土砂災害対策(監修:岩松暉 鹿児島大学名誉教授)
9.自然に対して謙虚に

ではどのようにして被害を防ぐか、がけ崩れに対してはどうしたらよいでしょうか。がけの街鹿児島をコンクリートだらけにして、要塞都市のようにするのか、100年に1回は崩れることがあっても、数年も経てばまた緑が回復すると放っておくのか、の選択です。鹿児島県では祖先の知恵に学び、自然に対して謙虚になる道を選びました。図は現行の鹿児島県宅地造成基準です。がけ肩を望んで仰角30度以内は宅造禁止になっています。過去の災害で被災した家屋は、すべてこの30度ライン内に入っているからです。
下の図は阪神大震災後の六甲山系グリーンベルト(水と緑の回廊)構想です。六甲山の麓にグリーンベルトを作り、山崩れからのバッファーゾーンにしようとするものです。鹿児島の人が昔からやっていたやり方と同じ発想です。

もちろん、こうしたやり方は広い土地があってこそ実現可能です。都会への人口集中を抑える施策、過疎過密を同時解消する政治が今求められています。土砂災害対策は煎じ詰めれば土地対策に行き着きます。

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