通知・通達

消防予第266号 火災通報装置のISDN回線への接続等の取扱いについて


消防予第266号
平成12年11月30日
 
各都道府県消防主管部長 様
 
消防庁予防課長
 
 
火災通報装置のISDN回線への接続等の取扱いについて
 
 
 火災通報装置(1の押しボタンの操作等により消防機関へ通報することができる火災報知設備で、電話回線を利用するものをいう。以下同じ。)については、消防法施行令第23条、消防法施行規則第25条及び「火災通報装置の基準」(平成8年消防庁告示第1号)等に基づき設置することとされるとともに、確実な火災通報の徹底を図るため、「消防機関へ通報する火災報知設備の取扱いについて」(平成8年2月16日付け消防予第22号)及び「火災通報装置の設置に係る指導・留意事項について」(平成8年8月19日付け消防予第164号)により、その運用について十分留意するよう通知しているところです。
 また、インターネットの普及等により増加しているISDN回線に対して、現行の火災通報装置を接続することについては、「電話回線を利用する通報装置の設置・維持管理に係る留意事項について」(平成8年9月11日付け消防予第180号・消防救第199号)により、認められないこととしています。
 しかしながら、近年、アナログ回線をISDN回線に変更する防火対象物が増加しており、特に火災通報装置の義務設置対象物の多くを占める病院や社会福祉施設等では、情報ネットワークにインターネット等を利用しているなどの理由により、ISDN回線の普及が急速に進んでいます。
 また、誤ってISDN回線に現行の火災通報装置を接続し、火災通報ができなくなっていた事例も散見されるところです。
 このような状況の下、近年、火災通報装置の機能を損なうことなくISDN回線に接続できる機器の開発が進められてきており、今般、下記に示す基準により火災通報装置の設置、維持管理等がなされ、検査等によりその機能が十分であると確認されたものについては、技術的にISDN回線に火災通報装置を接続しても差し支えないものとしたので、消防法施行令第32条を適用する場合において参考としてください。
 なお、貴都道府県内の市町村に対してもこの旨通知し、その運用について配慮されるよう周知願うとともに、既に火災通報装置が設置されている防火対象物の関係者にも広報等により周知願います。

 
ISDN回線に火災通報装置を接続する場合の基準
1 趣旨
  この基準は、ISDN回線に火災通報装置を接続する場合の取扱い及び接続に用いる装置の設置、機能、維持管理等について必要な事項を定める。
2 用語の定義
  この基準に用いる用語の定義は、次に定めるところによる。
  端末機器
   電話回線に接続して用いる機器をいう。
  アナログ端末機器
   端末機器のうち、火災通報装置、電話機、ファクシミリ等アナログ信号を発するものをいう。
  デジタル端末機器
   端末機器のうち、パソコン等デジタル信号を発するものをいう。
  TA(ターミナルアダプター)
   ISDN回線に対応する機能を持たない端末機器をISDN回線に接続して使用するための信号変換装置で、DSUと組み合わせて使用するものをいう。
  火災通報装置対応TA
   TAのうち、火災通報装置が発する信号をISDN回線に対応するものに変換できることについて、当該火災通報装置の製造者により確認されたものをいう。
  火災通報優先接続型TA
   火災通報装置対応TAのうち、火災通報装置が発する信号を他の端末機器が発する信号に優先してISDNに接続し、送出する機能を持ったものをいう。
  DSU(デジタルサービスユニット)
   ISDN回線におけるデジタル通信に必要な速度変換、同期等の機能を持つ回線接続装置で、ISDN回線の終端に接続するものをいう。
  火災通報装置対応TA等
   火災通報装置対応TAとDSUを接続したもの(DSU内蔵型の火災通報装置対応TAを含む。)をいう。
  火災通報優先接続型TA等
   火災通報優先接続型TAとDSUを接続したもの(DSU内蔵型の火災通報優先接続型TAを含む。)をいう。
(10) アナログ端末機器用端子
   アナログ端末機器を接続するための端子をいう。
(11) デジタル端末機器用端子
   USB端子、シリアル端子、S/T端子等デジタル端末機器及びTAを接続するための端子をいう。
3 火災通報装置対応TAに必要な機能等
  火災通報装置対応TAの機能等は、次に定めるところによること。
  ア 火災通報装置の音声信号を正確にISDN回線に送出でき、かつ、消防機関からの呼返し等の音声信号を適正に火災通報装置に伝達できる機能を有すること。
  イ 消防機関からの呼返し等の音声信号を火災通報装置以外の端末機器に伝達しない機能を有すること。
  ウ 常用電源が停電した場合においても、火災通報装置が予備電源により作動している間有効に作動する措置が講じられていること。
  火災通報優先接続型TAの優先接続機能については、火災通報装置が起動した場合、火災通報装置以外に接続されている端末機器が使用中であっても、火災通報装置が発する信号を優先してISDN回線に接続し、送出するものであること。
4 ISDN回線への火災通報装置の接続方法
  火災通報装置は、次の方法により火災通報装置対応TA等を介してISDN回線に接続するとともに、火災通報装置が接続された端子には、その旨の表示を見やすい位置に附しておくこと。
  火災通報優先接続型TA等を介して接続する場合
  ア 火災通報装置は、優先接続機能を有するアナログ端末機器用端子に接続すること。
  イ 火災通報優先接続型TA等を介して接続する場合は、アナログ端末機器用端子及びデジタル端末機器用端子にそれぞれの端末機器を接続しても差し支えない。ただし、デジタル端末機器用端子に接続するデジタル端末機器又はTAの送受信情報量を128kbpsとすると、火災通報装置が起動してから通報までに90秒程度要することがあるので、デジタル端末機器又はTAを接続する場合は、その送受信情報量を64kbps以下とすること。
  火災通報優先接続型TA等以外の火災通報装置対応TA等を介して接続する場合 
  ア 火災通報装置は、アナログ端末機器用端子に接続すること。
  イ ISDN回線における1の信号チャンネルを火災通報装置専用として確保する必要があることから、火災通報装置以外の端末機器は、アナログ端末機器用端子又はデジタル端末機器用端子のいずれかに1個のみ接続すること。
  ウ デジタル端末機器を接続する場合は、その送受信情報量を64kbps以下とすること。
  エ デジタル端末機器用端子には、他のTAを接続しないこと。
5 火災通報装置対応TA等の設置方法
  火災通報装置対応TA等の設置方法は、次によること。
  湿気、ほこり等の影響を受けにくい箇所に設置されていること。
  地震等による転倒を防止する措置が講じられていること。
6 接続時の機能の確認
  火災通報装置の設置者等による確認
   ISDN回線に火災通報装置を接続する場合は、次の事項について確認し、適切な接続を図ること。
  ア 火災通報装置対応TA等の仕様
  イ 火災通報装置製造メーカーが示す火災通報装置と火災通報装置対応TA等との適合
  ウ ISDN回線への火災通報装置の接続方法
  消防機関による確認
   消防機関は、火災通報装置について設置の届出があった場合には、その検査のときにおいて、当該火災通報装置の接続方法及び通報状態について確認すること。
7 既設の火災通報装置の取扱い
  既に火災通報装置が設置されている防火対象物において、電話回線がアナログ回線からISDN回線に変更された場合も、上記3から6に準じて、火災通報装置の適切な接続 について確認すること。
8 維持管理
  ISDN回線に火災通報装置が接続されている防火対象物については、次に示すところにより維持管理の徹底を図り、確実な火災通報を確保すること。
  火災通報装置の点検時には、火災通報装置対応TA等の機能及び接続状態についても確認し、その結果を火災通報装置の点検結果と合わせて消防機関に報告すること。
  火災通報装置対応TA等の仕様、接続方法等が変更された場合も、上記3から6に準じて、適切な接続等について確認すること。
9 留意事項
  本基準は、火災通報装置をISDN回線に接続することに起因して火災通報に支障が生じないようにするための取扱いについて特に示したものであり、火災通報装置を設置する場合の消防用設備等としての基準については、消防法施行令第23条及び消防法施行規則第25条に基づいて設置及び維持管理を徹底すること。
   また、これらの運用についても、「消防機関へ通報する火災報知設備の取扱いについて」(平成8年2月16日付け消防予第22号)、「火災通報装置の設置に係る指導・留意事項について」(平成8年8月19日付け消防予第164号)に基づき行われる必要があること。
   ただし、次の規定等については、火災通報装置の必要性能を満足するよう上記のとおり設置及び維持管理がされている場合には、技術的に支障ないものとして取り扱って差し支えないと考えられること。
 ア 消防法施行規則第25条第3項第2号
   「火災通報装置は、屋内の電話回線のうち交換機等と電話局の間となる部分に接続すること。」
 イ 消防庁予防課長通知(平成8年2月16日付け消防予第22号)1接続する電話回線
   「火災通報装置は、屋内の電話回線のうち、構内交換機等と電話局の間となる分に接続することとされているが、この場合において構内交換機等の内線には接続しないこと。
   また、電話回線は、利用度の低い発信専用回線の1回線を使用することが望ましいこと。」
火災通報装置対応TA等は、火災通報装置の附属装置ではなく、電話回線の一部と観念されるものであり、火災通報装置対応TA等の設置等に係る工事については、消防用設備等の工事には該当しないこと。
10 その他
  火災通報装置とISDN回線との接続について、別紙に接続例を示すので参考とされたいこと。