はじめに 近年、集中豪雨等の自然災害や火災・事故等により、各地に大きな被害が発生しており、その態様も多様化・大規模化の傾向を示しています。本年も平成18年豪雪、梅雨前線による大雨や台風第13号、さらに先般の竜巻などの風水害や弾道ミサイル発射のように国民保護の観点から見過ごすことの出来ない事案が生じています。 「骨太の方針2006」においても、「国民の安全と安心の確保は、政府の最も重要な責務の一つであるとともに、我が国の経済活性化の基盤である」と明記され、大地震等の大規模災害や大事故・テロ等に揺るがない社会を構築し、引き続き我が国の優位性である安心・安全を維持・向上させていく必要があります。 平成18年版の消防白書においては、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、国民保護への取組み、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説するとともに、特集として、全国的・広域的な見地から消防体制の充実・高度化を図り、国民の安心・安全を確保するため、「消防組織の体制強化−国民の安心・安全を確保する消防防災体制の確立−」と題し、本年6月に改正された消防組織法に基づく市町村の消防の広域化、緊急消防援助隊の増強整備など大規模災害等に備えた災害対応力の充実強化、消防団の充実強化に係る様々な施策の推進、消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化について、その概要、課題、今後の取組み等について紹介しています。 また、消防防災行政上、特に話題性のある次の3項目をトピックスとして紹介しています。 トピックスIでは、大規模、高層化、設備の多様化が進む防火対象物の防火安全対策の推進、増加を続ける住宅火災の死者数の減少のための取組みなど火災予防対策の充実強化について。 トピックスIIでは、増加する一方の救急需要を踏まえ、救命率の向上に向けた取組みについて。 トピックスIIIでは、大規模災害時の災害応急対策を円滑に実施するため、防災拠点となる公共施設等の耐震化促進について。 これらを踏まえ、消防白書が、国民の生命、身体及び財産を災害などから守る消防防災活動について、国民の皆様のご理解をいただき、安心・安全な地域社会づくりに向け、国、地方公共団体のみならず地域の皆様、企業等も含めた消防防災体制の確立のため、広く活用いただければ幸いです。平成18年12月
特集 消防組織の体制強化 −国民の安心・安全を確保する消防防災体制の確立−はじめに 多様化・大規模化する災害・事故等に対応するため、緊急消防援助隊の4,000隊規模への増強や高度救助隊の全国的展開・配備等に取り組み、消防防災体制の一層の強化を図っているところである。また、国民保護法の成立を受け、警報伝達や住民の避難等国民保護のための措置の円滑な実施を図るための計画が各市町村で策定されつつある。 しかしながら、今年に入っても、梅雨前線による大雨や台風第13号、さらに先般、竜巻による災害が生じるなど全国各地で大きな被害が発生するとともに、弾道ミサイル発射のように国民保護の観点から見過ごすことのできない事案も生じている。 このような災害・事故等から国民の生命、身体及び財産を護り、国民の安心・安全を確保するため、国・地方を通ずる防災・危機管理体制を構築し、全国的・広域的な見地から消防体制の充実・高度化を図るとともに、行政と住民が一体となって地域の消防防災力を強化することが不可欠である。 これらの状況を踏まえ、消防組織の体制を強化する方策として、以下「市町村の消防の広域化の推進」、「大規模災害等に備えた災害対応力の充実強化」、「消防団の充実強化推進施策」、「消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化」について、その概要、課題、今後の取組み等を紹介する。特別高度救助隊(名古屋市消防局提供)第20回全国消防操法大会
市町村の消防の広域化の推進 消防庁においては、現行の消防体制の現状と問題点を整理し、消防機関の果たすべき役割を踏まえた今後の消防体制のあり方について検討を行うため、平成17年10月から「今後の消防体制のあり方に関する調査検討会」(座長:多賀谷一照 千葉大学法経学部教授)を開催し、平成18年1月に同検討会において、「今後の消防体制のあり方について(中間報告)〜消防の広域化を中心として〜」が取りまとめられた。 また、消防審議会(会長:菅原進一 東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科教授)においても、今後の消防体制のあり方について審議が行われ、平成18年2月1日に「市町村の消防の広域化の推進に関する答申」が消防庁長官に対し手交された。 上記中間報告及び答申においては、消防の広域化の必要性に改めて言及した上で、消防の広域化を一層推進するために、新たな法的措置を講じ、広域化における都道府県の役割を明確にするとともに、消防の広域化に関する関係者の議論の枠組みを準備することが必要と考えられるとの指摘があり、これを踏まえ、消防庁は、第164回国会(平成18年通常国会)に市町村の消防の広域化を推進するための「消防組織法の一部を改正する法律案」(閣法第87号)を提出した。 同法案については、平成18年4月11日に参議院総務委員会において審議、同日賛成多数により可決、翌日12日に参議院本会議で同じく可決し、続いて6月1日に衆議院総務委員会において審議、同日賛成多数により可決、6月6日に衆議院本会議で同じく可決、成立した。 改正法については、6月14日に公布され、同日から施行された(平成18年法律第64号)。 市町村の消防の広域化とは、消防体制の充実強化による住民サービスの一層の向上を図るために、一部事務組合等の制度を活用して、常備消防の規模を拡大することである。 これによる具体的なメリットとしては、〔1〕 災害発生時における初動体制の強化〔2〕 統一的な指揮の下での効果的な部隊運用〔3〕 本部機能統合等の効率化による現場活動要員の増強〔4〕 予防業務や救急業務の高度化及び専門化〔5〕 財政規模の拡大に伴う高度な資機材の計画的な整備〔6〕 消防署所の配置や管轄区域の適正化による現場到着時間の短縮等が挙げられる(詳細は「2 広域化によるメリット」参照)。 また、実際の消防活動の第一線の業務を行う消防署所の設置については、消防庁長官が定める消防力の整備指針により市街地の人口規模等に応じてその基準が定められているため、広域化が行われたとしても、市街地が変化しない限り、基本的には署所の数は減少しない。むしろ、本部機能の高度化等による消防力の強化が期待できる。 なお、今回推進する広域化の対象は常備消防であり、消防団は地域に密着した消防防災活動を行うという特性上、その対象とされていない。 今後は、平成19年度までに都道府県において「消防広域化推進計画」(以下「推進計画」という。)を定め、その後5年程度で各市町村において広域化の実現を目指すこととなる。 各市町村においては、改正後の消防組織法に基づき、住民サービスの一層の向上のため、積極的に広域化の議論が行われることが期待されている。広域化により新設された分署(佐賀県:佐賀広域消防局の小城消防署北分署)広域化により機能が拡充された指令センター(長野県:松本広域消防局)
1 広域化の必要性 災害の大規模化、住民ニーズの多様化等、近年消防を取り巻く環境は急速に変化しており、消防はこの変化に的確に対応する必要がある。 しかしながら、小規模な本部においては、出動体制、保有する車両等の住民サービスの限界や組織管理上の限界が指摘されることがあるなど、消防の体制としては必ずしも十分でない場合がある。 これを職員数の規模でみると、消防本部の職員数はおおむね管轄人口の1,000分の1であることから、管轄人口10万未満の消防本部の職員数は、100人未満となることが多いと考えられる。さらに、消防職員はその大半が交替制勤務を行っており、休日や夜間にはその3分の1〜4分の1程度の人員しか常駐しないため、消防本部の体制として種々の点で脆弱であることが否めない。 また、日本の総人口は、平成17年に戦後初めて減少に転じており、今後も人口は減少すると予想されている。これにより一般的に各消防本部の管轄人口も減少すると考えられ、さらに、常備消防とともに地域の消防を担っている消防団員の担い手不足の問題も懸念されている。 このような現状にかんがみると、市町村の消防の体制の整備及び確立のためには、常備消防の広域化をより積極的に推進することが不可避である。第1図 管轄人口規模別消防本部数
2 広域化によるメリット〔1〕 住民サービスの向上 広域化による最大のメリットは、住民サービスの向上である。 まず、災害対応の観点からは、広域化により一消防本部が保有する部隊数が増えるため、多数の部隊の統一的な運用による効果的な対応が可能となる。 また、広域化により一消防本部の職員数が増加するとともに、総務部門や通信指令業務の効率化により生じた人員を、住民サービスを直接担当する部門に配置することにより、当該部門を増強することができる。これにより消防隊の増強はもとより、特に近年著しく高度化している予防業務や救急業務について、担当職員の専門化や専任化が進展することが考えられ、より質の高い消防サービスの提供が可能となる。 さらに、消防本部の管轄区域が拡大するため、消防署所の配置及び管轄区域の適正化が容易となり、それによって現場到着時間の短縮等の効果が期待できる。〔2〕 消防に関する行財政運営の効率化と基盤の強化 本部機能の一元化による業務の効率化や消防施設設備の計画的な整備の推進、重複投資の回避等により、少ない経費で高い水準の消防サービスの提供が可能になる。 具体的には、〔1〕で述べたとおり総務部門等の一元化による効率化が期待されたり、高機能な指令設備の効果的な運用が可能となる。 また、広域化により財政規模が拡大するため、小規模な消防本部では整備が困難な高度な車両等の計画的な整備が可能となる。 さらに、広域化によって職員数が増加することにより、人事ローテーションの設定が容易になることや、職務経験の不足や単線的な昇進ルートの解消を期待することができるなど、組織管理の観点からもメリットが多いと考えられる(第2図参照)。第2図 広域化によるメリット 以上のとおり、消防の広域化を行うことで、行財政上の様々なスケールメリットが働くことが期待でき、それにより厳しい財政状況下における効果的・効率的な消防体制の整備を図ることができる。
3 今後の目指す方向 消防庁は、7月12日、消防組織法第32条に基づき、市町村の消防の広域化に関する基本指針を定めた。基本指針においては、以下の事項が定められている。(1) 自主的な市町村の消防の広域化の推進に関する基本的な事項(2) 自主的な市町村の消防の広域化を推進する期間(3) 推進計画に定める市町村の組合せ及び都道府県における必要な措置に関する基準(4) 広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項(5) 市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項
(1)自主的な市町村の消防の広域化の推進に関する基本的な事項 基本的な事項として、広域化の必要性、消防組織法における広域化の基本的な考え方、国における広域化推進施策を定めている。 広域化の必要性としては、消防を取り巻く環境の変化に的確に対応するために、広域化を行うことによって行財政上の様々なスケールメリットを実現することが有効であること、また、将来人口の減少等の現状にかんがみると、今後ともより一層広域化を推進することが必要であることとしている。 消防組織法における広域化の基本的な考え方としては、広域化は、消防の体制の整備及び確立を図ることを旨として行われなければならないこと、その対象は常備消防であり、消防団は対象でないこと等を改めて明記している。 また、国における広域化推進施策としては、〔1〕 消防広域化推進本部の設置(「4 今後の取組み」参照)〔2〕 広域化に関する広報及び普及啓発〔3〕 広域化の推進に関する制度、先進事例、留意事項等についての都道府県及び市町村に対する情報提供〔4〕 広域化に関する個別具体の相談に応じるための相談体制の確保充実〔5〕 必要な財政措置を行うとしている。
(2)自主的な市町村の消防の広域化を推進する期間 基本指針において、広域化は、消防の体制の整備及び確立のため、不断に取り組んでいかなければならない課題であるが、これまでの実績を踏まえた上で、今後着実に推進するためには、当面、一定の期限を区切って広域化に取り組むことが必要であるとしている。 そこで、推進計画の策定期限については、遅くとも平成19年度中には定めることが求められている。 また、広域化対象市町村においては、推進計画策定後5年度以内(平成24年度まで)を目標に広域化を実現することが求められている(第3図参照)。第3図 消防の広域化のスケジュール
(3)推進計画に定める市町村の組合せ及び都道府県における必要な措置に関する基準 推進計画策定に当たっての留意事項として、関係者のコンセンサスを得ながら広域化の推進に努めること等を定めている。 また、広域化対象市町村の組合せに関する基準について、広域化の規模としては、一般論として、消防本部の規模が大きいほど望ましいとしている。その上で、現状を踏まえつつ、これからの消防に求められる消防力、組織体制、財政規模等にかんがみると、管轄人口の観点から言えばおおむね30万以上の規模を一つの目標とすることが適当であるとしている。 ただし、各市町村は、管轄面積の広狭、交通事情、島嶼部などの地理的条件、広域行政、地域の歴史、日常生活圏、人口密度及び人口減少などの人口動態等の地域の事情をそれぞれ有しているため、これらに対する十分な考慮が必要であるとしている。 さらに、既存の消防広域化基本計画に基づいて行われた広域化の状況及び非常備市町村の常備化の必要性に配慮する必要があり、市町村の合併の特例等に関する法律(平成16年法律第59号)第59条第1項に規定する構想により定められた組合せに十分留意する必要があるとしている。 都道府県における必要な措置に関する基準については、〔1〕 広域化を推進するための体制の整備〔2〕 住民及び関係者に対する情報提供〔3〕 相談対応体制の確保、職員の派遣等〔4〕 関係市町村間の協議の積極的な推奨、仲介、調整等〔5〕 広域化に関する調査研究等を参考にしつつ、必要な措置を定め、都道府県として広域化の推進に積極的に取り組むこととしている。
(4)広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項 広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項として、広域化後にその効果を十分発揮することができるよう、広域化後の消防において一元的な部隊運用、出動体制、事務処理等が行われることが重要であること、構成市町村等との意思疎通及び情報共有に特に意を用いる必要があること等を定めている。 また、広域化後の消防の体制の整備のために考えられる方策として、例えば、以下のような事項について組合等の規約等において定めることが有効であるとしている。〔1〕 負担金又は委託料に係る基本的なルール〔2〕 職員の任用、給与、教育訓練等に関する計画を策定すること〔3〕 中長期的な整備費用の見通しを含めた消防力の整備計画を策定すること〔4〕 部隊運用、指令管制等に関する計画を策定すること〔5〕 災害時等における構成市町村等の長と消防長等との間の相互連絡、情報共有等に関する計画を策定すること〔6〕 構成市町村等間の迅速な意見調整を可能とするための仕組みを構築すること〔7〕 消防事務の運営に関して住民の意見を反映できるようにすること
(5)市町村の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項 消防団については、地域に密着した消防防災活動を行うという特性上、消防組織法に基づき推進する広域化の対象とされていないが、広域化後の消防本部と消防団の緊密な連携の確保が必要となるとしている。 そのための具体的な方策として、〔1〕 連絡調整担当の団長を指名することによる常備消防との一元的な連絡調整〔2〕 各消防団合同又は常備消防を含めた訓練等の実施〔3〕 消防署所への消防団との連絡調整担当の配置、定例的な連絡会議の開催等〔4〕 常備消防と消防団との連絡通信手段の確保が示されており、これらを参考にしつつ、地域の実情に応じて両者の連携確保を図ることが必要であるとしている。 また、防災・国民保護担当部局との緊密な連携の確保についても必要とした上で、そのための具体的な方策として、〔1〕 夜間等の防災業務のうち初動時の連絡体制などの消防本部への事務委託〔2〕 構成市町村等の長及び危機管理担当幹部と消防長等による協議会の設置〔3〕 各構成市町村等と消防署所との連携確保のための定例的な連絡会議の開催、災害対策本部への署所員の派遣等〔4〕 防災・国民保護担当部局と消防本部との人事交流〔5〕 総合的な合同防災訓練の実施〔6〕 情報通信手段の充実による連絡体制の強化〔7〕 防災行政無線を消防通信指令部門に設置することによる24時間体制の確保が示されており、これらを参考にしつつ、地域の実情に応じて両者の連携確保を図ることが必要であるとしている。
4 今後の取組み 消防庁では、基本指針の策定とあわせて、広域化の推進方策の検討及び実施並びに都道府県及び市町村における広域化の取組みを支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置した(7月12日)。同日には、第1回会合を、また8月31日には第2回会合を開催し、推進本部の当面の取組み等について議論を行った。 推進本部では、〔1〕 都道府県の推進計画策定の促進・支援〔2〕 市町村に対する情報提供〔3〕 相談窓口の設置、広域化推進アドバイザーの派遣〔4〕 消防の広域化についての普及啓発に取り組んでいる。 また、同本部に広域化推進相談窓口を開設し、全国を5つの地域に分け、地域ごとに担当者を配置した。各都道府県からのみならず、各市町村や各消防本部からの相談も受け付けている。 さらに、各都道府県及び各市町村からの依頼に応じて、消防広域化推進アドバイザーの派遣や説明会・講演会の開催等も行う。 今後、消防庁としても、消防広域化推進本部を中心として全庁を挙げて広域化を推進し、市町村の消防の体制の整備及び確立を図るものである。 以上のような広域化の必要性・メリット及び推進の枠組みを十分理解の上、各地域において広域化に関する積極的な議論が行われることが期待されている。
大規模災害等に備えた災害対応力の充実強化1 緊急消防援助隊の計画的増強の推進(1)緊急消防援助隊の発足及び活動状況 我が国の消防は、消防組織法の規定により、市町村の区域内で発生した災害等に対してその市町村の消防が対応責任を有している。 しかし、平成7年に発生した阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、被災した市町村はもとより当該都道府県内の消防力のみでは対応が困難な大規模災害等において、全国規模での消防応援を迅速に行い被害の軽減を図るために、同年、「緊急消防援助隊要綱」に基づき全国の消防本部により緊急消防援助隊が発足した。 発足後は、平成8年12月の蒲原沢土石流災害をはじめ、平成15年9月の十勝沖地震による北海道苫小牧市製油所タンク火災などの災害に出動した。 その後、被害が複数の都道府県に及ぶ大規模地震災害及び毒性物質の発散等に迅速・的確に対応するための体制の充実強化の必要性が議論され、平成15年に消防組織法を改正し、緊急消防援助隊を法律上明確に位置付けるとともに、消防庁長官の指示権を創設し、平成16年4月に、法律に基づく部隊として新たに発足した。 法制化以後、緊急消防援助隊は平成16年7月の新潟・福島豪雨及び福井豪雨、同年10月の新潟県中越地震、平成17年のJR西日本福知山線列車事故等に出動し、その昼夜を分かたぬ献身的な活動が、社会的に高い評価を受けている。実災害での活動実績から、更なる迅速・的確な広域応援体制の拡充の必要性を再認識
(2)緊急消防援助隊の増強整備 緊急消防援助隊の部隊は、消防組織法第45条の規定に基づき、消防庁長官が登録することとしており、その登録規模については、緊急消防援助隊の法制化とあわせて総務大臣が策定した「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下「基本計画」という。)において、当初、平成20年度までの登録目標部隊数を3,000隊とした。 しかし、その後に公表された東海地震活動計画や首都直下地震等の最新の被害想定等を踏まえ、国民の安心・安全を確保するため、消火・救助・救急に係る主要部隊を中心に、大規模災害等への対応力を一層強化するため、平成18年2月に、同計画を変更し、緊急消防援助隊の登録目標を4,000隊規模に拡大することとし、増強整備を進めている。
(3)全国訓練と地域ブロック合同訓練の実施 緊急消防援助隊の技術及び連携活動能力のより一層の向上を図るため、「基本計画」において全国訓練と地域ブロック合同訓練の実施が明記されている。 これらの訓練は、国が都道府県・市町村の協力を得て実施することとされており、全国訓練に関しては、平成7年・12年及び法制化後の基本計画に基づき平成17年に実施している。 地域ブロック合同訓練は、平成8年以降、全国6つのブロックで毎年実施されており(自然災害発生等により中止した場合も含む。)、法制化以降は、消防庁としても、この訓練経費に係る予算措置を行い、主催者として各地域ブロック合同訓練を実施している。 平成18年度は、10月18・19日開催の中国・四国ブロックを皮切りに、11月11・12日開催の関東ブロックまで全国6ブロックで訓練を行った。 このように、消防庁では緊急消防援助隊の設備等の充実を継続的に図るとともに、実践的な訓練の実施をとおして、その体制等を総合的に強化することとしている。高層建築物対応訓練BC災害対応訓練
2 高度な救助体制の全国的整備(1)「特別高度救助隊」及び「高度救助隊」の創設と全国的配備の推進 平成16年10月に発生した新潟県中越地震の際、長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故において、東京都隊、長野県隊などで構成される緊急消防援助隊が活躍したが、中でも救出の中核を担ったのは、高度な救助資機材と技術を備えた東京消防庁消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー隊)であった。 また、平成17年4月に起きたJR西日本福知山線列車事故では、地元消防本部や緊急消防援助隊の救助隊が活躍したが、気化したガソリンが充満し引火危険等があるため、現有装備ではその活動が制約されることもあった。 このように、多様化・複雑化の度合いを増す大規模災害や特殊な災害に対して、迅速かつ効果的に対応するとともに活動する隊員の安全を確保する上でも、全国的見地から救助体制等を強化する必要があった。 そこで、消防庁は、「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」を改正し(平成18年4月1日施行)、新たに高度救助用資機材の装備を義務付けた「特別高度救助隊」を東京消防庁・政令指定都市消防本部に、「高度救助隊」を中核市消防本部等に創設することとした。 現在、「特別高度救助隊」は東京消防庁及びほとんどの政令指定都市消防本部で、「高度救助隊」は中核市消防本部等で整備が進んでいる。 「特別高度救助隊」及び「高度救助隊」が装備すべき高度救助用資機材は、画像探索機、地中音響探知機、地震警報器、電磁波探査装置※、水中探査装置※などである(※は、高度救助隊においては地域の実情に応じて装備することとしている。)。加えて、特別高度救助隊は、特殊災害対応車両を備え、さらに地域の実情に応じてウォーターカッター及び大型ブロアーを備えることとしている。【参 考】 ・特殊災害対応車両=放射性物質、生物剤及び化学剤による災害に対応する車両。 ・ウォーターカッター=研磨剤を含む高圧の水流により切断を行う器具。切断時に火花が発生しないため危険物や可燃性ガスが充満した場所でも使用可能。 ・大型ブロアー=車両積載の高性能大型排煙機。排煙と同時に噴霧消火等も可能。 ※ ウォーターカッター、大型ブロアーは、平成18年度中に、日本で初めて消防機関に導入
(2)消防大学校における特別高度救助隊等の教育・訓練 特別高度救助隊及び高度救助隊は、救助技術に関する高度な知識・技術を兼ね備えた隊員で構成する必要がある。消防庁では、平成18年度にそのための教育・訓練課程を消防大学校のカリキュラムに新設し、救助部隊の活動能力の充実・強化を図ることとしている。テロ災害対応訓練(東京消防庁提供)
3 消防防災ヘリコプターのより安全かつ積極的活用(1)消防防災ヘリコプターの整備状況 昭和41年11月に東京消防庁航空消防隊が創設され40周年を迎えた現在、東京消防庁をはじめ12政令指定都市及び岡山市の14消防本部で28機の消防ヘリコプターが、また、昭和55年4月の北海道防災ヘリコプターの運航開始を皮切りに38道県において42機の道県ヘリコプターが整備され、45都道府県で計70機の消防防災ヘリコプターが消防活動等に運航されている。 さらに、平成15年6月の消防組織法の改正等によって、都道府県所属の消防防災ヘリコプターの法的位置付けの明確化、航空隊員である都道府県職員への公権力行使を伴う消防支援活動権限の付与等が行われ、都道府県航空消防隊は消防法上の消防隊として市町村の消防支援を行うこととされた。長岡市妙見堰の車両埋没現場における救出活動(東京消防庁提供)
(2)消防防災ヘリコプターによる大規模災害時の救助活動等への備え 平成7年阪神・淡路大震災を契機に、ヘリコプターによる効果的な災害防ぎょ活動の必要性が再認識され、消防庁では消防防災ヘリコプターを緊急消防援助隊(航空部隊)に登録し、その計画的な増強を推進しているほか、派遣から現場到着までの的確な連絡手段の確保等による地上消防部隊との的確な連携体制等の確立、夜間等悪条件下における運航体制の確保、ヘリコプター複数機による活動現場での安全かつ効果的な運用体制の確保、自衛隊や海上保安庁等他の航空部隊等との的確な連携体制の確立等に取り組んでいる。 平成16年(2004年)新潟県中越地震に際しては、ハイパーレスキュー隊の被災現場への投入など大規模災害発生時の迅速な消防応援活動に大きな成果を上げており、その切迫性が懸念されている東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の発災時等においても、迅速かつ効果的な災害対応を行うため、消防防災ヘリコプターによる的確な情報収集や消防部隊の迅速な投入等が期待されている。
(3)安心して暮らせる地域社会の確保のために消防防災ヘリコプターの機動力を活かした救急業務の実施体制の確立 消防防災ヘリコプターは、救急・救助・消火活動や情報収集・指揮支援活動等に大きな役割を果たしており、平成17年中における災害出動は5,355件となっている。そのうち救急出動は半数近くの2,492件、平成11年中に比較して約2.6倍と急増している。 近年、少子・高齢化社会が進展する中で、増加する救急需要に対応し、離島や山間部を含めた地域社会の期待に応えていくためには、消防防災ヘリコプターの救急業務への積極的な活用が不可欠である。 消防庁は、従来からヘリコプター救急要請に係るガイドラインの策定、航空消防隊への救急隊員の配置及び必要な資機材の装備、臨着場の整備促進、医療機関との連携確保など消防防災ヘリコプターによる救急業務の実施体制の充実に努めている。 今後とも、消防の災害対策の強化を進めるとともに、救出救助、救急等に関し、ヘリコプターの活用を含め全国的見地からの体制整備を図っていく必要があり、消防庁としても、安心して暮らせる地域社会の実現のため、消防防災ヘリコプターの機動力の効果的活用を更に積極的に推進していくこととしている。航空消防隊の救急活動(高知県提供)
4 今後の取組み 消防は地域住民の安心・安全に直結する重要な役割を担っており、このため消防庁では、大規模地震災害等及び複雑化、多様化する事故等に的確に対応するため、消防組織法をはじめ関係法令等の見直しを適宜行いつつ、消防装備の整備や様々な教育、訓練等をとおして、その体制の整備に努めてきたところである。 今後も国民のニーズに的確に応えるため、緊急消防援助隊をはじめ、国内の消防体制の充実・強化に努め、大規模災害等に備えた災害対応力の更なる向上を図っていく必要がある。
消防団の充実強化施策推進1 消防団の必要性 我が国は、昔から地震、台風、火災などの災害が多く発生しているが、消防団は、「自らの地域は自らが守る」という崇高な郷土愛護の精神に基づき、これらの災害に日夜立ち向かい、地域の安心・安全の確保に大きく貢献している。 しかし、近年、災害は大規模・広域化してきており、新潟県中越地震や福岡県西方沖を震源とする地震をはじめとした大きな地震が頻発し、平成17年の台風第14号や平成18年7月豪雨などでは、都道府県域を超えた広範囲にわたる大きな被害が発生している。平成17年台風第14号での活動:広島県廿日市市消防団宮島分団(廿日市市消防本部提供) また、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震の発生が危惧されていることもあり、国民の安心・安全に寄せる関心は極めて高いものとなっている。 こうしたことから、消防防災体制の充実強化は、国、地方を通じて最重要課題の一つとなっており、その中でも地域防災の中核的存在である消防団の充実強化は、地域防災力の向上には必要不可欠となっている。 これまで消防庁では、地域の安心・安全の確保のために消防団の充実強化に係る様々な施策を推進しているが、特に近年の大きな取組みである「消防団組織・制度の多様化」と「消防団協力事業所表示制度」について紹介する。
2 消防団の充実強化に係る主な施策(1)消防団組織・制度の多様化 地域防災体制の充実を図るためには、住民の更に幅広い層から消防団に参加する人を確保することが必要であるため、平成16年度に「消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会」を開催し、地域住民・被雇用者・女性が参加しやすい活動環境の整備及び地域住民・事業所の消防団活動への理解促進について検討を行い、提言をまとめた。この提言では、消防団員はすべての消防団活動に参加することが基本であるが、団員の確保が困難な場合に、その補完制度として、特定の災害・活動のみに参加する「機能別団員・分団制度」等を掲げ、全国の市町村等が地域の実情に応じて制度の導入を図り、地域防災体制の充実が推進されるようにしている。〔1〕 機能別団員 従来からのすべての消防団活動に参加する団員(以下「基本団員」という。)を確保することが困難な場合で、その機能性等に着目し、大規模災害発生時など、ある特定の災害活動や役割を行う消防団員を配置できる制度である。機能別団員の報酬については、日額報酬や異なる年額報酬の設定など制度を柔軟に運用することができる。本制度の採用により、勤務条件が厳しい被雇用者が災害活動や特定行事に限って参加したり、体力的に基本団員に及ばないが技術・知識では遜色のない消防職団員OBなどが、災害活動の後方支援や住民指導に限って参加することが可能になる。 ただし、この制度では、一つの消防団の中に基本団員と機能別団員という制度の異なる団員が混在することになるので、本制度を導入する場合には団員の理解が必要である。松山西郵便局の職員を機能別団員として採用:愛媛県松山市(松山市消防局提供)消防団員OBを機能別団員として採用:愛知県瀬戸市(瀬戸市消防本部提供)〔2〕 機能別分団 前〔1〕の機能別団員を分団として組織して活動を行う制度である。報酬については前〔1〕と同様に制度を柔軟に運用することができる。本制度の採用により、大規模災害対応、火災予防対応など個別の内容を目的とした分団の設置や、事業所単位の分団の設置が容易になる。 ただし、この制度では、一つの消防団の中に制度の異なる分団が配置されることから、団員の理解を得て導入することが必要である。〔3〕 休団制度 消防団員が長期出張、育児等で長期間にわたり活動に参加することができない場合、消防団員の身分を保持したまま一定期間の活動休止を消防団長が承認する制度である。この制度の採用により、消防団員が一定期間活動できない場合にも退団することなく、在団することができる。 なお、休団中の大規模災害対応、休団期間の上限、処遇等については各消防団で検討し、別途規定する必要がある。〔4〕 多彩な人材を採用・活用できる制度 市町村の条例上の消防団員採用要件として性別・年齢・居住地等を限定している例が見受けられるので、当該条例を見直し、幅広い層の住民が入団できる環境を整備する必要がある。また、消防団員の募集についても、年間を通じての募集・採用を実施し、地域住民が入団しやすい環境を整えることが望ましい。
(2) 消防団協力事業所表示制度 消防庁では、全消防団員の約7割が被雇用者であることから、消防団活動への一層の理解と協力を得るために、平成17年度に「消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会」を設け、消防団と事業所の協力体制のあり方について検討し、提言をまとめた。その提言を踏まえて、平成18年度に事業所として消防団活動に協力することが、その地域に対する社会貢献及び社会責任として認められ、当該事業所の信頼性の向上につながるとともに、協力を通じて地域における防災体制をより一層充実するための『消防団協力事業所表示制度』を構築し、市町村等にその導入推進を図っていくこととしている。 本制度は、消防団に対して事業所が市町村等の定める協力を行っている場合に、事業所の申請又は市町村等の推薦により、「消防団協力事業所表示制度」表示マークを掲示することができるものである(第4図、第5図参照)。第4図 「消防団協力事業所表示制度」表示マーク第5図 消防団協力事業所表示制度イメージ図 表示マークは、事業所の社屋等へ表示するほか、ホームページ等にも掲載することができ、これにより世間一般に広く広報することが可能となる。 この制度がより多くの市町村等に円滑に導入されれば、消防団の活動環境の充実強化が図れ、ひいては地域の安心・安全の確保につながることになる。
3 今後の取組み 消防団は地域防災の中核的存在として、地域の安心・安全の確保のために、献身的かつ奉仕的に活動している。この素晴らしい組織である消防団を日本の未来のために、次世代へと引き継いでいくことが重要である。 今回、紹介した「消防団組織・制度の多様化」と「消防団協力事業所表示制度」について多くの市町村等が理解を示し導入を図り、地域の幅広い層の住民が参加しやすい環境と、被雇用者の消防団員が消防団活動を行いやすい環境を整備し、消防団員の確保について更なる推進を図ることが、消防団の充実強化になり、ひいては地域防災の充実につながる。 今後も消防団員の活動環境整備を図るほか、社会のニーズに応えた様々な取組みを検討・導入し、消防団のみならず、国、都道府県、市町村、事業所等の関係団体が一致団結して、消防団の充実強化に向けて全力で取り組んでいくことが重要である。
消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化1 消防救急無線の概要 消防救急無線は、消防本部(消防指令センター)と消防署、消防・救急隊を結ぶ通信網である。消防本部、消防署等に無線基地局を設置し、消防車両、救急車両に装備された無線機との間で、消防本部から消防・救急隊への指令、消防・救急隊から消防本部への報告等に使用されるほか、携帯無線機により、火災現場における隊員への指令等に利用されている。全国のすべての消防本部において運用されており、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、水火災又は地震等の災害を防除する日々の消防活動に必要不可欠なものとなっている(第6図参照)。第6図 消防救急無線の概要
2 デジタル化 消防救急無線は、これまでアナログ通信方式による音声主体の運用が行われてきたが、携帯電話、放送等様々な分野においてデジタル化が進展しており、電波の有効利用を図るとともに、データ伝送等による利用高度化が図られてきている。消防の分野においても、日進月歩の発展を遂げている情報通信技術を積極的に活用した高度化が求められていることから、消防救急無線について、デジタル化により機能強化を図り、高度な利用ニーズに応えていくことが必要となってきている。 消防救急無線のデジタル化により、秘匿性の向上による患者の傷病情報等の個人情報保護の強化、消防・救急車両の位置情報や水利情報、画像情報等の多様なデータ伝送ニーズへの対応、消防救急活動の増大に伴う無線チャンネルの増加、大規模災害時等における通信輻そうの回避等の実現が期待されている(第7図参照)。 なお、消防救急無線のデジタル化移行時期については、平成28年5月までとされている。第7図 消防救急無線のデジタル化
3 広域化・共同化 昨今、複雑多様化する災害に的確に対応するとともに、有事における国民保護の対応など、消防は広域的な相互応援活動が求められている。消防救急無線施設は、従来、各消防本部が単独で整備し、運用することが原則とされてきたが、今後は、消防の広域的活動に対応した広域的な通信基盤の確保が重要な課題となってきている。 また、平成16年度及び17年度に複数の県をモデルとして検討した結果、都道府県単位での広域共同整備が消防の広域的活動への対応とデジタル化費用の節減の両面で有効なものであることから、無線システムが一新されるデジタル化の機会を捉え、原則として都道府県域を一のブロックとした消防救急無線の広域化・共同化を推進していくこととしている(第8図参照)。第8図 消防救急無線の広域化・共同化 消防救急無線の広域化・共同化により、具体的には以下のメリットが期待される。〔1〕救急隊の広域搬送や応援出動時等、所属の消防本部の管轄区域を離れた場合においても、最寄りの消防本部の無線を用いて、所属消防本部等と円滑な通信連絡が可能となる。(第8図において、A消防本部からB消防本部に応援出動する場合)〔2〕大規模災害時等において都道府県庁等に設置される緊急消防援助隊調整本部と都道府県内各地で活動する各都道府県隊間の通信等、各消防本部の管轄区域を超えて都道府県域の通信を確保することが可能となる。(第8図において、都道府県庁等とE県応援部隊間の通信)〔3〕応援出動時に、応援部隊が受援側の消防本部の無線チャンネルを使用可能となり、応援部隊と受援部隊が統一的な指揮の下で活動することが容易となる。(第8図において、A消防本部応援部隊とB消防本部隊間の通信)〔4〕消防の広域化に対応した無線基地局配置場所の最適化や共同化のスケールメリットによる整備コストの節減が図られる。(第8図において、C消防本部及びD消防本部の広域化に対応して、無線基地局を集約する場合)
4 今後の取組み 現在、消防庁では、各都道府県において、各市町村及び消防本部と協議の上、消防救急無線の広域化・共同化に係る整備計画を平成18年度末までに策定するよう要請するとともに、大規模災害時等における全国的な広域応援の観点から、各消防本部の無線機器間においても相互に通信可能であることが確保されるよう、無線機器の仕様の共通化を図ることとしている。 このような取組みにより、全国における日々の消防活動はもとより、大規模災害時等においても必要不可欠な消防救急無線は、今後、既存の消防救急無線設備の更新時期を捉えつつ、消防の広域化と歩調をあわせて、デジタル方式による広域的通信基盤として新たに生まれ変わることが期待されている。
トピックスI 火災予防対策の充実強化1 はじめに 火災予防対策については、昭和23年の消防法制定以来、目まぐるしく変化する社会経済情勢の中、数々の大規模火災を教訓として、防火管理制度、消防用設備等の設置・維持基準、消防用機械器具の検定制度、防炎制度、消防同意・立入検査等、消防法令の整備を進めながら、国、地方公共団体、地域住民、企業等が一体となった総合的な火災予防体制の確立を進めてきたところである。 そのような中、近年における防火対象物の特徴として、大規模、高層化、建築構造や設備の多様化、管理形態の多様化等が急激に進んできたことが挙げられ、それに伴い火災の状況も複雑化、多様化している。一方、最近では「安心・安全」に対する社会の認識が高まっており、防火対象物の利用実態に即した防火安全対策を構築していくことが求められている。また、住宅火災における死者数が平成15年以降連続して1,000人を超え、平成17年には1,220人と過去最多となった。特に、今後本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、高齢者の火災による死者発生率が高いことを踏まえると、住宅防火対策を一層推進することにより、住宅火災による死者数を減少させる必要がある。 消防庁では、これらの現状を踏まえ、消防法令の改正を逐次行い、火災予防体制の充実強化に全力を挙げて取り組んでいるところある。
2 防火対象物の態様を踏まえた総合的な防火安全対策の推進(1)防火対象物の火災危険性を踏まえた消防用設備等の設置 ア 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入 消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多く、その要求内容が常識的かつ明確であり、適否の判定が行いやすい一方で、新技術を受け入れにくいという側面があった。 しかし、平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防防災分野における積極的な技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するため、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定が導入された。これにより、技術革新の成果を活用し、また、更なる技術開発を促すため、技術的な基準として必要な性能を規定し、達成する手法を自由に選択できる道が拓かれた。 性能規定の考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると判断できる設備についてその設置を認めることとしている。 消防用設備等に求められる性能は、「初期拡大抑制性能」、「避難安全支援性能」、「消防活動支援性能」に分けられるが、一定の知見が得られているものについては、逐次客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)等を策定することとしている。 一方、現行の技術基準と同等以上の性能を有する設備等をあらかじめ全て想定して客観的検証法を策定することは困難であるため、個々の防火対象物の実態に応じた総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない高度な技術等を用いた「特殊消防用設備等」を設置しようとする場合には、当該特殊消防用設備等ごとに総務大臣がその性能を審査し、通常用いられる消防用設備等と同等以上の性能を有すると認められるものについては円滑に設置できるようにすることとされたものである。 従来、大規模複雑な防火対象物において適切な火災監視、制御等を行い、火災時に的確に対応するために、「消防防災システムのインテリジェント化推進要綱」に基づく機能評価が行われ、高度な消防防災システムが設置されることが多かったが、性能規定の導入により消防防災システムの高度化の一層の促進を図るとともに、防火対象物の総合的な防火安全性の向上を図ることとなった。 イ 自力避難困難者入居施設等の安全対策の強化 平成18年1月8日に、長崎県大村市の認知症高齢者グループホームにおいて死者7人、負傷者3人を出す火災が発生したことを受け、消防庁では消防庁長官による火災原因調査を実施するとともに、認知症高齢者等自力避難困難者が入所する施設における防火管理や消防用設備等に係る防火安全対策のあり方について検討を行った。その結果、自力避難困難者が入所している施設において夜間に火災が発生した場合には、短時間で全ての入所者を避難させることは困難であることから、火災の早期発見のための「自動火災報知設備」、迅速かつ確実な通報のための「消防機関へ通報する火災報知設備」に加えて、火災の消火又は抑制を行うことにより在館者の避難時の安全性を確保するための「住宅用スプリンクラー設備」の設置が必要とされた。
(2)防火安全対策の推進 平成13年9月1日未明に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災は、延面積500m2程度の小規模なビルで発生したにもかかわらず、一夜のうちに44人もの尊い命を奪う大惨事となった。この火災が、このような大惨事となったのは、適切な防火管理が行われていなかったこと等により火災に対して有効な初期対応ができなかったこと等が原因であったことが判明している。 こうした教訓を踏まえ従来からの火災予防対策について、「防火管理の徹底」及び「避難・安全基準の強化」、「違反是正の徹底」等を中心に大幅な見直しを行った。 ア 小規模雑居ビルの違反是正状況 平成13年10月末の全国一斉立入検査実施の当初、小規模雑居ビルの9割以上において何らかの消防法令違反があったが、消防機関による違反是正の推進により、大きく減少しており、一定の成果が見られる。しかし、防火対象物定期点検報告制度の施行及び自動火災報知設備の設置基準拡大などの法令改正に伴う新たな違反要因を含めた違反率は、減少傾向にはあるがいまだ高いことから、引き続き小規模雑居ビルをはじめとした防火対象物の違反是正を推進する必要がある。 イ 防火対象物全体の状況 防火管理者の選任率及び消防計画作成率については、ともに7割程度、共同防火管理協議事項の届出率についても、6割程度を推移している状況である。また、歌舞伎町ビル火災を踏まえ新たに創設された防火対象物定期点検報告の実施率についても、向上してはいるものの全体の約半数は未実施であり、全体として防火管理の徹底は十分には進んでいない状況といえる。 また、立入検査の実施率について、消防機関の規模別に分析すると、職員300人未満を境にして減少している。命令件数についても、その多くが職員1,000人以上の消防機関によるものであり、立入検査及び違反処理の実施状況に関し消防機関の規模による格差が見受けられる(第1図、第2図参照)。 違反処理についても、全体として十分徹底されたとは言い難い状況にあり、今後も引き続き違反是正の徹底に努める必要がある。第1図 消防機関規模別の立入検査実施状況(平成18年3月31日現在)第2図 消防機関規模別の検査実施数と命令件数(平成18年3月31日現在)
(3)予防体制の強化 ア 消防機関の体制強化 平成15年にこれまでの「消防力の基準」を見直し、新たに「消防力の整備指針」が平成17年6月に示された。予防業務に関しては、人員の算定指標を従来の人口から予防事務量と密接な相関関係がある防火対象物数へ改め、高度化・専門化する予防業務に対応するための予防要員の資格制度(予防技術資格者)を創設し、予防業務担当係には、この資格者を1人以上配置するものなどと改められた。 また、平成18年6月には消防組織法の改正が行われ、消防体制の整備・確立の観点から、市町村の消防の広域化が法的に推進されることとなった。予防業務についても、先述のとおり立入検査や違反処理の実施状況において消防機関の規模による格差があり、広域化の目安とされている人口30万人(おおむね消防職員数300人に相当)を境として顕著にその傾向が表れている。 イ 違反是正に係る技術支援〔1〕 マニュアル・データベースの整備 消防庁においては、「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を示しており、また、消防法令違反に対する命令の発動に当たっての判断を迅速・的確に行えるよう支援することなどを目的として、全国の消防機関における違反是正事例や消防法令に関する判例等を集約した違反処理データベースを平成16年3月に構築し、各消防本部へ情報提供している。〔2〕 違反是正推進連絡会 全国消防長会において、消防本部相互間の情報交換や共同検討の場として、平成16年度に違反是正推進連絡会がすべての都道府県単位及び支部単位で設置され、消防庁においては、その活動に対し技術的助言等を行っている。〔3〕 違反是正支援センター 平成14年4月1日から財団法人日本消防設備安全センター内に設置された違反是正支援センターにおいて業務が開始され、違反処理に係る教育研修の企画、関連情報の提供、技術的助言を行うなど全国の違反処理担当職員における知識・技能の向上を支援する体制が整備されている。 ウ 関係行政機関との連携の推進 違反是正の推進に当たっては、関係行政機関における防火安全対策等との連携を図ることが効果的であるため、「安心・安全なまちづくり全国展開プラン」(平成17年6月犯罪対策閣僚会議決定)、「認知症高齢者グループホーム等に係る防火安全対策の指導について」(平成18年1月10日付け消防予第8号)、「防火対象物の防火安全対策における建築行政機関との連携の推進について」(平成18年3月28日付け消防予第122号)等に基づき、建築行政機関、警察機関、保健福祉部局等との連携強化を図っている。 エ 今後の方向性 このような取組みの実施状況や効果の確認、共通認識形成を踏まえ、戦略的・継続的に施策を展開することにより、全体としての防火安全対策を効果的に推進することが可能になると考えられる。今後は違反是正や火災原因調査など高度かつ専門的な予防業務について、消防の広域化による高度化とあわせ、予防要員の専門的能力の向上を支援することにより、実施体制を強化することが重要となり、昨年度に創設された予防技術検定を積極的に活用するほか、違反是正支援センターが全国消防長会の協力を得て実施する違反是正研修会等により、違反是正担当職員の資質の向上を図り、その育成に努める必要がある。また、違反是正推進連絡会を積極的に活用し、消防機関相互の地域的な相互協力体制強化に努める必要がある。 また、防火対象物の安全確保のためには、消防機関による違反是正の徹底とともに、防火対象物の関係者が自ら防火管理を徹底することが必要不可欠である。違反是正支援センター及び全国消防長会の協力を得ながら、消防機関の違反是正体制の整備やノウハウの蓄積等に資する取組みを進めてきたところであるが、「計画」「実行」「評価」「改善」のPDCAサイクルによる実施体制を構築し、違反是正における地域格差の解消を目指すとともに、防火対象物定期点検報告制度を推進し、効果的に防火管理と違反是正を徹底していく必要がある。
3 住宅防火対策の推進(1)住宅火災による死者数の急増 平成18年1月5日に兵庫県姫路市で児童5人が、また、平成18年8月15日には千葉県船橋市で5人が亡くなるなど、住宅火災による死者がここ数年増加している。住宅火災による死者数は、平成15年に昭和61年以降17年ぶりに1,000人を超え、その後3年間連続して1,000人を超え、平成17年には1,220人と記録のある昭和54年以来、最悪の記録となった(第3図参照)。第3図 住宅火災による死者数の推移(放火自殺者等除く) 住宅火災による死者のうち約6割が65歳以上の高齢者であり、今後高齢化の一層の進展に伴い、住宅火災による死者数の増加が懸念されている。 また、死者の約63%が逃げ遅れによるものとなっている。
(2)住宅用火災警報器の設置の義務化 このような状況に対応するため、平成16年の消防法改正により住宅用火災警報器の設置の義務付けを行い、新築住宅については平成18年6月1日から設置の義務化がスタートし、既存住宅については、平成23年までに市町村条例で定める日から適用されることとなった。住宅用火災警報器は、逃げ遅れ防止等の観点から、一般的に一般住宅の寝室及び階段の2階部分に設置することが義務付けられている。 しかしながら、住宅火災による死者数を低減するためには義務付けの適用時期を待つまでもなく、既存住宅に住宅用火災警報器の早期設置が重要である。
(3)防炎品の普及促進 出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制するために着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものとすることは、火災の発生と死者の低減に有効である。劇場、百貨店、旅館・ホテルなどで使用が義務付けられている防炎物品とあわせ、家庭におけるカーテン、じゅうたん、寝具類、自動車・オートバイカバー等の防炎製品の更なる普及を図ることとしている。
(4)住宅防火推進のための様々な施策の展開 住宅防火対策については、平成13年に「住宅防火基本方針」を策定し、消防庁の最重要課題として位置付け、住宅防火の徹底を図っているところである。 住宅火災による死者数の急増とこれからの高齢化の進展に対応した住宅防火は、まず第一に火災の発生要因を排除し、火災を未然に防ぐことが大切であるが、併せて、火災が発生した場合には早期に発見し、初期消火とともに早期の避難を行うことが大切である。消防庁では、今後も次のように報道機関や消防団、婦人防火クラブ等と連携した広報・普及活動を積極的に推進していくこととしている。〔1〕 報道機関との連携 取材対応、住宅火災で死者が発生した場合の情報提供、住宅用火災警報器の奏効事例の情報提供及び不適正な訪問販売等に対する注意喚起〔2〕 広報誌等と連携した積極的広報 秋・春の火災予防運動における普及・啓発活動、不適正販売防止のための注意喚起、テキストやパンフレットを活用した火災予防知識の普及〔3〕 消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等との連携による活動 防火訪問等による住宅用火災警報器の設置促進指導、住宅用火災警報器の共同購入等の普及促進指導、指導者用テキストを活用した地域における普及啓発活動
トピックスII 救命率の向上に向けた取組み1 救急業務の高度化 消防機関の行う救急業務は、昭和38年に法制化されて以来、我が国の社会経済活動の進展に従って、その体制が整備されてきた(第1表参照)。第1表 救急業務の高度化の歴史 しかしながら、事故以外の事由による急病人が法的に救急業務の対象として明確に位置付けられておらず、また、救急隊員が搬送中の傷病者に対して事実上行っていた応急処置についても、その法的根拠が明確にされていなかったため、昭和61年の消防法改正により、事故以外の急病人の搬送及び応急の手当てを行うことも救急業務に含まれることが法律上明確にされた。 その後も救急出場件数は一貫して増加し続け、救急業務は住民の安全を確保する上で必要不可欠な行政サービスとして定着した。 一方、我が国の傷病者の搬送システムは高い水準に至ったものの、プレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)については、救急隊員の行う応急処置の内容が比較的簡単なものに限られており、また、傷病者の救命率が欧米諸国と比べて十分でないことが指摘されてきた。このような状況を改善し、救急に対する国民のニーズの高まりに的確に対応するため、プレホスピタル・ケアを充実し、傷病者の救命率の向上を図るための具体的方策について議論が行われた。その結果、平成3年には救急隊員の行う応急処置等の範囲の拡大及び救急救命士制度の創設がなされた。これにより、救急救命士の資格を取得した救急隊員は、医師の具体的な指示のもと、心肺機能停止状態に陥った傷病者に対して「除細動(電気ショック)」等の高度な応急処置を行うことが可能となったのである。 救急救命士制度創設後も、更なる救命率の向上を目指したプレホスピタル・ケアの充実の取組みは続き、救急救命士の処置範囲の拡大とあわせてメディカルコントロール体制の充実の議論が行われることとなった(第1図参照)。第1図 メディカルコントロール体制 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁と厚生労働省が共同で開催した「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」の報告書(平成14年12月、平成15年12月)を踏まえ、心肺機能停止状態の傷病者に対して、〔1〕平成15年4月から医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動、〔2〕平成16年7月から医師の具体的指示による気管挿管、〔3〕平成18年4月から医師の具体的指示による薬剤(アドレナリン)投与が実施されることとなった。今後は、これらの高度な処置を実施することのできる救急救命士の養成を進めることが救命率の向上に向けた課題である。 また、これらの処置範囲の拡大の前提となるメディカルコントロールとは、プレホスピタル・ケアで行われる行為について、医学的見知からその質を保証するシステムであり、医師から救急隊員に対する常時かつ迅速・適切な指示・助言、救急活動の事後検証及び救急救命士の再教育などで構成される。高度な処置にはより専門的な医学的知見が必要であるため、メディカルコントロール体制を整備し、充実することが求められている。 このように、救急救命士制度の導入、救急救命士を含む救急隊員の処置範囲の拡大、さらにはメディカルコントロール体制の整備といった取組みの結果、救命率は向上しており、救急業務の高度化の効果が見られる(第2図参照)。第2図 救急救命士制度の導入による心肺停止傷病者の救命率の推移
2 新ガイドラインの導入による心肺蘇生法の改良 これまで多くの国で実施されてきた心肺停止傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)は、平成12年に改訂された「AHA(アメリカ心臓協会)心肺蘇生と救急心血管治療のための国際ガイドライン2000」に基づくものであったが、このガイドラインは、「医学的な根拠」や「その有用性と効果」などの細かな検証により、より良い方法へと逐次改正されており、平成17年11月にILCOR(国際蘇生連絡協議会)の勧告に基づいて2005年版の新しいガイドラインが示された。 我が国においても、ILCORの勧告を受け、平成18年6月、財団法人日本救急医療財団から、新しい日本版救急蘇生ガイドラインが示された。新しいガイドラインでは、効果的な救急蘇生を行うには、できるだけ早期から十分な強さと十分な回数かつ絶え間ない胸骨圧迫が必要であることが強調され、胸骨圧迫の効果を上げるために、心肺蘇生法開始の判断と手順、人工呼吸の吹き込み時間、胸骨圧迫と人工呼吸の比率、自動体外式除細動器による除細動の実施回数、除細動実施後の対応等が変更された(第2表参照)。なお、この新しいガイドラインは、従来の方法を否定するものではなく、より良い方法を推奨しているものである。第2表 心肺蘇生法の主な変更点 消防庁では、新しい日本版救急蘇生ガイドラインを受けて平成18年8月に発表された「救急業務高度化推進検討会報告書」を踏まえ、「救急隊員の行う心肺蘇生法の実施要領」及び「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」を改正し、各消防本部において新しい日本版救急蘇生ガイドラインに沿った救急活動や応急手当の普及啓発活動が行われるよう指導したところである。
3 一般市民による応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成17年中の平均では約6.5分であり、この間に救急現場に居合わせた一般市民(バイスタンダー)による応急手当が適切に実施されれば、救命率の向上に大きく寄与する(第3図参照)。一般市民が善意で実施した応急手当については、悪意や重大な落ち度がなければ、その結果の責任を法的に問われることはないと考えられているため、積極的な応急手当の実施が望まれるところである。第3図 心肺停止傷病者に対する応急手当の実施有無別救命率 消防庁では、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月制定)により、心肺蘇生法(CPR)等の実技指導を中心とした応急手当の普及啓発活動を行っており、バイスタンダーによる心肺停止傷病者への応急手当実施率は年々増加している(第4図参照)。また、平成16年7月から一般市民を含めた非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用が可能となったことから、AEDによる除細動の内容を組み入れた救命講習の実施も促進しているところである。第4図 心肺停止傷病者への応急手当実施率(現場において一般市民により実施されたもの)
4 ウツタイン様式の導入 平成15年からの救急救命士の処置範囲の拡大や、応急手当の普及啓発の進展に対応し、救急救命処置等の効果の検証・評価を行うことの重要性が再認識された。そこで、心肺停止症例を原因別に分類するとともに、目撃の有無、バイスタンダーによる心肺蘇生の実施の有無等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後を記録することによって、より正確な救急救命処置の効果の検証や地域間・国際間の比較を行うことのできる、国際的に共通な様式である「ウツタイン様式」を平成17年1月より全国の消防本部で一斉に導入を開始した。 このウツタイン様式の導入により、例えば救急救命士による処置やバイスタンダーによる心肺蘇生法の実施が、傷病者の予後にどのような影響を与えたかということについての詳細な分析や地域間の比較が客観的データに基づいて行うことが可能となり、今後更なる救命率の向上が期待されている。 消防庁では、今後、システムの改良を進めて入力されるデータの精度の向上を図るとともに、それらの分析結果に基づき、救命率の向上に寄与する政策を進めていくこととしている。
5 救急需要急増の現状と需要対策 救命率の向上を目指すためには、これまで述べてきたような救急業務の質の向上に加えて、近年急増する救急需要への適切な対処が不可欠となる。 救急出場件数は年々増加し、平成17年中は約528万件に達し、10年間で約61%増加している。とりわけ高齢者の急病事案の増加が著しく、また、軽症者の搬送が全体の約半数を占めており、さらには頻回利用やタクシー代わり等の不適切利用も指摘されている。一方、各消防本部の厳しい財政事情等により、救急隊の数は10年間で約8.3%の増加にとどまっており、これらの結果、救急隊の現場到着時間は遅延傾向にある。今後も、高齢化や独居化の進展等により、更なる救急出場件数の増加が予想されることから、地域によっては、真に緊急を要する傷病者への対応が遅れ、救命率に影響が出かねない状況にある(第5図、第6図、第7図参照)。第5図 救急出場件数と救急隊数の推移第6図 救急隊1隊当たり年間平均出場件数の推移第7図 救急自動車の現場到着所要時間 そこで、消防庁では平成17年度に「救急需要対策に関する検討会」及び「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」を開催し、救急需要対策に関する総合的な検討を行った。その中で取り組むべき対策として挙げられた主なものは以下のとおりである。
(1)軽症利用者等への代替措置の提供(民間の患者等搬送事業者等の活用) 症状は軽微だが「交通手段がない」、「どの病院に行けばよいか不明」といった要請に対しては、民間の患者等搬送事業者など代替的な移送サービスや病院情報の提供を行うことが効果的であり、これらのサービスの利用を促進することとした。 患者等搬送事業については、事業者が業務の質を担保しつつ、より円滑に事業を行えるよう、「患者等搬送事業指導基準」及び「患者等搬送事業認定基準」の一部を改正し、ベッド等を備えた専用車に加え、車椅子のみを固定できる自動車についても患者等搬送用自動車(車椅子専用)として認定することとした。
(2)転院搬送業務への病院救急車の活用 病院間の転院搬送は、消防機関が行う全救急搬送の1割近くを占める一方、経費負担等の理由から相当数の病院救急車が十分に活用されていないのが実態である。このような課題に対応し、病院救急車の運用経費を軽減することで病院間の転院搬送に活用させるため、複数病院による共同活用や民間事業者の活用等の方策について検討を行い、複数病院による病院救急車運用の民間委託についてのモデルを示した。現在、このモデルの実用化に向けた検討を進めているところである。
(3)119番受信時等における緊急度・重症度の選別(トリアージ) 緊急度・重症度の高い傷病者に対してより迅速な対応を行うため、119番受信時及び救急現場における緊急度・重症度の選別(トリアージ)の導入を検討し、内因性の疾患を中心として、緊急度・重症度を判断する運用要領の作成に着手した。平成18年度には「救急業務におけるトリアージに関する検討会」を開催し、選別基準や運用要領の更なる検討や実際に運用を行うとした場合の問題点等の諸課題についての検討を進めているところである。
(4)その他 その他の対策として、悪質な頻回利用者への個別指導と毅然たる対応、救急車の適正利用等に関する一般市民への普及啓発活動、ポンプ隊との連携、ピーク・オフピークに応じた救急隊の編成の推進などを提案した。 今後、消防庁としても、これらの検討会の結果をもとに、各地域において適切な救急需要対策の実施が図られるように推進していきたいと考えている。
トピックスIII 防災拠点となる公共施設等の耐震化促進1 公共施設等の耐震化 平成7年の阪神・淡路大震災では、全半壊した建築物は約25万棟にも及び、震災による死者の約8割が建築物の倒壊によるものであった。また、平成16年の新潟県中越地震では、一部市町村の庁舎が被災により使用不可能となる事態が発生した。 国や地方公共団体が所有する公用・公共用施設の多くは、不特定多数の利用者が見込まれるほか、地震災害の発生時には災害対策本部や避難所となるなど防災拠点としての機能を発揮することが求められる施設である。 こうした施設が地震により被害を受けた場合、多くの犠牲者を生じさせるばかりでなく、災害応急対策等の実施に支障をきたし、その結果として防ぐことができたであろう災害の発生や被害の拡大を招くおそれがある。 災害応急対策を円滑に実施するためにも、防災拠点となる庁舎、消防署、避難所となる文教施設などの公共施設等の耐震化が急務である。
2 公共施設等の耐震化のための環境整備 平成17年9月に中央防災会議において決定された「建築物の耐震化緊急対策方針」により、公共建築物の耐震化について、耐震診断実施結果をもとにした耐震性に係るリストを作成し、住民への周知を図る等の取組みを促進するとともに、耐震化に係る具体的な数値目標の設定に努め、緊急性の高い施設を絞り込み、重点化を図りながら耐震性を確保する等の措置を図ることとされた。 これを受け、平成18年1月に改正された「耐震改修の促進に関する法律」では、都道府県は耐震診断及び耐震改修の実施に関する目標や施策に関する事項等を内容とする都道府県耐震改修促進計画を策定することとされ、市町村においても都道府県耐震改修促進計画等を踏まえて市町村耐震改修促進計画の策定に努めることとされた。 また、平成18年4月には「地震防災対策特別措置法」が改正され、公立小中学校等の非木造校舎に加え、非木造屋内運動場の補強に関する国の負担割合のかさ上げ措置が新たに規定された。 さらに、平成18年4月に中央防災会議において決定された「首都直下地震の地震防災戦略」では、向こう10年間に首都直下地震で被害が想定される地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)において、防災拠点となる庁舎、消防署などすべての公共施設等の耐震化を図ることを目指すこととされた。 こうした環境が整えられたことにより、今後は、国、地方公共団体のより一層の連携のもとに公共施設等の耐震化を強力に推進していくこととなる。 なお、消防庁においても、防災拠点となる公共施設等の耐震化の促進を図るため、平成17年6月29日付け消防災第138号「公共施設等の耐震化の推進について」により、各都道府県に対し、市町村施設も含む都道府県内の防災拠点施設の耐震化緊急実施計画(耐震診断を実施した公共施設等の5年後までの耐震改修見込み)の策定を要請した。平成17年度末現在、39都道府県で耐震化緊急実施計画が策定され、平成21年度末には約6割の公共施設等で耐震性が確保される見込みとなっている。
3 防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況 消防庁では、地方公共団体(都道府県及び市町村)が所有又は管理する公共施設等の耐震化を促進するため、平成13年度に「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討委員会」を設置し、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討報告書」を取りまとめた。その中で、全国の防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況を把握するため、耐震診断の基準及び耐震診断・改修実施状況について調査を実施し、以後、平成15年度及び平成17年度に、防災拠点となる公共施設等の耐震化がどのように進んだか、その進捗状況を確認するための調査を実施した。 ア 調査対象棟数 平成17年4月1日現在で地方公共団体が所有又は管理している公共施設等のうち防災拠点となる公共施設等は19万1,427棟で、このうち11万834棟(57.9%)が旧耐震基準で建築されたものである。平成15年4月1日現在の18万6,287棟及び11万1,632棟(59.9%)、平成13年4月1日現在の18万7,446棟及び11万4,399棟(61.0%)と比べ、防災拠点となる公共施設等の棟数は増加し、旧耐震基準で建築された棟数は減少している(第1図参照)。第1図 調査対象棟数(建築年次別) イ 耐震診断の実施状況 旧耐震基準で建築された建築物のうち、耐震診断を実施した棟数は5万1,051棟(46.1%)である。平成15年4月1日現在の3万6,755棟(32.9%)、平成13年4月1日現在の3万4,687棟(30.3%)と比べ、棟数、率ともに増加している(第2図参照)。第2図 耐震診断実施率 ウ 耐震診断に基づく措置状況 耐震診断を実施した建築物のうち、「耐震性がある」と診断された棟数及び平成17年度末までに耐震改修が完了する棟数は2万7,466棟(53.8%)となっている。平成15年4月1日現在の2万995棟(57.1%)と比べ、棟数は増加し、率は減少している。また、平成13年4月1日現在の1万8,596棟(53.6%)と比べ、棟数は増加し、率はほぼ増減なしとなっている(第3図参照)。第3図 耐震診断に基づく措置状況 エ 耐震化の進捗状況・昭和56年6月1日以降の建築確認を得て建築された建築物・昭和56年5月31日以前の建築確認を得て建築された建築物のうち、耐震診断の結果「耐震性を有する」と診断された建築物・耐震改修整備を実施した建築物 上記の建築物については耐震性が確保されているものとした場合、平成17年度末までには10万8,059棟(56.4%)の耐震性が確保され、平成15年度末の9万5,650棟(51.3%)、平成13年度末の9万1,643棟(48.9%)と比べ、棟数、率ともに増加している(第4図参照)。 また、平成21年度末までには11万4,542棟(59.8%)の耐震性が確保される見込みとなっている(第5図参照)。第4図 耐震率第5図 耐震率見込み(調査年度の4年後の見込み) オ 総括 耐震診断の実施が大幅に増加し、耐震性の把握は進んでいるものの、耐震診断結果に基づく耐震措置の実施が追いついていないという現状が推測される。しかしながら、全体で見ると、耐震化は見込みを上回るペースで進んでおり、地方公共団体の耐震化に係る取組みが着実に進捗していることがうかがえる。 また、市町村にあっては、都道府県と比べ耐震診断実施率、耐震率ともに低く、市町村の耐震化に係る取組みの推進が必要である(第6図〔1〕、〔2〕参照)。第6図〔1〕 耐震診断実施率第6図〔2〕 耐震率
4 今後に向けて 防災拠点となる公共施設等の耐震化は着実に進捗しているものの、十分とは言えず、耐震性に係るリストの作成・公表や具体的な数値目標の設定など、耐震化に係る取組みをより一層推進することが望まれる。 消防庁においても、地方債・地方交付税による財政支援や「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」の作成・公表等の措置を講じているところであるが、今後とも、地方公共団体の早急かつ計画的な耐震化の推進を求めるとともに地方公共団体の取組みを支援していくこととしている。
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、平成8年以降6万件を超えていた出火件数は、平成10年及び11年には5万件台で推移したが、平成12年以降は再び6万件を超え、平成15年に5万件台に減少したものの、平成16年は再び6万件台に増加し、平成17年には5万件台に減少と増減を繰り返している。 火災による死者数は、阪神・淡路大震災が発生した平成7年に戦後最大の2,356人となり、翌平成8年にはいったん2,000人未満に減少したものの、平成9年以降は再び2,000人を超えて推移しており、平成17年は前年に比べ191人増加した(第1−1−1図、第1−1−2図、第1−1−3図)。第1-1-1図 火災の傾向第1-1-2図 火災による死者の状況第1-1-3図 火災の推移 平成17年中における火災の状況をみると、出火件数、建物焼損床面積及び損害額は減少しているものの、死者数及び焼損棟数は増加している(第1−1−1表)。第1-1-1表 火災の状況 なお、放火自殺者を除く死者数は増加し、高齢者及び乳幼児の比率についても前年に比べ増加している(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。第1-1-8図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者を除く。)第1-1-9図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者を除く。)
1 出火状況(1)出火件数は増加、1日当たり157件発生 平成17年中の出火件数は5万7,460件であり、前年に比べ2,927件(4.8%)減少している。また、1日当たりの出火件数は157件となっている(第1−1−1表、第1−1−2表)。第1-1-1表 火災の状況第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況
(2)建物火災は全火災の57.5% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の57.5%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(道路、空地、土手及び河川敷の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和60年以降変化していない(第1−1−3表)。第1-1-3表 火災種別出火件数の構成比率 最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災、林野火災及びその他の火災については、平成9年及び10年と2年連続して減少し、平成11年以降は再び増加傾向であったが、平成17年には減少している(第1−1−4表)。第1-1-4表 火災種別出火件数の推移
(3)冬季・春季に火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成17年中も、総出火件数の57.5%を占めている(第1−1−5表)。第1-1-5表 四季別出火状況
(4)出火率は4.5件/万人 平成17年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で4.5件/万人となり前年より0.3ポイント減少し、10年前の平成8年と比べると0.6ポイント減少している(第1−1−1表、第1−1−6表)。第1-1-1表 火災の状況第1-1-6表 出火率、出火件数、人口及び世帯数の変化 出火率を都道府県別にみると、最高は鹿児島県の6.5、次いで茨城県の6.1、山梨県の6.0の順であり、出火率が最も低いのは、富山県の2.5で、富山県については平成3年以降15年連続して最低となっている(第1−1−7表)。第1-1-7表 都道府県別出火率
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器 平成17年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が71.3%と圧倒的に多い(第1−1−4図)。第1-1-4図 覚知方法別出火件数 また、初期消火の状況をみると、消火器を使用したものが22.1%と初期消火が行われたものの中で最も高い比率になっている。一方で、初期消火を行わなかったものは37.1%となっており、この値を10年前(平成8年)と比較すると2.8ポイント増加している(第1−1−8表)。第1-1-8表 初期消火器具等の使用状況
(6)放火を除くと、住宅火災は建物火災の57.7% 平成17年中において、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数は1万7,014件であり、建物火災の件数(2万9,502件)の57.7%と半数以上を占めている(第1−1−9表)。第1-1-9表 建物火災に占める住宅火災の割合(放火を除く。)
2 火災による死者の状況 平成17年中の火災による死者数は2,195人であり、前年の2,004人に比べ191人(9.5%)増加しており、放火自殺者を除いた火災による死者数も1,559人で、前年の1,380人に比べ179人(13.0%)増加している。 また、放火自殺者数は636人であり、前年の624人に比べ12人(1.9%)増加している(第1−1−5図)。第1-1-5図 火災による死傷者数の推移
(1)1日当たりの火災による死者数は6人 平成17年中の火災による1日当たりの死者数は6.0人であり、前年の5.5人に比べ0.5人増加している(第1−1−2表)。第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.73人 平成17年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.73人であり、前年の1.58人に比べ0.15人増加している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年と同様に東京都が141人で最も多く、次いで埼玉県が110人、千葉県が109人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、福井県で10人、次いで島根県が11人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは高知県で3.36人、最も低いのは神奈川県で1.05人となっている(第1−1−10表)。第1-1-10表 都道府県別の火災による死者の状況
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成17年中においても、1月から3月及び12月の月ごとの死者数は250人以上(年間の月平均は182.9人)に上っており、この4か月間に死者総数の51.5%に当たる1,130人の死者が発生している(第1−1−6図)。第1-1-6図 月別の火災による死傷者発生状況 平成17年中の時間帯別の火災による死者発生状況は、3時台が135人と最も多く、次いで1時台が128人となっている。就寝時間帯の死者発生状況は、22時台から5時台にかけて平均で107.5人となっており、全時間帯の平均87.6人超に比べ、就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1−1−7図)。第1-1-7図 時間帯別の火災による死者の発生状況
(4)死因は一酸化炭素中毒・窒息が43.2%、火傷が43.0% 平成17年中の放火自殺者を除いた火災による死因は、一酸化炭素中毒・窒息によるものが674人(43.2%)と最も多く、次いで火傷によるものが671人(43.0%)となっている(第1−1−11表)。第1-1-11表 火災による死因別死者発生状況の推移
(5)建物火災による死者は死者総数の73.4% 平成17年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,611人と前年に比べ197人増加しており、死者総数に対する比率は73.4%と前年(70.6%)に比べ2.8ポイント増加している(第1−1−12表)。第1-1-12表 火災種別死傷者数
(6)逃げ遅れによる死者が57.0% 死亡に至った経過をみると、平成17年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,559人のうち、逃げ遅れが889人で57.0%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が352人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の22.6%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が839人(53.8%)を占めており、特に81歳以上が348人(22.3%)と極めて多くなっている。また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が207人(13.3%)、「熟睡によるもの」が195人(12.5%)となっている(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。第1-1-8図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者を除く。)第1-1-9図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者を除く。)
(7)建物火災のうち、全焼による死者は951人 平成17年中の建物火災による死者1,611人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が951人(死者の出た火災1件当たり1.15人)で59.0%を占めている。また、部分焼の場合が332人(同1.06人)で20.6%、半焼の場合が219人(同1.11人)で13.6%、ぼやの場合が109人(同0.96人)で6.8%となっている(第1−1−10図、附属資料13)。第1-1-10図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況
(8)建物火災による死者の88.9%が住宅で発生 平成17年中の建物火災による死者1,611人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,432人は、建物火災による死者の88.9%を占めている。また、階層別では、1階における死者が1,077人で建物火災による死者の66.9%、2階における死者が388人で建物火災による死者の24.0%等となっている(第1−1−11図、第1−1−12図、附属資料15)。第1-1-11図 建物区分別の死者発生状況第1-1-12図 階層別の死者発生状況 さらに、建物構造別では、木造建物における死者が1,046人と最も多く、建物火災による死者の64.9%を占めている(第1−1−13図)。第1-1-13図 建物構造別の死者発生状況 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,197人であり、建物火災による死者の74.3%を占めている(第1−1−14図、附属資料14)。第1-1-14図 死因別の死者発生状況
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成17年中の住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災による死者1,432人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)212人を除く失火等による死者は1,220人となっており、前年(1,038人)に比べ182人(17.5%)増加した。 また、このうち65歳以上の高齢者は691人(全体の56.6%)と半数を超えている(第1−1−15図、第1−1−13表、附属資料15)。第1-1-15図 住宅火災の件数及び死者の推移(放火自殺者等を除く。)第1-1-13表 建物火災による死者のうち住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)ア 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成17年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、最も低い16歳から20歳の階層に比べ43.9倍となっている。 また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、16歳から20歳の階層と比べると5.9倍となっている(第1−1−16図)。第1-1-16図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)イ たばこを発火源とした火災による死者が19.1% 平成17年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが233人(全体の19.1%)で最も多く、次いでストーブ150人(同12.3%)、こんろ82人(同6.7%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者1,220人の38.1%を占めている。 また、65歳以上の高齢者についても同様にたばこ、ストーブ及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数691人の41.0%を占めている(第1−1−17図)。第1-1-17図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成17年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が286人で、死者数1,220人の23.4%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が179人と多く、65歳以上の高齢者の死者数691人の25.9%を占めている(第1−1−18図)。第1-1-18図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)エ 死者の45.3%が就寝時間帯 平成17年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が553人であり、住宅火災の死者1,220人の45.3%を占めている(第1−1−19図)。第1-1-19図 住宅火災における時間帯別死者数(放火自殺者等を除く。)オ 木造住宅における死者が69.7% 平成17年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物における死者が850人であり、住宅火災の死者1,220人の69.7%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者691人の74.7%(516人)を占めている(第1−1−20図)。第1-1-20図 住宅火災の建物構造別死者数(放火自殺者等を除く。)カ 逃げ遅れによる死者が63.1%と圧倒的に多い 平成17年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが770人(全体の63.1%)と最も多く、次いで着衣着火が76人(同6.2%)、出火後再進入が28人(同2.3%)の順となっている(第1−1−21図)。第1-1-21図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は19件・63人 平成17年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は19件で前年(20件)より1件減少している。また、これによる死者は63人で前年(71人)より8人減少している。 火災種別では、建物火災18件で死者60人、車両火災1件で死者3人となっている(第1−1−14表)。第1-1-14表 1件で3人以上の死者を出した火災の火災種別発生状況 建物用途別では、専用住宅での死者が51人であり、1件で3人以上の死者を出した建物火災全体の85.0%を占めている(第1−1−15表)。第1-1-15表 1件で3人以上の死者を出した建物火災の建物用途別死者発生状況
(11)放火自殺者は減少、死者総数の29.0% 平成17年中の放火自殺者は636人であり、死者総数2,195人に占める比率は29.0%(前年31.1%)となっており、前年(624人)より12人増加している(第1−1−5図)。第1-1-5図 火災による死傷者数の推移 放火自殺者(男女合計)を年齢別にみると、56歳から60歳が98人、51歳から55歳が87人、61歳から64歳が67人であり、これらの年齢で放火自殺者全体の39.6%を占めている(第1−1−22図)。第1-1-22図 放火自殺者の年齢別・性別発生状況(年齢・性別不明者16人(4人)を除く。)
3 火災による損害額 平成17年中の火災による損害額は1,301億円であり、前年(1,353億円)に比べ52億円減少している。また、火災1件当たりでは226万円となっており、前年に比べ2万円増加している(第1−1−23図)。第1-1-23図 火災による損害額の推移 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の94.1%を占めている(第1−1−1表)。第1-1-1表 火災の状況
4 出火原因 平成17年中の総出火件数5万7,460件のうち、失火による火災が3万7,519件(全体の65.3%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1−1−24図)。第1-1-24図 出火原因別出火件数
(1)「放火」による火災が9年連続して第1位 平成17年中の放火による出火件数は7,225件であり、前年に比べ985件(12.0%)減少し、全火災(5万7,460件)の12.6%を占め、9年連続して出火原因の第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは5,039件であり、前年に比べ757件(13.1%)減少している。放火及び放火の疑いを合わせると1万2,264件(全火災の21.3%)であり、前年に比べ1,742件(12.4%)減少している(第1−1−16表、第1−1−25図、附属資料6)。第1-1-16表 放火及び放火の疑いによる火災の損害状況第1-1-25図 主な出火原因別の出火件数と損害額 放火による損害額は92億511万円であり、前年に比べ5億2,423万円(6.0%)増加している。放火の疑いによる損害額は72億9,689万円であり、前年より14億5,514万円(16.6%)減少している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は165億200万円であり、前年に比べ9億3,091万円(5.3%)減少している(第1−1−16表)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが4,175件(全体の34.0%)と最も多くなっている(第1−1−16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、夜間から明け方(22時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に5,329件(全体の43.5%)が発生している(第1−1−26図)。第1-1-26図 放火及び放火の疑いによる火災の出火時刻別件数
(2)「たばこ」による火災は減少 平成17年中のたばこによる火災は5,914件であり、前年に比べ214件(3.5%)減少し、全火災(5万7,460件)の10.3%を占めている(第1−1−17表、第1−1−25図)。第1-1-17表 たばこによる火災の損害状況第1-1-25図 主な出火原因別の出火件数と損害額 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが55.4%(3,279件)と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、104億5,150万円であり、前年に比べ5億8,147万円(5.9%)増加している(第1−1−17表)。
(3)「こんろ」による火災は増加 平成17年中のこんろによる火災は6,026件であり、前年に比べ90件(1.5%)増加している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,713件(全体の94.8%)であり、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、68.5%に当たる4,130件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、74億9,202万円であり、前年に比べ14億8,325万円(16.5%)減少している(第1−1−18表)。第1-1-18表 こんろによる火災の損害状況
(4)「たき火」及び「火遊び」による火災は減少 平成17年中のたき火による火災は3,380件であり、前年に比べ186件(5.2%)減少している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、たき火の延焼拡大が最も多く1,319件、次いで火の粉の飛び火、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は、14億8,123万円で、前年に比べ1,994万円(1.4%)増加している(第1−1−19表)。第1-1-19表 たき火及び火遊びによる火災の損害状況 また、火遊びによる火災は1,918件であり、前年に比べ144件(7.0%)減少している。 火遊びによる火災の損害額は、18億7,568万円であり、前年より1億7,568万円(10.3%)増加している。 火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,029件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1−1−19表)。
(5)「ストーブ」による火災は増加 平成17年中のストーブによる火災は2,025件であり、前年に比べ330件(19.5%)増加している。ストーブの種類別では、石油ストーブによる火災が最も多く1,114件(全体の55.0%)であり、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが695件と最も多く、次いで引火・ふく射、使用方法の誤りの順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、88億871万円であり、前年に比べ8億3,292万円(10.4%)増加している(第1−1−20表)。第1-1-20表 ストーブによる火災の損害状況
(6)着火物は前年と同様「枯草」が第1位 平成17年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が6,730件であり全体の11.7%を占め、最も多くなっている(第1−1−21表)。第1-1-21表 主な着火物別出火件数
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成17年中の建物火災の出火件数は、3万3,049件であり、前年に比べ276件(0.8%)の減少となっている。これを、10年前(平成8年)の3万4,756件と比較すると5.2ポイント減少したことになる(第1−1−4表)。第1-1-4表 火災種別出火件数の推移ア 建物火災は1日に91件、16分に1件の割合 平成17年中の建物火災の1日当たりの出火件数は、91件であり、16分に1件の割合で出火していることになる(第1−1−2表)。第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜4月、12月)にかけて多く発生し、全体の48.4%を占めている(第1−1−27図)。第1-1-27図 建物火災の月別火災件数イ 住宅における火災が建物火災の56.7% 平成17年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の56.7%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1−1−28図、附属資料16)。第1-1-28図 建物火災の火元建物用途別の状況ウ 建物火災の44.6%が木造建物 平成17年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万4,739件であり、建物火災の44.6%を占め、次いで耐火造、防火造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の29.5%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみると、木造が最も大きく65.9m2となっており、全建物火災平均では45.5m2となっている(第1−1−22表)。第1-1-22表 火元建物の構造別損害状況エ 建物火災の過半数は小火災 平成17年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,415件であり、全体の49.7%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万5,737件で全体の77.9%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1−1−23表)。第1-1-23表 建物火災の損害額及び焼損床面積の段階別出火件数オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成17年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが69.6%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが38.1%となっている(第1−1−29図)。第1-1-29図 建物火災の主な出火原因と経過カ 3DKの住戸2万3,120戸相当分が焼損 平成17年中の建物焼損床面積は、前年に比べ7万1,801m2(4.6%)減少し、150万2,781m2となっている。この面積は3DK(65m2)の住宅が2万3,120戸焼損したことに相当する(第1−1−3図)。第1-1-3図 火災の推移 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は北海道の8万267m2であり、次いで埼玉県、千葉県の順となっている。一方、最低は沖縄県の7,393m2であり、次いで島根県、石川県の順となっている(第1−1−24表)。第1-1-24表 建物火災1件当たりの焼損床面積キ 1件当たりの焼損床面積は45.5m2 平成17年中の建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で45.5m2となっており、前年の全国平均47.2m2に比べ1.7m2減少している。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、岩手県の109.0m2を最高に、秋田県88.7m2、滋賀県88.5m2など35道府県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が前年と同様、東京都の10.7m2で、次いで神奈川県24.4m2、大阪府25.6m2など12都府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1−1−24表)。ク 放水した建物火災の24.0%は覚知後5分以内に放水 平成17年中の建物火災における火元建物の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万7,291件(建物火災の52.3%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万3,494件(放水した建物火災の78.0%)であり、このうち5分以内のものは4,152件(放水した建物火災の24.0%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を14.6m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1−1−25表)。第1-1-25表 建物火災の放水開始時間別焼損状況ケ 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成17年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は7,743件であり、放水した建物火災の44.8%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが2,606件で最も多くなっている(第1−1−30図)。第1-1-30図 建物火災の鎮火所要時間別1件当たり焼損状況
(2)林野火災 平成17年中の林野火災の出火件数は2,215件であり、前年に比べ377件(14.5%)減少している。焼損面積は1,116haであり、前年に比べ452ha(28.8%)減少しており、また、損害額は8億6,816万円であり、前年に比べ5,900万円(7.3%)増加している。また、林野火災による死者は11人であり、前年と同数となっている(第1−1−26表)。第1-1-26表 林野火災の状況 林野火災の出火件数を月別にみると、平成17年中は4月に最も多く発生しており、次いで5月、3月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1−1−31図)。第1-1-31図 林野火災の月別出火件数 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は2,196件であり、全体の99.1%を占めている(第1−1−27表)。第1-1-27表 林野火災の焼損面積段階別損害状況 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが599件で全体の27.0%を占め最も多く、次いで、たばこ、放火(放火の疑いを含む。)の順となっている(第1−1−32図)。第1-1-32図 林野火災の主な出火原因と経過
(3)車両火災 平成17年中の車両火災の出火件数は6,630件で、前年に比べ447件(6.3%)減少し、車両火災件数は昭和51年以降増加傾向にあったが、4年連続減少している。 次に、死者数は231人で、前年に比べ18人(7.2%)減少し、負傷者数は354人で、前年に比べ2人(0.6%)増加している。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は31億9,765万円で、前年に比べ1億8,530万円(6.2%)増加している(第1−1−28表)。第1-1-28表 車両火災の状況 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,496件(全体の22.6%)と最も多くなっている(第1−1−33図)第1-1-33図 車両火災の主な出火原因と経過等
(4)船舶火災 平成17年中の船舶火災の出火件数は124件で、前年に比べ8件(6.1%)減少している。 次に、死者数はなしとなっており、前年に比べ2人減少し、負傷者数は13人で、前年に比べ13人減少している。 また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は3億6,409万円で、前年に比べ2億6,306万円減少している(第1−1−29表)。第1-1-29表 船舶火災の状況 出火原因は、電気機器によるものが12件(全体の9.7%)と最も多くなっている(第1−1−34図)。第1-1-34図 船舶火災の主な出火原因
(5)航空機火災 平成17年中の航空機火災の出火件数は6件で、前年に比べ4件減少している。 次に、死者数はなしとなっており、負傷者数は1人である。 また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は400万円で、前年に比べ1億3,719万円減少している。(第1−1−30表)。第1-1-30表 航空機火災の状況
[火災予防行政の現況]1 住宅防火対策の現況 平成17年中においては、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数(1万7,014件)は、建物火災の件数(2万9,502件)の約6割、また、放火自殺者等を除く住宅火災による死者数(1,220人)は、建物火災による死者数(1,366人)の約9割となっており、過去10年間以上この傾向で推移している。 また、近年の主な建物用途別にみた火災100件当たりの死者数では、住居における死者数は、多数の者が利用する物販店舗、旅館・ホテルと比べても5倍程度の死者数となっており、最多となっている。 住宅火災による死者数は増加傾向にあり、住宅火災による死者の半数以上が65歳以上の高齢者であることを考えると、今後の高齢化の進展とともに、さらに住宅火災による死者が増加するおそれがある。 消防庁では、平成3年に住宅防火対策推進に係る基本方針を策定、住宅防火対策推進協議会を設置し、住宅防火にかかるポスター、パンフレットの作成・配布、住宅防火安心マークによる住宅用防災機器の普及の促進等の対策を推進してきた。平成13年には、過去10年間の実績を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を定め、特に高齢者を対象とした住宅火災による被害及び死者の軽減を目指し、地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進を図るため、関係行政機関、関係団体等と協力しながら住宅防火対策の更なる推進を図ってきた。 しかし、今後、住宅火災による死者の増加が予想されることから、平成15年12月に消防審議会から、住宅に住宅用火災警報器等の住宅用防災機器の設置を義務付ける等を内容とする答申が出され、この答申を受けて、「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」が衆参両議院で全会一致で可決成立し、平成16年6月2日に公布され、平成18年6月1日施行された。 また、本改正に伴い、消防法施行令の改正(平成16年10月27日)、住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令の制定(平成16年11月26日)、火災予防条例(例)の改正(平成16年12月15日)及び住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令の制定(平成17年1月25日が順次公布された。これにより、新築住宅については平成18年6月1日から、既存住宅については各市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられ、これを受けて全国の消防本部では、消防団、婦人(女性)防火クラブ及び自主防災組織等と連携して、各種広報活動を展開しているところである。
住宅用火災警報器に係る音以外の警報機器について 平成16年の消防法改正により、新築住宅は平成18年6月1日、既存住宅は市町村条例で定める日から、すべての住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持が必要となりました。 現在の住宅用火災警報器等の規格においては、音又は音声による警報は詳細な基準を定めていますが、音以外の基準の詳細は定めていないのが現状であり、市場に流通するものの大半は音による警報を発するものとなっています。 一方で、聴覚障害者数は31万9,700人(平成17年度版「障害者白書」による)となっており、住宅火災による死者の半数を占める高齢者も、加齢に伴う聴覚機能の低下により音の警報のみでは十分とはいえない面があります。 このような背景から、住宅用火災警報器等に用いる警報について、音に加えて音以外の光・振動等の手法について調査・研究し、有効な警報機能を持つ機器の調査及び規格の明確化を行っているところです。 調査・研究の対象となっている具体的な機器として、光を用いた警報機器についてはストロボライトや高輝度LEDを使用したもの、また、振動を用いた警報機器については、腕時計式のものや枕の下に入れて使用するパッド式のものなどがあります。 今後、住宅用火災警報器等の更なる設置促進とともに、これら音以外の警報機器についても広く普及していくことを目的として、検討を進めていきます。安心・安全な社会の構築
2 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成18年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に103万8,746件あり、そのうち75.1%に当たる77万9,944件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、25万8,802件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が指導・命令を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は69万6,408件で全体の67.0%となっている(第1−1−31表)。第1-1-31表 全国の防火管理実施状況
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 平成18年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、63.1%(前年61.5%)となっている(第1−1−32表)。第1-1-32表 全国の共同防火管理実施状況
(3)防火対象物点検資格者 火災の発生を防止し、火災による被害を軽減するためには、消防機関のみならず防火対象物の関係者による防火対象物の火災予防上の維持管理及び消防法令への適合が重要である。 そのため、消防法では、一定の用途、構造等を有する防火対象物の管理権原者に対して、火災の予防に関して専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)による点検及び点検結果の消防長又は消防署長への報告を義務付けている。 この防火対象物点検資格者は、消防用設備等の工事等について3年以上の実務経験を有する消防設備士や、防火管理者として3年以上の実務経験を有する者など、火災予防に関し一定の知識を有する者であって、法人で総務大臣が登録するものが行う講習の課程を修了し、防火対象物の点検に関し必要な知識及び技能を修得したことを証する書類の交付を受けた者である。 防火対象物点検資格者は、その資質の維持及び向上を図るため、5年ごとに再講習を受講し、登録機関が発行する免状の交付を受けることとされている。 平成18年3月31日現在、防火対象物点検資格者の数は1万8,759人となっている。 また、定期点検報告が義務となる防火対象物のうち、管理を開始してから3年間以上継続して消防法令を遵守しているものは、当該防火対象物の管理権原者の申請に基づく消防機関の行う検査により、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合に点検・報告の義務が免除される。
3 立入検査(1)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成17年度中に全国の消防機関が行った立入検査回数は、97万9,910回であり、火災予防上必要な指導を行っている(第1−1−33表)。第1-1-33表 立入検査実施状況 新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた平成14年の消防法改正により、立入検査の時間制限の見直し等が行われ、消防機関がより的確で効果的な立入検査を行うことができるようになった。立入検査(横須賀市消防局提供)
(2)小規模雑居ビル等の違反状況 立入検査等により判明した防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができ、また、火災の予防に危険であると認める場合には、消防法第5条、第5条の2又は第5条の3の規定に基づき、当該防火対象物の改修、移転、危険排除等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされており、これらの命令をした場合には、公示することとされている。 このように立入検査等を行った結果消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1−1−34表、附属資料17、18、19)。第1-1-34表 命令の状況 特に、新宿区歌舞伎町ビル火災が発生したビルと類似する小規模雑居ビル及び特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)については、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性にかんがみ、厳しく指導を行っている。小規模雑居ビルについては、防火対象物定期点検報告制度の施行や自動火災報知設備の設置対象拡大などの新たな要因による消防法令違反を含めると51.0%の違反率となる。また、特定違反対象物については、182件の対象物において、消防法令違反が存在している。そのうち、特に消防用設備等と比べると、防火管理に関する消防法令違反の割合が高い傾向にある。こうした状況を踏まえ、防火対象物の安全性確保のためには、引き続き防火管理制度と合わせて立入検査等を通じた重点的な違反是正の徹底を図っていく必要がある(第1−1−35表、第1−1−36表)。第1-1-35表 小規模雑居ビルの違反是正状況の推移第1-1-36表 特定違反対象物の改善状況の推移
4 消防用設備等(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成17年度の全国における消防同意事務処理件数は、31万6,612件(前年度30万5,026件)であり、消防同意した申請のうち9万5,107件(30.0%)については、消防機関により指導が行われている(第1−1−37表)。第1-1-37表 消防同意処理状況
(2)防火対象物の実態 平成18年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第一(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(二十)項までに掲げる防火対象物の数)は372万9,105件である。 また、15大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は85万6,126件であり、全国の防火対象物の23.0%を占めている。特に都市部に集中しているものは準地下街(全国の85.7%)、地下街(同79.4%)、性風俗特殊営業店舗等(同55.0%)、非特定複合用途防火対象物(同43.4%)などである(第1−1−38表)。第1-1-38表 防火対象物数
(3)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所用の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみてみると、平成18年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率は96.3%(前年96.3%)、スプリンクラー設備の設置率は99.6%(前年99.6%)となっている(第1−1−39表)。第1-1-39表 全国における特定防火対象物の屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備の設置状況 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近においては、平成13年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビル火災にかんがみ、この種の小規模雑居ビル(特定複合用途防火対象物)や、直通階段が1つしかない防火対象物に設置される自動火災報知設備及び避難器具等の技術上の基準について見直しを行い、設置義務対象物の拡大、階段室における煙感知器の設置間隔の変更、受信機への再鳴動機能の付加、避難器具の設置基準の変更等必要な改正を行っている。 また、近年、高層建築物、大空間を有する建築物など、大規模・特殊な建築物が増加するとともに、新技術を活用した消防用設備の設置のニーズが高まっていること等を踏まえ平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防法令に性能規定を導入するとともに、平成16年6月からの施行にあわせて関係規定の整備を図った。 一方、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令、使用禁止命令、刑事告発等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。
(4)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 さらに、消防法令において、消防用設備等の技術基準に性能規定を導入したことを受けて、平成16年3月及び5月に消防法施行規則の一部改正が行われ、特殊消防用設備等の工事又は整備を行うことができる特類の甲種消防設備士と、特殊消防用設備等の点検を行うことができる特種消防設備点検資格者の資格が新たに創設された。今後、特殊消防用設備等が適宜設置されていくことに伴い、これらの資格を有する者の増加も予想されるところである。 また、消防設備点検資格者になるための講習は、従来、総務大臣又は消防庁長官が指定する者が行ってきたところであるが、平成16年3月の消防法施行規則の一部改正により、総務大臣又は消防庁長官の登録を受けた法人が行うこととされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施することとしている。 平成18年3月31日現在、消防設備士の数は延べ87万4,889人となっており(第1−1−40表)、また、消防設備点検資格者の数は特種(特殊消防用設備等)420人、第1種(機械系統)11万9,524人、第2種(電気系統)11万2,861人となっている。第1-1-40表 消防設備士の数 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(5)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等の構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等の不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成18年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、88万1,165件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものは86.2%、じゅうたんを全部使用しているものは84.3%、展示用合板を全部使用しているものは75.9%となっている(第1−1−41表)。第1-1-41表 防炎防火対象物数及び防炎物品の使用状況イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている。 防炎表示制度に関しては、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として従前の防炎表示者の認定制度が平成13年1月より登録制度に改正され、併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として登録要件を満たす登録確認機関による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高め、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成18年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、3万873業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.5%を占めている。)で前年同期より354業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎品の普及啓発 家庭におけるカーテン、じゅうたんや消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、自動車・オートバイカバー等についても、防炎化を推進することが火災予防上有効であることから、その普及啓発を行っている。防炎対象物品以外の防炎性能を有するもの(防炎製品)については、財団法人日本防炎協会が自主的に採用する「防炎製品」表示ラベルの貼付によりその情報を提供し、消費者の利便が図られている(第1−1−42表)。第1-1-42表 防炎製品の認定件数及び販売件数
(6)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備などその種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を有し、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成17年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,926件(総建物火災件数3万3,049件の24.0%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いについては、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制されている。 また、「規制改革・民間開放推進3か年計画」に基づき、環境負荷の低減に寄与すること等から実用化・普及が期待されている燃料電池発電設備の安全確保に必要な技術基準等に関する検討が行われ、平成17年3月に「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令」を改正し、燃料電池発電設備等(固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池による発電設備であって火を使用するものに限る。)を新たに対象火気設備等として、位置、構造及び管理の基準を定めた。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定の対象となる消防用機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定対象消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の検定対象機械器具等の形状等が、型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等と同一であるかどうかについて行う検定)とからなっている(第1−1−43表)。第1-1-43表 検定申請状況 また、新たな技術開発等に係る検定対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの検定対象機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 なお、昭和61年から、日本消防検定協会以外に、総務大臣が指定する「指定検定機関」でも検定を行うことができることとしていたが、政府の規制改革推進の方針に基づき、平成14年には指定検定機関の公益法人要件を撤廃し、さらに、平成15年からは、指定検定機関から「登録検定機関」へとその参入要件を緩和している。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格にしている旨の表示を付そうとする製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成18年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては2,369件、消防用吸管にあっては55件である。
6 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化 これまで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面があった。これに対して、近年、社会規制の様々な分野で、技術革新の成果を活用し、また、技術革新を促すため、技術的な基準として必要な性能を規定し、達成する手法は自由に選択できることとする「性能規定」の導入が進められてきた。 消防庁においても、平成11年度から消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するために、技術的、制度的な観点からの調査研究及び実証実験等を通じて、安全性を損なうことなく性能規定を導入するための技術的基盤の整備に取り組んできたところであり、平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することとしたものである。 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると判断できる設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものである。 消防用設備等に求められる性能は、火災の拡大を初期に抑制する性能である「初期拡大抑制性能」、火災時に安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」、消防隊による活動を支援する性能である「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては、客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)等により、同等性の評価が行われることとなる。 具体例を挙げると、共同住宅の構造特性等を踏まえた消防用設備等の評価手法についての検討が行われた結果、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成17年総務省令40号)並びに、特定共同住宅における通常用いられる消防用設備等に代えて設置することができるとされた共同住宅用スプリンクラー設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用非常警報設備及び戸外表示器等の技術基準を定める関係告示の制定が行われ、平成19年4月1より施行することとしている。 また、「初期拡大抑制性能」については事務所用途におけるスプリンクラー設備、「避難安全支援性能」については光点滅走行式避難誘導システム、「消防活動支援性能」については加圧防煙システムについての評価手法の検討を現在行っているところである。 一方、既定の客観的検証法のみでは同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」を設置しようとする場合には、防火対象物ごとに、高度な技術的識見を有する性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき、総務大臣がその性能を審査し、必要な性能を有するものについては円滑に設置できるようにすることとされたものである。(平成18年10月31日現在、認定済み特殊消防用設備等の設置10件) これらの規定を導入することにより、今後「特殊消防用設備等」を中心に新技術等を用いた新たな設備等が積極的に開発されていくことが期待される。
7 火災原因調査の現況 平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査をすることができる制度が導入された(平成15年9月1日より施行)。 本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて消防研究センター(旧独立行政法人消防研究所)を中心とする消防庁の職員により編成される調査チームが実施するもので、平成15年9月8日に発生した栃木県黒磯市ブリヂストン栃木工場火災に対して、改正消防法に基づき、初めての消防庁長官の自らの判断による火災原因調査を実施するとともに、出光興産北海道製油所において同月26日に原油タンク、28日にナフサタンクからそれぞれ発生した火災に対しても火災原因調査のチームを派遣し、計3件の火災に対して改正消防法に基づく火災原因調査を実施した。 さらに、三重県RDF発電所火災をはじめとした3件の火災に対しては、消防長から消防庁長官に対し火災原因調査の要請がされ、この要請に基づいた火災原因調査を実施し、これらを合わせ平成15年度には合計6件の火災に対して消防庁長官による火災原因調査を実施し、これらの結果を踏まえ、ブリヂストン栃木工場火災及び三重県RDF発電所火災を受けた「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」(平成16年法律第65号)により、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の基準を市町村条例で定めることとされた。また、出光興産北海道製油所火災を受けた「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令及び危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(平成16年政令第218号)等により、旧基準の屋外タンクに係る新たな技術上の基準への適合に関する経過措置の期限を繰り上げるなどの措置が講じられた。 平成16年度には、平成16年12月13日に発生した「ドン・キホーテ浦和花月店火災」について、その社会的影響を踏まえ、消防庁長官の判断による火災原因調査を実施し、その調査内容を踏まえ、「避難・消火困難な物品販売店舗における防火安全対策検討会」において報告書を取りまとめ(平成17年8月)、全国の消防本部に対し、避難・消火困難な物品販売店舗において講ずべき防火安全対策を示し、このような物品販売店舗の防火安全性の確保に努めるよう周知した。 平成17年度には、5月11日に福島県いわき市で発生した化学工場爆発火災において、消防長から消防庁長官に対し火災原因調査の要請がなされたため、この要請に基づいた火災原因調査を実施した。また、平成18年1月8日に長崎県で発生した認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里」火災については、多数の死傷者が発生し社会的影響が極めて大であることから、消防庁長官の判断による火災原因調査を実施し、その調査内容を踏まえ、「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」において報告書を取りまとめ(平成18年3月)、全国の消防本部に対し、当該グループホーム等の防火上の課題と講ずべき対策を周知した。
[火災予防行政の課題](1)違反是正の徹底 全国の消防機関において、平成14年の消防法の一部改正等を踏まえた「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物に対する違反是正の推進に一定の成果が得られたものの、防火対象物定期点検報告制度の施行(平成15年10月1日)や自動火災報知設備の設置対象拡大などの法改正に伴う新たな要因に係る消防法令違反が散見されるほか、平成18年1月8日に発生した長崎県大村市の認知症高齢者グループホームでの火災後に実施した実態調査の結果では、46.8%の施設において何らかの消防法令違反率があり、このうち防火管理面での違反が比較的多く見受けられた。 これらのことから、小規模雑居ビルをはじめとした防火対象物の消防法令違反の是正について、防火対象物定期点検報告制度等を活用した消防機関による立入検査の一層の重点化・効率化をはじめ、違反処理データベースの充実、違反是正推進連絡会を活用した消防機関相互の協力体制の活用等により、体制を強化し違反是正を更に推進する必要がある。
(2)防火管理の徹底 防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災又は地震等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度である。 防火管理の充実を図るため、平成15年6月消防法施行規則の一部を改正し、一定の要件に該当する防火対象物の防火管理者に選任された者は平成18年4月1日から5年以内ごとに甲種防火管理再講習を受講しなければならないこととした。再講習については、平成17年4月1日から受講することができることとしたが、まだ、再講習を受講していない該当防火対象物の管理権原者や防火管理者に対しては、この制度について周知するとともに、防火管理者に平成19年3月末までに再講習を受講させ必要な知識及び技能を修得させることで、防火管理の充実を図る必要がある。 さらに、適切な防火管理業務の推進を図るため、消防計画作成マニュアル及び避難等訓練マニュアルの作成に係る検討を行い、消防計画作成マニュアルについては、平成17年度は病院及び社会福祉施設を対象として検討を行い、平成18年3月に「消防計画作成マニュアルの作成に係る検討第2次中間報告書」として取りまとめ、全国の消防本部に配付した。避難等訓練マニュアルについても、平成17年度は地下街等を対象として検討を行い、平成18年3月に「地下街等避難等訓練マニュアル検討報告書」として取りまとめ、全国の消防本部に配付した。 また、防火管理者が選任されていたとしても、十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者(防火対象物点検資格者)に防火上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。消火訓練(千葉市消防局提供)
(3)住宅防火対策の推進 住宅防火対策については、これまで広報・普及啓発活動を中心に取り組んできたところであるが、最近の住宅火災による死者数は増加傾向にある。平成17年中の放火自殺者等を除く住宅火災による死者数は、1,220人となっており、昭和61年(1,016人)以来17年ぶりに1,000人を超えた平成15年から3年連続して1,000人を超え、記録のある昭和54年以降で最多となっている。 また、同死者数の約6割が65歳以上の高齢者であり、今後の高齢化の進展に伴い、更に増加のおそれがあること等から、平成16年6月に消防法を改正し、従来個人の自助努力と考えられてきた住宅防火対策を抜本的に見直し、すべての住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持を義務付ける法制度の導入を行った。それにより、新築住宅は平成18年6月1日から、既存住宅は市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられた。 消防庁では、今後全国に47万戸といわれる既存住宅への住宅用火災警報器の設置を促進するため、技術開発の促進、リース方式の導入等について関係業界に働きかけるとともに、消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等と連携した住宅用火災警報器等の設置、維持管理等に係る啓発などの普及方策の推進、悪質訪問販売の被害防止対策、報道機関の報道方法の工夫についての働きかけなど市場機能の活用について重点的に推進し、さらには様々な広報、普及・促進に関する施策を講じていくこととしている。住宅防火診断(相模原市消防本部提供)
(4)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降9年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占めている。特に、都市部においては、出火原因の4割を超えている地域もあることから、深刻な社会問題となっている。 放火を防ぐためには、一人ひとりが防止対策を心掛けるだけでなく、地域全体が「放火されない環境づくり」に取り組むことが重要である。 特に、連続放火が発生している地域にあっては、地域の安全に深刻な影響があるため、暗いところや死角になるところに可燃物を放置しないこと、夜間にごみを出さないこと、門灯の終夜点灯により街路を明るくすることなどの対策を地域全体で徹底するとともに、関係行政機関と地域住民が協力して、街灯の増設、炎感知器や侵入監視センサーと連動した照明の設置、放火監視機器の設置などを推進し、より一層の警戒体制を構築することが必要である。 消防庁では、平成16年6月に放火火災・連続放火火災の防止のため学識経験者や消防機関関係者等からなる検討会を設置し、その検討結果を「放火火災の防止に向けて〜放火火災防止対策戦略プラン〜」として取りまとめ、全国の消防本部に配付するなどした。平成18年春の火災予防運動では、戦略プランにより検討された地域の評価指針(評価シート)を活用し、放火火災防止に関する現状の対応力等について評価を行った。 また、戦略プランの中で放火火災防止対策に有効とされた放火監視機器について、「放火監視機器に係る技術上のガイドライン」を策定(平成17年4月)するとともに、平成17年8月より、福井地区消防本部(福井県)及び神戸市消防局(兵庫県)の協力を得て、商店街や住宅街等に放火監視機器を設置し、その効果の検証試験等を行った。平成18年9月からは神戸市消防局では継続して、また、福岡市消防局(福岡県)で検証試験を行っているところである。
(5)旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等における防火安全対策の推進 平成14年の消防法の一部改正により、一定規模以上の特定防火対象物(準地下街を除く。)に対し、平成15年10月1日から「防火対象物定期点検報告制度」が導入された。これに伴い、いわゆる「適マーク制度」は、平成15年9月30日をもって廃止され、従来の適マーク制度の対象となっていた旅館・ホテル等については、引き続き3年間に限り適マークを表示できる「暫定適マーク制度」が設けられ、また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象外の旅館・ホテル等に対しても、同様の制度を活用することが可能となるよう「自主点検報告表示制度」(新適マーク)が新たに導入された。 さらに、「暫定適マーク制度」については、平成18年9月30日をもって廃止されたことから、旅館・ホテル等についても平成18年10月1日以降は、「防火対象物定期点検報告制度」又は「自主点検報告表示制度」に基づく運用がなされている。 「防火対象物定期点検報告制度」は、旅館・ホテルをはじめとした多数の人が出入り等する一定の防火対象物について権原を有する者に対し、1年に1回防火対象物点検資格者による点検を義務付け、その結果について消防長又は消防署長へ報告を行わせるもので、管理権原者による防火対象物の管理の業務の消防法令への適合を確保することとしたものである。 また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象となるもののうち、過去3年間消防法令を遵守しており消防機関の検査により、消防法令に適合していると認められた場合には、点検報告が免除されることとなっている。 なお、これらの制度に適合するものについては、その情報を利用者に提供する防火セイフティマーク(防火優良認定証・防火基準点検済証)を表示することができるようになっている。このうち防火優良認定証については、消防の安心・安全マークとして広く国民に認知されている消防章を基調としたデザインに見直しが行われ、平成18年10月1日より施行されている。 旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念されることから、これらの制度を有効に活用し、防火安全対策の一層の充実を図る必要がある。
(6)消防法令への性能規定の導入等による消防用設備等における新技術の開発促進への期待及び課題 消防法令に定める消防用設備等の技術上の基準に性能規定を導入すること等により、新技術の開発促進が期待されるが、その実効性を高めるためには、消防防災分野における新たな技術に関する知見の蓄積を図るとともに、客観的検証法の適用範囲を着実に拡大していくことが必要である。このため、総務大臣による認定によりその知見が十分に蓄積された特殊消防用設備等については、円滑に客観的検証法を策定することにより、消防機関がその設置等の判断が容易にできるようにしていくことが必要である。 一方、消防機関においても、客観的検証法による審査体制を整備し、消防防災分野における新たな技術を用いた設備等が導入できる体制を構築することにより、消防防災に係る技術開発の促進と安全性の高い合理的な防火安全対策の構築に寄与することが望まれる。
(7)文化財保護のための防火安全対策の推進 国民共通の財産である文化財を火災による焼失等から保護し、後世に残すことは、極めて重要な課題である。 我が国の文化財建造物は、伝統的な建築技術を用いた木造の建造物が多いなど、通常の防火安全対策では十分な対処が難しいものも多い。このため、文化財の特性に応じた防火管理の実施、消防用設備等の設置、火災時の消火活動等の防火安全対策の充実に努める必要がある。 文化財建造物として指定を受けた防火対象物は、消防法施行令別表第一(十七)項に掲げる文化財施設として位置付け、必要な防火安全対策を講じてきたところであるが、近年、文化財建造物又はその部分を飲食店、宿泊施設等として利用するもの等、文化財建造物の利用形態が多様化してきた。 このような状況を踏まえ、文化財施設としての火災危険性のみに着目して防火安全対策を講ずれば足りるとしていた取扱いを改め、文化財施設であることに加え、使用実態に応じた用途にも該当するものとして取り扱うこととして消防法施行令が改正された。これにより、消防用設備等の設置をはじめとした必要な防火安全上の措置を、使用実態に応じて講ずることができるようになった。
(8)災害時要援護者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害時要援護者が安全に安心して生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。 今後、本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、老人福祉法で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設が増加してきており、この状況を踏まえて消防庁では、平成14年度から2年間にわたり学識経験者、関係省庁等からなる「高齢者施設における火災予防のあり方検討会」を開催し、既往施設との比較等を行いつつ、これらの新たな施設等に対する防火安全対策のあり方について検討を進めてきた。また、平成18年1月に、長崎県の認知症高齢者グループホームにおいて死者7人を出す火災が発生したことを踏まえ、消防庁では「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」を設置し、認知症高齢者グループホームをはじめとする自力避難困難者が入所する施設における消防用設備等及び防火管理等の防火安全対策のあり方について検討を行ってきた。今後、これらの検討結果等を踏まえ、必要な防火安全対策を講ずることとしている。 一方、災害時要援護者が居住する住宅における対策として、消防機関をはじめ行政機関が、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等の防火対策推進協力者と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等による防火指導の推進等の取組みを引き続き実践する必要がある。併せて、災害時要援護者から消防機関への緊急通報体制の一層の充実を図るため、従来から実施している「災害弱者緊急通報システムモデル事業」の更なる普及促進に取り組むとともに、情報通信技術の進展を踏まえ、より多様で高機能な自動通報システムや災害時要援護者に配慮した仕組みを有した緊急通報システムの開発・普及を進めていく必要がある。
(9)消火器等リサイクルの推進 消火器や、防炎加工を施したカーテン、じゅうたんなどの防炎物品は、不要となった場合の処理が困難であり、また、老朽化消火器にあっては、事故防止の観点からも適切な処理が求められていることから、政府のミレニアムプロジェクト(平成12年度から平成16年度)の一環として、リサイクル技術の開発、回収ルート等のリサイクルシステムの構築等について検討を行った。 消火器については、平成14年度に日本消防検定協会の検定細則が改正され、消火薬剤のリサイクル使用についての制度上の整備が行われ、平成15年度には消火器の消火薬剤の40%以上を再生消火薬剤としたエコマーク付き消火器の販売が開始された。平成16年度には、消火器に使用されている金属部品分離工程をより細分化する技術が導入され、消火器一本当たりのリサイクル率(再資源化率)は、平成12年度約40%であったものが、平成16年度にはほぼ100%まで上昇している。 さらに、平成16年度には「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)の特定調達品目に再生消火薬剤使用率40%以上の消火器が追加され、平成17年度には、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃掃法)に基づく一般廃棄物の広域認定制度の対象品目に廃消火器が追加された。 これらにより、消火器のリサイクルは更なる進展が期待される。 また、じゅうたん、カーテン等の防炎物品については、繊維部分をコンクリート型枠へ再加工する技術などが実用化可能な技術として確認された。今後は、廃防炎物品回収ルートの構築、テストプラントの建設及び再生品の市場開拓を総合的に推進するための検証実験等が課題となっている。
放火対策「Web版評価システム」 平成17年中に発生した放火による火災及び放火の疑いのある火災(以下「放火火災」という。)は、合計で1万2,264件発生しました。これは全出火件数の2割強を占めています。自らの不注意により火災を出さないようにすることももちろん大事ですが、それと同時に、放火火災への対策をしっかりと立てておくことも重要なことです。 放火火災を防ぐための方策の一つとして、居住している家や地域又は仕事場などに潜在している放火火災についての危険度を、インターネット環境のあるパソコンを持っている誰もが簡単にチェックを行えるよう消防庁のホームページ上に掲載する予定で開発したのが、「Web版評価システム」です。 画面上に表示される指示に従い、二者択一で回答していくと放火火災に対する危険度が視覚的に分かりやすいようレーダーチャートになって表示され、その後具体的な対応策が一覧となって表示されます。 この「Web版評価システム」で表示される対応策を参考に「放火されない、放火させない、放火されても被害を大きくさせない」を基本として、建物ごとの放火火災防止対策を検討し、さらに地域ぐるみの活動を展開し、安全なまちづくりを行っていきましょう。 なお、「Web版評価システム」は平成18年度中にホームページ掲載予定です。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設(指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う製造所、貯蔵所及び取扱所)における事故は、火災(爆発を含む。)と漏えいに大別される。危険物施設の火災・漏えい事故件数は、昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していたが、平成6年を境にして増加傾向を示している。平成17年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が188件、漏えいが392件で合計580件となっており、前年より26件増加し、統計を取り始めて以来過去最悪となっている。(第1−2−1図)。第1-2-1図 危険物施設における火災・漏えい事故発生件数の推移
1 火災 危険物施設における火災の発生件数は、減少に転じたものの、依然高い水準にある。火災の主な要因として、一般取扱所、製造所、給油取扱所等における管理不十分・確認不十分等の人的要因を挙げることができる。
(1)依然高い水準にある火災発生件数 平成17年中の危険物施設における火災の発生件数は、188件(対前年比7件減)、損害額は24億1,493万円(同25億1,573万円減)、死者は1人(同2人減)、負傷者は38人(同17人減)となっている(第1−2−2図)。第1-2-2図 危険物施設における火災発生件数と被害状況 危険物施設の火災による他への影響の程度をみると、他の施設からの類焼による2件を除く186件の火災のうち、6件(同3.2%)は当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼しており、180件(全体の96.8%)は当該危険物施設のみの火災にとどまっている。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が122件、製造所での火災が27件となっており、これらの火災は、全体の79.3%を占めている(第1−2−3図)。第1-2-3図 危険物施設別火災発生件数 さらに、188件の火災のうち110件(全体の58.5%)は、危険物が出火原因物質となっており、これを品名別にみると、第4類第1石油類43件、第4類第3石油類25件、第4類第4石油類16件等の順となっている(第1−2−4図)。第1-2-4図 出火原因物質別火災発生件数
(2)火災の発生原因の半数以上は人的要因 平成17年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が110件(全体の58.5%)と最も多く、物的要因が44件(同23.4%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が34件(同18.1%)となっている(第1−2−5図)。第1-2-5図 危険物施設における火災発生原因 また、着火原因をみると、静電気火花が26件(全体の13.8%)で最も多く、次いで高温表面熱が23件(同12.2%)、過熱着火18件(同9.6%)、となっている(第1−2−6図)。第1-2-6図 危険物施設における火災着火原因
(3)無許可施設の火災 平成17年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は11件であり、死者はなく、負傷者は2人となっている。 なお、これらの火災による損害額は、1億192万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成17年中の危険物運搬中の火災の発生件数は3件で、死者はなく、負傷者は1人となっている。 なお、これらの火災による損害額は533万円となっている。
2 漏えい 危険物施設における漏えい事故の発生件数は、事故全体と同様に増加傾向にあり、過去最悪の水準を推移している。漏えいの主な要因として、給油取扱所、一般取扱所、地下タンク貯蔵所、移動タンク貯蔵所等における人的要因や危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化を挙げることができる。
(1)危険物施設における漏えい件数が過去最悪に 平成17年中の危険物施設における危険物漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、392件(対前年比33件増)、損害額は3億6,543万円(同6,640万円減)、死者は前年と同様なく、負傷者は19人(同12人減)となっている(第1−2−7図)。第1-2-7図 危険物施設における漏えい事故発生件数と被害状況 また、危険物施設別の漏えい事故発生状況をみると、給油取扱所での漏えいが81件、一般取扱所での漏えいが80件、地下タンク貯蔵所での漏えいが76件、移動タンク貯蔵所での漏えいが73件となっており、これらの漏えいで全体の79.1%を占めている(第1−2−8図)。第1-2-8図 危険物施設別漏えい事故発生件数 さらに、危険物施設における漏えい事故で漏えいした危険物をみると、392件の事故のうち、387件(全体の98.7%)が第4類の危険物となっている。これを危険物の品名別にみると、第2石油類172件、第3石油類156件、第1石油類48件等の順となっている(第1−2−9図)。第1-2-9図 危険物施設から漏えいした危険物別件数
(2)漏えい事故の3割は腐食等劣化が原因 平成17年中に発生した危険物施設における漏えい事故の発生原因を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、物的要因が173件(全体の44.1%)と最も多く、人的要因が171件(同43.6%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が48件(同12.3%)となっている(第1−2−10図)。第1-2-10図 危険物施設における漏えい原因 漏えい事故の発生原因を個別にみると、腐食等劣化によるものが122件(全体の31.1%)と最も多く、次いで確認不十分によるものが58件(14.8%)、管理不十分によるものが50件(12.8%)となっている(第1−2−10図)。
(3)無許可施設の漏えい事故 平成17年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での漏えい事故の発生件数は、10件(対前年比6件増)、死者、負傷者はともになく、損害額は、267万円となっている。
(4)危険物運搬中の漏えい事故 平成17年中の危険物運搬中の漏えい事故の発生件数は14件(同2件減)であり、死者はなく、負傷者は3人となっている。なお、これらの漏えい事故による損害額は、88万円となっている。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。 なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関が行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として、危険物データベースを運用している。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならない。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、指定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱いについては、市町村条例で貯蔵・取扱いに関する基準を定め、規制することとされている。さらに平成16年6月には消防法が改正され(平成17年12月施行)、貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)についても市町村条例で定めることとされた。 なお、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務は、機関委任事務制度の廃止に伴い、平成12年4月1日から都道府県又は市町村の自治事務となった。規制の体系
(2)危険物規制の最近の動向 危険物等の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバー自らが、給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした。 平成13年7月には、消防法を改正し、平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第一第5類(自己反応性物質)の品名に追加するとともに、平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲を250度未満とした。 平成16年には、平成15年8月に発生した三重県ごみ固形燃料発電所爆発事故や同年9月に発生した株式会社ブリヂストン栃木工場タイヤ火災などを踏まえ、平成16年6月に消防法を改正し、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)を市町村条例で定めることとするとともに、再生資源燃料(RDF(ごみ固形燃料)、RPF(廃プラスチック固形燃料)等)を指定可燃物に追加した。 また、各地で発生が懸念される大規模地震に備えるため、大規模屋外貯蔵タンクの耐震改修期限の前倒しと浮き屋根の構造基準の強化を図った。 さらに、危険物施設の性能規定化(第1章第1節[火災予防行政の現況]6参照)については、平成13年度から調査研究を実施しており、平成16年度には地下タンク貯蔵所等について、平成17年度には給油取扱所等について危険物の規制に関する政令等を改正し、性能規定を導入したところである。 平成18年度には製造所等について性能規定化についての検討を進めており、その結果を踏まえて性能規定の導入を図ることとしている。
セルフ給油の安全を守るのはあなた自身です! セルフスタンドは平成18年3月末時点で、全国において約5,000施設に達し、今後も増加することが予想されます。セルフスタンドはより身近な存在となる反面、何か事故が起きた場合にはドライバー自身に被害が及びます。 現在セルフスタンドにおいて、給油時のガソリン吹きこぼれが多く起きていますが、その多くは給油方法が適切でなかったことによるものです。セルフスタンドの給油設備は、燃料タンクが満量になった場合に給油を自動停止する機能を備えていますが、吹きこぼれの発生を防ぐには、利用者一人ひとりが安全な方法で給油することが必要です。 消防庁では、平成18年8月に吹きこぼれ対策を各都道府県及び関係消防機関に通知し注意喚起を行うとともに、関係業界団体と協力して一般の方への周知に努めています。(吹きこぼれを防ぐために)○ 給油ノズルを自動車の給油口の奥まで差し込む。○ 給油レバーは最後までしっかり引く。○ 自動的に給油が止まったら、それ以上の継ぎ足し給油はしない。○ 給油後は、給油ノズルを確実に元の位置に戻す。○ そのほか、セルフスタンドに表示された注意事項を守る。 セルフスタンドでは静電気による火災も発生しています。ガソリンは引火点が低く、静電気等の着火源があれば簡単に火がついてしまいます。静電気の発生を防ぐために、給油を始める前に必ず静電気除去シートに触れ、給油行為は一人で行うなど、セルフスタンドに表示された注意事項を守ってください。 なお、現在消防庁では、学識経験者、行政機関及び関係機関から構成される「セルフガソリンスタンドにおける給油時の安全確保に関する検討会」を開催し、吹きこぼれの原因の把握及び防止対策を検討しており、この検討結果から一層の安全の確保をすることとしています。
(3)危険物施設ア 危険物施設の数は減少傾向 平成18年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は、50万6,245施設(対前年度比8,745施設、1.7%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が、11万4,564施設(全体の22.6%)と最も多く、次いで給油取扱所の7万7,642施設(同15.3%)、移動タンク貯蔵所の7万7,630施設(同15.3%)等となっている(第1−2−1表、第1−2−11図)。第1-2-1表 危険物施設数の推移第1-2-11図 危険物施設数の状況 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は、49万6,863施設(全体の98.1%)となっている。 危険物施設数の最近における推移をみると、すべての施設において減少傾向にある(第1−2−1表、附属資料27)。 イ 危険物施設の規模別構成 平成18年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が、38万7,139施設(全体の76.5%)を占めている(第1−2−12図)。第1-2-12図 危険物施設の規模別構成比
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければならない(囲み記事「危険物取扱者とは?」参照)。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成18年3月31日現在723万3,958人と広く国民の間に定着しており、危険物に関する知識、技能の普及に大きな役割を果たしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成17年度中の危険物取扱者試験は、全国で338回(対前年度比7回減)実施された。受験者数は、48万6,118人(同27,710人減)、合格者数は、19万1,283人(同22,403人減)で平均の合格率は39.3%(同2.3ポイント減)となっている(第1−2−13図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が31万8,016人(全体の65.4%)と最も多く、次いで丙種の5万4,613人(同11.2%)となっており、この二種類の試験で全体の76.6%を占めている。合格者数でも、乙種第4類が10万276人(全体の52.4%)、丙種が2万8,821人(同15.0%)となっており、この二種類の試験で全体の67.4%を占めている。第1-2-13図 危険物取扱者試験実施状況イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成17年度中の保安講習は、全国で延べ1,333回(対前年度比66回増)実施され、16万4,053人(同21,200人増)が受講している(第1−2−2表)。第1-2-2表 危険物取扱者保安講習受講者数及びその危険物取扱者免状の種類別内訳
危険物取扱者とは? 危険物は、ガソリン、灯油、軽油などの燃料のほか、塗料、プラスチック、化学繊維などの原料などに幅広く使用され、私たちの生活になくてはならないものとなっています。そして、それら様々な危険物施設における安全対策の人的基盤となり、私たちの暮らしの安心・安全を支えているのが「危険物取扱者」です。 危険物取扱者は、危険物の性質や危険物の火災予防・消火の方法などの知識を有する者として、都道府県知事から免状の交付を受けた者です。危険物施設では大量の危険物を取り扱うことから、その取扱いは危険物取扱者が自ら行うか、危険物取扱者の立会いのもとに行わなければなりません。 危険物取扱者の種類は次のとおりです。 危険物は、火災危険性が高い物質であるため、急激な延焼拡大や爆発により、多くの生命や財産を一瞬にして奪ってしまうおそれがあります。そのため、危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者一人ひとりが果たす役割や責任は大変重要です。 一方、石油化学等の分野における技術進歩等により、次々と新たな危険物が出現し、危険物の取扱方法も次第に変化してきており、これに対応して、危険物施設の技術基準も逐次改正されてきています。このようなことから、消防法令では危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者に対し、原則として3年に1回、都道府県知事が行う保安講習の受講を義務付けています。 近年、危険物施設の火災・漏えい事故は増加傾向にありますが、その多くは人的要因によるものです。危険物施設の保安対策の要である危険物取扱者が、保安講習などの機会を通じ、最近の災害事例やその予防対策も含め、危険物の保安に関する新たな知識・技能を習得し、その資質を向上させていくことが、その役割・責任を果たしていくために必要です。
(5)事業所における保安体制の整備 平成18年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で24万55事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱うものには、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1−2−14図)。第1-2-14図 自衛消防組織等を設ける事業所数の推移
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが義務付けられている。 平成17年度中に実施された保安検査は、284件(対前年度比36件増)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは、276件(同36件増)、特定移送取扱所に関するものは8件(前年同数)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成17年度中の立入検査は、23万3,227件(対前年度比1万1,512件減)の危険物施設について、延べ25万5,923回(同1万3,975回減)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成17年度中において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、357件(対前年度比16件増)となっている(第1−2−15図)。第1-2-15図 危険物施設等に関する措置命令等の推移
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならない。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行う。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけである。 なお、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)官民一体となった事故防止対策の推進 危険物施設の火災・漏えい事故は、平成6年頃を境に増加傾向に転じ、平成17年には過去最悪となる580件を記録している。このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される「危険物等事故防止対策情報連絡会」において策定された「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、事故に係る調査分析や事故防止技術の調査研究、各種情報の共有化を進めるとともに、各都道府県における事故防止の取組みなど、官民一体となって事故防止対策を推進していく必要がある(囲み記事「事故防止への取組み」参照)。 また、産業災害の背景要因として、厳しい経済状況下における人員や設備投資等の削減、雇用形態の変化や保守管理業務のアウトソーシング等が指摘されていることから、幅広い視点から実態を把握し、有機的に対策を講じるため、関係省庁とも連携して調査・検討を行い、再発防止を推進していくとともに、各事業所の実態に応じた安全確保を図るため、危険要因を把握して、これに応じた対策を講じることが必要である。
事故防止への取組み○ はじめに 危険物施設における事故件数は、平成6年頃を境にして増加傾向に転じました。平成17年は火災件数は減少に転じたものの、漏えい件数は大幅に増加し、事故全体の件数は平成16年より更に増加し、統計を取り始めてから過去最悪を記録しています。○ 危険物事故を防止するには 危険物施設における事故防止は緊急かつ重要な課題であり、事故の原因を的確に把握して対策を講じる必要があります。 現在、関係業界や消防機関等により構成される、危険物等事故防止対策情報連絡会において策定された「危険物事故防止アクションプラン」に基づき、官民一体となった総合的な事故防止対策を推進しています。(平成18年度危険物事故防止アクションプラン)の重点項目●製造所・一般取扱所等に潜んでいる火災危険要因の把握とこれに基づく安全対策●地下タンク、配管、屋外タンク等の腐食・劣化に関する評価手法の活用等による安全対策の推進●「やや長周期地震動」に対応した改修等耐震対策の推進と屋外タンク開放時等における事故防止対策の徹底●新たな火災危険性物質についての指定の見直しと火災予防対策の徹底○ 効果的に進めるために より実効性のある事故防止対策を進めていくには、各都道府県レベルでの取組みが必要不可欠であり、都道府県危険物事故防止連絡会の設置や、同連絡会を通じての地域の実情や実態にあわせた事故防止対策の推進をお願いしています。
(2)危険要因の抽出と把握 効果的・効率的に事故防止を図るためには、過去の危険物事故等を教訓とし、的確に危険要因を抽出しておくことが必要であり、危険物事故や事故防止に関する情報を広く収集・分析して関係者の間で共有することが重要である。このため、危険物等の性状や消防活動要領等をデータベース化した「危険物災害等情報支援システム」、消防機関からの事故報告をデータベース化した「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告オンライン処理システム」の拡充を推進していく必要がある。
(3)腐食・劣化への対策 近年における漏えい事故増加については、危険物施設の老朽化等に伴う腐食・劣化が大きな要因となっていることから、危険物施設に係る腐食・劣化に関する健全性評価手法の確立を図るため、評価手法の開発やデータベースの整備等を進めていく必要がある(囲み記事「危険物を貯蔵するタンクの腐食・劣化に係る評価手法について」参照)。
危険物を貯蔵するタンクの腐食・劣化に係る評価手法について 原油、ガソリン、重油等の危険物を貯蔵するタンク等の材料として用いられる金属材料は、内容物又は外部環境の影響により腐食・劣化するおそれがあります。 これらのタンクを含む危険物施設に対しては、腐食・劣化等により漏えい、火災が発生しないよう定期点検が義務付けられていますが、危険物施設からの危険物の漏えい件数は平成6年頃を境に増加傾向にあり、特に腐食・劣化によるものはこれらの約30%を占めていることから、危険物の漏えい・拡散による火災危険等の増大が懸念されています。 このような状況から、危険物施設の事故防止を図るため、危険物施設の腐食・劣化がどの程度進行しているのかを評価することのできる手法の開発が求められているところです。 このため消防庁では、平成16年度からの3か年度において、「危険物施設に関する腐食・劣化評価手法の開発・導入環境整備」に係る調査検討を行っています。そこでは、腐食していることが外部からわかりにくい地下貯蔵タンク及びその埋設配管並びに屋外貯蔵タンクの底板を対象としており、これらの評価手法の確立を目指しています。 地下貯蔵タンク及びその埋設配管については、土壌診断を用いた統計的手法(土壌中の水素イオン濃度、土壌比較抵抗値、土壌水分含有率、酸消費量、アルカリ消費量、イオン濃度及び塩化物イオン濃度等と腐食・劣化の程度との関連性を調査するもの)により腐食・劣化を評価する手法を確立することを目的として、漏えい事故のあったタンクや配管とその周囲の土壌環境の調査を実施し、これらの相互関係によって腐食のしやすさを統計的に分析し、評価手法の確立を目指しているところです。 屋外貯蔵タンクについては、AE(アコースティック・エミッション)法という手法を用いて、腐食・劣化による漏えい危険性が比較的高いタンク底板の腐食・劣化評価手法に係る調査検討を行っています。 AE法とは、材料の変形、亀裂が発生する際に、材料がそれまでに蓄えていた歪みエネルギーを弾性波として放出する現象(アコースティック・エミッション)を材料表面に設置したAEセンサーで検出し、信号処理を行うことにより材料の破壊過程を非破壊で評価する手法のことをいいます。 検出されるAE信号の発生源は大きな体積膨張を伴う腐食生成物の発生に起因する剥離又は割れの音であり、腐食部分に集中して発生するといわれています。 AE法は、現在、イギリス、フランスなどの西欧主要国において、タンク底部の状態を評価する試験法として一般的に利用されており、試験規格等が整備されつつあります。 現在、屋外貯蔵タンクに係る調査検討については、国内にあるタンクのAE法によるデータ収集を行うとともに、それらのタンクに係る底板の板厚データの収集を行っており、AEデータと板厚データの相関関係を分析し、そこから屋外貯蔵タンクにおける腐食・劣化評価手法の確立を目指しているところです。AE波の発生とセンサーによる検出のイメージ
(4)新規危険性物質の把握 科学の進展等に伴い数多くの物質が新たに開発・生産されており、危険物や指定可燃物と同様の性状を有していながらその潜在的危険性が認識されていない新規危険性物質の出現が懸念されるところである。 このため、新規危険性物質の早期把握に努め、火災・爆発等の防止を図っていく必要がある。
(5)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、新たな危険物品の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、諸外国で導入が進んでいる危険物施設に係る新しい安全性評価手法や危険物の分類に関する試験方法等に関する調査研究等を行うとともに、安全性の確保に十分配慮しつつ危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を図っていく必要がある。 また、燃料電池自動車への燃料供給のため、平成17年2月には政省令改正を行い水素ステーションの給油取扱所への併設などに係る技術基準を整備したところであるが、今後も新しい技術開発に対応して調査研究を行って、安全対策の確立を図り、燃料電池自動車の普及環境の整備を図っていく必要がある。 さらに、バイオマス燃料については、地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)等に基づき検討が進められ、平成18年3月31日にはバイオマスの利活用の現状と課題の検証を踏まえ、新たな総合戦略が策定された。その行動計画においては安全対策が新たに盛り込まれていることから、安全が確保されたバイオマス燃料の利活用を促進するため、安全対策の確立に係る調査検討を引き続き行っていく必要がある。
(6)津波・浸水対策 日本周辺における海溝型大規模地震に伴い発生することが予測される津波によって生じる危険物施設の被害軽減対策を確立するため、津波によって危険物施設にどのような被害が生じるかについて調査検討を行っていくとともに、台風等に伴う浸水によって危険物施設がどのような被害を被っているかについての調査及び検討等を行う必要がある。
第3節 石油コンビナート災害対策.[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成17年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は、144件であり、前年(150件)と比較すると6件の減少となっている(第1−3−1図)。第1-3-1図 石油コンビナート事故発生件数(種別ごと)の推移 全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、23件の災害により、死者4名、負傷者39名が発生している。損害額は6億1,223万円で、前年に比べて6,523万円の減少となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が75件(52.1%)、設備の劣化や故障などの物的要因が47件(32.6%)となっており、前年度と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が103件(うちレイアウト規制対象事業所90件)であり、全体の71.5%を占めている。1事業所当たりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が45.7%と最も高い(第1−3−1表)。第1-3-1表 特定事業所区分別災害件数
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、化学工業関係42件(全体の29.1%)、鉄鋼業関係39件(同27.1%)、石油製品・石炭製品製造業関係25件(同17.4%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質が大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律等による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立を図ることとしている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している地域については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の86地区(平成18年4月1日現在)が指定されている(第1−3−2図)。第1-3-2図 石油コンビナート等特別防災区域の指定状況 また、平成18年4月1日現在、第1種事業所400事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は194)、第2種事業所332事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料29のとおりである。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の整備指針」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を図っている。 平成18年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車99台、大型高所放水車82台、泡原液搬送車99台、泡消火薬剤3,430kl、消防艇26艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備28基、可搬式泡放水砲25基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成18年4月1日現在、全事業所(732事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか76の共同防災組織、58の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員5,093人、大型化学消防車130台、大型高所放水車86台、泡原液搬送車143台、大型化学高所放水車77台、油回収船34隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成18年4月1日現在、流出油等防止堤が184事業所に、消火用屋外給水施設が553事業所に、非常通報設備が 732の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」、「防災要員教育訓練指針」等を示しており、引き続き自衛防災体制の充実を図る。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特定事業所全体に占める割合は、石油にあっては55.1%、高圧ガスにあっては98.0%となっており、高圧ガスについては大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成18年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる197(平成17年4月1日現在)の事業所のうち平成17年度中の新設及び変更の届出件数は、21件であった。 また、平成17年度中の確認件数は、18件であった(第1−3−3図)。第1-3-3図 レイアウト規制対象事業所の新設等の届出及び確認の状況
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じた。さらに新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間は、石油コンビナート等災害防止法では3か月としているところを、関係省庁の協力を得て平均1か月としている。
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
6 石油コンビナート等災害防止法施行令等の一部改正(1)経緯 平成15年9月末に発生した十勝沖地震では、苫小牧市内の石油精製事業所において、多数の屋外貯蔵タンクの損傷、油漏れ等の被害が発生し、さらに、地震発生から約54時間が経過した後に浮き屋根式タンクの全面火災が発生した。 浮き屋根式タンクで発生する火災について、これまではリング火災を想定していたが、今後の我が国における地震の発生危険等を考慮すると、タンク全面火災にまで拡充することが必要となった。 この災害想定の拡充に対応するため、〔1〕消防力の充実強化(特定事業所に係る防災資機材の増強)、〔2〕防災体制の充実強化(防災管理者・防災規程等を中心とした体制の整備)に係る所要の規定整備を行うことが必要となり、消防庁では石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行った(平成16年6月2日公布)。 このうち防災体制の充実強化については、平成16年12月1日に施行され、防災規程の変更命令及び防災業務の改善措置命令に関する事項が新たに規定されたことに伴い、防災規程の変更命令及び防災業務改善措置命令に係る運用フローと防災規程作成指針及び防災規程作成指針の概説を示した。また、防災業務の実施状況を報告する定期報告について、報告書の提出に先立ち、防災業務の実施状況について確認をさせるための、防災業務実施状況チェック表及び防災業務実施状況チェック表細目を作成し、これに基づき特定事業所に報告書を作成させるよう、関係道府県あてに通知した。 一方、消防力の充実強化については、石油コンビナート等災害防止法施行令等の一部を改正し、大容量泡放射システムの配備を特定事業者に義務付けるとともに、当該システムを配備することができる広域共同防災組織を設置できる区域等について定め、平成17年12月1日に施行した。
(2)概要ア 改正内容(ア)大容量泡放射システムについて 大容量泡放射システムとは、主として大型の浮き屋根式タンク(可燃性液体貯蔵タンク)の全面火災に対応する資機材で、大容量泡放水砲、ポンプ、混合装置、泡消火薬剤、ホース等の資機材の総称である。 毎分1万リットル以上の放水能力を持つ当該システムは、現在配備されている大型高所放水車数台分の能力を有し、大型の浮き屋根式タンクの全面火災を早期に消火するために、必要不可欠な資機材とされている。 今回の改正では、消防力の充実強化のため、特定事業所に直径34メートル以上の浮き屋根式タンクを有する特定事業者は、その自衛防災組織に大容量泡放射システムを備え付けなければならないことを規定し、また、当該タンクの直径に応じた必要なシステムの能力について定めた。さらに、システムに必要な水利やシステムを構成する防災資機材の種類及び性能等について定め、そのうち泡消火薬剤については、消防庁告示として基準を示した(囲み記事「大容量泡放射システムに使用する泡消火薬剤について」参照)。(イ)広域共同防災組織について 大容量泡放射システムを配備するにあたり、特定事業者は特定事業者共同でより広域的な配備を可能とするための組織的受け皿である広域共同防災組織を設置することができることとされている。この広域共同防災組織を設置できる区域について、システムを配備すべき特定事業所が存在する全国の特別防災区域を12のブロックに分けて定めた。また、広域共同防災組織で行う防災業務について定めるとともに、当該組織が作成し行政機関へ届け出ることとなる広域共同防災規程に定める事項について規定した。イ 経過措置 大容量泡放射システムについては、政令で規定された性能を有するシステムを即座に配備することは事実上困難であることから、平成20年11月30日までに備え付けることとした。
大容量泡放射システムに使用する泡消火薬剤について 平成15年9月26日の十勝沖地震から約54時間が経過した後に北海道苫小牧市内の石油精製事業所において発生した浮き屋根式タンクの全面火災を踏まえ、特定事業所における消防力の充実強化を図るため、石油コンビナート等災害防止法が改正され、特定事業所の自衛防災組織等に、新たな防災資機材として大容量泡放射システム及び当該システムに適した泡消火薬剤の配備が義務付けられました。 タンク火災において大容量泡放射システムを用いて外部から泡を投入する消火方法に使用する泡消火薬剤には、耐油汚染性、耐火性、耐密封性が必要であり、また、有効な発泡倍率及び還元時間が必要となります。 よって、これらの性能を適切に評価・判定するため、大容量泡放射システムの消火方法を踏まえた泡放射方式(※1)、火皿の面積(※2)、試験ノズル(※3)、予燃焼時間(※4)による泡性状の測定、消火試験方法及び判定基準となる泡性状、消火性能(消火試験、耐火性試験及び密封性試験)等について「危険物に適合した泡消火薬剤の検証方法の確立に資する調査検討委員会(委員長:独立行政法人消防研究所(現消防研究センター)研究統括官 松原美之氏)」において実験・検討を行い、当該検討を踏まえた上で「大容量泡放水砲用泡消火薬剤の基準」を消防庁告示として示しました。消火試験中の写真 大容量泡放射システムに使用する泡消火薬剤は、泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(以下「規格省令」という。)に定める試験方法でなく、上記に示す試験方法により試験を行うことが必要になります。 なお、当該泡消火薬剤についても検定を行うことが必要なことから、新たな技術開発等に基づく製品に柔軟に対応することを目的とした規格省令第17条の基準の特例を用いることにより、「大容量泡放水砲用泡消火薬剤」としての型式承認を受けたものが、平成20年11月末までに、大容量泡放射システムと同様、特定事業所に備え付けられていくこととなります。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 総合的な災害対策の推進 石油コンビナート等特別防災区域は、大量の危険物等が集積している区域で、ひとたび火災等が発生した場合には甚大な被害となることが懸念されることから、消防法や高圧ガス保安法等の規制に加えて石油コンビナート等災害防止法により、特定事業者に対して自衛防災組織の設置の義務付けや事業所内の施設配置を規制(レイアウト規制)することにより、災害の拡大防止を図ることとしている。 また、同法により、道府県に防災本部が常設されており、消防機関をはじめとした防災関係機関、特定事業者が一体となって防災体制を確立する体制が整備されている。 こうした中、平成15年に発生した苫小牧市内の石油精製事業所の事故を受け、石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行い、新たな防災体制の充実強化及び消防力の充実強化を取り入れた。このうち消防力の充実強化については、石油コンビナート等災害防止法施行令の一部を改正し、大容量泡放射システムの配備を特定事業者に義務付けることにより、従来よりも防災対策を強化し、災害対応に努めることとしている。
(1)石油コンビナート等災害防止法の一部改正に伴い検討すべき事項ア 特定事業所における防災体制の充実強化に伴い検討すべき事項 市町村長等は特定事業者に対して、防災業務の改善措置命令及び防災規程の変更命令を行うことができることとされたことにより、改正後における当該命令の実施状況を把握すること、また、特定事業者が行う定期報告制度について、最初の報告を平成17年4月1日から平成18年3月31日までとしていることから、当該報告の内容について調査を実施することにより、特定事業所の防災体制の現状を把握し、必要な指導、助言等を行っていく必要がある。イ 大容量泡放射システムの配備に伴い検討すべき事項 浮き屋根式タンクの全面火災に対応するための大容量泡放射システムが特定事業所に配備することとされたが、当該防災資機材は、システム全体で運用されるため、導入の際には、個別の性能を満たしているのはもちろんであるが、システムとして設定した際に有効な消火活動ができるかの確認、検証をした上で、石油コンビナート等防災計画の修正を行う必要がある。そのため、関係防災機関の体制について整備する必要がある。 また、当該システムは2以上の道府県をわたって配備されることから、各道府県や関係防災機関が一体となった、新たな広域的な防災体制のあり方について検討する必要がある。
(2)浮き屋根式タンクの地震に対する安全性について 平成15年9月の十勝沖地震による浮き屋根式タンクの浮き屋根の損傷は、「やや長周期地震動」の影響によるものと考えられ、苫小牧地区の地盤構造特性により影響を受けたものと推定される。 「やや長周期地震動」とは、主に表面波から構成される周期3秒〜15秒程度の地震動であり、石油タンクのスロッシング(液面の揺動)に強い影響を与える。震源特性(震源深さ、規模、破壊過程など)と伝播特性(堆積層の影響)により、他の地域においても同様の被害が起こる可能性も否定できないことから、消防庁では浮き屋根耐震機能確保のため、技術基準(関係省令・告示)の改正を行い、平成17年4月1日から施行されたところである。 平成17年度からは、技術基準に適合しない浮き屋根の改修を円滑に推進するため、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの揺動実験による検証等を行い、浮き屋根に係る合理的な改修方法について検討を行っており、平成18年度末までに合理的な改修方法の確立を図ることとしている。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団(現独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万klを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
危険物施設の津波・浸水対策についての検討 発生が懸念されている東海地震、東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大地震においては、津波により大きな被害が発生するおそれがあります。我が国の沿岸部には、規模の大きい屋外タンクをはじめとする危険物施設が存在していますが、その津波による被害については未解明の部分も多く、その対策は万全とはいえません。津波の発生時には、浮き上がり、滑り、転倒及び座屈による破壊並びに漂流物等による破壊などによる火災や漏えいの発生、さらには漏えいした油が周囲に流出するという二次被害の発生が懸念されています。 現に、海外においては、大規模地震に伴う津波によって屋外タンクが破壊されるという大きな被害が発生しているところであり、平成18年2月の中央防災会議において取りまとめられた「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震大綱」においても、石油等の貯蔵施設が津波により損傷し、石油等が漏えいすることによる被害拡大を防ぐため、国等は漏えい防止措置等の拡散防止対策の強化を推進する、とされているところです。 また、大型台風による急激な浸水で屋外タンクが破壊された結果、流出した油の影響が住宅街へも及んだという事例も海外で生じています。 消防庁では、平成18年度から、地震に伴い発生する津波や台風などによる浸水に対する危険物施設の被害予測や被害の軽減を図るための対策について調査検討を行っています。インド洋スマトラ沖地震に伴う津波による被害のあった屋外タンク
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成17年中の林野火災の件数は、2,215件(前年2,592件)、焼損面積は1,116ha(同1,568ha)、損害額は8億6,816万円(同8億916万円)であり、件数、焼損面積は前年に比べ減少したが、損害額は前年に比べ増加した(第1−1−26表)。第1-1-26表 林野火災の状況 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜取りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成17年も例外ではなく、4月に596件と最も多く発生しており、3月から5月までの間に、1,238件(年間の55.9%)の火災が集中して発生している(第1−1−31図)。第1-1-31図 林野火災の月別出火件数
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、 〔1〕 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防 〔2〕 火災予防の見地からの林野管理 〔3〕 消防施設等の整備 〔4〕 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成17年度までに、38都道府県の708市町村にわたる228地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場)の整備に対して国庫補助を行っている。 なお、従来は国庫補助が行われていた林野火災対策用資機材、林野火災工作車及び小型動力ポンプ付水槽車については、平成17年度に三位一体改革による税源移譲に伴い、国庫補助対象ではなくなった(第1−4−1表)。第1-4-1表 国庫補助金による林野火災用消防施設等の整備状況
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より低いものの、ひとたび発災し、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等へ被害が及ぶこともあり、ときには隣接市町村、隣接都府県に拡大することがある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、迅速に十分な消防力の投入を行うとともに、火災による被害を最小限に抑えることを目的として、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。近年、消防防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」(昭和61年)に基づく消防防災ヘリコプターの応援出動による空中消火が増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1−4−1図のとおりである。 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保するとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。第1-4-1図 空中消火の実施状況
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、併せて、林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策としては、特に出火防止の徹底が重要である。消防庁としては、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。 〔1〕 林野周辺住民、入山者等の防火防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。 〔2〕 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。 〔3〕 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。 〔4〕 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じた山火事予防を呼びかけている。
(2)火災警報の運用の工夫 市町村は、都道府県を通じて火災気象通報を受けたとき又は気象の状況が火災の予防上危険であると認めるときは、火災警報を発令して火気の使用等の制限を行うことができる。しかしながら、火災気象通報の発表地域は県内全域など広範囲なことが多く、市町村の気象状況に対応した火災警報の発令が困難な面がみられた。そのため、消防庁と気象庁が連携し、消防本部で観測した湿度等のデータを気象庁側に提供することにより、気象台が発表する火災気象通報の区分をよりきめ細かく行う「火災気象通報の運用改善に伴う火災警報の効果的な活用の試行」を、平成16年度から、岩手・栃木・山口・熊本の4県を選定し、開始した。 また、平成16年度末からの試行においては、市町村(消防本部)での活用に資するため、火災気象通報の発表単位を二次細分区域からさらに細かい、消防本部単位での発表へと改めた。さらに、平成17年度には、従来の4県に加え、新たに新潟、三重、広島の3県をモデル県として追加し、平成18年4月末まで試行を行った。 今後は、消防庁と気象庁において、関係各県及び気象台から提出される試行の実施報告を取りまとめ、本格実施に向けて、運用面や技術面での課題及び改善点等についての整理・検討を行っていく予定である。
(3)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、〔1〕異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、〔2〕森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、〔3〕林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、〔4〕林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、〔5〕林野火災における消火・広域応援体制に関する調査、〔6〕林野火災の予防対策のあり方やヘリコプターによる空中消火のあり方についての検討を行っている。 また、平成16年度には、関係省庁、林野火災多発地方公共団体、全国消防長会等で構成する「林野火災の有効な低減方策検討会」を開催し、林野火災の主な原因である人的失火を抑制し、林野火災を低減させる方策についての検討を行い、この結果を受け、平成17年8月に、火災予防条例(例)の一部を改正し、火災に関する警報の発令中における火の使用の制限について、「山林、原野等の場所で、火災が発生するおそれが大であると認めて市(町・村)長が指定した区域内において喫煙をしないこと」を追加した。平成18年度については、林野庁と共同して消防活動等を行う関係機関間の情報共有・伝達のあり方や、無人航空機(UAV)の利用可能性など、広域的な林野火災発生時における消防活動体制のあり方について検討することとしている。
第8回「全国山火事対策シンポジウム」の開催1 第8回「全国山火事対策シンポジウム」の開催(1)期 日 平成17年11月18日(金)(2)場 所 東京グランドホテル(3)主 催 山の緑を守るネットワーク協議会   共 催 消防庁、林野庁   後 援 内閣府、気象庁、全国市長会、全国町村会2 概 要 「山の緑を守るネットワーク協議会」の主要な事業である「全国山火事対策シンポジウム」は、平成17年度に第8回目を迎え、消防庁及び林野庁による共催形式として開催されました。 今回のシンポジウムでは、メインテーマを「ストップ・ザ・林野火災」と題し、「焼失面積の拡大阻止と火災に強い山づくり」をサブテーマに、山火事防止と自然環境保全の大切さを再認識することを目的として、基調講演、パネルディスカッションが行われました。 シンポジウムには、防災及び消防関係者並びに治山関係者をはじめ、全国から約170人の方々が参加され、医師であり、登山家でもある今井通子氏を講師としてお招きし、「森林とのつきあい、環境を守る」というテーマのもと、森林保護を通じた環境保全、森林と人との共生の意義についての基調講演が行われました。 また、パネルディスカッションでは、コーディネーター役である山下邦博氏(消防大学校客員教授)が、日本の林野火災の現状に関して、スライドを使用したポイント解説を行いました。その後、林野火災の重要対策である焼失面積の最小限化、火災発生時の対応並びに被災跡地の復旧対策について、消防行政や林野行政の現場にて大規模林野火災を経験しているパネリストの方々から、それぞれの経験を踏まえた提言や今後の対策に関する発言が行われるとともに、専門的知見を有するオブザーバーの方々も加わり、積極的な意見交換や質疑が行われました。全国山火事対策シンポジウム開催状況
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後積極的に講じる必要がある。 〔1〕 気象台から発せられる気象情報や火災気象通報を踏まえて、林野火災発生の可能性を勘案し、必要に応じて火災警報の効果的な発令を行うなど、火気取扱いの注意喚起や制限を含めて適切に対応すること。 〔2〕 各地方公共団体における火災警報の発令に役立てていくため、今後火災気象通報における地域区分の細分化に関する取組みを促進していくこと。 〔3〕 林野火災を覚知した場合、早急に近隣の市町村に対して応援要請を行うなど、林野火災の拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するため、速やかな事前通報及び派遣要請に努めるとともに、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術の徹底を図ること。また、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。 〔4〕 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図を、GIS(地理情報システム)の活用も視野に入れて整備するなど、関係部局においてその共有を図ること。 〔5〕 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。 〔6〕 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大防止を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。愛媛県今治市の林野火災(平成17年5月)(今治市消防本部提供)ヘリコプターによる空中消火(仙台市消防局提供)
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成17年中の災害 平成17年は、6月28日の北陸地方を中心とする大雨、7月1日から6日にかけての中国及び四国地方を中心とする梅雨前線による集中豪雨、7月8日から10日にかけての東海及び九州地方を中心とする梅雨前線による集中豪雨、8月の台風第11号及び9月の台風第14号と前線による大雨等により、全国各地に甚大な被害をもたらした。 平成17年中に発生した台風の数は23個と、平年(昭和46年から平成12年までの30年間平均)の26.7個と比較すると少なかったが、日本列島への上陸数は3個とほぼ平年並みであった。 平成17年中の風水害等(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、前年に比べて減少し、死者・行方不明者147人(前年259人)、負傷者1,545人(同3,307人)、全壊1,246棟(同1,494棟)、半壊3,933棟(同16,708棟)、一部破損6,145棟(同96,133棟)となっている(第1−5−1図)。第1-5-1図 風水害等による被害状況 なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−1表)。第1-5-1表 平成17年中の主な風水害による被害状況
(2)平成18年1月から10月までの災害 平成18年10月までに発生した台風の数は、19個であり、このうち、日本列島への上陸数は2個である。 風水害に伴う人的被害、住家被害は、死者・行方不明者42人、負傷者519人、全壊392棟、半壊1,564棟、一部破損1万102棟となっている(平成18年10月31日現在)。 なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−2表)。第1-5-2表 平成18年中(1〜10月)の主な風水害による被害状況
[風水害対策の現況] 我が国では、台風や低気圧、前線などの集中豪雨等による風水害が毎年のように発生し、広い地域で大きな被害がもたらされている。そのため、中央防災会議において防災基本計画の風水害計画編等の修正が行われているが、消防庁では、平成14年4月の修正を受け洪水予報河川の指定、土砂災害警戒区域の指定及び洪水や高潮ハザードマップの作成など、また平成17年7月の修正を受け避難準備情報の活用、中小河川における洪水情報の提供、浸水想定区域におけるハザードマップを通じた洪水予報等の伝達方法などについて、地域防災計画の修正を行うよう地方公共団体に要請している。また、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や、地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制の整備についても要請している。 また、内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁をはじめとした関係省庁では、〔1〕防災情報の迅速かつ確実な伝達・提供、〔2〕災害時要援護者の避難体制の確保、〔3〕総合的な治水対策、〔4〕観測予報体制の充実強化のほか、ボランティア活動の支援強化、緊急消防援助隊の整備促進など36項目を課題として掲げ、局長会議や「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」を開催し、平成17年3月に、「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討報告」を取りまとめた。 そして、この検討報告の中で、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」及び「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が示された。「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」は、〔1〕避難すべき区域及び判断基準(具体的な考え方)を含めたマニュアル作成の進め方、〔2〕避難勧告等の伝達手段の整備、伝達内容について注意すべき事項等を示し、市町村が「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」を作成する際の指針となっている。また、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」では、〔1〕情報伝達体制の整備(災害時要援護者支援班の設置、防災関係部局と福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者との間の連携強化)、〔2〕災害時要援護者情報の共有(同意方式、手上げ方式、関係機関共有方式等による平時からの情報共有)、〔3〕災害時要援護者の避難支援計画の具体化(災害時要援護者一人ひとりの避難支援プランの策定)等について示された。その後、上記3項目の更なる充実とともに、〔4〕避難所における支援、〔5〕関係機関等の間の連携に関する検討も加える内容のガイドラインの改訂が、平成18年3月に行われた。 これを受けて、消防庁では、全国の市区町村における避難支援プラン作成への取組みが一層推進されるよう、平成17年度に「災害時要援護者の避難支援プラン策定モデル事業」を実施した。モデル地域として選定した10市町の協力を得て、災害時における高齢者や障害者等災害時要援護者の避難について、福祉部局と連携した情報共有や実践的な訓練の実施等、詳細な報告を受け、その報告を参考に避難支援プラン作成のノウハウを整理して、平成18年4月に「災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて」を手引きとして取りまとめ、地方公共団体に提供した。 また、関係省庁間において、引き続き災害時要援護者の支援体制の整備を図っていくため、避難後の避難所での生活支援等について検討を行っている。具体的には、〔1〕災害時要援護者の種別ごとに考慮すべき、自治体、関係企業等の間での情報伝達・共有、医療・福祉サービスの提供方策、〔2〕避難所において要援護者ごとに配慮すべき対策や関係企業等の間での連携方策、〔3〕避難所生活において特別な配慮を要する者のための福祉避難所の設置・活用促進や、自治体、関係企業等が取り組むべき事項及び災害時の対応要領等について検討を行っている。 なお、消防庁では、毎年、出水期を前に、各都道府県に対し、風水害に対する警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知の発出を行うほか、台風の襲来時における台風警戒情報、災害の発生が予想される際の警戒情報などを地方公共団体に送付して、警戒・避難体制の強化を呼びかけている。 さらに、平成17年度中において、風水害を想定した防災訓練が、都道府県では29団体で44回、市町村では延べ855回実施されている。
(1)洪水 近年、時間雨量80mmを超えるような猛烈な雨が頻発し、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど、大きな被害が発生する例が増えている。 平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨や福井豪雨をみると、停滞した梅雨前線に次々と湿った空気が流入し、非常に激しい雨が短時間で狭い範囲に降った結果、中小河川が破堤し、河川に隣接する住宅地一帯が浸水するなどの被害が発生した。特に、高齢者が自力で避難することができず、自宅で死亡するケースや、保育所に園児が孤立し、ヘリコプターで救助が行われるような例などから、災害時要援護者をはじめとした住民が安全かつ的確な避難を行うための、情報収集・伝達体制や避難体制の整備等が、重要な課題として明らかになった。 また、近年、都市部で集中豪雨が発生すると、排水能力の限界から水が溢れたり、さらには地下街や地下室へ水が流れ込むなどにより、福岡市や東京都内の地下空間において水死者が発生している。こうした事を背景に、著しい浸水被害が発生するおそれがある都市部を流れる河川及びその流域について、総合的な浸水被害対策を講じるため、流域水害対策計画の策定、河川管理者による雨水貯留浸透施設の整備、雨水の流出の抑制のための規制、都市洪水想定区域等の指定・公表等を盛り込んだ特定都市河川浸水被害対策法が、平成16年5月から施行され、同法に基づき3河川が特定都市河川に指定(平成18年11月1日現在)されている。 また、洪水による被害を軽減させるため、平成13年6月に、〔1〕これまで国直轄河川で行われていた洪水予報を新たに都道府県が管理する河川についても行うこと(平成18年9月1日現在38水系67河川(1湖沼含む)を指定)、〔2〕国及び都道府県は浸水想定区域を指定及び公表すること、〔3〕市町村は浸水想定区域ごとに洪水予報の伝達方法、避難所等を定め、住民に周知させるよう努めること等を主旨とする水防法の一部改正が行われた。 さらに、平成17年5月には、〔1〕浸水想定区域を指定する河川の範囲拡大、〔2〕浸水想定区域が指定された市町村におけるハザードマップの作成・周知の義務付け、〔3〕中小河川における洪水予報等の提供の充実、〔4〕水防協力団体制度の創設、〔5〕非常勤の水防団員に係る退職報償金の支給規定の創設、〔6〕浸水想定区域及び土砂災害警戒区域における警戒避難体制の充実等を内容とした「水防法及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の一部改正が行われた。 このような水防法の改正の趣旨を踏まえ、消防庁としては地方公共団体に対し、地域における水害や土砂災害の防止対策を図るとともに、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。
(2)土砂災害 がけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害はこれまでに多く発生しており、近年では、平成15年7月の豪雨による熊本県水俣市ほかの土砂災害、平成16年8月の台風第15号による愛媛県新居浜市ほかの土砂災害や同年9月の台風第21号による三重県宮川村や愛媛県西条市ほかでの土砂災害、平成18年7月豪雨による長野県や鹿児島県など各地で発生した土砂災害により、多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきており、土砂災害危険箇所の周知徹底等、特に重点的に推進すべき事項について、関係省庁による申合せがなされている。 また、中央防災会議においては、特に、効果的な事前周知、気象情報等の収集伝達体制の強化という観点から、豪雨災害対策のあり方について検討が行われ、気象情報の収集体制の強化等、重点的に進めるべき豪雨災害対策について提言がなされた。 さらに、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある区域において一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が、平成13年4月に施行された。この法律に基づき、「土砂災害防止対策基本指針」が定められた。 その後、平成17年の「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の改正や、近年の集中豪雨等による土砂災害の多発により、多くの死者・行方不明者が発生したことを踏まえ、警戒避難体制等のより一層の充実が必要となっていることから、平成18年9月に同指針が変更され、「土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域の指定の促進」及び「警戒避難体制の整備等」などの記載が追加された。 このような同法及び同指針の制定・改正の趣旨を踏まえ、消防庁としては地方公共団体に対し、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。 また、国土交通省及び気象庁では、平成17年6月、大雨による土砂災害の発生が見込まれる際に、市町村長が発令する避難勧告等の判断の支援や住民の自主避難の参考となるよう、都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」についての基本的な考え方や運用に向けて整えるべき事項等を取りまとめた「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成、発表するための手引き」を都道府県に配付した。このことを受け、平成17年9月に、鹿児島県において全国で初めて土砂災害警戒情報の発表を開始し、平成18年中には沖縄県、島根県、山形県、大阪府、広島県、長崎県及び宮崎県でも土砂災害警戒情報の発表を開始した。
(3)高潮 消防庁では、平成11年9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定している。 平成16年8月の台風第16号では、1年で最も潮位が高くなる大潮の時期に加えて満潮とも重なり、観測開始以来の最高潮位を60cm近くも超えるところが出るなど、香川県・岡山県・広島県等の瀬戸内地区を中心に、床上浸水など相当数の高潮被害が生じている。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等による風水害による人的被害の発生を防ぐためには、防災訓練の実施や防災知識の普及啓発等を進めるとともに、平成17年度の災害等を踏まえ次のような対策の推進が求められている。
(1)避難勧告等の発令・伝達ア 避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成 「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を参考に、市町村において「避難準備(災害時要援護者避難)情報」を位置付けるほか、災害緊急時にどのような状況において、どのような対象区域の住民に対して避難勧告等を発令するべきかの客観的な判断基準等について定めた避難勧告等の判断・伝達マニュアルの早急な整備が必要である。 また、避難の勧告・指示は、災害の状況及び地域の実情に応じ、防災行政無線や消防団、自主防災組織をはじめとした効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達するとともに、早期自主避難の重要性について周知する必要がある。 さらに、同一の水系を有する上下流の市町村間については、相互に避難報告等の情報が共有できるよう連絡体制についても整備の必要がある。イ 放送事業者との連携体制の整備 災害時における連絡方法、避難勧告等の連絡内容等について放送事業者とあらかじめ申し合わせるとともに、関係機関の防災連絡責任者を定めたリストを作成し共有するなど、放送事業者と連携した避難勧告等の伝達体制の確立が必要である。ウ 防災行政無線の整備 気象情報の的確な収集を行うため、緊急防災情報ネットワーク、各種の防災気象端末等の活用を図るとともに、他の防災機関等との連携を図り、休日・夜間も含め、防災関係機関相互間及び住民との間の情報収集・伝達体制の整備を行うことが必要である。このため、防災行政無線(同報系)の整備等を図る(第2章第9節参照)とともに、実際の災害時に有効に機能し得るよう、通信施設の整備点検を行うことが重要である。エ 防災情報の連絡体制等 都道府県から市町村に対する避難勧告等に関する意思決定の助言、気象官署、河川管理者と市町村との間でのホットラインの構築、気象官署から都道府県への要員派遣等、国・都道府県・市町村間の連携強化・情報共有を図る体制を整備する必要がある。オ 土砂災害警戒情報の推進 市町村における避難勧告の発令等に活用されるよう早期に土砂災害警戒情報の運用に取り組む必要がある。
(2)避難体制の整備ア 災害時要援護者の避難誘導体制の整備 「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」及び「災害時要援護者避難支援プラン策定に向けて」を参考に、市町村において福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者等と連携の下、災害時要援護者一人ひとりに対して複数の避難支援者を定める等、具体的な避難支援計画(避難支援プラン)の早急な整備が必要である。 なお、災害時要援護者関連施設については、立地条件の把握、施設周辺のパトロール体制の確認をはじめ、施設への平常時、緊急時における適切な情報提供、的確な避難誘導体制等の再点検を行うなど、警戒避難体制等の防災体制の整備が必要である。イ 避難路・避難所の周知徹底及び安全確保等 住民が円滑かつ安全に避難できるよう、避難路・避難所を地域住民に周知徹底するとともに、豪雨災害等の特性を踏まえた、避難路・避難所の安全性の確保、移送手段の確保及び交通孤立時の対応について配慮する必要がある。
(3)災害危険箇所に対する措置 例年、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域等の指定区域以外の箇所においても土砂災害が発生していることから、地形、地質、土地利用状況、災害履歴、最近の降雨状況等を勘案し、従来危険性が把握されていなかった区域もあわせて再点検を行い、標識の配置、広報誌、パンフレット、ハザードマップ、地区別防災カルテ等の配布、インターネットの利用、説明会の開催等により、地域住民への周知徹底を図る必要がある。
(4)二次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、災害対策基本法に基づく警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては、十分な警戒等を行うことが必要である。
(5)自主防災組織の育成等 風水害による被害を最小限にとどめるためには、防災機関の活動のみならず、住民自らの災害に対する日常の備えが不可欠であり、地域の防災対策を担う自主防災組織の育成強化を進める必要がある。台風14号と豪雨による被害(平成17年9月)(宮崎市消防局提供)救助活動の様子(宮崎市消防局提供)長野県岡谷市土石流災害(平成18年7月)〜行方不明者の捜索長野県岡谷市土石流災害(平成18年7月)〜中央高速道下付近
第6節 火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向](1)平成17年中の災害 三宅島では、山頂火口から二酸化硫黄を多量に含む火山ガスが依然として放出され続けており、二酸化硫黄の放出量は、平成16年秋以降、日量2千〜5千t程度で依然として多い状態が続いている。
(2)平成18年中の災害 三宅島では、山頂火口からの二酸化硫黄を多量に含む火山ガスの放出が続いており、二酸化硫黄の放出量は、平成18年中は、日量1千〜3千t程度で依然として多い状態が続いている。 桜島では、6月に南岳東斜面の昭和火口で噴火が発生するなど噴火活動が活発となったが、8月以降は小康状態となっている。なお、昭和火口での噴火は昭和21年以来であった。
[火山災害対策の現況] 平成15年1月の火山噴火予知連絡会において活火山の定義が見直されたが、新たな定義によると、我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が存在する。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの流出、津波等多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や火山噴火予知計画(文部科学省科学技術・学術審議会建議)による火山を有する地域の市町村に対し、ヘリコプター離着陸用広場、退避壕及び退避舎といった避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。三宅島噴火災害においては、平成14年度の活動火山対策避難施設クリーンハウス(退避舎)に対する約7億円の補助や平成16年度の高感受性世帯への小型脱硫装置の整備に対する約1億円の補助を行った。 さらに、平成12年に生じた有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップ(噴火などの火山活動により災害が発生した際、地域住民が迅速に避難できるよう、被害が想定される区域や被害の程度、さらには避難場所、避難経路等の情報を示した地図)の作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための防災行政無線(同報系)の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。その一方で消防庁は、平成13年から富士山火山防災協議会に参画するとともに、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」の開催を行っている。 平成13年度からは、富士山火山防災協議会の下に設置された富士山ハザードマップ検討委員会において、富士山防災対策の基本となる火山ハザードマップの作成に関する検討等が進められ、平成16年6月に報告がまとめられた。なお、引き続き新たに、富士山火山広域防災検討会が設置され、そのなかで広域的な火山防災体制の確立のための検討が行われ、平成17年7月に「富士山火山広域防災対策検討会報告書」が取りまとめられた。また、平成18年2月の中央防災会議において、今後の富士山火山広域防災対策を積極的に推進することを目指した「富士山火山広域防災対策基本方針」を決定した。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で74団体が整備している。 また、これらの団体においては、適宜見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。現在、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳の8火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、これらのうち7つの協議会においては、それぞれ火山の爆発に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。 また、消防庁では、平成14年度に、山体の大きな富士山における火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成17年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県5団体で延べ8回、市町村では延べ33回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
(4)火山活動度レベルの活用 異常な火山現象が認められた場合には、「緊急火山情報」、「臨時火山情報」、「火山観測情報」といった火山情報が気象庁から発表されているが、この火山情報をより分かりやすくする趣旨から、火山活動の程度を客観的な数値指標で表した「火山活動度レベル」が、平成15年11月から、浅間山、伊豆大島、阿蘇山、雲仙岳、桜島の5火山で導入された。また、平成17年2月から、吾妻山、草津白根山、九重山、霧島山(新燃岳、御鉢)、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島の7火山が追加となり、現在では12火山で提供されている。 この制度は今後逐次、他の火山にも導入されていくこととなるが、関係地方公共団体においては、レベルに応じた適切な防災対応に配慮することが望まれる。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を引き続き推進していくことが重要である。特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布するなど、平常時から防災情報を積極的に提供することが、住民の防災意識の高揚を図ることにつながる。 消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。 また、内閣府、国土交通省及び気象庁とともに、平成13年7月から富士山ハザードマップ検討委員会を設置し、火山ハザードマップの内容を検討してきた結果、平成16年6月に「富士山火山防災マップ」(火山ハザードマップとそれに対する各種防災情報(避難所の位置、連絡先や災害発生時にとるべき行動等)を記載したマップ)として試作版を提示した(第1−6−1図)。第1-6-1図 富士山火山防災マップ なお、平成12年の有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
(2)住民への情報伝達体制の整備 緊急火山情報や臨時火山情報をはじめとする火山情報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、84.9%(平成18年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告や指示を行う必要がある。また、あらかじめ、情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておくことが必要である。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日頃から連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じ、登山規制、立入規制等の措置を速やかにとることができるように、関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成17年1月から12月までの間に震度1以上が観測された地震は、1,712回(前年2,257回)でこのうち、震度4以上を記録した地震は49回(前年105回)で、いずれも前年を下回った(第1−7−1表)。第1-7-1表 近年の地震発生状況(震度1以上)
(1)平成17年以降の主な地震の概要 平成17年中の震度4以上を記録した地震は、第1−7−4表のとおりであり、平成17年1月から平成18年10月までの主な地震災害の概要は、以下のとおりである。第1-7-4表 平成17年1月から平成18年10月までの国内の主な地震災害 ア 福岡県西方沖を震源とする地震 平成17年3月20日10時53分頃、福岡県西方沖を震源とするマグニチュード7.0の地震が発生した。 この地震により、福岡県福岡市、前原市、佐賀県みやき町で震度6弱、福岡県須恵町、新宮町、志摩町、大川市、碓井町(現:嘉麻市)、春日市、久留米市、久山町、粕屋町、二丈町、穂波町(現:飯塚市)、佐賀県上峰町、白石町、七山村(現:唐津市)、長崎県壱岐市で震度5強、福岡県大野城市、若宮町(現:若宮市)、高田町、福津町(現:福津市)、柳川市、篠栗町、志免町、遠賀町、宗像市、大島村(現:宗像市)、小郡市、朝倉町、浮羽町(現:うきは市)、大木町、那珂川町、宇美町、中間市、直方市、飯塚市、筑穂町(現:飯塚市)、大刀洗町、添田町、佐賀県久保田市、千代田町(現:神埼市)、白石町、小城市、唐津市、鳥栖市、諸富町(現:佐賀市)、川副町、神埼町(現:神埼市)、嬉野町(現:嬉野市)、多久市、大和町(現:佐賀市)、三田川町(現:神埼市)、三瀬村(現:佐賀市)、江北町、東与賀町、北方町(現:武雄市)、大分県中津市で震度5弱を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が8回観測された。 この地震による被害は福岡県を中心に、死者1人、負傷者1,204人、住家の全壊144棟、半壊353棟、一部破損9,340棟となっている(平成18年9月30日現在)(第1−7−2表)。第1-7-2表 平成17年福岡県西方沖を震源とする地震の被害の状況 特に福岡市西区の玄界島においては、住家の全壊107棟、半壊46棟と被害が著しく、大多数の島民が島外に避難した。 イ 宮城県沖を震源とする地震 平成17年8月16日11時46分頃、宮城県沖を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生した。この地震により宮城県川崎町で震度6弱、宮城県石巻市、涌谷町、田尻町(現:大崎市)、小牛田町(現:美里町)、栗原市、登米市、東松島市、仙台市、名取市、蔵王町、岩手県藤沢町、福島県国見町、川俣町、相馬市、新地町、鹿島町(現:南相馬市)で震度5強、宮城県古川市(現:大崎市)、気仙沼市、大郷町、大衛村、加美町、松山町(現:大崎市)、鹿島台町(現:大崎市)、南郷町(現:美里町)、女川町、志津川町(現:南三陸町)、歌津町(現:南三陸町)、塩竃市、白石市、角田市、岩沼市、大河原町、村田町、柴田町、亘理町、山元町、岩手県陸前高田市、二戸市、花巻市、北上市、一関市、江刺市(現:奥州市)、矢巾町、東和町(現:花巻市)、金ヶ崎町、前沢町(現:奥州市)、胆沢町(現:奥州市)、衣川村(現:奥州市)、花泉町(現:一関市)、平泉町、千厩町(現:一関市)、室根村(現:一関市)、福島県福島市、桑折町、梁川町(現:伊達市)、保原町(現:伊達市)、霊山町(現:伊達市)、東和町(現:二本松市)、中島村、田村市、原町市(現:南相馬市)、小高町(現:南相馬市)、飯舘村、茨城県日立市で震度5弱を記録した。 この地震による被害は、宮城県を中心に負傷者100人、住家の全壊1棟、一部破損984棟となっている(平成18年9月30日現在)(第1−7−3表)。第1-7-3表 平成17年宮城県沖を震源とする地震の被害の状況
(2)平成7年(1995年)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成18年5月19日現在(確定)、人的被害は死者6,434人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1−7−5表、第1−7−6表、第1−7−7表)。第1-7-5表 地震の概要(気象庁資料)第1-7-6表 人的被害の状況第1-7-7表 住家被害の状況
2 外国の地震災害 平成17年1月から平成18年10月までの主な地震は、第1−7−8表のとおりである。第1-7-8表 平成17年1月から平成18年10月までの外国の主な地震災害
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。また、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めている。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、大規模災害時における人命救助活動等をより効率的かつ充実したものとするために、平成16年4月、法律に基づく緊急消防援助隊を発足させた。平成18年4月1日現在、全国の消防本部より3,397部隊、約3万9,000人の隊員が登録されている。さらに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等の整備や大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 また、阪神・淡路大震災での貴重な経験や教訓は、次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業や施策の企画・立案、日々の防災活動に役立てる必要があることから、平成13年6月から運用を開始した「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)の充実等により地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 なお、震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備においては、公益法人による助成事業も行われている。
(1)東海地震対策 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法では、事前予知の可能性のある大規模地震について、あらかじめ同法の規定に基づき、地震防災対策強化地域の指定を行ったうえで、同地域に係る地震観測体制の強化を図るとともに、大規模な地震の予知情報が出された場合の地震防災体制を整備しておき、地震による被害の軽減を図ることを目的としている。東海地震については事前の予知の可能性があることから、静岡県を中心とする東海地方の6県167市町村が地震防災対策強化地域として指定され、中央防災会議が作成する「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」等に基づき、切迫した東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 平成14年4月には大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討した結果、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、従前の6県167市町村から8都県263市町村(市町村合併により平成18年4月1日現在174市町村)に拡大された。 この新たな指定を受けた都県及び市町村等においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組みがなされているところであり、消防庁としても今後とも各都県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 地震防災対策強化地域の拡大を受け平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの、強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。大綱の主なポイントは、〔1〕被害軽減のための緊急耐震化、〔2〕地域における災害対応力の強化、〔3〕警戒宣言前からの的確な対応、〔4〕災害発生時における広域的防災体制の確立の4点であり、これらを踏まえた防災関係機関、地方公共団体等による的確な対応が求められている。消防庁では、地震防災対策強化地域における関係都県の広域応援の受入れ体制及び都道府県をまたがる広域的な地震防災体制の充実を目的として、「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;廣井 脩 東京大学社会情報研究所所長[当時])」を開催し、その検討結果を「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書」として平成15年3月にとりまとめた。 また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月に中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同日、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−7−1図)。これは最近の科学的な知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)による変化に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりも前に今後の推移について説明可能な段階が設定できるとの考えから、これまでの情報発表の仕方を見直したものであり、基本計画修正の中心的な部分である。新たな情報発表の主なポイントは、これまで防災関係機関の防災対応のきっかけとして位置付けられていた「判定会招集連絡報」を廃止し、従来の観測情報を2段階に分け、このうち東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合に「東海地震注意情報」を発表し、これを防災対応のきっかけとするという部分である。具体的には、この情報を基に、政府は準備行動開始の意思決定とその旨の公表を行い、関係機関は準備行動の実施体制(準備体制)をとることとなる。基本計画の修正により、地方公共団体は地震防災強化計画の、民間事業者は地震防災応急計画の修正が必要であり、消防庁としても、これらの取組みに対して積極的な支援・助言に努めている。第1-7-1図 東海地震に関連する情報と防災対応 さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、〔1〕緊急に実施すべき予防対策、〔2〕緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、〔3〕迅速な閣議手続等について、平成15年7月に「東海地震緊急対策方針」が閣議決定された。平成15年12月には、中央防災会議において「東海地震応急対策活動要領」が決定され、同要領に基づく、関係省庁の救助、物資の調達等について、具体的な活動内容の申合せを行った。消防庁としても関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災都道府県からの物資提供の調整、ボランティアの受入れに関する支援等を行うこととなっている。なお、同要領は、予知を前提とした活動計画に加えて、突発的に地震が発生した場合の活動計画の追加、広域医療搬送活動に従事する災害派遣医療チーム(DMAT)の整備、情報集約体制の修正等を踏まえて、平成18年4月に修正が行われている。 加えて、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。
(2)東南海・南海地震対策 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生し、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている(第1−7−2図)(今後30年以内に発生する確率(平成18年1月1日時点)は、地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、東南海地震60%程度、南海地震50%程度となっている。)。第1-7-2図 東海地震と東南海・南海地震 このため、中央防災会議は、平成13年6月に、「東南海、南海地震等に関する専門調査会」の設置を決定し、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策について検討を重ね、平成14年12月に東南海・南海地震が同時に発生した場合の被害想定の一部公表、平成15年9月には被害想定の全体像が示された(第1−7−9表)。第1-7-9表 「東海」「東南海」「南海」地震の発生ケースごとの被害想定 消防庁でも、市町村・都道府県境を超え、東南海・南海地震の被害が想定される地域が一体となってとるべき防災体制を、広域的な受援体制の整備の観点と、津波対策の観点から地方公共団体の防災体制の現状と課題を踏まえて検討するため、「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;室益輝 神戸大学都市安全研究センター教授[当時])」を開催し、その検討結果を「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する研究報告書」として平成16年3月に取りまとめた。さらに地方公共団体においても、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、関係府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立し、東南海・南海地震に係る情報交換・収集を行っている。 こうした中で、平成15年7月に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行され、同法に基づき、平成15年12月の中央防災会議において、「東南海・南海地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」を「東南海・南海地震防災対策推進地域」として1都2府18県652市町村(市町村合併により平成18年4月1日現在1都2府18県403市町村)が公表され、内閣総理大臣により指定された。推進地域の指定を受けた地方公共団体その他防災関係機関は、国の地震防災対策の基本方針として平成16年3月に中央防災会議が作成した「東南海・南海地震防災対策推進基本計画」に基づき、「東南海・南海地震防災対策推進計画」を作成し、地震防災対策の強化を図ることとなった。また、特に甚大な津波被害が懸念される地域については、地域ぐるみの迅速な対応が求められることから、学校・病院等の多数の者が集まる施設管理者等に対し、津波からの円滑な避難に関して「東南海・南海地震防災対策計画」を地域指定から6か月以内に策定するものとされた。この対策計画の作成について、消防庁としては今後とも関係都府県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 また、平成15年12月、東南海・南海地震防災対策のマスタープランとなる「東南海・南海地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。この大綱は、東南海・南海地震に対して津波防災体制の確立などを掲げた総合的計画であり、平成16年3月に中央防災会議で決定された基本計画をはじめとして、推進計画や対策計画はこの大綱に沿って、地域の実情に即した具体的な形で作成されたものである。 さらに、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。 また、平成18年4月、「東南海・南海地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。この活動要領は、緊急災害対策本部の設置、緊急災害現地対策本部の設置、関係省庁の役割分担としての応急対策活動等を定めている。消防庁としても、関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災都道府県からの物資提供の調整、ボランティアの受入れに関する支援等を行うこととなっている。
(3)首都直下地震対策 首都地域は、人口や建築物が密集するとともに、我が国の経済・社会・行政等の諸中枢機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広域なものとなるおそれがある。中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」によると、この地域においては、200〜300年に一度、大正12年の関東大震災と同様のマグニチュード8クラスの海溝型地震が発生し、その間にマグニチュード7クラスの直下型地震が数回発生する可能性が高いとされている(第1−7−3図)。このため、中央防災会議において昭和63年12月に、関東大震災と同じタイプの地震が発生した場合の被害想定が実施され、その結果を踏まえた「南関東地域震災応急対策活動要領」が策定された。また、平成4年8月には、南関東地域直下で発生するマグニチュード7クラスの地震を対象とした「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が策定され、震災対策が進められた。この大綱等は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ平成10年6月に全面的な見直しが行われ、南関東直下の地震発生に備えた政府の防災体制について充実が図られた。第1-7-3図 この400年間における南関東の大きな地震 他方、近年においては、情報通信技術や物流、金融等の高度化・国際化が進展し、経済・社会情勢が著しく変化しつつあることから、首都直下地震対策についても「首都中枢機能維持」や「企業防災」といった新たな観点からの対策強化が必要であるとの認識が広まったこと、関東地域の地殻変動に関する詳細な観測データの蓄積が進んだこと、マグニチュード7クラスの直下型地震が発生した場合の具体的な被害を明確にする必要があること等から、平成15年5月の中央防災会議で「首都直下地震対策専門調査会」の設置が決定され、首都直下の「地震像」の明確化や直下地震を考慮した首都機能(政治、行政、経済)確保対策等の検討が始められた。想定される18タイプの地震について、4つの時間帯と2つのパターンの風速ごとに被害想定を行い、平成17年2月に首都直下地震対策に係る被害想定として公表された(第1−7−10表)。その中で首都機能に最も大きな影響を与える地震(東京湾北部地震)の被害想定を基に、同年9月、首都直下地震対策のマスタープランとなる「首都直下地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。第1-7-10表 首都直下地震対策に係る被害想定 この大綱は、首都直下地震による被害の特徴として「首都中枢機能障害による影響」と「膨大な人的・物的被害の発生」の2点を掲げ、これらの被害を軽減するための対策を基本として構成するものであり、「首都中枢機能の継続性確保」と「膨大な被害への対応」を対策の柱とするものである。 「首都直下地震対策大綱」の決定を踏まえ、平成18年4月に、緊急災害対策本部の設置、緊急災害対策現地対策本部の設置、首都中枢機能継続性確保のための活動、関係省庁の役割分担としての応急対策活動等を定めた「首都直下地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。消防庁としても、関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災道府県からの物資提供の調整、ボランティアの受入れに関する支援等を行うこととなっている。 また、同時に、今後10年間で被害想定に基づく死者数を半減、経済被害額を4割減させることを減災目標とし、それを実現させるための具体的な実施方策等を定めた「首都直下地震の地震防災戦略」が中央防災会議で決定された。消防庁としても、同戦略において、防災拠点となる公共施設等の耐震化、自主防災組織・消防団・緊急消防援助隊等の充実・強化、防災行政無線等の整備・拡充等の施策を通じて、被害軽減に取り組むこととしている。 なお、「首都直下地震対策大綱」及び「首都直下地震応急対策活動要領」の決定に伴い、「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」(平成4年8月21日 中央防災会議決定)及び「南関東地域震災応急対策活動要領」(昭和63年12月6日 中央防災会議決定)は廃止された。
(4)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策 日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震の中には、約40年間隔で発生している宮城県沖地震など、繰り返し発生するものもあり、その切迫性が指摘されており、今後30年以内に発生する確率(平成18年1月1日時点)は、地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、宮城県沖についてはマグニチュード7.5前後で99%程度などとなっている。震源域はそのほとんどが海溝周辺にあり、過去において大津波を伴う地震が多数発生していること等から、この地域で発生する海溝型地震による地震・津波防災対策、特に巨大な津波に対する防災対策の確立を図るため、平成15年10月、中央防災会議に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」が設置された。 この専門調査会においては、日本海溝・千島海溝周辺で発生する海溝型地震のうち、防災対策上対象とすべき地震について検討した上で、その地震により発生すると予測される被害の大きさや、それに対する地震防災対策について検討を行っており、平成18年1月には地震動や津波等による被害想定が公表された(第1−7−11表)。第1-7-11表 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る被害想定 こうした中で、平成16年3月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進を図るためには法的整備が必要であるとして、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行された。そして、同法に基づき、平成18年2月の中央防災会議において、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」を「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として5道県130市町村(市町村合併により平成18年4月1日現在5道県119市町村)が公表され、内閣総理大臣により指定された。推進地域の指定を受けた地方公共団体等防災関係機関は、国の地震防災対策の基本方針として平成18年3月に中央防災会議が作成した「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」に基づき、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画」を作成するとともに、推進地域内で特に津波による甚大な被害のおそれのある地域において地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者のうち基本計画で定める者は「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画」を作成し、その実施を推進することとなった。この対策計画の作成について、消防庁としては関係道県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 また、同年2月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策のマスタープランであり、「津波防災対策の推進」や「揺れに強いまちづくりの推進」、「積雪・寒冷地域特有の問題への対応」を柱とする「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。
(5)地震防災緊急事業五箇年計画、地震対策緊急整備事業計画ア 地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする第1次地震防災緊急事業五箇年計画、及び平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成され、これらの計画に基づき、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集市街地対策等が実施された(第1次五箇年計画の実績額約14兆1,175億円:達成率76.3%、第2次五箇年計画の実績見込額約9兆8,244億円:達成見込率69.3%)。国は、同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 現在、すべての都道府県において、平成18年度を初年度とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画が策定されているところである。 なお、耐震性貯水槽等特例措置の対象となる消防庁関係の事業の国の負担割合は、2分の1となっており、平成18年度から、東南海・南海地震防災対策推進地域及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域においては、施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されることとなった。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。なお、耐震性貯水槽等特例措置の対象となる消防用施設の国の負担割合は2分の1となっているのに加え、施設整備の財源に充てた地方債の元利償還金の2分の1については、地方交付税の基準財政需要額に算入されることとなっている。 地震対策緊急整備事業として、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等を実施しており、昭和55年度からの計画額は約2兆円となっている。 なお、この法律は、これまで5回延長され、現在、平成21年度末までの計画に基づき事業が実施されている。
(6)総合防災訓練 政府は、首都直下に大規模地震が発生したとの想定のもとに、中央防災会議で決定した「平成18年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成18年9月1日(防災の日)に総合防災訓練を実施した。 当該訓練には、指定行政機関等、関係指定公共機関及び関係都県市が参加し、新たに策定した「首都直下地震応急対策活動要領」に基づき、災害発生時の首都中枢機能の継続性確保等の地震災害応急対策の実施体制の確保を図り、首都直下地震を想定した発災対応型訓練として行った。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、職員の参集訓練、災害対策本部の設置及び運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請などについて、消防防災無線網を活用した国と関係都県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。 また、消防庁に整備した緊急消防援助隊指揮車、現地活動支援車を訓練会場に派遣し、実践的な情報収集・伝達訓練を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、津波対策、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成18年4月1日現在、すべての都道府県において、震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けて定めている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,165団体、「節」等を設けているものが351団体、「その他の災害等」として扱っているものが41団体となっている。 なお、地域防災計画で「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で606団体となっている(前年度に比べ市区町村団体数が減少しているが、これは平成17年度の市町村合併よるものである。)。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会が順次評価を取りまとめ、公表している主要98断層帯で発生する地震や海溝型地震の長期評価(平成18年3月31日現在、主要断層帯、海溝型地震として南海トラフ、三陸沖から房総沖にかけて、千島海溝沿い、日本海東縁部、日向灘及び南西諸島海溝周辺、相模トラフ沿いで発生する地震についての評価結果を公表)等を踏まえた地域防災計画の見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1−7−4図、第1−7−5図)。第1-7-4図 地方公共団体と公共機関等との応援協定の締結状況(都道府県数)第1-7-5図 地方公共団体と公共機関等との応援協定の締結状況(市区町村数) 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所は、平成18年4月1日現在で、6万9,985箇所が指定されている(第1−7−12表)。 また、避難路については、211団体が指定している。第1-7-12表 市区町村における避難場所の指定状況
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1−7−13表)。第1-7-13表 主な備蓄物資の状況 これらの物資を備蓄するため、平成18年4月1日現在、都道府県においては46団体で909棟、市区町村においては1,562団体で2万918棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては9団体で408棟、市区町村においては131団体で545棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成17年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,136億8,900万円、また、市区町村が実施した事業費は577億6,300万円である(第1−7−14表)。第1-7-14表 震災対策施設等整備事業費
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成17年度においては、46都道府県と887市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が行われ、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1−7−15表、第1−7−16表)。第1-7-15表 都道府県における震災訓練の実施状況第1-7-16表 市区町村における震災訓練の実施状況 また、これらの訓練のほか、日頃から地域住民等に対し、43都道府県及び1,514市区町村において、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成18年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は666団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が367団体、地域防災計画へ記載している団体が379団体、津波災害を想定した避難地は6,830箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が237団体で実施されている。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約64万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生し、住民の生命、身体、財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年7月に地震防災対策特別措置法が制定され、同法に基づきすべての都道府県は平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画、さらに平成13年度から17年度までを計画期間とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を目指して事業の推進を図ったが、これを実施する都道府県及び市町村における防災基盤の整備は計画どおりに進められなかった(達成見込率69.3%)。 このような中で、災害に強い防災基盤を整備し地域住民の安心・安全を確保するためには、計画的かつ重点的な事業の実施が不可欠であるとの認識から、議員立法により同法が一部改正され、平成18年度から22年度までを計画期間とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災基盤の整備に向けた事業への積極的な取組みが続けられている。 特に、大規模災害時において、避難所や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などの耐震化については、各種国庫補助制度による補助事業のほか、消防庁では単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。しかしながら、その耐震改修の進捗率は、平成17年度末見込みで約56%にとどまっていることから、避難所に指定されている公共施設や災害対策の拠点となる庁舎等を中心に、早急かつ計画的に取り組む必要がある(消防庁の調査結果によれば、地方公共団体では、平成18年度から平成21年度までに、学校施設をはじめとした公共施設約6,500棟の耐震改修を実施する計画である)。 また、新潟県中越地震で震度6弱以上を観測した地域において、4箇所の市町村役場が地震の揺れにより被害を受け、使用できない状態となり、災害の初動対応に大きな支障を来したことを受け、消防庁において、耐震診断・改修工事の効果的な実施手法や事例を紹介する「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、全ての地方公共団体へ配布するとともに、消防庁ホームページにて公表している(URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/taishin/index-j.html)。 さらに、個人住宅についても、阪神・淡路大震災の死者の8割以上が建物の倒壊等によるものであったことから、平成17年9月に中央防災会議において決定された建築物の耐震化緊急対策方針においても、地域住民への意識啓発や耐震診断の徹底した実施の促進等、対策を早急に推進することとしている。なお、地震発生時に家具の転倒による負傷者や閉じこめ事案が発生していることから、各家庭において家具の固定化を進めていくことが更なる被害軽減のために重要である。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組み 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部の公表する地震活動の評価結果等を参考に地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、さらに教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能の状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成18年4月1日現在、全国で、約8万504基を整備してきた耐震性貯水槽については、今後も整備を推進していく必要がある。 消防庁では、国庫補助等による耐震性貯水槽の整備をかねてより進めているところであるが、大規模災害の発生時においては、多数の消防隊による長時間に及ぶ消火活動が必要となることから、これに対応する大容量の水源を確保するため、平成18年度からは、1,500m3型耐震性貯水槽についても国庫補助対象に追加するなど一層の整備促進を図っている。 また、耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債等の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑えるためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実(1)情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対応を現場へ迅速かつ的確に伝達することが重要であり、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を進めていく必要がある。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震において、消防庁では、応急体制活動要領に基づく各班ごとの初動対応により、情報の集約、整理、広域応援対応等を速やかに行ったが、初動期の情報収集に当たって、NTT回線も防災行政無線もつながらず、山間部の一部で情報孤立地域が発生するなど、他の無線系の活用や非常用電源の整備等、非常時の通信確保について課題を残した。このことから、消防庁では、「初動時における被災地情報収集のあり方検討会」を開催し、大規模災害発生の際の初動時における被災地情報収集のあり方や災害時の情報通信技術の活用について検討を行い、平成17年7月、政府及び地方公共団体等に提言を行った。
(2)震度情報ネットワークの整備 阪神・淡路大震災後、地方公共団体ごとに整備された震度情報ネットワークにより震度情報を早期に収集しているところであるが、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震や同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震において震度情報の送信が遅延するなどの障害が発生しており、早急な改善が望まれている。このことから、消防庁では、「次世代震度情報ネットワークのあり方検討会」を開催し、近年の地震学の知見や通信環境の著しい進化を踏まえ、今後整備・更新される震度計と震度情報ネットワークに求められる機能、震度計の適正配置など次世代の震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、国及び地方公共団体に提言を行ったところである。
5 初動体制の整備 初動対応の如何が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすと考えられることから、大規模災害時においては、発災直後から情報の収集・伝達等に関し、臨機応変で的確な対応をとることが極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 このうち、地方公共団体における防災担当職員の宿日直体制の整備など夜間・休日も含めた対応については、職員の参集や他機関との連絡を迅速かつ円滑に行う体制が確保されている必要がある。平成18年4月1日現在、都道府県では、23団体において職員の宿日直、13団体において防災専門の嘱託職員による対応、市町村では、939団体において職員の宿日直、497団体で消防機関による対応、このほか守衛や民間委託警備員等様々な対応がとられている。なお、国民保護業務の追加にも配慮し、24時間対応での情報収集、連絡体制の推進を図っていく必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心に防災担当部局と一元化した組織体制を整備していく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しをさらに推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震、東南海・南海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定を適切に実施するとともに、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、災害時相互応援協定に基づく救援活動が物資の供給と職員応援の両面から行われ成果を上げたが、初動期においては必ずしもスムーズに機能せず、応援側地方公共団体からは、必要とされる物資や業務をできるだけ早く被災地方公共団体から教えて欲しいという声が聞かれた。消防庁においても、地方公共団体の緊急物資等の備蓄・調達のあり方に関する検討を行い、災害時における広域対応等について地方公共団体に提言を行ったところである。 今後も、できるだけ多くの地方公共団体での相互応援協定締結を推進するとともに、地方公共団体同士が普段から訓練等で連絡を取り合い、災害時には受援側の窓口を早期に立ち上げることができるような体制づくりを推進する必要がある。 また、阪神・淡路大震災を踏まえ、地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性が高まり、NBCテロ災害の発生等が懸念されることから、平成15年度の消防組織法の一部改正により法定化され、平成16年4月からは、大規模災害発生時等における全国的な観点からの緊急対応のため、消防庁長官による出動指示が可能となったほか、国の国庫負担制度についても定められるなど、緊急対応体制の充実・強化が図られている。なお、消防庁では平成15年12月に東海地震及び首都直下地震に係る緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを作成し、緊急対応体制の更なる強化を図っている。 新潟県中越地震(午後5時56分頃発生)においては、発災後の広域的な応援出動に対応するため、発災直後の午後6時25分、新潟県の要請を待たないで、消防庁長官が消防ヘリコプターの出動を要請し、午後7時20分の新潟県知事からの出動要請をうけて、各都県知事に対して緊急消防援助隊の出動要請を行った。 同地震災害において、緊急消防援助隊は、1都14県から、累計480隊2,121名、消防防災ヘリ20機が出動し、453名を救助した。
7 実践的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日頃から実践的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実践的な訓練になるよう努める必要があり、地域の総合的防災力向上のため、参加型図上演習(DIG)の実施についても推進していく必要がある。 また、大規模災害時にあっては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実践的なものとなるよう、状況予測型訓練(イメージトレーニング方式)、災害図上訓練DIG(災害想像力ゲーム方式)や図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)など目的や実情に応じた訓練の実施に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。 消防庁では、度重なる風水害や地震災害での実災害対応及び数々の図上訓練の実施により初動対応における情報収集や班編成のあり方などの改善を図ってきたところであるが、平成18年4月19日には参集訓練、5月26日には首都直下地震を想定した図上訓練、6月1日には国民保護図上訓練、6月23日には鉄道の脱線事故を想定した鉄道事故図上訓練を関係機関と合同で実施するなど、実動訓練及び図上訓練を通じた災害対応における防災力の向上を図っている。加えて、平成18年6月から8月にかけて市町村長及び都道府県・市町村の危機管理担当職員等を対象とした「防災危機管理ブロック・ラボ」を全国3ブロックで開催し、市町村における実践的な図上訓練の実施を促進している(囲み記事「防災危機管理ブロック・ラボの開催について」参照)。消防庁図上訓練
災害時要援護者の避難対策について〜災害時要援護者の避難支援アクションプログラムの作成〜 平成16年7月の梅雨前線豪雨、一連の台風等における高齢者等の被災状況等を踏まえ、有識者・消防庁を含めた関係省庁で構成する「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」が平成16年10月に設置され、平成17年3月30日の中央防災会議において、その検討結果が報告されました。 同検討会の報告で示された「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」においては、「情報伝達体制の整備」、「災害時要援護者情報の共有」、「災害時要援護者の避難支援計画の具体化」の3点を課題として挙げ、一人ひとりの要援護者に対して複数の避難支援者を定める等、具体的な避難支援計画(以下「避難支援プラン」という。)の策定等に係る早急な取組みを市町村に要請しています。 また、平成17年度においては、避難所における要援護者の支援のあり方や、市町村と福祉サービス提供者や保健師、看護師等の関係機関等の連携のあり方について検討が進められ、平成18年3月28日に検討報告が取りまとめられるとともに、平成17年3月の「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が改訂されたところです。 これと同時に、総務省消防庁においては、10市町(北海道石狩市、秋田県秋田市、宮城県気仙沼市、宮城県石巻市、千葉県柏市、神奈川県二宮町、岡山県倉敷市、広島県呉市、愛媛県宇和島市、沖縄県宜野湾市)の協力を得て、避難支援プランを作成中の市町の実態を把握・整理し、災害時要援護者の避難支援アクションプログラムとして「災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて」を取りまとめました。 この災害時要援護者の避難支援アクションプログラムを活用し、全国の市町村における避難支援プラン作成への取組みが一層推進されることが期待されます。モデル地区でのリヤカーを使用した避難訓練の様子(気仙沼市)
地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書(平成17年度)について 近年、市町村においても、図上シミュレーション訓練などの図上型防災訓練が地震防災訓練に取り入れられてはいるものの、まだまだ実技・実働訓練に比重が置かれているものが多く、災害時の危機管理能力の向上・習得を意図した図上型防災訓練は一部に限られています。特に、市町村長や都道府県の防災担当の幹部には、災害時に一刻を争う意思決定が求められ、リーダーシップの重要性がクローズアップされることから、図上型防災訓練の企画・準備・実施による意思決定能力の一層の向上を図ることが求められています。 消防庁では、市町村や都道府県がより実戦的、効果的な地震防災訓練を実施できるよう「図上型防災訓練マニュアル作成研究会(座長;吉井博明 東京経済大学教授)」において、前年度の調査研究結果を踏まえ、人口10万人未満の市町村における実戦的・効果的な図上型防災訓練の実施を促進するため、長野県箕輪町及び和歌山県那智勝浦町の2町において地震による土砂災害・津波災害等を想定した図上型防災訓練の企画・準備・実施を支援することを通じて、市町村における図上シミュレーション訓練や住民参加による災害図上訓練DIGをスムーズに実施するための標準モデル(解説書)として研究会報告書を取りまとめ、これを全国の市町村及び都道府県に配付しました。(研究会報告書の概要)1 図上型防災訓練の手法の選択(手 法)〔1〕状況予測型図上訓練(イメージトレーニング方式)     〔2〕災害図上訓練DIG(災害想像力ゲーム)     〔3〕図上シミュレーション訓練 (ロールプレイング方式)(対象者)〔1〕 市町村等防災機関を対象に実施(災害対応能力、意思決定能力の向上等を目的)     〔2〕地域住民と市町村など防災機関との連携のあり方を対象として実施      (地域の災害危険性の把握、災害対応能力の向上等を目的)2 市町村等防災機関が実施する図上型防災訓練のあり方<かっこいい訓練ではではなく、「失敗」を見出す訓練を>(1) 図上型防災訓練の準備段階 〔1〕防災訓練のテーマ・課題の明確化 〔2〕地域特性に合った被害想定などの資料作成 〔3〕訓練参加者(プレーヤー)及び進行管理者(コントローラー)の役割分担 〔4〕状況付与シナリオ及び付与票配布スケジュール表の作成 〔5〕会場の確保とレイアウト、各種機材の設営 〔6〕関係者への事前説明(2)図上型防災訓練の実施段階 〔1〕災害対応上の課題 「失 敗」を多数見出せる訓練こそ成功 〔2〕「かっこいい」訓練よりも、「実戦的で職員が納得できる訓練」を 〔3〕いたずらに訓練に時間をかけすぎない 〔4〕災害時における関係機関との連携確認の機会に 〔5〕プレイヤーとコントローラーの連携で訓練の進行をスムーズに(3)図上型防災訓練の評価・検証段階 〔1〕訓練結果の評価・検証は入念に 〔2〕訓練対応事例を記録・蓄積長野県箕輪町での図上訓練和歌山県那智勝浦町での記者会見訓練
防災危機管理ブロック・ラボの開催について 消防庁では、平成18年6月から8月にかけて、全国3ブロック(西日本、関西・中部、東日本)で、「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催し、各地域の市町村長や助役、区長、防災担当幹部の方々、延べ637人が参加されました。 地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村において、迅速かつ効果的な応急対策を行うためには、地域住民と市町村長、さらに都道府県の危機管理部門との間の信頼関係の構築による的確な初動体制が不可欠です。 「防災危機管理ブロック・ラボ」は、このような大規模な災害に際し、起こりうる様々な条件を想定した実戦的な図上訓練の実施を推進することによって、市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定と応急体制の点検、住民と行政の信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、各ブロック内の市町村長や助役(又は市町村防災担当幹部職員)及び都道府県の危機管理担当幹部職員、政令指定都市の区長、危機管理担当幹部職員の方々を対象に開催いたしました。主催:消防庁、財団法人消防科学総合センター      後援:全国知事会   広島県、広島市(西日本ブロック)           全国市長会   全国市町村国際文化研修所(関西・中部ブロック)    全国町村会   市町村職員中央研修所(東日本ブロック)西日本ブロック・ラボ ( 6月15日、16日 開催)場所:広島県 広島市庁舎関西・中部ブロック・ラボ(7月17日、18日 開催)場所:滋賀県 全国市町村国際文化研修所東日本ブロック・ラボ (8月1日、2日 開催)場所:千葉県 市町村職員中央研修所*平成19年度の開催については現在検討中です。
8 津波対策の推進 平成15年5月26日に発生した宮城県沖を震源とする地震においては、津波の怖さを認識しておきながら、地震の発生あるいは避難勧告等の発令があっても避難しないといった住民の行動が多く見受けられた。また、同年9月26日に発生した十勝沖地震においては、市町村による津波避難勧告が適切に発せられなかった事例等が見受けられた。 さらに、平成16年9月5日に発生した東海道沖を震源とする地震においても、気象庁から津波警報が発せられた42市町村のうち、30市町村で避難勧告が発せられなかった(第1−7−17表)。第1-7-17表 東海道沖を震源とする地震に係る避難勧告の実施状況 津波被害軽減の基本は「避難すること」であり、海岸線等を有する市町村においては、地域防災計画上の規定の見直しや発災時の迅速な避難勧告等、的確な津波避難対応に努めることが必要であり、住民も受け取った情報を自分自身の問題として捉え、実際に避難行動を起こす必要がある。 実効性のある津波避難対策を実施する上で、海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示している。また、東南海・南海地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策の一環として、モデル地域を選定し、同指針やマニュアルに基づき関係県、市町村及び住民が連携して、地域ごとの津波避難計画を策定する事業に取り組み、この成果を取りまとめ、全国の海岸線等を有する市町村に配付しており、今後とも、地域ごとの津波避難計画の策定を推進することとしている。 一方で、この津波避難計画に基づく避難を円滑に実施するための避難場所や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進や施設の安全性向上を図るなど、津波防災の観点からのまちづくりを推進する必要がある。 消防庁としても、平成14年4月の東海地震対策強化地域の拡大、平成15年12月の東南海・南海地震対策推進地域の指定により、全国的に津波対策が喫緊の課題となったことを受け、津波避難タワーの設置について、平成17年度から地方債と地方交付税制度による財政支援を行っている。 こうした津波避難計画の策定や津波防災施設の整備等を推進するとともに、日頃から、住民等に対する津波に関する防災知識や津波避難計画の周知、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、いつでも迅速かつ円滑な避難行動ができる体制を整備しておくことが重要である。 また、消防庁において、「防災のための図記号に関する調査検討委員会」を開催し、津波避難に係る標準的図記号として、「津波注意」、「津波避難場所」、「津波避難ビル」の3種の図記号を決定した。さらに、国際的な津波防災対策の重要性が叫ばれる中で、ISO(国際標準化機構)規格化に向けても提案を行っているところである。■津波注意・図記号の意味 地震が起きた場合、津波が来襲する危険がある地域を示す。・図記号の目的 当該地域が津波による被害を被る危険がある地域であることを認識させ、地震発生時には直ちに当該地域から内陸部、高台に避難させる。■津波避難場所・図記号の意味 津波に対して安全な避難場所・高台を示す。・図記号の目的 津波からの避難先となる安全な場所や高台を示すとともに、地震発生時には、そうした避難場所へ向かわせるもの。■津波避難ビル・図記号の意味 津波に対して安全な避難ビルを示す。・図記号の目的 津波からの避難に際し、近くに高台がない場合、津波からの避難が可能な原則としてRC又はSRC構造の鉄筋コンクリート造3階建以上のビルを示すとともに、地震発生時に避難ビルへ向かわせるもの。
第8節 雪害対策[雪害の現況と最近の動向] 平成16年12月から平成17年3月にかけての雪害による人的被害、住家被害は、死者・行方不明者88人、負傷者771人、全壊56棟、半壊7棟、一部破損139棟となっている。 また、平成17年12月から平成18年3月にかけての雪害による人的被害、住家被害は、前年に比べほとんどが増加し、死者・行方不明者152人、負傷者2,145人、全壊18棟、半壊28棟、一部破損4,667棟となっている。
[雪害対策の現況] 平成17年12月から平成18年1月上旬にかけて、日本各地で低温となるとともに、日本海側を中心に大雪となり、また、1月中旬以降も日本海側の山沿いを中心に大雪となる日がたびたびあった。気象庁が積雪を観測している339地点のうち23地点で積雪の最大記録を更新し、また、12月としての最大記録を106地点で、1月としての最大記録を54地点で、2月としての最大記録を18地点で、3月としての最大記録を4地点で、4月としての最大記録を17地点で更新した。 気象庁が「平成18年豪雪」と命名したこの大雪の影響により、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故や家屋の倒壊等が多発し、昭和56年に並ぶ戦後2番目の記録となる152人の死者となっている。 平成18年豪雪による152人の死者のうち、65歳以上の高齢者が99人と約3分の2を、また、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の死者が113人と約4分の3を占めている。さらに、除雪作業中の死者113人のうち65歳以上の高齢者は76人となっている。 この災害に対し消防庁としては、被害が発生した道府県からの情報収集を実施するとともに、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の即応体制の確立、雪崩危険箇所等の把握・周知及び情報の収集・伝達体制や警戒・避難体制の確立等の対策、特に高齢者等の災害時要援護者に対する対策などに万全を期すように要請した。
[雪害対策の課題] 雪害による人的被害の発生を防ぐためには、防災知識の普及啓発等を進めるとともに、平成18年豪雪を踏まえ次のような対策の推進が求められている。
(1)除雪作業における対策 積雪時においては、特に高齢者等の災害時要援護者宅の状況を消防機関や福祉関係機関との連携による巡回等により把握し、除雪が困難又は危険な場合などについては、必要に応じ消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携協力の下、複数による除雪作業を行うことや、屋根の雪下ろしの際の命綱や滑り止めの着用、軒下での作業時の落雪への注意などについて注意喚起を行うなど適切に対応することが必要である。
(2)なだれ等に対する適切な避難勧告等の発令・伝達 降積雪の状況等の情報、過去の雪害事例等を勘案し、なだれ、家屋の倒壊等により、住民の生命・身体に被害が及ぶおそれがあると判断したときは遅滞なく避難の勧告・指示を行う必要がある。 また、避難の勧告・指示の伝達については、防災行政無線や消防団、自主防災組織をはじめとした効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達する必要がある。
(3)避難体制 避難路、避難所、避難誘導方法等を定め、住民に周知しておくとともに、雪害の特性を踏まえた安全性を確保する必要がある。 また、高齢者・障害者等の災害時要援護者については、消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携・協力の下、迅速な避難誘導に努める必要がある。
(4)防災体制の確立 災害が発生した場合には、関係機関とも連携し、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の活用など地方公共団体相互の広域的な応援活動により迅速な救助活動等に万全を期す必要がある。除雪作業の様子(新潟県十日町市)(いずれも五泉市消防本部提供)
第9節 特殊災害対策等[原子力災害対策]1 原子力災害等の現況と最近の動向(1)関西電力株式会社大飯発電所3、4号機廃棄物処理建屋火災事故 ア 事故の概要 平成18年3月22日18時40分頃、関西電力株式会社大飯発電所3号機が定格熱出力一定運転中、4号機は第10回定期検査中(定格熱出力一定による運転中)のところ、廃棄物処理建屋3階フィルタバルブ室上部中2階機材整理棚から出火(出火原因は特定されていない。)した。現場確認に向かった2人が煙を吸い込んだことから病院へ搬送したが特に異状はなく、他の人的被害及び外部への放射能による影響はなかった。 イ 消防庁及び消防機関の活動 大飯発電所からの119番通報を受けて、若狭消防組合消防本部から13隊48人、おおい町消防団から2隊38人が出動した。到着後、現場指揮本部を設置し、負傷者2人を救急隊により搬送するとともに、消火活動を実施し22時35分に鎮火を確認した。 消防庁としては、事故状況の把握のため、独立行政法人消防研究所(現消防研究センター)の職員1人及び消防庁職員2人を現地に派遣した。この事故を踏まえ、同年5月22日に今後の消防活動に資することを目的として、原子力発電所所在道県及び関係消防本部等の担当者による意見交換会を開催した。
(2)その他の原子力事故等 そのほか、消防活動の観点から見た原子力施設等における最近の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の核燃料サイクル開発機構(当時)の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし、火災となった事故。イ) 平成9年3月11日に核燃料サイクル開発機構(当時)の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成11年9月30日に茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設において、臨界に達する事故が発生し、従業員3人が重篤の放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事した従業員を含む多数の者が被ばくした事故。エ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク内の清掃作業中に、当該タンク内で体調不良となった作業員1人を救出するためタンク内に入った別の2人の作業員のうち1人が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案。また、病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明。オ) 平成13年11月7日に中部電力株式会社浜岡原子力発電所の定格出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系配管が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建家内に漏えいした事故。カ) 平成14年2月9日に東北電力株式会社女川原子力発電所の定期検査中の2号機の原子炉建屋地下1階の制御棒駆動機構補修室において、作業員が弁点検用資機材の後片付けの一環として浸透探傷用スプレー缶等の廃棄処理作業を実施中に出火し、ビニールシート等を焼損するとともに、作業員2人が火傷を負った火災。キ) 平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損する火災があった。また、火災の影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407人に避難勧告が出された。ク) 平成16年8月9日に関西電力株式会社美浜発電所3号機が定格熱出力一定運転中のところ、タービン建屋2階、脱気器側の天井付近にある給水加熱器から脱気器への給水ラインである復水配管(直径約560mm、炭素鋼)の破口(最大で配管軸方向に515mm、周方向に930mm)により、蒸気及び高温水(約140度、10気圧)が噴出し、同建屋全体に蒸気が充満して、付近にいた作業員11人が熱傷を受け、5人が死亡、6人が負傷した事故。ケ) 平成17年6月30日に、中部電力株式会社浜岡原子力発電所廃棄物減容処理装置において金属等の不燃性廃棄物の溶融処理を行っていたところ、溶融物の入った容器(キャニスタ)が転倒し火災となった事故。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓から、原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、平成11年12月に「原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)」の制定及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)」の一部改正が行われる等、関係法令等の整備が行われた。 また、平成12年8月に原子力災害危機管理関係省庁会議において、関係省庁が一体となった防災活動を行えるよう、必要な活動要領を取りまとめた原子力災害対策マニュアルが作成された。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に、原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて「原子力施設等の防災対策について」に改訂され、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1−9−1図、第1−9−2図、第1−9−3図)及び核燃料物質等の輸送時の防災対策についても盛り込まれた。第1-9-1図 我が国の原子力発電所立地地点(原子力安全白書より)第1-9-2図 試験研究用及び研究開発段階にある原子炉施設立地地点(原子力安全白書より)第1-9-3図 核燃料施設(加工施設、再処理施設及び廃棄施設)立地地点(原子力安全白書より) また、平成13年6月には、国、地方公共団体、原子力事業者等の医療に携わる者の責務等の明確化について、平成14年4月には、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策についてそれぞれ改訂が行われた。さらに平成14年11月には、原子力災害時におけるメンタルヘルス(心の健康)に関する対策について、平成15年7月には、緊急被ばく医療体制における地域ブロック化についてそれぞれ改訂が行われた。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。また、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。さらに、平成16年3月には緊急被ばく医療の実施体制に係る修正を行った。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月に関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設所在地等の都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るため、地域防災計画の見直しを行った。
(4)消防活動の充実等 原災法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、平成13年5月に各都道府県及び消防本部へ配付している。さらに、消防隊員が災害現場で活用できるよう必要とされる知識、活動要領、留意点等をコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」を平成16年5月に、原子力災害における消防活動のケーススタディを内容とする「原子力施設等における消防活動訓練マニュアル」を平成16年6月に、また、除染活動に関して「原子力施設等における除染等消防活動要領」(以下「活動要領」という。)を平成17年3月に、活動要領を基に除染及び汚染拡大防止措置等の要領を効果的に習得できるよう「原子力施設等における除染等視覚教材」(DVD版)を平成18年4月に、それぞれ各都道府県を通じ、消防本部に配付している。 なお、原子力災害の研修として、消防大学校において、平成12年度から、幹部職員を対象に実施していた「放射性物質災害講習会」を、平成16年度からは「NBC災害講習会」に、さらに平成17年度からは「緊急消防援助隊教育科 NBCコース」として再編し実施しているほか、文部科学省等においても、消防職員、消防団員及び自治体職員を対象とした各種原子力防災研修が実施されている。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、放射性同位元素(RI)の輸送については放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画には、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えに関する記述が加えられた。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において、放射性物質輸送の事故時における安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等についてマニュアルとして取りまとめ、平成13年5月に各都道府県及び消防本部に通知した。 また、平成14年3月に、原子力災害危機管理関係省庁会議において、原子力災害対策マニュアルに輸送編が追加された。
3 原子力災害対策の課題 消防庁では、JCOウラン加工施設における臨界事故等を教訓とし、原災法の制定、原子炉等規制法の改正及び防災基本計画原子力災害対策編の見直しが行われたことに伴い、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアル、原子力施設等における消防活動対策マニュアル等の見直しを行った。その後、平成15年6月に、消防組織法を改正し、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化として、二以上の都道府県に及ぶ大規模な災害又は毒性物質等による特殊災害対策に対応するため、運用上設けられていた緊急消防援助隊を法定化し、消防庁長官による出動の指示権を創設するとともに、消防学校の教育訓練の基準を改正し、特殊災害科を新たに加えた。また、従来、主に原子力施設の災害対応のための資機材について整備を推進してきたところであるが、今後、テロ災害を含めた放射性物質災害対応のため、緊急消防援助隊をはじめ各消防本部における放射線防護資機材の整備を図る必要がある。さらに、各消防学校等における教育・訓練体制の整備等により原子力防災体制の充実を図ることが必要である。 今後は、原子力緊急事態を想定した実践的な防災訓練の実施を推進し、その結果を地域防災計画等に反映し、より実効性のある原子力防災体制を構築していく必要がある。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル(地下鉄に接続するトンネルを含む。)、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、さらに長大海底トンネルとしての防災対策を取りまとめている。 また、平成15年2月に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、消防庁では、国土交通省と共同で、「地下鉄道の火災対策検討会」を設置し、ガソリンによる放火火災を想定し、地下鉄道の不燃化の推進と旅客の安全な避難対策を基本として、我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を進め、平成16年3月に検討結果を取りまとめた。主な内容については次のとおりである。
(1)車両の火災対策我が国の車両は、一定の不燃性や難燃性などの防火性能を備えているが、さらに大火源火災を考慮し、以下の措置を講じる必要がある。ア 防火性能が低い材料及び溶融滴下する材料は、車両天井部への使用を制限する。イ 従来の車両材料燃焼試験に、溶融滴下の判定を追加するとともに、新たに大火源火災における防火性能を判定するための燃焼試験を追加する。ウ 隣接車両への煙の流入等を防止するため、連結する車両間に、通常時閉じる構造の扉を設置する。
(2)地下駅・トンネルの火災対策異なる2以上の避難経路を設けること等の現行の基準に加え、大火源火災に対し、旅客の安全な避難経路を確保するとともに消防活動を支援するため、以下の措置を講じる必要がある。ア 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客が安全に避難できる時間を確保するための排煙設備を設置する。イ 旅客の安全な避難経路を確保するとともに、消防活動を支援するため、ホームとコンコースを結ぶ階段に、出火場所からの煙や炎を遮断するための防火シャッター等を設置する。ウ 旅客の避難経路を確保するため、袋小路部等には、売店を設置しない。これ以外の場所に、売店を設置する場合には、自動火災報知設備を設置することとし、コンビニ型売店には、これに加え、スプリンクラー設備を設置する。エ 消防隊員が地上と通信するための無線通信補助設備を設置する。また、駅の規模等により、消防隊員が使用する機器のための非常コンセント設備を設置する。
(3)旅客の避難誘導等に関する対策 旅客の安全な避難誘導をより確実に行うため、以下の措置を講じる必要がある。ア 火災発生時の運転取扱上徹底すべき事項を盛り込んだマニュアルを整備する。イ 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客の避難誘導の方法等火災発生時に係員が行うべき事項を定めたマニュアルを整備する。ウ 消火器、非常通報装置及びドアコックの車内表示を、ピクトグラム(絵文字)を使用する等により統一する。エ 避難経路図の駅への表示、消火器配置図の車両への表示等を行うとともに、通常時の構内放送、車内放送により、旅客に対し危機管理意識の高揚を図る。
(4)消防機関との連携 駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、鉄軌道事業者と消防機関が共有するとともに、定期的に両者が連携した訓練を実施する。 この検討結果を踏まえ、国土交通省において、鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正が行われたことに伴い、消防庁としても、地下鉄道における火災対策について、平成16年12月27日付で都道府県を通じ各消防機関に周知を行った。 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。なお、平成17年中における道路トンネル火災は36件となっている(第1−9−4図)。第1-9-4図 トンネル内車両・施設火災件数の推移 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や東日本高速道路株式会社等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 国土交通省は、都市部の道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、「乗用車専用道路(小型道路)」の導入を可能とする法令改正を平成15年度に行ったところである。この「乗用車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は、車両火災等における消防活動の課題について検討を行っているところであり、消防庁としても、「乗用車専用道路」の導入時においても円滑な消火・救急活動が確保されるよう、その対策について検討していく。 今後、供用を迎える中央環状新宿線の発災時の管理・運用面並びに縦流式換気方式による長大トンネルとして建設が予定されている中央環状品川線を想定した防災安全計画に関する方策を講じるため、平成18年1月、東京都及び首都高速道路株式会社において、首都高速道路における都市内長大トンネルの防災安全に関する調査研究委員会が設置され、消防庁などの関係機関や学識経験者等による検討が行われている。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において、大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が公布され、平成13年4月1日に施行された。 また、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ定期的に開催されている。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、従来の施設と比較して消火活動や救助活動がより困難になることが予想されている。 このため、消防庁、国土交通省等関係機関において大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について検討を行い、平成16年2月に「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を取りまとめた。 平成17年8月には、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の適用第1号として、神戸市から認可権者である兵庫県知事に大容量送水管整備事業の事業概要書が提出された。今後は、同法を利用する事業が行われる際においては、同指針等を踏まえた安全対策が講じられるよう、適切な指導、助言等を行う必要がある。 また、地下街やトンネル等の消防活動が困難な空間において、迅速で円滑な活動を安全に行うためには、指揮本部による一元的な情報管理が特に重要であることから、消防庁では、活動中の隊員位置や活動状況等の情報をリアルタイムに把握することができる、「消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システム」の開発を進めている。 活動支援情報システムは、隊員の位置を特定するため、小型の慣性航法装置と電子タグを組み合わせた位置特定システム、隊員の位置を表示するための位置表示システム、位置データや音声を伝送できる情報通信システムから構成され、各要素技術を組み合わせた小型軽量な可搬式システムの実用化に向けた開発を行っている。
[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成17年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故(以下「ガス事故」という。)のうち消防機関が出場したものの総件数は、1,134件(対前年比167件減)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが621件(同114件減)、液化石油ガスに係るものが513件(同53件減)となっている(第1−9−5図)。第1-9-5図 ガス事故の態様別発生件数ア 事故の約8割は漏えい事故 事故を態様別にみると、漏えい事故が898件(ガス事故全体の79.2%)、爆発・火災事故が236件(同20.8%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が550件(都市ガス事故全体の88.6%)、爆発・火災事故が71件(同11.4%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が348件(液化石油ガス事故全体の67.8%)、爆発・火災事故が165件(同32.2%)となっている(第1−9−5図)。イ 事故の約8割は消費先で発生 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが870件(ガス事故全体の76.7%)、ガス導管等消費先以外におけるものが264件(同23.3%)となっている(第1−9−6図)。第1-9-6図 ガス事故の発生場所別件数 消費先において発生した事故を、発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等発生原因が消費者に係る場合が458件(消費先において発生した事故全体の52.6%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が106件(同12.2%)、その他の原因が306件(同35.2%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が224件(都市ガス事故全体の54.5%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が52件(同12.7%)、その他の原因が135件(同32.8%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が234件(液化石油ガス事故全体の51.0%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が54件(同11.7%)、その他の原因が171件(同37.3%)となっている。
(2)ガス事故による死傷者が減少 平成17年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は11人(対前年比2人減)、負傷者数は227人(同37人減)である。死者のうち、都市ガスによるものは1人(死者数全体の9.1%、対前年比5人減)、液化石油ガスによるものは10人(同90.9%、同3人増)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは58人(全体の25.6%、対前年比27人減)、液化石油ガスによるものは169人(同74.4%、同10人減)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが6人(死者数全体の54.5%)、爆発・火災事故によるものが5人(同45.5%)、負傷者数では漏えい事故によるものが70人(負傷者数全体の30.8%)、爆発・火災事故によるものが157人(同69.2%)となっている(第1−9−7図)。第1-9-7図 ガス事故による死傷者数
(3)自損行為によるガス事故 平成17年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は66件(ガス事故全体の5.8%、対前年比15件減)、これらの事故による死者数は5人(死者全体の45.5%、同1人増)、負傷者数は51人(負傷者全体の22.5%、同11人減)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは51件(自損行為に起因する事故全体の77.3%、対前年比5件減)、爆発・火災事故に至ったものは15件(同22.7%、同10件減)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約8割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成17年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は、78件(対前年比11件増)で、火災が9件(同1件増)、漏えいが46件(同4件減)、それ以外のものが23件(同14件増)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、アンモニアが14件(全体の17.9%)、塩素が8件(同10.3%)、硫酸が8件(同10.3%)、以下水酸化ナトリウム等の順になっている(第1−9−8図)。第1-9-8図 毒劇物による事故の内訳
(2)事故による死傷者数 平成17年中の死者は6人(対前年比4人増)で、負傷者は61人(同8人減)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の3の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1−9−9図)。第1-9-9図 消防活動阻害物質に係る届出施設の状況 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。 なお、消防庁では救助用資機材として陽圧式化学防護服や防毒マスク等の整備を推進している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努める必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、さらにその内容を充実していく必要がある。
(3)装備・資機材の整備 有毒ガスの発生など特殊な状況下では、通常の消防装備・資機材では的確な消防活動を行うことが困難な場合があることから、陽圧式化学防護服及び防毒マスク等の整備を一層推進する。 また、危険物災害等特殊な災害を想定した消防資機材の性能等についての自主的な研究・協議に関する活動についても推進している。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成17年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成17年1月1日から平成17年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)113港における海上災害で消防機関が出動したものは28件あり、このうち火災によるものが14件(全体の50.0%)、油の流出によるものが9件(全体の32.1%)ある(第1−9−1表)。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が16件で全体の57.1%を占めている(第1−9−1表)。第1-9-1表 主要港湾における消防機関の出動状況 最近の主な船舶火災としては、平成14年10月1日に長崎港で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」において、ぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 また、平成14年11月26日には、伊豆大島において座礁していたバハマ船籍の自動車運搬船「ファルヨーロッパ号」で出火、大量の煙が発生したため、付近住民が一時的に自主避難をする事態となった。 油の流出災害としては、平成14年12月5日に茨城県日立港において、北朝鮮船籍の貨物船「チルソン号」が座礁し燃料油が流出する事故が発生している。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 消防庁では、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めており、平成15年6月には、全国の沿岸海域を有する都道府県及び市町村に対して、漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況とその意見に関する調査を行った。その把握結果について、関係省庁に通知するとともに、都道府県に対し、管内の沿岸海域を有する市町村の地域防災計画に、漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定するよう指導・助言した。 また、油以外の有害危険物質による災害対策の充実強化を図るため、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」の改正作業を、内閣府、消防庁、海上保安庁をはじめとした関係省庁で行っている。
[航空災害対策]1 航空災害の現況と最近の動向 平成17年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は23件発生しており、そのうち飛行機事故は9件となっている。また、民間航空事故による死者は16人、負傷者は20人となっている(平成17年版航空・鉄道事故調査委員会調べによる。)。 平成17年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは10件となっている。なお、消防機関が出動したものは58件あり、このうち飛行場内が48件、飛行場外が10件となっている。 最近の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)や平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生している。
2 航空災害対策の現況 航空事故は、いったん発生すれば、大惨事となるおそれがあり、初期における消火救難活動が極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が空港管理者により行われているが、消防庁では、国土交通省等と空港災害対策研究会議を設け、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準や航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者及び地方公共団体等関係機関に示し、航空災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、空港及びその周辺で発生する航空災害に対処すべく消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成18年4月1日現在、空港所在市町村の 97消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空災害対策の課題 航空事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においても、空港周辺地域での航空災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。平成18年度航空機事故消火救難医療総合訓練〜東京国際空港
第2章 消防防災の組織と活動 第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 いわゆる常備消防は、平成18年4月1日現在で811消防本部あり、この本部の下に、消防署が1,706署、出張所が3,221所あり、消防職員は15万6,758人となっている(第2−1−1表、第2−1−1図)。第2-1-1表 市町村の消防組織の現況第2-1-1図 消防職団員数の推移 前年と比較すると、市町村合併と広域化が進められたこと等により、本部は37本部減少している。 他方、前年と比較して消防署は2署、消防職員は676人増加しており、また、女性職員も2,961人(前年比126人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 現在の市町村における消防体制は、大別して、〔1〕消防本部及び消防署(いわゆる常備消防)と消防団(いわゆる非常備消防)とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、〔2〕消防団のみが存する地域がある。 平成18年4月1日現在、常備化市町村は、1,780市町村となり、常備化率は市町村数で97.7%(市は100%、町村は96.1%)に達し、人口の99.9%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化(昭和40年4月1日現在、常備化市町村は600市町村)に伴い、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が進められた。 その結果、平成18年4月1日現在、組合による消防本部は329本部(うち広域連合は17本部)に達しており、その構成市町村数1,172市町村(342市、681町、149村)は常備化市町村全体の65.8%に相当する。また、事務委託市町村数は126市町村(27市、80町、19村)に達している(第2−1−2図)。第2-1-2図 消防本部の設置方式の内訳
(2)消防団 消防団は、市町村の非常備の消防機関であり、その構成員である消防団員は、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員である一方、他に本業を持ちながらも、「自らの地域は自らで守る」という郷土愛護の精神に基づき参加し、消防・防災活動を行っている。 平成18年4月1日現在、全国の消防団数は2,584団、消防団員数は90万7人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設置されている(第2−1−1表、第2−1−1図)。第2-1-1表 市町村の消防組織の現況第2-1-1図 消防職団員数の推移 消防団は、・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務)・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約6倍)・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)といった3つの特性を活かしながら、初期消火や残火処理等を行っているほか、大規模災害時には住民の避難誘導や災害防ぎょ等を、国民保護の場合は住民の避難誘導等を行うこととなっており、特に消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っているなど、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。 また、消防団は、平常時においても地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、コミュニティの活性化にも大きな役割を果たしている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が38.7%を占め、また、平均年齢は37.8歳となっている(第2−1−3図)。第2-1-3図 消防団員の年齢構成
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2−1−2表)。第2-1-2表 消防機械の保有数
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が75.8%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は23.2%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2−1−3表)。第2-1-3表 消防水利(人工水利)の保有数
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、消防通信網等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話(119番)は、加入電話又は公衆電話によって消防機関に火災等の災害や救急・救助事案の発生等を通報するもので、平成18年4月1日現在、全国の消防機関に16,930回線が設置されている(第2−1−4図)。第2-1-4図 通信施設等の状況 近年の携帯電話・PHS(以下「携帯電話等」とする。)の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数に占める割合は20%を超えている。かつて、携帯電話等からの119番通報は、特定の代表消防本部が一括で受信し、それぞれの消防本部へ転送又は伝達していたが、対応までに時間を要することから、平成17年度に携帯電話等の発信地を管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムへの移行を行ったところである。 また、平成19年4月からは携帯電話・IP電話及び直収電話(以下「IP電話等」とする。)からの119番通報に際して、電話事業者から発信場所の位置情報がIP-VPN網を経由して各消防本部に通知されるシステムの運用が始まるが、迅速かつ能率的な指令業務に役立つものと期待されている。 このように119番通報については、電気通信技術の変革に伴う電話サービスの多様化に今後とも適切に対応していく必要がある。イ 消防通信網 無線通信網である消防救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。 平成18年4月1日現在、101,550局が運用されており、この1年間に1,605局が増加した(第2−1−4図)。 従来、消防救急無線はアナログ方式により、整備・運用されてきたが、秘話性の向上によるプライバシー保護や画像・文字等のデータ通信の活用による利用高度化及び電波の有効活用を図る観点から、平成28年5月までにデジタル方式に移行することとされている。また、この機会を捉え、各消防本部間の相互応援に対応可能な通信基盤の整備及び整備費用の節減を図る観点から、都道府県域での広域化・共同化整備を推進しているところである。 他方、有線通信網である消防電話は、消防本部、消防署、消防分署及び関係行政機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話である。 また、画像伝送システムは、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を消防指令センターに伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに国、都道府県及び他の市町村などへも伝送が可能である。発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、導入済みの消防機関は37機関に達している。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成16年度の消防費歳出決算額は1兆8,358億円(前年度1兆8,200億円)で、前年度に比べ158億円(0.9%)の増加となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額49兆2,578億円(前年度49兆7,846億円)に占める消防費決算額の割合は3.7%(同3.7%)となっている(第2−1−4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成16年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万6,438円(前年度3万6,519円)であり、住民1人当たりでは1万4,470円(同1万4,351円)となっている(第2−1−4表)。第2-1-4表 普通会計決算額と消防費決算額との比較並びに1世帯当たり及び住民1人当たり消防費の推移ウ 経費の性質別内訳 平成16年度消防費決算額1兆8,358億円の性質別内訳は、人件費1兆3,891億円(全体の75.7%、前年度75.9%)、物件費1,659億円(同9.0%、同8.9%)、普通建設事業費1,998億円(同10.9%、同11.0%)、その他810億円(同4.4%、同4.2%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が76億円(0.6%)、物件費が48億円(3.0%)増加し、普通建設事業費が12億円(0.6%)減少している(第2−1−5表)。第2-1-5表 市町村消防費の性質別歳出決算額の推移
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成16年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,811億円(全体の91.6%、前年度91.4%)、次いで地方債884億円(同4.8%、同4.9%)、国庫支出金208億円(同1.1%、同1.3%)となっている(第2−1−6表)。第2-1-6表 市町村消防費決算額の財源内訳イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、平成17年度の単位費用は1万800円(対前年度同額)、基準財政需要額は1兆6,469億円(対前年度伸び率△2.9%)であった。平成18年度は、メディカルコントロール体制の充実とともに、アスベスト対策資機材の整備に要する経費が措置された一方で、給与単価の引下げ等により、単位費用は1万600円(同△1.9%)であり、さらに段階補正の見直し等の影響により、基準財政需要額は1兆5,732億円(同△4.5%)に減少している(第2−1−7表)。第2-1-7表 消防費の単位費用及び基準財政需要額の推移ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがあり、国庫補助金には消防防災施設整備費補助金と緊急消防援助隊設備整備費補助金とがある。消防防災施設整備費補助金は予算措置による補助で、市町村等(一部都道府県を含む。)の消防防災施設等の整備に対して、予算の範囲内で、原則として補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の嵩上げが規定されているものがある。具体的には、地震防災対策強化地域の市町村及び地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村に対しては10分の5.5の補助を行っている。 また、緊急消防援助隊設備整備費補助金については、消防組織法による法律補助で、緊急消防援助隊のための一定の設備の整備に対して予算の範囲内で補助基準額の2分の1の補助を行っている。 平成18年度予算においては、平成17年度同様の歳出改革路線を堅持・強化し、一般会計歳出及び一般歳出について前年度の水準以下に抑制する一方、予算の内容については、あらゆる分野にわたり歳出を見直した上で、重要施策に重点的に予算配分を行うこととされた。 特に三位一体改革については、4兆円程度の補助金改革、3兆円規模の税源移譲を実施するため6,540億円程度の補助金改革が求められた。 このような状況の下で、高機能消防指令センターの一部、デジタル防災無線、自主防災組織、消防団に係る補助金が三位一体改革により廃止・一般財源化されたが、法律補助である緊急消防援助隊関係設備については前年度とほぼ同額(50億円)を確保し、総額で84億5,500万円(対前年度当初予算比35.9%減)を確保したところである(第2−1−5図)。第2-1-5図 国庫補助金の内訳エ 地方債 消防防災施設等の整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成16年度地方債許可額は、717億1,100万円で前年度に比べ500万円の微増となっている(第2−1−8表)。第2-1-8表 市町村の消防防災施設等整備事業に対する地方債許可額の推移(一般単独事業、指定都市及び市町村分) 地域における「災害等に強い安心・安全なまちづくり」を目指し、住民の安全の確保と被害の軽減を図るため、防災対策事業として防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業が推進されているが、これらの事業には防災対策事業債が充当され、その元利償還金の一部については地方交付税措置が講じられている。 防災基盤整備事業は、消防防災施設整備事業、消防広域化対策事業、緊急消防援助隊施設整備事業を対象としており、平成18年度からは、津波警報、緊急地震速報、弾道ミサイル攻撃等の発生時に、国が市町村の防災行政無線を起動し、住民に緊急情報を伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)の起動装置や、消防通信・指令施設として高機能消防指令センターも対象としている。 また、公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地地域対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺整備助成補助金等がある。
(3)都道府県の防災費 都道府県の防災費の状況をみると、平成16年度における歳出決算額は989億5,100万円であり、平成16年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.21%である(第2−1−9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防、国民保護対策等に要する事務費等である。第2-1-9表 都道府県の普通会計歳出決算額と消防防災費歳出決算額等の推移 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成16年度における補助金の決算額は108億8,400万円で、前年度に比べて7億3,400万円(6.3%)減少している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は8,600万円で、前年度に比べて1,300万円(13.1%)減少している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成18年度予算額は、前年度より27.1%減の142億3,010万円となっている(第2−1−10表)。第2-1-10表 平成18年度消防庁関係予算主要事項別一覧 総額のうち、84億5,531万円(対前年度比35.9%減)は、消防防災施設整備費補助金及び緊急消防援助隊設備整備費補助金(旧:消防防災設備整備費補助金)に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点整備ア 消防の広域化の積極的推進(ア)現状と課題 消防庁では、平成6年以降、市町村の消防の広域化を推進してきた。その結果、一定の成果を得たところであるが、管轄人口10万未満の小規模消防本部がいまだ全体の6割を占める状況にあった。 一方、災害の大規模化、住民ニーズの多様化等、近年消防を取り巻く環境は急速に変化しており、消防はこの変化に的確に対応しなければならないものの、小規模な消防本部においては、一般的に、出動体制、保有する車両等の住民サービスの限界や組織管理上の限界が指摘されていた。また、日本の総人口は、平成17年に戦後初めて減少に転じており、今後も人口は減少すると予想されている。これにより一般的に各消防本部の管轄人口も減少すると考えられ、さらに、地域の消防を担っている消防団員の担い手不足の問題も懸念されていた。このような現状にかんがみ、市町村の消防の体制の整備・確立のためには、市町村の消防の広域化をより積極的に推進することが必要であった。(イ)市町村の消防の広域化に関する法律の整備(消防組織法の一部を改正する法律) 消防庁では昨年来市町村の消防の広域化の推進について議論してきたが、「今後の消防体制のあり方について(中間報告)〜消防の広域化を中心として〜」(平成18年1月 今後の消防体制のあり方に関する調査検討会)及び「市町村の消防の広域化の推進に関する答申」(平成18年2月1日 消防審議会)を踏まえて、第164回国会(平成18年通常国会)に「消防組織法の一部を改正する法律案」(閣法第87号)を提出した。同法案については、平成18年6月6日に衆議院本会議で可決、成立し、改正法については、6月14日に公布され、同日から施行されたところである(平成18年法律第64号)。 また、同年7月12日に改正後の消防組織法第32条第1項に基づき、市町村の消防の広域化に関する基本指針を定めた(平成18年消防庁告示第33号)。この中で、広域化を推進する期間について、遅くとも平成19年度中には都道府県において推進計画を定め、平成24年度までを目途に広域化を実現することと定めている。この推進計画に定める市町村の組合せの基準については、消防本部の規模が大きいほど望ましく、消防力、組織体制、財政規模等にかんがみ、管轄人口の観点から言えば、おおむね30万以上の規模を目標とすることが適当と定めている。 消防庁では、基本指針の策定とあわせ、広域化の推進方策の検討及び実施並びに都道府県及び市町村における広域化の取組みを支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置した(囲み記事「消防広域化推進本部の設置」参照)。 今後は、基本指針に基づき各都道府県において推進計画策定が進められることから、消防の広域化の必要性、メリットなど十分に理解して、各地域において広域化に関する積極的な議論が行われることが期待されているところであり、消防庁としても、消防広域化推進本部を中心として全庁を挙げて広域化を推進していくこととしている(第2−1−6図、第2−1−7図、第2−1−8図)。第2-1-6図 市町村消防の広域化の推進第2-1-7図 消防本部数と常備化率第2-1-8図 改正後の消防組織法による市町村の消防の広域化の推進スキームイ 消防力の整備 消防庁により、「消防力の整備指針」及び「消防水利の基準」が示されている。 「消防力の整備指針」については、「消防力の基準」として昭和36年の制定以来、市町村の消防力の充実・強化に大きな役割を果たしてきた。以来、「消防力の基準」は数次にわたり改正が行われたが、その後の都市構造の変化、消防需要の変化に対応して、より実態に即した合理的な基準となるよう、平成12年に全部改正が行われ、それまでの「必要最小限の基準」から「市町村が適正な規模の消防力を整備するに当たっての指針」へと性格が改められ、市町村の自主的決定要素が拡充された。さらに、平成15年12月の消防審議会答申においては、「消防力の基準」について、市町村の消防力の整備に係る指針としての位置付けを維持しつつ、消防サービスの水準確保を前提にして、消防力の整備に当たって市町村が様々な選択を行えるような内容・形態にしていく必要があるとされた。具体的には、分野別の標準的職務能力の明示、「兼務」概念の導入、施設の性能・効果を考慮した規定の導入、組織的・効果的な指揮を行うための指揮隊及び指揮隊員の配置基準、消防団員数に関する算定指標の設定等の必要性について提言された。また、平成16年12月の消防審議会答申では、見直しについてのより具体的な提言が行われた(囲み記事「災害現場への指揮隊の導入」参照)。 これらを受け、消防庁においては、平成17年6月に「消防力の基準」の一部改正を行い、名称も「消防力の整備指針」に改めたところである。 今後、各市町村においては、この消防力の整備指針を整備目標として、地域の実情に即した消防計画の見直しを行い、警防体制や予防体制の充実・強化をはじめ、急増する救急需要に的確に対応するための救急隊の増隊等、消防力の計画的な整備が必要となる。ウ 消防財源の強化 消防力は逐年充実・強化されているが、複雑多様化する災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実・強化に必要となる消防財源については、国庫補助負担金の確保、地方交付税への適切な算入、地方債制度の拡充等を通じて、より一層その充実を図る必要がある。
消防広域化推進本部の設置1.消防広域化推進本部の設置及び第1回会合の開催 消防庁は、平成18年7月12日、消防組織法第32条第1項の規定に基づき、「市町村の消防の広域化に関する基本指針」(平成18年消防庁告示第33号)を策定し、告示しました。 同日、自主的な市町村の消防の広域化の推進方策の検討及び実施並びに都道府県及び市町村における広域化の取組みを支援するため、消防庁長官を本部長とする「消防広域化推進本部」を設置し、同日、第1回会合を開催しました。2.消防広域化推進本部の構成員 本部長  消防庁長官 本部長代理 消防庁次長 副本部長 国民保護・防災部長、審議官、消防大学校長、消防研究センター所長 本部員  消防庁各課室長等3.当面の取組み 消防庁では、同日付けで消防広域化推進本部に都道府県ごとの広域化に関する相談窓口を設置しました。担当者はおもに消防・救急課員があたり、都道府県からの問合せのほか、市町村、消防本部からの相談にも対応することとしています。 また、推進本部では、そのほかにも次の取組みを行う予定です。 〔1〕 都道府県における推進計画策定の促進・支援 〔2〕 広域化の推進に関する制度、先進事例等の都道府県及び市町村に対する説明・情報提供 〔3〕 広域化の必要性やメリットについての広報及び普及啓発 〔4〕 都道府県や市町村に対する必要な財政措置の検討4.消防広域化推進アドバイザー制度 対象団体 都道府県、市町村、一部事務組合、広域連合又は協議会 内 容 依頼に基づき、地方公共団体における消防の広域化を推進するための具体的な方策に関する助言、情報の提供等を行う。消防広域化推進本部の看板掲出「消防広域化推進本部」第1回会合における消防庁長官あいさつ
災害現場への指揮隊の導入 各消防本部における指揮体制の実態はそれぞれであり、特に規模の小さな消防本部では、専任の指揮隊が設けられていない場合が多く、近年消防職員の殉職事案が続いていることからも、安全管理の面から指揮体制の整備の必要性が指摘されてきたところです。 こうした中、平成17年6月の消防力の基準の一部改正(消防力の整備指針)により、新たに指揮隊の配置基準等が示されました。指揮隊は、現場活動上の安全管理の確保及び円滑・効果的な消防活動の遂行の観点から、災害現場においては責任ある者が高度な情報収集・判断の下、組織的で厳格な指揮を行う仕組みが必要であるという考え方に基づき基準が定められています。 その後、「指揮隊の災害現場における指揮活動等について(報告)」(平成18年3月 指揮隊の災害現場における指揮活動等に関する検討会)により、実践的かつ効果的な指揮活動を展開するため、「指揮業務」「安全管理」「現場広報」についての検討及び報告がなされました。 このことを踏まえ、市町村及び消防本部は、活動態様に応じた組織的・効果的な指揮が行える体制を構築するとともに、消防活動における組織的な安全管理の徹底を期するため、具体的な整備計画を早急に策定し、指揮隊を整備する必要があります。 なお、消防本部に配備されている指揮隊及び指揮活動のイメージは次に示すとおりです。消防本部に配備されている指揮隊指揮隊が行う指揮業務イメージ
(2)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮しなければならず、勤務条件はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、改善を積極的に図る必要がある。 特に交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、人員確保及び勤務体制の整備を図るとともに、〔1〕給料・手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、〔2〕仮眠室等の施設の整備等、執務環境の改善を促進すること、〔3〕消防活動時の安全性を高めるため、装備品(防火衣等)を充実強化すること、〔4〕安全衛生管理体制を整備し、事故防止と健康管理に努めることなど、常に配慮が必要である。
(3)消防職員の高年齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成17年4月1日現在、41.7歳と一般行政職の43.1歳よりやや低くなっているが、昨年(41.5歳)より僅かであるが上昇している。 また、平成13年度から再任用制度が導入され、消防司令以下の階級にある特定警察職員等についても、平成19年4月までに適用されることから、再任用職員の活用の場を設けるとともに、今後、職員の高年齢化対策を一層推進する必要がある。 消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の活用を図るとともに、〔1〕装備の軽量化・動力化・安全化、〔2〕部隊の編成、消防戦術の見直し・検討、〔3〕計画的な体力錬成、〔4〕能力開発、適正な人事配置、人事交流など、総合的な対策を推進し、活力ある体制の確立が必要である。
(4)消防団の充実強化・活性化対策の推進 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動している。消防団員は、災害防ぎょ活動や住民の避難誘導、被災者の救助などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。 また、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震の発生が危惧されており、さらに、平成16年6月に成立した国民保護法では、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うことが規定された。 これらのことからも明らかなように、消防団は、地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっている。 しかしながら、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて、様々な課題を抱えている。・ 消防団員数の減少 消防団員数は年々減少しており、10年前の平成8年4月1日現在に比べ72,071人(7.4%)減少している。・ 消防団員の被雇用者化 消防団員に占める被雇用者団員の割合は、10年前の平成8年4月1日現在の割合に比べ4.0ポイント増加しており、団員の被雇用者の割合が高くなっている。・ 消防団員の高年齢化 消防団員の平均年齢は、10年前の平成8年4月1日現在に比べ1.7歳上昇しており、少しずつではあるものの団員の高年齢化が進んでいる。・ 女性の採用 女性消防団員数は、10年前の平成8年4月1日現在に比べ7,869人増えて14,665人となっており、団員数が減少する中でも、年々増加している。しかしながら、女性を採用している消防団は全消防団の39.8%にとどまっている。 そこで、消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性消防団員数10万人以上)確保することを目標としており、また、消防団員確保の全国的な運動を展開し、消防団員数の減少に歯止めを掛けるため、平成18年7月14日付け消防災第275号により、消防庁長官名において各都道府県知事及び各指定都市市長あて「消防団員確保の更なる推進について」を通知し、併せて、市町村長に書簡を送付し、消防団員の確保についてより一層の喚起を図っている。 なお、消防団が抱える様々な課題を解消し、消防団の充実強化・活性化を推進するため、以下のような施策を実施している。ア 消防団機能向上のための総合戦略検討小委員会の開催 消防団に関する様々な課題について、集中的な検討を行うため、消防審議会に小委員会を設置し、検討を行っている。a 目的 これまでの消防団に関する各施策、個別テーマについての検討成果を総合的に整理するとともに、その成果を活かしながら新たな検討を加え、消防団の機能向上のための取組みを総合的、計画的に実行に移し、具現化することにより、消防団員100万人の実現による消防団の充実強化、ひいては地域防災体制の充実に寄与するため、消防審議会内に消防防災関係者や学識経験者等と小委員会を設けて、消防団に関する様々な課題について検討を行う。b 検討期間 平成18年9月〜12月(予定)c 小委員長 秋本敏文日本消防協会理事長d 主な検討内容 ・ 消防庁が行った消防団に関する最近の調査研究の成果及び施策の実施状況を整理し、今後の重点的な課題を協議する。イ 検討会の開催 消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、各種検討会を開催又は検討会に委員として参画し、検討・議論された提言を取りまとめ、施策に反映している。最近における主な検討会は以下のとおりである。(ア)消防団協力事業所表示制度に関する検討会a 目的 「消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会」の提言を踏まえて、事業所として消防団活動に協力することが、その地域に対する社会貢献及び社会責任として認められ、当該事業所の信頼性の向上につながるとともに、協力を通じて地域における防災体制がより一層充実するための仕組みである「消防団協力事業所表示制度」について検討を行った。b 検討期間 平成18年6月〜8月c 座長 小笠原倫明(小林恭一)消防庁国民保護・防災部長    ※( )内は前任者d 主な検討結果 ・ 消防団協力事業所表示制度の全体的な仕組み ・ 消防団協力事業所表示制度の効果的な普及策 ・ 消防団協力事業所表示制度に係るインセンティブ(イ)消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会a 目的 社会の就業構造の変化に伴い、消防団員の中で被雇用者が占める割合は年々増加しており、今後、団員の確保策を進めるためには、事業所との連携を深め、各事業所との協力体制を構築することが不可欠となっている。そこで、「消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会」における提言等を踏まえ、消防団と事業所の連携の具体的方策について必要な検討を行った。b 検討期間 平成17年8月〜平成18年2月c 座長 大森彌東京大学名誉教授d 主な検討結果 ・ 事業所における被雇用者消防団員の活動環境の整備 ・ 事業所との新たな協力関係の構築 ・ 事業所における防災知識・技術に関するストックの活用 ・ 消防団活動への協力が社会責任及び社会貢献として捉えられるための環境づくり(ウ)消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会a 目的 社会環境の変化等から、地域に必要な消防団員の確保に苦慮している消防団が見られ、全国的に消防団員数の減少が続いており、地域防災力の低下が懸念されている。そこで、地域住民・被雇用者・女性が参加しやすい活動環境の整備、地域住民・事業所の消防団活動への理解促進について必要な検討を行った。b 検討期間 平成16年7月〜平成17年1月c 座長 大森彌千葉大学教授(当時)d 主な検討結果 ・ 被雇用者団員・女性等が参加しやすい環境づくり ・ 各消防団が特性に応じて選択できる機能別団員及び機能別分団などの組織・制度の多様化方策 ・ 消防団の活動実態を踏まえた団員の処遇改善策(エ)地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会a 目的 「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」(委員長:伊藤滋・早稲田大学教授)の報告(平成15年3月)において、これからの消防団のあり方として提言された「消防団員数の確保」等を踏まえ、地域防災力の充実強化を図るため、「消防団員数の確保」に特に焦点を当て、消防団員の確保対策及び国、地方自治体、消防団がそれぞれ実施する具体的な方策について必要な検討を行った。b 検討期間 平成15年11月〜平成16年3月c 座長 大森彌千葉大学教授(当時)d 主な検討結果 ・ 都道府県、市町村、消防団が連携し地域の実態にあった団員確保方策の実施 ・ 市町村合併時における消防団員の定数の維持 ・ 事業所への説明や事業所との交流など、事業所の理解を深める活動の推進 ・ 消防団ホームページの充実や、市町村・都道府県ホームページでの消防団活動の紹介など、住民・団員が消防団情報にアクセスしやすい環境づくりの促進ウ 各種施策の実施 消防団への参加促進や消防団の活動環境の整備を図るため、以下の施策を実施している。(ア)消防団の装備・施設の充実強化 消防車両・無線機器・安全装備品等の消防団に必要な設備や、消防団の活動拠点となる施設の整備については、「防災基盤整備事業」及び「施設整備事業(一般財源化分)」の対象とされている。(イ)消防団員の処遇の改善 消防団員の年額報酬や出動手当等に対する地方財政措置、退職報償金制度について、その充実を図っている。(ウ)消防団への理解及び参加の促進 消防団PRビデオ・DVDとあわせ、消防団啓発ポスターや、学生(小学生、中学生・高校生、大学生・専門学校生等)・社会人・女性といった全国の幅広い層をそれぞれ対象とした消防団理解及び参加促進パンフレット(リーフレット)の作成・配布を行い、より幅広い層の消防団への理解及び参加の呼びかけに努めている。(エ)公務員や公共的団体職員の入団推奨 国家公務員(主に郵便局職員)や地方公務員のほか農業協同組合・漁業協同組合・森林組合等の公共的団体職員の入団を推奨している。(オ)女性の入団推奨 地域の安心・安全に積極的に取り組む女性の入団を推奨している。(カ)全国消防団員意見発表会・消防団地域活動表彰の実施 地域における活動を推進するとともに、若手・中堅団員や女性団員の士気の高揚を図るため、全国各地で活躍する若手・中堅団員や女性団員による意見発表会を開催し、併せて、 ・ 地域に密着した模範となる活動を行っている消防団 ・ 団員である住民を雇用し、消防団活動を支援する事業所 ・ 団員の確保について特に力を入れている消防団、地方自治体及び事業所 ・ 大規模災害時等において顕著な活動を行った消防団に対する表彰などを実施し、その内容を取りまとめ、全国に提供している。(キ)事業所の理解と協力 被雇用者団員の増加に伴い、消防団員である住民を雇用する事業所の消防団活動への理解と協力を得ることが不可欠であるため、平成18年度より、事業所の協力を通じて地域の防災体制が一層推進される仕組みである「消防団協力事業所表示制度」を導入し、事業所が消防団の活動へ協力しやすい環境の整備を図っている。また、 ・ 消防団員である住民を多く雇用し、消防団活動に特に深い理解があり協力度の高い事業所に対する表彰 ・ 経済団体や東京に本社機構を持つ事業所への働きかけ ・ 事業所に向けた消防団参加促進パンフレットの作成・配布などを実施し、事業所の消防団活動に対する理解・協力を求めている(囲み記事「消防団活動を積極的に支援する事業所」参照)。(ク)インターネットによる消防団活動のPRa 「消防団のホームページ」の運用 「消防庁ホームページ」内に「消防団のホームページ」を設け、消防庁における最新施策や最新情報等を掲載し、消防団活動のPRに努めている。b 「消防団メールマガジン」の発行 全国の消防団等に関する情報を提供するため、平成15年3月から「消防団メールマガジン」を発行し、全国の消防団員をはじめとした読者に配信している。 また、「消防団メールマガジン及び消防団のホームページの普及促進パンフレット」を作成・配布し、一層の普及促進に努めている。(ケ)機能別団員及び機能別分団など消防団組織・制度の多様化方策を導入 昼夜間を問わず、すべての災害・訓練に出動する消防団員(以下、「基本団員」という。)を基本とした現在の制度を維持した上で、必要な団員の確保に苦慮している各市町村が実態に応じて選択できる制度として、下記の多様化方策を導入した(第2−1−9図、囲み記事「多様化する消防団(機能別団員、機能別分団など)」参照)。第2-1-9図 機能別団員及び機能別分団の概要a 機能別団員(特定の活動、役割のみに参加する団員) 基本団員と同等の活動ができない人が、入団時に決めた特定の活動・役割及び大規模災害等に参加する制度。b 機能別分団(特定の活動、役割を実施する分団) 特定の役割、活動を実施する分団・部を設置し、所属団員は当該活動及び大規模災害対応等を実施する制度。c 休団制度 団員が長期出張、育児等で長期間に渡り、活動することができない場合、団員の身分を保持したまま一定期間、活動休止を消防団長が承認する制度。休団中の大規模災害対応、休団期間の上限は各消防団で規定し、休団中は報酬の不支給、退職報償金の在職年数不参入が可能。d 多彩な人材を採用・活用できる制度 条例上の採用要件として性別・年齢・居住地等を制限している例があるので、条例の見直しにより幅広い層の住民が入団できる環境の整備や年間を通じての募集・採用の実施。
消防団活動を積極的に支援する事業所 平成18年4月1日現在、消防団員の約7割が被雇用者であり、消防団活動には事業所の協力が必要不可欠です。 兵庫県加西市にある兵庫みらい農業協同組合は、地域に密着した職業柄、地元の消防団員を多数雇用しており、消防団行事の訓練会場、土のうの備蓄保管場所の提供など消防防災活動に積極的に協力しているほか、就業規則により、就業中に発生した各種災害等へ消防団員として出動した場合は、公の職務の執行とみなし他の勤務者が仕事を補充するとともに、勤務したものとして扱うなどの協力体制を構築しています。 このように、消防団活動に理解を示し、消防団に協力的な事業所の輪が広がり、地域の安心・安全が推進されることが期待されています。 このため、消防庁では、平成17年度に設置した「消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会」における提言を踏まえて、事業所として消防団活動に協力することが、その地域に対する社会貢献及び社会責任として認められ、当該事業所の信頼性の向上につながるとともに、協力を通じて地域における防災体制がより一層充実するための仕組みである『消防団協力事業所表示制度』を構築しました。この制度は、事業所の協力により消防団員の活動環境の改善を図ることによって、地域の安心・安全が推進されることを目的としておりますので、消防庁では多くの市町村にこの趣旨をご理解いただき、導入していただくことを期待しています。訓練を行う消防団員(加西市消防本部提供)
多様化する消防団(機能別団員、機能別分団など) 愛媛県松山市では、郵政団員の採用に引き続き、平成18年4月、機能別団員として市内4つの大学の学生74名による大学生防災サポーターを採用しました。 大学生防災サポーターは、災害時における避難所での対応を主な任務としており、若さと行動力、そして専攻学科の知識などに対する期待のほか、避難所での対応を請け負うことにより、すべての活動に従事する基本団員が、一人でも多く災害現場での消火や救助などの活動が行えるようになることを目的としています。 長野県伊那市でも、平成18年3月の周辺町村との合併に伴い、従前の3消防団(伊那市消防団、高遠町消防団、長谷村消防団)の条例定数をそのまま引継いだ、伊那市消防団を発足しました。合併前の消防団員の合計は1,129名と条例定数とは27名の乖離があり、また、合併の際に退団希望者が多く出ましたので、この不足する消防団員を確保するため、旧長谷村の消防団員OB17名を構成員とし、旧村内の建物火災や大規模災害に限って出動する「長谷機能分団(通称:OB分団)」を採用しました。 これら以外にも、全国各地で機能別団員・分団の採用について検討が行われておりますが、引き続き、地域の多くの方が消防団に参加しやすいように、これらのような地域防災力の充実強化に向けた消防団員確保に係る積極的な取組みが、全国に広がっていくことが期待されます。大学生防災サポーターの訓練の様子(松山市消防局提供)
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成17年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。)への出動回数は105万4,729回で、出動延人員は1,265万178人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,890回、30秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は26万5,465回、出動延人員は466万6,653人となっている(第2−2−1表)。第2-2-1表 消防職員及び消防団員の出動状況
(2)消防団員の活動状況 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生しており、多くの消防団員が出動し、消防団は消防隊と連携しながら、昼夜を分かたずに多岐にわたる活動を行っている。 平成17年においては、福岡県西方沖を震源とする地震や宮城県沖を震源とする地震における住民の避難誘導及び巡回警戒や、台風第14号等の風水害における水防活動や住民の避難誘導など、各地の消防団は多岐にわたる活動で被害の軽減に大きく寄与した。 平成18年においても平成18年7月豪雨により、各地で大きな被害が発生したが、消防団員の献身的な活動により、地域に大きく貢献した。 全国の消防団は、自宅が被災した消防団員もいる中で出動し、地域の防災力の中心として、これらの果敢な活動を不眠不休で行い、被害の拡大を防止し、住民の安全確保に貢献した。その支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という崇高な郷土愛護の精神である。一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、地域住民から高く賞賛されている。消防団員は、地域に居住又は勤務する住民により構成され地域に密着しており、地理や住民の居住先等の地域情報を十分に把握しているため、大規模災害時には特に能力を発揮している。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当等の講習会や住宅の防火指導の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組みが行われている。また、少しずつではあるものの着実に増加傾向である女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及などに活躍している(囲み記事「活躍する女性消防団員」参照)。 このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして、地域の安心・安全のため重要な役割を担っている。
活躍する女性消防吏員 平成18年4月1日現在の全国の消防吏員数は、155,061人で、うち女性消防吏員数は2,207人(1.42%)となっており、年々増加傾向にあります。 女性消防吏員は、昭和44年に川崎市で初めて採用され、その後、徐々に女性消防吏員を採用する消防本部が増えてきましたが、女性の深夜業務への従事が制限されていたこともあり、女性消防吏員を採用する消防本部はごく一部に限られていました。 その後、社会全般における女性の社会進出の広がり等を背景に、平成6年には労働基準法の一部が改正され、女性の深夜業務への従事制限が解除されたことから、住民からの期待や要望が強かった女性の救急隊員、機関業務や通信指令業務等の交替制勤務に従事する女性隊員を配置する消防本部が増えてきました。 消防庁においては、消防組織の充実強化を図るための方策の一つとして、消防組織における女性消防吏員の更なる積極的な採用と職域の拡大について推進しているところであり、平成16年には〔1〕採用における平等な受験機会を提供すること、〔2〕警防業務、予防業務、救急業務など幅広く従事できるよう職域を拡大すること、〔3〕仮眠室やトイレ等環境の整備を行うこと、について各消防本部における女性の職域拡大に向けた積極的な取組みを求めるとともに、警防業務を含む消防活動においては、基本的に女性は男性と同様に活動ができることなどを示したところです。 消防庁は、今後とも、各消防本部において積極的な取組みが図られ、女性消防吏員がより一層活躍されることを期待しています。消防吏員に占める女性消防吏員の割合と人数消防隊員として活躍する女性消防吏員(市川市消防局提供)救急隊員として活躍する女性消防吏員(姫路市消防局提供)
活躍する女性消防団員 消防団の組織の活性化及び地域のニーズに応える方策として、女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まっています。また、男女共同参画の流れを受けて、女性の消防団への参加意欲も高まっています。 消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加し、平成18年4月1日現在、14,665人(全体の1.6%)、女性消防団員を採用する消防団は1,029団(全体の39.8%)で全都道府県に及んでいます。 宮城県仙台市では、平成9年5月から女性消防団員を採用しており、平成18年4月1日現在、109名の女性消防団員が活躍しています。主な業務としては、消防出初式や特別点検への参加のほか、応急手当や火災予防の普及啓発、災害現場活動の支援や警戒、避難誘導や被災者の救護を行うこととしています。宮城県沖地震の再来が懸念される中、地域の安心・安全の確保のために、女性消防団員が行う応急手当や火災予防の普及啓発活動は、大きな成果を上げています。 このように、全国の女性消防団員は、それぞれの地域において、広報活動、一般家庭の防火指導、一人暮らし高齢者宅の防火訪問や応急手当指導等、多岐にわたって活躍しており、特に大規模災害時には、地域住民の検索及び避難住民の誘導など更なる活躍も期待されています。特別点検に参加する女性消防団員(仙台市消防局提供)
2 公務災害の状況 平成17年中における公務により死亡した消防職団員(火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡したもの等)は17人、同じく負傷した消防職団員は2,466人である。前年に比べて公務による死者は1人減少し、負傷者は25人減少している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが38.5%と最も多く、次いで火災によるものが24.1%、救急によるものが11.9%となっている(第2−2−2表)。第2-2-2表 消防職員及び消防団員の公務による死傷者数
3 勤務条件(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防本部の給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二つがあるが、行政職給料表を採用している団体では、号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けすることや、出動手当等の特殊勤務手当や休日給の支給がなされるなど、交替制勤務の特殊性が考慮されたものとなっている。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成17年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢41.7歳で34万1,237円であり、一般行政職員の場合は平均年齢43.1歳で35万2,825円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が10万2,866円であり、一般行政職員は8万326円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は、2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成18年4月1日現在、全国811消防本部中、2部制を採用している消防本部は539本部(66.5%)、3部制を採用している消防本部は209本部(25.8%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は60本部(7.4%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.3%)である。ウ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、〔1〕消防職員の勤務条件及び厚生福利、〔2〕消防職員の被服及び装備品、〔3〕消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 平成17年度においては、ほぼすべての消防本部で消防職員委員会が開催され、職員から提出された5,354件の意見について審議された。制度施行以来の累計では、合計で5万5,000件を超える意見について、審議が行われている。平成17年度においては、審議された意見のうち、「実施が適当」とされたものは、全体の41.8%を占めた。また、平成16年度において審議された意見のうち「実施が適当」とされた意見の58.8%が既に実施に移されるなど、消防職員委員会で審議された意見が着実に実現されてきているところである(第2−2−3表、第2−2−4表、第2−2−5表、第2−2−6表)。第2-2-3表 消防職員委員会の審議結果第2-2-4表 平成16年度に消防職員委員会において審議された意見の実施状況第2-2-5表 各年度の消防職員委員会開催状況第2-2-6表 各年度の消防職員委員会審議件数及び審議結果 また、平成17年5月、新たに「意見取りまとめ者」の制度を設けることなどを内容とした「消防職員委員会の組織及び運営の基準」の一部改正を行い、平成18年6月にはすべての市町村(組合を含む。)において所要の規則改正及び意見取りまとめ者の指名が行われた。エ 公務災害補償 消防職員の公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡)には、地方公務員災害補償法の定めるところにより、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償が支給される。また、福祉事業により必要に応じ、社会復帰に要する費用や遺族への援護資金も支給される。 また、消防職員が火災の鎮圧等の職務に従事したことにより公務上の災害を受けた場合、障害補償又はこれらに併せて支給する傷病特別給付金等について特例的な加算措置がなされる。 平成17年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数及び通勤災害認定請求受理件数のうち、消防職員については1,841件あり、前年度に比べ20件増加している。
(2)消防団員の処遇改善 消防団員は、大規模災害時においては昼夜を分かたず多岐にわたり活動し、また、平常時においても地域に密着した活動を行っているので、消防団員の処遇については、十分に配慮し改善していく必要がある。ア 報酬・出動手当 市町村では、条例に基づき消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額や支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨にかんがみ、引上げ等の適正化を図る必要がある。 なお、平成18年度の消防団員報酬等の地方交付税算入額は、第2−2−7表のとおりである。第2-2-7表 消防団員報酬等の地方交付税算入額イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況のもとで遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2−2−8表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2−2−9表)。第2-2-8表 消防団員の公務による死傷者数の推移第2-2-9表 補償基礎額改定状況 消防団員が身体に対し高度の危険が予測される状況の下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2−2−10表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。第2-2-10表 消防協力者等の死傷者数の推移ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、傷病・傷害の援護、介護の援護及び就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万4,000円、勤務年数30年以上の団長で92万9,000円となっている(第2−2−11表)。第2-2-11表 退職報償金支給額オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 平成18年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している関係市町村の数は、1,679市町村(契約対象市町村の92.2%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、1,822市町村(契約対象の全市町村)となっている。 消防基金の平成17年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,645人に対し、15億8,828万円となっている(第2−2−12表)。また、福祉事業の支給額は、延べ951人に対し4億9,176万円となっている。 消防基金の平成17年度の退職報償金の支給額は、5万7,140人に対し177億648万円となっている。第2-2-12表 消防基金の公務災害補償費の支払状況カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が改正され、平成14年度から、消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施している。平成17年度の支払状況は、延べ271人に対し2,443.5万円となっている。キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、消防団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された(平成14年7月)。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の基礎教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。
4 安全衛生体制の整備(1)安全衛生体制 現在、労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定が適用される消防本部・署所はないものの、消防庁においては、公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実かつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程の案」、「訓練時における安全管理に関する要綱の案」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、体制の整備の促進及び事故防止の徹底を図っている。 また、消防職員の衛生管理については、その内容にかんがみ、特に配慮する必要があることから、消防庁としては、「消防における衛生管理に関する規程の案」を示すなどの対応を行っている。
(2)惨事ストレス対策 消防職員は、火災等の災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、これにより、身体、精神、情動又は行動にさまざまな障害が発生するおそれがある。このような問題に対して、消防機関においても対策を講じる必要があるが、各消防本部においては、情報不足や専門家が身近にいないことなどが課題とされていた。 消防庁では、平成13年12月から精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、消防職員の惨事ストレス対策について研究を重ね、平成15年2月に報告書(「消防職員の惨事ストレスの実態と対策の在り方について」)を取りまとめ、全国の消防本部、消防署所等に配付するなどの取組みを推進している。また、同報告書を受けて、消防職員が惨事ストレスにさらされる危惧のある災害が発生した場合、現地の消防本部の求めに応じて、精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言などを行う「緊急時メンタルサポートチーム」を平成15年に創設した。 平成17年には、各消防本部等における取組みを更に促進させるため、ストレス対策の取組状況等について調査及び分析を行うことを目的とした、精神医学・心理学の専門家や消防関係者からなる「消防職員の現場活動に係るストレス対策フォローアップ研究会」を設置し、平成18年3月に報告書(「消防職員の現場活動に係るストレス対策フォローアップ研究会報告書」)を取りまとめた。本報告書の提言を踏まえて、緊急時メンタルサポートチームのメンバーの増員を図るなど、体制を強化している。 同チームにおいてはこれまで、平成15年に2件、平成16年に4件、平成17年に5件、平成18年には、埼玉県ふじみ野市プール死亡事故で活動した消防職員に対するメンタルサポートの1件の派遣実績がある(囲み記事「緊急時メンタルサポートチーム」参照)。
緊急時メンタルサポートチーム 緊急時メンタルサポートチームは、災害現場で活躍する消防職員が受ける精神的ショックやストレスの緩和を目的とし、グループミーティングの進行や消防本部への助言及び情報の提供等の活動を行う、精神科医や臨床心理士等で構成された専門家チームです。 近年、多数の死傷者が発生したJR西日本福知山線列車事故や幼い命が奪われた埼玉県ふじみ野市プール死亡事故等の痛ましい災害が多発しています。 このような災害現場で活躍する消防職員が受ける精神的ショックやストレスは惨事ストレスといわれ、身体や精神、情動や行動等に様々な傷害を発生するおそれがあり、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に移行する可能性があると指摘されています。 消防職員は、住民の生命、身体及び財産を災害から守ることを任務とし、24時間消防署で勤務し、ひとたび火災等の災害が発生すれば、昼夜を問わず災害現場に赴き、住民等が注目する中、困難を要する消火活動や救助活動等を行う場面が多く、ストレスを受ける機会が多い職業です。 さらに、火災等の災害現場において、多数の死傷者の救出活動を長時間にわたり行ったり、自分の子供と同世代の子供が被害にあった場合に自分の家族を想起してしまうなどにより、強いストレスを受けることがあります。 また、勇敢・献身的といった社会からの大きな期待、その期待に応えなければならないという義務感や責任感、勇敢さを重んじ弱音を吐くことをタブー視してきた組織的な風土等により、災害現場で受けたストレスを悪化させてしまう要素が多い職業的な特徴があります。 消防庁では、これまでに12件の惨事ストレス事案について、緊急時メンタルサポートチームの派遣を行ってきました。 現在21名の専門家からなる緊急時メンタルサポートチームが、消防本部の惨事ストレスに対する支援を行うとともに、全国の消防職員の心の健康を確保していきます。
(3)安全管理体制の強化 平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生したことから、消防庁では、この事態を重く受け止め、今後の再発防止に資するため「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、安全への高い意識と高度な判断力の重要性、安全管理のための情報共有化方策、心理学の要素を反映した効果的な教育訓練手法、現場指揮体制の充実等について平成16年11月に報告書を取りまとめた。これを受けて消防庁では、安全管理のための情報共有化方策として、「消防ヒヤリハットデータベース(消防職団員の事故事例の情報収集・提供システム)」及び「新規物質等データベース(新規物質及び新しい態様の火災に関する情報の一元化システム)」の2つのシステムを開発している。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在、国が行っている表彰等は第2−2−13表のとおりである。第2-2-13表 消防関係者の表彰者数等
(1)国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。国の栄典制度については、21世紀を迎え、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、平成14年8月の閣議決定により見直しが行われ、平成15年秋から実施された。 その主な内容は、勲章については、〔1〕旭日章と瑞宝章について、従来の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用し、消防職団員については、瑞宝章とする〔2〕旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた区分をそれぞれ6段階に整理するとともに名称を変更する〔3〕危険業務従事者叙勲を創設する等であり、褒章については、年齢にとらわれることなく速やかに顕彰する等である。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のあるものをその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えること。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は公共に対して功労のある者に対して勲章を授与し、栄誉を称えること。 また、消防関係の叙勲は、以下の種類に分けられる。・春秋叙勲      春は4月29日、秋は11月3日付けで授与される。・危険業務従事者叙勲 著しく危険性の高い業務に精励した功労者に対し実施されるもので、上記の日付で春秋叙勲とは別に授与される。・高齢者叙勲     春秋叙勲又は危険業務従事者叙勲によりいまだ勲章を授与されていない功労者のうち、88歳になった者に対して、毎月1日付けで授与される。・死亡叙勲      死亡した功労者に対し、随時授与される。・緊急叙勲      殉職者など特別な功績を有する者に対し、随時授与される。 <褒章> 自己の危険を顧みず人命救助に尽力した者、業務に精励し他の模範となるべき者、学術、芸術、産業の振興に多大な功績を残した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対して褒章を授与して栄誉を称えること。 消防関係者への褒章は、功績の内容によって、以下の褒章が運用されている。・藍綬褒章      永年にわたり、消防業務に従事し、その功績が顕著な消防団員並びに永年にわたり、消防機器製造業等に従事し、その功績が顕著な者を対象としている。・黄綬褒章      消防関係業務に精励し衆民の模範である者を対象としている。・紺綬褒章      消防関係機関に対し、公益のために一定の金額以上の私財の寄附を行った個人又は団体を対象としている。・紅綬褒章      火災等に際し、身を挺して人命救助に尽力した者を対象としている。
(2)内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、総務大臣表彰受賞者及び消防表彰規程に基づき消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受賞者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する。・安全功労者表彰 国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績をあげ、又は功績があった者等を毎年「国民安全の日」(7月1日)にちなみ、7月上旬に表彰。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があった者や防災思想の普及又は防災体制の整備について顕著な功績があった者を毎年「防災の日」(9月1日)にちなみ、9月上旬に表彰。
(3)総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害の防ぎょに関する対策の実施について功績顕著な者を表彰。
(4)消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の種類により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア)定例表彰 毎年3月7日の消防記念日、7月1日の国民安全の日、9月1日の防災の日にちなみ、3月上旬、7月上旬、8月下旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・功労章 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防ぎょに関する対策の実施について、その成績が特に優秀な者を対象としている。・永年勤続功労章 永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者を対象としている。・表彰旗及び竿頭綬 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防ぎょに関する対策の実施について、その成績が特に優秀で、他の模範と認められる消防機関を対象としている。・安全功労者表彰 安全思想の普及、安全水準の向上等のために顕著な成績をあげ、又は功労があった個人や消防機関以外の団体を対象としている。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があった者や防災思想の普及等について、その成績が特に優秀な個人及び団体を対象としている。(イ)随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度、実施されるもので、その種類と対象は以下のとおりである。・特別功労章 災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕功章 災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・功績章 災害に際して消防作業に従事し、多大な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕彰状 職務遂行中、死亡した消防吏員、消防団員等を対象としている。・国際協力功労章 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者を対象としている。・表彰状 災害に際して、消防作業に従事し、顕著な功労をあげ、又は防災思想の普及等について優秀な成績を修めた者を対象としている。・賞状 災害に際して、消防作業に従事し、その功労が顕著と認められる又は他の模範として推奨されるべき功績が認められる者を対象としている。
(5)退職消防団員報償 永年勤続した消防団員の功労に報いるため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官から賞状と銀杯が授与される。
(6)消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に貢献し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。
(7)その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・消防団地域活動表彰・消防関係業界功労者表彰・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防用設備等表彰・危険物保安功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰・防災まちづくり大賞・全国少年消防クラブ運営協議会表彰・救急功労者表彰
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職員及び消防団員が適切に対応するためには、その知識・技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部、消防署や消防団における教育訓練のほか、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。また、これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。特に、常に危険が潜む災害現場において、指揮命令に基づく厳格な部隊活動が求められる消防職員には、職務遂行にかける使命感と旺盛な気力が不可欠であることから、各消防本部においては、さまざまな教養訓練を通じて、士気の高揚に努めている。 なお、職場教育における基準としては、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、消防庁としては、訓練時や警防活動時の安全管理マニュアル等を示すなど、効率的かつ安全な訓練・活動の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除く外、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第51条)。 平成18年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。
(2)教育訓練の種類 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」(平成16年4月1日施行)が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と、消防団員に対する基礎教育(従来の普通教育)、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は800時間とされている。・「基礎教育」とは、消防団員として入団後、経験期間が短く、知識・技能の修得が必要な者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は24時間とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び一定期間の活動経験を有する消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。 なお、この基準については、全国的に平成19年頃から、いわゆる「団塊の世代」が大量に退職することに伴う、大量の新規採用消防職員に係る初任教育への対応や、被雇用者消防団員の増加に伴い、集合教育の受講が困難となるなどの検討課題に対応するため、昭和45年に制定された従来の基準を全面的に見直し、各消防学校の実情に応じたカリキュラム編成や柔軟な対応を可能としたものである。 見直しに当たっては、個別の各科ごとに、ア)必要の度合いを精査し、廃止、統合(消防職員の予防課程と査察課程)及び新設(消防職員の特殊災害科・上級幹部科、消防団員の初級幹部科・中級幹部科)を図り、イ)新たに教育訓練に係る「到達目標」や、ウ)推奨例としての「標準的な教科目及び時間数」を設定した。 消防団員の教育訓練についても、市町村との連携や教授内容の分割実施など、柔軟な対応を可能とした。 各消防学校では、「到達目標」を尊重した上で、「標準的な教科目及び時間数」を参考指針として活用して、具体のカリキュラムを定めることとなる。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成17年度では延べ2万6,739人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−1表)。第2-3-1表 消防職員を対象とする教育訓練の実施状況 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成17年度における新規採用者のうち初任教育の受講者は3,762人で、前年度に比べ278人減少している。なお、受講率については、91.6%となっている。 消防団員については、平成17年度では延べ7万1,617人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成17年度においては、地方公共団体職員、地域の自主防災組織、婦人(女性)防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ1万6,132人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成18年4月1日現在、消防学校の専任教員449人のうち派遣の教員は123人に及んでいる(第2−3−2表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校への研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。第2-3-2表 消防学校教職員数
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織の「消防講習所」として設置されたが、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)施設・設備 消防大学校の教育訓練施設は平成5〜12年度に整備更新を進めたところである。 本館には250人収容の大教室、3つの通常規模教室、視聴覚教室、理化学燃焼実験室、図書館等のほか、様々な災害現場をシミュレートして指揮者の情報収集整理・判断・指揮命令能力を養成するマルチメディア教室を設けている。 第2本館には、300人収容の講堂のほか救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。救急訓練室においては、高度救急処置人形などの機材が整備されており、救急救命士の気管挿管や薬剤投与の講習にも対応できるものとなっている。 屋内火災の防ぎょ訓練棟では、濃煙高温状態の中で、複雑な建物内を想定した、より実践的な消火・救助訓練を行うことができる。 一方、教育訓練車両については、平成14年度に指揮隊車、平成15年度に普通ポンプ車、平成16年度に水槽付きポンプ車、平成17年度に救助工作車II型を計画的に整備したところである。救助工作車II型 この車両は、7t級シャーシに救助活動に必要な大型油圧救助器具等の各種救助資機材を積載し、ウインチ装置は車両の前方向及び後方向にワイヤーを引き出せ、フロントで5t、リアで10tの最大引張力となっている。
(2)教育訓練の実施状況 消防大学校では学科、実務講習を合わせて、平成17年度までに延べ42,261人の卒業生を送り出しており(うち平成17年度は1,479人)、平成18年度教育訓練計画上の定員は1,804人としている(第2−3−3表)。第2-3-3表 教育訓練実施状況
(3)教育訓練の見直し動向 近い将来に消防職員の大量退職とこれに伴う幹部昇任者の急増が見込まれること、また緊急消防援助隊活動の充実のため幹部職員の応援・受援能力の向上が求められることなどから、平成17年8月に「消防大学校における教育訓練等に関する検討会」が報告書を取りまとめたところである。 これに基づき、平成18年度において、消防大学校の教育訓練の抜本的な見直しを以下のとおり順次実施している。ア 総合教育の学科として、消防組織の中核である消防司令への昇任時に幹部職員として重点的に育成する見地から、従来の本科及び幹部研修科を整理・統合して幹部科を新設(囲み記事「「幹部科」の開設」参照)。また、同学科の年間教育定員の増加を図るため、入校許可者に対し、e-ラーニングによる個別教育を実施(囲み記事「e-ラーニングの導入について」参照)。イ 総合教育の学科として、消防以外の分野から就任した消防長・消防学校長の資質向上のため新任消防長・学校長科を新設。ウ 専科教育の学科として、消防学校の教官教育充実のため新任教官科を、また、危険物災害の増大に対応して危険物科をそれぞれ新設。エ 緊急消防援助隊教育の実務講習として、高度救助コース、特別高度救助コースを新設(囲み記事「緊急消防援助隊教育の充実」参照)。
「幹部科」の開設 消防大学校では、平成18年4月から、これまでの「幹部研修科」と「本科」を統合・再編して、新たに「幹部科」をスタートさせました。 幹部科創設の背景は、間近に迫る消防職員の大量定年退職時期(いわゆる2007年問題)において、消防司令昇任者が年間3,000人以上となると見込まれることから、このうち将来、消防署長以上に昇任すると期待される年間800人程度の中堅幹部に対し、消防大学校幹部教育が必要と考えられることです。 このため、当面「定員60人、年4回(年間定員240人)、教育期間2か月」で発足し、来年度に向けて今年度後半からは、e-ラーニングによる個別教育と組み合わせ、消防大学校における集合教育期間を短縮し、年間実施回数を増やして更なる定員増を目指しています。 この幹部科では、最新の消防行政動向、消防関係法制、組織運営について学ぶほか、大規模地震、集中豪雨災害及び大規模都市災害における緊急消防援助隊の応援・受援を中心とした指揮理論の学習や図上訓練をはじめとする多様な指揮訓練を行うことにより、消防に関する高度の知識及び技術を総合的に修得させ、各消防本部の上級幹部にふさわしい人材を養成することとしています。 今年度、幹部科の研修は4回実施されますが、幹部科卒業生が、国民の消防に対する安心・安全の期待に応えるよう、消防大学校で学んだことを礎として、全国の各消防本部で活躍されることを念願しています。指揮シミュレーション訓練図上訓練(ロールプレイング方式)
e-ラーニングの導入について 全国の消防組織では、団塊の世代の大量退職時期を迎え、新たに幹部職員へと登用される人員の急増が見込まれています。 このため消防大学校では、教育体系全般の見直しを行い、今年度から「幹部科」を発足させるとともに、そのカリキュラムの一部にICT技術を活用した“e-ラーニング”を導入することとし、消防組織において次の時代を担う幹部職員の効率的な育成を目指しています。 消防大学校におけるe-ラーニングは、幹部科入校許可者に対する個別教育として導入されます。入校許可者は、インターネットを活用して学習教材の配信を受けることで、職場等での個別学習が可能となります。その学習進捗状況はすべて消防大学校で管理されるので、担当教官から適時適切なアドバイスを受けることができ、学習が円滑に進められます。 e-ラーニングは、入校許可者個々のレベルにあわせ、繰り返し必要な部分の学習が可能であるため、高い学習効果が得られます。また、このe-ラーニングの導入により、集合教育に要する時間を短縮することで、年間の開講回数を増やして、より多くの幹部職員に対する教育を行います。幹部科の教育体系
緊急消防援助隊教育の充実 消防大学校では、平成17年度から従来の実務講習会を緊急消防援助隊教育科と危機管理・防災教育科に区分し実施しています。このうち緊急消防援助隊教育科では、指揮隊長・NBC・航空隊長・航空隊の各コースに加え、平成18年度からは、特別高度救助・高度救助のそれぞれのコースを新設し、大規模特殊災害等に対する全国的な見地からの人命救助体制を強化することを目的としています。また科内の各コースを通じて部隊全体としての現場管理能力が向上することが期待されます。災害現場を想定した図上訓練(指揮隊長コース)化学災害を想定した訓練(NBCコース)グループ討議(航空隊長コース)救出訓練(航空隊コース)
(4)消防学校等に対する技術的援助ア 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教官を対象として、より高度な研究・研修の機会を提供するため、特別研究生として受け入れている。イ 講師の派遣及びあっせん 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、警防、予防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣及びあっせんを行っている。平成17年度は延べ104回の講師の派遣及びあっせんを実施した。ウ 消防教科書の作成 都道府県等の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っており、平成18年4月現在22種類が発行されている。
(5)調査・研究 平成16年より消防大学校に「自主防災組織教育指導者に対する教育のあり方に関する調査研究委員会」を設置し、自主防災組織の教育訓練の内容及び教育形態について調査研究を行うとともに、自主防災組織指導者が活用するための教本等を作成している(囲み記事「自主防災組織教育指導者用テキストについて」参照)。
自主防災組織教育指導者用テキストについて 消防大学校では、平成16年度から「自主防災組織教育指導者に対する教育のあり方に関する調査研究委員会」を開催し、その成果として、自主防災組織のリーダーが、その構成員に対し教育・指導を行うためのテキストを作成しています。 テキストには、自主防災組織活動の重要性について理解するため、リーダーと住民の方々が共に活動を進めていくための考え方、ヒントとなる事例・手法とともに、DIG※の進め方やチェックポイントなどをわかりやすく掲載しています。 自主防災組織への教育・研修等において、教材としてご活用をお願いします。※ 「DIG」とは、Disaster(災害)、Imagination(想像)、Game(ゲーム)の頭文字を取って名付けられた、誰でも参加できる防災訓練プログラムです。模擬地図で危険発見模擬地図を使ったDIG○ 自主防災組織教育指導者用テキスト 「自主防災組織づくりとその活動 自主防災組織指導者用教本」○ 受講者用のテキスト 「災害に備えて 自主防災組織の活動」
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団(以下「救急振興財団」という。)が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間200人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成18年度には、合わせて全国で約1,200人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 これらの救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、講義及び実習が行われている。 そのほか、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、平成14年度から独立行政法人消防研究所(現消防研究センター)の火災原因調査室により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした講座が実施されている(平成7年度〜平成13年度は、財団法人消防科学総合センターで実施)。 また、消防機関においても、生物・化学災害発生時における要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、生物・化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における生物・化学災害対応能力の充実を図っている。
6 全国消防救助技術大会等の実施 人命救助活動は、複雑多様化する各種災害に対応するため、高度かつ専門的な知識、技術が要求されるに至っていることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第35回大会は、平成18年8月24日に全国9ブロックから選抜された957人(陸上の部696人、水上の部261人)の隊員が参加して札幌市で開催された。
7 防災教育の普及 大規模地震やNBC災害等も懸念されることから、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされている状況の下で、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。このため、消防組織法において自主防災組織への教育訓練等に関する国・地方公共団体の努力義務が課せられていることも踏まえ、消防大学校、消防学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組みを進めている。また、昨今のライフスタイルの変化や情報通信環境の進展に対応し、インターネットを活用した遠隔教育(防災・危機管理e-カレッジ)を平成18年3月から本格運用しており、幼稚園児・小学校低学年児童向けや消防職団員・地方公務員及び日本に居住する外国人を対象としたコンテンツを提供している。さらに、消防職団員及び地方公務員の研修・教育等に活用することを目的とした「学習管理システム」も配信するとともに、今後ともカリキュラムの充実を図っていくこととしている。
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は6.0秒に1回、国民26人に1人が救急搬送 平成17年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる件数も含め、528万428件(対前年比4.9%増)と、前年に引き続き500万件を超え、前年と比較し、24万8,964件増加している。この増加した出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が316万7,046件、一般負傷が68万5,657件である。 また、救急自動車による搬送人員は495万5,976人(対前年比21万2,507人増、4.5%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は2,387人である(第2−4−1表、第2−4−2表、附属資料31、32)。第2-4-1表 救急出場件数及び搬送人員の推移第2-4-2表 救急自動車による事故種別出場件数及び搬送人員 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万4,460件(前年1万3,741件)で、6.0秒(同6.3秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の26人に1人(同27人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。 救急出場件数を事故種別ごとにみると、急病が半数以上を占め、次いで一般負傷、交通事故の順となっている(第2−4−2表、附属資料31)。
(2)搬送人員の52.3%が入院加療を必要としない傷病者 平成17年中の救急自動車による搬送人員495万5,976人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の47.7%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は52.3%となっている(第2−4−3表)。 なお、高齢者(65歳以上)の傷病者の割合は全体の44.4%となっている。第2-4-3表 傷病程度別搬送人員の状況
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成17年中の急病の救急自動車による搬送人員294万3,831人の内訳をWHO(世界保健機構)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(11.1%)、消化器系(10.5%)、呼吸器系(10.3%)、心疾患等(9.6%)となっている(第2−4−1図)。第2-4-1図 急病に係る疾病分類別搬送人員の状況
(4)現場到着まで平均6.5分 平成17年中の救急自動車による出場件数527万7,936件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が297万4,437件で最も多く、全体の半数以上(56.4%)になっている。 なお、これらの平均現場到着所要時間は6.5分(前年6.4分)となっている(第2−4−2図)。第2-4-2図 救急自動車による現場到着所要時間別出場件数の状況
(5)病院到着まで平均31.0分 平成17年中の救急自動車による搬送人員495万5,976人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、30分〜60分未満が193万1,180人(全体の38.9%)で最も多く、次いで20分〜30分未満の186万4,860人(同37.6%)となっている(第2−4−3図)。 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は31.0分(前年30.0分)となっている。第2-4-3図 救急自動車による収容所要時間別搬送人員の状況
(6)減少する転送 平成17年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.3%(492万854人)が転送なしに収容され、残りの0.7%に当たる3万5,122人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の97.9%に応急処置等実施 平成17年中の救急自動車による搬送人員495万5,976人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は485万2,249人(搬送人員の97.9%、前年は97.8%)であり、前年に比較し、21万3,123人(4.6%)増加している(第2−4−4表)。第2-4-4表 救急隊員が行った応急処置等の状況 また、平成3年以降に拡大された救急隊員による応急処置等(第2−4−4表における※の項目)の総件数は、1,151万5,480件(対前年比8.5%増)となっており、このうち救急救命士(除細動については、救急救命士以外の救急隊員を含む。)が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置(ラリンゲアルマスク等による気道確保、気管挿管、除細動、静脈路確保)の件数は6万7,129件にのぼり、前年比で約23.3%増となっている。これは救急救命士の養成、救急科修了者(旧救急標準課程又は旧救急II課程の修了者を含む。以下同じ。)(2(2)、(3)参照)による運用が着実に推進されていることを示している。
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.0% 救急業務実施市町村数は、平成18年4月1日現在、1,784市町村(780市、832町、172村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2−4−5表)。第2-4-5表 救急業務実施市町村数の推移 市町村合併の進展により全市町村数が1,821まで減少したことに伴い、救急業務実施市町村数も大幅に減少しているが、98.0%(前年98.2%)の市町村で救急業務が実施され、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(人口は、平成17年の国勢調査人口推計値による。以下同じ。)こととなり、引き続き、ほぼすべての地域で救急業務のサービスを受けられる状態となっている(附属資料33)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が482市町村、委託が132市町村、組合が1,170市町村となっている(第2−4−4図)。第2-4-4図 救急業務実施形態の内訳
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成18年4月1日現在、4,779隊(対前年比28隊増)が設置されている(第2−4−5図)。第2-4-5図 救急隊数の推移 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成18年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で10万9,057人(対前年比4,044人増)となっており、このうち5万8,510人が、救急隊員として救急業務に従事している(第2−4−6図)。第2-4-6図 救急隊員数の推移 より高度化する救急需要に応えるため、消防庁は、救急救命士のみならず、250時間の救急科(旧救急標準課程及び旧救急II課程を含む。)を修了した救急隊員の養成を推進している。平成18年4月1日現在、救急科修了者(旧救急標準課程及び旧救急II課程修了者を含む。)は、6万9,265人であり、うち、3万8,435人が救急隊員として救急業務に従事している。
(3)救急救命士 消防庁においては、全ての救急隊に救急救命士が少なくとも常時1人配置される体制を目標に救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。 平成18年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国811消防本部のうち810本部(市町村合併を含む広域再編等により消防本部数が対前年比37本部減となっていることに伴い、対前年比33本部減)で、その運用率は99.9%(前年99.4%)と増加しており、救急救命士を運用している救急隊も年々増加し、全国4,779隊の救急隊のうち82.4%(前年78.2%)を占める3,939隊(対前年比223隊増)となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は1万8,866人(対前年比1,775人増)、救急救命士として運用されている救急隊員は1万6,468人(対前年比1,472人増)と年々着実に増加している(第2−4−7図、第2−4−8図)。第2-4-7図 救急救命士運用隊の推移第2-4-8図 救急救命士数の推移第2-4-6表 救急救命士の導入効果
(4)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成18年4月1日現在、5,758台(対前年比117台増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格の救急車は4,142台(対前年比283台増、7.3%増)が配置されており、今後、さらに高規格の救急車の割合を高めていくよう推進している。
(5)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道及び本州四国連絡道路(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道等のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成18年4月末現在、供用延長7,562kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社においては、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成18年4月1日現在、全国で4,774箇所となっている(附属資料34)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが510箇所(平成18年3月31日現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により421地区(平成18年3月31日現在)で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが199箇所(平成18年10月1日現在)で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち20箇所(平成18年10月1日現在)で整備されている。 救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されている。
4 救急業務高度化の推進(1)救急隊員の教育訓練の推進 平成3年に、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が導入されるとともに、救急隊員の行う応急処置範囲が拡大された。消防庁としては、都道府県等の消防学校における拡大された応急処置の内容を含んだ救急課程の円滑な実施や財団法人救急振興財団等における救急救命士の着実な養成が行われるよう、諸施策を推進してきている。 そのほか、全国救急隊員シンポジウムや日本臨床救急医学会等の研修・研究機会を通じて、救急隊員の全国的な交流と救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急救命士の処置範囲の拡大 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁は厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催し、平成14年12月及び平成15年12月に報告書をそれぞれ取りまとめた。これを受けて、(3)に述べるメディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、次のように処置範囲が拡大されてきた。 〔1〕除細動 平成15年4月から、救急救命士は医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動を実施すること(以下「包括的指示下での除細動」という。)が可能となった。 消防庁としては、これに先立ち、包括的指示下での除細動の円滑な実施に向けて、「包括的指示下での除細動に関する研究会」で示されたカリキュラムに基づく講習会を各地で実施し、また、メディカルコントロール体制の整備、特に事後検証体制の構築を各都道府県、各消防本部に要請した。これらを踏まえ、平成15年4月から順次各地域で包括的指示下での除細動が実施された。 〔2〕気管挿管 気管挿管については、平成16年7月から、各地域において講習及び病院実習を修了した救急救命士により実施されているところであるが、このための講習については、各都道府県の消防学校を中心に行われており、また、病院実習については、講習修了後に各地域の医療機関の協力を得て行われている。平成18年4月1日現在、気管挿管を行うことのできる救急救命士数は2,390人となっている。 今後も、関係者の理解と協力のもとに、実習先医療機関の確保等に努めつつ、気管挿管を実施することができる救急救命士の養成をさらに促進していくこととしている。 〔3〕薬剤投与 薬剤投与については、平成18年4月から救急救命士によるアドレナリンの使用が認められることとなった。薬剤投与の実施に当たっては、高度な専門性を有する所要の講習及び病院実習を修了する必要があることから、消防庁としては、財団法人救急振興財団等における講習体制の確保、メディカルコントロール協議会が選定する施設における実習体制の確保を推進しており、これをうけて、各機関において、順次講習及び実習が開始されている。平成18年4月1日現在、薬剤投与を行うことのできる救急救命士の数は598人となっている。また、薬剤投与の実施に伴い、一層重要性を増すメディカルコントロール体制の充実強化についても、推進しているところである。
(3)メディカルコントロール体制の充実 救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、今後ともメディカルコントロール体制を充実していく必要がある。 このメディカルコントロール体制とは、消防機関と医療機関との連携によって、〔1〕救急隊が現場からいつでも迅速に医師に指示、指導、助言が要請できる、〔2〕実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証を行い、その結果を再教育に活用する、〔3〕救急救命士の資格取得後の再教育として、医療機関において定期的に病院実習を行う、という体制をいうものである。 消防機関と医療機関との協議の場である各都道府県単位及び各地域単位のメディカルコントロール協議会については、全て設置が完了しており、事後検証等により、救急業務の質的向上に積極的に取り組んでいるところである。
(4)ウツタイン様式の導入 ウツタイン様式とは、心肺停止症例をその原因別に分類するとともに、目撃の有無、バイスタンダー(現場に居合わせた人)による心肺蘇生の実施の有無等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後を記録するためのガイドラインであり、世界的に推奨されているものである。 我が国では、平成17年1月から全国の消防本部で一斉に導入を開始しているが、全国統一的な導入は世界で初めての先進的な取組みとなるものである。消防庁としては、ウツタイン様式による調査結果をオンラインで集計・分析するためのシステムの運用も開始しており、今後は、救急救命士が行う救急救命処置の効果等の検証や諸外国との比較が客観的データに基づき可能となり、プレホスピタル・ケアの一層の充実に資するものである。 ウツタイン様式の運用に当たっては、消防機関と医療機関の連携体制の充実・強化を促進していくことが重要である。
(5)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成17年中の平均では6.5分である。この間に、救急現場に居合わせた一般市民による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう、実技指導に積極的に取り組んでいくことが重要である。現在、特に心肺機能停止傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の習得に主眼を置き、住民体験型の普及啓発活動が推進されている。 消防庁としては、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月制定)により、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・事業所に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発活動を行っている。この結果、講習受講者数は年々着実に増加し、平成17年中の救命講習受講者数は121万5,985人、心肺停止傷病者への住民による応急手当の実施率は33.6%となっており、消防機関は最も代表的な応急手当普及啓発の担い手として期待されている。 心肺蘇生法については、平成18年6月、財団法人日本救急医療財団の心肺蘇生法委員会より、新しい日本版救急蘇生ガイドラインが示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動も、このガイドラインを踏まえた新しいものとするよう進められている。 消防機関においては、昭和57年に制定された「救急の日」(9月9日)及びその前後の「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を推進しているところである。 また、平成16年7月から、一般市民を含めた非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用が可能となったことから、消防庁としては、「応急手当普及啓発推進検討会」の報告を受けて「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」の改正を行い、消防機関における自動体外式除細動器(AED)による除細動の内容を組み入れた救命講習の実施を促進している。
5 救急業務体制の整備の課題(1)救急救命士の養成 救急救命士は、平成3年の制度導入以降、着実に養成され、各地の救急現場において活躍しているところであるが、全国すべての救急隊に少なくとも救急救命士が常時1人配置できるよう、今後も引き続き救急救命士の養成を積極的に進めていく必要がある。 救急救命士の資格は、消防職員の場合、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格することにより取得することができる。資格取得後、救急救命士が救急業務に従事するには、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。 救急救命士は、現在、財団法人救急振興財団の救急救命士養成所で年間約800人、政令指定都市等における養成所で年間約400人を養成しているところであるが、平成18年度からは救急救命士の処置範囲の拡大(薬剤(アドレナリン)投与)に伴う講習内容の改正を行い、医療機関と連携しながら、各養成機関での救急救命士の新規養成に加え、薬剤投与のための追加講習についても円滑、着実に進めていく予定である。
(2)救急用資機材等の整備 救急業務の高度化に伴い、高規格の救急自動車、高度救命処置用資機材等の整備が重要な課題となっている。 消防庁としては、三位一体の改革に伴い国庫補助金が廃止、縮減される中においても、高規格の救急自動車、自動体外式除細動器(AED)等に対して地方交付税措置を行うなど、必要な措置を講じているところである。 今後とも引き続き、高規格の救急自動車及び救急救命士の処置範囲の拡大に対応した高度救命処置用資機材の配備を促進する必要がある(囲み記事「救急車の高度化」参照)。
救急車の高度化1 近年の救急業務の高度化 我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、平成3年における救急救命士制度の創設をはじめとして、その後も救急救命士を含む救急隊員の処置範囲は徐々に拡大され、傷病者の救命効果の向上と救急業務の高度化に大きな成果をもたらしてきました。○救急救命士の処置範囲の拡大(心肺機能停止状態の傷病者に対して)平成15年4月〜 医師の包括的指示による除細動平成16年7月〜 医師の具体的指示による気管挿管平成18年4月〜 医師の具体的指示による薬剤(アドレナリン)投与2 救急車の高度化 これらの高度な救急救命処置を搬送途上の救急車内で行うためには、救急車の高度化も進める必要があります。このため、消防庁では、救急救命処置に必要な構造及び高度救命用資機材等の設備を有し、従来の救急車よりも広いスペースの確保できる高規格の救急車の配置の促進を進めています。高規格の救急車と従来の救急車救急車保有台数の推移3 高規格の救急車の普及と標準的仕様の推進 救急車の保有台数は、平成18年4月1日現在、全国で5,758台(予備車を含む。)であり、このうち、高規格の救急車の台数は、4,142台(予備車を含む。)となり、順次充実が図られています。 地方財政が逼迫する中、特に高規格の救急車を消防本部が購入するに当たっては、交通安全対策特別交付金を含む一般財源や国庫補助金のほか、民間団体等からの寄贈も受けて整備が進められているところです。 また、これまで救急車は消防本部からの注文に応じて生産されており、1台1台がほぼ手作りとなっていました。このことにより、救急車は高価なものになっていましたが、車両本体の構造や購入に係る事務処理を標準化することでコストを低減するため、自動車メーカーなども入った委員会で検討され報告書が出されています。多くの消防本部がこの標準的仕様の救急車を標準的な方法で購入することで少しでも救急車のコストが低減し、高規格の救急車の普及が進むことが期待されています。
(3)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染の危険性があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務において極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の科目を設けるとともに、重症急性呼吸器症候群(SARS)、新型インフルエンザ等を含めた各種感染症の取扱いについて、感染防止用マスク、手袋、感染防止衣等を着用し、傷病者の処置を行う共通の標準予防策等の徹底を消防機関等に要請しているところである。 また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制について整備していく必要がある。
(4)救急需要の増加への対応 救急自動車による救急出場件数は年々増加し、平成17年中は528万428件に達し、前年に引き続き500万件を超えた。今後も、高齢化の更なる進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増加し続けるものと考えられるが、全国の消防本部の厳しい財政事情等により、救急自動車や人員等の整備を図ることが困難な状況にある。このことから、救急隊1隊当たりの年間出場件数は更に増加し、救急自動車の現場到着時間も遅延していくことが予想され、地域によっては、傷病者が発生した場合に、救急自動車による迅速な対応が困難となってくるおそれがある。 このような状況を踏まえ、消防庁においては、平成17年度には「救急需要対策に関する検討会」及び「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」を開催し、救急需要対策に関する総合的な検討を行った。その中で取り組むべき対策の主なものとして、〔1〕軽症利用者等への代替措置の提供(民間の患者等搬送事業者の活用)、〔2〕転院搬送業務への病院救急車の活用、〔3〕119番受信時及び救急現場における緊急度・重症度の選別(トリアージ)等が挙げられた。現在はこれらの実現に向けた取組みを進めているところである。なお、〔3〕のトリアージについては、引き続き検討を加えるべきとされたことから、平成18年7月より「救急業務におけるトリアージに関する検討会」を開催し、「選別基準」や「運用要領」の更なる検討や実際に運用を行うとした場合の問題点等の諸課題についての検討を進めているところである。 今後、これらの検討会の結果をもとに、各地域において適切な救急需要対策が実施されるよう推進していく必要がある。
(5)災害時における消防と医療の連携 平成17年のJR西日本福知山線列車事故のような災害時の集団救急救助活動においては、消防機関と医療機関の連携方策や、救急救助活動に有用である医療行為など様々な検討が必要であることから、学識経験者、医療関係者、消防関係者等により構成される「災害時における消防と医療の連携に関する検討会」において検討を行っているところである。
(6)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 消防防災ヘリコプターを活用した救急業務については、平成10年3月の消防法施行令一部改正により、消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれを基に出動基準を作成するなど、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を進めている。 平成17年中における全国の消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数2,492件(前年比5.8%増)、搬送人員2,387人(同0.7%減)であり(第2−6−2図)、消防防災ヘリコプターによる救急搬送への需要は年々増加している(第2−4−1表)。特に、離島、山間部等からの救急患者の搬送や交通事故等による重症患者の救命救急センター等専門的医療機関への救急搬送、さらには、大規模災害時における広域的な救急搬送などに大きな効果を発揮し、地域社会の安心・安全の確保に大きな期待が寄せられていることから、医療機関等との連携を強化しながら、消防防災ヘリコプターの機動力を活かした救急活動を推進していく必要がある。第2-6-2図 消防防災ヘリコプターによる災害活動状況(平成11〜17年)第2-4-1表 救急出場件数及び搬送人員の推移消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況(福岡市消防局提供)
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成17年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数5万4,598件(対前年比1,790件減、3.2%減)、救助人員5万7,300人(同8,554人減、13.0%減)である(第2−5−1表、附属資料35)。第2-5-1表 救助活動件数及び救助人員の推移
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ130万2,431人である。消防職員は、延べ115万3,726人で、うち交通事故が36.1%、火災が18.9%である。一方、消防団員は、延べ14万8,705人で、うち火災が79.6%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ55万5,550人であり、救助活動1件当たり10.2人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は自然災害の27.8人が最も多く、次に火災の16.7人となっている(第2−5−2表)。第2-5-2表 事故種別救助出動及び活動の状況
2 救助活動の実施体制(1)救助隊設置消防本部及び構成市町村 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、救助活動に関する高度な専門教育を受けた隊員、救助活動に必要な資機材及びこれらの資機材を搭載した救助工作車等によって構成される。 平成18年4月1日現在、消防法第36条の2の規定並びに救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)に従い、救助隊を設置している消防本部は788本部と前年度と比較して29消防本部減少し、また、当該消防本部の構成市町村(受託市町村を含む。)は1,718市町村であり、前年度と比較して560市町村減少している。これは、市町村の合併や消防機関の広域再編が進められたためである(第2−5−3表)。第2-5-3表 救助隊の設置状
(2)救助隊数及び救助隊員数 救助隊は788消防本部に1,491隊設置されており、救助隊員は2万3,458人となっている。1消防本部当たり1.9隊の救助隊が設置され、1隊に15.7人の救助隊員が配置されていることとなる(第2−5−4表)。第2-5-4表 救助隊数及び救助隊員数
(3)救助隊が乗車する車両及び主な保有資機材 救助隊の保有する資機材については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている(第2−5−5表)。第2-5-5表 救助隊が乗車する車両及び主な資機材 また、消防庁としては救助工作車及び保有する資機材については、緊急消防援助隊設備整備費補助金又は地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている。
(4)救助隊の教育訓練 消防職員の救助活動については、より高度かつ専門的な知識と技術が不可欠となってきている。このため消防庁では、平成10年度から、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催しており、パネルディスカッション等による活発な意見交換や、事例研究などが行われている。平成18年度は12月に全国の救助隊員等約1,500名を対象として、「ヘリコプターを活用した救助活動について」をテーマにし、講演やパネルディスカッションを行った。また、消防学校の専科教育の救助科では、140時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2−5−6表)。第2-5-6表 消防本部における救助隊員の訓練実施状況
3 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は、火災、交通事故、水難事故、自然災害からテロ災害などの特殊な災害にまで及んでいる。 平成17年には、JR西日本福知山線列車事故や福岡県西方沖を震源とする地震を始めとする地震等が発生し、平成17年から平成18年にかけての冬に起きた平成18年豪雪、平成18年7月豪雨等の自然災害が発生している。また、海外では平成13年の米国同時多発テロ事件以降、平成16年スペイン列車爆破テロ、平成17年ロンドン爆破テロ、平成18年インド鉄道施設連続爆破テロ等が発生したように、世界的にテロの脅威が高まっており、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 なお、平成17年4月25日に発生したJR西日本福知山線列車事故は、死者107人、負傷者549人という甚大な被害をもたらした。列車が沿線の建物(マンション)に衝突し、一部の車両が建物内にくい込む形となり、また、中に駐車していた自動車からガソリンが漏れ、泡消火薬剤による防護措置を施しつつも気化したガソリンを完全に封じ込めることが難しく、エンジンカッター等の火気が発生する救助資機材の使用ができなかったこと、さらに、救助スペースが狭隘で、かつ車両内への進入及び救出口の確保が困難であったことから、救助活動に時間を要することとなった。 消防庁では、このような状況を勘案し、「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」の改正を行い、平成18年4月1日付けで施行し、新たに、特別高度救助隊の東京消防庁・政令市消防本部への整備、高度救助隊の中核市消防本部等への整備を行い、併せて、高度救助隊には高度救助用資機材、特別高度救助隊には高度救助隊が備える資機材に加え、特殊災害対応自動車等を整備することとしている。また、特別高度救助隊は、地域実情に応じて、ウォーターカッターと大型ブロアーを備えるものと定めている。これらの特別高度救助隊及び高度救助隊は、高度な救助技術に関する知識・技術を兼ね備えた隊員で構成することとし、この高度救助隊員の教育を消防大学校のカリキュラムに取り入れ、救助部隊の充実・強化を図ることとしている(囲み記事「特別高度救助隊及び高度救助隊の創設について」参照)。 また、消防庁は、複雑化、多様化する事故・災害に的確に対応するため、平成9年度から「救助技術の高度化等検討委員会」を設置し、救助技術の高度化や救助業務の充実・強化のための具体的な方策について、毎年、検討しており、平成18年度は、「水難事故活動要領」を検討テーマとしている。 消防庁は、各種災害に対応する救助活動マニュアル及び救助技術等の教育プログラムの充実を図っているほか、高度かつ専門的な救助資機材の機能・性能の明確化等先進技術の活用について、検討を行っているところであるが、これらの施策とあわせ、今後も救助工作車及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。
特別高度救助隊及び高度救助隊の創設について 近年、新潟県中越地震、JR西日本福知山線列車事故等の大規模な災害が多発している状況を踏まえ、平成18年4月1日「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」の一部改正を行い、「特別高度救助隊」を東京都及び政令市に、「高度救助隊」を中核市等に整備を行っているところです。 「特別高度救助隊」及び「高度救助隊」が装備すべき高度救助用資機材には、画像探索機、地中音響探知機、地震警報器、電磁波探査装置※、水中探査装置※などがあります(※は、高度救助隊においては地域の実情に応じて装備することとしています。)。 ・画像探索機は、高感度CCDカメラで倒壊建物の内部状況を写し出し生存者の探索ができるとともに、エア送気用チューブから生存者に空気を送ることができます。 ・地中音響探知機は、電子装置と2種類のセンサーを併用して、生存者の有無や位置を推定します。また、マイクによる対話も可能です。 ・地震警報器は、地震の初期微動を感知して警報を発する装置で、地震災害時における消防隊員等の安全を確保するため、人が地震を感じる前に感知し、危険を知らせることができます。 ・電磁波探査装置は、電磁波を使い瓦礫、建物、船体中などの生存者の心肺活動を検知して所在場所を探査します。 ・水中探査装置は、広角レンズ付高感度カラーテレビ型の探査装置で、水中状況の調査・観察が可能です。  また、特別高度救助隊においては、特殊災害対応車両を備え、さらに地域の実情に応じてウォーターカッター及び大型ブロアーを備えることとしています。 ・特殊災害対応車両は、放射性物質、生物剤及び化学剤による災害に対応する車両です。 ・ウォーターカッターは、研磨剤を含む高圧の水流により切断を行う器具であり、火花が発生しないことから危険物や可燃性ガスが充満した場所でも使用することができるものです。 ・大型ブロアーは、高性能な大型の排煙機であり、排煙と同時に噴霧消火等も可能なものです。 平成18年度には、ウォーターカッターと大型ブロアーを5台ずつ予算措置していますが、この2つの資機材については、今回、日本で初めて消防機関に導入するものです。電磁波探査装置を使用しての活動(東京消防庁提供)画像探査装置を使用しての活動(東京消防庁提供)
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等に日頃から大きな成果を上げている。特に、地震等大規模災害時においては、ビルの倒壊や道路の陥没等により陸上交通が遮断され、また津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態において、ヘリコプターの高速性、機動性を活用し、消防防災活動で大きな役割を担うことができるものと期待している。 消防庁としても、国庫補助金の活用による資機材の充実等の支援を行い、消防防災ヘリコプターの円滑な運航・整備を推進している。 平成18年4月1日現在の消防防災ヘリコプターの保有状況は、消防機関保有が28機、道県保有が42機、計70機となっており、未配備県は佐賀県及び沖縄県の2県のみとなっている(第2−6−1図)。第2-6-1図 消防防災ヘリコプターの保有状況 また、消防庁においてもヘリコプター(JA01FD)を導入、平成18年3月24日から運航を開始している。これにより、大規模な地震災害やNBCテロ災害等の様々な災害の発生時に消防庁職員を現地に派遣し、的確な情報収集や緊急消防援助隊の運用調整等にあたらせることとしている。 消防防災ヘリコプターは、消防活動に幅広く活用されており、平成17年中の出動実績は5,355件、その内訳は、救助出動1,480件、救急出動2,492件、火災出動1,161件、その他の出動222件となっている。 なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づいた広域航空消防応援によって、都道府県域を超えた応援活動が展開されており、平成17年中は20件となっている。
2 航空消防防災体制の課題(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要がある。 消防庁においては、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進し、45都道府県で配備されている。 都道府県保有の消防防災ヘリコプターは、従来、市町村の消防吏員が都道府県保有のヘリコプターを使用して消防事務を行うという法的構成がとられていたところであるが、平成15年6月の消防組織法等の改正により、都道府県は区域内の市町村長からの要請に応じ、航空機を用いて市町村消防を支援することができること、その支援を行うため都道府県に航空消防隊を設けるものとすること等、都道府県が行う支援事務の根拠が法律上明確となった。 近年の大規模災害においては、多くの消防防災ヘリコプターが緊急消防援助隊として出動し、その高速性、機動性を活かした迅速な情報収集、指揮支援、消火・救急・救助活動を実施するなど、大きな役割を果たしていることから、広域的な連携の下、その活用を一層推進していく必要がある。
(2)各種災害時におけるヘリコプター活用の推進 消防防災ヘリコプターは、火災、救急、救助等に幅広く活用されている(第2−6−2図)。第2-6-2図 消防防災ヘリコプターによる災害活動状況(平成11〜17年) 特に、救急搬送については、消防庁は平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、ヘリコプターの特性を活かした救急業務の実施を図るよう推進している。各都道府県ではこれをもとに出動基準を作成し、地域の実情を踏まえた救急業務実施体制を整備する等効果的な消防防災ヘリコプターの運用について所要の措置を講じている。 また、医師がヘリコプターに同乗した救急業務の実施についても、地域の病院と協定を結ぶ等、救命の輪が着実に広がっている。 高速道路で重大事故や大規模災害等が発生した場合には、その負傷者が重傷である可能性が高く、ヘリコプターを活用した救急・救助活動等は、後遺症の軽減も含めて高い救命効果が期待できる。このため、平成17年8月に警察庁、厚生労働省、国土交通省等関係機関との協議の結果、高速道路におけるヘリコプターの着陸場所については、サービスエリア、パーキングエリアの園地部に設置された救命活動支援ヘリポート、駐車エリアや高速道路本線上への離着陸等高速道路からのヘリコプターによる搬送フロー等を示したほか、地元の消防、警察、道路管理者等関係機関が参加した訓練を実施する等の取組みを行っている。 さらに、大規模災害時等における航空消防防災体制の充実強化を図るため、複数の消防防災ヘリコプターが連携した局地的活動をより効果的かつ安全に行うための運用マニュアルや、その訓練モデルを作成するための検討会を設置し、検討・検証を行っているところである。
(3)航空隊員等に対する教育訓練の推進 消防庁では、航空隊員等の資質の一層の向上を図るため、消防大学校で「航空隊長コース」「航空隊コース」を開催する等、航空隊員等に対する教育訓練を実施している。 さらに、消防防災ヘリコプターに係る地方公共団体相互の連絡協調を推進し、国民の信頼と期待に応える航空消防防災体制の確立に資することを目的として平成8年に設立された全国航空消防防災協議会においても、航空消防防災活動の向上に寄与する調査研究、航空隊員を対象とした研修会及び航空隊長会議を実施している。
(4)大規模災害時の消防防災ヘリコプターの有効活用に向けて 現在、大規模災害時等の広域的な運用に資するため、ヘリコプター運航システム等を構築し、消防防災ヘリコプターの稼働・整備状況、離着陸場情報等を随時把握し、緊急時においても全国規模で対応できるよう体制の整備を図っている。 大地震により道路等が寸断されても、迅速かつ確実に情報を取得するためには、消防防災ヘリコプターを活用して上空から被災地にアクセスし、情報収集を行うことが極めて有効である。そのため、高速性・機動性に富み、被災地の情報収集手段として必要不可欠なヘリコプターテレビ電送システム及び夜間における被災地情報収集に適したより性能の高い高感度カメラ・赤外線カメラの整備・充実を図ることとしている。
(5)消防防災ヘリコプターの積極的活用とより安全かつ効果的な運航の推進について 消防防災ヘリコプターのより積極的な活用と安全かつ効果的な運航体制の確保を図るため、〔1〕消防防災ヘリコプターの救急業務への活用〔2〕大規模災害時の航空消防応援を安全かつより効果的に行うための運航体制等の確保〔3〕消防の広域化に伴う管轄区域の拡大に対応するための消防防災ヘリコプターの機動力の活用等に関し、必要となる制度の見直しを含め、今後取り組むべき課題の整理を行うとともに、関係省庁並びに航空消防隊、都道府県消防防災担当部局、医療機関の関係者等から幅広く意見等を聴取しつつ、現状の課題及び今後とるべき対応策について検討・協議を行っている。
第7節 広域消防応援と緊急消防援助隊1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成18年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が1,940、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が558、その合計である全国の協定数は2,498である。また、全国の協定について応援する災害別に分類(重複計上)すると、火災2,262、風水害1,744、救急1,945、救助1,789、その他1,928となるが、市町村の合併等により、昨年に比べすべての協定数が減少している。 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を超えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の整備・充実を図るとともに、大規模・特殊災害や林野火災等において空中消火や救急業務、救助活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効であることから、その運用をより効率的に実施するため、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援可能地域の明示、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2−7−1表)。第2-7-1表 「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく広域航空応援の出動実績 今後とも消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場を確保し、情報活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。 平成17年中には、消防庁長官の求めに応じて20件の広域航空消防応援が実施された(第2−7−1表)。
2 緊急消防援助隊(1)緊急消防援助隊の概要と消防組織法改正による法制化ア 緊急消防援助隊の概要 緊急消防援助隊は、平成7年1月17日の阪神淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ迅速に実施し得るよう、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、平成7年6月に創設された。 この緊急消防援助隊は、平常時においては、それぞれの地域における消防の責任の遂行に全力を挙げる一方、いったん、我が国のどこかにおいて大規模災害が発生した場合には、全国から当該災害に対応できるだけの消防部隊が被災地に集中的に出動し、人命救助等の消防活動を実施するというシステムである。 緊急消防援助隊創設当初は要綱に基づく体制でスタートし、その部隊は、全国の消防本部から登録された指揮支援部隊、都道府県指揮隊、消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊から構成され、大規模災害発生に際し、消防組織法第44条に規定する消防庁長官の要請(同法改正後は指示も含む。)により、被災地に出動し、被災市町村長の指揮の下に活動することを任務としている。イ 消防組織法改正による法制化 近年、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、こうした災害に対しては、被災地の市町村はもとより当該都道府県内の消防力のみでは、迅速・的確な対応が困難な場合が想定される。そこで、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、併せて、国の財政措置を規定する等を内容とする、消防組織法の改正案が平成15年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立、同年6月18日公布(平成15年法律第84号)後、平成16年4月1日より施行された。(ア)法改正の主な内容 法改正の主な内容は、緊急消防援助隊の法律上への明確な位置付けと消防庁長官の出動の指示権の創設、緊急消防援助隊に係る基本計画の策定及び国の財政措置となっている。(イ)法律上の位置付けと消防庁長官の出動指示 創設以来要綱に基づき運用がなされてきた緊急消防援助隊であるが、この法改正により、消防組織法上の組織として明確に位置付けるとともに、併せて、東海地震等大規模な災害で2以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害(NBC災害)等の発生時には、消防庁長官は、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を「指示」することができるものとされた。この指示権の創設は、まさに国家的な見地から対応すべき大規模災害等に対し、緊急消防援助隊の出動指示という形で、被災地への消防力の投入責任を国に負わせることとするものである。(ウ)緊急消防援助隊に係る基本計画の策定等 法律上位置付けられた緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどのように配備・充足するかについては、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下、「基本計画」という。)を策定することとしている。この基本計画は、平成16年2月に策定され、緊急消防援助隊を構成する部隊の編成と装備の基準、出動計画及び必要な施設の整備目標などを規定している。策定当初は、緊急消防援助隊の部隊を平成20年度までに3,000隊登録とすることを目標としていたが、大規模災害等への対応力を一層強化するため、平成18年2月に同計画を変更し、平成20年度までの登録目標を4,000隊規模に拡大し、緊急消防援助隊の体制強化を図ることとした。(エ)緊急消防援助隊に係る国の財政措置 消防庁長官の指示を受けた場合には、緊急消防援助隊の出動が法律上義務付けられることから、出動に伴い新たに必要となる経費については、地方財政法第10条の国庫負担金として、国が全額負担することとしている。 また、基本計画に基づく施設(設備も含む。)の整備についても、「国が補助するものとする」と法律上明記されるとともに、対象施設及び補助率(2分の1)については政令で規定されている(第2−7−2表)。第2-7-2表 消防組織法の改正(緊急消防援助隊の法制化)
(2)緊急消防援助隊の体制及び装備ア 緊急消防援助隊の体制 緊急消防援助隊の部隊編成については、発足当初、救急部隊、救助部隊等の全国から集約的に出動する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(同1万3,000人規模)、総計で1,267隊、交替要員を含め約1万7,000人規模であった。平成13年1月には、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、消火部隊についても登録制を導入し、救助隊・救急隊とともにその登録部隊数が大きく増加し、さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、消防防災ヘリコプターによる航空部隊及び消防艇による水上部隊を新設し、8部隊とした(1,785隊、約2万8,000人規模)。 平成16年4月1日からの法律上の位置付けの明確化に伴い、法律に基づく登録を行った結果、指揮支援部隊をはじめとする10部隊で編成され、全国812消防本部から2,821隊、隊員数約3万5,000人が登録され、同年4月14日には、総務省講堂において全国の緊急消防援助隊指揮支援部隊、都道府県指揮隊、都道府県航空隊の隊長等の参集による緊急消防援助隊発足式が挙行された。平成18年4月1日現在では全国776消防本部(全国の消防本部の95.7%)から3,397隊、隊員数約3万9,000人規模が登録されている(第2−7−3表、第2−7−4表、第2−7−1図)(囲み記事「緊急消防援助隊の充実強化」参照)。第2-7-3表 各部隊の概要第2-7-4表 平成18年度緊急消防援助隊登録状況第2-7-1図 緊急消防援助隊の体制の推移イ 緊急消防援助隊の装備等 緊急消防援助隊の装備については、これまでも、消防庁において基準を策定するとともに、平成16年度からは、基本計画に基づき、その施設等の整備を図ってきた。平成18年度から緊急消防援助隊設備整備費補助金を新設、国庫補助措置を講じることにより、特殊災害対応特殊消防ポンプ自動車、救助工作車、災害対応特殊救急自動車等及び、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な車両並びにファイバースコープ等の高度救助用資機材等の整備を推進している。 また、平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムは、緊急消防援助隊派遣車両の位置及び動態を把握するためのシステムで、車載GPSにより特定した車両位置と車載端末装置から入力した車両動態を携帯電話通信網により消防庁に設置したサーバに送信し、広域応援支援システムの電子地図上にシンボルで表示する。また、携帯電話通信網の不感地帯では自動的に低軌道衛星回線に切り替わり、全国規模で安定したデータ通信が可能である。さらに、このシステムには、これらの回線を活用して、システム端末を積載した派遣車両と消防庁との間で情報連絡を行う簡易な文字通信機能等も備えている。平成13年度の実証実験、平成14年度の可搬型車載端末の開発を経て、現在、指揮支援部隊を構成する政令市消防局等及び全国の各県代表消防機関に配備されている。
緊急消防援助隊の充実強化 大規模・特殊災害への対応体制を強化するため、緊急消防援助隊の登録部隊を平成20年度までに4,000隊規模に増強することを目標としました。 緊急消防援助隊は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害等において被災した都道府県内の消防力では対応が困難な場合に、国家的観点から人命救助活動等を効果的かつ迅速に実施するために、平成7年に創設されました。 平成15年6月の消防組織法の改正により法制化されて平成16年4月に新たに発足し、その後も度重なる豪雨災害、新潟県中越地震及び兵庫県尼崎市にて発生したJR西日本福知山線列車事故等に出動したところです。 緊急消防援助隊の部隊は、消防組織法第45条第4項の規定に基づき、消防庁長官が登録することとされており、その登録規模については、総務大臣が策定した「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」で平成20年度までに3,000隊とすることを目標としていました。 その後に公表された東海地震活動計画や首都直下地震等の最新の被害想定等を踏まえ、消火・救助・救急部隊の主要部隊を中心に増強し、大規模災害等への対応力を一層強化するため、平成18年2月に、同計画を変更し、緊急消防援助隊の登録目標を4,000隊規模(おおむね4万5,000人体制)に拡大することとしました。 変更後の計画に基づく、平成18年4月1日現在における緊急消防援助隊の登録を行った結果、全国776消防本部から3,397隊の登録となり、昨年(779本部、2,963隊)より434隊(約15%)の増強となりました。 これにより、全国の消防本部の約95%から、主要部隊約1万4,000隊のうち、約24%の部隊が緊急消防援助隊に登録され、人員規模としては、約3万9,000人の体制となっています。 今後も緊急消防援助隊のより的確かつ迅速な出動及び活動を行える体制の確立に努め、国民の生命、身体及び財産を守る要として充実強化を計画的に進めて参ります。第3回緊急消防援助隊全国合同訓練(平成17年6月)新潟県中越地震災害における緊急消防援助隊の集結(平成16年10月)
(3)緊急消防援助隊の活動 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁及び名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月には、岩手県内陸北部の岩手山付近で発生した震度6弱を記録した地震において、仙台市消防局及び東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局及び仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局及び川崎市消防局から救助部隊及び消火部隊を現地に派遣し、地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊がヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする震度6弱を記録した芸予地震においては、大阪市消防局、神戸市消防局及び福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局及び北九州市消防局の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。 平成15年には、7月の宮城県北部地震(震度6弱、6強、6弱が1日に連続して発生)において、札幌市消防局の指揮支援部隊、航空部隊及び茨城県の航空部隊が被災地上空で情報収集活動を行った。8月の三重県ごみ固形燃料発電所火災では、名古屋市消防局の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が、9月の栃木県黒磯市ブリヂストン工場火災においては、東京消防庁の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が出動し、消火活動等を行った。 さらに、9月の平成15年十勝沖地震(震度6弱が2回発生)においては、札幌市消防局及び仙台市消防局の指揮支援部隊、航空部隊及び青森県の航空部隊が被害情報の収集活動を行った。また、当該地震により損傷した出光興産株式会社北海道製油所のオイルタンクから発災した火災の消火活動及び鎮火後の火災警戒活動のため、札幌市消防局の指揮支援部隊のほか、10都県15消防本部の特殊災害部隊等により応援活動を実施した。これらに加えて、泡消火薬剤の提供のため、全国的な広域応援を実施し、自衛隊航空機による輸送支援及び在日米軍からの泡消火薬剤の提供を受けた。 平成16年7月13日からの新潟・福島豪雨災害では、法制化以後初めて緊急消防援助隊が出動し、大規模な堤防決壊により浸水した地域及び道路寸断等により孤立した山間部等において、救出活動等に従事した。新潟県には宮城県、山形県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、長野県及び岐阜県 の1都11県から延べ171隊、693人(うち航空隊9隊、71人)が出動し、3日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、三条市1,652人、見附市106人、中之島町(現長岡市)97人の総数1,855人(うちヘリコプターによる救出92人)を救出した。 続く7月18日の福井豪雨災害では、神奈川県、富山県、石川県、長野県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県及び島根県の2府10県から延べ159隊、679人(うち航空隊9隊、65人)が出動し、2日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、福井市266人、鯖江市45人及び美山町77人の総数388人(うちヘリコプターによる救出187人)を救出した。 10月、平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号災害においては、豪雨による堤防の決壊等のため多大な被害を受けた兵庫県に出動し、浸水家屋の戸別調査及び救出活動等に従事した。10月21日、兵庫県豊岡市に、愛知県、滋賀県、大阪府及び岡山県の1府3県から延べ70隊、284人が2日間の活動に従事し、2,000世帯を超える戸別調査を行うとともに住宅等に孤立した住民127人を救命ボート等により救出した。 10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を中心にマグニチュード6.8、最大震度7となる大地震が発生した。最初の地震発生後も短時間の内に震度6強以上の地震が頻発し、また震度6弱以上の余震も発生するなど、新潟県の内陸部・山間部に家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。 緊急消防援助隊については、地震発生直後の23日18時25分、消防組織法第44条第2項及び第4項に基づき、情報収集と指揮支援部隊派遣のため、埼玉県及び仙台市に対し、消防庁長官より直接ヘリコプターの出動要請を行うとともに、19時20分の新潟県からの派遣要請を受けて、直ちに山形県、富山県、福島県及び東京都に出動を要請したところである。その後も引き続き各県に出動要請を行った結果、11月1日までの10日間にわたり累計で、15都県から480隊、2,121人、ヘリコプター20機と、これまでで最大規模の出動となった(出動都県は、宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、山梨県、富山県、石川県及び愛知県)。 活動状況は、主に小千谷市、長岡市及び山古志村(現長岡市)において、孤立住民等の安否確認、救助・救出、救急搬送に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動にも当たったところである。特に10月25日全村避難指示が発令された山古志村(現長岡市)においては、自衛隊、警察及び海上保安庁と連携して消防防災ヘリコプターにより集中的に救出活動を実施し、さらに27日には、長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故現場において、地元長岡市、新潟県内応援隊及び東京消防庁ハイパーレスキュー隊を中核とした緊急消防援助隊との合同の救助活動を実施し、2歳男児1人とその母親の2人を地震発生以来4日ぶりに救出(母親は病院搬送後死亡確認)した。 こうした活動の結果、453人(うちヘリコプターによる救出282人)を救出し、11月1日、活動を終了した。 平成17年3月20日には、福岡県西方沖を震源とする地震(震度6弱)が発生、大阪府及び熊本県から3隊12人が出動し、被災情報の収集にあたった。 続く4月25日には、兵庫県尼崎市においてJR西日本福知山線列車事故が発生、107人が死亡する大惨事となった。午前9時03分JR宝塚駅を出発した、7両編成の上り快速列車が、同9時18分頃尼崎市久々知3丁目付近において脱線、沿線のマンションに衝突し、先頭車両がマンション1階の駐車場にくい込むという事態となった。そのため、狭隘な空間の上、駐車場の自動車からガソリンが漏れ、エンジンカッター等の火気を発生する救助資機材が使用できないということもあり、救出に時間を要することとなった。緊急消防援助隊としては、大阪府、京都府及び岡山県の2府1県から累計で74隊、270人が4日間にわたり救助・救出、救急搬送活動に従事し、地元尼崎市消防局をはじめ、兵庫県内消防本部の県内応援隊と協力し、消防機関として240人(緊急消防援助隊の救出人員42人)を救出した。 以上のような緊急消防援助隊の活動に要した経費については、昭和62年度に創設された消防広域応援交付金制度に基づき、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されている。第2-7-5表 緊急消防援助隊の出動事例(平成8〜18年)
(4)緊急消防援助隊の運用 緊急消防援助隊の編成及び出動計画等については、総務大臣が定める基本計画に定められているが、その概要は以下のとおりである。ア 緊急消防援助隊の編成 緊急消防援助隊の部隊は、全国を8つのブロックに分けた災害発生地域別に、政令指定都市の消防本部により編成される指揮支援部隊と、応援都道府県内の消防本部の消火部隊、救助部隊、救急部隊等から編成される都道府県隊に大別される。 緊急消防援助隊は、被災地の市町村長(又は委任を受けた消防長。以下同じ。)の指揮の下に活動することとなるが、指揮支援部隊は、大規模災害の発生に際し、ヘリコプター等で速やかに被災地に赴き、被害情報の収集等にあたるとともに、当該市町村長の指揮を支援し、被災地における緊急消防援助隊の活動が円滑に行われるよう支援活動を行う。 都道府県隊は、当該都道府県内の消防本部において登録されている消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊並びに当該都道府県の航空部隊のうち、被災地への応援に必要な部隊をもって編成される。 こうした部隊編成に基づき、緊急消防援助隊は、被災地の市町村長→指揮支援部隊長→都道府県隊長→各部隊長という指揮命令系統により、活動することとなる。イ 出動計画(ア)基本的な出動計画 大規模災害等の発災に際し、消防庁長官は、情報収集に努めるとともに、被災都道府県知事等との密接な連携を図り、緊急消防援助隊の出動の有無を判断し、消防組織法第44条の規定に基づき、出動の要請又は指示の措置をとることとされている。この場合において迅速かつ的確な出動が可能となるよう、あらかじめ出動計画が定められている。 具体的には、災害発生都道府県ごとに、その隣接都道府県を中心に、原則として第一次的に応援出動する都道府県隊を第一次出動都道府県隊と、災害の規模によりさらに応援が必要となる場合に出動準備を行う都道府県隊を出動準備都道府県隊として指定している。(イ)東海地震等における出動計画 東海地震、首都直下地震等の大規模地震については、2以上の都道府県に及ぶ著しい地震被害が想定され、第一次出動都道府県隊及び出動準備都道府県隊だけでは、消防力が不足すると考えられることから、全国的規模での緊急消防援助隊の出動を行うこととしている。 そのため、東海地震及び首都直下地震を想定して、中央防災会議における対応方針も踏まえ、それぞれの発災時における、緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを策定しており、例えば東海地震の場合、強化地域に指定されている8都県以外の全道府県の陸上部隊の出動順位、応援先都県、出動ルート等をあらかじめ定めるとともに、航空部隊についても全国的な運用を行うこととしている(第2−7−2図)。第2-7-2図 緊急消防援助隊出動までの流れ(ウ)緊急消防援助隊調整本部 緊急消防援助隊はそれぞれの管轄区域を離れて活動することから、迅速かつ効果的な活動を行うためには、速やかな集結及び被災地域への出動とともに、被災地域における各部隊の具体的な活動場所及び部隊配備等を、被害状況を踏まえて適時的確に決定する必要がある。 そのため、緊急消防援助隊が出動した場合には、被災都道府県において緊急消防援助隊調整本部を設置し、同本部には消防庁職員も派遣して、都道府県・県代表消防機関職員、指揮支援部隊長等とともに、緊急消防援助隊の部隊配備等に係る所要の連絡調整を行うこととしている。 各都道府県においては、自らが被災地となる場合を想定して、平時よりこうした調整本部の運営方法をはじめ、進出拠点、燃料補給基地等、緊急消防援助隊の受入れに当たって必要な事項を都道府県内の消防機関等と協議の上「緊急消防援助隊受援計画」として定めておかなければならない。この受援計画の策定状況は、平成18年10月1日現在で、41道府県となっており、消防庁としてはその早急な整備を指導しているところである(第2−7−3図)。第2-7-3図 緊急消防援助隊調整本部等の設置イメージ
(5)緊急消防援助隊の訓練等 大規模災害時における緊急消防援助隊の出動及び活動を的確かつ迅速に行うためには、全国各地からそれぞれの管轄区域を離れて活動に従事するという緊急消防援助隊の特殊性を考慮し、指揮・連携能力の向上を図るなど、平時からの緊急消防援助隊としての教育訓練が重要となる。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日に、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われたのをはじめ、平成12年10月23・24日には、第2回目の全国合同訓練を東京都江東区有明において実施した。 第3回全国合同訓練は、緊急消防援助隊法制化後、初の全国訓練として、基本計画に基づき、平成17年6月10日・11日の両日、静岡県静岡市において「東海地震における緊急消防援助隊アクションプラン」の検証を兼ね実施し、参集及び活動体制について総合的な検証を行った。 また、基本計画に基づき、毎年隊員の技術向上と部隊間の連携強化のため地域ブロックごとに合同訓練が行われており、引き続き、消防大学校における必要な教育訓練の実施とともに、計画的な部隊の増強、施設の充実強化を図ることとしている(第2−7−6表)。第2-7-6表 緊急消防援助隊全国訓練、ブロック訓練の実施状況 さらに、新潟県中越地震災害への活動を教訓として、緊急消防援助隊調整本部機能の充実を図るため、消防庁の機動力強化として消防庁ヘリコプター及び消防庁車両(指揮車、要員搬送車)を平成16年度補正予算及び平成17年度当初予算により整備した。
(6)今後の課題 法制化後、新たに発足した緊急消防援助隊について、今後その活動能力を更に高めていくためには、それを構成する陸上部隊・航空部隊等の増強等を図るなど広域消防応援体制の更なる強化が求められていることから、下記の課題に引き続き取り組んでいく必要がある。ア 消防庁オペレーション機能の強化 消防庁においては、消防庁長官の指示権が創設されたことも踏まえると、大規模災害・特殊災害等発生時に、消防庁自体の初動対応がこれまで以上に重要となり、迅速かつ的確な情報収集等に努め、できる限り災害の規模、被害状況等を把握して、緊急消防援助隊の派遣等必要な措置を即座に講じなければならない。また図上訓練等の実施により日頃から体制の点検も行いながら、緊急消防援助隊の出動の要否、派遣地域、必要な部隊規模・種類の判断等オペレーション機能の強化を引き続き図っていく必要がある。イ 訓練の実施 緊急消防援助隊が迅速かつ効果的に活動するためには、各都道府県と各代表消防機関において速やかに応援部隊を編成し、参集・集結して被災地に出動する必要がある。また、緊急消防援助隊を受け入れる被災地の側においても、都道府県と被災市町村、消防機関が連携して緊急消防援助隊の活動地域等を調整・決定することが重要である。こうした点については、昨年来の出動事例及び全国訓練においても再認識されたところであるが、そのためには平時より、各種防災訓練等の機会も活かしながら、緊急消防援助隊調整本部運営訓練や大規模な参集・集結訓練など、緊急消防援助隊の活動に即したより実践的な教育訓練を行う必要がある。ウ アクションプランの策定 いつ起きてもおかしくないといわれる東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等に備えるためには、発生時における緊急消防援助隊の活動方針を更に具体化していく必要がある。このため今後も東海地震及び首都直下地震に係るアクションプランを随時検証するとともに、東南海・南海地震等を想定したアクションプランの策定、さらには日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など様々な事案を想定した運用体制の構築を図っていく必要がある。エ 部隊の増強・施設等の充実強化 緊急消防援助隊の活動規模の増大や、公表された東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等の被害想定を念頭に置き、今後さらに登録部隊の計画的な増強及び車両、航空機、資機材等各種の施設・設備の整備の推進を図るとともに、緊急消防援助隊の活動を機動的に行うために重要となる航空部隊についても、地上部隊との連携活動など、より安全かつ効果的な運用要領やその体制強化についての検討を行う必要がある。オ 特殊災害対応への備え NBC災害等特殊災害の場合においては、大規模自然災害の場合とは出動部隊、活動内容等も大きく異なってくることから、これらの事案の特殊性を踏まえた具体的な対応方策の検証を進めていく必要がある。
第8節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大きな改正や、防災基本計画の修正が数次にわたり行われている。 災害対策基本法については、平成7年6月に、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による措置の創設等を内容とする改正が行われたほか、同年12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等、国・地方を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 防災基本計画については、平成7年7月には、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められ、平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害について、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るための修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現・経済産業省)、厚生省(現・厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等を置くこととされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村におけるウラン加工施設における臨界事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られた。 平成16年3月には東海地震に係る地震防災基本計画の修正、東南海・南海地震防災対策推進基本計画の策定等、近年の震災対策の進展を踏まえ、震災対策編を中心に修正が行われた。また、平成17年7月には、災害への備えを実践する国民運動の展開、地震防災戦略の策定、インド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等、最近の災害対策の進展を踏まえ、修正が行われた。
(3)消防庁の防災体制 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現・総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関しとるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる(省庁再編に伴い、現在は消防庁防災業務計画)。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の自然的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成15年8月には、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に消防防災・危機管理センターを整備し、平成16年には、同センターに設置される消防庁災害対策本部の体制を情報収集中心のものから、より機動的な災害応急対応中心のものへと見直したことに伴い、センター内の配置を会議中心のスタイルであるいわゆる「コの字」型のものから、実践的なオペレーション機能を重視する「アイランド型」へと変更した。 同時に災害対策本部の編成について災害種別によって課室別にその都度編成していたのを、災害対策本部の組織体制を原則として一本化した。加えて、平成17年度には大規模地震やNBCテロ災害等の様々な災害発生時において、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示や現地における的確な災害対応等を迅速かつ適切に実施するため消防庁職員等を被災地へ迅速に派遣し、併せて、現地調査、情報収集を行うために消防庁ヘリコプターを導入した。さらに、平成17年8月には、業務の専門性の確立、責任体制の明確化を一層図ることを目的に、大規模地震対策、消防防災の情報通信システム、消防応援・支援、緊急消防援助隊、原子力災害、救助、テロ対策、国民保護の企画・運用等の緊急対応や地方公共団体との連絡調整等の各業務を統括する「国民保護・防災部」を設置した。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成18年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体(すべての都道府県で作成済)、原子力災害対策については23団体、風水害対策については30団体、火山災害対策については16団体、林野火災対策については18団体、雪害対策については12団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、災害対策基本法において、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(現、中央防災会議幹事会副会長、消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成18年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、このうち1,395団体(75.7%)が見直しを完了している。見直しが完了していない多くの市町村は、平成17年度中の市町村合併によるもので、都道府県と修正協議中又は修正検討中である。 なお、平成17度中には、都道府県では23団体が、市町村では548団体が、それぞれ災害対策基本法に基づく地域防災計画の修正を行っている。 また、平成9年6月には防災基本計画への事故災害対策の追加、平成12年5月には原子力災害対策編が修正されたこと、平成16年3月には東海地震、東南海・南海地震への対策として震災対策編を中心に修正が行われたこと、平成17年7月には災害への備えを実践する国民運動の展開、地震防災戦略の策定、インド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等についての自然災害対策各編の修正が行われたこと、平成18年3月には災害時要援護者の避難支援ガイドラインが改訂されたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請した。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成17年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、63団体となっている。
(3)広域防災応援体制ア 広域防災応援体制の確立 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛庁長官等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し、上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛庁長官等に対して災害の状況等を通知することができる。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正により都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。イ 広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関と、あらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、災害現場における指揮体制等各般にわたる項目について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援に関しては、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組みが進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計26の協定が締結されている。この結果、阪神・淡路大震災以後、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を超えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に積極的に取り組む傾向にあり、平成18年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、1,457団体となっている(平成17年度の市町村合併により、昨年に比べ協定を有する市町村数は減少している。)。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に軽減するために重要であり、そのためには日頃から実践的な対応力を身につけておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上型訓練等により実戦的な訓練の実施を促進することとしている。 平成15年度から行われた「地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデル作成調査研究」について平成17年度も引き続き実施し、「地方公共団体における地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書(平成17年度)」を取りまとめ、地方公共団体に配付した。平成18年においても同調査研究を進めるとともに、6月から翌年2月にかけて、火山噴火、地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定能力の向上と応急体制の点検、住民と行政との信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、全国3ブロック(西日本、関西・中部、東日本)で「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催し、市町村長や都道府県・市町村の防災担当幹部、延べ637人の参加を得た。 平成19年度も上記調査研究を更に進めていくとともに、防災危機管理ブロック・ラボを平成19年5月から7月に実施する予定としており、さらに消防庁及び財団法人消防科学総合センターから図上訓練支援チーム(専門家及び指導員で構成)を市町村に派遣し、図上訓練の企画立案から実施等に至る過程を指導支援することを通じ、市町村における実戦的な防災訓練(図上型訓練)の普及を促進する「市町村防災図上訓練推進モデル事業」を実施することとしている。 平成17年度においては、都道府県で延べ288回の防災訓練を実施したほか、市町村においても延べ5,932回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震・津波に対応するものが最も多く、次いで、原子力、台風等風水害、コンビナート災害、林野火災となっており、市町村では地震・津波、風水害、大火災、林野火災、土砂災害となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実動)訓練が最も多い。
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会の更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、すべての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。これに必要な経費については、平成8年度から普通交付税により地方財政措置を講じている。 また、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、〔1〕被害想定、〔2〕職員の動員配備体制、〔3〕情報の収集・伝達体制、〔4〕応援体制、〔5〕被災者の収容、物資等の調達、〔6〕防災に配慮した地域づくりの推進、〔7〕消防団、自主防災組織の充実強化、〔8〕災害ボランティアの活動環境の整備、〔9〕災害時要援護者対策、〔10〕防災訓練など項目に留意する必要がある。 なお、地域防災計画をより実践的かつ具体的なものとするため、消防庁では平成17年7月から各都道府県の地域防災計画をデータベース化した「地域防災計画データベース」の運用を始め、都道府県地域防災計画の内容の比較・検証を通じて、より適切な計画へ見直しを行える環境を整備している。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのため、組織に関しては、危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要がある。平成18年4月1日現在、44都道府県において部次長職以上の防災・危機管理専門職が設けられているが、さらに充実の必要がある。 防災体制強化の根幹である人材育成については、首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応力の向上、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要である。消防庁としては、平成15年度より消防大学校において、首長等幹部職員を対象とした「トップマネジメントコース」を含む「危機管理セミナー」を実施するとともに、消防職団員やボランティア、広く住民を対象として、インターネットを活用した家庭や地域でいつでも体系的に学習できる「防災・危機管理e-カレッジ」を、平成18年3月から全面運用を開始している。 このほか、各地方公共団体においては、防災業務に精通した職員をはじめとした人員を夜間・休日においても24時間体制で配置するほか、災害時の職員の参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などICT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険個所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。 また、近年の豪雨災害による被害を踏まえ、避難準備情報、避難勧告・指示を発出する際の客観的な基準の作成や、高齢者等災害時要援護者の避難誘導体制の整備等についても進めていく必要がある。そのため消防庁では、災害時における高齢者や障害者等災害時要援護者の避難について、モデル地域を選定し、市町村の福祉部局と連携した情報共有や実践的な訓練の実施等について、詳細な報告を受け、その報告を参考に避難支援プラン作成のノウハウを整理し、地方公共団体へ提供する「災害時要援護者の避難支援プラン策定モデル事業」を実施し、避難支援プランを作成するための手引きとして「災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて」を取りまとめた。
第9節 消防防災の情報化の推進1 被害状況等に係る情報の収集・伝達体制の確立 大規模災害時には、地方公共団体が把握した災害の規模や被害の概況を国が迅速かつ的確に把握し、緊急消防援助隊の出動その他の災害応急対策を迅速に講じることが重要である。消防庁では、地方公共団体と国との間の防災情報の収集・伝達の窓口として、地方公共団体から迅速かつ的確に情報を収集し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等に伝達できるよう努めている。 災害時に防災情報の収集・伝達を円滑に行うためには、平素から体制を確立しておくことが極めて重要であることから、消防庁では、大規模災害時の都道府県及び市町村からの情報収集のために火災・災害等即報要領を定め、情報収集体制を確立するとともに、防災映像情報送受信統一訓練を定期的に実施し、地方公共団体における機器操作の習熟に努めている。なお、火災・災害等即報要領については、必要に応じて随時見直しを行っており、最近は、平成16年9月17日の国民保護法の施行に伴い、武力攻撃災害及び緊急対処事態を即報の対象として位置付け、これらの災害等(該当するおそれがある場合も含む。)が発生した場合を報告の対象として追加している(第2−9−1図)。第2-9-1図 火災・災害等即報の概要
2 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 被害状況等に係る情報の収集及び伝達を行うためには、通信ネットワークが必要である。通信ネットワークには、加入電話、携帯電話、インターネット等の様々なネットワークが存在しているが、災害時には、安否確認等により平常時の数十倍もの通信量が発生することから、輻そうを避けるため、公衆網においては通話規制が行われることが多い。また、災害時には、通信施設の被災や停電によりこれらの通信ネットワークの使用が困難となる場合もある。 このため、災害時においても通信を確実に確保し、情報の収集及び伝達を迅速かつ確実に行うべく、国、都道府県、市町村等においては、加入電話、携帯電話等の公衆網及び専用線等を使用するほか、災害に強く輻そうのおそれのない自営網である消防防災通信ネットワークを整備しているところである。 現在、国、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、〔1〕国と都道府県を結ぶ消防防災無線、〔2〕都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線、〔3〕市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線及び〔4〕国と地方公共団体及び地方公共団体間を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2−9−2図、第2−9−1表)。第2-9-2図 消防防災通信ネットワークの概要第2-9-1表 消防防災情報通信ネットワーク 消防庁では、防災基盤整備事業等を活用し、これらの消防防災通信ネットワークの整備促進及び充実強化を図っているところである。
(1)消防防災通信ネットワークの概要ア 消防防災無線 消防防災無線は、国(消防庁)と全都道府県を結ぶ通信網である。電話及びファクシミリによる相互通信のほか、消防庁からの一斉伝達が可能であり、災害発生時には電話及びファクシミリによる災害報告や消防庁からの一斉伝達の手段として活用される通信網である。国土交通省のマイクロ回線設備との設備共用により整備・運営されている。イ 都道府県防災行政無線 都道府県防災行政無線は、都道府県とその出先機関、市町村、消防本部、防災関係機関等を結ぶ無線網である。機能は都道府県によって異なるが、一般的には、電話及びファクシミリによる相互通信のほか、都道府県庁からの一斉伝達が可能となっている。また、地上系では、車両に設置された車載無線機等の移動体との通信も可能となっている。都道府県と出先機関・車両との情報収集・伝達、都道府県と市町村との情報収集・伝達、都道府県と防災関係機関間の情報収集・伝達に使用される。地上系、衛星系又は両方式で全都道府県において運用されている。ウ 市町村防災行政無線(移動系)・地域防災無線 市町村防災行政無線(移動系)・地域防災無線は、市町村庁舎(災害対策本部)と市町村車両、市町村内の防災関係機関(消防本部、警察等)、生活関連機関(病院、電気、ガス、通信事業者等)自主防災組織等を結ぶ通信網である。災害対策本部における交通・通信の途絶した孤立地域や防災関係機関等からの情報収集・伝達、広報車との連絡等に利用される。整備率は移動系85.7%、地域防災無線12.6%(平成18年3月末現在)となっている。エ 市町村防災行政無線(同報系) 市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に、災害時において情報を迅速かつ確実に伝達することができるものである。気象予警報、避難勧告等の伝達に利用される。整備率は74.6%(平成18年3月末現在)となっている。防災行政無線(同報系屋外拡声装置)オ 消防救急無線 消防救急無線は、消防本部(消防指令センター)と消防署、消防・救急隊を結ぶ通信網である。消防本部から消防・救急隊への指令、消防・救急隊から消防本部への報告、火災現場における隊員への指令等に利用されており、消防活動の指揮命令を支え、消防活動の遂行に必要不可欠なものである。全国のすべての消防本部において運用されている。カ 地域衛星通信ネットワーク 地域衛星通信ネットワークは、衛星通信により、消防庁、都道府県、市町村及び防災関係機関を結ぶ全国的な通信網である。通常の音声通信のほか、一斉指令、データ通信、映像伝送等の機能を有し、消防防災無線のバックアップ及び都道府県防災行政無線(衛星系)として位置付けられているほか、画像電送システムにおいて、ヘリコプターや高所監視カメラからの映像を消防庁、都道府県、消防本部等に伝送するために利用される。スーパーバード衛星を利用して、財団法人自治体衛星通信機構が運営しており、消防庁、都道府県、市町村、消防本部等に地球局が設置されているほか、車載局や可搬局も存在し、災害発生時の機動的な情報収集・伝達体制の確保が可能となっている。まもなく全都道府県で運用される予定となっている。キ 画像伝送システム 画像伝送システムは、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を消防指令センター等に伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに国、都道府県及び他の市町村などへも伝送可能なものである(第2−9−3図)。発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムである。平成18年3月末現在、37消防本部で運用されている。第2-9-3図 画像伝送システムの概要
(2)バックアップ機能の確保ア 通信設備の耐震対策の徹底等 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、都道府県防災行政無線が建物の倒壊や非常用電源の不備などにより一部地域で不通となる事態が生じたが、防災行政無線については、災害時においても確実に機能が確保されることが必要である。このため、消防庁では、・都道府県防災行政無線の非常用電源設備の整備・保守点検の実施と的確な操作の徹底・総合防災訓練時等における防災行政無線を使用した通信訓練の実施(非常電源による訓練を含む。)・防災行政無線設備の耐震性のある堅固な場所への設置等を都道府県及び市町村に対して要請しているところである。 なお、中央非常通信協議会において、無線設備の停電・耐震対策のための指針が取りまとめられており、地方公共団体においては、無線設備の停電対策、非常用電源設備、管理運用対策、耐震対策等について、これに準じて、自ら点検を徹底することが必要である。イ バックアップ機能の確保 消防防災通信ネットワークであっても、大地震等により通信施設が使用不能となり、国と地方公共団体間の被害情報等の通信が困難となる場合が生じる恐れがある。 このため、消防庁では、バックアップ施設として消防大学校に衛星通信施設を整備しているほか、機動性のある衛星車載局車や可搬型衛星地球局を整備しているところである。また、消防庁を含む国の機関、都道府県、市町村、電気通信事業者、電力会社等で構成される非常通信協議会では、公衆網並びに消防庁及び地方公共団体の消防防災通信ネットワークが不通となった場合に備え、電力会社等の防災関係機関が管理している自営通信網を活用して、被害情報等を都道府県から国に伝達する中央通信ルートを策定しているほか、市町村から都道府県に伝達する地方ルートの策定も進められているところである。さらに、非常通信訓練を定期的に実施し、非常の場合の通信の円滑な実施の確保に努めているところである。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 消防庁では、震度情報や広域応援対応力情報などの防災情報のデータベース化と国・地方公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進し、順次運用を開始している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始しており、本システムで収集された震度データは、緊急消防援助隊の派遣等、広域応援活動に生かすとともに、気象庁にも提供され震度情報として発表されている。近年、システム機器の老朽化等により震度情報の送信が遅延するなどの問題が生じているため、消防庁では次世代震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、平成18年3月に報告書を取りまとめたところである。
(2)災害対応支援システムの導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断のもとに的確な応急活動を遂行する必要があるが、そのためには、シミュレーションにより被害を推測するとともに、円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入し、日頃から訓練に努めることが有効である。 このため、消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めており、特に、消防研究センター(旧独立行政法人消防研究所)で開発した「簡易型地震被害想定システム」(第2−9−4図)については、簡単な操作で即座に地震発生時の被害を推計することが可能であり、的確な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つことから、全都道府県等に配布しその活用を図るとともに、消防庁の消防防災・危機管理センターにおいても被害予測に同想定システムを活用している。第2-9-4図 簡易型地震被害想定システムの画面表示例
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、電話、ファクシミリにより行われてきたが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速、的確に行うため、消防庁では、次の2つのサブシステムから構成される緊急支援情報システムを整備している(第2−9−5図)。第2-9-5図 緊急支援情報システム概要図ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等で情報を共有するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。
(4)各種統計報告オンライン処理システム 行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度からVPN網を活用した各種統計報告のオンライン処理を可能とするシステムの開発を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。ア 火災報告等オンライン処理システム 従来から火災報告取扱要領(昭和43年11月11日付け消防総第393号)に基づき、国内で発生した火災について把握するシステムで、火災種別、火災原因、死傷者数、損害状況等の調査・分析等に活用している。イ 防火対象物実態調査等オンライン処理システム 消防設備等の設置、防火管理制度や消防設備士制度の運用及び違反処理体制の整備状況の実態を把握することを目的として実施している「防火対象物実態等調査」については、平成15年度にシステムの開発に着手し、その後、平成17年の調査からオンラインによる報告を開始している。ウ ウツタイン様式調査オンライン処理システム 「ウツタイン様式調査オンライン処理システム」は、平成15年度にシステムの開発を行った。ウツタイン様式は従前の蘇生指標に代わり、心肺停止傷病者の実態を原因や行われた処置等により詳細に記述・分類するための様式であり、世界標準となるべく考案されたものである。また、この様式を国家単位で採用するのは日本が初めてであるため各種学会の期待も大きく、救急行政、救急医療はもとより医療レベル全体のレベルの向上に資することが期待できる。本システムは、平成17年1月より本運用を実施している。エ 「危険物規制事務調査」及び「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」オンライン処理システム 危険物施設の許可及び設置状況、危険物取扱者制度の運用状況、立入検査及び違反処理の実施状況等の実態把握を目的として実施している「危険物規制事務調査」並びに危険物施設等において発生した事故の状況を把握し、事故防止対策に活用する「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」について、オンライン処理システムの開発を行い、平成18年度より本運用を開始している。 これによって、危険物施設の実態や事故の発生状況がデータベース化され、データの検索や参照が容易となるため、都道府県や消防本部において危険物情報を効率的に共有化することが可能となり、更なる危険物行政の向上につながるものである。オ 救急救助調査オンライン処理システム 全国消防本部からの救急救助活動の報告データを迅速的確に収集・整理し、情報収集から公表、各都道府県、各消防本部への速やかな情報提供、各種施策への反映を支援するために「救急救助調査オンライン処理システム」を開発した。 なお、本システムは平成19年度より運用を開始する予定である。カ 石油コンビナート等実態調査オンライン処理システム 石油コンビナート等特別防災区域が所在する道府県及び消防本部において、特定事業所の概要及び自衛防災組織等の状況等を把握し、防災行政上の資料とすることを目的として実施している「石油コンビナート等実態調査」について、平成18年度はオンライン処理システムの開発を行っており、平成19年度からの運用開始を予定している。 消防庁では、これらのデータを迅速的確に収集・整理することにより、各道府県、各消防本部への速やかな情報提供、各種施策への反映を支援することができることとなる。
4 情報化の今後の展開(1)消防防災通信ネットワークの充実強化 ICT(情報通信技術)は、ドッグイヤーとも呼ばれるように日進月歩の発展を続けているところである。消防防災分野においても、その進歩に的確に対応するとともに、ICTを積極的に活用することにより、消防防災力の一層の強化を図っていく必要がある。 そこで、消防庁では、次の事項に重点をおいて、地方公共団体と一体となって、消防防災通信ネットワークの充実強化を推進することにより、国民の安心と安全をより一層確保していくこととしている。ア 消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化 消防救急無線は、従来、アナログ方式により、整備・運用されてきたが、秘話性の向上によるプライバシー保護や画像・文字等のデータ通信の活用による利用高度化及び電波の有効活用を図る観点から、平成28年5月までにデジタル方式に移行することとされている。また、消防救急無線施設は、従来、各消防本部が単独で整備し、運用することが原則とされてきたが、デジタル方式への移行の機会を捉え、消防本部間の相互応援に対応可能な通信基盤の整備及び整備費用の節減を図る観点から、都道府県域での広域化・共同化整備を推進しているところである。 さらに、大規模災害時等における全国的な広域応援の観点から、各消防本部の無線機器間においても相互に通信可能であることが確保されるよう、無線機器の仕様の共通化を図ることとしている。イ 市町村防災行政無線(同報系)の整備促進 豪雨や津波等の災害時においては、一刻も早く住民に警報等の防災情報を伝達し、警戒を呼び掛けることが、生死を分けることとなる。市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に、災害時において情報を迅速かつ確実に伝達することができるものであり、その整備は重要である。国民保護法の制定を受け、市町村防災行政無線(同報系)は、災害対策のみならず、国民保護の観点からも非常に重要なものとなっているが、その整備率は、74.6%(平成18年3月末現在)にとどまっていることから、早急に整備率の向上を図る必要がある(囲み記事「一刻も早い住民への防災情報伝達について」参照)。ウ 災害に対する初動体制を確立するヘリコプターテレビ電送システムの整備促進 災害現場の映像情報は、「百聞は一見に如かず」といわれるように、被害規模及び概要を的確に把握し、災害応急対策等を立案する際に非常に有効である。このため、消防庁や一部の都道府県及び消防機関においては、被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を整備しているところである。 近年では、平成17年3月の福岡県西方沖を震源とする地震や同年8月の宮城県沖を震源とする地震などにおいて、現地の被災状況を、消防防災ヘリコプターに搭載する画像伝送システム(ヘリコプターテレビ電送システム)を用いて消防本部や消防庁へ伝達することによって迅速な被災地情報の収集が行われたところである。 ヘリコプターテレビ電送システムは、導入団体が増加しているものの、その映像受信範囲は全国をカバーするには至っていない状況にある(第2−9−6図)。こうした状況にかんがみ、消防庁においては、平成17年度に開催された「初動時における被災地情報収集のあり方に関する検討会」の提言を受け、ヘリコプターから衛星に直接電波を送信する方法により、地上受信局がない場合でも被災地情報をリアルタイムで伝送するシステムやヘリコプターからの被災地の夜間撮影の実用化に向け取り組んでいる(囲み記事「ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて」参照)。第2-9-6図 ヘリコプターテレビ電送システム受信用基地局受信エリア図消防庁衛星車載局車災害映像配信卓エ 緊急災害現地対策本部における通信設備の整備 東海地震、東南海・南海地震又は首都直下地震が発生した場合には、現地の都道府県庁等に、現地における被災情報の取りまとめや災害応急対策の調整を迅速かつ的確に実施するため、政府の緊急災害現地対策本部が設置されることとされている。当該本部において、各種情報の収集、伝達等を的確に実施するためには、通信網の充実が不可欠であることから、当該本部と消防庁及び関係地方公共団体との間で情報収集・伝達を行うための通信網の整備を行う必要がある。 このため、消防庁では、平成17年度、東海地震発生時に現地対策本部が設置される静岡県庁に地域衛星通信ネットワークを活用した通信設備を整備したところであり、引き続き、他の現地対策本部設置予定地について整備を進めていくこととしている。オ 防災行政無線のデジタル化 防災行政無線は、これまでアナログ通信方式による音声及びFAX主体の運用が行われてきたが、携帯電話、放送等様々な分野においてデジタル化が進展しており、データ伝送等による利用高度化が図られてきている。消防防災分野においても、日進月歩の発展を遂げている情報通信技術を積極的に活用し、安心・安全な社会の実現を図るため、文字情報や静止画像の伝達が可能なデジタル方式に移行し、高度化・高機能化を図ることが必要となってきている(第2−9−7図)。都道府県防災行政無線における60MHz帯周波数の使用期限が平成19年11月末、地域衛星通信ネットワークにおけるアナログ映像伝送の期限が平成20年3月末、地域防災無線の周波数の使用期限が平成23年5月末まで等とされており、今後デジタル化に適切に対応していく必要がある。第2-9-7図 デジタル化の概要
一刻も早い住民への防災情報伝達について 豪雨や津波等の災害時においては、状況に応じ適切な避難勧告等を一刻も早く住民に伝達することが、住民の迅速な避難を実現し、被害を最小化する観点から極めて重要です。 住民への防災情報伝達手段としては、広報車による巡回等による方法もありますが、この場合、市町村管内の巡回に時間を要することから、速やかな情報伝達が困難です。他方、市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に、災害時において情報を迅速かつ確実に伝達することができます。これまでも、豪雨等の発生の際に防災行政無線(同報系)が未整備であった市町村において、住民に対する情報伝達が遅れる等の問題が生じてきたところであり、その整備は非常に重要なものとなっています。 現在、その整備率は、全国平均で74.6%(平成18年3月末)となっているところですが、地域によって大きな差があり、静岡県、鳥取県のようにすべての市町村で整備している都道府県もあれば、山形県、栃木県のように整備済みの市町村が30%台に留まる都道府県もあります。 また、最近、消防庁では、国民保護法の施行を背景として、J-ALART(全国瞬時警報システム)の整備を推進しています。これは、津波警報、弾道ミサイル攻撃等の対処に時間的余裕がない事態が発生した場合に、消防庁より人工衛星を用いて情報を送信し、防災行政無線(同報系)を自動起動することにより、住民に緊急情報を瞬時に伝達するものであり、防災行政無線(同報系)は、災害対応のみならず、国民保護の観点からも、重要な役割を担うものとなっています。 このため、未整備市町村においては、早急に整備を図ることが求められています。
ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて 災害発生時に広範な被害状況を迅速に把握するためには、ヘリコプターによる上空からの映像を活用した情報収集が大変有効です。現在実用化されているシステムは、ヘリコプターから撮影した映像について、いったん地上の受信装置で受信し、これを経由して通信衛星に向けて伝送、さらにこれを地上で映像として受信する仕組みになっています。 このため、リアルタイムで映像を見るためには、受信装置がヘリコプターからの無線を受信可能な範囲内に設置されていることが不可欠ですが、固定して設置される受信装置については現在のところ全国を網羅する形で設置されていないため、これらカバーされていない地域においては中継車や可搬型受信装置を持ち込む必要があります。さらに平成16年10月に発生した新潟県中越地震の時のように、大規模災害により陸路が寸断されると、中継車や可搬型受信装置を持ち込めず、リアルタイムでは映像が見られません。 それを解消するための技術が、平成16年度に開発されたヘリコプター衛星通信システム(ヘリサット)です。ヘリサットを用いた場合、ヘリコプターから直接衛星に通信することにより、受信装置がない場所であっても災害時にリアルタイムで被災地情報収集が可能となります。消防庁としては、ヘリサットの映像品質の向上や搭載機材の小型化・軽量化などにより、消防防災分野での実用化に向け取り組んでいます。 そのほか、夜間など視界が効きにくい状況においても、ヘリコプターを活用した被災地情報収集活動が展開できるよう、ヘリコプターの夜間飛行やヘリコプターからの夜間撮影の実施に向け取り組み、迅速な災害対応のために最も重要となる初動時における被災地情報収集の充実を図ることとしています。
(2)マルチメディアの活用ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を全国の都道府県、消防本部に整備促進し、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。 また、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進める必要がある。イ 災害対応支援システムの充実 防災用地理情報システム(防災GIS)、全世界的衛星測位システム(GPS)等の活用を図りながら、消防防災対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるICT化推進のための共通基盤としてパソコンの整備及びこれらを結ぶLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が遅れている。 そこで電子自治体時代にふさわしい住民サービスを提供していくためには、消防本部においても情報基盤の整備を早急に進める必要がある。 このため消防庁では平成13年度からパソコンの一人一台体制の整備に必要な経費を地方交付税措置として消防費に算入する財政支援を行っている。
(4)携帯電話・IP電話等からの119番通報のあり方の検討 一般加入電話からの119番通報は、通報者の電話番号をもとに発信地を検索し、表示するシステムが構築されており、迅速な消防活動を行うために活用されている。 これまで携帯電話等からの119番通報は、代表消防本部といわれる消防本部が他の消防本部の管轄区域の119番通報も含めて一括で受信し、通報内容を確認した上で、当該区域を管轄する消防本部へ転送又は復唱して伝達する方式をとっていた。 この方式では、転送にかかる時間的遅延などの問題が指摘されていたことから、消防庁では、「携帯電話等を用いた119番通報のあり方検討懇談会」を開催するなど、消防関係機関や電気通信事業者等と連携を図りながら、発信電波を受信した基地局の位置情報をもとに接続先消防本部の振り分けを行い、管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムへの移行を平成17年度に行ったところである。 また、発信位置情報表示については、通常屋外からの発信で発信者が周辺の地理不案内の場合も多いため必要性が高い携帯電話では実現されておらず、IP電話等でも簡易な形態として事業者ごとに別々のコンピュータ端末に文字情報のみで表示するといった状況で、大都市消防本部では何台もの端末を設置せざるを得なかったため、その仕様の統一が望まれていた。 こうした中、平成16年6月に情報通信審議会から「携帯電話からの緊急通報における発信者位置情報通知機能に係る技術的条件」が報告されたことを受け、消防庁では平成17年度に「IPネットワークを用いた119番通報のあり方に関する懇談会」を開催、携帯電話・IP電話等からの緊急通報における発信位置情報表示を共通仕様により統一的に行うシステムを構築し、平成19年4月から携帯電話・IP電話等からの119番通報の際に発信位置情報が消防本部に通知されるシステムが稼働することとなった(囲み記事「119番通報を巡る最近の動きについて」参照)。現行の固定電話からの発信位置表示システムの新たな発信位置表示システムへの統合についても、今後検討していくこととしている。
119番通報を巡る最近の動きについて 最寄りの消防署から消防車や救急車が1秒を争って出動するのは、ほとんどの場合119番通報によるものです。そういった意味で119番通報は国民と消防活動をつなぐホットラインともいえるものです。その歴史は大変古く、当初は112番であった大正時代の火災報知通報からスタートしていますが、こうした119番通報に関しても、様々な通信技術の向上により、最近は色々な動きがあります。 例えば、携帯電話については、そのサービス開始時には119番通報自体が不可能でしたが、関係者間で協議を行った結果、地域ブロックの代表消防本部でいったん受信し、発信場所を管轄する消防本部に転送する方式が採用されました。しかし、携帯電話からの通報件数が総数の2割を超えるなど年々増加する中で、転送のために時間を要するといった問題点があったため、消防庁において検討を行った結果、管轄する消防本部に直接119番通報される仕組み(直接受信方式)を平成17年度に全国的に導入することとしました。 また、119番通報者の発信位置を消防本部の指令台ディスプレイに表示するシステムについては、屋外からの通報で住所不案内の場合も多い携帯電話においては存在せず、また、IP電話においては各電話事業者が独自の仕様で消防機関に接続していたため、消防本部の指令台に多くのモニターが並ぶといった不都合も生じておりました。そのため消防庁においては、平成17年度から携帯電話・IP電話からの通報に係る発信位置表示システムの検討を進め、119番通報時に携帯電話(第3世代)からは通報者の緯度・経度、IP電話からの通報には住所情報が一元的に消防本部に通知されるシステムが平成19年4月から開始することになりました。 このように、消防庁としては119番通報を巡る最近の様々な動きに対して、消防活動がより迅速に、より効率的に行われるように取り組んでいるところです。各種電話から119番緊急通報(平成19年度からの例)
(5)消防防災分野における申請・届出手続の電子化の取組み 申請・届出等手続の電子化の取組みについては、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてぺーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやりとりしてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされた。それを踏まえ、総務省では「総務省申請・届出等手続の電子化アクション・プラン」(平成14年7月25日総務省行政情報化推進委員会了承)が策定された。 これを受けて、消防庁では「総務省関係法令に係る地方公共団体関係手続のオンライン化実施要領」(平成15年3月31日)において、地方公共団体に対する申請・届出等の手続をオンライン化するための事務処理手順、システムの使用等の実施方策を提示したところである。 消防防災分野における申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うものとしては、検定対象機械器具等の型式承認の申請、製造所等(移送取扱所)の設置許可申請等があり、すべてオンライン化を完了しており、今後、利用の促進に努めることとしている。また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)については、平成14年度にオンラインシステムの開発を行い、汎用受付システムとの連携を図るための調整を行った上で、モデル消防機関において実証実験等を行った。平成15年度には国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化のために必要な措置を図ったところであり、今後も引き続き国と地方公共団体とのオンライン化を推進し、行政事務の効率化等に努めることとしている。
第3章 国民保護への取組み1 国民保護法の目的等(1)国民保護法制定の経緯・目的 平成15年6月に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」が成立・施行され、平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)」が成立し、関係政令とともに9月17日に施行された。 これにより、武力攻撃事態や大規模テロ等の緊急対処事態に対処するための態勢が整えられたところである。 国民保護法の目的は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするため、国、地方公共団体、指定公共機関等の責務をはじめ、住民の避難に関する事項、避難住民等の救援に関する事項、武力攻撃災害への対処等の措置について定めることにより、国全体として万全の態勢を整備することである。
(2)国民保護法に基づく地方公共団体の役割 国民保護法に基づき、地方公共団体は、警報の伝達や避難の指示、救援の実施等の国民保護措置の多くを実施する責務を有するなど、大きな役割を担うこととされている。また、平時においても、いざというときに迅速に国民保護措置が実施できるよう、国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)の作成や必要な組織の整備、訓練の実施などが求められている。 また、消防も市町村長の指揮の下に避難住民の誘導や、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護し、武力攻撃災害を防除及び軽減することが規定されるなど、重要な責務を負うこととされている(第3−1図)。第3-1図 国民の保護に関する措置の仕組み
2 これまでの主な取組み(1)基本指針の作成 国民保護法に基づき、政府は、国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を定めることとされた。 基本指針に定める事項は、〔1〕武力攻撃事態等における国民保護措置の実施に関する国としての基本的な方針、〔2〕武力攻撃事態の想定に関する事項、〔3〕指定行政機関、都道府県及び指定公共機関が国民保護計画又は国民保護業務計画を作成する際の基準となるべき事項、〔4〕関係機関相互の連携協力の確保に関する事項、などとされているが、内閣官房を中心に検討が進められ、平成17年3月25日に閣議決定されたところである。 基本指針は全6章で構成されており、〔1〕基本的人権の尊重や指定公共機関の自主性の尊重など、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針、〔2〕着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の4つを想定される武力攻撃事態の類型とし、それぞれの特徴及び留意点を示した武力攻撃事態の想定に関する事項、〔3〕国民保護措置を的確かつ迅速に実施するための体制の整備に関すること、〔4〕住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処に関する措置、国民生活の安定、武力攻撃災害の復旧等についての国、地方公共団体等のとるべき措置、〔5〕武力攻撃に準ずる大規模テロ等の事態(緊急対処事態)における国民保護措置に準じた措置の実施、等が定められている。
(2)指定行政機関等の計画作成 指定行政機関(各省庁)の長及び指定公共機関(NHK、日本赤十字社、JR、NTT等)は、基本指針に基づき、その所掌事務に関する国民保護計画又はその業務に関する国民保護業務計画を作成することとされている。消防庁を含む指定行政機関の国民保護計画については、平成17年10月28日に閣議で了承された。指定公共機関の国民保護業務計画についても、平成18年5月までに全指定公共機関で作成された。 都道府県知事は、基本指針に基づき、国民保護計画を作成することとされており、平成17年度中に全都道府県で作成された。 市町村長及び指定地方公共機関は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画又はその業務に関する国民保護業務計画を作成することとされており、これらは平成18年度を目途に作成することとされている(第3−2図)。第3-2図 国民の保護に関する「基本指針」及び「計画」の作成スケジュール
3 消防庁国民保護計画の作成 消防庁は、指定行政機関の一つとして、基本指針に基づいて、その所掌事務に関する国民保護計画を作成することとされている。消防庁の国民保護計画では、消防庁が実施する国民保護措置の内容及び実施方法や体制、関係機関との連携方法等を定めるものである。 消防庁の国民保護計画は、パブリックコメントや各省庁との調整を経た上で、平成17年10月28日に他の省庁の国民保護計画と一括して閣議で了承された。 消防庁国民保護計画の主な特徴は、次のとおりである。〔1〕 テロやゲリラの侵攻など突発的な事案においては、全職員体制の消防庁緊急事態連絡室を設置し、地方団体との連携や情報交換のための初動体制を整備することとしたこと。〔2〕 弾道ミサイルのような時間のない場合の警報の伝達については、全国瞬時警報システム(J-ALERT)等により、地方団体や住民に瞬時に情報を伝達することとしたこと。〔3〕 自然災害の場合等において他県の消防部隊が応援に駆けつける緊急消防援助隊の仕組みを、武力攻撃やテロの場合においても活用するため、部隊の増強や資機材の整備を図ることとしたこと。 特に、NBC災害に対応するためには、対応能力を持つ緊急消防援助隊による応援が重要なため、当該拠点となる消防本部の充実を図ることとしたこと。〔4〕 住民の避難誘導において重要な役割を果たす消防団や自主防災組織の充実を図るため、啓発の充実や設備の整備等を支援することとしたこと。〔5〕 住民の避難誘導や被災者の救助にあたっては、平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故のように事業所の協力が必要となることから、被災時における事業所と地方公共団体との連携を支援することとしたこと。
4 都道府県における国民保護計画の作成 都道府県知事が作成する国民保護計画は、当該都道府県の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該都道府県が行う国民保護措置に関する事項やその実施体制、市町村の国民保護計画及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の作成の基準となるべき事項等を定めることとされている。また、都道府県が国民保護計画を作成する際には、基本指針や指定行政機関及び他の都道府県の国民保護計画と整合性等を確保する観点から、内閣総理大臣に協議しなければならないこととされている。 多くの都道府県においては、平成16年12月議会及び平成17年2月(3月)議会で国民保護協議会に関する条例を制定し、基本指針の閣議決定を受けて国民保護計画の検討を本格化させた。平成16年から独自の計画案を作成して公表していた福井県及び鳥取県については、基本指針に基づいた所要の修正を行うとともに国に協議を行った結果、平成17年7月22日にその国民保護計画が閣議で了承された。その後、他の都道府県でも鋭意検討が進められ、平成17年度末までにすべての都道府県において国民保護計画が作成された。
5 市町村における国民保護計画の作成(1)市町村における国民保護計画の作成 市町村長は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画を作成することとされている。市町村の計画では、当該市町村の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該市町村が行う国民保護措置に関する事項や実施体制等を定めることとされている。また、市町村が国民保護計画を作成する際には、都道府県や他の市町村の国民保護計画との整合性等を確保する観点から、都道府県知事に協議しなければならないこととされている。 市町村における国民保護計画作成のスケジュールとしては、平成17年度に作成された都道府県の国民保護計画に基づいて作成することになるため、平成18年度を目途に作成することとされている。 市町村は、武力攻撃事態においては、警報や避難の指示の住民への伝達、避難住民の誘導、安否情報の収集・提供など直接住民と接する非常に重要な役割を担うこととされている。このため、夜間・休日等を問わずに通知される警報等に的確に対応できるような24時間の即応体制を構築しておくことが求められる。また、避難住民の適切な誘導のため、日頃から消防団や自主防災組織、警察等との連携・協力関係を構築しておくことが非常に重要である。 多くの市町村においては、平成18年2月(3月)議会及び6月議会で国民保護協議会に関する条例を制定し、都道府県の国民保護計画の作成完了を受けて国民保護計画の検討を本格化させた。平成18年3月に鳥取県三朝町において、市町村で初めて国民保護計画が作成されたところであり、他の市町村においても鋭意検討が進められている(第3−3図)。第3-3図 市町村における国民保護計画作成に係る取組み状況 なお、市町村におけるこのような取組みについては、都道府県の支援が不可欠となるので、都道府県の積極的な対応が求められるところである。
(2)市町村国民保護モデル計画の作成 消防庁では、市町村における国民保護計画の作成を支援するため、「地方公共団体の国民保護に関する懇談会」を定期的に開催し(第3−1表)、有識者からご意見をいただきながら、市町村国民保護モデル計画の検討を行い、平成18年1月に各地方公共団体に通知したところである(囲み記事「市町村国民保護モデル計画について」参照)。第3-1表 地方公共団体の国民保護に関する懇談会における議論の経過 また、市町村長は、避難の指示があったときは、国民保護計画に基づき、避難実施要領を作成し、避難住民の誘導を行うこととされている。武力攻撃事態等において迅速に避難実施要領を作成するためには、平素よりあらかじめ複数の避難実施要領のパターンを準備しておく必要がある。消防庁としては、各市町村のパターンの作成を支援するため、市町村国民保護モデル計画と併せて「避難実施要領のパターン作成に当たって(避難マニュアル)」を作成し、各地方公共団体に通知したところである。
市町村国民保護モデル計画について 消防庁では、市町村の国民保護計画の作成を支援するための技術的助言として、平成18年1月31日付けで「市町村国民保護モデル計画」及び「避難実施要領の作成にあたって(避難マニュアル)」(以下「市町村国民保護モデル計画等」という。)を通知しました。 都道府県の国民保護計画については、関係者の努力により、平成17年度中にすべての都道府県で作成されたところであり、平成18年度においては、各市町村が国民保護計画の作成に取り組んでいるところです。以下においては、市町村国民保護モデル計画の特徴を説明します。市町村国民保護モデル計画の特徴〔1〕初動体制の迅速な確立 武力攻撃の兆候について覚知した場合等において、速やかに初動的な措置が実施できるよう全庁的な「緊急事態連絡室」(事態認定前)や「国民保護対策本部」(事態認定後)の設置を明記。 その際、常備消防機関との連携を図りつつ当直等の強化を行うなど、速やかに市町村長及び国民保護担当職員に連絡が取れる24時間体制を整備。〔2〕「現地調整所」における関係機関との情報共有や活動調整 武力攻撃の現場において、市町村が関係機関(消防、警察、自衛隊、医療 等)と情報を共有しながら、活動内容の調整を図ることができるよう、「現地調整所」の設置を明記。 市町村や消防機関は、警察機関や自衛隊からの情報により、職員を安全確保した上で、避難住民の誘導や危険地域における当該機関等による措置の要請を行うことが可能。市町村対策本部○ 市町村対策本部では、市町村長を的確に補佐できるよう、統括班や対策班、情報通信班、広報班、庶務班等を設置し、迅速な意思決定を行うとともに、全庁的な体制を構築。○ 事態認定前の段階においても、対策本部と同様に「緊急事態連絡室」を設置し、初動対応を行い、切れ目のない対応を確保。○ 常備消防機関と連携を図りつつ、当直の強化等を行う等により、24時間体制を整備。現地調整所○ 現地調整所では、避難誘導時や被災の現場において、消防機関、警察機関、自衛隊、医療機関等との情報共有や活動調整を行い、同一の方針や認識の下での活動を実現。○ 現場における関係機関の最新情報を集約することで、職員の活動上の安全確保に活かすとともに、退避の指示や警戒区域の設定等の権限行使を的確なものにすることが可能。〔3〕警報の迅速な伝達 警報の伝達について、市町村は、受信後、速やかに住民に伝達するため、事態の状況に応じて、防災行政無線や広報車、自治会、消防団等による伝達の方策等を記載。 また、弾道ミサイル攻撃に際しては、メディアのほか、津波警報等の伝達の取組みと併行して、衛星通信ネットワークを活用した全国瞬時警報システム(J-ALERT)による伝達を想定。〔4〕避難住民の円滑な誘導 市町村長は、都道府県知事による避難の指示を受け、避難実施要領を作成し、住民の避難誘導を行うこととなるが、弾道ミサイル攻撃の場合都市部におけるゲリラ攻撃やNBC攻撃、離島への攻撃など、事態の類型に応じた「7パターン」の避難実施要領の例を提示。 また、避難経路における職員の効果的な配置や住民のパニック防止のための措置、警察機関や自衛隊との現地調整所における連携等、避難誘導時の留意点を整理して記載。
6 今後の課題等(1)普及啓発・研修・教育 国民保護法上、政府は、国民保護措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めることとされている。また、地方公共団体は、国民保護措置のうち、警報の通知・伝達、避難の指示・避難住民の誘導や救援に関する措置などを実施する責務を有しているため、具体的な措置を行う職員に対し、制度について研修を行うとともに、地方公共団体が実施する国民保護措置の具体的内容について、十分周知徹底しておくことが求められる。国民保護法の施行を踏まえ法律の趣旨を浸透させ、武力攻撃事態等における国民保護措置について理解を得るまでには、今後、繰り返し地方公共団体の一般職員、消防吏員、消防団員等に対して普及・啓発活動を行っていく必要がある。 地方公共団体や消防機関における危機管理や国民保護に関する専門的な知識を有する職員を養成するため、消防大学校におけるカリキュラムとして国民保護コースが設けられたところであるが、都道府県の自治研修所や消防学校においても、国民保護に関するカリキュラムの創設等に積極的に取り組む必要がある。 また、国民保護措置を円滑に行うためには、自主防災組織をはじめとする住民に対しても、国民保護法の仕組みや国民保護措置の内容、避難方法等について、広く普及啓発を行うことが大切である。 消防庁では、地方公共団体における普及・啓発・研修・教育を支援する取組みを行っている。平成16年12月には、国民保護法をはじめとする有事関連法の概要や国及び地方公共団体の役割等についてまとめたパンフレット「国民の保護のためのしくみ」(消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)に掲載)を作成し、平成17年度には、消防団員や自主防災組織リーダーを対象としたリーフレット「なくてはならない国民保護」と、武力攻撃事態等における消防機関の役割などをまとめた視聴覚CD「消防機関における国民保護措置上の留意事項等について」を作成した。 また、内閣官房において、武力攻撃やテロなどから身を守るための留意点等をまとめた国民向けの啓発冊子「武力攻撃やテロなどから身を守るために」が作成されている(国民保護ポータルサイト(http://www.kokuminhogo.go.jp/)に掲載)。
(2)情報伝達システム 武力攻撃事態等において、住民の避難を的確かつ迅速に行うためには、武力攻撃事態等に関する情報を、迅速に住民等に伝達できるシステムを構築しておくことが大変重要である。特に、弾道ミサイル攻撃のように対処に時間的余裕がない場合に、できる限り迅速に住民に情報を伝達するためのシステムの構築が喫緊の課題となっている。 このため、消防庁では、消防庁から衛星通信ネットワークを通じて、直接、市区町村の同報系防災行政無線を起動させることによりサイレンを自動吹鳴させるとともに、緊急地震速報、津波警報、気象警報などの防災情報や弾道ミサイル攻撃に関する情報等を人手を介さず、瞬時かつ自動的に住民に伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備に向け、取り組んでいる(第3−4図、囲み記事「全国瞬時警報システム(J-ALERT)による使用対象と放送内容について」参照)。第3-4図 全国瞬時警報システム(J-ALERT) 平成17年度においては、31市町村の協力を得て実証実験を行い、機器・システムの標準仕様を決定したところであり、平成18年度においては、受信装置のソフトウェアの改修等を行い、一部の情報については前述の31市町村を対象として運用を開始する予定である。 今後は、地方公共団体における機器整備が主たる課題であり、消防庁としても、機器整備の財源に地方債を充てることができるようにしている等、地方公共団体の取組みを支援しているところである。 また、J-ALERTの整備が進む場合、緊急の際に住民に危機を伝えるサイレン等を吹鳴する同報系の市町村防災行政無線が、住民の生命を守る上で極めて重要な役割を果たすこととなる。平成18年3月31日現在、同報系の市町村防災行政無線の整備率は74.6%にとどまっているが、その役割が今後一層強化されることも踏まえ、市町村においては、その整備や可聴区域の拡大等に最大限努力する必要がある。 さらに、ハード面の整備にあわせて、防災行政無線からの情報が伝達されたときに、どのような行動を取るべきか等の必要な情報を住民に周知する等のソフト面での取組みも重要である。
全国瞬時警報システム(J-ALERT)による使用対象と放送内容について 消防庁では、J-ALERTの運用について、平成17年10月から平成18年3月までの間、「サイレン等による瞬時情報伝達のあり方に関する検討会」において検討を行い、平成18年3月27日に報告書をまとめました。 ここでは、報告書に示されたJ-ALERTの使用対象と放送内容について、ご紹介します。1 使用対象(原則) J-ALERTの使用対象は次のとおりです。〔1〕 大津波警報〔2〕 津波警報〔3〕 緊急火山情報〔4〕 緊急地震速報(予測震度5弱以上)〔5〕 弾道ミサイル情報〔6〕 航空攻撃情報〔7〕 ゲリラ・特殊部隊攻撃情報〔8〕 大規模テロ情報(緊急対処事態に該当するような事例を想定)〔9〕 津波注意報〔10〕 震度速報〔11〕 気象警報〔12〕 指定河川洪水予報〔13〕 その他、土砂災害警戒情報、東海地震予知情報、臨時火山情報等の追加についても今後検討  ※ 津波警報には「オオツナミ」と「ツナミ」の2種類あり、報告書では、便宜的に「大津波警報」、「津波警報」と記述している。 J-ALERTによる情報伝達は、同報無線等の市区町村有の設備を使用すること等から、どのような情報をJ-ALERTを用いて送信するかについて(自動起動機の設定)は、最終的には、市区町村が判断することとなります。 しかしながら、〔1〕から〔6〕の情報については、基本的に、国が第一報を覚知すると考えられること、極めて短時間での瞬時情報伝達と住民避難が必要となること、災害が発生した場合に大きな被害が予測されることから、他の手段による伝達に加え、対象となる地方公共団体において、原則としてJ-ALERTによる瞬時情報伝達も行うこととし、あらかじめ地方公共団体にもそのような運用を行うよう周知しておくこととしています。2 放送内容 先に挙げた各情報の放送内容については、以下の理由から、自然災害情報(〔1〕〜〔4〕及び〔9〕〜〔13〕)に関しては、基本的に、国側で統一的又は標準的な放送内容の設定を行わず、表「J-ALERTによる放送例」のとおり、参考となる放送文言例や音声、考え方を示すこととし、それを踏まえて地方公共団体において、放送内容を関連機器設置時に事前に音声登録することとしています。ア 同報無線の屋外スピーカーの設置状況が地方公共団体ごとに異なり、反響の状況や放送スピードが千差万別であること。(例 放送スピードが遅い場合は短めの放送、速い場合はサイレンやメッセージ量も多い等)イ 地形により放送内容も千差万別(例 河川や海岸の有無)であること。ウ 従来の経緯から、放送呼びかけ方法も地方公共団体ごとに異なること。(例 冒頭の呼びかけも、「こちらは防災○○です」、「広報○○」、挿入無し等、団体ごとに分かれる。)エ 大半の地方公共団体が既に知見を有し、地方公共団体固有の放送音声も有しているので、その転用により、吹き込みは容易であること(緊急地震速報を除く。)。 有事関連情報(〔5〕〜〔8〕)については、それに密接に関連する国民保護措置等が法定受託事務であり、全国統一的な扱いが求められることや、地方公共団体からも統一的な放送内容の設定を求める意見が多いこと等を踏まえ、標準的な放送内容として別添の放送内容及び音声を提示することとしています。ただし、上記ア〜ウの地域事情等はこの場合にも当てはまることから、それらを踏まえた修正を行うことは差し支えないとしています。表 J-ALERTによる放送例
(3)地方公共団体における体制整備の推進 都道府県知事及び市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、それぞれの区域に係る国民保護措置を的確かつ迅速に実施するために必要な組織を整備しなければならないこととされている。とりわけ、24時間即応可能な体制の整備が求められている。 阪神・淡路大震災後、地方公共団体においては、危機管理体制の充実が図られてきており、平成18年4月1日現在、部次長級以上の防災・危機管理専門職を設けている都道府県は44団体となっている。 市町村においても、特に初動時の連絡体制等について、消防機関との連携を強化するなどにより、充実を図ることが必要である。その際は、国民保護のみならず、防災も含めた危機管理全般の初動体制にどう対処するかという視点が重要である。また、国民保護を中心とした危機管理体制は、全部局の総合調整が重要であり、消防機関や防災部局への丸投げが生じないよう留意することも大切である。 なお、これら地方公共団体の体制強化を支援するため、平成18年度においては、標準団体ベースで、都道府県で6人分、市町村で3人分の国民保護対策関係職員の人件費を交付税算定上、基準財政需要額に計上しているところである。
(4)訓練 国民保護法では、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれの国民保護に関する計画又は国民保護に関する業務計画で定めるところにより、他の指定行政機関の長等と共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならないとされている。 特に、国民保護計画等を実効性のあるものとするには平素から様々な事態を想定した実践的な訓練を行い、国民保護措置に関する対処能力の向上や関係機関との連携強化を図ることが重要である。 平成18年度、消防庁では、関係省庁や地方公共団体と共同で実施する訓練(囲み記事「平成18年度国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練について」参照)のほか、6月2日に消防庁単独で消防庁国民保護図上訓練を実施した。この訓練では、〔1〕国民保護法等に基づく通知等の事務、〔2〕政府対策本部との連携要領、〔3〕消防の応援等に関する消防庁長官の指示の3点を主要訓練項目として、消防庁における対処について検証を行ったところである。 地方公共団体については、全都道府県で国民保護計画が作成され、市町村においても国民保護計画の作成が進んでおり、今後、積極的に訓練を実施し、作成した国民保護計画の実効性について検証することが重要となっている(第3−5図)。第3-5図 平成18年度国民保護訓練 このため、地方公共団体において訓練を行う際には、防衛庁・自衛隊、警察機関、消防機関等の関係機関と連携し、実践的な訓練にすることが求められる。また、防災訓練と有機的な連携を図り、武力攻撃災害や緊急対処事態における災害だけではなく、自然災害や事故災害を含めた様々な災害に対処できる能力を総合的に高めていくことが必要である。
平成18年度国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練について 全都道府県において国民保護計画が策定されたこともあり、平成18年度は、国と地方公共団体と共同で実施する訓練は昨年度よりも増え、実動訓練3件、図上訓練8件が実施又は実施予定となっています(平成17年度実績:実動訓練1件、図上訓練1件)。(1)実動訓練 平成18年度の国と地方公共団体が共同で行う実動訓練は、北海道(8月25日)、茨城県(9月29日)、鳥取県(11月26日)の3道県において実施しました。 石油コンビナートや原子力施設へのテロ、市街地での化学剤テロの発生を想定し、国の現地対策本部や県の対策本部等の設置、それら相互の連絡調整、住民の避難誘導、医療等の救援、さらには災害対処に関する措置など、国民保護のための一連の措置についての訓練で、一部の訓練の実施に当たっては、シナリオを事前に示さない、いわゆるブラインド方式の訓練が部分的に導入されるなど、より現実に即した実践的な訓練となっています。(2)図上訓練 平成18年度国と地方公共団体が共同で行う図上訓練は、埼玉県(10月26日)、東京都(11月10日)、福井県(10月20日)、大阪府(11月2日)、鳥取県(8月9日)、愛媛県(2月上旬)、福岡県(10月16日)、佐賀県(2月上旬)の8都府県で実施又は実施予定となっています。 これらの図上訓練では、国、地方公共団体の対策本部の運営、それら相互の連絡調整、警報の通知、避難の指示等、国民保護措置に係る状況判断及び情報伝達要領についてブラインド方式を取り入れた訓練が行われ、各機関の連携を強化し、国民保護に係る事案発生時の対処能力を向上させる上で、大変有意義なものとなっています。 なお、これらの国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練については、国民保護法で定めるところにより、その費用は原則として国が負担することになっています。図上訓練(福岡県)実動訓練(北海道)実動訓練(福井県)
(5)安否情報の収集・提供 国民保護法上、市町村長及び都道府県知事は、避難住民等の安否情報の収集、整理に努めることとされており、総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報についての照会に速やかに回答することとされ、その際には個人情報の保護に十分留意しなければならないこととされている。安否情報の具体的な照会及び回答の手続等については、同法施行令及び「武力攻撃事態等における安否情報の報告方法並びに安否情報の照会及び回答の手続その他の必要な事項を定める省令」(平成17年総務省令第44号)に規定されている(第3−6図)。第3-6図 安保情報の流れ(関係機関相関イメージ) 消防庁では、平成17年度に「武力攻撃事態等における安否情報のあり方に関する検討会」(座長:廣井脩東京大学教授)を設置し、家族が近親者の運命を知る権利、個人の情報の保護等を十分踏まえた国民保護法に基づく安否情報事務の具体的運用について検討を行い、報告書を取りまとめた。その結果に基づき、効率的な事務処理のため、安否情報システムの構築を行うこととしている(囲み記事「安否情報システムについて」参照)。 なお、安否情報の収集・提供に当たっては、今後、国民保護措置を実施する中で当該事務に従事する人員をどのように確保するか、安否情報を入手したいという国民の要請に応える一方で個人情報を保護するためにはどうすべきか等の検討を深めていく必要がある。
安否情報システムについて1.安否情報に係る法体系 従来、安否情報(個人の生死及び負傷の程度に関する状態、避難住民の所在等の安否に関する情報であり、氏名、性別等の個人を識別するための情報を含む。)の収集・提供に係る法律上の条文はありませんでした。平成16年6月18日に公布された「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下「国民保護法」という。)において、初めて、武力攻撃事態等における安否情報の収集・提供の根拠条文が創設されました。○情報を収集する対象 避難住民、武力攻撃災害等により死亡・負傷した住民○収集、整理及び報告を行う者(書面報告が原則) 市町村長  : 収集・整理の努力義務及び都道府県知事への報告義務を負う 都道府県知事: 収集・整理の努力義務及び総務大臣への報告義務を負う○国民への回答(書面照会、書面回答が原則) 総務大臣、都道府県知事、市町村長:国民からの照会への回答義務及び個人情報保護への留意義務を負う 収集する情報は政令で定められており、主なものは、氏名、出生の年月日、男女の別、住所、負傷状況・死亡関連情報、居所、連絡先などです。2.安否情報事務とシステム 安否情報事務は、個人情報保護への留意と非常時における膨大な情報整理との両方を求められる事務であることを踏まえ、そのあり方を整理し、事務の効率化のためシステムを構築することが不可欠です。 消防庁では、平成17年度にまとめられた「武力攻撃事態等における安否情報のあり方に関する検討会」(座長:廣井脩東京大学教授)の報告書に基づいて、平成18年度にシステム開発を行い、平成19年度より運用を開始する予定です。 事務及びシステムの主な特徴は次のとおりです。(1)国民保護法の安否情報事務は、従来の情報提供(民間事業者、病院、警察機関)に加えて、「家族がその近親者の運命を知る権利」を満たすため、より手厚く+αの措置として、既存の情報提供スキームから漏れた者等に係る安否情報回答を可能とする仕組みとして位置付けることが適当です。(2)安否情報の収集時に、「誰に対して回答するか」「安否情報のどの範囲まで回答するか」に係る希望・同意を確認し、総務省、地方公共団体は、原則として、当該希望・同意に基づいて回答を行います。また、照会は、原則として窓口等において身分証明書により照会者の本人確認を実施した上で行います。(3)公表は、個人情報保護法、個人情報保護条例等に基づき、同意の有無や公益上の必要性を勘案し、情報を収集した市町村、都道府県、総務省が判断し実施します。(4)被災市町村、避難住民受入市町村などが収集した安否情報をすべての地方公共団体及び総務省で共有することにより、国民がどの地方公共団体に照会しても回答することを可能とします。(5)インターネットによる氏名検索機能を用意し、窓口照会をする前にインターネットで行政機関が照会に係る者の情報を保有しているかどうかを確認できるようにします。(6)個人情報の漏えい防止のための厳重なセキュリティ対策が必要です。例えばシステムの回線は、行政機関専用の総合行政ネットワーク(LGWAN)と暗号化技術を用いたインターネット回線を活用することにしています。(7)構築する安否情報システムは、自然災害や事故災害において地方公共団体が自主的に利用することも想定しています。安保情報システムの全体的な運用イメージ国民向けインターネット検索システム(イメージ)
(6)特殊標章等の取扱い 指定行政機関の長、地方公共団体の長等は、武力攻撃事態等においては、指定行政機関や地方公共団体の職員で国民保護措置に係る職務を行う者又は国民保護措置の実施に必要な援助について協力をする者に対し、これらの者又はこれらの者が行う職務等に使用される場所等を識別させるため、ジュネーヴ条約第一追加議定書第66条3の国際的な特殊標章及び身分証明書を交付し、又は使用させることができることとされている。この特殊標章等については、国民保護法上、みだりに使用してはならないこととされており、各交付権者においては、それぞれ交付対象者に特殊標章等を交付する際の取扱要領を定め、交付台帳を作成すること等により、特殊標章等の適正使用を担保することが必要となっている。 消防庁においては、関係省庁間の申合せを踏まえ、消防庁特殊標章交付要綱を作成した。また、地方公共団体や消防機関に対し、各交付権者が作成することとなっている交付要綱の例を通知するなど、特殊標章等が適正に取り扱われ、かつ、平素の訓練や啓発などにおいて積極的に活用されることにより国民の国民保護への理解を深めてもらうための取組みを行っている(第3−7図)。第3-7図 特殊標章
7 テロ対策 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置した。また、イラク情勢等の緊迫化を踏まえ、平成15年3月18日、消防庁に「イラク情勢等を踏まえた消防庁テロ対策室」を設置するとともに、テロ災害への一層の対処の強化を図るため、平成17年4月1日からテロ対策専門官を設置するなど所要の対応態勢をとった。加えて、緊急対処事態等を想定した訓練を繰り返し実施し、対応体制の充実を図っている。さらに、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期するため、次のような取組みを実施した。
(1)地方公共団体における危機管理体制 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、機会を捉え各都道府県に対して危機管理体制の点検、強化等の要請を累次にわたって行った。特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築など、所要の体制整備について要請を行い、全都道府県においてテロ対策本部等が設置された。また、テロ対策に関する国と地方公共団体との連携、さらには警察機関との一層の連携の強化を図った。
(2)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防機関、警察機関、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要があり、平成13年11月には、政府のNBCテロ(核(Nuclear)物質、生物(Biological)剤及び化学(Chemical)剤を用いたテロ)対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられた。消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 また、米国における炭疽菌事件などを踏まえ、今後、生物テロ災害の発生する危険性が考えられることから、平成15年5月に炭疽菌、天然痘の災害発生に備えるため、関係機関の役割分担と連携、必要な処置を明確化した「生物テロへの対処」が取りまとめられ、その旨を各都道府県内の関係部局、市町村及び消防機関に対して周知し、万全の体制を図った。 平成16年7月27日の東京の地下鉄で実施された消防・警察、その他関係機関による化学剤テロ災害合同訓練、同年11月30日の化学テロ対処に関する図上訓練、平成17年10月28日の緊急対処事態図上訓練などにより、各都道府県内では比較的規模の大きな消防本部等を中心に、特にNBCテロ災害を想定した合同訓練を実施し、関係機関の連携の強化を図っている。
(3)テロ災害に対応するための消防資機材の整備 NBCテロに対し、消防隊員の安全を確保しながら迅速に対応するためには、身体防護や検知のための特殊な資機材を用いた消防活動を実施する必要がある。消防庁では、米国における炭疽菌事件の発生などを踏まえ、特に、NBCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算において、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し、各都道府県の代表的な消防本部に対して無償貸与している。平成17年度には、テロ等によるBC災害時に備えた広域応援体制の強化を図るため、消防本部に対して、BC災害対応資機材の取扱いを習熟させるための検知部材を再整備し、平成18年度も引き続き検知部材を整備し、NBCテロ災害の対処能力の強化を図っている。 また、国庫補助の対象に、テロ対策用特殊救助資機材として、平成14年度に陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器、平成16年度にNBC対応車両を新たに加えている。 さらに、大規模特殊災害やテロ災害に対応するため、高度な救助技術に関する知識・技術、各種資格等を兼ね備えた救助隊員で構成される特別高度救助隊・高度救助隊を整備するとともに、特殊な救助用資機材や高度救助用資機材等の整備を行っているところである。
(4)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識、技術が必要である。このため、消防庁では消防職員及び消防団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防本部・全消防団等に配付した。 また、消防大学校においては、テロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、平成16年度からNBC災害講習会を新設した。さらに、平成18年度から消防大学校における教育訓練等の見直しを行い、特別高度救助隊等の養成講座として、緊急消防援助隊教育科(特別高度救助コース等)を新設し、実技については、より実践的な意味もあって、先のNBCコースと合同で実施していくところである。 一方、都道府県の消防学校においても、平成16年度から特殊災害科が新設されている。
北朝鮮弾道ミサイル発射事案及び核実験実施情報への対応について 平成18年7月5日、3時30分頃から17時20分頃の7度にわたり、北朝鮮から弾道ミサイルが発射されました。 また、北朝鮮が核実験を実施したとの情報が、10月9日11時50分に、朝鮮中央通信から報道され、我が国においても、気象庁が同日10時35分頃に発生した自然地震とは異なる震動波形を探知するとともに、我が国政府が、27日、「北朝鮮が核実験を行った蓋然性が極めて高いものと判断」する政府見解を発表しました。 これらの事案に対し、消防庁では、次のような対応をとりました。〔弾道ミサイル発射事案〕 消防庁では、北朝鮮のミサイル発射実施情報入手後、直ちに関係者を参集させ、情報収集に努めるとともに、都道府県に対して、情報提供を実施しました(政府の対応等についての情報提供は5日から14日までに計17回)。○ 消防庁の主な対応7月5日〔1〕5時   職員が登庁し、情報連絡体制確立〔2〕6時   情報連絡室設置(第1次応急体制)  (6時18分)官房長官会見実施〔3〕6時30分 都道府県に対して、以下の内容の緊急連絡発出        ・北朝鮮からなんらかの飛翔体が発射された模様        ・消防庁では、関係者を直ちに参集させるとともに、午前6時に情報連絡室体制をとり、情報の収集に努力〔4〕8時33分 都道府県に対して、8時20分に発表された内閣官房長官声明(北朝鮮に対して、我が国として厳重に抗議するとともに、遺憾の意を表明)を情報提供〔5〕10時47分 都道府県に対して、防衛庁公表資料「北朝鮮から発射された弾道ミサイル又は飛翔体について」を情報提供〔6〕11時36分 都道府県に対して、閣議決定の「特定船舶の入港禁止措置に関する情報について」を情報提供〔7〕12時40分 都道府県に対して、11時45分に開催された安全保障会議でとりまとめられた「我が国政府の当面の対応について」(万景峰92号の入港禁止等9項目の対北朝鮮措置を決定)を情報提供〔8〕18時27分 都道府県に対して、第7発目の飛翔体について情報提供7月6日〜14日 防衛庁の発表資料や消防庁の連絡体制等について継続的に情報提供〔核実験実施情報〕 消防庁では、北朝鮮の核実験実施情報入手後、直ちに関係者を参集させ、情報収集に努めるとともに、都道府県に対して、情報提供を実施しました(政府の対応等についての情報提供は9日から27日までに計17回、放射能影響の観測結果についての情報は10日から24日まで計13回)。 また、テロ災害等不測の事態に対応できるように、消防庁対策室を設置し、情報収集及び関係機関との連携体制を強化するとともに、都道府県に対して「テロ災害に関する緊急警戒について」の通知を発出しました。○ 消防庁の主な対応10月9日・11時50分 都道府県に対して、消防庁において情報を確認中である旨の速報を送付(第1報)・13時09分 都道府県に対して、13時05分に実施された官房長官記者会見(政府ととして、事実確認に全力を挙げている旨発表)に関する情報提供・18時37分 都道府県に対して、18時30分に発表された官房長官声明(北朝鮮の核実験等につき、北朝鮮に対し厳重に抗議し、断固として非難する旨表明)を情報提供10月10日・17時40分 都道府県へ放射能影響の測定結果に関する情報発出(以降、24日まで13回にわたり、定期的に情報提供)10月11日・22時45分 都道府県に対して21時に開催された安全保障会議で取りまとめられた「北朝鮮による核実験に係る我が国の当面の対応について」(すべての北朝鮮籍船の入港禁止や北朝鮮からのすべての品目の輸入禁止等を決定)を情報提供10月12日・13時30分 消防庁次長を長とする消防庁対策室設置・15時25分 都道府県に対して、消防庁対策室の設置を知らせるとともに、地方公共団体において関係機関の連携強化を要請10月13日・18時10分 北朝鮮籍船の入港禁止等の措置が閣議決定されたことを受け、都道府県に対して「テロ災害に関する緊急警戒について」を通知、各都道府県において緊密な情報連絡体制を整える等、必要な措置を講じることを要請10月27日・16時37分 都道府県に対して、「北朝鮮が核実験を行った蓋然性が極めて高いものと判断するに至った」との「北朝鮮の核実験実施に関する政府の見解について」を送付(第17報)
第4章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成17年中の火災を原因別にみると失火が全体の65.3%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日頃からの備えや災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会をつくるためには、国民の防火防災意識の高揚に負うところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日頃から自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合、的確に対処できるような基礎知識を身につけておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送等を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」(春季:3月1日〜7日、秋季:11月9日〜15日)、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)、「防災週間」(8月30日から9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会を捉えて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者については内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、都市構造や建築構造、生活様式の変化等に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日頃から防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施について通知し、国民に対する防火意識の普及宣伝に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成17年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、消防庁では「あなたです 火のあるくらしの 見はり役」を平成17年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力のもとに、「住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災予防対策の推進」、「震災時における出火防止対策等の推進」を重点目標として、各種広報媒体を通じて防火広報活動を行った。これとあわせて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断、老朽化した消火器の一斉回収等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。イ 春季全国火災予防運動(平成18年3月1日〜3月7日) 平成18年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語の下に、「住宅防火対策の推進」、「認知症高齢者グループホーム等高齢者等が入居する防火対象物の防火安全対策の推進」、「放火火災・連続放火火災防止対策の推進」、「林野火災予防対策の推進」、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」を重点目標として、秋季同様、様々な行事を実施した。
(2)全国山火事予防運動(平成18年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動とあわせて同期間に実施している。 平成18年の全国山火事予防運動では、「火の用心 森の恵みを 未来まで」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗の設置やポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練の実施や研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と婦人(女性)防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成18年3月1日〜3月7日) 車両火災予防運動は、車両交通の関係者及び利用者の火災予防思想の高揚を図り、もって車両火災を予防することを目的として、消防庁と国土交通省の共唱により、春季全国火災予防運動とあわせて同期間に実施している。平成18年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、駅舎及びトンネルの防火安全対策の徹底として初期消火、通報及び避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成18年1月26日) 昭和24年1月26日の法隆寺金堂火災を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共唱により毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導のもとに重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。文化財防火デー消防訓練(防府市消防本部提供)国分寺金堂(重要文化財)
2 危険物に関する意識高揚 危険物に係る火災・漏えい等の事故は近年増加傾向にあり、それらの事故原因をみると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然に防止するために、消防庁では、平成2年度以降、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」とし、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図っている。具体的には、各都道府県、関係団体等と協力して、推進標語の募集や推進ポスターの作成をはじめとする広報活動を行っているほか、危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。 平成18年度の危険物安全週間(6月4日〜10日)では、F1レーサーの佐藤琢磨氏をモデルとした推進ポスターを作成し、「自主点検 欠かさぬあなたに グランプリ」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域においては、危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関による危険物施設を対象とした立入検査や自衛消防組織等と連携した火災等を想定した訓練などが行われた。
3 防災知識の普及啓発 平成18年においても記録的大雨が各地で観測され、また一方で、東海地震や東南海・南海地震、首都直下地震といった大規模地震の発生が予想されているところであり、災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならない。それと同時に国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識や技術を確実に身につけるとともに、日頃から家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災を心掛けることが極めて重要である。また、防災のための講習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、前者では大がかりな防災訓練等を中心とした行事が行われているのに対し、後者は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日頃の備えを高めていくことがその趣旨とされている。平成18年の防災とボランティア週間では、45都道府県のほか、512の市区町村が、防災写真展や防災講習会、消火・救助をはじめとした防災訓練等の事業を実施している。 このほか、消防庁においては、年間を通じテレビ放送を利用して、防災知識の普及啓発事業を実施しており、平成18年においては、第10回防災まちづくり大賞で応募のあった防災に関する優れた取組み事例の紹介や防災訓練・研修への参加啓発を目的とした番組を放送するとともに、地方公共団体では防火教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気・ガス施設、水道等のライフラインが寸断され、常備消防をはじめとする防災関係機関等の災害対応に支障をきたすことが予測される。また、広域的な応援態勢の確立には更に時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下に、組織的に、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や、救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ(第4−2−1図)、地域における自主的な防災活動の重要さが改めて認識されたところであり、これに伴い全国における自主的な防災組織の組織率も増加傾向にある(第4−2−2図)。第4-2-1図 生き埋めや閉じ込められた際の救助第4-2-2図 自主防災組織の推移 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定しての防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人(女性)防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成18年4月1日現在では、全国1,843市区町村のうち、1,619市区町村で120,299の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、66.9%となっている(附属資料26)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ835市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ339市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これに要した経費は平成18年度で合計30億327万円に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から平成17年度までの間、自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を整備し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図ったが、三位一体の改革に伴い、平成18年度に税源移譲の対象となっている。そのほか、財団法人自治総合センターにおいてはコミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、災害補償制度の充実、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による防災活動の啓発を行うとともに、自主防災組織の活動拠点づくりを進めるため、防災基盤整備事業により、自主防災活動をはじめとする地域防災力向上を図るための防災拠点施設の整備を促進している。また、自主防災組織活動を進めるための指針である「自主防災組織の手引」(冊子)や自主防災組織結成のためのポイントを、視覚的にわかりやすく示した「自主防災組織の結成にむけて」(CD-ROM)を作成し、それぞれ各自治体等へ配付している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 平成15年度には、「地域の安全・安心に関する懇話会」を開催し、その中で、地域防災力強化の決め手となる自主防災組織の活性化のためには、自主防災組織相互の協調・交流や行政・企業・教育その他の分野との連携が重要とされ、自主防災組織が相互の活動内容を知り、連絡を取り合うための都道府県や市町村単位の連絡協議会の設置が有効と示された。 また、平成16年5月の経済財政諮問会議において示された「地域安心安全アクションプラン」を踏まえ、地域の自主防災組織とその他の団体が連携し、公民館、消防団詰所などを活動拠点として、防災・防犯活動など幅広く展開し、地域の安心・安全を確保する「地域安心安全ステーション整備モデル事業」を平成16年度より実施しており、平成16年度には、全国15カ所で先行実施し、平成17年度以降モデル地域を増やし、現在では計218団体でモデル事業を実施している。平成17年度には、これまでの事業の成果を踏まえ、「地域安心安全ステーション整備モデル事業実施団体における活動事例集」を取りまとめた。平成18年度は、地域安心安全ステーションの全国展開を図るため、事業実施団体のリーダーや有識者などによる講演等により地域安心安全ステーションへの理解を深める出前講座を全国6箇所で実施している。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人(女性)防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人(女性)防火クラブは、家庭における防火の分野では、日頃から大きなウェイトを占める主婦等が火災予防の知識を修得し、地域全体の防火意識の高揚を図るものである。万一の場合にお互いに協力して活動できる体制を整え、安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等の活動を行っている。 阪神・淡路大震災においても、婦人(女性)防火クラブにより初期消火活動や避難所での炊き出し等が活発に行われた。 なお、平成18年4月1日現在、全国の組織数は、1万2,431団体、約195万人となっており、37道府県において都道府県単位で連絡協議会がつくられている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人(女性)防火クラブの活動内容の充実・強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 少年・少女を中心とした自主防災組織である少年消防クラブは、10歳以上15歳以下の少年少女により編成されるもので、この年代から火災・災害を予防する方法等を身近な生活の中に見出すとともに、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりの実地見学等の活動を行い、地域や家庭における防火防災を図るために各地域で組織づくりが進められている。 消防庁では、関係機関とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成17年度は、特に優良なクラブ15団体、優良なクラブ29団体及び優良な指導者11人を表彰した。 また、平成17年度も、表彰式とあわせて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2006」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成18年5月1日現在の組織数は、5,530団体、約44万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした自主防災組織である幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図るものである。近い将来、少年・少女を中心とした防災活動に参加できるための素地づくりを目的として、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導の下に組織の育成が進められている。 なお、平成18年5月1日現在の組織数は、1万4,466団体、約124万人となっている。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成18年4月1日現在、2,215組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものである。しかし、地震などの大規模災害が発生した際は、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られれば、地域の自主防災体制の充実に大きな効果をもたらすものと考えられる。 平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故においては、発災直後から所有する資機材を活用し被災者の救出救護活動にあたった事業所があるなど、災害時における事業所の防災協力の重要性が改めて認識された。 災害時における地域防災力の強化は喫緊の課題となっており、大規模地震等をはじめとする自然災害のみならず、今回の列車事故のような大規模事故あるいはテロ事件等への地域の対応力を強化するためには、地域に所在する事業所の防災協力活動が不可欠である。 消防庁では、平成17年度に、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力検討会」を開催し、災害発生直後の初動対応において、地方公共団体と事業所が連携して迅速・的確に災害対応を行う仕組みづくりについて検討し、事業所と地域社会との平常時からの協力関係の強化及び事業所の防災組織が参加・協力するに当たっての条件整備を進めていくため、平成18年度において、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力モデル事業」を実施し、優良・先進的な取組みについてまとめた事例集を作成し、地方公共団体へ提供することとしている。
3 災害時のボランティア活動 被災地における様々なニーズに合わせた柔軟な対応を行う上で、ボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることは、阪神・淡路大震災において改めて認識された。平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられたところであり、また、防災関係機関をはじめ、広く国民が、災害時におけるボランティア活動や自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を図ることを目的として、「防災とボランティアの日」(1月17日)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)の創設も行われている。 消防庁においては、災害ボランティア活動に関して、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、災害ボランティアの情報提供施策として、消防庁のホームページからインターネットを通じて、災害時にボランティアセンターが必要とする機材、団体の検索が迅速、簡単にできる「災害ボランティア・データバンク」を平成13年5月から運用している。 平成15年6月には、セキュリティやプライバシーに配慮した、検索、集計機能強化により、被災地が必要とする活動を行っている団体の抽出や、全都道府県、全政令指定都市のボランティア担当窓口を登録することにより、ボランティア団体の積極的な登録や、災害時の円滑な活動参加を促し、登録団体数や登録情報の拡充にも対応できるようリニューアルを行った。 平成17年度には「災害ボランティアと自主防災組織の連携に関する事例集」(囲み記事「「災害ボランティアと自主防災組織の連携に関する事例集」について」参照)を作成し、自主防災組織等においての勉強会などに活用してもらい、「いざ」という時に備えてもらうために、各都道府県への配布と消防庁のホームページへの掲載を行った。 また、大規模災害時等の混乱の中で災害ボランティアの果たす役割は大きく、ボランティア活動が円滑に行われるよう地方公共団体による、ボランティアの活動環境整備を通じた側面的な支援の促進を目的として、都道府県、政令指定都市及び消防庁等で構成する「災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会」を平成11年度に設置し、年1〜2回、地方公共団体における災害ボランティア関係施策等についての情報交換、調査検討をはじめ、災害ボランティアに関する取組み事例の紹介や災害ボランティア団体からの活動状況に関する講演等を実施し、都道府県・政令市の担当者間で情報共有を進めている。平成17年台風第14号被害における災害ボランティア活動の様子(いずれも宮崎市消防局提供)
「災害ボランティアと自主防災組織の連携に関する事例集」について 災害ボランティア活動は、阪神・淡路大震災以降、平成16年の新潟県中越地震や平成18年7月豪雨災害など、様々な災害現場で行われているところです。 しかしながら、過去の災害においても、全国から集まる災害ボランティアが被災地の事情等に詳しくないことや、被災者が災害ボランティアの受け入れに慣れていないなど、相互の意思疎通がうまくいかないために、災害ボランティアの活動が円滑に行われないこともありました。 こうしたことは、災害からの復旧・復興が遅れるばかりではなく、災害ボランティアの活動に対する誤解を生じ、今後、災害が発生したときの災害ボランティアの受け入れに支障を来すことにもなりかねません。 被災地に集まってくれた災害ボランティアが気持ちよく活動し、また、被災地は気持ちよく災害ボランティアを受け入れるためには、お互いの意思疎通をどの様に図るかがポイントになります。 その解決策の一つとして、相互の意思疎通を円滑するために、地域事情に詳しい自主防災組織等と災害ボランティアとが連携することが挙げられます。 そこで、災害ボランティアの活動をより円滑にするために、近年の災害において災害ボランティアと自主防災組織等の連携が図られた事例を対象に調査を行い、参考となる7事例10地区を「事例集」として取りまとめました。一般的な災害ボランティアと自主防災組織の関係災害ボランティアに対する自主防災組織等の対応内容(ポイント) この事例集を活用していただき、平時から災害時のボランティア受け入れについて自主防災組織等で勉強会などを開き、取り上げた事例を題材に図上訓練を行うなど、災害ボランティアを受け入れる際、何が問題となり、どのように対応するかを災害が発生する前に検討することで、地域防災力の向上につながることが期待されています。(事例集は、消防庁のホームぺージからダウンロード可能です。http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/180516-1/180516-1jireisyuu-sb.pdf)
第3節 災害に強い安全なまちづくり1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災や新潟県中越地震においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設や、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えており、地方公共団体における災害対応能力の向上が大きな課題となっている。そこで、消防庁では、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、〔1〕 避難所となる公共・公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど)〔2〕 災害対策の拠点となる公共・公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など)〔3〕 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(平成18年3月)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり、拠点(以下「防災拠点」という。)となる公共施設等(例えば、社会福祉施設、避難所に指定されている学校施設・公民館等、災害対策本部等の庁舎、消防本部、警察本部等)の耐震改修の状況等は次のとおりである(平成17年4月1日現在)。 地方公共団体が所有又は管理している防災拠点となる公共施設等は19万1,427棟で、このうち11万834棟(57.9%)が昭和56年以前の旧耐震基準で建築されたものである。 この11万834棟のうち耐震診断を実施した棟数は、5万1,051棟(46.1%)である。 耐震診断を実施した5万1,051棟の建物をみると、そのうち1万1,548棟(22.6%)が「耐震性がある」と診断され、また、平成17年度末までに、1万5,918棟(31.2%)が耐震改修を終了し、合計2万7,466棟(53.8%)の耐震性が確保されていることとなる。 また、今後、平成21年度までに耐震改修を予定している棟数は、耐震診断を実施した5万1,051棟のうち6,483棟(12.7%)となっている。 次の建築物については耐震性が確保されているものとした場合、平成17年度末で、地方公共団体が所有又は管理している防災拠点となる公共施設等の19万1,427棟のうち10万8,059棟(56.4%)の耐震性が確保されていると考えられる。ア 昭和56年6月1日以降の建築確認を得て建築された建築物(8万593棟)イ 昭和56年5月31日以前の建築確認を得て建築された建築物のうち、耐震診断の結果「耐震性能を有する」と診断された建築物(1万1,548棟)ウ 耐震改修整備を実施した建築物(1万5,918棟) さらに、平成21年度までの耐震改修予定の棟数(6,483棟)を加えると、平成21年度末では、11万4,542棟(59.8%)の耐震性能が確保される見込みとなる(第4−3−1図)。第4-3-1図 地方公共団体の防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況 しかしながら、災害対策の拠点となる公共施設等の耐震化については十分とはいえないため、早急かつ計画的な耐震化に取り組む必要がある。 消防庁では、産・学・官の三者連携の下、地方公共団体が公共施設の耐震化を進める上での参考となる資料として「防災拠点となる公共施設の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、すべての地方公共団体へ配付するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防防災施設整備費補助金や防災基盤整備事業等により、防災情報通信施設や耐震性貯水槽等の整備を促進している。 中でも、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝送する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との情報連絡についても多角的な対策を講じている。 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際には、一部の市町村において停電により窓口業務や県防災行政無線等に支障が生じ、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震及び同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震の際には震度情報の送信が遅延するなどの障害が生じた。 こうしたことから、消防庁では、非常用電源の整備、保守点検の実施と的確な操作の徹底、防災行政無線を使用した通信訓練の実施等を地方公共団体に要請するとともに、迅速かつ確実な震度情報の伝達を可能とする次世代の震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、地方公共団体に提言したところである。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、あわせて、食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 さらに、住民の避難に必要な施設等として、避難地、避難路の整備のほか、トイレ・シャワー等避難生活に必要な機能を付加するための避難施設の改修を促進している。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースを確保することは非常に重要であり、このスペースをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、防災基盤整備事業等によりその整備を促進している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。・「コミュニティ防災拠点」…おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難場所等に活用される。・「地域防災拠点」…おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難場所等に活用される。・「広域防災拠点」…都道府県に1〜数箇所設置され、消防防災に関する広域応援のベースキャンプや物資の集配基地、長期の避難場所等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティ−レベルの研修等に活用される防災センターから、日頃から防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。 なお、首都圏、京阪神圏や名古屋圏といった稠密な市街地が連たんしている大都市圏において、広域あるいは甚大な被害が発生した場合における、国及び地方公共団体等による広域的な災害対策活動拠点の整備検討が引き続き行われている。これを中心とした広域防災拠点の連携等のあり方に関する検討のため、消防庁では、平成14年度に関係行政機関や学識経験者等で構成する「広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会」を、首都圏・中部圏・近畿圏の各大都市圏域ごとに開催したところであるが、広域防災拠点に関する共通的課題としては、オープンスペースの確保、広域防災拠点における防災情報の共有化の実現、広域防災拠点を活用した緊急消防援助隊の機能充実のための仕組みの検討、災害ボランティア活動支援のための環境整備、圏域内における定期的な協議の実施といった点が挙げられる。 都市再生プロジェクト第1次決定を受け、東京圏において大規模かつ広域的な災害が発生した際、災害対策活動の核となる現地対策本部機能を確保するため、東京湾臨海部において、有明の丘地区(東京都江東区)は公園事業により、東扇島地区(神奈川県川崎市)は港湾事業により整備を進めており、平成18年度は、有明の丘地区では本部棟の建設や造成等、東扇島地区では緑地や港湾広域防災拠点支援施設等の整備を推進している。 今後、早期供用開始に向けた具体的な調整を行うとともに、基幹的広域防災拠点の運用に関する整理、当該防災拠点を中核とした広域防災ネットワークの整備・連携等により首都圏の広域防災連携体制を確立することとしている。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所(現消防研究センター)が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有しており、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保など)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化とあわせた住民等への情報連絡機能の強化など、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことによって、地域の防災能力の向上を促進する必要がある。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など地方公共団体の実施する単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組みや連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組み、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。これまでの応募累計は、1,149件を数えるに至っている。 消防庁では、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供を行っている。一例として、地方公共団体の地域防災力・危機管理能力の充実を図るためには、地方公共団体が自らの防災・危機管理体制を評価し、その実態を的確に把握した上で、適切な対応を行うことが重要であることから、消防庁で作成した「地方公共団体の地域防災力・危機管理能力評価指針」に基づき、既存の地域防災計画の総点検及び平成17年4月1日現在における地方公共団体における災害対応の取組みについて自己評価してもらった。 都道府県において、今回の自己評価の結果について前回(平成15年度)の自己評価と比べ、47都道府県全てで総合評価ポイントが上昇し、47都道府県の平均値においても、9つの指標全てにおいて評価ポイントが上昇した結果となった(第4−3−2図)。第4-3-2図 全国平均総合評価比較レーダーチャート 上昇した理由としては、平成16年度に梅雨期の豪雨や上陸台風が多発したことから住民の防災に対する関心が高まったことなどにより、各都道府県においてインターネット等を活用した住民との情報共有体制の整備、避難方法に関する広報・啓発の進展や、災害時要援護者への情報提供手段・方法について整備されたことが一因として挙げられる。 なお、市区町村においても「地方公共団体の地域防災力・危機管理能力評価指針」に基づく地域防災計画の総点検及び災害対応の取組みを継続的に自己評価してもらうことで、災害に強く安心して暮らせる地域づくりの支援をソフト面からも行っていくこととしている。
第5章 規制改革への対応 近年、国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、規制改革が大きな課題となっている。本章では、規制改革に関する政府の取組みとともに、規制改革に対する消防庁の対応について記述することとする。
1 規制改革推進3か年計画以前の取組み 消防防災行政においては、必要な安全性を確保する等の観点から、消防用設備等や危険物施設等の各分野において必要な規制を行ってきているが、近年の技術革新や社会経済活動の多様化等にかんがみ、柔軟な対応を求められることが多くなり、平成5年9月16日の緊急経済対策閣僚会議決定「規制緩和等の実施について」において7項目、平成6年2月15日の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」において3項目、平成6年7月5日の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において7項目を消防防災行政に係る各種の規制緩和措置として計上し、それぞれ実施に移してきたところである。 また、平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、規制緩和等が計画的に推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に61項目を計上し、平成13年度末までに、すべての項目について措置を講じた。 さらに、平成10年3月31日には「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、規制緩和等が一層推進されることとなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に32項目を計上し、平成15年度末までに、すべての項目について措置を講じた。 これらの規制緩和への対応として、消防庁が講じた主な措置は以下のとおりである(第5−1表)。第5-1表 規制改革推進3か年計画策定以前の主な規制緩和事項(消防庁分)
2 規制改革推進3か年計画への取組み 平成13年度からの「規制改革推進3か年計画」の策定に当たり、消防庁としては、内外からの意見・要望等を踏まえつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から所管事務の見直しを行った。 これにより、平成13年3月30日に「規制改革推進3か年計画」が閣議決定され、消防庁としても同計画に基づき、引き続き規制緩和など規制改革の推進に向け積極的に取り組むこととなった。その後、2度の改定が行われた結果、消防防災行政に係るものとしては最終的に計24項目が対象となり、平成15年度末までに16項目について措置を講じた(第5−2表)。第5-2表 「規制改革推進3か年計画(再改定)」個別施策(消防庁分) なお、これ以外の8項目については、平成16年3月19日に新たに閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」に引き続き計上し、平成16年度において、所要の措置を講じた(第5−3表)。第5-3表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)
3 規制改革・民間開放推進3か年計画への取組み これまで、3次にわたる「規制改革(緩和)推進計画」を策定する中で、消防庁では、消防防災分野において内外からの意見・要望を踏まえて、安全性の確保を図りつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から積極的に規制改革を推進してきた。 平成16年度から、行政の各分野について、民間開放その他の規制のあり方の改革の積極的かつ抜本的な推進を図り、経済社会の構造改革を一層加速することを目的として、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)が策定(平成17年3月25日改定、平成18年3月31日再改定)され、消防庁としては、消防防災行政に係るものとして以下の22項目が対象となり、平成17年度末までに17項目について措置を講じ、それ以外の項目については、引き続き、所要の措置を講ずることとしている(第5―3表)。第5-3表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)
4 構造改革特区制度への取組み 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日には、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部(以下「推進本部」という。)が内閣に設置された。 推進本部は、平成14年9月に「構造改革特区推進のための基本方針」等を決定し、構造改革特区推進のための取組み方針等を示した。これを踏まえ、同年10月には、「構造改革特区推進のためのプログラム」を決定し、構造改革特区において実施することができる特例措置及び全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制改革事項の2点について、明らかにした。 さらに、平成14年12月18日には、「構造改革特区推進のための基本方針」の趣旨を実現するため、構造改革特別区域法(以下「法」という。)が公布され、法第3条第1項に基づき、政府における基本的な施策の推進の方向を示すものとして、構造改革の推進等の意義及び目標、政府が実施すべき施策に関する基本方針等を内容とする構造改革特別区域基本方針が定められた。 消防庁としては、特区制度の趣旨にかんがみつつ、火災予防又は防災の観点から安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。 (1)構造改革特区において実施することができる特例措置(第5−4表) ・劇場等における誘導灯及び誘導標識に関する基準の特例適用(平成17年12月) なお、構造改革特別区域基本方針において、特段の問題の生じていない特例措置については、速やかに全国規模の規制改革につなげることとされた。消防庁としてもこの基本方針に基づき、構造改革特区で実施した特例措置の全国展開を図った(第5−5表)。第5-4表 構造改革特区において実施することができる特例措置(消防庁関係分)第5-5表 構造改革特区において実施し、全国展開することとなった規制の特例措置(消防庁関係分) (2)全国において実施することが時期、内容とも明確な規制事項(第5−6表)・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設・固体酸化物型燃料電池(SOFC)の実証実験を円滑に行うための規制緩和・消防法第17条に規定する消防用設備等設置の柔軟な対応第5-6表 全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制改革事項(消防庁関係分)
第6章 国際的課題への対応[国際協力・国際交流] 災害から国民の生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災分野における国際協力・交流は、人道主義、国際社会の相互依存関係、環境保全等の観点から、必要性・緊急性の高い分野となっている。 また、開発途上諸国における近年の傾向として、人口の増大と都市への集中、産業活動の拡大、自然環境の変化等に伴い、火災をはじめ地震、風水害、土砂災害等、大規模な災害が発生する危険性が高まっている。我が国では、過去における様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ね、ハード・ソフトの両面にわたり高度なシステムを整備していることから、積極的な国際社会への貢献が更に求められている。 このため、集団研修、専門家派遣など開発途上諸国への技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 技術協力プロジェクトの実施 消防庁では、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)と連携・協力し、次の技術協力プロジェクトを実施している。
(1)タイ王国防災能力向上プロジェクト タイ王国では平成16年12月に津波により甚大な被害を受けたことを契機に、国を挙げて津波等による災害防止に取り組んでいるとともに、日本国に対し技術協力の要請があったことから、平成18年8月から平成20年7月まで「タイ王国防災能力向上プロジェクト」を設置し、タイ王国の防災体制の強化に係る人的能力開発、災害対応能力向上等を目的として実施する(囲み記事「タイ王国消防防災分野技術協力」参照)。
タイ王国消防防災分野技術協力 平成16年12月26日現地時間午前7時58分頃、インドネシア共和国メダン西方約300キロのインド洋を震源地とするマグニチュード9.0(米国地質調査所調べ)の大規模な地震が発生しました。この地震を原因とする大規模な津波は、インド洋沿岸諸国に死者、行方不明者あわせて22万人を超える犠牲者が生じる極めて甚大な被害をもたらしました。 消防庁では地震発生直後から外務省、独立行政法人国際協力機構(JICA)との連絡・協議を行い、平成16年12月27日に我が国に対して正式にタイ王国から援助要請があり、政府が国際緊急援助隊救助チームの派遣を決定し、12月28日18時40分、消防庁長官が国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire Service)の派遣を決定しました。 この派遣を契機として日本・タイ両国間の相互理解が進んだことから、消防庁では、消防庁防災分野におけるタイ王国への協力支援を進めているところです。今後、この二国間の消防防災分野における協力関係がモデルとなり、アジア地域を中心に海外諸国との間でも積極的に協力関係を築いていきたいと考えています。<協力支援の概要>○タイ王国の災害管理能力及び防災教育のレベル向上に寄与するため、消防庁職員をタイ王国内務省防災局長アドバイザーとして派遣しました(平成17年9月13日から平成18年4月6日の間)。 これは、タイ王国からの日本国政府に対しての防災分野における技術協力専門家の派遣要請を受けて、実施したものです。○タイ王国に対する消防防災分野の技術協力の一環として、外務省及び独立行政法人国際協力機構(JICA)との連携・協力の下、平成17年11月29日〜12月28日の間、同国防災アカデミーへ救助技術専門家4人を派遣しました。※タイ王国内務省防災局長アドバイザーと合流し、救助訓練指導者として選抜された24人の現地スタッフに対し、講義や実技指導、実災害を想定した訓練を通じて救助技術の移転を行いました。○随時タイ王国から研修生を日本に受け入れて研修を実施しました。 平成17年6月タイ王国内務省防災局次長以下64人が来日 平成17年10月タイ王国内務省防災局長以下4人が来日○平成17年7月には消防庁長官がタイ王国を訪問し、消防庁とタイ王国内務省との間で消防防災分野における包括的な協力に関する共同宣言を行いました。○消防庁では、タイ王国の防災及び災害対応能力向上のため、内務省防災局及び防災アカデミーに対して積極的な支援を展開するとともに、平成18年度も引き続き人的貢献として、タイ王国内務省防災局長アドバイザーの後任を派遣しています。後任アドバイザーへの辞令交付
(2)地震後72時間緊急対応計画構築プロジェクト イラン政府は、平成15年12月イラン南部で発生した地震により約4万人以上の住民が死亡した際、被害状況の把握、災害管理等において政府としての十分な機能を果たすことができず対応の遅れが指摘されるとともに、日本国に対し技術協力の要請があったことから、平成18年10月から平成21年3月にかけて「地震後72時間緊急対応計画構築プロジェクト」を設置し、地震発生後の人的被害を軽減するために地震後3日間の緊急対応計画の策定などを目的として実施する。
2 開発途上諸国への専門家派遣 消防庁では、開発途上諸国に対する技術協力の一環として、随時消防防災分野の専門家を派遣して技術供与を実施している。平成17年度は、技術協力プロジェクトによる専門家のほか、各国政府の要請に応じて、シンガポール共和国、タイ王国、大韓民国、ベトナム社会主義共和国に対して延べ8人の専門家を派遣している。 また、海外諸国における消防事情や技術協力の必要性を把握するための専門家派遣や、過去に実施した国際協力事業に対するフォローアップ調査を実施している。
3 開発途上諸国からの研修員受入れ(1)集団研修の実施 消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を実施している。 いずれも消防に関する技術研修として、救急救助技術研修を昭和62年度から、消火技術研修を昭和63年度から、火災予防技術研修を平成2年度から実施している。平成17年度は、救急救助技術研修について10か国から10人(累計158人)を、消火技術研修については10か国から10人(累計161人)、火災予防技術研修については、8か国から8人(累計106人)の研修生を受け入れ、2〜3か月間に及ぶ研修を実施した。
(2)個別研修の実施 消防庁では、(1)の集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修員の受け入れを行っている。平成17年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中国幹部消防職員を消防大学校予防科へ受け入れたほか、各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき各国からの消防防災関係者を研修生として受け入れ、随時研修を実施している。 1、2及び3で述べた開発途上諸国への国際協力は、各国における消防防災の発展に大きな成果を上げているところである。
4 国際交流(1)トップマネージャーセミナーの実施等 消防庁では、JICAを通じ、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて、平成10年度からトップマネージャーセミナーを実施している。 平成18年度はベトナム社会主義共和国から消防大学校副校長をはじめとする幹部職員を招き、意見交換や研修等を実施している。
(2)日韓消防交流の推進 消防庁では、平成14年の「日韓国民交流年」、日韓共同開催によるワールドカップサッカー大会を契機として、日韓消防の交流・連携・協力の推進を目的に、日韓消防行政セミナーを開催している。平成18年度の日韓消防行政セミナーは東京都で開催され、消防用機械器具等の認証分野における連携や全国瞬時警報システム(J-ALERT)などについて意見交換が行われた(囲み記事「日韓消防行政セミナー」参照)。
日韓消防行政セミナー経緯 日韓消防行政セミナーは、平成14年の「日韓国民交流年」、ワールドカップサッカー大会共同開催等を踏まえ、平成13年10月16日から19日にかけて韓国において開催された日韓消防関係者会議において、日韓両国の消防防災の継続的な交流・連携・協力を図って行くと合意したことを起点として開催しているものです。 第1回は平成14年度に日本で開催し、その後は日韓両国の持ち回りにより毎年1回開催しています。平成18年度は、韓国消防防災庁ファン次長を代表とする6人を日本に招き、7月10日から13日の間開催しました。第5回日韓消防行政セミナーの概要 7月11日に消防庁消防防災・危機管理センターにおいて、両国の消防防災の取組み(日本側:消防用機械器具等の認証分野における連携、全国瞬時警報システム(J-ALERT)等、韓国側:大衆利用施設安全管理の政策方向、高層建築の火災危険性の分析及び消防安全対策等)をそれぞれ紹介した後、これらに対する質疑応答や両国の消防防災体制等について、意見交換を行いました。 また、来日期間中は消防大学校消防研究センター及び日本消防検定協会を視察したほか、東京消防庁を表敬訪問し、指令センターや消防博物館を見学したのち、東京消防庁消防学校及び消防技術安全所や装備工場を視察しました。 4日間行われたセミナーにおいて、両国の消防防災関係者の間で活発な意見交換等が図られ、今後、両国間の消防防災交流をさらに深めていくこととしました。 平成19年度は、韓国で開催する予定です。日韓消防行政セミナーの模様
(3)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟(Federation of World Volunteer Firefighters Association)が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会(International Fire Chiefs Association of Asia)は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。平成18年8月10日から12日にかけて第24回総会がオーストラリア・メルボルン市において開催され、我が国からも消防庁、消防機関等の代表が参加している。
[国際緊急援助]1 設立の経緯 昭和60年11月14日(現地時間13日)に発生したコロンビアのネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際して、外務省から同国政府からの援助要請がある場合の救助隊の派遣について意向打診があり、消防庁では国内消防機関の意向を確認の上、これに積極的に協力することとして準備を進めたが、同国政府からの救助隊派遣要請はなく、実現には至らなかった。 消防庁では、こうした活動には国際協力の一環として積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service 略称“IRT-JF”愛称“愛ある手”)を整備した。 その後、政府は外務省を中心に、海外で大規模災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月16日、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布施行された。
2 派遣体制 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」の公布施行により、海外における大規模災害発生時に、被災国政府等からの要請に応じて日本国政府が実施する総合的な国際緊急援助体制が整備され、より迅速な援助活動が可能になった。 消防庁長官は、外務大臣からの派遣協力に関する協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなっている(第6−1図)。第6-1図 派遣までの流れ 消防庁長官の派遣要請に基づき参集する国際消防救助隊は、日本国政府の国際緊急援助隊救助チームとして、高度な救助技術と能力を海外の被災地で発揮している(第6−2図)。第6-2図 国際緊急援助の概要 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、平成13年度に登録消防本部・隊員数を40消防本部501人体制から62消防本部599人体制に拡充した。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制をさらに強化することとしている。
3 派遣実績 国際消防救助隊は、世界のトップレベルの救助技術を有する救助隊として、これまでに15回の海外派遣実績がある(第6−1表)。第6-1表 国際消防救助隊の派遣実績 平成15年5月に発生したアルジェリア民主人民共和国における地震災害においては、国際消防救助隊員17人を派遣して現地で救助活動を行い、倒壊建物から生存者1人を救出するなど大きな成果を上げている。ホテル倒壊現場から生存者を救出(平成15年5月アルジェリア地震災害) また、平成16年2月に発生したモロッコ王国における地震災害には、国際消防救助隊員7人を派遣し、現地の救助技術向上のための技術指導を行うなど、日本・モロッコ両国の友好親善の観点からも大きな役割を果たしている。現地救助担当者への救助資機材の操作説明(平成16年2月モロッコ地震災害) 平成16年12月に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波災害に際してタイ王国へ国際消防救助隊46人を派遣し、検索救助活動やヘリコプターによる支援活動のほか、内務省職員に対する救助技術指導を実施するなど幅広い援助を実施したところである。被災地上空を飛行する消防ヘリコプター(平成16年12月スマトラ沖大地震・インド洋津波災害) 最近では、平成17年10月に発生したパキスタン・イスラム共和国地震災害に国際消防救助隊13人を派遣し、救助活動を実施した。建物倒壊現場で救助活動を実施(平成17年10月パキスタン・イスラム共和国地震災害) 消防庁では、これまでの国際消防救助隊の活動を検証し、より効果的な国際緊急援助体制の構築に取り組んでいる。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成活動を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても昭和62年7月にはISO/TC21協議会を設置し、ISO対策の充実強化を図り積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成18年3月31日現在、69の規格が国際規格として定められているとともに、ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)分科会においても現在一つの規格が国際規格として定められている。
2 規格の国際化への対応 近年、WTO(世界貿易機関)等における非関税障壁低減に関する包括的な取組みの中で、各国個別の基準・認証制度を国際的に整合化することの重要性が認識されてきた。そして、平成7年1月にはWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効し、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。日本はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、また、平成13年には、ISO/TC21総会を千葉県の幕張メッセにおいて開催するとともに多くの実験データの提供を行っている。さらに、平成18年3月にはISO/TC21/SC5(消火装置)国際会議を日本で開催するなど国際規格の策定に積極的に貢献している。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、他の国々と連携を図りつつ、引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全]1 ハロン消火剤等の使用抑制 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、平成2年に消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を開催し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組み、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略とあわせ、日本全体として取りまとめた上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において、継続して今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどした。加えて、平成17年4月には、人命の安全確保の観点からクリティカルユースの判断について見直しを行ったところである。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成18年2月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。こうした中、社団法人日本消火装置工業会において平成17年10月に「ハロンの適切な管理のための自主行動計画」が策定され、不用意なハロン放出の防止、今後の需給見通しに対応したハロンの確実な回収・保管、取組みの実施状況に関するフォローアップ等を行うこととされた。また、平成18年1月には、消防用設備等の設置、変更、維持管理又は回収の際のガス系消火剤の排出を抑制するとともに、利用可能な消火剤の回収や再利用を行うことを目的として特定非営利活動法人消防環境ネットワークが設立され、ハロンバンク推進協議会のハロンに係る業務を継承したところである。 今後もクリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理のもとに使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクル等を効率的かつ的確に行うことを目的として特定非営利活動法人消防環境ネットワークを通じて回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
2 消防用設備等における環境・省エネルギー対策の推進 近年の地球環境問題に関する社会情勢等から、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組みが求められている。 このため、消防庁では、平成11年度において、消防用設備等全般における環境・省エネルギー対策について調査研究を行ったほか、これを踏まえ、政府における「ミレニアムプロジェクト」(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)の一環として、平成12年度から5年計画で消火器と防炎物品のリサイクルの推進に取り組み、リサイクル・リユース技術を確立した。 また、環境問題への対応や省エネルギー等の観点から、天然ガス若しくは液化石油ガスを燃料とする内燃機関又はガスタービンを原動機とする自家発電設備が開発され、さらに、コージェネレーション等の常用電源としての自家発電設備が普及してきたことに対応して、平成13年3月に、消防用設備等の非常電源である自家発電設備について、常用電源との兼用等に係る技術基準の整備を行ったところである。 さらに、マイクロガスタービン、ナトリウム・硫黄電池、レドックスフロー電池及び燃料電池設備等の新技術を用いた電源設備の普及に伴い、これらの電源設備の性能及び安全性等について平成15、16年度の2年間で検討を行い、この検討結果を踏まえ、消防法施行規則の一部及び関連する告示の改正等により、これらの電源設備を消防用設備等の非常電源として取り扱うことができることとし、その技術的基準を定めたところである。
新エネルギー時代の家庭用燃料電池の安全対策 環境問題への対応、エネルギーセキュリティーの確保、産業の競争力の強化の観点から、燃料電池の導入については、「燃料電池実用化に関する関係省庁連絡会議」により政府全体で取組みが進められています。一般家庭に設置される小出力の燃料電池については、規制の再点検(平成14年10月25日閣議決定)により規制の見直しが行われ、消防庁においても平成15年から一般家庭の定置用燃料電池を設置する場合の防火安全性を確保するための検討を実施し、定置用燃料電池のうち固体高分子型燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池の必要とされる安全対策について、平成17年3月22日火災予防条例の制定基準である省令及び火災予防条例(例)が改正されました。 その後、新たな技術開発が進み、次の世代の燃料電池として、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が実用化されてきていることを踏まえ、固体酸化物型燃料電池(SOFC)を設置する場合の防火安全性を確保するため、リスクアセスメント手法を活用したリスク評価を行うほか、位置、構造、管理方法等火災予防上必要な事項について調査・検討を行っていきます。1 燃料電池の種類 2 燃料電池の概要
第7章 消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)及び消防庁に設置された消防防災科学技術懇話会の意見を踏まえつつ、科学技術の動向や社会ニーズを把握し、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 これらの研究・開発の推進の中心となっているのは、消防研究センター(旧独立行政法人消防研究所)である。 消防研究センターは、その前身となる消防研究所が昭和23年に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきたが、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となったが、危機管理機能強化及び行政の効率的実施の観点から、消防庁に統合する方針が政府決定(平成16年12月24日)され、その後、「独立行政法人消防研究所の解散に関する法律」(平成18年法律第22号)に基づき平成18年4月1日に廃止されたことに伴い、消防庁に統合された。 一方、消防庁においては、平成15年度から、消防防災に係る競争的研究資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を創設するとともに、新技術・新素材(バイオマス燃料等)の活用等に係る研究等、消防法の技術基準の整備に直結する研究については、直接研究を実施する体制をとっている。 また、消防防災の研究・開発は、消防機関の研究部門等においても積極的に実施されている。
[消防研究センターにおける研究開発等] 消防研究センターは、我が国唯一の火災等の災害に関する総合的な研究機関であるとともに、大規模、特殊な火災等の災害発生時の現場における消防機関等と一体となった災害対応(消火方法、拡大防止、二次災害防止等に関する助言、情報提供など)及び火災原因調査を担う機関である。これらの災害等を踏まえた社会的、行政的要請の高い課題について緊急かつ優先的に行う重点研究を平成18年度より前身の独立行政法人消防研究所から引き継ぎ、継続的に実施している。 独立行政法人消防研究所では、平成13年度から平成17年度までの5年間の「独立行政法人消防研究所中期目標」として「災害対応への情報化の促進」、「高齢者等災害時要援護者の安全確保の推進」、「消火・救急・救助活動の技術の高度化」、「危険性物質と危険物施設に対する安全評価」の4つの研究領域について重点的に研究を実施することとされた。また、中期目標では重点研究領域とは別に、「物質の燃焼現象」、「消火の理論と技術」、「救急・救助」等の研究分野における基盤的研究の充実を図ることとされ、研究開発を継続的に実施してきた。 こうした独立行政法人消防研究所の研究を基礎に、消防研究センターにおいても、研究をより効率的に進めるため積極的に産学官の共同研究を推進するとともに、研究に関する国際的な交流を行うほか、研究成果の公開及び普及のため各種の活動を実施している。消防研究センター
1 重点研究 平成17年度をもって、独立行政法人消防研究所が廃止され、その業務が消防庁に統合されることから、独立行政法人消防研究所で実施中のすべての重点研究を終了することとなった。それらの重点研究の概要は、次のとおりである。ア 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(平成14〜18年度(当初予定)) 本研究では、発生した災害種別・内容、空間的分布等を迅速に把握し、把握した被害情報に基づく災害の拡大予測と消防の緊急・応急活動の最適対応のための支援情報を創出することを目的としている。支援情報創出に必要となる基盤データ構築に関する検討、全国展開可能な簡易な被害拡大予測手法の開発、災害発生時におけるリアルタイムの災害拡大予測により被害を極小化するためのシステムの開発等、以下の8つのサブテーマ分野において情報取得とシステム構築関係の研究を行ってきた。 サブテーマI 被害情報の早期取得と共有 リモートセンシングの高度化による広域被害分布の推定の精度向上を図ると共に、被災地現場において被害状況を容易に収集できる携帯端末機器を開発製作した。平成17年度には、この携帯端末を用いた情報収集実験を東京都北区、豊橋市及び吹田市での防災訓練時に行い、その有用性を確認できた。その他、消防庁広域応援支援システムとのリンクによる被害情報の共有、統合化消防無線の相互・広域通信化といった災害現場における消防機関相互の通信ネットワークの構築に関する研究を、独立行政法人情報通信研究機構等との共同研究により実施した。 サブテーマII 地震被害想定のための基盤情報の取得とシステム構築 地震被害の想定精度向上のため、リモートセンシングに基づく面的基盤データと土地条件図等の詳細地盤分類に基づく地盤の増幅度特性の両者の相関関係について検討を行った。また、地盤の詳細な情報がない地域においてもリモートセンシングに基づく標高データを用いた地盤分類により地震被害想定が可能となるアジア地域を対象とした地震被害想定システムのプロトタイプを開発した。本システムでソウル市、マニラ市を対象に地盤の増幅度を推定し、リモートセンシングデータで推定した地盤増幅度が、既存の地形分類図と比較しておおむね類似していることが確認された。 サブテーマIII 実情報に基づくリアルタイム地震被害推定システムの構築 地震災害時には、発災直後は被害情報が不足し事態の全容が判らないが、時々刻々事態の深刻さが判ってくるのが一般的である。本サブテーマでは被害の全容の把握を早期に行うため、地震直後からもたらされる実被害情報をもとに、全体の被害推定を短時間で行うため実被害情報把握の時間的推移モデルの開発を行い、新潟県中越地震に適用した。また、日常的な微動を用いた地盤の増幅度特性の把握及びその精度の検証を行い、強震動データと増幅度特性を用いた面的地震動推定システム構築を行った。本システムを石油備蓄基地に適用し、タンク1基ごとの入力地震動の評価とタンク被害をリアルタイムで推定可能なシステムの構築及び整備を行った。 そのほか、気象庁から送られてくる緊急地震速報をリアルタイムで監視し、地震の情報が送られた時点で地震被害想定を自動的に実施し、その結果を消防研究所のホームページに登録すると同時に、事前登録した防災関係者の携帯電話に想定結果をメールで通知する仕組みを構築し、試験運用を始めた。リアルタイム地震被害想定結果の携帯電話への通知システム サブテーマIV 消防力最適運用システムの開発 地震直後の同時多発火災に対して効率的な消防力の運用を図る上で必要な、リアルタイム火災延焼予測システム及び消防力最適運用システムの構築を行った。こうしたシステムにおいて既存消防力運用のための現実に即した精緻化を行い、所沢市消防本部において試験運用を実施した。このモデルを用い同時多発火災件数の大小、消防車走行速度、使用可能筒先数などのパラメータを変更してケーススタディを実施し、各要素が最適消防効果に与える影響の分析等を行った。またさらに、平成17年度では、消防力効果を取り入れた市街地火災のリアルタイム延焼予測に基づく避難誘導指示支援システムに関するモデル化を行い、地域住民の避難時の経路選定と誘導指示に役立てられるシステムを構築した。そのほか、本サブテーマでは、広域応援部隊の最適配備支援システムの開発もあわせて実施した。 サブテーマV 地方自治体の災害対策本部における応急対応支援システムの開発 都道府県、市町村の防災情報システムを調査し、 必要とされる応急対応支援情報項目を抽出・整理するとともに、被害想定結果、実被害量に基づく応急対応需要量及び各自治体の現行の対応可能量(備蓄等)との差分の要支援需要量を予測し、提示するシステムを開発した。また、本システムを新潟県中越地震に適用し、その有効性を確認した。 サブテーマVI 防災情報システムの現状調査とそれに基づくシステムのあり方に関する検討 実際に地震災害を経験した地方自治体(兵庫県、神戸市)、東海・東南海・南海大地震等による被害が懸念されている地方自治体(三重県、静岡県、高知県、浜松市、静岡市、 仙台市)の防災情報システムの現状調査を行い、地方自治体の災害対策本部のための地震災害応急対応支援システムのあるべき姿について検討を行った。その結果、地震災害のみならず、種々の緊急事態に対応できるマルチハザード対応型情報システムの必要性が明らかとなり、既存の研究成果に基づく災害対応における意思決定の共通点の体系的な整理を行った。 サブテーマVII 危機管理対応情報技術による減災対策 情報収集伝達及び共有による災害時の被害軽減に資する技術として、タブレットPCやタッチセンサー付きの大型ディスプレイを用いて住民が容易に操作できるようなPDA及びノートPCで構築済みの被害収集端末のアイコンや表示の仕方などのユーザーインターフェイスを試作した。また、災害本部において地図上にそれらの情報を自動的に提示するシステムを構築するとともに、本プロジェクトで開発した被害想定システム、延焼予測システム等からの支援情報を統合した形で提示する統合型システムを構築した。平成17年度には、市町村デジタル移動無線システムによるマルチホップアドホック無線通信システムや長距離無線LANを活用した情報収集伝達・表示システムを構築し、被害情報の収集及びWebカメラによる状況の把握に関する実証実験を豊橋市、吹田市等で行い、その有効性を確認した。 サブテーマVIII 防災技術や通信技術の展望と防災情報システムの将来についての検討 応急対応における通信の重要性にかんがみ、新潟県中越地震で派遣されたすべての緊急消防援助隊に対するアンケートをもとに、新たな通信技術(衛星通信、地上系移動無線、特にモバイルアドホックネットワーク(MANET)技術)の必要性と防災への導入の促進について現状の課題の整理を行った。防災情報システムのあり方についてのコンセプトは上記サブテーマVIにおいても検討されているが、特に実効性あるものとするためには、担当者の防災に対する意識・情報のリテラシーの高揚を図ること等、人間側に起因する課題が極めて重要であるとの結果を得た。イ 斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究(平成15〜17年度) 斜面災害現場における救助活動の安全を確保するため、崩壊面の形状と地下水の流出状況を遠隔監視し、二次崩壊の前兆となる変化を感知する手法の開発を実施した。斜面形状を遠隔から面的に計測できるレーザースキャナを対象に、測定値の誤差及びその圧縮手法について検討し、独立行政法人防災科学技術研究所大型降雨実験施設での模型斜面の降雨崩壊実験、茨城県加波山における自然斜面崩壊実験において遠隔観測を実施した。また、この遠隔計測法を新潟県中越地震時の妙見堰崩壊地における救助活動で実際に用い、救助活動に必要な変形監視手法として、立面図上への投影、断面の変形、特徴的形状を指定して変位を追跡する、という3つの手法が有効であるとの結果を得た。そのほか、赤外画像装置による地表面の温度変化観測結果から地下水湧出状況の変化を遠隔で推定する手法を検討した。自然斜面崩壊実験時に地下水が湧き出している状況を把握する事ができ、消防隊員の救助活動時の安全確保の手段として有効活用が可能であることがわかった。自然斜面崩壊実験の鉛直方向変形分布の時間変化。赤色は隆起、青色は沈下を示す。ウ 火災時の安全避難技術の高度化に関する研究(平成14〜17年度) 火災時等、非常時に安全な避難をするためには、早期の感知通報及び的確な避難誘導が重要である。しかしながら、現行の火災時の避難誘導に係る技術は、一般的な建物での健常者を対象として開発されたものが大半である。本研究では、公共の地下施設等の複雑・多様化の進む都市空間や視聴覚等のハンディキャップを有する人々に適した安全避難の確保のために以下の二つのサブテーマを設けて研究開発を行った。 サブテーマI 地下施設・大規模複合建築物等における避難誘導効果評価法に関する研究(平成16〜17年度) 火災が発生した場合には、煙の充満等により日常とは異なった環境下での避難を行うことになるが、現実にその条件を再現し、誘導灯等の効果の検討を行うことは困難である。本研究では、人工現実感(VR)模擬火災シミュレータを用いて、煙や屋内の光環境が異なる地下鉄駅構内で、誘導灯等の各種避難誘導対策の効果を避難者の視点から評価可能な実験用ソフトウェアの開発及びシミュレータを使った避難実験を行った。平成17年度には、韓国大邱市の中央路駅を模した地下空間を対象に、数値流体シミュレーションで煙が降下する状況を再現し、構内の照明、煙、誘導灯の条件を変化させた状態で避難経路探索実験を行った。その結果、避難経路探索には平面計画や誘導灯の視認性に依存するいくつかのパターンが明らかになり、今後の誘導灯の設置方法及び避難計画に有用な情報を得ることができた。そのほか、煙中での誘導方法として効果がある音声を使用した誘導方法について、現実の空間とVR空間において誘導実験を実施し、実空間での音声誘導効果をVR空間で評価可能であることがわかった。人工現実感(VR)模擬火災シミュレータを用いた地下鉄駅構内での避難実験実施状況 サブテーマII 災害弱者の火災避難安全のための警報・手法の開発(平成14〜17年度) 加齢あるいは聴覚障害により警報音の聴き取りが困難な人に対しても有効な警報伝達手法の開発及び病気・身体不自由などにより自力避難が困難な人を救助するための通報システム開発を行った。具体的には、火災発生時に光、振動、臭気により視聴覚困難者に火災を知らせる火災警報通報装置の開発及びその警報を家族や消防機関等に自動的に電話転送する火災通知装置の開発、そのほか、地域において地域防災情報受信、緊急通報送信装置及び臭気による火災警報等、民間で開発中の各種機器システムの有効性に関する研究が含まれる。こうした機器開発に当たっては、福祉施設や聴覚困難者宅に試作器を設置・モニターし、使用者ニーズを反映した改良を重ね、実用化段階での機器システム開発に至っている。エ 廃棄物の貯蔵・取扱いにおける火災安全に関する研究(平成15〜17年度) 廃棄物は多種多様で処理量も増加傾向にある。廃棄物処理施設での出火危険度は高く、不燃物と称されるプラスチック類は大きな発熱量を有している等、その防火対策が問題となっている。また、廃棄物を加工し発電用の燃料として利用する貯蔵施設で、爆発により消防隊員が死傷するという新たな災害も発生しており、廃棄物をめぐる火災安全対策の検討・立案が重要な社会問題となってきている。こうした背景から、本研究課題においては、以下の二つのサブテーマを掲げ、出火防止・消火・爆発時の被害軽減等の防火対策に関する研究を行った。 サブテーマI 廃棄物処理施設の火災安全技術に関する研究(平成15〜17年度) 廃棄物処理施設の集積ピット内の火災を消火する目的で不活性ガスである窒素に水微粒子を添加し、上部からの直接注水で消火困難な火災を消火できることを模型実験で確認できた。また、窒素富化空気を注入し酸素濃度、注入速度、火災規模の消火特性に与える影響を検討した。火災による焼失量を抑制するには、酸素供給量が同一でも酸素濃度を下げ、注入気体量が大きい条件が有効である結果が得られた。 一方、廃棄物処理施設の建屋や装置内部で火災が発生し、高温の煙層が形成された段階で高温物体に水を注入した場合、生成した水蒸気の急上昇により天井部付近の煙層が床付近に急速に降下し、消防活動隊員が危険にさらされる等、今後の消防活動への提言につながる知見が得られた。 サブテーマII RDF爆発・火災に関する研究(平成16〜17年度) 窒素によるRDF火災消火の中規模実験を行い、RDF層内部での火災の場合についてRDFの燃焼速度から推定された必要窒素供給量で消火可能なこと、また、それ以下では有炎燃焼を抑制できたもののくん焼を止めるには至らず、窒素供給を停止すると自己着火し有炎燃焼へ遷移する現象が認められた。窒素によるRDF火災消火を行うためには、RDF層へ燃焼によって消費される空気流量と同程度の窒素を空気供給側から供給し続ける必要があること、また、消火できない場合には可燃性の熱分解生成物が噴出し、有毒な一酸化炭素が0.5%以上含まれる場合があり、毒性ガスによる中毒と爆発火災による周囲への被害を考慮し、消防警戒区域を広くとる必要がある等、消防活動上有用な知見が得られた。そのほか、RDF貯蔵内部における蓄熱過程を数値的に予測し、現実の事故に近い状況が再現できた。RDF貯蔵槽希薄酸素環境による安全対策の有効性評価実験オ 救急システムに関する研究(平成14〜17年度) 年々増大している救急需要に対し、救急救命率の向上、市民から期待される救急サービスの維持・向上を図ることを目的として、増加し多様化することが予測される救急要請の実態、消防機関における救急隊の運用状況を調査分析し、限られた救急隊等の消防力資源を効果的に運用する救急システムの構築に係る研究を実施した。本研究では、重症度及び緊急度に応じて出動する救急隊を選定するトリアージ方法の開発及び効率的な運用体制をコンピュータ上でシミュレーションするプログラムの開発を行った。また、将来の救急件数予測や救急隊の運用、病院の新設などを行った場合の改善効果、救急隊の効率的な運用方法の開発に関して、消防機関を対象にケーススタディを実施し、その妥当性について検討を行った。こうした研究内容は、消防庁の救急体制の基本施策に反映されている。カ 地震時における石油タンクの火災及び構造の安全性確保のための研究(平成15〜17年度) 昭和39年新潟地震のタンク全面火災、昭和53年宮城県沖地震のタンク底部破口による大量漏えい、そして平成15年十勝沖地震のタンク全面火災等、地震後、大規模な石油タンクの事故事例が発生している。こうした事故の多くはタンク底部の経年劣化と地震動に起因するものであるが、十勝沖地震時に発生した原油タンクでのリング火災、また、その2日後のナフサタンクでの全面火災は、社会に多大な衝撃を与えることとなった。 本研究では、地震時における石油タンクの火災及び構造の安全性確保を目的とし、以下の3つのサブテーマを設けて研究を実施した。 サブテーマI 石油タンクの経年劣化に伴う危険度予測手法の確立に関する研究(平成15〜17年度) 石油タンクの損傷による危険物の漏えいを防止するため、石油タンク底板の経年劣化の非開放検査手法(AE法)による評価、ごく短周期領域までの強震動の予測等を行い、供用中の危険物施設の安全性評価手法を確立することを目的として研究を行った。 非開放検査手法に関しては、模型タンクと実タンクに非開放検査手法(AE法)を適用し音波(AE波)の伝搬特性を解析することにより、タンクでの音波の伝播特性を把握した上で、ニューラルネットワーク解析により石油タンク底部の腐食劣化状況を推測する手法を構築した。これにより底部の腐食部位の位置評定がかなりの精度で可能となった。 一方、地震時タンクにかかる外力を予測するにはタンクサイトにおける強震動波形を予測することが重要であり、そのための基礎的な地震データの継続的な観測及び地盤の構造モデルに関わる研究を実施した。平成15年度より仙台市内の製油所で開始した強震観測を継続し、想定宮城県沖地震発生時の強震動波形予測を行う場合に必要となる想定震源域で発生する中小の地震の記録を蓄積することができた。この地震計設置地点における強震動予測結果と製油所構内の地盤ボーリングデータを用いて、製油所構内の面的強震動予測手法を開発し、想定宮城県沖地震が発生した場合の仙台の石油タンクサイトにおける強震動を予測し、タンクの耐震性を評価した。さらに、このような強震動予測結果に基づいて石油タンクの耐震性を評価するためのツールとして、「石油コンビナート地震被害想定システム」ソフトウェアを予測対象事業所に対して開発した。 サブテーマII 石油タンク火災の安全確保に関する研究(平成16〜17年度) タンク火災の消火に使用する各種泡消火剤(蛋白泡、フッ素蛋白泡、界面活性剤泡、水成膜泡、粘性付与水成膜泡)の消火性能を実験室規模の消火実験により検討し、各々の消火特性(初期消火性能、油面封鎖性、再燃性)を整理した。また、2種類の大容量泡放射砲(ノンアスピレート型、アスピレート型ノズル)の性能に関して、苫小牧東部国家石油備蓄基地、志布志国家石油備蓄基地、四日市市において実大泡放射実験を実施し、散布分布、放射軌跡等の放射特性を把握し、泡消火薬剤と大容量放射砲の適合性が明らかになった。こうした実験を通じて、大規模石油火災の適切な消火方法についての技術的基準に資する基礎的なデータの蓄積を図る事ができた。そのほか、平成17年度には石油タンク火災時に発生危険のある激しい燃焼現象(ボイルオーバー)の研究のためハンガリー及びイギリスとの共同研究を実施し、海外での火災実験に参加して石油タンク火災の燃焼データの収集と分析を行った。 サブテーマIII 浮き屋根等の安全性確保に関する研究(平成16〜17年度) 平成15年十勝沖地震で沈没した浮き屋根及び折損したガイドポール等付属設備の変形、損傷形態を詳細に調べ、スロッシングの発生及び浮き屋根の沈没メカニズムを解明した。被害の特徴としては、被害が屋根部に集中しており、底部等にはほとんど発生していないことがわかった。 また、今後発生が予測される地震におけるスロッシングによる被害を最小限に抑えるため、FEM(有限要素法)による浮き屋根を考慮したスロッシング挙動解析のためのコードを作成した。製油所で計測された地震波形を本コードに入力し、実タンクのスロッシング波高に一致していることを確認した。しかしながら、地震時の浮き屋根の挙動については解明されていない事が多く、模型タンク(直径1m)及び中規模固定屋根付内部浮き屋根式石油タンク(直径15m)を用いてスロッシング実験を行い、地震によって沈没が起きないための技術的な基礎データの収集と解析を行った。石油タンク模型のスロッシングによる溢流実験キ 新規化学物質等の危険性を把握するための研究(平成16〜18年度(当初予定)) 科学技術の発達や社会ニーズの変化によって、従来、危険物として認識されていなかった特殊な化学物質が工業用原材料として使用されたり、廃棄物とされていた物質が新たな資源として大量に貯蔵され、新たな災害を引き起こしている。例えば、ハイドロキシルアミン及びその誘導体と呼ばれる極めて爆発性の高い特殊な化学物質、また、身近なものとしては自動車のエアバッグに使用されるガス発生剤、木材チップ等のバイオマス燃料及びシュレッダーダスト等がある。 本研究では、こうした新規化学物質等の安全な貯蔵、廃棄及び取扱いのために、以下の三つのサブテーマを掲げ、科学的裏付けのある合理的な評価方法を提案することを目的として研究を行った。 サブテーマI 反応性物質等の危険性を把握するための研究(平成16〜18年度(当初予定)) 従来は消防法の危険物の分類に該当しなかったが、「分解の激しさ」や「熱的不安定性」による危険性を有するハイドロキシルアミンやガス発生剤等の物質について、国際連合基準の危険物輸送勧告書に基づく熱分析と圧力容器試験における危険性評価の試験法を検討した。また、少量の試料で短時間かつ安全に定量的に試験を行うことができる圧力追従式熱量計(APTAC)及び高感度等温型熱量計(TAM)等を用いた危険性評価方法を提案した。こうした試験方法は、栃木県黒磯市で起きたタイヤ工場の火災原因調査分析においても活用されている。 また、新規物質の中には、通常は安定であるが、特定の物質と混合すると危険性の高いものもある。こうした混合危険性のある化学物質等に対して混合型反応熱量計(C80)を用いる危険性評価方法を適用して、混合危険性評価のための圧力上昇速度及び発熱速度の基礎データを得た。本評価方法を用いて京都で起きたイソシアネート類の事故の原因調査において水との接触危険性を明らかにすることができた。 サブテーマII 廃棄物及びその処理施設の火災安全技術に関する研究(平成15〜17年度) 本サブテーマでは、主として堆積された木材チップ等による火災発生機構と危険性評価を含む出火防止対策の技術的検討を行う事を目的としている。堆積された木材チップ、RDF、RPF及びシュレッダーダスト等の素材は、その特性によって、発酵発熱、化学的熱分解等異なった発熱機構を有している。そうした機構の差異について小型燃焼実験や熱量測定実験を行い、蓄熱発火機構を明らかにした。例えば、火災が頻発している木材チップ等について、高感度熱量計を用いて危険性評価を行った結果、水分が存在する場合、好気性細菌による発酵発熱が起こり、火災に至ることが明らかとなった。こうした研究情報は、火災が発生した消防機関に提供し、その火災の予防対策及び発災後の延焼拡大に活用されている。 サブテーマIII バイオ燃料等の性状確認等の研究(平成16〜18年度(当初予定)) 環境の面から注目されている木材チップなどのバイオ燃料について燃焼実験を行い、植物油に類似した燃焼性状を明らかにし、熱分析によって自然発火のメカニズムを解明した。また、木材、石炭等をもとに作られるリサイクル燃料(木材チップ/石炭混合物)や生ごみの危険性評価方法を提案し、発災メカニズムを解明した。ク 新燃料自動車に求められる消火設備の能力に関する研究(平成17年度) 地球環境保護のために、大気汚染物質及び二酸化炭素の放出の少ない高効率クリーンエンジン自動車の実用化の研究が進められている。こうした新燃料の中には、従来の消火設備では有効に対応できないメタノール、エタノール等も含まれており、本研究では、こうした新燃料火災に対応する消火設備の能力について検討することを目的としている。可燃性液体として、ヘプタン、メチルアルコール、エチルアルコール、10%エチルアルコール+90%ヘプタン(通称E10)を対象とし、消火薬剤として水成膜泡を用いた消火実験を行った。その結果、既往の泡消火剤ではアルコールの消火に時間を要するが、漏えい面積が1m2未満と限定的であれば、新燃料火災においてもヘプタン火災と同程度の消火能力を有する事が明らかになった。
2 基盤研究 重点研究のほか、消防防災に係る科学技術の基礎的・継続的研究として、平成17年度には24課題の基盤研究を行った。
3 外部競争的研究資金等による研究 消防防災の研究をより積極的に行うため、文部科学省原子力試験研究費、科学技術振興調整費等の外部競争的研究資金を活用して研究を行っている。平成17年度には、次の研究課題を外部競争的研究資金により実施した。 ア 地震時の防災情報の創出とシステム化に関する研究(重点研究:一部、文部科学省大都市大震災軽減化特別プロジェクト) イ 危機管理対応情報共有技術による減災対策(文部科学省科学技術振興調整費)
4 大学、消防機関及び民間企業等との共同研究及び協力 消防防災の研究は、消防機関を通じた社会的なニーズの把握と成果の反映が重要であるとともに、産学官の連携により推進することが効率化などの観点から重要である。 建築防火、消火、あるいは危険物に関連した基礎的研究については大学の研究室を中心に、消防活動の現場に関連した研究については消防機関を中心に、消防用機器等の開発にあたっては民間企業を中心に、それぞれ共同研究先を広く求めている。平成17年度は次の31件について共同研究を実施した。
(1)大学等との共同研究等 消防防災に関連した火災安全等の研究を行っている大学の研究室と、火災・燃焼・消火等に関連した以下の共同研究等を行った。 ア 一般住宅における初期火災時の燃焼特性に関する研究(国立大学法人東京大学大学院消防防災科学技術寄付講座) イ AE法による石油タンク底部の腐食劣化評価に関する研究(国立大学法人電気通信大学電気通信学部知能機械工学科) ウ 多様な火災に対応するための消火手法に関する研究(国立大学法人東京大学大学院工学系研究科建築学専攻) エ 実火災加熱条件下における防火ガラス部材の消防用ホース放水時の挙動に関する研究(国立大学法人東京大学) オ 巨大地震によるやや長周期地震動の生成機構解明と石油タンク・免震建物等耐震性能評価(国立大学法人東京大学地震研究所ほか) カ 原子力施設における救助活動支援ロボット完成度向上のための研究(国立大学法人神戸大学工学部機械工学科) キ 震災時の救助活動を想定したガレキ掘削可能な大型ロボットの実用化を考慮した操縦システムに関する研究(国立大学法人京都大学大学院工学研究科機械工学専攻) ク 防災無線アドホック通信(国立大学法人電気通信大学) ケ 長周期地震時の浮き屋根式タンクで発生するスロッシングを減衰させる装置の実用化研究(学校法人中央大学総合政策学部) コ 消防防災ロボットの活用を促進するための技術的研究(国立大学法人長岡技術科学大学)
(2)消防機関との共同研究等 消防機関と以下の共同研究等を行った。 ア 大規模閉鎖空間における消防活動に関する研究(横浜市安全管理局) イ 防火ガラスが消防活動の安全性に及ぼす影響に関する研究(東京消防庁) ウ 消防防災ロボットの活用を促進するための技術的研究(東京消防庁)
(3)地方公共団体、非営利団体等との共同研究等 地方公共団体、非営利団体等と以下の共同研究等を行った。 ア 長距離無線を用いたネットワーク対応型防災通信システムの共同実験研究(独立行政法人情報通信研究機構) イ 閉鎖型スプリンクラーヘッドの感熱体の経年挙動に関する基礎的研究に関する研究(日本消防検定協会) ウ 特殊消防用設備等の性能に関する評価手法の開発と標準化に関する研究(財団法人日本消防設備安全センター) エ 防災無線アドホック通信(独立行政法人情報通信研究機構) オ ガレキ内移動型探索ロボットに必要となる要素技術に関する研究(岐阜県生産情報技術研究所) カ 地震時における効果的な被害情報収集体制に関する実証的研究(吹田市企画部) キ 斜面崩壊現場の二次崩壊危険度予測手法に関する研究(独立行政法人防災科学技術研究所)
(4)民間企業等との共同研究等 民間企業等と以下の共同研究等を行った。 ア 水/空気混合噴霧の消火性能に関する研究 イ バーチャルリアリティ(VR)技術を用いた防火安全技術に関する研究 ウ 一般住宅における初期火災時の燃焼特性に関する研究 エ 火災時における臭い警報システムに関する研究 オ AE法による石油タンク底部の腐食劣化評価に関する研究 カ 室内環境データの収集と火災感知のための統計分析に関する研究 キ 窒素富化空気を用いた防火技術の開発と評価に関する研究 ク 災害弱者を含む広域住民への火災/避難に関する情報伝達手法の開発 ケ 実火災加熱条件下における防火ガラス部材の消防用ホース放水時の挙動に関する研究 コ 石油タンク火災の消火に適した泡消火剤に関する研究 サ 赤外線カメラによる消防・防災に関する研究 シ 震災時の救助活動を想定したガレキ掘削可能な大型ロボット実用化に関する研究 ス 緊急地震速報を用いた速度応答スペクトル評価手法の実務への適用 セ 消防防災ロボット用移動機構プラットフォームの性能評価に関する研究 ソ 災害時要援護者を考慮に入れた感知・警報用機器の無線ネットワーク化に関する研究
5 国際的な研究の協力と交流 火災等災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、災害の情報や研究の成果等を相互に公開し研究を効率的に進める必要がある。また、大量の危険物等が国境を越えて流通しているので、それらの安全に関する国際規格を作成するためにも研究の国際的協力が必要であり、国際的な共同研究、研究者の交流等を積極的に推進することが不可欠である。平成17年度、独立行政法人消防研究所においては、以下の国内外との共同研究等を実施した。
(1)国際共同研究 平成17年度は以下の国際共同研究を行った。 ア 地下空間の安全性評価のための火災モデル構築に関する調査研究(慶北大学校工科大学) イ 浮力による振動を伴う予混合火炎の構造に関する研究(ローレンス・バークレー国立研究所)
(2)外国人研究者の受入れ 火災関連の外国人研究者を受け入れ、国際的に関心のある課題について協力して研究を行っている。平成17年度は中国から1人をJSPS(日本学術振興会)外国人特別研究員として受け入れ、アジア地域に適した地震災害軽減のための防災訓練プログラムの開発を行った。また、フランスから1人をJSPS外国人招へい研究者制度を活用して招へいし、石油のボイルオーバーに関する研究を行った。さらに、中国から1人を招へいし、新反応性物質の危険性評価実験に関する研究を行った。
(3)消防研究所シンポジウム(国際シンポジウム)の開催 平成17年10月に「第5回消防研究所シンポジウム−林野火災防ぎょに関する国際シンポジウム」を開催した。このシンポジウムでは、林野火災防ぎょに関する国内外のエキスパート(10か国17人)を招へいし、林野火災に係る各国の状況、火災危険度予測システムに関する研究、消防活動及び消防用資機材の状況について討議し、効果的な火災防ぎょ方策を探ることを目的に討論が行われた。
6 火災原因調査及び災害・事故等への対応 消防研究センターは、消防防災の科学技術に関する専門的知見及び試験研究施設を活用し、「消防庁長官の求めに応じた火災原因調査」、「総務大臣の求めに応じた災害の発生又は拡大の防止のための緊急的研究、調査又は試験」を実施することとされている。 火災原因調査に関しては、独立行政法人消防研究所であった平成15年4月1日に火災原因調査室が設置され、大規模あるいは特殊な火災を中心に、全国各地において火災原因調査が実施されてきた。そして、その業務は、平成18年度以降、消防研究センターに引き継がれている(平成18年7月30日現在で48件)。なお、平成17年4月以降の火災原因調査の状況は第7−1表のとおりである。第7-1表 火災原因調査 現地調査状況(平成17年4月〜) 緊急的研究等としては、平成15年8月19日に三重県で発生したごみ固形化燃料貯槽での消防活動、平成15年十勝沖地震時の苫小牧市ナフサタンク全面火災の消火活動とその後の被災タンク群からの石油抜き取り作業の安全確保等に専門家を派遣したほか、平成16年の新潟県中越地震時には緊急消防援助隊として延べ23人の専門家派遣を実施する等の活動を行ってきた。平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波をはじめ、大規模な災害・事故に際しては、国内外を問わず被害調査と分析のために常に専門家を派遣している。
7 研究成果の公開及び普及 独立行政法人消防研究所では、研究成果を広く一般に公開するとともにその普及を図るため、以下の活動を行ってきた。また、こうした活動は、平成18年度以降、消防研究センターに引き継がれている。
(1)全国消防技術者会議 昭和28年以来、毎年、全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として「全国消防技術者会議」を開催している。平成17年度は、10月20日及び21日の2日間、東京虎ノ門ニッショーホールにおいて第53回会議を開催し、27件の研究発表が行われた。また、平成18年度には消防研究センター主催で11月1日及び2日の2日間、同一の会場において引き続き第54回会議を開催し、30件の研究発表が行われた。
(2)消防防災研究講演会 消防研究所では創立50周年にあたる平成9年度から、研究所内の研究成果を広く普及すること等を目的として開催してきた。平成17年度は、平成18年2月24日に消防研究所において第9回講演会を開催し、「石油タンクの構造および火災に対する安全対策」をテーマとして講演、討論等を行った。
(3)一般公開 科学技術週間の一環として消防研究センターの一般公開を実施している。独立行政法人消防研究所としては、平成17年4月22日に開催し、全国の消防関係者、企業、大学等の研究機関、一般市民等692人の参加を得た。また、平成18年4月21日に消防研究センターとして一般公開を開催し、538人の参加を得た。
(4)消防研究センター研究資料等の発行 定期的に「消防研究所報告」及び「消研輯報」を発行しているほか、個々の研究課題ごとに報告書をとりまとめ配付するなど、研究成果の普及に努めている。
(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰 独立行政法人消防研究所では、消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的に、消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文を募集し、優秀な作品を消防庁長官が表彰する制度を設け、消防機関等における研究・開発の推進を図ってきた。平成17年度は、全国の消防機関、消防機器メーカー等から総計80編の応募があり、選考委員会(委員長 上原陽一 横浜国立大学名誉教授)による厳正な審査の結果、13の受賞作品(優秀賞:11作品、奨励賞:2作品)が決定された。 本活動は、平成18年度消防研究センターに引き継がれ、総計61編の応募があり、選考が進められている。機器の開発・改良の部 優秀賞 「消防用自動二輪車の開発」 日本機械工業株式会社 小井土 徹
[消防庁における研究開発推進の概要] 消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術へ育成するための「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金制度)を平成15年度に創設し、制度の充実を着実に図ってきたところである(囲み記事「消防防災科学技術研究推進制度について」参照)。 平成18年度においては、これまで研究課題を消防防災全般としていたものに、消火・救助等に関しあらかじめ設定した課題を加え、より災害現場に密着した研究開発の促進を図ることとした。その結果、大学、研究機関、民間企業、個人から合わせて47課題の応募があった。応募課題の審査に当たっては、外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」を開催し、消防防災への貢献の高さ、研究方法や研究実施体制の妥当性等の観点から審査を行い、制度の目的に照らして優秀と認められる採択課題を選定した結果、本年度の研究助成対象課題として9件が採択された。また、平成16年度、平成17年度からの研究課題については、15件すべてが継続を承認された(第7−2表)。第7-2表 採択研究テーマ名一覧 さらに、消防庁においては、危険物施設に係る腐食・劣化評価に関する研究、新技術・新素材の活用に対応した安全対策に関する研究、消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システムに関する研究等、消防法技術基準の整備に直結する研究等については直接研究を実施する体制をとっている。
消防防災科学技術研究推進制度について 消防庁では、安心・安全に暮らせる社会の実現をめざし、消防防災科学技術の振興を図るため、平成15年度に消防防災分野の競争的研究資金制度として「消防防災科学技術研究推進制度」を創設し、年々拡充を図り、平成18年度予算においては3億5,000万円を計上するなど、制度の充実を図っています。 「消防防災科学技術推進制度」は、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる人などから研究課題を幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術への育成を目的とする制度です。平成17年度までは、研究課題を消防防災全般としていましたが、平成18年度からは、より災害現場に密着した研究を行う必要があるとの要請により、消火・救助等に関しあらかじめ設定した課題を対象とするものと、消防防災全般を対象とするものの2つのカテゴリーに分けて募集しました。 これまでの応募件数、採択件数等は下表のとおりです。 これまで、この制度において数々の研究成果が上げられていますが、中でも平成17年度の産学官連携功労者表彰(総務大臣賞)を受賞した「水損低減型2流体消火ノズル」や「津波による石油タンクへの影響評価」、「軽量・機能化を図った大容量水中ポンプ」及び「環境に配慮した消火水」などの研究においては、今後、実用化が期待でき、序々ではありますが、その成果が現れはじめています。水損低減型1流体消火ノズル軽量・機能化を図った大容量水中ポンプ さらに、平成18年度より、より災害現場に密着した研究を促進するため、テーマ設定型の公募を行いましたが、今後も、継続してより充実を図って行くこととしています。そして、本制度の更なる拡充を目指し、消防機関を含めた産学官の連携による研究を促進し、消防防災科学技術の高度化をより一層推進することとしています。
消防防災科学技術高度化戦略プランについて 消防防災の科学技術は、各種の災害や事故、科学技術の進展、その他の社会のニーズに対応して、技術基準の作成、消防用設備・機器等の開発を中心として進められてきています。 火災等の災害が複雑、多様化し、消防にとって新たな対応を迫られる災害や事故が増加してきたこと及び技術革新の飛躍的な進展に伴い、今後、これらの課題を解決するために、消防防災に係わる研究開発については幅広い視点から推進することとし、平成13年11月に「消防防災科学技術高度化戦略プラン」を策定しました。 「消防防災科学技術高度化戦略プラン」には、防災情報通信システム等の高度化、消防活動支援施設・活動資機材等の高度化等、技術的観点から見た消防防災行政の課題を挙げ、消防防災に活用可能と考えられる技術を紹介しています。また、消防防災における研究開発の重点領域を掲げるとともに、今後の推進体制の構築を行うこととしています。 しかし、その後の飛躍的な技術革新や特殊・特異な災害や事故に対応するためには、消防防災分野の科学技術も更に高度化が必要となり、また、国としても「科学技術創造立国」を国家戦略として打ち立て、それの下に「科学技術基本法」を制定し、さらには「科学技術基本計画」を第1期(平成8年度から平成12年度まで)から第3期(平成18年度から平成22年度まで)までを策定し、この計画に基づく総合的施策を強力に推進してきています。特に、「第3期科学技術基本計画」(平成18年3月 閣議決定)においては、「安全が誇りとなる国−世界一安全な国・日本を実現」という政策目標が掲げられており、消防庁としても、安心・安全に暮らせる社会の実現のために、消防防災に係わる科学技術の研究開発を強力に推進していくこととしています。 そのため、現在の「消防防災科学技術高度化戦略プラン」を改訂し、新たに「消防防災科学技術高度化推進戦略」を策定し、短期及び中長期の視点に立った消防防災分野の高度な科学技術に関する推進戦略の充実を図ることとしています。消防防災科学技術高度化推進戦略の概要
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防の科学技術に関する研究は、消防機関の研究部門においてもなされている。平成17年度において消防科学技術の研究部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、川崎市消防局、横浜市安全管理局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の9本部である。 消防機関の研究部門の概要は、第7−3表のとおりである。研究部門の定員は9機関で74人となっており、また、研究費は約180万円から5,000万円まで地方公共団体により大きな違いがあり、その総計は9,990万円となっている。 また、これらの研究部門は毎年、「大都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術について意見交換を行っている。第7-3表 消防機関の研究部門の概要
2 消防機関における研究の概要 研究部門を有する消防機関では、一般の火災研究を行っており、ついで危険物の判定等の試験研究、火災原因究明等の調査研究を行っている。消防装備の開発については、装備担当部門単独又は協力して行っている本部もある。 また、平成7年度から、多くの機関で地震時の出火防止対策及び消火等の地震対策研究が開始され、その後も続けられている。
[消防防災の科学技術研究の課題] 消防防災の科学技術は、災害の発生に伴う緊急的な研究ニーズが出現すること、また、その対象とする研究領域が著しく広く、様々な知見が必要であることなどが特徴的である。こうした消防防災の科学技術研究の特性に対応する上では、研究組織の運営の機動性、柔軟性が必要であるとともに、競争的研究資金制度の一層の充実による消防防災科学技術研究の領域に関する競争的な研究環境創出、産学官の連携の推進が求められる。 平成18年4月、独立行政法人消防研究所が消防庁へ統合され、消防研究センターとなったが、今後とも、組織の弾力性を確保しつつ、研究ポテンシャルを一層高めるとともに、消防防災の科学技術研究のニーズを的確に把握するため、消防機関・地方公共団体との連携を緊密化し、また、大学研究機関や民間との協力関係を深め効果的・効率的な研究を実施することが必要である。
消防庁研究開発評価実施指針について 我が国は、科学技術創造立国の実現を目指し「科学技術基本法」(平成7年法律第130号)を制定し、これに基づき第1期から第3期までの「科学技術基本計画」が策定され、科学技術の推進を図ってきています。また、これとともに研究開発の成果を適正に評価するための評価システムの改革が挙げられています。この研究開発評価については、平成13年11月に「国の研究開発評価に関する大綱的指針」が策定されていましたが、平成17年に当該大綱的指針のフォローアップが行われ、改善方向が提言されたことに伴い、新たに「国の研究開発評価に関する大綱的指針」(平成17年3月 内閣総理大臣決定)が定められました。 消防庁において、研究開発の評価は独立行政法人消防研究所が行っていましたが、当研究所が消防大学校消防研究センターとなったことから、当該消防研究センターの行う研究開発を含み、消防庁全体の研究開発に関する評価体制を整備するため、「消防庁研究開発評価実施指針」(平成18年7月)を策定しました。 消防庁では、火災等の災害時における消防防災活動や火災予防・拡大防止等に資する研究開発を推進することとしていますが、この評価実施指針に基づき評価を行うとともに、より効果的な研究開発を実施して、これらの成果を普及し、国民の安心・安全の確保に努めることとしています。研究開発評価体制概略図
浮き屋根等の安全性確保に関する研究 消防研究センター(旧独立行政法人消防研究所)では、平成15年十勝沖地震において浮き屋根タンクの浮き屋根沈没事故が多発したことを契機として、地震時における浮き屋根の挙動を明らかにするために、浮き屋根式タンクにおける浮き屋根揺動実験を行ってきました。 これまでに、地震時における浮き屋根の破損状況に基づいた浮き屋根の破壊のメカニズムとスロッシング波高の簡易評価手法が提案されていますが、液面のスロッシングに伴う浮き屋根の揺動の力学的挙動について、実規模タンクにおける検証が充分なされてはいません。過去の被害状況から浮き屋根最大上昇量が2m以上となるときに浮き屋根に甚大な被害が発生すると考えられていますが、浮き屋根を考慮したスロッシング挙動に関する研究は比較的少なく、大振幅の波高や2次モードの影響などの定式化は、実規模のタンクで照査する余地があります。 そこで、容量約300klの小規模浮き屋根式タンク(直径7.6m)を作製し、大型振動台で加振することにより、大振幅の波高を発生させ、非線形スロッシングや2次モードの大きさの検証を行いました。また、容量15,000klの大規模浮き屋根式タンク(直径38m)の浮き屋根をエアシリンダーで直接加振することで、実際の浮き屋根を大きく揺動させ、揺動時の浮き屋根の変形状況などを測定しております。小規模タンクを用いた浮き屋根揺動実験(直径7.6m、高さ5m) ステンレス鋼製浮き屋根が大きく揺動している状況(平成17年 茨城県つくば市)大規模タンクを用いた直接加振による浮き屋根揺動実験(直径38m、高さ13m)(平成18年 秋田県男鹿市)
石油コンビナート等特別防災区域における「やや長周期地震動」の観測 平成15年十勝沖地震では、北海道苫小牧市の浮き屋根式石油タンク数基に火災や浮き屋根沈没などの重大な被害が発生しました。これらの被害は、石油タンクが「やや長周期地震動」と呼ばれる周期数秒から十数秒の揺れに見舞われたために、石油タンクに大きな液面揺動(スロッシング)が発生し、それに伴って浮き屋根が大きく揺動したことが原因です。この時の「やや長周期地震動」は、浮き屋根をふだんの液面から最大3m程度の高さまで揺らすほど強いものでした。 図1は平成15年十勝沖地震の際に苫小牧市と釧路市で記録された実際の揺れの波形ですが、苫小牧では長周期の成分を多く含む揺れである「やや長周期地震動」が観測されたのに対して、釧路では短周期の成分を多く含む揺れであったことがよくわかります。このように、「やや長周期地震動」の発生のしかたには大きな地域差があることがわかってきています。このようなことから、平成15年十勝沖地震を受けて改正された「危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示」では、特定屋外貯蔵タンクの液面揺動に係る設計水平震度(タンク内容液の最高液面高さを決める際に基準となる「やや長周期地震動」の強さ)の定め方に、新たに「やや長周期地震動」特性の地域差が考慮されるようになりました。これにより、「やや長周期地震動」の影響を強く受けることが懸念される20の石油コンビナート等特別防災区域については、液面揺動設計水平震度が従来に比べて引き上げられました。図1 平成15年十勝沖地震の際の釧路市と苫小牧市における揺れ(独立行政法人防災科学技術研究所強震観測網K-NETと気象庁震度計の観測データから作成) また最近では、「やや長周期地震動」の発生のしかたは、同一地域内でも数kmの距離で異なる可能性があることがわかってきました。図1に波形を示した苫小牧市役所と旧苫小牧測候所は約5kmの距離ですが、「やや長周期地震動」のレベルには違いがあることがわかります。これは、石油コンビナートにおける「やや長周期地震動」特性を正確に把握し、有効な技術基準を定めるには石油コンビナートそのものにおいて取得された地震記録の分析が必要であることを意味しているといえます。 以上のようなことから、消防庁では「やや長周期地震動」の影響を強く受けることが懸念される石油コンビナート等特別防災区域を中心に全国21の地点(図2)に「やや長周期地震動」を高精度に記録できる広帯域速度型強震計を設置し、地震観測を行っています。また、これらの地震計は、地震記録が取得されたら、直ちにその記録を電子メールで消防庁、消防研究センター等に配信する機能を有しており、「石油コンビナートにおける強震動の監視」という役割も果たすことができます。将来的には、この機能を利用して、地震直後に石油タンクの被害推定を行い、迅速かつ的確な応急対応を支援する地震防災情報システムを開発する計画です。図2 消防庁が石油コンビナート等特別防災区域に設置している広帯域速度型強震計
第8章 今後の消防防災行政の方向 平成16年度の豪雨災害、平成18年7月の豪雨災害、9月の台風第13号による災害といった自然災害の多発や、新潟県中越地震や福岡県西方沖を震源とする地震といったたび重なる震災の発生は、我が国の自然条件等の厳しさを再認識させるものとなった。また、コンビナート火災等の企業災害の増加や、JR西日本福知山線列車事故のように、これまで安全と信じられてきたインフラ施設における故障・人災が発生している状況にある。さらには、住宅火災死者数が増加し過去最悪を記録しているほか、国際テロなどの懸念材料もあり、我が国の安心・安全神話に揺らぎが生じているのが現状である。 こうした中、経済財政諮問会議の論議を経て、平成18年7月7日に政府として閣議決定した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」(いわゆる「骨太の方針2006」)においては、「国民の安全と安心の確保は、政府の最も重要な責務の一つであるとともに、我が国の経済活性化の基盤である」ことが明記されたところである。 本章では、消防庁としてこれを受けて取りまとめた平成19年度消防庁重点施策の内容を基礎として、今後の消防防災行政の方向について解説する。 まず、消防防災行政を取り巻く状況は大きく変化しており、次に掲げるような課題がある。 第一に、消防組織法が改正され、消防の広域化を推進する枠組みが整ったことにより広域化の積極的な推進が求められている。また、消防団の充実強化、国民保護体制の充実強化等、消防防災対策の根幹となる体制の充実強化が急務となっている。 第二に、大規模災害発生時における住民の安全確保や迅速な応急対応を行うため、緊急消防援助隊の増強や特別高度救助隊の全国展開等、全国的見地からの災害対応体制の構築が課題となっている。 第三に、増加を続ける住宅火災による死者数の半減を目指した取組みをはじめ、自力避難が困難な方が入居する施設等における防火対策等、火災予防対策の推進が強く求められている。 第四に、消防防災分野における先端技術を国民の安心・安全に活用するため、国における研究体制の充実強化が重要となっている。 第五に、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)は、日進月歩の発達を続けている。そのため、ICTを積極的に活用し、消防庁のオペレーション機能の強化、効果的・効率的な教育訓練の実施等を図ることが求められている。 第六に、大地震や風水害等の自然災害や大事故、テロ等から地域の住民を守ることは安心・安全な社会を構築する上での重要課題である。大規模災害等を着実に克服していくため、地域防災の要である消防団の充実強化等、地域防災力の強化に向けた一層の取組みが必要となっている。 第七に、高齢化・独居化の進展や住民意識の変化により救急需要が急増しており、これへの対応が喫緊の課題となっている。また、救急業務について更なる高度化が求められている。 第八に、海外では大規模災害が頻発しており、我が国の高度な防災技術・救助技術を海外の防災・減災に役立てる、国際協力や国際貢献の推進が強く求められている。 以上の課題を踏まえつつ、次の「1」以下に掲げるとおり、消防の広域化や消防団の充実強化等消防組織の未来を見据えた体制づくりをはじめとし、大規模災害への備え、火災予防対策、地域防災力の強化等、総合的な消防防災対策を展開していくこととしている。
1 消防組織の体制強化(1)消防の広域化の積極的推進 平成18年通常国会において、市町村の消防の広域化を積極的に推進していくため、消防組織法の改正を行った。この改正消防組織法及び同法に基づき定めた「市町村の消防の広域化に関する基本指針」に基づいて、管轄人口30万以上の規模を一つの目標として、消防の広域化を積極的に推進することとしている。 具体的には、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部の下で、平成19年度中には全都道府県における推進計画策定を促進・支援するほか、広域化推進アドバイザーの派遣による助言・指導、広域化に係る諸課題に関する相談体制の確保、広報及び普及啓発活動、財政措置その他の必要な援助等を行う。
(2)消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化の推進 消防救急無線については、平成28年5月31日までにデジタル方式に移行することとされているが、この機会を捉え、整備費用の節減及び消防の広域的活動への対応の観点から、都道府県域での広域化・共同化に向けた整備を促進しているところである。このため、現在、各都道府県に対し、「消防救急無線のデジタル化及び広域化・共同化に係る整備計画」の策定を要請しており、今後、消防救急無線機器の仕様の共通化を図り、広域的通信基盤の整備を促進することとしている。
(3)国民保護体制の充実強化 平成16年9月に「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」が施行され、国、地方公共団体は国民保護計画を作成することとなった。消防庁は、平成17年3月に「都道府県国民保護モデル計画」を示し、これをもとに、平成17年度中にすべての都道府県において国民保護計画が作成された。平成18年1月には「市町村国民保護モデル計画」を示したところであり、平成18年度中にすべての市町村において国民保護計画が作成されるよう、強力に支援を行う。 また、安否情報システム等の各種システムの整備・運用、国と地方公共団体共同で行う訓練の実施、啓発資料の作成・配布、国民保護ブロック会議の開催等により、地方公共団体における国民保護体制の充実強化を推進する。
(4)消防団充実強化のための取組みの積極的推進 消防団は、火災への対応はもちろん、地域の防災訓練、大規模災害時等の活動の中心となって活躍する地域防災力の要であるが、団員数は昭和20年代の200万人を超える数から年々減少を続け、平成18年には90万人をわずかに超える程度となっている。このままでは、地域防災力の低下が懸念されるため、消防団員確保のための取組みを積極的に推進する。 具体的には、財団法人日本消防協会、経済団体及び都道府県等との連携、国民全体の理解の向上に資するマスコミを活用した広報等様々な手法を用いた入団促進事業の推進を行う。また、大規模災害対応など特定の活動のみを行う機能別団員・分団制度の一層の活用、「消防団協力事業所表示制度」の全国展開、消防団員確保に資する取組みを展開する団体に対する支援等を行う。
(5)女性消防職団員の活動環境・職場環境整備に向けた取組み 女性消防職団員の職場環境整備を推進する。また、女性消防職団員の活動について積極的なPRを促進する。
2 大規模災害に対する備えの強化(1)緊急消防援助隊の増強 総務大臣が定める「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備に関する基本的な事項に関する計画」の変更(平成18年2月)を受け、登録部隊数を3,000隊から、平成20年度を目途に4,000隊規模へ増強する(3,397隊:平成18年4月1日現在)。 また、緊急消防援助隊に係る施設・設備等の整備に必要な国庫補助金及び指揮・連携活動能力の向上に資する地域ブロック合同訓練等に係る所要の経費を確保する。
(2)特別高度救助隊等の充実強化 平成16年10月に発生した新潟県中越地震や平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故において救助隊が活躍し、大規模災害・大規模事故が発生した場合における救助隊活動の有効性が改めて示されたところである。 そこで、大規模災害・大規模事故等に際して、人命を救助する体制を充実させるため、高度な救助技術・知識及び高度な救助資機材等を有する救助隊として、「特別高度救助隊」を東京消防庁・政令市消防本部に、「高度救助隊」を中核市等の消防本部に配備する。
(3)大規模災害発生時の救急体制の整備 平成17年のJR西日本福知山線列車事故に代表されるような大規模災害時には、救急搬送を必要とする傷病者が同時に多数発生することから、緊急消防援助隊や地元消防本部、医療機関など、関係機関の間での情報共有や連携が不可欠である。そこで、災害現場における消防と医療の適切な役割分担を検討し、現地消防本部と地域の医療機関との連携体制や災害現場への救急の応援体制等、大規模災害発生時の救急体制の整備についての検討を進める。
(4)防災力強化のための耐震化の促進 東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など、切迫性の指摘されている大規模地震への対策は急務である。これらの大規模地震が発生した場合に防災拠点となる公共施設等の耐震化を強力に推進するため、防災対策事業の活用促進、防災拠点の耐震化促進資料の作成等を行う。
3 火災予防対策等の積極的推進(1)防火対象物における安心・安全の確保 防火対象物の大規模化・高層化や社会的情勢の変化等を踏まえ、防火管理に関する責任体制の明確化、自衛消防力の確保、地震等災害時の対応の明確化等、安全管理や危機対応のあり方について、制度全般の見直しの検討を行う。 また、民間自主保安の促進等により、防火対象物が法令に準拠しているか否かに関する確認体制を充実強化する。さらに、防火管理の透明性を向上させるため、法令遵守状況を表示する「基準適合マーク」について検証し、活用が図られるよう見直しを行い、入居者及び利用者に対する建物の防火管理状況の開示を促進する。 さらに、違反是正や火災原因調査など高度かつ専門的な予防業務について、消防の広域化による高度化とあわせ、予防要員の専門的能力の向上を支援することにより、実施体制を強化する。 また、自力避難困難者入所施設の関係者に対し、消防法令の改正について周知を図るとともに、火気管理の徹底等に関する普及啓発を行う。
(2)住宅火災死者数半減等を目指した総力を挙げた取組み 住宅火災による死者数は、建物火災の死者数の約9割を占めており、その数は近年急増している。また、その半数以上が高齢者であることから、今後高齢化・独居化が進むにつれて死者数は更に増加するおそれがある。 このため、逃げ遅れ等による死者数を減少させるため、平成16年に消防法の一部改正を行い、平成18年6月から新築住宅について住宅用火災警報器の設置が義務付けられたところである。今後、既存住宅についても平成23年6月までにそれぞれの市町村の条例によって設置が義務付けられることとなっている。 これらの状況を踏まえ、過去最悪となった住宅火災死者数(1,220人:平成17年)を今後10年間で半減させることを目標とし、既存住宅への住宅用火災警報器の設置の促進、防炎品(カーテン、寝具類、衣類等)の使用拡大に向けた取組みを集中的に実施する。 また、放火による火災は、平成9年度以降9年間連続して出火原因の第1位となっており、これに対する対策が急務である。このため、個人・事業所・地域・地方公共団体等のレベルごとに、自ら放火火災の危険性について現状認識を持ち、地域自らが対応を行う際の参考とするため、「放火火災防止対策戦略プラン」を策定したところであり、今後、プランの充実及び普及を図り、地域における「放火されない環境づくり」を推進する。
(3)大都市圏等における危険物対策の総点検 近年の危険物施設における事故件数の増加傾向、大規模災害発生による甚大な被害への懸念を踏まえ、大都市圏等における危険物施設の安全対策の総点検を行う。 具体的には、昭和52年に安全性が強化される以前の基準で建設された屋外タンクの現行基準への適応(改修)状況や、浮き屋根式タンク等の安全対策の総点検を実施するとともに、「危険物事故防止アクションプラン」に基づく官民一体となった総合的な事故防止対策を推進する。また、津波・浸水被害に対する大規模危険物施設の安全対策の実験・検証や、長周期地震動等が屋外タンクに及ぼす被害の予測手法、危険物施設の腐食防止・抑制対策について検討を行う。 さらに、バイオマス燃料・燃料電池等の新技術・環境対策に関する安全性の確保に取り組むとともに、新技術・新素材の導入を促進するため、危険物施設に係る技術基準の性能規定化を推進する。 また、石油コンビナート特別防災区域における広域的な防災体制の確立を促進する。
4 消防防災科学技術の向上(1)消防防災科学技術研究の推進 平成18年4月に独立行政法人消防研究所を国に統合し、今後、国の責任として消防防災科学技術の研究体制を充実強化する体制を整備したところである。 そこで、産学官の連携により実践的な研究開発を行うとともに、消防防災科学技術研究推進制度に基づく研究資金を充実させ、消防科学技術の高度化を図る。
(2)火災原因調査体制の充実・高度化 建築物の構造の多様化等に伴い、火災態様は特異・特殊化している。これに対応するため、火災原因調査に関して、中小規模の消防本部における火災原因調査体制の実態について調査検討を実施し、最新の消防防災科学技術を火災原因調査に適用する基盤を整備する。
(3)消防科学技術の研究開発に関する消防本部との連携強化 消防科学技術の進歩を実際の消防活動に活用し、消防活動の安全性を高め、高度化していくことは不可欠である。 そこで、研究の高度化・効率化や、最先端の研究の現場へのフィードバックを促進するため、消防研究センターと消防本部の研究部門との連携のあり方について早急に検討を行い、両者が連携したより効果的な研究開発を実施する。
5 消防防災分野におけるICTの活用(1)高度情報技術の活用によるオペレーション機能の強化 大規模災害時に活動する緊急消防援助隊は、効果的な活動を行うために、一体的な部隊運用が行われることが必要である。 現在、各消防本部で独自に導入されている例がある消防車両の動態システムについて、各消防本部での情報の共有を図ることができるよう、消防車両の動態システムの標準化等に向けた取組みを推進し、緊急消防援助隊等の広域応援時の活動をより効果的にする。 また、大規模災害時における消防庁と消防本部等との情報共有を一層充実させるための方策について、幅広く検討を行う。
(2)携帯電話等からの通報受信体制の確立 携帯電話及びIP電話からの119番通報が大幅に増加しているため、携帯電話等からの119番通報の発信位置情報が表示できるシステムの導入を推進する。
(3)ICTを用いた効果的な人材育成の推進 ICTを活用し、様々な災害現場を想定した消防職員(指揮者)の情報収集・整理能力、判断力、指揮命令能力等の養成を推進する。また、消防大学校における受講生の増大への対応や教育の高度化のため、e−ラーニングによる研修等、ICTを利用した研修プログラムの充実を図る。
6 消防団の充実と地域防災力の強化(1)消防団充実強化のための取組みの積極的推進(再掲)
(2)地域における防災力の充実強化ア 総合的な危機管理体制の整備 大規模災害・大規模事故にとどまらず、テロや武力攻撃事態、さらには感染症の発生など、様々な危機に対し、地方公共団体は的確な対処が求められており、地域の安心・安全を確保していく上で、地方公共団体における総合的な危機管理体制を整備することが非常に重要である。 このため、地方公共団体の危機管理事案への対処の実態や先進的な取組みに関して幅広く調査・分析を行い、危機管理組織のあり方や危機管理分野における人材育成のあり方等について検討する。イ 自主防災組織の充実・強化 大規模災害の危険性の高まりや犯罪の増加・凶悪化が大きな社会問題となる中、地域の安心・安全な生活を確保していくため、コミュニティ活動をベースとした地域の防災・防犯体制の強化が重要となっている。 そこで、自主防災組織率の向上、自主防災組織の強化のため、市町村レベル及び都道府県レベルでの連絡協議会の体制の充実を図るとともに、防災研修の実施を通じ、自主防災組織の結成促進を図る。また、消防団と自主防災組織との一層の連携を推進する。ウ 地域安心安全ステーションの全国展開 地域安心安全ステーションは、自主防災組織や各種コミュニティが消防や警察等と連携し、パトロールや初期消火、応急手当等を総合的に実施する取組みとして、モデル事業をとおし、その有効性が示されたところである。今後、消防団や婦人(女性)防火クラブ等との連携の促進により、地域安心安全ステーションの充実強化を促進し、本格的な全国展開に向けた取組みを推進する。 さらに、近年、事業所の地域における防災活動などが注目されており、事業所と連携した地域防災活動の充実・活性化を推進するため、事業所間のネットワークを活かした防災拠点づくりの事例調査を実施する。
(3)災害時要援護者支援対策の推進 高齢者等の災害時要援護者支援のため、地方公共団体における災害時要援護者避難支援プランの策定状況の調査結果を踏まえ、一人ひとりの要援護者に対して複数の支援者を定める等、市町村等における具体的な避難支援プランの策定の促進を行う。また、支援を必要とする外国人への対応も検討する。
(4)震度情報ネットワークの高度化 地方公共団体が設置した全国約2,800箇所の震度計と震度情報ネットワーク機器について、地方公共団体の適切な初動対応や地域住民・企業の防災対応に資するよう、より迅速・確実かつきめ細かに震度情報を把握できるものに高度化する。
(5)災害支援物資の備蓄・供給の調整体制の構築 各地方公共団体が備蓄している物資の内容、数量等を都道府県単位で一元的にデータベース化し、都道府県間の協定を基に、災害支援物資の供給調整を可能とする体制を構築する。
(6)消防防災を担う人材の確保 石油コンビナート災害に対応した訓練の実施、原子力施設における事故等に関する教育訓練の充実、自主防災組織のリーダー等に対する研修等、消防防災を担う高度な人材を確保するための実践的な教育研修を充実強化する。
(7)防災行政無線・全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備の促進 防災行政無線は、住民に対し迅速かつ確実に情報伝達を行うために必要不可欠であり、災害対応のみならず、国民保護の観点からも非常に重要である。そこで、未整備市町村における防災行政無線の整備を促進し、防災行政無線の普及率(74.6%:平成18年3月31日現在)の向上を図る。 また、津波警報、緊急地震速報、弾道ミサイル発射情報等の緊急情報を、人工衛星を用いて送信し、市町村の同報系防災行政無線を自動起動することにより、住民に瞬時に伝達するシステムである「全国瞬時警報システム(J-ALERT)」の整備を推進する。
7 救急需要対策・救急業務の高度化等に関する総合的な取組み(1)救急需要対策の推進 平成17年中の救急出場件数は約528万件と、10年前の平成7年中に比べて約61%増となっており、今後も、高齢化・独居化の進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増大し続けることが予想される。また、平成17年中の平均現場到着所要時間は6.5分と、平成7年中と比較すると0.5分遅くなっており、救急出場件数がこのまま増加を続ければ、地域によっては、住民の救急要請に対し現在のような迅速な対応を行うことが困難となるおそれがある。 このような状況を踏まえ、急増する救急需要対策として、真に緊急を要する傷病者に対するより迅速な対応を可能とするため、民間患者等搬送事業者との適切な役割分担及びトリアージ(緊急度・重症度の選別)の導入等について検討を行う。
(2)救急業務の高度化等 傷病者の救命率の向上を目指し、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士の処置範囲の拡大を推進してきたところであり、心肺機能停止状態の傷病者に対し、平成15年4月から医師の包括的指示による除細動、平成16年7月から気管挿管、平成18年4月からは薬剤投与(アドレナリンの使用)が認められた。 今後、更なる救命率の向上を目指して、地域の医療機関との連携等救急業務の高度化に関する取組みについて検討するとともに、AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)を使用した応急手当等を行う救命講習の実施等を促進し、一般市民による応急手当の普及を図る。
8 消防防災分野における国際協力(1)国際的消防援助体制の充実 平成16年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波災害や、平成17年10月のパキスタン・イスラム共和国地震災害など、海外においては大規模災害による甚大な被害が発生している。 消防防災分野における我が国の技術は世界トップクラスであり、今後とも国際協力・国際貢献を充実させていく必要がある。このため、被災国への国際消防救助隊(IRT:International Rescue Team)の派遣を積極的・効果的に行うため、国際緊急援助活動に関する訓練・研修を実施し、部隊の充実強化を図る。また、国際消防救助隊の救援活動をより効果的にするための方策を検討する。
(2)消防の国際協力及び国際貢献の推進 各国の消防技術の高度化のため、消防防災の専門家の派遣等、世界消防技術高度化事業を実施する。 また、開発途上国等からの研修員の受入れ及び防災教育・災害対策に関する教材の作成・提供等により、開発途上国等の災害対応能力の向上を図る。 さらに、消防防災分野の国際交流として、トップマネージャーセミナー(開発途上国消防行政に携わる幹部職員との交流)を実施する。
1 平成17、18年度の法令の制定
2 平成17年中の主な火災
3 都道府県別火災損害状況
4 月別火災損害状況
5 出火原因別火災損害状況
6 主な出火原因の推移(上位10位)
7 用途別の主な火災事例
8 昭和21年以降の火災損害状況
9 昭和21年以降の火災損害比較
10 昭和21年以降の大火記録
11 自然災害による都道府県別被害状況
12 死に至った経過と年齢別の死者発生状況
13 火災種別ごとの死者発生状況
14 建物構造別・死因別死者発生状況
15 建物用途別及び階層別の死者の発生状況
16 建物火災の火元建物用途別の損害状況
17 防火管理に関する命令等(消防法第8条及び第8条の2)の状況
18 防火対象物に関する命令等(消防法第5条、第5条の2及び第5条の3)の状況
19 消防用設備等に関する措置命令等(消防法第17条の4)の状況
20 関東大地震以後の主な地震災害
21 東海地震に係る地震防災対策強化地域、東南海・南海地震に係る地震防災対策推進地域、日本海溝・千島海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域
22 昭和23年以降の風水害等の記録
23 都道府県の防災訓練の実施状況
24 都道府県別市町村消防組織一覧
25 消防機関数と消防職団員数の推移
26 自主防災組織の都道府県別結成状況
27 危険物施設数の推移
28 容量別、都道府県別屋外タンク貯蔵所の施設数(完成検査済証交付施設)
29 石油コンビナート等特別防災区域の現況と防災資機材等の整備状況
30 主な石油コンビナート災害
31 救急自動車による都道府県別事故種別救急出場件数
32 救急自動車による都道府県別事故種別救急搬送人員
33 都道府県別救急業務実施状況
34 都道府県別経営主体別救急病院及び診療所告示状況一覧表
35 都道府県別救助活動件数及び救助人員
36 国庫補助金による年度別消防防災施設整備状況
37 国庫補助金による年度別消防防災設備整備状況
38 2004年 世界主要都市の火災状況
39 地域衛星通信ネットワーク地球局整備状況
40 市町村防災行政無線通信施設整備状況
41 危険物施設の火災・漏えい事故件数の推移(過去20年)
42 危険物施設における火災発生原因の推移