はじめに 昭和23年3月7日に消防組織法が施行され、市町村消防を原則とする我が国の自治体消防制度が誕生してから、本年で60周年を迎えました。これを記念して、本年3月7日の消防記念日には、自治体消防制度60周年記念式典を開催し、我が国における消防の発展を回顧するとともに国民から消防に課せられた使命の重要性を再確認しました。 近年、社会経済情勢の変化とこれに伴う地域社会の変化により、災害の態様も複雑多様化するなど、消防防災行政を取り巻く環境は、大きく変化しており、このような状況の中、国民の安心と安全を向上させていくためには、総合的な消防防災行政を迅速かつ積極的に推進していく必要があります。 平成20年版消防白書では、火災をはじめとする各種災害の現況と課題、消防防災の組織と活動、国民保護への取組、自主的な防災活動と災害に強い地域づくり等について解説するとともに、特集として、「地域総合防災力の強化〜消防と住民が連携した活動の重要性〜」と題し、自助・共助の精神に基づく住民一人ひとりによる防災の取組と消防との連携の必要性、地域防災の中核的存在である消防団の充実強化、自主防災組織など民間の防災組織の活動、住宅用火災警報器のすみやかな普及に向けた取組について紹介しています。 また、消防防災上、特に話題性のある4項目をトピックスとして紹介しています。 トピックスIは、大規模災害に対応するための消防庁の取組や法改正の概要をまとめた「大規模災害に備える」です。 トピックスIIは、消防力の強化等を図るべく推進している消防の広域化について、広域化実現後の消防の将来像を中心にまとめた「市町村の消防の広域化〜将来の消防本部〜」です。 トピックスIIIは、救急搬送時の受入医療機関の選定に困難を来す事案への対応についてまとめた「消防と医療の連携の推進〜迅速な救急搬送を確保するために〜」です。 トピックスIVは、中国への初の国際災害救助として国内外で高く評価された「中国四川省大地震災害における国際消防救助隊の活動について」です。 これらを踏まえ、この白書が国民の生命、身体及び財産を災害から守る消防防災活動について、国民の皆様の認識と理解を深めるとともに、国、地方公共団体だけではなく住民、企業も含めた総合的な消防防災体制の確立に広く活用いただけることを願います。平成20年12月
特集 地域総合防災力の強化〜消防と住民が連携した活動の重要性〜1 地域総合防災力の強化の必要性(1)切迫する大規模災害 我が国では平成20年度も、岩手・宮城内陸地震や相次ぐ水害など、全国各地で大規模な自然災害による被害が発生している。 集中豪雨が頻発していることや、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の大規模地震の発生の切迫性が指摘されていることもあり、国民の安心・安全に寄せる関心は極めて高い。 消防防災体制の充実強化は、国、地方を通じた最重要課題の一つである。平成20年8月末豪雨による浸水被害(愛知県岡崎市提供)
(2)地域総合防災力の強化 大規模な災害に対処するためには、常備消防(消防本部・消防署)の広域化や被災地への応援部隊として全国から出動する緊急消防援助隊の充実など広域的な体制の整備も大切であるが、同時に、発災直後の速やかな対応を図るためにも、自助・共助の精神に基づいた各地域の防災体制を強化していく必要がある。 地域の防災を支える担い手は様々である。消防機関はもちろんのこと、自治会や町内会等を単位とした住民の自主防災組織や婦人(女性)防火クラブなど民間の防災組織、さらには企業その他の団体やボランティアグループ、一般の住民なども、地域防災の担い手である。 こうした担い手が互いに連携するとともに、平時の予防活動から応急対策、そして復旧に至るまでのあらゆる活動が円滑に行われなければならない。 いわば地域の総合的な防災力(この特集において「地域総合防災力」とする。)の強化が急務となっているのである。 また、大規模な災害に限らず、例えば依然高水準にある住宅火災の被害を軽減していくためにも、地域全体での取組は欠かせない。住民一人ひとりが火災の予防に努めることや、ひとたび火災が発生すれば消防機関が迅速に出動し、消火にあたることはもちろんであるが、普段の防火意識の普及啓発活動や住宅用火災警報器の設置などの住宅防火対策の面では、常備消防や消防団が、婦人(女性)防火クラブなどの民間組織や地域住民と連携・協力することが必要である。第1図 地域防災の担い手と連携
(3)地域総合防災力の充実方策に関する小委員会報告 消防審議会に設置された地域総合防災力の充実方策に関する小委員会において、平成20年11月に報告書が取りまとめられた。その要点としては、まず地域防災を担う人づくりの必要性が挙げられる。地域の防災を支えるのは、住民が自ら判断し、また互いに助け合って行動する自助・共助の取組である。消防庁では、eラーニング方式による教育システム(防災・危機管理eカレッジ)を構築し、子どもを含む住民等を対象に基礎的知識から実践的な内容まで様々なコンテンツを提供しているところであるが、今後は、広く住民が防災に関する知識や技術を習得する機会をさらに増やしていくとともに、地域のリーダー役となる人材の育成により一層力を入れていく必要がある。 そのほか、地域防災の要となる消防団の充実強化や民間防災組織の活動促進等が掲げられており、これらの点に関して、以下(2及び3)に述べる。
2 地域防災の中核的存在である消防団の充実強化(1)消防団の役割〜連携のつなぎ役〜 地域総合防災力の強化を考える上では、以下の点から消防団の役割が極めて重要となる。 第一に、消防団は「自らの地域は自らで守る」という精神に基づき、住民の自発的な参加により組織された住民に身近な存在であるという点である。 地域の防災力を強化する上では、様々な主体が日頃から連携することが必要であるが、消防に関する専門的な知識・技術を有するとともに、地域の実情を熟知している消防団は、その連携を円滑に進めるためのつなぎ役として重要な役割を果たす。現に、地域の防災訓練における初期消火や応急手当の指導などで消防団員が活躍している例は少なくない。 第二に、消防団は常備消防とは異なる特性を生かした活動が期待されるということである。 大規模災害時には、被害が広範囲にわたり、被災者の数も多数にのぼるため、消火活動はもとより救助活動、避難住民の誘導等に大量の人員を速やかに投入しなければならない。この場合、先に述べた地域の事情に精通している(地域密着性)という点のほか、消防職員の約6倍の人員を有し(要員動員力)、現地に居住又は勤務しており速やかに対応できる(即時対応力)、といった特性を有する消防団の役割は極めて大きいものがある。 また、日頃からの戸別訪問等による火災予防活動や、地域の防災訓練への参加など、地域のニーズにきめ細かく対応する活動においても、その役割が期待されていると言えよう。 このように、消防団は、その特長や能力の面で、地域防災の中核的存在として活動することが期待されているところであり、その充実強化が求められている。消防団と自主防災組織の防災訓練 静岡県静岡市(静岡市消防防災局提供)
(2)災害時における活躍 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いでおり、多くの消防団員が出動し、関係機関と連携をしながら、昼夜を分かたず多岐にわたり活躍している。 平成20年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震では、各地で大きな被害が発生したが、行方不明者の検索活動、河川の警戒、土のう作りなど、消防団員による献身的な活動が行われた。 最近では、このような大規模災害に対応するため、倒壊家屋や道路障害物を排除し人命救助活動を円滑に行うための重機隊など、独自の体制を整えている消防団もあり、更なる活躍が期待される。岩手・宮城内陸地震における検索活動状況 宮城県栗原市駒ノ湯(栗原市提供)重機を使用した救助救出を任務とする重機隊 東京都武蔵野市(武蔵野市提供)
(3)消防団員の確保 しかしながら、消防団員の数は減少し、近年は全国で90万人を割る状況となっており、消防団員の確保は、地域の防災力を高める上で極めて重要な課題である。少子高齢化や過疎化など社会環境の変化や地域社会の変容に対応しながら、被雇用者や女性、若者をはじめとする住民に対して、関係者が一体となって引き続き入団を促進していく必要がある。〔1〕 消防団協力事業所表示制度 とりわけ、全消防団員の約7割が被雇用者となっている現状の下では、被雇用者団員の活動しやすい環境を整備することが急務である。消防庁では、消防団活動への事業所の一層の理解と協力を得るために、消防団活動に協力している事業所を顕彰する「消防団協力事業所表示制度」を設け、市町村等における導入の促進を図っている。特別の休暇制度を設けて勤務時間中の出動に便宜を図ったり、従業員の入団を積極的に推進する等の協力は、地域の防災体制の充実に資すると同時に、事業所が地域社会の構成員として防災に貢献する取組であり、当該事業所の信頼の向上につながるものである。「消防団協力事業所表示制度」表示証(市町村等交付用)第2図 消防団協力事業所表示制度イメージ図〔2〕 機能別団員・分団制度 また、特定の災害活動や役割を担う機能別団員・分団制度の導入も進められている。大規模災害の時のみ出動する団員や、一般家庭への防火指導など予防活動のみを行う団員、また、長年の消防活動で培った知識、経験を有する消防職団員OBで構成する災害活動の後方支援等を行う分団など、多様な消防団組織の拡充が進められており、被雇用者である団員の割合が高くなっている中で、団員の確保と体制の充実のための有効な方策である。消防団国際会議 平成20年5月14日(水)、15日(木)の2日間にわたり、世界各国から消防団(義勇消防)の代表者が集い、全国の消防団関係者や消防関係者等の参加の下、世界で初めての「消防団国際会議」が開催された。 この会議は、消防団関係者の国際的な情報交換と連携を深め、各国における消防団の発展を図ることを目的に、消防庁と財団法人日本消防協会が、全国知事会等との共催により自治体消防制度60周年記念事業として開催したものである。会議では、人々の安全確保と消防団の発展を目指すため、「世界消防団の充実発展を目指す東京宣言」が採択された。消防団国際会議の様子参加国:アメリカ合衆国、カナダ、ドイツ連邦共和国、英国、スイス連邦、フィンランド共和国、オランダ王国、オーストリア共和国、オーストラリア連邦、中華人民共和国及び日本の11カ国。東京宣言の概要:装備、機材の改善や団員の訓練の充実、消防団員の活動環境の整備、青少年消防組織の活性化、女性の参加促進、世界各国の消防団の情報交換・連携の強化
3 自主防災組織などの活動(1)自主防災組織 防災体制の強化については、公的な防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、地域住民が連帯し、地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気、ガス、水道等のライフラインが寸断され、公的機関の災害対応に支障を来すことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という信念と連帯意識の下に、組織的に自主的な防災活動を行うことが不可欠である。〔1〕 自主防災組織の活動 自主防災組織は、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等を行うこととしている。 例えば、神戸市の「大日通(だいにちどおり)周辺地区まちづくりを考える会」では、阪神・淡路大震災の教訓をもとに、震災体験についてのアンケートを実施し、これを地元デザイン専門学校の学生や市の協力を得て、多言語による「防災と備えの絵本」を制作し、市内の小中学校等に配布した。「防災と備えの絵本」(インドネシア語版) また、生徒手帳に入る大きさの「必ず役に立つ防災カード」を地域の児童生徒等に配布するほか、地域の保育園、小学校、企業と連携した津波避難訓練、子ども達に心をこめて折り鶴を折ってもらいながら震災で学んだ命の尊さや助け合いを語り継いでいこうとする「千羽鶴プロジェクト」の実施など、多様な活動を行っている。千羽鶴プロジェクト さらに、事業所、商店街など各協力団体が提供できる施設や資機材・技術等を事前に登録しておき、非常時などに無償で活用しあう「宝島ネットワーク」と名付けた仕組みづくりを進めている。〔2〕 活動の支援 自主防災組織については、防災訓練など日頃からの活動をより活発にしていくとともに、組織の中心となって意欲的に活動する人材を育てていくことが課題となっている。消防庁では、「自主防災組織の手引」、「防災研修カリキュラム・講師支援教材」等を作成するほか、地域で出前講座を開催するなど、自主防災組織の結成、強化への取組を支援している。また、地域における防災のすぐれた取組について表彰をする「防災まちづくり大賞」を行っている。
(2)婦人(女性)防火クラブ 主婦等を中心に組織された婦人(女性)防火クラブは、家庭での火災予防の知識の修得、地域全体の防火意識の高揚等を図るとともに、万一の場合には、お互いに協力して活動できる体制を整え、安心安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、住宅用火災警報器の普及促進、防火防災意識の啓発等、地域の実情や特性に応じた防火活動を行っている。 例えば、石川県金沢市の「金沢市婦人防火クラブ協議会」では、各町会の集会で説明を行うとともに、独自に作成したチラシを市内全戸に回覧して約4,000世帯からの希望を募り、住宅用火災警報器12,000個余りを共同購入し、低価格を実現しながら地域の住宅用火災警報器普及を大幅に促進させた。また、自ら取り付けができない高齢者などへは、婦人防火クラブ員や消防団員等が取り付けに協力する体制を整えた。 消防庁では、婦人防火クラブの幹部研修会(中央及び地域研修会)に講師として参加するなどの支援を行っている。住宅用火災警報器に関する説明の様子
(3)少年消防クラブ・幼年消防クラブ〔1〕 少年消防クラブ 10歳以上15歳以下の少年少女により編成される少年消防クラブは、身近な生活の中から火災・災害を予防する方法等を学ぶことを目的とし、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの活動を行っている。 消防庁では、地方公共団体等とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成19年度は、特に優良なクラブ18団体、優良なクラブ23団体、及び優良な指導者7人を表彰した。 例えば、広島県東広島市の安芸津少年消防クラブでは、消防職団員等の指導の下、1日消防署体験で、応急手当、放水体験、救助資機材展示、はしご車展示などを体験するとともに、春、秋の火災予防運動にあわせ町内防火パトロールなどを実施している。 現行の少年消防クラブは中学生までを対象としたものであるが、1(3)に記述した地域総合防災力の充実方策に関する小委員会報告では、青少年消防組織は将来の消防を支える人材の育成とも関係するものであり、外国の事例も参考に、対象年齢の引き上げについて検討すべきであると述べられている。〔2〕 幼年消防クラブ 幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについて学び、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図ろうとするものであり、近い将来、少年・少女を中心とした防災活動に参加できる素地をつくるため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導の下に組織の育成が進められている。
4 住宅用火災警報器のすみやかな普及に向けた取組(1)依然高水準にある住宅火災被害 住宅火災による死者数は、平成15年以降5年連続して1,000人を超えるかつてない高い水準で推移している。このうち、約6割が65歳以上の高齢者であることから、高齢化の進展にあわせて今後さらに死者数が増加することが懸念されており、住宅防火対策の推進が消防行政の最重要課題の一つとなっている。第3図 我が国の住宅火災死者数の推移
(2)住宅用火災警報器の設置の義務化〔1〕 義務化の経緯 住宅火災においては、火災に気付かず逃げ遅れることにより犠牲になるケースが多いと考えられている。このため、米国、英国等においては既に住宅に火災警報器の設置が義務付けられていたが、米国では、その普及に伴い住宅火災による死者数が半減するという効果が現れている。こうしたことから我が国においても、戸建を含む全ての住宅を対象に住宅用火災警報器(以下、「住警器」という。)の設置を義務付ける消防法の改正が平成16年に行われた。平成18年6月から全国で義務化された新築住宅に続き、市町村条例で定めることとされていた既存住宅についても一部地域で既に義務化が始まっており、平成23年6月の義務化の全国拡大に向けて普及促進の取組が活発に行われている。第4図 米国での普及効果発現状況第5図 既存住宅の義務化時期 警報により早期に火災に気付き、「無事に避難できた。」、「初期消火に成功した。」といった奏功事例も全国から多数寄せられてきている。住警器の設置は住宅防火対策の「切り札」と言え、その一刻も早い各家庭への普及が期待される。〔2〕 住宅用火災警報器の普及状況 住警器の普及状況については、各地域においてアンケート等の方法により調査が行われているところであるが、消防庁においてその結果を収集し、独自の方法で平成20年6月時点に換算したところ、全国の推計普及率は35.6%となっている。この結果を見ると、未だ十分には普及が進んでいないため、今後も普及促進活動を強力に推進する必要がある。 なお、普及状況のデータは、効果的な普及策の展開や死者発生防止効果の説明等に活用されることにより、住警器のさらなる普及促進に資することが期待されるところであり、各地域において創意工夫を凝らした様々な方法で普及状況の把握が進められている。第1表 普及状況の推計結果
(3)住宅用火災警報器の普及に向けた取組 店舗や事務所等を対象としていた従来の消防用設備とは違って、一般家庭の住宅を対象とする住警器の普及には、これまでとは違う工夫を凝らした取組が求められる。このため各地域・各主体が知恵を出し、協力しながら様々な取組を試みているところであり、その成果として住警器の普及が図られ、住宅火災による被害の低減、安心・安全の地域づくりの実現が期待される。〔1〕 地域住民組織による取組 住警器の普及に最も効果を発揮しているのは、自治会や婦人会等の地域住民組織による取組である。特に自主防災組織や婦人(女性)防火クラブ、消防団等の防火活動に努めてきた組織を中心として、地域社会との繋がりを活かした効果的な取組が展開されている。 ア 共同購入の実現で地域の普及率を一気に向上 茨城県大子町では、消防団が中心となって住警器の共同購入を推進している。パンフレットやチラシの配布、注文の受付、集金を各分団長が責任者となって行い、販売事業者と交渉して低価格での購入を実現させた。その結果、町全体の普及率は平成19年12月時点で約50%となった。また、ほとんどの世帯で消防団員が取付け作業を行うことにより、早期に火災覚知できる適切な設置が徹底されている。消防団員による取付け作業の様子 イ 町会による古紙回収収益で住警器を購入 東京都豊島区の巣鴨三明町会では、古新聞の資源回収収益金での住警器配布を企画した。住警器の購入にあたっては販売事業者と粘り強く値引き交渉を行い、町会加入者全世帯に無料で配布することができた。また、1人暮らしの老人世帯には取付け作業も町会役員が実施した。 ウ 実火災をイメージした隣近所が支え合う安全体制づくり 茨城県那珂市の額田地区では、住警器の設置が効果を上げるためには避難誘導に対する近隣住民の協力が欠かせないと考え、地区会費で高齢者宅に住警器と連動した外部ブザーを設置することにした。さらに、ブザー鳴動時に近隣住民が避難誘導する訓練も実施しており、実火災に備えた体制づくりに努めている。〔2〕 地域事業者による取組 地域に根ざして活動する事業者も住警器の普及に向けた取組を展開している。地域社会に貢献し、地域とともに発展しようとする経営理念が地域の事業者に浸透し、効率的に住宅防火が推進されることが期待される。 ア 不動産事業者による普及促進 都市部では一般的に賃貸住宅世帯が多く、それらへの住警器の普及が住宅火災による被害の低減の鍵となる。千葉市宅地建物取引業協同組合では、組合員である不動産事業者を対象に住宅火災の実態や住警器の設置義務化、奏功事例等を説明する研修会を開催し、意識啓発を図っている。また、住警器を設置した賃貸住宅には、それが一目でわかるステッカーを独自に作成して各戸の玄関に貼付する活動を行い、安全性をアピールすることで地域社会との信頼を築いている。玄関に貼られた設置済みステッカー イ 身近な公共交通機関で住警器普及促進広報 関東バス株式会社では、東京都の荻窪消防署と連携して同署管内を運行する路線バス200台で住警器の普及を呼び掛ける車内広報を無償で実施した。車内にポスターの掲示、配布用リーフレットの設置を行うとともに、車内アナウンスでも住警器の設置を呼び掛けた。実施にあたっては乗客からの質問等に対応できるよう、住警器についての乗務員教育も行っている。〔3〕 地域力を活かした取組の促進 住警器の普及には各地域・各主体の取組が必要不可欠である。このため、消防庁では、消防団や婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等のリーダーを対象として住警器の普及を呼び掛けるシンポジウムを全国各地域で開催している。シンポジウムでは、他地域での地域力を活かした先進的な取組事例の紹介も行っており、住警器の普及を推進するための知恵や工夫を参加者が持ち帰り、自分の地域での取組に活用することにより住警器の普及が加速することが期待される。
トピックスI 大規模災害に備える1 はじめに(1)切迫する大地震 特集で述べたように我が国では、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の大規模地震発生の切迫性が指摘されている。また、我が国には、陸域において約2,000もの活断層が確認されており、こうした活断層の活動によって引き起こされる強い地震がいつ、どこで起こるか分からない状況にある。 このような中、大規模地震に備えることが喫緊の課題となっている。
(2)地震防災対策の強化 消防庁では、これまで地震防災対策の強化・推進に取り組んできた。特に平成7年の阪神・淡路大震災以降、直ちに緊急消防援助隊が創設され、また同年の消防組織法の改正により広域応援体制の充実が図られた。さらに、平成15年には、消防組織法の改正により緊急消防援助隊が法制化され、翌年4月に新たな体制で発足した緊急消防援助隊は、今日に至るまで地震時等における出動実績を着実に積み重ねてきている。平成19年には、大規模建築物等における防災管理体制を強化するための消防法の改正が行われるなど、法令の整備が図られてきたが、この間、防災拠点となる公共施設の耐震化を促進するための環境整備や災害時における消防と医療の連携の推進等の種々の地震対策もすすめてきたところである。 平成20年度においても、更なる地震防災対策として、「消防法及び消防組織法の一部を改正する法律」(平成20年法律第41号)が平成20年5月28日に公布、同年8月27日に施行され、行政機関による危険物流出等の事故の原因調査体制の整備とともに、災害時に全国規模で消防応援を行う緊急消防援助隊の機動力の強化が図られている。 また、住民に情報を伝達するための全国瞬時警報システム(J-ALERT)及び住民の安否情報の収集・提供のための安否情報システムの活用の推進や、事業所の自衛消防力の確保を促進することによる防災力の強化を図るための取組なども進められている。 これらの施策の詳細について、以下、項目ごとに述べることとする。
2 危険物施設の事故防止対策の推進(1)危険物事故の動向と調査体制の整備 危険物施設(火災危険性の高い物質として消防法で規制されるガソリンや軽油などの「危険物」を、指定数量以上貯蔵し又は取り扱う製造所、貯蔵所及び取扱所)で発生した火災・流出事故は、平成6年まで減少傾向を示したが、平成7年から増加傾向に転じ、平成19年中の発生件数は、火災が169件、流出事故が443件と、平成6年と比べて火災が約1.5倍、流出事故が約2.5倍になり、統計を取り始めてから過去最多となった。 このような危険物事故の増加傾向を踏まえると、大規模地震発生時に、危険物施設における危険物流出事故や施設の破損事故等に起因する火災・爆発の災害が発生する可能性は高まっているといえる。そのような災害による被害を防止するためには、平時からの危険物流出等の事故防止対策が必要であり、その第一歩として、それぞれの事故原因を精確に調査し、その結果の蓄積・分析に基づく危険物に係る技術基準の見直しや施設点検技術の向上など、的確な事故防止対策につなげることが不可欠である。 しかし、これまで消防機関による火災原因調査の制度はあったが、火災にまで至らない危険物流出等の事故についての原因調査の制度が未整備であったため、精確な原因調査を行政機関が行うことは困難であった。 そこで、危険物施設における危険物流出等の事故の原因を効果的・効率的に究明できるよう、平成20年8月に改正消防法が施行され、火災にまで至らない危険物の流出等の事故について、危険物施設に対する許可を行う市町村長、都道府県知事又は総務大臣(以下「市町村長等」という。)が原因調査を行うことができるようになった。
(2)危険物流出等の事故の原因調査制度の概要ア 市町村長等による原因調査 危険物施設で発生した、火災にまで至らなかった危険物の流出等の事故について原因調査を実施するため、市町村長等は、事故が発生した危険物施設や、その事故の発生と密接な関係があると認められる場所の所有者、管理者又は占有者に対して資料の提出を命じ、又は報告を求めることができ、また、職員にこれらの場所に立ち入らせ、所在する危険物の状況や当該危険物施設など事故に関係のある工作物や物件を検査させ、関係のある者に質問させることができる。イ 消防庁長官による原因調査 市町村長又は都道府県知事は、自らの調査体制では事故の原因究明が困難な場合などに、消防庁長官による事故の原因調査を求めることができる。消防庁長官は市町村長又は都道府県知事からの求めに応じて、市町村長等が事故の原因調査を行う場合と同様の権限を行使して、事故の原因調査を実施できる。第1図 危険物流出等の事故の原因調査制度の概要
(3)危険物事故の防止に向けて 新たに整備された危険物流出等の事故原因調査制度の活用により、個別の事故の精確な原因を把握し、調査結果を蓄積・分析して、より的確な事故防止対策の企画・立案につなげることが重要である。 消防庁では、各消防機関が効率的・効果的に事故調査を行う上での参考とすることや、調査を実施する消防職員を養成するための都道府県消防学校等での教育における活用等も期待して、危険物流出等の事故原因調査マニュアルを作成・配布するとともに、消防大学校における教育カリキュラムの見直しを進めているところである。今後、原因調査を通じて得られた知見が多方面で効果的に活用されるよう、オンラインによる情報共有化の取組や、必要な技術基準の見直しの検討等を行い、消防機関のみならず、官民一体となった事故防止対策を推進していくこととしている。
3 緊急消防援助隊の効果的な運用(1)広域消防応援制度に関する現状と課題 緊急消防援助隊は、平成7年の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、迅速で効果的な消防の広域応援のため同年に創設された仕組みである。平成15年6月の消防組織法の改正により法制化され、平成16年4月から法律に基づく部隊として位置づけられている。 その後、複数の豪雨災害や地震、平成17年4月に発生した列車脱線事故、さらに、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震においても出動し、人命救助活動等に大きな成果を上げている。 このように、緊急消防援助隊の活動実績が積み上げられてきたところであるが、緊急消防援助隊の運用に関して次のような課題も指摘されるようになってきた。 大規模災害時に出動できる緊急消防援助隊には限りがあるため、既に災害発生市町村において行動している緊急消防援助隊を他の災害発生市町村に移動させる必要の生じる場合があるが、これまでは、緊急消防援助隊の部隊配備に係る都道府県知事の法律上の権限・役割が明確でないことから、出動後の状況変化に応じて部隊を他の災害発生市町村に移動させるには支障があった。このことは、災害の現場において迅速に活動することが求められる緊急消防援助隊の機動力の観点から問題があるとされていた。 また、消防庁長官が緊急消防援助隊の出動に係る指示を出すことができる場合は、大規模な災害で2以上の都道府県の区域に及ぶもの又は毒性物質発散等の特殊な災害に限られていたが、今日、活断層等により局地的に甚大な被害をもたらす地震の危険性が指摘され、1の都道府県内で大規模な被害が発生する場合も想定されているところであり、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示の要件を見直す必要があった。 そこで、第169回国会(平成20年通常国会)において、緊急消防援助隊の部隊移動に関する規定を整備するとともに、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示の要件の見直し等により、緊急消防援助隊の機動力の強化等を図るための消防組織法の改正が行われた。第2図 緊急消防援助隊の機動力の強化等について
(2)緊急消防援助隊の機動力の強化等のための消防組織法の改正ア 都道府県知事による災害発生市町村において既に行動している緊急消防援助隊に対する出動の指示権の創設等 都道府県の区域内に災害発生市町村が2以上ある場合において、緊急消防援助隊が行動している災害発生市町村(以下「緊急消防援助隊行動市町村」という。)以外の災害発生市町村の消防の応援等に関し緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事は、当該緊急消防援助隊に対し、当該都道府県内の他の災害発生市町村への移動の指示をすることができることとされた。イ 消防応援活動調整本部の設置 都道府県の区域内に災害発生市町村が2以上ある場合において、緊急消防援助隊が消防の応援等のために出動したときは、都道府県知事は、消防の応援等の措置の総合調整等を行う消防応援活動調整本部を設置することとされた。消防応援活動調整本部は、〔1〕災害発生市町村の消防の応援等のため都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村が実施する措置の総合調整に関する事務及び〔2〕この総合調整の事務を円滑に実施するための自衛隊、警察等の被災地で災害対応にあたる関係機関との連絡に関する事務をつかさどることとされた。通常、緊急消防援助隊が出動している都道府県においては、都道府県の航空消防隊による消防の支援、都道府県内の市町村による消防の応援等が行われていることが想定されるが、消防応援活動調整本部により、このような都道府県内での消防の応援等が統一的に行われるとともに、上記アの都道府県知事の指示が円滑に行われることが期待されている。ウ 消防庁長官による災害発生市町村において既に行動している緊急消防援助隊に対する出動の指示等の規定の整備 災害発生市町村において行動している緊急消防援助隊は、緊急消防援助隊行動市町村の長の指揮の下に行動しているが、このことは緊急消防援助隊の隊員の属する市町村の長が、消防庁長官の指示等に基づき、当該緊急消防援助隊に対し、緊急消防援助隊行動市町村以外の災害発生市町村への移動を命ずることを妨げるものではないとされた。エ 消防庁長官による緊急消防援助隊の出動に係る指示の要件の見直し 大規模な災害の発生が1の都道府県内に限られる場合であっても、当該災害に対処するために特別の必要があると認められるときは、消防庁長官は、災害発生市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事又は当該都道府県内の市町村の長に対し、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を指示することができることとされた。
4 全国瞬時警報システム(J-ALERT)と安否情報システムの活用(1)全国瞬時警報システム(J-ALERT)ア 運用状況 消防庁では、緊急地震速報をはじめ、津波警報、弾道ミサイル発射情報等といった、対処に時間的余裕のない事態に関する緊急情報を、人工衛星を用いて市町村の同報系防災行政無線等を自動起動させることにより、住民に瞬時に伝達するシステムの整備を推進している。平成20年10月1日現在、42都道府県及び134市区町村において運用されている(情報の受信のみの団体も含む)。イ 今後の方向性 消防庁では、同報系防災行政無線以外にも、業務用無線方式の一つであるMCA無線やコミュニティFMなど多様な手段を用いて緊急情報を住民に伝達することや、新たに開発されたJ-ALERT専用小型受信機を用いて、消防署所、役場出先庁舎、公立学校・病院等において情報を直接受信できるようにするなど、利用範囲の拡大に取り組んでいる。 また、地方公共団体においては、ハード面の整備に併せて、J-ALERTを用いた緊急地震速報の訓練など、同報系防災行政無線等からの情報が伝達されたときに、どのような行動をとるべきか等の必要な情報を住民に周知する等のソフト面での取組や避難訓練を行うことが重要である。第3図 全国瞬時警報システム(J-ALERT)の今後の拡大の方向性
(2)安否情報システムについて 安否情報システムは、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(平成16年法律第112号)に規定される安否情報事務(「第3章 国民保護への取組4(2)イ 安否情報システム」参照)を効率的に行うことを目的に、消防庁が開発したシステムであり、平成20年4月25日に運用を開始したところである。ア 安否情報システムの主な機能 安否情報システムは、武力攻撃に限らず、大地震をはじめとする自然災害や事故の際にも利用することが可能であり、機能としては、〔1〕避難所、医療機関、警察機関等から収集した安否情報をシステムに入力する機能、〔2〕入力された安否情報のうち誤入力や重複した安否情報について、修正や重複の排除をし、安否情報を最新かつ正しいものに整理する機能、〔3〕整理した安否情報を、市町村はその区域を管轄する都道府県に、都道府県は国(消防庁)に報告し、国において全地方公共団体が安否情報を共有できるようにする機能及び〔4〕国民からの照会に対し、システムから被照会者に係る安否情報を検索し、検索した安否情報を回答書の様式で印刷する機能がある。第4図 安否情報の入力・整理・報告・提供の流れイ 今後の取組 消防庁としては、自然災害の際に利用する場合の課題や準備事項について情報提供を行うなど、地方公共団体への支援を行っているところであるが、引き続き、事務処理が円滑かつ的確に実施されるよう安否情報システムの操作訓練や、国民保護共同訓練における利用を推進し、体制の検証及び課題の抽出に努め、システムの充実強化を図っていくこととしている。
5 大規模・高層建築物等の自衛消防力の確保(1)大規模地震発生時等における建築物等の防災対策の課題 消防法では、一定規模の防火対象物に対して火災による被害防止を図るため、管理権原者(建築物の管理行為を法律、契約又は慣習上当然行うべき者。所有者や借受人が該当)が防火管理者を選任し、消防計画を作成させてこれに基づく消火、通報、避難の訓練実施等の防火管理業務を行わせることが義務付けられているが、地震災害を想定した計画の作成や訓練の実施の取組については義務付けられていなかった。また、自衛消防組織についても、これまで防火管理業務の一環として消防計画に定める事項の一つとされてきたものの、組織構成等の具体的内容に関しては関係者の自主的な取組に委ねられていた。このため、特に大規模・高層建築物等は、適切な対策が実施されていない場合の消防防災上のリスクが極めて大きいため、大規模地震に対する自衛消防力の確保を図ることは、喫緊の課題であった。
(2)大規模地震等に対応した自衛消防力確保のための消防法の改正 平成19年6月22日に消防法の一部を改正する法律が公布され(平成19年法律第93号。以下「平成19年改正消防法」という。)、平成21年6月1日から施行されることとなった。平成19年改正消防法では、消防法第36条により防火管理に関する規定が火災以外の災害にも準用されることとなり、一定の大規模・高層建築物等の管理権原者は、資格を有する者のうちから防災管理者を定め、地震災害に対応した消防計画を作成し、これに基づいて地震発生時に特有な災害事象に関する応急対応や避難の訓練の実施その他防災管理上必要な業務を行わせなければならないこととされた。また、新たに消防法第8条の2の5の規定が設けられ、一定の大規模・高層建築物等の管理権原者は、火災その他の災害による被害を軽減するために必要な業務を行う自衛消防組織を設置しなければならないこととされた。第5図 平成19年消防法改正の内容
(3)今後の取組 平成19年改正消防法による大規模地震等への対応や自衛消防組織の設置等の取組が円滑に進められるために、消防庁が消防計画の作成主体である管理権原者・防災管理者と制度の運用に当たる消防機関双方への技術的支援を的確に実施することが重要である。 特に、消防計画の基本的な内容については、少なくともおおむね震度6強程度の地震による被害を想定し、これを踏まえて消防計画を作成する手順等についてとりまとめた消防計画作成ガイドラインを示しているところであるが、今後も特に災害想定手法、地震発生時の対応行動及び新たな訓練手法等について最新の知見を取り入れたものへと充実強化を図っていくことが必要である。 また、自衛消防についての優れた取組への表彰等により、防火対象物関係者の積極的な取組を促進し、自衛消防力の向上とともに地域貢献等による地域防災力の向上を図ることが重要である。
トピックスII 市町村の消防の広域化〜将来の消防本部〜 災害の大規模化、住民ニーズの多様化等、近年の消防を取り巻く環境の急速な変化に的確に対応するため、第164回国会(平成18年通常国会)において、市町村の消防の広域化を推進するための消防組織法の改正が行われた。 消防庁では、消防力の強化等を図る上で、消防の広域化は、後述のような様々な効果が期待されることから、市町村の消防の広域化の推進に積極的に取り組んでいるところであり、以下、広域化推進の経緯、広域化実現後の将来の消防本部の姿、今後の広域化推進施策等について紹介する。
1 消防庁の取組 消防庁では、平成18年7月に「市町村の消防の広域化に関する基本指針」(平成18年消防庁告示第33号。以下「基本指針」という。)を定め、各都道府県は広域化の対象となる市町村(以下「広域化対象市町村」という。)の組合せ等を定めた消防の広域化に関する推進計画(以下「推進計画」という。)を平成19年度中に策定し、広域化対象市町村は推進計画策定後5年度以内(平成24年度まで)を目途に広域化を実現することなどを求めるとともに、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置し、市町村の消防の広域化に取り組んでいる。 平成20年度においては、広域化対象市町村への具体的な指導・助言を行う消防広域化セミナーの開催(囲み記事「消防広域化セミナーを全国各ブロックで開催」参照)、広域化について国民、消防関係者等への周知・理解の促進を図るためのパンフレットの作成、広域化を行う際の具体的な事務手続や留意事項等を提示する手引書の作成・配布等を行っている。また、前年度に引き続き、既に広域化を実現した消防本部の幹部職員等を消防広域化推進アドバイザーとして市町村等からの依頼に応じて派遣するとともに、消防の広域化の実現に向け、必要な財政措置を講じている。第1図 消防の広域化のスケジュール
2 各都道府県の推進計画の概要〜将来の消防本部〜 各都道府県においては、基本指針に基づき、平成19年度中に推進計画を策定することとされており、期限とされていた平成20年3月末時点では、30団体が推進計画の策定に至った。平成20年3月末時点で推進計画未策定の17団体においても関係者の合意形成を図りながら実現可能性のある推進計画の策定に向けて取り組んでいるところであり、平成20年11月1日現在では、38団体において推進計画が策定されている。以下、平成20年11月1日時点で策定されている38都道府県の推進計画に示されている広域化によって将来見込まれる消防本部の姿について概説する。
(1)消防本部の規模 消防本部の数は673本部から184本部へと約7割減少し、各消防本部の管轄人口に着目すると、管轄人口が30万人未満の消防本部の比率が減少する一方、管轄人口が30万人以上の消防本部の比率が大幅に増加する見込みである(第1表参照)。第1表 管轄人口別消防本部数の比較 これまで、小規模消防本部とされてきた管轄人口10万人未満の消防本部は414本部から34本部に大きく減少し(減少率は91.8%)、全消防本部に占める構成比は61.5%から18.5%にまで下がる見込みである。 また、基本指針においては、管轄人口の観点から言えば、おおむね30万人以上の規模を目標とすることが適当とされていたところであるが、管轄人口30万人以上の消防本部は63本部から87本部に増加し(増加率は38.1%)、全消防本部に占める構成比は9.4%から47.3%へと上昇し、消防本部の約半数は、管轄人口30万人以上となる見込みである。 さらに、管轄人口100万人以上の消防本部は8本部から31本部となり、4倍近くに増加する。 なお、管轄人口100万人以上の消防本部の区域内人口は現在の約2,600万人から約5,900万人(38都道府県の人口約1億400万人の約56.7%)となり、住民の約6割は、現在の政令指定都市並みの規模の消防本部の管轄下に入る見込みである。
(2)都道府県全域を管轄区域とする消防本部 都道府県ごとの広域化後の消防本部数は、各地域の特性等に応じて様々であるが、県全域を管轄する1つの消防本部(以下「県域消防本部」という。)の設置を計画する都道府県は、12団体に及んでいる。また、今回の期限内(平成24年度まで)では、県域消防本部となっていなくとも、将来は県域消防本部を目標とする、あるいは、望ましいとしている推進計画も複数見受けられるところである。
(3)広域化する消防本部の数 今回の計画で広域化の対象となっている消防本部の数は、38都道府県の673本部中、616本部であり、91.5%の消防本部が広域化の対象となっている。また、38都道府県のうち、21の都道府県においては、県内のすべての消防本部が広域化の対象となっている。第2表 策定済都道府県の状況
(4)非常備町村の常備化 平成20年4月1日現在、全国で12都府県40町村あった非常備町村は、11府県34町村において解消されることとなり、離島にある一部の町村を除いては、消防の常備化が達成されることとなる。
3 広域化の実現に向けて 今後は、各都道府県が策定した推進計画に基づき、広域化対象市町村間で広域化に向けた具体的な協議が開始され、広域消防運営計画の策定が進み、消防の広域化が実現することとなるが、広域化が実現することにより次のような効果が期待される。
(1)住民サービスの向上 広域化により1つの消防本部が保有する部隊数が増え、初動人員が増強されるとともに、指令センター業務の統合や出動計画の見直し等により、統一的な指揮のもとで効率的に部隊を投入することができるようになり、効果的な災害対応が可能となる。 また、消防本部の管轄区域が拡大することにより、消防署所の配置及び管轄区域の適正化を図ることができるため、現場到着時間の短縮等の効果が期待できる。
(2)人員配備の効率化と充実 広域化により1つの消防本部全体の職員数が増加することにより、総務部門や通信指令業務の効率化で生じた余剰人員を、住民サービスを直接担当する部門に配置することができるようになり、当該部門を増強することができる。特に近年著しく高度化している救急業務や予防業務について、専門的・専任的な職員を養成することも可能となる。 また、人事ローテーションの設定が容易になることや、職務経験の不足や単線的な昇進ルートが解消されることが期待されるため、様々な職務経験を有し、幅広い分野の識見を有する職員を養成することが可能となる。 さらに、職員1人当たりの教育及及び訓練の機会も増えることが予想されるとともに、広域化実現前の他の消防本部の職員と接し、切磋琢磨することにより、各職員の質の向上が図られるものと考えられる。
(3)消防体制の基盤の強化 広域化により財政規模が拡大するため、消防施設設備の計画的な整備の推進、重複投資の回避等が図られるなど、効率的な財政運営に資することとなる。また、小規模な消防本部では整備が困難なはしご付消防自動車や救助工作車などの高度な車両や発信地表示システム等を備えた高機能な指令設備等の計画的な整備が可能となる。 消防庁では、広域化の実現によって期待される以上のようなメリットを踏まえ、広域化対象市町村において広域化の実現に向けた積極的な検討が行われるよう、消防広域化推進本部を中心に、引き続き広域化の推進に取り組むこととしている。
トピックスIII 消防と医療の連携の推進〜迅速な救急搬送を確保するために〜1 救急業務の現状 救急業務は、国民の生命・身体を事故や災害等から守り、安心・安全な社会を確保するものであり、我が国においては、昭和38年に法制化されて以来、国民にとって必要不可欠な行政サービスとして定着している。 現在、少子高齢化社会の進展や住民意識の変化及び核家族化等に伴って救急需要が拡大しており、平成19年中の救急出場件数は約529万件で、平成9年からの10年間で約52%増加している。一方で、全国の救急隊数は、平成10年からの10年間で約8%の増加にとどまっている(第1〜3図参照)。第1図 救急出場件数と救急隊数の推移第2図 救急自動車の現場到着時間第3図 現場到着から病院収容までの時間 このため、緊急性のある傷病者の搬送には、迅速かつ的確な対応が必要とされるにもかかわらず、救急隊の現場到着時間は平成9年の平均6.1分に対し、平成19年では7.0分であった。また、現場到着から病院収容までの時間は平成9年の平均19.9分に比べ、平成19年では26.4分と遅延傾向にあり、特に心肺機能停止状態の傷病者の発生など一刻を争う局面においては、今後、地域によっては、救急隊の到着が遅れるおそれがあり、深刻な問題となっている。 このような現状を受け、消防庁においては、「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」(平成17年度)や「救急需要対策に関する検討会」(平成17年度)を開催し、救急需要対策について総合的な検討を行うとともに、「救急業務におけるトリアージに関する検討会」(平成18年度)を開催し、119番通報受信時における緊急度・重症度の選別(コールトリアージ)について検討を加えた。平成20年度は、これらの検討を踏まえ改良されたトリアージプロトコル(トリアージの運用要領)に基づき、4消防本部で実証検証を行うなどコールトリアージの導入に向けた具体的な取組を進めている。
2 救急搬送における医療機関の受入状況 全国各地で救急搬送時の受入医療機関の選定に困難を来す事案が報告されたことから、消防庁では、平成19年10月に産科・周産期傷病者搬送の受入実態について調査を行い、結果を公表した。また、平成20年3月には、 〔1〕重症以上傷病者搬送事案 〔2〕産科・周産期傷病者搬送事案 〔3〕小児傷病者搬送事案 〔4〕救命救急センター等搬送事案に調査対象を拡大し、平成19年中の受入れ実態について調査を行い、結果を公表した。 当該調査によって、例えば〔1〕の重症以上傷病者搬送事案において、医療機関に受入れの照会を4回以上行った事案が14,387件あること、地域別の状況をみると、首都圏、近畿圏等の大都市周辺部において照会回数が多く、4回以上の事案の占める割合が全国平均(3.9%)を上回る団体(10都府県)における4回以上の事案数が、全国の事案数の85%を占めるなど、選定困難事案が一定の地域に集中して見られる傾向があることが判明した。また、受入れに至らなかった主な理由としては、処置困難(22.9%)、ベッド満床(22.2%)、手術中・患者対応中(21.0%)等の理由が挙げられた。 さらに3次救急医療機関と2次以下の救急医療機関における受入れに至らなかった理由の割合について、これらを区分して集計することが可能であった7都県において分析を行ったところ、3次医療機関で受入れに至らなかった理由において、「ベッド満床」が37.8%、「手術中・患者対応中」が34.5%と高いのに対し、2次以下の医療機関では「処置困難」が39.0%と高く、両者において受入れに至らなかった理由の傾向が異なることが明らかになった(第4図参照)。第4図 救命救急センター等搬送事案における受入に至らなかった理由 救急搬送における受入医療機関の選定が、大変厳しい状況にあることを踏まえ、消防庁では、平成19年度に「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」を「救急業務高度化推進検討会」に設け、平成20年度も引き続き、円滑な救急搬送・受入医療体制を確保するための対策について検討を行っている。
3 消防と医療の連携の推進(1)消防機関と医療機関が定期的に協議する場の設置 「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」では、早急に講じるべき対策等について、平成19年度の検討成果を中間報告として取りまとめた。 その中で、救急搬送の適切な実施を確保するために、早急に講じるべき対策としては、医療機関による救急医療情報システムへの迅速・正確な入力、救急隊による正確な傷病者観察とそれに基づいた適切な医療機関選定・情報伝達、受入可能と表示した医療機関による受入の確保等が円滑に行われることが必要であることが指摘された。また、これら一連の行為は、消防機関、医療機関が連携して行うものであり、その適切な実施を確保するためには、消防機関、医療機関等の関係者による検証・協議の場を設置し、救急搬送・受入医療体制について事後検証を行うとともに、検証に基づく改善策について協議することが有効であるとされ、このような検証・協議を行う場としては、都道府県や地域のメディカルコントロール協議会の活用等が考えられると指摘された。 これまで、メディカルコントロール協議会は、医学的観点から救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置の質を保障することを主な役割として、各地域において体制の確保が図られてきた。メディカルコントロール協議会の役割の重要性にかんがみ、消防庁では、平成19年5月、関係機関と協力・連携し、「全国メディカルコントロール協議会連絡会」を立ち上げ、全国のメディカルコントロール協議会の質の底上げを図るとともに、関係者間で情報共有や意見交換を行う環境を整えるなどメディカルコントロール体制の充実強化を推進している。また、平成20年度は「メディカルコントロール作業部会」及び「救急業務高度化推進検討会」において、メディカルコントロール協議会の位置付けの強化等について検討を進めている。
(2)救急相談事業の推進 救急自動車の出動を要請すべきかどうかについて、十分な医学的知識に基づく判断を市民に求めることは困難であり、例えば赤ちゃんの突然の発熱やけが等の場合に、それが軽症であっても、市民が不安を感じ救急自動車の出動を要請してしまうことがある。従来も、消防機関においては市民からの問い合わせに対応するサービスや、診療可能な医療機関の情報を提供するサービス等を行っていたが、医学的判断に基づいた相談は行われてこなかった。 東京消防庁においては、平成19年6月より、救急自動車の出動要請をするかどうか迷った場合に、緊急受診の要否に関するアドバイスや、医療機関の紹介を行い、さらには応急手当等に関して相談に応じる「東京消防庁救急相談センター」(#7119)を開設し、医師、看護師等が24時間365日体制で対応し大きな成果を上げているところである。 市民の救急相談に対し救急車の出動も含め適切に対応することで、市民の安心と安全を確保していくため、消防庁では、今後、消防と医療の一層の連携を図りつつ、救急相談事業について推進していくこととしている。
トピックスIV 中国四川省大地震災害における国際消防救助隊の活動について1 派遣決定から出発まで 平成20年5月12日(月)15時28分頃(現地時間14時28分頃)、中国四川省を震源地とするマグニチュード8.0(中国地震局発表)の大規模な地震が発生した。この地震では、中国四川省を中心に死者・行方不明者あわせて8万人を超える甚大な被害が発生した。 消防庁では、地震発生当初から外務省国際協力局(以下、「外務省」という。)及び独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」という。)と緊密に連絡・協議を進めていたが、5月15日(木)中国政府からの支援要請に応じて国際緊急援助隊救助チームの派遣にかかる外務大臣からの協議を受け、12時20分、消防庁長官は正式に国際消防救助隊の派遣を決定し、当日の出動第1順位に登録されている東京消防庁、名古屋市消防局、川崎市消防局、市川市消防局及び藤沢市消防本部に派遣準備を要請した。同日17時05分までに国際消防救助隊17人は成田空港に集結し、国際緊急援助隊救助チームとなる他のメンバー43人(外務省、JICA、警察庁、海上保安庁等)と合流して国際緊急援助隊結団式を実施後、国際消防救助隊発隊式を行った。成田空港での国際消防救助隊(IRT-JF)発隊式 第1陣となった11人(総務省消防庁1人、東京消防庁5人、名古屋市消防局3人、市川市消防局2人)は同日18時30分頃北京に向けて出発し、翌5月16日(金)13時17分には、第2陣6人(東京消防庁1人、川崎市消防局3人、藤沢市消防本部2人)が四川省の成都に向けて出発した。
2 被災地での活動 第1陣は北京を経由して現地時間5月16日(金)2時23分に成都空港に到着し、陸路6時間以上の移動の末、中国側から活動サイトとして指示を受けた広元市青川県関庄鎮に到着した。この現場は、地震による土砂崩れで町全体が完全に土砂に埋まっている状況だった。関庄鎮の土砂崩れ現場 国際緊急援助隊救助チームの規模・装備等を勘案すると、このような大規模土砂災害現場で効果的な救助活動を行うことは極めて困難であることから、直ちに中国側と協議し、都市型捜索救助活動に適し、生存者の存在する可能性の高い同県喬庄鎮へ移動することとした。4時間近くを要して到着した喬庄鎮の現場では、6階建ての病院の建物が倒壊しており、その下に少なくとも母子2人が埋まっているとの情報を得た。そのため、到着後すぐに電磁波探査装置や二酸化炭素探査装置を活用して生体反応を探るとともに、重機(ドラグショベル)を用いて瓦礫を排除しながら徹夜で捜索救助活動を展開した。翌朝、母子(27歳と2ヵ月)の遺体を発見・収容し、親族に引渡すこととなったが、担架に収容した母子の遺体に対して、整列し黙祷を捧げる国際緊急援助隊救助チームの姿は、マスコミを通じて中国内外に報じられ、厳正な規律と真摯な態度を評価する声が聞かれた。喬庄鎮の病院倒壊現場での活動 翌5月17日(土)12時20分に第2陣が第1陣と合流した。国際緊急援助隊救助チームは、喬庄鎮に生存者がいる可能性は極めて低いと判断したため中国側と協議の上、新たな活動サイトを約300km離れた綿陽市北川県曲山鎮に決定した。地震による道路状況の悪化と車両渋滞から現地到着に10時間以上を要した。現地の活動サイトとなった北川第一中学校の倒壊現場においては、二酸化炭素探査装置を活用して生体反応を探りながら現場確認を実施した。 翌5月18日(日)は、北川第一中学校をメインの活動場所としつつ、チームの一部を市内の捜索に向かわせた。 北川第一中学校は、5階建て校舎の1、2階部分が挫屈し、多くの生徒がその下敷きになった現場であり、電磁波探査装置やエンジンカッター等を活用して捜索救助活動を実施した。 なお、現地では、中国の北京消防隊等と協力することとなり、この中には日本の消防機関で研修を受けた経験のある指揮官もいたことから、十分な連携を保ちつつ、救助活動を実施することができた。残念ながらこの現場でも生存者の発見には至らず、結局13人の遺体を収容した。倒壊した北川第一中学校での活動北川第一中学校の現場で中国の救助隊と協議 翌5月19日(月)は、前日に捜索救助活動を行った市内での活動を予定していたが、市内を流れる河川の上流にできた土砂崩れダムが決壊する危険があるとの情報を得たため、専門家の意見も聴取しつつ中国側と協議し、この日の活動を中止することとした。その後、同日深夜中国側と調整した結果、国際緊急援助隊救助チームは中国国内での救助活動を終了し、5月21日(水)に帰国することとなり、今回の派遣活動は実質的に終了となった。
3 帰国 翌5月20日(火)は、四川省副省長との会談が開かれ、席上、四川省側から国際緊急援助隊救助チームの献身的な活動に対する謝辞が述べられた。5月21日(水)、中国での任務を終えた国際消防救助隊17人は、早朝に成都空港を離陸し、日本時間8時55分頃成田空港に到着した。空港で行われた国際緊急援助隊解団式の終了後、消防庁へと移動し、国際消防救助隊の解隊式を行った。国際消防救助隊の解隊式
4 まとめ 今回の派遣では、強い余震が続く厳しい状況の下で、国際消防救助隊17人をはじめとする国際緊急援助隊は、昼夜を問わず懸命の救出活動に全力を尽くした。残念ながら生存者の救出には至らなかったものの、隊員たちの献身的な活躍については、7月に開催された北海道洞爺湖サミットに出席するために日本を訪れた中国の胡錦涛国家主席から直接感謝の意が示されるなど、国内外より高い評価を得たところである。胡錦濤国家主席と国際緊急援助隊
第1章 災害の現況と課題第1節 火災予防[火災の現況と最近の動向] 平成19年中の出火件数は昭和42年以降で最少となった前年に比べ、1,306件(2.5%)増加し、5万4,582件となった。 一方、平成19年中の火災による死者数は、前年に比べ62人(3.0%)減少し2,005人となったものの、火災による死者数は平成9年に2,095人を数えて以降11年連続して2,000人を超えている(第1−1−1図)。第1-1-1図 火災の推移
1 出火状況(1)出火件数は増加、1日当たり150件の火災が発生 平成19年中の出火件数は5万4,582件で、前年に比べ1,306件(2.5%)増加している。これは、1日当たり150件の火災が発生したことになる(第1−1−1表、第1−1−2表)。第1-1-1表 火災の状況第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況
(2)建物火災は全火災の57.2% 火災を6種類に区分し、その構成比をみると、建物火災が全火災の57.2%で最も高い比率を占めている。次いで、その他の火災(空地、田畑、道路、河川敷、ごみ集積場、屋外物品集積場、軌道敷、電柱類等の火災)、車両火災、林野火災、船舶火災、航空機火災の順となっており、昭和60年以降変化していない(第1−1−3表)。第1-1-3表 火災種別出火件数の構成比率
(3)冬季・春季に火災が多い 平成19年中の出火件数を四季別にみると、火気を使用する機会の多い冬季から春季にかけて多く発生しており、総出火件数の57.4%を占めている(第1−1−4表)。第1-1-4表 四季別出火状況
(4)出火率は4.3件/万人 平成19年中の出火率(人口1万人当たりの出火件数)は、全国平均で4.3件/万人で、前年より0.1ポイント増加している(第1−1−1表、第1−1−5表)。第1-1-1表 火災の状況第1-1-5表 出火率、出火件数、人口及び世帯数の変化 また、出火率を都道府県別にみると、最高は鹿児島県の6.3、次いで高知県、宮崎県の5.5の順となっており、一方、出火率が最も低いのは、富山県の2.3で、平成3年以降17年連続して最低となっている(第1−1−6表)。第1-1-6表 都道府県別出火率
(5)火災の覚知は119番通報、初期消火は消火器 平成19年中の消防機関における火災覚知方法についてみると、火災報知専用番号(119番)による通報が71.2%と圧倒的に多い(第1−1−2図)。第1-1-2図 火災覚知方法別出火件数 また、初期消火の方法についてみると、消火器を使用したものが21.5%と初期消火が行われたもの(63.6%)の中で最も高い比率になっている。一方で、初期消火を行わなかったものは36.4%となっており、この値を10年前(平成10年)と比較すると1.4ポイント増加している(第1−1−7表)。第1-1-7表 初期消火における消防用設備等の使用状況
2 火災による死者の状況 平成19年中の「火災による死者数」は2,005人で、前年の2,067人に比べ62人(3.0%)減少しており、そのうち放火自殺者を除いた死者数は1,430人で、前年の1,475人に比べ45人(3.1%)減少している。 また、放火自殺者数は575人で、前年の592人に比べ17人(2.9%)減少している(第1−1−3図)。第1-1-3図 火災による死傷者数の推移
(1)1日当たりの火災による死者数は5.5人 平成19年中の火災による1日当たりの死者数は5.5人で、前年の5.7人に比べ0.2人減少している(第1−1−2表)。第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況
(2)火災による死者数は、人口10万人当たり1.58人 平成19年中の人口10万人当たりの火災による死者数は、全国平均で1.58人で、前年の1.63人に比べ0.05人減少している。 火災による死者の状況を都道府県別にみると、前年と同様に東京都が150人で最も多く、次いで愛知県が111人、大阪府が106人の順となっている。一方、死者が最も少ないのは、沖縄県で5人、次いで島根県、徳島県、佐賀県で10人の順となっている。 これを人口10万人当たりの死者数で比較すると、最も多いのは秋田県で3.32人、最も少ないのは沖縄県で0.36人となっている(第1−1−8表)。第1-1-8表 都道府県別の火災による死者の状況
(3)火災による死者は冬季と就寝時間帯に多い 火災による死傷者発生状況を月別にみると、例年、火気を使用する機会が多い冬季から春先にかけて多くなっており、平成19年中も、1月から3月及び12月の死者数の平均は月に246.8人(年間の月平均は167.1人)に上っており、この4か月間に死者総数の49.2%に当たる987人の死者が発生している(第1−1−4図)。第1-1-4図 月別の火災による死傷者発生状況 平成19年中の時間帯別の火災による死者発生状況をみると、1時台が112人と最も多く、次いで2時台が106人となっている。就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の平均は98.1人(全時間帯の平均は1時間当たり80.0人)となっており、就寝時間帯に多くの死者が発生していることとなる(第1−1−5図)。第1-1-5図 時間帯別の火災による死者の発生状況
(4)死因は火傷が45.5%、一酸化炭素中毒・窒息が42.9% 平成19年中の火災による死因(放火自殺者を除く。)は、火傷が650人(45.5%)と最も多く、次いで一酸化炭素中毒・窒息が613人(42.9%)となっている(第1−1−9表)。第1-1-9表 火災による死因別死者発生状況の推移
(5)逃げ遅れによる死者が56.6% 死亡に至った経過をみると、平成19年中の火災による死者数(放火自殺者を除く。)1,430人のうち、逃げ遅れが810人で56.6%を占めている。その中でも「発見が遅れ、気付いた時は火煙が回り、既に逃げ道がなかったと思われるもの(全く気付かなかった場合を含む。)」が303人と最も多く、火災による死者数(放火自殺者を除く。)の21.2%を占めている。 また、死亡に至った理由別では、「病気又は身体不自由によるもの」が192人(13.4%)、「熟睡によるもの」が157人(11.0%)となっている(第1−1−6図、附属資料11)。第1-1-6図 火災による経過別死者発生状況(放火自殺者を除く。)
(6)高齢者の死者が56.9% 火災による死者数(放火自殺者を除く。)を年齢別にみると、65歳以上の高齢者が814人(56.9%)を占めており、特に81歳以上が352人(24.6%)と極めて多くなっている(第1−1−7図、第1−1−9図)。第1-1-7図 火災による年齢階層別死者発生状況(放火自殺者を除く。)第1-1-9図 火災による死者及び放火自殺者の年齢別・性別発生状況(年齢不明者6人を除く。)
(7)建物火災による死者は、死者総数の74.9% 平成19年中の火災種別ごとの死傷者数をみると、建物火災による死者は1,502人と前年に比べ48人減少しており、死者総数に対する比率は74.9%と前年(75.0%)に比べ0.1ポイント減少している(第1−1−10表)。第1-1-10表 火災種別死傷者数
(8)建物火災のうち、全焼による死者は856人 平成19年中の建物火災による死者1,502人について、建物焼損程度別の死者発生状況をみると、全焼の場合が856人(死者の出た火災1件当たり1.17人)で57.0%を占めている。また、半焼の場合が208人(同1.09人)で13.8%、部分焼の場合が322人(同1.08人)で21.4%、ぼやの場合が116人(同1.01人)で7.7%となっている(第1−1−8図、附属資料12)。第1-1-8図 建物火災における焼損程度ごとの死者発生状況
(9)放火自殺者は減少、死者総数の28.7% 平成19年中の放火自殺者は575人で前年(592人)より17人減少している。これは、死者総数(2,005人)の28.7%(前年28.6%)を占めている(第1−1−3図)。第1-1-3図 火災による死傷者数の推移 放火自殺者を年齢別にみると、56歳から60歳が99人、51歳から55歳が72人、65歳から70歳が62人であり、これらの年齢で放火自殺者全体の40.5%を占めている(第1−1−9図)。第1-1-9図 火災による死者及び放火自殺者の年齢別・性別発生状況(年齢不明者6人を除く。)
3 火災による損害額 平成19年中の火災による損害額は1,262億円で、前年(1,142億円)に比べ120億円増加している。また、火災1件当たりでは231.1万円となっており、前年に比べ16.7万円増加している(第1−1−10図)。第1-1-10図 火災による損害額の推移 なお、火災種別ごとの損害額は、建物火災によるものが圧倒的に多く全体の86.7%を占めている(第1−1−1表)。第1-1-1表 火災の状況
4 出火原因 平成19年中の総出火件数5万4,582件のうち、失火による火災は3万5,880件(全体の65.7%)であり、火災の大半は火気の取扱いの不注意や不始末から発生している(第1−1−11図)。第1-1-11図 出火原因別出火件数 これを主な出火原因別に見てみると、放火(6,558件)、こんろ(6,080件)、たばこ(5,707件)、放火の疑い(4,584件)の順となっている(第1−1−12図)。第1-1-12図 主な出火原因別の出火件数と損害額
(1)「放火」による火災が11年連続して第1位 平成19年中の放火による出火件数は6,558件であり、前年に比べ91件(1.4%)減少したものの、全火災(5万4,582件)の12.0%を占め、11年連続して出火原因の第1位となっている。これに放火の疑いを加えると1万1,142件(全火災の20.4%、対前年△126件、△1.1%)となる(第1−1−11表、第1−1−12図、附属資料6)。第1-1-11表 放火及び放火の疑いによる火災の損害状況第1-1-12図 主な出火原因別の出火件数と損害額 放火による損害額は64億8,379万円で、前年に比べ8億4,581万円(11.5%)減少している。これに放火の疑いを加えた損害額は117億2,578万円(対前年△11億4,489万円、△8.9%)となる(第1−1−12図)。 次に、放火及び放火の疑いによる火災を発火源別にみると、ライターによるものが3,913件(全体の35.1%)と最も多くなっている(第1−1−11表)。 また、放火及び放火の疑いによる火災を時間帯別にみると、夜間から明け方(22時以降翌朝4時までの間)にかけて特に多くなっており、この時間帯に3,699件(全体の33.2%)が発生している(第1−1−13図)。第1-1-13図 放火及び放火の疑いによる火災の出火時刻別件数
(2)「こんろ」による火災は増加 平成19年中のこんろによる火災は6,080件で、前年に比べ90件(1.5%)増加している。こんろの種類別では、普及率の高いガスこんろによる火災が最も多く5,627件(全体の92.5%)で、こんろによる火災の大半を占めている。こんろによる火災の主な経過別出火件数をみると、67.0%に当たる4,073件が消し忘れによるものである。 また、こんろが原因の火災による損害額は74億4,025万円で、前年に比べ2億8,784万円(4.0%)増加している(第1−1−12表)。第1-1-12表 こんろによる火災の損害状況
(3)「たばこ」による火災は増加 平成19年中のたばこによる火災は5,707件で、前年に比べ572件(11.1%)増加し、全火災(5万4,582件)の10.5%を占めている(第1−1−13表、第1−1−12図)。第1-1-13表 たばこによる火災の損害状況第1-1-12図 主な出火原因別の出火件数と損害額 たばこによる火災の主な経過別出火状況をみると、投げ捨てによるものが56.6%(3,233件)と半数以上を占めている。たばこが原因の火災による損害額は、87億323万円であり、前年に比べ1億4,040万円(1.6%)増加している(第1−1−13表)。
(4)着火物は前年と同様「枯草」が第1位 平成19年中の全火災の着火物別出火件数は枯草が6,753件と全体の12.4%を占め、最も多くなっている(第1−1−14表)。第1-1-14表 主な着火物別出火件数
5 火災種別ごとの状況(1)建物火災 平成19年中の建物火災の出火件数は3万1,248件で、前年に比べ258件(0.8%)減少している(第1−1−1表)。第1-1-1表 火災の状況ア 建物火災は1日に86件、17分に1件の割合 平成19年中の建物火災の1日当たりの出火件数は86件で、17分に1件の割合で出火していることになる(第1−1−2表)。第1-1-2表 1日当たり及び1件当たりの火災の状況 また、月別の出火件数をみると、冬季から春先(1月〜4月、12月)にかけて多く、全体の47.8%を占めている(第1−1−14図)。第1-1-14図 建物火災の月別火災件数イ 住宅における火災が建物火災の56.9% 平成19年中の建物火災の出火件数を火元建物の用途別にみると、住宅火災が最も多く、全体の56.9%を占めている(第1−1−15図、附属資料15)。第1-1-15図 建物火災の火元建物用途別の状況ウ 建物火災の43.5%が木造建物 平成19年中の建物火災を火元建物の構造別にみると、木造建物が最も多く、建物火災の43.5%を占めている。 火元建物以外の別棟に延焼した火災件数の割合(延焼率)を火元建物の構造別にみても、木造が最も多く、木造建物の火災の28.6%が別棟に延焼している。 また、火元建物の構造別に火災1件当たりの焼損床面積をみると、全建物火災の平均では44.4m2であるが、木造は65.1m2と最も広くなっている(第1−1−15表)。第1-1-15表 火元建物の構造別損害状況エ 建物火災の過半数は小火災 平成19年中の建物火災の出火件数を損害額及び焼損床面積の段階別にみると、損害額では1件の火災につき10万円未満の出火件数が1万6,394件であり、全体の52.5%を占めている。また、焼損床面積50m2未満の出火件数が2万4,803件で全体の79.4%を占めており、建物火災の多くは早い段階で消し止められている(第1−1−16表)。第1-1-16表 建物火災の損害額及び焼損床面積の段階別出火件数オ 建物火災はこんろによるものが多い 平成19年中の建物火災の主な出火原因は、こんろによるものが最も多く、次いでたばこ、放火、放火の疑い、ストーブの順となっている。 主な経過をみると、こんろを出火原因とする火災では、消し忘れによるものが67.8%、たばこを出火原因とする火災では、投げ捨てによるものが41.1%となっている(第1−1−16図)。第1-1-16図 建物火災の主な出火原因と経過カ 建物火災による死者の90.3%が住宅で発生 平成19年中の建物火災による死者1,502人について、建物用途別の発生状況をみると、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)での死者は1,357人で、建物火災による死者の90.3%を占めている(第1−1−17図、附属資料14)。第1-1-17図 建物区分別の死者発生状況 また、死因別では一酸化炭素中毒・窒息と火傷による死者の合計が1,131人で、建物火災による死者の75.3%を占めている(第1−1−18図、附属資料13)。第1-1-18図 死因別の死者発生状況キ 放水した建物火災の15.2%は覚知後5分以内に放水 平成19年中の建物火災における火元建物の放水開始時間別の焼損状況をみると、消防機関が火災を覚知し、消防隊が出動して放水を行った件数は1万5,693件(建物火災の50.2%)となっている。また、覚知から放水開始までの時間が10分以内のものは1万888件(放水した建物火災の69.4%)で、このうち5分以内のものは2,392件(放水した建物火災の15.2%)となっている。 放水した建物火災の1件当たりの建物焼損床面積を昼夜別にみると、夜間における焼損床面積は昼間の焼損床面積を20.3m2上回っている。これは、昼間に比べて覚知が遅れがちとなるため、消防機関が現地に到着したときは既に火災が拡大していること等の理由によるものと考えられる(第1−1−17表)。第1-1-17表 建物火災の放水開始時間別焼損状況ク 建物火災の約半数は放水開始後30分以内に鎮火 平成19年中の消防隊が放水した建物火災について、鎮火所要時間別の件数をみると、放水開始後30分以内に鎮火した件数は6,767件で、放水した建物火災の43.1%を占めている。また、このうち11分から20分までに鎮火したものが2,288件で最も多くなっている(第1−1−19図)。第1-1-19図 建物火災の鎮火所要時間別1件当たり焼損状況
(2)住宅火災の死者の状況 平成19年中の建物火災中、放火を除く件数は、2万8,132件となっており、このうち、住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)の火災(放火を除く)は1万6,177件となっている。ア 住宅火災による死者の半数以上が高齢者 平成19年中の住宅火災による死者1,357人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添えとなった者及び放火殺人による死者(以下「放火自殺者等」という。)209人を除く失火等による死者は1,148人で、前年(1,187人)に比べ39人(3.3%)減少した。 また、このうち65歳以上の高齢者は684人(全体の59.6%)と半数を超えている(第1−1−20図、附属資料14)。第1-1-20図 住宅火災の件数及び死者の推移(放火自殺者等を除く。)イ 死者発生は高齢者層で著しく高い 平成19年中の住宅火災による年齢階層別の人口10万人当たりの死者発生数(放火自殺者等を除く。)は、年齢が高くなるに従って著しく増加しており、特に81歳以上の階層では、最も低い21歳から25歳の階層に比べ44.5倍となっている(第1−1−21図)。第1-1-21図 住宅火災における年齢階層別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)ウ たばこを発火源とした火災による死者が19.9% 平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を発火源別にみると、たばこによるものが229人(全体の19.9%)で最も多く、次いでストーブ134人(同11.7%)、こんろ87人(同7.6%)となっており、これらを合わせると住宅火災による死者1,148人の39.2%を占めている(第1−1−22図)。第1-1-22図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者等を除く。)エ 寝具類、衣服に着火した火災での死者が多い 平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を着火物(発火源から最初に着火した物)別にみると、寝具類及び衣類に着火した火災による死者が275人で、死者数1,148人の24.0%を占めている(第1−1−23図)。第1-1-23図 住宅火災の着火物別死者数(放火自殺者等を除く。)オ 死者の46.5%が就寝時間帯 平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を時間帯別にみると、就寝時間帯である22時から翌朝6時までの間の死者が534人で、住宅火災の死者1,148人の46.5%を占めている(第1−1−24図)。第1-1-24図 住宅火災における時間帯別死者数(放火自殺者等を除く。)カ 逃げ遅れによる死者が60.7%と圧倒的に多い 平成19年中の住宅火災による死者(放火自殺者等を除く。)を死に至った経過の発生状況別にみると、逃げ遅れが697人(全体の60.7%)と最も多くなっている(第1−1−25図)。第1-1-25図 住宅火災の死に至った経過別死者発生状況(放火自殺者等を除く。)
(3)林野火災 平成19年中の林野火災の出火件数は2,157件で、前年に比べ581件(36.9%)増加している。焼損面積は717haで、前年に比べ112ha(13.5%)減少している。損害額は2億3,659万円で、前年に比べ1億238万円(76.3%)増加している。また、林野火災による死者数は13人で、前年に比べ1人(7.1%)減少している(第1−1−18表)。第1-1-18表 林野火災の状況 林野火災の出火件数を月別にみると、平成19年中は3月に最も多く発生しており、次いで4月、2月と、空気の乾燥している春先に多くなっている(第1−1−26図)。第1-1-26図 林野火災の月別出火件数 林野火災の出火件数を焼損面積の段階別にみると、焼損面積が10ha未満の林野火災の出火件数は2,143件で、全体の99.4%を占めている(第1−1−19表)。第1-1-19表 林野火災の焼損面積段階別損害状況 林野火災を出火原因別にみると、たき火によるものが561件で全体の26.0%を占め最も多く、次いで、火入れ、放火(放火の疑いを含む。)の順となっている(第1−1−27図)。第1-1-27図 林野火災の主な出火原因と経過
(4)車両火災 平成19年中の車両火災の出火件数は5,798件で、前年に比べ445件(7.1%)減少し、死者数は179人で、前年に比べ21人(10.5%)減少している。 また、車両火災による損害額(車両火災以外の火災区分に分類している車両被害は除く。)は26億1,312万円で、前年に比べ2億8,228万円(9.7%)減少している(第1−1−20表)。第1-1-20表 車両火災の状況 出火原因は、放火によるもの(放火の疑いを含む。)が1,106件(全体の19.1%)と最も多くなっている(第1−1−28図)。第1-1-28図 車両火災の主な出火原因と経過等
(5)船舶火災 平成19年中の船舶火災の出火件数は123件で、前年に比べ21件(20.6%)増加し、死者数は2人で、前年に比べ2人増加している。 また、船舶火災による損害額(船舶火災以外の火災区分に分類している船舶被害は除く。)は3億180万円で、前年に比べ3,736万円減少している(第1−1−21表)。第1-1-21表 船舶火災の状況 出火原因は、溶接機・切断機によるものが13件(全体の10.6%)と最も多くなっている(第1−1−29図)。第1-1-29図 船舶火災の主な出火原因
(6)航空機火災 平成19年中の航空機火災の出火件数は6件で、前年に比べ5件増加しているが、死者は発生していない。 また、航空機火災による損害額(航空機火災以外の火災区分に分類している航空機被害は除く。)は99億7,626万円で、前年に比べ99億7,440万円増加している(第1−1−22表)。第1-1-22表 航空機火災の状況
[火災予防行政の現況]1 住宅防火対策の現況 平成19年中の放火を除いた住宅(一般住宅、共同住宅及び併用住宅)火災の件数(1万6,177件)は、建物火災の件数(2万8,132件)の約6割、また、放火自殺者等を除く住宅火災による死者数(1,148人)は、建物火災による死者数(1,259人)の約9割となっており、過去10年間以上この傾向で推移している。 また、近年の主な建物用途別にみた火災100件当たりの死者数では、住居における死者数は、多数の者が利用する物品販売店舗、旅館・ホテルと比べても5倍程度の死者数となっており、最も多くなっている。 住宅火災による死者数はわずかに減少傾向にあるが、住宅火災による死者の半数以上が65歳以上の高齢者であることを考えると、今後の高齢化の進展とともに、さらに住宅火災による死者が増加するおそれがある。 消防庁では、平成3年に住宅防火対策推進に係る基本方針を策定、住宅防火対策推進協議会を設置し、住宅防火に係るポスター、パンフレットの作成・配布、住宅防火安心マークによる住宅用防災機器の普及の促進等の対策を推進してきた。平成13年には、過去10年間の実績を踏まえ、新たに「住宅防火基本方針」を定め、特に高齢者を対象とした住宅火災による被害及び死者の軽減を目指し、地域に密着した連携・協力体制の充実と対策の促進を図るため、関係行政機関、関係団体等と協力しながら住宅防火対策の更なる推進を図ってきた。 しかし、今後、住宅火災による死者の増加が予想されることから、平成16年6月に住宅に住宅用火災警報器等の住宅用防災機器の設置を義務付ける等を内容とする消防法の改正が行われ、平成18年6月1日施行された。 また、本改正に伴い、消防法施行令の改正(平成16年10月27日)、住宅用防災機器の設置及び維持に関する条例の制定に関する基準を定める省令の制定(平成16年11月26日)、火災予防条例(例)の改正(平成16年12月15日)及び住宅用防災警報器及び住宅用防災報知設備に係る技術上の規格を定める省令の制定(平成17年1月25日)が順次行われた。これにより、新築住宅については平成18年6月1日から、既存住宅については概ね平成20年6月から平成23年6月までの各市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられ、これを受けて全国の消防本部では、消防団、婦人(女性)防火クラブ及び自主防災組織等と連携して、各種広報活動を展開しているところである。
2 防火管理制度(1)防火管理者 消防法では、多数の人を収容する防火対象物の管理について権原を有する者に対して、自主防火管理体制の中核となる防火管理者を選任し、消火、通報及び避難訓練の実施等を定めた消防計画の作成等、防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けている。 平成20年3月31日現在、法令により防火管理体制を確立し防火管理者を選任しなければならない防火対象物は、全国に104万7,597件あり、そのうち77.0%に当たる80万7,153件について防火管理者が選任され、その旨が消防機関に届け出されている。しかしながら、24万444件の防火対象物は防火管理者が未選任の状況であり、これらの防火対象物の管理について権原を有する者に対して、消防機関が指導・命令を行い、是正に努めている。また、防火管理者が自らの事業所等の適正な防火管理業務を遂行するために消防計画を作成し、その旨を消防機関へ届け出ている防火対象物は72万9,373件で全体の69.6%となっている(第1−1−23表)。第1-1-23表 全国の防火管理実施状況
(2)共同防火管理 消防法では、高層建築物(高さ31mを超える建築物)、地下街、準地下街(建築物の地階で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道を合わせたもの)、一定規模以上の特定防火対象物(百貨店、飲食店などの多数の者が出入するものや病院、老人福祉施設、幼稚園など災害時要援護者が利用するもの等の一定の防火対象物)等で、その管理権原が分かれているものについては、当該防火対象物の管理について権原を有する者のうち主要な者を代表者とする共同防火管理協議会を設け、統括防火管理者の選任、防火対象物全体にわたる消防計画の作成、消火、通報及び避難訓練の実施等について協議し、防火対象物全体の防火安全を図ることを各管理権原者に対して義務付けている。 平成20年3月31日現在の共同防火管理協議事項の届出率は、62.7%(前年66.3%)となっている(第1−1−24表)。第1-1-24表 全国の共同防火管理実施状況
(3)防火対象物点検資格者 火災の発生を防止し、火災による被害を軽減するためには、消防機関のみならず防火対象物の関係者による防火対象物の火災予防上の維持管理及び消防法令への適合が重要である。 そのため、消防法では、一定の用途、構造等を有する防火対象物の管理権原者に対して、火災の予防に関して専門的知識を有する者(防火対象物点検資格者)による点検及び点検結果の消防長又は消防署長への報告を義務付けている。 この防火対象物点検資格者は、消防用設備等の工事等について3年以上の実務経験を有する消防設備士や、防火管理者として3年以上の実務経験を有する者など、火災予防に関し一定の知識を有する者であって、法人で総務大臣が登録するものが行う講習の課程を修了し、防火対象物の点検に関し必要な知識及び技能を修得したことを証する書類の交付を受けた者である。 防火対象物点検資格者は、その資質の維持及び向上を図るため、5年ごとに再講習を受講し、登録機関が発行する免状の交付を受けることとされている。 平成20年3月31日現在、防火対象物点検資格者の数は2万1,046人となっている。 また、定期点検報告が義務となる防火対象物のうち、管理を開始してから3年間以上継続して消防法令を遵守しているものは、当該防火対象物の管理権原者の申請に基づく消防機関の行う検査により、消防法令の基準の遵守状況が優良なものとして認定された場合には3年間点検・報告の義務が免除される。
3 立入検査 消防機関は、火災予防のために必要があるときは、消防法第4条の規定により防火対象物に立ち入って検査を行っている。 平成19年度中に全国の消防機関が行った立入検査回数は、95万5,764回であり、火災予防上必要な指導を行っている(第1−1−25表)。第1-1-25表 立入検査実施状況 立入検査等により判明した防火対象物の防火管理上の不備や消防用設備等の未設置等については、消防長又は消防署長は、消防法第8条、第8条の2又は第17条の4の規定に基づき、当該防火対象物の所有者、管理者等に対し、防火管理者の選任、消防用設備等又は特殊消防用設備等の設置等必要な措置を講じるべきことを命じることができる。また、火災の予防に危険であると認める場合には、消防法第5条、第5条の2又は第5条の3の規定に基づき、当該防火対象物の改修、移転、危険排除等の必要な措置や使用禁止、制限等を命じることができるとされており、これらの命令をした場合には、その旨を公示することとされている。 このように立入検査等を行った結果、消防法令違反を発見した場合、消防長又は消防署長は、警告等の改善指導及び命令等を行い、法令に適合したものとなるよう違反状態の是正に努めている(第1−1−26表、附属資料16、17、18)。第1-1-26表 命令の状況 特に、特定違反対象物(床面積1,500m2以上の特定防火対象物及び地階を除く階数が11以上の非特定防火対象物のうち、スプリンクラー設備、屋内消火栓設備又は自動火災報知設備がその設置義務部分の過半にわたって未設置の防火対象物をいう。以下同じ。)については、火災発生時における人命の危険性が大きい等、その違反の重大性を踏まえ、厳しく指導を行っているところであるが、平成20年3月31日現在においても未だ134件の対象物において消防法令違反が存在していることから、引き続き重点的な違反是正の徹底を図っていく必要がある(第1−1−27表)。第1-1-27表 特定違反対象物の改善状況の推移
4 消防用設備等(1)消防同意の実態 消防同意は、消防機関が防火の専門家としての立場から、建築物の火災予防について設計の段階から関与し、建築物の安全性を高めることを目的として設けられている制度である。 消防機関は、この制度の運用に当たって、建築物の防火に関する法令の規定を踏まえ、防火上の安全性及び消防活動上の観点から、よりきめ細かい審査、指導を行うとともに、この事務が迅速に処理されるような体制の充実と連携の強化を図っている。 平成19年度の全国における消防同意事務処理件数は、27万7,011件(前年度31万6,775件)で、そのうち不同意としたものは58件(前年度11件)であった(第1−1−28表)。第1-1-28表 消防同意処理状況
(2)防火対象物の実態 平成20年3月31日現在の全国の防火対象物の数(消防法施行令別表第一(一)項から(十六の三)項までに掲げる防火対象物で延べ面積150m2以上のもの及び(十七)項から(二十)項までに掲げる防火対象物の数)は383万4,706件である。 また、18大都市(政令指定都市及び東京都特別区)の防火対象物は94万157件で、全国の防火対象物の24.5%を占めている。特に都市部に集中しているものは準地下街(全国の85.7%)、地下街(同81.3%)、性風俗特殊営業店舗等(同53.4%)などである(第1−1−29表)。第1-1-29表 防火対象物数
(3)消防用設備等の設置の現況 消防法では、防火対象物の関係者は、当該防火対象物の用途、規模、構造及び収容人員に応じ、所用の消防用設備等を設置し、かつ、それを適正に維持しなければならないとされている。 全国における主な消防用設備等の設置状況を特定防火対象物についてみてみると、平成20年3月31日現在、スプリンクラー設備の設置率は99.6%、自動火災報知設備の設置率は96.8%となっている(第1−1−30表)。第1-1-30表 全国における特定防火対象物のスプリンクラー設備及び自動火災報知設備の設置状況 消防用設備等に係る技術上の基準については、技術の進歩や社会的要請に応じ、逐次、規定の整備を行っている。最近では、平成19年1月に発生した兵庫県宝塚市カラオケボックス火災、平成19年6月に発生した東京都渋谷区温泉採取施設爆発火災を踏まえ、この種の小規模施設における防火安全対策を強化するため、自動火災報知設備やガス漏れ火災警報設備の設置対象の拡大、技術上の基準についての見直し等必要な改正を行っている。 一方、消防用設備等の設置義務違反等の消防法令違反対象物については消防法に基づく措置命令等の措置を積極的に講じ、迅速かつ効果的な違反処理を更に進めることとしている。
(4)消防設備士及び消防設備点検資格者 消防用設備等は、消防の用に供する機械器具等に係る検定制度等により性能の確保が図られているが、工事又は整備の段階において不備・欠陥があると、本来の機能を発揮することができなくなる。このような事態を防止するため、一定の消防用設備等の工事又は整備は、消防設備士(消防設備士免状の交付を受けた者)に限って行うことができることとされている。 また、消防用設備等は、いついかなるときでも機能を発揮できるようにするため日常の維持管理が十分になされることが必要であることから、定期的な点検の実施と点検結果の報告が義務付けられている。維持管理の前提となる点検には、消防用設備等についての知識や技術が必要であることから、一定の防火対象物の関係者は、消防用設備等の点検を消防設備士又は消防設備点検資格者(総務大臣又は消防庁長官の登録を受けた法人が実施する一定の講習の課程を修了し、消防設備点検資格者免状の交付を受けた者)に行わせなければならないこととされている。 さらに、消防法令において、消防用設備等の技術基準に性能規定を導入したことを受けて、平成16年3月及び5月に消防法施行規則の一部改正が行われ、特殊消防用設備等の工事又は整備を行うことができる特類の甲種消防設備士と、特殊消防用設備等の点検を行うことができる特種消防設備点検資格者の資格が新たに創設された。 これらの消防設備士及び消防設備点検資格者の資質の向上を図るためには、再講習の受講率の向上を図るとともに、業務を誠実に行うよう指導・助言していく必要がある。また、これらの者が消防法に違反した場合においては、「消防設備士免状の返納命令に関する運用について(平成12年3月24日消防予第67号)」、「消防設備点検資格者の不適正点検に対する指導指針(平成10年2月25日全消発第34号)」等に基づいて免状の返納命令等を的確に実施している。 平成20年3月31日現在、消防設備士の数は延べ91万8,097人となっており(第1−1−31表)、また、消防設備点検資格者の数は特種(特殊消防用設備等)522人、第1種(機械系統)12万6,206人、第2種(電気系統)11万8,918人となっている。第1-1-31表 消防設備士の数 なお、消防用設備等の点検を適正に行った証として点検済票を貼付する点検済表示制度が、各都道府県単位で自主的に実施されており、点検実施の責任の明確化、防火対象物の関係者の適正な点検の励行が図られている。
(5)防炎規制ア 防炎物品の使用状況 建築物内等で着火物となりやすい各種の物品を燃えにくいものにしておき、出火を防止すると同時に火災初期における延焼拡大を抑制することは、火災予防上特に有効であることから、消防法により、高層建築物、地下街等の構造及び形態上防火に特に留意する必要のある防火対象物や、劇場、キャバレー、旅館、病院等の不特定多数の者やいわゆる災害時要援護者が利用する防火対象物において使用するカーテン、どん帳、展示用合板、じゅうたん等の物品(防炎対象物品)又はその材料には、所定の防炎性能を有するもの(防炎物品)を使用することを義務付けている。 平20年3月31日現在、防炎規制の対象となる防火対象物数は、89万5,235件であり、適合率は、カーテン・どん帳等を全部使用しているものは86.4%、じゅうたんを全部使用しているものは84.2%、展示用合板を全部使用しているものは82.6%となっている(第1−1−32表)。第1-1-32表 防炎防火対象物数及び防炎物品の使用状況イ 寝具類等の防炎品の普及啓発 家庭におけるカーテン、じゅうたんや消防法で定められている防炎対象物品以外の寝具類、自動車・オートバイカバー等についても、防炎化を推進することが火災予防上有効であることから、消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)において、防炎品の普及のための動画を掲載するなど、その普及啓発を行っている。防炎対象物品以外の防炎性能を有するもの(防炎製品)については、財団法人日本防炎協会が自主的に採用する「防炎製品」表示ラベルの貼付によりその情報を提供し、消費者の利便が図られている(第1−1−33表)。第1-1-33表 防炎製品の認定件数及び販売件数
(6)火を使用する設備・器具等に関する規制 火を使用する設備・器具等(以下「火気設備等」という。)は、一般家庭で使用されるこんろ、ストーブ、給湯器、炉、厨房設備、サウナ設備などその種類は多種多様であり、使用される場所も多岐にわたっている。 これらの火気設備等は、国民の生活になくてはならないものであり、様々な面で国民の生活に役立つものとなっている。しかし、熱源、裸火等を有し、調理や暖房などを目的とする火気設備等は、その使用方法を誤った場合や故障などによる出火の危険性は高く、平成19年中の建物火災における火気設備等を原因とする出火件数は、こんろ、ストーブで合計7,557件(建物火災件数3万1,248件の24.2%)発生している。 火気設備等の位置、構造、管理及び取扱いについては、消防法令で定められた基準に基づき、各市町村の火災予防条例によって規制されている。
5 消防用機械器具等の検定等(1)検定 検定の対象となる消防用機械器具等は、消防法第21条の2の規定により、検定に合格し、その旨の表示が付されているものでなければ、販売し又は販売の目的で陳列する等の行為をしてはならないこととされている。 検定対象消防用機械器具等は、消火器、閉鎖型スプリンクラーヘッド等消防法施行令第37条に定める14品目である。 この検定は、「型式承認」(形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合している旨の承認)と「個別検定」(個々の検定対象機械器具等の形状等が、型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等と同一であるかどうかについて行う検定)からなっている(第1−1−34表)。第1-1-34表 検定申請状況 また、新たな技術開発等に係る検定対象機械器具等について、その形状等が総務省令で定める技術上の規格に適合するものと同等以上の性能があると認められるものについては、総務大臣が定める技術上の規格によることができることとし、これらの検定対象機械器具等の技術革新が進むよう検定制度の整備充実を図っている。
(2)自己認証 自己認証とは、国の定める技術上の規格に適合していることを製造業者等が自ら検査し、所定の表示を付すことができる制度であり、動力消防ポンプ及び消防用吸管を自主表示対象機械器具等として定めている。 自主表示対象機械器具等に係る技術上の規格に適合している旨の表示を付そうとする製造又は輸入を業とする者からの届出は、平成20年3月31日現在、動力消防ポンプが2,588件、消防用吸管が57件である。
6 消防用設備等に係る技術基準の性能規定化 これまで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面があった。これに対して、近年、規制の様々な分野で、技術革新の成果を活用し、また、技術革新を促すため、技術的な基準として必要な性能を規定し、達成する手法は自由に選択できることとする「性能規定」の導入が進められてきた。 消防庁においても、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、平成15年6月に消防法を、平成16年2月に消防法施行令を改正し、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入することとしたものである。 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると判断できる設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものである。 消防用設備等に求められる性能は、火災の拡大を初期に抑制する性能である「初期拡大抑制性能」、火災時に安全に避難することを支援する性能である「避難安全支援性能」、消防隊による活動を支援する性能である「消防活動支援性能」に分けられる。これらについて、一定の知見が得られているものについては、客観的検証法(新たな技術開発や技術的工夫について客観的かつ公正に検証する方法)等により、同等性の評価が行われることとなる。 一方、既定の客観的検証法のみでは同等性の評価ができない設備等(特殊消防用設備等)を対象として、総務大臣による認定制度が設けられている。これは、一般的な審査基準が確立されていない「特殊消防用設備等」を設置しようとする場合には、防火対象物ごとに、高度な技術的識見を有する性能評価機関(日本消防検定協会又は登録検定機関)の評価結果に基づき、総務大臣がその性能を審査し、必要な性能を有するものについては円滑に設置できるようにすることとされたものである(平成20年8月1日現在、認定済み特殊消防用設備等23件)。 これらの規定を導入することにより、今後「特殊消防用設備等」を中心に新技術等を用いた新たな設備等が積極的に開発されていくことが期待される(囲み記事「性能規定に基づく特殊消防用設備等の開発・普及状況について」参照)。
性能規定に基づく特殊消防用設備等の開発・普及状況について 通常の消防用設備等と同等以上の性能を有するものとして、消防法第17条第3項の規定により総務大臣の認定を受けた特殊消防用設備等は、平成20年7月31日までに合計23件となっており、その内訳は下表のとおりである。 これら特殊消防用設備のうち加圧防煙システムについては、これまで12件の大臣認定を受ける等、十分な知見が蓄積されつつある。こうした状況を踏まえ、消防庁において「消防活動支援性能のあり方検討会」を開催し、消防法施行令第29条の4に基づく客観的検証法(いわゆるルートB)の規定整備に向けた検討が行われ、平成19年度に最終報告書がとりまとめられた。平成20年度にはこの報告書に基づき、規定の整備を行う予定である。加圧防煙システムの概念図 今後とも、新技術による特殊な消防用設備等の開発が期待されるところであり、その円滑な導入や普及を順次行っていく予定である。
7 火災原因調査の現況 最近における科学技術の進歩による産業の高度化に伴い、大規模又は複雑な様相を呈する火災が頻発する傾向にあり、その原因の究明は更に高度の専門的知識が必要とされ、また、これらの火災が人心に与える影響も小さくないことから、その原因を一刻も早く明らかにして予防体制及び警戒体制を確立することは、一地方公共団体のみならず、国の責務でもあるということができる。これを踏まえ、平成15年の「消防組織法及び消防法の一部を改正する法律」により、大規模火災等について、消防庁長官の自らの判断により火災原因調査を行うことができる制度が導入された。 本制度による火災原因調査は、火災種別に応じて消防庁及び消防研究センターの職員(研究官を含む。)により編成される調査チームが、消防機関と連携して実施するものである。 平成18年度には、兵庫県宝塚市で発生したカラオケボックス火災において、管轄消防本部から消防庁長官に対し火災原因調査が要請され、この要請に基づいた火災原因調査を実施し、平成19年度には、東京都で発生した渋谷区温泉施設爆発火災において、消防庁長官の判断により主体的に、また新潟県中越沖地震により発生した東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所火災においては、管轄消防本部からの要請に基づき火災原因調査を実施している。 カラオケボックス、温泉施設等については、これらの調査内容等を踏まえ、「予防行政のあり方に関する検討会」を開催し、「予防行政のあり方について(中間報告)」を取りまとめ(平成19年12月)、これらの施設に係る防火安全対策の充実を図るため、「消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令」が平成20年7月に公布され、同年10月に施行された。 また、平成20年10月1日には、大阪市浪速区の個室ビデオ店において火災が発生し、25人もの死傷者を出す惨事となった。本火災は、多数の死傷者が発生し、社会的影響が極めて大きいことから、消防庁長官の判断により、主体的に消防庁職員7名を派遣し、火災原因調査を実施している。
[火災予防行政の課題]1 法令適合の確保 平成14年の消防法の一部改正等を受けて、全国の消防機関において「立入検査マニュアル」及び「違反処理マニュアル」を活用した違反是正指導が進捗した結果、小規模雑居ビルをはじめとする防火対象物に対する違反是正の推進に一定の成果が得られた。しかし、平成19年1月20日に発生した兵庫県宝塚市のカラオケボックスでの火災後に実施した実態調査の結果でも、当初70.3%の施設において何らかの消防法令違反がみられ、平成19年12月のフォローアップ調査時には29.0%まで是正されたが、その是正状況には地域差が見られるなど、引き続き違反是正の推進に努める必要がある。 このためには、管内における火災危険性の高い防火対象物を的確に把握し、その安全対策の不備等を適切に是正することなど、立入検査及び違反処理の戦略的な実施等をはじめ、違反処理データベースの充実、違反是正推進連絡会を活用した消防機関相互の協力体制の活用、消防本部単位ではなく、より広域的に連携した違反是正の取組等による体制の強化等が必要である。 また、防火管理制度は、防火対象物の関係者自らが火災を予防し、火災又は地震等による被害を軽減するために、防火管理者を中心とした火災予防体制を構築し、消防計画の作成や消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練など防火管理上必要な業務を行うことを主とした制度であり、これにより関係者が自ら法令適合の確保や防火安全の向上に取り組むことが重要であるが、防火管理者が選任されていたとしても十分な防火管理がなされていない状況も散見されるため、防火対象物の管理権原者が、資格を有する者(防火対象物点検資格者)に防火上必要な業務について消防法令に定める基準に適合しているかどうかの点検を行わせ、その結果を消防機関に報告する「防火対象物定期点検報告制度」を更に推進し、適切な防火管理が図られるようにする必要がある。
2 住宅防火対策の推進 住宅防火対策については、これまで広報・普及啓発活動を中心に取り組んできたところであるが、最近の住宅火災による死者数は増加傾向にある。平成19年中の放火自殺者等を除く住宅火災による死者数は、1,148人となっており、昭和61年(1,016人)以来17年ぶりに1,000人を超えた平成15年から5年連続して1,000人を超えている。 また、同死者数の約6割が65歳以上の高齢者であり、今後の高齢化の進展に伴い、更に増加するおそれがあること等から、平成16年6月の消防法の改正により、従来個人の自助努力と考えられてきた住宅防火対策が抜本的に見直され、すべての住宅に住宅用火災警報器等の設置・維持を義務付ける法制度の導入が図られた。それにより、新築住宅は平成18年6月1日から、既存住宅は概ね平成20年6月から平成23年6月までの各市町村条例で定める日から住宅用火災警報器の設置が義務付けられた。 消防庁では、今後全国に4,700万戸といわれる既存住宅への住宅用火災警報器の設置を促進するため、技術開発の促進、リース方式の導入等について関係業界に働きかけるとともに、消防団、婦人(女性)防火クラブ、自主防災組織等と連携した住宅用火災警報器等の設置、維持管理等に係る啓発などの普及方策の推進、悪質訪問販売の被害防止対策、報道機関への働きかけなど市場機能の活用について重点的に推進し、さらには政府広報をはじめ様々な広報媒体の利用、普及・促進に関する施策を講じていくこととしている。
3 放火火災防止対策の推進 放火による火災は、平成9年以降11年間連続して出火原因の第1位となっており、放火の疑いによる火災を合わせると全火災の2割以上を占めている。特に、都市部においては、出火原因の4割を超えている地域もあることから、深刻な社会問題となっている。 放火を防ぐためには、一人ひとりが防止対策を心掛けるだけでなく、地域全体が「放火されない環境づくり」に取り組むことが重要である。 特に、連続放火が発生している地域にあっては、地域の安心・安全に深刻な影響があるため、暗いところや死角になるところに可燃物を放置しないこと、夜間にごみを出さないこと、門灯の終夜点灯により街路を明るくすることなどの対策を地域全体で徹底するとともに、関係行政機関と地域住民が協力して、街灯の増設、炎感知器や侵入監視センサーと連動した照明の設置、放火監視機器の設置などを推進し、より一層の警戒体制を構築することが必要である。 消防庁では、平成16年6月に放火火災・連続放火火災の防止のため学識経験者や消防機関関係者等からなる検討会を開催し、その検討結果を「放火火災の防止に向けて〜放火火災防止対策戦略プラン〜」として取りまとめ、全国の消防本部に配付した。 また、戦略プランの中で放火火災防止対策に有効とされた放火監視機器について、「放火監視機器に係る技術上のガイドライン」を策定(平成17年4月)するとともに、現在、札幌市消防局(北海道)、大阪市消防局(大阪府)、川口市消防本部(埼玉県)、春日井市消防本部(愛知県)及び福岡市消防局(福岡県)で検証試験を行っているところである。
4 消防法令への性能規定の導入等による消防用設備等における新技術の開発促進への期待及び課題 消防法令に定める消防用設備等の技術上の基準に性能規定を導入すること等により、新技術の開発促進が期待されるが、その実効性を高めるためには、消防防災分野における新たな技術に関する知見の蓄積を図るとともに、客観的検証法の適用範囲を着実に拡大していくことが必要である。このため、総務大臣による認定によりその知見が十分に蓄積された特殊消防用設備等については、円滑に客観的検証法を策定することにより、消防機関がその設置等の判断が容易にできるようにしていくことが必要である。 一方、消防機関においても、客観的検証法による審査体制を整備し、消防防災分野における新たな技術を用いた設備等が導入できる体制を構築することにより、消防防災に係る技術開発の促進と安全性の高い合理的な防火安全対策の構築に寄与することが望まれる。
5 災害時要援護者に配慮した総合的防火安全対策の推進 高齢者、障害者等の災害時要援護者が安心して安全に生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導等が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。 平成18年1月に長崎県の認知症高齢者グループホームにおいて死者7人を出す火災が発生したことを踏まえ、消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令が平成19年6月に公布され、認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策の強化が図られた。また、平成20年度から「小規模施設に対応した防火対策に関する検討会」を開催し、災害時要援護者の利用する小規模施設について、その実状に即した防火安全対策のあり方を検討しているところである。 一方、平成18年度から平成19年度にわたり検討会を開催し、聴覚障害者に対し、いち早く火災を警報するため、携帯電話のメールを利用したソフトウェアを開発し、消防研究センターのホームページ(http://www.fri.go.jp/download/keitai/note.html)からダウンロードして利用できるようにした。今後、これらの検討結果等を踏まえ、必要な防火安全対策を講ずることとしている。 消防機関をはじめ行政機関は、災害時要援護者の日常生活をサポートするホームヘルパー、民生委員など、福祉関係者等と連携し、高齢者等の所在の積極的な把握や訪問診断等による防火指導の推進等の取組を引き続き実践する必要がある。
6 民間自衛消防力の確保 切迫する大地震の危険に対応するため、平成19年6月の消防法改正により、大規模・高層建築物等の管理権原者は、防災管理者を定め、地震災害等に対応した消防計画を作成し、地震発生時に特有な被害事象に関する応急対応や避難の訓練の実施その他防災管理上必要な業務を行うこととされ、また、火災その他の災害による被害を軽減するために必要な業務を行う自衛消防組織を設置することが義務付けられた。 平成19年改正消防法の施行は、平成21年6月1日とされており、今後、事業所において消防計画を作成する際に必要な災害想定手法や地震発生時の対応行動等に関する最新の知見や優良取組事例等について、情報提供を行っていく必要がある。 また、防災管理者や自衛消防組織の統括管理者等に対する講習をはじめ、関係者の防災教育を進める必要がある。 さらに、実践的な訓練の実施やその検証結果を踏まえた計画・体制の見直し等、継続的な取組が重要である。 消防機関においても、届出される消防計画に対する指導、助言が的確にできるよう、消防職員の資質を向上させることが重要であり、必要な研修や教育訓練等に取り組む必要がある。
7 グループホームなど小規模施設の防火安全対策 高齢者、障害者等の災害時要援護者が安心して安全に生活し、社会参加できるバリアフリー環境の整備を推進するためには、火災等の災害時における消防機関等への緊急通報や迅速な避難誘導が円滑に行われるよう災害時要援護者の安全性の確保に留意する必要がある。 平成18年1月に、長崎県の認知症高齢者グループホームにおいて死者7人を出す火災が発生したことを踏まえ、消防庁では「認知症高齢者グループホーム等における防火安全対策検討会」を開催し、その検討報告を受け、自力避難困難者が多く入所する小規模社会福祉施設でも、防火管理者を選任し、施設の実態に応じ、スプリンクラー設備等の消防用設備等を設置することを義務付ける消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令が平成19年6月に公布され、平成21年4月から施行される予定である。 一方、カラオケボックス、温泉採取施設等における最近の火災の事例を踏まえ、自動火災報知設備又はガス漏れ火災警報設備を設置しなければならない施設の対象範囲を見直すとともに、当該消防用設備等について、その設置及び維持に関する技術上の基準の整備等を規定した消防法施行令の一部を改正する政令及び消防法施行規則の一部を改正する省令が平成20年7月に公布され、同年10月に施行された。 また、これらの火災に代表されるように、近年の小規模施設における火災被害を踏まえて、平成20年度に「小規模施設に対応した防火対策に関する検討会」を開催し、施設の多様化・複合化の状況に対応した防火対策を検討しているところである。 消防機関をはじめ行政機関は、これらの小模規施設の関係者等と連携を密にし、施設等が多様化する状況を踏まえた防火安全対策の推進について引き続き取り組んでいく必要がある。
製品火災対策の推進について 最近の火災の出火原因は極めて多様化しているが、その中で電気用品、燃焼機器、自動車等といった国民の日常生活において身近な製品が発火源となる火災が多発している。国民生活あるいは消費者の安心・安全が強く求められており、消防庁では製品火災対策の取組を強化している。■製品を発火源とする全火災情報の収集、公表○平成18年中の製品火災の調査 消防庁の統計では、平成18年中の火災で電気用品、燃焼機器、自動車等のいわゆる製品を発火源とする火災は5,286件に上った。これらすべてを対象として、火災原因が製品欠陥によるものか否か調査を行った。 調査の結果、全体の8割を超える4,393件が使用方法の間違いなどによる「製品欠陥によらないことが明らかなもの」であったが、一方で「製品欠陥によることが明らかなもの」が174件、「製品欠陥によるものか否か不明なもの」が719件となった。 これら「製品欠陥によることが明らかなもの」及び「製品欠陥によるものか否か不明なもの」となった火災については、発火源製品ごとに該当火災件数を集計し、製造等事業者名と製品名を併せてこれを公表した。また、消防機関にも調査結果を通知するとともに、収集した情報を関係省庁と共有し、製品火災対策に活用している。平成18年中の製品火災の調査結果の概要○取組の意義 昨今、消費者の視点に立った行政サービスの実現が強く求められている。平成20年6月には消費者行政推進基本計画が閣議決定されるなど、製品火災対策を含む消費者の安心・安全の確保は、政府全体の重要課題として強力に推進されているところである。 消防庁の製品火災調査は、火災を網羅的に把握する消防機関の特性を活かし、消費生活用製品安全法の報告制度ではわからない、事業者が把握していない火災を含む、国内で発生したすべての火災に対する調査であり、関係省庁との連携により製品火災情報の収集に万全を期すこととしている。■疑わしい火災情報の即時報告体制の整備 また、製品火災の疑いがある火災情報については、火災原因調査の確定前を含めた即時報告を消防機関に対して依頼し、収集された情報の関係省庁との共有を図っているところであり、消費者の安心・安全確保の推進に寄与しているところである。
第2節 危険物施設等における災害対策[危険物施設等における災害の現況と最近の動向] 危険物施設(指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う製造所、貯蔵所及び取扱所)における事故は、火災(爆発を含む。)と危険物の流出に大別される。危険物施設の火災・流出事故件数は、昭和50年代中頃から緩やかな減少傾向を示していたが、平成6年を境に増加傾向を示している。平成19年中に発生した火災・流出事故件数は、火災が169件、流出が434件(能登半島地震及び新潟県中越沖地震による事故件数を除く。)で合計603件となっており、前年より5件増加し、統計を取り始めて以来過去最多となっている(第1−2−1図)。第1-2-1図 危険物施設における火災・流出事故発生件数の推移
1 火災 危険物施設における火災の発生件数は平成18年まで増加傾向にあったが、平成19年は減少に転じている。火災の主な要因としては、一般取扱所、給油取扱所、製造所等における管理不十分・確認不十分等の人的要因を挙げることができる。
(1)危険物施設における火災発生件数と被害 平成19年中の危険物施設における火災の発生件数は169件(対前年比54件減)、損害額は42億941万円(同13億7,655万円増)、死者は11人(同1人増)、負傷者は82人(同3人減)となっている(第1−2−2図)。第1-2-2図 危険物施設における火災発生件数と被害状況 また、危険物施設別の火災発生状況をみると、一般取扱所、製造所及び給油取扱所での火災が全体の93.5%を占めている(第1−2−3図)。第1-2-3図 危険物施設別火災発生件数 さらに、これらの火災のうち103件(全体の60.9%)は、危険物が出火原因物質となっている(第1−2−4図)。第1-2-4図 出火原因物質別火災発生件数
(2)火災の発生原因の半数以上は人的要因 平成19年中に発生した危険物施設における火災の発生原因については、人的要因が62.7%と最も多く、次いで物的要因が18.9%、その他の要因(不明、調査中を含む。)が18.4%となっている(第1−2−5図)。第1-2-5図 危険物施設における火災発生原因 また、着火原因をみると、静電気火花が最も多く、次いで過熱着火、溶接・溶断等火花の順となっている(第1−2−6図)。第1-2-6図 危険物施設における火災着火原因
(3)無許可施設の火災 製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での平成19年中の火災の発生件数は11件(対前年比7件増)であり、死者は1人、負傷者は8人となっている。 なお、これらの火災による損害額は9,923万円となっている。
(4)危険物運搬中の火災 平成19年中の危険物運搬中の火災の発生件数は4件で、死者はなく、負傷者は1人となっている。 なお、これらの火災による損害額は22万円となっている。
2 流出 危険物施設における危険物の流出事故の発生件数は前年より増加し、統計を取り始めて以来過去最多となっている。流出の主な要因として、屋外タンク貯蔵所、一般取扱所、地下タンク貯蔵所等の危険物施設の腐食疲労等劣化、確認不十分、管理不十分等を挙げることができる。
(1)危険物施設における流出件数と被害 平成19年中の危険物施設における危険物流出事故発生件数(火災に至らなかったもの)は434件(対前年比59件増)、損害額は4億2,762万円(同4,116万円減)、死者はなく(前年と同じ)、負傷者は28人(対前年比3人増)となっている(第1−2−7図)。第1-2-7図 危険物施設における流出事故発生件数と被害状況 また、危険物施設別の流出事故発生状況をみると、屋外タンク貯蔵所、一般取扱所及び地下タンク貯蔵所での流出が全体の59.9%を占めている(第1−2−8図)。第1-2-8図 危険物施設別流出事故発生件数 さらに、危険物施設における流出事故のうち、99.1%が第4類の危険物の流出となっている。これを品名別にみると、第3石油類(重油等)、第2石油類(軽油等)、第1石油類(ガソリン等)、第4石油類(ギヤー油等)の順となっている(第1−2−9図)。第1-2-9図 危険物施設から流出した危険物別件数
(2)流出事故の約4割は腐食疲労等劣化が原因 平成19年中に発生した危険物施設における流出事故の発生原因をみると、物的要因が48.8%と最も多く、続いて人的要因が44.5%、その他の要因(不明、調査中を含む。)が6.7%となっている(第1−2−10図)。 流出事故の発生原因を個別にみると、腐食疲労等劣化によるものが38.5%と最も多く、次いで確認不十分によるものが14.5%、管理不十分によるものが12.2%となっている(第1−2−10図)。第1-2-10図 危険物施設における流出事故発生原因
(3)無許可施設での流出事故 製造所、貯蔵所又は取扱所として許可を受けていない無許可施設での平成19年中の流出事故の発生件数は5件(対前年比4件減)であり、死者、負傷者は発生していない。 なお、これらの流出事故による損害額は15万円となっている。
(4)危険物運搬中の流出事故 平成19年中の危険物運搬中の流出事故の発生件数は10件(同2件減)であり、死者、負傷者は発生していない。 なお、これらの流出事故による損害額は1,522万円となっている。
[危険物行政の現況]1 危険物規制(1)危険物規制の体系 危険物に関する規制は、昭和34年の消防法の改正及び危険物の規制に関する政令の制定により、全国統一的に実施することとされた。それ以来、危険物施設の位置、構造及び設備に関する技術基準並びに危険物の貯蔵、取扱い等の技術基準の整備を内容とする関係法令の改正等を逐次行い、安全確保の徹底を図ってきた。 消防法では、火災危険性が高い物品を危険物として指定し、火災予防上の観点からその貯蔵・取扱い及び運搬についての規制を行っている。これら危険物の判定には、性状確認試験を導入している。規制の体系 指定数量以上の危険物は、危険物施設以外の場所で貯蔵し、又は取り扱ってはならない。危険物施設を設置しようとする者は、その位置、構造及び設備を法令で定める技術上の基準に適合させ、市町村長等の許可を受けなければならない。 危険物の運搬については、その量の多寡を問わず、法令で定める技術上の基準に従って行わなければならない。 また、指定数量未満の危険物の貯蔵又は取扱い及びその場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)については、市町村条例で定めることとされている。
(2)危険物規制の最近の動向 危険物等の規制に関しては、科学技術の進歩、社会経済の変化等を踏まえ、必要な見直しを行ってきた。 例えば、平成10年4月1日からは、ドライバー自らが給油作業を行うセルフサービス方式の給油取扱所(セルフスタンド)の設置を可能とした一方で、火災等の事故が相次いだため、平成19年10月から、人体に蓄積された静電気を除去するための給油ノズルの導電性確保と油が吹きこぼれた場合の飛散防止措置をセルフスタンドに義務付けるなど、随時、所要の安全対策を講じているところである(囲み記事「ガソリンの危険性について」参照)。 平成12年4月1日からは、機関委任事務制度の廃止に伴い、危険物施設の設置許可等の事務は、自治事務となった。 平成13年7月には、消防法が改正され、ヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩類が消防法別表第一の第5類(自己反応性物質)の品名に追加されるとともに、引火性液体のうち第4石油類及び動植物油類の物品の引火点の範囲が250度C未満とされた。 平成16年6月には、指定可燃物等を貯蔵し、又は取り扱う場所の位置、構造及び設備の技術上の基準(消防用設備等の技術上の基準を除く。)を市町村条例で定めることとするよう、消防法が改正されるとともに、再生資源燃料(RDF(ごみ固形燃料)、RPF(廃プラスチック固形燃料)等)が指定可燃物に追加された。 また、平成15年9月の十勝沖地震に伴い発生した浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の全面火災を踏まえ、平成16年7月に大規模屋外貯蔵タンクの耐震改修期限の前倒しを行い、平成17年1月には、浮き屋根の構造基準の強化を図った。 さらに、危険物施設における火災・流出事故件数の増加を受けて、危険物の流出等の事故の原因を究明し、データの蓄積・分析により的確な事故の再発防止策の企画・立案につなげられるよう、平成20年5月に消防法が改正され、同年8月に施行された。本改正により、市町村長等による危険物流出等の事故の原因調査制度が整備されるとともに、市町村長等から求めがある場合には消防庁長官が調査を実施できることとなった。
ガソリンの危険性について☆ ガソリンの危険性 ガソリンは気温がマイナス40度Cでも気化し、小さな火源でも爆発的に燃焼する物質です。 また、ガソリンの蒸気は、空気より重いため、穴やくぼみなどに溜まりやすく、離れたところにある思わぬ火源(ライター等の裸火、静電気、衝撃の火花等)によって引火する危険性がありますので、取扱いには十分な注意が必要です。○ ガソリンを入れる容器 ガソリンを入れる容器は、消防法令により、一定の強度を有しなければならないとされており、材質により容量が制限されています。特に、灯油用ポリ容器(容量20l)にガソリンを入れることは非常に危険なため、禁止されています。○ ガソリンの保管場所 消防法令に適合した容器で保管する場合でも、合計40l以上のガソリンを保管する場合は、消防法令により、次のとおり建物の大幅な改修や手続が必要となります。・40l以上200l未満のガソリンを保管する場合は、市町村の火災予防条例に基づき、保管場所の壁、柱、床及び天井が不燃材料であることなど、構造等の要件が条例の基準に適合している旨の書類を添えて、あらかじめ消防機関に届け出ることが必要です。・200l以上のガソリンを保管する場合は、消防法に基づき、壁、柱及び床を耐火構造とするなど、一定の構造等の基準に適合させた上で、市町村長等の許可を得ることが必要です。☆ ガソリンの取扱いに対する注意喚起について 平成20年3月末に揮発油税の暫定税率の適用期限が到来し、一時的に価格が下落していたガソリンについて、適用期限延長後の再値上げの前に、ポリタンク容器への買いだめや車庫等への備蓄が行われることが懸念されました。消防庁では、業界団体や地域団体などと連携し、ガソリンの取扱いの危険性に関するポスターの作成・配布等の啓発活動を実施するとともに、消防研究センターにおいてガソリンの火災危険性について次のような実験を行い、公開しました。(1)ガソリンの可燃性蒸気への着火の危険性:ポリタンク容器からガソリンの可燃性蒸気が漏れ、床面に滞留して引火した後に、着衣に着火する状況を模した実験(2)給油時の危険性:ポリタンク容器から注油ホースでガソリンを出す作業中、傾けた容器に引火し、火災が拡大する状況を模した実験(3)灯油ストーブへの誤注油の危険性:カートリッジ式石油ストーブに入れたガソリンの蒸気が外部に浸みだし、急激に炎上する状況を再現ガソリンの危険性についての啓発用ポスターガソリンの危険性についての火災実験
(3)危険物施設ア 危険物施設の数 平成20年3月31日現在の危険物施設の総数(設置許可施設数)は48万6,812施設(対前年度比9,977施設、2.0%の減)となっている。 施設区分別にみると、地下タンク貯蔵所が全体の22.2%と最も多く、次いで移動タンク貯蔵所、給油取扱所等となっている(第1−2−1表、第1−2−11図)。第1-2-1表 危険物施設数の推移第1-2-11図 危険物施設数の状況 なお、これらのうち、石油製品を中心とする第4類の危険物を貯蔵し、又は取り扱う危険物施設は全体の98.0%を占めている。 危険物施設数の推移をみると、施設区分を問わず、近年、減少傾向にある。イ 危険物施設の規模別構成 平成20年3月31日現在における危険物施設総数に占める規模別(貯蔵最大数量又は取扱最大数量によるもの)の施設数は、指定数量の50倍以下の危険物施設が、全体の76.4%を占めている(第1−2−12図)。第1-2-12図 危険物施設の規模別構成比
(4)危険物取扱者 危険物取扱者は、甲種、乙種及び丙種に区分されている。危険物施設での危険物の取扱いは、安全確保のため、危険物取扱者が自ら行うか、甲種又は乙種危険物取扱者が立ち会わなければならない。 危険物取扱者制度は、制度発足以来の合格者総数が平成20年3月31日現在で764万8,019人と広く国民の間に定着しており、危険物に関する知識、技能の普及に大きな役割を果たしている。ア 危険物取扱者試験 危険物取扱者試験は、甲種、乙種及び丙種に区分され、都道府県知事が毎年1回以上実施することとされている。 平成19年度中の危険物取扱者試験は、全国で389回(対前年度比22回増)実施された。受験者数は48万4,512人(同8,119人増)、合格者数は20万9,703人(同5,345人増)で平均の合格率は43.3%(同0.4ポイント増)となっている(第1−2−13図)。第1-2-13図 危険物取扱者試験実施状況 この状況を試験の種類別にみると、受験者数では、乙種第4類が全体の64.5%、次いで丙種同10%となっており、この二種類の試験で全体の74.5%を占めている。合格者数でも、同様にこの二種類の試験で全体の65.8%を占めている。 なお、甲種危険物取扱者試験について、平成20年4月1日以降、一定の組み合わせ(第1類又は第6類、第2類又は第4類、第3類及び第5類)で4種類以上の乙種危険物取扱者免状の交付を受けている者の受験が可能になるなど、受験資格が拡大されている。イ 保安講習 危険物施設において危険物の取扱作業に従事する危険物取扱者は、原則として3年以内ごとに、都道府県知事が行う危険物の取扱作業の保安に関する講習を受けなければならないこととされている。 平成19年度中の保安講習は、全国で延べ1,266回(対前年度比13回増)実施され、16万9,657人(同3,091人増)が受講している(第1−2−2表)。第1-2-2表 危険物取扱者保安講習受講者数及びその危険物取扱者免状の種類別内訳
(5)事業所における保安体制の整備 平成20年3月31日現在、危険物施設を所有する事業所総数は、全国で24万3,607事業所となっている。 事業所における保安体制の整備を図るため、一定の危険物施設の所有者等には、危険物保安監督者の選任、危険物施設保安員の選定、予防規程の作成が義務付けられている。また、同一事業所において一定の危険物施設を所有等し、かつ、一定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う者には、自衛消防組織の設置、危険物保安統括管理者の選任が義務付けられている(第1−2−14図)。第1-2-14図 自衛消防組織等を設ける事業所数の推移
(6)保安検査 一定の規模以上の屋外タンク貯蔵所及び移送取扱所の所有者等は、一定の時期ごとに市町村長等が行う危険物施設の保安に関する検査を受けることが、義務付けられている。 平成19年度中に実施された保安検査は305件(対前年度比6件減)であり、そのうち特定屋外タンク貯蔵所に関するものは297件(同6件減)、特定移送取扱所に関するものは8件(前年同件数)となっている。
(7)立入検査及び措置命令 市町村長等は、危険物の貯蔵又は取扱いに伴う火災防止のため必要があると認めるときは、危険物施設等に対して施設の位置、構造又は設備及び危険物の貯蔵又は取扱いが消防法で定められた基準に適合しているかについて立入検査を行うことができる。 平成19年度中の立入検査は22万4,805件(対前年度比8,458件減)の危険物施設について、延べ24万7,903回(同15,149回減)行われている。 立入検査を行った結果、消防法に違反していると認められる場合、市町村長等は、危険物施設等の所有者等に対して、貯蔵又は取扱いに係る基準の遵守命令、施設の位置、構造及び設備の基準に関する措置命令等を発することができる。 平成19年度中に市町村長等がこれらの措置命令等を発した件数は314件(前年同件数)となっている(第1−2−15図)。第1-2-15図 危険物施設等に関する措置命令等の推移
2 石油パイプラインの保安(1)石油パイプライン事業の保安規制 石油パイプラインのうち、一般の需要に応じて石油の輸送事業を行うものについては、その安全を確保するため、石油パイプライン事業法により、基本計画の策定及び事業の許可に当たって総務大臣の意見を聞かなければならない。また、総務大臣は工事計画の認可、完成検査、保安規程の認可、立入検査等を行う。 石油パイプライン事業法の適用を受けている施設は、現在、成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインだけであり、それ以外のパイプラインは、別途消防法において移送取扱所として規制されている。
(2)石油パイプラインの保安 石油パイプライン事業法に基づく成田国際空港への航空燃料輸送用パイプラインについては、定期的に保安検査等を実施するとともに、事業者に対しては、保安規程を遵守し、法令に定める技術上の基準に従って維持管理、点検等を行わせ、その安全の確保に万全を期することとしている。
[危険物行政の課題]1 官民一体となった事故防止対策の推進 危険物施設の火災・流出事故は、平成6年ころを境に増加傾向に転じ、平成19年には過去最多の603件を記録している。このような状況を踏まえ、関係業界や消防機関等により構成される「危険物等事故防止対策情報連絡会」において策定された「危険物事故防止アクションプラン」に基づいて、事故に係る調査分析や事故防止技術の調査研究、各種情報の共有化を進めるとともに、各都道府県における事故防止の取組など、官民一体となって事故防止対策を推進していく必要がある。 また、産業災害の背景要因として、人員や設備投資等の削減、雇用形態の変化や保守管理業務のアウトソーシング等が指摘されていることから、幅広い視点からの実態把握による有機的な対策を講じ、各事業所の実態に応じた安全確保を図るため、危険要因を把握して、これに応じた対策を講ずる必要がある。
2 腐食疲労等劣化への対策 近年の流出事故の増加については、危険物施設の老朽化等に伴う腐食疲労等劣化が大きな要因となっている。このような流出事故を防止するため、地下タンクの流出危険性の評価手法を確立し、その評価結果に応じた腐食防止・抑制対策を講ずることについて、また、資源の有効活用、廃棄物の削減等の観点から、地下タンクを改修し、継続して使用するための方策について検討を進める必要がある。
3 科学技術及び産業経済の進展等を踏まえた安全対策の推進 近年、科学技術及び産業経済の進展に伴い、危険物や指定可燃物と同様の性状を有していながらその潜在的危険性が認識されていない新規危険性物質の出現、危険物の流通形態の変容、危険物施設の大規模化、多様化、複雑化、新技術の開発など、危険物行政を取り巻く環境は大きく変ぼうしている。 こうした状況に的確に対応するため、新規危険性物質についての早期把握や必要に応じた危険物規制に関する技術基準の見直しを引き続き図るとともに、従来の消防や防災の観点からは想定されていなかった新しい危険要因を有する施設等について、幅広い視点から実態を把握し、それに応じた安全確保を図るための方策を検討していく必要がある(囲み記事「バイオマス燃料の安全性の確保について」参照)。
バイオマス燃料の安全性の確保について 温室効果ガスである二酸化炭素の排出を抑制する観点から、生物由来の有機性資源を用いたバイオマス燃料が世界的に注目を集めています。我が国においても、バイオマスの総合的な利活用を推進するため、具体的な行動計画からなる「バイオマス・ニッポン総合戦略」が平成14年12月27日に閣議決定され、関係省庁が連携して取組を進めています。 現在、バイオエタノールをガソリンに直接混合する「エタノール3%含有ガソリン(E3)」と、バイオエタノールをETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル:バイオエタノールと石油精製副産物との化合物)に変換してからガソリンに混合する「ETBE含有ガソリン」の2つのバイオマス燃料の導入・実用化が進められているところです。E3及びETBE含有ガソリンが安全かつ円滑に導入されるよう、消防庁では、平成19年度にこれらのバイオマス燃料の危険物施設における安全対策に関する検証実験等を行い、防火安全上必要な対策に関する検討を行いました。 同検討を踏まえ、平成20年3月にE3及びETBE含有ガソリンの取扱い上の安全対策に関する基準を示したところです。 地球温暖化対策の更なる推進のため、E3やETBE含有ガソリン以外のバイオマス燃料として、バイオディーゼル燃料(BDF)やバイオエタノールを高濃度で含有するガソリン(エタノール10%含有ガソリン(E10)等)の利活用が進むことも見込まれています。 消防庁では、これら新しい燃料の安全対策について引き続き調査検討を行うこととしています。
4 屋外タンク貯蔵所の安全対策 屋外タンク貯蔵所に代表される大規模危険物施設は、沿岸部に集中して設置されており、今世紀前半にも発生する可能性が高いとされている東南海・南海地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等に伴う津波に見まわれるおそれがある。しかし、現状では大規模危険物施設の津波被害の予測手法には確固たるものがないため、これらの地震の際、津波が大規模危険物施設に及ぼす影響の程度は不明である。 こうしたことから、大規模危険物施設に発生しうる津波・浸水被害を予測する標準的な手法を確立するとともに、有効な被害軽減対策を立案するため、平成18年度から「危険物施設に係る津波・浸水対策検討会」において検討を行っている。 また、内部浮き蓋付き屋外タンク貯蔵所(固定屋根式屋外タンクの内部に浮き蓋を有する屋外タンク貯蔵所)に関する技術基準が未整備であることから、「内部浮き蓋付き屋外貯蔵タンクの安全対策に関する調査検討会」において、これらのタンクの安全対策について検討を行っている。
第3節 石油コンビナート災害対策[石油コンビナート災害の現況と最近の動向]1 災害件数と被害 平成19年中に石油コンビナート等特別防災区域(以下「特別防災区域」という。)の特定事業所で発生した災害の件数は243件で、前年(236件)と比較すると7件の増加となっている(第1−3−1図)。 最近の傾向をみると、特に平成18年と平成19年は多く発生している。 また、24件の災害で、死者11人、負傷者51人が発生している。損害額は46億8,443万円で、前年に比べて29億7,587万円の増加となっている。 災害の原因をみると、管理面や操作面などの人的要因が124件(51.0%)、設備の劣化や故障などの物的要因が101件(41.6%)となっており、前年度と同様に人的要因による災害が多い。第1-3-1図 石油コンビナート事故発生件数(種別ごと)の推移
2 災害の特徴(1)特定事業所区分別災害件数 特定事業所区分別の災害件数をみると、第1種事業所が189件(うちレイアウト規制対象事業所168件)で、全体の77.8%を占めている。1事業所あたりの災害発生率は、レイアウト規制対象事業所が87.5%と最も高い(第1−3−1表)。第1-3-1表 特定事業所区分別災害件数
(2)特定事業所の業態別災害件数 特定事業所の業態別災害件数をみると、石油製品・石炭製品製造業関係が74件(全体の30.4%)、化学工業関係が63件(同26.0%)、鉄鋼業関係が35件(同14.4%)となっている。
[石油コンビナート災害対策の現況] 危険物、高圧ガス等の可燃性物質が大量に集積している石油コンビナートにおいては、災害の発生及び拡大を防止するため、消防法、高圧ガス保安法、労働安全衛生法及び海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律等による各種規制に加えて、各施設のレイアウト、防災資機材等について定めた石油コンビナート等災害防止法による規制を行い、総合的な防災体制の確立を図ることとしている。
1 石油コンビナート等特別防災区域の現況 一定量以上の石油又は高圧ガスを大量に集積している33道府県の86地区については、石油コンビナート等災害防止法に基づき、特別防災区域に指定されている(平成20年4月1日現在)(第1−3−2図)。第1-3-2図 石油コンビナート等特別防災区域の指定状況 また、平成20年4月1日現在、第1種事業所389事業所(このうちレイアウト規制対象事業所は190)、第2種事業所331事業所が石油コンビナート等災害防止法の規制を受けている。 なお、特別防災区域における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量等は、附属資料31のとおりである。
2 道府県・消防機関における防災体制(1)防災体制の確立 特別防災区域が所在する道府県では、石油コンビナート等災害防止法に基づき、石油コンビナート等防災本部(以下「防災本部」という。)を中心として関係機関等が一致協力して、総合的かつ計画的に防災体制の確立を推進している。防災本部は、石油コンビナート等防災計画(以下「防災計画」という。)の作成、災害時における関係機関の連絡調整、防災に関する調査研究等の業務を行っている。
(2)災害発生時の応急対策 特別防災区域で災害が発生した場合、その応急対策は、防災計画の定めるところにより、市町村の消防本部等が消防活動を指揮し、大規模災害に拡大した場合には防災本部が中心となって、関係機関等をも含めた防災活動の総合的な連絡調整を行っている。
(3)特別防災区域所在市町村等の消防力の整備 大規模かつ特殊な災害が発生するおそれのある特別防災区域に係る消防力は、十分に整備することが必要である。消防庁は、市町村の消防機関が基準とする「消防力の整備指針」において、特別防災区域に係る災害に対処するために保有すべき消防力を示しており、その整備を図っている。 平成20年4月1日現在、特別防災区域所在市町村の消防機関には、大型化学消防車97台、大型高所放水車77台、泡原液搬送車96台、3%泡消火薬剤3,140キロリットル、6%泡消火薬剤665キロリットル、消防艇22艇等が配備されている。 また、市町村の消防力を補完し、特別防災区域の防災体制を充実強化するため、特別防災区域所在道府県においても、泡原液貯蔵設備30基、可搬式泡放水砲20基等が整備されている。
3 特定事業所における防災体制(1)自衛防災組織等の現況 石油コンビナート等災害防止法では、特別防災区域に所在する特定事業者に対し、自衛防災組織の設置、防災資機材等の配備、防災管理者の選任及び防災規程の作成などを義務付けている。また、各特定事業所が一体となった防災体制を確立するよう、共同防災組織及び石油コンビナート等特別防災区域協議会(以下「区域協議会」という。)の設置について定めている。 平成20年4月1日現在、全事業所(720事業所)に自衛防災組織が置かれ、このほか74の共同防災組織、58の区域協議会が設置されている。これらの自衛防災組織及び共同防災組織には常時防災要員4,877人、大型化学消防車119台、大型高所放水車74台、泡原液搬送車147台、大型化学高所放水車89台、油回収船32隻等が配備されている。 さらに、特定事業所には、個別施設に対する防災設備のほかに、事業所全体としての防災対策の強化を図るため、施設の規模に応じて流出油等防止堤、消火用屋外給水施設及び非常通報設備を設置しなければならないこととされている。平成20年4月1日現在、流出油等防止堤が173事業所に、消火用屋外給水施設が530事業所に、非常通報設備が720の事業所にそれぞれ設置されている。
(2)自衛防災体制の充実 石油コンビナートにおける消防活動は、危険物等が大量に取り扱われていることや設備が複雑に入り組んでいることから困難な場合が多く、また大規模な災害となる可能性が高いことから、災害発生時には、自衛防災組織や共同防災組織による的確な消防活動を行うことが要求されるとともに、防災要員には広範な知識と技術が必要とされる。消防庁では、自衛防災組織等における防災活動、防災訓練及び防災教育のあり方について「自衛防災組織等のための防災活動の手引」、「防災要員教育訓練指針」等を示しており、引き続き自衛防災体制の充実を図ることとしている。
4 事業所のレイアウト規制(1)レイアウト規制対象事業所の実態 石油コンビナート災害の拡大を防止するには、石油コンビナートを形成する事業所の個々の施設を単体として規制するだけでは十分でなく、事業所内の施設地区等の配置及び他の事業所等との関係について、事業所全体として災害防止の観点から対策を講じることが必要である。 このため、石油コンビナート等災害防止法では、石油と高圧ガスを併せて取り扱う第1種事業所について、事業所の新設又は施設地区等の配置の変更を行う場合には、計画の届出を義務付けるとともに、新設又は変更の完了後には計画に適合していることの確認を受けなければならないこととされている(レイアウト規制)。 第1種事業所のうち、レイアウト規制対象事業所における石油の貯蔵・取扱量及び高圧ガスの処理量の特定事業所全体に占める割合は、石油にあっては55.2%、高圧ガスにあっては94.1%となっており、高圧ガスについては大部分がレイアウト規制対象事業所において貯蔵・取扱い等がされている(平成20年4月1日現在)。
(2)新設等の届出等の状況 レイアウト規制対象となる190(平成20年4月1日現在)の事業所のうち平成19年度中の新設及び変更の届出件数は、21件であり、平成19年度中の確認件数は、25件であった(第1−3−3図)。第1-3-3図 レイアウト規制対象事業所の新設等の届出及び確認の状況
5 その他の災害対策(1)通報体制の整備 特定事業所において災害が発生した場合には、消防機関等へ直ちに通報することが石油コンビナート等災害防止法において義務付けられている。しかし、通報に時間を要している事例があるため、迅速かつ的確な通報を徹底するよう指導を行っている。
(2)防災緩衝緑地等の整備 石油コンビナート等災害防止法に基づき、地方公共団体が防災上の見地から特別防災区域の周辺に整備する防災緩衝緑地等については、国、地方公共団体及び第1種事業者の費用負担によりその設置を推進している。
[石油コンビナート災害対策の課題]1 災害対策の推進 特別防災区域に関しては、消防法や高圧ガス保安法等の規制に加えて石油コンビナート等災害防止法により、特定事業者に対する災害の拡大防止を図るための規制や義務付けを行うとともに、道府県に防災本部を常設し、消防機関をはじめとした防災関係機関、特定事業者が一体となった防災体制が確立されている。 こうした中、平成15年に発生した苫小牧市内の石油精製事業所の事故を受け、石油コンビナート等災害防止法が改正されるとともに石油コンビナート等災害防止法施行令が改正され、大容量泡放射システムの配備を特定事業所に義務付けることにより、防災対策を強化し、災害対応に努めることとされた。
(1)特定事業所における防災体制の充実強化に伴い検討すべき事項 特別防災区域における事故は年々増加傾向にあり、平成19年中の事故件数は過去最多となっている。特に、石油や高圧ガス等を大量に貯蔵し、取り扱う石油製品製造関係の特定事業所において事故が増加しているほか、屋外タンク貯蔵所における漏えい事故が大幅に増加している。その中でも、内部浮きぶた付き屋外タンク貯蔵所の浮きぶたの異常時における応急措置に苦慮する事案が見受けられたほか、石油コンビナート等災害防止法第23条の規定に基づく異常現象の通報を怠った事例が判明するなど、特定事業所の事故防止体制に憂慮される事態が見受けられることから、特定事業所の防災体制の現状を把握し、適切な指導、助言等を行っていく必要がある。
(2)大容量泡放射システムの配備に伴う今後の課題 新たに大容量泡放射システムが配備されたことに伴い、今後、特定事業者と道府県を中心とした関係防災機関等が一体となった防災訓練を行っていく必要がある(囲み記事「大容量泡放射システムの配備について」参照)。
大容量泡放射システムの配備について 平成15年の十勝沖地震による浮き屋根式屋外タンク貯蔵所の全面火災を受けて、直径34メートル以上の浮き屋根式屋外タンク貯蔵所が存する特定事業所に大容量泡放射システムが配備されることとなりました。 大容量泡放射システムは、一の特別防災区域内に所在する特定事業所が共同して設置する、いわゆる共同防災組織による配備のほか、二以上の特別防災区域にわたる区域であって、地理的条件、交通事情、災害発生のおそれ、特定事業所の集中度その他の事情を勘案して政令で定めた12の区域ごとに所在する特定事業所が共同して設置する、いわゆる広域共同防災組織による配備が可能とされています。 大容量泡放射システムに必要とされる基準放水能力は、浮き屋根式屋外貯蔵タンクの直径に応じ、毎分1万リットル〜8万リットルとされ、泡放水砲1基当たりの放水能力は、従来の3点セット(大型化学消防車、大型高所放水車及び泡原液搬送車)の3倍〜10倍の泡放射を行うことが可能となっています。実際に配備される泡放水砲は、1万リットル〜4万リットルの放水能力を有するものであるため、直径の大きなタンクには複数の泡放水砲が配備されます。 また、大容量泡放射システムは放射距離を確保するため、泡放水砲ノズル本体では空気を取り込まずに、滞空中に発泡する仕組みのノンアスピレート方式を主流としています。ノンアスピレート方式ノズル 大容量泡放射システムは我が国初の防災資機材であり、メーカーごとにポンプ、混合装置又はホースなどの大きさや形状、特性等が異なっており、今後、大容量泡放射システムを用いた関係機関等が一体となった防災訓練等の実施が課題となっています。水中ポンプの一例送水ポンプの一例ホースの一例
2 石油備蓄基地への対応 エネルギー小国の我が国にとって、石油の備蓄は重要な意義を有するものであり、昭和53年から石油公団(現独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)を通じ国家備蓄を開始した。国家備蓄は、民間タンクの借上げ分を含め5,000万キロリットルを目標として、各地に大規模な備蓄基地の建設が進められ、平成10年2月にこの目標を達成した。備蓄基地の態様としては、従来から行われている地上タンク方式のほか、地中タンク、海上タンク、岩盤タンクといった特殊な貯蔵方式も導入されている。 これらの備蓄基地については、施設のみならず地域の安全に万全を期するため、備蓄の態様に応じた技術基準を整備し、石油コンビナート等災害防止法に基づく特別防災区域の指定等の措置を講じており、今後とも、備蓄の態様に応じた防災の対策を一層推進していく必要がある。
第4節 林野火災対策[林野火災の現況と最近の動向] 平成19年中の林野火災の出火件数は2,157件(前年1,576件)、焼損面積は717ha(同829ha)、損害額は2億3,659万円(同1億3,421万円)であり、出火件数及び損害額は前年に比べ増加し、焼損面積は前年に比べ減少した(第1−1−19表)。第1-1-19表 林野火災の焼損面積段階別損害状況 例年、林野火災は春先を中心に発生している。この原因としては、降水量が少なく空気が乾燥し強風が吹くこの時期に火入れが行われたり、山菜採りやハイキングなどで入山者が増加していることなどによるものと考えられる。平成19年も例外ではなく、2月から4月までの間に1,149件(年間の53.3%)の火災が集中して発生している(第1−1−26図)。第1-1-26図 林野火災の月別出火件数
[林野火災対策の現況]1 林野火災特別地域対策事業 消防庁では、昭和45年度から林野庁と共同で林野火災特別地域対策事業を推進してきた。この事業は、林野占有面積が広く、林野火災の危険度が高い地域において、関係市町村が共同で事業計画を樹立し、 〔1〕 防火思想の普及宣伝、巡視・監視等による林野火災の予防 〔2〕 火災予防の見地からの林野管理 〔3〕 消防施設等の整備 〔4〕 火災防ぎょ訓練等を総合的に行うものであり、平成20年4月1日現在、38都道府県の526市町村にわたる236地域において実施されている。 しかし、事業の実施要件を備えていながら、いまだに実施していない市町村も多数あり、今後、より一層事業を推進していく必要がある。 なお、消防庁では、昭和45年度から林野火災特別地域対策事業を実施する市町村における林野火災用消防施設等(防火水槽、林野火災用活動拠点広場)の整備に対して優先的に国庫補助を行っている。
2 広域応援による消防活動(1)広域応援体制の整備 林野火災は、対応が遅れると貴重な森林資源を大量に焼失するばかりでなく、家屋等に被害が及ぶことや市町村境、隣接都府県境を越えて拡大することもある。 消防庁では、地方公共団体に対し、林野火災が発生した場合、十分な消防力を迅速に投入するとともに、ヘリコプターによる情報収集や、空中消火を実施するための体制の整備を進め、必要に応じて早期に広域応援の要請を行うよう呼びかけている。
(2)空中消火の実施状況 ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による迅速かつ効果的な消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、消防庁は、地方公共団体に対し、比較的小規模な林野火災でも空中偵察と空中消火を実施し、早期消火に努めるよう要請している。 空中消火は、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣の要請を受けて出動した自衛隊のヘリコプターにより実施されている。 過去10年間の空中消火の実施状況は、第1−4−1図のとおりとなっている。第1-4-1図 空中消火の実施状況 なお、消防庁では、平成7年度から林野火災時にヘリコプターが安全に離着陸し、効率よく水利を確保するとともに、平常時においては地域住民が多目的に利用できる「林野火災用活動拠点広場」の整備事業に対して、国庫補助を行っている。
3 出火防止対策(1)出火防止対策の徹底 林野火災の出火原因は、たき火、たばこ及び火入れによるものが圧倒的に多く、併せて、林野火災の消火には多くの困難を伴うことから、林野火災対策は、特に出火防止の徹底が重要である。消防庁では、次の事項に重点を置いて出火防止対策を推進している。 〔1〕 林野周辺住民、入山者等の防火防災意識を高めること。特に、出火が行楽期等一定の期間に集中し、かつ土・日曜日、祝日に多いことから、このような多発期前に徹底した広報を行うこと。 〔2〕 火災警報発令中における火の使用制限の徹底を図るとともに、監視パトロールを強化すること。 〔3〕 「火入れ」に当たっては、必ず市町村長の許可を受けて、その指示に従うとともに、消防機関に連絡をとるよう、指導の徹底を図ること。 〔4〕 林野所有者に対して、林野火災予防措置の指導を強化すること。 また、毎年、林野庁と共同で、春季全国火災予防運動期間中の3月1日から3月7日までを全国山火事予防運動の統一実施期間とし、統一標語を定め、テレビ、新聞、ポスター等を用いた広報活動や消火訓練等を通じた山火事予防を呼びかけている。
(2)林野火災に係る調査研究 消防庁では、これまで、〔1〕異常乾燥・強風下における林野火災対策のあり方についての検討(林野庁と共同)、〔2〕森林レクリエーション利用者の増大に対する林野火災対策に関する検討、〔3〕林野周辺の住宅地開発の増加に伴う延焼拡大防止対策に関する調査(林野庁と共同)、〔4〕林野火災対策に係る消防水利のあり方に関する調査、〔5〕林野火災における消火・広域応援体制に関する調査、〔6〕林野火災の予防対策のあり方やヘリコプターによる空中消火のあり方の検討、〔7〕林野火災の有効な低減方策の検討、〔8〕広域的な林野火災の発生時における消防活動体制のあり方に関する検討を行っている。
[林野火災対策の課題] 効果的な林野火災対策を推進するためには、出火防止対策の一層の徹底を図るとともに、特に次の施策を積極的に講じる必要がある。 〔1〕 気象台から発せられる気象情報や火災気象通報を踏まえて、林野火災発生の可能性を勘案し、必要に応じて火災警報の効果的な発令を行うなど、火気取扱いの注意喚起や制限を含めて適切に対応すること。 〔2〕 各地方公共団体における火災警報の発令に役立てていくため、今後、火災気象通報における地域区分の細分化に関する取組を促進していくこと。 〔3〕 林野火災を覚知した場合、早急に近隣の市町村に対して応援要請を行うなど、林野火災の拡大防止を徹底すること。特に、ヘリコプターによる偵察及び空中消火を早期に実施するため、速やかな事前通報及び派遣要請に努めるとともに、ヘリコプターによる空中消火と連携した地上の効果的な消火戦術の徹底を図ること。また、ヘリコプターの活動拠点の整備促進を図ること。 〔4〕 林野火災状況の的確な把握、防ぎょ戦術の決定、効果的な部隊の運用と情報伝達及び消防水利の確保等を行うため、林野火災の特性及び消防活動上必要な事項を網羅した林野火災防ぎょ図を、GIS(地理情報システム)の活用も視野に入れて整備するなど、関係部局においてその共有を図ること。 〔5〕 防火水槽等消防水利の一層の整備を図ること。特に、林野と住宅地とが近接し、住宅への延焼危険性が認められる地域における整備を推進すること。 〔6〕 周辺住宅地及び隣接市町村への延焼拡大防止を考慮した有効な情報通信体制の整備を図るとともに、これを活用した総合的な訓練の実施に努めること。愛媛県今治市の林野火災(平成20年8月)(愛媛県消防防災航空隊提供)空中消火へ向かう愛媛県消防防災ヘリコプター「えひめ21」(愛媛県消防防災航空隊提供)
第5節 風水害対策[風水害の現況と最近の動向](1)平成19年中の災害 平成19年は、7月の台風第4号及び梅雨前線、8月の台風第5号、9月の台風第9号及び東北地方を中心とする大雨などにより、全国各地に甚大な被害がもたらされた。 平成19年中に発生した台風の数は24個と平年の26.7個(昭和46年から平成12年までの30年間平均)と比較すると少なかったものの、日本列島への上陸数は3個とほぼ平年並みであった。 平成19年中の風水害等(地震、火山噴火を除く。)による人的被害、住家被害は、死者・行方不明者25人(前年177人)、負傷者397人(同1,822人)、全壊97棟(同458棟)、半壊457棟(同2,022棟)、一部破損2,469棟(同16,091棟)となっている(第1−5−1図)。第1-5-1図 風水害等による被害状況 なお、主な風水害の状況は、次のとおりである(第1−5−1表)。第1-5-1表 平成19年中の主な風水害による被害状況
(2)平成20年1月から10月までの災害 平成20年10月末までに発生した台風の数は、18個であるが、日本列島への上陸はなかった。 風水害に伴う人的被害、住家被害は、死者・行方不明者18人、負傷者103人、全壊14棟、半壊25棟、一部破損481棟となっている(平成20年10月31日現在)。 なお、主な風水害の状況は次のとおりである(第1−5−2表)。第1-5-2表 平成20年中の主な風水害による被害状況
[風水害対策の現況]1 風水害対策の概要 台風や集中豪雨等による風水害が発生し、毎年、広い地域で大きな被害がもたらされている。そのため、中央防災会議において防災基本計画の風水害対策編等の修正が行われ、消防庁では、被害を軽減するために、地方公共団体に対し洪水予報河川の指定、土砂災害警戒区域の指定及び洪水や高潮ハザ−ドマップの作成などについて、地域防災計画の修正を行うよう要請している。また、地方防災会議の開催を通じた防災関係機関との連携の強化や地域防災計画の見直しなど、災害に的確に対応し得る体制の整備などについても要請している。 平成20年4月には、中央防災会議において、自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指すための総合プランが示され、国民一人ひとりの「命」を守るための災害対策をソフト・ハード両面から進めていくにあたり、「自助」や「共助」の取組を促進するための環境整備のあり方及び防災上の課題を踏まえた防災基盤の整備のあり方について、それぞれの基本的な考え方と施策の方向を明らかにするとともに、各府省において今後推進していく具体的な施策の全体像が示された。 消防庁では、毎年、出水期を前に、各都道府県に対し風水害に対する警戒の強化、土砂災害対策の充実を求める旨の通知を発出するとともに、台風の襲来時における台風警戒情報、災害の発生が予想される際の警戒情報などを都道府県に送付して、警戒・避難体制の強化を呼びかけている。 なお、平成19年度中においては、風水害を想定した防災訓練が都道府県では26団体で50回、市町村では延べ807回実施されている。
2 災害別対策(1)洪水 平成20年7月から9月にかけて全国各地で集中豪雨が発生し、特に「平成20年8月末豪雨」では、愛知県を中心に東海、関東、中国及び東北地方において中小河川の急激な水位上昇を伴う河川の氾らんなどによる被害が発生した。近年、このような時間雨量100mmを超えるような猛烈な雨が頻発し、被害の甚大化、ライフラインの破損による都市機能の麻痺といった状態を引き起こすなど大きな被害が発生する例が増えている。 消防庁では、平成16年5月に施行された「特定都市河川浸水被害対策法」、平成17年5月に改正された「水防法」及び「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」等を踏まえ、地方公共団体に対し、地域における水害や土砂災害の防止対策を図るとともに、地域防災計画の見直しを行うよう要請している。
(2)土砂災害 がけ崩れ、地すべり、土石流による土砂災害はこれまでに多く発生しており、近年では「平成18年7月豪雨」による長野県や鹿児島県など各地で発生した土砂災害により、多くの人的被害が生じている。土砂災害対策に関しては、昭和63年に中央防災会議で決定された「土砂災害対策推進要綱」、平成13年4月に施行された「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」及びこの法律に基づいて定められた「土砂災害防止対策基本指針」等に基づいて推進している。 平成19年4月には、市町村の警戒避難体制の整備を支援することを目的に、特に留意すべき事項として、情報の収集・伝達、避難勧告等の発令、避難所の開設・運営、災害時要援護者への支援、二次災害防止、防災意識の向上等の考え方を取りまとめた「土砂災害警戒避難ガイドライン」が国土交通省で作成された。 また、国土交通省及び気象庁では、平成17年6月、大雨による土砂災害が見込まれるときに市町村長が発令する避難勧告等の判断の支援や住民の自主避難の参考となるよう、都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」についての基本的な考え方や運用に向けて整えるべき事項等を取りまとめた「都道府県と気象庁が共同して土砂災害警戒情報を作成、発表するための手引き」を都道府県に配付した。 このことを受け、平成17年9月に鹿児島県において全国で初めて土砂災害警戒情報の発表が開始され、現在ではすべての都道府県で運用されている。 消防庁では、このような法律や指針・ガイドラインの趣旨を踏まえ、地方公共団体に対して、対策に万全を期すよう要請している。
(3)高潮 消防庁では、平成11年9月に熊本県不知火海岸で高潮の被害により12人の死者が発生したこと等を踏まえ、平成13年3月に内閣府、農林水産省、国土交通省等と共同で、高潮対策強化マニュアルを策定した。 平成16年8月の台風第16号に伴う高潮では、1年で最も潮位が高くなる大潮の時期に加えて満潮とも重なり、既往最高潮位を60cm近くも超えるところが出るなど、香川県・岡山県・広島県等の瀬戸内地区を中心に、床上浸水など相当数の高潮被害が発生している。このことから、消防庁をはじめとする関係府省では、高潮に対する住民等の理解の向上を図り、高潮災害の被害発生を防止するため、平成12年度に作成されたパンフレット「高潮災害とその対応」を平成17年度に改訂し、インターネット上で公表するとともに、関係機関への配布を行った。
(4)竜巻・突風 平成18年9月に宮崎県延岡市で発生した竜巻により3人の死者が発生した。また、11月に北海道佐呂間町で発生した竜巻により9人の死者が発生した。 こうした人命のみならず、住家、交通、ライフラインなどに甚大な被害をもたらす竜巻・突風災害が続発していることを踏まえ、政府では内閣府、気象庁など関係府省による「竜巻等突風対策検討会」を平成18年11月から平成19年6月にかけて開催し、その対策について検討を行った。その検討を踏まえ、内閣府及び気象庁では、竜巻などの突風からの身の守り方など個人レベルでの対策の周知を図るため、パンフレット「竜巻等突風災害とその対応」を作成しインターネット上で公表したほか、関係府省、地方公共団体など関係機関に配布した。 また、気象庁では、平成20年3月から、身の安全を確保することを目的とした新たな気象情報「竜巻注意情報」の発表を開始した。さらに、竜巻等の突風や短時間強雨、雷の危険度を格子点形式で示す「突風等短時間予測情報(仮称)」を平成22年度から提供できるよう準備を進めている。学識経験者、地方公共団体、報道機関等による『平成20年度突風等短時間予測情報利活用検討会』を開催し、「突風等短時間予測情報(仮称)」の利用上の留意点や利用例等を整理して、必要な周知・広報策について検討を行うこととしている。
[風水害対策の課題] 台風、集中豪雨等の風水害による人的被害の発生を防ぐためには、防災訓練の実施や防災知識の普及啓発等を進めるとともに、次のような対策の推進が求められている。
1 避難勧告等の発令・伝達(1)避難勧告等の判断・伝達マニュアルの作成 「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を参考に、市町村において「避難準備(要援護者避難)情報」を地域防災計画に位置付けるほか、避難勧告等を発令する客観的な判断基準等を定めた避難勧告等の判断・伝達マニュアルの早急な整備が必要である。 なお、土砂災害については、各都道府県は土砂災害警戒情報の適切な運用に努め、各市町村は的確な避難勧告等の発令のため、専門家等の助言、土砂災害警戒情報等を活用するよう努める必要がある。 また、避難勧告等は、災害の状況及び地域の実情に応じ、効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達するとともに、早期自主避難の重要性について周知する必要がある。
(2)放送事業者との連携体制の整備 災害時における連絡方法、避難勧告等の連絡内容等について放送事業者とあらかじめ申し合わせるなど、放送事業者と連携した避難勧告等の伝達体制の確立が必要である。
(3)防災行政無線の整備 気象情報の的確な収集を行うため、緊急防災情報ネットワーク、各種の防災気象端末等の活用を図るとともに、他の防災機関等との連携を図り、休日・夜間も含め、防災関係機関相互間及び住民との間の情報収集・伝達体制の整備が必要である。このため、防災行政無線(同報系)の整備等を図る(第2章第9節参照)とともに、実際の災害時に有効に機能し得るよう、通信施設の整備点検が重要である。
(4)防災情報の連絡体制等 都道府県から市町村に対する避難勧告等に関する意思決定の助言、気象官署、河川管理者と市町村との間でのホットラインの構築、気象官署から都道府県への要員派遣等、国・都道府県・市町村間の連携強化・情報共有を図る体制を整備する必要がある。 また、市町村は住民等からの前兆現象、災害発生情報等の情報が収集できるよう、日ごろから通報先を住民等へ周知しておくとともに、雨量情報、土砂災害警戒情報等を住民へ的確に提供するよう体制の整備に努める必要がある。
2 避難体制の整備(1)災害時要援護者の避難誘導体制の整備 市町村は、「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」等を参考に、自主防災組織等との連携の下、一人ひとりの災害時要援護者に対して複数の避難支援者を定める等、具体的な避難支援計画(避難支援プラン)を早急に策定する必要があり、「自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指すための総合プラン」(平成20年4月中央防災会議報告)においては、平成21年度までを目途に避難支援プランの全体計画などが策定されるよう促進し、災害時要援護者が安全に避難するための支援体制を確立する旨規定されているところである。 なお、災害時要援護者関連施設については、立地条件の把握、施設周辺のパトロール体制の確認をはじめ、施設への適切な情報提供、的確な避難誘導体制等の再点検を行うほか、避難が夜間になりそうな場合には日没前に避難が完了できるように努めるなど、警戒避難体制等の防災体制の整備が必要である。
(2)避難路・避難所の周知徹底及び安全確保等 避難路・避難所については、住民が円滑かつ安全に避難できるよう、周知徹底するとともに、豪雨災害等の特性を踏まえた安全性の確保、移送手段の確保及び交通孤立時の対応について配慮する必要がある。 また、避難所の確保が難しい場合には、他の公共施設等を一時避難所として確保するよう配慮も必要である。
3 その他の措置(1)災害危険箇所に対する措置 例年、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域等の指定区域以外の箇所においても土砂災害が発生していることから、従来危険性が把握されていなかった区域もあわせて再点検を行い、標識の配置、広報誌、パンフレット、ハザードマップ、地区別防災カルテ等の配布、インターネットの利用、説明会の開催等により、地域住民への周知徹底を図る必要がある。
(2)二次災害防止対策の強化 災害発生後も引き続き気象情報等に留意しつつ警戒監視を行い、安全が確認されるまでの間、災害対策基本法に基づく警戒区域の設定、立入規制、避難勧告等必要な措置を講じるとともに、救助活動や応急復旧対策の実施に当たっての十分な警戒等を行うことが必要である。
(3)自主防災組織の育成等 風水害による被害を最小限にとどめるためには防災機関の活動のみならず、住民自らの災害に対する日常の備えが不可欠であり、地域防災を担う自主防災組織の育成強化を進める必要がある。
第6節 震災対策[地震災害の現況と最近の動向]1 国内の地震災害 平成19年1月から12月までの間に、震度1以上が観測された地震は、2,098回(前年1,343回)で、このうち、震度4以上を記録した地震は57回(前年28回)で、いずれも前年を上回った(第1−6−1表)。第1-6-1表 近年の地震発生状況
平成19年以降の主な地震の概要 平成19年1月から平成20年10月までの地震災害の概要は、以下のとおりである。第1-6-7表 平成19年1月から平成20年10月までの国内の主な地震災害(震度5弱以上)::k160h070.gif
(1)平成19年(2007年)能登半島地震 平成19年3月25日9時42分、能登半島沖を震源とするマグニチュード6.9の地震が発生した。 この地震により、石川県七尾市、輪島市、穴水町で震度6強、石川県志賀町、中能登町、能登町で震度6弱、石川県珠洲市で震度5強、新潟県刈羽村、富山県富山市、滑川市、舟橋村、氷見市、小矢部市、射水市、石川県羽咋市、宝達志水町、かほく市で震度5弱を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が13回観測された。 この地震による被害は、石川県を中心に、死者1人、負傷者356人、住家の全壊684棟、半壊1,733棟、一部破損26,935棟となっている(平成19年12月28日現在)(第1−6−2表)。第1-6-2表 平成19年(2007年)能登半島地震の被害状況
(2)三重県中部を震源とする地震 平成19年4月15日12時19分、三重県中部を震源とするマグニチュード5.4の地震が発生した。 この地震により、三重県亀山市で震度5強、三重県鈴鹿市、津市、伊賀市で震度5弱を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が1回観測された。 この地震による被害は、三重県を中心に、負傷者13人、住家の一部破損122棟となっている(平成19年4月23日現在)(第1−6−3表)。第1-6-3表 三重県中部を震源とする地震の被害状況
(3)平成19年(2007年)新潟中越沖地震 平成19年7月16日10時13分、新潟県上中越沖を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。 この地震により、新潟県長岡市、柏崎市、刈羽村、長野県飯綱町で震度6強、新潟県上越市、小千谷市、出雲崎町で震度6弱、新潟県三条市、十日町市、南魚沼市、燕市、長野県中野市、飯山市、信濃町で震度5強を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が6回観測された。 この地震による被害は、新潟県を中心に、死者15人、負傷者2,344人、住家の全壊1,319棟、半壊5,621棟、一部破損35,070棟となっている(平成19年12月28日現在)(第1−6−4表)。第1-6-4 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の被害状況 また、この地震により柏崎刈羽原子力発電所で、3号機変圧器の火災が発生した。
(4)平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震 平成20年6月14日8時43分頃、岩手県内陸南部を震源とするマグニチュード7.2の地震が発生した。 この地震により、岩手県奥州市、宮城県栗原市で震度6強、宮城県大崎市で震度6弱、岩手県北上市、一関市、金ヶ崎市、平泉町、宮城県仙台市、名取市、登米市、利府町、加美町、涌谷町、美里市、秋田県湯沢市、東成瀬村で震度5強を記録した。 その後、同地方を震源とする震度4以上の余震が11回観測された。 この地震による被害は、岩手県及び宮城県を中心に、死者13人、行方不明者10人、負傷者451人、住家の全壊33棟、半壊138棟、一部破損2,181棟となっている(平成20年11月17日現在)(第1−6−5表)。第1-6-5表 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の被害状況
(5)岩手県沿岸北部を震源とする地震 平成20年7月24日0時26分頃、岩手県沿岸北部を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。 この地震により、青森県八戸市、五戸町、階上町、岩手県野田村で震度6弱、青森県東北町、東通村、南部町、岩手県宮古市、大船渡市、北上市、久慈市、遠野市、一関市、釜石市、二戸市、八幡平市、奥州市、平泉町、大槌町、山田町、普代村、軽米町、洋野町、一戸町、宮城県石巻市、気仙沼市、栗原市、大崎市、涌谷町、美里町で震度5強、青森県十和田市、三沢市、野辺地町、七戸町、おいらせ町、岩手県盛岡市、花巻市、陸前高田市、葛巻町、滝沢村、紫波町、矢巾町、金ヶ崎町、藤沢町、住田町、岩泉町、田野畑村、川井村、九戸村、宮城県岩沼市、登米市、東松島市、亘理町、色麻町、南三陸町で震度5弱を記録した。 この地震による被害は、青森県及び岩手県を中心に、死者1人、負傷者211人、住家の全壊1棟、一部破損377棟となっている(平成20年11月17日現在)(第1−6−6表)。第1-6-6表 岩手県沿岸北部を震源とする地震の被害状況
2 外国の地震災害 平成19年1月から平成20年10月までの主な地震は、第1−6−8表のとおりである。第1-6-8表 平成19年1月から平成20年10月までの外国の主な地震災害
[震災対策の現況]1 震災対策の推進 消防庁では、災害対策基本法、大規模地震対策特別措置法、東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法、地震防災対策特別措置法、地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律等に基づき、震災対策に係る国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡、地域防災計画(震災対策編)、地震防災強化計画及び地震防災応急計画の作成等に関する助言、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、震災対策に関する調査研究等の施策を推進している。
(1)東海地震対策 昭和53年12月に施行された大規模地震対策特別措置法では、事前予知の可能性のある大規模地震について、地震防災対策強化地域の指定を行った上で、同地域に係る地震観測体制の強化を図るとともに、大規模な地震の予知情報が出された場合の地震防災体制を整備しておき、地震による被害の軽減を図ることとしている。東海地震については事前の予知の可能性があることから、静岡県を中心とする東海地方の6県167市町村が地震防災対策強化地域として指定され、中央防災会議が作成する「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」等に基づき、県及び市町村の地方防災会議等が地震防災強化計画を、地震防災上重要な施設又は事業を管理・運営する者が地震防災応急計画をそれぞれ作成し、地域の実情に即した地震防災に関する事項を計画的、総合的に推進している。 平成14年4月には、大規模地震対策特別措置法が施行されて以来四半世紀の間の観測体制の充実や観測データの蓄積、新たな学術的知見等を踏まえ、地震防災対策強化地域の指定の範囲が、6県167市町村から8都県263市町村(市町村合併により平成20年4月1日現在8都県170市町村)に拡大された。 この新たな指定を受けた都県及び市町村においても、地震防災強化計画や地震防災応急計画が策定され、東海地震対策の推進に向けた積極的な取組がなされているところであり、消防庁としても今後とも各都県、消防本部等を通じて作成を働きかけていく。 地震防災対策強化地域の拡大を受け平成15年3月には、最大で死者約9千人、全壊棟数約46万棟、経済被害37兆円という被害想定が公表されるとともに、平成15年5月の中央防災会議においては、予防対策から復旧・復興までの、強化地域外も含めた東海地震全般のマスタープランとして、「東海地震対策大綱」(以下「大綱」という。)が決定された。消防庁では、地震防災対策強化地域における関係都県の広域応援の受入れ体制及び都道府県をまたがる広域的な地震防災体制の充実を目的として、「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;廣井脩 東京大学社会情報研究所所長[当時])」を開催し、その検討結果を「東海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方に関する調査検討報告書」として平成15年3月に取りまとめた。 また、大綱の趣旨を踏まえ、平成15年7月に中央防災会議において、大規模地震対策特別措置法に基づく、「東海地震の地震防災対策強化地域に係る地震防災基本計画」(以下「基本計画」という。)の修正が決定されるとともに、同月、気象庁から東海地震に関する新しい情報発表の仕方が発表された(第1−6−1図)。第1-6-1図 東海地震に関連する情報と防災対応 さらには、大綱で決定された事項のうち、人命に密接に関連する部分として、〔1〕緊急に実施すべき予防対策、〔2〕緊急時における応急活動の迅速かつ的確な実施、〔3〕迅速な閣議手続等について、平成15年7月に「東海地震緊急対策方針」が閣議決定された。平成15年12月には、中央防災会議において「東海地震応急対策活動要領」が決定され、同要領に基づく、関係省庁の救助、物資の調達等について、具体的な活動内容の申合せを行った。消防庁としても、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災都道府県からの物資提供の調整等を行うこととなった。なお、同要領は、予知を前提とした活動計画に加えて、突発的に地震が発生した場合の活動計画の追加、広域医療搬送活動に従事する災害派遣医療チーム(DMAT)の整備、情報集約体制の修正等を踏まえて、平成18年4月に修正が行われている。 加えて、平成17年3月には、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、平成17年より10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。
(2)東南海・南海地震対策 南海トラフに発生する地震(東南海・南海地震)は、歴史的にみて100年から150年の間隔で発生しており、その規模はマグニチュード8クラスである。最近では、昭和19年(東南海地震)及び昭和21年(南海地震)に発生し、すでに60年以上が経過していることから、今世紀前半にも発生が懸念されている(第1−6−2図)(今後30年以内に発生する確率(平成20年1月1日時点)は、地震調査研究推進本部の地震調査委員会の公表によると、東南海地震60〜70%程度、南海地震50%程度となっている。)。また、今後、東海地震が相当期間発生しなかった場合には、東海地震と東南海・南海地震が連動して発生する可能性も生じてくると考えられる。第1-6-2図 東海地震と東南海・南海地震 このため、中央防災会議は、平成13年6月に、「東南海、南海地震等に関する専門調査会」の設置を決定し、地震動や津波等による被害の想定及び地震防災対策について検討を重ね、平成14年12月に東南海・南海地震が同時に発生した場合の被害想定の一部公表、平成15年9月には被害想定の全体像が示された(第1−6−9表)。第1-6-9表 「東海」「東南海」「南海」地震の発生ケースごとの被害想定 消防庁でも、東南海・南海地震の被害が想定される地域が一体となってとるべき防災体制を、広域的な受援体制の整備の観点と、津波対策の観点から検討するため、「東南海・南海地震に係る広域的な地震防災体制のあり方研究会(座長;室崎益輝 神戸大学都市安全研究センター教授[当時])」を開催し、その検討結果を平成16年3月に取りまとめた。さらに地方公共団体の、地震対策に関する情報交換、広域的な連携の強化等を図るため、消防庁の呼びかけにより、関係府県で構成する「東南海・南海地震に関する府県連絡会」を設立し、東南海・南海地震に係る情報交換・収集を行っている。 こうした中、平成15年7月に「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行され、同法に基づき、平成15年12月の中央防災会議において、「東南海・南海地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」を「東南海・南海地震防災対策推進地域」として1都2府18県652市町村(市町村合併等により平成20年4月1日現在1都2府18県425市町村)が公表され、内閣総理大臣により指定された。推進地域の指定を受けた地方公共団体その他防災関係機関は、国の地震防災対策の基本方針として平成16年3月に中央防災会議が作成した「東南海・南海地震防災対策推進基本計画」に基づき、「東南海・南海地震防災対策推進計画」を作成し、地震防災対策の強化を図ることとなった。 また、平成15年12月、東南海・南海地震防災対策のマスタープランとなる「東南海・南海地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。平成16年3月に中央防災会議で決定された基本計画をはじめとして、推進計画や対策計画はこの大綱に沿って、地域の実情に即した具体的な形で作成されたものである。 さらに、平成17年3月には、被害要因の分析を通じた効果的な対策を選定し、戦略的に地震対策を推進するため、今後10年間で被害想定に基づく死者数、経済被害額の半減を目標とする地震防災戦略を中央防災会議で決定した。 また、平成18年4月、関係省庁の応急対策活動等を定めた「東南海・南海地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。消防庁では、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災都道府県からの物資提供の調整等を行うこととなっている。
(3)首都直下地震対策 首都地域は、人口や建築物が密集するとともに、我が国の経済・社会・行政等の諸中枢機能が高度に集積している地域であり、大規模な地震が発生した場合には、被害が甚大かつ広域なものとなるおそれがある。中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」によると、南関東地域においては、200〜300年に一度、大正12年の関東地震と同様のマグニチュード8クラスのプレート境界型地震が発生し、その間にマグニチュード7クラスの地震が数回発生する可能性が高いとされている(第1−6−3図)。第1-6-3図 この400年間における南関東の大きな地震 首都における直下地震については、昭和63年以来、中央防災会議において、南関東直下の地震発生に備えた政府の防災体制について充実が図られてきていたが、近年、情報通信技術や物流、金融等の高度化・国際化が進展し、経済・社会情勢が著しく変化しつつあることから、首都直下地震対策について「首都中枢機能維持」や「企業防災」といった新たな観点からの対策強化が必要であるとの認識が広まったことや、マグニチュード7クラスの直下型地震が発生した場合の具体的な被害を明確にする必要があること等から、平成15年5月の中央防災会議で「首都直下地震対策専門調査会」の設置が決定され、首都直下の「地震像」の明確化や直下地震を考慮した首都機能確保対策等の検討が始められた。想定される18タイプの地震について4つの時間帯と2つのパターンの風速ごとに被害想定を行い、平成17年2月に首都直下地震対策に係る被害想定として公表された(第1−6−10表)。平成17年9月には、上記被害想定の中で首都機能に最も大きな影響を与える地震(東京湾北部地震)の被害想定を基に、首都直下地震対策のマスタープランとなる「首都直下地震対策大綱」が中央防災会議で決定された。第1-6-10表 首都直下地震対策に係る被害想定 「首都直下地震対策大綱」の決定を踏まえ、平成18年4月に、首都中枢機能継続性確保のための活動、関係省庁の応急対策活動等を定めた「首都直下地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。消防庁では、関係省庁の一員として、救急・救助及び消火活動の調整、緊急消防援助隊による応援の指示及び調整、消防機関に対する緊急輸送の要請、非被災道府県からの物資提供の調整等を行うこととなっている。 また、同時に首都直下地震の定量的な減災目標と具体的な実施方策等を定めた「首都直下地震の地震防災戦略」が中央防災会議で決定された。消防庁としても、同戦略において、防災拠点となる公共施設等の耐震化、自主防災組織・消防団・緊急消防援助隊等の充実・強化、防災行政無線等の整備・拡充等の施策を通じて、被害軽減に取り組むこととしている。 さらに、平成18年より中央防災会議「首都直下地震避難対策等専門調査会」において、首都直下地震において膨大な数の発生が予想される避難者・帰宅困難者に係る対策についての検討が行われ、平成20年10月に報告書が取りまとめられた。
(4)日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策 日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震の中には、約40年間隔で発生し、今後30年以内にマグニチュード7.5前後の地震が発生確率(平成20年1月1日時点、地震調査研究推進本部の地震調査委員会により公表)が99%程度とされる宮城県沖地震など、その切迫性が指摘されているものもある。震源域はそのほとんどが海溝周辺にあり、過去において大津波を伴う地震が多数発生していることなどから、この地域で発生する海溝型地震による地震・津波防災対策、特に巨大な津波に対する防災対策の確立を図るため、平成15年10月、中央防災会議に「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に関する専門調査会」が設置された。 この専門調査会においては、日本海溝・千島海溝周辺で発生する海溝型地震のうち、防災対策上対象とすべき地震について検討した上で、平成18年1月には地震動や津波等による被害想定が公表された(第1−6−11表)。 平成17年9月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進を図るため「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行され、同法に基づき、平成18年2月の中央防災会議において、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域」を「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域」として5道県130市町村(市町村合併により平成20年4月1日現在5道県119市町村)が公表され、内閣総理大臣により指定された。推進地域の指定を受けた地方公共団体等防災関係機関は、平成18年3月に中央防災会議が作成した「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画」に基づき、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進計画」を作成するとともに、推進地域内で特に津波による甚大な被害のおそれのある地域において地震防災上重要な施設又は事業を管理し、又は運営する者のうち基本計画で定める者は「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策計画」を作成し、その実施を推進することとなった。この対策計画の作成について、消防庁としては関係道県、消防本部等を通じて作成を働きかけている。 また、平成18年2月、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策のマスタープランである「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策大綱」が中央防災会議で決定され、平成19年6月には、防災関係機関が効果的な連携をとって迅速かつ的確な応急対策活動を実施するため、各々の活動について定めた「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震応急対策活動要領」が中央防災会議で決定された。第1-6-11表 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る被害想定
(5)中部圏・近畿圏の内陸地震における地震対策 中部圏・近畿圏の内陸には多くの活断層があり、次の東南海・南海地震の発生に向けて、中部圏及び近畿圏を含む広い範囲で地震活動が活発化する可能性が高い活動期に入ったと考えられるとの指摘もある。この地域の市街地は府県境界を越えて広域化しており、大規模な地震が発生した場合、甚大かつ広範な被害が発生する可能性がある。中部圏・近畿圏の内陸地震への防災対策については、中央防災会議「東南海、南海地震等に関する専門調査会」において検討された。 同専門調査会では、地震が発生した場合の「応急対策」等具体的に検討するための地震として、中部圏・近畿圏に存在する11の活断層で発生する地震と、名古屋市直下及び阪神地域直下に想定したM6.9の地震について、平成18年12月に想定震度分布等を公表した。また、それらの震度分布等をもとに、平成19年11月に建物被害、死者数等の推計結果(第1−6−12表)を、平成20年2月に文化遺産の被災可能性を、同年5月に経済、交通、ライフライン被害等の推計結果を、そして同年8月に上町断層帯による浸水可能性の評価結果を、それぞれ公表した。これらの被害想定結果を踏まえ、平成20年12月には、被害軽減を図るための対策を含んだ専門調査会報告が取りまとめられている。第1-6-12表 中部圏・近畿圏の内陸地震に係る被害想定 なお、中央防災会議では、平成20年度中を目途に予防対策から応急対策、復旧・復興対策まで含んだ総合防災対策のマスタープランとして地震対策大綱の策定を予定している。
(6)地震防災緊急事業五箇年計画、地震対策緊急整備事業計画ア 地震防災緊急事業五箇年計画による震災対策 平成7年1月に発生した阪神・淡路大震災等の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、平成7年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関するものについて、第1次地震防災緊急事業五箇年計画(平成8年度〜)、第2次地震防災緊急事業五箇年計画(平成13年度〜)及び平成18年度を初年度とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画がすべての都道府県において作成され、これらの計画に基づき、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集市街地対策等が実施されてきている。 また、平成18年度からは、地震防災対策特別措置法に基づく国庫補助率のかさ上げが行われる事業については、東南海・南海地震防災対策推進地域及び日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域に限り、当該事業に充てられる地方債の元利償還金の50%について、普通交付税の基準財政需要額に算入されることとなった。平成19年度からは、対象地域が大規模地震対策特別措置法で指定される地震防災対策強化地域を除く全ての地域に拡大されたところである。イ 地震対策緊急整備事業の推進 地震対策緊急整備事業計画は、地震防災対策強化地域における地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備の促進を図るため、「地震防災対策強化地域における地震対策緊急整備事業に係る国の財政上の特別措置に関する法律」(昭和55年5月施行)に基づき策定されている。同計画に基づく地震対策緊急整備事業に対しては、国の負担又は補助の割合の特例その他国の財政上の特例措置が講じられている。 なお、この法律は、これまで5回延長され、現在、平成21年度末までの計画に基づき事業が実施されている。
(7)総合防災訓練 政府は、中央防災会議で決定した「平成20年度総合防災訓練大綱」に基づき、平成20年9月1日の防災の日に近畿府県総合防災訓練(大阪府岸和田市ちきりアイランド阪南2区会場等)とあわせて政府総合防災訓練を実施した。 当該訓練では、総理大臣官邸において、和歌山県南方沖でマグニチュード8.6の東南海・南海地震が発生したとの想定のもとで、緊急参集チームの参集・協議、関係閣僚協議、臨時閣議及び第1回緊急災害対策本部会議を行い、震災発生時の体制を確認するなど、一連の訓練を行った。 また、現地会場においては、総理大臣をはじめとした政府調査団の派遣を行うとともに関係防災機関等が連携した大規模な救出・救護訓練や広域医療搬送訓練等を実施した。 消防庁においても、政府訓練への参加のほか、職員の参集訓練、消防防災・危機管理センターにおける東南海・南海地震災害対策本部運営図上訓練、政府現地対策本部への職員派遣訓練等を実施した。
2 地方公共団体における震災対策 地方公共団体においては、地域の実情に即した震災対策を推進するため、消防力の充実強化、地域防災計画(震災対策編)の策定・見直し、避難場所や避難路の整備、地域住民に対する防災知識の普及・啓発、津波対策、物資の備蓄、地震防災訓練等について積極的に取り組んでいる。
(1)地域防災計画(震災対策編)の作成状況 平成20年4月1日現在、すべての都道府県において、震災対策に関する事項を地域防災計画の中で、「震災対策編」として独立の項目を設けて定めている。 一方、市区町村においては、「震災対策編」として独立の項目を設けているものが1,317団体、「節」等を設けているものが290団体、「その他の災害等」として扱っているものが51団体となっている。
(2)震災時における相互応援協定等の締結状況 大規模な地震は、甚大な被害を広域にわたって及ぼすことが予想されることから、対策を迅速かつ的確に遂行するため、地方公共団体においては、地方公共団体相互間又はその他の公共機関等との間で、震災時における相互応援協定等を締結するなど、各種の応援協力体制がとられている(第1−6−4図、第1−6−5図)。第1-6-4図 地方公共団体と公共機関等との応援協定の締結状況(都道府県数)第1-6-5図 地方公共団体と公共機関等との応援協定の締結状況(市区町村数) 特に阪神・淡路大震災以降は、平成8年7月に全国知事会において全都道府県による応援協定が締結され、広域応援体制が全国レベルで整備されるとともに、各都道府県相互間においても協定が締結されている。
(3)避難場所・避難路の指定状況 市町村における避難場所は、平成20年4月1日現在で、70,469箇所が指定されている(第1−6−13表)。第1-6-13表 市区町村における避難場所の指定状況 また、避難路については、210団体が指定している。
(4)備蓄物資・備蓄倉庫等の状況 災害に備えて地方公共団体は、食料、飲料水等の生活必需品、医薬品及び応急対策や災害復旧に必要な防災資機材の確保を図るため、自ら公的備蓄を行うほか、民間事業者等と協定を結び、必要な物資の流通在庫を震災時に確保するための施策の実施に努めている(第1−6−14表)。第1-6-14表 主な備蓄物資の状況
(5)震災対策施設等の整備事業 平成19年度において、震災対策施設等の整備促進のため、都道府県が実施した事業費は1,063億6,300万円、また、市区町村が実施した事業費は612億3,200万円である(第1−6−15表)。第1-6-15表 震災対策施設等整備事業費
(6)震災訓練・震災対策啓発事業の実施状況 平成19年度においては、42都道府県と872市区町村が総合防災訓練を実施した(第1−6−16表、第1−6−17表)。第1-6-16表 都道府県における震災訓練の実施状況第1-6-17表 市区町村における震災訓練の実施状況
(7)津波対策の実施状況 大規模な地震が発生した場合、沿岸地域では津波の発生が予想されることから、地方公共団体においては各種の津波対策が進められている。 平成20年4月1日現在、海岸線を有する市区町村は659団体であり、その中で過去の地震の記録や海岸の地形等を踏まえ、津波予想危険地域を定めている団体が417団体、地域防災計画へ記載している団体が393団体、津波災害を想定した避難地は7,647箇所が定められている。 また、緊急時に住民が迅速・的確に行動する必要があることから、津波を想定した訓練が219団体で実施されている。
[震災対策の課題]1 防災基盤の整備と耐震化の推進 阪神・淡路大震災においては、建築物の倒壊等による被害総数が約64万棟に及んだほか、交通網の寸断、ライフラインの機能停止など大規模な被害が発生し、住民の生命、身体及び財産を守る優れた都市環境の整備、地震に強いまちづくりが極めて重要であることが改めて認識された。 震災直後の平成7年7月には地震防災対策特別措置法が施行され、同法に基づきすべての都道府県は平成8年度から第1次及び第2次地震防災緊急事業五箇年計画を策定し、地域の防災機能の向上を目指して事業の推進を図ったが、これを実施する都道府県及び市町村における防災基盤の整備は計画どおりに進められなかった(達成率:第1次76.3%(平成8年度〜平成12年度)、第2次70.8%(平成13年度〜平成17年度))。 このため、議員立法により同法が一部改正され、平成18年度から22年度までを計画期間とする第3次地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災基盤の整備に向けた事業への積極的な取組が続けられている。 特に、消防庁では、大規模災害時において、避難所や災害対策の拠点となる公共施設等の耐震化について、平成25年度までに耐震化されていない施設の割合の半減を目指し、単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。 また、新潟県中越地震で震度6弱以上を観測した地域において、4箇所の市町村役場が地震の揺れにより被害を受け、災害の初動対応に大きな支障を来したことを受け、消防庁において、耐震診断・改修工事の効果的な実施手法や事例を紹介する「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、すべての地方公共団体へ配布するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している(URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/taishin/index-j.html)。
2 地域防災計画(震災対策編)の策定・見直しへの取組 地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を策定しておく必要がある。 また、地域防災計画の実効性を確保するため、地域の詳細な地質特性等を検討して被害想定を実施し、防災体制等の見直しを行うとともに、近隣地方公共団体における計画との整合性にも留意する必要がある。 さらに、地域防災計画の策定・見直しにおいては、職員参集・配備基準をはじめ初動時における各種応急体制の整備・充実を図るとともに、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にし、迅速かつ的確な初動対応を行うことができるよう、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。
3 消防力の充実強化(1)消防力の充実強化 地域の第一線において消防活動を行う消防職員については、今後とも地域の実情に即して人員配置を行うとともに、資機材の充実、機動力の強化に努め、さらに教育訓練を充実していく必要がある。 また、大規模災害時において効果的に消防防災ヘリコプターを活用する等活動体制を強化するため、関係機関が連携し、臨時離着陸場等の整備、確保に努めることが重要である。
(2)消防水利の多様化 大規模地震発生時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測されるため、消防水利を整備するに当たっては、消防水利の基準等に基づく計画的な整備を進めるとともに、平成20年4月1日現在、全国で、約8万3,000基を整備してきた耐震性貯水槽についても、継続して整備を推進していく必要がある。 消防庁では、国庫補助等による耐震性貯水槽の整備をかねてより進めているところであるが、多数の消防隊による長時間に及ぶ消火活動に対応する大容量の水源を確保するため、平成18年度からは、1,500m3型耐震性貯水槽についても国庫補助対象に追加するなど一層の整備促進を図っている。
(3)震災対策のための消防用施設等の整備の強化 地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債と地方交付税の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑えるためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。
4 情報通信体制の充実(1)情報通信体制の充実 災害応急対策を迅速かつ円滑に実施するためには、被害情報を迅速かつ的確に収集・伝達するとともに、これらの情報を分析した結果に基づく対応を現場へ迅速かつ的確に伝達することが重要であり、被害想定システム等の活用や高所監視カメラ、ヘリコプターテレビ電送システム等の整備を進めていく必要がある。 平成16年10月に発生した新潟県中越地震では、初動期の情報収集の際にNTT回線も防災行政無線もつながらず、山間部の一部で情報孤立地域が発生するなど、他の無線系の活用や非常用電源の整備等、非常時の通信確保について課題を残した。このことから、消防庁では、「初動時における被災地情報収集のあり方検討会」を開催し、大規模災害発生の際の初動時における被災地情報収集のあり方や災害時の情報通信技術の活用について検討を行い、平成17年7月、政府及び地方公共団体等に提言を行った。
(2)震度情報ネットワークの整備 阪神・淡路大震災後、地方公共団体ごとに整備された震度情報ネットワークにより震度情報を早期に収集しているところであるが、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震や同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震において震度情報の送信が遅延するなどの障害が発生し、早急な改善が望まれた。このことから、消防庁では、平成16〜17年度に、「次世代震度情報ネットワークのあり方検討会」を開催し、近年の地震学の知見や通信環境の著しい進化を踏まえ、今後整備・更新される震度計と震度情報ネットワークに求められる機能、震度計の適正配置など次世代の震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、平成18年3月国及び地方公共団体に提言を行ったところである。
5 初動体制の整備 災害時における初動対応が被害の軽減やその後の応急対策に大きな影響を及ぼすと考えられることから、大規模災害時においては、発災直後から情報の収集・伝達等に関し、臨機応変で的確な対応をとることが極めて重要である。 そこで、防災拠点となる施設が機能できない場合を想定した防災応急活動の実施方策、参集基準の明確化・統一化、参集手段の確保、全職員を対象とした初動対応マニュアル等を作成する等、初動時における危機管理体制の整備・充実を図る必要がある。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体等における防災体制の充実を図るため、消防大学校において行っている災害対策活動(危機管理)教育等を十分活用していく必要がある。さらに、災害発生時等において的確な対応を図るためには、消防と防災の連携を確保することが必要不可欠であり、そのためには、24時間対応で現場経験が豊富な消防機関を中心に防災担当部局と一元化した組織体制を整備していく必要がある。
6 広域応援体制の整備 震災時の広域応援は、被災地における救援・救護及び災害応急・復旧対策並びに復興対策に係る人的・物的支援、施設や業務の提携等が迅速かつ効率的に実施される必要があることから、今後も各地方公共団体は広域応援協定の締結・見直しを更に推進し、防災関連計画において広域応援に関する事項を明らかにしておく必要がある。 特に、東海地震、東南海・南海地震等被害の及ぶ範囲が極めて広いと想定される大規模地震については、被害想定の結果に基づき、現行の広域応援協定のあり方を含む広域応援体制の見直し・充実を図る必要がある。 平成16年(2004年)新潟県中越地震においては、災害時相互応援協定に基づく救援活動が物資の供給と職員応援の両面から行われ成果を上げたが、初動期においては必ずしもスムーズに機能せず、応援側地方公共団体からは、必要とされる物資や業務をできるだけ早く被災地方公共団体から教えて欲しいという声が聞かれた。消防庁においても、地方公共団体の緊急物資等の備蓄・調達のあり方に関する検討を行い、災害時における広域対応等について地方公共団体に提言を行ったところである。 さらに、平成18年12月から「緊急物資調達の調整体制・方法に関する検討会」を開催し、地方公共団体が被災者に供給する物資である緊急物資の取扱いについて、物流という観点から検討を行い、地方公共団体に提言を行ったところである。 また、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害発生時における人命救助活動等を効果的かつ迅速なものとするために発足した緊急消防援助隊については、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性が高まり、NBCテロ(核(Nuclear)物質、生物(Biological)剤及び化学(Chemical)剤を用いたテロ)災害の発生等も懸念されることから、平成15年度の消防組織法の一部改正により法定化され、平成16年4月から消防庁長官による出動指示が、平成20年8月から都道府県知事による県内移動の指示が可能となるなど、その充実・強化が図られている。
7 実戦的な防災訓練の実施 大規模地震災害等に対して迅速かつ的確に対応するためには、日ごろから実戦的な訓練を行い、防災活動に必要な行動、知識、技術を習得しておくことが極めて重要である。 地方公共団体において、効果的な防災訓練を実施するためには、地域における社会条件、自然条件等の実情を十分に加味し、職員参集、情報伝達などの本部運営訓練、避難誘導、救出救護、患者搬送、物資搬送などの現場対応訓練等の内容について、場所・時間・対象を多角的に検討し、より実戦的な訓練になるよう努める必要があり、地域の総合的防災力向上のため、状況予測型訓練(イメージトレーニング方式)、災害図上訓練DIG(Disaster Imagination Game=災害想像力ゲーム方式)や図上シミュレーション訓練(ロールプレイング方式)など目的や実情に応じた訓練の実施についても推進していく必要がある。 また、大規模災害時においては、1つの地方公共団体だけでは災害応急対策を実施することが困難な場合が予測されることから、近隣の地方公共団体、さらには警察、自衛隊、海上保安庁などの防災関係機関と連携した合同訓練を引き続き積極的に実施していくことが必要である。
8 津波対策の推進 平成15年5月26日に発生した宮城県沖を震源とする地震においては、津波の怖さを認識しているにもかかわらず、地震の発生あるいは避難勧告等の発令があっても避難しないといった住民の行動が多く見受けられた。また、同年9月26日に発生した平成15年(2003年)十勝沖地震においては、市町村による津波避難勧告が適切に発令されなかった事例等が見受けられた。 さらに、平成16年9月5日に発生した東海道沖を震源とする地震においても、気象庁から津波警報が発せられた42市町村のうち、30市町村で避難勧告が発せられなかった。 津波被害軽減の基本は「避難すること」であり、海岸線等を有する市町村においては、地域防災計画上の規定の見直しや発災時の迅速な避難勧告等、的確な津波避難対応に努めることが必要であり、住民も受け取った情報を自分自身の問題として捉え、実際に避難行動を起こす必要がある。 実効性のある津波避難対策を実施する上で、海岸線等を有する市町村においては、津波シミュレーション結果や過去の地震時における津波被害の記録等から想定される最大規模の津波を対象とした津波浸水予測図を作成し、これに基づき、避難対象地域、避難場所及び避難路の指定、避難勧告・指示の情報伝達、避難誘導等を定めた津波避難計画を策定する必要がある。 消防庁では、市町村がこの津波避難計画を策定する際の指針及び地域住民の参画による地域ごとの津波避難計画を策定する際のマニュアルを示すとともに、モデル地域における津波避難計画を策定する事業に取り組んでいる。 一方で、避難を円滑に実施するための避難場所や避難路、情報通信機器、津波による浸水を防止する防潮堤、津波水門等の津波防災施設などのハード面の整備を促進するとともに、津波に強い土地利用の推進や施設の安全性向上を図る必要がある。 消防庁としても、平成14年4月の東海地震対策強化地域の拡大、平成15年12月の東南海・南海地震対策推進地域の指定により、全国的に津波対策が喫緊の課題となったことを受け、津波避難タワーの設置について、平成17年度から地方債と地方交付税による財政支援を行っている。 また、消防庁では、平成18年11月と平成19年1月の千島列島を震源とする地震で津波警報等が発表され、避難指示等が発令された市町村を対象とした避難状況等の調査を行い、その結果を踏まえ、地方公共団体に対し、避難の実効性を上げるため、適切な対応を要請したところである。 また、消防庁において、平成16年度に「防災のための図記号に関する調査検討委員会」を開催し、津波避難に係る標準的図記号として、「津波注意」、「津波避難場所」、「津波避難ビル」の3種の図記号を決定した。さらに、国際的な津波防災対策の重要性が叫ばれる中で、これら図記号について、ISO(国際標準化機構)規格化に向けて提案を行ってきたところ、平成20年7月1日付けで国際規格化が決定した。ISOにより国際標準化が決定した「津波に関する統一標識」の図記号(ISO20712-1:2008)
第7節 原子力災害対策[原子力災害等の現況と最近の動向]1 東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所3号機所内変圧器火災(1)火災の概要 平成19年7月16日10時13分頃、新潟県中越沖地震(最大震度:震度6強)が発生し、それに伴い東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所3号機所内変圧器から出火した。 出火原因については、3号機所内変圧器の絶縁油が地震の影響により漏えいし、その絶縁油に電気配線のショートによる火花が着火したものと推定される。 この火災による人的被害はなく、また、原子炉建屋など他の施設への延焼もなく、外部環境への放射能の影響もなかった。出火元となった3号機変圧器
(2)火災を踏まえた対策 この火災に対する自衛消防の不備に加え、柏崎市内が震度6強の揺れに見舞われたことに伴い、119番通報が殺到し電話がつながりにくい状態となり、消防機関への通報が遅れたこと等により適切な応急対応が講じられなかったことは、原子力発電所等における大規模地震時の応急対応に様々な課題があるという警鐘を鳴らすこととなった。 消防庁では、この火災の教訓を踏まえて、経済産業省原子力安全・保安院と連携して原子力発電所等の自衛消防体制について検討するとともに、「原子力施設における消防活動対策マニュアル」(平成13年3月作成)の見直しを行い、新たに「原子力施設における消防活動対策マニュアル−地震対策編−」(平成20年2月作成)をとりまとめるなど、大規模地震時に原子力発電所等において火災等が発生した場合の消防体制の強化を図っている。
2 その他の原子力事故等 その他の原子力施設における平成7年以降の主な事故は次のとおりである。ア) 平成7年12月8日に使用前検査中の動力炉・核燃料開発事業団(当時)の高速増殖原型炉「もんじゅ」において、冷却材であるナトリウムが漏えいし、火災となった事故。イ) 平成9年3月11日に動力炉・核燃料開発事業団(当時)の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故。ウ) 平成11年9月30日に茨城県東海村の株式会社ジェー・シー・オー(以下「JCO」という。)のウラン加工施設において、臨界に達する事故が発生し、従業員3人が重篤の放射線被ばくを受けた(うち2人死亡)ほか、これらの者を救急搬送した救急隊員3人、防災業務関係者、臨界状態停止のための作業に従事した従業員を含む多数の者が被ばくした事故。エ) 平成12年8月17日に北海道電力株式会社泊発電所において、点検工事中の放射性廃棄物処理建屋サンプタンク内の清掃作業中に、当該タンク内で体調不良となった作業員1人を救出するためタンク内に入った別の2人の作業員のうち1人が、救出に使用した縄ばしごの約1メートルの高さから落下転倒し、死亡した救急事案(病院において、全身の放射線測定を改めて行った結果、臀部及び背部に汚染があり、臀部には当初事業所から説明があったレベルより高い汚染が判明)。オ) 平成13年11月7日に中部電力株式会社浜岡原子力発電所の定格熱出力運転中の1号機において、非常用炉心冷却系の一つである高圧注入系の定期手動起動試験を実施したところ、同系統のタービン蒸気配管から分岐する余熱除去系配管が破断し、放射性物質を含む蒸気が原子炉建屋内に漏えいした事故。カ) 平成14年3月12日、放射性同位元素(コバルト60)を用いた密封タンクのレベル計(発災した建物に9個)が設置されていた旭化成株式会社延岡支社レオナ工場において、5階建工場、延べ5万4,000m2のうち、約1万5,000m2を焼損する火災があり、その影響により有毒ガスの発生のおそれがあったため、周辺住民3,698世帯、9,407人に避難勧告が出された事案。キ) 平成16年8月9日に関西電力株式会社美浜発電所3号機が定格熱出力運転中のところ、タービン建屋2階、脱気器側の天井付近にある給水加熱器から脱気器への給水ラインである復水配管(直径約560mm、炭素鋼)の破口(最大で配管軸方向に515mm、周方向に930mm)により、蒸気及び高温水(約140度、10気圧)が噴出した。同建屋全体に蒸気が充満し、付近にいた作業員11人が熱傷を受け、5人が死亡、6人が負傷した事故。ク) 平成18年3月22日に、関西電力株式会社大飯発電所3、4号機廃棄物処理建屋において、管理区域である同建屋4階の工具等の物置として使用していた場所で発生した火災。
[原子力災害対策の現況]1 原子力施設等の防災対策 原子力防災対策は、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定める等の措置が講じられていたが、JCOウラン加工施設における臨界事故等の教訓を踏まえ、平成11年12月に原子力災害対策特別措置法(以下「原災法」という。)の制定及び核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)の一部改正が行われる等、法令等の整備が行われるとともに、関係府省が一体となった防災活動が行われるよう必要な活動要領を取りまとめた原子力災害対策マニュアルが作成された。 原子力安全委員会の「原子力発電所等周辺の防災対策について」は、平成12年5月に原災法との整合性及び臨界事故への対応を踏まえて「原子力施設等の防災対策について」に改訂され、従来の原子力発電所、再処理施設等に加え、研究炉、核燃料関連施設(第1−7−1図、第1−7−2図、第1−7−3図)及び核燃料物質等の輸送時の防災対策についても盛り込まれた。第1-7-1図 我が国の原子力発電所立地地点(原子力安全委員会ホームページより)第1-7-2図 試験研究用及び研究開発段階にある原子炉施設立地地点(原子力安全委員会ホームページより)第1-7-3図 核燃料施設(加工施設、再処理施設、廃棄施設及び中間貯蔵施設)立地地点(原子力安全委員会ホームページより) 平成13年6月には、国、地方公共団体、原子力事業者等の医療に携わる者の責務等の明確化について、平成14年4月には、安定ヨウ素剤予防服用に係る防護対策について改訂が行われ、さらに平成14年11月には、原子力災害時におけるメンタルヘルス(心の健康)に関する対策について、平成15年7月には、緊急被ばく医療体制における地域ブロック化についてそれぞれ改訂が行われた。 平成19年5月には、国際原子力機関(IAEA)等における原子力防災に係る国際的な動向を踏まえ、当該対策の目的、対象施設等をより明確化するとともに、予防的な防護措置の有効性についての改訂及び原災法や本委員会の関連する他の方針との重複部分についての整理が行われた。
2 防災基本計画原子力災害対策編の修正 防災基本計画原子力災害対策編は、国、地方公共団体、原子力事業者等が原子力防災対策に関し講ずべき措置及びその役割分担等について規定するものであり、災害対策基本法に基づき中央防災会議が毎年検討を加え、必要に応じ修正されるものである。 中央防災会議は、原災法が制定されたこと等を踏まえ、同対策編について従来の対象である原子力発電所及び再処理施設に加え、加工施設、研究炉、貯蔵施設、廃棄施設、使用施設及び運搬を追加する等の修正を平成12年5月に行った。また、原子力艦の原子力災害対策に関する記述の追加及び緊急被ばく医療に係る修正を平成14年4月に行った。さらに、平成16年3月には緊急被ばく医療の実施体制に係る修正を行った。 平成20年2月には、平成19年7月の東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所所内変圧器火災(以下「東電変圧器火災」という。)を踏まえ、原子力事業者が平時から自衛消防体制を整備し、火災が発生した場合には速やかに火災状況を把握して消防機関へ通報するとともに自発的な初期消火活動を実施すること等、原子力災害対策編の一部が修正された。
3 地域防災計画原子力災害対策編の見直し 地域防災計画は、防災基本計画に基づき地方公共団体が当該地域の防災に関して作成する計画である。また、地域防災計画は、災害対策基本法の規定により毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされている。 関係地方公共団体は、防災基本計画原子力災害対策編の修正に伴い、地域防災計画原子力災害対策編の見直しを行うことが必要である。 消防庁においては、地域防災計画の見直しに当たって地方公共団体に助言を行うこととしており、地域防災計画原子力災害対策編作成マニュアルを見直し、平成12年6月に関係地方公共団体に通知した。 これらを踏まえて、原子力施設所在地等の都道府県と関係市町村においては、原子力防災対策の充実を図るため、地域防災計画の見直しを行っている。
4 消防活動の充実等(1)マニュアル、ハンドブック、活動要領等の作成・配布 消防庁では、原災法等により事業者の責務と消防機関の果たすべき任務等がより明確に示されたことを踏まえ、事故等発生時において消防隊員の安全を確保しながら、効果的な消防活動が展開できるよう「原子力施設等における消防活動対策マニュアル」(平成13年3月作成)、このマニュアルを災害現場用にコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」(平成16年3月作成)、除染活動についてまとめた「原子力施設等における除染等消防活動要領」(平成17年3月作成)等を作成し、消防機関等に配布した。 また、火災等の発生時に消防機関がより安全かつ的確に活動を行うため、平成18年度に消防機関と事業者との連携の現状について調査・検討を行い、「消防機関と原子力事業者等との円滑な連携について」として報告書を取りまとめ、平成19年6月に各都道府県等に配布している。
(2)東電変圧器火災を受けた新たな措置 平成19年7月の東電変圧器火災の教訓を踏まえて、経済産業省原子力安全・保安院と連携して原子力発電所等の自衛消防体制について検討するとともに、大規模地震時に原子力発電所等において火災等が発生した場合の消防体制を強化するため、平成20年3月に次のような措置を講じている。ア 消防力の整備指針(平成12年消防庁告示第1号)の一部改正 原子力発電所等の所在する市町村について、消防力の整備指針を改定し、化学消防車の配置基準数を1台増加した。イ 原子力施設等における消防活動対策マニュアル等の見直し 大規模地震時にも消防活動が迅速かつ的確に実施できるよう、新たに「原子力施設等における消防活動対策マニュアル−地震対策編−」を作成するとともに、消防隊員が災害現場で活用できるよう必要とされる知識、活動要領、留意点等をコンパクトにまとめた「原子力施設等における消防活動対策ハンドブック」の一部改訂も行った。
(3)原子力防災研修 原子力防災研修については、消防大学校において、平成12年度から幹部職員を対象に実施していた「放射性物質災害講習会」を、平成16年度は「NBC災害講習会」、平成17年度は「緊急消防援助隊教育科 NBCコース」、平成19年度は「緊急消防援助隊教育科 NBC・特別高度救助コース」に再編し実施している。
[原子力災害対策等の課題] 平成19年7月の東電変圧器火災を踏まえて、国、地方公共団体、原子力事業者等において、原子力発電所等の防火安全対策の充実強化が図られているところである。今後は、原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院、消防機関など原子力防災関係機関と連携し、複合的な事故、災害等も想定した実践的な消防訓練、防災訓練等の恒常的実施を推進し、PDCAサイクルにより練度を高め、災害に対してより迅速かつ的確に対応できる原子力防災体制を構築していく必要がある。 この場合、消防機関は、原子力事業者に対して積極的に指導・助言していくことが求められている。
平成20年度原子力総合防災訓練の概要1.実施日時・対象施設・実施機関(1)日  時  平成20年10月21日(火) 13:00〜18:00             10月22日(水)  7:30〜13:00(2)対象施設  東京電力株式会社福島第一原子力発電所(3号機)(3)実施機関 内閣官房、内閣府、原子力安全委員会、消防庁、文部科学省、経済産業省、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院、福島県、大熊町、双葉町、富岡町、浪江町、広野町、楢葉町、双葉地方広域市町村圏組合消防本部、大熊町消防団、双葉町消防団、仙台市消防局、千葉市消防局など原子力防災関係機関(合計96機関)2.訓練概要 福島第一原子力発電所3号機において、非常用炉心冷却設備の故障等による冷却機能の喪失から炉心が損傷し、原子炉格納容器からの放射性物質の放出による影響が発電所周辺地域に及ぶおそれがあるという想定で訓練が実施された。消防に関する訓練については次の項目を中心に実施された。(1)緊急時通信連絡訓練 消防庁災害対策本部、現地オフサイトセンターに設置された消防庁現地対策本部、政府原子力災害対策本部間の緊急時通信連絡訓練を実施した。(2)自衛消防隊と公設消防との連携による消火訓練 福島第一原子力発電所自衛消防隊と双葉地方広域市町村圏組合消防本部消火隊による屋外タンク火災を想定した消火訓練を実施した。自衛消防隊と公設消防との連携による消火訓練(3)緊急消防援助隊による偵察訓練 緊急消防援助隊航空部隊として派遣された仙台市消防局ヘリによる発電所周辺状況の偵察訓練を実施した。(4)緊急被ばく患者搬送訓練 原子力発電所において被ばく患者が発生したとの想定で、双葉地方広域市町村圏組合消防本部救急隊、福島県消防防災ヘリ、千葉市消防局ヘリ等により福島県地域防災計画に定められている被ばく医療機関へ患者の重傷度に応じた被ばく患者搬送訓練を行った。緊急被ばく患者搬送訓練
第8節 その他の災害対策[火山災害対策]1 平成19年以降の主な火山活動の動向 桜島では、平成19年中は、5月から6月にかけて、昭和火口で小規模な噴火が時々発生し、火山ガス放出量の増加もみられるなど、火山活動がやや活発な状況が続いた。 また、平成20年2月以降も、同火口で爆発的噴火や小規模な噴火が時々発生するなど火山活動が継続している。 口永良部島では、火山性地震や微動がやや多い状態が以前から継続するなか、平成19年後半から減少する傾向が現れていたが、平成20年9月から火山性微動が増加し、地殻変動も観測された。その後、噴気や火山ガスの放出量も増加するなど火山活動はさらに高まっている。
2 火山災害対策の現況 我が国には、現在108(北方領土を含む。)の活火山が確認されている。火山災害の態様は、溶岩の流出、噴石、降灰、火砕流、土石流、泥流、山崩れ、ガスの放出、津波等多岐にわたっている。 これらの火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づいて諸対策が講じられている。消防庁では、同法により避難施設緊急整備地域に指定された地域や文部科学省において設置されている科学技術・学術審議会での「火山噴火予知計画の推進について」の建議を踏まえ、火山を有する地域の市町村に対して避難施設の整備に要する費用の一部に国庫補助を行っている。 さらに、平成12年の有珠山及び三宅島の火山災害を踏まえ、同年7月に関係地方公共団体に対し、火山ハザードマップの作成と住民に対する提供、住民への情報伝達を迅速に行うための同報系防災行政無線の整備、災害時要援護者等にも配慮した避難体制の整備、実践的な防災訓練の実施などについて要請を行うとともに、平成13年から最新の火山防災に関する情報や関係団体で有する情報等を共有していくことを目的とした「火山災害関係都道県連絡会議」を開催している。 平成13年度に富士山火山防災協議会の富士山ハザードマップ検討委員会において、火山ハザードマップの作成検討等が進められ、平成16年6月に報告がまとめられた。平成17年9月に富士山火山広域防災検討委員会において「富士山火山広域防災対策報告書」が取りまとめられた。また、平成18年2月の中央防災会議において、富士山火山防災対策として国、都県、市町村等がとるべき方針を定め、「富士山火山広域防災対策基本方針」を決定した。 平成18年11月から、全国の火山を対象として「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」が開催され、より効果的な火山防災体制を構築するための火山情報と避難体制について検討し、平成20年3月に「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」として取りまとめ、関係都道県へ配布している。 なお、火山の周辺にある地方公共団体においては、以下の火山災害対策が講じられている。
(1)地域防災計画 火山の特性、地理的条件及び社会的条件を勘案して、地域防災計画の中に火山災害対策計画を整備することが重要であり、都道府県で16団体、市町村で94団体が整備しているとともに、適宜その見直しも行われている。
(2)広域的な連絡・協力体制 火山の周辺にある地方公共団体では、火山情報の伝達、避難対策及び登山規制の実施等のため、広域的な連絡・協力体制が整備されている。現在、十勝岳、有珠山、北海道駒ケ岳、北海道樽前山、雌阿寒岳、草津白根山、雲仙岳、阿蘇山、硫黄山の9火山の関係市町村では災害対策基本法に基づく地方防災会議の協議会が設置されており、これらのうち7つの火山においては、それぞれ噴火に関連する事前措置その他の必要な措置について、相互間地域防災計画が作成されている。 また、消防庁では平成14年度に、富士山における火山災害対策をモデルとして、都道府県相互間の広域的な防災体制のあり方を検討する研究会を開催し、その成果として、既存の相互間地域防災計画の実態や課題の整理、都道府県相互間地域防災計画の策定指針の提示などを行った。
(3)防災訓練の実施 消防機関をはじめとする防災関係機関との密接な連携の下、定期的に実践的な防災訓練が行われ、平成19年度は火山災害を想定した防災訓練が都道府県5団体で延べ6回、市町村では延べ24回実施されている。なお、その際には、関係地方公共団体による合同訓練も実施されている。
(4)噴火警報、噴火警戒レベルの導入 迅速かつ確実な情報伝達により、火山災害の一層の軽減を図るため、平成19年12月に「気象業務法」の一部が改正され、「噴火警報・予報」の発表が開始された。加えて、関係地方公共団体や住民、登山者・入山者等が取るべき防災対応や行動を分かりやすく示した「噴火警戒レベル」が全国19火山(平成20年11月現在)を対象に運用されており、今後も準備が整った火山から導入される予定である。 関係地方公共団体等においては、地域防災計画等を修正し、レベルに応じて適切に防災対応をとることが必要である。
3 火山災害対策の課題 火山災害に対しては、活動火山対策特別措置法に基づく諸施策を、引き続き推進していくことが重要である。特に、人的被害の発生を防ぐためには、火山観測体制の強化、消防防災用施設・資機材等の整備、実践的な防災訓練の実施、広域的な防災体制の確立等とともに、次のような対策の推進が求められている。
(1)ハザードマップの作成、提供等 火山周辺の地方公共団体においては、火山の特性、地理的条件及び社会的条件を十分勘案して、地域防災計画において火山災害に関する実践的な防災計画を整備するとともに、最新資料の活用により適宜見直しを行う必要がある。また、火山ハザードマップを作成し、地域住民に配布することを通じて、防災情報を積極的に提供することが、平常時から住民に対して、防災意識の高揚を図ることにつながる。 消防庁では、火山周辺の地方公共団体に対してハザードマップの作成を要請するとともに、平常時から住民に対して防災情報を積極的に提供し、防災意識の高揚を図る必要性を示している。
(2)住民への情報伝達体制の整備 噴火警報や、避難勧告、避難指示等の災害情報を確実かつ迅速に住民に伝達するためには、防災行政無線(同報系)の整備が非常に有効である。火山地域の市町村における防災行政無線(同報系)の整備率は、82.6%(平成20年3月31日現在)であるが、更なる整備が必要である。
(3)避難体制 火山噴火等により、住民に被害が及ぶおそれがあると判断される場合には、噴火警報(噴火警戒レベルを含む。)に応じ、人命の安全確保を第一に時間的余裕をもって避難勧告・指示を行う必要がある。また、あらかじめ情報伝達体制、避難についての広報手段、誘導方法、避難所等をきめ細かく定めておくことが必要である。特に、高齢者などの自力避難の困難な災害時要援護者に関しては、事前に避難の援助を行う者を定めておくなど支援体制を整備し、速やかに避難できるよう配慮する必要がある。
(4)関係機関との連携 火山災害時に応急対策を迅速かつ的確に実施するため、火山観測を行っている気象官署、学術機関のほか、警察、消防機関、自衛隊、海上保安庁等との緊密な連携が不可欠であり、地方防災会議等の場を通じて、日ごろから連携を深めておくことが必要である。
(5)観光客対策 観光客、登山者の立入りが多い火山にあっては、火山活動の状況に応じて発表される噴火警報に基づいて、登山規制、立入規制等の措置を速やかにとることができるように、地方公共団体は関係機関と協議しておくことが望まれる。
[雪害対策]1 雪害の現況と最近の動向 平成18年12月から平成19年3月にかけての雪害による人的被害、住家被害は、死者・行方不明者12人、負傷者193人、一部破損1棟となっている。 また、平成19年12月から平成20年3月にかけての雪害による人的被害、住家被害は、死者・行方不明者47人、負傷者579人、半壊2棟、一部破損20棟となっている。
2 雪害対策の現況 平成17年12月から平成18年3月の「平成18年豪雪」では、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の事故、倒壊した家屋の下敷きなどにより、152人が犠牲となった。犠牲者のうち65歳以上の高齢者が99人と約3分の2を、また、屋根の雪下ろしなどの除雪作業中の犠牲者が113人(うち65歳以上の高齢者は76人)と約4分の3を占めている。 この災害に対し、消防庁は、被害が発生した道府県からの情報収集を実施するとともに、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の即応体制の確立、雪崩危険箇所等の把握・周知及び情報の収集・伝達体制や警戒・避難体制の確立等の対策、特に高齢者等の災害時要援護者に対する対策などに万全を期すように要請した。
3 雪害対策の課題 雪害による人的被害の発生を防ぐためには、防災知識の普及啓発等を進めるとともに、平成18年豪雪を踏まえ次のような対策の推進が求められている。
(1)除雪作業における対策 積雪時においては、特に高齢者等の災害時要援護者宅の状況を消防機関や福祉関係機関との連携による巡回等により把握し、除雪が困難又は危険な場合などについては、必要に応じ消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携協力の下、複数による除雪作業を行うことや、屋根の雪下ろしの際の命綱や滑り止めの着用、軒下での作業時の落雪への注意などについて注意喚起を行うなど適切に対応することが必要である。
(2)なだれ等に対する適切な避難勧告等の発令・伝達 降積雪の状況等の情報、過去の雪害事例等を勘案し、なだれ、家屋の倒壊等により、住民の生命・身体に被害が及ぶおそれがあると判断したときは、遅滞なく避難の勧告・指示を行う必要がある。 また、避難の勧告・指示の伝達については、防災行政無線や消防団、自主防災組織をはじめとした効果的かつ確実な伝達手段を複合的に活用し、対象地域の住民に迅速かつ的確に伝達する必要がある。
(3)避難体制 避難路、避難所、避難誘導方法等を定め、住民に周知しておくとともに、雪害の特性を踏まえた安全性を確保する必要がある。 また、高齢者・障害者等の災害時要援護者については、消防団、自主防災組織、近隣居住者等との連携・協力の下、迅速な避難誘導に努める必要がある。
(4)防災体制の確立 災害が発生した場合には、関係機関とも連携し、消防機関の県内相互応援及び緊急消防援助隊の活用など地方公共団体相互の広域的な応援活動により迅速な救助活動等に万全を期す必要がある。
[地下施設等の災害対策] 鉄道トンネル(地下鉄に接続するトンネルを含む。)、道路トンネル及び今後開発が予想される大深度地下施設は、出入口が限定された閉鎖性の高い場所であり、いったん火災等が発生し、濃煙、熱気が充満した場合には、利用者の避難・誘導、消防隊の消火・救助活動等に種々の制約、困難が伴うこととなる。
1 鉄道トンネル及び道路トンネルの防災対策(1)鉄道トンネル 鉄道トンネルに関しては、トンネル等における列車火災事故の防止に関する具体的対策を示すことにより、消火、避難設備等の設置の促進及び所在市町村における消防対策の強化を図っている。また、青函トンネルについては、さらに長大海底トンネルとしての防災対策を取りまとめている。 また、平成15年2月に発生した韓国大邱(テグ)市における地下鉄火災を踏まえ、消防庁では、国土交通省と共同で、「地下鉄道の火災対策検討会」を設置し、ガソリンによる放火火災を想定し、地下鉄道の不燃化の推進と旅客の安全な避難対策を基本として、我が国の地下鉄道の火災対策について総合的に検討を進め、平成16年3月に検討結果を取りまとめた。主な内容については次のとおりである。〔1〕車両の火災対策 我が国の車両は、一定の不燃性や難燃性などの防火性能を備えているが、さらに大火源火災を考慮し、以下の措置を講じる必要がある。 ア 防火性能が低い材料及び溶融滴下する材料は、車両天井部への使用を制限する。 イ 従来の車両材料燃焼試験に、溶融滴下の判定を追加するとともに、新たに大火源火災における防火性能を判定するための燃焼試験を追加する。 ウ 隣接車両への煙の流入等を防止するため、連結する車両間に、通常時閉じる構造の扉を設置する。〔2〕地下駅・トンネルの火災対策 異なる2以上の避難経路を設けること等の現行の基準に加え、大火源火災に対し、旅客の安全な避難経路を確保するとともに消防活動を支援するため、以下の措置を講じる必要がある。 ア 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客が安全に避難できる時間を確保するための排煙設備を設置する。 イ 旅客の安全な避難を確保するとともに、消防活動を支援するため、ホームとコンコースを結ぶ階段に、出火場所からの煙や炎を遮断するための防火シャッター等を設置する。 ウ 旅客の避難経路を確保するため、袋小路部等には、売店を設置しない。これ以外の箇所に、売店を設置する場合には、自動火災報知設備を設置することとし、コンビニ型売店には、これに加え、スプリンクラー設備を設置する。 エ 消防隊員が地上と通信するための無線通信補助設備を設置する。また、駅の規模等により、消防隊員が使用する機器のための非常コンセント設備を設置する。〔3〕旅客の避難誘導等に関する対策 旅客の安全な避難誘導をより確実に行うため以下の措置を講じる必要がある。 ア 火災発生時の運転取扱上徹底すべき事項を盛り込んだマニュアルを整備する。 イ 駅の構造等個別の駅の状況に応じ、旅客の避難誘導の方法等火災発生時に係員が行うべき事項を定めたマニュアルを整備する。 ウ 消火器、非常通報装置及びドアコックの車内表示を、ピクトグラム(絵文字)を使用する等により統一する。 エ 避難経路図の駅への表示、消火器配置図の車両への表示等を行うとともに、通常時の構内放送、車内放送により、旅客に対し危機管理意識の高揚を図る。〔4〕消防機関との連携 駅の構造、火災対策設備の位置等消防活動上有効な情報を、鉄軌道事業者と消防機関が共有するとともに、定期的に両者が連携した訓練を実施する。 この検討結果を踏まえ、国土交通省において、鉄道に関する技術上の基準を定める省令等の解釈基準の一部改正が行われたことに伴い、消防庁としても、地下鉄道における火災対策について、平成16年12月17日付(電気設備・運転等の解説)・平成18年12月13日付(地下駅等の不燃化・火災対策設備等の解説)で都道府県を通じ各消防機関に周知を行った。
(2)道路トンネル 道路トンネルに関しては、昭和54年7月に発生した日本坂トンネル火災事故を契機に関係省庁とも協力して、「トンネル等における自動車の火災事故防止対策」、「道路トンネル非常用施設設置基準」により道路トンネルに係る消防防災対策の充実に努めている。なお、平成19年中における道路トンネル火災は28件となっている(第1−8−1図)。 平成9年12月に供用が開始された東京湾アクアラインについては、関係地方公共団体や東日本高速道路株式会社等と消防機関が連携を図り、災害対策の充実強化等所要の対策を講じている。 国土交通省は、都市部の道路の交差点等における渋滞緩和を図る方策として、「乗用車専用道路(小型道路)」の導入を可能とする法令改正を平成15年度に行ったところである。この「乗用車専用道路」は、一般道路よりも狭いため、災害発生時に消防車両が進入して円滑な消火・救急活動が行えないことが危惧される。このため、国土交通省は、車両火災等における消防活動の課題について検討を行っているところであり、消防庁としても、「乗用車専用道路」の導入時において円滑な消火・救急活動が確保されるよう、その対策について検討していく。 平成21年度に全線供用を迎える中央環状新宿線(横流式換気方式)の発災時の管理・運用面並びに長大トンネルとして建設中の中央環状品川線(縦流式換気方式)を想定した防災安全計画に関する方策を講じるため、平成20年も、東京都及び首都高速道路株式会社において、首都高速道路における都市内長大トンネルの防災安全に関する調査研究委員会が設置され、消防庁などの関係機関や学識経験者等による検討が行われている。
2 大深度地下空間の防災対策 大深度地下空間の公的利用については、臨時大深度地下利用調査会設置法に基づき設置された臨時大深度地下利用調査会において、大深度地下の利用に関する基本理念及び施策の基本となる事項等について調査審議が行われ、平成10年5月に答申が取りまとめられた。 この答申を踏まえ、平成12年5月に、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法が公布され、平成13年4月1日に施行された。 また、同法に定める対象地域である首都圏、中部圏及び近畿圏において、関係省庁及び関係地方公共団体で構成する大深度地下使用協議会が、それぞれ定期的に開催されている。 大深度地下空間で災害が発生すると、地下の深部に多数の利用者が取り残される可能性があり、従来の施設と比較して消火活動や救助活動がより困難になることが予想されている。 このため、消防庁、国土交通省等関係機関において大深度地下施設の用途、深度、規模等に応じた安全対策について検討を行い、平成16年2月に「大深度地下の公共的使用における安全の確保に係る指針」を取りまとめた。 平成17年8月には、大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の適用第1号として、神戸市が認可権者である兵庫県知事に対し、大容量送水管整備事業の事業概要書の提出を行い、平成19年6月に全国初の認可を受けた。今後は、同法を利用する事業が行われる際には、同指針等を踏まえた安全対策が講じられるよう、適切な指導、助言等を行う必要がある。 また、地下街やトンネル等の消防活動が困難な空間において、迅速で円滑な活動を安全に行うためには、指揮本部による一元的な情報管理が特に重要であることから、消防庁では、活動中の隊員位置や活動状況等の情報をリアルタイムに把握することができる、「消防活動が困難な地下空間等における活動支援情報システム」の開発を行い、平成19年3月に公開実験を実施し、最終的な報告書をとりまとめた。 活動支援情報システムは、隊員の位置を特定するため、小型の慣性航法装置と電子タグを組み合わせた位置特定システム、隊員の位置を表示するための位置表示システム、位置データや音声を伝送できる情報通信システムから構成され、各要素技術を組み合わせた小型軽量な可搬式システムの実用化に向けた開発を行った。
[ガス災害対策]1 ガスによる災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成19年中に発生した都市ガス及び液化石油ガスの漏えい事故又は爆発・火災事故のうち消防機関が出場したもの(以下「ガス事故」という。)の総件数は、1,119件(対前年比57件増)である。これをガスの種別ごとにみると、都市ガスに係るものが686件(同80件増)、液化石油ガスに係るものが433件(同23件減)となっている(第1−8−2図)。第1-8-2図 ガス事故の態様別発生件数ア 事故の8割は漏えい事故 ガス事故を態様別にみると、漏えい事故が全体の80%、爆発・火災事故が同20%であり、ガスの種別ごとにみると、都市ガス事故の89.2%が漏えい事故、同10.8%が爆発・火災事故、液化石油ガス事故の65.4%が漏えい事故、同34.6%が爆発・火災事故となっている(第1−8−2図)。イ 事故の約7割は消費先で発生 事故を発生場所別にみると、消費先におけるものがガス事故の73.3%、ガス導管等消費先以外におけるものが同26.7%となっている(第1−8−3図)。第1-8-3図 ガス事故の発生場所別件数 消費先において発生した事故を発生原因別にみると、コックの誤操作・火の立ち消え等、消費者に係る場合が51.6%、ガス事業者・工事業者に係る場合が同14.9%となっている。ガスの種別ごとにみると、都市ガス事故の53.4%が消費者に係る場合、同11.2%がガス事業者・工事業者に係る場合となっており、液化石油ガス事故の49.5%が消費者に係る場合、同19.1%がガス事業者・工事業者に係る場合となっている。
(2)ガス事故による死傷者数 平成19年中に発生したガス事故(自損行為によるものを含む。) による死者数は13人 (対前年比6人増)、負傷者数は199人(同15人増)である。死者は、都市ガスによるものが7人(対前年比3人増)、液化石油ガスによるものが6人(同3人増)となっている。負傷者は、都市ガスによるものが71人(対前年比23人増)、液化石油ガスによるものが128人(同8人減)となっている。 死傷者を事故の態様別にみると、死者数では漏えい事故が爆発・火災事故を上回り、負傷者数は爆発・火災事故によるものが67.8%となっている(第1−8−4図)。第1-8-4図 ガス事故による死傷者数
(3)自損行為によるガス事故 平成19年中に発生したガス事故のうち、自損行為に起因する事故はガス事故全体の5.2%に当たる53件で、これらの事故による死者数は7人(死者全体の53.8%、前年同数)、負傷者数は60人(負傷者全体の30.2%、前年比10人増)となっている。 自損行為に起因する事故は、漏えい事故にとどまったものは43件(対前年比6件減)、爆発・火災事故にまで至ったものが15件(同6件減)となっている。
2 ガス災害対策の現況 消防機関は、ガスの爆発火災事故、漏えい事故等の場合に消防活動を行うほか、防火対象物におけるガス燃焼器具に係る火災予防を指導している。また、ガス災害の予防の一環として、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」により、LPガスの販売業者が貯蔵施設等の設置の許可を受ける際には、消防機関の意見書を添付しなければならないこととされている。このほか、関係行政庁は、LPガス等に係る事業登録等を行った場合には、消防機関に通報しなければならないこととされている。 なお、消防関係者に対しては、ガス漏れ事故に際しての警防活動要綱を示すとともに、消防大学校、各都道府県消防学校等において、LPガス等の規制に関する講座を設け、ガス漏れ事故への対応能力の向上に努めている。
3 ガス災害対策の課題 ガス事故は、その約7割が消費先で発生しているため、消防機関は主として一般家庭等の消費先に対してガスの性状、ガス器具の使用上の安全対策等について、今後とも日常の予防査察等を通じ周知徹底を図っていく必要がある。
[毒物・劇物等の災害対策] 科学技術の進展により化学物質の種類は増加し、様々な分野で使用されているが、この中には人体に有毒な物質や火災が発生した場合に著しく消火が困難な物質も多々ある。これらの物質は、車両等による輸送も頻繁に行われていることから、あらゆる場所で関連した災害が発生する危険性がある。
1 毒物・劇物等災害の現況と最近の動向(1)事故の発生件数 平成19年中に発生した毒物・劇物等(毒物及び劇物取締法第2条に規定されている物質並びに一般高圧ガス保安規則第2条に定める毒性ガス)による事故で消防機関が出場したものの総件数は、91件(対前年比27件増)で、火災が4件(同5件減)、漏えいが56件(同11件増)となっている。 関係する毒物・劇物等は、アンモニア、一酸化炭素、塩酸等の順になっている(第1−8−5図)。第1-8-5図 毒劇物による事故の内訳
(2)事故による死傷者数 平成19年中の死者は0人(対前年比7人減)で、負傷者は92人(同37人減)となっている。
2 毒物・劇物等災害対策の現況 毒物・劇物等のうち特に火災予防及び消火活動に重大な支障をきたすおそれのある物質は消防活動阻害物質として指定され、その一定数量以上の貯蔵又は取扱いは、消防法第9条の3の規定により、あらかじめ、その旨を消防機関に届け出なければならないこととされている(第1−8−6図)。第1-8-6図 消防活動阻害物質に係る届出施設の状況 なお、毒物及び劇物取締法令により指定される毒物及び劇物については、必要に応じて、消防活動阻害物質に指定している。
3 毒物・劇物等災害対策の課題(1)実態の把握及び指導 毒物・劇物等災害時において消防活動に重大な支障を及ぼすおそれのある物質については、届出等に基づき的確に実態の把握に努める必要がある。
(2)危険物災害等情報支援体制の充実 毒物・劇物等に係る災害時においては、消防職員の安全を確保しつつ、迅速かつ効果的な消防活動を展開するために、より早い段階で毒物・劇物等の危険性及び対応要領等に係る情報を把握することが重要である。このため、災害時に必要な情報(化学物質の性状、対応要領等)を災害活動現場に迅速かつ効果的に提供できるよう運用している「危険物災害等情報支援システム」について、更にその内容を充実していく必要がある。
[海上災害対策]1 海上災害の現況と最近の動向 平成19年中の主要港湾(1船の総t数が1,000t以上のタンカーが平成19年1月1日から平成19年12月31日までの間に入港した実績を有する港湾をいう。)115港における海上災害で消防機関が出動したものは38件あり、このうち火災によるものが24件(全体の63.2%)、油の流出によるものが10件(全体の26.3%)ある。 また、事故船舶の規模別では、1,000t未満の船舶が20件で全体の52.6%を占めている(第1−8−1表)。第1-8-1表 主要港湾における消防機関の出動状況 最近の主な船舶火災としては、平成14年10月1日に長崎港で建造中の客船「ダイヤモンド・プリンセス」において、ぎ装工事中に出火し、出火から鎮火まで36時間以上を要する火災が発生している。 また、平成14年11月26日には、伊豆大島において座礁していたバハマ船籍の自動車運搬船「ファルヨーロッパ号」で出火、大量の煙が発生したため、付近住民が一時的に自主避難をする事態となった。 油の流出災害としては、平成14年12月5日に茨城県日立港において、北朝鮮船籍の貨物船「チルソン号」が座礁し燃料油が流出する事故が発生している。
2 海上災害対策の現況 近年、タンカー等危険物積載船舶の大型化、海上交通の輻そう化、原油、LPG等受入基地の建設等により、海上災害発生の危険性が増大してきており、また、海上災害が発生した場合には、海洋汚染等により周辺住民にも重大な被害を及ぼすおそれが大きくなっている。 このため、地方公共団体においても、港内又は沿岸部における海上災害の発生に備え、地域防災計画に防災関係機関との連絡、情報の収集、応援要請、防災資機材の調達等の緊急措置がとれるような事前対策等を定め、防災体制の強化を図るとともに、大規模な災害となった場合には、災害対策本部の設置等により所要の対策を講じることとしている。 船舶火災等の海上災害における消防活動は、制約が多く極めて困難であるため、消防庁では、船舶火災時における消防活動上の留意事項、有効な資機材、外国船に係る留意事項等を取りまとめた「船舶火災対策活動マニュアル」を作成し、関係消防本部に通知している。消防機関においては、消防艇をはじめとする海上防災資機材の整備、防災関係機関との協力関係の確立、防災訓練の実施等に努め、万一の海上災害に備えている。 なお、船舶火災の消火活動については、港湾所在市町村の消防機関と海上保安官署間で業務協定が締結されているほか、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律によっても、海上災害に対する消防機関と海上保安官署との協力関係が整備されている。 また、海上における捜索救助に関しては、「1979年の海上における捜索及び救助に関する国際条約」(略称SAR条約)などを踏まえて、関係機関で構成する連絡調整本部が海上保安庁に設けられているほか、海上保安庁の管区海上保安本部単位に都道府県の消防防災部局、関係消防本部等を含む地方の関係機関で構成する救助調整本部が設けられ、海難救助対策の推進を図るため関係機関が密接に協力している。
3 海上災害対策の課題 消防庁では、地方公共団体における流出油災害対策の充実強化の推進に努めており、  平成15年6月には、全国の沿岸海域を有する都道府県及び市町村に対して、漂着油等への対応に係る地域防災計画の規定状況とその意見に関する調査を行った。その把握結果について、関係省庁に通知するとともに、都道府県に対し、管内の沿岸海域を有する市町村の地域防災計画に、漂着油等への対応を含めた海上災害対策を的確に規定するよう指導・助言した。 また、油以外の有害危険物質による災害対策の充実強化を図るため、「2000年の危険物質及び有害物質による汚染事件に係る準備、対応及び協力に関する議定書(OPRC-HNS議定書)」が採択されたことから、これに対応するため、「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」に替わる計画として、平成18年12月8日に「油等汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」が閣議決定された。
[航空災害対策]1 航空災害の現況と最近の動向 平成19年中における航空事故(飛行機、回転翼航空機、滑空機等に係る事故をいう。)は23件発生しており、そのうち飛行機事故は12件となっている。また、航空事故による死者は10人、負傷者は25人となっている(運輸安全委員会ホームページによる。)。 平成19年中に民間航空事故等で消防機関が消火・救急救助活動を実施したものは8件となっている。なお、消防機関が出動したものは65件あり、このうち飛行場内が63件、飛行場外が2件となっている。 平成元年以降の主な飛行機事故としては、平成6年4月26日に中華航空機が名古屋空港で着陸に失敗し、墜落、飛散炎上した事故(死者264人、負傷者7人)、平成8年6月13日にガルーダ・インドネシア航空機が福岡空港で離陸時にオーバーランして大破炎上する事故(乗員・乗客のうち死者3人、負傷者170人)が発生した。平成19年8月20日には、中華航空機が那覇空港で着陸後、出火炎上した事故が発生し、消火活動を行った消防職員等5人が負傷した。
2 航空災害対策の現況 航空事故は、いったん発生すれば、大惨事となるおそれがあり、初期における消火救難活動は極めて重要である。 空港の消防力は、国際民間航空条約第14附属書の標準及び勧告方式に準拠し、消火薬剤、消火救難車両等の整備が空港管理者により行われているが、消防庁では、国土交通省等とともに空港災害対策研究会議を開催し、空港及び関係市町村に整備すべき消防力の基準や航空機火災の消防戦術等を取りまとめ、空港管理者及び地方公共団体等関係機関に示し、航空災害に対する消防防災体制の整備に資するとともに、空港及びその周辺で発生する航空災害に対処すべく消防力の整備に努めている。 また、消防庁及び国土交通省では、市町村消防機関と空港管理者との間で、空港及びその周辺における消火救難活動に関する協定を締結するように指導しており、平成20年4月1日現在、空港所在市町村の99消防機関が協定を締結している。 さらに、消防庁では、国土交通省東京空港事務所におかれた救難調整本部(RCC)と消防庁との間に専用電話回線を開設するなど、航空災害に対する消防機関の初動体制の確立に努めてきたところであり、航空機の捜索救難に関し関係省庁で締結されている「航空機の捜索救難に関する協定」に関係機関として参加している。
3 航空災害対策の課題 航空事故に際して消防機関が有効な消火・救急救助活動等を実施するためには、必要な初動体制を早急に確立するとともに大規模災害用資機材の整備を計画的に進め、これらの資機材をはじめ、消防機関の保有する装備、人員等を広域的に活用できる体制を強化する必要がある。 また、航空事故の大半は空港及びその周辺(滑走路の中心より10km内)で発生しており、空港及びその周辺における消火救難体制の確立が極めて重要であり、空港が所在する市町村においては、空港周辺地域での航空災害に備え、空港管理者との提携、協力体制を推進するとともに、周辺市町村からの応援体制、さらには地域の実情に応じた広域応援体制の確立等消防体制の整備に努めている。
第2章 消防防災の組織と活動第1節 消防体制1 消防組織(1)常備消防機関 常備消防機関とは、市町村に設置された消防本部及びその下の消防署のことであり、専任の職員が勤務している。平成20年4月1日現在では、全国に807消防本部1,706消防署が設置されており、15万7,860人の消防職員が勤務している(第2−1−1表、第2−1−1図)。第2-1-1表 市町村の消防組織の現況第2-1-1図 消防職団員数の推移 前年と比較して消防職員は464人増加しており、また、女性職員も3,283人(前年比149人の増)となっており、年々増加している。ア 常備化の現況 市町村における現在の消防体制は、大別して、〔1〕消防本部及び消防署(いわゆる常備消防)と消防団(いわゆる非常備消防)とが併存している地域(例外的に常備消防のみの市もある。)と、〔2〕消防団のみが存する地域がある。 平成20年4月1日現在、常備化市町村は1,749市町村となり、常備化率は市町村数で97.8%(市は100%、町村は96.0%)に達し、人口の99.9%が常備消防によってカバーされており、全国的にみた場合、主に山間地、離島にある町村の一部を除いては、ほぼ常備化されるに至っている。イ 広域化の状況 昭和40年代以降、消防の常備化を進めるため、一部事務組合の設置や事務の委託を活用することにより、消防体制の広域化が推進された。 平成20年4月1日現在、組合による消防本部は316本部(うち広域連合は19本部)であり、その構成市町村数1,126市町村(335市、648町、143村)は常備化市町村全体の64.4%に相当する。また、事務委託市町村数は132市町村(29市、82町、21村)に達している(第2−1−2図)。第2-1-2図 消防本部の設置方式の内訳
(2)消防団 消防団は、市町村の非常備の消防機関であり、その構成員である消防団員は、他に本業を持ちながらも、権限と責任を有する非常勤特別職の地方公務員であり、「自らの地域は自らで守る」という郷土愛護の精神に基づき参加し、消防・防災活動を行っている。 平成20年4月1日現在、全国の消防団数は2,380団、消防団員数は888,900人であり、消防団は1市を除いてすべての市町村に設置されている(第2−1−1表、第2−1−1図)。第2-1-1表 市町村の消防組織の現況第2-1-1図 消防職団員数の推移 消防団は、 ・地域密着性(消防団員は管轄区域内に居住又は勤務) ・要員動員力(消防団員数は消防職員数の約6倍) ・即時対応力(日頃からの教育訓練により災害対応の技術・知識を習得)といった3つの特性を活かしながら、初期消火や残火処理等を行っているほか、大規模災害時には住民の避難誘導や災害防ぎょ等を、国民保護の場合は住民の避難誘導等を行うこととなっており、特に消防本部・消防署が設置されていない非常備町村にあっては、消防団が消防活動を全面的に担っているなど、地域の安全確保のために果たす役割は大きい。 また、消防団は、平常時においても地域に密着した活動を展開しており、消防・防災力の向上、地域コミュニティの活性化にも大きな役割を果たしている。 なお、消防団員の年齢構成は、30歳代が40.0%と最も多いが、40歳以上の団員が39.9%を占めており、平均年齢は38.3歳となっている(第2−1−3図)。第2-1-3図 消防団員の年齢構成
自治体消防制度60周年 我が国の消防は、昭和23年3月7日に施行された消防組織法によって、市町村消防の原則に基づく今日の自治体消防制度として確立し、平成20年3月7日に60周年を迎えました。 これを記念して、消防関係者をはじめ国民がこぞって我が国における消防の発展を回顧するとともに、国民の安心・安全を確保するという消防に課せられた使命の重要性を再認識し、更なる消防防災体制の充実強化を期するため、各種の記念事業を行いました。○自治体消防制度60周年記念式典 平成20年3月7日の消防記念日に、天皇皇后両陛下の御臨席のもと、日本武道館において挙行しました。式典は、天皇陛下のおことば、内閣総理大臣をはじめとする多くの来賓の祝辞を賜った後、消防行政の発展や地域防災のリーダーとして貢献してきた消防職員及び消防団員等に対して、内閣総理大臣表彰、総務大臣感謝状の授与などを行いました。天皇陛下おことば国歌吹奏幼年消防クラブ特別演技○「119番の日」シンポジウム 自治体消防制度40周年を記念して制定された「119番の日(11月9日)」に、国民の消防全般に対する正しい理解と認識を深めるとともに、広く消防防災に関する意識の高揚と啓発を図り、更なる地域の安心・安全を確立することを目的に、東京都港区虎ノ門のニッショーホールにおいて開催しました。パネルディスカッション○全国消防広報コンクール 全国の消防本部及び消防団で作成されている広報制作物の中から広報技術が優秀なものを表彰し、全国的に紹介することにより、各団体における広報技術の向上を図るとともに、消防防災行政の推進に寄与することを目的に、自治体消防制度50周年の平成10年度から毎年度、開催しており、今回は、「119番の日」シンポジウムにおいて表彰式を行いました。広報紙(誌)部門 札幌市消防局「火災分析ファイル〜暮らしにひそむ危険〜」広報ポスター・広報カレンダー部門 淡路広域消防事務組合消防本部「南海地震と大津波」広報写真部門 高松市消防局「救出」ホームページ部門 比企広域消防本部 http://www.hiki-saitama.jp/119/○全国消防イメージキャラクター「消太」の作成 より一層「親しまれる消防」を目指して『全国消防イメージキャラクター「消太」』を作成しました。デザインは、漫画家の松本零士氏を委員長とする審査委員会で選考し、名前は、全国からの10,508件の応募の中から選考されたものです。「消太」は、消防庁のHPでデータを提供しており、全国の消防機関で使用されています。消太○全国消防職員・消防団員意見発表会 毎年度、それぞれに行われている消防職員と消防団員の意見発表(会)の過去の最優秀賞及び優秀賞受賞者が一堂に会し、それぞれの意見を発表することにより、意識を共有し今後の消防組織の発展につなげることを目的に行いました。発表者による記念撮影○消防防災ロボット・高度な資機材等に関する消防庁長官表彰 消防防災活動を支える消防防災ロボット・高度な資機材の研究開発と実用化、さらには実用品の普及を推進することを目的に行いました。全国の消防機関・消防機器メーカー等から総計45作品の応募があり、平成20年6月27日に展示会および表彰式を行いました。最優秀賞 能動スコープカメラ○レスキューロボットコンテストにおける消防庁長官賞の授与 消防防災に係る科学技術の推進を図るために実施されている「レスキューロボットコンテスト」において、特別賞として「消防庁長官賞」を授与しました。○消防士・消防団員を主人公とした漫画・ビデオの募集 国民の生命を守る消防士や消防団員の日常や火災災害現場における活動を魅力的に描いた漫画、ビデオを募集し、優秀な作品を全国的に紹介することにより、消防防災行政の推進に寄与することを目的に行いました。○記念誌「自治体消防60年のあゆみ」発刊 自治体消防制度60周年を記念して、これまでの歩みを振り返り、合わせて今後の消防行政を展望する「自治体消防60年のあゆみ」を発刊しました。 このほか、消防庁では、多くの自治体消防制度60周年記念事業を行い、また、都道府県、消防本部をはじめ各地の消防機関・消防関係団体で、自治体消防制度60周年を記念した事業が行われました。
2 消防施設(1)消防車両等の整備 消防本部においては、消防活動に必要となる消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、はしご付消防自動車、化学消防自動車、救急自動車、救助工作車、消防ヘリコプター等の整備が進められている。 また、消防団においては、消防ポンプ自動車、小型動力ポンプ付積載車等の整備が進められ、機動力の強化が図られている(第2−1−2表)。第2-1-2表 消防車両等の保有数
(2)消防水利 消防水利は、火災鎮圧のためには消防車両等とともに不可欠なものである。 消防水利には、消火栓、防火水槽、プール等の人工水利と河川、池、湖、沼、海等の自然水利がある。 自然水利は、人工水利と並んで消防水利としての重要な役割を果たしているが、季節により使用不能となったり、取水場所が制限されることがあるので、消防水利の配置に当たっては、自然水利と人工水利の適切な組合せを考慮することが必要である。 また、人工水利については、消火栓が76.2%を占めており、防火水槽(消防水利として指定された耐震性貯水槽を含む。)の割合は22.8%にすぎないが、阪神・淡路大震災以後、特に大規模地震に対する関心の高まりとともに、消火栓との適切な組合せによる水利の多元化が要請されており、防火水槽の設置が促進されてきている(第2−1−3表)。第2-1-3表 消防水利(人工水利)の保有数
(3)消防通信施設 火災等の被害を最小限に抑えるためには、火災等を早期に覚知し、消防機関が素早く現場に到着するとともに、現場においては、情報の収集及び指揮命令の伝達を迅速かつ的確に行うことが重要である。この面で消防通信施設の果たす役割は大きい。消防通信施設には、火災報知専用電話(119番)、消防通信網等がある。ア 119番通報 火災報知専用電話(119番)は、加入電話・携帯電話・IP電話等によって消防機関に火災、救急、救助、その他の災害の発生等を通報するものである(第2−1−4図)。第2-1-4図 通信施設等の状況 また、平成19年中の119番通報件数は8,475,781件となっており、その内訳は救急・救助に関する通報件数が全体の60%を占めている(第2−1−5図)。第2-1-5図 119番通報件数 近年の携帯電話・IP電話等(以下「携帯電話等」という。)の普及に伴い、携帯電話等による119番通報の件数が増加し、通報総数に占める割合は約3割となっている。 特に携帯電話からの119番通報については、発信者が周辺の地理に不案内な場合も多い等の課題があったが、平成19年4月から、携帯電話等からの119番通報時に発信場所の位置情報が各消防本部に通知される共通のシステム(以下「位置情報通知システム」という。)の運用が始まった。平成20年10月1日現在、170本部においてこのシステムが導入されており、迅速かつ効果的な指令業務に役立っている。 さらに、位置情報通知システムに係る全国の消防機関の財政負担の軽減を図るため、この位置情報通知システムと従来の固定電話からの新発信地表示システムとの統合を図るための検討を行うとともに、ICT化の進展に伴う電話サービスの多様化に今後とも適切に対応していく必要がある。イ 消防通信網 無線通信網である消防救急無線は、消防本部から災害現場で活動する消防隊、救急隊等に対する指示を行う場合、あるいは、火災現場における命令伝達、情報収集を行う場合に必要とされる重要な設備である(第2−1−4図)。 消防電話は、消防本部、消防署、消防分署及び関係行政機関相互間の緊急連絡、指令等情報の伝達に使われる専用電話である(第2−1−4図)。 また、映像を伝送するシステムとしては、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を都道府県や消防本部(消防指令センター等)に伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに消防庁、都道府県及び他の市町村などへも伝送可能なシステムの構築も進められている。これは発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムであり、今後も整備促進が期待されている。 さらに、消防庁は、災害時に地上での通信途絶・輻輳が発生した場合等に備えイリジウム衛星携帯電話端末機器やヘリコプターテレビ電送システム受信固定局未整備地域における被害状況の迅速な把握のため同システムの可搬型受信装置、その他緊急消防援助隊の円滑な活動のために各種通信機器を消防援助隊指揮支援隊の所属する消防本部又は各都道府県代表消防機関を対象に無償使用させる制度を設けている。
3 消防財政(1)市町村の消防費ア 消防費の決算状況 市町村の普通会計(公営事業会計以外の会計をいう。)における平成18年度の消防費歳出決算額は1兆8,116億円(前年度1兆8,243億円)で、前年度に比べ127億円(0.7%)の減少となっている。 なお、市町村の普通会計歳出決算額47兆9,465億円(前年度49兆607億円)に占める消防費決算額の割合は3.8%(同3.7%)となっている(第2−1−4表)。イ 1世帯当たり及び住民1人当たりの消防費 平成18年度の1世帯当たりの消防費の全国平均額は3万5,033円(前年度3万5,699円)であり、住民1人当たりでは1万4,259円(同1万4,358円)となっている(第2−1−4表)。第2-1-4表 普通会計決算額と消防費決算額との比較並びに1世帯当たり及び住民1人当たり消防費の推移ウ 経費の性質別内訳 平成18年度消防費決算額1兆8,116億円の性質別内訳は、人件費1兆3,811億円(全体の76.2%、前年度76.0%)、物件費1,657億円(同9.1%、同9.2%)、普通建設事業費(消防用自動車、消防庁舎等)1,949億円(同10.8%、同10.5%)、その他699億円(同3.9%、同4.3%)となっている。 これを前年度と比較すると、人件費が45億円(0.3%)減少し、物件費が24億円(1.4%)減少し、普通建設事業費が35億円(1.8%)増加している(第2−1−5表)。第2-1-5表 市町村消防費の性質別歳出決算額の推移
(2)市町村消防費の財源ア 財源構成 平成18年度の消防費決算額の財源内訳をみると、一般財源等(地方税、地方交付税、地方譲与税等使途が特定されていない財源)が1兆6,654億円(全体の91.9%、前年度91.7%)、次いで地方債1,012億円(同5.6%、同5.3%)、国庫支出金192億円(同1.1%、同1.2%)となっている(第2−1−6表)。第2-1-6表 市町村消防費決算額の財源内訳イ 地方交付税 地方交付税における消防費の基準財政需要額については、市町村における消防費の実情を勘案して算定されており(地方債の元利償還金等、他の費目で算定されているものもある。)、平成19年度の単位費用は1万500円(対前年度伸び率△0.9%)、基準財政需要額は1兆5,481億円(同△1.6%)であった。平成20年度は、新型インフルエンザ対策感染防止用資機材の整備に必要な経費の増額等により、単位費用は1万600円(同1.0%)となり、基準財政需要額は1兆5,569億円(同0.6%)に増加している(第2−1−7表)。第2-1-7表 消防費の単位費用及び基準財政需要額の推移ウ 国庫補助金 市町村の消防防災施設等の整備に対する補助金としては、国庫補助金と都道府県補助金とがあり、国庫補助金には消防防災施設整備費補助金と緊急消防援助隊設備整備費補助金とがある。消防防災施設整備費補助金は予算措置による補助で、市町村等(一部都道府県を含む。)の消防防災施設等の整備に対して、予算の範囲内で、原則として補助基準額の3分の1の補助を行っている。なお、国の特別法等において、補助率の嵩上げが規定されているものがある。具体的には、地震防災対策強化地域の市町村及び地震防災緊急事業五箇年計画に基づき地震防災緊急事業を実施する市町村に対しては2分の1、過疎地域及び離島地域の市町村に対しては10分の5.5の補助を行っている。 また、緊急消防援助隊設備整備費補助金については、消防組織法による法律補助で、緊急消防援助隊のための一定の設備の整備に対して予算の範囲内で補助基準額の2分の1の補助を行っている。 「平成20年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(平成19年8月10日閣議了解)において、平成20年度予算については、「経済財政改革の基本方針2007」を踏まえ、引き続き、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」に則った最大限の削減を行うこととされるとともに、地方公共団体に対して交付される国庫補助金については、前年度当初予算額を下回るよう抑制することを目指すこととされた。また、「公共事業関係費」については、前年度当初予算額に100分の97を乗じた額の範囲内に抑制することとされ、各省庁の要望は、前年度当初予算額に100分の97を乗じた額に100分の120を乗じた額を上限、「義務的経費」については、前年度当初予算における義務的経費の合計額に相当する額の範囲内において、要求することとされた。 このような厳しい状況の下で、消防防災施設整備費補助金については前年度比3%減の32億5,058万円とされたが、緊急消防援助隊設備整備費補助金については前年度とほぼ同額(50億円)を確保し、総額で82億5,102万円(対前年度当初予算比1.2%減)を確保したところである(第2−1−6図)。第2-1-6図 国庫補助金の内訳エ 地方債 消防防災施設等の整備のためには多額の経費を必要とするが、補助金や一般財源に加えて重要な役割を果たしているのが地方債である(第2−1−8表)。第2-1-8表 市町村等の消防防災施設等整備に係る地方債発行(予定)額の推移 このうち、防災対策事業は、地域における「災害等に強い安心安全なまちづくり」を目指し、住民の安心安全の確保と被害の軽減を図るため、防災基盤整備事業及び公共施設等耐震化事業として実施されているもので、地方債の元利償還金の一部について地方交付税措置が講じられている。 防災基盤整備事業は、消防防災施設整備事業、消防広域化対策事業、緊急消防援助隊施設整備事業を対象としており、平成18年度からは、津波警報、緊急地震速報、弾道ミサイル攻撃等の発生時に、国が市町村の防災行政無線を起動し、住民に緊急情報を伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)の起動装置や、消防通信・指令施設として高機能消防指令センターも対象とし、平成20年度からは、一定の高規格救急自動車の整備についても対象としている。 また、公共施設等耐震化事業は、地域防災計画上、その耐震改修を進める必要のある公共施設及び公用施設の耐震化を対象としている。 このほか、消防防災施設等の整備に係る地方債には、教育・福祉施設等整備事業、一般単独事業(一般事業(消防・防災施設))、辺地対策事業及び過疎対策事業等がある。オ その他 前記イ〜エのほか、特に消防費に関係する財源として、入湯税、航空機燃料譲与税、交通安全対策特別交付金、電源立地地域対策交付金、石油貯蔵施設立地対策等交付金、高速自動車国道救急業務実施市町村支弁金、防衛施設周辺安定施設整備事業補助金等がある。
(3)都道府県の防災費 都道府県の防災費の状況をみると、平成18年度における歳出決算額は927億2,100万円であり、平成18年度都道府県普通会計歳出決算額に占める割合は0.20%である(第2−1−9表)。その内容は、防災資機材及び防災施設の建設・管理運営費、消防学校費、危険物及び高圧ガス取締り、火災予防、国民保護対策等に要する事務費等である。第2-1-9表 都道府県の普通会計歳出決算額と防災費歳出決算額等の推移 市町村に対する都道府県の助成措置としては、補助金と貸付金とがある。 平成18年度における補助金の決算額は94億100万円で、前年度に比べて11億4,000万円(10.8%)減少している。補助対象、補助率については、各都道府県により必ずしも同一ではないが、各地の実情に応じ、小型動力ポンプ、消防無線、防火水槽等を対象に定率若しくは定額の補助又は国庫補助の嵩上げ補助の方法によっている。 また、貸付金の決算額は7,100万円で、前年度に比べて5,300万円(42.7%)減少している。
(4)消防庁予算額 消防庁の平成20年度予算額は、前年度より1.7%増の137億8,998万円となっている(第2−1−10表)。第2-1-10表 平成20年度消防庁関係予算主要事項別一覧 総額のうち、82億5,102万円(対前年度比1.2%減)は、消防防災施設整備費補助金及び緊急消防援助隊設備整備費補助金に充てられている。
4 常備消防体制整備の課題(1)消防の広域化の推進(トピックスII「市町村の消防の広域化〜将来の消防本部〜」参照)ア 広域化の必要性 消防庁では、平成6年以降、市町村の消防の広域化を積極的に推進してきた。その結果、一定の成果を得たところであるが、平成17年4月1日現在で管轄人口10万未満の小規模消防本部がいまだ全体の6割を占める状況にあった。 一方、災害の大規模化、住民ニーズの多様化等、近年消防を取り巻く環境は急速に変化しており、消防はこの変化に的確に対応しなければならないものの、小規模な消防本部においては、一般的に、出動体制、保有する車両等の住民サービス面や組織管理面での限界が指摘されていた。また、日本の総人口は、平成17年に戦後初めて減少に転じており、今後も将来人口は減少すると予想されている。これにより一般的に各消防本部の管轄人口も減少すると考えられ、さらに、消防団員の担い手不足の問題も懸念されていた。このような現状から、市町村の消防の体制の整備・確立を図るためには、市町村の消防の広域化をより積極的に推進することが不可避であった。イ 市町村の消防の広域化に関する法律の整備(消防組織法の一部を改正する法律) 消防庁では、市町村の消防の広域化の推進について議論してきたが、「今後の消防体制のあり方について(中間報告)〜消防の広域化を中心として〜」(平成18年1月 今後の消防体制のあり方に関する調査検討会)及び「市町村の消防の広域化の推進に関する答申」(平成18年2月1日 消防審議会)を踏まえて、第164回国会(平成18年通常国会)に「消防組織法の一部を改正する法律案」(閣法第87号)を提出した。同法案については、平成18年6月6日に衆議院本会議で可決、成立し、同月14日に公布され、同日から施行されたところである(平成18年法律第64号)。 また、改正後の消防組織法第32条第1項に基づき、同年7月12日に市町村の消防の広域化に関する基本指針を定めた(平成18年消防庁告示第33号)。この中で、広域化を推進する期間について、平成19年度中には都道府県において推進計画を定め、平成24年度までを目途に広域化を実現することとしている。この推進計画に定める市町村の組合せの基準については、消防本部の規模が大きいほど望ましく、消防力、組織体制、財政規模等を考慮し、おおむね30万以上の規模を目標とすることが適当であるとしている。 消防庁では、基本指針の策定と合わせ、広域化の推進方策の検討及び実施並びに都道府県及び市町村における広域化の取組を支援するために、消防庁長官を本部長とする消防広域化推進本部を設置し、全庁を挙げて広域化を推進しているところである。具体的には、消防広域化推進アドバイザーの派遣や、セミナーの開催等を行っている(囲み記事「消防広域化セミナーを全国各ブロックで開催」参照)。 各都道府県においては、基本指針に基づき、広域化の組合せ等を定めた推進計画が策定されており、未策定の一部の都道府県においても引き続き検討が行われている。 推進計画に定められた広域化対象市町村においては、広域消防運営計画の策定に向けた協議が順次開始されているところであり、各都道府県においては、助言等の必要な支援を行うとともに、広域化対象市町村から求めがあった場合は必要な調整を行うことが求められる(第2−1−7図、第2−1−8図、第2−1−9図)。第2-1-7図 市町村の消防の広域化の推進第2-1-8図 消防本部数と常備化率第2-1-9図 市町村の消防の広域化の推進スキームウ 消防広域化支援対策 消防組織法の規定に基づき、市町村の消防の広域化への取組等を支援するため、平成19年度から「消防広域化支援対策」として、都道府県の推進計画作成に係る経費及び市町村の消防の広域化に伴って必要となる経費に対して、消防の広域化に支障の生じることがないよう、必要な財政措置を講じている。 例えば、消防署所等の整備については、これまで地方債の元利償還金を普通交付税の基準財政需要額に算入する措置は行われてこなかったところである。しかし、平成18年に改正された消防組織法の規定に基づく市町村の消防の広域化に限り、広域化対象市町村が、消防の広域化に伴って、消防力の整備指針(平成12年消防庁告示第1号)により行わなければならない広域消防運営計画に定められた消防署所等(消防署、出張所、分遣所、駐在所、派出所、指令センター等)の整備(土地の取得経費は含まない。)については、事業費の90%に一般単独事業債を充当し、元利償還金の30%に相当する額を、後年度、普通交付税の基準財政需要額に算入することとしている。
消防広域化セミナーを全国各ブロックで開催 消防庁では、市町村の消防の広域化を推進するため様々な施策を展開しています。 平成20年度は、都道府県が策定した消防広域化推進計画に基づき広域化対象市町村が広域化実現に向けた協議の第一歩を踏み出すことから、広域化対象市町村に対する具体的な助言等を行うことを目的として「消防広域化セミナー」を全国9ブロックで開催しました。消防広域化セミナー開催 セミナーは、学識経験者による基調講演、消防広域化推進アドバイザーによる事例発表、都道府県の取組の説明及び今後の広域化の進め方等の内容で実施しました。 長野市及び旭川市で開催したセミナーの基調講演では、群馬県における常備消防の広域化に関する有識者懇談会における議論の経緯などが紹介され、現場の実情を踏まえながら懇談会において活発な議論が行われたことや、消防力の強化という観点から消防の広域化が必要であるとの提言に至ったことが説明されました。第3回セミナー(長野市)基調講演 また、藤沢市及び広島市のセミナーでの事例発表では、新潟市の広域化事例が紹介され、消防の広域化実現は、想定される課題の抽出と分析を行い、具体的なシミュレーションを行った上で、広域化後の短期、中期、長期的なビジョンを策定することが必要であることなどが説明されました。第8回セミナー(広島市)アドバイザー事例紹介 今後、今回開催したセミナーが広域化実現へ向けての一つの契機となり、それぞれの地域で自らのまちの将来の消防体制について、活発な議論が行われ、消防の広域化への機運が高まることを期待するとともに、消防の広域化が着実に進展するよう消防庁としても引き続き必要な支援を行ってまいります。
(2)消防力の整備 消防庁では、「消防力の整備指針」及び「消防水利の基準」を示している。 「消防力の整備指針」は、「消防力の基準」として昭和36年に制定されて以来、市町村の消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきた。制定以来、数次にわたり改正が行われたが、その後の都市構造の変化、消防需要の変化に対応して、より実態に即した合理的な基準となるよう平成12年に全部改正が行われ、それまでの「必要最小限の基準」から「市町村が適正な規模の消防力を整備するに当たっての指針」へと性格が改められ、市町村の自主的決定要素が拡充された。さらに、平成15年12月の消防審議会答申においては、「消防力の基準」について、市町村の消防力の整備に係る指針としての位置付けを維持しつつ、消防サービスの水準確保を前提にして、消防力の整備に当たって市町村が様々な選択を行えるような内容・形態にしていく必要があるとされるとともに、分野別の標準的職務能力の明示、「兼務」概念の導入、施設の性能・効果を考慮した規定の導入、消防団員数に関する算定指標の設定等の必要性について提言された。また、平成16年12月の消防審議会答申では、見直しについてのより具体的な提言が行われた。 これらを受け、消防庁においては、平成17年6月に「消防力の基準」の一部改正を行い、名称も「消防力の整備指針」とした。 また、原子力発電所等で火災が発生した場合の市町村の消防体制を強化するため、平成20年3月に「消防力の整備指針」を改正した。 各市町村においては、この「消防力の整備指針」を整備目標として、地域の実情に即した消防力整備計画の見直しを行い、警防体制や予防体制の充実・強化をはじめ急増する救急需要に的確に対応するための救急隊の増隊等、消防力の計画的な整備が必要となる。
(3)消防財源の強化 消防力の充実・強化に必要となる消防財源については、国庫補助負担金の確保、地方交付税への適切な算入、地方債制度の拡充等を通じて、より一層その充実を図る必要がある。 各市町村においては、地方分権の推進の趣旨にかんがみ、地域に必要な消防力の確保について、国庫補助金のみに依存することなく、自ら責任をもって充実強化を図っていく必要がある。
(4)消防職員の処遇 消防職員の処遇は、業務の性格を十分考慮しなければならず、勤務条件はもとより、健康管理、安全管理にも十分配慮し、改善を積極的に図る必要がある。 特に、交替制勤務という勤務の特殊性及び職務の危険性等を考慮して、人員確保及び勤務体制の整備を図るとともに、〔1〕給料・手当等については、業務の特殊性に見合った適切なものとすること、〔2〕仮眠室等の施設の整備など執務環境の改善を促進すること、〔3〕消防活動時の安全性を高めるため、装備品(防火衣等)を充実強化すること、〔4〕安全衛生管理体制を整備し、事故防止と健康管理に努めることなど、常に配慮が必要である。
(5)消防職員の高年齢化対策の推進 消防職員の平均年齢は、平成19年4月1日現在、41.8歳と一般行政職の43.7歳よりやや低くなっている。 また、平成13年度から再任用制度が導入され、平成19年4月には、一定の要件を満たした消防職員についても適用されることとなったことから、再任用職員の活用の場を設けるとともに、今後、職員の高年齢化対策を一層推進する必要がある。 消防機関においては、再任用職員の豊富な経験と知識の活用を図るとともに、〔1〕装備の軽量化・動力化・安全化、〔2〕部隊の編成、消防戦術の見直し・検討、〔3〕計画的な体力錬成、〔4〕能力開発、適正な人事配置、人事交流など、総合的な対策を推進し、活力ある体制の確立が必要である。
5 消防団の充実強化・活性化対策の推進(1)消防団の現状と課題 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生し、多くの消防団員が出動している。消防団員は、災害防ぎょ活動や住民の避難誘導、被災者の救出・救助などの活動を行い、大きな成果を上げており、地域住民からも高い期待が寄せられている。 また、東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震などの大規模地震の発生が危惧されており、さらに、平成16年6月に成立した国民保護法では、消防団は避難住民の誘導などの役割を担うことが規定された。 このように、消防団は地域における消防防災体制の中核的存在として、地域住民の安心・安全の確保のために果たす役割はますます大きくなっているが、全国の多くの消防団では、社会環境の変化を受けて様々な課題を抱えている。ア 消防団員数の減少 消防団員数は年々減少しており、10年前の平成10年4月1日現在の962,625人に比べ73,725人7.7%減少し、888,900人となっている(第2−1−1図)。第2-1-1図 消防職団員数の推移イ 消防団員の被雇用者化 消防団員に占める被雇用者団員の割合は、10年前の平成10年4月1日現在の67.3%に比べ2.7ポイント増加し、70.0%となっており、団員の被雇用者の割合が高くなっている(第2−1―10図)。第2-1-10図 消防団員の被雇用者化の推移ウ 消防団員の平均年齢の上昇 消防団員の平均年齢は、10年前の平成10年4月1日現在に比べ1.9歳上昇しており、毎年少しずつではあるが、団員の平均年齢の上昇が進んでいる(第2−1―11図)。第2-1-11図 消防団員の年齢構成比率の推移エ 女性の採用 女性消防団員数は、10年前の平成10年4月1日現在の8,485人に比べ8,214人増えて16,699人となっており、団員数が減少する中、年々増加している(第2−1―12図)。しかしながら、女性を採用している消防団は全消防団の46.4%にとどまっており、未採用の消防団では今後積極的に採用していくことが期待されている。第2-1-12図 女性消防団員数の推移
(2)消防団員確保のための消防庁の取組 消防庁では、平成15年12月の消防審議会答申を踏まえ、消防団員数を全国で100万人以上(うち女性消防団員数10万人以上)確保することを目標としており、また、消防団員確保の全国的な運動を展開してきたところであるが、平成20年4月1日現在、消防団員数は89万人を割るという厳しい状況となっているため、平成20年9月8日付消防災第234号により、消防庁長官名において「消防団員確保の更なる推進について」を通知し、各都道府県知事及び各指定都市市長あてに地域住民の方々の生命・身体・財産を守る防災の重要性の認識、消防団員確保への取組、地域の防災力の向上を優先課題として取り組んでいただくよう更に一層の喚起を図った。 また、消防団が抱える様々な課題を解消し、消防団の充実強化・活性化を推進するため、以下のような施策を実施している。ア 地域総合防災力の充実方策に関する小委員会(ア)目的 災害が多様化・大規模化し、国民の安心・安全ニーズが高まる中、常備消防の充実強化はもとより、地域防災の要である消防団や自主防災組織等のさらなる育成、活用を図り、併せて地域の防災を支える人づくりを進めることで、市民レベルの活動を含めた地域の総合的な防災基盤を確立させる視点から、今後の中長期的な消防防災行政のあり方を検討するため、消防審議会に消防防災関係者や学識経験者等からなる小委員会を設置。(イ)検討期間 平成19年9月〜平成20年11月(ウ)主な検討内容 消防を基点としながら、消防機関による消防防災力だけではない「地域総合防災力」の整備・向上にまで視野を広げ、人づくりや民間防災組織の活動促進など国民の安心・安全を確保するための方策を検討した。イ 検討会の開催 消防団の充実強化・活性化を一層推進するため、各種検討会を開催又は検討会に委員として参画し、検討・議論された提言を取りまとめ、施策に反映している。最近における主な検討会は第2−1−11表のとおりである。第2-1-11表 消防団の充実強化・活性化のための検討会の概要ウ 各種施策の実施 消防団活動への参加促進や消防団の活動環境の整備を図るため、以下の施策を実施している。(ア)消防団の装備・施設の充実強化 消防車両・無線機器等の消防団に必要な設備や、消防団の活動拠点となる施設の整備については、「防災基盤整備事業」及び「施設整備事業(一般財源化分)」の対象とし、地方債と地方交付税で支援している。(イ)消防団員の処遇の改善 消防団員の年額報酬や出動手当等に対する地方財政措置、退職報償金制度について、その充実を図っている。(ウ)消防団への理解及び参加の促進 消防団PRビデオ・DVDと併せ、消防団啓発ポスターや社会人・女性・学生といった全国の幅広い層をそれぞれ対象としたパンフレット等の作成・配布を行い、消防団への理解及び参加の呼びかけに努めている。消防団PRビデオ・DVD(賀集 利樹さん)消防団啓発ポスター・パンフレット(甲斐 麻美さん)(エ)事業所の理解と協力 被雇用者団員の増加に伴い、消防団員を雇用する事業所の消防団活動への理解と協力を得ることが不可欠であるため、平成18年度より、勤務時間中の消防団活動への便宜や従業員の入団促進など、事業所としての消防団への協力が、地域における社会貢献として賞揚されるとともに、地域の防災体制が一層強化される仕組みである「消防団協力事業所表示制度」を導入し、全国への普及を図っている。平成20年4月1日現在、44都道府県の344市町村で本制度を導入済みであり、消防団協力事業所数は1,210事業所となっている(囲み記事「「総務省消防庁消防団協力事業所表示証」を交付された事業所」参照)。また、 ・ 消防団員である住民を多く雇用し、消防団活動に特に深い理解があり、協力度の高い事業所に対する表彰 ・ 経済団体への働きかけ ・ 事業所に向けた消防団参加促進パンフレットの作成・配布などを実施し、事業所の消防団活動に対する理解・協力を求めている。(オ)女性の入団推奨 地域の安心・安全に積極的に取り組む女性の入団を推奨している。(カ)学生の入団推奨 若い力を消防団活動に発揮してもらうため、大学生や専門学校生の入団を推奨している。(キ)公務員等の入団推奨 国家公務員や地方公務員(主に公立学校の教職員)のほか農業協同組合・漁業協同組合・森林組合等の公共的団体職員等の入団を推奨している。(ク)全国消防団員意見発表会・消防団等地域活動表彰の実施 地域における活動を推進するとともに、若手・中堅団員や女性団員の士気の高揚を図るため、全国各地で活躍する若手・中堅団員や女性団員による意見発表会を開催し、併せて、 ・ 地域に密着した模範となる活動を行っている消防団 ・ 団員である住民を雇用し、消防団活動を支援する事業所 ・ 団員の確保について特に力を入れている消防団、地方自治体及び事業所 ・ 大規模災害時等において顕著な活動を行った消防団に対する表彰などを実施し、その内容を取りまとめ、全国に提供している。(ケ)消防団員入団促進キャンペーンの全国展開 消防団員の退団が毎年3月末から4月にかけて多い状況を踏まえ、退団に伴う消防団員の確保の必要性があることから、退団時期の前の1月から3月中を「消防団員入団促進キャンペーン」として位置づけ、消防団員募集についての積極的な広報の全国的な展開を図っている。また、関係団体の協力を得て「消防団員入団促進キャンペーンイベント」を開催している。消防団員入団促進キャンペーンイベント(コ)消防団活動のPRa 「消防団のホームページ」の運用 消防庁における最新施策や最新情報等を掲載し、消防団活動のPRに努めている。消防団のホームページb 新聞を活用した広報 全国的に幅広く国民の目に留まる「新聞広告」を活用し、消防団への理解促進及び入団促進の広報に努めている。新聞広告紙面(サ)機能別団員及び機能別分団など消防団組織・制度の多様化方策の導入 昼夜間を問わず、すべての災害・訓練に出動する消防団員(以下、「基本団員」という。)を基本とした現在の制度を維持した上で、必要な団員の確保に苦慮している各市町村が実態に応じて選択できる制度として、下記の多様化方策を導入した(第2−1−13図、囲み記事「機能別団員・分団と女性団員の活躍」参照)。第2-1-13図 機能別団員及び機能別分団の概要a 機能別団員(特定の活動、役割のみに参加する団員) 入団時に決めた特定の活動・役割及び大規模災害対応等に参加する制度。b 機能別分団(特定の活動、役割を実施する分団) 特定の役割、活動を実施する分団・部を設置し、所属団員は当該活動及び大規模災害対応等を実施する制度。c 休団制度 団員が長期出張、育児等で長期間に渡り、活動することができない場合、団員の身分を保持したまま一定期間の活動休止を消防団長が承認する制度。休団中の大規模災害対応、休団期間の上限は各消防団で規定し、休団中は報酬の不支給、退職報償金の在職年数不算入が可能。d 多彩な人材を採用・活用できる制度 条例上の採用要件として性別・年齢・居住地等を制限している例があるので、条例の見直しにより幅広い層の住民が入団できる環境の整備や年間を通じての募集・採用の実施。(シ)団員確保の支援体制の構築 消防団員の減少に歯止めを掛けるために、団員確保に必要な知識又は経験を有する消防職団員等を地方公共団体に派遣し、団員の確保の具体的な助言、情報提供等を行う「消防団員確保アドバイザー派遣制度」を平成19年4月から運用している。長野県岡谷市自治体消防発足60周年記念式典へ派遣 アドバイザー:森連(東京都)(長野県岡谷市総務部消防課提供)
「総務省消防庁消防団協力事業所表示証」を交付された事業所◎事業所のコメント・埼玉県小鹿野町 株式会社 秩父富士 町内や周辺に火災が起こった場合、消防団と連携を図り、消防団員の従業員には勤務時間内でも出動の許可を与えています。 また、社内においても自衛消防隊を組織し、定期的な予防運動や消防活動訓練を行っています。 「自分たちの町は自分たちで守る」という理念を抱き続け、「消防団協力事業所」として、これからも地域社会に貢献していきます。・新潟県糸魚川市 電気化学工業株式会社 青梅工場 当工場は化学製品の製造を行っており、多数の危険物、可燃性ガス等を大量に取り扱っております。工場では職場単位での防災訓練はもちろん、消防署、消防団、工場と一体となった総合防災訓練を毎年継続し万が一の不測の事態に備えております。 また、工場従業員の111名は地域の消防団に加入しており、地域の消防防災活動に貢献しております。・山口県周南市 日本精ッ株式会社 徳山工場 私たちの会社は、最寄りの消防署から約12km離れた位置にあり、常日頃より、社内保安防災活動や自衛消防隊訓練を積極的に取組むと共に、地域火災では市消防本部の要請を受けて初期消火にもあたっています。 また、従業員の地域消防団への入団にも力を入れています。これからも認定事業所の誇りを持ち、地域と共に保安防災に努めたいと思います。・福岡県北九州市 医療法人 医和基会 地域社会への貢献を目的として、いわき福祉会消防団員規定を定めており、従業員が消防団活動を積極的に取組める環境が整っています。 また、消防団活動で得た技術・知識を法人の消防訓練等にも活かしています。これからも私たちは「自分のまちは自分で守る」ために、地域防災活動や福祉ボランティア活動等でも地域のリーダー的な存在を担えるように努力してまいります。
機能別団員・分団と女性団員の活躍 岐阜県飛騨市消防団では、近年の消防団員数減少や団員の被雇用者化が進む中で、平日昼間帯の消防力を補うために機能別団員として「災害支援団員」制度を導入しています。「災害支援団員」は、10年以上の経験を有する消防職団員OBが任命され、平日昼間帯の火災対応などに即戦力として現在67名が活動しています(平成20年4月現在)。災害支援団員辞令交付式(岐阜県飛騨市消防本部提供) 「災害支援団員」制度の導入後に発生した2件の建物火災では、いち早く災害支援団員が現場に駆け付け、迅速な消火活動に従事し延焼拡大を阻止した実績があります。今後も地域防災力の即戦力として活躍が期待されています。 また、消防団の組織の活性化及び地域のニーズに応える方策として、女性消防団員を採用しようという動きが全国的に広まっています。また、男女共同参画の流れを受けて、女性の消防団への参加意欲も高まっています。 消防団員数が減少する一方で、女性消防団員数は年々増加しています。平成20年4月1日現在、16,699人(全体の1.9%)、女性消防団員を採用する消防団は1,104団(全体の46.4%)で全都道府県に及んでいます。 長野県池田町消防団でも、平日昼間帯の消防力を補うために、町内の企業に従事する女性で構成された女性隊(女性消防団員18名)を平成19年4月11日に結成しました。女性隊による実戦型の消火訓練(長野県池田町提供) 活動としては、紙芝居を通した幼年期における防火思想の向上などの予防活動や、消火栓を使用した実戦型の消火訓練を行うなど幅広い消防団活動を行っています。 このように、全国各地で機能別団員・分団制度の採用が検討され、女性消防団員の活躍の場も広がっています。引き続き、多くの地域住民の方が消防団に参加しやすいように、このような地域防災力の充実強化に向けた積極的な取組が、全国に広がっていくことが期待されます。
第2節 消防職団員の活動1 活動状況(1)出動状況 平成19年中における全国の消防職団員の出動状況をみると、火災等(救急業務を除く、火災、救助活動、風水害等の災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他をいう。)への出動回数は107万9,160回で、出動延人員は1,000万4,800人である。また、火災等への1日当たりの出動回数は2,949回、29秒に1回の割合で出動したことになる。 そのうち、消防団員の火災等への出動回数は28万3,628回、出動延人員は462万847人となっている(第2−2−1表)。第2-2-1表 消防職団員の出動状況
(2)消防団員の活動状況 全国各地で地震や風水害等の大規模災害が相次いで発生しており、多くの消防団員が出動し、常備消防と連携しながら、昼夜を分かたず多岐にわたる活動を行っている。 平成18年梅雨前線に伴う大雨被害、台風第13号と豪雨による被害、竜巻による災害など、風水害における水防活動や住民の避難誘導、平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震発生時の消防団員の献身的な活動は、地域に大きく貢献している(特集「地域総合防災力の強化〜消防と住民が連携した活動の重要性〜」参照)。 このように全国の消防団は、自宅が被災した消防団員もいる中で出動し、地域の防災力の中心として、不眠不休で果敢に活動し、被害の拡大防止や、地域住民の安心・安全の確保に貢献している。その支えとなったのが、日頃の訓練と「自らの地域は自らで守る」という崇高な郷土愛護の精神である。消防団員は、地域に居住又は勤務する住民により構成され地域に密着しており、地理や住民の居住先等の地域情報を十分に把握しているため、大規模災害時には特に能力を発揮している。 一方、平常時の活動としては、訓練のほか、応急手当等の普及・指導・講習会や住宅の防火訪問の実施、広報紙の発行など、各地で活発な取組が行われている。また、毎年増加傾向にある女性消防団員は、一人暮らし高齢者宅への防火訪問、応急手当の普及啓発、予防広報など平常時の活動に幅広く活躍している。 このように、消防団は地域における身近な消防防災のリーダーとして、地域の安心・安全のため重要な役割を担っている。
北海道洞爺湖サミットにおける消防特別警戒 平成20年7月7日から9日までの3日間にわたり、北海道洞爺湖町にある「ザ・ウィンザーホテル洞爺」を主会場として、主要先進国首脳会議のほか、関係国・機関の首脳などが参加した拡大会議が開催されました。 消防庁では、サミット期間中の消防警戒体制の万全を期すため、平成19年10月に「北海道洞爺湖サミット消防・救急対策委員会」を設置し、応援活動体制や警戒活動要領などについて検討を重ねてきました。 その結果、首脳会議等が行われる3日間を含め、7月5日から11日までの一週間を消防特別警戒期間とし、本サミットにおける消防・救急体制については、現地の状況や昨今の社会情勢を踏まえ、開催地消防本部をはじめ、北海道内及び道外の主な消防本部から、消防職員約1,000人と消防車両74台、消防ヘリ3機の体制による消防特別警戒を実施しました。 警防部隊については、サミット関係施設及び要人の移動経路となる空港や高速道路の直近に仮設プレハブを設置するなど、2交代24時間体制で消防職員及び消防車両を配置して警戒活動にあたりました。また、救急隊についても、主会場のホテルや多くのマスメディアが集まったIMCセンター内に配置しました。 一方、予防対策としては、サミット関係施設における事前防火指導や従業員に対する自衛消防訓練指導を実施するなど、火災等の未然防止と災害発生時の迅速な体制の整備を図るとともに、サミット警戒期間中は予防警戒員を関係施設内の防災センターに配置し、事象発生に備えました。 消防特別警戒期間中における事案としては、救急搬送が5件、救急隊による現場処置が2件ありました。救急搬送のうち1件については、消防ヘリを活用し札幌市内の病院へ搬送しました。また、防災機器の作動により防災センターに詰めていた予防警戒員による現場確認や復旧措置などが全体で34件ありました。消防ヘリによる救急搬送
2 公務災害の状況 平成19年中における公務により死亡した消防職団員(火災等の災害防除、演習訓練等に出動し、職務遂行中に死亡したもの等)は12人、同じく負傷した消防職団員は2,460人である。前年に比べて公務による死者は5人増加し、負傷者は78人増加している。 負傷原因を出動形態別にみると、演習訓練によるものが39.6%と最も多く、次いで火災によるものが23.4%、救急によるものが11.3%となっている(第2−2−2表)。第2-2-2表 消防職団員の公務による死傷者数第2-2-1図 消防職団員の公務による死者数の推移第2-2-2図 消防職団員の公務による負傷者数の推移
3 勤務条件(1)消防職員の勤務条件等 消防職員の勤務条件は、勤務の特殊性や職務の危険性に配慮したものでなければならない。具体的な給与、勤務時間その他の勤務条件は、市町村(組合を含む。)の条例によって定められている。ア 給料及び諸手当 勤務条件のうち給料についてみると、消防職員に適用される給料表は、消防(公安)職給料表と行政職給料表の二種類がある。消防職員の給料については、その職務の危険度及び勤務の態様の特殊性等を踏まえ、一般職員と異なる特別の給料表(公安職給料表)を適用することとされている(昭和26年国家消防庁管理局長通知)。消防の職務遂行にあたっては、部隊活動に必要な上命下服を明示し組織の統一性を確保する機能を有する階級制度があるが、行政職給料表を適用した場合、階級制度を維持しつつ、給料の水準を適正に保つということが難しい。行政職給料表を採用しつつ、号給の加算調整や特殊勤務手当の支給により職員の給与水準の維持を図るような対応は、明確性及び透明性の観点から問題があり、条例により公安職給料表を採用することが望ましいところであるが、現状では、このような対応を行っている消防本部も多く見られる。 なお、消防職員の平均給料月額は、平成19年4月1日現在の地方公務員給与実態調査によると平均年齢41.8歳で33万5,093円であり、一般行政職員の場合は平均年齢43.7歳で34万9,469円となっている。 また、平均諸手当月額は、消防職員が9万6,123円であり、一般行政職員は8万3,838円となっている。これは、消防職員には、出動手当、夜間特殊業務手当等の諸手当が支給されていることによるものである。イ 勤務体制等 消防職員の勤務体制は、毎日勤務と交替制勤務とに大別され、さらに交替制勤務は2部制と3部制に分けられる。 2部制は、職員が2部に分かれ、当番・非番の順序に隔日ごとに勤務する制度であり、3部制は、職員が3部に分かれ、日勤・当番・非番を組み合わせて勤務する制度である。平成20年4月1日現在、全国807消防本部中、2部制を採用している消防本部は524本部(64.9%)、3部制を採用している消防本部は224本部(27.8%)である。また、業務の実態を勘案し、通信指令部門等一部の部門において3部制を採用している本部は56本部(6.9%)、その他の勤務体制を採用している本部は3本部(0.4%)である。ウ 消防職員委員会 消防職員委員会は、消防組織法の改正により平成8年10月から消防本部に置くこととされ、〔1〕消防職員の勤務条件及び厚生福利、〔2〕消防職員の被服及び装備品、〔3〕消防の用に供する設備、機械器具その他の施設に関して、消防職員から提出された意見を審議し、その結果に基づいて消防長に対して意見を述べることをその役割としている。 また、平成17年5月には、新たに「意見取りまとめ者」の制度を設けることなどを内容とした「消防職員委員会の組織及び運営の基準」の一部改正が行われた。 平成19年度においては、ほぼすべての消防本部で消防職員委員会が開催され、職員から提出された5,312件の意見について審議された。制度施行以来の累計では、合計で6万6,000件を超える意見について、審議が行われている。平成19年度においては、審議された意見のうち「実施が適当」とされたものは、全体の41.0%を占めた。また、平成18年度において審議された意見のうち「実施が適当」とされた意見の52.9%が既に実施に移されるなど、消防職員委員会で審議された意見が着実に実現されてきているところである(第2−2−3表、第2−2−4表、第2−2−5表、第2−2−6表)。第2-2-3表 消防職員委員会の審議結果第2-2-4表 平成18年度に消防職員委員会において審議された意見の実施状況第2-2-5表 各年度の消防職員委員会開催状況第2-2-6表 各年度の消防職員委員会審議件数及び審議結果エ 公務災害補償 消防職員の公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡)には、地方公務員災害補償法の定めるところにより、療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償が支給される。また、福祉事業により、必要に応じ社会復帰に要する費用や遺族への援護資金も支給される。 また、消防職員が火災の鎮圧等の職務に従事したことにより公務上の災害を受けた場合、障害補償又はこれらに併せて支給する傷病特別給付金等について特例的な加算措置がなされる。 平成19年度の地方公務員災害補償基金の公務災害認定請求受理件数及び通勤災害認定請求受理件数のうち、消防職員については1,777件あり、前年度に比べ127件増加している。
(2)消防団員の処遇改善 消防団員は、大規模災害時においては昼夜を分かたず多岐にわたり活動し、また、平常時においても地域に密着した活動を行っているので、消防団員の処遇については、十分に配慮し改善していく必要がある。ア 報酬・出動手当 市町村では、条例に基づき消防団員に対し、その労苦に報いるための報酬及び出動した場合の費用弁償としての出動手当を支給している。支給額や支給方法は、地域事情により、必ずしも同一ではないが、支給額の低い市町村においては、これらの支給を定める制度の趣旨からも、引上げ等の適正化を図る必要がある。 なお、平成20年度の消防団員報酬等の地方交付税算入額は、第2−2−7表のとおりである。第2-2-7表 消防団員報酬等の地方交付税算入額イ 公務災害補償 消防活動は、しばしば危険な状況の下で遂行されるため、消防団員が公務により死傷する場合もある(第2−2−2表)。このため消防組織法の規定により、市町村は、政令で定める基準に従って、条例で定めるところにより消防団員が公務上の災害によって被った損害を補償しなければならないとされており、他の公務災害補償制度に準じて療養補償、休業補償、傷病補償年金、障害補償、介護補償、遺族補償及び葬祭補償の制度が設けられている。なお、療養補償及び介護補償を除く各種補償の額の算定に当たっては、政令で補償基礎額が定められている(第2−2−8表)。第2-2-2表 消防職団員の公務による死傷者数第2-2-8表 補償基礎額改定状況 消防団員が身体に対し高度の危険が予測される状況の下において消防活動に従事し、そのため公務災害を受けた場合には、特殊公務災害補償として遺族補償等について100分の50以内を加算することとされている。 火災、風水害等においては民間の消防協力者等が死傷者となることがある(第2−2−9表)。これらの消防協力者等に対しては、消防法等の規定に基づき、市町村は条例で定めるところにより、災害補償を行うこととされている。消防協力者等の災害補償内容は、補償基礎額が収入日額を勘案して定められること以外は団員に対するものと同様である。第2-2-9表 消防協力者等の死傷者数の推移ウ 福祉事業 公務災害補償を受ける被災団員又はその者の遺族の福祉に関して必要な事業は市町村が行うものであるが、消防団員等公務災害補償責任共済契約を締結している市町村については、消防団員等公務災害補償等共済基金(以下「消防基金」という。)又は指定法人がこれら市町村に代わって行うこととなっている。 福祉に関して必要な事業の内容は、外科後処置、補装具、リハビリテーション、傷病・傷害の援護、介護の援護及び就学の援護等となっている。エ 退職報償金 非常勤の消防団員が退職した場合、市町村は当該団員の階級及び勤務年数に応じ、条例で定めるところにより退職報償金を支給することとされている。なお、条例(例)によれば、その額は勤務年数5年以上10年未満の団員で14万4,000円、勤務年数30年以上の団長で92万9,000円となっている(第2−2−10表)。第2-2-10表 退職報償金支給額オ 公務災害補償等の共済制度 昭和31年に市町村の支給責任の共済制度として、消防基金が設けられ、統一的な損害補償制度が確立された。その後、昭和39年には、退職報償金の支払制度が、昭和47年には、福祉事業の制度がそれぞれ確立した。 消防基金の平成19年度の消防団員等に対する公務災害補償費の支払状況については、延べ2,429人に対し、15億1,546万円となっている(第2−2−11表)。また、福祉事業の支給額は、延べ937人に対し4億6,382万円となっている。第2-2-11表 消防基金の公務災害補償費の支払状況 消防基金の平成19年度の退職報償金の支給額は、5万3,073人に対し169億7,000万1,000円となっている。カ 消防団員が災害活動等で使用した自家用車に損害が生じた場合の見舞金の支給 消防団員等公務災害補償等責任共済等に関する法律が改正され、平成14年度から、消防基金は、団員等が災害活動で使用した自家用車に損害が生じた場合に、上限10万円の見舞金を支給する事業を実施している。平成19年度の支払状況は、延べ84人に対し695万円となっている。キ 乙種消防設備士及び丙種危険物取扱者資格の取得に係る特例 消防団の活性化に資するとともに、消防団員が新たに取得した資格を活用し、更に高度な消防団活動を行える環境の整備を目的として、消防団員に対する乙種消防設備士試験及び丙種危険物取扱者試験に係る科目の一部を免除する特例が創設された(平成14年7月)。 危険物取扱者(丙種)に関しては団員歴5年以上で消防学校の基礎教育又は専科教育の警防科を修了した者が、消防設備士(乙種第五類・第六類)に関しては団員歴5年以上で消防学校の専科教育の機関科を修了した者が、それぞれ適用対象とされている。
4 安全衛生体制の整備(1)安全衛生体制 現在、労働安全衛生法が規定する安全管理者及び安全委員会の設置を義務付ける規定が適用される消防本部・署所はないものの、消防庁においては、公務災害の発生を可能な限り防止するとともに、消防活動を確実かつ効果的に遂行するため、消防本部における安全管理体制の整備について、「消防における安全管理に関する規程」、「訓練時における安全管理に関する要綱」、「訓練時における安全管理マニュアル」及び「警防活動時等における安全管理マニュアル」をそれぞれ示し、体制の整備の促進及び事故防止の徹底を図っている。 また、消防職員の衛生管理についても、特に配慮する必要があることから、「消防における衛生管理に関する規程」を示すなどの対応を行っている。
(2)惨事ストレス対策 消防職員は、火災等の災害現場などで、悲惨な体験や恐怖を伴う体験をすると、精神的ショックやストレスを受けることがあり、これにより、身体、精神、情動又は行動に様々な障害が発生するおそれがある。このような問題に対して、消防機関においても対策を講じる必要があるが、各消防本部においては、情報不足や専門家が身近にいないことなどが課題とされていた。 消防庁では、平成13年12月から精神科医や臨床心理士等の専門家の協力を得て、消防職員の惨事ストレス対策について研究を重ね、全国の消防本部と消防学校に対するアンケート調査の結果及び消防本部による体系的な惨事ストレス対策のあり方についての検討を取りまとめた「消防職員の惨事ストレスの実態と対策の在り方について(平成15年2月)」及び各消防本部等の取組状況についての調査及び分析を取りまとめた「消防職員の現場活動に係るストレス対策フォローアップ研究会報告書(平成18年3月)」を全国の消防本部、消防署所等に配布するなど、各消防本部における惨事ストレス対策を推進している。 また、報告書の提言に基づき、平成15年に、消防職員が惨事ストレスにさらされる危惧のある災害が発生した場合、現地の消防本部の求めに応じて、精神科医等の専門家を派遣し、必要な助言等を行う「緊急時メンタルサポートチーム」を創設、平成18年にメンバーの増員を図り、体制を強化している。 同チームにおいてはこれまで、平成15年に2件、平成16年に4件、平成17年に5件、平成18年に1件、平成19年に4件、平成20年には4件(平成20年10月現在)の派遣実績がある。 さらに、平成19年度から、消防学校において惨事ストレスに関する授業を担う教職員や消防本部において惨事ストレス対策を担当する消防職員を対象に、惨事ストレス対策についての基礎的な知識を習得することを目的とした「消防職員の惨事ストレス初級研修」を開催し、各消防本部等における惨事ストレス対策の更なる促進を図っている。
(3)安全管理体制の強化 平成15年6月の神戸市における建物火災、7月の熊本県水俣市における土石流災害、8月の三重県多度町(現桑名市)におけるごみ固形化燃料発電所爆発火災において、消防職員及び消防団員が殉職する事故が相次いで発生した。消防庁では、この事態を重く受け止め、今後の再発防止に資するため「消防活動における安全管理に係る検討会」を開催し、安全確保策の充実強化策などについて検討を行い、安全への高い意識と高度な判断力の重要性、安全管理のための情報共有化方策、心理学の要素を反映した効果的な教育訓練手法、現場指揮体制の充実等について平成16年11月に報告書を取りまとめた。また、安全管理のための情報共有化方策として、「消防ヒヤリハットデータベース(消防職団員の事故事例の情報収集・提供システム)」を運用している。
5 消防表彰等 消防関係者等に対して、現在、国が行っている表彰等は第2−2−17表のとおりである。第2-2-17表 消防関係者の表彰者数等
(1)国の栄典 日本国憲法に基づく国の栄典として、叙位、叙勲及び褒章がある。国の栄典制度については、21世紀を迎え、社会経済情勢の変化に対応したものとするため、平成14年8月の閣議決定により見直しが行われ、平成15年秋から実施された。 その主な内容は、勲章については、〔1〕旭日章と瑞宝章について、従来の運用を改め、功労の質的な違いに応じた別種類の勲章として運用し、消防職団員については、瑞宝章とする、〔2〕旭日章と瑞宝章について、勲七等及び勲八等に相当する勲等を廃止して、功労の大きさに応じた区分をそれぞれ6段階に整理するとともに名称を変更する、〔3〕危険業務従事者叙勲を創設する、等であり、褒章については、年齢にとらわれることなく速やかに顕彰する等である。 <叙位> 国家又は社会公共に対して功労のある者をその功労の程度に応じて、位に叙し、栄誉を称えるものである。 なお、昭和21年の閣議決定により生存者に対する運用は停止され、死亡者にのみ運用されている。 <叙勲> 国家又は公共に対して功労のある者に対して勲章を授与し、栄誉を称えるものである。 消防関係の叙勲は、以下の種類に分けられる(第2−2−12表)。第2-2-12表 叙勲 <褒章> 自己の危難を顧みず人命救助に尽力した者、業務に精励し衆民の模範である者、公衆の利益を興し成績著明である者、公同の事務に尽力した者、その他公益の為私財を寄附した者等に対して褒章を授与して栄誉を称えるものである。 消防関係者への褒章は、功績の内容によって、以下の褒章が運用されている(第2−2−13表)。第2-2-13表 褒章
(2)内閣総理大臣表彰 閣議了解に基づき実施されるもので、安全功労者表彰と防災功労者表彰があり、大臣表彰受賞者及び消防表彰規程に基づき消防庁長官が行う安全功労者表彰や防災功労者表彰等の受賞者のうち、特に功労が顕著な者について内閣総理大臣が表彰する(第2−2−14表)。第2-2-14表 内閣総理大臣表彰
(3)総務大臣表彰 総務大臣表彰要領に基づき、広く地域消防のリーダーとして地域社会の安全確保、防災思想の普及、消防施設の整備その他の災害の防ぎょに関する対策の実施について功績顕著な者を表彰している。
(4)消防庁長官表彰 消防表彰規程に基づき、消防業務に従事し、その功績等が顕著な消防職員、消防団員等に対し行われ、その表彰の種類により定例表彰と随時表彰に大別される。(ア)定例表彰 毎年3月7日の消防記念日、7月1日の国民安全の日、9月1日の防災の日にちなみ、3月上旬、7月上旬、9月上旬に実施されるもので、その種類と対象者は以下のとおりである(第2−2−15表)。第2-2-15表 消防庁長官の定例表彰(イ)随時表彰 災害現場等における人命救助など、現場功労を対象に事案発生の都度、実施されるもので、その種類と対象は以下のとおりである(第2−2−16表)。第2-2-16表 消防庁長官の随時表彰
(5)賞じゅつ金 災害に際し、危険な状況下であるにもかかわらず身の危険を顧みず敢然と職務を遂行して傷害を受け、そのために死亡又は障害を負った消防職員、消防団員、都道府県航空消防隊職員又は消防庁職員に対し、消防庁長官表彰(特別功労章、顕功章または功績章)の授与とあわせて支給される。
(6)退職消防団員報償 永年勤続した消防団員の功労に報いるため、退職消防団員報償規程に基づき、その勤続年数に応じて消防庁長官から賞状と銀杯が授与される。
(7)消防庁長官褒状、消防庁長官感謝状 災害等に際し、住民の安全確保等について、その功績顕著な消防機関等に対しては、消防庁長官褒状授与内規に基づき消防庁長官褒状が、また、消防の発展に貢献し、その功績顕著な部外の個人又は団体に対しては、消防庁長官感謝状授与内規に基づき消防庁長官感謝状が授与される。
(8)その他 上記のほか、消防関係の各分野において功労のあった者に対する表彰としては次のようなものがある。・消防団等地域活動表彰    ・危険物安全週間推進標語表彰・消防関係業界功労者表彰   ・危険物事故防止対策論文表彰・消防設備保守関係功労者表彰 ・防災まちづくり大賞・優良消防用設備等表彰    ・優良少年消防クラブ及び優良少年消防クラブ指導者表彰・危険物保安功労者表彰    ・救急功労者表彰・優良危険物関係事業所表彰第2-2-18表 消防庁長官表彰等の種類、表彰時期等一覧
第3節 教育訓練体制1 消防職団員の教育訓練 複雑多様化する災害や救急業務、火災予防業務の高度化に消防職団員が適切に対応するためには、その知識・技能の向上が不可欠であり、消防職団員に対する教育訓練は極めて重要である。 消防職団員の教育訓練は、各消防本部、消防署や消防団における教育訓練のほか、国においては消防大学校、都道府県等においては消防学校において実施されている。これらのほか、救急救命研修所等において専門的な教育訓練が行われている。 このように、消防職団員に対する教育訓練は、国、都道府県、市町村等がそれぞれ機能を分担しながら、相互に連携して実施されている。
2 職場教育 各消防機関においては、平素からそれぞれの地域特性を踏まえながら、計画的な教養訓練(職場教育)が行われている。特に、常に危険が潜む災害現場において、指揮命令に基づく厳格な部隊活動が求められる消防職員には、職務遂行にかける使命感と旺盛な気力が不可欠であることから、各消防本部においては、様々な教養訓練を通じて、士気の高揚に努めている。 なお、職場教育における基準として、「消防訓練礼式の基準」、「消防操法の基準」、「消防救助操法の基準」があり、また、訓練時や警防活動時には安全管理マニュアル等により、効率的かつ安全な訓練・活動の推進を図っている。
3 消防学校における教育訓練(1)消防学校の設置状況 都道府県は、「財政上の事情その他特別の事情のある場合を除くほか、単独に又は共同して」消防学校を設置しなければならず、また、指定都市は、「単独に又は都道府県と共同して」消防学校を設置することができることとされている(消防組織法第51条)。 平成20年4月1日現在、消防学校は、全国47都道府県と指定都市である札幌市、千葉市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市及び福岡市の8市並びに東京消防庁に設置されており、全国に56校ある。 消防学校を設置、運営する場合の基準としては「消防学校の施設、人員及び運営の基準」がある。
(2)教育訓練の種類 消防学校における教育訓練の基準として、「消防学校の教育訓練の基準」(平成16年4月1日施行)が定められている。この中で定められている教育訓練の種類には、消防職員に対する初任教育、専科教育、幹部教育及び特別教育と、消防団員に対する基礎教育(従来の普通教育)、専科教育、幹部教育及び特別教育がある。・「初任教育」とは、新たに採用された消防職員のすべての者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は800時間とされている。・「基礎教育」とは、消防団員として入団後、経験期間が短く、知識・技能の修得が必要な者を対象に行う基礎的な教育訓練をいい、基準上の教育時間は24時間とされている。・「専科教育」とは、現任の消防職員及び一定期間の活動経験を有する消防団員を対象に行う特定の分野に関する専門的な教育訓練をいう。・「幹部教育」とは、幹部及び幹部昇進予定者を対象に行う消防幹部として一般的に必要な教育訓練をいう。・「特別教育」とは、上記に掲げる以外の教育訓練で、特別の目的のために行うものをいう。 なお、この基準については、全国的に平成19年ごろから、いわゆる「団塊の世代」が大量に退職することに伴う大量の新規採用消防職員に係る初任教育への対応や、被雇用者消防団員の増加に伴い集合教育の受講が困難となるなどの検討課題に対応するため、昭和45年に制定された従来の基準を全面的に見直し、各消防学校の実情に応じたカリキュラム編成や柔軟な対応を可能としたものである。 見直しに当たっては、個別の各科ごとに、〔1〕必要の度合いを精査し、廃止、統合(消防職員の予防課程と査察課程)及び新設(消防職員の特殊災害科・上級幹部科、消防団員の初級幹部科・中級幹部科)を図り、〔2〕新たに教育訓練に係る「到達目標」や、〔3〕推奨例としての「標準的な教科目及び時間数」を設定した。 消防団員の教育訓練についても、市町村との連携や教授内容の分割実施など、柔軟な対応を可能とした。 各消防学校では、「到達目標」を尊重した上で、「標準的な教科目及び時間数」を参考指針として活用して、具体のカリキュラムを定めることとなる。
(3)教育訓練の実施状況 消防職員については、平成19年度では延べ2万8,327人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−1表)。第2-3-1表 消防職員を対象とする教育訓練の実施状況 新規採用者の初任教育受講状況をみると、平成19年度における新規採用者のうち、初任教育の受講者は5,045人で、前年度に比べ1,143人増加している。なお、受講率については、94.4%となっている。 消防団員については、平成19年度では延べ5万2,178人が消防学校における教育訓練を受講している(第2−3−2表)。第2-3-2表 消防団員を対象とする教育訓練の実施状況 消防団員にあっては、それぞれ自分の職業を持っているため、消防学校での教育訓練が十分実施し難いと認められる場合には、消防学校の教員を現地に派遣して、教育訓練を行うことができるものとされており、多くの消防学校でこの方法が採用されている。 また、消防学校では、消防職団員の教育訓練に支障のない範囲で消防職団員以外の者に対する教育訓練も行われており、平成19年度においては、地方公共団体職員、地域の自主防災組織、婦人(女性)防火クラブ、企業の自衛消防隊等延べ1万4,744人に対し教育訓練が行われている。
(4)教職員の状況 平成20年4月1日現在、消防学校の専任教員486人のうち派遣の教員は190人に及んでいる(第2−3−3表)。これは、消防活動や立入検査等の専門的な知識及び技能を必要とする教員を、直接消防活動に携わっている市町村の消防職員の中から迎えているためである。第2-3-3表 消防学校教職員数 今後とも消防学校の教職員については、消防大学校での研修や都道府県の他の部局、市町村消防機関との交流等を行うなどして、中長期的観点からその育成と確保を行っていく必要がある。
4 消防大学校における教育訓練及び技術的援助 消防大学校は、昭和23年4月に国家消防庁の内部組織の「消防講習所」として設置されたが、その後、昭和34年4月の消防組織法改正により「消防大学校」となったものである。 消防大学校は、国及び都道府県の消防事務に従事する職員又は市町村の消防職団員に対し、幹部として必要な高度な教育訓練を行うとともに、都道府県及び政令指定都市等の消防学校又は消防訓練機関に対し、教育訓練に関する必要な技術的援助を行っている。
(1)施設・設備 消防大学校の教育訓練施設は、本館には250人収容の大教室、3つの通常規模教室、視聴覚教室、理化学燃焼実験室、図書館等のほか、様々な災害現場をシミュレートして指揮者の情報収集整理・判断・指揮命令能力を養成するマルチメディア教室を設けている。消防大学校外観 第2本館には、300人収容の講堂のほか、救急訓練室、特別教室、屋内訓練場が設けられている。救急訓練室においては、高度救急処置人形などの機材が整備されており、救急救命士の気管挿管や薬剤投与の講習にも対応できるものとなっている。 火災防ぎょ訓練施設は、スチームとスモークマシンを併用し、濃煙高温の環境下での訓練が可能な屋内火災防ぎょ訓練棟及び地下1階、地上11階の高層訓練塔を有しており、複雑な建物内を想定した、より実践的な消火・救助訓練を行うことができる。 教育訓練車両は、指揮隊車、普通ポンプ車、水槽付きポンプ車、救助工作車、高規格の救急自動車を保有している。消防大学校における教育訓練車両
(2)教育訓練の実施状況 消防大学校では学科、実務講習を合わせて、平成19年度までに延べ4万5,292人の卒業生を送り出しており(うち平成19年度は1,512人)、平成20年度教育訓練計画上の定員は1,864人としている(第2−3−4表)。第2-3-4表 教育訓練実施状況
(3)消防学校等に対する技術的援助 自然災害や火災・事故等の態様の多様化・大規模化に伴い、都道府県等の消防学校における教育訓練も高度な内容が求められており、その円滑な実施に資するため、次のような技術的援助を行っている。ア 消防学校教官等に対する教育訓練 消防大学校の教育訓練では、新任消防長・学校長科において消防学校長に対する新任教育を、また、新任教官科において消防学校教官に対する新任教育を行っている。さらに、専科教育の各学科では教育指導者養成を目的としており、教育技法を学び、講義演習を実施している。イ 特別研究生の受入れ 都道府県等の消防学校の中堅的立場にある教官を特別研究生として受け入れ、消防学校における教育訓練について、カリキュラム見直し、教材作成のための機会を提供している。ウ 講師の派遣 都道府県等の消防学校における教育内容の充実を図るため、消防学校等からの要請により、警防、予防、救急、救助等の消防行政・消防技術について講師の派遣を行っている。平成19年度は延べ100回の講師の派遣を実施した。エ 消防教科書の作成 都道府県等の消防学校において使用する初任者用教科書の編集を行っており、平成20年4月現在21種類が発行されている。
(4)自主防災組織に関する調査・研究 平成16年より自主防災組織の教育訓練の内容及び教育形態について調査研究を行うとともに、自主防災組織指導者が活用するための教本等を作成している。
5 その他の教育訓練 救急救命士養成のための教育訓練については、救急救命士(第2章第4節参照)の資格を国家試験により取得するため救急隊員の養成所として、財団法人救急振興財団(以下「救急振興財団」という。)が救急救命東京研修所(年間600人規模)及び救急救命九州研修所(年間200人規模)を開設している。 また、大都市の消防機関等でも救急救命士養成所を設置しており、平成20年度には、あわせて全国で約1,163人の消防職員が救急救命士の資格取得のための教育を受けている。 これらの救急救命士養成所では、「救急救命士学校養成所指定規則」(平成3年文部省・厚生省令第2号)に基づき、講義及び実習が行われている。 そのほか、出火原因の究明率向上等、火災原因調査体制の整備充実を図るため、消防研究センターにより、基礎的な火災調査に係る知識・技術の習得を目的とした講座が開催されている。 また、消防機関においても、生物・化学災害発生時における要救助者の迅速な救出体制や、隊員の安全管理体制を強化すること等が求められていることから、消防庁においても、平成8年度から、生物・化学災害を担当する消防職員を陸上自衛隊化学学校における教育訓練に参加させ、消防機関における生物・化学災害対応能力の充実を図っている。
緊急消防援助隊教育の総合展開 近年は大規模災害発生時における緊急消防援助隊の更なる指揮・連携能力の向上、複雑多様化する災害に対処する際の専門的な知識・技術が求められています。 消防大学校では、これらに対応すべく、次の5つのコースを設け、実践的な緊急消防援助隊教育を総合展開しています。○指揮隊長コース 緊急消防援助隊の指揮支援部隊長、指揮支援隊長、都道府県隊長又は都道府県隊指揮隊長を対象として、部隊指揮要領、航空隊との連携及び過去の災害事例などの講義のほか、シミュレーションを通じて災害時の現地調整本部の適正な運用方法を疑似体験する図上訓練を行っています。現地調整本部運営を想定した図上訓練○航空隊コース 航空消防隊の救助隊員等を対象として、航空関係法制及び航空管理の講義のほか、東京消防庁の教育支援を受け、航空訓練施設による基本・駐機・模擬飛行訓練を行っています。東京消防庁訓練施設による駐機訓練○航空隊長コース 消防防災ヘリコプターの隊長、副隊長及びパイロットを対象として、消防航空行政を中心に、大規模災害における救援航空機の活動統制、関係機関の航空機運用について訓練を行っています。○高度救助コース 高度な資機材を装備している政令指定都市、中核市又は都道府県庁所在都市の救助隊の隊長を対象として、高度資機材の取扱い訓練、高度救助活動の現場管理の講義のほか、同時多発災害(地震災害)を想定した実技訓練を行っています。ウォーターカッター取扱い訓練○NBC・特別高度救助コース 緊急消防援助隊のNBC災害対応要員、特別高度救助隊の隊長等を対象として、広域消防応援体制、防衛省及び災害医療をはじめとする関係各機関による特殊災害発生時における対応方法についての講義のほか、高度救助資機材及びNBC対応資機材を使用した想定訓練を行っています。BC災害対応訓練
6 全国消防救助技術大会等の実施 消防救助活動に必要な高度かつ専門的な救助技術を相互に交換し研さんするとともに、全国の消防救助隊員の人的交流を促進する場として全国消防救助技術大会が、財団法人全国消防協会の主催で毎年開催されている。第37回大会は、平成20年8月29日に全国9ブロックから選抜された987人(陸上の部696人、水上の部261人、技術訓練30人)の隊員が参加して北九州市で開催された。
7 防災教育の普及 大規模地震の発生等が懸念される中、国内における防災・危機管理体制の充実が急務とされており、地方公共団体の幹部職員の危機管理能力及び防災担当職員の実践的対応能力の向上、さらには住民や地域の防災リーダー等の防災力の強化を図ることは緊急の課題である。 このため、消防大学校等における教育訓練については、受講対象の拡大や、その内容をより実践的かつ体系的なものとする取組を進めている。また、インターネットを活用した遠隔教育(防災・危機管理e-カレッジ)により、住民や消防職団員・地方公務員等を対象としたコンテンツを提供しており、今後ともカリキュラム等の充実・強化を図っていくこととしている。防災・危機管理e-カレッジ(消防庁ホームページより)
e-ラーニングの活用による幹部科教育について 平成19年4月以降に入校した幹部科学生から、ICT(情報通信技術)を活用した消防大学校e-ラーニング教育を行っており、平成20年12月までに約530人が受講しています。 e-ラーニング教育は、消防大学校入校前に数か月間行うもので、入校予定者が所属する消防本部等に配信される教材(講義映像のほか、解説画面や参考資料などを含みます。)を用いて個別学習を行って事前に知識を習得します。 学習を進める上で不明な点等については、サポートデスクを設置し対応しているほか、担当教官が各学生の学習進捗状況を随時確認するとともに、電子メールによるアドバイスを行うなど、学生への指導体制を確立しています。また、e-ラーニングシステム上の掲示板機能を利用して、学生が相互にコミュニケーションを図ることができます。 また、入校後は学習到達度を確認するために全科目の効果確認テストを行うほか、教科目によっては理解を深めるために課題を提示し、各学生から検討、研究した結果を提出させ、さらに講師が実務的な解説を加える等、授業展開を工夫しています。あわせて、e-ラーニングの学習内容をもとにした実践重視の集合教育(課題研究、図上訓練等)を行い、応用力を備えた消防幹部の養成を図っています。 幹部科を卒業した学生からは、e-ラーニングによる学習について、学習環境において一部課題があるものの、受講者の都合に合わせて学習できるため効率的であり、また、理解できなかったところは繰り返し確認しながら学習を進められたことなどから、高い評価を得ています。 幹部科にe-ラーニングを導入したことにより、短期間で効率的・効果的に授業を進めることができるようになり、全般的に成績の向上にも結びつけることができました。幹部科の教育体系
第4節 救急体制1 救急業務の実施状況(1)救急出場は6.0秒に1回、国民26人に1人が救急搬送 平成19年中における全国の救急業務の実施状況は、ヘリコプターによる件数も含め、529万3,403件(対前年比1.0%増)と、前年と比較し、5万2,925件増加している。出場件数のうち、救急自動車によるものの上位の事故種別は、急病が322万3,990件、一般負傷が70万4,193件である。 また、救急自動車による搬送人員は490万2,753人(対前年比1万160人増、0.2%増)であり、ヘリコプターによる搬送人員は2,996人(対前年比261人増、9.5%増)である(第2−4−1表、第2−4−2表、附属資料33、34)。第2-4-1表 救急出場件数及び搬送人員の推移第2-4-2表 救急自動車による事故種別出場件数及び搬送人員 救急自動車による出場件数は、全国で1日平均1万4,494件(前年1万4,350件)で、6.0秒(同6.0秒)に1回の割合で救急隊が出場し、国民の26人に1人(同26人に1人)が救急隊によって搬送されたことになる。
(2)搬送人員の51.8%が入院加療を必要としない傷病者 平成19年中の救急自動車による搬送人員490万2,753人のうち、死亡、重症、中等症の傷病者の割合は全体の48.2%、入院加療を必要としない軽症傷病者及びその他の割合は51.8%となっている(第2−4−3表)。第2-4-3表 傷病程度別搬送人員の状況 なお、高齢者(65歳以上)の傷病者の割合は全体の46.5%となっている。
(3)急病に係る疾病分類項目別搬送人員の状況 平成19年中の急病の救急自動車による搬送人員296万7,725人の内訳をWHO(世界保健機関)の国際疾病分類(ICD)の項目別にみると、脳疾患(10.6%)、消化器系(10.6%)、呼吸器系(9.4%)、心疾患等(9.4%)となっている(第2−4−1図)。第2-4-1図 急病に係る疾病分類別搬送人員の状況
(4)現場到着まで平均7.0分 平成19年中の救急自動車による出場件数529万236件のうち、現場到着時間別(救急事故の覚知から現場に到着するまでに要した時間別)の救急出場件数の状況は、5〜10分未満が321万5,647件で最も多く、全体の60.8%になっている。 なお、これらの平均現場到着時間は7.0分(前年6.6分)となっている(第2−4−2図)。第2-4-2図 救急自動車による現場到着時間別出場件数の状況
(5)病院到着まで平均33.4分 平成19年中の救急自動車による搬送人員490万2,753人についての病院収容時間(救急事故の覚知から医療機関等に収容するまでに要した時間)の状況は、30分〜60分未満が216万1,931人(全体の44.1%)で最も多く、次いで20分〜30分未満の174万9,241人(同35.7%)となっている(第2−4−3図)。第2-4-3図 救急自動車による収容時間別搬送人員の状況 なお、これら医療機関までの収容時間の平均は33.4分(前年32.0分)となっている。
(6)搬送人員の97.7%に応急処置等実施 平成19年中の救急自動車による搬送人員490万2,753人のうち、救急隊員が応急処置等を行った傷病者は478万9,024人(搬送人員の97.7%、前年は98.1%)となっている(第2−4−4表)。 また、平成3年以降に拡大された救急隊員による応急処置等(第2−4−4表における※の項目)の総件数は、1,162万879件(対前年比0.06%減)となっており、このうち救急救命士(除細動については、救急救命士以外の救急隊員を含む。)が心肺機能停止状態の傷病者の蘇生等のために行う高度な応急処置(ラリンゲアルマスク等による気道確保、気管挿管、除細動、静脈路確保、薬剤投与)の件数は8万4,136件(前年7万8,490件)にのぼり、前年比で約7.2%増となっている。これは救急救命士の養成、救急科修了者(旧救急標準課程又は旧救急II課程の修了者を含む。以下同じ。)(2(2)、(3)参照)による運用が着実に推進されていることを示している。なお、平成18年4月から救急救命士により、医師の具体的指示の下で心肺機能停止の状態である傷病者に対して開始された薬剤投与について、平成19年中の実施件数は3,940件にのぼっている。第2-4-4表 救急隊員が行った応急処置等の状況
2 救急業務の実施体制(1)救急業務実施市町村は全体の98.0% 救急業務実施市町村数は、平成20年4月1日現在、1,753市町村(784市、801町、168村)となっている(東京都特別区は、1市として計上している。以下同じ。)(第2−4−5表)。第2-4-5表 救急業務実施市町村数の推移 市町村合併の進展により全市町村数が1,789(平成20年4月1日現在)まで減少したことに伴い、救急業務実施市町村数も減少しているが、98.0%(前年98.0%)の市町村で救急業務が実施され、全人口の99.9%(前年99.9%)がカバーされている(人口は、平成17年の国勢調査人口確定値による。以下同じ。)こととなり、引き続き、ほぼすべての地域で救急業務のサービスを受けられる状態となっている(附属資料35)。 なお、救急業務形態の内訳は単独が491市町村、委託が135市町村、組合が1,127市町村となっている(第2−4−4図)。第2-4-4図 救急業務実施形態の内訳
(2)救急隊数及び救急隊員数 救急隊は、平成20年4月1日現在、4,871隊(対前年比25隊増)が設置されている(第2−4−5図)。第2-4-5図 救急隊数の推移 救急隊員は、人命を救護するという重要な任務に従事することから、最低135時間の救急業務に関する講習(旧救急I課程)を修了した者等をもって充てるようにしなければならないとされている。平成20年4月1日現在、この資格要件を満たす消防職員は全国で11万2,178人(対前年比2,726人増)となっており、このうち5万9,222人が、救急隊員として救急業務に従事している(第2−4−6図)。第2-4-6図 救急隊員数の推移 消防庁では、より高度化する救急需要に応えるため、救急救命士の養成を推進する一方、250時間の救急科(旧救急標準課程及び旧救急II課程を含む。)を修了した救急隊員の養成を推進している。平成20年4月1日現在、救急科修了者(旧救急標準課程及び旧救急II課程修了者を含む。)は、7万4,027人であり、うち、3万7,815人が救急隊員として救急業務に従事している。
(3)救急救命士 消防庁では、全ての救急隊に救急救命士が少なくとも1人配置される体制を目標に救急救命士の養成と運用体制の整備を推進している。 平成20年4月1日現在、救急救命士を運用している消防本部は、全国807消防本部のうち806本部で、その運用率は99.9%(前年99.9%)であり救急救命士を運用している救急隊は年々増加し、全国4,871隊の救急隊のうち88.5%(前年86.3%)を占める4,310隊(対前年比129隊増)となっている。また、救急救命士の資格を有する消防職員は2万1,840人(対前年比1,772人増)、救急救命士として運用されている救急隊員は1万8,336人(対前年比1,118人増)と年々着実に増加している(第2−4−7図、第2−4−8図)。第2-4-7図 救急救命士運用隊の推移第2-4-8図 救急救命士数の推移第2-4-6表 救急救命士の導入効果
(4)救急自動車 全国の消防本部における救急自動車の保有台数は、予備車を含め、平成20年4月1日現在、5,899台(対前年比24台増)である。 このうち、拡大された応急処置等を行うために必要な高規格の救急自動車は4,503台(対前年比112台増、2.6%増)が配置されており、今後、さらに高規格の救急自動車の割合を高めていくよう推進している。
(5)高速自動車国道等における救急業務実施体制 高速自動車国道、瀬戸中央自動車道及び神戸淡路鳴門自動車道(以下「高速自動車国道等」という。)における救急業務は、市町村の規模、救急処理体制、インターチェンジ間の距離その他の事情を勘案して、一定の基準に基づき高速自動車国道等のインターチェンジ所在市町村が実施している。 高速自動車国道等における救急業務の実施状況は、平成20年3月末現在、供用延長7,658kmのすべての区間について市町村の消防機関が実施している。 また、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社においては、救急業務実施市町村に対し、高速自動車国道等の特殊性を考慮して、一定の財政措置を講じている。
3 消防と医療の連携推進(1)消防と医療の連携推進 全国各地で救急搬送時の受入医療機関の選定に困難を来す事案が報告されたことから、消防庁では、平成19年10月に産科・周産期傷病者搬送の受入実態について調査を行い、結果を公表するとともに、平成20年3月に産科・周産期傷病者に加え、重症以上傷病者、小児傷病者、救命救急センター等への搬送者に関する搬送の受入実態についての調査を行い、結果を公表したところであり、これらの傷病者の搬送における受入医療機関の選定が、大変厳しい状況にあることが明らかとなった(第2−4−7表、第2−4−8表)。第2-4-7表 医療機関に受入の照会を行った回数ごとの件数第2-4-8表 受入に至らなかった理由ごとの件数 このような状況を踏まえ、消防庁では、円滑な救急搬送・受入医療体制の確立を目指すため、平成19年に「消防機関と医療機関の連携に関する作業部会」を開催し、平成20年度も継続して検討を行っている。同作業部会では、平成19年度の検討成果として、早急に講じるべき対策等について中間報告を取りまとめた。 早急に講じるべき対策としては、救急搬送の適切な実施を確保するためには、医療機関による救急医療情報システムへの情報の迅速・正確な入力、救急隊による正確な傷病者観察とそれに基づいた適切な医療機関選定・情報伝達、コーディネーターによる受入調整、救急搬送に関する検証・協議の場の設置等が必要であるといった指摘がなされた。 消防機関、医療機関が連携した検証・協議の場としては、メディカルコントロール協議会の活用が考えられるところであり、その位置づけの強化について、平成20年度、「救急業務高度化推進検討会」のもとに「メディカルコントロール作業部会」を開催し、具体的に検討を進めている。 また、消防庁では、市民が救急車を呼ぶべきかどうか迷った場合に、24時間365日相談できる窓口の消防機関への設置を推進していくこととしている。
(2)救急医療体制 傷病者を受け入れる救急病院及び救急診療所の告示状況は、平成20年4月1日現在、全国で4,370箇所となっている(附属資料36)。 また、厚生労働省では、傷病の重症度に応じて、多層的に救急医療体制の整備強化が進められている。 初期救急医療体制としては、休日、夜間の初期救急医療の確保を図るため休日夜間急患センターが511箇所(平成19年3月末現在)で、第二次救急医療体制としては、病院群輪番制方式及び共同利用型病院方式により418地区(平成19年3月末現在)で、第三次救急医療体制としては、救命救急センターが210箇所(平成20年7月末現在)で整備されており、また、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒等の特殊疾病傷病者に対応できる高度救命救急センターは、そのうち21箇所(平成20年7月末現在)で整備されている。 救急告示制度による救急病院及び診療所の認定と初期・第二次・第三次救急医療体制の整備については、都道府県知事が定める医療計画のもとで一元的に実施されている。
4 救急業務高度化の推進(1)救急隊員の教育訓練の推進 平成3年に、我が国のプレホスピタル・ケア(救急現場及び搬送途上における応急処置)の充実を図るため、救急救命士制度が導入されるとともに、救急隊員の行う応急処置範囲が拡大された。消防庁としては、都道府県等の消防学校における拡大された応急処置の内容を含んだ救急課程の円滑な実施や救急振興財団等における救急救命士の着実な養成が行われるよう、諸施策を推進してきている。 そのほか、全国救急隊員シンポジウムや日本臨床救急医学会等の研修・研究機会を通じて、救急隊員の全国的な交流の促進や救急活動技能の向上も図られている。
(2)救急救命士の処置範囲の拡大 救急救命士の処置範囲の拡大については、消防庁は厚生労働省と共同で「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催し、平成14年12月及び平成15年12月に報告書をそれぞれ取りまとめた。これを受けて、(3)に述べるメディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、次のように処置範囲が拡大されてきた。 〔1〕除細動 平成15年4月から、救急救命士は医師の包括的指示(具体的指示なし)による除細動を実施すること(以下「包括的指示下での除細動」という。)が可能となり、順次各地域で包括的指示下での除細動が実施されたところであったが、翌平成16年7月には、「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」(厚生労働省医政局長通知)により、非医療従事者においても、自動体外式除細動器(以下「AED」という。)を使用することが可能となった。これを受け、消防庁では、AEDの使用に係る普及啓発を図ることを目的として、非医療従事者によるAEDの使用条件のあり方等について報告書を取りまとめており(「応急手当普及啓発推進検討会報告書」)、消防機関によるAEDを使用するための内容を組み入れた応急手当普及講習プログラム等の実施を促進している。 〔2〕気管挿管 気管挿管については、平成16年7月から、各地域において講習及び病院実習を修了した救急救命士により実施されている。この講習は、各都道府県の消防学校を中心に行われており、また、病院実習は、講習修了後に各地域の医療機関の協力を得て行われている。平成20年4月1日現在、気管挿管を行うことのできる救急救命士数は5,476人となっている。 今後も、関係者の理解と協力の下に、実習先医療機関の確保等に努めつつ、気管挿管を実施することができる救急救命士の養成をさらに促進していくこととしている。 〔3〕薬剤投与 薬剤投与については、平成18年4月から救急救命士によるアドレナリンの使用が認められることとなった。薬剤投与の実施に当たっては、高度な専門性を有する所要の講習及び病院実習を修了する必要があることから、消防庁としては、財団法人救急振興財団等における講習体制の確保及びメディカルコントロール協議会が選定する施設における実習体制の確保を推進しており、これを受けて、各機関において、順次講習及び実習が開始されている。平成20年4月1日現在、薬剤投与を行うことのできる救急救命士の数は5,221人となっている。また、薬剤投与の実施に伴い、一層重要性を増すメディカルコントロール体制の充実強化についても、推進しているところである。
(3)メディカルコントロール体制の充実 救急救命士を含む救急隊員が行う応急処置等の質を向上させ、救急救命士の処置範囲の拡大等救急業務の高度化を図るためには、今後ともメディカルコントロール体制を充実していく必要がある。 このメディカルコントロール体制とは、消防機関と医療機関との連携によって、〔1〕救急隊が現場からいつでも迅速に医師に指示、指導、助言が要請でき、〔2〕実施した救急活動の医学的判断、処置の適切性について医師による事後検証が行われ、その結果が再教育に活用され、〔3〕救急救命士の資格取得後の再教育として、医療機関において定期的に病院実習が行われる体制をいうものである。 消防機関と医療機関との協議の場である各都道府県単位及び各地域単位のメディカルコントロール協議会の設置は全て完了しており、事後検証等により、救急業務の質的向上に積極的に取り組んでいるところである。なお、消防庁においては、全国のメディカルコントロール協議会の質の底上げや全国的なメディカルコントロール体制の充実強化を目的として、平成19年5月より、全国メディカルコントロール協議会連絡会を設置し、全国の関係者間での情報共有及び意見交換の促進を図っている。
(4)ウツタイン統計の活用 ウツタイン様式とは、心肺機能停止症例をその原因別に分類するとともに、目撃の有無、バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生の実施の有無等に分類し、それぞれの分類における傷病者の予後(1ヶ月後の生存率等)を記録するためのガイドラインであり、世界的に推奨されているものである。 我が国では、平成17年1月から全国の消防本部で一斉に導入を開始しているが、全国統一的な導入は世界で初めてであり、先進的な取組みとなっている。消防庁としては、ウツタイン様式による調査結果をオンラインで集計・分析するためのシステムの運用も開始しているため、今後は、救急救命士が行う救急救命処置の効果等の検証や諸外国との比較が客観的データに基づき可能となることから、プレホスピタル・ケアの一層の充実に資することが期待されている。 なお、ウツタイン様式の運用に当たっては、予後の調査を含め消防機関と医療機関の連携体制の充実・強化を促進していくことが重要である。
ウツタイン様式の活用による救急救命処置等の向上について 「ウツタイン様式」とは、心肺停止症例をその原因別(心臓に原因があるものかそれ以外か)に分類するとともに、心肺停止時点の目撃の有無、バイスタンダー(その場に居合わせた人)や救急隊員による心肺蘇生の有無やその開始時期、初期心電図の波形や除細動の有無などに応じて傷病者の経過を詳細に記録することにより、地域間・国際間での蘇生率等の統計比較を可能とする調査統計様式であり、1990年にノルウェーの「ウツタイン修道院」で開催された国際蘇生会議において提唱されたものです。 消防庁では、平成17年1月より、救急救命処置等による救命効果の客観的・医学的な把握や評価、地域間・国際間の比較・検証をより正確に行うため、消防庁救急調査オンライン処理システムにて収集を実施しています。平成18年9月には、平成17年中のデータを基に様々な条件下での救急救命処置の生存率への効果を分析し、暫定的な結果を試行解析例としてとりまとめ、また、平成19年9月には、平成17年中のデータ及び平成18年中の速報データを基に、結果をとりまとめました。 しかし、平成19年度に発足した「ウツタイン統計活用検討会」において、データのクリーニング方法や公表のあり方について、さらに検討を進めるべきであるとの指摘がなされ、消防庁では、平成20年度に「救急統計活用検討会」及び「ウツタイン統計作業部会」を開催し、引き続き検討を実施しています。 平成20年度の検討の中で、より質の高いウツタイン統計データを確保するために、データのクリーニングについての基本方針が示されたことを受け、消防庁では、平成17年からの全てのウツタインデータを改めて見直し、全てのウツタイン統計データの再集計を行いました。 また、救急救命士が行う救急救命処置の効果等について、データに基づくより適切な客観的評価を行っていくために、1か月後の生存率だけではなく、新たに、社会復帰率等を集計し、より効率的で効果的な救急救命処置等を実現していくために必要となる適切な統計分析を推進しています。試行解析例
(5)住民に対する応急手当の普及 救急自動車の要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成19年中の平均では7.0分である。この間に、救急現場に居合わせたバイスタンダーによる応急手当が適切に実施されれば、大きな救命効果が得られる。したがって、住民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう、実技指導に積極的に取り組んでいくことが重要である。現在、特に心肺機能停止傷病者を救命する心肺蘇生法(CPR)技術の習得を目的として、住民体験型の普及啓発活動が推進されている。 消防庁においては、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」(平成5年3月制定)により、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や応急手当の指導者の養成、公衆の出入りする場所・事業所に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発及び、学校教育を対象とした応急手当の普及啓発活動を行っている。この結果、講習受講者数は年々着実に増加し、全国の消防本部における平成19年中の救命講習受講者数は157万2,328人、心肺機能停止傷病者への住民による応急手当の実施率は39.2%となっており、消防機関は応急手当普及啓発の担い手としての役割を果たしている。 なお、心肺蘇生法については、平成18年6月、財団法人日本救急医療財団の心肺蘇生法委員会より、新しい日本版救急蘇生ガイドラインが示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動についても、このガイドラインを踏まえた新しい内容により講習が実施されている。 消防機関においては、昭和57年に制定された「救急の日」(9月9日)及びこの日を含む1週間の「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、住民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資器材の整備を推進している。
5 救急業務体制の整備の課題(1)救急救命士の養成 救急救命士は、平成3年の制度導入以降、着実に養成され、各地の救急現場において活躍しているところであるが、全国すべての救急隊に少なくとも救急救命士が1人配置できるよう、今後も引き続き救急救命士の養成を積極的に進めていく必要がある。 救急救命士の資格は、消防職員の場合、救急業務に関する講習を修了し、5年又は2,000時間以上救急業務に従事したのち、6か月以上の救急救命士養成課程を修了し、国家試験に合格することにより取得することができる。資格取得後、救急救命士が救急業務に従事するには、病院実習ガイドラインに従い160時間の病院実習を受けることとされている。 救急救命士は、現在、財団法人救急振興財団の救急救命士養成所で年間約800人、政令指定都市等における養成所で年間約400人が養成されているところである。一方で、平成18年度からは救急救命士の処置範囲が拡大(薬剤(アドレナリン)投与)したため、各養成機関での救急救命士の新規養成に加え、医療機関と連携しつつ、薬剤投与のための追加講習を行う等、円滑かつ着実に講習内容の更新が進められている。
(2)救急用資器材等の整備 救急業務の高度化に伴い、高規格の救急自動車、高度救命処置用資器材等の整備が重要な課題となっている。 近年、国庫補助金が廃止、縮減される中においても、これら高規格の救急自動車、AED等に対する財政措置は不可欠であり、地方交付税措置など、必要な措置が講じられている。 今後も引き続き、高規格の救急自動車及び救急救命士の処置範囲の拡大に対応した高度救命処置用資器材の配備を促進する必要がある。
(3)救急業務における感染防止対策 救急隊員は、常に各種病原体からの感染の危険性があり、また、救急隊員が感染した場合には、他の傷病者へ二次感染させるおそれがあることから、救急隊員の感染防止対策を確立することは、救急業務において極めて重要な課題である。 消防庁では、救急業務に関する消防職員の講習に救急用器具・材料の取扱いの科目を設置しているとともに、重症急性呼吸器症候群(SARS)等を含めた各種感染症の取扱いについて、感染防止用マスク、手袋、感染防止衣等を着用し、傷病者の処置を行う共通の標準予防策等の徹底を消防機関等に要請しているところである。特に、近年その発生が危惧されている新型インフルエンザについては、救急隊員等搬送従事者用に感染防御資器材の備蓄を進めるべく、平成19年度より普通交付税により財政措置を講じ、平成20年度には、新型インフルエンザ対策のための消防本部への資器材の配備を実施している。また、消防機関の搬送後に感染症に罹患していたことが判明する場合もあることから、医療機関等から消防機関への連絡体制、救急自動車等の消毒方法、救急隊員の健康診断等の感染防止体制について整備していく必要がある。
(4)救急需要の増加への対応 救急自動車による救急出場件数は年々増加し、平成19年中は529万236件に達し、前年に引き続き500万件を超えた。今後も、高齢化の更なる進展や住民意識の変化に伴い、救急需要は増加するものと考えられる。このことから、救急隊1隊当たりの年間出場件数は更に増加し、救急自動車の現場到着時間も遅延していくことが予想され、地域によっては、傷病者が発生した場合に、救急自動車による迅速な対応が困難となるおそれがある。 このような状況を踏まえ、消防庁においては、平成17年度には「救急需要対策に関する検討会」及び「救急搬送業務における民間活用に関する検討会」を開催し、救急需要対策に関する総合的な検討を行った。その中で取り組むべき対策の主なものとして、〔1〕軽症利用者等への代替措置の提供(民間の患者等搬送事業者の活用)、〔2〕転院搬送業務への病院救急車の活用、〔3〕119番受信時及び救急現場における緊急度・重症度の選別(トリアージ)等が挙げられた。現在はこれらの実現に向けた取組みを進めているところである。なお、〔3〕のトリアージについては、引き続き検討を加えるべきとされたことから、平成18年7月より「救急業務におけるトリアージに関する検討会」を開催し、「選別基準」や「運用要領」の検討や実際に運用を行うとした場合の問題点等の諸課題についての検討を行い、平成19年3月に報告書をとりまとめたところである。また、平成19年度も、「救急業務高度化推進検討会」において引き続き検討を進め、平成20年度にはトリアージプロトコルに基づき、4消防本部において実証検証を行うなどコールトリアージの導入に向けた具体的な取組みを進めている。
(5)災害時における消防と医療の連携 平成17年のJR西日本福知山線列車事故のような災害時の多数傷病者発生時の救急救助活動においては、消防機関と医療機関の連携方策や、災害現場における救急救助活動に有用である医療行為など様々な検討が必要である。このため、消防庁においては、学識経験者、医療関係者、消防関係者等により構成される「災害時における消防と医療の連携に関する検討会」において、平成18年度より検討が行われてきたところであり、幅広い議論を通じて、一層の災害時における消防と医療の連携体制を整備していくことが期待されている。
(6)救急搬送におけるヘリコプターの活用推進 消防防災ヘリコプターを活用した救急業務については、平成10年3月の消防法施行令一部改正により、消防法上の救急業務として明確に位置付けられた。さらに、消防庁は、平成12年2月にヘリコプターによる救急出動基準ガイドラインを示し、各都道府県はこれを基に出動基準を作成するなど、それぞれの地域の実情を踏まえた実効性のあるヘリコプター救急業務実施体制の整備を進めている。 また「消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会」の検討項目の1つとして、救急活動への積極的活用分科会を開催し、近年急増する消防防災ヘリコプターでの救急需要に的確に応えるための方策を検討しており、平成21年3月末までに報告書を取りまとめる予定である。 平成19年中における全国の消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況は、救急出動件数3,167件(前年比14.7%増)、搬送人員2,996人(同9.5%増)であり、消防防災ヘリコプターによる救急搬送への需要は年々増加している(第2−4−1表)。特に、離島、山間部等からの救急患者の搬送や交通事故等による重症患者の救命救急センター等専門的医療機関への救急搬送、さらには、大規模災害時における広域的な救急搬送等に大きな効果を発揮し、地域社会の安心・安全の確保に大きな期待が寄せられていることから、医療機関等との連携を強化しながら、消防防災ヘリコプターの機動力を活かした救急活動を推進することが求められている。第2-4-1表 救急出場件数及び搬送人員の推移消防防災ヘリコプターの救急活動実施状況 なお、厚生労働省では、平成13年度からドクターヘリ導入促進事業を実施しており、平成20年3月末現在13道府県でドクターヘリの運用が行われている。さらに、ドクターヘリを用いた救急医療の全国的確保を図るため、議員立法として、第166回国会(平成19年通常国会)に「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法案」が提出され、平成19年6月19日に成立し、平成20年4月1日に全面施行となっている。 消防機関では、119番通報のうち傷病者の重症度・緊急度が高いものについて、傷病者の情報を伝達しドクターヘリの出動要請を行うとともに、救急自動車からドクターヘリへ傷病者を円滑に引き渡すなど、緊密な連携を図っている。
新型インフルエンザ対策の推進について1.消防庁における新型インフルエンザ対策 新型インフルエンザとは、従来人から人への感染が認められていなかったインフルエンザウイルスが、遺伝子変異により人から人へと容易かつ継続的に感染するようになったものです。H5N1型は鳥類の中でまん延するインフルエンザウイルス(鳥インフルエンザ)の一種が人への感染力を獲得したことが認められたもので、新型インフルエンザ化が危惧されています。 消防庁においては、新型インフルエンザの発生に伴う事態に適切かつ迅速に対処するため、平成20年2月に消防庁長官を本部長とする消防庁新型インフルエンザ対策本部を設置しました。新型インフルエンザが発生した段階で、消防庁新型インフルエンザ緊急対策本部に移行する体制となっています。 平成20年5月には神奈川県、川崎市等の協力を得て、「消防機関における新型インフルエンザ対策総合訓練」を実施し、消防機関の対応に関する国と地方公共団体間の連携体制や、地方公共団体の消防防災部局と衛生部局、医療機関との連携体制について確認するとともに、適切な救急搬送について検証を行いました。2.消防機関における新型インフルエンザ対策検討会 新型インフルエンザが発生した際には、人類は新型インフルエンザに対する免疫を有していないため大流行が予想されており、救急搬送や救急要請件数が増大することが想定されます。また、消防機関の職員も罹患のおそれがあることから、新型インフルエンザの発生時においては平時より制限された人数で、増大した救急需要に対応しなければならなくなることが見込まれます。そのため、発生前から救急需要の突然の増加、消防職員の人員減を前提とした消防・救急業務継続体制維持のための対策を講じておく必要があります。 消防機関が現在講じることが出来る対策の一つが、業務継続計画の策定です。消防庁では、消防機関における新型インフルエンザ対策の業務継続計画策定のガイドライン策定を主たる目的とした「消防機関における新型インフルエンザ対策検討会」を開催し、平成20年9月に、消防機関において業務継続計画を策定するにあたり、早急に検討・準備すべき事項について中間報告書としてとりまとめ、各都道府県消防防災部局宛に送付しました。中間報告書においては、業務を列挙し優先継続業務を選定するための業務リストの参考例や、感染疑い患者の救急自動車の救急搬送に係る留意点として患者搬送に要する資器材等について示しています。 今後は、新型インフルエンザ発生時における対応として、資器材の用法例や人員計画の策定の例を盛り込んだ、消防機関における新型インフルエンザ対策の業務継続計画ガイドラインを策定します。また、新型インフルエンザの感染拡大の状況に応じた対応の検討や医療機関への入院が飽和状態となり、患者の救急搬送の受入れが困難になった状況における対応について引き続き検討を行い、消防機関における新型インフルエンザ対策を推進します。
第5節 救助体制1 救助活動の実施状況(1)救助活動件数及び救助人員の状況 消防機関の行う人命の救助とは、火災・交通事故・水難事故・自然災害や機械による事故等から、人力や機械力等を用いてその危険を排除し、安全な場所に救助する活動をいう。 平成19年中における全国の救助活動実施状況は、救助活動件数5万2,183件(対前年比1,436件減、2.7%減)、救助人員5万6,039人(同689人減、1.2%減)である(第2−5−1表、附属資料37)。第2-5-1表 救助活動件数及び救助人員の推移
(2)事故種別救助活動の状況 救助出動人員(救助活動を行うために出動したすべての消防職団員をいう。)は、延べ134万7,162人である。消防職員は、延べ119万5,229人で、うち交通事故が32.1%、火災が17.8%である。一方、消防団員は、延べ15万1,933人で、うち火災が77.8%である。 次に、救助活動人員(救助出動人員のうち実際に救助活動を行った消防職団員をいう。)は、延べ54万6,035人であり、救助活動1件当たり10.5人が従事したこととなる。また、事故種別ごとの救助活動1件当たりの従事人員は水難事故の16.5人が最も多く、次に火災の16.1人となっている(第2−5−2表)。第2-5-2表 事故種別救助出動及び活動の状況
2 救助活動の実施体制(1)救助隊数及び救助隊員数 消防機関が行う救助活動を専門に実施する組織である救助隊は、消防学校における救助活動に関する専門的な教育(標準時間:140時間)を受けた隊員、救助活動に必要な救助器具及びこれらを積載した救助工作車等によって構成される。 救助隊は782消防本部に1,500隊設置されており、救助隊員は2万4,351人となっている。1消防本部当たり1.9隊の救助隊が設置され、1隊に16.2人の救助隊員が配置されていることとなる。
(2)救助隊が保有する装備 救助隊の保有する装備については、救助事象の複雑化・多様化に伴い、より高度かつ専門的な機能・性能が必要とされている(第2−5−3表)。第2-5-3表 救助隊が乗車する車両及び主な救助器具 消防庁では、救助工作車及び救助用資機材等について、緊急消防援助隊設備整備補助金、また地方交付税措置を講じることなどにより、その整備の促進を図っている。
3 救助体制の整備の課題 消防機関の行う救助活動は、火災、交通事故、水難事故、自然災害からテロ災害などの特殊な災害にまで及んでいる。 例えば、平成19年には、能登半島地震、新潟県中越沖地震や渋谷区温泉施設爆発火災など、平成20年には、岩手・宮城内陸地震、岩手県沿岸北部を震源とする地震や都市部での集中豪雨の発生など、災害は後を絶たない。また、平成13年の米国同時多発テロ事件以降、世界的にテロの脅威が高まっているところであり、有毒化学物質や細菌等の生物剤、放射線の存在する環境下にも救助活動の範囲が及んでいる。 消防庁では、このような状況を勘案するとともに、平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故等を教訓として、平成18年4月「救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令(昭和61年自治省令第22号)」を改正し、新たに特別高度救助隊及び高度救助隊の整備を行うこととし、高度救助隊には従来の救助器具に加え高度救助用器具を、特別高度救助隊には高度救助隊が備える資機材に加え、特殊災害対応自動車並びに地域実情に応じてウォーターカッター及び大型ブロアーをそれぞれ備えるものとした。 さらに、消防庁として特別高度救助隊の装備の充実を図るため、消防組織法第50条に基づく無償使用により整備を推進しており、平成18年度にウォーターカッター車及び大型ブロアー車の各1台を5セット整備し、特別高度救助隊を配置する主要都市に配備した。平成20年度にはウォーターカッターと大型ブロアーの装備を備えた特別高度工作車を更に5台整備し配備する。 特別高度救助隊及び高度救助隊は、専門的かつ高度な救助技術に関する知識・技術を兼ね備えた隊員で構成することとし、この高度救助隊員の教育を平成18年度から消防大学校のカリキュラムに取り入れた。平成19年11月には「専門的かつ高度な教育を受けた隊員」となるための、消防学校等における教育訓練について定めた。 また、年々多様かつ高度化する消防救助事象に対応し、救助技術の高度化等を推進するために、平成9年度から「救助技術の高度化等検討会」を、平成10年度から「全国消防救助シンポジウム」を毎年度開催している。平成20年度は「救助技術の高度化等検討会」については、「災害現場における倒壊建物等の安定化技術(ショアリング)について」をテーマに検討し、「全国消防救助シンポジウム」においては、「救助隊の災害活動能力向上を目指した訓練のあり方について」をテーマにして開催する。 消防庁では、以上の取り組みに加え、救助体制のさらなる充実強化のため、各種災害に対応する救助活動マニュアル及び救助技術等の教育プログラムの充実を図るほか、高度な救助資機材の機能・性能の明確化等先進技術の活用について検討しているところであり、これらの施策と併せ、今後も救助工作車等及び救助資機材の計画的な整備を引き続き推進していく必要がある。ウォーターカッター大型ブロアー車大型除染システム搭載車
平成19年度救助技術の高度化等検討会報告書の公表―編み構造ロープ等を使用した救助技術について― 消防の救助隊が行うロープを使用した救助活動については、主にナイロン製三つ打ちロープ、スチール製カラビナ及び滑車の組み合わせにより実施されています。 しかし近年、編み構造ロープのうちカーンマントルタイプの救助ロープ及び同ロープに関連する資器材を取り入れている消防本部があります。こうした資器材の導入は、救助技術の高度化に資するものと考えられますが、一方、安易に導入、使用をした場合、予想もし得ない重大な事故が発生することが考えられます。 こうした状況を踏まえ、平成19年度に「救助技術の高度化等検討会」(座長:蓼沼朗寿・全国過疎地域自立促進連盟専務理事)を開催し、「編み構造ロープ等を使用した救助技術について」の検討を行ったものです。○ 報告書の概要 「救助体系の特徴」、「カーンマントルロープを使用した救助体系における基本的事項」、「目的別活動要領」、「まとめ」の項目に大別して検討した結果に、救助用ロープの試験結果等の「参考資料」を加え、取りまとめました。主な概要については、次のとおりです。カーンマントルロープの構造(1)救助体系の特徴 ・ ツイスト構造の三つ打ち撚りロープを使用した救助体系について ロープのほか、スチール製カラビナ及び滑車という数少ない資器材を使用し、人力や摩擦による抵抗などを利用したものであり、救助ロープの二本合わせの設定、カラビナの複数設定、滑車に対する補強カラビナの設定、更には懸垂ロープの設定等については、二次支点を設定するなど、二重安全の理念を基本にし、全国の救助隊員に共通の技術として認識され、広く浸透している。 ・ カーンマントル構造の編みロープを使用した救助体系について 欧米諸国では、カーンマントル構造の編みロープを使用した救助体系が構築されており、伸び率の小さいロープと伸び率の大きいロープが、それぞれの特性に応じて使用されている。 カーンマントル構造の編みロープを使用した救助体系においては、用いられる資器材の多くが、三つ打ちロープを使用した救助体系と異なり、ロープ二本合わせの設定等が出来ないため、救出専用ロープと二次確保ロープを別系統で設定することにより二重の安全が確保される。 ただし、手法や使用する器具の種類・数量が増加するため、個々の性能・特性を十分理解する必要があり、万一取り扱いを間違えると、重大な事故を招く恐れがある。(2)カーンマントルロープを使用した救助体系における基本的事項 「主な使用資器材」、「結索要領」、「力学」、「倍力効果システム」の内容について記載。 [記載例] ・ ロープの構造 カーンマントルロープの構造 カーンマントルロープは、繊維(ナイロン)を撚って束ねた内芯(コア)と、繊維(ナイロンやポリエステル)を編んだ外皮(シース)の二層からなり、内芯(コア)が全体強度の大部分を占めている。 ロープを挟み込み機能する器具等は、カーンマントル構造のロープで使用することを前提として作られている。(3)目的別活動要領 「支点・支持点設定」、「確保要領」、「高所・低所への進入が伴う救助」、「ロープブリッジ展張による救助」の内容について記載 [記載例] ・ 低所からの引上げ 進入時に使用したロープに、滑車を利用した倍力システムを組み救助員又は要救助者を引上げる。バックアップラインの設定を必ず行う。3倍力システム隊員の引上げ(4)まとめ(カーンマントルロープを使用した救助体系における留意事項) 消防救助隊が行う現在の救助体系は、懸垂ロープ、渡過ロープ等を原則として二本合わせにするなど「消防救助操法の基準」に沿って活動を行うことが基本です。 しかしながら、編み構造ロープ等を使用した救助体系により活動を行う場合については、二本合わせによることが困難であるため、救助用メインラインに加えて確保用バックアップラインを別系統で設定するなどにより、適切な二次的安全措置を確保する必要があります。 新たな資器材を導入することは、救助技術の高度化を推進させ救助の質の向上に資することとなるが、一方で重大事故が発生する要因となり得る恐れがあります。 従って、編み構造ロープ等を使用した救助体系を導入する際には、本報告書及び各資器材の説明資料の内容を理解するとともに、各消防本部においても検証・訓練等を実施することにより、導入した資器材の性能・特性を把握し、消防のロープ救助の理念である二重安全を確保した技術・知識の修得に十分努めた上で、実災害に臨んでいただきたいと考えています。
第6節 航空消防防災体制1 航空消防防災体制の現況 消防機関及び都道府県が保有する消防防災ヘリコプターは、救急搬送や救助、林野火災等に日ごろから大きな成果を上げている。特に、地震等大規模な災害が発生し、ビルの倒壊や道路の陥没等により陸上交通が遮断されたり、津波や港湾施設の損壊等により海上交通も遮断されるような事態では、ヘリコプターの高速性、機動性を活用し、消防防災活動で大きな役割を担うことができるものと期待されている。 近年の例では、平成20年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震において、地震発生直後から出動し、早期に情報収集活動を実施した他、山間地に孤立した被災者の救出や救助活動に必要な人員・物資の輸送等で活躍し、消防防災ヘリコプターの特長を発揮したところである。 消防庁においても、大規模な地震災害やテロ災害等の様々な災害の発生時に消防庁職員を現地に派遣し、的確な情報収集や緊急消防援助隊の運用調整等に当たるため、ヘリコプター(機体番号:JA01FD)を導入し、平成18年3月24日から運航を開始している。 また、消防庁では、消防防災ヘリコプターの円滑な運航・整備を推進するため、国庫補助金の活用による資機材の充実等の支援を行っている。 平成20年4月1日現在の消防防災ヘリコプターの保有状況は、総務省消防庁保有が1機、消防機関保有が29機、都道府県保有が42機の計72機となっており、未配備県は、佐賀県及び沖縄県の2県である(第2−6−1図)。第2-6-1図 消防防災ヘリコプターの保有状況 消防防災ヘリコプターは、消防活動に幅広く活用されており、平成19年中の出動実績は6,349件、その内訳は、救助出動1,720件、救急出動3,167件、火災出動1,238件、その他の出動224件となっている(第2−6−2図)。第2-6-2図 消防防災ヘリコプターによる災害活動状況(平成12〜19年)消防庁ヘリコプター「JA01FD」(総務省屋上へリポート) なお、大規模災害時には、昭和61年5月に定められた「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づき、都道府県域を越えた応援活動が展開されており、平成19年中は、13件の広域航空消防応援が実施された。
2 今後の取組(1)航空消防防災体制の整備 大規模災害及び複雑多様化する各種災害並びに救急業務の高度化に対応し、国民の信頼と期待に応えるために、消防防災ヘリコプターによる航空消防防災体制の一層の充実を図る必要があり、消防庁では、従来から消防防災ヘリコプターの全国的配備を推進し、現在、45都道府県で配備されているところである。 近年の大規模災害においては、多くの消防防災ヘリコプターが緊急消防援助隊として出動し、その高速性、機動性を活かした迅速な情報収集、指揮支援、消火・救急・救助活動を実施するなど、大きな役割を果たしており、広域的な連携の下、その活用を一層推進していく必要がある。
(2)大規模災害時等での消防防災ヘリコプターの有効活用に向けて 大地震により道路等が寸断されても、迅速かつ確実に情報を取得するためには、消防防災ヘリコプターを活用して、上空から情報収集活動を行うことが極めて有効である。そのため、被災地の情報収集手段として必要不可欠なヘリコプターテレビ電送システム及び夜間における被災地情報収集に適したより性能の高い高感度カメラ・赤外線カメラの整備を図ることとしている。 また、大規模な山林火災等では、消防防災ヘリコプターを活用し、地上での消火活動が困難な区域に、空中から消火活動を実施することで、火災の延焼防止・早期の鎮火を図ることができる。 このため、消防庁では、緊急消防援助隊として出動する消防防災ヘリコプター、ヘリコプターテレビ電送システム、赤外線カメラ等の高度化資機材及び消火用タンクの整備に対して補助金を交付し、大規模災害時等における航空消防防災体制の充実強化を図っている。
(3)消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会の実施 消防防災ヘリコプターは、消火・救助・救急及び情報収集等その任務は多岐に渡り、災害出動件数も年々増加している。特に、救急業務については、各方面から大きな期待が寄せられており、迅速かつ一層質の高い救急が求められている。 また、平成7年の阪神・淡路大震災を契機に、市街地火災に対するヘリコプターによる空中消火の関心が高まっており、東海地震等における緊急消防援助隊アクションプランにおいても、その活動を想定しているところであるが、より安全かつ効果的に行うためには、多くの課題が残されている。 これらのことから、平成19年10月29日に消防防災ヘリコプターの効果的な活用に関する検討会を開催し、以下3つの検討項目を設けて、消防防災ヘリコプターのより効果的な活用方策の構築について検討・協議を行っており、今後も増加することが予測される国民からの需要に応え、消防防災ヘリコプターのより効果的な活用に向けた積極的な施策を推進するため、平成21年3月末までに検討結果を取りまとめこととしている。〔1〕 空中消火技術のより効果的な活用体制の構築〔2〕 救急活動への積極的な活用推進体制の構築〔3〕 365日・24時間運航体制の構築消防防災ヘリコプター広報用ポスター
第7節 広域消防応援と緊急消防援助隊1 消防の広域応援体制(1)消防の相互応援協定 市町村は、消防に関し必要に応じ相互に応援すべき努力義務があるため、消防の相互応援に関して協定を締結するなどして、大規模な災害や特殊な災害などに適切に対応できるようにしている。 その締結状況は、平成20年4月1日現在、同一都道府県内の市町村間の協定数が1,747、異なる都道府県域に含まれる市町村間の協定数が563、その合計である全国の協定数は2,310である。また、全国の協定について応援する災害別に分類(重複計上)すると、火災1,939、風水害1,546、救急1,763、救助1,601、その他1,773となっている。 現在、すべての都道府県において都道府県下の全市町村及び消防の一部事務組合等が参加した消防相互応援協定(常備化市町村のみを対象とした協定を含む。)が結ばれている。 さらに、特殊な協定として、高速道路(東名高速道路消防相互応援協定他)、港湾(東京湾消防相互応援協定他)や空港(関西国際空港消防相互応援協定他)などを対象としたものがある。
(2)消防広域応援体制の整備 大規模な災害や特殊な災害などに対応するためには、市町村あるいは都道府県の区域を越えて消防力の広域的な運用を図る必要がある。 このため、消防庁では、2に述べる緊急消防援助隊の充実・強化を図るとともに、大規模・特殊災害や林野火災等において空中消火や救助活動、救急活動、情報収集、緊急輸送など消防防災活動全般にわたり、ヘリコプターの活用が極めて有効であることから、その運用をより効果的に実施するため、「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」を策定して、応援要請の手続の明確化等を図り、消防機関及び都道府県の保有する消防防災ヘリコプターによる広域応援の積極的な活用を推進している(第2−7−1表)。第2-7-1表 「大規模特殊災害時における広域航空消防応援実施要綱」に基づく広域航空応援の出動実績 平成19年7月の梅雨前線による大雨により、熊本県下益城郡美里町において孤立した住民を、地元熊本県防災航空隊及び同要綱の規定に基づき出動した福岡市消防局航空隊のヘリコプターにより、悪天候の中29人を救助するなどの実績をあげている。熊本県消防防災ヘリコプター「ひばり」福岡市消防防災ヘリコプター「ほおじろ」 今後とも消防防災ヘリコプターの広域的かつ機動的な活用を図るとともに、臨時離着陸場の確保並びに、情報収集活動を行うためのヘリコプターテレビ電送システム及び画像伝送システムの整備等を推進することにより、全国的な広域航空消防応援体制の一層の充実を図る必要がある。
2 緊急消防援助隊(1)緊急消防援助隊の概要と消防組織法改正による法制化ア 緊急消防援助隊の概要 緊急消防援助隊は、平成7年1月17日の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、国内で発生した地震等の大規模災害時における人命救助活動等をより効果的かつ迅速に実施し得るよう、全国の消防機関相互による援助体制を構築するため、全国の消防本部の協力を得て、平成7年6月に創設された。 この緊急消防援助隊は、平常時においては、それぞれの地域における消防の責任の遂行に全力を挙げる一方、いったん、我が国のどこかにおいて大規模災害が発生した場合には、全国から当該災害に対応できるだけの消防部隊が被災地に集中的に出動し、人命救助等の消防活動を実施するというシステムである。 緊急消防援助隊創設当初は要綱に基づく体制でスタートし、その部隊は、全国の消防本部から登録された指揮支援部隊、都道府県隊指揮隊、消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊から構成され、大規模災害発生に際し、消防組織法第44条に規定する消防庁長官の要請(同法改正後は指示も含む。)により、被災地に出動し、被災市町村長の指揮の下に活動することを任務としている。イ 消防組織法改正による法制化 近年、東海地震をはじめとして、東南海・南海地震、首都直下地震等の切迫性やNBCテロ災害等の危険性が指摘されており、こうした災害に対しては、被災地の市町村はもとより当該都道府県内の消防力のみでは、迅速・的確な対応が困難な場合が想定される。そこで、全国的な観点から緊急対応体制の充実・強化を図るため、消防庁長官に所要の権限を付与することとし、併せて、国の財政措置を規定する等を内容とする、消防組織法の改正案が平成15年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立、同年6月18日公布(平成15年法律第84号)後、平成16年4月1日より施行された。(ア)法改正の主な内容 法改正の主な内容は、緊急消防援助隊の法律上への明確な位置付けと消防庁長官の出動の指示権の創設、緊急消防援助隊に係る基本計画の策定及び国の財政措置となっている。(イ)法律上の位置付けと消防庁長官の出動指示 創設以来要綱に基づき運用がなされてきた緊急消防援助隊であるが、この法改正により、消防組織法上の組織として明確に位置付けるとともに、併せて、東海地震等大規模な災害で二以上の都道府県に及ぶもの、毒性物質の発散等により生ずる特殊な災害(NBC災害)等の発生時には、消防庁長官は、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置を「指示」することができるものとされた。この指示権の創設は、まさに国家的な見地から対応すべき大規模災害等に対し、緊急消防援助隊の出動指示という形で、被災地への消防力の投入責任を国に負わせることとするものである。(ウ)緊急消防援助隊に係る基本計画の策定等 法律上位置付けられた緊急消防援助隊として必要な部隊や装備をどのように配備・充足するかについては、総務大臣が「緊急消防援助隊の編成及び施設の整備等に係る基本的な事項に関する計画」(以下、「基本計画」という。)を策定することとしている。この基本計画は、平成16年2月に策定され、緊急消防援助隊を構成する部隊の編成と装備の基準、出動計画及び必要な施設の整備目標などを規定している。策定当初は、緊急消防援助隊の部隊を平成20年度までに3,000隊登録とすることを目標としていたが、大規模災害等への対応力を一層強化するため、平成18年2月に同計画を変更し、平成20年度末までの登録目標を4,000隊規模に拡大し、緊急消防援助隊の体制強化を図ることとした。(エ)緊急消防援助隊に係る国の財政措置 消防庁長官の指示を受けた場合には、緊急消防援助隊の出動が法律上義務付けられることから、出動に伴い新たに必要となる経費については、地方財政法第10条の国庫負担金として、国が全額負担することとしている。 また、基本計画に基づく施設の整備についても、「国が補助するものとする」と法律上明記されるとともに、対象施設及び補助率(2分の1)については政令で規定されている(第2−7−2表)。第2-7-2表 消防組織法の改正(緊急消防援助隊の法制化)ウ 平成20年消防組織法改正による機動力の強化 切迫性が指摘されている東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の大規模地震に対する消防・防災体制の更なる強化をはかるため、緊急消防援助隊の機動力の強化等を内容とする消防組織法の改正案が平成20年の通常国会に提出された。同法案は、衆・参両院において、それぞれ全会一致で可決成立、同年5月28日公布(平成20年法律第41号)後、平成20年8月27日より施行された。(ア)法改正の主な内容 法改正の主な内容は、災害発生市町村において既に行動している緊急消防援助隊に対する都道府県知事の出動指示権の創設、消防応援活動調整本部の設置及び消防庁長官の緊急消防援助隊の出動に係る指示の要件の見直しとなっている(第2−7−1図)。第2-7-1図 平成20年消防組織法改正による機動力の強化等(イ)都道府県知事の出動指示権の創設等 都道府県の区域内に災害発生市町村が二以上ある場合において、緊急消防援助隊行動市町村以外の災害発生市町村の消防の応援等に関し緊急の必要があると認めるときは、都道府県知事は、緊急消防援助隊行動市町村において行動している緊急消防援助隊に対し、出動することを指示することができるものとされた。これは、平成16年新潟県中越地震や平成16年新潟・福島豪雨災害において、県内において市町村をまたぐ部隊の移動が行われたことなどを踏まえ、制度を整備したものである。なお、都道府県をまたぐ場合は、二以上の都道府県に及ぶ調整となることから消防庁長官が行うこととされた(第2−7−2図)。第2-7-2図 平成20年消防組織法改正の概要(ウ)消防応援活動調整本部の設置 前(イ)の都道府県知事の指示が円滑に行われるよう、緊急消防援助隊が消防の応援等のために出動したときは、都道府県知事は、消防の応援等の措置の総合調整等を行う消防応援活動調整本部(以下「調整本部」という。)を設置するものとされた。調整本部は、都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村が実施する消防の応援等のための措置の総合調整に関する事務及びこの総合調整の事務を円滑に実施するための自衛隊、警察等の関係機関との連絡に関する事務をつかさどることとされた(第2−7−2図)。(エ)消防庁長官による緊急消防援助隊出動指示の要件見直し 今日、活断層等により局地的に甚大な被害をもたらす地震の危険性が指摘されており、大規模な災害が一つの都道府県に限られる場合であっても、当該災害に対処するために特別の必要があると認められるときは、消防庁長官は、災害発生市町村の属する都道府県以外の都道府県の知事又は当該都道府県内の市町村の長に対し、緊急消防援助隊の出動のため必要な措置をとることを指示することができるものとされた。
(2)緊急消防援助隊の体制及び装備ア 緊急消防援助隊の体制 緊急消防援助隊の部隊編成については、発足当初、救助部隊、救急部隊等の全国的な消防の応援を実施する消防庁登録部隊が376隊(交替要員を含めると約4,000人規模)、消火部隊等の近隣都道府県間において活動する県外応援部隊が891隊(約1万3,000人規模)、合計で1,267隊(約1万7,000人規模)であった。平成13年1月には、緊急消防援助隊の出動体制及び各種災害への対応能力の強化を行うため、消火部隊についても登録制を導入し、救助隊・救急隊とともにその登録部隊数が大きく増加し、さらに、複雑・多様化する災害に対応するため、石油・化学災害、毒劇物・放射性物質災害等の特殊災害への対応能力を有する特殊災害部隊、消防防災ヘリコプターによる航空部隊及び消防艇による水上部隊を新設し、8部隊、1,785隊(約2万6,000人規模)とした。 平成16年4月1日からの法律上の位置付けの明確化に伴い、法律に基づく登録を行った結果、指揮支援部隊をはじめとする10部隊で編成され、全国812消防本部から2,821隊が登録され(約3万5,000人規模)、同年4月14日には、総務省講堂において全国の緊急消防援助隊指揮支援部隊、都道府県隊指揮隊、都道府県航空隊の隊長等の参集による緊急消防援助隊発足式が挙行された。平成20年4月1日現在では全国789消防本部(全国の消防本部の98%)から3,960隊が登録され、人員規模としては、約4万6,000人規模となっている(第2−7−3図、第2−7−4図、第2−7−3表)。第2-7-3図 緊急消防援助隊の部隊編成第2-7-4図 緊急消防援助隊登録部隊の推移第2-7-3表 平成20年度緊急消防援助隊登録状況イ 緊急消防援助隊の装備等 緊急消防援助隊の装備については、これまでも、消防庁において基準を策定するとともに、平成16年度からは、基本計画に基づき、その施設等の整備を図ってきた。平成18年度から緊急消防援助隊設備整備費補助金を新設、国庫補助措置を講じることにより、災害対応特殊消防ポンプ自動車、救助工作車、災害対応特殊救急自動車等及び、活動部隊が被災地で自己完結的に活動するために必要な支援車並びにファイバースコープ等の高度救助用資機材等の整備を推進している。 また、緊急消防援助隊出動車両の位置及び動態を把握し、部隊運用を効果的に支援するため、緊急消防援助隊動態情報システムを指揮支援隊が所属する消防機関及び全国の代表消防機関に配備している。 平成16年新潟県中越地震の活動を教訓として、消防庁の機動力強化を図るため、消防庁ヘリコプター及び消防庁車両(指揮車、人員搬送車)を平成16年度補正予算及び平成17年度当初予算により整備した。 さらに、平成18年度の事業として、大量の送風能力を用いて陽圧換気やミクロ噴霧放水を行う大型ブロアー車、研磨剤を混入した高圧の水流で火花を出さずに物質を切断するウォーターカッター車及びNBC災害などにより化学剤等に汚染された人が多数発生した場合に、その原因物質を早急に取り除く大きな除染能力を有する大型除染システム車を、消防組織法第50条の無償使用制度により、主要な大都市圏の消防本部(札幌・東京・名古屋・大阪・福岡)に配備した。 引き続き消防庁では、緊急消防援助隊の効果的な活動を実施するため、計画的な施設等の充実強化を図ることとしている(第2−7−5図、第2−7−6図)。第2-7-5図 緊急消防援助隊動態情報システム第2-7-6図 消防庁車両等の運用イメージ
(3)緊急消防援助隊の活動ア 平成7年から平成16年4月(法制化)まで 緊急消防援助隊の活動については、平成8年12月に、新潟県・長野県の県境付近で発生した蒲原沢土石流災害において、東京消防庁及び名古屋市消防局の救助部隊による高度救助用資機材を用いた活動が行われ、平成10年9月に発生した岩手県内陸を震源とする地震(最大震度6弱)では、仙台市消防局及び東京消防庁の指揮支援部隊による情報収集活動が行われた。 また、平成12年3月に発生した有珠山噴火災害においては、札幌市消防局及び仙台市消防局から指揮支援部隊、東京消防庁、横浜市消防局及び川崎市消防局から救助部隊及び消火部隊が出動し、地元消防本部の応援活動を実施した。同年10月に発生した鳥取県西部地震(最大震度6強)においては、広島市消防局及び神戸市消防局の指揮支援部隊がヘリコプターによる情報収集活動を行った。 さらに、平成13年3月に発生した安芸灘を震源とする芸予地震(最大震度6弱)においては、大阪市消防局、神戸市消防局及び福岡市消防局の指揮支援部隊が各航空部隊のヘリコプターに同乗し、また、鳥取県、岡山市消防局及び北九州市消防局の航空部隊が情報収集活動を行った。 平成15年には、7月の宮城県北部を震源とする地震(最大震度6弱、6強、6弱が1日に連続して発生)において、札幌市消防局の指揮支援部隊、航空部隊及び茨城県の航空部隊が情報収集活動を行った。8月の三重県ごみ固形燃料発電所火災では、名古屋市消防局の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が、9月の栃木県黒磯市タイヤ工場火災においては、東京消防庁の指揮支援部隊、特殊災害部隊等が出動し、消火活動等を行った。 さらに、9月の平成15年十勝沖地震(最大震度6弱が2回発生)においては、札幌市消防局及び仙台市消防局の指揮支援部隊、航空部隊及び青森県の航空部隊が情報集活動を行った。また、この地震により損傷した出光興産株式会社北海道製油所のオイルタンクから発災した火災の消火活動及び鎮火後の火災警戒活動のため、札幌市消防局の指揮支援部隊のほか、10都県15消防本部の特殊災害部隊等が出動し、応援活動を実施した。これらに加えて、消火に必要な泡消火薬剤の確保のため、全国的な広域応援を実施し、自衛隊航空機による輸送支援及び在日米軍からの泡消火薬剤の提供を受けた。イ 平成16年4月以降(ア)平成16年中 平成16年7月13日からの新潟・福島豪雨災害では、法制化以後初めて緊急消防援助隊が出動し、大規模な堤防決壊により浸水した地域及び道路寸断等により孤立した山間部等において、救助活動等に従事した。新潟県には宮城県、山形県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県、富山県、石川県、山梨県、長野県及び岐阜県の1都11県から延べ171隊、693人が出動し、3日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、状況を踏まえた県内移動を行い、三条市1,652人、見附市106人、中之島町(現長岡市)97人の総数1,855人を救助した。 続く7月18日の福井豪雨災害では、神奈川県、富山県、石川県、長野県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県及び島根県の2府10県から延べ159隊、679人が出動し、2日間の活動に従事、住宅等に孤立した住民を救命ボート及びヘリコプターにより、福井市266人、鯖江市45人及び美山町77人の総数388人を救助した。 10月、平成に入って最大級の被害をもたらした台風第23号災害においては、豪雨による堤防の決壊等のため多大な被害を受けた兵庫県に出動し、浸水家屋の戸別調査及び救助活動等に従事した。10月21日、兵庫県豊岡市に、愛知県、滋賀県、大阪府及び岡山県の1府3県から延べ70隊、284人が2日間の活動に従事し、2,000世帯を超える戸別調査を行うとともに住宅等に孤立した住民127人を救命ボート等により救助した。 10月23日17時56分頃、新潟県中越地方を中心にマグニチュード6.8、最大震度7となる新潟県中越地震が発生した。最初の地震発生後も短時間の内に最大震度6強の地震が頻発し、また最大震度6弱の余震も発生するなど、新潟県の内陸部・山間部に家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。 緊急消防援助隊については、地震発生直後の23日18時25分、消防組織法第44条第2項及び第4項に基づき、埼玉県及び仙台市に対し、消防庁長官が直接航空部隊及び指揮支援部隊の出動要請を行うとともに、19時20分の新潟県知事からの派遣要請を受けて、直ちに山形県、富山県、福島県及び東京都に対して出動を要請したところである。その後も引き続き各県に出動要請を行った結果、1都14県(宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、山梨県、富山県、石川県、愛知県)から累計で、480隊(うち、ヘリコプター20機)、2,121人、と、これまでで最大規模の出動となった。 活動状況は、主に小千谷市、長岡市及び山古志村(現長岡市)において、孤立住民等の安否確認、救助、救急活動に従事するとともに、余震等に備えた警戒活動に従事した。特に10月25日全村避難指示が発令された山古志村(現長岡市)においては、自衛隊、警察及び海上保安庁と連携して消防防災ヘリコプターにより集中的に救助活動を実施し、さらに27日には、長岡市妙見堰の土砂崩れによる乗用車転落事故現場において、地元長岡市、新潟県内応援隊及び東京消防庁ハイパーレスキュー隊を中核とした緊急消防援助隊との合同の救助活動を実施し、2歳男児とその母親の2人を地震発生以来4日ぶりに救助(母親は病院搬送後死亡確認)するなど、11月1日の活動終了までの10日間で453人を救助した。(イ)平成17年中 平成17年3月20日には、福岡県西方沖を震源とする地震(最大震度6弱)が発生、大阪府及び熊本県から3隊12人が出動し、情報収集活動を行った。 続く4月25日には、兵庫県尼崎市においてJR西日本福知山線列車事故が発生、107人が死亡する大惨事となった。午前9時03分JR宝塚駅を出発した、7両編成の上り快速列車が、同9時18分頃尼崎市久々知3丁目付近において脱線、沿線のマンションに衝突し、先頭車両がマンション1階の駐車場にくい込むという事態となった。そのため、狭隘な空間の上、駐車場の自動車からガソリンが漏れ、エンジンカッター等の火花が発生する救助資機材が使用できないということもあり、救助活動に時間を要することとなった。緊急消防援助隊としては、大阪府、京都府及び岡山県の2府1県から累計で74隊、270人が4日間にわたり救助、救急活動に従事し、地元尼崎市消防局及び兵庫県内消防本部の県内応援隊と協力し、消防機関として240人(緊急消防援助隊の救助人員42人)を救助した。(ウ)平成19年中 平成19年1月30日には、奈良県吉野郡上北山村の国道169号において、土砂崩れにより走行中の乗用車が埋没し、3名が生き埋めになる災害が発生し、京都府、大阪府、三重県、和歌山県の2府2県から7隊30人が出動、情報収集活動を実施するとともに、救助活動及び航空部隊による救急搬送を行った。 また、3月25日には、能登半島地震(最大震度6強)が発生、京都府、大阪府及び東京都の指揮支援隊をはじめ、兵庫県、滋賀県、福井県、富山県の1都2府4県から、87隊349人が出動、平成16年新潟中越地震災害以来の大規模な出動になり、2日間にわたり倒壊建物等における検索活動及び情報収集活動を行った。 4月15日には、三重県中部を震源とする地震(最大震度5強)が発生、愛知県から航空部隊等3隊12人が出動し情報収集活動を行った。 さらに、7月16日10時13分頃、新潟県中越沖地震(最大震度6強)が発生し、最大震度6弱以上の余震も発生するなど、家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。16日10時40分、新潟県知事からの要請を受け、消防庁長官が1都1府8県に対して緊急消防援助隊の出動要請を行い、航空部隊を中心として15隊110人が出動し、7月23日の活動終了までの8日間に、述べ59隊286人が情報収集、救急及び人員搬送等の活動を行った。(エ)平成20年中 平成20年6月14日午前8時43分頃、岩手県内陸南部地方を中心にマグニチュード7.2、最大震度6強の岩手・宮城内陸地震が発生した。岩手、宮城両県の内陸部・山間部に家屋倒壊、土砂崩れ等により甚大な被害をもたらした。14日9時23分、岩手県知事からの要請を受け、消防庁長官が、岩手県一関市、奥州市を応援先として緊急消防援助隊の出動を求めた。その後、同日11時38分、宮城県知事からの要請を受け、動態情報システムを活用し岩手県へ出動途上の3県隊(山形県、千葉県、埼玉県)の応援先を宮城県栗原市に変更した。また、15日には、すでに岩手県内で活動中の1都2県隊(東京都、秋田県、福島県)について宮城県栗原市への部隊配備を行った。今回の緊急援助隊の活動では、岩手・宮城両県を合わせて、1都1道15県(北海道、青森県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、富山県、石川県、山梨県)から6日間で、211隊1,025人が出動し、救助活動、情報収集活動等を行った。 また、今回の出動は緊急消防援助隊発足後、初めて二つの県にまたがって活動を行った。 7月24日午前0時26分頃、岩手県沿岸北部を震源としてマグニチュード6.8、最大震度6弱の地震が発生した。大規模地震における緊急消防援助隊の迅速出動に関する実施要綱に基づき、地震発生と同時に指揮支援部隊長(仙台市消防局)及び航空部隊(茨城県及び栃木県)に出動要請。その後、岩手県知事から応援要請を受け、最終的に1都7県(秋田県、宮城県(仙台市)、山形県、福島県、栃木県、茨城県、埼玉県、東京都)に対して出動を要請した。同日14時30分の応援要請解除までに、99隊379人が出動し、情報収集活動等を行った(第2−7−4表)。救助事案は発生しなかったが、逡巡せずに部隊出動が行われた事例となった。 以上のような緊急消防援助隊の活動に要した経費については、昭和62年度に創設された消防広域応援交付金制度に基づき、応援市町村に対し広域応援交付金が財団法人全国市町村振興協会から交付されている(第2−7−4表)。第2-7-4表 緊急消防援助隊の出動実績
(4)緊急消防援助隊の運用 緊急消防援助隊の編成及び出動計画等については、総務大臣が定める基本計画に定められているが、その概要は以下のとおりである。ア 緊急消防援助隊の編成 緊急消防援助隊の部隊は、全国を8つのブロックに分けた災害発生地域別に、14の政令指定都市等の消防本部により編成される指揮支援部隊と応援都道府県内の消防本部の消火部隊、救助部隊、救急部隊等から編成される都道府県隊に大別される。 緊急消防援助隊は、被災地の市町村長(又は委任を受けた消防長。以下同じ。)の指揮の下に活動することとなるが、指揮支援部隊は、大規模災害の発生に際し、ヘリコプター等で速やかに被災地に赴き、被害情報の収集等にあたるとともに、当該市町村長の指揮を支援し、被災地における緊急消防援助隊の活動が円滑に行われるよう支援活動を行う。 都道府県隊は、当該都道府県内の消防本部において登録されている消火部隊、救助部隊、救急部隊、後方支援部隊、航空部隊、水上部隊、特殊災害部隊及び特殊装備部隊並びに当該都道府県の航空部隊のうち、被災地への応援に必要な部隊をもって編成される。 こうした部隊編成に基づき、緊急消防援助隊は、被災地の市町村長→指揮支援部隊長→都道府県隊長→各部隊長という指揮命令系統により、活動することとなる。イ 出動計画(ア)基本的な出動計画 大規模災害等の発災に際し、消防庁長官は、情報収集に努めるとともに、被災都道府県知事等との密接な連携を図り、緊急消防援助隊の出動の有無を判断し、消防組織法第44条の規定に基づき、出動の要請又は指示の措置をとることとされている。この場合において迅速かつ的確な出動が可能となるよう、あらかじめ出動計画が定められている。 具体的には、災害発生都道府県ごとに、その隣接都道府県を中心に、原則として第一次的に応援出動する都道府県隊を第一次出動都道府県隊と災害の規模によりさらに応援が必要となる場合に出動準備を行う都道府県隊を出動準備都道府県隊として指定している。(イ)東海地震等における出動計画 東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震等の大規模地震については、二以上の都道府県に及ぶ著しい地震被害が想定され、第一次出動都道府県隊及び出動準備都道府県隊だけでは、消防力が不足すると考えられることから、全国的規模での緊急消防援助隊の出動を行うこととしている。 そのため、東海地震、東南海・南海地震及び首都直下地震を想定して、中央防災会議における対応方針も踏まえ、それぞれの発災時における、緊急消防援助隊運用方針及びアクションプランを策定しており、例えば東海地震の場合、強化地域に指定されている8都県以外の全道府県の陸上部隊の出動順位、応援先都県、出動ルート等をあらかじめ定めるとともに、航空部隊についても全国的な運用を行うこととしている(第2−7−7図)。こうした出動計画がある事案については、基本パターンを了知しつつ、状況に応じた柔軟な対応が求められる。第2-7-7図 緊急消防援助隊の基本的な出動とアクションプラン(ウ)大規模地震における緊急消防援助隊の迅速出動 大規模地震時には、通信インフラ等の障害発生や全体の被害状況把握に相当の時間を要することなどを踏まえ、緊急消防援助隊が被災地に迅速に出動して、消火・救助・救急活動等により人命救助を効果的に行うことができる運用を強化する必要がある。 このため「消防組織法第44条に基づく緊急消防援助隊の出動の求め」の準備行為を、消防庁長官が全国の都道府県知事及び市町村長に予め行っておき、大規模地震の発生と同時に出動が可能な運用の導入を図ることとし、「大規模地震における緊急消防援助隊の迅速出動に関する実施要綱」を策定して、指揮支援部隊及び航空部隊については平成20年7月14日から、消火・救助・救急部隊等の陸上部隊については応援等実施計画の整備を踏まえて同年8月27日から運用を開始した。(エ)消防応援活動調整本部 緊急消防援助隊は、それぞれの管轄区域を離れて活動することから、迅速かつ効果的な活動を行うためには、速やかな集結及び被災地域への出動とともに、被災地域における各部隊の具体的な活動場所及び部隊配備等を、被害状況を踏まえて適時的確に決定する必要がある。 そのため、従来は緊急消防援助隊運用要綱により、緊急消防援助隊調整本部を設置して、必要な調整を行うこととしていたが、平成20年通常国会で消防組織法が改正され、都道府県内の区域内に災害発生市町村が2以上ある場合において、緊急消防援助隊が消防の応援のために出動した時は、都道府県知事は、消防の応援等の措置の総合調整等を行う消防応援活動調整本部(以下「調整本部」という。)を設置するものとされた。 調整本部は、災害発生市町村の消防の応援等のため都道府県及び当該都道府県の区域内の市町村が実施する措置の総合調整に関する事務及び当該事務を円滑に実施するための自衛隊、警察等の被災地で災害対応にあたる関係機関との連絡に関する事務をつかさどることとなっている。 また、消防応援活動調整本部長(以下「調整本部長」という。)は、都道府県知事をもって充てることとされ、調整本部の事務を統括することとなっている。 各都道府県は、自らが被災地となる場合を想定して、平時からこうした調整本部の運営方法をはじめ、進出拠点、燃料補給基地等、緊急消防援助隊の受け入れに当たって必要な事項を都道府県内の消防機関と協議のうえ、「緊急消防援助隊受援計画」として定めておかなければならない。 なお、平成20年4月1日現在、全ての都道府県が緊急消防援助隊受援計画を策定している(第2−7−8図)。第2-7-8図 消防応援活動調整本部
(5)緊急消防援助隊の訓練 大規模災害時における緊急消防援助隊の出動及び活動を的確かつ迅速に行うためには、全国各地からそれぞれの管轄区域を離れて活動に従事するという緊急消防援助隊の特殊性を考慮し、指揮・連携能力の向上を図るなど、平時からの緊急消防援助隊としての教育訓練が重要となる。 緊急消防援助隊の訓練については、緊急消防援助隊が発足した平成7年11月28・29日に、東京都江東区豊洲において、天皇陛下の行幸を賜り、98消防本部、約1,500人の隊員による全国合同訓練が行われたのをはじめ、平成12年10月23・24日には、第2回目の全国合同訓練を東京都江東区有明において実施した。 第3回全国合同訓練は、緊急消防援助隊法制化後、初の全国訓練として、基本計画に基づき、平成17年6月10日・11日の両日、静岡県静岡市において「東海地震における緊急消防援助隊アクションプラン」の検証を兼ね実施し、参集及び活動体制について総合的な検証を行った。 また、隊員の技術向上と部隊間の連携強化を目的に、平成8年度から毎年全国を6つのブロックに区分してブロックごとに合同訓練が行われており、平成16年4月の緊急消防援助隊の法制化以降は、基本計画において、「緊急消防援助隊の技術の向上及び連携活動能力の向上を図るため、都道府県及び市町村の協力を得て、複数の都道府県を単位とした合同訓練を定期的に実施するものとする。」として、消防庁主催としての位置付けを明確にするとともに、訓練実施経費も国費として確保し、全国の自治体及び消防機関の協力のもと、この地域ブロック合同訓練を実施している。消防大学校における教育訓練と併せて、引き続き緊急消防援助隊のより実戦的な教育訓練の充実を図ることとしている(第2−7−5表)。第2-7-5表 緊急消防援助隊全国訓練、ブロック訓練の実施状況 今後は、夜間訓練の充実、自衛隊等他部隊との連携、部隊移動とセットの図上訓練等、より実戦的な訓練に構成していくことが求められる。
(6)今後の課題 緊急消防援助隊の活動能力を更に高めていくためには、それを構成する陸上部隊・航空部隊等の増強等を図るなど広域消防応援体制の更なる強化が求められていることから、下記の課題に引き続き取り組んでいく必要がある。ア 消防庁オペレーション機能の強化 消防庁においては、消防庁長官の指示権が創設されたことも踏まえると、大規模災害・特殊災害等発生時に、消防庁自体の初動対応がこれまで以上に重要となり、迅速かつ的確な情報収集等に努め、できる限り災害の規模、被害状況等を把握して、緊急消防援助隊の派遣等必要な措置を即座に講じなければならない。また図上訓練等の実施により日頃から体制の点検も行いながら、緊急消防援助隊の出動の要否、派遣地域、必要な部隊規模・種類の判断等オペレーション機能の強化を引き続き図っていく必要がある。イ 消防防災ヘリコプターの夜間運航体制の充実 夜間の災害対応のため、乗員全てが基地で常時夜間待機している航空隊は、埼玉県・仙台市消防局・東京消防庁の3団体のみである。夜間の災害に備えるための体制は、全国的に見れば不十分であり、現在、「365日・24時間運航体制」のあり方について検討を実施しているが、今後、夜間の災害に即応できる航空隊を、各都道府県内に少なくとも1隊以上配置していくという目標に向って努力していく必要がある。ウ 緊急消防援助隊の後方支援体制等の充実強化 大規模災害時等において迅速かつ継続的な緊急消防援助隊活動を行うためには、被害状況や消防部隊の活動状況等の映像情報の早期収集体制(可搬型ヘリテレ受信機及び可搬型衛星地球局の全国的な配備)及び活動が長期間に渡ることを想定した燃料補給体制など後方支援体制の充実を図っていく必要がある。エ 部隊の増強・施設等の充実強化 緊急消防援助隊の活動規模の増大や、公表された東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等の被害想定を念頭に置き、登録部隊の計画的な増強及び車両、航空機、資機材等各種の施設・設備の整備の推進を図るとともに、緊急消防援助隊の活動を機動的に行うために重要となる航空部隊についても、陸上部隊との連携活動など、より安全かつ効果的な運用要領やその体制強化についての検討を行う必要がある。オ 訓練の実施 緊急消防援助隊が迅速かつ効果的に活動するためには、速やかに応援部隊を編成して被災地に出動し、各部隊が一元的な指揮体制のもとに連携した活動を実施する必要がある。このため消防庁ではより実践的な全国合同訓練及び地域ブロック合同訓練を実施するとともに、各都道府県及び各消防機関においても平時より、各種防災訓練等の機会も活かしながら、消防応援活動調整本部運営訓練や大規模な参集・集結訓練など、緊急消防援助隊の活動に即した教育訓練を行う必要がある。カ アクションプランの策定 いつ起きてもおかしくないといわれる東海地震、東南海・南海地震や首都直下地震等に備えるためには、発生時における緊急消防援助隊の活動方針を更に具体化していく必要がある。このため今後も東海地震、首都直下地震に係るアクションプラン及び平成19年5月に策定した東南海・南海地震に係るアクションプランについて、緊急消防援助隊の合同訓練等を通して随時検証するとともに、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など様々な事案を想定した運用体制の構築を図っていく必要がある。キ 特殊災害対応への備え NBC災害等特殊災害の場合においては、大規模自然災害の場合とは出動部隊、活動内容等も大きく異なってくることから、これらの事案の特殊性を踏まえた具体的な対応方策について、合同訓練等を通してその検証を進めていく必要がある。
第8節 国と地方公共団体の防災体制1 国と地方の防災組織等(1)防災組織 地震・風水害等の災害から国土並びに国民の生命、身体及び財産を守るため、災害対策基本法は、防災に関する組織として、国に中央防災会議、都道府県及び市町村に地方防災会議を設置することとしている。これら防災会議は、日本赤十字社等関係公共機関の参加も得て、災害予防、災害応急及び災害復旧の各局面に有効適切に対処するため、防災計画の作成とその円滑な実施を推進することを目的としており、中央防災会議においては我が国の防災の基本となる防災基本計画を、各指定行政機関及び指定公共機関においてはその所掌事務又は業務に関する防災業務計画を、地方防災会議においては地域防災計画をそれぞれ作成することとされている。 また、災害に際して応急対策等の推進上必要がある場合には、国は非常災害対策本部(著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合においては、緊急災害対策本部)、都道府県及び市町村は災害対策本部を設置して災害対策を推進することとしている。
(2)災害対策基本法の改正等 阪神・淡路大震災以降、防災対策の全面的な見直しを行う中、2度にわたる災害対策基本法の大改正と数次にわたる防災基本計画の修正が行われている。 災害対策基本法は、平成7年6月に都道府県公安委員会による災害時における交通規制の拡充と警察官、消防吏員等による緊急通行車両の通行の措置の創設等を内容とする改正が行われたほか、同年12月には緊急災害対策本部の設置要件の緩和等、国・地方公共団体を通じた防災体制の充実を図るとともに、国民の自発的な防災活動の促進、地方公共団体間の広域応援体制の強化など防災対策全般にわたる改正が行われた。 防災基本計画は、平成7年7月には、阪神・淡路大震災の教訓等を踏まえ、全面的な修正が行われ、震災対策、風水害対策及び火山災害対策の各編が定められた。 平成9年6月には海上災害、原子力災害等の事故災害について、総合的、体系的な事故災害対策の整備を図るための修正が行われ、新たに海上災害対策、航空災害対策、鉄道災害対策、道路災害対策、原子力災害対策、危険物等災害対策及び大規模な火事災害対策の各編が追加されたほか、林野火災、雪害についても新たに編立てがなされるなど、対策の充実が図られたが、平成12年5月には茨城県東海村におけるウラン加工施設における臨界事故を踏まえた原子力災害対策特別措置法の施行等を受け、原子力災害対策編の修正が行われ、原子力災害の対象に新たに核燃料の加工、貯蔵、廃棄の各施設と運搬過程が加わるなど、さらなる対策の充実・強化が図られた。 平成16年3月には東南海・南海地震防災対策推進基本計画の策定等、震災対策編を中心に修正が行われ、平成17年7月にはインド洋津波災害を踏まえた津波防災対策の充実、集中豪雨時等の情報伝達及び高齢者等の避難支援の強化等についての修正が行われた。 また、最近では、平成20年2月に、企業の事業継続計画の策定を強力に進めるための条件整備、平成19年7月の新潟県中越沖地震の教訓を踏まえた原子力災害対策の強化、被災者生活再建支援法の改正を踏まえた復興支援強化、緊急地震速報の本格導入等、最近の災害対策の進展を踏まえた修正が行われた。
(3)消防庁の防災体制 消防庁は、実戦部隊となる消防機関を所管し、地方公共団体から国への情報連絡の窓口になるとともに、地域防災計画の作成、修正など地方公共団体の防災対策に対する助言・勧告等を行っているが、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、地方公共団体の防災対策全般の見直しを推進し、支援措置の充実を図るとともに、情報収集・伝達体制の充実など消防庁における防災体制の強化も図っている。 平成8年5月には、自治省・消防庁防災業務計画の全面的な見直しを行い、できる限り具体的かつ実践的で分かりやすいものとするとともに、情報の収集・伝達体制の充実など自治省(現・総務省)・消防庁が重点的に推進している施策を盛り込んでいる(省庁再編に伴い、現在は消防庁防災業務計画)。 消防庁は、この計画に基づき、関係マニュアルの整備、研修・訓練の充実等を図り、災害発生時における職員の対応力の向上に努めている。 また、平成9年6月及び平成12年5月の防災基本計画の修正により、海上災害等の事故災害対策が追加されたこと、原子力災害対策が強化されたことを踏まえ、関係省庁等と緊密な連携を図り、事故災害に係る防災体制の充実強化を推進している。 平成15年8月には、大規模災害等が発生した際により迅速かつ的確な初動対応が実施できるよう、総務省内に消防防災・危機管理センターを整備し、平成16年には、同センターに設置される消防庁災害対策本部の体制を情報収集中心のものから、より機動的な災害応急対応中心のものへと見直した。同時に、災害対策本部の編成について災害種別によって課室別にその都度編成していたのを、災害対策本部の組織体制を原則として一本化し、加えて、平成17年度には大規模地震やNBCテロ災害等の様々な災害発生時において、消防庁長官による緊急消防援助隊の出動指示や現地における的確な災害対応等を迅速かつ適切に実施するため、消防庁職員等を被災地へ迅速に派遣し、併せて、現地調査、情報収集を行うために消防庁ヘリコプターを導入した。さらに、平成17年8月には、業務の専門性の確立、責任体制の明確化を一層図ることを目的に、大規模地震対策、消防防災の情報通信システム、緊急消防援助隊、救助・テロ対策、国民保護の企画・運用等の緊急対応や地方公共団体との連絡調整等の各業務を統括する「国民保護・防災部」を設置した。
2 地域防災計画(1)地域防災計画の修正 地域における防災の総合的な計画である地域防災計画については、既に全都道府県とほぼすべての市町村で作成されている。内容的にも、一般の防災計画と区別して特定の災害を編立て等で作成する団体が増加しており、平成20年4月1日現在、都道府県においては、震災対策・全団体、原子力災害対策・23団体、風水害対策・30団体、火山災害対策・16団体、林野火災対策・19団体、雪害対策・11団体がそれぞれ編立て等により作成している。 一方、地域防災計画については、災害対策基本法において、毎年検討を加え、必要があると認めるときは、これを修正しなければならないこととされているが、消防庁は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年2月に、情報の収集・伝達体制や応援体制など9項目について大規模災害も想定した地域防災計画の緊急点検を要請し、また、同年7月の防災基本計画の修正に伴い、地方公共団体に対して地域防災計画の見直しに際しての留意事項を示し、地域の実情に即した具体的かつ実践的な計画とするよう求めるとともに、当面の課題として情報の収集・伝達体制や初動体制など緊急を要する事項についての見直しを要請した。 この結果、阪神・淡路大震災以降、平成20年4月1日までに、全都道府県が阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた見直しを完了しており、また、市町村においても、ほとんどの団体が見直しに着手し、このうち1,575団体(87.0%)が見直しを完了している。 また、平成7年7月より後の防災基本計画の修正に際しても、地域防災計画の見直し及び所要の修正について、適宜要請しているところであり、平成19年度中には、都道府県32団体、市町村599団体が、地域防災計画の修正を行っている。
(2)防災アセスメントと被害想定の推進 防災アセスメントは災害誘因(地震、台風等)、災害素因(急傾斜地、軟弱地盤等)、災害履歴、土地利用の変遷などを考慮して総合的かつ科学的に地域の災害危険性を把握する作業であり、被害想定はこうした災害危険性や自然的・社会的環境要因等の諸条件に基づき、想定される災害に対応した人的被害、構造物被害等を算出する作業である。 実効ある地域防災計画を作成するためには、防災アセスメントと被害想定を実施し、地域の災害危険性と想定される被害を把握するとともに、それらに有機的に対応した効果的な計画を作成する必要がある。また、社会経済状況の変化等に伴い、防災アセスメントや被害想定を実施し、地域防災計画の前提から見直しを行い、状況の変化に対応した防災対策を構築する必要がある。 消防庁においては、防災アセスメントと被害想定の実施に基づく地域防災計画の見直しに要する経費を普通地方交付税に算入し、地方公共団体に対しその実施を要請している。 また、防災アセスメントや被害想定の成果は、地区別防災カルテとして、集落、学校区等の単位に防災に関連する各種情報を地図等によりわかりやすく整理し、住民の自主的な防災活動にも活用することが有効であり、消防庁においては、上記の普通地方交付税措置に地区別防災カルテの作成を含めて措置し、その整備を要請している。なお、平成19年度に、地区別防災カルテ等の作成を伴った地域防災計画の修正を行った市町村は、68団体となっている。
(3)広域防災応援体制ア 広域防災応援体制の確立 地方公共団体間等の広域防災応援に係る制度としては、消防相互応援のほか、災害対策基本法に基づく地方公共団体の長等相互間の応援、地方防災会議の協議会の設置等がある。また、災害対策基本法においては、地方公共団体は相互応援に関する協定の締結に努めなければならないとされている。 一方、地方公共団体と国の機関等との間の広域防災応援に係る制度としては、災害対策基本法に基づく指定行政機関から地方公共団体に対する職員の派遣、自衛隊法に基づく都道府県知事等から防衛大臣等に対する部隊等の派遣の要請がある。自衛隊の災害派遣についてはこのほか、災害対策基本法に基づき市町村長が都道府県知事に対し、上記の要請をするよう求めることができる。さらに市町村長は、知事に対する要求ができない場合には、防衛大臣等に対して災害の状況等を通知することができる。 なお、平成7年10月、自衛隊法施行令の改正等により、都道府県知事等の自衛隊に対する災害派遣要請手続が簡素化され、また、自衛隊の自主派遣の判断基準が明確化された。このことを踏まえ、同月、消防庁では、災害対策における地域防災計画の修正、共同の防災訓練の実施等災害対策における自衛隊との連携の強化、要請手順の明確化など情報収集・連絡体制の確立等について地方公共団体に通知している。イ 広域防災応援協定の締結 災害発生時において、広域防災応援を迅速かつ的確に実施するためには、関係機関とあらかじめ協議し協定を締結することなどにより、応援要請の手続、情報連絡体制、指揮体制等について具体的に定めておく必要がある。 都道府県間の広域防災応援については、阪神・淡路大震災以降、取組が進み、全国すべてのブロックで広域防災応援協定の締結又は既存協定の見直しがされた。また、その補完として他のブロックとの境界にある県間の協定も締結されている。このほか、平成8年7月には、全国知事会で、全都道府県による応援協定が締結され、広域防災応援体制が全国レベルで整備されている。 これらの協定は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、大規模災害時における自主的な応援出動、被災県への応援を調整する役割の県をあらかじめ定める等内容面の充実が図られている。 また、市町村でも、県内の統一応援協定や県境を超えた広域的な協定の締結など広域防災応援協定に積極的に取り組む傾向にあり、平成20年4月1日現在、広域防災応援協定を有する市町村数は、1,656団体となっている。 なお、広域防災拠点の整備や広域応援にも対応した物資・資機材等の備蓄を促進するとともに、受入れ体制の整備や広域応援を含む防災訓練の実施等により、実効ある広域応援体制の整備を図っていく必要がある。
3 防災訓練の実施 大規模災害時に迅速な初動体制を確立し、的確な応急対策をとることは、被害を最小限に軽減するために重要であり、そのためには日頃から実戦的な対応力を身につけておく必要がある。防災基本計画でも、防災訓練について積極的に実施するものと記述されており、消防庁では「防災・危機管理教育のあり方に関する調査懇談会報告書」(平成15年3月)に基づき、地方公共団体における図上型訓練等により実戦的な訓練の実施を促進することとしている。 平成15年度から行われた「地震防災訓練(図上型訓練)実施要領モデル作成調査研究」について、平成19年度には同研究の集大成として「地方公共団体の地震防災訓練(図上型訓練)実施要領のあり方に関する調査研究報告書(平成19年度)」及び「市町村による図上型防災訓練の実施支援マニュアル」を取りまとめ、地方公共団体に配付した。平成20年度においては研究対象を風水害とし同調査研究を進めるとともに、10月には地震や津波、台風などの大規模な災害に際し、市町村長等のリーダーシップによる的確な意思決定能力の向上と応急体制の点検、住民と行政との信頼関係に基づく地域防災力の強化を図ることを目的として、全国2ブロック(東日本、西日本)で防災特別セミナー「防災危機管理ブロック・ラボ」を開催し、都道府県・市町村の防災担当幹部等、延べ61人の参加を得た。 また、消防庁及び財団法人消防科学総合センターから図上訓練支援チーム(専門家及び指導員で構成)を都道府県に派遣し、図上訓練の企画立案から実施等に至る過程を指導支援することを通じ、市町村における実戦的な防災訓練(図上型訓練)の普及を促進する「図上訓練体験研修」を実施した。 平成19年度においては、都道府県で延べ341回の防災訓練を実施したほか、市町村においても延べ5,420回の防災訓練が実施された。訓練に際しての災害想定は、都道府県では、地震・津波に対応するものが最も多く、次いで、台風等風水害、土砂災害、原子力災害、コンビナート災害、林野火災となっており、市町村では地震・津波、風水害、大火災、土砂災害、林野火災となっている。また、訓練形態は地域住民等の参加を得た総合(実動)訓練が最も多い。防災特別セミナー「防災危機管理ブロック・ラボ」の様子図上訓練体験研修の様子
4 防災体制の整備の課題(1)地方防災会議の一層の活用 地方防災会議は、防災関係機関が行う防災活動の総合調整機関であり、近年は、その中に震災対策部会、原子力防災部会等の専門部会が設けられ、機能の強化が図られている。 今後は、その更なる活用等により専門性等を兼ね備えた防災計画の策定に努めるとともに、平常時の活動に加えて、災害時においても防災関係機関相互の連携のとれた円滑な防災対策を推進する必要がある。
(2)地域防災計画の見直しの推進 地域防災計画の見直しについては、全都道府県で、阪神・淡路大震災を教訓とした見直しを行っているが、今後は、市町村においても、見直しを一層推進する必要がある。見直しに際しては、防災アセスメントと被害想定の実施により、地域の災害危険性と想定される被害を明らかにした上で、これと有機的に対応した地域防災計画としていく必要がある。 また、地域防災計画の見直しに当たっては、主として、被害想定、職員の動員配備体制、情報の収集・伝達体制、応援体制、被災者の収容・物資等の調達、防災に配慮した地域づくりの推進、消防団・自主防災組織の充実強化、災害ボランティアの活動環境の整備、災害時要援護者対策、防災訓練などの項目に留意する必要がある。 なお、地域防災計画をより実践的かつ具体的なものとするため、消防庁では平成17年7月から各都道府県の地域防災計画をデータベース化した「地域防災計画データベース」の運用を始め、都道府県地域防災計画の内容の比較・検証を通じて、より適切な計画へ見直しを行える環境を整備している。
(3)実効ある防災体制の確保 地域防災計画はより具体的で内容が充実し、防災に資する施設・設備もより高度かつ多様なものが導入されてきているが、災害発生時に、これらが実際に機能し、又は定められたとおりに実施できるかが重要である。また、災害は多種多様で予想できない展開を示すものであり、適切で弾力的な対応を行うことが必要である。 そのため、組織に関しては、危機管理監等の専門スタッフが首長等を補佐し、自然災害のみならず各種の緊急事態発生時も含め地方公共団体の初動体制を指揮し、平時においては関係部局の調整を図る体制を整備する必要がある。平成20年4月1日現在、45都道府県において部次長職以上の防災・危機管理専門職が設けられているが、さらに充実の必要がある。 防災体制強化の根幹である人材育成については、幹部職員の危機管理能力及び防災担当職員の実践的対応力の向上並びに自主防災組織等の防災リーダーや地域住民の防災力のレベルアップが必要である。消防庁としては、平成15年度より消防大学校において、首長等幹部職員を対象とした「トップマネジメントコース」を含む「危機管理セミナー」を実施するとともに、消防職団員やボランティア、広く住民を対象に、インターネットにより家庭や地域でいつでも体系的に学習できる「防災・危機管理e-カレッジ」を運用している。 このほか、各地方公共団体においては、人員を夜間・休日においても24時間体制で配置するほか、職員の参集基準の明確化や職場近郊の災害対応職員用宿舎の確保など災害初動体制の確立を図る必要がある。また、消防防災GISの活用など防災分野における地理空間情報の活用推進が求められていること、平常時から災害危険個所や避難場所などを示したハザードマップ等を住民へ配布するなど防災情報の積極的な提供を進め、住民一人ひとりの防災意識の高揚・災害対応力の強化を図ること等にも十分留意する必要がある。 また、近年の豪雨災害による被害を踏まえ、避難勧告等を発出する際の客観的な基準の作成や、災害時要援護者の避難誘導体制の整備等についても進めていく必要がある。そのため消防庁では、災害時要援護者の避難についてモデル地域を選定し、福祉部局と連携した情報共有や実践的な訓練の実施等について、避難支援プラン作成のノウハウを整理し、地方公共団体へ提供する「災害時要援護者の避難支援プラン策定モデル事業」を実施し、避難支援プランを作成するための手引きとして「災害時要援護者避難支援プラン作成に向けて」を取りまとめた。
第9節 消防防災の情報化の推進1 被害状況等に係る情報の収集・伝達体制の確立 大規模災害時には、地方公共団体が把握した災害の規模や被害の概況を国が迅速かつ的確に把握し、緊急消防援助隊の出動やその他の災害応急対策を迅速に講じることが重要である。消防庁では、地方公共団体と国との間の防災情報の収集・伝達の窓口として、地方公共団体から迅速かつ的確に情報を収集し、内閣官房(内閣情報集約センター)、内閣府等の政府関係機関に伝達できるよう努めている。 災害時に防災情報の収集・伝達を円滑に行うためには、平素から体制を確立しておくことが極めて重要であることから、消防庁では、大規模災害時の都道府県及び市町村からの情報収集のために火災・災害等即報要領を定め、情報収集体制を確立するとともに、防災映像情報送受信統一訓練を定期的に実施し、地方公共団体における機器操作の習熟に努めている。なお、火災・災害等即報要領については、必要に応じて随時見直しを行っており、最近は、武力攻撃災害及び緊急対処事態についても即報の対象として位置付け、これらの災害等(該当するおそれがある場合も含む。)が発生した場合を報告の対象として追加している(第2−9−1図)。第2-9-1図 火災・災害等即報の概要
2 災害に強い消防防災通信ネットワークの整備 被害状況等に係る情報の収集及び伝達を行うためには、通信ネットワークが必要である。災害時には、安否確認等により平常時の数十倍もの通信量が発生することから、輻そうを避けるため、公衆網においては通話規制が行われることが多い。また、災害時には、通信施設の被災や停電によりこれらの通信ネットワークの使用が困難となる場合もある。 このため、災害時においても通信を確実に確保するべく、国、都道府県、市町村等においては公衆網を使用するほか、災害に強く輻そうの恐れのない自営網である消防防災通信ネットワークの整備を行っているところである。 現在、消防庁、地方公共団体、住民等を結ぶ消防防災通信ネットワークを構成する主要な通信網としては、〔1〕消防庁と都道府県を結ぶ消防防災無線、〔2〕都道府県と市町村等を結ぶ都道府県防災行政無線、〔3〕市町村と住民等を結ぶ市町村防災行政無線及び〔4〕国と地方公共団体及び地方公共団体間を結ぶ地域衛星通信ネットワークが構築されている(第2−9−2図)。第2-9-2図 消防防災通信ネットワークの概要 消防庁では、防災基盤整備事業等を活用し、これらの消防防災通信ネットワークの整備促進及び充実強化を図っているところである。
(1)消防防災通信ネットワークの概要ア 消防防災無線 消防防災無線は、消防庁と全都道府県を結ぶ通信網である。電話及びファクシミリによる相互通信のほか、消防庁からの一斉伝達が可能な通信網である。地上系は国土交通省のマイクロ回線設備との設備共用により整備・運用されており、このマイクロ回線設備については、順次IP化へ移行していくこととなっている。また、衛星系は地域衛星通信ネットワークにより運用中である。イ 都道府県防災行政無線 都道府県防災行政無線は、地上系、衛星系又は両方式により、都道府県とその出先機関、市町村、消防本部、指定地方行政機関、指定地方公共機関等を結ぶことで相互の情報収集・伝達に使用される通信網であり、全都道府県において運用されている。機能は都道府県によって異なるが、一般的には、電話及びファクシミリによる相互通信のほか、都道府県庁からの一斉伝達が可能となっている。なお、地上系では、車両に設置された車載無線機等の移動体との通信も可能となっている。ウ 市町村防災行政無線(同報系) 市町村防災行政無線(同報系)は、市町村と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機を結ぶ通信網であり、無線通信により地域住民に対し一斉に情報を迅速かつ確実に伝達することができるものである。災害時の一斉伝達、気象予警報、避難勧告、全国瞬時警報システム(J-ALEAT)の伝達に利用される。整備率(整備している市町村の割合)は75.5%(平成20年3月末現在)となっている。防災行政無線(同報系屋外拡声装置)エ 市町村防災行政無線(移動系・地域防災系) 市町村防災行政無線は、市町村(災害対策本部)と市町村の車両、市町村内の防災機関(病院、電気、ガス、通信事業者等)、自主防災組織等を結ぶ通信網である。災害対策本部においては、交通・通信の途絶した孤立地域や防災関係機関等からの情報収集・伝達、広報車との連絡等に利用される。整備率(整備している市町村の割合)は移動系85.0%、地域防災系12.2%(平成20年3月末現在)となっており、これらについては順次デジタル化(デジタル移動通信システム)への移行が進められている。オ 消防救急無線 消防救急無線は、消防本部(消防指令センター)と消防署、消防・救急隊を結ぶ通信網である。消防本部から消防・救急隊への指令、消防・救急隊から消防本部への報告、火災現場における隊員への指令等に利用されており、消防活動の指揮命令を支え、消防活動の遂行に必要不可欠なものである。全国の全ての消防本部において運用されており、平成28年5月末までにデジタル方式に移行することとされている。カ 地域衛星通信ネットワーク 地域衛星通信ネットワークは、衛星通信により、消防庁、都道府県、市町村及び防災関係機関を結ぶ全国的な通信網である。通常の音声通信のほか、一斉指令、データ通信、映像伝送等の機能を有し、消防防災無線のバックアップ及び都道府県防災行政無線(衛星系)として位置付けられているほか、ヘリコプターや高所監視カメラからの映像を消防庁、都道府県、消防本部等に伝送するために利用される。スーパーバード衛星を利用して、財団法人自治体衛星通信機構が運営しており、消防庁、都道府県、市町村、消防本部等に地球局が設置されているほか、車載局や可搬局により、災害発生時の機動的な情報収集・伝達体制の確保が可能である。現在、全ての都道府県において運用されている。キ 映像伝送システム 映像伝送システムは、高所監視カメラや消防防災ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影された映像情報を消防本部(消防指令センター等)に伝送するとともに、地域衛星通信ネットワークを活用して、直ちに消防庁、都道府県及び他の市町村等へも伝送が可能である(第2−9−3図)。発災直後の被害の概況を把握するとともに、広域的な支援体制の早期確立を図る上で非常に有効なシステムである。第2-9-3図 映像伝送システムの概要
(2)バックアップ機能の確保ア 通信設備の耐震対策の徹底等 平成16年10月に発生した新潟県中越地震においては、都道府県防災行政無線が建物の倒壊や非常用電源の不備などにより一部地域で不通となる事態が生じた。防災行政無線については、災害時においても確実に機能が確保されることが必要であるため、消防庁では、・都道府県防災行政無線の非常用電源設備の整備・保守点検の実施と的確な操作の徹底・総合防災訓練時等における防災行政無線を使用した通信訓練の実施(非常電源による訓練を含む。)・防災行政無線設備の耐震性のある堅固な場所への設置等を都道府県及び市町村に対して要請しているところである。 なお、消防庁を含む国の機関、都道府県、市町村、電気通信事業者、電力会社等で構成される非常通信協議会において、無線設備の停電・耐震対策のための指針が取りまとめられており、地方公共団体においては、無線設備の停電対策、非常用電源設備、管理運用対策、耐震対策等について、これに準じて、自ら点検を徹底することが必要である。イ バックアップ機能の確保 消防防災通信ネットワークであっても、大地震等により通信施設が使用不能となり、関係機関の被害情報等の通信が困難となる場合が生じるおそれがある。 このため、消防庁では、バックアップ施設として消防大学校(東京都調布市)に衛星通信施設を整備しているほか、機動性のある衛星車載局車や可搬型衛星地球局を整備しているところである。また、非常通信協議会では、公衆網並びに消防庁及び地方公共団体の消防防災通信ネットワークが不通となった場合に備え、電力会社等の防災関係機関が管理している自営通信網を活用して、被害情報等を都道府県から国に伝達する中央通信ルートを策定しているほか、市町村から都道府県に伝達する地方通信ルートの策定も進められているところである。さらに、非常通信訓練を定期的に実施し、非常の場合の通信の円滑な実施の確保に努めているところである。
3 情報処理システムの活用(1)防災情報システムの整備 大規模災害発生時の災害応急活動においては、広域的な対応が重視され、より迅速な情報収集・伝達と地方公共団体の対応力を把握した上での調整判断が不可欠となる。 消防庁では、震度情報や緊急消防援助隊派遣時などの広域応援に対応するための情報などについて、防災情報のデータベース化と国・地方公共団体間のネットワーク化により、情報の共有化と迅速な収集・伝達を図り、円滑な広域応援の実施や地方公共団体等における防災対策の高度化のため、防災情報システムの整備を推進している。 全国の市町村で計測された震度情報を消防庁へ即時送信するシステム(震度情報ネットワーク)は、平成9年4月から運用を開始しており、本システムで収集された震度データは、緊急消防援助隊の派遣等、広域応援活動に活用するとともに、気象庁にも提供され震度情報として発表されている。 近年、システム機器の老朽化等により震度情報の送信が遅延するなどの問題が生じているため、消防庁では次世代震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、平成18年3月に報告書を取りまとめたところである。
(2)災害対応支援システムの導入と活用 災害発生時には、正確かつ迅速な状況判断の下に的確な応急活動を遂行する必要があり、そのためには、災害発生時にはシミュレーションにより被害を推測することができ、かつ、平時には円滑な災害対応訓練に活用できるシステムを導入することが有効であることから、消防庁では、地震被害予測システム等の開発・普及に努めている。 中でも、消防研究センター(旧独立行政法人消防研究所)で開発した「簡易型地震被害想定システム」(第2−9−4図)は、簡単な操作で即座に地震による被害を推計することが可能であり、的確な状況判断、初動措置の確保、日常の指揮訓練等に役立つことから、全都道府県等に配布しその活用を図るとともに、消防庁の消防防災・危機管理センターにおいても被害予測に同システムを活用している。第2-9-4図 簡易型地震被害想定システムの画面表示例
(3)各種統計報告オンライン処理システム 行政事務の情報化に対応し、統計事務の効率化・迅速化を図るため、平成14年度からVPN(Virtual Private Network:仮想専用線)を活用した、以下に掲げる各種統計報告のオンライン処理を可能とするシステムの開発を行っており、平成15年度から順次運用を開始している。・火災報告等オンライン処理システム・防火対象物実態調査等オンライン処理システム・ウツタイン様式調査オンライン処理システム・「危険物規制事務調査」及び「危険物に係る事故及びコンビナート等特別防災区域における事故報告」オンライン処理システム・救急救助調査オンライン処理システム・石油コンビナート等実態調査オンライン処理システム 消防庁では、これらのデータを迅速的確に収集・整理することにより、各都道府県、各消防本部への速やかな情報提供、各種施策への反映を支援している。 なお、平成20年度からは「消防防災・震災対策等現況調査」をオンライン処理システム上で運用を開始した。またこれを機に、消防庁と各都道府県、市町村及び消防本部との間の接続方式をVPNからSSL(Secure Sockets Layer:WEBブラウザとWEBサーバ間で情報を暗号化して通信する方式)に変更し、セキュリティの強化を図ったところである。
4 情報化の今後の展開(1)消防防災通信ネットワークの充実強化 消防庁では、ICT(情報通信技術)を積極的に活用することにより消防防災力の一層の強化を図っており、次の事項に重点をおいて消防防災通信ネットワークの充実強化を推進することにより、地方公共団体と一体となって国民の安心と安全をより一層確かなものとすることとしている。ア 消防救急無線のデジタル化の推進 消防救急無線は、従来、アナログ方式により整備・運用されてきたが、画像・文字等のデータ通信や秘話性の向上による利用高度化及び電波の有効活用を図る観点から、平成28年5月末までにデジタル方式に移行することとされている。 そこで、消防の広域化と歩調を合わせ、消防救急デジタル無線のデジタル化が円滑に行われるよう、平成19年度に消防庁は、消防機関の協力を得つつ、無線機の価格の低廉化や実運用に即した全国共通の消防救急デジタル無線の仕様を策定したところである。今後も、地方財政措置や技術アドバイザーの派遣等のデジタル化が円滑に行われるための支援策を推進していく。イ 市町村防災行政無線(同報系)の整備促進 豪雨や津波等の災害時においては、一刻も早く住民に警報等の防災情報を伝達し警戒を呼び掛けることが、住民の安全を守る上で極めて重要となる。市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に情報を迅速かつ確実に伝達することができるものであり、その整備は重要である。国民保護法の制定を受け、市町村防災行政無線(同報系)は、災害対策のみならず国民保護の観点からも非常に重要なものとなっているが、その整備率は75.5%(平成20年3月末現在)にとどまっていることから、早急に整備率の向上を図る必要がある(囲み記事「一刻も早い住民への防災情報伝達について」参照)。 なお、災害時等における住民への情報伝達の方法については、他にMCA無線システム(Multi Channel Access System)やデジタル移動通信システムを利用した方式が提唱されており、市町村防災行政無線(同報系)に代替する設備としてこれと同様の財政支援措置を受けられるものとなっている。ウ ヘリコプターテレビ電送システムの整備促進 災害現場の映像情報は、被害規模及び概要を的確に把握し災害応急対策等を立案する際に非常に有効である。このため、消防庁や一部の都道府県及び消防機関においては、被災地の映像を現地から送信するための衛星車載局車を整備しているところである。 最近では、平成19年3月の能登半島沖を震源とする地震、同年7月の新潟県中越沖を震源とする地震及び平成20年6月の岩手県・宮城県内陸を震源とする地震などにおいて、現地の被災状況を消防防災ヘリコプターに搭載する映像伝送システム(ヘリコプターテレビ電送システム等)を用いて消防本部や消防庁へ伝達することにより迅速な被災地情報の収集が行われたところである。 しかしながら、ヘリコプターテレビ電送システムは、導入団体が増加しているものの、その映像受信範囲は全国をカバーするには至っていない状況にある(第2−9−5図)。第2-9-5図 ヘリコプターテレビ電送システム受信エリア及び関連機材 こうした状況を踏まえ、消防庁においては、消防組織法第50条の無償使用制度による可搬型ヘリコプターテレビ受信装置等の全国的配備を進めるとともに、平成17年度に開催された「初動時における被災地情報収集のあり方に関する検討会」の提言を受け、ヘリコプターから衛星に直接電波を送信する方法により、地上受信局に伝送できない地域でも被災地情報をリアルタイムで伝送するシステムの実用化に向け取り組んでいる(囲み記事「ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて」参照)。エ 緊急災害現地対策本部における通信設備の整備 東海地震、東南海・南海地震又は首都直下地震が発生した場合には、被災地における災害応急対策の調整や被災情報の取りまとめを迅速かつ的確に実施するため、現地に政府の緊急災害現地対策本部が設置されることとなっている。 このため、消防庁では、平成17年度に静岡県庁、平成19年度に東京都に地域衛星通信ネットワークを活用した通信設備を整備したところであり、引き続き、他の政府現地対策本部設置予定地についても整備を進めていくこととしている。オ 防災行政無線のデジタル化 近年、携帯電話、テレビ放送等様々な無線通信・放送分野においてデジタル化が進展し、データ伝送等による利用高度化が図られてきているところである。消防防災分野における防災行政無線についても、これまではアナログ通信方式による音声及びファクシミリ主体の運用が行われてきたものであるが、今後はICT(情報通信技術)を積極的に活用し、安心・安全な社会を実現するために文字情報や静止画像について双方向通信可能なデジタル方式に移行することで、高度化・高機能化を図ることが必要となってきている(第2−9−6図)。第2-9-6図 デジタル化の概要
一刻も早い住民への防災情報伝達について 豪雨や津波等の災害時においては、状況に応じ適切な避難勧告等を一刻も早く住民に伝達することが、住民の迅速な避難を実現し、被害を最小化する観点から極めて重要です。 住民への防災情報伝達手段としては、広報車による巡回等による方法もありますが、この場合、市町村管内の巡回に時間を要することから、速やかな情報伝達が困難です。他方、市町村防災行政無線(同報系)は、市町村庁舎と公園や学校等に設置されたスピーカーや各世帯に設置された戸別受信機の間の無線通信により、市町村庁舎等から住民に対し一斉に、災害時において情報を迅速かつ確実に伝達することができます。これまでも、豪雨等の発生の際に防災行政無線(同報系)が未整備であった市町村において、住民に対する情報伝達が遅れる等の問題が生じてきたところであり、その整備は非常に重要なものとなっています。 現在、その整備率は、市町村単位で、全国平均75.5%(平成20年3月末)となっているところですが、地域によって大きな差があり、千葉県、静岡県、鳥取県のように全ての市町村で整備している都道府県もあれば、整備済みの市町村が30%程度に留まる都道府県もあります。 また、最近、消防庁では、国民保護法の施行を背景として、J-ALERT(全国瞬時警報システム)の整備を推進しています。これは、津波警報、弾道ミサイル攻撃等の対処に時間的余裕がない事態が発生した場合に、消防庁より人工衛星を用いて情報を送信し、防災行政無線(同報系)を自動起動することにより、住民に緊急情報を瞬時に伝達するもので、防災行政無線(同報系)は、災害対応のみならず、国民保護の観点からも、重要な役割を担うものとなっています。 このため、未整備市町村においては、MCA無線システムやデジタル移動通信システムによる代替設備も視野に入れ、早急に整備を図ることが求められています。デジタル化の効果として、双方向通信が可能となることから、電話やテレメーターとして使用できるなど機能強化が図られます。防災行政無線(同報系)の概要防災行政無線(同報系)の整備状況
ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて 災害発生時に広範な被害状況を迅速に把握するためには、ヘリコプターによる上空からの映像を活用した情報収集が大変有効です。現在実用化されているシステムは、ヘリコプターから撮影した映像について、一旦地上の受信装置で受信し、これを経由して通信衛星に向けて伝送、さらにこれを地上で映像として受信する仕組みになっています。 このため、リアルタイムで映像を見るためには、受信装置がヘリコプターからの無線を受信可能な範囲内に設置されていることが不可欠ですが、固定して設置される受信装置については現在のところ全国を網羅する形で設置されていないため、これらカバーされていない地域においては中継車や可搬型受信装置を持ち込む必要があり、消防庁では当該受信装置を無償使用制度により配備し、受信可能エリアの拡大に努めています。 また、平成19年3月に発生した能登半島地震の時のように、大規模災害により陸路が寸断されると、中継車や可搬型受信装置を持ち込めず、リアルタイムでは映像が見られません。それを解消するための技術が、平成16年度に開発されたヘリコプター衛星通信(ヘリサット)システムです。このシステムは、ヘリコプターの上部で回転するブレードの隙間を狙って直接静止衛星へ送信し、ヘリコプターと衛星とが直接通信することにより、地上受信局の有無にかかわらず映像情報を送信できることが特徴です。ヘリコプターによる被災地情報収集の充実に向けて
(2)消防防災業務の業務・システムの最適化 消防庁においては、自治体消防を支える組織として、消防制度、基準の企画・立案、都道府県・市町村への消防に関する助言・指導等を所管事務として担ってきたところであるが、近年は、発生が懸念される大地震や大規模・特殊災害における緊急対応の必要性など、全国的な視点での総合的な消防防災体制の確立が新たに重要な課題となっている。最近では、大規模災害発生時の緊急消防援助隊のオペレーションや武力攻撃・大規模テロなどの緊急事態に対応するための計画の策定、情報収集なども新たな業務として担っており、これらの消防防災業務を効率的・効果的に遂行するため、現在、多くのシステムを整備・運用しているところであるが、阪神・淡路大震災をはじめ、その後も発生した各種災害ごとにきめ細かく対応してきた結果、システムの多様化、機能の重複等が課題となっている。 一方、情報システムの構築に関しては、電子政府構築計画(2003年7月17日各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)に基づき、業務・システムの最適化を実施することが求められており、そのため、情報システムのセキュリティや個人情報保護に留意しつつ、その時点で利用可能なICT(情報通信技術)を最大限に活用することにより、情報システムの簡素化、効率化、合理化、高度化及び透明性の向上を図ることを目的に、消防庁防災業務の業務・システムの最適化に取り組んでいる。
第3章 国民保護への取組1 国民保護法の目的等(1)国民保護法制定の経緯 平成15年6月に「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(平成15年法律第79号)」が成立・施行され、平成16年6月には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号。以下「国民保護法」という。)」が、関係政令とともに成立した。 これにより、武力攻撃事態等(武力攻撃事態及び武力攻撃予測事態をいう。以下同じ。)や大規模テロ等の緊急対処事態に対処するための法的基盤が整備された。 国民保護法の目的は、武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするため、国、地方公共団体、指定公共機関等の責務をはじめ、住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置等について定めることにより、国全体として万全の態勢を整備することである。
(2)国民保護法に係る地方公共団体の役割 国民保護法に基づき、地方公共団体は、警報の伝達や避難の指示、救援の実施等の国民の保護に関する措置(以下「国民保護措置」という。)の多くを実施する責務を有するなど、大きな役割を担うこととされている。また、平時においても、いざというときに迅速に国民保護措置が実施できるよう、国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)の作成や必要な組織の整備、訓練の実施などが求められている。 また、消防も、市町村長の指揮の下に避難住民を誘導し、国民の生命、身体及び財産を武力攻撃による火災から保護し、武力攻撃災害を防除及び軽減することが規定されるなど、重要な責務を負うこととされている(第3−1図)。第3-1図 国民の保護に関する措置の仕組み
(3)国民保護に係る消防庁の役割 消防組織法及び国民保護法に基づき、消防庁(総務大臣・消防庁長官)は、武力攻撃事態等において、国、地方公共団体が相互に連携する上で大きな役割を担うこととされている。【主な役割】〔1〕 内閣総理大臣が行った国民保護対策本部を設置すべき都道府県及び市町村の指定等を、都道府県知事及び市町村長に通知〔2〕 対策本部長(内閣総理大臣)による警報の発令の通知及び避難措置の指示の内容の都道府県知事への通知〔3〕 県境を越える避難に際し、必要と認める場合には、関係都道府県知事に勧告〔4〕 都道府県知事から報告を受けた安否情報について、照会に応じ情報提供〔5〕 武力攻撃災害を防除するための消防に関する措置及び消防の応援等に関し、都道府県知事又は市町村長へ指示〔6〕 被災情報を自ら収集し、又は都道府県知事等から報告を受け、対策本部長に報告〔7〕 都道府県知事からの求めに応じ、国や他の地方公共団体の職員の派遣について、あっせんを実施〔8〕 国民保護法に基づく地方公共団体の事務に関し、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡調整 このほか、消防庁では、国民保護法において国・政府・指定行政機関(各省庁)の役割として規定されている事項(国民に対する情報の提供、救援の支援、国民保護の重要性の啓発、訓練の実施等)について、「国民の保護に関する基本指針」、「消防庁国民保護計画」等に基づき対策を実施する。
2 国民の保護に関する基本指針・国民の保護に関する計画(1)基本指針と指定行政機関等の計画 国民保護法に基づく国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)は、平成17年3月25日に閣議決定され、その後随時変更が行われている。【基本指針の構成】〔1〕 基本的人権の尊重や指定公共機関の自主性の尊重など、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針〔2〕 着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃の4つを想定される武力攻撃事態の類型とし、それぞれの特徴及び留意点を示した武力攻撃事態の想定に関する事項〔3〕 国民保護措置を的確かつ迅速に実施するための体制の整備に関すること〔4〕 住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処に関する措置、国民生活の安定、武力攻撃災害の復旧等についての国、地方公共団体等のとるべき措置〔5〕 武力攻撃に準ずる大規模テロ等の事態(緊急対処事態)における国民保護措置に準じた措置の実施〔6〕 国民の保護に関する計画等を作成する際の関係者からの意見聴取 指定行政機関(各省庁)の長、都道府県知事及び指定公共機関は、基本指針に基づき、国民保護計画又は国民の保護に関する業務計画(以下「国民保護業務計画」という。)を作成することとされている。指定行政機関及び都道府県の国民保護計画については、平成17年度中にすべての団体の計画が閣議で了承され、指定公共機関の国民保護業務計画についても、平成18年5月までに全指定公共機関で作成された。 市町村長及び指定地方公共機関は、都道府県の国民保護計画に基づき、国民保護計画又は国民保護業務計画を作成することとされており、平成19年度末までに大部分の団体が計画を作成したところである(第3−2図)。第3-2図 国民の保護に関する基本指針・計画の作成状況
(2)消防庁国民保護計画 消防庁は、指定行政機関の一つとして、基本指針に基づいて、その所掌事務に関する国民保護計画を作成することとされている。消防庁の国民保護計画では、消防庁が実施する国民保護措置の内容、実施方法、体制、関係機関との連携方法等を定めている。 消防庁の国民保護計画は、平成17年10月28日に他の省庁の国民保護計画とともに閣議で了承され、その後随時変更が行われている。【消防庁国民保護計画の特徴】〔1〕 テロやゲリラの侵攻などの突発的な事案においては、全職員体制の消防庁緊急事態連絡室を設置し、地方公共団体との連携や情報交換のための初動体制を整備すること。〔2〕 必要に応じ、全国瞬時警報システム(J-ALERT)等により、地方公共団体や住民に瞬時に緊急情報を伝達すること。〔3〕 自然災害の場合等において他県の消防部隊が応援に駆けつける緊急消防援助隊の仕組みを、武力攻撃やテロの場合においても活用するため、部隊の増強や資機材の整備を図ること。  特に、NBC災害に対応するためには、対応能力を持つ緊急消防援助隊による応援が重要なため、当該拠点となる消防本部の充実を図ること。〔4〕 住民の避難誘導において重要な役割を果たす消防団や自主防災組織の充実を図るため、啓発の充実や設備の整備等を支援すること。〔5〕 住民の避難誘導や被災者の救助に当たっては、平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故のように事業所の協力が必要となることから、被災時における事業所と地方公共団体との連携を支援すること。
3 地方公共団体における国民保護計画の整備(1)消防庁による国民保護モデル計画 消防庁では、地方公共団体の国民保護計画の作成に当たり、「都道府県国民保護モデル計画」(平成17年3月)及び「市町村国民保護モデル計画」(平成18年1月)を作成し、各地方公共団体に対して技術的助言を行った。
(2)都道府県国民保護計画 都道府県の国民保護計画では、基本指針に基づき、当該都道府県の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該都道府県が行う国民保護措置に関する事項やその実施体制、市町村の国民保護計画及び指定地方公共機関の国民保護業務計画の作成の基準となるべき事項等を定めることとされている。また、都道府県が国民保護計画を変更する際には、基本指針や指定行政機関及び他の都道府県の国民保護計画と整合性等を確保する観点から、内閣総理大臣に協議しなければならないこととされている。都道府県国民保護計画は、平成17年度末までにすべての都道府県において作成されている。国民保護計画に基づき国民保護訓練を実施した都道府県は、訓練結果を踏まえ、さらに迅速かつ的確な対応とるべく随時計画の見直しを実施している。
(3)市町村国民保護計画 市町村の国民保護計画では、都道府県の国民保護計画に基づき、当該市町村の地域における国民保護措置の総合的な推進に関する事項、当該市町村が行う国民保護措置に関する事項や実施体制等を定めることとされている。また、市町村が国民保護計画を作成又は変更する際には、都道府県や他の市町村の国民保護計画との整合性等を確保する観点から、都道府県知事に協議しなければならないこととされている。 市町村における国民保護計画は、平成17年度に作成された都道府県の国民保護計画に基づいて作成することになるため、平成18年度を目途に作成することとされ、平成20年10月1日現在、98.7%の市町村において国民保護計画が作成されている。 市町村は、武力攻撃事態等においては、警報や避難の指示の住民への伝達、避難住民の誘導、安否情報の収集・提供など直接住民と接する非常に重要な役割を担うこととされている。このため、夜間・休日等を問わずに起きる事案に的確に対応できるような24時間の即応体制を構築しておくことが求められる。また、避難住民の適切な誘導のため、日ごろから消防団や自主防災組織、警察等との連携・協力関係を構築しておくことが非常に重要である。
4 国民保護体制の充実(1)地方公共団体における体制整備の推進 都道府県知事及び市町村長は、国民保護計画で定めるところにより、それぞれの区域に係る国民保護措置を的確かつ迅速に実施するために必要な組織を整備しなければならないとされているが、今日の地方公共団体には、国民保護関連事案に対する体制の整備はもとより、相次ぐ地震等の自然災害やインフラ関連の事故、新たな感染症など、住民の安心・安全を脅かす様々な危機管理事案に対しても、的確かつ迅速な対応が強く求められている。 このため消防庁では、地方公共団体における危機管理体制をより一層充実強化するために、平成18年度から「地方公共団体における総合的な危機管理体制の整備に関する検討会」を開催している。平成18年度は地方公共団体における取組状況等について調査・分析を行い、平成19年度は主に都道府県における〔1〕危機管理組織のあり方、〔2〕危機管理事案への対応のあり方、〔3〕平素から取り組むべき事項、〔4〕人材育成のあり方等について検討し、平成20年度は主に市町村における取組等について検討している。また消防庁では、平成18年度より「地方公共団体の危機管理に関する懇談会」を開催し、有識者から意見・助言を得ている。 これら以外にも地方公共団体の体制強化を支援するため、平成20年度においては、標準団体ベースで、都道府県で5人分、市町村で3人分の国民保護対策関係職員の人件費を交付税算定上、基準財政需要額に計上しているところである。
(2)情報システムの整備ア 全国瞬時警報システム(J-ALERT) 武力攻撃事態等において、住民の避難を的確かつ迅速に行うためには、武力攻撃事態等に関する情報を、迅速に住民等に伝達できるシステムを構築しておくことが大変重要である。特に、弾道ミサイル攻撃のように対処に時間的余裕がない場合に、できる限り迅速に住民に情報を伝達するためのシステムの構築が喫緊の課題となっている。 このため、消防庁では、消防庁から衛星通信ネットワークを通じて、直接、市区町村の同報系防災行政無線を起動させることによりサイレンを自動吹鳴させ、弾道ミサイル攻撃に関する情報や緊急地震速報、津波警報、気象警報などの防災情報等を、人手を介さず瞬時かつ自動的に住民に伝達する全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備の促進に取り組んでいる。 そのための施策として、消防庁は、機器整備の財源に地方債(防災対策事業債(特に推進すべき事業)として、事業費の90%を起債対象とし、その元利償還金の50%を交付税算入)を充てることができるようにしている等、地方公共団体によるシステム整備を推進している。第3-3図 全国瞬時警報システム(J-ALERT)イ 安否情報システム 国民保護法により、総務大臣及び地方公共団体の長は、武力攻撃事態等において、避難住民及び武力攻撃災害により死亡又は負傷した住民の安否に関する情報を収集・整理し、照会があったときは速やかに回答することとされている。 消防庁では安否情報の収集及び提供を円滑に行うためのシステム(安否情報システム)について開発を行い、平成20年4月25日に運用を開始した。第3-4図 安否情報の流れ(関係機関相関イメージ) 地方公共団体による安否情報システムの利用に際しては、運用体制の強化を図ることが重要であり、消防庁では、〔1〕安否情報の収集・入力に係る人材確保、〔2〕警察・医療機関等の関係機関との協力体制の構築、〔3〕国民保護運用訓練等の機会を活用して地方公共団体が行う安否情報システムの事務処理訓練に係るマニュアルや要領の配布などの支援に取り組んでいる。
(3)特殊標章の取扱い 指定行政機関の長、地方公共団体の長等は、武力攻撃事態等においては、指定行政機関や地方公共団体の職員で国民保護措置に係る職務を行う者又は国民保護措置の実施に必要な援助について協力をする者に対し、これらの者又はこれらの者が行う職務等に使用される場所等を識別させるため、1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書第66条3の国際的な特殊標章(第3−5図)及び同条3の身分証明書(以下「特殊標章等」という。)を交付し、又は使用させることができることとされている。この特殊標章等については、国民保護法上、みだりに使用してはならないこととされており、各交付権者においては、それぞれ交付対象者に特殊標章等を交付する際の取扱要領を定め、交付台帳を作成すること等により、特殊標章等の適正使用を担保することが必要となっている。第3-5図 特殊標章 消防庁においては、関係省庁間の申合せを踏まえ、消防庁特殊標章交付要綱を作成し、地方公共団体や消防機関に対して、各交付権者が作成することとなっている交付要綱の例を通知するなど、特殊標章等が適正に取り扱われるよう取り組んでいる。また、平素の訓練や啓発などにおいて積極的に活用されることにより、国民の国民保護への理解を深めてもらうための取組を行っている。
(4)普及啓発・研究・教育 国民保護法上、政府は、国民保護措置の重要性について国民の理解を深めるため、国民に対する啓発に努めることとされている。また、地方公共団体は、国民保護措置のうち、警報の通知・伝達、避難の指示、避難住民の誘導や救援に関する措置などを実施する責務を有しているため、具体的な措置を行う職員に対し、地方公共団体が実施する国民保護措置の具体的内容について、十分周知徹底しておくことが求められる。このため、地方公共団体の一般行政職員、消防職員、消防団員等に対して国民保護法の趣旨を浸透させ、武力攻撃事態等における国民保護措置について理解が得られるよう、今後、繰り返し研修及び普及啓発活動を行っていく必要がある。 消防庁においては、地方公共団体の一般行政職員、消防職員、消防団員等が危機管理や国民保護に関する専門的な知識を修得するため、消防大学校におけるカリキュラムとして国民保護コースを設けているところであるが、都道府県の自治研修所や消防学校においても、国民保護に関するカリキュラムの創設等に積極的に取り組むことが望まれる。 また、国民保護措置を円滑に行うためには、自主防災組織をはじめとする住民に対しても、国民保護法の仕組みや国民保護措置の内容、避難方法等について、広く普及啓発を行うことが大切である。 消防庁では、啓発資料等として、これまでに、国民保護法をはじめとする有事関連法の概要や国及び地方公共団体の役割等についてまとめたパンフレット「有事における国民保護のためのしくみ」(平成16年度に作成したパンフレットの改訂版)、消防団員や自主防災組織リーダーを対象としたリーフレット「なくてはならない国民保護」を作成し、消防庁ホームページ(http://www.fdma.go.jp/)に掲載するとともに、武力攻撃事態等における消防機関の役割などをまとめた視聴覚CD「消防機関における国民保護措置上の留意事項等について」を作成している。また、地方公共団体による国民保護訓練のための教育資料として、国民保護担当職員を対象としたDVD「国民保護のしくみと訓練」、平成18年度に実施した鳥取県国民保護共同実動訓練の記録DVD「化学剤テロ発生〜緊急対処事態における対応活動〜」及び都道府県職員向けに国民保護訓練の企画・立案を示した冊子「地方公共団体における国民保護図上訓練の手引(都道府県版)」を作成している。第3-6図 消防庁が作成した国民保護啓発媒体
(5)訓練 国民保護法では、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長等並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、それぞれの国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、それぞれ又は他の指定行政機関の長等と共同して、国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければならないとされている。 特に、国民保護計画等を実効性のあるものとするには平素から様々な事態を想定した実践的な訓練を行い、国民保護措置に関する対処能力の向上や関係機関との連携強化を図ることが重要である。 平成20年度、消防庁では内閣官房、関係省庁と連携し、地方公共団体と共同で計18件の訓練を実施又は実施予定となっている(囲み記事「平成20年度における国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練について」参照)。 また、地方公共団体においても、作成した国民保護計画の実効性についての検証等のため、平成20年度も多くの地方公共団体が単独で訓練を実施又は実施を予定しているところである(第3−1表)。第3-1表 平成20年度国民保護訓練
平成20年度における国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練について 平成20年度に国と地方公共団体が共同で実施する訓練は、実動訓練4件、図上訓練14件が実施又は実施予定となっています(平成19年度実績:実動訓練5件、図上訓練10件)。(1)実動訓練 平成20年度の国と地方公共団体が共同で行う実動訓練は、山口県(11月)、鳥取県(11月)、岡山県(11月)、長野県(11月)の4県において実施されています。 これらの訓練では、大規模集客施設における化学テロ等の発生を想定し、国の現地対策本部や県及び市の対策本部等の設置、それら相互の連絡調整、住民の避難誘導、医療等の救援、さらには災害対処に関する措置など、国民の保護のための一連の措置について、実際に現場で住民・関係機関の行動を伴って訓練が行われます。(2)図上訓練 平成20年度の国と地方公共団体が共同で行う図上訓練は、三重県(10月)、宮崎県(10月)、秋田県(11月)、青森県(11月)、滋賀県(11月)、大分県(11月)、奈良県(11月)、愛媛県(1月)、新潟県(1月)、長崎県(2月)、徳島県(2月)、神奈川県(2月)、山形県(2月)、福井県(2月)の14県で実施又は実施予定となっています。 これらの訓練では、国・県・市の対策本部等の設置運営、それら相互の連絡調整、警報の通知、避難の指示等、国民の保護のための措置に係る状況判断及び情報伝達要領についての訓練が主に行われます。 また、シナリオについては、爆破テロや化学テロのほか、平成20年度は共同訓練としては初めて、生物剤や放射性物質を使用したテロの発生を想定し、それらの対処についての訓練も行います。 また、平成19年度から、共同訓練の一環として、全国を6ブロックに分け、都道府県の国民保護担当者等を対象にセミナーを開催しており、平成20年度も同様に開催することとしています。 このセミナーは、共同訓練から得られた成果を他の都道府県と広く共有することで、地方公共団体が実施する国民保護措置及び訓練手法の理解の促進を図ることを狙いとしています。 なお、これらの国と地方公共団体が共同で実施する国民保護訓練については、国民保護法で定めるところにより、その費用は原則として国が負担することになっています。図上訓練(三重県)
5 テロ対策(1)消防庁における危機管理体制の整備 平成13年9月11日の米国同時多発テロ事件の発生及び米国等のアフガニスタンへの攻撃を踏まえ、消防庁では、平成13年10月8日に消防庁長官を本部長とする「消防庁緊急テロ対策本部」を設置した。また、イラク情勢等の緊迫化を踏まえ、平成15年3月18日、消防庁に「イラク情勢等を踏まえた消防庁テロ対策室」を設置するとともに、テロ災害への一層の対処の強化を図るため、平成17年4月1日からテロ対策専門官を設置するなど所要の体制整備を行った。加えて、緊急対処事態等を想定した訓練を繰り返し実施し、対応体制の充実を図っている。
(2)地方公共団体における危機管理体制の整備 総務省及び消防庁では、米国同時多発テロ事件以降、地方公共団体におけるテロ災害対策に万全を期することとし、特に、都道府県を中心とした適切な体制整備を緊急に図るため、都道府県におけるテロ対策本部の設置及び24時間対応可能な体制の構築、テロ対策に関する国と地方公共団体の連携、警察機関との一層の連携の強化など、所要の体制整備について要請を行い、全都道府県においてテロ対策本部等が設置された。
(3)関係機関との連携の強化 テロ災害発生時において適切な応急対応措置を講じるためには、消防機関、警察機関、自衛隊等の関係機関との連携の強化を図る必要があり、平成13年11月には、政府のNBCテロ対策会議幹事会において、NBCテロ対処現地関係機関連携モデルが取りまとめられた。消防庁では、都道府県等に対して、各地域の実情に応じた役割分担や活動内容等について、このモデルを参考に更に具体的に協議・調整し、NBCテロ対処体制整備の推進を図るよう要請した。 また、米国における炭疽菌事件などを踏まえ、平成15年3月に、炭疽菌、天然痘の災害発生に備えるための関係機関の役割分担と連携及び必要な処置を明確化した「生物テロへの対処について」が取りまとめられ、その旨を各都道府県内の関係部局、市町村及び消防機関に対して周知した。 各都道府県内では、比較的規模の大きな消防本部等を中心に、NBCテロ災害を想定した合同訓練を実施し、関係機関の連携の強化を図っている。
(4)テロ災害に対応するための装備の整備 消防庁では、米国における炭疽菌事件の発生などを踏まえ、BCテロ災害に対する消防本部の対処能力の強化を緊急に図る必要が生じたため、平成13年度第一次補正予算等により、陽圧式化学防護服、携帯型生物剤検知装置等の資機材を購入し、各都道府県の代表的な消防本部に対して無償貸与した。平成20年度には、携帯型化学剤検知器24器を整備し、特別高度救助隊等に各1器を再配置する。また、N災害への対応としては、平成16年度から平成18年度に、地域のバランスを考慮しつつ、全国の代表的な消防学校に対して、放射線防護服、放射線測定器等を無償貸与した。 さらに、国庫補助の対象として、平成14年度に陽圧式化学防護服、生物剤検知装置等のテロ対策用特殊救助資機材、平成16年度にNBC災害対応自動車を加えている。 また、大規模特殊災害やNBCテロ災害に対応するため、高度な救助技術に関する知識・技術、各種資格等を兼ね備えた救助隊員で構成される特別高度救助隊・高度救助隊を整備するとともに、平成19年度に大型除染システム車5台を整備し主要都市に配備するなど、NBCテロ災害に対する対処能力の強化を図っている。
(5)消防機関に対する危機管理教育訓練の充実強化 NBCテロに起因する災害に対処する際には、専門的な知識、技術が必要である。このため、消防庁では消防職団員を対象として、NBCテロ災害対応のための教材を作成し、全消防本部・全消防団等に配布した。 また、消防大学校においては、NBCテロ災害発生時における適切な消防活動を確保することを目的として、平成16年度からNBC災害講習会を新設した。さらに、平成18年度からは、特別高度救助隊等の養成講座として、緊急消防援助隊教育科(特別高度救助コース等)を新設した。 一方、都道府県の消防学校においても、平成16年度から特殊災害科が新設されている。
「国民保護における避難施設の機能に関する検討会」について 消防庁では、国民保護における避難施設の機能について、具体的かつ専門的に調査・検討することを目的として、平成19年10月より、「国民保護における避難施設の機能に関する検討会」を開催しました。 検討会では、国民保護事案に対応するために地方公共団体が指定している避難施設の現在の状況及び海外の事例を調査するとともに、NBC(核物質、生物剤、化学剤)等を用いた各種攻撃から国民の生命及び身体を保護するために避難施設が備えるべき機能等について検討を行い、〔1〕既に指定されている避難施設の機能強化と〔2〕新たな指定について、提言が示されました。(1)避難施設に対する提言 本検討会における、各種攻撃発生時に必要となる避難施設の機能やその強化策等についての検討をもとに、地方公共団体におきましては、現行の避難施設の現状を再度確認するとともに、避難施設の指定及び機能強化を進めていくことが求められます。 下表に、機能ごとに地方公共団体において取り組みやすいと考えられる方策を整理しました。(2)避難施設の更なる指定 現行の避難施設について機能強化を図るだけでなく、地下施設や堅ろうな施設等、一時的な避難(退避)により適している屋内施設について、国民保護における避難施設として可能な限り多く指定することも必要です。 特に、地下街、地下駅舎といった地下施設等については、各種の攻撃に際して、被害軽減の観点から有効です。 また、商業ビル、地下街、地下駅舎等の民間施設については、営業時間外の対応が困難であることや避難(退避)者に開放できるスペースが限られている等の課題もあることから、まずは当該施設の現状を確認し、施設管理者の要望等を十分に聞いた上で、指定に向けた積極的な取組みを行う必要があります。
最近の国際的な危機管理事案と消防庁の対応について 我が国周辺では、平成18年に発生した北朝鮮の弾道ミサイル発射事案や核実験事案以降も、引き続き、各地で地域紛争やテロ等危機管理事案が頻発しています。 特に近年、テロに用いられる兵器が小型化して個人が携帯可能になっており、また、次々と未知の感染症が発生するなど、これらの脅威は、多様化、複雑化しているとともに、その顕在化を正確に予想することが困難になっています。そのため、怠りなくこれらの事案に対し、情報収集に努めるとともに、適切な対応をとる必要があります。 また、従来型の着上陸作戦等と異なり、テロの脅威は、世界のどの地域においても例外なく発生し得ることから、地方公共団体においても、これらの情勢に関する関心が高くなってきています。 そこで、消防庁は、これらの事案に対し、積極的に情報収集に努め、日常的に地方公共団体に情報提供を行うとともに、随時、必要な情報を提供するよう努めています。 次図は、最近の国際的な危機管理事案に対する消防庁の対応を示したものです。最近の国際的な危機管理事案への対応
第4章 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり第1節 防火防災意識の高揚 平成19年中の火災を原因別にみると失火が全体の65.7%を占めていること、危険物に係る事故については原因の多くが人的要因にあること、地震や風水害における避難や二次災害の防止等については地域住民の日ごろからの備えや、災害時の適切な行動が基本となることなどから、災害に強い安全な地域社会をつくるためには、国民の防火防災意識の高揚に負うところが極めて大きい。 そのため、家庭、職場を問わず国民一人ひとりが常に防火防災に関心を持つとともに、それぞれが日ごろから自主防災の意識を持ち、災害が発生した場合に的確に対処できるような基礎知識を身に付けておくことが大切である。 このような観点から、消防庁では、年間を通じてテレビ放送等を利用した啓発を行うとともに、毎年春秋2回の「全国火災予防運動」(春季:3月1日〜7日、秋季:11月9日〜15日)、「危険物安全週間」(6月の第2週)、「防災とボランティア週間」(1月15日〜21日)、「防災週間」(8月30日〜9月5日)、「119番の日」(11月9日)などあらゆる機会をとらえて、国民の防火防災意識の高揚を図っている。また、毎年、安全功労者及び防災功労者に対して消防庁長官表彰を行い、特に功労が顕著な者について、内閣総理大臣表彰が行われている。 今後とも、国民の防火防災に関する関心を喚起し、意識の高揚を図っていく必要がある。
1 全国火災予防運動(1)全国火災予防運動 近年、都市構造や建築構造、生活様式の変化等に伴い、火災等の災害の要因が多様化してきている。 このような状況において、火災等の災害を未然に防止するためには、国民の一人ひとりが日ごろから防災の重要性を十分自覚し、自主的な防火安全活動を積極的に実施することが何よりも大切なことである。このような観点から、消防庁では、毎年春と秋の2回、全国火災予防運動の実施について通知し、国民に対する防火意識の高揚に努め、国民自ら火災予防を実践するよう働きかけている。ア 秋季全国火災予防運動(平成19年11月9日〜11月15日) 秋季全国火災予防運動は、火災が発生しやすい時季を迎えるに当たり、火災予防思想の一層の普及を図り、もって火災の発生を防止し、死傷事故や財産の損失を防ぐことを目的として行われるもので、消防庁では「火は見てる あなたが離れる その時を」を平成19年度の全国統一防火標語に掲げ、各省庁、各都道府県及び関係団体の協力の下に、「住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災防止対策の推進」、「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」を重点目標として、各種広報媒体を通じて広報活動を行った。これと併せて、各地の消防機関においても、予防運動の主旨に基づき、各種イベントの開催、消防訓練、防火講演、各家庭に対する住宅防火診断等の様々な行事を行った。 また、消防庁では、昭和62年から毎年11月9日を「119番の日」として設定し、各種行事を実施している。消防庁ポスター(火は見てる あなたが離れる その時を)イ 春季全国火災予防運動(平成20年3月1日〜3月7日) 平成20年春季全国火災予防運動では、前年の秋季全国火災予防運動と同一の全国統一防火標語の下に、「住宅防火対策の推進」、「放火火災・連続放火火災防止対策の推進」、「特定防火対象物等における防火安全対策の徹底」、「林野火災予防対策の推進」を重点目標として、秋季同様、様々な行事を実施した。消防庁ポスター(火は見てる あなたが離れる その時を)
(2)全国山火事予防運動(平成20年3月1日〜3月7日) 全国山火事予防運動は、広く国民に山火事予防思想の普及を図るとともに、予防活動をより効果的なものとするため、消防庁と林野庁の共同により、春季全国火災予防運動と併せて同期間に実施している。 平成20年の全国山火事予防運動では、「山火事は 地球の未来も 燃やします」を統一標語として、ハイカー等の入山者、地域住民、小中学校生徒等を重点対象とした啓発活動、駅、市町村の庁舎、登山口等への警報旗の設置やポスター等の掲示、報道機関等を通じた山火事予防思想の普及啓発、消防訓練の実施や研究会の開催、地域住民、森林所有者等による山火事予防組織と婦人(女性)防火クラブ等民間防火組織が連携した予防活動等を通じ、林野火災の未然防止を訴えた。
(3)車両火災予防運動(平成20年3月1日〜3月7日) 車両火災予防運動は、車両交通の関係者及び利用者の火災予防思想の高揚を図り、もって車両火災を予防し、安全な輸送を確保することを目的として、消防庁と国土交通省の共同主唱により、春季全国火災予防運動とあわせて同期間に実施している。平成20年の車両火災予防運動では、車両カバーの防炎化を推進し、放火火災防止対策を図るとともに、駅舎及びトンネルの防火安全対策の徹底として、初期消火、通報及び避難などの消防訓練の実施及び消防用設備等の点検整備を推進した。また、地下鉄駅舎等における防災体制の整備・充実を図った。
(4)消防記念日(平成20年3月7日) 昭和23年3月7日に「消防組織法」が施行され、我が国の消防は、市町村消防を原則とする今日の「自治体消防」として誕生した。そして、同法が施行されて2周年を迎えた昭和25年、広く消防関係職員及び住民の方々に「自らの地域を自らの手で火災その他の災害から守る」ということへの理解と認識を深めていただくため「消防記念日」が制定された。 消防組織法が施行されて60周年を迎えた平成20年3月7日には、天皇皇后両陛下の御臨席を仰ぎ「自治体消防制度60周年記念式典」を挙行し、我が国の消防の発展を回顧したところ。 また、3月7日は、春季全国火災予防運動(毎年3月1日〜3月7日)の最終日となっており、全国の消防本部等において、消防訓練、記念式典や消防防災功労者に対する表彰など、様々な行事が行われている。
(5)文化財防火デー(平成20年1月26日) 昭和24年1月26日の法隆寺金堂火災を契機として、昭和30年以降、消防庁と文化庁の共同主唱により、毎年1月26日を「文化財防火デー」と定め、全国的に文化財防火運動を展開している。 また、文化財の所有者及び管理者は、管轄する消防本部の指導の下に重要物件の搬出や消火、通報及び避難の訓練などを積極的に実施し、文化財の防火・防災対策に努めている。文化財防火デー消防訓練 二荒山神社(栃木県日光市)(文化庁提供)
2 危険物安全週間 危険物に係る火災・流出等の事故は近年増加傾向にあり、それらの事故原因をみると、管理や確認が不十分であるなど人的要因によるものが多くなっている。 こうした事故を未然に防止するために、消防庁では、平成2年度以降、毎年6月の第2週を「危険物安全週間」とし、危険物関係事業所における自主保安体制の確立を呼びかけるとともに、家庭や職場における危険物の取扱いに対する安全意識の高揚及び啓発を図っている。具体的には、各都道府県、関係団体等と協力して、推進標語の募集や推進ポスターの作成をはじめとする広報活動を行っているほか、危険物の安全管理の推進や危険物の保安に功績のあった個人、団体及び事業所に対し表彰を行っている。 平成20年度の危険物安全週間(6月8日〜14日)では、バドミントン選手の小椋久美子さんと潮田玲子さんをモデルとした推進ポスターを作成し、「安全へ確かなスマッシュ保守点検」を推進標語として全国的な啓発運動を展開した。また、各地域においては、危険物関係事業所の従業員や消防職員を対象とした講演会や研修会が開催されたほか、消防機関による危険物施設を対象とした立入検査や自衛消防組織等と連携した火災等を想定した訓練などが行われた。消防庁ポスター(安全へ 確かなスマッシュ 保守点検)
3 防災知識の普及啓発 平成20年においても記録的大雨が各地で観測されており、また一方で、東海地震や東南海・南海地震、首都直下地震といった大規模地震の発生が予想されているところであり、被害を最小限に食い止めるためには、国、地方公共団体が一体となって防災対策を推進するとともに、国民一人ひとりが、出火防止、初期消火、避難、救助、応急救護などの防災に関する知識や技術を身に付け、日ごろから家庭での水、食料等の備蓄、家具の転倒防止等の自主防災を心がけることが極めて重要である。また、防災のための講習会や防災訓練に積極的に参加し、地域ぐるみ、事業所ぐるみの防災体制を確立していく必要がある。 このため、政府は、8月30日から9月5日までを「防災週間」(9月1日を「防災の日」)、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」(1月17日を「防災とボランティアの日」)と定めて、国民の防災意識の高揚を図っている。とりわけ、「防災週間」では大規模防災訓練等を中心として行事が行われ、「防災とボランティア週間」では、全国各地で防災写真展や防災講習会、消火・救助等の防災訓練等の事業が実施されている。 このほか、消防庁においては、年間を通じ、テレビ放送等により、防災知識の普及啓発を行うとともに、地方公共団体では、防火教室の開催、自主防災組織の育成などを通じて、住民、事業所等に対する防災知識の普及啓発に努めている。 また、平成16年度から平成18年度にかけて全国の地方公共団体などの協力を得て、各地に残されている災害にまつわる資料や情報を収集し「災害伝承情報データベース」を構築した。このデータベースはインターネットを通じて消防庁のホームページから閲覧が可能であり、防災意識の高揚や、防災教育用の教材としての活用が図られることが期待される。 さらに、平成19年度に地方公共団体において実施される一般向けの防災研修を支援することを目的として、講師となる地方公共団体職員向けの「防災研修カリキュラム・講師支援教材」をとりまとめた。受講者の興味を引きやすく、理解を促すための基本的なカリキュラムについて例示するとともに、研修に活用することを想定した教材、資料作成に活用できる写真素材などを掲載している。
第2節 住民等の自主防災活動1 コミュニティにおける自主防災活動(1)コミュニティにおける自主防災活動の促進 防災体制の強化については、消防機関をはじめとする防災関係機関による体制整備が必要であることはいうまでもないが、住民による地域ぐるみの防災体制を確立することも重要である。 特に、大規模災害時には、電話が不通となり、道路、橋りょう等は損壊し、電気、ガス、水道等のライフラインが寸断され、常備消防をはじめとする防災関係機関等の災害対応に支障を来すことが考えられる。また、広域的な応援態勢の確立にはさらに時間を要する場合も考えられる。このような状況下では、地域住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という固い信念と連帯意識の下に、組織的に出火の防止、初期消火、情報の収集伝達、避難誘導、被災者の救出・救護、応急手当、給食・給水等の自主的な防災活動を行うことが必要不可欠である。 阪神・淡路大震災においても、地域住民が協力し合って初期消火を行い、延焼を防止した事例や、救助作業を行い、多くの人命を救った事例等が数多くみられ、地域における自主的な防災活動の重要性が改めて認識されたところであり(第4−2−1図)、これに伴い全国における自主的な防災組織による活動カバー率(全国の総世帯数に対する組織されている地域の世帯数の割合)も増加傾向にある(第4−2−2図)。第4-2-1図 生き埋めや閉じ込められた際の救助第4-2-2図 自主防災組織の推移 このような自主防災活動が効果的かつ組織的に行われるためには、地域ごとに自主防災組織を整備し、平常時から、災害時における情報収集伝達・警戒避難体制の整備、防災用資機材の備蓄等を進めるとともに、大規模な災害を想定し防災訓練を積み重ねておくことが必要である。 また、地域の防火防災意識の高揚を図るためには、地域の自主防災組織の育成とともに、婦人(女性)防火クラブ、少年消防クラブ、幼年消防クラブ等の育成強化を図ることも重要である。
(2)自主防災組織ア 地域の自主防災活動 自主防災組織は地域住民の連帯意識に基づき自主防災活動を行う組織で、平常時においては、防災訓練の実施、防災知識の普及啓発、防災巡視、資機材等の共同購入等を行っており、災害時においては、初期消火、避難誘導、救出・救護、情報の収集・伝達、給食・給水、災害危険箇所等の巡視等を行うこととしている。 なお、平成20年4月1日現在では、全国市区町村のうち1,649市区町村で13万3,344の自主防災組織が設置されており、組織による活動カバー率は71.7%となっている(附属資料26)。 これらの自主防災組織を育成するために、延べ1,343市区町村において、資機材購入及び運営費等に対する補助を行い、また、延べ1,075市区町村において、資機材等の現物支給を行っており、これらに要した経費は平成19年度で合計7億3,881万に達している。 消防庁としても、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成7年度から平成17年度までの間、国庫補助制度により自主防災活動用の資機材の整備を促進し、自主防災組織等の活動の一層の推進を図ったほか、財団法人自治総合センターにおいては、コミュニティ助成事業の一環として防災用資機材の整備に対する助成を行っている。 また、消防庁では、テレビ等による防災活動の啓発を行うとともに、自主防災組織活動を進めるための指針である「自主防災組織の手引」(冊子)や自主防災組織結成のためのポイントを示した「自主防災組織の結成に向けて」(CD-ROM)を作成し、それぞれ各自治体等へ配布している。今後は、住民が参加しやすい工夫を凝らすことなどにより、地域の防災力を一層向上させていくことが必要である。 平成15年度に開催された「地域の安全・安心に関する懇話会」では、自主防災組織の活性化のためには、自主防災組織相互の協調・交流や行政・企業・教育その他の分野との連携が重要とされ、自主防災組織が相互の活動内容を知り、連絡を取り合うための都道府県や市町村単位の連絡協議会の設置が有効と示された。 また、地域の自主防災組織とその他の団体が連携し、公民館、消防団詰所などを活動拠点として、防災・防犯活動などを幅広く展開し、地域の安心・安全を確保する「地域安心安全ステーション整備モデル事業」を平成16年度から実施しており、平成20年4月1日現在までに計412団体でモデル事業を実施している。平成18年度からは、地域安心安全ステーションの全国展開を図るため、事業実施団体のリーダーや有識者などによる講演等により地域安心安全ステーションへの理解を深める出前講座を年6か所で実施している。 なお、防災訓練における住民の事故については、防火防災訓練災害補償等共済制度により、住民が安心して訓練に参加できる体制が確立されている。イ 婦人(女性)防火クラブ 家庭の主婦等を中心に組織された自主防災組織である婦人(女性)防火クラブは、家庭での火災予防の知識の修得、地域全体の防火意識の高揚等を図っている。また、万一の場合には、お互いに協力して活動できる体制を整え、安心安全な地域社会をつくるため、各家庭の防火診断、初期消火訓練、防火防災意識の啓発等、地域の実情や特性に応じた防火活動を行っている。 なお、平成20年4月1日現在、全国の組織数は、1万1,586団体、約182万人となっており、39道府県において都道府県単位での連絡協議会が設置されている。このような連絡協議会は、団体相互の交流と活動内容の情報交換、さらには研修を行う場として、婦人(女性)防火クラブの活動内容の充実強化に資するものとなっている。ウ 少年消防クラブ 10歳以上15歳以下の少年少女により編成される少年消防クラブは、身近な生活の中から火災・災害を予防する方法等を学ぶことを目的とし、研究発表会、ポスター等の作成、防災タウンウォッチングや防災マップづくりなどの活動を行っている。 消防庁では、地方公共団体等とともに全国少年消防クラブ運営指導協議会(会長:消防庁長官)を設けて、優良なクラブや指導者に対する表彰を実施しており、平成19年度は、特に優良なクラブ(ゴールド消太賞受賞団体)18団体、優良なクラブ(シルバー消太賞受賞団体)23団体、及び優良な指導者7名を表彰した。 また、平成19年度も、表彰式とあわせて「自分で守ろう、みんなで守ろう」を合い言葉に「少年少女消防クラブフレンドシップ2008」を開催し、全国から多くのクラブ員が参加し、交流を深めたところである。 なお、平成20年5月1日現在の組織数は、5,284団体、約42万人となっている。エ 幼年消防クラブ 児童・園児を中心とした幼年消防クラブは、幼年期において、正しい火の取扱いについてのしつけをし、消防の仕事をよく理解させることにより、火遊び等による火災の減少を図るものであり、近い将来、少年・少女を中心とした防災活動に参加できる素地をつくるため、9歳以下の児童、幼稚園、保育園の園児等を対象として編成され、消防機関等の指導の下に組織の育成が進められている。 なお、平成20年5月1日現在の組織数は、1万4,154団体、約120万人となっている。
2 事業所の自主防災体制 一定数量以上の危険物等を取り扱う事業所は、消防法及び石油コンビナート等災害防止法に基づき、防災組織を設置することが義務付けられている。また、法令等により義務付けられていない事業所においても、任意に自主防災組織が設置される場合も多くあり、その数は、平成20年4月1日現在、2,216組織となっている。 事業所の防災組織は、本来自らの施設を守るために設けられているものであるが、地震などの大規模災害が発生した際に、自主的に地域社会の一員として防災活動に参加・協力できる体制の構築が図られれば、地域防災力の充実強化に大きな効果をもたらすものと考えられる。 平成17年4月に発生したJR西日本福知山線列車事故においては、発災直後から周辺の事業所が所有する資機材を活用して被災者の救出救護活動に当たるなど、事業所の協力が重要であることが改めて認識された。 災害時における地域防災力の強化は喫緊の課題となっており、自然災害のみならず、前出の列車事故のような大規模事故あるいはテロ災害等への地域の対応力を強化するためには、地域に所在する事業所の協力が不可欠である。 消防庁では、平成17年度に、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力検討会」を開催し、災害発生直後の初動対応において、地方公共団体と事業所が連携して迅速かつ的確に災害対応を行う仕組みづくりについて検討を行い、報告書として取りまとめて公表した。また、平成18年度において、「災害時における地方公共団体と事業所間の防災協力モデル事業」を実施し、先進的な取組についてまとめた事例集を作成し公表するとともに、地方公共団体への提供を行った。
3 災害時のボランティア活動 被災地における様々なニーズに合わせた柔軟な対応を行う上で、ボランティア活動が非常に重要な役割を担っていることが、阪神・淡路大震災において改めて認識された。平成7年12月に改正された災害対策基本法においても、ボランティアの活動環境の整備が防災上の配慮事項として位置付けられたところであり、また、防災関係機関をはじめ、広く国民が、災害時におけるボランティア活動や自主防災活動についての認識を深めるとともに、災害への備えの充実強化を促進するために、「防災とボランティアの日」(1月17日)、「防災とボランティア週間」(1月15日から21日)も創設されている。 消防庁においては、地方公共団体とボランティア団体等が連携を図る上で必要な情報が相互に得られるよう、平成17年度には、「災害ボランティアと自主防災組織の連携に関する事例集」を作成し、自主防災組織等が「いざ」という時に活用できるように、各都道府県への配布と消防庁のホームページへの掲載を行った。 また、大規模災害時等の混乱の中でもボランティア活動が円滑に行われるよう、平成11年度から、地方公共団体によるボランティアの活動環境整備の促進を目的として、消防庁、都道府県、政令指定都市等で構成する「災害ボランティアの活動環境整備に関する連絡協議会」を年1回開催している。この協議会では、毎年、地方公共団体における災害ボランティアに関する取組事例等の紹介や災害ボランティア団体からの活動状況に関する講演等により、都道府県・政令指定都市の担当者間で情報共有を行っている。
第3節 災害に強い安全なまちづくり1 防災基盤等の整備(1)公共施設等の耐震化 消防庁では、地震等の大規模な災害が発生した場合においても、災害対策の拠点となる施設等の安全性を確保し、もって被害の軽減及び住民の安全を確保できるよう防災機能の向上を図るため、「災害に強い安全なまちづくり」の一環として、公共施設等耐震化事業により、 〔1〕 避難所となる公共・公用施設(学校や体育館など) 〔2〕 災害対策の拠点となる公共・公用施設(都道府県、市町村の庁舎や消防署など) 〔3〕 不特定多数の住民が利用する公共施設(文化・スポーツ施設、道路橋りょう、交通安全施設、福祉施設など)の耐震化を推進している。 なお、「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査報告書」(平成20年11月)によると、地方公共団体が所有している公共施設等のうち、災害応急対策を実施するに当たり、平成19年度末まで地方公共団体が所有又は管理している防災拠点となる公共施設等の19万2,735棟のうち12万415棟(62.5%)の耐震性が確保されていると考えられる(第4−3−1図)。第4-3-1図 地方公共団体の防災拠点となる公共施設等の耐震化の作成 消防庁では、地方公共団体が公共施設の耐震化を進める上での参考となる資料として「防災拠点となる公共施設の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を作成し、すべての地方公共団体へ配付するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している。 さらに、初動対応の要となる都道府県・市町村庁舎等の耐震率の向上や家具転倒防止等自主防災の推進など「切迫する大地震に立ち向かう施策」に取り組んでいるところである。
(2)防災施設等の整備 災害に強い地域づくりを推進するためには、消防防災の対応力の向上に資する施設等の整備が必要であり、消防庁では、消防防災施設整備費補助金や防災基盤整備事業等により、防災情報通信施設や耐震性貯水槽等の整備を促進している。 平成16年(2004年)新潟県中越地震の際には、一部の市町村において停電により窓口業務や県防災行政無線等に支障が生じ、平成17年7月23日の千葉県北西部を震源とする地震及び同年8月16日の宮城県沖を震源とする地震の際には震度情報の送信が遅延するなどの障害が生じた。 こうしたことから、消防庁では、非常用電源の整備、保守点検の実施と的確な操作の徹底、防災行政無線を使用した通信訓練の実施等を地方公共団体に要請するとともに、迅速かつ確実な震度情報の伝達を可能とする次世代の震度情報ネットワークのあり方に関する検討を行い、地方公共団体に提言したところである。
(3)防災拠点の整備 大規模災害対策の充実を図る上で、住民の避難地又は防災活動の拠点を確保することは非常に重要であり、想定される災害応急活動の内容等に応じた機能を複合的に有する「防災拠点」として整備していくことが必要である。 このため、平常時には防災に関する研修・訓練の場、地域住民の憩いの場等となり、災害時には、防災活動のベースキャンプや住民の避難地となる防災拠点の整備が必要である。消防庁では、防災基盤整備事業等により地方公共団体における防災拠点の整備を促進している。
2 防災に配慮した地域づくり 消防研究所(現消防大学校消防研究センター)が行った阪神・淡路大震災における21地区の火災の焼け止まり調査によると、焼け止まり要因として最も大きいのが「道路、鉄道」(主に道路)の約40%で、次いで「空地」、「耐火造、防火壁、崖等」(主に耐火造)がともに約23%となっており、こうした物理的要因が焼け止まり要因の86%を占め、また緑地帯なども有効な要因とされている。さらに、被災地においては、市街地の様々な公園が避難地等として活用されるなど、災害応急対策の上でも重要な役割を担った。 このように、道路や公園等の空地、耐火造の建物、樹木や緑地帯は、防災上重要な機能を有しており、消防自動車等緊急車両の災害時における緊急通行に配慮した道路整備(道路の多重性、代替性の確保等)、ライフラインの機能確保にも資する電線類の地中化・共同溝化、地域の情報化とあわせた住民等への情報連絡機能の強化等、消防防災の観点をあらゆる施策に盛り込んでいくことによって、地域の防災能力の向上を促進する必要がある。 こうした事業には、防災基盤整備事業等のほか、緑地帯の整備や電線類の地中化等を対象とした地域活性化事業(都市再生事業)など地方公共団体の実施する単独事業への支援策が講じられている。 さらに、地域の防災力を総合的に向上させるためには、地方公共団体によるハード整備に加えて、地域コミュニティの取組や連携が重要である。消防庁では、平成8年度から「防災まちづくり大賞」を創設し、地域コミュニティ等における防災に関する様々な取組、工夫・アイディアのうち、独創的で防災力の向上に貢献する特に優れたものを表彰し、全国に紹介している。
第5章 規制改革への対応1 規制改革推進のための3か年計画以前の取組 消防防災行政においては、必要な安全性を確保する等の観点から、消防用設備等や危険物施設等の各分野において必要な規制を行ってきているが、近年の技術革新や社会経済活動の多様化等にかんがみ、柔軟な対応を求められているところである。消防庁では、平成5年9月16日緊急経済対策閣僚会議決定の「規制緩和等の実施について」から、平成16年3月19日の閣議決定「規制改革・民間開放推進3か年計画」までの7次にわたる規制改革の推進のための政府計画等に計上された合計150項目の消防防災行政に係る各種の規制緩和・改革事項について、平成18年度末までに以下のとおりの措置を講じてきたところである(第5−1表)。第5-1表 「規制改革推進のための3か年計画」以前の主な規制緩和・改革事項(消防庁分) なお、これら以外の項目については、平成19年6月22日の閣議決定「規制改革推進のための3か年計画」に引き続き計上し、所要の措置を講ずることとしている。
2 規制改革推進のための3か年計画への取組 これまで、7次にわたる規制改革の推進のための政府計画等を策定する中で、消防庁では、消防防災分野において内外からの意見・要望を踏まえて、安全性の確保を図りつつ、新技術への対応、手続の簡素化などの観点から積極的に規制改革を推進してきた。 規制改革は、引き続き、構造改革の重要な柱であり、平成19年1月には、内閣総理大臣の諮問機関として民間人主体の「規制改革会議」が設置されるとともに、政府にも全閣僚から構成される「規制改革推進本部」が設置され、規制改革推進のための体制が改めて整備された。その推進体制の下、規制改革を国民本位の改革として、一層強力かつ着実に推進するため、「規制改革推進のための3か年計画」(平成19年6月22日閣議決定)が策定され、その後の改定(平成20年3月25日閣議決定)を経て、消防防災行政に係るものとして以下の14項目が対象となっており、消防庁として所要の措置を講ずることとしている(第5―2表)。第5-2表 「規制改革推進のための3か年計画(改定)」個別施策(消防庁分)
3 構造改革特区制度への取組 平成14年6月、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(平成14年6月25日閣議決定)において、構造改革特区制度の導入が盛り込まれ、その推進が図られることとなった。 これを受けて、平成14年7月26日には、構造改革特区制度を推進することによって、規制改革を地域の自発性を最大限尊重する形で進め、我が国経済の活性化及び地域の活性化を実現することを目的として、構造改革特区推進本部(以下「推進本部」という。)が内閣に設置された。平成14年12月18日には、構造改革特別区域法(以下「法」という。)が公布され、法第3条第1項に基づき、政府における基本的な施策の推進の方向を示すものとして、構造改革の推進等の意義及び目標、政府が実施すべき施策に関する基本方針等を内容とする構造改革特別区域基本方針が平成15年1月24日に閣議決定され、これまでに(平成20年8月1日現在)15次の改定を経ている。 消防庁としては、特区制度の趣旨にかんがみつつ、火災予防又は防災の観点から安全性の確保に十分配慮し、以下のとおり対応している。(1)構造改革特区において実施することができる特例措置(第5−3表)・119番通報時における緊急度・重症度識別(トリアージ)による救急隊編成の弾力化第5-3表 構造改革特区において実施することができる特例措置(消防庁関係分) なお、構造改革特別区域基本方針において、特段の問題の生じていない特例措置については、速やかに全国規模の規制改革につなげることとされており、消防庁としてもこの基本方針に基づき、構造改革特区で実施した特例措置の全国展開を図った(第5−4表)。第5-4表 構造改革特区において実施し、全国展開することとなった規制の特例措置(消防庁関係分)(2)全国において実施することが時期、内容とも明確な規制改革事項(第5−5表)・燃料電池に係る消防法上の規制の緩和・工場棟の建て替えやコンビナート地区の再開発等における石油コンビナート等災害防止法上の区分・地区要件等の緩和・燃料電池自動車の水素ステーションに関する、ガソリンスタンドへの併設・固体酸化物型燃料電池(SOFC)の実証実験を円滑に行うための規制緩和・消防法第17条に規定する消防用設備等設置の柔軟な対応第5-5表 全国において実施することが時期、内容ともに明確な規制改革事項(消防庁関係分)
第6章 国際的課題への対応[国際緊急援助]1 設立の経緯 昭和60年11月14日に発生したコロンビア共和国のネバド・デル・ルイス火山の噴火による泥流災害に際し、外務省から同国政府の援助要請がある場合の救助隊の派遣について意向打診があり、消防庁では、これに積極的に協力することとして準備を進めた。結局、コロンビア共和国政府からの救助隊派遣要請はなかったが、消防庁は、国際協力の一環としてこうした活動に積極的に対応することとし、昭和61年に国際消防救助隊(International Rescue Team of Japanese Fire-Service:略称“IRT-JF”:愛称“愛ある手”)を整備した。 その後、政府は外務省を中心に、海外で大規模災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進め、昭和62年9月16日、「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」が公布、施行された。 これ以降、国際消防救助隊は、国際緊急援助隊の救助チームが派遣されるたびに、同チームの要員として常に派遣されている。
2 派遣体制 「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」の施行により、海外における大規模災害発生時に、被災国政府等からの要請に応じて我が国が実施する総合的な国際緊急援助体制が整備された。 消防庁長官は、外務大臣からの派遣協力に関する協議に基づき、消防庁職員に国際緊急援助活動を行わせるとともに、消防庁長官の要請を受けた市町村は、その消防機関の職員に国際緊急援助活動を行わせることができることとなっている(第6−1図)。第6-1図 派遣までの流れ 消防庁長官の派遣要請に基づき参集する国際消防救助隊は、日本国政府の国際緊急援助隊救助チーム、あるいは専門家チームとして、高度な救助技術と能力を海外の被災地で発揮している(第6−2図)。第6-2図 国際緊急援助の概要 消防庁では、国際緊急援助活動の協力要請に速やかに対応するため、62消防本部・隊員599人(平成20年10月31日現在)を登録している。 今後、登録隊員に対する各種教育訓練の充実を図り、国際消防救助隊の活動体制を更に強化することとしている。
3 派遣実績 国際消防救助隊は、これまでに16回の海外派遣実績がある(第6−1表)。第6-1表 国際消防救助隊の派遣状況 平成16年12月に発生したスマトラ沖大地震・インド洋津波災害に際しては、タイ王国へ国際消防救助隊員46人を派遣し、検索救助活動やヘリコプターによる支援活動のほか、内務省職員に対する救助技術指導を実施するなど幅広い援助を実施した。 平成17年10月に発生したパキスタン・イスラム共和国地震災害においては、国際消防救助隊員13人を派遣し、救助活動を実施した。被災地上空を飛行する消防ヘリコプター(平成16年12月スマトラ沖大地震・インド洋津波災害)建物倒壊現場で救助活動を実施(平成17年10月パキスタン・イスラム共和国地震災害) また、平成20年5月に発生した中国四川省における大地震災害においては、国際消防救助隊員17人を派遣し、都市型災害救助技術を発揮して、学校、寄宿舎等の建物倒壊現場で救助活動を行った。 残念ながら生存者の救出には至らなかったものの、救助隊員の勤勉かつ真摯な救助の姿勢には、中国側から大いなる共感と謝意が示された。特に、犠牲者に黙祷を捧げる救助隊員の姿は日中両国に大きな感銘を与えた。 こうした国際消防救助隊をはじめとする国際緊急援助隊の活動は、日中友好にも大きく寄与することとなり、平成20年7月に北海道洞爺湖サミットのため来日した胡錦涛国家主席からは、派遣隊員の代表に対して直接謝辞が寄せられた。 消防庁では、これまでの国際消防救助隊の活動を検証し、より効果的な国際緊急援助体制の構築に取り組んでいる。医療施設倒壊現場で救助活動を実施(平成20年5月中国四川省における大地震災害)救出した母子に対して黙祷を捧げる救助隊員(平成20年5月中国四川省における大地震災害)
[国際協力・国際交流] 災害から国民の生命、身体及び財産を守るということは、万国共通の課題であり、消防防災分野における国際協力・交流は、必要性・緊急性の高い分野となっている。 我が国では、過去の様々な災害を教訓として、消防防災分野における制度、技術の改善を重ねてきており、積極的な国際社会への貢献が求められている。 このため、開発途上諸国への技術協力や、アジア諸国を中心とした海外の消防防災関係者との交流など、消防における国際協力・交流を積極的かつ継続的に推進する必要がある。
1 開発途上諸国等に対する国際協力(1)アジア国際消防フォーラムの開催 アジア諸国は、人口の増大と都市化が進む一方で、各種の災害に対しぜい弱であることから、我が国は、消防防災体制の整備について大きく貢献することができる。 また、国際消防救助隊の派遣をはじめとする国際協力を円滑に行うためには、日常的に政府間での情報交換と人的ネットワークを形成しておくことが極めて重要である。 こうした視点から、我が国の消防防災に関する知識・技術を活用して、アジア諸国の消防防災能力の向上に資するため、平成19年度から定期的にアジア国際消防フォーラムを開催することとした。 第2回となる平成20年度のフォーラムは、トルコ共和国で開催し、同国の消防防災能力の向上を図る観点から、震災対応等を経て整備された我が国の消防防災機能の概要等に関し、トルコ側関係者への講義を行った。
(2)開発途上諸国からの研修員受入れア 集団研修の実施 消防庁では、JICAと連携・協力し、開発途上諸国の消防防災機関職員を対象に救急救助技術研修、消火技術研修及び火災予防技術研修の3コースの集団研修を、各消防本部の協力の下で実施している。 救急救助技術研修は昭和62年度から、消火技術研修は昭和63年度から、火災予防技術研修は平成2年度から実施しており、平成20年度は、救急救助技術研修については大阪市消防局において8か国から10人(累計187人)、消火技術研修については北九州市消防局において6か国から10人(累計191人)、火災予防技術研修については東京消防庁において7か国から7人(累計128人)の研修生を受け入れ、2〜3か月間に及ぶ研修を実施した。イ 個別研修の実施 消防庁では、アの集団研修のほかにも、開発途上諸国から個別に研修生の受入れを行っている。各国大使館、JICA、財団法人自治体国際化協会等の協力依頼に基づき、各国からの消防防災、気象分野等の関係者を研修生として受け入れ、研修を実施している。
(3)トップマネージャーセミナーの実施 消防庁では、JICAと連携・協力し、消防防災分野の国際交流を図ることを目的として、平成10年度から、各国消防行政に携わる幹部職員を日本へ招いて意見交換等を行う、トップマネージャーセミナーを実施している。 平成19年度は、トルコ共和国から内務省市民防衛総局副局長をはじめとする幹部職員を招き、トルコ共和国における実践的な消火活動訓練の方策等を構築するため、意見交換や視察研修等を実施した。 また、平成20年度は、カンボジア王国から内務省武器・爆発物・火災管理部副局長をはじめとする幹部職員を受け入れ、日本の消防制度等についての講義・視察等研修実施を予定している。
(4)技術協力プロジェクトへの協力 消防庁では、JICAと連携・協力し、次の技術協力プロジェクトの内容の検討及び実施の枠組みについての検討に参画している。ア タイ王国防災能力向上プロジェクト タイ王国の防災体制の強化に係る人的能力開発、災害対応能力向上等を目的として実施。イ イラン国地震後72時間緊急対応計画構築プロジェクト イラン・イスラム共和国における地震発生後の人的被害を軽減するため、地震後3日間の緊急対応計画の策定支援を目的として実施。ウ 日中協力地震緊急救援能力強化計画プロジェクト 中華人民共和国における地震災害に対する緊急救援能力の向上を目的として実施を検討。
2 国際交流(1)日韓消防交流の推進 消防庁では、平成14年の日韓共同開催によるサッカーワールドカップ大会、「日韓国民交流年」を契機として、日韓消防の交流・連携・協力の推進を目的に、日韓消防行政セミナーを開催している。平成20年度の日韓消防行政セミナーは、東京での開催を予定している。
(2)国際消防組織への参画等 義勇消防の国際交流を推進することによって、各国消防の発展と、国際親善の増進に寄与することを目的として、昭和57年12月に世界義勇消防連盟が設立されており、我が国では、消防団の代表として財団法人日本消防協会がこれに加盟している。 平成20年5月に自治体消防60周年記念協賛事業として、消防団関係者の国際的な情報交換と交流を深め、各国における消防団の益々の発展と国際的な連携、友好交流の充実を目的に、世界で初めて消防団国際会議を財団法人日本消防協会と共催した。 日本を含め12ヶ国の主要国の消防団の代表が参加し、消防団の当面する課題や大規模自然災害、テロ対策における消防の役割について議論を行った。 また、アジア消防長協会は、アジア地域の消防の発展を図ることを目的として設立された団体であり、アジア各国の消防機関の長を会員としている。
[基準・認証制度の国際化への対応]1 消防用機械器具等の国際規格の現況 人、物、情報等の国際交流を進めていくには、国又は地域により異なる技術規格を統一していく必要がある。このため、ISO(国際標準化機構)、IEC(国際電気標準会議)等の国際標準化機関では、国際交流の促進を技術面から支える国際規格の作成を行っている。 消防用機械器具等の分野については、ISO/TC21(消防器具)専門委員会において国際規格の策定作業が行われており、我が国としても積極的に活動に参加している。 なお、ISO/TC21の活動により、平成20年3月31日現在、73の規格が国際規格として定められているとともに、ISO/TC94/SC14(消防隊員用個人防護装備)分科会においても4つの規格が国際規格として定められている。
2 規格の国際化への対応 WTO(世界貿易機関)等における非関税障壁低減に関する包括的な取組の中で、平成7年1月にWTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)が発効され、WTO加盟国は原則として、国際規格に基づいた規制をすることとされた。我が国はISO/TC21(消防器具)専門委員会に初期から参加し、国際規格の策定に積極的に貢献している。 今後も、ISO規格を通して技術の交流を円滑にし、消防器具の技術発展を促すために、各国との連携を図りつつ、引き続きISO規格策定に参画していくことが必要である。
[地球環境の保全(ハロン消火剤等の使用抑制)] 地球環境の保全のため、消防法令により設置・維持が義務付けられている消防用設備等についても、その環境に及ぼす影響をできるだけ少なくするために、リサイクル等の省資源対策や省エネルギー対策等の取組が求められている。 ハロン消火剤(ハロン2402、1211及び1301)は、消火性能に優れた安全な消火剤として、建築物、危険物施設、船舶、航空機等に設置される消火設備・機器等に幅広く用いられている(平成19年3月現在、約1万7千トン)。しかしながら、ハロンはオゾン層を破壊する物質であることから、オゾン層の保護のためのウィーン条約に基づき、モントリオール議定書において、平成6年1月1日以降の生産等が全廃されることとなり、ハロン消火剤の回収・リサイクルによるハロン消火剤のみだりな放出の抑制や、ハロン代替消火剤の開発・設置等が必要となった。 我が国では、第10回モントリオール議定書締約国会合における決議を踏まえて策定した「国家ハロンマネジメント戦略」に基づき、クリティカルユース(必要不可欠な分野における使用)のハロン消火剤を十分な管理の下に使用していくとともに、回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ、不要な放出を抑えていくこととしている。これまで、特定非営利活動法人消防環境ネットワークを中心として、社団法人日本消火装置工業会や消防機関等の国内関係者の継続的な取組により、世界でも例のない厳格な管理体制が整理されるに至っている。 一方、ハロンの代替として、在来の消火設備・機器(粉末消火設備等)のほか、新たにハロン代替消火剤が開発されているところであり、これについても消火性能、毒性等に係る評価手法の検討を行うとともに、ハロン代替消火剤を用いた消火設備の安全性及び適正な設置の確認、データベースの整備等を行っている。このうち知見が十分蓄積されたガスに係る設置方法については、平成13年3月に一般基準化を行った。また、ハロン代替消火剤のうちHFC(ハイドロフルオロカーボン)については、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく京都議定書において、温室効果ガスとして排出抑制・削減の対象となっているため、回収・再利用等による排出抑制に努めるよう要請している。 今後とも、国際会議等における地球環境保護の動向等に留意しながら、引き続きハロン消火剤等を十分な管理の下に使用していくとともに、回収・リサイクルを推進することにより、建築物等の防火安全性を確保しつつ不要な放出を抑えていく必要がある。
第7章 消防防災の科学技術の研究・開発[研究・開発の推進] 火災等の災害の複雑多様化に伴い、災害の予防・防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研究開発が果たす役割はますます重要になっているため、第3期科学技術基本計画(平成18年3月28日閣議決定)及び消防庁で開催された消防防災科学技術懇話会の意見や科学技術の動向、社会ニーズを踏まえて策定した「消防防災科学技術高度化戦略プラン」により、効率的かつ計画的な研究・開発を推進することとしている。 これらの研究・開発の中心となっている消防研究センターは、その前身となる消防研究所が昭和23年に設立されて以来、我が国における消防防災の科学技術に関する国立研究機関として社会的要請及び消防行政上の課題に重点を置いた研究を行ってきている。消防研究所は、平成13年4月1日、中央省庁等改革の一環として、独立行政法人消防研究所となった。その後、危機管理機能の強化及び行政の効率的実施の観点から、消防庁に統合・吸収する方針が決定(平成16年12月24日閣議決定)され、「独立行政法人消防研究所の解散に関する法律」(平成18年法律第22号)に基づき、平成18年4月1日に廃止され、消防研究センターとして消防庁に統合された。 一方、消防庁においては、平成15年度から、消防防災分野を対象とする競争的研究資金制度である「消防防災科学技術研究推進制度」を創設するとともに、消防法令の技術基準の整備に直結する研究等を、直接実施している。 また、消防防災の科学技術に関する研究・開発等については、消防機関の研究部門等においても、消防防災活動や防火安全対策等を実施する上で生じた課題を解決する手段として、積極的に実施されている。
[消防研究センターにおける研究開発等] 消防研究センターは、独立行政法人を経て平成18年4月より総務省消防庁の研究機関として再発足した。昭和23年に設置された消防研究所の伝統と成果を引き継いだ、我が国唯一の消防防災に関する総合的研究機関である。消防研究所創設時の目的である、現場の消防職団員の活動を科学技術の面から支えて、社会の安心と安全の要請に応えることを、基本的な使命としている。 現在、消防研究センターでは、過密都市空間や化学物質及び危険物施設に係る安全性向上、また、大規模自然災害や特殊災害に対する消防防災活動、さらには火災調査技術についての領域の研究を実施している。また、上記の研究と併行して、大規模地震等の自然災害や、大規模・特殊な様態の火災に係る原因調査も消防研究センターの主要な業務の一つである。地域の消防本部で対応が難しい災害が発生した場合の消火や拡大防止方法、二次災害防止等に関する助言、情報提供など、災害時における緊急時の支援にも取り組んでいる。
1 消防防災に関する研究 21世紀は、多様な危機の時代だといわれている。地球環境や社会環境、さらには技術環境の変化が、これまでの経験だけでは対処しきれないような新しい火災や災害を増大させる状況にある。こうした状況にあって、消防防災に関する科学技術への期待は飛躍的に増大している。この期待に応えるために、消防研究センターでは災害の動向と安全のニーズの把握を心掛け、被害の軽減に資する消防防災に関する研究の発展に努めている。 そこで、被害の軽減に資する目的で、以下に示す5項目の研究を行っている。
(1)主な研究紹介ア 過密都市空間における火災に対する安全確保 近年、米国ニューヨークの超高層ビルへのテロ攻撃、韓国大邱(テグ)市の地下鉄放火火災など、消防がこれまでに経験したことのない規模や様態の火災が発生している。これらの想定を超えた大規模で特殊な火災では、多数の人々の避難や救助に困難を極めたばかりでなく、消火・救出活動に当たる消防隊員も危険にさらされ被害の拡大を招いた。また、近い将来に発生のおそれが高いと考えられている東海地震、首都直下地震等では、大規模な市街地延焼火災が発生し、従来の想定を超えた被害の拡大が危惧されている。 地下施設、超高層ビル、大規模市街地等、過密都市空間での火災時の被害軽減のためには、火災性状の理解と各々の特徴に応じた消防戦術の構築が不可欠である。しかしながら、こうした空間での火災の性状は複雑で未解明な点が多く、これまでの経験や知識だけでは、効果的かつ安全な消防活動を行うことは困難である。 この研究では、消防隊員等が大規模で特殊な火災発生時に消防活動を迅速かつ安全に実施する上で必要な、火災の性状を予測できるコンピュータによる支援ツール及び消防隊員のナノ技術を利用した新たな消防防火服の開発を目指している。研究内容及び19年度の主な成果 1)火災燃焼性状データベースの構築と整備 主として地下空間、高層ビル等での火災時における燃焼性状及び有毒ガスについて、小型燃焼実験装置を使用し、素材レベルでの火災性状予測につながるデータ収集のための基礎実験を行った。 2)大規模市街地火災における旋風・火災旋風の実験・解明 火炎の発熱量、発熱速度、規模などが旋風の発生に与える影響を調べるために、現在の低速風洞の乱れをより少なくするための改造を行った。 3)消防活動支援のための火災進展等の予測手法の開発 二層ゾーンモデルと呼ばれる既存の数値モデルを基に、短時間に入力条件が設定でき、かつ結果が容易に把握できる新たな入出力プログラムの開発を行った。 4)消防活動、戦術向上のための高性能装備の開発 消防防火服にナノ技術を活用する場合の性能要素を明確にする必要がある。本研究では、将来を見込んだ消防服のニーズ調査、現有サーマルマネキン装置の改造、「ナノテク防火服」開発グループが試作した防火服生地の快適性能の評価、耐熱性能評価シミュレーションの開発などを実施した。イ 化学物質の火災爆発防止と消火 近年、地球環境に配慮して廃棄物などを再利用する取組が進められて、ごみ固形化燃料(以下「RDF」という。)等の多くの再生資源燃料が誕生している。しかし、これらの中には大量に貯蔵した場合に、燃料内部で熱が発生し火災に至る場合もあることが分かってきた。 実際に、平成15年8月に三重県のRDFの貯蔵施設で発生した火災において、消火作業中の消防隊員2人がRDFの爆発によって吹き飛ばされ死亡する事故が発生した。この原因は、RDFの爆発危険性を十分把握していなかったことにある。また、平成15年9月に発生した北海道苫小牧市のタンク火災においても、それまで経験したことがない大規模な火災となり、44時間にわたり火災が続いた。 この研究では、今後このような災害が発生しないよう、これらの災害に至るプロセスを解き明かすとともに、その特性に応じた予防策と消火システムの開発を行っている。研究内容及び19年度の主な成果 1)化学物質の危険性評価の研究 消防法第五類危険物(自己反応性物質)の熱分解について赤外分光光度計を用いて熱分解開始の兆候を観測する危険性評価手法を提案した。水との混合によって微少な発熱を発生させる金属粉について等温型高感度熱量計を用いて熱流束の経時変化及び反応熱を指標とすることによって、定量的な危険性評価が可能であることを示した。 2)廃棄物、リサイクル物の研究 大量堆積廃棄物の発熱発火機構解明のため、国立環境研究所等と共同で千葉県内の不法投棄現場において、堆積物内部の温度測定、生成ガスの分析等の屋外実験を行い、表面付近が比較的高温であることが分かった。バイオガソリン(ETBE7%含有ガソリン)、バイオディーゼルの火災危険性について、最大で直径0.9m容器による火災実験を行い、火災性状を明らかにした。 3)化学物質の消火に関する研究 粘弾性計測器を使用し、泡消火剤ごと、また同一泡で、発泡倍率を変化させた時の、定量的な流動評価を行った。その結果、各泡の流動性は、水成膜系とたん白系の泡では大きく異なることが分かった。また、泡性状(還元率)に対する耐油性評価に着目し、発泡倍率を一定にして泡の還元率を変えた時のガソリン油面に対する泡のシール性能を調べた。その結果、油温、油種、泡消火剤にも依存するが、還元率の低い泡は、シール性が高いことが分かった。泡流動性の検証実験(タンク直径:18m)ウ 石油タンクの地震防災と経年劣化対策 石油タンクに関連した災害として、平成15年の十勝沖地震により発生した鎮火まで44時間を要した火災や昭和53年の宮城県沖地震により発生した油流出事故などがある。これらの災害の原因は、非常に強い長周期の地震動による揺れであったことや、強い地震動に伴う石油タンクの被害を経年劣化を加味して予測する手法が確立されていなかったことである。 この研究では、今後予測される石油タンクの受ける特殊な地震による揺れを想定し、石油タンクの経年劣化や地域により異なる地盤条件等を考慮に入れて、その揺れに伴う被害を予測・評価可能なシステム(石油タンク損傷被害推定システム)を研究開発する。研究内容及び19年度の主な成果 1)地震時における浮き屋根式石油タンクの溢流実験 今後発生する可能性のある大地震に対して、適切な消防力を算定するために、防油堤内火災の規模に関係する漏洩危険物の量の把握が重要となる。直径7.6mの大型模型タンクの揺動実験により、地震時における石油タンクからの溢流量を簡易に算定する方法を確立した。浮き屋根がある場合のタンクからの溢流実験 2)地震によるスロッシング時の浮き屋根損傷形態の推定手法の検討 一次モード及び二次モードにおける浮き屋根の挙動を大型模型タンク及び実タンクを用いた実験により把握した。 3)強風時における浮き屋根の変形計測 強風時に石油タンクが受ける強度的影響を明確にするため、実タンクに風速風向計、デッキの変形観測用ビデオカメラ及びデッキ上の発生ひずみ計測等の装置を設置し、強風時の浮き屋根挙動を解明するためのデータを収集した。 4)石油タンク損傷被害推定システムの開発 18年度に作成したN-N(ニューラルネットワーク)によるAE源位置評定ソフトウェアを改良し、計測データから直接、AE源位置評定ができるように改良した。 5)石油コンビナート地域における強震動の予測・推定に関する研究 神戸、静岡、宮崎、松山の各気象官署の1倍強震計記録を収集・数値化した。エ 大規模自然災害時の消防防災活動 発生が懸念されている東海地震、東南海・南海地震、首都直下地震などでは、火災、地震動、斜面災害、津波などの災害が複合的に絡み合った激甚・広域災害となり、その対応は混乱を極めるおそれがある。例えば、平成7年の阪神・淡路大震災では、地震により多数の火災が発生し、長時間にわたり火災を鎮火することができなかった。その理由として、既存の消防隊員、消防団員や消防車などでは、その消防力が十分でなかったことと、消火に対する適切な情報収集及びその情報に基づいた予測や消防隊の運用などが行えなかったことなどが主な要因と考えられる。 このような大規模災害に対して、国及び地方公共団体が適切に連携し、国民への情報伝達、被害情報の収集、避難誘導・消火・人命救助等の現場における消防活動等を迅速かつ円滑に実施するためには、住民への情報伝達の高度化、緊急消防援助隊等の迅速な展開、災害現場での消防活動の円滑化及び安全確保等の消防防災活動や地方公共団体の応急対応等を支援するための総合システムの研究開発が不可欠である。 この研究では、様々な大規模自然災害に対して、有効な消防防災活動を実現するために必要な総合システムの研究開発を行っている。研究内容及び19年度の主な成果 1)災害時要援護者等も考慮した警報伝達システムの開発 住民向けに避難勧告・指示のタイミングと広報文案を作成し、これを用いた災害対策本部での意思決定の支援が可能な、防災情報文章作成支援システムの試作を行った。 2)広域応援部隊消防力最適配備支援システムの開発 消防力最適運用プログラムを、対象エリアの広域化並びに100件程度の同時多発火災件数に対して迅速に延焼予測計算できるようプログラム改良を行った。また、消防力最適運用支援システムの試用版を全国消防本部に提供した。 3)アドホックネットワーク技術を用いた広域消防援助隊用災害情報共有システムに関する検討 広域応援ナビゲーションシステムの試作のためユーザインタフェイス部を極力簡素化し、データ共有部を中心とした部分的試作を行った。 4)斜面崩壊現場の消防活動の安全性向上に関する研究 地表変形に基づく崩壊時間予測手法の開発を目的として、前駆的変形と地下内部の変形との関係について検討を行った。 5)119番通報に対する救急業務の高度化に関する研究 コールトリアージを行う場合の救急隊平均待ち時間の検討を、仙台市をモデル地区として行った。コールトリアージプロトコルの作成に関してバイタルサインを基準とした緊急度判断基準を用いて行った。 6)災害対策本部における応急対応支援システムの構築 応急対応計画における実施業務における発災後の実施時間、実施項目、連関項目等の調査結果を、平成19年度に一部試作した情報管理システムに反映させた。19年度一部試作したシステムの評価を大学、自治体に依頼し、その結果判明したプログラムの不具合について改修を行った。 7)地震火災時の消防活動の高度化に関する研究 レーザー測距技術を応用した火点覚知手法の検証を、京都市において実施した。火点覚知に関するレーザー距離計とGISを用いた京都市における実験オ 特殊災害に対する安全確保 平成7年の地下鉄サリン事件での救急隊員の被災や、平成11年のJCO臨界事故における救急隊員の放射線被ばく、平成15年の三重県ごみ固形化燃料(RDF)発電所爆発事故における消防職員の殉職等、特殊災害において消防職員が被害を受けている。これらの特殊災害に対しては、これまでに消防職員が対応した経験がなく、危険性が未知数であったため、その対応が十分でなかった。消防職員は、これら対応経験がない火災や災害に対しても、現場へ迅速に駆け付け、災害の拡大防止と火災の早期鎮圧に努めなければならない社会的責務を負っているため、今後このような特殊災害による被害を減らすためには、消防隊員自身の被災を防ぎ、効果的な消防活動を可能にする技術を開発することが必要である。 この研究では、特殊災害発生時において現場の状況を活動前に把握する手法や消火技術の確立、消防隊員の安全を確保し負担を軽減する技術の開発を行う。研究内容及び19年度の主な成果 1)リサイクル資源化施設の爆発対策研究 負圧管理された大空間内において、木材を燃焼させた場合の温度分布計測などを行った。 2)消防活動を支援するロボット技術・救助技術の開発 複数の小型移動ロボットによる連携協調動作の消防防災活動支援への応用とし空間認識を利用した移動経路認識ロボットを試作し自律帰還実験を行った。実用化に向けた改良開発として、消防機関に配備した試作ロボットの改良を行った。試作した移動経路認識ロボット
(2)国際的な研究の協力と交流 火災や地震などの災害は我が国固有のものもあれば、多くの国々が同様な災害に遭遇しているものもある。このため、それぞれの災害を受けている国において研究をより効率的に進めるためには、各国が保有する災害の情報や研究の成果等を相互に共有していく必要がある。そこで、消防研究センターでは、火災研究所長国際会議などの様々な国際会議や国際共同実験に参画し、日本における研究成果の公表を行ったり、外国人研究者の受け入れにより諸外国への情報提供などを行ったりしている。
2 火災原因調査及び災害・事故等への対応(1)主な火災原因調査及び災害・事故対応 消防研究センターは、消防防災の科学技術に関する専門的知見及び試験研究施設を活用し、「消防庁長官による火災原因調査」を実施することとされており、大規模あるいは特殊な火災を中心に、全国各地において火災原因調査を実施してきた。また、消防本部への技術支援として、火災原因解明のための鑑識・鑑定を共同で実施している。 平成19年4月以降の火災原因調査は第7−1表のとおりである。また、平成19年度中の鑑識は5件、鑑定は6件である。第7-1表 火災原因調査 現地調査状況(平成19年4月〜) 災害・事故への緊急対応としては、平成19年7月の新潟県中越沖地震発生の際に、原子力発電所の危険物施設の被害調査や発電所内の変圧器火災の火災調査において職員を派遣し調査を実施した。平成19年12月の茨城県神栖市の化学プラント爆発火災において専門家を派遣し、火災原因調査のための現地調査や検証のための実験を行い消防本部の支援を行った。その他、平成20年1月に韓国京畿道利川市で発生し死者40名を出した冷凍物流センターの地下冷凍倉庫火災のように我が国の消防防災の施策にかかわる大規模な災害・事故については、国内外を問わず専門家を派遣する等、被害調査と情報収集を行っている。柏崎市原子力発電所における所内変圧器火災
(2)火災原因調査の高度化に関する研究 近年の火災・爆発事故は、例えばグループホームのような新しい使用形態の施設での火災やリサイクル社会において、ごみから燃料を製造する施設での火災などが発生するなど、複雑・多様化している。そのため、それらの原因の解明のために必要な調査用資機材の高度化や科学技術の高度利用が求められている。 このような状況に的確に対応し、効果的な火災原因の解明を行うためには、火災の発生メカニズム、火災拡大の経過、建築物の構造などを解明するための手がかりとなる残留ガスや材料の変形の状況、飛散物の状況などを、現場調査において早期に収集し、高度な分析を行うことが不可欠である。このため、火災原因調査に役立つ科学技術についての調査研究を行いつつ、サンプル採取技術、計測・分析技術など多岐にわたる技術の高度化を行うことが必要である。 この調査・研究では、現場調査に必要な調査用資機材の性能・機能を明らかにするサンプルの採取・分析方法、火災前の状態の再現と火災現象の再現の方法、原因の推定又は特定を行う手法等についての調査研究、火災原因調査に必要な現象究明のための研究を行う。平成19年度の主な成果 溶融した樹脂が外部を覆っている残渣物に対し、内部部品を破壊することなく外部樹脂を除去する技術について超音波カッターの使用を検討し、微細部分の除去が可能なことが分かった。 火災原因調査の鑑識にX線透過装置及びデジタルマイクロスコープを用いて、溶融した部品内部の金属部品の形状異常の発見及び接点表面の荒れ具合や溶融痕などを観察し、火災原因調査に有効であることが分かった。 火災原因調査に関連して8件の火災事案に対し、現場から収去した製品や物質の分析や実験を実施した。宝塚市カラオケボックス火災に関連し調理室のてんぷら油火災がどのように拡大するかの検証のために実大実験を実施し、延焼経路や延焼条件についての知見を得た。上越市化学工場爆発火災において現場で使用されていた着衣や粉体などの抵抗値等の測定を実施した。
3 研究成果をより広く役立てるために 消防研究センターでは、研究によって得られた成果を、全国の消防職員をはじめとする消防関係者はもとより、一般の方々にも広く役立てることを目的に、以下の活動を行っている。
(1)一般公開 毎年4月の「科学技術週間」にあわせて、消防研究センターの一般公開を実施している。平成20年度は4月18日に実施し、581人の参加を得た。 一般公開では、実験施設や実験場などの公開、展示や実演を用いた研究の紹介を行っている。平成20年度は12の内容を公開し、中でも、自動車用に開発されているバイオガソリン、バイオディーゼルの燃焼実験などが、参加者の注目を集めた。
(2)全国消防技術者会議 全国の消防技術者の研究発表、意見交換等の場として昭和28年から「全国消防技術者会議」を毎年開催している。 この会議では、各地の消防本部で実施された研究の成果の発表、消防機器の開発・改良に関する紹介、そして火災原因調査の事例紹介などを行っている。平成19年度は、10月18日及び19日の2日間、東京都港区虎ノ門のニッショーホールにおいて開催された。
(3)消防防災研究講演会 消防研究センターの研究成果の発表及び消防関係者や消防防災分野の技術者や研究者との意見交換を行うため、平成9年度から「消防防災研究講演会」を開催している。 この講演会では毎年特定のテーマを設けており、平成19年度は「廃棄物・バイオマス等の環境対策に伴う新たな火災危険への取組をテーマとして、近年増大している廃棄物火災に焦点を当てた研究発表及び討論を実施した。
(4)火災調査技術会議 消防本部が消火活動の後に実施する火災調査の技術の向上を目的として、「火災調査技術会議」を開催している。 この会議は、全国の主な都市で年間5回程度開催しており、各地の消防本部における特異な火災事例の紹介や、最新の調査技術、機器に関する情報交換を行っている。平成19年度は、東京、名古屋、仙台、大阪、北九州の5都市で開催した。
(5)消防防災機器の開発等及び消防防災科学論文の表彰 消防防災科学技術の高度化と消防防災活動の活性化に寄与することを目的として、消防職団員や一般の方による消防防災機器の開発や改良及び消防防災に関する研究成果のうち特に優れたものを消防庁長官が表彰する制度を平成9年度から実施している。応募の資格に制限はなく誰でも応募することができるため、多くの人に開かれた発表の機会となっている。 平成19年度は69編の応募があり、12編の作品が表彰された。
平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震における消防研究センターの活動1 活動概要 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震(6月14日8時43分頃発生)に際して、消防研究センターは、土砂崩れ現場における救助作業の安全確保を支援するため、現地へ土砂災害を専門とする研究員を派遣しました。派遣された研究員は、ヘリコプターからの広域調査と2つの土砂災害現場での捜索救助活動の安全確保に関する助言を行いました。2 ヘリコプターによる広域調査 15日朝に実施したヘリコプターでの調査では、まず、どのような災害が発生したのかという全体的な状況の把握を行いました。次に、救助活動が継続していた3つの土砂災害地点について、周辺に亀裂などの異状がないか、以前に地すべりが発生した痕跡がないか、上流に土砂ダムができていないか、などについて調べました。このときには、これらの危険な兆候は見つかりませんでした。 栗駒山が大きく崩れ、土砂が土石流になって温泉宿を破壊した現場の上流において、土砂が残っていたり、岸が崩れたりして、川の流れが悪くなっていると危険なので、そのようなものがないか、川筋に沿って飛行してもらい、この時点では見あたらないことを確認しました。ヘリコプターによる広域調査3 土砂災害現場での捜索救助活動の安全確保 災害現場では、崖やその周辺を調査して、崩れ残った不安定な部分がないか、地下水などの動きがないか、積もった土砂がもう一度災害を引き起こさないかなどについて分析し、監視方法や特に監視すべき場所の指定、関係他機関への協力要請などの対策を提案しました。土砂災害現場での捜索救助活動の安全確保 厳しい環境の中で高い士気を持って活動をする救助隊員。急斜面で足場も悪く、何かあったときにも待避が難しいため、危険度の分析には十分な注意が必要でした。
[競争的研究資金による産学官連携の推進] 消防庁では、消防防災科学技術の振興を図り、安心・安全に暮らせる社会の実現に資する研究を、提案公募の形式により、産学官において研究活動に携わる者等から幅広く募り、優秀な提案に対して研究費を助成し、産学官の連携を推進するとともに、革新的かつ実用的な技術を育成するための「消防防災科学技術研究推進制度」(競争的研究資金制度)を平成15年度に創設し、制度の充実を着実に図ってきたところである。特に、平成18年度からは、PD(プログラムディレクター)、PO(プログラムオフィサー)の選任、研究成果の公表、フォローアップの実施など、当該制度の円滑な運営を図っている。 また、公募に係る研究課題については、これまで消防防災全般としていたものに、平成18年度には消火・救助等に関しあらかじめ設定した課題(「テーマ設定型研究開発」枠)を、平成19年度には火災等の災害に対する消防防災活動や予防業務等における現場のニーズを反映した課題(「現場ニーズ対応型研究開発」枠)を新たに設定し、より火災等の災害現場に密着した課題解決型の研究開発の促進を図っている。 応募課題の審査に当たっては、外部の学識経験者等からなる「消防防災科学技術研究推進評価会」において、消防防災への貢献の高さ、研究方法や研究実施体制の妥当性等に加え、消防防災に関わる研究主体の育成という観点から、若手研究者等である場合は、その点を考慮しつつ審査を行い、制度の目的に照らして優秀と認められる課題を選定している。平成20年度の研究助成対象課題としては、新規課題を13件、また、平成18年度、平成19年度からの継続課題を13件採択している(第7−2表、第7−3表)。第7-2表 採択研究テーマ名一覧第7-3表 応募件数、採択件数等の推移 この制度においては、これまでに44件の研究課題が終了し、数々の研究成果が得られており、特に平成17年度には「水/空気2流体混合噴霧消火システムを用いた放水装置」が、また、平成19年度には「少水量型消火剤の開発と新たな消火戦術の構築」が、それぞれ産学官連携推進会議において産学官連携功労者表彰(総務大臣賞)を受賞するなど、火災等の災害現場のニーズに密着した成果が得られてきている。
[消防機関の研究等]1 消防機関の研究体制 消防防災の科学技術に関する研究開発は、消防本部の研究部門等においても行われている。平成19年度において、消防防災科学技術に関する研究開発等の部門を有する消防機関は、札幌市消防局、東京消防庁、川崎市消防局、横浜市安全管理局、名古屋市消防局、京都市消防局、大阪市消防局、神戸市消防局及び北九州市消防局の9機関である。 消防機関の研究開発等の部門の概要は、第7−4表のとおりであり、研究開発等の部門の定員は9機関で89人、また、研究費は約170万円から5,000万円まで消防本部により大きな違いがあり、その総計は約8,600万円となっている。第7-4表 消防機関の研究開発等の部門の概要 また、これらの研究開発等の部門を有する消防機関は、毎年「大都市消防防災研究機関連絡会議」を開催し、消防防災の科学技術についての意見交換を行っている。 なお、研究開発等の部門を有しない消防機関においても、火災原因の究明に関する研究や消防装備・資機材等の開発・改良等が、それぞれの業務を担当する部門を中心に実施されている。 一方、消防機関においては、消防研究センターや大学に職員を派遣し、消防防災の科学技術に関する研究開発等を担う担当者の養成や指導助言等を受けて研究開発等を行うところもある。
2 消防機関における研究の概要 消防機関においては、主に、消防装備・資機材等の改良等、消防隊の勤務形態に関する研究、火災性状に関する研究など火災等の災害現場に密着した技術開発や応用研究、防災資機材等の改良等を行うとともに、火災原因調査に係る原因究明のための研究(調査、分析、試験等)が行われている。また、火災予防、住宅防火、初期消火等に関する普及・啓発方法等に関しての研究も実施されている。 また、平成7年の阪神淡路大震災以降、多くの消防機関において、地震時の出火防止対策や消火等の地震対策研究も行われている。 一方、消防防災科学技術研究開発制度(競争的研究資金制度)において、現場ニーズ対応型研究開発枠やテーマ設定型研究開発枠を設定し、火災等の災害時の消防防災活動や防火安全対策など課題解決型の研究課題を優先的に採択する方向となっていることもあり、消防機関が大学、研究機関、民間企業等と連携して研究開発を行う事例が増えてきている。
[消防防災科学技術の研究の課題] 消防防災の科学技術は、火災等の災害現場における消防防災活動や防火安全対策等に不可欠なものであり、火災等の災害の発生に伴い緊急的な研究ニーズが出現すること、また、その対象とする研究領域が著しく広く、様々な知見が必要であることなどが特徴的である。こうした消防防災科学技術の研究の特性に対応する上では、研究体制の運営の機動性、柔軟性が必要であるとともに、競争的研究資金制度の一層の充実による消防防災科学技術の研究領域に関する競争的な研究環境の創出、大学、研究機関等との産学官連携の推進が求められる。さらに、研究成果を火災等の災害現場における消防防災活動や防火安全対策等に利活用するためには、成果の解説、具体的な活用事例等に関する情報の共有化の推進が必要である。特に、新技術等を積極的に導入するためには、消防ニーズを積極的に発信するとともに、これらに関する技術シーズを有する大学、研究機関、企業等と連携して研究を行う必要がある。
消防防災分野における情報通信技術(ICT)の活用について 国民の安心と安全を確保することは、昨今の政府の最重要課題となっています。火災や大地震等の災害の脅威から国民を守るためには、効果的な消火方法やがれきに埋もれた人を的確に発見・救助する機器など、先進的な技術を開発して消防活動の現場に活用することが不可欠です。消防庁では、消防防災科学技術研究推進制度(競争的研究資金)などに基づき、大学や企業などと連携しながら、国民の生命、財産の保護に直結する消防防災科学技術の高度化に取り組んでいます。 ICT分野においては、センサー技術や携帯電話をはじめとしたモバイル通信技術などの研究開発が多くの企業や研究機関で盛んに行われています。火災などの災害の発生状況をいち早く検知して、その情報をどこにいても確実に受け取れる技術は、消防隊の応急対応はもとより国民一人一人の防災行動に直結することから、消防庁が目指す安心・安全な社会の実現に大きく寄与するものです。 消防庁では、センサー技術やユビキタス通信など最新のICTを、消防隊の活動支援、災害情報の収集等、消防防災の現場でも利活用可能なものとするため、研究機関の研究成果や要素技術(シーズ)と消防活動現場の課題(ニーズ)をマッチングさせ、連携して研究開発を行っていく「消防防災分野における情報通信技術ICT活用のための産学官連携の推進事業」を進めています。この事業では、連携を促進するための検討会を開催するとともに、普及が進んでいる住宅用火災警報器などの火災感知器を、携帯電話、電子タグやインターネットと組み合わせることによってセンサーネットワーク化する実験的試みを、大学や独立行政法人などの研究機関や関係省庁と連携して進めています。 長期戦略指針「イノベーション25」が、技術革新、社会制度の刷新、人材の育成など中長期に取り組むべき政策として、平成19年6月に閣議決定されました。指針中の個々の政策のうち、要素技術を融合し、実証研究を通して成果の社会還元を加速する先駆的なモデルプロジェクトが「社会還元加速プロジェクト」として指定されています。ICT活用のための産学官連携の推進の事業は、「社会還元加速プロジェクト」において、「災害情報通信システムの構築」(きめ細かい災害情報を国民一人一人に届けるとともに災害対応に役立つ情報通信システムの構築)の中に位置付けられています。火災感知器のユビキタスセンサーネットワーク化