告示

救急隊員の行う応急処置等の基準

昭和五十三年七月一日
消防庁告示第二号
改正 昭和五六年一二月消防庁告示第九号、平成三年八月第四号、一六年四月第一号、八月第二一号

救急隊員の行う応急処置等の基準を次のとおり定める。

救急隊員の行う応急処置等の基準

(目的)
第一条 この基準は、救急隊員の行う応急処置等の基準となるべき事項を定め、もつて救急業務の適正な運営に資することを目的とする。

〔本条改正・平一六消告一〕

(救急隊員の意義)
第二条 この基準において救急隊員とは、消防法施行令(昭和三十六年政令第三十七号)第四十四条第三項又は第四十四条の二第三項に該当する者をいう。

〔本条改正・昭五六消告九・平一六消告一〕

(応急処置を行う場合)
第三条 救急隊員は、傷病者を医療機関その他の場所に収容し、又は救急現場に医師が到着し、傷病者が医師の管理下に置かれるまでの間において、傷病者の状態その他の条件から応急処置を施さなければその生命が危険であり、又はその症状が悪化する恐れがあると認められる場合に応急処置を行うものとする。

〔本条改正・平三消告四〕

(応急処置の原則)
第四条応急処置は、次の各号に掲げる原則に従つて行うものとする。
一 短時間に行うことができ、かつ効果をもたらすことが客観的に認められている処置であること。
二 複雑な検査を必要とすることなく、消防庁長官が別に定める装備資器材を用いて行う処置であること。

 〔本条改正・平三消告四〕

(観察等)
第五条 救急隊員は、応急処置を行う前に、傷病者の症状に応じて、次の表の上欄に掲げる事項について下欄に掲げるところに従い傷病者の観察等を行うものとする。

区分方法
(一) 顔貌表情や顔色を見る。
(二) 意識の状態ア 傷病者の言動を観察する。
イ 呼びかけや皮膚の刺激に対する反応を調べる。
ウ 瞳孔の大きさ、左右差、変形の有無を調べる。
エ 懐中電灯等光に対する瞳孔反応を調べる。
(三) 出血出血の部位、血液の色及び出血の量を調べる。
(四) 脈拍の状態橈骨動脈、総頸動脈、大腿動脈等を指で触れ、脈の有無、強さ、規則性、脈の早さを調べる。
(五) 呼吸の状態ア 胸腹部の動きを調べる。
イ 頬部及び耳を傷病者の鼻及び口元に寄せて空気の動きを感じとる。
(六) 皮膚の状態皮膚や粘膜の色及び温度、付着物や吐物等の有無及び性状、創傷の有無及び性状、発汗の状態等を調べる。
(七) 四肢の変形や運動の状態四肢の変形や運動の状態を調べる。
(八) 周囲の状況傷病発生の原因に関連した周囲の状況を観察する。

2 消防庁長官、都道府県知事、市町村長又は消防庁長官が定める者が行う救急業務に関する講習の課程で、消防学校の教育訓練の基準(平成十五年消防庁告示第三号)別表第二6に掲げるもの又はこれと同等以上と認められる講習の課程を修了した救急隊員は、前項に掲げるもののほか、応急処置を行う前に、傷病者の症状に応じて、次の表の上欄に掲げる事項について下欄に掲げるところに従い傷病者の観察等を行うものとする。

区分方法
(一) 血圧の状態血圧計を使用して血圧を測定する。
(二) 心音及び呼吸音等の状態聴診器を使用して心音及び呼吸音等を聴取する。
(三) 血中酸素飽和度の状態血中酸素飽和度測定器を使用して血中酸素飽和度を測定する。
(四) 心電図心電計及び心電図伝送装置を使用して心電図伝送等を行う。

3 救急隊員は、応急処置を行う前に、傷病者本人又は家族その他の関係者から主訴、原因、既往症を聴取するものとする。

 〔一項改正・二項追加・平三消告四、二項改正・平一六消告一〕

(応急処置の方法)
第六条 救急隊員は、前条の観察等の結果に基づき、傷病者の症状に応じて、次の表の上欄に掲げる事項について下欄に掲げるところに従い応急処置を行うものとする。

区分 方法
(一) 意識、呼吸、循環の障害に対する処置 ア 気道確保 (ア) 口腔内の清拭
直接手指又は手指にガーゼを巻き、異物を口角部からかき出す。
(イ) 口腔内の吸引
口腔内にある血液や粘液等を吸引器を用いて吸引し除去する。
(ウ) 咽頭異物の除去
背部叩打法又はハイムリック法により咽頭異物を除去する。
(エ) 頭部後屈法又は下顎挙上法による気道確保
頭部後屈法又は下顎挙上法で気道を確保する。
(オ) エァーウェイによる気道確保
気道確保を容易にするためエァーウェイを挿入する。
イ 人工呼吸 (ア) 呼気吹き込み法による人工呼吸
次の方法により直接傷病者の口や鼻から呼気を吹き込む。
 a 口対口による人工呼吸
 b 口対鼻による人工呼吸
 c 口対ポケットマスクによる人工呼吸
(イ) 手動式人工呼吸器(マスクバック人工呼吸器)による人工呼吸
手動式人工呼吸器を用いて人工呼吸を行う
(ウ) 自動式人工呼吸器による人工呼吸
自動式人工呼吸器を用いて人工呼吸を行う。
(エ) 用手人工呼吸
ジルベスター法変法又はアイブイ法等により人工呼吸を行う。
ウ 胸骨圧迫心マッサージ 手を用いて胸骨をくり返し圧迫することにより心マッサージを行う。
エ 除細動 自動体外式除細動器による除細動を行う。
オ 酸素吸入 加湿流量計付酸素吸入装置その他の酸素吸入器による酸素吸入を行う。
(二) 外出血の止血に関する処置 ア 出血部の直接圧迫による止血 出血部を手指又はほう帯を用いて直接圧迫して止血する。
イ 間接圧迫による止血 出血部より中枢側を手指又は止血帯により圧迫して止血する。
(三) 創傷に対する処置 創傷をガーゼ等で被覆しほう帯をする。
(四) 骨折に対する処置 副子を用いて骨折部分を固定する。
(五) 体位 傷病者の症状や創傷部の保護等に適した体位をとる。
(六) 保温 毛布等により保温する。
(七) その他 傷病者の生命の維持又は症状の悪化の防止に必要と認められる処置を行う。

2 前条第二項に規定する救急隊員は、前項に掲げるもののほか、前条の観察等の結果に基づき、傷病者の症状に応じて、次の表の上欄に掲げる事項について下欄に掲げるところに従い応急処置を行うものとする。

区分 方法
(一) 意識、呼吸、循環の障害に対する処置 ア 気道確保 (ア) 吐物及び異物の除去
喉頭鏡及び異物除去に適した鉗子等を使用して吐物及び異物を除去する。
(イ) 経鼻エアーウェイによる気道確保
気道確保を容易にするため経鼻エアーウェイを挿入する。
イ 胸骨圧迫心マッサージ 自動式心マッサージ器を用いて心マッサージを行う。
(二) 血圧の保持に関する処置並びに骨折に対する処置 ショック・パンツを使用して血圧の保持と骨折肢の固定を行う。
(三) その他 在宅療法継続中の傷病者の搬送時に、継続されている療法を維持するために必要な処置を行う。

3 救急救命士(救急救命士法(平成三年法律第三十六号)第二条第二項に規定する救急救命士をいう。)の資格を有する救急隊員は、前二項に掲げるもののほか、救急救命士法の定めるところにより、応急処置を行うものとする。

 〔一項改正・二・三項追加・平三消告四、一項改正・平一六消告二一〕

(医師の指示の下に行う応急処置)
第七条 傷病者が医師の管理下にある場合において医師の指示があるときは、救急隊員は前二条の規定によることなく医師の指示に従い応急処置を行うものとする。

附 則
この告示は、昭和五十三年七月一日から施行する。

附 則〔昭和五六年一二月一日消防庁告示第九号〕
この告示は、昭和五十七年四月一日から施行する。

附 則〔平成三年八月五日消防庁告示第四号〕
この告示は、公布の日から施行する。

附 則〔平成一六年四月一日消防庁告示第一号〕
この告示は、平成十六年四月一日から施行する。