⑤ 津波災害時の安全確保対策等
9.住民の防災意識の向上、地域ぐるみの津波に強いまちづくり

 東日本大震災において、岩手県釜石市の小中学校の生徒・児童が率先避難して助かったように、一人ひとりの住民が事前の想定に捉われることなく、津波警報等が発表された際に率先して避難するようになれば、避難誘導や広報に係る消防団員等の負担軽減に大きく寄与することとなります。市町村においては、地域住民、自治会、自主防災組織などと一緒になって、地域ぐるみで具体的な避難計画を作成することが重要です。また、その中で、消防団員等の活動・退避のルールについて説明しておくこと、地域住民等の協力を得ながら、要配慮者が短時間で避難が可能となる方策を、あらかじめ定めておくことも重要です。


 岩手県洋野町では、地区ごとに消防団、住民、港湾利用者等が参加して具体的な避難行動について検討したり、自主防災組織が自ら海抜表示板を作成・設置したりするなど、地域ぐるみで実効的な避難計画を策定しています。これにより、住民の防災意識、避難意識が高まりました。また、地域の協力を得て、消防団が担当する水門を限定(一部一門制)することにより、「水門閉鎖→避難誘導→道路封鎖→高台への退避」という海岸から高台に向けての垂直的行動が可能となり、消防団員の安全性も高まりました。これらの取組が奏功し、東日本大震災の際には、高さ8~10mの津波が押し寄せ、海岸線から約50mが浸水したにも関わらず、洋野町の人的被害はゼロで済んでいます。

 また、東海・東南海・南海地震が同時発生した場合に、数分から十数分で大津波が押し寄せることが予想される三重県尾鷲市のように、地域住民の理解・協力を得て、消防団員自身が率先避難者として行動する避難訓練を実施することにより、地域の防災力向上につなげているといった例もあります。
 防災基本計画では、津波からの迅速かつ確実な避難を実現するため、徒歩による避難を原則として、地域の実情を踏まえつつ、できるだけ短時間で避難が可能となるような「津波に強いまちづくり」が求められています。

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