NBC災害対応用資機材 (監修·制作協力:東京消防庁第三消防方面本部消防救助機動部隊)
2.放射性物質からの防護

 放射性物質による汚染がある又はあると想定される災害現場での活動では、状況に応じて適切な活動スタイルを選択します。
 透過性の弱い「α線」、「β線」を出す放射性物質に対しては、内部被ばくを防ぐため身体への付着や、呼吸時に体内に取り込まないようにすることが必要です。そのため、気体や粒子状の放射性物質が空気中にあるおそれがある環境下では、空気呼吸器などによる呼吸の保護と、陽圧式化学防護服などにより放射性物質の身体への付着を防止します。
 しかし、「γ線」や「中性子線」は極めて透過力が大きいため、これらを出す放射性物質が存在する現場では、防護服による防護では身体への影響を防止できません。常に「防護の3原則(時間、距離、遮へい)」を十分に念頭においた活動が必要となります。



・陽圧式化学防護服
 手袋、ブーツが一体の構造となっており、空気呼吸器を装着した隊員の全身を覆い、隊員を外界の環境から隔離します。さらに、高い気密性と空気呼吸器の使用により内部を陽圧状態とし、気体状の放射性物質などの侵入を防ぎます。


・化学防護服(スーツ式一体型のもの)
 塵や埃など粒子状の物質の侵入を防ぎ、液体が浸透しない素材でできており、空気呼吸器を併用することで、液体状の有害物質から全身を保護します。


・簡易化学防護服
 塵や埃など粒子状の物質の侵入を防ぎ、放射性物質の除染を行いやすい素材でできています。空気呼吸器や全面式の防塵マスクにより肌の露出部分を無くすことで、透過力の弱い放射性物質から全身を防護することができます。なお、簡易防護服が不足する場合は、状況により応急的に雨合羽で代用されることもあります。服の継ぎ目となる部分などは、テープなどで十分に密閉しておく必要があります。


 しかし、火災発生時にはこれらの防護服は耐熱性、耐火性が無いため、直接消火活動は行えません。そのため、放射能防護服や防護服と防火衣を組み合わせて着装して活動を行います。


・放射能防護消火服
 空気中の放射性を帯びた塵や埃などの物質の身体への付着を防ぐとともに、透過力の小さいα線、β線からの遮へい性能があります。さらに、鉛のシートを組み込んだインナーの着用によりγ線の身体への影響を軽減し、人命救助、消火作業及び応急措置活動に使用します。

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