N災害 (監修·制作協力:相模原市消防本部、東京消防庁第三消防方面本部消防救助機動部隊)
14.救急活動

 救急活動の原則は、二次汚染・汚染の拡大防止、被ばく・汚染状況の聞き取り、傷病者の救命を主眼とした適応医療機関への速やかな搬送となります。


・まず、活動する際は、簡易型防護服、防護マスク、ディスポーザブル式ゴム手袋などを着用し、二次汚染に注意します。
・ゴム手袋は、2枚重ねて着用することとし、1枚目の手袋は皮膚の露出を防ぐため、袖が常に外れないようにテープで留め、2枚目は必要に応じ交換するようにします。


 被ばく状況、汚染状況を把握するための情報収集は、次のとおり実施します。


・施設側の放射線管理要員、医療担当者に聞き取りを行い、災害発生状況及び要救助者に関する情報を収集します。

・負傷状況、全身状態、負傷者の処置に関する情報、応急医療処置、創傷部の処置、脱衣や除染を行ったかどうかを聴取します。
・被ばく、汚染状況に関する情報は、外部被ばくの程度、体表面汚染の有無、内部被ばくの有無及び放射性物質・放射線の種類を聴取します。
・また、情報が確定できないときは、汚染があるものとして対応します。
・活動時は、施設側の放射線管理要員による空間線量及び汚染状況など、放射線の測定結果を確認しながら実施します。
・不測の放射線量上昇の場合に備え、迅速に退避が行えるようにします。
・汚染患者を収容する場合は、担架及び搬送車両などに対し汚染防止措置を実施します。
・担架は、ポリエチレンシートなどにより保護を行います。その際滑りやすい場合は、更に紙などを敷きます。
・要救助者の状態によっては、除染を行わずに毛布などによる養生のうえ医療機関などへ搬送します。
・搬送車内をポリエチレンシート及び片面防水シートなどで、床面を優先し、順次下から上へ広げて覆い、介助者及び車内の汚染防止を行います。
・搬送車両の運転要員には、汚染されていない者を必ず充て、必要最低限の人数で乗車するとともに、あらかじめ車内の不要なものは除去しておきます。


 搬送中の措置は、次の点に注意します。


・放射線に関する助言、対応のため、施設側の放射線管理要員などを同行させます。
・また、測定器など必要な資機材の携行も依頼します。
・搬送中は、放射線管理要員に、救急車内の放射能汚染状況を確認してもらうなどの協力を受けます。
・汚染部位又は外傷などがある場合は、医療機関までガーゼなどで覆っておきます。
・傷病者は、毛布又はシーツなどを用いて包み、担架に固定します。
・傷病者の過度の発汗や不快感を避けるため、傷病者の生命を主眼とし、上側をポリエチレンシートなどで覆うなどの過剰な防護は行ってはいけません。
・脈拍、血圧の測定又は静脈内輸血に備える場合は、片方の腕をシーツなどから出しておきます。
・ガーゼ、包帯、使用した器具などの汚染物は、排泄物、吐物を収納するバック又はポリエチレン袋などを準備し、保管します。
・搬送距離が長距離化する場合などは、傷病者の症状を考慮し、ヘリコプターによる搬送も考慮します。なお、ヘリコプターの搬送時も、救急車の場合に準じた対応を行います。
・搬送後、医療機関への傷病者の引き渡しに際しては、傷病者の容態、被ばく及び汚染状況について、確実に報告します。
・随行した施設側の放射線管理要員により、隊員及び救急車などの汚染検査を受けます。
・汚染のおそれのある物は、施設側に処理を依頼します。

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