御嶽山噴火災害に学ぶ
4.御嶽山噴火災害に対する政府の取り組み

政府は御嶽山噴火が発生した当日の夜には対策会議を開催し、同日のうちに対象の地域に「先遣チーム」を派遣しました。噴火翌日には、内閣府副大臣を団長とする「政府調査団」が現地に派遣され、多数の被災者が出ている状況を踏まえ、「平成26年御嶽山噴火非常災害対策本部」が設置されました。内閣の重要政策に関する会議の一つとして防災基本計画の作成や、防災に関する重要事項の審議等を行っている中央防災会議の元に同年10月20日「火山防災対策推進ワーキンググループ」が設置されました。そこでの4回にわたる会議により、翌年平成27年3月に今後の火山防災対策の推進についての最終報告が6つの項目に分けてまとめられました。
この報告を受け、平成27年7月8日、活動火山対策特別措置法の一部を改正する法律が公布され、同年12月に施行されました。法改正を含め、火山防災対策推進ワーキンググループによって提言された課題や対策は次の6点です。


①火山防災対策を推進するための仕組み
火山ごとに対応の差があった防災体制をより強固にするには、原則として常時監視が必要な火山全てに「火山防災協議会」を設置し、「火山防災協議会」の位置づけを明確化すること。また、専門家に加え、官公庁や自治体さらには観光関係団体など、多方面から検討することを推進しました。また、住民だけでなく、登山者や旅行者なども対象とした警戒避難体制の整備も必要とされました。

②火山監視・観測体制
常時監視が必要な火山である、常時観測火山が47火山に選定されていましたが、選定後新たに異常現象が観測された火山が存在するため、平成26年11月、50火山に見直されました。また、火口付近の観測施設の増強および新たな手法の開発、他には、体制・仕組みが十分とは言えなかった機動観測を強化することや、山小屋の管理人など日頃山を見ている人などからの情報収集するネットワーク強化も必要であると提言されました。

③火山防災情報の伝達
火山防災情報の伝達において、情報提供のわかりやすさと情報伝達手段の強化が必要です。情報提供においては、変化を観測するたびに噴火警戒レベルを更新し、気象庁のHPなどで火山活動状況がひと目でわかるように掲載することが大事です。また、御嶽山噴火時は噴火警戒レベル1(平常)となっていましたが、「平常」という言葉が、活火山である時点で突然噴火する一定のリスクがあるにもかかわらず、「安全な状態」であるように誤解を生むことから「活火山であることに留意」に変更されました。情報伝達手段については様々な情報伝達手段を検討し、特に携帯端末を活用した情報伝達においては電波状況の改善や登山者にとってわかりやすいエリアマップの公表など改善の余地があります。旅行者に自ら情報を得るような意識づけは困難なため、観光施設等を通じた情報伝達の推進も提言されました。

④火山噴火からの適切な避難方策
御嶽山には退避壕や退避舎などがなかったこともあり、噴石により多くの方が被災されました。未だ設置数の少ない退避壕や退避舎等の設備の必要性や整備の検討にあたり、「活火山における退避壕等の充実に向けた手引き」が作成されました。また、登山届の提出率は低く、浸透していません。今回の御嶽山噴火災害の際も登山届の提出率が低く、身元判明に時間を要しました。必要に応じて登山届の制度を導入することが必要とされました。その他には山小屋や山岳ガイド、施設管理者との計画避難対策の推進が提言されました。

⑤火山防災教育や火山に関する知識の普及
火山地域の学校で実施している実践的防災教育や火山防災に関する教育等は引き続き支援し、登山者や旅行者、地域住民などにはさらなる火山防災に対する関心や知識を深めるため、積極的に関係団体と連携し、普及させる必要があるとされました。

⑥火山研究体制の強化と火山研究者の育成
専門的な知見を習得した人材が定期的あるいは随時、火山活動評価に参加する等の体制を整備するため、火山研究体制の強化や人材育成に力を入れ、その人材を火山噴火予知連絡会や気象庁の火山監視情報センターなどに参画させる体制の推進も提言されました。

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