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第2章 消防防災の組織と活動
(2) 救急救命士の処置範囲の拡大

救急救命士の処置範囲については、(3)に述べるメディカルコントロール体制の整備を前提とした上で、次の〔1〕から〔4〕に示すように、順次拡大されてきた。直近の救急救命士の処置拡大経緯については、後述のとおりである。平成23年度から、「救急救命士の処置範囲に係る研究」において、傷病者の救命率の向上や後遺症の軽減等を図るため、<1>血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与、<2>重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用、<3>心肺機能停止前の静脈路確保と輸液、の3行為について、臨床効果、安全性及び実効性に関する検証が、全国129消防本部で実施された。

この実証研究における分析・考察の結果、平成25年8月に厚生労働省より公表された「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」の報告書(参照URL:http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000014584.pdf)において、3行為のうち、<1>及び<3>については、救急救命士の処置範囲に追加することが適当であるという結論が示された。これを受けて、平成26年4月1日より心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液、血糖測定並びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与が、救急救命士の処置範囲に追加された(〔4〕参照)。

【処置範囲拡大の経過】

〔1〕除細動

平成3年の救急救命士法の施行以来、医師の具体的指示の下に救急救命士が実施していた除細動については、平成15年4月から、プロトコルの作成及び普及、講習カリキュラムに沿った必要な講習の実施、プロトコルに沿った処置の実施等に関する事後検証体制の整備など、事前及び事後におけるメディカルコントロール体制の整備を条件に、医師の包括的指示の下で実施することが可能となった。

〔2〕気管挿管

気管挿管については、平成16年7月から、事前及び事後のメディカルコントロール体制の整備を条件に、一定の講習及び病院実習を修了し、認定を受けた救急救命士に認められることとなった。平成28年4月1日現在、気管挿管を実施することのできる救急救命士数は1万6,517人となっている。

また、気管内チューブによる気道確保を実施する場合に、ビデオ硬性挿管用喉頭鏡を使用すると、気道確保の安全性や確実性が高まることから、平成23年8月より、追加講習及び病院実習など、一定の要件の下でビデオ硬性挿管用喉頭鏡が使用可能となっており、今後も、地域メディカルコントロール協議会等で運用について検討されることが期待されている。平成28年4月1日現在、ビデオ硬性挿管用喉頭鏡を実施することのできる救急救命士の数は3,255人となっている。

〔3〕薬剤投与(アドレナリン)

薬剤投与については、平成18年4月から、事前及び事後のメディカルコントロール体制の整備を条件に、一定の講習及び病院実習を修了し、認定を受けた救急救命士に認められることとなった。平成28年4月1日現在、薬剤投与(アドレナリン)を実施することのできる救急救命士の数は2万7,212人となっている。

さらに、平成21年3月より、アナフィラキシーショックにより生命が危険な状態にある傷病者があらかじめ自己注射が可能なアドレナリン製剤(エピペン)を処方されている者であった場合には、救急救命士が、アドレナリン製剤(エピペン)の投与を行うことが可能となった。

〔4〕心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液、血糖測定並びにブドウ糖溶液の投与

心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液、血糖測定並びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与については、平成26年4月から、事前及び事後におけるメディカルコントロール体制の整備を条件に、一定の講習を受講し、認定を受けた救急救命士に認められることとなった。平成28年4月1日現在、心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保及び輸液を実施することができる救急救命士の数は1万2,110人、血糖測定並びにブドウ糖溶液の投与を実施することができる救急救命士の数は1万2,169人となっている。これにより傷病者の救命率の向上や後遺症の軽減に寄与するものと考えられる。消防庁としては、厚生労働省と連携し、全国の消防本部における救急救命士の処置範囲の拡大に向けた対応を支援していくこととしている。

第2章 消防防災の組織と活動
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