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第6章 消防防災の科学技術の研究・開発
(1) 消防活動の安全確保のための研究開発

ア 背景・目的

本研究課題では、消防活動により一人でも多くの命を救うことができるよう、安全かつ効果的な消防活動を実現する上での技術的課題の解決を目指して、次の四つのサブテーマを設け、5年間の計画で研究開発を行っている。

  1. (ア) サブテーマ「消防ヘルメット等の装備及び個人防護技術の研究」

    平成9年(1997年)以降の消火活動中の消防職員の受傷等の状況をみると、平均して一年間に約2名が殉職し、約300名が負傷しており、消火活動には依然として高い危険が伴うことを示している。また、近年の省エネルギー指向の建物は、可燃性のプラスチック断熱材等を使用していること及び高い気密性を有していることから消火活動中に急激に火勢が拡大することがあり、このような建物の増加により、今後、消火活動における危険性は更に高まるおそれがある。このサブテーマでは、これまでの消防防護服に関する研究開発成果を踏まえて、消防隊員が消防ヘルメット等を含めた防護装備を着用した状況の下で、その防護装備全体に求められる安全性能を明らかにするとともに、より安全かつ効果的に消火活動を実施できるようにするための活動基準を考案することを目指している。

  2. (イ) サブテーマ「津波浸水域における消防活動用車両等の研究」

    東日本大震災では、津波で浸水した地域に消防隊員が進入することが極めて困難であったことなどから、津波浸水域における消火・救助活動が難航した。このため、今後我が国に起こり得る大震災への備えとして、津波浸水域にも進入できる消防用車両等や津波浸水域における要救助者を速やかに発見する技術などが必要と考えられる。このサブテーマでは、〔1〕津波で浸水し、がれきが堆積しているような地域においても、消火・救助活動を安全かつ円滑に実施することを可能とする消防用車両等が有すべき機能・性能を具体的に示すこと、〔2〕要救助者を速やかに発見するため、無人ヘリコプター等により周囲の状況を把握する技術を開発することを目指している。

  3. (ウ) サブテーマ「がけ崩れでの活動における二次災害防止機器の研究」

    豪雨や地震を契機としたがけ崩れは、我が国では避けることのできない災害であり、万一の生き埋め者の発生に備えることは重要である。がけ崩れによる生き埋め者の救助活動では、更なるがけ崩れが起きて救助活動を行う者に二次災害が生じるおそれの有無に注意する必要がある。現在、がけ崩れの前兆があるかどうかを素早くかつ広い範囲にわたって監視する方法はない。このため、このサブテーマでは、無人ヘリコプター等を活用してがけの変形を素早く広範囲に監視するシステムの開発を目指している。

  4. (エ) サブテーマ「AEDの不具合の原因調査と対策検討」

    救急活動において使用中のAEDに不具合と疑われるような動作が生じる事例が相次いで発生している。平成21年度に行われた全国メディカルコントロール協議会連絡会の調査の結果によると、平成19年から21年までの3年間に328件の不具合が報告されており、その後も同様の事例が発生している。このサブテーマでは、救急活動を確実に行い、救える命を救えるようにするため、AEDの動作の不具合の要因を調査分析し、対応策の考案を目指している。

イ 平成25年度の主な研究開発成果

サブテーマ「消防ヘルメット等の装備及び個人防護技術の研究」では、消防ヘルメットや防火服の素材、形状、厚みなどの違いにより、火災による熱の伝わりやすさを予測するソフトウェアを開発した。

サブテーマ「津波浸水域における消防活動用車両等の研究」では、平成24年度に開発したプロトタイプ車両(第6-1図)をベースに実用化にむけて仕様検討を行い、浸水域での波対策、がれき集積領域でのパンク対策を講じた試作機作製を行った。また、偵察用の無人ヘリコプターの飛行実験(第6-2図、第6-3図)を行い、無線装置の信頼性向上や持ち運びや離着陸を容易にするための機体形状の変更などを行った。

第6-1図 消防車、救助工作車、救急車のプロトタイプ車両
第6-2図 偵察用無人ヘリコプター
第6-3図 偵察用無人ヘリコプターからの偵察映像例

サブテーマ「がけ崩れでの活動における二次災害防止機器の研究」では、無人ヘリコプターの大きな振動下においても、がけの変形を監視できる実用的な計測精度を確保するための計測側のソフトウェアの開発を行った。

第6章 消防防災の科学技術の研究・開発
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