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地域の安全・安心を実現するために

〜 自主防災組織の新たな在り方について 〜



平成15年12月

地域の安全・安心に関する懇話会

最終報告







目次

はじめに  
第1章 背景
第2章 自主防災活動の質的転換点
第3章 自主防災活動活性化の手法
  第1節   地域(自主防災組織)自身による取り組み
  第2節   学校教育における取り組み
  第3節   行政による取り組み
  第4節   その他(自主防災組織と行政のすき間を埋める役割)
第4章 企業と地域との連携
第5章 防災の施策効果の社会に対する影響
第6章 自主防災組織の活性化のための施策推進に向けて

[参考資料] (PDF)
 資料1 自主防災組織組織数・組織率
 資料2 大雨災害に係る水俣市自主防災組織の活動
 資料3 CERTの概要
 資料4 東京消防庁災害時支援ボランティア(概要)
 資料5 アメリカ(ロサンゼルスでの取り組み)CBOとENLAについて
 資料6 一寺言問 防災まちづくり瓦版
 資料7 坂戸地区婦人防火クラブ
 資料8 赤十字ボランティアについて
 資料9 太子堂中学校 (地域防災の担い手をめざした中学教育の取組と実践)
 資料10 防災・危機管理e-カレッジ
 資料11 「防災力評価指針」の概要







はじめに


  自主防災組織の活動は、停滞気味と言われる地域がある一方で、阪神・淡路大震災以降、着実に組織率は向上し、地域によっては非常に活発な活動を行っているところも少なくない。大規模災害などが高い確率で想定される近い将来において、地縁組織の伝統に基盤を有する自主防災組織の意義を再確認していくべきであるとの強い指摘がある中、消防庁をはじめとした政府の各組織、地方自治体においても、自主防災組織の意義の再認識が行われつつある。
  一方で、全国的に見ると災害は各地で多発しているものの、個々の地域の立場からすれば、そう頻繁に災害に見舞われているわけではない。このような中で、自主防災組織が災害活動だけを主たる活動として組織員の緊張感を維持していくことは、なかなか容易ではない。継続性のある自主防災活動、多くの参加者を集める自主防災活動を成功させている事例を見ると、教育PTA活動、福祉活動、環境保護活動、青少年健全育成活動、防犯活動、地域のお祭り行事などを自主防災活動と組み合わせて、日常性を大事にしながら、あるいは楽しみながら、自然に地域の人同士のふれあいが行われるようにする中で自然な形で地域防災力を高めている例が多くあることに気付かされる。
  これらの日常的な住民同士のふれあいの積み重ねが、いざ災害時に、「非常モード」に転換し、消火、救助、避難、安否確認、市町村との連絡調整などが円滑に行われることに結びつくものであることは想像に難くないところである。普段の地域社会活動での情報共有や心のふれあいが災害時の地域の連帯した対応力に役立つのである。
  本懇話会では、わが国の社会経済情勢や地域の生活様式が変化し、危機管理の重要性が大きく注目される中で、各界を代表する有識者・実践活動家による議論を通じて、自主防災活動をどのような形で維持・強化し、そのためにはどのような方策、どのような連携・協力が必要となるのか、そして自主防災組織の新たなあり方とは何かを整理し、報告書としてとりまとめた。
  この報告書が各地域での日常的な防災活動を活性化させ、地域の安全・安心を実現するための一助となることを期待したい。


地域の安全・安心に関する懇話会
会長   樋口 公啓







1章  自主防災組織の設立の背景

1) 発展の経緯
  日本における自主防災組織は、1971年に米国ロサンゼルスでサンフェルナンド地震の教訓をきっかけに、大都市を中心として設立されたと言われている。当初の設立目的は地震災害対応で、都市部における行政による救援活動に対する協力が主たる活動であり、組織形態は町内会を中心としたものであった。
  こうした組織に対し、行政が支援し始めてから30年余りが経過しているが、今日では、組織形態は変わらず町内会中心であるが、組織の目的は災害全般への対応に拡大し、エリアは都市部のみならず地方へと広がった上、活動内容も災害予防の観点も取り入れた活動となっている。
  自主防災組織は、地縁組織を活用した防災組織として、ポテンシャルの高いわが国特有の組織であり、その積極的な活用が求められているところである。

2) 災害において自主防災組織の果たす役割
  自主防災組織は、大災害発生時における地域の消火・救助活動にとどまらず、広報やインターネットを通じて提供される地域のリスク情報や災害発生時の対応に関する行政情報について、各戸にまできめ細かく伝えていく役割をも有している。
  平成7年の阪神大震災以降、自主防災組織数は全国的に増加傾向にあり、平成15年4月現在で組織率は61.3%となっている(→資料1(PDF))。
  最近でも、災害時に自主防災組織の活動が評価された例としては、平成15年7月の九州豪雨における水俣市の土砂災害時時において、住民の早期避難に役立ったケースがある(→資料2(PDF))。
  こうした自主防災組織の活動をさらに発展させるに当たっては、わが国に特有の地縁組織を活用した防災の仕組みのメリットを再認識し、これを十二分に生かしていくことが必要である。

3) 外国における自主防災組織の設立例
  外国においても、日本の仕組みが模範となり、地域の防災組織の育成が行われている例もある。
  例えば、 米国のCERT(Community Emergency Response Teams)は、静岡県等の自主防災組織の仕組みを参考に発展させたものである。米国では地縁による組織の設立が困難であるため、防災ボランティアの育成という形で開始され、定着したものである。1993年よりFEMA(Federal Emergency Management Agency:連邦危機管理庁)がこれを推奨しており、45州、340以上のコミュニティーにおいて訓練が実施される等、行政による関与・支援が積極的に行われている。ちなみに、CERTの教育プログラム(下記参照)については、2003年度予算が約20億円、2002年までに20万人が受講している(→資料3(PDF))。
  阪神大震災後、東京消防庁がこうした仕組みを参考に、「災害時支援ボランティア」制度を設け、平成10年度以降、登録人員17,000名となっている(→資料4(PDF))が、CERTのプログラムのあり方について、わが国においても自主防災組織リーダー訓練制度への応用を検討すべきである。
  また、ロサンゼルスでは、防災専門家によるネットワーク組織ENLA(Emergency Network of Los Angeles)が、福祉・保健・医療など地域における多様なニーズに対応した活動を行うCBO(Community Based Organization:地域密着型組織)をネットワーク化し、災害発生時の支援はもとより、平時からの研修・訓練、災害対応に対する評価を行うことを通じ、地域の組織だけではまかないきれない専門的・技術的サポートや、社会的弱者をはじめとする多種多様な満たされないニーズ(アンメット・ニーズ)への対応を担っている(→資料5(PDF))。こうした地域組織をバックアップする専門組織の設立・運営もわが国の課題として挙げられよう。

参考)CERTにおける訓練概要
 (1セッションの所要時間は2.5時間。1週間で1セッション、7週間で終了)
   セッション1:災害予防 セッション2:消火
   セッション3:応急医療1)    

セッション4:応急医療2)

   セッション5:捜索・救助

セッション6:災害心理学及び組織の在り方

 ?? ??   セッション7:総括及びシミュレーション




2章  自主防災活動の質的転換点

  現状において、自主防災組織の活動は盛んになってきている一方で、多くの課題が指摘されている。大規模災害の発生への関心が高まるつつある中、自主防災活動の必要性は更に増しており、新たな切り口により活性化させる必要がある。

1) 地域による取り組みの格差
  活発な取組みを行っているところは成果を上げる一方で、地域の取り組みに大きな格差が生じている。
  例えば、墨田区では木造密集地域であって街路も狭く、地盤も脆弱な地域において、一寺小学校と言問小学校を第一次避難拠点として防災まちづくりを進めるため、「一寺言問を防災のまちにする会」(通称「一言会」)を結成し、路地における隣近所のつきあいを大切にし、地域への愛着を持ちながら安全・安心なまちづくりを行っている(→資料6(PDF))。
  一方で、近年建てられたマンション等においては、自治会のような組織が十分に防災活動を行っていない場合も多いことから、万一に備え、消防団等のエキスパートの指導などによって、自主防災組織としての活動に加わっていく必要がある。そして、地域を構成する多様な団体・組織が、いざという時には統一的な指揮の下で、信頼できる情報を得て活動できるようなシステムを構築していく必要がある。
  とりわけ、意識の高い自主防災リーダーの存在するところは、活動が大きく進展する傾向があることから、こうした取り組みが進めるためにも、意識の高いリーダーの育成が必要である。
  また、防災用のハード設備の充実度により生じる地域格差もある。例えば、行政からの情報網が物理的に届きにくい山間地域では、情報伝達力の不足が問題となっており、トランシーバー等の可搬式無線機を導入するなど、情報伝達手段の見直しを図る必要がある。

2) 自主防災組織の基盤となる地域コミュニティの復活の必要性
  最近の都市的な生活意識や生活様式の変化、生活圏の広域化などによって、かつての共同体的な秩序と連帯が失われ、家庭・職場・余暇の3極に空間を分けて行動することが以前よりも顕著になってきている中で、組織の基盤となる町内会等、地域コミュニティが衰退してきている。
  行政と住民とのパートナーシップや、市町村合併など、行政のあり方が大きく変化を遂げようとしている現在、地域コミュニティは、その復活のためのぎりぎりの時期にさしかかっている。地域の活力を維持・発展させるため、もう一度コミュニティのあり方を考え、住民に地域の普段の行事への参加を改めて促していくなど、住民による主体的な地域づくりへと転換する必要がある。

3) コミュニティの維持、復活の切り口としての自主防災活動の可能性
  昔ながらのコミュニティは、町内会の年輩者を中心としたものであり、現代の若者が関わりづらいイメージが払拭できないものであったが、コミュニティの崩壊が地域の活力ばかりでなく、防災力という人間の生命・身体に関わる能力の低下につながるおそれもありうることから、自主防災活動をむしろ積極的にコミュニティ維持・復活の重要な切り口と位置づける積極的な視点が求められている。
  市町村合併を行う上でも、従来よりそれぞれの市町村において行ってきた防災の取り組みを地域に残し、NPOやコミュニティ、自主防災組織が連携することによって、合併後は行政の枠組みにとらわれず、住民自治による地域自治組織のような形で活動の枠組みを構築していくことも検討するべきである。
  特に、いつ起きてもおかしくないとされる東海地震をはじめ、東南海・南海地震や首都圏直下地震等、切迫する大災害においては、行政部門における防災担当者のみでは被災者の救助や消火活動には全く不十分であり、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえれば、自助・共助といった住民自身・相互の活動体制をいかに整えるかが喫緊の課題である。
  その際、災害時の初期対応に加え、耐震化の啓発活動(家具の転倒防止等)、夜回り活動(火の用心等)等、未然に災害を防止するための取り組みを行う必要がある。
  こうした地域の安全・安心を守るための住民自身の活動は、防災だけでなく、放火防止をはじめとした安全確保の役割を果たすとともに、現在政府で議論されている国民保護法制において住民の避難誘導等を補完する役割にもつながると考えられる。




3章 自主防災活動の活性化の手段

  自主防災活動を活性化させるには、地域の自主防災組織自身による取り組みのほか、学校教育や行政との密接な連携を図りながら、地域の総合力を結集して取り組んでいく必要がある。以下に、今後取り組んでいくべき方向性とその選択肢について、実例を挙げつつ示していくこととする。


1節 地域(自主防災組織)自身による取り組み
1) 各組織における具体的な目標の設定
  自主防災組織への参加やその活動内容については、基本的に住民の自発性に委ねられているが、自主防災組織自身が一定の目標を設定することも、積極的に取り組んでいる住民にとっての励みにつながることが想定されるため、組織ごとに具体的な目標の設定を検討すべきである。例えば、救急救命講習を組織メンバー全員が受講することを目標とすることにより、参加メンバーのモチベーションを高めるとともに、必然的に地域防災力を向上させることとなる。
2) 自主防災活動を教育、福祉等の日常活動の延長線上の活動と位置づけ
  例えば、京都市の柏野自主防災会のように、日常的な教育、福祉、環境美化、青少年健全育成、お祭りなど各種の地域社会活動をいざというときに防災モードに転換し、普段の活動の延長線上に自主防災活動があるという形をとることが、自主防災組織を長続きさせ、活性化させる手法と言える。
  また、地域で救急救命講習を実施するに当たっては、「防災対策」を掲げるよりも、「うちのおじいちゃん、おばあちゃんに万一のことがあったら」というアプローチで参加を促した方が、動機として身近である。同様に、「防災のための炊き出し訓練」と呼びかけるよりも、PTAで焼きそばや豚汁づくりを遊び感覚で行うことによって、実践的な訓練に相当する事業に楽しみながら参加することができる。
  こうした普段から親しみやすい活動を発展させるため、家族と比べて仕事上のつながりは多いが隣近所との付き合いが必ずしも多くないサラリーマンも、休日には出来るだけ家族とともに、地域社会活動に参加するように心がけていく必要がある。それがいざというときに家族と自分の命を守ることにも繋がるという意識を持つことが必要である。

3) 自主防災組織と他の組織(婦人防火クラブ、日赤奉仕団等)との連携
  婦人防火クラブの活動としては、例えば埼玉県婦人防火クラブでは、「家庭の防火は主婦の手で」をモットーに、標語ビラの台所への掲示、防災施設の見学、消火器の使い方の研修会等を実施し、出かける前にまずガスの元栓・火の元に注意するという意識を高める運動を行い、幼少年防火委員会の子供たちとともに出初め式や防災訓練に参加している(→資料7(PDF))。こうした意識の高い地域の他の組織との連携の下、自主防災組織の活性化を進めることも検討するべきである。
  また、全国で約300数十万人登録されている日赤奉仕団(地域赤十字奉仕団・青年赤十字奉仕団・特殊赤十字奉仕団)(→資料8(PDF))のメンバーが、地域における面的な災害対応を担う自主防災組織に積極的に加入、関与することにより、奉仕団の専門性の高いスキル、意識を自主防災組織の場においても発揮することが可能となることから、相互の得意分野を補完し合うためのこうした連携を積極的に進めるべきである。
  さらに、マンション管理人や警備業者等、施設の管理や安全確保に当たる業務に従事する者が、防災に必要な資機材に関する知識やノウハウを身につけ、災害時において住民との連携をとっていく仕組みを構築することも検討すべきである。

4) 自主防災組織に期待されるさらなる役割
1) 罹災者の安否確認の実施
  災害時に現にその場に誰がいたか、今どこでどうしているのかについて、最も的確に確認することができるのは、現場の住民である。大規模災害等において、こうした情報をいち早く収集し、安否確認のとりまとめを行う市町村に伝達するためにも、自主防災組織の活動の一環として明確に位置づけ、訓練のメニューに盛り込んでいくべきである。
2) 国民保護活動の実施(訓練等)
  現在議論されている国民保護法制においては、有事における自主防災組織やボランティア等の自発的活動のみならず、平時における住民の訓練への参加・協力が求められていることから、国民保護活動に特徴的な県境を超える広域的な避難誘導の訓練等に対し、自主防災組織等が積極的に参加することが期待される。
3) 自主防災組織ならではの身の回りの安全を確保する小道具の配備も
  災害時に必須となるアイテムをいざという時になって探し出すことは極めて困難な場合があることから、被災時(瓦礫の下に閉じ込められた場合等)に所在位置を知らせたり、夜間照明に用いることができるよう、常日頃より身につけることのできる、ファッショナブルな笛(瓦礫に埋もれた際などに自分の居場所を伝えるツール)や小型ライト(停電時において不可欠なツール)等を無償で住民に配布しておくことを検討すべきである。その際、財団法人自治総合センターの事業等との連携が重要である。
4) 被害軽減に向けた普及啓発活動
  自主防災組織は、地域に密着した組織として、災害時における被害の軽減に向けた普及啓発を有効に行う役割も期待される。例えば、家屋の耐震診断と補強や家具の転倒防止を進めることや、地域の災害履歴や土地利用の変遷などを調べ検証していくこと等は、行政だけで十分に行うことのできない地域に根ざした自主防災組織の特性を生かした活動と言える。また、地域にまつわる災害伝承の情報を収集・整理するといったことは、地域特性を踏まえた災害への備えになるだけでなく、地域の地勢的な特徴や歴史を深く知ることにも通じることから、学校教育等に十分生かすことにもつながる。


2節 学校教育における取り組み
  学校・家庭・地域の連携により、1)生徒の健全育成、2)学校教育の充実、3)地域自主防災活動の3つの柱を中心とした取り組みを図ることが望まれる。年少期の体験的防災教育はしっかりと身に付くものであり、大人になった後も大いに役立つものである。以下に、事例を挙げながら、具体的な方策について述べることとする。

1) 防災の視点を持って地域をまわり、防災スキルを習得、防災活動体験を実施
  例えば、世田谷区立太子堂中学校においては、「防災まちづくり学習」として、町内の公園をまわって歩き、その設置目的等について生徒が自ら考えることを通じ、防災の観点から、新たな公園建設予定地に設置するべき設備(例:仮設用トイレのマンホール等)を生徒が行政に提案する活動を実施している。
  また、防災スキルを身につけるため、地元消防署の指導の下、住宅密集地(路幅が狭く車両通行不可能)において必要となるD型ポンプの技能講習会を実施したり、卒業時には、PTAの費用負担により、普通救命技能講習会を行い、認定証を交付している。
  さらに、同校においては、学校を会場として、毎年1回、1泊2日の避難所体験(サバイバルキャンプ)を実施している。児童生徒、地域住民、教職員、保護者が自主的に校舎の中に宿泊し、ライフラインをすべて停止して24時間にわたって様々な防災訓練を行うことを通して、子供達に人の命の大切さを教えている。(→資料9(PDF))
  こうした活動は、太子堂中学校のほか、各地域で中学生・高校生を対象に普通救命講習・応急救護講習を実施するなどの優れた実践例があるが、いずれも子供たちが地域の一員として、地域への愛着や自分たちの町を災害から守るという意識を醸成することにつながるものである。太子堂中学校では、卒業生が救命技能講習の認定証の更新のため母校を訪れるなど、卒業後においても地域とのつながりや防災の意識を強く持ち続けている。このように、中学生の時分から防災活動に馴染んだ人材を育成していくことは、今世紀前半に起こる可能性の高い大規模地震等への備えとしても極めて重要である。
2) 学校における自主防災組織の設置
  町内会のみならず、学校においても教員が自主防災組織メンバーとして被災時に学校や周囲の地域社会に貢献することを通じ、児童・生徒に対して社会貢献の意義について教育することにもつながる。児童・生徒自身を自主防災組織に加入させることについても、実践的な教育活動として検討すべきである。
  特に、高校生は体力的にも大人と同等とも言え、即戦力として地域の防災活動により主体的に加わってもらうことにより、大人並みに扱われることによる高校生の意識の高まりと相俟って、将来にわたり地域の防災の担い手になっていくことが期待される。また、学園祭で防災に関する講演やパンフレット配布などを行ったり、モデル校を指定して消防や応急救護の訓練をカリキュラムに取り入れ、課外活動の単位とするなどの施策が考えられる。
3) 「総合学習の時間」における防災教育の実施
  小中学校の義務教育でも、総合学習の時間等を活用して、副読本により最低限必要な知識は習得できるようにしたり、PTAや地元企業の協力を得ながら、福祉やコミュニティ活動等の日常活動に子供達を参加させるなどの工夫をすべきである。
  また、義務教育用の書籍に地震や防災の問題に関する記述が必ずしも十分でないことを踏まえ、副読本の作成に加え、インターネットを活用した「防災・危機管理e−カレッジ」(一般用)や「e−ランド」(子供用)を開発・普及(→資料10(PDF))することにより、防災に関する知識を学校だけでなく自宅でも家族とともに学べる環境を整えていくことも重要である。
  一方で、防災教育を行う上で、学校教育に過度の期待をすることも望ましくなく、基本は家庭や地域において子供達を守り育てていく視点を忘れてはならない。
4) 授業の一環としてのハザードマップの作成
  授業において、地域の地形や想定される災害について理解を深め、実際にどの地域にどのような被害が生じ、それに対応するためにはどんな予防策、応急策をとるべきかについて議論を深めること(DIG:Disaster Imagination Game)は、地域への理解や愛着の醸成も含め、極めて有効な教育手法であり、導入を検討すべきである。


3節 行政による取り組み

1) 行政の防災施策そのものの見直しのための工夫
1) 防災力評価指針の活用
  平成1510月に消防庁において作成された「地方公共団体の地域防災力・危機管理対応力評価指針」(いわゆる「防災力評価指針」)は、地方公共団体が自らの防災・危機管理体制の実態を客観的に把握するために策定された全国統一の指針であり、チェックリストへの自治体の回答結果を多面的なグラフとして表現できるようにしたものである(→資料11(PDF))。この中には、自主防災組織をはじめとした住民との関連について問う設問も置かれており、行政の防災施策と住民の活動とが適切な連携の下で機能することの重要性が示されている。これにより、まず当該地方公共団体が関与している地域防災力強化への取り組みの現状を明確にするべきである。
  この自己評価を踏まえて、しっかりとした体制を整え、行政目標を作成し、自主防災組織の活性化のための行政、民間による防災体制の再構築を図るべきである。
2) 防災会議における専門委員会の設置等
  また、例えば、当懇話会において、検討された自主防災組織の活性化のメニュー等を具体化し実行していくため、都道府県・市町村防災会議に「自主防災組織についての専門委員会」を設置し、自主防災組織の活動計画を作成するとともに、これを地域防災計画や防災基本条例に位置付け、5年程度を目途に定期的に見直していくことも検討すべきである。
  都道府県・市町村防災会議や専門委員会の委員に自主防災関係者も参加してもらうことにより、行政のイニシアティブと住民の自助・共助を連携させながら地域の防災力を高めていくことが可能となろう。

2) 行政の地域に対する働きかけ
1) 防災カタライザー制度の導入
  防災担当者だけでなく、地方自治体の全職員が、本来業務とは別に、各地域に出向いて住民と接し要望や意見を行政に持ち帰って検討したり、地域の実態を把握する等の役割を担うことによって、行政と自主防災組織のつなぎ役を行う防災カタライザー(「触媒」を意味する英語と「語らい」をかけた造語)制度も検討に値する。職員が住民と接することにより、職員にとっては、新しい発見や今まで気づかなかった地域の実情が見えてくるし、地域としても、客観的な立場から要望の実現に向けての問題点や課題についての事前整理ができ、支援制度の情報提供が受けられる等のメリットがある。アウトプットとしては、職員と住民が一緒になって、地域ごとの防災マップを作成することが考えられる。
  この制度の導入を通じ、全職員が防災についても「併任」をかけられているという意識の醸成が行われ、住民の命を守ることが行政の本来目的を認識することにつながる。
  ただし、農山村などの町村部と異なり、大都市における自治体職員は、自宅が職場から離れている場合も多く、勤務している地域にうまくかかわっていくことが困難なこともあると考えられるため、居住している地域でなくとも、防災活動のつなぎ役をうまく務めることのできる環境をつくる工夫が必要となってくる。
2) 自主防災組織のカルテ作成
  例えば、埼玉県庄和町で行われてきたように、地域の自主防災組織の立ち上げ・育成に当たり、役場において、個々の組織についてカルテを作成し、資機材整備状況、訓練・研修の実施状況等を順次記録し、ファイリングしていくことによって、それぞれの組織における課題が明確になるだけでなく、組織の活動ぶりを組織間の相互比較を行うことが可能となり、それぞれの組織の活動内容の熟度の段階に応じ、適時適切な助言を行うことができるようになる。また、正確な記録を整理・保存しておくことにより、行政の担当者が代わっても、引き続き、継続的に取り組んでいくことができる。
3) 全国、都道府県、市町村各段階における、自主防災協議会の設立
  それぞれの地域において活動している自主防災組織が、相互の活動内容を知り、連絡をとりあえる場を設けることにより、お互いに刺激を受けるだけでなく、合同研修を行ったり、活動の質をさらに向上させるべきである。自主防災活動は、住民の意欲や創意に基づくものであることから、こうした人的ネットワークは何よりも貴重なツールであり、行政としても協議会に対して財政的・知的支援を行うことが効果的である。そのネットワークを市町村、都道府県、全国へと広げる仕組みをつくることが有効である。

3) 自主防災組織等をバックアップするための制度の導入
1) 資機材整備、人材育成(例、訓練、e−カレッジ)等を行う施策の充実及びそれに対する財政措置等の支援
  現在取り組んでいる資機材整備への助成制度を充実するとともに、防災・危機管理e−カレッジを自治体職員及び消防団や自主防災組織をはじめとした地域住民に早期に定着させるよう、消防庁や各自治体において財政措置を講じるべきである。
2) 防災スキルを評価する仕組みの導入
  職員の防災スキルを磨くため、通常の研修に加え、客観的なスキル評価を行い、これを認定するための制度を創設し、職員の意識や向上心を高めることを検討すべきである。この場合、日赤の開設コースとの連携、e−カレッジの修了なども活用していくことが考えられる。また、防災スキルを保有している職員を常時登録しておき、必要に応じて各自主防災組織に派遣することも防災力向上に有効な手段となる。
3) インターネット等のコミュニケーションツールの利用
  以下のような様々なツールを複合的に活用し、あらゆるチャンネルから情報を入手することを可能とすべきである。
  ・ホームページの開設
  ・防災検索サイトの開設
  ・自主防災メーリングリストの作成、実施
  ・自主防災メールマガジンの発行
  ・e−カレッジ
  ・携帯サイトの開設
4) 自主防災組織のアイデンティティー確立のマークの作成
  自主防災組織の社会的認知や、メンバーの仲間意識の醸成、使命感・責任感・士気の高揚のため、自主防災組織のアイデンティティー確立のマーク(エンブレム)を作成し、訓練活動時等に着用することなども検討すべきである。
5) 災害時補償制度の充実
  現在、地域住民が防災訓練中の不慮の事故による傷害を受けた場合に、市町村が補償する災害補償制度に対し、一時的な財政負担を全国的な共済制度によって合理的にリスク分散しようとする「防火防災訓練災害補償等共済制度」(掛金1人1円とされていることから「一円共済制度」と呼ばれている)がある。この仕組みを拡充し、自主防災活動に多くの住民が安心して参加しうるような仕組みを検討していくこともありうる。


4節 その他(行政と自主防災組織のすき間を埋める役割)

1) NPOCERTのような専門家、学会、教員等の地域防災への積極的参加
  例えば、静岡県では、平成14年度から「地域防災指導員」(通称「自主防応援団)制度を新設し、富士常葉大学環境防災学部講師の指導の下、学生とともに災害図上訓練DIGのノウハウを活用した取り組みを行っている。こうした大学等との連携や防災ボランティアの参加により、DIGの実施・普及が進むとともに、専門的な知識(地学、理科等)を社会に還元していくことにつながる。
  なお、自主防災に関する専門家が地域の活動をネットワーク化しつつ、教育・研修や技術的・専門的助言を行うことを通じて、地域防災力を高める仕組みの導入も重要であり、前掲(第1章(3))のロサンゼルスにおけるENLAはその実例として挙げられる。

2) コミュニティFM(名古屋、大阪等)、ケーブルテレビ、CS放送等の活用
  自主防災組織は、一般に、町内会活動の一環であることが多いことから、社会全体における位置づけやその重要な役割について、認識されていないことが多い。社会的貢献度の高いこうした活動について、テレビをはじめとしたメディアに乗せることにより、自助・共助の重要性について国民一般に伝達し、組織率の向上や活動内容への理解を深めてもらうことも検討すべきである。


行政と自主防災組織等の連携(イメージ)





4章 企業と地域との連携
  昨今の日本を代表する大企業が起こしている事故を引き合いに出すまでもなく、企業自身が事故、災害を引き起こさないように万全の安全対策を講じるべきことは当然のことである。更に、今日では地域の防災力を高めるためには、それぞれの地域の企業も「企業市民」として、行政や住民、ボランティア、NPO等と普段から連携を強めていくことが極めて重要な課題となっている。この点については、社団法人日本経団連においても、本年7月、提言「災害に強い社会の構築に向けて」をとりまとめるなど、経済界においても、企業の地域における役割や地域住民・行政との連携のあり方等について関心が高まっているところである。

1) 企業自身の安全管理の徹底
  重化学工場や危険物貯蔵施設を保有する大企業においては、失火や震災等により大規模な火災等が発生すると、企業自身が損失を被るだけでなく、企業がリスクとなって地域住民を大きな不安に陥れ、わが国の経済活動全体や地域における雇用に甚大な影響を及ぼすことになる。各企業においては、こうした社会的責任を重視し、厳しい経済情勢の下にあっても、少なくとも必要なコストは確保し、安全管理を徹底しなくてはならないことは勿論である。

2) 企業の本来業務による地域防災活動への貢献
  1)経済のグローバル化により、災害のダメージが大きく回復に時間がかかる場合には国際競争力の低下を招きかねないこと、2)少子高齢化の中で地域コミュニティの組織力が弱体化する傾向があり企業組織力の活用が期待されること、3)IT等の先端技術が普及する中で災害時には社会システム全体が麻痺する可能性もあることから、従業員・顧客の安全確保や事業活動への被害軽減等のほか、企業の防災・危機管理体制の整備、事業所の耐震化等による安全性の確保、従業員・顧客に対する情報提供体制の構築、社員に対する防災・危機管理教育、訓練の実施、応急手当の普及等については、すべての企業が行うべきものである。更に、事業主としても、従業員が率先して地域の自主防災活動に参加していくよう後押しすべきである。
  また、企業が取り組むべきことは、業種・業態、立地などによって様々であり、例えば、ライフライン、小売り、輸送、建設・建築といった事業者については、災害時又は災害に備え、各企業の特性を活かした対策を講じるべきである。大量の危険物を取り扱う企業で特に安全確保に意を用いることは勿論のこと、2次災害防止に最大限注力しなくてはならない。拠点駅周辺の企業においては、帰宅困難者(交通機関が不通になりオフィスビルなどで逗留を余儀なくされる人)への支援が課題である。研究開発事業者においても、レスキューロボット等を開発するなど、民間の立場から災害対応力を強化する活動を行うことが可能である。

3) 事業所単位の防災対策の実施
  企業は、それぞれの事業所内において、被害を想定した実践的な取り組みを行うことが必要である。このため、経営者の責務として危機に強い組織をつくるため、防災体制の基本方針を確立した上で、これに基づくマニュアル作成、教育訓練を行うべきである。マニュアルの作成に当たっては、時系列的な段階ごとの対応を検討し、業務内容の変化に合わせた不断の見直しが必要である。
  マニュアルの内容としては、具体的には、次のような4段階が考えられる。
1)日頃の備え
2)災害直後(人命救助、2次災害の防止と社員や家族の安否確認などを優先)
3)災害発生後2〜3日(地域社会への貢献も含めた対応)
4)災害発生後1週間(事業活動の再開に向けた活動を開始)
  マニュアルの整備に併せて、防災担当者の育成やレベル向上、社員の防災意識向上に取り組むこと、派遣社員や外国人従業員へのマニュアル内容の浸透が重要である。
  例えば、三菱地所株式会社では、ビルの耐震補強工事を実施してハード面を強化するとともに、災害対策要綱を策定し、非常用食糧・資機材の備蓄、社員への防災用品の配布による備え、社員やテナントとの防災訓練・研修の実施等の取り組みを行っている。
  また、神戸市旧居留地(元町近辺)では、神戸市旧居留地連絡協議会において「地域防災計画」を策定した上で以下の取り組みを実施している。
  1) 企業の相互支援をスムーズにするため、電子メールや隣組組織等による情報ネットワークの構築、共同備蓄を実施。
  2) 非常時における来訪者を助けるため、救護、情報提供コーナーの設置、一時待避場所の提供を実施。
  3) 日頃からの備えや訓練として、市民救命士、市民防災リーダーの養成、防災訓練の実施、意識啓発、「地域防災計画」の定期点検を実施。

4) 事業所単位の自主防災組織の設立等
  事業所単位で自衛消防隊を設立し、市町村と提携して周辺地域での消火、救助、救急活動等の活動を行う例がある。例えば、兵庫県西宮市では、16事業所の自衛消防隊を「西宮消防協力隊」として委嘱しているし、愛知県大府市では、自衛消防隊をもつ市内10企業と消防防災応援協定を締結している。
  また、複数の企業が連携して消防団を設置し、地域の防災活動に参加する例も見られる。例えば、北九州市洞海湾消防団(第一海運・矢野海運・日本水産等)、丸の内消防団(三菱地所、東宝、丸の内駐車場等)、四日市消防団海上分団(日本トランスシティ、四日市物流サービス)等が挙げられる。

5) 非常時における地域への協力、社員の地域防災活動への参加推進
  阪神淡路大震災で体験したように、企業が地域に協力したり、社員が地域防災活動に参加することによって、地域住民は大いに助かることになるが、それだけでなく、企業にとっても地域の信頼を獲得することによって、企業の価値が高まり、経営面にも好影響を与える場合もある。
  非常時における地域への協力等の例としては、以下のような事例がある。
  1) 名古屋市のノリタケカンパニーリミテッドや、静岡県内265カ所の津波避難ビルでは、所有施設の避難場所としての提供。
  2) 神戸・防災福祉コミュニティでは、企業の所有する救助救急等に役立つ資機材の提供。
  3) 愛知県西枇杷島町・東海理化、神戸・旧居留地連絡協議会では、事業所周辺の救助、救急、避難所の運営、生活物資の配布、瓦礫処理等への人的支援。
  4) トヨタグループ災害Vネットでは、社員による災害ボランティア活動を支援。

6) 自主防災活動への資金協力、資機材協力
  また、資金協力や資機材提供等の金銭・物資面での協力が行われる事例もある。
  1) 京都市広沢学区自主防災会では、自主防災組織が地元30事業者と連携、日頃各事業所で使用されているクレーン付きトラック、パワーショベル、リフト、チェーンソー等が提供されている。
  2) 静岡県東海パルプ株式会社は、社内に特設消防隊を設置し、島田市消防団の一分団として活動。防災訓練会場や避難場所として体育館を提供。地震発生時には会社周辺の被災者救出に従業員を派遣予定。

7) 企業の防災活動を支援する仕組み
1) 企業と地域の接着剤としての行政の役割も必要
  企業による災害時の地域支援について、現状では、企業と自治体・町内会が個別に協議することが一般的であるが、関係者が非常時対応を包括的に議論し把握するためにも、まず自治体から働きかけを行い、それを前提として災害発生時の地域連携のあり方について三者間で協議する形が望ましい。
2) 建物の耐震性強化を支援する税制の検討
  企業の災害対応のために設備投資を行う場合、例えば耐震性の確保の観点から建物や工場、設備の耐震化工事を行った場合には、法人税の償却の特例、固定資産税の課税標準の特例措置などについても検討すべきである。  
3) 経済団体の役割
  各経済団体においても、会員との日常的なネットワーク機能を災害時にも活用し、被災地におけるニーズや情報を会員企業等に伝達し、必要な支援を呼びかけ、企業による救援活動と被災地の行政や住民とを結びつける役割を積極的に果たすべきである。日本経団連においても、平時および発災時におけるブロック別の経済団体や各地の経営者協会との連携や、先進事例の紹介等による防災意識の啓発等の役割を果たしていくべきである。

8) 社員の家族や居住地域での活動への配慮
  以上のとおり、企業は、自らの被災に対応するだけでなく、地域への貢献も求められているが、これらの活動を更に実効あらしめるためには、その前提条件として、企業の社員がそれぞれ自身の家族や生活を守ることができるような環境整備についても配慮していく必要がある。社員は、企業活動を支える立場と同時に、家族を守り支え、また、居住地域での救助や被災後処理等の活動の重要な担い手でもある。被災時にどのような優先順位をつけて何から手をつけるべきかについては様々な考え方があるが、家族の安否確認や災害時の地域活動を行いやすいような環境整備について配慮を行うことも必要である。こうした条件を整備していくことではじめて企業が「企業市民」としての活動を全うすることにもなる。




5章 防災の施策効果の社会に対する影響
 
自主防災組織×学校教育×行政×専門家等×企業=日本の防災力のさらなる向上

  以上に述べたポイントを整理すると、行政、自主防災組織、学校教育、専門家等、企業がそれぞれの立場から適切な役割を果たしていくことにより、地域防災力の向上に相乗効果が生まれ、ひいては国際的に飛び抜けて高い自然災害に対するリスク評価がなされている日本社会のリスク評価の低減、再保険料の軽減による社会・経済的負担の軽減につながることになる。防災力強化は、経済的にも見合うことなると考えられる。


ミュンヘン再保険会社によれば、東京・横浜の災害リスク指数は、他国に比して格段に大

拡大図(PDF)

1) 日本の災害損失額は世界でも飛び抜けて大きい
  ミュンヘン再保険会社によれば、ハザード(Hazard:その地域を襲う災害)×エクスポーズド・バリュー(Exposed Value:その地域の経済的価値)×バルネラビリティー(Vulnerability:その地域でとられている防災対策)により得られる災害リスク指数は、東京・横浜において格段に大きいとされている。積算方法については、議論の余地もあるが、いずれにしても当該地域に政治・経済・社会的機能が集中し、外国からの投資が期待されていることに鑑みれば、このようなリスクと戦う必要性は極めて大きい。
2) リスク指標の軽減には防災対策しかない
  現に起こりうるハザード及びエクスポーズドバリューについては、現実問題として動かし難いことから、防災対策の程度を示すバルネラビリティーを高めることを通じて、リスク指標の軽減に向けて最大限努力することが、リスクの縮小に貢献する唯一の方法と考えられる。
3) 公助については、制度改正も含めこれまでとるべき対策をとっている
  災害対策基本法をはじめとした長年にわたる様々な法整備、国土保全事業の実施、常備消防率の向上等に加え、近年では緊急消防援助隊制度の整備など、いわゆる公助の面では、制度改正や予算措置等の対策は相当程度とってきている。
4) 自助、共助の点について、少ない経費でソフト中心の対策面の大きな効果を生む余地がある
  これらに加え、自助・共助については、消防団や自主防災組織、婦人防火クラブ等における研修・訓練や資機材整備等、少ない経費でソフト中心の対策をとることにより、大きな効果を生む余地がある。
5) すなわちリスク低減対策は、日本の社会、企業にとっての負担減となる投資であると受け止めていくことが肝要
  上記の施策をとることにより、日本社会のリスクを軽減することが可能となり、首都圏をはじめとした日本における経済活動にも良好な影響をもたらすこととなる。特に、企業が負担する再保険料が低減することにより、企業活動にも大きく貢献し、低迷するわが国経済の活性化の一助となると考えられる。防災施策については、こうした観点からもその効果を注視していく必要がある。




6章 自主防災組織の活性化のための施策推進に向けて

  自主防災組織の活性化のためには、まずは議論のための場の設定が不可欠である。都道府県・市町村単位の協議会を立ち上げ、自主防災組織相互間や、行政、企業等との間で地域防災力の強化に向けた連携を図ることにより、活性化を推進することが必要である。
 
  以上に述べたように、地域防災力強化の決め手である自主防災組織の活性化のためには様々な施策や手法があるが、その多くは、他の自主防災組織との協調・交流や、行政・企業・教育その他のプレーヤーとの連携がカギを握るものであり、そのための自主防災組織相互間の協議の場の設定が、たいへん有効だと考えられる。このため、まず第一歩として、都道府県・市町村単位の協議会を立ち上げ、自主防災組織が相互の活動内容を知り、連絡を取り合うことのできる場を設けるべきである。行政としてもこうした協議会に対して財政支援をはじめとした施策を講じることにより、協議会を足がかりとして各自主防災組織の活動が活性化される上、そのネットワークも全国的に広がっていく(全国レベルの自主防災組織協議会の設立等)と考えられる。

  また、災害時には、行政は自主防災組織のリーダーと密接な連携をとりながら、警報伝達、避難誘導、救助等を行う必要が生じるが、現在は、市町村の個人情報保護条例上の取り扱いの問題もあり、こうした自主防災組織に関わる情報が、国、県、市町村の間で共有されていない実態もある。例えばこうした課題にも適切に対応できるよう、上記の協議会の場などで十分な検討が行われることも必要である。

  こうした自主防災組織の活性化に向けた様々な施策や手法の実施に向けた努力の積み重ねを通して、自主防災組織の立ち上げや活性化が国民的な運動として全国に展開されることが期待される。そして、最終的に、わが国全体において地域の安全・安心を実現することを目標に、こうした運動が力強く継続されることが私たちの願いである。










地域の安全・安心に関する懇話会委員名簿

(会 長)

 
  樋口  公啓 東京海上火災保険株式会社相談役

(会 長代理)

 
  伊藤    滋 財団法人都市防災研究所理事長

(委 員)

 
  新井  明子 埼玉県婦人防火クラブ連絡協議会会長

  飯田    亮 セコム株式会社取締役最高顧問

  井戸  敏三 兵庫県知事

  大森    彌 千葉大学法経学部教授

  鹿野  文永 宮城県鹿島台町長

  北脇  保之 浜松市長

  小村  隆史 富士常葉大学環境防災学部講師

  佐原  滋元 防災まちづくりの会(墨田区)会長

  白谷  祐二 全国消防長会会長

  祢津    啓 世田谷区立瀬田中学校校長

  室崎  益輝 神戸大学都市安全研究センター教授

  山越  芳男 消防設備安全センター会長






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