土砂災害対策(監修:岩松暉 鹿児島大学名誉教授)
19.防災ネットワークづくり


【図を拡大】

防災には行政と住民、住民同士等々、いろいろなネットワークが重要だと思います。ネットワークと一口に言ってもいろいろあります。今までは、国-県-市町村-住民と上意下達な考えの下に、防災はすべて行政がやるものと考えられてきました。住民は災害が起きた後、行政の責任を責め、一方、行政も安全はすべて任せてくれといった気負いもありました。
しかし、阪神大震災では、ライフラインがすべて途絶し、隣近所が助け合うしか手がありませんでした。そこで今、防災ネットワークがにわかに脚光を浴びています。行政・マスコミ・住民の3者が日頃からネットワークを組んでおけば、災害時に大きな力を発揮するに違いありません。

この図で矢印が両方を向いているのがポイントです。今ではインターネットのような双方向メディアが発達して、一方的な広報ではなく、こちらの意見や地元の情報を送る手段ができたのです。昔は消防署に火の見櫓があって監視していたのが、今では住民からの電話通報に100%頼っています。どこでがけが崩れたとか、どこの川が危ないといった情報を電子メールで行政に送れば、消防団がどんなに頻繁に見回りするよりも迅速に対応できます。双方向通信ということは、情報の共有が可能になったと言っても過言ではないでしょう。
行政機関同士には緊急防災情報ネットワークが作られつつありますし、住民と行政の間には防災エキスパートのようなボランティアもあります。
しかし、何よりも大切なネットワークは住民相互のネットワークです。とくに住民参加の防災まちづくりが鍵になるでしょう。

続きを読む