令和元年版 消防白書

2.平成31年1月から令和元年10月までの主な風水害

平成31年1月から令和元年10月までの主な風水害による被害状況等については、第1-5-2表のとおりである。
なお、「令和元年8月の前線に伴う大雨」、「台風第15号」及び「台風第19号等」による被害等の状況については、特集1に記載している。

第1-5-2表 平成31年1月から令和元年10月までの主な風水害による被害状況

(令和元年12月5日現在)

第1-5-2表 平成30年1月から10月までの主な風水害による被害状況等

(備考)「消防庁とりまとめ報」により作成

(1)5月18日からの大雨による被害等の状況

5月18日から20日にかけて九州南部に湿った空気が継続して流れ込み、また、20日から21日にかけて寒冷前線が西日本から北日本と関東地方を通過した。
この湿った空気と寒冷前線の影響により、同月17日から20日までの総降水量が鹿児島県で500ミリ、宮崎県で400ミリを超える地域があったほか、鹿児島県屋久島町では1時間に約120ミリの猛烈な雨が観測された。
消防庁では、同月18日23時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
なお、この大雨により、軽傷者5人の人的被害のほか、54棟の住家被害が発生した。

(2)台風第3号による被害等の状況

6月26日、沖縄・奄美及び九州南部に接近した熱帯低気圧は、27日21時に室戸岬の南で台風第3号に変わった後、太平洋沿岸を東北東に進み、28日15時に日本の東で温帯低気圧となった。
この熱帯低気圧及び台風の影響により、沖縄・奄美から西日本の太平洋側を中心に非常に激しい雨が降った。
消防庁では、同月26日17時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「熱帯低気圧の接近による大雨についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
なお、この熱帯低気圧及び台風による人的被害はなかったものの、5棟の住家被害が発生した。

(3)6月29日からの大雨による被害等の状況

6月29日から7月4日頃にかけて日本付近に停滞していた梅雨前線に南から暖かく湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発となった。
この梅雨前線の影響により、西日本の太平洋側を中心に局地的に非常に激しい雨となり、6月28日から7月5日まで宮崎県えびの市で1,089.5ミリの総降水量を観測するなど、記録的な大雨となった。
消防庁では、6月28日17時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
また、同日、各都道府県及び指定都市に対して「6月30日から7月1日頃にかけての大雨についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、6月30日、各都道府県及び指定都市に対して「今週半ばにかけての大雨についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼びかけた。
なお、この大雨により、死者2人(鹿児島県)、重傷者1人及び軽傷者4人の人的被害のほか、542棟の住家被害が発生した。

(4)梅雨前線による大雨及び台風第5号による被害等の状況

台風第5号は、7月18日に先島諸島に最も接近した後、朝鮮半島に上陸し、21日3時に熱帯低気圧となった。また、22日から24日にかけて活発な梅雨前線が西日本の日本海側から東北南部に停滞した。
台風周辺の湿った空気と梅雨前線の影響により、西日本を中心に同月18日から21日にかけて非常に激しい雨となり、特に長崎県の五島と対馬では19日夜から20日昼過ぎにかけて発達した雨雲が次々と流れ込み、長崎県五島市で399.0ミリの24時間降水量を観測した。この大雨に関し、気象庁は、20日10時05分、長崎県の五島と対馬市に大雨特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけた。
また、同月21日未明から朝にかけて佐賀県から福岡県にかけて発達した雨雲が停滞し、24時間で7月の平年の降水量を超える記録的な大雨となったところがあったほか、台風第5号から変わった温帯低気圧と上空に流れ込んだ寒気の影響によって、西日本と東日本の広い範囲で大気が不安定となり、22日にかけて東海地方では局地的に猛烈な雨となった。
消防庁では、同月19日11時45分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「梅雨前線による大雨と台風第5号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
また、同月20日10時05分に国民保護・防災部長を長とする消防庁災害対策本部に改組(第2次応急体制)して災害応急体制を強化し、大雨特別警報が発表された長崎県に対し、適切な対応と迅速な被害報告について要請した。
なお、この大雨により、行方不明者1人(高知県)及び軽傷者6人の人的被害のほか、746棟の住家被害が発生した。

(5)台風第6号による被害等の状況

台風第6号は、7月27日7時頃に三重県南部に上陸した後、北北東に進み、15時に岐阜県付近で熱帯低気圧となった。
この台風と台風から変わった熱帯低気圧の影響により、近畿地方から東日本にかけて激しい雨となった。
消防庁では、同月26日14時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第6号及び前線による大雨についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
なお、この台風による人的被害はなかったものの、2棟の住家被害が発生した。

(6)台風第8号による被害等の状況

台風第8号は、8月6日5時頃に強い勢力で宮崎市付近に上陸した後、北西に進み、7日9時に日本海で熱帯低気圧となった。
この台風の影響により、九州や四国の太平洋側を中心に西日本では局地的に猛烈な雨となり、同月5日から7日までに徳島県那珂町で467.0ミリの総降水量を観測したほか、九州南部、九州北部地方では非常に強い風を観測した。
消防庁では、同月5日9時55分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第8号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
なお、この台風により、死者1人(大分県)、重傷者1人及び軽傷者4人の人的被害のほか、26棟の住家被害が発生した。

(7)台風第9号による被害等の状況

台風第9号は、8月8日に先島諸島に最も接近した後、東シナ海を北西に進み、10日昼過ぎに中国大陸に上陸した。
この台風の影響により、沖縄地方では同月10日にかけて激しい雨となり、先島諸島を中心に沖縄地方では猛烈な風を観測した。
消防庁では、同月7日15時40分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第9号と台風第10号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
なお、この台風による住家被害はなかったが、重傷者2人及び軽傷者4人の人的被害が発生した。

(8)台風第10号による被害等の状況

台風第10号は、8月15日11時過ぎに愛媛県佐田岬半島付近を通過し、15時頃に広島県呉市付近に上陸した後、北上し、16日21時に日本海で温帯低気圧となった。
この台風の影響により、西日本から東日本の太平洋側を中心に広い範囲で強風を伴った非常に激しい雨が降り、降り始めからの総降水量が1,000ミリを超えたところがあった。また、台風から変わった温帯低気圧の影響によって、同月17日明け方にかけて北海道では強い風、強い雨を観測した。
消防庁では、同月7日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第9号と台風第10号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
また、同月9日15時45分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日及び13日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第10号についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼びかけた。
なお、この台風により、死者2人(兵庫県、広島県)、重傷者7人及び軽傷者50人の人的被害のほか、42棟の住家被害が発生した。

(9)台風第13号による被害等の状況

台風第13号は、9月4日から6日にかけて沖縄地方に接近した後、北上して、8日9時に中国大陸で温帯低気圧となった。
この台風の影響により、沖縄地方では猛烈な風を伴った非常に激しい雨となり、沖縄県宮古島市で最大風速47.7メートルを観測した。
消防庁では、同月4日16時10分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
また、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第13号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、同月6日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第13号と台風第15号についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼びかけた。
なお、この台風により、軽傷者7人の人的被害のほか、2棟の住家被害が発生した。

(10)台風第17号による被害等の状況

台風第17号は、9月20日から21日にかけて沖縄・奄美に接近した後、22日から23日にかけて西日本及び北陸地方に接近し、同日9時に日本海で温帯低気圧となった。
この台風の影響により、沖縄地方では同月21日から22日にかけて、西日本の太平洋側では22日から23日にかけて非常に強い風が吹き、雷を伴った非常に激しい雨が降り、19日から24日までに徳島県那賀町で548.0ミリの総降水量を観測するなど、局地的に大雨となった。
また、沖縄県渡嘉敷村で32.9メートル、長崎県長崎市で29.2メートルの最大風速を観測するなど、沖縄・奄美や西日本の広い範囲で非常に強い風を観測したほか、同月22日には宮崎県延岡市で竜巻が発生した。
消防庁では、同月20日、各都道府県に対して台風第17号の接近に備え、庁舎等の自家発電設備の燃料確保、住民への情報伝達手段の確保等、防災体制に万全を期すよう要請する「台風第17号への対応について」を発出するとともに、同日14時30分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化した。
また、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第17号や前線についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけるとともに、同月22日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第17号や前線についての警戒情報」を発出し、更なる警戒を呼びかけた。
なお、この台風により、死者2人(長野県、沖縄県)、重傷者5人及び軽傷者64人の人的被害のほか、972棟の住家被害が発生した。

(11)台風第18号による被害等の状況

台風第18号は、9月30日から10月1日にかけて先島諸島に接近した後、北上し、3日15時に日本海で温帯低気圧に変わった。
この台風の影響により、沖縄地方、九州北部地方、四国地方で猛烈な雨となり、9月30日から10月5日までの総降水量が沖縄地方や四国地方の多いところで300ミリを超える大雨となった。
また、沖縄県竹富町で30.7メートルの最大風速を観測するなど、沖縄地方で最大風速30メートル以上の猛烈な風を観測した。
消防庁では、9月30日10時00分に応急対策室長を長とする消防庁災害対策室を設置(第1次応急体制)し、情報収集体制を強化するとともに、同日、各都道府県及び指定都市に対して「台風第18号についての警戒情報」を発出し、警戒を呼びかけた。
また、同日、各都道府県に対して、台風第18号の接近に備え、庁舎等の自家発電設備の燃料確保、住民への情報伝達手段の確保等、防災体制に万全を期すよう要請する「台風第18号への対応について」及び災害発生時における被害状況の迅速な報告を要請する「被害状況の速やかな報告について」を発出したほか、各都道府県、東京消防庁及び指定都市消防本部に対し、「消防防災ヘリコプターを活用した令和元年台風第18号への対応について」を発出し、消防防災ヘリコプターを活用した被害状況等の早期把握を要請した。
さらに、各都道府県及び指定都市に対し、10月2日に「台風第18号についての警戒情報」を、4日に「台風第18号から変わった低気圧についての警戒情報」を発出して、厳重な警戒を呼びかけた。
なお、この台風により、軽傷者10人の人的被害のほか、101棟の住家被害が発生した。

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