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第2章 消防防災の組織と活動
(6) 一般市民に対する応急手当の普及

救急出動要請から救急隊が現場に到着するまでに要する時間は、平成25年中の平均では8.5分であり、この間に、バイスタンダー*7による応急手当が適切に実施されることで、大きな救命効果が期待される。したがって、一般市民の間に応急手当の知識と技術が広く普及するよう、より一層取り組んでいくことが重要である。現在、特に心肺機能停止状態に陥った傷病者を救命するために必要な心肺蘇生法(CPR:Cardio Pulmonary Resuscitation)の習得を目的として、住民体験型の普及啓発活動が推進されている。特に平成16年7月には、「非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用について」(厚生労働省医政局長通知)により、非医療従事者についても、自動体外式除細動器(以下「AED*8」という。)を使用することが可能となった。これを受け、消防庁では、AEDの使用に係る普及啓発を目的として、非医療従事者によるAEDの使用条件のあり方等について報告書を取りまとめており(「応急手当普及啓発推進検討会報告書」)、消防機関によるAEDを使用するための内容を組み入れた応急手当普及講習プログラム等の実施を促進している。

*7 バイスタンダー(bystander):救急現場に居合わせた人(発見者、同伴者等)のことで、適切な処置が出来る人員が到着するまでの間に、救命のための心肺蘇生法等の応急手当を行う人員のこと。
*8 AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器):心室細動の際に機器が自動的に解析を行い、必要に応じて電気的なショック(除細動)を与え、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器。薬事法上の「半自動除細動器」(広義のAED)には、非医療従事者向けAED(PAD:Public Access Defibrillator)及び医療従事者向けAED(半自動式AED)が含まれる。救急隊は医療従事者向けのAEDを使用する。

消防庁では、「応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱」により、心肺蘇生法等の実技指導を中心とした住民に対する救命講習の実施や応急手当指導者の養成、公衆の出入りする場所・事業所に勤務する管理者・従業員を対象にした応急手当の普及啓発及び学校教育の現場における応急手当の普及啓発活動を行っている。全国の消防本部における平成25年中の救命講習受講者数は144万2,872人で、心肺機能停止傷病者への住民による応急手当の実施率は44.9%に上昇するなど、消防機関は応急手当普及啓発の担い手としての主要な役割を果たしている。

また、平成23年度から、より専門性を高めつつ受講機会の拡大等を図るため、主に小児・乳児・新生児を対象とした普通救命講習Vや住民に対する応急手当の導入講習(「救命入門コース」)、e-ラーニングを用いた分割型の救命講習を新たに追加するなど、国民のニーズに合わせた取組も進めている。

なお、心肺蘇生法については、平成23年度、一般財団法人日本救急医療財団の救急蘇生法委員会より、新しい日本版救急蘇生法のガイドラインが示されたことから、消防機関が行う住民に対する普及啓発活動についても、このガイドラインを踏まえた内容となっている。

消防機関においては、昭和57年に制定された「救急の日」(9月9日)及びこの日を含む一週間の「救急医療週間」を中心に、応急手当講習会や救急フェア等を開催し、一般市民に対する応急手当の普及啓発活動に努めるとともに、応急手当指導員等の養成や応急手当普及啓発用資機材の整備を推進している。また、平成26年度は、非医療従事者によるAEDの使用が認められて10年の節目となることから、文部科学省と連携して、学校におけるAEDの使用を含む応急手当講習の受講を推進するため、救急医療週間から今年度末までを、応急手当講習受講キャンペーン期間と位置付けることとしており、この期間に、各学校において、管轄する消防署等と連携し、可能な限りAEDの使用を含む応急手当講習が計画的に開催されるよう促している。

第2章 消防防災の組織と活動
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