トピックスII 救命率の向上に向けた取組み 

トピックスII 救命率の向上に向けた取組み

1 救急業務の高度化

 消防機関の行う救急業務は、昭和38年に法制化されて以来、我が国の社会経済活動の進展に従って、その体制が整備されてきた(第1表参照)。

第1表 救急業務の高度化の歴史

 しかしながら、事故以外の事由による急病人が法的に救急業務の対象として明確に位置付けられておらず、また、救急隊員が搬送中の傷病者に対して事実上行っていた応急処置についても、その法的根拠が明確にされていなかったため、昭和61年の消防法改正により、事故以外の急病人の搬送及び応急の手当てを行うことも救急業務に含まれることが法律上明確にされた。
 その後も救急出場件数は一貫して増加し続け、救急業務は住民の安全を確保する上で必要不可欠な行政サービスとして定着した。
 一方、我が国の傷病者の搬送システムは高い水準に至ったものの、プレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)については、救急隊員の行う応急処置の内容が比較的簡単なものに限られており、また、傷病者の救命率が欧米諸国と比べて十分でないことが指摘されてきた。このような状況を改善し、救急に対する国民のニーズの高まりに的確に対応するため、プレホスピタル・ケアを充実し、傷病者の救命率の向上を図るための具体的方策について議論が行われた。その結果、平成3年には救急隊員の行う応急処置等の範囲の拡大及び救急救命士制度の創設がなされた。これにより、救急救命士の資格を取得した救急隊員は、医師の具体的な指示のもと、心肺機能停止状態に陥った傷病者に対して「除細動(電気ショック)」等の高度な応急処置を行うことが可能となったのである。
 救急救命士制度創設後も、更なる救命率の向上を目指したプレホスピタル・ケアの充実の取組みは続き、救急救命士の処置範囲の拡大とあわせてメディカルコントロール体制の充実の議論が行われることとなった(第1図参照)。

第1図 メディカルコントロール体制

 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁と厚生労働省が共同で開催した「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」の報告書(平成14年12月、平成15年12月)を踏まえ、心肺機能停止状態の傷病者に対して、〔1〕平成15年4月から医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動、〔2〕平成16年7月から医師の具体的指示による気管挿管、〔3〕平成18年4月から医師の具体的指示による薬剤(アドレナリン)投与が実施されることとなった。今後は、これらの高度な処置を実施することのできる救急救命士の養成を進めることが救命率の向上に向けた課題である。
 また、これらの処置範囲の拡大の前提となるメディカルコントロールとは、プレホスピタル・ケアで行われる行為について、医学的見知からその質を保証するシステムであり、医師から救急隊員に対する常時かつ迅速・適切な指示・助言、救急活動の事後検証及び救急救命士の再教育などで構成される。高度な処置にはより専門的な医学的知見が必要であるため、メディカルコントロール体制を整備し、充実することが求められている。
 このように、救急救命士制度の導入、救急救命士を含む救急隊員の処置範囲の拡大、さらにはメディカルコントロール体制の整備といった取組みの結果、救命率は向上しており、救急業務の高度化の効果が見られる(第2図参照)。

第2図 救急救命士制度の導入による心肺停止傷病者の救命率の推移

 1 救急業務の高度化

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