風害対策(監修:丸山敬 京都大学防災研究所准教授)
3.台風に伴う強風の性質

 過去に観測された台風の最大風速は約70m/s、最大瞬間風速の記録としては約85m/s以上に達するものがあります。
 ここで言う風速とは10分間の平均風速のことで、瞬間風速とは風速計で計測された瞬間値のことをさします。
 現在では台風の接近の様子は気象衛星などにより、2、3日前から知ることができ、台風情報として発表されています。
 気象庁から発表される台風情報では、平均風速25m/s以上の風が吹く領域を暴風域として表し、強風が吹く地域の警戒を促しています。

さて、暴風域の中の風速の分布を見ると、風は一様に吹いているわけではありません。風は台風の中心に向かって反時計回りに吹き込みますが、台風の進行方向と風向が同じ東側では台風の移動速度分だけ風速は早くなり、西側では移動速度分だけ風速が遅くなるのです。
 その結果、台風の中心付近や東側で強い風が吹き、被害の発生も台風の中心が通った東側で大きくなるので、台風の中心から東側に位置する地域では強風被害に注意しなければなりません。
 一方、ある地点における風向・風速は時間とともに変化し、風速は台風の接近に伴って次第に強くなり、通過後減少します。とくに、台風の目が通過する地点では風速がいったん収まった後、再び強い風が吹き、"吹き返し"あるいは"吹き戻し"などと呼ばれます。このとき、以前よりも風速が強い場合があるので注意が必要です。
 また、台風によっては「プレッシャーディップとよばれる」...顕著な気圧の降下を伴った強風域が、台風の後方に存在する場合があります。これに伴い、台風の通過数時間後、風が弱まってきた頃に再び瞬間的な強風が発生する場合があるので、"吹き返し"と同様に注意が必要です。

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