消防庁告示第十三号
消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号)第四十六条の規定に基づき、緊急消防援助隊の出動その他消防の応援等に関する情報通信システムのうち、消防救急デジタル無線通信システムに係るものの仕様を次のとおり定める。
平成二十一年六月四日
消防庁長官 岡本 保
緊急消防援助隊の出動その他消防の応援等に関する情報通信システムのうち、消防救急デジタル無線通信システムに係るものの仕様を定める件
第一 趣旨
この告示は、消防組織法(昭和二十二年法律第二百二十六号。以下「法」という。)第四十六条の規定に基づき、緊急消防援助隊の出動その他消防の応援等に関する情報通信システムのうち、消防救急デジタル無線通信システム(法第一条に規定する消防の任務の遂行上必要な無線通信を行うことを目的とするシステムのうち、二百六十メガヘルツ帯の周波数を使用し、かつ、デジタル信号によるものをいう。)に係るもの(以下「本システム」という。)の仕様を定めるものとする。
第二 用語の意義
この告示において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 基地局 電波法施行規則(昭和二十五年電波監理委員会規則第十四号。以下「規則」という。)第四条第六号に規定する基地局及び同条第七号に規定する携帯基地局のうち、本システムで運用されるものをいう。
二 移動局 規則第四条第十四号に規定する移動局のうち、本システムで運用されるものをいう。
三 消防指令センター 消防隊への指令、本システムその他の通信システムの統制等の業務を行うための施設をいう。
四 単信方式 規則第二条第十七号に規定する単信方式をいう。
五 半複信方式 規則第二条第十九号に規定する半複信方式をいう。
六 統制波 消防の応援等を行う際に、応援を受ける市町村が属する都道府県以外の都道府県から出動した消防隊と当該応援を受ける市町村の消防本部の消防指令センターとの間又は異なる都道府県から出動した消防隊相互間において通信を行うために使用される全国共通の周波数をいう。
七 低群周波数 移動局から基地局向けの送信又は移動局相互間における送受信に使用される周波数をいう。
八 高群周波数 基地局から移動局向けの送信又は基地局相互間における送受信に使用される周波数をいう。
九 指令系装置 消防指令センターに設置され、本システムその他のシステムを操作するための装置であって、音声の入出力並びにデータ(画像、車両の位置を示す情報等の非音声情報をいう。以下同じ。)及び短文(最大八十バイトの文字列をいう。以下同じ。)の入力、処理、表示等を行うものをいう。
ち、本システムで使用されるものをいう。
十一 基地局無線設備 基地局で使用される無線設備をいう。
十二 移動局無線設備 移動局で使用される無線設備をいう。
十三 受令機 音声、データ、短文等を受信するための無線設備をいう。
十四 無線回線制御装置 本システムを自動的に制御する装置であって、指令系装置及び基地局無線設備と電気的に接続されているものをいう。
十五 データ系端末装置 データの入力、処理、表示等を行う装置であって、移動局無線設備、受令機又は無線回線制御装置と電気的に接続されているものをいう。
第三 通信機能の内容
本システムに実装することができる通信機能のうち、次の各号に掲げるものは、それぞれ当該各号に定めるところによるものとする。
一 一斉音声通信機能 消防指令センターに接続された基地局と移動局等(移動局及び受令機を使用している者をいう。以下同じ。)との間において、低群周波数及び高群周波数を使用した半複信方式により通信を行うことによって、消防指令センターと移動局等との間において音声を送受信するものであって、移動局から低群周波数を使用して音声を送信する場合は、当該音声を受信した基地局は、当該音声を当該基地局に接続された消防指令センターに送信するとともに、高群周波数を使用して当該音声を当該基地局の覆域に存するすべての移動局等に送信するもの(高群周波数を使用して当該基地局の覆域に存するすべての移動局等へ音声を送信するものについては、消防指令センターにおいて、移動局から最初に送信された音声に対して応答した後に限る。)とし、消防指令センターから音声を送信する場合は、当該消防指令センターに接続された基地局は、高群周波数を使用して当該音声を当該基地局の覆域に存するすべての移動局等に送信するもの
二 移動局間直接音声通信機能 低群周波数を使用した単信方式により通信を行うことによって、移動局相互間において音声を送受信するもの
三 消防指令センター間音声通信機能 各消防指令センターに接続された基地局相互間において高群周波数を使用した単信方式により通信を行うことによって、当該消防指令センター相互間において音声を送受信するもの
四 他の通信網接続機能 消防指令センターでの操作により、無線回線制御装置又は指令系装置と本システム以外の通信網(本号において「他の通信網」という。)と回線を接続することによって、消防応援活動調整本部が設置される施設、他の消防指令センター、病院等の施設のうち、他の通信網に接続されたものと移動局等との間において音声を送受信するもの
五 ショートメッセージ送信機能 消防指令センター又は移動局から通信の相手方となる消防指令センター又は移動局等に短文を送信するもの
六 ショートメッセージ表示機能 受信した短文を消防指令センターにあっては指令系装置、移動局等にあっては移動局無線設備又は受令機の表示部に表示するもの
七 一斉音声通信中のショートメッセージ送信機能 消防指令センターと移動局との間において一斉音声通信機能を利用して音声を送受信すると同時に、短文を送信するもの
八 一斉音声通信中のショートメッセージ表示機能 消防指令センターと移動局との間において一斉音声通信機能を利用して音声を送受信すると同時に、受信した短文を消防指令センターにあっては指令系装置、移動局等にあっては移動局無線設備又は受令機の表示部に表示するもの
九 データ送信機能 消防指令センター又は移動局から通信の相手方となる消防指令センター又は移動局等にデータを送信するもの
十 データ表示機能 受信したデータを消防指令センターにあっては指令系装置、移動局等にあってはデータ系端末装置の表示部に表示するもの
十一 発信者番号送信機能 消防指令センター又は移動局から通信の相手方となる消防指令センター又は移動局等に音声、データ又は短文を送信する場合において、送信元の消防指令センターに設置された指令系装置又は移動局の移動局無線設備に付与された番号(次号において「発信者番号」という。)を送信先の消防指令センターに設置された指令系装置と電気的に接続されている無線回線制御装置、移動局無線設備又は受令機に併せて送信するもの
十二 発信者番号表示機能 受信した発信者番号を消防指令センターにあっては指令系装置、移動局等にあっては移動局無線設備又は受令機の表示部に表示するもの
十三 通話モニタ機能 消防指令センターでの操作により、当該消防指令センターに接続された基地局において受信されたすべての音声を指令系装置に送信し、当該消防指令センターにおいて聴取するもの
十四 通信モニタ機能 一の消防本部の消防指令センターでの操作により、当該一の消防本部における通信に使用される周波数と同一の周波数を使用して現に行われている他の消防本部における通信を当該消防指令センターに接続された基地局が受信した場合に、当該他の消防本部において同一の周波数を使用して現に通信が行われている旨を当該消防指令センターに設置された指令系装置の表示部に表示するもの
十五 他局通信中の表示信号送信機能 一の移動局が通信中に、当該通信において送受信される音声又はデータを受信している基地局の覆域に存するその他すべての移動局無線設備又は受令機に対して、現に通信を行っている移動局が当該基地局の覆域に存在している旨の表示を生成するための信号(次号において「他局通信中の表示信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
十六 他局通信中の表示機能 現に通信を行っている一の移動局が使用している周波数と同一の周波数を使用して通信を行おうとする移動局等において、他局通信中の表示信号を受信した移動局無線設備又は受令機が、同一の周波数を使用して現に通信を行っている移動局が当該基地局の覆域に存在している旨を表示部に表示するもの
十七 他局通信中の発信禁止信号送信機能 一の移動局が通信中に、当該通信において送受信される音声又はデータを受信している基地局の覆域に存するその他すべての移動局無線設備に対して、当該一の移動局が使用している周波数と同一の周波数を使用して通信を開始することを、当該一の移動局が行う通信が終了するまでの間、不可能にするための信号(次号において「他局通信中の発信禁止信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
十八 他局通信中の発信禁止機能 他局通信中の発信禁止信号を受信した移動局無線設備が、一の移動局が行う通信が終了するまでの間、当該一の移動局が使用している周波数と同一の周波数を使用して通信を開始することを不可能にするもの
十九 出動指令時の報知信号送信機能 消防指令センターでの操作により、特定の基地局の覆域に存するすべての移動局無線設備又は受令機に対して、出動の指令が発せられている旨を報知するためのランプの点灯、音響の発生等を行わせるための信号(次号において「出動指令時の報知信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
二十 出動指令時の報知機能 出動指令時の報知信号を受信した移動局無線設備又は受令機が、出動の指令が発せられている旨を報知するためのランプの点灯、音響の発生等を行うもの
二十一 出動指令時の発信規制信号送信機能 出動指令時の報知信号送信機能の利用の際に特定した基地局の覆域に存するすべての移動局無線設備に対して、出動を指令するための通信が終了するまでの間、通信を開始することを不可能にするための信号(次号において「出動指令時の発信規制信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
二十二 出動指令時の発信規制機能 出動指令時の発信規制信号を受信した移動局無線設備が、出動を指令するための通信が終了するまでの間、通信を開始することを不可能にするもの
二十三 通信規制時の報知信号送信機能 消防指令センターでの操作により、特定の基地局の覆域に存するすべての移動局無線設備又は受令機に対して、通信の規制中である旨を報知するためのランプの点灯、音響の発生等を行わせるための信号(次号において「通信規制時の報知信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
二十四 通信規制時の報知機能 通信規制時の報知信号を受信した移動局無線設備又は受令機が、通信の規制中である旨を報知するためのランプの点灯、音響の発生等を行うもの
二十五 通信規制時の発信規制信号送信機能 通信規制時の報知信号送信機能の利用の際に特定した基地局の覆域に存するすべての移動局無線設備に対して、通信の規制が終了するまでの間、通信を開始することを不可能にするための信号(次号において「通信規制時の発信規制信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
二十六 通信規制時の発信規制機能 通信規制時の発信規制信号を受信した移動局無線設備が、通信の規制が終了するまでの間、通信を開始することを不可能にするもの
二十七 強制切断信号送信機能 消防指令センターでの操作により、特定の基地局の覆域に存するすべての移動局無線設備に対して、現に行っている通信を切断するための信号(次号において「強制切断信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
二十八 強制切断機能 強制切断信号を受信した移動局無線設備が、現に行っている通信を切断するもの
二十九 緊急信号送信機能 消防指令センターでの操作により、特定の基地局の覆域に存するすべての移動局無線設備、受令機又はこれらと電気的に接続されている装置に対して、緊急的対応の必要がある旨を報知するための音響の発生等を行わせるための信号(次号において「緊急信号」という。)を無線回線制御装置が送信するもの
三十 緊急報知機能 緊急信号を受信した移動局無線設備、受令機又はこれらと電気的に接続されている装置が、緊急的対応の必要がある旨を報知するための音響の発生等を行うもの
第四 実装しなければならない通信機能
本システムに実装しなければならない通信機能は、第三の各号に掲げる通信機能のうち、次の各号に掲げるものとする。
一 一斉音声通信機能
二 移動局間直接音声通信機能
三 データ送信機能(統制波を使用して消防指令センターから移動局にデータを送信するものに限る。)
四 発信者番号送信機能
五 通話モニタ機能
六 通信モニタ機能
七 他局通信中の表示信号送信機能
八 他局通信中の表示機能
第五 技術的諸元
本システムが満たさなければならない技術的諸元は、次に定めるところによる。
一 無線設備の仕様は、次の表の上欄に掲げる項目に応じ、それぞれ同表下欄に掲げる諸元を満たすものであること。
項 目 | 諸 元 |
---|---|
アクセス方式 | SCPC |
無線変調方式 | π/4シフトQPSK |
双方向通信方式 | FDD(周波数分割複信) |
キャリア周波数間隔 | 六・二五キロヘルツ |
伝送速度 | 毎秒九千六百ビット |
空中線電力 | 五十ワット以下 |
スタティック感度 | 零デシベルマイクロボルト以下 |
フェージング感度 | ダイバーシチ無しの場合において五デシベルマイクロボルト以下 |
ドップラー周波数 | 十ヘルツ |
スプリアス・レスポンス | 五十三デシベル以上 |
隣接チャネル選択度 | 四十二デシベル以上 |
相互変調特性 | 五十三デシベル以上 |
音声符号化速度 | 誤り訂正符号を含んで毎秒六千四百ビット以下 |
二 移動局無線設備又は受令機とデータ系端末装置との間の通信方式及び電気的特性その他の仕様は、次の表の上欄に掲げる項目に応じ、それぞれ同表下欄に掲げる諸元を満たすものであること。
項 目 | 諸 元 |
---|---|
物理層 | 米国電気通信工業会規格五七四(シリアル二値データ交換のためのデータ端末装置とデータ回線終端装置との間の九ピン非同期インターフェース)に適合すること。 |
データリンク層〜アプリケーション層 | 無手順 |
ドライバの無負荷時出力電圧 | 二十五ボルト以下 |
ドライバの負荷時出力電圧 | データが零の場合にあっては五ボルトを超え十五ボルト以下の範囲、データが一の場合にあってはマイナス十五ボルトを超えマイナス五ボルト以下の範囲 |
ドライバの短絡時出力電流 | 五百ミリアンペア以下 |
ドライバのパワーオフ時出力抵抗 | 三百オーム以上 |
レシーバの入力抵抗 | 三キロオームを超え七キロオーム以下 |
レシーバの入力ヒステリシス電圧 | データが零の場合にあっては三ボルト、データが一の場合にあってはマイナス三ボルト |
レシーバの入力電圧 | マイナス二十五ボルトを超え二十五ボルト以下の範囲 |
最大ケーブル長 | 十五メートル |
最大伝送速度 | 毎秒二十キロビット |
動作方式 | 不平衡 |
伝送速度 | 毎秒九千六百ビット |
同期方式 | 調歩同期 |
データ長 | 八ビット |
スタートビット | 一ビット |
ストップビット | 一ビット |
パリティビット | 有(偶数) |
フロー制御 | RS/CSのハードフロー制御 |
三 指令系装置又はデータ系端末装置と無線回線制御装置との間の通信方式は、次の表の上欄に掲げる項目に応じ、それぞれ同表下欄に掲げる諸元を満たすものであること。
項 目 | 諸 元 |
---|---|
物理層 | イーサネット |
データリンク層〜アプリケーション層 | インターネットプロトコル |
附 則
この告示は、公布の日から施行する。