている(第1−1−1表、第1−1−2表)。
(2)建物火災は全火災の55.2% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の55.2%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(道路、空地、土手及び河川敷の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和59年以降変化していない(第1−1−3表)。 最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災、林野火災及びその他の火災については、平成9年及び10年と2年連続して減少し、平成11年以降は再び増加傾向であり、平成15年は減少したものの、平成16年には増加している(第1−1−4表)。
(3)冬季・春季に火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成16年中も、総出火件数の57.5%を占めている(第1−1−5表)。
(4)出火率は4.8件/万人 平成16年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で4.8件/万人となり前年より0.4ポイント増加しているが10年前の平成7年と比べると0.2ポイント減少している(第1−1−1表、第1−1−6表)。 出火率を都道府県別にみると、最高は鹿児島県の6.9、次いで山梨県の6.4、高知県の6.2の順であり、出火率が最も低いのは、富山県及び京都府の2.7で、富山県については平成3年以降14年連続して最低となっている(第1−1−7表)。
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器 平成16年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が71.9%と圧倒的に多い(第1−1−4図)。 また、初期消火の状況をみると、消火器を使用したものが21.5%と初期消火が行われたものの中で最も高い比率になっている。一方で、初期消火を行わなかったものは38.8%となっており、この値を10年前(平成7年)と比較すると5.7ポイント増加している(第1−1−8表)。
(6)放火を除くと、住宅火災は建物火災の57.1% 平成16年中において、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数は1万6,866件であり、建物火災の件数(2万9,528件)の57.1%と半数以上を占めている(第1−1−9表)。
2 火災による死者の状況 平成16年中の火災による死者数は2,004人であり、前年の2,248人に比べ244人(10.9%)減少しており、放火自殺者を除いた火災による死者数も1,380人で、前年の1,433人に比べ53人(3.7%)減少している。 また、放火自殺者数は624人であり、前年の815人に比べ191人(23.4%)減少している(第1−1−5図)。
(1)1日当たりの火災による死者数は5.5人 平成16年中の火災による1日当たりの死者数は5.5人であり、前年の6.2人に比べ0.7人減少している(第1−1−2表)。
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.58人 平成16年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.58人であり、前年の1.77人に比べ0.19人減少している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年同様東京都が123人で最も多く、次いで北海道が107人、大阪府が106人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、鳥取県で7人、次いで佐賀県が8人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは岩手県で3.19人、最も低いのは奈良県で0.63人となっている(第1−1−10表)。
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成16年中においても、1月から3月及び12月の月ごとの死者数は200人以上(年間の月平均は167人)に上っており、この4か月間に死者総数の47.7%に当たる955人の死者が発生している(第1−1−6図)。 平成16年中の時間帯別の火災による死者発生状況は、2時台が146人と最も多く、次いで4時台が109人となっている。就寝時間帯の死者発生状況は、22時台から5時台にかけて平均で100.1人となっており、全時間帯の平均80人超に比べ、就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1−1−7図)。
(4)死因は火傷が42.8%、一酸化炭素中毒・窒息が42.7% 平成16年中の放火自殺者を除いた火災による死因は、火傷によるものが590人(42.8%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息によるものが589人(42.7%)となっている(第1−1−11表)。
(5)建物火災による死者は死者総数の70.6% 平成16年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,414人と前年に比べ80人減少しているが、死者総数に対する比率は70.6%と前年(66.5%)に比べ4.1ポイント増加している(第1−1−12表)。
(6)逃げ遅れによる死者が56.0% 死亡に至った経過をみると、平成16年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,380人のうち、逃げ遅れが772人で56.0%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が300人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の21.7%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が726人(52.6%)を占めており、特に81歳以上が286人(20.7%)と極めて多くなっている。また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が183人(13.3%)、「熟睡によるもの」が169人(12.2%)となっている(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。
(7)建物火災のうち、全焼による死者は768人 平成16年中の建物火災による死者1,414人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が768人(死者の出た火災1件当たり1.14人)で54.3%を占めている。また、部分焼の場合が301人(同1.07人)で21.3%、半焼の場合が222人(同1.14人)で15.7%、ぼやの場合が123人(同1.04人)で8.7%となっている(第1−1−10図、附属資料13)。
(8)建物火災による死者の88.5%が住宅で発生 平成16年中の建物火災による死者1,414人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,252人は、建物火災による死者の88.5%を占めている。また、階層別では、1階における死者が958人で建物火災による死者の67.7%、2階における死者が317人で建物火災による死者の22.4%等となっている(第1−1−11図、第1−1−12図、附属資料15)。 さらに、建物構造別では、木造建物における死者が892人と最も多く、建物火災による死者の63.1%を占めている(第1−1−13図)。 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,032人であり、建物火災による死者の73.0%を占めている(第1−1−14図、附属資料14)。
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成16年中の住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災による死者1,252人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)214人を除く失火等による死者は1,038人となっており、前年(1,041人)に比べ3人(0.3%)減少した。 また、このうち65歳以上の高齢者は590人(全体の56.8%)と半数を超えている(第1−1−15図、第1−1−13表、附属資料15)。ア 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成16年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、最も低い16歳から20歳の階層に比べ65.9倍となっている。 また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、16歳から20歳の階層と比べると6.0倍となっている(第1−1−16図)。イ たばこを発火源とした火災による死者が20.8% 平成16年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが216人(全体の20.8%)で最も多く、次いでストーブ113人(同10.9%)、こんろ72人(同6.9%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者1,038人の38.6%を占めている。 また、65歳以上の高齢者についても同様にたばこ、ストーブ及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数590人の40.7%を占めている(第1−1−17図)。ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成16年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が242人で、死者数1,038人の23.4%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が145人と多く、65歳以上の高齢者の死者数590人の24.5%を占めている(第1−1−18図)。エ 死者の44.9%が就寝時間帯 平成16年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が466人であり、住宅火災の死者1,038人の44.9%を占めている(第1−1−19図)。オ 木造住宅における死者が68.6% 平成16年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物における死者が712人であり、住宅火災の死者1,038人の68.6%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者590人の75.4%(445人)を占めている(第1−1−20図)。カ 逃げ遅れによる死者が62.2%と圧倒的に多い 平成16年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが645人(全体の62.2%)と最も多く、次いで着衣着火が70人(同6.7%)、出火後再進入が26人(同2.5%)の順となっている(第1−1−21図)。
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は20件・71人 平成16年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は20件で前年(33件)より13件減少している。また、これによる死者は71人で前年(118人)より47人減少している。 火災種別では、建物火災17件で死者56人、車両火災3件で死者15人となっている(第1−1−14表)。 建物用途別では、専用住宅での死者が50人であり、1件で3人以上の死者を出した建物火災全体の89.3%を占めている(第1−1−15表)。
(11)放火自殺者は減少、死者総数の31.1% 平成16年中の放火自殺者は624人であり、死者総数2,004人に占める比率は31.1%(前年36.3%)となっており、前年(815人)より191人減少している(第1−1−5図)。 放火自殺者(男女合計)を年齢別にみると、56歳から60歳が102人、51歳から55歳が99人、61歳から64歳が60人であり、これらの年齢で放火自殺者全体の41.8%を占めている(第1−1−22図)。
3 火災による損害額 平成16年中の火災による損害額は1,353億円であり、前年(1,331億円)に比べ22億円増加している。また、火災1件当たりでは224万円となっており、前年に比べ12万円減少している(第1−1−23図)。 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の93.5%を占めている(第1−1−1表)。
4 出火原因 平成16年中の総出火件数6万387件のうち、失火による火災が3万8,347件(全体の63.5%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1−1−24図)。
(1)「放火」による火災が8年連続して第1位 平成16年中の放火による出火件数は8,210件であり、前年に比べ144件(1.7%)減少し、全火災(6万387件)の13.6%を占め、8年連続して出火原因の第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは5,796件であり、前年に比べ89件(1.6%)増加している。放火及び放火の疑いを合わせると1万4,006件(全火災の23.2%)であり、前年に比べ55件(0.4%)減少している(第1−1−16表、第1−1−25図、附属資料6)。 放火による損害額は86億8,088万円であり、前年に比べ7億4,568万円(9.4%)増加している。放火の疑いによる損害額は87億5,203万円であり、前年より24億8,959万円(22.1%)減少している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は174億3,291万円であり、前年に比べ17億4,391万円(9.1%)減少している(第1−1−16表)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが4,570件(全体の32.6%)と最も多くなっている(第1−1−16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、夜間から明け方(22時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に6,198件(全体の44.3%)が発生している(第1−1−26図)。
(2)「たばこ」による火災は増加 平成16年中のたばこによる火災は6,128件であり、前年に比べ771件(14.4%)増加し、全火災(6万387件)の10.1%を占めている(第1−1−17表、第1−1−25図)。 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが57.0%(3,496件)と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、98億7,003万円であり、前年に比べ5億7,761万円(5.5%)減少している(第1−1−17表)。
(3)「こんろ」による火災は増加 平成16年中のこんろによる火災は5,936件であり、前年に比べ86件(1.5%)増加している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,659件(全体の95.3%)であり、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、67.7%に当たる4,018件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、89億7,527万円であり、前年に比べ16億4,969万円(22.5%)増加している(第1−1−18表)。
(4)「たき火」及び「火遊び」による火災は増加 平成16年中のたき火による火災は3,566件であり、前年に比べ786件(28.3%)増加している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、たき火の延焼拡大が最も多く1,294件、次いで火の粉の飛び火、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は、14億6,129万円で、前年に比べ4億4,446万円(43.7%)増加している(第1−1−19表)。 また、火遊びによる火災は2,062件であり、前年に比べ96件(4.9%)増加している。 火遊びによる火災の損害額は、17億円であり、前年より6億2,880万円(27.0%)減少している。 火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,161件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1−1−19表)。
(5)「ストーブ」による火災は減少 平成16年中のストーブによる火災は1,695件であり、前年に比べ260件(13.3%)減少している。ストーブの種類別では、石油ストーブによる火災が最も多く1,023件(全体の60.4%)であり、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが500件と最も多く、次いで引火・ふく射、使用方法の誤りの順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、79億7,579万円であり、前年に比べ14億2,766万円(15.2%)減少している(第1−1−20表)。
(6)着火物は前年同様「枯草」が第1位 平成16年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が7,552件であり全体の12.5%を占め、最も多くなっている(第1−1−21表)。
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成16年中の建物火災の出火件数は、3万3,325件であり、前年に比べ791件(2.4%)の増加となっている。これを、10年前(平成7年)の3万4,539件と比較すると3.5ポイント減少したことになる(第1−1−4表)。ア 建物火災は1日に91件、16分に1件の割合 平成16年中の建物火災の1日当たりの出火件数は、91件であり、16分に1件の割合で出火していることになる(第1−1−2表)。 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜4月、12月)にかけて多く発生し、全体の48.3%を占めている(第1−1−27図)。イ 住宅における火災が建物火災の56.1% 平成16年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の56.1%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1−1−28図、附属資料16)。ウ 建物火災の45.5%が木造建物 平成16年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万5,165件であり、建物火災の45.5%を占め、次いで耐火造、準耐火非木造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の28.5%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみると、木造が最も大きく68.2m2となっており、全建物火災平均では47.2m2となっている(第1−1−22表)。エ 建物火災の過半数は小火災 平成16年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,642件であり、全体の49.9%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万5,909件で全体の77.7%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1−1−23表)。オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成16年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが68.6%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが38.1%となっている(第1−1−29図)。カ 3DKの住戸2万4,224戸相当分が焼損 平成16年中の建物焼損床面積は、前年に比べ2,661m2(0.2%)増加し、157万4,582m2となっている。この面積は3DK(65m2)の住宅が2万4,224戸焼損したことに相当する(第1−1−3図)。 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は北海道の9万3,900m2であり、次いで埼玉県、茨城県の順となっている。一方、最低は福井県の8,418m2であり、次いで沖縄県、鳥取県の順となっている(第1−1−24表)。キ 1件当たりの焼損床面積は47.2m2 平成16年中の建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で47.2m2となっており、前年の全国平均48.3m2に比べ1.1m2減少している。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、岩手県の108.4m2を最高に、秋田県96.6m2、富山県95.3m2など36道県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が前年同様東京都の10.9m2で、次いで大阪府22.6m2、神奈川県23.8m2など11都府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1−1−24表)。ク 放水した建物火災の25.5%は覚知後5分以内に放水 平成16年中の建物火災における火元建物の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万7,687件(建物火災の53.1%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万4,087件(放水した建物火災の79.6%)であり、このうち5分以内のものは4,515件(放水した建物火災の25.5%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を17.4m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1−1−25表)。ケ 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成16年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は8,172件であり、放水した建物火災の46.2%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが2,815件で最も多くなっている(第1−1−30図)。
(2)林野火災 平成16年中の林野火災の出火件数は、2,592件であり、前年に比べ782件(43.2%)増加している。焼損面積は、1,568haであり、前年に比べ842ha(116.1%)増加しており、また、損害額も8億916万円であり前年に比べ5億1,705万円(177.0%)増加している。また、林野火災による死者は11人であり、前年に比べ8人減少している(第1−1−26表)。 林野火災の出火件数を月別にみると、平成16年中は4月に最も多く発生しており、次いで2月、3月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1−1−31図)。 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は、2,572件であり、全体の99.2%を占めている(第1−1−27表)。 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが672件で全体の25.9%を占め最も多く、次いで放火(放火の疑いを含む。)、たばこの順となっている(第1−1−32図)。
(3)車両火災 平成16年中の車両火災の出火件数は7,077件で、前年に比べ289件(3.9%)減少し、車両火災件数は昭和51年以降増加傾向にあったが、3年連続減少している。 次に、死者数は249人で、前年に比べ64人(20.4%)減少し、負傷者数は352人で、前年に比べ29人(7.6%)減少している。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は30億1,235万円で、前年に比べ2億828万円(6.5%)減少している(第1−1−28表)。 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,644件(全体の23.2%)と最も多くなっている(第1−1−33図)。
(4)船舶火災 平成16年中の船舶火災の出火件数は132件で、前年に比べ4件(2.9%)減少している。 次に、死者数は2人で、前年に比べ2人減少し、負傷者数は26人で、前年に比べ8人減少している。 また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は6億2,715万円で、前年に比べ1億4,803万円増加している(第1−1−29表)。 出火原因は、排気管によるものが13件(全体の9.8%)と最も多くなっている(第1−1−34図)。
(5)航空機火災 平成16年中の航空機火災の出火件数は10件で、前年に比べ7件増加している。 次に、死者数はなしとなっており、負傷者数は4人である。 また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は1億4,119万円で、前年に比べ3億7,476万円減少している(第1−1−30表)。
[火災予防行政の現況]1 住宅防火対策の現況 平成16年中においては、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数(1万6,866件)は、建物火災の件数(2万9,528件)の約6割、また、放火自殺者等を除く住宅火災による死者数(1,038人)は、建物火災による死者数(1,159人)の約9割となっており、過去10年間以上この傾向で推移している。 また、近年の主な建物用途別に見た火災100件当たりの死者数では、住居における死者数は、多数の者が利用する物販店舗、旅館・ホテルと比べても5倍程度の死者数となっており、最多となっている。 住宅火災による死者数は増加傾向にあり、住宅火災による死者の半数以上が65歳以上の高齢者であることを考えると、今後の高齢化の進展とともに更に住宅火災による死者が増加するおそれがある。 消防庁では、平成3年に住宅防火対策推進に係る基本方針を策定、住宅防火対策推進協議会を設置し、住宅防火に係るポスター、パンフレットの作成・配布、住宅防火安心マークによる住宅用防災機器の普及の促進等の対策を推進してきた。平成13年には、過去10年間の実績を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を定め、特に高齢者を対象とした住宅火災による被害及び死者の軽減を目指し、地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進を図るため、関係行政機関、関係団体等と協力しながら住宅防火対策の更なる推進を図ってきた。 しかし、今後、住宅火災による死者の増加が予想されることから、平成15年12月に消防審議会から、住宅に住宅用火災警報器等の住宅用防災機器の設置を義務付ける等を内容とする答申が出され、この答申を受けて、「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」が衆参両議院で全会一致で可決成立し、平成16年6月2日に公布された。また、本改正に伴い、消防法施行令の改正(平成16年10月27日)、住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令の制定(平成16年11月26日)、火災予防条例(例)の改正(平成16年12月15日)及び住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令の制定(平成17年1月25日)が順次公布された。施行日は新築住宅については平成18年6月1日から、既存住宅については市町村条例で定める日から住宅用火災警報器等の設置が義務付けられている。これを受けて全国の消防機関では、消防団、婦人(女性)防火クラブ及び自主防災組織等と連携して、各種広報活動を展開しているところである(囲み記事「住宅用火災警報器の広報・普及啓発活動について」参照)。
2 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成17年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に103万7,000件あり、そのうち74.6%に当たる77万3,455件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、26万3,545件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が指導・命令を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は67万9,998件で全体の65.6%となっている(第1−1−31表)。
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 平成17年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、61.5%(前年66.4%)となっている(第1−1−32表)。
(3)防火対象物点検資格者 火災の発生を防止し、火災による被害を軽減するためには、消防機関のみならず防火対象物の関係者による防火対象物の火災予防上の維持管理及び消防法令への適合が重要である。 そのため、消防法では、一定の用途、構造等を有する防火対象物の管理権原者に対して、1年に1回火災の予防に関して専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)による点検及び点検結果の消防長又は消防署長への報告を義務付けている。 この防火対象物点検資格者は、消防用設備等の工事等について3年以上の実務経験を有する消防設備士や、防火管理者として3年以上の実務経験を有する者など、火災予防に関し一定の知識を有する者であって、法人で総務大臣が登録するものが行う講習の課程を修了し、防火対象物の点検に関し必要な知識及び技能を修得したことを証する免状の交付を受けた者である。 防火対象物点検資格者は、その資質の維持及び向上を図るため、5年ごとに再講習を受講し、登録機関が発行する免状の交付を受けることとされている。 平成17年3月31日現在、防火対象物点検資格者の数は1万6,761人となっている。 また、定期点検報告が義務となる防火対象物のうち、管理を開始してから3年間以上継続して消防法令を遵守しているものは、当該防火対象物の管理権原者の申請に基づく消防機関の行う検査により、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合に3年間点検・報告の義務が免除される。
住宅用火災警報器の広報・普及啓発活動について 平成16年の消防法改正により、新築住宅は平成18年6月1日、既存住宅は市町村条例で定める日から、全ての住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持が必要となります。 住宅用火災警報器等は、逃げ遅れ防止等の観点から、一般的に一般住宅の寝室及び階段の2階部分(2階に寝室がある場合のみ)に取り付けることが義務付けられています。 住宅用火災警報器等の設置対象となる住宅数は膨大であり、また、基本的には個人自ら設置・維持するものであるため、広報・普及啓発活動が必要です。特に高齢者世帯については、地域に密着した団体等による活動が重要となります。 消防庁では、住宅用火災警報器の設置・維持について、住民に分かりやすく広報していくため、普及促進用CM、PRハンドブック・PRハンドブックダイジェスト版を作成し、消防本部や消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等に配布しています。 消防本部などでは、これらを効果的に活用して、住民に対し、丁寧に分かりやすく広報・普及啓発活動を進めています。○住宅用火災警報器の普及促進用CM 住宅用火災警報器の設置・維持を国民に幅広く知っていただくため、簡潔で分かりやすく、かつ、親しみの持てる普及促進用CMを作製しました。このCMは、タレントの原史奈さんが出演して、住宅用火災警報器の設置の必要性や効果等についてポイントを捉えて説明しています。当庁のホームページ(http://www.fdma.go.jp)で公開していますので、是非ご覧下さい。○住宅用火災警報器のPRハンドブック 住宅用火災警報器の設置・維持を中心とした住宅防火対策全般について、消防本部などが地域の住民に指導を行う際のポイントをまとめた「住宅用火災警報器PRハンドブック」を全国の消防本部等へ配布しました。このPRハンドブックは消防本部だけでなく消防団員や、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等のリーダー等の研修テキストとしても役立てていただくことを目的としています。 また、PRハンドブックを概略化し「住宅用火災警報器PRハンドブックダイジェスト版」も併せて作製し全国に配布しています。 これらの普及促進用CMやPRハンドブック、PRハンドブックダイジェスト版等を効果的に活用して、国民に対し、丁寧に幅広く広報・普及啓発活動を進めていきます。
3 立入検査(1)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成16年度中に全国の消防機関が行った立入検査回数は、95万1,155回であり、火災予防上必要な指導を行っている(第1−1−33表)。 新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた平成14年の消防法の一部改正により、立入検査の時間制限の見直し等が行われ、消防機関がより的確で効果的な立入検査を行うことができるようになった。
(2)小規模雑居ビル等の違反状況 立入検査等により判明した防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができ、また、火災の予防に危険であると認める消防法第5条、第5条の2又は第5条の3の規定に基づき、当該防火対象物の改修、移転、危険排除等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされており、これらの命令をした場合には、公示することとされている。 このように立入検査等を行った結果消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1−1−34表、附属資料17、18、19)。 特に、新宿区歌舞伎町ビル火災が発生したビルと類似する小規模雑居ビル、特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)については、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性にかんがみ、厳しく指導を行っており、消防法令違反は前年度に比べ減少している。しかしながら、小規模雑居ビルについては30.7%の対象物、特定違反対象物については175件の対象物において、消防法令違反が存在し、未だ十分に是正されている状況にあるとは言えないことから、小規模雑居ビル等の違反是正について、各都道府県及び全国の消防機関に対し、〔1〕 違反是正担当職員に対する教育の充実、違反是正技術の向上を図り、違反是正担当職員の資質の向上に努めること。〔2〕 都道府県消防長会違反是正推進連絡会を、情報交換、共同検討等の場として積極的に活用し、消防機関相互の密接な協力体制の構築に努めること。〔3〕 防火管理者の選任と適切な消防計画の作成を促進し、防火管理の充実を図るよう指導すること。〔4〕 「小規模ビル避難等訓練マニュアル」等を活用するなどして、防火対象物に対応した訓練の実施を指導すること。〔5〕 防火対象物定期点検報告制度の趣旨、内容等の周知徹底を図り、本制度を効果的に活用し、効率的な違反是正の推進に努めること。〔6〕 自動火災報知設備等に係る技術上の基準の改正に係る経過措置期間が平成17年10月1日であるため、関係者に対し、引き続きその旨の周知徹底を図り、当該期間までに設置するよう指導すること。〔7〕 違反が全く是正されない場合や繰り返し違反が行われる場合など悪質なもの及び火災危険性が特に高いものについては、時機を失することなく措置命令を発動すること。等を通知し(平成17年3月24日付け消防安第58号)、引き続き違反是正の徹底を図っている(第1−1−35表、第1−1−36表、囲み記事「違反是正支援体制の整備について」参照)。
違反是正支援体制の整備について 平成13年9月の新宿区歌舞伎町ビル火災を契機として、平成14年に消防法の改正により消防機関の立入検査権や措置命令権の拡大が行われ、以下の体制により消防庁を中心に消防機関が違反是正の徹底に取り組んだ結果、小規模雑居ビルの消防法令違反率は、平成13年10月末に約92%であったものが平成16年12月末には約31%にまで低減され、一定の成果を見せています。<消防庁の取組み> 消防庁においては消防法令違反の是正を推進するため、平成14年4月に「防火安全室」を新設し、全国の消防機関の違反是正体制の強化について様々な取組みにより支援してきました。〔1〕立入検査マニュアル・違反処理マニュアルの作成 平成14年度に立入検査マニュアル及び違反処理マニュアルを作成し、講習会の実施により違反処理担当職員の資質の向上を図りました。〔2〕違反是正推進のための要員の確保 平成14年度地方財政計画において約1,000人分の予防要員増員のための財政措置を行っており、また、緊急雇用対策特別交付金事業の活用により、消防機関の違反是正措置等を支援するための事業等として、平成16年度の事業終了までの3年間に、約4,500人の消防防災支援要員を確保したところです。〔3〕違反処理データベースの構築 平成15年度に全国の消防機関における違反是正事例や消防法令に関する判例を集約した違反処理データベースを構築し、情報提供しています。〔4〕関係行政機関との連携 消防機関、警察機関及び建築行政機関との間における情報交換や合同立入検査等の相互の連携を図るための仕組みづくりを平成14年度に行い、現在、全都道府県において連携体制が整備され、消防法令違反の早期覚知と効果的な是正指導等の体制が構築されています。<全国消防長会違反是正推進連絡会の取組み> また、全国消防長会において、更なる効果的な違反是正を推進するため、消防本部相互間の情報交換や共同検討の場として、平成16年度に違反是正推進連絡会が都道府県単位及び支部単位で設置されました。消防庁においては、その活動に対し技術的助言等を行っています。<違反是正支援センターの取組み> さらに、全国の消防機関が行う違反処理を側面的に支援するため、財団法人全国市町村振興協会の援助により、平成14年4月に財団法人日本消防設備安全センター内に「違反是正支援センター」が設置され、消防機関からの専門的な相談に対する助言のほか、次のような支援が行われています。〔1〕違反是正研修会の実施〔2〕消防関係判例集、違反是正実務必携等の作成・配布〔3〕違反是正視聴覚教材の作成・配布〔4〕防火対象物定期点検報告制度、小規模ビル避難等訓練マニュアル等のリーフレットの作成・配布 など このような体制のもとでの消防機関の違反是正の取組みにより、小規模雑居ビル等の違反率は大きく低減されましたが、未だ十分な改善状況とはいえませんので、消防庁では、更なる違反率の低減に向け、引き続き違反是正支援センター、違反是正推進連絡会及び関係行政機関と連携し、違反是正を推進していきます。
予防技術資格者 消防本部で実施すべき予防業務は、高度化、多様化しており、特に消防用設備等や危険物保安に係る性能規定の導入、防火対象物に係る違反処理、防火対象物定期点検報告制度の推進などを踏まえると、消防機関で処理すべき予防業務を円滑に遂行するためには、より高度で専門的な知識及び能力が消防職員に求められます。 このような状況を踏まえ、予防業務を担当する消防職員の職務能力をさらに高め、予防業務の高度化・専門化に的確に対応するための方策について検討を行いました。 その結果から、市町村が消防力の整備を進める際の指針として、消防本部及び消防署において、火災の予防を担当する係又は係に相当する組織には、当該消防本部及び消防署の管轄区域に存する防火対象物、危険物施設の種類、規模等を勘案し、火災の予防に関する高度な知識及び技術を有する者として消防庁長官が定める資格を有する予防技術資格者を1人以上配置することが盛込まれ、平成18年4月1日からその運用が開始されることになりました。 消防職員が、予防技術資格者となるためには、予防技術検定に合格するほか、一定の期間、予防業務に従事することが必要ですが、それをイメージにすると次のようになります。
4 消防用設備等(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成16年度の全国における消防同意事務処理件数は、30万5,026件(前年度31万8,494件)であり、消防同意した申請のうち9万2,183件(30.2%)については、消防機関により指導が行われている(第1−1−37表)。
(2)防火対象物の実態 平成17年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第1(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(十九)項までに掲げる防火対象物の数)は367万6,824件である。 また、14大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は84万8,328件であり、全国の防火対象物の23.1%を占めている。特に都市部に集中しているものは準地下街(全国の85.7%)、地下街(同79.4%)、性風俗特殊営業店舗等(同59.4%)、非特定複合用途防火対象物(同44.6%)などである(第1−1−38表)。
(3)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所要の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみてみると、平成17年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率は96.3%(前年96.2%)、スプリンクラー設備の設置率は99.6%(同99.6%)となっている(第1−1−39表)。 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近においては、平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災にかんがみ、この種の小規模雑居ビル(特定複合用途防火対象物)や直通階段が一つしかない防火対象物に設置される自動火災報知設備及び避難器具等の技術上の基準について見直しを行い、設置義務対象物の拡大、階段室における煙感知器の設置間隔の変更、受信機への再鳴動機能の付加、避難器具の設置基準の変更等必要な改正を行っている。 また、近年、高層建築物、大空間を有する建築物など、大規模・特殊な建築物が増加するとともに、新技術を活用した消防用設備等の設置のニーズが高まっていること等を踏まえ平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防法令に性能規定を導入するとともに、平成16年6月からの施行に合わせて関係規定の整備を図った。 一方、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令、使用禁止命令、刑事告発等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。
(4)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 さらに、消防法令において、消防用設備等の技術基準に性能規定を導入したことを受けて、平成16年3月及び5月に消防法施行規則の一部改正が行われ、特殊消防用設備等の工事又は整備を行うことができる特類の甲種消防設備士と、特殊消防用設備等の点検を行うことができる特種消防設備点検資格者の資格が新たに創設された。今後、特殊消防用設備等が適宜設置されていくことに伴い、これらの資格を有する者の増加も予想されるところである。 また、消防設備点検資格者になるための講習は、従来、総務大臣又は消防庁長官が指定する者が行ってきたところであるが、平成16年3月の消防法施行規則の一部改正により、総務大臣又は消防庁長官の登録を受けた法人が行うこととされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施することとしている。 平成17年3月31日現在、消防設備士の数は延べ85万3,592人となっており(第1−1−40表)、また、消防設備点検資格者の数は特種(特殊消防用設備等)220人、第1種(機械系統)11万6,671人、第2種(電気系統)11万195人となっている。 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(5)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等の構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等の不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成17年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、86万6,845件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものは84.2%、じゅうたんを全部使用しているものは81.1%、展示用合板を全部使用しているものは72.6%となっている(第1−1−41表)。イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている(囲み記事「消防に関する安全・安心マーク」参照)。 防炎表示制度に関しては、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として従前の防炎表示者の認定制度が平成13年1月より登録制度に改正され、併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として登録要件を満たす登録確認機関による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高め、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成17年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、3万519業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.6%を占めている。)で前年同期より335業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎品の普及啓発 家庭におけるカーテン、じゅうたんや消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、自動車・オートバイカバー等についても、防炎化を推進することが火災予防上有効であることから、その普及啓発を行っている。防炎対象物品以外の防炎性能を有するもの(防炎物品)については、財団法人日本防炎協会が自主的に採用する「防炎製品」表示ラベルの貼付によりその情報を提供し消費者の利便が図られている(第1−1−42表)。
消防に関する安全・安心マーク 消防法においては、火災予防に関する様々な基準を設け防火安全性の確保を図っていますが、基準への適合状況が一般国民に分かるように、表示を付しその情報を提供しています。○ 防炎ラベル 炎が直接接しても燃え移りにくい性質のことを「防炎性能」といい、基準に定める防炎性能を有していることが確認された製品には、「防炎物品ラベル」や「防炎製品ラベル」が貼付されています。 「防炎物品ラベル」は、百貨店、劇場、旅館・ホテルなどで使用が義務付けられている防炎性能を有するカーテン、じゅうたん等に貼付されるもので、これらの物品を販売するには、その表示を付さなければなりません。 「防炎製品ラベル」は、火災予防に有効でその使用を推奨している防炎性能を有する衣類、ふとん類等に貼付されるもので、財団法人日本防炎協会が自主的に採用しています。 使用者が防炎性能を有するものを誤りなく入手できるように製品の見やすい箇所に縫付、貼付、下げ札等の方法により付されています。 住宅等においても、これらの防炎物品や防炎製品を使用することが火災の発生と死者の低減に有効であることから、消防庁ではこれらの防炎品の更なる普及を図ることとしています。○ 防火セイフティマーク 百貨店、劇場、旅館・ホテルなど不特定多数の人が利用する一定の防火対象物については、平成15年10月から、総合的な防火管理の状況を火災予防に関する専門知識を有する資格者に1年に1回点検させ報告することが義務付けられています。点検の結果、法令の基準に適合しているものや、一定期間継続して法令を遵守しているものとして消防機関から認定されたものは、防火セイフティマークを表示することができます。 また、防火セイフティマークの対象とならない小規模な旅館・ホテル等において、資格者等による自主的な点検の結果、法令に適合していれば、防火自主点検済証を表示することができます。 これらのマークは、防火管理が適切に行われていることを表すもので、建物を訪れる人々に安心して利用していただけるよう表示されています。 なお、防火セイフティマークの法制化に伴い、旅館・ホテル等に表示されていた「暫定適マーク」は、平成18年9月をもって廃止されますが、これらの防火セイフティマーク及び防火自主点検済証の表示の普及により、防火対象物の防火管理の確保と地域の安心の向上を図っていきます。○ 消防用機械器具等の検定・鑑定マーク 多数の消防用機械器具等のうち、生命や財産などの安全に直結し、万一火災が発生した場合、その性能を十分に発揮しなければ、消火や人命救助等に重大な支障を生じるおそれがある消火器やスプリンクラーヘッドなどについては検定対象機械器具等としています。 検定対象機械器具等は、いつ発生するかわからない不測の事態に備え、かつ、有効に機能が発揮できるよう構造、材質、性能等について技術上の規格を法令で定め、その規格に合格したものについて、合格証が付されています。 また、検定対象機械器具等以外のエアゾール式簡易消火具や住宅用火災警報器など国民の安全に深く関係しているものについても、定められた基準と構造や性能等が合致しているかどうか鑑定を行い、基準を満たしているものに適合マークが表示されています。 これらのマークは、消火器や住宅用火災警報器などの消防用機械器具等が充分な性能を確保し、消防用機械器具等を購入する際の「安心・安全」の目安となるよう定めているものです。
(6)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備など、その種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を有し、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成16年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,523件(総建物火災件数3万3,325件の22.6%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いについては、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制されている。 また、「規制改革・民間開放推進3か年計画」に基づき、燃料電池発電設備の安全確保に必要な技術基準等に関する検討を行い、平成17年3月に「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令」の改正により、燃料電池発電設備(固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池による発電設備であって火を使用するものに限る。)を新たに対象火気設備等として、位置、構造及び管理の基準を定めた。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定の対象となる消防用機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定対象消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の検定対象機械器具等の形状等が、型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等と同一であるかどうかについて行う検定)とからなっている(第1−1−43表)。 また、新たな技術開発等に係る検定対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの検定対象機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 なお、昭和61年から、日本消防検定協会以外に、総務大臣が指定する「指定検定機関」でも検定を行うことができることとしていたが、政府の規制改革推進の方針に基づき、平成14年には指定検定機関の公益法人要件を撤廃し、さらに、平成15年からは、指定検定機関から「登録検定機関」へとその参入要件を緩和している。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格にしている旨の表示を付そうとする製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成17年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては2,315件、消防用吸管にあっては51件である。
6 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化 これまで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、新たな技術を受け入れにくい面があった。これに対して、近年、社会的規制の様々な分野で、技術革新の成果を活用し、また、技術革新を促すため、技術的な基準として必要な性能を規定し、達成する手法は自由に選択できることとする「性能規定」の導入が進められてきた。 消防庁においても、平成11年度から消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するために、技術的、制度的な観点からの調査研究及び実証実験等を通じて、安全性を損なうことなく性能規定を導入するための技術的基盤の整備に取り組んできたところであり、平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するため、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することとしたものである。 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると判断できる設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものである。 消防用設備等に求められる性能は、「初期拡大抑制性能」、「避難安全支援性能」、「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)を策定する予定であり、初期の火災拡大を抑制する性能である「初期拡大抑制性能」については事務所用途におけるスプリンクラー設備、火災から安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」については光点滅走行式避難誘導システム、有効かつ安全に消防活動を行えるよう支援する性能である「消防活動支援性能」については加圧防煙システムについて評価手法の検討を行っている。また、共同住宅の構造特性等を踏まえた消防用設備等の評価手法についての検討を行い、その結果を踏まえ、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成17年総務省令第40号)及び関係告示の制定を行ったところである。 一方、既定の客観的検証法のみでは同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」を設置しようとする場合には、防火対象物ごとに、高度な技術的識見を有する性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき、総務大臣がその性能を審査し、必要な性能を有するものについては円滑に設置できるようにすることとされたものである。 これらの規定を導入することにより、今後「特殊消防用設備等」を中心に新技術等を用いた新たな設備等が積極的に開発されていくことが期待される。
7 火災原因調査の現況 平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査をすることができる制度が導入された(平成15年9月1日より施行)。 本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて編成される消防庁及び独立行政法人消防研究所職員の調査チームが実施するもので、平成15年9月8日に発生した栃木県黒磯市ブリヂストン栃木工場火災に対して、改正消防法に基づき、初めての消防庁長官の自らの判断による火災原因調査を実施するとともに、出光興産北海道製油所において同月26日に原油タンク、28日にナフサタンクからそれぞれ発生した火災に対しても火災原因調査のチームを派遣し、計3件の火災に対して改正消防法に基づく火災原因調査を実施した。 さらに、三重県RDF発電所火災をはじめとした3件の火災に対しては、消防長から消防庁長官に対し火災原因調査の要請がされ、この要請に基づいた火災原因調査を実施し、これらを合わせ平成15年度には合計6件の火災に対して消防庁長官による火災原因調査を実施し、これらの結果を踏まえ、ブリヂストン栃木工場火災及び三重県RDF発電所火災を受けた「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」(平成16年法律第65号)により、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の基準を市町村条例で定めることとされた。また、出光興産北海道製油所火災を受けた「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令及び危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(平成16年政令第218号)等により、旧基準の屋外タンクに係る新たな技術上の基準への適合に関する経過措置の期限を繰り上げるなどの措置が講じられた。 平成16年度には、平成16年12月13日に発生した「ドン・キホーテ浦和花月店火災」について、その社会的影響を踏まえ、消防庁長官の判断による火災原因調査を実施し、その調査内容を踏まえ、「避難・消火困難な物品販売店舗における防火安全対策検討会」において報告書を取りまとめ(平成17年8月)、全国の消防機関に対し、避難・消火困難な物品販売店舗において講ずべき防火安全対策を示し、このような物品販売店舗の防火安全性の確保に努めるよう周知した。
[火災予防行政の課題](1)違反是正の徹底 全国の消防機関において、平成14年の消防法の一部改正等を踏まえた「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビル等に対する違反是正に一定の成果が得られたものの、未だ違反が十分には改善されていない。また、平成16年12月のドン・キホーテ火災を契機とした量販店等における全国一斉立入検査の結果では、避難関係の防火管理面を中心に違反が見受けられた。 これらのことから、小規模雑居ビルをはじめとした防火対象物の消防法令違反の是正について、防火対象物定期点検報告制度等を活用した消防機関による立入検査の一層の重点化・効率化をはじめ、違反処理データベースの充実、違反是正推進連絡会を活用した消防機関相互の協力体制の活用等により、体制を強化し違反是正を更に推進する必要がある。
(2)防火管理の徹底 防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災又は地震等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度である。 防火管理の充実を図るため、平成15年6月消防法施行規則の一部を改正し、一定の要件に該当する防火対象物の防火管理者に選任された者は平成18年4月1日から5年以内ごとに甲種防火管理再講習を受講しなければならないこととした。再講習については、平成17年4月1日から受講することができることとしたが、まだ再講習を受講していない該当防火対象物の管理権原者や防火管理者に対しては、この制度について周知するとともに、防火管理者に平成19年3月末までに再講習を受講させ必要な知識及び技能を修得させることで、防火管理の充実を図る必要がある。 また、平成16年12月に発生した量販店での火災を受けて、「避難・消火困難な物品販売店舗における防火安全対策検討会」を開催し、講ずべき防火安全対策を取りまとめたが、今後、同様の火災事故の再発を防止するため、その消火対策や避難対策等について周知徹底を図っていく必要がある。 さらに、適切な防火管理業務の推進を図るため、消防計画作成マニュアル及び避難等訓練マニュアルの作成に係る検討を行っている。消防計画作成マニュアルについては、平成16年度は劇場等及び物品販売店舗等を対象として検討を行い、平成17年3月に「消防計画作成マニュアルの作成に係る検討中間報告書」としてとりまとめ、全国の消防機関に配布しているところである。避難等訓練マニュアルについても、平成16年度は(一)項(特に劇場及び映画館)を対象として検討を行い、平成17年3月に「劇場等避難等訓練マニュアル検討報告書」として取りまとめ、全国の消防機関に配布している。これらのマニュアルについては、他の用途についても順次検討を行い、整備していくこととしている。 また、防火管理者が選任されていたとしても、十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者(防火対象物点検資格者)に防火上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。
(3)住宅防火対策の推進 住宅防火対策については、これまで広報・普及啓発活動を中心に取り組んできたところであるが、最近の住宅火災による死者数は増加傾向にある。平成16年中の放火自殺者等を除く住宅火災による死者数は、1,038人となっており、昭和61年(1,016人)以来17年ぶりに1,000人を超えた平成15年の1,041人に引き続き2年連続で1,000人を超えている。 また、同死者数の過半は65歳以上の高齢者であり、今後の高齢化の進展に伴い、更に増加のおそれがあること等から、平成16年6月に消防法を改正し、従来個人の自助努力と考えられてきた住宅防火対策を抜本的に見直し、住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持を義務付ける法制度の導入を行った。 消防庁では、法制度が導入され、新築住宅は平成18年6月1日、既存住宅は市町村条例で定める日から設置が義務となることに伴い、消防法改正後、積極的に住宅用火災警報器等の普及促進に努めている。今後、技術開発の促進、リース方式の導入等について関係業界に働きかけるとともに、消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等と連携した住宅用火災警報器等の設置、維持管理等に係る啓発などの普及方策の推進、悪質訪問販売の被害防止対策、報道機関の報道方法の工夫についての働きかけなど市場機能の活用について重点的に推進し、さらに様々な広報、普及・促進に関する施策を講じていくこととしている。
(4)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降8年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占め、年々増加する傾向にある。特に、都市部においては、出火原因の4割を超えている地域もあることから、深刻な社会問題となっている。 放火を防ぐためには、一人ひとりが防止対策を心がけるだけでなく、地域全体が「放火されない環境づくり」に取り組むことが重要である。 特に、連続放火が発生している地域にあっては、地域の安全に深刻な影響があるため、暗いところや死角になるところに可燃物を放置しないこと、夜間にゴミを出さないこと、門灯の終夜点灯により街路を明るくすることなどの対策を地域全体で徹底するとともに、関係行政機関と地域住民が協力して、街灯の増設、炎感知器や侵入監視センサーと連動した照明の設置、放火監視機器などを推進し、より一層の警戒体制を構築することが必要である。 消防庁では、平成16年6月に放火火災・連続放火火災の防止のため学識経験者や消防機関関係者等からなる検討会を設置し、その検討結果を「放火火災の防止に向けて〜放火火災防止対策戦略プラン〜」としてとりまとめ、全国の消防本部に配布するなどした。この戦略プランについては今後も中身の充実・対策の追加などを常に行うことにより、より現実に即した実効性のあるものとなるように改訂を続けていくこととしている。 また、戦略プランの中で放火火災防止対策に有効とされた放火監視機器について、「放火監視機器に係る技術上のガイドライン」を策定(平成17年4月)するとともに、平成17年8月より、福井地区消防本部(福井県)及び神戸市消防局(兵庫県)の協力を得て、商店街や住宅街等に放火監視機器を設置し、その効果の検証試験等を行っているところである(囲み記事「「ご近所の底力」を利用した放火火災防止対策」参照)。
「ご近所の底力」を利用した放火火災防止対策○はじめに 平成16年中に発生した放火による火災及び放火の疑いのある火災は、合計で1万4,006件発生しました。これは全出火件数の2割強を占めています。自らの不注意により火事を出さないようにすることももちろん大事ですが、それと同時に、放火火災への対策をしっかりと立てておくことも、重要なことです。○放火火災を防止するには 「放火火災の防止」の基本は、「放火されない、放火させない、放火されても被害を大きくさせない」ということです。これらのことを目標として、建物ごとの放火火災予防対策、地域ぐるみの活動、安全なまちづくり、広報や防火教育、行政の取組みなどを行っていくことが必要です。そして、これらの取組みは1回限りの対策を行って終わりにするのではなく、取り組むべき対策について、地域ぐるみで常に意見を出し合い見直しを行い、継続して実行することで、より実効性のある対策となります。○ハード対策とソフト対策 ハード面での具体的な放火火災防止対策の一つに放火監視機器があります。放火監視機器とは、自動火災報知設備の炎感知器の10倍程度の感度を持ったセンサーと音響装置を組み合せた機器であり、必要に応じてカメラによる撮影機能などを付加していくことも可能です。機器本体の警報機能による効果もさることながら、「地域として放火対策に取り組んでいる」ことを知らしめる効果も放火火災の削減につながると期待されます。 ソフト対策では、「地域におけるごみ出しのルールの徹底」や「警察等と連携した警戒パトロールの実施」などのほか、自治会で注意喚起を促すセミナーを開催したり、旅行等で不在にする際に、新聞や郵便物をポストにため込まない、などといった内容があげられます。これらの対策は、一人ひとりが心がけて実施することも大切ですが、隣近所で協力をし、地域が一体となって取り組むことでさらに効果が期待できます。「ご近所の底力」が放火火災の防止には不可欠といえます。
(5)旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等における防火安全対策の推進 平成14年の消防法の一部改正により、一定規模以上の特定防火対象物(準地下街を除く。)に対し、平成15年10月1日から「防火対象物定期点検報告制度」が導入された。これに伴い、いわゆる「適マーク制度」は、平成15年9月30日をもって廃止され、従来の適マーク制度の対象となっていた旅館・ホテル等については、引き続き3年間に限り適マークを表示できる「暫定適マーク制度」が設けられ、また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象外の旅館・ホテル等に対しても、同様の制度を活用することが可能となるよう「自主点検報告表示制度」(新適マーク)が新たに導入された。 「防火対象物定期点検報告制度」は、旅館・ホテルをはじめとした多数の人が出入り等する一定の防火対象物について権原を有する者に対し、1年に1回防火対象物点検資格者による点検を義務付け、その結果について消防長又は消防署長へ報告を行わせるもので、管理権原者による防火対象物の管理の業務の消防法令への適合を確保することとしたものである。 また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象となるもののうち、過去3年間消防法令を遵守していると消防機関の検査により認められた場合には、この点検報告が免除されることとなっている。 なお、これらの制度に適合するものについては、その情報を利用者に提供する防火セイフティマ−クを表示することができるようになっている。 旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念されることから、これらの制度を有効に活用し、防火安全対策の一層の充実を図る必要がある。
(6)消防法令への性能規定の導入等による消防用設備等における新技術の開発促進への期待及び課題 消防法令に定める消防用設備等の技術上の基準に性能規定を導入すること等により、新技術の開発促進が期待されるが、その実効性を高めるためには、知見の蓄積を図り、客観的検証法の適用範囲を着実に拡大していくことが必要である。このため、総務大臣による認定によりその知見が十分に蓄積された特殊消防用設備等については、円滑に客観的検証法を策定することにより、消防機関がその設置等の判断が容易にできるようにしていくことが必要である。 一方、消防機関においても、客観的検証法による審査体制を整備し、消防防災に係る新たな技術を用いた設備等が導入できる体制を構築することにより、消防防災に係る技術開発の促進と安全性の高い合理的な防火安全対策の構築に寄与することが望まれる。
(7)文化財保護のための防火安全対策の推進 国民共通の財産である文化財を火災による焼失等から保護し、後世に残すことは、極めて重要な課題である。 我が国の文化財建造物は、伝統的な建築技術を用いた木造の建造物が多いなど、通常の防火安全対策では十分な対処が難しいものも多い。このため、文化財の特性に応じた防火管理の実施、消防用設備等の設置、火災時の消火活動等の防火安全対策の充実に努める必要がある。 文化財建造物として指定を受けた防火対象物は、消防法施行令別表第1(十七)項に掲げる文化財施設として位置付け、必要な防火安全対策を講じてきたところであるが、近年、文化財建造物又はその部分を飲食店、宿泊施設等として利用するもの等、文化財建造物の利用形態が多様化してきた。 このような状況を踏まえ、文化財施設としての火災危険性のみに着目して防火安全対策を講ずれば足りるとしていた取扱いを改め、文化財施設であることに加え、使用実態に応じた用途にも該当するものとして取り扱うこととして改正された消防法施行令が、平成17年4月1日より施行されている。これにより、消防用設備等の設置をはじめとした必要な防火安全上の措置を、使用実態に応じて講ずることができるようになった。
ユビキタス機能を応用した高機能自動火災報知設備について 自動火災報知設備は、火災により発生した熱や煙を感知器で感知し、その信号を受信機まで伝えるために、感知器、中継器及び受信機等を配線でつないでいます。この配線を用いる有線方式は、確実に信号を伝達できるという点で信頼性が高いものですが、室内の模様替え(間仕切りの変更等)による感知器の移設・増設の際に配線の工事等が必要になるため、工事費用が高額になることや設計の際の自由度が低くなるという課題があります。 そこで、近年の世界的なICT化の進展による無線ネットワークやモバイルインターネット等の情報技術の進歩に伴い、より経済的で多様なニーズにも柔軟に対応できるよう、平成17年度から無線式の自動火災報知設備について検討を行っています。 感知器が感知した火災信号等を無線ネットワークにより受信機まで伝達するシステムが実現すると、感知器の移設や増設に必要な費用や工期が低減され、防火対象物の利用形態が変わっても、その実態に即した感知器の設置が容易に行えるようになるとともに、火災情報を伝達する手段の多様化を図ることも可能となります。
(8)災害時要援護者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害時要援護者が安全に安心して生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。 今後、本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、老人福祉法で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設(グループホーム、シルバーハウジング等)が増加してきており、この状況を踏まえて消防庁では、学識経験者、関係省庁等からなる「高齢者施設における火災予防のあり方検討会」を平成14年度から2年間にわたり開催し、既往施設との比較等を行いつつ、これらの新たな施設等に対する防火安全対策のあり方について検討を進めてきた。また、平成16年度は、認知症高齢者グループホーム対応スプリンクラー設備の消火実験も行った。 今後、これら検討結果等を踏まえ、実態に即した防火安全対策が行えるよう、小規模な高齢者居住施設における有効な消防用設備等の考え方及び防火管理の考え方の両面から、必要な対策を講ずることとしている。 一方、災害時要援護者が居住する住宅における対策として、消防機関をはじめ行政機関が、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等の防火対策推進協力者と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等による防火指導の推進等の取組みを引き続き実践する必要がある。併せて、災害時要援護者から消防機関への緊急通報体制の一層の充実を図るため、従来から実施している「災害弱者緊急通報システムモデル事業」の更なる普及促進に取り組むとともに、情報通信技術の進展を踏まえ、より多様で高機能な自動通報システムや災害時要援護者に配慮した仕組みを有した緊急通報システムの開発・普及を進めていく必要がある。
(9)消火器等リサイクルの推進 消火器や、防炎加工を施したカーテン、じゅうたんなどの防炎物品は、不要となった場合の処理が困難なものであり、また、老朽化消火器にあっては、事故防止の観点からも適切な処理が求められていることから、政府のミレニアムプロジェクト(平成12年度から平成16年度)の一環として、リサイクル技術の開発、回収ルート等のリサイクルシステムの構築等について検討を行った。 消火器については、平成14年度に日本消防検定協会の検定細則が改正され、消火薬剤のリサイクル使用についての制度上の整備が行われ、平成15年度には消火器の消火薬剤の40%以上を再生消火薬剤としたエコマーク付き消火器の販売が開始された。平成16年度には、消火器に使用されている金属部品分離工程をより細分化する技術が導入された。これらにより、消火器一本当たりのリサイクル率(再資源化率)は、平成12年度約40%であったものが、平成16年度にはほぼ100%まで上昇している。 さらに、平成16年度には「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)の特定調達品目に再生消火薬剤使用率40%以上の消火器が追加されたことにより、消火器のリサイクルは更なる進展が期待される。 また、じゅうたん、カーテン等の防炎物品については、繊維部分をコンクリート型枠へ再加工する技術などが実用化可能な技術として確認された。今後は、廃防炎物品回収ルートの構築、テストプラントの建設及び再生品の市場開拓を総合的に推進するための検証実験等が課題となっている。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設における事故は、火災(爆発を含む。)と漏えいに大別される。危険物施設の火災・漏えい事故件数は、昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していたが、平成6年を境にして増加傾向を示している。平成16年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が195件、漏えいが359件で合計554件となっており、前年より14件増加し、統計を取りはじめて以来過去最悪となっている(第1−2−1図)。
1 火災 危険物施設における火災の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。火災の主な要因として、一般取扱所、給油取扱所、製造所等における管理不十分・確認不十分等の人的要因を挙げることができる。
(1)危険物施設における火災発生件数が過去最多に 平成16年中の危険物施設における火災の発生件数は、195件(対前年比7件増)、損害額は49億3,066万円(同32億5,913万円増)、死者は3人(同19人減)、負傷者は55人(同3人増)となっている(第1−2−2図)。 危険物施設の火災による他への影響の程度をみると、192件(他の施設からの類焼により危険物施設が火災となった3件を除く。)の火災のうち185件(全体の96.4%)が当該危険物施設のみの火災にとどまり、6件(同3.1%)が当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼し、1件(同0.5%)が危険物の漏えいに起因した施設外からの火災となっている。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が107件、給油取扱所での火災が37件となっており、これらの火災は、全体の73.8%を占めている(第1−2−3図)。 なお、195件の火災のうち117件(全体の60.0%)は、危険物が出火原因物質となっている。出火原因となった物質を消防法別表の類別等に従って区分すると、第4類第1石油類46件、第4類第3石油類22件、第4類第2石油類14件等の順となっている(第1−2−4図)。
(2)火災の発生原因の6割は人的要因 平成16年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が125件(全体の64.1%)と最も多く、物的要因が36件(同18.5%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が34件(同17.4%)となっている(第1−2−5図)。 また、着火原因をみると、静電気火花が32件(全体の16.4%)で最も多く、次いで高温表面熱が23件(同11.8%)、過熱着火21件(同10.8%)となっている(第1−2−6図)。
(3)無許可施設の火災 平成16年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は、8件であり、死者はなく、負傷者は1人となっている。 なお、これらの火災による損害額は、5,136万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成16年中の危険物運搬中の火災の発生件数は4件で、死者は2人、負傷者はなしとなっている。 なお、これらの火災による損害額は1,548万円となっている。
2 漏えい 危険物施設における漏えい事故の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。漏えいの主な要因として、給油取扱所(ガソリンスタンド等)、一般取扱所、移動タンク貯蔵所(タンクローリー等)、地下タンク貯蔵所等における人的要因や危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化を挙げることができる。
(1)危険物施設における漏えい件数が過去最多に 平成16年中の危険物施設における危険物漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、359件(対前年比7件増)、損害額は4億3,183万円(同2億906万円増)、死者はなし(前年同数)、負傷者は31人(同1人減)となっている(第1−2−7図)。 また、危険物施設別の漏えい事故発生状況をみると、給油取扱所での漏えいが84件、一般取扱所での漏えいが77件、移動タンク貯蔵所での漏えいが65件、地下タンク貯蔵所での漏えいが64件となっており、全体の80.8%を占めている(第1−2−8図)。 さらに、危険物施設における漏えい事故で漏えいした危険物をみると、359件すべての事故が第4類の危険物となっている。これを危険物の品名別にみると、第2石油類157件、第3石油類126件、第1石油類56件等の順となっている(第1−2−9図)。
(2)危険物施設の腐食等劣化に注意 平成16年中に発生した危険物施設における漏えい事故の発生原因を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が163件(全体の45.4%)と最も多く、物的要因が154件(同42.9%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が42件(同11.7%)となっている(第1−2−10図)。 漏えい事故の発生原因を個別にみると、腐食等劣化によるものが109件(全体の30.4%)と最も多く、次いで確認不十分によるものが44件(12.2%)、監視不十分によるものが39件(10.9%)となっている(第1−2−10図)。
(3)無許可施設の漏えい事故 平成16年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での漏えい事故の発生件数は、4件(対前年比1件減)であり、死者、負傷者はともになく、損害額は、152万円となっている。
(4)危険物運搬中の漏えい事故 平成16年中の危険物運搬中の漏えい事故の発生件数は16件(同3件減)であり、死者はなく、負傷者は8人となっている。なお、これらの漏えい事故による損害額は、802万円となっている。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。 なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関が行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として、危険物データベースを運用している。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならない。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 また、危険物施設においては、危険物取扱者以外の者は、危険物取扱者の立会いがなければ危険物を取り扱ってはならず、危険物の貯蔵又は取扱いは、政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。さらに、一定の危険物施設では、危険物保安監督者を選任し保安監督を行わせる等、危険物の貯蔵又は取扱いに関する保安体制の整備を図らなければならない。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、一定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱いについては、市町村条例で貯蔵・取扱いに関する基準を定め、規制することとされている。さらに平成16年6月には消防法が改正され(平成17年12月施行)、貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)についても市町村条例で定めることとされた。 なお、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務は、機関委任事務制度の廃止に伴い、平成12年4月1日から都道府県又は市町村の自治事務となった。
(2)危険物等の規制の最近の動向 危険物等の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバー自らが、給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした。 平成13年7月には、消防法を改正し、平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第一第5類(自己反応性物質)の品名に追加するとともに、平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲を250度未満とした。 平成16年には、平成15年8月に発生した三重ごみ固形燃料発電所爆発事故や同年9月に発生した(株)ブリヂストン栃木工場タイヤ火災などを踏まえ、平成16年6月に消防法を改正し、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)を市町村条例で定めることとするとともに、再生資源燃料(RDF(ごみ固形燃料)、RPF(廃プラスチック固形燃料)等)を指定可燃物に追加した。 また、各地で発生が懸念される大規模地震に備えるため、大規模屋外貯蔵タンクの耐震改修期限の前倒しと浮き屋根の構造基準の強化を図った。 さらに、危険物施設の性能規定化(第1章第1節[火災予防行政の現況]6参照)については、平成13年度から調査研究を実施しており、地下タンク貯蔵所について、平成16年にタンク本体の構造等の技術基準に性能規定を導入した。平成17年度は、給油取扱所等の技術基準について性能規定化の検討を進めているところであり、平成18年度以降も引き続き調査検討を行うこととしている。
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成17年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は、51万4,990施設(対前年度比8,351施設、1.60%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が、11万7,491施設(全体の22.8%)と最も多く、次いで給油取扱所の7万9,104施設(同15.4%)、移動タンク貯蔵所の7万8,683施設(同15.3%)等となっている(第1−2−1表、第1−2−11図)。 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は、50万5,585施設(全体の98.2%)となっている。 危険物施設数の最近における推移をみると、すべての施設において減少傾向にある(第1−2−1表、附属資料29)。イ 危険物施設の規模別構成 平成17年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が、39万4,033施設(全体の76.5%)を占めている(第1−2−12図)。
水素を充てんできるガソリンスタンドが登場します 燃料電池自動車の実用化・普及のためには、水素充てん施設を全国的に普及することが不可欠であることから、ガソリンスタンドにこれを併設することができるように要望されていました。消防庁では、平成17年2月に危険物の規制に関する政省令を改正し、同年4月から燃料電池自動車に水素を供給する設備をガソリンスタンドに設置することができるようになりました。 水素を供給する設備は、ガソリン等の炭化水素系燃料から水素を製造するための改質装置、水素を圧縮するための圧縮機、圧縮水素を貯蔵する蓄圧器、圧縮水素を燃料電池自動車に充てんするディスペンサー等で構成されています。(主な安全対策)○ 水素ガスの改質装置、圧縮機及び蓄圧器と自動車にガソリンや軽油を給油する場所やタンクの注入口との間に障壁を設ける。○ ガソリンや軽油を給油する場所と水素ガスを充てんする場所との間は、排水溝で区切る。○ 固定給油設備への自動車等の衝突を防ぐため、設備の周囲に保護柵又はポール等の衝突防止装置を設ける。○ 危険物から水素を製造する改質装置については、温度の維持管理、圧力の調整及び静電気の除去等のための必要な設備を設ける。
地下タンク貯蔵所に性能規定を導入しました 危険物施設への新技術・新素材の導入ニーズが高まっており、これらに迅速に対応するため、技術基準の性能規定化が重要な課題となっています。 従来の技術基準は、経験的な知見等に基づき、例えば「タンク室は壁及び底を厚さ0.3メートル以上のコンクリート造とすること」というように寸法や材料を具体的に定めている仕様書的な規定が中心となっており、容易に適合状態を判断できるという特徴がありますが、規定されている以外のものを用いる場合の基準は明確に示されていないため、新技術等の円滑な導入を抑制する要因ともなっています。 一方、性能規定では、例えば「タンク室は当該タンク室の自重、地下貯蔵タンク及びその附属設備並びに貯蔵する危険物の重量、土圧、地下水圧等の主荷重並びに上載荷重、地震の影響等の従荷重によって生ずる応力及び変形に対して安全なもの」というように基準の目的、必要とされる性能が明確となり、この性能を満足する各種の材料等を活用することが可能となります。 「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)において、『危険物規制に関する技術基準のうち、可能なものについての性能規定化を検討し、所要の措置を講ずる』とされたところです。 消防庁では、平成13年度から技術基準の性能規定化について調査検討を行っており、平成16年度は、地下タンク貯蔵所について性能規定の導入のための技術基準の改正を図りました。平成17年度は、給油取扱所等の技術基準について性能規定化について検討しています。○ 性能規定が図られた技術基準 1 地下貯蔵タンクの構造 2 地下貯蔵タンクの外面の保護 3 危険物の漏れを検知する設備 4 タンク室の構造
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければできない。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成17年3月31日現在704万2,675人と広く国民の間に定着してきており、広く危険物に関する知識、技能の普及に貢献している。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施している。 平成16年度中の危険物取扱者試験は、全国で345回(対前年度比16回増)実施された。受験者数は、51万3,828人(同19,268人減)、合格者数は、21万3,686人(同14,558人減)で平均の合格率は41.6%(同1.2ポイント減)となっている(第1−2−13図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が32万9,926人(全体の64.2%)と最も多く、次いで丙種の6万1,041人(同11.9%)となっており、この2種類の試験で全体の76.1%を占めている。合格者数でも、乙種第4類が10万6,829人(全体の50.0%)、丙種が3万3,771人(同15.8%)となっており、この2種類の試験で全体の65.8%を占めている(第1−2−13図)。イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならない。 平成16年度中の保安講習は、全国で延べ1,267回(対前年度比67回減)実施され、14万2,853人(同1万5,031人減)が受講している(第1−2−2表)。
(5)事業所における保安体制の整備 平成17年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で24万3,363事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものには、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1−2−14図)。 なお、危険物施設の許可の際の許可要件が維持されていない等の場合は、許可の取消し等ができる。また、著しく不適任と判断される危険物保安統括管理者及び危険物保安監督者については、市町村長等が解任を命ずることができる。
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが、義務付けられている。 平成16年度中に実施された保安検査は、248件(対前年度比42件減)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは、240件(同42件減)、特定移送取扱所に関するものは8件(前年同数)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造及び設備並びに危険物の貯蔵又は取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成16年度中の立入検査は、24万4,739件(対前年度比1万3,026件減)の危険物施設について、延べ26万9,898件(同1万7,412件減)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成16年度中において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、341件(対前年度比186件減)となっている(第1−2−15図)。
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聴かなければならない。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行う。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけである。 なお、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)官民一体となった事故防止対策の推進 危険物施設の火災・漏えい事故は、平成6年頃を境に増加傾向に転じ、平成16年には過去最悪となる554件を記録している。このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される連絡会を中心にして策定された「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、事故に係る調査分析や事故防止技術の調査研究、各種情報の共有化を進めるなど、官民一体となった事故防止対策を更に推進していく。 また、産業災害の背景要因として、厳しい経済状況下における人員や設備投資等の削減、雇用形態の変化や保守管理業務のアウトソーシング等が指摘されていることから、幅広い視点から実態を把握し、有機的に対策を講じるため、関係機関等とも連携して調査・検討を行い、再発防止を推進していくとともに、各事業所の実態に応じた安全確保を図るため、危険要因を把握し、これに応じた対策を講じていく。
(2)危険要因の抽出と把握 効果的・効率的に事故防止を図るためには、過去の危険物事故等を教訓とし、的確に危険要因を抽出しておくことが必要であり、危険物事故や事故防止に関する情報を広く収集・分析して関係者の間で共有することが重要である。このため、危険物等の性状や消防活動要領等をデータベース化した「危険物災害等情報支援システム」、消防機関からの事故報告をデータベース化した「危険物等事故情報サブシステム」の拡充を推進していく。
(3)腐食・劣化への対策 近年における漏えい事故増加については、危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化が主な要因の一つとなっていることから、危険物施設に係る腐食・劣化に関する健全性評価手法の確立を図るため、評価手法の開発やデータベースの整備等を進めていく。
(4)新規危険性物質の把握 科学の進展等に伴い数多くの物質が新たに開発・生産されており、危険物や指定可燃物と同様の性状を有していながらその潜在的危険性が認識されていない新規危険性物質の出現が懸念されるところである。このため、新規危険性物質の早期把握に努め、火災・爆発等の防止を図っていく。
(5)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、新たな危険物品の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、諸外国で導入が進んでいる危険物施設に係る新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行うとともに、安全性の確保に十分配慮しつつ危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を図っていく。 また、燃料電池自動車への燃料供給のため、平成17年2月には政省令を改正し、水素ステーションの給油取扱所への併設などインフラ整備に係る技術基準を整備したところである。今後も新しい技術開発に対応した調査研究を行い、安全対策の確立を図り、燃料電池自動車の普及環境の整備を図っていく必要がある。さらに、バイオマス燃料については、地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)等に基づき検討が進められ、消防庁も同戦略推進会議に平成15年9月から参画しているところであり、その安全利用を確保するため、危険物保安に係る検討を行っていく。
「バイオマス燃料」をご存じですか? 近年、バイオマスの利活用が進められつつあります。バイオマスとは、動植物から生まれた再生可能な有機性資源で、その利活用により地球温暖化の防止や循環型社会の形成を図ることができます。我が国においては、バイオマスの総合的な利活用を推進するため、具体的な行動計画からなる「バイオマス・ニッポン総合戦略」が平成14年12月27日に閣議決定され、関係省庁が連携して取り組みを進めています。 バイオマスの中で、燃料として用いられるものを「バイオマス燃料」といいますが、このうち、バイオエタノール含有ガソリン、バイオディーゼル燃料など液状のものは、主に自動車の燃料として研究開発や実証・導入が進められています。 また、バイオマス燃料には、固体状のものもあり、ごみ固形燃料(RDF)もその一つです。このRDFについては、十分な安全対策が講じられることなく使用が開始されてしまったため、平成15年8月に三重県のごみ固形燃料発電所で爆発火災が発生し、大きな人的、物的被害を出してしまいました。 バイオマスの利活用の推進には、その安全対策を講ずることが不可欠であり、消防庁ではバイオマス燃料の実態把握や安全に扱うための対策について調査、検討を行っています。(バイオマス燃料(液体)の例)○バイオエタノール サトウキビやトウモロコシなどの資源作物や林地残材、間伐材等の木質系バイオマスなど様々な資源を醗酵させてエタノールに転換した液体燃料です。○バイオディーゼル燃料(BDF) 植物油等を原料として製造される軽油の代替燃料。一般に食用油(廃食用油を含む。)を加工してディーゼル自動車燃料としたもの。その代表的な製造方法は、廃食用油にメタノールを反応させエステル化して脂肪酸メチルエステルという軽油に近い物質に変換するものです。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成16年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は、150件であり、前年(161件)と比較すると11件の減少となるが、十勝沖地震による災害の28件を除いた133件と比較すると、17件の増加となっている(第1−3−1図)。 全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、5件の災害により、負傷者5人が発生している。損害額は、6億7,746万円で、前年に比べ7億2,461万円の減少となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が85件(56.7%)、設備の劣化や故障などの物的要因が44件(29.3%)となっており、前年と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が110件(うちレイアウト規制対象事業所96件)であり、全体の73.3%を占めている。1事業所当たりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が47.3%と最も高い(第1−3−1表)。
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、化学工業関係51件(全体の34.0%)、鉄鋼業関係38件(同25.3%)、石油製品・石炭製品製造業関係27件(同18.0%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質が大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立を図ることとしている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している地域については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の84地区(平成17年4月1日現在)が指定されている(第1−3−2図)。 また、平成17年4月1日現在、第1種事業所403事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は197)、第2種事業所340事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料29のとおりである。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には、防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の整備指針」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を図っている。 平成17年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車101台、大型高所放水車84台、泡原液搬送車96台、泡消火薬剤3,709kl、消防艇25艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備30基、可搬式泡放水砲25基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成17年4月1日現在、全事業所(743事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか79の共同防災組織、64の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員5,231人、大型化学消防車141台、大型高所放水車100台、泡原液搬送車142台、大型化学高所放水車60台、油回収船35隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成17年4月1日現在、流出油等防止堤が188事業所に、消火用屋外給水施設が556事業所に、非常通報設備が743の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」、「防災要員教育訓練指針」等を示しており、引き続き自衛防災体制の充実を図る。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特別防災区域全体に占める割合は、石油にあっては55.8%、高圧ガスにあっては98.2%となっており、高圧ガスについては大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成17年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる203(平成16年4月1日現在)の事業所のうち平成16年度中の新設及び変更の届出件数は、15件であった。 また、平成16年度中の確認件数は、25件であった(第1−3−3図)。
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じた。さらに、新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間は、石油コンビナート等災害防止法では3月としているところを、関係省庁の協力を得て平均1月としている。
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
6 石油コンビナート等災害防止法施行令等の一部改正(1)経緯 平成15年9月末に発生した十勝沖地震では、苫小牧市内の石油精製事業所において、多数の屋外貯蔵タンクの損傷、油漏れ等の被害が発生し、さらに、地震発生から約54時間が経過した後に浮き屋根式タンクの全面火災が発生した。 浮き屋根式タンクで発生する火災について、これまではリング火災を想定していたが、今後の我が国における地震の発生危険等を考慮すると、タンク全面火災にまで拡充することが必要となった。 この災害想定の拡充に対応するため、〔1〕消防力の充実強化(特定事業所に係る防災資機材の増強)、〔2〕防災体制の充実強化(防災管理者・防災規程等を中心とした体制の整備)に係る所要の規定整備を行うことが必要となり、消防庁では石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行った(平成16年6月2日公布)。 このうち防災体制の充実強化については、平成16年12月1日に施行され、防災規程の変更命令及び防災業務の改善措置命令に関する事項が新たに規定されたことに伴い、防災規程の変更命令及び防災業務改善措置命令に係る運用フローと防災規程作成指針及び防災規程作成指針の概説を示した。また、防災業務の実施状況を報告する定期報告について、報告書の提出に先立ち、防災業務の実施状況について確認をさせるための、防災業務実施状況チェック表及び防災業務実施状況チェック表細目を作成し、これに基づき特定事業所に報告書を作成させるよう、関係道府県あてに通知した。 一方、消防力の充実強化については、広域共同防災組織の整備に関することを含め、石油コンビナート等災害防止法施行令等の一部を改正し、平成17年12月1日に施行した。
(2)概要 ア 改正内容 (ア)大容量泡放射システムについて 大容量泡放射システムとは、主として大型の浮き屋根式タンク(可燃性液体貯蔵タンク)の全面火災の消火に用いる資機材で、大容量泡放射砲、ポンプ・混合装置、放射に必要な泡原液、泡原液搬送のための資機材及び必要となる水量の水利を確保する遠距離送水のための資機材の総称である。 毎分1万リットル以上の放水能力を持つ当該システムは、現在配備されている大型高所放水車数台分の能力を有し、大型の浮き屋根式タンクの全面火災を早期に消火するためには必要不可欠な資機材とされている。 今回の改正では、消防力の充実強化のため、特定事業所に直径34メートル以上の浮き屋根式屋外貯蔵タンクを有する特定事業者は、自衛防災組織に大容量泡放射システムを備え付けなければならないことを規定し、また、当該屋外貯蔵タンクの直径に応じて、必要なシステムの能力について定めた。 (イ)広域共同防災組織について 大容量泡放射システムを配備するにあたり、特定事業者は特定事業者共同でより広域的な配備を可能とするための組織的受け皿である広域共同防災組織を設置することができることとされている。この広域共同防災組織を設置できる区域について、システムを配備すべき特定事業所が存在する全国の特別防災区域を12のブロックに分けて定めた。また、広域共同防災組織で行う防災業務について定めた。 イ 経過措置 大容量泡放射システムについては、平成17年12月1日の施行日から3年を超えない期間のうちに備え付けることとされた。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 総合的な災害対策の推進 石油コンビナート等特別防災区域は、大量の危険物等が集積している区域で、ひとたび火災等が発生した場合には甚大な被害となることが懸念されることから、消防法や高圧ガス保安法等の規制に加えて石油コンビナート等災害防止法により、特定事業者に対して自衛防災組織の設置の義務付けや事業所内の施設配置を規制(レイアウト規制)することにより、災害の拡大防止を図ることとしている。 また、同法により、道府県に防災本部が常設されており、消防機関をはじめとした防災関係機関、特定事業者が一体となって防災体制を確立する体制が整備されている。 こうした中、平成15年に発生した苫小牧市内の石油精製事業所の事故を受け、石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行い、新たに防災体制の充実強化及び消防力の充実強化を取り入れた。このうち消防力の充実強化については、石油コンビナート等災害防止法施行令の一部を改正し、大容量泡放射システムを特定事業所に配備することにより、従来よりも防災対策を強化し、災害対応に努めることとしている。
(1)石油コンビナート等災害防止法の一部改正に伴い検討すべき事項 ア 特定事業所における防災体制の充実強化に伴い検討すべき事項 市町村長等は特定事業所に対して防災業務の改善措置命令及び防災規程の変更命令ができることとされたことにより、改正後における当該命令の実施状況を把握すること、また、特定事業者が行う定期報告制度について、最初の報告を平成17年4月1日から平成18年3月31日までとしていることから、当該報告の内容について調査を実施することにより、特定事業所の防災体制の現状を把握し、必要な指導、助言等を行っていく必要がある。 イ 大容量泡放射システムの配備に伴い検討すべき事項 浮き屋根式タンクの全面火災に対応するための防災資機材として大容量泡放射システムを特定事業所に配備することとされたが、当該防災資機材は、システム全体で運用されるため、導入の際には、個別の性能を満たしているのはもちろんであるが、システムを設定した際に有効な消火活動ができるか確認をしなければならない。また、当該システムは様々な構成による形態が考えられるため、有効な消防戦術について検討し、活動マニュアル等を作成する必要がある。
(2)浮き屋根式タンクの地震に対する安全性について 平成15年9月の十勝沖地震による浮き屋根式タンクの屋根の損傷は、「やや長周期地震動」の影響によるものと考えられ、苫小牧地区の地盤構造特性により影響を受けたものと推定される。 「やや長周期地震動」とは、石油タンクのスロッシング(液面の揺動)に強く影響する周期約3秒から15秒程度の地震動で、主に表面波から構成され、震源特性(震源深さ、規模、破壊過程など)と伝播特性(堆積層の影響)により地域ごとに特性がある。 他の地域においても同様の被害が起こり得る可能性も否定できないことから、やや長周期地震動による影響により損傷を受けにくい浮き屋根構造等とする措置を講ずる必要があり、消防庁では浮き屋根耐震機能確保のため技術基準(関係省令・告示)の改正を行い、平成17年4月1日から施行されている。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団(現独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万klを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
大容量泡放射システムによる泡放射実験 平成15年十勝沖地震で発生した、浮き屋根式タンクの全面火災を踏まえ、特定事業所における消防力の充実強化を図るため石油コンビナート等災害防止法の改正を行いました。この改正により導入することとなった大容量泡放射システムの性能・機能等の検討に資するため、当該システムを用いた実大規模の泡放射実験を行いました。1 実験の主催等  主催   消防庁及び独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構  実施主体 危険物保安技術協会及び独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構2 実施日及び実施場所  平成17年2月7日(月)〜9日(水)(3日間)  志布志国家石油備蓄基地(鹿児島県肝属郡東串良町川東字新州崎5024番1)3 実験詳細<アスピレートノズル(内部吸気発泡方式)> ノズル手元の空気吸引口で空気を吸引し、ノズル本体の中で攪拌、整粒されて、保水性のよい泡となって放出される。安定性のある泡を生成する。<ノンアスピレートノズル(外部吸気発泡方式)> 空気吸引口のない、通常のスプレーノズル。加圧された泡水溶液がノズル外部へ放出され、水流同士が衝突した際に外部の空気を水流に取り込んで泡になる。4 実験写真(抜粋) 2月8日 アスピレートノズル フッ素たん白 ノンアスピレートノズル 粘性付与水成膜 2月9日 ノンアスピレート フッ素たん白5 実験結果まとめ 本実験から、大容量泡放射システムにより、構内道路から高さ24mの浮き屋根式タンクへの泡投入が可能であることが確認されたほか、以下のことが検証できました。 ○ 大容量泡放射砲により有効に放射ができること。 ○ ポンプ混合装置により適切な混合率の泡消火薬剤が放射できること。 ○ 水利から離れた場所であっても遠距離送水のための資機材により、必要な量の水量が確保できること。6 まとめ 当該実験により、特定事業所に備え付ける大容量泡放射システムに求められる性能・機能等について検証した上で、システム整備のために必要な法令改正を行ったところです。 今後、当該システムが特定事業所に配備されていくことにより、石油コンビナート等特別防災区域の防災体制の充実強化が実現されることを切に期待するところです。
浮き屋根式屋外貯蔵タンクの揺動実験 浮き屋根式屋外貯蔵タンクは、浮きがついた屋根を貯蔵油に浮かべた構造となっており、貯蔵危険物の増減に伴って屋根が上下動するものです。 平成15年9月26日に発生した十勝沖地震においては、地震の影響に伴う「スロッシング現象(液面揺動)」によって浮き屋根が従来想定されていた以上に大きく揺動し浮き屋根に損傷が生じて、大規模な火災をはじめ大きな被害が発生しました。そこで、消防庁では、今後、各地で発生が想定されている大規模地震において同様の被害発生を防止するため、浮き屋根が損傷し、沈下に至ったメカニズムを解明するとともに、必要な対策を見出すための検討を行いました。その検討結果を受け、浮き屋根耐震機能確保のため技術基準の改正を行い、平成17年4月1日から施行されています。 しかしながら、浮き屋根は形状、製作方法、構成材料等が様々であることから、技術基準に適合しない浮き屋根の改修を円滑に推進するため、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの揺動実験による検証を行い、代表的な構造を有する浮き屋根に係る合理的な改修方法について検討を行っています。 浮き屋根式屋外貯蔵タンクの揺動実験とは、浮き屋根各部に発生する変位、応力、動液圧等の挙動を把握することを目的として実施するものであり、模型タンクを作成し、振動台を用いて振動させるものです。平成18年度は、実規模タンクの揺動実験を行う予定です。このような、屋外タンクの揺動実験は世界的に見ても例がなく、多くの注目が集まっています。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成16年中の林野火災の件数は、2,592件(前年1,810件)、焼損面積は1,568ha(同726ha)、損害額は8億916万円(同2億9,211万円)であり、件数、焼損面積、損害額ともに、前年より増加した(第1−1−27表)。 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜採りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成16年も例外ではなく、4月に609件と最も多く発生しており、2月から4月までの間に、1,624件(年間の62.7%)の火災が集中して発生している(第1−1−31図)。
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、 〔1〕 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防 〔2〕 火災予防の見地からの林野管理 〔3〕 消防施設等の整備 〔4〕 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成16年度までに、38都道府県の892市町村にわたる231地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場)の整備に対して国庫補助を行っている。 なお、従来は国庫補助が行われていた林野火災対策用資機材、林野火災工作車及び小型動力ポンプ付水槽車については、平成17年度に三位一体改革による税源移譲に伴い、国庫補助対象から外されたところである(第1−4−1表)。
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より低いものの、ひとたび発災し、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等へ被害が及ぶこともあり、ときには隣接市町村、隣接都府県に拡大することがある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、迅速に十分な消防力の投入を行うとともに、火災による被害を最小限に抑えることを目的として、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。近年、消防防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」(昭和61年)に基づく消防防災ヘリコプターの応援出動による空中消火が増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1−4−1図のとおりである。 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保できるとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、併せて林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策としては、特に出火防止の徹底が重要である。消防庁としては、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。 〔1〕 林野周辺住民、入山者等の防火防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。 〔2〕 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。 〔3〕 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。 〔4〕 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じた山火事予防を呼びかけている。
(2)火災警報の運用の工夫 消防庁と気象庁は、火災気象通報を都道府県を通じて受けた市町村長が、消防法第22条に定める「火災警報」について適切な時期に発令することを期待し、消防本部で観測した湿度等のデータを気象庁側に提供することにより、気象台が発表する火災気象通報の区分をよりきめ細かく行う火災気象通報の運用改善に伴う火災警報の効果的な活用の試行を、平成16年度から、岩手・栃木・山口・熊本の4県で実施している。 なお、平成16年秋にモデル県から提出された試行の中間報告結果などを参考に、平成16年度末の試行においては、火災気象通報支援資料に新たに風向や風速に係る情報を追加するほか、市町村(消防本部)での活用に資するため、火災気象通報の発表単位を二次細分区域からさらに細かい、消防本部単位での発表へと改善を進めたところである。 この試行を通じて、関係各県、消防本部及び気象台において運用面や技術面での課題及び改善点等をさらに抽出整理し今後取組みを広めていく予定である。
(3)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、〔1〕異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、〔2〕森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、〔3〕林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、〔4〕林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、〔5〕林野火災における消火・広域応援体制に関する調査、〔6〕林野火災の予防対策のあり方やヘリコプターによる空中消火のあり方についての検討を行っている。 また、平成16年度には、関係省庁、林野火災多発地方公共団体、全国消防長会等で構成する「林野火災の有効な低減方策検討会」を開催し、林野火災の主な原因である人的失火を抑制し、林野火災を低減させる方策を検討し、〔1〕気象台から都道府県を通じて市町村に送られる火災気象通報の地域区分を細分化することにより、市町村による火災警報の発令をしやすくすることが必要である、〔2〕失火防止対策として、「山林、原野等の中で、特に火災の危険性が高いとして、あらかじめ市町村長が指定した区域内において喫煙をしない」こととし、その旨を各自治体の条例で定めてもらうため、火災予防条例(例)を改正することが必要である、〔3〕防火看板・ポスター、広報紙・パンフレット、ホームページ、学校教育や、林業関係者等を対象とした防火講習会などを通じて、林野火災予防に関する広報・啓発を行うことが必要である、また、〔4〕山火事が発生した市町村で構成される「山と緑を守るネットワーク協議会」の加入市町村の拡充が必要である、ことを内容とする検討結果をとりまとめ、平成17年8月には、検討結果を踏まえた火災予防条例(例)の改正を行った。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後積極的に講じる必要がある。 〔1〕 気象台から発せられる気象情報や火災気象通報を踏まえて、林野火災発生の可能性を勘案し、必要に応じて火災警報の効果的な発令を行うなど、火気取扱いの注意喚起や制限を含めて適切に対応すること。 〔2〕 火災警報発令時における喫煙の制限に関して、各自治体が実効的な運用が図れるよう、今後火災気象通報における地域区分の細分化に関する取り組みを促進していくこと。 〔3〕 林野火災を覚知した場合、早急に近隣の市町村に対して応援要請を行うなど、林野火災の拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するため、速やかな事前通報及び派遣要請に努めるとともに、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術の徹底を図ること。また、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。  〔4〕 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防御図を、GIS(地理情報システム)の活用も視野に入れて整備するなど、関係部局においてその共有を図ること。  〔5〕 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。  〔6〕 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大防止を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成16年中の災害 平成16年は、6月の台風第6号、7月12日から13日にかけての新潟県及び福島県を中心とする、並びに7月17日から18日にかけての福井県を中心とする活発な梅雨前線による集中豪雨、7月の台風第10号、8月の台風第11号、15号、16号、9月の台風第18号、21号、10月の台風第22号、23号等により、全国各地に甚大な被害をもたらした。 平成16年中に発生した台風の数は29個、日本に接近した数(台風の中心が日本の海岸線から300km以内に入ったもの)は19個、上陸した数は、観測史上最多の10個と、いずれも平年値(昭和46年から平成12年までの30年間平均)を上回った。 平成16年中の風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、前年に比べて増加し、死者、行方不明者259人(前年60人)、負傷者3,307人(同483人)、全壊1,494棟(同115棟)、半壊16,708棟(同238棟)、一部破損96,133棟(同3,355棟)となっている(第1−5−1図)。 なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−1表)。
(2)平成17年1月から10月までの災害 平成17年10月までに発生した台風の数は、21個であり、このうち、日本列島への上陸数は3個である。特に9月に発生した台風第14号は西日本を中心に大きな被害をもたらした。 風水害に伴う人的被害、住家被害は、死者・行方不明者42人、負傷者232人、全壊1,185棟、半壊3,512棟、一部破損2,932棟となっている。(平成17年10月31日現在) なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−2表)。
[風水害対策の現況] 台風、集中豪雨等による風水害は、毎年のように我が国の広い地域で大きな被害をもたらしている。そのため、平成14年4月に中央防災会議において、防災基本計画の風水害編等の修正が行われ、これを踏まえ消防庁では、洪水予報河川の指定、土砂災害警戒区域の指定及び洪水や高潮ハザ−ドマップの作成などについて地域防災計画の修正を行うよう要請している。また、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や、地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制の整備についても要請している。 平成16年には、集中豪雨や台風による災害が多発したが、特に7月の新潟・福島豪雨や福井豪雨による災害状況にかんがみて、本格的な台風襲来を前に平成16年8月には、風水害対策にかかる都道府県消防防災主管課長会議を開催して徹底を図った。 また、内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁をはじめとした関係省庁では、〔1〕防災情報の迅速確実な伝達提供、〔2〕災害時要援護者の避難体制の確保、〔3〕総合的な治水対策、〔4〕観測予報体制の充実強化のほか、ボランティア活動の支援強化、緊急消防援助隊の整備促進など36項目を課題として掲げ、局長会議や「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」を開催し、平成17年3月「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討報告」を取りまとめた。 そして、この検討報告の中で「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」及び「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が示された。「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」は、〔1〕避難すべき区域及び判断基準(具体的な考え方)を含めたマニュアル策定の進め方、〔2〕避難勧告等の伝達手段の整備、伝達内容について注意すべき事項等を示し、市町村が「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」を作成する際の指針となっている。また、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」では、〔1〕情報伝達体制の整備(災害時要援護者支援班の設置、防災関係部局と福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者との間の連携強化)、〔2〕災害時要援護者情報の共有(同意方式、手上げ方式、共有情報方式等による平時からの情報共有)、〔3〕災害時要援護者の避難支援計画の具体化(災害時要援護者一人ひとりの避難支援プランの策定)等について示された。 これを受けて、消防庁では、平成17年度にモデル地域を選定し、福祉部局と連携した情報共有や実践的な訓練の実施等、消防団や自主防災組織等地域の人的防災資源を効果的に活用した取組みやシステムづくりについて、詳細な報告を受け、その報告を参考に避難支援プラン作成のノウハウを整理して、地方公共団体に提供する「災害時要援護者の避難支援プラン策定モデル事業」を実施している。 また、関係省庁間において、引き続き災害時要援護者の支援体制の整備を図っていくため避難後の避難所での生活支援等について検討を行っており、具体的には、〔1〕災害時要援護者の種別ごとに自治体、関係企業等の間での情報伝達・共有、医療・福祉サービスの提供方策、〔2〕避難所において要援護者ごとに配慮すべき対策や関係企業等の間での連携方策、〔3〕避難所生活において特別な配慮を要する者のための福祉避難所の設置・活用促進や、自治体、関係企業等が取り組むべき事項や災害時の対応要領等について検討を行っている。 なお、消防庁では、毎年、出水期を前に、各都道府県に対し、風水害に対する警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知の発出や、台風の襲来時における、台風警戒情報を地方公共団体に送付して、警戒の強化を呼びかけている。 さらに、防災訓練については、平成16年度中において、風水害を想定した防災訓練を都道府県では21団体で26回、市町村では延べ755回実施されている。
(1)洪水 近年、時間雨量80mmを超えるような猛烈な雨が頻発し、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど、大きな被害が発生する例が増えている。 平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨や福井豪雨を見ると、停滞した梅雨前線に次々と湿った空気が流入し、非常に激しい雨が短時間で狭い範囲に降った結果、中小河川が破堤し、河川に隣接する住宅地一帯が浸水するなどの被害が発生した。特に、高齢者が自力で避難することができず、自宅で死亡するケースや、保育所に園児が孤立し、ヘリコプターで救助が行われるような例など、災害時要援護者をはじめとした住民が安全かつ的確な避難を行うための、情報収集・伝達体制や避難体制の整備等が、重要な課題として明らかになった。 また、10月の台風第23号では、暴風域が広く、また本州付近に停滞していた前線の活動が活発になったため、西日本から東北地方の広い範囲で暴風、大雨、高波となった。特に、多数の河川で警戒水位を超え、一部は危険水位に達し破堤するなど、兵庫県豊岡市及びその近傍をはじめとして各地で浸水被害等が発生した。 平成17年9月の集中豪雨では、東京・埼玉を中心に床上・床下浸水が多数発生しており、都市部でこのような集中豪雨が発生すると、排水能力の限界から水が溢れたり、さらには地下街や地下室へ水が流れ込むなどにより、これまでも福岡市や東京都内の地下空間において水死者が発生している。地下空間における浸水対策については、都市部における浸水被害対策を総合的に推進するために、都市洪水想定区域又は都市浸水想定区域において、洪水等情報の伝達方法、避難場所、地下街等への情報伝達方法等を市町村地域防災計画に定めて住民に周知することや、地下街等の所有者又は管理者が浸水時の避難等に関する計画作成及び公表に努めることなどを盛り込んだ特定都市河川浸水被害対策法が、平成16年5月から施行されている。 また、前述の被害を軽減させるため、平成13年6月に〔1〕これまで国直轄河川で行われていた洪水予報を新たに都道府県が管理する河川についても行うこと(平成17年11月1日現在25水系41河川を指定)、〔2〕国及び都道府県は浸水想定区域を指定及び公表すること、〔3〕市町村は浸水想定区域ごとに洪水予報の伝達方法、避難場所等を定め、住民に周知させるよう努めること等を主旨とする水防法の一部改正が行われ、地方公共団体に対し、同法の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 さらに、平成17年5月にも〔1〕浸水想定区域を指定する河川の範囲拡大、〔2〕浸水想定区域が指定された市町村におけるハザードマップの作成・周知の義務付け、〔3〕中小河川における洪水情報等の提供の充実、〔4〕水防協力団体制度の創設、〔5〕非常勤の水防団員に係る退職報奨金の支給規定の創設、〔6〕浸水想定区域及び土砂災害警戒区域における警戒避難体制の充実等を内容とした「水防法及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の一部改正が行われ、地域における水害や土砂災害の防止対策が図られている。
(2)土砂災害 土砂災害は、これまでも平成8年12月の蒲原沢土石流災害、平成9年7月の鹿児島県出水市の土石流災害、平成15年7月の豪雨による熊本県水俣市ほかの土砂災害、平成16年8月の台風第15号による愛媛県新居浜市ほかの土砂災害や同年9月の台風第21号による三重県宮川村や愛媛県西条市ほかでの土砂災害などが発生しており、特に平成16年においては昭和57年の統計開始以来、最多の2,500件以上の災害が発生するなど、近年、がけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害により、多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきており、土砂災害危険箇所の周知徹底等、特に重点的に推進すべき事項について、関係省庁による申合せがなされている。 また、中央防災会議においては、特に、効果的な事前周知、気象情報等の収集伝達体制の強化という情報提供の観点から、豪雨災害対策のあり方について検討が行われ、気象情報の収集体制の強化等、重点的に進めるべき豪雨災害対策について提言がなされた。 さらに、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月に施行された。この法律に基づき「土砂災害防止対策基本指針」が定められたことから、地方公共団体に対し、法及び指針の趣旨を踏まえ、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 また、国土交通省及び気象庁では、平成17年6月、大雨による土砂災害のおそれがあるときに、市町村長が発令する避難勧告等の判断の支援や住民の自主避難の参考となるよう、都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」についての基本的な考え方や運用に向けて整えるべき事項等を取りまとめた「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成、発表するための手引き」を都道府県に配布した。平成17年9月には、鹿児島県で全国で初めて土砂災害警戒情報の提供を開始している。
(3)高潮 消防庁では、平成11年9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定している。 平成16年8月の台風第16号に伴う被害では、1年で最も潮位が高くなる大潮の時期に加えて満潮とも重なり、既往最高潮位を60cm近くも超えるところが出るなど、香川県・岡山県・広島県等の瀬戸内地区を中心に、床上浸水など相当数の高潮被害が生じている。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等による風水害による人的被害の発生を防ぐためには、防災訓練の実施や防災知識の普及啓発等を進めるとともに、平成16年度の災害等を踏まえ次のような対策の推進が求められている。
(1)避難勧告等の発令・伝達ア 避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成 「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を参考に、市町村において「避難準備(災害時要援護者避難)情報」を位置づける他、災害緊急時にどのような状況において、どのような対象区域の住民に対して避難勧告等を発令するべきかの客観的な判断基準等について定めた避難勧告等の判断・伝達マニュアルの早急な整備が必要である。 また、避難の勧告・指示は、災害の状況及び地域の実情に応じ、防災行政無線や消防団、自主防災組織をはじめとした効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達するとともに、早期自主避難の重要性について周知する必要がある。 さらに、同一の水系を有する上下流の市町村間においては、相互に避難勧告等の情報が共有できるよう連絡体制についても整備の必要がある。イ 放送事業者との連携体制の整備 住民への避難勧告等の迅速な伝達には、放送事業者が重要な役割を担っていることから、各地方公共団体は放送機関等と検討会(連絡会)を開催し、風水害の対応事例を基に、災害時における連絡方法、避難勧告等の連絡内容等についてあらかじめ申し合わせるなど、放送事業者と連携した避難勧告等の伝達体制の確立が必要である。ウ 防災行政無線の整備 気象情報の的確な収集を行うため、緊急防災情報ネットワーク、各種の防災気象端末等の活用を図るとともに、他の防災機関等との連携を図り、休日・夜間も含め、防災関係機関相互間及び住民との間の情報収集・伝達体制の整備が必要である。このため、防災行政無線(同報系)の整備等を図る(第2章第9節参照)とともに、実際の災害時に有効に機能し得るよう、通信施設の整備点検が重要である。エ 防災情報の連絡体制等 都道府県から市町村に対する避難勧告等に関する意思決定の助言、気象官署、河川管理者と市町村との間でのホットラインの構築、気象官署から都道府県への要員派遣等、国・都道府県・市町村間の連携強化・情報共有を図る体制を整備する必要がある。
(2)避難体制の整備ア 災害時要援護者の避難誘導体制の整備 「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を参考に、市町村において、福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者等と連携の下、災害時要援護者一人ひとりに対して複数の避難支援者を定める等、具体的な避難支援計画(避難支援プラン)の早急な整備が必要である。 なお、災害時要援護者関連施設については、立地条件の把握、施設周辺のパトロール体制の確認をはじめ、施設への平常時、緊急時における適切な情報提供、的確な避難誘導体制等の再点検を行うなど、警戒避難体制等の防災体制の整備が必要である。イ 避難路・避難場所の周知徹底及び安全確保等 住民が円滑かつ安全に避難できるよう、避難路・避難場所を地域住民に周知徹底するとともに、豪雨災害等の特性を踏まえた、避難路・避難所の安全性の確保、移送手段の確保及び交通孤立時の対応について配慮する必要がある。
(3)災害危険箇所に対する措置 例年、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域等や土砂災害危険箇所以外の箇所においても土砂災害が発生していることから、地形、地質、土地利用状況、災害履歴、最近の降雨状況等を勘案し、従来危険性が把握されていなかった区域もあわせて再点検を行い、標識の配置、広報誌、パンフレット、ハザードマップ、地区別防災カルテ等の配布、インターネットの利用、説明会の開催等により、地域住民への周知徹底を図る必要がある。
(4)2次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、災害対策基本法に基づく警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては、十分な警戒等を行うことが必要である。
(5)自主防災組織の育成等 風水害による被害を最小限にとどめるためには防災機関の活動のみならず、住民自らの災害に対する日常の備えが不可欠であり、地域の防災対策を担う自主防災組織の育成強化を進める必要がある。
第6節  火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向]1 三宅島噴火災害 平成12年7月8日、14日、15日、8月10日、13日〜16日に小規模な噴火が起こり、8月18日には、一連の噴火で最大規模の噴火が発生し、さらに29日にも18日に次ぐ規模の噴火があった。この活動について火山噴火予知連絡会(事務局:気象庁)は、同年8月31日に、「当面8月18日及び29日と同程度かこれをやや上回る規模の噴火が繰り返し起こる可能性があり、火砕流に警戒が必要」との見解を示した。その後9月まで小規模な噴火が時折発生した。 三宅村では、この見解を受け、同年9月2日には、防災及びライフライン関係要員を除く全住民(三宅村人口3,855人:平成12年8月1日住民基本台帳)に対し、島外への避難指示を行い、全対象住民が島外への避難(9月2日〜4日にかけて実施)を行った。 消防機関の対応としては、平成12年6月27日から7月2日までの間に東京消防庁が応援部隊を自衛隊・海上保安庁の輸送協力により三宅島へ派遣し、地元消防や警察と連携し、道路状況の調査、一時帰宅の支援、道路修繕支援活動、ヘリコプターによる救援物資の搬送等を行った。また、同年8月29日以降は応援部隊を現地派遣して地元消防等と連携し、救急搬送、住民の島外避難の支援等を行ったほか、住民避難後も、警戒巡視、夜間島内滞在時の安全監視等を行った。 長期避難生活を余儀なくされるなか、平成15年3月には、火山ガスに対処する脱硫装置を備えた302名宿泊可能な滞在型の活動火山対策避難施設・退避舎(クリーンハウス)が消防防災施設整備費補助金を活用して整備され、同施設を活用した滞在型一時帰宅が実施された。 一方、三宅島の火山活動は最近大きな変化がなく、火山ガスの放出も長期的には減少しているが、現在も放出は継続している。島民の避難生活は長期に及び、精神的及び経済的負担が限界となるなかで、島民に帰島の意向調査を実施するなど、「火山ガスとの共生」による帰島を視野に検討が進められた。そして、平成16年7月に三宅村は、帰島は村民個々の自己責任に基づく、村は村民の安全確保のため新たに条例を制定することなどを内容とする「帰島に関する基本方針」を発表し、平成16年12月の火山噴火予知連絡会拡大幹事会の見解を受けて、平成17年2月に避難指示を約4年半ぶりに解除し、帰島の意向を持つ大半の住民が4月までに順次帰島した。村民の帰島にあたっては、十分な安全を確保することが前提となるため、特に呼吸器系疾患のある方や妊婦などの高感受性者の生活環境を確保するために実施する高感受性者世帯への小型脱硫装置が、消防防災設備整備費補助金を活用し整備された。
2 その他の火山災害(1)平成16年中の災害 平成16年の日本の火山活動は、浅間山で9月以降噴火活動が活発となり、昭和58年以来となる中爆発が数回発生し、山腹に噴石を飛散させたり、山麓に火山礫を降らせたほか、東北地方から関東地方の広範囲に降灰をもたらした。噴火に伴う空振により山麓で窓ガラスが破損したり、降灰で農作物に被害が発生した。 浅間山の他に噴火した火山は、十勝岳、三宅島、桜島、薩摩硫黄島及び諏訪之瀬島であった。三宅島では2年振りに山麓に降灰をもたらす程度の小規模な噴火が数回発生した。また、火山ガスの放出は依然として多い状態が続いたが、秋頃からやや少なくなる傾向を示した。桜島、薩摩硫黄島及び諏訪之瀬島の噴火は従来の山頂噴火が継続しているものである。また、十勝岳の噴火は火山灰混じりの有色噴煙が観測されるというごく小規模なものであった。 その他、阿蘇山では規模の大きな土砂噴出が発生するなど活動のやや活発な状態が続き、霧島山では平成15年12月以降、御鉢の噴気活動のやや活発な状態が続いている。吾妻山、伊豆東部火山群、伊豆大島、口永良部島等で顕著な地震活動の活発化が見られた。
(2)平成17年中の災害 三宅島では、山頂火口から二酸化硫黄を多量に含む火山ガスが依然として放出され続けており、二酸化硫黄の放出量は、平成16年秋以降、日量2千〜5千t程度で依然として多い状態が続いている。
[火山災害対策の現況] 平成15年1月の火山噴火予知連絡会において活火山の定義が見直されたが、新たな定義によると、我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が存在する。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの流出、津波等多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や第6次火山噴火予知計画(平成10年8月文部省測地学審議会建議)による火山を有する地域の市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用を国庫補助の対象としている。三宅島噴火災害においては、平成14年度の活動火山対策避難施設クリーンハウス(退避舎)に対する約7億円の助成や平成16年度の高感受性世帯への小型脱硫装置の整備に対する約1億円の助成を行った。 また、地域の特色を活かした火山災害に強いまちづくりを推進できるように、活動火山情報教育施設、大規模避難宿泊施設、避難休憩施設、活動火山情報表示施設等の火山対策施設について、防災基盤整備事業の対象としている。 さらに、平成12年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動により災害が発生した際、地域住民が迅速に避難できるよう、被害が想定される区域や被害の程度、さらに避難場所、避難経路等の情報を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。その一方で消防庁は、平成13年から富士山火山防災協議会に参画するとともに、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」の開催を行っている。 平成13年度からは、富士山火山防災協議会の下に設置された富士山ハザードマップ検討委員会において、富士山防災対策の基本となる火山ハザードマップの作成検討等が進められ、平成16年6月に報告がまとめられた。なお、引き続き新たに、富士山火山広域防災対策検討会が設置され、そのなかで広域的な火山防災体制の確立のための検討が行われ、平成17年9月に「富士山火山広域防災対策検討会報告書」がとりまとめられた。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で85団体が整備している。 また、これらの団体においては、適宜見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。特に、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、北海道恵山、雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳、桜島の10火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、9火山の協議会では、それぞれ火山の爆発に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。 また、消防庁では平成14年度に、山体の大きな富士山における火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成16年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県4団体で延べ6回、市町村では延べ17回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
(4)火山活動度レベルの活用 異常な火山現象が認められた場合には、「緊急火山情報」、「臨時火山情報」、「火山観測情報」といった火山情報が気象庁から発表されているが、この火山情報をより分かりやすくする趣旨から、火山活動の程度を客観的な数値指標で表した「火山活動度レベル」が平成15年11月から、浅間山、伊豆大島、阿蘇山、雲仙岳、桜島の5火山で導入され、平成17年2月からは、吾妻山、草津白根山、九重山、霧島山(新燃岳、御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島の7火山が追加となり、現在では12火山で提供されている。 この制度は今後逐次、他の火山にも導入されていくこととなるが、関係自治体においては、レベルに応じた適切な防災対応に配慮することが望まれる。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を引き続き推進していくことが重要である。特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布することを通じて、防災情報を積極的に提供することが、平常時から住民に対して、防災意識の高揚を図ることにつながる。 消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。 また、内閣府、国土交通省及び気象庁とともに、平成13年7月から富士山ハザードマップ検討委員会を設置し、火山ハザードマップの内容を検討してきた結果、平成16年6月に「富士山火山防災マップ」〔火山ハザードマップとそれに対する各種防災情報(避難所の位置、連絡先や災害発生時にとるべき行動等)を記載したマップ〕として試作版を提示した。 なお、平成12年の有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
(2)住民への情報伝達体制の整備 緊急火山情報や臨時火山情報をはじめとする火山情報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、82.0%(平成17年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告や指示を行う必要がある。また、あらかじめ、情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておくことが必要である。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日頃から連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じ、登山規制、立入規制等の措置を速やかにとることができるように、関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成16年1月から12月までの間に震度1以上が観測された地震は、2,234回(前年2,179回)でこのうち、震度4以上を記録した地震は93回(前年71回)で、いずれも前年を上回った(第1−7−1表)。
(1)平成16年以降の主な地震の概要 平成16年中の震度4以上を記録した地震は、第1−7−5表のとおりであり、平成16年1月から平成17年10月までの主な地震災害の概要は、以下のとおりである。 ア 平成16年(2004年)新潟県中越地震 平成16年10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。この地震により新潟県川口町で震度7、小千谷市、山古志村(現・長岡市)、小国町(現・長岡市)で震度6強、長岡市、十日町市、栃尾市、越路町(現・長岡市)、三島町(現・長岡市)、堀之内町(現・魚沼市)、広神村(現・魚沼市)、守門町(現・魚沼市)、入広瀬村(現・魚沼市)、川西町(現・十日町市)、中里村(現・十日町市)、刈羽村で震度6弱、安塚町(現・上越市)、松代町(現・十日町市)、松之山町(現・十日町市)、見附市、中之島町(現・長岡市)、与板町、和島村、出雲崎町、小出町(現・魚沼市)、塩沢町、六日町(現・南魚沼市)、大和町(現・南魚沼市)、津南町で震度5強、上越市、浦川原村(現・上越市)、牧村(現・上越市)、柿崎町(現・上越市)、頚城村(現・上越市)、吉川町(現・上越市)、三和村(現・上越市)、三条市、柏崎市、加茂市、栄町(現・三条市)、湯之谷村(現・魚沼市)、高柳町(現・柏崎市)、西山町(現・柏崎市)、燕市、弥彦村、分水町、吉田町、巻町(現・新潟市)、月潟村、中之口村、福島県只見町、西会津町、柳津町、群馬県片品村、高崎市、北橘村、埼玉県久喜市、長野県三水村で震度5弱を記録した。 その後も震度6強を観測する余震が2回、6弱を観測する余震が2回発生した。 この地震による被害は、新潟県を中心に死者51人、負傷者4,805人、住家の全壊3,185棟、半壊1万3,715棟、一部破損10万4,560棟となっている(平成17年10月14日現在)。 また、避難状況については、川口町が10月23日19時30分に避難勧告を行ったのをはじめとして、1万8,723世帯、6万1,663人に避難勧告、1,024世帯、3,231人に避難指示が出され、山古志村については、全村避難指示となった。避難者数は、最大時(平成16年10月26日)で10万3,178人に上った。 イ 福岡県西方沖を震源とする地震 平成17年3月20日10時53分頃、福岡県西方沖を震源とするマグニチュード7.0の地震が発生した。 この地震により、福岡県福岡市、前原市、佐賀県みやき町で震度6弱、福岡県須恵町、新宮町、志摩町、大川市、碓井町、春日市、久留米市、久山町、粕屋町、二丈町、穂波町、佐賀県上峰町、白石町、七山村、長崎県壱岐市で震度5強、福岡県大野城市、若宮町、高田町、福津町、柳川市、篠栗町、志免町、遠賀町、宗像市、大島村(現・宗像市)、小郡市、朝倉町、浮羽町(現・うきは市)、大木町、那賀川町、宇美町、中間市、直方市、飯塚市、筑穂町、大刀洗町、添田町、佐賀県久保田市、千代田町、白石町、小城市、唐津市、鳥栖市、諸富町、川副町、神埼町、嬉野町、多久市、大和町、三田川町、三瀬村、江北町、東与賀町、北方町、大分県中津市で震度5弱を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が8回観測された。 この地震による被害は福岡県を中心に、死者1人、負傷者1,087人、住家の全壊133棟、半壊244棟、一部破損8,620棟となっている(平成17年5月12日現在)。 特に福岡市西区の玄界島においては、住家の全壊107棟、半壊46棟と被害が著しく、大多数の島民が島外に避難した。 ウ 宮城県沖を震源とする地震 平成17年8月16日11時46分頃、宮城県沖を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生した。この地震により宮城県川崎町で震度6弱、石巻市、涌谷町、田尻町、小牛田町、栗原市、登米市、東松島市、仙台市、名取市、蔵王町、岩手県藤沢町、福島県国見町、川俣町、相馬市、新地町、鹿島町で震度5強、宮城県古川市、気仙沼市、大郷町、大衛村、加美町、松山町、鹿島台町、南郷町、女川町、志津川町、歌津町、塩竃市、白石市、角田市、岩沼市、大河原町、村田町、柴田町、亘理町、山元町、岩手県陸前高田市、二戸市、花巻市、北上市、一関市、江刺市、矢巾町、東和町、金ヶ崎町、前沢町、胆沢町、衣川村、花泉町、平泉町、千厩町、室根村、福島県福島市、桑折町、梁川町、保原町、霊山町、東和町、中島村、田村市、原町市、小高町、飯舘村、茨城県日立市で震度5弱を記録した。 この地震による被害は、宮城県を中心に負傷者91人、住家の全壊1棟、一部破損856棟となっている(平成17年8月22日現在)。
(2)平成7年(1995年)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成15年12月25日現在、人的被害は死者6,433人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1−7−6表、第1−7−7表、第1−7−8表)。
2 外国の地震災害 平成16年1月から平成17年10月までの主な地震は、第1−7−9表のとおりである。
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。また、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めている。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、大規模災害時における人命救助活動等をより効率的かつ充実したものとするために平成16年4月、法律に基づく緊急消防援助隊を発足させた。全国の消防本部より2,963部隊、約3万6,000人の隊員が登録されている。さらに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等の整備や大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 また、阪神・淡路大震災での貴重な経験や教訓は、次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業や施策の企画・立案、日々の防災活動に役立てる必要があることから、平成13年6月から運用を開始した「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)の充実等により地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 なお、震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備においては、公益法人による助成事業も行われている。
(1)東海地震対策 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法の規定に基づき、地震防災対策強化地域に指定された6県167市町村においては、東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画等に基づき、切迫した東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 平成14年4月には大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討した結果、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、従前の6県167市町村から8都県263市町村(平成17年4月1日現在213市町村)に拡大された。 この新たな指定を受けた都県及び市町村等においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組みがなされており、このうち、民間事業者が作成する地震防災応急計画の作成率(平成17年4月1日現在)は、79.1%となっている。消防庁では今後とも関係都県、消防本部等を通じて作成を強く働きかけていく。 地震防災対策強化地域の拡大を受け平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。大綱の主なポイントは、〔1〕被害軽減のための緊急耐震化、〔2〕地域における災害対応力の強化、〔3〕警戒宣言前からの的確な対応、〔4〕災害発生時における広域的防災体制の確立の4点であり、これらを踏まえた防災関係機関・地方公共団体等による的確な対応が求められている。消防庁では、地震防災対策強化地域における関係都県の広域応援の受け入れ体制及び都道府県をまたがる広域的な地震防災体制の充実を目的として、「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;廣井 脩 現東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授)」を開催し、その検討結果を「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書」として平成15年3月にとりまとめた。 また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月に中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同日、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−7−1図)。これは最近の科学的な知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)による変化に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりも前に今後の推移について説明可能な段階が設定できるとの考えから、これまでの情報発表の仕方を見直したものであり、基本計画修正の中心的な部分である。新たな情報発表の主なポイントは、これまで防災関係機関の防災対応のきっかけとして位置付けられていた「判定会招集連絡報」を廃止し、現行の観測情報を2段階に分け、このうち東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合に「東海地震注意情報」を発表し、これを防災対応のきっかけとするという部分である。具体的には、この情報を基に、政府は準備行動開始の意思決定とその旨の公表を行い、関係機関は準備行動の実施体制(準備体制)をとることとなる。基本計画の修正により、地方公共団体は地震防災強化計画の、民間事業者は地震防災応急計画の修正が必要であり、消防庁としても、これらの取組みに対して積極的な支援・助言に努めている。 さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、〔1〕緊急に実施すべき予防対策、〔2〕緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、〔3〕迅速な閣議手続き等について、平成15年7月に「東海地震緊急対策方針」として閣議決定された。平成15年12月には、中央防災会議において「東海地震応急対策活動要領」が決定され、同要領に基づく、関係省庁の救助、物資の調達等について、具体的な活動内容の申し合わせを行った。 加えて、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。
(2)東南海・南海地震対策 ア 東南海・南海地震対策の充実・強化 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生し、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている(第1−7−2図)(今後30年以内に発生する確率(平成17年1月1日時点)は、地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、東南海地震60%、南海地震50%となっている。)。 このため、中央防災会議は、平成13年6月に、「東南海、南海地震等に関する専門調査会」の設置を決定し、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策について検討を重ね、平成14年12月に東南海・南海地震が同時に発生した場合の被害想定の一部公表、平成15年9月には被害想定の全体像が示された(第1−7−10表)。 また、消防庁では、市町村・都道府県境を越え、東南海・南海地震の被害が想定される地域が一体となって取るべき防災体制を、広域的な受援体制の整備の観点と、津波対策の観点から地方公共団体の防災体制の現状と課題を踏まえて検討するため、「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;室益輝 現消防研究所理事長)」を開催し、その検討結果を「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する研究報告書」として平成16年3月に取りまとめた。地方公共団体においても、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、関係府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立し、東南海・南海地震に係る情報交換・収集を行っている。 イ 東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法の施行 こうした中で、平成15年7月に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」、同法施行令及び施行規則が施行となり、平成15年7月、内閣総理大臣から中央防災会議に対して地震防災対策推進地域の指定について諮問がなされ、東南海・南海地震が発生した場合、「著しい地震災害の恐れがある地域」として、具体的な推進地域の指定に向けた検討が開始された。その結果、平成15年12月に中央防災会議において「東南海・南海地震防災対策推進地域」として1都2府18県652市町村(平成17年4月1日現在1都2府18県506市町村)が公表され、翌17日に内閣総理大臣により指定(公示)された。推進地域の指定を受けた地方公共団体その他防災関係機関は、東南海・南海地震防災対策推進基本計画に基づき、「東南海・南海地震防災対策推進計画」を作成し地震防災対策強化を図ることとなった。また、特に甚大な津波被害が懸念される地域については、地域ぐるみの迅速な対応が求められることから、学校・病院等多数の者が集まる施設管理者等に対し、津波からの円滑な避難に関して「地震防災対策計画」を地域指定から6か月以内に策定するものとされた。平成17年4月1日現在の対策計画の作成率は、80.7%となっており、消防庁としては今後とも関係都府県、消防本部等を通じて作成を強く働きかけていく。 また、平成15年12月、東南海・南海地震防災対策のマスタープランとなる「東南海・南海地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。この大綱は、東南海・南海地震に対して津波防災体制の確立などを掲げた総合的計画であり、平成16年3月に中央防災会議で決定された推進基本計画をはじめとして、推進計画や対策計画はこの大綱に沿って、地域の実情に即した具体的な形で作成されたものである。 さらに、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。
(3)南関東地域における震災対策 南関東地域は、人口、諸機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広範なものとなるおそれがある。この地域においては、200〜300年に一度、関東大震災クラス(M8クラス)の海溝型地震が発生し、この間にもM7クラスの直下型地震が数回発生する可能性が高いとされている(第1−7−3図)。このため、中央防災会議において昭和63年12月に「南関東地域震災応急対策活動要領」が、平成4年8月に「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が決定され、震災対策を推進してきた。この要領等は、ともに阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大都市震災対策専門委員会の提言を受け、平成10年6月に全面的な見直しが行われるとともに、同要領等を補完し、応急対策活動の実践的な備えを推進するため、医療搬送、広域輸送等の課題分野ごとにアクションプランを検討することとされた。平成10年8月に中央防災会議主事会議において「南関東地域の大規模地震時における広域医療搬送活動アクションプラン第1次申し合わせ」(平成12年12月14日改正)が行われたほか、平成12年度から広域輸送プランや帰宅困難者対策についても調査・検討が進められている。 また、関係地方公共団体に対し、この活動要領及び大綱の趣旨等を踏まえ、震災対策用施設・設備の整備の促進、都市型地震災害の防止・軽減対策の推進、広域応援体制の整備充実、緊急輸送の確立、救助・救急体制の確立、情報伝達及び広報体制の確立、災害応急対策の強化、防災意識の啓発、周辺地域と一体となった広域的な防災訓練の実施など震災対策の充実を図るよう要請している。 こうした中、社会経済情勢の変化を踏まえ、平成15年9月、中央防災会議に「首都直下地震対策専門調査会」が設置され、首都直下の「地震像」の明確化や、直下地震を考慮した首都機能(政治、行政、経済)確保対策の検討などが行われ、平成17年2月に、首都直下地震対策に係る被害想定(東京湾北部地震M7.3、18時、風速15m/s)(第1−7−11表)が公表され、同年9月、首都直下地震対策のマスタープランとなる「首都直下地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。 この大綱は、首都直下地震による被害の特徴として「首都中枢機能障害による影響」と「膨大な人的・物的被害の発生」の2点が掲げられ、これらの被害を軽減するための対策を基本として構成するものである。なお、「首都直下地震対策大綱」の決定に伴い、「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」(平成4年8月21日 中央防災会議決定)は廃止された。 また、中央防災会議における内閣総理大臣の指示により、緊急消防援助隊等、広域応援部隊の活動拠点の確保を図ることとなり、関係都県をはじめとする地方公共団体と協議の結果、平成16年4月、465箇所の活動拠点の利用について合意した。これら活動拠点は地域防災計画等へ位置付けられ、訓練時等に活用されることとなっている。
地域防災計画データベースの運用開始 都道府県、市町村においては、大規模災害等に的確に対応するため、それぞれの地域特性を踏まえた地域防災計画を策定し、災害時には本計画に基づき総合的な対策を講じることになっています。 消防庁では平成17年7月より「地域防災計画データベース」の運用を開始しました。このデータベースは、47都道府県の地域防災計画をデータベース化し、その内容を迅速に検索・把握・比較することができるもので、消防庁のホームページからアクセス(http://www.fdma.go.jp)ができます。国及び地方公共団体の防災担当者はもちろん、地域住民の方々が47都道府県の地域防災計画を自由に閲覧することができます。<目的> 地域住民の方々が、居住する都道府県の地域防災計画を確認したり、地方公共団体の防災担当者が、他の都道府県の地域防災計画を参考とするために利用するとともに、各地方公共団体の地域防災計画の内容が一層具体的かつ実践的なものとなり、地域の防災力が向上することを期待するものです。<地域防災計画データベース搭載内容>〔1〕 47都道府県の地域防災計画(基本編、震災・風水害対策編等)〔2〕 地域防災計画修正作業時に必要な消防庁の通知・通達文(平成7年以降)及び参考資料<機能概要>〔1〕 ファイル及び記載文言の検索閲覧機能〔2〕 ファイルのダウンロード機能〔3〕 ページ送り・検索結果頁送り機能* 検索結果(例)
日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震 房総半島の東方沖から択捉島の東方沖にかけての北米プレートに太平洋プレートが沈み込む部分では日本海溝や千島海溝が形成されており、その周辺では多くの地震が発生しています。日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震は、マグニチュード7前後の比較的小さなものからマグニチュード8を超える巨大なもの、プレート境界で発生するものやプレート内部で発生するもの、さらには地震の揺れのわりに大きな津波が発生する津波地震など様々なタイプの地震が発生しています。中には約40年間隔で発生する宮城県沖地震など、繰り返しの発生が確認され、その切迫性が指摘されている地震もあります。日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会 日本海溝・千島海溝周辺では、過去において、揺れの大きな地震はもとより、大津波を伴う地震が多数発生していることなどから、この地域で発生する海溝型地震による地震・津波防災対策、特に巨大な津波に対する防災対策の強化を図るため、平成15年10月27日、中央防災会議に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」が設置されました。 この専門調査会においては、日本海溝・千島海溝周辺で発生する海溝型地震のうち、防災対策上の対象とすべき地震を決定したうえで、その地震の揺れの強さ、津波の高さ、これらにより発生する液状化、急傾斜地崩壊、津波による浸水の状況などの被害を想定し、強化すべき地震防災対策について検討を行うこととされています。日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法 法の整備により地震防災対策の推進を図るため、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が平成16年3月26日に議員立法により成立し、同年4月2日に公布、平成17年9月1日に施行されました。 同法では、内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺地域で海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがある地域を「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として指定するとともに、中央防災会議において、国の地震防災対策の基本方針となる「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」を作成することとされています。地震防災対策推進地域の指定を受けた地方公共団体などの防災関係機関は、基本計画に基づき、地震防災上緊急に整備する必要がある施設の整備や津波からの円滑な避難などについて定める「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画」を作成することとされています。また、推進地域内において地震防災上の措置を講じる必要があると認められる民間事業者は、基本計画や推進計画に沿って、津波からの円滑な避難や防災訓練、教育、広報などについて定める「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画」を推進地域の指定から6か月以内に作成することとされています。 なお、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による被害が生じる恐れがある地域は、積雪寒冷地域であることが予想されるため、地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備を行うに当たっては、交通、通信その他積雪寒冷地域における地震防災上必要な機能が確保されるよう配慮することとされています。 同法により、国、地方公共団体、民間事業者などが一体となって地震防災対策を推進する体制が整えられました。今後の対応 消防庁では、推進地域の指定及び地方公共団体等の推進計画や民間事業者の対策計画の作成などについて、必要な指導や助言を行うとともに、関係機関の連携がより一層強化されるよう支援し、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の地震防災対策の推進に努めていきます。
(4)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震 日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震の中には、約40年間隔で発生する宮城県沖地震など、繰り返し発生するものもあり、その切迫性も指摘されているとともに、震源域はそのほとんどが海溝周辺にあり、過去において大津波を伴う地震が多数発生していること等から、この地域で発生する海溝型地震による地震・津波防災対策、特に巨大な津波に対する防災対策の確立を図るため、平成15年10月27日、中央防災会議に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」が設置された。 この専門調査会においては、日本海溝・千島海溝周辺で発生する海溝型地震のうち、防災対策上対象とすべき地震について検討した上で、その地震により発生すると予測される被害の大きさや、それに対する地震防災対策について検討を行っている。 平成16年3月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進を図るためには法的整備が必要であるとして、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が、議員立法により成立し、同年4月に公布され平成17年9月に同法、同法施行令及び同法施行規則が施行された。これにより内閣総理大臣は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として指定するとともに、中央防災会議は、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」を作成することとなった。また、推進地域の指定を受けた地方公共団体等防災関係機関は、この基本計画に基づき、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画」を作成するとともに、推進地域内で特に津波による甚大な被害のおそれのある地域において地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者のうち基本計画で定める者は「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画」を作成し、その実施を推進することとなる。
(5)地震防災緊急事業五箇年計画、地震対策緊急整備事業計画 ア 地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成された。同計画に基づき、平成12年度末までの5年間に避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集市街地対策等が実施された(実績額14兆1,175億円:達成率76.3%)。国は同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 各都道府県は、同法が平成13年3月に一部改正され、この特例等の適用期限が平成17年度末まで延長されたことにより、平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画を作成し、引き続き地震防災緊急事業を実施しており、平成13年度からの計画額は約14兆1千億円となっている。 なお、耐震性貯水槽等特例措置の対象となる消防庁関係の事業の国の負担割合は、2分の1となっている。 イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。なお、耐震性貯水槽等特例措置の対象となる消防用施設の国の負担割合は2分の1となっているのに加え、施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されることとなっている。 地震対策緊急整備事業として、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等を実施しており、昭和55年度からの計画額は約1兆5千億円となっている。 なお、この法律は、これまで5回延長され、現在、平成21年度末までの計画に基づき事業が実施されている。
(6)総合防災訓練 政府は、災害対策基本法及び大規模地震対策特別措置法に基づき、東海地域に大規模地震が発生したとの想定及び首都直下に大規模地震が発生したとの想定のもとに、中央防災会議で決定した「平成17年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成17年9月1日(防災の日)に総合防災訓練を実施した。 当該訓練には、指定行政機関等、関係指定公共機関及び地震防災対策強化地域と周辺地域の関係都県市が参加し、東海地震を想定した訓練は予知対応型訓練として、首都直下地震を想定した訓練は発災対応型訓練として行った。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、職員の参集訓練、地震警戒本部及び災害対策本部の設置及び運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請などについて、消防防災無線網を活用した国と関係都県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。 また、消防庁に整備した緊急消防援助隊指揮車、現地活動支援車、衛星車載局車を訓練会場に派遣し、実践的な情報収集・伝達訓練を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、津波対策、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成17年4月1日現在、すべての都道府県において、震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けて定めている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,468団体、「節」等を設けているものが562団体、「その他の災害等」として扱っているものが75団体となっている。 なお、地域防災計画で「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で633団体となっている。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会が評価を取りまとめ公表している主要98断層帯で発生する地震や海溝型地震の長期評価(平成17年4月13日現在、海溝型地震のうち南海トラフ、三陸沖から房総沖にかけて、千島海溝沿い、日本海東縁部、日向難及び南西諸島海溝周辺、相模トラフ沿いで発生する地震についての評価結果を公表)等を踏まえた地域防災計画の見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1−7−4図、第1−7−5図)。 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所の指定は逐年拡充されており、平成17年4月1日現在で、7万1,995箇所が指定されている(第1−7−12表)。 また、避難路については、248団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1−7−13表)。 これらの物資を備蓄するため、平成17年4月1日現在、都道府県においては43団体で870棟、市区町村においては1,911団体で2万440棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては20団体で426棟、市区町村においては139団体で868棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成16年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,644億7,900万円、また、市区町村が実施した事業費は498億7,200万円である(第1−7−14表)。
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成16年度においては、47都道府県と998市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が実施されており、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1−7−15表、第1−7−16表)。 また、44都道府県及び1,369市区町村においては、これらの訓練に加え、日頃から地域住民等に対し、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、関係地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成17年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は806団体であり、その中で過去の地震津波の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波浸水予想地域を定めている団体が374団体、地域防災計画へ記載している団体が465団体、津波災害を想定した避難地は6,442箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が245団体で実施されている。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約52万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生し、住民の生命、身体、財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年7月に地震防災対策特別措置法が制定され、同法に基づきすべての都道府県は平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を図るべく事業の推進を図ったが、これを実施する都道府県及び市町村における財政事情の悪化等により、防災基盤の整備は計画どおりに進められなかった(達成率76.3%)。 このような中で、災害に強い防災基盤を整備し地域住民の安心・安全を確保するためには、計画的かつ重点的な事業の実施が不可欠であるとの認識から、議員立法により同法が一部改正され、平成13年度から平成17年度までを計画期間とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災基盤の整備に向けた事業への積極的な取り組みが続けられている。 特に、大規模災害時において、避難所や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などの耐震化については、各種国庫補助制度による補助事業のほか、消防庁では単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。しかしながら、その耐震改修の進捗率は、平成15年4月1日現在で約51%にとどまっていることから、避難所に指定されている公共施設や災害対策の拠点となる庁舎等を中心に、早急かつ計画的に取り組む必要がある(消防庁の調査結果によれば、地方公共団体では、平成16年度から平成19年度までに、学校施設をはじめとした公共施設約5,200棟の耐震改修を実施する計画である。)。 さらに消防庁としては、平成17年6月に各都道府県に対して定量的な目標を設定した「耐震化緊急実施計画」の策定を要請し、計画的、効果的な耐震化の推進を図っている。また、新潟県中越地震で震度6弱以上を観測した地域において、4箇所の市町村役場が地震の揺れにより被害を受け、使用できない状態となり、災害の初動対応に大きな支障を来したことを受け、消防庁において、耐震診断・改修工事の効果的な実施手法や事例を紹介する「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、全ての地方公共団体へ配布するとともに、消防庁ホームページにて公表している。 また、個人住宅についても、阪神・淡路大震災の死者の8割以上が建物の倒壊等によるものであったことから、平成17年9月に中央防災会議決定された建築物の耐震化緊急対策方針においても、地域住民への意識啓発や耐震診断の徹底した実施の促進等、対策を早急に推進することとしている。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組み 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部の公表する地震活動の評価結果等を参考に地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、更に教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能の事態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成17年4月1日現在、全国で、約7万7,500基を整備してきた耐震性貯水槽については、今後も整備を推進していく必要がある。特に耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債等の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑えるためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対応を現場へ迅速かつ的確に伝達することが重要であり、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を進めていく必要がある。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある(第2章第9節を参照)。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震において、消防庁では、応急体制活動要領に基づく各班ごとの初動対応により、情報の集約、整理、広域応援対応等を速やかに行ったが、初動期の情報収集に当たって、NTT回線も防災行政無線もつながらず、山間部の一部で情報孤立地域が発生するなど、他の無線系の活用や非常用電源の整備等、非常時の通信確保について課題を残した。このことから、消防庁では「初動時における被災地情報収集のあり方検討会」を開催し、大規模災害発生の際の初動時における被災地情報収集のあり方や災害時の情報通信技術の活用について検討を行い、政府及び地方公共団体等に提言を行ったところである(囲み記事「初動時における被災地情報収集について」参照)。 また、非常用電源と防災行政無線の点検確認、市町村長自らの危機管理意識の高揚及び消防本部との連携強化を目的に、平成16年12月から平成17年1月までの延べ11日間において、41道府県の2,630市町村を対象とした全国市町村通信訓練を実施した。 なお、阪神・淡路大震災後、自治体ごとに整備された震度情報ネットワークにより震度情報を早期に収集しているところであるが、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震や同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震において震度情報の送信が遅延するなどの障害が発生しており、早急な改善が望まれている。
5 初動体制の整備 初動対応の如何が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすなど、大規模災害時は発災直後から情報の収集・伝達等の臨機応変で的確な対応が極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 このうち、地方公共団体における防災担当職員の宿日直体制の整備など夜間・休日も含めた対応については、職員の参集や他機関との連絡を迅速かつ円滑に行う体制が確保されている必要がある。平成17年4月1日現在、都道府県では21団体において職員の宿日直、14団体において防災専門の嘱託職員による対応、市町村では、1,292団体において職員の宿日直、951団体で消防機関による対応、このほか守衛や民間委託警備員等様々な対応がとられている。なお、国民保護業務の追加にも配慮し、24時間対応での情報収集、連絡体制の推進を図っていく必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心に防災担当部局と一元化した組織体制を整備していく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震、東南海・南海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定を適切に実施するとともに、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、災害時相互応援協定に基づく救援活動が物資の供給と職員応援の両面から行われ成果を上げたが、初動期においては必ずしもスムーズに機能せず、応援側自治体からは、必要とされる物資や業務をできるだけ早く被災自治体から教えて欲しいという声が聞かれた。 今後も、できるだけ多くの自治体での相互応援協定締結を推進するとともに、自治体同士が普段から訓練等で連絡を取り合い、災害時には受援側の窓口を早期に立ち上げることができるような体制づくりを推進する。 また、阪神・淡路大震災を踏まえ、地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震等の切迫性が高まり、NBCテロ災害の発生等が懸念されることから、平成15年度の消防組織法の一部改正により法定化され、平成16年4月からは、大規模災害発生時等における全国的な観点からの緊急対応のため、消防庁長官による出動指示が可能となった他、国の国庫負担制度についても定められるなど、緊急対応体制の充実・強化が図られている。なお、消防庁では平成15年12月に東海地震及び南関東直下型地震に係る緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを作成し、緊急対応体制の更なる強化を図っている。 新潟県中越地震(午後5時56分頃発生)においては、発災後の広域的な応援出動に対応するため、発災直後の午後6時25分、新潟県の要請を待たないで、消防庁長官が消防ヘリコプターの出動を要請し、午後7時20分の新潟県知事からの出動要請を受けて、各都県知事に対して緊急消防援助隊の出動要請を行った。 同地震災害において、緊急消防援助隊は、1都14県から、累計480隊2,121人、消防防災ヘリ20機が出動し、453人を救助した。
7 実践的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日頃から実践的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実践的な訓練になるよう努める必要があり、地域の総合的防災力向上のため、参加型図上演習(DIG)の実施についても推進していく必要がある。 また、大規模災害時にあっては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予想されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実践的なものとなるよう、状況予測型訓練(イメージトレーニング方式)、災害図上訓練DIG(災害想像力ゲーム方式)や図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)など目的や実情に応じた訓練に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。 消防庁では、度重なる風水害や地震災害での実災害対応及び数々の図上訓練の実施により初動対応における情報収集や班編成のあり方などの改善を図ってきたところであるが、平成17年4月19日には南関東直下型地震を想定した図上訓練を関係機関と合同で実施するとともに、平成17年6月10日・11日の両日には、静岡県静岡市において全国の緊急消防援助隊が参加した「緊急消防援助隊全国合同訓練」を実施するなど、実動訓練及び図上訓練を通じた災害対応における防災力の向上を図っている。加えて、平成17年7月から8月にかけて市町村長及び都道府県・市町村の危機管理担当職員等を対象とした「防災危機管理ブロック・ラボ」を全国3ブロックで開催し、市町村における実践的な図上訓練の実施を促進している(囲み記事「防災危機管理ブロック・ラボの開催について」参照)。
8 津波対策の推進 平成15年5月26日に発生した宮城県沖を震源とする地震においては、津波の怖さを認識しておきながら、地震の発生あるいは避難勧告等の発令があっても避難しないといった住民の行動が多くみられた。また、同年9月26日に発生した十勝沖地震においては、市町村による津波避難勧告が適切に発せられなかった事例等が見受けられた。 さらに、平成16年9月5日に発生した東海道沖を震源とする地震においても、気象庁から津波警報が発せられた42市町村のうち、30市町村で避難勧告が発せられなかった(第1−7−17表)。 津波被害軽減の基本は「避難すること」であり、海岸線を有する市町村においては、地域防災計画上の規定の見直しや発災時の迅速な避難勧告等、的確な津波避難対応に努めることが必要であり、住民も受け取った情報を自分自身の問題として捉え、実際に避難行動を起こす必要がある。 実効性のある津波避難対策を実施するうえで、海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示すとともに、東南海・南海地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策の一環として、モデル地域を選定し、同指針やマニュアルに基づき関係県、市町村及び住民が連携して、地域ごとの津波避難計画を策定する事業に取り組み、この成果を取りまとめ、全国の海岸線を有する市町村に配布しており、今後とも、地域ごとの津波避難計画の策定を推進することとしている。 一方で、この津波避難計画に基づく避難を円滑に実施するための避難地や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進や施設の安全性向上を図るなど、津波防災の観点からのまちづくりを推進する必要がある。 こうした津波避難計画の策定や津波防災施設の整備等を推進するとともに、日頃から、住民等に対する津波に関する防災知識や津波避難計画の周知、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、いつでも迅速かつ円滑な避難行動ができる体制を整備しておくことが重要である。 また、消防庁において、「防災のための図記号に関する調査検討委員会」を開催し、津波避難に係る標準的図記号として、「津波注意」、「津波避難場所」、「津波避難ビル」の3種の図記号を決定した。さらに、国際的な津波防災対策の重要性が叫ばれる中で、ISO(国際標準化機構)規格化に向けても提案を行っているところである。■津波注意・図記号の意味 地震が起きた場合、津波が来襲する危険がある地域を示す。・図記号の目的 当該地域が津波による被害を被る危険がある地域であることを認識させ、地震発生時には直ちに当該地域から内陸部、高台に避難させる。■津波避難場所・図記号の意味 津波に対して安全な避難場所・高台を示す。・図記号の目的 津波からの避難先となる安全な場所や高台を示すとともに、地震発生時には、そうした避難場所へ向かわせるもの。■津波避難ビル・図記号の意味 津波に対して安全な避難ビルを示す・図記号の目的 津波からの避難に際し、近くに高台がない場合、津波からの避難が可能な原則としてRC又はSRC構造の鉄筋コンクリート造3階建以上のビルを示すとともに、地震発生時に避難ビルへ向かわせるもの。
地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書(平成16年度)について 現状における市町村の地震防災訓練では、実技・実働訓練に比重が置かれたものは多く実施されていますが、災害時の危機管理能力の向上・習得を意図した図上型訓練は一部に限られています。特に、市町村長や都道府県の防災担当の幹部には、災害時に一刻を争う意思決定が求められ、リーダーシップの重要性がクローズアップされることから、図上型訓練の企画・実施による意思決定能力の一層の向上を図ることが求められます。このようなことから消防庁では、市町村や都道府県がより実戦的、効果的な地震防災訓練を実施できるよう、「地震防災訓練(図上型訓練)実施要領作成研究会(座長;吉井博明 東京経済大学教授)」において、図上型訓練の実施要領モデルの検討を行い、平成17年3月に本報告書を作成いたしました。(図上訓練の手法)〔1〕 状況予測型図上訓練(イメージトレーニング方式)《目的・ニーズ》・最小限の準備時間で、防災上の課題をくまなく把握したい。        ・首長が参加する図上型訓練を実施したい。        ・経験が乏しい職員の意識啓発をしたい。〔2〕 災害図上訓練DIG(災害想像力ゲーム)《目的・ニーズ》・地図に危険箇所や防災施設を書き込み、防災力や地域の脆弱性を把握したい。        ・住民、ボランティアなど協同して取り組み、発見した問題点・課題を共有したい。        ・まずは気軽に図上型訓練を始めてみたい。〔3〕 図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)《目的・ニーズ》・特定条件下の詳細な状況付与に基づく情報収集・伝達、意思決定訓練を実施したい。        ・参加者の役割等に応じた災害対応力や防災意識を向上できる訓練としたい。        ・被災想定やマニュアルを見直したい。
防災危機管理ブロック・ラボの開催について 消防庁では、平成17年7月から8月にかけて、全国3ブロック(西日本、関西・中部、東日本)で、「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催し、市町村長や都道府県・市町村の防災担当幹部の方々、延べ629人が参加されました。 地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村において、迅速かつ効果的な応急対策を行うためには、地域住民と市町村さらに都道府県の危機管理部門との間の信頼関係の構築による的確な初動体制が不可欠です。 「防災危機管理ブロック・ラボ」は、このような大規模な災害に際し、起こりうる様々な条件を想定した実戦的な図上訓練の実施を推進することによって、市町村長のリーダーシップによる的確な意思決定と応急体制の点検、住民と行政の信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、各ブロック内の市町村長(又は市町村防災担当幹部職員)及び都道府県・政令指定都市の危機管理担当幹部職員の方々の参加を得て開催しました。主催:消防庁、(財)消防科学総合センター      後援:全国知事会   福岡県(西日本ブロック)              全国市長会   全国市町村国際文化研修所(関西・中部ブロック)   全国町村会   市町村職員中央研修所(東日本ブロック)*平成18年度も5月下旬〜7月中旬に防災危機管理ブロック・ラボを開催する予定です。
第8節 特殊災害対策等[原子力災害対策]1 原子力災害等の現況と最近の動向(1)中部電力株式会社浜岡原子力発電所廃棄物減容処理装置建屋事故 ア 事故の概要 平成17年6月30日21時10分頃、中部電力株式会社浜岡原子力発電所廃棄物減容処理装置において金属等の不燃性廃棄物の溶融処理を行っていたところ、溶融物の入った容器(キャニスタ)が転倒し、火災となった。 なお、この事故による人的被害及び外部への放射能による影響はなかった。 イ 消防庁及び消防機関の活動 浜岡発電所からの119番通報を受けて、相良町・御前崎市広域施設組合消防本部(現牧之原市・御前崎市広域施設組合消防本部)から7隊18人、御前崎市消防団から15隊150人が出動した。到着後、現場指揮本部を設置し、22時40分に鎮火を確認した。 消防庁としては、事故状況の把握のため、独立行政法人消防研究所の職員1人及び消防庁職員1人を現地に派遣した。この事故を踏まえ、同年10月17日、今後の消防活動に資することを目的として、原子力発電所立地道県、関係消防本部等の担当者による意見交換会を開催した。
(2)その他の原子力事故等 その他の原子力施設における最近の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の核燃料サイクル開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし火災となった事故。イ) 平成9年3月11日に核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成11年9月30日に茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設において、臨界に達する事故が発生し、従業員3人が重篤の放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事した従業員を含む多数の者が被ばくした事故。エ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク内の清掃作業中に、当該タンク内で体調不良となった作業員1人を救出するためタンク内に入った別の2人の作業員のうち1人が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案(病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明)。オ) 平成13年11月7日に中部電力株式会社浜岡原子力発電所の定格熱出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系配管が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建屋内に漏えいした事故。カ) 平成14年2月9日に東北電力株式会社女川原子力発電所の定期点検中の2号機の原子炉建屋地下1階の制御棒駆動機構補修室において、作業員が弁点検用資機材の後片づけの一環として浸透探傷用スプレー缶等の廃棄処理作業を実施中に出火し、ビニールシート等を焼損するとともに、作業員2人が火傷を負った火災。 なお、放射性物質による影響はなかったが、平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損する火災があった。また、火災の影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407人に避難勧告が出された。キ) 平成16年8月9日15時22分頃、関西電力株式会社美浜発電所3号機が定格熱出力運転中のところ、タービン建屋2階、脱気器側の天井付近にある給水加熱器から脱気器への給水ラインである復水配管(直径約560mm、炭素鋼)の破口(最大で配管軸方向に515mm、周方向に930mm)により、蒸気及び高温水(約140度、10気圧)が噴出した。同建屋全体に蒸気が充満し、付近にいた作業員11人が熱傷を受け、5人が死亡、6人が負傷した。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓から原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、平成11年12月に原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等法令等の整備が行われた。 また、平成12年8月に原子力災害危機管理関係省庁会議において、関係省庁が一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領を取りまとめた原子力災害対策マニュアルが作成された。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて「原子力施設等の防災対策について」に改訂され、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1−8−1図、第1−8−2図、第1−8−3図)及び核燃料物質等の輸送時の防災対策についても盛り込まれた。 また、平成13年6月には、国、地方公共団体、原子力事業者等の医療に携わる者の責務等の明確化について、平成14年4月には、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策についてそれぞれ改訂が行われた。さらに平成14年11月には、原子力災害時におけるメンタルヘルス(心の健康)に関する対策について、平成15年7月には、緊急被ばく医療体制における地域ブロック化についてそれぞれ改訂が行われた。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。また、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。さらに、平成16年3月には緊急被ばく医療の実施体制に係る修正を行った。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設所在地等の23都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るため、地域防災計画の見直しを進めている。
(4)消防活動の充実等 原子力施設所在市町村等に対して、同報系無線及び放射線防護資機材の整備のための補助を行うとともに、原子力施設等における消防活動用資機材の調査研究、原子力災害時における消防応援体制に関する検討を実施した。 また、原災法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、平成13年5月に各都道府県及び消防本部へ配布している。さらに、消防隊員が災害現場で活用できるよう必要とされる知識、活動要領、留意点等をコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」を平成16年5月に、原子力災害における消防活動のケーススタディを内容とする「原子力施設等における消防活動訓練マニュアル」を平成16年6月に、また、除染活動に関して「原子力施設等における除染等消防活動要領」を平成17年3月に、それぞれ各都道府県を通じ、全消防本部に配布している。 なお、原子力災害の研修として、消防大学校においては、平成12年度から幹部職員を対象に実施していた「放射性物質災害講習会」を、平成16年度からは「NBC災害講習会」として再編し実施しているほか、文部科学省等において消防職員、消防団員及び自治体職員を対象とした各種原子力防災研修が実施されている。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、放射性同位元素(RI)の輸送については放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画には、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えに関する記述が加えられた。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において放射性物質輸送の事故時安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等についてマニュアルとして取りまとめ、平成13年5月に各都道府県及び消防本部に通知した。 また、平成14年3月に、原子力災害危機管理関係省庁会議において、原子力災害対策マニュアルに輸送編が追加された。
3 原子力災害対策の課題 消防庁では、JCOウラン加工施設における臨界事故等を教訓とし、原災法の制定、原子炉等規制法の改正及び防災基本計画原子力災害対策編の見直しが行われたことに伴い、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアル、原子力施設等における消防活動対策マニュアル等の見直しを行った。さらに、平成15年6月に、消防組織法を改正し、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化として、二以上の都道府県に及ぶ大規模な災害又は毒性物質等による特殊災害対策に対応するため、運用上設けられていた緊急消防援助隊を法定化し、消防庁長官による出動の指示を創設するとともに、消防学校の教育訓練の基準を改正し、特殊災害科を新たに加えた。また、従来、主に原子力施設の災害対応のための資機材について整備を推進してきたところであるが、今後、テロ災害を含めた放射性物質災害対応のため緊急消防援助隊をはじめ各消防本部における放射線防護資機材の整備を図る必要がある。さらに、各消防学校等における教育・訓練体制の整備等により原子力防災体制の充実を図ることが必要である。 また、原子力緊急事態を想定した実践的な防災訓練の実施を推進し、その結果を地域防災計画等に反映し、より実効性のある原子力防災体制を構築していく必要がある。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル(地下鉄に接続するトンネルを含む。)、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、さらに長大海底トンネルとしての防災対策を取りまとめている。 次に、平成15年2月に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、消防庁では、国土交通省と共同で、「地下鉄道の火災対策検討会」を設置し、ガソリンによる放火火災を想定し、地下鉄道の不燃化の推進と旅客の安全な避難対策を基本として、我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を進め、平成16年3月に検討結果を取りまとめた。主な内容については次のとおりである。
(1)車両の火災対策 我が国の車両は、一定の不燃性や難燃性などの防火性能を備えているが、更に大火源火災を考慮し、以下の措置を講じる必要がある。ア 防火性能が低い材料及び溶融滴下する材料は、車両天井部への使用を制限する。イ 従来の車両材料燃焼試験に、溶融滴下の判定を追加するとともに、新たに大火源火災における防火性能を判定するための燃焼試験を追加する。ウ 隣接車両への煙の流入等を防止するため、連結する車両間に、通常時閉じる構造の扉を設置する。
(2)地下駅・トンネルの火災対策 異なる2以上の避難経路を設けること等の現行の基準に加え、大火源火災に対し、旅客の安全な避難を確保するとともに消防活動を支援するため、以下の措置を講じる必要がある。ア 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客が安全に避難できる時間を確保するための排煙設備を設置する。イ 旅客の安全な避難を確保するとともに、消防活動を支援するため、ホームとコンコースを結ぶ階段に、出火場所からの煙や炎を遮断するための防火シャッター等を設置する。ウ 旅客の避難経路を確保するため、袋小路部等には、売店を設置しない。これ以外の箇所に、売店を設置する場合には、自動火災報知設備を設置することとし、コンビニ型売店には、これに加え、スプリンクラー設備を設置する。エ 消防隊員が地上と通信するための無線通信補助設備を設置する。また、駅の規模等により、消防隊員が使用する機器のための非常コンセント設備を設置する。
(3)旅客の避難誘導等に関する対策 旅客の安全な避難誘導をより確実に行うため以下の措置を講じる必要がある。ア 火災発生時の運転取扱上徹底すべき事項を盛り込んだマニュアルを整備する。イ 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客の避難誘導の方法等火災発生時に係員が行うべき事項を定めたマニュアルを整備する。ウ 消火器、非常通報装置及びドアコックの車内表示を、ピクトグラム(絵文字)を使用する等により統一する。エ 避難経路図の駅への表示、消火器配置図の車両への表示等を行うとともに、通常時の構内放送、車内放送により、旅客に対し危機管理意識の高揚を図る。
(4)消防機関との連携 駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、鉄軌道事業者と消防機関が共有するとともに、定期的に両者が連携した訓練を実施する。 この検討結果を踏まえ、国土交通省において、鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準の一部改正が行われたことに伴い、消防庁としても、地下鉄道における火災対策について、平成16年12月17日付で都道府県を通じ各消防機関に周知を行った。 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。 なお、平成16年中における道路トンネル火災は17件となっている(第1−8−4図)。 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や日本道路公団等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 国土交通省は都市部の道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、「乗用車専用道路(小型道路)」の導入を可能とする法令改正を平成15年度に行ったところである。この「乗用車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は、車両火災等における消防活動の課題について検討を行っているところであり、消防庁としても、「乗用車専用道路」の導入時においても円滑な消火・救急活動が確保されるようその対策について検討していく。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が公布され、平成13年4月1日に施行された。 また、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ4回開催された。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、消火活動や救助活動が従来の施設と比較して困難さが増すことが予想されている。 このため、大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を平成16年2月に消防庁、国土交通省等関係機関において検討を行い、取りまとめた。 今後、大深度地下を利用する事業の計画に当たっては、同指針等を踏まえた安全対策が講じられるように、適切に指導、助言等を行う必要がある。 また、消防庁においては、地下街やトンネル等の消防活動が困難な空間において、消防隊員の安全確保を図りつつ、円滑な消防活動を図るため、独立行政法人消防研究所の協力も得ながら、消防隊員の位置特定システムの開発を行っている。 平成12年度より開発を開始し、平成16年度には建築物内での公開実験を行っており、現在、実用化に向けて検討・開発を進めているところである。 当該システムは、〔1〕慣性航法装置・電子タグ等を用いた消防隊員の位置特定機能、〔2〕3次元数値地図を活用した消防隊員の位置表示機能、〔3〕無線通信を活用した現場指揮本部からの指示命令に対する応答機能等を有する、小型・軽量な可搬式、かつ汎用性の高いシステムであり、実用化の暁には大深度地下空間を含む地下空間における消防活動に多大な効果を上げることが期待されている(囲み記事「消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システム」参照)。
[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成16年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故(以下「ガス事故」という。)のうち消防機関が出動したものの総件数は、1,301件(対前年比43件減)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが735件(同60件減)、液化石油ガスに係るものが566件(同17件増)となっている(第1−8−5図)。ア 事故の約8割は漏えい事故 事故を態様別にみると、漏えい事故が1,025件(ガス事故全体の78.8%)、爆発・火災事故が276件(同21.2%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が659件(都市ガス事故全体の89.7%)、爆発・火災事故が76件(同10.3%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が366件(液化石油ガス事故全体の64.7%)、爆発・火災事故が200件(同35.3%)となっている(第1−8−5図)。イ 事故の発生場所の7割は消費先で発生 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが967件(ガス事故全体の74.3%)、ガス導管等消費先以外におけるものが334件(同25.7%)となっている(第1−8−6図)。 消費先において発生した事故を、発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等発生原因が消費者に係る場合が505件(消費先において発生した事故全体の52.2%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が123件(同12.7%)、その他の原因が339件(同35.1%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が248件(都市ガス事故全体の52.2%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が56件(同11.8%)、その他の原因が171件(同36.0%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が257件(液化石油ガス事故全体の52.2%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が67件(同13.6%)、その他の原因が168件(同34.2%)となっている。
(2)ガス事故による死傷者が増加 平成16年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は13人(対前年比1人増)、負傷者数は264人(同30人増)である。死者のうち、都市ガスによるものは6人(死者数全体の46.2%、対前年比3人増)、液化石油ガスによるものは7人(同53.8%、同2人減)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは85人(全体の32.2%、対前年比18人増)、液化石油ガスによるものは179人(同67.8%、同12人増)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが2人(死者数全体の15.2%)、爆発・火災事故によるものが11人(同84.8%)、負傷者数では漏えい事故によるものが66人(負傷者数全体の25.0%)、爆発・火災事故によるものが198人(同75.0%)となっている(第1−8−7図)。
(3)自損行為によるガス事故 平成16年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は81件(ガス事故全体の6.2%、対前年比1件増)、これらの事故による死者数は4人(死者全体の30.8%、同2人減)、負傷者数は62人(負傷者全体の23.5%、同1人減)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは56件(自損行為に起因する事故全体の69.1%、対前年比7件減)、爆発・火災事故に至ったものは25件(同30.9%、同8件増)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならない。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならない。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約7割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成16年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出動したものの総件数は、67件(対前年比14件減)で、火災が8件(同4件増)、漏えいが50件(同5件減)、それ以外のものが9件(同13件減)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、アンモニアが12件(全体の17.9%)、硫酸が7件(同10.4%)、水酸化ナトリウムが6件(同9.0%)、以下塩素等の順になっている(第1−8−8図)。
(2)事故による死傷者数 平成16年中の死者は2人(対前年比2人減)で、負傷者は69人(同9人減)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち、特に消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の2の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならない(第1−8−9図)。 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。 なお、消防庁では救助用資機材として陽圧式化学防護服や防毒マスク等の整備を推進している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努めるとともに、立入検査等を通じて貯蔵・取扱いの安全対策について指導を徹底する必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく。
(3)装備・資機材の整備 有毒ガスの発生など特殊な状況下では、通常の消防装備・資機材では的確な消防活動を行うことが困難な場合があることから、陽圧式化学防護服及び防毒マスク等の整備を一層推進する。 また、危険物災害等特殊な災害を想定した消防資機材の性能等についての自主的な研究・協議に関する活動についても推進している。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成16年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成16年1月1日から平成16年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)111港における海上災害で消防機関が出動したものは32件あり、このうち火災によるものが13件(全体の40.6%)、油の流出によるものが11件(全体の34.3%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が23件で全体の71.9%を占めている(第1−8−1表)。 最近の主な船舶火災としては、平成14年10月1日に長崎港で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」において、ぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 また、平成14年11月26日には、伊豆大島において座礁していたバハマ船籍の自動車運搬船「ファルヨーロッパ号」で出火、大量の煙が発生したため、付近住民が一時的に自主避難をする事態となった。 油の流出災害としては、平成14年12月5日に茨城県日立港において、北朝鮮船籍の貨物船「チルソン号」が座礁し燃料油が流出する事故が発生している。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 海上における油の大量流出事故に関しては、平成9年1月に発生したナホトカ号海難・流出油災害の教訓を踏まえ、油汚染事故発生時の即応体制等をより強化するため、平成9年12月に「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」を改正するとともに、平成10年5月に海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正している。 また、平成9年6月に防災基本計画の海上災害対策編が示されたことに伴い、地域防災計画の見直しを含め、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めている。 そのほか、平成15年6月に消防庁では、全国の沿岸海域を有する都道府県及び市町村に対して、漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況とその意見に関する調査を行った。その把握結果について、関係省庁に通知するとともに、都道府県に対し、管内の沿岸海域を有する市町村の地域防災計画に、漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定されるよう指導・助言した。
[航空災害対策]1 航空災害の現況と最近の動向 平成16年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は27件発生しており、そのうち飛行機事故は17件となっている。また、民間航空事故による死者は14人、負傷者は25人となっている(平成16年版航空・鉄道事故調査委員会調べによる。)。 平成16年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは8件となっている。なお、消防機関が出動したものは43件あり、このうち飛行場内が37件、飛行場外が6件となっている。 最近の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)や平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生している。
2 航空災害対策の現況 航空事故は、いったん発生すれば、大惨事となるおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が空港管理者により行われているが、消防庁では、国土交通省等と空港災害対策研究会議を設け、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準や航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者及び地方公共団体等関係機関に示し、航空災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、化学消防ポンプ自動車の整備について国庫補助を行うなど、空港及びその周辺で発生する航空災害に対処すべく消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成17年4月1日現在、空港所在市町村の91消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空災害対策の課題 航空事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においても、空港周辺地域での航空災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。
消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システム 消防庁では、平成12年度以降、大深度地下等の消防活動が困難な空間における消防活動を支援するため、消防隊員の位置特定システムの開発を進めています。 平成14年度には、隊員の位置を把握する方法として慣性航法装置(加速度計とジャイロ(注1)を用いた装置)を活用して隊員の位置を特定し、3次元数値地図に表示するシステムを開発し、また、平成15年度には、同装置の体積を約4分の1及び重量を2分の1に抑えるなどの開発を行いました。 平成16年度は、平成15年度までに開発した各要素技術(消防隊員の位置特定機能、3次元数値地図を活用した位置表示機能、無線通信を活用した現場本部からの指示命令に対する応答機能等を有する小型軽量な可搬式のシステム)について、それぞれの機能の相互接続を行い、機能確認及び評価を行いました。 そして、消防研究所の協力を得て、このシステムを実際の建築物内で動かす公開実験を平成17年3月25日に実施しました。 今後は、これまでの開発結果を踏まえ、地下空間での使用に適した通信システムの評価・検討や新たな技術である電子タグ(注2)の活用等、このシステムを実用化するための検討・開発を行っていきます。(注)1 ジャイロ…角度または角速度を計測するための機器   2 電子タグ…集積回路(IC)とアンテナを内蔵した部分で、個別の識別情報等が格納でき、その情報を電波でやりとりすることが可能
第2章 消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 いわゆる常備消防は、平成17年4月1日現在で848消防本部あり、この本部の下に、消防署が1,704署、出張所が3,225所あり、消防職員は15万6,082人となっている。 前年と比較すると、市町村合併と広域再編が進められたこと等により、本部は38本部減少しており、さらに、平成18年4月1日には32本部減少して、816本部となる見込みである。 他方、前年と比較して消防署は5署、消防職員は558人増加しており(第2−1−1表、第2−1−1図)、また、女性職員も2,835人(前年比104人の増)となっており、年々増加している。 ア 常備化の現況 現在の市町村における消防体制は、大別して、〔1〕消防本部及び消防署(いわゆる常備消防)と消防団(いわゆる非常備消防)とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、〔2〕消防団のみが存する地域がある。 平成17年4月1日現在、常備化市町村は、2,347市町村となり、常備化率は市町村数で98.0%(市は100%、町村は97.0%)に達し、人口の99.9%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。 イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化(昭和40年4月1日現在、常備化市町村は600市町村)に伴い、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が進められた。 その結果、平成17年4月1日現在、組合による消防本部は385本部(うち広域連合は19本部)に達しており、その構成市町村数1,720市町村(332市、1,116町、272村)は常備化市町村全体の73.3%に相当する。また、事務委託市町村数は164市町村(26市、107町、31村)に達している。さらに、平成6年度以降、市町村合併により88本部が37本部に再編されている。
(2)消防団 消防団は、常備消防と同様に市町村の消防機関であり、その構成員である消防団員は、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員である一方、他に本業を持ちながら、自らの意思に基づく参加、すなわちボランティアとしての性格も併せ有している。 平成17年4月1日現在、全国の消防団数は2,963団、消防団員数は90万8,043人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設置されている。 消防団は、・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務)・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約6倍)・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)といった3つの特性を活かしながら、初期消火や残火処理等を行っているほか、大規模災害時には住民の避難誘導や災害防御等を行っており、特に消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っているなど、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。 また、消防団は、平常時においても地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、コミュニティの活性化に大きな役割を果たしている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が38.3%を占め、また、平均年齢は37.6歳となっている(第2−1−2図)。
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2−1−2表)。
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が75.5%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は23.5%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2−1−3表)。
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、消防電話及び消防救急無線等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話(119番)は、加入電話又は公衆電話によって消防機関に火災、救急、その他の災害の発生等を通報するもので、平成17年4月1日現在、全国の消防機関に1万4,780回線が設置されている(第2−1−3図)。 また、近年では、携帯電話等の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数の全体に占める割合は20%を超えている。現在、携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部へ転送又は復唱して伝達する方式をとっている。この方式では、転送にかかる時間的遅延などの問題が指摘されていることから、消防庁では、平成17年度中を目途に携帯電話の発信地を管轄する消防本部で119番通報を直接受信可能なシステムへの移行を推進している。 さらに今後は、電気通信技術の変革により、IP電話や直収電話など電話サービスの多様化が始まっており、これらの新たな電話からの119番通報にも対応していく必要がある。イ 消防緊急通信網 消防電話は、消防本部・消防署等の消防機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話であり、消防機関相互の連絡に大きな役割を果たしている。また、消防・救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するとともに広域的な消防応援に対応するため、消防救急無線について、現行のアナログ方式より周波数の有効利用やデータ通信の点で優れているデジタル方式への移行を平成28年5月までに完了することとしている。この整備を効果的かつ効率的に行うため、広域化・共同化の取組みを進めている。 また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビ電送システム等、高度な機能を持った各種消防通信施設を導入する消防機関も徐々に増えている。これらの施設は多額の経費を要することなどから、小規模消防本部だけでは整備することができないことが多い。そのため、通信指令管制業務の効率化を図る観点からも一定エリア内に高機能な通信指令施設を設けるとともに、その施設の共同運用を進め、より広い範囲からの通報を受信し処理を行い、管轄消防本部へ割り振るシステムを整備するなど、通信指令業務の高度化に向けた取組みが求められている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成15年度の消防費歳出決算額は1兆8,200億円(前年度1兆8,593億円)で、前年度に比べ393億円(2.1%)の減少となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額49兆7,846億円(前年度50兆4,260億円)に占める消防費決算額の割合は3.7%(同3.7%)となっている(第2−1−4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成15年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万6,519円(前年度3万7,744円)であり、住民1人当たりでは1万4,351円(同1万4,676円)となっている(第2−1−4表)。ウ 経費の性質別内訳 平成15年度消防費決算額1兆8,200億円の性質別内訳は、人件費1兆3,815億円(全体の75.9%、前年度75.4%)、物件費1,611億円(同8.9%、同8.8%)、普通建設事業費2,010億円(同11.0%、同11.8%)、その他764億円(同4.2%、同4.0%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が196億円(1.4%)、普通建設事業費が188億円(8.6%)、また物件費が27億円(1.6%)減少している(第2−1−5表)。
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成15年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,631億円(全体の91.4%、前年度91.0%)、次いで地方債883億円(同4.9%、同5.6%)、国庫支出金231億円(同1.3%、同1.2%)となっている(第2−1−6表)。イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、平成16年度の単位費用は1万800円(対前年度伸び率△0.9%)、基準財政需要額は1兆6,953億円(対前年度伸び率△2.2%)であった。平成17年度は、メディカルコントロール体制の充実とともに、消防団員手当が引き上げられた一方で、給与単価の引き下げ等により、単位費用は1万800円(対前年度同額)の措置であり、さらに段階補正の見直し等の影響により、基準財政需要額は1兆6,468億円(同△2.9%)に減少している(第2−1−7表)。ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがある。国は、消防施設強化促進法による法律補助及び予算措置による補助により、市町村等(一部都道府県を含む。)の消防防災施設等の整備に対して、予算の範囲内で、原則として補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の引上げが規定されているものがある。具体的には、地震防災対策強化地域の市町村及び地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村並びに原子力発電施設等立地地域として指定された市町村に対しては10分の5.5の補助を行っている。 また、緊急消防援助隊関係施設の整備に対しては、予算措置により補助を行っていたところであるが、平成15年6月の消防組織法の一部改正により緊急消防援助隊が法定化されるとともに、一定の施設整備に要する経費については、予算の範囲内において国が補助するものとされ、平成16年度から補助基準額の2分の1の補助を行っている。 平成17年度予算においては、一般歳出を前年度の水準以下に抑制することを目標に、歳出全般にわたる徹底した見直しを行うこととされ、特に、三位一体改革において国庫補助負担金について17年度及び18年度の2か年度間で3兆円の廃止・縮減等の改革を行うとともに、併せて地方公共団体に対する奨励的補助金は前年度の5%相当額を縮減するという厳しい制約が課された。 このような状況の下で、常備消防に係る設備整備に係る補助金については三位一体改革により税源移譲されたものの、緊急消防援助隊関係施設・設備の義務的補助金の拡充(対前年度当初予算比4.3%増の50億円)を図ることとし、総額131億9,300万円(対前年度当初予算比17.1%減)を確保したところである(第2−1−4図)。エ 地方債 消防防災施設等整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成15年度地方債許可額は、717億600万円で前年度に比べ214億3,800万円(23.0%)の減少となっている(第2−1−8表)。 地域における「災害等に強い安心安全なまちづくり」を目指し、住民の安全の確保と被害の軽減を図るため、防災対策事業として防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業が推進されているが、これらの事業には防災対策事業債が充当され、その元利償還金の一部については地方交付税措置が講じられている。 防災基盤整備事業は、消防防災施設整備事業、消防広域化対策事業、緊急消防援助隊施設整備事業を対象としており、平成17年度からは、国民保護の観点から消防団に整備される施設や、消防本部又は消防署に整備される施設等も対象としている。 また、公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地促進対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺整備助成補助金等がある。
(3)都道府県の消防防災費 都道府県の消防防災費の状況をみると、平成15年度における歳出決算額は940億6,200万円であり、平成15年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.19%である(第2−1−9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防等に要する事務費等である。 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成15年度における補助金の決算額は116億1,800万円で、前年度に比べて17億7,300万円(18.0%)増加している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に国庫補助に準じて定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は9,900万円で、前年度に比べて1,600万円(19.3%)増加している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成17年度の予算額は、前年度より11.3%減の195億2,924万円となっている(第2−1−10表)。 総額のうち、131億9,283万円(対前年度比17.1%減)は、消防防災施設整備費補助金及び消防防災設備整備費補助金に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点整備 ア 消防の広域再編の推進 現在管轄人口が10万人に満たない消防本部が全体の約3分の2を占めており、小規模消防本部の広域再編により組織面での対応力を推進する必要がある。 消防庁では、平成13年3月に市町村合併との整合性を確保しながら消防の広域再編を推進するための指針を策定し、都道府県の対応を要請した。 これらに併せ、具体的な助言、情報の提供等を行う「消防広域再編アドバイザー」を導入したほか、一定の要件を満たす地域を「広域化重点支援消防」として指定し、各種の財政支援を講じてきた。 また、全国で市町村合併の推進の動きが活発になっていることを踏まえ、平成15年10月に、消防事務の効率・適正な遂行の観点から、市町村合併に伴う消防本部の広域再編に係る留意事項をとりまとめ、管轄区域の拡大に取り組むよう通知した。 特に、それまで組合を構成していた市町村の一部が合併し、当該合併後の市町村が単一で消防本部を設置することなどにより、結果として従来の消防本部の管轄区域が縮小され、消防本部の一層の小規模化を招くことがないよう要請している。 さらに、平成17年10月に「今後の消防体制のあり方に関する調査検討会」を発足させ、現行の消防体制の現状と問題点を整理し、消防機関の果たすべき役割を踏まえた今後の消防体制のあり方について検討を行う中で、今後の消防の広域再編のあり方についても議論されている。 イ 消防力の整備 消防庁により、「消防力の整備指針」及び「消防水利の基準」が示されている。 「消防力の整備指針」は、「消防力の基準」として昭和36年の制定以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきた。以来、数次にわたり改正が行われたが、その後の都市構造の変化、消防需要の変化に対応して、より実態に即した合理的な基準となるよう、平成12年に全部改正が行われ、それまでの「必要最小限の基準」から「市町村が適正な規模の消防力を整備するに当たっての指針」へと性格が改められ、市町村の自主的決定要素が拡充された。さらに、平成15年12月の消防審議会答申においては、「消防力の基準」について、市町村の消防力の整備に係る指針としての位置付けを維持しつつ、消防サービスの水準確保を前提にして、消防力の整備に当たって市町村が様々な選択を行えるような内容・形態にしていく必要があるとされるとともに、分野別の標準的職務能力の明示、「兼務」概念の導入、施設の性能・効果を考慮した規定の導入、消防団員数に関する算定指標の設定等の必要性について提言された。また、平成16年12月の消防審議会答申では、見直しについてのより具体的な提言が行われた。 これらを受け、消防庁においては、平成17年6月に「消防力の基準」の一部改正を行った。 主な改正事項としては、以下のとおりである。〔1〕 消防力の整備指針としての理念の明確化 市町村が消防力の整備を進める上での整備目標としての性格を明確にするため、題名を「消防力の整備指針」とするとともに、その理念を表現した前文を追加。また、基本理念を条文化(第3条)。〔2〕 消防職員に必要とされる職務能力の明確化 消防職員の各分野別に求められる職務能力を明確にする(第28条)とともに、消防長の責務も明記(第27条)。〔3〕 「兼務」の概念の導入 職員の能力の効率的な活用、総合的な消防力の向上、無制限な兼務の拡大防止の観点から、以下の場合について一定の条件の下で兼務することを可能とする。 ・消防ポンプ自動車等及び救急自動車の搭乗隊員の兼務(第35条第1項、第2項) ・予防要員と警防要員等の兼務(第35条第3項)〔4〕 各業務の基準の明確化・重点化 ・複数の消防隊等の円滑で効果的な警防活動の遂行と安全管理を徹底するため、指揮車及び指揮隊の配置基準を追加(第17条及び第32条) ・消防ポンプ自動車等の搭乗隊員数の弾力化(第29条) ・通信員の基準(第33条) ・予防要員の基準(第34条)〔5〕 防災・危機管理に関する基準の導入 ・NBC災害対応資機材の配置基準(第20条) ・同報系の市町村防災行政無線の設置基準(第21条) ・消防本部と消防団との通信設備の設置基準(第23条) ・消防本部等の庁舎の耐震化等の基準(第25条)〔6〕 消防団 ・消防団の設置基準(第37条) ・消防団員数の基準(第38条) 今後各市町村においては、この消防力の整備指針を整備目標として、地域の実情に即した消防計画の見直しを行い、急増する救急需要に的確に対応するための救急隊の増隊等、消防力の計画的な整備が必要となる。 ウ 消防財源の強化 消防力は逐年充実・強化されているが、複雑多様化する災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実・強化に必要となる消防財源については、国庫補助負担金の確保、地方交付税への適切な算入、地方債制度の拡充等を通じて、より一層その充実を図る必要がある。
(2)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮しなければならず、勤務条件はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、改善を積極的に図る必要がある。 特に交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、人員確保及び勤務体制の整備を図るとともに、〔1〕給料、手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、〔2〕仮眠室等の施設の整備等、執務環境の改善を促進すること、〔3〕消防活動時の安全性を高めるため、装備品(防火衣等)を充実強化すること、〔4〕安全衛生管理体制を整備し、事故防止と健康管理に努めることなど、常に配慮が必要である。
(3)消防職員の高年齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成16年4月1日現在、41.5歳と一般行政職の42.8歳よりやや低くなっているが、昨年(41.3歳)より僅かであるが上昇している。 また、平成13年度から再任用制度が導入され、消防司令以下の階級にある特定警察職員等については、平成19年4月までに適用されることから、再任用職員の活用の場を設けるとともに、今後、職員の高年齢化対策を一層推進する必要がある。 消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の活用を図るとともに、〔1〕装備の軽量化・動力化・安全化、〔2〕部隊の編成、消防戦術の見直し・検討、〔3〕計画的な体力錬成、〔4〕能力開発、適正な人事配置、人事交流など、総合的な対策を推進し、活力ある体制の確立が必要である。
(4)消防団の充実強化・活性化対策の推進 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動している。消防団員は、災害防御活動や住民の避難誘導、被災者の救助活動などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。 また、今後も東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などの大規模地震の発生が危惧されており、さらに、平成16年6月に成立した国民保護法では、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うことが規定された。 これらのことからも明らかなように、消防団は、地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっている。 しかしながら、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて、様々な課題を抱えている。・ 消防団員数の減少 消防団員数は年々減少しており、10年前の平成7年4月1日現在に比べても6万7,469人(6.9%)減少している。・ 消防団員のサラリーマン化 消防団員に占める被用者(サラリーマン)団員の割合は、10年前に比べ5.4ポイント増加しており、団員のサラリーマン化が進んでいる。・ 消防団員の高年齢化 消防団員の平均年齢は、10年前に比べ1.7歳上昇しており、少しずつではあるものの団員の高年齢化が進んでいる。・ 女性の採用 女性消防団員数は、10年前に比べ7,962人増えて1万3,864人となっており、団員数が減少する間、年々増加している。しかしながら、女性を採用している消防団は全消防団の34.1%に止まっている。 そこで、消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性団員数10万人以上)確保することを目標とし、消防団が抱える様々な課題を解消し、消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、以下のような施策を実施している。 ア 検討会の開催 消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、各種検討会を開催又は検討会に委員として参画し、検討・議論された提言を取りまとめ、施策に反映している。最近における主な検討会は以下のとおりである。(ア)消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会a 目的 社会の就業構造の変化に伴い、消防団員の中でサラリーマンが占める割合は年々増加しており、今後、団員の確保策を進めるためには、事業所との連携を深め、各事業所との協力体制を構築することが不可欠となっている。そこで、「消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会」における提言等を踏まえ、消防団と事業所の連携の具体的方策について必要な検討を行う。b 検討期間 平成17年8月〜平成18年1月(予定)c 座長 大森彌・東京大学名誉教授d 主な検討内容 ・ 消防団と事業所の連携体制の強化策 ・ 現行消防団制度の課題と改善策 ・ 広報施策など(イ)消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会a 目的 社会環境の変化等から、地域に必要な消防団員の確保に苦慮している消防団が見られ、全国的に消防団員数の減少が続いており、地域防災力の低下が懸念されている。そこで、地域住民・被雇用者・女性が参加しやすい活動環境の整備、地域住民・事業所の消防団活動への理解促進について必要な検討を行った。b 検討期間 平成16年7月〜平成17年1月c 座長 大森彌・千葉大学教授(当時)d 主な検討結果 ・ サラリーマン団員・女性等が参加しやすい環境づくり ・ 各消防団が特性に応じて選択できる機能別団員及び機能別分団などの組織・制度の多様化方策 ・ 消防団の活動実態を踏まえた団員の処遇改善策(ウ)地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会a 目的 「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」(委員長:伊藤滋・早稲田大学教授)の報告(平成15年3月)において、これからの消防団のあり方として提言された「消防団員数の確保」等を踏まえ、地域防災力の充実強化を図るため、「消防団員数の確保」に特に焦点を当て、消防団員の確保対策及び国、地方自治体、消防団がそれぞれ実施する具体的な方策について必要な検討を行った。b 検討期間 平成15年11月〜平成16年3月c 座長 大森彌・千葉大学教授(当時)d 主な検討結果 ・ 都道府県、市町村、消防団が連携し地域の実態にあった団員確保方策の実施 ・ 市町村合併時における消防団員の定数の維持 ・ 事業所への説明や事業所との交流など、事業所の理解を深める活動の推進 ・ 消防団ホームページの充実や、市町村・都道府県ホームページでの消防団活動の紹介など、住民・団員が消防団情報にアクセスしやすい環境づくりの促進 イ 各種施策の実施 消防団への参加促進や消防団の活動環境の整備を図るため、以下の施策を実施している。(ア)消防団の装備・施設の充実強化 消防車両・無線機器・安全装備品等の消防団に必要な設備や、消防団の活動拠点となる施設の整備に対して補助を行う「消防団総合整備事業」を実施している。(イ)消防団員の処遇の改善 消防団員の年額報酬や出動手当等に対する地方財政措置、退職報償金制度について、その充実を図っている。(ウ)消防団への加入の促進 消防団啓発ポスターや、学生(小学生、中学生・高校生、大学生・専門学校生)・社会人・女性といった全国の幅広い層をそれぞれ対象とした消防団参加促進パンフレット(リーフレット)の作成・配布などにより幅広い層の消防団への参加の呼びかけに努めている。(エ)公務員や公共的団体職員の入団推奨 国家公務員(特に郵便局職員)・地方公務員・農業協同組合・漁業協同組合・森林組合等の公共的団体職員の入団を推奨している。(オ)女性の入団推奨 地域に密着して生活し、地域コミュニティの結びつきの強い女性の入団を推奨している。(カ)全国消防団員意見発表会・消防団地域活動表彰の実施 地域における活動を推進するとともに、若手・中堅団員や女性団員の士気の高揚を図るため、 ・ 全国各地で活躍する若手・中堅団員や女性団員による意見発表会の開催 ・ 地域の実情に合わせた斬新で特色ある活動を常日頃展開し、魅力ある地域づくりを推進している消防団に対する表彰などを実施し、その内容をとりまとめ、全国に提供している。(キ)事業所への理解・協力 サラリーマン団員の増加に伴い、消防団員である住民を雇用する事業所による消防団活動の理解・協力を得ることは不可欠である。そこで、 ・ 消防団員である住民を多く雇用し、消防団活動に特に深い理解があり協力度の高い事業所に対する表彰 ・ 経済団体や東京に本社機構を持つ事業所への働きかけ ・ 事業所に向けた消防団参加促進パンフレットの作成・配布などを実施し、事業所の消防団活動の理解・協力を求めている(囲み記事「消防団活動を積極的に支援する事業所」参照)。(ク)インターネットによる消防団活動のPRa 「消防団のホームページ」の運用 「消防庁ホームページ」内に「消防団のホームページ」を設け、消防庁における最新施策や最新情報等を掲載し、消防団活動のPRに努めている。b 「消防団メールマガジン」の発行 全国の消防団等に関する情報を提供するため、平成15年3月から「消防団メールマガジン」を発行し、全国の消防団員を中心に配信している。 「消防団メールマガジン及び消防団のホームページの普及促進パンフレット」を作成・配布し、一層の普及促進に努めている。(ケ)機能別団員及び機能別分団など消防団組織・制度の多様化方策を導入 昼夜間を問わず、全ての災害・訓練に出動できる消防団員(以下、基本団員という。)を基本とした現在の制度を維持した上で、必要な団員の確保に苦慮している各市町村が実態に応じて選択できる制度として、下記の多様化方策を導入した(第2−1−5図、囲み記事「多様化する消防団(機能別団員、機能別分団など)」参照)。a 機能別団員(特定の活動、役割のみに参加する団員) 基本団員と同等の活動ができない人が、入団時に決めた特定の活動・役割及び大規模災害等に参加する制度b 機能別分団(特定の活動、役割を実施する分団) 特定の役割、活動を実施する分団・部を設置し、所属団員は当該活動及び大規模災害対応等を実施する制度c 休団制度 団員が長期出張、育児等で長期間、活動することができない場合、団員の身分を保持したまま一定期間、活動休止を消防団長が承認する制度。休団中の大規模災害対応、休団期間の上限は各消防団で規定し、休団中は報酬の不支給、退職報償金の在職年数不参入が可能d 多彩な人材を採用・活用できる制度 条例上の採用要件として性別・年齢・居住地等を制限している例があるので、条例の見直しにより幅広い層の住民が入団できる環境の整備や年間通じての募集・採用の実施
新素材・新技術を活用した安全装備の開発 消防活動においては、消防機械器具の進歩とともに消防隊員の活動能力の向上が求められています。消防隊員の能力とは、その多くを消防装備に依存しており、求められる性能は「強度」、「運動性」、「快適性」の3つの要素から構成されます。 これらが有機的に組み合わせられることで、消防装備は高い能力を発揮することができると考えられます。そこで、消防庁と消防研究所では、過酷な状況下にも耐えうる消防装備の研究・開発を行うこととしました。これにより、火災の進行状況にかかわらず、内部に進入し、早期に救出、燃焼物体に接近して直接注水、少量の水で消火し、水損を最小限とすること、また、危険物火災やNBC関連災害等、過酷な環境でも安全かつ円滑な消火活動を行うこと、等が可能となり、消防活動の対応範囲が飛躍的に拡大することになります。 今後、技術開発により目指す「ハイパー消防服(仮称)」はRDF火災、原発事故等に見られる複雑・多様化、過酷化する消防活動の現場において、安全かつ効率的な活動を可能にすると考えられます。これら災害現場で使用する消防装備の性能が向上すれば、災害対応力が飛躍的に高まることが期待できます。
多様化する消防団(機能別団員、機能別分団など) 消防団は、地域防災体制の中核的存在として、今後も大きな役割を果たすことが期待されていますが、消防団員数の減少という大きな課題に直面しており、団員を確保し、地域防災体制を充実強化するためには、住民の幅広い層から団員を確保することが望ましく、地域住民が参加しやすい消防団の活動環境の整備が必要となっています。 平成17年1月に通知した「消防団員の活動環境の整備について」では、地域住民・被雇用者・女性が参加しやすい消防団組織・制度の多様化策を提言しており、新たに団員がすべての活動に参加する基本的な制度の補完制度として、「機能別団員」(特定の活動にのみ参加する団員)、「機能別分団」(特定の活動、役割のみ実施する分団)という制度を導入しています。 愛媛県松山市では、平成17年4月に、通知後初めて、機能別団員として郵政職員を採用しました。大規模災害時に住民の安全を確保するためには、郵政職員の消防団への入団が効果的と考え、日本郵政公社四国支社との協議を経て、沿岸部に位置し、津波・高潮の被害が想定される松山西郵便局と提携することで同支社と同意し、松山西郵便局職員31人が松山市消防団に入団しました。その活動内容としては、災害時(大規模災害等)には防災情報通報・住民への避難情報提供・避難誘導の支援・負傷者の救出及び応急救護等、平常時には交通事故等を発見した場合の応急救護及び通報・防災訓練及び研修等への参加となっています。 また、福岡県立花町でも、消防団員の減少・サラリーマン化等の問題を抱えていたことから条例を改正し、平成17年10月に、新たに機能別団員として消防吏員及び消防団員のOB(エキスパート隊員)を採用するとともに、併せて機能別分団として、女性を採用した予防広報部を導入しました。これらの活動内容としては、機能別団員(エキスパート隊員)は自主防災組織への指導・大規模災害への出動等となっており、機能別分団(予防広報部)は火災予防広報・大規模災害への出動等となっています。 これら以外にも、栃木県鹿沼市や宮崎県北方町など消防団員OBを新たに役割を限定した団員として採用する事例等もあり、多くの方が消防団に参加しやすいように、このような地域防災力の充実強化に向けた消防団員確保に係る積極的な取組みが、全国に広がっていくことが期待されます。
消防団活動を積極的に支援する事業所 消防団員の約7割が被雇用者である現在、事業所の協力が必要不可欠です。 福岡県北九州市にある医療法人医和基会では、消防団活動にグループ全体で理解を示しており、事業所独自の消防団規則があって、消防団活動をする職員に内部規程を設けています。 その中で、地域の有事や訓練・行事参加等の際には、勤務中にも消防団員が活動しやすいように、職務の免除や特別休暇等を定めています。 また、消防団への入団は個人の自由ですが、少ない男性スタッフから概ね45歳までの健康な方を積極的に消防団員として消防団長に推薦しており、10年以上の消防団活動を行った者には勤続表彰を設けています。 このように、消防団活動に理解があり、消防団に協力的な事業所の輪が広がっていくことが期待されます。 消防庁では、消防団と事業所との連携を深め、各事業所との協力体制を構築し、消防団の充実強化ひいては地域防災力の充実を目的とする「消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会」を平成17年8月から発足し、連携のための具体的方策について検討を行っています。
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成16年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。)への出動回数は107万3,314回で、出動延人員は1,306万341人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,933回、29秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は25万5,712回、出動延人員は510万2,939人となっている(第2−2−1表)。
(2)消防団員の活動状況 全国各地では地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動し、消防団は消防隊と連携しながら、昼夜を分かたずに多岐にわたる活動を行っている。 平成16年においては、各地で相次ぐ台風の上陸等による水災や震災が発生した。新潟・福島豪雨、福井豪雨、台風第23号等の水災における水防活動や避難誘導、新潟県中越地震における住民の避難誘導及び巡回による住民の安全確認など、各地の消防団は多岐にわたる活動で被害の軽減に大きく寄与した。 平成17年においても、福岡県西方沖を震源とする地震や宮城県沖を震源とする地震における住民の避難誘導及び巡回警戒や台風第14号等の水災における水防活動や住民の避難誘導など、地域住民の安全確保のため、力を発揮している。 全国の消防団は、自宅が被災した消防団員もいる中で出動し、地域の防災力の中心として、これらの果敢な活動を不眠不休で行い、被害の拡大を防止し、住民の安全確保に貢献した。その支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という精神である。一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、地域住民から高く賞賛されている。消防団員は、地域に居住又は勤務する住民により構成され地域に密着しており、地理や住民の居住先等の地域情報を十分に把握しているため、大規模災害時には特に能力を発揮している。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当、無線等の講習会や住宅の防火指導の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組みが行われている。また、少しずつではあるものの着実に増加傾向である女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及など、女性の優しさや細かな配慮などを活かして活躍している(囲み記事「活躍する女性消防団員」参照)。 このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして、地域の安心・安全のため重要な役割を担っている。
2 公務災害の状況 平成16年中における公務により死亡した消防職団員(火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡したもの等)は18人、同じく負傷したものは2,491人である。前年に比べて公務による死者は2人増加し、負傷者は52人増加している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが36.5%と最も多く、次いで火災によるものが23.7%、救急によるものが10.5%となっている(第2−2−2表)。
活躍する女性消防吏員 平成17年4月1日現在の全国の消防吏員数は、15万4,427人で、うち女性消防吏員数は2,053人(1.33%)となっており、年々増加傾向にあります。 女性消防吏員は、昭和44年に川崎市で初めて採用され、その後、徐々に女性消防吏員を採用する消防本部が増えてきましたが、女性の深夜業務への従事が制限されていたこともあり、女性消防吏員を採用する消防本部はごく一部に限られていました。 その後、社会全般における女性の社会進出の広がり等を背景に、平成6年には労働基準法の一部が改正され、女性の深夜業務への従事制限が解除されたことから、住民からの期待や要望が強かった女性の救急隊員、機関業務や通信指令業務等の交替制勤務に従事する女性隊員を配置する消防本部が増えてきました。 消防庁においては、消防組織の充実強化を図るための方策の一つとして、消防組織における女性消防吏員の更なる積極的な採用と職域の拡大について推進しているところであり、平成16年には〔1〕採用における平等な受験機会を提供すること、〔2〕警防業務、予防業務、救急業務など幅広く従事できるよう職域を拡大すること、〔3〕仮眠室やトイレ等環境の整備を行うこと、について各消防本部における女性の職域拡大に向けた積極的な取組みを求めるとともに、警防業務を含む消防活動においては、基本的に女性は男性と同様に活動ができることなどを示したところです。 消防庁は、今後とも、各消防本部において積極的な取組みが図られ、女性消防吏員がより一層活躍されることを期待しています。
活躍する女性消防団員 社会環境の変化に伴い、地域に密着して生活し、地域コミュニティとの結びつきが強い女性の能力が地域防災力の充実強化のために一層期待されるようになり、消防団の組織の活性化及び地域のニーズに応える方策として、女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まっています。男女共同参画の流れを受けて、女性の消防団への参加意欲も高まっています。 消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加し、平成17年4月1日現在、1万3,864人(全体の1.5%)、女性消防団員を採用する消防団は1,010団(全体の34.1%)と全都道府県に及んでいます。 山形県長井市、茨城県ひたちなか市、神奈川県厚木市、富山県南砺市、愛知県瀬戸市、三重県名張市、広島県竹原市、徳島県小松島市、大分県日出町など、全国的に新たに女性消防団員を採用する市町村は増えています。 また、広島県東広島市消防団では、複雑化する災害に対応するため、合併を契機に、自主防災組織として活動していた旧黒瀬町の女性消防隊員の中から57人を女性消防団員として採用し、新たに分団(第9方面隊第7分団)を設置しました。林野火災や地震等の大規模災害時の後方支援活動や平常時の防火広報活動及び訓練等を実施するほか、管轄区域内の自主防災組織の結成の際には地域と行政とのパイプ役を果たしていくことが期待されています。 全国の女性消防団員は、通常の災害対応のほか、広報活動、一般家庭の防火指導、一人暮らし高齢者宅の防火訪問や応急手当指導等、多岐にわたる場面で大きな成果を上げているだけでなく、大規模災害時には地域住民の検索及び避難住民の誘導など更なる活躍が期待され、その重要性はますます高まっています。
3 勤務条件(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。 ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防本部の給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二つがあるが、行政職給料表を採用している団体では、号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けすることや、出動手当等の特殊勤務手当や休日給の支給がなされるなど、交替制勤務の特殊性が考慮されたものとなっている。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成16年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢41.5歳で34万737円であり、一般行政職員の場合は平均年齢42.8歳で35万657円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が10万4,507円であり、一般行政職員は7万9,785円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。 イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は、2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成17年4月1日現在、全国848消防本部中、2部制を採用している消防本部は577本部(68.0%)、3部制を採用している消防本部は211本部(24.9%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は57本部(6.7%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.4%)である。 ウ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、〔1〕消防職員の勤務条件及び厚生福利、〔2〕消防職員の被服及び装備品、〔3〕消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 平成16年度においては、ほぼすべての消防本部で消防職員委員会が開催され、職員から提出された4,919件もの意見について審議された。制度施行以来の累計では、合計で5万件を超える意見について、審議が行われている。平成16年度においては、審議された意見のうち、「実施することが適当」とされたものは、全体の40.2%を占めた。また、平成15年度において審議された意見のうち「実施することが適当」とされた意見の53.7%が既に実施に移されるなど、消防職員委員会で審議された意見が着実に実現されてきているところである(第2−2−3表、第2−2−4表、第2−2−5表、第2−2−6表)。 平成16年10月、総務大臣と全日本自治団体労働組合委員長との定期協議を受けて、実務者レベルによる「消防職員委員会懇談会」が設置され、消防職員委員会のこれまでの取組みや、運用方法について意見交換を行った。消防庁においては、同懇談会における合意を受けて、新たに「意見取りまとめ者」の制度を設けることなどを内容とした「消防職員委員会の組織及び運営の基準」の一部改正を行った(平成17年5月9日)。 エ 公務災害補償 消防職員は、公務により災害を受けた場合、地方公務員災害補償法の規定に基づき、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償並びに休業援護金等の福祉に関して必要な給付等を受けることができる。 また、消防吏員が身体に対し高度の危険が予測される状況下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 平成16年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数は、消防職員について1,821件であり、前年度に比べ86件減少している。
(2)消防団員の処遇改善 消防団員は、大規模災害時においては昼夜を分かたず多岐にわたり活動し、また、平常時においても地域に密着した活動を行っているので、消防団員の処遇については、十分に配慮し改善していく必要がある。 ア 報酬・出動手当 市町村では、条例に基づき消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額や支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨にかんがみ、引上げ等、適正化を図る必要がある。 平成17年度においては、地方交付税の単位費用の積算に当たって、団員の出動手当について改善措置が講じられた(第2−2−7表)。 イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況のもとで遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2−2−8表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2−2−9表)。 消防団員が身体に対し高度の危険が予測される状況の下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2−2−10表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。 ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、療養生活の援護、介護の援護及び就学の援護等となっている。 エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万4,000円、勤務年数30年以上の団長で92万9,000円となっている(第2−2−11表)。 オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 平成17年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している関係市町村の数は、2,314市町村(契約対象市町村の91.8%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、2,518市町村(契約対象の全市町村)となっている。 消防基金の平成16年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,915人に対し、15億7,348万円となっている。また、福祉事業の支給額は、延べ1,030人に対し5億3,869万円となっている。 消防基金の平成16年度の退職報償金の支給額は、5万8,112人に対し180億839万円となっている。 カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が改正され、平成14年度から、消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施することとなった。平成16年度の支払状況は、延べ582人に対し5,209万円となっている。 キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、消防団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された(平成14年7月)。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の普通教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。
4 安全衛生体制の整備(1)安全衛生体制 現在、労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定が適用される消防本部・署所はないものの、消防庁においては、公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実かつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程の案」、「訓練時における安全管理に関する要綱の案」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、体制の整備の促進及び事故防止の徹底を図っている。 また、消防職員の衛生管理については、その内容に鑑み、特に配慮する必要があることから、消防庁としては、「消防における衛生管理に関する規程の案」を示すなどの対応を行っている。
(2)惨事ストレス対策 消防職員は、火災等の大きな災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、このようなストレスを受けた場合には、身体、精神、情動又は行動にさまざまな障害が発生するおそれがある。このようなストレスの問題に対して、消防機関においても対策を講じる必要があるが、各消防本部においては、情報不足や専門家が身近にいないことなどが課題とされていた。 消防庁では、平成13年12月から精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、消防職員の惨事ストレス対策について研究を重ね、平成15年3月に報告書をとりまとめ、全国の消防本部、消防署所等に配布するなどの取組みを推進している。また、消防庁においては、同報告書を受けて、消防職員が惨事ストレスにさらされる危惧のある災害が発生した場合、現地の消防本部の求めに応じて、精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言などを行う緊急時メンタルサポートチームを平成15年に創設した。同チームにおいてはこれまで、平成15年に2件、平成16年に4件、平成17年には、JR西日本福知山線列車事故で活動した消防職員に対するサポートなど4件の派遣実績(平成17年10月現在)がある。
(3)安全管理体制の強化 平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生したことから、消防庁では、この事態を重く受け止め、今後の再発防止に資するため「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、安全への高い意識と高度な判断力の重要性、安全管理のための情報共有化方策、心理学の要素を反映した効果的な教育訓練手法、現場指揮体制の充実等について平成16年11月に報告書を取りまとめた。これを受けて消防庁では、安全管理のための情報共有化方策として、「消防職団員の事故事例の情報収集・提供システム」及び「新規物質及び新しい態様の火災に関する情報の一元化システム」の2つのシステムの開発について現在検討を行っている。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在国が行っている表彰等は次のとおりである(第2−2−13表)。
(1)国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。国の栄典制度については、21世紀を迎え、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、平成14年8月の閣議決定により見直しが行われ、平成15年秋から実施された。 その主な内容は、勲章については、〔1〕旭日章と瑞宝章について、従来の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用し、消防職団員については、瑞宝章とする〔2〕旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた区分をそれぞれ6段階に整理するとともに名称を変更する〔3〕危険業務従事者叙勲を創設する等であり、褒章については、年齢にとらわれることなく速やかに顕彰する等である。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のあるものをその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えること。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は公共に対して功労のある者に対して勲章を授与し、栄誉を称えること。 また、消防関係の叙勲は、以下の種類に分けられる。・春秋叙勲      春は4月29日、秋は11月3日付けで授与される。・危険業務従事者叙勲 著しく危険性の高い業務に精励した功労者に対し実施されるもので、上記の日付で春秋叙勲とは別に授与される。・高齢者叙勲     春秋叙勲又は危険業務従事者叙勲によりいまだ勲章を授与されていない功労者のうち、88歳になった者に対して、毎月1日付けで実施される。・死亡叙勲      死亡した功労者に対し、随時授与される。・緊急叙勲      殉職者など特別な功績を有する者に対し、随時授与される。 <褒章> 自己の危険を顧みず人命救助に尽力した者、業務に精励し他の模範となるべき者、学術、芸術、産業の振興に多大な功績を残した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対して褒章を授与して栄誉を称えること。 褒章は、功績の内容によって、消防関係では以下の褒章が運用されている。・藍綬褒章      多年消防業務に従事し、その功労が顕著な消防団員を対象としている。・黄綬褒章      消防関係業務に精励し衆民の模範である者を対象としている。・紺綬褒章      消防関係機関に対し、公益のために一定の金額以上の私財の寄附を行った個人又は団体を対象としている。・紅綬褒章      火災等に際し、身を挺して人命救助に尽力した者を対象としている。
(2)内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、総務大臣表彰受賞者及び消防表彰規程に基づき消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受賞者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する。・安全功労者表彰 国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績をあげ、又は功績があった者等を毎年「国民安全の日」(7月1日)にちなみ、7月上旬に表彰。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があった者や防災思想の普及又は防災体制の整備について顕著な功績があった者を毎年「防災の日」(9月1日)にちなみ、9月上旬に表彰。
(3)総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害の防ぎょに関する対策の実施について尽力して功績顕著な者を表彰。
(4)消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の種類により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア)定例表彰 毎年3月7日の消防記念日、7月1日の国民安全の日、9月1日の防災の日にちなみ、3月上旬、7月上旬、8月下旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・功労章 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防ぎょに関する対策の実施についてその成績が特に優秀な者を対象としている。・永年勤続功労章 永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者を対象としている。・表彰旗及び竿頭綬 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防ぎょに関する対策の実施について、その成績が特に優秀で、他の模範と認められる消防機関を対象としている。・安全功労者表彰 安全思想の普及、安全水準の向上等のため顕著な成績をあげ又は功労があった者で、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた消防職団員以外の個人又は消防機関以外の団体を対象としている。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があった者や防災思想の普及等について、その成績が特に優秀なもので、当該事案により都道府県知事の表彰を受けた個人及び団体を対象としている。(イ)随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度実施されるもので、その種類と対象は以下のとおりである。・特別功労章 災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕功章 災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・功績章 災害に際して消防作業に従事し、多大な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕彰状 職務遂行中死亡した消防吏員、消防団員等を対象としている。・国際協力功労章 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者を対象としている。・表彰状 災害に際して、消防作業に従事し、顕著な功労をあげ、又は防災思想の普及等について優秀な成績を収めた者を対象としている。・賞状 災害に際して、消防作業に従事し、その功労が顕著と認められる又は他の模範として推奨されるべき功績が認められる者を対象としている。
(5)退職消防団員報償 永年勤続した消防団員の功労に報いるため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官から賞状と銀杯が授与される。
(6)消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に貢献し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。
(7)その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・消防団地域活動表彰・消防関係業界功労者表彰・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防用設備等表彰・住宅防火対策優良推進組織等表彰・危険物保安功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰・防災まちづくり大賞・全国少年消防クラブ運営協議会表彰・救急功労者表彰
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職員及び消防団員が適切に対応するためには、その知識、技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部、消防署や消防団における教育訓練のほか、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。また、これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。特に、常に危険が潜む災害現場において、指揮命令に基づく厳格な部隊活動が求められる消防職員には、職務遂行にかける使命感と旺盛な気力が不可欠であることから、各消防本部においては、さまざまな教養訓練を通じて、士気の高揚に努めている。 なお、職場教育における基準としては、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、消防庁としては、訓練時や警防活動時の安全管理マニュアル等を示すなど、効率的かつ安全な訓練の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除く外、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第26条)。 平成17年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。
(2)教育訓練の種類 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」(平成16年4月1日施行)が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と消防団員に対する基礎教育(従来の普通教育)、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は800時間とされている。・「基礎教育」とは、消防団員として入団後、経験期間が短く、知識・技能の修得が必要な者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は24時間とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び一定期間の活動経験を有する消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。 なお、この基準については、全国的に平成19年度以降に到来する大量の新規採用消防職員に係る初任教育への対応や、サラリーマン消防団員の増加に伴い、集合教育の受講が困難となるなどの検討課題に対応するため、昭和45年に制定された従来の基準を全面的に見直し、各消防学校の実情に応じたカリキュラム編成や柔軟な対応を可能としたものである。 見直しに当たっては、個別の各科ごとに、ア)必要の度合いを精査し、廃止、統合(消防職員の予防課程と査察課程)及び新設(消防職員の特殊災害科・上級幹部科、消防団員の初級幹部科・中級幹部科)を図り、イ)新たに教育訓練に係る「到達目標」や、ウ)推奨例としての「標準的な教科目及び時間数」を設定した。 消防団員の教育訓練についても、消防本部との連携や教授内容の分割実施など、柔軟な対応を可能とした。 各消防学校では、「到達目標」を斟酌・尊重した上で、「標準的な教科目及び時間数」を参考指針として活用して、具体のカリキュラムを定めることとなる。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成16年度では延べ2万7,561人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−1表)。 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成16年度における新規採用者のうち初任教育の受講者は3,750人で、前年度に比べ312人増加している。なお、受講率については、91.7%となっている。 消防団員については、平成16年度では延べ7万6,743人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成16年度においては、地方公共団体職員、地域の自主防災組織、婦人防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ1万5,208人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成17年4月1日現在、消防学校の専任教員475人のうち派遣の教員は131人に及んでおり、前年度に比べ14人増加している(第2−3−2表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校への研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織の「消防講習所」として設置されたが、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)教育訓練施設等 消防大学校の教育訓練施設は、平成5年度以降、鋭意その整備更新を進め、平成12年度末には地下1階地上5階建ての本館が完成した。普通教室や図書館はもとより、マルチメディアを活用した大規模災害に対する指揮運用訓練室や250人収容の大教室、視聴覚教室等を設け、機能的で使いやすい施設となっている。 第2本館には、300人収容の講堂のほか救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。救急訓練室においては、高度救急処置人形などの機材が整備されており、救急救命士の気管挿管や薬剤投与の講習にも対応できるものとなっている。 屋内火災の防ぎょ訓練棟では、濃煙高温状態の中で、複雑な建物内を想定した、より実践的な消火・救助訓練を行うことができる。 一方、教育訓練車両については、平成14年度に指揮隊車、平成15年度に普通ポンプ車、平成16年度に水槽付きポンプ車を計画的に整備したところである。 この車両は、道路が狭隘な地域を想定し、小型で小回りの可能な車体に、600リットルの水槽を積載している。放水能力は0.85MPaにおいて毎分2,000リットル以上となっている。さらには、消火泡圧縮吐出装置を積載し、泡消火液を発泡状態で放出し、少量の水で効率の良い消火を行うことができる。
(2)教育訓練等ア 総合教育及び専科教育 消防大学校の総合教育及び専科教育は2部9学科から成っており、消防の指導者、監督者として幅広い人材の育成に努めている。 消防大学校(消防講習所を含む。)の総合教育及び専科教育の卒業生は、平成16年度末現在で3万365人(内、平成16年度の卒業生は756人)である。平成17年度入校者の教育計画人数は852人である(第2−3−3表)。イ 実務講習(危機管理教育科、緊急消防援助隊教育科、調査研究科) 最近の消防防災情勢下において特に教育を行う必要がある分野に関しては、標記の実務講習を行っている。消防大学校の実務講習の修了者は、平成16年度末現在で1万453人(内、平成16年度の修了者は607人)である。平成17年度の実務講習の計画人数は892人である(第2−3−4表)。
(3)消防学校等に対する技術的援助ア 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教官を対象として、より高度な研究・研修の機会を提供するため、特別研究生として受け入れている。イ 講師の派遣及びあっせん 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、警防、予防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣及びあっせんを行っている。平成16年度は延べ111回の講師の派遣及びあっせんを実施した。ウ 消防教科書の作成及び視聴覚教材の整備 都道府県の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っており、平成17年4月現在21種類が発行されている。また、視聴覚教材の整備を進めている。
(4)調査・研究 平成16年より消防大学校に「自主防災組織教育指導者に対する教育のあり方に関する調査研究委員会」を設置し、自主防災組織の教育訓練の内容及び教育形態について調査研究を行うとともに、自主防災組織指導者が活用するための教本等を作成している。
(5)教育訓練等の見直しについて 消防大学校は、現在まで消防職団員幹部の育成を使命として教育を実施してきたが、近い将来に消防職員の大量退職とこれに伴う幹部昇任者の急増が見込まれ、また緊急消防援助隊活動の充実のため幹部職員の応援・受援能力の向上が求められるなど、社会の変化と要求に対応した教育訓練の抜本的な見直しが必要になっている。 このため、消防大学校では平成16年12月、「消防大学校における教育訓練等に関する検討会」を設置し、新しい時代にふさわしい教育訓練体系について検討を行った結果、平成17年8月報告書がとりまとめられたところである。報告内容は多岐にわたるが、主な内容は次のとおりである。ア 総合教育については、まず消防本部の中核である消防司令への昇任時に重点的に行い、さらに消防署長及び消防長への昇任時においても社会情勢の変化に対応したより高度な教育を行う。イ 消防団幹部が入校し易い環境の整備を図る。ウ 警防科、予防科等の専科教育は、都道府県及び政令指定都市に設置された消防学校の教官育成を主眼としたものとする。エ 特別高度救助隊及び高度救助隊の養成講座を創設するなど、高度専門教育を拡充強化する。オ e-ラーニングを積極的に活用することにより、集合教育期間を短縮し、入校者を大幅に増加させる。カ 消防教育訓練等に関する協議機関を設置し、消防大学校と消防学校との連携強化等を図る。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団(以下「救急振興財団」という。)が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間400人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成17年度には、あわせて全国で約1,400人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 これらの救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、講義及び実習が行われている。 そのほか、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、平成14年度から独立行政法人消防研究所の火災原因調査室により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした講座が実施されている(平成7年度〜平成13年度は、財団法人消防科学総合センターで実施)。 また、消防機関においても、生物・化学災害発生時における要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、生物・化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における生物・化学災害対応能力の充実を図っている。
6 全国消防救助技術大会等の実施 人命救助活動は、複雑多様化する各種災害に対応するため、高度かつ専門的な知識、技術が要求されるに至っていることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第34回大会は、平成17年8月25日に全国9ブロックから選抜された829人(陸上の部568人、水上の部261人)の隊員が参加してさいたま市で開催された。
7 防災教育の普及 大規模地震やNBC災害等も懸念されることから、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされている状況のもとで、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。このため、平成15年6月に改正された消防組織法において自主防災組織への教育訓練等に関する国・地方公共団体の努力義務が規定されたことも踏まえ、消防大学校、消防学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組みを進めている。また、昨今のライフスタイルの変化や情報通信環境の進展に対応し、インターネットを活用した遠隔教育(防災・危機管理e-カレッジ)の運用を平成16年2月から開始しており、幼稚園児・小学校低学年児童向けや消防職団員・地方公務員及び日本に居住する外国人を対象としたコンテンツを提供している。さらに、消防職団員及び地方公務員の研修・教育等に活用することを目的とした「学習管理システム」も配信するとともに、今後ともカリキュラムの充実を図っていくこととしている。
新任消防長・学校長コースの開催 消防大学校では、従来から上級幹部科、消防団長科等を開講し全国の消防本部及び消防団の幹部等に組織管理者としての教育を行ってきましたが、更に平成17年度からは、都道府県や市町村の行政部門等から就任する新任消防長・消防学校長を対象に教育訓練コースを次のとおり実施しました。新任消防長・学校長コース概要・ 第1回 29名受講 平成17年4月18日〜4月28日・ 第2回 49名受講 平成17年8月22日〜8月30日 これらのカリキュラムを通じて、受講生からは、消防防災業務全般にわたる幅広い見識を得ることができた、実科訓練をともに励まし合いながら乗り越えた、それまで不安に思っていたことがやる気に変わった、部下職員の消防にかける思いを理解しながら消防行政の充実に努めたい、などの感想が寄せられました。
消防大学校における救急救命士による薬剤投与研修(救急科第63期、第64期) 消防大学校では、平成18年4月から「救急救命士による薬剤(エピネフリン)投与」が実施可能になることを受け、平成17年の救急科第63期及び第64期において、全国から選抜された救急救命士96名に対して170時間の薬剤投与カリキュラムを取り入れた指導者教育を実施しました。 同カリキュラムは、薬剤投与に関する座学や訓練人形を用いた実技をはじめ、指導者として必要な教育技法や救急実務に至るまで多岐にわたるもので、卒業生は、現在全国の救急現場の管理者として、また救命技能の指導者、監督者として活躍しています。 薬剤投与を実施することができる救急救命士が増加することで、救急搬送中の傷病者の一層の救命率の向上が期待されています。
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は6.3秒に1回、国民27人に1人が救急搬送 平成16年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる件数も含め、503万1,464件(対前年比4.1%増)と、初めて500万件を超え、前年と比較し、19万8,564件増加している。この増加した出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が13万3,851件、一般負傷が3万3,442件である。 また、救急自動車による搬送人員は474万3,469人(対前年比16万8,144人増、3.7%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は2,403人である(第2−4−1表、第2−4−2表、附属資料31、32)。 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万3,741件(前年1万3,235件)で、6.3秒(同6.5秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の27人に1人(同28人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。 救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、次いで交通事故、一般負傷の順となっている(第2−4−2表、附属資料31)。
(2)搬送人員の51.7%が入院加療を必要としない傷病者 平成16年中の救急自動車による搬送人員474万3,469人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の48.3%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は51.7%となっている(第2−4−3表)。 なお、高齢者(65歳以上)の傷病者の割合は全体の42.5%となっている。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成16年中の急病の救急自動車による搬送人員275万3,170人の内訳をWHO(世界保健機構)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(11.5%)、消化器系(10.9%)、心疾患(9.8%)、呼吸器系(9.8%)となっている(第2−4−1図)。
(4)現場到着まで平均6.4分 平成16年中の救急自動車による出場件数502万9,108件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が282万614件で最も多く、全体の半数以上(56.1%)になっている。 なお、これらの平均現場到着所要時間は6.4分(前年6.3分)となっている(第2−4−2図)。
(5)病院到着まで平均30.0分 平成16年中の救急自動車による搬送人員474万3,469人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、20分〜30分未満が181万4,982人(全体の38.3%)で最も多く、次いで30分〜60分未満の172万3,248人(同36.3%)となっている(第2−4−3図)。 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は30.0分(前年29.4分)となっている。
(6)減少する転送 平成16年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.3%(470万9,761人)が転送なしに収容され、残りの0.7%に当たる3万3,708人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の97.8%に応急処置等実施 平成16年中の救急自動車による搬送人員474万3,469人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は463万9,126人(搬送人員の97.8%、前年は96.7%)であり、前年に比較し、21万4,711人(4.9%)増加している(第2−4−4表)。 また、平成3年以降に拡大された救急隊員による応急処置等(第2−4−4表における※の項目)の総件数は、1,061万4,551件(対前年比7.7%増)となっており、このうち救急救命士(除細動については、救急救命士以外の救急隊員を含む。)が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置(ラリンゲアルマスク等による気道確保、気管挿管、除細動、静脈路確保)の件数は5万4,452件にのぼり、前年比で約15.5%増となっている。これは救急救命士の養成、救急科修了者(旧救急標準課程又は旧救急II課程の修了者を含む。以下同じ。)(2(2)、(3)参照)による運用が着実に推進されていることを示している。
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.2% 救急業務実施市町村数は、平成17年4月1日現在、2,352市町村(740市、1,305町、307村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2−4−5表)。 市町村合併の進展により全市町村数が2,396まで減少したことに伴い、救急業務実施市町村数も大幅に減少しているが、98.2%(前年98.3%)の市町村で救急業務が実施され、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(人口は、平成12年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)こととなり、引き続き、ほぼ全ての地域で救急業務のサービスを受けられる状態となっている(附属資料33)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が464市町村、委託が169市町村、組合が1,719市町村となっている(第2−4−4図)。
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成17年4月1日現在、4,757隊(対前年46隊増)が設置されている(第2−4−5図)。 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成17年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で10万5,013人(対前年1,464人増)となっており、このうち5万7,966人が、救急隊員として救急業務に従事している(第2−4−6図)。 より高度化する救急需要に応えるため、消防庁は、救急救命士のみならず、250時間の救急科(旧救急標準課程及び旧救急II課程を含む)を修了した救急隊員の養成を推進している。平成17年4月1日現在、救急科修了者(旧救急標準課程及び旧救急II課程修了者を含む)は、6万6,788人であり、うち、3万8,911人が救急隊員として救急業務に従事している。
(3)救急救命士 消防庁においては、全ての救急隊に救急救命士が少なくとも常時1名配置される体制を目標に救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。 平成17年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国848消防本部のうち843本部(市町村合併を含む広域再編等により消防本部数が対前年38本部減となっていることに伴い、対前年33本部減)で、その運用率は99.4%(前年98.9%)と増加しており、救急救命士を運用している救急隊も年々増加し、全国4,757隊の救急隊のうち78.2%(前年73.0%)を占める3,722隊(対前年283隊増)となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は1万7,091人(対前年1,788人増)、救急救命士として運用されている救急隊員は1万5,317人(対前年1,812人増)と年々着実に増加している(第2−4−7図、第2−4−8図)。
(4)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成17年4月1日現在、5,641台(対前年5台増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格救急自動車は3,859台(対前年222台増、6.1%増)が配置されており、今後、更に高規格救急自動車の割合を高めていくよう推進している。
(5)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道及び本州四国連絡道路(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道等のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成17年4月末現在、供用延長7,536kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社においては、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成17年4月1日現在、全国で4,862箇所となっている(附属資料34)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが510箇所(平成16年3月31日現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により410地区(平成16年3月31日現在)で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが178箇所(平成17年3月31日現在)で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち16箇所(平成17年3月31日現在)で整備されている。 救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されている。
4 救急業務高度化の推進(1)救急隊員の教育訓練の推進 平成3年に、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が導入されるとともに、救急隊員の行う応急処置範囲が拡大された。消防庁としては、都道府県等の消防学校における拡大された応急処置の内容を含んだ救急課程の円滑な実施や救急振興財団等における救急救命士の着実な養成が行われるよう、諸施策を推進してきている。 そのほか、全国救急隊員シンポジウムや日本臨床救急医学会等の研修・研究機会を通じて、救急隊員の全国的な交流と救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急救命士の処置範囲の拡大 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁は厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催し、平成14年12月及び平成15年12月に報告書をそれぞれ取りまとめた。これを受けて、(3)に述べるメディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、次のように処置範囲が拡大されてきた。 〔1〕除細動 平成15年4月から、救急救命士は医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動を実施すること(以下「包括的指示下での除細動」という。)が可能となった。 消防庁としては、これに先立ち、包括的指示下での除細動の円滑な実施に向けて、「包括的指示下での除細動に関する研究会」で示されたカリキュラムに基づく講習会を各地で実施し、また、メディカルコントロール体制の整備、特に事後検証体制の構築を各都道府県、消防機関に要請した。これらを踏まえ、平成15年4月から順次各地域で包括的指示下での除細動が実施された。 〔2〕気管挿管 気管挿管については、平成16年7月から、各地域において講習及び病院実習を修了した救急救命士により実施されているところであるが、このための講習については、各都道府県の消防学校を中心に行われており、また、病院実習については、講習修了後に各地域の医療機関の協力を得て行われている。 今後も、関係者の理解と協力のもとに、実習先医療機関の確保等に努めつつ、気管挿管を実施することができる救急救命士の養成をさらに促進していくことしている。 〔3〕薬剤投与 薬剤投与については、平成18年4月から救急救命士によるエピネフリンの使用が認められることとなった。薬剤投与の実施に当たっては、高度な専門性を有する所要の講習及び病院実習を修了する必要があることから、消防庁としては、救急振興財団等における講習体制の確保、メディカルコントロール協議会が選定する施設における実習体制の確保を推進しており、これをうけて、各機関において、順次講習及び実習が開始されている。また、薬剤投与の実施に伴い、一層重要性を増すメディカルコントロール体制の充実強化についても、推進しているところである。
(3)メディカルコントロール体制の充実 救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、今後ともメディカルコントロール体制を充実していく必要がある。 このメディカルコントロール体制とは、消防機関と医療機関との連携によって、〔1〕救急隊が現場からいつでも迅速に医師に指示、指導、助言が要請できる、〔2〕実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行い、その結果を再教育に活用する、〔3〕救急救命士の資格取得後の再教育として、医療機関において定期的に病院実習を行う、という体制をいうものである。 消防機関と医療機関との協議の場である各都道府県単位及び各地域単位のメディカルコントロール協議会については、全て設置が完了しており、事後検証等により、救急業務の質的向上に積極的に取り組んでいるところである。
(4)ウツタイン様式の導入 ウツタイン様式とは、心肺停止症例をその原因別に分類するとともに、目撃の有無、バイスタンダーによる心肺蘇生の有無等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後を記録するためのガイドラインであり、世界的に推奨されているものである。 我が国では、平成17年1月から全国の消防本部で一斉に導入を開始しているが、全国統一的な導入は各国で初めての先進的な取組みとなるものである。消防庁としては、ウツタイン様式による調査結果をオンラインで集計・分析するためのシステムの運用も開始しており、今後は、救急救命士が行う救急救命処置の効果等の検証や諸外国との比較が客観的データに基づき可能となり、プレホスピタル・ケアの一層の充実に資するものである。 ウツタイン様式の運用に当たっては、消防機関と医療機関の連携体制の充実・強化を促進していくことが重要である。
(5)救急隊員等による自動体外式除細動器(AED)の使用 従来、医師、救急救命士等以外の非医療従事者には心肺停止傷病者に対する除細動を実施することが認められていなかったが、平成16年7月に示された厚生労働省設置の「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会」の報告書により、非医療従事者による自動体外式除細動器(AED;Automated External Defibrillator)の使用を可能とする見解が示された。報告書では、救急隊員、一般消防職員等、業務の内容や活動領域の性格から一定の頻度で心肺停止傷病者に応急の対応をすることが期待・想定される非医療従事者には所要の講習が必要とされた。 これを受け、消防庁が「応急手当普及啓発推進検討会」を開催して取りまとめた、救急隊員等のための講習のあり方に基づき、各消防本部で救急隊員等に所要の講習を逐次実施しており、救急現場において自動体外式除細動器(AED)の使用が行われている。
(6)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成16年中の平均では6.4分である。この間に、救急現場に居合わせた一般市民による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう、実技指導に積極的に取り組んでいくことが重要である。現在、特に心肺機能停止傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の習得に主眼を置き、住民体験型の普及啓発活動が推進されている。 消防庁としては、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月制定)により、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・事業所に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発活動を行っている。この結果、講習受講者数は年々着実に増加しており、平成16年中の救命講習受講者数は111万9,610人となり、消防機関は最も代表的な応急手当普及啓発の担い手として期待されている。 消防機関においては、昭和57年に制定された「救急の日」(9月9日)及びその前後の「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を推進しているところである。 また、平成16年7月から、一般市民を含めた非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用が可能となったことから、消防庁としては、「応急手当普及啓発推進検討会」の報告を受けて「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」の改正を行い、消防機関における自動体外式除細動器(AED)による除細動の内容を組み入れた救命講習の実施を促進している。
5 救急業務体制の整備の課題(1)救急救命士の養成 救急救命士は、平成3年の制度導入以降、着実に養成され、各地の救急現場において活躍しているところであるが、全国すべての救急隊に少なくとも救急救命士が常時1名配置できるよう、今後も引き続き救急救命士の養成を積極的に進めていく必要がある。 救急救命士の資格は、消防職員の場合、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格することにより取得することができる。資格取得後、救急救命士が救急業務に従事するには、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。 救急救命士は、現在、救急振興財団の救急救命士養成所で年間約1,000人、政令指定都市等における養成所で年間約400人を養成しているところであるが、平成18年度からは救急救命士の処置範囲の拡大(薬剤投与)に伴う講習内容の改正を行い、医療機関と連携しながら、各養成機関での救急救命士の新規養成に加え、薬剤投与のための追加講習についても円滑、着実に進めていく予定である。
(2)救急用資機材等の整備 救急業務の高度化に伴い、高規格救急自動車、高度救命処置用資機材等の整備が重要な課題となっている。 消防庁としては、三位一体の改革に伴い国庫補助金が廃止、縮減される中においても、高規格救急自動車、自動体外式除細動器(AED)等に対して地方交付税措置を行うなど、必要な措置を講じているところである。 今後とも引き続き、高規格救急自動車及び救急救命士の処置範囲の拡大に対応した高度救命処置用資機材の配備を促進する必要がある。
(3)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染の危険性があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務において極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の科目を設けるとともに、重症急性呼吸器症候群(SARS)を含めた各種感染症の取扱いについて、感染防止用マスク、手袋、感染防止衣等を着用し、傷病者の処置を行う共通の標準予防策等の徹底を消防機関等に要請しているところである。 また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制について整備していく必要がある。
(4)救急需要の増加への対応 救急自動車による救急出場件数は年々増加し、平成16年中は502万9,108件に達し、初めて500万件を超えた。今後も、高齢化の更なる進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増加し続けるものと考えられるが、全国の消防本部の厳しい財政事情等により、救急自動車や人員等の整備を図ることが困難な状況にある。このことから、救急隊1隊当たりの年間出場件数は更に増加し、救急自動車の現場到着時間も遅延していくことが予想され、地域によっては、傷病者が発生した場合に、救急自動車による迅速な対応が困難となってくる恐れがある。 このような状況を踏まえ、消防庁においては、学識経験者、医療関係者、消防本部の代表者等を委員とする「救急需要対策に関する検討会」を開催し、救急要請時や救急現場におけるトリアージシステムの確立や、救急隊の運用体制の効率化等、救急需要対策に関する総合的な検討を行うとともに、「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」を開催し、消防機関が実施している救急搬送業務において、患者等搬送事業者を活用する方策等に関する検討を行っているところである。 今後、これらの検討会の結果をもとに、各地域において適切な救急需要対策が実施されるよう推進していく必要がある。
(5)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 消防防災ヘリコプターを活用した救急業務については、平成10年3月に消防法施行令が一部改正され、消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれを基に出動基準を作成するなど、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を進めている。 平成16年中における全国の消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数2,356件(前年比12.9%増)、搬送人員2,403人(同15.6%増)であり(第2−6−2図)、消防防災ヘリコプターによる救急搬送への需要は年々増加している(第2−4−1表)。特に、離島、山村等からの救急患者の搬送や交通事故等による重症患者の救命救急センター等専門的医療機関への救急搬送、更には、大規模災害時における広域的な救急搬送などに大きな効果を発揮し、救命効果の向上に貢献するものと期待されていることから、今後とも、医療機関と連携をしながら、消防防災ヘリコプターの一層の活用を推進していく必要がある。
救急救命士による処置範囲の拡大1 救急救命士制度の創設 我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が平成3年に創設され、このことが、傷病者の救命効果の向上と救急業務の高度化に大きな成果をもたらしてきました。2 救急救命士の処置範囲の拡大 救急救命士が心肺停止傷病者に対して行うことのできる処置の範囲については、消防庁と厚生労働省により共同開催された「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」(座長:松田博青(財)日本救急医療財団理事長)において、平成14年12月、平成15年12月に報告書が取りまとめられました。これを受け、メディカルコントロール体制の整備を前提として、処置範囲が次のように拡大されてきました。(1)除細動(平成15年4月から) 医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動は、救急救命士に対する講習会の実施を前提として、全国的に実施可能となりました。(2)気管挿管(平成16年7月から) 一定の講習及び病院実習を修了した救急救命士により、医師の具体的な指示のもとで行われる気管挿管が、各地域で順次可能となっています。(3)薬剤投与(平成18年4月から) 医師の具体的な指示による薬剤投与については、エピネフリン(心拍再開のための強心剤)の使用が可能となることとなっています。薬剤投与の実施にあたっては、都道府県又は指定都市に設置された消防学校や救急救命士養成所等を活用した講習、メディカルコントロール協議会が選定した施設等を活用した実習等の体制確保が必要となります。消防庁としては、これらの体制確保及び救急救命士の受講を推進することとしています。3 今後の課題 気管挿管・薬剤投与については、実施状況等の調査を定期的に行うことで、地域における問題点を把握し、気管挿管・薬剤投与が実施可能な救急救命士の全国的な養成を推進していきます。さらに、消防庁は関係機関と連携し、今後も救急救命士の処置範囲の拡大を含む救急業務の高度化について検討していきたいと考えています。メディカルコントロール体制とは、下記の体制をいいます。1)指示・指導体制 救急隊が、現場からいつでも迅速に、医師の指示、指導、助言を要請できる2)事後検証体制 実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行い、その結果を救急隊員の再教育に活用する3)教育・研修体制 救急救命士の資格取得後の再教育として、医療機関において定期的に病院実習を行う
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成16年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数5万6,388件(対前年比4,578件増、8.8%増)、救助人員6万5,854人(同1万3,553人増、25.9%増)である(第2−5−1表、附属資料35)。
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ134万6,748人である。消防職員は、延べ116万6,552人で、うち交通事故が37.0%、火災が19.4%である。一方、消防団員は、延べ18万196人で、うち火災が77.0%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ56万1,921人であり、救助活動1件当たり10.0人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は破裂事故の23.4人が最も多く、次に水難事故の16.6人となっている(第2−5−2表)。
2 救助活動の実施体制(1)救助隊設置消防本部及び構成市町村 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、救助活動に関する高度な専門教育を受けた隊員、救助活動に必要な資機材及びこれらの資機材を搭載した救助工作車等によって構成される。 平成17年4月1日現在、消防法第36条の2の規定並びに救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)に従い、救助隊を設置している消防本部は817本部と前年度と比較して34消防本部減少し、また、当該消防本部の構成市町村(受託市町村を含む。)は2,292市町村であり、前年度と比較して650市町村減少している。これは、市町村の合併や消防機関の広域再編が進められたためである(第2−5−3表)。
(2)救助隊数及び救助隊員数 救助隊は817消防本部に1,493隊設置されており、救助隊員は2万4,225人となっている。1消防本部当たり1.8隊の救助隊が設置され、1隊に16.2人の救助隊員が配置されていることとなる。
(3)救助隊が乗車する車両及び主な保有資機材 救助隊の保有する資機材については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている(第2−5−5表)。 また、消防庁としては救助工作車及び保有する資機材については、国庫補助又は、地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている。
(4)救助隊の教育訓練 消防職員の救助活動については、より高度かつ専門的な知識と技術が不可欠となってきている。このため消防庁では、平成10年度から、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催しており、パネルディスカッション等による活発な意見交換や、事例研究などが行われている。今年度は12月に全国の救助隊員等約1,500名を対象として、「新たな交通事象に適応した救助のあり方について」をテーマにし、講演やパネルディスカッションを行った。また、消防学校の専科教育の救助科では、140時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2−5−6表)。
3 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は、火災、交通事故、自然災害からテロ災害など特殊な災害までに及んでいる。 平成16年、新潟県中越地震を始めとした大規模な自然災害が発生し、平成17年においても、JR西日本福知山線列車事故や福岡県西方沖、宮城県沖を震源とする地震等の災害が発生、海外では平成13年の米国同時多発テロ事件以降、平成16年スペイン列車爆破テロ、平成17年ロンドン爆破テロ等が発生したように、世界的にテロの脅威が高まっており、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 特に、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震における長岡市妙見堰での土砂崩れ乗用車転落事故ではいつ起こるかわからない余震の続く中で、救助スペースが限られた過酷な救助活動であったが、東京消防庁のハイパーレスキュー隊を中核に地元長岡市、新潟県広域応援隊、緊急消防援助隊の合同の救助活動を実施し、母子を4日ぶりに救出した。 また、平成17年4月25日に発生したJR西日本福知山線列車事故は、死者107人、負傷者549人もの被害となった。列車が沿線の建物(マンション)に衝突し、一部の車両が建物内にくい込む形となり、また、中に駐車していた自動車からガソリンが漏れ、泡消火薬剤による防護措置を施しつつも気化したガソリンを完全に封じ込めることが難しく、エンジンカッター等の火気が発生する救助資機材の使用ができなかったこと、さらに、建物内という極めて狭隘な空間での作業であったことから、救助活動に時間を要することとなった。 消防庁ではこのような状況を勘案し、現行省令に掲げる救助隊の他に、特別高度救助隊の東京消防庁・政令市消防本部への配備、高度救助隊の中核市消防本部・中核市を有しない県の代表消防本部への配備を検討し、あわせて特別高度救助隊には特殊な救助用資機材、高度救助隊には高度救助用資機材等を整備することを検討している。また、救助隊員については、高度な救助技術に関する知識・技術を兼ね備えた隊員で構成することとし、この高度救助隊員の教育を消防大学校のカリキュラムに取り入れ、救助部隊の充実・強化を図ることとしている。 このように、多種多様な事故・災害に的確に対応するため、各種災害に対応する救助活動のマニュアル及び救助技術等の教育プログラムの充実を図るとともに、高度かつ専門的な機能・性能が要求される救助資機材の機能・性能の明確化や消防・防災ロボット等先進技術の活用について検討を行っており、また、救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。
兵庫県尼崎市で発生した列車事故概要と消防機関の活動 平成17年4月25日に発生したJR西日本福知山線列車事故は、107人の方々がお亡くなりになるという大きな被害となりました。 列車が沿線の建物(マンション)に衝突し、一部の車両が建物内にくい込む形となり、また、中に駐車していた自動車からガソリンが漏れ、泡消火薬剤による防護措置を施しつつも気化したガソリンを完全に封じ込めることが難しく、エンジンカッター等の火気が発生する救助資機材の使用ができなかったこと、さらに、建物内という極めて狭隘な空間での作業であったことから、救助活動に時間を要するものでした。 この事案では地元尼崎市消防局による救助・救急活動をはじめ、兵庫県内の消防本部による応援隊や近隣府県からも緊急消防援助隊の応援活動が行われました。 また、警察広域緊急援助隊や自衛隊の災害派遣による救助活動も行われ、消防機関とこれらの機関との連携により活動が行われました。1 概要○発生日時(覚知日時) 平成17年4月25日(月)午前9時18分頃(9時22分 尼崎市消防局119番通報覚知)○発生場所 兵庫県尼崎市久々知3丁目27線路上○発生状況 JR宝塚駅発(9:03)上り快速列車(7両編成)が脱線し建物に衝突2 被害の状況(5月24日現在)○死 者 107人(男59人、女48人)○負傷者 549人(重症139人、軽症410人) ・消防機関等による医療機関への搬送人員 240人  (医療機関収容時区分/重症47人、中等症18人、軽症169人、傷病程度不明6人) ・消防機関による救出人員 240人 ・マンション(列車が衝突した建物)の居住者に負傷者なし3 消防機関の活動状況 消防機関の活動状況は以下のとおり○尼崎市消防局の活動状況 累計119隊 462人(4月25日〜28日)○尼崎市消防団の活動状況 1団27分団 96人(4月25日)○県内応援の活動状況 累計100隊 363人(4月25日〜28日)○緊急消防援助隊の活動状況 累計 74隊 270人(4月25日〜28日)
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等に日頃から大きな成果を上げている。特に、地震等大規模災害時においては、ビルの倒壊や道路の陥没等により陸上交通が遮断され、また津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態において、ヘリコプターの高速性、機動性を活用し、消防防災活動で大きな役割を担うことができるものと期待している。 消防庁としても、国庫補助金の活用による資機材の充実等の支援を行い、消防防災ヘリコプターの円滑な運航・整備を推進している。 平成17年4月1日現在の消防防災ヘリコプターの保有状況は、消防機関保有が27機、道県保有が42機、計69機となっており(第2−6−1図)、未配備県は佐賀・沖縄の2県のみとなっている。 また、平成17年度中には、消防庁としても大規模災害時の早期の職員派遣など、迅速な情報収集の手段を確保すべく、消防庁ヘリコプターの導入を図ることとしている。 消防防災ヘリコプターは、消防防災業務に幅広く活用されており、平成16年中の出動実績は5,692件であり、内訳は火災出動1,248件、救急出動2,356件、救助出動1,605件、その他の出動483件となっている。 なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づいた広域航空消防応援によって、都道府県域を越えた応援活動が展開されており、平成16年中は27件となっている。
2 航空消防防災体制の課題(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要がある。 消防庁においては、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進し、45都道府県で配備されている。 都道府県保有の消防防災ヘリコプターは、従来、市町村の消防吏員が都道府県保有のヘリコプターを使用して消防事務を行うという法的構成がとられていたところであるが、平成15年6月の消防組織法等の改正により、都道府県は区域内の市町村長からの要請に応じ、航空機を用いて市町村消防を支援することができること、その支援を行うため都道府県に航空消防隊を設けるものとすること等、都道府県が行う支援事務の根拠が法律上明確となった。 近年の災害においては、消防防災ヘリコプターの活躍が顕著であり、平成16年中に発生した新潟県中越地震等の自然災害時には、多くの消防防災ヘリコプターが出動し、救助・救出及び救急搬送を実施したほか、被災地の映像を官邸及び消防庁の消防防災・危機管理センターに配信するなど、大きな役割を果たした。また、平成17年4月のJR西日本福知山線列車事故では、6機の消防防災ヘリコプターが出動し、情報収集、医師搬送及び救急患者のピストン搬送を実施した。 海外においては、平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波災害の際に、消防防災ヘリコプター2機がタイ王国の被災地救援に出動した。 このように消防防災ヘリコプターに対する国内外の出動需要は高まっており、広域的な連携の下、その一層の活用を推進していく必要がある。
(2)各種災害時におけるヘリコプター活用の推進 消防防災ヘリコプターは、火災、救急、救助等に幅広く活用されている(第2−6−2図)。 特に、救急搬送については、消防庁は平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、ヘリコプターの特性を生かした救急業務の実施を図るよう推進している。各都道府県ではこれを基に出動基準を作成し、地域の実情を踏まえた救急業務実施体制を整備する等効果的な消防防災ヘリコプターの運用について所要の措置を講じている。 また、医師がヘリコプターに同乗した救急業務の実施についても、地域の病院と協定を結ぶ等、救命の輪が着実に広がっている。 高速道路で重大事故や大規模災害等が発生した場合には、その負傷者が重傷である可能性が高く、ヘリコプターを活用した救急・救助活動等は、後遺症の軽減も含めて高い救命効果が期待できる。このため、平成17年8月に警察庁、厚生労働省、国土交通省等関係機関との協議の結果、高速道路におけるヘリコプターの着陸場所については、サービスエリア、パーキングエリアの園地部に設置された救命活動支援ヘリポート、駐車エリアや高速道路本線上への離着陸等高速道路からのヘリコプターによる搬送フロー等を示したほか、地元の消防、警察、道路管理者等関係機関が参加した訓練を実施する等の取組みを行っている。
(3)航空隊員に対する教育訓練の推進 航空隊員の資質のいっそうの向上を図るため、平成10年度から消防大学校で「航空消防防災講習会」を開催する等最新の救急救助技術の習得等を進めている。 さらに、消防防災ヘリコプターに係る地方公共団体相互の連絡協調を推進し、国民の信頼と期待に応える航空消防防災体制の確立に資することを目的として平成8年に設立された全国航空消防防災協議会においても、航空消防防災活動の向上に寄与する調査研究、航空隊員を対象とした研修会及び航空隊長講習会を実施している。
(4)大規模災害時の消防防災ヘリコプターの有効活用に向けて 現在、大規模災害時等の広域的な運用に資するため、ヘリコプター運航システム等を構築し、消防防災ヘリコプターの稼働・整備状況、離着陸場情報等を随時把握し、緊急時においても全国規模で対応できるよう、体制の整備を図っている。 大地震により道路等が寸断されても、迅速かつ確実に情報を取得するためには、消防防災ヘリコプターを活用して上空から被災地にアクセスし情報収集を行うことが極めて有効である。そのため、迅速性・機動性に富み、被災地の情報収集手段として必要不可欠なヘリコプターテレビ電送システム及び夜間における被災地情報収集に適したより性能の高い高感度カメラ・赤外線カメラの整備・充実を図ることとしている。 また、新たに導入する消防庁ヘリコプターには、衛星通信とGPSを活用した動態管理システムを搭載することにより、位置情報の把握及び運航中における通信手段を確保することができるようになる。将来的には、消防防災ヘリコプターにこれらのシステムを搭載し、出動から災害現場到着までの通信手段の確保や消防防災ヘリコプター複数機によるオペレーションシステムの確立を図るなどより効率的な運用を進めていくこととしている。
消防庁ヘリコプターの導入について 大規模災害、NBCテロ災害等の発生時には、救助活動、消火活動、救急活動等のため、現地と連携した消防の広域応援を含む対応を、より迅速かつ的確に行うべく、平成16年度に緊急消防援助隊の法制化とこれに伴う消防庁長官指示権等の創設がされ、消防庁としても国家的観点からの責任ある対応が求められるようになりました。 その一つの手段として、消防庁がヘリコプターを導入し、消防庁職員を被災現地に迅速に派遣し、情報の収集を図り、緊急消防援助隊の部隊派遣に係る的確なオペレーションを実施することにしました。 派遣される消防庁職員は、災害初期における情報収集、必要となる緊急消防援助隊の部隊種別、数量の判断、被災地都道府県や消防本部等と連携しての緊急消防援助隊の部隊配備、転戦等の調整、特殊災害時の専門家派遣による的確な災害対応、緊急消防援助隊の派遣に関する他省庁との連絡調整、特殊災害時における消防庁長官による火災原因調査(消防研究所等による適切な助言)等の活動を、災害時における中央指令機能を果たす消防庁「消防防災・危機管理センター」の対策本部と一体となり行うことになります。 また、消防庁ヘリコプターを中心とした地方公共団体の消防防災ヘリコプターとの連携(広域応援体制)の強化を図っていくことが重要になります。 本格的に、消防庁ヘリコプターが運航されるのは、平成18年に入ってからですが、国民の生命・身体・財産を守る一翼として一刻も早い運航が待たれます。導入ヘリ:ユーロコプターAS365N3      中型ヘリ(14人乗り)      36倍ズームのヘリコプターテレビ電送システム搭載
第7節 広域消防応援と緊急消防援助隊1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成17年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が2,210、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が610、その合計である全国の協定数は、2,820である。また、全国の協定について応援災害別に分類(重複計上)すると、火災2,458、風水害1,976、救急2,156、救助2,023、その他2,161となる。 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の整備・充実を図るとともに、各都道府県に対し消防広域応援基本計画を作成し、その中で、派遣要請システムの整備、代表消防機関の設置、応援情報リストの整備等の都道府県単位の消防広域応援体制の整備を推進するように通知しているところであり、平成17年4月1日現在、38都道府県で整備が図られている。 また、大規模・特殊災害や林野火災等においては、空中消火や救急業務、救助活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効である。 そのため、消防庁では、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2−7−1表)。 今後とも消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場を確保し、情報活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。 平成16年中には、消防庁長官の求めに応じて27件の消防広域航空応援が実施された。
2 緊急消防援助隊(1)緊急消防援助隊の概要と消防組織法改正による法制化 ア 緊急消防援助隊の概要 緊急消防援助隊は、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ迅速に実施し得るよう、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、平成7年6月に創設された。 この緊急消防援助隊は、平常時においては、それぞれの地域における消防の責任の遂行に全力を挙げる一方、一旦、我が国のどこかにおいて大規模災害が発生した場合には、全国から当該災害に対応できるだけの消防部隊が被災地に集中的に出動するというシステムである。 創設当初は要綱設置という形でスタートした緊急消防援助隊であるが、その部隊は、全国の消防本部から登録された指揮支援部隊、都道府県指揮隊、消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊から構成され、大規模災害発生に際し、消防組織法第24条の3に規定する消防庁長官の要請(同法改正後は指示も含む)により、被災地に出動し、被災市町村長の指揮の下、活動することを任務としている。 イ 消防組織法改正による法制化 近年、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、南関東地域直下型地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、こうした災害に対しては、被災地の市町村消防のみでは、迅速・的確な対応が困難な場合が想定される。そこで、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、あわせて、国の財政措置を規定する等を内容とする消防組織法の改正案が平成15年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立、同年6月18日公布(平成15年法律第84号)、平成16年4月1日より施行された。(ア)法改正の主な内容 法改正の主な内容は、緊急消防援助隊の法律上の位置付けの明確化と消防庁長官の出動の指示権の創設、緊急消防援助隊に係る基本計画の策定及び国の財政措置となっている。(イ)法律上の位置付けと消防庁長官の出動指示 創設以来要綱に基づき運用がなされてきた緊急消防援助隊であるが、この法改正により、消防組織法上の組織として明確に位置づけるとともに、あわせて、東海地震等大規模な災害で2以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害(NBC災害)等の発生時には、消防庁長官は、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を「指示」するものとされた。この指示権の創設は、まさに国家的な見地から対応すべき大規模災害等に対し、緊急消防援助隊の出動指示という形で、被災地への消防力の投入責任を国に負わせることとするものである。(ウ)緊急消防援助隊に係る基本計画の策定等 法律上位置づけられた緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどう配備・充足するかについて、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下、「基本計画」という。)を策定することとしている。この基本計画は、平成16年2月に策定され、緊急消防援助隊を構成する部隊の編成と装備の基準、出動計画及び必要な施設の整備目標などを規定している。 また、緊急消防援助隊の登録についても、改正法の施行に伴い、都道府県知事及び市町村長よりあらためて申請がなされたところである。(エ)緊急消防援助隊に係る国の財政措置 消防庁長官の指示を受けた場合には、緊急消防援助隊の出動が法律上義務づけられることから、出動に伴い新たに必要となる経費については、地方財政法第10条の国庫負担金として、国が全額負担することとしている。 また、基本計画に基づく施設(設備も含む)の整備についても、「国が補助するものとする」と法律上明記されるとともに、対象施設及び補助率(2分の1)については政令で規定されている。
(2)緊急消防援助隊の体制及び装備 ア 緊急消防援助隊の体制 緊急消防援助隊の部隊編成については、発足当初、救急部隊、救助部隊等の全国から集約的に出動する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(同1万3,000人規模)、総計で1,267隊、交替要員を含め約1万7,000人規模であった。平成13年1月には、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、消火部隊について登録制を導入し、救助隊・救急隊とともにその隊数が大きく増加し、さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、及び消防防災ヘリコプターによる航空部隊、消防艇による水上部隊を新設し、8部隊とした(1,785隊、約2万6,000人規模)。 平成16年4月1日からの法律上の位置付けの明確化に伴い、法律に基づく登録を行った結果、指揮支援部隊をはじめとする10部隊で編成され、全国812消防本部から2,821隊、隊員数約3万5,000人が登録された。平成17年4月1日現在では全国779消防本部から2,963隊、隊員数約3万6,000人が登録されている。 イ 緊急消防援助隊の装備等 緊急消防援助隊の装備については、これまでも、消防庁において基準を策定するとともに、国庫補助措置を講じることにより、特殊災害対応特殊消防ポンプ自動車、救助工作車、災害対応特殊救急自動車、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な車両及びファイバースコープ等の高度救助用資機材等の整備を推進している。平成16年度からは、基本計画に基づいた義務的補助金により整備を図っているところである。 平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムは、緊急消防援助隊派遣車両の位置及び動態を把握するためのシステムで、車載GPSにより特定した車両位置と車載端末装置から入力した車両動態を携帯電話通信網により消防庁に設置したサーバに送信し、広域応援支援システムの電子地図上にシンボルで表示する。また、携帯電話網の不感地帯では自動的に低軌道衛星回線に切り替わり、全国規模で安定したデータ通信を可能とする。さらに、このシステムには、これらの回線を活用して派遣車両と消防本部等との間で情報連絡を行う簡易な文字通信機能等も備えている。平成13年度の実証実験、平成14年度の可搬型車載端末の開発を経て、現在、指揮支援部隊を構成する政令市消防局等に配備されている。
(3)緊急消防援助隊の活動 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁と名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月には、岩手県内陸北部の岩手山付近で発生した震度6弱を記録した地震において、仙台市消防局と東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局、仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局、川崎市消防局から救助部隊、消火部隊を現地に派遣し地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊が、ヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする震度6弱を記録した芸予地震においては、大阪市消防局、神戸市消防局、福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局、北九州市消防局の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。 平成15年には、7月の宮城県北部地震(震度6弱、6強、6弱が1日に連続して発生)において、札幌市消防局の指揮支援部隊・航空部隊及び茨城県の航空部隊が被災地上空で情報収集活動を行った。8月の三重県ごみ固形燃料発電所火災では、名古屋市消防局の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が、9月の栃木県黒磯市ブリヂストン工場火災においては、東京消防庁の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が出動し、消火活動等を行った。 さらに、9月の平成15年十勝沖地震(震度6弱が2回発生)においては、札幌市消防局、仙台市消防局の指揮支援部隊・航空部隊、青森県の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。また、当該地震により損傷した出光興産(株)北海道製油所のオイルタンクから発災した火災の消火活動及び鎮火後の火災警戒活動のため、札幌市消防局の指揮支援部隊のほか、10都県15消防本部の特殊災害部隊等により応援活動を実施した。これらに加えて、泡消火薬剤の提供のため、全国的な広域応援を実施し、自衛隊航空機による輸送支援及び在日米軍からの泡消火薬剤の提供を受けた。 平成16年7月13日からの新潟・福島豪雨災害では、法制化後初めて緊急消防援助隊が出動し、大規模な堤防決壊により浸水した地域及び道路寸断等により孤立した山間部等において、救出活動等に従事した。新潟県には宮城県、山形県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、長野県、岐阜県 の1都11県から、延べ171隊、693人(うち航空隊9隊、71人)が出動し3日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、三条市1,652人、見附市106人、中之島町97人の総数1,855人(うちヘリコプターによる救出92人)を救出した。 続く7月18日の福井豪雨災害では、神奈川県、富山県、石川県、長野県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県の2府10県から159隊、679人(うち航空隊9隊、65人)が出動し、2日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、福井市266人、鯖江市45人及び美山町77人の総数388人(うちヘリコプターによる救出187人)を救出した。 10月、平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号災害においては、豪雨による堤防の決壊等のため多大な被害を受けた兵庫県に出動し、浸水家屋の戸別調査及び救出活動等に従事した。10月21日、兵庫県豊岡市に、愛知県、滋賀県、大阪府及び岡山県の1府3県から、70隊、284人が2日間の活動に従事、2,000世帯を超える戸別調査を行うとともに住宅等に孤立した住民127人を救命ボート等により救出した。 10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を中心に発生したマグニチュード6.8、最大震度7を記録する大地震は、最初の地震発生後も短時間の内に震度6強以上の地震が頻発し、また震度6弱以上の余震も発生するなど、新潟県の内陸部・山間部に家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。 緊急消防援助隊については、地震発生直後の23日18時25分、消防組織法第24条の3第2項及び第4項に基づき、情報収集と指揮支援部隊派遣のため、埼玉県と仙台市に消防庁長官より直接ヘリコプターの出動要請を行うとともに、19時20分の新潟県からの派遣要請を受けて、直ちに山形県、富山県、福島県及び東京都に出動を要請したところである。その後も引き続き各県に出動要請を行った結果、11月1日までの10日間に、累計で、1都14県から480隊、2,121人、ヘリコプター20機と、これまでで最大規模の出動となった(出動都県は、宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、山梨県、富山県、石川県及び愛知県)。 活動状況は、主に小千谷市、長岡市、山古志村において、孤立住民等の安否確認、救助・救出、救急搬送に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動にもあたったところである。特に10月25日全村避難指示が発令された山古志村においては、自衛隊、警察及び海上保安庁と連携して消防防災ヘリコプターにより集中的に救出活動を実施、さらに27日には、長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故現場において、東京消防庁ハイパーレスキュー隊を中核にした緊急消防援助隊の救助部隊や航空部隊と地元長岡市、新潟県との合同の救助活動を実施し、2歳男児1人とその母親の2人を地震発生以来4日ぶりに救出(母親は病院搬送後死亡確認)した。 こうした活動の結果453人(うちヘリコプターによる救出282人)を救出し、11月1日、活動を終了した。 平成17年3月20日には、福岡県西方沖を震源とする地震(震度6弱)が発生、大阪府及び熊本県からヘリコプター2機、3隊12人が出動し、被災情報の収集にあたった。 続く4月25日には、兵庫県尼崎市においてJR西日本福知山線列車事故が発生、107人が死亡する大惨事となった。午前9時03分JR宝塚駅を出発した7両編成の上り快速列車が、同9時18分ころ尼崎市久々知3丁目付近において脱線、沿線のマンションに衝突し、先頭車両がマンション1階の駐車場にくい込むという事態となった。そのため、狭隘な空間の上、駐車場の自動車からガソリンが漏れ、エンジンカッター等の火気を発生する救助資機材が使用できないということもあり、救出に細心の注意を要する活動となった。緊急消防援助隊としては、大阪府、京都府及び岡山県の2府1県から累計で74隊、270人が4日間にわたり救助・救出、救急搬送活動に従事し、地元尼崎市消防局をはじめ、兵庫県内消防本部の県内応援隊と協力、消防機関として240人(緊急消防援助隊の救出人員42人)を救出した。 以上のような緊急消防援助隊の活動経費については、昭和62年度に創設された消防広域応援交付金制度に基づき、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されている。
(4)緊急消防援助隊の運用 緊急消防援助隊の編成及び出動計画等については、総務大臣が定める基本計画に定められているが、その概要は以下の通りである。 ア 緊急消防援助隊の編成 緊急消防援助隊の部隊は、全国を8つのブロックに分けた災害発生地域別に、政令指定都市の消防本部により編成される指揮支援部隊と、応援都道府県内の消防本部の消火部隊、救助部隊、救急部隊等から編成される都道府県隊に大別される。 緊急消防援助隊は、被災地の市町村長(又は委任を受けた消防長。以下同じ)の指揮の下に活動することとなるが、指揮支援部隊は、大規模災害の発生に際し、ヘリコプター等で速やかに被災地に赴き、被害情報の収集等にあたるとともに、当該市町村長の指揮を支援し、被災地における緊急消防援助隊の活動が円滑に行われるよう支援活動を行う。 都道府県隊は、当該都道府県内の消防本部において登録されている消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊並びに当該都道府県の航空部隊のうち、被災地への応援に必要な部隊をもって編成される。 こうした部隊編成に基づき、緊急消防援助隊は、被災地の市町村長→指揮支援部隊長→都道府県隊長→各部隊長という指揮命令系統により、活動することとなる。 イ 出動計画 (ア)基本的な出動計画 大規模災害等の発災に際し、消防庁長官は、情報収集に努めるとともに、被災都道府県知事等との密接な連携を図り、緊急消防援助隊の出動の有無を判断し、消防組織法第24条の3の規定に基づき、出動の要請又は指示の措置をとることとされている。この場合において迅速かつ的確な出動が可能となるよう、あらかじめ出動計画が定められている。 具体的には、災害発生都道府県ごとに、その隣接都道府県を中心に、原則として第一次的に応援出動する都道府県隊を第1次出動都道府県隊と、災害の規模によりさらに応援が必要となる場合に出動準備を行う都道府県隊を出動準備都道府県隊として指定している。 (イ)東海地震等における出動計画 東海地震、南関東地域直下型地震等の大規模地震については、2以上の都道府県に及ぶ著しい地震被害が想定され、第1次出動都道府県隊及び出動準備都道府県隊だけでは、消防力が不足すると考えられることから、全国的規模での緊急消防援助隊の出動を行うこととしている。 そのため、東海地震及び南関東地域直下型地震を想定して、中央防災会議における対応方針も踏まえ、それぞれの発災時における、緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを策定しており、例えば東海地震の場合、強化地域に指定されている8都県以外の全道府県の陸上部隊の出動順位、応援先都県、出動ルート等を定めるとともに、航空部隊についても全国的な運用を行うこととしている。 (ウ)緊急消防援助隊調整本部 緊急消防援助隊はそれぞれの管轄区域を離れて活動することから、迅速かつ効果的な活動を行うためには、速やかな集結及び被災地域への出動とともに、被災地域における各部隊の具体的な活動場所及び部隊配備等を、被害状況を踏まえて適時的確に決定する必要がある。 そのため、緊急消防援助隊が出動した場合には、被災都道府県において緊急消防援助隊調整本部を設置し、同本部には、消防庁職員も派遣して、都道府県・県代表消防機関職員、指揮支援部隊長等とともに、緊急消防援助隊の部隊配備等に係る所要の連絡調整を行うこととしている。 各都道府県においては、自らが被災地となる場合想定して、平時よりこうした調整本部の運営方法をはじめ、進出拠点、燃料補給基地等、緊急消防援助隊の受入にあたって必要な事項を都道府県内の消防機関等と協議の上「緊急消防援助隊受援計画」として定めておかなければならない。この受援計画の策定状況は、平成17年10月1日現在で、25道府県となっており、消防庁としてはその早急な整備を指導しているところである。
(5)緊急消防援助隊の訓練等 大規模災害時における緊急消防援助隊の出動及び活動を的確かつ迅速に行うためには、全国各地からそれぞれの管轄区域を離れて活動に従事するという緊急消防援助隊の特殊性を考慮し、指揮・連携能力の向上を図るなど、平時からの緊急消防援助隊としての教育訓練が重要となる。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日に、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われたのをはじめ、平成12年10月23・24日には、第2回目の全国合同訓練を、東京都江東区有明において実施した。 第3回全国合同訓練は、緊急消防援助隊法制化後、初の全国訓練として平成17年6月10日・11日の両日、静岡県静岡市において「東海地震における緊急消防援助隊アクションプラン」等に基づき、参集及び活動体制について実践的かつ総合的な検証を行った。 また、「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に関わる基本的な事項に関する計画」に基づき毎年、隊員の技術向上と部隊間の連携強化のため地域ブロックごとに合同訓練が行われており、引き続き、消防大学校における必要な教育訓練の実施とともに、計画的な部隊の増強、施設の充実強化を図ることとしている。 更に、新潟県中越地震災害への活動を教訓として、緊急消防援助隊調整本部機能の充実を図るため、消防庁の機動力強化として消防庁指揮車、消防庁要員搬送車を平成16年度補正予算により整備した。
(6)今後の課題 法制化後あらたに発足した緊急消防援助隊について、今後その活動能力をさらに高めていくためには、下記の課題に引き続き取り組んでいく必要がある。〔1〕 消防庁においては、消防庁長官の指示権が創設されたことも踏まえると、大規模災害・特殊災害等発生時に、消防庁自体の初動対応がこれまで以上に重要となり、迅速かつ的確な情報収集等に努め、できる限り災害の規模、被害状況等を把握して、緊急消防援助隊の派遣等必要な措置を即座に講じなければならない。また図上訓練等の実施により日頃から体制の点検も行いながら、緊急消防援助隊の出動の要否、派遣地域、必要な部隊規模・種類の判断等オペレーション機能の強化を引き続き図っていく必要がある。〔2〕 緊急消防援助隊が迅速かつ効果的に活動するためには、各都道府県と県代表消防機関において速やかに応援部隊を編成し、参集・集結して被災地に出動する必要がある。また、緊急消防援助隊を受け入れる被災地の側においても、都道府県と被災市町村、消防機関が連携して緊急消防援助隊の活動地域等を調整・決定することが重要である。こうした点については、昨年来の出動事例及び本年6月の全国訓練においても再認識されたところであるが、そのためには平時より、各種防災訓練等の機会も活かしながら、緊急消防援助隊調整本部運営訓練や大規模な参集・集結訓練など、緊急消防援助隊の活動に即したより実践的な教育訓練を行う必要がある。〔3〕 いつ起きてもおかしくないと言われる東海地震や東南海・南海地震等に備えるためには、発生時における緊急消防援助隊の活動方針をさらに具体化していく必要がある。このため今後も東海地震及び南関東地域直下型地震に係るアクションプランを随時検証するとともに、東南海・南海地震等を想定したアクションプランの策定など様々な事案を想定した運用体制の構築を図っていく必要がある。〔4〕 緊急消防援助隊の活動規模の増大や、公表された首都直下地震や東南海・南海地震の被害想定を念頭に置き、今後さらに登録部隊の計画的な増強を図るとともに、車両、航空機、資機材等各種の施設・設備整備を推進していく必要がある。〔5〕 NBC災害等特殊災害の場合においては、大規模自然災害の場合とは出動部隊、活動内容等も異なってくることから、これらの事案の特殊性を踏まえた具体的な対応方策の検証を進めていく必要がある。
第3回緊急消防援助隊全国合同訓練の実施 緊急消防援助隊は各自治体消防の集合部隊であることから、その技術の向上及び指揮・連携活動の能力を高め、大規模・複雑化する災害に対応し、広域応援活動が計画通り効果的に実施できるように備えておくことが何より重要であり、そのための実践的な訓練の実施を通じ、常に活動能力の向上と検証を行っていく必要があります。 特に昨今、切迫性が指摘される東海地震、東南海・南海地震、南関東直下型地震のような大規模地震による大災害を想定した場合、全国的規模での訓練の実施は大変重要です。 全国合同訓練は、平成7年、平成12年とこれまで過去2回、いずれも東京都内で実施されましたが、緊急消防援助隊が法制化されてから初めての訓練となる第3回は、平成17年6月10日、11日の両日に、静岡県静岡市において消防庁主催により実践的な訓練として実施しました。 今回の緊急消防援助隊全国合同訓練には、静岡県内消防本部と他の46都道府県内消防本部合わせて206消防本部から現地消防部隊及び緊急消防援助隊の陸上部隊に14航空部隊合わせて386部隊1,953人参加し、「東海地震における緊急消防援助隊アクションプラン」等に基づき、参集及び運用・活動体制について総合的に検証しました。 台風の接近が心配される中、遠方からの部隊、航空部隊の参集への影響が懸念されましたが、各隊とも無事円滑に訓練会場に到着し、長距離移動の疲れも見せず、真剣な表情で訓練に打ち込みました。 また、社会の防災意識、大規模災害に対する危機意識が、年々高まりを見せる中で、一般の来場者数が主催者の予想を遙かに上回り、緊急消防援助隊に対する関心の高さと期待を参加隊員全員が肌で感じることとなりました。 今回の訓練により、全国の消防が連携し、大規模災害時等における救助・救出活動に当たるという緊急消防援助隊の性格と任務が、全国民の前に一層明確になり、消防への信頼を多いに高めることとなったと認識しています。消防庁としては、今回の訓練を通じて得た貴重な経験を活かして、今後、緊急消防援助隊のより迅速な参集体制を確立し、指揮・連携活動の能力を一層高め、大規模・複雑化する災害に的確に対応できるよう体制整備を図ることとしています。
第8節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大きな改正や、防災基本計画の修正が行われている。 災害対策基本法については、平成7年6月に、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による措置の創設等を内容とする改正が行われたほか、12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等国・地方を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 防災基本計画については、平成7年7月には、阪神・淡路大震災の経験等を踏まえ、全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められ、平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害についても、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るための修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現・経済産業省)、厚生省(現・厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等を置くこととされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村における核燃料加工施設における臨界事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られた。 平成16年3月には東海地震に係る地震防災基本計画の修正、東南海・南海地震防災対策推進基本計画の策定等、近年の震災対策の進展を踏まえ、震災対策編を中心に修正が行われた。また、平成17年7月には、前年の風水害等の教訓を踏まえ、修正が行われた。
(3)消防庁の防災体制 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現・総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関しとるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる(省庁再編に伴い、現在は消防庁防災業務計画)。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の自然的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成15年8月には、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に消防防災・危機管理センターを整備し、平成16年には、同センターに設置される消防庁災害対策本部の体制を情報収集中心のものから、より機動的な災害応急対応中心のものへと見直したことに伴い、センター内の配置を会議中心のスタイルであるいわゆる「コの字」型のものから、実践的なオペレーション機能を重視する「アイランド型」へと変更した。 同時に災害対策本部の編成について災害種別によって課室別にその都度編成していたのを、災害対策本部の組織体制を原則として一本化した。加えて、平成17年度には大規模地震やNBCテロ災害等の様々な災害発生時において、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示や現地における的確な災害対応等を迅速かつ適切に実施するため、消防庁職員等を被災地へ迅速に派遣し、併せて現地調査、情報収集を行うため消防庁ヘリコプターを導入することとした。さらに、平成17年8月には、業務の専門性の確立、責任体制の明確化を一層図ることを目的に、大規模地震対策、消防防災の情報通信システム、消防応援・支援、緊急消防援助隊、原子力災害、救助、テロ対策、国民保護の企画・運用等の緊急対応や地方公共団体との連絡調整等の各業務を統括する「国民保護・防災部」を設置した。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成17年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体(全ての都道府県で作成済)、原子力災害対策については23団体、風水害対策については29団体、火山災害対策については16団体、林野火災対策については18団体、雪害対策については12団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(現、中央防災会議幹事会副会長、消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成17年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、このうち1,879団体(77.7%)が見直しを完了している。 なお、平成16年度中には、都道府県では34団体が、市町村では820団体が、それぞれ修正を行っている。 また、平成9年6月には防災基本計画への事故災害対策の追加、平成12年5月には原子力災害対策編が修正されたこと、平成16年3月には東海地震、東南海・南海地震への対策として震災対策編を中心に修正が行われたこと、平成17年7月には災害への備えを実践する国民運動の展開、地震防災戦略の策定、インド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等についての自然災害対策各編の修正が行われたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請した。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントの実施マニュアルを作成するとともに、このような防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、地区別防災カルテの作成マニュアルを示すとともに、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成16年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、40団体となっている。
(3)広域防災応援体制ア 広域防災応援体制の確立 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛庁長官等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛庁長官等に対して災害の状況等を通知することができる。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正により都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。イ 広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関と、あらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、災害現場における指揮体制等各般にわたる項目について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援に関しては、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組みが進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計23の協定が締結されている。この結果、阪神・淡路大震災以後、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を越えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に取り組む団体が大幅に増加しており、平成17年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、1,816団体となっている。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に軽減するために重要であり、そのためには日頃から実践的な対応力を身につけておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上型訓練等により実戦的な訓練の実施を促進することとしている。 平成15年度から行われた「地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデル作成調査研究」について平成16年度も引き続き実施し、「地方公共団体における地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書(平成16年度)」をとりまとめ、地方公共団体に配布。平成17年においても同調査研究を進めるとともに、7月から8月にかけて、地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定能力の向上と応急体制の点検、住民と行政との信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、全国3ブロック(西日本、関西・中部、東日本)で「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催、市町村長や都道府県・市町村の防災担当幹部、延べ629名の参加を得た。 平成18年度も上記調査研究を更に進めていくとともに、防災危機管理ブロック・ラボを平成18年5月から7月に実施する予定としており、さらに消防庁及び(財)消防科学総合センターから図上訓練支援チーム(専門家及び指導員で構成)を市町村に派遣し、図上訓練の企画立案から実施等に至る過程を指導支援することを通じ、市町村における実戦的な防災訓練(図上型訓練)の普及を促進する「市町村防災図上訓練推進モデル事業」を実施することとしている。 平成16年度においては、都道府県で延べ218回の防災訓練を実施したほか、市町村においても延べ6,852回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震・津波に対応するものが最も多く、次いで、原子力、台風等風水害、コンビナート災害、林野火災となっており、市町村では地震・津波、風水害、大火災、林野火災、土砂災害となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実働)訓練が最も多い。
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会の更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、すべての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。これに必要な経費については、平成8年度から地方財政計画に約70億円を計上し、普通交付税により措置している。 また、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、〔1〕被害想定、〔2〕職員の動員配備体制、〔3〕情報の収集・伝達体制、〔4〕応援体制、〔5〕被災者の収容、物資等の調達、〔6〕防災に配慮した地域づくりの推進、〔7〕消防団、自主防災組織の充実強化、〔8〕災害ボランティアの活動環境の整備、〔9〕災害時要援護者対策、〔10〕防災訓練、といった項目に留意する必要がある。 なお、地域防災計画をより実践的かつ具体的なものとするため、消防庁では平成17年7月より各都道府県の地域防災計画をデータベース化した「地域防災計画データベース」の運用を始め、利用の促進を図るなど、内容の比較・検証を通じたより適切な計画へ見直しを行える環境を整備している。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのため、組織に関しては、高いレベルの危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要がある。平成17年4月1日現在、42都道府県において部次長職以上の防災・危機管理専門職が設けられているが、更に充実の必要がある。 防災体制強化の根幹である人材育成については、首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応力の向上、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要である。消防庁としては、平成15年度より消防大学校において、首長等幹部職員を対象とした「トップマネジメントコース」を含む「危機管理セミナー」を実施するとともに、消防職団員やボランティア、広く住民を対象とし、インターネットを活用して家庭や地域でいつでも学習できる「防災・危機管理e-カレッジ」を、平成16年2月から運用開始している。 このほか、各地方公共団体においては、防災業務に精通した職員をはじめとした人員を夜間・休日においても24時間体制で配置するほか、災害時の職員の自主参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などICT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険個所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。 また、近年の豪雨災害による被害を踏まえ、避難勧告・指示を発出する際の客観的な基準の作成や高齢者等災害時要援護者の避難誘導体制の整備等についても進めていく必要がある。
第9節 消防防災の情報化の推進1 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 災害時において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するためには、災害に強い消防防災通信ネットワークを構築しておくほか、平素から防災情報の収集・伝達体制を確立しておくことが極めて重要である。 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、〔1〕国と都道府県を結ぶ消防防災無線網、〔2〕都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線網、〔3〕市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線網及び〔4〕国と地方公共団体を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2−9−1図、第2−9−1表)。 消防庁では、次の事項に重点をおいて、地方公共団体と一体となって総合的な消防防災通信ネットワークの整備を推進している。
(1)通信ルートの多ルート化及び耐震化の推進 大規模災害時には、通信施設が被害を受け、情報連絡に支障を来すことも予想されることから、災害に強い通信ネットワークを構築するため、地上系通信網に加え、衛星系通信網を整備することにより通信ルートの多ルート化を推進している。 衛星系の通信網については、現在、地域衛星通信ネットワークが消防庁及び46都道府県の間で運用されており、地震等による通信回線の遮断を最小限とするため、通信施設の耐震・免震対策及び停電時に備えた非常電源設備の耐震対策を促進している。
(2)災害に対する初動体制を確立する画像伝送システムの整備 大規模災害発生時に迅速かつ的確な災害応急活動を展開するためには、情報の収集・伝達を速やかに行うことが必要であり、中でも、上空からの映像情報は被害規模及び概要を迅速に把握できるため、災害に対する初動体制及び広域応援体制を整える上で非常に有効である。 画像伝送システム(第2−9−2図)は、衛星地球局、高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等で構成されており、得られた画像情報を消防本部指令センター内等に集約し、発災直後の被害状況を当該団体において把握するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに国(消防庁を経由して官邸等)、都道府県及び他の市町村などへ伝送するものである。たとえば、平成17年3月20日に発生した福岡西方沖を震源とする地震の際には、福岡市消防局や北九州市消防局の消防防災ヘリコプターにより、玄界島などの離島をはじめ各地域を撮影した被災地情報を、画像伝送システムを用いて消防庁へ送信することで被災地情報の収集が迅速に行われた。 ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているものの、その映像受信範囲は全国をカバーするには至っていない(第2−9−3図)ことから、財政負担が少なく機動性のある可搬型ヘリコプターテレビ受信装置についても整備を進めていく必要がある。 近年の災害態様の複雑化及び救急業務の増大に対処するため、消防機関は、特に消防・救急無線の増強に努めており、機器についてもデジタル化等の高性能化が進められている。また、消防緊急通信指令施設やヘリコプターテレビの撮影位置を把握する資機材など高度な機能を持った各種消防通信設備を導入する消防機関も徐々に増えている。
(3)市町村の消防防災無線の整備 ア 地域住民等に密着した防災行政無線網 同報系の防災行政無線は、住民等に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報、避難勧告等の伝達に極めて有効である。移動系無線は、災害現場に赴き、その状況等を的確に把握・伝達するため必要不可欠なものである。 また、地域防災系無線は、災害時において市町村と防災関係機関、病院、学校、ライフライン等の生活関連機関、自主防災組織等との相互連絡に極めて有効である。 消防庁では、国庫補助制度、防災基盤整備事業等を活用し、これらの無線網の整備の促進を図っているところであり、全国整備率は平成17年3月末現在、同報系無線70.1%、移動系無線83.3%、地域防災系無線9.6%となっている(附属資料40)。 また、整備にあたっては、デジタル方式の高機能情報通信対応防災無線は、テロップなどの文字情報や静止画像を伝達できるほか、音声による双方向情報伝達を可能とすることからその整備を促進している。 イ 高度化する消防・救急無線網 消防・救急無線は、消防本部、消防署等に基地局を設置し、消防ポンプ自動車、救急自動車等に積載した移動局との間で情報の収集・伝達、指揮・連絡等を行うための無線網である。平成17年4月1日現在、9万9,945局が運用されており、この1年間に1,309局が増加した(第2−1−3図)。 また、119番通報の受付から出動指令、現場活動支援等を効率的に行うための消防緊急通信指令施設は約9割の消防本部で整備され、地図等検索装置や車両動態管理システム、医療情報装置などのシステムの導入が進められているほか、災害現場の映像を消防防災ヘリコプターから消防本部に伝送するヘリコプターテレビ電送システムの導入も増加するなどの高度化が図られている。 一方、近年、情報通信の飛躍的進展により周波数チャンネルの需要が高まっているが、電波は限られた資源であり、新たな周波数割り当てが極めて困難な状況となっている。 このような過密な電波環境への対応や秘匿性の確保、各種データ、画像等の伝達を可能とする消防・救急無線の高度化のため、消防・救急無線においても平成28年5月までにデジタル化を進めることとしている。 消防庁では全国消防長会と連携を図りながら、「消防・救急無線デジタル化検討懇談会」を開催し、平成11年度には実験用デジタル無線機の仕様作成及び実験機の製作、12年度には変調方式や周波数帯等の違いによる電波伝搬への影響調査、13年度にはデジタル移行に伴う使用周波数の変更による既設の無線通信補助設備への影響調査及び対応方法の検討、14年度にはデジタル化した際に活用できるアプリケ−ション例と移行に際しての効果的な設計方法や低コスト等のモデル、費用等を検討等、様々な課題検討を行い、全国の消防本部が円滑かつ速やかにデジタルへの移行が図られるよう取組みを進めている。 また、デジタル化は、全ての無線システムを再整備しなければならず、多額の費用を要する。このため、平成16年度には、「消防・救急無線の広域化・共同化の推進検討懇談会」を開催し、無線設備の広域化・共同化による効果的かつ効率的な整備に向けた検討を行った。この結果、広域化・共同化して整備した場合、広域での安定した通信が実現するとともに、消防救急無線施設の整備費用の大幅な節減効果がみられるなど、広域化・共同化の有効性が確認されたことから、今後、各都道府県において、広域化・共同化に係る整備計画を策定し、広域化・共同化を促進することとしている。
(4)多様な情報収集、伝達手段の整備とバックアップ機能の確保 地震災害、石油コンビナート災害等の大規模な災害が発生した場合、災害現場においては、消防機関をはじめとする防災関係機関が相互に協力して効率的な災害応急活動を行う必要がある。消防相互の応援には、全国共通波等を的確に活用することとしているほか、警察等異なる機関との密接な情報交換を行うための通信手段としては、防災相互通信用無線(防災相互波)が活用されることとなっている。 消防庁では、特に、大規模災害等の発生が想定される市町村、あるいは石油コンビナート地帯等の市町村に対し、防災相互通信用無線施設を整備し、災害時にその機能を十分活用できるよう、あらかじめ関係機関と調整する等運用体制の確立について要請している。 なお、大地震等により通信施設が使用不能となった場合には、国・地方間の情報伝達機能が麻痺し、災害応急活動に重大な支障を来すことから、通信施設のバックアップを確保しておく必要がある。 このため、地方公共団体の本庁舎が被災した場合のバックアップ施設(衛星施設等)の確保や機動性のある車載型衛星地球局、可搬型衛星地球局等の整備の促進を図っているところである。
2 被害状況等に係る情報の収集・伝達 消防庁では、地方公共団体と国との間の災害情報の収集・伝達の窓口として、消防防災通信ネットワークの充実を図るとともに、迅速かつ的確な情報の収集・伝達に努めている。 とりわけ、大規模災害時には、災害の規模や被害の概況を迅速に把握することが重要である。消防庁では、大規模災害時の都道府県及び市町村からの情報収集のために火災・災害等即報要領を定め、緊急消防援助隊等による対応を迅速に行うよう、情報収集体制の整備に努めているところである。また、火災・災害等即報要領については、必要に応じてこれまでも随時見直しを行ってきたところであるが、平成16年9月17日には、国民保護法の施行に伴い、武力攻撃災害及び緊急対処事態を即報の対象として位置付け、これらの災害等(該当するおそれがある場合も含む。)が発生した場合も報告の対象としている。 なお、消防庁においても、大規模災害時等に被災地に出動し、情報収集や現地での防災活動の支援を行うための現地活動支援車及び被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を、また、消防庁が被災した場合の地方公共団体との通信機能の確保のため、消防大学校に衛星通信施設等の諸施設をそれぞれ整備している。さらに、地方公共団体から情報を入手し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等に適切に伝達できるよう、その徹底を図っている。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 消防庁では、震度情報や広域応援対応力情報などの防災情報のデータベース化と国・地方公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始しており、本システムで収集された震度データは、緊急消防援助隊の派遣等、広域応援活動に生かすとともに、気象庁にも提供され震度情報として発表されている。近年、震度情報が経由する設備の不備等により震度情報の伝達に不具合が生じており、今後、それらの課題に対する検討が必要である。 また、平成11年度から、危険物等の災害発生時に、色、臭気等から物質を特定し、危険物等に係る危険性及び防ぎょ方法を検索することができるデータベース(危険物災害等情報支援システム)をサブシステムとして防災情報システムに加えるとともに、危険物の対象品目を拡大し、全国の消防本部で利用できるようにしている。 さらに平成15年度には、VPN(仮想専用通信網)の技術を導入し、インターネット経由で防災情報システムの利用が可能となっている。
(2)災害対応支援システム等の導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断のもとに的確な応急活動を行う必要がある。そのためには、地震発生直後には被害を即時に推定することができるシミュレーションシステムの導入が有効である。 消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めている。独立行政法人消防研究所で開発した「簡易型地震被害想定システム」は、震源、マグニチュード等の入力という簡単な操作で即座に地震による被害を推計することが可能であり、災害対応における初動対応の状況判断と日常の訓練等に有効である。消防庁では、全国の自治体や消防本部に配布し、その活用を図るとともに、消防防災・危機管理センターにおいても被害予測に同想定システムを活用している。
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、電話、ファクシミリにより行われてきたが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速、的確に行うため、消防庁では、次の3つのサブシステムから構成される緊急支援情報システム、及びこれらをバックアップして電子地図などの大容量のデータ等を衛星通信回線により伝送することができるシステムを整備している(第2−9−6図)。ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等で情報を共有するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。ウ ヘリ映像等による被災状況把握システム 消防防災ヘリコプター等で撮影した被災地映像を解析し、被災範囲等を迅速に把握することができるシステム。
(4)各種統計報告オンライン処理システム 行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度からVPN網を活用した各種統計報告のオンライン処理を可能とするシステムの開発を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。 ア 火災報告オンラインシステム 従来から火災報告取扱要領(昭和43年11月11日付け消防総第393号)に基づき、国内で発生した火災について把握するシステムで、火災種別、火災原因、死傷者数、損害状況等の調査・分析等に活用している。 イ 防火対象物実態等調査オンライン処理システム 消防設備等の設置、防火管理制度や消防設備士制度の運用及び違反処理体制の整備状況の実態を把握することを目的として実施している「防火対象物実態等調査」については、平成15年度にシステムの開発に着手し、その後、平成17年の調査からオンラインによる報告を開始している。 ウ ウツタイン様式調査オンラインシステム 「ウツタイン様式調査オンラインシステム」は、平成15年度にシステムの開発を行った。ウツタイン様式は従前の蘇生指標に代わり、心肺停止傷病者の実態を原因や行われた処置等により詳細に記述・分類するための様式であり、世界標準となるべく考案されたものである。また、この様式を国家単位で採用するのは日本が初めてであるため各種学会の期待も大きく、救急行政、救急医療はもとより医療レベル全体のレベルの向上に資することが期待できる。 本システムは、平成17年1月より本運用を実施しており、平成18年中には初めての年間統計データ(平成17年分)が集計される予定である。 エ 「危険物規制事務調査」及び「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」オンライン処理システム 危険物施設の許可及び設置状況、危険物取扱者制度の運用状況、立入検査及び違反処理の実施状況等の実態把握を目的として実施している「危険物規制事務調査」並びに危険物施設等において発生した事故の状況を把握し、事故防止対策に活用する「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」について、オンライン処理システムの開発を行った。 なお、「危険物規制事務調査(平成17年度分報告)」については、平成18年4月以降、「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」については、平成18年1月1日以降より運用の開始を予定している。 これによって、危険物施設の実態や事故の発生状況がデータベース化され、データの検索や参照が容易となるため、都道府県や消防本部において危険物情報を効率的に共有化することが可能となり、更なる危険物行政の向上につながるものである。
4 情報化の今後の展開(1)防災情報通信体制の充実強化 大規模・特殊災害等において、広域的な対応をより迅速・円滑に行うためには、災害情報を迅速・確実に伝達し、国・都道府県・市町村の相互間における情報共有化等のためのシステムを整備することが必要不可欠である。また、行政と住民の間においても、必要な防災情報の共有化等を一層進めることが重要である。 そこで、消防庁において、消防防災分野の情報通信ネットワーク、情報通信システムの整備推進に関する指針を作成し、地方公共団体はこれを踏まえつつ、消防防災情報の共有化の計画的な取組みを行う必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、混信のないよう広域応援時の消防・救急無線の全国共通波の増波等を行ってきたところであるが、さらに統一的な情報通信基盤の整備や標準化を早急に進めることが必要となっており、前述の「消防・救急無線の広域化・共同化の推進検討懇談会」における検討なども踏まえて推進していく。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、都道府県防災行政無線が建物の倒壊や停電などにより一部地域で不通となる事態が生じた。防災行政無線については、災害時においても的確に機能が確保されることが必要であり、非常電源設備の設置や耐震対策等を徹底する必要がある。 また、この地震における情報収集に関する課題を踏まえ、「初動時における被災地情報収集のあり方に関する検討会」を平成17年5月から平成17年7月にかけて開催し、既存の情報収集方策の適切な活用や各府省のヘリコプター活用の連携強化などが必要との結論を得て、対策等を講じることとした。 ア 消防防災通信ネットワークの充実強化 消防防災通信ネットワークについては、災害に強い通信網の構築の観点から地上系及び衛星系による通信ルートの多ルート化の早期確立を図るとともに、衛星系については、全国的なネットワークの早期確立のほか最近のデジタル通信技術を活用して、画像情報、地図情報等を含めた多様な防災情報を迅速・効率的に伝達できるよう、ネットワークの高度化を図ることが必要である。 この中で、都道府県と市町村等を結ぶ地上系の防災行政無線については、施設の老朽化等に伴い再整備の時期を迎えているものや、周波数の再編成により他の周波数帯に移行が決定されているものがあり、施設の再整備の際には、情報通信分野の技術革新を展望しつつ、衛星系通信網と有機的に結合したネットワークを構築することが必要である。 一方、市町村と住民等を結ぶ同報系防災行政無線(住民連絡用)については、全国の市町村における整備促進を図るとともに、双方向通信機能やデータ伝送機能を有するデジタル方式による整備を促進する必要がある。また、最近急速に普及しているインターネット、携帯電話や、サービスが開始された地上デジタル放送等について活用方策を検討し、災害発生後住民等に、速やかに情報伝達できるシステムの整備を図る必要がある。 なお、通信施設については、地震時においても確実に稼働することが必要であり、通信施設の耐震対策を行うとともに、非常用電源設備の設置及び保守点検を実施し、また、的確な操作の徹底のため総合防災訓練時等における防災行政無線を使用した通信訓練を実施することが必要である。 イ 広域応援に必要な情報通信施設等の整備促進 画像伝送システムは、発災直後の被害の概況を把握し、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、政令指定都市、都道府県庁所在都市等大規模な都市における整備が求められる。 また、消防・救急無線については、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国共通用の周波数が3波へ増波されている。 さらに、消防防災ヘリコプターの増強に伴い、ヘリコプターテレビ電送システムの導入が増加しているが、いまだ全国をカバーするには至っておらず、引き続き消防防災ヘリコプターテレビ電送システムの普及・増強に努める必要がある。また、こうしたシステムを搭載したヘリコプターが集結する大規模災害時には混信が発生するおそれがあるため、ヘリコプターテレビ電送用の周波数が4波へ増波されたが、その円滑な運用を図る必要がある。 また、消防防災ヘリコプターは、広域航空消防応援時等において、通常の消防・防災無線、航空無線では保有団体と交信することは不可能となるほか、大規模災害現場においては、同一地帯を飛行する複数の消防防災ヘリコプターの動態を管理し統制する必要があるため、消防庁では、ヘリコプターの動態管理が可能になるシステムについて、研究開発を進め、平成16年3月には実証実験を実施し、実用化に向けてさらに検討を行った。 このほか、車載型や可搬型の衛星地球局、可搬型ヘリコプターテレビ受信装置の整備を促進し、大規模災害時にも機動的で確実な情報の伝達手段を確保することが重要である。 ウ 情報の収集・伝達体制の整備 災害時における的確な情報の収集・伝達を行うためには、消防防災通信ネットワーク等設備の充実強化とこれを運用する体制の強化を図ることが重要である。 このため、都道府県、市町村、消防機関、警察等防災関係機関相互の連携を強化するとともに、収集、伝達すべき情報に係る基準の周知徹底、迅速な第一報の励行、消防機関からの速やかな情報伝達、夜間・休日の情報収集・伝達体制の整備・強化を更に推進していく必要がある。 エ 住民等への情報伝達の強化 災害時の応急対策の実施に際しては、住民等に対し、気象情報や避難勧告、避難時の生活情報等を適切に伝達することが重要であり、これによって住民等に無用な不安を抱かせないことにもつながる。 そのためには、防災行政無線、有線放送、広報車、消防職団員の巡回等による住民への伝達手段についてハード・ソフト両面から絶えず点検を行うとともに、今後はインターネット等を活用した新たな伝達手段についても整備を進めることが望ましい。 また、住民に対する気象予警報、避難勧告等を迅速、的確に伝達できるよう、あらかじめ伝達手段、手順、ルート等を定め、これを地域防災計画に明示し、住民への広報に努めるとともに、職員に対しても周知徹底しておく必要がある。 オ 衛星通信を用いた情報伝達体制の整備 現在、衛星系の通信網として活用されている地域衛星通信ネットワークは、電話・ファクシミリとアナログ映像送信を主としたシステムであるが、情報通信分野の環境は、インターネットに代表されるように大きく発展を続けている。映像分野においてもデジタル化への移行が急速に進みつつあり、地域衛星通信ネットワークにおいても、データ通信を重視し、デジタル映像方式を導入したシステムへの移行が進められている。 カ 消防・救急無線のデジタル化への対応 現場活動の複雑、多様化に伴う情報量の増加等に対応するため、消防・救急無線のデジタル化を推進するとともに、消防緊急通信指令施設に車両の動態管理、地図検索装置等を整備するなど、一層の高度化を図る必要がある。
(2)マルチメディアの活用 ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を全国の都道府県、消防本部に整備促進し、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。 また、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進める必要がある。 イ 災害対応支援システムの充実 防災用地理情報システム(防災GIS)、全世界的衛星測位システム(GPS)等の活用を図りながら、消防防災対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるICT化推進のための共通基盤としてパソコンの整備及びこれらを結ぶLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が遅れている。 そこで電子自治体時代にふさわしい住民サービスを提供していくためには、消防本部においても情報基盤の整備を早急に進める必要がある。 このため消防庁では平成13年度からパソコンの一人一台体制の整備に必要な経費を地方交付税措置として消防費に算入する財政支援を行っている。
(4)携帯電話・IP電話等からの119番通報のあり方の検討 一般加入電話からの119番通報は、通報者の電話番号をもとに発信地を検索し、表示するシステムが構築されており、迅速な消防活動を行うために活用されている。 一方、携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部へ転送又は復唱して伝達する方式をとっている。 この方式では、転送にかかる時間的遅延などの問題が指摘されていることから、消防庁では、「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討懇談会」を開催するなど、消防関係機関や電気通信事業者等と連携を図りながら、発信電波を受信した基地局の位置情報を基に接続先消防本部の振り分けを行い、管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムへの移行を平成17年度に行うこととしている。 さらに、発信位置情報表示についても、携帯電話では実現されておらず、IP電話等でも簡易な形態として事業者ごとに別々のコンピュータ端末に文字情報のみで表示するといった現状にある。また一方で、「携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に係る技術的条件」(平成16年度6月情報通信審議会答申)において、携帯電話からの発信位置情報表示について、平成19年4月から開始準備の整った消防本部の指令台で発信位置情報通知の受信を開始する旨が述べられている。 これらのことを踏まえ、消防庁では平成17年度より「IPネットワークを用いた119番通報のあり方に関する懇談会」を開催し、IP電話等からの緊急通報における発信位置情報表示等を共通仕様により統一的に行うシステムを構築するとともに、将来的に現行の固定電話からの発信位置表示システム及び携帯電話からの緊急通報における発信位置表示システムとの統合を目指した検討を進めることとしている。
(5)消防防災分野における申請・届出手続の電子化の取組み 申請・届出等手続の電子化の取組みについては、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてぺーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやりとりしてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされた。それを踏まえ、総務省では「総務省申請・届出等手続の電子化アクション・プラン」(平成14年7月25日総務省行政情報化推進委員会了承)が策定された。 これを受けて、消防庁では「総務省関係法令に係る地方公共団体関係手続のオンライン化実施要領」(平成15年3月31日)において、地方公共団体に対する申請・届出等の手続をオンライン化するための事務処理手順、システムの使用等の実施方策を提示したところである。 消防防災分野における申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うものとしては、検定対象機械器具等の型式承認の申請、製造所等(移送取扱所)の設置許可申請等があり、すべてオンライン化を完了しており、今後、利用の促進に努めることとしている。また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)については、平成14年度にオンラインシステムの開発を行い、汎用受付システムとの連携を図るための調整を行った上で、モデル消防機関において実証実験等を行った。平成15年度には国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化のために必要な措置を図ったところであり、今後も引き続き国と地方公共団体とのオンライン化を推進し、行政事務の効率化等に努めることとしている。
初動時における被災地情報収集について 消防庁では、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震などの教訓を活かし、大規模災害発生の際の初動時における被災地情報収集のあり方、災害時の情報通信技術の活用について検討することを目的として、「初動時における被災地情報収集のあり方に関する検討会」を開催してきたところです。 このたび、平成17年5月以降6回にわたる精力的な議論の結論として、平成17年7月27日に次の提言がとりまとめられ、河田惠昭座長(京都大学防災研究所長)から、主催者である今井宏総務副大臣に手渡されました。 また、この内容について翌28日には副大臣会議において報告され、夜間のヘリコプターによる情報収集のための省庁横断的な検討組織の立ち上げなどに、政府全体として取り組んでいくこととなりました。 今後、総務省として被災地情報収集のための技術・方策を充実させるため、この提言を踏まえて、必要な対策を講じることとしています。  写真(左)今井宏総務副大臣による主催者あいさつ    (右)今井宏総務副大臣が河田惠昭座長から提言書を受領提言の概要1 現行の被災地情報収集方策の適切な活用・充実 ・非常用電源の整備及び保守点検、通信訓練の実施、通信設備の耐震対策の徹底等、現行の被災地情報収集方策の適切な活用・充実2 人・既存ネットワーク等の新たな活用による被災地情報収集 ・消防団の機能別分団等の人・既存ネットワーク等の新たな活用3 衛星携帯電話による被災地情報収集 ・衛星携帯電話を全市町村等の防災関係機関に整備し、被災地災害発生時に迅速に被災地情報を発信4 夜間のヘリコプターによる被災地情報収集 ・夜間ヘリコプターの夜間飛行・夜間離着陸・ヘリコプターからの夜間撮影の実施に向けた研究開発や訓練方法開発などの環境整備 ・夜間のヘリコプターによる情報収集のために省庁横断的な検討組織を立ち上げ5 ヘリコプター衛星通信による被災地情報収集 ・ヘリコプターからの衛星通信についての、映像品質の向上等の研究開発や、消防活動に必要な小型化・軽量化の程度の検証等を行うための実証実験等の推進6 航空機搭載映像レーダーによる被災地情報収集 ・航空機・衛星搭載映像レーダーによる初動時における被災地情報収集の実用化に向けた研究開発の推進7 無人航空機による被災地情報収集 ・無人航空機を災害情報の的確な把握に活用するために必要な検討を推進8 最先端ICT等の活用による被災地情報収集 ・「リスク対応情報システム」、「電子タグ」等最先端ICT等の活用に関する研究開発等を推進9 被災地情報収集のための体制の充実 ・地方公共団体において、地域防災計画の中で上記の取組の位置づけを具体化 ・被災地情報収集のための組織・体制の早急な充実
消防・救急無線のデジタル化及び広域化・共同化について 消防・救急無線については、災害時における消防活動上の重要な情報伝達手段として、これまでアナログ通信方式による音声主体の運用が行われてきました。近年、無線通信分野においては、デジタル通信方式が導入され、データ伝送等の多様化する通信ニーズへの対応をはじめ、ナロー化(占有周波数の狭帯域化)により逼迫する周波数帯の有効利用が図られつつあるところです。消防・救急無線についても、平成28年5月31日までの期間において、全ての消防本部がデジタル化を進めていくこととなっています。 デジタル化による周波数帯の有効活用により、多くの通話チャンネルを確保することができるほか、データ通信により、消防・救急車両の位置・活動状況の消防本部への伝送、水利情報、病院情報等の消防・救急車両への伝送等が可能となります。 また、消防・救急無線のデジタル化の整備にあたっては、広域化・共同化を図ることにより、従来よりも広域での安定した通信、周波数の共有による弾力的な運用、管轄エリアを越えた通信確保、設備の整備及び維持管理の合理化が期待できます。
同報系の市町村防災行政無線のデジタル化について 同報系の市町村防災行政無線は、住民に情報を一斉に伝達することが可能であり、気象予警報や避難勧告の伝達に極めて有効な無線網です。近年、より一層の周波数帯の有効利用を図り、災害発生時の住民の安全確保や行政サービスの向上を図るために、高機能なデジタル方式が導入されつつあります。(1) デジタル化の効果についてア 複数の通話チャンネルが利用できることにより、電話のように同時通話(複信)が可能となるとともに、市町村役場から住民への拡声通報中であっても、別の場所へ連絡ができるようになります。イ データ通信により、戸別受信機等への情報伝達が高機能となるほか、画像伝送やテレメータ情報伝送等多様な情報伝達が可能となります。(2) 同報系の市町村防災行政無線に関する標準化 平成15年4月に、総務省において「市町村デジタル同報通信システム推奨規格」(総務省推奨規格)が策定され、これを受けて同年7月には民間規格である「市町村デジタル同報通信システム」の標準規格が策定されました。これらの規格により、相互互換性が確保できるとともに、標準化により、価格の低減化も図られるものと期待されています。
第3章 国民保護への取組み1 国民保護法の目的等(1)国民保護法制定の経緯・目的 平成15年6月に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」が成立・施行され、平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)」が成立し、関係政令とともに9月17日に施行された。 これにより、武力攻撃事態や大規模テロ等の緊急対処事態に対処するための態勢が整えられたところである。 国民保護法の目的は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするため、国、地方公共団体、指定公共機関等の責務をはじめ、住民の避難に関する事項、避難住民等の救援に関する事項、武力攻撃災害への対処等の措置について定めることにより、国全体として万全の態勢を整備することである。
(2)国民保護法に基づく地方公共団体の役割 国民保護法に基づき、地方公共団体は、警報の伝達や避難の指示、救援の実施等の国民保護措置の多くを実施する責務を有するなど、大きな役割を担うこととされている。また、平時においても、いざというときに迅速に国民保護措置が実施できるよう、国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)の作成や必要な組織の整備、訓練の実施などが求められている。 また、消防も、市町村長の指揮の下に避難住民の誘導や、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護し、武力攻撃災害を防除及び軽減することが規定されるなど、重要な責務を負うこととされている。
2 これまでの主な取組み(1)基本指針の作成 国民保護法に基づき、政府は、国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めることとされた。 基本指針に定める事項は、〔1〕武力攻撃事態等における国民保護措置の実施に関する国としての基本的な方針、〔2〕武力攻撃事態の想定に関する事項、〔3〕指定行政機関、都道府県及び指定公共機関が国民保護計画又は国民保護業務計画を作成する際の基準となるべき事項、〔4〕関係機関相互の連携協力の確保に関する事項、などとされているが、内閣官房を中心に検討が進められ、平成17年3月25日に閣議決定されたところである。 基本指針は全6章で構成されており、〔1〕基本的人権の尊重や指定公共機関の自主性の尊重など、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針、〔2〕着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の4つを想定される武力攻撃事態の類型とし、それぞれの特徴及び留意点を示した武力攻撃事態の想定に関する事項、〔3〕国民保護措置を的確かつ迅速に実施するための体制の整備に関すること、〔4〕住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処に関する措置、国民生活の安定、武力攻撃災害の復旧等についての国、地方公共団体等のとるべき措置、〔5〕武力攻撃に準ずる大規模テロ等の事態(緊急対処事態)における国民保護措置に準じた措置の実施、等が定められている。
(2)指定行政機関や都道府県、市町村の計画作成 指定行政機関(各省庁)の長及び指定公共機関(NHK、日本赤十字社、JR、NTT等)は、基本指針に基づき、その所掌事務に関する国民保護計画又はその業務に関する国民保護業務計画を作成することとされている。消防庁を含む指定行政機関の国民保護計画については、平成17年10月28日に閣議で了承された。指定公共機関の国民保護業務計画についても、同じく平成17年度を目途に作成され、指定行政機関の長を経由して内閣総理大臣に報告されることとされている。 都道府県知事は、基本指針に基づき、国民保護計画を作成することとされているが、平成17年度中には作成される見込みである。 市町村長及び指定地方公共機関は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画又はその業務に関する国民保護業務計画を作成することとされているが、これらは平成18年度を目途に作成することとされている(第3−1図)。
(3)都道府県国民保護モデル計画の作成 都道府県は、基本指針に基づいて国民保護計画を作成することとされており、また、都道府県の国民保護計画は内閣総理大臣に協議しなければならないことから、消防庁では、都道府県における国民保護計画作成に資するため、基本指針の検討と並行して都道府県の国民保護モデル計画について検討を進めた。 国民保護モデル計画の作成に当たっては、事態の想定、武力攻撃の状況等に応じた避難の方法等について、幅広い視点から検討していくことが必要であることから、この分野について高い見識を有する者によって構成される「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」(座長:石原信雄 元内閣官房副長官)において御意見をいただくとともに(第3−1表)、内閣総理大臣協議(各省庁協議)を円滑に行うために関係各省庁にも協力を要請し、全省庁横断的な内容として、平成17年3月31日付で各都道府県に通知した。 都道府県国民保護モデル計画は、都道府県にとってなじみの深い地域防災計画も参考にしつつ、「第1編 総論」「第2編 平時からの備えや予防」「第3編 武力攻撃事態への対処」「第4編 復旧等」「第5編 緊急対処事態への対処」という構成としたところである。 また、都道府県国民保護モデル計画の作成に際しては、可能な限り実際に計画を作成する都道府県の立場に立った表現にしたこと、国や市町村との役割分担がわかるよう、都道府県が実施主体となる事項を厳密に整理して記載したこと、地方公共団体の現場での対応を想定し、対応策の具体例を記述したこと、都道府県国民保護対策本部の組織・機能等について具体的な例を示したことなどの点について特に配慮したところである。 例えば、多数の人を殺傷する行為や建造物の破壊などの被害が発生した場合には、事態認定前においても初動的な被害対処が必要となることが想定されることから、緊急事態連絡室(仮称)の設置等初動措置についても記述している(第3−2図)。 また、地方公共団体の現場での対応を想定し、可能な限り、対応等の具体例を示している。具体的には、避難の指示について、弾道ミサイル攻撃による場合、ゲリラ・特殊部隊による攻撃の場合等について、武力攻撃事態の類型ごとに例示したこと、市町村計画の中で記載されるべき避難実施要領のイメージ例を市町村計画の基準として例示したこと、緊急の必要があると認めるときの都道府県知事が行う退避の指示の一例等を示している。
(4)市町村国民保護モデル計画の作成 市町村は、都道府県の国民保護計画に基づいて国民保護計画を作成することとされており、消防庁では、それを支援するため、「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」で有識者からご意見をいただきながら、市町村国民保護モデル計画の検討を行っている。市町村国民保護モデル計画については、さらに検討を重ねるとともに、関係各省庁の協力も得て、平成17年度中にも各地方公共団体に通知することとしている。 また、市町村長は、避難の指示があったときは、国民保護計画に基づき、避難実施要領を作成し、避難住民の誘導を行うこととされている。武力攻撃事態等において迅速に避難実施要領を作成するためには、平素よりあらかじめ複数の避難実施要領のパターンを準備しておく必要がある。消防庁としては、各市町村のパターンの作成を支援するため、避難誘導における留意点等も積極的に市町村国民保護モデル計画の中に盛り込んでいくこととしている。
(5)消防庁国民保護計画の作成 消防庁は、指定行政機関の一つとして、基本指針に基づいて、その所掌事務に関する国民保護計画を作成することとされている。消防庁の国民保護計画では、消防庁が実施する国民保護措置の内容及び実施方法や体制、関係機関との連携方法等を定めるものである。 消防庁の国民保護計画は、パブリックコメントや各省庁との調整を経た上で、平成17年10月28日に他の省庁の国民保護計画と一括して閣議で了承された。 消防庁国民保護計画の主な特徴は、次のとおりである。〔1〕 テロやゲリラの侵攻など突発的な事案においては、全職員体制の消防庁緊急事態連絡室を設置し、地方団体との連携や情報交換のための初動体制を整備することとしたこと。〔2〕 弾道ミサイルのような時間のない場合の警報の伝達については、全国瞬時警報システム(J-ALERT)等により、地方団体や住民に瞬時に情報を伝達することとしたこと。〔3〕 自然災害の場合等において他県の消防部隊が応援に駆けつける緊急消防援助隊の仕組みを、武力攻撃やテロの場合においても活用するため、部隊の増強や資機材の整備を図ることとしたこと。  特に、NBC災害に対応するためには、対応能力を持つ緊急消防援助隊による応援が重要なため、当該拠点となる消防本部の充実を図ることとしたこと。〔4〕 住民の避難誘導において重要な役割を果たす消防団や自主防災組織の充実を図るため、啓発の充実や設備の整備等を支援することとしたこと。〔5〕 住民の避難誘導や被災者の救助にあたっては、平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故のように事業所の協力が必要となることから、被災時における事業所と地方団体との連携を支援することとしたこと。
3 都道府県における国民保護計画の作成 都道府県知事が作成する国民保護計画は、当該都道府県の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該都道府県が行う国民保護措置に関する事項やその実施体制、市町村の国民保護計画及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の作成の基準となるべき事項等を定めることとされている。また、都道府県が国民保護計画を作成する際には、基本指針や指定行政機関及び他の都道府県の国民保護計画との整合性等を確保する観点から、内閣総理大臣に協議しなければならないこととされている。 多くの都道府県においては、平成16年12月議会及び平成17年2月(3月)議会で国民保護協議会に関する条例を制定し、基本指針の閣議決定を受けて国民保護計画の検討を本格化させた。平成16年から独自の計画案を作成して公表していた福井県及び鳥取県については、基本指針に基づいた所要の修正を行うとともに国に協議を行った結果、平成17年7月22日にその国民保護計画が閣議で了承された。その後、他の都道府県でも鋭意検討が進められており、平成17年度末までに全ての都道府県において国民保護計画が作成されることが見込まれている。
4 市町村における国民保護計画の作成 市町村長は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画を作成することとされている。市町村の計画では、当該市町村の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該市町村が行う国民保護措置に関する事項や実施体制等を定めることとされている。また、市町村が国民保護計画を作成する際には、都道府県や他の市町村の国民保護計画との整合性等を確保する観点から、都道府県知事に協議しなければならないこととされている。 市町村における国民保護計画作成のスケジュールとしては、平成17年度中に作成されることとなる都道府県の国民保護計画に基づいて作成することになるため、平成18年度を目途に作成することが予定されている。 市町村は、武力攻撃事態においては、警報や避難の指示の住民への伝達、避難住民の誘導、安否情報の収集・提供など直接住民と接する非常に重要な役割を担うこととされている。このため、夜間・休日等を問わずに通知される警報等に的確に対応できるような24時間の即応体制を構築しておくことが求められる。また、避難住民の適切な誘導のため、日頃から消防団や自主防災組織、警察等との連携・協力関係を構築しておくことが非常に重要である。 なお、市町村におけるこのような取組みについては、都道府県の支援が不可欠となるので、都道府県の積極的な対応が求められるところである。
5 今後の課題等(1)普及啓発・研修・教育 国民保護法上、政府は、国民保護措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めることとされている。また、地方公共団体は国民保護措置のうち、警報の通知・伝達、避難の指示・避難住民の誘導や救援に関する措置などを実施する責務を有しているため、具体的な措置を行う職員に対し、制度について研修を行うとともに、地方公共団体が実施する国民保護措置の具体的内容について、十分周知徹底しておくことが求められる。国民保護法の施行を踏まえ法律の趣旨を浸透させ、武力攻撃事態等における国民保護措置について理解を得るまでには、今後、繰り返し地方公共団体の一般職員、消防吏員、消防団員等に対して普及・啓発活動を行っていく必要がある。 地方公共団体や消防における危機管理や国民保護に関する専門的な知識を有する職員を養成するため、消防大学校におけるカリキュラムとして国民保護コースが設けられたところであるが、都道府県の自治研修所や消防学校においても、国民保護に関するカリキュラムの創設等に積極的に取り組む必要がある。 また、国民保護措置を円滑に行うためには、自主防災組織をはじめとする住民に対しても、国民保護法の仕組みや国民保護措置の内容、避難方法等について、広く普及啓発を行うことが大切である。 消防庁では、平成16年12月に国民保護法をはじめとする有事関連法の概要並びに国及び地方公共団体の役割等についてまとめたパンフレット「国民の保護のためのしくみ」を作成し、地方公共団体等に配布した(消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)に掲載)。 また、本年度においては、内閣官房において、武力攻撃やテロなどから身を守るための留意点等をまとめた国民向けの啓発冊子「武力攻撃やテロなどから身を守るために」が作成された(国民保護ポータルサイト(http://www.kokuminhogo.go.jp/)に掲載)。
(2)警報伝達システム 武力攻撃事態等において、住民の避難を的確かつ迅速に行うためには、武力攻撃事態等の現状・予測及び武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域についての警報を、直ちに住民等に伝達できるシステムを構築しておくことが大変重要である。特に、弾道ミサイル攻撃のように対処に時間的余裕がない場合に、迅速に住民に警報を伝達するためのシステムの構築が喫緊の課題となっている。 このため、消防庁では平成17年度において、消防庁から衛星通信ネットワークを通じて、直接、地方公共団体の同報系防災行政無線を起動させることによりサイレンを自動吹鳴させるとともに、国民保護法に基づく警報や緊急地震速報、津波警報、気象予警報などの防災情報を、人手を介さず、瞬時かつ自動的に住民に伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)に関する調査検討を行うこととしている。この一環として、いくつかの地方公共団体の協力を得て実証実験を行い、標準仕様を決定することとしている。 今後、J-ALERTの整備が進む場合、緊急の際に住民に危機を伝えるサイレン等を吹鳴する同報系の市町村防災行政無線が、住民の生命を守る上で極めて重要な役割を果たすこととなる。平成17年3月31日現在、同報系の市町村防災行政無線の整備率は70.1%にとどまっているが、その役割が今後一層強化されることも踏まえ、市町村においては、その整備や可聴区域の拡大等に最大限努力する必要がある。 また、国民保護のためのサイレン音については、明確に区別できること、伝達距離が大きいこと、緊急性が感じられると同時に過度の緊張感を与えないこと、高齢者や聴覚弱者にも配慮したものであること等を考慮し、「国民保護に係る警報のサイレンについて」(平成17年7月内閣危機管理監決裁)」により決定されたところである。
(3)地方公共団体における体制整備の推進 都道府県知事及び市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、それぞれの区域に係る国民保護措置を的確かつ迅速に実施するため必要な組織を整備しなければならないこととされている。とりわけ、24時間即応可能な体制の整備が求められている。 阪神・淡路大震災後、地方公共団体においては、危機管理体制の充実が図られてきており、平成17年4月1日現在、部次長級以上の防災・危機管理専門職を設けている都道府県は42団体となっている。 市町村においても、特に初動時の連絡体制等について、消防機関との連携を強化するなどにより、充実を図ることが必要である。その際は、国民保護のみならず、防災も含めた危機管理全般の初動体制にどう対処するかという視点が重要である。また、国民保護を中心とした危機管理体制は、全部局の総合調整が重要であり、消防や防災部局への丸投げが生じないよう留意することも大切である。 なお、これら地方公共団体の体制強化を支援するため、平成17年度においては、標準団体ベースで、都道府県で6人分、市町村で1人分の人件費を交付税算定上、基準財政需要額に計上しているところである。
(4)訓練 都道府県知事及び市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、国民保護措置についての訓練を行うよう努めなければならないこととされている。 特に、国民保護計画を実効性あるものとするためには、平素から実践的な訓練を行い、国民保護措置を担う地方公共団体職員の対処能力の向上や関係機関との連携確認などを行うことが重要である。 このため、地方公共団体において訓練を行う際には、防衛庁・自衛隊、警察、消防等関係機関とも連携した訓練を行うことが求められるところである。 なお、国会における法案修正により、国と地方が共同して行う訓練についての国庫負担規定が追加されたほか、国民保護措置についての訓練を行う場合には、災害をも含めた幅広い事態に対応できるように、防災訓練との有機的な連携が図られるよう配慮することとされている。 平成17年度においては、国と地方公共団体が共同して行う訓練として、10月28日に、埼玉県、富山県、鳥取県、佐賀県で同時多発テロ的攻撃が行われ、緊急対処事態が認定されたとの想定に基づき、〔1〕事態の認定、緊急対処事態対処方針の決定、〔2〕警報、避難措置の指示、救援の指示及び災害対処のための措置の指示、〔3〕国の指示等に応ずる地方公共団体における国民保護措置、〔4〕現地における関係機関相互の連携、に係る図上訓練が行われた。また、11月27日には、関西電力(株)美浜発電所がテログループによる攻撃を受け、同施設の一部が損傷を受けたことにより、放射性物質が放出されるおそれが生じるとの想定で、福井県、美浜町、敦賀市において実動訓練が行われた。 なお、この図上訓練に先立って、9月29日に消防庁単独で図上訓練を実施し、消防庁における対処について検証を行っている。
(5)安否情報収集・提供システム 市町村長及び都道府県知事は避難住民等の安否情報の収集、整理に努めることとされており、総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報についての照会に速やかに回答することとされ、その際には個人の情報の保護に十分留意しなければならないこととされている。安否情報の具体的な照会及び回答の手続き等については、平成17年3月に定めた「武力攻撃事態等における安否情報の報告方法並びに安否情報の照会及び回答の手続その他の必要な事項を定める省令」(平成17年総務省令第44号)に規定されている。 消防庁では、武力攻撃事態等における家族、親族、友人等の安否情報は、国民が最も必要とする情報の一つであることを踏まえ、効率的な安否情報の収集及び提供のあり方について検討を進め、その結果に基づき、安否情報共有ネットワークの検討を行うこととしている(第3−3図)。 なお、安否情報の収集・提供に当たっては、国民保護措置を実施する中で、どのように膨大な当該事務を両立させる体制とするか、個人のプライバシー保護と国民が必要とする情報の提供という相反する要請をどのようにうまく両立するか等の検討を深めていく必要がある。
(6)特殊標章等の取扱い 指定行政機関の長、地方公共団体の長等は、指定行政機関や地方公共団体の職員で国民保護措置に係る職務を行う者又は国民保護措置の実施に必要な援助について協力をする者に対し、これらの者又はこれらの者が行う職務等に使用される場所等を識別させるため、ジュネーヴ条約第一追加議定書第66条3の国際的な特殊標章及び身分証明書を交付し、又は使用させることができることとされている。この特殊標章等については、国民保護法上、みだりに使用してはならないこととされており、各交付権者においては、それぞれ交付対象者に特殊標章等を交付する際の取扱要領を定め、交付台帳を作成すること等により、特殊標章等の適正使用を担保することが必要となっている。 消防庁においては、関係省庁間の申し合わせを踏まえ、消防庁特殊標章交付要綱を作成した。また、地方公共団体や消防機関に対し、各交付権者が作成することとなっている交付要綱の例を通知するなど、特殊標章等が適正に取り扱われ、かつ、平素の訓練や啓発などにおいて積極的に活用されることにより国民の国民保護への理解を深めてもらうための取組みを行った。
6 テロ対策 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置した。また、イラク情勢等の緊迫化を踏まえ、平成15年3月18日、消防庁に「イラク情勢等を踏まえた消防庁テロ対策室」を設置するとともに、テロ災害への一層の対処の強化を図るため平成17年4月1日からテロ対策専門官を設置するなど所要の対応態勢をとった。さらに、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期するため、次のような取組みを実施した。
(1)地方公共団体における危機管理体制 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、機会をとらえ各都道府県に対して危機管理体制の点検、強化等の要請を累次にわたって行った。特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築など、所要の体制整備について要請を行い、全都道府県においてテロ対策本部等が設置された。また、テロ対策に関する国と地方公共団体との連携、更には警察機関との一層の連携の強化を図った。
(2)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防、警察、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要があり、平成13年11月には、政府のNBCテロ(核(Nuclear)物質、生物(Biological)剤及び化学(Chemical)剤を用いたテロ)対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられた。消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 また、米国における炭疽菌事件などを踏まえ、今後、生物テロ災害の発生する危険性が考えられることから、平成15年5月に炭疽菌、天然痘の災害発生に備えるため、関係機関の役割分担と連携、必要な処置を明確化した「生物テロへの対処」が取りまとめられ、その旨を各都道府県内の関係部局、市町村及び消防機関に対して周知し、万全の体制を図った。 平成16年7月27日に東京の地下鉄で実施された消防・警察、その他関係機関による化学剤テロ災害合同訓練、同年11月30日の化学テロ対処に関する図上訓練、平成17年10月28日の緊急対処事態図上訓練などにより、各都道府県内では比較的規模の大きな消防本部等を中心に、特にNBCテロ災害を想定した合同訓練を実施し、関係機関の連携の強化を図っている。
(3)テロ災害に対応するための消防資機材の整備 NBCテロに対し、消防隊員の安全を図りながら迅速に対応するためには、身体防護や検知のための特殊な消防活動用資機材を用いた消防活動を実施する必要がある。消防庁では、米国における炭疽菌事件の発生などを踏まえ、特に、NBCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算において、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し各都道府県の代表的な消防本部に対して、これらを無償貸与し、NBCテロ災害の対処能力の強化を図った。 また、国庫補助の対象に、テロ対策用特殊救助資機材として、平成14年度に陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器、平成16年度にNBC対応車両を新たに加えたところである。 さらに、消防庁では、大規模特殊災害やテロ災害に対応するため、高度な救助技術に関する知識・技術、各種資格等を兼ね備えた救助隊員で構成される特別高度救助隊・高度救助隊の配備を検討するとともに、特殊な救助用資機材や高度救助用資機材等の整備を検討していく。
(4)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識、技術が必要である。このため、消防庁では消防職員及び消防団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防本部・全消防団等に配布した。 また、消防大学校においては、テロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、従来からの本科、幹部研修科、消防団長科、救助科、危機管理講習会等の学科にNBCテロ災害対応に係る科目を組み入れている他、平成16年度からはNBC災害講習会を新設した。 一方、都道府県の消防学校においても、平成16年度から特殊災害科が新設された。
第4章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成16年中の火災を原因別にみると失火が全体の63.5%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日頃からの備え、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会をつくるためには、国民の防火防災意識の高揚に負うところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送等を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」(春季:3月1日〜7日、秋季:11月9日〜15日)、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災週間」(8月30日から9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、都市構造や建築構造、生活様式の変化等に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日頃から防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施について通知し、国民に対する防火意識の普及宣伝に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成16年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい気候となる時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、消防庁では「火は消した? いつも心に きいてみて」を平成16年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力の下に、「消防法改正を踏まえた住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災予防対策の推進」、「消火器の適切な維持管理の推進」を重点目標として、各種広報媒体を通じて防火広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断、老朽化消火器の一斉回収等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。イ 春季全国火災予防運動(平成17年3月1日〜3月7日) 平成17年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語の下に、「消防法改正を踏まえた住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災予防対策の推進」、「林野火災予防対策の推進」、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」を重点目標として、秋季同様、様々な行事を実施した。
(2)全国山火事予防運動(平成17年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成17年の全国山火事予防運動では、「小さな火 山に捨てると 大きな火」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校の児童・生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、学校、登山口等への警報旗、ポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練、研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と婦人(女性)防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成17年3月1日〜3月7日) 車両火災予防運動は、車両交通の関係者及び利用者の火災予防思想の高揚を図り、もって車両火災を予防することを目的として、消防庁と国土交通省の共唱により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。平成17年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、駅舎及びトンネルの防火安全対策の徹底として初期消火、通報及び避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成17年1月26日) 昭和24年1月26日の法隆寺金堂火災を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共唱により毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導の下に重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。
2 危険物に関する意識高揚 危険物に係る火災・漏えい等の事故は近年増加傾向にあり、平成16年中の事故発生件数は、統計を取り始めて以来最悪の件数となっている。それらの事故原因を分析すると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然防止するために、消防庁では、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図るため、平成2年度から、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」としており、推進標語の募集や推進ポスターの作成及び、各都道府県、関係団体等と協力し広報活動を行っているほか、危険物安全大会において危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。また、危険物施設においては、万一事故が発生した場合に備え自主的に訓練等を行っている。 平成17年度の危険物安全週間においても、女子マラソンの野口みずき選手をモデルとした推進ポスターを作成し、「危険物 かさねる無事故の 金メダル」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域で危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関においては、危険物施設を対象とした立入検査を実施し、事故の未然防止を図るとともに、火災等を想定した訓練を自衛消防組織等と連携し行った。
3 防災知識の普及啓発 平成17年においても記録的大雨が各地で観測され、また震度6弱を記録した福岡県西方沖、宮城県沖を震源とする地震、また、震度5強を記録した千葉県北西部を震源とする地震等が発生するなど自然災害が多発している。一方、東南海・南海地震や東海地震、首都直下地震といった大規模地震の発生が予想されているところであり、災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならない。また同時に国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識や技術を確実に身につけるとともに、日頃から家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災を心がけることが極めて重要である。また、防災のための講習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、前者では大がかりな防災訓練等を中心とした行事が行われているのに対し、後者は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日頃の備えを高めていくことがその趣旨とされている。平成17年の防災とボランティア週間では、43都道府県のほか、564の市区町村が、防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業を実施している。 このほか、消防庁においては、年間を通じテレビ放送を利用して、防災知識の普及啓発事業を実施しており、平成17年においては、平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨や、地域の自主防災活動等をテーマとした番組を放送するとともに地方公共団体では、防災教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道等のライフラインが寸断され、常備消防をはじめとする防災関係機関等の災害対応に支障をきたすことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下に、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や、救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ、地域における自主的な防災活動の重要さが改めて認識されたところであり(第4−2−1図)、これに伴い全国における自主的な防災組織の組織率も増加傾向にある(第4−2−2図)。 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人(女性)防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成17年4月1日現在では、全国2,418市区町村のうち、1,988市区町村で11万5,814の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、64.5%となっている(附属資料26)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,000市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ359市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これに要した経費は平成16年度で合計33億2,639万円に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を創設し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図っているほか、財団法人自治総合センターではコミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、災害補償制度の充実、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による防災活動の啓発を行うとともに、自主防災組織の活動拠点づくりを進めるため、防災基盤整備事業により、自主防災活動をはじめとする地域防災力向上を図るための防災拠点施設の整備を促進している。また、自主防災組織活動を進めるための指針である「自主防災組織の手引」(冊子)や自主防災組織結成のためのポイントを、視覚的にわかりやすく示した「自主防災組織の結成にむけて」(CD-ROM)を作成し、それぞれ各自治体等へ配布している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 平成15年度には、「地域の安全・安心に関する懇話会」を開催し、その中で、地域防災力強化の決め手となる自主防災組織の活性化のためには、自主防災組織相互の協調・交流や行政・企業・教育その他の分野との連携が重要とされ、自主防災組織が相互の活動内容を知り、連絡を取り合うための都道府県や市町村単位の連絡協議会の設置が有効と示された。 また、麻生総務大臣が平成16年5月の経済財政諮問会議において示した「地域安心安全アクションプラン」を踏まえ、地域の自主防災組織とその他の団体が連携し、公民館、消防団詰所などを活動拠点として、防災・防犯活動など幅広く展開し、地域の安心・安全を確保する「地域安心安全ステーション整備モデル事業」を平成16年度より実施しており、平成16年度には、全国15団体で先行実施し、17年度についてはモデル地域を100団体に増やし、事業を実施している。また、平成17年5月の経済財政諮問会議では、「地域安心安全ステーション」の全国展開を行うこととする「麻生 安心・安全ビジョン」を示しており、事業の早期普及が必要である(囲み記事「地域安心安全ステーション整備モデル事業」参照)。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人(女性)防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人(女性)防火クラブは、家庭における防火の分野では、日頃から大きなウェイトを占める主婦等が火災予防の知識を修得し、地域全体の防火意識の高揚を図るものである。万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っている。 阪神・淡路大震災においても、婦人(女性)防火クラブにより初期消火活動や避難所での炊き出し等が活発に行われた。 なお、平成17年4月1日現在、全国の組織数は、1万3,012団体、約200万人となっており、37道府県において都道府県単位で連絡協議会がつくられている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人(女性)防火クラブの活動内容の充実・強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 少年・少女を中心とした自主防災組織である少年消防クラブは、10歳以上15歳以下の少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すとともに、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために各地域で組織づくりが進められている。 消防庁では、関係機関とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成16年度は、特に優良なクラブ14団体、優良なクラブ32団体、及び優良な指導者9人を表彰した。 また、平成16年度も、表彰式と併せて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2005」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成17年5月1日現在の組織数は、5,632団体、約43万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした自主防災組織である幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図るものである。近い将来少年・少女を中心とした防災活動に参加できるための素地づくりのため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導のもとに組織の育成が進められている。 なお、平成17年5月1日現在の組織数は、1万4,461団体、約126万人となっている。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成17年4月1日現在、2,264組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものである。しかし、地震などの大規模災害が発生した際は、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られれば、地域の自主防災体制の充実に大きな効果をもたらすものと考えられる。 平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故においては、発災直後から所有する資機材を活用し被災者の救出救護活動にあたった事業所があるなど、災害時における事業所の防災協力の重要性が改めて認識された。 災害時における地域防災力の強化は喫緊の課題となっており、大規模地震等をはじめとする自然災害のみならず、今回の列車事故のような大規模事故あるいはテロ事件等への地域の対応力を強化するためには、地域に所在する事業所の防災協力活動が不可欠である。 消防庁では、平成17年8月より、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力検討会」を開催し、災害発生直後の初動対応において、地方公共団体と事業所が連携して迅速・的確に災害対応を行う仕組みづくりについて検討しており、事業所と地域社会との平常時からの協力関係の強化及び事業所の防災組織が参加・協力するに当たっての条件整備を進めていくこととしている。
地域安心安全ステーション整備モデル事業 国民の安心・安全な生活を実現するためには、防災と防犯が連携の上、住民が手を組んで地域の力を結集した取組みが重要であることから、平成16年度より消防庁と警察庁が連携し「地域安心安全ステーション整備モデル事業」に積極的に取り組んでいます。 具体的には、全国の小学校区単位を基本として公民館や消防団詰所、交番コミュニティルームなどを「地域安心安全ステーション」として指定し、当該ステーションを活動拠点として自主防災組織や地域の各種コミュニティが行う防災訓練や「安心安全パトロール」活動、消火訓練、自動体外式除細動器(AED)を使用した応急手当等について、資機材整備やノウハウの提供などの支援を行っています。 平成16年度は、北海道札幌市の澄川地区連合会など全国15団体においてモデル事業を先行実施し、事業活動を行っており、また、平成17年6月8日には、新たに全国で100団体を選定したところです。 今後、消防庁では、モデル活動事例を評価・検証し、他地域への普及に活かしていくこととしています。 また、地域の防災力をさらに向上させるという観点から、「地域安心安全ステーション」の事業を進めていくに当たって防犯以外の福祉などの分野との連携を強化し、複合的な活動を展開していくことが求められます。 消防庁としても、「地域安心安全ステーション」の全国展開を図り、各種コミュニティの活性化を通じた地域防災力のさらなる向上を積極的に推進していくこととしています。
3 災害時のボランティア活動 被災地における多様なニーズに対応したきめ細かな防災対策を講じる上で、ボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることは、阪神・淡路大震災において改めて認識された。平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられたところであり、また、防災関係機関をはじめ、広く国民が、災害時におけるボランティア活動や自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を図ることを目的として、「防災とボランティアの日」(1月17日)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)の創設も行われている。 消防庁においては、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、災害ボランティアの情報提供施策として、消防庁のホームページからインターネットを通じて、災害時にボランティアセンターが必要とする機材、団体の検索が迅速、簡単にできる「災害ボランティア・データバンク」を平成13年5月から運用している。 平成15年6月には、セキュリティやプライバシーに配慮した、検索、集計機能強化により、被災地が必要とする活動を行っている団体の抽出や、全都道府県、全政令指定都市のボランティア担当窓口を登録することにより、ボランティア団体の積極的な登録や、災害時の円滑な活動参加を促し、登録団体数や登録情報の拡充にも対応できるようリニューアルを行った。 また、大規模災害時等の混乱の中で災害ボランティアの果たす役割は大きく、ボランティアの活動環境整備を通じた側面的な支援が必要であることから、都道府県、政令指定都市及び消防庁等で構成する「災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会」を平成11年度に設置し、年1〜2回、地方公共団体における災害ボランティア関係施策等についての情報交換、調査検討をはじめ、災害ボランティアに関する取組事例の紹介や災害ボランティア団体からの活動状況に関する講演等を実施し、都道府県・政令市の担当者間で情報共有を進めている。
第3節 災害に強い安全なまちづくり1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災や新潟県中越地震においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設や、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えており、地方公共団体における災害対応能力の向上が大きな課題となっている。そこで、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、〔1〕 避難所となる公共・公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど)〔2〕 災害対策の拠点となる公共・公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など)〔3〕 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 また、水道管、ガス管、港湾、地下鉄の耐震化についても単独事業への支援策が設けられている。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(平成16年2月)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり、拠点(以下「防災拠点」という。)となる公共施設等(例えば、社会福祉施設、避難所に指定されている学校施設・公民館等、災害対策本部等の庁舎、消防本部、警察本部等)の耐震改修の状況等は次のとおりである(平成15年4月1日現在)。 地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等は約18万6,300棟で、このうち約11万1,600棟(約60%)が昭和56年以前の耐震基準で建築されたものである。 この約11万1,600棟のうち耐震診断を実施した棟数は、約3万6,800棟(約33%)である。 耐震診断を実施した約3万6,800棟の建物をみると、そのうち約9,600棟(約26%)が「耐震性がある」と診断され、また、平成15年度末までに、約1万1,500棟(約31%)が耐震改修を終了しており、合計約2万1,000棟(約57%)の耐震性が確保されている。 また、今後、平成19年度までに耐震改修を予定している棟数は、耐震診断を実施した約3万6,800棟のうち約5,200棟(約14%)となっている。 次の建築物については耐震性が確保されていると判断した場合、平成15年度末で、地方公共団体が所有している防災拠点となる公共施設等の約18万6,300棟のうち約9万5,700棟(約51%)が耐震性が確保されていると考えられる。ア 昭和56年以降の新耐震基準で建築された建築物(約7万4,700棟)イ 耐震診断の結果「耐震性能を有する。」と診断された建築物(約9,600棟)ウ 耐震改修済みの建築物(約1万1,500棟) また、平成19年度までの耐震改修予定の棟数(約5,200棟)を加えると、平成19年度末では、約10万800棟(約54%)が耐震性能が確保される見込みとなる(第4−3−1図)。 災害対策の拠点となる公共・公用施設等については、早急かつ計画的な耐震化に取り組む必要がある。 消防庁では、産・学・官の三者連携の下、地方公共団体が公共施設の耐震化を進めるうえでの参考となる資料として「防災拠点となる公共施設の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、全ての地方公共団体へ配布するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防防災施設整備費補助金や防災基盤整備事業等により、防災情報通信施設や耐震性貯水槽等の整備を促進している。 中でも、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝達する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との間の情報連絡についても多角的な対策を講じている。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、併せて食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際には、一部の市町村において停電により窓口業務や県防災行政無線等に支障が生じ、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震及び同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震の際には震度情報ネットワークの震度情報の送信が遅延するなどの障害が生じた。こうしたことから、消防庁では、非常用電源の整備、保守点検の実施と的確な操作の徹底、防災行政無線を使用した通信訓練の実施、震度情報ネットワークシステムの総点検等を地方公共団体に要請したところである。 さらに、住民の避難に必要な施設等については、避難地、避難路の整備のほか、トイレ等避難生活に必要な機能を持つよう避難施設の改修を促進している。 なお、地域防災計画上掲載されている災害危険区域については、地方債と地方交付税による財政措置が講じられている。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースを確保することは非常に重要であり、このスペースをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動の拠点スペースや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、防災基盤整備事業等によりその整備を促進している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。・「コミュニティ防災拠点」…おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難地等に活用される。・「地域防災拠点」…おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難地等に活用される。・「広域防災拠点」…都道府県に一又は数箇所設置され、消防防災に関する広域応援の拠点スペースや物資の集配基地、長期の避難地等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、防災無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティレベルの研修等に活用される防災センターから、日頃から防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。 なお、首都圏、京阪神圏や名古屋圏といった稠密な市街地が連たんしている大都市圏において、広域あるいは甚大な被害が発生した場合における、国及び地方公共団体等による広域的な災害対策活動拠点の整備検討が引き続き行われている。これを中心とした広域防災拠点の連携等のあり方に関する検討のため、消防庁では平成14年度に、関係行政機関や学識経験者等で構成する「広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会」を、首都圏・中部圏・近畿圏の各大都市圏域ごとに開催したところであるが、広域防災拠点に関する共通的課題としては、オープンスペースの確保、広域防災拠点における防災情報の共有化の実現、広域防災拠点を活用した緊急消防援助隊の機能充実のための仕組みの検討、災害ボランティア活動支援のための環境整備、圏域内における定期的な協議の実施といった点が挙げられる。 首都圏の基幹的広域防災拠点として位置付けられた東京都の有明の丘地区及び川崎市の東扇島地区においては、それぞれの防災拠点としての機能の具体的な検討とあわせて、整備が進められている。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有している。また、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保など)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化と合わせた住民等への情報連絡機能の強化など、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことによって、地域の防災能力の向上を促進する必要がある。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など地方公共団体の実施する単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組みや連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組み、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。これまでの応募累計は、1,013件を数えるに至っている。 消防庁では、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供、「地域防災力・危機管理能力評価指針」に基づく自己評価の実施などソフト面での支援をも含め、災害に強く安心して暮らせる地域づくりを総合的に推進することとしている。
第5章 規制改革への対応 近年、国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっている。本章では、規制改革に関する政府の取組みとともに、規制改革に対する消防庁の対応について記述することとする。
1 規制改革推進3か年計画以前の取組み 消防防災行政においては、必要な安全性を確保する等の観点から、消防用設備等や危険物施設等の各分野において必要な規制を行ってきているが、近年の技術革新や社会経済活動の多様化等にかんがみ、柔軟な対応を求められることが多くなり、平成5年9月16日の緊急経済対策閣僚会議決定「規制緩和等の実施について」において7項目、平成6年2月15日の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」において3項目、平成6年7月5日の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において7項目を消防防災行政に係る各種の規制緩和措置として計上し、それぞれ実施に移してきたところである。 また、平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、規制緩和等が計画的に推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に61項目を計上し、平成13年度末までに、すべての項目について措置を講じた。 さらに、平成10年3月31日には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、規制緩和等が一層推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に32項目を計上し、平成15年度末までに、すべての項目について措置を講じた。 これらの規制緩和への対応として、消防庁が講じた主な措置は以下のとおりである(第5−1表)。
2 規制改革推進3か年計画への取組み 平成13年度からの「規制改革推進3か年計画」の策定に当たり、消防庁としては、内外からの意見・要望等を踏まえつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から所管事務の見直しを行った。 これにより、平成13年3月30日に「規制改革推進3か年計画」が閣議決定され、消防庁としても同計画に基づき、引き続き規制緩和など規制改革の推進に向け積極的に取り組むこととなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に計24項目が対象となり、平成15年度末までに16項目について措置を講じた(第5−2表)。 なお、これ以外の8項目については、平成16年3月19日に新たに閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」に引き続き計上し、平成16年度において、所要の措置を講じた(第5−3表)。
3 規制改革・民間開放推進3か年計画への取組み これまで、3次にわたる「規制改革(緩和)推進計画」を策定する中で、消防庁では、消防防災分野において内外からの意見・要望を踏まえて、安全性の確保を図りつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から積極的に規制改革を推進してきた。 平成16年度から、行政の各分野について、民間開放その他の規制の在り方の改革の積極的かつ抜本的な推進を図り、経済社会の構造改革を一層加速することを目的として、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)が策定(平成17年3月25日改定)され、消防庁としては、消防防災行政に係るものとして以下の17項目が対象となり、平成16年度末までに13項目について措置を講じ、それ以外の項目については、引き続き、所要の措置を講ずることとしている(第5―3表)。
4 構造改革特区制度への取組み 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日には、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部(以下「推進本部」という。)が内閣に設置された。 推進本部は、平成14年9月に「構造改革特区推進のための基本方針」等を決定し、構造改革特区推進のための取組み方針等を示した。これを踏まえ、同年10月には、「構造改革特区推進のためのプログラム」を決定し、構造改革特区において実施することができる特例措置及び全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制改革事項の2点について、明らかにした。 さらに、平成14年12月18日には、「構造改革特区推進のための基本方針」の趣旨を実現するため、構造改革特別区域法(以下「法」という。)が公布され、法第3条第1項に基づき、政府における基本的な施策の推進の方向を示すものとして、構造改革の推進等の意義及び目標、政府が実施すべき施策に関する基本方針等を内容とする構造改革特別区域基本方針が定められた。 消防庁としては、特区制度の趣旨にかんがみつつ、火災予防又は防災の観点から安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。(1)構造改革特区において実施することができる特例措置(第5−4表) ・劇場等における誘導灯及び誘導標識に関する基準の特例適用(平成17年8月現在の実績 1件) なお、平成16年4月には、特区において講じられた規制の特例措置の評価に関する基本方針が定められ、特段の問題の生じていない特例措置については、速やかに全国規模の規制改革につなげることとされた。消防庁としてもこの基本方針に基づき、構造改革特区で実施した特例措置の全国展開を図った(第5−5表)。(2)全国において実施することが時期、内容とも明確な規制事項(第5−6表)・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和・IH調理器等と上方のグリスフィルターとの離隔距離に係る消防法及び火災予防条例における規制の緩和・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設
第6章 国際的課題への対応[国際協力・国際交流] 災害から国民の生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災分野における国際協力・交流は、人道主義、国際社会の相互依存関係、環境保全等の観点から、必要性・緊急性の高い分野となっている。 また、開発途上諸国における近年の傾向として、人口の増大と都市への集中、産業活動の拡大、自然環境の変化等に伴い、火災をはじめ地震、風水害、土砂災害等、大規模な災害が発生する危険性が高まっている。我が国では、過去における様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ね、ハード・ソフトの両面にわたり高度なシステムを整備していることから、積極的な国際社会への貢献が更に求められている。 このため、集団研修、専門家派遣など開発途上諸国への技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 技術協力プロジェクトの実施 消防庁では、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)との連携・協力のもと、平成12年7月から平成17年6月までタイ王国に対する技術協力の一環として、「タイ外傷センタープロジェクト」を推進してきた。 本プロジェクトは、タイ王国における交通事故外傷に対するプレホスピタルケアの改善及び交通事故による死亡率の低減を目標に、5年間で11人の短期専門家を現地に派遣するとともに、現地で指導的役割を果たしている医師・看護師等を日本に受け入れて視察・研修を実施し、救急救命技術の向上に貢献した。 また、平成14年8月から平成17年8月にかけて、カリブ海沿岸諸国における防災組織・体制の確立・強化、地域災害管理計画及びハザードマップの策定等を目標として「カリブ・災害管理プロジェクト」を実施し、地域防災計画の長期専門家3人を派遣したほか、現地消防防災職員を日本に受け入れて研修を行っている。
2 開発途上諸国への専門家派遣 消防庁では、開発途上諸国に対する技術協力の一環として、随時消防防災分野の専門家を派遣して技術供与を実施している。平成16年度は、技術協力プロジェクトによる専門家のほか、各国政府の要請に応じて、シンガポール共和国、タイ王国、台湾、ベトナム社会主義共和国に対して延べ7人の専門家を派遣している。 また、海外諸国における消防事情や技術協力の必要性を把握するための専門家派遣や、過去に実施した国際協力事業に対するフォローアップ調査を実施している。
3 開発途上諸国からの研修員受入れ(1)集団研修の実施 消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を実施している。 いずれも消防に関する技術研修として、救急救助技術研修を昭和62年度から、消火技術研修を昭和63年度から、火災予防技術研修を平成2年度から実施している。平成16年度は、救急救助技術研修について10か国から10人(累計148人)を、消火技術研修については10か国から10人(累計151人)、火災予防技術研修については、6か国から8人(累計98人)の研修生を受け入れ、2〜3ヶ月間に及ぶ研修を実施した。
(2)個別研修の実施 消防庁では、(1)の集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修員の受け入れを行っている。平成16年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中国幹部消防職員を消防大学校予防科へ受け入れたほか、各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき各国からの消防防災関係者を研修生として受け入れ、随時研修を実施している。 1、2及び3で述べた開発途上諸国への国際協力は、各国における消防防災の発展に大きな成果を挙げているところである。
4 国際交流(1)トップマネージャーセミナーの実施等 消防庁では、JICAを通じ、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて、平成10年度からトップマネージャーセミナーを実施している。 平成16年度はバングラデシュ人民共和国から内務省消防庁長官をはじめとする幹部職員の訪問を受け入れ、意見交換や研修等を実施している。
(2)日韓消防交流の推進 消防庁では、日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会、2002年の「日韓国民交流年」を契機として、日韓消防の交流・連携・協力の推進を目的に、日韓消防行政セミナーを開催している。平成16年度の日韓消防行政セミナーは東京都で開催され、国民保護行政や救急業務推進等について意見交換が行われた。
(3)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟(Federation of World Volunteer Firefighters Association)が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会(International Fire Chiefs Association of Asia)は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。平成16年11月17日から19日にかけて第23回総会が台湾・台北市において開催され、我が国からも消防庁、消防機関等の代表が参加している。
[国際緊急援助]1 設立の経緯 昭和60年11月14日(現地時間13日)に発生したコロンビアのネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際して、外務省から同国政府からの援助要請がある場合の救助隊の派遣について意向打診があり、消防庁では国内消防機関の意向を確認のうえ、これに積極的に協力することとして準備を進めたが、同国政府からの救助隊派遣要請はなく、実現には至らなかった。 消防庁では、こうした活動には国際協力の一環として積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service 略称“IRT-JF”愛称“愛ある手”)を整備した。 その後、政府は外務省を中心に、海外で大規模災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月16日、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布施行された。
2 派遣体制 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」の公布施行により、海外における大規模災害発生時に、被災国政府等からの要請に応じて日本国政府が実施する総合的な国際緊急援助体制が整備され、より迅速な援助活動が可能になった。 消防庁長官は、外務大臣からの派遣協力に関する協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなっている(第6−1図)。 消防庁長官の派遣要請に基づき参集する国際消防救助隊は、日本国政府の国際緊急援助隊救助チームとして、高度な救助技術と能力を海外の被災地で発揮している(第6−2図)。 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、平成13年度に登録消防本部・隊員数を40消防本部501人体制から62消防本部599人体制に拡充した。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制を更に強化することとしている。
3 派遣実績 国際消防救助隊は、世界のトップレベルの救助技術を有する救助隊として、これまでに15回の海外派遣実績がある(第6−1表)。 平成15年5月に発生したアルジェリア民主人民共和国における地震災害においては、国際消防救助隊員17人を派遣して現地で救助活動を行い、倒壊建物から生存者1人を救出するなど大きな成果を挙げている。 また、平成16年2月に発生したモロッコ王国における地震災害には、国際消防救助隊員7人を派遣し、現地の救助技術向上のための技術指導を行うなど、日本・モロッコ両国の友好親善の観点からも大きな役割を果たしている。 平成16年12月に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波災害に際してタイ王国へ国際消防救助隊46人を派遣し、検索救助活動やヘリコプターによる支援活動のほか、内務省職員に対する救助技術指導を実施するなど幅広い援助を実施したところである。 最近では、平成17年10月に発生したパキスタン・イスラム共和国地震災害に国際消防救助隊13人を派遣し、救助活動を実施した。 消防庁では、これまでの国際消防救助隊の活動を検証し、より効果的な国際緊急援助体制の構築に取り組んでいる。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成活動を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても昭和62年7月にはISO/TC21協議会を設置し、ISO対策の充実強化を図り積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成17年3月31日現在、54の規格が国際規格として定められているとともに、ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)分科会においても現在1の規格が国際規格として定められている。
2 規格の国際化への対応 近年、WTO(世界貿易機関)等における非関税障壁低減に関する包括的な取組みの中で、各国個別の基準・認証制度を国際的に整合化することの重要性が認識されてきた。そして、平成7年1月にはWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効し、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。日本はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、また、平成13年には、ISO/TC21総会を千葉県の幕張メッセにおいて開催するとともに多くの実験データの提供を行っている。さらに、平成17年3月にはISO/TC94/SC14国際会議を日本で開催するなど国際規格の策定に積極的に貢献している。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、他の国々と連携を図りつつ、引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全]1 ハロン消火剤等の使用抑制 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、平成2年に消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を開催し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組み、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略と併せ、日本全体として取りまとめの上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどした。加えて、平成17年4月には、人命の安全確保の観点からクリティカルユースの判断について見直しを行ったところである。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成17年2月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。こうした中、社団法人日本消火装置工業会において平成17年10月に「ハロンの適切な管理のための自主行動計画」が策定され、不用意なハロン放出の防止、今後の需給見通しに対応したハロンの確実な回収・保管、取組の実施状況に関するフォローアップ等を行うこととされた。今後もハロン1301を貴重な資源として捉え、クリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理のもとに使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクルを効率的かつ的確に行うことを目的として平成5年に設立されたハロンバンク推進協議会を活用して回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
2 消防用設備等における環境・省エネルギー対策の推進 近年の地球環境問題に関する社会情勢等から、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組みが求められている。 このため、消防庁では、平成11年度において、消防用設備等全般における環境・省エネルギー対策について調査研究を行ったほか、これを踏まえ、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の一環として、平成12年度から5年計画で消火器と防炎物品のリサイクルの推進に取り組んでいる。 また、環境問題への対応や省エネルギー等の観点から、天然ガス若しくは液化石油ガスを燃料とする内燃機関又はガスタービンを原動機とする自家発電設備が開発され、さらに、コージェネレーション等の常用電源としての自家発電設備が普及してきたことに対応して、平成13年3月に、消防用設備等の非常電源である自家発電設備について、常用電源との兼用等に係る技術基準の整備を行ったところである。 さらに、マイクロガスタービン、ナトリウム・硫黄電池、レドックスフロー電池及び燃料電池設備等の新技術を用いた電源設備の普及に伴い、これらの電源設備の性能及び安全性等について平成15、16年度の2年間で検討を行い、この検討結果を踏まえて消防法施行規則の一部を改正し、これらの電源設備を消防用設備等の非常電源として取り扱うことができることとし、その技術的基準を定めたところである。
第7章 消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)及び消防庁に設置された消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 これらの研究・開発の推進の中心となっているのは、独立行政法人消防研究所である。 消防研究所は、昭和23年に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきたが、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となっている。 一方、消防庁においては、平成15年度から、消防防災に係る競争的研究資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を創設するとともに、燃料電池の設置の安全に係る研究等、消防法の技術基準の整備に直結する研究について、直接研究を実施する体制をとっている(囲み記事「消防防災分野における産学官連携と科学技術の高度化について」参照)。 なお、最近の大規模災害の多発等を踏まえ、国の危機管理体制の強化及び行政の効率的実施の観点から、独立行政法人消防研究所の事務及び事業については、消防庁に統合・吸収する方針が政府決定(平成16年12月24日)された。 また、消防防災の研究・開発は、消防機関の研究部門等においても積極的に実施されている。
[消防研究所における研究開発等] 消防研究所は、我が国唯一の火災等の災害に関する総合的な研究機関であるとともに、大規模、特殊な火災等の災害発生時の現場における消防機関等と一体となった災害対応(消火方法、拡大防止、二次災害防止等に関する助言、情報提供など)及び火災原因調査を担う機関であり、これらの災害等を踏まえた社会的、行政的要請の高い課題について緊急かつ優先的に行う重点研究と火災等の災害に関する基盤的な研究を継続的に実施している。 独立行政法人化に当たり、消防研究所では、5年間の期間中に達成すべき具体的な目標が「独立行政法人消防研究所中期目標」として定められたが、その中で「災害対応への情報化の促進」、「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」、「消火・救急・救助活動の技術の高度化」、「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の4つの研究領域については重点的に研究を実施することとされている。中期目標では重点研究領域とは別に、「物質の燃焼現象」、「消火の理論と技術」、「救急・救助」等の研究分野における基盤的研究の充実を図ることとされている。 また、消防研究所では、研究をより効率的に進めるため積極的に産学官の共同研究を推進しているとともに、研究に関する国際的な交流を行うほか、研究成果の公開及び普及のため各種の活動を実施している。
1 重点研究(1) 平成16年度終了重点研究 平成16年度に終了した重点研究の概要は、次のとおりである。 消防用防護服の総合的な性能評価手法に関する研究(平成14〜16年度) 消防用防護服の性能評価は主に耐熱性能の観点からのみしか実施されていないため、現在の防護服は、生地自体がごわごわとするなど防護服を着た際の消防隊員の快適性や機能性が損なわれている、あるいは、着衣状態での長時間作業に身体的負荷が強くかかるなど、実際の消防隊員から快適性、機能性の面からの要望が大きい。そこで、耐熱性能だけではなく、快適性に関連した性能である、着心地・熱感覚・湿度感・柔軟性・重量感及び機能性に関連した着脱容易性・動き易さ等の諸性能を、実際の消防隊員の協力を得て測定し、日本の気候風土に適した防護服のトータルな性能評価基準値を提案することを目的として実施した。初年度には生地レベルでの快適性能を計測する試験装置を開発製作し、2年度・3年度にはサーマルマネキン法による耐熱性能、発汗マネキン実験や環境室内模擬フィールド実験などにより快適性能、機能性能と各種防護服構造との関連を研究し、防火服の防水層の透湿性が快適性向上に大きく寄与することを明らかにするなど、次世代防火服開発と総合的性能評価に不可欠な成果を得た。なお、研究最終年度にあたって、平成17年3月に「消防隊員用防護服に関する国際シンポジウム」を開催し、消防隊員用防護服に関する14か国の専門家を交えた、消防用防護服の安全性の強化と高機能化及び円滑な国際流通に関する意見交換を実施した。
(2)継続重点研究 平成16年度に実施した重点研究で17年度以降に継続しているものの概要は、次のとおりである。 ア 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(平成14〜18年度) 発生した災害種別・内容、空間的分布とを迅速に把握し、把握した被害情報に基づく災害の拡大予測と最適対応のための支援情報を創出することを目的として、支援情報創出に必要となる基盤データ構築に関する検討、全国展開可能な簡易な被害拡大予測手法の開発、災害発生時におけるリアルタイムな災害拡大予測により被害を極小化するためのシステムの研究を行う。 イ 斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究(平成15〜17年度) 斜面災害現場における救助活動の安全を確保するため、崩壊面の形状と地下水の流出状況を遠隔監視し、二次崩壊の前兆となる変化を感知する手法の開発を行う。 ウ 火災時の安全避難技術の高度化に関する研究(平成14〜17年度) サブテーマI 地下施設・大規模複合建築物等における避難誘導効果評価法に関する研究(平成16〜17年度) すでに開発した人工現実感(VR)模擬火災シミュレータを用い、煙・光環境等様々な環境下における誘導灯等の各種避難誘導対策の効果を避難者の視点から評価可能な手法を開発する。また、その評価手法によるケーススタディを通して効果的な誘導灯の設置方法について技術的な提言を行う。 サブテーマII 災害弱者の火災避難安全のための警報・手法の開発(平成14〜17年度) 加齢あるいは聴覚障害により警報音の聞取りが困難な人に対しても有効な警報伝達手法の開発及び病気・身体不自由などにより自力避難が困難な人を救助するための通報システムの開発のための研究を実施する。 エ 廃棄物の貯蔵・取扱いにおける火災安全に関する研究(平成15〜17年度) サブテーマI 廃棄物処理施設の火災安全技術に関する研究(平成15〜17年度) 出火危険度が高い廃棄物処理施設における火災の出火防止技術の開発研究を行う。また、廃棄物施設では常に着火源が存在するため、これらの火災対策として火災時の適切な消火技術の開発研究を行う。 サブテーマII RDF爆発・火災に関する研究(平成16〜17年度) 燃料として使用されているRDF(Refuse Derived Fuel:ごみ固形燃料)貯蔵時の爆発火災の消火活動を行う場合に必要な消火方法と爆発災害による被害軽減方法の開発研究を行う。 オ 救急システムに関する研究(平成14〜17年度) 救急救命率の向上、市民から期待される救急サービスの維持・向上を図ることを目的として、増加し多様化することが予測される救急要請の実態、消防機関における救急隊の運用状況を調査分析し、限られた救急隊等消防力資源を効果的に運用する救急システムの構築のための研究を実施する。 カ 地震時における石油タンクの火災及び構造の安全性確保のための研究(平成15〜17年度) サブテーマI 石油タンクの経年劣化に伴う危険度予測手法の確立に関する研究(平成15〜17年度) 石油タンクの損傷による危険物の漏洩を防止するため、石油タンク底板の経年劣化の非開放検査手法(AE法)による評価、ごく短周期領域までの強震動の予測等を行い、供用中の危険物施設の安全性評価手法を確立する。 サブテーマII 石油タンク火災の安全確保に関する研究(平成16〜17年度) タンク火災の消火に使用する泡薬剤に求められる性能を実験室規模の消火実験により把握、整理する。また、大容量泡放射砲の性能に関して、泡の散布分布、放射軌跡等の放射特性を把握する。 サブテーマIII 浮き屋根等の安全性確保に関する研究(平成16〜17年度) 2003年十勝沖地震で沈没した浮き屋根及び折損したガイドポール等付属設備の変形損傷形態を詳細に調べ、スロッシングの発生及び浮き屋根の沈没メカニズムを解明し、今後発生が予測される地震におけるスロッシング被害を最小化するための技術を確立する。 キ 新規化学物質等の危険性を把握するための研究(平成16〜18年度) サブテーマI 反応性物質等の危険性を把握するための研究(平成16〜18年度) 次々に開発される新規化学物質の安全な貯蔵、廃棄及び取扱いのために、それらの危険物の危険性を適正かつ定量的に把握するための方法を提案し、さらに現行の危険性評価方法との相関性を調べて検討した評価方法の妥当性を評価する。 サブテーマII 廃棄物及びその処理施設の火災安全技術に関する研究(平成15〜17年度) 廃棄物及び廃棄物処理施設における火災事例の調査をもとに、火災発生メカニズムを解明し、燃焼物の危険性評価を含む出火防止対策の技術的検討を行う。 サブテーマIII バイオ燃料等の性状確認等の研究(平成16〜18年度) 環境の面から注目されている木材チップなどのバイオ燃料についてその危険性評価方法を提案する。また、RDFやRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)といったリサイクル燃料自体の発火メカニズムを解明し、危険性評価方法を提案する。
2 基盤研究 重点研究のほか、消防防災に係る科学技術の基礎的・継続的研究として、平成16年度には24課題の基盤研究を行った。
3 外部競争的研究資金等による研究 消防研究所では消防防災の研究をより積極的に行うため、文部科学省原子力試験研究費、科学技術振興調整費等の外部競争的研究資金を活用して研究を行っている。平成16年度には、次の研究課題を外部競争的研究資金により実施した。・地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(重点研究:一部、文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト)
4 大学、消防機関及び民間企業等との共同研究及び協力 消防防災の研究は、消防機関を通じた社会的なニーズの把握と成果の反映が重要であるとともに、産学官の連携により推進することが効率化などの観点から重要である。 建築防火、消火、あるいは危険物に関連した基礎的研究については大学の研究室を中心に、消防活動の現場に関連した研究については消防機関を中心に、消防用機器等の開発に当たっては民間企業を中心に、それぞれ共同研究先を広く求めている。平成16年度は次の31件について共同研究を実施した。
(1)大学等との共同研究等 消防防災に関連した火災安全等の研究を行っている大学の研究室と、火災・燃焼・消火等に関連した以下の共同研究等を行った。ア AE法による石油タンク底部の腐食劣化評価に関する研究(国立大学法人電気通信大学電気通信学部知能機械工学科)イ 多様な火災に対応するための消火手法に関する研究(国立大学法人東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻)ウ 原子力施設における救助活動支援ロボット完成度向上のための研究(国立大学法人神戸大学工学部機械工学科)エ 実火災加熱条件下における防火ガラス部材の消防用ホース放水時の挙動に関する研究(国立大学法人東京大学)オ 震災時の救助活動を想定したガレキ掘削可能な大型ロボットの実用化を考慮した操縦システムに関する研究(国立大学法人京都大学大学院工学研究科機械工学専攻)カ 科学研究費補助金基盤研究B(2)「巨大地震によるやや長周期地震動の生成機構解明と石油タンク・免震建物等耐震性能評価」(国立大学法人東京大学地震研究所ほか)キ 防災無線アドホック通信(国立大学法人電気通信大学)
(2)消防機関との共同研究等 消防機関と以下の共同研究等を行った。ア 消防用防護服の総合的な性能評価手法及び総合的に優れた防火衣の開発に関する研究(東京消防庁)イ 大規模閉鎖空間における消防活動に関する研究(横浜市消防局消防訓練センター)ウ 救急活動記録データの分析(救急要請を行っている市民ニーズの把握、救急件数の増加要因分析など)ほか(仙台市消防局)
(3)地方公共団体、非営利団体等との共同研究等 地方公共団体、非営利団体等と以下の共同研究等を行った。ア 閉鎖型スプリンクラーヘッドの感熱体の経年挙動に関する基礎的研究(日本消防検定協会)イ 消防用防護服の総合的な性能評価手法に関する研究(日本防炎協会)ウ 長距離無線LANとPHSを用いたネットワーク対応型消防無線システムに関する研究(独立行政法人情報通信研究機構)エ ナトリウム燃焼挙動に関する研究(IV)(核燃料サイクル開発機構)オ ガレキ内移動型探索ロボットに必要となる要素技術に関する研究(岐阜県生産情報技術研究所)カ 特殊消防用設備等の性能に関する評価手法の開発と標準化に関する研究(日本消防設備安全センター)キ 斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究(独立行政法人防災科学技術研究所)ク 防災無線アドホック通信(独立行政法人情報通信研究機構)
(4)民間企業等との共同研究等 民間企業等と以下の共同研究等を行った。ア 水/空気混合噴霧の消火性能に関する研究イ バーチャルリアリティ(VR)技術を用いた防火安全技術に関する研究ウ 一般住宅における初期火災時の燃焼特性に関する研究エ 火災時における臭い警報システムに関する研究オ AE法による石油タンク底部の腐食劣化評価に関する研究カ 室内環境データの収集と火災感知のための統計分析に関する研究キ 窒素富化空気を用いた防火技術の開発と評価に関する研究ク 災害弱者を含む広域住民への火災/避難に関する情報伝達手法の開発ケ 震災時の救助活動を想定したガレキ探査可能な大型ロボット開発可能性に関する研究コ 救急業務シミュレーションに関する研究サ 実火災加熱条件下における防火ガラス部材の消防用ホース放水時の挙動に関する研究シ 石油タンク火災の消火に適した泡消火剤に関する研究ス 赤外カメラによる消防・防災に関する研究
5 国際的な研究の協力と交流 火災等災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、災害の情報や研究の成果等を相互に公開し研究を効率的に進める必要がある。また、大量の危険物等が国境を越えて流通しているので、それらの安全に関する国際規格を作成するためにも研究の国際的協力が必要である。このため、国際的な共同研究、研究者の交流等を積極的に推進することが不可欠である。このため、消防研究所は、以下の国内外との共同研究等を実施している。
(1)国際共同研究 平成16年度は以下の国際共同研究を行った。ア 地下鉄の火災安全性に関する研究(慶北大学校建築工学科)イ LabVIEWによる火炎計測システムの構築に関する研究(米国NIST建築火災研究所)ウ 地下空間の安全性評価のための火災モデル構築に関する調査研究(慶北大学校工科大学)
(2)外国人研究者の受入れ 火災関連の外国人研究者を受け入れ、国際的に関心のある課題について協力して研究を行っている。平成16年度は中国から1人をJSPS(日本学術振興会)外国人特別研究員として受け入れ、アジア地域に適した地震災害軽減のための防災訓練プログラムの開発を行った。また、フランスから1人をJSPS外国人招へい研究者制度を活用して招へいし、石油のボイルオーバーに関する研究を行った。
(3)消防研究所シンポジウム(国際シンポジウム)の開催 平成17年3月に「第4回消防研究所シンポジウム−消防隊員用防護服に関する国際シンポジウム−」を開催した。このシンポジウムでは、消防隊員用防護服に関する国内外のエキスパート(14か国27人)を招へいし、消防隊員用防護服の安全性の強化と高機能化及び円滑な国際流通に貢献することを目的として、消防隊員用防護服に係る各国及び国際基準の状況及び消防隊員用防護服に対する要求、消防隊員用防護服の素材を含めた研究・開発状況等についての討論が行われた。
6 火災原因調査及び災害・事故等への対応 消防研究所は、消防防災の科学技術に関する専門的知見及び試験研究施設を活用し、「消防庁長官の求めに応じた火災原因調査」、「総務大臣の求めに応じた、災害の発生又は拡大の防止のための緊急的研究、調査又は試験」を実施することとされている。 火災原因調査に関しては、平成15年4月1日に火災原因調査室を設置し、大規模あるいは特殊な火災を中心に、全国各地において火災原因調査を実施(平成17年7月30日現在で34件)してきた。平成15年4月以降の火災原因調査の状況は第7−1表のとおりである。 緊急的研究等としては、平成15年8月19日に三重県で発生したごみ固形化燃料貯槽での消防活動、平成15年十勝沖地震時の苫小牧市ナフサタンク全面火災の消火活動とその後の被災タンク群からの石油抜き取り作業の安全確保等に専門家を派遣したほか、平成16年の新潟県中越地震時には緊急消防援助隊として延べ23人の専門家派遣を実施する等の活動を行ってきている。平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波をはじめ、大規模な災害・事故に際しては、国の内外を問わず被害調査と分析のために常に専門家を派遣してきている。
消防防災分野における産学官連携と科学技術の高度化について 安心・安全に暮らせる社会の実現をめざし、消防防災科学技術の振興を図るため、平成15年度に消防防災分野の競争的資金制度として「消防防災科学技術研究推進制度」が創設されました。この制度は、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者などから研究課題を幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術への育成を目的としています。 本制度の予算については、初年度から毎年拡充し、平成17年度予算においては3億7,000万円を計上するなど、制度の充実が着実に図られてきたところです。 予算、応募件数、採択件数の推移は以下のとおりです。 本制度による成果の一つとして、平成15年度に採択された「2流体ノズルPAGを用いた水損低減型消火システムの開発研究」において、マンションなどで消火活動における放水によって、下の階に漏水することによって生じる損害の軽減が期待できる「水/空気2流体混合噴霧消火システムを用いた放水装備」(以下「2流体消火システム」という。)が開発されたことが挙げられます。この2流体消火システムの開発に当たっては、民間企業や横浜市消防局、消防研究所等で共同研究を実施しており、産学官連携活動の優れた功績が認められ、産学官連携功労者表彰(総務大臣賞)を受賞しました。横浜市消防局では既に、8消防隊にこの2流体消火システムが配備されており、今後は消防隊による実地検証を進め、さらなる研究開発を推進し、2流体消火システムの普及促進を進めていくこととしています(図1、2)。 この例のように研究成果を社会に還元するため、今後も制度の更なる充実と、消防機関を含めた産学官の連携を図り、消防防災科学技術の高度化をより一層推進していきます。
7 消防研究所による研究成果の公開及び普及 消防研究所では、研究成果を広く一般に公開するとともにその普及を図るため、以下の活動を行っている。
(1)全国消防技術者会議 昭和28年以来、毎年、全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として「全国消防技術者会議」を開催している。平成16年度は、10月21日及び22日の2日間、東京虎ノ門ニッショーホールにおいて第52回会議を開催し、29件の研究発表が行われた。
(2)消防防災研究講演会 消防研究所創立50周年に当たる平成9年度から、消防研究所の研究成果を広く普及すること等を目的として開催している。平成16年度は、平成17年1月28日、消防研究所において第8回講演会を開催し、「地震被害軽減に向けての消防研究所での調査研究活動〜阪神淡路大震災後の10年を顧みて〜」をテーマとして講演、討論等を行った。
(3)一般公開 科学技術週間の一環として消防研究所の一般公開を平成16年4月16日に開催し、全国の消防関係者、企業、大学等の研究機関、一般市民等890人の参加を得た。
(4)消防研究所研究資料等の発行 定期的に「消防研究所報告」及び「消研輯報」を発行しているほか、個々の研究課題ごとに報告書をとりまとめ配布するなど、研究成果の普及に努めている。
(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰 消防研究所では、消防庁との共催により、消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的に、消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文を募集し、優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を設け、消防機関等における研究・開発の推進を図っている。平成16年度は、全国の消防機関、消防機器メーカー等から総計80編の応募があり、選考委員会(委員長 上原陽一 横浜国立大学名誉教授)による厳正な審査の結果、13の受賞作品(優秀賞:11作品、奨励賞:2作品)が決定された。
[消防庁における研究開発推進の概要] 消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術へ育成するための「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金制度)を平成15年度に創設し、制度の充実を着実に図ってきたところである。 平成17年度においては、大学、研究機関、民間企業、個人から合わせて75課題の応募があった。応募課題の審査に当たっては、外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」を開催し、消防防災への貢献の高さ、研究方法や研究実施体制の妥当性等の観点から審査を行い、制度の目的に照らして優秀と認められる採択課題を選定した結果、本年度の研究助成対象課題として11件が採択された。また、平成15年度、平成16年度からの研究課題については、19件中18件が継続を承認された。 さらに、消防庁においては、危険物施設に係る腐食・劣化評価に関する研究、新技術・新素材の活用に対応した安全対策に関する研究、消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システムに関する研究等、消防法技術基準の整備に直結する研究等については直接研究を実施する体制をとっている。
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防の科学技術に関する研究は、消防機関の研究部門においてもなされている。平成16年度において消防科学技術の研究部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、横浜市消防局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の8本部がある。 消防機関の研究部門の概要は第7−3表のとおりである。研究部門の定員は8機関で85人となっており、また、研究費は約180万円から5,000万円まで地方公共団体により大きな違いがあり、その総計は8,926万円となっている。 また、これらの研究部門は毎年、「指定都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術について意見交換を行っている。
2 消防機関における研究の概要 ほとんどの研究機関で一般の火災研究を行っており、ついで危険物の判定等の試験研究、火災原因究明等の調査研究を行っている。消防装備の開発については、装備担当部門単独又は協力して行っている本部もある。 また、平成7年度から、多くの機関で地震時の出火防止対策及び消火等の地震対策研究が開始され、その後も続けられている。
[消防防災の科学技術研究の課題] 消防防災の科学技術は、災害の発生に伴う緊急的な研究ニーズが出現すること、また、その対象とする研究領域が著しく広く、様々な知見が必要であることなどが特徴的である。こうした消防防災の科学技術研究の特性に対応する上では、研究組織の運営の機動性、柔軟性が必要であるとともに、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携が求められる。 消防庁への消防研究所の統合・吸収に際しては、今後とも、組織の弾力性を確保しつつ、研究ポテンシャルを一層高めるとともに、消防防災の科学技術研究のニーズを的確に把握するため、消防機関・地方公共団体との連携を緊密化し、また、大学研究機関や民間との協力関係を深め効果的・効率的な研究を実施することが必要である。 また、競争的研究資金制度の一層の充実により、消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携の推進が求められる。
タンク火災に用いる泡消火薬剤の研究 独立行政法人消防研究所は、平成15年9月の十勝沖地震時に発生した出光興産(株)北海道製油所の全面タンク火災を契機として、石油タンク火災の消火に用いる泡消火薬剤の性能を明らかにするための研究(「石油タンク火災の安全確保に関する研究」)を平成16年4月より開始しました。 本研究では、実験室規模の消火実験により各種泡消火薬剤毎のタンク火災消火能力の特性を明らかにするとともに、実大規模の放射実験等による泡の安定性・展開性能等について明らかにすることを目指しています。 平成16年5月、四日市市消防本部と共同で、同本部所有のノンアスピレート型ノズル(5,700Lpm)を用いて、水、水成膜泡(AFFF)、粘性付与水成膜泡(AR-AFFF)及び合成界面活性剤泡(SD)の泡放射実験を実施し、分散分布密度、発泡倍率、25%還元時間(泡の寿命)、放射軌跡等の泡性状や放射状況を放射角度を変えて測定・分析したほか、平成17年2月には、志布志国家石油備蓄基地において消防庁他主催(実施主体:危険物保安技術協会及び(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構)で実施された20,000Lpm級のアスピレート型、ノンアスピレート型の大容量泡放射砲を使用した実タンク(高さ24m、直径80m)への放射実験を含む泡放射実験を水、フッ素蛋白泡(FP)、粘性付与水成膜泡(AR-AFFF)について実施し、泡の性状や放射状況、タンク内での泡分布の測定を行いました。 実大規模のタンクを用いた消火実験は、国内では環境問題等のために実施が困難であるため、海外で実施される実験に参画することとし、平成17年5月にハンガリーで実施された国際消火実験(タンク直径42m、高さ16m、燃料:軽油)等に参加をしています。
消防用防護服の総合的な性能評価手法に関する研究 独立行政法人消防研究所では、平成14年度より3年間をかけて、消防用防護服を「耐熱性」だけでなく、「快適性」及び「機能性」の側面からも評価する総合的な性能評価手法を開発する研究を実施しました。 耐熱性は、生地レベルでの火炎暴露、放射熱に対する防護性能を国際基準(ISO 6942等)にのっとって評価したうえで、防火服に縫製した状態での耐熱性をサーマルマネキンで評価する手法をとりました。 快適性・機能性についても、同様に生地レベルでの性能評価と、縫製された防火服レベルでの性能評価を実施しました。生地レベルの快適性評価のためには、発汗ホットプレートを用いて熱や水蒸気の透過性等、人体からの発熱に対する放熱の性能を評価する手法をとりました。 防火服レベルでの快適性・機能性の評価には、発汗マネキンなど測定機器による客観的測定だけではなく、実際に消防隊員等が着衣し環境室内で模擬的な活動をした時の体表面温度変化など生理的測定や、着衣者の主観申告による評価方法も採用しました。 生地レベル快適性能、機能性能と各種防護服構造との関連を分析した結果、防水層の透湿性の多寡、素材生地間に存在する空気層が、発汗による放熱に大きく影響するなど、快適性を防火服が獲得するために重要な現象を明らかとしました。機能性に関しては、重量や素材の厚みだけでなく、人体との密着性を確保することが重要であることも明らかとなりました。
消防防災ロボットの研究 独立行政法人消防研究所(以下「消防研究所」)では、民間企業(株式会社テムザック)、北九州市消防局及び大学等研究機関と共同でガレキの掘削・救助などを目的とした大出力型のロボット“援竜”の研究開発を実施してきました。援竜は、双腕のマニピュレータを備えており本体内に乗り込んで操縦することが出来るほか、無線遠隔操作が可能であり、平成17年度には、消防本部に貸し出して評価を受けているところです。 また、消防研究所では平成16年度に、研究開発用のクローラ移動機構“FRIGOシリーズ”を開発しました。この“FRIGOシリーズ”は、消防機関をはじめ、これからロボットの研究開発を実施しようとする機関が、開発を進める上で部品として利用できるベースユニットです。この汎用のユニットを活用することで、ロボットの研究着手が容易となります。 消防防災ロボットは配備、運用、そして実戦投入されて初めてその価値が認められるものです。したがって、運用する組織と開発する組織が、開発段階からロボット運用上の問題点を共同して発掘していくことも、効率的な開発を推進するための重要な要素であるといえます。 現在、“FRIGOシリーズ”を用いて、いくつかの消防本部と連携しながら実用化に向けた改良開発を進めることとし、消防隊員より20−30m先行して進入し消防隊員にセンサ情報を伝達する情報収集型のロボット開発に着手しています。 消防防災ロボットの果たす役割は、「小型・単純・安価で、簡易的な情報収集を主な目的としたタイプ」と「処理対応作業までも目的とした高機能なタイプ」とに区分できますが、“FRIGOシリーズ”は前者の開発に威力を発揮するものと期待しています。 なお、現在、消防防災ロボットは、全国11消防本部で25機が配備されており、最も多く配備されているロボットは水中探索型であり9消防本部に計16機が配備されています。
新潟県中越地震における消防研究所の活動 平成16年新潟県中越地震(発生、平成16年10月23日17時56分頃)に際して、独立行政法人消防研究所は、地震直後から以下の活動を行っています。 1 開発した「簡易型被害想定システム」による直後被害推定情報の消防庁への提供 2 現地対策本部(緊急消防援助隊)への専門家の派遣(地震発生翌朝〜) 3 全発生火災の現地調査(10月27日〜) 4 地震被害全般に関する現地調査(10月28日〜) 5 収集した情報分析結果のホームページでの一般への情報提供(以上に関する情報詳細は、消防研究所ホームページで見ることができます。http://www.fri.go.jp/cgi-bin/hp/index.cgi?Page=hpd_view&ac1=JNN2&ac2=&ac3=361) 簡易型被害想定システムは、地震直後に気象庁から発表される地震発生に関する即時的・限定的情報を入力すれば、直ちに被害推定値が得られ、被害程度のイメージを持つことができるもので、大地震直後の実被害情報空白を埋める目的で阪神・淡路大震災の経験を踏まえて開発されました。地震発生(10月23日17時56分頃)の6分後の18時02分に気象庁が発表した震源情報に基づき得られた推定結果、家屋被害数(全壊+半壊)153棟、出火件数3件、死者数8人(その後、震源情報が訂正発表されており最新の震源情報による予測値は、家屋被害数383棟、出火件数5件、死者数21人となり、さらに実際の被害に近づきます。)が消防庁に提供されました。現在、この簡易型被害想定システムは消防庁消防防災・危機管理センターで稼働中です。 また、地震直後から消防庁の現地派遣にあわせて研究員2人を被災地に派遣しました。今回の地震が豪雨後の地域であり山間部での土砂被害が懸念されたことから、斜面災害の専門家1人が含まれており、緊急消防援助隊による長岡市妙見堰救出活動現場に臨場し、レスキュー活動を斜面災害の専門家の立場から支援しました。 こうした災害への直接対応業務と並行して、地震被害をより正確に分析記録するために、火災調査とその他被害調査のために2つの調査チームを地震の4日後より現地に派遣しました。 被害調査、消防等関連機関の対応状況を含めた消防研究所による調査結果は「平成16年(2004年)新潟県中越地震被害および消防活動に関する調査報告書(平成17年9月)」として取りまとめられました。報告書については、消防研究所ホームページからダウンロード可能です。http://www.fri.go.jp/pdf/shiryo/shiryo_no69.pdf
第8章 今後の消防防災行政の方向 従来、我が国は充実した災害対策や治安の良さ、社会の安定性、社会インフラの安全等の安心・安全な社会を基盤として、経済の活力を高めてきており、それが我が国経済の国際競争力の源泉となっている。 ところが昨今、豪雨災害や相次ぐ台風の上陸、新潟県中越地震や福岡県西方沖、千葉県北西部、宮城県沖を震源とする地震といった大規模な自然災害の発生や、(株)ブリヂストン栃木工場火災及び出光興産(株)北海道製油所火災等の企業災害やJR西日本福知山線列車事故に見られるようなこれまで安全と信じられていたインフラ施設の故障・事故、また発生が懸念される東海地震、東南海・南海地震、首都直下型地震等の大規模地震やNBC災害など、安心・安全神話に揺らぎが生じている。 こうした中、国民の安心・安全を確保することは、政府の基本的な責務であるとともに、我が国の経済活性化の基盤であり、我が国に大きな優位性がある安心・安全を維持向上させるため、官民各々において防災・事故対策等の「安心・安全総点検運動」を展開するとともに、災害・事故発生時の対策及び平常時からの備えを強化することが急務となっている。 重点施策の具体的内容に関しては、次の6つをあげることができる。 第一に、消防組織法の改正による緊急消防援助隊に係る消防庁長官の指示権の創設、国民保護法の施行に伴う新たな役割の付与等により、消防庁は大きな変革期を迎えており、大規模災害・テロ・有事等に対する国家的対応の観点から、消防庁の体制を大幅に充実強化することが急務である。 第二に、消防救急無線のデジタル化、IP電話等の新たな情報通信手段への対応など、情報通信を巡る諸課題に対応し、大規模災害発生時における住民の避難や国・地方を通じた初動対応の迅速化を図るためには、日進月歩の高度な情報通信技術を活用した消防防災情報通信ネットワークの高度化・充実強化が不可欠である。 第三に、大規模・特殊災害時における全国的見地からの緊急対応体制の充実強化を図るため、緊急消防援助隊の増強や特別高度救助隊・高度救助隊の政令市・中核市規模以上の消防本部への配備など、高度消防・救急救助体制の全国的整備を検討するほか、救急出場件数が急増傾向にあり、地域によっては迅速な対応が困難となるおそれがあることを踏まえ、その対策を講じることが必要である。 第四に、先端科学技術の進歩を国民の安心・安全に活かすことが強く求められており、様々な先端科学技術を利用した予防・災害対応技術の開発等の国民の安心・安全に資する消防防災科学技術の高度化が必要である。 第五に、地域防災力の強化は災害への備えとして平時より取り組まれるべき課題であり、常備消防をはじめ消防団、自主防災組織、災害ボランティア等多様な主体が一体となった地域防災のネットワーク構築が極めて重要である。 第六に、最近における住宅火災による死者数が急増していることや、放火が出火原因の第1位を占めるなど、地域における防火・防犯体制の強化が求められている。特に、住宅防火対策については、消防法が平成16年6月に改正され、住宅用防災機器の設置・維持が義務付けられることから、より一層の充実が必要である。
1 安心・安全の総点検(1)国・地方の防災・危機管理体制の総点検ア 消防庁の体制の大幅な充実強化 近年、安心・安全の確保に対する国民の関心は特に強くなっている。「経済財政運営と構造改革の基本方針2005」においても、国民の安心・安全の確保は、政府の基本的な責務であるとともに、我が国の経済活性化の基盤であるとされており、国家として責任を持って取り組んでいるところである。 特に、消防防災分野では、大規模災害・テロ・有事等に対する全国的見地からの対応の必要性から、まず、平成16年4月施行の消防組織法の一部改正により、緊急消防援助隊に係る消防庁長官の指示権が創設されたことに伴い、情報収集や出動時の各種調整などの新たな任務が消防庁として果たすべき責務に加わった。次に、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)の施行に伴い、消防庁が新たに法制運用上の基幹的な役割を果たすこととなった。具体的には、警報及び避難措置の通知、安否情報の収集・伝達、地方公共団体の国民保護計画の策定支援等の新たな任務が消防庁として果たすべき責務に加わったところである。 こうしたことから、大規模地震災害時等における国としてのオペレーション体制の強化を図るため、消防庁の組織体制を大幅に充実強化する。イ 地域防災計画の総点検 地域の防災・危機管理体制の根幹である地域防災計画について、阪神・淡路大震災以降の修正率の向上に努めるとともに、都道府県・市町村における地域防災力・危機管理能力指針による自己評価の実施の推進及びその状況の把握、計画修正協議を通じた必要な助言等の支援を行うことなどにより、全地方公共団体における総点検を促進するほか、都道府県間で計画内容の情報共有を推進する。ウ 実践的な防災訓練等の実施 大規模災害等に備え、国と地方の緊密な連携に基づく迅速かつ的確な人命救助体制を充実強化するため、実践的な訓練を反復し的確に緊急事態に対応する体制の構築が何よりも重要である。 そのため、消防庁に設置した「消防防災・危機管理センター」を活用し、国の関係機関、地方公共団体等と連携した実践的な防災訓練や図上訓練を実施するほか、市町村長や都道府県防災担当部局幹部を対象とした「防災危機管理ラボ」の実施等により、地方公共団体における実践的な図上シミュレーション訓練の計画的な実施を促進する。
(2)国民保護のための体制づくりア 国民保護のための仕組みの整備・充実 弾道ミサイル攻撃等の武力攻撃事態の類型ごとの初動対応、警報の伝達、避難誘導、救助など詳細な対処のあり方の検討等により、地方公共団体の国民保護計画の作成を支援するとともに、安否情報のシステム等により、国民保護のための体制を整備・充実する。イ 実践的な訓練の実施及び普及啓発の強化 国民保護のための訓練を国・地方公共団体共同で実施するとともに、パンフレット、視聴覚教材の作成やブロック会議の開催等により、国民保護に関する国民に対しての普及啓発を強化する。
2 世界最先端の災害緊急情報伝達・収集ネットワークの構築(1)災害情報の瞬時伝達システムの構築ア 全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備 弾道ミサイル攻撃等の武力攻撃事態に的確に対処するためには、国民保護法に基づき、国において瞬時かつ確実に国民に警報を通知・伝達するシステムの整備が不可欠である。 そのため、国民保護法に基づく警報や緊急地震速報、気象予警報等の災害情報を瞬時かつ全国一斉に住民に伝達するため、衛星通信ネットワークと同報系防災行政無線を接続した全国瞬時警報システム(J-ALERT)の開発、整備を進めることを検討していく。イ 携帯電話・テレビの自動起動・警報受信機能を活用したシステムの開発・普及 気象予警報や避難勧告、地震に伴う津波警報など、住民に迅速かつ確実に伝達すべき情報について、伝達手段の多様化が求められており、緊急情報を全住民に対して確実に伝達するため、平成23年7月に完全移行する地上デジタル放送の技術を活用して、携帯電話・テレビを自動的に起動させ、警報を伝達する災害情報の瞬時伝達システムの開発・普及を促進する。
(2)被災地情報の収集・広域通信体制の強化ア 迅速かつ確実な被災地情報収集体制の構築 平成16年10月に発生した新潟県中越地震では、初動時において消防庁と山古志村や小千谷市塩谷地区等との間で情報が途絶し、被害の把握に時間を要する事態となるなど、初動時における被災地情報収集のあり方に大きな課題を残したところである。 そこで、大規模災害発生の際の初動時における迅速かつ確実な被災地情報収集を図るため、衛星携帯電話・ヘリコプターテレビ電送システムの全国的整備を進めるとともに、夜間のヘリコプター運用についての調査検討等により、初動時における迅速な被災地情報収集体制の構築を図る。 また、平成17年7月に発生した千葉県北西部、同年8月に発生した宮城県沖を震源とする地震の際に、震度情報が遅れて送信される事例が相次いだことも踏まえ、震度情報ネットワークについて、システムの効率的な見直しを行うこと等により、震度データ送信及び震度発表の更なる迅速化等の充実を図る。イ 広域活動のための情報通信基盤の確立等 平成28年度を目途とした消防救急無線のデジタル化への移行を踏まえ、消防救急無線の広域化・共同化及び消防指令業務の共同運用について、各都道府県において整備計画を策定し、両者を強力に推進する。 これらとあわせ、消防救急無線と地域衛星通信ネットワークが連携した全国消防救急通信ネットワークを構築し、被災情報の共有化及び緊急消防援助隊の広域活動のための通信体制を確立する。 また、国・地方公共団体間の防災情報の共有化に向け、消防庁防災情報システムと都道府県防災情報システムを相互接続するなど、地方公共団体等との情報共有化を図るとともに、各種統計報告のオンライン化を推進する。 さらに、IP電話の普及や携帯電話の高機能化等の新しい通信手段の需要を踏まえ、これらからの緊急通報の発信地を特定するシステムについて、実証実験を行う。
3 高度消防・救急救助体制等の全国的整備(1)高度消防・救急救助体制の全国的整備ア 特別高度救助隊等の全国的展開・配備 平成16年10月に発生した新潟県中越地震や平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故における救助隊の活躍は記憶に新しいところであり、これらに対する国民の期待は高まっているところである。 そこで、大規模災害・テロ・有事等に対して全国的見地から人命を救助する体制を強化するため、高度な救助用資機材、特殊車両及び高度な救助技術・知識等を兼ね備えた救助隊員で構成される「特別高度救助隊」「高度救助隊」をそれぞれ政令市消防本部・中核市規模以上の消防本部に配備することを検討するとともに、特殊な救助用資機材を特別高度救助隊に整備することを検討していく。 あわせて、消防大学校において特別高度救助隊等の養成講座を創設し、専門的な教育等の実施を予定している。イ 緊急消防援助隊の充実及び大幅増強 大規模・特殊災害等に対する全国的見地からの対応が強く求められる中、緊急消防援助隊の果たす役割は特に強くなっている。実際に、平成16年10月の新潟県中越地震では1都14県から延べ480隊、2,121人が活動に従事し、453人の救出、平成16年7月の新潟・福島豪雨では、1都11県から延べ171隊、693人が活動に従事し、1,855人を救出し、さらに、平成17年4月のJR西日本福知山線列車事故でも2府1県から延べ74隊、270人が活動に従事し、42人の救出を実施したところである。 緊急消防援助隊について、大規模・特殊災害等への対応力を強化するため、登録部隊数をさらに増強し、その整備・充実を図ることを検討する。
(2)救急救命等の充実・高度化ア 救急需要対策の検討 平成16年中の救急出場件数は約503万件で、10年前の平成6年中と比較して約65%増となっており、今後も、高齢化の更なる進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増加し続けることが予想されている。また、平成16年中の平均現場到着所要時間は6.4分となっており、平成6年中と比較すると、0.6分遅くなっており、救急出場件数がこのまま増加を続ければ、地域によっては、住民の救急要請に対して、現在のような迅速な対応が困難となるおそれがある。 こうしたことを踏まえ、今後も救急業務が適正に執行されるよう、救急自動車の適正利用の普及啓発、傷病者のトリアージシステム、民間事業者の活用等の救急需要対策に必要な諸問題について、幅広く検討を行う。イ 大規模災害発生時の救急体制のあり方の検討 平成16年10月に発生した新潟県中越地震や平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故の教訓を踏まえ、緊急消防援助隊、地元消防本部及び医療機関など、関係機関での被害状況の情報共有等を含む大規模災害発生時の救急体制整備の重要性が再認識されているところである。 このため、大規模な地震等の大規模災害が発生した場合における緊急消防援助隊と現地消防本部との連携体制、救急隊と医療機関等関係機関との連携体制、トリアージの実施体制等の災害時の救急業務のあり方等について検討を実施し、大規模災害発生時の救急体制マニュアルを作成するなど、救急体制の更なる充実強化を図る。ウ 救急業務の高度化の推進 傷病者の救命効果の向上を図るため、救急救命士の処置範囲の拡大を推進しつつ、救急救命処置等の適切な実施に必要な、医師による常時指示体制、医学的観点からの事後検証体制、再教育・研修体制の確保など、メディカルコントロール体制のあり方を検討し、更なる充実を図る。あわせて、高規格救急自動車や高度救命処置用資機材の整備を促進し、高度な救急救命処置が可能な搬送体制の確保を図る。 また、「救急の日」のイベント等を通じて、日本赤十字社等の関係機関との連携強化を図りつつ、バイスタンダー(現場に居合わせた人)による自動体外式除細動器(AED)の使用も含めた応急手当の普及啓発を推進する。
4 消防防災科学技術の向上(1)消防防災研究開発体制の強化 独立行政法人消防研究所は、消防防災の高度化のための研究開発に取り組んできたほか、出光興産(株)北海道製油所タンク火災や新潟県中越地震をはじめとする大規模・特殊災害時において、消防庁と一体となって消防機関の活動支援及び安全確保を行うとともに、消防法に基づき、消防庁長官の指示により火災原因調査を行うなど、緊急時対応等に取り組んできたところである。 このような中、平成16年の独立行政法人の見直しにおいて、独立行政法人消防研究所の事務及び事業については、危機管理機能の強化及び行政の効率的実施の観点から、消防庁に統合・吸収することとされている。 このため、消防防災分野における研究開発において、国として実施すべき研究開発の充実強化を図るとともに、危機管理機能を強化する。
(2)消防防災に係る科学技術の高度化 消防防災に係る科学技術の高度化により、災害対応力の強化、火災予防対策の推進、危険性物質・危険物施設の安全確保、消火・救急・救助活動に係る技術の高度化等の各分野における重点的な研究開発を推進する。 具体的には、ロボット、ナノテク、ICT(情報通信技術)等の新技術を活用した高度な技術・資機材の研究開発・実用化の推進、やや長周期地震動に対する浮き屋根式屋外貯蔵タンクの耐震基準強化に伴う浮き屋根を改修する際の標準的設計手法の開発等を行う。 また、消防防災分野に係る競争的研究資金制度の一層の充実を図り、産学官連携による研究開発を推進する。
(3)消防防災分野における国際的課題への対応 平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波災害以降、大規模災害に関する知見・対策の蓄積を有する我が国に対する国際的な貢献への期待が高まっていることから、平成17年1月に開催した世界消防庁長官会議やタイ王国への支援を踏まえ、被災国を中心に諸外国に対して大規模災害に関する教育、避難対策等での教材提供、情報提供・共有、人的交流の推進を行う。 このほか、開発途上諸国への消防防災分野の専門家の派遣、開発途上諸国からの研修員の受け入れ及びトップマネージャーセミナーの開催、国際消防救助隊(IRT)の一層の充実等を図る。 また、日韓消防行政セミナーへの参加など主要国の防災関係諸機関との情報交換等の機会の拡大を積極的に図る。 さらに、消防器具の国際規格について、試験方法等の国際的な標準化に引き続き協力していくほか、消防車両等消防用機器の国際競争力を強化するための諸方策を検討する。
(4)新技術等に対応した防火安全対策等の構築 消防用設備等に係る技術基準の性能規定の導入に伴い、客観的検証法(新たな技術開発や技術工夫について客観的かつ公正に検証する方法)については、一定の知見が得られたものから順次技術基準を策定するとともに、総務大臣が認定を行う特殊消防用設備等については、その申請及び審査が円滑に行えるよう、審査体制の充実強化を図る。また、ユビキタス機能を応用した高機能自動火災報知設備の開発や、高齢者等の災害時要援護者に適した規格・消防用機械器具等のあり方等についても検討を行う。 一方、危険物施設に係る技術基準についても、新技術・新素材の円滑な導入等を一層図るため、性能規定の導入・基盤整備を行う。 さらに、バイオマス燃料、燃料電池自動車用水素スタンド及び固体酸化物型燃料電池等の新技術や環境対策等に対応した総合的な安全対策を推進する。
5 地域防災力の強化(1)常備消防力の強化 地域における安心・安全を確保する上で、市町村消防の果たす役割は一段と大きなものとなっている。まず、地域の常備消防力については、平成17年に改正した「消防力の整備指針」を踏まえ、消防防災施設、無線、資機材等の整備を促進するとともに、消防救急車両の規格の標準化を進めるほか、小規模消防本部の広域再編についても引き続き推進する。 また、惨事ストレス対策や消防職員の勤務環境の整備など、職員が安全かつ能率的に業務を遂行できる体制・環境づくりを進めるとともに、消防職員委員会制度の円滑な運用を図る。 さらに、相次いだ消防職団員の殉職事故を受けて行われた所要の検討を踏まえ、事故事例の情報収集システム及び新しい態様で使用される物品の火災等における情報の一元化システムを構築、運用することとする。
(2)消防団・自主防災組織等の充実強化 消防団員を当面100万人(女性10万人)確保することを目指し、引き続き消防団員の活動環境の整備や、住民の消防団活動への理解を深める施策を推進するとともに、消防団と事業所との連携のあり方について検討を行う。 また、自主防災組織と消防団の連携のあり方について調査検討を行うなど、自主防災組織の活動の活性化及び組織化を図るほか、災害ボランティアの活動環境の整備について、各地方公共団体における取組み状況の収集及び分析を行い、地域の実情に即した取組みの進め方、あり方を検討する。 さらに、地域防災コーディネーターの育成を図り、消防団、自主防災組織、地元企業その他防災関係機関等の連携体制を構築することにより、地域防災力の充実強化を図る。
(3)地域における防災・危機管理体制の強化ア 人材育成及び地方公共団体の防災体制の強化等 地方公共団体の幹部クラスの防災・危機管理専任スタッフの配置・研修、地域住民及び地方公共団体職員や消防職団員を対象としたe-カレッジの活用等を引き続き推進するほか、地方公共団体の防災・国民保護担当職員や自主防災組織のリーダー等に対し、幅広く研修を行う体制の整備を検討する。 また、消防大学校における地方公共団体の首長等を対象とした危機管理セミナーの充実を図るとともに、受講人員の増大を踏まえ、e-ラーニングによる効率的な研修を行うことで、意欲と能力の高い幹部人材の計画的育成を促進する。イ 市町村における具体的な防災・危機管理体制の検討 専任職員・スタッフ・幹部等の効果的な設置パターン、迅速かつ的確な災害対応のための24時間対応体制、防災部局と消防本部との連携・一体化など、市町村における具体的な防災・危機管理体制について検討を実施する。
(4)地域安心安全ステーションの全国展開 大規模災害等の危険性の高まりや犯罪の増加・凶悪化が大きな社会問題となる中、地域において安心・安全な生活を確保していくため、コミュニティ活動をベースとした地域の防災・防犯体制の強化を図ることが重要となっている。 このため、自主防災組織や各種コミュニティが消防や警察等と連携し、安心安全パトロールや初期消火、応急手当等を総合的に実施する地域安心安全ステーションについて、引き続きモデル事業を実施するとともに、その全国展開に向け、国民保護も含めた地域の安心・安全の確保について普及啓発活動を行うほか、当該ステーションを核にした関係機関とのネットワーク強化について検討を行う。
(5)震災対策の充実 東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震及び首都直下型地震対策について、特別措置法等の整備を踏まえ、推進地域における推進計画・対策計画の策定の支援、地域ごとの津波避難計画の策定及び避難地・避難路の整備の促進等の防災対策を推進する。 また、耐震性貯水槽等の整備を促進するとともに、都道府県が策定する耐震化緊急実施計画を踏まえ、効果的な公共施設等の耐震化を強力に推進するほか、耐震改修事業の促進を図る。
(6)特殊災害・テロ災害対策の充実 原子力災害時等の消防活動における隊員の安全管理、活動要領、除染及び汚染拡大防止措置要領等について、マニュアルの周知及び訓練への活用等により、消防機関における原子力災害等対応体制の向上を図る。 また、石油コンビナート防災対策として、市町村長等による防災業務の改善措置命令及び防災規程の変更命令、特定事業者による防災業務の実施状況の定期報告制度についての進捗状況を把握し、必要な指導・助言等を行うとともに、大規模災害時を想定した大容量泡放射システムを含む消火資機材の大規模な訓練を実施するための訓練環境について、検討を行う。 さらに、消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システムについて、技術的検証を行う。
(7)災害時における情報伝達・避難誘導体制の整備・促進 平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨災害及び福井豪雨災害では、警報伝達や避難誘導体制の不十分さが指摘されたところである。そこで、避難に際して高齢者等の災害時要援護者の逃げ遅れがないよう、モデル事業の実施によるアクションプログラムの策定等を踏まえ、地方公共団体における災害時要援護者避難支援プランの作成を支援するとともに、同報系の防災行政無線の整備を促進する。
(8)災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力の推進 平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故においては、災害現場周辺の住民・事業所が発災直後からいち早く駆けつけ、所有する資機材等を活用して被災者の救出救助活動にあたるなど、災害時における事業所の防災協力の重要性が改めて認識されたところである。 今後発生が懸念される東海地震、東南海・南海地震、首都直下型地震等の大規模災害発生時には、地域に所在する事業所の防災協力活動が被災者の救命・救助に不可欠であることから、災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力について、その一層の推進を図るため、地方公共団体の防災体制づくりや実践的な訓練の実施等に取り組んだ実績を地方公共団体に対してノウハウとして提示することを検討する。
6 火災予防対策等の推進(1)住宅防火対策の推進 住宅火災による死者数は、建物火災の死者数の約9割を占めており、近年、その数は急増している。また、その半数以上が高齢者であることから、今後、高齢化が進展するとその数は更に増加するおそれがある。 このような状況等をかんがみ、住宅火災による死者数の低減を目的として、住宅用火災警報器等の設置を義務付ける消防法の一部改正(平成16年法律第65号)が行われたところであり、その施行に向けて、地域で住宅用火災警報器等の広報・普及啓発活動に取り組む消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等を支援する事業を実施すること等により、これらの団体と連携して、高齢者等を中心とした住宅用火災警報器等の普及啓発を一層推進する。
(2)総合的な防火安全対策の推進 近年の防火対象物の大規模化・複雑化等に伴い、その用途及び利用形態等の多様化も進んできているため、高度な火災監視及び制御システムを有した総合消防防災システムの高度化の一層の推進を図るとともに、防火対象物を本来の用途以外の用途に一時的に使用する場合の防火安全性について検討を行う。 また、小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物の消防法令違反の是正を推進するため、関係行政機関との連携、消防機関相互の協力関係の充実、防火対象物定期点検報告制度の活用により、効果的な立入検査を行うなど、違反是正体制の強化を図る。 さらに、避難等訓練マニュアルの充実、消防計画作成マニュアル等の作成などを通じて、防火対象物ごとの実態に合った防火管理体制の確立を図る。
(3)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降8年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占め、年々増加する傾向にある。放火を防ぐためには、一人ひとりが防止対策を心がけるだけでなく、地域全体が「放火されない環境づくり」に取り組むことが重要である。 このため、個人・事業所・地域・地方公共団体等のレベルごとに、自ら放火火災の危険性について現状認識を持ち、地域自らが対応を行うため、「放火火災防止対策戦略プラン」が策定されたところである。 地域で実施した放火火災防止対策戦略プランの評価シートの収集・分析結果に基づき、地域の取組みを反映させるための手法を用いたプランの改定及びプログラムの開発を行うとともに、放火火災情報地図等の基礎となる放火危険度データベースの開発等を推進することにより、地域による「放火されない環境づくり」の取組みを一層推進する。
(4)危険物事故対策の充実 近年における危険物の火災・漏えい事故の増加傾向を踏まえ、「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、官民一体となって総合的な事故防止対策を強力に推進するとともに、大規模地震に伴う津波や台風等の洪水による浸水に対する危険物施設の安全対策について、検討を行う。 また、危険物施設に係る腐食・劣化に関する評価手法の開発・データベースの整備、自主保安の一層の推進等を図ることにより、火災・漏えい事故の防止、施設の効果的・効率的な保守管理を推進する。 さらに、新規危険性物質の早期把握及び危険性評価等に努めると同時に、潜在的な危険要因に応じた安全対策について調査検討を行う。