土砂災害対策(監修:岩松暉 鹿児島大学名誉教授)
13.地すべりの前兆現象


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それでは、カッコ付き"土砂災害"の前兆現象について見ていきましょう。
地すべりでは、頭部に亀裂や陥没が発生するとか、末端で擁壁がはらみ出すとか、あるいは、井戸水が枯れたり、湧水が止まったりと、平常とは違ういろいろな変状が現れます。
しかし、平常がどのようであったかを一番良く知っているのは地元の住民です。ところが、昔と違って、今は農林業が衰退しましたから、山仕事をしなくなったので、地元の人でも普段の状態を知らないため、変状に気づかないこともしばしばです。これに関して新潟県ではユニークな制度を持っています。地すべりモニター制度です。地元の人にモニターになってもらって裏山の見回りをしてもらうのです。モニターは変状を見つけると、県庁の担当課に通報します。

モニターは地すべり専門家とつき合い、親しくなりますから、門前の小僧的に地すべりの知識が身につきます。人間は物知りになると他人に話したくなるものらしく、近所の人たちにお茶のみ話のとき、地すべりの話をして聞かせますので、地域住民の地すべりに関する知識水準が高くなります。草の根防災教育です。
その証拠に、モニター以外からの通報で地すべりを発見した例が相当数に上るそうです。

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