風害対策(監修:丸山敬 京都大学防災研究所准教授)
5.その他の強風(ダウンバースト、フェーン現象)

 竜巻と同様な強風を発生する気象現象としてはダウンバーストが挙げられます。
 飛行場の近くで起こる局所的な下降気流は飛行機の墜落事故を起こすことがあり、その原因調査によってダウンバーストという現象が認知されるようになりました。
 ダウンバーストは積乱雲や局地的な雄大積雲の下に起こる回転を伴わない発散性の下降気流で、風速の最大値は竜巻ほど大きくはありませんが、発生や接近を事前に知ることは竜巻と同様非常に困難です。
 一方、ダウンバーストによる被害も局所的で、場所によってその程度が異なるのは竜巻と同じですが、直線上に被害が分布する竜巻の場合とは異なり、ダウンバーストによる被害は放射状に広がって、電柱や樹木などは同じ向きに転倒することが多いようです。

 その他の強風の発生原因としては、発達した温帯低気圧や前線によるものが挙げられます。

 温帯低気圧は発生位置やエネルギーの供給機構の違いから熱帯低気圧と区別され、発達しても台風とは呼ばれませんが、台風と同じぐらいの規模や強さをもつようになるものもあり、台風と同様な注意が必要です。
 温帯低気圧は台風と異なり前線を伴うのが特徴ですが、温帯低気圧に伴う前線、とくに寒冷前線では、大気が非常に不安定な状態になっていることがあり、そこで発達した積乱雲による強い雨や突風が起きることが多く、竜巻の発生もしばしばみられます。

 その他、暖湿空気が大きな山脈を越え高温の乾燥空気となって吹き下りるフェーン現象も強風を伴うことがあり、1933年7月の台風に伴うフェーンでは山形市で40.8℃を記録しました。1983年4月には青森、岩手、宮城県を中心に22件の山火事を起こし、岩手県では最大瞬間風速38m/sの強風を記録しました。
 さらに、山や谷、土手など地形によって局所的に風の流れが集まる場所が生じることがあり、台風や低気圧、季節風などによって強風が発生する場合があります。

 また、局地的な風という意味では、建物による、いわゆるビル風と呼ばれるものも含まれるでしょう。

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