消防予第123号 既存の有料老人ホームに対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について
消防予第123号 平成11年5月28日 各都道府県消防主管部長 殿 消 防 庁 予 防 課 長 既存の有料老人ホームに対する消防用設備等の技術上の特例基準の適用について 平成11年3月17日に公布された消防法施行規則の一部を改正する省令(平成11年自冶省令第5号)により、消防法施行令(以下「令」という。)別表第1項ロに掲げる防火対象物のうち有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入所させるものに限る。)について、スプリンクラー設備の設置対象となる床面積の合計が6千平方メートル以上から千平方メートル以上とされるとともに、屋内消火栓設備の設置対象となる延べ面積の倍読み規定に係る上限が千平方メートルとされたところである(平成11年10月1日施行)。 本改正により、平成11年10月1日において現に存する有料老人ホーム若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の有料老人ホーム若しくはその部分(以下「既存の有料老人ホーム」という。)についても、スプリンクラー設備又は屋内消火栓設備の設置対象となる規模のものにあっては、平成19年9月30日までにスプリンクラー設備又は屋内消火栓設備を設置することが必要となる。この場合において、既存の有料老人ホームにあっては、スプリンクラー設備等を現行基準に従って設置することが困難であるものが見受けられること等特殊な状況にあること等を勘案して、令第32条の規定を適用する場合の特例基準を下記のとおり定めとりまとめた。 貴職におかれては、その運用について格段の配慮をされるとともに、貴都道府県内の市町村に対しても、この旨を通知し、その運用に遺漏のないよう格別のご配慮をお願いする。 1 パッケージ型自動消火設備等による代替について 「屋内消火栓設備及びスプリンクラー設備の代替設備の取扱いについて」(平成9年11月27日付け消防予第182号)により、スプリンクラー設備の代替としてパッケージ型自動消火設備を、屋内消火栓設備の代替としてパッケージ型消火設備をそれぞれ設置することができること。この場合において、パッケージ型自動消火設備の有効範囲内の部分については、屋内消火栓設備(代替設備を含む。)を設置しないことができる。 2 介護居室にスプリンクラー設備が設けられている場合の取扱いについて 介護居室にスプリンクラー設備が設けられており、かつ、次の要件に適合する場合には、令第11条及び第12条の規定は適用しないことができること。 (1) 介護居室に設けられているスプリンクラー設備は、令第12条の規定の例によるものであること。ただし、非常電源並びに水源水量及びスプリンクラー設備の性能については、次によることができる。 ア 非常電源については、次のいずれかによることができること。
(イ) 自家発電設備は、次のaからeまでに該当する場合は、当分の間、自家発電設備の基準(昭和48年消防庁告示第1号)に適合するものとみなしてさしつかえないものであること。 a 同告示第2、1(及びを除く。)、2(、及びホを除く。)及び4(ロ(自動停止装置に限る。)を除く。)並びに第3に適合するものであること。 b 常用電源が停電してから電圧確立までの所要時間が、1分以内であること。 c セルモーターに使用する蓄電池設備は、(ウ)に適合するものであること。 d 燃料タンクの容量は、消防用設備等を有効に1時間以上連続して運転できるものであること。 e 起動試験を行った場合、機能に異常を生じないものであること。 (ウ) 蓄電池設備は、次のaからeまでに該当する場合は、当分の間、蓄電池設備の基準(昭和48年消防庁告示第2号)に適合するものとみなしてさしつかえないものであること。 a 次に掲げる蓄電池以外の蓄電池であること。
b 自動的に充電するもであること。 c 出力電圧又は出力電流を監視できる電圧計又は電流計が設けられていること。 d 補液が必要な蓄電池にあっては、減液警報装置が設けられていること。 e 蓄電池設備の容量は、消防用設備等ごとに定められた時間以上放電できるものであること。
(エ) 加圧送水装置に自家発電設備の基準に適合する内燃機関が設けられている場合で、当該内燃機関が常用電源の停電時に自動的に起動するものであるか又は常時人がいて停電時において直ちに操作することができる場所に設けられているときは、当該内燃機関を加圧送水装置の非常電源とみなしてさしつかえないものであること。
(2) 介護居室以外の部分は、次のいずれかによること。 ア 補助散水栓又は屋内消火栓設備(パッケージ型消火設備により代替する場合を含む。)が設置されていること。 イ 規則第13条第1項(第1号ロを除く。)の規定の例によること。この場合において、同条同項ハ中「ロの開口部には、甲種防火戸(廊下と階段とを区画する部分以外の部分の開口部にあつては、防火シャッターを除く。)」とあるのは「甲種防火戸若しくは乙種防火戸又は不燃材料の扉」と読み替えるものとすること。 3 主要構造部が木造である有料老人ホームの取扱いについて 既存の有料老人ホーム又はその部分で主要構造部が木造であるものについては、屋内消火栓設備、自動火災報知設備、非常警報設備、避難器具及び誘導灯が令第11条、第21条及び第24条から第26条までの基準に従って設置され、当該有料老人ホームの居室の部分から2以上の異なった経路により有効に避難できると認められ、かつ、当該木造部分と木造以外の部分とが延焼防止上有効に区画されている場合は、当該木造部分にスプリンクラー設備を設置しないことができるものであること。 4 屋内消火栓設備をスプリンクラー設備に改造する場合の取扱いについて スプリンクラー設備を設置するに当たって、当該有料老人ホームに屋内消火栓設備が設置されている場合にあっては、当該設備をスプリンクラー設備に改造してもさしつかえないものであること。この場合において、水源の水量及びポンプ能力については、前2(1)イに規定する個数に応じた値以上の値(床面積の合計が千平方メートル以上3千平方メートル未満の場合にあっては、水源水量4.8立方メートル以上、ポンプの吐出量270リットル毎分以上、また、床面積の合計が3千平方メートル以上6千平方メートル未満の場合にあっては水源水量8.0立方メートル以上、ポンプの吐出量450リットル毎分以上)であることが必要であること。 なお、屋内消火栓設備をスプリンクラー設備に改造する方法については、「既存の社会福祉施設等において、屋内消火栓設備をスプリンクラー設備に改造し設置する場合等における留意事項について」(昭和62年12月4日付け消防予第205号)によること。 消防法施行令の一部を改正する政令等の施行について(平成11年3月17日付け消防予第53号)(抜粋) 有料老人ホームに係るスプリンクラー設備の設置に関する基準の見直し 平成6年9月の「シルバーサービスに関する調査結果に基づく勧告」(総務庁)において、「自ら避難することが困難な要介護者が入居する有料老人ホームにおけるスプリンクラーの設置基準の見直し」を行うべき旨の勧告がなされたことを契機に、有料老人ホームに係るスプリンクラー設備等の実態調査の結果等を踏まえ、「有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入所させるものに限る。)」に係るスプリンクラー設備の設置について、防火安全上の観点から、特別養護老人ホーム等と同様の取扱いとなるよう見直しが図られたこと。(規則第13条第2項関係) なお、「主として要介護状態にある者を入所させるもの」とは、介護居室の定員の割合が一般居室を含めた施設全体の定員の半数以上のものをいうものであること。 施行期日等 1 施行期日 (1) 改正令及び改正規則は、平成11年4月1日から施行することとされたこと。ただし、有料老人ホームに係るスプリンクラー設備の設置に関する基準の見直し(規則第13条第2項)、誘導灯の設置に関する基準の見直し及びそれに伴う所要の規定整備(規則第3条第2項、第28条の2及び第28条の3)並びに排煙設備の建築基準法との整合化(令第28条)については、平成11年10月1日から施行することとされたこと。(改正令附則及び改正規則附則第1項関係) 2 経過措置 (1) 平成11年10月1日において現に存する有料老人ホーム若しくはその部分又は現に新築、増築、改築、移転、修繕若しくは模様替えの工事中の有料老人ホーム若しくはその部分におけるスプリンクラー設備のうち、規則第13条第2項の規定に適合しないものに係る技術上の基準については、同項の規定にかかわらず、平成19年9月30日までの間、なお従前の例によることとされたこと。(改正規則附則第2項関係) 3 運用上の留意事項 (1) 既存の有料老人ホームについては、改正省令附則第2項による経過措置のほか、消防用設備等の技術上の特例基準の適用について、別途通知する予定であること。 |