水害対策(監修:片田敏孝 群馬大学教授)
7.要介護高齢者の避難行動

 1998年(平成10年)8月末北関東・南東北豪雨災害における郡山市の在宅介護ヘルパーに派遣要請をしている 要介護高齢者の避難実態をみてみましょう。


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 ここにおける避難率は、郡山市において発令された二度の避難勧告 ・指示のうち、一度でも避難を行った人の割合を示しています。
この避難率によれば、要介護高齢者全体の避難率は約62%となっており、一般世帯に比して低い値となっています。
特に、寝たきり状態の人など、避難に際して 身体的制約の大きい高齢者や、避難勧告・指示の発令時に様子を見に来てくれる人がいないなど、地域コミュニティ から孤立した高齢者の避難率は顕著に低く、要介護高齢者の避難には、その身体的条件や周辺からの避難援助の有無が 大きな影響を与えることわかります。


一方、避難勧告・指示の発令時における、避難情報の取得状況と、その際の危険意識、避難の必要性の認識など、 避難行動に関わる意識の実態を見てみると、要介護高齢者は一般世帯員に比べて、比較的早い段階で情報を取得しており、 その際に破堤や越流に対して抱いた危機感も高いことがわかります。これは、自らが身体的な制約を 有するが故に、洪水被害に対する不安意識が高く、それが積極的な情報取得を促した結果と解釈できます。

 このように、水害時において多くの要介護高齢者が、大きな不安のなか、積極的に情報取得に努め、洪水に対する危機感や 避難の必要性を感じているにも関わらず、避難が困難な状況におかれている実態が明らかとなりました。
災害時の犠牲者の多くが、こうした高齢者によって占められる現実を踏まえるならば、このような高齢者への配慮は緊急の 課題と言えます。

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