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特集1 熊本地震の被害と対応
(3) 消防機関の活動規模・概況

ア 活動規模等

熊本市消防局など被災地の消防本部のほか、県内消防応援隊及び緊急消防援助隊が総力を挙げて消火・救助・救急活動等に従事し、これら消防機関により376人(大分県の13人を含む。)の人命救助が実施された。

また、消防団の活動においても、常備消防と連携したものも含め、益城町で51人、南阿蘇村で5人、西原村で15人など多数の人命救助が実施された。

なお、各機関の最大活動規模は特集1-6表のとおりである。

特集1-6表 消防機関の最大活動規模

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特集1-7表 熊本県内消防本部の活動

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特集1-8表 大分県内消防本部の活動

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イ 活動の概況

(ア) 救助活動

被災地域の多くの現場で、地元消防本部、消防団及び県内消防応援隊が緊急消防援助隊、警察、自衛隊等と協力して救助活動を行った。家屋倒壊などの被害が各所で発生し、閉じ込め等による救助要請が多発した。一部地域では、道路が損壊するなど、消防車両が救助現場に近づくことができない場所もあり、救助資機材を携行しながら徒歩で移動しなければならない現場もあった。

熊本県では、益城町安永地区の救助現場において、乳児が倒壊家屋から地元消防本部の救助隊に救出されるなど、地震発生直後から、被災地では各機関の懸命な救助活動が展開された。

(イ) 消火活動

地震に伴う火災は、熊本県内で4月14日21時26分の地震により5件、4月16日1時25分の地震により10件、合計で15件発生した。内訳としては、熊本市消防局管内で9件、上益城消防組合消防本部管内で1件、八代広域行政事務組合消防本部管内で2件、阿蘇広域行政事務組合消防本部管内で1件、菊池広域連合消防本部管内で2件となっている。

各地で発生した火災に対し、地元消防本部及び消防団による消火活動が実施された。消防機関の消火活動により、大規模火災に至る火災はなかった。

なお、熊本県以外では、この地震による火災は発生していない。

(ウ) 救急活動

地震発生後から、地震を直接の原因とする救急要請に加え、医療機関が被災したことにより、入院患者を他の医療機関へ搬送する転院搬送の要請があった。

また、避難生活が長期化する中、被災地では、地震の影響によって体調不良を訴える傷病者からの救急要請が長期間にわたって続いた。

熊本県内の地震に関連した救急件数については、4月14日21時26分の地震発生から約1週間が経過した4月21日9時00分までの間に1,351件となり、累計では1,979件となっている。

大分県内の地震に関連した救急件数は、4月21日9時00分までの間に43件となり、累計では45件となっている。

ウ 各機関の活動状況

(ア) 地元消防本部

4月14日21時26分の地震発生とともに、被災地域の各消防本部は初動対応を速やかに行い、災害対応体制の早期確立に努めた。

災害通報については、地震被害が甚大であった地域の消防本部では、地震発生直後から119番通報が多数入電し、その対応に追われた。119番通報の受信内容としては、地震発生直後から、救急・救助要請及び火災等の災害通報が続いた。

これらに対応するため、災害受信件数が急増した消防本部においては、受信内容に応じ、出動について優先度の判定を行うなど、同時多発した災害への対応を行った。

また、4月16日1時25分の地震発生後において、被災地域の各消防本部は、4月14日21時26分の地震による災害対応中であったところ、再度発生した大きな地震により同時多発した救急・救助要請や火災発生への対応等に追われた。

(イ) 県内応援等

熊本県内においては、4月14日21時26分の地震発生後の22時42分、熊本県知事から各消防本部へ熊本県消防相互応援協定に基づく出動の指示が出され、4月16日までの間に、県内消防応援隊10消防本部、延べ59隊198人が益城町及び西原村で要救助者の捜索・救助、救急搬送等の応援活動を実施した。

4月16日1時25分の地震発生以降は、他の地域にも被害が拡大し、それぞれの地元管内での対応を余儀なくされたこと、県外からの緊急消防援助隊の活動もなされていたことから、県内消防応援活動は、いったん中断された。

4月27日の緊急消防援助隊の引揚げ後は、引き続き現地消防体制を補完するため、改めて県内消防応援隊が組織され、4月27日から5月5日の間、11消防本部、延べ55隊186人が南阿蘇村立野地区(阿蘇大橋付近)の道路啓開現場での警戒活動、南阿蘇村全域の救急搬送等の応援活動を実施した。

また、4月27日から5月2日の間、北九州市消防局及び福岡市消防局から各1隊3人の救急隊が、南阿蘇村において消防活動支援を実施した。

大分県においては、県内相互応援協定等に基づく出動はなく、各々の消防本部で災害対応を行った。

(ウ) 緊急消防援助隊

4月14日21時26分の地震発生を受け、消防庁長官から緊急消防援助隊の出動の求めを受けた九州地方各県を中心とする10県の緊急消防援助隊は、速やかに熊本県へ向けて出動した。また、4月16日1時25分の地震発生を受け、消防庁長官から出動の求めを受けた中国・四国地方の各県を中心とする10都府県の緊急消防援助隊も、新たに熊本県へ向けて出動するとともに、先に出動していた大分県を除く9県からも追加で出動した。なお、4月16日1時25分の地震では、大分県において震度6弱が観測されたため、4月14日21時26分の地震を受け出動していた大分県の緊急消防援助隊は自県対応を行うこととなったが、その他の緊急消防援助隊は全て熊本県において活動した(特集1-9表)。

特集1-9表 緊急消防援助隊の出動状況

緊急消防援助隊は、4月14日21時26分の地震発生後、主に、熊本市、益城町及び西原村で、4月16日1時25分の地震発生後は、これらの地域に加えて、南阿蘇村において活動した。

福岡市消防局指揮支援隊は、部隊長として熊本県庁に設置された消防応援活動調整本部に参集し、熊本県、熊本県内消防本部及び消防庁派遣職員のほか、警察、自衛隊、海上保安庁、DMAT*2、国土交通省、気象庁等の関係機関とも連携し、被害情報の収集・整理、緊急消防援助隊の活動方針の調整等を行った。その他の消防本部の指揮支援隊は、4月14日21時26分の地震発生後、熊本市消防局、宇城広域連合消防本部、有明広域行政事務組合消防本部等において、警察、自衛隊等と連携し、被害情報の収集・整理、緊急消防援助隊の活動管理、活動内容の調整等を行った。4月16日1時25分の地震発生後は、熊本県消防学校、益城町災害対策本部、熊本県阿蘇地域振興局、阿蘇広域行政事務組合消防本部等でも活動を展開した。

熊本県活動調整会議

陸上隊は、多少の通行障害があったものの、迅速な復旧により規制が解除されたこともあり、熊本市、益城町及び西原村への進出に大きな混乱は生じなかったが、南阿蘇村では、阿蘇大橋の崩落や幹線道路の寸断等の発生により、活動エリアへの進出には困難を伴った。現場到着後は、警察、自衛隊、DMAT、国土交通省(TEC-FORCE*3)等の関係機関と連携し、活動内容や範囲等を調整した上で、市街地や住宅街での広範囲にわたる捜索を行い、大きな余震が発生すれば全壊する可能性のあった倒壊建物内などから22人の住民を救助した。また、土砂災害現場においても、大量の土砂が堆積する状況の中、スコップ等を用いて捜索・救助活動を行った。そのほか、停電の影響により病院機能の維持が難しくなり、かつ建物強度に問題が発生した病院から、地元消防本部に協力して28人の入院患者を救助し、環境の整った病院へ搬送するとともに、救急車による転院搬送や避難所等で発生した傷病者の救急搬送などを実施した。

土砂崩れ現場での活動(南阿蘇村消防団提供)
益城町活動時の地図(岡山市消防局提供)
益城町宮園地区(宮崎市消防局提供)

航空隊は、先着で情報収集を行った隊から、山間部の狭い地域において多数の要救助者を救助するため、小型のヘリコプターを着陸させて救助活動を行うことが必要との情報を受けて、着陸スペースに適したヘリコプター3機の連携により孤立住民26人を救助するなど、ホイスト*4による人命救助等も合わせて35人を救助した。また、地上で活動を展開する無線中継車とも連携したヘリテレ*5やヘリサット*6等を活用した情報収集や映像配信も実施した。

そのほか、大規模かつ広範囲な地滑りが発生した南阿蘇村の土砂災害現場において、雨天後の活動再開の可否を判断するため、消防防災ヘリコプターに消防研究センターの土砂災害の専門家を搭乗させ、上空からの現場確認を実施した。これらの情報を基に、警察、自衛隊等と協議を行い、救助活動を再開した。また、阿蘇大橋崩落現場では、二次災害の危険性が高かったことから、救助小隊が保有する地震警報器や国土交通省の無人重機等を活用して、捜索・救助活動が行われた。

南阿蘇村河陽地区(大阪市消防局提供)
南阿蘇村河陽地区(広島県防災航空隊提供)

これら懸命な活動の結果、緊急消防援助隊は、熊本県内において、陸上隊、航空隊を合わせて86人を救助し、388人を救急搬送した。

こうした緊急消防援助隊の活動は、4月14日から27日まで14日間にわたり実施され、部隊の総数は、20都府県の1,644隊5,497人(延べ4,336隊、15,613人)に上り、東日本大震災に次ぐ大規模な応援となった。また、1日単位での活動のピークは、4月16日で569隊2,100人であった(特集1-1図)。

*2 Disaster Medical Assistance Team(災害派遣医療チーム)の略称。災害時に被災地に迅速に駆け付け、救急治療を行うための専門的な訓練を受けたチーム(厚生労働省所管)。
*3 Technical Emergency Control Force(緊急災害対策派遣隊)の略称。災害時に地方公共団体への技術的支援等を円滑かつ迅速に行うための河川、砂防、道路等の各分野に精通した国土交通省の職員で構成される部隊。
*4 ヘリコプターが着陸できない場所において、ホバリング(空中での停止飛行)状態からヘリコプターと地上間の人員や物資を昇降する装置。
*5 ヘリコプターに搭載されたカメラで撮影した被災地の映像情報を都道府県や消防本部等の地上受信局へ伝送する装置。地上受信局に人工衛星へ伝送が可能な装置が併設されている場合には、映像情報を消防庁や他の地方公共団体等へも伝送することが可能。
*6 ヘリコプターから人工衛星に直接電波を送信する方法により、地上受信局に伝送できない地域でも、被災地の映像情報をリアルタイムで消防庁や他の地方公共団体等へ伝送する装置。
*7 出動した隊員数、隊数(交替出動を含む。)の実総数。
*8 各日毎の活動した隊員数、隊数を活動期間中(14日間)累計した数。
特集1-1図 熊本地震における緊急消防援助隊活動人員の推移

(エ) 消防団

多くの消防団が、地震発生後直ちに活動を開始した。地震直後に発生した火災の消火活動、各地区内における住民の安否確認や避難誘導、倒壊家屋に閉じ込められた住民の救助活動などに加え、その後においても避難所運営の支援など、消防団の特性を生かしながら地域防災の要として多くの活動を行った。

その活動規模は、熊本県においては、4月14日から5月31日までの間に延べ約105,000人(最大活動時は13,858人(4月17日))が、大分県においては、4月14日から5月31日までの間に延べ約7,400人(最大活動時は2,960人(4月16日))が、それぞれ活動した。

a 地震発生直後の活動

今回の地震では、多くの家屋が倒壊するなどの被害が発生し、一部地域では、道路損壊などにより、救助隊の到着が遅くなることが懸念される中、地域の状況を詳細に把握している消防団は、速やかに住民の安否確認を行った。さらに、常備消防と連携したものも含め、倒壊家屋に閉じ込められた住人の救助活動を行い、益城町で51人、南阿蘇村で5人、西原村で15人の救助を行った。なお、南阿蘇村において、道路啓開のために倒木を撤去したり、夜間の救助現場での照明機器を用いた活動支援を実施したりするため、消防庁が無償貸与している救助資機材搭載型車両が活躍した。

また、八代市、益城町において地震直後に発生した火災では、いち早く消防団が駆け付けて消火活動を行い、常備消防と連携した鎮圧活動も行われた。

b 地震発生後の活動

地震発生から数日経過した後においても、消防団は各地域において多くの住民が避難する避難所や地域の見回りなど、消火・救助活動以外の次のような活動を行った。

〈被災地における消防団長の声〉

特集1 熊本地震の被害と対応
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