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消防白書の要旨
                                                                平成10年12月
                            消  防  庁
 
1 消防白書について
 「消防白書」は、火災その他の災害の実態と消防に関する施策の現状について、国民へ広く周知することを目的として、消防庁が、昭和29年11月に「わが国の火災の実態と消防の現状」として作成したことに始まり、毎年、閣議了解を経て公表している。
2 消防白書の概要

 (1) 火災等の災害
   ア 火  災
   @ 平成9年中の総出火件数は6万1,889件で前年の6万4,066件と比べ2,177件減少している。
   A 出火原因は「放火」が7,222件で前年の6,732件と比べ490件増加しており、4年ぶりで第1位
      となっている。また、「放火の疑い」によるものは 5,654件で前年と比べ276件増加し、「放火」
     及び「放火の疑い」は合わせて1万2,876件で前年と比べ766件増加している。
   B 平成9年中の火災による死者数は2,095人で前年の1,978人と比べ117人増加している。
   C  平成9年中の住宅火災による死者数1,165人のうち、放火自殺者、放火自殺の巻き添え及び
      放火殺人242人を除く失火等による死者は923人で、このうち、65歳以上の高齢者の死者数
      は499人(54.1%)と半数を超えている。

   イ 危険物施設等災害
   @ 危険物施設における平成9年中の火災発生件数は155件で前年の144件と比べ11件増加し
      ている。
   A 危険物運搬中の火災の発生件数は11件で、死者はなく、負傷者は2人となっている。 
 
  ウ 石油コンビナート火災
    平成9年中に石油コンビナート等特別防災区域内で発生した災害の件数は76件で前年の93件
    と比べ17件減少している。
 
  エ 林 野 火 災
    平成9年中の林野火災の出火件数は3,766件で前年の4,339件と比べ573件減少している。
   一方、焼損面積は3,124haで前年の2,420haと比べ704ha、損害額は35億 6,780万円で前年の
   15億1,485万円と比べ20億5,295万円とそれぞれ増加している。
 
  オ 風 水 害

    平成9年中の年降水量は、東日本・西日本の太平洋側と南西諸島では平年より少なかったが、
   西日本の日本海側では多かった。
    また、台風の発生数は平年並みであったが、6月から7月にかけて台風7号、8号、9号が相次い
   で上陸、9月には台風19号が上陸するなど上陸数、接近数はいずれも平年を上回った。
  しかしながら、風水害、雪害等の異常な自然現象に伴う災害(地震、火山噴火を除く。)による
   人的被害は前年に比べて少なく、死者・行方不明者71人(前年84人)、負傷者306人(同475人)
   住家被害では全壊110棟(前年39棟)、半壊117棟(同216棟)、一部損壊2,218棟(同14,487棟)と
なっている。
 
  カ 火 山 災 害

   平成9年は、3月と4月に諏訪之瀬島(鹿児島県)が噴火し、8月には、秋田焼山が46年ぶりに噴
   火した。
    なお、平成9年は、9月に安達太良山(福島県)で登山者4人が火口内に滞留していた硫化水素
   により中毒死し、11月には阿蘇山(熊本県)で観光客2人が二酸化硫黄により死亡したほか、7月
   には八甲田山(青森県)の田代平で訓練中の自衛隊員が3人が火山性の二酸化炭素より死亡す
   るなど、火山ガスに起因する事故により9人が死亡している。平成9年中の火山情報は、2火山に
   おいて、計4回の臨時火山情報が発表されている。
 
  キ 地 震 災 害
   − 阪神・淡路大震災について −

   1) 災害の概要
      被害は兵庫県を中心に2府15県におよび、人的被害は死者・行方不明者6,433人、負傷者
     4万3,773人、建物被害は住宅の全壊10万4,900棟、半壊14万4,256棟となっている。
      また、地震により発生した火災は285件で、焼損棟数7,483棟、焼損床面積83万4,663uとな
     っている。
 
   2) 震災を踏まえて講じた措置

    @ 大規模災害時において、被災都道府県知事からの要請を待ついとまがないと認められるよ
      うな場合等においても、迅速な消防広域応援が確保できるよう、消防組織法の一部改正を
      行った。

    A 災害時における交通規制に関する措置の拡充等、国及び地方公共団体の防災体制の強
      化等について、災害対策基本法の一部改正を行った。

    B 地震防災緊急事業五箇年計画の策定及び国の財政上の特別措置等を定めた地震防災
      対策特別措置法が制定された。

    C 防災機関の初動体制の充実など防災基本計画の修正や自治省・消防庁防災業務計画の
      修正を行うとともに、地域防災計画の見直しを要請した。

    D 被災した消防防災施設の早期復旧を図るとともに、大規模災害に対応できる全国的な消
      防防災体制の整備を促進する観点から、画像伝送システム、ヘリコプターテレビ電送システ
      ム、震度情報ネットワークシステムなどの情報収集・伝達体制の整備、耐震性貯水槽等多様
      な水利の整備等のための補助金や地方単独事業による防災基盤整備のための緊急防災
      基盤整備事業の創設などにより財政支援措置の拡充等を行った。

    E 緊急消防援助隊の創設、航空消防防災体制の強化、防災拠点の整備、広域応援協定の
      締結など防災体制の充実・強化を推進している。
 
− 平成9年中の地震災害 −

    平成9年中に発生した地震のうち震度4以上を記録したのは40回で前年の31回と比べ9回増加
    している。
     そのうち、3月26日から4月9日までの間及び5月13日、14日に発生した鹿児島県薩摩地方を
    震源とする地震では、負傷者111名の被害を出した。また、3月16日に発生した愛知県北東部
    を震源とする地震では、負傷者4名の被害を出した。
 
   ク 特殊災害

   @ 原子力事故としては、平成7年12月8日に使用前検査中の高速増殖炉「もんじゅ」において、
     冷却材であるナトリウムが漏洩し、火災が発生した事故や、平成9年3月11日に動力炉・核燃
     料開発事業団の東海再処理施設アスファルト固化処理施設で発生した火災爆発事故があ
     る。

   A 海上における油の流出災害としては、平成9年1月2日に日本海沿岸の各地に大きな被害を
     生じさせたロシア船籍タンカー「ナホトカ号」海 難・流出油災害のほか、7月2日には東京湾
     においてパナマ船籍タンカー「ダイヤモンドグレース号」流出油災害が発生した。
   
 (2) 消防防災の組織と活動

  ア 消防体制

   @ 平成10年4月1日現在、消防本部920本部、消防署1,662署、出張所3,232所、消防職員15万
     1,703人となっており、前年と比較して、広域化が進められたことにより3本部減少し、消防署8
     署増加し、消防職員は1,077人増加している。

   A 平成10年4月1日現在、消防本部及び消防署の常備化市町村は、3,130市町村となり、常備
     化率は市町村数で96.8%(市は100%、町村は96.0%)に達し、人口の99.7%が常備消防にカバー
     されている。

   B 消防団は、常備化が進展してきた今日においても、地域の消防防災に果たす役割は依然と
     して重要である。
     平成10年4月1日現在、消防団は3,643団、消防団員数は96万2,625人であり、ほとんど全て
     の市町村に設けられている。
      団員数は減少傾向にあり、10年前の昭和63年4月1日現在に比べ4万6,373人(4.6%)減少し
      ている。この間、女性消防団員は7,260人増加し、8,485人となっている。
       また、消防団員の平均年齢は36.4歳(前年より0.2歳増)となっており、その高齢化が進ん
      でいる。

   C 組織面での消防の対応力強化のため、小規模消防の広域再編を推進している。

  イ 消防活動

   @ 平成9年中における消防職団員の活動状況をみると、火災等(火災、救助活動、風水害等の
     災害、特別警戒、捜索、誤報等及びその他(警察への協力、危険物排除等)をいう。ただし救
     急業務を除く。)への出動回数は89万434回で出動延人員では965万4,934人である。
      また、1日当たりの出動回数は2,441回、35秒に1回の割合で出動したことになっている。
     そのうち、消防団の火災等への出動回数は26万911回、出動延人員は562万6,218人となって
     おり、火災において初期消火、残火処理にあたるほか、多数の要員を必要とする風水害にお
     いても多くの消防団員が出動した。

   A 平成10年8月上旬豪雨(8月3日から7日)、8月末豪雨(8月26日から31日)、台風第5号、台風7・8号、
9月23日から25日の大雨による災害において、延べ約5万6,000人の消防職員と延べ約21万6,000人の消防団員が活動している。

  ウ 救急体制

   @ 平成9年中の救急出場件数は347万6,504件で前年の337万3,394件と比べ10万3,110件増加している。また、救急搬送人員は334万2,280人で前年の324万7,129人と比べ9万5,151人
     増加している。
     全国で1日平均9,525件(前年9,217件)、9.1秒(同9.4秒)に1回の割合で救急隊が出場し、
     国民の38人に1人が救急隊に搬送されたことになる。

   A 平成10年4月1日現在、救急隊は4,515隊で前年の4,483隊と比べ32隊の増となっており、ま
     た、救急隊員は5万5,410人で前年の5万4,743人と比べ667人の増となっている。

   B 救急業務の高度化については、平成10年7月1日現在で666消防本部で実施され、消防職
     員関係の救急救命士は 6,920人であり(対前年1,396人増)、高規格救急自動車は平成10年4
     月1日現在で 1,770台(対前年347台増)となっている。                    

  エ 救助体制

    平成9年中の救助活動件数は、3万5,050件で前年の3万2,572件と比べ2,478件の増、救助人
   員は、3万5,105人で前年の3万2,828人と比べ2,277人の増となっている。
    活動内容は交通事故が50.1%を占め、火災が19.3%となっている。
                                  
  オ 航空消防防災体制

   @ 消防・防災ヘリコプターは林野火災や風水害などの災害状況の把握、林野火災における空
     中消火、山岳等における救助、離島・山間地域等か らの重度傷病者の救急搬送等に極め
     て有効であり、その整備を推進している。

   A 消防・防災ヘリコプターの保有状況(平成10年4月1日現在)

    消防機関の保有するヘリ 26機(前年度26機) 
    都道府県の保有するヘリ 37機( 〃 32機)  
                計  63機( 〃 58機)
 
  カ 国と地方公共団体の防災体制

    阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、災害対策基本法の改正や防災基本計画の修正、消防庁
   の防災体制の強化、地域防災計画の見直し等が進められている。
    また、地域住民の参加を得た防災訓練を推進している。
 
  キ 広域応援体制

    大規模災害に際し、地方公共団体の区域を越えて、機動的、効果的に対応できるよう広域航
   空消防応援体制の整備、緊急消防援助隊の災害対応力の充実強化など消防の広域応援体制
   の強化を推進している。
    また、都道府県の広域防災応援に関して、全国全てのブロックで広域応援協定の締結・見直し
   がなされている。
 
  ク 消防防災の情報化の推進

   災害時において、迅速かつ的確な災害応急活動を実施するため、情報の収集・伝達体制の整
  備を推進している。
 
 
(3) 自主的な防災活動と災害に強い地域づくり

    災害に強い安全な地域社会を作るためには、国民の防火防災意識の高揚を待つところが極め
   て大きいことから、火災予防運動、防災知識の普及啓発や自主防災活動の促進を行っている。また、
防災基盤の整備等災害に強い地域づくりを推進している。
 
(4) 規制緩和への対応

    国際化の進展や社会経済活動の多様化等を背景に、公的規制の緩和が大きな課題となって
    いる。
    消防庁としては、安全性の確保に十分配慮しながら、「規制緩和推進3か年計画」に定められた
    各措置の着実な推進を図るなど適切に対処していくこととしている。

(5) 国際協力の推進と地球環境の保全

   @ 消防庁では、国際協力事業団と協力して、開発途上にあるアジア諸国等の消防職員を対象と
     した消防行政管理者研修をはじめとする集団研修のほか、諸外国からの個別研修員の受け
     入れ、消防における技術指導のための専門家の派遣を実施している。

   A 平成9年10月22日にインドネシア共和国での森林火災により29名の隊員と消防ヘリコプター
     計2機からなる国際消防救助隊が派遣された。

   B 地球環境の保全の一環として、ハロン消火剤等の使用抑制を図っている。
 
(6) 消防の科学技術の研究

     災害の複雑多様化に対し、災害の防止、被害の軽減、原因の究明等に関する科学技術の研
    究開発が果たす役割はますます重要になっている。このため、社会的要請及び消防行政上の
    課題に重点を置いた研究を行っている。
     その他、国際間あるいは産学官の協力を図るため、外国の研究機関、国内の大学あるいは
    企業との共同研究を積極的に進めている。
 
(7) 今後の消防防災行政の方向

    平成10年は自治体消防制度が50周年を迎えた年であり、これを記念して、「自治体消防50年全
   国縦断シンポジウム」(平成9年7月〜9月)、「自治体消防制度50周年記念式典」(平成10年3月7
   日)、「自治体消防50年記念国際消防防災展’98in 東京」(平成10年6月4日〜7日)等の行事や「
   21世紀の消防」論文等の募集、「21世紀の消防を考える会」の開催などが多彩に行われた。 
    我が国の消防は、昭和23年3月に消防組織法が施行され、市町村消防の原則に基づく自治体
   消防が発足して以来、今日まで、歴代の関係者の努力の積み重ねにより、制度、施策、施設、装
   備等の各般にわたり着実な発展を遂げてきた。
    この結果、自治体消防の活動も火災の予防、警防はもとより、救急、救助から地震、風水害等への対応まで広範囲にわたり、国民生活の基礎となる安全の確保に大きな役割を果たしてきてい
   る。
    しかし、その一方で、我が国は、これまで幾多の災害を経験してきており、平成7年1月、戦後最
   大の被害をもたらした阪神・淡路大震災が発生し、その後も、地下鉄サリン事件、新潟・長野県 
   境の蒲原沢及び鹿児島県出水市における土石流災害、鹿児島県薩摩地方を震源とする地震災
   害、ナホトカ号及びダイヤモンドグレース号の海難事故による流出油災害など住民やその生活の
   安全を脅かす災害等が相次いでいる。
    本年に入っても、震度6弱を記録した岩手県内陸北部を震源とする地震災害、新潟県・福島県・
   栃木県・高知県など各地における豪雨や台風による災害などが起きている。
    こうしたことから、災害や事故に対する不断の備えの重要性はますます増大し、国民の消防に寄
   せる期待は極めて大きなものがある。
    このため、自治体消防50周年を契機とし、これまでの成果と教訓の上に立って、21世紀に向け、
   消防防災行政において第一次的な役割を担っている地方公共団体が、安全で安心な地域社会
   づくりに向けその使命を十分に果たしていくことができるよう、今後とも各般の施策を強力に展開し
   て消防防災行政の推進及びその体制の充実強化を図っていく必要がある。
    具体的には、総合的な防災対策の推進、高度防災情報通信体制の整備促進、消防力の充実強
   化と教育訓練の充実等、消防団の充実強化、救急・救助業務の充実強化、総合的な防火安全対
   策の推進、危険物施設等の安全の確保及び特殊災害対策の充実強化、技術革新等に対応した
   規制緩和の推進、消防防災技術の高度化・国際協力の推進などに積極的に取り組むことが必要
   である。
 
    ○ 総合的な防災対策の推進
    ○ 高度防災情報通信体制の整備促進
    ○ 消防力の充実強化と教育訓練の充実等
    ○ 消防団の充実強化
    ○ 救急・救助業務の充実強化
    ○ 航空消防防災体制の整備
    ○ 総合的な防火安全対策の推進
    ○ 危険物施設の安全の確保及び特殊災害対策の充実強化
    ○ 技術革新等に対応した規制緩和と国際協力の推進
    

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