土砂災害対策(監修:岩松暉 鹿児島大学名誉教授)
10.土砂災害に備える

危険に近づくなとは言っても、既に危険地帯に住んでいる人は大勢いらっしゃいます。やはり、防災対策を施さなければなりません。特に、我々市民一人ひとりが、土砂災害に対してどのように備えたらよいのかを考えてみましょう。
そのためには、孫子の兵法ではありませんが、敵を知り己を知ることが大切です。敵、すなわち災害を知ることがまず第一です。災害そのものに対する知識と、災害に役立つ知識の両方を身につける必要があります。次に己を知る、つまり、自分の住んでいる地域を知ることも重要です。わが家が災害危険箇所に立地していることを知らなければ、大雨のとき安閑としていて、避難が遅れてしまうでしょう。また、防災設備や避難所がどこにあるのか、日頃から熟知しておかなければなりません。さらには、お年寄りや障害者など、要配慮者がどこのお宅におられるのか、知っておくことも大切です。

知識だけを頭に詰め込んでも、非常時には役立ちません。災害時には、消防車やレスキュー隊が到着する前の初動が、生死を分けることがあります。日頃からの組織づくりと訓練が大切です。以下、一つひとつ見て行きましょう。

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