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 本ページは、平成15年7月30日大阪高等裁判所判決の平成15年(ネ)第1055号動産引渡等請求控訴事件により、原審(神戸地方裁判所平成14年(ワ)第2729号)に対し付加訂正された内容を反映したもののうち「第3判断」を掲載したものです。

第3    判断
 原告が本件消火器を所有していること、被告が平成14年11月1日、原告会社事業所から本件消火器を持ち出したことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、消火器の値段は1本当たり1万2000円と認めるのが相当である。なお、控訴人は、中古の本件消火器について1万2000円の認定は高すぎると主張するが、これを裏付ける証拠はなく、上記認定を覆すことはできない。
 本件取引については、『消防用設備点検作業契約書』と題する書面(甲2)が存在し、これには、その上部に『消防用設備点検作業契約書』と、その下、右側に『作業実施申込確認書』といずれもやや大きな文字で記載され、その下には、控訴人に有償にて消火器の充填作業等を依頼する旨の記載があるところ、甲3(Cの陳述書)によれば、被控訴人の従業員Cが、その控訴人の記名押印の上部に設けられた『支払権限者又は代理人署名』欄に『B、C』と署名したことが認められる。前掲の甲3には、預かり証と思って署名した旨の記述があるが、上記のような書面の体裁からするとこれが契約書であることは一見して分かるものであるから、その記述は容易に信用できず、Cが、依頼した業者や契約金額に錯誤があったかもしれないが、被控訴人のために、本件消火器の薬剤充填を依頼する意思表示をしたことは、これを認めることができる。被控訴人は、意思表示の合致がなく、本件取引について契約は不成立である旨主張するが、Cの意思表示は甲2によって控訴人宛にされているのであるから、錯誤の問題が生じるとしても、不成立とはいえず、これを採用することはできない。
  また、原告は社長でなければ契約は締結できないとも主張するが、原告は資本金3500万円の株式会社である(商業登記簿)ことからすれば、通常は消火器の点検程度のことは社長自身が契約することはなく会社内部で権限委譲されていると推測され、原告の主張は採用できない。
 しかしながら、本件記録によれば本件取引が法にいう訪問販売に該当し、取引対象商品が指定商品に該当することが認められ、同認定に反する証拠はない。
 控訴人は、本件取引に法26条1項1号の適用があるというので検討するに、同法(平成12年に改正される前は訪間販売等に関する法律)は、昭和63年法律第43号による改正前は、訪間販売等における契約の申込みの撤回等についての適用を除外する契約として、「売買契約でその申込みをした者又は購入者のために商行為となるものに係る販売」と規定されていたのであるが、上記改正によって「売買契約又は役務提供契約で、その申込みをした者が営業のために若しくは営業として締結するもの又は購入者若しくは役務の提供を受ける者が営業のために若しくは営業として締結するものに係る販売又は役務の提供」となったものである。これによれば、上記改正の趣旨は、商行為に該当する販売又は役務の提供であっても、申込みをした者、購入者若しくは役務の提供を受ける者にとって、営業のために若しくは営業として締結するものでない販売又は役務の提供は、除外事由としない趣旨であることが明白である。そこで、本件取引についてみるに、被控訴人は、各種自動車の販売、修理及びそれに付随するサービス等を業とする会杜であって、消火器を営業の対象とする会杜ではないから(甲3、弁論の全趣旨)、消火器薬剤充填整備、点検作業等の実施契約(本件取引)が営業のため若しくは営業として締結されたということはできない。消防法上、被控訴人の事務所等に消火器を設備することが必要とされているとしても、これは消防法の目的から要求されるものであって、これによって本件取引を営業のため若しくは営業として締結されたものということはできない。
 被告が法4条、5条に規定する書面を原告に交付していないことは当事者間に争いがない。
 そして、原告が平成14年12月10日被告に送達された本件訴状をもって、法9条に基づきクーリング・オフの意思表示をしたことは本件記録上明らかである。
 以上によれば、クーリング・オフを理由とする原告の主張は理由がある。
 念のために付言すると、証拠(甲2、3、乙1)並びに弁論の全趣旨によれば、控訴人は、種々の事業所等に出入業者を装う等の方法で訪間し、消火器点検薬剤充填の業務を行っている者であるが、平成14年10月末ころ、女性従業員に被控訴人の事務所に電話させ、「Aです。いつもお世話になっております。消火器の充填の期日が過ぎております。こちらから伺いますので、いつごろがよろしいでしょうか。」と、被控訴人の出入業者を装って電話をさせたこと、電話を受けた被控訴人従業員Cは、その電話を従前から被控訴人と取引のある業者と誤信し、「期限が過ぎているようでしたら来てください。」と答えたこと、そこで、控訴人が雇用する男性2人が、同年11月1日ころ、控訴人の事務所を訪れ、上記のように錯誤に陥っているCに、「Aですが、引き取りに来ました。」と言い、本件消火器を運び出し、Cが上記の錯誤に陥っていることを知りながら、控訴人が従前からの取引業者でないことを告げず、その錯誤を利用して、「引き上げておきましたので、ここにサインを下さい。」と告げて、従前からの取引業者よりも非常に高額の作業費等を計上の消防用設備点検作業契約書に署名させたことを認めることができるが、これは詐歎に該当するということができる。そして、被控訴人が、本件取引を詐欺により取り消す旨の意思表示をしたことは当裁判所に顕著である。してみれば、本件取引は、法によって申込みの撤回が認められないとしても、その効力を失ったものである。
よって、原告の本訴請求を認容することとし、主文のとおり判決する。


以上

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