風害対策(監修:丸山敬 京都大学防災研究所准教授)
8.建物周囲の風

 ここでは建物まわりで風がどのように吹くか、また、どのようにして風の吹き方をコントロールするかなど、防風対策についても見てみましょう。
 地上には植物や建物、森や山などいろいろな物が風を遮り、地面付近の風を弱めています。そのため、通常は上空を吹く風のほうが速く、地面に近づくにしたがって風速は減少します。
 さて、このような分布をもった風が建物に吹いてくると、どうなるでしょうか。接近してきた風は建物に遮られるため、建物を避けて流れますが、建物のまわりでは複雑な流れ方をします。この図では、建物が1棟だけ建っている場合を示していますが、実際には周囲にも建物があり、その形状も単純ではないので、流れはもっと複雑になります。

 さて、風は建物をよけて流れ、軒や角など、建物の端を通過する際には建物からはがれて、そこでは細かな渦や乱れを生みだします。建物の後ろでは、風は渦を巻いたり、接近する風と反対向きに吹いたりします。建物前方では、上方に向かう風や、下に向かうものがあり、上空の速い風が吹き下りてくる場合があります。このため、建物の端からはがれてきた流れと相まって、建物の足もと付近に風速が増加する領域が生じる場合があります。
 地面付近における風速増加は、我々の生活に支障を及ぼす場合があり、風速低減のための対策が必要となることがあります。
 風速を低減させるためには、庇や覆い、アーケード、スクリーン、防風フェンス、植栽などが用いられ、離島や風の強い地方で伝統的に用いられている防風垣や防風林はその一例です。
 ただしこれらは、基本的に風の流れを遮るものなので、遮られた風が向かう部分で風速の増加が生じる場合があります。したがって、それらによって問題が生じないように位置や向きには充分注意して設置する必要があります。

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