を保有し、観察する試料や状況に応じて使用する機
器を選択し、火災や危険物流出等事故の原因調査を
行っている。

これらの高度な分析機器を用いることにより、火

災の原因調査では、現場から収去した残渣物や粉塵
について、成分分析、熱分析、粒度分布測定などを
実施し、総合的に発火源の推定を行っている。ま
た、危険物流出等の事故原因調査では、危険物施設
の破損箇所の金属組織や腐食生成物(錆)、漏洩し
た油、腐食環境となる地下水の成分などの分析を行
い、原因の推定を行っている。

さらに、消防研究センターでは、高度な分析機器

を積載した機動鑑識車を整備し、火災や危険物流出
等事故の現場で迅速に高度な調査活動が行えるよう
な体制をとっている。

また、消防法改正により、平成25年4月から、

消防本部は火災の原因調査のため火災の原因である
と疑われる製品の製造業者等に対して資料提出等を
命ずることができることとなった。消防本部の依頼
を受け消防研究センターで実施する鑑識・鑑定で
は、電気用品、燃焼機器、自動車などの製品に関す
るものも多く、これらの火災原因調査に関する消防
本部からの問い合わせにも随時対応しており、消防
本部の火災原因調査の支援のため、設備や体制の整
備を図っていくこととしている。

消防研究センターでは、火災原因調査及び危険物

流出等の事故原因調査に加え、災害・事故における
消防活動において専門的知識が必要となった場合に
は、職員を現地に派遣し、必要に応じて助言を行う
など消防活動に対する技術的支援も行っている。ま
た、消防防災の施策や研究開発の実施・推進にとっ
て重要な災害・事故が発生した際にも、現地に職員
を派遣するなどして、被害調査や情報収集等を行っ
ている。

災害・事故における消防活動に対する技術的支援

としては次のようなものを実施している。

平成24年5月に新潟県南魚沼市内のトンネル工

事現場において可燃性ガスが関係して発生した爆発
事故(死者4名、負傷者3名)では、現場での救助
活動を支援するため、直ちに職員を現地に派遣し、
技術的助言を行うなどしている。その後、爆発事故
の現場見分について消防本部へ技術的支援を行って

行った鑑識は79件、鑑定は28件である。

主な原因調査は次のとおりである。
平成24年4月に山口県内の石油コンビナートで

発生した化学工場の反応釜の爆発火災(死者1名、
負傷者22名)においては、消防本部から消防庁長
官への依頼に基づく火災原因調査を行った。

平成24年5月に広島県内のホテルで発生し宿泊

客等が死傷した火災(死者7名、負傷者3名)にお
いては、消防庁長官の自らの判断による火災原因調
査を行った。

平成24年9月に兵庫県内の化学工場で発生した

アクリル酸製造施設の爆発火災(死者1名、負傷者
36名)においては、消防活動に関する技術的支援
を行うとともに、消防本部から消防庁長官への依頼
に基づく火災原因調査を行った。

平成25年2月に長崎県内のグループホームで発

生し入居者等が死傷した火災(死者5名、負傷者7
名)においては、消防庁長官の自らの判断による火
災原因調査を行った。

平成24年11月に沖縄県内の原油タンクで発生し

た原油流出事故と引き続いて発生した浮き屋根沈没
事故(原油流出量約4.5kL)においては、消防活動
に関する技術的支援を行うとともに、事故原因調査
を行った。

 火災原因査及び危険物流出等の事故原因査

の度にけた組

近年の火災・爆発事故は、グループホームや個室

ビデオ店のような新しい使用形態の施設での火災や
ごみをリサイクルして燃料を製造する施設での火
災、あるいは、リチウムイオン電池やナトリウム硫
黄電池などの蓄電池の火災、燃焼機器、自動車など
の製品の火災など、複雑・多様化している。また、
石油類などを貯蔵し、取り扱う危険物施設での危険
物流出等の事故や火災発生件数は増加傾向にあり、
危険物施設の安全対策上問題となっている。

このような火災・事故を詳細に調査し、原因を究

明することは、火災・事故の予防対策を考える上で
必要不可欠であり、そのためには、調査用資機材の
高度化や科学技術の高度利用が必要である。

このため消防研究センターでは、走査型電子顕微

鏡、デジタルマイクロスコープ、X線透過装置、ガ
スクロマトグラフ質量分析計、フーリエ変換型赤外
分光光度計、X線回折装置などの調査用の分析機器

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