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第6章 消防防災の科学技術の研究・開発
(3) 危険物施設の安全性向上に関する研究開発

本研究課題では、南海トラフ巨大地震、首都直下地震等の大地震が切迫している中で、東日本大震災の経験から、地震発生後の早期復旧・復興の実現において、石油タンクなどエネルギー産業施設の強靭化による被害の未然防止、火災等災害発生時の早期鎮圧と徹底した拡大抑止が極めて重要視されていること、火災危険性に関して知見が少ない物質や一旦火災が発生すると消火が困難な物質が普及し、石油コンビナート地域等の危険物施設における火災・爆発事故の発生が後を絶たないなど化学物質に関する防火安全上の課題が生じていることを踏まえ、危険物施設の安全性の向上を目指して、次の三つのサブテーマを設けて研究開発を行っている。

ア サブテーマ「石油タンクの入力地震動と地震被害予測の高精度化のための研究」

南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生時には、石油コンビナート地域をはじめとする大型石油タンク立地地点も、極めて大きな短周期地震動及び長周期地震動に見舞われるおそれがあることが予測されており、これらの大きな揺れによる石油タンクへの影響が懸念される。

一方、東日本大震災等過去の地震時の事例は、石油タンクに対する実効性のある地震被害予防・軽減対策や災害拡大防止のための地震時応急対応の基礎となる石油タンクの地震時の被害予測が、現状では十分な精度でできないことを示唆している。

本研究では、石油タンク地震時被害予測の高精度化を目指して、[1]石油タンク被害発生条件と相関の高い短周期地震動の性状を探求するとともに、[2]石油コンビナート地域の長周期地震動特性のピンポイント把握のための実務的手法を開発し、長周期地震動の短距離空間較差をもたらす地下構造中の支配的要因を解明することを目的としている。

イ サブテーマ「泡消火技術の高度化に関する研究」

石油タンク火災や流出油火災時の消火対応としては、泡消火が最も有効であるが、その泡消火過程は、燃料の種類、泡の投入方法、泡消火薬剤の種類、泡性状が関与する極めて複合的な現象であるため、泡消火性能の定量的な評価は、極めて難しく、大規模石油タンク火災等に対する詳細な消火戦術や、より効率的な泡消火技術の開発まで至っていないのが現状である。また、国際的動向により、泡消火時の環境負荷低減も考慮しなければならず、早期火災鎮圧および環境負荷が低いフッ素フリー泡消火薬剤における適切な使用方法等の課題が残されている。

本研究では、これまで検討を続けてきた、フッ素含有およびフッ素フリー泡消火薬剤の泡性状に対する消火効率の検討に加え、石油タンク内の油種の違いや泡の投入方法、また石油タンク火災規模に対する、各消火効率の検討も併せて行い、フッ素フリー泡消火薬剤代替時の泡供給率を定量的に示すことを目的としている。

ウ サブテーマ「化学物質の火災危険性を適正に把握するための研究」

化学物質の火災を予防するためには、多岐に及ぶ化学物質の火災危険性を適正に把握し、火災予防・被害軽減対策を立案しておくことが重要である。しかしながら、消防法等を含む従来の火災危険性評価方法では、加熱分解、燃焼性、蓄熱発火及び混合等に対する危険性評価が困難で不十分な場合がある。

本研究では、化学物質および化学反応について、現在把握できていない火災危険性を明らかにするために、適正な火災危険性評価方法を研究開発することを目的とする。熱量計等を用いて得られる温度及び圧力等を指標として、分解、混合及び蓄熱発火危険性を定量的に評価する方法を検討し、開発する。また、燃焼速度、燃焼熱及び発熱速度等を指標とした燃焼危険性を評価する方法を研究開発する。

第6章 消防防災の科学技術の研究・開発
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