原子力災害対策
5.防護対策「安定ヨウ素剤の予防服用」

原子力発電所や核燃料施設の事故では、施設から放出される放射性物質の中に、放射性ヨウ素が含まれる場合があります。

ヨウ素は海草などに含まれ人にとって必要な元素であり、甲状腺に多く存在し成長を促す作用があります。

放射性プルームからの吸入などにより体の中に入った放射性ヨウ素は甲状腺にたまり、甲状腺の機能障害や甲状腺ガンの発生などの原因となります。特に成長期にある小児などへの影響に配慮が必要とされています。

放射性ヨウ素の放出が相当な量に達し、吸入などによる甲状腺の被ばく線量を減らす必要がある場合の対策として、安定ヨウ素剤の予防服用があります。


これは、放射性ヨウ素の吸入などにより甲状腺の被ばく線量が、一定の値を超えると予想される場合に、あらかじめ、あるいは吸入の直後のできるだけ早い時間に、放射能を持たないヨウ素、すなわち安定ヨウ素を服用することにより、放射性ヨウ素が甲状腺にたまりにくくなることを利用した対策です。

原子力規制委員会の原子力災害対策指針では、原則、原子力規制委員会が服用の必要性を判断し、原子力災害対策本部又は地方公共団体の指示に基づいて、安定ヨウ素剤を服用することが示されています。ただし、安定ヨウ素剤の成分等に対し、過敏症の既往歴のある方や高カリウム血症と言われたことのある方等は、服用してはならない又は慎重に服用する必要があります。

なお、全面緊急事態(原災法第15条原子力緊急事態)に至った場合に即時避難を実施する区域(PAZ)の住民に対しては、地方公共団体は、医師等による安定ヨウ素剤に関する住民説明会を実施のうえ、予防服用のための安定ヨウ素剤を事前配布する等の体制の整備が進められているところです。PAZ外の住民に対しても、避難等と併せて安定ヨウ素剤の服用を行うことができる体制の整備が進められているところです。

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