タンクを移動しないと予測した「見逃し」は0.5%
だけであり、津波浸水深が想定されれば、石油タン
クの移動被害の予測が可能であることを示した。

サブテーマ「再生資源物質の火災危険性評価方法

及び消火技術の開発」では、固体の再生資源物質に
ついて、発熱開始温度、発熱量、可燃範囲及びガス
濃度から計算される値を危険性を評価するための指
標とする蓄熱発火の危険性評価手法を提案した。ま
た、再生資源物質の蓄熱発火試験装置の検討を行
い、温度及び圧力を同時に測定できる試験装置を試
作し、昇温試験及び等温試験を実施し、測定方法に
ついて検討した。

サブテーマ「フッ素化合物の使用禁止が泡消火薬

剤の消火性能に与える影響評価と対応策に関する研
究」では、試作したPFOSを含まない泡消火薬剤と
泡性状コントロールノズルを使用し、発泡倍率や保
水性を調整した泡を生成させるための種々の条件を
明らかにして、泡性状のデータベースを作成した。

ア ・

本研究課題では、消防職員が、大地震や大雨によ

る洪水などの未経験かつ未曾有の大規模災害に直面
することとなった場合でも、適切な意思決定とそれ
に基づく迅速・的確な応急対応を可能とすることを
目指して、被害推定シミュレーションなどを活用し
た情報技術を、次の三つのサブテーマを設け、5年
間の計画で研究開発を行っている。

(ア) サブテーマ「広域版地震被害想定システム

の研究開発」

東日本大震災における災害対応の初期段階で

は、広範囲にわたる被害と通信の途絶などによっ
て、甚大な被害を受けた地域及び全体的な被害規
模の把握ができず、緊急消防援助隊の活動に係る
意思決定が容易でなかった。地震発生後に被害の
様相がなかなか把握できない状況下では、被害の
規模や分布を推定する仕組みが応急対応に係る意
思決定を支援するものとなり得る。このような仕
組みの一つとして、震源に関する情報に基づいて
被害分布や被害量を推定するシステムを開発し、
消防庁において実運用してきた。しかし、2011
年東北地方太平洋沖地震のような巨大地震では、
気象庁から地震直後に発表される震源に関する情

報のみからでは、正確な推定ができなかった。そ
こでこのサブテーマでは、震度情報などを活用す
ることにより、巨大地震に対しても確度の高い地
震・津波被害推定結果が得られるようなシステム
の開発を目指している。

(イ) サブテーマ「水害時の応急対応支援システ

ムの開発」

大規模水害時においては、地方公共団体の災害

対策本部が行う応急対策の項目は非常に多い。さ
らに、対策実施の判断条件、優先順位、対応力の
限界などが複雑に絡み合うこと、災害の様相は
時々刻々と変化し得るものであることなどから、
どのような対策を、いつ、どのように実施するか
を迅速かつ的確に判断することは極めて困難であ
り、場合によっては避難勧告発出に遅れが生じる
ことも懸念される。加えて、大規模水害は頻繁に
発生するものではないため、災害対策本部で応急
対応にあたる担当者全員が必ずしも経験豊富では
ないということも考えられる。こうしたことか
ら、災害対策本部における水害時の応急対応を支
援するための情報を提供するシステムの必要性は
極めて高いといえる。

このようなことから、このサブテーマでは、

〔1〕水害時に住民が適切に避難行動をとれるよ

う、河川水位等の防災・気象情報に基づいてわか
りやすい防災広報文を作成し、緊迫感のある音声
で広報する「避難広報支援システム」を研究開発
すること、〔2〕災害時に災害対策本部が行うべ
き応急対策項目を時系列で管理することが可能な

「応急対応支援システム」と「避難広報支援シス

テム」とが連携し、避難勧告の発令等の意思決定
を支援可能な「水害時の応急対応支援システム」
を開発することを目指している。

(ウ) サブテーマ「同時多発火災への対応を訓練

するためのシミュレーターの開発」

首都直下地震など大都市等で大地震が発生した

場合は、多数の火災がほぼ同時に発生することが
危惧される。このような場合には、消防本部の指
揮指令担当者には、限られた消防隊を被害が最少
になるように火災現場へ出動させることが求めら
れる。しかし、消防職員であっても、同時多発火
災に対応した経験を有する者は少ないことから、
判断・指示を的確に行うことは必ずしも容易では
ないと考えられ、地震時の同時多発火災への消防

消災の学技の・発


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