はじめに 昭和23年に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする我が国の自治体消防制度が誕生してから、まもなく60周年を迎えます。 この間、社会経済情勢の変化とこれに伴う地域社会の変ぼうの中で、災害の態様も複雑多様化し、消防行政は多くの課題に直面してきました。 本年も、能登半島地震、新潟県中越沖地震などの大規模な災害が発生し、各地に大きな被害をもたらしています。また、首都直下地震等の大規模地震やテロ災害の発生も危惧されております。 このため、消防は国民の安心・安全を確保するため、大規模災害に対する備えや危機管理体制の強化、火災予防対策や地域防災力の推進、救急救命の充実と高度化等、総合的な消防防災対策を積極的に展開しております。 このような中、平成19年版消防白書では、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、国民保護への取組、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説するとともに、特集として現在、東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震の発生の切迫性が指摘されていることから「切迫する大地震〜それに立ち向かう施策とは〜」と題し、防災拠点となる公共施設等の耐震化の促進、災害時における消防と医療の連携の推進、緊急消防援助隊の現状と大規模地震災害時の運用方針、大規模地震時に対応した自衛消防力の確保について紹介しています。 また、消防防災上、特に話題性のある次の4項目をトピックスとして紹介しています。 トピックスIは、住民サービスの一層の向上が期待される消防の広域化に対する消防庁の取組をまとめた「消防の広域化に向けて」です。 トピックスIIは、地域防災に重要な消防団員確保のための近年の取組をまとめた「消防団員確保に向けた取組」です。 トピックスIIIは、近年、我が国においてもテロや武力攻撃等の発生が危惧されることから「国民保護体制充実のためのシステム整備〜全国瞬時警報システム(J−ALERT)と安否情報システム〜」です。 トピックスIVは、救急自動車の適正な利用を推進し、増加の一途をたどる救急出動件数に対応するため、「急増する救急需要!〜救急自動車の適正利用の推進〜」です。 これらを踏まえ、この白書が国民の生命、身体及び財産を災害から守る消防防災活動について、国民の認識と理解を深め、また、国、地方公共団体のみならず住民、企業をも含めた消防防災体制の確立に広く活用されることを願うものです。平成19年12月
特集 切迫する大地震〜それに立ち向かう施策とは〜1 はじめに(1)切迫する大地震 静岡県や愛知県など1都7県に大きな被害を及ぼすおそれがあると指摘されている「東海地震」は、いつ発生してもおかしくない状況であるといわれており、その被害想定は、朝5時発生の場合で、死者が約7,900人から約9,200人、建物の全壊が風速により約23万棟から約26万棟となっており、経済的被害も最大ケースで約37兆円と想定されている。 また、「東南海・南海地震」は、今後30年間に発生する可能性がそれぞれ60〜70%・50%とされており、その被害想定は、朝5時発生の場合で、死者が約1万2,000人から約1万8,000人、建物の全壊が約33万棟から約36万棟となっており、経済的被害も最大ケースで約57兆円とされ、「東海地震」を超える被害が想定されている。 さらに、マグニチュード7クラスの地震発生の切迫性が指摘されている「首都直下地震」も、その被害想定は、想定される18タイプの地震動のうち、東京湾北部地震(マグニチュード7.3)において、冬の夕方18時・風速毎秒15mの場合で、死者が約1万1,000人、建物の全壊が約85万棟、経済的被害が約112兆円と想定されている。また、発生間隔が約40年(宮城県沖)のものもあり、切迫性が指摘されている「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」も、津波の発生等による大きな被害が想定されている。
(2)最近の地震発生状況 我が国においては、(1)で述べた大地震のほかにも、平成7年の阪神・淡路大震災に代表されるように、大きな被害をもたらす地震が全国どこでも起こりうるとされており、最近の主な地震の発生状況(第1表参照)からも、全国どこでも、いつ大地震が発生してもおかしくない状況にある。第1表 最近の主な地震の発生状況(最大震度5弱以上) 平成19年においても、3月には能登半島地震、7月には新潟県中越沖地震が立て続けに発生している。震度6強の地震で倒壊した新潟県柏崎市の家屋
(3)切迫する大地震に立ち向かう施策 「東海地震」など、従来から近い将来の発生が想定されている大地震のほかにも、阪神・淡路大震災や平成16年の新潟県中越地震のように、全国どこでも大きな被害をもたらす地震が発生する可能性があり、国を挙げて地震対策に取り組む必要がある。ア 国全体の取組 近い将来の発生が想定されている大地震に対する対策としては、「東海地震」については「大規模地震対策特別措置法(昭和53年)」、「東南海・南海地震」については「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成14年)」、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」については「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成16年)」が制定され、それぞれの地震による災害から国民の生命、身体及び財産を保護するため、地震防災対策の強化・推進に係る取組が進められているところである。 最近の動きとしては、平成18年4月の中央防災会議において、首都直下地震の地震防災戦略及び応急対策活動要領並びに東南海・南海地震の応急対策活動要領が、また、平成19年6月の中央防災会議において、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震応急対策活動要領が策定されたところであるが、東南海・南海地震については、同年3月に中央防災会議幹事会において、「東南海・南海地震応急対策活動要領」に基づく具体的な活動内容に係る計画が申し合わせられたところである。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国のどこでも起こりうる地震に対応するため、「地震防災対策特別措置法(平成7年)」が制定され、同法に基づき、全都道府県において平成8年度を初年度とする第1次地震防災緊急事業五箇年計画、平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画が策定され、地震防災施設等の整備の推進が図られてきたところであり、現在は、平成18年度を初年度とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画により、地震防災緊急事業の計画的な推進が図られているところである。イ 消防庁の取組 国を挙げた地震防災対策が進められている中、消防庁としても、防災拠点となる公共施設等の耐震化を進めることにより、地震災害発生時において地方公共団体が円滑に災害応急対策を実施するための拠点を確保するとともに、災害時の救急救助活動現場における消防機関と医療機関の有機的な連携を推進することとしている。 また、大規模災害等が発生した場合に全国規模での消防応援を行う緊急消防援助隊について、大規模災害等への対応力を一層強化するための増強整備を進めているほか、平成19年5月には、既に策定されている東海地震及び首都直下地震の緊急消防援助隊運用方針及び同アクションプランに加え、東南海・南海地震における緊急消防援助隊運用方針及び同アクションプランの策定を行う等、全国規模での出動を行うための出動計画の策定・改訂等も行っている。 さらに、以上のような公的セクターによる取組だけでなく、事業所における自衛消防力の確保を促進するため、同年6月、改正消防法が公布され、公布から2年以内の同法の施行とともに、多数の者が利用し、円滑な避難誘導が求められる大規模・高層の建築物等について、大規模地震に対応した消防計画の作成や、応急対応の実施に当たっての中心的組織として期待される自衛消防組織の設置が義務付けられることとなった。 これら切迫する大地震に立ち向かう施策の詳細については、以下に、項目ごとに述べることとする。
2 防災拠点となる公共施設等の耐震化の促進(1)耐震化の必要性 平成7年の阪神・淡路大震災では、全半壊した建築物が約25万棟にも及び、死者の8割以上が建築物の倒壊等によるものであったことから、建築物の耐震化の必要性が強く認識された。 また、災害応急対策の実施拠点となる庁舎、消防署等や避難所となる学校等の施設も被害を受け、災害応急対策の実施に多大な影響が生じたことから、これら防災拠点となる公共施設等の耐震化は、早急に取り組むべき重要な課題となっている。 しかし、平成16年の新潟県中越地震では、旧耐震基準で建築された一部市町村の庁舎が被災により使用不可能となる事態が発生しており、また、地方公共団体が防災拠点として使用する公共施設等の耐震率も、最新の平成18年調査(平成18年4月1日時点の平成18年度末の見込みの数値。以下同様。)において、59.6%にとどまっている。 防災拠点となる公共施設等は、多数の利用者が見込まれるほか、地震災害の発生時には災害対策本部や避難所となるなど、防災拠点としての機能を発揮することが求められる施設であることから、地震により被害を受けた場合、多くの犠牲者を生じさせるばかりでなく、災害応急対策の実施に支障をきたし、その結果として防ぐことができたであろう災害の発生や被害の拡大を招くおそれがある。 防災拠点となる公共施設等の耐震化は、当該施設を利用する住民等の安全確保を図るとともに、地方公共団体の円滑な災害応急対策の実施を確保する観点からも、極めて緊急かつ重要な課題であるといえる。
(2)耐震化の進捗状況ア 防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査 消防庁では、地方公共団体が所有又は管理する公共施設等の耐震化を促進するため、平成13年に「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討委員会」を開催し、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進検討報告書」を取りまとめた。その中で、全国の防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況を把握するため、耐震診断の基準及び耐震診断・改修実施状況について調査を実施し、以後、防災拠点となる公共施設等の耐震化の進捗状況を確認するため、平成15年、平成17年及び平成18年に調査を実施している。 ここでは、平成17年と直近の平成18年の調査結果を比較することとする。イ 調査対象棟数 地方公共団体が所有又は管理する防災拠点となる公共施設等の棟数は、平成18年調査では19万1,891棟で、このうち10万8,828棟(56.7%)が昭和56年5月31日以前の建築確認を得て建築された、いわゆる旧耐震基準で建築されたものである。平成17年調査の19万1,427棟及び11万834棟(57.9%)と比べ、全体の棟数は464棟増加する一方、旧耐震基準で建築された棟数は2,006棟減少していることから、防災拠点となる公共施設等全体に占める旧耐震基準の建築物の比率も減少している(第1図参照)。第1図 調査対象棟数(建築年次別)ウ 耐震診断の実施状況 旧耐震基準で建築された建築物棟数のうち、耐震診断を実施した棟数は、平成18年調査で5万9,917棟(55.1%)であり、平成17年調査の5万1,051棟(46.1%)と比べ、棟数、率ともに大きく増加している(第2図参照)。第2図 耐震診断実施率エ 耐震診断に基づく措置状況 耐震診断を実施した棟数のうち、「耐震性有」と診断された棟数と平成18年度末までに耐震改修が完了する棟数の合計は、3万1,264棟(52.2%)となっており、平成17年調査の2万7,466棟(53.8%)と比べると、棟数は大きく増加している。 なお、耐震診断を実施した棟数に占める措置済みの棟数の比率は1.6%減少しているが、これは、ウのとおり耐震診断を実施した棟数が大きく増加していることによるものであり、耐震診断に基づく耐震改修自体は着実に実施されているといえる(第3図参照)。第3図 耐震診断に基づく措置状況オ 耐震化の進捗状況 ・昭和56年6月1日以降の建築確認を得て建築された、いわゆる新耐震基準で建築された建築物 ・旧耐震基準で建築された建築物のうち、耐震診断の結果「耐震性有」と診断された建築物 ・耐震改修を実施した建築物 上記の建築物については、耐震性能を有するものとされており、平成18年度末までには11万4,327棟(59.6%)の耐震性が確保され、平成17年度末の10万8,059棟(56.4%)と比べ、棟数、率ともに増加している(第4図参照)。第4図 耐震率カ 総括 ウのとおり耐震診断を実施した棟数は大幅に増加し、エのとおり診断結果に基づく耐震改修も着実に実施されているが、全体でみると、平成18年度末の見込みで59.6%の耐震率にとどまっており、いまだ十分に耐震化されているとは言い難い。 また、市町村にあっては、都道府県と比べ、耐震診断実施率、耐震率ともに低く、市町村の耐震化に係る取組の推進が望まれる(第5図参照)。第5図 都道府県と市町村の比較
(3)耐震化のための環境整備 平成17年9月の中央防災会議において決定された「建築物の耐震化緊急対策方針」では、公共建築物の耐震化について、耐震診断実施結果をもとにした耐震性に係るリストを作成し、住民への周知を図る等の取組を促進するとともに、耐震化に係る具体的な数値目標の設定に努め、緊急性の高い施設を絞り込み、重点化を図りながら耐震性を確保する等の措置を図ることとされた。 これを受け、平成18年1月に改正された「耐震改修の促進に関する法律」では、都道府県は耐震診断及び耐震改修の実施に関する目標や施策に関する事項等を内容とする都道府県耐震改修促進計画を策定することとされ、市町村においても都道府県耐震改修促進計画等を踏まえて市町村耐震改修促進計画の策定に努めることとされた。 また、平成18年4月の中央防災会議において決定された「首都直下地震の地震防災戦略」では、向こう10年間に、首都直下地震の被害想定地域(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)において防災拠点となるすべての公共施設等の耐震化を図ることを目指すこととされた。 こうした環境の下、国、地方公共団体がより一層連携し、公共施設等の耐震化を強力に推進していくこととしている。
(4)耐震化の促進 防災拠点となる公共施設等の耐震化は着実に進捗しているものの、十分とはいえず、耐震性に係るリストの作成・公表や具体的な数値目標の設定など、耐震化に係る取組をより一層推進することが望まれる。 消防庁においても、防災拠点となる公共施設等の計画的な耐震化を強力に推進するため、地方債・地方交付税による財政支援により、公共施設等耐震化事業の一層の促進を目指すほか、新たに平成19年度から耐震改修の前提として必要となる耐震診断に要する経費について地方交付税措置を講じることとした。 また、地方公共団体の担当者のための耐震診断・耐震改修工事事例集として、平成17年に「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、消防庁のホームページに公表する等の措置を講じているところであるが、平成19年には地方公共団体が有する多くの公共施設について、どのような優先順位で耐震化を進めるべきかを検討するための参考となるよう、実例に即して解説を加えた「地方公共団体の耐震化促進実例」を新たな章として追加することとした。 今後とも、地方公共団体の早急かつ計画的な耐震化の推進を求めるとともに、地方公共団体の取組を支援していくこととしている。
(5)その他 平成16年の新潟県中越地震など、最近発生した主な地震における負傷原因の3〜5割は、家具転倒に起因するものであり、また、家具の転倒・落下は、その散乱等により、安全な避難経路が確保できず、避難の遅れにもつながることから、地域における人的被害軽減のため、防災拠点となる公共施設等の耐震化のほか、家具の転倒防止対策の促進が必要である。 また、「頑張る地方応援プログラム」において、家具転倒防止など自主防災の推進、消防団の充実など地域の防災体制の整備などを進める「安心・安全なまちづくりプロジェクト」を例示し、その取組のための経費について地方交付税により支援することとしている。
3 災害時における消防と医療の連携の推進(1)消防と医療の連携の必要性 平成7年の阪神・淡路大震災以降、国や地方公共団体の危機管理意識は一層高まり、消防・防災、医療などの各分野で、災害対策・制度の充実が図られている。一方で、近年、交通網の発達(高速化・高度化)や都市整備の進展、生活様式の変化などに伴い、災害の形態が多様化しており、高エネルギー外傷を含む様々な傷病者が発生する可能性がますます高まっている。 このような中、平成17年のJR西日本福知山線列車事故に代表されるように、災害時の救急救助活動現場において、消防機関が医療チームと連携し、円滑な現場活動を行うことによって大きな効果を上げた事例が注目されており、災害現場における消防と医療の連携の必要性に対する認識が高まっている。 災害救助現場、現場救護所、搬送に至る一貫した救急救助活動の中では、例えば、救助方法を選択する際の医学的助言や救助活動と並行した要救助者への医療処置など、要救助者の救命のため、医療チームの役割が必要となる場面が数多く存在する。 一方で、医療機関側にとっても、現場で医療活動を実施する際には、消防機関による災害状況に関する適切な情報提供、現場における安全管理、入院患者の転院搬送など、消防機関の協力が不可欠であり、災害時における消防と医療の連携体制の確立が望まれている。 このような状況に対応すべく、消防庁では、災害現場における消防機関と医療機関の連携についての有用性を整理するとともに、全国の消防機関と医療機関が共通の認識を共有できるよう、救急救助活動と災害現場における医療活動との具体的な連携方策を検討し、連携マニュアル(評価指標)を作成するなど、災害時における消防機関と医療機関の連携の推進を図っている(第6図参照)。新潟県中越沖地震における救出活動(新潟市消防局提供)第6図 災害時の医療機関と消防機関の連携について(イメージ)
(2)連携の進め方ア 連携体制 平成16年の新潟県中越地震やJR西日本福知山線列車事故、さらには平成19年7月に発生した新潟県中越沖地震の際にみられたように、消防機関による活動に当たっては、相互の応援協定に基づく応援隊の出動、緊急消防援助隊の出動や災害派遣医療チーム(DMAT;Disaster Medical Assistance Team)の出動、ドクターヘリによる早期の救助活動、現地隊と応援隊との分担による救急搬送など、医療機関との連携による的確な救急救助活動が大きな成果を上げているところである。新潟県中越沖地震におけるDMATの活動(新潟市消防局提供) 災害時という特殊な状況下における消防と医療の円滑な連携のためには、災害発生からの活動を時系列的に追い、次に掲げる具体的な連携を要する事項について確認することが重要であり、各関係機関においては、消防と医療の連携の現状を理解し、不十分な部分について引き続き連携方策を検討・改善していくことが求められている。(ア)平時のあり方 大規模災害が発生していない平時の消防活動(救急・救助)において、医療機関との連絡ないし連携体制が具体的に実践されていることが重要であり、消防機関の研修、訓練やメディカルコントロール協議会における事後検証、症例検討などを通して交流を図り、日ごろから消防機関と医療機関の「顔の見える関係」を構築することが不可欠である。(イ)要請体制 小規模な災害であっても、医師要請がなされた場合に、医療機関が積極的に出動する等、協力体制の構築が重要である。(ウ)連絡体制 連絡窓口を一元化し、関係組織間において緊急時の連絡先情報を共有すべきである。(エ)後方支援の分担 災害現場への医療チームの出動手段、現場における使用資器材、あるいは情報収集・共有のための通信手段などの後方支援に関して、消防機関及び医療機関により平時において事前に調整がなされなければならない。(オ)現場指揮命令系統 消防機関は階級に基づく指揮命令下で行動するが、医療チームは定まった指揮系統を持たないことが多いため、今後、災害時においては医療チームの代表者となる統括医師(いわゆるメディカルディレクター)を設置することが重要である。 また、消防機関と医療機関の役割分担が重要となるため、安全面など現場全般については消防側の判断、個別の医療処置については医療チームの判断が優先するなどのルールを共有することが必要となる。イ 医療チームの形態の多様化 災害時においては、災害拠点病院の医療救護チーム、医師会その他の病院関係団体など、多様な医療チームが活躍している。中でも、災害派遣医療チーム(DMAT)は、現在では全国で200チーム以上が養成されるなど、災害発生直後の急性期に活動できる機動性をもった医療専門家チームとして重要な役割を果たしている。 また、平成19年6月、いわゆるドクターヘリコプターの全国整備を目的として、「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」が公布されたところであり、同法の制定を機に、消防機関と医療機関との連携協力について一層の強化を図ることとしている。ウ その他の機関及び地域住民との連携 地震等の災害時においては、消防機関と医療機関に加えて、警察や自衛隊等の機関が出動する場合や発災地周辺の住民や民間機関等との協働も考えられ、そのような場合にも、出動した関係機関は互いに連絡調整を行い、協力して災害の軽減化に当たることが求められる。このため、訓練や広報・普及啓発等を通じて、平時より「顔の見える関係」を築くことが重要となっている。
(3)今後の検討課題 消防庁の「災害時における消防と医療の連携に関する検討会」では、今後の検討課題として、医療従事者、自衛隊、警察など関係者との専門用語や災害時に用いる言語などの共有化又は共通化、テロ災害をも念頭に置いた国民保護法を踏まえた新たな連携活動のあり方、さらにトリアージマニュアルの統一等が挙げられた。また、医療チームが災害現場に出場した場合の指揮命令系統、通信手段の確保、医師等の災害補償等の問題解決のために、医療チームの医師等スタッフについて、例えば、「特殊な機能を有する消防団員、分団(機能別団員、機能別分団)とする」との考え方も提示されており、これらの検討課題の幅広い議論を通じて、より一層、災害時における消防と医療の連携体制を整備していくことが期待されている。
4 緊急消防援助隊の現状と大規模地震災害時の運用方針(1)緊急消防援助隊の発足 我が国においては、消防組織法の規定により、市町村の区域内で発生した災害等に対しては、その市町村の消防が対応責任を有している。 しかし、平成7年の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、被災した市町村はもとより当該都道府県内の消防力のみでは対応が困難な大規模災害等において、全国規模での消防応援を迅速に行い被害の軽減を図るために、同年、「緊急消防援助隊要綱」に基づき、全国の消防本部による緊急消防援助隊が発足した。 当初は、被災地における緊急消防援助隊の指揮が円滑に行われるように、その支援活動を行う指揮支援部隊をはじめ、消火部隊、救助部隊、救急部隊及び被災地における緊急消防援助隊の活動に関して必要な補給活動を行う後方支援部隊の5部隊、計1,267隊で発足したが、その後、平成13年に航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊の3部隊、平成16年に都道府県指揮隊、特殊装備部隊の2部隊を加え、平成19年4月現在では計10部隊、3,751隊が緊急消防援助隊として登録されている。 発足後は、平成8年12月に新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害をはじめとし、平成12年3月の北海道有珠山噴火災害、平成13年3月の芸予地震、平成15年9月の栃木県黒磯市のタイヤ工場火災、平成15年9月の北海道十勝沖地震及び苫小牧市における石油製油所タンク火災など、平成16年3月までに10災害に出動した。
(2)緊急消防援助隊の法制化 東海地震等大規模地震災害の切迫性やNBCテロ災害発生の危険性の高まりが指摘される中、複数の都道府県に及ぶような大規模災害や特殊な災害に迅速・的確に対応できるよう、広域応援体制の充実強化が必要とされた。 これを受け、平成15年6月の消防組織法の改正により、緊急消防援助隊が法律上位置付けられ、その根拠が明確になるとともに、併せて消防庁長官の指示権が創設され、平成16年4月に、法律に基づく部隊として新たに発足した(第7図参照)。第7図 災害の規模等に応じた消防の応援 また、これに合わせ総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下「基本計画」という。)を、消防庁長官が「緊急消防援助隊運用要綱」を定め、計画的な体制の充実強化と効果的運用を図っている。 法制化以後、緊急消防援助隊は、平成16年7月の新潟・福島豪雨災害や福井豪雨災害、同年10月の新潟県中越地震、平成17年4月のJR西日本福知山線列車事故、さらに、平成19年3月に発生した能登半島地震及び7月に発生した新潟県中越沖地震など、10災害に出動している。
(3)緊急消防援助隊の増強整備 緊急消防援助隊の部隊は、消防組織法第45条の規定に基づき、消防庁長官が登録することとされており、その登録規模については、基本計画において、当初、平成20年度までの登録目標部隊数を3,000隊とした。 しかし、その後に公表された首都直下地震等の最新の被害想定等を踏まえ、国民の安心・安全を確保するため、消火・救助・救急に係る主要部隊を中心に、大規模災害等への対応力を一層強化するため、平成18年2月に基本計画を変更し、緊急消防援助隊の登録目標を4,000隊規模に拡大し、増強整備を進めている(第8図参照)。第8図 指揮支援隊・都道府県隊の配置状況
(4)消防防災ヘリコプターのより安全かつ積極的活用 大規模災害において消防の迅速かつ効果的な応援活動を実施するため、消防防災ヘリコプターを緊急消防援助隊航空部隊として登録し、その計画的な増強を推進している(平成19年4月現在、全国38道県が保有する42機、14消防本部が保有する28機の合計70機。)。 大規模災害発生時には、即座に上空から被害状況を調査し、テレビカメラで撮影した映像をヘリコプターテレビ電送システムにより国並びに災害発生都道府県や市町村に設置される災害対策本部などに対して送信するとともに、消火、救助、救急等その機動力を最大限に発揮した消防活動を行うこととしている。 また、航空部隊と地上消防部隊との連携体制の確立、夜間等悪条件下における運航体制及び複数機による活動現場での安全かつ効果的な運用体制の確保並びに自衛隊や海上保安庁等他の航空部隊等との的確な連携体制の確保等に努めており、今後とも、住民が安心して暮らせる地域社会の実現のため、消防防災ヘリコプターの効果的活用をさらに積極的に推進していくこととしている。平成19年(2007年)新潟県中越沖地震で救急活動中の緊急消防援助隊(横浜市消防ヘリ)
(5)緊急消防援助隊運用方針とアクションプランの策定等 緊急消防援助隊として必要な部隊や出動計画等については、基本計画に規定しており、その中で特にその発生が危惧される東海地震、東南海・南海地震及び首都直下地震等の大規模地震災害については、2以上の都道府県に及ぶ著しい被害が想定され、消防力が不足すると考えられることから、全国規模での緊急消防援助隊の出動を行うため、各地域の被害想定等を踏まえた上で、消防庁長官が特別の出動計画を策定することとしている。 平成15年12月に、東海地震及び首都直下地震におけるそれぞれの緊急消防援助隊運用方針(当該地震災害における緊急消防援助隊の出動等に関する基本的な考え方)及び同アクションプラン(当該運用方針に基づく緊急消防援助隊の出動計画)を策定し、平成19年4月1日現在における緊急消防援助隊の登録状況等を踏まえ、同年5月に部隊数等について所要の改訂を実施した。 さらに、平成19年3月の中央防災会議幹事会において、東南海・南海地震の被害想定に基づく具体的な活動計画について申合せがなされたことを踏まえ、消防庁では、緊急消防援助隊の効果的かつ迅速な運用を図るため、同年5月に東南海・南海地震における緊急消防援助隊運用方針及び同アクションプランを新たに策定した(第9図参照)。第9図 東南海・南海地震における緊急消防援助隊アクションプランの概要
(6)今後の取組 消防は、地域住民の安心・安全に直結する重要な役割を担っており、このため、消防庁では、緊急消防援助隊の機動力の強化など部隊運用の一層の強化を図るため、部隊配備を総合的に調整する仕組等について検討を行うなど消防の応援体制の充実強化に努めるとともに、大規模災害等に備えた災害対応力のさらなる向上を図ることとしている。
5 大規模地震等に対応した自衛消防力の確保〜消防法改正〜(1)大規模地震発生時等における事業所の防災体制の課題 大規模・高層建築物等においては、他の防火対象物と同様に火災による被害防止を図るため、管理権原者(建築物の管理行為を法律、契約又は慣習上当然行うべき者。所有者や借受人等が該当。)が防火管理者を選任し、消防計画を作成させてこれに基づく消火、通報、避難の訓練実施等の防火管理業務を行わせることが消防法により義務付けられている。他方、地震災害は、被害態様の違いや、消防機関による迅速な対応が必ずしも期待出来ないことなどにより、火災とはその対応が相当に異なると考えられるところであるが、これを想定した計画の作成や訓練の実施の取組については、十分とはいえない状況にあった。また、災害時に応急対応を実施する中心的組織として期待される自衛消防組織については、これまで防火管理業務の一環として消防計画に定める事項の一つとされてきたものの、組織構成や装備等の具体的内容に関しては関係者の自主的な取組に委ねられてきた。 大規模・高層建築物等が一層増加している現在、これらの建築物における火災以外の災害、とりわけ全国的にその切迫性が指摘されている大規模地震に対する事業者側の自衛消防力の確保を図ることは、喫緊の課題であった。 消防庁では、こうした状況も踏まえ、防火対象物の今後の防火安全対策について全般的に見直すため、平成18年7月に「予防行政のあり方に関する検討会(委員長:平野敏右千葉科学大学学長)」を開催して幅広く検討を進め、同年12月に緊急性の高い大規模地震等に対応した自衛消防力の確保に関し中間報告を取りまとめた。 また、消防審議会(会長:菅原進一東京理科大学大学院教授)においてもこの問題に関して同年11月から審議がなされ、平成19年2月に「大規模地震等に対応した自衛消防力の確保に関する答申」がなされた。 これらの検討結果を踏まえ、消防法の一部を改正する法律案が平成19年の第166国会(常会)に提出され、参議院及び衆議院でそれぞれ全会一致により可決、同年6月22日に公布された(第10図参照)。第10図 消防法の一部を改正する法律の概要
(2)大規模地震等に対応した自衛消防力確保のための消防法の一部改正ア 大規模地震等に対応した消防計画の作成 改正消防法により、大規模・高層建築物等の管理権原者は、火災その他の災害の被害の軽減に関する知識を有する者として資格を有する者のうちから防災管理者を定め、地震災害等に対応した消防計画を作成し、これに基づいて、エレベーター閉じ込め事案をはじめ同時多発的な災害事案への対応など地震発生時に特有な被害事象(第11図参照)に関する応急対応や避難の訓練の実施その他防災管理上必要な業務を行わせなければならないこととされた。第11図 火災及び大規模地震発生時の被害事象等の相違点 なお、防火・防災の一元的な管理を実現するため、防災管理者が防火管理業務も併せて実施することとされた。 また、対象建築物等で管理権原が分かれているものにあっては、現行の共同防火管理制度と同様、防災管理上必要な業務に関する事項について、協議して定め、届け出なければならないこととされた。 さらに、大規模地震等発生時における大規模・高層建築物等の応急活動が有効に実施されるためには、適切に災害を想定してその被害に対応できるように合理的な消防計画を検討、作成し、この計画に基づく実践的訓練が実施されるとともに、訓練時又は中小規模の地震発生時等に見出された活動上の問題点についての計画の見直しが定期的に行われる、いわゆるPDCAサイクルによる防火・防災管理体制が構築されることが必要である。そこで、消防庁では今後、〔1〕適正な規模を想定した地震等の被害の予測、〔2〕被害の発生・拡大防止のために必要な予防活動・応急活動体制等の決定、〔3〕応急活動体制の有効性を確保するための訓練・検証方法の決定などに関し、消防計画作成上のポイントや留意すべき事項を取りまとめたガイドラインを作成し、関係者に周知して消防計画作成の支援を行うこととした。イ 自衛消防組織の設置 これまで自衛消防組織については、消防計画に盛り込むべき事項の一つとされてきたが、その設置については、法律上明確に定められたものではなく、自主的な取組に委ねられていた。 消防法の一部改正により、新たに消防法第8条の2の5の規定が設けられ、防火管理業務の実施が必要な防火対象物のうち、多数の者が出入りする大規模なものの管理権原者は、火災その他の災害による被害を軽減するために必要な業務を行う自衛消防組織を設置しなければならないこととされた。 自衛消防組織は、防火対象物における火災又は地震等の災害による被害を軽減するための応急活動を業務とし、具体的には、在館者の生命・身体の保護、被害の拡大防止を目的として消火活動、通報連絡、避難誘導、救出・救護等を実施するものであり、個々の建物の状況に即した応急活動を実施することができるよう、必要な人員及び装備をもって編成する必要がある(第12図参照)。第12図 自衛消防組織編成例
(3)今後の取組 今回の改正消防法の施行に向け、今後、次に掲げる事項について取り組んでいくこととしている。ア 消防計画作成ガイドラインの充実強化 消防計画作成ガイドラインについては、特に災害想定手法、地震発生時の対応行動及び新たな訓練手法等、今後も最新の知見を取り入れたものへと充実強化を図っていくことが必要であり、消防庁としても必要な調査研究を実施し、ガイドラインに反映させるとともに、事業所に対しても情報提供を行う。イ 新たな講習制度の充実強化  防災管理者、自衛消防組織の中核的要員及び防災管理点検資格者に対する講習について、従来の防火管理者等に対する講習等の実施と併せ効率的に実施するとともに、災害時に的確な対応ができる能力を身に付けるために効果的な講習を実施する。ウ 予防担当職員の資質向上 消防機関に届出される消防計画について、消防機関がその適否の判断、指導や自衛消防訓練の実施に関する助言などが的確にできるよう、予防担当職員の資質を向上させることが重要であり、研修会の実施等、教育訓練の充実を図る。
トピックスI 消防の広域化に向けて1 消防の広域化の必要性 災害の大規模化、住民ニーズの多様化等、近年消防を取り巻く環境は急速に変化しており、消防はこの変化に的確に対応する必要がある。 しかしながら、小規模な消防本部においては、一般的に、出動体制、保有する車両等の住民サービス面や組織管理面での限界が指摘されるなど、消防の体制としては必ずしも十分でない場合がある。 そこで、第164回国会(平成18年通常国会)において、市町村の消防の広域化を推進するための消防組織法の改正が行われた。 市町村の消防の広域化とは、消防体制の充実強化による住民サービスの一層の向上を図るために、一部事務組合等の制度を活用して、常備消防の規模を拡大することである。広域化によって期待できるメリットは以下のとおりである(第1図参照)。第1図 広域化によって期待できるメリット〔1〕 住民サービスの向上 広域化により一つの消防本部が保有する部隊数が増えるため、初動出動台数が充実するとともに、統一的な指揮の下、効果的な災害対応が可能となる。 また、消防本部の管轄区域が拡大するため、消防署所の配置及び管轄区域の見直しが容易となり、それによって現場到着時間の短縮等の効果が期待できる。〔2〕 人員配備の効率化と充実 広域化により一つの消防本部の職員数が増加するとともに、総務部門や通信指令部門の効率化により生じた人員を、住民サービスを直接担当する部門に配置することにより、当該部門を増強することが可能となる。 さらに、特に近年著しく高度化している予防業務や救急業務について、担当職員の専門化や専任化が進むことが考えられ、質の高い消防サービスの提供が可能となる。〔3〕 消防体制の基盤の強化 広域化により財政規模が拡大するため、小規模な消防本部では整備が困難なはしご車や救助工作車などの高度な車両や発信地表示システム等を備えた高機能な指令設備の計画的な整備が可能となる。 また、広域化によって職員数が増加することにより、人事ローテーションの設定が容易になることや、職務経験の不足や単線的な昇進ルートの解消を期待することができるなど、組織管理の観点からも多くのメリットが期待できる。
2 消防庁の取組(1)基本指針の策定 消防庁は、消防組織法の一部を改正する法律の公布・施行から約1か月後の平成18年7月12日、消防組織法第32条第1項に基づき、「市町村の消防の広域化に関する基本指針」(平成18年消防庁告示第33号。以下「基本指針」という。)を策定した。 この基本指針において、都道府県は、広域化の対象となる市町村(以下「広域化対象市町村」という。)の組合せ等を内容とする推進計画を、遅くとも平成19年度中には定めることとされている。また、広域化対象市町村においては、推進計画策定後5年度以内(平成24年度まで)を目途に広域化を実現することが求められている。 推進計画において定める広域化対象市町村の組合せに関する基準について、広域化の規模は、一般論として、消防本部の規模が大きいほど、災害への対応能力が強化されることとなり、組織管理、財政運営等の観点から望ましいとしている。その上で、現状を踏まえつつ、これからの消防に求められる消防力、組織体制、財政規模等にかんがみると、管轄人口の観点からいえばおおむね30万以上の規模を一つの目標とすることが適当であるとしている。ただし、各市町村は、管轄面積の広狭、交通事情、島嶼部等の地理的条件、広域行政、地域の歴史、日常生活圏、人口密度及び人口減少等の人口動態等の地域の事情をそれぞれ有しているため、これらに対する十分な考慮が必要であるとしている。
(2)消防広域化推進本部の設置 前述の基本指針の策定と同日の平成18年7月12日、消防庁では、広域化の推進方策の検討及び実施並びに都道府県及び市町村における広域化の取組のために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置した。 設置同日の第1回会合から6回の会合が開催され(第1表参照)、広域化の推進方策等について議論を行っている。具体的な取組は以下のとおりである。第1表 消防広域化推進本部の開催状況〔1〕 都道府県の推進計画策定の促進・支援 平成18年10月に全国の消防長、市町村防災担当部(課)長、都道府県消防防災主管部長など3,000機関へ、消防広域化資料集や広域化事例等と併せて協力依頼文書を送付した。 また、都道府県に対するヒアリングを行い、平成19年4月には、推進計画の策定について議論する協議機関の設置状況等について把握し、その結果を踏まえて個別に助言等を行うとともに、9月には、協議機関の検討状況・推進計画の策定見込み時期等について把握した。〔2〕 消防長・市町村長等に対する情報提供 平成19年10月1日現在で、130を超える地域に消防広域化推進本部の構成員等が出向き、消防長・市町村長等に対し、消防の広域化に関する説明を行っている。
(3)広域化推進アドバイザーの派遣・相談体制の確保 既に広域化を実現した消防本部の幹部職員等を消防広域化推進アドバイザーとして消防庁に登録し、市町村等からの依頼に応じて派遣することにより、広域化を検討している市町村等へ助言等の支援を行っている。平成19年度には9人がアドバイザーとして登録されており、平成19年10月1日現在で16回の派遣実績がある。 また、消防広域化推進本部に広域化推進相談窓口を開設し、全国を5つの地域に分け、地域ごとに担当者を配置した。各都道府県からのみならず、各市町村や各消防本部から相談が寄せられている。平成19年度には、消防広域化推進本部の事務局に当たる消防庁消防・救急課に広域化推進専門官、広域化推進係を設置し、広域化の積極的な推進に向けた相談体制を充実させた。
(4)広報及び普及啓発 消防の広域化について消防庁ホームページ内での専門ページの開設(http://www.fdma.go.jp/neuter/koikika/koikika_index.html)や、総務省広報誌等での紹介とともに、市町村、都道府県等の広報誌や消防本部の機関誌等への掲載依頼を行っている。 また、広域化の理解を深めるとともに、各地域での議論に役立ててもらうため、消防の広域化の必要性やメリット等をまとめたパンフレットを38,000部、広域化の先進的な事例をまとめた事例集を5,000部作成し説明の際に活用している(第2図参照)。第2図 「市町村の消防の広域化」パンフレット・消防広域化推進事例集長野県消防広域化推進検討委員会(長野県危機管理局消防課提供) さらに、平成19年5月から7月にかけて全国で3回のシンポジウムを開催し(第2表参照)、広域化のメリット等に関する基調講演や広域化を実現している消防本部による事例紹介、都道府県職員・消防関係者等によるパネルディスカッションなどを行った。第2表 消防広域化シンポジウムの開催状況 各回とも、都道府県・市町村職員、消防関係者、地域住民など300〜500名の参加があり、消防の広域化の必要性についての理解を深めるとともに、将来の消防の姿について検討した。
(5)消防広域化支援対策 消防組織法第35条第2項に基づき、市町村の消防の広域化への取組等を支援するため、平成19年度から「消防広域化支援対策」として、都道府県の推進計画作成に係る経費及び市町村の消防の広域化に伴って必要となる経費に対して、消防の広域化に支障の生じることがないよう、必要な財政措置を講じている。 例えば、消防署所等の整備については、これまで地方債の元利償還金を普通交付税の基準財政需要額に算入する措置は行われてこなかったところであるが、今回の消防組織法の一部改正に伴う市町村の消防の広域化に限り、広域化対象市町村が、消防の広域化に伴って、消防力の整備指針(平成12年消防庁告示第1号)に基づき行わなければならない広域消防運営計画に定められた消防署所等(消防署、出張所、分遣所、駐在所、派出所、指令センター等)の整備(土地の取得経費を含まない。)については、事業費のおおむね90%に一般単独事業債(一般事業・一般分)を充当し、元利償還金の30%に相当する額を、後年度、普通交付税の基準財政需要額に算入することとしている。
3 全国の取組状況 前述のように、消防庁では、広域化に関する取組方針・状況について、これまでに4回、都道府県の消防広域化事務担当者に対しヒアリングを行っている。ヒアリングなどによる全国における広域化の取組の概要は以下のとおりである。
(1)各都道府県の推進計画策定の進捗状況について 基本指針において、都道府県が推進計画を定めるに当たっては、都道府県に、都道府県、市町村の代表、消防機関の代表(常備消防・消防団)、住民代表及び学識経験者等で構成する委員会等の協議機関を設置するなどして、関係者のコンセンサスの形成に努めることが重要であるとされている。 この協議機関の設置状況については、基本指針の策定から5か月足らずの2回目のヒアリングの頃(平成18年11月〜12月)までに、協議会等を設置した都道府県があった。平成19年10月1日現在で、ほぼすべての都道府県で協議機関が設置され検討が進められており、平成19年度中に推進計画が策定される予定である。
(2)広域化に関する各都道府県内の消防本部・市町村の取組について 都道府県の消防長会においては、消防の広域化に対して積極的な姿勢を示しているところがあり、市町村においても、消防広域化推進本部の構成員や消防広域化推進アドバイザー等の派遣を要請するなどして広域化に関する理解を深めようと取り組んでいるところがある。
4 まとめ 消防庁としては、平成19年度中にすべての都道府県において推進計画が策定されるよう、消防広域化推進本部を中心として前述のような広域化の推進に向けた取組を行っている。 平成20年度は、市町村において、推進計画に基づき広域化の検討が具体的に開始されることとなる。都道府県についても、広域化対象市町村が広域化を検討する過程での市町村相互間の調整、必要に応じた市町村への勧告という役割が消防組織法上規定されている。 将来のあるべき消防体制をそれぞれの地域が自ら考えるとともに、消防の広域化の実現に向けて、都道府県及び市町村においても引き続き積極的な取組が求められている。
トピックスII 消防団員確保に向けた取組1 はじめに 消防団は、地域の安心・安全の確保のため、住民の自発的な参加によって構成される組織で、地域密着性、要員動員力及び即時対応力といった面で特に優れ、この特性を活かした地域における消防防災の中核的存在である。また、消防団員は常備の消防職員とは異なり、平素は他に職業を持ちながら「自らの地域は自らで守る」という崇高な郷土愛護の精神に基づき、消防活動を行う権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員である。 しかしながら、常備消防の進展、人口の過疎化、少子高齢化の進行、産業・就業構造の変化などに伴い、消防団員が年々減少し、かつて200万人いた消防団員が今では90万人を割るなど、地域防災力の低下が懸念されている。
2 消防団の重要性と現状 我が国は、昔から災害列島といわれてきた。特に近年の災害は大規模化・広域化の様相を呈しており、平成19年に入ってからも能登半島地震や新潟県中越沖地震、相次ぐ台風の上陸や集中豪雨による風水害など全国各地に都道府県域を超えた広範囲にわたる大きな被害が発生している。 また、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震の発生が危惧されている中にあって、国民の安心・安全に寄せる関心は極めて高いものとなっており、消防防災体制の充実強化は、国、地方を通じて最重要課題の一つである。 その中でも、常備消防の充実はもとより、地域防災の中核的存在である消防団の充実強化は、地域防災力の向上には必要不可欠なものである。 さらに、消防団の活動範囲も、通常の災害対応はもちろんのこと、各種警戒や火災予防広報運動の実施、救命講習の指導、国民保護法制の施行に伴う住民の避難誘導など多岐にわたっている。このように地域の安心・安全のために、献身的かつ奉仕的に活動している組織は他になく、消防団の更なる活躍が期待されているところである。 ところが、地域の防災力の要である消防団員は減少の一途をたどっており、これらの原因として、人口減少による過疎化、消防団員の高齢化、団員の被雇用者化などがいわれているが、この危機的な状況に歯止めをかけるため、消防庁では団員確保に向けた様々な取組を実施している。 特に近年の主な取組を以下に紹介する。
3 消防団員確保に向けた施策(1)消防団組織・制度の多様化 地域防災体制の充実を図るためには、住民の幅広い層から消防団に参加する人を確保することが必要である。消防団員はすべての消防団活動に参加することが基本であるが、団員の確保が困難な場合に、その補完制度として、特定の災害・活動のみに参加する「機能別団員・分団制度」を構築し、全国の市町村等が地域の実情に応じて制度の導入を図り、地域防災体制の充実が推進されるようにしている。〔1〕 機能別団員 従来からのすべての消防団活動に参加する団員(以下「基本団員」という。)を確保することが困難な場合で、その機能性等に着目し、大規模災害発生時など、ある特定の災害活動や役割を行う消防団員を配置できる制度である。機能別団員の報酬については、日額報酬や異なる年額報酬の設定など制度を柔軟に運用することができる。本制度の採用により、勤務条件が厳しい被雇用者が災害活動や特定行事に限って参加したり、長年の消防活動により培った知識、経験を有する消防職団員OBなどが、災害活動の後方支援や住民指導に限って参加することが可能になる。〔2〕 機能別分団 前〔1〕の機能別団員を分団として組織して活動を行う制度である。報酬については前〔1〕と同様に制度を柔軟に運用することができる。本制度の採用により、大規模災害対応、火災予防対応など個別の内容を目的とした分団の設置や、事業所単位の分団の設置が容易になる。 また、消防団組織の活性化及び地域のニーズに応える方策として、女性のみの消防団員を分団として採用する動きが全国的に広まってきている。女性消防団員は、それぞれの地域において、広報活動、一般家庭への防火指導、一人暮らしの高齢者宅への防火訪問や応急手当指導など多岐に渡って活躍しており、また、大規模災害時には、避難誘導など更なる活躍が期待されている。大規模災害時の情報収集を任務とするバイク隊 宮城県気仙沼市(気仙沼市提供)重機を使用した救助救出を任務とする重機隊 東京都武蔵野市(武蔵野市提供)活躍する女性消防団員(三重県津市津消防団デージー分団)
(2)消防団協力事業所表示制度 消防庁では、全消防団員の約7割が被雇用者であることから、消防団活動への一層の理解と協力を得るために、事業所として消防団活動に協力することが、その地域に対する社会貢献として認められ、当該事業所の信頼性の向上につながるとともに、協力を通じて地域における防災体制をより一層充実するための「消防団協力事業所表示制度」を構築し、市町村等にその導入推進を図っている。 本制度は、事業所が消防団に対して市町村等の定める協力を行っている場合に、事業所の申請又は消防団長等の推薦により、協力事業所として認定されると「消防団協力事業所表示制度」表示証を社屋等に掲示することができる。また、ホームページなどにも掲載することができ、世間一般に広く広報することが可能なものである。この表示証には、市町村等が交付するものと消防庁が交付するものの2種類があり、さらに多くの市町村などに円滑に導入されるよう推進しているものである。「消防団協力事業所表示制度」表示証(市町村等交付用)
(3)消防団員確保アドバイザー派遣制度 過疎化、少子高齢化など消防団員の担い手不足が叫ばれ、各自治体で消防団員確保に大変苦慮していることを踏まえ、消防庁では、年々消防団員数が減少していることに歯止めを掛けるため、消防団員を確保する知識や経験を有する方を「消防団員確保アドバイザー」として消防庁長官が委嘱し、都道府県や市町村等へ派遣する「消防団員確保アドバイザー派遣制度」を平成19年4月1日からスタートさせている。 本制度は、「消防団員確保アドバイザー」が派遣先に出向き、都道府県や市町村等の消防団関係者及び消防団長等に、消防団員確保の具体的な助言、情報提供等の積極的な支援を行うものであり、現在30名を超える方々をアドバイザーとして委嘱しており、制度発足以来、全国各地にアドバイザーを派遣し、消防団員確保に向けた支援を積極的に推進している。五十嵐幸男アドバイザー(長野県)の講演風景
4 今後に向けて 今回、紹介した「消防団組織・制度の多様化」と「消防団協力事業所表示制度」については多くの市町村等が理解を示し導入を図っており、また、「消防団員確保アドバイザー派遣制度」についても、全国各地で積極的に活用され消防団員確保に取り組んでいる。 地域の幅広い層の住民が参加しやすい環境と、被雇用者の消防団員が消防団活動を行いやすい環境を整備し、消防団員の確保について更なる推進を図ることが、消防団の充実強化になり、ひいては地域防災の充実につながるものである。 消防団は地域防災の中核的存在として、地域の安心・安全の確保のために、献身的かつ奉仕的に活動している。この素晴らしい組織である消防団を日本の未来のために、次世代へと引き継いでいくことが重要である。 また、自衛消防組織を有する事業所については、日頃から地域の消防団と訓練を実施するなど消防団との連携強化を図り、事業所等が消防団活動への理解をより一層深め、機能別分団等への加入促進など、更なる消防団の充実強化が必要である。 今後も消防団員の活動環境整備を図るほか、社会のニーズに応えた様々な取組を検討・導入し、消防団のみならず、国、都道府県、市町村、事業所等の関係団体が一致団結して、消防団の充実強化に向けて全力で取り組んでいくことが重要である。
トピックスIII 国民保護体制充実のためのシステム整備〜全国瞬時警報システム(J-ALERT)と安否情報システム〜1 全国瞬時警報システム(J-ALERT)について(1)全国瞬時警報システム(J-ALERT)整備の経緯 武力攻撃事態等においては、住民の避難を的確かつ迅速に行うため、弾道ミサイル攻撃等の武力攻撃事態等に関する情報を速やかに住民に伝達することが大変重要である。また、緊急地震速報や津波情報等の自然災害に関する情報についても、できる限り迅速な伝達が強く求められており、そのための瞬時の情報伝達のシステム構築が喫緊の課題となっている。 このため、消防庁では、地域衛星通信ネットワークを通じて直接、市区町村の同報系防災行政無線等を起動させることにより、緊急地震速報、津波警報、気象警報などの防災情報や弾道ミサイル発射に関する情報等の有事情報を、人手を介さず瞬時に住民等に伝達するJ-ALERTの整備に向け、全力を挙げて取り組んでいるところである。 なお、武力攻撃事態等におけるサイレンについては、国民の保護に関する基本指針に基づき、平成17年度に開催した「武力攻撃事態等における警報サイレン音に関する検討会」において選定した候補音の中から、「国民保護に係るサイレン」として内閣官房により決定されている。
(2)J-ALERTによる送信対象と放送内容について 消防庁では、J-ALERTの運用について、平成17年10月から平成18年3月までの間、「サイレン等による瞬時情報伝達のあり方に関する検討会」において検討を行い、平成18年3月27日に報告書をまとめ、平成19年2月9日から送信を開始した。また、平成19年10月1日から、気象庁による一般国民向けの緊急地震速報の提供が開始されたことに伴い、当該情報の送信も開始している。 ア 送信対象(原則) J-ALERTの送信の対象は次のとおりである。〔1〕津波警報(オオツナミ)〔2〕津波警報(ツナミ)〔3〕緊急火山情報〔4〕緊急地震速報(予測震度5弱以上)〔5〕津波注意報〔6〕臨時火山情報〔7〕火山観測情報〔8〕東海地震予知情報〔9〕東海地震注意情報〔10〕東海地震観測情報〔11〕震度速報〔12〕気象警報〔13〕弾道ミサイル情報〔14〕航空攻撃情報〔15〕ゲリラ・特殊部隊攻撃情報〔16〕大規模テロ情報(武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律第二十五条第一項に規定する緊急対処事態であることの認定がなされた場合及びそれに準ずる場合に限る。)〔17〕震源・震度に関する情報(〔1〕、〔2〕、〔4〕、〔5〕、〔11〕に掲げる情報とは別に送信するものに限る。)〔18〕気象注意報〔19〕その他、土砂災害警戒情報、指定河川洪水予報等の追加についても今後検討  ※ 津波警報には「オオツナミ」と「ツナミ」の2種類あり、報告書では、便宜的に「大津波警報」、「津波警報」と記述している。 J-ALERTによる情報伝達は、同報無線等の市区町村の設備を使用すること等から、どのような情報をJ-ALERTを用いて送信するかについて(同報無線自動起動機の設定による)は、最終的には、市区町村が判断することとなる。 しかしながら、〔1〕〜〔4〕、〔13〕〜〔16〕の情報については、基本的に、国が第一報を覚知すると考えられること、極めて短時間での瞬時情報伝達と住民避難が必要となること、災害が発生した場合に大きな被害が予測されることから、他の手段による伝達に加え、対象となる地方公共団体において、原則としてJ-ALERTによる瞬時情報伝達も行うこととしている。 イ 放送内容 自然災害情報(緊急地震速報を除く。)に関しては、以下の理由から、基本的に、国側で統一的又は標準的な放送内容の設定を行わず、参考となる放送文言例や音声、考え方を示すこととし、それを踏まえて地方公共団体において、放送内容を関連機器設置時に事前に音声登録することとしている。(ア)同報無線等の屋外スピーカーの設置状況が地方公共団体ごとに異なり、反響の状況や放送スピードが千差万別であること。 (例 放送スピードが遅い場合は短めの放送、速い場合はサイレンやメッセージ量も多い等)(イ)地形により放送内容も千差万別(例 河川や海岸の有無)であること。(ウ)従来の経緯から、放送呼びかけ方法が地方公共団体ごとに異なること。 (例 「こちらは防災○○です」、「広報○○」、挿入無し等、冒頭の呼びかけが団体ごとに分かれる。)(エ)大半の地方公共団体が既に知見を有し、地方公共団体固有の放送音声も有しているので、その転用により、放送音声の吹き込みは容易であること(緊急地震速報を除く。)。
(3)J-ALERT関連設備の整備の推進 消防庁では、平成17年度に、全国31の団体(15都道県16市区町村)の協力を得てJ-ALERTの実証実験を行い、機器・システムの標準仕様を決定した。平成18年度には、受信装置のソフトウェアの改修等を行い、平成19年2月9日から情報の送信を開始した。平成19年11月1日現在、18都道県10市区町において、情報の受信、同報系防災行政無線の自動起動を開始している。 平成19年3月の能登半島地震、同年7月の新潟県中越沖地震等が発生するなど、地震等の自然災害が頻発しており、また、依然として弾道ミサイルの脅威は存在していることから、市区町村においては、なるべく早期にJ-ALERTの関連設備の整備に取り組むことが望まれる。 消防庁としても、J-ALERTの受信装置を構成する衛星モデムの地方公共団体への配備を進めるとともに、機器整備の財源に地方債(防災対策事業債(特に推進すべき事業)として、事業費の90%を起債対象とし、その元利償還金の50%を交付税算入)を充てることができるようにしている等、地方公共団体の取組を支援しているところである(第1図参照)。第1図 J-ALERT関連設備
(4)緊急地震速報の送信の開始 地震発生後、地震の揺れは、震源から波紋のように波(地震波)として伝わるが、その地震波には、主に相対的に速く伝わる縦波(P波:秒速約7キロメートル)と遅く伝わる横波(S波:秒速約4キロメートル)の2種類がある。P波による揺れを初期微動、S波による揺れを主要動と呼び、地震による被害は主に強い揺れの主要動によってもたらされる。 緊急地震速報は、このP波とS波の伝わる時間差を利用して、強い揺れが始まる前に、地震の発生及びその規模を素早く知り、地震による強い揺れが来ることを住民等に伝達することを目指すものであり、住民に避難行動を促すこと等により、減災効果を期待するものである(第2図参照)。第2図 緊急地震速報の原理 ただし、緊急地震速報が住民に伝達される場合、大きな揺れが到達するまでの時間は数秒から数十秒であると想定され、住民がとりうるのは、主に「大きな家具から離れ、丈夫な机の下などに隠れる」等の避難行動が中心となる。 また、住民に緊急地震速報が提供される場所は、一般的に、家庭内、デパートや駅等の不特定多数の者が出入りする施設内、屋外、乗り物で移動中等様々であり、置かれた状況に応じて避難行動が異なることとなる。 さらに、緊急地震速報の技術上の特性(限界)として、以下の点に留意する必要がある。ア 内陸の浅い地震(直下型地震)等の場合、住民への伝達が大きな揺れの前に間に合わない場合があること。イ 緊急地震速報の発信後、住民に伝達されるまでに一定の時間を要するため、住民への伝達が大きな揺れの前に間に合わない場合があること。ウ 場合により、誤報が発信される可能性がある(誤報の場合にはキャンセル報が出される)こと。 J-ALERTによる緊急地震速報の一般住民向けの提供においては、人手を介さず住民に情報提供を行うことから、瞬時伝達が可能であり、地震被害への大幅な減災効果が期待されている。 ただし、上記の緊急地震速報の技術上の特性(限界)は、J-ALERTにも当てはまるため、その点に十分留意する必要がある。また、その他にも提供基準の違い等から、テレビやラジオ等で緊急地震速報の提供が行われていても、J-ALERTによる緊急地震速報の提供が行われない場合がある点についても留意する必要がある。
(5)今後の方向性 市区町村におけるJ-ALERTの整備が進んだ場合、緊急の際に住民に危機を伝えるサイレン等を放送する同報無線が、住民の生命を守る上で極めて重要な役割を果たすと考えられるが、平成19年3月31日現在、全国の市区町村における同報無線の整備率は75.2%にとどまっている。財政的理由等により同報無線の早期整備が困難な場合、代替手段として、MCA陸上移動無線通信システム等を活用することにより、J-ALERTの情報を伝達することが可能である。消防庁としても、防災対策事業債の充当対象として財政的支援措置を講じており、市区町村においては、これらの代替手段を含めて早期整備を検討することが望まれる。※MCA(Multi Channel Access)陸上移動無線通信システム :一定数の周波数を多数の利用者が共同で利用するMCA方式(複数の周波数を多数の利用者が効率よく使える業務用無線通信方式。混信に強く、無線従事者の資格が必要ないなどの特徴)を採用した業務用無線システム。 また、J-ALERTの情報について、消防署所や役場出先庁舎等、複数施設での受信もできることとしており、今後さらに公立学校等でも受信することができるよう検討しているところである。 なお、これらの施設で情報を受信するための安価な受信設備の開発を、財団法人自治体衛星通信機構(LASCOM)において、平成20年春をめざし進めているところである。 さらに、関連設備の整備に併せ、同報無線等からの情報が伝達されたときにどのような行動を取るべきか等の必要な情報を、住民に周知する等の取組も重要である。
2 安否情報システムについて(1)安否情報システム整備の経緯 「1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書I)」においては、「家族がその近親者の運命を知る権利」に基づき、行方不明であると報告された者の捜索及び情報伝達が紛争当事者に義務付けられている。 同条約の規定を踏まえ、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(以下「国民保護法」という。)においては、武力攻撃事態等における安否情報の収集・提供の規定(第94条〜第96条)が創設された。【国民保護法における安否情報の収集等に係る規定の内容】ア 情報を収集する対象  避難住民、武力攻撃災害等により死亡又は負傷した住民イ 収集、整理及び報告を行う者  市町村長:収集・整理の努力義務及び都道府県知事への報告義務を負う  都道府県知事:収集・整理の努力義務及び総務大臣への報告義務を負うウ 国民への回答(書面照会、書面回答が原則)  総務大臣、都道府県知事、市町村長:国民からの照会への回答義務及び個人情報保護への留意義務を負うエ 収集する情報  氏名、出生の年月日、男女の別、住所、負傷状況・死亡関連情報、居所、連絡先など 安否情報に係る事務の執行については、国民の生命等を守るための避難、救援等の国民保護措置を実施する中で実施する必要があることや、対象情報も膨大な数になることが想定されることから、効率的なシステムの構築が不可欠である。 消防庁では、平成17年度に「武力攻撃事態等における安否情報のあり方に関する検討会」を開催し、安否情報システムの運用を含めた、国民保護法に基づく安否情報事務の具体的運用について検討を行った。この検討結果を踏まえ、平成18年度から安否情報システムの開発を行ったところであり、平成19年度中に運用試験を経て本格運用を開始する予定である。
(2)安否情報システムの概要 ア 特徴 安否情報事務及びシステムの主な特徴は以下のとおりである。(ア)安否情報の収集時に、「誰に対して回答するか」「安否情報のどの範囲まで回答するか」に係る希望・同意を本人に確認し、総務省及び地方公共団体は、原則として、当該希望・同意に基づいて回答を行う。また、照会は、原則として窓口等において身分証明書により照会者の本人確認を実施した上で行う。(イ)公表(報道機関等への提供)は、個人情報保護法、個人情報保護条例等に基づき、同意の有無や公益上の必要性を勘案し、情報を収集した市町村、都道府県、総務省が判断し実施する。(ウ)収集した安否情報をすべての地方公共団体及び総務省で共有することにより、国民がどの地方公共団体に照会しても回答することを可能とする。(エ)インターネットによる氏名検索機能により、窓口照会をする前に行政機関が照会に係る者の情報を保有しているかどうかを確認できる。(オ)個人情報の漏えい防止のための厳重なセキュリティ対策として、行政機関専用の総合行政ネットワーク(LGWAN)と暗号化技術を用いたインターネット回線を活用している。(カ)構築する安否情報システムは、自然災害や事故災害において地方公共団体が自主的に利用することも想定している。 イ 機能 システムの主な機能は、安否情報の「入力」、「整理」、「報告」、「提供」の4つに分けられる(第3図参照)。第3図 安否情報の入力・整理・報告・提供の流れ(ア)安否情報の入力機能  避難所、医療機関、警察機関等から収集した安否情報をシステムに入力する機能。(イ)安否情報の整理機能  入力された安否情報には、同一人物の安否情報が重複して入力されたり、誤ったデータが入力されることがあり、重複した安否情報については、最新かつ正しいものを残して排除し、誤ったデータは修正する必要がある。このような重複排除や修正により、安否情報を最新かつ正しいものに整理する機能。(ウ)安否情報の報告機能  整理した安否情報を、市町村は(自らが属する)都道府県に、都道府県は国(消防庁)に報告し、国において全地方公共団体が安否情報を共有できるようにする機能。(エ)安否情報の提供機能  国民からの安否情報の照会に対して回答するための機能。具体的には、入力、整理、報告された安否情報から被照会者に係るものを検索する機能、検索した安否情報を回答書の様式で印刷する機能。 その他、システムには、国民がインターネットを通じて被照会者の氏名を検索し、安否情報の有無について確認する機能がある(第4図参照)。第4図 国民向け検索画面 なお、安否情報の収集・提供に当たっては、今後、国民保護措置を実施する中で当該業務に従事する人員をどのように確保するか、安否情報を入手したいという国民の要請に応える一方で、個人情報を保護するためにはどうすべきか等の検討を深めていくこととしている。
トピックスIV 急増する救急需要!〜救急自動車の適正利用の推進〜1 救急業務の現状 救急業務は、国民の生命・身体を事故や災害等から守り、安心・安全な社会を確保するものであり、我が国においては、昭和38年に法制化されて以来、国民にとって必要不可欠な行政サービスとして定着している。 現在、少子高齢化社会の進展や住民意識の変化並びに核家族化等に伴って救急需要が拡大しており、救急出場件数は、平成18年中は約524万件で前年より微減したものの、平成8年からの10年間で約55.3%増加している。一方で、全国の消防本部においては、厳しい財政事情等により、救急出場件数の増加に合わせて救急隊の増強を図ることが困難な状態にあり、平成19年4月現在の救急隊数は4,846隊であり、平成9年からの10年間で約8.1%の増加にとどまっている(第1〜3図参照)。第1図 救急出場件数と救急対数の推移第2図 救急隊1隊当たり年間平均出場件数の推移第3図 救急自動車の現場到着所要時間 このため、緊急性のある傷病者の搬送には、迅速かつ的確な対応が必要とされるにもかかわらず、救急隊の現場到着所要時間は平成8年の平均6.0分に比べ、平成18年では6.6分と遅延傾向にあり、特に心肺機能停止状態の傷病者の発生など一刻を争う局面においても、地域によっては、今後、救急隊の到着が遅れるおそれがあり、深刻な問題となっている。 このような現状を受け、消防庁においては、「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」(平成17年度)や「救急需要対策に関する検討会」(平成17年度)を設け、救急需要対策について総合的な検討を行うとともに、さらに「救急業務におけるトリアージに関する検討会」(平成18年度)を開催し、119番通報受信時等における緊急度・重症度の選別(トリアージ)について4消防本部で検証を実施するなど、新たな視点からの検討を加えた。平成19年度は、それらトリアージプロトコルの実用化に向けた検討結果を踏まえ、具体的な取組を進めている。
2 市民への情報提供サービスの充実と頻回利用者への対応 救急需要の増加の内訳を見ると、必ずしも緊急性があるものばかりではなく、タクシー代わりの利用や定期的な入退院、さらに事前予約のある外来通院など、救急事案に該当しない利用も少なくない。 従来、消防機関においては、市民からの問い合わせに対応するテレホンサービスや消防署による診療可能な医療機関の情報を提供するサービス等が広く行われてきた。引き続き、これらの情報提供サービスを通して自己通院を希望する市民をサポートするとともに、今後、医療機関に関する相談等を含め一般市民等への救急に関する情報提供サービスの一層の拡充・強化を図ることにより、増加する救急需要を抑制し、救急自動車の適正な利用を促進することが求められている。 例えば、東京消防庁においては、平成19年6月、救急要請をすべきか迷った場合に、緊急受診の要否や医療機関の受診に関するアドバイス、さらには応急処置や医療機関の案内等を24時間年中無休で実施する「東京消防庁救急相談センター」(#7119)を開設し、救急要請につながる市民の判断をサポートするともに、情報提供サービスの充実に努めている。東京消防庁「救急相談センター」ポスター また、特に、頻回利用者については、自らの頻回利用により救急隊の迅速な活動が阻害され、真に緊急な対応が必要な重症患者への対応が遅れかねないことを認識していない者も多く、その抑止が課題となっている。このため、各消防本部においては、救急出場の現状に関する情報提供など一般市民への啓発活動を積極的に行うとともに、頻回利用者に対して、福祉部局等と連携して個別訪問を行い、救急の実態について理解を求めるなどの対応を進めている。 なお、消防庁においては、消防に関する政府広報活動の一環としてテレビやラジオ、さらにはインターネットテレビ等を活用し救急自動車の適正利用を促すなど、一般市民等への普及啓発活動を推進している。
3 民間事業者の活用 救急需要が増大する現状を踏まえ、「消防力の整備指針に関する調査検討会」報告(平成17年3月)では、今後、「一定の出動業務や患者等の搬送業務への民間活用等」の検討を深めていく必要性が指摘されるなど、近年、緊急性のない患者等の搬送においては民間事業者による患者等搬送事業を有効活用すべきであるとの認識が高まっており、その活用が促進されている。 民間の患者等搬送事業者は、道路運送法に基づき、一般旅客自動車運送事業者又は特定旅客自動車運送事業者として国土交通大臣による許可を受けることが必要である。これに加え、緊急性のない者を搬送対象とすることを前提とした上で、一定の要件を満たした場合には、地域の消防機関により認定が行われており、認定を受けた事業者の質が一定程度担保される形となっている。また、民間の患者等搬送事業者は、その経営主体がタクシー会社、ハイヤー・サービス、福祉事業、葬祭事業など様々であるが、平成18年9月、一般タクシー運賃とは別に「民間救急運賃」が位置付けられ、運賃の透明性の向上が図られるなど、利用環境の整備が進められている。 現状では、平成18年10月1日時点で、消防機関が認定している患者等搬送事業者は全国で407事業者、その所有する患者等搬送用自動車は711台に達している。民間事業者の患者等搬送用自動車 しかしながら、患者等搬送事業は、電話番号が通常の番号であったり、患者等搬送用自動車における表示方法が一定でなかったりするなどの事情から、依然として、社会的に十分に認知されているとは言い難いのが実情である。患者等搬送業務がより質の高い患者サービスを行い、社会的に認知度を高めることができるよう、現在の課題を整理するとともに、引き続き対応策の検討を行わなければならない。 なお、例えば、東京消防庁においては、緊急性がない受診や通院、入院に際し、医療機関までの搬送手段がない者に対して民間の患者等搬送事業者やタクシーなどの交通手段の案内を行うことを目的として、平成17年4月に財団法人東京救急協会が運用を開始した「東京民間救急コールセンター」の運営を支援している。同センターの案内件数については、運用開始初年度である平成17年度の5,805件から、平成18年度の8,002件へと順調に増加しているところであり、今後、消防本部におけるこのような民間の患者等搬送事業者などの代替的な移送サービスに関する情報等の提供を行う取組の拡大に期待が高まっている。
4 転院搬送業務への病院救急自動車の活用 消防機関による救急搬送のうち、病院間の転院搬送は全体の9%を占めるが、転院搬送そのものは、消防機関の救急自動車以外に、民間搬送事業者の搬送用自動車や病院が所有する救急自動車など、様々な方法で行われている(第1表参照)。第1表 救急出場件数に占める転院搬送数の推移 一方で、病院救急自動車(ドクターカーを含む)は多数存在するものの、これまで所有する病院のみでの利用に限られていたため、経費負担が大きいことから、十分に活用されてこなかった。こうした中、平成18年3月、「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」報告書において、病院救急自動車を複数病院間で運行し、かつ、民間事業者を活用する柔軟性のある運用モデルが示されており、特に、救急需要への対応が逼迫している大都市地域において、当該モデルを活用し、転院搬送を中心として病院救急自動車の活用を図ることが期待されている。現在、関係省庁、医療機関、消防機関により、複数医療機関による病院救急自動車の共同利用に関する事務処理要領案が作成され試行事業が開始されるなど、取組が進められているところである。
5 119番通報受信時等における緊急度・重症度の選別(トリアージ) 救急要請の中には、少しでも早く救急現場に到着し、処置を行う必要のある心肺機能停止傷病者から、四肢末梢の軽微な外傷のように緊急度・重症度の低いものまで様々な事案があるが、救急業務本来の目的である「救命率の向上」を目指すためには、緊急度・重症度の高い傷病者に対してより迅速かつ的確な対応を行うことが効果的と考えられる。このため、119番通報受信時等における緊急度・重症度の選別(トリアージ)に関しては様々な検討が行われてきた(第4図参照)。第4図 軽症者割合の推移 緊急度・重症度の選別には、119番通報受信時における指令室トリアージ(コール・トリアージ)と救急現場での傷病者観察を通じたトリアージ(フィールド・トリアージ)がある。
(1)119番通報受信時におけるトリアージ(コール・トリアージ) 現在、既に指令室において、通報内容から緊急度・重症度が高い事案かどうかを判断し、心肺機能停止状態等が疑われる事案にあっては、消防防災ヘリやドクターヘリの出動要請や、救急現場におけるいち早い応急処置の実施のためにポンプ隊との連携出場(いわゆる「PA連携」)、ドクターカーあるいは医師派遣の要請等が行われている。また、救急要請受信時の電話等を活用した応急手当の口頭指導を行うためには、この段階で心肺機能停止状態が疑われる傷病者を選別する必要があり、現在、口頭指導の実施体制の整備促進が図られている。
(2)救急現場での観察活動を通じたトリアージ(フィールド・トリアージ) フィールド・トリアージは、救急隊が出場した上で現場で傷病者の状況を観察し、緊急度・重症度に応じてより適切な搬送医療機関(場合によっては搬送手段)を選定するものである。救急隊員の医療機関選定の適正化及び観察判断の資質の向上並びに応急処置の適正化を図ることを目的として、平成16年3月に取りまとめられた「救急搬送における重症度・緊急度判断基準作成委員会」報告書において、高次医療機関とそれ以外の医療機関の選定に係わる重症度・緊急度判断基準がまとめられており、現在、傷病者観察にあたっての判断基準として活用されている。 なお、東京消防庁では、平成19年6月からフィールド・トリアージ(「救急搬送トリアージ」という。)を試行しており、救急搬送トリアージシートを用いて傷病者の容態のチェックを行った上で、救急隊が搬送すべき緊急性が認められない傷病者に対しては、自己通院を促し、同意が得られた場合は不搬送とする取組の試行を開始した。この方式の導入により1件当たりの活動時間短縮効果がみられるなど、その効果が報告されている。
(3)コール・トリアージによる救急隊編成の弾力的な運用 コール・トリアージの本格的導入はいまだ行われていないものの、横浜市安全管理局においては、「横浜市救急業務委員会」などの提言を受け、平成15年度から、独自のトリアージ・プロトコルの研究を開始し、度重なる検証を実施するとともに、これに基づき、救急要請の緊急度・重症度に応じて弾力的な部隊運用を行うシステムの実用化が検討されている。 本取組の運用体制を実施に移すため、平成19年6月、横浜市は、構造改革特区に係る第11次提案の募集に対して、救急隊は、原則、救急自動車1台及び救急隊員3人以上をもって編成すべきとされているところ、コール・トリアージにより、緊急度・重症度が低いと識別された傷病者に対し、救急自動車1台及び救急隊員2人による救急隊の編成を可能とするよう提案を行った。 これに対し、政府において、119番通報受信時に症状や程度を聴取しながら体系的かつ自動的にチェックし、緊急度・重症度の判定を行うことのできる仕組み及び手順の整備、緊急度・重症度の高い傷病者を低いものと誤認するリスク(アンダートリアージ)の極小化の状況、医師が24時間指令室に常駐し、指令管制員及び救急隊員に常時、指導・助言を行える体制の整備等、多角的な観点から必要な要件等を含め検討を行った結果、平成19年10月の構造改革特別区域推進本部決定により、所要の要件を満たすことを条件に構造改革特区において新たに規制の特例措置を講じることが決定された。横浜市では、本特例措置の活用による救急隊編成の弾力化を行い、救急隊員で構成する部隊数を増やすことにより、救急隊員の現場到着時間を短縮し、救命率の向上を図ることを目指している。今後、政府における特例措置に関する手続を経て、構造改革特別区域計画の認定申請が予定されているところ、本格運用開始後は運用状況に注目するとともに、必要なフィードバックを行っていくことが望まれる。
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] この10年間の火災の動向をみると、出火件数は6万件の前後で増減を繰り返しているが、平成18年はここ10年間で最も少なくなっている。 一方、火災による死者数は、平成18年は前年に比べ128人減少したものの平成9年以降2,000人を超えて推移している(第1−1−1図、第1−1−2図、第1−1−3図)。第1-1-1図 火災の傾向第1-1-2図 火災による死者の状況第1-1-3図 火災の推移 平成18年中における火災の状況をみると、出火件数、焼損棟数、建物焼損床面積、死者数、損害額ともに前年より減少した(第1−1−1表)。第1-1-1表 火災の状況 なお、放火自殺者を除く死者数は84人減少し、すべての年齢層において死者数が減少した(第1−1−2図、第1−1−5図、第1−1−8図)。第1-1-5図 火災による死傷者数の推移第1-1-8図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者を除く。)
1 出火状況(1)出火件数は減少、1日当たり146件発生 平成18年中の出火件数は5万3,276件であり、前年に比べ4,184件(7.3%)減少している。また、1日当たりの出火件数は146件となっている(第1−1−1表、第1−1−2表)。第1-1-1表 火災の状況第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況
(2)建物火災は全火災の59.1% 火災を6種類の種別に区分し、その構成比についてみると、建物火災が全火災の59.1%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(敷地内、田畑、空地及び河川敷等の枯草、看板、広告等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和60年以降変化していない(第1−1−3表)。最近の火災種別出火件数の推移をみると、建物火災、林野火災及びその他の火災については、平成9年から10年にかけて減少し、平成11年以降は再び増加傾向であったが、平成17年から減少している(第1−1−4表)。第1-1-3表 火災種別出火件数の構成比率第1-1-4表 火災種別出火件数の推移
(3)冬季・春季に火災が多い 出火件数を四季別にみると、火災は、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生し、平成18年中も、総出火件数の57.2%を占めている(第1−1−5表)。第1-1-5表 四季別出火状況
(4)出火率は4.2件/万人 平成18年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で4.2件/万人となり前年より0.3ポイント減少し、10年前の平成9年と比べると0.7ポイント減少している(第1−1−1表、第1−1−6表)。第1-1-1表 火災の状況第1-1-6表 出火率、出火件数、人口及び世帯数の変化 出火率を都道府県別にみると、最高は鹿児島県の6.1、次いで高知県の5.5、宮崎県の5.4の順であり、出火率が最も低いのは、富山県の1.9で、富山県については平成3年以降16年連続して最低となっている(第1−1−7表)。第1-1-7表 都道府県別出火率
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器 平成18年中において、消防機関が火災をどのような方法で覚知しているかについてみると、火災報知専用電話(119番)による通報が71.6%と圧倒的に多い(第1−1−4図)。第1-1-4図 覚知方法別出火件数 また、初期消火の状況をみると、消火器を使用したものが22.2%と初期消火が行われたものの中で最も高い比率になっている。一方で、初期消火を行わなかったものは37.3%となっており、この値を10年前(平成9年)と比較すると3.0ポイント増加している(第1−1−8表)。第1-1-8表 初期消火器具等の使用状況
(6)住宅火災は建物火災の59.1% 平成18年中において、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数は1万6,683件であり、建物火災の件数(2万8,251件)の59.1%と半数以上を占めている(第1−1−9表)。第1-1-9表 建物火災に占める住宅火災の割合(放火を除く。)
2 火災による死者の状況 平成18年中の火災による死者数は2,067人であり、前年の2,195人に比べ128人(5.8%)減少しており、放火自殺者を除いた火災による死者数も1,475人で、前年の1,559人に比べ84人(5.4%)減少している。 また、放火自殺者数は592人であり、前年の636人に比べ44人(6.9%)減少している(第1−1−5図)。第1-1-5図 火災による死傷者数の推移
(1)1日当たりの火災による死者数は5.7人 平成18年中の火災による1日当たりの死者数は5.7人であり、前年の6.0人に比べ0.3人減少している(第1−1−2表)。第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.63人 平成18年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.63人であり、前年の1.73人に比べ0.1人減少している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年と同様に東京都が122人で最も多く、次いで大阪府が116人、愛知県が104人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、徳島県で5人、次いで佐賀県が11人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も高いのは秋田県で3.67人、最も低いのは徳島県で0.62人となっている(第1−1−10表)。第1-1-10表 都道府県別の火災による死者の状況
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 月別の火災による死傷者発生状況は、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて死者が多く発生しており、平成18年中においても、1月から3月及び12月の月ごとの死者数は220人以上(年間の月平均は172.3人)に上っており、この4か月間に死者総数の50.7%に当たる1,047人の死者が発生している(第1−1−6図)。第1-1-6図 月別の火災による死傷者発生状況 平成18年中の時間帯別の火災による死者発生状況は、2時台が125人と最も多く、次いで1時台が124人となっている。就寝時間帯の死者発生状況は、22時台から5時台にかけて平均で101.8人となっており、全時間帯の平均82.1人超に比べ、就寝時間帯に多くの死者が発生している(第1−1−7図)。第1-1-7図 時間帯別の火災による死者の発生状況
(4)死因は火傷が46.6%、一酸化炭素中毒・窒息が42.4% 平成18年中の放火自殺者を除いた火災による死因は、火傷によるものが687人(46.6%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息によるものが626人(42.4%)となっている(第1−1−11表)。第1-1-11表 火災による死因別死者発生状況の推移
(5)逃げ遅れによる死者が60.3% 死亡に至った経過をみると、平成18年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,475人のうち、逃げ遅れが890人で60.3%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が329人と最も多く、放火自殺者を除く死者数の22.3%を占めている。 また、放火自殺者を除く死者数のうち、年齢別では、65歳以上の高齢者が826人(56.0%)を占めており、特に81歳以上が327人(22.2%)と極めて多くなっている。また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が220人(14.9%)、「熟睡によるもの」が178人(12.1%)となっている(第1−1−8図、第1−1−9図、附属資料12)。第1-1-8図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者を除く。)第1-1-9図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者を除く。)
(6)建物火災による死者は、死者総数の75.0% 平成18年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,550人と前年に比べ61人減少しており、死者総数に対する比率は75.0%と前年(73.4%)に比べ1.6ポイント増加している(第1−1−12表)。第1-1-12表 火災種別死傷者数
(7)建物火災のうち、全焼による死者は887人 平成18年中の建物火災による死者1,550人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が887人(死者の出た火災1件当たり1.17人)で57.2%を占めている。また、部分焼の場合が328人(同1.07人)で21.2%、半焼の場合が223人(同1.11人)で14.4%、ぼやの場合が112人(同1.01人)で7.2%となっている(第1−1−10図、附属資料13)。第1-1-10図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況
(8)建物火災による死者の90.5%が住宅で発生 平成18年中の建物火災による死者1,550人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者1,403人は、建物火災による死者の90.5%を占めている。また、階層別では、1階における死者が1,035人で建物火災による死者の66.8%、2階における死者が370人で建物火災による死者の23.9%等となっている(第1−1−11図、第1−1−12図、附属資料15)。第1-1-11図 建物区分別の死者発生状況第1-1-12図 階層別の死者発生状況 さらに、建物構造別では、木造建物における死者が1,014人と最も多く、建物火災による死者の65.4%を占めている(第1−1−13図)。第1-1-13図 建物構造別の死者発生状況 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,180人であり、建物火災による死者の76.1%を占めている(第1−1−14図、附属資料14)。第1-1-14図 死因別の死者発生状況
(9)住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成18年中の住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災による死者1,403人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)216人を除く失火等による死者は1,187人となっており、前年(1,220人)に比べ33人(2.7%)減少した。 また、このうち65歳以上の高齢者は688人(全体の58.0%)と半数を超えている(第1−1−15図、第1−1−13表、附属資料15)。第1-1-15図 住宅火災の件数及び死者の推移(放火自殺者等を除く。)第1-1-13表 建物火災による死者のうち住宅火災による死者数(放火自殺者等を除く。)ア 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成18年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)について、年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、最も低い16歳から20歳の階層に比べ43.5倍となっている。 また、5歳以下の乳幼児の死者発生数は、16歳から20歳の階層と比べると4.6倍となっている(第1−1−16図)。第1-1-16図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)イ たばこを発火源とした火災による死者が19.0% 平成18年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが226人(全体の19.0%)で最も多く、次いでストーブ171人(同14.4%)、電気器具類67人(同5.6%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者1,187人の39.1%を占めている。 また、65歳以上の高齢者については、ストーブ、たばこ、電気器具類及びこんろを発火源とした火災による死者が多く、65歳以上の高齢者の死者数688人の46.9%を占めている(第1−1−17図)。第1-1-17図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)ウ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成18年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が281人で、死者数1,187人の23.7%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に寝具類及び衣類に着火した火災による死者が174人と多く、65歳以上の高齢者の死者数688人の25.3%を占めている(第1−1−18図)。第1-1-18図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)エ 死者の45.1%が就寝時間帯 平成18年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が535人であり、住宅火災の死者1,187人の45.1%を占めている(第1−1−19図)。第1-1-19図 住宅火災における時間帯別死者数(放火自殺者等を除く。)オ 木造住宅における死者が69.9% 平成18年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を建物構造別にみると、木造建築物における死者が830人であり、住宅火災の死者1,187人の69.9%を占めている。また、65歳以上の高齢者についても同様に住宅火災の死者688人の75.3%(518人)を占めている(第1−1−20図)。第1-1-20図 住宅火災の建物構造別死者数(放火自殺者等を除く。)カ 逃げ遅れによる死者が63.9%と圧倒的に多い 平成18年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが759人(全体の63.9%)と最も多く、次いで着衣着火が68人(同5.7%)、出火後再進入が24人(同2.0%)の順となっている(第1−1−21図)。第1-1-21図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)
(10)1件で3人以上の死者を出した火災は23件・85人 平成18年中の火災で、1件で3人以上の死者を出した火災は23件で前年(19件)より4件増加している。また、これによる死者は85人で前年(63人)より22人増加している。 火災種別では、建物火災22件で死者80人、その他の火災1件で死者5人となっている(第1−1−14表)。第1-1-14表 1件で3人以上の死者を出した火災の火災種別発生状況 建物用途別では、専用住宅での死者が60人であり、1件で3人以上の死者を出した建物火災全体の75.0%を占めている(第1−1−15表)。第1-1-15表 1件で3人以上の死者を出した建物火災の建物用途別死者発生状況
(11)放火自殺者は減少、死者総数の28.6% 平成18年中の放火自殺者は592人であり、死者総数2,067人に占める比率は28.6%(前年29.0%)となっており、前年(636人)より44人減少している(第1−1−5図)。第1-1-5図 火災による死傷者数の推移 放火自殺者(男女合計)を年齢別にみると、56歳から60歳が100人、51歳から55歳が72人、61歳から64歳が68人であり、これらの年齢で放火自殺者全体の40.5%を占めている(第1−1−22図)。第1-1-22図 放火自殺者の年齢別・性別発生状況(年齢不明者10人及び性別不明者1人を除く。)
3 火災による損害額 平成18年中の火災による損害額は1,142億円であり、前年(1,301億円)に比べ159億円減少している。また、火災1件当たりでは214.4万円となっており、前年に比べ12.0万円減少している(第1−1−23図)。第1-1-23図 火災による損害額の推移 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の94.3%を占めている(第1−1−1表)。第1-1-1表 火災の状況
4 出火原因 平成18年中の総出火件数5万3,276件のうち、失火による火災が3万4,954件(全体の65.6%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1−1−24図)。第1-1-24図 出火原因別出火件数
(1)「放火」による火災が10年連続して第1位 平成18年中の放火による出火件数は6,649件であり、前年に比べ576件(8.0%)減少し、全火災(5万3,276件)の12.5%を占め、10年連続して出火原因の第1位となった。さらに、放火の疑いによるものは4,619件であり、前年に比べ420件(8.3%)減少している。放火及び放火の疑いを合わせると1万1,268件(全火災の21.2%)であり、前年に比べ996件(8.1%)減少している(第1−1−16表、第1−1−25図、附属資料6)。第1-1-16表 放火及び放火の疑いによる火災の損害状況第1-1-25図 主な出火原因別の出火件数と損害額 放火による損害額は73億2,960万円であり、前年に比べ9億6,892万円(11.7%)減少している。放火の疑いによる損害額は55億4,107万円であり、前年より13億1,523万円(19.2%)減少している。この結果、放火と放火の疑いを合わせた損害額は128億7,067万円であり、前年に比べ22億8,415万円(15.1%)減少している(第1−1−16表)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが3,926件(全体の34.8%)と最も多くなっている(第1−1−16表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、夜間から明け方(22時以降翌朝6時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に4,881件(全体の43.3%)が発生している(第1−1−26図)。第1-1-26図 放火及び放火の疑いによる火災の出火時刻別件数
(2)「たばこ」による火災は減少 平成18年中のたばこによる火災は5,135件であり、前年に比べ779件(13.2%)減少し、全火災(5万3,276件)の9.6%を占めている(第1−1−17表、第1−1−25図)。第1-1-17表 たばこによる火災の損害状況第1-1-25図 主な出火原因別の出火件数と損害額 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが52.3%(2,685件)と半数以上を占め、次いで火源の転倒・落下、消したはずのものが再燃の順となっている。たばこが原因の火災による損害額は、85億6,283万円であり、前年に比べ18億8,867万円(18.1%)減少している(第1−1−17表)。
(3)「こんろ」による火災は減少 平成18年中のこんろによる火災は5,990件であり、前年に比べ36件(0.6%)減少している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,704件(全体の95.2%)であり、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、69.4%に当たる4,160件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は、71億5,241万円であり、前年に比べ3億3,961万円(4.5%)減少している(第1−1−18表)。第1-1-18表 こんろによる火災の損害状況
(4)「たき火」及び「火遊び」による火災は減少 平成18年中のたき火による火災は2,630件であり、前年に比べ750件(22.2%)減少している。 たき火による火災の主な経過別出火件数をみると、たき火の延焼拡大が最も多く1,058件、次いで火の粉の飛び火、消し忘れの順となっている。 たき火が原因の火災による損害額は、7億6,841万円で、前年に比べ7億1,282万円(48.1%)減少している(第1−1−19表)。第1-1-19表 たき火及び火遊びによる火災の損害状況 また、火遊びによる火災は1,825件であり、前年に比べ93件(4.8%)減少している。 火遊びによる火災の損害額は、16億6,580万円であり、前年より2億989万円(11.2%)減少している。 火遊びによる火災の主な発火源別出火件数は、ライターによるものが最も多く1,047件、次いでマッチ、花火の順となっている(第1−1−19表)。
(5)「ストーブ」による火災は減少 平成18年中のストーブによる火災は1,927件であり、前年に比べ98件(4.8%)減少している。ストーブの種類別では、石油ストーブによる火災が最も多く1,063件(全体の55.2%)であり、次いで電気ストーブ、まきストーブの順となっている。 ストーブによる火災の主な経過別出火件数をみると、可燃物の接触・落下によるものが707件と最も多く、次いで引火・ふく射、使用方法の誤りの順となっている。 また、ストーブが原因の火災による損害額は、82億9,895万円であり、前年に比べ5億976万円(5.8%)減少している(第1−1−20表)。第1-1-20表 ストーブによる火災の損害状況
(6)着火物は前年と同様「枯草」が第1位 平成18年中の全火災の着火物別出火件数は、枯草が5,986件であり全体の11.2%を占め、最も多くなっている(第1−1−21表)。第1-1-21表 主な着火物別出火件数
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成18年中の建物火災の出火件数は、3万1,506件であり、前年に比べ1,543件(4.7%)の減少となっている。これを、10年前(平成9年)の3万4,519件と比較すると8.7ポイント減少したことになる(第1−1−4表)。第1-1-4表 火災種別出火件数の推移ア 建物火災は1日に86件、17分に1件の割合 平成18年中の建物火災の1日当たりの出火件数は、86件であり、17分に1件の割合で出火していることになる(第1−1−2表)。第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜4月、12月)にかけて多く発生し、全体の48.5%を占めている(第1−1−27図)。第1-1-27図 建物火災の月別火災件数イ 住宅における火災が建物火災の58.2% 平成18年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災の出火件数が最も多く、全体の58.2%を占めている。次いで複合用途の建物、工場・作業場、事務所の順となっている(第1−1−28図、附属資料16)。第1-1-28図 建物火災の火元建物用途別の状況ウ 建物火災の43.9%が木造建物 平成18年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物からの火災が1万3,834件であり、建物火災の43.9%を占め、次いで耐火造、防火造の順となっている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の出火件数の27.7%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみると、木造が最も大きく65.8m2となっており、全建物火災平均では44.0m2となっている(第1−1−22表)。第1-1-22表 火元建物の構造別損害状況エ 建物火災の過半数は小火災 平成18年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,005件であり、全体の50.8%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万4,823件で全体の78.8%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1−1−23表)。第1-1-23表 建物火災の損害額及び焼損床面積の段階別出火件数オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成18年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いで放火、たばこ、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが70.4%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが35.8%となっている(第1−1−29図)。第1-1-29図 建物火災の主な出火原因と経過カ 東京ドーム30個相当分の住戸が焼損 平成18年中の建物焼損床面積は、前年に比べ11万6,689m2(7.8%)減少し、138万6,092m2となっている。この面積は東京ドーム30個分の住戸が焼損したことに相当する(第1−1−3図)。第1-1-3図 火災の推移 建物焼損床面積を都道府県別にみると、最高は北海道の8万6,155m2であり、次いで愛知県、大阪府の順となっている。一方、最低は沖縄県の6,045m2であり、次いで徳島県、富山県の順となっている(第1−1−24表)。第1-1-24表 建物火災1件当たりの焼損床面積キ 1件当たりの焼損床面積は44.0m2 平成18年中の建物火災1件当たりの焼損床面積は、全国平均で44.0m2となっており、前年の全国平均45.5m2に比べ1.5m2減少している。これを都道府県別にみると、全国平均を上回るのは、岩手県の121.6m2を最高に、秋田県109.9m2、青森県90.0m2など34道県となっている。一方、全国平均以下となっているのは、最低が前年と同様、東京都の12.0m2で、次いで神奈川県21.4m2、大阪府22.0m2など13都府県となっており、相対的に大都市のある都府県では出火件数は多いが、火災1件当たりの焼損床面積の小さい火災が多いことを示している(第1−1−24表)。ク 放水した建物火災の23.0%は覚知後5分以内に放水 平成18年中の建物火災における火元建物の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万6,138件(建物火災の51.2%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万2,442件(放水した建物火災の77.1%)であり、このうち5分以内のものは3,709件(放水した建物火災の23.0%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を14.1m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1−1−25表)。第1-1-25表 建物火災の放水開始時間別焼損状況ケ 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成18年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は7,136件であり、放水した建物火災の44.2%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが2,392件で最も多くなっている(第1−1−30図)。第1-1-30図 建物火災の鎮火所要時間別1件当たり焼損状況
(2)林野火災 平成18年中の林野火災の出火件数は1,576件であり、前年に比べ639件(28.8%)減少している。焼損面積は829haであり、前年に比べ287ha(25.7%)減少しており、損害額は1億3,421万円であり前年に比べ7億3,395万円(84.5%)減少している。また、林野火災による死者は14人であり、前年に比べ3人(27.3%)増加している(第1−1−26表)。第1-1-26表 林野火災の状況 林野火災の出火件数を月別にみると、平成18年中は1月に最も多く発生しており、次いで3月、4月と、春先の空気の乾燥する時期に多くなっている(第1−1−31図)。第1-1-31図 林野火災の月別出火件数 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は1,562件であり、全体の99.1%を占めている(第1−1−27表)。第1-1-27表 林野火災の焼損面積段階別損害状況 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが392件で全体の24.9%を占め最も多く、次いで、火入れ、放火(放火の疑いを含む。)の順となっている(第1−1−32図)。第1-1-32図 林野火災の主な出火原因と経過
(3)車両火災 平成18年中の車両火災の出火件数は6,243件で、前年に比べ387件(5.8%)減少し、車両火災件数は昭和51年以降増加傾向にあったが、5年連続減少している。 次に、死者数は200人で、前年に比べ31人(13.4%)減少し、負傷者数は302人で、前年に比べ52人(14.7%)減少している。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は28億9,540万円で、前年に比べ3億225万円(9.5%)減少している(第1−1−28表)。第1-1-28表 車両火災の状況 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,312件(全体の21.0%)と最も多くなっている(第1−1−33図)。第1-1-33図 車両火災の主な出火原因と経過等
(4)船舶火災 平成18年中の船舶火災の出火件数は102件で、前年に比べ22件(17.7%)減少している。 次に、死者数は前年に続きなしとなっており、負傷者数は18人で、前年に比べ5人増加している。 また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は3億3,916万円で、前年に比べ2,493万円減少している(第1−1−29表)。第1-1-29表 船舶火災の状況 出火原因は、交通機関内配線によるものが9件(全体の8.8%)と最も多くなっている(第1−1−34図)。第1-1-34図 船舶火災の主な出火原因
(5)航空機火災 平成18年中の航空機火災の出火件数は1件で、前年に比べ5件減少している。 次に、死者数、負傷者数はともになしとなっている。 また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は186万円で、前年に比べ214万円減少している。(第1−1−30表)。第1-1-30表 航空機火災の状況
[火災予防行政の現況]1 住宅防火対策の現況 平成18年中においては、放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数(1万6,683件)は、建物火災の件数(2万8,251件)の約6割、また、放火自殺者等を除く住宅火災による死者数(1,187人)は、建物火災による死者数(1,297人)の約9割となっており、過去10年間以上この傾向で推移している。 また、近年の主な建物用途別にみた火災100件当たりの死者数では、住居における死者数は、多数の者が利用する物販店舗、旅館・ホテルと比べても5倍程度の死者数となっており、最多となっている。 住宅火災による死者数は増加傾向にあり、住宅火災による死者の半数以上が65歳以上の高齢者であることを考えると、今後の高齢化の進展とともに、さらに住宅火災による死者が増加するおそれがある。 消防庁では、平成3年に住宅防火対策推進に係る基本方針を策定、住宅防火対策推進協議会を設置し、住宅防火に係るポスター、パンフレットの作成・配布、住宅防火安心マークによる住宅用防災機器の普及の促進等の対策を推進してきた。平成13年には、過去10年間の実績を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を定め、特に高齢者を対象とした住宅火災による被害及び死者の軽減を目指し、地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進を図るため、関係行政機関、関係団体等と協力しながら住宅防火対策の更なる推進を図ってきた。 しかし、今後、住宅火災による死者の増加が予想されることから、平成15年12月に消防審議会から、住宅に住宅用火災警報器等の住宅用防災機器の設置を義務付ける等を内容とする答申が出され、この答申を受けて、「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」が衆参両議院で全会一致で可決成立し、平成16年6月2日に公布され、平成18年6月1日施行された。 また、本改正に伴い、消防法施行令の改正(平成16年10月27日)、住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令の制定(平成16年11月26日)、火災予防条例(例)の改正(平成16年12月15日)及び住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令の制定(平成17年1月25日)が順次行われた。これにより、新築住宅については平成18年6月1日から、既存住宅については各市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられ、これを受けて全国の消防本部では、消防団、婦人(女性)防火クラブ及び自主防災組織等と連携して、各種広報活動を展開しているところである(囲み記事「住宅用火災警報器の設置を促進する地域の取組について」参照)。
住宅用火災警報器の設置を促進する地域の取組について 住宅用火災警報器の普及を促進するため、消防庁では共同購入を推奨しています。町内会や団地などの単位で隣近所が共同で大量に購入することで、住宅用火災警報器を安く手に入れて経済的負担を軽減するとともに、悪質訪問販売の防止にも効果が期待されます。【金沢市の例】 金沢市では、市内の校区・地区ごとに結成されている57の婦人防火クラブで構成する金沢市婦人防火クラブ協議会が、独自で住宅用火災警報器を紹介するチラシを作成し、市内の全住戸(約19万世帯)に回覧しました。 紹介した住宅用火災警報器は、金沢市消防機器販売協会(消防機器を販売する8社が加盟)と価格交渉し、煙式3個1セットで11,000円と、一般に市販されている価格よりかなり安くすることができました。 平成18年12月から平成19年5月までこのような共同購入を推進した結果、約4,000世帯(金沢市全世帯の2%)に住宅用火災警報器が設置されました。また、高齢者宅での設置に当たっては、婦人防火クラブ員が協力して行いました。【京都市の例】 京都市では、自主防災組織を通じて住宅用火災警報器の設置促進を図るため、「地域力を活かした住宅用火災警報器設置促進事業」を実施しています。 平成18年度は、財団法人京都市防災協会が、一定要件を満たした自主防災部(町内会、自治会)から住宅用火災警報器の購入希望世帯を募集し、入札価格で市民に提供するという仕組みで実施した結果、170の自主防災部から5,317世帯、14,420個の購入申込みがあり、当初の予定を大幅に上回る設置ができました。 平成19年度は、同協会が、住宅用火災警報器を選定するために必要な情報、安心して安価に共同購入に応じられる事業者の情報、共同購入案内文や実施手順など、様々なノウハウを自主防災会(おおむね小学校区単位で設置)に提供するとともに、取付が困難な高齢者世帯などには取付サポーターを派遣して、自主防災会による共同購入を支援しています。 自主防災会では、本部役員が機能面や価格面などを比較検討して共同購入する住宅用火災警報器を選定し、ブロック組織の自主防災部を通じて購入希望世帯と購入個数を取りまとめるとともに、一括購入後は、各自主防災部に商品の引取りと各世帯へ配分を依頼する方法が一般的です。 平成19年度は、上半期が終了した時点で、3,950世帯に8,900個の住宅用火災警報器が設置されましたが、年度末までには、市全体の4割に当たる90の自主防災会が、共同購入を行う予定で、少なくとも3万世帯、7万個以上の住宅用火災警報器の設置が見込まれています。
2 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成19年3月31日現在において、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に104万8,904件あり、そのうち75.8%に当たる79万4,674件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、25万4,230件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が指導・命令を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は71万159件で全体の67.7%となっている(第1−1−31表)。第1-1-31表 全国の防火管理実施状況
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 平成19年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、66.3%(前年63.1%)となっている(第1−1−32表)。第1-1-32表 全国の共同防火管理実施状況
(3)防火対象物点検資格者 火災の発生を防止し、火災による被害を軽減するためには、消防機関のみならず防火対象物の関係者による防火対象物の火災予防上の維持管理及び消防法令への適合が重要である。 そのため、消防法では、一定の用途、構造等を有する防火対象物の管理権原者に対して、火災の予防に関して専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)による点検及び点検結果の消防長又は消防署長への報告を義務付けている。 この防火対象物点検資格者は、消防用設備等の工事等について3年以上の実務経験を有する消防設備士や、防火管理者として3年以上の実務経験を有する者など、火災予防に関し一定の知識を有する者であって、法人で総務大臣が登録するものが行う講習の課程を修了し、防火対象物の点検に関し必要な知識及び技能を修得したことを証する書類の交付を受けた者である。 防火対象物点検資格者は、その資質の維持及び向上を図るため、5年ごとに再講習を受講し、登録機関が発行する免状の交付を受けることとされている。 平成19年3月31日現在、防火対象物点検資格者の数は2万57人となっている。 また、定期点検報告が義務となる防火対象物のうち、管理を開始してから3年間以上継続して消防法令を遵守しているものは、当該防火対象物の管理権原者の申請に基づく消防機関の行う検査により、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合に点検・報告の義務が免除される。
3 立入検査(1)立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成18年度中に全国の消防機関が行った立入検査回数は、96万7,047回であり、火災予防上必要な指導を行っている(第1−1−33表)。第1-1-33表 立入検査実施状況 新宿区歌舞伎町ビル火災を踏まえた平成14年の消防法改正により、立入検査の時間制限の見直し等が行われ、消防機関がより的確で効果的な立入検査を行うことができるようになった。立入検査(加古川市消防本部提供)
(2)小規模雑居ビル等の違反状況 立入検査等により判明した防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置等については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができる。また、火災の予防に危険であると認める場合には、消防法第5条、第5条の2又は第5条の3の規定に基づき、当該防火対象物の改修、移転、危険排除等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされており、これらの命令をした場合には、その旨を公示することとされている。 このように立入検査等を行った結果、消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1−1−34表、附属資料17、18、19)。第1-1-34表 命令の状況 特に、新宿区歌舞伎町ビル火災が発生したビルと類似する小規模雑居ビル及び特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)については、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性を踏まえ、厳しく指導を行っている。小規模雑居ビルについては、防火対象物定期点検報告制度の施行や自動火災報知設備の設置対象拡大などの新たな要因による消防法令違反を含めると50.6%の違反率となる。また、特定違反対象物については、168件の対象物において消防法令違反が存在している。そのうち、特に消防用設備等と比べると、防火管理に関する消防法令違反の割合が高い傾向にある。こうした状況を踏まえ、防火対象物の安全性確保のためには、引き続き防火管理制度と合わせて立入検査等を通じた重点的な違反是正の徹底を図っていく必要がある(第1−1−35表、第1−1−36表)。第1-1-35表 小規模雑居ビルの違反是正状況の推移第1-1-36表 特定違反対象物の改善状況の推移
4 消防用設備等(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成18年度の全国における消防同意事務処理件数は、31万6,775件(前年度31万6,612件)であり、消防同意した申請のうち9万7,913件(30.9%)については、消防機関により指導が行われている(第1−1−37表)。第1-1-37表 消防同意処理状況
(2)防火対象物の実態 平成19年3月31日現在における全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第一(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(二十)項までに掲げる防火対象物の数)は383万8,099件である。 また、16大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は95万824件であり、全国の防火対象物の24.8%を占めている。特に都市部に集中しているものは準地下街(全国の85.7%)、地下街(同81.3%)、性風俗特殊営業店舗等(同59.9%)、非特定複合用途防火対象物(同44.2%)などである(第1−1−38表)。第1-1-38表 防火対象物数
(3)消防用設備等の設置の現況 消防用設備等とは、消火設備、警報設備、避難設備、消防用水及び消火活動上必要な施設をいい、火災による被害の軽減を図るという消防の目的を達成するために必要なものである。消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所用の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみてみると、平成19年3月31日現在、屋内消火栓設備の設置率は96.4%(前年96.3%)、スプリンクラー設備の設置率は99.6%(前年99.6%)となっている(第1−1−39表)。第1-1-39表 全国における特定防火対象物の屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備の設置状況 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近においては、平成18年1月に発生した長崎県大村市認知症高齢者グループホーム火災を踏まえ、この種の社会福祉施設における防火安全対策を強化するため、スプリンクラー設備や自動火災報知設備、消防機関へ通報する火災報知設備の設置対象の拡大、技術上の基準についての見直し等必要な改正を行っている。 一方、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令、使用禁止命令、刑事告発等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。
(4)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 さらに、消防法令において、消防用設備等の技術基準に性能規定を導入したことを受けて、平成16年3月及び5月に消防法施行規則の一部改正が行われ、特殊消防用設備等の工事又は整備を行うことができる特類の甲種消防設備士と、特殊消防用設備等の点検を行うことができる特種消防設備点検資格者の資格が新たに創設された。 また、消防設備点検資格者になるための講習は、従来、総務大臣又は消防庁長官が指定する者が行ってきたところであるが、平成16年3月の消防法施行規則の一部改正により、総務大臣又は消防庁長官の登録を受けた法人が行うこととされた。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施している。 平成19年3月31日現在、消防設備士の数は延べ89万5,794人となっており(第1−1−40表)、また、消防設備点検資格者の数は特種(特殊消防用設備等)487人、第1種(機械系統)12万3,015人、第2種(電気系統)11万5,973人となっている。第1-1-40表 消防設備士の数 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(5)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等の構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等の不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平成19年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、88万4,250件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものは86.6%、じゅうたんを全部使用しているものは84.7%、展示用合板を全部使用しているものは77.2%となっている(第1−1−41表)。第1-1-41表 防炎防火対象物数及び防炎物品の使用状況イ 防炎表示者の登録 防炎対象物品又はその材料が防炎性能を有するかどうかを容易に判別できるようにするため、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列しようとする場合には、防炎表示を付することとしている。 防炎表示制度に関しては、規制緩和の要望を踏まえ、行政関与を必要最小限にすること等を目的として従前の防炎表示者の認定制度が平成13年1月より登録制度に改正され、併せて、これに伴い、信頼性の高い第三者機関として登録要件を満たす登録確認機関による情報提供の仕組みを導入し、表示の信頼性を高め、消費者が防炎物品を購入・使用等する際の判断に資するものとした。 平成19年3月31日までの防炎表示者の登録数(従前の認定数を含む。)は、3万1,391業者(このうち裁断・施工・縫製業者が93.4%を占めている。)で前年同期より518業者の増加となっている。ウ 寝具類等の防炎品の普及啓発 家庭におけるカーテン、じゅうたんや消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、自動車・オートバイカバー等についても、防炎化を推進することが火災予防上有効であることから、消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)において、防炎品の普及のための動画を掲載するなど、その普及啓発を行っている。防炎対象物品以外の防炎性能を有するもの(防炎製品)については、財団法人日本防炎協会が自主的に採用する「防炎製品」表示ラベルの貼付によりその情報を提供し、消費者の利便が図られている(第1−1−42表)。第1-1-42表 防炎製品の認定件数及び販売件数
(6)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備などその種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を有し、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成18年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,802件(建物火災件数3万1,506件の24.8%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いについては、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制されている。 また、「規制改革・民間開放推進3か年計画」に基づき、環境負荷の低減に寄与すること等から実用化・普及が期待されている燃料電池発電設備の安全確保に必要な技術基準等に関する検討が行われ、平成17年3月に「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令」を改正し、燃料電池発電設備等(固体高分子型燃料電池、リン酸型燃料電池及び溶融炭酸塩型燃料電池による発電設備であって火を使用するものに限る。)を新たに対象火気設備等として、位置、構造及び管理の基準を定めた。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定の対象となる消防用機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定対象消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の検定対象機械器具等の形状等が、型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等と同一であるかどうかについて行う検定)とからなっている(第1−1−43表)。第1-1-43表 検定申請状況 また、新たな技術開発等に係る検定対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの検定対象機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。 なお、昭和61年から、日本消防検定協会以外に、総務大臣が指定する「指定検定機関」でも検定を行うことができることとしていたが、政府の規制改革推進の方針に基づき、平成14年には指定検定機関の公益法人要件を撤廃し、さらに、平成15年からは、指定検定機関から「登録検定機関」へとその参入要件を緩和している。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の基準に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格にしている旨の表示を付そうとする製造業者又は輸入業者からの届出は、平成19年3月31日現在、動力消防ポンプにあっては2,456件、消防用吸管にあっては57件である。
6 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化 これまで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面があった。これに対して、近年、社会規制の様々な分野で、技術革新の成果を活用し、また、技術革新を促すため、技術的な基準として必要な性能を規定し、達成する手法は自由に選択できることとする「性能規定」の導入が進められてきた。 消防庁においても、平成11年度から消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するために、技術的、制度的な観点からの調査研究及び実証実験等を通じて、安全性を損なうことなく性能規定を導入するための技術的基盤の整備に取り組んできたところであり、平成15年6月に消防法の一部を、平成16年2月に消防法施行令の一部を改正し、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することとしたものである。 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると判断できる設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものである。 消防用設備等に求められる性能は、火災の拡大を初期に抑制する性能である「初期拡大抑制性能」、火災時に安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」、消防隊による活動を支援する性能である「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては、客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)等により、同等性の評価が行われることとなる。 具体例を挙げると、共同住宅の構造特性等を踏まえた消防用設備等の評価手法についての検討が行われた結果、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」(平成17年総務省令40号)並びに、特定共同住宅における通常用いられる消防用設備等に代えて設置することができるとされた共同住宅用スプリンクラー設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、共同住宅用非常警報設備及び戸外表示器等の技術基準を定める関係告示の制定が行われ、平成19年4月1日より施行されたところである。 また、「初期拡大抑制性能」については事務所用途におけるスプリンクラー設備、「避難安全支援性能」については光点滅走行式避難誘導システム、「消防活動支援性能」については加圧防煙設備についての評価手法の検討を現在行っているところである。 一方、既定の客観的検証法のみでは同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」を設置しようとする場合には、防火対象物ごとに、高度な技術的識見を有する性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき、総務大臣がその性能を審査し、必要な性能を有するものについては円滑に設置できるようにすることとされたものである。(平成19年9月30日現在、認定済み特殊消防用設備等の設置13件) これらの規定を導入することにより、今後「特殊消防用設備等」を中心に新技術等を用いた新たな設備等が積極的に開発されていくことが期待される。
7 火災原因調査の現況 最近における科学技術の進歩による産業の高度化に伴い、大規模又は複雑な様相を呈する火災が頻発する傾向にあり、その原因の究明は更に高度の専門的知識が必要とされ、また、これらの火災が人心に与える影響も小さくないことから、その原因を一刻も早く明らかにして予防体制及び警戒体制を確立することは、一地方公共団体のみならず、国の責務でもあるということができる。これを踏まえ、平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査をすることができる制度が導入された。 本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて消防庁及び消防研究センターの職員(研究官を含む。)により編成される調査チームが、消防機関と連携して実施するものである。平成15年に発生した栃木県黒磯市ブリヂストン栃木工場火災に対して、改正消防法に基づき、初めての消防庁長官の自らの判断による火災原因調査を実施した。さらに、三重県RDF発電所火災では、消防庁長官に対し火災原因調査が要請され、この要請に基づいた火災原因調査を実施するなど、平成15年度には合計6件の火災に対して消防庁長官による火災原因調査を実施した。これらの結果を踏まえ、「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」(平成16年法律第65号)により、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の基準を市町村条例で定めることとした。また、出光興産北海道製油所火災における消防庁長官による火災原因調査の結果を踏まえ、「危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令及び危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令の一部を改正する政令」(平成16年政令第218号)等により、旧基準の屋外タンクに係る新たな技術上の基準への適合に関する経過措置の期限を繰り上げるなどの措置を講じている。 平成16年度には、「ドン・キホーテ浦和花月店」火災において、その社会的影響を踏まえ、消防庁長官の判断による火災原因調査を実施し、平成17年度には、福島県いわき市で発生した化学工場爆発火災において、消防庁長官に対し火災原因調査が要請され、この要請に基づいた火災原因調査を実施した。 また、長崎県で発生した認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里」火災においては、多数の死傷者が発生し社会的影響が極めて大であることから、消防庁長官の判断による火災原因調査を実施し、その調査内容等を踏まえ、「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」において報告書を取りまとめ(平成18年3月)、これらの施設に係る防火安全対策の充実を図るため、「消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令」が平成19年6月に公布された。 平成18年度には、兵庫県宝塚市で発生したカラオケボックス火災において、消防庁長官に対し火災原因調査が要請され、この要請に基づいた火災原因調査を実施した。 平成19年度には、東京都で発生した渋谷区温泉施設爆発火災において、消防庁長官の判断により主体的に、また新潟県中越沖地震により発生した東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所火災においては、要請に基づき火災原因調査を実施している。
[火災予防行政の課題](1)違反是正の徹底 全国の消防機関において、平成14年の消防法の一部改正等を踏まえた「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物に対する違反是正の推進に一定の成果が得られた。しかし、防火対象物定期点検報告制度の施行(平成15年10月1日)や自動火災報知設備の設置対象拡大などの法改正に伴う新たな要因に係る消防法令違反が散見されるほか、平成19年1月20日に発生した兵庫県宝塚市のカラオケボックスでの火災後に実施した実態調査の結果では、70.3%の施設において何らかの消防法令違反率があり、このうち防火管理面での違反が比較的多く見受けられた。 これらのことから、小規模雑居ビルをはじめとした防火対象物の消防法令違反の是正について、防火対象物定期点検報告制度等を活用した消防機関による立入検査の一層の重点化・効率化をはじめ、違反処理データベースの充実、違反是正推進連絡会を活用した消防機関相互の協力体制の活用等により、体制を強化し違反是正を更に推進する必要がある。
(2)防火管理の徹底 防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災又は地震等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度である。 防火管理の充実を図るため、平成15年6月消防法施行規則の一部を改正し、一定の要件に該当する防火対象物の防火管理者に選任された者は平成18年4月1日から5年以内ごとに甲種防火管理再講習を受講しなければならないこととした。 さらに、適切な防火管理業務の推進を図るため、消防計画作成マニュアル及び避難等訓練マニュアルの作成に係る検討を行い、消防計画作成マニュアルについては、平成17年度は病院及び社会福祉施設を対象として検討を行い、平成18年3月に「消防計画作成マニュアルの作成に係る検討第2次中間報告書」として取りまとめ、全国の消防本部に配付した。避難等訓練マニュアルについても、平成17年度は地下街等を対象として検討を行い、平成18年3月に「地下街等避難等訓練マニュアル検討報告書」として取りまとめ、全国の消防本部に配付した。 また、防火管理者が選任されていたとしても、十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者(防火対象物点検資格者)に防火上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。消火訓練(千葉市消防局提供)
(3)住宅防火対策の推進 住宅防火対策については、これまで広報・普及啓発活動を中心に取り組んできたところであるが、最近の住宅火災による死者数は増加傾向にある。平成18年中の放火自殺者等を除く住宅火災による死者数は、1,187人となっており、昭和61年(1,016人)以来17年ぶりに1,000人を超えた平成15年から4年連続して1,000人を超え、記録のある昭和54年以降で最多となった平成17年(1,220人)に次ぐ死者数となった。 また、同死者数の約6割が65歳以上の高齢者であり、今後の高齢化の進展に伴い、更に増加のおそれがあること等から、平成16年6月に消防法を改正し、従来個人の自助努力と考えられてきた住宅防火対策を抜本的に見直し、すべての住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持を義務付ける法制度の導入を行った。それにより、新築住宅は平成18年6月1日から、既存住宅は市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられた。 消防庁では、今後全国に4,700万戸といわれる既存住宅への住宅用火災警報器の設置を促進するため、技術開発の促進、リース方式の導入等について関係業界に働きかけるとともに、消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等と連携した住宅用火災警報器等の設置、維持管理等に係る啓発などの普及方策の推進、悪質訪問販売の被害防止対策、報道機関の報道方法の工夫についての働きかけなど市場機能の活用について重点的に推進し、さらには政府広報をはじめ様々な広報媒体の利用、普及・促進に関する施策を講じていくこととしている。住宅防火診断(相模原市消防本部提供)
(4)放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降10年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占めている。特に、都市部においては、出火原因の4割を超えている地域もあることから、深刻な社会問題となっている。 放火を防ぐためには、一人ひとりが防止対策を心掛けるだけでなく、地域全体が「放火されない環境づくり」に取り組むことが重要である。 特に、連続放火が発生している地域にあっては、地域の安全に深刻な影響があるため、暗いところや死角になるところに可燃物を放置しないこと、夜間にごみを出さないこと、門灯の終夜点灯により街路を明るくすることなどの対策を地域全体で徹底するとともに、関係行政機関と地域住民が協力して、街灯の増設、炎感知器や侵入監視センサーと連動した照明の設置、放火監視機器の設置などを推進し、より一層の警戒体制を構築することが必要である。 消防庁では、平成16年6月に放火火災・連続放火火災の防止のため学識経験者や消防機関関係者等からなる検討会を開催し、その検討結果を「放火火災の防止に向けて〜放火火災防止対策戦略プラン〜」として取りまとめ、全国の消防本部に配付するなどした。 また、戦略プランの中で放火火災防止対策に有効とされた放火監視機器について、「放火監視機器に係る技術上のガイドライン」を策定(平成17年4月)するとともに、現在、大阪市消防局(大阪府)、福岡市消防局(福岡県)、川口市消防本部(埼玉県)及び春日井市消防本部(愛知県)で検証試験を行っているところである。
(5)旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等における防火安全対策の推進 平成14年の消防法の一部改正により、一定規模以上の特定防火対象物(準地下街を除く。)に対し、平成15年10月1日から「防火対象物定期点検報告制度」が導入された。これに伴い、いわゆる「適マーク制度」は、平成15年9月30日をもって廃止され、従来の適マーク制度の対象となっていた旅館・ホテル等については、引き続き3年間に限り適マークを表示できる「暫定適マーク制度」が設けられ、また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象外の旅館・ホテル等に対しても、同様の制度を活用することが可能となるよう「自主点検報告表示制度」(新適マーク)が新たに導入された。 さらに、「暫定適マーク制度」については、平成18年9月30日をもって廃止されたことから、旅館・ホテル等についても平成18年10月1日以降は、「防火対象物定期点検報告制度」又は「自主点検報告表示制度」に基づく運用がなされている。 「防火対象物定期点検報告制度」は、旅館・ホテルをはじめとした多数の人が出入り等する一定の防火対象物について権原を有する者に対し、1年に1回防火対象物点検資格者による点検を義務付け、その結果について消防長又は消防署長へ報告を行わせるもので、管理権原者による防火対象物の管理の業務の消防法令への適合を確保することとしたものである。 また、「防火対象物定期点検報告制度」の対象となるもののうち、過去3年間消防法令を遵守しており消防機関の検査により、消防法令に適合していると認められた場合には、点検報告が免除されることとなっている。 なお、これらの制度に適合するものについては、その情報を利用者に提供する防火セイフティマーク(防火優良認定証・防火基準点検済証)を表示することができるようになっている。このうち防火優良認定証については、消防の安心・安全マークとして広く国民に認知されている消防章を基調としたデザインに見直しが行われ、平成18年10月1日より施行されている(囲み記事「防火優良認定証のデザイン変更」参照)。 旅館・ホテル、物品販売店舗、病院・社会福祉施設等において火災が発生し拡大した場合には、大きな被害が発生することが懸念されることから、これらの制度を有効に活用し、防火安全対策の一層の充実を図る必要がある。
防火優良認定証のデザイン変更 「消防法施行規則の一部を改正する省令」(平成18年総務省令第116号。以下「改正省令」という。)により、平成18年10月1日から防火優良認定証のデザインが変更されました。防火優良認定証は、消防機関の特例認定を受けた防火対象物において表示できるものであり、利用者等への安心・安全情報の提供を趣旨とするものです。以前の防火優良認定証はデザイン的にわかりにくいとの声が多く聞かれたことから、消防の安心・安全マークとして、広く国民に認知されている消防章を基調としたデザインに見直しが行われました。 なお、平成18年10月1日において既に表示されている旧規則別表第1の2による防火優良認定証は、消防法第8条の2の3第4項第1号の規定により認定の効力が失われる日(原則として当該認定を受けてから3年後)までの間、引き続き使用することができます。防火優良認定証マークの表示期間
(6)消防法令への性能規定の導入等による消防用設備等における新技術の開発促進への期待及び課題 消防法令に定める消防用設備等の技術上の基準に性能規定を導入すること等により、新技術の開発促進が期待されるが、その実効性を高めるためには、消防防災分野における新たな技術に関する知見の蓄積を図るとともに、客観的検証法の適用範囲を着実に拡大していくことが必要である。このため、総務大臣による認定によりその知見が十分に蓄積された特殊消防用設備等については、円滑に客観的検証法を策定することにより、消防機関がその設置等の判断が容易にできるようにしていくことが必要である。 一方、消防機関においても、客観的検証法による審査体制を整備し、消防防災分野における新たな技術を用いた設備等が導入できる体制を構築することにより、消防防災に係る技術開発の促進と安全性の高い合理的な防火安全対策の構築に寄与することが望まれる。
(7)災害時要援護者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害時要援護者が安心して安全に生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。 今後、本格的な高齢化社会を迎えるに当たり、老人福祉法で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設が増加してきており、この状況を踏まえて消防庁では、平成14年度から2年間にわたり学識経験者、関係省庁等からなる「高齢者施設における火災予防のあり方検討会」を開催し、既往施設との比較等を行いつつ、これらの新たな施設等に対する防火安全対策のあり方について検討を進めてきた。また、平成18年1月に、長崎県の認知症高齢者グループホームにおいて死者7人を出す火災が発生したことを踏まえ、消防庁では「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」を開催し、その検討報告を受け、消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令が平成19年6月に公布された(囲み記事「小規模福祉施設における防火安全対策について」参照)。一方、災害時要援護者が居住する住宅における対策として、消防庁では平成17年度から2年間にわたり「住宅用火災警報器の音以外の警報に係る調査・研究検討会」において、音以外の光や振動を用いた警報機器について調査・研究を行い、その結果を報告書に取りまとめた。今後、これらの検討結果等を踏まえ、必要な防火安全対策を講ずることとしている。 消防機関をはじめ行政機関は、これらの人の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など福祉関係者等の防火対策推進協力者と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等による防火指導の推進等の取組みを引き続き実践する必要がある。
小規模福祉施設における防火安全対策について 平成18年1月8日に発生した長崎県大村市における認知症高齢者グループホーム火災を受けて開催した検討会の報告書を受け、消防法施行令の一部を改正する政令(平成19年政令第179号。)及び消防法施行規則の一部を改正する省令(平成19年総務省令第66号。)が平成19年6月13日に公布(平成21年4月1日施行)されました。また、それにあわせて、「小規模社会福祉施設に対する消防用設備等の技術上の基準の特例について」を通知しました。 改正内容は、認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設(認知症グループホーム)における火災の事例を踏まえ、火災発生時に自力で避難することが著しく困難な者が入所する社会福祉施設等について、防火管理者を定め、かつ、スプリンクラー設備等の設置を行わなければならない施設の範囲を拡大するとともに、当該施設について、スプリンクラー設備の設置及び維持に関する技術上の基準の整備等を行ったものです。認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策の概要
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設(指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う製造所、貯蔵所及び取扱所)における事故は、火災(爆発を含む。)と危険物の漏えいに大別される。危険物施設の火災・漏えい事故件数は、昭和50年代中頃よりおおむね緩やかな減少傾向を示していたが、平成6年を境にして増加傾向を示している。平成18年中に発生した火災・漏えい事故件数は、火災が223件、漏えいが375件で合計598件となっており、前年より18件増加している(第1−2−1図)。第1-2-1図 危険物施設における火災・漏えい事故発生件数の推移
1 火災 危険物施設における火災の発生件数は増加傾向にあり、統計を取り始めて以来過去最悪となっている。火災の主な要因として、一般取扱所、給油取扱所、製造所等における管理不十分・確認不十分等の人的要因を挙げることができる。
(1)危険物施設における火災発生件数が過去最多に 平成18年中の危険物施設における火災の発生件数は、223件(対前年比35件増)、損害額は28億3,286万円(同4億1,793万円増)、死者は10人(同9人増)、負傷者は85人(同47人増)となっている(第1−2−2図)。第1-2-2図 危険物施設における火災発生件数と被害状況 危険物施設の火災による他への影響の程度をみると、223件の火災のうち6件(全体の2.7%)は当該危険物施設の火災により他の施設にまで延焼しており、217件(同97.3%)は当該危険物施設のみの火災にとどまっている。 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所での火災が139件、給油取扱所での火災が40件、製造所での火災が35件となっており、これらの火災は、全体の96.0%を占めている(第1−2−3図)。第1-2-3図 危険物施設別火災発生件数 さらに、223件の火災のうち154件(全体の69.1%)は、危険物が出火原因物質となっており、これを品名別にみると、第4類第1石油類70件、第4類第3石油類31件、第4類第2石油類26件、第4類第4石油類15件の順となっている(第1−2−4図)。第1-2-4図 出火原因物質別火災発生件数
(2)火災の発生原因の半数以上は人的要因 平成18年中に発生した危険物施設における火災の発生原因の比率を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、人的要因が147件(全体の65.9%)と最も多く、物的要因が46件(同20.6%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が30件(同13.5%)となっている(第1−2−5図)。第1-2-5図 危険物施設における火災発生原因 また、着火原因をみると、静電気火花が42件(全体の18.8%)で最も多く、次いで高温表面熱が29件(同13.0%)、過熱着火26件(同11.7%)となっている(第1−2−6図)。第1-2-6図 危険物施設における火災着火原因
(3)無許可施設の火災 平成18年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での火災の発生件数は4件であり、死者、負傷者は発生していない。なお、これらの火災による損害額は、3,118万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成18年中の危険物運搬中の火災の発生件数は3件で、死者、負傷者は発生していない。なお、これらの火災による損害額は604万円となっている。
2 漏えい 危険物施設における危険物の漏えい事故の発生件数は、前年より減少に転じたものの、依然高い水準にある。漏えいの主な要因として、給油取扱所、一般取扱所、地下タンク貯蔵所等の危険物施設の腐食等劣化、管理不十分や確認不十分等の人的要因を挙げることができる。
(1)危険物施設における漏えい件数と被害 平成18年中の危険物施設における漏えい事故発生件数(火災に至らなかったもの)は、375件(対前年比17件減)、損害額は4億6,878万円(同1億335万円増)、死者は前年と同様なく、負傷者は25人(同6人増)となっている(第1−2−7図)。第1-2-7図 危険物施設における漏えい事故発生件数と被害状況 また、危険物施設別の漏えい事故発生状況をみると、給油取扱所での漏えいが78件、一般取扱所での漏えいが75件、地下タンク貯蔵所での漏えいが71件となっており、これらの漏えい件数の合計は、全体の59.7%を占めている(第1−2−8図)。第1-2-8図 危険物施設別漏えい事故発生件数 さらに、危険物施設における漏えい事故で漏えいした危険物をみると、375件の事故のうち、370件(全体の98.7%)が第4類の危険物となっている。これを危険物の品名別にみると、第2石油類176件、第3石油類115件、第1石油類66件、第4石油類9件の順となっている(第1−2−9図)。第1-2-9図 危険物施設から漏えいした危険物別件数
(2)漏えい事故の3割は腐食等劣化が原因 平成18年中に発生した危険物施設における漏えい事故の発生原因を、人的要因、物的要因及びその他の要因に区別すると、物的要因が169件(全体の45.1%)と最も多く、人的要因が164件(同43.7%)、その他の要因(不明、調査中を含む。)が42件(同11.2%)となっている(第1−2−10図)。第1-2-10図 危険物施設における漏えい原因 漏えい事故の発生原因を個別にみると、腐食等劣化によるものが122件(全体の32.5%)と最も多く、次いで確認不十分によるものが57件(同15.2%)、管理不十分によるものが48件(同12.8%)となっている(第1−2−10図)。
(3)無許可施設の漏えい事故 平成18年中の製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での漏えい事故の発生件数は9件であり、死者、負傷者は発生していない。なお、これらの漏えい事故による損害額は24万円となっている。
(4)危険物運搬中の漏えい事故 平成18年中の危険物運搬中の漏えい事故の発生件数は12件であり、死者、負傷者は発生していない。なお、これらの漏えい事故による損害額は477万円となっている。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の一部改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、試験によって一定の性状を示すかどうかを確認する方法を導入している。 なお、消防庁では、危険物判定の公正性、統一性を保つとともに、消防機関が行う危険物判定業務の簡素化、合理化を図ることを目的として、危険物データベースを運用している。 一定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならない。このような危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 危険物の運搬については、その量の多少を問わず、危険物の規制に関する政令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、指定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱い並びにその場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)については、市町村条例で定めることとされている。規制の体系
(2)危険物規制の最近の動向 危険物等の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ニーズの多様化等を踏まえ、ドライバー自らが、給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした。その後、セルフスタンドは増加傾向にあるが、給油中における燃料タンク給油口からのガソリン噴出(いわゆる「吹きこぼれ」)や、静電気による火災が発生していることから、平成18年9月から「セルフスタンドにおける給油時の安全確保に関する検討会」を開催した。その検討結果を踏まえ、平成19年3月に給油中の吹きこぼれや静電気火災対策について各都道府県及び関係消防機関に通知し注意喚起を行うとともに、同年9月には、吹きこぼれに対する安全対策及び給油ノズルの導電性確保を図るため、総務省令の一部を改正するなど、随時、所要の安全対策を講じているところである(囲み記事「セルフスタンドの給油時の安全対策について」参照)。 平成12年4月1日からは、都道府県知事又は市町村長の機関委任事務であった危険物施設の設置許可や危険物取扱者試験の実施等の事務が、機関委任事務制度の廃止に伴い、都道府県又は市町村の自治事務となった。 平成13年7月には、消防法を改正し、平成12年6月に群馬県で発生した化学工場の爆発火災事故を踏まえ、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類を消防法別表第一第5類(自己反応性物質)の品名に追加するとともに、平成12年3月に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画」(再改定)を踏まえ、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲を250度未満とした。 平成16年には、平成15年8月に発生した三重県ごみ固形燃料発電所爆発事故や同年9月に発生した株式会社ブリヂストン栃木工場タイヤ火災などを踏まえ、平成16年6月に消防法を改正し、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)を市町村条例で定めることとするとともに、再生資源燃料(RDF(ごみ固形燃料)、RPF(廃プラスチック固形燃料)等)を指定可燃物に追加した。 また、平成15年9月の十勝沖地震に伴い発生した浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の全面火災を踏まえ、各地で発生が懸念される大規模地震に備えるため、平成16年7月に大規模屋外貯蔵タンクの耐震改修期限を前倒しするとともに、平成17年1月には浮き屋根の構造基準の強化を図った(囲み記事「屋外タンク貯蔵所の改修期限について」参照)。
セルフスタンドにおける給油時の安全対策について セルフスタンドの数は、平成19年3月末時点で全国において約6,000施設に達し、今後も増加することが予想されます。セルフスタンドがますます身近な存在となることから、必要な安全確保策を講じることやドライバーが給油方法に対する理解を深めることが重要となります。 これまでも、セルフスタンドにおいては、ガソリンの吹きこぼれ、静電気による火災が発生していることから、平成18年度に消防庁では、学識経験者、行政機関及び関係機関から構成される「セルフスタンドにおける給油時の安全確保に関する検討会」を開催し、吹きこぼれや静電気火災の原因把握及び事故防止対策を検討しました。平成19年3月に検討結果を取りまとめましたので、その内容を紹介します。○ガソリン吹きこぼれ防止について ◆セルフスタンドにおける適切な給油方法  給油時におけるガソリン吹きこぼれの多くは、給油方法が適切でなかったことによるものです。セルフスタンドの給油設備には、燃料タンクが満量になった場合に給油を自動停止する装置(満量停止装置)を備えていますが、吹きこぼれの発生を防ぐには、利用者が適切な方法で給油することが必要です。【セルフスタンドにおける適切な給油方法】 ○ 給油ノズルを止まるところまで確実に差し込む。 ○ 給油ノズルのレバーを止まるところまで確実に引く。 ○ 自動的に給油が止まったら、それ以上の給油はしない。 ○ 給油後、給油ノズルを確実に元の位置に戻す。 ※ 給油開始後、早期に満量停止装置が作動し給油できない場合には、給油方法についてセルフスタンドの従業員の指示を仰ぐことが必要です(このような状況が繰り返し発生する場合には、自動車メーカーに相談する。)。 ◆給油ノズル等の維持管理  吹きこぼれの原因として、給油ノズルの満量停止装置の故障が考えられることから、消防法に定められている点検に加えて日常点検を行い、満量停止装置の検知センサー部に損傷がないか等、基準に適合したものであることを確認することが必要です。 ◆吹きこぼれに対する安全対策  給油ノズルには万が一、ガソリンが吹きこぼれても、ガソリンが人体にかかるのを防ぐための措置が必要です。  例:スプラッシュガードの設置○静電気による火災防止について ◆静電気除去シート  ガソリンは引火点が低く、静電気等の着火源があれば容易に火がついてしまいます。静電気を除去するために、給油を始める前に必ず静電気除去シートに触れることが有効です。 ◆給油ノズルの導電性確保  一部の給油ノズルでは、レバー等の手で触れる部分の材質に導電性がなく、給油中に発生した静電気が除去されなかったために火災が発生したことが考えられることから、ガソリンを取り扱う給油ノズルを優先して、当該ノズルの手で触れる部分を導電性のある材料とすることが必要です。
屋外タンク貯蔵所の改修期限について1 屋外タンク貯蔵所の改修期限とは 消防法令で定められている屋外タンク貯蔵所の技術基準は、昭和49年に発生した岡山県水島コンビナートの屋外タンク貯蔵所からの油の大量漏えい事故を契機として昭和52年に大幅に強化されました。この時の基準の強化は、貯蔵量1,000キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所(以下「特定屋外タンク貯蔵所」という。)に対して行われました。その際、新たな基準に適合していない既設の特定屋外タンク貯蔵所(以下「旧法特定屋外タンク貯蔵所」という。)の技術基準は据え置かれましたが、平成7年に、旧法特定屋外タンク貯蔵所の耐震性の向上を図るために技術基準が強化され、旧法特定屋外タンク貯蔵所は、一定の期日までに新たな基準に適合するように改修を行うこととされました。 さらに平成11年には、貯蔵量が500キロリットル以上1,000キロリットル未満の中規模な屋外タンク貯蔵所(以下「準特定屋外タンク貯蔵所」という。)についても、耐震性の向上を図る目的で技術基準が強化され、同時に、新たな基準に適合していない既設の準特定屋外タンク貯蔵所(以下「旧法準特定屋外タンク貯蔵所」という。)に対して、改修期限が定められました。2 改修期限の繰り上げ 消防庁では、平成15年十勝沖地震発生後に政令を改正し、旧法特定屋外タンク貯蔵所及び旧法準特定屋外タンク貯蔵所の改修期限を繰り上げました。これにより、屋外タンク貯蔵所の耐震性がより早期に確保されることになります。 また、改修の進ちょくをより確実なものとするために、改修実施状況と今後の予定を把握することとしています。
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成19年3月31日現在における危険物施設の総数(設置許可施設数)は49万6,789施設(対前年度比9,456施設、1.9%減)となっている。 施設別にみると、地下タンク貯蔵所が11万1,204施設(全体の22.4%)と最も多く、次いで給油取扱所の7万6,310施設(同15.4%)、移動タンク貯蔵所の7万6,262施設(同15.4%)等となっている(第1−2−1表、第1−2−11図)。第1-2-1表 危険物施設数の推移第1-2-11図 危険物施設数の状況 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は48万7,252施設(全体の98.1%)となっている。 危険物施設数の最近における推移をみると、大半の施設において減少傾向にある。イ 危険物施設の規模別構成 平成19年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の小規模な危険物施設が、37万9,224施設(全体の76.3%)を占めている(第1−2−12図)。第1-2-12図 危険物施設の規模別構成比
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物の取扱いは、危険物に関する安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、あるいは甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければならない。 また、危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成19年3月31日現在743万8,316人と広く国民の間に定着しており、危険物に関する知識、技能の普及に大きな役割を果たしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成18年度中の危険物取扱者試験は、全国で367回(対前年度比29回増)実施された。受験者数は47万6,393人(同9,725人減)、合格者数は20万4,358人(同13,075人増)で平均の合格率は42.9%(同3.6ポイント増)となっている(第1−2−13図)。この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が31万2,769人(受験者数全体の65.7%)と最も多く、次いで丙種の4万9,546人(同10.4%)となっており、この二種類の試験で全体の76.1%を占めている。合格者数でも、乙種第4類が11万729人(合格者数全体の54.2%)、丙種が2万5,503人(同12.5%)となっており、この二種類の試験で全体の66.7%を占めている。第1-2-13図 危険物取扱者試験実施状況イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成18年度中の保安講習は、全国で延べ1,253回(対前年度比80回減)実施され、16万6,566人(同2,513人増)が受講している(第1−2−2表)。第1-2-2表 危険物取扱者保安講習受講者数及びその危険物取扱者免状の種類別内訳
(5)事業所における保安体制の整備 平成19年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で23万6,140事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う者には、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1−2−14図)。第1-2-14図 自衛消防組織等を設ける事業所数の推移
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、その規模等に応じた一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが、義務付けられている。 平成18年度中に実施された保安検査は、311件(対前年度比27件増)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは、303件(同27件増)、特定移送取扱所に関するものは8件(前年同件数)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造又は設備及び危険物の貯蔵又は取扱いが消防法に従っているかについて立入検査を行うことができる。 平成18年度中の立入検査は23万3,263件(対前年度比36件増)の危険物施設について、延べ26万3,052回(同7,129回増)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成18年度中において市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は、314件(対前年度比43件減)となっている(第1−2−15図)。第1-2-15図 危険物施設等に関する措置命令等の推移
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならない。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行う。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインのみである。 なお、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプライン以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインの保安については、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題](1)官民一体となった事故防止対策の推進 危険物施設の火災・漏えい事故は、平成6年ごろを境に増加傾向に転じ、平成18年には過去最悪となる598件を記録している。このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される「危険物等事故防止対策情報連絡会」において策定された「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、事故に係る調査分析や事故防止技術の調査研究、各種情報の共有化を進めるとともに、各都道府県における事故防止の取組など、官民一体となって事故防止対策を推進していく必要がある。 また、産業災害の背景要因として、人員や設備投資等の削減、雇用形態の変化や保守管理業務のアウトソーシング等が指摘されていることから、幅広い視点からの実態の把握による有機的な対策を講ずるため、関係省庁との連携した調査・検討や事故原因調査制度の整備等により再発防止を推進していくとともに、各事業所の実態に応じた安全確保を図るため、危険要因を把握して、それに応じた対策を講ずることが必要である。
(2)腐食等劣化への対策 近年の漏えい事故増加については、危険物施設の老朽化等に伴う腐食等劣化が大きな要因となっている。このような漏えい事故を未然に防止するため、危険物施設の設置環境等にも配慮した腐食防止・抑制対策を講ずるとともに、資源の有効活用、廃棄物の削減等の観点から、危険物施設を改修し、継続して使用するための方策に係る検討を行う必要がある(囲み記事「漏えい事故の防止に向けて」参照)。
漏えい事故の防止に向けて 原油、ガソリン、重油等の危険物を貯蔵するタンク等の材料として用いられている金属材料は、内容物又は外部環境の影響により腐食等劣化するおそれがあります。 これらのタンクを含む危険物施設に対しては、腐食等劣化などによる危険物の漏えい、火災が発生しないよう定期点検等が義務付けられていますが、危険物施設における漏えい事故件数は、平成6年頃を境に増加傾向にあります。特に腐食等劣化によるものは漏えい事故件数の約30%を占めており、また設置後長期間を経過した施設も増加していることから、今後さらに危険物の漏えい・拡散による火災危険等の増大や環境への影響が懸念されています。漏えい事故事例 給油取扱所の地下タンクからのガソリン漏えい事故漏えいした場所 :地下タンク(容量10キロリットルの鋼製の一重殻タンク)漏えい量(推定):レギュラーガソリン約9.1キロリットル【事故概要】5日間にわたり地下タンクからガソリンが漏えい。漏えい初日から地下タンク中のガソリンの在庫の差を把握していたが、漏えいとは疑わずに、ガソリンを地下タンクに新たに受け入れた(約10キロリットル)結果、ガソリンが推定約9.1キロリットル漏えいした。【事故原因】◆地下タンクの腐食により穴が開き、穴からガソリンが漏えいした   ・・・腐食劣化◆在庫の差を把握しながらも、ガソリンを受け入れ、営業を継続していた・・・管理不十分漏えいした地下タンク腐食により開いた穴 このような腐食等劣化による危険物の漏えい事故を防止するため、消防庁では、平成19年から「地下タンク等の危険物施設の腐食防止・抑制対策並びに腐食劣化した危険物施設を継続使用するための対策」に係る調査検討を行っています。 この調査検討は、腐食していることが外部からは分かりにくい地下貯蔵タンク及びその埋設配管を対象としており、平成18年度までの3か年度に実施した、土壌中の水素イオン濃度、土壌比抵抗値、土壌水分含有率、酸消費量、アルカリ消費量、塩化物イオン濃度等と腐食劣化の程度との関連性を統計的に調査した結果を踏まえ、地下貯蔵タンク及び埋設配管の種類や設置環境に応じた、腐食防止・抑制対策の研究を行っています。 あわせて、資源の有効活用、廃棄物の削減の観点から、地下タンクを補修し、安全に継続して使用するための対策についても研究を行っています。
(3)科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、危険物や指定可燃物と同様の性状を有していながらその潜在的危険性が認識されていない新規危険性物質の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、新規危険性物質についての早期把握や危険物規制に関する技術基準の性能規定化等を引き続き図るとともに、従来の消防や防災の観点からは想定されていなかった新しい危険要因を有する施設等について、幅広い視点から実態を把握し、それに応じた安全確保を図るための方策を検討していく必要がある。 また、バイオマス燃料については、地球温暖化対策やエネルギー安定供給等の観点から、「バイオマス・ニッポン総合戦略」(平成14年12月27日閣議決定)等に基づき検討が進められ、平成18年3月31日にはバイオマスの利活用の現状と課題の検証を踏まえ、新たな総合戦略が策定された。その行動計画においては安全対策が新たに盛り込まれていることから、安全が確保されたバイオマス燃料の利活用を促進するため、安全対策の確立に係る調査検討を引き続き行っていく必要がある。
(4)屋外タンク貯蔵所の安全対策 平成15年十勝沖地震の際、北海道苫小牧市では多数の浮き屋根式屋外タンク貯蔵所で浮き屋根が損傷し、中には油中に沈下した浮き屋根もあった。浮き屋根の損傷は、「やや長周期地震動」と呼ばれる周期3秒〜15秒程度の地震動により、タンクに大きな液面揺動(スロッシング)が励起され、それにともなって浮き屋根が大きく揺動したことが原因とされている。このことを受けて、浮き屋根の耐震機能を確保するため、消防法令で定められている技術基準が改正され、平成17年4月1日から施行されている。 さらに、やや長周期地震動に対する浮き屋根式屋外貯蔵タンクの安全対策を推進するため、やや長周期地震動の影響を強く受ける全国の石油コンビナート地域に強震計を設置し、各石油コンビナート地域におけるやや長周期地震動の詳細な特性の把握に努めている。また、これらの強震計からのデータをもとに、地震発生後直ちに屋外貯蔵タンクの被害予測・異常診断を行うことができる手法を開発することにより、消防機関やタンクを保有する事業所による迅速かつ的確な応急対応を支援することを目指している。 屋外タンク貯蔵所に代表される大規模危険物施設は、沿岸部に集中して設置されており、今世紀前半にも発生する可能性が高いとされている南海トラフを震源とする地震、千島海溝・日本海溝を震源とする地震等に伴う津波の危険に直面している。しかし、現状では大規模危険物施設の津波被害の予測手法には確固たるものがないため、これらの地震の際、津波が大規模危険物施設に及ぼす影響の程度は不明である。 こうしたことから、大規模危険物施設の発生しうる津波・浸水被害を予測する標準的な手法を確立するとともに、有効な被害軽減対策を立案するため、平成18年度から「危険物施設に係る津波・浸水対策検討会」において検討を行っている。 また、近年、内部浮き蓋付き屋外タンク貯蔵所(固定屋根式屋外貯蔵タンクの内部に浮き蓋を有する屋外タンク貯蔵所)における内部浮き蓋の沈没・損傷事故が相次いで発生していることから、これらのタンクに対して所要の安全対策を講ずる必要がある。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成18年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は236件であり、前年(144件)と比較すると大幅に増加(92件)している(第1−3−1図)。第1-3-1図 石油コンビナート事故発生件数(種別ごと)の推移 全般的な発生件数の傾向は、平成6年以降増加に転じ、依然として発生件数は多い状況にある。 また、18件の災害により、死者7人、負傷者76人が発生している。損害額は17億856万円で、前年に比べて10億9,633万円の増加となっている。 災害原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が127件(53.8%)、設備の劣化や故障などの物的要因が100件(42.4%)となっており、前年度と同様に人的要因に係る事故が多い。
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数は、第1種事業所が173件(うちレイアウト規制対象事業所151件)であり、全体の73.3%を占めている。1事業所あたりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が77.8%と最も高い(第1−3−1表)。第1-3-1表 特定事業所区分別災害件数
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数は、化学工業関係75件(全体の31.8%)、石油製品・石炭製品製造業関係58件(同24.6%)、鉄鋼業関係38件(同16.1%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質が大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制が行われ、総合的な防災体制の確立を図ることとしている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している地域については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域として33道府県の86地区(平成19年4月1日現在)が指定されている(第1−3−2図)。第1-3-2図 石油コンビナート等特別防災区域の指定状況 また、平成19年4月1日現在、第1種事業所394事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は192)、第2種事業所331事業所が石油コンビナート等災害防止法の適用を受けている。 なお、各特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等については、附属資料29のとおりである。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の整備指針」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を図っている。 平成19年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車97台、大型高所放水車78台、泡原液搬送車97台、3%泡消火薬剤3,340キロリットル、6%泡消火薬剤537キロリットル、消防艇24艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備30基、可搬式泡放水砲24基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成19年4月1日現在、全事業所(725事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか74の共同防災組織、58の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員4,949人、大型化学消防車120台、大型高所放水車78台、泡原液搬送車141台、大型化学高所放水車85台、油回収船34隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成19年4月1日現在、流出油等防止堤が176事業所に、消火用屋外給水施設が534事業所に、非常通報設備が725の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」、「防災要員教育訓練指針」等を示しており、引き続き自衛防災体制の充実を図る。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特定事業所全体に占める割合は、石油にあっては54.8%、高圧ガスにあっては98.2%となっており、高圧ガスについては大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成19年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる192(平成19年4月1日現在)の事業所のうち平成18年度中の新設及び変更の届出件数は、25件であった。 また、平成18年度中の確認件数は、15件であった(第1−3−3図)。第1-3-3図 レイアウト規制対象事業所の新設等の届出及び確認の状況
(3)レイアウト規制の簡素合理化 平成8年3月及び平成10年1月に、レイアウト規制に係る事務の簡素合理化を図るため「レイアウト規制に係る審査に関する運用指針」の見直しを行うとともに、個別の届出を要しない軽微な変更の範囲を拡大する等の措置を講じた。さらに新設等の届出から指示又は不指示の通知までの審査期間は、石油コンビナート等災害防止法では3月としているところを、関係省庁の協力を得て平均1月としている。
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
6 石油コンビナート等災害防止法施行令等の一部改正(1)経緯 平成15年9月末に発生した十勝沖地震では、苫小牧市内の石油精製事業所において、多数の屋外貯蔵タンクの損傷、油漏れ等の被害が発生し、さらに、地震発生から約54時間が経過した後に浮き屋根式タンクの全面火災が発生した。 浮き屋根式タンクで発生する火災について、これまではリング火災を想定していたが、今後の我が国における地震の発生危険等を考慮すると、タンク全面火災にまで拡充することが必要となった。 この災害想定の拡充に対応するため、〔1〕消防力の充実強化(特定事業所に係る防災資機材の増強)、〔2〕防災体制の充実強化(防災管理者・防災規程等を中心とした体制の整備)に係る所要の規定整備を行うことが必要となり、石油コンビナート等災害防止法の一部改正が行われた(平成16年6月2日公布)。 このうち防災体制の充実強化については、平成16年12月1日に施行され、防災規程の変更命令及び防災業務の改善措置命令に関する事項が新たに規定されたことに伴い、防災規程の変更命令及び防災業務改善措置命令に係る運用フロ−と防災規程作成指針及び防災規程作成指針の概説を示した。また、防災業務の実施状況を報告する定期報告について、報告書の提出に先立ち、防災業務の実施状況について確認をさせるための、防災業務実施状況チェック表及び防災業務実施状況チェック表細目を作成し、これに基づき特定事業所に報告書を作成させるよう、関係道府県あてに通知した。 一方、消防力の充実強化については、石油コンビナート等災害防止法施行令等の一部が改正され、大容量泡放射システムの配備を特定事業者に義務付けるとともに、当該システムを配備することができる広域共同防災組織を設置できる区域等について定められ、平成17年12月1日に施行された。
(2)概要ア 改正内容(ア)大容量泡放射システムについて 大容量泡放射システムとは、主として大型の浮き屋根式タンクの全面火災に対応する資機材で、大容量泡放水砲、ポンプ、混合装置、泡消火薬剤、ホ−ス等の資機材の総称である。 毎分1万リットル以上の放水能力を持つ当該システムは、現在配備されている大型高所放水車数台分の能力を有し、大型の浮き屋根式タンクの全面火災を早期に消火するために、必要不可欠な資機資機材である。 この改正では、消防力の充実強化のため、特定事業所に直径34メ−トル以上の浮き屋根式タンクを有する特定事業者は、その自衛防災組織に大容量泡放射システムを配備しなければならないことが規定され、また、当該タンクの直径に応じた必要なシステムの能力について定められた。さらに、システムに必要な水利やシステムを構成する防災資機材の種類及び性能等について定め、そのうち泡消火薬剤については、消防庁告示として基準を示した。(イ)広域共同防災組織について 大容量泡放射システムを配備するに当たり、特定事業者は特定事業者共同でより広域的な配備を可能とするための組織的受け皿である広域共同防災組織を設置することができることとされている。この広域共同防災組織を設置できる区域について、システムを配備すべき特定事業所が存在する全国の特別防災区域を12のブロックに分けて定められた。また、広域共同防災組織で行う防災業務について定めるとともに、当該組織が作成し行政機関へ届け出ることとなる広域共同防災規程に定める事項について規定した。イ 経過措置 政令で規定された性能を有する大容量泡放射システムを即座に配備することは事実上困難であることから、平成20年11月30日までに配備することとされた。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 災害対策の推進 特別防災区域は、大量の危険物等が集積している区域で、ひとたび火災等が発生した場合には甚大な被害となることが懸念されることから、消防法や高圧ガス保安法等の規制に加えて石油コンビナート等災害防止法により、特定事業者に対して自衛防災組織の設置の義務付けや事業所内の施設配置を規制(レイアウト規制)することにより、災害の拡大防止を図ることとしている。 また、同法により、道府県に防災本部が常設されており、消防機関をはじめとした防災関係機関、特定事業者が一体となって防災体制を確立する体制が整備されている。 こうした中、平成15年に発生した苫小牧市内の石油精製事業所の事故を受け、石油コンビナート等災害防止法の一部改正を行い、新たな防災体制の充実強化及び消防力の充実強化を取り入れた。このうち消防力の充実強化については、石油コンビナート等災害防止法施行令の一部が改正され、大容量泡放射システムの配備を特定事業所に義務付けることにより、従来よりも防災対策を強化し、災害対応に努めることとしている。
(1)特定事業所における防災体制の充実強化に伴い検討すべき事項 平成18年中の特別防災区域における事故件数は、平成17年中に比べ大幅に増加し、特に、石油や高圧ガス等を大量に貯蔵し、取り扱う化学工業関係及び石油製品製造関係の特定事業所において、事故が大幅に増加したところである。 また、石油コンビナート等災害防止法第23条の規定に基づく異常現象の通報を怠った事例が判明するなど、特定事業所の事故防止体制に憂慮される事態が見受けられることから、特定事業所の防災体制の現状を把握し、必要な指導、助言等を行っていく必要がある。
(2)大容量泡放射システムの配備に伴い検討すべき事項 特定事業者による大容量泡放射システムの配備が、平成20年11月末までに行われることとなるが、当該防災資機材は、国内初の大規模な防災資機材であることから、その配備にあたっては、個別の資機材ごとの性能を満たすことは当然として、システムとして設定した際に有効な消火活動ができるかの確認、検証が必要である。特に、大容量泡放射システムから放出される泡の有効性の確認・検証のほか、広域共同防災組織による配備とした場合には、府県をまたがって輸送が行われることとなるため、防災本部に設置する専門部会による確認・検証体制を整備する必要がある。 また、各道府県や関係防災機関が一体となった、新たな広域的な防災体制のあり方として、泡消火薬剤の予備備蓄や相互融通、さらには、大容量泡放射システムの構成資機材の相互活用のあり方等について検討する必要がある(囲み記事「大容量泡放射システムの広域的な輸送について」)。
大容量泡放射システムの広域的な輸送について 大容量泡放射システムは、平成20年11月30日までに共同防災組織又は広域共同防災組織に配備が予定されている防災資機材です。 広域共同防災組織は、地理的条件、交通事情、災害の発生のおそれ、特定事業所の集中度及びシステムを設定するまでの時間的猶予、対象タンクの配置状況、やや長周期地震動による影響を勘案し、下図のとおり区域割りが設定されています。なお、災害発生時において、大容量泡放射システムの常置場所から広域共同防災組織を構成する最も遠い距離に所在する特定事業所の該当タンクまでに概ね8時間以内で輸送できるように、広域共同防災組織を設けることとされています。 災害発生時に大容量泡放射システムを輸送する場合、構成資機材及び泡消火薬剤は、相当の大きさや数量等となることから、トラック数十台を用いた道府県を越える大規模な輸送が必要となる場合が想定されます。 このようなことを踏まえ、消防庁では、学識経験者、関係行政機関等から構成される「大容量泡放射システムの輸送のあり方に係る検討会」を開催し、大容量泡放射システムの輸送に係る様々な問題点を整理するための検討を行っています。
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団(現独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万キロリットルを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成18年中の林野火災の件数は、1,576件(前年2,215件)、焼損面積は829ha(同1,116ha)、損害額は1億3,421万円(同8億6,816万円)であり、件数、焼損面積、損害額のすべてにおいて大幅な減少となった(第1−1−26表)。第1-1-26表 林野火災の状況 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜取りや森林レクリエーションなどにより入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成18年も例外ではなく、3月から5月までの間に、723件(年間の45.9%)の火災が集中して発生している(第1−1−31図)。第1-1-31図 林野火災の月別出火件数
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業(1)林野火災特別地域対策事業の実施 消防庁は、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、 〔1〕 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防 〔2〕 火災予防の見地からの林野管理 〔3〕 消防施設等の整備 〔4〕 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成19年4月1日現在、38都道府県の536市町村にわたる228地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。
(2)林野火災用消防施設等の整備 消防庁は、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村に対して、優先的に林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場)の整備に対して国庫補助を行っている。 なお、従来は国庫補助が行われていた林野火災対策用資機材、林野火災工作車及び小型動力ポンプ付水槽車については、平成17年度に三位一体改革による税源移譲に伴い、国庫補助対象ではなくなった(第1−4−1表)。第1-4-1表 国庫補助金による林野火災用消防施設等の整備状況
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、発生頻度は住宅火災より低いものの、ひとたび発災し、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等へ被害が及ぶこともあり、ときには隣接市町村、隣接都府県に拡大することがある。 消防庁は、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、迅速かつ十分な消防力の投入を行うとともに、火災による被害を最小限に抑えることを目的として、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、必要に応じて早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。近年、消防防災ヘリコプターの整備に伴い、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」(昭和61年)に基づく消防防災ヘリコプターの応援出動による空中消火が増えてきている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1−4−1図のとおりである。第1-4-1図 空中消火の実施状況 なお、平成7年度から、林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保するとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、あわせて、林野火災の消火には多くの困難を伴うこと等から、林野火災対策としては、特に出火防止の徹底が重要である。消防庁では、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。 〔1〕 林野周辺住民、入山者等の防火防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。 〔2〕 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。 〔3〕 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。 〔4〕 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じた山火事予防を呼びかけている。
(2)火災警報の運用の工夫 市町村は、都道府県を通じて火災気象通報を受けたとき又は気象の状況が火災の予防上危険であると認めるときは、火災警報を発令して火気の使用等の制限を行うことができる。しかしながら、火災気象通報の発表地域は県内全域など広範囲なことが多く、市町村の気象状況に対応した火災警報の発令が困難な面がみられた。そのため、消防庁と気象庁が連携し、消防本部で観測した湿度等のデータを気象庁側に提供し、気象台が発表する火災気象通報の区分をよりきめ細かく行う「火災気象通報の運用改善に伴う火災警報の効果的な活用の試行」を実施した。平成16年度は4県、平成17年度は3県を追加し、平成18年4月末まで試行を行い、運用面・技術面の課題及び改善点の整理を行った。
(3)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、〔1〕異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、〔2〕森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、〔3〕林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、〔4〕林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、〔5〕林野火災における消火・広域応援体制に関する調査、〔6〕林野火災の予防対策のあり方やヘリコプターによる空中消火のあり方についての検討を行っている。 また、平成17年8月に、「林野火災の有効な低減方策検討会」の検討結果を受け、火災予防条例(例)の一部を改正し、火災に関する警報の発令中における火の使用の制限について、「山林、原野等の場所で、火災が発生するおそれが大であると認めて市(町・村)長が指定した区域内において喫煙をしないこと」を追加した。 平成18年度は林野庁と共同して「広域的な林野火災の発生時における消防活動体制のあり方検討会」を開催し、広域的な林野火災が発生した場合の防災関係機関間の情報共有及び連携のあり方、無人飛行機の利用可能性等について検討を行い、報告書を取りまとめた(囲み記事「林野火災発生時における無人航空機の利用可能性に関する実証実験」参照)。
林野火災発生時における無人航空機の利用可能性に関する実証実験1.実験日時・場所・体制(1)日  時 平成19年2月5日(月)(2)場  所 敷島総合公園(山梨県甲斐市牛句2814番地)(3)実験主体 消防庁特殊災害室、消防大学校消防研究センター、        財団法人消防科学総合センター(4)実験協力 山梨県総務部防災課、甲斐市、甲府地区広域行政事務組合消防本部2.実験概要 広域的な林野火災が発生した場合の情報収集手段として、無人航空機(UAV=Unmanned Aerial Vehicle)の利用可能性の検討について、消防研究センター保有のカイトプレーン(写真参照)を活用し、実証実験を行いました。大型カイトプレーン小型カイトプレーン(1)可視カメラを用いての情報収集   上空200mから、消防車両や人の存在を把握することが可能であることが確認された。(2)暗視カメラを用いての情報収集   上空300mから、木立の陰の熱源、消防車両、人、土やコンクリートの違いなどを把握することが可能であることが確認された。(3)GPSを用いての位置情報の把握   カイトプレーンから地上の基地局に1秒ごとに送られてくる映像とGPS位置情報データに基づき、目標位置を地図上に反映するとともに、飛行経路を軌跡として示すことができることが確認された。3.まとめ  林野火災における活用の可能性として、火災発生場所の確認、発災地周辺の地勢の把握のような初動時の情報収集のみならず、延焼範囲や延焼方向の把握、消防隊の部署配置・進入ルートの確認、夜間の情報収集や鎮圧後の残火確認など、幅広い分野での活用が実証されました。 実用化に向けては、更なるコストダウン及び操作の簡便性の向上が求められ、この点については、今後の検討課題です。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、前述の出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を今後も積極的に講じる必要がある。 〔1〕 気象台から発せられる気象情報や火災気象通報を踏まえて、林野火災発生の可能性を勘案し、必要に応じて火災警報の効果的な発令を行うなど、火気取扱いの注意喚起や制限を含めて適切に対応すること。 〔2〕 各地方公共団体における火災警報の発令に役立てていくため、今後、火災気象通報における地域区分の細分化に関する取組を促進していくこと。 〔3〕 林野火災を覚知した場合、早急に近隣の市町村に対して応援要請を行うなど、林野火災の拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するため、速やかな事前通報及び派遣要請に努めるとともに、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術の徹底を図ること。また、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。 〔4〕 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図を、GIS(地理情報システム)の活用も視野に入れて整備するなど、関係部局においてその共有を図ること。 〔5〕 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。 〔6〕 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大防止を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。熊本県阿蘇山の林野火災(平成19年3月)(熊本県防災消防航空隊提供)空中消火へ向かう熊本県消防防災ヘリコプター「ひばり」(熊本県防災消防航空隊提供)
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成18年中の災害 平成18年は、6月5日の沖縄県の大雨から始まり、6月26日から7月2日にかけての九州地方を中心とする梅雨前線による集中豪雨、7月15日から24日にかけての西日本を中心とする集中豪雨(気象庁は「平成18年7月豪雨」と命名)、10月6日から9日にかけての北海道及び東北を中心とする急速に発達した低気圧による大雨と暴風、さらに、8月の台風第10号、9月の台風第13号及び前線による大雨や暴風、竜巻、11月7日に北海道佐呂間町で発生した竜巻などにより、全国各地に甚大な被害をもたらした。 平成18年中に発生した台風の数は23個と、平年(昭和46年から平成12年までの30年間平均)の26.7個と比較すると少なかったが、日本列島への上陸数は2個と、ほぼ平年(2.6個)並みであった。 平成18年中の風水害等(地震、火山噴火を除く。)による被害をみると、人的被害は、死者177人(前年147人)、負傷者1,822人(同1,545人)となり、前年に比べて増加している。また、住家被害は、全壊458棟(同1,246棟)、半壊2,022棟(同3,933棟)と前年に比べて減少したものの、一部破損は16,091棟(同6,145棟)となり、前年に比べて増加している(第1−5−1図)。 なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−1表)。第1-5-1図 風水害等による被害状況第1-5-1表 平成18年中の主な風水害による被害状況
(2)平成19年1月から10月までの災害 平成19年10月までに発生した台風の数は、20個であり、このうち、日本列島への上陸数は3個である。 風水害に伴う主な人的被害、住家被害は、死者・行方不明者14人、負傷者204人、全壊43棟、半壊278棟、一部破損1,024棟となっている(平成19年10月31日現在)。 なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−2表)。第1-5-2表 平成19年中(1〜10月)の主な風水害による被害状況
[風水害対策の現況] 我が国では、台風や低気圧、前線などの集中豪雨等による風水害が毎年のように発生し、広い地域で大きな被害がもたらされている。そのため、中央防災会議において防災基本計画の風水害計画編等の修正が行われているが、消防庁では、これらの災害による被害を軽減するために、地方公共団体に対し洪水予報河川の指定、土砂災害警戒区域の指定及び洪水や高潮ハザ−ドマップの作成などについて、地域防災計画の修正を行うよう要請している。また、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制の整備などについても要請している。 内閣府、消防庁、国土交通省、気象庁をはじめとした関係省庁では、〔1〕防災情報の迅速確実な伝達提供、〔2〕災害時要援護者の避難体制の確保、〔3〕総合的な治水対策、〔4〕観測予報体制の充実強化のほか、ボランティア活動の支援強化、緊急消防援助隊の整備促進など36項目を課題として掲げ、局長会議や「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」を開催し、平成17年3月に、「集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討報告」を取りまとめた。 そして、この検討報告の中で、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」及び「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」が示された。「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」は、〔1〕避難すべき区域及び判断基準(具体的な考え方)を含めたマニュアル策定の進め方、〔2〕避難勧告等の伝達手段の整備、伝達内容について注意すべき事項等を示し、市町村が「避難勧告等の判断・伝達マニュアル」を作成する際の指針となっている。また、平成18年3月に改訂した「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」は、〔1〕情報伝達体制の整備(災害時要援護者支援班の設置、防災関係部局と福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者との間の連携強化)、〔2〕災害時要援護者情報の共有(関係機関共有方式、同意方式、手上げ方式等による平時からの情報共有)、〔3〕災害時要援護者の避難支援計画の具体化(災害時要援護者一人ひとりの避難支援プランの策定)、〔4〕避難所における支援、〔5〕関係機関等の間の連携に関する検討等について示された。 これを受けて、消防庁では、全国の市区町村における避難支援プラン作成への取組が一層推進されるよう、平成17年度に、「災害時要援護者の避難支援プラン策定モデル事業」を実施した。モデル地域として選定した10市町の協力を得て、災害時における高齢者や障害者等災害時要援護者の避難について、福祉部局と連携した情報共有や実践的な訓練の実施等の詳細な報告を受け、避難支援プラン作成のノウハウを整理して、平成18年4月に、「災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて」を手引きとして取りまとめ、地方公共団体に提供した。 さらに、内閣府、消防庁、厚生労働省をはじめとした関係省庁では、要援護者対策の具体的な進め方や地域の取組に当たって有効と考えられる方策例を、平成19年3月に「災害時要援護者対策の進め方について」として取りまとめた。 なお、消防庁では、毎年、出水期を前に、各都道府県に対し風水害に対する警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知の発出を行うほか、台風の襲来時における台風警戒情報、災害の発生が予想される際の警戒情報などを都道府県に送付して、警戒・避難体制の強化を呼びかけている。 さらに、防災訓練については、平成18年度中において、風水害を想定した防災訓練を都道府県では29団体で55回、市町村では延べ786回実施されている。
(1)洪水 昨年に発生した「平成18年7月豪雨」では、本州付近にあった梅雨前線に向かって多量の水蒸気が流れ込んで前線の活動が活発となり、九州地方、山陰地方、北陸地方と長野県の広い範囲で記録的な大雨となったが、近年、時間雨量80mmを超えるような猛烈な雨が頻発し、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど、大きな被害が発生する例が増えている。 また、近年、都市部で集中豪雨が発生すると、排水能力の限界から水が溢れたり、さらには地下街や地下室へ水が流れ込むなどにより、著しい浸水被害が発生するおそれがある都市部を流れる河川及びその流域について、総合的な浸水被害対策を講じるため、新たな法制化として、特定都市河川浸水被害対策法が、平成16年5月に施行されている。 そのほか、洪水による被害を軽減させるため、平成13年6月に〔1〕これまで国直轄河川で行われていた洪水予報を新たに都道府県が管理する河川についても行うこと(平成19年11月1日現在45水系80河川(1湖沼含む)を指定)、〔2〕国及び都道府県は浸水想定区域を指定及び公表すること、〔3〕市町村は浸水想定区域ごとに洪水予報の伝達方法、避難所等を定め、住民に周知させるよう努めること等を主旨とする水防法の一部改正が行われた。 さらに、平成17年5月には〔1〕浸水想定区域を指定する河川の範囲拡大、〔2〕浸水想定区域が指定された市町村におけるハザードマップの作成・周知の義務付け、〔3〕中小河川における洪水予報等の提供の充実、〔4〕水防協力団体制度の創設、〔5〕非常勤の水防団員に係る退職報奨金の支給規定の創設、〔6〕浸水想定区域及び土砂災害警戒区域における警戒避難体制の充実等を内容とした「水防法及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」の一部改正が行われた。 このような法の施行や改正の趣旨を踏まえ、消防庁としては地方公共団体に対し、地域における水害や土砂災害の防止対策を図るとともに、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。
(2)土砂災害 がけ崩れ、地すべり、土石流といった土砂災害はこれまでに多く発生しており、近年では平成16年8月の台風第15号による愛媛県新居浜市ほかの土石流災害や同年9月の台風第21号による三重県宮川村や愛媛県西条市ほかでの土石流災害、平成18年7月豪雨による長野県や鹿児島県など各地で発生した土砂災害により多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」に基づき推進してきており、土砂災害危険箇所の周知徹底等、特に重点的に推進すべき事項について、関係府省による申し合わせがなされている。 また、土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、土砂災害が発生するおそれがある区域を明らかにし、当該区域における警戒避難体制の整備を図るとともに、著しい土砂災害が発生するおそれのある土地の区域において一定の開発行為を制限すること等を内容とする「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」が平成13年4月に施行された。この法律に基づき「土砂災害防止対策基本指針」が定められた。 さらに近年、集中豪雨等による土砂災害が多数発生し、多くの死者・行方不明者が発生するなど、警戒避難体制等のより一層の充実が必要となっていることから、平成18年9月、当指針に「土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域の指定の促進」及び「警戒避難体制の整備等」の記載が追加されたほか、市町村の警戒避難体制の整備を支援することを目的に、特に留意すべき事項として、情報の収集・伝達、避難勧告等の発令、避難所の開設・運営、災害時要援護者への支援、二次災害防止、防災意識の向上等の考え方を取りまとめた「土砂災害警戒避難ガイドライン」が平成19年4月に国土交通省により作成された。 このような法律や指針・ガイドラインの趣旨を踏まえ、消防庁としては地方公共団体に対し対策に万全を期すよう要請している。 また、国土交通省及び気象庁では、平成17年6月、大雨による土砂災害が見込まれるときに、市町村長が発令する避難勧告等の判断の支援や住民の自主避難の参考となるよう、都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」についての基本的な考え方や運用に向けて整えるべき事項等を取りまとめた「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成、発表するための手引き」を都道府県に配付した。 このことを受け、平成17年9月に、鹿児島県において全国で初めて土砂災害警戒情報の発表を開始し、平成19年10月1日現在、38府県で土砂災害警報情報の発表を開始している。
(3)高潮 消防庁では、平成11年9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定している。 平成16年8月の台風第16号に伴う被害では、1年で最も潮位が高くなる大潮の時期に加えて満潮とも重なり、既往最高潮位を60cm近くも超えるところが出るなど、香川県・岡山県・広島県等の瀬戸内地区を中心に、床上浸水など相当数の高潮被害が発生している。
(4)竜巻・突風 平成18年9月に宮崎県延岡市で発生した竜巻により3人の死者が発生した。また、11月に北海道佐呂間町で発生した竜巻により9人の死者が発生した。 こうした人命のみならず、住家、交通、ライフラインなどに甚大な被害をもたらす突風災害が続発していることを踏まえ、政府では関係省庁による「竜巻等突風対策検討会」を開催し、対策について検討を行った。 その検討を踏まえ、内閣府及び気象庁では、竜巻などの突風からの身の守り方など個人レベルでの対策の周知を図るため、パンフレット「竜巻等突風災害とその対応」を作成しインターネット上で公表したほか、関係機関に配布を行い、消防庁を通じ各地方公共団体にもパンフレットの配布を行った。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等の風水害による人的被害の発生を防ぐためには、防災訓練の実施や防災知識の普及啓発等を進めるとともに、平成18年度の災害等を踏まえ次のような対策の推進が求められている。
(1)避難勧告等の発令・伝達ア 避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成 「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を参考に、市町村において「避難準備(要援護者避難)情報」を位置付けるほか、災害緊急時に避難勧告等を発令する客観的な判断基準等を定めた避難勧告等の判断・伝達マニュアルの早急な整備が必要である。 なお、土砂災害にあっては、各都道府県は土砂災害警戒情報の整備、運用等に努め、各市町村は的確な避難勧告・指示等の発令のため、専門家等の助言、土砂災害警戒情報等を活用するよう努める必要がある。 また、避難の勧告・指示は、災害の状況及び地域の実情に応じ、効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達するとともに、住民に対し、早期自主避難の重要性について周知する必要がある。イ 放送事業者との連携体制の整備 災害時における連絡方法、避難勧告等の連絡内容等について放送事業者とあらかじめ申し合わせるなど、放送事業者と連携した避難勧告等の伝達体制の確立が必要である。ウ 防災行政無線の整備 気象情報の的確な収集を行うため、緊急防災情報ネットワーク、各種の防災気象端末等の活用を図るとともに、他の防災機関等との連携を図り、休日・夜間も含め、防災関係機関相互間及び住民との間の情報収集・伝達体制の整備が必要である。このため、防災行政無線(同報系)の整備等を図る(第2章第9節参照)とともに、実際の災害時に有効に機能し得るよう、通信施設の整備点検が重要である。エ 防災情報の連絡体制等 都道府県から市町村に対する避難勧告等に関する意思決定の助言、気象官署、河川管理者と市町村との間でのホットラインの構築、気象官署から都道府県への要員派遣等、国・都道府県・市町村間の連携強化・情報共有を図る体制を整備する必要がある。 また、市町村は住民等からの前兆現象、災害発生情報等の情報を収集するよう、日ごろから通報先を住民等へ周知しておくとともに、雨量情報、土砂災害警戒情報等を住民へ的確に提供するよう体制の整備に努める必要がある。
(2)避難体制の整備ア 災害時要援護者の避難誘導体制の整備 「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」、「災害時要援護者避難支援プラン策定に向けて(災害時要援護者支援プラン作成の促進について(平成18年4月12日付消防災第152号))」及び「災害時要援護者対策の進め方について」を参考に、福祉関係部局、自主防災組織、福祉関係者等と連携の下、一人ひとり災害時要援護者に対して複数の避難支援者を定める等、具体的な避難支援計画(避難支援プラン)の早急な策定が必要である。 なお、災害時要援護者関連施設については、立地条件の把握、施設周辺のパトロール体制の確認をはじめ、施設への平常時、緊急時における適切な情報提供、的確な避難誘導体制等の再点検を行うほか、災害時要援護者の避難が夜間になりそうな場合には日没前に避難が完了できるように努めるなど、警戒避難体制等の防災体制の整備が必要である。イ 避難路・避難所の周知徹底及び安全確保等 住民が円滑かつ安全に避難できるよう、避難路・避難所を地域住民に周知徹底するとともに、豪雨災害等の特性を踏まえた、避難路・避難所の安全性の確保、移送手段の確保及び交通孤立時の対応について配慮する必要がある。 また、避難所の確保が難しい場合には、他の公共施設等を一時避難所として確保するよう配慮も必要である。
(3)災害危険箇所に対する措置 例年、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域等の指定区域以外の箇所においても土砂災害が発生していることから、従来危険性が把握されていなかった区域もあわせて再点検を行い、標識の配置、広報誌、パンフレット、ハザードマップ、地区別防災カルテ等の配布、インターネットの利用、説明会の開催等により、地域住民への周知徹底を図る必要がある。
(4)二次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行うとともに、安全が確認されるまでの間、災害対策基本法に基づく警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じ、特に、救出活動や応急復旧対策の実施に当たっては、十分な警戒等を行うことが必要である。
(5)自主防災組織の育成等 風水害による被害を最小限にとどめるためには防災機関の活動のみならず、住民自らの災害に対する日常の備えが不可欠であり、地域の防災対策を担う自主防災組織の育成強化を進める必要がある。長野県岡谷市土石流災害(平成18年7月)〜行方不明者の捜索長野県岡谷市土石流災害(平成18年7月)〜中央高速道下付近北海道佐呂間町での竜巻による災害(平成18年11月)北海道佐呂間町での竜巻による災害(平成18年11月)
第6節 火山災害対策[火山災害の現況と最近の動向](1)平成18年中の災害 三宅島では、山頂火口からの二酸化硫黄を多量に含む火山ガスの放出が続いており、二酸化硫黄の放出量は、平成18年中、日量1,000〜3,000t程度で依然として多い状態が続いている。 桜島では、6月に南岳東斜面の昭和火口で噴火が発生するなど噴火活動が活発となったが、8月以降は、小康状態になっている。なお、昭和火口での噴火は昭和23年以来であった。
(2)平成19年中の災害 三宅島では、山頂火口から火山ガス(二酸化硫黄)が依然として日量1,000〜6,000t程度放出され続けており、火山活動はやや活発な状態が続いている。 諏訪之瀬島では、御岳火口で噴火が発生するなど火山活動は活発な状況が続いており、集落に降灰があるなど御岳火口から半径2km以内では注意が必要である。
[火山災害対策の現況] 我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が確認されている。火山災害の態様は、溶岩の流出をはじめとして、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの放出、津波等多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づき諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や文部科学省において設置されている科学技術・学術審議会測地学分科会での火山噴火予知計画の推進についての建議を踏まえ、火山を有する地域の市町村に対して避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。三宅島噴火災害においては、活動火山対策避難施設クリーンハウス(退避舎)に対する約7億円の補助や平成16年度の小型脱硫装置の整備に対する約1億円の補助を行った。 さらに、平成12年の有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップの作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行った。その一方で、消防庁は平成13年から富士山火山防災協議会に参画するとともに、最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」の開催を行っている。 平成13年度に富士山火山防災協議会の富士山ハザードマップ検討委員会において、対策の基本となる火山ハザードマップの作成検討等が進められ、平成16年6月に報告がまとめられた。なお、引き続き、富士山火山広域防災検討委員会が開催され、そのなかで広域的な火山防災体制の確立のための検討が行われ、平成17年9月に「富士山火山広域防災対策報告書」が取りまとめられた。また、平成18年2月の中央防災会議において、富士山火山防災対策として国、都県、市町村等がとるべき方針を定め、今後の広域防災対策を積極的に推進することを目指した「富士山火山広域防災対策基本方針」を決定した。 平成18年11月から、全国の火山を対象として「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」が開催され、より効果的な火山防災体制を構築するための火山情報と避難体制の検討を行っている。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で91団体が整備しているとともに、適宜その見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。現在、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、雌阿寒岳、草津白根山、阿蘇山、雲仙岳の8火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、これらのうち7つの火山においては、それぞれ火山の噴火に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。 また、消防庁では平成14年度に、山体の大きな富士山における火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成18年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県4団体で延べ5回、市町村では延べ26回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
(4)噴火警戒レベルの導入 火山活動の状況に応じて必要な防災対応を分かりやすく示し、関係地方公共団体等が状況に応じた防災対応をとりやすくするため、気象庁は「火山活動度レベル」に替わり、「噴火警戒レベル」を導入することとした。 この噴火警戒レベルは、まず浅間山、伊豆大島、阿蘇山、雲仙岳、桜島などの16火山について本年12月に導入された。今後逐次、他の火山にも導入されていくこととなる。 関係地方公共団体等においては、地域防災計画等を修正し、レベルに応じた適切な防災対応に配慮することが必要である。
[火山災害対策の課題] 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を、引き続き推進していくことが重要である。特に、噴火災害による人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山噴火災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布することを通じて、防災情報を積極的に提供することが、平常時から住民に対して、防災意識の高揚を図ることにつながる。 消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。 また、内閣府、国土交通省及び気象庁とともに、平成13年7月から富士山ハザードマップ検討委員会を設置し、火山ハザードマップの内容を検討してきた結果、平成16年6月に「富士山火山防災マップ」〔火山ハザードマップとそれに対する各種防災情報(避難所の位置、連絡先や災害発生時にとるべき行動等)を記載したマップ〕として試作版を提示した。 なお、平成12年の有珠山噴火災害では、事前にハザードマップが住民に配布されており、噴火前の段階からの避難が円滑に実施された。
(2)住民への情報伝達体制の整備 噴火警報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、75.2%(平成19年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、噴火警報(噴火警戒レベルを含む。)に応じ、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難の勧告や指示を行う必要がある。また、あらかじめ情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておくことが必要である。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 噴火災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、消防機関、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日ごろから連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じて発表される噴火警戒レベルに基づいて、登山規制、立入規制等の措置を速やかにとることができるように、地方公共団体は関係機関と協議しておくことが望まれる。
第7節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成18年1月から12月までの間に、震度1以上が観測された地震は、1,343回(前年1,712回)で、このうち、震度4以上を記録した地震は28回(前年49回)で、いずれも前年を下回った(第1−7−1表)。第1-7-1表 近年の地震発生状況(震度1以上)
(1)平成18年以降の主な地震の概要 平成18年以降の震度4以上を記録した地震は、第1−7−5表のとおりであり、平成18年1月から平成19年10月までの主な地震災害の概要は、以下のとおりである。第1-7-5表 平成18年1月から平成19年10月までの国内の主な地震災害(1)第1-7-5表 平成18年1月から平成19年10月までの国内の主な地震災害(2)第1-7-5表 平成18年1月から平成19年10月までの国内の主な地震災害(3)第1-7-5表 平成18年1月から平成19年10月までの国内の主な地震災害(4)第1-7-5表 平成18年1月から平成19年10月までの国内の主な地震災害(5)ア 平成19年(2007年)能登半島地震 平成19年3月25日9時41分、能登半島沖を震源(深さ11km)とするマグニチュード6.9の地震が発生した。 この地震により、石川県七尾市、輪島市、穴水町で震度6強、石川県志賀町、中能登町、能登町で震度6弱、石川県珠洲市で震度5強、新潟県刈羽村、富山県富山市、滑川市、舟橋村、氷見市、小矢部市、射水市、石川県羽咋市、宝達志水町、かほく市で震度5弱を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が12回観測された。 この地震による被害は、石川県を中心に、死者1人、負傷者359人、住家の全壊638棟、半壊1,563棟、一部破損13,556棟となっている(平成19年6月14日現在)(第1−7−2表)。第1-7-2表 平成19年(2007年)能登半島地震の被害の状況イ 三重県中部を震源とする地震 平成19年4月15日12時19分、三重県中部(深さ16km)を震源とするマグニチュード5.4の地震が発生した。 この地震により、三重県亀山市で震度5強、三重県鈴鹿市、津市、伊賀市で震度5弱を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が1回観測された。 この地震による被害は、三重県を中心に、負傷者13人、住家の一部破損122棟となっている(平成19年4月23日現在)(第1−7−3表)。第1-7-3表 三重県中部を震源とする地震の被害の状況ウ 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震 平成19年7月16日10時13分、新潟県上中越沖(深さ17km)を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。 この地震により、新潟県長岡市、柏崎市、刈羽村、長野県飯綱町で震度6強、新潟県上越市、小千谷市、出雲崎町で震度6弱、新潟県三条市、十日町市、南魚沼市、燕市、長野県中野市、飯山市、信濃町で震度5強を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が7回観測された。 この地震による被害は、新潟県を中心に、死者14人、負傷者2,345人、住家の全壊1,244棟、半壊5,250棟、一部破損34,401棟となっている(平成19年10月22日現在)(第1−7−4表)。 また、この地震により柏崎刈羽原子力発電所で、3号機の変圧器で火災が発生した。第1-7-4表 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の被害の状況
(2)平成7年(1995年)兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災) この地震による被害は、兵庫県を中心に2府13県に及び、平成18年5月19日現在(確定)、人的被害は死者6,434人、行方不明者3人、負傷者4万3,792人、建物被害も住家では全壊10万4,906棟、半壊14万4,274棟で、昭和23年(1948年)の福井地震の被害(死者3,769人、負傷者2万2,203人、住家の全壊3万6,184棟)を超える戦後最大のものとなっている(第1−7−6表、第1−7−7表、第1−7−8表)。第1-7-6表 地震の概要(気象庁資料)第1-7-7表 人的被害の状況第1-7-8表 住家被害の状況
2 外国の地震災害 平成18年1月から平成19年10月までの主な地震は、第1−7−9表のとおりである。第1-7-9表 平成18年1月から平成19年10月までの外国の主な地震災害
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策特別措置法等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。また、消防の制度、人員、施設、装備等の整備充実に努めている。 特に、阪神・淡路大震災の経験とその後の震災対策の実施状況等を踏まえ、大規模災害時における人命救助活動等をより効率的かつ充実したものとするために、平成16年4月、法律に基づく緊急消防援助隊を発足させた。平成19年4月1日現在、全国の消防本部等より3,751部隊、4万4,000人規模の隊員が登録されている。さらに、地震時における出火防止、初期消火の徹底及び火災の延焼拡大の防止のため、危険物に関する規制の適切な運用及び消防ポンプ自動車・防火水槽等の整備による消防力・消防水利の充実等の施策の実施並びに耐震性貯水槽・震災初動対応資機材等の整備や大規模地震時における防災機関の迅速な初動対応に資するよう、震度情報ネットワークシステムの充実等を促進している。 また、阪神・淡路大震災での貴重な経験や教訓は、次の世代に継承し、これらの教訓等を消防防災対策事業や施策の企画・立案、日々の防災活動に役立てる必要があることから、平成13年6月から運用を開始した「阪神・淡路大震災関連情報データベース」(URL:http://sinsai.fdma.go.jp/)の充実等により地方公共団体等における地震防災対策の一層の充実強化に努めている。 なお、震災に係る避難地案内板及び標識の設置、消火・通報訓練指導車の配備においては、公益法人による助成事業も行われている。
(1)東海地震対策 昭和53年6月に制定された大規模地震対策特別措置法では、事前予知の可能性のある大規模地震について、あらかじめ同法の規定に基づき、地震防災対策強化地域の指定を行った上で、同地域に係る地震観測体制の強化を図るとともに、大規模な地震の予知情報が出された場合の地震防災体制を整備しておき、地震による被害の軽減を図ることを目的としている。東海地震については事前の予知の可能性があることから、静岡県を中心とする東海地方の6県167市町村が地震防災対策強化地域として指定され、中央防災会議が作成する「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」等に基づき、切迫した東海地震の発生に備え、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 平成14年4月には、大規模地震対策特別措置法が制定されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、東海地震の新たな震源域及び地震動、津波の発生する地域等を検討した結果、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、従前の6県167市町村から8都県263市町村(市町村合併により平成19年4月1日現在173市町村)に拡大された。 この新たな指定を受けた都県及び市町村においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組がなされているところであり、消防庁としても今後とも各都県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 地震防災対策強化地域の拡大を受け平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの、強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。大綱の主なポイントは、〔1〕被害軽減のための緊急耐震化、〔2〕地域における災害対応力の強化、〔3〕警戒宣言前からの的確な対応、〔4〕災害発生時における広域的防災体制の確立の4点であり、これらを踏まえた防災関係機関、地方公共団体等による的確な対応が求められている。消防庁では、地震防災対策強化地域における関係都県の広域応援の受入れ体制及び都道府県をまたがる広域的な地震防災体制の充実を目的として、「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;廣井脩 東京大学社会情報研究所所長[当時])」を開催し、その検討結果を「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書」として平成15年3月に取りまとめた。 また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月に中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同日、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−7−1図)。これは最近の科学的な知見により、プレスリップ(前兆的なすべり現象)による変化に沿った現象が観測されている場合には、警戒宣言よりも前に今後の推移について説明可能な段階が設定できるとの考えから、これまでの情報発表の仕方を見直したものであり、基本計画修正の中心的な部分である。新たな情報発表の主なポイントは、これまで防災関係機関の防災対応のきっかけとして位置付けられていた「判定会招集連絡報」を廃止し、従来の観測情報を2段階に分け、このうち東海地震の前兆現象が高まったと認められた場合に「東海地震注意情報」を発表し、これを防災対応のきっかけとするという部分である。具体的には、この情報をもとに政府は準備行動開始の意思決定とその旨の公表を行い、関係機関は準備行動の実施体制(準備体制)をとることとなる。基本計画の修正により、地方公共団体は地震防災強化計画の、民間事業者は地震防災応急計画の修正が必要であり、消防庁としても、これらの取組に対して積極的な支援・助言に努めている。第1-7-1図 東海地震に関連する情報と防災対応 さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、〔1〕緊急に実施すべき予防対策、〔2〕緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、〔3〕迅速な閣議手続等について、平成15年7月に「東海地震緊急対策方針」が閣議決定された。平成15年12月には、中央防災会議において「東海地震応急対策活動要領」が決定され、同要領に基づく、関係省庁の救助、物資の調達等について、具体的な活動内容の申合せを行った。消防庁としても関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災都道府県からの物資提供の調整、ボランティアの受入れに関する支援等を行うこととなっている。なお、同要領は、予知を前提とした活動計画に加えて、突発的に地震が発生した場合の活動計画の追加、広域医療搬送活動に従事する災害派遣医療チーム(DMAT)の整備、情報集約体制の修正等を踏まえて、平成18年4月に修正が行われている。 加えて、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。
(2)東南海・南海地震対策 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、1944年(東南海地震)及び1946年(南海地震)に発生し、すでに50年以上が経過していることから、今世紀前半での発生が懸念されている(第1−7−2図)(今後30年以内に発生する確率(平成19年1月1日時点)は、地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、東南海地震60〜70%程度、南海地震50%程度となっている。)。第1-7-2図 東海地震と東南海・南海地震 このため、中央防災会議は、平成13年6月に、「東南海、南海地震等に関する専門調査会」の設置を決定し、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策について検討を重ね、平成14年12月に東南海・南海地震が同時に発生した場合の被害想定の一部公表、平成15年9月には被害想定の全体像が示された(第1−7−10表)。第1-7-10表 「東海」「東南海」「南海」地震の発生ケースごとの被害想定 消防庁でも、市町村・都道府県境を超え、東南海・南海地震の被害が想定される地域が一体となってとるべき防災体制を、広域的な受援体制の整備の観点と、津波対策の観点から地方公共団体の防災体制の現状と課題を踏まえて検討するため、「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;室益輝 神戸大学都市安全研究センター教授[当時])」を開催し、その検討結果を「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する研究報告書」として平成16年3月に取りまとめた。さらに地方公共団体においても、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、関係府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立し、東南海・南海地震に係る情報交換・収集を行っている。 こうした中で、平成15年7月に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行され、同法に基づき、平成15年12月の中央防災会議において、「東南海・南海地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」を「東南海・南海地震防災対策推進地域」として1都2府18県652市町村(市町村合併により平成19年4月1日現在1都2府18県412市町村)が公表され、内閣総理大臣により指定された。推進地域の指定を受けた地方公共団体その他防災関係機関は、国の地震防災対策の基本方針として平成16年3月に中央防災会議が作成した「東南海・南海地震防災対策推進基本計画」に基づき、「東南海・南海地震防災対策推進計画」を作成し、地震防災対策の強化を図ることとなった。また、特に甚大な津波被害が懸念される地域については、地域ぐるみの迅速な対応が求められることから、学校・病院等の多数の者が集まる施設管理者等に対し、津波からの円滑な避難に関して「東南海・南海地震防災対策計画」を地域指定から6か月以内に策定するものとされた。この対策計画の作成について、消防庁としては今後とも関係都府県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 また、平成15年12月、東南海・南海地震防災対策のマスタープランとなる「東南海・南海地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。この大綱は、東南海・南海地震に対して津波防災体制の確立などを掲げた総合的計画であり、平成16年3月に中央防災会議で決定された基本計画をはじめとして、推進計画や対策計画はこの大綱に沿って、地域の実情に即した具体的な形で作成されたものである。 さらに、平成17年3月には、具体的な被害軽減量を数値目標として定め、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。 また、平成18年4月、「東南海・南海地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。この活動要領は、緊急災害対策本部の設置、緊急災害現地対策本部の設置、関係省庁の役割分担としての応急対策活動等を定めている。消防庁としても、関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災都道府県からの物資提供の調整、ボランティアの受入れに関する支援等を行うこととなっている。
(3)首都直下地震対策 首都地域は、人口や建築物が密集するとともに、我が国の経済・社会・行政等の諸中枢機能の集積が著しい地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広域なものとなるおそれがある。中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」によると、この地域においては、200〜300年に一度、大正12年の関東地震と同様のマグニチュード8クラスの海溝型地震が発生し、その間にマグニチュード7クラスの直下型地震が数回発生する可能性が高いとされている(第1−7−3図)。このため中央防災会議において昭和63年12月に関東地震と同じタイプの地震が発生した場合の被害想定が実施され、その結果を踏まえた「南関東地域震災応急対策活動要領」が策定された。平成4年8月には南関東地域直下で発生するマグニチュード7クラスの地震を対象とした「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」が策定され、震災対策が進められた。この大綱等は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ平成10年6月に全面的な見直しが行われ、南関東直下の地震発生に備えた政府の防災体制について充実が図られた。第1-7-3図 この400年間における南関東の大きな地震 近年、情報通信技術や物流、金融等の高度化・国際化が進展し、経済・社会情勢が著しく変化しつつあることから、首都直下地震対策についても「首都中枢機能維持」や「企業防災」といった新たな観点からの対策強化が必要であるとの認識が広まったこと、関東地域の地殻変動に関する詳細な観測データの蓄積が進んだこと、マグニチュード7クラスの直下型地震が発生した場合の具体的な被害を明確にする必要があること等から、平成15年5月の中央防災会議で「首都直下地震対策専門調査会」の設置が決定され、首都直下の「地震像」の明確化や直下地震を考慮した首都機能(政治、行政、経済)確保対策等の検討が始められた。想定される18タイプの地震について4つの時間帯と2つのパターンの風速ごとに被害想定を行い、平成17年2月に首都直下地震対策に係る被害想定として公表された(第1−7−11表)。その中で首都機能に最も大きな影響を与える地震(東京湾北部地震)の被害想定を基に、同年9月、首都直下地震対策のマスタープランとなる「首都直下地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。第1-7-11表 首都直下地震対策に係る被害想定 この大綱は、首都直下地震による被害の特徴として「首都中枢機能障害による影響」と「膨大な人的・物的被害の発生」の2点を掲げ、これらの被害を軽減するための対策を基本として構成するものであり、「首都中枢機能の継続性確保」と「膨大な被害への対応」を対策の柱とするものである。 「首都直下地震対策大綱」の決定を踏まえ、平成18年4月に、緊急災害対策本部の設置、緊急災害対策現地対策本部の設置、首都中枢機能継続性確保のための活動、関係省庁の役割分担としての応急対策活動等を定めた「首都直下地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。消防庁としても、関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災道府県からの物資提供の調整、ボランティアの受入れに関する支援等を行うこととなっている。 また、同時に首都直下地震の定量的な減災目標と具体的な実施方策等を定めた「首都直下地震の地震防災戦略」が中央防災会議で決定された。消防庁としても、同戦略において、防災拠点となる公共施設等の耐震化、自主防災組織・消防団・緊急消防援助隊等の充実・強化、防災行政無線等の整備・拡充等の施策を通じて、被害軽減に取り組むこととしている。 なお、「首都直下地震対策大綱」及び「首都直下地震応急対策活動要領」の決定に伴い、「南関東地域直下の地震対策に関する大綱」(平成4年8月21日 中央防災会議決定)及び「南関東地域震災応急対策活動要領」(昭和63年12月6日 中央防災会議決定)は廃止された。
(4)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策 日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震の中には、約40年間隔で発生している宮城県沖地震など、繰り返し発生するものもあり、その切迫性が指摘されており、今後30年以内に発生する確率(平成19年1月1日時点)は、地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、宮城県沖についてはマグニチュード7.5前後で99%程度などとなっている。震源域はそのほとんどが海溝周辺にあり、過去において大津波を伴う地震が多数発生していることなどから、この地域で発生する海溝型地震による地震・津波防災対策、特に巨大な津波に対する防災対策の確立を図るため、平成15年10月、中央防災会議に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」が設置された。 この専門調査会においては、日本海溝・千島海溝周辺で発生する海溝型地震のうち、防災対策上対象とすべき地震について検討した上で、その地震により発生すると予測される被害の大きさや、それに対する地震防災対策について検討を行っており、平成18年1月には地震動や津波等による被害想定が公表された(第1−7−12表)。第1-7-12表 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る被害想定 こうした中で、平成17年9月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進を図るためには法的整備が必要であるとして、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行された。そして、同法に基づき、平成18年2月の中央防災会議において、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」を「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として5道県130市町村(市町村合併により平成19年4月1日現在5道県119市町村)が公表され、内閣総理大臣により指定された。推進地域の指定を受けた地方公共団体等防災関係機関は、国の地震防災対策の基本方針として平成18年3月に中央防災会議が作成した「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」に基づき、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画」を作成するとともに、推進地域内で特に津波による甚大な被害のおそれのある地域において地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者のうち基本計画で定める者は「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画」を作成し、その実施を推進することとなった。この対策計画の作成について、消防庁としては関係道県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 また、同年2月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策のマスタープランであり、「津波防災対策の推進」や「揺れに強いまちづくりの推進」、「積雪・寒冷地域特有の問題への対応」を柱とする「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。 さらに、平成19年6月には、防災関係機関が効果的な連携をとって迅速かつ的確な応急対策活動を実施するため、各々の活動について定めた「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。
(5)地震防災緊急事業五箇年計画、地震対策緊急整備事業計画ア 地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、平成8年度を初年度とする第1次地震防災緊急事業五箇年計画、及び平成13年度を初年度とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成され、これらの計画に基づき、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集市街地対策等が実施された(第1次五箇年計画の実績額約14兆1,175億円:達成率76.3%、第2次五箇年計画の実績額約10兆188億円:達成見込率70.8%)。国は、同計画に基づいて地方公共団体が実施する地震防災緊急事業に対し、国の負担又は補助の割合の特例等の措置を講じている。 現在、すべての都道府県において、平成18年度を初年度とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画が策定されているところである。 なお、耐震性貯水槽等特例措置の対象となる消防庁関係の事業の国の負担割合は、2分の1となっている。 また、平成18年度からは、地震防災対策特別措置法に基づく国庫補助率のかさ上げが行われる事業については、東南海・南海地震防災対策推進地域及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域に限り、当該事業に充てられる地方債の元利償還金の50%について、普通交付税の基準財政需要額に算入されていたが、平成19年度からは、対象地域が大規模地震対策特別措置法で指定される地震防災対策強化地域を除く全ての地域に拡大され、財政支援が強化されたところである。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。 地震対策緊急整備事業として、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路、通信施設の整備及び社会福祉施設・公立の小中学校等の耐震化等を実施しており、昭和55年度からの計画額は約2兆円となっている。 なお、この法律は、これまで5回延長され、現在、平成21年度末までの計画に基づき事業が実施されている。
(6)総合防災訓練 政府は、東海地震及び首都直下地震を想定し、中央防災会議で決定した「平成19年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成19年9月1日(防災の日)に、総合防災訓練を実施した。 当日は、東海地震を想定し、地震予知に対応した地震防災応急対策の実施体制の確保等を図る目的で、東海地震注意情報発出に伴う緊急参集チームの参集・協議、気象庁長官から内閣総理大臣への地震予知情報の報告、臨時の閣議、内閣総理大臣会見、第1回東海地震災害警戒本部会議の運営等を実施するなどの一連の訓練を行った。 また、静岡県総合防災訓練と連携した訓練(静岡県伊豆市)や八都県市合同防災訓練と連携した訓練(埼玉県さいたま市)を実施するなど、地方公共団体・関係機関等とも連携した実戦的・広域的な訓練を実施した。 消防庁においても、消防庁防災業務計画及び消防庁応急体制整備要領に基づき、政府訓練への参加のほか、消防庁車両の運行による政府現地対策本部への職員派遣訓練、職員の参集訓練、災害対策本部の設置及び運営訓練のほか、応急対策実施状況の把握、緊急消防援助隊等広域応援の要請訓練などについて、消防防災無線網を活用した関係県との間における情報収集・伝達訓練等を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、津波対策、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成19年4月1日現在、すべての都道府県において、震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けて定めている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,246団体、「節」等を設けているものが319団体、「その他の災害等」として扱っているものが43団体となっている。 なお、地域防災計画で「警戒宣言に伴う対応措置」を定めているのは都道府県で19団体、市区町村で633団体となっている。 また、地震調査研究推進本部地震調査委員会が順次評価を取りまとめ、公表している主要98断層帯で発生する地震や海溝型地震の長期評価(平成19年1月1日現在、主要断層帯、海溝型地震として南海トラフ、三陸沖から房総沖にかけて、千島海溝沿い、日本海東縁部、日向灘及び南西諸島海溝周辺、相模トラフ沿いで発生する地震についての評価結果を公表)等を踏まえた地域防災計画の見直しも徐々に進められてきている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1−7−4図、第1−7−5図)。第1-7-4図 地方公共団体と公共機関等との応援協定の締結状況(都道府県数)第1-7-5図 地方公共団体と公共機関等との応援協定の締結状況(市区町村数) 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所は、平成19年4月1日現在で、7万345箇所が指定されている(第1−7−13表)。第1-7-13表 市区町村における避難場所の指定状況 また、避難路については、219団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている。 特に阪神・淡路大震災以降、備蓄物資の増加が図られている(第1−7−14表)。第1-7-14表 主な備蓄物資の状況 これらの物資を備蓄するため、平成19年4月1日現在、都道府県においては45団体で906棟、市区町村においては1,557団体で2万2,428棟の備蓄倉庫を設置している。 また、備蓄倉庫の借上げは、都道府県においては17団体で409棟、市区町村においては131団体で786棟となっている。
(5)震災対策施設等の整備事業 平成18年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,058億5,310万円、また、市区町村が実施した事業費は504億6,420万円である(第1−7−15表)。第1-7-15表 震災対策施設等整備事業費
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成18年度においては、46都道府県と900市区町村が総合防災訓練を実施した。 都道府県においては、各都道府県内の行政機関、公共機関、自主防災組織のほか、緊急消防援助隊や自衛隊が参加した広域応援を想定した総合防災訓練が行われ、市区町村においては、職員の参集訓練や情報伝達訓練等の初動体制の確保に主眼をおいた個別訓練及び消火訓練、避難誘導訓練、救急救助訓練等の実践的な個別訓練を実施している例が多い(第1−7−16表、第1−7−17表)。 また、これらの訓練のほか、日ごろから地域住民等に対し、47都道府県及び1,096市区町村において、パンフレットの配布、講演会・映画会の開催等、防災知識の普及啓発事業を実施し、防災意識の高揚に努めている。第1-7-16表 都道府県における震災訓練の実施状況第1-7-17表 市区町村における震災訓練の実施状況
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成19年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は667団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が374団体、地域防災計画へ記載している団体が384団体、津波災害を想定した避難地は7,307箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が244団体で実施されている。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約64万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生し、住民の生命、身体及び財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 このため、平成7年7月に地震防災対策特別措置法が施行され、同法に基づきすべての都道府県は平成8年度から平成12年度までの地震防災緊急事業五箇年計画、さらに平成13年度から17年度までを計画期間とする第2次地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を目指して事業の推進を図ったが、これを実施する都道府県及び市町村における防災基盤の整備は計画どおりに進められなかった(達成率76.3%(平成8年度〜平成12年度)、70.8%(平成13年度〜平成17年度))。 このような中で、災害に強い防災基盤を整備し地域住民の安心・安全を確保するためには、計画的かつ重点的な事業の実施が不可欠であるとの認識から、議員立法により同法が一部改正され、平成18年度から22年度までを計画期間とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災基盤の整備に向けた事業への積極的な取組が続けられている。 特に、大規模災害時において、避難所や災害対策の拠点となる公用・公共施設、公立学校、福祉施設などの耐震化については、各種国庫補助制度による補助事業のほか、消防庁では単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。しかしながら、その耐震改修の進ちょく率は、平成18年度末見込みで59.6%にとどまっていることから、避難所に指定されている公共施設や災害対策の拠点となる庁舎等を中心に、早急かつ計画的に取り組む必要がある。 また、新潟県中越地震で震度6弱以上を観測した地域において、4箇所の市町村役場が地震の揺れにより被害を受け、使用できない状態となり、災害の初動対応に大きな支障を来したことを受け、消防庁において、耐震診断・改修工事の効果的な実施手法や事例を紹介する「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、すべての地方公共団体へ配布するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している(URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/taishin/index-j.html)。 さらに、個人住宅についても、阪神・淡路大震災の死者の8割以上が建物の倒壊等によるものであったことから、平成17年9月に中央防災会議において決定された建築物の耐震化緊急対策方針の中でも、地域住民への意識啓発や耐震診断の実施の促進等、対策を早急に推進することとしている。なお、地震発生時に家具の転倒による負傷者や閉じ込め事案が発生していることから、各家庭において家具の固定化を進めていくことが更なる被害軽減のために重要である。 今後とも防災基盤の整備を進め、地域の防災機能を高めることが極めて重要であり、特に、大都市部においては大きな被害が想定されることから、その整備促進が急務である。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地震調査研究推進本部の公表する地震活動の評価結果等を参考に地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画に沿った具体的な行動マニュアルの作成・見直しを行うことにより、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、さらに教育訓練を充実していく必要がある。 特に、消防防災ヘリコプターは、地震災害における消防防災機関の機動力の強化を図る上で有効であることから、より一層航空消防防災体制の整備の促進を図ることが必要である。 また、大規模災害時において効果的に消防防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模災害時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、今後消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成19年4月1日現在、全国で、約7万9,000基を整備してきた耐震性貯水槽については、今後も整備を推進していく必要がある。 消防庁では、国庫補助等による耐震性貯水槽の整備をかねてより進めているところであるが、大規模災害の発生時においては、多数の消防隊による長時間に及ぶ消火活動が必要となることから、これに対応する大容量の水源を確保するため、平成18年度からは、1,500m3型耐震性貯水槽についても国庫補助対象に追加するなど一層の整備促進を図っている。 また、耐震性貯水槽のうち飲料水兼用型のものにあっては、消火用水のみならず、生活用水としての機能も有しており、地域の実情に応じた適正な整備が必要である。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債と地方交付税の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑えるためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実(1)情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対応を現場へ迅速かつ的確に伝達することが重要であり、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を進めていく必要がある。 特に、震災時においては通信途絶や輻そうを回避するため、地上系の防災行政無線、消防防災無線に加え衛星通信系の整備を図るなど通信ルートの多重化を図る必要がある。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震において、消防庁では、応急体制活動要領に基づく各班ごとの初動対応により、情報の集約、整理、広域応援対応等を速やかに行ったが、初動期の情報収集の際にNTT回線も防災行政無線もつながらず、山間部の一部で情報孤立地域が発生するなど、他の無線系の活用や非常用電源の整備等、非常時の通信確保について課題を残した。このことから、消防庁では、「初動時における被災地情報収集のあり方検討会」を開催し、大規模災害発生の際の初動時における被災地情報収集のあり方や災害時の情報通信技術の活用について検討を行い、平成17年7月、政府及び地方公共団体等に提言を行った。
(2)震度情報ネットワークの整備 阪神・淡路大震災後、地方公共団体ごとに整備された震度情報ネットワークにより震度情報を早期に収集しているところであるが、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震や同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震において震度情報の送信が遅延するなどの障害が発生しており、早急な改善が望まれている。このことから、消防庁では、「次世代震度情報ネットワークのあり方検討会」を開催し、近年の地震学の知見や通信環境の著しい進化を踏まえ、今後整備・更新される震度計と震度情報ネットワークに求められる機能、震度計の適正配置など次世代の震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、国及び地方公共団体に提言を行ったところである。
5 初動体制の整備 災害時における初動対応が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすと考えられることから、大規模災害時においては、発災直後から情報の収集・伝達等に関し、臨機応変で的確な対応をとることが極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、防災関連施設等のバックアップ体制の確保、参集基準の明確化・統一化、情報伝達方法、参集手段の確保、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 このうち、地方公共団体における防災担当職員の宿日直体制の整備など夜間・休日も含めた対応については、職員の参集や他機関との連絡を迅速かつ円滑に行う体制が確保されている必要がある。平成19年4月1日現在、都道府県では、26団体において職員の宿日直、15団体において防災専門の嘱託職員による対応、市町村では、906団体において職員の宿日直、884団体で消防機関による対応、このほか守衛や民間委託警備員等様々な対応がとられている。なお、国民保護業務の追加にも配慮し、24時間対応での情報収集、連絡体制の推進を図っていく必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心に防災担当部局と一元化した組織体制を整備していく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震、東南海・南海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定の結果に基づき、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 平成16年10月に発生した平成16年(2004年)新潟県中越地震においては、災害時相互応援協定に基づく救援活動が物資の供給と職員応援の両面から行われ成果を上げたが、初動期においては必ずしもスムーズに機能せず、応援側地方公共団体からは、必要とされる物資や業務をできるだけ早く被災地方公共団体から教えて欲しいという声が聞かれた。消防庁においても、地方公共団体の緊急物資等の備蓄・調達のあり方に関する検討を行い、災害時における広域対応等について地方公共団体に提言を行ったところである。 さらに、平成18年12月から「緊急物資調達の調整体制・方法に関する検討会」を開催し、地方公共団体が被災者に供給する物資である緊急物資の取扱いについて、物流という観点から検討を行い、地方公共団体に提言を行ったところである。 今後も、できるだけ多くの地方公共団体での相互応援協定締結を推進するとともに、地方公共団体同士が普段から訓練等で連絡を取り合い、災害時には受援側の窓口を早期に立ち上げることができるような体制づくりを推進する必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地震等の大規模災害時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性が高まり、NBCテロ災害の発生等が懸念されることから、平成15年度の消防組織法の一部改正により法定化された。また、平成16年4月からは、大規模災害発生時等における全国的な観点からの緊急対応のため、消防庁長官による出動指示が可能となったほか、国庫負担制度についても定められるなど、その充実・強化が図られている。なお、消防庁では平成15年12月に東海地震及び首都直下地震、平成19年5月に東南海・南海地震に係る緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを作成し、緊急対応体制の更なる強化を図っている。 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(10時13分発生)においては、発災後の広域的な応援出動に対応するため、発災後の10時40分、新潟県知事の要請を受け、消防庁長官が緊急消防援助隊の出動要請を行った結果、1都1府8県から、15隊110人(うち、消防防災ヘリコプター9機)が出動し、情報収集及び救急活動等に従事した。
7 実戦的な防災訓練の実施 大規模地震災害は、時、場所を選ばずに発生することから、発災に対して迅速かつ的確に対応するためには、日ごろから実戦的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、定型的な訓練の繰り返しを避け、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実戦的な訓練になるよう努める必要があり、地域の総合的防災力向上のため、参加型災害図上演習(DIG)の実施についても推進していく必要がある。 また、大規模災害時においては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。 さらに、訓練がより効果的・実戦的なものとなるよう、状況予測型訓練(イメージトレーニング方式)、災害図上訓練DIG(災害想像力ゲーム方式)や図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)など目的や実情に応じた訓練の実施に努めるとともに、訓練結果を評価し、その反省と教訓を踏まえながら地域防災計画や災害対応マニュアルの見直しを進めることにより、迅速かつ的確な災害対応が可能になるよう努めることが重要である。 消防庁では、度重なる風水害や地震災害での実災害対応及び数々の図上訓練の実施により初動対応における情報収集や班編成のあり方などの改善を図ってきたところであるが、平成19年4月27日には参集訓練、5月17日には首都直下地震を想定した図上訓練、9月1日には政府総合防災訓練、10月10日には国民保護図上訓練など、実動訓練及び図上訓練を通じて災害対応における防災力の向上を図っている。加えて、平成19年9月から10月にかけて市町村長及び都道府県・市町村の危機管理担当幹部職員等を対象とした「防災危機管理ブロック・ラボ」を全国2ブロックで開催するなど、市町村における実戦的な図上訓練の実施を促進している。消防庁図上訓練防災危機管理ブロック・ラボ市町村図上訓練
8 津波対策の推進 平成15年5月26日に発生した宮城県沖を震源とする地震においては、津波の怖さを認識しておきながら、地震の発生あるいは避難勧告等の発令があっても避難しないといった住民の行動が多く見受けられた。また、同年9月26日に発生した平成15年(2003年)十勝沖地震においては、市町村による津波避難勧告が適切に発せられなかった事例等が見受けられた。 さらに、平成16年9月5日に発生した東海道沖を震源とする地震においても、気象庁から津波警報が発せられた42市町村のうち、30市町村で避難勧告が発せられなかった(第1−7−18表)。第1-7-18表 東海道沖を震源とする地震に係る避難勧告の実施状況 津波被害軽減の基本は「避難すること」であり、海岸線等を有する市町村においては、地域防災計画上の規定の見直しや発災時の迅速な避難勧告等、的確な津波避難対応に努めることが必要であり、住民も受け取った情報を自分自身の問題として捉え、実際に避難行動を起こす必要がある。 実効性のある津波避難対策を実施する上で、海岸線等を有する市町村においては、「地域防災計画における津波対策強化の手引き」や「津波災害予測マニュアル」等を踏まえ、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示している。また、東南海・南海地震や日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策の一環として、モデル地域を選定し、同指針やマニュアルに基づき関係県、市町村及び住民が連携して、地域ごとの津波避難計画を策定する事業に取り組み、この成果を取りまとめ、全国の海岸線等を有する市町村に配付しており、今後とも、地域ごとの津波避難計画の策定を推進することとしている。 一方で、この津波避難計画に基づく避難を円滑に実施するための避難場所や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門、河川堤防等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、沿岸地域における津波に強い土地利用の推進や施設の安全性向上を図る必要がある。 消防庁としても、平成14年4月の東海地震対策強化地域の拡大、平成15年12月の東南海・南海地震対策推進地域の指定により、全国的に津波対策が喫緊の課題となったことを受け、津波避難タワーの設置について、平成17年度から地方債と地方交付税による財政支援を行っている。 また、消防庁では、平成18年11月と平成19年1月の千島列島を震源とする地震で津波警報等が発表され、避難指示等が発令された市町村を対象とした避難状況等の調査を行い、その結果を踏まえ、地方公共団体に対し、避難の実効性を上げるため、適切な対応を要請したところである。 こうした津波避難計画の策定や津波防災施設の整備等を推進するとともに、日頃から、住民等に対する津波に関する防災知識や津波避難計画の周知、住民や防災関係機関合同の津波防災訓練の実施等により、いつでも迅速かつ円滑な避難行動ができる体制を整備しておくことが重要である。 また、消防庁において、平成16年度に「防災のための図記号に関する調査検討委員会」を開催し、津波避難に係る標準的図記号として、「津波注意」、「津波避難場所」、「津波避難ビル」の3種の図記号を決定した。さらに、国際的な津波防災対策の重要性が叫ばれる中で、ISO(国際標準化機構)規格化に向けても提案を行っているところである。■津波注意・図記号の意味 地震が起きた場合、津波が来襲する危険がある地域を示す。・図記号の目的 当該地域が津波による被害を被る危険がある地域であることを認識させ、地震発生時には直ちに当該地域から内陸部、高台に避難させるもの。■津波避難場所・図記号の意味 津波に対して安全な避難場所・高台を示す。・図記号の目的 津波からの避難先となる安全な場所や高台を示すとともに、地震発生時には、そうした避難場所へ向かわせるもの。■津波避難ビル・図記号の意味 津波に対して安全な避難ビルを示す。・図記号の目的 津波からの避難に際し、近くに高台がない場合、津波からの避難が可能な、原則としてRC又はSRC構造の鉄筋コンクリート造3階建以上のビルを示すとともに、地震発生時に避難ビルへ向かわせるもの。
第8節 雪害対策[雪害の現況と最近の動向] 平成17年12月から平成18年3月にかけての雪害による人的被害、住家被害は、死者・行方不明者152人、負傷者2,145人、全壊18棟、半壊28棟、一部破損4,667棟となっている。 また、平成18年12月から平成19年3月にかけての雪害による人的被害、住家被害は、前年に比べ大幅に減少し、死者・行方不明者12人、負傷者193人、一部破損1棟となっている。
[雪害対策の現況] 気象庁が「平成18年豪雪」と命名した、平成17年12月から平成18年3月の大雪では、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故、倒壊した家屋の下敷きなどにより、152人が犠牲となった。 平成18年豪雪の152人の犠牲者のうち65歳以上の高齢者が99人と約3分の2を、また、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の犠牲者が113人と約4分の3を占めている。さらに、除雪作業中の犠牲者113人のうち65歳以上の高齢者は76人となっている。 この災害に対し消防庁としては、被害が発生した道府県からの情報収集を実施するとともに、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の即応体制の確立、雪崩危険箇所等の把握・周知及び情報の収集・伝達体制や警戒・避難体制の確立等の対策、特に高齢者等の災害時要援護者に対する対策などに万全を期すように要請した。
[雪害対策の課題] 雪害による人的被害の発生を防ぐためには、防災知識の普及啓発等を進めるとともに、平成18年豪雪を踏まえ次のような対策の推進が求められている。
(1)除雪作業における対策 積雪時においては、特に高齢者等の災害時要援護者宅の状況を消防機関や福祉関係機関との連携による巡回等により把握し、除雪が困難又は危険な場合などについては、必要に応じ消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携協力の下、複数による除雪作業を行うことや、屋根の雪下ろしの際の命綱や滑り止めの着用、軒下での作業時の落雪への注意などについて注意喚起を行うなど適切に対応することが必要である。
(2)なだれ等に対する適切な避難勧告等の発令・伝達 降積雪の状況等の情報、過去の雪害事例等を勘案し、なだれ、家屋の倒壊等により、住民の生命・身体に被害が及ぶおそれがあると判断したときは、遅滞なく避難の勧告・指示を行う必要がある。 また、避難の勧告・指示の伝達については、防災行政無線や消防団、自主防災組織をはじめとした効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達する必要がある。
(3)避難体制 避難路、避難所、避難誘導方法等を定め、住民に周知しておくとともに、雪害の特性を踏まえた安全性を確保する必要がある。 また、高齢者・障害者等の災害時要援護者については、消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携・協力の下、迅速な避難誘導に努める必要がある。
(4)防災体制の確立 災害が発生した場合には、関係機関とも連携し、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の活用など地方公共団体相互の広域的な応援活動により迅速な救助活動等に万全を期す必要がある。
第9節 特殊災害対策等[原子力災害対策]1 原子力災害等の現況と最近の動向(1)東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所3号機所内変圧器火災事故ア 事故の概要 平成19年7月16日10時13分頃、新潟県中越沖地震(最大震度:震度6強)が発生し、それに伴い東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所3号機所内変圧器から出火した。 出火原因については、3号機所内変圧器の絶縁油が地震の影響により漏えいし、その絶縁油に電気配線のショートによる火花が着火したものと推定される。 この火災による人的被害はなく、また、原子炉建屋など他の施設への延焼もなく、外部環境への放射能の影響もなかった。イ 消防庁及び消防機関の活動 柏崎刈羽原子力発電所からの119番通報により、柏崎市消防本部は10時27分に火災を覚知したが、地震発災直後に119番通報が殺到し、勤務していた職員はすべて、他の災害対応に従事していたことから当該火災に即応できなかった。その後、自己参集してきた職員により、順次部隊編成を行い、水槽付化学消防車1隊5人が出動、さらに、3隊12人が当該火災に順次出動した。先着した水槽付化学消防車隊が消火活動を実施し、12時10分に鎮火を確認した。 消防庁としては、発災当日の16日に事故状況の把握のため、消防研究センターの職員1人及び消防庁職員1人を現地に派遣した。 また、柏崎市消防本部消防長からの要請により、消防庁長官による火災原因調査を実施するため、消防庁職員2人及び消防庁消防研究センター職員5人を追加派遣した。 この火災事故を踏まえ、同年7月31日に今後の消防活動に資することを目的として、原子力発電所所在道県及び消防本部等の担当者による情報交換会を開催した。黒煙を上げる柏崎刈羽原子力発電所3号機(海上保安庁提供)出火元となった3号機変圧器
(2)その他の原子力事故等 その他の原子力施設における最近の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の動力炉・核燃料開発事業団(当時)の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし、火災となった事故。イ) 平成9年3月11日に動力炉・核燃料開発事業団(当時)の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成11年9月30日に茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設において、臨界に達する事故が発生し、従業員3人が重篤の放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事した従業員を含む多数の者が被ばくした事故。エ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク内の清掃作業中に、当該タンク内で体調不良となった作業員1人を救出するためタンク内に入った別の2人の作業員のうち1人が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案(病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明)。オ) 平成13年11月7日に中部電力株式会社浜岡原子力発電所の定格熱出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系配管が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建屋内に漏えいした事故。カ) 平成14年2月9日に東北電力株式会社女川原子力発電所の定期点検中の2号機の原子炉建屋地下1階の制御棒駆動機構補修室において、作業員が弁点検用資機材の後片づけの一環として浸透探傷用スプレー缶等の廃棄処理作業を実施中に出火し、ビニールシート等を焼損するとともに、作業員2人が火傷を負った火災。キ) 平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損する火災があり、その影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407人に避難勧告が出された事案。ク) 平成16年8月9日に関西電力株式会社美浜発電所3号機が定格熱出力運転中のところ、タービン建屋2階、脱気器側の天井付近にある給水加熱器から脱気器への給水ラインである復水配管(直径約560mm、炭素鋼)の破口(最大で配管軸方向に515mm、周方向に930mm)により、蒸気及び高温水(約140度、10気圧)が噴出した。同建屋全体に蒸気が充満し、付近にいた作業員11人が熱傷を受け、5人が死亡、6人が負傷した事故。ケ) 平成17年6月30日に、中部電力株式会社浜岡原子力発電所廃棄物減容処理装置において金属等の不燃性廃棄物の熔融処理を行っていたところ、溶融物の入った容器(キャニスタ)が転倒し、火災となった事故。コ) 平成18年3月22日に、関西電力株式会社大飯発電所3、4号機廃棄物処理建屋において、管理区域である同建屋4階の工具等の物置として使用していた場所で発生した火災。
2 原子力災害対策の現況(1)原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓から原子力安全・防災対策の抜本的強化の必要性が顕在化した。 このため、平成11年12月に原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等、法令等の整備が行われた。 また、平成12年8月に原子力災害危機管理関係省庁会議において、関係省庁が一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領を取りまとめた原子力災害対策マニュアルが作成された。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて「原子力施設等の防災対策について」に改訂され、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1−9−1図、第1−9−2図、第1−9−3図)及び核燃料物質等の輸送時の防災対策についても盛り込まれた。第1-9-1図 我が国の原子力発電所立地地点(原子力安全委員会ホームページより)第1-9-2図 試験研究用及び研究開発段階にある原子炉施設立地地点(原子力安全委員会ホームページより)第1-9-3図 核燃料施設(加工施設、再処理施設及び廃棄施設)立地地点(原子力安全委員会ホームページより) 平成13年6月には、国、地方公共団体、原子力事業者等の医療に携わる者の責務等の明確化について、平成14年4月には、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について改訂が行われ、さらに平成14年11月には、原子力災害時におけるメンタルヘルス(心の健康)に関する対策について、平成15年7月には、緊急被ばく医療体制における地域ブロック化についてそれぞれ改訂が行われた。 また、平成19年5月には、国際原子力機関(IAEA)等における原子力防災に係る国際的な動向を踏まえ、当該報告書の目的、対象施設等をより明確化するとともに、予防的な防護措置の有効性について記載され、また、原災法や本委員会の関連する他の指針との重複部分について整理が行われた。
(2)防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関して講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。また、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。さらに、平成16年3月には緊急被ばく医療の実施体制に係る修正を行った。 平成19年3月には、防衛庁の防衛省への移行に伴い、原子力災害対策編の一部が修正された。
(3)地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月に関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設所在地等の都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るため、地域防災計画の見直しを行った。
(4)消防活動の充実等 原災法等により、事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」を作成し、平成13年5月に各都道府県及び消防本部へ配布している。さらに、消防隊員が災害現場で活用できるよう必要とされる知識、活動要領、留意点等をコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」を平成16年5月に、原子力災害における消防活動のケーススタディを内容とする「原子力施設等における消防活動訓練マニュアル」を平成16年6月に、また、除染活動に関して「原子力施設等における除染等消防活動要領」(以下「活動要領」という。)を平成17年3月に、活動要領を基に除染及び汚染拡大防止措置等の要領を効果的に習得できるよう「原子力施設等における除染等視覚教材」(DVD版)を平成18年4月にそれぞれ各都道府県を通じ、全消防本部に配布している。 平成15年6月に、消防組織法を改正し、運用上設けられていた緊急消防援助隊を法定化し、消防庁長官による出動の指示権等を創設するとともに、消防学校の教育訓練の基準を改正し、特殊災害科を新たに加えた。 なお、原子力災害の研修として、消防大学校においては、平成12年度から、幹部職員を対象に実施していた「放射性物質災害講習会」を、平成16年度では「NBC災害講習会」に、平成17年度では「緊急消防援助隊教育科 NBCコース」に、そして、平成19年度では「緊急消防援助隊教育科 NBC・特別高度救助コース」として再編し実施しているほか、文部科学省等において消防職員、消防団員及び自治体職員を対象とした各種原子力防災研修が実施されている。 また、火災等の発生時に消防機関がより安全かつ的確に活動を行うため、平成18年度に消防機関と事業者との連携の現状について調査・検討を行い、「消防機関と原子力事業者等との円滑な連携について」として報告書を取りまとめ、平成19年6月に各都道府県等に配布した。
(5)放射性物質輸送の安全対策 核燃料物質の輸送については原子炉等規制法等に基づき、また、放射性同位元素(RI)の輸送については放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律等に基づき、それぞれ安全基準が定められ、輸送物及び輸送方法の確認、都道府県公安委員会への届出等の安全規制が実施されている。 また、原災法の制定等を踏まえて修正された防災基本計画には、核燃料物質等の事業所外運搬中の事故に対する迅速かつ円滑な応急対策及びその備えに関する記述が加えられた。 放射性物質の輸送に関する安全対策については、関係省庁間において密接な連絡・調整を図りつつ、所要の施策を講じていくこととしているほか、関係省庁で構成している放射性物質安全輸送連絡会において放射性物質輸送の事故時における安全対策に関してとるべき措置がまとめられている。 消防庁では、これを受けて各都道府県に通知し、その周知徹底を図っているほか、放射性物質輸送中の事故に際し、消防機関が行う消防活動等についてマニュアルとしてとりまとめ、平成13年5月に各都道府県及び消防本部に通知した。 また、平成14年3月に、原子力災害危機管理関係省庁会議において、原子力災害対策マニュアルに輸送編が追加された。
3 原子力災害対策等の課題 新潟県中越沖地震に伴って発生した東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所3号機所内変圧器火災事故では、一般通信手段輻輳時の自衛消防隊招集方法が不十分だったこと、屋外消火栓設備の損傷により消火活動が十分にできなかったことなど、地震後の火災時に事業者が講ずべき初動対応に不十分な点が多いことが明らかになった。このような状況を踏まえ、経済産業省は、東京電力株式会社をはじめ電力会社等に対して、初期対応要員の確保、化学消防車等の配備、消防機関との専用通信回線の開設・確保、消防機関と連携した訓練の実施等について指示した。電力会社等は改善計画を提出し、年度内を目途に改善が図られる予定である。また、原子力安全委員会において、地震時の火災防護対策を強化するため「発電用軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針」の一部改訂について検討が行われるとともに、経済産業大臣の諮問機関である総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」において、電力会社等の自衛消防体制の強化、事故報告体制の構築等について検討が行われており、検討結果を踏まえ、所要の検討・対策を講じていく必要がある。 今後は、原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院、消防機関など関係機関と連携して、事業者の自衛消防力の充実強化を図るとともに、複合的な事故、災害等も想定した実践的な消防訓練、防災訓練等の実施を推進し、災害に対してより迅速かつ的確に対応できる原子力防災体制を構築していく必要がある。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル(地下鉄に接続するトンネルを含む。)、道路トンネル及び今後の開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、さらに長大海底トンネルとしての防災対策を取りまとめている。 また、平成15年2月に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、消防庁では、国土交通省と共同で、「地下鉄道の火災対策検討会」を開催し、ガソリンによる放火火災を想定し、地下鉄道の不燃化の推進と旅客の安全な避難対策を基本として、我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を進め、平成16年3月に検討結果を取りまとめた。主な内容については次のとおりである。
(1)車両の火災対策 我が国の車両は、一定の不燃性や難燃性などの防火性能を備えているが、さらに大火源火災を考慮し、以下の措置を講じる必要がある。 ア 防火性能が低い材料及び溶融滴下する材料は、車両天井部への使用を制限する。 イ 従来の車両材料燃焼試験に、溶融滴下の判定を追加するとともに、新たに大火源火災における防火性能を判定するための燃焼試験を追加する。 ウ 隣接車両への煙の流入等を防止するため、連結する車両間に、通常時閉じる構造の扉を設置する。
(2)地下駅・トンネルの火災対策 異なる2以上の避難経路を設けること等の現行の基準に加え、大火源火災に対し、旅客の安全な避難経路を確保するとともに消防活動を支援するため、以下の措置を講じる必要がある。 ア 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客が安全に避難できる時間を確保するための排煙設備を設置する。 イ 旅客の安全な避難を確保するとともに、消防活動を支援するため、ホームとコンコースを結ぶ階段に、出火場所からの煙や炎を遮断するための防火シャッター等を設置する。 ウ 旅客の避難経路を確保するため、袋小路部等には、売店を設置しない。これ以外の箇所に、売店を設置する場合には、自動火災報知設備を設置することとし、コンビニ型売店には、これに加え、スプリンクラー設備を設置する。 エ 消防隊員が地上と通信するための無線通信補助設備を設置する。また、駅の規模等により、消防隊員が使用する機器のための非常コンセント設備を設置する。
(3)旅客の避難誘導等に関する対策 旅客の安全な避難誘導をより確実に行うため、以下の措置を講じる必要がある。 ア 火災発生時の運転取扱上、徹底すべき事項を盛り込んだマニュアルを整備する。 イ 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客の避難誘導の方法等火災発生時に係員が行うべき事項を定めたマニュアルを整備する。 ウ 消火器、非常通報装置及びドアコックの車内表示を、ピクトグラム(絵文字)を使用する等により統一する。 エ 避難経路図の駅への表示、消火器配置図の車両への表示等を行うとともに、通常時の構内放送、車内放送により、旅客に対し危機管理意識の高揚を図る。
(4)消防機関との連携 駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、鉄軌道事業者と消防機関が共有するとともに、定期的に両者が連携した訓練を実施する。 この検討結果を踏まえ、国土交通省は鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正を行い、これに伴い、消防庁は地下鉄道における火災対策について、平成16年12月27日付(電気設備・運転等の解説)・平成18年12月13日付(地下駅等の不燃化・火災対策設備等の解説)で都道府県を通じ各消防機関に周知を行った。 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。なお、平成18年中における道路トンネル火災は22件となっている(第1−9−4図)。第1-9-4図 トンネル内車両・施設火災件数の推移 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や東日本高速道路株式会社等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 また、都市部の道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、平成15年7月に「乗用車専用道路(小型道路)」の導入が可能とされた。この「乗用車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は、車両火災等における消防活動の課題について検討を行っているところであり、消防庁としても、「乗用車専用道路」の導入時において円滑な消火・救急活動が確保されるよう、その対策について検討していく。 平成19年12月に供用を迎える中央環状新宿線の発災時の管理・運用面及び今後建設が予定されている中央環状品川線の防災安全計画に関する方策を講じるため、平成18年1月に東京都及び首都高速道路株式会社は、首都高速道路における都市内長大トンネルの防災安全に関する調査研究委員会を設置し、消防庁などの関係機関や学識経験者等による検討を行っている。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において、大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が公布され、平成13年4月1日に施行された。 また、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ定期的に開催されている。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、従来の施設と比較して消火活動や救助活動がより困難になることが予想されている。 このため、大深度地下施設の安全の確保については、「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」が平成16年2月に消防庁、国土交通省等関係機関において取りまとめられており、事業者は大深度地下を利用する事業の計画に当たっては、同指針等を踏まえた安全対策を講ずる必要がある。 なお、平成19年6月には、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の適用第1号として、神戸市大容量送水管整備事業について、認可権者である兵庫県知事から使用の認可が行われた。引き続き、同法を利用する事業が行われる際には、同指針等を踏まえた安全対策が講じられるよう、適切な指導、助言等を行う必要がある。 また、地下街やトンネル等の消防活動が困難な空間において、迅速で円滑な活動を安全に行うためには、指揮本部による一元的な情報管理が特に重要であることから、消防庁では、活動中の隊員位置や活動状況等の情報をリアルタイムに把握することができる、「消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システム」の開発を行い、平成19年3月に公開実験を実施し、最終的な報告書を取りまとめた。 活動支援情報システムは、小型の慣性航法装置と電子タグを組み合わせた位置特定システム、隊員の位置を表示するための位置表示システム、位置データや音声を伝送できる情報通信システムから構成される(第1−9−5図)。第1-9-5図 活動支援情報システム
[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成18年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故のうち消防機関が出場したもの(以下「ガス事故」という。)の総件数は、1,062件(対前年比72件減)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが606件(同15件減)、液化石油ガスに係るものが456件(同57件減)となっている(第1−9−6図)。第1-9-6図 ガス事故の態様別発生件数ア 事故の約8割は漏えい事故 事故を態様別にみると、漏えい事故が849件(ガス事故全体の80.0%)、爆発・火災事故が213件(同20.0%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは漏えい事故が538件(都市ガス事故全体の88.8%)、爆発・火災事故が68件(同11.2%)に対し、液化石油ガスでは漏えい事故が311件(液化石油ガス事故全体の68.2%)、爆発・火災事故が145件(同31.8%)となっている(第1−9−6図)。イ 事故の約8割は消費先で発生 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものが805件(ガス事故全体の75.8%)、ガス導管等消費先以外におけるものが257件(同24.2%)となっている(第1−9−7図)。第1-9-7図 ガス事故の発生場所別件数 消費先において発生した事故を発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等を原因とした消費者に係る場合が427件(消費先において発生した事故全体の53.0%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が125件(同15.5%)、その他の原因が253件(同31.5%)となっている。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスでは消費者に係る場合が236件(都市ガス事故全体の59.2%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が50件(同12.5%)、その他の原因が113件(同28.3%)、液化石油ガスでは消費者に係る場合が191件(液化石油ガス事故全体の47.0%)、ガス事業者・工事業者に係る場合が75件(同18.5%)、その他の原因が140件(同34.5%)となっている。
(2)ガス事故による死傷者が減少 平成18年中に発生したガス事故(自損行為によるガス事故を含む。)による死者数は7人(対前年比4人減)、負傷者数は184人(同43人減)である。死者のうち、都市ガスによるものは4人(死者数全体の57.1%、対前年比3人増)、液化石油ガスによるものは3人(同42.9%、同7人減)となっている。負傷者のうち、都市ガスによるものは48人(負傷者数全体の26.1%、対前年比10人減)、液化石油ガスによるものは136人(同73.9%、同33人減)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故によるものが5人(死者数全体の71.4%)、爆発・火災事故によるものが2人(同28.6%)、負傷者数では漏えい事故によるものが51人(負傷者数全体の27.7%)、爆発・火災事故によるものが133人(同72.3%)となっている(第1−9−8図)。第1-9-8図 ガス事故による死傷者数
(3)自損行為によるガス事故 平成18年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故件数は70件(ガス事故全体の6.6%、対前年比4件増)、これらの事故による死者数は7人(死者全体の100.0%、同2人増)、負傷者数は50人(負傷者全体の27.2%、同1人減)となっている。 自損行為に起因する事故を事故の態様別にみると、漏えい事故にとどまったものは49件(自損行為に起因する事故全体の70.0%、対前年比2件減)、爆発・火災事故に至ったものは21件(同30.0%、同6件増)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約8割が消費先において発生している。このため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成18年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は、64件(対前年比14件減)で、火災が9件(前年同件数)、漏えいが45件(対前年比1件減)、その他のものが10件(同13件減)となっている。 毒物・劇物等の内訳は、アンモニアが10件(全体の15.6%)、塩素が7件(同10.9%)、塩酸が6件(同9.4%)、硫酸が5件(同7.8%)、以下硫化水素等の順になっている(第1−9−9図)。第1-9-9図 毒劇物による事故の内訳
(2)事故による死傷者数 平成18年中の死者は7人(対前年比1人増)で、負傷者は129人(同68人増)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を消防活動阻害物質として指定し、一定数量以上を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第9条の3の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1−9−10図)。 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。第1-9-10図 消防活動阻害物質に係る届出施設の状況
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努める必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく必要がある。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成18年中の主要港湾(1船の総トン数が1,000トン以上のタンカーが平成18年1月1日から平成18年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)112港における海上災害で消防機関が出動したものは38件あり、このうち火災によるものが17件(全体の44.7%)、油の流出によるものが12件(全体の31.6%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000トン未満の船舶が23件で全体の60.5%を占めている(第1−9−1表)。第1-9-1表 主要港湾における消防機関の出動状況 最近の主な船舶火災としては、平成14年10月1日に長崎港で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」において、ぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 また、平成14年11月26日には、伊豆大島において座礁していたバハマ船籍の自動車運搬船「ファルヨーロッパ号」で出火、大量の煙が発生したため、付近住民が一時的に自主避難をする事態となった。 油の流出災害としては、平成14年12月5日に茨城県日立港において、北朝鮮船籍の貨物船「チルソン号」が座礁し燃料油が流出する事故が発生している。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁においては、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 消防庁では、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めており、平成15年6月には、全国の沿岸海域を有する都道府県及び市町村に対して、漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況とその意見に関する調査を行った。その把握結果について、関係省庁に通知するとともに、都道府県に対し、管内の沿岸海域を有する市町村の地域防災計画に、漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定するよう指導・助言した。 また、油以外の有害危険物質による災害対策の充実強化を図るため、「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に対する準備、対応及び協力に関する議定書(OPRC−HNS議定書)」が採択されたことから、これに対応するため、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」に替わる計画として、平成18年12月8日に「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」が閣議決定された。
[航空災害対策]1 航空災害の現況と最近の動向 平成18年中における民間航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいい、航空機内の病死等の事故を含む。)は18件発生しており、そのうち飛行機事故は10件となっている。また、民間航空事故による死者は4人、負傷者は10人となっている(平成18年版航空・鉄道事故調査委員会調べによる。)。 平成18年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは4件となっている。なお、消防機関が出動したものは51件あり、全て飛行場内で発生している。 平成元年以降の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)、平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)、平成19年8月20日に中華航空機が那覇空港で着陸後、出火炎上した事故が発生した。この事故により、消火活動を行った消防職員等5人が負傷した。
2 航空災害対策の現況 航空事故は、いったん発生すれば、大惨事となるおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が空港管理者により行われているが、消防庁では、国土交通省等と空港災害対策研究会議を設け、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準や航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者及び地方公共団体等関係機関に示し、航空災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、空港及びその周辺で発生する航空災害に対処すべく消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省は、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成19年4月1日現在、空港所在市町村の99消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁は、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空災害対策の課題 航空事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においても、空港周辺地域での航空災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。那覇空港で出火炎上した中華航空機(ボーイング737型機)
第2章 消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 常備消防(市町村に設置された消防本部、消防署、出張所のことで、専任の職員が勤務している。)は、平成19年4月1日現在807消防本部である。この本部の下に、消防署が1,705署、出張所が3,230所あり、消防職員は15万7,398人である(第2−1−1表、第2−1−1図)。第2-1-1表 市町村の消防組織の現況第2-1-1図 消防職団員数の推移 前年と比較すると、市町村合併と広域化が進められたこと等により、本部は4減少している。 他方、前年と比較して消防署所は計8署所、消防職員は640人増加しており、また、女性職員も3,134人(前年比173人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 市町村における現在の消防体制は、大別して、〔1〕消防本部及び消防署(いわゆる常備消防)と消防団(いわゆる非常備消防)とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、〔2〕消防団のみが存する地域がある。 平成19年4月1日現在、常備化市町村は1,765市町村となり、常備化率は市町村数で97.8%(市は100%、町村は96.1%)に達し、人口の99.9%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化(昭和40年4月1日現在、常備化市町村は600市町村)に伴い、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が進められた。 その結果、平成19年4月1日現在、組合による消防本部は320本部(うち広域連合は18本部)に達しており、その構成市町村数1,148市町村(339市、662町、147村)は常備化市町村全体の65.0%に相当する。また、事務委託市町村数は130市町村(28市、83町、19村)に達している(第2−1−2図)。第2-1-2図 消防本部の設置方式の内訳
(2)消防団 消防団は、市町村の非常備の消防機関であり、その構成員である消防団員は、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員である一方、他に本業を持ちながらも、「自らの地域は自らで守る」という郷土愛護の精神に基づき参加し、消防・防災活動を行っている。 平成19年4月1日現在、全国の消防団数は2,474団、消防団員数は89万2,893人であり、消防団はほとんどすべての市町村に設置されている(第2−1−1表、第2−1−1図)。第2-1-1表 市町村の消防組織の現況第2-1-1図 消防職団員数の推移 消防団は、 ・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務) ・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約6倍) ・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)といった3つの特性を活かしながら、初期消火や残火処理等を行っているほか、大規模災害時には住民の避難誘導や災害防ぎょ等を、国民保護の場合は住民の避難誘導等を行うこととなっており、特に消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っているなど、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。 また、消防団は、平常時においても地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、コミュニティの活性化にも大きな役割を果たしている。 なお、消防団員の年齢構成は、40歳以上の団員が39.0%を占め、また、平均年齢は38.0歳となっている(第2−1−3図)。第2-1-3図 消防団員の年齢構成
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部については、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 さらに、消防団については、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2−1−2表)。第2-1-2表 消防機械の保有数
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防機械とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が76%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は23%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽(耐震性貯水槽を含む。)の設置が促進されてきている(第2−1−3表)。第2-1-3表 消防水利(人工水利)の保有数
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、119番通報(火災報知専用電話)、消防通信網等がある。ア 119番通報 固定電話・携帯電話によって消防機関に火災、救急、救助、その他の災害の発生等を通報する119番通報受信回線は、平成19年4月1日現在、全国の消防機関に16,370回線が設置されている(第2−1−4図)。また、平成18年中の119番通報件数は8,598,106件となっており、その内訳は火災に関するもの106,752件、救急・救助に関するもの5,082,695件、火災、救急・救助以外の災害に関するもの118,489件、いたずら193,005件、間違い通報430,252件、その他2,666,913件となっている。第2-1-4図 通信施設等の状況 近年の携帯・IP電話等(以下「携帯電話等」という。)の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数に占める割合は約2割となっている。かつて、携帯電話からの119番通報は、特定の代表消防本部が一括で受信し、それぞれの消防本部へ転送又は伝達していたが、対応までに時間を要することから、平成17年度に携帯電話の発信地を管轄する消防本部での直接受信を可能とするシステムへの移行を行ったところである。 一方、屋外から発信されることが多い携帯電話においては、発信者が周辺の地理に不案内な場合も多い等、必要性が高いにもかかわらず発信地情報表示が実現されていなかった。また、IP電話等においては、事業者ごとに別々のコンピュータ端末に文字情報のみで表示されており、仕様の統一が望まれていた。こうした中、消防庁では平成17年度より「IPネットワークを用いた119番通報の在り方に関する懇談会」を開催し、携帯電話等からの緊急通報における発信地情報表示を共通仕様により統一的に行うシステムを検討した。これにより、平成19年4月から、携帯電話等からの119番通報時に発信場所の位置情報が各消防本部に通知されるシステム(以下「携帯電話等発信位置表示システム」という。)の運用が始まっており、迅速かつ効果的な指令業務に役立つものと期待される。 さらに、携帯電話等発信位置表示システムに係る全国の消防機関の財政負担の軽減を図るため、この発信位置表示システムと従来の固定電話からの発信位置表示システムとの統合を図るための検討を行うとともに、電気通信技術の変革に伴う電話サービスの多様化に今後とも適切に対応していく必要がある。イ 消防通信網 消防救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、災害現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である。平成19年4月1日現在、102,480局が運用されている(第2−1−4図)。 従来、消防救急無線はアナログ方式により整備・運用されてきたが、画像・文字等のデータ通信や秘話性の向上による利用高度化及び電波の有効活用を図る観点から、平成28年5月末までにデジタル方式に移行することとされている。 消防電話は、消防本部、消防署、消防分署及び関係行政機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話であり、平成19年4月1日現在、8,376回線が設置されている。 また、映像を伝送するシステムとしては、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を都道府県や消防本部(消防指令センター等)に伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに消防庁、都道府県及び他の市町村などへも伝送可能なシステムがあり、このシステムの充実が図られている。これは発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、今後も一層の整備促進が期待されている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成17年度の消防費歳出決算額は1兆8,243億円(前年度1兆8,358億円)で、前年度に比べ115億円(0.6%)の減少となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額49兆607億円(前年度49兆2,578億円)に占める消防費決算額の割合は3.7%(同3.7%)となっている(第2−1−4表)。第2-1-4表 普通会計決算額と消防費決算額との比較並びに1世帯当たり及び住民1人当たり消防費の推移イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成17年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万5,699円(前年度3万6,438円)であり、住民1人当たりでは1万4,358円(同1万4,470円)となっている(第2−1−4表)。ウ 経費の性質別内訳 平成17年度消防費決算額1兆8,243億円の性質別内訳は、人件費1兆3,856億円(全体の76.0%、前年度75.7%)、物件費1,681億円(同9.2%、同9.0%)、普通建設事業費1,914億円(同10.5%、同10.9%)、その他792億円(同4.3%、同4.4%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が35億円(0.3%)減少し、物件費が22億円(1.3%)増加し、普通建設事業費が84億円(4.2%)減少している(第2−1−5表)。第2-1-5表 市町村消防費の性質別歳出決算額の推移
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成17年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,726億円(全体の91.7%、前年度91.6%)、次いで地方債970億円(同5.3%、同4.8%)、国庫支出金224億円(同1.2%、同1.1%)となっている(第2−1−6表)。第2-1-6表 市町村消防費決算額の財源内訳イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定しており、平成18年度の単位費用は1万600円(対前年度伸び率△1.9%)、基準財政需要額は1兆5,732億円(同△4.5%)であった。平成19年度は、テロ災害対応資機材の整備に必要な経費や新型インフルエンザ対策に必要な経費等が措置された一方で、追加財政需要額が包括算定経費に一括計上されたこと等により、単位費用は1万500円(同△0.9%)となり、さらに段階補正の見直し等の影響により、基準財政需要額は1兆5,481億円(同△1.6%)に減少している(第2−1−7表)。第2-1-7表 消防費の単位費用及び基準財政需要額の推移ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがあり、国庫補助金には消防防災施設整備費補助金と緊急消防援助隊設備整備費補助金とがある。消防防災施設整備費補助金は予算措置による補助で、市町村等(一部都道府県を含む。)の消防防災施設等の整備に対して、予算の範囲内で、原則として補助基準額の3分の1以内の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の嵩上げが規定されているものがある。具体的には、地震防災対策強化地域の市町村及び地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村に対しては10分の5.5の補助を行っている。 また、緊急消防援助隊設備整備費補助金については、消防組織法による法律補助で、緊急消防援助隊のための一定の設備の整備に対して予算の範囲内で補助基準額の2分の1の補助を行っている。 平成19年度予算は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」で示された今後5年間の新たな改革に向けた出発点となる重要な予算であり、これまでの財政健全化の努力を今後とも継続していくこととされたため、引き続き歳出全般にわたる徹底した見直しを行い、歳出の抑制と所管を越えた予算配分の重点化・効率化を実施するとともに、基礎的財政収支の改善を図り、国債発行額についても極力抑制することとされた。 また、地方公共団体に対して交付される国庫補助金については、前年度当初予算額を下回るよう抑制することを目指すこととされるとともに、「公共事業関係費」については、総額を前年度予算額から3%減算した額及び重点化促進加算額の合計額の範囲内とすることを基本に厳しく抑制することとされ、また、「義務的経費」については、自然増を放置することなく、制度・施策の抜本的見直しを行い歳出の抑制を図ることとされた。 このような厳しい状況の下で、消防防災施設整備費補助金については前年度比3%減の33億5,100万円とされたが、緊急消防援助隊設備整備費補助金については前年度とほぼ同額(50億円)を確保し、総額で83億5,130万円(対前年度当初予算比1.2%減)を確保したところである(第2−1−5図)。第2-1-5図 国庫補助金の内訳エ 地方債 消防防災施設等の整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である。市町村等における消防防災施設等整備事業に対する平成17年度地方債許可額は、579億6,400万円で前年度に比べ137億4,700万円の減となっている(第2−1−8表)。第2-1-8表 市町村の消防防災施設整備事業に対する地方債許可額の推移(一般単独事業、指定都市及び市町村分) 地域における「災害等に強い安心安全なまちづくり」を目指し、住民の安心・安全の確保と被害の軽減を図るため、防災対策事業として防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業が推進されているが、これらの事業には防災対策事業債が充当され、その元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。 防災基盤整備事業は、消防防災施設整備事業、消防広域化対策事業、緊急消防援助隊施設整備事業を対象としており、平成18年度からは、津波警報、緊急地震速報、弾道ミサイル攻撃等の発生時に、国が市町村の防災行政無線を起動し、住民に緊急情報を伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)の起動装置や、消防通信・指令施設として高機能消防指令センターも対象としている。 また、公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地地域対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺安定施設整備事業補助金等がある。
(3)都道府県の防災費 都道府県の防災費の状況をみると、平成17年度における歳出決算額は971億6,500万円であり、平成17年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.20%である(第2−1−9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防、国民保護対策等に要する事務費等である。第2-1-9表 都道府県の普通会計歳出決算額と防災費歳出決算額等の推移 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成17年度における補助金の決算額は105億4,100万円で、前年度に比べて3億4,300万円(3.2%)減少している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽、科学消防施設等を対象に定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は1億2,400万円で、前年度に比べて3,800万円(44.2%)増加している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成19年度予算額は、前年度より4.7%減の135億6,444万円となっている(第2−1−10表)。第2-1-10表 平成19年度消防庁関係予算主要事項別一覧 総額のうち、83億5,130万円(対前年度比1.2%減)は、消防防災施設整備費補助金及び緊急消防援助隊設備整備費補助金に充てられている。
4 消防体制の整備の課題(1)消防力の重点整備ア 消防の広域化の推進(ア)広域化の必要性 消防庁では、平成6年以降、市町村の消防の広域化を積極的に推進してきた。その結果、一定の成果を得たところであるが、平成17年4月1日現在で管轄人口10万未満の小規模消防本部がいまだ全体の6割を占める状況にあった。 一方、災害の大規模化、住民ニーズの多様化等、近年消防を取り巻く環境は急速に変化しており、消防はこの変化に的確に対応しなければならないものの、小規模な消防本部においては、一般的に、出動体制、保有する車両等の住民サービス面や組織管理面での限界が指摘されていた。また、日本の総人口は、平成17年に戦後初めて減少に転じており、今後も将来人口は減少すると予想されている。これにより一般的に各消防本部の管轄人口も減少すると考えられ、さらに、消防団員の担い手不足の問題も懸念されていた。このような現状から、市町村の消防の体制の整備・確立を図るためには、市町村の消防の広域化をより積極的に推進することが不可避であった。(イ)市町村の消防の広域化に関する法律の整備(消防組織法の一部を改正する法律) 消防庁では一昨年より、市町村の消防の広域化の推進について議論してきたが、「今後の消防体制のあり方について(中間報告)〜消防の広域化を中心として〜」(平成18年1月 今後の消防体制のあり方に関する調査検討会)及び「市町村の消防の広域化の推進に関する答申」(平成18年2月1日 消防審議会)を踏まえて、第164回国会(平成18年通常国会)に「消防組織法の一部を改正する法律案」(閣法第87号)を提出した。同法案については、平成18年6月6日に衆議院本会議で可決、成立し、改正法については、6月14日に公布され、同日から施行されたところである(平成18年法律第64号)。 また、同年7月12日に消防組織法第32条第1項に基づき、市町村の消防の広域化に関する基本指針を定めた(平成18年消防庁告示第33号)。この中で、広域化を推進する期間について、遅くとも今年度中には都道府県において推進計画を定め、平成24年度までを目途に広域化を実現することとしている。この推進計画に定める市町村の組合せの基準については、消防本部の規模が大きいほど望ましく、消防力、組織体制、財政規模等を考慮し、おおむね30万以上の規模を目標とすることが適当であるとしている。 消防庁では、基本指針の策定と合わせ、広域化の推進方策の検討及び実施並びに都道府県及び市町村における広域化の取組を支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置し、全庁を挙げて広域化を推進しているところである。具体的には、消防広域化推進アドバイザーの派遣や、シンポジウムの開催等を行っている(囲み記事『「消防広域化シンポジウム−強くなる地域の消防力−」を開催』を参照)。 各都道府県においては、今年度中の推進計画の策定に向けて、協議機関を設置し検討を進めているところであるが、今後は推進計画に基づき市町村において広域化の検討が具体的に開始される。消防の広域化の必要性、メリットなどを踏まえ、各地域において広域化に関する積極的な議論が行われることを期待しているところである(第2−1−6図、第2−1−7図、第2−1−8図)。第2-1-6図 市町村の消防の広域化の推進第2-1-7図 消防本部数と常備化率第2-1-8図 市町村の消防の広域化の推進スキームイ 消防力の整備 消防庁により、「消防力の整備指針」及び「消防水利の基準」が示されている。 「消防力の整備指針」は、「消防力の基準」として昭和36年に制定されて以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきた。制定以来、数次にわたり改正が行われたが、その後の都市構造の変化、消防需要の変化に対応して、より実態に即した合理的な基準となるよう平成12年に全部改正が行われ、それまでの「必要最小限の基準」から「市町村が適正な規模の消防力を整備するに当たっての指針」へと性格が改められ、市町村の自主的決定要素が拡充された。さらに、平成15年12月の消防審議会答申においては、「消防力の基準」について、市町村の消防力の整備に係る指針としての位置付けを維持しつつ、消防サービスの水準確保を前提にして、消防力の整備に当たって市町村が様々な選択を行えるような内容・形態にしていく必要があるとされるとともに、分野別の標準的職務能力の明示、「兼務」概念の導入、施設の性能・効果を考慮した規定の導入、消防団員数に関する算定指標の設定等の必要性について提言された。また、平成16年12月の消防審議会答申では、見直しについてのより具体的な提言が行われた。 これらを受け、消防庁においては、平成17年6月に「消防力の基準」の一部改正を行った(名称も「消防力の整備指針」とされた。)。 各市町村においては、この消防力の整備指針を整備目標として、地域の実情に即した消防力整備計画の見直しを行い、警防体制や予防体制の充実・強化をはじめ急増する救急需要に的確に対応するための救急隊の増隊等、消防力の計画的な整備が必要となる。ウ 消防財源の強化 消防力は逐年充実・強化されているが、複雑多様化する災害への対応力を強化するためには、その整備を一層推進する必要がある。 消防力の充実・強化に必要となる消防財源については、国庫補助負担金の確保、地方交付税への適切な算入、地方債制度の拡充等を通じて、より一層その充実を図る必要がある。
「消防広域化シンポジウム−強くなる地域の消防力−」を開催 消防庁では、市町村の消防の広域化を推進するために各種施策を積極的に展開しています。 平成19年度は、その一環として、消防の広域化について消防関係者をはじめ広く地域住民からの理解を得るため、東京、広島、仙台と全国3箇所でシンポジウムを開催しました。基調講演、事例発表、パネルディスカッション等を内容に、消防の広域化の重要性や、これから取り組むべき課題等について考えました。 第1回及び第3回において行われた消防研究センター・室r所長の基調講演では、防災の専門家の視点から、21世紀を迎えてこれからの消防組織はどうあるべきか、消防組織の体制強化をどう考えるか、について提言がされました。また、第2回の東京経済大学・吉井教授の基調講演では、過去に発生した大規模災害への消防対応の実態を示しながら、広域化した消防において大規模災害に対応するためには、消防の広域化をどのように計画・運用すべきなのかについて提言がされました。第1回パネルディスカッション第2回吉井教授基調講演 また、事例発表・特別講演では、消防の広域化について先進的な取組を行ってきた組織の方々が、広域化実現までの経緯やメリットについて、各々の経験などを交えながら講演しました。第3回において事例発表を行った佐賀広域消防局・金丸副局長は、広域再編前の職員数から増員することなく新たに分署を設置した事例や、新たな救急隊の設置により現場到着時間の短縮が図られた事例などを紹介し、消防の広域化は、地域住民にとって大変有益であると述べました。第3回(仙台会場)の概要 シンポジウム後半のパネルディスカッションでは、消防の広域化への取組状況や考え方、さらには地域住民への説明のあり方などについて、都道府県、消防関係者、市民の代表などの方々により、それぞれの視点から発言がなされました。市民を代表する方々からは、広域化した場合の課題として、消防団との連携が希薄になるのではないかとの質問があり、消防庁より、消防団は今後とも地域防災力の向上のためには必要不可欠な存在であり、それぞれの地域で配慮と工夫をしながら、これまで以上にきめ細かな対応が必要であると答えました。また、第2回では宮崎県総務部危機管理局・押川消防保安室長より、非常備町村の実情が紹介され、今般の消防の広域化へ向けた動きを、非常備町村が常備化を図る契機と考えていると述べたほか、宮崎県飯干五ヶ瀬町長による、非常備解消、広域化へ向けての思いを述べたビデオレターの紹介などもありました。 消防関係者をはじめ地域住民と広く対話していくことで、消防の広域化への機運を高めることを目的に開催した本シンポジウムを契機として、これからの消防体制を検討する議論がそれぞれの地域で活発に行われることを期待します。
(2)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮しなければならず、勤務条件はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、改善を積極的に図る必要がある。 特に、交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、人員確保及び勤務体制の整備を図るとともに、〔1〕給料・手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、〔2〕仮眠室等の施設の整備など執務環境の改善を促進すること、〔3〕消防活動時の安全性を高めるため、装備品(防火衣等)を充実強化すること、〔4〕安全衛生管理体制を整備し、事故防止と健康管理に努めることなど、常に配慮が必要である。
(3)消防職員の高年齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成18年4月1日現在、41.8歳と一般行政職の43.5歳よりやや低くなっているが、昨年(41.7歳)よりわずかであるが上昇している。 また、平成13年度から再任用制度が導入され、平成19年4月には、すべての消防職員について適用されることとなったことから、再任用職員の活用の場を設けるとともに、今後、職員の高年齢化対策を一層推進する必要がある。 消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の活用を図るとともに、〔1〕装備の軽量化・動力化・安全化、〔2〕部隊の編成、消防戦術の見直し・検討、〔3〕計画的な体力錬成、〔4〕能力開発、適正な人事配置、人事交流など、総合的な対策を推進し、活力ある体制の確立が必要である。
(4)消防団の充実強化・活性化対策の推進 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動している。消防団員は、災害防ぎょ活動や住民の避難誘導、被災者の救助などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。 また、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震の発生が危惧されており、さらに、平成16年6月に成立した国民保護法では、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うことが規定された。 これらのことからも明らかなように、消防団は地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっている。 しかしながら、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて、様々な課題を抱えている。・ 消防団員数の減少 消防団員数は年々減少しており、10年前の平成9年4月1日現在に比べ75,188人7.8%減少している。・ 消防団員の被雇用者化 消防団員に占める被雇用者団員の割合は、10年前の平成9年4月1日現在の割合に比べ3ポイント増加しており、団員の被雇用者の割合が高くなっている。・ 消防団員の高年齢化 消防団員の平均年齢は、10年前の平成9年4月1日現在に比べ1.8歳上昇しており、少しずつではあるものの団員の高年齢化が進んでいる。・ 女性の採用 女性消防団員数は、10年前の平成9年4月1日現在に比べ7,907人増えて15,502人となっており、団員数が減少する中でも、年々増加している。しかしながら、女性を採用している消防団は全消防団の42.8%にとどまっている。 そこで、消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性消防団員数10万人以上)確保することを目標としており、また、消防団員確保の全国的な運動を展開し、消防団員数の減少に歯止めを掛けるため、平成18年7月14日付消防災第275号により、消防庁長官名において各都道府県知事及び各指定都市市長あて「消防団員確保の更なる推進について」を通知し、併せて、市町村長に書簡を送付し、消防団員の確保についてより一層の喚起を図った。 しかし、平成19年4月1日現在、消防団員数は90万人を割るという厳しい状況となっている。これ以上の減少傾向が続くと地域の安心・安全を確保する上で、多大な支障をもたらす事になるなど大変憂慮される状況にあるため、平成19年8月29日付消防災第315号により、消防庁長官名において「消防団員確保の更なる推進について」を通知し、各都道府県知事及び各指定都市市長あてに地域住民の方々の身体・生命・財産を守る防災の重要性の認識、消防団員確保への取組、地域の防災力の向上を優先課題として取り組んでいただくよう更に一層の喚起を図った。 なお、消防団が抱える様々な課題を解消し、消防団の充実強化・活性化を推進するため、以下のような施策を実施している。ア 消防団機能向上のための総合戦略検討小委員会の開催 消防団に関する様々な課題について、集中的な検討を行うため消防審議会に小委員会を設置し、消防団に関する様々な課題について検討し、報告書として「消防団員増加への時代転換をめざして」を作成した。a 目的 これまでの消防団に関する各種施策、個別テーマについての検討成果を総合的に整理するとともに、その成果を活かしながら新たな検討を加え、消防団の機能向上のための取組を総合的、計画的に実行に移し、具現化することにより、消防団員100万人の実現による消防団の充実強化、ひいては地域防災体制の充実に寄与するため、消防審議会内に消防防災関係者や学識経験者等からなる小委員会を設けて、消防団に関する様々な課題について検討を行った。b 検討期間 平成18年9月〜平成19年2月c 小委員長 秋本敏文財団法人日本消防協会理事長d 主な検討内容 ・ 消防庁が行った消防団に関する最近の調査研究の成果及び施策の実施状況を整理し、今後の重点的な課題を協議した。イ 検討会の開催 消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、各種検討会を開催又は検討会に委員として参画し、検討・議論された提言を取りまとめ、施策に反映している。最近における主な検討会は以下のとおりである。(ア)消防団協力事業所表示制度に関する検討会a 目的 「消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会」の提言を踏まえて、事業所として消防団活動に協力することが、その地域に対する社会貢献及び社会責任として認められ、当該事業所の信頼性の向上につながるとともに、協力を通じて地域における防災体制がより一層充実するための仕組みである「消防団協力事業所表示制度」について検討を行った。b 検討期間 平成18年6月〜8月c 座長 小笠原倫明(小林恭一)消防庁国民保護・防災部長(当時)   ※( )内は前任者d 主な検討結果 ・ 消防団協力事業所表示制度の全体的な仕組み ・ 消防団協力事業所表示制度の効果的な普及策 ・ 消防団協力事業所表示制度に係るインセンティブ(イ)消防団と事業所の協力体制に関する調査検討会a 目的 社会の就業構造の変化に伴い、消防団員の中で被雇用者が占める割合は年々増加しており、今後、団員の確保策を進めるためには、事業所との連携を深め、各事業所との協力体制を構築することが不可欠となっている。そこで、「消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会」における提言等を踏まえ、消防団と事業所の連携の具体的方策について必要な検討を行った。b 検討期間 平成17年8月〜平成18年2月c 座長 大森彌東京大学名誉教授d 主な検討結果 ・ 事業所における被雇用者消防団員の活動環境の整備 ・ 事業所との新たな協力関係の構築 ・ 事業所における防災知識・技術に関するストックの活用 ・ 消防団活動への協力が社会責任及び社会貢献として捉えられるための環境づくり(ウ)消防団員の活動環境の整備に関する調査検討会a 目的 社会環境の変化等から、地域に必要な消防団員の確保に苦慮している消防団が見られ、全国的に消防団員数の減少が続いており、地域防災力の低下が懸念されている。そこで、地域住民・被雇用者・女性が参加しやすい活動環境の整備、地域住民・事業所の消防団活動への理解促進について必要な検討を行った。b 検討期間 平成16年7月〜平成17年1月c 座長 大森彌千葉大学教授(当時)d 主な検討結果 ・ 被雇用者団員・女性等が参加しやすい環境づくり ・ 各消防団が特性に応じて選択できる機能別団員及び機能別分団などの組織・制度の多様化方策 ・ 消防団の活動実態を踏まえた団員の処遇改善策(エ)地域防災体制の充実強化に向けた消防団員確保のための調査検討会a 目的 「新時代に即した消防団のあり方に関する検討委員会」(委員長:伊藤滋・早稲田大学教授)の報告(平成15年3月)において、これからの消防団のあり方として提言された「消防団員数の確保」等を踏まえ、地域防災力の充実強化を図るため、「消防団員数の確保」に特に焦点を当て、消防団員の確保対策及び国、地方自治体、消防団がそれぞれ実施する具体的な方策について必要な検討を行った。b 検討期間 平成15年11月〜平成16年3月c 座長 大森彌千葉大学教授(当時)d 主な検討結果 ・ 都道府県、市町村、消防団が連携し地域の実態にあった団員確保方策の実施 ・ 市町村合併時における消防団員の定数の維持 ・ 事業所への説明や事業所との交流など、事業所の理解を深める活動の推進 ・ 消防団ホームページの充実や、市町村・都道府県ホームページでの消防団活動の紹介など、住民・団員が消防団情報にアクセスしやすい環境づくりの促進ウ 各種施策の実施 消防団活動への参加促進や消防団の活動環境の整備を図るため、以下の施策を実施している。(ア)消防団の装備・施設の充実強化 消防車両・無線機器等の消防団に必要な設備や、消防団の活動拠点となる施設の整備については、「防災基盤整備事業」及び「施設整備事業(一般財源化分)」の対象とし、地方債と地方交付税で支援している。(イ)消防団員の処遇の改善 消防団員の年額報酬や出動手当等に対する地方財政措置、退職報償金制度について、その充実を図っている。(ウ)消防団への理解及び参加の促進 消防団PRビデオ・DVDと併せ、消防団啓発ポスターや学生(小学生、中学生・高校生、大学生・専門学校生等)・社会人・女性といった全国の幅広い層をそれぞれ対象としたパンフレット(リーフレット)の作成・配布を行い、消防団への理解及び参加の呼びかけに努めている。(エ)公務員や公共的団体職員の入団推奨 国家公務員や地方公務員(主に公立学校の教職員)のほか農業協同組合・漁業協同組合・森林組合等の公共的団体職員等の入団を推奨している。(オ)女性の入団推奨 地域の安心・安全に積極的に取り組む女性の入団を推奨している。(カ)全国消防団員意見発表会・消防団等地域活動表彰の実施 地域における活動を推進するとともに、若手・中堅団員や女性団員の士気の高揚を図るため、全国各地で活躍する若手・中堅団員や女性団員による意見発表会を開催し、併せて、 ・ 地域に密着した模範となる活動を行っている消防団 ・ 団員である住民を雇用し、消防団活動を支援する事業所 ・ 団員の確保について特に力を入れている消防団、地方自治体及び事業所 ・ 大規模災害時等において顕著な活動を行った消防団に対する表彰などを実施し、その内容を取りまとめ、全国に提供している。(キ)事業所の理解と協力 被雇用者団員の増加に伴い、消防団員である住民を雇用する事業所の消防団活動への理解と協力を得ることが不可欠であるため、消防庁では、平成18年度より、勤務時間中の消防団活動への便宜や従業員の入団促進など、事業所としての消防団への協力が、事業所の社会貢献として賞揚されるとともに、地域の防災体制が一層強化される仕組みである「消防団協力事業所表示制度」を導入し、事業所が消防団の活動へ協力しやすい環境の整備を行った。また、 ・ 消防団員である住民を多く雇用し、消防団活動に特に深い理解があり、協力度の高い事業所に対する表彰及び「総務省消防庁消防団協力事業所表示証」、「市(町村)消防団協力事業所表示証」の交付(囲み記事「「消防団協力事業所表示証」を交付された事業所」を参照) ・ 経済団体や東京に本社機構を持つ事業所への働きかけ ・ 事業所に向けた消防団参加促進パンフレットの作成・配布などを実施し、事業所の消防団活動に対する理解・協力を求めている。(ク)消防団活動のPRa 「消防団のホームページ」の運用 「消防庁ホームページ」内に「消防団のホームページ」を設け、消防庁における最新施策や最新情報等を掲載し、消防団活動のPRに努めている。b 「消防団メールマガジン」の発行 全国の消防団等に関する情報を提供するため、平成15年3月から「消防団メールマガジン」を発行し、全国の消防団員をはじめとした読者に配信している。 また、「消防団メールマガジン及び消防団のホームページの普及促進パンフレット」を作成・配布し、一層の普及促進に努めている。c 新聞を活用した広報 全国的に幅広く国民の目に留まる「新聞広告」活用し、消防団への理解促進及び、入団促進の広報に務めている。(ケ)機能別団員及び機能別分団など消防団組織・制度の多様化方策を導入 昼夜間を問わず、すべての災害・訓練に出動する消防団員(以下、「基本団員」という。)を基本とした現在の制度を維持した上で、必要な団員の確保に苦慮している各市町村が実態に応じて選択できる制度として、下記の多様化方策を導入した(第2−1−9図、囲み記事「多様化する消防団(機能別団員、機能別分団など)」参照)。第2-1-9図 機能別団員及び機能別分団の概要a 機能別団員(特定の活動、役割のみに参加する団員) 基本団員と同等の活動ができない人が、入団時に決めた特定の活動・役割及び大規模災害等に参加する制度。b 機能別分団(特定の活動、役割を実施する分団) 特定の役割、活動を実施する分団・部を設置し、所属団員は当該活動及び大規模災害対応等を実施する制度。c 休団制度 団員が長期出張、育児等で長期間に渡り、活動することができない場合、団員の身分を保持したまま一定期間の活動休止を消防団長が承認する制度。休団中の大規模災害対応、休団期間の上限は各消防団で規定し、休団中は報酬の不支給、退職報償金の在職年数不参入が可能。d 多彩な人材を採用・活用できる制度 条例上の採用要件として性別・年齢・居住地等を制限している例があるので、条例の見直しにより幅広い層の住民が入団できる環境の整備や年間を通じての募集・採用の実施。(コ)団員確保の支援体制の構築 消防団員の減少に歯止めを掛けるために、団員確保に必要な知識又は経験を有する消防職団員等を地方公共団体に派遣し、団員の確保の具体的な助言、情報提供等を行う「消防団員確保アドバイザー派遣制度」を平成18年度に構築し、平成19年4月から運用を開始している。消防団員確保アドバイザーの派遣
「消防団協力事業所表示証」を交付された事業所 現在、消防団員の約7割が被雇用者であり、消防団活動には事業所の協力が必要不可欠です。このため、消防庁では、消防団員の確保に協力し従業員の消防団活動への配慮をしている事業所等に対して、消防団への協力の証として表示証を交付することにより、事業所の社会貢献として賞揚する「消防団協力事業所表示制度」を構築しました。 この表示証には、消防庁長官が認定する「総務省消防庁消防団協力事業所表示証」と市町村長等が認定する「市(町村)等消防団協力事業所表示証」があります。 「市町村等消防団協力事業所表示制度」について、長野県茅野市にある株式会社オーク製作所諏訪工場では、地元の消防団員を多数雇用しており、就業規則において就業中に発生した各種災害等へ消防団員として出動した場合は職務の執行とみなし、他の勤務者が仕事を補充するとともに、勤務したものとして扱うなど消防団活動に積極的に協力していることから、茅野市長より「市(町村)等消防団協力事業所表示証」の交付を受けています。平成18年度全国消防ポンプ操法大会では、2名の従業員が出場し、事業所の全面的な協力の下、準優勝の成績を残しています。株式会社オーク製作所諏訪工場の表示証(諏訪広域消防本部茅野消防署提供) また、岩手県の太平洋セメント株式会社大船渡工場と佐賀県の株式会社フタバ伊万里は、従業員の消防団への入団、消防団活動への積極的配慮等をしており、都道府県の推薦を受けて消防庁長官より「総務省消防庁消防団協力事業所表示証」の交付を受けています。太平洋セメント株式会社大船渡工場の表示証(大船渡地区消防組合消防本部提供) この制度は、事業所の協力により消防団員の活動環境の整備を図ることによって、地域の安心・安全が推進されることを目的としており、消防庁では今後、各市町村等においてこの趣旨をご理解いただき、早急に本制度を導入されることを期待しています。
多様化する消防団(機能別団員、機能別分団など) 平成19年4月、宮崎県宮崎市では、宮崎市消防団に機能別分団である「水上バイク隊」を発足させました。水上バイク隊は、個人の水上バイクを使用して、大規模な水害や水難事故発生時の救助活動を専門に行う消防団です。また、この水上バイク隊は、団本部付の直轄の部として、リーダー1人、副リーダー2人、女性1人を含む15人の団員で組織され、平常時は基本団員や消防局及び関係機関と連携した水難救助訓練等に参加しています。 発足のきっかけとなったのは、平成17年に発生した台風第14号による記録的豪雨により市内各地で大規模な浸水被害が同時多発的に発生し、救助用ボートが不足したことから、宮崎市消防局の要請により水上バイク愛好者4人が約90人の住民の救助や病院への物資搬送を行ったことからです。その実績を今後の水害対策に活かすため、機能別分団の導入が検討され、「水上バイク隊」が発足しました。 この水上バイク隊のメリットは、救助活動による燃料費及び故障等の修理は公費での負担となりますが、個人所有の水上バイクを使用することから水上バイクの購入費用がかからないこと、また、ゴムボートと比較してスピードが出て小回りが利くこと、船底にスクリューなどの突起物がなく、水中に障害物の多い浸水地域において活動が容易であることなどが挙げられます。 このほかにも、全国各地で機能別団員・分団の採用について検討が行われていますが、多くの地域住民の方が消防団に参加しやすいように、このような地域防災力の充実強化に向けた積極的な取組が、全国に広がっていくことが期待されます。水上バイク隊の訓練の様子(宮崎市消防局提供)
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成18年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険排除等)をいう。)への出動回数は113万5,967回で、出動延人員は1,221万892人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は3,112回、28秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は28万5,182回、出動延人員は448万1,538人となっている(第2−2−1表)。第2-2-1表 消防職員及び消防団員の出動状況
(2)消防団員の活動状況 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生しており、多くの消防団員が出動し、常備消防と連携しながら、昼夜を分かたず多岐にわたる活動を行っている。 平成18年においては、梅雨前線に伴う大雨被害、台風第13号と豪雨による被害、また、竜巻による災害など、風水害における水防活動や住民の避難誘導など、各地の消防団は多岐にわたる活動で被害の軽減に大きく寄与した。 平成19年においても、平成19年(2007年)能登半島地震、平成19年(2007年)新潟県中越沖地震が発生し、各地で大きな被害が発生したが、消防団員の献身的な活動は、地域に大きく貢献している。平成19年(2007年)能登半島地震での活動(石川県:輪島市消防団)(写真提供:奥能登広域圏事務組合消防本部)平成19年(2007年)新潟県中越沖地震での活動(新潟県:柏崎市消防団)(写真提供:柏崎市消防本部) このように全国の消防団は、自宅が被災した消防団員もいる中で出動し、地域の防災力の中心として、不眠不休で果敢に活動し、被害の拡大防止や、地域住民の安心・安全の確保に貢献している。その支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という崇高な郷土愛護の精神である。一致団結して「わが街」のために災害に立ち向かった消防団の活躍は、地域住民から高く賞賛されている。消防団員は、地域に居住又は勤務する住民により構成され地域に密着しており、地理や住民の居住先等の地域情報を十分に把握しているため、大規模災害時には特に能力を発揮している。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当等の普及・指導・講習会や住宅の防火訪問の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組が行われている。また、毎年増加傾向にある女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及啓発、予防広報など平常時の活動に幅広く活躍している(囲み記事「活躍する女性消防団員」参照)。 このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして、地域の安心・安全のため重要な役割を担っている。
活躍する女性消防吏員 平成19年4月1日現在の全国の女性消防吏員は2,387人で、全消防吏員数の1.53%となっており、年々増加しています。消防吏員に占める女性消防吏員の割合と人数 女性が消防吏員として初めて採用されたのは昭和44年で、以来、社会全般における女性の社会進出の広がり等を背景とした平成6年の労働基準法の一部改正により、女性の深夜業務への従事制限が解除されたことから、住民の期待や要望が強かった救急業務だけでなく、機関業務や通信指令業務等の交替制勤務へ配置される女性消防吏員が増えてきました。 消防庁においては、消防組織の充実強化を図るための方策の一つとして、消防組織における女性消防吏員の更なる積極的な採用と職域の拡大について推進しているところであり、平成16年には〔1〕採用における平等な受験機会を提供すること、〔2〕警防業務、予防業務、救急業務など幅広く従事できるよう職域を拡大すること、〔3〕仮眠室やトイレ等環境の整備を行うこと、について各消防本部における女性の職域拡大に向けた積極的な取組を求めるとともに、警防業務を含む消防活動においては、基本的に女性は男性と同様に活動ができることなどを示したところです。 消防庁では、今年度、女性消防吏員の職域拡大のために望ましい職場環境について検討を進めており、その結果も踏まえながら、各消防本部における女性消防吏員の積極的な採用と職域の拡大を図り、今後も女性消防吏員がより一層活躍できる環境を整えてまいります。消防隊員として活躍する女性消防吏員(阿南市消防本部提供)救急隊員として活躍する女性消防吏員(金沢市消防局提供)
活躍する女性消防団員 消防団の組織の活性化及び地域のニーズに応える方策として、女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まっています。また、男女共同参画の流れを受けて、女性の消防団への参加意欲も高まっています。 消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加しています。平成19年4月1日現在、15,502人(全体の1.7%)、女性消防団員を採用する消防団は1,058団(全体の42.8%)で全都道府県に及んでいます。 佐賀市佐賀消防団では、男性消防団員減少の中、団員確保の一環として平成12年4月から女性消防団員の採用を開始し、現在は25人の女性消防団員が活躍しています。 主な活動としては、毎月の定例会に始まり、出初め式はもちろんのこと、予防査察等の火災予防啓発や幼稚園及び保育園の避難訓練時に行う紙芝居、パネルシアター等の幼年期における防火思想の向上を図るなど防火普及活動に重点を置いています。また、男性消防団員の災害出動時や訓練時の後方支援活動も行っています。幼稚園・保育園の避難訓練時に行うパネルシアターの様子(佐賀広域消防局提供) 平成19年7月には14人が救急普及員の資格を取得し、救急隊が行う救急講習の補助講師として参加するなど、地域住民に対しての応急手当の普及にも大いに貢献しています。 このように、全国の女性消防団員は、それぞれの地域において、広報活動、一般家庭の防火指導、一人暮らしの高齢者宅の防火訪問や応急手当指導など、多岐にわたって活躍しており、また、大規模災害時には、地域住民の検索及び避難の誘導など更なる活躍も期待されています。
2 公務災害の状況 平成18年中における公務により死亡した消防職団員(火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡したもの等)は7人、同じく負傷した消防職団員は2,382人である。前年に比べて公務による死者は10人減少し、負傷者は84人減少している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが41.3%と最も多く、次いで火災によるものが21.9%、救急によるものが11.5%となっている(第2−2−2表)。第2-2-2表 消防職員及び消防団員の公務による死傷者数
3 勤務条件(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防職員に適用される給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二種類がある。消防職員の給料については、その職務の危険度及び勤務の態様の特殊性等を踏まえ、一般職員と異なる特別の給料表(公安職給料表)を適用することとされているが(昭和26年国家消防庁管理局長通知)、現状では行政職給料表を適用している消防本部が多く見られる。行政職給料表を採用している団体では号給調整等により一般行政職員に比べて上位に格付けすることや、出動手当等の特殊勤務手当や休日勤務手当の支給がされるなど、勤務の特殊性が考慮されたものとなっている。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成18年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢41.8歳で33万9,782円であり、一般行政職員の場合は平均年齢43.0歳で35万2,399円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が9万6,656円であり、一般行政職員は7万9,271円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成19年4月1日現在、全国807消防本部中、2部制を採用している消防本部は526本部(65.2%)、3部制を採用している消防本部は217本部(26.9%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は61本部(7.5%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.4%)である。ウ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、〔1〕消防職員の勤務条件及び厚生福利、〔2〕消防職員の被服及び装備品、〔3〕消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 また、平成17年5月には、新たに「意見取りまとめ者」の制度を設けることなどを内容とした「消防職員委員会の組織及び運営の基準」の一部改正が行われた。 平成18年度においては、ほぼすべての消防本部で消防職員委員会が開催され、職員から提出された5,036件の意見について審議された。制度施行以来の累計では、合計で6万件を超える意見について、審議が行われている。平成18年度においては、審議された意見のうち「実施が適当」とされたものは、全体の43.1%を占めた。また、平成17年度において審議された意見のうち「実施が適当」とされた意見の58.5%が既に実施に移されるなど、消防職員委員会で審議された意見が着実に実現されてきているところである(第2−2−3表、第2−2−4表、第2−2−5表、第2−2−6表)。第2-2-3表 消防職員委員会の審議結果第2-2-4表 平成17年度に消防職員委員会において審議された意見の実施状況第2-2-5表 各年度の消防職員委員会開催状況第2-2-6表 各年度の消防職員委員会審議件数及び審議結果エ 公務災害補償 消防職員の公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡)には、地方公務員災害補償法の定めるところにより、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償が支給される。また、福祉事業により、必要に応じ社会復帰に要する費用や遺族への援護資金も支給される。 また、消防職員が火災の鎮圧等の職務に従事したことにより公務上の災害を受けた場合、障害補償又はこれらに併せて支給する傷病特別給付金等について特例的な加算措置がなされる。 平成18年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数及び通勤災害認定請求受理件数のうち、消防職員については1,650件あり、前年度に比べ191件減少している。
(2)消防団員の処遇改善 消防団員は、大規模災害時においては昼夜を分かたず多岐にわたり活動し、また、平常時においても地域に密着した活動を行っているので、消防団員の処遇については、十分に配慮し改善していく必要がある。ア 報酬・出動手当 市町村では、条例に基づき消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額や支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨からも、引上げ等の適正化を図る必要がある。 なお、平成19年度の消防団員報酬等の地方交付税算入額は、第2−2−7表のとおりである。第2-2-7表 消防団員報酬等の地方交付税算入額イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況の下で遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2−2−8表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2−2−9表)。第2-2-8表 消防団員の公務による死傷者数の推移第2-2-9表 補償基礎額改定状況 消防団員が身体に対し高度の危険が予測される状況の下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2−2−10表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。第2-2-10表 消防協力者等の死傷者数の推移ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、傷病・傷害の援護、介護の援護及び就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万4,000円、勤務年数30年以上の団長で92万9,000円となっている(第2−2−11表)。第2-2-11表 退職報償金支給額オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 平成19年3月31日現在、消防基金との間に消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している関係市町村の数は、1,663市町村(契約対象市町村の92.1%)、消防団員退職報償金支給責任共済契約を締結している関係市町村の数は、1,805市町村(契約対象の全市町村)となっている。 消防基金の平成18年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,682人に対し、16億829万円となっている(第2−2−12表)。また、福祉事業の支給額は、延べ982人に対し5億3,075万円となっている。第2-2-12表 消防基金の公務災害補償費の支払状況 消防基金の平成18年度の退職報償金の支給額は、5万2,255人に対し163億4,688万5千円となっている。カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が改正され、平成14年度から、消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施している。平成18年度の支払状況は、延べ156人に対し1,405万円となっている。キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、消防団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された(平成14年7月)。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の基礎教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。
4 安全衛生体制の整備(1)安全衛生体制 現在、労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定が適用される消防本部・署所はないものの、消防庁においては、公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実かつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程」、「訓練時における安全管理に関する要綱」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、体制の整備の促進及び事故防止の徹底を図っている。 また、消防職員の衛生管理についても、特に配慮する必要があることから、「消防における衛生管理に関する規程」を示すなどの対応を行っている。
(2)惨事ストレス対策 消防職員は、火災等の災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、これにより、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがある。このような問題に対して、消防機関においても対策を講じる必要があるが、各消防本部においては、情報不足や専門家が身近にいないことなどが課題とされていた。 消防庁では、平成13年12月から精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、消防職員の惨事ストレス対策について研究を重ね、全国の消防本部と消防学校に対するアンケート調査の結果及び消防本部による体系的な惨事ストレス対策のあり方についての検討を取りまとめた「消防職員の惨事ストレスの実態と対策の在り方について(平成15年2月)」及び各消防本部等の取組状況についての調査及び分析を取りまとめた「消防職員の現場活動に係るストレス対策フォローアップ研究会報告書(平成18年3月)」を全国の消防本部、消防署所等に配布するなど、各消防本部における惨事ストレス対策を推進している。 また、報告書の提言に基づき、平成15年に、消防職員が惨事ストレスにさらされる危惧のある災害が発生した場合、現地の消防本部の求めに応じて、精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言等を行う「緊急時メンタルサポートチーム」を創設、平成18年にメンバーの増員を図り、体制を強化している。 同チームにおいてはこれまで、平成15年に2件、平成16年に4件、平成17年に5件、平成18年に1件、平成19年には3件(平成19年10月現在)の派遣実績がある。 さらに、平成19年度から、消防学校において惨事ストレスに関する授業を担う教職員や消防本部において惨事ストレス対策を担当する消防職員を対象に、惨事ストレス対策についての基礎的な知識を習得することを目的とした「消防職員の惨事ストレス初級研修」を開催し、各消防本部等における惨事ストレス対策の更なる促進を図っている。
(3)安全管理体制の強化 平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生した。消防庁では、この事態を重く受け止め、今後の再発防止に資するため「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、安全への高い意識と高度な判断力の重要性、安全管理のための情報共有化方策、心理学の要素を反映した効果的な教育訓練手法、現場指揮体制の充実等について平成16年11月に報告書を取りまとめた。また、安全管理のための情報共有化方策として、「消防ヒヤリハットデータベース(消防職団員の事故事例の情報収集・提供システム)」及び「新規物質等データベース(新規物質及び新しい態様の火災に関する情報の一元化システム)」の2つのシステムを運用している。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在、国が行っている表彰等は第2−2−13表のとおりである。第2-2-13表 消防関係者の表彰者数等
(1)国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。国の栄典制度については、21世紀を迎え、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、平成14年8月の閣議決定により見直しが行われ、平成15年秋から実施された。 その主な内容は、勲章については、〔1〕旭日章と瑞宝章について、従来の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用し、消防職団員については、瑞宝章とする〔2〕旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた区分をそれぞれ6段階に整理するとともに名称を変更する〔3〕危険業務従事者叙勲を創設する等であり、褒章については、年齢にとらわれることなく速やかに顕彰する等である。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のある者をその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えること。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は公共に対して功労のある者に対して勲章を授与し、栄誉を称えること。 また、消防関係の叙勲は、以下の種類に分けられる。・春秋叙勲      春は4月29日、秋は11月3日付で授与される。・危険業務従事者叙勲 著しく危険性の高い業務に精励した功労者に対し実施されるもので、上記の日付で春秋叙勲とは別に授与される。・高齢者叙勲     春秋叙勲又は危険業務従事者叙勲を、いまだ勲章を授与されていない功労者のうち、88歳になった者に対して、毎月1日付で授与される。・死亡叙勲      死亡した功労者に対し、随時授与される。・緊急叙勲      殉職者など特別な功績を有する者に対し、随時授与される。 <褒章> 自己の危険を顧みず人命救助に尽力した者、業務に精励し他の模範となるべき者、学術、芸術、産業の振興に多大な功績を残した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対して褒章を授与して栄誉を称えること。 消防関係者への褒章は、功績の内容によって、以下の褒章が運用されている。・藍綬褒章      永年にわたり、消防業務に従事し、その功績が顕著な消防団員並びに永年にわたり、消防機器製造業等に従事し、その功績が顕著な者を対象としている。・黄綬褒章      消防関係業務に精励し衆民の模範である者を対象としている。・紺綬褒章      消防関係機関に対し、公益のために一定の金額以上の私財の寄附を行った個人又は団体を対象としている。・紅綬褒章      火災等に際し、身を挺して人命救助に尽力した者を対象としている。
(2)内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、総務大臣表彰受賞者及び消防表彰規程に基づき消防庁長官が行う安全功労者表彰及び防災功労者表彰の受賞者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する。・安全功労者表彰 国民の安全に対する運動の組織及び運営について顕著な成績を上げ、又は功績があった者等を毎年「国民安全の日」(7月1日)にちなみ、7月上旬に表彰。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があった者や防災思想の普及又は防災体制の整備について顕著な功績があった者を毎年「防災の日」(9月1日)にちなみ、9月上旬に表彰。
(3)総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害の防ぎょに関する対策の実施について功績顕著な者を表彰。
(4)消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の種類により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア)定例表彰 毎年3月7日の消防記念日、7月1日の国民安全の日、9月1日の防災の日にちなみ、3月上旬、7月上旬、9月上旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである。・功労章 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害の防ぎょに関する対策の実施について、その成績が特に優秀な者を対象としている。・永年勤続功労章 永年勤続し、その勤務成績が優秀で、他の模範と認められる者を対象としている。・表彰旗及び竿頭綬 防災思想の普及、消防施設の整備その他災害防ぎょに関する対策の実施について、その成績が特に優秀で、他の模範と認められる消防機関を対象としている。・安全功労者表彰 安全思想の普及、安全水準の向上等のために顕著な成績を上げ、又は功労があった個人や消防機関以外の団体を対象としている。・防災功労者表彰 災害における防災活動について顕著な功績があった者や防災思想の普及等について、その成績が特に優秀な個人及び団体を対象としている。(イ)随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度、実施されるもので、その種類と対象は以下のとおりである。・特別功労章 災害に際して消防作業に従事し、功労抜群で他の模範と認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕功章 災害に際して消防作業に従事し、特に顕著な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・功績章 災害に際して消防作業に従事し、多大な功労があると認められる消防吏員、消防団員等を対象としている。・顕彰状 職務遂行中、死亡した消防吏員、消防団員等を対象としている。・国際協力功労章 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」に基づき派遣され、救助活動等に従事し、功労顕著な者を対象としている。・表彰状 災害に際して、消防作業に従事し、顕著な功労を上げ、又は防災思想の普及等について優秀な成績を修めた者を対象としている。・賞状 災害に際して、消防作業に従事し、その功労が顕著と認められる又は他の模範として推奨されるべき功績が認められる者を対象としている。
(5)退職消防団員報償 永年勤続した消防団員の功労に報いるため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官から賞状と銀杯が授与される。
(6)消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功労顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に貢献し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。
(7)その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・消防団地域活動表彰・消防関係業界功労者表彰・消防設備保守関係功労者表彰・優良消防用設備等表彰・危険物保安功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰・防災まちづくり大賞・全国少年消防クラブ運営協議会表彰・救急功労者表彰
第3節 教育訓練体制1 消防職員及び消防団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職員及び消防団員が適切に対応するためには、その知識・技能の向上が不可欠であり、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職員及び消防団員の教育訓練は、各消防本部、消防署や消防団における教育訓練のほか、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職員及び消防団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。特に、常に危険が潜む災害現場において、指揮命令に基づく厳格な部隊活動が求められる消防職員には、職務遂行にかける使命感と旺盛な気力が不可欠であることから、各消防本部においては、様々な教養訓練を通じて、士気の高揚に努めている。 なお、職場教育における基準として、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、訓練時や警防活動時には安全管理マニュアル等により、効率的かつ安全な訓練・活動の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第51条)。 平成19年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。
(2)教育訓練の種類 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」(平成16年4月1日施行)が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と、消防団員に対する基礎教育(従来の普通教育)、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は800時間とされている。・「基礎教育」とは、消防団員として入団後、経験期間が短く、知識・技能の修得が必要な者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は24時間とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び一定期間の活動経験を有する消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。 なお、この基準については、全国的に平成19年ごろから、いわゆる「団塊の世代」が大量に退職することに伴う大量の新規採用消防職員に係る初任教育への対応や、被雇用者消防団員の増加に伴い集合教育の受講が困難となるなどの検討課題に対応するため、昭和45年に制定された従来の基準を全面的に見直し、各消防学校の実情に応じたカリキュラム編成や柔軟な対応を可能としたものである。 見直しに当たっては、個別の各科ごとに、ア)必要の度合いを精査し、廃止、統合(消防職員の予防課程と査察課程)及び新設(消防職員の特殊災害科・上級幹部科、消防団員の初級幹部科・中級幹部科)を図り、イ)新たに教育訓練に係る「到達目標」や、ウ)推奨例としての「標準的な教科目及び時間数」を設定した。 消防団員の教育訓練についても、市町村との連携や教授内容の分割実施など、柔軟な対応を可能とした。 各消防学校では、「到達目標」を尊重した上で、「標準的な教科目及び時間数」を参考指針として活用して、具体のカリキュラムを定めることとなる。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成18年度では延べ2万7,282人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−1表)。第2-3-1表 消防職員を対象とする教育訓練の実施状況 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成18年度における新規採用者のうち、初任教育の受講者は4,225人で、前年度に比べ463人増加している。なお、受講率については、93.9%となっている。 消防団員については、平成18年度では延べ6万258人が消防学校における教育訓練を受講している。 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成18年度においては、地方公共団体職員、地域の自主防災組織、婦人(女性)防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ1万5,996人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成19年4月1日現在、消防学校の専任教員466人のうち派遣の教員は174人に及んでいる(第2−3−2表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。第2-3-2表 消防学校教職員数 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校での研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織の「消防講習所」として設置されたが、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)施設・設備 消防大学校の教育訓練施設は平成5〜12年度に整備更新を進めたところである。 本館には250人収容の大教室、3つの通常規模教室、視聴覚教室、理化学燃焼実験室、図書館等のほか、様々な災害現場をシミュレートして指揮者の情報収集整理・判断・指揮命令能力を養成するマルチメディア教室を設けている。 第2本館には、300人収容の講堂のほか救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。救急訓練室においては、高度救急処置人形などの機材が整備されており、救急救命士の気管挿管や薬剤投与の講習にも対応できるものとなっている。 屋内火災の防ぎょ訓練棟では、濃煙高温状態の中で、複雑な建物内を想定した、より実践的な消火・救助訓練を行うことができる。消防大学校外観 一方、教育訓練車両については、平成14年度に指揮隊車、平成15年度に普通ポンプ車、平成16年度に水槽付きポンプ車、平成17年度に救助工作車II型、平成18年度に高規格の救急自動車を計画的に整備したところである。 この車両は、高規格の救急自動車として防振架台、救急処置範囲の拡大に対応した各種救急資機材(除細動器や観察モニター等)を装備した車両となっている。平成18年度に導入した高規格の救急自動車
(2)教育訓練の実施状況 消防大学校では学科、実務講習を合わせて、平成18年度までに延べ4万3,780人の卒業生を送り出しており(うち平成18年度は1,519人)、平成19年度教育訓練計画上の定員は1,852人としている(第2−3−3表)。第2-3-3表 教育訓練実施状況
(3)消防学校等に対する技術的援助 自然災害や火災・事故等の態様の多様化・大規模化に伴い、都道府県等の消防学校における教育訓練も高度な内容が求められており、その円滑な実施に資するため、次のような技術的援助を行っている。ア 消防学校教官等に対する教育訓練 消防大学校の教育訓練では、新任消防長・学校長科において消防学校長に対する新任教育を、また、新任教官科において消防学校教官に対する新任教育を行っている(囲み記事「学科の新設について」)。さらに、専科教育の各学科では教育指導者養成を目的としており、教育技法を学び、講義演習を実施している。イ 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教官を特別研究生として受け入れ、消防学校における教育訓練について、カリキュラム見直し、教材作成のための機会を提供している。ウ 講師の派遣 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、警防、予防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣を行っている。平成18年度は延べ82回の講師の派遣を実施した。エ 消防教科書の作成 都道府県等の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っており、平成19年4月現在21種類が発行されている。
学科の新設について〜新任消防長・学校長科、危険物科、新任教官科の新設〜 消防大学校では、平成18年度から新たに「新任消防長・学校長科」、「危険物科」、「新任教官科」を新設しました。 新任消防長・学校長科は、消防本部・消防学校のトップとして必要な知識及び能力を総合的に習得するために開講し、危機管理、情報保護・報道管理、惨事ストレス、緊急消防援助隊の受援体制など、近年の消防・防災の課題点について積極的にカリキュラムに取り入れました。訓練においては、実践的な訓練を通じて災害時の対応能力を高めるため、最新鋭の大規模災害訓練システムを活用し、現場指揮本部と消防本部の様々な役割を体験する「指揮シミュレーション訓練」、災害時の想像力を養うための「状況予測型図上訓練」など災害時における即応能力の向上に重点を置き、各機関の最高幹部として必要な教育を行うこととしました。新任消防長・学校長科指揮訓練 危険物科は、近年の危険物施設における事故件数の大幅な増加、科学技術の進歩と新たな材料の開発に伴う危険物施設技術基準の性能規定化の動きなどを背景に開講しました。危険物規制事務を担当する職員が、より高度な知識と技術を習得するため、最新の行政動向をはじめ、関連する理化学分野や企業防災に係る自主保安の取組の現状などをカリキュラムに取り入れました。危険物科危険物判定実験 また、学生の自主研究の時間を設け、班ごとに研究テーマを討議し、その結果を全体で発表することにより、各消防本部の事例や考え方を比較するなど、活発な意見交換の場を提供しています。 新任教官科は、消防職員の大量退職時期を迎え、各消防本部においても新規採用職員に対する初任教育の需要が増大し、また、幹部教育や専科教育も同様に増加する見込であることから、消防学校の教育力の充実強化を目的とし、開講しました。消防学校での学生教育に必要な専門知識、技術等を習得するため、教育心理学、教育技法や話し方技法、メンタルヘルス講習などをカリキュラムに取り入れました。 また、教育専門家による実践的な講義実習を実施するなどして、教育上のノウハウを学ぶほか、消防教育に係る課題研究討議を導入し、活発な意見交換の場を提供しています。
(4)自主防災組織に関する調査・研究 平成16年より自主防災組織の教育訓練の内容及び教育形態について調査研究を行うとともに、自主防災組織指導者が活用するための教本等を作成している。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急隊員が救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するための養成所として、財団法人救急振興財団(以下「救急振興財団」という。)が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間200人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成19年度には、全国で約1,182人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 これらの救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、講義及び実習が行われている。 そのほか、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、消防研究センター(平成18年4月消防庁消防大学校に設置、旧独立行政法人消防研究所)により、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした講座が開催されている。 また、消防機関においても、生物・化学災害発生時における要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められることから、消防庁では、平成8年度から、生物・化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させるなど、消防機関における生物・化学災害対応能力の充実を図っている。
6 全国消防救助技術大会等の実施 人命救助活動は、危険を伴う災害・事故現場において、専門的かつ高度な知識・技術が要求されることから、全国の消防職員が日頃錬成した救助技術を相互に交換し、研さんする場として、全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第36回大会は、平成19年8月22日に全国9ブロックから選抜された930人(陸上の部700人、水上の部230人)の隊員が参加して東京都で開催された。
7 防災教育の普及 大規模地震やNBC災害等も懸念されることから、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされている状況の下で、地方公共団体の首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。 このため、消防組織法において自主防災組織への教育訓練等に関する国・地方公共団体の努力義務が課せられていることも踏まえ、消防大学校、消防学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組を進めている(囲み記事「地方公共団体の自主防災組織担当者に対する教育の推進」)。また、昨今のライフスタイルの変化や情報通信環境の進展に対応し、インターネットを活用した遠隔教育(防災・危機管理e-カレッジ)を平成18年3月から本格運用しており、幼稚園児・小学校低学年児童向けや消防職団員・地方公務員及び日本に居住する外国人を対象としたコンテンツを提供している。さらに、消防職団員及び地方公務員の研修・教育をはじめ、自主防災組織、企業内における社員教育等に活用することを目的としたグループ学習用「学習管理システム」も配信するとともに、今後ともカリキュラムの充実を図っていくこととしている。防災・危機管理e-カレッジ(消防庁ホームページより)
消防団長科の改編 消防大学校では、消防団の上級幹部を対象に毎年消防団長科を開講し、消防団の指揮・運営に必要な知識及び能力を総合的に習得していただいています。 各地で発生した地震や豪雨・豪雪災害における消防団の献身的な働きに、国民から厚い信頼が寄せられているところですが、近年、消防団を取り巻く環境は大きく変化しており、国民保護においても、住民の円滑な避難誘導への対応が求められるなど、「安心・安全」に対し、国民が消防団に寄せる期待はますます大きくなっています。 その一方で、消防団活動時の殉職事案も引き続き発生しており、消防団幹部には、より高度な安全管理上の知識と判断力が求められています。 また、多くの消防団では団員数の減少や高齢化など、非常に困難な課題にも直面しています。 このような現状と課題に対処するため、平成18年度の消防団長科から、新たに、消防団本部と災害現場との情報連絡体制の確保をテーマとして「指揮シミュレーション図上訓練」を行うこととしたほか、「事例討議」として各消防団の抱える課題や具体例について、学生の間で意見交換を行うこととしました。大規模災害対応訓練システムを活用し、「指揮シミュレーション図上訓練」を行う消防団長科第50期学生消防団長科第51期学生通常点検 また、「校外研修」では、被災地に派遣される東京消防庁のヘリコプターや最新の消防車両、救助資機材等の視察を行い、緊急消防援助隊の活動と力強さを実感できるよう配慮しています。「校外研修」で東京消防庁第八消防方面本部・航空隊を訪れた消防団長科第49期学生
e-ラーニングの導入による新しい幹部科教育のスタート 平成19年4月に入校した幹部科第5期学生から、ICT(情報通信技術)を活用した消防大学校e-ラーニング教育を開始しました。 e-ラーニング教育は、消防大学校入校前に数か月間行うもので、入校予定者が所属する消防本部等に配信される教材(講義映像のほか、解説画面や参考資料などを含みます。)を用いて個別学習を行って事前に知識を習得します。 学習を進める上で不明な点等については、サポートデスクを設置し対応しているほか、担当教官が各学生の学習進捗状況を随時確認するとともに、電子メールによるアドバイスを行うなど、学生への指導体制を確立しています。また、e-ラーニングシステム上の掲示板機能を利用して、学生が相互にコミュニケーションを図ることができます。 また、入校後は学習到達度を確認するために全科目の効果確認テストを行うほか、教科目によっては理解を深めるために課題を提示し、各学生から検討、研究した結果を提出させ、さらに講師が実務的な解説を加える等、授業展開を工夫しています。あわせて、e-ラーニングの学習内容をもとにした実践重視の集合教育(課題研究、図上訓練等)を行い、応用力を備えた消防幹部の養成を図っています。 幹部科を卒業した学生からは、e-ラーニングによる学習について、コンピュータ操作に慣れるまでは戸惑いがあったものの、自分のペースで、また、理解できなかったところは繰り返し確認しながら学習を進められたことなどから、高い評価を得ています。 幹部科にe-ラーニングを導入したことにより、短期間で効率的・効果的に授業を進めることができるようになり、全般的に成績の向上にも結びつけることができました。幹部科の教育体系
地方公共団体の自主防災組織担当者に対する教育の推進 平成15年の消防組織法の改正を契機として、消防大学校では、地方公共団体の自主防災組織担当者に対する教育を推進しています。1 自主防災組織担当者の講習会(1)自主防災組織育成コース(消防大学校内、5日間) 平成16年度に自主防災指導者講習会として新設して以来、自主防災組織の育成担当者等の知識と能力の向上を図ることを目的として毎年度実施しています。 平成19年1月に開催した同コースでは、自主防災活動の推進、話し方技法に係る講義に加え、多様な図上訓練、事例研究を行いました。また、自主防災活動で成果を上げている団体の代表者による活動事例紹介の時間を増やすなどして、教育内容の充実を図りました。自主防災組織育成コースでの図上訓練(2)自主防災組織育成短期講習会(全国各地、1日間) 平成19年度から、自主防災組織の教育指導に当たる地方公共団体の職員に対する短期の講習会を開催します。 講習会は、図上訓練など実務的な内容とし、各地域で担当者が育つようにします。2 自主防災組織教育指導者用教本の作成 自主防災組織教育指導者等の教育の充実を図るため、平成16年度から18年度までの3か年計画で教育手法の調査・研究、教材の開発を行い、その成果として自主防災組織教育指導者用教本を作成しました。 〔1〕自主防災組織指導者用テキスト、〔2〕受講者用テキストの2種類があり、これらを電子ファイル化した「CD-ROM版」も作成しています。消防庁ホームページからダウンロードすることも可能です。自主防災組織教育指導者用教本のダウンロードページ(http://www.fdma.go.jp/html/intro/form/daigaku/kyouhon/index.htm)
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は6.0秒に1回、国民26人に1人が救急搬送 平成18年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる件数も含め、524万478件(対前年比0.8%減)と3年連続して500万件を超えているものの、前年と比較し3万9,950件減少している。出場件数のうち救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が316万3,822件、一般負傷が68万8,149件である。 また、救急自動車による搬送人員は489万2,593人(対前年比6万3,383人減、1.3%減)であり、ヘリコプターによる搬送人員は2,735人(対前年比348人増、14.6%増)である(第2−4−1表、第2−4−2表、附属資料31、32)。第2-4-1表 救急出場件数及び搬送人員の推移第2-4-2表 救急自動車による事故種別出場件数及び搬送人員 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万4,350件(前年1万4,460件)で、6.0秒(同6.0秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の26人に1人(同26人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。
(2)搬送人員の52%が入院加療を必要としない傷病者 平成18年中の救急自動車による搬送人員489万2,593人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の48.0%、入院加療を必要としない軽症傷病者の割合は52.0%となっている(第2−4−3表)。第2-4-3表 傷病程度別搬送人員の状況 なお、高齢者(65歳以上)の傷病者の割合は全体の45.1%となっている。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成18年中の急病の救急自動車による搬送人員293万550人の内訳をWHO(世界保健機関)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(10.7%)、消化器系(11.0%)、呼吸器系(9.5%)、心疾患等(9.3%)となっている(第2−4−1図)。第2-4-1図 急病に係る疾病分類別搬送人員の状況
(4)現場到着まで平均6.6分 平成18年中の救急自動車による出場件数523万7,716件のうち、現場到着所要時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5分以上10分未満が299万437件で最も多く、全体の半数以上(57.1%)になっている。 また、全出場事案の平均現場到着所要時間は6.6分(前年6.5分)となっている(第2−4−2図)。第2-4-2図 救急自動車による現場到着所要時間別出場件数の状況
(5)病院到着まで平均32.0分 平成18年中の救急自動車による搬送人員489万2,593人についての収容所要時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、30分以上60分未満が199万1,713人(全体の40.7%)で最も多く、次いで20分以上30分未満の180万7,926人(同37.0%)となっている(第2−4−3図)。第2-4-3図 救急自動車による収容所要時間別搬送人員の状況 なお、これら医療機関までの収容所要時間の平均は32.0分(前年31.1分)となっている。
(6)減少する転送 平成18年中の救急自動車による転送の状況をみると、傷病者の99.3%(485万9,361人)が転送なしに収容され、残りの0.7%に当たる3万3,232人が転送されている。転送された傷病者の全体に占める割合は年々減少している。
(7)搬送人員の98.1%に応急処置等実施 平成18年中の救急自動車による搬送人員489万2,593人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は480万1,493人(搬送人員の98.1%、前年は97.9%)であり、前年に比較し、0.2%増加している(第2−4−4表)。第2-4-4表 救急隊員が行った応急処置等の状況 また、平成3年以降に拡大された救急隊員による応急処置等(第2−4−4表における※の項目)の総件数は、1,162万8,405件(対前年比0.97%増)となっており、このうち救急救命士(除細動については、救急救命士以外の救急隊員を含む。)が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生のために行う高度な応急処置(ラリンゲアルマスク等による気道確保、気管挿管、除細動、静脈路確保、薬剤投与)の件数は7万8,490件にのぼり、前年比で約14.5%増となっている。これは救急救命士の養成、救急科修了者(旧救急標準課程又は旧救急II課程の修了者を含む。以下同じ。)(2(2)、(3)参照)による運用が着実に推進されていることを示している。なお、平成18年4月から救急救命士により、医師の具体的指示の下で心肺機能停止状態である傷病者に対して開始された薬剤投与については、開始初年の平成18年で実施件数は1,780件(うち事故種別が判明しているものが1,546件)にのぼっている。
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.0% 救急業務実施市町村数は、平成19年4月1日現在、1,769市町村(783市、816町、170村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2−4−5表)。第2-4-5表 救急業務実施市町村数の推移 市町村合併の進展により全市町村数が1,805(平成19年4月1日現在)まで減少したことに伴い、救急業務実施市町村数も大幅に減少しているが、98.0%(前年98.0%)の市町村で救急業務が実施され、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(人口は、平成17年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)こととなり、引き続き、ほぼすべての地域で救急業務のサービスを受けられる状態となっている(附属資料33)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が483市町村、委託が137市町村、組合が1,149市町村となっている(第2−4−4図)。第2-4-4図 救急業務実施形態の内訳
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成19年4月1日現在、4,846隊(対前年比68隊増)が設置されている(第2−4−5図)。第2-4-5図 救急隊数の推移 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成19年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で10万9,452人(対前年比395人増)となっており、このうち5万9,216人が、救急隊員として救急業務に従事している(第2−4−6図)。第2-4-6図 救急隊員数の推移 消防庁では、より高度化する救急需要に応えるため、救急救命士の養成を推進する一方、250時間の救急科(旧救急標準課程及び旧救急II課程を含む。)を修了した救急隊員の養成を推進している。平成19年4月1日現在、救急科修了者(旧救急標準課程及び旧救急II課程修了者を含む。)は、7万1,376人であり、うち、3万8,542人が救急隊員として救急業務に従事している。
(3)救急救命士 消防庁では、すべての救急隊に救急救命士が少なくとも常時1人配置される体制を目標に救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。 平成19年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国807消防本部のうち806本部(市町村合併を含む広域再編等により消防本部数が対前年比4本部減となっていることに伴い、対前年比4本部減)で、その運用率は99.9%(前年99.9%)であり、救急救命士を運用している救急隊は年々増加し、全国4,846隊の救急隊のうち86.3%(前年82.4%)を占める4,181隊(対前年比242隊増)となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は2万68人(対前年比1,202人増)、救急救命士として運用されている救急隊員は1万7,218人(対前年比750人増)と年々着実に増加している(第2−4−7図、第2−4−8図)。第2-4-7図 救急救命士運用隊の推移第2-4-8図 救急救命士数の推移第2-4-6表 救急救命士の導入効果
(4)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成19年4月1日現在、5,875台(対前年比117台増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格の救急自動車は全国で4,391台(対前年比249台増、5.7%増)配置されており、今後、さらに高規格の救急自動車の割合を高めるよう配備を推進している。
(5)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道、瀬戸中央自動車道及び神戸淡路鳴門自動車道(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道等のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成19年3月末現在、供用延長7,548kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社においては、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成19年4月1日現在、全国で4,767箇所となっている(附属資料34)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、階層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが511箇所(平成19年3月末現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により418地区(平成19年3月末現在)で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが204箇所(平成19年9月末現在)で整備されている。また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち21箇所(平成19年9月末現在)で整備されている。 救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施することとされている。
4 救急業務高度化の推進(1)救急隊員の教育訓練の推進 平成3年に、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が導入されるとともに、救急隊員の行う応急処置範囲が拡大された。消防庁としては、都道府県等の消防学校における拡大された応急処置の内容を含んだ救急課程の円滑な実施や財団法人救急振興財団等における救急救命士の着実な養成が行われるよう、諸施策を推進してきている。 そのほか、全国救急隊員シンポジウムや日本臨床救急医学会等の研修・研究の機会を通じて、救急隊員の全国的な交流の促進や救急活動における知識や技能の向上を図っている(囲み記事「救急救命士を含む救急対象の技術向上について」)。
救急救命士・救急隊員の技術向上について1 メディカルコントロール体制下での事後検証及び再教育 プレホスピタル・ケア(傷病者搬送途上における応急処置等)におけるメディカルコントロールとは、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置の質を保障することであり、各地域において体制の確保が図られています。 なお、消防庁においては、平成19年5月、関係機関と協力・連携し、「全国メディカルコントロール協議会連絡会」を立ち上げ、全国のメディカルコントロール協議会の質の底上げを図るとともに、関係者間で情報共有や意見交換を行う環境を整えるなどメディカルコントロール体制の充実強化を推進しています。メディカルコントロール体制2 シミュレーション訓練 救急救命士養成課程を実施している財団法人救急振興財団東京・九州研修所や各消防学校においては、救急現場の第一線で活動する救急救命士を養成するため、救急活動現場を想定したシミュレーション訓練を実施しています。シミュレーション訓練では、研修生は事前に傷病者の状態を知らされず、現場で初めて傷病者の状態を確認し、医師からの電話等による指示を受け、処置を行います。この一つ一つの行為を医師がチェックし、訓練後に批評します。このような訓練により、研修生は、様々な事案に対応できる能力を養います。3 全国救急隊員シンポジウム 毎年1月に開催される「全国救急隊員シンポジウム」は、全国の救急隊員等が実務的観点からの研究発表や意見交換を行い、救急業務に必要な新しい医学的知識を修得するとともに、相互に交流する場を提供することを目的としています。救急救命士制度発足間もない平成4年度の仙台市での開催を皮切りに、政令市を中心とした全国各都市で財団法人救急振興財団と開催地の消防本部とが共同開催しています。例年、2,000人から3,000人の救急隊員が参加し、最新の医療関連情報を学ぶとともに、病院前救護における問題点や処置範囲が拡大した救急救命処置について、第一線で活動する救急隊員から日頃の体験を踏まえたケーススタディが発表されており、救命技術の向上に大きく貢献しています。
(2)救急救命士の処置範囲の拡大 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁は厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催し、平成14年12月及び平成15年12月に報告書をそれぞれ取りまとめた。これを受けて、(3)に述べるメディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、次のように処置範囲が拡大されてきた。 〔1〕除細動 平成15年4月から、救急救命士は医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動を実施すること(以下「包括的指示下での除細動」という。)が可能となり、順次各地域で包括的指示下での除細動が実施されたところであったが、翌平成16年7月には、「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」(厚生労働省医政局長通知)により、非医療従事者においても、自動体外式除細動器(以下「AED」という。)を使用することが可能となった。これを受け、消防庁では、AEDの使用に係る普及啓発を図ることを目的として、非医療従事者によるAEDの使用条件のあり方等について報告書を取りまとめており(「応急手当普及啓発推進検討会報告書」)、消防機関によるAEDを使用するための内容を組み入れた応急手当普及講習プログラム等の実施を促進している。(第2−4−7表、第2−4−9図)第2-4-7表 自動体外式除細動器(AED)の住民に対する普及状況第2-4-9図 自動体外式除細動器(AED)の救急自動車積載状況 〔2〕気管挿管 気管挿管については、平成16年7月から、各地域において講習及び病院実習を修了した救急救命士により実施されている。この講習は、各都道府県の消防学校を中心に行われており、また、病院実習は、講習修了後に各地域の医療機関の協力を得て行われている。平成19年4月1日現在、気管挿管を行うことのできる救急救命士数は4,357人となっている。 今後も、関係者の理解と協力の下に、実習先医療機関の確保等に努めつつ、気管挿管を実施することができる救急救命士の養成を更に促進していくこととしている。 〔3〕薬剤投与 薬剤投与については、平成18年4月から救急救命士によるアドレナリンの使用が認められることとなった。薬剤投与の実施に当たっては、高度な専門性を有する所要の講習及び病院実習を修了する必要があることから、消防庁としては、財団法人救急振興財団等における講習体制の確保及びメディカルコントロール協議会が選定する施設における実習体制の確保を推進しており、これを受けて、各機関において、順次講習及び実習が開始されている。平成19年4月1日現在、薬剤投与を行うことのできる救急救命士の数は2,768人となっている。また、薬剤投与の実施に伴い、一層重要性を増すメディカルコントロール体制の充実強化についても、推進しているところである。
(3)メディカルコントロール体制の充実 救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、今後ともメディカルコントロール体制を充実していく必要がある。 このメディカルコントロール体制とは、消防機関と医療機関との連携によって、〔1〕救急隊が現場からいつでも迅速に医師に指示、指導、助言が要請でき、〔2〕実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証が行われ、その結果が再教育に活用され、〔3〕救急救命士の資格取得後の再教育として、医療機関において定期的に病院実習が行われる体制をいうものである。 消防機関と医療機関との協議の場である各都道府県単位及び各地域単位のメディカルコントロール協議会の設置はすべて完了しており、事後検証等により、救急業務の質的向上に積極的に取り組んでいるところである。なお、消防庁においては、全国のメディカルコントロール協議会の質の底上げや全国的なメディカルコントロール体制の充実強化を目的として、平成19年5月に全国メディカルコントロール協議会連絡会を立ち上げ、全国の関係者間での情報共有及び意見交換の促進を図っている。
(4)ウツタイン様式の導入 ウツタイン様式とは、心肺停止症例をその原因別に分類するとともに、目撃の有無、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生の実施の有無等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後(1か月後の生存率等)を記録するためのガイドラインであり、世界的に推奨されているものである。 我が国では、平成17年1月から全国の消防本部で一斉に導入を開始しているが、全国統一的な導入は世界で初めてであり、先進的な取組となっている。消防庁では、ウツタイン様式による調査結果をオンラインで集計・分析するためのシステムの運用も開始しており、今後は、救急救命士が行う救急救命処置の効果等の検証や諸外国との比較が客観的データに基づき可能となることから、プレホスピタル・ケアの一層の充実に資することが期待されている。 なお、ウツタイン様式の運用に当たっては、予後の調査を含め消防機関と医療機関の連携体制の更なる充実強化を促進していくことが重要である(囲み記事「ウツタイン様式を活用した分析及び今後の課題について」)。
ウツタイン様式を活用した分析及び今後の課題について 平成17年1月、全国の消防本部で一斉に「ウツタイン様式」という調査統計様式に基づき、心肺機能停止傷病者の救急搬送に関する記録の収集を開始しました。また、消防庁においては、全国の消防本部からのオンラインによる報告を受け、同様式に基づき、調査結果を集計・分析するためのシステムの運用を開始しました。 ウツタイン様式とは、病院外の心肺停止症例をその原因別(心原性か非心原性か)に分類するとともに、心肺停止時点の目撃の有無、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)や救急隊員による心肺蘇生の有無、その開始時期、初期心電図の波形や除細動の有無などに分類し、それぞれの分類に応じて病院搬送後の傷病者の経過を統一された用語、定義を用いて詳細に記録することにより、地域間・国際間での蘇生率等の統計比較を可能とするガイドラインであり、1990年にノルウェー「ウツタイン修道院」で開催された国際蘇生会議において提唱されたものです(注)。 消防庁では、平成18年9月に、平成17年中のデータを基に様々な条件下での救急救命処置の生存率への効果の分析を行い、暫定的な結果をとりまとめたところです(試行解析例)。 このように収集されたウツタインデータですが、誤入力や入力漏れなどが散見されるなど、より正確な統計データとするためには、ウツタイン統計データの精度の向上方策の検討が必要であり、また、今後の救急行政の施策の展開に反映させる分析方法の検討、さらに利用に関する基本的なルールの整備など、様々な課題が浮かび上がってきました。 このことを踏まえ、消防庁では、ウツタイン様式により収集したデータをより有効に活用することができるよう、また、救急業務の高度化、救命率の向上に資するよう平成19年7月2日に「ウツタイン統計活用検討会」を発足させ、検討を開始しており、平成19年度中に検討結果を報告書に取りまとめる予定です。 今後は、救急搬送の対象となった心肺停止症例について分析を行うことにより、消防機関と医療機関の連携を含め、プレホスピタル・ケアの充実に活用していくこととしています。(注)海外では、都市や地域単位、病院単位で導入した例はありますが、国単位で情報収集するのは我が国が初めてです。試行解析例
(5)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成18年中の平均では6.6分である。この間に、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)による応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう、実技指導に積極的に取り組んでいくことが重要である。現在、特に心肺機能停止傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の習得を目的として、住民体験型の普及啓発活動が推進されている。 消防庁においては、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月制定)により、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・事業所に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発及び学校教育を対象とした応急手当の普及啓発活動を行っている。この結果、講習受講者数は年々着実に増加し、全国の消防本部における平成18年中の救命講習受講者数は146万6,223人、心肺停止傷病者への住民による応急手当の実施率は35.3%となっており、消防機関は最も代表的な応急手当普及啓発の担い手としての役割を果たしている。 なお、心肺蘇生法については、平成18年6月、財団法人日本救急医療財団の心肺蘇生法委員会より、新しい日本版救急蘇生ガイドラインが示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動についても、このガイドラインを踏まえた新しい内容により講習が実施されている。 消防機関においては、昭和57年に制定された「救急の日」(9月9日)及びこの日を含む一週間の「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資器材の整備を推進している。「救急の日2007」の様子
5 救急業務体制の整備の課題(1)救急救命士の養成 救急救命士は、平成3年の制度導入以降、着実に養成され、各地の救急現場において活躍しているところであるが、全国すべての救急隊に少なくとも救急救命士を常時1人配置できるよう、今後も引き続き救急救命士の養成を積極的に進めていく必要がある。 救急救命士の資格は、消防職員の場合、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月以上の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格することにより取得することができる。資格取得後、救急救命士が救急業務に従事するには、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている(囲み記事「救急救命士の病院実習」)。 救急救命士は、現在、財団法人救急振興財団の救急救命士養成所で年間約800人、政令指定都市等における養成所で年間約400人が養成されているところである。一方で、平成18年度からは救急救命士の処置範囲が拡大(薬剤(アドレナリン)投与)したため、各養成機関での救急救命士の新規養成に加え、医療機関と連携しつつ、薬剤投与のための追加講習を行う等、円滑かつ着実に講習内容の更新が進められている。
救急救命士の病院実習1 救急救命士の運用状況 平成3年に創設された救急救命士制度においては、近年、メディカルコントロール体制の下で救急救命士の処置範囲の拡大が進み、平成15年には包括的指示下での除細動が、平成16年には気管挿管が、さらに平成18年には薬剤投与(アドレナリン)が実施可能な処置に加えられました。 平成19年4月1日現在、全国の救急救命士の運用数は17,218人、気管挿管・薬剤投与を共に実施できる運用救急救命士は1,387人で運用救急救命士全体の8.1%、気管挿管のみ実施可能は2,970人(17.2%)、薬剤投与のみ実施可能は1,381人(8.0%)となっています。2 気管挿管・薬剤投与の実習 救急救命士が、気管挿管及び薬剤投与を実施するためには、十分な医学的知識を実習により習得するとともに、実践に即した手技を確実に身に付けることが求められます。 平成19年4月1日現在、全国47都道府県において気管挿管実習に協力している医療機関は734医療機関、薬剤投与実習協力医療機関は507医療機関となっています。 実習は、入院中や救急自動車等で搬送された患者に対して、指導医師の指導監督の下で実施されますが、その前提として、個々の患者から同意を得るか、一般的掲示、すなわちその病院で救急救命士が実習している旨の掲示を行い、インフォームドコンセント(説明と同意)を得る必要があります。 救急救命士の病院実習は現場の救急活動の質の向上に必要不可欠であることから、消防庁では、ポスターの作成・掲示等を通じて救急救命士が病院で患者に対して実習を行う際に、十分理解してもらい、協力いただくことが重要であると考えています。
(2)救急用資器材等の整備 救急業務の高度化に伴い、高規格の救急自動車、高度救命処置用資器材等の整備が重要な課題となっている。 近年、国庫補助金が廃止、縮減される中においても、これら高規格の救急自動車やAED等に対する財政措置は不可欠であり、地方交付税措置など、必要な措置が講じられている。 今後も引き続き、高規格の救急自動車及び救急救命士の処置範囲の拡大に対応した高度救命処置用資器材の配備を促進する必要がある。
(3)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染の危険性があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務において極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の消毒の科目を設けるとともに、重症急性呼吸器症候群(SARS)等を含めた各種感染症の取扱いについて、感染防止用マスク、手袋、感染防止衣等を着用し、傷病者の処置を行う共通の標準予防策等の徹底を消防機関に要請しているところである。特に、近年その発生が危惧されている新型インフルエンザについては、救急隊員等搬送従事者用に感染防御資器材の備蓄を進めるべく、平成19年度より普通交付税により財政措置を講じているところである。 また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒や救急隊員の健康診断等の実施による感染防止体制について整備していく必要がある。
(4)救急需要の増加への対応 救急自動車による救急出場件数は年々増加し、平成18年中は523万7,716件に達し、前年に引き続き500万件を超えた。今後も、高齢化の更なる進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増加し続けるものと考えられるが、全国の消防本部の厳しい財政事情等により、救急自動車や人員等の整備を図ることが困難な状況にある。このことから、救急隊1隊当たりの年間出場件数は更に増加し、救急自動車の現場到着時間が遅延していくことが予想され、地域によっては、傷病者が発生した場合に、救急自動車による迅速な対応が困難となるおそれがある。 このような状況を踏まえ、消防庁においては、平成17年度には「救急需要対策に関する検討会」及び「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」を開催し、救急需要対策に関する総合的な検討を行った。その中で取り組むべき対策の主なものとして、〔1〕軽症利用者等への代替措置の提供(民間の患者等搬送事業者の活用)、〔2〕転院搬送業務への病院救急自動車の活用、〔3〕119番受信時及び救急現場における緊急度・重症度の選別(トリアージ)等が挙げられた。現在はこれらの実現に向けた取組を進めているところである。 なお、〔3〕のトリアージについては、引き続き検討を加えるべきとされたことから、平成18年7月より「救急業務におけるトリアージに関する検討会」を開催し、「選別基準」や「運用要領」の更なる検討や実際に運用を行うとした場合の問題点等の諸課題についての検討を行い、平成19年3月に報告書を取りまとめたところである。 今後、これらの検討会の結果や横浜市による取組を踏まえつつ、各地域において適切な救急需要対策が実施されるよう推進していく必要がある(トピックスIV「急増する救急需要!〜救急自動車の適正利用の推進〜」参照)。
(5)災害時における消防と医療の連携 平成17年のJR西日本福知山線列車事故のような災害時の集団救急救助活動においては、消防機関と医療機関の連携方策や、救急救助活動に有用である医療行為など様々な検討が必要である。このため、消防庁においては、学識経験者、医療関係者、消防関係者等により構成される「災害時における消防と医療の連携に関する検討会」等において検討を行ってきたところであり、幅広い議論を通じて、一層の災害時における消防と医療の連携体制を整備していくことが期待されている(特集「3.災害時における消防と医療の連携の推進」参照)。
(6)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 消防防災ヘリコプターを活用した救急業務については、平成10年3月の消防法施行令一部改正により、消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれを基に出動基準を作成するなど、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を進めている。 平成18年中における全国の消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数2,762件(前年比10.8%増)、搬送人員2,735人(同14.6%増)であり、消防防災ヘリコプターによる救急搬送への需要は年々増加している(第2−4−1表)。特に、離島、山間部等からの救急患者の搬送や交通事故等による重症患者の救命救急センター等専門的医療機関への救急搬送、さらには、大規模災害時における広域的な救急搬送等に大きな効果を発揮し、地域社会の安心・安全の確保に大きな期待が寄せられていることから、医療機関等との連携を強化しながら、消防防災ヘリコプターの機動力を活かした救急活動を推進することが求められている。第2-4-1表 救急出場件数及び搬送人員の推移消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成18年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数5万3,619件(対前年比979件減、1.8%減)、救助人員5万6,728人(同572人減、1.0%減)である(第2−5−1表、附属資料35)。第2-5-1表 救助活動件数及び救助人員の推移
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ127万1,554人である。消防職員は、延べ113万3,499人で、うち交通事故が35.2%、建物等による事故が18.5%である。一方、消防団員は、延べ13万8,055人で、うち火災が79.1%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ55万6,202人であり、救助活動1件当たり10.4人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は破裂事故の20.2人が最も多く、次に自然災害の17.1人となっている(第2−5−2表)。第2-5-2表 事故種別救助出動及び活動の状況
2 救助活動の実施体制(1)救助隊数及び救助隊員数 消防機関が行う救助活動を専門に実施する救助隊は、救助活動に関する専門的な教育を受けた隊員、救助活動に必要な救助器具及びこれらを積載した救助工作車等によって構成される。 救助隊は781消防本部に1,467隊設置されており、救助隊員は2万3,902人となっている。1消防本部当たり1.9隊の救助隊が設置され、1隊に16.3人の救助隊員が配置されていることとなる。
(2)救助隊が保有する装備 救助隊の保有する装備については、救助事案の複雑化・多様化に伴い、より専門的かつ高度な機能・性能が必要とされている(第2−5−3表)。第2-5-3表 救助隊が乗車する車両及び主な救助器具 消防庁としては、救助工作車等及び救助器具について、緊急消防援助隊設備整備費補助金又は地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている。
(3)救助隊の教育訓練 消防庁では、平成10年度から、救助活動に関する知識や技術の向上を図るため、毎年度全国消防救助シンポジウムを開催している。今年度は、12月に全国の救助隊員等約2,000人を対象として、「救助の安全管理について〜技術・知識の伝承〜」をテーマとし、海外からの招へい講師による講演やパネルディスカッションを行った。また、文部科学省登山研修所の協力を得て、全国の山岳救助活動を実施する救助隊員等の教育を行った。さらに、消防学校の専科教育の救助科では、140時間以上の教育訓練が行われており、消防本部においても月間又は年間の救助に関する訓練計画を策定し、職場教育を定期的に実施している(第2−5−4表)。第2-5-4表 消防本部における救助隊員の訓練実施状況
3 救助体制の整備の課題 消防機関が行う救助活動は、火災・交通事故・水難事故・自然災害からテロ災害などの特殊な災害にまで及んでいる。 平成18年には、北陸地方を中心とする日本海側の豪雪、7月の豪雨等の自然災害が発生し、平成19年においても、能登半島地震や新潟県中越沖地震、集中豪雨等の自然災害や、7月に発生した渋谷区温泉施設爆発火災など災害は後を絶たない。また、海外では平成13年の米国同時多発テロ事件以降、平成16年スペイン列車爆破テロ、平成17年ロンドン爆破テロ、平成18年インド鉄道施設連続爆破テロ等が発生しており、平成19年においても、パキスタン、アルジェリア、トルコ等で爆破テロやロンドンでのテロ未遂事件の発生など、世界的にテロの脅威が高まっているところであり、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 消防庁では、このような状況を勘案するとともに、平成17年4月25日に発生したJR西日本福知山線列車事故等を教訓として、平成18年4月、「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」を改正し、新たに、高度救助隊及び特別高度救助隊の整備を行うこととし、高度救助隊には特別救助隊が備える資機材に加え、高度救助用器具を、特別高度救助隊には高度救助隊が備える資機材に加え、特殊災害対応自動車並びに地域実情に応じてウォーターカッター及び大型ブロアーを、それぞれ備えるものとした。ウォーターカッター車大型ブロアー車大型除染システム搭載車 これらの高度救助隊及び特別高度救助隊は、高度な救助技術に関する知識・技術を兼ね備えた隊員で構成することとしたことから、この高度救助隊員等の教育を消防大学校のカリキュラムに取り入れ、救助隊の充実強化を図っている。 さらに、平成19年10月1日に同省令を改正し、検索用器具である「簡易画像探索機」を特別救助隊でない救助隊についても地域の実情に応じて備える救助器具と定めるとともに、平成18年度「救助技術の高度化等検討委員会」における「水難事故における救助活動について」の検討結果を踏まえ、「流水救助器具」を地域の実情に応じて救助隊が備える救助器具と定めている(囲み記事「平成18年度救助技術の高度化等検討委員会報告書(水難事故における救助活動について)」参照)。 また、上記の「救助技術の高度化等検討委員会」は、平成9年度から開催しており、救助技術の高度化や救助業務の充実強化のための具体的な方策について、毎年度検討している。平成19年度は、「編み構造ロープ等を使用した救助技術について」を検討することとしている。 消防庁としては、以上の取組に加え、救助体制のさらなる充実強化のため、各種災害に対応する救助活動マニュアル及び救助技術等の教育プログラムの充実を図るほか、専門的かつ高度な救助資機材の機能・性能の明確化等先進技術の活用について検討しているところであり、これらの施策と併せ、今後も救助工作車等及び救助器具の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。
平成18年度救助技術の高度化等検討委員会報告書(水難事故における救助活動について) 水難事故における救助活動は、水流、水圧、温度、視界等によって様々な物理的、生理的作用を受け、直接生命にかかわるような危険な環境条件の中での活動となります。また、陸上でバックアップする側からは水中での隊員の活動状況がわかりにくいなど、その危険性が高いことから、陸上隊員と水上(水中)隊員の連携体制を確立し、安全、確実かつ迅速な部隊活動を実施しなければならず、救助活動の中でも極めて危険性の高い活動と言えます。 消防庁では、平成10年度に水難救助活動の基本的な活動要領について取りまとめていますが、より安全、確実かつ迅速な救助活動が実施されるよう、平成18年度に「救助技術の高度化等検討委員会」(委員長;蓼沼 朗寿 全国過疎地域自立促進連盟専務理事)を開催し、新たに河川等の流水域についての項目をはじめ、安全管理からの視点も踏まえた救助活動要領などの検討を重ね報告書を取りまとめました。(検討会報告書の概要) 報告書では、新たに河川等の流水域についての救助活動に関する「流水救助活動時の基礎知識」、「流水現場の特徴等」、「流水救助活動時の装備」及び「活動要領」等の検討結果について記載しました。概要については、以下のとおりです。「流水救助活動」のポイント1 流水救助活動時の基礎知識「事故の形態」、「流水救助活動の定義」、「流水救助活動の特徴」及び「流水における負の要因」の内容について記載2 流水現場の特徴等「流水救助活動における一般的な専門用語」、「流水救助現場の危険性」の内容について記載[記載例]・エディー(反転流) 岩等の障害物に流れがぶつかると下流側(背後)にできる逆流する渦のことで、エディーは流れが穏やかであり要救助者を救出する場合はここへ誘導する。・ローヘッドダム(人工の低いダム)及び水中の岩付近で起きる現象 回転しながら循環する水流は落ち込み部分に吸い付けられるようにボートや要救助者を飲み込んでしまう。 水流の落ち込みでは、その下流で水面付近の水が逆流していることをバックウォッシュ、アウトウォッシュという。 ホールの下流側で湧き上がる上昇流(ボイルライン)では空気混入率が60%に上がることがあり、救命胴衣を装着していても浮力が無くなる。3 流水救助活動時の装備[記載例]・救命胴衣(PFD) 従来の救命胴衣より大きな浮力を有し、緊急解放ベルト等が装備された流水救助用の救命胴衣・水難救助用ヘルメット 軽く水に浮き、流水による水圧等を減少するための水抜き穴のある水難救助用のヘルメット4 活動要領[記載例]・各隊の配置 救命索発射銃等で、流れに対して斜めにロープを展張する(これを「テンションダイオゴナル」という。なお、ザイルを使用し、3〜9倍力で展張することも有効。)。上流には上流域監視警戒隊、下流にはスローバックを装備した下流域活動隊1を配置する。さらに下流域活動隊1の下流には下流域活動隊1が失敗した時に備え、下流域活動隊2を配置する。
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等に日ごろから大きな成果を上げている。特に、地震等大規模災害時においては、ビルの倒壊や道路の陥没等により陸上交通が遮断され、また、津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態において、ヘリコプターの高速性、機動性を活用し、消防防災活動で大きな役割を担うことができるものと期待されている。 消防庁としても、国庫補助金の活用による資機材の充実等の支援を行い、消防防災ヘリコプターの円滑な運航・整備を推進している。 平成19年4月1日現在の消防防災ヘリコプターの保有状況は、消防機関保有が28機、道県保有が42機、計70機となっており、未配備県は、佐賀県及び沖縄県の2県のみとなっている(第2−6−1図)。第2-6-1図 消防防災ヘリコプターの保有状況 また、消防庁においてもヘリコプター(JA01FD)を導入し、平成18年3月24日から運航を開始している。これにより、大規模な地震災害やNBCテロ災害等の様々な災害の発生時に消防庁職員を現地に派遣し、的確な情報収集や緊急消防援助隊の運用調整等に当たらせることとしている。 消防庁ヘリコプターは、平成19年3月25日(日)に発生した「平成19年(2007年)能登半島地震」における初動対応等のために初めて出動し、消防庁現地派遣職員及び東京消防庁指揮支援隊の搬送、ヘリコプターテレビ電送システム等を活用した被害状況等の情報収集活動を実施した。「平成19年(2007年)能登半島地震」に出動する消防庁ヘリコプター(総務省屋上へリポート) 消防防災ヘリコプターは、消防活動に幅広く活用されており、平成18年中の出動実績は5,606件、その内訳は、救助出動1,562件、救急出動2,762件、火災出動1,073件、その他の出動209件となっている(第2−6−2図)。第2-6-2図 消防防災ヘリコプターによる災害活動状況(平成11〜18年) なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づき、都道府県域を超えた応援活動が展開されており、平成18年中は、8件の広域航空消防応援が実施された。
2 今後の取組(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要があり、消防庁においては、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進し、現在、45都道府県で配備されているところである。 近年の大規模災害においては、多くの消防防災ヘリコプターが緊急消防援助隊として出動し、その高速性、機動性を活かした迅速な情報収集、指揮支援、消火・救急・救助活動を実施するなど、大きな役割を果たしていることから、広域的な連携の下、その活用を一層推進していく必要がある。
(2)大規模災害時の消防防災ヘリコプターの有効活用に向けて 現在、大規模災害時等の広域的な運用に資するため、ヘリコプター運航システム等を構築し、消防防災ヘリコプターの稼働・整備状況、離着陸場情報等を随時把握し、緊急時においても全国規模で対応できるよう体制の整備を図っている。 大地震により道路等が寸断されても、迅速かつ確実に情報を取得するためには、消防防災ヘリコプターを活用して上空から被災地にアクセスし、情報収集を行うことが極めて有効である。そのため、高速性・機動性に富み、被災地の情報収集手段として必要不可欠なヘリコプターテレビ電送システム及び夜間における被災地情報収集に適したより性能の高い高感度カメラ・赤外線カメラの整備を図ることとしている。 なお、平成18年度には、大規模災害時等における航空消防防災体制の充実強化を図るため、複数の消防防災ヘリコプターが連携した局地的活動をより効果的かつ安全に行うための運用マニュアルや、その訓練モデルを作成するための検討会を開催し、検討・検証を行った。
(3)消防防災ヘリコプターの積極的活用とより安全かつ効果的な運航の推進について 消防防災ヘリコプターのより積極的な活用と安全かつ効果的な運航体制の確保を図るため、〔1〕消防防災ヘリコプターの救急業務への活用〔2〕大規模災害時の航空消防応援を安全かつより効果的に行うための運航体制等の確保〔3〕消防の広域化に伴う管轄区域の拡大に対応するための消防防災ヘリコプターの機動力の活用等に関し、必要となる制度の見直しを含め、今後取り組むべき課題の整理を行うとともに、関係省庁並びに航空消防隊、都道府県消防防災担当部局、医療機関の関係者等から幅広く意見等を聴取しつつ、現状の課題及び今後とるべき対応策について検討・協議を行っている。消防防災ヘリコプター広報用ポスター
第7節 広域消防応援と緊急消防援助隊1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成19年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が1,822、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が556、その合計である全国の協定数は2,378である。また、全国の協定について応援する災害別に分類(重複計上)すると、火災2,142、風水害1,653、救急1,860、救助1,701、その他1,873となるが、市町村の合併等により、昨年に比べすべての協定数が減少している。 現在、すべての都道府県において、都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)を結んでいる。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を超えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の充実強化を図るとともに、大規模・特殊災害や林野火災等において、空中消火や救助活動、救急活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたりヘリコプターの活用が極めて有効であることから、その運用をより効果的に実施するため、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2−7−1表)。第2-7-1表 「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく広域航空応援の出動実績 平成19年7月には、梅雨前線の大雨により、熊本県下益城郡美里町において孤立した住民を、熊本県防災航空隊及び同要綱の規定に基づき出動した福岡市消防局航空隊のヘリコプターにより、7月6日から7月8日までの3日間で、悪天候の中29人を救助するなどの実績をあげている。熊本県消防防災ヘリコプター「ひばり」福岡市消防防災ヘリコプター「ほおじろ」 今後とも、消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場の確保並びに情報収集活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。
2 緊急消防援助隊(1)緊急消防援助隊の概要と消防組織法改正による法制化ア 緊急消防援助隊の概要 緊急消防援助隊は、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ迅速に実施し得るよう、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、平成7年6月に創設された。 この緊急消防援助隊は、平常時においては、それぞれの地域における消防の責任の遂行に全力を挙げる一方、いったん、我が国のどこかにおいて大規模災害が発生した場合には、全国から当該災害に対応できるだけの消防部隊が被災地に集中的に出動し、人命救助等の消防活動を実施するというシステムである。 緊急消防援助隊創設当初は、要綱に基づく体制でスタートし、その部隊は、全国の消防本部から登録された指揮支援部隊、都道府県指揮隊、消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊から構成され、大規模災害発生に際し、消防組織法第44条に規定する消防庁長官の要請(同法改正後は指示も含む。)により被災地に出動し、被災市町村長の指揮の下に活動することを任務としている。イ 消防組織法改正による法制化 近年、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、こうした災害に対しては、被災地の市町村はもとより、当該都道府県内の消防力のみでは迅速・的確な対応が困難な場合が想定される。そこで、全国的な観点から緊急対応体制の充実強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、併せて、国の財政措置を規定する等を内容とする消防組織法の改正案が、平成15年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立し、同年6月18日に公布(平成15年法律第84号)後、平成16年4月1日より施行された。(ア)法改正の主な内容 法改正の主な内容は、緊急消防援助隊の法律上への明確な位置付けと消防庁長官の出動の指示権の創設、緊急消防援助隊に係る基本計画の策定及び国の財政措置となっている。(イ)法律上の位置付けと消防庁長官の出動指示 創設以来要綱に基づき運用がなされてきた緊急消防援助隊であるが、この法改正により、消防組織法上の組織として明確に位置付けられるとともに、併せて、東海地震等大規模な災害で2以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害(NBC災害)等の発生時には、消防庁長官は、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を「指示」することができるものとされた。この指示権の創設は、まさに国家的な見地から対応すべき大規模災害等に対し、緊急消防援助隊の出動指示という形で被災地への消防力の投入責任を国に負わせることとするものである。(ウ)緊急消防援助隊に係る基本計画の策定等 法律上位置付けられた緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどのように配備・充足するかについては、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下「基本計画」という。)を策定することとしている。この基本計画は、平成16年2月に策定され、緊急消防援助隊を構成する部隊の編成と装備の基準、出動計画及び必要な施設の整備目標などを規定している。策定当初は、緊急消防援助隊の部隊を平成20年度までに3,000隊登録とすることを目標としていたが、大規模災害等への対応力を一層強化するため、平成18年2月に同計画を変更し、平成20年度までの登録目標を4,000隊規模に拡大し、緊急消防援助隊の体制強化を図ることとした。(エ)緊急消防援助隊に係る国の財政措置 消防庁長官の指示を受けた場合には、緊急消防援助隊の出動が法律上義務付けられることから、出動に伴い新たに必要となる経費については、地方財政法第10条の国庫負担金として、国が全額負担することとしている。 また、基本計画に基づく施設の整備についても、「国が補助するものとする」と法律上明記されるとともに、対象施設及び補助率(2分の1)については政令で規定されている(第2−7−2表)。第2-7-2表 消防組織法の改正(緊急消防援助隊の法制化)
(2)緊急消防援助隊の体制及び装備ア 緊急消防援助隊の体制 緊急消防援助隊の部隊編成については、発足当初、救助部隊、救急部隊等の全国的な消防の応援を実施する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると約4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(約1万3,000人規模)、合計で1,267隊(約1万7,000人規模)であった。平成13年1月には、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、消火部隊についても登録制を導入し、救助隊・救急隊とともにその登録部隊数が大きく増加し、さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、消防防災ヘリコプターによる航空部隊及び消防艇による水上部隊を新設し、8部隊、1,785隊(約2万8,000人規模)とした。 平成16年4月1日からの法律上の位置付けの明確化に伴い、法律に基づく登録を行った結果、指揮支援部隊をはじめとする10部隊で編成され、全国812消防本部から2,821隊(約3万5,000人規模)が登録され、同年4月14日には、総務省講堂において全国の緊急消防援助隊指揮支援部隊、都道府県指揮隊、都道府県航空隊の隊長等の参集による緊急消防援助隊発足式が挙行された。平成19年4月1日現在では、全国780消防本部(全国の消防本部の96.7%)から3,751隊が登録され、人員規模としては、約4万4,000人体制となっている(第2−7−1図、第2−7−2図、第2−7−3表)。第2-7-1図 緊急消防援助隊の部隊編成第2-7-2図 緊急消防援助隊の体制の推移第2-7-3表 平成19年度緊急消防援助隊登録状況イ 緊急消防援助隊の装備等 緊急消防援助隊の装備については、これまでも、消防庁において基準を策定するとともに、平成16年度からは、基本計画に基づきその施設等の整備を図ってきた。平成18年度から緊急消防援助隊設備整備費補助金を新設、国庫補助措置を講じることにより、災害対応特殊消防ポンプ自動車、救助工作車、災害対応特殊救急自動車等及び活動部隊が、被災地で自己完結的に活動するために必要な支援車並びにファイバースコープ等の高度救助用資機材等の整備を推進している。 また、緊急消防援助隊派遣車両(指揮支援隊及び都道府県隊長)の位置及び動態を把握し、緊急消防援助隊の部隊運用を効果的に支援するため、平成12年度から消防庁が整備を進めている緊急消防援助隊動態情報システムについては、平成13年度の実証実験、平成14年度の可搬型車載端末の開発を経て、現在、指揮支援部隊が所属する消防機関及び全国の各代表消防機関が、消防組織法第50条の規定に基づき無償使用して活用している。 さらに、平成16年の新潟県中越地震災害おける活動を教訓として、消防庁の機動力強化を図るため、消防庁ヘリコプター及び消防庁車両(指揮車、人員搬送車)を、平成16年度補正予算及び平成17年度当初予算により整備した。 消防庁では、今後とも、緊急消防援助隊の効果的な活動を実施するため、計画的な施設等の充実強化を図ることとしている(第2−7−3図、第2−7−4図)。第2-7-3図 緊急消防援助隊動態情報システム第2-7-4図 消防庁車両等の運用イメージ
(3)緊急消防援助隊の活動ア 平成7年から平成16年4月(法制化)まで 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁及び名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月に発生した岩手県内陸地震(震度6弱)では、仙台市消防局及び東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局及び仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局及び川崎市消防局から救助部隊及び消火部隊が出動し、地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震(震度6強)においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊がヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする芸予地震(震度6弱)においては、大阪市消防局、神戸市消防局及び福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局及び北九州市消防局の航空部隊が情報収集活動を行った。 平成15年には、7月の宮城県北部地震(震度6弱、6強、6弱が1日に連続して発生)において、札幌市消防局の指揮支援部隊、航空部隊及び茨城県の航空部隊が情報収集活動を行った。8月の三重県ごみ固形燃料発電所火災では、名古屋市消防局の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が、9月の栃木県黒磯市タイヤ工場火災においては、東京消防庁の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が出動し、消火活動等を行った。 さらに、9月の平成15年十勝沖地震(震度6弱が2回発生)においては、札幌市消防局及び仙台市消防局の指揮支援部隊、航空部隊及び青森県の航空部隊が情報集活動を行った。また、この地震により損傷した出光興産株式会社北海道製油所のオイルタンクから発災した火災の消火活動及び鎮火後の火災警戒活動のため、札幌市消防局の指揮支援部隊のほか、10都県15消防本部の特殊災害部隊等が出動し、応援活動を実施した。これらに加えて、消火に必要な泡消火薬剤の確保のため、全国的な広域応援を実施し、自衛隊航空機による輸送支援及び在日米軍からの泡消火薬剤の提供を受けた。イ 平成16年4月以降(ア)平成16年中 平成16年7月13日からの新潟・福島豪雨災害では、法制化後初めて緊急消防援助隊が出動し、大規模な堤防決壊により浸水した地域及び道路寸断等により孤立した山間部等において、救助活動等に従事した。新潟県には、宮城県、山形県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、長野県及び岐阜県の1都11県から延べ171隊、693人が出動し、3日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、三条市1,652人、見附市106人、中之島町(現長岡市)97人の総数1,855人を救助した。 続く7月18日の福井豪雨災害では、神奈川県、富山県、石川県、長野県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県及び島根県の2府10県から延べ159隊、679人が出動し、2日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、福井市266人、E江市45人及び美山町77人の総数388人を救助した。 10月、平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号災害においては、豪雨による堤防の決壊等のため多大な被害を受けた兵庫県に出動し、浸水家屋の戸別調査及び救助活動等に従事した。10月21日、兵庫県豊岡市に、愛知県、滋賀県、大阪府及び岡山県の1府3県から延べ70隊、284人が2日間の活動に従事し、2,000世帯を超える戸別調査を行うとともに、住宅等に孤立した住民127人を救命ボート等により救助した。 10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を中心にマグニチュード6.8、最大震度7となる新潟県中越地震が発生した。最初の地震発生後も短時間の内に震度6強以上の地震が頻発し、また震度6弱以上の余震も発生するなど、新潟県の内陸部・山間部に家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。 緊急消防援助隊については、地震発生直後の23日18時25分、消防組織法第44条第2項及び第4項に基づき、埼玉県及び仙台市に対し、消防庁長官が直接航空部隊及び指揮支援部隊の出動要請を行うとともに、19時20分の新潟県知事からの派遣要請を受けて、直ちに、山形県、富山県、福島県及び東京都に対して出動を要請したところである。その後も引き続き各県に出動要請を行った結果、1都14県(宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、山梨県、富山県、石川県、愛知県)から累計で、480隊(うち、ヘリコプター20機)、2,121人と、これまでで最大規模の出動となった。 活動状況は、主に小千谷市、長岡市及び山古志村(現長岡市)において、孤立住民等の安否確認、救助、救急活動に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動に従事した。特に、10月25日全村避難指示が発令された山古志村(現長岡市)においては、自衛隊、警察及び海上保安庁と連携して消防防災ヘリコプターにより集中的に救助活動を実施し、さらに、27日には、長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故現場において、地元長岡市、新潟県内応援隊及び東京消防庁ハイパーレスキュー隊を中核とした緊急消防援助隊との合同の救助活動を実施し、2歳男児1人とその母親の2人を地震発生以来4日ぶりに救助(母親は病院搬送後死亡確認)するなど、11月1日の活動終了までの10日間で453人を救助した。(イ)平成17年中 平成17年3月20日には、福岡県西方沖を震源とする地震(震度6弱)が発生、大阪府及び熊本県から3隊12人が出動し、情報収集活動を行った。 続く4月25日には、兵庫県尼崎市においてJR西日本福知山線列車事故が発生、107人が死亡する大惨事となった。午前9時03分JR宝塚駅を出発した7両編成の上り快速列車が、同9時18分頃尼崎市久々知3丁目付近において脱線、沿線のマンションに衝突し、先頭車両がマンション1階の駐車場にくい込むという事態となった。現場は、狭あいな空間の上、駐車場の自動車からガソリンが漏れ、エンジンカッター等の火花が発生する救助資機材が使用できないということもあり、救助活動に時間を要することとなった。緊急消防援助隊としては、大阪府、京都府及び岡山県の2府1県から累計で74隊、270人が4日間にわたり救助、救急活動に従事し、地元尼崎市消防局及び兵庫県内消防本部の県内応援隊と協力し、消防機関として240人(緊急消防援助隊の救助人員42人を含む。)を救助した。(ウ)平成19年中 平成19年1月30日には、奈良県吉野郡上北山村の国道169号において、土砂崩れにより走行中の乗用車が埋没し、3人が生き埋めになる災害が発生し、京都府、大阪府、三重県、和歌山県の2府2県から7隊30人が出動、情報収集活動を実施するとともに、救助活動及び航空部隊による救急搬送を行った。奈良県吉野郡上北山村土砂崩れ車両埋没事故 また、3月25日9時41分に、能登半島地震(震度6強)が発生、京都府、大阪府及び東京都の指揮支援隊をはじめ、兵庫県、滋賀県、福井県、富山県の1都2府4県から、87隊349人が出動、平成16年新潟中越地震災害以来の大規模な出動になり、2日間にわたり倒壊建物等における検索活動及び情報収集活動を行った。平成19年(2007年)能登半島地震 4月15日には、三重県中部を震源とする地震(震度5強)が発生、愛知県から航空部隊等3隊12人が出動し情報収集活動を行った。 さらに、7月16日10時13分、新潟県中越沖地震(震度6強)が発生し、震度6弱以上の余震も発生するなど、家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。16日10時40分、新潟県知事からの要請を受け、消防庁長官が、宮城県、東京都の指揮支援隊をはじめ、福島県、栃木県、埼玉県、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、京都府の1都1府8県に対して緊急消防援助隊の出動要請を行い、航空部隊を中心として15隊110人が出動し、7月23日の活動終了までの8日間に、述べ59隊286人が情報収集、救急及び人員搬送等の活動を行った(第2−7−4表)。第2-7-4表 緊急消防援助隊の出動事例(平成8年以降)平成19年(2007年)新潟県中越沖地震 以上のような緊急消防援助隊の活動に要した経費については、昭和62年度に創設された消防広域応援交付金制度に基づき、応援市町村に対し広域応援交付金が、財団法人全国市町村振興協会から交付されている。
(4)緊急消防援助隊の運用 緊急消防援助隊の編成及び出動計画等については、総務大臣が定める基本計画に定められているが、その概要は、以下のとおりである。ア 緊急消防援助隊の編成 緊急消防援助隊の部隊は、全国を8つのブロックに分けた災害発生地域別に、14の政令指定都市等の消防本部により編成される指揮支援部隊と、応援都道府県内の消防本部の消火部隊、救助部隊、救急部隊等から編成される都道府県隊に大別される。 緊急消防援助隊は、被災地の市町村長(又は委任を受けた消防長。以下同じ。)の指揮の下に活動することとなるが、指揮支援部隊は、大規模災害の発生に際し、ヘリコプター等で速やかに被災地に赴き、被害情報の収集等にあたるとともに、当該市町村長の指揮を支援し、被災地における緊急消防援助隊の活動が円滑に行われるよう支援活動を行う。 都道府県隊は、当該都道府県内の消防本部において登録されている消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊並びに当該都道府県の航空部隊のうち、被災地への応援に必要な部隊をもって編成される。 こうした部隊編成に基づき、緊急消防援助隊は、被災地の市町村長→指揮支援部隊長→都道府県隊長→各部隊長という指揮命令系統により活動することとなる。イ 出動計画(ア)基本的な出動計画 大規模災害等の発災に際し、消防庁長官は、情報収集に努めるとともに、被災都道府県知事等との密接な連携を図り、緊急消防援助隊の出動の有無を判断し、消防組織法第44条の規定に基づき、出動の要請又は指示の措置をとることとされている。この場合において、迅速かつ的確な出動が可能となるようあらかじめ出動計画が定められている。 具体的には、災害発生都道府県ごとに、その隣接都道府県を中心に、原則として、第一次的に応援出動する都道府県隊を第一次出動都道府県隊と、災害の規模によりさらに応援が必要となる場合に出動準備を行う都道府県隊を出動準備都道府県隊として指定している。(イ)東海地震等における出動計画 東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の大規模地震については、2以上の都道府県に及ぶ著しい地震被害が想定され、第一次出動都道府県隊及び出動準備都道府県隊だけでは消防力が不足すると考えられることから、全国規模での緊急消防援助隊の出動を行うこととしている。 そのため、東海地震、東南海・南海地震及び首都直下地震を想定して、中央防災会議における対応方針も踏まえ、それぞれの発災時における緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを策定しており、例えば、東海地震の場合、強化地域に指定されている8都県以外の全道府県の陸上部隊の出動順位、応援先都県、出動ルート等をあらかじめ定めるとともに、航空部隊についても全国的な運用を行うこととしている(第2−7−5図)。第2-7-5図 緊急消防援助隊の基本的な出動とアクションプラン(ウ)緊急消防援助隊調整本部 緊急消防援助隊は、それぞれの管轄区域を離れて活動することから、迅速かつ効果的な活動を行うためには、速やかな集結及び被災地域への出動とともに、被災地域における各部隊の具体的な活動場所及び部隊配備等を、被害状況を踏まえて適時的確に決定する必要がある。 そのため、緊急消防援助隊が出動した場合には、被災都道府県において緊急消防援助隊調整本部を設置し、都道府県知事(又はその委任を受けた者)を本部長として、被災地市町村の派遣職員、消防庁派遣職員、指揮支援部隊長及び被災都道府県の代表消防機関の派遣職員等が、指揮者である被災市町村長と連携を図り、緊急消防援助隊の部隊配備等に係る所要の連絡調整を行うこととしている。 各都道府県は、緊急消防援助隊運用要綱において、自らが被災地となる場合を想定して、平時よりこうした調整本部の運営方法をはじめ、進出拠点、燃料補給基地等、緊急消防援助隊の受入れに当たって必要な事項を都道府県内の消防機関等と協議の上、「緊急消防援助隊受援計画」として定めておかなければならない。この受援計画の策定状況は、平成19年10月1日現在で、45都道府県となっており、消防庁としてはその早急な整備を指導しているところである(第2−7−6図)。第2-7-6図 緊急消防援助隊調整本部等設置イメージ
(5)緊急消防援助隊の訓練 大規模災害時における緊急消防援助隊の出動及び活動を的確かつ迅速に行うためには、全国各地からそれぞれの管轄区域を離れて活動に従事するという緊急消防援助隊の特殊性を考慮し、指揮・連携能力の向上を図るなど、平時からの緊急消防援助隊としての教育訓練が重要となる。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日に、東京都江東区豊洲において、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われ、29日には、天皇陛下の行幸を賜った。平成12年10月23・24日には、第2回目の全国合同訓練が東京都江東区有明において実施された。 第3回全国合同訓練は、緊急消防援助隊法制化後、初の全国訓練として、基本計画に基づき、平成17年6月10日・11日の両日、静岡県静岡市において「東海地震における緊急消防援助隊アクションプラン」の検証を兼ね実施し、参集及び活動体制について総合的な検証を行った。 また、隊員の技術向上と部隊間の連携強化を目的に、平成8年度から、全国を6つのブロックに区分しての合同訓練が毎年行われており、平成16年4月の緊急消防援助隊の法制化以降は、基本計画において、「緊急消防援助隊の技術の向上及び連携活動能力の向上を図るため、都道府県及び市町村の協力を得て、複数の都道府県を単位とした合同訓練を定期的に実施するものとする。」(第4章第1節)として、消防庁主催としての位置付けを明確にするとともに、訓練実施経費の一部を措置し、全国の自治体及び消防機関の協力の下、この地域ブロック合同訓練を実施している。 さらに、消防大学校における教育訓練と併せて、引き続き緊急消防援助隊のより実戦的な教育訓練の充実を図ることとしている(第2−7−5表)。第2-7-5表 緊急消防援助隊全国訓練、ブロック訓練の実施状況
(6)今後の課題 法制化後、新たに発足した緊急消防援助隊について、今後その活動能力を更に高めていくためには、それを構成する陸上部隊・航空部隊等の増強等を図るなど広域消防応援体制の更なる強化が求められていることから、下記の課題に引き続き取り組んでいく必要がある。ア 緊急消防援助隊の機動力の強化 東海地震等の著しい被害が想定される大規模地震災害における緊急消防援助隊の一層効果的な部隊運用を図るため、被災市町村をまたがる部隊移動を迅速に行うなど、部隊配備を総合的に調整する仕組等について検討を行う必要がある。イ 消防庁オペレーション機能の強化 消防庁においては、消防庁長官の指示権が創設されたことも踏まえると、大規模災害・特殊災害等発生時に、消防庁自体の初動対応がこれまで以上に重要となり、迅速かつ的確な情報収集等に努め、できる限り災害の規模、被害状況等を把握して、緊急消防援助隊の派遣等必要な措置を即座に講じなければならない。また、図上訓練等の実施により日頃から体制の点検も行いながら、緊急消防援助隊の出動の要否、派遣地域、必要な部隊規模・種類の判断等オペレーション機能の強化を引き続き図っていく必要がある。ウ 訓練の実施 緊急消防援助隊が迅速かつ効果的に活動するためには、速やかに応援部隊を編成して被災地に出動し、各部隊が一元的な指揮体制の下に連携した活動を実施する必要がある。このため、消防庁では、より実戦的な全国合同訓練及び地域ブロック合同訓練を実施するとともに、各都道府県及び各消防機関においても、平時より各種防災訓練等の機会も活かしながら、緊急消防援助隊調整本部運営訓練や大規模な参集・集結訓練など、緊急消防援助隊の活動に即した教育訓練を行う必要がある。緊急消防援助隊関東ブロック合同訓練(群馬県前橋市)緊急消防援助隊中部ブロック合同訓練(石川県かほく市)エ アクションプランの策定 いつ起きてもおかしくないといわれる東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等に備えるためには、発生時における緊急消防援助隊の活動方針を更に具体化していく必要がある。このため、今後も東海地震、首都直下地震に係るアクションプラン及び平成19年5月に策定した東南海・南海地震に係るアクションプランについて、緊急消防援助隊の合同訓練等を通して随時検証するとともに、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など様々な事案を想定した運用体制の構築を図っていく必要がある。オ 部隊の増強・施設等の充実強化 緊急消防援助隊の活動規模の増大や、公表された東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等の被害想定を念頭に置き、登録部隊の計画的な増強及び車両、航空機、資機材等各種の施設・設備の整備の推進を図るとともに、緊急消防援助隊の活動を機動的に行うために重要となる航空部隊についても、地上部隊との連携活動など、より安全かつ効果的な運用要領やその体制強化についての検討を行う必要がある。カ 特殊災害対応への備え NBC災害等特殊災害の場合においては、大規模自然災害の場合とは出動部隊、活動内容等も大きく異なってくることから、これらの事案の特殊性を踏まえた具体的な対応方策について、合同訓練等を通してその検証を進めていく必要がある。
第8節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県に都道府県防災会議、市町村に市町村防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、行政機関のほか、日本赤十字社等関係公共機関の参加を得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することをその目的としている。 すなわち中央防災会議においては我が国における防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 なお、石油コンビナート等災害防止法に基づく石油コンビナート等特別防災区域については、同法により、石油コンビナート等防災本部を設置するとともに、地域防災計画に代わるものとして、石油コンビナート等防災計画を作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、政府を挙げて防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大きな改正や、防災基本計画の修正が数次にわたり行われている。 災害対策基本法については、平成7年6月に、都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員及び自衛官による緊急通行車両の通行の措置の創設等を内容とする改正が行われたほか、同年12月には、緊急災害対策本部の設置要件の緩和等、国・地方公共団体を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 防災基本計画については、平成7年7月には、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められ、平成9年6月には、海上災害、原子力災害等の事故災害について、災害対策基本法に基づく非常災害対策本部の設置など、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るための修正が行われた。これにより、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策が編として追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られている。 この修正により、事故災害については、安全規制等を担当する省庁に非常災害対策本部等を置くこととされ、危険物に係る災害については、消防庁、通商産業省(現経済産業省)、厚生省(現厚生労働省)に、大規模な火事災害、林野火災については、消防庁に非常災害対策本部等を置くこととされた。 平成12年5月には、平成11年9月の茨城県東海村におけるウラン加工施設における臨界事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、防災基本計画原子力災害対策編の修正を行い、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程を加えるなど、原子力防災対策の充実・強化が図られた。 平成16年3月には東海地震に係る地震防災基本計画の修正、東南海・南海地震防災対策推進基本計画の策定等、近年の震災対策の進展を踏まえ、震災対策編を中心に修正が行われた。また、平成17年7月には、災害への備えを実践する国民運動の展開、地震防災戦略の策定、インド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等、最近の災害対策の進展を踏まえ、新たな対応体制を確立すべく修正が行われた。
(3)消防庁の防災体制 消防庁においては、防災の第一線の実戦部隊となる消防機関を所管する一方、地方公共団体から国への情報連絡の窓口となるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っている。 消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化を図っている。 こうした経過や災害対策基本法の改正、防災基本計画の修正等を踏まえ、平成8年5月には、自治省(現・総務省)及び消防庁の所掌する事務について、防災に関しとるべき措置と地域防災計画の作成の基準を定めた自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる(省庁再編に伴い、現在は消防庁防災業務計画)。 消防庁においては、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。今後とも、防災体制の一層の強化を図るとともに、地方公共団体の自然的、社会的条件等地域の実情に十分配慮し、助言等を行っていくこととしている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成15年8月には、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に消防防災・危機管理センターを整備し、平成16年には、同センターに設置される消防庁災害対策本部の体制を情報収集中心のものから、より機動的な災害応急対応中心のものへと見直したことに伴い、センター内の配置を会議中心のスタイルであるいわゆる「コの字」型のものから、実践的なオペレーション機能を重視する「アイランド型」へと変更した。 同時に災害対策本部の編成について災害種別によって課室別にその都度編成していたのを、災害対策本部の組織体制を原則として一本化した。加えて、平成17年度には大規模地震やNBCテロ災害等の様々な災害発生時において、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示や現地における的確な災害対応等を迅速かつ適切に実施するため消防庁職員等を被災地へ迅速に派遣し、併せて、現地調査、情報収集を行うために消防庁ヘリコプターを導入した。さらに、平成17年8月には、業務の専門性の確立、責任体制の明確化を一層図ることを目的に、大規模地震対策、消防防災の情報通信システム、消防応援・支援、緊急消防援助隊、原子力災害、救助、テロ対策、国民保護の企画・運用等の緊急対応や地方公共団体との連絡調整等の各業務を統括する「国民保護・防災部」を設置した。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体も増加しており、平成19年4月1日現在、都道府県地域防災計画においては、震災対策については47団体(すべての都道府県で作成済)、原子力災害対策については22団体、風水害対策については30団体、火山災害対策については16団体、林野火災対策については19団体、雪害対策については11団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、災害対策基本法において、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされており、阪神・淡路大震災を教訓に、多くの地方公共団体において見直しが進められている。 消防庁においても、平成7年2月には、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請した。また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、中央防災会議事務局次長(現、中央防災会議幹事会副会長、消防庁次長)名通知や地域防災計画担当部長会議の開催等により、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成19年4月1日までに、都道府県においては全団体が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了している。また、市町村においては、ほとんどの団体が見直しに着手しており、このうち1,506団体(82.4%)が見直しを完了している。 なお、平成18年度中には、都道府県では27団体が、市町村では548団体が、それぞれ災害対策基本法に基づく地域防災計画の修正を行っている。 また、平成9年6月には防災基本計画への事故災害対策の追加、平成12年5月には原子力災害対策編が修正されたこと、平成16年3月には東海地震、東南海・南海地震への対策として震災対策編を中心に修正が行われたこと、平成17年7月には災害への備えを実践する国民運動の展開、地震防災戦略の策定、インド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等についての自然災害対策各編の修正が行われたこと、平成18年3月には災害時要援護者の避難支援ガイドラインが改訂されたことを踏まえ、地域防災計画を見直し、所要の修正を行うことを要請した。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進ア 防災アセスメントと被害想定 防災アセスメントは、災害誘因(地震、台風、豪雨等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤、危険物施設の集中地域等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業である。また、被害想定は、こうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。イ 地区別防災カルテ 防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、自治会、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効である。 消防庁においては、平成8年度からは、アの普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成18年度に、地区別防災カルテの作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、54団体となっている。
(3)広域防災応援体制ア 広域防災応援体制の確立 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置、水防法に基づく水防管理者から水防管理者等に対する応援等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛大臣等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し、上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛大臣等に対して災害の状況等を通知することができる。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正、防衛庁防災業務計画の修正により都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。イ 広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関とあらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、災害現場における指揮体制等各般にわたる項目について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援については、阪神・淡路大震災以降、各都道府県で協定の締結への取組が進み、既存協定の見直しも含め、全国で合計26の協定が締結されている。この結果、阪神・淡路大震災以後、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされたことになり、また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月に、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を超えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に積極的に取り組む傾向にあり、平成19年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、1,550団体となっている。 これらの協定を円滑かつ効果的に機能させるため、消防庁では、応援に提供(派遣)可能な職員、備蓄物資、資機材等に関する情報、消防防災ヘリコプターの運航管理状況に関する情報等広域応援に資する情報をデータベース化し、全国の地方公共団体との間で情報を共有化する防災情報システムの構築を進めている。 また、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、応援を受け入れる体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に軽減するために重要であり、そのためには、日ごろから実戦的な対応力を身に付けておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では、「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上型訓練等により実戦的な訓練の実施を促進することとしている。 平成15年度に行われた「地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデル作成調査研究」に基づき、平成16年度から、図上型防災訓練マニュアル研究会を開催し、「地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデルの作成に関する調査研究報告書」を取りまとめて、毎年度地方公共団体に配布している。本年度においても、地震による各種被害等を想定した一連の効果的な図上訓練の実施方法を検討している。 また、平成19年度には、火山噴火、地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定能力の向上と応急体制の点検、住民と行政との信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、全国2ブロック(東日本、西日本)で「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催し、市町村長や都道府県・市町村の防災担当幹部、延べ67人の参加を得た。さらに、平成18年度から、消防庁及び財団法人消防科学総合センターから図上訓練支援チーム(専門家及び指導員で構成)を市町村に派遣し、図上訓練の企画立案から実施等に至る過程を助言支援することを通じ、市町村における実戦的な防災訓練(図上型訓練)の普及を促進する「市町村防災図上訓練推進モデル事業」を実施しており、平成18年度は全国で8市町、本年度は全国で12市町で開催することとしている。 一方、地方公共団体における防災訓練の状況をみると、平成18年度においては、都道府県で延べ347回の防災訓練を実施したほか、市町村においても延べ5,750回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震・津波に対応するものが最も多く、次いで、原子力、台風等風水害、コンビナート災害、林野火災となっており、市町村では地震・津波、風水害、大火災、林野火災、土砂災害となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実動)訓練が最も多い。住民向け災害図上訓練DIGの様子市町村職員向け図上シミュレーション訓練の様子
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 都道府県及び市町村の地方防災会議は、それぞれの地域において防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会、救急医療部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、専門部会の更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、こうした平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、すべての都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、都道府県地域防災計画の修正も踏まえて見直しを一層推進する必要がある。見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。これに必要な経費については、平成8年度から普通交付税により地方財政措置を講じている。 また、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、〔1〕被害想定、〔2〕職員の動員配備体制、〔3〕情報の収集・伝達体制、〔4〕応援体制、〔5〕被災者の収容、物資等の調達、〔6〕防災に配慮した地域づくりの推進、〔7〕消防団、自主防災組織の充実強化、〔8〕災害ボランティアの活動環境の整備、〔9〕災害時要援護者対策、〔10〕防災訓練など項目に留意する必要がある。 なお、地域防災計画をより実践的かつ具体的なものとするため、消防庁では平成17年7月から各都道府県の地域防災計画をデータベース化した「地域防災計画データベース」の運用を始め、都道府県地域防災計画の内容の比較・検証を通じて、より適切な計画へ見直しを行える環境を整備している。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容の充実したものとなり、防災に資する施設・設備についてもより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害が発生した場合に、これらが実際に機能するか、あるいは定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであるが、こうした災害にも、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのため、組織に関しては、危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要がある。平成19年4月1日現在、44都道府県において部次長職以上の防災・危機管理専門職が設けられているが、さらに充実の必要がある。 防災体制強化の根幹である人材育成については、首長等幹部職員の危機管理能力、防災担当職員の実践的対応力の向上、自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要である。消防庁としては、平成15年度より消防大学校において、首長等幹部職員を対象とした「トップマネジメントコース」を含む「危機管理セミナー」を実施するとともに、消防職団員やボランティア、広く住民を対象として、インターネットを活用した家庭や地域でいつでも体系的に学習できる「防災・危機管理e-カレッジ」を、平成18年3月から全面運用を開始している。 このほか、各地方公共団体においては、防災業務に精通した職員をはじめとした人員を夜間・休日においても24時間体制で配置するほか、災害時の職員の参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、地理情報システム(GIS)の防災業務への活用などICT(情報通信技術)の導入を進めていくこと、平常時から災害危険個所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。 また、近年の豪雨災害による被害を踏まえ、避難準備情報、避難勧告・指示を発出する際の客観的な基準の作成や、高齢者等災害時要援護者の避難誘導体制の整備等についても進めていく必要がある。そのため消防庁では、災害時における高齢者や障害者等災害時要援護者の避難について、モデル地域を選定し、市町村の福祉部局と連携した情報共有や実践的な訓練の実施等について、詳細な報告を受け、その報告を参考に避難支援プラン作成のノウハウを整理し、地方公共団体へ提供する「災害時要援護者の避難支援プラン策定モデル事業」を実施し、避難支援プランを作成するための手引きとして「災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて」を取りまとめた。
第9節 消防防災の情報化の推進1 被害状況等に係る情報の収集・伝達体制の確立 大規模災害時には、地方公共団体が把握した災害の規模や被害の概況を国が迅速かつ的確に把握し、緊急消防援助隊の出動その他の災害応急対策を迅速に講じることが重要である。消防庁では、地方公共団体と国との間の防災情報の収集・伝達の窓口として、地方公共団体から迅速かつ的確に情報を収集し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等の政府関係機関に伝達できるよう努めている。 災害時に防災情報の収集・伝達を円滑に行うためには、平素から体制を確立しておくことが極めて重要であることから、消防庁では、大規模災害時の都道府県及び市町村からの情報収集のために火災・災害等即報要領を定め、情報収集体制を確立するとともに、防災映像情報送受信統一訓練を定期的に実施し、地方公共団体における機器操作の習熟に努めている。なお、火災・災害等即報要領については、必要に応じて随時見直しを行っており、最近は、平成16年9月17日の国民保護法の施行に伴い、武力攻撃災害及び緊急対処事態を即報の対象として位置付け、これらの災害等(該当するおそれがある場合も含む。)が発生した場合を報告の対象として追加している(第2−9−1図)。第2-9-1図 火災・災害等即報の概要
2 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 被害状況等に係る情報の収集及び伝達を行うためには、通信ネットワークが必要である。通信ネットワークには、固定電話、携帯電話、インターネット等の様々なネットワークが存在しているが、災害時には、安否確認等により平常時の数十倍もの通信量が発生することから、輻そうを避けるため、公衆網においては通話規制が行われることが多い。また、災害時には、通信施設の被災や停電によりこれらの通信ネットワークの使用が困難となる場合もある。 このため、災害時においても通信を確実に確保し、情報の収集及び伝達を迅速かつ確実に行うべく、国、都道府県、市町村等においては、固定電話、携帯電話等の公衆網及び専用線等を使用するほか、災害に強く輻そうのおそれのない自営網である消防防災通信ネットワークの整備を行っているところである。 現在、消防庁、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、〔1〕消防庁と都道府県を結ぶ消防防災無線、〔2〕都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線、〔3〕市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線及び〔4〕国と地方公共団体及び地方公共団体間を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2−9−2図)。 消防庁では、防災基盤整備事業等を活用し、これらの消防防災通信ネットワークの整備促進及び充実強化を図っているところである。第2-9-2図 消防防災通信ネットワークの概要
(1)消防防災通信ネットワークの概要ア 消防防災無線 消防防災無線は、消防庁と全都道府県を結ぶ通信網である。電話及びファクシミリによる相互通信のほか、消防庁からの一斉伝達が可能であり、災害発生時には電話及びファクシミリによる災害報告や消防庁からの一斉伝達の手段として活用される通信網である。地上系は国土交通省のマイクロ回線設備との設備共用により全都道府県で整備・運営されている。また、衛星系は地域衛星通信ネットワークにより運用中である。イ 都道府県防災行政無線 都道府県防災行政無線は、地上系、衛星系又は両方式により、都道府県とその出先機関、市町村、消防本部、指定地方行政機関、指定地方公共機関等を結ぶことで相互の情報収集・伝達に使用される通信網であり、全都道府県において運用されている。機能は都道府県によって異なるが、一般的には、電話及びファクシミリによる相互通信のほか、都道府県庁からの一斉伝達が可能となっている。なお、地上系については車両に設置された車載無線機等の移動体との通信も可能となっている。ウ 市町村防災行政無線(同報系) 市町村防災行政無線(同報系)は、市町村と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機を結ぶ通信網であり、無線通信により地域住民に対し一斉に情報を迅速かつ確実に伝達することができるものである。災害時の一斉伝達、気象予警報、避難勧告、全国瞬時警報システム(J-ALERT)等の伝達に利用される。整備率は75.2%(平成19年3月末現在)となっている。防災行政無線(同報系屋外拡声装置)エ 市町村防災行政無線(移動系・地域防災系) 市町村防災行政無線は、市町村(災害対策本部)と市町村の車両、市町村内の防災関係機関(消防本部、警察等)、生活関連機関(病院、電気、ガス、通信事業者等)、自主防災組織等を結ぶ通信網である。災害対策本部においては、交通・通信の途絶した孤立地域や防災関係機関等からの情報収集・伝達、広報車との連絡等に利用される。整備率(整備している市町村の割合)は移動系85.2%、地域防災系12.6%(平成19年3月末現在)となっており、これらについては順次デジタル化(デジタル移動通信システム)への移行が進められている。オ 消防救急無線 消防救急無線は、消防本部(消防指令センター等)と消防署、消防・救急隊を結ぶ通信網である。消防本部から消防・救急隊への指令、消防・救急隊から消防本部への報告、災害現場における隊員への指令等に利用されており、消防活動の指揮命令を支え、消防活動の遂行に必要不可欠なものである。全国のすべての消防本部において運用されている。カ 地域衛星通信ネットワーク 地域衛星通信ネットワークは、衛星通信により、消防庁、都道府県、市町村及び防災関係機関を結ぶ全国的な通信網である。通常の音声通信のほか、一斉指令、データ通信、映像伝送等の機能を有し、消防防災無線のバックアップ及び都道府県防災行政無線(衛星系)として位置付けられているほか、ヘリコプターや高所監視カメラからの映像を消防庁、都道府県、消防本部等に伝送するために利用される。スーパーバード衛星を利用して、財団法人自治体衛星通信機構が運営しており、消防庁、都道府県、市町村、消防本部等に地球局が設置されているほか、車載局や可搬局も存在し、災害発生時の機動的な情報収集・伝達体制の確保が可能である。なお、平成19年度中には全都道府県に運用が拡大される予定となっている。キ 映像伝送システム 映像伝送システムは、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を消防本部(消防指令センター等)に伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに消防庁、都道府県及び他の市町村等へも伝送が可能である(第2−9−3図)。発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムである。第2-9-3図 映像伝送システムの概要ク 119番通報 住民と消防本部を結ぶネットワーク。固定電話(加入電話、IP電話等)・携帯電話等からの音声による緊急通報の他、発信位置特定機能があり、近年は各消防本部において発信位置特定機能の整備充実が進められている。 特に、平成19年4月1日より、携帯電話・IP電話等(IP電話、直収電話のうち050で電話番号が始まる電話サービスを除く)からの119番緊急通報に係る位置情報通知システムの運用を開始したところである。
(2)バックアップ機能の確保ア 通信設備の耐震対策の徹底等 平成16年10月に発生した新潟中越地震においては、都道府県防災行政無線が建物の倒壊や非常用電源の不備などにより一部地域で不通となる事態が生じたが、防災行政無線については、災害時においても確実に機能が確保されることが必要である。このため、消防庁では、・都道府県防災行政無線の非常用電源設備の整備・保守点検の実施と的確な操作の徹底・総合防災訓練時等における防災行政無線を使用した通信訓練の実施(非常電源による訓練を含む。)・防災行政無線設備の耐震性のある堅固な場所への設置等を都道府県及び市町村に対して要請しているところである。 なお、消防庁を含む国の機関、都道府県、市町村、電気通信事業者、電力会社等で構成される非常通信協議会において、無線設備の停電・耐震対策のための指針が取りまとめられており、地方公共団体においては、無線設備の停電対策、非常用電源設備、管理運用対策、耐震対策等について、これに準じて、自ら点検を徹底することが必要である。イ バックアップ機能の確保 消防防災通信ネットワークであっても、大地震等により通信施設が使用不能となり、国と地方公共団体間の被害情報等の通信が困難となる場合が生じるおそれがある。 このため、消防庁では、バックアップ施設として消防大学校(東京都調布市)に衛星通信施設を整備しているほか、機動性のある衛星車載局車や可搬型衛星地球局装置を整備しているところである。また、非常通信協議会では、公衆網並びに消防庁及び地方公共団体の消防防災通信ネットワークが不通となった場合に備え、電力会社等の防災関係機関が管理している自営通信網を活用して、被害情報等を都道府県から国に伝達する中央通信ルートを策定しているほか、市町村から都道府県に伝達する地方ルートの策定も進められているところである。さらに、非常通信訓練を定期的に実施し、非常の場合の通信の円滑な実施の確保に努めているところである。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 消防庁では、震度情報や緊急消防援助隊派遣時などの広域応援に対応するための情報などについて、防災情報のデータベース化と国・地方公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集・伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始しており、本システムで収集された震度データは、緊急消防援助隊の派遣等、広域応援活動に活用するとともに、気象庁にも提供され震度情報として発表されている。 近年、システム機器の老朽化等により震度情報の送信が遅延するなどの問題が生じているため、消防庁では次世代震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、平成18年3月に報告書を取りまとめ、同報告書を踏まえたシステムの更新について、防災基盤整備事業等の活用による促進を図っているところである。
(2)災害対応支援システムの導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断の下に的確な応急活動を遂行する必要があり、そのためには、災害発生時にはシミュレーションにより被害を推測することができ、かつ、平時には円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入することが有効であることから、消防庁では、地震被害予測システム等の災害対応支援システムの開発、普及に努めている。 中でも、消防研究センターにおいて開発された「簡易型地震被害想定システム」(第2−9−4図)は、簡単な操作で即座に地震による被害を推計することが可能であり、的確な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つことから、全都道府県等に配布しその活用を図るとともに、消防庁の消防防災・危機管理センターにおいても被害予測に同システムを活用している。第2-9-4図 簡易型地震被害想定システムの画面表示例
(3)緊急支援情報システムの開発と活用 大規模災害時に緊急消防援助隊が活動する場合の情報連絡は、電話やファクシミリにより行われてきたが、広域応援に出動した緊急消防援助隊が必要とする災害情報の収集・管理・提供をより迅速・的確に行うため、消防庁では、次の2つのサブシステムから構成される緊急支援情報システムを整備している(第2−9−5図)。第2-9-5図 緊急支援情報システム概要図ア 広域応援支援システム 緊急消防援助隊の編成、出動等を支援するため、消防広域応援時に必要な被災状況、被災地域の水利等の情報を電子地図上に表示し、関係する消防本部等で情報を共有するシステム。イ 緊急消防援助隊動態情報システム 緊急消防援助隊の派遣車両の位置をGPSにより特定し、この情報を派遣車両において把握するとともに、消防庁、関係消防本部等で共有することができるシステム。
(4)各種統計報告オンライン処理システム 行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度からVPN(Virtual Private Network:仮想専用線)を活用した、以下に掲げる各種統計報告のオンライン処理を可能とするシステムの開発を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。・火災報告等オンライン処理システム・防火対象物実態調査等オンライン処理システム・ウツタイン様式調査オンライン処理システム・危険物規制事務調査及び危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告オンライン処理システム・救急救助調査オンライン処理システム・石油コンビナート等実態調査オンライン処理システム 消防庁では、これらのデータを迅速的確に収集・整理することにより、各都道府県及び各消防本部への速やかな情報提供、各種施策への反映を支援している。 なお、平成20年度からは消防防災・震災対策等現況調査をオンライン処理システム上で運用する予定であり、また、それを機に、消防庁サーバと各県・消防本部等の端末パソコンとの接続をSSL(Secure Sockets Layer:WEBブラウザとWEBサーバ間で情報を暗号化して通信する方式。)化することとしている。
4 情報化の今後の展開(1)消防防災通信ネットワークの充実強化 消防庁では、ICT(情報通信技術)を積極的に活用することにより消防防災力の一層の強化を図っており、次の事項に重点をおいて消防防災通信ネットワークの充実強化を推進することにより、地方公共団体と一体となって国民の安心と安全をより一層確かなものとすることとしている。ア 消防救急無線のデジタル化の推進 消防救急無線は、従来、アナログ方式により整備・運用されてきたが、文字等のデータ通信や秘話性の向上による利用高度化及び電波の有効活用を図る観点から、平成28年5月末までにデジタル方式に移行することとされている。 そこで、消防の広域化と歩調を合わせ、消防救急無線のデジタル化が円滑に行われるよう、消防庁では消防機関の協力を得つつ、無線機の価格の低廉化や実運用に即した全国共通の消防救急デジタル無線の仕様を検討しているところである。イ 市町村防災行政無線(同報系)の整備促進 豪雨や津波等の災害時においては、一刻も早く住民に警報等の防災情報を伝達し警戒を呼び掛けることが、住民の安全を守る上で極めて重要となる。市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に情報を迅速かつ確実に伝達することができるものであり、その整備は重要である。また、国民保護法の制定を受け、市町村防災行政無線(同報系)は、災害対策のみならず国民保護の観点からも非常に重要なものとなっているが、その整備率は75.2%(平成19年3月末現在)にとどまっていることから、早急に整備率の向上を図る必要がある(囲み記事「一刻も早い住民への防災情報伝達について」参照)。 なお、災害時等における住民への情報伝達の方法については、他にMCA陸上移動通信システム(Multi Channel Access System)や市町村デジタル移動通信システムを利用した方式があり、市町村が市町村防災行政無線(同報系)に代替する設備としてこれらのシステムを利用した整備を行う場合には、市町村防災行政無線と同様の財政支援措置を受けられるものとなっている。ウ ヘリコプターテレビ電送システムの整備促進 災害現場の映像情報は、被害規模及び概要を的確に把握し災害応急対策等を立案する際に非常に有効である。このため、消防庁や一部の都道府県及び消防機関においては、被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を整備しているところである。 最近では、平成19年3月の能登半島沖を震源とする地震、同年7月の新潟県中越沖を震源とする地震などにおいて、現地の被災状況を消防防災ヘリコプターに搭載する映像伝送システム(ヘリコプターテレビ電送システム)を用いて消防本部や消防庁へ伝達することにより、迅速な被災地情報の収集が行われたところである。 しかしながら、ヘリコプターテレビ電送システムは、導入団体が増加しているものの、その映像受信範囲は全国をカバーするには至っていない状況にある(第2−9−6図)。第2-9-6図 ヘリコプターテレビ電送システム受信エリア及び関連機材 こうした状況を踏まえ、消防庁においては、平成17年度に開催された「初動時における被災地情報収集のあり方に関する検討会」の提言を受け、ヘリコプターから衛星に直接電波を送信する方法により、地上受信局に伝送できない地域でも被災地情報をリアルタイムで伝送するシステムの実用化に向け取り組んでいる(囲み記事「ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて」参照)。エ 緊急災害現地対策本部における通信設備の整備 東海地震、東南海・南海地震又は首都直下地震が発生した場合には、被災地における災害応急対策の調整や被災情報の取りまとめを迅速かつ的確に実施するため、現地の都道府県庁等に政府の緊急災害現地対策本部が設置される。当該本部において、各種情報の収集、伝達等を的確に実施するためには、通信網の充実が不可欠であることから、当該本部と消防庁及び関係地方公共団体との間で情報収集・伝達を行うための通信網の整備を行う必要がある。 このため、消防庁では、平成17年度に東海地震発生時に政府の現地対策本部が設置される静岡県庁に地域衛星通信ネットワークを活用した通信設備を整備したところであり、引き続き、他の政府現地対策本部設置予定地についても整備を進めていくこととしている。オ 防災行政無線のデジタル化 近年、携帯電話、テレビ放送等様々な無線通信・放送分野においてデジタル化が進展し、データ伝送等による利用高度化が図られてきているところである。消防防災分野における防災行政無線についても、これまではアナログ通信方式による音声及びファクシミリ主体の運用が行われてきているが、今後は情報通信技術を積極的に活用し、安心・安全な社会を実現するために文字情報や静止画像が伝達可能なデジタル方式に移行することで、高度化・高機能化を図ることが必要となってきている(第2−9−7図)。第2-9-7図 デジタル化の概要 また、都道府県防災行政無線における60MHz帯周波数の使用期限が平成19年11月末まで、地域衛星通信ネットワークにおけるアナログ映像伝送の期限が平成20年3月末までとされていることから、今後のデジタル化に適切に対応していく必要がある。
一刻も早い住民への防災情報伝達について 豪雨や津波等の災害時においては、状況に応じ適切な避難勧告等を一刻も早く住民に伝達することが、住民の迅速な避難を実現し、被害を最小化する観点から極めて重要です。 住民への防災情報伝達手段としては、広報車による巡回等による方法もありますが、この場合、市町村管内の巡回に時間を要することから、速やかな情報伝達が困難です。他方、市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に、災害時において情報を迅速かつ確実に伝達することができます。これまでも、豪雨等の発生の際に防災行政無線(同報系)が未整備であった市町村において、住民に対する情報伝達が遅れる等の問題が生じてきたところであり、その整備は非常に重要なものとなっています。 現在、その整備率は、全国で75.2%(平成19年3月末現在)となっているところですが、地域によって大きな差があり、静岡県、鳥取県のようにすべての市町村で整備している都道府県もあれば、整備済みの市町村が30%程度にとどまる都道府県もあります。 また、消防庁では、国民保護法の施行を背景として、全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備を推進しています。これは、地震や津波、弾道ミサイル攻撃等、対処に時間的余裕がない事態が発生した場合に、消防庁から人工衛星を用いて情報を送信し、防災行政無線(同報系)を自動起動することにより、住民に緊急情報を瞬時に伝達するもので、防災行政無線(同報系)は、災害対応のみならず、国民保護の観点からも重要な役割を担うものとなっています。 このため、未整備市町村においては、MCA陸上移動通信システムや市町村デジタル移動通信システムによる代替設備も視野に入れ、早急に住民への防災情報伝達体制の整備を図ることが求められています。防災行政無線(同報系)の概要防災行政無線(同報系)の整備状況
ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて 災害発生時に広範な被害状況を迅速に把握するためには、ヘリコプターによる上空からの映像を活用した情報収集が大変有効です。現在実用化されているシステムは、ヘリコプターから撮影した映像について、一旦地上の受信装置で受信し、これを経由して通信衛星に向けて伝送、さらにこれを地上で受信する仕組みになっています。 このため、リアルタイムで映像を見るためには、受信装置をヘリコプターからの無線が受信可能な範囲内に設置することが不可欠ですが、固定して設置される受信装置については現在のところ全国を網羅する形で設置されていないため、これらカバーされていない地域においては中継車や可搬型受信装置を持ち込む必要があります。さらに平成19年3月に発生した能登半島地震の時のように、大規模災害により陸路が寸断されると、中継車や可搬型受信装置を持ち込めず、リアルタイムでは映像が見られません。 それを解消するための技術が、平成16年度に開発されたヘリコプター衛星通信(ヘリサット)システムです。このシステムは、ヘリコプターの上部で回転するブレードの隙間を狙って直接静止衛星への送信が可能なことと、小型省電力での大容量通信が可能なことが特徴です。 また、既存のヘリテレシステムよりも優れている点として、・ヘリコプターと衛星とが直接通信することにより、地上受信局の有無にかかわらず映像情報を送信できること・音声を双方向通信できることから、地球局からヘリコプターへ撮影箇所の指示等ができること・地上受信局の整備が不要となることにより、管轄区域が広範囲であればあるほどコストパフォーマンスに優れることが挙げられます。 消防庁ではこのほかにも、夜間における情報収集の方策に関することも合わせて、総合的な観点からより効果的なヘリコプターによる被災地情報収集の在り方について検討して参ります。
(2)マルチメディアの活用ア 防災情報システムの充実 現在、消防庁で運用している防災情報システムの端末を全国の都道府県、消防本部に整備促進し、当該システムのデータベースの充実を図っていくことが必要である。 また、消防庁内においては、消防防災業務の業務・システム最適化計画を踏まえつつ、画像処理技術や高度な通信技術を活用した災害現場からの情報収集伝達システムについての検討を進めていく必要がある。イ 災害対応支援システムの充実 災害の発生時においては、様々な事態に対応して的確な応急対策を一刻も早く実施していく必要があることから、高度な情報通信技術を活用して、災害応急対策の強化を支援するシステムの新たな開発及びこれらのシステムの高度化を推進する必要がある。
(3)情報基盤の整備 消防防災分野におけるICT(情報通信技術)化推進のための共通基盤としてパソコンの整備及びこれらを結ぶLANの構築は重要であるが、特に消防本部においてこれらの基盤整備が不可欠である。 そこで、電子自治体時代にふさわしい住民サービスを提供していくためには、消防本部においても情報基盤の整備を早急に進める必要がある。 このため消防庁では平成13年度からパソコンの一人一台体制の整備に必要な経費を地方交付税措置として基準財政需要額に算入する財政支援を行っている。
(4)消防防災業務の業務・システムの最適化 消防庁では、自治体消防を支える組織として、消防制度、基準の企画・立案、都道府県・市町村への消防に関する助言・指導等を所管事務として担ってきたところであるが、近年は、発生が懸念される大地震や大規模・特殊災害における緊急対応の必要性など、全国的な視点での総合的な消防防災体制の確立が新たに重要な課題となっている。最近では、大規模災害発生時の緊急消防援助隊のオペレーションや武力攻撃・大規模テロなどの緊急事態に対応するための計画の策定、情報収集なども新たな業務として担っており、これらの消防防災業務を効率的・効果的に遂行するため、現在、多くのシステムを整備・運用しているところであるが、阪神・淡路大震災をはじめ、その後も発生した各種災害ごとにきめ細かく対応してきた結果、システムの多様化、機能の重複等が課題となっている。 一方、情報システムの構築に関しては、電子政府構築計画(2003年7月17日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)に基づき、業務・システムの最適化を実施することが求められており、そのため、情報システムのセキュリティや個人情報保護に留意しつつ、その時点で利用可能なICT(情報通信技術)を最大限に活用することにより、情報システムの簡素化、効率化、合理化、高度化及び透明性の向上を図ることを目的に、消防防災業務の業務・システムの最適化に取り組んでいる(囲み記事「消防防災業務の業務・システムの最適化について」参照)。
消防防災業務の業務・システムの最適化について 消防庁では、国民の生命、身体及び財産を災害から守るという責務を担っています。その業務は、火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等の自然災害及び事故、テロ災害等への対応まで広範囲にわたっています。さらに、近年においては、国民の安心・安全意識の高まりを受け、より一層迅速・的確な災害への対応、災害による被害の軽減が強く求められており、その手段である消防防災業務の業務・システムについては、効果的・効率的にその役割が果たされなければなりません。 このため、消防庁では所掌する消防防災業務を「災害発生時等の消防庁におけるオペレーション業務」、「防災に関する国民等への啓発業務及び情報提供業務」、「武力攻撃事態等に際しての国民への情報伝達業務」、「火災予防・危険物災害等の統計及び地方公共団体等との情報共有業務」及び「消防庁の内部管理事務」の5業務に分類し、これらの全業務及び全システムを対象とした横断的な見直しを行い最適化を図ることとしています。 なお、消防防災業務の業務・システムの最適化に当たっては、電子政府構築計画(2003年7月17日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)に従い、予算効率の高い簡素かつ透明な業務・システムを構築することを基本理念とし、平成18年度に「業務・システム最適化指針(ガイドライン)」(平成18年3月31日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)の趣旨を踏まえ、消防庁情報通信システム委員会において検討が行われ、平成19年度に「消防庁消防防災業務の業務・システムの選定」(平成19年4月24日総務省行政情報化推進委員会決定)、「消防庁消防防災業務・システムの見直し方針」(平成19年8月22日総務省行政情報化推進委員会決定)が定められました。 今後は、これらの方針等に基づき、消防防災業務の業務・システムの最適化について、具体的な計画を策定し、必要に応じて最適化計画を見直すこととしています。最適化スケジュール(予定)
(5)消防防災分野における申請・届出手続の電子化の取組 申請・届出等手続の電子化の取組については、平成11年に策定された「経済新生対策(平成11年11月11日経済対策閣僚会議)」及び「ミレニアム・プロジェクトについて(平成11年12月19日内閣総理大臣決定)」において、政府は、2003年度(平成15年度)までに、民間から政府、政府から民間への行政手続をインターネットを通じてぺーパーレスで行うことのできる電子政府の基盤を構築することとされている。 これらを踏まえ、「申請・届出等手続の電子化推進のための基本的枠組みについて(平成12年3月31日行政情報システム各省庁連絡会議了承)」において、国民等と行政との間で、これまで書面を用いてやりとりしてきた申請・届出等手続について、原則として、平成15年度までに書面による手続に加え、インターネット等を利用した手続のオンライン化を図るよう努めることとされた。それを踏まえ、総務省では「総務省申請・届出等手続の電子化アクション・プラン」(平成14年7月25日総務省行政情報化推進委員会了承)が策定された。 これを受けて、消防庁では「総務省関係法令に係る地方公共団体関係手続のオンライン化実施要領」(平成15年3月31日)において、地方公共団体に対する申請・届出等の手続をオンライン化するための事務処理手順、システムの使用等の実施方策を提示したところである。 消防防災分野における申請・届出等の手続のうち、国の機関に対して行うものとしては、検定対象機械器具等の型式承認の申請、製造所等(移送取扱所)の設置許可申請等があり、すべてオンライン化を完了しており、今後、利用の促進に努めることとしている。また、地方公共団体に対して行う手続(消防用設備等届出、危険物製造所設置許可申請等)については、平成14年度にオンラインシステムの開発を行い、汎用受付システムとの連携を図るための調整を行った上で、モデル消防機関において実証実験等を行った。平成15年度には国と地方公共団体とのネットワーク、地方公共団体の組織認証システムなどの整備の進展状況を勘案しつつ、オンライン化のために必要な措置を図ったところであり、今後も引き続き国と地方公共団体とのオンライン化を推進し、行政事務の効率化等に努めることとしている。
第3章 国民保護への取組1 国民保護法の目的等(1)国民保護法制定の経緯 平成15年6月に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」が成立・施行され、平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)」が成立し、関係政令とともに9月17日に施行された。 これにより、武力攻撃事態等や大規模テロ等の緊急対処事態に対処するための態勢が整えられた。 国民保護法の目的は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするため、国、地方公共団体、指定公共機関等の責務をはじめ、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置等について定めることにより、国全体として万全の態勢を整備することである。
(2)国民保護法に係る地方公共団体の役割 国民保護法に基づき、地方公共団体は、警報の伝達や避難の指示、救援の実施等の国民の保護に関する措置(以下「国民保護措置」という。)の多くを実施する責務を有するなど、大きな役割を担うこととされている。また、平時においても、いざというときに迅速に国民保護措置が実施できるよう、国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)の作成や必要な組織の整備、訓練の実施などが求められている。 また、消防も、市町村長の指揮の下に避難住民を誘導し、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護し、武力攻撃災害を防除及び軽減することが規定されるなど、重要な責務を負うこととされている(第3−1図)。第3-1図 国民の保護に関する措置の仕組み
(3)国民保護に係る消防庁の役割 消防組織法及び国民保護法に基づき、消防庁(総務大臣・消防庁長官)は、武力攻撃事態等において、国、地方公共団体が相互に連携する上で大きな役割を担うこととされている。【主な役割】〔1〕 内閣総理大臣が行った国民保護対策本部を設置すべき市町村及び都道府県の指定等を、都道府県知事及び市町村長に通知〔2〕 対策本部長(内閣総理大臣)による警報の発令の通知及び避難措置の指示の内容の都道府県知事への通知〔3〕 県境を越える避難に際し、必要と認める場合には、関係都道府県知事に勧告〔4〕 都道府県知事から報告を受けた安否情報について、照会に応じ情報提供〔5〕 武力攻撃災害を防除するための消防に関する措置及び消防の応援等に関し、都道府県知事又は市町村長へ指示〔6〕 被災情報を自ら収集し、又は都道府県知事等から報告を受け、対策本部長に報告〔7〕 都道府県知事からの求めに応じ、国や他の地方公共団体の職員の派遣について、あっせんを実施〔8〕 国民保護法に基づく地方公共団体の事務に関し、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡調整 このほか、消防庁では、国民保護法において国・政府・指定行政機関(各省庁)の役割として規定されている事項(国民に対する情報の提供、救援の支援、国民保護の重要性の啓発、訓練の実施等)について、「国民の保護に関する基本指針」、「消防庁国民保護計画」等に基づき対策を実施する。
2 国民の保護に関する基本指針・計画の作成(1)基本指針と指定行政機関等の計画 国民保護法に基づく国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)は、平成17年3月25日に閣議決定された。【基本指針の構成】〔1〕 基本的人権の尊重や指定公共機関の自主性の尊重など、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針〔2〕 着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の4つを想定される武力攻撃事態の類型とし、それぞれの特徴及び留意点を示した武力攻撃事態の想定に関する事項〔3〕 国民保護措置を的確かつ迅速に実施するための体制の整備に関すること〔4〕 住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処に関する措置、国民生活の安定、武力攻撃災害の復旧等についての国、地方公共団体等のとるべき措置〔5〕 武力攻撃に準ずる大規模テロ等の事態(緊急対処事態)における国民保護措置に準じた措置の実施〔6〕 国民の保護に関する計画等を作成する際の関係者からの意見聴取 指定行政機関(各省庁)の長、都道府県知事及び指定公共機関は、基本指針に基づき、国民保護計画又は国民の保護に関する業務計画(以下「国民保護業務計画」という。)を作成することとされている。指定行政機関及び都道府県の国民保護計画については、平成17年度中にすべての団体の計画が閣議で了承され、指定公共機関の国民保護業務計画についても、平成18年5月までに全指定公共機関で作成された。 市町村長及び指定地方公共機関は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画又は国民保護業務計画を作成することとされており、平成18年度中に大部分の団体が計画を作成したところである(第3−2図)。第3-2図 国民の保護に関する基本指針・計画の作成状況
(2)消防庁国民保護計画 消防庁は、指定行政機関の一つとして、基本指針に基づいて、その所掌事務に関する国民保護計画を作成することとされている。消防庁の国民保護計画では、消防庁が実施する国民保護措置の内容、実施方法、体制、関係機関との連携方法等を定めている。 消防庁の国民保護計画は、平成17年10月28日に他の省庁の国民保護計画とともに閣議で了承された。【消防庁国民保護計画の特徴】〔1〕 テロやゲリラの侵攻などの突発的な事案においては、全職員体制の消防庁緊急事態連絡室を設置し、地方公共団体との連携や情報交換のための初動体制を整備すること。〔2〕 弾道ミサイル攻撃のように対処に時間的余裕がない事態に関する緊急情報の伝達については、全国瞬時警報システム(J-ALERT)等により、地方公共団体や住民に瞬時に情報を伝達すること。〔3〕 自然災害の場合等において他県の消防部隊が応援に駆けつける緊急消防援助隊の仕組みを、武力攻撃やテロの場合においても活用するため、部隊の増強や資機材の整備を図ること。  特に、NBC災害に対応するためには、対応能力を持つ緊急消防援助隊による応援が重要なため、当該拠点となる消防本部の充実を図ること。〔4〕 住民の避難誘導において重要な役割を果たす消防団や自主防災組織の充実を図るため、啓発の充実や設備の整備等を支援すること。〔5〕 住民の避難誘導や被災者の救助に当たっては、平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故のように事業所の協力が必要となることから、被災時における事業所と地方公共団体との連携を支援すること。
3 地方公共団体における国民保護計画の作成(1)都道府県国民保護計画 都道府県の国民保護計画では、基本指針に基づき、当該都道府県の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該都道府県が行う国民保護措置に関する事項やその実施体制、市町村の国民保護計画及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の作成の基準となるべき事項等を定めることとされている。また、都道府県が国民保護計画を作成する際には、基本指針や指定行政機関及び他の都道府県の国民保護計画と整合性等を確保する観点から、内閣総理大臣に協議しなければならないこととされている。 多くの都道府県においては、平成16年12月議会及び平成17年2月(3月)議会で国民保護協議会に関する条例を制定し、基本指針の閣議決定を受けて国民保護計画の検討を本格化させた。平成16年から独自の計画案を作成して公表していた福井県及び鳥取県については、基本指針に基づいた所要の修正を行うとともに国に協議を行った結果、平成17年7月22日にその国民保護計画が閣議で了承された。その後、他の都道府県でも鋭意検討が進められ、平成17年度末までにすべての都道府県において国民保護計画が作成された。
(2)市町村国民保護計画 市町村の国民保護計画では、都道府県の国民保護計画に基づき、当該市町村の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該市町村が行う国民保護措置に関する事項や実施体制等を定めることとされている。また、市町村が国民保護計画を作成する際には、都道府県や他の市町村の国民保護計画との整合性等を確保する観点から、都道府県知事に協議しなければならないこととされている。 市町村における国民保護計画は、平成17年度に作成された都道府県の国民保護計画に基づいて作成することになるため、平成18年度を目途に作成することとされた。 市町村は、武力攻撃事態等においては、警報や避難の指示の住民への伝達、避難住民の誘導、安否情報の収集・提供など直接住民と接する非常に重要な役割を担うこととされている。このため、夜間・休日等を問わずに通知される警報等に的確に対応できるような24時間の即応体制を構築しておくことが求められる。また、避難住民の適切な誘導のため、日ごろから消防団や自主防災組織、警察等との連携・協力関係を構築しておくことが非常に重要である。 多くの市町村においては、平成18年2月(3月)議会及び6月議会で国民保護協議会に関する条例を制定し、都道府県の国民保護計画の作成完了を受けて国民保護計画の検討を本格化させた。平成18年3月に鳥取県三朝町において、市町村で初めて国民保護計画が作成されたのをはじめ、他の市町村においても鋭意検討が進められ、平成19年7月1日現在、96.0%の市町村において国民保護計画が作成されている。 消防庁では、地方公共団体の国民保護計画の作成に当たり、「都道府県国民保護モデル計画」(平成17年3月)及び「市町村国民保護モデル計画」(平成18年1月)を作成し、各地方公共団体に対して技術的助言を行った。
4 国民保護計画実施に関する活動(1)各種マニュアルの整備 国民保護計画を作成した地方公共団体は、計画に基づき、組織体制、関係機関との連携、各種国民保護措置の方法等について、平素から検討・準備を行うこととなる。検討結果は、各団体の実情に応じて、マニュアル等の形で整理しておくことが望まれる。 特に、市町村長は、避難の指示があったときは、国民保護計画に基づき、避難実施要領を作成し、避難住民の誘導を行うこととされており、武力攻撃事態等において迅速に避難実施要領を作成するためには、平素よりあらかじめ複数の避難実施要領のパターンを準備しておく必要がある。消防庁では、各市町村のパターンの作成を支援するため、平成18年1月に、市町村国民保護モデル計画と併せて「避難実施要領のパターン作成に当たって(避難マニュアル)」を作成し、各地方公共団体に通知した。 また、消防庁では、地方公共団体における国民保護体制の整備を支援するため、「地方公共団体の危機管理に関する懇談会」における有識者からの意見を踏まえ、内閣官房等とも連携し、助言等を行っている(第3−1表)。第3-1表 国民保護に関して地方公共団体に対して発出された主な通知
(2)訓練 国民保護法では、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれの国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、それぞれ又は他の指定行政機関の長等と共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならないとされている。 特に、国民保護計画等を実効性のあるものとするには平素から様々な事態を想定した実践的な訓練を行い、国民保護措置に関する対処能力の向上や関係機関との連携強化を図ることが重要である。 平成19年度、消防庁では、関係省庁や地方公共団体と共同で実施する訓練(囲み記事「平成19年度における国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練について」参照)のほか、消防庁単独で消防庁国民保護図上訓練を実施した。この訓練では、〔1〕国民保護法等に基づく通知等の事務、〔2〕政府の緊急対処事態対策本部との連携要領、〔3〕消防の応援等に関する消防庁長官の指示の3点を主要訓練項目として、消防庁における対処について検証を行ったところである。 また、地方公共団体においては、平成17年度に全都道府県で国民保護計画が作成され、平成18年度末までには大部分の市町村においても国民保護計画が作成されたことから、平成19年度は、作成した国民保護計画の実効性についての検証等のため、平成18年度よりも更に多くの地方公共団体が訓練を実施しているところである(第3−2表)。第3-2表 平成19年度国民保護訓練 地方公共団体において訓練を行う際には、消防機関、警察機関、自衛隊等の関係機関と連携し、実践的な訓練にすることが求められる。また、防災訓練と有機的な連携を図り、武力攻撃災害や緊急対処事態における災害だけではなく、自然災害や事故災害を含めた様々な災害に対処できる能力を総合的に高めていくことが必要である。
平成19年度における国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練について 平成19年度に国と地方公共団体が共同で実施する訓練は、実動訓練5件、図上訓練11件が実施又は実施予定となっています(平成18年度実績:実動訓練3件、図上訓練8件)。(1)実動訓練 平成19年度の国と地方公共団体が共同で行う実動訓練は、島根県(11月)、愛媛県(11月)、千葉県(11月)、茨城県(11月)、静岡県(2月)の5県において実施又は実施予定となっています。 これらの訓練は、原子力発電所に対するテロ、大規模集客施設における化学テロ、鉄道駅等における爆破テロ及び港湾における化学テロの発生を想定し、国の現地対策本部や県の対策本部等の設置、それら相互の連絡調整、住民の避難誘導、医療等の救援、さらには災害対処に関する措置など、国民保護のための一連の措置についての訓練となっています。実動訓練(島根県)(2)図上訓練 平成19年度の国と地方公共団体が共同で行う図上訓練は、山口県(10月)、京都府(10月)、宮城県(11月)、長野県(1月)、和歌山県(1月)、広島県(1月)、鹿児島県(2月)、熊本県(2月)、兵庫県(2月)、愛知県(2月)、岐阜県(2月)の11府県で実施又は実施予定となっています。 これらの訓練では、国、地方公共団体の対策本部の運営、それら相互の連絡調整、警報の通知、避難の指示等、国民保護措置に係る状況判断及び情報伝達要領について、シナリオを事前に示さない、いわゆるブラインド方式の訓練が行われています。図上訓練(京都府) なお、これらの国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練については、国民保護法で定めるところにより、その費用は原則として国が負担することになっています。 また、平成19年度から、共同訓練の一環として、全国を6ブロックに分け、都道府県の国民保護担当者を対象にセミナーを開催することとしています。 このセミナーは、共同訓練から得られた成果を他の都道府県と広く共有することで、地方公共団体が実施する国民保護措置及び訓練手法の理解の促進を図ることを狙いとしています。
5 国民保護体制の充実(1)地方公共団体における体制整備の推進 都道府県知事及び市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、それぞれの区域に係る国民保護措置を的確かつ迅速に実施するために必要な組織を整備しなければならないこととされている。とりわけ、24時間即応可能な体制の整備が求められている。 阪神・淡路大震災後、地方公共団体においては、危機管理体制の充実が図られてきており、平成19年4月1日現在、部次長級以上の防災・危機管理専門職を設けている都道府県は44団体となっている。 市町村においても、特に初動時の連絡体制等について、消防機関との連携強化等により充実を図ることが必要である。その際は、国民保護のみならず、防災も含めた危機管理全般の初動体制にどのように対処するかという視点が重要である。また、国民保護を中心とした危機管理体制は、全部局の総合調整が重要であり、消防機関や防災部局に任せきりとならないよう留意することも大切である。 消防庁では、これら地方公共団体の体制強化を支援するため、平成19年度においては、標準団体ベースで、都道府県で5人分、市町村で3人分の国民保護対策関係職員の人件費を交付税算定上、基準財政需要額に計上しているところである。
「地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会」について 相次ぐ地震等の自然災害やインフラ事故、新たな感染症の危険、国際的なテロやミサイル発射等の国民保護関連事案など、今日の地方公共団体は多種多様な危機に直面する危険を常に抱えています。 このような中、地方公共団体は幅広い分野で的確な危機管理を行うことが求められており、総合的な危機管理体制をより一層充実強化することが喫緊の課題となっています。 このため、消防庁では、地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備について、具体的かつ専門的に調査・検討を行うことを目的として、平成18年9月から「地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会」を開催しています。 検討会では、平成18年度に、地方公共団体における総合的な危機管理体制の充実強化のための取組状況等について調査・分析を行いました。 平成19年度は、平成18年度の検討を踏まえ、地方公共団体(特に都道府県)における〔1〕危機管理組織のあり方、〔2〕危機管理事案への対応のあり方、〔3〕平素から取り組むべき事項、〔4〕人材育成のあり方等について方策を検討し、その結果を「危機管理指針充実のための視点」及び「危機管理指針参考モデル」(ともに仮称)としてまとめ、地方公共団体に助言を行うこととしています。「地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会」検討フロー
(2)情報伝達システム 武力攻撃事態等においては、住民の避難を的確かつ迅速に行うために、弾道ミサイル攻撃等の武力攻撃事態等に関する情報を速やかに住民等に伝達することが大変重要である。また、緊急地震速報や津波情報等の自然災害に関する情報についても、できる限り迅速な伝達が強く求められており、そのための瞬時の情報伝達のシステム構築が喫緊の課題となっている。 このため、消防庁では、地域衛星通信ネットワークを通じて、直接、市区町村の同報系防災行政無線等を起動させることにより、緊急地震速報、津波警報、気象警報などの防災情報や弾道ミサイル攻撃に関する情報等を人手を介さず、瞬時かつ自動的に住民に伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備に向け、取り組んでいる(第3−3図、トピックスIII「国民保護体制充実のためのシステム整備」参照)。第3-3図 全国瞬時警報システム(J-ALERT) 平成17年度においては、全国31の団体(15都道県16市区町村)の協力を得てJ-ALERTの実証実験を行い、機器・システムの標準仕様を決定した。平成18年度においては、受信装置のソフトウェアの改修等を行い、平成19年2月9日から情報の送信を開始したところであり、平成19年10月1日現在、18都道県10市区町において情報の受信及び同報系防災行政無線の自動起動を行っている。 また、平成19年度においては、気象庁による一般国民向けの緊急地震速報の提供が開始されたことから、当該情報の送信も開始している。 平成19年3月の能登半島地震、同年7月の新潟県中越沖地震等が発生するなど、地震等の自然災害が頻発しており、また、依然として弾道ミサイルの脅威は存在していることから、市区町村においては、なるべく早期にJ-ALERTの関連設備の整備に取り組むことが望まれる。 消防庁としても、受信装置を構成する衛星モデムの地方公共団体への配備を進めるとともに、機器整備の財源に地方債(防災対策事業債(特に推進すべき事業)として、事業費の90%を起債対象とし、その元利償還金の50%を交付税算入)を充てることができるようにしている等、地方公共団体の取組を支援しているところである。 また、J-ALERTの整備が進む場合、緊急の際に住民に危機を伝えるサイレン等を放送する市区町村の同報系防災行政無線が、住民の生命を守る上で極めて重要な役割を果たすこととなる。平成19年3月31日現在、市区町村の同報系防災行政無線の整備率は75.2%にとどまっているが、その役割が今後一層強化されることも踏まえ、市区町村においては、その整備や可聴区域の拡大等をできる限り早期に進めることが望まれる。 また、J-ALERTによる情報について、消防署所や役場出先庁舎等、複数施設での受信もできることとしており、今後はさらに公立学校等でも受信することができるよう検討しているところである。 なお、これらの施設でJ-ALERTによる情報を受信するための安価な受信設備の開発を、財団法人自治体衛星通信機構(LASCOM)において、平成20年春を目途に進めているところである。 さらに、ハード面の整備に併せて、防災行政無線からの情報が伝達されたときに、どのような行動をとるべきか等の必要な情報を住民に周知する等のソフト面での取組も重要である。
(3)安否情報の収集・提供 国民保護法上、市町村長及び都道府県知事は、避難住民等の安否情報の収集・整理に努めるとともに、市町村長は都道府県知事に、都道府県知事は総務大臣に遅滞なく報告することとされている。また、総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報についての照会に速やかに回答することとされ、その際には個人情報の保護に十分留意しなければならないこととされている。安否情報の具体的な照会及び回答の手続等については、同法施行令及び「武力攻撃事態等における安否情報の報告方法並びに安否情報の照会及び回答の手続その他の必要な事項を定める省令」(平成17年総務省令第44号)に規定されている(第3−4図)。第3-4図 安否情報の流れ(関係機関相関イメージ) 消防庁では、平成17年度に「武力攻撃事態等における安否情報のあり方に関する検討会」(座長:廣井脩東京大学教授)を開催し、家族が近親者の運命を知る権利、個人の情報の保護等を十分踏まえた国民保護法に基づく安否情報事務の具体的運用について検討を行った。この検討結果を踏まえ、平成18年度に、効率的な安否情報の収集・整理のためのシステム(安否情報システム)の開発を行ったところであり、運用試験を経て平成19年度中に本格運用を開始する予定である(トピックスIII「国民保護体制充実のためのシステム整備」参照)。 なお、安否情報の収集・提供に当たっては、今後、国民保護措置を実施する中で当該事務に従事する人員をどのように確保するか、安否情報を入手したいという国民の要請に応える一方で個人情報を保護するためにはどうすべきか等の検討を深めていく必要がある。
(4)特殊標章の取扱い 指定行政機関の長、地方公共団体の長等は、武力攻撃事態等においては、指定行政機関や地方公共団体の職員で国民保護措置に係る職務を行う者又は国民保護措置の実施に必要な援助について協力をする者に対し、これらの者又はこれらの者が行う職務等に使用される場所等を認識させるため、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書第66条3の国際的な特殊標章(第3−5図)及び同条3の身分証明書(以下「特殊標章等」という。)を交付し、又は使用させることができることとされている。この特殊標章等については、国民保護法上、みだりに使用してはならないこととされており、各交付権者においては、それぞれ交付対象者に特殊標章等を交付する際の取扱要領を定め、交付台帳を作成すること等により、特殊標章等の適正使用を担保することが必要となっている。第3-5図 特殊標章 消防庁においては、関係省庁間の申合せを踏まえ、消防庁特殊標章交付要綱を作成した。また、地方公共団体や消防機関に対し、各交付権者が作成することとなっている交付要綱の例を通知するなど、特殊標章等が適正に取り扱われ、かつ、平素の訓練や啓発などにおいて積極的に活用されることにより、国民の国民保護への理解を深めてもらうための取組を行っている。
(5)避難施設に係る調査研究 様々な態様が想定される武力攻撃災害に的確に対処し、人の生命、身体及び財産を保護するためには、適切な避難を実施することが必要である。そこで、消防庁では、避難のあり方についての調査及び研究を行い、避難施設の整備等を推進するために、国民保護法第150条に基づき、避難施設に係る調査研究を行っている。 具体的には、国民保護法施行令第35条に基づき指定されている避難施設について調査し現状を把握するとともに、武力攻撃の類型ごとに必要とされる機能を検討している。調査・検討結果として示す避難施設に必要な機能は、「備えなければならないもの」ではなく「備えるのが望ましいもの」とし、武力攻撃災害から国民の安全を確保し、適切な避難を実施するため、避難施設の指定・整備を実施する際に、地方公共団体に助言していくこととしている。
(6)普及啓発・研究・教育 国民保護法上、政府は、国民保護措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めることとされている。また、地方公共団体は、国民保護措置のうち、警報の通知・伝達、避難の指示、避難住民の誘導や救援に関する措置などを実施する責務を有しているため、具体的な措置を行う職員に対し、地方公共団体が実施する国民保護措置の具体的内容について、十分周知徹底しておくことが求められる。このため、地方公共団体の一般行政職員、消防吏員、消防団員等に対して国民保護法の趣旨を浸透させ、武力攻撃事態等における国民保護措置について理解が得られるよう、今後、繰り返し研修及び普及啓発活動を行っていく必要がある。 消防庁においては、地方公共団体の一般行政職員、消防吏員、消防団員等が危機管理や国民保護に関する専門的な知識を修得するため、消防大学校におけるカリキュラムとして国民保護コースを設けているところであるが、都道府県の自治研修所や消防学校においても、国民保護に関するカリキュラムの創設等に積極的に取り組むことが望まれる。 また、国民保護措置を円滑に行うためには、自主防災組織をはじめとする住民に対しても、国民保護法の仕組みや国民保護措置の内容、避難方法等について、広く普及啓発を行うことが大切である。 消防庁では、啓発資料等として、これまでに、国民保護法をはじめとする有事関連法の概要や国及び地方公共団体の役割等についてまとめたパンフレット「国民の保護のためのしくみ」、消防団員や自主防災組織リーダーを対象としたリーフレット「なくてはならない国民保護」、武力攻撃事態等における消防機関の役割などをまとめた視聴覚CD「消防機関における国民保護措置上の留意事項等について」及び地方公共団体の国民保護担当職員を対象としたDVD「国民保護のしくみと訓練」を作成し、消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)に掲載している(第3−6図)。第3-6図 消防庁が作成した国民保護啓発媒体 また、内閣官房において、武力攻撃やテロなどから身を守るための留意点等をまとめた国民向けの啓発冊子「武力攻撃やテロなどから身を守るために」が作成されている(国民保護ポータルサイト(http://www.kokuminhogo.go.jp/))。
6 テロ対策(1)消防庁における危機管理体制の整備 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、消防庁では、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置した。また、イラク情勢等の緊迫化を踏まえ、平成15年3月18日、消防庁に「イラク情勢等を踏まえた消防庁テロ対策室」を設置するとともに、テロ災害への一層の対処の強化を図るため、平成17年4月1日からテロ対策専門官を設置するなど所要の体制整備を行った。加えて、緊急対処事態等を想定した訓練を繰り返し実施し、対応体制の充実を図っている。
(2)地方公共団体における危機管理体制の整備 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期するため、機会を捉え各都道府県に対して危機管理体制の点検・強化等の要請を累次にわたって行った。特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築、テロ対策に関する国と地方公共団体の連携、警察機関との一層の連携の強化など、所要の体制整備について要請を行い、全都道府県においてテロ対策本部等が設置された。
(3)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防機関、警察機関、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要があり、平成13年11月には、政府のNBCテロ(核(Nuclear)物質、生物(Biological)剤及び化学(Chemical)剤を用いたテロ)対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられた。消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 また、米国における炭疽菌事件などを踏まえ、今後、生物テロ災害の発生する危険性が考えられることから、平成15年3月に、炭疽菌、天然痘の災害発生に備えるための関係機関の役割分担と連携及び必要な処置を明確化した「生物テロへの対処について」が取りまとめられ、その旨を各都道府県内の関係部局、市町村及び消防機関に対して周知した。 各都道府県内では、比較的規模の大きな消防本部等を中心に、NBCテロ災害を想定した合同訓練を実施し、関係機関の連携の強化を図っている。地下鉄構内におけるNBCテロ対策訓練(東京消防庁提供)嘉手納基地米軍消防本部とのBCテロ対策訓練(比謝川行政事務組合ニライ消防本部提供)
緊迫する国際情勢と消防庁の対応について 世界には依然として地域紛争やテロ発生の危機等が存在し、我が国周辺においても不安定な要因が存在します。地方公共団体においても、これら国際情勢に関する関心は高くなっています。 最近発生した事案に対し、消防庁では、次のような対応をとりました。〔ロンドン同時多発テロ〕 消防庁では、平成17年7月7日のロンドンでの同時爆破テロの情報入手後、情報収集に努めるとともに、都道府県に対して「テロ災害に関する緊急警戒について」・「テロ災害対策の再認識及び徹底について」の通知を発出しました。〔北朝鮮の弾道ミサイル発射〕 平成18年7月5日、3時30分頃から17時20分頃の7度にわたり、北朝鮮から弾道ミサイルが発射されました。 消防庁では、北朝鮮のミサイル発射実施情報入手後、直ちに関係者を参集させ、情報収集に努めるとともに、都道府県に対して、情報提供を実施しました(政府の対応等についての情報提供は5日から14日までに計17回)。〔英国同時爆破テロ計画摘発〕 消防庁では、平成18年8月10日の英国同時爆破テロ計画摘発の情報入手後、都道府県に対して「テロ災害に関する情報連絡体制の再確認等について」の通知を発出しました。〔北朝鮮の核実験実施〕 平成18年10月9日11時50分に、北朝鮮が核実験を実施したとの情報が、朝鮮中央通信から報道され、我が国においても、気象庁が同日10時35分頃に発生した自然地震とは異なる震動波形を探知するとともに、27日には「北朝鮮が核実験を行った蓋然性が極めて高いものと判断」する政府見解が発表されました。 消防庁では、北朝鮮の核実験実施情報入手後、直ちに関係者を参集させ、情報収集に努めるとともに、都道府県に対して、情報提供を実施しました(政府の対応等についての情報提供は9日から27日までに計17回、放射能影響の観測結果についての情報提供は10日から24日までに計13回)。 また、テロ災害等不測の事態に対応できるように、消防庁対策室を設置し、情報収集及び関係機関との連携体制を強化するとともに、都道府県に対して「テロ災害に関する緊急警戒について」の通知を発出しました。〔北朝鮮の短距離ミサイル等発射〕 平成19年5月25日から6月27日にかけて北朝鮮が短距離ミサイル等を発射した旨の報道がなされたことについて、都道府県に対して計7回の情報提供を実施しました。 このように、消防庁としては、最近の様々な国際情勢に対して、地方公共団体へ迅速かつ的確に情報発信できるよう取り組んでいるところです。
(4)NBCテロ災害に対応するための装備の整備 NBCテロ災害に対し、消防隊員の安全を図りながら迅速に対応するためには、身体防護や検知のための特殊な消防活動用資機材を用いた消防活動を実施する必要がある。消防庁では、米国における炭疽菌事件の発生などを踏まえ、BCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算において、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し、各都道府県の代表的な消防本部に対して無償貸与した。平成17年度以降は、テロ等によるBC災害時に備えた広域応援体制の強化を図るため、消防本部に対して、BC災害対応資機材の取扱いを習熟させるための検知部材を再整備した。また、N災害への対応としては、平成16年度から平成18年度に、地域バランスを考慮しつつ、全国の代表的な消防学校に対して、放射線防護服、放射線測定器等を無償貸与した。 さらに、国庫補助の対象に、テロ対策用特殊救助資機材として、平成14年度に陽圧式化学防護服、生物剤検知装置、除染シャワー及び除染剤散布器、平成16年度にNBC対応車両を新たに加えている。 また、大規模特殊災害やNBCテロ災害に対応するため、高度な救助技術に関する知識・技術、各種資格等を兼ね備えた救助隊員で構成される特別高度救助隊・高度救助隊を整備するとともに、大型除染システム等の特殊な救助用資機材や高度救助用資機材等の整備を行うなど、NBCテロ災害への対処能力の強化を図っている。
(5)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識・技術が必要である。このため、消防庁では消防職団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防本部・全消防団等に配布した。 また、消防大学校においては、NBCテロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、平成16年度からNBC災害講習会を新設した。さらに、平成18年度からは、特別高度救助隊等の養成講座として、緊急消防援助隊教育科(特別高度救助コース等)を新設した。 一方、都道府県等の消防学校においても、平成16年度から特殊災害科が新設されている。
第4章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成18年中の火災を原因別にみると失火が全体の65.6%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日ごろからの備えや、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会をつくるためには、国民の防火防災意識の高揚に負うところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日ごろから自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合に的確に対処できるような基礎知識を身に付けておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送等を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」(春季:3月1日〜7日、秋季:11月9日〜15日)、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日〜21日)、「防災週間」(8月30日〜9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、都市構造や建築構造、生活様式の変化等に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日ごろから防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施について通知し、国民に対する防火意識の高揚に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成18年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、消防庁では「消さないで あなたの心の 注意の火。」を平成18年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力の下に、「住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災防止対策の推進」、「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」を重点目標として、各種広報媒体を通じて広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。消防庁ポスター(消さないで あなたの心の 注意の火。)イ 春季全国火災予防運動(平成19年3月1日〜3月7日) 平成19年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語の下に、「住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災防止対策の推進」、「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」、「林野火災予防対策の推進」、「乾燥時及び強風時の火災発生防止対策の推進」を重点目標として、秋季同様、様々な行事を実施した。消防庁ポスター(消さないで あなたの心の 注意の火。)
(2)全国山火事予防運動(平成19年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成19年の全国山火事予防運動では、「伝えたい 森のやさしさ 火のこわさ」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗の設置やポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練の実施や研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と婦人(女性)防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成19年3月1日〜3月7日) 車両火災予防運動は、車両交通の関係者及び利用者の火災予防思想の普及啓発を図り、もって車両火災を予防することを目的として、消防庁と国土交通省の共同主唱により、春季全国火災予防運動とあわせて同期間に実施している。平成19年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、駅舎及びトンネルの防火安全対策の徹底として、初期消火、通報及び避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)文化財防火デー(平成19年1月26日) 昭和24年1月26日の法隆寺金堂火災を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共同主唱により、毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導の下に重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。文化財防火デー消防訓練 興福寺 五重塔(国宝)
2 危険物安全週間 危険物に係る火災・漏えい等の事故は近年増加傾向にあり、それらの事故原因をみると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然に防止するために、消防庁では、平成2年度以降、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」とし、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図っている。具体的には、各都道府県、関係団体等と協力して、推進標語の募集や推進ポスターの作成をはじめとする広報活動を行っているほか、危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。 平成19年度の危険物安全週間(6月3日〜9日)では、米大リーグで活躍する井口資仁選手をモデルとした推進ポスターを作成し、「危険物目指せ無事故のMVP」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域においては、危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関による危険物施設を対象とした立入検査や自衛消防組織等と連携した火災等を想定した訓練などが行われた。消防庁ポスター(危険物 目指せ無事故の MVP)
3 防災知識の普及啓発 平成19年においても記録的大雨が各地で観測され、また一方で、東海地震や東南海・南海地震、首都直下地震といった大規模地震の発生が予想されているところであり、災害による被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進しなければならない。また同時に国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識や技術を確実に身に付けるとともに、日ごろから家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災を心がけることが極めて重要である。また、防災のための講習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府においては、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、「防災週間」では大規模防災訓練等を中心として行事が行われているのに対し、「防災とボランティア週間」は災害時のボランティア活動と自主防災の重要性を認識し、日ごろの備えを高めていくことがその趣旨とされている。毎年の「防災とボランティア週間」では、全国各地で防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業が実施されている。 このほか、消防庁においては、年間を通じ、テレビ放送等を利用して、防災知識の普及啓発事業を実施するとともに、地方公共団体では、防火教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。 また、平成16年度から平成18年度にかけて全国の地方公共団体などの協力を得て、各地に残されている災害にまつわる資料や情報を収集し「災害伝承情報データベース」を構築した。インターネットを通じて消防庁のホームページから閲覧が可能であり、防災意識の高揚や、防災教育用の教材としての活用が図られることを期待している。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気、ガス、水道等のライフラインが寸断され、常備消防をはじめとする防災関係機関等の災害対応に支障を来すことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下に、組織的に出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や、救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ、地域における自主的な防災活動の重要性が改めて認識されたところであり(第4−2−1図)、これに伴い全国における自主的な防災組織の組織率も増加傾向にある(第4−2−2図)。第4-2-1図 生き埋めや閉じ込められた際の救助第4-2-2図 自主防災組織の推移 このような自主的な防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定し防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人(女性)防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づく自主的な防災組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、住民等の避難誘導、負傷者等の救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成19年4月1日現在では、全国市区町村のうち1,632市区町村で12万7,788の自主防災組織が設置されており、組織率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)は、69.9%となっている(附属資料26)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,310市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ1,187市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これらに要した経費は平成19年度で合計8億5,135万に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から平成17年度までの間、自主防災活動用の資機材の整備を促進するための国庫補助制度を整備し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図ったほか、財団法人自治総合センターにおいては、コミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、自主防災組織の育成強化のためには、自主防災組織の活動を日常化させるとともに、防災に関する情報の積極的な提供、防災センターの整備の推進等により、自主防災活動の条件整備を図ることが重要である。 このため、消防庁では、テレビ等による防災活動の啓発を行うとともに、自主防災組織活動を進めるための指針である「自主防災組織の手引」(冊子)や自主防災組織結成のためのポイントを示した「自主防災組織の結成に向けて」(CD-ROM)を作成し、それぞれ各自治体等へ配布している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 平成15年度に開催された「地域の安全・安心に関する懇話会」では、自主防災組織の活性化のためには、自主防災組織相互の協調・交流や行政・企業・教育その他の分野との連携が重要とされ、自主防災組織が相互の活動内容を知り、連絡を取り合うための都道府県や市町村単位の連絡協議会の設置が有効と示された。 また、地域の自主防災組織とその他の団体が連携し、公民館、消防団詰所などを活動拠点として、防災・防犯活動などを幅広く展開し、地域の安心・安全を確保する「地域安心安全ステーション整備モデル事業」を平成16年度から実施しており、平成19年4月1日現在までに計321団体でモデル事業を実施している。平成18年度からは、地域安心安全ステーションの全国展開を図るため、事業実施団体のリーダーや有識者などによる講演等により地域安心安全ステーションへの理解を深める出前講座を全国6か所で実施している。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人(女性)防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人(女性)防火クラブは、家庭での火災予防の知識の修得、地域全体の防火意識の高揚等を図っている。また、万一の場合には、お互いに協力して活動できる体制を整え、安心安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等、地域の実情や特性に応じた防火活動を行っている。 なお、平成19年4月1日現在、全国の組織数は、1万1,831団体、約193万人となっており、39道府県において都道府県単位での連絡協議会が設置されている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人(女性)防火クラブの活動内容の充実強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 10歳以上15歳以下の少年少女により編成される少年消防クラブは、身近な生活の中から火災・災害を予防する方法等を学ぶことを目的とし、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの活動を行っている。 消防庁では、地方公共団体等とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成18年度は、特に優良なクラブ15団体、優良なクラブ27団体、及び優良な指導者3人を表彰した。 また、平成18年度も、表彰式とあわせて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2007」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成19年5月1日現在の組織数は、5,519団体、約43万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図るものであり、近い将来、少年・少女を中心とした防災活動に参加できる素地をつくるため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導の下に組織の育成が進められている。 なお、平成19年5月1日現在の組織数は、1万4,497団体、約124万人となっている。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成19年4月1日現在、1,959組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものであるが、地震などの大規模災害が発生した際に、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られれば、地域の自主防災体制の充実強化に大きな効果をもたらすものと考えられる。 平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故においては、発災直後から周辺の事業所が所有する資機材を活用して被災者の救出救護活動に当たるなど、災害時における事業所の協力が重要であることが改めて認識された。 災害時における地域防災力の強化は喫緊の課題となっており、自然災害のみならず、前出の列車事故のような大規模事故あるいはテロ災害等への地域の対応力を強化するためには、地域に所在する事業所の協力活動が不可欠である。 消防庁では、平成17年度に、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力検討会」を開催し、災害発生直後の初動対応において、地方公共団体と事業所が連携して迅速かつ的確に災害対応を行う仕組みづくりについて検討を行い、報告書として取りまとめて公表した。また、平成18年度において、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力モデル事業」を実施し、先進的な取組についてまとめた事例集を作成し公表するとともに、地方公共団体への提供を行った。
3 災害時のボランティア活動 被災地における様々なニーズに合わせた柔軟な対応を行う上で、ボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることが、阪神・淡路大震災において改めて認識された。平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられたところであり、また、防災関係機関をはじめ、広く国民が、災害時におけるボランティア活動や自主的な防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を図ることを目的として、「防災とボランティアの日」(1月17日)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)も創設されている。 消防庁においては、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、災害ボランティアの情報提供施策として、消防庁のホームページからインターネットを通じて、災害時にボランティアセンターが必要とする機材、団体の検索が迅速かつ簡単にできる「災害ボランティア・データバンク」を平成13年5月から運用している。 平成15年6月には、セキュリティやプライバシーに配慮した、検索・集計機能の強化により、被災地が必要とする活動を行っている団体の抽出や、全都道府県、全政令指定都市のボランティア担当窓口を登録することにより、ボランティア団体の積極的な登録や災害時の円滑な活動参加を促し、登録団体数や登録情報の拡充にも対応できるようリニューアルを行った。 平成17年度には、「災害ボランティアと自主防災組織の連携に関する事例集」を作成し、自主防災組織等が「いざ」という時に活用できるように、各都道府県への配布と消防庁のホームページへの掲載を行った。 また、大規模災害時等の混乱の中で災害ボランティアの果たす役割は大きく、ボランティア活動が円滑に行われるよう、地方公共団体によるボランティアの活動環境整備を通じた側面的な支援の促進を目的として、都道府県、政令指定都市及び消防庁等で構成する「災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会」が平成11年度に設置された。この協議会では、毎年、地方公共団体における災害ボランティア関係施策等についての情報交換、調査検討をはじめ、災害ボランティアに関する取組事例の紹介や災害ボランティア団体からの活動状況に関する講演等を実施し、都道府県・政令指定都市の担当者間で情報共有を進めている。
第3節 災害に強い安全なまちづくり1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 阪神・淡路大震災や新潟県中越地震においては、一般の建築物のみならず、消防署や学校等の施設、水道施設等のライフラインも被害を受け、災害応急対策の実施や住民の避難に大きな影響を与えており、地方公共団体における災害対応能力の向上が大きな課題となっている。そこで、消防庁では、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、 〔1〕 避難所となる公共・公用施設(学校や体育館、コミュニティセンターなど) 〔2〕 災害対策の拠点となる公共・公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など) 〔3〕 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化施設やスポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(平成19年3月)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり、拠点(以下「防災拠点」という。)となる公共施設等(例えば、社会福祉施設、避難所に指定されている学校施設・公民館等、災害対策本部等の庁舎、消防本部、警察本部等)の耐震改修の状況等は次のとおりである。 地方公共団体が所有又は管理している防災拠点となる公共施設等は19万1,891棟で、このうち10万8,828棟(56.7%)が昭和56年以前の旧耐震基準で建築されたものである。 この10万8,828棟のうち耐震診断を実施した棟数は、5万9,917棟(55.1%)である。 耐震診断を実施した5万9,917棟の建物をみると、そのうち1万2,825棟(21.4%)が「耐震性がある」と診断され、また、平成18年度末までに、1万8,439棟(30.8%)が耐震改修を終了し、合計3万1,264棟(52.2%)の耐震性が確保されていることとなる。 次の建築物については耐震性が確保されているものとした場合、平成18年度末で、地方公共団体が所有又は管理している防災拠点となる公共施設等の19万1,891棟のうち11万4,327棟(59.6%)の耐震性が確保されていると考えられる。 ア 昭和56年6月1日以降の建築確認を得て建築された建築物(8万3,063棟) イ 昭和56年5月31日以前の建築確認を得て建築された建築物のうち、耐震診断の結果「耐震性能を有する」と診断された建築物(10万8,828棟) ウ 耐震改修整備を実施した建築物(1万8,439棟)第4-3-1図 地方公共団体の防災拠点となる公共施設等の耐震化の状況 しかしながら、災害対策の拠点となる公共施設等の耐震化については十分とはいえないため、早急かつ計画的な耐震化に取り組む必要がある。 消防庁では、産・学・官の三者連携の下、地方公共団体が公共施設の耐震化を進める上での参考となる資料として「防災拠点となる公共施設の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、すべての地方公共団体へ配付するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している。 さらに、初動対応の要となる都道府県・市町村庁舎等の耐震率の向上や家具転倒防止等自主防災の推進など「切迫する大地震に立ち向かう施策」に取り組んでいるところである。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防防災施設整備費補助金や防災基盤整備事業等により、防災情報通信施設や耐震性貯水槽等の整備を促進している。 特に、防災情報通信施設については、防災関係機関相互の確実で迅速な情報収集・伝達を行うため、通信ルートの多重化を図るとともに、映像・データを伝送する通信施設などの整備・機能強化を促進しているほか、防災行政無線の整備など、住民や自主防災組織等との情報連絡についても多角的な対策を講じている。 平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の際には、一部の市町村において停電により窓口業務や県防災行政無線等に支障が生じ、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震及び同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震の際には震度情報の送信が遅延するなどの障害が生じた。 こうしたことから、消防庁では、非常用電源の整備、保守点検の実施と的確な操作の徹底、防災行政無線を使用した通信訓練の実施等を地方公共団体に要請するとともに、迅速かつ確実な震度情報の伝達を可能とする次世代の震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、地方公共団体に提言したところである。 また、災害応急対策に重要な施設等として、ヘリポートや非常用電源、備蓄倉庫、耐震性貯水槽等の整備を進め、あわせて、食料、医薬品等の非常用物資の備蓄や地域における自主防災用の資機材等の整備を促進している。 さらに、住民の避難に必要な施設等として、避難地、避難路の整備のほか、トイレ・シャワー等避難生活に必要な機能を付加するための避難施設の改修を促進している。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点となるスペースを確保することは非常に重要であり、このスペースをより有効に活用するためには、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要であり、消防庁では、防災基盤整備事業等によりその整備を促進している。 防災拠点は、その役割に応じた機能を整備することが必要である。その例を示すと、次のようになる。 ・「コミュニティ防災拠点」…おおむね町内会等の単位で設置され、地域住民の自主防災活動や緊急避難場所等に活用される。 ・「地域防災拠点」…おおむね小中学校区単位で設置され、市町村等の現地活動拠点や住民の短中期の避難場所等に活用される。 ・「広域防災拠点」…都道府県に1〜数箇所設置され、消防防災に関する広域応援のベースキャンプや物資の集配基地、長期の避難場所等に活用される。 また、その整備内容は、地域の実情に即して検討することが重要であるが、典型的な一例を示すと、防災センターとオープンスペース、備蓄倉庫・資機材倉庫、耐震性貯水槽、無線設備等からなり、防災拠点の種類に応じた規模や機能の施設を整備していくものである。このほか、夜間照明や防災井戸、比較的大きな防災拠点ではヘリポート等も有効な施設であると考えられる。 防災センターについては、近年、コミュニティレベルの研修等に活用される防災センターから、日ごろから防災意識を高めるための災害を体験できる高度なシミュレーション装置や市町村等の災害対策本部のバックアップ機能を備えた中核的な防災センターまで、多様な防災センターの整備が進められている。 なお、首都圏、京阪神圏や名古屋圏といった大都市圏において、広域あるいは甚大な被害が発生した場合における、国及び地方公共団体等による広域的な災害対策活動拠点の整備検討が引き続き行われている。これを中心とした広域防災拠点の連携等のあり方に関する検討のため、消防庁では、平成14年度に関係行政機関や学識経験者等で構成する「広域防災拠点が果たすべき消防防災機能のあり方に関する調査検討会」を、首都圏・中部圏・近畿圏の各大都市圏域ごとに開催したところであるが、広域防災拠点に関する共通的課題としては、オープンスペースの確保、広域防災拠点における防災情報の共有化の実現、広域防災拠点を活用した緊急消防援助隊の機能充実のための仕組みの検討、災害ボランティア活動支援のための環境整備、圏域内における定期的な協議の実施といった点が挙げられる。 都市再生プロジェクト第1次決定を受け、東京圏において大規模かつ広域的な災害が発生した際、災害対策活動の核となる現地対策本部機能及び物流コントロール機能を確保するため、東京湾臨海部において、有明の丘地区(東京都江東区)は公園事業により、東扇島地区(神奈川県川崎市)は港湾事業により、内閣府との連携の下、整備を進めており、平成19年度は、有明の丘地区では防災体験学習施設等の整備を、東扇島地区では平成19年度中の完成を目指して緑地や港湾広域防災拠点支援施設等の整備を推進している。 今後、早期供用開始に向けた具体的な調整を行うとともに、基幹的広域防災拠点の運用に関する整理、当該防災拠点を中核とした広域防災ネットワークの整備・連携等により首都圏の広域防災連携体制を確立することとしている。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所(現消防大学校消防研究センター)が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように、道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有しており、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保等)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化とあわせた住民等への情報連絡機能の強化等、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことによって、地域の防災能力の向上を促進する必要がある。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など地方公共団体の実施する単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組や連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。 消防庁では、地方公共団体が部局横断的に防災機能の向上に資する施策を推進するためのノウハウの提供を行っている。一例として、地方公共団体の地域防災力・危機管理能力の充実を図るためには、地方公共団体が自らの防災・危機管理体制を評価し、その実態を的確に把握した上で、適切な対応を行うことが重要であることから、消防庁で作成した「地方公共団体の地域防災力・危機管理能力評価指針」に基づき、既存の地域防災計画の総点検及び平成17年4月1日現在における地方公共団体における災害対応の取組について自己評価を行った。 その結果、都道府県においては、前回(平成15年度)の自己評価と比べ、47都道府県すべてで総合評価ポイントが上昇し、47都道府県の平均値においても、9つの指標すべてにおいて評価ポイントが上昇した(第4−3−2図)。第4-3-2図 全国平均総合評価比較レーダーチャート 上昇した理由としては、平成16年度に梅雨期の豪雨や上陸台風が多発したことから住民の防災に対する関心が高まったことなどにより、各都道府県においてインターネット等を活用した住民との情報共有体制の整備、避難方法に関する広報・啓発の進展や、災害時要援護者への情報提供手段・方法について整備されたことが一因として挙げられる。 なお、市区町村においても「地方公共団体の地域防災力・危機管理能力評価指針」に基づく地域防災計画の総点検及び災害対応の取組を継続的に自己評価してもらうことで、災害に強く安心して暮らせる地域づくりの支援をソフト面からも行っていくこととしている。
第5章 規制改革への対応1 規制改革・民間開放推進3か年計画以前の取組 消防防災行政においては、必要な安全性を確保する等の観点から、消防用設備等や危険物施設等の各分野において必要な規制を行ってきているが、近年の技術革新や社会経済活動の多様化等にかんがみ、柔軟な対応を求められることが多くなり、平成5年9月16日の緊急経済対策閣僚会議決定「規制緩和等の実施について」において7項目、平成6年2月15日の閣議決定「今後における行政改革の推進方策について」において3項目、平成6年7月5日の閣議決定「今後における規制緩和の推進等について」において7項目を消防防災行政に係る各種の規制緩和措置として計上し、措置を講じた。 また、平成7年3月31日の閣議決定「規制緩和推進計画について」において、「規制緩和推進計画」が定められ、2度の改定を経て、消防防災行政に係るものとしては最終的に61項目を計上し、平成13年度末までに、すべての項目について措置を講じた。 また、平成10年3月31日に「規制緩和推進3か年計画」が閣議決定され、その後2度の改定を経て、消防防災行政に係るものとしては最終的に32項目を計上し、平成15年度末までに、すべての項目について措置を講じた。 さらに、平成13年3月30日に「規制改革推進3か年計画」が閣議決定され、その後2度の改定を経て、消防防災行政に係るものとしては最終的に24項目が対象となり、平成17年度末までに22項目について措置を講じた。 なお、これ以外の項目については、平成16年3月19日の閣議決定「規制改革・民間開放推進3か年計画」に引き続き計上し、検討を行っているところである。 これらの規制改革への対応として、消防庁が講じた主な措置は以下のとおりである(第5−1表)。第5-1表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」策定以前の主な規制緩和事項(消防庁分)
2 規制改革・民間開放推進3か年計画への取組 平成16年度から、行政の各分野について、民間開放その他の規制のあり方の改革の積極的かつ抜本的な推進を図り、経済社会の構造改革を一層加速することを目的として、「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)が策定され、その後2度の改定を経て、消防防災行政に係るものとして以下の25項目が対象となり、平成18年度末までに18項目について措置を講じた。 なお、これ以外の項目については、平成19年6月22日の閣議決定「規制改革推進のための3か年計画」に引き続き計上し、所要の措置を講ずることとしている(第5−2表)。第5-2表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)(1)第5-2表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)(2)第5-2表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)(3)第5-2表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)(4)第5-2表 「規制改革・民間開放推進3か年計画」個別施策(消防庁分)(5)
3 規制改革推進のための3か年計画への取組 これまで、4次にわたる規制改革の推進のための政府計画を策定する中で、消防庁では、消防防災分野において内外からの意見・要望を踏まえて、安全性の確保を図りつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から積極的に規制改革を推進してきた。 規制改革は、引き続き、構造改革の重要な柱であり、平成19年1月には、内閣総理大臣の諮問機関として民間人主体の「規制改革会議」が設置されるとともに、政府にも全閣僚から構成される「規制改革推進本部」が設置され、規制改革推進のための体制が改めて整備された。その推進体制の下、規制改革を国民本位の改革として、一層強力かつ着実に推進するため、「規制改革推進のための3か年計画」(平成19年6月22日閣議決定)が策定され、消防防災行政に係るものとして以下の13項目が対象となったところであり、今後、消防庁として、所要の措置を講ずることとしている(第5―3表)。第5-3表 「規制改革推進のための3か年計画」個別施策(消防庁分)(1)第5-3表 「規制改革推進のための3か年計画」個別施策(消防庁分)(2)第5-3表 「規制改革推進のための3か年計画」個別施策(消防庁分)(3)
4 構造改革特区制度への取組 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日には、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部(以下「推進本部」という。)が内閣に設置された。 平成14年12月18日には、「構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)」が公布され、平成15年1月24日には、同法第3条第1項に基づき、政府における基本的な施策の推進の方向を示すものとして、構造改革の推進等の意義及び目標、政府が実施すべき施策に関する基本方針等を内容とする構造改革特別区域基本方針が閣議決定された。 消防庁としては、特区制度の趣旨にかんがみつつ、火災予防又は防災の観点から安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。(1)構造改革特区において実施することができる特例措置(第5−4表) ・劇場等における誘導灯及び誘導標識に関する基準の特例適用(平成17年12月)第5-4表 構造改革特区において実施することができる特例措置(消防庁関係分) なお、構造改革特別区域基本方針において、特段の問題の生じていない特例措置については、速やかに全国規模の規制改革につなげることとされた。消防庁としてもこの基本方針に基づき、構造改革特区で実施した特例措置の全国展開を図った(第5−5表)。第5-5表 構造改革特区において実施し、全国展開することとなった規制の特例措置(消防庁関係分)(2)全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制改革事項(第5−6表) ・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和 ・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和 ・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設 ・固体酸化物型燃料電池(SOFC)の実証実験を円滑に行うための規制緩和 ・消防法第17条に規定する消防用設備等設置の柔軟な対応第5-6表 全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制改革事項(消防庁関係分)
第6章 国際的課題への対応[国際緊急援助]1 設立の経緯 昭和60年11月14日に発生したコロンビア共和国のネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際し、外務省から同国政府の援助要請がある場合の救助隊の派遣について意向打診があり、消防庁では、これに積極的に協力することとして準備を進めた。結局、コロンビア共和国政府からの救助隊派遣要請はなかったが、消防庁は、国際協力の一環としてこうした活動に積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service:略称“IRT-JF”:愛称“愛ある手”)を整備した。 その後、政府は外務省を中心に、海外で大規模災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月16日、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布、施行された。 これ以降、国際消防救助隊は、国際緊急援助隊の救助チームが派遣されるたびに、常に派遣されている。
2 派遣体制 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」の施行により、海外における大規模災害発生時に、被災国政府等からの要請に応じて我が国が実施する総合的な国際緊急援助体制が、法的に整備された。 消防庁長官は、外務大臣からの派遣協力に関する協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村はその消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなっている(第6−1図)。第6-1図 派遣までの流れ 消防庁長官の派遣要請に基づき参集する国際消防救助隊は、日本国政府の国際緊急援助隊救助チーム、あるいは専門家チームとして、高度な救助技術と能力を海外の被災地で発揮している(第6−2図)。第6-2図 国際緊急援助の概要 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、62消防本部・隊員599人(平成19年10月31日現在)を登録している。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制を更に強化することとしている。
3 派遣実績 国際消防救助隊は、これまでに15回の海外派遣実績がある(第6−1表)。第6-1表 国際消防救助隊の派遣実績 平成15年5月にアルジェリア民主人民共和国で発生した地震災害においては、国際消防救助隊員17人を派遣して現地で救助活動を行い、トルコ共和国の救助隊と協力して倒壊建物から生存者1人を救出する成果を上げた。ホテル倒壊現場から生存者を救出(平成15年5月アルジェリア地震災害) 平成16年2月にモロッコ王国で発生した地震災害においては、国際消防救助隊員7人を派遣し、現地の救助技術向上のための技術指導を行うなど、日本・モロッコ両国の友好親善の観点からも大きな役割を果たした。現地救助担当者への救助資機材の操作説明(平成16年2月モロッコ地震災害) 平成16年12月に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波災害に際しては、タイ王国へ国際消防救助隊員46人を派遣し、検索救助活動やヘリコプターによる支援活動のほか、内務省職員に対する救助技術指導を実施するなど幅広い援助を実施した。被災地上空を飛行する消防ヘリコプター(平成16年12月スマトラ沖大地震・インド洋津波災害) また、平成17年10月に発生したパキスタン・イスラム共和国地震災害においては、国際消防救助隊員13人を派遣し、救助活動を実施した。建物倒壊現場で救助活動を実施(平成17年10月パキスタン・イスラム共和国地震災害) 消防庁では、これまでの国際消防救助隊の活動を検証し、より効果的な国際緊急援助体制の構築に取り組んでいる。
[国際協力・国際交流] 災害から国民の生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災分野における国際協力・交流は、必要性・緊急性の高い分野となっている。 我が国では、過去の様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ねてきており、積極的な国際社会への貢献が求められている。 このため、開発途上諸国への技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 開発途上諸国等に対する国際協力(1)アジア国際消防フォーラムの開催 アジア諸国は、人口の増大と都市化が進む一方で、各種の災害に対しぜい弱であることから、我が国は、消防防災体制の整備について大きく貢献することができる。 また、国際消防救助隊の派遣をはじめとする国際協力を円滑に行うためには、日常的に政府間での情報交換と人的ネットワークを形成しておくことが極めて重要である。 こうした視点から、我が国の消防防災に関する知識・技術を活用して、アジア諸国の消防防災能力の向上に資するため、定期的にアジア国際消防フォーラムを開催することとした。 初回となる平成19年度のフォーラムは、ベトナム社会主義共和国で開催し、同国の消防防災能力の向上を図るとともに、都市化の進展に対応する消防力の整備に関し、日本・ベトナム両国間の意見交換を行った(囲み記事「アジア国際消防フォーラム」参照)。
アジア国際消防フォーラム 我が国の消防防災に関する知識・技術を活用して、アジア諸国における消防防災能力の向上に資するため、消防庁はアジア諸国にて国際消防フォーラムを開催することとしました。 第1回目となる平成19年度は9月21日に、近年、日本との交流が盛んになっているベトナム社会主義共和国(ハノイ市)において、「日越消防フォーラム」として開催しました。 フォーラムでは、はじめに両国の消防事情についての基調講演を行いました。続いて、ベトナムの最近の社会経済の発展とそれに対する消防へのニーズ等を踏まえ、日本側から、〔1〕消防力の水準と予防、〔2〕都市化に伴う火災対応、〔3〕救助と国際協力、〔4〕教育訓練と消防団の4つのテーマについて講演し、さらにその後は、質疑応答及び意見交換を行いました。 今回のフォーラムは、ベトナム側から要望があったテーマを選んだことや日本の消防防災に関する知識・技術についての強い関心があったことから、公安省警察総局副局長、警察消防局長をはじめ警察消防局や消防大学校の幹部・職員のほか、地方消防局等ベトナム全土から100人を超える消防関係者が参加し、盛況のうちに終えることができました。 今回のフォーラムをきっかけに、日本・ベトナム両国間の消防に関する交流・協力関係が、今後、一層深まることが期待されます。日越消防フォーラムの模様
(2)開発途上諸国への専門家派遣 消防庁では、開発途上諸国に対する技術協力の一環として、消防防災分野の専門家を派遣している。平成18年度は、トルコ共和国へ防災啓発センターアドバイザーとして専門家を1人派遣した。また、タイ王国政府の要請に応じ、内務省防災局長アドバイザーとして専門家を、ベトナム社会主義共和国政府の要請に応じ、消防教育訓練改善のための専門家を、それぞれ1人派遣しており、平成19年度も引き続き派遣中である。
(3)開発途上諸国からの研修員受入れア 集団研修の実施 消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を、各消防本部の協力の下実施している。 救急救助技術研修は昭和62年度から、消火技術研修は昭和63年度から、火災予防技術研修は平成2年度から実施しており、平成18年度は、救急救助技術研修については大阪市消防局において9か国から10人(累計168人)、消火技術研修については北九州市消防局において9か国から10人(累計171人)、火災予防技術研修については東京消防庁において7か国から7人(累計113人)の研修生を受け入れ、2〜3か月間に及ぶ研修を実施した。イ 個別研修の実施 消防庁では、アの集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修生の受入れを行っている。平成18年度には、財団法人日本消防協会の協力依頼に基づき3人の中華人民共和国幹部消防職員を消防大学校予防科へ受け入れたほか、各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき、各国からの消防防災関係者を研修生として受け入れ、研修を実施している。
(4)トップマネージャーセミナーの実施 消防庁では、JICAと連携・協力し、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、平成10年度から、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて意見交換等を行う、トップマネージャーセミナーを実施している。 平成18年度は、ベトナム社会主義共和国から消防大学校副校長をはじめとする幹部職員を招き、ベトナム社会主義共和国における実践的な消火活動訓練の方策等を構築するため、意見交換や視察研修等を実施した。 また、平成19年度は、トルコ共和国から幹部職員を受け入れ、日本の消防制度等について研修を実施した。
(5)技術協力プロジェクトへの協力 消防庁では、JICAと連携・協力し、次の技術協力プロジェクトの内容の検討・実施に参画している。ア タイ王国防災能力向上プロジェクト タイ王国の防災体制の強化に係る人的能力開発、災害対応能力向上等を目的として実施。イ 地震後72時間緊急対応計画構築プロジェクト イラン・イスラム共和国における地震発生後の人的被害を軽減するため、地震後3日間の緊急対応計画の策定支援を目的として実施。ウ 地震緊急救援能力強化計画プロジェクト 中華人民共和国における地震災害に対する緊急救援能力の向上を目的として実施を検討。 このような開発途上諸国等への国際協力は、各国における消防防災の発展に大きな成果を上げているところである。
2 国際交流(1)世界消防庁長官会議の開催 平成17年1月に国連主催の「国連防災世界会議」が日本で開催されるのを機に、我が国の発意により、阪神・淡路大震災10周年事業として、世界各国の消防庁の長官等(10か国が参加)を招へいし、大規模災害時における国家消防の役割等についての意見交換、各国消防庁間の今後の協力体制や将来展望を提言すること等を目的として、平成17年1月24日に東京都で「第1回世界消防庁長官会議」が開催された。 また、「第2回世界消防庁長官会議」が、平成19年9月17日から9月19日にかけて大韓民国ソウル市で開催され、13か国・地域が参加して、人的交流の促進、情報共有のためのネットワーク構築、緊急時における相互応援体制の確立等について意見交換が行われた(囲み記事「第2回世界消防庁長官会議及び第6回日韓消防行政セミナー」参照)。
(2)日韓消防交流の推進 消防庁では、平成14年の日韓共同開催によるサッカーワールドカップ大会、「日韓国民交流年」を契機として、日韓消防の交流・連携・協力の推進を目的に、日韓消防行政セミナーを開催している。平成19年度の日韓消防行政セミナーは、大韓民国ソウル市で開催された(前掲 囲み記事参照)。
第2回世界消防庁長官会議及び第6回日韓消防行政セミナー〔第2回世界消防庁長官会議の概要〕 我が国の発意により平成17年1月に東京で初めて開催された世界消防庁長官会議の第2回会議が、平成19年9月17日から19日にかけて、大韓民国ソウル市において開催されました。今回の会議では、第1回会議での共同宣言を踏まえ、人的交流の促進、情報共有のためのネットワークの構築、緊急時における相互応援体制の確立等の課題について活発な意見交換が行われました。第2回世界消防庁長官会議の模様〈参加国〉バーレーン王国、ベラルーシ共和国、ブルネイ・ダルサラーム国、フランス共和国、ギリシャ共和国、日本国、ホンジュラス共和国、大韓民国、マレーシア、パプアニューギニア、フィリピン共和国、シンガポール共和国、(香港がオブザーバー参加) この結果、国際的な教育研究プログラムの開発や参加国間で情報共有を図るためのウェブサイトの整備の推進とともに、会議を2年ごとに開催しながら参加国の拡大に努めていくことなどについて合意が得られ、ソウル共同宣言として採択されました。 第3回会議は、2年後にホンジュラス共和国において開催される予定です。第2回世界消防庁長官会議ソウル共同宣言(要旨)1.国際的な教育研究プログラムの開発による捜索・救助及び緊急医療手当の強化についての協力。2.非常時に必要な情報を提供及び共有するウェブサイトの開発及び整備による緊急ネットワークシステム構築の推進。3.世界長官会議の2年ごとの開催による継続的な参加国の拡大及び将来の同会議の枠組み構築の推進。〔第6回日韓消防行政セミナーの概要〕 第2回世界消防庁長官会議の開催時期と合わせて、平成19年9月18日に大韓民国ソウル市において、第6回日韓消防行政セミナーが開催されました。今回は、日本側からは消防の広域化、火災予防行政の取組について、韓国側からは緊急援助活動の指揮訓練に関するシミュレーションの問題点・改善方案、電気火災の発火要因・調査技法の研究についてそれぞれ紹介した後、これらに対する質疑応答や、両国の消防防災体制等についての意見交換を行いました。 次回(第7回セミナー)は、平成20年度に日本で開催する予定です。
(3)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 また、アジア消防長協会は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成19年3月31日現在、68の規格が国際規格として定められているとともに、ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)分科会においても現在一つの規格が国際規格として定められている。
2 規格の国際化への対応 WTO(世界貿易機関)等における非関税障壁低減に関する包括的な取組の中で、平成7年1月にWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効され、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。我が国はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、さらに平成13年にはISO/TC21総会を、平成18年3月にはISO/TC21/SC5(消火装置)国際会議を開催するなど、国際規格の策定に積極的に貢献している。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、各国との連携を図りつつ、引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全(ハロン消火剤等の使用抑制)] 地球環境の保全のため、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組が求められている。 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 ハロン消火剤の大部分が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されていることから、平成2年に消防庁では「ハロン等抑制対策検討委員会」を開催し、以降ハロン消火剤の使用抑制対策等に取り組んでいる。 また、平成10年11月に開催された第10回モントリオール議定書締約国会合において、各締約国は「国家ハロンマネジメント戦略」を策定し、国連環境計画(UNEP)オゾン事務局へ提出することが決議された。このため、「ハロン等抑制対策検討委員会」において、日本におけるこれまでの取組、ハロン排出抑制の効果等を勘案して消防関係の戦略を策定し、船舶、航空機等の消防関係以外の戦略とあわせ、日本全体として取りまとめた上、平成12年7月末に国連環境計画(UNEP)に提出した。これを受けて、ハロン等抑制対策検討委員会において、継続して今後のハロン消火剤の抑制対策等について検討を行い、平成13年5月にクリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)についての明確化を図るなどした。加えて、平成17年4月には、人命の安全確保の観点からクリティカルユースの判断について見直しを行ったところである。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については、平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 平成19年3月現在では、我が国には約1万7,000トンのハロン消火剤が設置されており、そのうちの9割以上が建築物や危険物施設等の消防関係の分野で使用されている。現在においても、ハロンと同等の消火性能及び安全性を有する代替消火剤はまだ開発されていない状況にある。こうした中、社団法人日本消火装置工業会において平成17年10月に「ハロンの適切な管理のための自主行動計画」が策定され、不用意なハロン放出の防止、今後の需給見通しに対応したハロンの確実な回収・保管、取組の実施状況に関するフォローアップ等を行うこととされ、平成18年度のフォローアップ結果について評価を行ったところ、おおむね計画どおり実施されていると報告された。また、平成18年1月には、消防用設備等の設置、変更、維持管理又は回収の際のガス系消火剤の排出を抑制するとともに、利用可能な消火剤の回収や再利用を行うことを目的として特定非営利活動法人消防環境ネットワークが設立され、ハロンバンク推進協議会のハロンに係る業務を継承したところである。 今後もクリティカルユースに限り、引き続きハロン消火剤を十分な管理の下に使用していくとともに、ハロンの管理・回収・リサイクル等を効率的かつ的確に行うことを目的として特定非営利活動法人消防環境ネットワークを通じて回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
第7章 消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 火災等の災害の複雑多様化に伴い、災害の予防・防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究・開発が果たす役割はますます重要になっているため、第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)及び消防庁で開催された消防防災科学技術懇話会の意見や科学技術の動向、社会ニーズを踏まえて策定した「消防防災科学技術高度化戦略プラン」により、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている(囲み記事「消防防災科学技術高度化戦略プランについて」参照)。 これらの研究・開発の中心となっている消防研究センターは、その前身となる消防研究所が昭和23年に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行っている。消防研究所は、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となった。その後、危機管理機能の強化及び行政の効率的実施の観点から、消防庁に統合・吸収する方針が政府決定(平成16年12月24日)され、「独立行政法人消防研究所の解散に関する法律」(平成18年法律第22号)に基づき、平成18年4月1日に廃止され、消防研究センターとして消防庁に統合された。 一方、消防庁においては、平成15年度から、消防防災分野を対象とする競争的研究資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を創設するとともに、新技術・新素材の導入等や消防法令の技術基準の整備に直結する研究等について、直接研究を実施する体制をとっている。 また、消防防災の科学技術に関する研究・開発等については、消防機関の研究部門等においても、消防防災活動や防火安全対策等を実施する上で生じた課題を解決する手段として、積極的に実施されている。
消防防災科学技術高度化戦略プランについて 近年の火災等の災害は、大規模化・特殊化する傾向にあるとともに、NBC災害や過密都市災害など新たな形態の災害の発生が懸念されています。さらに、東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等については、その切迫性に加え、発生した場合の被害が深刻であることが予測されています。こうした状況を背景として、ファーストレスポンダー(災害発生を受け現場で第一に対応する者)である消防に対して、その能力を最大限に発揮し、災害の防止や被害の軽減をより効果的に行うことが期待されています。 このような国民の期待に応えるためには、新技術等を消防防災分野に積極的に導入するためのより災害現場等に密着した実践的な技術開発・応用研究を行い、その成果を消防防災活動等に積極的に利活用するという一連のプロセスの確立が重要であると考えられます。 このため、産学官における消防防災関係者の力を結集して、消防防災科学技術の高度化を推進する必要があることから、消防庁では、消防防災科学技術に係る研究開発に携わる関係者の共通の認識・目標として、平成13年11月に「消防防災科学技術高度化戦略プラン」を策定しました。 しかし、策定後5年近くが経過したこと、また、社会の飛躍的な技術革新もあり、消防防災科学技術を取り巻く環境は大きく変化していることから、第3期科学技術基本計画(平成18年度から平成22年度まで)に基づく国全体としての科学技術の推進戦略との整合を図りつつ、短期及び中長期の視点に立った消防防災分野の科学技術の高度化のさらなる推進を図るため、平成19年2月に、「消防防災科学技術高度化戦略プラン」の改訂を行いました。なお、本戦略プランについては、火災等の災害の状況、日々刻々と進化する科学技術等の動向を踏まえ、今後も適時見直すこととしています。
[消防研究センターにおける研究開発等] 消防研究センターは、現場の消防職団員の活動を科学技術の面から支えて、社会の安心と安全の要請に応えることを基本的な使命として、火災をはじめとする各種災害による被害の軽減に資する消防防災に関する研究を行っている我が国唯一の総合的研究機関である。主な事業は、大規模地震等の自然災害や、大規模・特殊な様態の火災に係る原因調査を行い、その結果を踏まえた効果的な対策の研究及び地域の消防本部で対応が難しい災害が発生した場合の消火や拡大防止方法、二次災害防止等に関する助言、情報提供など、災害時における緊急の支援を行っている。 さらに、研究をより効率的に進めるため、積極的に産学官の共同研究を推進するとともに、研究に関する国際的な交流を行うほか、研究成果の公開及び普及のため各種の活動を行っている。
1 消防防災に関する研究 21世紀は、多様な危機の時代だといわれている。地球環境や社会環境、さらには技術環境の変化が、これまでの経験だけでは対処しきれないような新しい火災や災害を増大させる状況にある。こうした状況にあって、消防防災に関する科学技術への期待は飛躍的に増大している。この期待に応えるために、消防研究センターでは災害の動向と安全のニーズの把握をこころがけ、被害の軽減に資する消防防災に関する研究の発展に努めている。 そこで、被害の軽減に資する目的で、以下に示す5項目の研究を行っている。
(1)主な研究紹介ア 過密都市空間における火災に対する安全確保 近年、米国ニューヨークの超高層ビルへのテロ攻撃、韓国大邱(テグ)市の地下鉄放火火災など、消防がこれまでに経験したことのない規模や様態の火災が発生している。これらの想定を超えた大規模で特殊な火災では、多数の人々の避難や救助に困難を極めたばかりでなく、消火・救出活動に当たる消防隊員も危険にさらされ被害の拡大を招いた。また、近い将来に発生のおそれが高いと考えられている東海地震、首都直下地震等では、大規模な市街地延焼火災が発生し、従来の想定を超えた被害の拡大が危惧されている。 地下施設、超高層ビル、大規模市街地等、過密都市空間での火災時の被害軽減のためには、火災性状の理解と各々の特徴に応じた消防戦術の構築が不可欠である。しかしながら、こうした空間での火災の性状は複雑で未解明な点が多く、これまでの経験や知識だけでは、効果的かつ安全な消防活動を行うことは困難である。 本研究では、消防隊員等が大規模で特殊な火災発生時に消防活動を迅速かつ安全に実施する上で必要な、火災の性状を予測できるコンピュータによる支援ツール及び消防隊員のナノテク技術を利用した新たな消防防護服の開発を目指している。研究内容 1)火災燃焼性状データベースの構築と整備 2)大規模市街地火災における旋風・火災旋風の実験・解明 3)消防活動支援のための火災進展等の予測手法の開発 4)消防活動、戦術向上のための高性能装備の開発研究協力機関 東京理科大学、独立行政法人  建築研究所、東京消防庁、帝人テクノプロダクツ株式会社委託のナノテク消防服開発グループ(民間企業)平成18年度の主な成果 コンピュータによる支援ツールの入力データとして必要となる各種素材の異なった酸素濃度下での燃焼性状や有毒ガス濃度を測定するため、小規模燃焼実験装置及び分析システムを開発したほか、支援ツールの実用化に向けて、数値流体力学に基づく精細予測手法、ゾーンモデルに基づく簡易予測手法の高速化、効率化をめざしたシステムの改良を実施した。また、大規模市街地火災で懸念される同時多発火災時に発生する旋風の発生メカニズムや条件を明らかにするため、1m規模の火源を用いた実験を行い、その速度場の構造をPIV(粒子画像流速測定法)により検討した。ほかにも、消防防護服の新たな生地の物性値の試験及び火災環境を入力することにより耐熱性能を評価できるシミュレーションプログラムの開発、改良を行っている。「火災旋風」の実験。横風中の火炎風下に発生した旋風イ 化学物質の火災爆発防止と消火 近年、地球環境に配慮して廃棄物などを再利用する取組が進められて、ごみ固形化燃料(以下「RDF」という。)等の多くの再生資源燃料が誕生している。しかし、これらの中には大量に貯蔵した場合に、燃料内部で熱が発生し火災に至る場合もあることが分かってきた。 実際に、平成15年8月に三重県のRDFの貯蔵施設で発生した火災において、消火作業中の消防隊員2人がRDFの爆発によって吹き飛ばされ死亡する事故が発生した。この原因は、RDFの爆発危険性を十分把握していなかったことにある。また、平成15年9月に発生した北海道苫小牧市のタンク火災においても、それまで経験したことがない大規模な火災となり、44時間にわたり火災が続いた。 この研究では、今後このような災害が発生しないよう、これらの災害に至るプロセスを解き明かすとともに、その特性に応じた予防策と消火システムの開発を行っている。研究内容 1)化学物質の危険性評価の研究 2)廃棄物、リサイクル物の研究 3)化学物質の消火に関する研究研究協力機関 東京大学、福井大学、東京電機大学、独立行政法人国立環境研究所、米国・テキサスA&M大学、フランス・ポアチエ大学、ハンガリー石油(MOL)等平成18年度の主な成果 化学物質等の熱分解及び混合危険性について、発熱速度、圧力上昇速度及びガス発生量等を指標とした火災危険性の評価方法を提案した。再生資源燃料等に対して危険性評価を行い、下水汚泥燃料の一部や鶏糞は火災発生の危険が大きいこと、バイオアルコール燃料であるETBEやバイオディーゼルに自然発火危険性があることを示した。 また、大規模石油タンク火災へ使用する消火薬剤として、フッ素タンパク泡、水成膜泡消火薬剤等の消火性について検討を行った。ハンガリー、英国の研究者と共同で、海外で大規模なタンク火災・消火実験を行い、ボイルオーバー等の燃焼性状や泡消火剤の放出性状を明らかにした。ハンガリー・MOL石油で実施した大容量泡放水砲による泡放射実験(平成18年10月)ウ 石油タンクの地震防災と経年劣化対策 石油タンクに関連した災害として、昭和53年の宮城県沖地震により発生した油流出事故や、平成15年の十勝沖地震により発生した鎮火まで44時間を要した火災などがある。これらの災害の原因は、それまで石油タンクが経験したことのない長周期の地震による揺れや強さであったことと、大きな地震動に伴う石油タンクの被害を予測する手法が確立されていなかったためである。 この研究では、今後予測される石油タンクの受ける特殊な地震による揺れを想定し、石油タンクの経年劣化や地域により異なる地盤条件等を考慮に入れて、その揺れに伴う被害を予測・評価可能なシステム(石油タンク地震被害推定システム)を研究開発する。研究内容 1)石油タンクの経年劣化評価 2)タンク浮き上がりや浮き屋根揺動による損傷予測 3)地震時における浮き屋根式石油タンクからの溢流量推定研究協力機関 独立行政法人防災科学技術研究所平成18年度の主な成果 石油タンクの経年劣化を測定する手法として、AE法を用いた石油タンク底部の腐食損傷の位置が標定可能なソフトウエアを作成し、標定精度が十分であることを確認した。 新たに石油コンビナート特別防災地区に指定された地区の長周期地震動の設計水平震度に関する検討を行い、これに係る消防法令の改正が行われた(平成18年11月10日付消防危第242号)。 大規模タンクの浮き屋根を直接揺動させ、揺動時の浮き屋根の変形と浮き屋根各部に発生するひずみの計測を実施し、具体的な浮き屋根の力学的特性を明らかにし、浮き屋根の耐震・補強対策への活用を図った。大規模タンクを用いたエアシリンダー加振による浮き屋根揺動実験(平成18年秋田県男鹿市、直径38m)エ 大規模自然災害時の消防防災活動 発生が懸念されている東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などでは、火災、地震動、斜面災害、津波などの災害が複合的に絡み合った激甚・広域災害となり、その対応は混乱を極めるおそれがある。例えば、平成7年の阪神・淡路大震災では、地震により多数の火災が発生し、長時間にわたり火災を鎮火することができなかった。その理由として、既存の消防隊員、消防団員や消防車などでは、その消防力が十分でなかったことと、消火に対する適切な情報収集及びその情報に基づいた予測や消防隊の運用などが行えなかったことなどが主な要因と考えられる。 このような大規模災害に対して、国及び地方公共団体が適切に連携し、国民への情報伝達、被害情報の収集、避難誘導・消火・人命救助等の現場における消防活動等を迅速かつ円滑に実施するためには、住民への情報伝達の高度化、緊急消防援助隊等の迅速な展開、災害現場での消防活動の円滑化及び安全確保等の消防防災活動や地方公共団体の応急対応等を支援するための総合システムの研究開発が不可欠である。 この研究では、様々な大規模自然災害に対して、有効な消防防災活動を実現するために必要な総合システムの研究開発を行っている。研究内容 1)消防力最適運用支援システム 2)緊急消防援助隊用災害情報共有システム 3)警報伝達システム 4)応急対応支援システム 5)斜面崩壊現場の消防活動の安全性向上研究協力機関 財団法人消防科学総合センター平成18年度の主な成果 住民への情報伝達については、水害時の住民向け防災広報等に関する実態調査に基づき、広報文作成支援、広報時期・頻度の決定支援を可能とするシステムの枠組みを構築した。 緊急消防援助隊の運用に関しては、100件程度の同時多発火災に対して3日間の延焼予測を短時間(約2分)で実行できるようプログラムを改良するとともに、静岡県を対象に緊急消防援助隊の車両が現地集結拠点に到着するまでの時間分布についての調査等を行った。また、出場途上の緊急消防援助隊への災害情報等の提供及び共有化システムに係る基本的仕様(災害情報データベース入出力機能、ネットワーク構築機能など)を取りまとめ、これに基づきシステムの根幹となるデータ共有部の試作のための詳細設計を行った。 応急対応支援システムについては、被害状況の想定のみならず、発災直後の状況に応じた業務内容、時期、組織編成、必要防災資源数等を提示する情報管理支援システムを試作し、いくつかの自治体に評価を依頼した。 斜面崩壊現場の消防活動の安全性向上の研究では、斜面崩壊領域での変形の時間的変化から、崩壊前の前兆変形中に崩壊深さを推定する手法を開発した。情報管理支援システム(活動状況表示画面)オ 特殊災害に対する安全確保 平成7年の地下鉄サリン事件での救急隊員の被災や、平成11年のJCO臨界事故における救急隊員の放射線被ばく、平成15年の三重県ごみ固形化燃料(RDF)発電所爆発事故における消防職員の殉職等、特殊災害において消防職員が被害を受けている。これらの特殊災害に対しては、これまでに消防職員が対応した経験がなく、危険性が未知であったため、その対応が十分でなかった。消防職員は、これら対応経験がない火災や災害に対しても、現場へ迅速に駆け付け、災害の拡大防止と火災の早期鎮圧に努めなければならない社会的責務を負っているため、今後このような特殊災害による被害を減らすためには、消防隊員自身の被災を防ぎ、効果的な消防活動を可能にする技術を開発することが必要である。 この研究では、特殊災害発生時において現場の状況を活動前に把握する手法や消火技術の確立、消防隊員の安全を確保し負担を軽減する技術の開発を行う。研究内容 1)特殊災害に関する現状把握と消火方法の研究 2)消防活動を支援するロボット技術・救助技術の開発研究協力機関 神戸大学工学部機械工学科 大須賀研究室、千葉科学大学危機管理学部防災システム学科 高研究室、明石高専機械工学科 岩野研究室、岐阜高専機械工学科 奥平研究室、東京消防庁、横浜市安全管理局、三菱電機特機システム株式会社平成18年度の主な成果 屋内型廃棄物処理施設内での火災時の煙の上昇速度、温度等の流動性状を画像情報を用いて計測する手法の開発を行った。 また、小型移動ロボットFRIGOの耐環境性の向上を図り、完全防水、防塵、防爆、耐衝撃性の高い実用化品の開発を行った。さらに、小型移動ロボットによる資材搬送を目的として、人間の移動に対する自動追従機能の研究を行った。小型移動ロボット「FRIGO-M」
(2)国際的な研究への協力と交流 火災や地震などの災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、それぞれの災害を受けている国において研究をより効率的に進めるためには、各国が保有する災害の情報や研究の成果等を相互に共有していく必要がある。そこで、消防研究センターでは、様々な国際会議や国際共同実験に参画し、日本における研究成果の公表を行ったり、外国人研究者の受入れにより諸外国への情報提供などを行ったりしている。(ア)国際的な研究・連携 年に一度、各国の火災に関する研究所の所長が集まり、「火災研究所長国際会議」(FORUM: International Forum of Fire Research Directors)が開催されている。FORUMは、火災研究における国際的な協力を通して、火災の被害を軽減することを目的として、平成3年に設立された。消防研究センターは、その一員として会議に参加し、火災研究のグローバル化に努めている。 また、世界各地で開催される学会等に参加して、研究成果の発表と情報の収集も行っている。 さらに、海外の研究機関と共同で大規模な実験を実施している。平成18年10月には、ハンガリーにおいて、国内では実施の難しい石油タンク火災の消火実験を行った。(イ)外国人研究者の受け入れ 消防研究センターでは、随時、外国人研究者を受け入れ、共同で研究を行っている。平成18年度は大韓民国から2人の研究員を受け入れ、化学物質の火災爆発防止と消火に関する研究と、消防防護服に関する研究を行った。
2 火災原因調査及び災害・事故等への対応(1)主な火災原因調査及び災害・事故対応 消防研究センターは、消防防災の科学技術に関する専門的知見及び試験研究施設を活用し、「消防庁長官による火災原因調査」を実施することとされている。 火災原因調査に関しては、独立行政法人消防研究所であった平成15年4月1日に火災原因調査室が設置され、大規模あるいは特殊な火災を中心に、全国各地において火災原因調査を実施してきた。また、消防本部への技術支援として、火災原因解明のための鑑識・鑑定を共同で実施している。なお、平成18年4月以降の火災原因調査及び技術支援の状況は第7−1表のとおりである。第7-1表 火災原因調査 現地調査状況(平成18年4月〜) 災害・事故への緊急対応としては、平成18年12月の東大阪市化学工場火災において専門家を派遣し消火活動に対する技術支援を実施したほか、平成19年3月の能登半島地震及び7月の新潟県中越沖地震において職員を派遣し、被害状況の調査を実施した。また、平成18年1月に長崎県大村市で発生した認知症高齢者グループホーム「やすらぎの里」火災や平成19年1月に兵庫県宝塚市で発生したカラオケボックス火災の出火原因の現地調査及び検証のための燃焼実験やコンピュータ解析を実施した。その他、平成18年11月に発生した米国ミズーリ州グループホーム火災のように我が国の消防防災の施策にかかわる大規模な災害・事故については、国内外を問わず専門家を派遣する等、被害調査と情報収集を行っている。東大阪市化学工場における爆発事故
(2)火災原因調査の高度化に関する研究 近年の火災・爆発事故は、例えばグループホームのような新しい使用形態の施設での火災やリサイクル社会においてのごみから燃料を製造する施設での火災などが発生するなど、複雑・多様化している。そのため、それらの原因の解明のために必要な調査用資機材の高度化や科学技術の高度利用が求められている。 このような状況に的確に対応し、効果的な火災原因の解明を行うためには、火災の発生メカニズム、火災拡大の経過、建築物の構造などを解明するための手がかりとなる残留ガスや材料の変形の状況、飛散物の状況などを、現場調査において早期に収集し、高度な分析を行うことが不可欠である。このため、火災原因調査に役立つ科学技術についての調査研究を行いつつ、サンプル採取技術、計測・分析技術など多岐にわたる技術の高度化を行うことが必要である。 この調査・研究では、現場調査に必要な調査用資機材の性能・機能を明らかにするサンプルの採取・分析方法、火災前の状態の再現と火災現象の再現の方法、原因の推定又は特定を行う手法等についての調査研究、火災原因調査に必要な現象究明のための研究を行う。研究内容 1)火災原因調査に活用可能な科学技術等についての調査 2)無人航空機による情報収集技術に関する研究 3)特殊火災の原因調査に関する研究平成18年度の主な成果 火災原因調査にX線マイクロフォーカス顕微鏡が有効であることを明らかとし、火災調査に必要な顕微鏡の仕様を取りまとめ、装置を整備した。 無人航空機から無線によりリアルタイムの画像を地上で観察できるシステムを構築した。無人航空機を用い山間部及び河川敷での可視光画像の撮影を実施し、昼間の可視光画像によって車両や人の確認や焼け跡の把握が可能であることを示した。無人航空機に搭載したCCDカメラでも活用可能な精度の可視光画像が得られることが分かった。 火災原因調査に関連して3件の火災事案に対し、現場から収去した製品や物質の導電性の測定を実施した。石油タンク内部での事故発生時の作業中の静電気帯電計測を実施し、着火能力のある放電が発生する可能性があることを明らかとした。また、石油中における水滴の沈降帯電について、実験装置を整備した。
消防研究センターの火災原因調査と消防本部への技術支援 消防研究センターでは、火災等の災害に関する科学技術面からの調査・研究のほかに、全国の消防本部(機関)に対して、火災原因の調査や火災災害現場での緊急対応的な消火や危険排除のための助言等、技術的な支援を行っています。また、製品出火の原因を究明するための鑑識・鑑定を消防本部等と共同して実施しており、こうした支援業務の高度化を図るため、物質の物理的又は化学的な分析装置を整備しています。 火災原因の調査は、基本的には消防本部等が行うこととされていますが、大規模あるいは特異な火災などで社会的な影響が大きい事案については、消防庁長官による火災原因調査を消防研究センターで実施しています。こうした調査結果は、同種の火災再発防止のための予防行政上の基準の立案といった施策に反映されています。例えば、平成18年1月に長崎県大村市で発生した認知症高齢者グループホーム火災では、出火原因や延焼拡大経路を検証するために、現場の条件で火災初期の再現実験を実施しました。この実験データをもとに、延焼拡大の様子をコンピュータシミュレーションで予測し、実際の火災時の延焼拡大状況と類似した状況を把握することもできました。この実験においては、スプリンクラーによる火災抑制効果の検証実験も実施し、その結果は、類似の高齢者施設における今後の消防防災対策の技術基準の作成に活かされています。宝塚市のカラオケボックス火災出火源再現実験 発災現場の緊急対応も、消防研究センターの重要な業務の一つです。例えば、水をかけることによって新たな爆発や急激な燃焼を起こす化学物質が燃えている場合もあり、そのような特殊な火災の消火、事後処理方法に対して技術的な支援を現場で行っています。具体的には、平成18年12月の東大阪市化学工場でのアルミ粉の火災や平成19年1月の船橋市における木材チップの産業廃棄物置き場での火災では、現場に専門家を派遣し消火方法の助言を行い、火災の抑制に貢献しました。東大阪市の化学工場爆発事故調査 最近、製造工程や設計の不良による電気用品及び燃焼器具の火災が増加してきています。平成17年度から、消防研究センターにおいては、全国の消防本部等から寄せられたこうした身近な製品の火災事故情報の集約を行っています。こうした製品の出火原因を探るためには、X線顕微鏡やデジタル顕微鏡などを使った微細な分析が必要となります。消防研究センターの火災原因調査室では、各種分析機器を整備するとともに調査技術の高度化に向けた研究を行い、消防本部等が行う鑑識に対して、技術的な支援を行っています。これによって、メーカーが製品のリコールを行ったり、自主的な改修を行ったりするケースもありました。鑑定以外にも、蛍光X線分析装置やガスクロマトグラフ等の分析機器を活用して、火災現場から採取してきた物の成分の特定を行い、消防本部等へ情報提供するなどの鑑定支援も併せて行っています。消防研究センター鑑識室での鑑識支援の様子
3 研究成果をより広く役立てるために 消防研究センターでは、研究によって得られた成果を、全国の消防職員をはじめとする消防関係者はもとより、一般の方々にも広く役立てることを目的に、以下の活動を行っている。
(1)一般公開 毎年4月の「科学技術週間」にあわせて、消防研究センターの一般公開を実施している。平成19年度は4月20日に実施し、599人の参加を得た。 一般公開では、実験施設や実験場などの公開、展示や実演を用いた研究の紹介を行っている。平成19年度は12の内容を公開し、中でも、消防研究センターが開発を進めている消防防災用ロボット「FRIGO」の実演や、泡消火剤による消火のメカニズムの紹介が、参加者の注目を集めた。
(2)全国消防技術者会議 全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として昭和28年から「全国消防技術者会議」を毎年開催している。 この会議では、各地の消防本部で実施された研究の成果の発表、消防機器の開発・改良に関する紹介、そして火災原因調査の事例紹介などを行っている。平成18年度は、11月1日及び2日の2日間、東京都港区虎ノ門のニッショーホールにおいて開催された。
(3)消防防災研究講演会 消防研究センターの研究成果の発表及び消防関係者や消防防災分野の技術者や研究者との意見交換を行うため、平成9年度から「消防防災研究講演会」を開催している。 この講演会では毎年特定のテーマを設けており、平成18年度は「住宅火災の死者低減に向けて」をテーマとして、近年増大している住宅火災に焦点を当てた研究発表及び討論を実施した。
(4)火災原因調査技術会議 消防本部が消火活動の後に実施する火災原因調査の技術の向上を目的として、「火災原因調査技術会議」を開催している。 この会議は、全国の主な都市で年間5回程度開催しており、各地の消防本部における特異な火災事例の紹介や、最新の調査技術、機器に関する情報交換を行っている。平成18年度は、東京、名古屋、札幌、大阪、福岡の5都市で開催した。
(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰 消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的として、消防職員や一般の方による消防防災機器の開発や改良及び消防防災に関する研究成果のうち特に優れたものを消防庁長官が表彰する制度を平成9年度から実施している。応募の資格に制限はなく誰でも応募することができるため、多くの人に開かれた発表の機会となっている。 平成18年度は64編の応募があり、10編の作品が表彰された。
[研究開発の推進] 消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術を育成するための「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金制度)を平成15年度に創設し、制度の充実を着実に図ってきたところである。特に、平成18年度からは、PD(プログラムディレクター)、PO(プログラムオフィサー)の選任、研究成果の公表、フォローアップの実施など、当該制度の円滑な運営を図っている。 また、公募に係る研究課題については、これまで消防防災全般としていたものに、平成18年度には消火・救助等に関しあらかじめ設定した課題(「テーマ設定型研究開発」枠)を、平成19年度には火災等の災害に対する消防防災活動や予防業務等における現場のニーズを反映した課題(「現場ニーズ対応型研究開発」枠)を新たに設定し、より火災等の災害現場に密着した課題解決型の研究開発の促進を図っている。応募課題の審査に当たっては、外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」において、消防防災への貢献の高さ、研究方法や研究実施体制の妥当性等の観点から審査を行い、制度の目的に照らして優秀と認められる課題を選定している。平成19年度の研究助成対象課題としては、新規課題を9件、また、平成17年度、平成18年度からの継続課題を17件採択している(第7−2表、第7−3表)。第7-2表 採択研究テーマ名一覧第7-3表 応募件数、採択件数等の推移 この制度においては、これまでに31件の研究課題が終了し、数々の研究成果が得られており、特に、平成17年度には「水/空気2流体混合噴霧消火システムを用いた放水装備」が、また、平成19年度には「少水量型消火剤の開発と新たな消火戦術の構築」が、それぞれ産学官連携推進会議において産学官連携功労者表彰(総務大臣賞)を受賞するなど、火災等の災害現場のニーズに密着した成果が得られてきている。 さらに、消防庁においては、危険物施設に係る腐食・劣化評価に関する研究、新技術・新素材の活用に対応した安全対策に関する研究等、消防法令の技術基準の整備に直結する研究等については直接研究を実施する体制をとっている。 また、本年度においては、平成18年度に行った消防本部の研究部門等との連携のあり方についての検討報告書の内容等を踏まえ、消防防災の科学技術に関する情報を共有する仕組みの構築や消防本部と消防研究センターの連携体制の充実などの基盤を整備し、消防防災科学技術の高度化を推進している。新たに開発された少水量型消火剤による消火実験(北九州市消防局提供)
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防防災の科学技術に関する研究開発は、消防本部の研究部門等においても行われている。平成18年度において、消防防災科学技術に関する研究開発等の部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、川崎市消防局、横浜市安全管理局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の9機関である。 消防機関の研究開発等の部門の概要は、第7−4表のとおりであり、研究開発等の部門の定員は9機関で75人、また、研究費は約180万円から5,000万円まで消防本部により大きな違いがあり、その総計は約9,300万円となっている。第7-4表 消防機関の研究部門の概要 また、これらの研究開発等の部門を有する消防機関は、毎年、「大都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術についての意見交換を行っている。 なお、研究開発等の部門を有しない消防機関においても、火災原因の究明に関する研究や消防装備・資機材等の開発・改良等が、それぞれの業務を担当する部門を中心に実施されている。 一方、消防機関においては、消防研究センターや大学に職員を派遣し、消防防災の科学技術に関する研究開発等を担う担当者の養成や指導助言等を受けて研究開発等を行うところもある。
2 消防機関における研究の概要 消防機関においては、主に、消防装備・資機材等の改良、改造等、消防隊の勤務形態に関する研究、火災性状に関する研究など火災等の災害現場に密着した技術開発や応用研究、防災資機材等の改良、改造等を行うとともに、火災原因調査に係る原因究明のための研究(調査、分析、試験等)が行われている。また、火災予防、住宅防火、初期消火等に関する普及啓発方法等に関しての研究も実施されている。 また、平成7年の阪神・淡路大震災以降、多くの消防機関において、地震時の出火防止対策や消火等の地震対策研究も行われている。 一方、消防防災科学技術研究推進制度(競争的研究資金制度)において、現場ニーズ対応型研究開発枠やテーマ設定型研究開発枠を設定し、火災等の災害時の消防防災活動や防火安全対策など課題解決型の研究課題を優先的に採択する方向となっていることもあり、消防機関が大学、研究機関、民間企業等と連携して研究開発を行う事例が増えてきている。
[消防防災科学技術の研究の課題] 消防防災の科学技術は、火災等の災害現場における消防防災活動や防火安全対策等に不可欠なものであり、火災等の災害の発生に伴い緊急的な研究ニーズが出現すること、また、その対象とする研究領域が著しく広く、様々な知見が必要であることなどが特徴的である。こうした消防防災科学技術の研究の特性に対応する上では、研究体制の運営の機動性、柔軟性が必要であるとともに、競争的研究資金制度の一層の充実による消防防災科学技術の研究領域に関する競争的な研究環境の創出、大学、研究機関等との連携を中心とする産学官の連携の推進が求められる。さらに、研究成果を火災等の災害現場における消防防災活動や防火安全対策等に利活用するためには、成果の解説、具体的な活用事例等に関する情報の共有化の推進が必要である。特に、新技術等を積極的に導入するためには、消防ニーズを積極的に発信するとともに、これらに関する技術シーズを有する大学、研究機関、企業等と連携して研究を行う必要がある。
[イノベーション25(社会還元加速プロジェクト)への対応] 日本社会に新たな活力をもたらし成長に貢献するイノベーションの創造に向け、2025年までを視野に入れた、技術革新、社会制度の刷新、人材の育成、国民意識改革などの短期、中長期に取り組むべき政策が長期戦略指針「イノベーション25」として取りまとめられ、平成19年6月に閣議決定された。消防庁では、技術革新戦略ロードマップにおける「早急に開始すべき社会還元加速プロジェクト」として掲げられている、「きめ細かい災害情報を国民一人ひとりに届けるとともに災害対応に役立つ情報通信システムの構築」について、現在、消防庁が進めている「大規模災害時等における消防防災活動支援情報システム」等と整合を図りつつ、情報通信の基盤技術を有する関係府省と連携し、積極的に取り組むこととしている(囲み記事「イノベーション25への対応」参照)。
イノベーション25への対応 日本社会に新たな活力をもたらし成長に貢献するイノベーションの創造に向け、2025年までを視野に入れた、技術革新、社会制度の刷新、人材の育成、国民意識改革などの短期、中長期に取り組むべき政策が、長期戦略指針「イノベーション25」として取りまとめられ、平成19年6月に閣議決定されました。 消防庁では、イノベーションの創造に向けた社会の基礎となる安全・安心を確保するとの認識の下、大規模地震等による被害が半分となる社会、火災・危険物事故による被害が最小となる安全な社会、救える命が必ず救える社会、あらゆる危機に、より的確に対応できる社会の実現を目指すこととしています。特に、長期戦略指針第4章「イノベーションで拓く2025年の姿」の「安全・安心な社会」に掲げられている、救命機器(携帯型AED等)や災害情報ネットワークといった社会環境の整備について、他府省等と連携し、中長期的に取り組むこととしています。また、このうち政策的に取り組んでいくべき事項を取りまとめた「技術革新戦略ロードマップ」では、イノベーションを国民一人ひとりが実感できるようにするため、近い将来に実証研究段階に達する技術を融合させながら、今後、国が主体的に進めていく先駆的なプロジェクトを「社会還元加速プロジェクト」として位置付けることとされており、この中には、消防防災に関するものとして、災害情報通信システムの構築(きめ細かい災害情報を国民一人ひとりに届けるとともに災害対応に役立つ情報通信システムの構築)が具体的事例として挙げられています。 災害情報通信システムとは、ユビキタスやブロードバンドなどの最新のICTを活用することで各種の情報通信ネットワークを確立し、災害発生予測や発生状況を迅速かつ的確に収集・整理するとともに、住民や消防機関をはじめ関係機関に伝達することにより、災害による被害を激減させようとするものです。消防庁では、火災感知器のユビキタスセンサーネットワーク化や、消防防災分野におけるICT活用のための連携推進等に取り組み、災害時の瞬時情報収集・解析・提供システムとの連携による火災・事故、要救助、急病等の情報の早期覚知と迅速な消防防災活動による被害の軽減を図ることとしています。 なお、イノベーション25の推進に当たっては、内閣府内に設置された「イノベーション推進室」が旗振り役となり、現在、政府一丸となった取組が進められています。消防庁としても、災害情報通信システムの構築をはじめとした諸課題に対し、関係府省と連携を図りながら、積極的に取り組むこととしています。火災感知器のユビキタスセンサーネットワーク化
第8章 今後の消防防災行政の方向[消防防災行政の意義] 国民の安心と安全の確保は政府の基本的な責務であるとともに、安定した経済成長の基盤である。我が国においては、全国どこでも大規模地震が発生する可能性を有するとともに、実際に地震や風水害等の自然災害が頻発している。また、国際情勢・社会経済情勢の変化により、テロや危険物事故、大規模な人為的事故の危険性が高まっている。こうした中、これらの災害に揺るがない社会を構築し、引き続き我が国の優位性である安心・安全を確保していかなくてはならない。 そのため、消防庁は、大規模地震・大規模災害に対する備えや消防防災・危機管理体制の強化、火災予防対策や消防防災科学技術の向上、地域防災力の強化、救急救命の充実と高度化など、総合的な消防防災対策を積極的に展開する。
[消防防災行政を取り巻く状況] 大規模化・複雑多様化する災害や、国内外の経済社会情勢の変化等により、消防防災行政を取り巻く状況は、年々変化している。 第一に、災害の大規模化などへの的確な対応が求められている。改正消防法に基づく民間事業所における自衛消防力の確保の促進や、緊急消防援助隊の充実強化・被災地情報の収集能力の向上、テロ災害対応装備の整備など、大規模地震・大規模災害に対する備えの強化が急務となっている。 第二に、消防防災行政の根幹を担う体制の充実強化が求められている。改正消防組織法に基づく消防の広域化の推進や、地方公共団体における危機管理体制の整備方策についての検討、地域防災の要である消防団員の充実強化に向けた取組など、消防防災・危機管理体制の強化を引き続き推進していく必要がある。 第三に、火災予防対策等の積極的な推進が求められている。危険物施設における事故は増加の一途をたどっており、早急な危険物事故の防止対策が必要である。また、安全性が確保されていない小規模建築物等の火災による被害や、依然として高い水準にある住宅火災や放火火災への早急な対策が必要となっている。 第四に、科学技術の進歩を国民の安心・安全の分野に積極的に活用することが求められている。消防防災分野での産学官連携の推進や消防の現場への科学技術の導入、ユビキタスやブロードバンド等ICT(情報通信技術)を活用した情報伝達の高度化など、消防防災科学技術の向上が急務となっている。 第五に、身近な生活の安心・安全の確保が重要となっている。大地震や風水害、テロなどから地域住民の安心・安全を確保するため、地域コミュニティ活動の活性化等による地域防災力の強化が重要な課題となっている。 第六に、救急救命の充実・高度化が一層重要となっている。救急需要が引き続き高水準で推移することが見込まれている中で、真に緊急を要する傷病者へ迅速な対応を行うことのできる体制の整備が求められている。また、AED(自動体外式除細動器)や応急手当の普及啓発の推進が課題となっている。 第七に、海外で大規模災害による甚大な被害が頻発している中、我が国の高度な消防防災技術・救助技術に対する期待はますます高まっており、国際協力や国際貢献の一層の推進が求められている。 このため、以下の事項を重点的に実施する。
[重点的に推進すべき事項]1 大規模地震・大規模災害に対する備えの強化(1)民間事業所における自衛消防力の確保 自衛消防組織の設置や大規模地震に対応した消防計画の作成の義務付けを内容とする消防法の改正を受け、消防計画のガイドラインの策定や優良事例の紹介、消防機関への技術的支援等により民間事業所における自衛消防力の確保を促進する。
(2)防災拠点となる公共施設等の耐震化、家具の転倒防止対策等の促進 切迫する大地震に備え、耐震率100%を目指し防災対策事業債の活用促進等により防災拠点となる公共施設等の耐震化をさらに進めるとともに、地方交付税により地方公共団体を支援し、家具の転倒防止等地域における自主防災の取組を推進する。
(3)緊急消防援助隊の充実と運用の強化 東海地震等の著しい被害が想定される大規模地震災害における緊急消防援助隊の一層効果的な部隊運用を図るため、被災市町村をまたがる部隊移動を迅速に行うなど、部隊配備を総合的に調整する仕組み等について検討を行う。 また、緊急消防援助隊の基本計画に基づき、登録部隊数4,000隊(平成20年度中。平成19年4月現在、3,751隊。)に向けた取組を引き続き推進し、装備の充実を図るとともに、指揮・連携能力を向上させるため、関係機関と連携したより実践的な地域ブロック合同訓練を実施する。
(4)航空機の利活用による被災地情報の収集能力の向上 夜間における情報収集のための資機材の整備等により、夜間運航体制の整備を含めた即応体制の強化を図るとともに、ヘリコプターの利活用による全国的な被災地情報の収集体制を整備する。
(5)NBCテロ災害対応の充実強化 特別高度救助隊及び高度救助隊等に化学検知器を整備するとともに、消防大学校においてテロ災害に対応した救助隊幹部の養成を拡充する。また、原子力テロ災害対応訓練の充実を図る。
(6)原子力施設における消防との連携による防火防災対策の充実強化 原子力施設の消防用施設及び自衛消防体制など、地震災害時等における防火防災対策の充実強化が図られるよう、消防機関との連携を強化する。
2 消防防災・危機管理体制の強化(1)消防の広域化の積極的推進 消防組織法及び市町村の消防の広域化に関する基本指針に基づき、消防の広域化を引き続き積極的に推進する。 このため、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部の下で、都道府県の広域化推進計画を踏まえた市町村の広域消防運営計画の作成を促進・支援するとともに、広域化推進アドバイザーの派遣による助言・指導、広域化に係る諸課題に関する相談体制の確保、広報及び普及啓発活動その他の必要な援助等を行う。
(2)消防団の充実強化のための施策の積極的推進 財団法人日本消防協会、経済団体及び都道府県等との連携、機能別団員・分団制度の一層の活用、「消防団協力事業所表示制度」の全国的な普及、入団促進キャンペーンの展開等により、団員確保の取組を強化するとともに、救助活動や災害現地情報の発信等今後期待される新たな役割を消防団が果たすことができるよう、環境整備を進める。 また、シンポジウム、出前講座等全国的な広報活動により、消防団活動に対する国民の認知度を高める。 さらに、消防団と民間事業所の自衛消防組織や自主防災組織等の民間組織・団体との連携を強化し、地域の消防防災力の一層の充実を図る。
(3)地方公共団体における総合的な危機管理体制の構築 平成18年度、19年度において開催された「地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会」の結果を踏まえ、市町村における総合的な危機管理体制の強化を図るため、消防機関と首長部局の連携等市町村特有の事情を踏まえつつ、市町村における総合的な危機管理体制の整備方策等について検討する。
(4)地方公共団体における災害対策本部の意思決定機能の充実強化 災害の各段階における意思決定等近年の災害経験の全国的な共有や人的な相互応援のさらなる活用など、災害対策本部の機能の充実強化を支援するための方策について、検討を行う。
(5)国民保護体制の充実強化 全国瞬時警報システム(J-ALERT)の全国的な整備を推進し国民保護体制を充実強化するとともに、国と地方公共団体による共同訓練の実施、啓発資料の作成・配布等を通じて、国民保護に対する国民の理解の促進を図る。
(6)消防救急無線のデジタル化の促進 消防の広域化と歩調を合わせ、消防救急無線のデジタル化が円滑に行われるよう、消防本部や都道府県に無線等に関する専門的な知見を有する相談員を派遣する。また、無線機の価格の低廉化や実運用に即して策定する全国共通の消防救急デジタル無線の仕様を踏まえ、技術検証を実施する。併せて、消防車両動態システム等に関して、大規模災害時の広域応援活動にも活用可能となるよう検討を行う。
(7)防災行政無線の整備等の促進 未整備市町村(平成19年3月31日現在、整備率75.2%)における防災行政無線の整備を促進し、防災行政無線の普及を図るとともに、防災行政無線に代わるMCA無線システム(Multi Channel Access System)等の活用方策を含め、災害時の住民への情報伝達のあり方について検討を行う。
(8)北海道洞爺湖サミットにおける消防・救急体制の確保 平成20年7月に開催される北海道洞爺湖サミットの成功について万全を期すため、関係省庁及び関係地方公共団体と十分な連携を図りながら、関係市町村における十分な消防・救急体制を確保する。
3 火災予防対策等の積極的推進(1)住宅防火対策の推進 住宅火災による死者数を半減させることを目標とし、住民の十分な理解を得るよう、既存住宅への住宅用火災警報器の設置に向けた普及啓発活動等を集中的に実施する。また、防炎品の使用拡大を促進する。
(2)危険物施設等の安全対策の充実強化 「危険物事故防止アクションプラン」に基づく官民一体となった事故防止対策を推進するとともに、危険物施設の腐食防止・抑制対策や、近年大災害に直結しうる事故が多発しているインナーフロートタンク(内部浮き蓋付きタンク)に係る技術基準等の整備に取り組む。 また、地震・津波が大規模危険物施設に与える被害の予測と有効な被害軽減方策の整備を図る。
(3)危険物事故防止のための制度の見直し 近年増加している危険物施設における火災・漏えい事故への対策や切迫する大地震を考慮した危険物施設のさらなる安全対策が急務であることから、危険物施設の保安体制や事故の原因調査等、危険物施設の安全対策のあり方について制度の見直しに取り組む。
(4)石油コンビナート災害対策の充実強化 大規模災害時を想定した大容量泡放射システムの導入を推進するとともに、泡消火薬剤の相互調達など防災関係機関の連携のあり方の検討を踏まえ、県域を越える広域的な防災体制を確立する。
(5)放火火災防止対策を含めた安心・安全なまちづくり活動の推進 10年連続で火災原因の第1位となっている放火火災(放火の疑い含む。)の低減のため、消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織の連携による防災全般を対象とした地域づくり活動を支援する。
(6)安全性が確保されていない建築物における防火安全対策の推進 近年、高齢者グループホーム、カラオケボックス、温泉施設など小規模な建築物の火災によって大きな人的被害が生じているため、立入検査やこれを補完する情報収集、不特定多数の人が出入りする小規模建築物等に対する重点的な違反是正、予防面における警防職員の活用、法令遵守状況の表示等による積極的な情報提供、消防用設備等のハード面の対策のあり方など、効果的・効率的な防火安全性の確保方策について検討する。
4 消防防災科学技術の向上(1)消防防災分野におけるICT活用のための産学官連携の推進 ユビキタスやブロードバンドなど最新のICTを活用し、消防防災活動の高度化に資するために、研究開発の初期段階から、消防の現場ニーズ・政策ニーズと研究機関の技術シーズを踏まえ、産学官が連携し研究開発を進められる体制を構築する。 また、技術動向に関する調査、情報化の推進戦略の検討を行うとともに、電子タグを利用した高度情報化などの実用化に向けた実証・評価並びに要求仕様の策定に取り組む。
(2)消防の現場への科学技術の導入の強化 産学官の連携により実践的な研究開発を行う消防防災科学技術研究推進制度について、災害現場に密着した研究開発への重点化を一層推し進める。 また、消防防災分野における研究開発の情報を積極的に発信し、ナノテク消防防護服など消防本部の装備・機器等の高度化を推進するとともに、消防研究センターにおける研究開発等についても、消防本部との連携を強化する。 さらに、火災態様の特異・特殊化に対応するため、消防本部における火災原因調査について、最新の科学技術を利活用できる基盤整備を進める。
(3)消防庁と地方公共団体の間の情報伝達ネットワークの強化 国と地方公共団体をつなぐ消防防災無線のIP化を実施し、高速な通信を実現するとともに、LGWAN等をバックアップ回線として活用し、確実な情報伝達を可能とすることにより、消防庁と地方公共団体の間の情報収集・伝達体制を強化する。
(4)携帯電話等からの通報受信体制の充実 携帯電話及びIP電話等からの119番通報が増加しているため、携帯電話等からの119番通報の通報者位置情報が表示できるシステムの導入を推進する。 また、NTT固定電話(アナログ電話等)からの通報に関して、IP電話等と同じシステムによる通報者位置情報の通知の可否について、技術的検討を進める。
(5)ICTを活用した効果的な人材育成の推進 様々な態様の災害現場をシミュレートし、消防職員(指揮者)の災害現場における情報収集・整理能力、判断力、指揮命令能力等を養成するシステムの拡充等を進める。また、消防大学校における教育の効率的・効果的な実施のため、e-ラーニングによる個別教育の充実を図る。
(6)震度情報ネットワークシステムの高度化 震度情報ネットワークシステムの通信の高速化、大容量化等が必要とされていることを踏まえ、地震情報が迅速かつ確実に把握できるよう、システムの施設や設備の更新・高度化を促進する。
5 地域防災力の強化(1)地域防災力の強化とコミュニティ活動の活性化 自主防災組織率の向上、自主防災組織の強化のため、市町村、都道府県各レベルでの連絡協議会の体制の充実を図るとともに、防災研修の実施を通じ、自主防災組織の結成促進を図る。 また、コミュニティ活動の活性化により地域社会の再生を図ることも念頭に置きつつ、住民相互間の協力及び信頼関係を醸成するため、消防団をはじめ優れた知識、技能等を持つ組織や個人と自主防災組織との一層の連携を推進する。
(2)地域安心安全ステーションの全国展開 自主防災組織等の地域住民が消防職団員の指導の下で消火訓練・応急手当訓練等を実施する地域安心安全ステーションについて、これまでの整備、消防団や婦人(女性)防火クラブとの連携等の成果を踏まえ、地域安心安全ステーション優良実践者を派遣して出前講座等を実施し、優良事例等を情報提供することにより、本格的な全国展開に向けた取組を推進する。
(3)災害時要援護者支援対策の推進 地方公共団体が作成する災害時要援護者避難支援プランについて、関係者間における要援護者情報の適切な共有等により、同プランの策定が促進されるよう、全国的な普及啓発活動を進める。
(4)緊急物資調達の調整体制の構築 各地方公共団体が備蓄している物資の内容・数量等をあらかじめ把握し、被災地方公共団体が必要とする災害支援物資が的確かつ円滑に供給されるための情報共有を推進する。
(5)水難救助活動を行う民間との連携の推進 水難事故の現場において、ファーストレスポンダー(一次対応者)としての役割を持つライフガード(水難救助員)等の水辺で人命救助活動を実施している民間団体等と救助行政との連携体制や、その支援方策等について研究し、地域の救助体制の一層の充実強化を図る。
6 救急救命の充実・高度化(1)救急需要の増大に対する新たな取組 救急需要が引き続き高水準で推移することが見込まれる中で救命率の向上を図るため、トリアージ(緊急度・重症度の選別)の実用化に向けた検討や、住民に対する救急自動車の適正利用の呼びかけ等を行うことにより、真に緊急を要する傷病者に対する迅速な対応が可能な救急体制の整備を促進する。
(2)救命率の向上に向けたAED・応急手当の普及啓発の推進 AED(自動体外式除細動器)等救命機器の効率的な配置、設置場所の把握・公表、高機能化の検討等を関係機関との連携の下で進めるとともに、救命講習の充実や受講の推進を図ることにより、いつでも・どこでも・誰でも効果的な応急手当を行うことのできる社会を形成する。
(3)災害時における消防と医療の連携の推進 平成18年度、19年度に開催された「災害時における消防と医療の連携に関する検討会」における検討結果を踏まえ、消防と医療の連携モデルの作成・普及を図るとともに、様々な災害の想定の下での消防と医療チームの連携訓練を実施する。
(4)新型インフルエンザ対策の推進 新型インフルエンザが発生した際の関係機関の対応をまとめた「新型インフルエンザ対策ガイドライン(フェーズ4以降)」に基づき、救急隊員の感染防ぎょ対策及び新型インフルエンザ患者の搬送体制等の検討を行い、新型インフルエンザ発生時における適切な救急業務提供体制の整備を推進する。
7 消防防災分野における国際協力(1)国際的消防援助体制の充実 被災国への国際消防救助隊(IRT-JF:International Rescue Team of Japanese Fire-Service)の派遣を効果的なものとするため、国際消防救助隊セミナー等国際緊急援助活動に関する訓練・研修を実施し、活動体制の充実強化を図る。
(2)消防の国際協力及び国際交流の推進 開発途上国等の消防防災能力構築のため、アジア諸国における消防防災に関するセミナーの開催、消防防災分野の専門家の派遣等を実施する。国内においては、地方公共団体等の協力も得ながら、研修員の受入れ等を行う。 また、消防防災における国際交流を図るため、各国の消防行政に携わる幹部職員の招へいや消防防災関係者との交流、情報発信力の強化等を行う。
1 平成18、19年度の法令の制定
2 平成18年中の主な火災
3 都道府県別火災損害状況(1)3 都道府県別火災損害状況(2)3 都道府県別火災損害状況(3)
4 月別火災損害状況
5 出火原因別火災損害状況
6 主な出火原因の推移(上位10位)
7 用途別の主な火災事例
8 昭和21年以降の火災損害状況(1)8 昭和21年以降の火災損害状況(2)
9 昭和21年以降の火災損害比較
10 昭和21年以降の大火記録
11 自然災害による都道府県別被害状況
12 死に至った経過と年齢別の死者発生状況
13 火災種別ごとの死者発生状況
14 建物構造別・死因別死者発生状況
15 建物用途別及び階層別の死者の発生状況
16 建物火災の火元建物用途別の損害状況
17 防火管理に関する命令等(消防法第8条及び第8条の2)の状況
18 防火対象物に関する命令等(消防法第5条、第5条の2及び第5条の3)の状況
19 消防用設備等に関する措置命令等(消防法第17条の4)の状況
20 関東大地震以後の主な地震災害
21 東海地震に係る地震防災対策強化地域、東南海・南海地震に係る地震防災対策推進地域、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域
22 昭和23年以降の風水害等の記録
23 都道府県の防災訓練の実施状況
24 都道府県別市町村消防組織一覧
25 消防機関数と消防職団員数の推移
26 自主防災組織の都道府県別結成状況
27 危険物施設数の推移
28 容量別、都道府県別屋外タンク貯蔵所の施設数(完成検査済証交付施設)
29 石油コンビナート等特別防災区域の現況と防災資機材等の整備状況
30 主な石油コンビナート災害
31 救急自動車による都道府県別事故種別救急出場件数
32 救急自動車による都道府県別事故種別救急搬送人員
33 都道府県別救急業務実施状況
34 都道府県別経営主体別救急病院及び診療所告示状況一覧表
35 都道府県別救助活動件数及び救助人員
36 国庫補助金による年度別消防防災施設整備状況
37 国庫補助金による年度別消防防災設備整備状況
38 2005年 世界主要都市の火災状況
39 地域衛星通信ネットワーク地球局整備状況
40 市町村防災行政無線通信施設整備状況
41 危険物施設の火災・漏えい事故件数の推移(過去20年)
42 危険物施設における火災発生原因の推移