大規模災害時における消防団活動のあり方に関する検討委員会報告について
平成9年5月15日 消 防庁 消防課
消防庁では、阪神・淡路大震災の経験を踏まえ、平成8年度において、大規模災害時における消防団活動のあり方について検討するための委員会を設置し、調査検討を行ってきたところであるが、このたびその報告書がまとまった。この委員会では、阪神・淡路大震災における消防団活動の状況を分析し、大規模災害時における消防団活動のあり方について、消防団の体制づくり、消防と地域の自主防災組織等との連携等について検討を行ったものである。
1 報告書の概要
- (1)阪神・淡路大震災における消防団活動
- 今回の大震災においては消防団員の多くが、自らも被災したにもかかわらず、消火活動や倒壊家屋の下敷きになった人々の捜索・救助活動に従事した。また、消防団の消火活動や救助活動に対し、住民が自発的に協力したり、消防団員の依頼によって協力したことにより、大きな成果をあげた例が数多くあった。
- (2)大規模災害に備えた消防団の体制づくり
- 常備消防に比べ大量動員が可能であること、地域の実情に精通していること、多様な職業に従事している団員の様々な技術や知識を生かすことが可能であること等から、消防団は地域の実情に即し、その特色を十分に生かした災害対応をすることが望まれるところである。また、近年増加の著しい女性消防団員も、その特色を生かした活動が期待される。また、大震災においては、情報連絡体制の主要な手段が使用不能となることを想定し、大規模災害時に団員それぞれがどのような役割を果たすべきか、事前に十分に徹底しておくこと、そのためのマニュアル等を作成しておくことが必要である。消防無線の拡充やトランシーバー、地域防災無線の活用等による情報伝達手段の強化、多様化を図るとともに、自動二輪車等機動力のある手段による情報収集や伝達活動についても検討しておくことが必要である。今回の大震災では、救助用資機材の整備やその操作のための訓練の重要性が改めて認識されたところである。さらに、情報連絡体制を確保するための情報関連機器、装備の充実も望まれるところである。消防団の訓練は、従来、消火作業に重点が置かれていたが、今回の大震災の経験から救助訓練や応急救護の訓練等も充実することが必要である。消火訓練においては、消火栓が使用できなくなった場合に備え、プールや河川からの取水など多様な水利を活用した訓練を行っておく必要がある。
- (3)消防団による応援活動のあり方
- 消防団による他地域への応援活動は、近隣市町村や同一県内、隣接県など比較的近距の範囲で行われることが通常の姿であることから、県内のブロック毎や県単位、あるいは隣接県同士であらかじめ大災害時における消防団の相互応援について調整を図っておくことも効果的である。
- (4)消防団と住民、ボランティア、自主防災組織等との連携
- 消防団の活動を効果的に実施していくためには、大震災時において顔見知りの団員の協力の求めに多くの住民が応じて効果的な活動が行われたり、自主防災組織や青年団などが大きな活躍をしたことなどから、地元に居住し、地元の事情にも精通している消防団員が住民と連携しながら活動する事が有効であると考えられる。今回の大震災によって、国民の安全に対する関心は非常に高まってきている。防災という視点から、コミュニティづくりに対する住民の意識を高め、住民それぞれが地域の安全を守ための役割意識を持ち、安全で災害に強い地域づくりを進めていくことが必要である。また、今回の大震災においては、パソコン通信等の新しいメディアが住民への災害情報の提供等に有効であることが注目されたことから、今後の消防団活動においては多様なメディアの活用についても検討を進める必要がある。
2 今後の活用
全都道府県、市町村、消防本部等に配布し、それぞれの地域特性に応じた対策を促していく。