地域防災の必要性
1.はじめに

私たちの国は、その位置、地形や気象などの自然条件から、地震、台風、豪雨、火山の噴火などによる災害が発生しやすい環境にあり、毎年のように自然災害により大きな被害を受けています。
こうした事態が発生したとき、生き延びるために最も大切なのは隣近所の助け合いです。

このレッスンでは、隣近所の助け合い、つまり「地域防災」の必要性について学びます。

まず、1995年(平成7年)に起きた阪神・淡路大震災の体験者の声を伺ってみましょう。


兵庫県人と防災未来センター
語り部ボランティア
稲谷利輝(いなやとしてる)さん

私の家は倒壊してしまいました。その倒れた家の下、埋まってしまったんですけれども、幸いなことに私の体の上に乗ったのは土壁でした。土壁を壊して這い出した後公園に出ますと隣近所の者も避難しておりました。振り返りますと私たちの町はもう9割がた倒れてしまっていました。そこでみんな呆然としていました。

若い者も歳がいった者も呆然としとったんですけども、まだ出てきてない者がいることがわかりまして、子供に尋ねますと、お父さんどこにいるかお母さんどこにいるかわからんと言いますので、私はその時とっさに家ごとに、各家庭で点呼と、こう言いました。そうしますと、誰が現在いて誰がいないということがわかりました。

その家族を中心としまして近所の者たちがいくつかのグループに分かれて救出に入りました。多くの者は埋まっておりまして、助けを求めていたり痛い痛いと言っておりました。道具も何もありませんからどうしたかと言いますと、倒れた家の隙間からもぐりこんで行きまして、1人ではこれ、できません。もぐりこんでいった後の瓦礫を後ろに、自分の後ろに置きますと逃げ道がなくなってしまいます。

そこで私達は女性も子供も入ってもらいましてラインをこしらえまして、もぐっていった者が取り出した物を後ろへ後ろへ送っていきながら埋まっている人のところへ辿り着きました。家具の、タンスの下敷きになっている人が多かったんですけれども、そのタンスを引き出しを抜いたり壊したりして引き出していきました。倒れたその小さい隙間の中でそれを行なうのですから、大変な苦労があるわけですけども、寝転んだまま足を引っ張ったり、あるいは首に抱きついてもらったりして、自分が後ずさりをしながら引き出したりしました。

そういうようにして次々とみんな助け出しました。私達の神戸の町では近所付き合いというのですか、向こう3軒両隣のお付き合い、この辺りが段々と薄れてきておりました。それはその近所付き合いが煩わしいとこういうことで避けてきたように思います。そういった中で私達のところは幸いなことによくお互いに知り合って、どこの家族はどうだということまで知り合っておったということが、これが良かったんではないかなとこう思っております。

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