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第1章 災害の現況と課題
(6) その他

ア 防災基盤の整備と耐震化の推進

平成7年(1995年)1月に発生した阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、総合的な地震防災対策を強化するため、同年7月に「地震防災対策特別措置法」が施行された。同法に基づき地域防災計画に定められた事項のうち、地震防災上緊急に整備すべき施設等に関して、すべての都道府県において「地震防災緊急事業五箇年計画」が作成され、これらの計画に基づき、避難地、避難路、消防用施設、緊急輸送路の整備、社会福祉施設・公立小中学校等の耐震化及び老朽住宅密集市街地対策等が実施されてきている。

同計画は、第1次地震防災緊急事業五箇年計画(平成8年度(1996年度)〜平成12年度(2000年度))、第2次地震防災緊急事業五箇年計画(平成13年度〜平成17年度)、第3次地震防災緊急事業五箇年計画(平成18年度〜平成22年度)、第4次地震防災緊急事業五箇年計画(平成23年度〜平成27年度)と策定され、防災基盤の整備に向けた事業への積極的な取組が続けられている。

消防庁では、大規模地震発生時に、避難所や災害対策の拠点となる公共施設等について、地方単独事業として行われる耐震改修事業に対し、地方債と地方交付税による財政支援を行っている。なお、平成21年度からは、地震による倒壊の危険性が高い庁舎及び避難所について、事業費の90%を起債対象とし、その元利償還金の2/3を交付税算入とする地方財政措置の拡充を行った。さらに、東日本大震災の教訓を踏まえて平成23年12月に新たに設けられた「緊急防災・減災事業(単独)」の対象とすることとし、平成26年度においても、地方公共団体が緊急に防災・減災に取り組むために措置された「緊急防災・減災事業」(起債充当率100%、交付税措置率70%)の対象としている。

また、耐震診断・改修工事の効果的な実施手法や事例を紹介する「防災拠点の耐震化促進資料(耐震化促進ナビ)」を平成17年度に作成し、すべての地方公共団体へ配布するとともに、消防庁ホームページにおいて公表している(参照URL:http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/taishin/index-j.html)。

イ 消防力の充実強化

  1. 〔1〕 耐震性貯水槽の整備

    大規模地震発生時には、地震動による配水管の破損、水道施設の機能喪失等により消火栓の使用不能状態が想定され、消火活動に大きな支障を生ずることが予測される。

    このため、消防庁では、地震が発生しても消防水利が適切に確保されるよう、国庫補助による耐震性貯水槽の整備を進めているところであり、平成26年4月1日現在、全国で、10万85基が整備されている。

  2. 〔2〕 震災対策のための消防用施設等の整備の強化

    地震防災対策強化地域における防災施設等の整備や地震防災緊急事業五箇年計画に基づく防災施設等の整備については、国の財政上の特例措置が講じられている。また、地方単独事業についても地方債と地方交付税の措置により地方公共団体の財政負担の軽減が図られてきた。大規模地震発生後における防災活動が迅速かつ的確に行われ震災被害を最小限に抑えるためには、今後とも中・長期的な整備目標等に基づき、より一層の消防防災施設等の整備促進を図っていくことが必要である。

ウ 津波対策の推進

我が国においては、地震とそれに伴い発生する津波によって、過去に大きな被害が生じている。東日本大震災においても津波によって甚大な被害が発生した。

これを受け、第177回国会において、議員立法により、津波対策を総合的かつ効率的に推進するために「津波対策の推進に関する法律」が成立し、平成23年6月24日に公布・施行された。同法律では、津波対策に係る基本的認識や11月5日を津波防災の日とすること等が定められた。

同年12月には、1)都道府県知事が、最大クラスの津波が悪条件下において発生することを前提に津波防災地域づくりを実施するための基礎となる津波浸水想定を設定、2)その上で、当該津波浸水想定を踏まえて、ハード・ソフト対策を組み合わせた市町村の推進計画の作成、都道府県知事による津波災害警戒区域・津波災害特別警戒区域の指定等を、地域の実情に応じ、適切かつ総合的に組み合わせることにより、最大クラスの津波への対策を効率的かつ効果的に講ずることなどを主な内容とする「津波防災地域づくりに関する法律」が成立し、同月公布・施行された。

一方、中央防災会議「防災対策推進検討会議」の下の「津波避難対策検討ワーキンググループ」は、津波避難対策の基本的な考え方及び具体的な方向性について示した報告を平成24年7月に取りまとめた。同報告が示した津波避難対策の基本的な考え方は「素早い避難」が最も有効で重要な津波対策であること、津波による人的被害を軽減するためには、住民等一人ひとりの迅速かつ主体的な避難行動が基本となること、その上で、海岸保全施設等のハード対策や確実な情報伝達等のソフト対策は、すべて素早い避難の確保を後押しする対策と位置付けるべきものであることである。

実効性のある津波避難対策を実施するためには、都道府県が津波浸水想定区域図を作成すること、それに基づき、市町村が避難対象地域の指定、緊急避難場所等の指定、避難指示等の情報伝達、避難誘導等を定める必要がある。

消防庁では、こうした地方公共団体の取組を推進するため、平成24年度に有識者及び地方公共団体関係者等による「津波避難対策推進マニュアル検討会」を開催し、2市町(徳島県海陽町・愛知県弥富市)において住民による津波避難の検討や津波避難訓練を行い、それらの内容を「津波避難対策推進マニュアル検討会報告書」としてとりまとめるとともに、地方公共団体に通知した(平成25年3月)。

本報告書では、津波避難を円滑に実施するためには、地域の実情を踏まえつつ、広域的かつ統一的な考え方に基づいた避難対策を講じる必要があることから、都道府県が市町村に示す指針等の参考を提示するとともに、住民等が安全に避難するため、その地域の情報に詳しい住民が直接参加し、津波避難を検討する際の参考となるマニュアルを提示している。消防庁では、津波避難の専門家を市町村に派遣するなど、市町村における津波避難対策を促進している。

また、平成16年度に開催した「防災のための図記号に関する調査検討委員会」では、津波避難に係る標準的図記号として、「津波注意」、「津波避難場所」、「津波避難ビル」の3種の図記号を決定した(第1-6-4図)。これらの図記号は、平成20年7月に国際規格化(ISO化)されるとともに、平成21年3月にJIS(日本工業規格)化されている。災害時には、地域住民はもとより、観光客や外国人などが共通した認識を持ち、迅速かつ円滑な避難を行う必要があることから、これらの図記号を用いた避難標識の整備を進めていく必要がある。

第1-6-4図 ISOにより国際標準化が決定した「津波に関する統一標識」の図記号(ISO20712-1:2008)

さらに、地方公共団体が整備する津波避難タワーや、住民の避難経路となる避難路・避難階段、浸水想定区域内からの公共施設等の移転などに係る地方単独事業に要する経費については、従来より地方債と地方交付税による支援を行ってきており、平成26年度においては「緊急防災・減災事業」により支援を行っている。

エ 地域防災計画(震災対策編等)の作成・見直しへの取組

地震災害は地震動による建築物の損壊のみならず、津波、火災、山崩れ等による二次的災害も含んだ複合的な災害であり、被害も広範囲に及ぶという特性を有するものであるため、地域防災計画において、他の災害とは区分して「震災対策編」等として独立した総合的な計画を作成しておく必要がある。

さらに、平成23年12月の防災基本計画の修正により、これまで震災対策編の一部とされていた津波災害対策について、新たに独立して「津波災害対策編」が設けられた(震災対策編は「地震災害対策編」とされた。)。

また、地域防災計画の作成・見直しにおいては、被害想定に基づく防災体制の見直しや、近隣地方公共団体における計画との整合性に留意するとともに、職員参集・配備基準をはじめ各種応急体制の整備・充実、災害時における職員の役割や関係機関等との連絡体制等を明確にするなど、地域防災計画の実効性の向上に努めることが重要である。

第1章 災害の現況と課題
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