大地震に備えた責務
1-2.イントロダクション

大地震が発生した直後から、消火や救助活動に当たる消防職員や消防団員に限らず、一般の地方公務員の方々も被災状況の把握、被災地内外からの安否問い合わせへの対応、避難所の開設・運営、物資の調達や配付、水の供給、遺体の安置など数知れない仕事が求められます。
なぜでしょうか?公的な救援が必要な被災者の方々がいるからです。地方公務員法第30条には、「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と規定されています。大災害時の公務は一生涯のうちで極めてまれなことかもしれません。しかし、「その時」に直面したときは、まさに、全力を挙げて地方公務員としての責務を果たさなければならないときなのです。

特に、大地震の発生直後は、ひとりでも多くの人を救うため、一刻も早く被害状況を把握し、さまざまな救援活動を始めなければなりません。そのためには、まず、「一刻も早く職務に就く」ことが地方公務員としての最初の責務になります。
戦後最大の自然災害による被害をもたらした阪神・淡路大震災。この震災を引き起こした地震は連休明けの火曜日、1995年(平成7年)1月17日の午前5時46分に発生しました。大部分の地方公務員のみなさんは、何もなければやがて目覚め、いつものように出勤していったはずです。
ところがこの地震は、大きな揺れとともに公務員の方々の日常の生活を奪いました。亡くなった人、家族を失った人、家を失った人、けがを負った人...地方公務員自身も被災者になってしまったのです。
被災した地方公務員の方々はどのように行動されたのでしょうか。公務員としての自分、そして家族の一員としての自分との間でさまざまな葛藤に悩まされながら行動されたことは想像に難くありません。
ここでは、葛藤の中で「一刻も早く職務に就く」という点について、阪神・淡路大震災での体験を基に考えていきましょう。

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