平成26年版 消防白書

第2節 市町村消防の広域化

1.広域化の推進の概要

消防は、災害や事故の多様化及び大規模化、都市構造の複雑化、住民ニーズの多様化等の環境の変化に的確に対応し、今後とも住民の生命、身体及び財産を守る責務を全うする必要がある。しかしながら、小規模消防本部においては、出動体制、保有する消防車両、専門要員の確保等に限界があることや、組織管理や財政運営面での厳しさが指摘されるなど、消防の体制としては必ずしも十分でない場合がある。このことから、消防庁は、平成18年に改正された消防組織法や市町村の消防の広域化に関する基本指針(以下「基本指針」という。)に基づき、平成24年度末を期限として消防の広域化を推進してきた。その結果、消防組織法の改正以降、平成26年4月1日までに34地域において広域化が実現し、例えば、平成26年4月1日には管轄人口が約90万の奈良県広域消防組合消防本部が誕生するなど、広域化は一定の進展をみたところである。
しかし、東日本大震災での教訓や類例を見ない大規模災害等の発生、また、今後の災害リスクの高まり、さらに将来の日本の総人口が減少することが予想されていることを踏まえると、国、都道府県及び市町村が一体となった消防の広域化の推進による小規模消防本部の体制強化がこれまで以上に必要となっている。そこで、消防庁は、平成25年4月1日に基本指針を改正し、推進期限を平成30年4月1日まで延長するとともに、都道府県知事が、〔1〕今後、十分な消防防災体制が確保できないおそれがある市町村を含む地域、又は、〔2〕広域化の気運が高い地域に該当すると認める地域を消防広域化重点地域として指定することができる枠組みを設け、国の施策や都道府県における措置を他の広域化対象市町村よりも先行して集中的に実施することにより自主的な市町村の消防の広域化を着実に推進することとしている。

関連リンク

平成26年版 消防白書(PDF版)
平成26年版 消防白書(PDF版) 平成26年版 消防白書  はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~  特集1 緊急消防援助隊の機能強化  特集2 消防団等地域防災力の充実強化  特集3 最近の大規...
はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~
はじめに 今後発生が予測される大規模災害への対応と消防防災体制の強化 ~東日本大震災の教訓を生かす~ 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、死者・行方不明者が約2万名、住家における全壊が約13万棟、半壊が約27万棟に被害が及び、それは戦後最大の自然災害の脅威とも呼べるものであった(1表)。...
特集1 緊急消防援助隊の機能強化
特集1 緊急消防援助隊の機能強化 東日本大震災では、発災日から88日間にわたり、延べ約3万1,000隊、約11万人の緊急消防援助隊が消防・救助活動に尽力し、5,064人の人命を救助した。 南海トラフでは、過去100年から150年程度の周期でマグニチュード8クラスの海溝型地震が発生しており、東海、東南...
1.南海トラフ地震、首都直下地震等に備えた大幅増隊
1.南海トラフ地震、首都直下地震等に備えた大幅増隊 東日本大震災を上回る被害が想定される南海トラフ地震等に備え、大規模かつ迅速な部隊投入のための体制整備が不可欠であることから、平成30年度末までの目標登録隊数をおおむね4,500隊規模からおおむね6,000隊規模に増強することとしている(特集1-1表...