コンビナート災害対策(監修:大谷英雄 横浜国立大学大学院教授)
2-4.事故防止対策の現状 事故解析による安全管理 事故概要

 事故は次のようにして発生しました。

 9時20分 桟橋に小型タンカーが着桟しました。
 9時40分 軽油1,050kLのNo.31タンクへの荷卸し作業を開始。
 10時55分 軽油の受入作業を終了し,ローディングの取替え作業を開始。
 11時03分 発災タンクへハイオクガソリンの移送を開始したところ,作業開始から2~3分後,爆発音とともに発災タンクが炎上。
 11時07分 構内全作業停止放送を行なうとともにタンカー元弁を一斉停止した。同時に119番通報を行なう。

 鎮火後のタンクの概観を示します。タンク上部は火災の熱により座屈しています。

 ガソリン受け入れ時の液面の動揺を説明したのがこの図です。配管に残留していた空気によりインナーフロートが動揺するとともにインナーフロートと側板との隙間から液状でインナーフロートの上へ噴出する。あるいは少なくとも気泡がガソリン中を上昇する間にガソリン蒸気が侵入し、空気とともに上部空間へ噴出する。したがって、通常の受け入れ作業でインナーフロートが動揺することが想定されなければなりません。隣接する類似タンクのインナーフロートの上にも油の染みが見られ、油がインナーフロートと側板との隙間から噴出していたものと推定されます。
 また、インナーフロートの動揺に伴って、タンク本体も振動します。このタンク本体の振動により、ラフターも落下します。

 この写真は事故後、タンク内に入り、インナーフロートの上を撮影したものですが、屋根を支えていたラフターが落下しています。ラフターが鉄製、インナーフロートはアルミ製であることがよくわかります。

 これはラフターをタンク側板で支えているラフターピースを付けたまま落下していたラフターです。ラフターピースは側板に溶接されているものであり、溶接が十分であれば側板から外れるはずはないものであるため、溶接が不十分であったと考えられます。
 また、ボルト穴が見えており、ボルトが事故前から欠落していた、もしくは締め付け強度が弱くて事故時に欠落したものと思われます。

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