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第6章 消防防災の科学技術の研究・開発
(5) 災害対応のための消防ロボットの研究開発

ア 背景・目的

平成15年に発生した十勝沖地震では、石油タンクの上面全体が火に包まれる大規模な火災が発生し、東日本大震災においてガス貯蔵施設の火災・爆発が発生した。現在、南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念される中、自然災害によって石油コンビナートや化学プラントといったエネルギー・産業基盤施設において大規模な火災が発生することも考えられる。自然災害ばかりでなく、石油コンビナートや化学プラントにおける火災・爆発事故も発生しており、ここ数年間は事故件数も増加傾向にある。

これらエネルギー・産業基盤施設の火災は市民生活の安心安全上大きな影響を与えるのみならず、市民の日常生活のエネルギー、物資の供給面においても支障をきたす。またさらに自然災害や事故後、地域の復興・復旧には、エネルギー・産業基盤が不可欠である。したがって、自然災害や事故に対して強靭な社会を実現するために、これらの火災を早期に抑制することが重要である。しかしながら、特殊な環境下の大規模火災において、消防隊員が大規模な火災に近接して活動することは非常に危険を伴い現実的には不可能である。また遠隔操作機器等での対応にも、通信条件の影響などもあり、有効な活動を行うための限界もある。

そこで、消防隊員による操作の必要がなく、簡単な判断及び操作指示をするだけで、半自律的に火災抑制、消火活動を行うことができる消防ロボットシステムを、平成26年度から5年計画で開発する。開発する消防ロボットシステムのイメージを第6-9図に示す。空中や地上の偵察ロボットが火災の状況を偵察伝送し、センターシステムで気象状況などを考慮した上で最適な消火戦術を導き、放水ロボットの放水位置を確定し、放水ロボット及びホース延長ロボットが放水作業を開始するというように、複数のロボットに機能を分散し、それぞれのロボットが協調連携し活動を成し遂げる。また、各ロボットには自律的な機能を取り入れる。自律機能を実現するには画像認識や空間認識などの高度な先端技術を研究し消防活動という過酷な状況において機能するように仕上げる必要もある。自律的な機能を取り入れることによって、消防隊員が進入できない、あるいは、遠隔操作機器では進入できない、大規模火災に近接し、高熱な領域での消防活動を可能とし、より効率的な消防活動を実現する。

第6-9図 開発する消防ロボットシステムのイメージ

対応を想定している状況は以下のとおり。

  1. (ア) 石油タンクの防油堤内火災や可燃性ガスホルダーの防液堤内火災の発生時において隣接する石油タンク等周辺施設への延焼を阻止するため、周辺施設を冷却する活動
  2. (イ) 大型の浮き屋根石油タンク全面火災が発生した状況下において、火災燃焼中の石油タンク側板を冷却し石油タンクの倒壊を防ぐことができること
  3. (ウ) 中型の浮き屋根石油タンク全面火災が発生した状況下において、火災を抑制できる(鎮圧まではできなくても、火炎の拡大をコントロールできる)こと
  4. (エ) 上記(ア)〜(ウ)の活動に伴う偵察・情報収集活動

開発する消防ロボットシステム1セットで対応できない場合は、複数セット用いることにより対応する。また、石油コンビナート火災以外の大規模火災にも対応可能とする汎用性、また、消防ロボットシステム全体ではなく一部のロボット、たとえば偵察ロボットだけでも機能することも考慮し開発を進めている。

イ 年次計画

平成26年度には設計を行い、平成28年度には消防ロボットシステムを構成する、偵察ロボットや放水ロボットなどの一次試作を完成させる。試作したロボットに協調連携や自律化といった高度な機能を取り込み、平成30年度には実戦配備可能なロボットシステムを完成させる。

第6章 消防防災の科学技術の研究・開発
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