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平成15年3月4目判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
平成14年(ワ)第2729号動産引渡等請求事件
口頭弁論終結日 平成15年2月5目

判決
原告
同代表者代表取締役       
同訴訟代理人弁護士

被告

こと

主文
   被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の消火器38本を引き渡せ
   被告は、原告に対し、上記引き渡しの強制執行が功を奏しないときは、45万6000円を支払え。
   訴訟費用は、被告の負担とする。
   この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1    請求の趣旨
   主文と同旨
第2    当事者の主張
   原告の請求原因は別紙のとおりである。
   被告は、請求原因及び原告主張の関連事実に対し、
(1 ) 原告が別紙物件目録記載(※別紙物件目録省略)の消火器38本(以下全部まとめて「本件消火器」という)を所有していること、被告が平成14年11月1日、原告会社事業所から本件消火器を持ち出したことは認める。
(2 ) 消火器の値段は原告主張の1本当たり2万5000円は高すぎる、一本当たり1万2000円から1万8000円である。
(3 ) 原告が各種自動車の販売、修理及びそれに付随するサービス等を業とする会社であること、被告が消火器の設備点検を営んでいる個人業者であることは認める。
(4 ) 持ち出した消火器の本数については原告側も確認している筈である。
(5 ) 契約書と表題が印刷してあり、金額も記載されている書類に署名しているのであるから、契約書とわかったはずである。
(5 ) 契約書と表題が印刷してあり、金額も記載されている書類に署名しているのであるから、契約書とわかったはずである。
(6 ) 作業を他人に依頼すれば費用がかかるのは当然であり、それに対し金銭を支払う意思がなかったとの原告の主張はおかしい。
(7 ) 社長が全ての契約をするとは限らないのであって、担当者が契約をしたというそれだけの理由で会社との契約が無効になるものではない。
(8 ) 本件が訪問販売に該当するのか、指定商品にあたるのかは知らない。
(9 ) 特定商取引に関する法律(以下「法」という)に規定されている法定書面を交付していないことは認める。
(1 0) 原告は会社なので法26条1項1号が適用され、クーリング・オフの適用除外にあたる。
第3    判断
   原告が本件消火器を所有していること、被告が平成14年11月1日、原告会社事業所から本件消火器を持ち出したことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、消火器の値段は1本当たり1万2000円と認めるのが相当である。
   原告は、「消防用設備点検作業契約書」(甲2)と題する書面につき、預かり証と思って署名したから契約は不成立である旨主張するが、甲2の体裁及び記載内容からみて、原告の主張は採用できない。
   また、原告は社長でなければ契約は締結できないとも主張するが、原告は資本金3500万円の株式会社である(商業登記簿)ことからすれば、通常は消火器の点検程度のことは社長自身が契約することはなく会社内部で権限委譲されていると推測され、原告の主張は採用できない。
   しかしながら、本件記録によれば本件取引が法にいう訪問販売に該当し、取引対象商品が指定商品に該当することが認められ、同認定に反する証拠はない。
   そして、原告が個人ではなく株式会社であることは被告の主張するとおりであるが、原告は各種自動車の販売、修理及びそれに付随するサービス等を業とする会社であって、消火器の充填薬剤の購入が営業のためもしくは営業としての購入でないことが明らかであるから、法26条1項1号(適用除外の規定)は本件に適用されない。
   被告が法4条、5条に規定する書面を原告に交付していないことは当事者間に争いがない。
   そして、原告が平成14年12月10日被告に送達された本件訴状をもって、法9条に基づきクーリング・オフの意思表示をしたことは本件記録上明らかである。
   以上によれば、クーリング・オフを理由とする原告の主張は理由がある。

   よって、原告の本訴請求を認容することとし、主文のとおり判決する。

神戸地方裁判所第1民事部
裁判官  
   古川   行男


(別紙)
第1    請求の原因
   原告は、別紙物件目録記載の消火器38本を所有している。
   被告は、平成14年11月1日、原告会社事業所から、上記消火器38本を持ち出し、以来同消火器を占有している。
   上記消火器38本の価額合計は、金95万円(1本あたり2万5000円)である。
   よって、原告は被告に対して、所有権に基づき別紙物件目録記載の消火器38本の引き渡しを求めるとともに、同消火器38本の引き渡しの強制執行が功を奏しないときは金95万円を支払うよう求める。
第2    関連事実
   当事者
(1 ) 原告は、各種自動車の販売、修理、及びそれに付随するサービス、貸自動車及びそれに付随するサービス等を業とする株式会社である。
(2 ) 被告は、甲第1号証の1・同号証の2に記載されているのと類似の商法により、消火器の設備点検を営んでいる個人事業者である。
   消火器持ち出しの経緯について(甲第3号証)
(1 ) 平成14年10月末頃、被告から原告事務所に対し、消火器の充填期日が過ぎているので作業に伺う旨の電話があった。なお、原告が従前から消防法上の消防用設備等点検を委託しているのは被告とは全く別の会社であり、被告とはこれまで取引関係は一切存在していなかった。
(2 ) 同年11月1日、被告従業員2名が原告事務所を訪れ、充填整備のためと称して、原告事務所から消火器38本を運び出したが、その際、原告側では、消火器の運び出し作業には立ち会っておらず、本数の確認もしていない。
(3 ) 消火器運び出し後、上記従業員は原告従業員に対し書類にサインするよう求め、原告従業員は消火器の預かり証だと思いサインに応じた(甲第2号証)。
   このとき、同書類が消防用設備点検作業契約書であることについても、作業費用がいくらかかるのかについても、被告従業員からの説明は一切無かった。
第3    法的主張
   契約の不成立(意思表示の不一致)
   契約の成立には、申込と承諾の合致が必要である。そして、この合致については、客観的合致(契約内容の合致)と、主観的合致(契約当事者の合敦)があることは、異論がない。
   本件については、このような申込と承諾の合致が存在しておらず、したがって、契約は成立していない。
   すなわち、客観的合致についてみれば、原告会社従業員は、消火器の薬剤充填の対価として53万4922円を支払う意思など有しておらず、被告従業員の言動により、消火器引き上げについての確認書であると誤信させられ、「消防用設備点検作業契約書」なる書面に、自己の氏を記入させられたものにすぎず、このような契約締結の意思なき署名の騙取があった場合には、客観的合致がなく、契約は成立しないとするのが判例である(長崎地方裁判所昭和58年9月14日判例集未登載(「消費生活判例ファイル」(平成3年:国民生活センター監修/第一法規発行)に掲載)、門司簡易裁判所昭和60年10月18日判例タイムズ576号93貫 参照)。
   また、主観的合致についてみれば、原告従業員は、被告従業員の言動によって、原告会社が従前より、動力消防ポンプ、自動火災報知設備、屋外消火栓設備、消火器など消防用設備等の維持管理点検を依頼し、その消防用設備等の維持台帳の記録や消防署長への報告など消防に関する一切の業務を委託してきた取引業者が、そのような消防に関する委託業務遂行の必要から、架電のうえで消火器を引き取りに来たものと誤信させられ、当該原告会社との継続的取引業者とのやりとりであると信じて、「消防用設備点検作業契約書」なる書面に、自己の氏を記入したものである。したがって、原告従業員には、従前からの原告会社の継続的取引業者とのやりとりをする意思しか存せず、新規の飛び込みの業者である被告と取引をする意思など毛頭なかった。主観的合致がなく、契約が成立していないことは明らかである。
   以上のとおり、本件においては、客観的合致及び主観的合致の双方とも存在していない以上、契約が不成立であることは、明白である。
   契約の不成立(代表権の欠如)
   原告は、株式会社であるから、その代表権は代表取締役のみが有している。いうまでもなく、株式会社が当事者となる契約が成立するためには、代表行為が有効になされる必要があるところ、その要件事実は、1)第三者と会社代表者との間の申込の意思表示と承諾の意思表示の合致、2)当核会社代表者は、上記契約締結時において、当該株式会社の代表取締役の地位にあったこと、の2点である。
   本件において、原告会社の代表取締役は、いかなる意思表示もしていない。
   したがって、かかる観点からも、契約の不成立は明らかである。
   クーリング・オフ(特定商取引法の適用)
   本件において、仮に「消防用設備点検作業契約書」なる書面に記載されているような契約の成立が認められると仮定しても、特定商取引法上の訪問販売に該当すること、取引対象物が指定商品(別表第一の18)に該当すること、及び、法定書面の交付がないことは明白であって、原告会社は、本訴状をもって、被告との間の上記契約について、特定商取引法9条に基づき、クーリング・オフする旨の意思表示をする。
   なお、本件においては、特定商取引法26条1項1号(適用除外に関する規定)は、適用がない。
   すなわち、原告会社は、消火器の充填薬剤の購入など、その営業目的としておらず、営業としての購入などないことは明白である。また、原告会社は、既に継続的な取引業者に対して、消防用設備等の維持管理点検を包括的に委託しており、消火器の薬剤充填は、半年に一度の割合で行なわれる消火器を用いた消防訓練で使用に供された消火器について、順次薬剤を補填する方法によってなされていたものであり、わざわざ新たに被告との契約締結により消火器薬剤の充填をする必要などどこにもなかったものであり、かような契約は、「営業のために」なされたものではないことは、明らかである。
   したがって、仮に契約が成立したとしても、本件において、特定商取引法の適用は除外されず、クーリング・オフにより、契約は解消される。

以上

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